(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】真菌病原体を予防及び防除するための殺真菌剤
(51)【国際特許分類】
A01N 47/46 20060101AFI20230222BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20230222BHJP
A61K 31/26 20060101ALI20230222BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20230222BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20230222BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20230222BHJP
A23L 3/3499 20060101ALI20230222BHJP
A23L 3/3535 20060101ALI20230222BHJP
A23L 2/44 20060101ALI20230222BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20230222BHJP
A23B 7/154 20060101ALI20230222BHJP
A23B 9/26 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
A01N47/46
A01P3/00
A61K31/26
A61P31/10
A61Q11/00
A61K8/46
A23L3/3499
A23L3/3535
A23L2/00 P
A23L2/52
A23B7/154
A23B9/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540919
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(85)【翻訳文提出日】2022-08-23
(86)【国際出願番号】 EP2020087718
(87)【国際公開番号】W WO2021136735
(87)【国際公開日】2021-07-08
(32)【優先日】2020-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522263471
【氏名又は名称】アグロサステイン エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ドゥベイ オルガ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥベイ シルヴァイン
(72)【発明者】
【氏名】ジンドロ カティア
(72)【発明者】
【氏名】シュネー シルヴァイン
【テーマコード(参考)】
4B021
4B117
4B169
4C083
4C206
4H011
【Fターム(参考)】
4B021MC02
4B021MK02
4B021MK19
4B021MK24
4B021MP02
4B117LC15
4B117LL07
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4B169KA01
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4B169KC22
4C083AC761
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4C083EE32
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4C206AA01
4C206AA02
4C206JA70
4C206MA01
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4C206MA72
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZB35
4H011AA01
4H011AA02
4H011AA03
4H011BB04
(57)【要約】
本発明は、アブラナ目由来の植物抽出物又は類似の化学構造を明らかにする分子に由来する、幅広い範囲の抗真菌活性を有する生物殺真菌剤の分野に関する。出願人らは、驚くべきことに、スルホニル及びスルフィニル含有脂肪族グルコシノレート誘導体、それらの副生成物及び合成類似体の組み合わせの、広域の活性スペクトルを有する効率的な抗真菌性化合物としての新しい用途を提供した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物における真菌病原体の予防又は治療における、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)及び1-イソチオシアナト-8-(メチルスルフィニル)-オクタン(8MSOH)の混合物からなる2種の活性化合物の組み合わせを含む組成物であって、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)は、前記2種の活性化合物の前記組み合わせの濃度で0.5~7%を占めることを特徴とする組成物の使用。
【請求項2】
1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)が、前記2種の活性化合物の前記組み合わせの濃度で1~4%を占めることを特徴とする請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項3】
前記1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)が、前記2種の活性化合物の前記組み合わせの濃度で1~2%を占めることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の組成物の使用。
【請求項4】
前記組成物が、植物において真菌毒性及び/又は静真菌性であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項5】
野外の植物培養物における、又はそのインビトロでの実施のための、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項6】
食品又は飲料における抗カビ剤としての、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)及び1-イソチオシアナト-8-(メチルスルフィニル)-オクタン(8MSOH)の混合物からなる2種の活性化合物の組み合わせを含む組成物であって、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)は、前記2種の活性化合物の前記組み合わせの濃度で0.5~7%を占めることを特徴とする組成物の使用。
【請求項7】
前記1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)が、前記2種の活性化合物の前記組み合わせの濃度で1~2%を占めることを特徴とする請求項6に記載の組成物の使用。
【請求項8】
1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)及び1-イソチオシアナト-8-(メチルスルフィニル)-オクタン(8MSOH)の混合物からなる2種の活性化合物の組み合わせを含み、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)は、前記2種の活性化合物の前記組み合わせの濃度で0.5~7%を占めることを特徴とする口腔衛生用品又はサニタリー用品における消毒剤。
【請求項9】
前記1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)が、前記2種の活性化合物の前記組み合わせの濃度で1~2%を占めることを特徴とする請求項8に記載の消毒剤。
【請求項10】
前記口腔衛生用品が、歯磨剤、トローチ剤、液体又は粉末の口腔洗浄薬、コーティング溶液、口臭予防剤、チューインガムから選択される請求項8又は請求項9に記載の消毒剤。
【請求項11】
ヒト又は動物の患者において真菌症を予防又は治療する方法において使用するための、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)及び1-イソチオシアナト-8-(メチルスルフィニル)-オクタン(8MSOH)の混合物からなる2種の活性化合物の組み合わせを含む組成物であって、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)は、前記2種の活性化合物の前記組み合わせの濃度で0.5~7%を占めることを特徴とする組成物。
【請求項12】
前記真菌症が、カンジダ・アルビカンス又はトリコフィトン・ルブルムへの感染によるものである請求項11に記載の使用するための組成物。
【請求項13】
1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)及び1-イソチオシアナト-8-(メチルスルフィニル)-オクタン(8MSOH)の混合物からなる2種の活性化合物の組み合わせを含む殺真菌剤組成物であって、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)は、前記2種の活性化合物の前記組み合わせの濃度で0.5~7%を占めることを特徴とする殺真菌剤組成物。
【請求項14】
1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)が、前記2種の活性化合物の前記組み合わせの濃度で1~4%を占めることを特徴とする請求項11に記載の殺真菌剤組成物。
