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特表2023-508581神経外科手術のための位置特定パッド
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  • 特表-神経外科手術のための位置特定パッド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】神経外科手術のための位置特定パッド
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20230222BHJP
   A61B 6/12 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B6/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540511
(86)(22)【出願日】2020-12-06
(85)【翻訳文提出日】2022-07-26
(86)【国際出願番号】 IB2020061561
(87)【国際公開番号】W WO2021137056
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】16/729,556
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ゴバリ・アサフ
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA22
4C093AA25
4C093DA04
4C093ED30
(57)【要約】
位置特定パッドは、複数の磁場発生器及びフレームを含む。複数の磁場発生器は、患者の器官の対象領域における医療機器の位置を測定するために、対象領域にそれぞれの磁場を発生するように構成されている。フレームは、X線放射に対して透明であり、対象領域を取り囲むそれぞれの位置において、複数の磁場発生器を固定するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置特定パッドであって、
患者の器官の対象領域における医療機器の位置を測定するための、前記対象領域にそれぞれの磁場を発生するように構成されている、複数の磁場発生器と、
前記対象領域を取り囲むそれぞれの位置において、前記複数の磁場発生器を固定するように構成されているフレームと、を備え、前記フレームが、X線放射に対して透明である、位置特定パッド。
【請求項2】
前記磁場発生器が、少なくとも第1の磁場発生器及び第2の磁場発生器を備え、かつ前記第1の磁場発生器に接続された第1の電気ケーブルと、前記第2の磁場発生器に接続された第2の電気ケーブルと、を少なくとも備え、前記第1の電気ケーブル及び前記第2の電気ケーブルが、前記対象領域の外に位置決めされている、請求項1に記載の位置特定パッド。
【請求項3】
前記フレームが、炭素及び有機ポリマーからなる物質のリストから選択される物質を含む、請求項1に記載の位置特定パッド。
【請求項4】
前記患者が、台上に位置しており、前記位置特定パッドが、前記患者と前記台との間に位置するように構成されている、請求項1に記載の位置特定パッド。
【請求項5】
前記磁場発生器のうちの少なくとも1つが、複数の非同心コイルを備える、請求項1に記載の位置特定パッド。
【請求項6】
前記磁場発生器のうちの少なくとも1つが、複数の同心コイルを備える、請求項1に記載の位置特定パッド。
【請求項7】
位置特定パッドを製造するための方法であって、
患者の器官の対象領域における医療機器の位置を測定するために、前記対象領域にそれぞれの磁場を発生するための複数の磁場発生器を設けることと、
前記対象領域を取り囲むそれぞれの位置においてフレーム上に前記複数の磁場発生器を固定することであって、前記フレームが、少なくとも前記対象領域において、X線放射に対して透明である、固定することと、を含む、方法。
【請求項8】
前記磁場発生器が、少なくとも第1の磁場発生器及び第2の磁場発生器を備え、かつ第1の電気ケーブルを前記第1の磁場発生器に接続し、第2の電気ケーブルを前記第2の磁場発生器に接続することと、前記第1の電気ケーブル及び前記第2の電気ケーブルを前記対象領域の外に位置決めすることと、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記磁場発生器のうちの少なくとも1つが、複数の非同心コイルを備える、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
