(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】フッ化物を含む水性亜鉛口腔ケア組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/27 20060101AFI20230222BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20230222BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20230222BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20230222BHJP
A61K 8/21 20060101ALI20230222BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20230222BHJP
A61K 33/30 20060101ALI20230222BHJP
A61K 33/16 20060101ALI20230222BHJP
A61K 33/02 20060101ALI20230222BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20230222BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20230222BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20230222BHJP
A61K 31/191 20060101ALI20230222BHJP
A61K 31/194 20060101ALI20230222BHJP
A61K 31/401 20060101ALI20230222BHJP
A61K 31/405 20060101ALI20230222BHJP
A61K 31/4172 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
A61K8/27
A61K8/36
A61K8/44
A61K8/19
A61K8/21
A61Q11/00
A61K33/30
A61K33/16
A61K33/02
A61P1/02
A61K31/198
A61K31/19
A61K31/191
A61K31/194
A61K31/401
A61K31/405
A61K31/4172
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540427
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(85)【翻訳文提出日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 IB2020062516
(87)【国際公開番号】W WO2021137154
(87)【国際公開日】2021-07-08
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ワン,イジョン
(72)【発明者】
【氏名】トン,ティファニー ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ルシン,リチャード ピー.
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AB081
4C083AB082
4C083AB211
4C083AB471
4C083AB472
4C083AC231
4C083AC271
4C083AC291
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC581
4C083AC582
4C083CC41
4C083DD23
4C083EE07
4C083EE32
4C086AA01
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4C086BC07
4C086BC14
4C086BC38
4C086GA13
4C086HA03
4C086HA07
4C086HA09
4C086MA03
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4C086MA17
4C086MA57
4C086NA14
4C086ZA67
4C206AA01
4C206AA02
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4C206GA20
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4C206HA32
4C206JA27
4C206JA58
4C206KA01
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4C206MA04
4C206MA37
4C206MA77
