(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(54)【発明の名称】治療部位での免疫系応答性を刺激し維持するためのナノ粒子システム
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7088 20060101AFI20230222BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230222BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20230222BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230222BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230222BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20230222BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230222BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230222BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230222BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230222BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20230222BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230222BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230222BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230222BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230222BHJP
C12N 15/54 20060101ALI20230222BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230222BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230222BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230222BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230222BHJP
C12N 5/0786 20100101ALN20230222BHJP
【FI】
A61K31/7088
A61K48/00
A61K31/7105
A61P35/00
A61K47/26
A61K9/127
A61K9/14
A61K45/00
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/28
A61K47/24
A61K39/395 N
C12N15/13 ZNA
C12N15/12
C12N15/54
C12N5/10
C12N15/63 Z
C07K16/28
C07K19/00
C12N5/0786
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565737
(86)(22)【出願日】2020-12-31
(85)【翻訳文提出日】2022-08-26
(86)【国際出願番号】 US2020067729
(87)【国際公開番号】W WO2021138600
(87)【国際公開日】2021-07-08
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522256406
【氏名又は名称】フレッド ハッチンソン キャンサー センター
(71)【出願人】
【識別番号】522261019
【氏名又は名称】タイダル・セラビューティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン,ウルリク
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4C076AA19
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4C084NA05
4C084ZB261
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4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA24
4C086MA41
4C086MA56
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA06
4C086ZB26
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
単球/マクロファージをインビボで遺伝的に改変して、(1)追加の免疫細胞を治療部位に動員する;(2)治療部位で活性化されたままで他の免疫細胞に進行中の刺激シグナルを出す;及び(3)治療部位で目的の細胞上の抗原に結合し動員された免疫細胞にも結合してこれを活性化し結合した細胞を破壊する二重特異的免疫細胞結合分子を分泌するナノ粒子システム。システムは、形質転換成長因子ベータ(TGFβ)の活性も阻害することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
専門食細胞に結合するターゲティングリガンド;並びに
第1の結合ドメイン及び第2の結合ドメインを少なくとも有するタンパク質分子をコードする核酸
を含むナノ粒子であって、
第1の結合ドメインが、免疫細胞により発現される細胞表面タンパク質に特異的であり、
第2の結合ドメインが、がん細胞により発現される細胞表面タンパク質に特異的である、ナノ粒子。
【請求項2】
ターゲティングリガンドが、単球、マクロファージ、又は両方により発現される細胞表面タンパク質に結合する、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
ターゲティングリガンドがジマンノースを含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項4】
核酸がリボ核酸(RNA)を含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項5】
RNAがメッセンジャーRNA(mRNA)を含む、請求項4に記載のナノ粒子。
【請求項6】
mRNAが、合成RNA又はインビトロ転写RNA(IVT RNA)を含む、請求項5に記載のナノ粒子。
【請求項7】
第1の結合ドメインが、リンパ球の細胞表面タンパク質に特異的である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項8】
リンパ球が、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及び腫瘍浸潤リンパ球(TIL)細胞からなる群から選択される、請求項7に記載のナノ粒子。
【請求項9】
第1の結合ドメインが、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ガンマデルタT細胞、及びNK T細胞からなる群から選択されるT細胞の細胞表面タンパク質に特異的である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項10】
第1の結合ドメインがCD3に特異的である、請求項9に記載のナノ粒子。
【請求項11】
タンパク質分子が二重特異性T細胞エンゲージャーである、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項12】
タンパク質分子が、EpCAM-CD3二重特異性T細胞エンゲージャーである、請求項11に記載のナノ粒子。
【請求項13】
第2の結合ドメインが、がん細胞により発現される抗原に特異的である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項14】
1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードする第2の核酸をさらに含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項15】
腫瘍細胞増殖インヒビター又は腫瘍細胞増殖インヒビターをコードする核酸をさらに含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項16】
核酸が、抗体、又は抗体の抗原結合断片をコードする、請求項15に記載のナノ粒子。
【請求項17】
ナノ粒子が、CD40-CD40Lインヒビター又はTGFβインヒビターをコードする核酸を含む、請求項15に記載のナノ粒子。
【請求項18】
ナノ粒子が、リポソーム、リポソームナノ粒子、脂質ナノ粒子、又は固形脂質ナノ粒子である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項19】
第1の複数のナノ粒子のそれぞれが、
専門食細胞に結合するターゲティングリガンド
を含む第1の複数のナノ粒子と;
免疫細胞により発現される細胞表面タンパク質に特異的な第1の結合ドメイン、及びがん細胞により発現される細胞表面タンパク質に特異的な第2の結合ドメインを有するタンパク質分子をコードする核酸と
を含む組成物。
【請求項20】
ターゲティングリガンドが、単球、マクロファージ、又は両方により発現される細胞表面タンパク質に結合する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
ターゲティングリガンドがジマンノースを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
核酸がRNAを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
RNAがmRNAを含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
mRNAが、合成RNA又はIVT RNAを含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
第1の結合ドメインが、リンパ球の細胞表面タンパク質に特異的である、請求項19に記載の組成物。
【請求項26】
リンパ球が、T細胞、B細胞、NK細胞、及びTIL細胞からなる群から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
第1の結合ドメインが、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ガンマデルタT細胞、及びNK T細胞からなる群から選択されるT細胞の細胞表面タンパク質に特異的である、請求項19に記載の組成物。
【請求項28】
第1の結合ドメインがCD3に特異的である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
タンパク質分子が二重特異性T細胞エンゲージャーである、請求項19に記載の組成物。
【請求項30】
タンパク質分子がEpCAM-CD3二重特異性T細胞エンゲージャーである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
第2の結合ドメインが、がん細胞により発現される抗原に特異的である、請求項19に記載の組成物。
【請求項32】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項33】
第1の複数のナノ粒子の少なくともサブセットが、(a)1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードする核酸、及び(b)IKKβをコードする核酸のうちの1つ以上をさらに含む、請求項19~32のいずれかに記載の組成物。
【請求項34】
第2の複数のナノ粒子の少なくともサブセットが、(a)1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードする核酸、及び(b)IKKβをコードする核酸のうちの1つ以上を含む、第2の複数のナノ粒子
をさらに含む、請求項19~32のいずれかに記載の組成物。
【請求項35】
腫瘍細胞増殖インヒビターをさらに含む、請求項19~34のいずれかに記載の組成物。
【請求項36】
第1又は第2の複数のナノ粒子の少なくともサブセットが、腫瘍細胞増殖インヒビターをコードする核酸をさらに含む、請求項19~35のいずれかに記載の組成物。
【請求項37】
第1又は第2の複数のナノ粒子の少なくともサブセットが、腫瘍細胞増殖インヒビターの抗体の抗原結合断片をコードする核酸をさらに含む、請求項34のいずれかに記載の組成物。
【請求項38】
第3の複数のナノ粒子の少なくともサブセットが、腫瘍細胞増殖インヒビターの抗体の抗原結合断片をコードする核酸を含む、第3の複数のナノ粒子をさらに含む、請求項19又は34~36のいずれかに記載の組成物。
【請求項39】
腫瘍細胞増殖インヒビターが、CD40-CD40Lインヒビター又はTGFβインヒビターである、請求項35~38のいずれかに記載の組成物。
【請求項40】
第2の複数のナノ粒子の非存在下で、第1の複数のナノ粒子及び第3の複数のナノ粒子を含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項41】
第1、第2、及び/又は第3の複数のナノ粒子が、リポソーム、リポソームナノ粒子、脂質ナノ粒子、又は固形脂質ナノ粒子を含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項42】
ヒト対象においてがんを治療するための組成物であって、
複数のナノ粒子のそれぞれが、
(i)単球、マクロファージ、又は両方に結合するターゲティングリガンド;並びに
(ii)リンパ球により発現される細胞表面タンパク質に特異的な第1の結合ドメイン、及びがん細胞により発現される細胞表面タンパク質に特異的な第2の結合ドメインを少なくとも有するタンパク質分子をコードするmRNA
を含む、第1の複数のナノ粒子
を含み、
第1の複数のナノ粒子が、ヒト対象において免疫応答を刺激又は増強し、それによってがんを治療する、組成物。
【請求項43】
ターゲティングリガンドがジマンノースを含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
mRNAが、合成RNA又はIVT RNAを含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項45】
第1の結合ドメインがリンパ球の細胞表面タンパク質に特異的である、請求項42に記載の組成物。
【請求項46】
リンパ球が、T細胞、B細胞、NK細胞及びTIL細胞からなる群から選択される、請求項42に記載の組成物。
【請求項47】
第1の結合ドメインが、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ガンマデルタT細胞、及びNK T細胞からなる群から選択されるT細胞の細胞表面タンパク質に特異的である、請求項42に記載の組成物。
【請求項48】
第1の結合ドメインがCD3に特異的である、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
タンパク質分子が二重特異性T細胞エンゲージャーである、請求項42に記載の組成物。
【請求項50】
タンパク質分子がEpCAM-CD3二重特異性T細胞エンゲージャーである、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
第2の結合ドメインが、がん細胞により発現される抗原に特異的である、請求項42に記載の組成物。
【請求項52】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項53】
第1の複数のナノ粒子の少なくともサブセットが、(a)1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードするmRNA、(b)IKKβをコードするmRNA、又は(c)1つ以上のIRFをコードするmRNA及びIKKβをコードするmRNA、並びに(c)腫瘍細胞増殖インヒビターをコードするmRNAのうちの1つ以上をさらに含む、請求項42~52のいずれかに記載の組成物。
【請求項54】
第2の複数のナノ粒子のそれぞれが、
単球、マクロファージ、又は両方に結合するターゲティングリガンド、並びに
(a)1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードするmRNA、(b)IKKβをコードするmRNA、及び(c)腫瘍細胞増殖インヒビターをコードするmRNAのうちの1つ以上を含む、第2の複数のナノ粒子
をさらに含む、請求項42~53のいずれかに記載の組成物。
【請求項55】
第2の複数のナノ粒子が、腫瘍細胞増殖インヒビターの抗体の抗原結合断片をコードするmRNAを含む、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
瘍細胞増殖インヒビターが、CD40-CD40Lインヒビター又はTGFβインヒビターである、請求項53~55のいずれかに記載の組成物。
【請求項57】
第1及び/又は第2の複数のナノ粒子が、リポソーム、リポソームナノ粒子、脂質ナノ粒子、又は固形脂質ナノ粒子を含む、請求項54に記載の組成物。
【請求項58】
ヒト対象においてがんを治療するための方法であって、第1の複数のナノ粒子を含む組成物をヒト対象に投与することを含み、
第1の複数のナノ粒子のそれぞれが、
(i)単球、マクロファージ、又は両方に結合するターゲティングリガンド;並びに
(ii)リンパ球により発現される細胞表面タンパク質に特異的な第1の結合ドメイン、及びがん細胞により発現される細胞表面タンパク質に特異的な第2の結合ドメインを少なくとも有するタンパク質分子をコードするmRNA
を含み、
複数のナノ粒子が、ヒト対象において免疫応答を刺激又は増強し、それによってがんを治療する、方法。
【請求項59】
ターゲティングリガンドがジマンノースを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
mRNAが、合成RNA又はIVT RNAを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
リンパ球が、T細胞、B細胞、NK細胞、及びTIL細胞からなる群から選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
第1の結合ドメインが、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ガンマデルタT細胞、及びNK T細胞からなる群から選択されるT細胞の細胞表面タンパク質に特異的である、請求項58に記載の方法。
【請求項63】
第1の結合ドメインがCD3に特異的である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
タンパク質分子が二重特異性T細胞エンゲージャーである、請求項58に記載の方法。
【請求項65】
タンパク質分子がEpCAM-CD3二重特異性T細胞エンゲージャーである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
第2の結合ドメインが、がん細胞により発現される抗原に特異的である、請求項58に記載の方法。
【請求項67】
組成物が薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項58に記載の方法。
【請求項68】
第1の複数のナノ粒子の少なくともサブセットが、(a)1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードする核酸、(b)IKKβをコードする核酸、及び(c)腫瘍細胞増殖インヒビターをコードする核酸のうちの1つ以上をさらに含む、請求項58~67のいずれかに記載の方法。
【請求項69】
第2の複数のナノ粒子のそれぞれが、
単球、マクロファージ、又は両方に結合するターゲティングリガンド、並びに
(a)1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードするmRNA、及び(b)IKKβをコードするmRNAを含む、第2の複数のナノ粒子を含む組成物をヒト対象に投与することをさらに含む、請求項58~68のいずれかに記載の方法。
【請求項70】
第1又は第2の複数のナノ粒子の少なくともサブセットが、腫瘍細胞増殖インヒビターをコードするmRNAをさらに含む、請求項68又は69に記載の方法。
【請求項71】
第3の複数のナノ粒子のそれぞれが、
単球、マクロファージ、又は両方に結合するターゲティングリガンド、及び
腫瘍細胞増殖インヒビターをコードするmRNA
を含む、第3の複数のナノ粒子を含む組成物をヒト対象に投与することをさらに含む、請求項58~70のいずれかに記載の方法。
【請求項72】
腫瘍細胞増殖インヒビターをコードするmRNAが、腫瘍細胞増殖インヒビターの抗体の抗原結合断片をコードする、請求項70又は71に記載の方法。
【請求項73】
腫瘍細胞増殖インヒビターが、CD40-CD40Lインヒビター又はTGFβインヒビターである、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
第1、第2、及び/又は第3の複数のナノ粒子が、リポソーム、リポソームナノ粒子、脂質ナノ粒子、又は固形脂質ナノ粒子を含む、請求項71に記載の組成物。
【請求項75】
第1の複数のナノ粒子を含む組成物を投与するステップ及び第2の複数のナノ粒子を含む組成物を投与するステップが同時に又は逐次実施される、請求項58又は69に記載の方法。
【請求項76】
第1の複数のナノ粒子を含む組成物を投与するステップが、第2の複数のナノ粒子を含む組成物を投与するステップ後に実施される、請求項58又は69のいずれかに記載の方法。
【請求項77】
第3の複数のナノ粒子を含む組成物を投与するステップが、第1の複数のナノ粒子を投与するステップと同時に又は逐次実施される、請求項71に記載の方法。
【請求項78】
第3の複数のナノ粒子を含む組成物を投与するステップが、第2の複数のナノ粒子を投与するステップと同時に又は逐次実施される、請求項71に記載の方法。
【請求項79】
第2の複数のナノ粒子を含む組成物を投与するステップなしで第1の複数のナノ粒子を含む組成物を投与するステップ及び第3の複数のナノ粒子を含む組成物を投与するステップを含む、請求項69に記載の方法。
【請求項80】
免疫細胞により発現される細胞表面タンパク質に特異的な第1の結合ドメイン及びがん細胞により発現される細胞表面タンパク質に特異的な第2の結合ドメインを少なくとも有するタンパク質分子をコードする核酸が積載されたナノ粒子を含み、
ナノ粒子が食細胞の表面に付着しているか、又は食細胞により内在化されている、改変された専門食細胞。
【請求項81】
食細胞が単球又はマクロファージである、請求項80に記載の改変された専門食細胞。
【請求項82】
食細胞が腫瘍関連マクロファージである、請求項80に記載の改変された専門食細胞。
【請求項83】
核酸がリボ核酸(RNA)を含む、請求項80に記載の改変された専門食細胞。
【請求項84】
RNAがメッセンジャーRNA(mRNA)を含む、請求項83に記載の改変された専門食細胞。
【請求項85】
mRNAが、合成RNA又はインビトロ転写RNA(IVT RNA)を含む、請求項84に記載の改変された専門食細胞。
【請求項86】
第1の結合ドメインがリンパ球の細胞表面タンパク質に特異的である、請求項80に記載の改変された専門食細胞。
【請求項87】
リンパ球が、T細胞、B細胞、NK細胞、及びTIL細胞からなる群から選択される、請求項86に記載の改変された専門食細胞。
【請求項88】
第1の結合ドメインが、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ガンマデルタT細胞、及びNK T細胞からなる群から選択されるT細胞の細胞表面タンパク質に特異的である、請求項80に記載の改変された専門食細胞。
【請求項89】
第1の結合ドメインがCD3に特異的である、請求項80に記載の改変された専門食細胞。
【請求項90】
タンパク質分子が二重特異性T細胞エンゲージャーである、請求項80に記載の改変された専門食細胞。
【請求項91】
タンパク質分子がEpCAM-CD3二重特異性T細胞エンゲージャーである、請求項80~90のいずれかに記載の改変された専門食細胞。
【請求項92】
ナノ粒子が、(a)1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードする核酸、(b)IKKβをコードする核酸、及び(c)腫瘍細胞増殖インヒビターをコードする核酸のうちの1つ以上をさらに積載されている、請求項80~91のいずれかに記載の改変された専門食細胞。
【請求項93】
(a)1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードする核酸、(b)IKKβをコードする核酸、及び(c)腫瘍細胞増殖インヒビターをコードする核酸のうちの1つ以上が積載されている第2のナノ粒子をさらに含み、
第2のナノ粒子が食細胞の表面に付着しているか、又は食細胞により内在化されている、請求項80~92のいずれかに記載の改変された専門食細胞。
【請求項94】
第1又は第2のナノ粒子が、腫瘍細胞増殖インヒビターの抗体又は抗体の抗原結合断片をコードする核酸が積載されている、請求項92又は93に記載の改変された専門食細胞。
【請求項95】
腫瘍細胞増殖インヒビターが、CD40-CD40Lインヒビター又はTGFβインヒビターである、請求項94に記載の改変された専門食細胞。
【請求項96】
(a)1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードする核酸、(b)IKKβをコードする核酸、又は(c)腫瘍細胞増殖インヒビターをコードする核酸のうちの1つ以上が積載された第2のナノ粒子のうちの少なくとも1つ、及び
腫瘍細胞増殖インヒビターをコードする核酸が積載された第3のナノ粒子、
をさらに含み、
第2及び第3のナノ粒子のそれぞれが、食細胞の表面に付着しているか、又は食細胞により内在化されている、請求項80に記載の改変された専門食細胞。
【請求項97】
第1、第2、及び/又は第3のナノ粒子が、リポソーム、リポソームナノ粒子、脂質ナノ粒子、又は固形脂質ナノ粒子を含む、請求項96に記載の改変された専門食細胞。
【請求項98】
正電荷ポリマーコア、及びポリマーコアの周囲の中性又は負電荷被覆を含み、正電荷ポリマーコアが、免疫細胞活性化エピトープに結合する少なくとも1つの結合ドメイン及び/又はがん抗原に結合する少なくとも1つの結合ドメインをコードするヌクレオチドをカプセル化している、ナノ粒子。
【請求項99】
ナノ粒子が130nm未満である、請求項98に記載のナノ粒子。
【請求項100】
正電荷ポリマーが、ポリ(β-アミノエステル)、ポリ(L-リジン)、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、ポリ(アミドアミン)デンドリマー(PAMAM)、ポリ(アミン-コ-エステル)、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)(PDMAEMA)、キトサン、ポリ(L-ラクチド-コ-L-リジン)、ポリ[α-(4-アミノブチル)-L-グリコール酸](PAGA)、又はポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)(PHP)を含む、請求項98に記載のナノ粒子。
【請求項101】
正電荷ポリマーがポリ(β-アミノエステル)を含む、請求項100に記載のナノ粒子。
【請求項102】
中性又は負電荷被覆が、ポリグルタミン酸(PGA)、ポリ(アクリル酸)、アルギン酸、又はコレステリルヘミスクシナート/1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンを含む、請求項98に記載のナノ粒子。
【請求項103】
中性又は負電荷被覆がポリグルタミン酸(PGA)を含む、請求項102に記載のナノ粒子。
【請求項104】
中性又は負電荷被覆が双性イオンポリマーを含む、請求項98に記載のナノ粒子。
【請求項105】
中性又は負電荷被覆がリポソームを含む、請求項98に記載のナノ粒子。
【請求項106】
リポソームが、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、3β-[N-(N’、N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)、ジオクタデシル-アミドグリシルスペルミン(DOGS)、コレステロール、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、又は1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)を含む、請求項105に記載のナノ粒子。
【請求項107】
ヌクレオチドがリボ核酸(RNA)を含む、請求項98に記載のナノ粒子。
【請求項108】
RNAが合成RNAを含む、請求項107に記載のナノ粒子。
【請求項109】
RNAがインビトロ転写mRNAを含む、請求項107に記載のナノ粒子。
【請求項110】
ヌクレオチドが組み込み又は非組み込み二本鎖DNAを含む、請求項98に記載のナノ粒子。
【請求項111】
ヌクレオチドが、プラスミド、ミニサークルプラスミド、又は閉鎖末端線状ceDNAの形態である、請求項98に記載のナノ粒子。
【請求項112】
がん抗原が、卵巣がん細胞、黒色腫細胞、神経膠芽腫細胞、多発性骨髄腫細胞、黒色腫細胞、前立腺がん細胞、乳がん細胞、幹細胞がん細胞、中皮腫細胞、腎細胞癌細胞、膵臓がん細胞、肺がん細胞、胆管細胞癌細胞、膀胱がん細胞、神経芽細胞腫細胞、結腸直腸がん細胞、又はメルケル細胞癌細胞により発現される、請求項98に記載のナノ粒子。
【請求項113】
がん抗原が、B細胞成熟抗原(BCMA)、カルボキシ-アンヒドラーゼ-IX(CAIX)、CD19、CD24、CD56、CD133、CEA、ジシアロガングリオシド、EpCam、EGFR、EGFRバリアントIII(EGFRvIII)、ERBB2、葉酸受容体(FOLR)、GD2、グリピカン-2、HER2、ルイスY、L1-CAM、メソセリン、MUC16、PD-L1、PSMA、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、ROR1、TYRP1/gp75、SV40 T、又はWT-1を含む、請求項98に記載のナノ粒子。
【請求項114】
がん抗原に結合する結合ドメインが、抗体アデカトゥマブ、アネツマブ、ラブタンシン、アマツキシマブ、HN1、オレゴボマブ、オバレックス、アバゴモマブ、エドレコロマブ、ファルレツズマブ、フランボツマブ、TA99、20D7、セツキシマブ、FMC63、SJ25C1、HD37、R11、R12、2A2、Y31、4D5、3G10、アテゾリズマブ、アベルマブ、若しくはデュルバルマブの相補性決定領域(CDR)を含む、請求項98に記載のナノ粒子。
【請求項115】
がん抗原に結合する結合ドメインがタンパク質分子である、請求項98に記載のナノ粒子。
【請求項116】
ナノ粒子内の異なるタンパク質分子が、異なるがん抗原に結合する結合ドメインを含む、請求項115に記載のナノ粒子。
【請求項117】
異なるがん抗原が同じがんタイプにより発現される、請求項116に記載のナノ粒子。
【請求項118】
がんタイプが卵巣がん、黒色腫、又は神経膠芽腫である、請求項117に記載のナノ粒子。
【請求項119】
異なるがん抗原が、
EpCam、L1-CAM、MUC16、葉酸受容体(FOLR)、ルイスY、ROR1、メソセリン、WT-1、PD-L1、EGFR、及びCD56から選択される少なくとも2つのがん抗原;
チロシン関連タンパク質1(TYRP1/gp75);GD2、PD-L1、及びEGFRから選択される少なくとも2つのがん抗原;又はEGFRバリアントIII(EGFRvIII)及びIL13Ra2から選択される2つのがん抗原
を含む、請求項116に記載のナノ粒子。
【請求項120】
タンパク質分子の少なくとも1つの結合ドメインが、T細胞又はナチュラルキラー(NK)細胞により発現される免疫細胞活性化エピトープに結合する、請求項98に記載のナノ粒子。
【請求項121】
免疫細胞活性化エピトープがT細胞により発現される、請求項120に記載のナノ粒子。
【請求項122】
T細胞により発現される免疫細胞活性化エピトープが、CD2、CD3、CD7、CD8、CD27、CD28、CD30、CD40、CD83、4-1BB、OX40、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、LIGHT、NKG2C、又はB7-H3を含む、請求項121に記載のナノ粒子。
【請求項123】
T細胞により発現される免疫細胞活性化エピトープが、CD3、CD28、又は4-1BBを含む、請求項122に記載のナノ粒子。
【請求項124】
免疫細胞活性化エピトープに結合する結合ドメインがタンパク質分子を含む、請求項98に記載のナノ粒子。
【請求項125】
ナノ粒子内の異なるタンパク質分子が、異なる免疫細胞活性化エピトープに結合する結合ドメインを含む、請求項124に記載のナノ粒子。
【請求項126】
異なる免疫細胞活性化エピトープが、CD3及びCD28又はCD3及び4-1BBを含む、請求項125に記載のナノ粒子。
【請求項127】
少なくとも1つの結合ドメインが、抗体OKT3、20G6-F3、4B4-D7、4E7-C9、18F5-H10、TGN1412、9D7、9.3、KOLT-2、15E8、248.23.2、EX5.3D10、OKT8又はSK1のCDRを含む、請求項126に記載のナノ粒子。
【請求項128】
免疫細胞活性化エピトープがNK細胞により発現される、請求項120に記載のナノ粒子。
【請求項129】
NK細胞により発現される免疫細胞活性化エピトープが、NKG2D、CD8、CD16、KIR2DL4、KIR2DS1、KIR2DS2、KIR3DS1、NKG2C、NKG2E、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80、又はDNAM-1を含む、請求項128に記載のナノ粒子。
【請求項130】
少なくとも1つの結合ドメインが、抗体5C6、1D11、mAb 33、P44-8、SK1、又は3G8のCDRを含む、請求項129に記載のナノ粒子。
【請求項131】
結合ドメインが、タンパク質リンカーを通じて連結されている、請求項98に記載のナノ粒子。
【請求項132】
タンパク質リンカーがGly-Serリンカーを含む、請求項131に記載のナノ粒子。
【請求項133】
タンパク質リンカーがプロリンリッチなリンカーを含む、請求項131に記載のナノ粒子。
【請求項134】
タンパク質分子が一本鎖可変断片(scFv)を含む、請求項124に記載のナノ粒子。
【請求項135】
タンパク質分子が、
CEAに結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;
EGFRに結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;
EpCamに結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;
HER2に結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;
PD-L1に結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;
PSMAに結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;又は
[TYRP1/gp75]に結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン
を含む、請求項124に記載のナノ粒子。
【請求項136】
タンパク質分子が、カツマキソマブ、MT110、エルツマキソマブ、MDX-447、MM-141、AMG211、RO6958688、RO6895882、TF2、BAY2010112、AMG701、ソリトマブ、又はブリナツモマブを含む、請求項135に記載のナノ粒子。
【請求項137】
正電荷ポリマーコアが、1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードするヌクレオチドをさらにカプセル化している、請求項98に記載のナノ粒子。
【請求項138】
1つ以上のIRFが機能的自己阻害ドメインを欠く、請求項137に記載のナノ粒子。
【請求項139】
1つ以上のIRFが機能的核外移行シグナルを欠く、請求項137に記載のナノ粒子。
【請求項140】
1つ以上のIRFが、IRF1、IRF3、IRF5、IRF7、IRF8及び/又はIRF7とIRF3の融合体から選択される、請求項137に記載のナノ粒子。
【請求項141】
1つ以上のIRFが、配列番号1~17に示される配列に対し90%よりも大きい、95%よりも大きい、又は98%よりも大きな同一性を有する配列から選択される、請求項137に記載のナノ粒子。
【請求項142】
1つ以上のIRFが、配列番号1~7に示される配列から選択されるIRF5を含む、請求項137に記載のナノ粒子。
【請求項143】
IRF5が、S156D、S158D及びT160Dから選択される1つ以上の突然変異を有する配列番号1又は配列番号3に示される配列を含む、請求項142に記載のナノ粒子。
【請求項144】
IRF5が、T10D、S158D、S309D、S317D、S451D、及びS462Dから選択される1つ以上の突然変異を有する配列番号2に示される配列を含む、請求項142に記載のナノ粒子。
【請求項145】
IRF5が、S425D、S427D、S430D、及びS436Dから選択される1つ以上の突然変異を有する配列番号4に示される配列を含む、請求項142に記載のナノ粒子。
【請求項146】
1つ以上のIRFが、配列番号8又は12に示される配列を含むIRF1を含む、請求項137に記載のナノ粒子。
【請求項147】
1つ以上のIRFが、配列番号11、16、又は17に示される配列を含むIRF8を含む、請求項137に記載のナノ粒子。
【請求項148】
IRF8が、K310R突然変異を有する配列番号11に示される配列を含む、請求項147に記載のナノ粒子。
【請求項149】
1つ以上のIRFが、構成的活性ドメインであるN末端IRF7 DNA結合ドメイン、及びC末端IRF3核外移行シグナルを含むIRF7/IRF3融合タンパク質を含む、請求項137に記載のナノ粒子。
【請求項150】
IRF7/IRF3融合タンパク質が、配列番号15に示される配列を含む、請求項149に記載のナノ粒子。
【請求項151】
1つ以上のIRFがIRF4を含む、請求項137に記載のナノ粒子。
【請求項152】
ナノ粒子の少なくともサブセットがIKKβをコードするヌクレオチドを含む、請求項137に記載のナノ粒子。
【請求項153】
IKKβが、配列番号18~22から選択される配列に示される配列に対し90%よりも大きい、95%よりも大きい、又は98%よりも大きい同一性を有する配列から選択される、請求項152に記載のナノ粒子。
【請求項154】
IKKβが、配列番号18~22から選択される配列に示される配列を含む、請求項152に記載のナノ粒子。
【請求項155】
ヌクレオチドが配列番号23~44から選択される配列に示される配列を含む、請求項152に記載のナノ粒子。
【請求項156】
1つ以上のIRFをコードするヌクレオチド及びIKKβをコードするヌクレオチドが同じナノ粒子内にカプセル化されている、請求項152に記載のナノ粒子。
【請求項157】
1つ以上のIRFをコードするヌクレオチド及びIKKβをコードするヌクレオチドが同じナノ粒子コア内にカプセル化されている、請求項137に記載のナノ粒子。
【請求項158】
1つ以上のIRFをコードするヌクレオチド及びIKKβをコードするヌクレオチドが異なるナノ粒子にカプセル化されている、請求項137に記載のナノ粒子。
【請求項159】
少なくとも1つ以上の結合ドメインをコードするヌクレオチドが、1つ以上のIRF及び/又はIKKβをコードするヌクレオチドと同じナノ粒子内にカプセル化されている、請求項137に記載のナノ粒子。
【請求項160】
少なくとも1つ以上の結合ドメインをコードするヌクレオチドが、1つ以上のIRF及び/又はIKKβをコードするヌクレオチドをカプセル化するナノ粒子とは異なるナノ粒子内にカプセル化されている、請求項137に記載のナノ粒子。
【請求項161】
形質転換成長因子ベータ(TGFβ)インヒビターをさらに含む、請求項98に記載のナノ粒子。
【請求項162】
TGFβインヒビターが、TGFβインヒビターをコードするヌクレオチドを含む、請求項161に記載のナノ粒子。
【請求項163】
TGFβインヒビターが、TGFβの活性を抑制する抗体のCDRを含む、請求項161に記載のナノ粒子。
【請求項164】
TGFβインヒビターが、TGFβの活性を抑制する抗体を含む、請求項161に記載のナノ粒子。
【請求項165】
抗体が、トラベデルセン、ジシテルチド、メテリムマブ、フレソリムマブ、LY2382770、SIX-100、アボタミン、及び/又はIMC-TR1を含む、請求項163又は164に記載のナノ粒子。
【請求項166】
ナノ粒子が、グルココルチコイド誘導ロイシンジッパー(GILZ)をコードするヌクレオチドをさらに含む、請求項98に記載のナノ粒子。
【請求項167】
ナノ粒子が、p53、RB、BRCA1、E1A、bcl-2、MDR-1、p21、p16、bax、bcl-xs、E2F、IGF-I VEGF、アンギオスタチン、オンコスタチン、エンドスタチン、GM-CSF、IL-12、IL-2、IL-4、IL-7、IFN-γ、TNFα及び/又はHSV-tkから選択される抗がん遺伝子を含むヌクレオチドをさらに含む、請求項98に記載のナノ粒子。
【請求項168】
ナノ粒子の少なくともサブセットが、1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードするヌクレオチドを含み、
ナノ粒子の少なくともサブセットが、少なくとも2つの結合ドメインを有するタンパク質分子をコードするヌクレオチドを含み、
1つの結合ドメインが、腫瘍部位でがん細胞により発現される抗原に結合し、
1つの結合ドメインが、免疫細胞活性化エピトープに結合する、
ナノ粒子を含むシステム。
【請求項169】
ナノ粒子が130nm未満である、請求項168に記載のシステム。
【請求項170】
ナノ粒子が、正電荷コア及びコアの外部表面上に中性又は負電荷被覆を含む、請求項168に記載のシステム。
【請求項171】
正電荷コアが、正電荷脂質及び/又は正電荷ポリマーを含む、請求項170に記載のシステム。
【請求項172】
正電荷ポリマーが、ポリ(β-アミノエステル)、ポリ(L-リジン)、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、ポリ(アミドアミン)デンドリマー(PAMAM)、ポリ(アミン-コ-エステル)、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)(PDMAEMA)、キトサン、ポリ(L-ラクチド-コ-L-リジン)、ポリ[α-(4-アミノブチル)-L-グリコール酸](PAGA)、又はポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)(PHP)を含む、請求項171に記載のシステム。
【請求項173】
正電荷ポリマーがポリ(β-アミノエステル)を含む、請求項172に記載のシステム。
【請求項174】
中性又は負電荷被覆が、ポリグルタミン酸(PGA)、ポリ(アクリル酸)、アルギン酸、又はコレステリルヘミスクシナート/1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンを含む、請求項170に記載のシステム。
【請求項175】
中性又は負電荷被覆がポリグルタミン酸(PGA)を含む、請求項174に記載のシステム。
【請求項176】
中性又は負電荷被覆が双性イオンポリマーを含む、請求項170に記載のシステム。
【請求項177】
中性又は負電荷被覆がリポソームを含む、請求項170に記載のシステム。
【請求項178】
リポソームが、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、3β-[N-(N’、N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)、ジオクタデシル-アミドグリシルスペルミン(DOGS)、コレステロール、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、又は1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)を含む、請求項177に記載のシステム。
【請求項179】
ヌクレオチドがリボ核酸(RNA)を含む、請求項168に記載のシステム。
【請求項180】
RNAが合成RNAを含む、請求項179に記載のシステム。
【請求項181】
RNAがインビトロ転写mRNAを含む、請求項179に記載のシステム。
【請求項182】
ヌクレオチドが組み込み又は非組み込み二本鎖DNAを含む、請求項168に記載のシステム。
【請求項183】
ヌクレオチドが、プラスミド、ミニサークルプラスミド、又は閉鎖末端線状ceDNAの形態である、請求項168に記載のシステム。
【請求項184】
ヌクレオチドが正電荷コア内にカプセル化されている、請求項168に記載のシステム。
【請求項185】
1つ以上のIRFが機能的自己阻害ドメインを欠く、請求項168に記載のシステム。
【請求項186】
1つ以上のIRFが機能的核外移行シグナルを欠く、請求項168に記載のシステム。
【請求項187】
1つ以上のIRFが、IRF1、IRF3、IRF5、IRF7、IRF8及び/又はIRF7とIRF3の融合体から選択される、請求項168に記載のシステム。
【請求項188】
1つ以上のIRFが、配列番号1~17に示される配列に対し90%よりも大きい、95%よりも大きい、又は98%よりも大きな同一性を有する配列から選択される、請求項168に記載のシステム。
【請求項189】
1つ以上のIRFが、配列番号1~7に示される配列から選択されるIRF5を含む、請求項168に記載のシステム。
【請求項190】
IRF5が、S156D、S158D及びT160Dから選択される1つ以上の突然変異を有する配列番号1又は配列番号3に示される配列を含む、請求項189に記載のシステム。
【請求項191】
IRF5が、T10D、S158D、S309D、S317D、S451D、及びS462Dから選択される1つ以上の突然変異を有する配列番号2に示される配列を含む、請求項189に記載のシステム。
【請求項192】
IRF5が、S425D、S427D、S430D、及びS436Dから選択される1つ以上の突然変異を有する配列番号4に示される配列を含む、請求項189に記載のシステム。
【請求項193】
1つ以上のIRFが、配列番号8又は12に示される配列を含むIRF1を含む、請求項168に記載のシステム。
【請求項194】
1つ以上のIRFが、配列番号11、16、又は17に示される配列を含むIRF8を含む、請求項168に記載のシステム。
【請求項195】
IRF8が、K310R突然変異を有する配列番号11に示される配列を含む、請求項194に記載のシステム。
【請求項196】
1つ以上のIRFが、構成的活性ドメインであるN末端IRF7 DNA結合ドメイン、及びC末端IRF3核外移行シグナルを含むIRF7/IRF3融合タンパク質を含む、請求項168に記載のシステム。
【請求項197】
IRF7/IRF3融合タンパク質が、配列番号15に示される配列を含む、請求項196に記載のシステム。
【請求項198】
1つ以上のIRFがIRF4を含む、請求項168に記載のシステム。
【請求項199】
ナノ粒子の少なくともサブセットがIKKβをコードするヌクレオチドを含む、請求項168に記載のシステム。
【請求項200】
IKKβが、配列番号18~22から選択される配列に示される配列に対し90%よりも大きい、95%よりも大きい、又は98%よりも大きい同一性を有する配列から選択される、請求項199に記載のシステム。
【請求項201】
IKKβが、配列番号18~22から選択される配列に示される配列を含む、請求項199に記載のシステム。
【請求項202】