所与の平面に前記非同心コイルのうちの少なくとも2つを並べて配置することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記磁場発生器のうちの少なくとも1つが、複数の同心コイルを備える、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記フレームが、炭素及び有機ポリマーからなる物質のリストから選択される物質を含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、医療デバイスに関し、具体的には、神経外科手術で使用される磁気位置追跡システムの位置特定パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気位置追跡システムは、最低限の侵襲性の手技などの幅広い医療用途で使用される。従来技術の例を以下に示す。
【0003】
米国特許出願公開第2017/0007155号は、磁気位置追跡システムの位置特定パッドを記載している。位置特定パッドは、複数の磁場発生器及びフレームを含む。磁場発生器は、対象領域における医療器具の位置を測定するための、患者の身体の対象領域にそれぞれの磁場を発生するように構成されている。フレームは、対象領域を取り囲むそれぞれの位置において、複数の磁場発生器を固定するように構成されている。このフレームは、対象領域の少なくとも1つの側で開いている。
【0004】
米国特許出願公開第2014/0275998号は、磁場を生成する磁場発生器アセンブリを含む医療デバイスをナビゲートするためのシステムを記載している。医療デバイス上、撮像システム上、又は身体上の位置センサは、磁場内の位置を示す信号を生成する。発生器アセンブリ及び参照センサは、それらと、身体の位置と、撮像システムの放射放出器及び放射検出器の位置と、の間に相関関係が存在するように配置される。電子制御ユニット(electronic control unit、ECU)は、センサによって生成された信号に応答して、医療デバイスの位置、放射放出器及び放射検出器のうちの1つの位置、並びに放出器と検出器との間の距離を決定する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書において記載されている本発明の一実施形態は、複数の磁場発生器及びフレームを含む、位置特定パッドを提供する。複数の磁場発生器は、患者の器官の対象領域における医療機器の位置を測定するために、対象領域にそれぞれの磁場を発生するように構成されている。フレームは、X線放射に対して透明であり、対象領域を取り囲むそれぞれの位置において、複数の磁場発生器を固定するように構成されている。
【0006】
いくつかの実施形態では、磁場発生器は、少なくとも第1の磁場発生器及び第2の磁場発生器を含み、位置特定パッドは、第1の磁場発生器に接続された第1の電気ケーブルと、第2の磁場発生器に接続された第2の電気ケーブルと、を少なくとも含み、第1の電気ケーブル及び第2の電気ケーブルは、対象領域の外に位置決めされている。他の実施形態では、フレームは、炭素及び有機ポリマーからなる物質のリストから選択される物質を含む。更に他の実施形態では、患者は、台上に位置しており、位置特定パッドは、この患者と台との間に位置するように構成されている。
【0007】
一実施形態では、磁場発生器のうちの少なくとも1つは、複数の非同心コイルを含む。別の実施形態では、磁場発生器のうちの少なくとも1つは、複数の同心コイルを含む。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、位置特定パッドを製造するための方法であって、患者の器官の対象領域における医療機器の位置を測定するために、対象領域においてそれぞれの磁場を発生するための複数の磁場発生器を設けることを含む、方法が更に提供される。複数の磁場発生器は、対象領域を取り囲むそれぞれの位置においてフレーム上に固定されており、フレームは、少なくとも対象領域において、X線放射に対して透明である。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、患者の対象領域に対して位置特定パッドを位置決めすることであって、位置特定パッドが、対象領域を取り囲むそれぞれの位置において複数の磁場発生器を固定するフレームを含み、フレームが、少なくとも対象領域において、X線放射に対して透明である、位置決めすること、を含む方法が、更に提供される。医療器具は、対象領域に挿入される。この医療器具の位置は、磁場発生器を使用して追跡される。この位置を追跡するのと同時に、蛍光透視撮像システムにより対象領域が照射されて、対象領域の画像が作製される。
【0010】
以下の本開示の実施形態の詳細な説明を図面と併せ読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態による、神経外科システムの概略的な描写図である。
図2】本発明の一実施形態による、蛍光透明型位置特定パッドの概略的な上面図である。
図3】本発明の実施形態による、神経外科手術中の同時撮像及び位置追跡の方法を概略的に図示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概論
医療器具及びガイドワイヤは、神経外科などの様々な治療及び診断医療処置で使用される。
