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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】蒸気治療システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/04 20060101AFI20230222BHJP
   A61B 5/0537 20210101ALI20230222BHJP
   A61B 5/0538 20210101ALI20230222BHJP
【FI】
A61B18/04
A61B5/0537
A61B5/0538
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565733
(86)(22)【出願日】2020-12-30
(85)【翻訳文提出日】2022-08-24
(86)【国際出願番号】 US2020067532
(87)【国際公開番号】W WO2021138466
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】62/955,288
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522260562
【氏名又は名称】フランシス メディカル, インク.
【氏名又は名称原語表記】FRANCIS MEDICAL, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ホエイ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ヘースティングズ,ロジャー,ノエル
【テーマコード(参考)】
4C127
4C160
【Fターム(参考)】
4C127AA06
4C127LL08
4C160MM53
(57)【要約】
【課題】幾つかの特徴のうちの何れかを含み得る蒸気送達システムが提供される。
【解決手段】
蒸気送達システムの1つの特徴は、凝縮可能な蒸気エネルギーを前立腺等の組織に適用して、前立腺を縮小、損傷、又は変性させることができることである。幾つかの実施形態において、蒸気送達システムは、前立腺被膜検出、針追尾、及び治療追尾を含む安全機能を含み得る。前立腺組織の安全且つ効果的な治療の為の方法が提示される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺治療装置であって、
患者への経尿道アクセス向けのサイズと構成である導入シャフトと、
前記導入シャフト内に摺動可能に配置された治療針と、
前記治療針に結合され、前記治療針を前記導入シャフトから前立腺尿道を通って前記患者の前立腺内に前進させるように構成された前進機構と、
前記治療針の遠位部分に配置され、前記前立腺の1つ以上の組織のパラメータを感知するように構成された少なくとも1つのセンサと、
前記少なくとも1つのセンサに動作可能に結合され、前記感知されたパラメータに基づいて、前記治療針が前記前立腺の前立腺被膜に接触するかどうかを判断するように構成された電子コントローラと、
を備えた装置。
【請求項2】
前記パラメータが、前記前立腺の1つ以上の組織の電気インピーダンスを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記前立腺の前記1つ以上の組織の前記電気インピーダンスを感知することが、更に、
固定周波数で一定の電流振幅の正弦波を前記少なくとも1つのセンサに通すステップと、
前記少なくとも1つのセンサの電圧振幅を測定するステップと、
前記電圧振幅と前記電流振幅の比を計算することによって、インピーダンス振幅を決定するステップと、
前記電圧振幅と前記電流振幅の間の位相シフトを決定するステップと、
前記位相シフトと前記インピーダンス振幅を用いて、前記1つ以上の組織の前記電気インピーダンスを計算するステップと、を含む請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのセンサが少なくとも1つの生体インピーダンス電極を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記電気インピーダンスの急激な変化があった場合に、前記治療針が前記前立腺の前立腺被膜に接触したと判断するように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記急激な変化は、25%を超える急激な変化を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記パラメータが前記前立腺の1つ以上の組織の電気抵抗を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記パラメータが前記前立腺の1つ以上の組織の電気容量を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記パラメータが、前記前立腺の1つ以上の組織によって前記少なくとも1つのセンサに加えられる力を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つのセンサが力センサを含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記力センサが、前記治療針の可撓性先端の背後に埋め込まれ、前記可撓性先端が、臨界力が前記可撓性先端に加えられた時に撓むように構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記治療針は、前記前立腺に蒸気を送達するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記治療針の近位部分に結合された磁石を更に備え、前記前進機構が前記磁石の周りに配置されたソレノイドアクチュエータを備え、前記ソレノイドアクチュエータが電流源に結合された押し巻線と電流源に結合された引き巻線とを備え、前記押し巻線は、前記磁石に第1の磁場を印加するように構成され、前記引き巻線は、前記磁石に第2の磁場を印加するように構成され、前記第1及び第2の磁場は、前記治療針の遠位先端を前記導入シャフト内の後退位置と前記導入シャフトの少なくとも部分的に外側の拡張位置との間で移動させる、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
患者の前立腺を治療する方法であって、
治療装置のシャフトを前記患者の中に経尿道挿入するステップと、
前記治療針を前記シャフトから前記患者の前立腺尿道を通って前記患者の前記前立腺内に前進させるステップと、
前記治療針に配置されたセンサで前立腺組織の少なくとも1つのパラメータを測定するステップと、
前記少なくとも1つのパラメータに基づいて、前記治療針が前立腺被膜に接触したと判断するステップと、
前記前立腺被膜に接触した場合に、前記治療針の前進を停止するステップと、を含む方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのパラメータが、前記前立腺組織の電気インピーダンスを含んでいる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記治療針が前記前立腺被膜に接触したと判断するステップが、前記測定された電気インピーダンスの急激な変化を検出するステップを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記急激な変化が、前記測定された電気インピーダンスの25%を超える急激な変化を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのパラメータが、前記前立腺組織によって前記治療針に加えられる力を含んでいる、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記治療針が前記前立腺被膜に接触したと判断するステップが、前記センサで臨界力を検出するステップを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記治療針から前記前立腺に蒸気を送達するステップを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前立腺治療システムであって、
治療装置を備え、前記治療装置が、
患者への経尿道アクセス向けのサイズと構成である導入シャフトと、
前記導入シャフト内に摺動可能に配置された治療針と、
前記治療針に結合され、前記治療針を前記導入シャフトから前立腺尿道を通って前記患者の前立腺内に前進させるように構成された前進機構と、を備えており、
前記治療針上に配置された少なくとも1つのトランスミッタと、
前記前立腺内での前記少なくとも1つのトランスミッタの位置を感知するように構成された外部追尾システムと、を備えたシステム。
【請求項22】
前記少なくとも1つのトランスミッタが磁石を含み、前記外部追尾システムが、前記磁石からのパルス磁場を感知して、前記前立腺内の前記少なくとも1つのセンサの位置を判定するように構成されている、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記外部追尾システムが、前記磁石が前記前立腺内を移動する際に前記磁石の周囲磁場の変化を感知するように構成されたトランスミッタコイルのアレイを備えている、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記外部追尾システムが経直腸プローブ上又は経直腸プローブ内に配置されている、請求項21に記載のシステム。
【請求項25】
前記経直腸プローブが経直腸超音波プローブを含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記磁石が電磁石を含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項27】
前立腺治療装置であって、
患者への経尿道アクセス向けのサイズと構成である導入シャフトと、
前記導入シャフト内に摺動可能に配置された治療針と、
前記治療針に結合され、前記治療針を前記導入シャフトから前立腺尿道を通って前記患者の前立腺内に前進させるように構成された前進機構と、
前記治療針に配置された少なくとも1つのトランスミッタと、
前記導入シャフトの遠位部分に配置され、前記導入シャフトの前記遠位部分に対する前記治療針上の前記少なくとも1つのトランスミッタの位置を感知するように構成された追尾センサと、を備えたシステム。
【請求項28】
前記少なくとも1つのトランスミッタが磁石を含み、前記追尾センサが、前記磁石からのパルス磁場を感知して前記少なくとも1つのセンサの位置を判定するように構成されている、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記外部追尾システムが、前記磁石が前記前立腺を通って移動する時の前記磁石の周囲磁場の変化を感知するように構成されたトランスミッタコイルのアレイを含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記磁石が電磁石を含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項31】
患者の前立腺を治療する方法であって、
治療装置のシャフトを前記患者に経尿道挿入するステップと、
前記治療針を前記シャフトから前記患者の前立腺尿道を通って前記患者の前記前立腺内に前進させるステップと、
前記前立腺内の前記治療針のリアルタイム位置を判定するステップと、
前記治療針の前記リアルタイム位置と前記前立腺を表示するステップと、
前記治療針から前記前立腺に焼灼治療を提供するステップと、
を含む方法。
【請求項32】
前記前進させるステップは、前記治療針及び前記治療針上に配置されたトランスミッタを前記前立腺内に前進させるステップを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記治療針の前記リアルタイム位置を判定するステップが、追尾システムで前記トランスミッタの周囲磁場を感知するステップを更に含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記治療装置の前記シャフト上に配置された追尾システムで前記トランスミッタの前記周囲磁場を感知するステップを更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記治療装置の外部の追尾システムで前記トランスミッタの前記周囲磁場を感知するステップを更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
経直腸プローブ上に配置された追尾システムで前記トランスミッタの前記周囲磁場を感知するステップを更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
経直腸超音波プローブ上に配置された追尾システムで前記トランスミッタの前記周囲磁場を感知するステップを更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記治療針の前記リアルタイム位置を前記経直腸超音波プローブからの超音波画像に登録するステップを更に含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記リアルタイム位置を表示するステップが、前記前立腺内の前記治療針の前記リアルタイム位置を表示するステップを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
患者の前立腺治療を追尾する方法であって、
蒸気治療システムで蒸気を発生させるステップと、
前記蒸気治療システムから前記患者の前立腺内の第1の位置に蒸気を送達するステップと、
前記蒸気治療システムから第1空気体積を前記第1の位置に注入するステップと、
前記前立腺内の前記第1空気体積を視覚化して、前記前立腺治療を追尾するステップと、を含む方法。
【請求項41】
蒸気を送達するステップが更に、
前記蒸気治療システムのシャフトを前記患者内に経尿道導入するステップと、
蒸気治療針を前記シャフトから前記前立腺の第1の位置に前進させるステップと、
を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
更に、前記蒸気治療システムから前記前立腺内の第2の位置に蒸気を送達するステップと、
前記蒸気治療システムから第2空気体積を前記第2の位置に注入するステップと、
前記前立腺内の前記第2空気体積を視覚化して、前記前立腺治療を追尾するステップと、
