(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】個別にアクセス可能な電極要素および温度センサを有する腫瘍治療フィールド(TTフィールド)を送出するためのアレイ
(51)【国際特許分類】
A61N 1/40 20060101AFI20230222BHJP
A61N 1/04 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
A61N1/40
A61N1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540519
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(85)【翻訳文提出日】2022-08-22
(86)【国際出願番号】 IB2020062309
(87)【国際公開番号】W WO2021137094
(87)【国際公開日】2021-07-08
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519275847
【氏名又は名称】ノボキュア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨラム・ワッサーマン
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB34
4C053LL20
(57)【要約】
過熱するトランスデューサアレイ中の1つまたは複数の電極要素をオフに切り換えることによって、腫瘍治療フィールド(TTフィールド)を、より強い場の強度で、被験者の体に送出することができる。これは、各電極要素の温度を検知するサーミスタを使用して達成することができる。各トランスデューサアレイの結線の部分は、その各々が、(a)コネクタのピン、(b)それぞれの電極要素、および、(c)それぞれのサーミスタを電気的に接続する複数の導体を使用することによって、電極要素とサーミスタとの間で共有される。いくつかの実施形態では、サーミスタのすべてが直列に結線される。他の実施形態では、サーミスタのすべてが共通の接続を共有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の体に交流電場を印可するための装置であって、
複数の電極要素と、
前記被験者の体に対して前記電極要素を保持するように構成される支持体と、
複数のサーミスタであって、前記サーミスタの各々が第1の端子および第2の端子を有し、前記サーミスタの各々が、前記電極要素のうちの対応するそれぞれ1つで温度を検知するように位置決めされる、複数のサーミスタと、
複数の第1のピンおよび第2のピンを有するコネクタと、
複数の第1の導体であって、その各々が、(a)前記第1のピンのうちのそれぞれ1つと、(b)前記電極要素のうちのそれぞれ1つと、(c)前記対応するサーミスタの前記第1の端子との間に導電性経路を実現する、複数の第1の導体と、
前記第2のピンと前記サーミスタのうちの少なくとも1つの前記第2の端子との間に導電性経路を実現する第2の導体と
を備える、装置。
【請求項2】
すべての前記サーミスタの前記第2の端子が一緒に結線される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
すべての前記サーミスタの前記第2の端子が、(a)フレックス回路上の少なくとも1つのトレースと(b)少なくとも1つのワイヤのうちの少なくとも1つを使用して、一緒に結線される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記複数のサーミスタが直列に配置され、前記サーミスタのうちの第1のもので始まり、前記サーミスタのうちの最後のもので終了し、前記最後のサーミスタを除く前記サーミスタのうちの各々の前記第2の端子が、それぞれの後続のサーミスタの前記第1の端子に結線され、前記第2の導体が、前記コネクタの前記第2のピンと前記最後のサーミスタの前記第2の端子との間に導電性経路を実現する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第2の導体が、前記第2のピンと前記サーミスタのうちのただ1つの前記第2の端子との間に導電性経路を実現する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記複数の電極要素が少なくとも4つの電極要素を備え、前記複数のサーミスタが少なくとも4つのサーミスタを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記複数の電極要素が少なくとも9つの電極要素を備え、前記複数のサーミスタが少なくとも9つのサーミスタを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記電極要素のうちの各々が、導電板と前記導電板上に配設される誘電体層とを備え、前記電極要素の各々の前記誘電体層が前記被験者の体に面するように、前記支持体が、前記被験者の体に対して前記電極要素を保持するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
すべての前記サーミスタの前記第2の端子が一緒に結線され、前記第2の導体が、前記第2のピンとすべての前記サーミスタの前記第2の端子との間に導電性経路を実現する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
複数の電極要素を使用して被験者の体に交流電場を印可するための装置であって、前記複数の電極要素の各々がそれぞれのサーミスタと熱接触して配設され、
AC出力信号を発生するAC信号発生器と、
複数のピンを含むコネクタであって、前記ピンの各々が前記複数の電極要素のそれぞれ1つに対応する、コネクタと、
第1の複数のスイッチであって、前記第1の複数のスイッチの各々が、前記ピンのそれぞれ1つに前記AC出力信号を選択的に印可する、または印可しないのいずれかであるように構成される、第1の複数のスイッチと、
前記サーミスタの各々からの電気信号を受け入れ、対応する出力を発生するように構成される増幅器であって、前記サーミスタからの前記電気信号が、前記複数の電極要素に対応する同じピンを介して到達する、増幅器と、
前記増幅器の前記出力に基づいて、前記複数のピンの各々に印可される前記AC信号のデューティサイクルを個別に調整するように、前記第1の複数のスイッチを制御するように構成されるコントローラと
を備える、装置。
【請求項11】
前記コントローラが、(a)前記増幅器の前記出力に基づいて、前記電極要素のうちの少なくとも1つが他の電極要素より熱いときを判定し、(b)少なくとも1つのそれぞれのピンに印可される前記AC信号の前記デューティサイクルを減らすように、前記第1の複数のスイッチを制御するように構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記コントローラが、(a)前記増幅器の前記出力に基づいて、前記電極要素のうちの少なくとも1つが閾値レベルより熱いときを判定し、(b)少なくとも1つのそれぞれのピンに印可される前記AC信号の前記デューティサイクルを減らすように、前記第1の複数のスイッチを制御するように構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記複数の電極要素が少なくとも4つの電極要素を備え、前記複数のピンが少なくとも4つのピンを備え、前記第1の複数のスイッチが少なくとも4つのスイッチを備える、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記複数の電極要素が少なくとも9つの電極要素を備え、前記複数のピンが少なくとも9つのピンを備え、前記第1の複数のスイッチが少なくとも9つのスイッチを備える、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
各々が前記複数のピンのうちのそれぞれ1つから前記増幅器の第1の入力に信号を経路指定するように配置される第2の複数のスイッチをさらに備え、
前記コントローラが、前記複数のピンの各々を順次選択し、前記サーミスタの各々からの温度読取値を順次得るように、前記第2の複数のスイッチを制御するようにさらに構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項16】
前記コネクタが追加ピンを含み、
前記追加ピンから前記増幅器の第2の入力に信号を経路指定するように配置される追加スイッチをさらに備える、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