【0013】
以下に記載される本発明の実施形態は、神経外科手術中に、解剖学的撮像を改善し、同時に医療器具を追跡するための方法及び装置を提供する。
【0014】
神経外科システムを使用して実施される神経外科手術では、外科医は、ガイドワイヤを患者の頭部に挿入し、神経外科手術を実行するために患者の脳内の標的領域にガイドワイヤをナビゲートし得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、神経外科システムは、患者頭部内のガイドワイヤの位置を追跡するように構成されている磁気位置追跡サブシステムを備え得る。いくつかの実施形態では、磁気位置追跡サブシステムは、典型的には位置特定パッド上に固定された複数の磁場発生器を備え、患者の頭部の対象領域(region-of-interest、ROI)にそれぞれの磁場を適用するように構成されている。いくつかの実施形態では、磁気位置追跡サブシステムは、典型的にはガイドワイヤの遠位端に設置された、位置センサを備える。位置センサは、磁場に応答して、患者の頭部内の遠位端の位置及び配向を示す位置信号を生成するように構成されている。
【0016】
いくつかの実施形態では、位置追跡サブシステムは、位置信号に基づいて、患者の頭部の解剖学的画像上に重ね合わされた遠位端の位置を表示するように構成されているプロセッサを備える。
【0017】
いくつかのシナリオでは、磁気位置追跡システムと同時に蛍光透視システムを適用することが望ましい。例えば、本明細書では、患者の頭部のROI、又は問題の任意の他の器官の、蛍光透視画像とも称されるX線画像を取得するため。神経外科手術では、位置特定パッドの一部は、蛍光透視システムの照射体積内に入り得、患者の脳の蛍光透視画像の部分を遮断又は妨害し得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、位置特定パッドは、少なくともROIにおいて、本明細書では「蛍光透明」とも称される、X線放射線に対して透明なフレームを備える。蛍光透明フレームは、ROIを取り囲むそれぞれの位置において、その上に磁場発生器を固定するように構成されている。フレームのX線放射に対する透明性は、少なくとも神経外科手術で一般的に使用されるX線透視投影では、蛍光透視撮像をほとんど又は全く遮らない。
【0019】
いくつかの実施形態では、位置特定パッドは、低プロファイルの位置特定パッドを可能にするように配置された非同心コイルを有する磁場発生器を備え得る。より厚く台の下に配置する必要がある従来の位置特定パッドとは異なり、かかる位置特定パッドは、移動台(患者がその上に位置している)と患者の頭部との間に容易に配置することができる。他の実施形態では、磁場発生器のうちの少なくとも1つ(及び典型的には全て)は、同心コイルを含み得る。この構成は、低プロファイル位置特定パッドが必要ではない場合、又は位置特定パッドの機能性を高めるために使用され得る。
【0020】
開示された技術は、外科又は任意の他の侵襲的手術中の脳の同時撮像及び治療を可能にすることによって、神経外科手術の質を改善する。その上、開示された技術は、必要な変更を加えて、患者の身体の他の器官で実施される医療手術に適用され得る。
【0021】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、神経外科システム10の概略的な描写図である。いくつかの実施形態では、神経外科システム10は、X線を問題の器官に照射するように構成されている蛍光透視撮像サブシステム22と、以下に詳細に記載される磁気位置追跡サブシステム20と、を備える。
【0022】
ここで、挿入図32を参照する。いくつかの実施形態では、神経外科手術中、外科医42は、任意の好適なタイプのガイドワイヤ24を患者30の脳28内にナビゲートする。いくつかの実施形態では、位置センサ41は、ガイドワイヤ24の遠位端34に連結されている。
【0023】
いくつかの実施形態では、外科医42は、脳28の対象領域(ROI)39内の標的位置に遠位端34をナビゲートし、続いて、典型的にはガイドワイヤ24に沿って遠位端34に誘導される医療デバイス(図示せず)を適用して、ROI39、例えば、腫瘍除去の医療手術を実施する。
【0024】
ここで、挿入図27を参照する。いくつかの実施形態では、神経外科システム10は、患者30の頭部の下に配置された低プロファイル位置特定パッド38を備える。位置特定パッド38は、ROI39の周りのフレーム37上に取り付けられている磁場発生器36A~36Dと本明細書で称される、磁場発生コイルを備える。
【0025】
いくつかの実施形態では、フレーム37は、X線に対して透明であり、これによって、サブシステム22のX線源23によって照射されたX線は、パッド38及び脳28を通過し、X線検出器25によって感知される。フレーム37は、低プロファイル(例えば、約1.2cmの厚さ)を有し、X線検出器25は、以下に記載されるように、ROI39の少なくとも一区分の解剖学的画像35を生成するために、被感知X線を示す電気信号を出力するように構成されていることに留意されたい。