ヌクレオチドが、配列番号23~44から選択される配列に示される配列を含む、請求項168に記載のシステム。
【請求項203】
1つ以上のIRFをコードするヌクレオチド及びIKKβをコードするヌクレオチドが同じナノ粒子内にカプセル化されている、請求項168に記載のシステム。
【請求項204】
1つ以上のIRFをコードするヌクレオチド及びIKKβをコードするヌクレオチドが同じナノ粒子コア内にカプセル化されている、請求項199に記載のシステム。
【請求項205】
1つ以上のIRFをコードするヌクレオチド及びIKKβをコードするヌクレオチドが異なるナノ粒子にカプセル化されている、請求項168に記載のシステム。
【請求項206】
タンパク質分子の少なくとも1つの結合ドメインが、卵巣がん細胞、黒色腫細胞、神経膠芽腫細胞、多発性骨髄腫細胞、黒色腫細胞、前立腺がん細胞、乳がん細胞、幹細胞がん細胞、中皮腫細胞、腎細胞癌細胞、膵臓がん細胞、肺がん細胞、胆管細胞癌細胞、膀胱がん細胞、神経芽細胞腫細胞、結腸直腸がん細胞、又はメルケル細胞癌細胞により発現されるがん抗原に結合する、請求項168に記載のシステム。
【請求項207】
がん抗原が、B細胞成熟抗原(BCMA)、カルボキシ-アンヒドラーゼ-IX(CAIX)、CD19、CD24、CD56、CD133、CEA、ジシアロガングリオシド、EpCam、EGFR、EGFRバリアントIII(EGFRvIII)、ERBB2、葉酸受容体(FOLR)、GD2、グリピカン-2、HER2、ルイスY、L1-CAM、メソセリン、MUC16、PD-L1、PSMA、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、ROR1、TYRP1/gp75、SV40 T、又はWT-1を含む、請求項206に記載のシステム。
【請求項208】
タンパク質分子の少なくとも1つの結合ドメインが、抗体アデカトゥマブ、アネツマブ、ラブタンシン、アマツキシマブ、HN1、オレゴボマブ、オバレックス、アバゴモマブ、エドレコロマブ、ファルレツズマブ、フランボツマブ、TA99、20D7、セツキシマブ、FMC63、SJ25C1、HD37、R11、R12、2A2、Y31、4D5、3G10、アテゾリズマブ、アベルマブ、又はデュルバルマブの相補性決定領域(CDR)を含む、請求項168に記載のシステム。
【請求項209】
システム内の異なるタンパク質分子が、異なるがん抗原に結合する結合ドメインを含む、請求項168に記載のシステム。
【請求項210】
異なるがん抗原が同じがんタイプにより発現される、請求項209に記載のシステム。
【請求項211】
がんタイプが卵巣がん、黒色腫、又は神経膠芽腫である、請求項210に記載のシステム。
【請求項212】
異なるがん抗原が、
EpCam、L1-CAM、MUC16、葉酸受容体(FOLR)、ルイスY、ROR1、メソセリン、WT-1、PD-L1、EGFR、及びCD56から選択される少なくとも2つのがん抗原;
チロシン関連タンパク質1(TYRP1/gp75);GD2、PD-L1、及びEGFRから選択される少なくとも2つのがん抗原;又は
EGFRバリアントIII(EGFRvIII)及びIL13Ra2から選択される2つのがん抗原
を含む、請求項209に記載のシステム。
【請求項213】
タンパク質分子の少なくとも1つの結合ドメインが、T細胞又はナチュラルキラー細胞により発現される免疫細胞活性化エピトープに結合する、請求項168に記載のシステム。
【請求項214】
免疫細胞活性化エピトープがT細胞により発現される、請求項213に記載のシステム。
【請求項215】
T細胞により発現される免疫細胞活性化エピトープが、CD2、CD3、CD7、CD8、CD27、CD28、CD30、CD40、CD83、4-1BB、OX40、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、LIGHT、NKG2C、又はB7-H3を含む、請求項214に記載のシステム。
【請求項216】
T細胞により発現される免疫細胞活性化エピトープが、CD3、CD28、又は4-1BBを含む、請求項215に記載のシステム。
【請求項217】
システム内の異なるタンパク質分子が、異なる免疫細胞活性化エピトープに結合する結合ドメインを含む、請求項168に記載のシステム。
【請求項218】
異なる免疫細胞活性化エピトープが、CD3及びCD28又はCD3及び4-1BBを含む、請求項217に記載のシステム。
【請求項219】
少なくとも1つの結合ドメインが、抗体OKT3、20G6-F3、4B4-D7、4E7-C9、18F5-H10、TGN1412、9D7、9.3、KOLT-2、15E8、248.23.2、EX5.3D10、OKT8又はSK1のCDRを含む、請求項218に記載のシステム。
【請求項220】
免疫細胞活性化エピトープがNK細胞により発現される、請求項213に記載のシステム。
【請求項221】
NK細胞により発現される免疫細胞活性化エピトープが、NKG2D、CD8、CD16、KIR2DL4、KIR2DS1、KIR2DS2、KIR3DS1、NKG2C、NKG2E、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80、又はDNAM-1を含む、請求項220に記載のシステム。
【請求項222】
少なくとも1つの結合ドメインが、抗体5C6、1D11、mAb 33、P44-8、SK1、又は3G8のCDRを含む、請求項221に記載のシステム。
【請求項223】
タンパク質分子の結合ドメインが、タンパク質リンカーを通じて連結されている、請求項168に記載のシステム。
【請求項224】
タンパク質リンカーがGly-Serリンカーを含む、請求項223に記載のシステム。
【請求項225】
タンパク質リンカーがプロリンリッチなリンカーを含む、請求項223に記載のシステム。
【請求項226】
タンパク質分子が一本鎖可変断片(scFv)を含む、請求項168に記載のシステム。
【請求項227】
タンパク質分子が、
CEAに結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;
EGFRに結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;
EpCamに結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;
HER2に結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;
PD-L1に結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;
PSMAに結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;又は
[TYRP1/gp75]に結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン
を含む、請求項168に記載のシステム。
【請求項228】
タンパク質分子が、カツマキソマブ、MT110、エルツマキソマブ、MDX-447、MM-141、AMG211、RO6958688、RO6895882、TF2、BAY2010112、AMG701、ソリトマブ、又はブリナツモマブを含む、請求項227に記載のシステム。
【請求項229】
少なくとも2つの結合ドメインをコードするヌクレオチドが、1つ以上のIRF及び/又はIKKβをコードするヌクレオチドと同じナノ粒子内にカプセル化されている、請求項168に記載のシステム。
【請求項230】
少なくとも2つの結合ドメインをコードするヌクレオチドが、1つ以上のIRF及び/又はIKKβをコードするヌクレオチドと同じナノ粒子コア内にカプセル化されている、請求項168に記載のシステム。
【請求項231】
少なくとも2つの結合ドメインをコードするヌクレオチドが、1つ以上のIRF及び/又はIKKβをコードするヌクレオチドをカプセル化するナノ粒子とは異なるナノ粒子内にカプセル化されている、請求項168に記載のシステム。
【請求項232】
形質転換成長因子ベータ(TGFβ)インヒビターをさらに含む、請求項168に記載のシステム。
【請求項233】
TGFβインヒビターが、TGFβインヒビターをコードするヌクレオチドを含む、請求項232に記載のシステム。
【請求項234】
TGFβインヒビターが、TGFβの活性を抑制する抗体のCDRを含む、請求項232に記載のシステム。
【請求項235】
TGFβインヒビターが、TGFβの活性を抑制する抗体を含む、請求項232に記載のシステム。
【請求項236】
抗体が、トラベデルセン、ジシテルチド、メテリムマブ、フレソリムマブ、LY2382770、SIX-100、アボタミン、及び/又はIMC-TR1を含む、請求項234又は235に記載のシステム。
【請求項237】
ナノ粒子が、グルココルチコイド誘導ロイシンジッパー(GILZ)をコードするヌクレオチドをさらに含む、請求項168に記載のシステム。
【請求項238】
ナノ粒子が、p53、RB、BRCA1、E1A、bcl-2、MDR-1、p21、p16、bax、bcl-xs、E2F、IGF-I VEGF、アンギオスタチン、オンコスタチン、エンドスタチン、GM-CSF、IL-12、IL-2、IL-4、IL-7、IFN-γ、TNFα及び/又はHSV-tkから選択される抗がん遺伝子を含むヌクレオチドをさらに含む、請求項168に記載のシステム。
【請求項239】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項168に記載のシステム。
【請求項240】
請求項168に記載のシステムのヌクレオチドを発現するように遺伝的に改変された単球又はマクロファージ。
【請求項241】
対象内の腫瘍部位でマクロファージ活性化状態を調節し、免疫細胞を腫瘍部位に動員し、動員された免疫細胞を活性化する方法であって、請求項168に記載のシステムを対象に投与し、それによって対象内の腫瘍部位でマクロファージ活性化状態を調節し、免疫細胞を腫瘍部位に動員し、動員された免疫細胞を活性化することを含む、方法。
【請求項242】
投与が静脈内投与を含み、ナノ粒子が血流内の単球により取り込まれる、請求項241に記載の方法。
【請求項243】
単球が腫瘍部位に遊走してマクロファージに分化する、請求項242に記載の方法。
【請求項244】
分化したマクロファージが腫瘍抑制に対して抵抗性である、請求項243に記載の方法。
【請求項245】
投与が腫瘍部位での局所的投与を含み、ナノ粒子が腫瘍関連マクロファージ(TAM)により取り込まれる、請求項241に記載の方法。
【請求項246】
局所的投与が、腹腔内投与又は脳内投与を含む、請求項245に記載の方法。
【請求項247】
TAMが、抑制状態から活性化状態へ表現型転換を受ける、請求項245に記載の方法。
【請求項248】
腫瘍部位が、卵巣がん腫瘍部位、神経膠芽腫腫瘍部位、又は黒色腫がん腫瘍部位を含む、請求項245に記載の方法。
【請求項249】
動員され活性化された免疫細胞がT細胞又はNK細胞である、請求項241に記載の方法。
【請求項250】
少なくとも2つの結合ドメインをコードするヌクレオチドを含むナノ粒子を投与する前に、1つ以上のIRFをコードするヌクレオチドを含むナノ粒子を投与することを含む、請求項241に記載の方法。
【請求項251】
少なくとも2つの結合ドメインをコードするヌクレオチドを含むナノ粒子を投与する少なくとも24時間前に、1つ以上のIRFをコードする核酸を含むナノ粒子を投与することを含む、請求項241に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2019年12月31日に提出された米国特許仮出願第62/956,033号の優先権を主張するものであり、前記特許文献は、あたかも本明細書に完全に明記されているかのように参照によりその全体を本明細書に組み込む。
【0002】
本開示は、単球/マクロファージをインビボで遺伝的に改変して、(1)追加の免疫細胞を治療部位に動員する;(2)治療部位で活性化されたままで他の免疫細胞に進行中の刺激シグナルを出す;及び(3)治療部位で標的細胞上の抗原に結合し動員された免疫細胞にも結合してこれを活性化し結合した細胞を破壊する多特異的免疫細胞結合分子を分泌するナノ粒子システムを提供する。システムは、形質転換成長因子ベータ(TGFβ)の活性も阻害することができる。
【背景技術】
【0003】
マクロファージは、がん組織に多数浸潤する鍵となる免疫エフェクター細胞である。しかし、腫瘍微小環境において、マクロファージは活性化殺腫瘍性状態から、実際に腫瘍成長及び転移を促進する免疫抑制表現型への切り替えを受ける。Pollard、Nat Rev Cancer 4、71~78頁(2004);Mantovaniら、Nat Rev Clin Oncol(2017)。
【0004】
腫瘍微小環境内の免疫抑制されたマクロファージががん成長及び転移を促進することを理解すると、免疫抑制腫瘍関連マクロファージ(TAM)を標的にする療法を開発することに多くの努力が捧げられてきた。TAMに取り組む数多くの努力は、TAMを殺滅して腫瘍微小環境において免疫抑制を緩和することに焦点を合わせてきた。しかし、このアプローチを用いると、TAMは腫瘍微小環境において新たに到着したマクロファージに取って代わられるだけである。さらに、一部のTAMを殺滅することに成功した場合でも、現在までに開発された大半の治療薬は、腫瘍微小環境中に十分に浸透することができずにいた。一部の小分子薬物及び抗体はある程度の成功を見せてきたが、これらのアプローチは、危険な副作用を含めて身体においてすべてのマクロファージを抑制してきた。Bowman&Joyce、Immunotherapy 6、663~666頁(2014)。したがって、がんに冒されたすべての人が理解しているように、副作用がより少ないより効果的な治療戦略が大いに必要とされている。
【0005】
免疫系のT細胞を遺伝子操作してがん細胞などの目的の細胞型を標的にして殺滅することが著しく進歩してきた。これらのT細胞の多くは遺伝子操作されたキメラ抗原受容体(CAR)を発現する。CARは、遺伝的に改変されたT細胞にがん細胞を認識し殺滅させるいくつかの異なる小成分を含むタンパク質である。小成分は、少なくとも細胞外成分及び細胞内成分を含む。細胞外成分は、目的の細胞の表面に優先的に存在するマーカーに特異的に結合する結合ドメインを含む。結合ドメインがそのようなマーカーに結合すると、細胞内成分がT細胞にシグナル伝達して結合している細胞を破壊させる。CARは、細胞外成分を細胞内成分に連結させることができる膜貫通ドメイン、及びCARの機能を高めることができる他の小成分をさらに含む。例えば、スペーサー領域などの、1つ以上のリンカー配列を含むことにより、CARは追加の構造的柔軟性を有し、標的細胞マーカーに結合する結合ドメインの能力を増やせることが多くなる。
【0006】
CAR発現T細胞(CAR-T)を用いた臨床試験では、従来の治療が失敗した場合に、抵抗性大細胞型B細胞リンパ腫を有する患者での肯定応答が示された(Neelapuら、2017年 N Engl J Med 377:2531~2544頁)。しかしながら、遺伝子操作CAR-T細胞はがん細胞破壊をもたらすけれども、いくつかの適応症に対してインビボで長期の抗がん活性を提供できなかった。この失敗の1つの理由は、腫瘍微小環境の免疫抑制効果に基づいている可能性がある。
【0007】
二重特異性T細胞誘導抗体は、がん細胞上のがん抗原とT細胞活性化エピトープの両方に結合し、T細胞をがん細胞に運んでがん細胞を破壊させる目標を有する。例えば、US2008/0145362を参照されたい。現在の二重特異性T細胞誘導抗体治療薬の大半が、対になった単一特異性抗体由来結合ドメインを含む。一部の人は、2つの異なるT細胞活性化エピトープ(例えば、CD3及びCD28)を標的にするような抗体を組み合わせての使用を調査した。しかし、これらの抗体の多くのインビボ半減期が短いので、投薬が依然として難問である。
【0008】
いくつかのグループが、二重特異性T細胞誘導抗体の投与に関連する難問のいくつかを克服するための道を調査した。例えば、Stadlerら、(Nature.Medicine 23、815~817頁)は、二重特異性T細胞誘導抗体をコードする核酸を送達するナノキャリアーを注射することを記載した。これらの抗体をインビボで発現することにより、このアプローチは、循環する二重特異性T細胞誘導抗体の維持されたレベルを達成し、それによって連続送達のための輸液ポンプを回避することができた。にもかかわらず、循環する二重特異性T細胞誘導抗体は、固形腫瘍に効率的に浸透せず、腫瘍微小環境に動員され進入するT細胞の活性は骨髄系サプレッサー細胞により抑制される。
【0009】
Choiら、(Nature Biotechnology、37、1049~1058頁、2019年)は、T細胞を遺伝子操作して二重特異性T細胞誘導抗体を産生し分泌させることを調査した。実際、Choiら、はT細胞を遺伝子操作してCARを発現させ、並びに二重特異性T細胞誘導抗体を分泌させることを調査した。しかし、これらのT細胞には、エクスビボ遺伝子操作が必要であった。さらに、CAR T細胞も固形腫瘍に効率的に浸潤して腫瘍部位に拡大しない(多くの場合、骨髄系サプレッサー細胞の結果として)。したがって、がん治療戦略は著しく進歩してきたが、にもかかわらず重大な難問が残っている。
【0010】
さらに、タンパク質因子の形質転換成長因子ベータ(TGF-β)ファミリーが固形腫瘍において高レベルで見つかり、腫瘍微小環境において免疫機能不全の一因になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0145362号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Pollard、Nat Rev Cancer 4、71~78頁(2004)
【非特許文献2】Mantovaniら、Nat Rev Clin Oncol(2017)
【非特許文献3】Bowman&Joyce、Immunotherapy 6、663~666頁(2014)
【非特許文献4】Neelapuら、2017年 N Engl J Med 377:2531~2544頁
【非特許文献5】Stadlerら、Nature.Medicine 23、815~817頁
【非特許文献6】Choiら、Nature Biotechnology、37、1049~1058頁、2019年
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は腫瘍関連マクロファージ(TAM)の免疫抑制腫瘍支援状態を逆転させて、これらのTAMを高度に活性化された腫瘍細胞を殺滅するマクロファージに変えるシステム及び方法を提供する。したがって、本明細書で開示されるシステム及び方法は、単にTAMを殺滅することを狙いとするのではなく、代わりにその活性を腫瘍促進から腫瘍破壊に向け直すことである。特定の実施形態において、このシステム及び方法は、がん細胞の殺滅を誘導し及び/又は新しいがん細胞の成長若しくは発生を減少する若しくは予防するための治療法として使用される。本明細書に開示されるデータから、これらのシステム及び方法が、制御するのが悪名高いほど困難であるがんタイプである卵巣がんを完全に根絶し抑制することができることが明らかにされる。
【0014】
本明細書で開示されるTAM活性化戦略の使用により、免疫細胞が腫瘍部位へ動員されることが明らかにされた。しかし、動員された免疫細胞の多くが腫瘍により発現されるがん抗原に結合せず、したがって、これらの動員された細胞が抗がん応答に与える利益は他の方法で達成できるよりも少ない。この問題に取り組むため、本開示は、活性化されたTAMを遺伝子操作して多特異性免疫細胞結合分子を発現させることを提供する。次に、活性化されたTAMは、本明細書に記載されるがん療法の成功に3つの決定的な局面を提供する。活性化されたTAMは、(1)免疫細胞を腫瘍部位に動員する;(2)腫瘍部位で活性化されたままで他の免疫細胞に進行中の刺激シグナルを出す;及び(3)腫瘍部位でがん抗原に結合し動員された免疫細胞にも結合してこれを活性化し結合したがん細胞を破壊する多特異的免疫細胞結合分子を分泌する。がん細胞を殺滅するために記載されたアプローチは、いくつか例を挙げると、疾患のある細胞、自己反応性細胞、感染細胞、及び微生物細胞などの目的の他の細胞型にも適用可能である。
【0015】
特定の実施形態は、転写因子などの活性化制御因子をコードするヌクレオチドを送達するナノ粒子システムを利用することによりマクロファージの活性化状態をインビボで変更又は維持する。特に有用なナノ粒子は、正電荷コア及び中性又は負電荷表面を有し、(i)マクロファージの活性化状態を生み出す及び/若しくは維持する転写因子;(ii)キナーゼ、並びに/又は(iii)多特異性免疫細胞結合分子をコードするヌクレオチドを送達する。好ましい実施形態では、システムは、これらの成分のそれぞれをコードするヌクレオチドを送達するナノ粒子を含む。ナノ粒子サイズが130nm未満であれば、腫瘍浸潤が確実になる。ナノ粒子は、任意選択的に、TAMによるナノ粒子のもっと選択的な取込みを指示するTAMターゲティングリガンドを含むことができる。一例として、TAMは、ナノ粒子の表面にマンノースを含むことにより標的にすることができる細胞表面受容体であるCD206を発現する。
【0016】
特定の実施形態は、径が130nm未満であり、正電荷ポリマーコア及び中性又は負電荷被覆を有するナノ粒子を含む。インターフェロン制御因子5(IRF5);キナーゼ;IKKβ;多特異性抗体;及び任意選択的にTGFβインヒビターをコードするヌクレオチドは、正電荷ポリマーコア内にカプセル化される。この例では、二重特異性抗体は、EpCam又はチロシナーゼ関連タンパク質1(TYRP1/gp75)から選択されるがん抗原及びCD3、CD28、又は4-1BBから選択される免疫細胞活性化エピトープに結合する。
【0017】
本明細書で開示されるシステムは、形質転換成長因子ベータ(TGFβ)インヒビターをさらに含むことができる。
【0018】
本明細書で提出される図の一部はカラーでのほうがよく理解される場合がある。出願は元の提出物の一部として図のカラー版を検討し、後の手続きにおいて図のカラー画像を提示する権利を保留する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】標的化されたmRNAナノ粒子を使用して腫瘍関連マクロファージ(TAM)を殺腫瘍性細胞に遺伝的に変換する模式図を示す。全身毒性を引き起こすことなく治療目的でTAMを合理的に再プログラムする新しい方法としてM1極性化転写因子をコードするインビトロで転写されたmRNAを送達するための注射可能なナノ粒子が開発された。mRNAナノ粒子の繰り返される腹腔内注入を用いて卵巣がん患者を治療するように設計され、初めて計画された臨床適用が図解されている。
【
図1B】標的化されたmRNAナノ粒子を使用して腫瘍関連マクロファージ(TAM)を殺腫瘍性細胞に遺伝的に変換する模式図を示す。標的化されたmRNAナノ粒子を使用して脳内TAMを殺腫瘍性マクロファージに遺伝的に再プログラムする模式図を示す。
【
図1C】標的mRNAナノ粒子を使用して腫瘍関連マクロファージ(TAM)を殺腫瘍性二重特異性抗体分泌細胞に遺伝的に形質転換する模式図を示す。M1極性化転写因子及びT細胞を腫瘍抗原に向け直す抗体をコードするインビトロ転写されたmRNAを同時送達する注射可能なナノ粒子は、全身毒性を引き起こさずに治療目的のためTAMを合理的に再プログラムし宿主適応性免疫応答を活性化する新たな方法を提供する。
【
図1D】Fc及び非Fcフォーマットでの二重特異性結合分子の例示的フォーマットを示している。
【
図2A】IRF5及びIKKβをコードするmRNAを担持するナノ粒子は、炎症性M1様表現型を刷り込むことができる。マクロファージ極性化の重要な制御因子をコードするmRNAを用いて組み立てられたマクロファージ標的化ポリマーNPの設計を示す。ナノ粒子は、PGAジマンノースの層で被覆されたPbAE-mRNAポリプレックスコアからなり、PGAジマンノースはナノ粒子をM2様マクロファージが発現するマンノース受容体(CD206)に向ける。NPにカプセル化された合成mRNAも描かれており、この合成mRNAは再プログラミング転写因子をコードするように操作されている。
【
図2B】IRF5及びIKKβをコードするmRNAを担持するナノ粒子は、炎症性M1様表現型を刷り込むことができる。NPの集団(スケールバー200nm)及び単一NP(挿入図、スケールバー50nm)の透過型電子顕微鏡。
【
図2C】IRF5及びIKKβをコードするmRNAを担持するナノ粒子は、炎症性M1様表現型を刷り込むことができる。NPのサイズ分布、NanoSight NS300装置を使用して測定。
【
図2D】IRF5及びIKKβをコードするmRNAを担持するナノ粒子は、炎症性M1様表現型を刷り込むことができる。NPは、1時間曝露後骨髄由来マクロファージ(BMDM)の高トランスフェクション(46%)を示した。
【
図2E】IRF5及びIKKβをコードするmRNAを担持するナノ粒子は、炎症性M1様表現型を刷り込むことができる。ナノ粒子トランスフェクションの24時間後フローサイトメトリーにより測定された骨髄由来マクロファージ(BMDM)中への遺伝子移入効率。
【
図2F】IRF5及びIKKβをコードするmRNAを担持するナノ粒子は、炎症性M1様表現型を刷り込むことができる。NPトランスフェクトされた及び非トラスフェクトマクロファージの相対的生存率(Annexin V及びPIを用いて染色することにより評価した)。N.s.;有意でない。
【
図2G】IRF5及びIKKβをコードするmRNAを担持するナノ粒子は、炎症性M1様表現型を刷り込むことができる。qRT-PCRにより測定したコドン最適化IRF5 mRNA(青色、左Y軸)及び内在性IRF5 mRNA(黒色、右Y軸)の発現動態。時点ごとにn=3。
【
図2H】IRF5及びIKKβをコードするmRNAを担持するナノ粒子は、炎症性M1様表現型を刷り込むことができる。NPトランスフェクションプロトコール及び
図2I~2Kで使用されるBMDMの培養条件を描くタイムライン。
【
図2I】IRF5及びIKKβをコードするmRNAを担持するナノ粒子は、炎症性M1様表現型を刷り込むことができる。Toll様受容体6アゴニストMPLAで刺激されたシグネチャーM1細胞と比べたIRF5/IKKβ NP-トランスフェクトされたマクロファージの遺伝子発現プロファイル。結果は、遺伝子発現における倍率変化の分布を示す火山プロットとして描かれている。M1シグネチャー遺伝子が示されている。IRF5/IKKβ NP-トランスフェクトされたマクロファージとM1シグネチャー遺伝子セットの間の重複のP値はGSEAにより決定した。
【
図2J】IRF5及びIKKβをコードするmRNAを担持するナノ粒子は、炎症性M1様表現型を刷り込むことができる。IL-4において培養されたマクロファージ対IL-4において培養されIRF5/IKKβ NPをトランスフェクトされた細胞でのM1シグネチャー遺伝子発現のヒートマップ。
【
図2K】IRF5及びIKKβをコードするmRNAを担持するナノ粒子は、炎症性M1様表現型を刷り込むことができる。指示された遺伝子についての平均カウント及びS.E.Mを示す箱ひげ図。
【
図3】マウスマクロファージの表現型に対するインターフェロン制御因子(IRF)ファミリーの異なるメンバー(その活性化キナーゼと組み合わせて又はなしで送達される)の効果のインビトロスクリーニング。C57BL/6由来のBMDMをM-CSF条件付け培地でインキュベートし、(1)対照GFP、(2)マウスIRF5、(3)IRF5をリン酸化するマウスIRF5及びIKKβキナーゼ、(4)マウスIRF8及びIKKβキナーゼ、(5)Lys-310からArg(K310R)変換したIRF8の突然変異体であるマウスIRF8 K310R(Whiteら、J Biol Chem.2016年6月24日)、又は(6)マウスIRF7/3(5D)をコードする、合成mRNAを担持するmRNA-PBAE NPで、トランスフェクトした。この融合タンパク質は、IRF-7のDNA結合ドメイン(DBD)及び構成的活性ドメイン(CAD)並びにIRF3の核外移行シグナル(NES)及びIRF会合ドメインを含む(Linら、Molecular and Cellular Biology.18.5、1998年)。NPトランスフェクションの2日後、細胞を、TAM関連マクロファージマーカーEgr2及び活性化マクロファージマーカーCD38についてのフローサイトメトリー分析のために収集した。このインビトロスクリーニングに基づいて、mIRF5及びIKKβキナーゼをコードするmRNAを同時送達するNPを、本明細書に記載される残りのインビトロ及び治療インビボ実験のために選択した。
【
図4A】IRF5及びIKKβ遺伝子をマクロファージ中に送達するmRNAナノ担体を繰り返し腹腔内に注入すると、播種性卵巣がんを抱えたマウスの平均生存期間が2倍を超える。タイムライン及び投与計画。矢印は、I.P.注射の時間を示している。
【
図4B】IRF5及びIKKβ遺伝子をマクロファージ中に送達するmRNAナノ担体を繰り返し腹腔内に注入すると、播種性卵巣がんを抱えたマウスの平均生存期間が2倍を超える。対照及び治療マウスにおける腫瘍成長の連続生物発光イメージング。
【
図4C】IRF5及びIKKβ遺伝子をマクロファージ中に送達するmRNAナノ担体を繰り返し腹腔内に注入すると、播種性卵巣がんを抱えたマウスの平均生存期間が2倍を超える。治療対対照マウスについてのカプラン・マイヤー生存曲線。統計解析は対数順位検定を使用して実施した。
【
図4D】IRF5及びIKKβ遺伝子をマクロファージ中に送達するmRNAナノ担体を繰り返し腹腔内に注入すると、播種性卵巣がんを抱えたマウスの平均生存期間が2倍を超える。対照としてGFP mRNAを担持するD-マンノース被覆NPの単回i.p.投与の48時間後、異なる免疫細胞亜集団におけるインビボトランスフェクション率のフローサイトメトリー定量化:マクロファージ(CD45+、CD11b+、MHCII+、CD11c-、Ly6C-/low、Ly6G-)、単球(CD45+、CD11b+、MHCII+、CD11c-、Ly6C+、Ly6G-)、好中球(CD45+、CD11b+、MHCII+、CD11c-、Ly6G+)、CD4+T細胞(CD45+、TCR-β鎖+、CD4+、CD8-)、CD8+T細胞(CD45+、TCR-β鎖+、CD4-、CD8+)、及びナチュラルキラー細胞(CD45+、TCR-β鎖-、CD49b+)を測定した。
【
図4E】IRF5及びIKKβ遺伝子をマクロファージ中に送達するmRNAナノ担体を繰り返し腹腔内に注入すると、播種性卵巣がんを抱えたマウスの平均生存期間が2倍を超える。播種性ID8卵巣がんを抱えたマウスの腹膜におけるマクロファージ表現型のフローサイトメトリー分析。動物は、IRF5/IKKβ NPの4回投与又はPBSで治療した。
【
図4F】IRF5及びIKKβ遺伝子をマクロファージ中に送達するmRNAナノ担体を繰り返し腹腔内に注入すると、播種性卵巣がんを抱えたマウスの平均生存期間が2倍を超える。Ly6C-、F4/80+、及びCD206+(M2様)マクロファージの相対的パーセント(左パネル)及び絶対数(右パネル)をまとめる箱ひげ図。
【
図4G】IRF5及びIKKβ遺伝子をマクロファージ中に送達するmRNAナノ担体を繰り返し腹腔内に注入すると、播種性卵巣がんを抱えたマウスの平均生存期間が2倍を超える。Ly6C-、F4/80+、及びCD206-(M1様)マクロファージについての対応する数。
【
図4H】IRF5及びIKKβ遺伝子をマクロファージ中に送達するmRNAナノ担体を繰り返し腹腔内に注入すると、播種性卵巣がんを抱えたマウスの平均生存期間が2倍を超える。PBS対照(上パネル)又はIRF5/IKKβ NP治療動物(下パネル;スケールバー100μm)から単離した卵巣腫瘍浸潤腸間膜の代表的ヘマトキシリン及びエオシン染色切片。代表的悪性病変の10倍拡大図が右側に示されている(スケールバー50μm)。
【
図4I】IRF5及びIKKβ遺伝子をマクロファージ中に送達するmRNAナノ担体を繰り返し腹腔内に注入すると、播種性卵巣がんを抱えたマウスの平均生存期間が2倍を超える。それぞれの治療群から単離した腹膜マクロファージにより産生されたサイトカインを測定するLuminexアッセイ。CD11b+、F4/80+腹膜マクロファージは蛍光活性化細胞選別により単離し、エクスビボで培養した。24時間後、細胞培養上澄みを収集した。パラレル実験において、FACS選別CD11b+、F4/80+腹膜マクロファージはpRT-PCRにより直接分析して、マクロファージ表現型の4つの主要制御因子(セルピンB2、Retnla、Ccl11、及びCcl5)の発現レベルを決定した。
【
図4J】IRF5及びIKKβ遺伝子をマクロファージ中に送達するmRNAナノ担体を繰り返し腹腔内に注入すると、播種性卵巣がんを抱えたマウスの平均生存期間が2倍を超える。それぞれの治療群から単離した腹膜マクロファージにより産生されたサイトカインを測定するLuminexアッセイ。CD11b+、F4/80+腹膜マクロファージは蛍光活性化細胞選別により単離し、エクスビボで培養した。24時間後、細胞培養上澄みを収集した。パラレル実験において、FACS選別CD11b+、F4/80+腹膜マクロファージはpRT-PCRにより直接分析して、マクロファージ表現型の4つの主要制御因子(セルピンB2、Retnla、Ccl11、及びCcl5)の発現レベルを決定した。その結果を、
図4Jに箱ひげ図としてまとめている。
【
図5A】マクロファージプログラミングmRNAナノ担体は高度に生体適合性であり繰り返し投与が安全である。i.p.投与に続くマクロファージ標的化IRF5/IKKβ NPのインビボ生体内分布。NP-送達された(コドン最適化)mRNAは、50μgのmRNAを含有するナノ粒子の単回注射の24時間後qPCRにより検出した。
【
図5B】マクロファージプログラミングmRNAナノ担体は高度に生体適合性であり繰り返し投与が安全である。実験タイムラインの模式図。最後の投与の
*24時間後、マウスはCO
2吸入により安楽死させた。血液は、血清化学及び全血球計算のために後眼窩出血を通じてヘパリン被覆チューブ中に収集した。死体解剖は、肝臓、脾臓、膵臓、腸間膜及び網、胃、並びに膀胱の組織学的分析のために実施した。
【
図5C】マクロファージプログラミングmRNAナノ担体は高度に生体適合性であり繰り返し投与が安全である。対照又はNP治療動物から単離された種々の臓器の代表的なヘマトキシリン及びエオシン染色切片。スケールバー、100μm。NP治療動物において見出された病変は比較病理医による分析に基づいて示されここに記載されている。番号が付いた画像ごとに関連する所見は、[1]少数の顆粒球と混ざり合った単核細胞で大部分構成された細胞浸潤物の別々の病巣;軽い骨髄外造血発生。[2]少数の局所的広い領域において、肝細胞は軽度から中等度に腫大している。[3]赤色髄内の中等度の骨髄性(優勢な)、赤血球及び巨大核細胞過形成。[4]白色髄の軽い低細胞性。[5]腸間膜内において、マクロファージ、リンパ球、血漿細胞及び顆粒球の中等度の多巣性浸潤物が存在する。[6]リンパ球、血漿細胞及び顆粒球と混ざり合ったマクロファージの軽度から中等度浸潤物;腺房の軽度の解離及び腺房消失;腺房細胞からのチモーゲン顆粒の軽度のびまん性消失。[7]脂肪組織周辺のマクロファージと混ざり合ったリンパ球の濃い凝集体。[8]胃粘膜内の主及び壁細胞の軽度の多巣性空胞変性。
【
図5D】マクロファージプログラミングmRNAナノ担体は高度に生体適合性であり繰り返し投与が安全である。(
図5D)血清化学及び血球数。
【
図5E】マクロファージプログラミングmRNAナノ担体は高度に生体適合性であり繰り返し投与が安全である。IRF5/IKKβ NPの単回i.p.注射の4又は8日後の血清IL-6サイトカインのLuminexアッセイ測定。
【
図5F】マクロファージプログラミングmRNAナノ担体は高度に生体適合性であり繰り返し投与が安全である。IRF5/IKKβ NPの単回i.p.注射の4又は8日後の血清TNF-αサイトカインのLuminexアッセイ測定。
【
図6A】静脈内注入されたIRF5/IKKβナノ粒子は、肺において腫瘍転移を制御することができる。i.v.投与に続くマクロファージ標的化IRF5/IKKβ NPのインビボ生体内分布。コドン最適化mRNAは、50μgのmRNAを含有するナノ粒子の単回i.v.注射の24時間後にqPCRにより測定した。
【
図6B】静脈内注入されたIRF5/IKKβナノ粒子は、肺において腫瘍転移を制御することができる。C57BL/6アルビノマウスに尾部静脈を経て1×10
6のB16F10ホタルルシフェラーゼ発現メラノーマ細胞を注射して、肺転移を確立した。7日後、動物は、IRF5/IKKβ NP治療群、対照GFP NP群、又はPBS対照に無作為に割り当てた。タイムライン及び投与計画。
【
図6C】静脈内注入されたIRF5/IKKβナノ粒子は、肺において腫瘍転移を制御することができる。C57BL/6アルビノマウスに尾部静脈を経て1×10
6のB16F10ホタルルシフェラーゼ発現メラノーマ細胞を注射して、肺転移を確立した。7日後、動物は、IRF5/IKKβ NP治療群、対照GFP NP群、又はPBS対照に無作為に割り当てた。健康な肺(左パネル)及びB16F10腫瘍浸潤肺(右パネル)の共焦点顕微鏡。浸潤性マクロファージ集団は緑色の蛍光を発する。
【
図6D】静脈内注入されたIRF5/IKKβナノ粒子は、肺において腫瘍転移を制御することができる。C57BL/6アルビノマウスに尾部静脈を経て1×10
6のB16F10ホタルルシフェラーゼ発現メラノーマ細胞を注射して、肺転移を確立した。7日後、動物は、IRF5/IKKβ NP治療群、対照GFP NP群、又はPBS対照に無作為に割り当てた。連続生物発光腫瘍イメージング。
【
図6E】静脈内注入されたIRF5/IKKβナノ粒子は、肺において腫瘍転移を制御することができる。C57BL/6アルビノマウスに尾部静脈を経て1×10
6のB16F10ホタルルシフェラーゼ発現メラノーマ細胞を注射して、肺転移を確立した。7日後、動物は、IRF5/IKKβ NP治療群、対照GFP NP群、又はPBS対照に無作為に割り当てた。治療群ごとのカプラン・マイヤー生存曲線。msは生存期間中央値を示す。統計解析は対数順位検定を使用して実施し、P<0.05は有意と見なした。
【
図6F】静脈内注入されたIRF5/IKKβナノ粒子は、肺において腫瘍転移を制御することができる。C57BL/6アルビノマウスに尾部静脈を経て1×10
6のB16F10ホタルルシフェラーゼ発現メラノーマ細胞を注射して、肺転移を確立した。7日後、動物は、IRF5/IKKβ NP治療群、対照GFP NP群、又はPBS対照に無作為に割り当てた。2週間の治療に続くそれぞれの群を表すB16F10メラノーマ転移を含有する肺の代表的写真(上の列)及び顕微鏡写真。
【
図6G】静脈内注入されたIRF5/IKKβナノ粒子は、肺において腫瘍転移を制御することができる。C57BL/6アルビノマウスに尾部静脈を経て1×10
6のB16F10ホタルルシフェラーゼ発現メラノーマ細胞を注射して、肺転移を確立した。7日後、動物は、IRF5/IKKβ NP治療群、対照GFP NP群、又はPBS対照に無作為に割り当てた。肺腫瘍病巣の数。
【
図6H】静脈内注入されたIRF5/IKKβナノ粒子は、肺において腫瘍転移を制御することができる。C57BL/6アルビノマウスに尾部静脈を経て1×10
6のB16F10ホタルルシフェラーゼ発現メラノーマ細胞を注射して、肺転移を確立した。7日後、動物は、IRF5/IKKβ NP治療群、対照GFP NP群、又はPBS対照に無作為に割り当てた。それぞれの治療群由来の気管支肺胞洗浄中の単球/マクロファージ集団の表現型特徴付け。
【
図6I】静脈内注入されたIRF5/IKKβナノ粒子は、肺において腫瘍転移を制御することができる。抑制性及び活性化されたマクロファージの相対的パーセンテージのまとめ。
【
図7A】マクロファージ再プログラミングは神経膠腫において放射線療法の結果を改善する。誘導後21日目のRCAS-PDGF-B/Nestin-Tv-a;Ink4a/Arf-/-;Pten-/-トランスジェニックマウスにおけるPDGFβ駆動神経膠腫の開始に続くT2 MRIスキャン、及び組織学的染色。
【
図7B】マクロファージ再プログラミングは神経膠腫において放射線療法の結果を改善する。神経膠腫縁を浸潤するCD68+TAMの共焦点顕微鏡。スケールバー、300μm。
【
図7C】マクロファージ再プログラミングは神経膠腫において放射線療法の結果を改善する。健康な脳組織対神経膠腫におけるマクロファージ(F4/80+、CD11b+)集団のフローサイトメトリー分析。
【
図7D】マクロファージ再プログラミングは神経膠腫において放射線療法の結果を改善する。単独療法としてIRF5/IKKβ治療を受けた、確立した神経膠腫を抱えたマウスのカプラン・マイヤー生存曲線。タイムライン及び投与計画は上に示されている。ms、生存期間中央値。統計解析は対数順位検定を使用して実施し、P<0.05は統計的に有意と見なした。
【
図7E】マクロファージ再プログラミングは神経膠腫において放射線療法の結果を改善する。脳腫瘍放射線療法と組み合わせたIRF5/IKKβ治療を受けた、確立した神経膠腫を抱えたマウスのカプラン・マイヤー生存曲線。タイムライン及び投与計画は上に示されている。ms、生存期間中央値。統計解析は対数順位検定を使用して実施し、P<0.05は統計的に有意と見なした。
【
図7F】マクロファージ再プログラミングは神経膠腫において放射線療法の結果を改善する。腫瘍進行の連続生物発光イメージング。
【
図8A】ヒトIRF5/IKKβをコードするIVT mRNA担持ナノ粒子はヒトマクロファージを効率的に再プログラムする。ヒトTHP-1単核球細胞株を抑制性M2様マクロファージに分化させるタイムライン及び培養条件。
【
図8B】ヒトIRF5/IKKβをコードするIVT mRNA担持ナノ粒子はヒトマクロファージを効率的に再プログラムする。24ウェルにおいて培養され、ヒトIRF5/IKKβ mRNA対対照GFP mRNAを担持するNPの指示された濃度をトランスフェクトされたM2-分化THP1-Lucia細胞の生物発光イメージング。IRF誘導Luciaルシフェラーゼのレベルは、Quanti-Lucを使用してトランスフェクション24時間後に決定した。
【
図8C】ヒトIRF5/IKKβをコードするIVT mRNA担持ナノ粒子はヒトマクロファージを効率的に再プログラムする。生物発光数のまとめ。
【
図8D】ヒトIRF5/IKKβをコードするIVT mRNA担持ナノ粒子はヒトマクロファージを効率的に再プログラムする。IL-1βサイトカイン分泌におけるM1-マクロファージマーカーCD80の差。
【
図8E】ヒトIRF5/IKKβをコードするIVT mRNA担持ナノ粒子はヒトマクロファージを効率的に再プログラムする。表面発現におけるM1-マクロファージマーカーCD80の差。
【
図9】実施例1に記載される骨髄及びリンパ球免疫表現型パネルにおいて使用される抗体の一覧表。
【
図10A】T細胞が、マクロファージプログラミングナノ粒子を用いて達成される抗腫瘍効果に寄与することを示している。ナノ粒子媒介マクロファージプログラミングは腫瘍病変中へのT細胞動員を増やす。腸間膜でのID8卵巣がん細胞の腹膜転移の代表的な共焦点画像が示される。PBS又はIRF5/IKKβNP (50μg mRNA/用量)の6回の週2回腹腔内注射後に組織は収集され、指示されたリンパ球-及び骨髄マーカーについて染色された(a、c)。Tu=腫瘍。Mes=腸間膜。スケールバー:100μm。
【
図10B】T細胞が、マクロファージプログラミングナノ粒子を用いて達成される抗腫瘍効果に寄与することを示している。Halo(商標)画像解析ソフトウェアを使用してそれぞれの表現型マーカーについての蛍光シグナルを示すボックス図である。N=5。ボックスは平均値を表し、ボックス中の線は中央値を表す。ボックスを横切るバーは最小及び最大値を表す。ウィスカーは95%信頼区間を表す。N=5つの生物学的に独立した試料。
【
図11-10】本開示を支持する例示的配列である。
【
図11-11】本開示を支持する例示的配列である。
【
図11-12】本開示を支持する例示的配列である。
【
図11-13】本開示を支持する例示的配列である。
【
図11-14】本開示を支持する例示的配列である。
【
図11-15】本開示を支持する例示的配列である。
【
図11-16】本開示を支持する例示的配列である。
【
図11-17】本開示を支持する例示的配列である。
【
図11-18】本開示を支持する例示的配列である。
【
図11-19】本開示を支持する例示的配列である。
【
図11-20】本開示を支持する例示的配列である。
【
図11-21】本開示を支持する例示的配列である。
【
図12-1】タンパク質/コード配列組合せ、注記付きである。
【
図12-2】タンパク質/コード配列組合せ、注記付きである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
マクロファージは、がん性組織を多数で浸潤する鍵となる免疫エフェクター細胞である。しかし、免疫抑制性腫瘍環境において、マクロファージは活性化殺腫瘍性状態から、腫瘍成長及び転移を促進する免疫抑制表現型への切り替えを受ける。これらの腫瘍関連免疫抑制されたマクロファージ(TAM)は予後不良と関連している(Komohara Yら、(2014)Cancer science 105(1):1~8頁)。TAMは、血管新生、リンパ球新生、及び間質リモデリングを誘導する。TAMは、酵素プラスミン、uPA、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)及びカテプシンBの分泌を通じて腫瘍浸潤及び転移を促進するのに重要な役割も果たしている(Komohara、Yら、(2016)Advanced drug delivery reviews 99:180~185頁;Gocheva Vら、(2010)Genes Dev 24:241~255頁;Wang Rら、(2011)Lung Cancer 74:188~196頁)。腫瘍成長及び進行を媒介することとは別に、TAMは他の免疫細胞と相互作用をして自然及び適応抗腫瘍免疫応答を抑制することができる。
【0021】
いくつかの小分子薬物は、細胞動員又は増殖に関与する経路を標的にすることにより、TAM前駆体細胞の腫瘍への局在化を遮断することに焦点を合わせている(すなわち、CSF-1/CSF-1R経路(Pyon;teckら、Nat Med 19、1264~1272頁(2013);Tapら、N Engl J Med 373、428~437頁(2015))又はCCL2経路(Nyweningら、Lancet Oncol 17、651~662頁(2016))の阻害剤)。これらのアプローチには、小分子薬物の高用量への繰り返し全身曝露が必要である。さらに、これらの薬物の臨床試験は、細胞減少療法と組み合わされていなければ、示す応答は低かった。Nyweningら、Lancet Oncol 17、651~662頁(2016);Butowskiら、Neuro Oncol 18、557~564頁(2016)。さらに、これらの小分子アプローチは、マクロファージ抗腫瘍活性を活発に促進しない。
【0022】
リポソームなどの従来のナノ担体は、ビスホスホネート又は腫瘍内のマクロファージを全身的に破壊する他の抗増殖剤(すなわち、リポソームクロドロネート)で処方されてきた(Fritzら、Front Immunol 5、587(2014))。腫瘍溶解性ウイルスも、siRNAを送達し、腫瘍内の免疫回避経路を発現停止させTAMの食作用を間接的に促進するのに使用されてきた(Chaoら、Curr Opin Immunol 24、225~232頁(2012))。しかし、これらのアプローチを使用して破壊されるマクロファージは、新たに到着するマクロファージで自然に取って代わられ、これは同様に免疫抑制性になる。
【0023】
TAMの機能的活性化を誘導する抗体が、開発されている。これらのアプローチは、腫瘍内の限定された抗原タイプを標的にする抗体を利用する。Mantovaniら、Nat Rev Clin Oncol(2017)。しかし、これらの抗体の成功は、その低い腫瘍浸透及び不均質な分布により制限される。Thurberら、Adv Drug Deliv Rev 60、1421~1434頁(2008)。彼らはまた、抗体により標的にされる抗原を欠く腫瘍エスケープ変異体にも取り組んでいない。
【0024】
本明細書で開示されるように、記載されているアプローチで、TAMを、活性化された殺腫瘍性マクロファージのままでいるか又はそうなるように直接的に効果的にプログラム又は再プログラムするアプローチは一つもない。本明細書に開示されるシステム及び方法は、著しく革新的である。なぜならば、本明細書に開示されるシステム及び方法は、腫瘍促進TAM負荷を同時に減らしつつ、TAMを腫瘍除去マクロファージになるように再プログラムするのを可能にするからである。現在、医師が、これらの治療目的のためにTAMを合理的に再プログラムすることを、可能にする他の方法は、存在しない。Mantovaniら、Nat Rev Clin Oncol(2017);Gabrilovich&Nagaraj、Nat Rev Immunol 9、162~174頁(2009)。本方法は、本方法自体においてかつ本方法自体が、腫瘍の治療において治療効果を与えることができる。実際、本明細書で開示されるアプローチの有効性は、卵巣がん、メラノーマ、及び神経膠芽腫のモデルにおいて実証されている。より詳しくは、インターフェロン制御因子5(IRF5)をその活性化キナーゼIKKβと組み合わせてコードするヌクレオチドで処方されたナノ粒子を注入すると、TAMの免疫抑制腫瘍支援状態を逆転させ、TAMを、抗腫瘍免疫を誘導し腫瘍退縮を促進する表現型に再プログラムした。