【請求項15】
前記1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)が、前記2種の活性化合物の前記組み合わせの濃度で1~2%を占めることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の殺真菌剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アブラナ目(Brassicales)由来の植物抽出物又は類似の化学構造を明らかにする分子に由来する、幅広い範囲の抗真菌活性を有する生物殺真菌剤の分野に関する。特に、出願人らは、驚くべきことに、2種のスルホニル及びスルフィニル脂肪族グルコシノレート誘導体の組み合わせ、並びにそれらの副生成物の、広域の活性スペクトルを有する効率的な抗真菌性化合物としての新しい用途を提供した。
【背景技術】
【0002】
ヒトの人口は毎年増加し、2030年までに86億人に到達しようとしている。高いレベルの食物生産を維持するために、農業者は、1)高効率、手ごろなコストを有するが、環境及びヒトの健康に対する負の影響を示す化学殺虫剤;2)環境に対して有害な効果は有さないが低効率(既存の化学殺虫剤と比べて60%未満)及び高コストを示す生物殺虫剤、等の外的処理を使用する必要がある。このことは、多くの国々で生物殺虫剤を利用しやすくはないものにしており、高効率で手ごろなコストを示して環境にやさしい新規な有機処理を開発し市場に出す可能性を開く。
【0003】
過去数10年の間に、いくつかの生物学的アプローチ、例えばバチルス・スブチリス(枯草菌、Bacillus subtilis)及びトリコデルマ・ハルチアナム(Trichoderma harzanium)の適用が、実地でボトリティス・シネレア(B.cinerea)を予防するために開発されたが、それらは、その低効率に起因して農業であまり使われていない。
【0004】
西ヨーロッパの農業では、一般に使用される生物予防的な殺真菌剤は銅及び硫黄である。これらの殺真菌剤は、各降水後に再施用する必要があることに起因して、施用するのにコストがかかる。加えて、土壌中のこれらの金属の高い濃度は環境に対して負の影響を有する。
【0005】
結果として、環境に対してより配慮したものであることによるこれらの技術の代替方法、及び真菌病原体に対する非常に効率的な予防的処理を提供することが非常に重要である。
【0006】
植物真菌病原体は、毎年深刻な食物喪失につながる農学的な脅威のうちの1つである。
【0007】
真菌病原体の効率は、それらの簡単な自然界への分散、宿主表面への迅速な付着、及び植物への浸透を促す素早い発芽管発達が原因である。
【0008】
他方で、植物は、真菌病原体、例えば殺生菌に対するいくつかの防御機構を発達させた:a)病原体浸透の防止;b)活性酸素種のレベルの上昇;c)ジャスモン酸類、エチレン、サリチル酸及びアブサイシン酸等の防御ホルモンの誘導。さらには、いくつかの植物は、植物表面での真菌発育を防止し疾患形成を停止する対真菌毒性化合物を合成している。強い抗真菌活性を有する植物化合物の特定は、潜在的に、現存する化学処理を置き換えることができる新規な生物殺真菌剤の開発につながる可能性がある。
【0009】
アブラナ目は、広く分布し食物源として使用される経済的に重要な植物からなる。この植物の群は、独特の組の二次代謝産物 - グルコシノレートを有することが示された。過去数10年において、グルコシノレート誘導体は、抗癌性、抗炎症性及び殺虫性を有することが示された。
【0010】
例えば特開平11-139949号公報(小川香料株式会社(OGAWA KORYO CO LTD))は、特定の[オメガ]-アルケニルイソチオシアネート化合物又は特定の[オメガ]-アルキルチオアルキルイソチオシアネート化合物を配合することにより、強い刺激臭がなく、高い閾値を有し、揮発性が低く、かつ優れた抗菌抗真菌活性を有する抗菌抗真菌剤を得る方法を開示する。式:CH2CH(CH2)mNCS[(m)=2~10]を有する[オメガ]-アルケニルイソチオシアネート化合物(例えば3-ブテニルイソチオシアネート)又は式:RS(CH2)n2NCS[(n)=1~10;Rは1~4Cアルキルである]を有する[オメガ]-アルキルチオアルキルイソチオシアネート化合物(例えばメチルチオメチルイソチオシアネート)が、食物の中に0.01~100ppm、好ましくは1~50ppmの量で、又は経口衛生剤の中に約0.01~100ppmの濃度で配合される。
【0011】
同様に、特開平11-246319号公報(小川香料株式会社(OGAWA KORYO CO LTD))は、特定の[オメガ]-アルキルスルフィニルアルキルイソチオシアネートを有効成分として使用することにより、刺激臭をほぼ緩和し、種々の飲料及び食品に応用することができる抗菌抗真菌剤を得る方法を開示する。この抗菌抗真菌剤は、式:R-S(O)-(CH2)n-NCS(nは1~10であり、Rは1~4Cアルキルである)によって表される[オメガ]-アルキルスルフィニルアルキルイソチオシアネートを含む。一実施形態では、このイソチオシアネートは、3-メチルスルフィニルプロピルイソチオシアネート、6-メチルスルフィニル-プロピルイソチオシアネート等である。nが7以下である式Iの化合物は、セイヨウワサビの香料成分の中に含まれるが、その含有量は低い。上記式の化合物は、式:CH3S-(CH2)n-NCSの[オメガ]-メチルチオアルキルイソチオシアネートを過酸化物で酸化することにより調製される。
【0012】
特開2000-086414号公報(金印わさび株式会社(KINJIRUSHI WASABI KK))は、セイヨウワサビの芳香成分を有効成分として含有する、とりわけ真菌から細菌までの広い範囲に及ぶ抗菌性スペクトルを示し、その芳香成分がごく微量であっても強い静菌作用及び抗菌作用を奏する抗菌剤を得る方法を開示する。この薬剤は、有効成分として、n-メチルスルホニルアルキルイソチオシアネートというセイヨウワサビの芳香成分と、n-メチルチオアルキルイソチオシアネート、n-メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネート、及びアリルイソチオシアネートからなる群から選択される1種以上のセイヨウワサビの芳香成分とを含む。この薬剤は、有効成分として、n-メチルチオアルキルイソチオシアネート及びn-メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネートの両方というセイヨウワサビの芳香成分を含む。
【0013】
K.GILLIVER、「The Inhibitory Action of Antibiotics on Plant Pathogenic Bacteria and Fungi」、ANNALS OF BOTANY.、第10巻、第3号、1946年7月1日(1946-07-01)、271-282頁、XP55512767、GB ISSN:0305-7364、DOI:10.1093/oxfordjournals.aob.a083136は、土壌微生物と植物病原体との間の拮抗作用の例が長年認識されており、いくつかの例では、疾患防除の生物学的方法が作り上げられたと報告する。特定の抗生物質が真菌、細菌及び放線菌(アクチノマイセテス、Actinomycetes)の培養濾液から単離されており、そのうちのいくつかが植物病の原因生物に対して拮抗作用を有することが示されている。特に、ケイロリン(cheiroline)の抗真菌活性が開示されている。
【0014】
T Soteloらの「In vitro activity of glucosinolates and their degradation products against Brassica-Pathogenic bacteria and fungi」、Applied and Environmental Microbiology、2015年1月1日(2015-01-01)、432-440頁、XP55512754、DOI:10.1128/AEM.03142-14では、この研究の目的は、2種の細菌性(ザントモナス・カンペストリス・病原型カンペストリス(Xanthomonas campestris pv. campestris)及びシュードモナス・シリンゲ・病原型マキュリコラ(黒斑細菌病菌、Pseudomonas syringae pv. maculicola))のアブラナ属の病原体並びに2種の真菌性(アルテルナリア・ブラシカエ(Alternaria brassicae)及びスクレロティニア・スクレロティオラム(Sclerotinia scletoriorum))のアブラナ属の病原体のインビトロ増殖を抑制することに対する17種のグルコシノレート類(GSL)及びグルコシノレート加水分解生成物(GHP)及び異なるGSL富化アブラナ属作物の葉のメタノール抽出液の殺生物効果を評価することであった。GSL、GHP、及びメタノール性葉抽出物は、対照と比べて、試験した病原体の発育を阻害し、その効果は用量依存的であった。特に、この文献はスルフォラファンの抗真菌活性を開示する。
【0015】
L DROBNICAらの「Antifungal activity of Isothiocyanates and related compounds」、APPLIED MICROBIOLOGY、第15巻、第4号、1967、701-709頁は、ビフェニル(群「A」)、スチルベン(「B」)、アゾベンゼン及びベンゼンアゾナフタレン(「C」)、ナフタレン(「D」)、並びにさらなる多環縮合芳香族炭化水素(「E」)のイソチオシアネート誘導体の抗真菌活性に関する研究の結果を提示する。全部で48種の検討された化合物から、A群及びD群の化合物においてのみ抗真菌活性が認められた。B、C、及びEの群の誘導体は、水に極めて不溶性であり、それらの分子は非常に大きく、結果として、それらは、おそらくは真菌の胞子又は菌糸体へ通過することができない。-NCS基はその反応性を示すことができないということを示唆された。特に、この文献は、グルコケイロリン(glucocheirolin)、グルコエリソリン(glucoerysolin)及びグルコベルテロイン(glucoberteroin)の抗真菌活性を開示する。
