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特表2023-508548機能構造を有する歯科装具及びこのような装具の形成に使用される転写物品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】機能構造を有する歯科装具及びこのような装具の形成に使用される転写物品
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/08 20060101AFI20230222BHJP
【FI】
A61C7/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540429
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(85)【翻訳文提出日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 IB2020062525
(87)【国際公開番号】W WO2021137161
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】62/955,268
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/955,843
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラマカンニ,バスカー ヴィー.
(72)【発明者】
【氏名】ゴトリック,ケビン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】レディー,ケビン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,スコット ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ステイ,マシュー エス.
(72)【発明者】
【氏名】スミス,マシュー アール.ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ワン,イゾン
(72)【発明者】
【氏名】ペクロフスキー,ミハイル エル.
(72)【発明者】
【氏名】ステパノヴァ,ナリナ ワイ.
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA20
4C052JJ01
(57)【要約】
転写物品は、少なくとも、2~50グラム/インチ(0.8~20g/cm)の剥離値で、金属層、金属酸化物層、又はドープされた半導体層を含む剥離層から剥離可能なアクリレート層を含む。機能層は、アクリレート層の上に重なり、この機能層は、患者の口内の歯科装具に治療、審美的、又は美容的効果のうちの少なくとも1つをもたらすように選択された機能材料の層を少なくとも1つ含み、転写物品は3マイクロメートル未満の厚さを有する。転写材料のパターンは、機能層の主面上にあり、転写材料は、剥離材料及び接着剤から選択される接着改質材料を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写物品であって、
2~50グラム/インチ(0.8~20g/cm)の剥離値で、金属層、金属酸化物層、又はドープされた半導体層を含む剥離層から剥離可能である、アクリレート層と、
前記アクリレート層の上に重なる機能層であって、患者の口内の歯科装具に治療、審美的、又は美容的効果のうちの少なくとも1つをもたらすように選択された機能材料の層を少なくとも1つ含む、機能層と、
を含み、前記転写物品は、3マイクロメートル未満の厚さを有し、
前記機能層の主面上の転写材料のパターンを含み、前記転写材料は、剥離材料及び接着剤から選択される接着改質材料を含む、転写物品。
【請求項2】
前記機能材料が、金属、金属酸化物、リン化合物、フッ化物化合物、並びにそれらの混合物及び組み合わせから選択される、請求項1に記載の転写物品。
【請求項3】
前記機能層が、AgOx層及びSiOx層の配列を含む、請求項1又は2に記載の転写物品。
【請求項4】
前記転写材料が、約25ミクロン~約1mmの特徴的断面寸法、及び約100ミクロン~約2000ミクロンの特徴部間隔を有する、個別の転写構造のパターンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の転写物品。
【請求項5】
前記機能層が、SiAlOx及びSiOxのうちの少なくとも一方を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の転写物品。
【請求項6】
前記機能層が、AgOx及びSiAlOxの交互層を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の転写物品。
【請求項7】
前記機能層が、少なくとも1つのフッ化物イオン放出層を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の転写物品。
【請求項8】
前記フッ化物イオン放出層が前記MOx層の上に重なり、前記構造が前記フッ化物イオン放出層上にある、請求項7に記載の転写物品。
【請求項9】
前記フッ化物イオン放出層が、CaFを含む、請求項7又は8に記載の転写物品。
【請求項10】
前記機能層が、抗菌剤、抗バイオフィルム剤、摩擦低減剤、抗う蝕剤、並びにそれらの混合物及び組み合わせから選択される治療剤を含む層を含み、前記抗菌治療剤は、Ag、金属酸化物(MOx)、モノラウリン、機能性糖カルボキシレート、並びにそれらの混合物及び組み合わせを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の転写物品。
【請求項11】
前記剥離層が、Al、NiFe、SiAl、SiAlOx、NiCr、及びそれらの組み合わせを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の転写物品。
【請求項12】
前記機能層上の構造の前記パターンの上に重なるポリマー材料の層を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の転写物品。
【請求項13】
前記ポリマー材料が、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル/ポリカーボネートコポリマー、ポリオレフィン、環状オレフィンポリマー、スチレン系コポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸、並びにそれらの混合物及び組み合わせから選択される熱可塑性ポリマーの1つ以上の層を含む、請求項12に記載の転写物品。
【請求項14】
転写物品であって、
個別の転写構造のパターンをその上に有する主面を含む基材であって、前記転写構造がポリビニルアルコール(PVA)を含む、基材と、
前記転写構造の上に重なる、生物活性金属又は生物活性金属酸化物の少なくとも1つの層を含む機能層と、
を含む、転写物品。
【請求項15】
前記個別の転写構造が、約25ミクロン~約1mmの特徴的断面寸法、及び約100ミクロン~約2000ミクロンの特徴部間隔を有する、請求項14に記載の転写物品。
【請求項16】
前記生物活性金属が、少なくとも1つの銀又は酸化銀の層を含む、請求項14又は15に記載の転写物品。
【請求項17】
患者の少なくとも1本の歯を位置決めするための歯科装具であって、前記歯科装具は1本以上の歯を受け入れるための複数のキャビティを含むポリマーシェルを含み、前記ポリマーシェルの表面は個別の機能構造のパターンを含み、前記パターンにおける構造が機能層を含む、歯科装具。
【請求項18】
前記機能層の上に重なるアクリレート層を更に含む、請求項17に記載の歯科装具。
【請求項19】
前記個別の機能構造が、約25ミクロン~約1mmの特徴的断面寸法、及び約100ミクロン~約2000ミクロンの特徴部間隔を有する、請求項17又は18に記載の歯科装具。
【請求項20】
前記機能層が、AgOx層及びSiOx層の配列を含む、請求項17~19のいずれか一項に記載の歯科装具。
【請求項21】
前記機能層が、フッ化物イオン放出層を含む、請求項17~20のいずれか一項に記載の歯科装具。
【請求項22】
前記機能層が、24時間接触後に黄色ブドウ球菌(S. aureus)及びストレプトコッカス・ミュータンス菌に対して少なくとも2の微生物の対数減少を示す抗菌剤を含む、請求項17~21のいずれか一項に記載の歯科装具。
【請求項23】
前記抗菌剤が、MOx、Ag、モノラウリン、並びにそれらの混合物及び組み合わせから選択される、請求項22に記載の歯科装具。
【請求項24】
前記歯科装具が、可視光の少なくとも75%を透過する、請求項17~23のいずれか一項に記載の歯科装具。
【請求項25】
前記ポリマーシェルが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETg)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートグリコール(PCTg)、並びにそれらの混合物及び組み合わせから選択される熱可塑性ポリマーを含む、請求項17~24のいずれか一項に記載の歯科装具。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
歯科矯正治療は、改善された美容的外観及び歯科機能のために、位置ずれしている歯を整復し、咬合配置を改善する。歯は、制御された力を長期間にわたって歯に加えることによって整復される。一例では、歯は、一般に歯科矯正アライナ又は歯科矯正アライナトレイと呼ばれる歯科装具を、歯科矯正治療の各治療段階で、患者の歯を覆って配置することによって整復され得る。歯科矯正用アライメントトレイは、1本以上の歯を受け入れるための複数のキャビティを画定するポリマーシェルを含む。ポリマーシェル内の個々のキャビティは、1本以上の歯に力を加えて、上顎又は下顎の選択された歯又は歯のグループを弾性的かつ漸増的に整復するような形状とされる。
【0002】
一連の歯科矯正アライナトレイは、歯科矯正治療の各段階中に順次かつ交互に患者が装着するために提供され、歯を1つの歯配列から次に続く歯配列に徐々に整復して、所望の歯のアライメント状態を達成する。所望のアライメント状態が達成されると、アライナトレイ、又は一連のアライナトレイを、患者の口腔内で定期的又は連続して使用して、歯のアライメントを維持し得る。加えて、歯科矯正リテーナトレイを長期間使用して、初期歯科矯正治療後に歯のアライメントを維持し得る。
【0003】
いくつかの例では、歯科矯正治療の一つの段階では、歯科矯正アライナトレイが、数日間、数週間、又は更には数ヶ月もの長期間にわたって、1日に数時間、患者の口腔内に留まることを必要とし得る。歯科矯正アライナトレイが患者の口腔内で使用される間に、食品又は他の物質が、装具を着色するか、さもなければ損傷し得る。加えて、微生物は、装具の表面を汚染する可能性があり、これはまた場合によっては、表面上にバイオフィルムの形成も引き起こし得る。装具が定期的に洗浄された場合であっても、バイオフィルムを除去することは困難となり得る。アライナトレイの表面上の微生物又はバイオフィルムの蓄積により、アライナトレイが着色するか、さもなければ変色する可能性があり、望ましくない味及び臭気を生じる可能性があり、更には潜在的に様々な歯周病を引き起こす。
【発明の概要】
【0004】
概して、本開示は、個別の機能構造のパターンを有する表面を含む、歯科装具に関する。いくつかの実施形態では、個別の機能構造は、歯科装具上に選択された色を提供するための、歯科装具を通る選択されたレベルの光透過率を提供するための、又は歯科装具の審美的外観を提供するための光学機能を備え得る。他の実施形態では、個別の機能構造は、歯科装具に抗菌機能を提供し得る、又は、例えば、脱灰に対して歯を保護する、バイオフィルム形成を防止する、う蝕の形成を防止する、創傷治癒を促進する、歯に対する、若しくは口腔内における歯科装具の摩擦を減少させる、歯科装具によって歯に加えられる力の方向を変更若しくは変化させる、などのための治療的口腔衛生機能を提供し得る。
【0005】
いくつかの実施形態では、歯科装具上に個別の機能構造を形成するために使用される本開示のパターン化方法では、機能層を含む転写物品を利用する。機能層は、患者の口内の歯科装具で使用される場合に治療効果のうちの少なくとも1つ、又は歯科装具に対する審美的若しくは美容的効果をもたらすように選択された、例えば、金属、金属酸化物、リン化合物、フッ化物化合物などの材料の層を少なくとも1つ含む。機能層の選択されたパターン化領域が転写物品から離れて、ターゲットポリマーフィルム基材に転写し、ターゲットポリマーフィルム基材はその後、歯科装具に成形され得る。機能層のパターン化領域は、歯科装具に美容的、審美的、又は治療効果をもたらすための、歯科装具表面上の個別の機能構造を含む。
【0006】
一実施形態では、歯科装具は、間接パターン化方法を使用して作製され、この場合、接着改質剥離材料が転写物品の機能層上に印刷されて、その上に個別の転写構造の第1のパターンを形成する。ポリマーフィルム基材が、転写物品の機能層と接触され、転写構造に接触する。次いで、ポリマーフィルム基材は、転写物品から分離され、機能層の領域は、転写構造によって占められていない領域でポリマーフィルムに転写し、ひいては、ポリマーフィルム基材の面上に機能構造の第2のパターンを形成し、第2のパターンは、第1のパターンの逆である。次いで、機能的に構造化されたポリマーフィルム基材は、歯保持キャビティを含む歯科用物品に成形され得る。