各々が前記複数のピンのうちのそれぞれ1つから前記追加ピンに信号を経路指定するように配置される第3の複数のスイッチをさらに備え、
前記第1の複数のスイッチからの所与のスイッチが開であるとき、前記コントローラが前記第3の複数のスイッチからのそれぞれ対応するスイッチを閉じるように、前記コントローラがさらに構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
各々が前記複数のピンのうちのそれぞれ1つから前記増幅器の第1の入力に信号を経路指定するように配置される第2の複数のスイッチと、
各々が前記複数のピンのうちのそれぞれ1つから前記増幅器の第2の入力に信号を経路指定するように配置される第3の複数のスイッチと
をさらに備え、
前記コントローラが、順番に前記サーミスタの各々の両方の端子に対応する前記複数のピンの対から前記増幅器の前記第1および第2の入力に信号を順次経路指定し、前記サーミスタの各々からの温度読取値を順次得るように、前記第2の複数のスイッチおよび前記第3の複数のスイッチを制御するようにさらに構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項19】
複数の電極要素を使用して被験者の体に交流電場を印可する方法であって、前記複数の電極要素の各々がそれぞれのサーミスタと熱接触して配設され、
交流電場が前記被験者内で誘起されるように、前記電極要素の各々に対してそれぞれのデューティサイクルでAC信号を印可するステップと、
前記サーミスタの各々から信号を入力するステップと、
前記入力信号に基づいて、前記電極要素の各々の温度を判定するステップと、
前記判定した温度に基づいて、前記電極要素に印可される前記AC信号の前記デューティサイクルを調整するステップと
を含み、
前記調整するステップの後に、前記電極要素のうちの少なくとも1つに印可される前記AC信号の前記デューティサイクルが、前記電極要素のうちの別の1つに印可される前記AC信号の前記デューティサイクルと異なる、方法。
【請求項20】
前記調整するステップが、少なくとも1つの他の電極要素より熱い前記電極要素のうちの少なくとも1つに印可される前記AC信号の前記デューティサイクルを減らすステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記調整するステップが、前記電極要素のうちのいずれか最も熱いものに印可される前記AC信号の前記デューティサイクルを減らすステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記調整するステップが、その温度が閾値レベルを超える前記電極要素のいずれかに印可される前記AC信号の前記デューティサイクルを減らすステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記調整するステップが、その加熱速度が閾値レベルを超える前記電極要素のいずれかに印可される前記AC信号の前記デューティサイクルを減らすステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記調整するステップが、その温度が第1の閾値レベルを超える前記電極要素のいずれかに印可される前記AC信号をオフに切り換えるステップ、および、その温度が第2の閾値レベルより低い前記電極要素の少なくとも1つに印可される前記AC信号をオンに切り換えるステップを含み、前記第2の閾値レベルが前記第1の閾値レベルより低い、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2019年12月31に出願された米国仮特許出願第62/955,664号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
TTフィールド療法は、腫瘍を治療するための定評のある手法である。
図1は、TTフィールドを送出するための従来技術のOptune(登録商標)システムの概略図である。TTフィールドは、(たとえば、グリア芽細胞腫を有する人について、
図2A~
図2Dに描かれるように)腫瘍に非常に近接して、患者の皮膚上に配置される4つのトランスデューサアレイ21~24を介して患者に送出される。トランスデューサアレイ21~24は、2対に配置され、各トランスデューサアレイは、マルチワイヤケーブルを介してAC信号発生器20に接続される。AC信号発生器が、(a)第1の時間期間の間、一方の対のアレイ21、22を通してAC電流を送り、これが、腫瘍を通る第1の方向を有する電場を誘起し、次いで、(b)第2の時間期間の間、他方の対のアレイ23、24を通してAC電流を送り、これが、腫瘍を通る第2の方向を有する電場を誘起し、次いで、処理の持続時間の間、ステップ(a)および(b)を繰り返す。
【0003】
各トランスデューサアレイ21~24は、フレックス回路を介して相互接続される、1組の容量結合した電極要素E(たとえば、9個の電極要素の組であって、その各々が、直径で約2cmである)として構成される。各電極要素は、その上に配設される誘電体層(より具体的には、高い誘電率を有するセラミック材料の層)を有する導電性基板を含む。各電極要素は、導電性医療用ゲルの層と接着テープとの間に挟まれる。アレイを患者上に置くと、医療用ゲルが、患者の皮膚の輪郭に適合して、体とデバイスの良好な電気的接触を確実にする。接着テープは、患者が彼らの日常の活動を行うとき、全アレイを患者上の定位置に保持する。
【0004】
トランスデューサアレイを介して送出される交流電流の振幅は、(トランスデューサアレイの下方の皮膚上で測定したときの)皮膚温度が、安全な閾値の41℃を超えないように制御される。患者の皮膚上の温度測定値は、トランスデューサアレイのディスクのうちのいくつかの下方に置かれるサーミスタTを使用して得られる。既存のOptune(登録商標)システムでは、各アレイが8個のサーミスタを含み、1つのサーミスタは、アレイ中のそれぞれのディスクの下方に位置決めされる。(ほとんどのアレイが8個より多いディスクを含み、この場合、温度測定は、アレイ内のディスクのサブセットの下方でだけ実施されることに留意されたい。)
【0005】
AC信号発生器20は、(4個のアレイ×アレイ毎に8個のサーミスタ)すべてで32個のサーミスタからの温度測定値を得、AC信号発生器中のコントローラは、温度測定値を使用して、患者の皮膚上の温度を41℃より下に維持するために、各対のアレイを介して送出される電流を制御する。電流自体は、AC信号発生器20から各アレイに延びる追加ワイヤ(すなわち、アレイ21~24の各々に1つのワイヤ28)を介して各アレイに送出される。また、アレイ21~24の各々用の追加ワイヤ(図示せず)は、すべてで8個のサーミスタ用の共通の戻り線として使用される。したがって、既存のOptuneシステム中のアレイ21~24上で終端する4つのケーブルの各々が合計で10個の導体を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US 16/686,918
【特許文献2】US 2018/0050200
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様は、被験者の体に交流電場を印可するための第1の装置に関する。第1の装置は、複数の電極要素と、被験者の体に対して電極要素を保持するように構成される支持体と、複数のサーミスタとを備える。サーミスタの各々が第1の端子と第2の端子とを有し、サーミスタの各々は、電極要素のうちの対応するそれぞれ1つで温度を検知するように位置決めされる。第1の装置は、複数の第1のピンおよび第2のピンを有するコネクタと、複数の第1の導体であって、その各々が、(a)第1のピンのうちのそれぞれ1つと、(b)電極要素のうちのそれぞれ1つと、(c)対応するサーミスタの第1の端子との間に導電性経路を実現する複数の第1の導体と、第2のピンとサーミスタのうちの少なくとも1つの第2の端子との間に導電性経路を実現する第2の導体とをやはり備える。
【0008】
第1の装置のいくつかの実施形態では、すべてのサーミスタの第2の端子は一緒に結線される。任意選択で、これらの実施形態では、すべてのサーミスタの第2の端子は、(a)フレックス回路上の少なくとも1つのトレースと(b)少なくとも1つのワイヤのうちの少なくとも1つを使用して、一緒に結線することができる。
【0009】
第1の装置のいくつかの実施形態では、複数のサーミスタが直列に配置され、サーミスタのうちの第1のもので始まり、サーミスタのうちの最後のもので終了し、最後のサーミスタを除くサーミスタのうちの各々の第2の端子が、それぞれの後続のサーミスタの第1の端子に結線され、第2の導体が、コネクタの第2のピンと最後のサーミスタの第2の端子との間に導電性経路を実現する。