【0016】
独国特許出願公開第17 93 450 A1号明細書(PHILIPS NV)は、特定のチオシアネート、すなわちスルフィニル-メチレンチオシアネート又はスルホニル-メチレンチオシアネートを含有する殺真菌性組成物、及び植物をカビによる感染に対して準備し保護する方法に関する。
【0017】
しかしながら、環境に対して配慮したものであるが、より強い対真菌毒性効果を示し、かつより広い範囲の真菌病原体に対して活性である天然分子を提供するというニーズがまだ存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平11-139949号公報
【特許文献2】特開平11-246319号公報
【特許文献3】特開2000-086414号公報
【特許文献4】独国特許出願公開第17 93 450 A1号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】K.GILLIVER、「The Inhibitory Action of Antibiotics on Plant Pathogenic Bacteria and Fungi」、ANNALS OF BOTANY.、第10巻、第3号、1946年7月1日(1946-07-01)、271-282頁、XP55512767、GB ISSN:0305-7364、DOI:10.1093/oxfordjournals.aob.a083136
【非特許文献2】T Soteloら、「In vitro activity of glucosinolates and their degradation products against Brassica-Pathogenic bacteria and fungi」、Applied and Environmental Microbiology、2015年1月1日(2015-01-01)、432-440頁、XP55512754、DOI:10.1128/AEM.03142-14
【非特許文献3】L DROBNICAら、「Antifungal activity of Isothiocyanates and related compounds」、APPLIED MICROBIOLOGY、第15巻、第4号、1967、701-709頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明では、出願人らは、特定の濃度で幅広い範囲の真菌病原体に対する強い対真菌毒性効果を顕す2種のスルホニル含有脂肪族グルコシノレート誘導体及びスルフィニル含有脂肪族グルコシノレート誘導体、すなわち1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)及び1-イソチオシアナト-8-(メチルスルフィニル)-オクタン(8MSOH)並びにそれらの副生成物の組み合わせを特定した。この物の組み合わせは、(微)生物殺真菌剤の新しい系統として使用することができる。
【0021】
本発明の目的の1つは、植物における真菌病原体の予防又は治療における、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)及び1-イソチオシアナト-8-(メチルスルフィニル)-オクタン(8MSOH)の混合物からなる2種の活性化合物又はそれらの副生成物の組み合わせを含む組成物であって、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)は、上記2種の活性化合物の組み合わせの濃度で(濃度において)0.5~7%を占める組成物の使用を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、ヒト又は動物の患者において真菌症を予防又は治療する方法において使用するための、本発明の化合物の組み合わせを含む組成物を提供することである。
【0023】
本発明のさらなる目的は、本発明の化合物の組み合わせを含む殺真菌剤組成物を提供することである。
【0024】
本発明は、上記の抗真菌剤、つまり当該殺真菌剤組成物を含有する食品、飲料又は経口衛生剤にも関する。
【0025】
本発明の他の目的及び利点は、以下の説明図を参照して進む以下の詳細な説明、及び添付の特許請求の範囲を概観すると当業者には明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】3種の真菌病原体(A.ラデキナ(A.radicina)、F.グラミネアラム(F.graminearum)、及びP.ククメリナ(P.cucumerina))に対して、2種の分子単独(8MSOH及び8MSOOH)及びそれらの組み合わせについて得られたED50(単位:μM)を表す。星印は、試験した比の最低ED50を示している。
【
図2】1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)及び1-イソチオシアナト-8-(メチルスルフィニル)-オクタン(8MSOH)の混合物の副生成物を表す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書に記載される方法及び材料と類似又は等価な方法及び材料を本発明の実施又は試験で使用することができるが、好適な方法及び材料が以下に記載されている。本明細書中で言及されるすべての公開公報、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりその全体を援用したものとする。本明細書で論じられる公開公報及び出願は、本願の出願日前のそれらの開示についてのみ提供される。本明細書中の記載には、本発明が、先行発明であるという理由からそのような刊行物に先行する権利がないということを認めるものと解釈されるものは何もない。加えて、それらの材料、方法及び例は、説明のためだけのものであり、限定することは意図されていない。
【0028】
矛盾する場合、定義を含めて本明細書が優先することになる。
【0029】
特段の記載がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明の主題が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書で使用する場合、本発明の理解を容易にするために、以下の定義が与えられる。
【0030】
用語「comprise(…を含む、備える)」は、include(…を含む、備える)の意味で一般に使用され、つまり1つ以上の特徴又は構成要素の存在を許容する。
【0031】
本明細書及び請求項で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈と明らかに矛盾する場合を除いて複数の指示対象を含む。
【0032】
いくつかの例における「1つ(1種)以上の」、「少なくとも」、「…が、これらに限定されない」又は他の類似の語句等の拡張する語及び語句の存在は、そのような拡張する語句が存在しなくてもよい場合により狭い場合が意図されているか又は必要とされるということを意味すると読まれるべきではない。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「対象」又は「患者」は当該技術分野で十分に認識されており、本明細書中では、イヌ、ネコ、ラット、マウス、サル、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ラクダ、最も好ましくはヒトを含む哺乳動物を指すためにほとんど同義で使用される。いくつかの実施形態では、上記対象は、治療の必要がある対象又は疾患若しくは障害を抱える対象である。しかしながら、他の実施形態では、上記対象は、健康な対象であることができる。この用語は、特定の年齢も性別も表さない。従って、雄であろうと雌であろうと、成体及び新生の対象が包含されることが意図されている。
【0034】
用語「有効量」は、生理的な効果を得るために必要な量を指す。この生理的な効果は、1回の施用用量により、又は反復的な施用により成し遂げられてもよい。投与される投与量は、当然、公知の要因、例えば特定の組成物の生理学的な特徴、対象の年齢、健康状態及び体重、症状の性質及び程度、併用療法の種類、処置の頻度、並びに望まれる効果によって変わってよく、当業者によって調整されることが可能である。
【0035】
「真菌」は、食物を外的に消化し、その細胞壁を通して栄養素を直接吸収する真核生物である。ほとんどの真菌は胞子によって繁殖し、菌糸と呼ばれる微視的な管状細胞からなる体(地衣体)を有する。真菌は従属栄養体であり、動物のように、自身の炭素及びエネルギーを他の生物から得る。いくつかの真菌は生きている宿主(植物又は動物)から自身の栄養素を得るので、生体栄養体(biotroph)と呼ばれる。他のものは死んだ植物又は動物から自身の栄養素を得るので、腐生生物(腐生菌)と呼ばれる。いくつかの真菌は生きている宿主に感染するが、自身の栄養素を得るために宿主細胞を殺す。これらは殺生菌と呼ばれる。
【0036】
本明細書中で「真菌病原体」とも呼ばれる「病原性真菌」は、植物、ヒト又は他の生物において疾患を引き起こす真菌である。およそ300種の真菌が、ヒトに対して病原性であることが知られている。ヒトに対して病原性である真菌の研究は、「医真菌学」と呼ばれる。真菌は真核生物であるが、多くの病原性真菌は微生物である。植物に対して病原性である真菌及び他の生物の研究は植物病理学と呼ばれる。
【0037】