【0007】
別の実施形態では、歯科装具は、直接パターン化方法で形成され、この場合、接着改質転写材料がポリマーフィルム基材の面上に印刷されてその上に個別の転写構造の第1のパターンを形成し、その転写構造が、転写物品の機能層と接触される。次いで、ポリマーフィルム基材は、転写物品から分離され、機能層の部分が転写物品から離れ、転写構造に接着し、ポリマーフィルム基材の面上に機能構造の第2のパターンを形成し、第2のパターンは第1のパターンに対応する。次いで、機能的に構造化されたポリマーフィルムは、歯保持キャビティを含む歯科用物品に成形され得る。
【0008】
別の実施形態では、ポリビニルアルコール(PVA)転写材料が第1のポリマーフィルムの面上に印刷されて、転写構造の第1のパターンを形成する。患者の口内の歯科装具上で使用されるときの治療効果、又は歯科装具に対する審美的若しくは美容的効果のうちの少なくとも1つをもたらすように選択された、例えば生物活性金属若しくは金属酸化物などの材料の機能層の少なくとも1つが、第1のポリマーフィルムの面上に適用され、転写構造の上に重なる。次いで、第2のポリマーフィルム基材が機能層に適用され、積層構造体を形成する。次いで、第1のポリマーフィルム基材は積層構造体から除去され、積層構造体は、硬化した転写構造と重なっている領域内の機能層の部分を第2のポリマーフィルム基材に写し、個別の機能構造の第2のパターンを第2のポリマーフィルム基材の表面上に形成し、第2のパターンは第1のパターンに対応する。次いで、機能的に構造化されたポリマーフィルムは、歯保持キャビティを含む歯科用物品に成形され得る。
【0009】
上記の方法のいずれかを使用して、ポリマーフィルム基材が歯科装具に成形された後、個別の機能構造は、患者の歯に隣接する歯科装具の内側面上、若しくは歯から離れた方向に面する歯科装具の外向き面上、又はその両方に存在し得る。様々な実施形態では、個別の機能構造は、歯科装具に美的効果をもたらし得る、歯科装具が患者の口内で使用されるときに治療効果をもたらし得る、又は患者の歯に加えられる力を修正するために用いられて、例えば粘弾性クリープ/伸張に対抗するなどし得、これにより特定の治療プロトコルの有効性を向上させ、患者の快適さを改善し得る。
【0010】
一態様では、本開示は、少なくとも、2~50グラム/インチ(0.8~20g/cm)の剥離値で、金属層、金属酸化物層、又はドープされた半導体層を含む剥離層から剥離可能なアクリレート層を含む、転写物品に関する。機能層は、アクリレート層の上に重なり、この機能層は、患者の口内の歯科装具に治療、審美的、又は美容的効果のうちの少なくとも1つをもたらすように選択された機能材料の層を少なくとも1つ含み、転写物品は3マイクロメートル未満の厚さを有する。転写材料のパターンは、機能層の主面上にあり、転写材料は、剥離材料及び接着剤から選択される接着改質材料を含む。
【0011】
別の態様では、本開示は、転写物品であって、個別の転写構造のパターンをその上に有する主面を有する基材であって、転写構造がポリビニルアルコール(PVA)を含む、基材と、転写構造の上に重なる(overlaying)、生物活性金属又は生物活性金属酸化物のうちの少なくとも1つの層を含む機能層と、を含む、転写物品に関する。
【0012】
別の態様では、本開示は、患者の少なくとも1本の歯を位置決めするように構成された歯科装具を作製するための方法に関する。この方法は、ポリマーフィルムの主面上に接着改質組成物を堆積させて、ポリマーフィルムの上に個別の転写構造の第1のパターンを形成することと、機能層と、機能層の下にあるアクリレート層と、を含む転写物品を提供することであって、転写物品上のアクリレート層は、金属層、金属酸化物層、又は、ドープされた半導体層を含む剥離層から、少なくとも、2~50グラム/インチ(0.8~20g/cm)の剥離値で剥離可能であり、転写物品は3マイクロメートル未満の厚さを有する、ことと、転写構造が機能層に接触するように、ポリマーフィルムを転写物品の機能層と接触させることと、転写物品のアクリレート層をその剥離層から分離して、機能層とアクリレート層とを転写物品から転写構造上に転写して、個別の機能構造の第2のパターンをポリマー材料の第1の主面上に形成し、成形可能な物品を作製することであって、第2のパターンが第1のパターンに対応する、ことと、成形可能な物品内に複数のキャビティを形成して、一本以上の歯を受け入れるように構成された複数のキャビティを含む歯科装具を作製することと、を含む。
【0013】
別の態様では、本開示は、患者の少なくとも1本の歯を位置決めするように構成された歯科装具を作製するための方法であって、ポリマーフィルムの主面上に接着改質組成物を堆積させて、ポリマーフィルムの上に個別の転写構造の第1のパターンを形成することと、機能層と、機能層の下にあるアクリレート層と、を含む転写物品を提供することであって、転写物品上のアクリレート層が、金属層、金属酸化物層、又は、ドープされた半導体層を含む剥離層から、少なくとも、2~50グラム/インチ(0.8~20g/cm)の剥離値で剥離可能であり、転写物品が3マイクロメートル未満の厚さを有する、ことと、転写構造が機能層に接触するように、ポリマーフィルムを転写物品の機能層と接触させることと、転写物品のアクリレート層をその剥離層から分離して、機能層とアクリレート層とを転写物品から転写構造上に移して、個別の機能構造の第2のパターンをポリマー材料の第1の主面上に形成し、成形可能な物品を作製することであって、第2のパターンが第1のパターンに対応する、ことと、成形可能な物品内に複数のキャビティを形成して、一本以上の歯を受け入れるよう構成された複数のキャビティを含む歯科装具を作製することと、を含む、方法に関する。
【0014】
別の態様では、本開示は、患者の少なくとも1本の歯を位置決めするように構成された歯科装具を作製するための方法であって、ポリビニルアルコール(PVA)を基材の主面上に堆積させて、基材上に個別の転写構造の第1のパターンを形成することと、機能層を基材の主面上に適用することであって、機能層は転写構造に接触する、ことと、ポリマーフィルムの主面を機能層に適用して、積層体を形成することと、転写構造と、転写構造と重なっている機能層の部分とが基材から離れ、ポリマーフィルムの主面に転写するようにポリマーフィルムを積層体から除去して、成形可能な物品を作製することであって、ポリマーフィルムの主面が第1のパターンに対応する機能構造の第2のパターンを含む、ことと、成形可能な物品内に複数の歯保持キャビティを形成して、歯科装具を形成することと、を含む、方法に関する。
【0015】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細を、添付図面及び以下の説明に示す。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、明細書及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示による転写物品の一実施形態の概略断面図である。
【0017】
図2A】歯科装具に成形され得る基材上に構造を作製するための、間接印刷プロセスのステップの概略断面図である。
図2B】歯科装具に成形され得る基材上に構造を作製するための、間接印刷プロセスのステップの概略断面図である。
図2C】歯科装具に成形され得る基材上に構造を作製するための、間接印刷プロセスのステップの概略断面図である。
図2D】歯科装具に成形され得る基材上に構造を作製するための、間接印刷プロセスのステップの概略断面図である。
【0018】
図3A】歯科装具に成形され得る基材上に構造を作製するための、直接印刷プロセスのステップの概略断面図である。
図3B】歯科装具に成形され得る基材上に構造を作製するための、直接印刷プロセスのステップの概略断面図である。
【0019】
図4A】歯科装具に成形され得る基材上に構造を作製するための、ポリビニルアルコール(PVA)転写プロセスのステップの概略断面図である。
図4B】歯科装具に成形され得る基材上に構造を作製するための、ポリビニルアルコール(PVA)転写プロセスのステップの概略断面図である。
図4C】歯科装具に成形され得る基材上に構造を作製するための、ポリビニルアルコール(PVA)転写プロセスのステップの概略断面図である。
【0020】
図5】患者の歯に適用された時点での歯科装具(クリアトレイアライナ)の概略斜視図である。
【0021】
図6A】以下の実施例で使用される転写物品の概略断面図である。
図6B】以下の実施例で使用される転写物品の概略断面図である。
【0022】
図7A】実施例1及び図2A図2Cの間接印刷プロセスによって生成されたPETG基材上に1000ミクロンのピッチで印刷されたパターンの写真である。図7Aは、直径100ミクロンの構造を示している。
図7B】実施例1及び図2A図2Cの間接印刷プロセスによって生成されたPETG基材上に1000ミクロンのピッチで印刷されたパターンの写真である。図7Bは、直径200ミクロンの構造を示している。
図7C】実施例1及び図2A図2Cの間接印刷プロセスによって生成されたPETG基材上に1000ミクロンのピッチで印刷されたパターンの写真である。図7Cは、直径300ミクロンの構造を示している。
【0023】
図8A】実施例1の間接印刷プロセスで生成された画素化Agパターンを有する熱成形クリアトレイアライナ(CTA)の描写である。
図8B】タイポドント上の画素化Agパターンを有するCTAの描写である。
【0024】
図9図3A図3Bに概略的に示され、以下の実施例2に記載されている直接印刷プロセスで生成されたPETGフィルム上の画素化Ag構造の写真である。
【0025】
図10図4A図4Bに概略的に示され、以下の実施例3に記載されているポリビニルアルコール(PVA)転写プロセスを使用して、PETGフィルム上に印刷されたAg正方形の写真である。
【0026】
図11A図2A図2Cに概略的に示され、以下の実施例4に記載されている間接転写プロセスで作製されたPETG上のCaFのパターンの写真である。図11Aのパターンは、1200ミクロンのピッチで400ミクロンの正方形を含んでいた。
図11B図2A図2Cに概略的に示され、以下の実施例4に記載されている間接転写プロセスで作製されたPETG上のAg-CaFのパターンの写真である。11Bのパターンは、1200ミクロンのピッチで400ミクロンの正方形を含んでいた。
【0027】
図12A】実施例5からの画素化構造を含む試料の写真を含む。
図12B図12A及び実施例5の試料の抗菌特性を示すプロットである。
【0028】
図中の同様の符号は、同様の要素を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1を参照すると、転写物品10は、剥離層14と重なる任意選択の剥離層基材12を含む。第1のアクリレート層16は、剥離面17に沿って剥離層14に接触する。機能層18は、第1のアクリレート層16に接触する第1の主面19を含む。様々な実施形態では、機能層18は、歯科装具上の審美的、美容的、又は治療特性のうちの少なくとも1つを提供するように選択された1つ以上の無機層のスタックを含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、機能層18は、その後、画像、ロゴ、バーコード、又はQRコードパターンを形成するようにパターン化され得、又は、反射性や透過性の特性若しくは色を提供するように選択された材料を含み得る。いくつかの実施形態では、機能層18は、例えば、抗菌、抗バイオフィルム、摩擦低減、力適用、抗う蝕、及びそれらの組み合わせなどの患者の口内に少なくとも1つの治療効果をもたらし得る。
【0030】
図1の実施形態では、機能層18は、第1のアクリレート層16と同じであっても異なっていてもよい任意選択の第2のアクリレート層24を更に含む。図1の実施形態では、任意選択の接着剤層22は、第2のアクリレート層24(存在する場合)の上に重なっている。いくつかの例では、任意選択の接着剤層22を使用して、転写物品10を対象面に、又は別の物品(図1には示されていない)に付着することができる。
【0031】
様々な実施形態では、第1のアクリレート層16及び機能層18の組み合わせは、約3マイクロメートル未満、又は2マイクロメートル未満、又は1マイクロメートル未満、又は0.5マイクロメートル未満、又は0.25マイクロメートル未満、又は0.1マイクロメートル未満の厚さを有する。
【0032】