【0010】
第1の装置のいくつかの実施形態では、第2の導体が、第2のピンと、サーミスタのうちのただ1つの第2の端子との間に導電性経路を実現する。
【0011】
第1の装置のいくつかの実施形態では、複数の電極要素が少なくとも4つの電極要素を備え、複数のサーミスタが少なくとも4つのサーミスタを備える。
【0012】
第1の装置のいくつかの実施形態では、複数の電極要素が少なくとも9つの電極要素を備え、複数のサーミスタが少なくとも9つのサーミスタを備える。
【0013】
第1の装置のいくつかの実施形態では、電極要素のうちの各々が、導電板と導電板上に配設される誘電体層とを備え、電極要素の各々の誘電体層が被験者の体に面するように、支持体は、被験者の体に対して電極要素を保持するように構成される。
【0014】
第1の態様のいくつかの実施形態では、すべてのサーミスタの第2の端子が一緒に結線され、第2の導体が、第2のピンとすべてのサーミスタの第2の端子との間に導電性経路を実現する。
【0015】
本発明の別の態様は、複数の電極要素を使用して被験者の体に交流電場を印可するための第2の装置に関する。複数の電極要素の各々が、それぞれのサーミスタと熱接触して配設される。第2の装置は、AC出力信号を発生するAC信号発生器と、複数のピンを含むコネクタとを備える。ピンの各々が、複数の電極要素のそれぞれ1つに対応する。第2の装置は、第1の複数のスイッチをやはり備える。第1の複数のスイッチの各々は、ピンのそれぞれ1つにAC出力信号を選択的に印可する、または印可しないのいずれかであるように構成される。第2の装置は、サーミスタの各々からの電気信号を受け入れ、対応する出力を発生するように構成される増幅器をやはり備える。サーミスタからの電気信号は、複数の電極要素に対応する同じピンを介して到達する。第2の装置は、増幅器の出力に基づいて、複数のピンの各々に印可されるAC信号のデューティサイクルを個別に調整するように、第1の複数のスイッチを制御するように構成されるコントローラをやはり備える。
【0016】
第2の装置のいくつかの実施形態では、コントローラは、(a)増幅器の出力に基づいて、電極要素のうちの少なくとも1つが他の電極要素より熱いときを判定し、(b)少なくとも1つのそれぞれのピンに印可されるAC信号のデューティサイクルを減らすように、第1の複数のスイッチを制御するように構成される。第2の装置のいくつかの実施形態では、コントローラは、(a)増幅器の出力に基づいて、電極要素のうちの少なくとも1つが閾値レベルより熱いときを判定し、(b)少なくとも1つのそれぞれのピンに印可されるAC信号のデューティサイクルを減らすように、第1の複数のスイッチを制御するように構成される。
【0017】
第2の装置のいくつかの実施形態では、複数の電極要素が少なくとも4つの電極要素を備え、複数のピンが少なくとも4つのピンを備え、第1の複数のスイッチが少なくとも4つのスイッチを備える。第2の装置のいくつかの実施形態では、複数の電極要素が少なくとも9つの電極要素を備え、複数のピンが少なくとも9つのピンを備え、第1の複数のスイッチが少なくとも9つのスイッチを備える。
【0018】
第2の装置のいくつかの実施形態は、第2の複数のスイッチをさらに備え、その各々は、複数のピンのうちのそれぞれ1つから増幅器の第1の入力に信号を経路指定するように配置される。これらの実施形態では、コントローラは、複数のピンの各々を順次選択し、サーミスタの各々からの温度読取値を順次得るように、第2の複数のスイッチを制御するようにさらに構成される。任意選択で、これらの実施形態では、コネクタが追加ピンを含み、装置が、追加ピンから増幅器の第2の入力に信号を経路指定するように配置される追加スイッチをさらに備える。
【0019】
第2の装置のいくつかの実施形態は、第2の複数のスイッチをさらに備え、その各々は、複数のピンのうちのそれぞれ1つから増幅器の第1の入力に信号を経路指定するように配置される。これらの実施形態では、コントローラは、複数のピンの各々を順次選択し、サーミスタの各々からの温度読取値を順次得るように、第2の複数のスイッチを制御するようにさらに構成される。コネクタが追加ピンを含み、装置が、(a)追加ピンから増幅器の第2の入力に信号を経路指定するように配置される追加スイッチ、および(b)その各々が複数のピンのうちのそれぞれ1つから追加ピンに信号を経路指定するように配置される第3の複数のスイッチをさらに備える。これらの実施形態では、コントローラは、第1の複数のスイッチからの所与のスイッチが開であるとき、コントローラが第3の複数のスイッチからのそれぞれ対応するスイッチを閉じるようにさらに構成される。
【0020】
第2の装置のいくつかの実施形態は、その各々が複数のピンのうちのそれぞれ1つから増幅器の第1の入力に信号を経路指定するように配置される第2の複数のスイッチ、および、その各々が複数のピンのうちのそれぞれ1つから増幅器の第2の入力に信号を経路指定するように配置される第3の複数のスイッチをさらに備える。これらの実施形態では、コントローラは、順番にサーミスタの各々の両方の端子に対応する複数のピンの対から増幅器の第1および第2の入力に信号を順次経路指定し、サーミスタの各々からの温度読取値を順次得るように、第2の複数のスイッチおよび第3の複数のスイッチを制御するようにさらに構成される。
【0021】
本発明の別の態様は、複数の電極要素を使用して被験者の体に交流電場を印可する第1の方法に関する。複数の電極要素の各々が、それぞれのサーミスタと熱接触して配設される。第1の方法は、交流電場が被験者内で誘起されるように、電極要素の各々に対してそれぞれのデューティサイクルでAC信号を印可するステップと、サーミスタの各々から信号を入力するステップと、入力信号に基づいて、電極要素の各々の温度を判定するステップと、判定した温度に基づいて、電極要素に印可されるAC信号のデューティサイクルを調整するステップとを含む。調整するステップの後に、電極要素のうちの少なくとも1つに印可されるAC信号のデューティサイクルは、電極要素のうちの別の1つに印可されるAC信号のデューティサイクルと異なる。
【0022】
第1の方法のいくつかの事例では、調整するステップは、少なくとも1つの他の電極要素より熱い電極要素のうちの少なくとも1つに印可されるAC信号のデューティサイクルを減らすステップを含む。第1の方法のいくつかの事例では、調整するステップは、電極要素のうちのいずれか最も熱いものに印可されるAC信号のデューティサイクルを減らすステップを含む。第1の方法のいくつかの事例では、調整するステップは、その温度が閾値レベルを超える電極要素のいずれかに印可されるAC信号のデューティサイクルを減らすステップを含む。
【0023】
第1の方法のいくつかの事例では、調整するステップは、その加熱速度が閾値レベルを超える電極要素のいずれかに印可されるAC信号のデューティサイクルを減らすステップを含む。第1の方法のいくつかの事例では、調整するステップは、その温度が第1の閾値レベルを超える電極要素のいずれかに印可されるAC信号をオフに切り換えるステップ、および、その温度が第2の閾値レベルより低い電極要素の少なくとも1つに印可されるAC信号をオンに切り換えるステップを含み、第2の閾値レベルが第1の閾値レベルより低い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】TTフィールドを送出するための従来技術のOptune(登録商標)システムの概略図である。
【
図2A】脳腫瘍を治療するための、人の頭上におけるトランスデューサアレイの位置決めを描く図である。
【
図2B】脳腫瘍を治療するための、人の頭上におけるトランスデューサアレイの位置決めを描く図である。
【
図2C】脳腫瘍を治療するための、人の頭上におけるトランスデューサアレイの位置決めを描く図である。
【
図2D】脳腫瘍を治療するための、人の頭上におけるトランスデューサアレイの位置決めを描く図である。
【
図3】各個別の電極要素について個別の導体を設けるトランスデューサアレイの第1の実施形態を描く図である。
【
図4】TTフィールドを被験者に印可するため、
図3のトランスデューサアレイの4つのコピーを使用するシステムのブロック図である。
【
図5】各個別の電極要素について個別の導体を設けるトランスデューサアレイの第2の実施形態を描く図である。
【
図6】TTフィールドを被験者に印可するため、
図5のトランスデューサアレイの4つのコピーを使用するシステムのブロック図である。
【
図7】
図4および