全体ですべての公知の植物病の70%を占める植物病原性真菌には数千もの種がある。植物病原性真菌は寄生生物であるが、すべての植物寄生性真菌が病原体であるわけではない。植物寄生性真菌は、生きている植物宿主から栄養素を得るが、植物宿主は必ずしも何らかの症状を呈するわけではない。植物病原性真菌は、寄生生物であり、症状によって特徴づけられる疾患を引き起こす。
【0038】
「殺真菌剤」は、寄生性真菌又はそれらの胞子を死滅させる(本明細書中で、対真菌毒性と定義される)ために使用される殺生物性の化学的化合物又は生物有機体である。静真菌薬はそれらの増殖を阻害する。真菌は、農業において深刻な損害を引き起こし、収量、品質及び利益の重大な損失を生じる可能性がある。殺真菌剤は、動物又はヒトにおいて真菌症(真菌感染)と戦うために、農業及び医学の両方において使用される。卵菌は真菌ではないが、卵菌を防除するために使用される化学物質も殺真菌剤と呼ばれる。というのも、卵菌は植物に感染するために真菌と同じメカニズムを使用するからである。殺真菌剤は、接触性、層貫通性(translaminar)又は浸透性のいずれかであることができる。接触性殺真菌剤は、植物組織に取り込まれず、噴霧物が堆積した場所の植物だけを保護する。層貫通性殺真菌剤は、殺真菌剤を、上側の、噴霧された葉の表面から下側の噴霧されていない表面へ再分布する。浸透性殺真菌剤は、取り込まれて木部導管を通して再分布される。植物のすべての部分に移動する殺真菌剤はほとんどない。いくつかのものは局所的に浸透性であり、いくつかのものは上方向に移動する。
【0039】
「静真菌剤」は、(真菌を死滅させることなく)真菌の増殖を阻害する抗真菌剤である。fungistatic(静真菌剤、静真菌性の)との用語は、名詞及び形容詞の両方として使用されてもよい。静真菌剤は、農業、食品産業、塗料産業、及び医学で応用されている。
【0040】
本発明の目的の1つは、植物における真菌病原体の予防又は治療における、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)及び1-イソチオシアナト-8-(メチルスルフィニル)-オクタン(8MSOH)の混合物からなる2種の活性化合物又はそれらの副生成物の組み合わせを含む組成物であって、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)は、上記2種の活性化合物の組み合わせの濃度で0.5~7%を占める組成物の使用を提供することである。
【0041】
好ましくは、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)は、上記2種の活性化合物の組み合わせの濃度で1~4%を占め、より好ましくは、この1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)は、上記2種の活性化合物の組み合わせの濃度で1~2%を占める。
【0042】
しかしながら、特定の実施形態では、上記2種の活性化合物の組み合わせにおける1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)のより低い濃度は、実質的に0.5%未満の濃度、例えば0.4%又は0.3%又は0.2%でさえあってもよい。
【0043】
本明細書で使用する場合の用語「濃度」はモル濃度を指し、モル濃度は、容積モル濃度(molarity)で表される物質の濃度である。モル濃度(容積モル濃度、物質量濃度又は物質濃度とも呼ばれる)は、溶液の単位体積あたりの物質の量に関する溶液中の化学種、特に溶質の濃度の尺度である。容積モル濃度の単位は、リットルあたりのモル数又はmol/Lである。
【0044】
本発明の組成物は、植物において真菌毒性及び/又は静真菌性であり、野外の植物培養物に、又はそのインビトロでの実施のために適用することができる。
【0045】
「相乗効果」は、2以上の因子の複合作用がそれらの個々の効果の和よりも大きいときに起こるということは通常受け入れられる。換言すれば、相乗効果は、2以上の因子の複合作用が、単独で使用される場合のそれらの因子の性能に基づいて予測されうるものよりも大きいときに起こると言われる。
【0046】
「イソチオシアネート」は、イソシアネート基の酸素を硫黄で置き換えることにより形成される化学基-N=C=Sである。植物由来の多くの天然のイソチオシアネートは、グルコシノレートと呼ばれる代謝産物の酵素による変換によって生成される。アリルイソチオシアネート等のこれらの天然のイソチオシアネートは、からし油としても知られる。人工イソチオシアネートであるフェニルイソチオシアネートは、アミノ酸配列決定のためにEdman分解において使用される。
【0047】
本発明の化合物が1つのキラル中心を含む場合、当該化合物は、単一の異性体(R若しくはS)として、又は異性体の混合物、例えばラセミ混合物として提供されてもよい。本発明の化合物が複数のキラル中心を含む場合、当該化合物は、鏡像異性体として純粋なジアステレオマーとして、又はジアステレオマーの混合物として提供されてもよい。
【0048】
「副生成物」は、反応が完了したときに形成される化合物を指す。副生成物は、製造プロセス、生物学的プロセス又は化学反応に由来する二次生成物である。
【0049】
1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)及び1-イソチオシアナト-8-(メチルスルフィニル)-オクタン(8MSOH)の副生成物は、遊離アミン及びチオ尿素からなる。
【0050】
アミン副生成物は8-(メチルスルフィニル)オクチルアミン及び8-(メチルスルホニル)オクチルアミンである。チオ尿素副産物は
図2に与えられている。
【0051】
本発明の特定された化合物はいくつかの利点を提示し、それらは、環境的、植物的、保存的及び医学的な真菌病原体に対する対真菌毒性活性及び/又は静真菌活性を示す。
【0052】
さらに、本発明の特定された化合物は植物毒性を示さず、光の中で安定であり、植物に対して自由に施用することができる。
【0053】
本発明で使用される組成物は、真菌病原体に感染した果実、野菜及び切り花について、貯蔵設備の中で最低でも1週間、貯蔵寿命を延長することが示されている。使用される化合物(すなわち混合物)は、昆虫及びヒトに対しては毒性はないことが示された。本発明の組成物は、傷みやすい食品を追熟することに対して特定の影響を伴って容易に施用可能であり、追加の設置費用は必要ではない。本発明の組成物は、保管会社(すなわち、梱包のコストを低下させる)、木材産業、造園業者及び農業者にとって興味深い。
【0054】
従って、本発明の組成物は、植物における対真菌毒性剤として、及び/又は静真菌剤として使用されることができる。殺真菌剤として使用される本発明の組成物は、種々の植物又は植物科(宿主)を治療することにおいて大きな有効性を示した。実際、本発明の組成物は、ナス目、バラ目、ブドウ目、イネ目等を含む1400種を超える農学的に重要な作物又は植物を治療することに使用することができる。
【0055】
本発明の組成物は、植物のライフサイクルの任意の部分の間の植物の任意の部分とともに使用されてもよく、その例としては、種子、実生苗、植物細胞、植物、又は花が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
本発明によれば、すべての植物及び植物部分を治療することができる。「植物」は、望ましい及び望ましくない野生植物、栽培品種及び植物品種(植物品種保護権又は育成者権によって保護されているか否かによらない)等のすべての植物及び植物個体群を意味する。栽培品種及び植物品種は、従来の繁殖及び育種の方法によって得ることができる植物であることができ、この従来の繁殖及び育種の方法は、倍加半数体、プロトプラスト融合、ランダム変異導入及び部位特異的変異導入、分子マーカー若しくは遺伝子マーカーの使用による等の1つ以上の生物工学的な方法によって、又は生体工学的及び遺伝子工学的方法によって支援又は補完されることができる。植物部分は、植物のすべての地上及び地中の部分及び器官、例えば新芽、葉、花及び根を意味し、これらとしては、例えば葉、針状葉、茎、枝、花、子実体、果実及び種子、並びに根、球茎及び地下茎が挙げられる。作物並びに栄養繁殖材料及び有性繁殖材料、例えば挿し穂、球茎、地下茎、匍匐茎及び種子も植物部分に属する。
【0057】
本発明の組成物によって保護されることが可能な植物のうち、以下のような主要な農作物が言及されてもよい:トウモロコシ、大豆、綿花、アブラナ属の油料種子、例えばブラシカ・ナプス(セイヨウアブラナ、Brassica napus)(例えばキャノーラ)、ブラシカ・ラパ(Brassica rapa)、ブラシカ・ユンセア(カラシナ、B.juncea)(例えばカラシ(マスタード))及びブラシカ・カリナタ(アビシニアガラシ、Brassica carinata)、イネ、小麦、テンサイ、サトウキビ、エンバク、ライ麦、大麦、アワ(キビ)、ライ小麦、アマ(亜麻)、ブドウ、並びに種々の植物分類群の種々の果実及び野菜、例えばバラ科(Rosaceae)の各種(例えばリンゴ及びナシ等の仁果(pip fruit)、さらに核果、例えばアンズ、サクランボ、アーモンド及びモモ、漿果、例えばオランダイチゴ)、リベシオイダエ科(Ribesioidae)の各種、クルミ科各種(Juglandaceae)の各種、カバノキ科(Betulaceae)の各種、ウルシ科(Anacardiaceae)の各種、ブナ科(Fagaceae)の各種、クワ科(Moraceae)の各種、モクセイ科(Oleaceae)の各種、マタタビ科(Actinidaceae)の各種、クスノキ科(Lauraceae)の各種、バショウ科(Musaceae)の各種(例えばバナナの木及びバナナ園(banana trees and plantings))、アカネ科(Rubiaceae)の各種(例えば、コーヒー)、ツバキ科(Theaceae)の各種、アオギリ科(Sterculiceae)の各種、ミカン科(Rutaceae)の各種(例えばレモン、オレンジ及びグレープフルーツ);ナス科(Solanaceae)の各種(例えばトマト、ジャガイモ、トウガラシ、ナス)、ユリ科(Liliaceae)の各種、キク科(Compositiae)の各種(例えば、レタス、チョウセンアザミ及びチコリー(これは、ルートチコリー(root chicory)、エンダイブ(キクヂシャ)又はキクニガナを包含する))、セリ科(Umbelliferae)の各種(例えば、ニンジン、パセリ、セロリ及びセルリアック)、ウリ科各種(Cucurbitaceae sp.)