(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】取外し可能なベアリングアセンブリを備える電気機械
(51)【国際特許分類】
H02K 5/16 20060101AFI20230222BHJP
H02K 5/173 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
H02K5/16 A
H02K5/173 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540458
(86)(22)【出願日】2020-12-31
(85)【翻訳文提出日】2022-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2020088080
(87)【国際公開番号】W WO2021136834
(87)【国際公開日】2021-07-08
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522258444
【氏名又は名称】ボンバルディア トランスポーテーション ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リンドバーグ ヨハン
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA02
5H605AA03
5H605AA12
5H605BB01
5H605BB05
5H605CC04
5H605CC05
5H605CC10
5H605DD16
5H605EB10
5H605EB17
5H605EB21
5H605EB33
5H605GG06
(57)【要約】
電気機械(10)は、ステータ(12)と、ロータ(14)と、ベアリングアセンブリ(16)とを備える。ステータ(12)は、ベアリングシールド(26)、及び蛇行ラビリンス面(36)を有する固定式ラビリンスシールリング(28)を含む、ベアリングシールドアセンブリ(24)を備える。ロータ(14)は、ロータシャフト(32)、及び第1の軸方向距離(D1)で、固定式ラビリンスシールリング(28)の蛇行ラビリンス面(36)と対向する蛇行ラビリンス面(38)を有する、回転式ラビリンスシールリング(34)を含む。ベアリングシールドアセンブリ(24)には固定接触面(40)が設けられており、また、ロータ(14)は、第1の軸方向距離(D1)よりも短い第2の軸方向距離(D2)で、ベアリングシールドアセンブリ(24)の固定接触面(40)に軸方向に対向する対向接触面(42)をさらに備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-ベアリングシールド(26、126)、及び蛇行ラビリンス面(36、136)を有する固定式ラビリンスシールリング(28、128)を含む、ベアリングシールドアセンブリ(24、124)を備えるステータ(12)と、
-前記ステータ(12)に対して回転軸(100)を中心に回転可能であり、ロータシャフト(32)、及び前記ロータシャフト(14)に取り付けられた回転式ラビリンスシールリング(34、134)を備えるロータ(14)であって、前記回転式ラビリンスシールリング(34、134)は、前記固定式ラビリンスシールリング(28、128)の前記蛇行ラビリンス面(36、136)と自身の蛇行ラビリンス面(38、138)との間に環状ラビリンスを形成するような前記固定式ラビリンスシールリング(28、128)の前記蛇行ラビリンス面(36、136)における第1の軸方向距離(D1、D11)で、前記固定式ラビリンスシールリング(28、128)の前記蛇行ラビリンス面(36、136)と対向する蛇行ラビリンス面(38、138)を有する、ロータ(14)と、
-前記回転軸(100)を中心とした前記ロータ(14)の回転運動を案内するために、前記ベアリングシールドアセンブリ(24、124)と前記ロータシャフト(32)との間に取外し可能に取り付けられているベアリングアセンブリ(16、116)と、を備え、
前記ベアリングシールドアセンブリ(24、124)には固定接触面(40、140)が設けられており、また、前記ロータ(14)が、前記ベアリングシールドアセンブリ(24、124)の前記固定接触面(40、140)における第2の軸方向距離(D2、D12)で、前記ベアリングシールドアセンブリ(24、124)の前記固定接触面(40、140)に軸方向に対向する対向接触面(42、142)をさらに備え、前記第2の軸方向距離(D2、D12)が前記第1の軸方向距離(D1、D11)よりも短いものであることを特徴とする、
電気機械(10)。
【請求項2】
前記ベアリングアセンブリ(16、116)は、ベアリングカートリッジ(44、144)と、前記ベアリングカートリッジ(44、144)に内嵌された外側軌道輪(46、146)と、前記ロータシャフト(32)に外嵌された内側軌道輪(48、148)とを備える、請求項1に記載の電気機械(10)。