任意選択の剥離層基材12は、剥離層14を支持することができる任意の材料を含むことができ、好適な例としては、ポリマー材料及び金属が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、剥離層基材12は、機械的に取り外し可能であり得、これは機能層18の破砕につながることも、つながらないこともある。いくつかの実施形態では、剥離層基材12は熱収縮可能であり得、所定の温度で収縮することができる。好適な剥離層基材12は、任意の好適な手段によって熱収縮可能であるように処理される任意の有機ポリマー層から選択することができる。一実施形態では、剥離層基材12は、そのガラス転移温度Tgを超える温度で配向し、次いで冷却することによって熱収縮可能にすることができる半結晶性ポリマー又は非晶質ポリマーである。有用な半結晶性ポリマーフィルムの例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、及びシンジオタクチックポリスチレン(sPS)などのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びポリエチレン-2,6-ナフタレートなどのポリエステル;ポリビニリデンジフルオリド、及びエチレン:テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)などのフルオロポリマー;ナイロン6及びナイロン66などのポリアミド;ポリフェニレンオキシド及びポリフェニレンスルフィドが挙げられるが、これらに限定されない。非晶質ポリマーフィルムの例としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、アタクチックポリスチレン(aPS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ乳酸(PLA)、ノルボルネン系環状オレフィンポリマー(COP)、及び環状オレフィンコポリマー(COC)が挙げられる。いくつかのポリマー材料は、半結晶性形態及び非晶質形態の両方で利用可能である。上記に列挙したものなどの半結晶性ポリマーは、ピーク結晶化温度まで加熱及び冷却することによって熱収縮可能にすることもできる。
【0033】
いくつかの実施形態では、厚さおよそ0.002インチ(0.05mm)の二軸又は一軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)は、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)フィルムと同様に、剥離層基材12にとって好都合の選択であると考えられる。二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)は、ExxonMobil Chemical Company(Houston,TX)、Continental Polymers(Swindon,UK)、Kaisers International Corporation(Taipei City,Taiwan)、及びPT Indopoly Swakarsa Industry(ISI)(Jakarta,Indonesia)を含む、複数の商業供給元から市販されている。
【0034】
剥離層14は、金属層、金属酸化物層、又はドープされた半導体層を含み得る。図1に示す実施形態では、第1のアクリレート層16は、剥離層14及び機能層18と直接接触している。図1に示す実施形態では、任意選択の剥離層基材12は、剥離層14と直接接触しているが、他の実施形態では、剥離層基材12と剥離層14との間に追加の層が存在し得る(図1には示されていない)。
【0035】
いくつかの実施形態では、剥離層14と第1のアクリレート層16との間の剥離面17に沿った剥離値は、50g/インチ(20g/cm)、40g/インチ(16g/cm)、30g/インチ(12g/cm)、20g/インチ(8g/cm)、15g/インチ(6g/cm)、10g/インチ(4g/cm)、9g/インチ(3.5g/cm)、8g/インチ(3g/cm)、7g/インチ(2.8g/cm)、6g/インチ(2.4g/cm)、5g/インチ(2g/cm)、4g/インチ(1.6g/cm)、又は3g/インチ(1.2g/cm)未満である。いくつかの実施形態では、剥離層14と第1のアクリレート層16との間の剥離値は、1g/インチ(0.4g/cm)、2g/インチ(0.8g/cm)、3g/インチ(1.2g/cm)、又は4g/インチ(1.6g/cm)を超える。いくつかの実施形態では、剥離層14と第1のアクリレート層16との間の剥離値は、1~50g/インチ(0.4~20g/cm)、1~40g/インチ(0.4~16g/cm)、1~30g/インチ(0.4~12g/cm)、1~20g/インチ(0.4~8g/cm)、1~15g/インチ(0.4~6g/cm)、1~10g/インチ(0.4~4g/cm)、1~8g/インチ(0.4~3g/cm)、2~50g/インチ(0.8~20g/cm)、2~40g/インチ(0.8~16g/cm)、2~30g/インチ(0.8~12g/cm)、2~20g/インチ(0.8~8g/cm)、2~15g/インチ(0.8~6g/cm)、2~10g/インチ(0.8~4g/cm)、又は2~8g/インチ(0.8~3g/cm)である。
【0036】
転写物品10を使用して、第1のアクリレート層16とその上の機能層18とを別の対象面、例えば、ポリマーフィルム基材などに転写し得、その結果、剥離層14及び/又は剥離層基材12は再使用され得る。一例では、転写物品10は、機能層18が第1のアクリレート層16と対象面との間に位置する状態で、対象面に適用され得る。転写物品10が対象面に適用された後、剥離層14と基材12とは、存在する場合、転写物品10から除去され得る。次いで、第1のアクリレート層16及び機能層18は、対象面上に残される。いくつかの実施形態では、任意選択の接着剤層22は、機能層18が対象面により効果的に付着するのを助けることができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、剥離層14は、個々の元素金属、混合物として2種以上の金属、金属間化合物又は合金、半金属又はメタロイド、金属酸化物、金属及び混合金属酸化物、金属及び混合金属フッ化物、金属及び混合金属窒化物、金属及び混合金属炭化物、金属及び混合金属炭窒化物、金属及び混合金属酸窒化物、金属及び混合金属ホウ化物、金属及び混合金属オキシホウ化物、金属及び混合金属ケイ化物、ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンドライクガラス、グラフェン、並びにこれらの組み合わせから選択される、金属層を含み得る。いくつかの実施形態では、限定することを意図するものではないが、剥離層14は、好都合には、Al、Zr、Cu、NiCr、NiFe、Ti、又はNbから形成されてもよく、約3nm~約3000nmの厚さを有してもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、剥離層14は、ドープされた半導体層を含むことができる。いくつかの実施形態では、限定することを意図するものではないが、ドープされた半導体層は、好都合には、約3nm~約3000nmの間の厚さを有するSi、BドープSi、AlドープSi、PドープSiから形成され得る。剥離層14のための特に好適なドープされた半導体層は、AlドープSiであり、Al組成百分率は約10%である。
【0039】
様々な例示的実施形態では、剥離層14は、蒸着、反応蒸着、スパッタリング、反応スパッタリング、化学蒸着、プラズマ化学蒸着、及び原子層堆積により調製される。
【0040】
転写物品10内の第1のアクリレート層16と第2のアクリレート層24とは、同じ材料で作製されても異なる材料から作製されてもよい。いくつかの実施形態では、第1のアクリレート層16又は第2のアクリレート層24は、アクリレート又はアクリルアミドを含むことができる。アクリレート層がモノマーのフラッシュ蒸着、蒸着、その後の架橋により形成される場合、揮発性のアクリレート及びメタクリレート(本明細書において「(メタ)アクリレート」と称される)モノマー、又はアクリルアミド若しくはメタクリルアミド(本明細書において「(メタ)アクリルアミド」と称される)モノマーが有用であり、揮発性アクリレートモノマーが好ましい。様々な実施形態では、好適な(メタ)アクリレートモノマー又は(メタ)アクリルアミドモノマーは、蒸発器内で蒸発され、蒸着コーターにおいて液体又は固体のコーティングに凝縮され、スピンオンコーティングなどとして堆積されるのに十分な蒸気圧を有する。
【0041】
好適なモノマーの例としては、ヘキサンジオールジアクリレート、エトキシエチルアクリレート、シアノエチル(モノ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、オクタデシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ベータ-カルボキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジニトリルアクリレート、ペンタフルオロフェニルアクリレート、ニトロフェニルアクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングルコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAエポキシジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)-イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、フェニルチオエチルアクリレート、ナフチルオキシエチルアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、MIRAMER M210(Miwon Specialty Chemical Co.,Ltd.(Korea)から入手可能)、KAYARAD R-604(Nippon Kayaku Co.,Ltd.(Tokyo,Japan)から入手可能)、商品番号RDX80094のエポキシアクリレート(RadCure Corp.(Fairfield,N.J.)から入手可能)、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、ビニルエーテル、ビニルナフタレン、アクリロニトリル、及びこれらの混合物などのポリマー層に様々な他の硬化性材料が含まれてもよい。
【0042】
トリシクロデカンジメタノールジアクリレートは、機能層中の成分層のうちのいずれかのアクリレート材料として使用することができ、いくつかの実施形態では、例えば、凝縮有機コーティング、続いてUV、電子ビーム、又はプラズマ開始フリーラジカル重合によって適用され得る。アクリレート層16、24の厚さは、約10nm~10000nmの厚さが好都合であると考えられ、約10nm~5000nmの厚さが特に好適であると考えられる。いくつかの実施形態では、アクリレート層16、24の厚さは、約10nm~3000nmであり得る。いくつかの実施形態では、機能層18は、患者の口内の歯科装具の表面上で提供されるときに有益な効果をもたらすように選択された機能性材料の層20を少なくとも1つ含む。限定することを意図するものではない様々な実施形態では、機能層18は、光学機能(例えば、層は、その色/透過/審美性においてある特定の様子で見える)、抗菌機能(例えば、層は、ある特定のタイプの細菌を死滅させる)、治療的口腔衛生機能(例えば、層は、再石灰化、う蝕予防、創傷治癒、摩擦低減、力適用などの可能性を提供する)を備え得る。
【0043】
一実施形態では、機能材料は、治療剤を含み、これには、歯科用組成物に使用されることが多い種類の、フッ化物源、増白剤、抗う蝕剤(例えば、キシリトール)、再石灰化剤(例えば、リン酸カルシウム化合物)、酵素、息清涼剤、麻酔剤、凝固剤、酸中和剤及びpH調整剤、イオンリチャージ剤、化学療法剤、免疫応答調節剤、チキソトロープ剤、ポリオール、抗炎症剤、抗菌剤、抗真菌剤、口腔乾燥症治療剤、減感剤などが挙げられるが、これらに限定されない。機能層18は、上記の治療剤のうちのいずれかの層の1つ以上、又は上記の治療剤のうちのいずれか1つ以上を含む個々の層を含み得る。
【0044】
いくつかの例示的な実施形態では、機能層18に好適な治療剤としては、カルシウム、リン、及びフッ化物化合物などの再石灰化剤が挙げられる。
【0045】
例えば、いくつかの実施形態では、好適なカルシウム化合物としては、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、カゼイン酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、フッ化カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、水酸化カルシウム、カルシウムヒドロキシアパタイト、乳酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、酸化カルシウム、パントテン酸カルシウム、リン酸カルシウム、ポリカルボフィルカルシウム、プロピオン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、硫酸カルシウム、並びにそれらの混合物及び組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物により、患者の歯の表面におけるカルシウムヒドロキシアパタイトの脱灰は最小限に留まることが見出された。
【0046】