を含む請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記第1空気体積が前記第2空気体積より大きい、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記第1空気体積が前記第2空気体積より小さい、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
治療された前立腺の位置のマップを作成するステップを更に含む、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記第1空気体積を注入するステップが、蒸気を前記第1の位置に送達した後に行われる、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
前記第1空気体積を注入するステップと前記第1の位置に蒸気を送達するステップが同時に実行される、請求項40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年12月30日に出願された米国仮出願第62/955,288号の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
参照による援用
本明細書で言及される、特許及び特許出願を含む全ての刊行物は、個々の刊行物が参照により組み込まれることが具体的且つ個別に示されているのと同じ程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、低侵襲性アプローチを使用する前立腺癌の処置の為の装置及び関連する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ヒト男性の前立腺は、辺縁域、移行域、及び中心域の3つの区域に分類され得る。辺縁域(PZ)は、男性の前立腺の体積の約70%を構成している。この前立腺後面の被膜下部分は遠位尿道を取り囲んでおり、癌の70~80%は辺縁域の組織から発生する。中心域(CZ)は射精管を取り囲み、前立腺の体積の約20~25%を含む。中心域はしばしば炎症過程の場となる。移行域(TZ)は、前立腺肥大症(BPH)が発生する部位であり、正常な前立腺では腺要素の体積の約5~10%を含むが、BPHの場合にはその80%を占めることもある。移行域は、2つの外側前立腺葉及び尿道周囲腺領域を含む。移行域の周囲には、前立腺尿道、前線維筋間質(FS)、移行域と辺縁域の間の線維面(FP)といった天然バリアが存在する。前線維筋間質(FS)又は線維筋域は、主に線維筋組織である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前立腺癌の約70%から80%は前立腺の辺縁域に発生し、辺縁域に限局している場合がある。近年、生検の後に癌が発見された組織の領域のみを処置する、前立腺癌の限局性治療に関心が高まっている。RF焼灼エネルギーを用いたような先行技術の限局性治療処置は、処置を辺縁域組織又は前立腺内の組織に限定していない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前立腺治療システムが提供され、前記システムは、患者への経尿道アクセス向けのサイズと構成である導入シャフトと、前記導入シャフトに結合されたハンドルと、前記ハンドル内に配置され、凝縮性蒸気を発生するように構成された蒸気発生器と、前記蒸気発生器に連通し、前記導入シャフト内に摺動可能に配置された蒸気送達針と、前記針に取り付けられた磁石と、前記磁石の周りに配置されたソレノイドアクチュエータとを備え、前記ソレノイドアクチュエータは、前記針に制御式運動を提供して、組織内に展開し、定速又はパルスステップで前進し、前記シャフト内に後退し、更に、前記針、前記シャフト、及び前記ハンドルに配置され、前記針先端の位置及び組織内の方向に関するデータを提供するセンサと、前記ハンドル及び外部コンソールに配置され、標的組織への蒸気の安全且つ効果的な送達を保証し、標的組織外への蒸気送達を防止する為に互いに通信し、ユーザと通信する電子機器と、を備えている。
【0007】
前立腺治療装置が提供され、前記前立腺治療装置は、患者への経尿道アクセス向けのサイズと構成である導入シャフトと、前記導入シャフト内に摺動可能に配置された治療針と、前記治療針に結合され、前記治療針を前記導入シャフトから前立腺尿道を通って前記患者の前立腺内に前進させるように構成された前進機構と、前記治療針の遠位部分に配置され、前立腺の1つ以上の組織のパラメータを感知するように構成された少なくとも1つのセンサと、前記少なくとも1つのセンサに動作可能に結合され、前記感知したパラメータに基づいて前記治療針が前立腺の前立腺被膜に接触するかどうかを判断するように構成された電子コントローラとを備えている。
【0008】
幾つかの実施形態において、前記パラメータは、前記前立腺の1つ以上の組織の電気インピーダンスを含む。
【0009】
一実施形態において、前記前立腺の前記1つ以上の組織の前記電気インピーダンスを感知することは、固定周波数で一定の電流振幅正弦波を前記少なくとも1つのセンサに通すステップと、前記少なくとも1つのセンサの電圧振幅を測定するステップと、前記電圧振幅と前記電流振幅の比を計算することによってインピーダンス振幅を決定するステップと、前記電圧振幅と前記電流振幅の間の位相シフトを決定するステップと、前記位相シフトと前記インピーダンス振幅を用いて、前記1つ以上の組織の前記電気インピーダンスを計算するステップとを更に含む。
【0010】
一実施形態において、前記少なくとも1つのセンサは、少なくとも1つの生体インピーダンス電極を含む。
【0011】
幾つかの実施形態において、前記コントローラは、前記電気インピーダンスの急激な変化があった場合に、前記治療針が前記前立腺の前立腺被膜に接触したと判断するように構成されている。
【0012】
一実施形態において、前記急激な変化は、25%を超える急激な変化を含む。
【0013】
幾つかの実施例では、前記パラメータは、前記前立腺の1つ以上の組織の電気抵抗を含む。別の例では、前記パラメータは、前記前立腺の1つ以上の組織の電気容量を含む。更に別の例では、前記パラメータは、前記前立腺の1つ以上の組織によって前記少なくとも1つのセンサに加えられる力を含む。
【0014】
幾つかの実施形態において、前記少なくとも1つのセンサは力センサを含む。一実施例では、前記力センサは、前記治療針の可撓性先端の背後に埋め込まれ、前記可撓性先端は、臨界力が前記可撓性先端に加えられた時に撓むように構成される。
【0015】
幾つかの実施形態において、前記治療針は、前記前立腺に蒸気を送達するように構成されている。
【0016】
一実施例では、前記装置は、前記治療針の近位部分に結合された磁石を更に備え、前記前進機構は、前記磁石の周りに配置されたソレノイドアクチュエータを備え、前記ソレノイドアクチュエータは、前記電流源に結合された押し巻線と前記電流源に結合された引き巻線とを備え、前記押し巻線は、前記磁石に第1の磁場を印加するように構成され、前記引き巻線は、前記磁石に第2の磁場を印加するように構成され、前記第1及び第2の磁場は、前記治療針の遠位先端を、前記導入シャフト内の後退位置と前記導入シャフトの少なくとも部分的に外側の拡張位置との間で移動させる。
【0017】
患者の前立腺を治療する方法も提供され、治療装置のシャフトを前記患者の中に経尿道挿入するステップと、前記治療針を前記シャフトから前記患者の前立腺尿道を通って前記患者の前記前立腺の中に前進させるステップと、前記治療針に配置されたセンサで前立腺組織の少なくとも1つのパラメータを測定するステップと、前記少なくとも1つのパラメータに基づいて、前記治療針が前立腺被膜に接触したと判断するステップと、前記前立腺被膜に接触した場合に、前記治療針の前進を停止させるステップとを含む。
【0018】
幾つかの実施形態において、前記少なくとも1つのパラメータは、前記前立腺組織の電気インピーダンスを含む。
【0019】
別の実施形態において、前記治療針が前記前立腺被膜に接触したと判断するステップは、前記測定された電気インピーダンスの急激な変化を検出するステップを更に含む。幾つかの実施形態において、前記急激な変化は、前記測定された電気インピーダンスの25%を超える急激な変化を含む。
【0020】
一実施形態において、前記少なくとも1つのパラメータは、前記前立腺組織によって前記治療針に加えられる力を含んでいる。
【0021】
幾つかの実施例では、前記治療針が前記前立腺被膜に接触したと判断するステップは、前記センサで臨界力を検出するステップを更に含む。
【0022】
幾つかの実施形態において、前記方法は、前記治療針から前記前立腺に蒸気を送達するステップを更に含む。
【0023】
前立腺治療システムが提供され、前記前立腺治療システムは治療装置を備え、前記治療装置は、患者への経尿道アクセス向けのサイズと構成である導入シャフトと、前記導入シャフト内に摺動可能に配置された治療針と、前記治療針に結合され、前記治療針を前記導入シャフトから前立腺尿道を通って前記患者の前立腺内に前進させるように構成された前進機構と、前記治療針上に配置された少なくとも1つのトランスミッタとを備え、更に、前記前立腺内の前記少なくとも1つのトランスミッタの位置を感知するように構成された外部追尾システムを備えている。
【0024】
幾つかの実施形態において、前記少なくとも1つのトランスミッタは磁石を含み、前記外部追尾システムは、前記磁石からのパルス磁場を感知して、前記前立腺内の前記少なくとも1つのセンサの位置を判定するように構成されている。
【0025】
別の実施形態において、前記外部追尾システムは、前記磁石が前記前立腺内を移動する際に前記磁石の周囲磁場の変化を感知するように構成されたトランスミッタコイルのアレイを備えている。
【0026】
幾つかの実施形態において、前記外部追尾システムは、経直腸プローブ上又は経直腸プローブ内に配置されている。
【0027】
別の実施形態において、前記経直腸プローブは経直腸超音波プローブを含む。
【0028】
幾つかの実施形態において、前記磁石は電磁石を含む。
【0029】
前立腺治療装置が提供され、患者への経尿道アクセス向けのサイズと構成である導入シャフトと、前記導入シャフト内に摺動可能に配置された治療針と、前記治療針に結合され、前記治療針を前記導入シャフトから前立腺尿道を通って前記患者の前立腺内に前進させるように構成された前進機構と、前記治療針上に配置された少なくとも1つのトランスミッタと、前記導入シャフトの遠位部分上に配置され、前記導入シャフトの前記遠位部分に対する前記治療針上の前記少なくとも1つのトランスミッタの位置を感知するように構成された追尾センサと、を備えている。
【0030】
幾つかの実施形態において、前記少なくとも1つのトランスミッタは磁石を含み、前記追尾センサは、前記磁石からのパルス磁場を感知して前記少なくとも1つのセンサの位置を判定するように構成されている。
【0031】
別の実施形態において、前記外部追尾システムは、前記磁石が前記前立腺を通って移動する時の前記磁石の周囲磁場の変化を感知するように構成されたトランスミッタコイルのアレイを含む。
【0032】
幾つかの実施形態において、前記磁石は電磁石を含む。
【0033】
患者の前立腺を治療する方法が提供され、治療装置のシャフトを前記患者の中に経尿道挿入するステップと、前記治療針を前記シャフトから前記患者の前立腺尿道を通って前記患者の前記前立腺内に前進させるステップと、前記前立腺内の前記治療針のリアルタイム位置を判定するステップと、前記治療針の前記リアルタイム位置と前記前立腺を表示するステップと、前記治療針から前記前立腺に焼灼治療を提供するステップと、を含む。
【0034】
幾つかの実施形態において、前記前進させるステップは、前記治療針及び前記治療針上に配置されたトランスミッタを前記前立腺内に前進させるステップを更に含む。
【0035】
他の実施形態において、前記治療針の前記リアルタイム位置を判定するステップは、追尾システムで前記トランスミッタの前記周囲磁場を感知するステップを更に含む。
【0036】
幾つかの実施形態において、前記方法は、前記治療装置の前記シャフト上に配置された追尾システムで前記トランスミッタの前記周囲磁場を感知するステップを更に含む。
【0037】
幾つかの実施形態において、前記方法は、前記治療装置の外部の追尾システムで前記トランスミッタの前記周囲磁場を感知するステップを更に含む。
【0038】
幾つかの実施形態において、前記方法は、経直腸プローブ上に配置された追尾システムで前記トランスミッタの前記周囲磁場を感知するステップを更に含む。
【0039】
幾つかの実施形態において、前記方法は、経直腸超音波プローブ上に配置された追尾システムで前記トランスミッタの前記周囲磁場を感知するステップを更に含む。
【0040】
幾つかの実施形態において、前記方法は、前記治療針の前記リアルタイム位置を前記経直腸超音波プローブからの超音波画像上に登録するステップを更に含む。
【0041】
別の実施形態において、前記方法は、前記リアルタイム位置を表示するステップが更に、前記前立腺内の前記治療針の前記リアルタイム位置を表示するステップを含む。
【0042】
患者の前立腺治療を追尾する為の方法が提供され、蒸気治療システムで蒸気を発生させるステップと、前記蒸気治療システムから前記患者の前立腺内の第1の位置に蒸気を送達するステップと、前記蒸気治療システムから第1空気体積を前記第1の位置に注入するステップと、前記前立腺内の前記第1空気体積を視覚化して、前記前立腺治療を追尾するステップとを含む。
【0043】
一実施形態において、蒸気を送達するステップは、前記蒸気治療システムのシャフトを前記患者内に経尿道導入するステップと、蒸気治療針を前記シャフトから前記前立腺の第1の位置に前進させるステップと、を更に含む。
【0044】
一実施例では、前記方法は更に、前記蒸気治療システムから前記前立腺内の第2の位置に蒸気を送達するステップと、前記蒸気治療システムから第2空気体積を前記第2の位置に注入するステップと、前記前立腺内の前記第2空気体積を視覚化して、前記前立腺治療を追尾するステップとを更に含む。
【0045】
一実施形態において、前記第1空気体積は前記第2空気体積より大きい。
【0046】
別の実施形態において、前記第1空気体積は前記第2空気体積より小さい。
【0047】
他の実施形態において、前記方法は、治療された前立腺の位置のマップを作成するステップを更に含む。
【0048】
幾つかの実施形態において、前記第1空気体積を注入するステップは、蒸気を前記第1の位置に送達した後に実行される。他の実施形態において、前記第1空気体積を注入するステップと前記第1の位置に蒸気を送達するステップは同時に実行される。
【0049】
本発明をより良く理解する為に、及び本発明が実際にどのように実施され得るかを把握する為に、次に、幾つかの好ましい実施形態を、添付の図面を参照して、非限定的な例のみによって説明するが、その際、同様の参照文字は、添付図面における類似した実施形態全体に亘って一貫して対応する特徴を示している。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1A】乃至