【請求項3】
前記ベアリングカートリッジ(44、144)には、前記回転軸(100)に対して平行であり、前記ベアリングシールドアセンブリ(24、124)のねじ穴(65、165)に位置合わせされた取付貫通孔(62、162)が設けられており、前記ベアリングアセンブリ(16、116)は、前記ベアリングカートリッジ(44、144)の前記取付貫通孔(62、162)に挿入され、前記ベアリングシールドアセンブリ(24、124)の前記ねじ穴(65、165)に螺入されることにより、前記ベアリングカートリッジ(44、144)を前記ベアリングシールドアセンブリ(24、124)に固定する固定ボルト(66、166)を備える、請求項2に記載の電気機械(10)。
【請求項4】
前記ベアリングカートリッジ(44、144)には隙間貫通孔(68、168)が設けられており、前記隙間貫通孔(68、168)は、前記回転軸(100)に対して平行であり、前記ベアリングシールドアセンブリ(24、124)の貫通孔(70、72、170、172)と位置合わせされており、また、前記ステータ(12)に対する前記ロータ(14)の割出角度位置で前記ロータ(14)のねじ穴(74、174)と位置合わせされ得、前記隙間貫通孔(68、168)の直径は、前記ベアリングシールドアセンブリの前記貫通孔(70、72、170、172)及び前記ロータ(14)の前記ねじ穴(74、174)の直径よりも大きく、その結果、前記割出角度位置で、固定ボルト(82、182)が前記隙間貫通孔(68、168)に、そして前記ベアリングシールドアセンブリ(24、124)の前記貫通孔(70、72、170、172)に挿入され、次いで前記ロータ(14)の前記ねじ穴(74、174)に螺入されて、前記固定ボルト(82)の円筒ボルトヘッド(84)が前記ベアリングシールドアセンブリ(24)の前記貫通孔(70、72、170、172)の縁部に対して軸方向に当接する、請求項2又は3のいずれか一項に記載の電気機械(10)。
【請求項5】
前記ベアリングアセンブリ(16)の前記内側軌道輪(48)に軸方向に当接するように、前記ロータシャフト(32)の端部に取外し可能に固定されたスラストワッシャ(54)をさらに備える、請求項2から4のいずれか一項に記載の電気機械(10)。
【請求項6】
前記ベアリングアセンブリ(10)は、前記外側軌道輪(46、146)と前記内側軌道輪(48、148)との間に転動体(50、150)を備える、請求項2から5のいずれか一項に記載の電気機械(10)。
【請求項7】
潤滑油で充填された内側ベアリング空間(80、180)が前記内側軌道輪(48、148)と前記外側軌道輪(50、150)との間に形成され、前記固定式ラビリンスシールリング(28、128)と前記回転式ラビリンスシールリング(34、134)との間に形成された前記環状ラビリンスによって封鎖されている、請求項2から6のいずれか一項に記載の電気機械(10)。
【請求項8】
前記ベアリングシールドアセンブリ(24)に取外し可能に固定された外側ベアリングカバー(76)をさらに備える、請求項2から7のいずれか一項に記載の電気機械(10)。
【請求項9】
前記固定接触面(40、140)は電気絶縁材料から作製されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の電気機械(10)。
【請求項10】
前記対向接触面(42、142)は電気絶縁材料から作製されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の電気機械(10)。
【請求項11】
前記固定接触面(40、140)は、前記固定式ラビリンスシールリング(28、128)と一体的に作製されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項12】
前記固定接触面(40、140)は前記ベアリングシールド(26、126)上に形成されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項13】
前記固定接触面(40、140)は、前記第2の軸方向距離で前記対向接触面(42、142)の平面部分に対向する、少なくとも1つの平面部分を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の電気機械(10)。
【請求項14】
前記固定式ラビリンスシールリング(28、128)及び前記回転式ラビリンスシールリング(34、134)には、前記回転軸(100)に沿って交互に配置された管状リブ(36、38、136、138)が設けられており、前記ラビリンスは、前記交互に配置された管状リブ(36、38、136、138)間の一続きの環状空間によって形成されている、請求項1から13のいずれか一項に記載の電気機械(10)。