【0025】
1つの興味深い所見は、T細胞が、マクロファージプログラミングナノ粒子を用いて達成される抗腫瘍効果に寄与することであった。実際、新生物を取り囲む宿主T細胞の多巣性密集クラスターがIRF5/IKKβナノ粒子治療動物すべてで見い出されており、免疫刺激マクロファージの遺伝的プログラミングがリンパ球輸送及び固形腫瘍中への浸潤を回復させることを示している(NPは腫瘍中へのT細胞浸潤を平均10.6倍(CD8)及び3.5倍(CD4)増加させた;
図10A、10B参照)。
【0026】
しかし、腫瘍中に動員されるT細胞の大半が腫瘍部位でがん抗原に結合すると考えられる治療的に関連するT細胞受容体を欠くために、本開示は、マクロファージプログラミング転写因子及びT細胞向け直しマクロ分子(二重特異性抗体などの)をコードするヌクレオチドを送達して自然及び適応免疫細胞をさらに活性化するナノ粒子の使用を提供する(
図1Cに図解されている)。
【0027】
既存の二重特異性分子技術と比べて一つの鍵となる優れている点は、これらの分子がTAMにより直接分泌され、したがって、腫瘍病変内で最高濃度に到達する(全身曝露を最小限に抑える)ことである。二重特異性抗体の急速なクリアランス速度(例えば、ヒト血清中で2時間)を考慮すると、従来の二重特異性抗体療法は、持続静脈内注入により投与する必要があり、用量規制毒性と関連している。このアプローチは、固形腫瘍の治療についてはほとんど臨床成功を見せておらず、この腫瘍は、骨髄系由来サプレッサー細胞でT細胞攻撃から防御されている。本開示に記載されるアプローチを使用すれば、医師は単球/マクロファージをインビボで遺伝的に改変して、(1)追加の免疫細胞を腫瘍部位に動員する;(2)腫瘍部位で活性化されたままで、進行中の刺激シグナルを他の免疫細胞に提供する;及び(3)腫瘍部位でがん抗原に結合し動員された免疫細胞にも結合して活性化し結合したがん細胞を破壊する多特異性免疫細胞結合分子を分泌することができる。重要なことに、この療法は、腫瘍内部から働き、これは免疫恒常性を破壊することがある既存の併用治療とは対照的である。
【0028】
特定の実施形態は、ナノ粒子を利用して細胞に、転写因子(例えば、インターフェロン制御因子(IRF))及び/又はキナーゼ(例えば、IKKβ)などの活性化制御因子をコードする遺伝子をコードするヌクレオチドを提供する。これらの活性化制御因子は、マクロファージ極性化を調節する。マクロファージ極性化は、マクロファージの生理的活性が変化する際に通過する、高度に動的なプロセスである。示されるように、大半の腫瘍において、TAMは、「M2」表現型が可能である免疫抑制された表現型を示す。これとは対照的に、活性化されたマクロファージは、腫瘍細胞の殺滅をもたらす「M1」表現型を示すことができる。本明細書で開示される特定の実施形態は、腫瘍促進TAMの極性化を、腫瘍を殺滅するマクロファージへと逆転する。本明細書で開示される特定の実施形態は、マクロファージが腫瘍部位で免疫抑制されないように、単球を遺伝的に改変して後にマクロファージに分化したら活性化された状態を維持する。これらの効果は、炎症性サイトカインを誘導し、他の免疫細胞を活性化し、腫瘍細胞を貪食することにより腫瘍内の免疫抑制性環境を回復する。
【0029】
「マクロファージ活性化(macrophage activation)」とは、マクロファージの表現型又は機能を(i)不活性化状態(inactivated state)から活性化状態(activated state)へ;(ii)非活性化状態から活性化状態へ;(iii)活性化状態からさらに活性化された状態へ;又は(iv)不活性化状態から非活性化状態へ変更するプロセスのことである。不活性化状態とは、腫瘍成長及び転移を促進する免疫抑制された表現型を意味する。非活性化状態とは、マクロファージが腫瘍成長又は転移を促進せず、腫瘍細胞の殺滅を促進もしないことを意味する。活性化状態は、マクロファージが殺腫瘍活性を示すことを意味する。特定の実施形態において、活性化状態により、下でより完全に説明されるM1表現型が生じる。特定の実施形態において、不活性化状態によりM2表現型が生じ、これも下でより完全に説明される。
【0030】
特定の実施形態において、開示されたシステム及び方法の1つの利点は、治療により誘導される炎症が治療部位に局在化したままになるがゆえに、患者を全身的毒性から救うことである。この利点を達成するため、局所的に注入されたナノ粒子は、腫瘍環境中のTAMを標的にし、マクロファージ極性化を制御するシグナル伝達経路を選択的に再プログラムするヌクレオチドを送達し、局所的に生理的経路により完全に分解可能になる(Sahinら、Nat Rev Drug Discov 13、759~780頁(2014))。本明細書に記載されるナノ粒子は、血流内の単球が取り入れることができる場所で静脈内に投与することもできる。
【0031】
固形腫瘍中で外因性ヌクレオチドの高発現を達成するのは、インビボにおいて難問である。本開示以前、ウイルス又はリポソームなどの従来のナノ担体に基づくヌクレオチド送達システムは、腫瘍組織内においてその制限された拡散により限定された、Jain&Stylianopoulos、Nat Rev Clin Oncol 7、653~664頁(2010)。この障壁を回避するため、特定の実施形態は、NPが腫瘍内のTAMの大集団にヌクレオチドを送達するように、増強された拡散率を有するナノ粒子(本明細書ではNPとも呼ばれる)を利用する。特定の実施形態は、中性表面電荷を担うサイズが130nm未満のNPを利用する。
【0032】
特定の実施形態は、NPの表面に結合されたターゲティングリガンドをさらに任意選択的に含むことができる。例えば、マクロファージマンノース受容体1(MRC1)は、CD206としても知られるが、マクロファージが発現するI型膜貫通タンパク質である。CD206は、TAMにおいて高発現レベルも示す。したがって、特定の実施形態では、ジマンノースをNP表面に結合させて、TAM細胞表面で発現されるマンノース受容体(CD206)へのより選択的なターゲティングを可能にすることができる。CD206結合及びターゲティングリガンドに関するさらに多くの情報は、Zhangら、Nature Communications、10、3974頁(2019)を参照されたい。標的にすることができる他のTAM細胞表面受容体は、初期増殖応答タンパク質2(Egr2)、CD163、CD23、インターロイキン(IL)27RA、CLEC4A、CD1a、CD1b、CD11b、CD14、CD16、CD31、CD93、CD115、CD192、CD226、IL13-Ra1、IL-4r、IL-1R II型、デコイIL-1R II型、IL-10r、マクロファージスカベンジャー受容体A及びB、Ym-1、Ym-2、低密度受容体関連タンパク質1(LRP1)、IL-6r、CXCR1/2、CX3CR1、CXCR3、CXCR4、及びPD-L1を含む。
【0033】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるシステム及び方法は、粒子の投与を必要とする対象にナノ粒子を投与することを含む。ナノ粒子は、対象の血流中の単球及び/又は腫瘍中に存在するマクロファージに向けられ、単球/マクロファージにより内在化されるように設計されている。内部移行された後、ナノ粒子は、IRF5とIKKβをコードする配列を有する1つ以上のヌクレオチドをさらに送達する。1つ以上のヌクレオチドは、IRF5とIKKβを発現するように単球/マクロファージを改変する。理論に縛られることはなく、IKKβキナーゼはリン酸化によりIRF5転写因子を活性化する。次に、活性化されたIRF5は、I型インターフェロン(IFN)遺伝子、腫瘍壊死因子(TNF)、IL-6、IL-12及びIL-23を含む炎症性サイトカイン、並びに、腫瘍抑制因子の発現を引き起こす。IRF5とIKKβをコードする1つ以上のヌクレオチドを内部移行させたM2マクロファージにおいて、IRF5作用を通じた前述の遺伝子の発現は、マクロファージのM2表現型からM1表現型への表現型又は機能的転換をもたらし、これによりマクロファージが腫瘍細胞を殺滅する又は腫瘍細胞の破壊を他の方法でトリガーさせ、それによって、がんを治療することが可能になる。特定の実施形態において、ナノ粒子は食作用により単球/マクロファージに内部移行される。特定の実施形態において、ナノ粒子は、リガンド媒介エンドサイトーシス(例えば、CD-206媒介エンドサイトーシス)により単球/マクロファージに内部移行される。特定の実施形態において、IRF5とIKKβ遺伝子を含むナノ粒子のマクロファージ中への送達は、例えば、(1)マクロファージへの結合、(2)マクロファージによるナノ粒子の内部移行、(3)内部移行後の細胞内小胞から細胞質中への逃避、(4)1つ以上のヌクレオチドの放出、(5)このヌクレオチドはマクロファージの核中に輸送することができ、(6)転写されてIRF5とIKKβを発現するための遺伝子を送達する。
【0034】
以前示されたように、本明細書で開示されるシステム内のナノ粒子は単球/マクロファージをさらに遺伝的に改変して、二重特異性免疫細胞活性化分子を産生し分泌する。このアプローチは
図1Cに描かれており、そこでは転写因子及び二重特異性抗体をコードするヌクレオチドを有するナノ粒子は正電荷コア内にカプセル化されている。
図1Cに描かれているアプローチでは、ナノ粒子は血流内の単球により取り込まれる。次に、これらの単球は血流を離れて腫瘍部位に到達する。ナノ粒子取込みに基づいて、細胞は、核に入り活性化されたマクロファージ状態の創造又は維持を可能にする転写因子を発現する。活性化されたマクロファージ状態は、免疫細胞を腫瘍部位に引き付け、そこで二重特異性抗体も分泌する。二重特異性抗体は腫瘍部位でがん抗原に結合し、並びに動員された免疫細胞上でエピトープを活性化する。
【0035】
タンパク質因子の形質転換成長因子β(TGF-β)ファミリーは、幅広い異なる細胞及び組織型での幅広い制御経路に並びに正常な及び病理過程の異なる段階で関与する。がん内部では、TGF-βは固形腫瘍中において高レベルで見い出される多面的サイトカインである。TGFβは、制御性T細胞(Treg)を誘導して腫瘍微小環境においてCD8+及びTH1細胞を阻害し、免疫機能不全を駆動する。例えば、Raviら、Nature Communications 9、741頁(2018)を参照されたい。したがって、本明細書で開示される特定の実施形態は、腫瘍微小環境においてTGF-βを低減又は中和する。例えば、本明細書に記載されるナノ粒子は、TGFβ抗体などのTGFβインヒビターをコードするヌクレオチドを送達することができる。
【0036】
本開示の態様は、この時点で、以下のような追加の詳細及び選択肢を用いて記載される:(1)マクロファージ及びマクロファージ表現型;(2)マクロファージ極性化に影響を及ぼす細胞経路;(3)標的化された抗原及び関連結合ドメイン;(4)免疫細胞活性化エピトープ及び関連結合ドメイン;(5)二重特異性分子フォーマット;(6)TGFβインヒビター;(7)ヌクレオチド;(8)ナノ粒子;(9)投与用の組成物;(10)使用方法;(11)例示的実施形態;(12)実験例;並びに(13)締め括りのパラグラフ。これらの見出しは、本開示の解釈を限定せず、組織的目的のためだけに提供される。
【0037】
(1)マクロファージ及びマクロファージ表現型。「マクロファージ」とは、骨髄由来単球から分化した免疫系の白血球のことである。マクロファージは、その食細胞活動及びその抗原提示能力により特徴付けられる。マクロファージは、自然及び適応免疫応答の両方において重要な役割を担う。表現型的には、マクロファージは表面マーカーF4/80(Ly71)を発現し、CDllb(Macl)、CDllc、CD14、CD40又はCD68などの他の表面マーカーを発現することもある。
【0038】
マクロファージは、Tリンパ球を活性化することにより、自然及び適応免疫の両方において重要な役割を果たす。がんにおいて、マクロファージは、固体腫瘍に関連する浸潤性白血球の大集団の1つである(Gordon S&Taylor PR(2005)Nature Reviews Immunology 5(12):953~964頁)。マクロファージは、周辺組織から又は走化性分子の分泌を通じて腫瘍そのものにより腫瘍部位へ動員することができる。マクロファージは、その表現型に応じて、極性化した様式で腫瘍に対する免疫応答に関与する。「表現型」は、遺伝子型と環境の相互作用の結果としての細胞の物理的属性又は生化学的特徴を指すのに本明細書において使用され、細胞の機能を含むことができる。
【0039】
Th1 Tリンパ球を活性化するマクロファージは、炎症応答を与え、M1極性化又は「古典的活性化」表現型を有するとして表されることが多い。活性化状態のマクロファージ(すなわち、M1マクロファージ又はM1表現型を有するマクロファージ)は、「キラーマクロファージ」とも呼ばれるが、細胞増殖を阻害し、組織損傷を引き起こし、病原体に対する抵抗を媒介し、強力な殺腫瘍活性を有する。これらのマクロファージは、抗原提示及び同時刺激の原因であるメディエーターの発現を増加することができ;腫瘍領域への好中球の浸潤が促進されると、好中球標的化腫瘍退縮がもたらされる。M1表現型は、適切な対照状態と比べると抗原提示の増加により証明することもできる。特定の実施形態において、M1表現型は、活性酸素種(ROS)及び一酸化窒素(NO)のM1マクロファージ生成により証明することができる。NOは、病原体及び腫瘍細胞のような異常な細胞に対する防御に不可欠な抗増殖効果を有する。特定の実施形態において、M1表現型は、IL-12などのサイトカインの産生を通じてTh1免疫を誘導する炎症誘発性状態により証明することができる。特定の実施形態において、活性化状態のマクロファージは、古典的には、病原体を貪食することができる活性化マクロファージである。
【0040】
機能以外に、M1表現型は、マクロファージにより発現される表面マーカー;極性化によりマクロファージにより産生される因子、タンパク質、若しくは化合物;又は極性化の時にマクロファージにより誘導される遺伝子により証明することもできる。M1極性化は、CD80、CD86、iNOS、サイトカインシグナル伝達抑制因子3(SOCS3)、TNFα、IL-1、IL-6、IL-12、IL-23、I型IFN、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL8、CXCL9、及びCXCL10の発現により証明される表現型をもたらすことができる。特定の実施形態において、M1表現型は、CD80の発現の増加を含む。特定の実施形態において、M1表現型は、CD206-、MHCII+、CD11c-、及びCD11b+を含む。
【0041】
一方、Th2 Tリンパ球を活性化するマクロファージは抗炎症応答を与え、「M2」表現型を有すると示されることが多い。不活性化状態であるマクロファージ(すなわち、M2マクロファージ又はM2表現型を有するマクロファージ)は、「修復マクロファージ」とも呼ばれるが、メタゾア寄生体封じ込め、細胞増殖、組織修復、腫瘍進行、抗炎症経路、及び免疫抑制に関与している。M2表現型は、適切な対照状態と比べると抗原提示を減らし、食作用を減少することができる。M2表現型は、例えば、アルギナーゼ1(Arg1(アルギナーゼ活性は増殖促進性効果及び組織修復応答に関連している)、IL-10、TGF-β、PPArγ、KLF4、CD206(MRC1)、デクチン-1(シグナル伝達非TLRパターン認識受容体)、DC-SIGN(C型レクチン)、スカベンジャー受容体A、スカベンジャー受容体B-1、CD163(ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体に対する高親和性スカベンジャー受容体)、ケモカイン受容体CCR2、CXCR1、及びCXCR2、YM1(キチナーゼ3様3)、及びFizz1の1種以上の発現;並びに、ケモカインCCL17、CCL22及びCCL24の分泌により証明することもできる。特定の実施形態において、不活性化状態のマクロファージは転移及び/又は化学療法に対する抵抗を促進する。特定の実施形態において、M2表現型は、CD206+、MHCII-、CD11c+、及びCD11blowを含む。
【0042】
表1は、M1表現型とM2表現型(M2a、M2b、M2c及びM2dと命名されるサブ表現型を含む)を区別するのに使用することができる基準の特定の組合せを提供する。
【0043】
【0044】
マクロファージ表現型を評価するためのアッセイは、M1又はM2表現型に特有の異なる分子シグネチャーを利用することができる。M1マクロファージについて一般的に認められたマーカープロファイルはCD80+であり、M2-マクロファージはCD163+と見なすことができる。したがって、フローサイトメトリーを実施すれば、これらのマーカーについて評価することができる。マクロファージをM1タイプのほうに近づけM2タイプから遠ざけることは、IL-12/IL-10比又はCD163-/CD163+マクロファージ比の増加を測定することにより、評価することもできる。特定の実施形態において、M1対M2形態は、光学顕微鏡により評価することができる。特定の実施形態において、食作用アッセイは、マクロファージがM1タイプなのかM2表現型なのかを評価する他のアッセイと併せて使用してもよい。異なるマクロファージ集団の食作用アッセイは、貪食される実体をマクロファージと一緒に細胞あたりの正規化された全表面積と一致する濃度でインキュベートすることにより実施してもよい。貪食される実体をマクロファージ培養物に添加してもよい。貪食される実体は、例えば、蛍光ラベルで標識してもよい。食作用インデックスは、マクロファージあたり測定された全蛍光強度中央値により決定してもよい。食作用の定量化は、例えば、フローサイトメトリーによって行ってもよい。腫瘍細胞殺滅アッセイを利用してもよい。特定の実施形態において、M1表現型は、セルピンB2(ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子の阻害剤)、CCL2(C-Cモチーフケモカインリガンド2)、CCL11(C-Cモチーフケモカインリガンド11)、及びRetnla(レジスチン様アルファ;Fizz1)を含むシグネチャーM2マクロファージ遺伝子の発現の減少を含む。特定の実施形態において、M1表現型は、CCL5(C-Cモチーフケモカインリガンド5)を含むM1分化遺伝子の発現の増加を含む。
【0045】
遺伝子発現(例えば、CD80、CD86及び/又は上記の他の遺伝子のM1発現)は当業者には周知であるアッセイによって測定することができる。遺伝子発現を測定する方法は、NanoString nCounter(登録商標)発現アッセイ(NanoString Technologies、Inc.、Seattle、WA)、ノーザンブロット、ドットブロット、マイクロアレイ、遺伝子発現の連続分析(SAGE)、RNA-seq、及び定量的RT-PCRを含む。遺伝子発現産物、例えば、タンパク質レベルを測定する方法は、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、ウェスタンブロット、FACS、放射性免疫アッセイ(RIA)、サンドイッチアッセイ、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)、免疫組織染色、免疫電気泳動、免疫沈澱、及び抗体又はタンパク質結合剤などの検出試薬を使用する免疫蛍光を含む。
【0046】
本明細書で開示される実施形態を使用すれば、多形核好中球、単球、単球由来マクロファージ、組織常在性マクロファージ、上皮細胞、線維芽細胞、及び樹状細胞などの食作用細胞を遺伝的に改変することができる。食作用細胞は専門であってもよいし、又は非専門であってもよい。専門食細胞は、多形核好中球、単球、単球由来マクロファージ、及び組織常在性マクロファージを含む。特定の実施形態では、専門食作用細胞の主要な機能は食作用である。非専門食細胞は、食作用を実施することができる他のあらゆる細胞型を含むが、食作用が細胞の主要な機能とは考えられていない。非専門食細胞の例は、上皮細胞、線維芽細胞、及び樹状細胞を含む。専門及び非専門食細胞に関するさらに多くの情報は、Lim、Grinstein、and Roth、Frontiers in Cellular and Infection Microbiology、2017年5月、第7巻、Article 191頁を参照されたい。
【0047】
(2)マクロファージ極性化に影響を及ぼす細胞経路。活性化又は不活性化表現型に向かうマクロファージの極性化は、マクロファージといくつかの異なる分子又は環境との相互作用から生じる。例えば、M1マクロファージ極性化は、トール様受容体(TLR)リガンド(例えば、リポ多糖(LPS)、ムラミルジペプチド、リポテイコ酸、イミキモド、CpG)、IFNγ、TNFα、及びマクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む刺激によりトリガーされる。M2極性化マクロファージは、極性化を惹起する刺激に応じて、サブセットに分割することができ:M2aサブセットはIL-4、IL-13又は真菌及び蠕虫感染により誘発され;M2bはIL-1受容体リガンド、免疫複合体及びLPSにより誘発され;M2cはIL-10、TGF-β及びグルココルチコイドにより誘発され;M2dはIL-6及びアデノシンにより誘発される。M2マクロファージ極性化は、IL-21、GM-CSF、補体成分、及びアポトーシス細胞によりトリガーされる場合もある。マクロファージ極性化は、低酸素などの局所的微小環境状態によっても調節される。
【0048】
前述の分子及び環境は、転写因子を含む異なる細胞内シグナル伝達経路をトリガーさせることによりマクロファージ極性化に影響を及ぼす。M1とM2極性化の両方に関与している転写因子は、IRF、シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)、SOCS3タンパク質、及び活性化B細胞の核内因子カッパ軽鎖エンハンサー(NFκB)を含む。マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)も、マクロファージ機能をM1又はM2表現型のほうに向けるのに役割を果たしている。
【0049】
IRF/STAT経路は、上で考察したIFN及びTLRシグナル伝達などの刺激により活性化されるが、マクロファージを、STAT1を経てM1活性状態に極性化する。一方、IL-4及びIL-13などの刺激は、マクロファージを、STAT6を経てM2活性状態のほうにそらす(Sica A&Bronte V(2007)J Clin Invest 117:1155~1166頁)。したがって、これらのシグナル伝達イベントは、M1マクロファージ極性化の場合、炎症性免疫応答及び殺腫瘍活性を促進する、又はM2マクロファージ極性化の場合、免疫抑制性腫瘍促進応答を促進する。
【0050】
M1表現型の誘導に関係するいくつかの細胞内分子は、Gタンパク質共役型受容体、P2Y(2)R、これはNOS2を経てNOを誘導するのに役割を果たし(Eun SYら、(2014)Int Immunopharmacol 18:270~276頁);SOCS3、これはNFκB/PI-3キナーゼ経路を活性化してNOを生成し(Arnold CEら、(2014)Immunology 141:96~110頁);並びに成長及び分化因子アクチビンA、これはM1マーカーを促進しIL-10を下方調節する(Sierra-Filardi Eら、(2011)Blood 117:5092~5101頁)、を含む。
【0051】
M1表現型の誘導に関与する他の細胞内分子はIRFを含む。IRFは、IFNのウイルス媒介活性化、並びに細胞成長、分化、アポトーシス、及び免疫系活性の調節を含む、多様な役割を有する転写因子のグループである。IRFファミリーのメンバーは、トリプトファン(W)リピートを含有する保存されたN末端DNA結合ドメインを特徴とする。
【0052】
IRF5は、ヘリックスターンヘリックスDNA結合モチーフを有しウイルス-及びIFN誘導シグナル伝達経路を媒介する転写因子である。IRF5は、マクロファージが炎症を促進する又は阻害するかを制御する分子スイッチとして作用する。IRF5は、I型IFN遺伝子、TNF、IL-6、IL-12及びIL-2を含む炎症性サイトカイン、及び腫瘍抑制因子、並びにTh1及びTh17応答を活性化する。IRF5は、染色体7q32に位置するヒトIRF5遺伝子(OMIM ID 607218)によりコードされている。IRF5のいくつかのアイソフォーム/転写変異体が存在することが認識されている。特定の実施形態において、ヒトIRF5のアイソフォームは、アイソフォーム1(UniProt受託Q13568-1、配列番号1)、アイソフォーム2(UniProt受託Q13568-2、配列番号2)、アイソフォーム3(UniProt受託Q13568-3、配列番号3)、アイソフォーム4(UniProt受託Q13568-4、配列番号4)、アイソフォーム5(UniProt受託Q13568-5、配列番号5)及びアイソフォーム6(UniProt受託Q13568-6、配列番号6)を含む。特定の実施形態において、ヒトIRF5のアイソフォームは、配列番号23に示されるヌクレオチド配列によりコードされるアイソフォーム1、配列番号24に示されるヌクレオチド配列によりコードされるアイソフォーム2、配列番号25に示されるヌクレオチド配列によりコードされるアイソフォーム3、配列番号26に示されるヌクレオチド配列によりコードされるアイソフォーム4、配列番号27に示されるヌクレオチド配列によりコードされるアイソフォーム5、及び配列番号28に示されるヌクレオチド配列によりコードされるアイソフォーム6を含む。特定の実施形態において、マウスIRF5は配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、マウスIRF5は配列番号29に示されるヌクレオチド配列によりコードされる。M1マクロファージはIRF5を上方調節することが明らかにされている。
【0053】
IRF1及びIRF8も、IFNγなどの炎症誘発性シグナルによるマクロファージの活性化を含む、骨髄系細胞の発生及び機能に極めて重要な役割を果たす、Dror Nら、(2007)Mol Immunol.44(4):338~346頁。特定の実施形態において、ヒトIRF1は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、ヒトIRF1は、配列番号30に示されるヌクレオチド配列によりコードされる。特定の実施形態において、マウスIRF1は、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、マウスIRF1は、配列番号34に示されるヌクレオチド配列によりコードされる。特定の実施形態において、ヒトIRF8は、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、ヒトIRF8は、配列番号33に示されるヌクレオチド配列によりコードされる。特定の実施形態において、マウスIRF8は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、マウスIRF8は、配列番号38に示されるヌクレオチド配列によりコードされる。
【0054】
IRF3はIRF1及びIRF2の相同体である。IRF3は、NES、DBD、C末端IRF会合ドメイン及びいくつかの調節リン酸化部位を含む、いくつかの機能的ドメインを含有する。IRF3は、セリン/スレオニンリン酸化すると、転写共役因子であるCREB結合タンパク質と複合体を形成する不活性細胞質形態で見出される。この複合体は核に移動し、IFN-α及び-β、並びに他のインターフェロン誘導遺伝子の転写を活性化する。特定の実施形態において、ヒトIRF3のアイソフォームは、アイソフォーム1(UniProt受託Q14653-1)、アイソフォーム2(UniProt受託Q14653-2)、アイソフォーム3(UniProt受託Q14653-3)、アイソフォーム4(UniProt受託Q14653-4)、及びアイソフォーム5(UniProt受託Q14653-5)を含む。特定の実施形態において、ヒトIRF3アイソフォーム1は、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、ヒトIRF3アイソフォーム1は、配列番号31に示されるヌクレオチド配列によりコードされる。特定の実施形態において、マウスIRF3は、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、マウスIRF3は、配列番号35に示されるヌクレオチド配列によりコードされる。
【0055】
IRF7は、I型IFN遺伝子の転写活性化において役割を果たすことが明らかにされている。特定の実施形態において、ヒトIRF7のアイソフォーム1は、アイソフォームA(UniProt受託Q92985-1)、アイソフォームB(UniProt受託Q92985-2)、アイソフォームC(UniProt受託Q92985-3)、及びアイソフォームD(UniProt受託Q92985-4)を含む。特定の実施形態において、ヒトIRF7アイソフォームAは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、ヒトIRF7アイソフォームAは、配列番号32に示されるヌクレオチド配列によりコードされる。特定の実施形態において、マウスIRF7は、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、マウスIRF7は、配列番号36に示されるヌクレオチド配列によりコードされる。
【0056】
IRF活性化に寄与する1つ以上のIRF突然変異体も使用してもよい。例えば、アミノ酸残基S425、S427、S430、S436をアスパラギン酸残基などのリン酸化を模倣する残基で置換するIRF5(アイソフォーム4、配列番号4)のヒト変異体3/変異体4のリン酸化模倣突然変異体(Chen Wら、(2008)Nat Struct Mol Biol.15(11):1213~1220頁);アミノ酸残基T10、S158、S309、S317、S451、及び/又はS462をアスパラギン酸残基などのリン酸化を模倣する残基で置換するIRF5(アイソフォーム2、配列番号2)のヒト変異体5のリン酸化模倣突然変異体(Chang Foreman H-Cら、上記参照);IRF5の構成的核集積のための、ヒトIRF5アイソフォームa(変異体1、アイソフォーム3、配列番号3)及びアイソフォームb(変異体2、アイソフォーム1、配列番号1)残基S156、S158及びT160からアスパラギン酸残基などのリン酸化を模倣する残基への突然変異(Lin Rら、(2005)J Biol Chem 280(4):3088~3095頁);並びにIRF3のアミノ酸残基S396をアスパラギン酸などのリン酸化を模倣する残基で置換するIRF3リン酸化模倣突然変異体(Chen Wら、上記参照)。特定の実施形態において、マウスIRF7/IRF3の融合タンパク質は、IRF3会合ドメイン(配列番号15)において4つのセリン及び1つのスレオニン残基にAsp(D)突然変異を含み、融合タンパク質の構成的活性化及び転位置を与える(Lin Rら、(1998)上記参照;Linら、(2000)Molecular and Cellular Biology 20:6342~6353頁)。特定の実施形態において、IRF3会合ドメインにおいて4つのセリン及び1つのスレオニン残基にD突然変異を含むマウスIRF7/IRF3の融合タンパク質は、配列番号37に示されるヌクレオチド配列によりコードされている。特定の実施形態において、マウスIRF8突然変異体は、アミノ酸残基310のリジン(K)のアルギニン(R)での置換を含む(配列番号17)。特定の実施形態において、アミノ酸残基310のKのRでの置換を含むマウスIRF8突然変異体は、配列番号39に示されるヌクレオチド配列によりコードされている。主にK310でIRF8に結合している低分子ユビキチン様修飾因子(SUMO)は、IRF8応答性遺伝子の活性化を阻害する。セントリン特異的プロテアーゼ1(SENP1)はSUMO2/3を標的にする。SENP1の活性は、IRF8(及び他のタンパク質)を「脱SUMO化し」、IRF8にM1マクロファージ分化の抑制因子から活性化因子に(直接的に及びトランスアクチベーション活性を通じて)進ませる。K310残基の突然変異によりSUMOがIRF8に結合するのを妨げると、IRF8特異的遺伝子転写が2~5倍増加する(Chang T-Hら、(2012)上記参照)。
【0057】
本開示の特定の実施形態は、操作されたIRF転写因子を含む。特定の実施形態において、操作されたIRF転写因子は、機能する自己抑制的ドメインを欠き、したがって、フィードバック不活性化に非感受性であるIRFを含む(Thompsonら、(2018)Front Immunol 9:2622頁)。例えば、活性の増加が2~3倍であるヒトIRF5は、ヒトIRF5タンパク質のアミノ酸489~539を欠失させることにより得ることができる(Barnesら、(2002)Mol Cell Biol 22:5721~5740頁)。特定の実施形態において、M2表現型を促進する転写因子である、IRF4の自己抑制的ドメインを欠失させる又は突然変異させると、自己免疫疾患を治療するという文脈においてさらに活性なIRF4を作成することができる。特定の実施形態において、IRFの自己抑制的ドメインは、IRFタンパク質のカルボキシ末端で見出せる。特定の実施形態において、操作されたIRF転写因子は、核においてIRFを捕捉し、したがって、転写を増強する1つ以上の機能する核外移行シグナル(NES)を欠くIRFを含む。例えば、ヒトIRF5の核集積は、2つのロイシン残基をアラニンで置き換える(L157A/L159A)ことによってヒトIRF5のNESを突然変異することにより達成可能である(Linら、(2000)Molecular and Cellular Biology 20:6342~6353頁)。特定の実施形態において、操作されたIRF転写因子は、1つ以上のIRFの融合体、1つ以上のIRFの断片の融合体、及び突然変異したIRFの融合体を含む。
【0058】
NFκBも、マクロファージM1活性化に関係する重要な転写因子である。NFκBは、TNFα、IL1B、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)、IL-6、及びIL12p40を含む多数の炎症性遺伝子の発現を調節する。NFκB活性は、カッパBキナーゼ(IKK)三量体複合体(2つのキナーゼ、IKKα、IKKβ、及び調節タンパク質、IKKγ)の阻害因子の活性化を経て調節される。上流シグナルがIKK複合体で収束すると、これらのシグナルは先ずリン酸化を経てIKKβキナーゼを活性化し、活性化されたIKKβはカッパBの阻害因子(I-κB)である、阻害性分子をさらにリン酸化する。これにより、I-κBがプロテアソーム分解され、NFκB/I-κB複合体からNFκB p65/p50ヘテロ二量体が放出される。次に、NFκB p65/p50ヘテロ二量体は核に移動されて、炎症性遺伝子のプロモーターに結合する。
【0059】
IKKβは、NFκB並びにIRF5などの他の転写因子に対する活性化キナーゼである。IKKβは同様に、FOXO3、NCOA3、BCL10、IRS1、NEMO/IKBKG、NFκBサブユニットRELA及びNFKB1を含む他のいくつかのシグナル伝達経路成分、並びにIKK関連キナーゼTBK1及びIKBKEをリン酸化する。特定の実施形態において、ヒトIKKβのアイソフォームは、アイソフォーム1(UniProt受託O14920-1、配列番号18)、アイソフォーム2(UniProt受託O14920-2、配列番号19)、アイソフォーム3(UniProt受託O14920-3、配列番号20)、アイソフォーム4(UniProt受託O14920-4、配列番号21)を含む。特定の実施形態において、ヒトIKKβのアイソフォームは、配列番号40に示されるヌクレオチド配列によりコードされるアイソフォーム1、配列番号41に示されるヌクレオチド配列によりコードされるアイソフォーム2、配列番号42に示されるヌクレオチド配列によりコードされるアイソフォーム3、配列番号43に示されるヌクレオチド配列によりコードされるアイソフォーム4を含む。特定の実施形態において、マウスIKKβは配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、マウスIKKβは配列番号44に示されるヌクレオチド配列によりコードされる。
【0060】
示されるように、低酸素も、低酸素誘導性因子HIF-1α及びHIF-2αを通じてマクロファージ極性化に影響を及ぼす。HIF-1αは、NOS2発現を調節しM1表現型の出現を支援し、HIF-2αはArg1発現を調節してM2表現型の出現を支援する(Takeda Nら、(2010)Genes Dev 24:491~501頁)。
【0061】
【0062】
本開示は、IRFを活性化して、腫瘍殺滅のための活性化状態へのTAM再プログラミングをもたらすことができる1種以上の分子と一緒のIRF転写因子の共発現を提供する。特定の実施形態において、共発現戦略は、IRF5とIKKβの共発現;IRF5とTANK結合キナーゼ1(TBK-1)、TNF受容体会合因子6(TRAF6)アダプター、受容体相互作用タンパク質2(RIP2)キナーゼ、及び/又はNFκBキナーゼε(IKKε)の共発現(Chang Foreman H-Cら、(2012)PLoS One 7(3):e33098);IRF5とタンパク質キナーゼDNA-PKの共発現(Ryzhakov Gら、(2015)J of Interferon&Cytokine Res 35(2):71~78頁);IRF5とタンパク質キナーゼチロシンキナーゼBCR-ABLの共発現(Massimo Mら、(2014)Carcinogenesis 35(5):1132~1143頁);並びにIRF5又はIRF8とCOP9シグナロソームの1つ以上の成分の共発現(Korczeniewska Jら、(2013)Mol Cell Biol 33(6):1124~1138頁;Cohen Hら、(2000)J Biol Chem 275(50):39081~39089頁)を含む。
【0063】
(3)標的化された抗原及び関連結合ドメイン。本明細書で使用される場合、抗原とは目的の細胞型により発現されるタンパク質のことである。目的の細胞又は目的の細胞型は、免疫系により認識され破壊されることができる任意の予め定義された細胞型を含む。一部の実施形態では、本発明の目的の細胞型は、対象の健康、生存率、又は福祉に対して有害な、害を及ぼす又は他の点で望ましくない効果を有する(又はそのような効果を有する素因になる)細胞型である。目的の細胞は、例えば、(i)がん性の又はウイルスなどの病原体に感染している真核細胞、及び(ii)ある特定の細菌、真菌又は酵母などの原核細胞を含むことができる。目的の細胞は、害を及ぼす及び/又は自己免疫を引き起こす場合がある自己反応性細胞も含む。目的のそのような自己反応性細胞は、例えば、自己反応性免疫細胞、自己反応性リンパ球、自己反応性T細胞、自己反応性B細胞を含む。目的の自己反応性細胞は、制御性T細胞などの免疫応答を制御するように発生中にプログラムされる自己反応性細胞でもよい。自己反応性細胞は、例えば、不適切な自己抗原を認識し結合することにより対象中での自己免疫状態に寄与する。一部の実施形態では、局在性の又は循環している細胞集団で大きな比率を占めると害を与える場合がある細胞型は、本発明に従った目的の細胞型でもよい。例えば、炎症性反応は免疫細胞の過剰出現を生じることがあり、その場合、目的の細胞は、例えば、好中球又はマスト細胞を含んでもよい。さらに、一部の例では、目的の細胞は、治療の一部として以前投与された細胞、例えば、遺伝的に改変された細胞(例えば、キメラ抗原受容体(CAR)発現細胞)でもよい。
【0064】
特定の実施形態では、抗原は目的の細胞により優先的に発現される。「優先的に発現される」とは、他の細胞型と比べた場合、目的の細胞上でのほうが抗原が高いレベルで見い出されることを意味する。一部の例では、抗原は目的の細胞によってのみ発現される。他の例では、抗原は目的の細胞上で他の細胞型よりも少なくとも25%、35%、45%、55%、65%、75%、85%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%多く発現される。
【0065】
以下は、異なるがんタイプと関連するがん細胞抗原の例を提供する。
【0066】
【0067】
がん細胞抗原に対する例示的結合ドメインは、新規に作製するか、又は選択されたがん抗原に特異的である既知の抗体若しくは結合ドメインから導き出すことができる。
【0068】
上皮細胞接着分子(EpCam;EGP-40、Trop-1、17-1A、KSA、KS1/4、AUA1、GA733-2、及びCD326とも呼ばれる)は、卵巣がんを含むある特定のがんで過剰発現される。上皮細胞接着分子は、2つのEGF様リピートのある細胞外ドメインを有する40kd表面糖タンパク質である。EpCamを標的にする抗体は市販されている(Richterら、Am.J.Obstet.Gynecol.2010年、203(6):582.e1-582e7)。EpCamに結合する例示的抗体は、MT201(アデカツムマブ(adecatumumab))及びエドレコロマブ(Edrecolomab)を含む。
【0069】
チロシン関連タンパク質1又はgp75糖タンパク質(TYRP1/gp75)は、悪性メラニン細胞及び黒色腫進行に関与しているメラノソームタンパク質である(Ghanemら、Mol.Oncol.2011年4月;5(2):150~155頁)。TYRP1/gp75に結合する例示的抗体は、TA99(Saengerら、Cancer Research、68(23):9884~9891頁、2008年)、20D7(Patelら、IOS Press、16(3-4):127~1036頁、2007年)、及びフランボツマブ(flanvotumab)(IMC-20D7S)(Khalilら、Clinical Cancer Research、22(21):5204~5210頁、2016年)を含む。
【0070】
特定の実施形態では、TYRP1/gp75に結合する抗体は、米国特許第7951370号に記載されている。特定の実施形態では、TYRP1/gp75に結合する抗体は、RASQSVSSYLAを含むCDRL1配列(配列番号84)、DASNRATを含むCDRL2配列(配列番号85)、QQRSNWLMYTを含むCDRL3配列(配列番号253)、GYTFTSYAMNを含むCDRH1配列(配列番号254)、WINTNTGNPTYAQGFTGを含むCDRH2配列(配列番号255)、RYSSSWYLDYを含むCDRH3配列(配列番号256)を含む。
【0071】
特定の実施形態では、TYRP1/gp75に結合する抗体は、RASGNIYNYLAを含むCDRL1配列(配列番号257)、DAKTLADを含むCDRL2配列(配列番号258)、QHFWSLPFTを含むCDRL3配列(配列番号259)、GFNIKDYFLHを含むCDRH1配列(配列番号260)、WINPDNGNTVYDPKFQGを含むCDRH2配列(配列番号261)、DYTYEKAALDYを含むCDRH3配列(配列番号262)を含む。
【0072】
特定の実施形態では、TYRP1/gp75結合抗体は、配列:
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
メソセリンに結合する結合ドメインのある例示的抗体は、アネツマブ(anetumab)、ラブタンシン(ravtansine)、アマツキシマブ(Amatuximab)、及びHN1を含む。
【0077】
特定の実施形態では、HN1抗体は、RASEGIYHWLAを含むCDRL1配列(配列番号55)、KASSLASを含むCDRL2配列(配列番号58)、QQYSNYPLTを含むCDRL3配列(配列番号61)、TYYMQを含むCDRH1配列(配列番号64)、VINPSGVTSYAQKFQGを含むCDRH2配列(配列番号71)、及びWALWGDFGMDVを含むCDRH3配列(配列番号73)を含む。
【0078】
米国特許第8206710号は、配列
【0079】
【0080】
【化5】
を含む可変重鎖を含むメソセリン結合抗体並びに配列
【0081】
【0082】
【化7】
を含む可変重鎖を有する抗体を記載している。
【0083】
追加のメソセリン結合抗体は、米国特許第8911732号、米国特許第7081518号、米国特許第8357783号及び米国特許第8425904号に記載されている。
【0084】
MUC16結合ドメインは、抗体オレゴボマブ(Oregovomab)、オバレックス(ovarex)、及びアバゴモマブ(abagovomab)から導き出すことができる。米国特許第7723485号は、配列
【0085】
【0086】
【化9】
を含む可変重鎖を含むMUC16結合抗体を記載している。
【0087】
国際公開第2016149368号は、SEDIYSGを含むCDRL1配列(配列番号117)、GASを含むCDRL2配列、GYSYSSTLを含むCDRL3配列(配列番号118)を含む可変軽鎖、TLGMGVGを含むCDRH1配列(配列番号119)、HIWWDDDKYYNPALKSを含むCDRH2配列(配列番号120)、及びIGTAQATDALDYを含むCDRH3配列(配列番号121)を含む可変重鎖を含むMUC16結合抗体を記載している。
【0088】
葉酸受容体結合抗体はファルレツズマブ(farletuzumab)を含む。特定の実施形態では、ファルレツズマブは米国特許第9133275号に記載されている。特定の実施形態では、ファルレツズマブは、KASQSVSFAGTSLMHを含むCDRL1配列(配列番号122)、RASNLEAを含むCDRL2配列(配列番号123)、及びQQSREYPYTを含むCDRL3配列(配列番号124)を含む可変軽鎖、並びにGYFMNを含むCDRH1配列(配列番号125)、RIHPYDGDTFYNQKFQGを含むCDRH2配列(配列番号126)、及びYDGSRAMDYを含むCDRH3配列(配列番号127)を含む可変重鎖を含む。追加のFOLR結合抗体は、米国特許第10101343号、米国特許第8388972号、及び米国特許第8709432号に記載されている。
【0089】
例示的EGFR抗体はセツキシマブ(cetuximab)を含む。特定の実施形態では、セツキシマブは米国特許第7598350号に記載されている。特定の実施形態では、セツキシマブは、RASQSVSSYLAを含むCDRL1配列(配列番号84)、DASNRATを含むCDRL2配列(配列番号85)、及びHQYGSTPLTを含むCDRL3配列(配列番号130)を含む可変軽鎖、並びにSGDYYWSを含むCDRH1配列(配列番号131)、YIYYSGSTDYNPSLKSを含むCDRH2配列(配列番号132)、及びVSIFGVGTFDYを含むCDRH3配列(配列番号133)を含む可変重鎖を含む。
【0090】
追加のEGFR結合ドメインは、米国特許第7247301号、米国特許第7723484号、米国特許第7132511号、及び米国特許第5844093号に記載されている。米国特許第7723484号は特に、配列
【0091】
【0092】
【化11】
を含む可変重鎖を含むEGFR結合抗体を記載している。
【0093】
CD19結合ドメインは、抗体FMC63、SJ25C1及びHD37内に見い出される(SJ25C1:Bejcekら、Cancer Res 2005年、PMID 7538901;HD37:Pezuttoら、JI 1987年、PMID 2437199)。特定の実施形態では、FMC63 CDRは、RASQDISKYLNを含むCDRL1配列(配列番号136)、SRLHSGVを含むCDRL2配列(配列番号137)、GNTLPYTFGを含むCDRL3配列(配列番号138)、DYGVSを含むCDRH1配列(配列番号139)、VTWGSETTYYNSALKSを含むCDRH2配列(配列番号140)、及びYAMDYWGを含むCDRH3配列(配列番号141)を含む。
【0094】
RORIに特異的ないくつかの抗体も当業者には公知であり、配列、エピトープ結合、及び親和性について容易に特徴付けることができる。例えば、国際公開第2008076868号、国際公開第2008103849号、国際公開第201008069号、国際公開第2010124188号、国際公開第2011079902号、国際公開第2011054007号、国際公開第2011159847号、国際公開第2012076066号、国際公開第2012076727号、国際公開第2012045085号、及び国際公開第2012097313号を参照されたい。
【0095】
ROR1に結合する抗体の特定の例は、R11、R12、2A2、及びY31を含む。
【0096】