図1E】蒸気送達システムの一実施形態を示す図である。
図2A】乃至
図2C】蒸気送達針先端のリアルタイム追尾を提供する為に蒸気送達システムと共に使用するTRUSプローブの一実施形態を示す図である。
図3A】乃至
図3B】蒸気焼灼の区域を追尾する為の、蒸気による空気の注入を示す図である。
図4A】乃至
図4C】針先端磁石又はコイルを使用して蒸気送達針の位置を追尾する一実施形態を示す図である。
図5A】乃至
図5C】運動追尾の為の先端コイルセンサを有する蒸気送達針を示す図である。
図6A】乃至
図6E】経直腸プローブによる蒸気送達針の位置の追尾の他の実施形態を示す図である。
図7】乃至
図8】針先端が前立腺壁に接触した時に検出するように構成された接触センサを有する蒸気送達針の更なる実施形態を示す図である。
図9A】乃至
図9B】前立腺被膜と接触した時に変形するように構成された非ニュートン先端を有する蒸気送達針の一実施例の図である。
図10】前立腺組織を処置する別の方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
一般に、前立腺の癌を治療する為の1つの方法は、加熱された蒸気を前立腺の内部に間歇的に導入し、蒸気で制御式に前立腺組織を焼灼することを含む。この方法は、外来患者ベースの処置において、各個別の蒸気処置につき50カロリー~600カロリーの適用熱エネルギー(及び各前立腺ローブに対する複数の処置を仮定する)用に蒸気を利用することができる。この方法は、前立腺尿道を損傷することなく、又、前立腺の外側の組織を損傷することなく、前立腺組織の局所的な焼灼を引き起こすことができる。
【0052】
本開示は、前立腺癌の処置を対象とし、より詳細には、中心域又は移行域の前立腺組織を焼灼することなく辺縁域の前立腺組織を焼灼する為のものである。
【0053】
システムは、水蒸気を含む蒸気媒体を送達する蒸気送達機構を含み得る。システムは、少なくとも60℃~140℃の温度を有する蒸気を提供するように構成された蒸気源を利用することができる。別の実施形態において、システムは、1秒~30秒の範囲の間隔で蒸気を送達するように構成されたコンピュータコントローラを更に備える。
【0054】
幾つかの実施形態において、システムは、蒸気と共に送達する為の薬理学的薬剤又は他の化学的薬剤若しくは化合物の供給源を更に備える。これらの薬剤は、限定されないが、麻酔薬、抗生物質、又はボトックス(Botox(登録商標))等の毒素、又は癌組織細胞を処置できる化学薬剤を含む。薬剤は又、シーラント、接着剤、グルー、瞬間接着剤等であってもよい。
【0055】
幾つかの実施形態において、患者への経尿道アクセス向けのサイズと構成である導入シャフトと、凝縮可能な蒸気を発生するように構成された蒸気発生器と、蒸気発生器と連通し、導入シャフト内に摺動可能に配置された蒸気送達針と、導入シャフト内の後退位置と導入シャフトの少なくとも部分的に外側の拡張位置との間で蒸気送達針を移動させ、前立腺尿道と前立腺被膜との間の任意の位置の組織に対して針を連続的又は段階的に前進又は後退させるように構成されたアクチュエータとを備えた前立腺治療装置が提供され得る。
【0056】
本開示は、組織を焼灼する為の蒸気の安全且つ効果的な送達を対象とする。蒸気送達装置は、患者の前立腺への経尿道アクセス向けに構成されたシャフトと、蒸気発生器と、1つ以上の蒸気送達ポートを含み得る蒸気送達針とを含み得る。一実施形態において、蒸気は、蒸気送達針のポート(複数可)を介して送達されて癌組織又は前癌組織を焼灼する。好ましい実施形態において、蒸気送達針は、前立腺尿道を穿刺し、蒸気が送達される前立腺内の1つ以上の部位に前進するように構成される。複数の穿刺部位は、或る部位で送達された蒸気が以前の穿刺部位の入口穴を通って出ることができるように、余り接近することなく、前立腺内の組織焼灼の重複区域を提供する為に離隔され得る。
【0057】
より具体的には、本開示は、前立腺被膜を貫通する可能性なしに、蒸気送達針を含む蒸気送達装置の、前立腺内及び全体へのナビゲーションを対象とする。幾つかの実施形態において、蒸気送達針の先端は、大きい展開力の下では前立腺尿道を貫通する程度であるが、より小さいナビゲーション力の下では前立腺被膜を穿刺することはできない程度に鈍化されている。他の実施形態において、電極が針先端に配置され、先端に隣接する組織の電気インピーダンスを測定する。組織インピーダンス(抵抗と静電容量の両方)は、組織が前立腺内の細胞性から被膜壁の繊維性へと変化するにつれて、急激に変化する。
【0058】
蒸気送達針先端に組織によって及ぼされる力を感知し、前立腺被膜を穿刺するのに十分な大きさの力が接近してきた時にユーザにアラートする為のシステム及び方法が開示される。一実施形態において、線形力センサ又は変位センサが、蒸気送達針上を含む蒸気送達装置上に配置されてもよい。或いは、システムは、指定された先端力を超過した時に作動するスイッチ閉鎖機能を含んでもよい。
【0059】
別の実施形態において、針は、針が取り付けられている電子ソレノイドを介して針に力を加えることによって前進させられる。ソレノイドに隣接するセンサは、ソレノイドの磁石と針の変位を測定する。閉ループアルゴリズムを使用して、針は指定された距離、又は指定された速度で前進される。針が障害物に当たった場合、針の動きを継続させる為にソレノイドの電流が自動的に増加される。臨界電流は、前立腺組織によって針に及ぼされる力と等しく、且つ反対である針上の臨界力に対応する。臨界力は、針が前立腺被膜に遭遇したことを示すと定義され得る。この時点で、ソレノイド力はゼロにされ、操作者は、前立腺被膜の壁であり得る臨界障害物に遭遇したことをアラートされ得る。
【0060】
別の実施形態において、針先端は、尿道を穿刺する為に針の展開中に急速に前進された時に針先形状を維持するが、より小さい緩慢に作用する力が加えられた時に鈍い先端に変形する非ニュートン材料から構築され得る。鈍い先端形状は、前立腺被膜を貫通できない。
【0061】
好ましい実施形態において、蒸気送達針先端は、前立腺組織のナビゲーション中に針ドライバによって加えられる力の下で前立腺被膜の貫通が起こり得ない程度に鈍化される。他方、最初の針展開の間に達成される遥かに高い針速度は、鈍化した先端が尿道壁を貫通するのに十分である。一実施形態において、針ドライバはソレノイドを含む。針の初期展開は10~15ミリ秒で起こり得、針は、鈍い針先端が尿道壁を貫通するのに十分な、1m/secを超える速度に達することができる。前立腺組織を通過する際、ソレノイドは、針が小さい指定距離を移動するのに十分な時間である、約1~2ミリ秒の間作動し、摩擦力により、針は、短いパルス持続時間の間にその最大極限速度に到達せず、針は、1m/sec未満、又は0.5m/sec未満である速度に到達する。一実施形態において、針は、前立腺組織を通して連続運動で前進され、これは、初期展開力より遥かに小さいソレノイド力を要する。この力は、被膜壁を貫通するのに十分な高い力を防ぐ為に、アルゴリズムを介して測定され制御される。
【0062】
ヒト及び模擬前立腺組織で行った実験では、0.020インチ~0.035インチの範囲の直径を有する半球状先端が、前立腺被膜を貫通することなく尿道壁を実際に貫通することを示唆している。この例では、0.050インチの針の直径は、約17度の角度で先細りになり、0.20インチ~0.35インチの範囲の直径を有する半球状の先端になる。我々の実験では、最も好ましい直径は0.032インチであった。針先端の鈍化は、蒸気治療の間の前立腺被膜の破裂を防止する為の単純で受動的な手段である。図1Dに示す針は、鈍化された先端の例である。
【0063】
蒸気送達システム
図1Aは、蒸気送達システム100の一実施形態を示している。蒸気送達システム100は、患者の尿道への挿入向けに構成された細長いシャフト102と、人間の手で把持する為のハンドル部分104とを有し得る。ハンドルは、ユーザが快適に送達装置を左右に回転させて蒸気を前立腺の右葉及び左葉に送達できるようにする人間工学的なスウェプトバックハンドルであり得る。蒸気送達システム100は、シャフト内に配置され、細長いシャフト102の遠位部分から延びるように構成された、図1Bの蒸気送達針106を含み得る。
【0064】
蒸気送達システム100は、蒸気の送達、針の前進/後退、生理食塩水又は冷却流体フラッシュ等を含むシステムの様々な機能を作動させるように構成された1つ以上のトリガー、ボタン、レバー、又は作動機構を更に含み得る。幾つかの実施形態において、針の前進は、針の遠位長さに沿ったマーキングを介した膀胱鏡117を通して視覚化され得る。他の実施形態において、1つ以上の磁気センサが蒸気送達針を駆動する磁石107の磁場を検出する。電子機器は磁場測定を磁石(及び針)位置に変換し、これはモニタに表示され得る。
【0065】
蒸気送達システム100は、滅菌水源10、吸引源20、流体冷却又は灌漑源30、光源40、及び、蒸気源からシャフトの内腔を通り、蒸気送達針を通り、組織に至る蒸気の生成及び供給を制御するように構成された電子コントローラ50を含み得る。幾つかの実施形態において、電子コントローラは、蒸気送達システム上又はその中に配置され得、他の実施形態において、電子コントローラは、図1Eの外部コンソールに配置され得る。好ましい実施形態において、コントローラ電子機器は、一部が送達システム内に、一部が外部コンソール内に存在し、2つの電子機器基板はケーブル60によって接続される。
【0066】
図1A~1Eの蒸気送達システム100は、ソレノイド針ドライバ110及び蒸気発生器112を更に含み得る。ソレノイド針ドライバ110は、蒸気送達システムの蒸気送達針106を前進及び後退させるように構成され得る。ソレノイド針ドライバは、蒸気送達針と、引き巻線116と、押し巻線118と、蒸気送達針上に配置された磁石107とを含み得る。磁石107、ひいては蒸気送達針は、押し巻線116及び引き巻線118に磁場を発生させることによって横方向に移動し、蒸気送達針を前進及び後退させることができる。後退の間、ソレノイドを通る電流は逆転され、コイル116は押し巻線となり、コイル118は引き巻線となる。ソレノイド電流は、リアルタイムで、針駆動磁石の位置を検出する1つ以上のセンサ124に応答して制御されてもよい。好ましい実施形態において、1つ以上のホール磁場センサが、磁石107の磁場を測定し、それによって後退位置に対するその位置を計算する為に使用される。幾つかの実施形態において、ソレノイド電流が測定され、ソレノイドコイル内の電流によって生じる磁場に関してホールセンサ信号を補償する為に使用される。針磁石の位置の閉ループ制御は、PID制御ループで達成され、ソレノイド電流の連続的な調整によって、指令された磁石位置と実際の磁石位置の差がゼロになるように駆動される。閉ループ制御モードでは、パルス状及び連続的な針の動きは、それによって、可変速度で、後退位置に対して既知且つ慎重に制御された磁石及び針の位置で達成され得る。幾つかの実施形態において、針は、0.5mm/秒の速度で、又は0.1mm/秒~10mm/秒の速度範囲で、又は0.25mm/秒~4mm/秒の間の速度範囲で動くように指令され得る。速度は制御ループによって維持されるので、針先端が例えば前立腺被膜壁のような障害物に遭遇すると、ソレノイド電流は自動的に増加することになる。安全機能として、ソレノイド電流をリアルタイムで監視し、ソレノイド電流が障害物の存在を示す臨界値を超えた場合、アラート又は自動停止を行うことができ、これは、障害物が被膜壁の場合は特に重要である。
【0067】
蒸気発生器112は、直流又は交流電流がチューブの壁に流されると高品質の蒸気に変換される無菌水が流れるコイル状の金属チューブ120を含み得る。蒸気は、標的組織への送達の為に送達装置針を通過する。蒸気発生器112は、直流又は交流電流の為の電気リード線がその端に取り付けられたインコネル625ステンレス鋼のコイル状チューブ120を含み得る。インコネルチューブは、ポリイミド等の薄壁、電気絶縁材料122によって覆われ、隣接するチューブ巻線間で短絡することなくチューブの全長を通して電流が流れることを保証する。インコネル625は、電気抵抗の温度係数が非常に小さい金属の一例であり、チューブの長さに沿った実質的な温度勾配に係らず、オーミック熱がチューブの長さに沿って均一に印加されるようになっている。ポリイミドは、隣接するチューブ巻線間に良好な熱伝導性を提供するのに十分小さい厚みに亘って優れた電気絶縁体であり、それによって、発熱体チューブに沿った温度勾配を極減できる。ポリイミド絶縁体は、10~100ミクロンの厚さを有し得る。滅菌水を蒸気発生器コイル120に導入し、蒸気発生器コイルチューブの壁を通して直流又は交流電流を印加して、チューブ長さに沿ったチューブ材料の電気抵抗におけるオーミック熱を放散させることができる。蒸気コイルは、内側コイルから流体源に延びるプラスチックチューブ10を介して滅菌水の供給源に接続され得る。蒸気は、チューブの遠位端から、例えばPEEK製の蒸気送達針106の中に出る。チューブで散逸したオーミック加熱パワーを測定し、制御することによって、一貫したカロリー蒸気出力が確保される。加熱パワーは、チューブを流れる電流とチューブを横切る電圧の積として測定される。加熱パワーは、リアルタイムで設定値に制御される。
【0068】
図1Bは、2つの分離可能なシステム、送達装置ハンドル103、及びハンドル103から取り外され得るカートリッジ104を備えた蒸気送達システム100の一実施形態を示している。ハンドル103は、外部コンソール内の電子機器と共に、針の動き及び蒸気の送達を制御し、加熱要素112上の熱電対(図示せず)及び針の位置及び前立腺組織に対する向きを感知する針106(例えば図6)上に配置されたセンサ等のセンサからの情報を処理及び/又は中継する回路基板50と係合するボタン及び作動装置を備えている。ケーブル60は、送達装置ハンドル103内のセンサ及び電子機器を外部制御システムと接続する。ケーブル70は、カートリッジ加熱要素112及びセンサを外部コンソールに接続する。或いは、ケーブル70は、送達装置ハンドル103に差し込まれ、リード線の一部がケーブル60を通過してコンソールに至ることもある。ハンドル103及びカートリッジ104からのケーブル60及び70は、送達システムと外部コンソールとの間にある点で合流し、単一のコネクタを介して外部コンソールに入ることができる。
【0069】