【請求項15】
前記電気機械(10)は鉄道車両の駆動モータである、請求項1から14のいずれか一項に記載の電気機械(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モータ又は発電機などの電気機械に関する。本発明は、具体的には、排他的ではなく車両を駆動する電気モータ、とりわけ鉄道車両の電気モータに関する。
【0002】
本発明は、あらゆる電気機械に概ね適用することができる。しかしながら、これらの利点は、当該機械に電力が供給されるときだけでなく不変的に、とりわけ高い磁力が発生する永久磁石励磁式電気機械の場合に、その重要性が高まる。
【背景技術】
【0003】
車両を駆動する電気機械は通常、ベアリングシールド及び固定式ラビリンスシールリングを含むステータと、ロータシャフト、及びロータシャフトに取り付けられ、固定式ラビリンスシールリングと自身との間に環状ラビリンスを形成するような固定式ラビリンスシールリングにおける距離で、固定式ラビリンスシールリングと対向する回転式ラビリンスシールリングを含むロータとを備える。回転軸を中心としたロータの回転運動が案内され、かつステータに対するロータの軸方向運動が阻止されるように、1つ又は複数のベアリングアセンブリがベアリングシールドとロータシャフトとの間に取外し可能に取り付けられている。
【0004】
電気機械のこのようなベアリングは使用頻度が高いため、定期的に修理又は交換される必要がある。ベアリングの交換は比較的複雑であり、電気機械の構成要素に損傷が生じるリスクを伴うものである。通常、ロータは、ベアリング交換中に分解され、その後再組み立てされる必要がある。こうした作業は、とりわけ永久磁石励磁式電気機械の場合、ロータとステータとの間の空隙に高い磁力が発生するために、困難な作業となり得る。
【0005】
欧州特許第2610514号明細書では、ラビリンスリング同士がロック位置で互いに接触し合うまで、これらのラビリンスリングを互いに対して移動させることができ、これにより、ベアリングを交換するために、ロータを軸方向及び径方向に固定することができる電気機械を構築することが提案されている。これらのラビリンスリングは、ラビリンスリング間の確実な接続がロック位置において得られるように、ロック位置で互いに接触し合う円錐形状の面を有し、これにより、ロータが回転軸の中心に確実かつ正確に固定されるようになる。この固定式ラビリンスリングは、電気機械の通常動作中はボルトによってベアリングシールドに接続されている。これらのボルトは、ベアリングを交換するために、ラビリンスリングをロック位置まで移動させる目的で緩められる。傾斜配置された少なくとも1つの固定ボルト、好ましくは3つの固定ボルトによって、固定式ラビリンスリングがロック位置に固定され得る。これにより、比較的少ない労力で、ベアリング交換中のモータの位置がしっかりと確実に固定される。整備位置では、電気機械のベアリングが迅速かつ容易に修理又は交換され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本解決策の1つの欠点は、固定力が非常に弱く、それもラビリンス内に摩擦接合を形成するようにボルトに掛かる圧縮荷重に依存しているため、小さい接触面しか得られなくなることにある。その上、グリースは通常、ラビリンス内に存在するため、この摩擦接合がさらに弱まることになる。加えて、本解決策では、固定ボルトの締め付け方に慎重さを要し、ロータの詰まりを防止するために、横方向にわずかに増分してボルトを締め付ける必要がある。最後に、とりわけ重要なことだが、本解決策では、特定のラビリンスシールリングを必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、従来技術の欠点の少なくとも一部を克服し、容易に保守を行うことができる電気機械を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、ステータと、ロータと、ベアリングアセンブリとを備える電気機械が提供される。当該ステータは、ベアリングシールド、及び蛇行ラビリンス面を有する固定式ラビリンスシールリングを含む、ベアリングシールドアセンブリを備える。当該ロータは、ステータに対して回転軸を中心に回転可能であり、ロータシャフト、及びロータシャフトに取り付けられた回転式ラビリンスシールリングを備える。当該回転式ラビリンスシールリングは、固定式ラビリンスシールリングの蛇行ラビリンス面と自身の蛇行ラビリンス面との間に環状ラビリンスを形成するような固定式ラビリンスシールリングの蛇行ラビリンス面における第1の軸方向距離で、固定式ラビリンスシールリングの蛇行ラビリンス面と対向する蛇行ラビリンス面を有する。本ベアリングアセンブリは、回転軸を中心としたロータの回転運動を案内するために、ベアリングシールドアセンブリとロータシャフトとの間に取外し可能に取り付けられている。本ベアリングシールドアセンブリには固定接触面が設けられており、また、ロータは、ベアリングシールドアセンブリの固定接触面における第2の軸方向距離で、ベアリングシールドアセンブリの固定接触面に軸方向に対向する対向接触面をさらに備え、第2の軸方向距離は第1の軸方向距離よりも短いものである。