R11抗体は、QASQSIDSNLAを含むCDRL1配列(配列番号142)、RASNLASを含むCDRL2配列(配列番号143)、LGGVGNVSYRTSを含むCDRL3配列(配列番号144)、DYPISを含むCDRH1配列(配列番号145)、FINSGGSTWYASWVKGを含むCDRH2配列(配列番号146)、及びGYSTYYCDFNIを含むCDRH3配列(配列番号147)を含む。
【0097】
R12抗体は、TLSSAHKTDTIDを含むCDRL1配列(配列番号148)、GSYTKRPを含むCDRL2配列(配列番号149)、GADYIGGYVを含むCDRL3配列(配列番号150)、AYYMSを含むCDRH1配列(配列番号151)、TIYPSSGKTYYATWVNGを含むCDRH2配列(配列番号152)、及びDSYADDGALFNIを含むCDRH3配列(配列番号153)を含む。
【0098】
2A2抗体は、KASQNVDAAVAを含むCDRL1配列(配列番号154)、SASNRYTを含むCDRL2配列(配列番号155)、QQYDIYPYTを含むCDRL3配列(配列番号156)、DYEMHを含むCDRH1配列(配列番号157)、AIDPETGGTAYNQKFKGを含むCDRH2配列(配列番号158)、及びYYDYDSFTYを含むCDRH3配列(配列番号159)を含む。
【0099】
Y31抗体は、QASQSIGSYLAを含むCDRL1配列(配列番号160)、YASNLASを含むCDRL2配列(配列番号161)、LGSLSNSDNVを含むCDRL3配列(配列番号162)、SHWMSを含むCDRH1配列(配列番号163)、IIAASGSTYYANWAKGを含むCDRH2配列(配列番号164)、及びDYGDYRLVTFNIを含むCDRH3配列(配列番号165)を含む。
【0100】
Her2結合ドメインは4D5抗体から導き出すことができる。4D5抗体は、RASQDVNTAVAWを含むCDRL1配列(配列番号166)、YSASFLESを含むCDRL2配列(配列番号167)、QQHYTTPTを含むCDRL3配列(配列番号168)、SGFNTKDTYIHWを含むCDRH1配列(配列番号169)、RIYPTNGYTRYADSVKGRを含むCDRH2配列(配列番号170)、及びWGGDGFYAMDVを含むCDRH3配列(配列番号171)を含む。
【0101】
PD-L1結合抗体は3G10抗体及び米国特許出願公開第2016/0222117号に記載される抗体を含む。特定の実施形態では、3G10抗体に由来する結合ドメインは、RASQSVSSYLを含むCDRL1配列(配列番号172)、DASNRATを含むCDRL2配列(配列番号85)、QQRSNWPRTを含むCDRL3配列(配列番号173)、DYGFSを含むCDRH1配列(配列番号174)、WITAYNGNTNYAQKLQGを含むCDRH2配列(配列番号175)、及びDYFYGMDYを含むCDRH3配列(配列番号176)を含む。
【0102】
PD-L1結合ドメインは、RASQDVSTAVAを含むCDRL1配列(配列番号177)、SASFLYSを含むCDRL2配列(配列番号178)、QQYLYHPATを含むCDRL3配列(配列番号179)、SGFTFSDSWIHを含むCDRH1配列(配列番号180)、WISPYGGSTYYADSVKGを含むCDRH2配列(配列番号181)、及びRHWPGGFDYを含むCDRH3配列(配列番号182)又は(ii)TGTSSDVGGYNYVSを含むCDRL1配列(配列番号183)、DVSNRPSを含むCDRL2配列(配列番号184)、SSYTSSSTRVを含むCDRL3配列(配列番号185)、SGFTFSSYIMMを含むCDRH1配列(配列番号186)、SIYPSGGITFYADTVKGを含むCDRH2配列(配列番号187)、及びIKLGTVTTVDYを含むCDRH3配列(配列番号188)も含むことができる。
【0103】
PD-L1結合ドメインのある追加の抗体は、アテゾレイツマブ(Atezolizumab)、アベルマブ(Avelumab)、及びデュルバルマブ(Durvalumab)を含む。
【0104】
特定の実施形態では、抗原はウイルス感染細胞により発現される。例示的ウイルスは、アデノウイルス、アレナウイルス、ブニヤウイルス、コロナウイルス、フラビウイルス、ハンタウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、オルトミクソウイルス、レトロウイルス、レオウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、海綿状ウイルス(spongiform viruses)又はトガウイルスを含む。追加の実施形態では、ウイルス抗原は、CMV、かぜウイルス、エプスタインバーウイルス、フルウイルス、A型、B型、及びC型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、HIVウイルス、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、はしかウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器多核体ウイルス、風疹ウイルス、天然痘ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス又は西ナイルウイルスにより発現されるペプチドを含む。
【0105】
さらなる特定の例として、コロナウイルス抗原はスパイク(S)タンパク質を含み、サイトメガロウイルス抗原は外被糖タンパク質B及びCMV pp65を含み;エプスタインバー抗原はEBV EBNAI、EBV P18、及びEBV P23を含み;肝炎抗原は、B型肝炎ウイルスのS、M、及びLタンパク質、B型肝炎ウイルスのプレ-S抗原、HBCAG DELTA、HBV HBE、C型肝炎ウイルスRNA、HCV NS3並びにHCV NS4を含み;単純ヘルペスウイルス抗原は初期タンパク質及び糖タンパク質Dを含み;HIV抗原は、HIV gp32、HIV gp41、HIV gp120、HIV gp160、HIV P17/24、HIV P24、HIV P55 GAG、HIV P66 POL、HIV TAT、HIV GP36、Nefタンパク質及び逆転写酵素などのgag、pol、及びenv遺伝子の遺伝子産物を含み;インフルエンザ抗原はヘマグルチニン及びノイラミニダーゼを含み;日本脳炎ウイルス抗原はタンパク質E、M-E、M-E-NS1、NS1、NS1-NS2A及び80%Eを含み;はしか抗原は、はしかウイルス融合タンパク質を含み、狂犬病抗原は、狂犬病糖タンパク質及び狂犬病核タンパク質を含み;呼吸器多核体ウイルス抗原はRSV融合タンパク質及びM2タンパク質を含み;ロタウイルス抗原はVP7scを含み;風疹抗原はタンパク質E1及びE2を含み;並びに水痘帯状疱疹ウイルス抗原はgpI及びgpIIを含む。ウイルス抗原のさらなる例についてはFundamental Virology、第2版、編者Fields,B.N.及びKnipe,D.M.(Raven Press、New York、1991年)を参照されたい。
【0106】
特定の実施形態では、抗原は細菌感染に関連する細胞により発現される。例示的細菌は、炭疽菌;グラム陰性杆菌、クラミジア、ジフテリア、ヘモフィリス・インフルエンザ、ヘリコバクターピロリ菌、マラリア、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、百日咳毒素、肺炎球菌、リケッチア、ブドウ球菌、連鎖状球菌及び破傷風を含む。
【0107】
細菌抗原の特定の例として、炭疽菌抗原は炭疽防御抗原を含み;グラム陰性杆菌抗原はリポ多糖を含み;ヘモフィリス・インフルエンザ抗原は莢膜多糖を含み;ジフテリア抗原はジフテリア毒素を含み;マイコバクテリウム・ツベルクローシス抗原は、ミコール酸、熱ショックタンパク質65(HSP65)、30kDa主要分泌タンパク質及び抗原85Aを含み;百日咳毒素抗原は、ヘマグルチニン、パータクチン、FIM2、FIM3及びアデニル酸シクラーゼを含み;肺炎球菌抗原はニューモリシン及び肺炎球菌莢膜多糖を含み;リケッチア抗原はrompAを含み;連鎖球菌抗原はMタンパク質を含み;並びに破傷風抗原は破傷風毒素を含む。
【0108】
スーパーバグ。特定の実施形態では、リンパ球は改変されて多剤耐性「スーパーバグ」を標的にする。スーパーバグの例は、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、及びエンテロバクター科(Enterobacteriaceae)(エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、クリブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、エンテロバクター(Enterobacter)菌種を含む)を含む。
【0109】
特定の実施形態では、抗原は真菌感染に関連する細胞により発現される。例示的真菌は、カンジダ(candida)、コクシジオイデス属(coccidiodes)、クリプトコックス(cryptococcus)、ヒストプラズマ属(histoplasma)、リーシュマニア(leishmania)、プラスモディウム属(plasmodium)、原生生物(protozoa)、寄生生物(parasites)、シストソーマ属(schistosomae)、ティニア(tinea)、トキソプラズマ(toxoplasma)、及びトリパノソーマ・クルーズ(trypanosoma cruzi)を含む。
【0110】
真菌抗原のさらなる特定の例として、コクシジオイデス属抗原は、スフェルール抗原を含み;クリプトコックス抗原は莢膜多糖を含み;ヒストプラズマ属抗原は熱ショックタンパク質60(HSP60)を含み;リーシュマニア抗原はgp63及びリポホスホグリカンを含み;プラスモディウム・ファルスィパラム(plasmodium falciparum)抗原はメロゾイト表面抗原、スポロゾイト表面抗原、スポロゾイト周囲抗原、ガメトサイト/ガメート表面抗原、血液段階抗原pf 155/RESAを含む原生生物及び他の寄生生物抗原を含み;シストソーマ属抗原は、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ及びパラミオシンを含み;ティニア真菌抗原はトリコフィチンを含み;トキソプラズマ抗原はSAG-1及びp30を含み;並びにトリパノソーマ・クルーズ抗原は75~77kDa抗原及び56kDa抗原を含む。
【0111】
特定の実施形態では、抗原は、自己免疫又はアレルギー状態に関連する細胞により発現される。例示的自己免疫状態は、急性壊死性出血性脳疾患、アレルギー性喘息、円形脱毛症、貧血症、アフタ性潰瘍、関節炎(関節炎リウマチ、若年性関節炎リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎を含む)、喘息、自己免疫性甲状腺炎、セリアック病、結膜炎、クローン病、皮膚エリテマトーデス、皮膚炎(アトピー性皮膚炎及び湿疹性皮膚炎を含む)、糖尿病、真性糖尿病、らい性結節性紅斑、角結膜炎、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、強皮症、シェーグレン症候群、シェーグレン症候群に続発する乾性角結膜炎を含むスティーブンスジョンソン症候群、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、膣炎及びウェゲナー肉芽腫症を含む。
【0112】
自己免疫抗原の例は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)、未変性DNA、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、アセチルコリン受容体成分、サイログロブリン、及び甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体を含む。アレルギー抗原の例は、スギ花粉抗原、ブタクサ花粉抗原、ドクムギ花粉抗原などの花粉抗原、動物由来抗原(イエダニ抗原及びネコ抗原などの)、組織適合性抗原、並びにペニシリン及び他の治療薬を含む。
【0113】
目的の細胞により発現される抗原に対する結合ドメインは、T細胞受容体(TCR)由来でも可能である。結合ドメインとしての使用のために特定のTCRを同定し選択する方法は数多く存在する。例えば、特定の抗原断片に結合する数多くのTCRの配列は公知であり公開されている。
【0114】
有用なTCRは、特定の抗原に結合するT細胞を単離しTCR鎖をシーケンシングすることにより同定することもできる。例として、抗原特異的T細胞は、抗原/MHC複合体の存在下で単離されたヒトT細胞をインビトロ培養することにより誘導してもよい。抗原/MHC複合体に結合するTCRをコードするTCR遺伝子は、例えば、TCRα-鎖遺伝子及びTCRβ-鎖遺伝子に特異的である配列に対応するプライマーを使用する5’RACE手順により容易にクローニングすることができる。
【0115】
特定の実施形態では、シーケンシングに続いてTCR鎖を対にする(すなわち、対合鎖分析を実施する)ことが必要な場合がある。単離されたα及びβ鎖を対にするためには種々の方法を利用できる。特定の実施形態では、例えば、α及びβ鎖対合情報が、仮に単細胞からシーケンシングする場合などの手順で失われていない実施形態では、シーケンシング後対合は不必要であるか、又は比較的簡単である場合がある。鎖対合は、マルチウェルシーケンシングを使用して実施してもよい。PairSEQ(登録商標)(Adaptive Biotechnologies Corp.、Seattle、WA)などのアッセイも開発されている。
【0116】
本開示の文脈内で使用することができるTCRの特定の例は、例えば、国際公開第2018/129270号;国際公開第2017/112944号;国際公開第2011/039507号;米国特許第8,008,438号;米国特許出願公開第2016/0083449号;米国特許出願公開第2015/0246959号;Stromnesら、(2015)Cancer cell 28(5):638~652頁;Kobayashiら、(2013)Nature Medicine 19:1542~1546頁);Varela-Rohenaら、(2008)Nature Medicine.14(12):1390~1395頁);及びRobbinsら、(2008)The Journal of Immunology 180(9):6116~6131頁を参照されたい。
【0117】
(4)免疫細胞活性化エピトープ及び関連結合ドメイン。局所的活性化のために標的にすることができる免疫細胞は、例えば、T細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。
【0118】
T細胞活性化は、2つの異なるシグナル:抗原依存性一次活性化を開始しT細胞受容体様シグナルを提供するシグナル(一次細胞質シグナル伝達配列)及び抗原非依存性的に作用して二次又は共刺激シグナルを提供するシグナル(二次細胞質シグナル伝達配列)により媒介することができる。二重特異性抗体の組合せは、結合するとT細胞活性化を誘導するT細胞活性化エピトープのいかなる組合せでも標的にすることができる。そのようなT細胞活性化エピトープの例は、CD2、CD3、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD83、4-1BB(CD 137)、OX40、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、LIGHT、NKG2C、及びB7-H3を含むT細胞マーカー上にある。遮断することができるT細胞抑制受容体は、PD-1、LAG3、TIM-3、BTLA、CTLA-4、及びCD200を含む。PD-1結合ドメインのある抗体は、ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)及びニボルマブ(Nivolumab)を含み、CTLA-4ブロッキング抗体はイピリムマブ(Ipilimumab)を含む。
【0119】
CD3はT細胞受容体の一次シグナル伝達エレメントであり、すべての成熟T細胞上で発現される。CD3に対する結合ドメインは、例えば、OKT3、20G6-F3、4B4-D7、4E7-C9、及び18F5-H10から導き出すことができる。
【0120】
OKT3は米国特許第5,929,212号に記載されている。OKT3抗体は、SASSSVSYMNを含むCDRL1配列(配列番号189)、RWIYDTSKLASを含むCDRL2配列(配列番号190)、QQWSSNPFTを含むCDRL3配列(配列番号191)、KASGYTFTRYTMHを含むCDRH1配列(配列番号192)、INPSRGYTNYNQKFKDを含むCDRH2配列(配列番号193)、及びYYDDHYCLDYを含むCDRH3配列(配列番号194)を含む。
【0121】
以下の配列:
【0122】
【化12】
は、CD3に結合する能力を保持しているOKT3由来のscFvである。この配列はCD3結合ドメインとして使用してもよい。
【0123】
20G6-F3抗体は、QSLVHNNGNTYを含むCDRL1配列(配列番号196)、KVSを含むCDRL2配列、GQGTQYPFTを含むCDRL3配列(配列番号197)、GFTFTKAWを含むCDRH1配列(配列番号198)、IKDKSNSYATを含むCDRH2配列(配列番号199)、及びRGVYYALSPFDYを含むCDRH3配列(配列番号200)を含む。
【0124】
4B4-D7抗体は、QSLVHDNGNTYを含むCDRL1配列(配列番号201)、KVSを含むCDRL2配列、GQGTQYPFTを含むCDRL3配列(配列番号197)、GFTFSNAWを含むCDRH1配列(配列番号202)、IKARSNNYATを含むCDRH2配列(配列番号203)、及びRGTYYASKPFDYを含むCDRH3配列(配列番号204)を含む。
【0125】
4E7-C9抗体は、QSLEHNNGNTYを含むCDRL1配列(配列番号205)、KVSを含むCDRL2配列、GQGTQYPFTを含むCDRL3配列(配列番号197)、GFTFSNAWを含むCDRH1配列(配列番号202)、IKDKSNNYATを含むCDRH2配列(配列番号206)、及びRYVHYGIGYAMDAを含むCDRH3配列(配列番号207)を含む。
【0126】
18F5-H10抗体は、QSLVHTNGNTYを含むCDRL1配列(配列番号208)、KVSを含むCDRL2配列、GQGTHYPFTを含むCDRL3配列(配列番号209)、GFTFTNAWを含むCDRH1配列(配列番号210)、KDKSNNYATを含むCDRH2配列(配列番号211)、及びRYVHYRFAYALDAを含むCDRH3配列(配列番号212)を含む。
【0127】
抗CD3抗体、結合ドメイン、及びCDRの追加の例は、国際公開第2016/116626号に見い出すことができる。TR66を使用してもよい。
【0128】
CD28はヒトの末梢T細胞の80%上に存在する表面糖タンパク質であり、休止T細胞と活性化T細胞の両方上に存在する。CD28はB7-1(CD80)及びB7-2(CD86)に結合し、既知の共刺激分子のなかで最も強力である(Juneら、Immunol.Today 15:321頁(1994);Linsleyら、Ann.Rev.Immunol.11:191頁(1993))。
【0129】
特定の実施形態では、CD28結合ドメインは、CD80、CD86、又は抗体TGN1412、9D7、9.3、KOLT-2、15E8、248.23.2、及びEX5.3D10から導き出すことができる。
【0130】
特定の実施形態では、TGN1412由来の結合ドメインは、HASQNIYVWLNを含むCDRL1配列(配列番号213)、KASNLHTを含むCDRL2配列(配列番号214)、QQGQTYPYTを含むCDRL3配列(配列番号215)、SYYIHを含むCDRH1配列(配列番号216)、CIYPGNVNTNYNEKFKDを含むCDRH2配列(配列番号217)、及びSHYGLDWNFDVを含むCDRH3配列(配列番号218)を含む。
【0131】
特定の実施形態では、CD80/CD86結合ドメインは、米国特許第7,531,175号に記載される1つ以上のモノクローナル抗体に由来する。特定の実施形態では、CD80/CD86結合ドメインは、SVSSSISSSNLHを含むCDRL1配列(配列番号219)、GTSNLASを含むCDRL2配列(配列番号220)、QQWSSYPLTを含むCDRL3配列(配列番号221)、DYYMHを含むCDRH1配列(配列番号222)、WIDPENGNTLYDPKFQGを含むCDRH2配列(配列番号223)、及びEGLFFAYを含むCDRH3配列(配列番号224)を含む。
【0132】
活性化T細胞は4-1BB(CD137)を発現する。4-1BBは、CD137又はTNFSF9(UniProt ID番号Q07011)とも呼ばれるが、T細胞共刺激受容体である。
【0133】
4-1BB結合ドメインは、米国特許第9,382,328B2号に記載されるモノクローナル抗体から導き出すことができる。
【0134】
特定の実施形態では、4-1BB結合ドメインは、RASQSVSを含むCDRL1配列(配列番号225)、ASNRATを含むCDRL2配列(配列番号226)、QRSNWPPALTを含むCDRL3配列(配列番号227)、YYWSを含むCDRH1配列(配列番号228)、INHを含むCDRH2配列、及びYGPGNYDWYFDLを含むCDRH3配列(配列番号229)を含む。
【0135】
特定の実施形態では、4-1BB結合ドメインは、SGDNIGDQYAHを含むCDRL1配列(配列番号230)、QDKNRPSを含むCDRL2配列(配列番号231)、ATYTGFGSLAVを含むCDRL3配列(配列番号232)、GYSFSTYWISを含むCDRH1配列(配列番号233)、KIYPGDSYTNYSPSを含むCDRH2配列(配列番号234)、及びGYGIFDYを含むCDRH3配列(配列番号235)を含む。
【0136】
細胞傷害性T細胞は腫瘍細胞を破壊する。これらの細胞は、その表面にCD8糖タンパク質を発現するのでCD8+T細胞としても知られる。これらの細胞は、MHCクラスIに関連する抗原に結合することによりその標的を認識し、MHCクラスIは身体のほぼすべての細胞の表面に存在する。
【0137】
特定の実施形態では、CD8結合ドメインはOKT8抗体から導き出すことができる。OKT8抗体は、RTSRSISQYLAを含むCDRL1配列(配列番号236)、SGSTLQSを含むCDRL2配列(配列番号237)、QQHNENPLTを含むCDRL3配列(配列番号238)、GFNIKDを含むCDRH1配列(配列番号239)、RIDPANDNTを含むCDRH2配列(配列番号240)、及びGYGYYVFDHを含むCDRH3配列(配列番号241)を含む。
【0138】
特定の実施形態では、免疫細胞は、PD-1、LAG3、TIM-3、BTLA、CTLA-4、VISTA及び/又はCD200などの抑制性エピトープの活性を抑制することにより活性化することができる。
【0139】
PD-1は、CD279(UniProt ID番号Q15116)とも呼ばれるが、T細胞免疫応答を制御することに関与する阻害性細胞表面受容体である。特定の実施形態では、PD-1結合ドメインは、米国特許出願公開第2011/0271358号に記載されるモノクローナル抗体から導き出すことができる。特定の実施形態では、PD-1結合ドメインは、RASQSVSTSGYSYMHを含むCDRL1配列(配列番号242)、FGSNLESを含むCDRL2配列(配列番号243)、QHSWEIPYTを含むCDRL3配列(配列番号244)、SSWIHを含むCDRH1配列(配列番号245)、YIYPSTGFTEYNQKFKDを含むCDRH2配列(配列番号246)、及びWRDSSGYHAMDYを含むCDRH3配列(配列番号247)を含む。
【0140】
特定の実施形態では、PD-1結合ドメインは、米国特許出願公開第20090217401号に記載されるモノクローナル抗体から導き出すことができる。特定の実施形態では、PD-1結合ドメインは、RASQSVSSYLAを含むCDRL1配列(配列番号84)、DASNRATを含むCDRL2配列(配列番号85)、QQSSNWPRTを含むCDRL3配列(配列番号248)、NSGMHを含むCDRH1配列(配列番号249)、VLWYDGSKRYYADSVKGを含むCDRH2配列(配列番号250)、及びNDDYを含むCDRH3配列(配列番号251)を含む。
【0141】
LAG3は、CD223(UniProt ID番号P18627)とも呼ばれるが、HLAクラスII抗原に結合し、リンパ球の活性化に関与している。特定の実施形態では、LAG3結合ドメインは、国際公開第2014/008218号に記載されるモノクローナル抗体から導き出すことができる。
【0142】
TIM-3は、HAVcr-2又はTIMD-3(UniProt ID番号Q9TDQ0)としても知られるが、先天性及び適応免疫応答で抑制性の役割を果たす細胞表面受容体である。特定の実施形態では、TIM-3結合ドメインは、米国特許出願公開第2015/0218274号に記載されるモノクローナル抗体から導き出すことができる。
【0143】
BTLAは、CD272(UniProt ID番号Q7Z6A9)としても知られるが、リンパ球の免疫応答を阻害する抑制性受容体である。特定の実施形態では、BTLA結合ドメイン(例えば、scFv)は、米国特許出願公開第2012/0288500号に記載される1つ以上のモノクローナル抗体から導き出すことができる。
【0144】
CTLA-4は、CD152(UniProt ID番号P16410)としても知られるが、T細胞応答の主要な負の制御因子である抑制性受容体である。特定の実施形態では、CTLA-4結合ドメインは、米国特許第6,984,720号に記載されるモノクローナル抗体から導き出すことができる。
【0145】
CD200(ox-2膜糖タンパク質としても知られる、UniProt ID番号P41217)は、抑制シグナルを免疫細胞に送達することができるタンパク質である。特定の実施形態では、CD200結合ドメインは、米国特許出願公開第2013/0189258号に記載される1つ以上のモノクローナル抗体から導き出すことができる。
【0146】
特定の実施形態では、ナチュラルキラー細胞(NK細胞、K細胞、及びキラー細胞としても知られる)は、二重特異性抗体により局所的活性化のための標的にされる。NK細胞は、細胞膜を破壊し他の免疫細胞を動員するサイトカインを分泌することができる顆粒を放出することによりアポトーシス又は細胞溶解を誘導することができる。
【0147】
NK細胞の表面で発現される活性化タンパク質の例は、NKG2D、CD8、CD16、KIR2DL4、KIR2DS1、KIR2DS2、KIR3DS1、NKG2C、NKG2E、NKG2D及び天然の細胞傷害性受容体(NCR)ファミリーのいくつかのメンバーを含む。リガンド結合するとNK細胞を活性化するNCRの例は、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80、及びDNAM-1を含む。
【0148】
NK細胞受容体に結合しNK細胞の活性化を誘導する及び/又は増強する市販の抗体の例は、5C6及び1D11、これらはNKG2Dに結合して活性化する(BioLegend(商標)San Diego、CAから入手可能);mAb33、これはKIR2DL4に結合して活性化する(BioLegend(商標)から入手可能);P44-8、これはNKp44に結合して活性化する(BioLegend(商標)から入手可能);SK1、これはCD8に結合して活性化する;及びCD16に結合して活性化する3G8を含む。追加のNK細胞活性化抗体は、国際公開第2005/0003172号及び米国特許第9,415,104号に記載されている。
【0149】
CDR配列及びセグメントとの関連で、天然に存在する抗体構造単位はテトラマーを含む。それぞれのテトラマーは、2対のポリペプチド鎖を含み、それぞれの対は1本の軽鎖及び1本の重鎖を有する。それぞれの鎖のアミノ末端部分は、抗原認識及びエピトープ結合を担当する可変領域を含む。可変領域は、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)が、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる3つの高頻度可変領域により結合されている同じ一般的構造を示す。それぞれの対の2本の鎖由来のCDRはフレームワーク領域により整列されており、そのせいで特定のエピトープへの結合が可能になる。N末端からC末端へ、軽鎖と重鎖可変領域の両方がドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。それぞれのドメインへのアミノ酸の割り当ては典型的には、免疫学的に関心のあるタンパク質のKabat配列(National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1987及び1991))、又はChothia&Lesk,J.Mol.Biol.、196:901~917頁(1987);Chothiaら、Nature、342:878~883頁(1989)の定義に従っている。
【0150】
(5)多特異性分子フォーマット。示されるように、多特異性免疫細胞結合分子は、治療部位での抗原(例えば、腫瘍部位でのがん抗原)と免疫細胞活性化エピトープの両方に結合し、免疫細胞を目的の細胞まで運びそれを破壊する目標を持つ。二重特異性抗体は、目的の細胞上の1つの抗原及び1つの免疫細胞活性化エピトープに結合する。三重特異性抗体は、目的の細胞上の2つの抗原及び1つの免疫細胞活性化エピトープ又は目的の細胞上の1つの抗原及び2つの免疫細胞活性化エピトープ(例えば、一次活性化シグナル(例えば、CD3)及び共刺激活性化シグナル(例えば、CD28又は4-1BB))に結合する。四重特異性抗体は、目的の細胞上の抗原と免疫細胞活性化エピトープの間の複数の組合せに分けられる、4つの異なる結合パートナーに結合することができる。特定の実施形態では、免疫細胞はT細胞又はナチュラルキラー(NK)細胞である。
【0151】
例示的二重特異性抗体フォーマットは、例えば、国際公開第2009/080251号、国際公開第2009/080252号、国際公開第2009/080253号、国際公開第2009/080254号、国際公開第2010/112193号、国際公開第2010/115589号、国際公開第2010/136172号、国際公開第2010/145792号、及び国際公開第2010/145793号に記載されている。使用できる追加の二重特異性フォーマットの概説は、Brinkmann&Kontermann、mAbs、2017年.9:2、182~212頁、DOI:10.1080/19420862.2016.1268307を参照されたい。Yuら、(Journal of Hematology&Oncology(2017)10、155頁)は、Fcフォーマット(クアドローマ、ノブイントゥホール(Knobs-into-holes)、ScFv-IgG、(IgG)2、ナノボディ、及びScFv-Fc)で提供されるフォーマット及び非Fcフォーマット(F(ab’)2、ScFv-HAS-scFv、TandscFv、ダイアボディ、DART、ImmTAC、ドックアンドロック(dock and locks)、及びTandAb)で提供されるフォーマットなどの、固形腫瘍の治療において特に有用な追加のフォーマットを記載している。
【0152】
上記のセクション(3)又は(4)では提供されない範囲では、追加の異なる結合ドメインは、抗体、TCR、フィブロネクチン、アフィボディ、天然リガンド(例えば、CD28に対するCD80及びCD86)、等などの複数の供給源から導き出すことができる。特定の実施形態では、結合ドメインは、全抗体又は抗体の結合断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fc、及び一本鎖Fv断片(scFv)又はがん抗原若しくは免疫細胞活性化エピトープ(例えば、T細胞受容体)に特異的に結合する免疫グロブリンの任意の生物学的に効果的な断片から導き出すことができる。抗体又は抗原結合断片は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、合成抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ミニ抗体、及び線状抗体のすべて又は一部を含む。
【0153】
ヒト起源又はヒト化抗体由来の結合ドメインを含む多特異性抗体は、ヒトにおいて免疫原性を低下させており、非ヒト抗体と比べて、非免疫原性エピトープの数が少ない。結合ドメインは一般には、ヒト対象において低減した抗原性を有するように選択される。結合ドメインは特に、選択されたがん抗原又は免疫細胞活性化エピトープに特異的に結合するいかなるペプチドでも含むことができる。結合ドメインの供給源は、種々の種由来の抗体可変領域(抗体、sFv、scFv、Fab、scFvベースのグラバボディ、又は可溶性VHドメイン若しくはドメイン抗体の形態が可能である)を含む。これらの抗体は、重鎖可変領域のみを使用して抗原結合領域を形成することができる、すなわち、これらの機能的抗体は重鎖のみのホモダイマーである(「重鎖抗体」と呼ばれる)(Jespersら、Nat.Biotechnol.22:1161頁、2004年;Cortez-Retamozoら、Cancer Res.64:2853頁、2004年;Baralら、Nature Med.12:580頁、2006年;及びBarthelemyら、J.Biol.Chem.283:3639頁、2008年)。
【0154】
部分的に又は完全に合成抗体のファージディスプレイライブラリーは入手可能であり、選択されたエピトープに結合することができる抗体又はその断片を求めてスクリーニングすることができる。例えば、結合ドメインは、目的の標的に特異的に結合するFab断片を求めてFabファージライブラリーをスクリーニングすることにより同定しうる(Hoetら、Nat.Biotechnol.23:344頁、2005年参照)。ヒト抗体のファージディスプレイライブラリーも利用可能である。さらに、便利な系(例えば、マウス、HuMAbマウス(登録商標)、TCマウス(商標)、KMマウス(登録商標)、ラマ、ニワトリ、ラット、ハムスター、ウサギ、等)において免疫原として目的の標的を使用するハイブリドーマ開発のための従来の戦略を使用すれば、結合ドメインを開発することができる。特定の実施形態では、結合ドメインは、標的化がん細胞及び/又はT細胞により発現される選択されたエピトープに特異的に結合し、非特異的成分又は無関係な標的とは交差反応しない。同定された後は、結合ドメイン内のCDRをコードするアミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列を単離する及び/又は決定することができる。
【0155】
結合ドメインの代替の供給源は、ランダムペプチドライブラリーをコードする配列又は代替の非抗体スキャフォールドのループ領域の操作された多様なアミノ酸をコードする配列、例えば、scTCR(例えば、Lakeら、Int.Immunol.11:745頁、1999年;Maynardら、J.Immunol.Methods 306:51頁、2005年;米国特許第8,361,794号参照)、mAb2又はFcab(商標)(例えば、国際公開第2007/098934号;国際公開第2006/072620号参照)、アフィボディ、アビマー(avimer)、フィノーマー(fynomer)、細胞傷害性T-リンパ球関連タンパク質-4(Weidleら、Cancer Gen.Proteo.10:155頁、2013年)、及び同類の物(Nordら、Protein Eng.8:601頁、1995年;Nordら、Nat.Biotechnol.15:772頁、1997年;Nordら、Euro.J.Biochem.268:4269頁、2001年;Binzら、Nat.Biotechnol.23:1257頁、2005年;Boersma and Pluckthun、Curr.Opin.Biotechnol.22:849頁、2011年)を含む。
【0156】
特定の実施形態では、抗体断片は多特異性抗体において1つ以上の結合ドメインとして使用される。「抗体断片」は、エピトープに結合する能力を保持する完全な又は完全長抗体の一部を意味する。抗体断片の例は、Fv、scFv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;及び線状抗体を含む。
【0157】
一本鎖可変断片(scFv)は、短いリンカーペプチドで接続された免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域の融合タンパク質である。Fv断片は、抗体の単一アームのVL及びVHドメインを含む。Fv断片の2つのドメイン、VLとVHは、別々の遺伝子でコードされているが、例えば、2つのドメインを、VLとVH領域が対合して一価分子を形成する単一タンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv))として作製することを可能にする合成リンカーによる、組換え方法を使用して結合させることができる。Fv及びscFvに関する追加の情報は、例えば、Birdら、Science 242(1988)423~426頁;Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(1988)5879~5883頁;Plueckthun、in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻、Rosenburg and Moore(編)、Springer-Verlag、New York)、(1994)269~315頁;国際公開第1993/16185号;米国特許第5,571,894号;及び米国特許第5,587,458号を参照されたい。
【0158】
Fab断片は、VL、VH、CL及びCH1ドメインを含む一価抗体断片である。F(ab’)2断片は、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価断片である。増加したインビボ半減期を有するFab及びF(ab’)2断片についての考察は、米国特許第5,869,046号を参照されたい。ダイアボディは、二価になり得る2つのエピトープ結合部位を含む。例えば、欧州特許第0404097号;国際公開第1993/01161号;及びHolligerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90(1993)6444~6448頁を参照されたい。デュアルアフィニティリターゲティング抗体(DART(商標);ダイアボディフォーマットを基盤とするがさらなる安定化のためのC末端ジスルフィド架橋を特色とする(Mooreら、Blood 117、4542~51頁(2011)))も使用することができる。抗体断片は、単離されたCDRも含むことができる。抗体断片の概説は、Hudsonら、Nat.Med.9(2003)129~134頁を参照されたい。
【0159】
特定の実施形態では、多特異性抗体は、結合ドメインとしてエピトープに対する天然の受容体又はリガンドも含むことができる。例えば、結合のための標的がPD-L1を含む場合、結合ドメインはPD-1(例えば、PD-1/抗CD3融合体を含む)を含むことができる。結合のための受容体融合体の一例はEnbrel(登録商標)(Amgen)である。天然の受容体又はリガンドは、結合を増強するために改変することもできる。例えば、ベラタセプトはアバタセプトの改変版である。特定の実施形態では、多特異性抗体は、食作用を誘導する天然の受容体又はリガンドを含むことができる。カルレティキュリン(UniProt ID番号P27797)は、健康な細胞の小胞体に局在しているタンパク質であるが、瀕死の細胞では、このタンパク質は細胞表面に移動し、マクロファージなどの免疫細胞による食作用を誘導する。特定の実施形態では、結合ドメインはカルレティキュリン又は食作用を誘導することができるカルレティキュリンの一部を含むことができる。
【0160】
特定の実施形態では、多特異性抗体は、軽鎖のC末端に結合している一本鎖抗体を含むことができる(例えば、Oncoimmunology.2017年;6(3):e1267891参照)。このフォーマットは、Fc領域の存在はタンパク質半減期を保存する一助となれるので、有用になれる。Fc領域の存在も、Fcがいくつかの受容体と相互作用して免疫応答に寄与することができるので、有用になれる。抗体-scFv融合体も有用になれる。なぜならば、抗体部分はそのエピトープに二量体様式で結合し、これが結合力を増強し、scFv部分はそのエピトープに単量体様式で結合して、これが、例えば、T細胞エピトープに結合して標的の存在下で多量体化を可能にするだけでも有用になれるからである。これらの実施形態は、「三重特異性」が可能である。
【0161】
示されるように、多特異性抗体の結合ドメインはリンカーを通じて結合させうる。リンカーは、多特異性の結合ドメイン間の立体構造運動に柔軟性及び余地を与えることができるアミノ酸配列である。いかなる適切なリンカーでも使用しうる。リンカーの例は、Chenら、Adv Drug Deliv Rev.2013年10月15日;65(10):1357~1369頁に見い出せる。リンカーは、標的への所望の機能ドメイン提示に応じて柔軟である、強剛性、又は半剛性が可能である。一般的に使用される柔軟なリンカーは、GGSGGGSGGSG(配列番号252)、GGSGGGSGSG(配列番号63)、及びGGSGGGSG(配列番号65)などのGly-Serリンカーを含む。追加の例は、GGGGSGGGGS(配列番号90);GGGSGGGS(配列番号128);及びGGSGGS(配列番号129)を含む。1つ以上の抗体ヒンジ領域及び/又はCH3単独若しくはCH2CH3配列などの免疫グロブリン重鎖定常領域を含むリンカーも使用できる。
【0162】
一部の状況では、柔軟なリンカーは、特定の使用に必要な距離を維持することも結合ドメインを配置することもできない場合がある。こうした例では、強剛性又は半剛性のリンカーが有用である場合がある。強剛性又は半剛性のリンカーの例は、プロリンリッチなリンカーを含む。特定の実施形態では、プロリンリッチなリンカーは、偶然のみに基づいて予想されるよりも多くのプロリン残基を有するペプチド配列である。特定の実施形態では、プロリンリッチなリンカーは、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも36%、少なくとも39%、少なくとも40%、少なくとも48%、少なくとも50%、又は少なくとも51%のプロリン残基を有するリンカーである。プロリンリッチなリンカーの特定の例は、プロリンリッチな唾液タンパク質(PRP)の断片を含む。
【0163】
二重特異性抗体の特定の例は、Yuら、(Journal of Hematology&Oncology(2017)10、155頁)に記載されており、カツマキソマブ(Catumaxomab)(EpCAM/CD3;トリオマブ(Triomab)フォーマットで及び臨床試験NCT00189345で評価されている);MT110(EpCAM/CD3;BiTE(Amgen)フォーマットで及び臨床試験NCT00635596で評価されている);エルツマキソマブ(Ertumaxomab)(HER2/CD3;トリオマブフォーマットで及び臨床試験NCT00452140で評価されている);MDX-447(EGFR/CD64;2(Fab’)フォーマットで及び臨床試験NCT00005813で評価されている);MM-141(HER3/IGF-IR;scFv-IgGフォーマットで及び臨床試験NCT01733004で評価されている);AMG211(CEA/CD3;BiTEフォーマットで及び臨床試験NCT02760199で評価されている);RO6958688(CEA/CD3;IgGベースのフォーマットで及び臨床試験NCT02324257で評価されている);RO6895882(CEA/IL2;ScFv-IgGフォーマットで及び臨床試験NCT02004106で評価されている);TF2(CEA/HSG;ドック及びロックフォーマットで及び臨床試験NCT00860860で評価されている);抗CEAxanti-DTPA(CEA/di-DTPA-131;scFv-IgGフォーマットで及び臨床試験NCT00467506で評価されている);BAY2010112(PSMA/CD3;BiTEで及び臨床試験NCT01723475で評価されている);及びMOR209/ES414(PSMA/CD3;ScFv-Fc-scFvフォーマットで及び臨床試験NCT02262910で評価されている)を含む。AMG701(BCMA-ターゲティング)及びソリトマブ(Solitomab)も使用できる。EpCam結合二重特異性分子に関するさらなる情報は、Brischweinら、Mol.Immunol.2006年;43:1129~1143頁及びSchlerethら、Cancer Research、2005年;65 2882~2889頁を参照されたい。Hornら、Oncotarget、2017年8月29日 8(35)に記載されるPD-L1/CD3二重特異性も使用できる。二重特異性抗体の追加の特定の例は、国際公開第2014/167022号;米国特許出願公開第2016/0208001号、米国特許出願公開第2014/0302037号、及び米国特許出願公開第2014/0308285号に記載されている。1つの最後の例はブリナツモマブ(Blinatumomab)を含む。二重特異性T細胞エンゲージャーに関するさらなる情報はEllerman、Methods、154(2019)102~117頁を参照されたい。
【0164】
(6)TGFβインヒビター。TGFβの3つの高度に相同なアイソフォーム:TGFβ1、TGFβ2及びTGFβ3がヒトには存在する。数多くの抑制性TGFβペプチド及び抗体が利用可能である。特定の実施形態では、単球/マクロファージを再プログラムすれば、抑制性TGFβペプチド又は抗体を発現させることができる。TGFβインヒビターの例は、トラベデルセン(AP12009;臨床試験NCT00431561、NCT00844064、及びNCT00761280において評価されたアンチセンスオリゴ);ジシテルチド(Disitertide)(臨床試験NCT00574613及びNCT00781053で評価されたペプチド);レルデリムマブ(Lerdelimumab)(ヒト化抗体):メテリムマブ(Metelimumab)(臨床試験NCT00043706で評価されたヒト化抗体);フレソリムマブ(Fresolimumab)(臨床試験NCT00464321、NCT01284322、及びNCT01291784で評価されたヒト化抗体);LY2382770(臨床試験NCT01113801で評価されたヒト化抗体);SIX-100(臨床試験NCT01371305で評価された抗体);アボタミン(Avotermin)(臨床試験NCT004322111及びNCT00656227で評価された組換えタンパク質);及びIMC-TR1(臨床試験NCT01646203で評価されたヒト化抗体)を含む。
【0165】
Raviら、(Nature Communications 9、741頁(2018))は、標的細胞微小環境において自己分泌/パラ分泌TGFβを同時に無効にするTGFβ受容体II外部ドメイン配列に融合しているCTLA-4又はPD-L1(a-CTLA4-TGFβRIIecd及びa-PDL1-TGFβRIIecd)を標的にする抗体を含む二機能性抗体-リガンドトラップ(Y-トラップ)を記載している。Raviらの
図2Bは、TGFβRII細胞外ドメインのリガンド結合配列を含むa-CTLA4-TGFβRIIの重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を提供している。Cuendeら、Science Translational Medicine、2015年4月、7(284)は、TGFβをインビボで阻害する抗体の産生をさらに記載しており;例えば、抗GARPモノクローナル抗体MHG-8及びLHG-10は活性なTGF-β1の産生を遮断する。
【0166】
追加のTGFβインヒビターの例は、トラニラスト、ピルフェニドン、Lefty-1(1105I受託番号:NM_010094(マウス)、及びNM_020997(ヒト))、SB-431542、SB-202190、及びSB-505124(Lindemannら、Mol.Cancer、2003年、2:20頁;GlaxoSmithKline)、NPC30345、SD093、SD908、SD208(Scios)、SM16(Biogen Idec)、LY2109761、LY364947、LY580276、LY2157299(Lilly Research Laboratories)、A-83-01(国際公開第2009/146408号)、ALK5インヒビターII(2-[3-[6-メチルピリジン-2-イル]-1H-ピラゾール-4イル]-1,5-ナフチリジン)、TGFβRIキナーゼインヒビターVIII(6-[2-t-ブチル-5-[6-メチル-ピリジン-2-イル]-1H-イミダゾール-4-イル]-キノキサリン)及びその誘導体を含む。
【0167】