いくつかの実施形態では、歯再石灰化化合物としては、リン酸塩化合物が挙げられる。好適なリン酸塩化合物としては、リン酸アルミニウム、骨質リン酸塩、リン酸カルシウム、オルトリン酸カルシウム、二塩基性無水リン酸カルシウム、リン酸カルシウム-骨灰、二塩基性リン酸カルシウム二水和物、二塩基性無水リン酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム二水和物、三塩基性リン酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム二水和物、リン酸二カルシウム、中性リン酸カルシウム、沈降リン酸カルシウム、三級リン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ウイトロカイト、リン酸マグネシウム、リン酸カリウム、二塩基性リン酸カリウム、オルトリン酸水素二カリウム、一リン酸二カリウム、リン酸二カリウム、一塩基性リン酸カリウム、リン酸カリウム、重リン酸カリウム、オルトリン酸二水素カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、無水リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、オルトリン酸水素二ナトリウム、オルトリン酸水素二ナトリウム十二水和物、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二ナトリウム、及びオルトリン酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
歯のミネラル表面に組み込まれたフッ化物化合物は、エナメル質の脱灰を阻害し、歯を保護するのに役立つ。歯のミネラル表面に吸収されたフッ化物化合物は、唾液又は他の供給源からのカルシウムイオン及びリン酸イオンを誘引し、これはフルオロアパタイトの形成をもたらし、脱灰に対して歯を保護する。いかなる理論にも束縛されるものではないが、現在利用可能な証拠は、フルオロアパタイトが、天然のヒドロキシアパタイトよりも低い溶解度を呈することを示し、これは、歯が毎日直面する不可避の酸曝露に抵抗するのに役立ち得ることを示している。
【0048】
歯列矯正患者は、治療の過程にわたってう蝕のリスクが高いと考えられる。市販のフッ化物ワニスは、設計によって非常に粘着性であり、典型的には、適用されるとエナメル質上に数時間残る。アライナトレイなどの歯科装具を装着している歯科矯正患者にとってこれは望ましくなく、それは、ワニスは、患者の歯列弓上のアライナのフィット性を妨げ、更にはアライナの素材であるプラスチックに接着してアライナを永久的に反らせる又は変形させる可能性があるからである。一実施形態では、例えば、機能層18は、患者へのアライメントトレイのフィット性を損なうことなく、又はアライメントトレイの素材であるポリマー材料を破壊することなく、アライメントトレイセットの典型的な装着時間(例えば、7日)にわたって有益なフッ化物を送達する個別の構造を形成するように構成することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、カルシウム化合物、リン酸塩化合物、フッ化物化合物、又はこれらの組み合わせは、カルシウム、リン酸塩又はフッ化物のうちの少なくとも1つが、所定の装着時間又はそれを超える期間に、患者の歯の表面上の脱灰を実質的に低減又は防止できるように十分な量で、転写物品上の機能層18内に存在する。
【0050】
別の実施形態では、機能層18における治療剤は、抗菌化合物を含む。好適な抗菌化合物又はバイオフィルム低減化合物としては、銀、酸化銀、酸化銅、酸化金、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、並びにこれらの混合物、合金、及び組み合わせなどの生物活性金属及び金属酸化物MOが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
機能層18は、任意の抗菌有効量の金属又は金属酸化物MOを含むことができる。様々な実施形態では、限定することを意図するものではないが、機能層18は、100cm当たり100mg未満、40mg未満、20mg未満、又は5mg未満のMOを含むことができる。金属酸化物としては、酸化銀、酸化銅、酸化金、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、並びにこれらの混合物、合金、及び組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、限定することを意図するものではないが、金属酸化物は、AgCuZnOx、AgドープZnOx、AgドープAZO、AgドープTiO、AlドープZnO、及びTiOxから選択できる。
【0052】
いくつかの実施形態では、機能層18は、1つ以上の抗菌剤を含むことができる。好適な抗菌剤の例としては、アルデヒド(グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド)、フェノール又は酸の塩、クロルヘキシジン又はその誘導体(アセテート、グルコネート、クロリド、ニトレート、サルフェート又はカーボネートなどの酸付加物を含む)、及びこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0053】
抗菌剤の非限定的な例としては、亜鉛塩、酸化亜鉛、スズ塩、酸化スズ、塩化ベンザルコニウム、ヘキシチジン、長鎖アルキルアンモニウム又はピリジニウム塩(例えば、塩化セチルピリジニウム(cetypyridinium chloride)、塩化テトラデシルピリジニウム)、精油(例えば、チモール)、フラノン、クロルヘキシジン及びその塩形態(例えば、クロルヘキシジングルコネート)、サンギナリン、トリクロサン、塩化第一スズ、フッ化第一スズ、オクテニジン、非イオン性又はイオン性界面活性剤(例えば、四級アンモニウム化合物)、アルコール(モノマー、ポリマー、モノアルコール、ポリアルコール)、芳香族アルコール(例えば、フェノール)、抗菌ペプチド(例えば、ヒスタチン)、バクテリオシン(bactericins)(例えば、ナイシン)、抗生物質(例えば、テトラサイクリン)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、無機及び有機酸(例えば、安息香酸、サリチル酸、脂肪酸など)又はそれらの塩、エステルなどのこのような酸の誘導体(例えば、p-ヒドロキシベンゾエート又はその他のパラベン、ラウリシジンなどの脂肪酸のグリセロールエステル)、銀化合物、銀塩、銀ナノ粒子、過酸化物(例えば、過酸化水素)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0054】
様々な実施形態では、機能層18内の機能材料は、単一の層内又は複数の層の間で大きく変化し得る。例えば、機能層18内の第1の層によって放出された治療剤は、機能層18内の第2の層によって放出された治療剤と異なっていてよく、例えば、第1の層はフッ化物であり第2の層はリン酸塩である。他の例では、機能層18内の単一層によって放出された治療剤は、互いに異なり得る。別の実施形態では、機能層18の層内の治療剤は、異なる濃度にて、個々の層間で異なる濃度にて放出され得る。
【0055】
例えば、機能層18から歯科装具上に形成された機能構造から放出された治療剤は、所定の患者の装着時間にわたって放出可能であり得る。いくつかの例では、治療剤は、数秒間、数分間、数時間、数日間、数週間、又は数ヶ月間にわたって放出され得る。加えて、歯科矯正装具の異なる領域は、様々な所定の放出期間の治療剤を有することができる。例えば、1つの領域は、数秒のオーダーの放出期間を有してもよく、別の異なる領域は、数ヶ月のオーダーの放出期間を有してもよい。
【0056】
別の実施形態では、機能層18から形成された機能構造は、治療剤を吸収及び放出するように構成され得る。例えば、カルシウム及び/又はリンが、唾液から吸収され、経時的に放出され得る。別の例では、フッ化物、カルシウム、スズ、及び/又はリンが、口腔ケア製品(例えば、練り歯磨き及びすすぎ剤)から吸収され、経時的に放出され得る。
【0057】
別の実施形態では、機能層18は、例えば、患者の口腔内における歯科装具の設置及び取り出しを容易にする、患者の口腔内の歯又は組織に対する快適性を改善する、又はトレイ-歯列の接触面積を高めて、歯の整復のための歯科用物品からの応力低下及び/若しくは効果的な力伝達をもたらす個別の機能構造を、歯科装具の表面上に例えば形成するために選択されたエラストマーポリマー材料を含み得る。いくつかの例では、機能層18に好適なエラストマーとしては、ポリイソプレン、ポリブタジエン、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、フルオロポリマー、ニトリル、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、シリコーンゴム、ポリアクリルゴム、フルオロシリコーン、フルオロエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、クロロスルフィン酸化ポリエチレン(chlorosulfinated polyethylene)、及びエチレンビニルアセテートを挙げることができる。
【0058】
別の実施形態では、機能層18は、硬組織の健康を増強及び/又は維持するために唾液及び他の液体が妨げなく流れるように、歯科装具の表面上に機能構造を形成することを容易にするように構成することができる。例えば、歯表面が、口腔細菌、食事選択、口腔乾燥症などによって引き起こされる脱灰を受けるとき、機能層18から形成された機能構造は、歯表面を再石灰化及び水和するための唾液の開放チャネルを提供することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、機能層18は、対象の少なくとも1つの電磁波長にわたって反射特性、反射防止特性、部分吸収特性、偏光特性、リターディング特性、回折特性、散乱特性、又は透過特性を有する機能構造を歯科装具の表面上に提供することができる。例えば、機能層18から形成された機能構造は、少なくとも1つ又は複数の無機層を含み得、これらの無機層は、様々な実施形態では、対象の電磁波長にわたって所定の光学効果を提供するように選択された同じ又は異なる厚さ及び屈折率を有し得る金属層及び金属酸化物層を含む。
【0060】
様々な実施形態では、機能層18は、約5ミクロン未満、又は約2ミクロン未満、又は約1ミクロン未満、又は約0.5ミクロン未満の厚さを有する。
【0061】
様々な実施形態では、限定することを意図するものではないが、機能層18は、個々の元素金属から選択される金属、混合物として2種以上の金属、金属間化合物又は合金、半金属又はメタロイド、金属酸化物、金属及び混合金属酸化物、金属及び混合金属フッ化物、金属及び混合金属窒化物、金属及び混合金属炭化物、金属及び混合金属炭窒化物、金属及び混合金属酸窒化物、金属及び混合金属ホウ化物、金属及び混合金属オキシホウ化物、金属及び混合金属ケイ化物、ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンドライクガラス、グラフェン、並びにこれらの組み合わせの層を含み得る。いくつかの実施形態では、限定することを意図するものではないが、無機層20は、Ag、Al、Ge、Au、Si、Ni、Cr、Co、Fe、Nb、並びにこれらの混合物、合金、及び酸化物から選択される。いくつかの実施形態では、機能層18の無機層20は、その間に金属層が散在する、例えば、AgOx、SiAlOx、NbOx、並びにそれらの混合物及び組み合わせなどの金属酸化物の層を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、機能層18における無機層は、スパッタリング、蒸着、又はフラッシュ蒸着によって適用され、約3~約200nm、又は約3~約100nm、又は約3nm~約50nm、又は約3nm~約20nm、又は約3nm~約15nm、又は約3nm~約10nm、又は約3nm~約5nmの厚さである。
【0063】
いくつかの実施形態では、機能層18は、複数の金属層のスタックを含み、スタック内の金属層のうちの少なくともいくつかは、金属酸化物層、ポリマー層、又はそれらの混合物及び組み合わせによって分離される。様々な実施形態では、スタック内の各金属層は、実質的に同じ厚さを有することができ、又はスタック内の金属層は、異なる厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、限定することを意図するものではないが、複数の無機層中の各無機層は、約5nm~約100nmの厚さを有する。様々な実施形態では、無機層のスタックは、約2~約100個の層、又は約2~10個の層、又は約2~5個の層を含み得る。非限定的な一例では、無機層のスタックは、AgOx層及びSiOx層を含み、これらは、いくつかの場合では交互に配置され得る。いくつかの実施形態では、SiOx層は、SiAlOx層を含む。いくつかの実施形態では、無機層のスタックは、AgOxの層及びSiAlOxの層を含む。
【0064】