(例えば、キュウリ(これは、ピックルキュウリ(pickling cucumber)、カボチャ、スイカ、ヒョウタン及びメロンを包含する)、ネギ科(Alliaceae)の各種(例えばタマネギ及びリーキ)、アブラナ科(Cruciferae)の各種(例えば、白キャベツ、赤キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ、タイサイ、コールラビ、ラディッシュ、セイヨウワサビ、クレソン、ハクサイ)、マメ科(Leguminosae)の各種(例えば、ラッカセイ、エンドウ及びインゲンマメ(例えば、クライミングビーン(climbing beans)及びソラマメ))、アカザ科(Chenopodiaceae)の各種(例えば、マンゴルド(mangold)、フダンソウ(spinach beet)、ホウレンソウ、ビートルート)、アオイ科(Malvaceae)(例えば、オクラ)、キジカクシ科(Asparagaceae)(例えば、アスパラガス);園芸作物及び森林作物(forest crops)、観賞用の植物及び花(切り花を含む);草、すなわちゴルフ場、芝地、並びにこれら作物の遺伝子組み換えが行われた相同物。
【0058】
例えば、本発明の組成物は、農作物、果樹及び野菜におけるうどんこ病、さび病、べと病、及び炭疸病等の一般の真菌病を防除するために使用することができる。
【0059】
加えて、本発明の組成物は、抵抗性の病気の治療のために、主に小麦うどんこ病、イネイモチ病、イネ黒穂病、メロンうどんこ病、トマトうどんこ病、リンゴさび病、スイカ炭疸病及び花のうどんこ病の防除のために使用することができる。さらに、当該組成物は、キュウリべと病、ブドウべと病、黒星病(赤カビ病)、炭疸病、及び斑点落葉病に対して非常に良好な防除効果を有する。
【0060】
本発明の特定の実施形態では、本発明の組成物は、真菌病原体によって引き起こされる樹木の病気、例えばバナナのパナマ病、トネリコ立ち枯れ病(ash dieback)の治療又は予防において使用することができる。
【0061】
さらに、本発明の組成物は、植物培養において屋外で直接使用することができるだけでなく、インビトロで例えば植物培養の実施のために使用することができる。
【0062】
驚くべきことに、殺真菌剤として使用される本発明に係る組成物は、4つの異なる門、8つの異なる綱及び14個の異なる目からの43種を超える真菌病原体(下記リストを参照)に対して極めて活性であることが見出されている。
【0063】
【0064】
特に、本発明の組成物は、担子菌門(Basidiomycota)、接合菌門(Zygomyceta)、卵菌門(Oomycota)又は子嚢菌門(Ascomycota)を含む門から選択される植物真菌病原体に対して有効であることが示されている。
【0065】
例えば、本発明の組成物は、以下の植物真菌病原体に対して特に有効であることが示されている:ボトリティス・シネレア、コレトトリカム・グラミニコーラ(Colletotrichum graminicola)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、スクレロティニア・スクレロティオラム(Sclerotiana sclerotiorum)、バーティシリウム・ダーリエ(Verticillium dahlia)、ミコスファエレラ・グラミニコラ(Mycospharella gramincola)及びスファセロテカ・レリアナ(Sphacelotheca reliana)。
【0066】
実施例2では、99/1の比での8MSOH/8MSOOHの組み合わせは、予防的及び治癒的様式で72種の真菌病原体のインビトロバイオアッセイにおいて効率的であることが証明された。
【0067】
別の実施形態では、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)及び1-イソチオシアナト-8-(メチルスルフィニル)-オクタン(8MSOH)の混合物からなる2種の活性化合物又はそれらの副生成物の組み合わせを含む組成物であって、この1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)が上記2種の活性化合物の組み合わせの濃度で0.5~7%を占める組成物は、食品又は飲料において抗カビ剤(antimycotic agent、抗真菌剤)として使用することができる。本発明は、上記の抗真菌剤を含有する食品及び飲料並びに経口衛生剤にも関する。
【0068】
好ましくは、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)は、上記2種の活性化合物の組み合わせの濃度で1~4%を占め、より好ましくは、この1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)は、上記2種の活性化合物の組み合わせの濃度で1~2%を占める。
【0069】
特に、本発明の抗真菌剤又は抗カビ剤は、食品の腐敗及び真菌又は病原体による汚染を防止するために、食品又は飲料に添加することができる。
【0070】
本発明の特定の実施形態では、本発明の組成物は、有利なことに、植物真菌病原体の発育を予防することによる、果実及び野菜の貯蔵寿命の延長のために、食品流通業者又は食品小売店によって使用されることが可能である。例えば、本発明の組成物は、野菜、漿果、果実又は切り花の貯蔵寿命を少なくとも1週間延長することができる。
【0071】
好ましくは、添加量は、上記食品に対して0.01~100ppmの範囲である。より好ましくは1~50ppmである。
【0072】
本発明の抗真菌剤が配合されるべき食品及び飲料の例としては、魚加工品、魚類ソーセージ、ハム、魚肉ソーセージ及びハム、すり身製品、魚類及び甲殻類の乾燥品、くん製品、明太子等の塩魚、塩漬けの魚、エビ半固体海産物;ハム、ソーセージ、ベーコン及びひき肉製品等の畜肉製品;サラダ、ハンバーガー、肉入り蒸し団子、煮豆等の調理済み食品、白菜、キュウリ、キムチ等の野菜の漬け物、サツマイモ、タタミディッシュ(tatami dish)、及びロータスローズマリー(lotus rosemary);甘味料及びスープ等の調味液;みそ及びしょうゆ等の香辛料;生の又はゆでたそば麺、うどん、パスタ等の麺類、フルーツジュース、炭酸飲料、茶、乳飲料、乳酸菌飲料、コーヒー、ココア、豆乳等の種々の飲料;果実及び野菜、粉ミルク、発酵乳、バター、チーズ、アイスクリーム、クリーム等の乳製品、キャラメル、キャンディー、チューインガム、ジャム、マーガリン等が挙げられる。
【0073】
さらに別の実施形態では、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)及び1-イソチオシアナト-8-(メチルスルフィニル)-オクタン(8MSOH)の混合物からなる2種の活性化合物又はそれらの副生成物の組み合わせを含む口腔衛生用品又はサニタリー用品における消毒剤であって、この1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)が上記2種の活性化合物の組み合わせの濃度で0.5~7%を占める消毒剤を提供する。
【0074】
好ましくは、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)は、上記2種の活性化合物の組み合わせの濃度で1~4%を占め、より好ましくは、この1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)は、上記2種の活性化合物の組み合わせの濃度で1~2%を占める。
【0075】
好ましくは、この口腔衛生用品は、歯磨剤、トローチ剤、液体又は粉末の口腔洗浄薬、コーティング溶液、口臭予防剤、チューインガムの中から選択される。
【0076】
本発明の抗カビ剤が配合される経口衛生剤の剤形は、液体調製物、固体調製物、及び半固体の薬剤のいずれであってもよく、歯磨剤、トローチ剤、液体又は粉末の口腔洗浄薬、コーティング溶液、口臭予防剤、チューインガム等であってよい。
【0077】
さらには、本発明の消毒薬は、まな板等の台所用品、歯ブラシ等の洗浄用具、筆記具、消しゴム及びノート等の文房具、下着製品等の衣類、ハンドル及びシート等の自動車内装品等、ワードプロセッサ及び冷蔵庫等の家電製品、畳マット及び壁紙等の室内装飾材料等の、いわゆる抗真菌性の物品(グッズ)等の各種製品、又は例えば建物若しくは病院の設備における表面の任意の滅菌に使用することができる。すなわち、上記抗カビ剤は、上記商品の製造段階で原料に練り込まれて混合されるか、又は必要に応じて界面活性剤等の補助剤がこの溶媒とともに製品表面に添加される。塗布またはスプレーとして噴霧して施用する。液体製剤またはスプレー製剤は、公衆トイレ(sanitary shed)、便座、浴室タイル用消毒薬及び防カビ剤として施用することができる。さらには、紙または布などの液体吸収性支持体に液体配合剤を含浸させることによって、消毒用クリーナーまたはウェットティッシュなどのサニタリー用品として応用することもできる。
【0078】
有利なことに、本発明の組成物は、細菌感染、真菌感染、酵母感染及び/又はウイルス感染からなるリストから選択される微生物感染の治療又は予防のためにも使用することができる。