(7)ヌクレオチド。本開示内では、活性化状態を制御する遺伝子並びに多特異性分子及び任意選択的にTGFβインヒビターの発現をもたらす遺伝子をコードするヌクレオチドが、単球及び/又はマクロファージなどの免疫細胞に送達される。「遺伝子」とは、コードされた分子をコードするヌクレオチド配列のことである。この定義は、種々の配列多形、突然変異、及び/又は配列バリアントを含み、そのような変更はコードされた分子の機能に影響を及ぼさない。用語「遺伝子」は、コード配列だけでなく、プロモーター、エンハンサー、及び終結領域などの調節領域も含んでいてよい。この用語は、mRNA転写物からスプライスされたすべてのイントロン及び他のDNA配列を、選択的スプライシング部位から生じる変異体と共にさらに含むことができる。コードされた分子をコードするヌクレオチド配列は、コードされた分子の発現を指示するRNAが可能である。これらのヌクレオチド配列は、特定の実施形態で、タンパク質に翻訳されるRNA配列を含む。特定の実施形態において、当業者であれば、チミン(T)塩基を含むDNA配列は、T塩基がウラシル(U)塩基で置き換えられることを除いて、同じ配列を有するmRNA配列と等価であることが可能であることを認識できる。ヌクレオチド配列は、完全長ヌクレオチド配列並びに完全長タンパク質に由来する非完全長配列の両方を含む。配列は、特定の免疫細胞においてコドン選択を提供するように導入しうる天然の配列(単数又は複数)の縮重コドンも含むことができる。本明細書に記載される分子をコードする遺伝子配列は、公開されているデータベース及び出版物で入手可能である。「コードしている」とは、活性化制御因子、多特異性抗体、及び/又はTGFβインヒビターの合成のための鋳型の役割を果たすプラスミド、遺伝子、cDNA、mRNAなどのヌクレオチドの配列の特性のことである。
【0168】
特定の実施形態において、ヌクレオチドは合成mRNAを含む。特定の実施形態において、合成mRNAは、5’-キャッピングを使用して細胞内安定性を増やすように操作される。複数の異なる5’-キャップ構造を使用すれば、合成mRNA分子の5’-キャップを作成することができる。例えば、アンチリバースキャップアナログ(ARCA)キャップは5’-5’-三リン酸グアニン-グアニン結合を含有し、そこでは1つのグアニンがN7メチル基並びに3’-O-メチル基を含有する。合成mRNA分子は、5’-キャップ構造を作成する原因となる酵素を使用して転写後にキャップしてもよい。例えば、組換えワクシニアウイルスキャッピング酵素及び組換え2’-O-メチルトランスフェラーゼ酵素は、mRNAの最も5’側の末端ヌクレオチドとグアニンヌクレオチドの間に標準的な5’-5’-三リン酸結合を生み出すことができ、そこにおいてグアニンはN7メチル化を含有し最後の5’-ヌクレオチドはCap1構造を生み出す2’-O-メチルを含有する。これにより、さらに高い翻訳能力及び細胞安定性を有するキャップが生じ、並びに細胞炎症性サイトカインの活性化が低下する。
【0169】
特定の実施形態において、免疫原性を減し、mRNAの安定性を促進し、及び/又はmRNAの翻訳を促進するための合成mRNAの他の改変は、5’-及び3’-末端非翻訳領域(UTR)、5’UTRにおけるコザック翻訳開始配列、改変されたリボヌクレオシド、及び/又はポリAテイルを含むことができる。特定の実施形態において、改変されたリボヌクレオシドは、プソイドウリジン(ψ)、5-メチルシチジン(5mC)、N6-メチルアデノシン(m6A)、2-チオウリジン(2sU)、5-メトキシウリジン(5moU)、及びN-1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)を含むことができる。特定の実施形態において、UTRはアルファ-及び/又はベータグロビンUTRを含むことができる。
【0170】
合成mRNAを作成する特定の実施形態は、対応するDNAプラスミドからPCR増幅により5’T100~250オーバーハングを有する所望のタンパク質のコードDNA配列を含有するDNA鋳型を作成することを含む。次に、DNA鋳型を使用すれば、インビトロ転写反応によりmRNAを作成することができる。インビトロ転写中、5’キャップ構造(例えば、ARCA)、改変されたリボヌクレオシド、及び/又は3’ポリ(A)テイルを組み込むことができる。例えば、MEGAscript T7転写キット(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)、Riboprobe(商標) System T7(Promega、Madison、WI)、AmpliScribe(商標) T7高収率転写キット(Epicentre、Madison、WI)、及びHiScribe(商標) T7インビトロ転写キット(New England Biolabs、Ipswich、MA)からを含むいくつかのインビトロ転写システムが市販されている。特定の実施形態では、合成mRNAは、ヌクレオチドを合成する企業(例えば、TriLink Biotechnologies、San Diego、CA)により合成されることができる。
【0171】
合成mRNA又は他のヌクレオチドは環状にしてもよい。そのようなヌクレオチドは環状化する又はコンカテマー化して、ポリA結合タンパク質と5’-末端結合タンパク質の間の相互作用を支援する翻訳能力のある分子を作成してもよい。環状化又はコンカテマー化の機構は、少なくとも3つの異なる経路:1)化学的、2)酵素的、又は3)リボザイム触媒された、を通じて起こりうる。新たに形成された5’-/3’-結合は、分子内でも分子間でもよい。
【0172】
第1の経路において、ヌクレオチドの5’-末端及び3’-末端は、互いに接近すると分子の5’-末端と3’-末端の間に新たな共有結合を形成する化学反応性基を含有してよい。有機溶媒中でヌクレオチド分子の3’-末端の3’-アミノ末端ヌクレオチドが5’-NHSエステル部分に求核攻撃を受け新たな5’-/3’-アミド結合を形成するように、5’-末端はNHSエステル反応性基を含有してよく、3’-末端は3’-アミノ末端ヌクレオチドを含有してよい。
【0173】
第2の経路において、T4 RNAリガーゼを使用して5’-リン酸化ヌクレオチド分子をヌクレオチドの3’-ヒドロキシル基に酵素的に連結させて新たなホスホジエステル結合を形成してもよい。例となる反応では、1μgのヌクレオチド分子を、1~10ユニットのT4 RNAリガーゼ(New England Biolabs、Ipswich、MA)と製造業者のプロトコールに従って37℃で1時間インキュベートすることができる。ライゲーション反応は、並置した5’-と3’-領域の両方と塩基対合して酵素的ライゲーション反応を支援することができるスプリットオリゴヌクレオチドの存在下で起こりうる。
【0174】
第3の経路において、cDNA鋳型の5’-又は3’-末端は、インビトロ転写中に、得られるヌクレオチド分子が、ヌクレオチド分子の5’-末端をヌクレオチド分子の3’-末端にライゲートすることができる活性なリボザイム配列を含有できるように、リガーゼリボザイム配列をコードする。リガーゼリボザイムは、グループIイントロン、デルタ肝炎ウイルス、ヘアピンリボザイム由来でもよく、又はSELEX(指数関数的濃縮によるリガンドの体系的な進化)により選択してもよい。リボザイムリガーゼ反応は0~37℃の温度で1~24時間かかる可能性がある。
【0175】
特定の実施形態では、ヌクレオチドは、コードされた分子を発現するために含むことができるプラスミド、cDNA、又はmRNA、例えば、配列(例えば、遺伝子)を含む。適切なプラスミドは、遺伝子を単球/マクロファージに移動させるのに使用することができる標準的プラスミドベクター及びミニサークルプラスミドを含む。ヌクレオチド(例えば、ミニサークルプラスミド)は、改変された細胞における一過性発現を促進するための任意の追加的配列情報をさらに含むことができる。例えば、ヌクレオチドは、ジェネラルプロモーター、組織特異的プロモーター、細胞特異的プロモーター、及び/又は細胞質に特異的なプロモーターなどのプロモーターを含むことができる。示されるように、プロモーター及びプラスミド(例えば、ミニサークルプラスミド)は、当技術分野において一般に周知であり、従来の技法を使用して調製することができる。
【0176】
本開示の実施形態内で使用できるヌクレオチドに関するさらなる情報は、Hardeeら、Genes(2017)、8、65頁を参照されたい。Hardeeらは、プラスミド、ミニサークル、及びミニベクターを含む非ウイルスDNA遺伝子療法ベクターの方法を概説している。プラスミドベクター及び最小化DNAベクターは、がんに対する遺伝子療法を送達するのに使用されて成功してきた。ミニサークルは、T細胞にB細胞リンパ腫を殺滅させるためにT細胞を操作して二重特異性抗体を送達するのにもっと最近に使用された(Hardeeら、Genes(2017)、8、65頁)。特定の実施形態は、二本鎖DNA(組み込み及び/又は非組み込み)、従来のプラスミド、ミニサークル、及び/又は閉鎖末端線状ceDNAの使用を含む(Liら、PLoS One、2013年8月1日 doi.org/10.1371/journal.pone.0069879参照)。ceDNAは、共有結合閉鎖末端を有する非ウイルスAAV由来ベクターDNAである(Liら、PLoS One、2013年、doi.org/10.1371/journal.pone.0069879)。
【0177】
特定の実施形態では、マクロファージ活性化制御因子をコードするヌクレオチドは、他の活性化制御因子をコードする1つ以上の追加のヌクレオチドと組み合わせて使用される(例えば、IRF、多特異性抗体及び/又はTGFβインヒビターの組合せ)。特定の実施形態では、IRFをコードするヌクレオチドは、他のIRFをコードする1つ以上の追加のヌクレオチドと及びIKKβをコードするヌクレオチドと組み合わせて使用される。特定の実施形態では、IRFをコードするヌクレオチドは、IKKβ、多特異性抗体及び/又はTGFβインヒビターをコードするヌクレオチドと0.5対1、1対1、2対1、3対1、4対1、又は5対1の比で組み合わせて使用される。特定の実施形態において、IRFをコードするヌクレオチドは、IKKβをコードするヌクレオチドと、3対1の比で組み合わせて使用される。
【0178】
特定の実施形態は、遺伝子編集システム内にヌクレオチドを送達することができる。遺伝子編集システムは、細胞の内在性ゲノムの特定の配列を改変する又はこれに影響を及ぼす。ゲノム編集システムは、標的化ゲノム編集、例えば、遺伝子破壊、相同組換えによる遺伝子編集、及びヒトゲノム内の適切な染色体標的部位に治療遺伝子を挿入する遺伝子療法に有用である。
【0179】
特定の実施形態は、遺伝子編集システムとして転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)を利用する。TALENとは、転写活性化因子様エフェクター(TALE)DNA結合ドメインとDNA切断ドメインを含む融合タンパク質のことである。TALENを使用して、DNA中に二本鎖切断(DSB)を誘導することにより遺伝子及びゲノムを編集し、この切断により細胞において修復機構が誘導される。一般的に、2つのTALENは、二量体化してDSBを誘導するためにDNA切断ドメインのための標的DNA部位のそれぞれの側に結合して隣接しなければならない。DSBは、非相同末端結合(NHEJ)により又は外来性二本鎖ドナーDNA断片との相同組換え(HR)により細胞内で修復される。
【0180】
示されるように、TALENは、例えば、内在性ゲノムの標的配列に結合し、標的配列の位置でDNAを切断するように操作されてきた。TALENのTALEは、サンドモナス属(Xanthomonas)細菌により分泌されるDNA結合タンパク質である。TALEのDNA結合ドメインは、高度に保存された33又は34個のアミノ酸リピートを含み、それぞれのリピートの12番目及び13番目位には多様な残基を抱えている。これら2つの位置は、リピート可変二残基(Repeat Variable Diresidue)(RVD)と呼ばれるが、特定のヌクレオチド認識と強い相関関係を示す。したがって、ターゲティング特異性は、RVDにおいてアミノ酸を変え従来にないRVDアミノ酸を組み込むことにより改善することができる。
【0181】
TALEN融合体において使用可能なDNA切断ドメインの例は、野生型及び変異Foklエンドヌクレアーゼである。Foklドメインは、標的配列上の部位のための独特のDNA結合ドメインを有する2つの構築物を必要とする二量体として機能する。Fokl切断ドメインは、2つの逆位半部位を分離する5つ又は6つの塩基対スペーサー配列内で切断する。
【0182】
特定の実施形態は、遺伝子編集システムとしてMegaTALを利用する。MegaTALは、TALEがメガヌクレアーゼのDNA切断ドメインと融合している一本鎖希少切断ヌクレアーゼ構造を有する。メガヌクレアーゼは、ホーミングエンドヌクレアーゼとしても知られるが、同じドメインにおいてDNA認識とヌクレアーゼ機能の両方を有する単一ペプチド鎖である。TALENとは対照的に、megaTALは機能的活性のために単一ペプチド鎖の送達だけを必要とする。
【0183】
特定の実施形態は、遺伝子編集システムとして亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を利用する。ZFNは、特定の位置でDNAに結合して切断するように操作された部位特異的ヌクレアーゼのクラスである。ZFNは、ZFNが種々の異なる細胞においてゲノム内の独特の配列を標的にすることを可能にするDNA配列中の特定の部位にDSBを導入するのに使用される。さらに、二本鎖切断に続いて、相同組換え又は非相同末端結合が起きてDSBを修復し、こうしてゲノム編集を可能にする。
【0184】
ZFNは、亜鉛フィンガーDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合させることにより合成される。DNA結合ドメインは、転写因子である3~6つの亜鉛フィンガータンパク質を含む。DNA切断ドメインは、例えば、Foklエンドヌクレアーゼの触媒ドメインを含む。
【0185】
ガイドRNAは、例えば、CRISPR-Casシステムなどの遺伝子編集システムと一緒に使用することができる。CRISPR-Casシステムは、CRISPRリピート及びCRISPR会合遺伝子(Cas)のセットを含む。
【0186】
一般に、送達されたヌクレオチドの機能的発現をもたらすことができるいかなるシステムも、本開示内で使用することができる。しかし、特定の実施形態において、ウイルスベクターを利用する送達は排除される。
【0187】
(8)ナノ粒子。ある特定の例では、本明細書で開示されるシステム及び方法内で使用されるナノ粒子は、凝縮してヌクレオチドを酵素的分解から防御するように機能することができる。この目的のためにナノ粒子内で使用するのに特に有用な材料は、ポリ(β-アミノエステル)(PbAE)を含む、正電荷脂質及び/又はポリマーを含む。
【0188】
本開示のナノ粒子内で使用できる正電荷ポリマーの例は、ポリアミン;ポリ有機アミン(例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリエチレンイミンセルロース);ポリ(アミドアミン)(PAMAM);ポリアミノ酸(例えば、ポリリジン(PLL)、ポリアルギニン);多糖(例えば、セルロース、デキストリン、DEAEデキストラン、デンプン);スペルミン、スペルミジン、ポリ(ビニルベンジルトリアルキルアンモニウム)、ポリ(4-ビニル-N-アルキル-ピリジニウム)、ポリ(アクリロイル-トリアルキルアンモニウム)、及びTatタンパク質を含む。
【0189】
正電荷脂質の例は、ジパルミトイルホスファチジル酸又はジステアロイリホスファチジル酸とヒドロキシエチレンジアミンのエステルなどの、ホスファチジル酸とアミノアルコールのエステルを含む。正電荷脂質のさらに詳細な例は、3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロール(DC-chol);N,N’-ジメチル-N,N’-ジオクタデシルアンモニウムブロマイド(DDAB);N,N’-ジメチル-N,N’-ジオクタデシルアンモニウムクロライド(DDAC);1,2-ジオレオイルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムクロライド(DORI);1,2-ジオレオイルオキシ-3-[トリメチルアンモニオ]-プロパン(DOTAP);N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA);ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);1,2-ジオクタデシルオキシ-3-[トリメチルアンモニオ]-プロパン(DSTAP);及び、例えば、Martinら、Current Pharmaceutical Design 2005年、11、375~394頁に記載されるカチオン性脂質を含む。
【0190】
脂質とポリマーの混合物も、いかなる濃度でも及びいかなる比でも使用可能である。種々の等級を使用して異なるポリマータイプを異なる比で混合すると、寄与ポリマーのそれぞれから借りてくる特徴をもたらすことができる。種々の末端基化学も採用することができる。
【0191】
本明細書で開示される特定の実施形態は、多孔質網を形成することができるいかなる材料から構築される多孔質ナノ粒子も利用可能である。例示的な材料は、金属、遷移金属及びメタロイドを含む。例示的な金属、遷移金属及びメタロイドは、リチウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム及びシリカを含む。特定の実施形態において、多孔質ナノ粒子はシリカを含む。メソ多孔質シリカの並外れた高表面積(1,000m2/gを上回る)により、リポソームなどの従来のDNA担体を上回るレベルでのヌクレオチド積載が可能になる。
【0192】
粒子は、楕円体の、立方状の、ピラミッド形の、長方形の、円柱状の、ドーナツ形の、及び同類の物を含む、種々の異なる形状で形成することができる。ヌクレオチドは、種々のやり方でナノ粒子の孔に含むことができる。例えば、ヌクレオチドは多孔質ナノ粒子にカプセル化することができる。他の態様において、ヌクレオチドは、多孔質ナノ粒子の表面又は表面のすぐ下付近と会合する(例えば、共有結合的に及び/又は非共有結合的に)ことができる。特定の実施形態において、ヌクレオチドは、例えば、多孔質ナノ粒子の材料に組み込んで多孔質ナノ粒子に取り込むことができる。例えば、ヌクレオチドは、ポリマーナノ粒子のポリマーマトリックス中に取り込むことができる。
【0193】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるナノ粒子はコーティングを含む。コーティングはカプセル化されたヌクレオチドを遮蔽する及び/又はオフターゲット結合を減らす若しくは妨げる働きをすることができる。オフターゲット結合は、ナノ粒子の表面電荷を中性又は負に下げることにより減らされる又は妨げられる。本明細書の別の場所でさらに詳細に開示されているように、コーティングは、中性又は負電荷ポリマー-及び/又はリポソームベースのコーティングを含むことができる。特定の実施形態において、コーティングは、カプセル化されたヌクレオチドが免疫細胞中に放出される前に環境に曝露されることを防ぐのに十分に親水性の及び/又は中性電荷親水性ポリマーの高密度表面コーティングである。特定の実施形態において、コーティングは、ナノ粒子の表面の少なくとも80%又は少なくとも90%を覆う。特定の実施形態において、コーティングは、ポリグルタミン酸(PGA)を含む。特定の実施形態において、PGAは、ターゲティングリガンドをナノ粒子に結合させるリンカーとしての役割を果たす。特定の実施形態において、PGAは、ジマンノースをナノ粒子に結合させるリンカーとしての役割を果たす。特定の実施形態において、コーティングはヒアルロン酸を含む。
【0194】
本開示の実施形態内でコーティングとして使用可能な中性電荷ポリマーの例は、ポリエチレングリコール(PEG);ポリ(プロピレングリコール);及びポリアルキレンオキシド共重合体(PLURONIC(登録商標)、BASF Corp.、Mount Olive、NJ)を含む。
【0195】
中性電荷ポリマーは双性イオンポリマーも含む。双性イオンとは、正電荷と負電荷の両方を有しつつ全体的な電荷的中性という特性のことである。双性イオンポリマーは、細胞及びタンパク質接着に抵抗する細胞膜の領域のような振る舞いができる。
【0196】
双性イオンポリマーは、ペンダント基(すなわち、ポリマー骨格から垂れ下がった基)を双性イオン基と一緒に含む双性イオン構成単位を含む。例示的な双性イオンペンダント基は、カルボキシベタイン基(例えば、-Ra-N+(Rb)(Rc)-Rd-CO2-、Raはポリマー骨格をカルボキシベタイン基のカチオン窒素中心に共有結合的に連結させるリンカー基であり、Rb及びRcは窒素置換基であり、Rdはカチオン窒素中心をカルボキシベタイン基のカルボキシ基に共有結合的に連結させるリンカー基である)。
【0197】
負電荷ポリマーの例は、アルギン酸類;カルボン酸多糖類;カルボキシメチルセルロース;カルボキシメチルセルロースシステイン;カラゲナン(例えば、GELCARIN(登録商標)209、GELCARIN(登録商標)379、FMC Corporation、Philadelphia、PA);コンドロイチン硫酸;グリコサミノグリカン;ムコ多糖類;負電荷多糖類(例えば、デキストラン硫酸);ポリ(アクリル酸);ポリ(D-アスパラギン酸);ポリ(L-アスパラギン酸);ポリ(L-アスパラギン酸)ナトリウム塩;ポリ(D-グルタミン酸);ポリ(L-グルタミン酸);ポリ(L-グルタミン酸)ナトリウム塩;ポリ(メタクリル酸);アルギン酸ナトリウム(例えば、PROTANAL(商標)LF 120M、PROTANAL(商標)LF 200M、PROTANAL(商標)LF 200D、FMC Biopolymer Corp.、Drammen、Norway);カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC);硫酸化多糖類(ヘパリン、アガロペクチン);ペクチン、ゼラチン及びヒアルロン酸を含む。
【0198】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるポリマーは、「星型ポリマー」を含むことができ、これは2つ以上のポリマー枝がコアから伸びている分岐ポリマーのことである。コアは、2つ以上の官能基を有する原子団であり、そこから分岐鎖を重合により伸ばすことができる。特定の実施形態において、本開示のナノ粒子は星型ポリマーを含む。特定の実施形態において、本開示のナノ粒子は星型ポリマー及びコーティングを含む。特定の実施形態において、本開示のナノ粒子は星型ポリマー及びPGAを含むコーティングを含む。特定の実施形態において、本開示のナノ粒子は星型ポリマー及びヒアルロン酸を含むコーティングを含む。
【0199】
特定の実施形態において、分岐鎖は双性イオン又は負電荷ポリマー分岐鎖である。星型ポリマーは、分岐鎖前駆体を、加水分解、紫外線照射、又は熱により双性イオン又は負電荷ポリマーに変換することができる。ポリマーも、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)、光重合、開環重合(ROP)、濃縮、マイケル付加、分岐生成/成長反応、又は他の反応を含む、不飽和単量体の重合に効果的ないかなる重合法によって得てもよい。
【0200】
リポソームは、少なくとも1つの同心脂質二重層を含む微細小嚢である。小嚢形成脂質は、最終複合体の流動性又は強剛性の指定度を達成するように選択される。特定の実施形態では、リポソームは、水性コアを取り囲む脂質組成物を提供する。ある特定の例では、リポソームの構造を使用すれば、ナノ粒子をそのコア内にカプセル化することができる(すなわち、リポソームナノ粒子)。特定の実施形態では、本開示のナノ粒子は、リポソームナノ粒子内のナノ粒子として利用される。脂質ナノ粒子(LNP)は、リポソームに特徴的な連続脂質二重層を欠くリポソーム様構造体である。固形脂質ナノ粒子(SLN)は、室温及び体温で固形であるLNPである。
【0201】
先行するパラグラフに記載されるリポソーム及び類似する構造体は、中性(コレステロール)又は双極性が可能であり、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)、及びスフィンゴミエリン(SM)などのリン脂質並びにジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)を含む他のタイプの双極性脂質を含み、炭化水素鎖長は14~22の範囲で飽和しているか、又は1つ以上の二重C=C結合を有する。単独で、又は他の脂質成分と組み合わせて安定なリポソームを作成することができる脂質の例は、水素化ダイズホスファチジルコリン(HSPC)、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、セファリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)及び、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミド-メチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)などのリン脂質である。リポソーム中に組み込むことができる追加のリンを含有しない脂質は、ステアリルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ミリスチン酸イソプロピル、トリエタノールアミンラウリル硫酸、アルキルアリール硫酸、アセチルパルミテート、グリセロールリシノレート、ヘキサデシルステアレート、両性アクリルポリマー、ポリエチルオキシル化脂肪酸アミド、DDAB、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド(DODAC)、1,2-ジミリストイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DMTAP)、DOTAP、DOTMA、DC-Chol、ホスファチジン酸(PA)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、DOPG、及びリン酸ジセチルを含む。特定の実施形態において、本明細書に開示されるリポソームを作り出すのに使用される脂質は、コレステロール、水素化ダイズホスファチジルコリン(HSPC)及び誘導体化小嚢形成脂質PEG-DSPEを含む。
【0202】
リポソームを形成する方法は、例えば、米国特許第4,229,360号、米国特許第4,224,179号、米国特許第4,241,046号、米国特許第4,737,323号、米国特許第4,078,052号、米国特許第4,235,871号、米国特許第4,501,728号、及び米国特許第4,837,028号に、並びにSzokaら、Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467頁(1980)及びHopeら、Chem.Phys.Lip.40:89頁(1986)に記載されている。ナノ粒子に関するさらなる情報は、Yetisginら、Molecules 2020年、25、2193頁を参照されたい。
【0203】
粒子のサイズは広い範囲にわたって変動することがあり、異なる方法で測定可能である。示されるように、好ましい実施形態では、粒子はサイズが130nm未満のナノ粒子である。しかし、本開示のNPは、500nmに等しい若しくはそれ未満、150nm未満、140nm未満、120nm未満、110nm未満、100nm未満、90nm未満、80nm未満、70nm未満、60nm未満、50nm未満、40nm未満、30nm未満、20nm未満、又は10nm未満の最小寸法を有することも可能である。特定の実施形態において、ナノ粒子はサイズがNP90~130nmである。
【0204】
特定の実施形態において、NPは、5nm~500nm、10nm~100nm、20nm~90nm、30nm~80nm、40nm~70nm、及び40nm~60nmの範囲に及ぶ最小寸法を持つことができる。特定の実施形態において、寸法は、NP又は被覆NPの径である。特定の実施形態において、本開示のナノ粒子の集団は、500nmに等しい若しくはそれ未満、100nm未満、90nm未満、80nm未満、70nm未満、60nm未満、50nm未満、40nm未満、30nm未満、20nm未満、又は10nm未満の平均最小寸法を有することも可能である。特定の実施形態において、本開示の組成物中のNPの集団は、5nm~500nm、10nm~100nm、20nm~90nm、30nm~80nm、40nm~70nm、及び40nm~60nm、70nm~130nm又は75nm~125nmの範囲に及ぶ平均径を持つことができる。ナノ粒子の寸法は、例えば、動的光散乱及び/又は電子顕微鏡などの従来の技法を使用して決定することができる。好ましくはないが、特定の実施形態において、微小粒子も使用できると考えられる。
【0205】
特定の実施形態において、PbAEポリマーは、ヌクレオチド(例えば、インビトロ転写されたmRNA)と、20対1、30対1、40対1、50対1、60対1、70対1、80対1、90対1、100対1、又はそれよりも多い比で混合させ、PbAE-ヌクレオチドポリプレックスを作成する。特定の実施形態において、PbAEポリマーは、ヌクレオチド(例えば、インビトロ転写されたmRNA)と60対1の比で混合させ、PbAE-ヌクレオチドポリプレックスを作成する。特定の実施形態において、PbAE-ヌクレオチドポリプレックスはPGA/Di-マンノースと組み合わせて最終NPを形成することができる。
【0206】
特定の実施形態では、正電荷ポリマーコアは、1,4-ブタンジオールジアクリレートを4-アミノ-1-ブタノールと、ジアクリレート対アミンモノマーの1対1モル比で組み合わせることにより形成されるPbAEである。ポリマーは、ピペラジンキャッピングされた447ポリマーが可能である。ジマンノースにコンジュゲートされる場合、α-D-マンノピラノシル-(1→2)-α-D-マンノピラノース(Di-mannose、Omicron Biochemicals Inc)は、PGAにコンジュゲートする前にグリコシルアミンに改変することができる。
【0207】
コドン最適化mRNAは、アンチリバースキャップアナログ3’-O-Me-m7G(5’)ppp(5’)G(ARCA)でキャッピングし、改変リボヌクレオチドシュードウリジン(Ψ)及び5-メチルシチジン(m5C)で完全に置換することができる。
【0208】
ナノ粒子を形成するため、PbAE-447ポリマーを60対1(w対w)の比でmRNAに付加し、直ちに中速度で15秒間ボルテックスすることができる。次に、混合物を室温で5分間インキュベートしてPbAE-mRNAポリプレックスを形成させることができる。次のステップにおいて、NaOAcバッファー中100μg/mLのPGA/ジマンノースをポリプレックス溶液に添加し、中速度で15秒間ボルテックスし、室温で5分間インキュベートすることができる。この工程で、PGA/ジマンノースがPbAE-mRNAポリプレックスの表面を被覆して最終NPを形成する。長期貯蔵のため、D-スクロース(60mg/mL)を凍結保護物質としてNP溶液に添加することができる。ナノ粒子はドライアイスで瞬間凍結させ、次に凍結乾燥することができる。乾燥NPは、使用するまで-20℃又は-80℃で貯蔵できる。インビボ使用では、凍結乾燥させたNPは1対20(w対v)比で水に再懸濁することができる。
【0209】
特定の実施形態では、NPはサイズ99.8±SE/24.5、多分散0.183、及びほぼ中性の表面電荷(3.40±SE/2.15mV ζ電位)を有する。NPのこれらの物理化学的特性は、25℃でZetapals装置(Brookhaven Instrument Corporation)を使用して特徴付けることができる。動的光散乱に基づいて流体力学半径及び多分散を測定するため、NPを25mMのNaOAc(pH=5.2)中に5倍に希釈することができる。ζ電位を測定するため、NPは10mMのPBS(pH=7.0)で10倍に希釈することができる。NPの安定性を評価するため、新たに調製されたナノ粒子は10mMのPBSバッファー(pH=7.4)に希釈することができる。NPの流体力学半径及び多分散は10分ごとに5時間測定し、そのサイズ及び粒子濃度は、Nanosite 300装置(Malvern)を使用して粒子トラッキング解析から導き出された。新たに作製したNP(mRNA0.83μgを含有する25μL)を、グロー放電処理200メッシュ炭素/ホルムバール被覆銅グリッドに沈着させた。30秒後、グリッドは、50%のカルノフスキー固定液、0.1Mのカコジル酸バッファー、dH2O、次に1%(w/v)の酢酸ウラニルで順次処理した。試料は、120kVで操作するJEOL JEM-1400透過型電子顕微鏡(JEOL USA)で撮像した。
【0210】
特定の実施形態では、ナノ粒子は任意選択的に、単球及び/又はマクロファージの表面に存在する細胞マーカーに結合するリガンドを標的にする結合ドメインを含むことができる。
【0211】
M2結合ドメイン。Egr2はM2マクロファージにより発現される。Egr2についての市販の抗体は、Thermo Fisher、Waltham、MA;Abcam、Cambridge、MA;Millipore Sigma、Burlington、MA;Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany;LifeSpan Biosciences、Inc.、Seattle、WA;and Novus Biologicals、Littleton、COから入手可能である。抗Egr2抗体の産生は、例えば、Murakami Kら、(1993)Oncogene 8(6):1559~1566頁で考察されている。抗Egr2抗体は:ウサギモノクローナル抗Egr2抗体クローンEPR4004;マウスモノクローナル抗Egr2抗体クローン1G5;マウスモノクローナル抗Egr2抗体クローンOTI1B12;ヒトEgr2のAA残基200~300を認識するウサギポリクローナル抗Egr2抗体;ヒトEgr2のAA残基340~420を認識するウサギポリクローナル抗Egr2抗体;及びヒトEgr2のAA残基370~420を認識するウサギポリクローナル抗Egr2抗体を含む。結合ドメインはこれらの抗体及び本明細書に開示される他の抗体由来が可能である。
【0212】
特定の実施形態では、ターゲティングリガンドは、SGNIFSINAIGを含むCDR1配列(配列番号45)、TITLSGSTNを含むCDR2配列(配列番号46)、NTYSDSDVYGYを含むCDR3配列(配列番号47)を含む結合ドメインを含むナノボディが可能である。これらは、CD206に結合するCDR配列を反映している。
【0213】
特定の実施形態では、ターゲティングリガンドは、PGFKLDYYAIAを含むCDR1配列(配列番号48)、SINSSGGSTを含むCDR2配列(配列番号49)、及びLRRYYGLNLDPGSYDYを含むCDR3配列(配列番号50)を含むナノボディが可能である。これらは、CD206に結合するCDR配列を反映している。
【0214】
特定の実施形態において、ターゲティングリガンドは、GFPFNIYPMS(配列番号51)を含むCDR1配列、YISHGGTTT(配列番号52)を含むCDR2配列、及びGYARLMTDSELV(配列番号53)を含むCDRH3配列を含むヒト又はヒト化結合ドメイン(例えば、ナノボディ)を含む。これらは、CD206に結合するCDR配列を反映している。
【0215】
CD206に特異的ないくつかの追加の抗体は当業者には公知であり、配列、エピトープ結合、及び親和性について容易に特徴付けることができる。例えば、国際特許第2014/140376号パンフレット、国際特許第2013/174537号パンフレット、米国特許第7,560,534号を参照されたい。CD206についての市販の抗体は、Thermo Fisher、Waltham、MA;Proteintech、Rosemont、IL;BioLegend、San Diego、CA;R&D Systems、Minneapolis、MN;LifeSpan Biosciences、Inc.、Seattle、WA;Novus Biologicals、Littleton、CO;及びBio-Rad、Hercules、CAから入手可能である。特定の実施形態において、抗CD206抗体は、ラットモノクローナル抗マウスCD206モノクローナル抗体クローンC068C2(カタログ#141732、Biolegend、San Diego、CA)を含む。
【0216】
特定の実施形態において、ターゲティングリガンドは、ASQSVSHDV(配列番号54)を含むCDRL1配列、YTSを含むCDRL2配列、QDYSSPRT(配列番号56)を含むCDRL3配列、GYSITSDY(配列番号57)を含むCDRH1配列、YSGを含むCDRH2配列、及びCVSGTYYFDYWG(配列番号59)を含むCDRH3配列を含む結合ドメインを含む。これらは、CD163に結合するMac2-48抗体のCDR配列を反映している。
【0217】
特定の実施形態において、ターゲティングリガンドは、ASQSVSSDV(配列番号60)を含むCDRL1配列、YASを含むCDRL2配列、QDYTSPRT(配列番号62)を含むCDRL3配列、GYSITSDY(配列番号57)を含むCDRH1配列、YSGを含むCDRH2配列、及びCVSGTYYFDYWG(配列番号59)を含むCDRH3配列を含む結合ドメインを含む。これらは、CD163に結合するMac2-158抗体のCDR配列を反映している。
【0218】
CD163に特異的ないくつかの追加の抗体又は結合ドメインは当業者には公知であり、配列、エピトープ結合、及び親和性について容易に特徴付けることができる。例えば、国際特許第2011/039510号パンフレット、国際特許第2002/032941号パンフレット、国際特許第2002/076501号パンフレット、及び米国特許出願公開第2005/0214871号参照を参照されたい。CD163についての市販の抗体は、Thermo Fisher、Waltham、MA;Enzo Life Sciences、Inc.、Farmingdale、NY;BioLegend、San Diego、CA;R&D Systems、Minneapolis、MN;LifeSpan Biosciences、Inc.、Seattle、WA;及びRDI Research Diagnostics、Flanders、NJから入手可能である。特定の実施形態において、抗CD163抗体は、マウスモノクローナル抗CD163抗体クローン3D4;マウスモノクローナル抗CD163抗体クローンBer-Mac3;マウスモノクローナル抗CD163抗体クローンEDHu-1;及びマウスモノクローナル抗CD163抗体クローンGHI/61を含むことができる。
【0219】
特定の実施形態において、ターゲティングリガンドは、RSSKSLLYKDGKTYLN(配列番号66)を含むCDRL1配列、LMSTRAS(配列番号67)を含むCDRL2配列、QQLVEYPFT(配列番号68)を含むCDRL3配列、GYWMS(配列番号69)を含むCDRH1配列、EIRLKSDNYATHYAESVKG(配列番号70)を含むCDRH2配列、及びFIDを含むCDRH3配列を含む結合ドメインを含む。これらは、CD23に結合するCDR配列を反映している。
【0220】
CD23に特異的ないくつかの追加の抗体又は結合ドメインは当業者には公知であり、配列、エピトープ結合、及び親和性について容易に特徴付けることができる。例えば、米国特許第7,008,623号、米国特許第6,011,138号(5E8、6G5、2C8、B3B1及び3G12を含む抗体)、及び米国特許出願公開第2009/0252725号、Rectorら、(1985)J.Immunol.55:481~488頁;Flores-Rumeoら、(1993)Science 241:1038~1046頁;Sherrら、(1989)J.Immunol.142:481~489頁;及びPeneら、(1988)PNAS 85:6820~6824頁を参照されたい。CD23についての市販の抗体は、Thermo Fisher、Waltham、MA;Abcam、Cambridge、MA;Bioss Antibodies、Inc.、Woburn、MA;Bio-Rad、Hercules、CA;LifeSpan Biosciences、Inc.、Seattle、WA;及びBoster Biological Technology、Pleasanton、CAから入手可能である。特定の実施形態において、抗CD23抗体は、マウスモノクローナル抗CD23抗体クローンTu1;ウサギモノクローナル抗CD23抗体クローンSP23;ウサギモノクローナル抗CD23抗体クローンEPR3617;マウスモノクローナル抗CD23抗体クローン5B5;マウスモノクローナル抗CD23抗体クローン1B12;マウスモノクローナル抗CD23抗体クローンM-L23.4;及びマウスモノクローナル抗CD23抗体クローン3A2を含むことができる。
【0221】
M1結合ドメイン。特定の実施形態において、ターゲティングリガンドは、SSNIGDNY(配列番号72)を含むCDRL1配列、RDSを含むCDRL2配列、QSYDSSLSGS(配列番号74)を含むCDRL3配列、GFTFDDYG(配列番号75)を含むCDRH1配列、ISWNGGKT(配列番号76)を含むCDRH2配列、及びARGSLFHDSSGFYFGH(配列番号77)を含むCDRH3配列を含む結合ドメインを含む。これらは、CD38に結合するAb79抗体のCDR配列を反映している。
【0222】
特定の実施形態において、ターゲティングリガンドは、NSNIGSNT(配列番号78)を含むCDRL1配列、SDSを含むCDRL2配列、QSYDSSLSGSR(配列番号80)を含むCDRL3配列、GFTFNNYG(配列番号81)を含むCDRH1配列、ISYDGSDK(配列番号82)を含むCDRH2配列、及びARVYYYGFSGPSMDV(配列番号83)を含むCDRH3配列を含む結合ドメインを含む。これらは、CD38に結合するAb19抗体のCDR配列を反映している。
【0223】
特定の実施形態において、ターゲティングリガンドは、RASQSVSSYLA(配列番号84)を含むCDRL1配列、DASNRAT(配列番号85)を含むCDRL2配列、QQRSNWPPTF(配列番号86)を含むCDRL3配列、SFAMS(配列番号87)を含むCDRH1配列、AISGSGGGTYYADSVKG(配列番号88)を含むCDRH2配列、及びDKILWFGEPVFDY(配列番号89)を含むCDRH3配列を含む結合ドメインを含む。これらは、米国特許第7,829,693号に記載されるCD38に結合するダラツムマブ抗体のCDR配列を反映している。
【0224】
CD38に特異的ないくつかの抗体は当業者には公知であり、配列、エピトープ結合、及び親和性について容易に特徴付けることができる。例えば、国際公開第2005/103083号パンフレット、国際公開第2006/125640号パンフレット、国際公開第2007/042309号パンフレット、国際公開第2008/047242号パンフレット、国際公開第2012/092612号パンフレット、国際公開第2006/099875号パンフレット、国際公開第2011/154453号パンフレット、国際公開第2015/130728号パンフレット、米国特許第7,829,693号、及び米国特許出願公開第2016/0200828号を参照されたい。CD38についての市販の抗体は、Thermo Fisher、Waltham、MA;Abcam、Cambridge、MA;及びMillipore Sigma、Burlington、MAから入手可能である。特定の実施形態において、抗CD23抗体は、ウサギモノクローナル抗CD38抗体クローンGAD-3;マウスモノクローナル抗CD38抗体クローンHIT2;マウスモノクローナル抗CD38抗体クローンAT1;マウスモノクローナル抗CD38抗体クローンAT13/5;ラットモノクローナル抗CD38抗体クローンNIMR-5;及びラットモノクローナルIgG2a、κ抗CD38抗体クローン90/CD38(カタログ#BD Biosciences、San Jose、CA)を含むことができる。
【0225】
特定の実施形態において、Gタンパク質共役受容体18(Gpr18)はM1マクロファージ上で標的にされる。Gpr18についての市販の抗体は、Assay Biotechnology Company Inc.、Sunnyvale、CA;Thermo Fisher、Waltham、MA;Abcam、Cambridge、MA;GeneTex、Inc.、Irvine、CA;及びNovus Biologicals、Littleton、COから入手可能である。特定の実施形態において、抗Gpr18抗体は、ヒトGpr18のアミノ酸1~50の一部を認識するウサギポリクローナル抗Gpr18抗体;ヒトGpr18のアミノ酸160~240を含む領域を認識するウサギポリクローナル抗Gpr18抗体;ヒトGpr18のアミノ酸100~180を含む領域を認識するウサギポリクローナル抗Gpr18抗体;ウサギモノクローナル抗Gpr18抗体クローンEPR12359;及びヒトGpr18のアミノ酸140~190を含む領域を認識するウサギポリクローナル抗Gpr18抗体を含む。
【0226】
特定の実施形態において、ホルミルペプチド受容体2(Fpr2)はM1マクロファージ上で標的にされる。Fpr2についての市販の抗体は、Atlas Antibodies、Bromma、Sweden;Biorbyt、LLC、San Francisco、CA;Cloud-Clone Corp.、Katy、TX;US Biological Life Sciences、Salem、MA;及びNovus Biologicals、Littleton、COから入手可能である。特定の実施形態において、抗fpr2抗体は、マウスモノクローナル抗fpr2抗体クローンGM1D6;マウスモノクローナル抗fpr2抗体クローン304405;組換え抗fpr2抗体クローンREA663;及びfpr2のアミノ酸300~350を含む領域を認識するウサギポリクローナル抗fpr2抗体を含む。
【0227】
特定の実施形態において、ターゲティングリガンドは、RASQSVSSYLA(配列番号84)を含むCDRL1配列、DASSRAT(配列番号91)を含むCDRL2配列、QLRSNWPPYT(配列番号92)を含むCDRL3配列、GYGMH(配列番号93)を含むCDRH1配列、VIWYDGSNKYYADSVKG(配列番号94)を含むCDRH2配列、及びDTGDRFFDY(配列番号95)を含むCDRH3配列を含む結合ドメインを含む。これらは、CD64に結合するCDR配列を反映している。
【0228】
(9)投与のための組成物。本明細書に開示されるナノ粒子は、対象への投与のために処方される組成物の一部として提供することができる。組成物は、本明細書に開示されるナノ粒子及び薬学的に許容される担体を含む。
【0229】
例示的な一般に使用される薬学的に許容される担体は、ありとあらゆる充填剤若しくはフィラー、溶媒若しくは共溶媒、分散媒、被覆剤、界面活性剤、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE)、保存剤、等張化剤、吸収遅延剤、塩、安定化剤、緩衝剤、キレート剤(例えば、EDTA)、ゲル、結合剤、崩壊剤、及び/又は潤滑剤を含む。
【0230】
例示的な緩衝剤は、クエン酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、フマル酸緩衝剤、グルコン酸緩衝剤、シュウ酸緩衝剤、乳酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤及び/又はトリメチルアミン塩を含む。
【0231】
例示的な保存剤は、フェノール、ベンジルアルコール、メタクレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンザルコニウムハロゲン化物、塩化ヘキサメトニウム、メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール及び3-ペンタノールを含む。
【0232】
例示的な等張剤は、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール又はマンニトールなどの三価又は高級糖アルコールを含む多価糖アルコールを含む。
【0233】
例示的な安定化剤は、有機糖、多価糖アルコール、ポリエチレングリコール、硫黄含有還元剤、アミノ酸、低分子量ポリペプチド、タンパク質、免疫グロブリン、親水性ポリマー又は多糖を含む。
【0234】
特定の実施形態において、組成物は、腹腔内、静脈内、又は頭蓋内注射用に処方される。本明細書に開示される組成物は、さらに動脈内、リンパ節内、リンパ内、腫瘍内、筋肉内、経口、及び/又は皮下投与用に処方することができ、さらに詳細には、動脈内、リンパ節内、リンパ内、腫瘍内、筋肉内、及び/又は皮下注射による。本明細書に開示される組成物は、注入、灌流、又は経口摂取による投与用に処方することができる。
【0235】