【0009】
当該取外し可能なベアリングが緩められると、固定接触面が対向接触面に到達するまでステータに対してロータを平行移動させることができるようになり、この移動が行われてから、回転式ラビリンスリングが固定式ラビリンスシールリングに接触する。固定接触面と対向接触面とは、ロータをステータに固定するための広い清浄表面を提供している。
【0010】
一実施形態では、本ベアリングアセンブリは、ベアリングカートリッジと、当該ベアリングカートリッジに内嵌された外側軌道輪と、ロータシャフトに外嵌された内側軌道輪とを備える。好ましくは、ベアリングカートリッジには、回転軸に対して平行であり、ベアリングシールドアセンブリのねじ穴と位置合わせされた取付貫通孔が設けられており、本ベアリングアセンブリは、ベアリングカートリッジの取付貫通孔に挿入され、ベアリングシールドアセンブリのねじ穴に螺入されることにより、ベアリングカートリッジをベアリングシールドアセンブリに固定する固定ボルトを備える。これらの固定ボルトを緩めることで、本ベアリングアセンブリを取り外すことができる。
【0011】
一実施形態では、ベアリングカートリッジは、ベアリングシールドの外面を圧迫している一方、固定式ラビリンスシールリングは、この外面に対向するベアリングシールドの内面を圧迫している。
【0012】
好ましい一実施形態では、ベアリングカートリッジには隙間貫通孔が設けられており、当該隙間貫通孔は、回転軸に対して平行であり、ベアリングシールドアセンブリの貫通孔と位置合わせされており、また、ステータに対するロータの割出角度位置でロータのねじ穴と位置合わせされ得、当該隙間貫通孔の直径は、ベアリングシールドアセンブリの貫通孔及びロータのねじ穴の直径よりも大きく、その結果、割出角度位置で、固定ボルトが隙間貫通孔に、そしてベアリングシールドアセンブリの貫通孔に挿入され、次いでロータのねじ穴に螺入されて、当該固定ボルトの円筒ボルトヘッドがベアリングシールドアセンブリの貫通孔の縁部に対して軸方向に当接する。一方の固定ボルトのボルトヘッドがベアリングシールドアセンブリの貫通孔の縁部にひとたび到達すると、その後ボルトが締め付けられた場合、ベアリングシールドアセンブリの接触面とロータの対向接触面との接触面同士の接触が確立されるまで、ボルト軸に対して平行に、即ち回転軸に対して平行に、ロータがステータに対して平行移動することになる。この平行移動は、ボルトシャンクとベアリングシールドアセンブリの貫通孔の内壁との間で径方向の接触が生じることによって案内される。接触面同士の接触がひとたび確立されると、引張荷重が加わった固定ボルトが接触面間に十分な圧力をもたらして、ロータが接触面の摩擦係合によって固定されるまで、固定ボルトがさらに締め付けられる。
【0013】
一実施形態では、本ベアリングアセンブリの内側軌道輪に軸方向に当接するように、ロータシャフトの端部にスラストワッシャが取外し可能に固定されている。内側軌道輪の対向軸方向端部は、ロータシャフトの肩部又は別の軸方向ストッパに当接してもよい。
【0014】
一実施形態では、本ベアリングアセンブリは、外側軌道輪と内側軌道輪との間に転動体を備える。これらの転動体は、1つ又は複数の列を成して配置された球、円筒ころ、テーパ付きころ、又は樽型ころを含んでいてもよい。
【0015】
一実施形態では、潤滑油で充填された内側ベアリング空間が内側軌道輪と外側軌道輪との間に形成され、固定式ラビリンスシールリングと回転式ラビリンスシールリングとの間に形成された環状ラビリンスによって封鎖されている。この潤滑油がグリースであることが好ましい。
【0016】
一実施形態では、外側ベアリングカバーは、ベアリングシールドアセンブリに取外し可能に固定されている。この外側ベアリングカバーは、自身からラビリンスシールリングまで延在する、当該ベアリングの内側潤滑空間を封鎖することができる。当該外側ベアリングが、ベアリングカートリッジの取付貫通孔及び/又は隙間貫通孔を覆っていることが好ましい。
【0017】
一実施形態では、固定接触面は電気絶縁材料から作製されている。代替的に又は付加的に、対向接触面は電気絶縁材料から作製されている。これにより、これらの接触面同士が接触し合っているときに、電流が接触面を通って流れることが確実に無くなる。
【0018】
一実施形態では、固定接触面は、固定式ラビリンスシールリングと一体的に作製されている。あるいは、固定接触面はベアリングシールド上に形成されている。
【0019】
好ましい一実施形態では、固定接触面は、当該第2の軸方向距離で対向接触面の平面部分に対向する、少なくとも1つの平面部分を含む。