例示的な一実施形態では、機能層18は、同じ元素組成であっても異なる元素組成であってもよい金属層又は金属酸化物層を含む複数の無機層を含み、アクリレート層によって分離され、同じ又は異なる厚さを有してもよい。いくつかの実施形態では、機能層18におけるアクリレート層は、同じ元素組成であってもよく、又は転写物品中の第1のアクリレート層16及び第2のアクリレート層24の元素組成とは異なる元素組成を有してもよい。様々な実施形態では、機能層18におけるアクリレート層は、第1のアクリレート層16及び第2のアクリレート層24と同じ厚さを有しても異なる厚さを有してもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、機能層18は、図1に概略的に示されるように、その主面19、21に沿って、又は無機層20の露出面上、又はその両方に、1つ以上の任意選択のバリア層25、27を含むことができる。1つ以上のバリア層25、27は、個々の元素金属、混合物として2種以上の金属、金属間化合物又は合金、半金属又はメタロイド、金属酸化物、金属及び混合金属酸化物、金属及び混合金属フッ化物、金属及び混合金属窒化物、金属及び混合金属炭化物、金属及び混合金属炭窒化物、金属及び混合金属酸窒化物、金属及び混合金属ホウ化物、金属及び混合金属オキシホウ化物、金属及び混合金属ケイ化物、ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンドライクガラス、グラフェン、並びにこれらの組み合わせを含み得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、バリア層25、27は、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、並びに酸化物、窒化物、及び酸窒化物の金属合金から選択され得る。いくつかの実施形態では、バリア層15、27は、シリカなどの酸化ケイ素、アルミナなどの酸化アルミニウム、チタニアなどの酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ニオビウム、及びこれらの組み合わせから選択される、金属酸化物を含み得る。いくつかの実施形態では、バリア層25、27の金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ケイ素アルミニウム、窒化アルミニウムケイ素、及び酸窒化アルミニウムケイ素、CuO、TiO、ITO、ZnO、酸化亜鉛アルミニウム、ZrO、及びイットリア安定化ジルコニアが挙げられ得る。好ましい窒化物としては、Si及びTiNが挙げられる。
【0067】
いくつかの例示的実施形態において、バリア層25、27は、典型的には、反応蒸着、反応スパッタリング、化学蒸着、プラズマ化学蒸着、及び原子層堆積により調製することができる。好ましい方法としては、反応スパッタリング及びプラズマ化学蒸着及び原子層堆積などの真空調製が挙げられる。
【0068】
バリア層25、27は、薄層として好都合に適用することができる。バリア層材料、例えば酸化ケイ素アルミニウムは、例えば、良好なバリア特性、並びにアクリレート層に対する良好な界面接着性を提供することができる。かかる層は、スパッタリングにより好都合に適用され、厚さ約3~100nmが好都合であると考えられ、およそ厚さ27nmが特に好適であると考えられる。いくつかの実施形態では、バリア層は、0.2、0.1、0.05、0.01、0.005、又は0.001g/mm/日未満の水蒸気透過率を有してもよく、したがって、無機層20に良好な環境抵抗を提供する。
【0069】
転写物品10上の任意選択の接着剤層22は、50MPa~約1000MPa、又は約100MPa~約500MPaの低弾性率を有する粘弾性接着剤又はエラストマー性接着剤を含むことができる。好適な粘弾性接着剤又はエラストマー性接着剤としては、米国特許第9,862,124号(Radcliffeら)に記載のもの、例えば、感圧接着剤(PSA)、ゴム系接着剤(例えば、ゴム、ウレタン)、及びシリコーン系接着剤を挙げることができる。粘弾性接着剤又はエラストマー性接着剤としては、室温では非粘着性であるが、温度上昇時に一時的に粘着性となり、基材に結合できる熱活性化接着剤も挙げられる。熱活性化接着剤は、活性化温度で活性化し、この温度を上回ると、PSAと同様の粘弾性特性を有する。粘弾性接着剤又はエラストマー性接着剤は、実質的に透過性(transparent)で光学的に透明(clear)でもよい。
【0070】
粘弾性接着剤又はエラストマー性接着剤22のいずれかが、粘弾性の光学的に透明な接着剤でもよい。エラストマー性材料は、約20パーセント超、又は約50パーセント超、又は約100パーセント超の破断伸びを有してもよい。
【0071】
粘弾性接着剤層又はエラストマー性接着剤層22は、実質的に100パーセント固形の接着剤として直接適用されてもよく、又は溶剤型接着剤をコーティングし、溶剤を気化させることによって形成してもよい。粘弾性接着剤又はエラストマー性接着剤は、溶融し、溶融状態で適用された後に、冷却されて粘弾性又はエラストマー性接着剤層を形成する熱溶融型接着剤でもよい。好適な粘弾性接着剤又はエラストマー性接着剤としては、いずれも3M Company(St.Paul,MN)から入手可能な、エラストマー性のポリウレタン又はシリコーン接着剤、及び粘弾性の光学的に透明な接着剤CEF22、817x及び818xが挙げられる。他の有用な粘弾性接着剤又はエラストマー性接着剤としては、スチレンブロックコポリマー、(メタ)アクリルブロックコポリマー、ポリビニルエーテル、ポリオレフィン及びポリ(メタ)アクリレート系のPSAが挙げられる。いくつかの実施形態では、接着剤層22は、UV硬化接着剤を含むことができる。
【0072】
ここで図2Aを参照すると、硬化性液体剥離組成物は、任意の好適な印刷プロセスを使用して、転写物品110の機能層118の主面115上に印刷される。図1に示すように、転写物品は、アクリレート層116と、剥離層114と、基材112とを含む。図2Aの実施形態では、液体剥離組成物は、個別の領域124に印刷されて、第1の画素化パターン122を形成するが、代替的な実施形態(図2Aには示されていない)では、主面115上の連続層として印刷され得る。本出願では、「個別の」という用語は、自立型であり、別個であり、互いに異なり、縁部間の境界を共有しない、硬化性液体剥離組成物の個々の液体領域を指す。
【0073】
個別の領域124を形成するために使用される印刷プロセスは、広く様々であってよく、一例では、限定することを意図するものではないが、スクリーン印刷を含み、これは、インクと称されることもある液体組成物を、遮断ステンシルによってインクに対して不透過性である領域を除いて、基材上に転写するためにメッシュを使用するものである。ブレード又はスキージを、スクリーンを横切って移動させて、開いたメッシュ開口部をインクで充填し、次いで逆の動きにより、スクリーンを接触線に沿って一時的に基材と接触させる。これにより、インクは、基材を湿潤させ、ブレードが通過した後にスクリーンが跳ね返るときに、メッシュ開口部から引き抜かれる。1回につき1つの色が印刷されるため、いくつかのスクリーンを使用して、多色画像又は意匠を生成することができる。スクリーン印刷は、面115の上に様々な高さ又は間隔を有する液体領域124を形成するのに特に有用である。例えば、いくつかの実施形態では、スクリーン内の開口部の間隔、若しくはスクリーンの厚さ、又はその両方を変化させて、面115の上に対応する間隔又は高さを有する液体領域のアレイを形成することができる。
【0074】
別の好適な印刷プロセスはフレキソ印刷であり、これは、印刷インクが、アニロックスロール(通常はインクをアニロックスロールセルにブレーディングすることによって、インクで充填されたセルで構成されている)を介してフレキソプレートの画像領域に転写され、次いで、インクは、「インク付けされた」フレキソプレートを基材に接触させることによって基材に転写されるものである。インクは、フレキソプレートのレリーフ特徴部から基材に転写されるのみである。
【0075】
様々な実施形態では、限定することを意図するものではないが、液体剥離組成物の液体領域124は、接着改質材料から作製される。広範囲の接着剤が好適であり、好適な接着剤としては、3M、St.Paul,MNから商品名SCOTCHBOND Universal Adhesiveで入手可能なものが挙げられるが、これらに限定されない。接着改質材料はまた、例えば、シリコーン、フッ素化化合物、Flint Group,Rogers,MNから入手可能な放射線硬化性インク、ポリビニルアルコール(PVA)などの剥離材料を含み得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、機能層118の主面115は、任意選択的に、例えば面115と領域124との間の接着性を強化するために、硬化性液体転写組成物を適用する前に、化学的又は機械的に処理されてもよい。好適な処理の例としては、コロナ処理、オゾン処理、シランカップリング剤の適用、プライマーの適用、接着剤の適用、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
様々な実施形態では、硬化性液体剥離材料の個別の領域124は、面115上に連続的若しくは不連続的なアレイ、又はその両方を形成し得る。例えば、面115のいくつかの領域は、液体領域124を含まなくてもよく、一方他の領域は、液体領域124の高密度配列を有する。別の例示的な実施形態では、面115の様々な領域は、様々な形状及び特徴部間隔を有する液体領域124を有し得る。液体領域124のサイズ及び形状は、大きく異なり得、液体領域124は、面115の特定の領域内で、又は面115全体にわたって、同じサイズ又は形状である必要がない。例えば、いくつかの実施形態では、液体領域124は、審美的パターン、画像、ロゴ、バーコード、又はQRコードなどを形成することができる。他の実施形態では、液体領域124は、面115の全て又は一部分の上にドットのアレイを形成する。
【0078】
いくつかの実施形態では、液体領域124は、ポリマー基材130(図2Bを参照して以下で論じられる)に転写され得られたパターンが可視光に対して非常に透過性であるように、面115上に適用される。いくつかの場合では、この目的を達成するために、液体領域124は、面115上に高密度で適用される。例えば、様々な実施形態の液体領域124は、ポリマー基材130を通した可視光透過率が少なくとも約50%、又は約75%、又は約85%、又は約90%、約95%、約98%、又は約99%であるような、サイズ及び特徴部間隔で面115上に適用される。
【0079】
様々な実施形態では、面115の領域は、異なるサイズ、形状、又は組成の液体領域124を含み得、いくつかの実施形態では、液体領域124の2つ以上の異なる構成が、面115の少なくとも一部分に均一に又はランダムに堆積され得る。例えば、第1の形状又はサイズを有する液体領域124が、面115の第1の領域上に配置され得、第1の形状又はサイズとは異なる第2の形状又はサイズを有する液体領域124が、面115の第2の領域に配置され得る。
【0080】
様々な実施形態では、液体領域124は、様々な断面形状を有することができ、それは、面115上の他の領域内の液体領域の断面形状と同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、液体領域124は実質的に半球状であり、面115上のドットのアレイとして現れる。
【0081】
液体領域124は、面115上のいくつかの領域に均一に配列又はランダムに分布することができ、面115の場合、他の領域にランダムに分布することができる。
【0082】
限定することを意図するものではないいくつかの実施形態では、液体領域124は、少なくとも1つの微小規模断面寸法を有する基部を含む。様々な例示的な実施形態では、液体領域124は、約25μm~約1000μm、又は約100μm~約300μm、又は約150μm~約250μmの断面寸法を有する面115上の基部を含むことができる。
【0083】
非限定的な例として提供されるいくつかの実施形態では、液体領域124の高さは、面115の平面から測定したときに、約1μm未満から約10μmまで、又は約1μmから約100μmまで、又は約1μmから約50μmまで変化し得る。いくつかの実施形態では、液体転写領域124の高さは実質的に同じであるが、良好な性能を維持しながら、高さのいくらかの変動が許容できる。例えば、いくつかの実施形態では、液体領域124の平均高さは、許容可能な性能を維持しながら、±50μm変動し得るが、他の実施形態では、平均高さは±10μm変動し得、更に他の実施形態では、平均高さは±1μm変動し得る。
【0084】
ここで図2Bを参照すると、図2Aの液体領域124は、例えば、空気乾燥、加熱、紫外(UV)光、及びそれらの組み合わせなどのプロセスによって少なくとも部分的に硬化されて、少なくとも部分的に硬化した剥離構造126の第1の画素化パターン150を形成する。次いで、ポリマーフィルム130は、剥離構造126上に、その面132が接触するが剥離構造126の少なくとも一部には接着しないように適用され、構造体180を形成する。いくつかの実施形態では、構造体180の形成は、任意選択的に、熱又は圧力のうちの少なくとも一方の適用を含み得る。
【0085】
