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特表2023-508568病原性抗リン脂質抗体の検出法及び阻害剤の同定法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】病原性抗リン脂質抗体の検出法及び阻害剤の同定法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/564 20060101AFI20230222BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230222BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230222BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230222BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230222BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230222BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20230222BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230222BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20230222BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230222BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230222BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20230222BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
G01N33/564
A61K45/00
A61P37/06
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P13/12
A61K38/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K38/43
A61K48/00
A61K31/7088
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540483
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(85)【翻訳文提出日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 EP2020085278
(87)【国際公開番号】W WO2021136639
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】62/955,060
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514243896
【氏名又は名称】ウニヴェルシテーツメディツィン・デア・ヨハネス・グーテンベルク-ウニヴェルシテート・マインツ
(71)【出願人】
【識別番号】504284559
【氏名又は名称】ザ・スクリップス・リサーチ・インスティテュート
【氏名又は名称原語表記】THE SCRIPPS RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】ウルフラム,ルフ
(72)【発明者】
【氏名】ナディネ,ミューラー-カレジャ
(72)【発明者】
【氏名】カール,ラックナー
(72)【発明者】
【氏名】ルック,テイトン
【テーマコード(参考)】
2G045
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045DA37
2G045DA61
2G045FB03
2G045GC15
4C084AA02
4C084AA13
4C084AA17
4C084BA44
4C084DC01
4C084NA14
4C084ZA81
4C084ZA96
4C084ZB08
4C084ZB15
4C085AA13
4C085BB11
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZA96
4C086ZB08
4C086ZB15
(57)【要約】
本発明は、新規標的である、内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)又はそのLBPA結合断片に結合したリゾビスホスファチジン酸(LBPA)を用いて、試料中の抗リン脂質抗体(aPL)を検出することにより、対象が自己免疫疾患、例えば、抗リン脂質症候群(APS)等に罹患しているかどうかを判定する方法に関する。そのうえさらに、本発明は、自己免疫疾患における内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)機能の阻害剤であって、好ましくは凝血におけるEPCR調節機能に対する副作用を伴わないものを同定する方法、及び医薬組成物の製造方法に関し、本製造方法は、阻害剤候補を同定する工程と、上記阻害剤候補を医薬組成物へと適切に製剤化する工程とを含む。そのうえ、本発明は、対象において自己免疫疾患、例えば、抗リン脂質症候群等の予防及び/又は治療に使用される、同定されたとおりの上記阻害剤又は上記医薬組成物に関する。そのうえさらに、本発明は、対象において自己免疫疾患、例えば、抗リン脂質症候群等を予防及び/又は治療する方法に関する。
【選択図】図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象が自己免疫疾患に罹患しているかどうかを判定する方法であって、前記対象から得られた生体試料中の抗リン脂質抗体(aPL)と内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)又はそのLBPA結合断片に結合したリゾビスホスファチジン酸(LBPA)との結合を検出することを含み、aPLと内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)又はその前記LBPA結合断片に結合した前記リゾビスホスファチジン酸(LBPA)との前記結合は、前記対象における自己免疫疾患を検出する、方法。
【請求項2】
前記自己免疫疾患は、抗リン脂質症候群(APS)、原発性又は続発性APS、原発性シェーグレン症候群、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、及びループス腎炎からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)又はそのLBPA結合断片に結合した前記リゾビスホスファチジン酸(LBPA)は、直接又は間接的に、固形担体材料に固定されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
自己免疫疾患における内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)機能の阻害剤を同定する方法であって、
i)EPCRタンパク質又はそのリゾビスホスファチジン酸(LBPA)結合断片を含む生体試料を用意することと、
ii)阻害剤候補を、前記試料と接触させることと、
iii)前記阻害剤候補の存在下又は不在下で、LBPAと前記EPCRタンパク質又はその前記LBPA結合断片との結合を試験することと、
iv)試験したとおりの前記LBPA結合に基づき、前記阻害剤候補を同定することと、
を含む、方法。
【請求項5】
自己免疫疾患における内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)機能の阻害剤であって、凝血におけるEPCRの調節機能と干渉しないものを同定する方法であって、
i)EPCRタンパク質又はそのリゾビスホスファチジン酸(LBPA)結合断片を含む生体試料を用意することと、
ii)LBPAを前記EPCRタンパク質又はその前記LBPA結合断片と結合させてEPCR-LBPA複合体を形成させることと、
iii)阻害剤候補を、前記試料と接触させることと、
iii)前記阻害剤候補の存在下又は不在下で、抗リン脂質抗体(aPL)の結合又は細胞機能を試験することと、
iv)試験したとおりの前記aPL結合又は細胞機能との干渉に基づき、前記阻害剤候補を同定することと、
を含む、方法。
【請求項6】
EPCR、LBPA、前記阻害剤候補、及び/又はaPLのうち少なくとも1種は、適切に標識されている及び/又は固定されている、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
自己免疫疾患における内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)機能の阻害剤であり、それでいて凝血においてEPCRの調節機能を阻害しないと、同定されたとおりの前記阻害剤候補を試験する工程を更に含む、請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記阻害剤候補は、小分子、タンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合断片、酵素、及びアプタマーから選択される、請求項4~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象は、哺乳類、又はヒトである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記生体試料は、血液、血清、及び唾液を含む体液、並びに組織、臓器、又は細胞型血液試料、血液リンパ球の試料、並びにそれらの画分から選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
医薬組成物を製造する方法であって、請求項4~10のいずれか1項に記載の阻害剤候補又は阻害剤を同定する工程と、前記阻害剤候補又は阻害剤を適切に配合して医薬組成物にする工程とを含む、方法。
【請求項12】
対象において自己免疫疾患の予防及び/又は治療に使用される、請求項4~10のいずれか1項に従って同定されるとおりの阻害剤、又は請求項11に従って製造される医薬組成物。
【請求項13】
前記阻害剤は、小分子、ペプチド、抗体又はその抗原結合断片、酵素、及びアプタマーから選択される、請求項12に記載の使用のための阻害剤又は医薬組成物。
【請求項14】
前記自己免疫疾患は、抗リン脂質症候群(APS)、原発性又は続発性APS、原発性シェーグレン症候群、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、及びループス腎炎からなる群より選択される、請求項12又は13に記載の使用のための阻害剤又は医薬組成物。
【請求項15】
対象における、自己免疫疾患、又は、抗リン脂質症候群(APS)、原発性又は続発性APS、原発性シェーグレン症候群、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、及びループス腎炎等からなる群より選択される自己免疫疾患を治療及び/又は予防する方法であって、そのような治療及び/又は予防を必要としている前記対象に、請求項4~10のいずれか1項に従って同定されるとおりの阻害剤、又は請求項11に従って製造される医薬組成物を有効量で投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規標的である、内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)又はそのLBPA結合断片に結合したリゾビスホスファチジン酸(LBPA)を用いて、試料中の抗リン脂質抗体(aPL)を検出することにより、対象が自己免疫疾患、例えば、抗リン脂質症候群(APS)等に罹患しているかどうかを判定する方法に関する。そのうえさらに、本発明は、自己免疫疾患における内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)機能の阻害剤であって、好ましくは凝血におけるEPCR調節機能に対する副作用を伴わないものを同定する方法、及び医薬組成物の製造方法に関し、本製造方法は、阻害剤候補を同定する工程と、上記阻害剤候補を医薬組成物へと適切に製剤化する工程とを含む。そのうえ、本発明は、対象において自己免疫疾患、例えば、抗リン脂質症候群等の予防及び/又は治療に使用される同定されたとおりの上記阻害剤又は上記医薬組成物に関する。そのうえさらに、本発明は、対象において自己免疫疾患、例えば、抗リン脂質症候群等を治療及び/又は予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗リン脂質症候群(APS)は、後天性自己免疫疾患であり、この疾患では、免疫系の不十分な制御が、血液の凝固する傾向の増長を招く。結果として生じる血液凝固(血栓症)は、続いて患部組織への血流の減少(虚血)を招き、脳卒中、心臓発作、又は流産等の合併症を引き起こす可能性がある。脂質反応性抗体は、感染症においても一過性に出現するものの、自己免疫疾患における持続性抗リン脂質抗体(aPL)のクローン進化は、抗リン脂質症候群(APS)において重篤な血栓塞栓性事象、不育症、及び胎児死亡を引き起こす(1)。