4C206NA14
4C206ZA67
(57)【要約】
アミン含有リガンドで安定化された亜鉛錯体及びフッ化物アニオン源を有する均質な溶液を含む歯科用組成物が記載される。歯科用組成物を使用する歯表面で齲蝕活性を治療又は予防するための方法も記載されており、同様にキットについても記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用組成物であって、
カルボン酸亜鉛と、
アミン含有リガンドと、
前記歯科用組成物の重量に対して少なくとも4重量%の量でフッ化物を提供するのに有効なフッ化物アニオン源と、
水と、を含み、
前記歯科用組成物は、少なくとも8のpHを有し、
前記歯科用組成物は、約20℃~25℃の温度で均質な溶液である、歯科用組成物。
【請求項2】
前記カルボン酸亜鉛、前記アミン含有リガンド、前記フッ化物源、及び水から本質的になる、請求項1に記載の歯科用組成物。
【請求項3】
前記カルボン酸亜鉛が、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、マレイン酸亜鉛、酢酸亜鉛、フマル酸亜鉛、アジピン酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、それらの水和物、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1又は2に記載の歯科用組成物。
【請求項4】
前記カルボン酸亜鉛がクエン酸亜鉛である、請求項1~3のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項5】
前記アミン含有リガンドが、アミノ酸及びアンモニアのうちの1つ以上から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項6】
前記アミン含有リガンドが、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グリシン、アルギニン、グルタミン酸、バリン、アラニン、トレオニン、システイン、プロリン、アスパラギン、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸である、請求項1~5のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項7】
前記アミノ酸が、アルギニンである、請求項1~6のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項8】
前記アミン含有リガンドが、アンモニアである、請求項1~5のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項9】
前記フッ化物アニオン源が、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム、フッ化銀、フッ化第一スズ、フッ化カリウム、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項10】
前記フッ化物アニオン源がフッ化アンモニウムである、請求項1~9のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項11】
前記アミン含有リガンドが、前記歯科用組成物の重量に対して約5重量%~約30重量%の量で存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項12】
前記カルボン酸亜鉛が、前記歯科用組成物の重量に対して約5重量%~約15重量%の亜鉛を提供するのに有効な量で存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項13】
前記水が、前記歯科用組成物の重量に対して約20重量%~約50重量%の量で存在する、請求項1~12のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項14】
前記アミン含有リガンドが、前記歯科用組成物に対して約10重量%~約15重量%の量で存在し、約1:2~約1:3の亜鉛:アミン含有リガンドモル比を提供する、請求項1~13のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項15】
歯表面上の齲蝕活性を治療又は予防するための方法であって、
請求項1~14のいずれか一項に記載の歯科用組成物を提供することと、
前記歯科用組成物を前記歯表面に接触させることと、を含む、方法。
【請求項16】
前記方法が、前記歯科用組成物を約10秒~約15分間にわたって前記歯表面に接触させることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記接触させることが、前記歯科用組成物をスポイト、針、ピペット、トレイ、又はスワブで適用することを含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項18】
キットであって、