注射に関して、組成物は、ハンクス液、リンゲル液、又は生理食塩水を含む緩衝液などの水溶液として処方可能である。水溶液は、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの調合剤を含有することができる。あるいは、製剤は、使用前に、適切な溶媒、例えば、減菌発熱性物質除去水で構成するための凍結乾燥及び/又は粉末形態が可能である。
【0236】
組成物はデポ製剤としても処方することができる。デポ製剤は、適切なポリマー若しくは疎水性材料(例えば、許容可能な油中の乳剤として)又はイオン交換樹脂を用いて、又はやや難溶性の誘導体として、例えば、やや難溶性の塩として処方することができる。
【0237】
さらに、組成物は、ナノ粒子を含有する固体ポリマーの半透性マトリックスを利用して徐放性製剤として処方することができる。種々の徐放性材料が確立されており、当業者には周知である。徐放性製剤は、その化学的性質に応じて、投与に続いて数週間から100日を超えるまでの間ナノ粒子を放出しうる。
【0238】
経口投与に関して、組成物は、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液及び同類の物として処方することができる。
【0239】
がんを治療するために処方される場合、開示された組成物は、p53、RB、BRCA1、E1A、bcl-2、MDR-1、p21、p16、bax、bcl-xs、E2F、IGF-I VEGF、アンジオスタチン、オンコスタチン、エンドスタチン、GM-CSF、IL-12、IL-2、IL-4、IL-7、IFN-γ、TNFα及び/又はHSV-tkから選択される1種以上の抗がん遺伝子を担持するヌクレオチドも含むことができる。
【0240】
本明細書に開示されるいかなる組成物製剤も、研究のためであれ、予防的治療であれ、及び/又は治療的処置であれ、投与の効果を凌ぐ著しく有害な、アレルギー性の又は他の都合の悪い反応を生じない担体を含む他のいかなる薬学的に許容される担体でも有利に含むことができる。例示的な薬学的に許容される担体及び製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、18th Ed.Mack Printing Company、1990年に開示されている。さらに、製剤は、米国食品医薬品局生物製剤基準局(United States FDA Office of Biological Standards)及び/又は他の関連する外国規制当局により要求される無菌性、発熱性、一般的安全性及び純度基準を満たすように調製することができる。
【0241】
特定の実施形態において、ナノ粒子は、例えば、少なくとも0.1% w/v若しくはw/wナノ粒子;少なくとも1% w/v若しくはw/wナノ粒子;少なくとも10% w/v若しくはw/wナノ粒子;少なくとも20% w/v若しくはw/wナノ粒子;少なくとも30% w/v若しくはw/wナノ粒子;少なくとも40% w/v若しくはw/wナノ粒子;少なくとも50% w/v若しくはw/wナノ粒子;少なくとも60% w/v若しくはw/wナノ粒子;少なくとも70% w/v若しくはw/wナノ粒子;少なくとも80% w/v若しくはw/wナノ粒子;少なくとも90% w/v若しくはw/wナノ粒子;少なくとも95% w/v若しくはw/wナノ粒子;又は少なくとも99% w/v若しくはw/wナノ粒子を含むことができる組成物の一部として提供される。
【0242】
(10)使用方法。本明細書に開示される方法は、1つ以上のIRF及びIKKβをコードするヌクレオチドを含むナノ粒子をマクロファージ中に導入することにより、マクロファージの活性状態を不活性化状態から活性化状態に変更することを含む。特定の実施形態において、変更により、1つ以上のIRF及びIKKβをコードするヌクレオチドを含むナノ粒子で治療したマクロファージの集団において不活性化状態のマクロファージ(例えば、M2マクロファージ)のパーセンテージは、1つ以上のIRF及びIKKβをコードするヌクレオチドを含むナノ粒子で治療されたことがない不活性化状態のマクロファージのパーセンテージと比べて、5倍、10倍、15倍、20倍、又はそれよりも多く減少する。特定の実施形態において、変更により、1つ以上のIRF及びIKKβをコードするヌクレオチドを含むナノ粒子で治療したマクロファージの集団において不活性化状態のマクロファージ(例えば、M2マクロファージ)の数は、1つ以上のIRF及びIKKβをコードするヌクレオチドを含むナノ粒子で治療されたことがない不活性化状態のマクロファージの数と比べて、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、又はそれよりも多く減少する。
【0243】
特定の実施形態では、マクロファージ中に1つ以上のIRF及びIKKβをコードするヌクレオチドを含むナノ粒子を導入することによりマクロファージの活性化状態を不活性状態から活性化された状態に変更することにより:固形腫瘍などの治療部位又は感染若しくは炎症の部位中へのリンパ球遊走及び浸潤を回復させる;IL-1β、IL-12、IFNγ、及び/又はTNFαを含む炎症促進性(抗腫瘍)サイトカインの放出を1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、又はそれよりも多く増やす;IL-6を含むM2マクロファージ表現型に関連するサイトカインの放出を1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、又はそれよりも多く低減する。
【0244】
特定の実施形態において、マクロファージの活性状態を不活性化状態から活性化状態に変更することは、IRF5及びIRF8をコードするヌクレオチドを含むナノ粒子をマクロファージ中に導入することを含む。特定の実施形態において、マクロファージの活性状態を不活性化状態から活性化状態に変更することは、構成的に活性である又はその野生型の対応物IRFよりも活性である突然変異IRFをコードするヌクレオチドを含むナノ粒子をマクロファージ中に導入することを含む。
【0245】
本明細書で開示される方法は、遺伝的に改変された単球/マクロファージからの多特異性分子(例えば、二重特異性分子)並びに任意選択的にTGFβインヒビターの分泌をさらにもたらす。
【0246】
本明細書に開示される方法は、本明細書に開示される組成物で対象(ヒト、獣医動物、家畜及び研究動物)を治療することを含む。対象を治療することは、治療有効量を送達することを含む。治療有効量は、有効量、予防的治療及び/又は治療的処置を提供することができる。
【0247】
「有効量」は、対象において所望の生理的変化を生じるのに必要な化合物の量である。有効量は、研究目的で投与されることも多い。本明細書に開示される有効量は、対象において細胞を免疫調節する。特定の実施形態において、免疫調節される細胞は免疫抑制された細胞である。特定の実施形態において、免疫調節される細胞はマクロファージである。特定の実施形態において、マクロファージの免疫調節は、免疫抑制されたマクロファージを活性化マクロファージに切り替えることを含む。特定の実施形態において、マクロファージの免疫調節は、M2マクロファージをM1マクロファージに切り替えることを含む。特定の実施形態において、免疫調節される細胞は、MDSC、Treg、DCreg、好中球、Th17、Breg、及び/又はMSCを含む免疫抑制された細胞を含む。特定の実施形態において、免疫抑制された細胞の免疫調節は、腫瘍促進性(protumor)から抗腫瘍への免疫抑制された細胞の表現型的及び/又は機能的切り替えを含む。
【0248】
「予防的治療」は、疾患又は状態をさらに発症するリスクを縮小する、予防する、又は減少する目的で治療が施されるように、疾患若しくは状態の徴候若しくは症状を示さない又は疾患若しくは状態の初期徴候若しくは症状のみを示す対象に施される治療を含む。したがって、予防的治療は、疾患又は障害に対する予防治療として機能する。例えば、特定の実施形態では、予防治療は、再発の発生を低減又は遅延させる目的で治療が施されるように、がんを有していたが寛解期にある対象への本明細書で開示される組成物の投与を含む。
【0249】
「治療的処置」は、疾患又は状態の症状又は徴候を示す対象に施される治療を含み、疾患又は状態の徴候又は症状を縮小する又は取り除く目的で対象に施される。例えば特定の実施形態において、治療的処置は、腫瘍及び/又は転移を縮小する又は取り除くためにがんを抱えた対象に本明細書に開示される組成物を投与することを含む。
【0250】
特定の実施形態において、治療有効量は、対象において抗ガン効果を提供する。がん(医学用語:悪性新生物)とは、細胞の群が制御されない成長(正常な限界を超えた分裂)、浸潤(隣接する組織への侵入及びこの破壊)、及び時に転移を示す疾患のクラスのことである。「転移」とは、その最初の増殖部位から身体の別の部分へのがん細胞の広がりのことである。転移の形成は非常に複雑な過程であり、原発腫瘍からの悪性細胞の脱離、細胞外マトリックスの侵襲、内皮基底膜を貫入し体腔及び血管への進入、次に、血液により運ばれた後、標的臓器への浸潤に依存する。最終的に、標的部位での新しい腫瘍、すなわち、二次腫瘍又は転移腫瘍の成長は、血管新生に依存する。腫瘍転移は原発腫瘍を切除後でさえ起こることが多い。なぜならば、腫瘍細胞又は成分が残っていて転移能を身に着けることがあるからである。
【0251】
特定の実施形態において、治療有効量は対象において抗腫瘍効果を提供する。「腫瘍」とは、細胞の異常な成長により形成される腫脹又は病変(新生細胞又は腫瘍細胞と呼ばれる)である。「腫瘍細胞」は、急速な制御されない細胞増殖により分裂し、新たな分裂を開始させた刺激が止んだ後分裂し続ける異常な細胞である。腫瘍は、構造組織及び正常細胞との機能的な協調の部分的又は完全な欠如を示し、通常は、異なった組織塊を形成するが、これは良性、前悪性又は悪性の場合がある。
【0252】
抗腫瘍効果とは生物学的効果のことであり、これは、腫瘍細胞の数の減少、転移の数の減少、腫瘍量の減少、平均寿命の増加、がん細胞のアポトーシスの誘導、がん細胞死の誘導、がん細胞の化学受容性又は放射線感受性の誘導、がん細胞近辺の血管新世の阻害、がん細胞増殖の阻害、腫瘍成長の阻害、転移の防止、対象の寿命の延長、がんに伴う疼痛の減少、転移の数の縮小、及び/又は治療に続くがんのぶり返し若しくは再発の減少により明らかにすることができる。したがって、本明細書に開示される組成物は、種々のがんを治療するのに使用することができ、転移を予防する若しくは著しく遅延させることができ、及び/又は再発を予防する若しくは著しく遅延させることができる。特定の実施形態において、がんを本明細書に開示されるナノ粒子組成物で治療した対象の全生存期間は、同じがんがナノ粒子で治療されていない対照の対象と比べた場合、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、又はそれよりも多く改善される。特定の実施形態において、がんを本明細書に開示されるナノ粒子組成物で治療した対象の転移の数は、同じがんがナノ粒子で治療されていない対照の対象と比べた場合、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれよりも多く減少する。
【0253】
特定の実施形態において、治療的処置は、腫瘍を縮小する又は取り除くために、がんを抱えた対象への本明細書に開示される組成物の他の療法と組み合わせての投与を含む。特定の実施形態において、本明細書に開示される組成物と組み合わせて使用する療法は、がんワクチン、CAR免疫療法(例えば、CAR-T免疫療法)、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、シグナル伝達阻害剤、遺伝子発現調節剤、アポトーシス誘導剤、血管新生阻害剤、及び毒性分子を送達するモノクローナル抗体を含む。特定の実施形態において、がんを抱えた対象への本明細書に開示されるナノ粒子組成物の放射線療法と組み合わせての投与により、全生存期間は、同じがんが放射線療法と組み合わせてナノ粒子組成物を投与されていない対照の対象と比べた場合、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、又はそれよりも多く改善される。
【0254】
本明細書に開示されるシステム及び方法で治療することができるがんは、卵巣がん、乳がん、脳がん、黒色腫、肺転移、精上皮腫、奇形腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、直腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん、副腎がん、甲状腺がん、皮膚がん、子宮頸がん、腸がん、肝臓がん、結腸がん、胃がん、頭頚部がん、胃腸がん、リンパ節がん、食道がん、結腸直腸がん、膵臓がん、耳、鼻及び喉(ENT)がん、前立腺がん、子宮のがん、肺がん、並びにこれらの転移を含む。
【0255】
特定の実施形態では、治療有効量は抗病原体効果を与える。抗病原体効果は、抗感染効果を含むことができる。抗感染効果は、感染症の発生の減少、感染症の重症度の減少、感染症の期間の減少、感染細胞の数の減少、感染組織の体積の減少、平均寿命の増加、免疫クリアランスに対する感染細胞の誘導された感受性、低減した感染関連疼痛、及び/又は治療された感染に関連する症状の低減若しくは除去を含むことができる。
【0256】
特定の実施形態では、治療有効量は抗炎症性効果を与える。抗炎症性効果は、低減した炎症関連疼痛、熱、発赤、腫脹及び/又は機能の消失を含むことができる。
【0257】
特定の実施形態では、治療有効量は、抗クローン病効果又は抗潰瘍性大腸炎効果を与える。抗クローン病効果又は抗潰瘍性大腸炎効果は、低減した下痢、低減した直腸出血、低減した不可解な体重減少、低減した発熱、低減した腹痛及び筋痙攣、低減した疲労及び活力低下感、並びに/又は回復した食欲を含むことができる。
【0258】
特定の実施形態では、治療有効量は抗関節炎効果を与える。抗関節炎効果は、関節での低減した疼痛、凝り、腫脹、発赤及び/又は回復した可動域を含むことができる。関節炎のタイプは、関節リウマチ(RA)、強直性脊椎炎、及び乾癬性関節炎を含む。
【0259】
特定の実施形態では、治療有効量は抗尋常性乾癬効果を与える。抗尋常性乾癬効果は、低減した赤い斑点、鱗屑斑点(scaling spots)、掻痒、熱さ(burning)、ひりひりする痛み、爪床異常及び/又は腫大した若しくは強張った関節を含むことができる。
【0260】
投与に関して、治療有効量(本明細書において用量とも呼ばれる)は、インビトロアッセイ及び/又は動物モデル研究からの結果に基づいて最初に評価することができる。例えば、用量は、特定の標的に対する細胞培養において決定されるIC50を含む循環濃度範囲を達成するように動物モデルにおいて処方することができる。そのような情報を使用すれば、目的の対象における有用な用量をより的確に決定することができる。
【0261】
特定の対象に投与される実際の服用量は、医師、獣医師又は研究者により、標的、体重、状態の重症度、疾患の種類、以前の又は同時の治療介入、対象の特発性及び投与経路を含む身体的及び生理的要因などのパラメータを考慮に入れて決定することができる。
【0262】
有用な用量は、0.1~5μg/kg又は0.5~1μg/kgの範囲に及ぶことが多い。特定の実施形態において、用量は、1μg/kg、5μg/kg、10μg/kg、15μg/kg、20μg/kg、25μg/kg、30μg/kg、35μg/kg、40μg/kg、45μg/kg、50μg/kg、55μg/kg、60μg/kg、65μg/kg、70μg/kg、75μg/kg、80μg/kg、85μg/kg、90μg/kg、95μg/kg、100μg/kg、150μg/kg、200μg/kg、250μg/kg、350μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、650μg/kg、700μg/kg、750μg/kg、800μg/kg、850μg/kg、900μg/kg、950μg/kg、1000μg/kg、0.1~5mg/kg又は0.5~1mg/kgを含むことができる。特定の実施形態において、用量は、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mμg/kg、45mg/kg、50mg/kg、55mg/kg、60mg/kg、65mg/kg、70mg/kg、75mg/kg、80mg/kg、85mg/kg、90mg/kg、95mg/kg、100mg/kg、150mg/kg、200mg/kg、250mg/kg、350mg/kg、400mg/kg、450mg/kg、500mg/kg、550mg/kg、600mg/kg、650mg/kg、700mg/kg、750mg/kg、800mg/kg、850mg/kg、900mg/kg、950mg/kg、1000mg/kg又はそれよりも多く含むことができる。
【0263】
治療有効量は、治療計画の進行中に単回又は複数回用量を投与することにより達成することができる(例えば、毎日、1日おき、3日毎に、4日毎に、5日毎に、6日毎に、毎週、2週間毎に、3週間毎に、毎月、2カ月毎に、3カ月毎に、4カ月毎に、5カ月毎に、6カ月毎に、7カ月毎に、8カ月毎に、9カ月毎に、10カ月毎に、11カ月毎に、1年毎に)。特定の実施形態において、治療有効量は、治療計画の進行中に反復用量を投与することにより達成することができる。
【0264】
本明細書に記載されるナノ粒子組成物は、注射、吸入、注入、灌流、洗浄又は経口摂取により投与することができる。投与経路は、静脈内、皮内、動脈内、非経口内、鼻腔内、リンパ節内、リンパ内、腹腔内、頭蓋内、病巣内、前立腺内、膣内、直腸内、局所的、くも膜下腔内、腫瘍内、筋肉内、小胞内、経口、皮下、及び/又は舌下投与、さらに詳細には、静脈内、腫瘍内、腹腔内、及び/又は頭蓋内注射によりを含むことができる。局所投与は、本明細書に開示される組成物の治療有効量を身体の特定の領域、器官、又は腔に投与することを含む。例えば、腹腔内注射を使用すれば、卵巣がんを治療する治療薬を送達することができる、又は頭蓋内注射を使用すれば、神経膠腫を治療する治療薬を送達することができる。腫瘍部位での治療薬の投与は、上記のターゲティングリガンドを使用する腫瘍細胞及び/又は腫瘍支持細胞への治療薬(例えば、ナノ粒子組成物)のリガンド媒介ターゲティングを含むことができ、この治療薬は健康な組織には向かわない。腫瘍部位での治療薬の投与は、腫瘍細胞及び/又は腫瘍支持細胞への治療薬(例えば、ナノ粒子組成物)の受動的ターゲティングを含むことができ、この治療薬は健康な組織には向かわない。受動的ターゲティングの特定の実施形態は、ナノ粒子のサイズ範囲並びに腫瘍組織の漏れ穴のある脈管構造及びリンパ排出障害に基づく亢進された浸透性及び保持(EPR)現象を含むことができる。これとは対照的に、全身投与は全身に及び、典型的には、循環中への組成物又は治療薬の静脈内注射により達成される。治療薬の全身投与は、転移してしまったがんなどの局在性の少ない形態のがんに有用であることが可能である。
【0265】
(11)例示的な実施形態。
【0266】
1.専門食細胞に結合するターゲティングリガンド;並びに
第1の結合ドメイン及び第2の結合ドメインを少なくとも有するタンパク質分子をコードする核酸
を含むナノ粒子であって、
第1の結合ドメインが、免疫細胞により発現される細胞表面タンパク質に特異的であり、
第2の結合ドメインが、目的の細胞により発現される細胞表面タンパク質に特異的である、ナノ粒子。
【0267】
2.目的の細胞が、がん細胞、感染細胞、自己反応性細胞、又は原核細胞である、実施形態1のナノ粒子。
【0268】
3.ターゲティングリガンドが、単球、マクロファージ、又は両方により発現される細胞表面タンパク質に結合する、実施形態1又は2のナノ粒子。
【0269】
4.ターゲティングリガンドがジマンノースを含む、実施形態1~3のいずれかのナノ粒子。
【0270】
5.核酸がリボ核酸(RNA)を含む、実施形態1~4のいずれかのナノ粒子。
【0271】
6.RNAがメッセンジャーRNA(mRNA)を含む、実施形態5のナノ粒子。
【0272】
7.mRNAが、合成RNA又はインビトロ転写RNA(IVT RNA)を含む、実施形態6のナノ粒子。
【0273】
8.第1の結合ドメインがリンパ球の細胞表面タンパク質に特異的である、実施形態1~7のいずれかのナノ粒子。
【0274】
9.リンパ球が、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及び腫瘍浸潤リンパ球(TIL)細胞を含む群から選択される、実施形態8のナノ粒子。
【0275】
10.第1の結合ドメインが、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ガンマデルタT細胞、及びNK T細胞を含む群から選択されるT細胞の細胞表面タンパク質に特異的である、実施形態1~9のいずれかのナノ粒子。
【0276】
11.第1の結合ドメインがCD3に特異的である、実施形態1~10のいずれかのナノ粒子。
【0277】
12.タンパク質分子が多特異性T細胞エンゲージャーである、実施形態1~11のいずれかのナノ粒子。
【0278】
13.タンパク質分子がEpCAM-CD3二重特異性T細胞エンゲージャーである、実施形態1~12のいずれかのナノ粒子。
【0279】
14.第2の結合ドメインが目的の細胞により発現される抗原に特異的である、実施形態1~13のいずれかのナノ粒子。
【0280】
15.1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードする第2の核酸をさらに含む、実施形態1~14のいずれかのナノ粒子。
【0281】
16.腫瘍細胞増殖インヒビター又は腫瘍細胞増殖インヒビターをコードする核酸をさらに含む、実施形態1~15のいずれかのナノ粒子。
【0282】
17.核酸が、抗体、又は抗体の抗原結合断片をコードする、実施形態1~16のいずれかのナノ粒子。
【0283】
18.ナノ粒子が、CD40-CD40Lインヒビター又はTGFβインヒビターをコードする核酸を含む、実施形態1~17のいずれかのナノ粒子。
【0284】
19.ナノ粒子が、リポソーム、リポソームナノ粒子、脂質ナノ粒子、又は固形脂質ナノ粒子である、実施形態1~18のいずれかのナノ粒子。
【0285】
20.第1の複数のナノ粒子のそれぞれが、
専門食細胞に結合するターゲティングリガンド
を含む第1の複数のナノ粒子と;
免疫細胞により発現される細胞表面タンパク質に特異的な第1の結合ドメイン、及び目的の細胞により発現される細胞表面タンパク質に特異的な第2の結合ドメインを有するタンパク質分子をコードする核酸と
を含む組成物。
【0286】
21.目的の細胞が、がん細胞、感染細胞、自己反応性細胞、又は原核細胞である、実施形態20の組成物。
【0287】
22.ターゲティングリガンドが、単球、マクロファージ、又は両方により発現される細胞表面タンパク質に結合する、実施形態20又は21の組成物。
【0288】
23.ターゲティングリガンドがジマンノースを含む、実施形態20~22のいずれかの組成物。
【0289】
24.核酸がRNAを含む、実施形態20~23のいずれかの組成物。
【0290】
25.RNAがmRNAを含む、実施形態24の組成物。
【0291】
26.mRNAが、合成RNA又はIVT RNAを含む、実施形態25の組成物。
【0292】
27.第1の結合ドメインがリンパ球の細胞表面タンパク質に特異的である、実施形態20~26のいずれかの組成物。
【0293】
28.リンパ球が、T細胞、B細胞、NK細胞、及びTIL細胞を含む群から選択される、実施形態27の組成物。
【0294】
29.第1の結合ドメインが、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ガンマデルタT細胞、及びNK T細胞を含む群から選択されるT細胞の細胞表面タンパク質に特異的である、実施形態20~28のいずれかの組成物。
【0295】
30.第1の結合ドメインがCD3に特異的である、実施形態20~29のいずれかの組成物。
【0296】
31.タンパク質分子が二重特異性T細胞エンゲージャーである、実施形態20~30のいずれかの組成物。
【0297】
32.タンパク質分子がEpCAM-CD3二重特異性T細胞エンゲージャーである、実施形態20~31のいずれかの組成物。
【0298】
33.第2の結合ドメインが目的の細胞により発現される抗原に特異的である、実施形態20~32のいずれかの組成物。
【0299】
34.薬学的に許容される担体をさらに含む、実施形態20~33のいずれかの組成物。
【0300】
35.第1の複数のナノ粒子の少なくともサブセットが、(a)1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードする核酸、及び(b)IKKβをコードする核酸のうちの1つ以上をさらに含む、実施形態20~34のいずれかの組成物。
【0301】
36.第1の複数のナノ粒子が、リポソーム、リポソームナノ粒子、脂質ナノ粒子、又は固形脂質ナノ粒子を含む、実施形態20~35のいずれかの組成物。
【0302】
37.第2の複数のナノ粒子の少なくともサブセットが、(a)1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードする核酸、及び(b)IKKβをコードする核酸のうちの1つ以上を含む、第2の複数のナノ粒子
をさらに含む、実施形態20~36のいずれかの組成物。
【0303】
38.腫瘍細胞増殖インヒビターをさらに含む、実施形態20~37のいずれかの組成物。
【0304】
39.第1又は第2の複数のナノ粒子の少なくともサブセットが、腫瘍細胞増殖インヒビターをコードする核酸をさらに含む、実施形態20~38のいずれかの組成物。
【0305】
40.第1又は第2の複数のナノ粒子の少なくともサブセットが、腫瘍細胞増殖インヒビターの抗体の抗原結合断片をコードする核酸をさらに含む、実施形態20~39のいずれかの組成物。
【0306】
41.第2の複数のナノ粒子が、リポソーム、リポソームナノ粒子、脂質ナノ粒子、又は固形脂質ナノ粒子を含む、実施形態37~40のいずれかの組成物。
【0307】
42.第3の複数のナノ粒子の少なくともサブセットが腫瘍細胞増殖インヒビターの抗体の抗原結合断片をコードする核酸を含む、第3の複数のナノ粒子をさらに含む、実施形態20~41のいずれかの組成物。
【0308】
43.腫瘍細胞増殖インヒビターが、CD40-CD40Lインヒビター又はTGFβインヒビターである、実施形態38~42のいずれかの組成物。
【0309】
44.第2の複数のナノ粒子の非存在下で、第1の複数のナノ粒子及び第3の複数のナノ粒子を含む、実施形態42又は43の組成物。
【0310】
45.第3の複数のナノ粒子が、リポソーム、リポソームナノ粒子、脂質ナノ粒子、又は固形脂質ナノ粒子を含む、実施形態42~44のいずれかの組成物。
【0311】
46.ヒト対象において状態を治療するための組成物であって、
複数のナノ粒子のそれぞれが、
(i)単球、マクロファージ、又は両方に結合するターゲティングリガンド;並びに
(ii)リンパ球により発現される細胞表面タンパク質に特異的な第1の結合ドメイン及び目的の細胞により発現される細胞表面タンパク質に特異的な第2の結合ドメインを少なくとも有するタンパク質分子をコードするmRNA
を含む、第1の複数のナノ粒子
を含み、
第1の複数のナノ粒子が、ヒト対象において免疫応答を刺激又は増強し、それによって状態を治療する、組成物。
【0312】
47.目的の細胞が、がん細胞、感染細胞、自己反応性細胞、又は原核細胞である、実施形態46の組成物。
【0313】
48.ターゲティングリガンドがジマンノースを含む、実施形態46又は47のいずれかの組成物。
【0314】
49.mRNAが、合成RNA又はIVT RNAを含む、実施形態46~48のいずれかの組成物。
【0315】
50.第1の結合ドメインがリンパ球の細胞表面タンパク質に特異的である、実施形態46~49のいずれかの組成物。
【0316】
51.リンパ球が、T細胞、B細胞、NK細胞及びTIL細胞を含む群から選択される、実施形態50の組成物。
【0317】
52.第1の結合ドメインが、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ガンマデルタT細胞、及びNK T細胞を含む群から選択されるT細胞の細胞表面タンパク質に特異的である、実施形態46~51のいずれかの組成物。
【0318】
53.第1の結合ドメインがCD3に特異的である、実施形態46~52のいずれかの組成物。
【0319】
54.タンパク質分子が二重特異性T細胞エンゲージャーである、実施形態46~53のいずれかの組成物。
【0320】
55.タンパク質分子がEpCAM-CD3二重特異性T細胞エンゲージャーである、実施形態46~54のいずれかの組成物。
【0321】
56.第2の結合ドメインが目的の細胞により発現される抗原に特異的である、実施形態46~55のいずれかの組成物。
【0322】
57.薬学的に許容される担体をさらに含む、実施形態46~56のいずれかの組成物。
【0323】
58.第1の複数のナノ粒子の少なくともサブセットが、(a)1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードするmRNA、(b)IKKβをコードするmRNA、又は(c)1つ以上のIRFをコードするmRNA及びIKKβをコードするmRNA、並びに(c)腫瘍細胞増殖インヒビターをコードするmRNAのうちの1つ以上をさらに含む、実施形態46~57のいずれかの組成物。
【0324】
59.第1の複数のナノ粒子が、リポソーム、リポソームナノ粒子、脂質ナノ粒子、又は固形脂質ナノ粒子を含む、実施形態46~58のいずれかの組成物。
【0325】
60.第2の複数のナノ粒子のそれぞれが、
単球、マクロファージ、又は両方に結合するターゲティングリガンド、並びに
(a)1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードする核酸、(b)IKKβをコードするmRNA、及び(c)腫瘍細胞増殖インヒビターをコードするmRNAのうちの1つ以上を含む、第2の複数のナノ粒子
をさらに含む、実施形態46~59のいずれかの組成物。
【0326】
61.第2の複数のナノ粒子が、腫瘍細胞増殖インヒビターの抗体の抗原結合断片をコードするmRNAを含む、実施形態60の組成物。
【0327】
62.腫瘍細胞増殖インヒビターが、CD40-CD40Lインヒビター又はTGFβインヒビターである、実施形態60又は61の組成物。
【0328】
63.第2の複数のナノ粒子が、リポソーム、リポソームナノ粒子、脂質ナノ粒子、又は固形脂質ナノ粒子を含む、実施形態60~62のいずれかの組成物。
【0329】
64.ヒト対象において状態を治療するための方法であって、第1の複数のナノ粒子を含む組成物をヒト対象に投与することを含み、
第1の複数のナノ粒子のそれぞれが、
(i)単球、マクロファージ、又は両方に結合するターゲティングリガンド;並びに
(ii)リンパ球により発現される細胞表面タンパク質に特異的な第1の結合ドメイン及び目的の細胞により発現される細胞表面タンパク質に特異的な第2の結合ドメインを少なくとも有するタンパク質分子をコードするmRNA
を含み、
複数のナノ粒子が、ヒト対象において免疫応答を刺激又は増強し、それによって状態を治療する、方法。
【0330】
65.目的の細胞が、がん細胞、感染細胞、自己反応性細胞、又は原核細胞である、実施形態64の方法。
【0331】
66.ターゲティングリガンドがジマンノースを含む、実施形態64又は65の方法。
【0332】
67.mRNAが、合成RNA又はIVT RNAを含む、実施形態64~66のいずれかの方法。
【0333】
68.リンパ球が、T細胞、B細胞、NK細胞及びTIL細胞を含む群から選択される、実施形態64~67のいずれかの方法。
【0334】
69.第1の結合ドメインが、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ガンマデルタT細胞、及びNK T細胞を含む群から選択されるT細胞の細胞表面タンパク質に特異的である、実施形態64~68のいずれかの方法。
【0335】
70.第1の結合ドメインがCD3に特異的である、実施形態64~69のいずれかの方法。
【0336】
71.タンパク質分子が二重特異性T細胞エンゲージャーである、実施形態64~70のいずれかの方法。
【0337】
72.タンパク質分子がEpCAM-CD3二重特異性T細胞エンゲージャーである、実施形態64~71のいずれかの方法。
【0338】
73.第2の結合ドメインが目的の細胞により発現される抗原に特異的である、実施形態64~72のいずれかの方法。
【0339】
74.組成物が薬学的に許容される担体をさらに含む、実施形態64~73のいずれかの方法。
【0340】
75.第1の複数のナノ粒子の少なくともサブセットが、(a)1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードする核酸、(b)IKKβをコードする核酸、及び(c)腫瘍細胞増殖インヒビターをコードする核酸のうちの1つ以上をさらに含む、実施形態64~74のいずれかの方法。
【0341】
76.第1の複数のナノ粒子が、リポソーム、リポソームナノ粒子、脂質ナノ粒子、又は固形脂質ナノ粒子を含む、実施形態64~75のいずれかの組成物。
【0342】
77.第2の複数のナノ粒子のそれぞれが、
単球、マクロファージ、又は両方に結合するターゲティングリガンド、並びに
(a)1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードするmRNA、及び(b)IKKβをコードするmRNAを含む、第2の複数のナノ粒子を含む組成物をヒト対象に投与することをさらに含む、実施形態64~76のいずれかの方法。
【0343】
78.第1又は第2の複数のナノ粒子の少なくともサブセットが、腫瘍細胞増殖インヒビターをコードするmRNAをさらに含む、実施形態75~77のいずれかの方法。
【0344】
79.第2の複数のナノ粒子が、リポソーム、リポソームナノ粒子、脂質ナノ粒子、又は固形脂質ナノ粒子を含む、実施形態77又は78の組成物。
【0345】
80.第3の複数のナノ粒子のそれぞれが、
単球、マクロファージ、又は両方に結合するターゲティングリガンド、及び
腫瘍細胞増殖インヒビターをコードするmRNA
を含む、第3の複数のナノ粒子を含む組成物をヒト対象に投与することをさらに含む、実施形態64~79のいずれかの方法。
【0346】
81.腫瘍細胞増殖インヒビターをコードするmRNAが、腫瘍細胞増殖インヒビターの抗体の抗原結合断片をコードする、実施形態75~80のいずれかの方法。
【0347】
82.腫瘍細胞増殖インヒビターが、CD40-CD40Lインヒビター又はTGFβインヒビターである、実施形態75~81のいずれかの方法。
【0348】
83.第3の複数のナノ粒子が、リポソーム、リポソームナノ粒子、脂質ナノ粒子、又は固形脂質ナノ粒子を含む、実施形態80~82のいずれかの組成物。
【0349】
84.第1の複数のナノ粒子を含む組成物を投与するステップ及び第2の複数のナノ粒子を含む組成物を投与するステップが同時に又は逐次実施される、実施形態77~83のいずれかの方法。
【0350】
85.第1の複数のナノ粒子を含む組成物を投与するステップが、第2の複数のナノ粒子を含む組成物を投与するステップ後に実施される、実施形態77~83のいずれかの方法。
【0351】
86.第3の複数のナノ粒子を含む組成物を投与するステップが、第1の複数のナノ粒子を投与するステップと同時に又は逐次実施される、実施形態80~85のいずれかの方法。
【0352】
87.第3の複数のナノ粒子を含む組成物を投与するステップが、第2の複数のナノ粒子を投与するステップと同時に又は逐次実施される、実施形態80~85のいずれかの方法。
【0353】
88.第2の複数のナノ粒子を含む組成物を投与するステップなしで第1の複数のナノ粒子を含む組成物を投与するステップ及び第3の複数のナノ粒子を含む組成物を投与するステップを含む、実施形態80~85のいずれかの方法。
【0354】
89.免疫細胞により発現される細胞表面タンパク質に特異的な第1の結合ドメイン及び目的の細胞により発現される細胞表面タンパク質に特異的な第2の結合ドメインを少なくとも有するタンパク質分子をコードする核酸が積載されたナノ粒子を含み、
ナノ粒子が食細胞の表面に付着しているか、又は食細胞により内在化されている、改変された専門食細胞。
【0355】
90.目的の細胞が、がん細胞、感染細胞、自己反応性細胞、又は原核細胞である、実施形態89の改変された専門食細胞。
【0356】
91.食細胞が単球又はマクロファージである、実施形態89又は90のいずれかの改変された専門食細胞。
【0357】
92.食細胞が腫瘍関連マクロファージである、実施形態89~91のいずれかの改変された専門食細胞。
【0358】
93.核酸がリボ核酸(RNA)を含む、実施形態89~92のいずれかの改変された専門食細胞。
【0359】
94.RNAがメッセンジャーRNA(mRNA)を含む、実施形態93の改変された専門食細胞。
【0360】
95.mRNAが、合成RNA又はインビトロ転写RNA(IVT RNA)を含む、実施形態94の改変された専門食細胞。
【0361】
96.第1の結合ドメインがリンパ球の細胞表面タンパク質に特異的である、実施形態89~95のいずれかの改変された専門食細胞。
【0362】
97.リンパ球が、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及びTIL細胞を含む群から選択される、実施形態96の改変された専門食細胞。
【0363】
98.第1の結合ドメインが、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ガンマデルタT細胞、及びNK T細胞を含む群から選択されるT細胞の細胞表面タンパク質に特異的である、実施形態89~97のいずれかの改変された専門食細胞。
【0364】
99.第1の結合ドメインがCD3に特異的である、実施形態89~98のいずれかの改変された専門食細胞。
【0365】
100.タンパク質分子が二重特異性T細胞エンゲージャーである、実施形態89~99のいずれかの改変された専門食細胞。
【0366】
101.タンパク質分子がEpCAM-CD3二重特異性T細胞エンゲージャーである、実施形態89~100のいずれかの改変された専門食細胞。
【0367】
102.ナノ粒子が、(a)1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードする核酸、(b)IKKβをコードする核酸、及び(c)腫瘍細胞増殖インヒビターをコードする核酸のうちの1つ以上をさらに積載されている、実施形態89~101のいずれかの改変された専門食細胞。
【0368】
103.ナノ粒子が、リポソーム、リポソームナノ粒子、脂質ナノ粒子、又は固形脂質ナノ粒子を含む、実施形態89~102のいずれかの改変された専門食細胞。
【0369】
104.(a)1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードする核酸、(b)IKKβをコードする核酸、及び(c)腫瘍細胞増殖インヒビターをコードする核酸のうちの1つ以上が積載されている第2のナノ粒子をさらに含み、
第2のナノ粒子が食細胞の表面に付着しているか、又は食細胞により内在化されている、実施形態89~103のいずれかの改変された専門食細胞。
【0370】
105.第2の複数のナノ粒子が、リポソーム、リポソームナノ粒子、脂質ナノ粒子、又は固形脂質ナノ粒子を含む、実施形態104の改変された専門食細胞。
【0371】
106.第1又は第2のナノ粒子が、腫瘍細胞増殖インヒビターの抗体又は抗体の抗原結合断片をコードする核酸が積載されている、実施形態104又は105の改変された専門食細胞。
【0372】
107.腫瘍細胞増殖インヒビターが、CD40-CD40Lインヒビター又はTGFβインヒビターである、実施形態102~106のいずれかの改変された専門食細胞。
【0373】
108.(a)1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードする核酸、(b)IKKβをコードする核酸、又は(c)腫瘍細胞増殖インヒビターをコードする核酸のうちの1つ以上が積載された第2のナノ粒子、
腫瘍細胞増殖インヒビターをコードする核酸が積載された第3のナノ粒子、
のうちの少なくとも1つをさらに含み、
第2及び第3のナノ粒子のそれぞれが、食細胞の表面に付着しているか、又は食細胞により内在化されている、実施形態89~107のいずれかの改変された専門食細胞。
【0374】
109.第3の複数のナノ粒子が、リポソーム、リポソームナノ粒子、脂質ナノ粒子、又は固形脂質ナノ粒子を含む、実施形態108の改変された専門食細胞。
【0375】
110.正電荷ポリマーコア、及びポリマーコアの周囲の中性又は負電荷被覆を含み、正電荷ポリマーコアが、免疫細胞活性化エピトープに結合する少なくとも1つの結合ドメイン及び/又は目的の細胞上の抗原に結合する少なくとも1つの結合ドメインをコードするヌクレオチドをカプセル化している、ナノ粒子。
【0376】
111.ナノ粒子が130nm未満である、実施形態110のナノ粒子。
【0377】
112.正電荷ポリマーが、ポリ(β-アミノエステル)、ポリ(L-リジン)、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、ポリ(アミドアミン)デンドリマー(PAMAM)、ポリ(アミン-コ-エステル)、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)(PDMAEMA)、キトサン、ポリ(L-ラクチド-コ-L-リジン)、ポリ[α-(4-アミノブチル)-L-グリコール酸](PAGA)、又はポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)(PHP)を含む、実施形態110又は111のナノ粒子。
【0378】
113.正電荷ポリマーがポリ(β-アミノエステル)を含む、実施形態110~112のいずれかのナノ粒子。
【0379】
114.中性又は負電荷被覆が、ポリグルタミン酸(PGA)、ポリ(アクリル酸)、アルギン酸、又はコレステリルヘミスクシナート/1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンを含む、実施形態110~113のいずれかのナノ粒子。
【0380】
115.中性又は負電荷被覆がポリグルタミン酸(PGA)を含む、実施形態110~114のいずれかのナノ粒子。
【0381】
116.中性又は負電荷被覆が双性イオンポリマーを含む、実施形態110~115のいずれかのナノ粒子。
【0382】
117.中性又は負電荷被覆がリポソームを含む、実施形態110~116のいずれかのナノ粒子。
【0383】
118.リポソームが、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTMA)、3β-[N-(N’、N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)、ジオクタデシル-アミドグリシルスペルミン(DOGS)、コレステロール、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、又は1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)を含む、実施形態117のナノ粒子。
【0384】
119.ヌクレオチドがリボ核酸(RNA)を含む、実施形態110~118のいずれかのナノ粒子。
【0385】
120.RNAが合成RNAを含む、実施形態119のナノ粒子。
【0386】
121.RNAがインビトロ転写mRNAを含む、実施形態119又は120のナノ粒子。
【0387】
122.ヌクレオチドが組み込み又は非組み込み二本鎖DNAを含む、実施形態110~121のいずれかのナノ粒子。
【0388】
123.ヌクレオチドが、プラスミド、ミニサークルプラスミド、又は閉鎖末端線状ceDNAの形態である、実施形態110~122のいずれかのナノ粒子。
【0389】
124.目的の細胞上の抗原が、卵巣がん細胞、黒色腫細胞、神経膠芽腫細胞、多発性骨髄腫細胞、黒色腫細胞、前立腺がん細胞、乳がん細胞、幹細胞がん細胞、中皮腫細胞、腎細胞癌細胞、膵臓がん細胞、肺がん細胞、胆管細胞癌細胞、膀胱がん細胞、神経芽細胞腫細胞、結腸直腸がん細胞、又はメルケル細胞癌細胞により発現されるがん抗原である、実施形態110~123のいずれかのナノ粒子。
【0390】
125.がん抗原が、B細胞成熟抗原(BCMA)、カルボキシ-アンヒドラーゼ-IX(CAIX)、CD19、CD24、CD56、CD133、CEA、ジシアロガングリオシド、EpCam、EGFR、EGFRバリアントIII(EGFRvIII)、ERBB2、葉酸受容体(FOLR)、GD2、グリピカン-2、HER2、ルイスY、L1-CAM、メソセリン、MUC16、PD-L1、PSMA、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、ROR1、TYRP1/gp75、SV40 T、又はWT-1を含む、実施形態110~124のいずれかのナノ粒子。
【0391】
126.がん抗原に結合する結合ドメインが、抗体アデカツムマブ、アネツマブ、ラブタンシン、アマツキシマブ、HN1、オレゴボマブ、オバレックス、アバゴモマブ、エドレコロマブ、ファルレツズマブ、フランボツマブ、TA99、20D7、セツキシマブ、FMC63、SJ25C1、HD37、R11、R12、2A2、Y31、4D5、3G10、アテゾリズマブ、アベルマブ、若しくはデュルバルマブの相補性決定領域(CDR)を含むか、又はT細胞受容体(TCR)に由来する、実施形態110~125のいずれかのナノ粒子。
【0392】
127.がん抗原に結合する結合ドメインがタンパク質分子である、実施形態110~126のいずれかのナノ粒子。
【0393】
128.ナノ粒子内のヌクレオチドが、異なるがん抗原に結合する結合ドメインを含む異なるタンパク質分子をコードする、実施形態127のナノ粒子。
【0394】
129.異なるがん抗原が同じがんタイプにより発現される、実施形態128のナノ粒子。
【0395】
130.がんタイプが卵巣がん、黒色腫、又は神経膠芽腫である、実施形態129のナノ粒子。
【0396】
131.異なるがん抗原が、
EpCam、L1-CAM、MUC16、葉酸受容体(FOLR)、ルイスY、ROR1、メソセリン、WT-1、PD-L1、EGFR、及びCD56から選択される少なくとも2つのがん抗原;
チロシン関連タンパク質1(TYRP1/gp75);GD2、PD-L1、及びEGFRから選択される少なくとも2つのがん抗原;又はEGFRバリアントIII(EGFRvIII)及びIL13Ra2から選択される2つのがん抗原
を含む、実施形態128~130のいずれかのナノ粒子。
【0397】
132.タンパク質分子の少なくとも1つの結合ドメインが、ウイルス抗原、細菌抗原、スーパーバグ抗原、真菌抗原、又は自己免疫若しくはアレルギー抗原に結合する、実施形態110~131のいずれかのナノ粒子。
【0398】
133.ウイルス抗原が、アデノウイルス、アレナウイルス、ブニヤウイルス、コロナウイルス、フラビウイルス、ハンタウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、オルトミクソウイルス、レトロウイルス、レオウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、海綿状ウイルス又はトガウイルスにより発現され;
細菌抗原が、炭疽菌;グラム陰性杆菌、クラミジア、ジフテリア、ヘモフィリス・インフルエンザ、ヘリコバクターピロリ菌、マラリア、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、百日咳毒素、肺炎球菌、リケッチア、ブドウ球菌、連鎖状球菌又は破傷風により発現され;
スーパーバグ抗原が、エンテロコッカス・フェシウム、クロストリジウム・ディフィシル、アシネトバクター・バウマニ、シュードモナス・エルギノーザ、又はエンテロバクター科により発現され;
真菌抗原が、カンジダ、コクシジオイデス属、クリプトコックス、ヒストプラズマ属、リーシュマニア、プラスモディウム属、原生生物、寄生生物、シストソーマ属、ティニア、トキソプラズマ、又はトリパノソーマ・クルーズにより発現され;
自己免疫又はアレルギー抗原が、急性壊死性出血性脳疾患、アレルギー性喘息、円形脱毛症、貧血症、アフタ性潰瘍、関節炎、喘息、自己免疫性甲状腺炎、結膜炎、クローン病、皮膚エリテマトーデス、皮膚炎、糖尿病、真性糖尿病、らい性結節性紅斑、角結膜炎、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、強皮症、シェーグレン症候群、シェーグレン症候群に続発する乾性角結膜炎を含む、スティーブンスジョンソン症候群、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、膣炎及び/若しくはウェゲナー肉芽腫症を有する対象により発現され;
並びに/又は抗原に対する結合ドメインがTCRに由来する、
実施形態132のナノ粒子。
【0399】