【0003】
カルジオリピンとの反応性がaPLの同定に使用されているが、aPLは、β2糖タンパク質I(β2GPI)をはじめ、様々なアニオン性リン脂質及び血液タンパク質を認識する。こうした複雑な反応性は、一連のAPS関連病態(1、2)及び自己免疫疾患の発生(3、4)を引き起こす正確な機構の定義を妨げてきた。モノクローナルaPLのクローン拡大は、タンパク質交差反応性を招く(5)が、脂質認識は、妊娠合併症(6)及びマウスの血栓症(7)を引き起こすのに十分であり、この両方に、自然免疫防御補体のクロストーク及び凝血経路が関与する(6、8)。
【0004】
骨髄細胞から発現したEPCRと結合することにより、aPLは、凝血及び自然免疫シグナル伝達を制御する重要なトグルスイッチを標的にする。TF-FVIIa-FXa-EPCR複合体によるPAR2活性化は、インターフェロン制御型遺伝子のTLR4介在型誘導を支援する(16)が、EPCRリガンド占有について抗凝血活性化タンパク質C-FV-タンパク質S複合体と競合することにより、TF依存性PAR2シグナル伝達を減弱する(37)。調節解除されたインターフェロンシグナル伝達は、自己免疫を駆動し、EPCR aPLを直接標的とすることにより、骨髄細胞においてインターフェロンシグナル伝達反応を誘導するものの、EPCRシグナル伝達経路が無効化されたマウスは、自己免疫性aPL発生から保護される。
【0005】
抗原標的EPCR-LBPAの遺伝的又は薬理学的阻害は、マウスにおいて、aPL誘導型病態を減弱する。自然免疫細胞発現型EPCRにaPLが係合することで、インターフェロン調節型抗菌反応が誘導され、インターフェロン依存性B細胞増殖及び自己免疫の発生が駆動される。すなわち、aPLは、この自己免疫疾患の病態形成及び合併症に必要な単一脂質タンパク質受容体複合体を認識する。
【0006】
特許文献1は、試料中の内皮細胞タンパク質C/活性化タンパク質C受容体(EPCR)に対する自己抗体を検出及びin vitro定量することによる、自己抗体の検出法に関する。
【0007】
Soriceらは(非特許文献1において)、APS患者由来の抗LBPA抗体及びIgGが、内皮細胞培養物及び凝血系中の細胞内β2GPIの分布に影響を及ぼすことを開示している。さらに、Soriceらは、LBPAがaPlの標的であり、APSの免疫病原性に関与していることを示唆している。
【0008】
Alessandriらは(非特許文献2において)、LBPA抗体を、抗リン脂質症候群患者のバイオマーカーとして記載している。
【0009】
Olivieriらは(非特許文献3において)、抗LBPAの臨床的価値を精査し、抗LBPA抗体がAPSの診断に利用不可であることを明らかにしている。
【0010】
上記従来技術は、内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)及びリゾビスホスファチジン酸(LBPA)、又は内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)若しくはリゾビスホスファチジン酸(LBPA)を指向する抗体が、患者のAPSを診断するバイオマーカーとして利用可能であることを開示する。しかしながら、リゾビスホスファチジン酸(LBPA)に対する抗体には、他の抗体、例えば、カルジオリピンに対する抗体の分析に比べてバイオマーカーとしての利点がないことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007-0141625号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Evidence for anticoagulant activity and beta2-GPI accumulation in late endosomes of endothelial cells induced by anti-LBPA antibodies. Thromb Haemost. 2002 Apr;87(4):735-41. PMID: 12008959
【非特許文献2】Anti-lysobisphosphatidic acid antibodies in patients with antiphospholipid syndrome and systemic lupus erythematosus. Clin Exp Immunol. 2005 Apr;140(l):173-80. doi: 10.1111/j.1365-2249.2005.02727.x. PMID: 15762889
【非特許文献3】Clinical value of antibodies to lysobisphosphatidic acid in patients with primary antiphospholipid syndrome. Reumatismo. 2010 Apr-Jun;62(2):107-12. Italian. doi: 10.4081/reumatismo.2010.107. PMID: 20657887
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
すなわち、したがって、本発明の目的は、自己免疫疾患、例えば、抗リン脂質症候群(APS)、特に原発性又は続発性APS等を、抗リン脂質抗体(aPL)の結合に基づき検出する信頼できる堅固な方法を提供することである。
【0014】
本発明の更なる目的は、aPL病原性シグナル伝達を阻止する阻害剤候補の同定法を提供することである。
【0015】
別の目的は、医薬組成物の製造法の提供であり、本方法では、とりわけ、そのような阻害剤が含まれる。
【0016】
本発明の更に別の目的は、ひいては、対象に、上記阻害剤を含有する医薬組成物を投与することによって、上記対象における、自己免疫疾患、例えば、抗リン脂質症候群(APS)、特に原発性又は続発性APS等の治療及び/又は予防法を提供することである。
【0017】
他の態様及び目的は、本発明の以下の説明を検討することにより、当業者に明らかとなるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
驚いたことに、本発明者らは、本発明の状況において、これまで不明であったaPLにより認識される疾患原因細胞表面抗原として、エンドソームリゾビスホスファチジン酸(LBPA)及びCD1d様内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)によるその提示を同定した。EPCRの自然免疫及び凝血シグナル伝達機能と交差することにより、aPLは、エンドソーム輸送並びに血栓形成促進性及び炎症促進性シグナル伝達の開始に向けてEPCRと係合する。
【0019】
本発明者らは、更に、内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)とLPBAの相互作用が、抗リン脂質症候群の過程に重要であることを示すことに成功した。この驚くべき発見により、EPCR-LBPA複合体を、診断スクリーニング手順用の、並びに抗リン脂質症候群の治療及び予防に使用可能な薬物生成のスクリーニング手順において、新規標的として使用することが可能になる。
【0020】
第1の態様において、本発明は、対象が自己免疫疾患に罹患しているかどうかを判定する方法であって、上記対象から得られた生体試料中の抗リン脂質抗体(aPL)と内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)又はそのLBPA結合断片に結合したリゾビスホスファチジン酸(LBPA)との結合を検出することを含み、aPLと内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)又はその上記LBPA結合断片に結合した上記リゾビスホスファチジン酸(LBPA)との上記結合は、上記対象における自己免疫疾患を検出する、方法を提供することで上記問題を解決する。
【0021】
第2の態様において、本発明は、自己免疫疾患における内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)機能/活性の阻害剤であって、好ましくは凝血における機能と干渉しないものを同定する方法であって、EPCRタンパク質又はそのリゾビスホスファチジン酸(LBPA)結合断片を含む生体試料を用意することと、阻害剤候補を、上記試料と接触させることと、上記阻害剤候補の存在下又は不在下で、LBPAと上記EPCRタンパク質又はその上記LBPA結合断片との結合を試験することと、試験したとおりの上記LBPA結合に基づき、上記阻害剤候補を同定することとを含む、方法に関する。
【0022】
第3の態様において、本発明は、自己免疫疾患における内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)機能の阻害剤であって、好ましくは凝血におけるEPCRの調節機能と干渉しないものを同定する方法であって、EPCRタンパク質又はそのリゾビスホスファチジン酸(LBPA)結合部分を含む生体試料を用意することと、LBPAを上記EPCRタンパク質又はその上記LBPA結合断片と結合させてEPCR-LBPA複合体を形成させることと、阻害剤候補を、上記試料と接触させることと、上記阻害剤候補の存在下又は不在下で、抗リン脂質抗体(aPL)の結合又は細胞効果/機能を試験することと、試験したとおりの上記aPL結合又は細胞機能との干渉に基づき、上記阻害剤候補を同定することとを含む、方法に関する。
【0023】
第4の態様において、本発明は、医薬組成物を製造する方法であって、本明細書に記載の阻害剤候補又は阻害剤を同定する工程と、上記阻害剤候補又は阻害剤を適切に配合して医薬組成物にする工程とを含む、方法に関する。
【0024】
第5の態様において、本発明は、対象において自己免疫疾患の予防及び/又は治療に使用される、同定されるとおりの阻害剤、又は本明細書に記載の医薬組成物に関する。
【0025】
第6の態様において、本発明は、対象における、自己免疫疾患、例えば、抗リン脂質症候群、特に原発性又は続発性APS等の自己免疫疾患を治療及び/又は予防する方法であって、そのような治療及び/又は予防を必要としている上記対象に、同定されるとおりの及び本明細書に記載の阻害剤、又は本明細書に記載の医薬組成物を有効量で投与することを含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1-1】EPCRがaPLの受容体であることを示す図である。(A)LPS及びトレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)に感染した患者由来のIgGによる、単球におけるIFN調節型遺伝子のEPCR依存型誘導。(B)aPLによるIFN調節型遺伝子の誘導。(C)表示されるマウスのCD115+脾細胞をaPL HL5B又はHL7Gで3時間刺激することによるTF及びTnfα mRNAの誘導、並びに初期ROS産生;平均±SD、n=6;*p<0.0001;一元配置分散分析、ダネットの多重比較検定。(D)表示されるマウス系統の単球におけるHL5B内部移行を生細胞で撮影。バー=5 μm。(E)ヒトMM1細胞で、非阻害性αEPCR 1489を用いて、aPL HL5B Fab'2又はIgGをEPCRと共局在化させた場合を、生細胞で撮影。(F)15分間刺激したMM1細胞におけるEPCR、FVIIa、及びTFの内部移行は、プロテアーゼ及びインテグリン輸送を同様に必要とした。内部移行の定量のため、表面染色を0.4%トリパンブルーでクエンチした;平均±SD、n=6、*p<0.0001;一元配置分散分析、IgG対照と比較したダネットの多重比較検定。
図1-2】同上
図2】aPLシグナル伝達にはEPCRが必要であることを示す図である。(A)ヒト及びマウスEPCRに対するαEPCRの機能特性の概要。(B、C)HL5B又はHL7Gで3時間刺激し、抗ヒトEPCR抗体で15分間前処理した、初代単球(B)及びMM1細胞(C)におけるTNF及びTF誘導;平均±SD、n=6。APS患者から単離したIgG(100 μg/ml)を用いて1時間又は3時間刺激した後のTNFαの(D)表示されるマウス系統のCD115+脾細胞、及び(E)栄養芽細胞誘導、これは、カルジオリピン反応性(αCL)のみ、αβ2GP反応性のみ、又は二重反応性を示す。ヒト栄養芽細胞は、非阻害性αEPCR 1489又は阻害性αEPCR 1496いずれかで前処理した。