請求項1~14のいずれか一項に記載の歯科用組成物と、
請求項15~17のいずれか一項に記載の方法を実行するように使用者を案内する一連の指示と、
を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
虫歯は、細菌によって生成された酸との相互作用により齲蝕が生じた疾患である。銀塩は、抗菌特性を有することが知られており、フッ化物塩は、歯表面を再石灰化することが知られている。銀及びフッ化物組成物の両方は、齲蝕活性の予防及び停止を助けることが別々に示されている。
【0002】
齲蝕の影響を受けた表面を治療するために、フッ化ジアミン銀が使用されてきた。しかしながら、唾液と反応してリン酸銀の形成を生じる。リン酸銀は光感受性であり、露光されたときに歯を永久的に黒色に染色する。フッ化銀(ジアミン安定剤なし)は水溶液中で非常に不安定であり、迅速に分解して金属銀を形成する。
【0003】
亜鉛塩もまた、抗菌特性を有することが知られており、かつ光感受性を受けず、すなわち、亜鉛錯体は、露光時に黒色に変化しない。亜鉛及びフッ化物は一緒になって、有望な齲蝕治療を形成する可能性がある。しかしながら、フッ化亜鉛、並びに他の亜鉛錯体は、水溶液に溶解しない。実際、水溶性の亜鉛前駆体が用いられた場合でも、フッ化亜鉛は、しばしば溶液から沈殿する。
【0004】
必要とされているのは、齲蝕活性を治療するために亜鉛及びフッ化物の水溶液を配合する方法である。本開示は、フッ化物イオンを含む水溶液中のアミン含有リガンドで安定化された亜鉛錯体を提供する歯科用組成物を記載する。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態では、歯科用組成物が記載される。歯科用組成物は、カルボン酸亜鉛と、アミン含有リガンドと、歯科用組成物の重量に対して少なくとも4重量%の量でフッ化物を提供するのに有効なフッ化物アニオン源と、水と、を含み得る。歯科用組成物は、少なくとも8のpHを有し得、約20~25℃の温度で均質な溶液であり得る。
【0006】
一実施形態では、歯表面上の齲蝕活性を治療又は予防するための方法が記載される。本方法は、カルボン酸亜鉛と、アミン含有リガンドと、歯科用組成物の重量に対して少なくとも4重量%の量でフッ化物を提供するのに有効なフッ化物アニオン源と、水と、を含む歯科用組成物を提供することを含み得る。歯科用組成物は、少なくとも8のpHを有し得、約20~25℃の温度で均質な溶液であり得る。本方法は、歯科用組成物を歯表面に接触させることを含み得る。
【0007】
一実施形態では、キットが記載される。キットは、カルボン酸亜鉛と、アミン含有リガンドと、歯科用組成物の重量に対して少なくとも4重量%の量でフッ化物を提供するのに有効なフッ化物アニオン源と、水と、を含む歯科用組成物を含み得る。歯科用組成物は、少なくとも8のpHを有し得、約20~25℃の温度で均質な溶液であり得る。本方法は、歯科用組成物を歯表面に接触させることを含み得る。キットは、歯科用組成物を提供し、歯科用組成物を歯表面に接触させる方法を使用者に実行させるように案内するための指示をさらに含み得る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で使用される場合、「約」は、所与の値の±10パーセントを意味する。例えば、約10は、9~11を意味する。
【0009】
本明細書で使用される場合、「カルボン酸亜鉛」は、1つ以上のカルボキシレートリガンド、例えば、-OC(O)-Rを有する亜鉛錯体を意味する。
【0010】
本明細書で使用される場合、「均質な溶液」は、視覚的に透明又は透過性の溶液を指す。本明細書に記載の均質な溶液において微粒子又は混濁は観察されない。均質な溶液は、分散液、懸濁液などを除外する。
【0011】
歯科用組成物
多くの実施形態では、歯科用組成物が記載される。歯科用組成物は、カルボン酸亜鉛と、アミン含有リガンドと、歯科用組成物の重量に対して少なくとも4重量%の量でフッ化物を提供するのに有効なフッ化物アニオン源と、水と、を含み得る。歯科用組成物は、少なくとも8のpHを有し得、約20~25℃の温度で均質な溶液であり得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、カルボン酸亜鉛、アミン含有リガンド、フッ化物源、及び水から本質的になり得る。実際、増粘剤、シリカ、又はポリマービヒクルは必要とされない場合がある。
【0013】