ポリマーフィルム130は、歯科装具を形成するように成形可能である任意の好適な弾性ポリマー材料から選択され得、成形されてから、概して患者の歯に適合可能である。ポリマーフィルム130は、透明であっても、半透明であっても、不透明であってもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルム130は、例えば、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン、アクリル、ポリスルホン、ポリプロリレン、ポリプロピレン/エチレンコポリマー、環状オレフィンポリマー/コポリマー、ポリ-4-メチル-1-ペンテン又はポリエステル/ポリカーボネートコポリマー、スチレンポリマー材料、ポリアミド、ポリメチルペンテン、ポリエーテルエーテルケトン、及びこれらの組み合わせから選択される、非晶質熱可塑性ポリマー、半結晶性熱可塑性ポリマー、及び透明な熱可塑性ポリマーのうちの1つ以上を含み得る、透明又は実質的に透明なポリマー材料である。別の実施形態では、ポリマーフィルム130は、透明又は実質的に透過性の半結晶性熱可塑性樹脂、結晶性熱可塑性樹脂、及び複合材、例えば、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル/ポリカーボネートコポリマー、ポリオレフィン、環状オレフィンポリマー、スチレン系コポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリトリメチレンテレフタレート、並びにそれらの混合物及び組み合わせから選択され得る。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルム130は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートグリコール、並びにそれらの混合物及び組み合わせから選択されるポリマー材料である。ポリマーフィルム130の弾性ポリマー材料として好適な市販材料の一例は、限定することを意図するものではないが、ポリエチレンテレフタレート(グリコール添加剤を有するポリエステル(PETg))である。好適なPETg樹脂は、例えば、Eastman Chemical(Kingsport,TN);SK Chemicals(Irvine,CA);DowDuPont(Midland,MI);Pacur(Oshkosh,WI);及びScheu Dental Tech(Iserlohn,Germany)などの様々な商業的供給業者から入手することができる。
【0086】
ポリマーフィルム130は、単層であってもよく、又は、同じ若しくは異なるポリマー材料の複数の層を含んでもよい。
【0087】
様々な実施形態では、ポリマーフィルム130は、1mm未満の厚さを有するが、歯科矯正装具100の用途に応じて様々な厚さを使用してもよい。様々な実施形態では、ポリマーフィルム130は、約50μm~約3,000μm、又は約300μm~約2,000μm、又は約500μm~約1,000μm、又は約600μm~約700μmの厚さを有する。
【0088】
一実施形態では、ポリマーフィルム130は、実質的に透明なポリマー材料であり、これは本出願において、電磁スペクトルのうち、ヒトの眼が感じる波長領域(約0.4マイクロメートル(μm)~約0.75μm)の光を通すが、他の領域の光を拒絶する材料を指す。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルム130は、約50μm~約1000μmの厚さで、約400nm~約750nmの可視光に対して実質的に透明である。様々な実施形態では、ポリマーフィルム130の合わせた厚さを通した可視光透過率は、少なくとも約75%、又は約85%、又は約90%、又は約95%、又は約99%である。様々な実施形態では、基材16は、約0%~約20%、又は約1%~約10%、又は約3%~約8%のヘイズを有する。様々な実施形態では、ポリマーフィルム130は、約75%~約100%、又は約85%~約99%、又は約90%~約95%の透明度を有する。ポリマーフィルム130の光学特性は、例えば、BYK Gardner,Columbia,MDから商品名Haze Guardで入手可能なものなどの多種多様な光学機器により、ASTM D1003などの規格を使用して測定することができる。
【0089】
ポリマーフィルム130の適用に続いて、少なくとも部分的に硬化した剥離構造126は、必要に応じて、更なる加熱、UV光の適用などを含むがこれらに限定されないプロセス140によって、完全に硬化され得る。
【0090】
ここで図2Cを参照すると、ポリマーフィルム基材130は、転写物品110から分離されて、成形可能な物品190を形成する。第1のアクリレート層116は剥離面117に沿って剥離層114から除去され、層114及び112(存在する場合)は剥がされる。機能層118は、剥離構造126によって占められていない領域にのみ接着し、ポリマーフィルム130の面132上で個別の機能構造160の、第2の画素化パターン170の形成をもたらし、第2の画素化パターンは、第1のパターン150の逆である。
【0091】
一例として示されるいくつかの実施形態では、機能構造160は、約100μm~約2000μm、又は約750μm~約1500μm、又は約800μm~約1300μmの特徴部間隔(すなわち、隣接する構造間の中心距離)を有する。限定することを意図するものではないいくつかの実施形態では、機能構造160は、約10~約5000ドット/インチ(dpi)、又は約25dpi~約1000dpi、又は約100dpi~約300dpiで面132上に存在する。
【0092】
いくつかの例示的な実施形態では、構造160は、約25μm~約2500μm、又は約100μm~約1500μm、又は約750μm~約1400μmの特徴的な長さを有する。いくつかの例示的な実施形態では、構造160は、約0.0005~約0.01、又は約0.005~約0.05、又は約0.10~約0.20のアスペクト比を有する。
【0093】
ここで図2Dを参照すると、図2Bの積層構造体180から図2Cの成形可能な物品190を除去した後、剥離物品192は、印刷剥離構造の第1のパターン150に対応する構造196のパターン194を含む。構造196は、剥離層114の面117上のアクリレート層116と、基材112とを含む。機能層118は、アクリレート層116上に位置し、剥離構造124は、機能層118上に位置する。
【0094】
次いで、成形可能な物品190を歯科装具に成形することができる。例えば、複数のキャビティが成形可能な物品190内に形成されて歯科矯正装具を形成してもよく、キャビティは、1本以上の歯を受け入れるように構成される。キャビティは、熱成形、レーザー加工、化学的又は物理的エッチング、及びこれらの組み合わせを含む、任意の好適な技法によって、成形可能な物品190内に形成され得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、キャビティは、パターン170及び個々の機能構造160が実質的に歪まないような加工条件下で、成形可能な物品190内に形成される。例えば、いくつかの実施形態では、成形可能な物品190は、機能構造160を任意の寸法(例えば、直径、高さなど)において約50%未満歪ませる温度及び圧力で熱成形され得る。いくつかの実施形態では、成形可能な物品190は、機能構造160のパターン170によって形成された画像が実質的に歪まないような温度及び圧力で熱成形され得、これは、本出願では、パターン170によって形成された任意の画像が所定の視野距離で依然として認識可能であることを意味する。
【0096】
ここで図3Aを参照すると、転写物品210は、剥離層214と重なる任意選択の剥離層基材212を含む。第1のアクリレート層216は、剥離面217に沿って剥離層214に接触する。機能層218は、第1のアクリレート層216に接触する第1の主面219を含む。様々な実施形態では、ここでは繰り返さない図1に関して上述したように、機能層218は、画像、ロゴ、バーコード、若しくはQRコードパターンなどを例とする審美的特性、反射特性若しくは透過特性、又は抗菌、抗バイオフィルム、摩擦低減、抗う蝕剤、並びにそれらの混合物及び組み合わせなどを例とする患者の口内での少なくとも1つの治療効果、のうちの少なくとも1つを有する歯科装具を提供するように選択された1つ以上の層のスタックを含むことができる。
【0097】
図1を参照して上述したように、図3Aに示されていないが、機能層218は、第1のアクリレート層216と同じであっても異なっていてもよい追加のアクリレート層、更には任意選択の接着剤層を含み得る。
【0098】
パターン化された転写構造体282は、個別の転写構造226の画素化パターン222を含む面232を有する、ポリマーフィルム230を含む。上述のように、転写構造226は、好適な印刷プロセスによって面232上に液体転写組成物として適用され、任意選択的に、空気乾燥、加熱、UV硬化などのうちの少なくとも1つによって硬化され得る。限定することを意図するものではない様々な実施形態では、転写構造226は、接着剤などの接着改質材料から作製される。図3Aに示されていない代替的な実施形態では、転写構造226は、転写物品210の機能層218の面215上に直接適用され得、その後、ポリマーフィルム230は、転写構造226と接触され得る。
【0099】
いくつかの実施形態では、ポリマーフィルム230の面232は、任意選択的に、例えば面232と領域226との間の接着性を強化するために、硬化性液体組成物を適用する前に、化学的又は機械的に処理されてもよい。いくつかの実施形態では、転写物品210の面215は、任意選択的に、例えば面215と領域226との間の接着性を強化するために、硬化性液体組成物を適用する前に、化学的又は機械的に処理されてもよい。好適な処理の例としては、コロナ処理、オゾン処理、シランカップリング剤の適用、プライマーの適用、接着剤の適用、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
様々な実施形態では、ここでは繰り返さない図2に関して上述したように、転写構造226は、面232上の個別の転写構造の連続的若しくは不連続的なパターン、又はその両方を形成し得る。
【0101】
図3Aに概略的に示されるように、パターン化された転写構造体282は、転写物品210の機能層218の露出面215に適用される。いくつかの実施形態では、パターン化された転写構造体282及び転写物品210は、積層構造体280を形成し、いくつかの実施形態では、積層構造体280の形成は、任意選択的に、熱又は圧力のうちの少なくとも一方の適用を含み得る。いくつかの実施形態では、転写構造226は、任意選択的に、加熱、UV硬化、及びそれらの組み合わせを含むプロセス240によって硬化され得る。
【0102】
ここで図3Bを参照すると、ポリマーフィルム230は、積層構造体280から分離され、これにより、第1のアクリレート層216を剥離面217に沿って剥離層214から除去し、層214及び212(存在する場合)を剥がす。転写物品210の機能層218は、接着剤転写構造226のみに接着し、図3Aの機能構造のパターン222に対応するポリマーフィルム230の面232上で機能構造260の画素化パターン270の形成をもたらす。
【0103】
個別の機能構造260を含むポリマーフィルム230は、歯科装具に成形され得る成形可能な物品290を形成する。複数のキャビティが成形可能な物品290内に形成されて歯科矯正装具を形成してもよく、キャビティは、1本以上の歯を受け入れるように構成される。キャビティは、熱成形、レーザー加工、化学的又は物理的エッチング、及びこれらの組み合わせを含む、任意の好適な技法によって、成形可能な物品290内に形成され得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、キャビティは、パターン270及び機能構造260が実質的に歪まないような加工条件下で、成形可能な物品290内に形成される。例えば、いくつかの実施形態では、成形可能な物品290は、機能構造260を任意の寸法(例えば、直径、高さなど)において約50%未満歪ませる温度及び圧力で熱成形され得る。いくつかの実施形態では、成形可能な物品290は、機能構造260のパターン270によって形成された画像が実質的に歪まないような、温度及び圧力で熱成形され得る。
【0105】
ここで図4Aを参照すると、パターン化された転写構造体382は、上に適用された転写構造326の画素化パターン322を含む面332を有する、ポリマーフィルム330を含む。上述のように、転写構造326は、好適な印刷プロセスによって面332上に液体として適用され、任意選択的に、空気乾燥、加熱、UV硬化などのうちの少なくとも1つによって少なくとも部分的に硬化され得る。様々な実施形態では、上で詳細に論じたように、転写構造326は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)などの接着改質材料で作製される。
【0106】
機能性材料の層392は、転写構造326の上に適用される。機能層392は、上述の機能材料のいずれかを含み得、いくつかの例示的な実施形態では、例えば、銀、酸化銀、酸化銅、酸化金、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、並びにそれらの混合物、合金、及び組み合わせなどの、少なくとも1つの生物活性金属又は金属酸化物MOを含み得る。いくつかの例示的な実施形態では、生物活性金属又は金属酸化物は、スパッタリング、物理蒸着(PVD)などの方法によって転写構造326の上に適用され得る。
【0107】
機能層392は、任意の抗菌有効量の金属又は金属酸化物MOを含むことができる。様々な実施形態では、限定することを意図するものではないが、機能層392は、100cm当たり100mg未満、40mg未満、20mg未満、又は5mg未満のMOを含むことができる。金属酸化物としては、酸化銀、酸化銅、酸化金、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、並びにこれらの混合物、合金、及び組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、限定することを意図するものではないが、金属酸化物は、AgCuZnOx、AgドープZnOx、AgドープAZO、AgドープTiO、AlドープZnO、及びTiOxから選択できる。
【0108】