図3-1】EPCRが細胞表面で後期エンドソームリゾビスホスファチジン酸(LBPA)を提示することを示す図である。(A)マウス微小血管内皮細胞のEPCR依存性aPC産生に対するaPL HL5B抗体、aPL HL7G抗体、及びαEPCR抗体の効果。(B)aPL HL5B及びHL7GによるTnfα mRNA誘導に対する抗マウスEPCR抗体1682及び1650の効果;平均±SD、n=6、*p<0.0001;一元配置分散分析、ダネットの多重比較。(C)CD115+脾細胞へのaPL HL5B及びHL7G内部移行に対するαEPCRの効果。バー=5 μm。(D)表示されるマウス系統から単離されたCD115+脾臓単球で行ったFXa及びEPCRのフローサイトメトリー検出。(E)表示される単球で行ったαEPCR 1682及びαLBPA 6C4の表面結合に対する10 μMのLBPAで10分間前処理することの効果;平均±SD、n=6、*p<0.003;多重t検定。(F)マウスCD115+脾細胞に対する、αEPCR 1650及び1682とFITC標識化抗LBPA抗体6C4の結合の競合。(G)マウス単球に対する、αLBPA 6C4とαEPCR 1682の結合の競合。(H)EPCRC/S単球におけるaPL HL5Bシグナル伝達に対するLBPA、カルジオリピン(CL)、及びホスファチジルセリン(PS)(10 μM)の効果。3時間後のTNF誘導を示す;平均±SD、n=6。(I)精製したマウス又はヒトsEPCRのLBPAローディング、これは天然ゲル上での移動がより速いことにより裏付けられる。(J)aPL HL5Bと精製したヒトsEPCR又はsEPCR-LBPAとの結合を表面プラズモン共鳴で分析。明らかな協同的結合がなかったため、親和性の計算は、一価結合モデルに基づくものであった。
図3-2】同上
図3-3】同上
図4-1】aPL相互作用に対するEPCR LBPAローディングの効果を示す図である。(A)マウス単球への結合に対する、LBPAをロードしたsEPCR又は未修飾sEPCRいずれかと、FITC標識化HL5B Fab'2断片又は対照との競合をフローサイトメトリーにより測定。(B)aPL HL5Bシグナル伝達の遮断において、LBPAをロードしたEPCRは、未修飾EPCRよりも強力な阻害剤である。(C)ヒトsEPCRのLBPAローディングは、マウス内皮細胞でのaPC産生に対するsEPCRの競合を変化させない。(D)対照CHO細胞及びマウスEPCR(mEPCR)を発現するCHO細胞に対するHL5Bの結合。細胞は未処理であったか、10 μMのLBPAとともに30分間プレインキュベートした、平均±SD、n=6。(E)マウスEPCRで形質移入したCHOに対する抗β2GPI aPL rJGG9又は対照IgGの結合を、蛍光マイクロプレートリーダーで測定、平均±SD、n=3。(F)マウス(mEPCR)又はヒト(hEPCR)で形質移入したCHO細胞に対するaPL HL5B、aPL HL7G、又は対照IgGの結合。細胞には、染色前に30分間、10 μMのLBPAをロードした。(G)未修飾又はLBPAロードのいずれかである精製sEPCRを様々な濃度で用いて15分間プレインキュベートした後の、LBPAロードしたマウスEPCRに対するaPL HL5B(左パネル)又はHL7G(右パネル)の結合;平均±SD、n=6。(H)HL5B及びHL7Gが引き起こしたPS露出の用量反応曲線を、アネキシン5表面染色により測定。
図4-2】同上
図4-3】同上
図5-1】aPLが細胞表面酸性スフィンゴミエリナーゼのEPCR-LBPA活性化及び血栓症を促進することを示す図である。(A)aPL介在型TF活性化、アネキシン5染色により測定されるPS露出、ROS産生及びTNFα誘導並びに(B)MM1細胞におけるaPL内部移行は、スフィンゴミエリナーゼ阻害剤デシプラミンにより遮断された。バー=5 μm。(C)MM1細胞におけるaPL誘導型ASM活性は、FXa、トロンビン、及びPAR1切断の阻害剤により遮断される。(D)Fab'2 aPL HL5Bを用いて30分間刺激した後のMM1細胞における表面ASM露出の生細胞撮影。バー=5 μm。(E)刺激されていない細胞ライセートにおけるASM活性は、sEPCR-LBPA(2.5 μM)の添加後、αEPCR 1682により遮断される。全てのASM活性アッセイについて:平均±SD、n=3、*p<0.0003;一元配置分散分析、ダネットの多重比較検定。(F)HL5B誘導型血栓症を、表示されるαEPCR抗体で処置されたWTマウスの血流制限された下大静脈で分析。(G、H)表示されるマウス系統又はWTマウスにおける、表示されるαEPCR存在下での、二重反応性aPL HL7Gによる血栓症誘導。(F~H)aPL誘導から3時間後の血栓寸法の定量;中央値、四分位範囲、及び範囲;n=6~11;*p<0.004;一元配置分散分析、ダネットの多重比較検定でαEPCR 1650と比較。(I、J)表示されるマウス系統における、aPL HL5B(I)による、又は年齢一致の16週齢ループス傾向MRL/lprマウス及びMRL対照マウスから単離したIgG(J)による、血栓症誘導。aPL誘導から3時間後の血栓寸法の定量;中央値、四分位範囲、及び範囲;(I)n=6~10;*p=0.001;独立t検定。(J)n=5;*p=0.0025;二元配置分散分析、シダックの多重比較検定。
図5-2】同上
図5-3】同上
図5-4】同上
図6】aPLが細胞表面酸性スフィンゴミエリナーゼのEPCR-LBPA活性化を促進することを示す図である。(A)表示される阻害剤を用いてaPL HL5Bを15分間刺激した後のWT CD115+脾臓単球によるASM活性化の誘導。(B)EPCRC/S細胞のLBPA(10 μM)ローディングは、HL5Bで刺激したCD115+単球におけるASM活性化を可能にした。(C)aPL HL5Bは、TfpiΔK1細胞においてASMを活性化しなかった。しかし、WT細胞及びTfpiΔK1細胞におけるASMのトロンビン(1 U/ml)活性化は、αEPCR 1682により遮断されたが、αEPCR 1650による遮断はされなかった。
図7】aPL-EPCRシグナル伝達が胎児死亡を促進することを示す図である。(A)HL5Bを用いて2時間後のTNFα mRNA誘導は、Alix欠損栄養芽細胞において阻止される;平均±SD、n=6、*p<0.0001;正規分布についてシャピロ・ウィルク検定後にt検定。(B、C)LBPAローディングあり又はなしで、HL5B(B)又はトロンビン(C)を用いて10分間刺激後のスクランブルした対照JAR又はALIX-/-細胞で行った、ASM及びEPCRの近接ライゲーションアッセイ(PLA)。バー=25 μm。(D)ALIX欠損JAR細胞におけるaPL内部移行及びEPCRC/S単球におけるシグナル伝達(E)は、10 μMのLBPA(S、R)を添加することにより回復したが、他のリン脂質では回復しなかった。(F)8日目及び12日目にaPL HL5Bを注射した後、交尾後15.5日目に妊娠喪失を点数化した。*p<0.02;一元配置分散分析、ダネットの多重比較検定。(G)aPLシグナル伝達が血栓症又は妊娠合併症を招くことの概略図。
図8】栄養芽細胞におけるaPLシグナル伝達にEPCR-LPBAが必要であることを示す図である。(A)ALIX欠損JAR細胞のWB分析。(B)EPCRを発現するALIXノックダウン栄養芽(JAR)細胞におけるLBPA表面発現の減少。FITC標識したαEPCR又はαLBPA抗体を用いて細胞を染色し、マイクロプレート蛍光光度計を用いて抗体表面結合を検出した。(C)トロンビン阻害剤ヒルジンあり又はなしで、トロンビン及びHL5Bを用いて10分間刺激後のスクランブルした対照JAR細胞で行った、ASM及びEPCRの近接ライゲーションアッセイ(PLA)。バー=25 μm。
図9】aPLインターフェロンシグナル伝達にも脂質反応性aPLを産生するB細胞の増殖にもEPCRが必要であることを示す図である。(A)EPCRC/S又はWT単球において、LBPA添加あり又はなしで、HL5B、HL7G、又はLPS(100 ng/ml)を用いて1時間刺激した後のGbp2 mRNA誘導。(B)表示されるEPCRに対する抗体の存在下、MRL/lprループス傾向マウス又は対照MRLマウスから単離したIgGを用いて、WT単球を1時間刺激した。(C)TLR7/8アゴニストR848及びaPL HL5Bに加えて表示されるヒトEPCRに対する抗体の存在下、ヒト単球由来DCをB細胞と共培養した。10日後、抗カルジオリピン力価を特定した。(D~F)表示されるマウス系統から単離した脾臓形質細胞様樹状細胞(pDC)及びB細胞の共培養物を、10日間、Tlr7アゴニストR848及びaPL HL5Bとともに共培養し、続いて抗カルジオリピン力価を特定した。IFNR-/-、I型インターフェロン受容体欠損マウス。
図10-1】EPCRシグナル伝達がin vivoでaPL拡大を駆動することを示す図である。(A、B)表示される遺伝子型のマウスを、aPL HL5B又はアイソタイプの一致する対照IgGで免疫化し、表示される時点で血清抗カルジオリピン力価を特定した。(C)負に荷電したリポソームと反応性である細胞は、aPL HL5Bで免疫化したマウスでのみ検出され、アイソタイプの一致するIgGの場合は検出されなかった。EPCR-LBPAは、これらCD19+CD5+CD43+CD27+記憶型B1a細胞との結合に対してリボソームと競合したが、EPCRは競合しなかった。(D)EPCRWTマウス及びEPCRC/Sマウスにおいて、ヒトβ2GPIを用いた免疫化は、ヒトβ2GPIに対して同様な高力価IgG抗体反応を誘導した。(E)LBPAに対する抗体価は、EPCRWTにおいてのみ検出され、マウスプロトロンビンに対する抗体価は検出されず、また、ヒトβ2GPIを用いて5回免疫化した後のEPCRC/Sマウスでは検出されなかった。(F)ヒトβ2GPI免疫化EPCRWT由来のIgGは、単球TF活性及び単球における炎症促進性シグナル伝達を誘導したが、EPCRマウスでは誘導されなかった。
図10-2】同上
図11-1】自己免疫及びエリテマトーデスの例示状況におけるEPCR-LBPA経路への介入の治療関連性を示す図である。(A)MRL-Faslprループス傾向マウスを、4週齢の時点(0日目)で、表示されるαEPCR抗体を用いて処置し、表示される時点で血清の抗カルジオリピン力価を特定した;n=5、*P=0.03;**P<0.0001;二元配置分散分析、シダックの多重比較検定。(B)αEPCR 1650処置及びαEPCR-LBPA 1682処置したMRL-Faslprマウスで最終用量から2週間後に、又は6週齢MRL/MpJ対照マウス又はMRL-Faslprマウスで、二本鎖(ds)DNAに対する抗体を測定した;n=4~5、*P<0.0001。(C)αEPCR処置したMRL-Faslprマウスの免疫細胞浸潤;n=5、*P<0.025。(D)αEPCR処置したMRL-Faslprマウスの腎臓病態スコア;n=5、*P=0.0317;マン・ホイットニーのU検定。
図11-2】同上
図12-1】自己免疫疾患の発症に、EPCR-LBPAが必要であることを示す図である。(A)MRL/MpJ対照マウス由来及びαEPCR 1650又はαEPCR-LBPA 1682で処置したMRL-Faslprマウス由来の精製IgG(40 μg/ml)の、固定化LBPA又はカルジオリピンとの反応性;n=6~7、*P<0.0001、対照であるαEPCR 1650処置したマウスからの差;二元配置分散分析、シダックの多重比較検定。(B)非阻害性αEPCR 1650又は阻害性αEPCR-LBPA 1682で処置したMRL-FaslprマウスにおけるCD45+/F4/80+免疫細胞の腎臓への浸潤;n=5~7、*=0.024。(C)MRL-Faslprマウスの腎臓におけるF4/80+細胞の表現型を、サイトカイン染色により特定した。(D)MRL/MpJ対照マウス、及び4週齢の時点から6週間表示される抗体で処置されたMRL-Faslprマウスのアルブミン尿。
図12-2】同上
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下において、本発明の構成要素を説明する。これらの構成要素は、具体的実施形態とともに列挙されるが、当然のことながら、これらは任意の様式で及び任意の数で組み合わせることにより更なる実施形態を形成することができる。様々に記載される例及び好適な実施形態は、本発明を、その明白に記載される実施形態のみに限定するとみなされるべきではない。この説明は、明白に記載される実施形態を2つ以上組み合わせた実施形態又は1つ以上の明白に記載される実施形態と任意の数の開示される及び/又は好適な構成要素とを組み合わせた実施形態を、支持及び包含すると理解されるべきである。そのうえさらに、本出願中において記載される全ての構成要素のあらゆる順列及び組み合わせは、文脈で特に示されない限り、本出願の記載により開示されているとみなされるべきである。
【0028】
上に記載のとおり、第1の態様において、本発明は、対象が自己免疫疾患に罹患しているかどうかを判定する方法であって、上記対象から得られた生体試料中の抗リン脂質抗体(aPL)と内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)又はそのLBPA結合断片に結合したリゾビスホスファチジン酸(LBPA)との結合を検出することを含み、aPLと内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)又はそのLBPA結合断片に結合した上記リゾビスホスファチジン酸(LBPA)との上記結合は、上記対象における自己免疫疾患の存在を検出する、方法に関する。
【0029】