図6の実施形態中のバンク1Lおよび1Rにおける、スイッチの各々を実装するのに好適な回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付図面を参照して下で詳細に様々な実施形態が記載される。添付図面では、同様の参照番号は同様の要素を表す。
【0026】
上で記載した
図1の手法は、腫瘍にTTフィールドを送出するのに非常に効果的であるが、4つのトランスデューサアレイ21~24中の要素の各々と人体との間に良好な電気的接触が維持されない場合、治療の効果が低下することになる。これは、たとえば、トランスデューサアレイの1つまたは複数の要素の下方のヒドロゲルが経時的に乾燥する場合、または要素のうちの1つまたは複数の下方の髪の成長に起因して発生する可能性がある。
【0027】
たとえば、トランスデューサアレイ21~24の各々に9つの電極要素Eがあり、前部トランスデューサアレイ21上の単一の電極要素Eの下方のヒドロゲルが乾燥して、(a)そのトランスデューサアレイ21のすべての他の電極要素、および(b)他のトランスデューサアレイ22~24のすべての電極要素Eの下方に十分なヒドロゲルが存在すると仮定する。この状況では、単一の電極要素Eと人体との間の抵抗値は、他の電極要素のいずれかと人体との間の抵抗値よりも高くなる。また、この抵抗値の増加によって、単一の電極要素Eの温度が他の電極要素より上昇することが引き起こされる。
【0028】
この状況では、トランスデューサアレイ21~24の各々の中の電極要素Eのすべてが並列に結線されるため、前部および後部トランスデューサアレイ21、22上の残りの電極要素Eのすべてにおける温度が41℃より十分低いことができるにもかかわらず、前部アレイ21上の単一の電極要素Eの温度を41°より低く保つために、AC信号発生器20は、トランスデューサアレイ21、22の全前部/後部対に印可される電流を制限しなければならない。また、この電流の減少によって、腫瘍における電場の強度の、対応した減少が引き起こされ、このことによって、治療の効果が低下する可能性がある。
【0029】
本明細書に記載される実施形態は、有利なことに、トランスデューサアレイ上で終端するケーブルの導体の数を過度に増やすことなく、また、トランスデューサアレイ上またはトランスデューサアレイの近くに位置決めされる能動素子に依拠することなく、個別の電極要素を通して経路指定される電流を制御する能力を実現する。
【0030】
トランスデューサアレイ21~24の各々の中の電極要素Eのすべてが並列に結線される従来技術の構成とは異なり、本明細書に記載される実施形態は、トランスデューサアレイの各々の中の複数の電極要素の各々についての個別の導体を有する。この構成によって、アレイのいずれか1つの中の任意の所与の個別の電極要素について、電流を独立してオンとオフに切り換えることが可能になる。
【0031】
要素毎ベースで電流を制御するための1つの可能な手法は、
図1に図示される従来技術の構成で開始して、電極要素が並列に接続されず、個別のワイヤを各個別の電極要素に導くように、電極要素を再結線することである。しかし、この手法での問題点は、トランスデューサアレイに延びるケーブルの各々における導体の数をほとんど倍にすることが必要となる点である。たとえば、9つの電極要素を有するトランスデューサアレイでは、各ケーブルに合計で19本のワイヤが必要となる(すなわち、9つの電極要素の各々に対して個別のアクセスを実現するために9本、サーミスタからの信号用に追加の9本、プラス、すべてで9つのサーミスタ用の共通の戻り線として働く1本の追加ワイヤ)。また、各ケーブル中のワイヤの数の、この劇的な増加は、ケーブルを曲がりにくくより厄介にし、このことによって、システムは、使用するのが難しくなり、患者の適合性が減少する場合がある。
【0032】
各ケーブル中のワイヤの合計数を減らすための1つの方法は、トランスデューサアレイ上またはトランスデューサアレイの近くに能動素子(たとえば、電気的に制御されるスイッチ)を位置決めすることである。たとえば、1組のスイッチを使用して、電極要素のどれが任意の所与の瞬間にオンになるかを制御することができる(たとえば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2019年11月18日に出願された、US 16/686,918に記載されるように)。代替または追加で、アナログマルチプレクサを使用して、少ない数の導体を有する、サーミスタから得られた温度読取値をケーブル中へと多重化することができる(たとえば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、US 2018/0050200に記載されるように)。しかし、トランスデューサアレイ上またはトランスデューサアレイの近くに能動素子を位置決めすることによって、それ自体の欠点の組がもたらされる(たとえば、重さおよび複雑さが追加され、プラス、殺菌での潜在的な問題点)。
【0033】
図3は、所与のトランスデューサアレイに延びる各ケーブル中のワイヤの数に劇的な増加をもたらすことなく、また、トランスデューサアレイ上またはトランスデューサアレイの近くに位置決めされる能動素子を必要とすることなく、各個別の電極要素51に個別の導体を提供するトランスデューサアレイ50の第1の実施形態を描く。
図4に関連して下で記載されるように、好ましくは、トランスデューサアレイ50の4つのコピーを使用して、人の頭(または、他の体の部分)にTTフィールド治療が施される。
【0034】
各トランスデューサアレイ50は、
図3の実施形態中で参照を簡単にするために、E1~E9とラベル付けされる複数の電極要素52を含む。これらの電極要素52の各々は、その上に誘電体層が配設される、導電性基板(たとえば、円形金属基板)を有する。いくつかの好ましい実施形態では、これらの電極要素52の各々は、Optune(登録商標)システムで使用された従来技術の電極要素と同様の、(たとえば、2cmの直径を有する)ディスク形状で容量結合した電極要素であり、誘電体層は、高い誘電率を有するセラミック材料の薄い層を備える。しかし、Optune(登録商標)システムおよび(すべての要素が並列に結線される)
図1とは異なり、この
図3の実施形態では、個別の導体が電極要素52の各々からコネクタ57に延びる。これらの導体は、(個別の導体を一緒に単一のケーブル56へと集中させる)「ワイヤ経路指定」ブロック55のすぐ上に1~9と番号付けされる。いくつかの好ましい実施形態では、電極要素52の各々への電気的接続は、フレックス回路上の1つもしくは複数のトレースおよび/または1つもしくは複数の導電性ワイヤを含む。
【0035】
図3に描かれた実施形態では、容量結合した電極要素52のすべてが、支持構造物59によって定位置に保持される。電極要素52の誘電体層が被験者の体に面し、被験者の体と接触して位置決めできるよう、支持構造物は、被験者の体に対して電極要素を保持するように構成される。任意選択で、この支持構造物は、可撓性裏当て59(たとえば、発泡材料の層)を備えることができる。好ましくは、トランスデューサアレイ50が被験者の体に対して置かれるとき、電極要素52の誘電体層と被験者の体との間に、ヒドロゲルの層が配設される。支持構造物59の構築は、限定しないが、粘着布、発泡体、またはプラスチックシートを含む、当業者には明らかな種々の従来の手法のいずれかを使用して実施することができる。
【0036】
各トランスデューサアレイ50は、複数のサーミスタ54をやはり含み、1つのサーミスタが電極要素52の各々に位置決めされ、そのため、サーミスタ54は、それぞれの電極要素52の温度を検知することができる。これは、たとえば、各電極要素52の中心に孔または凹部を組み込むこと、および、この孔または凹部の中にサーミスタ54のうちのそれぞれ1つを位置決めすることによって達成することができる。サーミスタ54の各々は、第1の端子(すなわち、
図3における、サーミスタの下の端子)および第2の端子(すなわち、
図3における、サーミスタの上の端子)を有する。
【0037】
各トランスデューサアレイ50は、トランスデューサアレイ50の中に、また、トランスデューサアレイ50から電気信号を送信するために使用されるコネクタ57をやはり有する。コネクタ57は、複数の第1のピンおよび第2のピンを有する。図示される実施形態では、第1のピンの数は電極要素52の数と同じであり、第1のピンの各々は、それらの電極要素52のうちのそれぞれ1つに対応する。また、図示される実施形態では、Cとラベル付けされた単一の第2のピンだけがある。本明細書で使用する、「ピン」という用語は、コネクタ57のオスまたはメスのピンのいずれかのことを呼ぶことができることに留意されたい。
【0038】