【0079】
本発明の一実施形態によれば、細菌感染はグラム陽性感染又はグラム陰性感染を含む。
【0080】
特に、細菌感染又は酵母感染は、シュードモナス・エルジノーサ(緑膿菌、Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(エシェリキア・コリ、Escherichia coli)、スタフィロコッカス・アウレウス(黄色ブドウ球菌、S.aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(表皮ブドウ球菌、S.epidermis)、クレブシエラ・ニューモニエ(クレブシエラ肺炎桿菌、Klebsiellae pneumoniae)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、枯草菌(B.subtilis)、エンテロバクター・エロゲネス(E.aerogenes)、シトロバクター・フロインディ(C.freundii)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)の各種、連鎖球菌属(Streptococcus)の各種、エンテロコッカス属(Enterococcus)の各種、プロテウス属(Proteus)の各種、カンジダ属(Candida)の各種、アポフィソマイセス属(Apophysomyces)の各種、アスペルギルス属(Aspergillus)、ケカビ属(Mucor)の各種、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphymonas gingivalis)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、トレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)、タンネレラ・フォーサイセンシス(Tannerella forsythensis)又はアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)の感染である。
【0081】
ヒト又は動物の患者において真菌症を予防又は治療する方法において使用するための、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)及び1-イソチオシアナト-8-(メチルスルフィニル)-オクタン(8MSOH)の混合物からなる2種の活性化合物又はそれらの副生成物の組み合わせを含む組成物であって、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)が上記2種の活性化合物の組み合わせの濃度で0.5~7%を占める組成物を提供することが本発明の別の目的である。
【0082】
好ましくは、当該組成物は医薬組成物である。
【0083】
好ましくは、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)は、上記2種の活性化合物の組み合わせの濃度で1~4%を占め、より好ましくは、この1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)は、上記2種の活性化合物の組み合わせの濃度で1~2%を占める。
【0084】
本発明に係る医薬組成物は、ヒト又は動物の真菌病、例えば、真菌症、ツボかび感染(Bd;Bs)、皮膚病、白癬菌性疾患及びカンジダ症又はアスペルギルス属の各種、例えばアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)によって引き起こされる疾患等を治療的に又は予防的に処置するために有用な医薬の調製のために使用することができる。
【0085】
本発明の一実施形態では、上記真菌症は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)又はトリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)の感染に起因する。
【0086】
特に、本発明の抗真菌剤は、義歯性口内炎の原因となる酵母のうちの1つであると考えられるカンジダ・アルビカンスに対する優れた抗菌活性を有するため、本発明の抗真菌剤が従来の方法に従って経口衛生剤に配合されれば、カンジダ属感染は有効に予防され治療されることが可能である。
【0087】
さらに、本発明の抗真菌剤は、アルコール等の他の抗菌剤、セージ及びローズマリー等の香辛料材料、クエン酸、乳酸、酢酸等の有機酸などと組み合わせて使用することができる。
【0088】
本発明のさらに別の目的は、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)及び1-イソチオシアナト-8-(メチルスルフィニル)-オクタン(8MSOH)の混合物からなる2種の活性化合物又はそれらの副生成物の組み合わせを含む殺真菌剤組成物であって、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)が上記2種の活性化合物の組み合わせの濃度で0.5~7%を占める殺真菌剤組成物を提供することである。
【0089】
しかしながら、特定の実施形態では、上記2種の活性化合物の組み合わせにおける1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)のより低い濃度は、実質的に0.5%未満の濃度、例えば0.4%又は0.3%又は0.2%でさえあってもよい。
【0090】
好ましくは、1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)は、上記2種の活性化合物の組み合わせの濃度で1~4%を占め、より好ましくは、この1-イソチオシアナト-8-(メチルスルホニル)-オクタン(8MSOOH)は、上記2種の活性化合物の組み合わせの濃度で1~2%を占める。
【0091】
特に、本発明の殺真菌剤組成物は、担子菌門、接合菌門、卵菌門、子嚢菌門を含む門から選択される植物真菌病原体に対して有効であることが示されている。
【0092】
実施例2では、99/1の比での8MSOH/8MSOOHの組み合わせは、予防的及び治癒的様式で72種の真菌病原体のインビトロバイオアッセイにおいて効率的であることが証明された。
【0093】
例えば、本発明の殺真菌剤組成物は、以下の植物真菌病原体に対して特に有効であることが示されている:ボトリティス・シネレア、コレトトリカム・グラミニコーラ、フザリウム・オキシスポラム、スクレロティニア・スクレロティオラム、バーティシリウム・ダーリエ、ミコスファエレラ・グラミニコラ及びスファセロテカ・レリアナ。
【0094】
本発明の一実施形態では、本発明の殺真菌剤組成物は、許容できる担体又は希釈剤と組み合わせて、すなわち噴霧剤で施用される。
【0095】
本発明の殺真菌剤組成物は、施用のために水、又は別の液体で希釈することができる濃縮処方物であることが多いであろう。ある実施形態では、当該殺真菌剤組成物は、さらなる処理なしで噴霧又は施用される粒子又は粒剤へと処方されることも可能である。
【0096】
好ましくは、本発明で使用される担体又は希釈剤は植物学的に許容できるものである。
【0097】
本明細書で使用する場合、用語「植物学的に許容できる」処方物は、植物のライフサイクルの任意の部分の間の植物の任意の部分とともに使用するために一般に施用可能である組成物、希釈剤、賦形剤、及び/又は担体を指し、植物の任意の部分の例としては、種子、実生苗、植物細胞、植物、又は花が挙げられるが、これらに限定されない。この処方物は、農業分野で従来の手順、方法及びやり方に従って調製することができる。本発明の教示に従って、農学分野及び/又は化学分野の当業者は、所望の組成物を容易に調製することができる。最も一般的には、本発明の殺真菌剤組成物は、ニートで調製されるか若しくはその組成物の濃縮配合物から調製された水性若しくは非水性の懸濁液若しくはエマルションとして保存、及び/又は施用されるように処方されることが可能である。水溶性、水懸濁性又は乳化性の処方物は、固体(例えば、湿潤可能な粉末)に変換されるか又はそのような固体として処方されることも可能であり、この固体は、後で最終の処方物へと希釈されることが可能である。特定の処方物では、本発明の殺真菌剤組成物は、増殖培地、例えば、植物又は他の種類の細胞の増殖のためのインビトロ培地の中で、実験室の植物増殖培地の中で、土壌中で、又は種子、実生苗、根、茎、柄、葉、花若しくは植物全体に噴霧するために提供されることも可能である。
【0098】
これらの植物学的に許容できる処方物は、例えば、任意に乳化剤及び/又は分散剤、及び/又は泡形成剤である界面活性剤を使用して、本発明の殺真菌剤組成物を、液体溶媒、加圧下の液化ガス及び/又は固体担体である増量剤と混合することにより、公知の様式で製造される。使用される増量剤が水である場合、補助溶媒として、例えば有機溶媒を使用することも可能である。実質的に、好適な液体溶媒としては、キシレン、トルエン若しくはアルキルナフタレン等の芳香族炭化水素、クロロベンゼン、クロロエチレン若しくは塩化メチレン等の塩素化芳香族炭化水素若しくは塩素化脂肪族炭化水素、シクロヘキサン又はパラフィン、例えば石油留分等の脂肪族炭化水素、ブタノール若しくはグリコール等のアルコール及びそれらのエーテル若しくはエステル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン若しくはシクロヘキサノン等のケトン、ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシド等の強極性溶媒、又は他に水が挙げられる。液化ガス状の増量剤又は担体は、常温及び大気圧下でガス状である液体、例えばブタン、プロパン、窒素及び二酸化炭素等のエアロゾル噴霧剤を意味すると理解されるべきである。好適な固体担体は、例えば、カオリン、クレー、タルク、胡粉、石英、アタパルジャイト、モンモリロナイト又は珪藻土等の挽いた天然鉱物、及び微粉化されたシリカ、アルミナ及びケイ酸塩等の挽いた合成鉱物である。顆粒用の好適な固体担体は、例えば、方解石、大理石、軽石(粉)、セピオライト及び苦灰石(ドロマイト)等の粉砕して分画した天然石、又は無機物及び有機物の他の合成顆粒、並びにおがくず、ヤシ殻、トウモロコシの穂軸及びタバコの柄等の有機材料の顆粒である。好適な乳化剤及び/又は泡形成剤は、例えば、非イオン性乳化剤及びアニオン性乳化剤、例えばポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、例えばアルキルアリールポリグリコールエーテル,アルキルスルホネート,アルキルスルフェート、アリールスルホネート、又はタンパク質加水分解生成物である。好適な分散剤は、例えば、リグニン-亜硫酸廃液及びメチルセルロースである。