【0026】
いくつかの実施形態では、位置特定パッド38は、磁場発生器36A~36Dと磁気位置追跡サブシステム20のドライバ回路50との間を電気的に結合するように構成された、電気ケーブル60及び62を更に備える。位置特定パッド38は、以下の図2においてより詳細に説明する。
【0027】
本開示の文脈において、任意の数値又は範囲についての「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書で述べるその意図された目的に沿って機能することを可能とする、好適な寸法の許容誤差を示すものである。より具体的には、「約」又は「およそ」は、列挙された値の±20%の値の範囲を指し、例えば「約90%」は、71%~99%の値の範囲を指し得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、神経外科システム10は、簡潔にするために、本明細書ではコンソール26と称される動作コンソールを備える。コンソール26は、プロセッサ44と、ドライバ回路50と、蛍光透視画像サブシステム22へのインタフェース回路48と、入力デバイス46と、ディスプレイ40と、を含む。図1の例示的な構成では、パッド38は、4つの磁場発生器36A~36Dを備え、他の実施形態では、パッド38は、任意の他の好適な数の磁場発生コイルを備えてよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、位置センサ41は、磁場発生器36A~36Dによって生成された磁場を感知し、かつ、プロセッサ44に、ROI39内の遠位端34の位置及び配向を示す電気信号を送信するように構成されている。
【0030】
磁気位置追跡サブシステム20は、例えば、Biosense Webster Inc.(Irvine,Calif.)が製造するCARTO(商標)システムで実施され得、その詳細は、例えば、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号及び同第2004/0068178(A1)号に記述され、これらの開示は全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
ここで、挿入図29を参照する。いくつかの実施形態では、位置特定パッドは、発生器36A~36Dが患者30外部の固定された既知の場所に位置するように、台33の上、かつ患者の頭部の下に位置決めされる。ドライバ回路50は、脳28のROI39の周りで事前定義された体積に前述の磁場を生成するように、好適な信号で磁場発生器36A~36Dを駆動するように構成されている。
【0032】
いくつかの実施形態では、磁場発生器36A~36Dの少なくとも1つは、低プロファイル磁場発生器内に配置及び包装された3つの非同心コイルを備え得る。したがって、各コイルは、相互に直交する3つの方向のうちの一方向に磁場成分を発生させるように構成される。この構成では、2つのコイルが所与の平面内に並んで位置決めされ、第3のコイルは、所与の平面内の2つのコイルの周りに巻かれて、これによって、低プロファイル磁場発生器を得る。この構成は、例えば、その開示内容が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0007155号に詳細に記載されている。
【0033】
他の実施形態では、磁場発生器36A~36Dの少なくとも1つは、3つの同心コイルを備え得る。しかしながら、かかる構成では、磁場発生器は通常はより厚くなる。典型的には、全ての磁場発生器36A~36Dは同じ構成を有し、コイルの配置は、これに限定はされないが、位置特定パッドの指定された厚さなどの様々なパラメータに基づいて決定されることに留意されたい。神経外科の例では、厚さは重要でない場合があり、したがって両方の構成が適用可能であり得る。位置特定パッド38は、4つ以外の任意の好適な数の磁場発生器を備え得ることに留意されたい。
【0034】
いくつかの実施形態では、神経外科システム10のオペレータは、入力デバイス46及び好適なグラフィックユーザインターフェース(graphical user interface、GUI)を使用してサブシステム22を操作することによって、解剖学的画像35を生成することができ、プロセッサ44は、ディスプレイ40上に解剖学的画像35を表示するように構成されている。いくつかの実施形態では、プロセッサ44は、位置センサ41から、脳28内の遠位端34の位置を示す位置信号を受信するように更に構成されている。位置信号に基づいて、プロセッサ44は、(a)解剖学的画像35上に重ね合わされた遠位端の位置、及び(b)ROI39の位置を示すフレームを表示するように構成されており、そのため、サブシステム22のオペレータは、患者30の頭部上で、照射されたX線の方向を調整することができる。
【0035】