一実施形態において、ハンドル103は再使用可能である一方、カートリッジ104は使い捨てである。一般に、ツーピース設計は、カートリッジが異なる態様での処置向けに挿入されることを可能にする。例えば、前立腺焼灼手順において、図1Dの針126を包含するカートリッジは、前立腺の辺縁域を処置する為に使用され得る一方、針106を包含するカートリッジは、他の前立腺域の処置の為に使用される。カートリッジは、他の組織を処置する為に、他の穴パターン及び様々な針の長さを有する針を包含し得る。幾つかのカートリッジは、例えば、針の先端を追尾する為、又は針の先端における蒸気温度若しくは圧力を測定する為の、高度なセンサシステムを包含し得る。カートリッジは、様々な機能及びコストを有し得る。図1Bのツーピース設計は、比較的高価な電子機器を包含するハンドルを打ち捨てることなく、アプリケーション固有のカートリッジを交換することを可能にする。
【0070】
図1Bのツーピース設計では、カートリッジ104は、ハンドル103内で回転できる。この特徴により、カートリッジと針先端を回転させて前立腺尿道周囲の前立腺組織を貫通させながら、ハンドル103を静止させて保持できる。図1Aのシングルピースシステムは、全ての前立腺組織に対処する為に、ユーザが装置全体を回転させることを必要とする。
【0071】
図1Cは、シャフトを超えて延び、蒸気送達ポート108を露出する蒸気送達針106を含む、蒸気システム100のシャフトの遠位部分のクローズアップ図である。蒸気送達針は、シャフトに対して概ね垂直に又はシャフトから横方向に延びることができる。針先端は、針から前立腺組織へ蒸気媒体の流れを送達するように構成された1つ以上の蒸気送達ポート108を含み得る。蒸気送達ポート108は、所与の用途における組織への蒸気の送達を最適化するパターンで配置され得る。一般に、蒸気送達ポートは、各々、固有の直径を有し得る。一実施形態において、蒸気送達ポートは全て同じ直径を有する。一実施形態において、蒸気送達穴は、蒸気を隣接する前立腺域に通過させずに、前立腺辺縁域の薄い部分に蒸気を送達する為に、針先端付近では減少した長さを占める。
【0072】
図1Dは、針遠位端に沿って4mmを占める針円周の周りに等間隔に配置された3列の4蒸気送達ポートを備えた針106内の蒸気送達ポート115の標準的な穴パターンを比較する。図1Dは又、千鳥状のパターンで間隔を空けて配置された蒸気送達ポート115を備えた辺縁域針126の一実施例を図示する。図示の例では、針126は、針遠位端に2mmだけ占める9つの蒸気送達ポートを含む。9穴パターンの穴の直径は、全ての蒸気穴の総断面積が12穴のパターンと同じままとなるように選択され、それによって、蒸気出口速度が両方の針でほぼ同じであることが保証される。
【0073】
システム100は、医師への追加の表示及びフィードバックを提供する為に内視鏡又はカメラを収容する大きさのルーメン(図1Aのルーメン117)を更に含み得る。この内視鏡又はカメラは、展開された時の蒸気送達針の視界、及び針の展開長さを示す針上のマーキングを含む、シャフトの遠位端及び隣接する組織の視界を提供することができる。
【0074】
図1Eは、上述した蒸気送達システムに組み込まれる様々な電子コンポーネントの一例である。このシステムは、上述したように、電子コントローラ又は外部コンソール151と、ハンドル103と、カートリッジ104とを含み得る。例示の目的で、カートリッジ及びハンドルは、幾つかの実施形態においてこれらの構成要素が別個ではなく、更に電子機器の多くはシステムのハンドル又はカートリッジの何れかに交換可能に配置され得るので、一緒に概略的に図示されている。電子機器は、図1Eにおいて、コンソール、カートリッジ、及び送達装置ハンドルの間に分散されているが、電子機器は、様々な構成要素の間で移動され得ることが理解されるべきである。コンソールに配置されたFPGA152及びハンドルに配置されたFPGA153は、互いに通信してシステムのセンサ及びアクチュエータを監視及び処理し、針の動き及び蒸気送達を制御するように構成される。FPGAの利点は、急速に変化する信号のリアルタイムフィードバックの為の非常に高速、小型、及び複数の送達システム機能に同時に対処する為の並列処理アーキテクチャを含む。
【0075】
本システムの蒸気発生器は、蒸気コイル120と、コイルへの直流電力供給を制御してコイルを加熱し、蒸気を発生させるように構成された蒸気コントローラ121とを含み得る。幾つかの実施形態において、蒸気コイルは、システムのハンドル内に配置され得る。コンソールから発生器への生理食塩水又は流体の送達は、FPGA152で生理食塩水ポンプを制御することによって達成され得る。最大蒸気流量を組織に送達する為に必要な蒸気発生器電流は、幾つかの用途において最大25アンペアまで及ぶことがある。低電気抵抗を有する比較的重い通電リード線は、行きと戻りのリード線の両方でAWG#22磁石ワイヤの2本の平行ストランドを含み得る。これらのリード線は、配信装置ハンドルを通過してもよいし、配信装置ハンドルに入らずにコンソールに配線されてもよい。同様に、送達装置カートリッジ内のセンサからのリード線の一部又は全部は、FPGA153での処理の為にハンドルを介して配線されてもよいし、FPGA152での処理の為にコンソールに直接配線されてもよい。
【0076】
システムは、蒸気送達針を前進/後退させる為に、ハンドル/カートリッジ内にソレノイド156を実装してもよい。針上の磁石は、本明細書で説明するように、ソレノイドによって移動され得る。前進、後退の為の蒸気送達針の作動は、ソレノイドコントローラ157によって制御され得る。
【0077】
それらのシステムは、コンソール、ハンドル、及び/又はカートリッジに配置された複数のセンサを含み得る。例えば、カートリッジ内で終端するリード線を有するセンサは、前立腺被膜への針の近接度を感知する為に構成された針先端生体インピーダンス電極154を含む。対応する生体インピーダンス電子機器155は、ハンドル/カートリッジ又はコンソールの何れかに配置され得る。針先端追尾電子機器158及び1つ以上のコイル159は、針先端の位置及び方位を追尾する為に使用される外部磁場を感知する為に構成され得る(代替的にこのコイルは、外部センサによって感知される交流磁場を伝送してもよい)。幾つかの実施形態において、外部磁場は、コンソールのトラッキングコイル162で生成される。これらのトラッキングコイルは、例えば、コンソールの外部に配置され得る。幾つかの実施形態において、蒸気発生器コイル120上に配置された1つ以上の熱電対160は、蒸気出口温度を測定し、温度が範囲外である場合に加熱電流の自動シャットダウンを有効化する。蒸気発生器の端部に取り付けられたリード線は、蒸気発生器に供給される電力を計算する為に、蒸気発生器を横切る電圧を測定するように構成され得る。センサのリード線は、細い絶縁ワイヤ、例えばAWG#30マグネットワイヤで構成されてもよい。これらのリード線は、送達装置ハンドルに配線されてもよく、そこでFPGA153によってデジタル化及び処理され、必要に応じてFPGA152に伝達され得る。磁場センサ161(例えば、ホールセンサ)は、ソレノイド156の磁場を感知するように構成され得、そこから、後退位置に対する磁石の位置が、FPGA153によって計算され得、磁石位置を制御する為のソレノイド電流のリアルタイムフィードバックの為にFPGA152に中継され得る。
【0078】
蒸気及び生理食塩水のフラッシュと針の動きの制御との起動の為のスイッチ状態は、FPGA153によって感知され、これらの機能の起動の為にコンソール及びFPGA152に伝達され得る。
【0079】
図1Eのコンソールは、FPGA152及びグラフィカルユーザインターフェース165(GUI)を制御するシングルボードコンピュータ164(SBC)の両方と通信し得るマイクロプロセッサ163(MCU)を更に含み得る。一実施形態において、MCUは、カートリッジとハンドルとを接続するケーブル及び/又はハンドルとコンソールとを接続するケーブルであり得る、ケーブルコネクタの近くに典型的に存在する1線式セキュリティチップと通信する。MCUは、シリアル番号、治療モード、及び以前の使用に関する情報等のセキュリティチップ情報を読み取り、蒸気ショットの数及び各ショットのパラメータ等の情報を書き込む。
【0080】
アクセサリ感覚入力とコイルドライバ出力は、図1Eのコンソールを介して接続されてもよい。例えば、図1Eに示すトラッキングコイル162は、電磁場センサとして、又は交流磁場を発生させる為の電流ドライバとして機能してもよい。針先端追尾データは、コンソールSBCにおいて計算され、GUI上又は外部モニタ上でユーザに表示されてもよい。コンソールに入力され得る他のデータは、超音波又は膀胱鏡画像等のリアルタイム画像、及び蒸気送達中に冷却する為の、前立腺を包囲する組織への生理食塩水の灌漑の感知及び制御を含む。
【0081】
図1Eに示される電子コンポーネントは、他の図示された電子コンポーネントの一部又は全部と通信できることを理解されたい。
【0082】
蒸気送達針のリアルタイムの追尾
蒸気送達システムの蒸気送達針は、蒸気送達の為に前立腺尿道を通して前立腺内に前進されるように構成されている。しかしながら、針が前立腺を通って完全に前進し、前立腺被膜を穿刺して、その結果、蒸気が前立腺の外側で誤って患者の体内に送達されてしまうことがないように注意しなければならない。本明細書では、蒸気送達針が前立腺被膜を誤って穿刺したり貫通して前進したりしないように、蒸気送達針、特に蒸気送達針先端の位置を正確に追尾する為のシステム、技術、及び方法を記載している。
【0083】
経直腸超音波イメージング
幾つかの実施形態において、経直腸超音波イメージングシステム(TRUS)が、針先端を含む平面へのフォーカス状態を保つ為に適応モードで使用される。針先端の平面は、超音波視野角を調整することによってフォーカス状態を保たれる。撮像素子を並進及び回転させる機構はオートフォーカスを容易にする。幾つかの実施形態において、超音波画像に対する針先端の位置を追尾する為に、センサ又はトランスミッタがTRUS上に配置され得る。他の実施形態において、針先端とTRUSの位置の両方が追尾され、重畳される。この場合、針先端の動きも追尾しているセンサアレイでプローブの位置を追尾する為に、TRUS上にセンサを配置してもよい。
【0084】
一実施形態において、蒸気送達針先端はTRUSプローブによって画像化され得る。蒸気送達針先端は、TRUSトランスデューサの撮像面内にある時、超音波画像上でリアルタイムで視覚化され得る。蒸気送達針の画像は、針先端又はその近くに配置された超音波造影剤(例えば、多孔質材料)で強化されてもよい。他の実施形態において、針先端に配置された反射性材料は、先端の視認性を強化できる。例えば、金メッキされた先端電極又は銅製GPSコイル(複数可)等の電極先端の特徴は、針先端の反射率及び視認性を強化できる。更に、蒸気は良好な超音波造影剤であり、画像内で先端の周りに明るい雲を示すので、蒸気送達針先端は、針先端穴からスチーム又は蒸気を放出することによって明確に識別され得る。ドップラー超音波画像は、更に、針先端の蒸気出口穴で最大となる蒸気速度のマップを示し得る。超音波トランスデューサのヘッドは、針先端に焦点を合わせる為に、並進及び/又は回転させることができる。この手法では、蒸気焼灼の中心にある針先端を、蒸気焼灼の前、間、後に識別することができる。次の焼灼部位への針の移動は、移動中に針先端にフォーカスさせ続けることによって、超音波画像上で明確に識別され得る。幾つかの実施形態において、コンピュータコントローラは、超音波画像内の針先端を識別し、針の移動中に先端画像のフォーカスを維持するようにTRUSプローブの並進及び回転を自動調整するように構成され得る。
【0085】
オートフォーカス付きTRUSプローブ200の一実施形態は、図2Aに示されており、このプローブは、トランスデューサ202、不動シース204、TRUSプローブの遠位部分に位置する膨張式安定化バルーン206、TRUSプローブの近位部分に位置する膨張式カフバルーン208、並進/回転アクチュエータ210、電子機器212、及び(無線操作用の)任意のバッテリー、並びに(有線操作用の)任意の可撓性ケーブル214を含んでいる。図示のように、TRUSプローブの超音波トランスデューサヘッドは、電子機器212によって制御される小型のコンピュータ制御線形及び回転アクチュエータ210によって、剛性の不動シース内で回転及び並進させることができる。電力及びデータは、可撓性ケーブルによって制御コンピュータに伝播され得る。幾つかの実施例では、電力はプローブ内に含まれるバッテリーによって供給され、データは、可撓性ケーブルの必要性を排除する無線トランシーバによって通信される。
【0086】
TRUSプローブは、患者の直腸に挿入され、患者の前立腺に近接して配置され得る。位置が決まると、TRUSプローブは、遠位安定化バルーン206を膨張させることによって安定化させることができる。バルーンを膨張させる為にガスが使用される場合、ガスは超音波ビームを減衰させ散乱させるので、バルーンのどの部分も超音波トランスデューサと撮像される前立腺組織との間に存在すべきではない。バルーンの一部がトランスデューサと前立腺組織との間にある場合、バルーンは、脱気水又は生理食塩水のような超音波画像を歪めない流体で膨張させることが望ましい。膨張式カフバルーン208は、TRUSプローブを更に安定させる為に膨張させることができる。システムコントローラは、以下に提示する複合電磁チップトラッキング及び超音波画像化システムを用いて蒸気送達針チップの焦点を自動的に維持してもよいし、ユーザがユーザインターフェースを介して焦点を調整してもよい。
【0087】
図2Bは、バルーン安定化シース内のTRUSトランスデューサ202の並進及び回転を可能にする特徴を含む、TRUSプローブの内部を示す断面図である。TRUSトランスデューサは、中央ロッド又はケーブル226に係合するように構成された一対のステッパモータ222及び224を含み得る。ステッパモータ222は、ロッド又はケーブル226に対してトランスデューサ220を半径方向に回転/並進させるように構成され得、ステッパモータ224は、ロッド又はケーブル226に沿ってトランスデューサを線形に前進/後退させるように構成され得る。
【0088】
図2Cは、医師又はシステムのユーザがフットペダル216を用いてTRUSトランスデューサ200の並進及び/又は回転を作動させて、超音波画像の一部、例えば針先端を処置中にフォーカス状態に維持できる実施形態を示す。
【0089】
蒸気治療ガイダンスの為の方法
前立腺への安全且つ効果的な蒸気送達の為の方法は、神経及び直腸の組織を含む被膜の外側の組織への損傷を避ける為に、前立腺被膜の近くの組織への長時間の又は過度の蒸気送達を回避することを含む。前立腺被膜から臨界距離以内には蒸気は送達されない。ショット間の組織冷却の為の十分な時間を有する短い蒸気送達ショットは、前立腺被膜の外側への熱の過度の伝導を防ぐ。
【0090】