「LBPA結合断片」は、本明細書中において使用される場合、内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)の一部又は断片であって、上記LBPA結合断片が依然として、好ましくは、リゾビスホスファチジン酸(LBPA)と結合することができるようになっているもの、すなわち内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)の受容体親和性が上記LBPA結合断片に維持されているものを意味するものとする。同じく含まれるのは、そのような結合ドメインの構造的模倣物である。好ましくは、LBPA結合断片の全部又は一部は、適切な発現系において組換えにより産生される、又は化学合成により生成される。
【0030】
APSは、多くの患者において自己免疫の唯一の発現であるが(原発性APS)、APSは、他の自己免疫疾患の状況においても、特に全身性エリテマトーデス(SLE)において発症する(続発性APS)。すなわち、本発明の実施形態として好適であるのは、自己免疫疾患が、抗リン脂質症候群、特に原発性又は続発性APSである場合である。更なる自己免疫疾患は、原発性シェーグレン症候群、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、及びループス腎炎から選択されるが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書中において使用される場合、「抗リン脂質抗体(aPL)」という用語は、負に荷電したリン脂質に一般的に結合する自己抗体であり、抗原としてカルジオリピン(CL)が挙げられる。同じく含まれるのは、こうした抗体の抗原結合断片である(更なる説明についても以下を参照)。
【0032】
本明細書中において使用される場合、EPCR若しくはそのLBPA結合断片に結合した上記LBPAに対してaPLが「結合する」、又はEPCR若しくはそのLBPA結合断片にLBPAが結合する、又は本発明の状況における分子間の更なる分子間結合という用語は、非共有結合相互作用に基づくものである。これらの「非共有結合」相互作用は、電子対を共有しない原子間の化学的相互作用を示す。非共有結合相互作用は、水素結合、ファン・デル・ワールス相互作用、疎水的相互作用、及び静電相互作用に分類される。上記結合パートナーのそれぞれの間に結合が存在することは、上記結合パートナー間の具体的な結合の個々の相互作用に基づいて、「結合アッセイ」を用いて精査することになる。当業者に既知である適切な結合アッセイは複数存在し、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)等がある。
【0033】
内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)又はそのLBPA結合断片に結合した上記リゾビスホスファチジン酸(LBPA)が、好ましくは直接又は間接的に、固形担体材料に固定されている本発明の実施形態が更に好ましい。
【0034】
本明細書中において使用される場合、「直接」固定されたという用語は、単離された可溶性内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)又は単離された可溶性LBPA結合断片の固定を意味し、この場合、リゾビスホスファチジン酸(LBPA)は、この内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)又は上記LBPA結合断片に結合し、上記内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)又は上記LBPA結合断片は、固形担体材料に、例えば、光化学法を介して、共有結合で直接固定されている。固形担体材料上に生体分子を共有結合で、平行に及び方向を定めて固定する目的で、いわゆるフォトリンカーが使用可能であり、フォトリンカーは、内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)又は上記LBPA結合断片と結合している。光反応は、UV照射により引き起こされ、その場合、生体分子の光分解を回避する目的で、300 nm超の波長範囲を使用しなければならない。フォトリンカーは、光誘導型ラジカル反応の基質と反応し、内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)又は上記LBPA結合断片は、上記固形担体材料に直接固定される。
【0035】
「間接的に」固定されたという用語は、内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)若しくはLBPA結合断片を発現する細胞、又は内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)若しくはLBPA結合断片を細胞表面に提示する細胞の一部を、固形担体材料に固定することを意味し、この場合、リゾビスホスファチジン酸(LBPA)は、内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)若しくはLBPA結合断片に既に結合しているか、又は固定された細胞若しくはその一部の表面を介してリゾビスホスファチジン酸(LBPA)が結合した内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)若しくはLBPA結合断片が提供されるように細胞培養物上清に添加されるかのいずれかであり、この場合、細胞又はその一部は、固形担体材料上に固定されている。本発明の文脈で使用される「細胞」という用語は、内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)又はLBPA結合断片を発現することができる真核生物細胞を意味する。したがって、内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)をコードするPROCR遺伝子又はLBPA結合断片をコードする核酸は、細胞中に既に存在することが可能であるか、又は細胞にその核酸若しくは核酸を含むベクターで遺伝子導入することが可能であるかのいずれかである。「真核生物」という用語は、酵母菌細胞、高等植物細胞、昆虫細胞、及び哺乳類細胞を含む。いったん核酸又はベクターが相当する細胞に遺伝子導入されると、その細胞は、核酸又はベクターの高度発現に適切な条件下に維持される。
【0036】
「固形担体材料」という用語は、化学的に不活性であり、内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)又はLBPA結合断片を固形支持材料に直接又は間接的に固定することを可能にする任意の固形支持材料を示すものとする。大面積固定化は、非常に多孔質である材料を用いることで達成可能である。そのうえさらに、担体は、本発明の文脈において、使用される物質が流入及び流出することを可能にするものでなければならない。適切な担体は、複数知られている。固形担体材料は、例えば、ガラス、アガロース、重合体、又は金属から選択することができるが、これらに限定されない。
【0037】
第2の態様において、本発明は、自己免疫疾患における内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)機能の阻害剤であって、それでいて好ましくは凝血におけるEPCRの調節機能と干渉しない阻害剤を同定する方法であって、EPCRタンパク質又はそのリゾビスホスファチジン酸(LBPA)結合断片を含む生体試料を用意することと、阻害剤候補を、上記試料と接触させることと、上記阻害剤候補の存在下又は不在下で、LBPAと上記EPCRタンパク質又はその上記LBPA結合断片との結合を試験することと、試験したとおりの上記LBPA結合に基づき、上記阻害剤候補を同定することとを含む、方法に関する。したがって、このアッセイは、LBPAとEPCRタンパク質の間の結合の阻害剤を同定することを目指すものである。
【0038】
第3の態様において、本発明は、自己免疫疾患における内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)機能の阻害剤であって、凝血におけるEPCRの調節機能と干渉しないものを同定する方法であって、EPCRタンパク質又はそのリゾビスホスファチジン酸(LBPA)結合断片を含む生体試料を用意することと、LBPAを上記EPCRタンパク質又はその上記LBPA結合断片と結合させてEPCR-LBPA複合体を形成させることと、阻害剤候補を、上記試料と接触させることと、上記阻害剤候補の存在下又は不在下で、抗リン脂質抗体(aPL)の結合又は細胞機能を試験することと、試験したとおりの上記aPL結合又は細胞効果/機能との干渉に基づき、上記阻害剤候補を同定することとを含む、方法に関する。したがって、このアッセイは、LBPA/EPCRタンパク質複合体とaPLの間の結合の阻害剤、並びに上記複合体及びaPLが関与するシグナル伝達経路に干渉する「全般的」阻害剤を同定することを目指すものである。
【0039】
上記のとおりの「結合する」に加えて、阻害剤候補は、生体試料に存在する無傷細胞内の「細胞機能」を介して同定することも可能である。「細胞機能」は、本発明の文脈において使用される場合、生体試料に存在する上記細胞におけるインターフェロン誘導型遺伝子のタンパク質発現の、阻害剤候補の有無による変化に基づく。例えば、阻害性結合パートナー及び非阻害性結合パートナーは両方とも、LBPA-EPCR複合体、EPCR、又はaPLに結合することができる。阻害性結合パートナー、すなわち阻害剤候補の結合は、aPL誘導型インターフェロン反応を阻止するが、非阻害性結合パートナーの結合は、aPL誘導型インターフェロン反応を改変しない。次いで、インターフェロン反応は、aPL産生B細胞の増殖及びインターフェロン誘導型遺伝子の発現を招く。インターフェロン誘導型遺伝子には、IRF8、GBP2、GBP6が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
EPCR、断片、LBPA、上記阻害剤候補、及び/又はaPLのうち少なくとも1種は、適切に標識されている及び/又は固定されている、本発明に記載の方法の実施形態が好ましい。
【0041】
「適切に標識された」という用語は、本明細書中において使用される場合、EPCR、断片、LBPA、上記阻害剤候補、及び/又はaPLのうち少なくとも1種が、非タンパク質分子、例えば、核酸、糖類等の追加マーカー、又は放射標識用若しくは蛍光標識用マーカーを有し得ることを意味する。標識は、検出可能なシグナルの生成に直接又は間接的いずれかで関与する。
【0042】
本発明の別の好適な実施形態において、本方法は、同定されたとおりの上記阻害剤候補を、凝血レギュレーターとしての内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)機能に干渉しない、自己免疫疾患のEPCR機能の阻害剤であるかどうかについて試験する工程を更に含む。本発明者らは、aPLがEPCR-LBPA複合体に結合することが、複合体の内部移行及び病原性aPLシグナル伝達を招くことを示した。LBPA不在下でもEPCRはそのアゴニストタンパク質Cに結合することから、EPCRの凝血レギュレーターとしての重要な機能は維持され、この場合、タンパク質CとEPCRの結合は、同定されたとおりの阻害剤により阻止されない。この試験は、系のその他の構成要素、LBPA、及び/又はaPLもまた含むことができる。
【0043】
本発明の文脈において「適切に試験する」という用語を用いて、結合についての適切な試験と細胞機能についての適切な試験とを区別する。結合についての適切な試験とは、使用した標識に応じて適切な検出系を用いて、生成した検出可能なシグナルを検出し、阻害剤候補がLBPAとEPCR若しくはLBPA結合断片との結合を阻害し得るかどうか、又は阻害剤候補がaPLとLBPA-EPCR複合体との結合を阻害し得るかどうか判定することを意味する。例えば、適切な試験にFRETプローブが使用可能であり、この場合、一方の結合パートナーをドナー蛍光色素で標識し、他方の結合パートナーをアクセプター蛍光色素で標識する。放射される蛍光シグナルは、同定される阻害剤候補が関与する結合パートナーの結合を阻害したかどうかの非常に特異的な検出に利用可能である。他にも多くの検出系が従来技術で既知である。細胞機能についての適切な試験は、aPL誘導型インターフェロン反応の検出又はB細胞増殖により発現したaPLの検出を意味する。検出は、転写後又は翻訳後レベルいずれかで、mRNA又はタンパク質を定量することにより行うことができる。当業者なら、mRNA及びタンパク質分析法がわかる。
【0044】
上記阻害剤候補は、小分子、タンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合断片、酵素、及びアプタマーから選択される、本発明に記載の方法の実施形態が更に好ましい。
【0045】
「小分子」という用語は、本明細書中において使用される場合、約900ダルトンを超えない低分子量の物質のクラスを記載する。小分子は、その寸法の小ささ故に、部分的に細胞に進入することができる。小分子は、化学合成されたものが可能である。この用語は、極めて一様ではない物質群を包含する。小分子は、豊富な生体機能を有し、例えば、シグナル分子等がある。小分子は、天然(例えば、二次代謝産物)起源のものも、人工(例えば抗ウイルス性)起源のものも可能である。一部の小分子は、血液脳関門を横断することができる。
【0046】