【0020】
有利には、固定式ラビリンスシールリング及び回転式ラビリンスシールリングには、回転軸に沿って交互に配置された管状リブが設けられており、ラビリンスは、当該交互配置された管状リブ間の一続きの環状空間によって形成されている。
【0021】
実施形態では、当該電気機械は鉄道車両の駆動モータである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の他の利点及び特徴は、非限定的な例としてのみ与えられ、以下の添付の図面に表される本発明の特定の実施形態の以下の説明から、より明確に明らかになるであろう。
【
図1】本発明の一実施形態による、ある電気機械の駆動側から見た等角投影図である。
【
図2】当該電気機械の非駆動側の第1のベアリングアセンブリを分解するステップ中の、非駆動側から見た
図1の電気機械の等角投影図である。
【
図3】外側ベアリングカバーが無い状態の、非駆動側から見た
図1の電気機械の正面図である。
【
図4】
図3に示す断面IV-IVに沿って見た、
図1の電気機械の軸方向断面図である。
【
図5】
図3に示す断面V-Vに沿って見た、
図1の電気機械の軸方向断面図である。
【
図6】
図3に示す断面V-Vにおける、当該電気機械の非駆動側の第1のベアリングアセンブリを分解するステップ中にある、
図1の電気機械の詳細を示す図である。
【
図7】
図3に示す断面V-Vにおける、当該電気機械の非駆動側の第1のベアリングアセンブリを分解する別のステップ中にある、
図1の電気機械の詳細を示す図である。
【
図8】
図3に示す切断面IV-IVにおける、
図7の分解ステップ中にある、
図1の電気機械の詳細を示す図である。
【
図9】
図3に示す断面V-Vにおける、当該電気機械の駆動側の第2のベアリングアセンブリを分解するステップ中にある、
図1の電気機械の詳細を示す図である。
【
図10】
図3に示す断面V-Vにおける、当該電気機械の駆動側の第2のベアリングアセンブリを分解する別のステップ中にある、
図1の電気機械の詳細を示す図である。
【0023】
対応する参照番号は、各図において同じ又は対応する部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1~
図5を参照すると、電気機械10、例えば鉄道車両の駆動モータは、ステータ12と、ロータ14と、電気機械10の非駆動端部にある第1のベアリングアセンブリ16と、電気機械10の駆動端部にあり、電気機械10の回転軸100を中心としたステータ12に対するロータ14の回転運動を案内するための、第2のベアリングアセンブリ116とを備える。
【0025】
ステータ12には、ステータハウジング20に収容されたステータ巻線18が設けられており、ステータハウジング20は、ステータフレーム22と、電気機械10の非駆動端部にある第1のベアリングシールドアセンブリ24と、電気機械10の駆動端部にある第2のベアリングシールドアセンブリ124とを含む。第1のベアリングシールドアセンブリ24は環状であり、ベアリングシールド26と固定式ラビリンスシールリング28とを含む。第2のベアリングシールドアセンブリ124は環状であり、ベアリングシールド126と2つの固定式ラビリンスシールリング128、228とを含む。
【0026】
ロータ14は回転軸100に対して中心に位置しており、一組のロータ巻線又は永久磁石30と、ロータシャフト32と、ロータシャフト32に取り付けられ、第1のベアリングシールドアセンブリ24の固定式ラビリンスシールリング28に対向する第1の回転式ラビリンスシールリング34と、ロータシャフト32に取り付けられ、第2のベアリングシールドアセンブリ124の2つの固定式ラビリンスシールリング128、228に対向する一対の第2の回転式ラビリンスシールリング134、234とを備える。固定式ラビリンスシールリング28、128、228及び回転式ラビリンスシールリング34、134、234には、回転軸100に沿って交互に配置された管状リブ36、38、136、138、236、238が設けられており、また、当該交互配置された管状リブ36、38、136、138、236、238間の一続きの環状空間によって、蛇行経路が形成されている。
【0027】
回転軸100に対して平行な軸方向において、最小距離D1により、回転式ラビリンスシールリング34の管状リブ38によって形成された蛇行ラビリンス面を、固定式ラビリンスシールリング28の管状リブ36によって形成された蛇行ラビリンス面から分離している。
【0028】
注目すべきことに、ベアリングシールドアセンブリ24には1つ又は複数の固定接触面40が設けられており、また、ロータ14は、ベアリングシールドアセンブリの固定接触面の軸方向距離D2(D2<D1)でベアリングシールドアセンブリ24の1つ又は複数の固定接触面40に軸方向に対向する、1つ又は複数の対向接触面42をさらに備える。1つ又は複数の固定接触面と対向接触面とは、回転軸に対して垂直な平坦面である。