蒸気治療は、MRI画像分析及び/又は組織生検を通じて癌であることが分かっている前立腺内の領域に局所的に送達されてもよい。或いは、前立腺の特定の区域又は前立腺の一半球面が、1回の蒸気治療送達セッションにおいて焼灼されてもよい。幾つかの処置では、前立腺全体が蒸気治療を使用して焼灼されてもよい。これら全ての例において、前立腺内の選択された標的位置に蒸気を送達することが重要である。単一の蒸気治療ショットで、治療送達の出力及び持続時間に応じて、1~2cmの直径を有するほぼ球状の領域の組織を焼灼できる。蒸気は、前立腺被膜から、又は前立腺域間の組織境界から反射されてもよい。これらの場合、病変は球状でなく、特定の前立腺区域の組織を通る経路を辿ることがある。前立腺癌が主に発生する前立腺の辺縁域は、前立腺の大部分に亘って広がる前立腺被膜に隣接する薄い層から構成され得る。あらゆる癌治療の目標は、非癌組織への損傷を最小限に抑えながら、全ての癌を焼灼することである。
【0091】
これらの理由から、蒸気治療が前立腺内の何処に送達されているかを把握し、その後の蒸気送達の位置を計画できるように、焼灼された組織を評価することが重要である。上述のように、蒸気送達針から送達された蒸気は、超音波画像上で蒸気気泡からの明るい反射として、及び/又は蒸気の速度のドップラー画像から見ることができる。蒸気治療後に撮影された超音波画像では、凝縮した蒸気の存在故に暗く見える領域として、焼灼された組織が示されることがある。治療前と治療後の差のマップを示すデジタルサブトラクション画像は、焼灼された組織のコントラストを高めることができる。
【0092】
一実施形態において、本システムの蒸気発生器は、蒸気流に空気を導入するように構成され得る。図3を参照すると、蒸気発生器312は、入口322を介して滅菌水のような流体を受容するように構成された絶縁チューブ321の複数のループからなるコイル320を含み得る。リード線323を介してコイルに電流を印加することで、コイルを加熱して出口324で蒸気を発生させることができる。この実施形態において、電子バルブ325を空気に対して開き、蒸気送出の終了直前に電子バルブを閉じることによって、蒸気流に空気を導入できる。空気は、ベンチュリ効果によって蒸気流に引き込まれる。他の実施形態において、空気は、例えば、ポンプ又はファンを使用して空気を注入又は送達することによって、蒸気流に注入され得る。使用中、空気は、蒸気送達後、焼灼された組織内に留まる。空気は、一定期間(例えば、数分間)に亘って緩慢に再吸収される。蒸気送達後に観察される超音波画像は、空気から反射される焼灼の区域で明るく表示され、それによって焼灼された組織のマップを提供する。そのような画像は、後の評価の為に保存され、取り出され得る。
【0093】
同様に、図3Bを参照すると、前立腺治療を追尾する為の方法を示すフローチャートが提示されている。本方法は、本明細書に記載のシステム及び装置の何れを用いて実行されてもよい。操作302を参照すると、本方法は、治療システムにおいて蒸気を発生させるステップと、操作304において、治療システムで前立腺内の或る位置に蒸気を送達するステップを含み得る。本明細書に記載のように、蒸気送達システムは、前立腺尿道を介して前立腺にアクセスするように構成された経尿道シャフトと蒸気送達針とを含み得る。治療中、システムのユーザは、シャフトを患者の尿道内の所望の位置に移動させ、蒸気送達針をシャフトから前立腺の中に延ばすことができる。
【0094】
フローチャートの操作306において、本方法は、その位置で前立腺に所定体積の空気を注入するステップを含み得る。この空気の注入は、操作304で蒸気がその位置に送達される前、間、又は後に起こり得る。上述したように、一実施形態において、蒸気治療システムは、弁を開閉することによって蒸気流に空気を注入することを可能にする空気入口を有する蒸気発生器を含み得る。幾つかの実施形態において、本方法は、既知の体積の空気を、その位置で前立腺に注入することを含み得る。他の実施形態において、装置のユーザは、その位置に任意の体積の空気を注入することができる。例えば、最初の又は最後の処置位置において、より大きい体積の空気を前立腺に注入することが望ましい場合がある。
【0095】
操作308で、本方法は、操作304及び306を繰り返すステップを任意選択的に含み得る。具体的には、本方法は、前立腺内の1つ以上の追加の位置に蒸気送達針を配置し、その位置の各々で蒸気を送達するステップを含み得る。更に、本方法は、これらの追加の位置の各々において所定体積の空気を注入するステップを含み得る。幾つかの実施形態において、注入される空気の体積は各位置について同じであり得る。他の実施形態において、より多くの又はより少ない体積の空気が注入され得る。例えば、最初の、又は最後の位置では通常よりも大きい体積の空気を注入することが望ましい場合がある。これは、次に、前立腺処置が何処で始まったか、又は終わったかを決定する為に後で使用され得る。
【0096】
フローチャートの操作310において、本方法は、前立腺内の注入された空気を視覚化して、治療された前立腺の位置を追尾するステップを含み得る。幾つかの実施形態において、注入された空気を視覚化するステップは、超音波撮像システムで前立腺を視覚化することを含み得る。上述したように、前立腺内の注入された空気は、前立腺組織内の明るい又は白い体積として超音波撮像に現れることになる。従って、蒸気で処理され、空気注入を受けた前立腺内の位置は、超音波撮像で容易に見えるようになる。幾つかの実施形態において、本方法は、前立腺内の治療された位置のマップを作成するステップを更に含み得る。次いで、マップは、システムのユーザに表示されて、処置進捗のリアルタイムフィードバックを提供できる。
【0097】
送達装置シャフトセンサを用いた針先端の追尾
蒸気送達針の安全且つ効果的なナビゲーションの為の方法及び技術は、リアルタイムの超音波及び/又は術前MRI画像を用いた画像誘導を含み得る。一実施形態において、図4Aを参照すると、蒸気送達針の先端追尾は、蒸気送達針の先端内又はその近くに埋め込まれた磁石428によって促進され得る。図示された実施形態は、針内の永久磁石を示しているが、この構成要素は、磁場のトランスミッタとも呼ばれ得ることが理解されるべきである。
【0098】
更に、図4Bを参照すると、磁気センサ等の1つ以上のセンサ430は、蒸気送達装置シャフトの遠位端又はその近くに、及び/又は手術部位の周りの戦略的な位置に配置され得る。装置のシャフトに沿ったセンサリード線432は、例えば、センサ430をコンソール又は電子コントローラに電気的に結合できる。センサ430は、例えば、軸方向巻線430a(例えば、シャフトの外周のコイル巻線)又は側面巻線430b(例えば、シャフトの側面に配置されたコイル巻線)を含み得る。センサの位置は、蒸気送達針がシャフトを出る位置に対して固定され得る。
【0099】
一使用方法において、装置のナビゲーションは、蒸気送達針先端が短時間に所定の距離を移動するパルスステップで発生し得る。蒸気送達チップの位置の変化は、針のパルス移動の間に感知され得る。例えば、針先端の磁石のパルス移動によって発生する磁場は、装置のシャフト上のセンサによって感知され得るものであり、感知された磁場の値は、蒸気送達針の先端がセンサからどれだけ離れているか、従って、針先端が蒸気送達装置のシャフトからどれだけ前進したかを決定する為に使用され得る。幾つかの実施形態において、上述したように、針が移動した距離は、針駆動磁石の位置のホールセンサによって行われた測定から判っている。この場合、シャフト先端上のセンサ430は、送達装置シャフトに対して垂直な線に沿った公称針先端位置からの針の横方向の偏向を示し得る。
【0100】
図4Bの実施形態において、センサ430は、シャフトの遠位端上又はその近くに位置するワイヤの複数の直交コイルを含み得る。一実施形態において、図示のように、2つのコイルがシャフト先端の側面に巻かれ、第3のコイルがシャフトの軸の周りに巻かれ得る。針先端磁石428の磁場を移動しながら感知することにより、針の経路が既知であるという仮定を緩和して、シャフト先端に対する先端のx、y、及びz座標の軌跡が提供される。針先端の測定された軌道は、シャフトに対して斜めであっても、曲線であってもよく、シャフトが超音波画像で見えるので、TRUS画像上に登録され得る。
【0101】
幾つかの実施形態において、針先端磁石428は、図5Aに示すように、針先端近くに配置されたワイヤのコイル528であり得る。図5Aを参照すると、コイルは、蒸気送達ポート515及び生体インピーダンス電極554を含む針先端から近位に位置決めされ得る。図5Aに示すように、一実施形態において、生体インピーダンス電極及びコイル528の為のリード線532は、蒸気送達ポートを通って針の中に配線され得る。しかしながら、図5Bに示す別の実施形態において、針は、コイル及びリード線を夫々収容する為のチャネル538を有するスロット536を含み得る。所与の周波数の正弦波電流を図5A~5Bの針先端コイルに通して、図4Bのシャフト先端センサ(例えば、軸方向又は側面コイルセンサ430)によって感知される交番磁場を形成することができる。一実施形態において、シャフト先端は、針先端から約26mm以上離れることはない。この場合、非常に大きいSN比を有する比較的大きい信号が、図4Bのセンサによって受信される。
【0102】
一実施例では、図4Bのシャフトセンサは、0.001インチの直径を有するAWG#50ワイヤのN=100ターンのコイルであり得る。この例では、コイル半径は4mmであり、コイル面積はA=5×10-5である。コイルにはコアがないので、比透磁率μ=1である。プローブコイルに誘起される電圧は次のようになる。
V=dΦ/dt=2πfμNAB (1)
【0103】
人体内の磁気追尾に典型的に使用される周波数範囲の上限である5000Hzの周波数では、式(1)は次のように書くことができる。
V/B=感度=160ボルト/テスラ (2)
【0104】
磁気双極子と見做される図6の針先端トランスミッタコイルから離隔rにおける側面磁場は、以下に等しい。
B=m/(4πr) (3)
【0105】
ここで、針先端コイルの磁気モーメントmは、以下の通りである。
m=μ0μnaI (4)
【0106】
1つの好ましい実施形態において、図5Aの針状コイルの透磁率μは3に等しく、コイルはAWG#51磁石線のn=300ターンで巻かれ、a=1×10-6が1.25mmの蒸気送達針の壁におけるコイル断面積である。電流Iは、コイルが熱くなる前に供給できる5,000Hzの最大交流電流として選択される。このコイルにおける典型的な安全電流は0.04アンペアrmsである。コイルの透磁率は、透磁性フォイル540の上にコイルを巻くことによって、又は、例えばニッケル磁石ワイヤのような透磁性ワイヤでコイルを巻くことによって、提供され得る。透磁性フォイルを用いた実施形態において、コイルによって発生する磁場を打ち消す傾向にあるフォイル内の周方向渦電流を防止する為に、透磁性フォイルにギャップ542を設けてもよい。この例では、式(4)の針先端コイルの磁気モーメントは、次にm=4.5×10-11T‐mであり、最大離隔量0.026mでの式(3)の磁場は2×10-7テスラrms、式(2)から軸先端センサに誘導される電圧はV=32×10-6ボルトrmsである。一般的な低雑音増幅器の雑音電圧は、3×10-9×sqrt(BW)ボルトrmsの範囲にあるのが普通であり、BWは出力信号帯域幅である。測定した実効電圧を10サンプル/秒のレートで平均化すると、帯域幅は10Hzとなり、アンプの実効ノイズは約9.5×10-9ボルトrmsとなる。そして、針先端とシャフトセンサとの間の最大の離隔における予期されるSN比は、次の通りである。
S/N=32×10-6/9.5×10-9=3,400
【0107】
言い換えると、針先端トランスミッタコイルとシャフトチップセンサとの間の比較的小さい離隔において、受信信号はノイズの3000倍以上である。これは、式(2)と式(3)を組み合わせて微分することにより、トランスミッタコイルの計算された位置の予想される不確かさに換算して、次のように見ることができる。
δr=r/(3S/N)=0.0025mm又は極少量である為、センサノイズは、シャフト先端に対する針先端の位置決めにおける制限要因となることはない。
【0108】
図4Aの針先端磁石の場合、静止磁石の磁場は直流であり、自然及び人工の両方の多くのノイズ源が、そのような小さい磁石から直流信号を識別することを困難にすることがよく知られている。図4Bの誘導コイル軸センサは、直流では感度がゼロであり、周波数に伴って増加する誘導信号が発生する。針が高速で小さいステップで急速に移動される場合、図4Bのセンサは、磁石のステップ移動の立ち上がり時間に対応する交流信号を見ることになる。図4Aの実施形態において、埋め込まれた永久磁石は、リード線がなく、針先端に電子機器を必要としない。これは、他の針の機能に影響を与えないように針内にリード線を配置することが困難である為、針先端コイルと比較して有利である。磁石がパルスステップで移動する時、これらのコイルに誘導される電圧は、コイルを結合する磁束の時間変化率である。
【0109】
ind=-dΦ/dt=-(dΦ/dx)(dx/dt) (5)
式中、Φ=磁束(テスラ‐m単位)である。
dx/dt=磁石の速度(m/秒単位)
ind=誘導電圧(ボルト単位)
【0110】
コイルのうち1つを連結する磁束の大きさを推定する為に、磁石は、針先端からの距離xにおいて以下の最小(側面)磁場を有する点双極子と見做される。
【0111】
B=m/(4πx) (6)
dB/dx=-3m/(4πx
式中、
B=双極子磁場(テスラ単位)
m=先端磁石の双極子モーメント(テスラ‐m単位)
x=先端磁石とセンサとの間の距離(メートル単位)
【0112】
配向した希土類磁石の場合、双極子モーメントは次式で与えられる。
m=MV (7)
【0113】
式中、Mは磁石の磁化であり、Vは磁石の体積である。磁化Mは、これらの配向磁石の残留誘導Bに等しい。磁性材料は、蒸気送達中の先端部の昇温に対する耐性のあるものが選択される。このような磁石の場合、残留誘導はM=1.3テスラ程度まで低くなることがある。直径0.030インチ×長さ0.030インチの寸法を有する図4Aの円筒形先端磁石を考慮すると、式(7)の磁気モーメントは、次のようになる。
m=3.5×10-10テスラ‐m
【0114】
先端磁石と先端部に配置されたセンサとの距離は、x=25mm=0.025m程度でもよく、この距離では、式(6)により磁場とその勾配が得られる。
B=1.8×10-6テスラ (8)
dB/dx=-2.1×10-4テスラ/m
【0115】
コイルセンサの場合、面積AでNターンを有するコイルを結合する磁束は以下となる。
Φ=NAB
dΦ/dx=NAdB/dx
【0116】
半径4mmの100ターンを有するコイルを考えた場合、以下となる。
Φ=9×10-7テスラm
dΦ/dx=-1.1×10-4テスラ‐m
【0117】
式(5)は、先端速度を約0.5m/secと仮定した場合のセンサコイルに誘起される電圧の推定値を与えるものである。
ind≒5.3×10-5ボルト
【0118】
標準的な精密アンプチップの入力電圧ノイズは3nV/Hz1/2である。予期される周波数(=1/パルス移動時間)1000Hzを中心とする100Hzの帯域幅では、センサノイズは30nVか、又は以下である。