いくつかの実施形態では、カルボン酸亜鉛は、歯科用組成物の重量に対して重量%で約5重量%~約15重量%の亜鉛を提供するのに有効な量で存在する。例えば、カルボン酸亜鉛は、組成物の重量に対して重量%で約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、若しくは15重量%、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲内の値、例えば、約8~約15重量%、約10~約12重量%などの亜鉛を提供し得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、アミン含有リガンドは、歯科用組成物の重量に対して約5重量%~約30重量%の量で存在する。例えば、アミン含有リガンドは、重量%で約5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、若しくは30重量%、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲内の値、例えば、約8~約16重量%、約10~約15重量%の量で存在し得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、カルボン酸亜鉛及びアミン含有リガンドは、約1:2~約1:3のモル比を提供する量で存在する。いくつかの実施形態では、モル比は、1:2である。他の実施形態では、モル比は、1:2より大きい。
【0016】
いくつかの実施形態では、フッ化物アニオン源は、歯科用組成物の重量に対して少なくとも約10重量%、少なくとも約15重量%、又は少なくとも約20重量%の量の有効量のフッ化物を提供する量で存在する。
【0017】
いくつかの実施形態では、フッ化物アニオン源は、約4重量%~約20重量%の量の有効量のフッ化物を提供する量で存在する。例えば、フッ化物アニオン源は、歯科用組成物の重量に対して重量%で約4、6、8、10、12、14、16、若しくは20重量%、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲内の値、例えば、約14~約10重量%、若しくは約8~約16重量%の量のフッ化物を提供し得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、水は、歯科用組成物の重量に対して約20重量%~約50重量%の量で存在する。例えば、水は、約20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、若しくは50の量、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲内の値、例えば、約28~約50、約36~約40などの量で存在し得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物のpHは、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、又は少なくとも12であり得る。いくつかの実施形態では、歯科用組成物は約8~約10のpHを有し得る。いくつかの実施形態では、pHは9であり得る。
【0020】
カルボン酸亜鉛
いくつかの実施形態では、カルボン酸亜鉛は、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、マレイン酸亜鉛、酢酸亜鉛、フマル酸亜鉛、アジピン酸亜鉛、及びプロピオン酸亜鉛のうちの 1つ以上から選択される。
【0021】
いくつかの実施形態では、カルボン酸亜鉛は、クエン酸亜鉛である。
【0022】
アミン含有リガンド
いくつかの実施形態では、アミン含有リガンドは、アミノ酸及びアンモニアのうちの1つ以上を含み得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、アミン含有リガンドは、1つ以上のアミノ酸を含み得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、アミン含有リガンドは、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グリシン、アルギニン、グルタミン酸、バリン、アラニン、トレオニン、システイン、プロリン、及びアスパラギンのうちの1つ以上から選択される。
【0025】
いくつかの実施形態では、アミン含有リガンドは、アルギニンであり得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、アミン含有リガンドは、アンモニア(H3N)である。
【0027】
他の実施形態では、アミン含有リガンドは、式R3Nのアミンを含み得、式中、1つ以上のRはC1~4アルキルである。
【0028】
フッ化物アニオン源
いくつかの実施形態では、フッ化物アニオン源は、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム、フッ化銀、フッ化第一スズ、及びフッ化カリウムのうちの1つ以上から選択される。
【0029】
いくつかの実施形態では、フッ化物アニオン源は、フッ化アンモニウム、フッ化銀、フッ化第一スズ、及びフッ化カリウムのうちの1つ以上から選択される。
【0030】
他の実施形態では、フッ化物源は、フッ化ナトリウムではない。
【0031】
いくつかの実施形態では、フッ化物アニオン源は、フッ化アンモニウムである。
【0032】
齲蝕活性を治療又は予防するための方法
