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特表2023-508620抗体グリコフォームをリモデリングするための融合タンパク質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-03
(54)【発明の名称】抗体グリコフォームをリモデリングするための融合タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230224BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230224BHJP
   C12N 9/44 20060101ALI20230224BHJP
   C12N 9/24 20060101ALI20230224BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230224BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230224BHJP
   C12N 15/56 20060101ALN20230224BHJP
   C07K 14/195 20060101ALN20230224BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N9/44
C12N9/24
C07K19/00
C12P21/08
C12N15/56
C07K14/195
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021573284
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(85)【翻訳文提出日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 US2020045054
(87)【国際公開番号】W WO2021026264
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】62/882,729
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521537830
【氏名又は名称】チョ ファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュー クオ-チン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン リン-ヤ
(72)【発明者】
【氏名】ゼン イ-ファン
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC05
4B050DD02
4B050EE10
4B050LL01
4B064AG26
4B064CA19
4B064CA21
4B064CC24
4B064DA01
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA11
4H045DA89
4H045EA20
4H045EA34
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、エンドグリコシダーゼ又はその切断断片若しくは変異体のN末端又はC末端のいずれかと融合されたフコシダーゼ又はその切断断片若しくは変異体を含む融合タンパク質を提供する。本開示は、融合タンパク質を発現する核酸分子及び抗体Fc領域のグリカンをリモデリングする方法も提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドグリコシダーゼ又はその切断断片若しくは変異体のN末端又はC末端のいずれかと融合されたフコシダーゼ又はその切断断片若しくは変異体を含む融合タンパク質であって、前記融合タンパク質がフコシダーゼ活性及びエンドグリコシダーゼ活性の両方を示す、融合タンパク質。
【請求項2】
前記フコシダーゼが、ラクトバチルス・カゼイのα-L-フコシダーゼC(Alfc)、バクテロイデス・フラジリスのフコシダーゼ(BF3242)、バクテロイデス・テタイオタミクロンのα-L-フコシダーゼ(BT2970)、エムティシシア・オリゴトロフィカのα-L-フコシダーゼ(EO0918)、及びエリザベトキンギア・ミリコーラのα-(1-6)-フコシダーゼ(Emfuc3)、又はそれらの断片若しくはそれらの変異体である、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記フコシダーゼが、ラクトバチルス・カゼイのα-L-フコシダーゼC、エリザベトキンギア・ミリコーラのα-(1-6)-フコシダーゼ(Emfuc3)、又はそれらの切断断片若しくは変異体である、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記エンドグリコシダーゼが、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、又はそれらの断片若しくは変異体である、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
エンドグリコシダーゼの前記切断断片が、そのIgG結合ドメインである、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記エンドグリコシダーゼの前記切断断片が、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS又は化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2のIgG結合ドメインである、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記エンドグリコシダーゼ変異体が、アミノ酸位D233での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼSである、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記エンドグリコシダーゼ変異体が、アミノ酸位D233Qでの変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼSである、請求項7に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記エンドグリコシダーゼ変異体が、アミノ酸位T138、D182、D184、D186、D226又はT227での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2である、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記エンドグリコシダーゼ変異体が、アミノ酸位T138E、T138M、T138Q、T138R、T138M、T138L、T138H、T138N、T138K、D182Q、D184M、D184Q、D184T、D184L、D184F、D184S、D184V、D184K、D184W、E186A、D226Q、又はT227Qでの変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2である、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼSのIgG結合ドメイン、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2のIgG結合ドメイン、アミノ酸位D233での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS、アミノ酸位T138での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、アミノ酸位D182での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、アミノ酸位D184での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、アミノ酸位D186での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、アミノ酸位D226での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、又はアミノ酸位T227での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2と融合されたラクトバチルス・カゼイのα-L-フコシダーゼCを含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼSのIgG結合ドメイン、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2のIgG結合ドメイン、アミノ酸位D233での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS、アミノ酸位T138での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、アミノ酸位D182での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、アミノ酸位D184での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、アミノ酸位D186での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、アミノ酸位D226での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、又はアミノ酸位T227での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2と融合されたエリザベトキンギア・ミリコーラのα-(1-6)-フコシダーゼを含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202、及び204から選択されるアミノ酸配列、又はそれらと実質的に類似する配列を有する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
配列番号34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202及び204からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれらと実質的に類似する配列を有する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の融合タンパク質を発現する核酸分子。
【請求項16】
配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197、199、201、及び203からなる群から選択されるヌクレオチド配列又はそれらと実質的に同一な配列を有する、請求項15に記載の核酸分子。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項18】
抗体Fc領域のグリカンをリモデリングする方法であって、抗体のFc領域に不均一なグリカンを有する抗体を得る工程と、前記抗体を請求項1~14のいずれか1項に記載の融合タンパク質と接触させる工程とを含む、方法。
【請求項19】
Fc領域に不均一なグリカンを有する抗体、請求項1~14のいずれか1項に記載の融合タンパク質、及び標的グリカンオキサゾリンを準備することと、ここで、前記抗体Fc領域の前記グリカンが、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を含む;
前記抗体を請求項1~14のいずれか1項に記載の融合タンパク質及び前記抗体Fc領域に結合する前記標的グリカンオキサゾリンと接触させることと、
を含み、