【0029】
回転軸100に対して平行な軸方向において、最小距離D11により、回転式ラビリンスシールリング134、234の管状リブ138、238によって形成された蛇行ラビリンス面が、固定式ラビリンスシールリング128、228の管状リブ136、138によって形成された蛇行ラビリンス面から分離されている。D11はD2<D11となり、好ましくはD1に等しい。
【0030】
同様に、ベアリングシールドアセンブリ124には1つ又は複数の固定接触面140が設けられており、また、ロータ14は、ベアリングシールドアセンブリの固定接触面の軸方向距離D22(D12<D11)でベアリングシールドアセンブリ124の1つ又は複数の固定接触面140に軸方向に対向する、1つ又は複数の対向接触面142をさらに備える。1つ又は複数の固定接触面と対向接触面とは、回転軸に対して垂直な平坦面である。好ましくは、D12がD2に等しい。
【0031】
電気機械10の非駆動端部にある第1のベアリングアセンブリ16は、第1のベアリングシールドアセンブリ24とロータ14との間に取り付けられている一方、第2のベアリングアセンブリ116は、第2のベアリングシールドアセンブリ124とロータ14との間に取り付けられており、回転軸100を中心としたロータ14の回転運動を案内している。
【0032】
より具体的には、第1のベアリングアセンブリ16は、ベアリングカートリッジ44と、ベアリングカートリッジ44に圧入内嵌されている外側軌道輪46と、ロータシャフト14に圧入外嵌されている内側軌道輪48と、内側軌道輪48と外側軌道輪46との間の転動体50とを備える。本実施形態では、転動体50は球であり、また、内側軌道輪48と外側軌道輪46とは凹状断面を有する。内側軌道輪48は、ロータシャフト14の肩部52に軸方向に当接している。ベアリングアセンブリ16の内側軌道輪48に軸方向に当接するように、ロータシャフト32の端部56にスラストワッシャ54が、ボルト58を用いて取外し可能に固定されている。
【0033】
図4に示すように、ベアリングカートリッジ44は、ベアリングシールド26の外側60に軸方向に当接しており、また、ベアリングカートリッジ44の外周にわたって分散配置され、回転軸100に対して平行な方向に延在する、いくつかの、好ましくは3つ以上からなる一組の取付貫通孔62を備える。取付貫通孔62は、ベアリングシールド26の中間穴64、及び固定式ラビリンスシールリング28のねじ穴65と位置合わせされている。ベアリングカートリッジの取付貫通孔62に固定ボルト66が挿入され、ベアリングシールド26のねじ穴64に螺入されることにより、ベアリングカートリッジ44をベアリングシールド26に固定する。
【0034】
ベアリングカートリッジ44には、
図5に示すように、ベアリングカートリッジ44の外周にわたって分散配置されているいくつかの、好ましくは3つ以上からなる一組の隙間貫通孔68がさらに設けられており、これら一組の隙間貫通孔68は回転軸100に対して平行であり、本実施形態ではベアリングシールド26及び固定式ラビリンスシールリング28を貫通して、ベアリングシールドアセンブリ24の貫通孔70、72と位置合わせされている。
【0035】
これらの隙間貫通孔68は、ステータ12に対する割出角度位置にロータ14が配置されたときに、ロータ14のねじ穴74と位置合わせされる。隙間貫通孔68の直径は、ベアリングシールドアセンブリの貫通孔70、72及びロータのねじ穴74の直径よりも大きい。
【0036】
外側ベアリングカバー76が、ボルト78を用いてベアリングシールド26に取外し可能に固定されており、ベアリングカートリッジ44の取付貫通孔62及び隙間貫通孔68を覆っている。内側軌道輪48と外側軌道輪46との間に密封された潤滑容積80が形成されており、外側ベアリングカバー76によって一方の軸方向端部が封鎖され、固定式ラビリンスシールリング28及び回転式ラビリンスシールリング34によって形成されるラビリンスシールにより、対向軸方向端部が封鎖されている。この潤滑容積が、潤滑油、好ましくはグリースで充填され得る。
【0037】
同様に、当該電気機械の駆動端部にある第2のベアリングアセンブリ16は、固定式ラビリンスシールリング228と一体であるベアリングカートリッジ144と、ベアリングカートリッジ144に圧入内嵌されている外側軌道輪146と、ロータシャフト14に圧入外嵌されている内側軌道輪148と、内側軌道輪148と外側軌道輪146との間の転動体150とを備える。本実施形態では、当該転動体は円筒ころであり、また、内側軌道輪148と外側軌道輪46とは円筒状である。内側軌道輪148は、ロータシャフト14の肩部152に軸方向に当接している。
【0038】