神経外科システム10のこの特定の構成は、本発明の実施形態が対処する特定の問題を説明し、またそのようなシステムの性能を向上させる際のこれらの実施形態の適用を明示するために、例として示されている。しかしながら、本発明の実施形態は、この特定の種類の例示的なシステムに決して限定されるものではなく、本明細書に記載の原理は、他の種類の外科システムに同様に適用され、特に、これらに限定されないが、蛍光透視ベース、又はコンピュータ断層撮影(computerized tomography、CT)ベースのシステム又はサブシステムなどの撮像システム又はサブシステムと組み合わせて適用される他の種類の位置追跡システムにも、同様に適用され得る。
【0036】
X線放射に対して透明な位置特定パッド
図2は、本発明の一実施形態による、位置特定パッド38の概略的な上面図である。いくつかの実施形態では、フレーム37は、これらに限定されないが、炭素フィルム、炭素繊維、及び様々なタイプの有機ポリマー(例えば、プラスチック)などの、X線に対して透明な剛性物質を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、磁場発生器36A及び36Dは、固定デバイス66を使用してフレーム37の片側に固定され、電気ケーブル62を介してドライバ回路50に電気的に接続されている。同様に、磁場発生器36B及び36Cは、固定デバイス64を使用してフレーム37の反対側に固定され、電気ケーブル60を介してドライバ回路50に電気的に接続されている。そのような実施形態では、図2に示されるように、磁場発生器36A~36D、固定デバイス64及び66、並びに電気ケーブル60及び62は全て、ROI39の外側のフレーム37上に固定されている。
【0038】
いくつかの実施形態では、固定デバイスは、ROI39のサイズ及び形状を設定するように、フレーム37の表面上の他の位置に移動可能であり得る。
【0039】
他の実施形態では、フレーム37は、ROI39を取り囲むそれぞれの位置において磁場発生器36A~36Dを固定するように構成されている。そのような実施形態では、磁場発生器36A~36は、接着、溶接、はんだ付け、又はねじ込みなどがあるがこれらに限定されない任意の好適な技術を使用して、フレーム37上に取り付けられ得る。この構成では、固定デバイス64及び66は、位置特定パッド38から取り外され得ることに留意されたい。
【0040】
いくつかの実施形態では、磁場発生器36A~36Dは、ROI39内の遠位端34の位置を測定するように、患者の脳28のROI39内にそれぞれの磁場を生成するように構成されている。そのような実施形態では、外科医42が脳28内の位置70に遠位端34を位置決めするとき、プロセッサ44は、位置センサ41から位置70を示す位置信号を受信し、解剖学的画像35上に位置70を重ね合わせる。
【0041】
いくつかの実施形態では、外科医42は、医療手術を行うための任意の好適な医療器具を位置決めするためにガイドワイヤ24を使用し得る。追加的又は代替的に、
他の実施形態では、外科医42は、脳28内の標的位置に、その遠位端に結合された位置センサ41を有する任意の他の神経外科関連医療デバイスを位置決めするために同じ技術を使用することができる。そのような実施形態では、ガイドワイヤ24は、神経外科システム10の構成から取り外され得る。
【0042】
神経外科手術中の同時撮像及び位置追跡
図3は、本発明の実施形態による、神経外科手術の間の同時撮像及び位置追跡のための方法を概略的に図示するフローチャートである。
【0043】
この方法は、位置特定パッド38が台33と患者の頭部との間に位置決めされるように、患者位置決め工程100において、位置特定パッド38に対して台33上に患者30を位置決めすることで始まる。ガイドワイヤ挿入工程102において、外科医42は、ガイドワイヤ24を患者30の頭部内に挿入する。
【0044】
神経外科手術中に実施される追跡工程104では、外科医42は、遠位端34を追跡するために磁気位置追跡サブシステム20を適用し得る。そのような実施形態では、外科医42は、ドライバ回路50を制御するためのコンソール26を使用し得、前述の磁場をROI39に適用し、脳28内の遠位端34の位置を追跡するために、かつ、解剖学的画像35上に重ね合わされた位置を表示するために、位置センサ41及びプロセッサ44を更に制御する。追跡工程104と並行して実施される照射工程106では、外科医42は、脳28のROI39を照射するためにサブシステム22を適用し得る。位置特定パッド38の構造は、ROI39の同時撮像、及びROI39内の遠位端34の位置追跡を可能にすることに留意されたい。
【0045】
医療手術実施工程108では、外科医42は、解剖学的画像35上に重ね合わされた遠位端34の表示位置に基づいて、神経外科手術を行う。工程108は、典型的には、図3の方法を終了するが、外科医は、工程104及び工程106を同時に適用して、これに限定されないが、患者30の頭部から遠位端34を後退させるためなどの、手術に関連する追加の活動を実施し得ることに留意されたい。