多くの実施形態では、歯表面上の齲蝕活性を治療又は予防するための方法が記載される。本方法は、カルボン酸亜鉛と、アミン含有リガンドと、歯科用組成物の重量に対して少なくとも4重量%の量でフッ化物を提供するのに有効なフッ化物アニオン源と、水と、を含む、歯科用組成物を提供することを含み得る。歯科用組成物は、少なくとも8のpHを有し得、約20~25℃の温度で均質な溶液であり得る。本方法は、歯科用組成物を歯表面に接触させることを含み得る。
【0033】
多くの実施形態では、歯科用組成物としては、本明細書に記載の任意の歯科用組成物が挙げられ得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、本方法は、歯科用組成物を、約10秒~約15分の期間にわたって歯表面に接触させることをさらに含み得る。例えば、歯科用組成物は、約10、20、30、40、50、60、90、120、150、180、210、240、300、360、420、480、540、600、660、720、780、840、若しくは900秒間、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲内の値、例えば、約30~約60秒、約90~約300秒などの範囲内の期間、歯表面に接触させることができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、本方法は、歯科用組成物をスポイト、針、ピペット、トレイ、又はスワブで適用することを含み得る。
【0036】
キット
多くの実施形態では、キットが記載される。キットは、カルボン酸亜鉛と、アミン含有リガンドと、歯科用組成物の重量に対して少なくとも4重量%の量でフッ化物を提供するのに有効なフッ化物アニオン源と、水と、を含む歯科用組成物を含む。歯科用組成物は、少なくとも8のpHを有し得、約20℃~25℃の温度で均質な溶液であり得る。この方法は、歯科用組成物を歯表面に接触させることを含み得る。キットは、歯科用組成物を提供し、歯科用組成物を歯表面に接触させる方法を使用者に実行させるように案内するための指示をさらに含み得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、1剤として提供される。
【0038】
他の実施形態では、歯科用組成物は、2つ以上の剤として提供される。
【0039】
いくつかの実施形態では、指示は、使用者に、2つ以上の剤を組み合わせて歯科用組成物を調製するようにさらに案内し得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物としては、本明細書に記載の任意の歯科用組成物が挙げられ得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、指示は、本明細書に記載の任意の方法を実施するように使用者を案内し得る。
【実施例】
【0042】
本開示の目的及び利点を以下の実施例によって更に例示するが、これらの実施例に記載の特定の材料及びそれらの量並びに他の条件及び詳細は、本開示を不当に限定するものと解釈してはならない。これらの実施例は、単に例示目的のみのものであり、添付の特許請求の範囲を限定することを意味するものではない。
【表1】
【0043】
実施例EX1~EX10及び比較例CE1~CE4
全ての例示的な成分をプラスチック製遠心チューブに添加した。組成物をボルテックスミキサーで十分に混合して、懸濁液を形成した。次いで、混合物を60℃に加熱し、数回混合し続けた。混合物を60℃のオーブンに24時間保持した。例示的な混合物を60℃のオーブンで加温する間に数回ボルテックス混合して溶液を形成した。比較例(CE)は、溶液を形成しなかった。クエン酸亜鉛及びフッ化カリウム亜鉛は溶液中に溶解できず、これらの比較例は実施例と比較して低い水溶性を示した。
【表2】
【表3】
【0044】
再石灰化及び耐酸性試験
エナメル質の試験片をウシの歯から調製した。各試験片を0.1M乳酸及び0.2%CARBOPOL(pH=5)の溶液に37℃で24時間浸漬することによって、そのエナメル質に齲蝕病変を形成させた。試験片を、人工唾液(対照として使用)、比較溶液EX1、EX2、及びEX3として使用されるフッ化銀(SDF)の処理液のうちの1つに無作為化した。処理溶液ごとに合計10個の試験片を調製した。
【0045】
試験片は、ミニ歯科用ブラシ(bush)を用いて異なる試験処理液をエナメル病変に適用し、病変をミニ歯科用ブラシで10秒間こすって、1分間待機し、人工唾液ですすぎ、人工唾液中で37℃で30分間保管することによって処理した。次いで、試験片を再び人工唾液ですすぎ、37℃で24時間新鮮な人工唾液に入れた。
【0046】
処理された試験片の表面硬度(ビッカース硬度数(VHN))を、ビッカース硬度ツールによって測定した。処理当たり10個の試験片の平均VHN及び標準偏差を計算した。
【0047】