これにより、前記抗体Fc領域のリモデリングされたグリカンが得られ得る、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記Fc領域に前記リモデリングされたグリカンを有する前記抗体を精製することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記リモデリングされたグリカンが、Sia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-3)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-3)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-3/α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-6/α2-3)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-3/α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-6/α2-3)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-3)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-3)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-3)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-3)GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAc、又はManGlcNAcである、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「Advanced Fucosidase for Cleaving Core-Fucose of Ab-Fc」と題される2019年8月5日付で出願された米国仮特許出願第62/882,729号に対する利益及び優先権を主張し、その開示全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
[配列表]
本願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。2020年8月5日付けで作成された上記ASCIIコピーの名前はG4590-09600PCT_SeqList.txtであり、1.5MBのサイズである。
【0003】
本開示は、グリコフォームリモデリング、特に、抗体グリコフォームをリモデリングするための融合タンパク質に関する。
【背景技術】
【0004】
免疫グロブリン(Ig)としても既知の抗体は、免疫反応において中心的役割を果たす糖タンパク質である。IgG抗体及びIgG抗体の断片は、多種多様な疾患を処置するための重要な生物学的製剤として開発されている。天然に存在する抗体の定常(Fc)領域は、通常、N-グリコシル化されている。特定のグリコシル化、すなわち、グリコフォームは、抗体のFcエフェクター機能及び安定性に顕著な影響を及ぼす。したがって、抗体の治療有効性を改善する1つの手法は、Fc領域のグリコフォームを修飾することである。
【0005】
Fcグリコフォームは、通常、コアフコース残基を含む。癌治療の場合、低レベルのコアフコースを有するFc領域のグリコフォームを有する抗腫瘍抗体は、NK細胞上のCD16(FcγRIIIA)に対するより高い結合親和性を示すことが報告されている。より高い親和性は、腫瘍細胞に対する抗体依存性細胞傷害の誘導の改善をもたらす。
【0006】
低レベルのコアフコースを有する抗体を製造するために、幾つかの戦略が開発されてきた。例えば、コアフコースの付加に必要であるフコシル基転移酵素の阻害剤が、抗体産生細胞を増殖させるために使用される培養培地に添加され得る。別の例では、抗体産生細胞が、フコシル基転移酵素活性を欠くように遺伝子操作され得る。
【0007】
別の戦略では、予測可能な方法で抗体グリコフォームを直接修飾するために、精製された酵素がin vitroで使用され得る。この戦略の1つの利点は、抗体が産生された後に、所望の生物学的性質を有する規定された低コアフコースFcグリコフォームを有するようにその抗体を修飾することができることである。これにより、適切なコアグリコシル化を確実にするために通常用いられる哺乳動物発現系の代わりに、高収量の非哺乳類発現系を抗体の製造に使用することが容易となる。特許文献1は、インタクトな治療抗体が挙げられる、様々な生物学的糖ペプチド及び糖タンパク質のコアフコシル化のためのフコリガーゼ(fuco-ligases)として機能するフコシダーゼ変異体を提供する。
【0008】
今のところ、既存のフコシダーゼ酵素は、Fc領域からコアフコースを切断するのに非効率的である。効率的かつ予測通りに抗体グリコフォームをリモデリングすることができる酵素を開発する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第20190185898号
【発明の概要】
【0010】
本開示では、融合タンパク質が提供される。融合タンパク質における複数の酵素の集合体は、酵素の相乗効果を促し、抗体グリコフォームを予測可能にリモデリングするという有利な効果を示す。
【0011】
1つの態様において、本開示は、エンドグリコシダーゼ又はその切断断片若しくは変異体のN末端又はC末端のいずれかと融合されたフコシダーゼ又はその切断断片若しくは変異体を含む融合タンパク質であって、融合タンパク質がフコシダーゼ活性及びエンドグリコシダーゼ活性の両方を示す、融合タンパク質を提供する。
【0012】
フコシダーゼの或る特定の実施の形態としては、限定されるものではないが、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)のα-L-フコシダーゼC(Alfc)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)のフコシダーゼ(BF3242)、バクテロイデス・テタイオタミクロン(Bacteroides thetaiotamicron)のα-L-フコシダーゼ(BT2970)、エムティシシア・オリゴトロフィカ(Emticicia oligotrophica)のα-L-フコシダーゼ(EO0918)、及びエリザベトキンギア・ミリコーラ(Elizabethkingia miricola)のα-(1-6)-フコシダーゼ(Emfuc3)、又はそれらの断片若しくはそれらの変異体が挙げられる。幾つかの実施の形態において、フコシダーゼは、ラクトバチルス・カゼイのα-L-フコシダーゼC、エリザベトキンギア・ミリコーラのα-(1-6)-フコシダーゼ(Emfuc3)、又はそれらの切断断片若しくは変異体である。