【0099】
本発明に係る殺真菌剤組成物は、エアロゾルディスペンサー、カプセル懸濁液、冷煙霧剤(cold fogging concentrate)、散粉性粉剤(dustable powder)、乳剤、水中油型エマルション、油中水型エマルション、カプセル化粒剤(encapsulated granule)、細粒剤(fine granule)、種子処理用流動性濃厚剤(flowable concentrate)、ガス剤(加圧下)、ガス生成剤、粒剤、温煙霧剤(hot fogging concentrate)、大型粒剤、微粒剤、油分散性粉剤、油混和性流動性濃厚剤、油混和性液剤、ペースト剤、植物用棒状剤(plant rodlet)、乾燥種子処理用粉剤、農薬粉衣種子(seed coated with a pesticide)、可溶性濃厚剤、可溶性粉剤、種子処理用溶液剤、懸濁液剤(suspension concentrate)(流動性濃厚剤)、微量(ULV)散布用液剤、微量(ULV)散布用懸濁液剤、水分散性顆粒剤、水分散性錠剤、泥水処理用水分散性顆粒剤、水溶性顆粒剤、水溶性錠剤(water soluble tablet)、種子処理用水溶性粉剤(water soluble powder for seed treatment)、及び、水和性粉剤(wettable powder)等の種々の形態で使用することができる。これらの組成物には、処理対象の植物又は種子に対して噴霧装置又は散粉装置等の適切な装置により施用される状態にある組成物のみではなく、作物に対して施用する前に希釈することが必要な市販の濃厚組成物も包含される。
【0100】
本発明の好ましい実施形態では、当該組成物は、超音波噴霧器を有する貯蔵設備の中で果実及び野菜に具体的に施用することができる。超音波噴霧器は、水を非常に小さい液滴(<10um)へと砕くために超音波を使用しており、水を空気中へ濃い冷煙(すなわち、沸騰水から生じたものではない)として噴霧する装置である。超音波噴霧器及びシステムの例は、すなわち、以下の米国特許に記載されている:米国特許第4,042,016号明細書;米国特許第4,058,253号明細書;米国特許第4,118,945号明細書;米国特許第4,564,375号明細書;米国特許第4,667,465号明細書;米国特許第4,702,074号明細書;米国特許第4,731,990号明細書;米国特許第4,731,998号明細書;米国特許第4,773,846号明細書;米国特許第5,454,518号明細書;米国特許第6,854,661号明細書。通常は、超音波噴霧器は、前面に排出口を備える軸方向孔を有する略円筒形の本体と、上記孔に結合されたガス供給口及び液体供給口と、湾曲した凸状の輪郭を有する上記前面の少なくとも一部分であって、この前面は、上記孔の排出口を取り囲む平らな中央環状領域を有する一部分と、上記孔の排出口末端から離間しそれと反対側にある共振器とを備える。そのような装置は、温室内の湿度レベルを制御するため、気耕栽培において栄養素を植物に送達するため、又は室内で最適な湿度レベルを作り出すために一般に使用されている。
【0101】
出願人らは、この技術が、貯蔵施設における果物及び野菜の鮮度の延長のために使用される製品(例えば、天然の殺真菌剤)に適用するために使用することができるということを実証した。この技術は、果物及び野菜のパッケージのためにスプレー又は他の施用法によって適用される処理を用いることができない(すなわち、果物及び野菜が、例えば、容器に貯蔵されるため、又はスプレーが果物及び野菜を損傷する可能性があるため、容易に直接スプレーすることができない)それら果物及び野菜を、効率的に処理することを可能にする。
【0102】
興味深いことに、本出願人らは、平均5ミクロン(5μm)で1~10μmを含む大きさの液滴で構成された15kgの霧を1時間あたりに発生する工業用MHS15超音波加湿器(http://www.mainlandmart.com/humidify.html)を使用して、30m3の貯蔵設備において果物及び野菜について有効性試験を行った。粉末によって表される本発明の組成物を、試験した植物種に応じて、400~600μMの投与量で噴霧器の水容器に添加した。粉末を水に溶解し、冷蒸気の形態で果実に施用した。出願人らは、全ての処理された作物上での製品の均等な分布、及びパッケージの以前は接近不可能な部分への容易な接近を確認した。
【0103】
本発明に係る殺真菌剤組成物は、1種以上の殺虫剤、駆除薬、誘引剤、減菌剤、殺菌剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、他の殺真菌剤、成長調節剤、除草剤、肥料、毒性緩和剤、情報物質、除香剤又は生物活性を有する他の化合物と混合することもできる。このようにして得られた混合物は、通常、広範な活性スペクトルを有する。他の殺真菌化合物との混合物は、特に有利である。
【0104】
殺菌性化合物との混合物を含む本発明に係る殺真菌剤組成物もまた、特に有利であり得る。適切な殺菌剤混合相手の例は、以下のリストで選択することができる:ブロノポール、ジクロロフェン、ニトラピリン、ジメチルジチオカルバミン酸ニッケル、カスガマイシン、オクチリノン、フランカルボン酸、オキシテトラサイクリン、プロベナゾール、ストレプトマイシン、テクロフタラム、硫酸銅及び他の銅調製物。
【0105】
本発明に係る治療において通常施用される当該殺真菌剤組成物の用量は、一般に、及び有利には、葉の処理における施用については10~800g/ha、好ましくは50~300g/haである。種子処理の場合には、施用される殺真菌剤組成物の用量は、一般に、及び有利には、種子100kgあたり2~200g、好ましくは種子100kgあたり3~150gである。
【0106】
本明細書に示される用量は、本発明に係る処理・治療の方法の具体例として与えられることが明らかに理解される。当業者は、特に、処理・治療される植物又は作物の性質に従って、施用の用量をどのように適応させるかを知っているであろう。
【0107】
当業者は、本明細書に記載された発明に対し、具体的に記載されたもの以外の変形及び変更が可能であるということはわかるであろう。本発明は、その趣旨又は本質的特徴から逸脱しないそのようなすべての変形及び変更を含むことが理解されるべきである。本発明はまた、本明細書において参照又は示される工程、特徴、組成物及び化合物のすべてを、個々に又は集合的に、並びに上記工程若しくは特徴の任意の及びすべての組み合わせ又は任意の2つ以上を含む。それゆえ、本開示は、例示された、限定的ではない全ての態様において考慮されるべきであり、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示され、均等の意味及び範囲内にある全ての変更は、本発明に包含されることが意図される。
【0108】
上述の説明は、以下の実施例を参照してより十分に理解される。しかしながら、そのような実施例は、本発明を実施する方法の例示であり、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【実施例】
【0109】
実施例1:
3種の真菌病原体のインビトロバイオアッセイ
8MSOH及び8MSOOHは、SpiroChem(スピロケム)(バーゼル、スイス)から入手した。両方の化合物を1Mのストック濃度でジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。インビトロバイオアッセイに使用した病原性真菌株は、アルテルナリア・ラデキナ(Alternaria radicina)及びフザリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearum)についてはAgroscope(www.mycoscope.bcis.ch)のmycotheca(マイコテカ)から得た。プレクトスファエレラ・ククメリナ(Plectosphaerella cucumerina)は市販の果実から単離し、Sanger配列決定によって同定した。
【0110】
PDBに予備溶解し24ウェル滅菌培養プレート(VWR International(ブイダブリュアール・インターナショナル)、ディーティコン(Dietikon)、スイス)に入れて、それぞれ10μM、75μM、150μM、250μM、375μM、500μM、700μM及び850μMの最終濃度にした8MSOH/8MSOOH混合物の異なる組み合わせを実装したPDAに、3種の植物真菌病原体の純粋培養物を接種した。最初に、8MSOH/8MSOOHについて、10%ごとの範囲の異なる組み合わせ、すなわち100/0、90/10、80/20、...、10/90及び0/100を使用して、各真菌についてバイオアッセイを3回(各回において三連)行った。2回目では、8MSOH/8MSOOHについて、最初のバイオアッセイにおいて効果が最適であった2%ごとの範囲の異なる組み合わせ、すなわち100/0、99.5/0.5、99/1、98/2、96/4、...、82/18及び80/20について、各真菌についてバイオアッセイを三連で行った。各バイオアッセイについて、真菌培養物の2mm寒天プラグを各ウェルに入れ、プレートを、ファイトトロン(80%相対湿度、23℃の一定温度)中で、交互の16時間の日中及び8時間の夜間のサイクルの下で7日間インキュベートした。ImageJ(http://imagej.net/Welcome)を用いて7日後に菌糸体増殖を測定した。EC50は、Schneeら、2013に記載されているように評価した。