表面マイクロ硬度の保持を測定するために、次に、試験片を0.1M乳酸及び0.2%CARBOPOL(pH=5)の溶液に24時間入れて、脱灰負荷(demineralization challenge)を作成する。任意の増加した硬度の保持を、酸負荷によって評価した。試料を、24時間脱灰溶液に供した。酸負荷後のマイクロ硬度の保持は、上記処理が脱灰に抵抗する能力を示す。表面マイクロ硬度は、酸負荷後に測定した。ベースライン測定よりも高いマイクロ硬度値は、処理による歯のエナメル質の再石灰化を示した。試験片を人工唾液中で37℃で24時間保管し、次いで硬度を測定した。試験片を脱灰溶液によって酸負荷し、硬度を再度測定した。エナメル質の負荷への耐性が高いほど、表面マイクロ硬度値はより保持される。表面マイクロ硬度は、このベースライン測定と同じ手順を使用して測定した。処理後のマイクロ硬度の増加は、処理溶液が歯のエナメル質を再石灰化する能力を示す。
【表4】
【0048】
フッ化物取り込み試験
エナメル質の試験片をウシの歯から調製した。各試験片を0.1M乳酸及び0.2%CARBOPOL(pH=5)の溶液に37℃で24時間浸漬することによって、そのエナメル質に齲蝕病変を作成した。試験片を、人工唾液(対照として使用)、比較EX1、EX2、及びEX3として使用されるフッ化銀(SDF)の処理液のうちの1つに無作為化した。処理群ごとに合計10個の試験片を調製した。
【0049】
試験片は、ミニ歯科用ブラシを用いて異なる試験処理液をエナメル病変に適用し、病変をミニ歯科用ブラシで10秒間こすって、1分間待機し、人工唾液ですすぎ、人工唾液中で37℃で30分間保管することによって処理した。次いで、試験片を再び人工唾液ですすぎ、37℃で24時間新鮮な人工唾液に入れた。
【0050】
各試験片のマイクロドリル生検を採取して、エナメル質に移行したフッ化物の量を測定した。歯へのフッ化物の組み込みを試験するために、試験片をさらに酸負荷に供した。試験片を、37℃の0.1M乳酸及び0.2%CARBOPOL(pH=5)の溶液に24時間入れ、酸負荷をシミュレートする。マイクロドリル生検を各試験片から採取して、酸負荷後のエナメル質中のフッ化物の量を測定した。μgF/cm
2の単位の結果を表5に報告する。
【表5】
【0051】
実施例EX11~EX13及び比較例CE5
追加の実施例は、実施例EX3の亜鉛錯体溶液と組み合わせた市販のSDFを使用して調製した。以下の実施例は、例示的な組成物の歯表面上での使用を例示する。実施例の処理のための試験表面として機能するように、ウシ歯試料を以下の方法で調製した。ウシの歯をアクリル製成形型に保持し、120グリットのサンドペーパーで研磨して象牙質を露出させた後、320グリットのサンドペーパーで研磨して象牙質表面を平滑化した。各実施例の組成物1滴を、調製されたウシ象牙質表面上に置き、次いで、3M ELIPAR DEEPCURE-S LED硬化ライト(St.Paul,MN,USAの3M Companyから入手可能)を使用して、最大波長450nm及び出力およそ1500mW/cm
2の青色LED光に20秒間曝露した。実施例EX11~EX13は、フッ化ジアミン銀を追加のフッ化物源として使用することができ、組成物中の亜鉛の抗菌利益を有するが、最終的な状態は、EX3などの露光されたときに黒色に変化しない実施例よりも審美的に満足の行くものではないことを示す。
【表6】
【0052】
実施例EX14及び比較例CE6
EX3又はSDFのフッ化亜鉛錯体を光硬化性メタクリレート混合物と組み合わせることによって、追加の実施例を調製した。
【表7】
【0053】
抗菌阻害試験
実施例の抗菌性能を評価するために、以下のステップに従って、多種域の阻害試験を実施した。ヒト唾液を細菌源として使用した。
1. 滅菌された直径6mmの円形濾紙ディスクを使用した。
2. 実験溶液及び対照溶液を、濾紙ディスクを浸漬するための調製中に標準的な96ウェルプレートに分配した。
3. 各滅菌紙ディスクを、10μLの対応する溶液をディスクに適用することによって浸漬した。各試料は3つずつ複製して同様に処理し、最終結果を平均した。
4. 試験される溶液の数に応じて、寒天プレートを等しい数の切片に分割した。切片に試験溶液の名称を付けた。
5. 寒天プレートの蓋を持ち上げ、浸漬した濾紙試料を寒天上に置いた。次いで、各試料濾紙ディスクを穏やかに押下し、濾紙ディスクを寒天表面と確実に完全に接触させた。寒天表面への接触後、ディスクを移動させないように注意した。
6. 上記のように、全てのディスクが各寒天プレートのそれぞれの切片に配置されるまで、分析者は、1度に1つの試料ディスクを寒天表面上に配置し続けた。
7. 一旦全てのディスクを配置したら、蓋を交換し、寒天プレートを反転させ、37℃の空気インキュベータに24時間置いた。
8. 37℃で24時間インキュベートした後、各阻害域の直径を定規又はキャリパを使用して最も近いミリメートルまで測定した。阻害域は、肉眼により、最後の可視コロニーの縁からの直径として測定した。
9. 測定中、寒天のディスク又は表面に触れないように注意した。定規を各測定の間に汚染除去した。測定は、バイオセーフティキャビネットで行った。
【表8】
等価物
当業者であれば、せいぜい日常的な実験を用い、本明細書で具体的に説明される特定の実施形態に対する多数の等価物を認識するか、又は確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【国際調査報告】