134.タンパク質分子の少なくとも1つの結合ドメインが、T細胞又はナチュラルキラー(NK)細胞により発現される免疫細胞活性化エピトープに結合する、実施形態110~133のいずれかのナノ粒子。
【0400】
135.免疫細胞活性化エピトープがT細胞により発現される、実施形態110~134のいずれかのナノ粒子。
【0401】
136.T細胞により発現される免疫細胞活性化エピトープが、CD2、CD3、CD7、CD8、CD27、CD28、CD30、CD40、CD83、4-1BB、OX40、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、LIGHT、NKG2C、又はB7-H3を含む、実施形態135のナノ粒子。
【0402】
137.T細胞により発現される免疫細胞活性化エピトープが、CD3、CD28、又は4-1BBを含む、実施形態135のナノ粒子。
【0403】
138.免疫細胞活性化エピトープに結合する結合ドメインがタンパク質分子を含む、実施形態110~137のいずれかのナノ粒子。
【0404】
139.ナノ粒子内のヌクレオチドが、異なる免疫細胞活性化エピトープに結合する結合ドメインを含む異なるタンパク質分子をコードする、実施形態138のナノ粒子。
【0405】
140.異なる免疫細胞活性化エピトープが、CD3及びCD28又はCD3及び4-1BBを含む、実施形態139のナノ粒子。
【0406】
141.少なくとも1つの結合ドメインが、抗体OKT3、20G6-F3、4B4-D7、4E7-C9、18F5-H10、TGN1412、9D7、9.3、KOLT-2、15E8、248.23.2、EX5.3D10、OKT8又はSK1のCDRを含む、実施形態110~140のいずれかのナノ粒子。
【0407】
142.免疫細胞活性化エピトープがNK細胞により発現される、実施形態110~134のいずれかのナノ粒子。
【0408】
143.NK細胞により発現される免疫細胞活性化エピトープが、NKG2D、CD8、CD16、KIR2DL4、KIR2DS1、KIR2DS2、KIR3DS1、NKG2C、NKG2E、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80、又はDNAM-1を含む、実施形態142のナノ粒子。
【0409】
144.少なくとも1つの結合ドメインが、抗体5C6、1D11、mAb 33、P44-8、SK1、又は3G8のCDRを含む、実施形態110~143のいずれかのナノ粒子。
【0410】
145.結合ドメインが、タンパク質リンカーを通じて連結されている、実施形態110~144のいずれかのナノ粒子。
【0411】
146.タンパク質リンカーがGly-Serリンカーを含む、実施形態145のナノ粒子。
【0412】
147.タンパク質リンカーがプロリンリッチなリンカーを含む、実施形態145又は146のナノ粒子。
【0413】
148.タンパク質分子が一本鎖可変断片(scFv)を含む、実施形態110~147のいずれかのナノ粒子。
【0414】
149.タンパク質分子が、
CEAに結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;
EGFRに結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;
EpCamに結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;
HER2に結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;
PD-L1に結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;
PSMAに結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;又は
[TYRP1/gp75]に結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン
を含む、実施形態110~148のいずれかのナノ粒子。
【0415】
150.タンパク質分子が、カツマキソマブ、MT110、エルツマキソマブ、MDX-447、MM-141、AMG211、RO6958688、RO6895882、TF2、BAY2010112、AMG701、ソリトマブ、又はブリナツモマブを含む、実施形態149のナノ粒子。
【0416】
151.正電荷ポリマーコアが、1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードするヌクレオチドをさらにカプセル化している、実施形態110~150のいずれかのナノ粒子。
【0417】
152.1つ以上のIRFが機能的自己阻害ドメインを欠く、実施形態151のナノ粒子。
【0418】
153.1つ以上のIRFが機能的核外移行シグナルを欠く、実施形態151又は152のナノ粒子。
【0419】
154.1つ以上のIRFが、IRF1、IRF3、IRF5、IRF7、IRF8及び/又はIRF7とIRF3の融合体から選択される、実施形態151~153のいずれかのナノ粒子。
【0420】
155.1つ以上のIRFが、配列番号1~17に示される配列に対し90%よりも大きい、95%よりも大きい、又は98%よりも大きな同一性を有する配列から選択される、実施形態151~154のいずれかのナノ粒子。
【0421】
156.1つ以上のIRFが、配列番号1~7に示される配列から選択されるIRF5を含む、実施形態151~155のいずれかのナノ粒子。
【0422】
157.IRF5が、S156D、S158D及びT160Dから選択される1つ以上の突然変異を有する配列番号1又は配列番号3に示される配列を含む、実施形態154~156のいずれかのナノ粒子。
【0423】
158.IRF5が、T10D、S158D、S309D、S317D、S451D、及びS462Dから選択される1つ以上の突然変異を有する配列番号2に示される配列を含む、実施形態154~157のいずれかのナノ粒子。
【0424】
159.IRF5が、S425D、S427D、S430D、及びS436Dから選択される1つ以上の突然変異を有する配列番号4に示される配列を含む、実施形態154~158のいずれかのナノ粒子。
【0425】
160.1つ以上のIRFが、配列番号8又は12に示される配列を含むIRF1を含む、実施形態151~159のいずれかのナノ粒子。
【0426】
161.1つ以上のIRFが、配列番号11、16、又は17に示される配列を含むIRF8を含む、実施形態151~160のいずれかのナノ粒子。
【0427】
162.IRF8が、K310R突然変異を有する配列番号11に示される配列を含む、実施形態154~161のいずれかのナノ粒子。
【0428】
163.1つ以上のIRFが、構成的活性ドメインであるN末端IRF7 DNA結合ドメイン、及びC末端IRF3核外移行シグナルを含むIRF7/IRF3融合タンパク質を含む、実施形態151~162のいずれかのナノ粒子。
【0429】
164.IRF7/IRF3融合タンパク質が、配列番号15に示される配列を含む、実施形態163のナノ粒子。
【0430】
165.1つ以上のIRFがIRF4を含む、実施形態151~164のいずれかのナノ粒子。
【0431】
166.ナノ粒子の少なくともサブセットがIKKβをコードするヌクレオチドを含む、実施形態110~165のいずれかのナノ粒子。
【0432】
167.IKKβが、配列番号18~22から選択される配列に示される配列に対し90%よりも大きい、95%よりも大きい、又は98%よりも大きい同一性を有する配列から選択される、実施形態166のナノ粒子。
【0433】
168.IKKβが、配列番号18~22から選択される配列に示される配列を含む、実施形態166又は167のナノ粒子。
【0434】
169.ヌクレオチドが配列番号23~44から選択される配列に示される配列を含む、実施形態166~168のいずれかのナノ粒子。
【0435】
170.1つ以上のIRFをコードするヌクレオチド及びIKKβをコードするヌクレオチドが同じナノ粒子内にカプセル化されている、実施形態166~169のいずれかのナノ粒子。
【0436】
171.1つ以上のIRFをコードするヌクレオチド及びIKKβをコードするヌクレオチドが同じナノ粒子コア内にカプセル化されている、実施形態151~170のいずれかのナノ粒子。
【0437】
172.1つ以上のIRFをコードするヌクレオチド及びIKKβをコードするヌクレオチドが異なるナノ粒子にカプセル化されている、実施形態151~170のいずれかのナノ粒子。
【0438】
173.少なくとも1つ以上の結合ドメインをコードするヌクレオチドが、1つ以上のIRF及び/又はIKKβをコードするヌクレオチドと同じナノ粒子内にカプセル化されている、実施形態151~172のいずれかのナノ粒子。
【0439】
174.少なくとも1つ以上の結合ドメインをコードするヌクレオチドが、1つ以上のIRF及び/又はIKKβをコードするヌクレオチドをカプセル化するナノ粒子とは異なるナノ粒子内にカプセル化されている、実施形態151~172のいずれかのナノ粒子。
【0440】
175.形質転換成長因子ベータ(TGFβ)インヒビターをさらに含む、実施形態110~174のいずれかのナノ粒子。
【0441】
176.TGFβインヒビターが、TGFβインヒビターをコードするヌクレオチドを含む、実施形態175のナノ粒子。
【0442】
177.TGFβインヒビターが、TGFβの活性を抑制する抗体のCDRを含む、実施形態175又は176のナノ粒子。
【0443】
178.TGFβインヒビターが、TGFβの活性を抑制する抗体を含む、実施形態175~177のいずれかのナノ粒子。
【0444】
179.抗体が、トラベデルセン(trabedersen)、ジシテルチド(disitertide)、メテリムマブ、フレソリムマブ、LY2382770、SIX-100、アボタミン(avotermin)、及び/又はIMC-TR1を含む、実施形態177又は178のナノ粒子。
【0445】
180.ナノ粒子が、グルココルチコイド誘導ロイシンジッパー(GILZ)をコードするヌクレオチドをさらに含む、実施形態110~179のいずれかのナノ粒子。
【0446】
181.ナノ粒子が、p53、RB、BRCA1、E1A、bcl-2、MDR-1、p21、p16、bax、bcl-xs、E2F、IGF-I VEGF、アンギオスタチン(angiostatin)、オンコスタチン(oncostatin)、エンドスタチン(endostatin)、GM-CSF、IL-12、IL-2、IL-4、IL-7、IFN-γ、TNFα及び/又はHSV-tkから選択される抗がん遺伝子を含むヌクレオチドをさらに含む、実施形態110~180のいずれかのナノ粒子。
【0447】
182.ナノ粒子の少なくともサブセットが、1つ以上のインターフェロン制御因子(IRF)をコードするヌクレオチドを含み、
ナノ粒子の少なくともサブセットが、少なくとも2つの結合ドメインを有するタンパク質分子をコードするヌクレオチドを含み、
1つの結合ドメインが、治療部位で目的の細胞により発現される抗原に結合し、
1つの結合ドメインが、免疫細胞活性化エピトープに結合する、
ナノ粒子を含むシステム。
【0448】
183.目的の細胞が、がん細胞、感染細胞、自己反応性細胞、又は原核細胞である、実施形態182のシステム。
【0449】
184.目的の細胞ががん細胞であり治療部位が腫瘍部位である、実施形態182又は183のシステム。
【0450】
185.ナノ粒子が130nm未満である、実施形態182~184のいずれかのシステム。
【0451】
186.ナノ粒子が、正電荷コア及びコアの外部表面上に中性又は負電荷被覆を含む、実施形態182~185のいずれかのシステム。
【0452】
187.正電荷コアが、正電荷脂質及び/又は正電荷ポリマーを含む、実施形態186のシステム。
【0453】
188.正電荷ポリマーが、ポリ(β-アミノエステル)、ポリ(L-リジン)、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、ポリ(アミドアミン)デンドリマー(PAMAM)、ポリ(アミン-コ-エステル)、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)(PDMAEMA)、キトサン、ポリ(L-ラクチド-コ-L-リジン)、ポリ[α-(4-アミノブチル)-L-グリコール酸](PAGA)、又はポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)(PHP)を含む、実施形態186又は187のシステム。
【0454】
189.正電荷ポリマーがポリ(β-アミノエステル)を含む、実施形態186~188のいずれかのシステム。
【0455】
190.中性又は負電荷被覆が、ポリグルタミン酸(PGA)、ポリ(アクリル酸)、アルギン酸、又はコレステリルヘミスクシナート/1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンを含む、実施形態186~189のいずれかのシステム。
【0456】
191.中性又は負電荷被覆がポリグルタミン酸(PGA)を含む、実施形態186~190のいずれかのシステム。
【0457】
192.中性又は負電荷被覆が双性イオンポリマーを含む、実施形態186~191のいずれかのシステム。
【0458】
193.中性又は負電荷被覆がリポソームを含む、実施形態186~192のいずれかのシステム。
【0459】
194.リポソームが、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTMA)、3β-[N-(N’、N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)、ジオクタデシル-アミドグリシルスペルミン(DOGS)、コレステロール、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、又は1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)を含む、実施形態193のシステム。
【0460】
195.ヌクレオチドがリボ核酸(RNA)を含む、実施形態182~194のいずれかのシステム。
【0461】
196.RNAが合成RNAを含む、実施形態195のシステム。
【0462】
197.RNAがインビトロ転写mRNAを含む、実施形態195又は196のシステム。
【0463】
198.ヌクレオチドが組み込み又は非組み込み二本鎖DNAを含む、実施形態182~197のいずれかのシステム。
【0464】
199.ヌクレオチドが、プラスミド、ミニサークルプラスミド、又は閉鎖末端線状ceDNAの形態である、実施形態182~198のいずれかのシステム。
【0465】
200.ヌクレオチドが正電荷コア内にカプセル化されている、実施形態182~199のいずれかのシステム。
【0466】
201.1つ以上のIRFが機能的自己阻害ドメインを欠く、実施形態182~200のいずれかのシステム。
【0467】
202.1つ以上のIRFが機能的核外移行シグナルを欠く、実施形態182~201のいずれかのシステム。
【0468】
203.1つ以上のIRFが、IRF1、IRF3、IRF5、IRF7、IRF8及び/又はIRF7とIRF3の融合体から選択される、実施形態182~202のいずれかのシステム。
【0469】
204.1つ以上のIRFが、配列番号1~17に示される配列に対し90%よりも大きい、95%よりも大きい、又は98%よりも大きな同一性を有する配列から選択される、実施形態182~203のいずれかのシステム。
【0470】
205.1つ以上のIRFが、配列番号1~7に示される配列から選択されるIRF5を含む、実施形態182~204のいずれかのシステム。
【0471】
206.IRF5が、S156D、S158D及びT160Dから選択される1つ以上の突然変異を有する配列番号1又は配列番号3に示される配列を含む、実施形態205のシステム。
【0472】
207.IRF5が、T10D、S158D、S309D、S317D、S451D、及びS462Dから選択される1つ以上の突然変異を有する配列番号2に示される配列を含む、実施形態205又は206のシステム。
【0473】
208.IRF5が、S425D、S427D、S430D、及びS436Dから選択される1つ以上の突然変異を有する配列番号4に示される配列を含む、実施形態205~207のいずれかのシステム。
【0474】
209.1つ以上のIRFが、配列番号8又は12に示される配列を含むIRF1を含む、実施形態182~208のいずれかのシステム。
【0475】
210.1つ以上のIRFが、配列番号11、16、又は17に示される配列を含むIRF8を含む、実施形態182~209のいずれかのシステム。
【0476】
211.IRF8が、K310R突然変異を有する配列番号11に示される配列を含む、実施形態182~210のいずれかのシステム。
【0477】
212.1つ以上のIRFが、構成的活性ドメインであるN末端IRF7 DNA結合ドメイン、及びC末端IRF3核外移行シグナルを含むIRF7/IRF3融合タンパク質を含む、実施形態182~211のいずれかのシステム。
【0478】
213.IRF7/IRF3融合タンパク質が、配列番号15に示される配列を含む、実施形態212のシステム。
【0479】
214.1つ以上のIRFがIRF4を含む、実施形態182~213のいずれかのシステム。
【0480】
215.ナノ粒子の少なくともサブセットがIKKβをコードするヌクレオチドを含む、実施形態182~214のいずれかのシステム。
【0481】
216.IKKβが、配列番号18~22から選択される配列に示される配列に対し90%よりも大きい、95%よりも大きい、又は98%よりも大きい同一性を有する配列から選択される、実施形態215のシステム。
【0482】
217.IKKβが、配列番号18~22から選択される配列に示される配列を含む、実施形態215又は216のシステム。
【0483】
218.ヌクレオチドが、配列番号23~44から選択される配列に示される配列を含む、実施形態182~217のいずれかのシステム。
【0484】
219.1つ以上のIRFをコードするヌクレオチド及びIKKβをコードするヌクレオチドが同じナノ粒子内にカプセル化されている、実施形態182~218のいずれかのシステム。
【0485】
220.1つ以上のIRFをコードするヌクレオチド及びIKKβをコードするヌクレオチドが同じナノ粒子コア内にカプセル化されている、実施形態219のシステム。
【0486】
221.1つ以上のIRFをコードするヌクレオチド及びIKKβをコードするヌクレオチドが異なるナノ粒子にカプセル化されている、実施形態182~218のいずれかのシステム。
【0487】
222.タンパク質分子の少なくとも1つの結合ドメインが、卵巣がん細胞、黒色腫細胞、神経膠芽腫細胞、多発性骨髄腫細胞、黒色腫細胞、前立腺がん細胞、乳がん細胞、幹細胞がん細胞、中皮腫細胞、腎細胞癌細胞、膵臓がん細胞、肺がん細胞、胆管細胞癌細胞、膀胱がん細胞、神経芽細胞腫細胞、結腸直腸がん細胞、又はメルケル細胞癌細胞により発現されるがん抗原に結合する、実施形態182~221のいずれかのシステム。
【0488】
223.がん抗原が、B細胞成熟抗原(BCMA)、カルボキシ-アンヒドラーゼ-IX(CAIX)、CD19、CD24、CD56、CD133、CEA、ジシアロガングリオシド、EpCam、EGFR、EGFRバリアントIII(EGFRvIII)、ERBB2、葉酸受容体(FOLR)、GD2、グリピカン-2、HER2、ルイスY、L1-CAM、メソセリン、MUC16、PD-L1、PSMA、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、ROR1、TYRP1/gp75、SV40 T、又はWT-1を含む、実施形態222のシステム。
【0489】
224.タンパク質分子の少なくとも1つの結合ドメインが、抗体アデカトゥマブ、アネツマブ、ラブタンシン、アマツキシマブ、HN1、オレゴボマブ、オバレックス、アバゴモマブ、エドレコロマブ、ファルレツズマブ、フランボツマブ、TA99、20D7、セツキシマブ、FMC63、SJ25C1、HD37、R11、R12、2A2、Y31、4D5、3G10、アテゾリズマブ、アベルマブ、若しくはデュルバルマブの相補性決定領域(CDR)又はTCRを含む、実施形態182~223のいずれかのシステム。
【0490】
225.システム内の異なるタンパク質分子が、異なるがん抗原に結合する結合ドメインを含む、実施形態182~224のいずれかのシステム。
【0491】
226.異なるがん抗原が同じがんタイプにより発現される、実施形態225のシステム。
【0492】
227.がんタイプが卵巣がん、黒色腫、又は神経膠芽腫である、実施形態226のシステム。
【0493】
228.異なるがん抗原が、
EpCam、L1-CAM、MUC16、葉酸受容体(FOLR)、ルイスY、ROR1、メソセリン、WT-1、PD-L1、EGFR、及びCD56から選択される少なくとも2つのがん抗原;
チロシン関連タンパク質1(TYRP1/gp75);GD2、PD-L1、及びEGFRから選択される少なくとも2つのがん抗原;又は
EGFRバリアントIII(EGFRvIII)及びIL13Ra2から選択される2つのがん抗原
を含む、実施形態225~227のいずれかのシステム。
【0494】
229.タンパク質分子の少なくとも1つの結合ドメインが、ウイルス抗原、細菌抗原、スーパーバグ抗原、真菌抗原、又は自己免疫若しくはアレルギー抗原に結合する、実施形態182~228のいずれかのシステム。
【0495】
230.ウイルス抗原が、アデノウイルス、アレナウイルス、ブニヤウイルス、コロナウイルス、フラビウイルス、ハンタウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、オルトミクソウイルス、レトロウイルス、レオウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、海綿状ウイルス又はトガウイルスにより発現され;
細菌抗原が、炭疽菌;グラム陰性杆菌、クラミジア、ジフテリア、ヘモフィリス・インフルエンザ、ヘリコバクターピロリ菌、マラリア、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、百日咳毒素、肺炎球菌、リケッチア、ブドウ球菌、連鎖状球菌又は破傷風により発現され;
スーパーバグ抗原が、エンテロコッカス・フェシウム、クロストリジウム・ディフィシル、アシネトバクター・バウマニ、シュードモナス・エルギノーザ、又はエンテロバクター科により発現され;
真菌抗原が、カンジダ、コクシジオイデス属、クリプトコックス、ヒストプラズマ属、リーシュマニア、プラスモディウム属、原生生物、寄生生物、シストソーマ属、ティニア、トキソプラズマ、又はトリパノソーマ・クルーズにより発現され;
自己免疫又はアレルギー抗原が、急性壊死性出血性脳疾患、アレルギー性喘息、円形脱毛症、貧血症、アフタ性潰瘍、関節炎、喘息、自己免疫性甲状腺炎、結膜炎、クローン病、皮膚エリテマトーデス、皮膚炎、糖尿病、真性糖尿病、らい性結節性紅斑、角結膜炎、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、強皮症、シェーグレン症候群、シェーグレン症候群に続発する乾性角結膜炎を含む、スティーブンスジョンソン症候群、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、膣炎及び/若しくはウェゲナー肉芽腫症を有する対象により発現される;
実施形態229のシステム。
【0496】
231.タンパク質分子の少なくとも1つの結合ドメインが、T細胞又はナチュラルキラー細胞により発現される免疫細胞活性化エピトープに結合する、実施形態182~230のいずれかのシステム。
【0497】
232.免疫細胞活性化エピトープがT細胞により発現される、実施形態231のシステム。
【0498】
233.T細胞により発現される免疫細胞活性化エピトープが、CD2、CD3、CD7、CD8、CD27、CD28、CD30、CD40、CD83、4-1BB、OX40、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、LIGHT、NKG2C、又はB7-H3を含む、実施形態232のシステム。
【0499】
234.T細胞により発現される免疫細胞活性化エピトープが、CD3、CD28、又は4-1BBを含む、実施形態233のシステム。
【0500】
235.システム内の異なるタンパク質分子が、異なる免疫細胞活性化エピトープに結合する結合ドメインを含む、実施形態182~234のいずれかのシステム。
【0501】
236.異なる免疫細胞活性化エピトープが、CD3及びCD28又はCD3及び4-1BBを含む、実施形態235のシステム。
【0502】
237.少なくとも1つの結合ドメインが、抗体OKT3、20G6-F3、4B4-D7、4E7-C9、18F5-H10、TGN1412、9D7、9.3、KOLT-2、15E8、248.23.2、EX5.3D10、OKT8又はSK1のCDRを含む、実施形態182~236のいずれかのシステム。
【0503】
238.免疫細胞活性化エピトープがNK細胞により発現される、実施形態231のシステム。
【0504】
239.NK細胞により発現される免疫細胞活性化エピトープが、NKG2D、CD8、CD16、KIR2DL4、KIR2DS1、KIR2DS2、KIR3DS1、NKG2C、NKG2E、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80、又はDNAM-1を含む、実施形態238のシステム。
【0505】
240.少なくとも1つの結合ドメインが、抗体5C6、1D11、mAb 33、P44-8、SK1、又は3G8のCDRを含む、実施形態182~239のいずれかのシステム。
【0506】
241.タンパク質分子の結合ドメインが、タンパク質リンカーを通じて連結されている、実施形態182~240のいずれかのシステム。
【0507】
242.タンパク質リンカーがGly-Serリンカーを含む、実施形態241のシステム。
【0508】
243.タンパク質リンカーがプロリンリッチなリンカーを含む、実施形態241又は242のシステム。
【0509】
244.タンパク質分子が一本鎖可変断片(scFv)を含む、実施形態182~243のいずれかのシステム。
【0510】
245.タンパク質分子が、
CEAに結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;
EGFRに結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;
EpCamに結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;
HER2に結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;
PD-L1に結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;
PSMAに結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン;又は
[TYRP1/gp75]に結合する少なくとも1つの結合ドメイン、及びCD3、CD28、又は4-1BBに結合する少なくとも1つの結合ドメイン
を含む、実施形態182~244のいずれかのシステム。
【0511】
246.タンパク質分子が、カツマキソマブ、MT110、エルツマキソマブ、MDX-447、MM-141、AMG211、RO6958688、RO6895882、TF2、BAY2010112、AMG701、ソリトマブ、又はブリナツモマブを含む、実施形態182~245のいずれかのシステム。
【0512】
247.少なくとも2つの結合ドメインをコードするヌクレオチドが、1つ以上のIRF及び/又はIKKβをコードするヌクレオチドと同じナノ粒子内にカプセル化されている、実施形態182~246のいずれかのシステム。
【0513】
248.少なくとも2つの結合ドメインをコードするヌクレオチドが、1つ以上のIRF及び/又はIKKβをコードするヌクレオチドと同じナノ粒子コア内にカプセル化されている、実施形態247のシステム。
【0514】
249.少なくとも2つの結合ドメインをコードするヌクレオチドが、1つ以上のIRF及び/又はIKKβをコードするヌクレオチドをカプセル化するナノ粒子とは異なるナノ粒子内にカプセル化されている、実施形態182~246のいずれかのシステム。
【0515】
250.形質転換成長因子ベータ(TGFβ)インヒビターをさらに含む、実施形態182~249のいずれかのシステム。
【0516】
251.TGFβインヒビターが、TGFβインヒビターをコードするヌクレオチドを含む、実施形態250のシステム。
【0517】
252.TGFβインヒビターが、TGFβの活性を抑制する抗体のCDRを含む、実施形態250又は251のシステム。
【0518】
253.TGFβインヒビターが、TGFβの活性を抑制する抗体を含む、実施形態250~252のいずれかのシステム。
【0519】
254.抗体が、トラベデルセン、ジシテルチド、メテリムマブ、フレソリムマブ、LY2382770、SIX-100、アボタミン、及び/又はIMC-TR1を含む、実施形態252又は253のシステム。
【0520】
255.ナノ粒子が、グルココルチコイド誘導ロイシンジッパー(GILZ)をコードするヌクレオチドをさらに含む、実施形態182~254のいずれかのシステム。
【0521】
256.ナノ粒子が、p53、RB、BRCA1、E1A、bcl-2、MDR-1、p21、p16、bax、bcl-xs、E2F、IGF-I VEGF、アンギオスタチン、オンコスタチン、エンドスタチン、GM-CSF、IL-12、IL-2、IL-4、IL-7、IFN-γ、TNFα及び/又はHSV-tkから選択される抗がん遺伝子を含むヌクレオチドをさらに含む、実施形態182~255のいずれかのシステム。
【0522】
257.薬学的に許容される担体をさらに含む、実施形態182~256のいずれかのシステム。
【0523】
258.実施形態182~257のいずれかのシステムのヌクレオチドを発現するように遺伝的に改変された単球又はマクロファージ。
【0524】
259.対象内の治療部位でマクロファージ活性化状態を調節し、免疫細胞を治療部位に動員し、動員された免疫細胞を活性化する方法であって、実施形態182~257のいずれかのシステムを対象に投与し、それによって対象内の治療部位でマクロファージ活性化状態を調節し、免疫細胞を治療部位に動員し、動員された免疫細胞を活性化することを含む、方法。
【0525】
260.治療部位が腫瘍部位である、実施形態259の方法。
【0526】
261.投与が静脈内投与を含み、ナノ粒子が血流内の単球により取り込まれる、実施形態259又は260の方法。
【0527】
262.単球が腫瘍部位に遊走してマクロファージに分化する、実施形態261の方法。
【0528】
263.分化したマクロファージが腫瘍抑制に対して抵抗性である、実施形態262の方法。
【0529】
264.投与が腫瘍部位での局所的投与を含み、ナノ粒子が腫瘍関連マクロファージ(TAM)により取り込まれる、実施形態259~263のいずれかの方法。
【0530】
265.局所的投与が、腹腔内投与又は脳内投与を含む、実施形態264の方法。
【0531】
266.TAMが、抑制状態から活性化状態へ表現型転換を受ける、実施形態264又は265の方法。
【0532】
267.腫瘍部位が、卵巣がん腫瘍部位、神経膠芽腫腫瘍部位、又は黒色腫がん腫瘍部位を含む、実施形態264~266のいずれかの方法。
【0533】
268.動員され活性化された免疫細胞がT細胞又はNK細胞である、実施形態259~267のいずれかの方法。
【0534】
269.少なくとも2つの結合ドメインをコードするヌクレオチドを含むナノ粒子を投与する前に、1つ以上のIRFをコードするヌクレオチドを含むナノ粒子を投与することを含む、実施形態259~268のいずれかの方法。
【0535】
270.少なくとも2つの結合ドメインをコードするヌクレオチドを含むナノ粒子を投与する少なくとも24時間前に、1つ以上のIRFをコードする核酸を含むナノ粒子を投与することを含む、実施形態259~269のいずれかの方法。
【実施例】
【0536】
(12)実験的実施例。
[実施例1] 材料及び方法。PbAE合成。ポリマーを合成するのに使用する方法はすでに記載されていた(Mangraviti Aら、(2015)ACS Nano 9:1236~1249頁)。1,4-ブタンジオールジアクリレートは、ジアクリレート対アミン単量体の1対1モル比で4-アミノ-1-ブタノールと組み合わせた。アクリレート端末ポリ(4-アミノ-1-ブタノール-1,4-ブタンジオールジアクリレート共重合体)は、混合物を24時間攪拌しながら90℃まで加熱することにより形成した。このポリマーの2.3gを2mLのテトラヒドロフラン(THF)に溶解した。ピペラジンキャップド447ポリマーを形成するため、13mLのTHF中786gの1-(3-アミノプロピル)-4-メチルピペラジンをポリマー/THF溶液に添加し、室温(RT)で2時間攪拌した。キャップドポリマーは5容積のジエチルエーテルで沈澱させ、2容積の新しいエーテルで洗浄し、1日真空下で乾燥させた。純ポリマーはジメチルスルホキシド(DMSO)に100mg/mLの濃度まで溶解し、-20℃で保存した。
【0537】
ジマンノースへのPGAコンジュゲーション。α-D-マンノピラノシル-(1→2)-α-D-マンノピラノース(Di-mannose、Omicron Biochemicals Inc.)をポリグルタミン酸(PGA)にコンジュゲートする前にグルコシルアミンに改変した。先ず、ジマンノース(157mg)を10.5mLの飽和水性炭酸アンモニウムに溶解し、室温で24時間攪拌した。2日目、さらに多くの固体炭酸アンモニウムを、ジマンノースが反応液から沈澱するまで添加した。混合物はTLCにより測定した場合、完了するまで攪拌し、続いて凍結乾燥して過剰な炭酸アンモニウムを取り除いた。揮発性塩の完全な除去は、固体をメタノールに再溶解することにより達成した。これらの手順により、今後のPGAとのコンジュゲーションのためにアノマー炭素上にアミンが作り出された。
【0538】
アミノ化ジマンノースをPGAにコンジュゲートするため、基質を30mg/mLまで水に溶解し、次に10分間超音波処理した。水中エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・HCL(4mg/mL、30当量)を、室温で4分間混合しながら添加した。水中N-ヒドロキシスルホスクシンイミド(30mg/mL、35当量)を、PGA/EDC液と一緒に1分間インキュベートした。リン酸緩衝食塩水(PBS)中アミノ化ジマンノースは、得られた活性化PGAと44対1のモル比で組み合わせ、室温で6時間混合した。過剰な試薬は、24時間水に対して透析することにより取り除いた。
【0539】
mRNA合成.eGFP、IRF5、及びIKK(TriLink Biotechnologies)についてのコドン最適化mRNAは、アンチリバースキャップアナログ3’-O-Me-m7G(5’)ppp(5’)G(ARCA)でキャップし、修飾リボヌクレオチドプソイドウリジン(ψ)及び5-メチルシチジン(m5C)で完全に置換した。
【0540】
ナノ粒子調製。IRF5及びIKKβ mRNAは3対1(w対w)比で組み合わせ、25mMの酢酸ナトリウム(NaOAc)バッファー(pH=5.2)中100μg/mLまで希釈した。DMSO(上記の通り調製)中ポリ(β-アミノアステル)-447(PbAE-447)ポリマーを、やはりNaOAcバッファー中100μg/μLから6μg/μLまで希釈した。ナノ粒子を形成するため、PbAE-447ポリマーを60対1(w対w)の比でmRNAに添加し、直ちに中速度で15秒間ボルテックスし、次に混合物は室温で5分間インキュベートして、PbAE-mRNAポリプレックスを形成させた。次のステップにおいて、NaOAcバッファー中100μg/mLのPGA/ジマンノースをポリプレックス溶液に添加し、中速度で15秒間ボルテックスし、室温で5分間インキュベートした。この工程において、PGA/ジマンノースがPbAE-mRNAポリプレックスの表面を被覆して最終NPを形成した。長期貯蔵のため、D-スクロース(60mg/mL)を凍結保護物質としてNP溶液に添加した。ナノ粒子はドライアイスで瞬間凍結し、次に凍結乾燥した。乾燥NPは使用するまで-20℃又は-80℃で貯蔵した。インビボ実験において、凍結乾燥したNPは1対20(w対v)比で水に再懸濁した。
【0541】
ナノ粒子サイズ分布及びζ電位の特徴付け。NPの物理化学的特性(流体力学半径、多分散、ζ電位及び安定性を含む)は、25℃でZetapals器具(Brookhaven Instrument Corporation)を使用して特徴付けた。動的光散乱に基づいて流体力学半径及び多分散を測定するため、NPを25mMのNaOAc(pH=5.2)中に5倍希釈した。ζ電位を測定するため、NPを10mMのPBS(pH=7.0)に10倍希釈した。NPの安定性を評価するため、新たに調製したナノ粒子を10mMのPBSバッファー(pH=7.4)に希釈した。NPの流体力学半径及び多分散は10分ごとに5時間測定し、そのサイズ及び粒子濃度は、Nanosite 300 instrument(Malvern)を使用して粒子トラッキング解析から導き出した。透過型電子顕微鏡を使用してNPを特徴付けるため、以前記載されたプロトコールに従った(Smith TTら、(2017)Nat Nanotechnol 12:813~820頁)。新たに作成したNP(0.83μgのmRNAを含有する25μL)を、グロー放電処理200メッシュ炭素/Formvar被覆銅グリッド上に沈着させた。30秒後、グリッドは、50%のKarnovsky定着液、0.1Mのカコジル酸バッファー、dH2O、次に1%(w/v)酢酸ウラニルで順次処理した。試料は、120kVで作動するJEOL JEM-1400透過型電子顕微鏡(JEOL USA)で撮像した。
【0542】
骨髄由来マクロファージ(BMDM)及び他の細胞株。BMDMを調製するため、確立したプロトコール(Zhang Xら、(2008)Curr Protoc Immunol Chapter 14:Unit 14 11)に従って骨髄前駆細胞をマウス大腿骨から収集した。これらの細胞は完全培地[4.5g/LのD-グルコース、L-グルタミン、10%の熱失活ウシ胎仔血清(FBS)、100U/mLのペニシリンを補充したDMEM、及び20ng/mLのM-CSF(Peprotech、カタログ#315-02)を補充した、100μg/mL、Glutamax50mL/500mL]において播種密度0.5~1.0 e6/mlで培養した。細胞は、エクスビボで7日間、5%CO2下、37℃でBMDM中に分化させておいた。次に、細胞は、マクロファージ条件付け培地[20ng/mLのMPLA(Sigma、カタログ#L6895)又は20ng/mLのIL4(eBiosience、カタログ#34-8041)を補充したマクロファージ完全培地]で条件付けした。BMDMはエクスビボで7~21日間使用した。マウス卵巣がん細胞株ID8は、Dr.Katherine Roby(University of Kansas Medical Center、Kansas City、KS)からの寄贈であるが、10% FBS、100U/mLのペニシリン、5μg/mLのインスリン、5μg/mLのトランスフェリン、及び5ng/mLの亜セレン酸ナトリウム(すべてSigma-Aldrich)を補充したDMEMにおいて培養した。より侵襲性の血管内皮増殖因子(VEGF)発現ID8株を作成するため、ID8腫瘍細胞に、マウスVEGFをブラストサイジン耐性遺伝子と一緒にコードするpUNO1プラスミド(Invivogen)をトランスフェクトした。安定なトランスフェクタントを得るため、腫瘍細胞は、10μg/mLのブラストサイジン(Invivogen)を含有する完全培地において3週間培養した。B16F10黒色腫細胞株(アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関)を、10%のFBS、100U/mLのペニシリン、2mM/L-グルタミン、1.5g/L炭酸水素ナトリウム、4.5g/Lグルコース、10mMのHEPES、1.0mMのピルビン酸ナトリウム、及び0.05mMの2-メルカプトエタノールを有する完全RPMI 1640培地において培養した。インビボ生物発光イメージングにおいて、ID8-VEGFとB16F10細胞株の両方にホタルルシフェラーゼをレトロウイルス性に形質導入した。RACS-PDGFβ又はRCAS-creレトロウイルスを担持するDF-1細胞株は、10%のFBS及び100U/mLのペニシリンを補充した完全培地において5%のCO2下、39℃で培養した。
【0543】
BMDMのmRNAトランスフェクション。トランスフェクションに1日先立って、BMDMは、マクロファージ完全培地において24ウェルプレート上に250,000/ウェルの濃度で再播種した。トランスフェクション前、完全培地は300μLの非補充DMEMで置き換えた。これらの細胞にトランスフェクトするため、2μgのmRNAを含有するNPを基本培地中に添加し、37℃でBMDMと共培養した。1時間後、NPを含有する培地は取り除き、細胞は、トランスフェクション効率及び細胞生存率を評価する前にさらに24時間培養した。
【0544】
マクロファージシグネチャー遺伝子分析のためのBMDMのトランスフェクション。BMDMはトランスフェクション24時間前に条件付け培地で24ウェルプレート上に再播種し、細胞をその表現型に形質転換させておいた。次に、上記のトランスフェクションプロトコールに従って、M2様マクロファージを、レポーターとして25%のeGFP mRNAを担持するIRF5/IKKβ NP又は2μgのmRNAを担持するeGFP NP(対照)に曝露した。24時間後、高度にトランスフェクトしたBMDMの上から10%(eGFP発現により測定した)をトランスフェクション後24時間で選別し、RNA単離前さらに48時間、低用量(10ng/mL)IL4培地において再チャレンジした。これらの細胞から抽出されたRNAは、IRF5-NP治療に関連するシグネチャー遺伝子を同定できるように、標準M1又はM2様マクロファージ由来のRNAと比較した。
【0545】
RNA単離及び調製。RNAを収集するため、BMDMはTrizol試薬(Ambion)に溶解し、全RNAを抽出して、RNeasy(登録商標)Plus Universal Mini-Kits(QIAGEN)を製造業者の使用説明書に従って使用して精製した。試料RNAは、NanoDrop Microvolume分光光度計(Thermo Fisher)を使用して定量化し、次にAgilent 4200 TapeStation分析器(Agilent)でFHCRCゲノム共用資源により実施される品質管理を受けさせた。
【0546】
ナノストリング技術によるマクロファージシグネチャー遺伝子分析。刺激を受けたBMDM培養物からの遺伝子発現値は、nCounter(登録商標)骨髄自然免疫パネル(NanoString Technologies、Seattle、WA)を使用して測定し、この装置は19の異なる経路に存在する770の遺伝子を分析し、7つの異なる骨髄細胞型にわたり遺伝子を処理する。試料は、nCounter分析システム(NanoString Technologies、Seattle、WA)を使用して試験した。生データは、R/Bioconductor NanoStringQCProソフトウェアパッケージ(Nickles D、Sandmann T、Ziman R and Bourgon R(2018)NanoStringQCPro:Quality metrics and data processing methods for NanoString mRNA gene expression data.R package version 1.10.0.)を使用して処理し、品質について点検した。発現値は、ハウスキーピング遺伝子の幾何平均に正規化され、nSolver 4.0ソフトウェア(NanoString Technologies、Seattle、WA)を使用してlog2変換した。比例データについての偽陽性率は、Benjamini-Yekutieli法を使用するt-検定により戻されたp値から計算した。
【0547】
フローサイトメトリー及び細胞選別。脾臓、血液、腹膜灌流、及び気管支肺胞洗浄から得た細胞は、
図9に収載されている抗マウス抗体プローブを使用して骨髄及びリンパ系免疫表現型検査パネルでフローサイトメトリーにより分析した。データは、FACSDIVAソフトウェア(Beckton Dickinson)を実行するBD LSRFortessa分析器を使用して収集した。CD11b+及びF4/80+腹腔マクロファージは、BD FACS ARIA IIを使用して選別した。収集したデータはすべてFlowJo 10.0ソフトウェアを使用して解析した。
【0548】
サイトカイン分析。サイトカインレベルは、FHCRC免疫モニタリング共用資源センターでLuminex 200システム(Luminex)を使用して評価した。エクスビボ研究において、細胞培養上澄みを、IL-6、IL-12p70、INFγ、及びTNFα濃度の測定のために収集した。インビボ研究において、GM-CSF、INFγ、IL-12p70、IL-2、IL-6、及びTNFαの血漿濃度を測定した。
【0549】
qRT-PCR分析。遺伝子発現レベルはqRT-PCRにより決定した。選択されたマクロファージシグネチャー遺伝子(セルピンB2、Retnla、Ccl5、Ccl11、コドン最適化IRF5、内在性IRF5、及びハウスキーピングGAPD遺伝子)を測定するため、全RNAはRNeasy mini-columns(Qiagen)を製造業者の使用説明書に従って用いて単離した。cDNAは、qScript cDNA合成キット(Quanta)を使用して合成した。試料ごとに、RocheのUniversal Probe Library(UPL)由来の遺伝子特異的プローブ及びProbeFinder(Roche)により最適化されたPCRプライマーを使用するPerfeCTa qPCR SuperMix Low ROX(Quanta)を経て3通りに実施した:セルピンB2、UPL-049、F-ACTGGGGCAGTTATGACAGG(配列番号96)、R-GATGATCGGCCACAAACTG(配列番号97);Retnla、UPL-078、F-TTGTTCCCTTCTCATCTGCAT(配列番号98)、R-CCTTGACCTTATTCTCCACGA(配列番号99);Ccl5、UPL-105、F-CCTACTCCCACTCGGTCCT(配列番号100)、R-CTGATTTCTTGGGTTTGCTGT(配列番号101);Ccl11、UPL-018、F-AGAGCTCCACAGCGCTTC(配列番号102)、R-CAGCACCTGGGAGGTGAA(配列番号103);コドン最適化IRF5、UPL-022、F-TCTTAAAGACCACATGGTAGAACAGT(配列番号104)、R-AGCTGCTGTTGGGATTGC(配列番号105);内在性IRF5、UPL-011、F-GCTGTGCCCTTAACAAAAGC(配列番号106)、R-GGCTGAGGTGGCATGTCT(配列番号107)。シグネチャー遺伝子mRNAレベルは、GAPD、UPL-060、F-AGCCACATCGCTCAGACAC(配列番号108)及びR-GCCCAATACGACCAAATCC(配列番号109)の増幅に基づいて正規化した。qRT-PCR反応はすべて、QuantStudio6ソフトウェア(Applied Biosystems)を実行するQuant Studio5 RT-PCR装置を使用して実施した。増幅プロットが閾値を通過せずCt値が得られない(「未決定の」)場合、アッセイでの最高のサイクル数(40サイクル)に等しいCt値を相対的発現の比較のために使用した。
【0550】
マウス及びインビボ腫瘍モデル。脳腫瘍モデル関連の実験を除いて、これらの実験で使用するマウスはJackson Laboratoryから入手し、その他のマウスはFHCRC動物施設で繁殖させ収容した。マウスはすべて、センターの動物実験委員会が承認したプロトコールに照らして使用した。卵巣腫瘍をモデル化するため、5×106の血管内皮細胞成長因子(VEGFP)発現ID8細胞を、生後4~6週間のメスのアルビノB6(C57BL/6J-Tyr<c-2J>)マウスの腹腔内(i.p.)に注射し、2週間確立させておいた。生存研究に関して、動物は、50μgのmRNAを担持するIRF5 NP/eGFP NPでi.p.治療した(9週間の間、週当たり2用量で、又は健康な状態が安楽死要件に達するまで)。機序研究に関して、1、2、又は3週間の治療を使用し、続いて、最後の用量に続く48時間で安楽死させた。腹膜灌流を実施して腹腔細胞を収集した。IRF5/IKKβ NPと現状のマクロファージターゲティング療法の効率を比べるため、マウスの1つの群は、週当たり2用量で3週間の間、50μgのmRNAを担持するIRF5/IKKβ NPでの治療を受け、第2の群は、3週間毎日、溶媒(ポリエチレングリコール400中5%の1-メチル-2-ピロリジノン)で処方した15mg/kgのPI3Kγ阻害剤IPI-594(MedKoo Biosciences Inc)の経口投与を受け;第3の群は、3週間毎日、同じ溶媒で処方した30mg/kgのCSF1R阻害剤ペキシダルチニブ(PLX3397、MedKoo Biosciences Inc)のi.p.注射を受けた。