【0111】
次いで、Chou(2006)におけるように相乗的真菌毒性活性を推定し、CompuSynソフトウェア(www.combosyn.com)を使用して、2種の分子の組み合わせについての併用効果(組み合わせ指数、combination index、CI)及び相乗作用の存在(CI<1)を判定した。各真菌種について得られた結果を表1及び
図1に要約する。それは、2種の分子単独について、これらの組み合わせについて得られたED
50(単位:μM)、及び試験した組み合わせの最低ED50についての(試験した濃度10~850μMの)より低い併用効果を示す。
【0112】
【0113】
結論:A.ラデキナ、F.グラミネアラム、及びP.ククメリナの最低ED50は、それぞれ、比99/1(ED50:166μM)、99/1(30μM)及び94/6(199μM)であった。3種の真菌病原体の最低ED50の最低CIは、それぞれ0.22、0.076及び0.491であり、これは、組み合わせた分子が強い相乗作用を有し、試験した真菌種に対して効率的であることを示す。
【0114】
実施例2:
72種の真菌病原体のインビトロバイオアッセイ
8MSOH及び8MSOOHは、SpiroChem(バーゼル、スイス)から入手した。両方の化合物を1Mのストック濃度でジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。インビトロバイオアッセイに使用した病原性真菌株は、Agroscope(www.mycoscope.bcis.ch)のmycotheca又は市販の果実から入手し、Sanger配列決定によって同定した。
【0115】
PDBに予備溶解し24ウェル滅菌培養プレート(VWR International、ディーティコン、スイス)に入れて、10μM、75μM、150μM、250μM、375μM、500μM、700μM及び850μMの最終濃度にした8MSOH/8MSOOH混合物(99/1)の1つの組み合わせを実装したPDAに、71種の植物真菌病原体の純粋培養物を接種した。各バイオアッセイについて、真菌培養物(治癒試験)の2mm寒天プラグを各ウェルに入れ、プレートを、ファイトトロン(80%相対湿度、23℃の一定温度)中で、交互の16時間の日中及び8時間の夜間のサイクルの下で7日間インキュベートした。同様に、各ウェルに濃厚胞子溶液を加えて発芽試験を行った。ImageJ(http://imagej.net/Welcome)を用いて7日後に菌糸体増殖を測定した。EC50は、Schneeら、2013に記載されているように評価した。
【0116】
以下のリストは、71種の真菌病原体についての発芽試験及び治癒試験のED50を要約する:アクレモニウム属の種(276;420)、アルテルナリア・ラデキナ(109;166)、アルテルナリア・テヌイッシマ(Alternaria tenuissima)(<250;1419)、アスペルギルス・シュードグラウカス(217;5)、アスペルギルス・べルシカラー(540;1404)、ビオネクトリア・オクロレウカ(Bionectria ochroleuca)(105;171.57)、ボトリオスファエリア・パルバ(Botryosphaeria parva)(<250;<250)、ボトリティス・シネレア(156;395)、クラドスポリウム・ハロトレランス(Cladosporium haloterans)(71;123)、クラドスポリウム・ランゲロニー(Cladosporium langeronii)(110;190)、クラドスポリウム属の種(59;322)、クラドスポリウム・テヌイッシマム(Cladosporium tenuissimum)(304;1113)、コレトトリカム・アキテイタム(222;211)、コレトトリカム・コッコデス(218;534)、コレトトリカム・グロエオスポリオイデス(162;376)、コレトトリカム・ムサエ(Colletotrichum musae)(95;117)、ディアポルテ・シュードマンギフェラエ(Diaporthe pseudomangiferae)(<250;640)、フザリウム・アベナセウム(276;440)、フザリウム・アベナセウム(384;707)、フザリウム・クルモラム(41;63)、フザリウム・グラミネウム(47;30)、フザリウム・インカルナツム(Fusarium incarnatum)(<250;182)、フザリウム・ムサエ(Fusarium musae)(256;551)、フザリウム・オキシスポラム(105;272)、フザリウム・プロリフェラタム(Fusarium proliferatum)(245;513)、フザリウム・バーチシリオイデス(55;94)、ゲオトリクム・カンディダム(>500;515)、ゲオトリクム・カンディダム(382;542)、グロエオスポリウム・アルブム(20;236)、ギグナルディア・ビドウェリイ(7;9.6’)、 ハンセニアスポラ・オプンティアエ(Hanseniaspora opuntiae)(278;306)、ハンセニアスポラ・ウバラム(Hanseniaspora uvarum)(270;310)、ヘルミントスポリウム・ソラニ(105;130)、ハイメノスシファス・フラキシヌス(1;98)、ハイホピキア・バートニイ(Hyphopichia burtonii)(75;160)、ラシオディプロディア・シュードテオブロマエ(Lasiodiploda pseudotheobromae)(<250;281)、ラシオディプロディア・テオブロマエ(210;190)、ラシオディプロディア・テオブロマエ(105;163)、ラシオディプロディア・テオブロマエ(<250;270)、モニリニア・フルクチゲナ(Monilinia fructigena)(30;43)、モニリニア・ラクサ(1;1)、ミロテシウム属(Myrothecium)の種(<50;172)、ネクトリア・シュードトリキア(Nectria pseudotrichia)(101;117)、ニグロスポラ・スファエリカ(Nigrospora sphaerica)(<50;129)、ペニシリウム・ケラルム(Penicillium cellarum)(61;115)、ペニシリウム・クラストザム(Penicillium crustosum)(274;547)、ペニシリウム・エキスパンサム(Penicillium expansum)(267;658)、ペニシリウム・エキスパンサム(301;525)、ペニシリウム・オクロサルモネウム(Penicillium ochrosalmoneum)(112;289)、ペニシリウム・ロックフォルティ(Penicillium roqueforti)(316;264)、ペニシリウム・ソリタム(Penicillium solitum)(201;753)、ペニシリウム・ソリタム(156;389)、ペニシリウム・ソリタム(110;382)、ペニシリウム・ブルピナム(272;93)、ペニシリウム・ワートマニー(107;190)、ペスタロチオプシス・ミクロスポラ(Pestalotiopsis microspora)(111;722)、フォーマ・ベタエ(13;266)、フォーマ・エクシグア(251;543)、ホモプシス属(Phomopsis)の種(<250;158)、フィトフトラ・アガチディシダ(Phytophthora agathidicida)株(1;79)、フィトフトラ・カクトラム(119;75)、フィトフトラ・インフェスタンス(242;270)、フィトフトラ・シリンゲ(36;78)、ピキア・フェルメンタンス(218;159)、ピキア・クルイベリ(Pichia kluyveri)(381;402)、ピキア・クドリアブゼビ(Pichia kudriavzevii)(159;323)、プレクトスファエレラ・ククメリナ(158;266)、リゾクトニア・ソラニ-(7;100)、スクレロチニア・スクレロチオルム(161;550)、サムニディウム・エレガンス(248;395)、トリコフィトン・ルブルム(Tricophyton rubrum)(275;204)。
【0117】
結論:99/1の比での8MSOH/8MSOOHの組み合わせは、予防的及び治癒的様式で多数の真菌病原体に対して効率的であることが証明された。
【0118】
【0119】
参考文献
1. Schnee S、Queiroz EF、Voinesco F、Marcourt L、Dubuis P-H、Wolfender J-L、Gindro K. 2013. Vitis vinifera canes,a new source of antifungal compounds against Plasmopora viticola,Erysiphe necator,and Botrytis cinerea. J.Agric.Food Chem. 61(23):5459-67.
2. Chou TC. 2006. Theoretical basis,experimental design,and computerized simulation of synergism and antagonism in drug combination studies. Pharmacol.Rev 58:621-681、2006.
【国際調査報告】