noise=3×10-8ボルト
【0119】
よって、シャフトチップコイルセンサによる針先センサの定位に予期される最小の信号/ノイズ比は、次のように推定される。
信号/雑音=Vind/Vnoise=1,800
【0120】
針先端位置の精度は、針先端とシャフトコイルセンサの離隔をSN比の3倍で割ったものに等しい。従って、本実施例のコイルチップセンサは、以下の追尾精度を有することが予期される。
δx=x/5400=0.005mm (9)
【0121】
これは無視できる程度であり、センサノイズが送達装置シャフトに対する針先端位置決めの精度における要因にならないことを示す。ユーザは、針先端の動きを連続的であると認識するかも知れないが、微視的レベルでは、動きはパルスで構成されている。例えば、パルスは高速で、夫々0.1~0.3mmであり得る。シャフト先端の誘導コイルは、針磁場の変化、又はシャフト先端のコイルに対する磁石の位置の変化を追尾する。
【0122】
シャフト先端の位置は、経直腸超音波画像で観察され得る。ポイント&クリック装置によって、シャフト先端に対する針先端位置がモニタに入力され表示されながら、ユーザは、超音波モニタ上でシャフト先端位置を示すことができる。
【0123】
図4Cに示す別の実施形態において、シャフト先端の位置及び方位は、蒸気装置及び蒸気針とは別の外部アンテナアレイを使用して追尾される。幾つかの実施形態において、外部アレイは、患者の外部に配置され得る。例えば、外部アレイは、患者テーブルに統合されてもよく、又は代替的に、処置中に患者の下又は患者に隣接して配置されてもよい。外部アレイは、送信コイルまたは受信コイルであるコイル434を含み得る。従来、外部トラッキングコイルは、一般に1~5kHzの範囲の別個の周波数で順次又は同時に送信するトランスミッタである。先端センサ又は先端磁石からのパルス磁場は、1kHz未満の周波数で感知されてもよく、フィルタリングによって外部信号と区別されてもよい。或いは、外部磁場を磁石の動きに合わせて順次パルス化し、時間領域で分離してもよい。シャフト先端の位置と方位は、外部アレイとの相対的な関係で計算される。このデータは、超音波プローブに磁気センサを配置し、シャフト先端と超音波プローブの両方の座標を追尾することによって、超音波画像等の画像に転置され得る。追尾データは、後述する登録処理により、他の画像、例えば、術前MRIに転置されてもよい。
【0124】
別の実施形態において、追尾センサは、マイクロチップ磁石センサ、例えばGMR、TMR、又はAMRセンサを含んでもよい。これらのセンサのセンサノイズの要件は、上記の式(1)~式(9)から計算され得る。磁気抵抗式センサの利点は、応答が直流まで下がることである。しかし、このセンサは1/fノイズを有する為、直流ではSN比が低くなる。又、直流ではバックグラウンドノイズにより、先端磁石の信号が打ち消されてしまう。針(と磁石)の動きをパルス化することで、センサノイズが最小値に達した1kHz付近の帯域の信号をもたらす。
【0125】
ソレノイドコイル電流とソレノイド磁石の動きの両方が、周囲の磁場の変化としてシャフトチップセンサによって感知され、それによって針先端磁石又は電磁石に対するノイズ源となる可能性がある。これらの磁場は、ソレノイドとシャフトチップの間の比較的大きい離隔と、距離による磁場の急激な低下により小さくなっている。これらのシグネチャも既知であり、送達装置ハンドル内の1つ以上のセンサによって測定されるので、補償され得る。針の展開の変位及び速度は送達装置センサから得られ、これは先端センサの追尾を改善する為に使用され得る。
【0126】
シャフト及び/又は針に必要なリード線の数は、センサの数によって異なる。例えば、シャフト先端の3つのセンサには最低6本のリード線が必要である。使い捨て送達装置カートリッジに入る複数のリード線は、カートリッジから再使用可能なハンドル及び/又は外部システムコントローラに信号を転送する為の低コストな方法を必要とする。センサ信号を多重化してデジタル化し、ビットストリームを短距離で良好な分解能で送信できる安価な無線遠隔測定チップが利用可能である。
【0127】
経直腸磁気センサ又はトランスミッタによる針先端の追尾
一実施形態において、図6Aに示すように、蒸気送達針(図5A~5Bに示す蒸気送達針等)は、プローブ上又はプローブ内に配置された磁気センサ630のアレイを含む経直腸プローブ600により追尾され得る。図示された実施形態において、センサ630は、プローブの遠位端の近く、及びバルーン606と608との間のプローブの中央の近くにも示されている。しかし、センサは、プローブ上又はプローブ内の何処にでも配置され得ることを理解されたい。経直腸プローブの磁気センサは、蒸気送達針先端の磁石又は電磁石が組織内を移動する際に、周囲磁場の変化を感知するように構成され得る。プローブの電子機器612は、感知された信号を処理して、直腸プローブに対する針先端のx、y、z座標を提供することができる。図5Aのコイルについて、式(2)及び(3)は、直腸プローブ遠位センサと針先端との間で予期される最大の離隔に等しいrで評価され得る。直腸プローブから最も遠い針位置における最大の前立腺では、離隔rは10cm未満となる。r=100mmでのSN比は60に等しく、計算された位置の不確かさは0.56mmに等しい。SN比は離隔の3乗で増加し、位置の不確かさは離隔の4乗で減少するため、大きい前立腺でも針先端がアクセスできる全てのポイントで精密(サブミリ)トラッキングが実現される。
【0128】
図6Aの実施形態において、磁気センサアレイを含む経直腸プローブは、プローブの遠位端が前立腺の近くに配置された状態で、患者の直腸に挿入され得る。バルーン606及び608は、上述したように、プローブを安定させる為に膨張させることができる。しかしながら、経直腸超音波イメージングとは異なり、図6Aのプローブに良好な組織接触が要求されることはなく、プローブに加える圧力は最小限でよいか、又は圧力を全く加えなくてもよい。TRUSとは対照的に、前立腺はプローブの力によって機械的に動かされたり変化したりすることはない。それでも、安定化バルーンが磁気センサアレイの移動を防止し、センサの為の剛性フレームワークが、蒸気送達針の位置を追尾する為の剛性座標系を提供する。
【0129】
基準センサ631は、プローブが患者に挿入される時、前立腺に近接するセンサ630から離隔され、環境磁気ノイズを補償する為に一次追尾センサ測定値から減算され得る測定値を提供するように構成され得る。これは、直流フィールドセンサが針先内の磁石を感知する為に採用される場合に特に重要である。マイクロチップ又は電子機器212は、針先端のx、y、z座標及び配向角度を提供する為に経直腸プローブ内に含まれ得る。
【0130】
経直腸プローブ内のセンサは、例えば図6Bのコイルで示されるような細線の多重巻線コイル、又は適切なSN比を有する任意の固体磁場センサを含み得る。更に多くのセンサを追加することで、トラッキングのSN比を改善する冗長な情報が得られる。図6Bを参照すると、コイルは、+yコイル630a、-yコイル630b、+xコイル630c、-xコイル(図示せず)、+zコイル630d、及び-zコイル630eを含み得る。経直腸プローブは、超音波プローブに対してキー633及び中空635を有し、超音波プローブを受け入れるように適合され得る。コイル630a~eは、交流電流がコイルに印加される時、トランスミッタとして構成され得る。蒸気送達針上の小型コイルは、トランスミッタコイルに対する、従って超音波画像に対する蒸気送達針先端の位置及び向きを計算する為に、コイル630a~630eの交流磁場を測定するように構成され得る。MRI画像は、更に、超音波画像と融合されて、融合されたMRI/超音波画像上の針先端軌道及び現在の位置を示してもよい。幾つかの処置では、針先端は、MRI画像なしで超音波画像上に表示されてもよく、又は先端は、超音波画像化を採用することなく術前MRI画像上に表示されてもよい。
【0131】
6Cに示す一実施形態において、前立腺の術前MRI3D画像がモニタに表示され得る。コイルセンサ630(図6Bのセンサ等)を有する安定化直腸プローブ600は、針先端トランスミッタコイル628からデータを収集し、MRI画像上に表示又は重ね合わせることができる針606の追尾を提供する。図6Cに示す一実施形態において、針先端追尾に登録される超音波画像は、術前MRI画像にも共同登録される。MRI画像は、癌組織の位置を示し得る。針が後退された状態で、送達装置シャフトは、追尾され、送達された針を癌領域に配置することが予測される尿道内の位置及び方向へと前進され、そこで蒸気が送達され得る。
【0132】
図6Cに示す超音波画像とMRI画像を同時に表示しなくても、この組織の座標が術前MRI画像に相対して既知であり、MRI画像の座標を超音波画像の座標に、例えば2つの画像における既知のランドマークの座標を比較することによって登録すれば、癌組織の位置が超音波画像に手動入力され得る。
【0133】
針先端の軌道を術前MRI画像に登録することは、計算された針先端の軌道が、MRI画像に表示された針先端の真の位置の常に近くにあることを保証する為に重要である。MRI画像は蒸気治療処置の前に撮影される為、一部の前立腺組織の位置がずれている可能性がある。更に、送達装置シャフトが前立腺組織の位置を変化させる可能性もある。登録は、MRI画像上に現れる解剖学的特徴の座標を電磁的に測定することを含む。
【0134】
1つの登録プロセスでは、蒸気治療プローブは、膀胱鏡モニタで見るように、MRI画像上で識別できる位置、例えば膀胱頸部又は精阜に移動される。一実施例では、直腸プローブセンスコイルによって決定された軌道は、軌道が解剖学的特徴のMRI画像と整合するようにスケーリングされる。別の例では、MRI画像は、電磁トラックによって決定された点と整合するようにモーフィングされる。幾つかの実施形態において、直腸プローブセンスコイルは、ソリッドステート又は他の磁場センサで置き換えられる。幾つかの例では、直腸プローブのコイルは交流電流で通電されて、針先端コイルに電圧を誘導する交番磁場を提供する。直腸コイルは順次通電してもよいし、針先端コイル信号で分解できる異なる周波数で通電する場合は同時に通電してもよい。
【0135】
針先端コイル(又は磁石)は、特に送達装置シャフトの先端内にあり、膀胱鏡上で見える場合、別の登録処理で使用され得る。図6Dに示す追加の実施形態において、TRUSプローブ601は、MRI画像を患者の解剖学的構造に登録する為に使用され得る。TRUSプローブ601は、超音波トランスデューサ602、コイル603、トランスデューサ及びコイル用のリード線605a及び605b、並びにオプションの保護シース606(例えば、コンドーム等)を含み得る。幾つかの実施形態において、ツールは光ファイバカメラ等の追加の撮像機能を含み得る。プローブは、直腸内で、MRI画像において特定され得る位置に移動させることができる。これらの位置は、超音波撮像を介して、又は任意に直腸プローブ光ファイバカメラ撮像を介して特定され得る。プローブコイル又は磁気センサ603は、可視解剖学的特徴の座標を決定する為に使用され得る。幾つかの実施形態において、プローブは、装置上のレバーを作動させることによって操縦可能である。その小さいプロファイルは、登録プロセスの間の前立腺組織の機械的破壊を防止する。電磁的定位は、図4Cに示す外部アレイのような一組の外部トランスミッタコイルによって促進され得る。外部トランスミットコイルは、追尾精度を最適化する為に、必要に応じて患者の周囲の他の位置に配置されてもよい。
【0136】
他の登録マーカーは、例えば腰骨及び尾骨(尾てい骨)のような、MRI画像上に現れる骨構造上にある皮膚上の点に取り付けてもよい。幾つかの実施形態において、細いワイヤのコイルが、MRI処置の前に皮膚上の位置に接着固定される。コイルの金属は、特にコイルが短絡している場合、画像に表示される。これらのマーカーを蒸気治療の時までそのままにしておくと、外部又は内部の電磁(EM)追尾システムによってこれらが位置特定され得る。マーカーはMRI画像上に表示されるので、EM座標スケーリング又はMRIマップの何れかを、計算されたEM位置とMRI画像上でマーカーが重なるように変更することができる。このプロセスは、患者が動くか、又は送達装置シャフトのような装置の位置が、前立腺組織の位置を著しく変更するのに十分な程に変化する場合に、繰り返されてもよい。
【0137】
図6Dの例では、コイル603は、固有の周波数で交流磁場を伝送する為にプローブに巻かれている。使用される周波数が独特であるので、センサ出力は、SN比を増加させる為に、これらの周波数で緊密にフィルタリングされ得る。プローブ上の好ましい位置で小さいコイルに正弦波電流を駆動することは、プローブ、特に送達装置針先に対するTRUS画像の平面を位置決めするのに十分である。コイルリード線は、図1Eの外部コンソールに差し込むことができるTRUSプローブ上に必要とされる。
【0138】
臨床的な目標は、針先端の経路を追尾し、前立腺の画像、例えばMR画像に登録されていてもいなくてもよいTRUS画像上にその経路を表示することである。一実施形態において、加速度計と固体ジャイロスコープを備えた慣性センサチップが蒸気送達装置に搭載され得る。送達装置シャフトの軸に沿った並進及びシャフトの軸を中心とした回転は、慣性センサチップによって測定され得る。MRIイメージング又は超音波イメージング等のイメージングへの登録は、送達装置膀胱鏡を用いた前立腺ランドマークの識別によって実行され得る。膀胱頸部及び精阜は、一義的に識別され得る優れたランドマークである。尿道内での送達装置の回転は、慣性センサチップによって測定され得る。送達装置のハンドルに配置された磁気センサは、上述のソレノイド針駆動磁石の磁場を測定するように構成される。センサの測定値は、送達装置カートリッジ内の磁石の位置に変換され得る。このようにして、前立腺の中に入った針の長さが分かる。針は、送達装置シャフトに垂直な(又は既知の角度で)直線で、又は曲がっているが予測可能な経路で前立腺組織内を移動すると仮定され得る。この仮定と慣性センサの出力とで、針先端の位置が推定され、画像に登録され得る。他の実施形態において、磁場センサが図1Bのカートリッジ104に取り付けられてもよい。図4Cのような外部アンテナから送信される磁場は、外部基準フレームに対してカートリッジ、ひいては送達装置シャフト先端を位置付ける為に使用され得る。1つ以上のカートリッジセンサは又、カートリッジ及び針先端の配向を提供することになる。
【0139】
リードレス針先端トラッキングの為のリモートセンサ