「タンパク質」という用語は、ペプチド結合により結合したアミノ酸単量体で構成される重合体を示すのに使用される。この用語は、アミノ酸分子鎖を示すのであって、特定長の生成物を示すのではなく、そして必要であれば、in vivo又はin vitroで、例えば、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、又はリン酸化により修飾可能である。約100アミノ酸長より短いアミノ酸鎖は、「ペプチド」と呼ばれる。「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書中において使用される場合、「ポリペプチド」の定義内に含まれる。「ペプチド結合」とは、2つのアミノ酸間の共有結合であり、一方のアミノ酸のα-アミノ基が他方のアミノ酸のα-カルボキシル基と結合している。全てのアミノ酸又はポリペプチド配列は、特に指定がない限り、アミノ末端(N末端)からカルボキシ末端(C末端)に向かって書かれる。
【0047】
「抗体(単数)」及び「抗体(複数)」は、免疫系の文脈において生じる抗原結合タンパク質を示す。「抗体」という用語は、本明細書中において称する場合、全抗体、全長抗体、及びそれらの任意の断片又は誘導体であって「抗原結合部分」若しくは「抗原結合領域」又はそれらの一本鎖が保持されているもの、例えば、リゾビスホスファチジン酸(LBPA)に特異的な抗体の結合ドメイン、内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)、LBPA結合断片、LBPA-EPCR複合体、又は抗リン脂質抗体(aPL)等を包含する。天然に生じる「抗体」(免疫グロブリン)とは、ジスルフィド結合で相互接続した少なくとも2本の重(H)鎖と、2本の軽(L)鎖とを含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書中において、略号VHで表す)及び重鎖定常領域で構成される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、又はイプシロンと分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEと定義する。重鎖定常領域は、3つのドメインであるCHI、CH2、及びCH3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中において、略号VLで表す)及び軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインであるCLで構成される。VH領域及びVL領域は、更に細分化して、相補性決定領域(CDR)と名付けられた超可変領域に分けることができ、CDRの間に、フレームワーク領域(FR)と名付けられたより保存的な領域が散在する。VH及びVLのそれぞれは、3つのCDR及び4つのFRで構成され、これらは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序で配列している:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖及び軽鎖は、2つの領域:Fab(断片、抗原結合)領域、別名可変(Fv)領域、及びFc(断片、結晶性)領域を形成する。重鎖及び軽鎖の可変領域(Fv)は、抗原と相互作用する結合ドメインを有する。抗体の定常(Fc)領域は、宿主組織又は因子との結合に介在する場合があり、宿主組織又は因子として、免疫系の各種細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)が挙げられる。「Fc」という用語は、本明細書中において使用される場合、抗体のFc領域に由来する天然型及び変異型のポリペプチドを含む。二量体化を促進するヒンジ領域を有するそのようなポリペプチドの切断型も含まれる。Fc部分(及びそれらから形成されるオリゴマー)を含む融合タンパク質は、タンパク質A又はタンパク質Gカラムを通じたアフィニティークロマトグラフィーにより手軽に精製されるという利点を提供する。1つの適切なFcポリペプチドは、ヒトIgG1抗体に由来する。
【0048】
抗体等の抗原結合タンパク質の断片、誘導体、又は類似体は、当該技術分野で既知である技法を用いて容易に調製することができる。「抗原結合断片」という用語は、本明細書中において使用される場合、対応する全長抗原結合タンパク質と比べた場合に、アミノ末端及び/又はカルボキシ末端に欠失があるポリペプチドを示す。「抗原結合断片」という用語に包含される抗原結合タンパク質の断片例として、以下が挙げられる:Fab断片;VL、VH、CL、及びCHIドメインからなる一価断片;F(ab')2断片;ヒンジ領域でジスルフィド架橋により結合した2つのFab断片を含む二価断片;VH及びCHIドメインからなるFd断片;抗体の単一の腕のVL及びVHドメインからなるFv断片;VHドメインからなるdAb断片;単離された相補性決定領域(CDR);並びに一本鎖可変断片(scFv)。抗原結合タンパク質又はその断片若しくは誘導体又はその融合タンパク質は、1つ以上の結合部位を有する場合がある。結合部位が2つ以上存在する場合、結合部位は、お互いに同一である場合もあれば、異なっている場合もある。例えば、天然に生じるヒト免疫グロブリンは、典型的には、同一の結合部位を2つ有するが、一方で「二重特異性抗体」又は「二官能性抗体」は、2つの異なる結合部位を有する。二重特異性抗体は、本発明の好適な分子であり、当業者に既知である任意の二重特異性様式、例えば、bite抗体又はダイアボディから選択することができる。抗原結合タンパク質の「誘導体」とは、化学修飾された、例えば、別の化学部分(例えば、ポリエチレングリコール又はアルブミン等、例えば、ヒト血清アルブミン)との結合、リン酸化、及び/又はグリコシル化により修飾された、ポリペプチド(例えば、抗体)である。
【0049】
「scFv」とは、組換え法を用い、Fv断片の2つのドメインであるVL及びVHを一本のタンパク質鎖にすることができる合成リンカーで、VLとVHを結合することにより操作可能である一価分子である。そのような一本鎖抗原結合ペプチドは、「抗原結合タンパク質」という用語内に包含されることも意図する。これらの抗体断片は、当業者に既知である従来技法を用いて得られ、断片は、インタクト抗体と同じ様式で、有用性についてスクリーニングされる。
【0050】
抗体等の抗原結合タンパク質の「抗原結合断片」若しくは「抗原結合領域」という用語、又は、文法上同様な表現は、本明細書中において使用される場合、抗原特異性を付与するその領域又は部分を示す。したがって、抗原結合タンパク質の断片は、抗原(例えば、HLA-ペプチド複合体)に特異的に結合する能力を維持した抗原結合タンパク質の1つ以上の断片を含む。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片により発揮可能であることが示されている。
【0051】
「酵素」という用語は、本明細書中において使用される場合、触媒活性を持つタンパク質を示す。
【0052】
本明細書中において使用される場合、「アプタマー」という用語は、特定分子に結合可能な短い一本鎖DNA又はRNAオリゴヌクレオチド(25~70の塩基)を意味する。アプタマーは、一般に、RNA分子、一本鎖DNA分子、修飾RNA分子、又は修飾DNA分子を含む。アプタマーの調製は、当該技術分野で既知であり、とりわけ、結合側を同定するためにコンビナトリアルRNAライブラリーの使用が関与する場合がある。
【0053】
上記対象が、哺乳類、好ましくはヒトである、本発明に記載の方法の実施形態が好ましい。
【0054】
上記生体試料が、血液、血清、及び唾液を含む体液、並びに組織、臓器、又は細胞型血液試料、血液リンパ球の試料、並びにそれらの画分から選択される、本発明に記載の方法の実施形態が更に好ましい。
【0055】
第4の態様において、本発明は、医薬組成物を製造する方法であって、本明細書に記載の阻害剤候補又は阻害剤を同定する工程と、上記阻害剤候補又は阻害剤を適切に配合して医薬組成物にする工程とを含む、方法に関する。
【0056】
本明細書中において使用される場合、「医薬組成物」という用語は、その中に含まれる活性成分の生物活性が有効であることを許容するような形態にあり、その組成物が投与される可能性のある対象に対して許容できない毒性を持つ追加要素を含有しない、「適切な製剤」を示す。本発明の医薬組成物は、当該技術分野で既知である様々な方法により投与可能である。当業者なら分かるとおり、投与の経路及び/又は様式は、所望の結果に応じて変化することになる。或る特定の投与経路で本発明による結合化合物を投与するのに、その化合物の不活性化を予防する材料でその化合物を被覆する、又はそのような材料とともにその化合物を投与することが必要である場合がある。例えば、化合物は、適切なキャリア、例えば、リポソーム等、又は希釈剤に入れられて対象に投与される場合がある。薬学上許容される希釈剤として、生理食塩水及び水性緩衝液が挙げられる。
【0057】
「適切なキャリア」は、医薬配合物中の活性成分以外の成分を示し、これは、対象にとって無毒である。適切なキャリアとして、生理学的に適合性のあるありとあらゆる溶媒、分散媒、被覆剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張化剤、並びに吸収遅延剤等が挙げられる。投与は、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄、又は表皮投与(例えば、注射又は点滴による)が可能である。微生物の存在が予防されていることは、滅菌手順(既出)、並びに各種抗細菌剤及び抗真菌剤の使用の両方により確実にすることができ、抗細菌剤及び抗真菌剤としては、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等がある。等張化剤、例えば、糖、塩化ナトリウム等を組成物中に含ませることもまた望ましい場合がある。また、注射剤形の長期吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン等の吸収遅延剤を使用することにより達成可能である。
【0058】
選択した投与経路に関係なく、本発明の化合物(複数の場合もある)、これは適切な水和形で使用される場合がある、及び/又は本発明の医薬組成物は、当業者に既知の従来法により、薬学上許容される剤形へと製剤化される。本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬レベルは、変化する可能性がある。選択される投薬レベルは、様々な薬物動態要因に依存することになり、そのような要因として、採用した本発明の特定組成物の活性、投与経路、投与の時点、採用した特定化合物の排出速度、治療期間、採用した特定組成物と併用される他の薬物、化合物、及び/又は材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全体的な健康状態、及び既往歴、並びに医薬分野で既知の同様な要因が挙げられる。
【0059】
組成物は、その組成物がシリンジにより送達可能である限りにおいて、滅菌されていなければならず、流体でなければならない。多くの場合、等張化剤、例えば、糖類、マンニトール又はソルビトール等のポリアルコール、及び塩化ナトリウム等が、組成物に含まれている。
【0060】
本発明の組成物は、局所で又は全身に投与することができる。投与は、一般に、非経口で、例えば、静脈内投与になる。非経口投与用製剤として、滅菌の水性又は非水性の液剤、懸濁剤、及び乳剤が挙げられる。非水性溶剤の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、及びオレイン酸エチル等の注射用有機エステルがある。水性キャリアとして、水、アルコール性/水性の溶液、乳濁液、又は懸濁液が挙げられ、生理食塩水及び緩衝化媒体が含まれる。非経口ビヒクルとして、塩化ナトリウム溶液、ブドウ糖加リンゲル液、ブドウ糖及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、又は不揮発性油が挙げられる。静脈内ビヒクルとして、流体及び栄養分補充剤、電解質補充剤(例えばブドウ糖加リンゲル液に基づくもの)等が挙げられる。保存剤及び他の添加剤も、存在可能であり、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤、及び不活性ガス等がある。
【0061】
第5の態様において、本発明は、対象において、好ましくはEPCRの血管保護機能への干渉を回避しながら、自己免疫疾患の予防及び/又は治療に使用される、同定されるとおりの阻害剤又は本明細書中において記載されるとおりの医薬組成物に関する。
【0062】
本明細書中において使用される場合、「予防する」又は「予防」という用語は、対象の自己免疫疾患を発症する素因又はリスクを、どれだけわずかであろうとも、低減することに注意を向けた、上記対象に、上記化合物(複数の場合もある)を、好ましくは予防的有効量で、投与することを含み、自己免疫疾患は、例えば、抗リン脂質症候群、特に原発性又は続発性APS、原発性シェーグレン症候群、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、及びループス腎炎等である。予防の場合、対象は、好ましくは、自己免疫疾患を発症するリスクがある又は発症しやすい対象であり、自己免疫疾患は、例えば、抗リン脂質症候群、特に原発性又は続発性APS、原発性シェーグレン症候群、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、及びループス腎炎等である。