ここで図4Bを参照すると、機能層392がその面393に接触し、積層構造体380を形成するように、ポリマーフィルム基材394を機能層392と接触させる。いくつかの実施形態では、積層構造体380の形成は、任意選択的に、熱又は圧力のうちの少なくとも一方の適用を含み得る。
【0109】
図4Cに示すように、ポリマーフィルム層330は、その後、図4Bに示される積層構造体380から分離され、転写構造326は、ポリマーフィルム層330の面332から、下にある機能層392の部分と共に、ポリマーフィルム層394に転写される。転写により、ポリマーフィルム層394の面393上に、図4Aのパターン322に対応する機能構造396の画素化パターン395を提供し、歯科装具に成形され得る成形可能な物品390を形成する。
【0110】
図4A図4Cに示されていない代替の実施形態では、構造326が、例えば、シリコーンなどの剥離材料で作製されている場合、ポリマーフィルム層330が積層構造体380から分離されると、機能層392は代わりに構造326から放れ、ポリマーフィルム層394の表面393に付着する。
【0111】
次いで、複数のキャビティが成形可能な物品390内に形成されて歯科矯正装具を形成してもよく、キャビティは、1本以上の歯を受け入れるように構成される。キャビティは、熱成形、レーザー加工、化学的又は物理的エッチング、及びこれらの組み合わせを含む、任意の好適な技法によって、成形可能な物品390内に形成され得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、キャビティは、パターン395及び機能構造396が実質的に歪まないような加工条件下で、成形可能な物品390内に形成される。例えば、いくつかの実施形態では、成形可能な物品390は、機能構造396を任意の寸法(例えば、直径、高さなど)において約50%未満歪ませる温度及び圧力で熱成形され得る。いくつかの実施形態では、成形可能な物品390は、機能構造396のパターン395によって形成された画像が実質的に歪まないような、温度及び圧力で熱成形され得る。
【0113】
ここで図5を参照すると、歯科矯正装具400のシェル402は、患者の歯500に概ね適合するが、患者の最初の歯の配置とのアライメントからわずかに外れる弾性ポリマー材料である。いくつかの実施形態では、シェル402は、実質的に同じ形状又は型を有する一群又は一連のシェルのうちの1つであってもよいが、異なる材料から形成されて、患者の歯を動かす必要に応じて異なる剛性又は弾力性を提供する。このようにして、一実施形態では、患者又はユーザーは、各治療段階中、患者の所望の使用時間又は各治療段階の治療期間に応じて、歯科矯正装具のうちの1つを交互に使用してもよい。
【0114】
シェル402を歯500の上に保持するためのワイヤ又は他の手段は、設けられなくてもよいが、いくつかの実施形態では、歯に個々のアンカーをシェル402内の対応する受容部又は開口部と共に設け、シェル402がそのようなアンカーが存在しない場合には不可能な維持力又は他の方向の歯科矯正力を歯に適用できるようにすることが望ましい又は必要であり得る。
【0115】
シェル402は、例えば、日中及び夜間使用、機能中又は非機能中(咀嚼中対非咀嚼中)、社会的場面(外観がより重要となり得る)及び非社会的場面(審美的外観が重要要因ではない場合がある)に合わせて、又は、歯の移動を加速したいという患者の要望に基づいて(任意選択的に、各治療段階で、剛直性の低い装具ではなく、より剛直な装具をより長時間使用することによって)、カスタマイズされてもよい。
【0116】
例えば、一態様では、患者には、歯の位置を保持するために主に使用され得る透明な歯科矯正装具400、及び各治療段階で歯を移動させるために主に使用され得る不透明な歯科矯正装具を提供してもよい。したがって、日中、社会的場面で、さもなければ患者が身体的外観をより切実に意識する環境で、患者は透明な装具を使用し得る。更に、夕方又は夜間、非社会的場面で、さもなければ身体的外観があまり重要でない環境で、患者は、異なる量の力を提供するように構成された、さもなければ、より剛直な構成を有して各治療段階での歯の移動を加速する、不透明な装具を使用し得る。このアプローチは繰り返されて、各治療段階中に装具の対の各々が交互に使用されてもよい。
【0117】
再び図5を参照すると、様々な実施形態によるシステム及び方法は、歯科矯正治療の各治療段階に対して、各々同じ材料又は異なる材料から形成された、複数の漸増的位置調整装具を含む。歯科矯正装具は、患者の上顎又は下顎502において個々の歯500を漸増的に整復するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、キャビティ504は、選択された歯が整復されるように構成され、一方でその他の歯は、整復しようとする1本又は複数の歯に対して弾力的な整復力を加えたときに、整復装具を所定の位置に保持するための基部又はアンカー領域として表される。
【0118】
歯500の上に弾性ポジショナーシェル402を配置することにより、制御された力が特定の場所に加えられ、歯を新たな配置に徐々に移動させる。異なる構成を有する逐次的な装具を用いたこのプロセスの繰り返しにより、最終的に患者の歯を、一連の中間配置を経て最終的な所望の配置に移動させる。移動プロセス中、シェル402上の構造410は、上記のように治療機能又は審美的機能を提供する。
【0119】
例示的な一実施形態では、歯科矯正アライメント装具は、透明なエラストマーポリマー材料から作製されたシェル402を含み得、クリアトレイアライナ(CTA)と呼ばれる。使用中、治療の段階1(N)でのCTAは、段階ゼロ(N-1)において位置ずれしている又は不正咬合の歯列を有する歯列弓の上に挿入される。ポリマートレイを延伸して、歯列を次の段階1(N)に再配置することができる。言い換えれば、各アライナトレイは、故意に「フィット性不良」で開始する。ポリマートレイは、歯列に対してかみ合い、力を伝達することで、指定された位置、ベクトル、及び時間で適切な歯又は歯のセットを効果的に再配置することができるように輪郭形成された面を有し得る。「フィット性不良」で開始しながら、ポリマートレイが歯列に対してかみ合い、力を伝達する能力のために、CTAは、例えば、クラスIIの不正咬合を補正するための、患者にとってより快適であり、配置/取り出しが容易であり、予測可能な治療転帰をもたらす、効果的及び/又は効率的な装具であり得る。したがって、少なくとも部分的にその平坦面のために、いくらかの可撓性を有するポリマーアライナトレイは、歯列に対してかみ合い、力を伝達して、指定された位置、ベクトル、及び時間で適切な歯又は歯のセットを効果的に再配置することが可能であり得る。歯又は歯のセットとのフィット性のために、CTAは、クラスIIの不正咬合を補正するための、患者にとって快適であり、配置/取り出し容易であり、予測可能な治療転帰をもたらすなどの、効果的及び/又は効率的な装具であり得る。
【0120】
実施形態を、以下の非限定的な実施例を参照して、以下に記載する。
【実施例
【0121】
銀(Ag)転写箔フィルム(図6A
図6Aに概略的に示される転写可能な薄膜を、米国特許第8,658,248号(Andersonら)及び同第7,018,713号(Padiyathら)に記載されているものと同様の真空コーター上で作製した。コーターに、Toray Plastics(America),Inc.(North Kingstown,RI)からTorayFAN PMX2の商品名で入手可能な、厚さ0.0250mm、幅35.6cmのアルミニウム処理二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)フィルムの不定長ロールの形態で基材を通し、この基材を9.8m/分の定ライン速度で前進させた。
【0122】
Sartomer USA,Exton,PAから商品名SARTOMER SR833Sで入手可能な、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートに基づくアクリレート液体を超音波噴霧及びフラッシュ蒸着を適用することによって、第1の有機層をBOPP基材のアルミニウム層の上に形成し、幅31.8cmのコーティングを作製した。その後、このモノマーコーティングを、7.0kV及び10.0mAで動作する電子線硬化ガンにより、すぐ下流で硬化させた。蒸発器への液体モノマーの流れは、0.67mL/分であり、窒素ガスの流速は、100sccmであり、蒸発器の温度は、500°F(260℃)に設定した。加工用ドラムの温度は、14°F(-10℃)であった。
【0123】
TorayFAN PMX2フィルムのアルミニウム面及び第1の有機層を、0.283g/mmの180°剥離力で分離した。
【0124】
この第1の有機層の上に、銀反射体層を、銀99%超のカソードターゲットのDCスパッタリングによって堆積させた。システムを、9.1メートル/分のライン速度で3kWにて動作させた。同じ電力及びライン速度でその後2回堆積を行い、銀の90nm層を作製した。
【0125】
この銀層の上に、酸化ケイ素アルミニウムの酸化物層をAC反応性スパッタリングによって堆積させた。カソードは、Soleras Advanced Coatings US(Biddeford,ME)から入手したSi(90%)/Al(10%)ターゲットを有した。スパッタリング中のカソードに対する電圧を、フィードバック制御ループにより制御した。この制御ループは、電圧が高いまま維持され、ターゲットの電圧がクラッシュしないように、電圧をモニターし、酸素流を制御した。16kWの電力でシステムを動作させて、銀反射体上に厚さ6nmの酸化ケイ素アルミニウム層を堆積させた。
【0126】
酸化銀転写箔フィルム(図6B
図6Bに概略的に示される転写可能な薄いフィルムを、上記の図6AのAg転写箔フィルムを作製するのに使用した真空コーター上で作製した。コーターに、厚さ0.0500mm、幅35.6cmのDowDuPont製PETフィルムの不定長ロールの形態である基材を通し、このPETフィルムは、SR833アクリレート層に界面破断をもたらすためのNiFeの層を含んでおり、このフィルム基材を9.8m/分の定ライン速度で前進させた。
【0127】
フィルムをプラズマ処理して、第1の金属層の接着性を高めた。プラズマは、1mTの圧力及び2.4m/分の速度で0.3kWのDC源から発生させた。第1の金属層を、ACI Alloys,San Jose,CAから入手した80/20 Ni/Feターゲットから、4kWのDC源を使用し、1ミリトルの圧力、及び2.4メートル/分のウェブ速度で堆積させた。
【0128】
SARTOMER SR833Sアクリレート液体を超音波噴霧及びフラッシュ蒸着により適用することによって、第1の有機層を基材の上に形成し、幅31.8cmのコーティングを作製した。その後、このモノマーコーティングを、7.0kV及び10.0mAで動作する電子線硬化ガンにより、すぐ下流で硬化させた。蒸発器への液体モノマーの流れは、0.67mL/分であり、窒素ガスの流速は、100sccmであり、蒸発器の温度は、500°F(260℃)に設定した。加工用ドラムの温度は、14°F(-10℃)であった。
【0129】
この第1の有機層の上に、酸化銀層を、銀99%超のカソードターゲットのDC反応性スパッタリングによって堆積させた。システムを、20sccmのO及び残部のArにより、7.8mTの圧力で1kWにて、1.22メートル/分のライン速度で動作させ、厚さ25nmのAgOコーティングを作製した。いくつかの場合では、第2、第3、及び第4のパスを使用して、50nm、100nm、及び150nmのAgOコーティングを作製した。
【0130】
この酸化銀層の上に、酸化ケイ素の酸化物層を、DC反応性スパッタリングによって堆積させた。カソードは、Soleras Advanced Coatings US(Biddeford,(ME))から入手したSiターゲットを有した。スパッタリング中のカソードに対する電圧を、フィードバック制御ループにより制御した。この制御ループは、電圧が高いまま維持され、ターゲットの電圧がクラッシュしないように、電圧をモニターし、酸素流を制御した。2.8kWの電力でシステムを動作させて、酸化ケイ素の厚さ12nmの層を堆積させた。
【0131】
フィルムのNiFe面及び第1の有機層を、0.283g/mmの180°剥離力で分離するように設計した。
【0132】
CaF層を、ベース真空度(10-6トルの範囲)で基材を加熱することなく蒸着により、酸化ケイ素アルミニウムの層上に厚さ90nmまで堆積させた。
【0133】
転写インク
3つの異なる転写インク:1)UV Easy Release Coating(UVF03408-465、Flint Group,Plymouth,MI);2)Scotchbond Universal Adhesive(3M,St.Paul,MN);及び3)80%加水分解9,000~10,000Mwポリビニルアルコール(PVA)(Sigma-Aldrich;St.Louis;MO)を、以下の実施例で使用した。
【0134】
試験方法
耐変色性
変色試験媒体は、6.25gのケチャップ、6.25gのマスタード及び87.5gの水を含有する、酸性溶液であり、pH3.7であった。各1つずつを、1、5、10、及び60分間、酸性溶液中で別々にエージングした。各浸漬期間後、試験片を変色試験媒体から取り出し、脱イオン(DI)水で十分にすすぎ、試料間で、色差について、色差がある場合、目視検査し、記録した。
【0135】
抗菌死滅アッセイ