透過性コアを有し得るマルチターンコイルは、磁場に対する最高の感度を達成できるが、患者の近くに配置されたフラックスゲート又は固体磁気センサのアレイも、蒸気送達針先端のパルス状の動きを測定し、センサ座標系に対する針先端のx、y、z座標及び極角及び方位角である針先端の5自由度を局限する為に使用され得る。1kHzを中心とする100Hzの帯域幅における典型的な実効磁場ノイズは6×10-10テスラである。式(3)で示す25mmの先端磁石からの側面磁場は、他の距離rに外挿され得る。例えば、先端から150mm(約6インチ)の位置では、磁場は8.3×10-9テスラであり、市販のセンサ、例えばハネウェル(Honeywell)HMC1003センサを用いて83/6=14のSN比で分割され得る。一実施例では、2つの3軸センサが剛性非磁性ベース上で離隔され、患者の下部胴体上又はその近傍に配置され得る。例えば、図4Cの外部コイルアレイは、2つ以上の3軸固体磁気センサを含み得る。この2つのセンサは、磁石の5自由度を解決するには申し分ない、先端磁石の磁場の6つの測定値を供給する。これにより、針先端に埋め込まれた受動磁石部品により、針や送達装置のプローブには全くリード線がない状態で、針先端の追尾が実現される。移動する永久磁石や針先端コイルに発生する交流磁場を検知する為に、フラックスゲートや可飽和コアセンサ等、様々な磁気センサ技術が採用され得る。
【0140】
生体インピーダンス組織センシング
図5Bは又、改良型蒸気送達針先端を示し、これは、先端を包囲する組織のインピーダンスを測定するように構成された針先端生体インピーダンス電極554を含む。更に、蒸気送達システムの生体インピーダンス電極は、前立腺の組織間、例えば、前立腺の組織と前立腺の線維性被膜組織とを区別する為に使用され得る。組織の抵抗と静電容量を感知することによって、針先端電極は、先端が前立腺被膜の壁に触れた場合/時、インピーダンスの変化を感知するように構成され得る。インピーダンスは、先端電極間に一定周波数の定電流振幅正弦波を流し、その電圧振幅を測定することにより測定される。インピーダンス振幅は、電圧振幅と電流振幅の比である。電圧と電流の位相のずれとインピーダンス振幅から、組織の静電容量と抵抗が計算される。前立腺の繊維性被膜組織の電気抵抗は前立腺組織の抵抗より大きい。静電容量は細胞組織膜に由来する。細胞性被膜が少ないと、前立腺組織よりも静電容量が小さい、つまり容量性リアクタンスが大きくなる。被膜の抵抗の増加及び静電容量の減少の両方が、インピーダンスの大きさの増加につながる。
【0141】
一実施例では、針が前立腺被膜に接触していることを示すインピーダンスの上昇を電極が感知すると、蒸気送達針の前進を自動停止できる。
【0142】
針の先端が前立腺内部から前立腺被膜に接触すると、前立腺組織内の抵抗及び静電容量の両方が最大40%急激に変化することがある。コントラストは、約15~30kHzの間の周波数範囲において最大である。考えられ得る周波数の範囲は約1kHz~10MHzである。周波数によっては、焼灼治療後の組織でインピーダンスの変化が見られることがある。インピーダンスは、癌組織と非癌組織とで異なる場合がある。従って、一実施形態において、針先端で測定された生体インピーダンスは、癌組織の存在の検出と、組織焼灼における蒸気治療の成功の評価の両方を行う為にシステムによって使用され得る。
【0143】
図5Cは、患者の前立腺を処置する1つの方法を提供するフローチャートである。本方法は、本明細書に記載されるシステム又は装置の何れを用いて実行されてもよい。操作502において、図5Cの方法は、治療装置のシャフトを患者に経尿道挿入するステップを含み得る。操作504において、本方法は、シャフトから患者の前立腺の中に治療針を前進させるステップを更に含み得る。
【0144】
次に、操作506において、本方法は、治療針上に配置されたセンサで前立腺組織のパラメータを測定するステップを更に含み得る。幾つかの実施形態において、センサは生体インピーダンスセンサを含んでもよく、測定されたパラメータは、前立腺組織の電気インピーダンスであり得る。他の実施形態において、電気抵抗又は電気容量等の、組織の他の電気パラメータがセンサによって測定され得る。更に別の実施形態において、センサは、力センサを含んでもよく、パラメータは、前立腺組織によって針の先端に対して加えられる力であり得る。組織のパラメータは、針が前立腺内に前進されると、継続的又は周期的に監視され得る。
【0145】
次に、操作508において、本方法は、測定されたパラメータに基づいて、治療針が患者の前立腺被膜に接触したことを判定するステップを含み得る。電気インピーダンスが測定されている時の1つの実施態様では、本方法は、測定されたインピーダンスに急激な変化がある場合、針が患者の前立腺被膜に接触したと判定するステップを含み得る。幾つかの実施態様では、この急激な変化は、測定されたインピーダンスの25%を超える変化を含み得る。幾つかの実施態様では、この急激な変化は、測定されたインピーダンスにおける25~40%を超える、又は20~50%を超える変化を含み得る。別の実施態様では、センサが力センサを含む場合、判定ステップは、針が針の前進速度で前立腺被膜に接触するのと一致する力が針に加えられた時、針が前立腺被膜に接触したと判定することを含み得る。この「臨界力」は、例えば、システムに既知であり得る。
【0146】
幾つかの実施形態において、本方法は、前立腺被膜が針先端によって接触されたことをユーザにアラートするステップを含み得る。アラートは、例えば、視覚的アラート又は可聴アラート又はアラームであり得る。
【0147】
次に、操作510において、本方法は、前立腺被膜が接触した時に治療針の前進を停止させるステップを含み得る。幾つかの実施態様では、針の前進は自動停止される。例えば、システムのコントローラは、前立腺被膜との接触を検出し、針の前進を自動停止させることができる。例えば、上述したように、蒸気送達システムは、ソレノイド針前進機構を含み得る。一実施態様では、システムの電子コントローラは、システムが前立腺被膜との針の接触を検出すると針の前進を自動停止するように、センサ及び前進機構に動作可能に結合される。
【0148】
TRUSプローブと一体化されたトラッキングコイル
上述したように、図6Dの実施形態は、電磁コイル603がTRUS超音波画像化プローブと一体化されたTRUSプローブ601を含む。コイルは、トランスミッタ又はレシーバ何れかであってよく、蒸気送達装置の針先端コイルは、レシーバ又はトランスミッタの何れかである。前者では、TRUSコイル603は、約10kHz未満の周波数を有する正弦波電流によって駆動され得る。低周波数の制限により、導電性の身体組織における電流の著しい誘導を防止できる。一実施形態において、コイルは、より低い周波数の高調波ではあり得ない素数周波数で駆動され得る。TRUSトランスミッタコイルは、単一の周波数で順次駆動されてもよいし、別個の周波数で同時に駆動されてもよい。一実施例では、コイルは、5kHzの周波数で順次駆動される。10Hzのレートで局在データを得たい場合、全てのデータを0.1秒間隔で収集しなければならないので、各コイルは最大0.1/6=16.7ミリ秒の時間だけオンであり得る。コイル励磁の間に1.7ミリ秒のブランキング時間を設けると、各コイルは15ミリ秒の間オンになる。正弦波の1サイクルの時間は1/5ミリ秒=0.2ミリ秒となる。各コイルがオンになる周期は15/0.2=75であり、75周期のデータを平均化することで、75の平方根、つまり8.7のノイズ低減となる。この手法では、1つの正弦波電流発生器が6つのコイルに夫々多重化される。針先端コイルセンサ信号は、コイル駆動周波数での増幅とフィルタリングにより調整され、出力はコイルマルチプレクサと同期したセグメントで収集される。
【0149】
式(1)~(4)を用いた計算は、図6DのシステムにおけるSN比及び予期される定位精度を計算する為に使用され得る。トランスミッタコイルのコイル電流は、オーミックIR加熱によって直腸組織を損傷することができない値に制限される。一実施例では、加熱電力は1ワットに制限される。コイルは、約70オームの抵抗の#42磁石線を約150ターン巻いているので、コイルに1ワットの電力を散逸させる臨界電流は0.12アンペアrmsである。針先端コイルにおける定位精度は、この場合もサブミリメートルである。
【0150】
針先端コイルは、#48~#58の範囲の磁石線で巻かれ、高透磁率で低ヒステリシスのフォイルがコイルの下に配置されて、針先端コイルの信号を2~10倍に拡大してもよい。図5Aに示すように、合金48の10ミクロン厚の単層フォイルが針先端センスコイル528の下に配置され得る。この実施形態において、感知された信号は約3倍に拡大され得る。この点で、信号を打ち消し得るフォイル内の周回電流の誘導を避ける為に、フォイル長に沿って小さいギャップを残すことが重要である。ノイズに対する信号が増加することで、トランスミッタコイルの面積を小さくする機会が得られる。センスコイルの下に透磁率の高いフォイルを使用することの欠点は、トランスミッタコイルの近くで見られる比較的大きい磁場でフォイルが飽和する可能性があることである。透磁率の高いフォイルの上に銅のコイルを巻く代わりに、ニッケル等の透磁率の高いワイヤでコイルを巻く方法もある。センサとして、コイルは高インピーダンス増幅器に接続されているので、感知された電圧を減少させる可能性のある電流はコイルに殆ど流れない。
【0151】
図6Dの送信コイルは、コイルに十分な可撓性を提供する磁石ワイヤで巻かれてもよく、安全で経済的に提供される交流電流及び電圧レベルで駆動されてもよい。幾つかの実施形態において、#42~#52の範囲の磁石線を用いて、図6Dの送信コイルを巻いてもよい。送信コイルは、円、楕円、正方形、長方形、及びビオ・サバールの法則を使用して磁場を計算する為に定量化できる不規則な形状さえ含む、都合よく巻ける任意の形状を含み得る。
【0152】
幾つかの実施形態において、送信コイルは、図7Bに示すように、経直腸チューブの壁に一体化されてもよい。他の例では、超音波プローブは、電磁場巻線を備えた図6Bのチューブに挿入される。チューブの外径は、2.5~3cmの範囲であってもよく、内径は、2.3~2.8cmの範囲であってもよい。超音波プローブは、プローブがトランスミッタコイルに対して並進又は回転することを防止するキー付き様式でトランスミッタコイルチューブに挿入され得る。幾つかの実施形態において、超音波波長はチューブ壁の厚さより大きく、チューブ及び集積コイルは超音波に対して本質的に透過性である。他の実施形態において、例えば図6Dにおいて、コイルは、超音波ビームがコイルのワイヤと交差しないようなパターンで巻かれ得る。チューブ材料は、超音波の速度がチューブ材料内と体内組織内とでほぼ同じになるように選択され得る。この音響インピーダンスマッチング特性を有する超音波ゲルを、チューブ内径と超音波プローブの間のチューブ外側とチューブ内側に塗布してもよい。
【0153】
図6Bの幾つかの実施形態において、チューブの内径は、トランスミッタチューブに挿入される経直腸超音波プローブにキー止めされる。トランスミッタコイルを超音波プローブにロックすることにより、TRUSプローブが患者の解剖学的構造に対して相対的に動かされる場合でさえ、超音波画像がセンサ追尾座標系に登録されることが保証される。言い換えると、工場でのキャリブレーション後は、磁場追尾システムの座標系が超音波画像の座標系と同じになる。この共同登録は、磁場トランスミッタコイルを患者の外側や超音波プローブと共に移動しない他の位置に配置するよりも有利である。ユーザは、患者の肛門内で超音波プローブをルーチンで並進又は回転させ、所定の処置に最適な視野角を見つけてもよい。物理的にロックされたプローブがなければ、そのような動きを追尾してアルゴリズムで説明する必要があり、又は追尾システム及び超音波システムは、超音波プローブの各動作の後に再登録される必要があり得る。図6Dの幾つかの実施形態において、電磁コイルは、超音波周波数にインピーダンス整合された可撓性材料の薄肉壁内に収容されてもよい。コイルは、超音波ゲルをプローブに塗布した後に超音波プローブ上に転がされ得る「コンドーム」又は保護シースの壁に巻かれ得る。この実施形態において、コンドームは、電磁コイルがTRUSトランスデューサ結晶と適切に整列するように超音波プローブ上に配置されて、コイルが結晶上を横切るのを避け、プローブ上に再現可能なコイルパターンを提供する必要がある。
【0154】
TRUS又は他の直腸プローブと電磁定位を統合することの1つの利点は、送信コイルと受信コイルが互いに近いことである。式(3)に見られるように、磁場、従ってコイルセンサ電圧の大きさは、送信コイルと受信コイルとの間の離隔の3乗として低下する。外部コイルを使用するシステムは、通常、送信コイルを駆動する為に30ワット以上の電力を必要とする。上記の例では、ミリメートル以下の定位精度を得る為に、ワット以下の電力を要する。低電力は、電子機器のサイズ、コスト及び冷却要件を低減する。
【0155】
本発明の経直腸コイルシステムの別の利点は、手術領域内に存在し、処置中に位置を変える可能性のある外部金属による送信信号の干渉が無視できる程度であることである。送信信号は、トランスミッタに近接する金属部品によって歪む。本発明のシステムでは、前立腺内又はその近くに金属物が予期されず、外部の金属物はシステムの範囲外であるため、歪みはないと予想される。
【0156】
本発明の経直腸コイルシステムの別の利点は、センサのリード線及び電子機器がトランスミッタからの微小な磁場に曝されることである。図4Cのような外部送信コイルシステムでは、図1の送達装置ハンドル内の針先センサ及び電子機器から延びるリード線は、リード線、コネクタ、及び電子機器部品並びに接地面における電流を誘発することによって受信信号を歪める磁場に曝される可能性がある。
【0157】
本発明の経直腸コイルシステムの別の利点は、経直腸画像が較正後にEMトラックに対して自動登録され、外部コイルシステムとは対照的に、登録は処置中に変更できないことである。
【0158】
送信コイルとしての針先端コイル
幾つかの実施形態において、図5Aの針先端コイルは、図6Dに示すように、正弦波磁場のトランスミッタであり、直腸プローブ内のコイルセットはレシーバであってよい。針先端コイルは、センスコイルとトランスミッタコイルの間の離隔よりも真にずっと小さいので、磁場の双極子の式が適用される。送信磁場と感知磁場の方程式を組み合わせると、遠方磁場におけるセンサ電圧の大きさの推定値は次のようになる。
V=μμ(μfI/r) (12)
【0159】
これは、送信コイルとセンスコイルの透磁率、巻き数、面積の積で完全に対称である。トランスミッタ電流は、トランスミッタで許容される電力散逸によって決定され、これは、例えば直腸プローブトランスミッタでは1ワット、針先端トランスミッタでは0.1ワットと小さくなることがある。電流と誘起電圧の信号は電力の平方根でスケーリングされるか、又は、この例では、SQRT(10)=3.2分の1に縮小する。この構成では、直腸プローブコイルは、より細いワイヤのより多くのターンを含み得る。トランスミッタとして、これらのコイルの抵抗は、安全な電圧で動作するように制限されるが、この制限は、センサとしてのコイルには適用されない。針先端コイルをトランスミッタとして使用する利点は、複数のコイル間で多重化された送信電流に対して、センサ電圧を同時に測定した連続的な正弦波送信電流を使用することである。順次作動する直腸プローブトランスミッタコイルと比較して、連続作動する直腸受信コイルは、コイル数の倍数だけ長い時間サンプリングされ、それによってSN比が改善される。測定された電圧が針先端トランスミッタから外部コイルのアレイに誘導されても、針先端コイルに誘導された電圧が外部トランスミッタコイル毎に感知されても、定位演算は同一であることが示され得る。