【0063】
「治療する」又は「治療」という用語は、本明細書中において使用される場合、自己免疫疾患の疾患又は進行を緩和するため、上記対象に、上記化合物(複数の場合もある)を、好ましくは治療上有効量で、投与することを含み、自己免疫疾患は、例えば、抗リン脂質症候群、特に原発性又は続発性APS、原発性シェーグレン症候群、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、及びループス腎炎等である。
【0064】
本明細書に記載の使用のための阻害剤又は医薬組成物が、小分子、ペプチド、抗体又はその抗原結合断片、酵素、及びアプタマーから選択される、本発明の実施形態が好ましい。
【0065】
上記自己免疫疾患が、抗リン脂質症候群(APS)、特に原発性又は続発性APS、原発性シェーグレン症候群、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、及びループス腎炎である実施形態が更に好ましい。
【0066】
第6の態様において、本発明は、対象における、自己免疫疾患、例えば、抗リン脂質症候群、特に原発性又は続発性APS、原発性シェーグレン症候群、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、及びループス腎炎等を治療及び/又は予防する方法であって、そのような治療及び/又は予防を必要としている上記対象に、同定されるとおりの及び本明細書に記載の阻害剤、又は本明細書に記載の医薬組成物を有効量で投与することを含む、方法に関する。
【0067】
本明細書中において使用される「投与する」又は「投与」という用語は、腸内投与及び外用投与、通常は注射によるものを包含し、そのような投与として、特に制限なく、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、及び胸骨内の注射及び点滴が挙げられる。
【0068】
「有効量」とは、本明細書中において使用される場合、対象の炎症状態を正常化する、本明細書中において記載されるとおりの化合物(複数の場合もある)又は医薬組成物(複数の場合もある)の量である。この量は、対象にとって毒性となることなく、疾患及び/又は病態で見られるとおりの症状を軽減する。投薬レジメンは、担当医及び臨床要因により決定されることになる。医薬分野で既知であるとおり、どの患者についてもその患者に対する投薬量は、多くの要因に依存し、そのような要因として、その患者の大きさ、体表面積、年齢、投与される特定化合物、性別、投与の時点及び経路、全体的な健康、並びに同時に投与される他の薬物が挙げられる。典型的な用量は、例えば、0.001 μg~1000 μgの範囲(又は、この範囲で発現するための若しくは発現を阻害するための核酸の量)にあることが可能である。しかしながら、この例示範囲より下又は上にある用量も、特に上記要因を考慮して企図される。
【0069】
「(本)発明の」、「本発明に従う」、「本発明による」等の用語は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載及び/又は特許請求される本発明の全ての態様及び実施形態を指すことを意図したものである。
【0070】
本発明の文脈において、「約」及び「およそ」という用語は、問題となる特徴の技術的効果が依然として確実であると当業者に理解される正確さの区間を表す。この用語は通例、指定の数値からの±20%、±15%、±10%、例えば±5%の偏差を示す。当業者に理解されるように、所与の技術的効果についてのこのような具体的な数値の偏差は、技術的効果の性質に左右される。例えば、自然の又は生物学的な技術的効果は概して、人為的又は工学的な技術的効果についての偏差よりも大きなかかる偏差を有し得る。当業者に理解されるように、所与の技術的効果についてのこのような具体的な数値の偏差は、技術的効果の性質に左右される。例えば、自然の又は生物学的な技術的効果は概して、人為的又は工学的な技術的効果についての偏差よりも大きなかかる偏差を有し得る。単数名詞に言及する際に不定冠詞又は定冠詞、例えば「a」、「an」又は「the」が用いられる場合、何か他の具体的な指定がない限り、複数のその名詞も含まれる。
【0071】
特定の問題又は環境への本発明の教示の適用、及び本発明の変形形態又はその付加的な特徴(更なる態様及び実施形態等)の包含は、本明細書に含まれる教示を考慮すれば、当業者の能力の範囲内であることを理解すべきである。
【0072】
本明細書に引用される全ての参照文献、特許及び刊行物は、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【実施例
【0073】
ここで、本発明の或る特定の態様及び実施形態を例として、本明細書に提示される説明、図面及び表を参照して説明する。本発明の方法、使用及び他の態様のかかる例は、単に代表的なものであり、本発明の範囲をかかる代表的な例にのみ限定するとみなすべきではない。
【0074】
実施例1:aPLのEPCR依存性シグナル伝達
凝血開始剤TF-FVIIaにより生成したFXaは、LPS誘導型インターフェロン(IFN)反応に特に必要とされるプロテアーゼ活性化受容体(PAR)2切断のため、内皮細胞タンパク質C受容体(EPCR)を利用する(15、16)。この経路と合致して、EPCRに対する阻害性(αEPCR 1560)抗体は、インターフェロン調節型宿主防御遺伝子のLPS誘導を遮断したが、非阻害性(αEPCR 1562)抗体は誘導せず(図2A)、また、脾臓由来単球において炎症促進性TNFαは誘導されなかった(図1A)。予期せぬことに、活動性梅毒である患者由来の脂質反応性IgG画分(図1A)及び十分に特性決定された脂質反応性モノクローナルaPLであってβ2GPI交差反応性を持つもの(HL5B)又は持たないもの(HL7G)(図1B)は、インターフェロン調節型遺伝子を誘導しただけではなく、EPCRに依存するTNFαを誘導した。aPLは、Tlr7シグナル伝達の増幅を通じてTNFαを促進するものの(9)、Tlr7アゴニストR848は、TNFαのみを上方制御し、インターフェロン調節型遺伝子を上方制御しなかった(図1B)。このことは、aPLが、宿主防御と関連した新規経路でEPCRと係合することを実証する。
【0075】
EPCR遮断は、ヒト単球において、凝血原反応及び炎症促進性aPL反応を同様に阻害した(図2B図2C)。機能遮断抗マウスEPCRは、広く確立されたaPL単球反応(図1D)、すなわちTF、Tnfa、及び活性酸素種(ROS)産生を消失させた。これらの産生は、EPCR-タンパク質C(PC)シグナル伝達(17)及びβ2GPI依存性aPL病態形成の既知の共受容体(12、13)であるLrp8とは無関係であった(図1D)。重要なことは、新規マウスモデルであるEPCRC/Sマウスにおいて、Serにノックイン型変異誘発することにより予想されるEPCR細胞内パルミトイル化アクセプターCys242の除去が、aPLシグナル伝達を阻止したことである。このことは、EPCRが、aPL病態において高度に特異的なシグナル伝達機能を有することを示す。
【0076】
APS患者の母集団で見られる診断反応性を代表する無作為に選択した患者のIgG画分(8、11)を分析した。β2GPI単独と反応性があるまれなaPL IgG(α-β2GPI;2/20患者)は、迅速な炎症促進性反応を誘導しなかったが、β2GPI交差反応性を持つ(モノクローナルaPL HL7Gに類似;7/20患者)又は持たない(モノクローナルaPL HL5Bに類似;11/20患者)脂質反応性aPL IgG(カルジオリピン反応性により定義される、α-CL)のシグナル伝達は、マウスEPCRC/S単球で(図2D)又はヒト栄養芽細胞で、阻害性αEPCRの存在下、顕著に減少した(図2E)。これらのデータは、患者のaPLの大部分が脂質反応性及びEPCR依存性シグナル伝達を保存していたことを示しただけでなく、自然免疫及び胚細胞におけるこのシグナル伝達機構の顕著な種間保存も示した。
【0077】
撮影により、aPL HL5Bが、EPCR欠損(EPCRlow)単球(18)にも、阻害性αEPCR 1560により遮断された細胞にも結合しなかったが、それに対して非阻害性αEPCR 1562は、結合もaPL内部移行も阻止しなかった(図1D)ことが実証された。対照的に、aPLは、EPCRC/S単球に結合したが、内部移行しなかった(図1D)。ヒト単球では、aPL HL5Bは、15分間の刺激後、細胞内で非阻害性αEPCRと共局在化したが、EPCRが同じaPL欠損補体結合のFab'2断片に係合されていた場合、表面結合のみが存在し、内部移行は存在しなかった(図1E)。補体は、aPL病態において役割を担っていることが知られており(8、19~21)、TFにおいてチオール-ジスルフィド交換及びタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)介在型立体構造変化を引き起こす。これは、TFの凝固活性を上昇させ(22)、ADPリボシル化因子(ARF)6インテグリン経路における凝血依存性TF-FVIIa輸送(23)がaPLエンドソーム炎症促進性シグナル伝達を開始することを可能にする(14)。補体、PDI、及びARF6、並びに凝血プロテアーゼFXa及びトロンビンの阻害は、TF-FVIIaを阻止しただけでなく、EPCR内部移行も阻止した(図1F)。このことは、EPCRが結合したaPLが、自然免疫防御補体及び凝血経路の共同作用に依存して、TF-FVIIa複合体と一緒に内部移行したことを示す。
【0078】
実施例2:エンドソームLBPAのEPCR表面提示
或る種のaPLは、抗凝血に干渉する(24)が、この特徴は、全ての脂質反応性プロトタイプaPLに共通するものではなかった(図3A)。PC活性化を阻害しなかった抗マウスEPCR抗体(図3A)のうち、aPL炎症促進性シグナル伝達を強力に阻害するまれな抗体であるαEPCR 1682(図2B)が同定された。aPL結合を阻害しない内部移行(図3C)は、αEPCR 1682が、凝血因子又はaPLとEPCRの結合とは無関係のaPL病態形成の中心経路を遮断したことを示す。
【0079】
驚いたことに、αEPCR 1682は、EPCRC/Sマウス由来の単球にて正常レベルで発現したEPCRを染色しなかった(図3D)。EPCRはFXaと相互作用すること(15)並びにFXaはTF経路阻害剤(TFPI)複合体の形成及び再利用に重要であること(25)から、これは合理的なことであった。なぜなら、EPCRC/Sマウスにおいて改変されたEPCR輸送は、TF-FVIIa-FXa-TFPI複合体形成を阻止し、したがって、αEPCR 1682結合に必要な立体構造変化を阻止したからである。TFPI欠損TfpiΔK1単球の表面に結合したFXaの撮影(14)は、この複合体が実際に、単球により合成されたTFPIに依存して形成されたこと、及びEPCRC/S細胞には存在しなかったことを示した。しかしながら、αEPCR 1682は、FXa-EPCR相互作用に必要なαEPCR 1682反応性をのぞいて、TfpiΔK1細胞を染色した(図3D)。
【0080】
EPCR機能は構造的に結合した脂質に依存するため(26、27)、脂質交換がEPCR抗体反応性に影響を及ぼすと仮定された。後期エンドソーム脂質(LBPA(リゾビスホスファチジン酸、又はビス(モノアシルグリセロール)ホスファート(BMP))は、内部移行後、aPLにより認識され(28)、EPCR及びaPLは、共通のエンドリソソーム区画を通じて輸送される(図1E)。LBPAがEPCRの構造的に結合した脂質と置き換わったことを支持するように、EPCRを発現する非透過処理細胞はαLBPA 6C4で染色されたが、EPCR欠損細胞も、シグナル伝達欠損EPCRC/S細胞も染色されなかった(図3E)。
【0081】
重要なことは、EPCRC/Sの培養培地にLBPAを単に添加するだけで、細胞表面αLBPA 6C4及びαEPCR 1682染色が回復し(図3E)、FXa表面局在化が促進された(図3D)が、EPCR欠損細胞では、そうはならなかったことである。また、αEPCR 1682は、αLBPA 6C4がマウス単球に結合するのを特異的に阻止した(図3F)。反対に、αLBPA 6C4がαEPCR 1682結合と競合することは、αEPCR 1682が、LBPAロードしたEPCRを認識したことを示した(図3G)。注目すべきことに、LBPAの補充のみが、EPCRC/S細胞のaPL炎症促進性シグナル伝達を回復させ、一般に推測されるaPLリガンドカルジオリピン(CL)の補充、又は負に荷電した凝血原ホスファチジルセリン(PS)の補充では、そうならなかった(図3H)。
【0082】
昆虫細胞で発現させたヒト又はマウス溶解性EPCR(sEPCR)の精製品(15)をLPBAに曝露させると、未変性ゲル上での移動度が顕著にシフトした再精製タンパク質が得られた。このことは、LBPAとの脂質交換を実証する(図3I)。精製ヒトsEPCRは、aPL HL5BとLBPAロードしたEPCRの緊密な結合を示したが、未修飾sEPCRでは、結合親和性を表面プラズモン共鳴で定量することはできなかった(図3J)。すなわち、EPCR-LBPAは、aPLにより認識される抗原標的である。