【0046】
本明細書に記載される実施形態は、主として神経外科手術に対処するが、本明細書に記載される方法及びシステムは、他の用途でも使用され得る。
【0047】
したがって、上述の実施形態は、例として引用したものであり、本発明は、上記に具体的に示し、かつ説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書において上に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれた文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義される場合は、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠な部分とみなすものとする。
【0048】
〔実施の態様〕
(1) 位置特定パッドであって、
患者の器官の対象領域における医療機器の位置を測定するための、前記対象領域にそれぞれの磁場を発生するように構成されている、複数の磁場発生器と、
前記対象領域を取り囲むそれぞれの位置において、前記複数の磁場発生器を固定するように構成されているフレームと、を備え、前記フレームが、X線放射に対して透明である、位置特定パッド。
(2) 前記磁場発生器が、少なくとも第1の磁場発生器及び第2の磁場発生器を備え、かつ前記第1の磁場発生器に接続された第1の電気ケーブルと、前記第2の磁場発生器に接続された第2の電気ケーブルと、を少なくとも備え、前記第1の電気ケーブル及び前記第2の電気ケーブルが、前記対象領域の外に位置決めされている、実施態様1に記載の位置特定パッド。
(3) 前記フレームが、炭素及び有機ポリマーからなる物質のリストから選択される物質を含む、実施態様1に記載の位置特定パッド。
(4) 前記患者が、台上に位置しており、前記位置特定パッドが、前記患者と前記台との間に位置するように構成されている、実施態様1に記載の位置特定パッド。
(5) 前記磁場発生器のうちの少なくとも1つが、複数の非同心コイルを備える、実施態様1に記載の位置特定パッド。
【0049】
(6) 前記磁場発生器のうちの少なくとも1つが、複数の同心コイルを備える、実施態様1に記載の位置特定パッド。
(7) 位置特定パッドを製造するための方法であって、
患者の器官の対象領域における医療機器の位置を測定するために、前記対象領域にそれぞれの磁場を発生するための複数の磁場発生器を設けることと、
前記対象領域を取り囲むそれぞれの位置においてフレーム上に前記複数の磁場発生器を固定することであって、前記フレームが、少なくとも前記対象領域において、X線放射に対して透明である、固定することと、を含む、方法。
(8) 前記磁場発生器が、少なくとも第1の磁場発生器及び第2の磁場発生器を備え、かつ第1の電気ケーブルを前記第1の磁場発生器に接続し、第2の電気ケーブルを前記第2の磁場発生器に接続することと、前記第1の電気ケーブル及び前記第2の電気ケーブルを前記対象領域の外に位置決めすることと、を含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記磁場発生器のうちの少なくとも1つが、複数の非同心コイルを備える、実施態様7に記載の方法。
(10) 所与の平面に前記非同心コイルのうちの少なくとも2つを並べて配置することを含む、実施態様9に記載の方法。
【0050】
(11) 前記磁場発生器のうちの少なくとも1つが、複数の同心コイルを備える、実施態様7に記載の方法。
(12) 前記フレームが、炭素及び有機ポリマーからなる物質のリストから選択される物質を含む、実施態様7に記載の方法。
(13) 方法であって、
患者の対象領域に対して位置特定パッドを位置決めすることであって、前記位置特定パッドが、前記対象領域を取り囲むそれぞれの位置において複数の磁場発生器を固定するフレームを備え、前記フレームが、少なくとも前記対象領域において、X線放射に対して透明である、位置決めすることと、
前記対象領域に医療器具を挿入することと、
前記磁場発生器を使用して、前記医療器具の位置を追跡することと、
前記位置を追跡するのと同時に、蛍光透視撮像システムにより前記対象領域を照射して、前記対象領域の画像を作製することと、を含む、方法。
(14) 前記位置特定パッドを位置決めすることが、前記患者と前記患者が位置している台との間に前記位置特定パッドを置くことを含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記位置を追跡することが、前記磁場発生器を使用して磁場を生成することと、生成した前記磁場に磁気位置追跡を適用することにより前記位置を追跡することと、を含む、実施態様13に記載の方法。
【0051】
(16) 前記対象領域が、前記患者の脳の少なくともある体積を含み、前記医療器具を挿入することが、前記対象領域において神経外科手術を実行するためのガイドワイヤを挿入することを含む、実施態様13に記載の方法。
図1
図2
図3
【国際調査報告】