図4に示すように、ベアリングカートリッジ144は、ベアリングシールド126の外側160に軸方向に当接しており、また、ベアリングカートリッジ144の外周にわたって分散配置され、回転軸100に対して平行な方向に延在する、いくつかの、好ましくは3つ以上からなる一組の取付貫通孔162を備える。取付貫通孔162は、ベアリングシールド126の中間穴、及び固定式ラビリンスシールリング128のねじ穴165と位置合わせされている。ベアリングカートリッジ144の取付貫通孔162に固定ボルト166が挿入され、ベアリングシールド126のねじ穴164に螺入されることにより、ベアリングカートリッジ144をベアリングシールド126に固定する。
【0039】
ベアリングカートリッジ144には、
図5に示すように、ベアリングカートリッジ144の外周にわたって分散配置されているいくつかの、好ましくは3つ以上からなる一組の隙間貫通孔168がさらに設けられており、これら一組の隙間貫通孔168は回転軸100に対して平行であり、本実施形態ではベアリングシールド126及び固定式ラビリンスシールリング128を貫通して、ベアリングシールドアセンブリ124の貫通孔170、172と位置合わせされている。これらの隙間貫通孔168は、ステータ12に対する割出角度位置にロータ14が配置されたときに、ロータ14のねじ穴174と位置合わせされ得る。隙間貫通孔168の直径は、ベアリングシールドアセンブリの貫通孔170、172及びロータのねじ穴174の直径よりも大きい。
【0040】
内側軌道輪48と外側軌道輪46との間に密封された潤滑容積180が形成されており、固定式ラビリンスシールリング128及び回転式ラビリンスシールリング134によって形成されるラビリンスシールにより、一方の軸方向端部が封鎖され、ベアリングカートリッジ144と一体である固定式ラビリンスシールリング228及び回転式ラビリンスシールリング34によって形成されるラビリンスシールにより、対向軸方向端部が封鎖されている。この潤滑容積が、潤滑油、好ましくはグリースで充填され得る。
【0041】
電気機械10の非駆動端部から第1のベアリングアセンブリ16を取り外すには、最初にボルト78のねじを外して、外側ベアリングカバー76を取り外す必要があり、これにより、ベアリングカートリッジ44の隙間貫通孔68と、ベアリングカートリッジ44の取付貫通孔62とに接触することができる。
【0042】
ロータ14は割出角度位置まで回転し、また、ベアリングシールドアセンブリ24の隙間貫通孔68(
図2を参照されたい)及び貫通孔70、72に固定ボルト82が挿入される。
図6に示すように、固定ボルト82の円筒ボルトヘッド84がベアリングシールド26の貫通孔70の縁部86に軸方向に当接するまで、固定ボルト82はロータ14のねじ穴74に螺入される。
【0043】
固定ボルト82のボルトヘッド84がベアリングシールド26の貫通孔70の縁部86にひとたび到達すると、固定ボルト82のシャンクは、ベアリングシールド24及び固定式ラビリンスシールリング28の貫通孔70、72と接触して、回転軸10に対し、ロータ14がベアリングアセンブリ16から独立して確実に中心位置合わせされるようになる。したがって、固定ボルト66は、ステータ12に対するロータ14の平行移動が制限されるように、少なくとも部分的にねじを緩めることができる。
【0044】
その後固定ボルト82を締め付けた場合、
図7に示すように、ベアリングシールドアセンブリ24の接触面40とロータ14の対向接触面42との接触面同士の接触が確立されるまで、固定ボルト軸に対して平行に、即ち回転軸100に対して平行に、ロータ14がステータ12に対して平行移動することになる。この平行移動は、固定ボルト82のシャンクとベアリングシールドアセンブリ24の貫通孔70、72の内壁との間に生じる径方向の接触によって、かつ/又は転動体50及び内側軌道輪48によって案内される。接触面40、42同士の接触がひとたび確立されると、引張荷重が加わった固定ボルト82が接触面40、42間に十分な圧力をもたらして、ロータ14が接触面40、42の摩擦係合によって固定されるまで、固定ボルト82がさらに締め付けられる。注目すべきことに、D2<D1であるため、固定式ラビリンスシールリング及び可動式ラビリンスシールリングの交互配置されたリブ36、38間に接触は生じない。同様に、D2<D11であるため、固定式ラビリンスシールリング128、228及び可動式ラビリンスシールリング134、234の交互配置されたリブ136、138、236、238間に接触は生じない。ロータの平行移動中、円筒ころ150は内側軌道輪148の軌道上を摺動する。
【0045】
図5のステップの終了時に取外しが完全に済んでいない場合、固定ボルト66は、ボルト58と同様に十分に緩められて取り外され得る。ベアリングカートリッジ76、外側軌道輪46、及び転動体50を取り外してから、引抜治具を挿入して内側軌道輪48の遠位端面にこれを到達させ、内側軌道輪48を取り出すことができる。
【0046】