【0083】
競合実験から、LBPAロードしたsEPCRへのaPL HL5Bの高い親和性が裏付けられた(図4A図4B)が、LBPAローディングは、EPCRのPC活性化を阻害する効力を増大させなかった(図4C)。脂質反応性aPLのみが、LBPAをロードしたマウス又はヒトEPCRを認識し、β2GPI特異的aPLは認識しなかった(図4D及び図4E)。細胞結合アッセイ(図4F)、競合実験(図4G)、及び単球活性化読み取り(図4H)は、脂質選択的aPL HL5Bに比べて幾分高いβ2GPI交差反応性aPL HL7Gの親和性を示した。したがって、aPL進化中のタンパク質反応性の獲得は、病原性標的EPCR-LBPAの親和性成熟と適合性があるように思われる。この知見は、β2GPI交差反応性とAPS重篤度の臨床的相関を解釈する上で重要である可能性がある。
【0084】
実施例3:EPCR-LBPAは、aPL誘導型血栓症の標的である
αEPCR-LBPA 1682による表面脂質提示の遮断が、aPL結合を阻止することなくaPLシグナル伝達を阻害するのに十分である理由は、依然として不明であった。aPLは、酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)により増幅されるプロセスである(29)凝血原ホスファチジルセリンの露出を迅速に誘導したため(図4H)、ASMをデシプラミンで遮断したところ、ASMはaPL病原性シグナル伝達(図5A)及びaPL内部移行(図5B)に必要であると判断された。トロンビンをはじめとする様々なアゴニストが、ASM細胞表面移行を誘導する(30~32)。ヒト単核球細胞において、FXa及びトロンビン依存性PAR1切断に依存して、aPLは、15分以内に、ASM活性を最大まで刺激した(図5C)。しかしながら、ASM活性は、補体、PDI、又はARF6の阻害剤により遮断されなかった。このことは、ASM活性化が、凝血活性化だけを必要とし、TF-FVIIa内部移行は必要としなかったことを示す。このASM活性化経路は、マウスに保存されていた(図6A)。重要なことは、aPL HL5BのFab'2も、ASM活性を誘導し、細胞表面へのASMのトロンビン依存性出現を促進したことである(図5D)。このことは、ASM活性化が、aPL内部移行及びエンドソーム輸送に先行する初期事象であることを裏付ける。
【0085】
ASMは、活性にLBPAを必要とする(33)。ASM活性化は、aPLとEPCRの結合を阻止する抗体により阻止されただけでなく、αEPCR-LBPA 1682によっても阻止された(図6A)。一連の実験において、EPCR-LBPAは、細胞表面ASMを直接活性化したことが、更に示された。LBPAをEPCRC/Sに細胞外添加することで、aPLによるASM活性化が回復したが、EPCR欠損単球に添加しても回復しなかった(図6B)。ASM表面発現を誘導するトロンビン刺激は、αEPCR-LBPA 1682の細胞外添加により遮断されたASM活性化を引き起こすのに十分であった(図6C)。TfpiΔK1細胞は、LBPAロードしたEPCRを発現したが(図3D)、トロンビン生成を引き起こす表面FXaを欠いていた。これらの細胞におけるASM活性化は、aPLにより誘導されなかったが、EPCR-LBPAに依存してトロンビンにより誘導された(図6C)。刺激していない細胞の細胞ライセートに精製EPCR-LBPAを添加することも、効率的にASM活性化を誘導したが、未修飾EPCRではそうならず、この効果は、αEPCR-LBPA 1682により特異的に遮断された(図5E)。したがって、凝血誘導型PAR1シグナル伝達は、EPCR-LBPAによる細胞表面活性化のためASMを移行させる。その結果、表面脂質修飾のASM修飾が、エンドソーム輸送及びEPCRの結合したaPLのシグナル伝達に必要とされる。
【0086】
単球が血栓症を引き起こす(34)ことを考慮して、最初に、マウスモノクローナルαEPCR 1650及び1682の独自の性質を利用した。マウスモノクローナルαEPCR 1650及び1682は、aPL病原性シグナル伝達を異なって調節しながらも抗凝血PC経路との干渉がなくなっていた(図3A図3B)。血栓症は、αEPCR-LBPA 1682により顕著に減弱したが、非阻害性αEPCR 1650により減弱しなかった(図5F)。同様に、二重反応性aPL HL7GによるLrp8独立型血栓症誘導は、αEPCR-LBPA 1682により特異的に遮断された(図5G図5H)。
【0087】
重要なことは、aPL HL5Bによる血栓症誘導が、系統の一致するWT対照と比較した場合に、EPCRC/Sで顕著に減少したことである(図5I)。この知見の自己免疫病態に関するより広い意味を評価する目的で、16週齢の血栓形成促進性ループス傾向MRL-lprマウス(35)及び年齢の一致するループス不含MRL対照マウスから、IgG画分を単離した。病原性IgGによる血栓症誘導は、EPCRC/Sマウスに注射した場合、対照マウスから単離したIgGで見られるレベルまで反転した(図5J)。このことは、自己免疫疾患に関連した血栓症についての同定されたシグナル伝達標的の中心的役割を裏付ける。
【0088】
実施例4:胎児死亡におけるEPCR病原性シグナル伝達
ヒト栄養芽細胞におけるこの経路の重要性を、ALIXのノックダウン(図8A)により評価した。ALIXは、正常なリポソーム機能に必要である。ALIXノックダウンは、LBPAの細胞表面提示を減少させたが、EPCR発現は減少させず(図8B)、またaPL誘導型炎症促進性効果を消失させたが、TNFα誘導型炎症促進性効果は消失させなかった。しかしながら、細胞外LBPAを補充すると、aPLシグナル伝達が回復した(図7A)。ASMとEPCRとの直接相互作用の裏付けとして、近接ライゲーションアッセイ(PLA)は、トロンビン又はaPL Fab'2 HL5Bで刺激した後では、EPCRとASMは共局在化した(図8C)が、LBPAを添加しなかったヒルジン処理細胞又はALIX-/-細胞ではそうならなかった(図7B)ことを示した。また、ASMのトロンビン動員は、ALIX-/-細胞においてLBPA曝露後、EPCRとの近接ライゲーションの増加を示した(図7C)。したがって、EPCR-LBPAは、細胞表面ASMと直接相互作用して、その活性を刺激する。
【0089】
ヒトALIX-/-栄養芽細胞及びマウスEPCRC/S単球は、EPCRによる脂質提示の種間保存を比較する手段を提供した。S/R 18:1 LBPA及びR/R 18:1 LBPAの添加のみが、aPL HL5BとALIX-/-栄養芽細胞との結合(図7D)又はEPCRC/S単球におけるシグナル伝達(図7E)を回復させ、S/S 18:1 LBPA又はセミS/R LBPAではそうならなかった。したがって、ヒト及びマウスEPCRは、同じ選択性でLBPAを提示し、このことは、病原性aPLの並外れた種交差反応性を説明する。
【0090】
さらに、aPL誘導型妊娠喪失のマウスモデルにおいてEPCRの役割を分析した。EPCRは、胚性栄養芽細胞機能及び生存の維持に中心的な役割を果たしている(36)ものの、WT対照に比べてEPCRC/Sマウス又はEPCRlowマウスで胚損失が顕著になるということは見られなかった(図7F図7G)。しかしながら、EPCRシグナル伝達欠損マウスは、脂質反応性aPL HL5Bにより誘導される胎児死亡から保護された。これらの実験は、新たに同定されたaPL-EPCRシグナル伝達経路が、脂質反応性により誘導されるAPSの主要な病態、すなわち血栓症及び妊娠喪失、並びにin vivoでのβ2GPI交差反応性aPL(図7H)に極めて重要であることを示す。
【0091】
実施例5:aPL誘導型インターフェロンシグナル伝達による自己免疫の発生
さらに、脂質反応性aPLの標的として同定されたものが、自己免疫の発生の一因であるかどうか検討した。循環免疫細胞におけるインターフェロン反応の上方制御は、APSの発症と関連している(38、39)。脂質反応性aPLによるインターフェロン調節型遺伝子(例えばIRF8、GBP2、GBP6)の誘導は、EPCRC/S単球では消失したが、LPSではそうならず、またGBP2について示されるとおり、LBPA添加は、インターフェロン反応を回復させた(図9A)。また、MRL/lprエリテマトーデスマウスから単離したIgGは、単球においてEPCR-LPBAに依存してインターフェロン反応を誘導したが、MRL対照マウスではそうならなかった(図9B)。
【0092】
エリテマトーデスにおいて自己免疫の一因である(40、41)Tlr7のアゴニストの存在下でのヒト形質細胞様樹状細胞(pDC)とB細胞との共培養は、カルジオリピン反応性抗体の産生を促進するのにaPLの添加を必要とした(図9C)。これらの条件下、EPCRの機能を遮断する抗体(αEPCR 1496)は、脂質反応性抗体の発生を阻止したが、非阻害性抗体(αEPCR 1489)は阻止しなかった(図9C)。このことは、EPCR依存性インターフェロンシグナル伝達が、自己免疫抗体反応を駆動することを示唆する。
【0093】
この結論を裏付けるように、マウスpDCを、EPCRC/Sマウスから単離した場合、抗カルジオリピン抗体産生は存在しなかったが、B細胞ではそうではなかった(図9D)。LBPA又はインターフェロンαの添加は、aPLシグナル伝達欠損EPCRC/SpDCとの共培養において抗カルジオリピン産生B細胞の増殖を回復させた(図9D)。対照的に、β2GPIの受容体であるLRP8を欠損した細胞は、aPL及びTlr7アゴニストの共刺激に反応して正常に抗カルジオリピン抗体を産生した(図9E)。脂質反応性抗体の出現は、B細胞によるI型IFN受容体発現を必要としたが、pDCはそうではなかった(図9F)。このことは、aPLがpDCインターフェロン産生を誘導して、B細胞反応を刺激したことを実証する。
【0094】
したがって、APSの確立されたモデルにおいてaPLの発生を評価した。脂質反応性モノクローナル又はポリクローナル抗体を用いた免疫化は、マウスにおいて、カルジオリピン反応性抗体の出現を誘導する(42、43)。aPL HL5Bを用いた免疫化は、Tlr7に依存して3週間~6週間以内に堅固な抗カルジオリピン力価を誘導したが、対照IgGではそうならず、一方Tlr9-/-マウスは、わずかに向上した反応を示した(図10A)。aPLを用いた免疫化は、標識化リポソームと反応する循環B1細胞の出現を誘導し(44)、リポソーム染色は、EPCR-LPBAにより阻止されたが、未修飾EPCRでは阻止されなかった(図10B)。このことは、EPCR-LPBA反応性B細胞の増殖を示す。抗カルジオリピン力価は、系統の一致するWT対照マウス及びLRP8-/-マウスとは際立って対照的に、免疫化EPCRC/Sマウスでは発生しなかった(図10C)。したがって、EPCRシグナル伝達の遺伝子切断は、病原性ヒトaPLによる免疫化が引き起こす脂質反応性抗体の拡大を消失させた。
【0095】
APSは、ヒトβ2GPIを用いた免疫化によっても引き起こされ(45)、これは、EPCRWTマウス及びEPCRC/Sマウスにおいてヒトβ2GPIに対して同様な高力価のIgG抗体反応を誘導した(図10D)。LBPAに対するIgG力価は、EPCRWTマウスにおいてのみ発生し、プロトロンビンではそうならなかった(図10E)。また、免疫化EPCRWTマウス由来のIgGのみが、単球におけるTF活性及び炎症促進性シグナル伝達を誘導した(図10F)。すなわち、実験APSにおいて自己免疫の発生にはEPCRが必要である。
【0096】
実施例6:EPCR-LBPAシグナル伝達は、in vivoで、aPL拡大及び自己免疫病態を駆動する
EPCR-LBPAの特異的阻害は、aPL(図11A)及び二本鎖DNA自己抗体の発生を完全に阻止した。これらは、6週齢MRL-Faslprマウスで既に検出可能であったが、対照MRL/MpJマウスでは検出できなかった(図11B)。MRL-FaslprマウスをαEPCR-LBPA 1682で処置すると、自己抗体の発生が減少しただけではなく、腎臓におけるCD3+及びF4/80+免疫細胞の浸潤の減少(図11C)並びに糸球体及び間質性損傷を反映した腎臓病態スコアの低下(図11D)から裏付けられるとおり、進行性腎臓病態から保護された。
【0097】
独立実験において、MRL-Faslprマウスを、αEPCR-LBPA 1682又はαEPCR 1650を用いて6週間処置し、処置終了から2週間後に分析した。αEPCR-LBPA 1682は、またしても、血清αLBPA及びαCL力価を特異的に抑制して、年齢の一致するMRL/MpJ対照マウスで見られるレベルにし(図12A)、フローサイトメトリーで測定してCD45+/F4/80+免疫細胞の腎臓浸潤を減弱した(図12B)。これらの浸潤骨髄細胞は、IFN-γを発現した(図12C)。アルブミン尿は、非阻害性αEPCR 1650で処置したマウスでのみ発症し、阻害性αEPCR-LBPA 1682で処置したマウス又はMRL/MpJ対照マウスでは発生しなかった(図12D)。したがって、EPCR-LBPAシグナル伝達は、このエンドソームTLR7依存性動物モデルにおいて、脂質反応性抗体の発生及び腎臓自己免疫病態の両方に重要であり、より一般的に言えば、腎臓自己免疫病態を駆動する。
【符号の説明】
【0098】
図1A
no inhibitor 阻害剤なし
control IgG 対照IgG
Syphilis IgG 梅毒IgG
fold gene induction 遺伝子誘導倍数