【0160】
一般的な針先端の追尾
図6Eは、患者の前立腺を処置する1つの方法を提供するフローチャートである。本方法は、本明細書に記載されるシステム又は装置の何れを用いて実行されてもよい。操作62において、図6Eの方法は、治療装置のシャフトを患者の中に経尿道挿入するステップを含み得る。操作64において、本方法は、シャフトから患者の前立腺の中に治療針を前進させるステップを更に含み得る。
【0161】
次に、操作66において、本方法は、前立腺内の治療針のリアルタイム位置を判定するステップを更に含み得る。幾つかの実施態様では、治療針のリアルタイム位置を判定するステップは、治療針上又は治療針内に配置されたセンサの位置を判定するステップを含み得る。例えば、針は、針上又は針内に配置された磁石又は電磁石を含み得る。幾つかの実施形態において、追尾システムは、針が前立腺を通って移動する時に、センサの周囲磁場を検出できる。追尾システムは、例えば、トランスミッタコイルのアレイを含み得る。幾つかの実施態様では、追尾システムは、治療装置自体(例えば、装置のシャフト上)への統合、装置の外部への配置、又は代替的に、経直腸プローブ若しくは経直腸超音波画像プローブへの統合が可能である。
【0162】
次に、操作68において、本方法は、治療針と前立腺のリアルタイム位置を表示するステップを含み得る。幾つかの実施態様では、この操作は、超音波イメージングシステムで前立腺を画像化するステップと、前立腺の画像に治療針の位置をオーバーレイして前立腺の画像を表示するステップを含む。
【0163】
次に、操作70において、本方法は、治療針から前立腺への焼灼治療を含み得る。本明細書に記載のように、この治療は、例えば、前立腺を処置する為に、治療システムから蒸気を前立腺の1つ以上の位置に送達するステップを含み得る。
【0164】
MRI画像に重畳された蒸気の超音波イメージング
針の先端から出て隣接する組織に広がる時の蒸気を、超音波画像で見ることができる。一実施形態において、追尾システムによって感知された針先端位置は、リアルタイム超音波画像(これは、MRI画像と融合されてもよい)に重畳されてもよい。超音波モニタは、針先端の周囲の組織への蒸気の予測経路を表示できる。又、実際の蒸気が組織内に広がっている様子を表示することができ、以前に焼灼された組織を表示することができる。幾つかの実施形態において、追尾システムは、超音波システム及びモニタと一体化されている。他の実施形態において、ビデオコンバイナが超音波モニタの出力とEMシステムコンピュータからの追尾データとを重畳し、合成された画像が別のシステムモニタに表示される。
【0165】
ユーザは、針先端の重畳された追尾を伴う超音波画像を見ることができる。針先端の現在の位置には、その針先端を示す為に矢印が配置されてもよい。或いは、現在の位置を含む以前の針位置の軌跡自体が、針の向きの適切な指標であり得る。ユーザは、針が前立腺被膜に接近する時に針を観察し、先端が被膜に触れることから近い、例えば約5mmである時に針の前進を停止してもよい。別の実施形態において、前立腺被膜等の組織に対する針先端の位置は、超音波画像内の被膜を認識するようにプログラムされた画像処理装置において生成され得る。蒸気送達装置又はシステムは、蒸気送達針が前立腺被膜に接近するか又は触れる時に、ユーザにアラートし及び/又は針の動きを自動停止するように構成され得、それによって、前立腺の外部の組織への蒸気の送達の可能性を伴う被膜の穿刺を防止することができる。
【0166】
幾つかの実施形態において、送達装置ハンドルは、送達装置プローブ及び針先端の動きを制御し、ポイントアンドクリック又は他の入力装置を介してユーザによって指定された位置に針先端を自動的に送達するロボットアーム又はプラットフォームに取り付けられ得る。ロボットは、組織への損傷を防ぐ為に、ユーザアラーム、或いは自動的な針の動きをプログラムされ得る。
【0167】
針先端の力センサ又は電気接触センサ
蒸気送達針の先端に作用する力の測定も、前立腺の壁又は被膜との針の接触を操作者にアラートする為に、本明細書に記載のシステムにおいて実施され得る。電気接触力センサ702を有する蒸気送達針700が、図7に示されている。この例では、先端は、先端が前立腺壁又は被膜に接触した時に非常に少量だけ撓むように構成された可撓性材料704から構成され得る。臨界先端力がかかると、半球状電極706と針先端内の接触スイッチ708との間で電気的接触が成され、リード線710を介してユーザにアラートを送る。電極の半球形状は針先端と組織との軸外接触を補償する。先端材料の選択と幅、先端電極間の公称ギャップ、及び先端形状により、電気的接触及びユーザアラートに必要な力が決まる。2本のリード線を用いて、針の側面の溝、又は針の壁のチャンネル、又は針の蒸気ルーメン内を通って、接触が成されたと判定するマイクロプロセッサに通す。
【0168】
力センサを備えた蒸気送達針の別の実施形態が図8に示されており、感応材料802が2つの電極804の間に挟まれ、蒸気送達針先端806で力が加えられると外側の電極が撓むことができるようになっている。例としては、材料が誘電体であるコンデンサ、或いは空気や真空が含まれる。静電容量が測定され、電極の離隔によって変化する。圧電材料は、力を加えると、電極間に電圧を発生させる。ピエゾ抵抗材料は、力を加えると電極間で測定される電気抵抗が変化する。センサ技術は、上記の先端磁石のような磁気源からの離隔を測定する先端部の磁場センサを含む。別の実施形態において、センサは、微細加工された膜又はカンチレバーを含む小型集積回路を含んでもよく、加速度、変位、又は力を測定してもよい。針先端のセンサから、針の側面の溝に沿って延び、送達チューブの壁のチャネルを通り、又は針の蒸気ルーメンを通り、送達装置内の電子機器に出るリード線の最小数は2本である。ホイートストンブリッジが針先センサと統合されている場合、3本のリード線が必要である。幾つかの実施例では、光ファイバがリード線に置き換わり、センサは、針先力の下で撓む反射膜を含む。
【0169】
上記の例では、前立腺被膜壁のような障害物が針先端に衝突していることを示す、臨界力が検出される。針駆動力を停止して蒸気送達針の前進を直ちに停止し、超音波画像又はMR画像を参照して針先端の位置を確認し、針先端を軌道修正して被膜の貫通を防止することが可能である。
【0170】
既述のように、針に組織が及ぼす力は、針が一定の速度で組織を通って前進している時に、図1Aのソレノイドコイル116及び118に流れる電流を測定することによって決定され得る。一定速度では、針にかかる正味の力はゼロであり、即ち、組織が針に及ぼす力は、ソレノイドが針に及ぼす力と等しく、反対である。ソレノイドの力はソレノイドコイル電流に比例するので、ソレノイド電流を測定することは組織の力の測度になる。ソレノイド電流(一定の速度を維持するのに必要な電流)の急激な上昇は、針先端が、前立腺被膜であり得る障害物に遭遇したことを示す。
【0171】
既述のように、図5Bの電極の間に配置された組織の電気インピーダンスの測定は、接近する前立腺被膜の更に別の指標を提供し得る。針先端を取り囲む電場が、針先端の前方で或る程度まで広がっていることは注目に値する。電極間の電圧は、針先端が被膜に遭遇する前に幾分上昇し始める。この生体インピーダンス測定は、妨害する被膜組織の早期のアラートを提供する。
【0172】
非ニュートン針先端材料
一実施形態において、蒸気送達針先端は、図9A~9Bに示すように、比較的小さいパルスナビゲーション又は連続ナビゲーション力の下で前立腺壁又は被膜に接触すると平らになるように針先端を構成することによって、前立腺被膜壁を突き抜けることを受動的に防止することが可能である。針が前立腺の中に最初に前進される時等、大きく且つ迅速に作用する針展開力が加えられる時、針は、図9Aに示されるように、尿道壁を貫通する為にその尖った形状を維持する。しかし、針が前立腺被膜のようなより剛性の高い組織に緩慢に押し付けられると、図9Bに示されるように、針の先端は、それ自体が平らになるか又は鈍くなるように構成され得る。この実施形態において、材料は非ニュートン(急速に加えられる大きい力の下では剛性を保つが、緩慢に加えられる小さい力の下では緩和して変形する材料の特性)と呼ばれる。このような材料の例として、濡れた浜辺の砂がよく挙げられる。非ニュートン材料の一例として、PMMAビーズ等の生体適合性材料があり、応力が緩和されると針を元の形状に戻す形状記憶ポリマーの皮膜に囲まれる場合の先端部に使用され得る。PETは、形状記憶ポリマーの候補である。
【0173】
前立腺の薄肉組織域に蒸気を送達する為の短縮された針先端
前立腺の辺縁域は、前立腺被膜に隣接している場合があり、前立腺の他の区域と比較して薄い場合がある。蒸気治療針が尿道に対して垂直に前進される時、針は、厚さが10mm未満であり得るその薄い寸法と平行に辺縁域に入る可能性がある。先細りの針先端の追加された長さにより、この製品は、辺縁域組織を処置する為に使用される場合、誤って隣接区域組織を処置することがあり、前立腺域を離隔する偽被膜を焼灼すること、或いは被膜を貫通することもある。本明細書に記載の蒸気送達針は、図1Dに示すように、蒸気送達穴を有する針セグメントの長さを、標準針の4mmと比較して約2.5mmに短縮し、辺縁域組織を処置するように設計されている。穴の総面積は、様々な先端設計について同じにすることができ、従って、針表面での蒸気速度がほぼ同じであることを確実にする。
【0174】
安全で効果的な蒸気治療の送達方法
耐穿刺性針先設計並びに前立腺のリアルタイムの超音波及び/又はMR画像に重畳した針先端追尾は、前立腺被膜を破り、周辺組織に蒸気を送達する可能性を軽減する。それでも、蒸気が被膜壁を通して伝導され、前立腺の外側の組織を加熱し傷つける可能性は依然としてある。直腸の隣接組織は、熱による損傷を受けやすく、重篤な合併症を引き起こす可能性がある。射精神経は前立腺被膜の外壁に隣接しており、これらの神経への熱損傷は性的機能不全を引き起こす可能性がある。
【0175】
敏感な組織を保護する為の安全で効果的な方法及びシステムは、これらの領域への熱伝導の制限を含む。熱伝導は時間依存性プロセスであるので、前立腺壁に隣接する組織に治療が適用される時間を短縮し、治療ショット間の冷却の為の時間を増加することは、前立腺周囲組織への損傷を緩和する為の有効な手段である。好ましい実施形態において、画像誘導は、針が過熱からの保護を必要とする敏感な組織に隣接している場合を決定する。前立腺組織の焼灼は、固定カロリー/秒のエネルギー蒸気送達速度で可変の焼灼時間を構成し得る複数のステップで実行される。
【0176】
幾つかの実施形態において、前立腺を包囲する組織における温度の過度の上昇を防止するヒートシンクを提供する為に、通常の生理食塩水が前立腺を包囲する組織に注入される。生理食塩水は、会陰を通して前立腺に挿入される1つ以上の生理食塩水針を介して注入されてもよい。前立腺に近接して注入された生理食塩水は、前立腺を周囲の組織から物理的に離隔させ、生理食塩水の保護層を形成する。又、生理食塩水は、超音波画像上で反射の少ない、即ち暗い液体層を形成し、前立腺被膜の鮮明な画像を提供する。超音波画像に重畳された針先端追尾と共に前立腺被膜の明確な描出が、被膜の針破断に対する更なる保護を提供する。前立腺の3次元外形は、システムコンピュータに保存され、処置中に超音波撮像平面が変更されると、数学的に変換されて新しい図に表示され得る。
【0177】
図10は、前立腺を処置する方法のフローチャートを提供する。本方法は、本明細書に記載のシステム及び装置の何れを用いて実行されてもよい。操作1002において、本方法は、患者の前立腺に隣接する組織に生理食塩水を注入するステップを含み得る。生理食塩水は、例えば、経会陰挿入された針で注入され得る。幾つかの実施態様では、前立腺に隣接する組織に、前立腺を完全に取り囲むのに十分な生理食塩水が注入され得る。或る実施態様では、生理食塩水の注入は、前立腺の組織と隣接する組織との間に流体層を形成する。
【0178】
操作1004を参照すると、本方法は、治療システムにおいて蒸気を発生させるステップを含み得る。操作1006において、本方法は、治療システムを用いて前立腺及び注入された生理食塩水を視覚化するステップを更に含み得る。或る実施態様では、視覚化は、超音波画像処理システムによる視覚化を含む。この実施態様では、生理食塩水注入は、前立腺と隣接する組織との間に流体層を形成し、それは超音波画像化下で患者の暗い又は最小限の反射領域として可視化される。
【0179】
操作1008において、本方法は、可視化下にある間に、治療システムから前立腺の中に治療針を前進させるステップを更に含み得る。幾つかの実施態様では、治療針の位置を追尾することができ、注入された生理食塩水によって提供される暗い又は最小反射領域を使用して、針の前進が前立腺被膜を越えて隣接組織に及ばないことを確実にすることができる。
【0180】
操作1010において、本方法は、治療システムを用いて前立腺に蒸気を送達するステップを更に含み得る。本明細書に記載されるように、蒸気送達システムは、前立腺尿道を介して前立腺にアクセスするように構成された経尿道シャフトと蒸気送達針とを含み得る。治療中、システムのユーザは、シャフトを患者の尿道内の所望の位置に移動させ、蒸気送達針をシャフトから前立腺の中に延ばすことができる。次いで、蒸気は、蒸気送達針から前立腺の中に送達され得る。
【0181】
本発明の実施形態を詳細に上述したが、この説明は単に例示の為のものであり、本発明の上記説明は網羅的ではないことが理解されよう。本発明の特定の特徴は、幾つかの図面に示され、他の図面には示されていないが、これは便宜上のものであり、任意の特徴は、本発明に従って別の特徴と組み合わせてもよい。変形及び代替案は、当技術分野における通常の技術を有する者には明らかであろう。そのような代替案及び変形は、特許請求の範囲に含まれることが意図されている。従属請求項に示される特徴は、組み合わせることができ、本発明の範囲に含まれる。本発明は、従属請求項が他の独立請求項を参照して複数の従属請求項の形式で代替的に記述されているかのような実施形態も包含する。
【符号の説明】
【0182】
50 電子コントローラ
60 ケーブル
100 蒸気送達システム
102 シャフト
104 ハンドル部分
106 蒸気送達針
107 磁石
110 ソレノイド針ドライバ
112 蒸気発生器
116 引き巻線
117 膀胱鏡
118 押し巻線
124 センサ
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】