各トランスデューサアレイ50は、複数の第1の導体をやはり有し、これらの第1の導体の数は、電極要素52の数に依存することになる。9つの電極要素52を含む、
図3に描かれた実施形態では、これらの導体は、1~9とラベル付けされる。これらの第1の導体の各々は、(a)コネクタ57中の第1のピンのうちのそれぞれ1つと、(b)電極要素52のうちのそれぞれ1つ(E1~E9)の導電性基板と、(c)対応するサーミスタ54の第1の端子との間に導電性経路を実現する。これらの第1の導体の各々は、複数のワイヤの切片および/またはフレックス回路上の複数のトレースを使用して任意選択で実装することができることに留意されたい。
【0039】
各トランスデューサアレイ50は、コネクタ57の第2のピンとサーミスタ54のうちの少なくとも1つの第2の端子(すなわち、
図3における上の端子)との間に導電性経路を実現する第2の導体をやはり有する。
図3に描かれた実施形態では、サーミスタのすべての第2の端子が一緒に結線される。この実施形態では、第2の導体が、コネクタ57の第2のピンとサーミスタ54のすべての第2の端子との間に導電性経路を実現する。第2の導体は、複数のワイヤの切片および/またはフレックス回路上の複数のトレースを使用して任意選択で実装することができる。
【0040】
コネクタ57は、個別の電極要素52の各々に対応する個別の第1のピンを有し、第1のピンの各々と電極要素52のそれぞれ1つとの間に導電性経路が存在するために、コネクタ57と対合するシステムは、コネクタ57上のそれぞれの第1のピンに信号を印可すること、または印可しないことのいずれかによって、電極要素52の各々を個別に選択的に通電すること、または通電しないことができる。
【0041】
また、コネクタ57は、サーミスタ54の各々の第1の端子に対応する個別の第1のピンを有し、第1のピンの各々とサーミスタ54のそれぞれ1つとの間に導電性経路が存在するために、コネクタ57と対合するシステムは、サーミスタ54の各々の第1の端子にアクセスできる。加えて、すべてのサーミスタ54の第2の端子がすべて一緒に結線され、第2のピン(Cとラベル付けされる)に接続されるために、コネクタ57と対合するシステムは、サーミスタ54の各々の第2の端子にやはりアクセスできる。結果として、コネクタ57と対合するシステムは、サーミスタ54のいずれかの抵抗値を測定することができる。これは、たとえば、各サーミスタ54を通して既知の電流を経路指定し、各サーミスタを横切って現れる電圧を測定することによって達成することができる。
【0042】
特に、コネクタ57上の任意の所与の第1のピンが、個別の電極要素52のそれぞれ1つに対応し、個別のサーミスタ54のそれぞれ1つにやはり対応するために、コネクタ57上の第1のピンの各々は、2つの機能を果たす。このことによって、ケーブル56の各々に含まなければならないワイヤの数が減り、このことが、次いで有利なことに、ケーブルをより曲げやすくし、厄介さを減らす。
【0043】
図4は、TTフィールドを被験者に印可するため、(
図3に関連して上で記載された)トランスデューサアレイ50の4つのコピーを使用するシステムのブロック図である。
図4では、これらの4つのコピーが、50A、50P、50L、および50Rとラベル付けされ、ここで、A、P、L、およびRは、それぞれ、前、後、左、および右を意味する。
図4の下部は、別個のブロックとして、AC電圧発生器35および「CADボックス」30を描いており、その後者は、温度測定ブロック32、コントローラ34、およびスイッチのバンク1L、2L、3L、1R、2R、および3Rを含む。いくつかの実施形態では、それら2つのブロック35、30中の構成要素は、2つの別個の筐体へと物理的に分割することができる。しかし、代替実施形態では、それら2つのブロック35、30中の構成要素は、単一の筐体へと組み合わされる。
【0044】
見やすいように、
図4には、左および右のチャネルだけが描かれる。しかし、残りのチャネル(すなわち、前および後のチャネル)は、それぞれ、左および右のチャネルと同じ方法で動作する。加えて、
図4のトランスデューサアレイ50の各々は、見やすいように、4つの電極要素52および4つのサーミスタ54だけで描かれる。しかし、実際のシステムは、より多い数(たとえば、9と30の間)の電極要素およびサーミスタを有することになり、トランスデューサアレイ50の各々に実際に使用される電極要素52の数に依存して、より多い数のある種の他の構成要素(たとえば、スイッチ、導体など)も有することになることが予期される。
【0045】
図4のシステムは、(双方向性アナログスイッチを使用して実装することができる)バンク2L中の電子制御スイッチを制御することによって、左チャネル50L中のサーミスタ54の温度を測定し、順番にサーミスタの各々を選択することができる。たとえば、サーミスタT1を選択するために、スイッチCおよびスイッチ1は閉じなければならず、サーミスタT2を選択するために、スイッチCおよびスイッチ2は閉じなければならず、などである。トランスデューサアレイ50L内のサーミスタT1~T4のうちの任意の所与の1つが選択された後、温度測定ブロック(TMB)32は、サーミスタの抵抗値を測定することによって、サーミスタの温度を判定することができる。これは、たとえば、任意の所与の時刻にスイッチのバンク2Lによって選択されるサーミスタのどれにでも、既知の電流が経路指定されるように、TMB32内に位置決めされる既知の電流(たとえば、150μA)を発生する電流源を使用することによって、達成することができる。既知の電流によって、選択したサーミスタ(T1~T4)を横切る電圧を現れさせ、この電圧を測定することによって、選択したサーミスタの温度を、判定することができる。サーミスタT1~T4の各々を順番に選択し、(選択したサーミスタにおける温度を示す)サーミスタの各々を横切って現れる電圧を順番に測定するプログラムをコントローラ34が走らせる。サーミスタの各々から温度の読取値を得るために使用することができる好適なハードウェアおよび手順の例は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれるUS 2018/0050200に記載される。
【0046】
右のチャネル50R中のサーミスタ54の温度を測定するのは、バンク2Lの代わりに、スイッチのバンク2Rが使用されることを除いて、左のチャネル50Lに関連して上で記載されたものと同じ手法を使用して達成される。他のチャネル50A、50Pについて、対応するスイッチのバンク(図示せず)がやはり設けられ、それらのチャネルでまた同様の手法が使用される。
【0047】
サーミスタ54(T1~T4)から得られた温度読取値に基づいて、対応する電極要素52(E1~E4)の各々に対する(AC電圧発生器35から生じる)電流をオンまたはオフのいずれかにするため、バンク1L中のスイッチをコントローラ34が制御する。たとえば、電極要素52の4つすべてで電流をオンのままにするために、バンク1L中のスイッチの4つすべてを閉じなければならない。電極要素E1に達する電流を中断するため、バンク1L中のスイッチ1を開かなければならず、電極要素E2に達する電流を中断するため、バンク1L中のスイッチ2を開かなければならず、などである。
【0048】
少数の電極要素が過熱し始めたら、人体に結合される平均電流の減少を減らすまたはなくすために、個別の電極要素を通って経路指定される電流を制御するステップを使用することができる。これが、次いで、腫瘍における電場の強度の減少を有利に減らすまたはなくすことができる。このことは、(41°に近づいていない)残りの電極要素を通過する電流に影響を及ぼすことなく、それらの電極要素についての平均電流を減らすために、41°に近づき始めた各個別の電極要素について、電流を交互にオンおよびオフに切り換えるようにコントローラ34をプログラムすることによって、達成することができる。
【0049】
たとえば、500mAの電流が、10個の電極要素を含むトランスデューサアレイを通過し、それらの電極要素のうちのただ1つだけが41°に近づき始めた状況を仮定する。その単一の電極要素の温度を41°未満に保つため、単一の電極要素を通る電流の10%低減が必要となるとさらに仮定する。(従来技術でのように)トランスデューサアレイ全体を通る電流を500mAから450mAに削減することによって、この電流の10%低減を達成する代わりに、バンク1L中のスイッチを制御して、その単一の電極要素を通る電流を90%デューティサイクルでオンおよびオフに切り換える一方で、残りの電極要素のすべてについてフルタイムで電流をオンのままにすることによって、コントローラ34は、単一の電極要素を通る平均電流を10%だけ削減することができる。電極要素の熱慣性の観点から、単一の電極要素の瞬間的な温度が41°を決して超えないように、切換速度は十分速くなければならないことに留意されたい。たとえば、電流を90msの間オンに切り換え、10msの間オフに切り換えることによって、90%のデューティサイクルを達成することができる。