【0551】
転移性肺がんをモデル化するため、F-lucを形質導入し200μLのRPMI培養液に懸濁された2.5×104の16F10細胞を、生後4~6週間のメスのアルビノB6(C57BL/6J-Tyr<c-2J>)マウス(Jackson Laboratories)に注射し、1週間確立させておいた。生存研究に関して、マウスは、PBS中に懸濁された30μgのmRNAを担持するIRF5/IKKβ又はeGFP NPで(又はなしで)後眼窩に治療した。マウスは、3週間の間、週当たり3用量で、又は健康な状態が安楽死要件に達するまで治療した。機序研究に関して、マウスは2週間、同じ治療を受けた。気管支肺胞洗浄を実施して分析のために肺胞細胞を収集した。
【0552】
神経膠腫を抱えたマウスを、公表されているプロトコール(Uhrbom Lら、(2004)Nat Med 10:1257~1260頁)に従って作成した。RCAS-PDGFβ及びRCAS-creレトロウイルスを産出しているトリDF-1細胞を、生後4~6週間でNestin-tv-a/Ink4a-arf-/-;Pten-/-マウス(C57BL/6)の両方の脳半球(座標:前頂から1mm尾側、2mm側部、硬膜表面から2mmの深さ)の頭蓋内に注射した。腫瘍は2週間確立させておいた。15日目、マウスは1つの半球に10Gyの放射線を受け、その間未照射半球は鉛で遮蔽した。次の日、マウスは、30μgのmRNAを担持するIRF5/IKKβ NPの後眼窩注射を受ける(3週間の間、週当たり3用量)、又はPBS対照群に割り当てられた。
【0553】
インビボ生物発光イメージング。PBS中D-ルシフェリン(Xenogen)(15mg/mL)を、ホタルルシフェラーゼイメージングのための基質として使用した。生物発光画像は、Xenogen IVIS Spectrumイメージングシステム(Xenogen)で収集した。マウスは、イメージング前及び最中に2%のイソフルラン(Forane、Baxter Healthcare)で麻酔にかけた。ID8-VEGF卵巣腫瘍に関して、それぞれのマウスは、300μgのD-ルシフェリンをi.p.注射し、画像は10分後に収集した。B16F10肺転移性腫瘍に関して、マウスは、3mgのD-ルシフェリンをi.p.注射し、画像は15分後に収集した。脳腫瘍モデルに関して、マウスは、75mg/体重kgのD-ルシフェリンの後眼窩注射を受け、画像は4分後に収集した。捕捉時間は10秒~5分の範囲に及んだ。
【0554】
体内分布分析。ID8-VEGF卵巣腫瘍モデルにおけるIRF5 NPの体内分布を決定するため、7~8群のマウスが、50μgのmRNAを担持するNPのi.p.又は後眼窩用量を受けた。注射24時間後、全血を収集し、マウスはCO2で安楽死させ、臓器(肝臓、脾臓、肺、腎臓、心臓、腸、膵臓、及び横隔膜)を回収した。すべての組織はRNAlaterで安定化し、次に、ドライアイス上で凍結した。それぞれの臓器におけるコドン最適化IRF5 mRNAレベルはRT-qPCRを使用して測定した。
【0555】
毒性分析。繰り返し注入マクロファージターゲティングNPの潜在的なインビボ毒性を測定するため、3週間の経過にわたり50μgのmRNAを担持するIRF5/IKKβ又はeGFP NPの6連続用量をマウス(5/群)の静脈内に注射した。対照は治療を受けなかった。最終注入の24時間後、マウスに麻酔をかけ、血液を後眼窩出血により収集し、全血球数を決定した。血液は、血清化学及びサイトカインプロファイル分析のためにも収集した(Phoenix Central Laboratories、Mukilteo、WAにより実施した)。次に、動物はCO2で安楽死させ、臓器を回収し、4%のパラホルムアルデヒドに固定する前に脱イオン水で洗浄した。組織はルーチン処理し、切片はヘマトキシリン-エオジンで染色した。検体は、委員会認定の局員病理学者のDr.Smitha Pillai MVSc、PhD、DACVPにより、盲検様式で解釈された。
【0556】
サイトカインアッセイ。サイトカインレベルは、FHCRC Immune Monitoring Shared Resourcesにおいてルミネックス200システム(Luminex)を使用して評価した。エクスビボ研究に関して、細胞培養上澄みを、IL-6、IL12p70、INFγ、及びTNFαの濃度の測定のために収集した。インビボ研究に関して、GM-CSF、INFγ、IL-12p70、IL-2、IL-6、及びTNFαの血漿濃度を測定した。
【0557】
統計解析。観察された相違の統計的有意は、独立両側一元配置分散分析検定を使用して分析した。測定ごとのP値は、図又は図説明文に収載されている。生存データは、対数順位検定を使用して特徴付けた。統計解析はすべて、GraphPad Prismソフトウェアバージョン6.0又はRソフトウェアを使用して実施した。
【0558】
結果。TAMのIVT mRNAトランスフェクションを構成するためにNPを設計する.陽イオンポリ(βアミノエステル)(PbAE)ポリマーと陰イオンmRNAの間の静電相互作用を利用することにより、標的化細胞における頑強な遺伝子発現を導入することができる標的化mRNA送達システムを開発した(
図2A)。得られたナノ担体にカプセル化されたmRNAの安定性及び翻訳を改善するため、改変リボヌクレオチドプソイドウリジン(ψ)(Kariko Kら、(2008)Mol Ther 16:1833~1840頁)及び5-メチルシチジン(m5C)を組み込み、ARCA(アンチリバースキャップアナログ)(Quabius ESら、(2015)N Biotechnol 32:229~235頁)でキャップされたメッセージの合成バージョンを使用した。mRNAは、PbAE骨格においてエステル結合の加水切断により細胞内でmRNA-PbAE複合体から放出される。効率的なインビボT細胞トランスフェクションは、このシステムを使用して以前実証されていた(Smith TTら、(2017)Nat Nanotechnol)。ナノ粒子を標的のTAMに向け並びにナノ粒子が含有するmRNA-PbAE複合体をさらに安定化するため、ジマンノース部分は、リンカーとしてポリグルタミン酸(PGA)を使用してその表面上に操作した(
図2A)。NPは、単純な2ステップ電荷駆動自己組織化工程を利用して製造した。第1に、合成mRNAは正電荷PbAEポリマーと複合体化し、これによりmRNAはナノサイズ複合体中に凝縮される。このステップに続いて、ジマンノース官能基を持たされたPGAを添加し、これは正電荷のPbAE-mRNAナノ粒子を遮蔽して、マクロファージ-ターゲティングを与える。得られたmRNAナノ担体は、99.8±24.5nmのサイズ、0.183の多分散性、及び中性表面電荷(3.40±2.15mVのζ電位、
図2B~2C)有していた。トランスフェクション効率は、先ず、緑色蛍光タンパク質コードmRNAで処方されたNP(GFP-NP)を使用してマウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)において試験した。手短に言えば、50,000のBMDMを1μgのmRNAを含有するNPに1時間曝露し、続いて次の日、GFP発現のフローサイトメトリー測定を行った。単一NP適用に続いて、我々は、これら初代マクロファージの31.9%(±8.5%)をそれらの生存率を減らすことなくルーチンにトランスフェクトした(
図2E~2F)。ジマンノースを用いたナノ粒子の表面修飾は適切であった。なぜならば、非標的化(しかし、PGA被覆された)ナノ担体でのトランスフェクション率はこの固有の食作用性細胞型において平均で25%(±2.1%)まで低下したからであった。NPは、CD11b+、F4/80+マクロファージ集団を選択的に標的にし、マクロファージの46%がトランスフェクトされ高レベルのeGFPを発現した(
図2D)。この高度なトランスフェクション効率は、TAMへのmRNAの標的化送達において開示されたシステム及び方法の効力を実証している。マクロファージ極性化を誘導する転写因子候補を求めてのインビトロスクリーニングの結果に基づいて、NPに包含するための2つのmRNAを選択し:第1のmRNAは、M1表現型に向かうマクロファージの極性化に有利に働くIRFファミリーのキーとなるメンバーである、IRF5をコードし、第2のmRNAはIRF5をリン酸化し活性化するキナーゼである、IKKβをコードする。
【0559】
免疫抑制性マクロファージを炎症促進性表現型にプログラムする。マクロファージ極性化を誘導するため、NPに包含するための2つのmRNAを選択し:第1のmRNAは、M1表現型に向かうマクロファージの極性化に有利に働くインターフェロン制御因子ファミリーのキーとなるメンバーである、IRF5をコードし(Krausgruber Tら、(2011)Nat Immunol 12:231~238頁);第2のmRNAは、IRF5をリン酸化し活性化するキナーゼである、IKKβをコードする(Ren Jら、(2014)Proc Natl Acad Sci USA 111:17438~17443頁)。3 IRF5 mRNA対1 IKKβ mRNAの比を使用した。NP送達(及びコドン最適化)IRF5 mRNAに特異的なリアルタイム定量的PCRを使用して、マクロファージにおけるmRNA発現は1日目が最大であり、内在性因子レベルと比べてIRF5の1500倍の増加がもたらされることが見出された(
図2A)。予想通り、遺伝子発現は一過性であるが、IRF5レベルは、ベースラインに戻る前、3日目(581倍の増加)から5日目(87倍の増加)を通じて強く上方調節されたままであった。
【0560】
IRF5/IKKβコードNPがM2マクロファージを治療的に望ましい抗がんM1表現型に再プログラムできるかどうかを判定するため、ナノストリング遺伝子発現分析を使用した。BMDMは、先ず、インターロイキン-4(IL-4)の存在下で培養して、抑制性M2表現型を誘導した(
図2H)。対照GFP-mRNAナノ粒子又はIRF5/IKKβ mRNA含有NPでのトランスフェクションに続いて、遺伝子発現プロファイルを分析し炎症性マクロファージと比較した。この炎症性マクロファージは、BMDMをTLR4アゴニストモノホスホリスリピドAに曝露することにより別々に作成した。抑制性IL-4含有培地で培養されたが、IRF5/IKKβ mRNA NPをトランスフェクトされたマクロファージは、炎症性マクロファージに類似する遺伝子発現プロファイルを示す(
図2I)。セルピンb2及びCcl2などのシグネチャーM2マクロファージ遺伝子(Jablonski Kら、(2015)Plos One 10:e0145342;Varga Tら、(2016)J Immunol 196:4771~4782頁)は、強く下方調節されており、Ccl5などのキーとなるM1分化遺伝子(Sica Aら、(2012)J Clin Invest 122:787~795頁)は上方調節されていた(
図2J、2K)。これらのデータにより、IRF5及びそのキナーゼのNP媒介発現は抑制性マクロファージを炎症促進性表現型のほうに歪めることが立証される。
【0561】
[実施例2] 播種性卵巣がんに対するNP送達pro-M1遺伝子の治療効果。臨床関連インビボ試験システムにおいてこの治療アプローチを評価するため、C57BL/6マウスにおいて後期切除不能卵巣腫瘍を再現するモデルを使用し;これらの動物には、腫瘍成長の連続生物発光イメージングを可能にするようにルシフェラーゼでタグ付けされたID8卵巣がん細胞を注射する(Liao JBら、(2015)J Immunother Cancer 3:16頁;Stephan SBら、(2015)Nat Biotechnol 33:97~101頁)。腫瘍は2週間確立させておいた。この段階まで、マウスは腹膜壁全体に及び腸の腸間膜に小結節を発症していた。動物は、9週間の間100μgのmRNA/マウス/週のi.p.用量での、PBS(対照)、GFPNP(ニセ)、又はIRF5/IKKβ NP治療を受ける3つの群に分けた(
図4A)。IRF5/IKKβ NP治療群において、疾患が退行しており、最後には動物の40%で除去されていることが観察された(全体で142日生存期間中央値対60日対照;
図4B~4C)。IRF5/IKKβ NP媒介抗腫瘍効果の下にある機序を理解するため、マンノース受容体ターゲティングがNP相互作用をどのようにして排他的に食細胞に限定するのかを先ず調べた。ジマンノースで標的化されたNPの最初の投与の24時間後に収集された腹膜灌流液のフローサイトメトリーにより、マクロファージ及び単球中への優先的遺伝子移入(それぞれ、平均37.1%及び15.3%、
図4D)が明らかにされ、オフターゲット細胞中へのトランスフェクションは低い又は検出されなかった。3週間にわたる(毎週2回注射)IRF5/IKKβナノ粒子又はPBSを用いた治療に続く確立した卵巣がんを抱えたマウスの腹膜におけるマクロファージ/単球集団の詳細な表現型及び機能分析を次に行った。フローサイトメトリー分析によれば、IRF5/IKKβ NPは免疫抑制性マクロファージの集団(Ly6C-、F4/80+、CD206+)を平均2.6%±2.1%対対照においては43%±15.6%まで減少させることが明らかになった(
図4E~4F)。反対に、M1様マクロファージの割合は0.5%±0.2%から10.2%±4.1%まで増えた(
図4E、4G)。IRF5遺伝子療法は他の免疫細胞の集団にも影響を及ぼした。特に、炎症性単球(CD11b+、Ly6C+、Ly6G-)がより豊富であった(非治療マウスでの4.5%±1.9%と比べて73.4%±3.6%)。すべてのIRF5 NP治療マウスにおける1つの興味深い所見は、新生物内又は周辺に存在するリンパ球の多巣性密集クラスターであり(
図4H)、免疫刺激性マクロファージの遺伝的プログラミングが固体腫瘍中へのリンパ球遊走及び浸潤を復活させる可能性があることを示している。
【0562】
腹膜マクロファージは蛍光活性化細胞選別により単離して、それらのサイトカイン分泌を分析し、炎症促進性(抗腫瘍)サイトカインIL-12(3.4倍高い)、IFN-g(8.4倍高い)、及びTNF-α(1.5倍高い)の放出の頑強な増加を検出し、一方、選択的に活性化される(M2様)マクロファージへの分化に関連する制御サイトカインであるIL-6のレベルは97倍減少した;
図4I)。ゲノム発現プロファイリングにより、IRF5/IKKβナノ粒子治療マウスにおいてM1様マクロファージ表現型のほうに向かう分化が確認された。MPLA又はIL-4においてエクスビボで培養されたマクロファージの遺伝子発現レベルは、それぞれ古典的M1様又はM2様マクロファージについての参照値を提供するために含まれた(
図4J)。
【0563】
生体分布及び安全性。ナノ粒子送達(コドン最適化)IRF5のみを検出するように設計されたRT-qPCRアッセイを使用して腹腔内注射の24時間後に種々の臓器におけるナノ粒子の分布を次に定量化した。IVT mRNAの最高濃度は、肝臓、脾臓、腸、膵臓、及び横隔膜を含む、腹膜に位置する臓器において見出された(
図5A)。腹膜の外側に位置する臓器(心臓、肺、腎臓)における粒子送達mRNAは少量が検出され、i.p.注射されたナノ担体の一部が全身循環に入ったことが示唆される。分布データに導かれて、次に我々は、これらのナノ試薬が生体適合性であり、繰り返し投与は安全であるかどうかを評価した。マウスに、全部で8用量のIRF5/IKKβ NPを注射した(4週間の間、2回の50μgのmRNA用量/週、
図5B)。マウスは最終用量の24時間後に安楽死させ、体重を記録し、血清化学のために血液を後眼窩出血により収集し、完全肉眼部検を実施した。群間には体重差はなかった。以下の組織:肝臓、脾臓、腸間膜、膵臓、胃、腎臓、心臓、及び肺は、委員会認定の局員病理学者により評価された。病理組織学的評価により、すべての症例で、腫瘍病変内又は周辺に存在するリンパ球の多巣性密集クラスターが明らかにされたが、炎症又は明らかな壊死の証拠は、新生物細胞が存在しない組織において観察されなかった(
図5C)。その上、IRF5/IKKβ NP治療マウスの血清化学は、PBS対照の血清化学と匹敵しており、全身的な毒性は起きていないことを示していた(
図5D)。生体分布研究において少量のIRF5-mRNAが全身的に検出されたので、末梢血中の炎症性サイトカインを定量化するための並列実験を設計した。IRF5/IKKβ NPの単回i.p.注射に続いて、インターロイキン-6(IL-6)の平均26.8pg/mLまでの(
図5E)及び腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の平均94.7pg/mLまでの(
図5F)血清レベルの中程度で一過性の増加が測定された。以前の報告に基づいて、これらのレベルは、病理学的所見に関連するレベルの500分の1であり、したがって安全と見なすことができる(Tarrant J.M.(2010)Toxicol Sci 117:4~16頁;Copeland Sら、(2005)Clin Diagn Lab Immunol 12:60~67頁)。
【0564】
IRF5/IKKβナノ粒子の静脈内注入で全身性腫瘍転移を制御する。腹膜全体に広がった腫瘍病変を治療するために腹膜腔中に直接投与されたIRF5/IKKβ NPにより達成された治療応答に基づいて、問われた次の問題は、静脈内注入mRNAナノ担体が伝播した疾患を制御するようにマクロファージを全身的にプログラムすることができるかどうかであった。RT-qPCR生体分布研究によれば、i.v.注入ナノ担体はそれらのmRNAカーゴを高レベルの常在性マクロファージ/食細胞のある臓器、大部分が脾臓、肝臓、及び肺に優先的に送達することが明らかにされた(
図6A)。臨床関連インビボ試験システムにおいて抗腫瘍応答を測定するため、IRF5/IKKβ mRNAを含有するナノ粒子を、播種性肺黒色腫転移のあるマウス中に投与した(
図6B)。最近の研究は、この疾患により引き起こされる転移を確立する際の単球及びマクロファージの基本的役割を記載しており(Butler KLら、(2017)Sci Rep 7:45593頁;Nielsen SRら、(2017)Mediators Inflamm 2017年:9624760頁)、腫瘍移植は肺における食細胞蓄積と同調していることが共焦点顕微鏡により確かめられた(
図6C)。腫瘍量は生物発光イメージングにより決定し、検出可能な腫瘍のあるマウスは適合するレベルを有する群に選別された。次に、群は無作為に、治療を受けない(PBS)、又はGFP-若しくはIRF5/IKKβカプセル化ナノ粒子の静脈内注射を受ける治療条件を割り当てられた。IRF5/IKKβナノ粒子療法のみが肺において腫瘍量を実質的に減らし;実際、IRF5/IKKβナノ粒子療法は全生存を平均で1.3倍改善した(
図6D~6E)。並列実験において、マウスは腫瘍接種22日後に屠殺されて、肺転移のカウントで生物発光腫瘍シグナルを確認し、フローサイトメトリーによりマクロファージ極性化を評価した。IRF5/IKKβ NP治療動物の肺における全転移数は、PBS対照(平均419±139転移;
図6F~6G)と比べて8.7倍減少した(平均40±16転移)。気管支肺胞洗浄液細胞のフローサイトメトリーにより、免疫抑制性(CD206+、MHCII-、CD11c+、CD11blow)マクロファージから活性化(CD206-、MHCII+、CD11c-、CD11b+)食細胞への強い移行が明らかにされた(
図6H~6I)。
【0565】
神経膠腫を治療するために腫瘍抑制食細胞をプログラムする。第3のインビボ試験システムに関して、神経膠腫を調べたが、これは、M2様マクロファージが非新生物細胞の大多数を表し腫瘍成長及び侵襲を促進する管理するのが困難ながんタイプである(Hambardzumyan Dら、(2016)Nat Neurosci 19:20~27頁)。現在、この疾患の標準治療は放射線療法であり、この療法は不運なことに、症状の一時的な安定化及び減少のみを提供し、生存期間中央値を3カ月延ばす(Mann Jら、(2017)Front Neurol 8:748頁)。この疾患の遺伝的事象及びそれに続く分子進化を再現するため、PDGFβ駆動神経膠腫のRCAS-PDGF-B/Nestin-Tv-a;Ink4a/Arf-/-;Pten-/-トランスジェニックマウスモデル(PDGマウス(Hambardzumyan Dら、(2009)Transl Oncol 2:89~95頁;Quail DFら、(2016)Science 352:aad3018))を使用した。脳組織は、RCAS-PDGFβ又はRCAS-creレトロウイルスをトランスフェクトしたDF-1細胞の混合物(1対1混合物、2μL)を定位的に注射した。神経膠腫前駆細胞におけるPDGFβがん遺伝子の過剰発現及び腫瘍抑制遺伝子Ink4a-arf及びPtenの非存在のせいで、21日以内にほぼ完全な浸透率を有する4~5mm直径の腫瘍が形成された(
図7A)(以前確立された通りに(Hambardzumyan Dら、(2009)Transl Oncol 2:89~95)。免疫蛍光を使用して、腫瘍浸潤(CD68+)マクロファージの存在(
図7B、左から3番目のパネルに示されている)が確立した神経膠腫(左から2番目のパネルに示されている)において確かめられた。フローサイトメトリーにより、F4/80+、CD11b+マクロファージ集団が腫瘍中の全細胞の32.8%を占めており、この数字は同年齢の健康な対照マウス(3.7%)に見られる9倍高いことが明らかにされている(
図7C)。実験におけるPDGマウスは、キーとなるがん遺伝子プロモーターに連結されたホタルルシフェラーゼを発現する。このレポーター由来の生物発光は、腫瘍悪性度と正の相関関係があることが実証されており(Uhrbom Lら、(2004)Nat Med 10:1257~1260頁)、したがって、この生物発光を使用して、治療開始後4日毎に腫瘍成長をモニターした。単独療法としてのIRF5/IKKβ NPを先ず試験し:PDGマウスは、IRF5/IKKβ mRNAを積載したNP、又は対照群においてPBSの9用量の静脈内注入を受けた(3週間の間、3用量/週)。IRF5/IKKβ NP治療は腫瘍進行をわずかに抑制した(非治療の対照と比べて平均で5日の生存優位性を生じただけであった;
図7D)。しかし、標準治療としての放射線療法とIRF5/IKKβ NP注射を組み合わせると、PBS対照群と比べて治療マウスの腫瘍成長を実質的に減らし生存期間を2倍以上にした(それぞれ、52日対25日、
図7E~7F)。
【0566】
結論として、3つの前臨床固体腫瘍モデルからのインビボ結果によれば、ナノ粒子は、局所的に又は全身的に投与されるが、マクロファージ極性化のマスター制御因子をコードする遺伝子を送達して免疫抑制性マクロファージを腫瘍除去表現型に再プログラムすることができることが実証されている。
【0567】
マウスからヒトマクロファージへの置き換え。マウスで得られたデータがヒト疾患を治療することに適用可能性があることを確かめるため、ヒトIRF5及びIKKβをコードするIVT mRNAを送達するNP(huIRF5 NP)を製作した。ヒト単球細胞株THP-1を確立したM1及びM2マクロファージ極性化モデルとして使用して、これらのナノ担体を試験した(Li Cら、(2016)Sci Rep 6:21044頁;Surdziel Eら、(2017)Plos One 12:e0183679)。M2タイプのマクロファージは、THP-1細胞をPMAで治療し、IL-4及びIL-13で極性化することにより作成した(
図8A)。huIRE5 NPが機能的でありIRF経路を活性化することを確かめるため、THP1-Lucia(商標)ISG細胞に、huIRF5/IKKβ又はGFP対照mRNAを積載したナノ粒子をトランスフェクトした。THP1-Lucia(商標)ISG細胞は、IRF誘導性プロモーターの制御下で蛍光Luciaレポーターを分泌する。この複合プロモーターは、ISG54ミニマルプロモーターに融合された5つのIFN刺激応答エレメント(ISRE)を含み、このミニマルプロモーターはNF-κB又はAP-1経路の活性化因子に無応答性である。その結果、THP1-Lucia(商標)ISG細胞は、Luciaルシフェラーゼの活性を決定することによりIRF経路のモニタリングを可能にする。huIRF5 NPは、M2極性化THP-1細胞においてルシフェラーゼ発現を強く上方調節することが見出され、mRNA構築物がヒト細胞において機能的であることが示される(
図8B~8C)。IRF5経路活性化がM2極性化THP-1細胞をM1様表現型のほうに再プログラムできるかどうかを判定するため、NPトランスフェクションに続く炎症促進性サイトカインIL-1βの分泌を測定した。IL-1βの産生は、huIRF5 NPをトランスフェクトしたTHP-1細胞対非トランスフェクト対照において有意に増加しており(平均21倍;P<0.0001、
図8D)、M1マクロファージ細胞表面マーカーCD80の頑強な上方調節(10.9倍に増加したMFI、P<0.0001)と相関していた(
図8E)。
【0568】
[実施例3] IRF5/IKKb及びEpCAM-CD3 二重特異性抗体mRNAを送達するナノ粒子は、播種性ステージ4卵巣がんの前臨床マウスモデル及び4T1乳がん肺転移モデルにおいて投与される。根底にある機構(腫瘍微小環境の組成の変化)及び二重特異性抗体血清レベル(対直接に腫瘍部位での二重特異性抗体の濃度)が評価される。インサイツ生成対静脈内投与された二重特異性タンパク質の対照比較も実施される。
【0569】
(13)締め括りのパラグラフ。本明細書に記載されるヌクレオチド配列は、37 C.F.R.§1.822に定義される通りに、ヌクレオチド塩基についての標準文字省略形を使用して示される。それぞれのヌクレオチド配列の1つの鎖のみが示されるが、相補鎖はそれが適切であると考えられる実施形態に含まれているとして理解されている。
【0570】
本明細書で開示され言及される配列のバリアントも含まれる。生物活性を消失せずにどのアミノ酸残基を置換する、挿入する、又は欠失させることができるかを決定するガイダンスは、DNASTAR(商標)(Madison、Wisconsin)ソフトウェアなどの当技術分野で周知のコンピュータプログラムを使用して見つけることができる。好ましくは、本明細書で開示されるタンパク質バリアントでのアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち、類似する電荷又は非電荷のアミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化は、その側鎖での関連するアミノ酸のファミリーのうちの1つの置換を含む。
【0571】
ペプチド又はタンパク質では、アミノ酸の適切な保存的置換は当業者には公知であり、一般に、得られた分子の生物活性を変更せずに行うことができる。当業者であれば、一般に、ポリペプチドの非必須領域での単一アミノ酸置換は生物活性を実質的に変更しないことを認識している(例えば、Watsonら、Molecular Biology of the Gene、第4版、1987年、The Benjamin/Cummings Pub.Co.,224頁参照)。天然に存在するアミノ酸は一般に以下の保存的置換ファミリーに分割される:グループ1:アラニン(Ala)、グリシン(Gly)、セリン(Ser)、及びスレオニン(Thr);グループ2:(酸性):アスパラギン酸(Asp)、及びグルタミン酸(Glu);グループ3:(酸性;極性、負電荷残基及びそのアミドとしても分類される):アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、Asp、及びGlu;グループ4:Gln及びAsn;グループ5:(塩基性;極性、正電荷残基としても分類される):アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、及びヒスチジン(His);グループ6:(大きな脂肪族、非極性残基):イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、バリン(Val)及びシステイン(Cys);グループ7(非電荷極性):チロシン(Tyr)、Gly、Asn、Gln、Cys、Ser、及びThr;グループ8(大きな芳香族残基):フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)、及びTyr;グループ9(非極性):プロリン(Pro)、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、及びTrp;グループ11(脂肪族):Gly、Ala、Val、Leu、及びIle;グループ10(小さな脂肪族、非極性又はわずかに極性残基):Ala、Ser、Thr、Pro、及びGly;並びにグループ12(硫黄含有):Met及びCys。追加の情報は、Creighton(1984)Proteins、W.H.Freeman and Companyに見い出せる。
【0572】
そのような変化を加える際には、アミノ酸のハイドロパシー指標を考量するのがよい。タンパク質に相互作用生物学的機能を与える際のハイドロパシーアミノ酸指標の重要性は、当技術分野では一般に理解されている(Kyte and Doolittle、1982年、J.Mol.Biol.157(1)、105~32頁)。それぞれのアミノ酸には、その疎水性及び電荷特徴に基づいてハイドロパシー指標が割り当てられている(Kyte and Doolittle、1982年)。これらの値は、Ile(+4.5);Val(+4.2);Leu(+3.8);Phe(+2.8);Cys(+2.5);Met(+1.9);Ala(+1.8);Gly(-0.4);Thr(-0.7);Ser(-0.8);Trp(-0.9);Tyr(-1.3);Pro(-1.6);His(-3.2);グルタメート(-3.5);Gln(-3.5);アスパルテート(-3.5);Asn(-3.5);Lys(-3.9);及びArg(-4.5)である。
【0573】
ある特定のアミノ酸は類似するハイドロパシー指標又はスコアを有する他のアミノ酸で置換して、それでも類似する生物活性のあるタンパク質をもたらす、すなわち、それでも生物学的な機能的に等価なタンパク質を得ることは当技術分野では公知である。そのような変化を加える際には、そのハイドロパシー指標が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のハイドロパシー指標のアミノ酸が特に好ましく、±0.5以内のハイドロパシー指標のアミノ酸ならなおさら特に好ましい。類似のアミノ酸の置換は、親水性に基づけば効果的に行うことができることも当技術分野では理解されている。
【0574】
米国特許第4,554,101号に詳述されているように、以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:Arg(+3.0);Lys(+3.0);アスパルテート(+3.0±1);グルタメート(+3.0±1);Ser(+0.3);Asn(+0.2);Gln(+0.2);Gly(0);Thr(-0.4);Pro(-0.5±1);Ala(-0.5);His(-0.5);Cys(-1.0);Met(-1.3);Val(-1.5);Leu(-1.8);Ile(-1.8);Tyr(-2.3);Phe(-2.5);Trp(-3.4)。アミノ酸は類似する親水性値を有する別のアミノ酸で置換して、それでも生物学的に等価な、特に免疫学的に等価なタンパク質を得ることができることは理解されている。そのような変化では、その親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内であるアミノ酸が特に好ましく、±0.5以内であるアミノ酸ならなおさら特に好ましい。
【0575】
上で概要を述べたように、アミノ酸置換は、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば、その疎水性、親水性、電荷、サイズ、及び同類の物に基づいていてよい。他の場所で示したように、遺伝子配列のバリアントは、コドン最適化バリアント、配列多型、スプライスバリアント、及び/又はコードされた産物の機能に統計的に有意な程度に影響を及ぼさない突然変異を含むことができる。
【0576】
本明細書で開示されるタンパク質、ヌクレオチド、及び遺伝子配列のバリアントは、本明細書で開示されるタンパク質、ヌクレオチド、及び遺伝子配列に少なくとも70%配列同一性、80%配列同一性、85%配列同一性、90%配列同一性、95%配列同一性、96%配列同一性、97%配列同一性、98%配列同一性、又は99%配列同一性を有する配列も含む。
【0577】
「%配列同一性」とは、配列を比較することにより決定される場合、2つ以上の配列間の関係のことである。当技術分野では、「同一性」は、そのような配列の一続き間の適合により決定した場合、タンパク質、ヌクレオチド、又は遺伝子配列間の配列関連性の程度も意味する。「同一性」(「類似性」と呼ばれることも多い)は、Computational Molecular Biology(Lesk、A.M.、ed.)Oxford University Press、NY(1988);Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith、D.W.、ed.)Academic Press、NY(1994);Computer Analysis of Sequence Data、Part I(Griffin、A.M.、and Griffin、H.G.、eds.)Humana Press、NJ(1994);Sequence Analysis in Molecular Biology(Von Heijne、G.、ed.)Academic Press(1987);及びSequence Analysis Primer(Gribskov、M.and Devereux、J.eds.)Oxford University Press、NY(1992)に記載されている方法を含む、既知の方法により容易に計算することができる。試験されている配列間に最良の適合を与えるため、同一性を決定する好ましい方法が考案されている。同一性及び類似性を決定する方法は公開されているコンピュータプログラムに成文化されている。配列アラインメント及びパーセント同一性計算は、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピュータスイートのMegalignプログラムを使用して実施しうる(DNASTAR、Inc.、Madison、Wisconsin)。配列のマルチプルアライメントは、デフォルトパラメータ(GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=10)を用いるアライメントのクラスタル法(Higgins and Sharp CABIOS、5、151~153頁(1989))を使用して実施することもできる。関連するプログラムは、プログラムのGCGスイート(Wisconsin Package Version 9.0、Genetics Computer Group(GCG)、Madison、Wisconsin);BLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschulら、J.Mol.Biol.215:403~410頁(1990);DNASTAR(DNASTAR、Inc.、Madison、Wisconsin);Smith-Watermanアルゴリズムを組み込んでいるFASTAプログラム(Pearson、Comput.Methods Genome Res.、[Proc.Int.Symp.](1994)、Meeting Date 1992年、111~20頁.Editor(s):Suhai、Sandor.Publisher:Plenum、New York、NYも含む。本開示の文脈内において、解析に配列解析ソフトウェアが使用される場合、解析の結果は参照されるプログラムの「デフォルト値」に基づくことは理解される。本明細書で使用される場合、「デフォルト値」とは、任意のセットの値又はパラメータを意味し、これは最初に初期化する場合、元々ソフトウェアにロードされているものである。
【0578】
バリアントは、本明細書で開示される配列に厳密なハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするヌクレオチド分子も含み、参照配列と同じ機能を与える。例示的厳密なハイブリダイゼーション条件は、50%のホルムアミド、5×SSC(750mMのNaCl、75mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%のデキストラン硫酸、及び20μg/mlの変性、剪断サーモン精液DNAを含む溶液中42℃での一晩インキュベーション、続いて50℃、0.1×SSCでのフィルターの洗浄を含む。ハイブリダイゼーション及びシグナル検出の厳密性の変化は、主にホルムアミド濃度(ホルムアミドの百分率が低いほど厳密性は低くなる);塩条件、又は温度の操作を通じて達成される。例えば、適度に高い厳密性条件は、6×SSPE(20×SSPE=3MのNaCl;0.2MのNaH2PO4;0.02MのEDTA、pH7.4)、0.5%のSDS、30%のホルムアミド、100μg/mlのサーモン精液ブロッキングDNAを含む溶液中37℃での一晩インキュベーション、続いて50℃、1×SSPE、0.1%のSDSでの洗浄を含む。さらに、はるかに低い厳密性を達成するためには、厳密なハイブリダイゼーションに続いて実施される洗浄はもっと高い塩濃度(例えば、5×SSC)で行うことができる。上記条件の変動は、ハイブリダイゼーション実験においてバックグラウンドを抑制するのに使用される代替のブロッキング試薬の包含及び/又は置換を通じて成し遂げうる。典型的なブロッキング試薬は、デンハート試薬、BLOTTO、ヘパリン、変性サーモン精液DNA、及び市販されている専売製剤を含む。特定のブロッキング試薬の包含は、互換性の問題のせいで、上記のハイブリダイゼーション条件の修正を必要とする場合がある。
【0579】
「特異的に結合する」とは、関連する環境試料中の他のいかなる分子又は成分とも有意に会合せずに、結合ドメイン(例えば、CAR結合ドメイン又はナノ粒子選択細胞ターゲティングリガンドの)のその同族結合分子との105M-1に等しい又はそれよりも大きな親和性又はKa(すなわち、1/Mの単位での特定の結合相互作用の平衡会合定数)での会合のことである。「特異的に結合する」は、本明細書では「結合する」とも呼ばれる。結合ドメインは、「高親和性」又は「低親和性」として分類される場合がある。特定の実施形態では、「高親和性」結合ドメインとは、少なくとも107M-1、少なくとも108M-1、少なくとも109M-1、少なくとも1010M-1、少なくとも1011M-1、少なくとも1012M-1、又は少なくとも1013M-1、のKaを有する結合ドメインのことである。特定の実施形態では、「低親和性」結合ドメインとは、最大で107M-1までの、最大で106M-1までの、最大で105M-1までのKaを有する結合ドメインのことである。代わりに、親和性は、Mの単位(例えば、10-5M~10-13M)での特定の結合相互作用の平衡解離定数(Kd)として定義してもよい。ある特定の実施形態では、結合ドメインは「増強された親和性」を有する場合があり、これは、同族結合分子への野生型(又は親)結合ドメインよりも強い結合を有する選択された又は操作された結合ドメインのことである。例えば、増強された親和性は、参照結合ドメインよりも高い同族結合分子に対するKa(平衡会合定数)による又は参照結合ドメインのKdよりも低い同族結合分子に対するKd(解離定数)による、又は参照結合ドメインのオフレートよりも低い同族結合分子に対するオフレート(Koff)による場合がある。特定の同族結合分子に特異的に結合する結合ドメインを検出する並びに結合親和性を決定するための、ウェスタンブロット、ELISA、及びBIACORE(登録商標)分析などの種々のアッセイが公知である(例えば、Scatchardら、1949年、Ann.N.Y.Acad.Sci.51:660頁;及び米国特許第5,283,173号、米国特許第5,468,614号、又は同等のものも参照)。
【0580】
別段指示されなければ、本開示の実行は、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学及び組換えDNAの従来の技法を用いることができる。これらの方法は、以下の出版物に記載されている。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(1989);F.M.Ausubelら、編、Current Protocols in Molecular Biology、(1987);the series Methods IN Enzymology (Academic Press、Inc.);M.MacPhersonら、PCR:A Practical Approach、IRL Press at Oxford University Press(1991);MacPhersonら、編、PCR 2:Practical Approach、(1995);Harlow and Lane、編、Antibodies、A Laboratory Manual、(1988);及びR.I.Freshney、編、Animal Cell Culture(1987)を参照されたい。
【0581】
当業者であれば理解するように、本明細書に開示されるそれぞれの実施形態は、その特定の述べられた要素、ステップ、成分又は構成要素を含む、本質的にからなる又はからなることが可能である。したがって、用語「含む(include)」又は「含む(including)」は、「含む(comprise)、からなる(consist of)、又はから本質的になる(consist essentially of)」を列挙すると解釈されるべきである。転換語「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」は有するを意味するがこれに限定されず、不特定の要素、ステップ、構成要素、又は成分を大量にでさえ包含することを許す。移行句「からなる」は、明記されていないいかなる要素、ステップ、成分又は構成要素も排除する。移行句「本質的にからなる」は、実施形態の範囲を明記された要素、ステップ、成分、又は構成要素に、及び実施形態に物理的に影響を及ぼさない要素、ステップ、成分、又は構成要素に限定する。物質効果は、本開示に記載される関連する実験方法に従って主張される効果を得る能力の統計的に有意な低減を引き起こすと考えられる。
【0582】
別段示されなければ、明細書及び特許請求の範囲で使用されている分子量、反応条件、その他などの成分の量、特性を表す数字はすべて、すべての例において用語「約」により修飾されていると理解するべきである。したがって、反対だと示されていなければ、明細書及び添付の特許請求の範囲で表明される数のパラメータは、本発明が得ようとしている所望の特性に応じて変動することがある近似値である。最低でも、及び特許請求の範囲の等価物の学説の適用を限定しようとする試みとしてではなく、それぞれの数のパラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数に照らして、及び普通の四捨五入法を適用することにより解釈するべきである。さらなる明快さが求められる場合、用語「約」は、記述されている数値又は範囲と併せて使用される場合に当業者がその用語が持つと合理的に考える意味を有し、すなわち、記述されている値又は範囲よりもいくぶん多い又はいくぶん少ない、記述されている値の±20%;記述されている値の±19%;記述されている値の±18%;記述されている値の±17%;記述されている値の±16%;記述されている値の±15%;記述されている値の±14%;記述されている値の±13%;記述されている値の±12%;記述されている値の±11%;記述されている値の±10%;記述されている値の±%9;記述されている値の±8%;記述されている値の±7%;記述されている値の±6%;記述されている値の±5%;記述されている値の±4%;記述されている値の±3%;記述されている値の±2%;又は記述されている値の±1%の範囲内までを表す。
【0583】
本発明の広い範囲を示している数の範囲及びパラメータは近似値であるが、特定の実施例で示されている数値はできる限り正確に報告されている。しかし、いかなる数値も、それぞれの試験測定値に見出される標準偏差から必然的に生じるある特定の誤差を本質的に含有する。
【0584】
本発明を記載する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)使用される用語「1つ(a)」、「1つ(an)」、「その(the)」及び類似する指示対象は、本明細書で別段指示されなければ又は文脈と明白に矛盾しなければ、単数形と複数形の両方を含むものと解釈されるべきである。本明細書での値の範囲の列挙は、その範囲内に収まるそれぞれ別々の値に個別に言及するという簡単な方法としての働きをすることだけを意図されている。本明細書において別段指示されなければ、それぞれ個々の値は、あたかもそれが本明細書において個別に列挙されているかのように明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書で別段指示されなければ又は別段文脈とはっきり矛盾しなければ、任意の適切な順番で実施することができる。ありとあらゆる実施例の使用、又は本明細書で提供される例示的言語(例えば、「などの」)は、本発明をよりよく明らかにすることだけを意図されており、別の方法で請求される本発明の範囲を限定しない。明細書のいかなる言語も、本発明の実行に不可欠な任意の請求されていない要素も指示していると解釈されるべきである。
【0585】
本明細書に開示される本発明の別の要素又は実施形態のグループ分けは限定と解釈されるべきではない。それぞれのグループのメンバーは、個別に又はそのグループの他のメンバー若しくは本明細書に見出される他の要素との任意の組合せで言及され請求されてもよい。グループの1つ以上のメンバーは、都合上及び/又は特許性という理由でグループに含まれる又はグループから削除される場合があることは予想されている。いかなるそのような包含又は削除が起きた場合でも、明細書は、修正され、したがって、添付の特許請求の範囲において使用されるすべてのマーカッシュグループの書面による記述を満たすグループを含有すると見なされる。
【0586】
本発明を実行するために発明者らに知られている最良の態様を含む、本発明のある特定の実施形態は本明細書に記載されている。当然のことながら、これらの記載されている実施形態の変形は、前の記述を読めば当業者には明らかになる。本発明者は、当業者がそのような変形を必要に応じて用いると予想しており、本発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載される以外の方法で実行されることを意図している。したがって、本発明は、準拠法によって許されるように、ここに添付される特許請求の範囲に列挙される主題のすべての修正物及び等価物を含む。さらに、この考えられるあらゆる変形における上記要素のいかなる組み合わせも、本明細書で別段指示されなければ又は別段文脈とはっきり矛盾しなければ、本発明に包含される。
【0587】
さらに、本明細書全体で、特許、出版物、雑誌論文及び他の文書が数多く参照されてきた(本明細書の参照材料)。参照材料のそれぞれが個々に、その参照される教えのために参照によりその全体を本明細書に組み込まれる。
【0588】
最後にあたって、本明細書に開示される本発明の実施形態が本発明の原理を例証していることは理解されるべきである。用いることができる他の修正物は本発明の範囲内である。したがって、例として、しかし限定ではなく、本発明の別の構成を本明細書の教えに従って利用してもよい。したがって、本発明は示され記載されている通りの発明に限定されない。
【0589】
本明細書に示される特色は、例としてであり、本発明の好ましい実施形態を実証的に考察することのみを目的とするものであり、本発明の種々の実施形態の原理及び概念面の最も有用ですぐに理解される記述であると考えられるものを提供するために示されている。これに関して、本発明の構造的詳細を本発明の基本的理解に必要である以上に詳細に示そうとは試みておらず、説明は、本発明のいくつかの形態を実際にどのようにして用いればよいのかを当業者が明らかにする図面及び/又は実施例と一緒に行われている。
【0590】
実施例において明白に明確に修正されていなければ将来のいかなる解釈においても、又は意味の適用がいかなる解釈も無意味にする若しくは本質的に無意味にする場合、本開示において使用される定義及び説明が支配的であることが意味され意図されている。用語の解釈がその用語を無意味にする若しくは本質的に無意味にすると考えられる場合、定義は、ウェブスター辞典第3版又は生化学及び分子生物学のオックスフォード辞典(編者、Attwood Tら、Oxford University Press、Oxford、2006年)などの当業者には公知である辞書から採用するべきである。
【配列表】
【国際調査報告】