電気機械10の駆動端部から第2のベアリングアセンブリ116を取り外すには、
図9に示すように、最初にボルト78のねじを外して、電気機械10の非駆動端部から外側ベアリングカバー76を取り外す必要があり、これにより、ベアリングカートリッジ44の隙間貫通孔68と、ベアリングカートリッジ44の取付貫通孔62とに接触することができる。
【0047】
ロータ14は割出角度位置まで回転し、また必要に応じて、
図9に示すように、ベアリングシールドアセンブリ24の隙間貫通孔68及び貫通孔70、72にねじ式割出しロッド90が挿入され、次いでロータ14のねじ穴74に螺入される。
【0048】
割出しロッド90がひとたび適所に配置されると、割出しロッド90のシャンクは、ベアリングシールド24及び固定式ラビリンスシールリング28の貫通孔70、72の内壁と接触して、回転軸10に対し、ロータ14がベアリングアセンブリ16から独立して確実に中心位置合わせされるようになる。したがって、固定ボルト66は、ステータ12に対するロータ14の平行移動が制限されるように、少なくとも部分的にねじを緩めることができる。
【0049】
これらの予備ステップが電気機械10の非駆動端部において完了すると、駆動端部で実際の動作を開始することができる。固定ボルト182は、
図9に示すように、固定ボルト182の円筒ボルトヘッド184がベアリングシールド126の貫通孔170の縁部186に軸方向に当接するまで、ベアリングシールドアセンブリ124の隙間貫通孔168及び貫通孔170、172に挿入され、次いでロータ14のねじ穴174に螺入される。
【0050】
固定ボルト182のボルトヘッド184がベアリングシールド126の貫通孔170の縁部186にひとたび到達すると、固定ボルト182のシャンクは、ベアリングシールド124及び固定式ラビリンスシールリング128の貫通孔170、172の内壁と接触して、回転軸10に対し、ロータ14がベアリングアセンブリ116から独立して確実に中心位置合わせされるようになる。したがって、固定ボルト166は、ステータ12に対するロータ14の平行移動が制限されるように、少なくとも部分的にねじを緩めることができる。
【0051】
その後固定ボルト182を締め付けた場合、
図10に示すように、ベアリングシールドアセンブリ124の接触面140とロータ14の対向接触面142との接触面同士の接触が確立されるまで、固定ボルト軸に対して平行に、即ち回転軸100に対して平行に、ロータ14がステータ12に対して平行移動することになる。この平行移動は、固定ボルト182のシャンクとベアリングシールドアセンブリ124の貫通孔170、172の内壁との間に生じる径方向の接触によって、かつ/又は転動体150及び内側軌道輪148によって案内される。接触面140、142同士の接触がひとたび確立されると、引張荷重が加わった固定ボルト182が接触面140、142間に十分な圧力をもたらして、ロータ14が接触面140、142の摩擦係合によって固定されるまで、固定ボルト182がさらに締め付けられる。注目すべきことに、D12<D11であるため、固定式ラビリンスシールリング128、228及び可動式ラビリンスシールリング134、234により、固定式ラビリンスシールリング及び可動式ラビリンスシールリングの交互配置されたリブ136、138、236、238間に接触は生じない。注目すべきことに、電気機械10の非駆動端部のベアリングアセンブリ16は、ロータ14及びスラストワッシャ54と共に移動して、固定式ラビリンスシールリング28をベアリングシールド26から遠ざけるが、両方の部品間の相対角度位置は、割出しロッド90によって維持されている。次いで、可動式ラビリンスシールリング223を
図9に示すように引き出すことができ、また、ベアリングカートリッジ176、外側軌道輪146、及び転動体150を取り外してから、引抜治具を挿入して内側軌道輪148の遠位端面にこれを到達させ、内側軌道輪148を取り出すことができる。
【0052】
ベアリングシールド26、126が金属製であると好ましい。接触面40、42、140、142が互いに接触し合うときに電気経路が生成されないように、固定式ラビリンスシールリング28、128、228が電気絶縁材料から作製されていると好ましい。
【0053】
変形例として、
図4のステップの後に固定ボルト82を締め付けた場合、ベアリングシールド26が弾性変形し、その結果として、ロータ14がステータ12に対して平行移動することなく、接触面40、42同士の接触が生じることになり得る。あるいは、ねじ穴74が配置されたロータプレスプレートの変形が起こり得る。
【0054】
固定ボルト82のシャンクと、ベアリングシールド24及び固定式ラビリンスシールリング28の貫通孔70、72との間に隙間を確保することができ、この場合、固定ボルト66が取り外されたときの回転軸10に対するロータ14の中心位置合わせは、ベアリングアセンブリ16によって行われる。
【国際調査報告】