【0013】
エンドグリコシダーゼの或る特定の実施の形態としては、限定されるものではないが、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)のエンドグリコシダーゼS、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、又はそれらの断片若しくは変異体が挙げられる。特に、エンドグリコシダーゼは、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2又は切断断片若しくは変異体である。
【0014】
一実施形態において、フコシダーゼ又はエンドグリコシダーゼは切断断片である。エンドグリコシダーゼの切断断片は、そのIgG結合ドメインである。幾つかの実施形態において、エンドグリコシダーゼの切断断片は、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS又は化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2のIgG結合ドメインである。
【0015】
一実施形態において、フコシダーゼ又はエンドグリコシダーゼは、変異ポリペプチドである。特に、エンドグリコシダーゼ変異体は、アミノ酸位D233での変異、好ましくはD233Qを有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼSである。幾つかの実施形態において、エンドグリコシダーゼ変異体は、アミノ酸位T138、D182、D184、D186、D226又はT227での変異、好ましくは、T138E、T138M、T138Q、T138R、T138M、T138L、T138H、T138N、T138K、D182Q、D184M、D184Q、D184T、D184L、D184F、D184S、D184V、D184K、D184W、E186A、D226Q、又はT227Qを有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2である。
【0016】
融合タンパク質の或る特定の実施形態としては、限定されるものではないが、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼSのIgG結合ドメイン、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2のIgG結合ドメイン、アミノ酸位D233での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS、アミノ酸位T138での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、アミノ酸位D182での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、アミノ酸位D184での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、アミノ酸位D186での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、アミノ酸位D226での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、又はアミノ酸位T227での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2と融合されたラクトバチルス・カゼイのα-L-フコシダーゼCが挙げられる。
【0017】
特に、融合タンパク質は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202、及び204からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれらと実質的に類似する配列を有する。好ましくは、融合タンパク質は、配列番号34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202及び204からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれらと実質的に類似する配列を有する。
【0018】
別の態様において、本開示は、本明細書に記載される融合タンパク質を発現する核酸分子を提供する。核酸の或る特定の実施形態としては、限定されるものではないが、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197、199、201、及び203又はそれらと実質的に同一な配列が挙げられる。幾つかの更なる実施の形態において、核酸は、配列番号33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197、199、201、及び203からなる群から選択されるヌクレオチド配列又はそれらと実質的に同一な配列を有する。
【0019】
別の態様において、本開示は、本開示の核酸を含むベクターを提供する。本開示は、ベクターを含む宿主細胞も提供する。
【0020】
更なる態様において、本開示は、抗体のFc領域のグリカンをリモデリングする方法であって、抗体のFc領域に不均一なグリカンを有する抗体を得る工程と、抗体を本明細書に記載される融合タンパク質と接触させる工程とを含む、方法を提供する。特に、この方法は、Fc領域に不均一なグリカンを有する抗体、本明細書に記載される融合タンパク質、及び標的グリカンオキサゾリンを準備することと、ここで、抗体Fc領域のグリカンが、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を含む;抗体を融合タンパク質及び抗体Fc領域に結合する標的グリカンオキサゾリンと接触させることとを含み、これにより、抗体Fc領域のリモデリングされたグリカンが得られ得る。
【0021】
本開示の一実施の形態において、上記方法は、Fc領域にリモデリングされたグリカンを有する抗体を精製することを更に含む。
【0022】