改正ISO22196:2011方法「Measurement of Antibacterial Activity on Plastic and Other Non-Porous Surfaces」を、実施例の物品の抗菌特性の評価に使用した。試験試料を、正方形の試験片(1インチ×1インチ、n=3)に切断した。ストレプトコッカス・ミュータンス菌(Streptococcus mutans)(ATCC27352)の接種材料をリン酸緩衝液及び人工唾液中で調製した。人工唾液の組成は以下のとおりであった(g/L):胃ムチン、Sigma Porcine stomach mucin type III、2.2;NaCl,0.381、CaCl・2HO,0.213、KHPO,0.738、及びKCl,1.114。細菌接種材料(159ul)を、1×106CFU/mLの目標濃度で、PETG基材のコーティングされた/処理された側に広げ、37℃で0、2、及び24時間インキュベートした。インキュベーション後、試料をDE中和ブロス((Dey/Engley)Neutralizingブロス(Difco製))で中和し、プレート計数培養法を使用して生存細胞数について評価した。
【0136】
プレート計数培養法
Butterfieldリン酸緩衝液(3M)中でDE中和ブロス(1mL)の10倍段階希釈を行うことによって、生細菌を数えた。100マイクロリットルの各希釈物をTSAプレート(Tryptic Soy Agar,Hardy Diagnostics)上に塗抹播種した。TSAプレートを、37℃で嫌気条件下、48時間インキュベートした。インキュベーション後、コロニーを手で計数した。
【0137】
F-イオン放出
フッ化物イオン放出測定結果を、3M Oral Care DTS-1218 Determination of Fluoride Releaseに従って得た。コーティングごとに合計5つのディスク(直径2cm)を作製し、各ディスクを25mLのMilliQ水を入れたプラスチック遠心管(50mL)内で、37Cで保管した。遠心管をその内容物と共に37Cのオーブン内で直立させてエージングする。実験を1週間にわたって行い、1日、3日、及び7日後をデータ収集時点とした。各時間点で、各遠心管からの5mLのアリコートを5mLのTISAB IIと混合し、較正されたイオン選択性電極を使用して、F-イオン(ppm)を測定した。データを平均化し、時間点での放出として、さらには、実験期間全体にわたって放出される累積フッ化物としてプロットした。
【0138】
実施例1
上記の図2A図2Cに概略的に示される銀箔パターンの「間接箔転写」の第1のアプローチを例示するために、接着改質材料のグリッドパターンを、3Mパイロット印刷ライン上の図6Aに記載の転写箔フィルム上にフレキソ印刷し、その後厚さ0.75mmの透明PETGに転写した。
【0139】
銀転写箔フィルムは、材料セクションで上述したとおりであり、図6Aに概略的に示されている。逆の正方形(1000umのピッチで100、200、及び300umの正方形)の規則的パターンで画像化された0.067インチDigital MAXフォトポリマーフレキソ印刷プレート(MacDermid Graphics Solutions,Atlanta,GA))を、3M E1060H Cushion-Mount(3M,St.Paul,MN)フレキソ印刷テープで取り付け、UV易剥離インク(UV easy release ink)で印刷した。
【0140】
次いで、箔基材上の剥離インクパターンを、Xeric Web UV硬化ステーション(XDS Holding Inc,Neenah,WI)を通して運び、印刷されたインクを十分に硬化させた(すなわち、触ると硬く感じられ、PETG表面から擦ることができないようにした)。
【0141】
次いで、箔基材上の印刷画像の逆の画像を、5000psiで、CarverプレスにてPETGディスク(直径125mm×厚さ0.75mm)上に250°Fで1分かけて転写した。その後、残りの箔フィルムをPETGから剥がして、逆の画像をPETG上に転写した。
【0142】
画素化PETGディスクは、1000ミクロンのピッチで異なる特徴部寸法の箔正方形を含んでいた。図7Aの光学顕微鏡写真画像に示されるディスクは、100ミクロンの直径を有する特徴部を含み、図7Bに示されるディスクは、200ミクロンの直径を有する特徴部を有し、図7Cに示されるディスクは、300ミクロンの直径を有していた。
【0143】
次いで、ディスクを、Biostar VI圧力成形/熱成形機(Scheu Dental,Great Lakes,Tonawanda,NY)で熱成形して、UTK-RDTP-11-300071に従うクリアトレイアライナ(CTA)を製造した。
【0144】
図8Aは、Ag箔パターン化CTAの描写であり、図8Bは、タイポドント上のCTAの描写である。
【0145】
PETGディスク上の画素化Ag(300um×1000um)は、ケチャップ-マスタード混合物に最大1時間曝露されたときに耐変色性があることが分かった。
【0146】
表Iは、完全カバレージAg及び画素化Ag(300um×1000um)による24時間での細菌数の対数減少がそれぞれ6.3及び4.1であることを示している。これらのデータは、Agの抗菌活性が画素のサイズ及び密度によって制御され得ることを示唆している。
【表1】
【0147】
実施例2
上記の図3A図3Bに概略的に示される個別のAgパターンの「直接箔パターン化」の、第2のアプローチを例示するために、六方充填パターンの接着剤を、Flexiproofer100(RK Print Coat Instruments,Litlington,Royston,Herts SG8 0QZ)を使用して、PETGフィルム(厚さ0.75mm)の片側にフレキソ印刷した。
【0148】
六方充填ドットアレイパターン(3000umのピッチで約1500umのドット)で画像化された(Southern Graphics Systems Inc.,Brooklyn Park,MN)、CYREL DPR0.067の商品名でDowDuPontから入手可能なフレキソ印刷プレートを、3M E1060H Cushion-Mount(3M,St.Paul,MN)フレキソ印刷テープで取り付け、商品名SCOTCHBOND汎用接着剤にて3Mから入手可能な接着剤で印刷した。得られた接着剤フィルムを、室温で乾燥させた。
【0149】
次いで、印刷されたPETGフィルムを、Hot Roll Laminator(ChemInstuments,Fairfield,Ohio)を使用して上記のように金属転写フィルムに積層した。次いで、これら2つのフィルムを一緒にして保ち、積層された構造体を、HバルブUV硬化ランプ(Haraeus Group,Hanau,Germany)を備えたFusion UVコンベヤベルトを通して運び、印刷されたインクを十分に硬化及び固化させた(すなわち、触ると硬く感じられ、PETG表面から擦ることができないようにした)。次いで、金属転写箔フィルムを除去し、接着剤が印刷された場所にのみ箔を残した。
【0150】
次いで、印刷されたPETGを、Biostar VI圧力成形/熱成形機(Scheu Dental,Great Lakes,Tonawanda,NY)で熱成形して、直径125mmの熱可塑性ディスクを、UTK-RDTP-11-300071に従う歯科矯正アライナトレイに成型した。図9は、PETG上の抗菌転写箔パターンの顕微鏡写真を示している。
【0151】
実施例3
上記の図4A図4Bに概略的に示される第3のアプローチを例示するために、ポリビニルアルコール(PVA)転写インクを、3Mパイロット印刷ライン上のMylar DS PETフィルム(DowDupont Teijin Films-America’s Region,Chester,VA)の未プライマー処理側に繰り返し正方形パターンで印刷し、その後金属化して、厚さ0.75mmの透明なPETGに転写した。
【0152】
3M E1060H Cushion-Mount(3M,St.Paul,MN)フレキソ印刷テープで取り付けた、0.067インチ(1.7mm)Digital MAXフォトポリマーフレキソ印刷プレート(MacDermid Graphics Solutions,Atlanta,GA)を使用して、PVAを印刷した。
【0153】
次いで、未プライマー処理PET上のPVAを、180°F(82℃)で2つのXDS Hot Air Dryer(Xeric Web Drying Systems,Neenah,Wi)を通して運び、PVAから水を十分に乾燥させた(すなわち、触ると硬く感じられ、PET表面から擦ることができないようにした)。
【0154】
PETフィルム上の印刷画像は、99%銀カソードターゲットのDCスパッタリングによって堆積された反射体層を有していた。システムを、異なる電力及びライン速度設定で動作させて、所望の銀層厚さを得た。
【0155】
PET基材上に印刷された、上に銀がコーティングされた画像を、PETGディスク(直径125mm×厚さ0.75mm)上に、Carverプレスにて5000psiで、1分間かけて225°F(107℃)で転写した。その後、PETをPETGから剥がして、画像をPETGに転写した。
【0156】
次いで、PVA転写印刷された銀を有するPETGディスクを、Biostar VI圧力成形/熱成形機(Scheu Dental,Great Lakes,Tonawanda,NY)で熱成形して、UTK-RDTP-11-300071に従うCTAを製造した。
【0157】
図10は、PETGディスクに転写された銀及びPVAの顕微鏡写真を示している。
【0158】
実施例4
上記の実施例1に記載されているように、CaF層(厚さ90nm)及びAg-CaF層(各厚さ90nm)を、厚さ0.75mmのPETGディスクに転写した(1200ミクロンのピッチで400ミクロンの正方形)。ディスクの写真を図11A図11Bに示す。
【0159】
各々厚さ90nmのCaFによる100%カバレージのCaF箔フィルム及びAg-CaF箔スタックフィルムからのフッ化物イオン放出により、それぞれ3.52uF/cm及び3.5uF/cmを放出した。したがって、11%の表面カバレージを有するPETG上のCaF及びAg-CaFの画素化転写フィルムからのF-イオン放出は、比例して約0.38uF/cmと少なくなるものと予想される。
【0160】
臨床状況において、CaFを含むCTAは、Caイオン及びFイオン放出から、う蝕に対する保護を提供し、Ag-CaFを含む場合は、有益な抗菌特性及びCa/Fイオン放出特性の両方を提供する。
【0161】
実施例5
抗菌箔パターンの「間接箔転写」のアプローチを例示するために、グリッドパターンを、異なるカバレージ及び厚さでパイロット印刷ライン上の転写箔フィルム上にフレキソ印刷し、その後、厚さ0.75mmの透明PETGに転写した。転写箔フィルムは、NiFe、アクリレート、AgO、及びSiOの層を有する上記の転写可能な薄いフィルムであり(図6A)、NiFe及び第1の有機層が分離するように設計した。
【0162】
逆の正方形(1200ミクロンのピッチで200ミクロン、300ミクロン、及び400ミクロンの正方形)の規則的パターンで画像化された0.067インチ(1.7mm)Digital MAXフォトポリマーフレキソ印刷プレート(MacDermid Graphics Solutions,Atlanta,GA))を、3M E1060H Cushion-Mount(3M,St.Paul,MN)フレキソ印刷テープで取り付け、UVF03408-465 UV Easy Release Coating(Flint Group,Plymouth,MI)で印刷した。異なるカバレージでの試料1~7の写真を図12Aに示す(試料1は構造のない対照試料であった)。
【0163】
次いで、箔基材上の剥離インクパターンを、UV硬化ステーションを通して運び、印刷インクを十分に硬化させた(すなわち、触ると硬く感じられ、PETG表面から擦ることができないようにした)。次いで、箔基材上の印刷画像の逆の画像を、PETGディスク(直径125mm×厚さ0.75mm)上に、Carverプレスにて9000psiで、1分間かけて250°Fで転写した。
【0164】
以下の表2~表3は、PETG基材上にパターン化された、それぞれ厚さ25nm及び50nmのAgOのAgOカバレージを示している。
【表2】
【表3】
【0165】
図12Bに示されるように、厚さ25nm及び50nm両方の画素化AgOについて、75%、87.5%及び98%の開放領域では、対数(細菌殺傷)は、24時間後に約5であり、これは、AgO構造が非常に抗菌性であることを示すものであった。
【0166】
次いで、間接パターン化箔によるPETGディスクを、Biostar VI圧力成形/熱成形機(Scheu Dental,Great Lakes,Tonawanda,NY)で熱成形して、UTK-RDTP-11-300071に従うクリアトレイアライナ(CTA)を製造した。
【0167】
上記の特許出願において引用された全ての参考文献、特許文献及び特許出願は、一貫した形でその全文が参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれている参照文献の部分と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の記述における情報が優先される。本発明の様々な実施形態を記載してきた。これらの実施形態及び他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
【国際調査報告】