【0050】
この手法が使用されると、残りの9つの電極要素を通る電流は、変わらないままとなることができ(すなわち、電極要素毎に50mA)、単一の電極要素を通る電流だけが45mAの平均に減らされる。トランスデューサアレイを通る、平均の正味合計電流は、ここで、495mAになり(すなわち、9×50+45)、これは、電極要素のいずれかで41°を超えることなく、著しく多い電流を人体の中に結合できることを意味する。
【0051】
コントローラ34は、単一の電極要素を通る電流の減少を補償するために、残りの9つの電極要素を通る電流を増やすように構成することさえできる。たとえば、残りの9つの電極要素を通る電流は、(たとえば、コントローラ34がAC電圧発生器35に電圧を1%増加させる要求を送信することによって)電極要素毎に50.5mAに増加することができる。この解決策が実装される場合、トランスデューサアレイ全体を通る平均の正味合計電流は、(9つの電極×50.5mA+1つの電極×50.5mA×0.9デューティサイクル)=499.95mAであり、これは、元々の500mAの電流に非常に近い。
【0052】
何らかの後の時刻に(または同時刻にでさえ)、第2の電極要素の温度が41°に近づき始めた場合、同様の技法(すなわち、100%から100%未満の何らかの点へのデューティサイクルの低減)を使用して、第2の電極要素の温度が41°を超えるのを防ぐことができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、この技法を使用して、これらの電極要素の各々を通って流れる電流を最大化する一方で、それらの要素の各々の温度を41°未満に保つため、電極要素の各々におけるデューティサイクルを個別にカスタマイズすることができる。任意選択で、所与の電極要素の温度が41°に近づき始めたときにだけデューティサイクルを減らすため改善行為を行う代わりに、アレイ中の電極要素のすべてにわたり温度を等化するように、所与のトランスデューサアレイ中の電極要素の各々で個別にデューティサイクルを予め設定するようにコントローラ34を構成することができる。たとえば、コントローラ34は、電極要素の各々で40.5°の周りから離れない温度を維持するように、各電極要素でデューティサイクルを個別に設定するように構成することができる。任意選択で、コントローラ34は、この結果に到達するために、必要に応じて電圧を増減するため、AC電圧発生器35に要求を送信するように構成することができる。
【0054】
この手法を使用して、あらゆる電極要素が可能な最大平均電流を(41°を超えることなく)伝達するのを確実にすることができ、このことによって、腫瘍中の場の強度の増加を実現し、それに対応して治療が改善される。
【0055】
いくつかの実施形態では、コントローラ34は、以下のように、電極要素のすべての温度を安全な閾値より下に(たとえば、41℃未満に)保つようにプログラムすることができる。電流が連続的にオン(すなわち、100%のデューティサイクル)であるように、バンク1L中のスイッチ1~4のすべてを閉じることによって開始する。次いで、TMB32を介して到達する信号に基づいて、コントローラ34は、電極要素の各々の温度が安全な閾値より下である上側閾値(たとえば、40℃)を超えるかを判定する。コントローラ34がこの条件を検出すると、コントローラ34は、対応するデジタル出力を所望のデューティサイクルでトグルすることによって、バンク1L中の対応するスイッチについてのデューティサイクルを減らす。これは、対応する電極要素52への電流を同じデューティサイクルで中断することになり、それによって、温度がその上側閾値を超える特定の電極要素52における平均電流が減る。電流の低減レベルは、デューティサイクルによって決定される。たとえば、50%デューティサイクルを使用すると電流を半分削減することになり、75%デューティサイクルを使用すると電流を25%だけ削減することになる。
【0056】
特に、この手順は、トランスデューサアレイ50上の電極要素52の特定のものへの電流だけを中断し、そのトランスデューサアレイ50上の残りの電極要素52への電流を中断しない。これは、従来技術を超える非常に著しい利益をもたらす。というのは、そのことによって、それらの電極要素のうちのほんの少数だけが熱くなるとき、電極要素を通して経路指定される電流を削減する必要性がなくなる、または必要性が減るためである。
【0057】
この点を説明するのに、数値例が有用となる。
図4の実施形態において、左のトランスデューサアレイ50Lおよび右のトランスデューサアレイ50Rは、それぞれ、被験者の頭の左側および右側に位置決めされ、バンク1Lおよび1R中のスイッチのすべてが100%デューティサイクルでオン状態であり、AC電圧発生器35が最初に500mAの電流を出力すると仮定する。左のトランスデューサアレイ50Lの電極要素52と右のトランスデューサアレイ50Rの電極要素52との間にAC電圧が現れ、500mAのAC電流が、電極要素52を通り、被験者の頭を通って容量結合されることになる。コントローラ34は、温度センサ54の各々から温度測定ブロック32を介して信号を入力することによって、トランスデューサアレイ50L、50Rの各々の中の電極要素52の各々の温度を監視する。ここで、左のトランスデューサアレイ50L中の電極要素52のうちの所与の1つの温度が40℃に上昇したと仮定する。この状態は、対応する温度センサ54からの信号を介してコントローラ34に報告されることになる。所与の電極要素52の温度が40℃に上昇したことをコントローラ34が認識すると、所与の電極要素52への電流を周期的に中断してより低い平均電流を維持するために、コントローラ34は、バンク1L中の対応するスイッチへ行く制御信号を所望のデューティサイクルでトグルすることになる。
【0058】
これは、電極要素52のうちのたった1つでさえ、温度が41℃に近づくとすぐに、電極要素のすべてを通って流れる電流を減らす必要がある、従来技術のデバイスとははっきりとした対照をなしている。
【0059】
残りの電極要素52のうちのただ1つのデューティサイクルが減らされる場合、元々の500mAの電流を維持すること(および、全電流を使用することによって生じる利益を享受すること)が可能であることに留意されたい。しかし、電極要素52のうちの十分なだけ多くのデューティサイクルが減らされる場合、元々の500mAの電流が低下しなければならない場合がある。これを達成するため、コントローラ34は、AC電圧発生器35に命令を送信することができる。AC電圧発生器35がこの要求を受信すると、AC電圧発生器35は、その出力電圧を減らし、このことによって、電流を低下させることになる。
【0060】
任意選択で、コントローラ34によって選択されるデューティサイクルは、所与の電極要素52に電流が印可された後に、(温度センサ54およびTMB32を介して測定されるような)所与の電極要素52が温度上昇する速度に基づいて制御することができる。より具体的には、所与の電極要素52が予期されるよりも2倍速く温度上昇するとコントローラ34が認識する場合、コントローラ34は、その電極要素について50%のデューティサイクルを選択することができる。同様に、所与の電極要素52が予期されるよりも10%速く温度上昇するとコントローラ34が認識する場合、コントローラ34は、その電極要素について90%のデューティサイクルを選択することができる。
【0061】
他の実施形態では、デューティサイクルを減らすことによって平均電流を確定的に削減する代わりに、上で記載したように所与の電極要素52への電流をオフにするためバンク1L中のスイッチを使用し、温度センサ54を使用して測定される温度が第2の温度閾値より下に(たとえば、38℃より下に)落ちるまで待つことによって、実時間温度測定に基づいて、所与の電極要素52における平均電流をコントローラ34が減らすことができる。温度がこの第2の温度閾値より下に落ちると、コントローラ34は、所与の電極要素52への電流を回復させることができる。これは、たとえば、スイッチがオン状態に戻るように、以前にオフにされたバンク1L中のスイッチの状態を制御することによって達成することができ、このことによって、導電体とそれぞれの電極要素52との間を電流が流れることが可能になる。これらの実施形態では、所与の電極要素52への電流は、所与の電極要素52の温度を安全な閾値より下に保つため、実時間温度測定に基づいて、オフおよびオンに繰り返し切り換えることができる。