図1B
no inhibitor 阻害剤なし
fold gene induction 遺伝子誘導倍数

図1C
no inhibitor 阻害剤なし
(fold induction) (誘導倍数)
(0-15min) (0分~15分)

図1E
merged 重ね合わせ

図1F
EPCR internalization EPCR内部移行
no inhibitor 阻害剤なし
+Rivaroxaban +リバーロキサバン
+hirudin +ヒルジン
+compstatin +コンプスタチン
+PDI inhibitor +PDI阻害剤
+ARF6 inhibitor +ARF6阻害剤
VIIa internalization VIIa内部移行
TF internalization TF内部移行

図2A
species 種
name 名前
effect on aCL aPL aCL aPLに対する効果
PC activation inhibition PC活性化阻害
Mouse マウス
blocking 遮断
non-blocking 遮断せず
Human ヒト

図2B
primary monocytes 初代単球
no inhibitor 阻害剤なし
(fold induction) (誘導倍数)

図2C
no inhibitor 阻害剤なし
(fold induction) (誘導倍数)

図2D
(fold induction) (誘導倍数)
1h 1時間
3h 3時間

図2E
(fold induction) (誘導倍数)
1h 1時間
3h 3時間

図3A
EPCR-dependent EPCR依存性
aPC generation aPC産生
(% of control) (対照に対する%)

図3B
(fold induction) (誘導倍数)

図3D
counts カウント数

図3F
6C4 surface binding 6C4表面結合

図3G
1682 surface binding 1682表面結合
antibody concentration 抗体濃度
control 対照

図3H
(fold induction) (誘導倍数)

図3I
Mouse マウス
Human ヒト

図3J
Response Units レスポンスユニット
Time (sx103) 時間(秒×103)

図4A
surface binding 表面結合

図4B
(fold induction) (誘導倍数)

図4C
EPCR-dependent EPCR依存性
aPC generation aPC産生
(% of control) (対照に対する%)

図4D
aPL binding aPL結合

図4E
antibody concentration 抗体濃度

図4F
antibody concentration 抗体濃度

図4H
Annexin V アネキシンV
aPL concentration aPL濃度

図5A
HL5B+desipramine HL5B+デシプラミン
HL7G+desipramine HL7G+デシプラミン
desipramine デシプラミン
(units/106 cells) (単位/106細胞)
(Annexin V-FITC) (アネキシンV-FITC)
(0-15min) (0分~15分)
(fold induction) (誘導倍数)

図5B
no inhibitor 阻害剤なし
+desipramine +デシプラミン

図5C
unst. 刺激せず
no inhibitor 阻害剤なし
+Rivaroxaban +リバーロキサバン
+hirudin +ヒルジン
+compstatin +コンプスタチン
+PDI inh. +PDI阻害剤
+ARF6 inh. +ARF6阻害剤
ASM activity ASM活性

図5D
merged 重ね合わせ
+hirudin +ヒルジン

図5E
no inhibitor 阻害剤なし
ASMase ASMアーゼ

図5F
Thrombus size 血栓寸法
no inhibitor 阻害剤なし

図5G
Thrombus size 血栓寸法
no inhibitor 阻害剤なし

図5H
Thrombus size 血栓寸法

図5I
Thrombus size 血栓寸法

図5J
Thrombus size 血栓寸法

図6A
unst. 刺激せず
no inhibitor 阻害剤なし
+Rivaroxaban +リバーロキサバン
+hirudin +ヒルジン
+compstatin +コンプスタチン
+PDI inh. +PDI阻害剤
+ARF6 inh. +ARF6阻害剤
ASMase ASMアーゼ

図6B
ASMase ASMアーゼ

図6C
thrombin トロンビン
no inhibitor 阻害剤なし
ASMase ASMアーゼ

図7A
(fold induction) (誘導倍数)
scramble control スクランブル対照

図7B
PLA+ signals/cell PLA+シグナル/細胞

図7C
PLA+ signals/cell PLA+シグナル/細胞
thrombin トロンビン
thrombin+LBPA トロンビン+LBPA

図7D
merged 重ね合わせ
control JAR 対照JAR
+semi LBPA +セミLBPA

図7E
+semi LBPA +セミLBPA
(fold induction (誘導倍数

図7F
HL5B immunized mice HL5B免疫化マウス
naive mice ナイーブマウス

図7G
control 対照
fetal death rate 胎児死亡率

図7H
endosomal Signaling エンドソームシグナル伝達
Thrombosis 血栓症
Pregnancy loss 妊娠喪失

図8A
Scr. Control スクランブル対照

図8B
fold increase in MFI MFIの増加倍数
(antibody/isotype control) (抗体/アイソタイプ対照)
scrambled control スクランブル対照

図8C
PLA+ signals/cell PLA+シグナル/細胞
scrambled control スクランブル対照
hirudin ヒルジン
thrombin トロンビン

図9A
(fold induction) (誘導倍数)

図9B
control IgGs 対照IgG
no inhibitor 阻害剤なし
(fold induction) (誘導倍数)

図9C
cardiolipin binding カルジオリピン結合
(OD units) (OD単位)
unstimulated 刺激せず

図9D
cardiolipin binding カルジオリピン結合
(OD units) (OD単位)
B cells B細胞
unstimulated 刺激せず

図9E
cardiolipin binding カルジオリピン結合
(OD units) (OD単位)
unstimulated 刺激せず

図9F
cardiolipin binding カルジオリピン結合
(OD units) (OD単位)
B cells B細胞
unstimulated 刺激せず

図10A
binding to cardiolipin カルジオリピンとの結合
(OD units) (OD単位)
time (weeks) 時間(週数)

図10B
binding to cardiolipin カルジオリピンとの結合
(OD units) (OD単位)
time (weeks) 時間(週数)

図10C
Count カウント数
PL vesicle+ cells PL小胞+細胞

図10D
hβ2GPI binding hβ2GPI結合
(OD units) (OD単位)

図10E
binding to indicated proteins 表示されるタンパク質との結合
(OD units) (OD単位)

図10F
PCA (units/106 cells) PCA(単位/106細胞)
(fold induction) (誘導倍数)

図11C
cardiolipin binding カルジオリピン結合
(OD units) (OD単位)
time [days] 時間[日数]

図11D
ds DNA binding dsDNA結合
(OD units) (OD単位)
no inhibitor 阻害剤なし

図11E
CD3+ cells/hpf CD3+細胞/hpf
F4-80+ cells/hpf F4-80+細胞/hpf

図11F
Score of renal pathology 腎臓病態スコア

図12A
OD units OD単位

図12B
Frequency (%) 頻度(%)

図12C
Frequency (%) 頻度(%)

図12D
Albumin アルブミン
Creatinine クレアチニン
days after treatment start 処置開始後日数
【0099】
引用文献
本明細書中において引用される参照は以下のとおりである:
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図1-1】
図1-2】
図2
図3-1】
図3-2】
図3F-3G】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図11-1】
図11-2】
図12-1】
図12-2】
【国際調査報告】