【0062】
右のチャネル50R中の電極要素52の各々への電流を個別に切り換えるのは、バンク1Lの代わりにスイッチのバンク1Rが使用されることを除いて、左のチャネル50Lに関連して上で記載したものと同じ手法を使用して達成される。他のチャネル50A、50Pについて、対応するスイッチのバンク(図示せず)がやはり設けられ、それらのチャネルでまた同様の手法が使用される。
【0063】
(100%、90%、75%、50%などのデューティサイクルに言及する)上で記載した例は、所与のチャネル(たとえば、左/右チャネル)が活性化される時間の窓内のデューティサイクルを言及することに留意されたい。いくつかの好ましい実施形態では、AC信号発生器35は、(a)第1の時間期間(たとえば、1秒)の間に前/後のアレイ50A/50Pを通してAC電流を送り、これが、被験者の体の中の腫瘍を通して第1の方向で電場を誘起し、次いで、(b)第2の時間期間(たとえば、1秒)の間に左/右のアレイ50L/50Rを通してAC電流を送り、これが、腫瘍を通して第2の方向で電場を誘起し、次いで、処理の持続時間の間、ステップ(a)および(b)を繰り返す。これらの実施形態では、任意の所与のチャネル(すなわち、A/PチャネルまたはL/Rチャネルのいずれか)についてのデューティサイクル全体は、上で記載した例における値の半分となる。これは、1sの時間窓の期間に100%のデューティサイクルで動作し、その後、次の1sの時間窓の期間オフを維持することによって、50%のデューティサイクル全体がもたらされるためである。同様に、1sの時間窓の期間に90%のデューティサイクルで動作し、その後、次の1sの時間窓の期間オフを維持することによって、45%のデューティサイクル全体がもたらされる。
【0064】
任意選択で、追加のスイッチのバンク3Lを設けることができる。このバンク中のスイッチの各々は、サーミスタT1~T4のうちの対応する1つと並列に結線され、そのため、スイッチ1~4のうちの所与の1つが閉じると、サーミスタT1~T4のうちのそれぞれ1つが短絡されることになる。
【0065】
追加のスイッチのバンク3Lを含む理由は、(a)AC電圧発生器35からの電流が左のチャネル50Lの電極要素52、被験者の体、および右のチャネル50の電極要素52を通って流れ、(b)左のチャネル50Lの電極要素52のいずれかへの電力が、バンク1L中のスイッチのうちの対応する1つによってオフに切り換えられるとき、電流が、左のチャネル50L中のサーミスタ54を通って漏洩する可能性があるというためである。たとえば、バンク1L中のスイッチ#2だけがオフに切り換えられる(すなわち、開)と仮定する。スイッチ#1、3、4がオンに切り換えられる(すなわち、閉である)ため、AC電圧発生器35は、電極要素E1、E3、E4上に電圧を課することになる。サーミスタT1およびT2は、電流がE1からE2に流れるための経路を提供し、サーミスタT3およびT2は、電流がE3からE2に流れるための経路を提供し、サーミスタT4およびT2は、電流がE4からE2に流れるための経路を提供する。これは、E2と直列に結線されるE1、E3、およびE4の並列の組合せと等価である。この並列の組合せ中のサーミスタの数は電極要素52の数とともに直線的に増加するために、(並列の組合せと直列に結線される)単一のサーミスタE2中の電流が重要になる可能性がある。任意選択の追加のスイッチのバンク3Lを含むことによって、バンク3L中の対応するスイッチ#2を閉じることによるその単一のサーミスタE2中の電力損失を防ぐ能力をシステムに提供する。
【0066】
(追加のスイッチのバンク3Lを含むそれらの実施形態において)これを達成するため、バンク1L中のスイッチのうちの所与の1つが開であるときはいつでも、対応するバンク3L中のスイッチが閉であるようにコントローラ34をプログラムすることができる。これによって、以前の段落で記載したように、オフにした電極要素52に関連するサーミスタ54が多すぎる電力を散逸するのを防ぐことになる。
【0067】
追加のスイッチのバンク3Lを含むそれらの実施形態では、右のチャネル50R中のサーミスタ54の各々を個別にバイパスするのは、バンク3Lの代わりにスイッチのバンク3Rが使用されることを除いて、左のチャネル50Lに関して上で記載したものと同じ手法を使用して達成される。他のチャネル50A、50Pについて、対応するスイッチのバンク(図示せず)がやはり設けられ、それらのチャネルでまた同様の手法が使用される。
【0068】
図5は、所与のトランスデューサアレイに延びる各ケーブル中のワイヤの数に劇的な増加をもたらすことなく、また、トランスデューサアレイ上またはトランスデューサアレイの近くに位置決めされる能動素子を必要とすることなく、各個別の電極要素152に個別の導体を提供するトランスデューサアレイ150の第2の実施形態を描く。
図6に関連して下で記載されるように、好ましくは、トランスデューサアレイ150の4つのコピーを使用して、人の頭(または、他の体の部分)にTTフィールド治療が施される。
【0069】
各トランスデューサアレイ150は、参照を簡単にするために、E1~E9とラベル付けされる複数の電極要素152を含む。電極要素152は、
図3の実施形態に関して上で記載した電極要素52と同様である。この
図5の実施形態では、個別の導体が電極要素152の各々からコネクタ157に延びる。これらの導体は、(個別の導体を一緒に単一のケーブル156へと集中させる)「ワイヤ経路指定」ブロック155のすぐ上に1~9と番号付けされる。いくつかの好ましい実施形態では、電極要素152の各々への電気的接続は、フレックス回路上の1つもしくは複数のトレースおよび/または1つもしくは複数の導電性ワイヤを含む。
【0070】
いくつかの好ましい実施形態では、容量結合した電極要素152のすべてが、支持構造物159によって定位置に保持され、これは、
図3の実施形態中の支持構造物59と同様である。
【0071】
各トランスデューサアレイ150は、複数のサーミスタ154をやはり含み、1つのサーミスタが電極要素152の各々に位置決めされ、そのため、サーミスタ154は、それぞれの電極要素152の温度を検知することができる。これは、
図3の実施形態で、上で記載したように達成することができる。サーミスタ154の各々は、第1の端子(すなわち、
図5における、サーミスタの下の端子)および第2の端子(すなわち、
図5における、サーミスタの上の端子)を有する。
【0072】
各トランスデューサアレイ150は、トランスデューサアレイ150の中に、また、トランスデューサアレイ50から電気信号を送信するために使用されるコネクタ157をやはり有する。コネクタ157は、複数の第1のピンおよび第2のピンを有する。図示される実施形態では、第1のピンの数は電極要素152の数と同じであり、第1のピンの各々は、それらの電極要素152のうちのそれぞれ1つに対応する。また、図示される実施形態では、Nとラベル付けされた単一の第2のピンだけがある。本明細書で使用する、「ピン」という用語は、コネクタ157のオスまたはメスのピンのいずれかのことを呼ぶことができることに留意されたい。
【0073】
各トランスデューサアレイ150は、複数の第1の導体をやはり有し、これらの第1の導体の数は、電極要素152の数に依存することになる。9つの電極要素152を含む、
図5に描かれた実施形態では、これらの導体は、1~9とラベル付けされる。これらの第1の導体の各々は、(a)コネクタ157中の第1のピンのうちのそれぞれ1つと、(b)電極要素152のうちのそれぞれ1つ(E1~E9)の導電性基板と、(c)対応するサーミスタ154の第1の端子との間に導電性経路を実現する。
図3の実施形態でのように、これらの第1の導体の各々は、複数のワイヤの切片および/またはフレックス回路上の複数のトレースを使用して任意選択で実装することができる。
【0074】
複数のサーミスタ154は、直列に配置され、サーミスタのうちの第1のもの(すなわち、
図5中の左上)で始まり、サーミスタのうちの最後のもの(すなわち、
図5中の右下)で終了する。最後のサーミスタを除くサーミスタのうちの各々の第2の端子が、それぞれの後続のサーミスタの第1の端子に結線される。
【0075】
各トランスデューサアレイ150は、コネクタ157の第2のピンと最後のサーミスタ154の第2の端子(すなわち、
図5における右下のサーミスタの上の端子)との間に導電性経路を実現する第2の導体を有する。第2の導体は、複数のワイヤの切片および/またはフレックス回路上の複数のトレースを使用して任意選択で実装することができる。
【0076】
コネクタ157は、個別の電極要素152の各々に対応する個別の第1のピンを有し、第1のピンの各々と電極要素152のそれぞれ1つとの間に導電性経路が存在するために、コネクタ157と対合するシステムは、コネクタ157上のそれぞれの第1のピンに信号を印可すること、または印可しないことのいずれかによって、電極要素152の各々を個別に選択的に通電すること、または通電しないことができる。また、サーミスタ154の任意の所与の1つの2つの端子が、コネクタ157上の異なるピンに結線されるために、コネクタ157と対合するシステムは、サーミスタ154の各々の両方の端子にアクセスできる。結果として、コネクタ157と対合するシステムは、サーミスタ154のいずれかの抵抗値を測定することができる。
【0077】
特に、コネクタ157上の任意の所与の第1のピンが、個別の電極要素152のそれぞれ1つまたは2つに対応し、個別のサーミスタ154のそれぞれ1つにやはり対応するために、コネクタ157上の第1のピンの各々は、2つの機能を果たす。このことによって、ケーブル156の各々に含まなければならないワイヤの数が減り、このことが、次いで有利なことに、ケーブルをより曲げやすくし、厄介さを減らす。
【0078】
図6は、TTフィールドを被験者に印可するため、(
図5に関連して上で記載された)トランスデューサアレイ150の4つのコピーを使用するシステムのブロック図である。
図6では、これらの4つのコピーが、150A、150P、150L、および150Rとラベル付けされ、ここで、A、P、L、およびRは、それぞれ、前、後、左、および右を意味する。
図6の下部は、別個のブロックとして、AC電圧発生器35および「CADボックス」130を描いており、その後者は、温度測定ブロック132、コントローラ134、およびスイッチのバンク1L、2L、3L、1R、2R、および3Rを含む。いくつかの実施形態では、それら2つのブロック35、130中の構成要素は、2つの別個の筐体へと物理的に分割することができる。しかし、代替実施形態では、それら2つのブロック35、130中の構成要素は、単一の筐体へと組み合わされる。
【0079】
見やすいように、
図6には、左および右のチャネルだけが描かれる。しかし、残りのチャネル(すなわち、前および後のチャネル)は、それぞれ、左および右のチャネルと同じ方法で動作する。加えて、
図6のトランスデューサアレイ150の各々は、見やすいように、4つの電極要素152および4つのサーミスタ154だけで描かれる。しかし、実際のシステムは、より多い数(たとえば、9と30の間)の電極要素およびサーミスタを有することになり、トランスデューサアレイ150の各々に実際に使用される電極要素152の数に依存して、より多い数のある種の他の構成要素(たとえば、スイッチ、導体など)も有することになる。
【0080】
図6のシステムは、(双方向性アナログスイッチを使用して実装することができる)バンク2Lおよび3L中の電子制御スイッチを制御することによって、左チャネル150L中のサーミスタ154の温度を測定し、順番にサーミスタの各々を選択することができる。たとえば、サーミスタT1を選択するために、スイッチ1および2は閉じなければならず、サーミスタT2を選択するために、スイッチ2および3は閉じなければならず、サーミスタT3を選択するために、スイッチ3および4は閉じなければならず、最後のサーミスタ(すなわち、
図6中のT4)を選択するために、スイッチ4およびNは閉じなければならない。トランスデューサアレイ150L内のサーミスタT1~T4のうちの任意の所与の1つが選択された後、温度測定ブロック132は、
図4に関して上で記載したように、サーミスタの抵抗値を測定することによって、そのサーミスタの温度を判定することができる。
【0081】
右のチャネル150R中のサーミスタ154の温度を測定するのは、バンク2Lおよび3Lの代わりに、スイッチのバンク2Rおよび3Rが使用されることを除いて、左のチャネル150Lに関連して上で記載されたものと同じ手法を使用して達成される。他のチャネル150A、150Pについて、対応するスイッチのバンク(図示せず)がやはり設けられ、それらのチャネルでまた同様の手法が使用される。
【0082】
図4に関して上で記載したように、サーミスタ154(T1~T4)から得られた温度読取値に基づいて、対応する電極要素152(E1~E4)の各々に対する(AC電圧発生器35から生じる)電流をオンまたはオフのいずれかにするため、バンク1Lおよび1R中のスイッチ(ならびに、前および後のチャネル中の対応するスイッチ、図示せず)をコントローラ134が制御する。たとえば、電極要素152の4つすべてで電流をオンのままにするために、バンク1L中のスイッチの4つすべてを閉じなければならない。チャネル150L中の電極要素E1に達する電流を中断するため、バンク1L中のスイッチ1を開かなければならず、電極要素E2に達する電流を中断するため、バンク1L中のスイッチ2を開かなければならず、などである。
【0083】
図4に関して上で記載したように少数の電極要素が過熱し始めたら、人体に結合される平均電流の減少を減らすまたはなくすために、上で記載したように個別の電極要素を通って経路指定される電流を(たとえば、特定の電極要素へのデューティサイクルを減らすことによって)制御するステップを使用することができる。
【0084】
図7は、上で記載した
図4および
図6の実施形態中のバンク1Lおよび1R、ならびに、前および後のチャネルについての対応するバンク(図示せず)における、スイッチの各々を実装するのに好適な回路の概略図である。回路は、直列に結線される2つの電界効果型トランジスタ66、67を含み、これは、いずれかの方向に電流を通すことができる構成である。この回路のための好適なFETの一例は、BSC320N20NSEである。(
図7に図示されるダイオードは、FET66、67自体の中に本質的に含まれることに留意されたい。)2つのFET66、67の直列の組合せは、上で記載したコントローラ34のデジタル出力のうちの1つから到達する制御入力の状態に依存して、電力の流れを導通することまたはブロックすることのいずれかを行うことになる。直列の組合せが導通であるとき、電流は、共通の導体とそれぞれの電極要素52との間を流れることができる。一方で、FET66、67の直列の組合せが導通でないとき、電流は、共通の導体とそれぞれの電極要素52との間を流れない。
【0085】
図3および
図5に関して上で記載した実施形態では、電極要素52のすべては容量結合されており、支持構造物59は、電極要素52の誘電体層が被験者の体に面し、被験者の体と接触して位置決めできるよう、被験者の体に対して電極要素52を保持するように構成される。しかし、代替実施形態では、容量結合されない電極要素を使用する場合がある。この場合には、各電極要素の誘電体層が省略され、この場合に、支持構造物59は、被験者の体に対して電極要素52を保持し、そのため、電極要素52の導電面が被験者の体に面し、被験者の体と接触して位置決めすることができる。任意選択で、この実施形態では、トランスデューサアレイ50が被験者の体に対して置かれるとき、電極要素52の導電面と被験者の体との間に、ヒドロゲルの層を配設することができる。
【0086】
本発明は、ある種の実施形態を参照して開示されている一方で、添付の請求項に規定されるような、本発明の領域および範囲から逸脱することなく、記載した実施形態に対する多くの修正、代替、および変更が可能である。したがって、本発明は、記載される実施形態に限定されず、以下の請求項の言葉によって規定される全範囲およびその等価物を有することが意図される。
【符号の説明】
【0087】
20 AC信号発生器
21 トランスデューサアレイ
22 トランスデューサアレイ
23 トランスデューサアレイ
24 トランスデューサアレイ
28 ワイヤ
30 CADボックス
32 温度測定ブロック、TMB
34 コントローラ
35 AC電圧発生器
50 トランスデューサアレイ
50A トランスデューサアレイ
50P トランスデューサアレイ
50L トランスデューサアレイ
50R トランスデューサアレイ
52 電極要素
54 サーミスタ、温度センサ
55 ワイヤ経路指定ブロック
56 ケーブル
57 コネクタ
59 支持構造物、可撓性裏当て
66 電界効果型トランジスタ、FET
67 電界効果型トランジスタ、FET
130 CADボックス
132 温度測定ブロック
134 コントローラ
150 トランスデューサアレイ
150A トランスデューサアレイ
150P トランスデューサアレイ
150L トランスデューサアレイ
150R トランスデューサアレイ
152 電極要素
154 サーミスタ
155 ワイヤ経路指定ブロック
156 ケーブル
157 コネクタ
159 支持構造物
【国際調査報告】