本開示は、以下のセクションにおいて詳述される。本開示の他の特徴、目的、及び利点は、発明を実施するための形態及び特許請求の範囲に見出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】除去された出発物質のフコースの百分率として表現される、示される酵素、すなわち、フコシダーゼ及びフコシダーゼ/EndoS2融合タンパク質によるフコース加水分解の百分率を示す棒グラフを示す図である。酵素は以下の表1~表5において識別される。
図2】除去された出発物質のフコースの百分率として表現される、Alfcフコシダーゼ又はAlfc/EndoS2融合タンパク質によるフコース加水分解の百分率を示す棒グラフを示す図である。融合タンパク質は以下の表1~表5において識別される。
図3】除去された出発物質のフコースの百分率として表現される、Alfcフコシダーゼ又は5種のフコシダーゼと切断型EndoS2との融合タンパク質によるフコース加水分解の百分率を示す棒グラフを示す図である。融合タンパク質は以下の表1~表5において識別される。
図4】除去された出発物質のフコースの百分率として表現される、Alfc若しくはEmfuc3フコシダーゼ又はAlfc若しくはEmfuc3/EndoS2融合タンパク質によるフコース加水分解の百分率を示す棒グラフを示す図である。融合タンパク質は以下の表1~表5において識別される。
図5】除去された出発物質のフコースの百分率として表現される、Alfc若しくはEmfuc3フコシダーゼ、Alfc/EndoS、又はEndoS若しくはEndoS2/Emfuc3融合タンパク質によるフコース加水分解の百分率を示す棒グラフを示す図である。融合タンパク質は以下の表1~表5において識別される。
図6】除去された出発物質のフコースの百分率として表現される、Alfc、Emfuc3、若しくはBF3242フコシダーゼ、EndoS若しくはEndoS2/Emfuc3、又はEndoS/BF3242融合タンパク質によるフコース加水分解の百分率を示す棒グラフを示す図である。融合タンパク質は以下の表1~表5において識別される。
図7】除去された出発物質のフコースの百分率として表現される、BF3242フコシダーゼ、EndoS又はEndoS2/BF3242融合タンパク質によるフコース加水分解の百分率を示す棒グラフを示す図である。融合タンパク質は以下の表1~表5において識別される。
図8A】C-C401によるトラスツズマブ(TRZ)のグリカンリモデリングの経時変化のSDS-PAGE解析を示す図である。2つの天然グリカンが除去され、それぞれSia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc(G2S2)で置き換えられた。レーン2:TRZの標準物質。レーン3:TRZ-N/N(2つのGlcNAcを含有するTRZ)の標準物質。レーン4:TRZ-N/Nを得るためのTRZのC-C401での20時間の処理。レーン5~レーン7:TRZ-N/NのC-C401によるSCT-オキサゾリンでの10分間、20分間、及び30分間でのそれぞれ95%、98%、及び98%のグリコシル化。レーン8:糖鎖が操作されたTRZ(TRZ-G2S2/G2S2)精製物。
図8B】C-C401によるTRZのグリカンリモデリングのSDS-PAGE解析を示す図である。2つの天然グリカンが除去され、それぞれGalGlcNAcManGlcNAc(G2)で置き換えられた。レーン2:トラスツズマブの標準物質。レーン3:TRZ-N/Nを得るためのTRZのC-C401での16時間の処理。レーン4~レーン7:TRZ-N/NのC-C401によるCT-オキサゾリンでの15分間、30分間、45分間、及び60分間での98%のグリコシル化。レーン8:糖鎖が操作されたTRZ(TRZ-G2/G2)精製物。レーン9:TRZ-G2S2/G2S2の標準物質。
図9】C-C401によるリツキシマブ(RTX)のグリカンリモデリングのSDS-PAGE解析を示す図である。レーン2:トラスツズマブの標準物質。レーン3:TRZ-N/Nの標準物質。レーン4:リツキシマブの標準物質。レーン5:RTX-N/Nを得るためのRTXのC-C401での20時間の処理。レーン6~レーン8:RTX-N/NのC-C401によるSCT-オキサゾリンでの95%、98%、及び98%のグリコシル化。レーン9:糖鎖が操作されたRTX(RTX-G2S2/G2S2)精製物。
図10】C-C406によるTRZのグリカンリモデリングのSDS-PAGE解析を示す図である。レーン2:トラスツズマブの標準物質。レーン3:TRZ-N/Nの標準物質。レーン4:TRZ-N/Nを得るためのTRZのC-C406での16時間の処理。レーン5~レーン8:TRZ-N/NのC-C406によるSCT-オキサゾリンでの30分間、60分間、90分間、及び120分間でのそれぞれ90%、95%、98%、及び98%のグリコシル化。レーン9:糖鎖が操作されたTRZ(TRZ-G2S2/G2S2)精製物。
図11】C-C407によるTRZのグリカンリモデリングのSDS-PAGE解析を示す図である。レーン2:トラスツズマブの標準物質。レーン3:TRZ-N/Nの標準物質。レーン4~レーン7:TRZ-N/NのC-C407によるSCT-オキサゾリンでの30分間、60分間、90分間、及び120分間でのそれぞれ80%、95%、98%、及び98%のグリコシル化。レーン8:TRZ-N/Nを得るためのTRZのC-C407での12時間の処理。レーン9:糖鎖が操作されたTRZ(TRZ-G2S2/G2S2)精製物。
図12】C-C204によるTRZのグリカンリモデリングのSDS-PAGE解析を示す図である。レーン2:トラスツズマブの標準物質。レーン3:TRZ-N/Nを得るためのTRZのC-C204での16時間の処理。レーン4~レーン9:TRZ-N/NのC-C204によるSCT-オキサゾリンでの15分間、30分間、45分間、60分間、90分間、120分間、及び240分間でのそれぞれ85%、97%、98%、98%、97%、及び90%のグリコシル化。レーン10:糖鎖が操作されたTRZ(TRZ-G2S2/G2S2)精製物。
【発明を実施するための形態】
【0024】
全てのIgGのFcドメインは、二分岐複合型グリカンが通常結合される保存されたN-グリコシル化部位を有するが、顕著な構造的異質性が末端及びコア修飾により生じる。ヒト抗体の或る特定のグリコフォームは、改善された治療効果を示すが、望ましくない特性を有するものもある。したがって、グリコシル化プロセスを制御する能力は、それらの治療有効性を改善するように、所望のグリコフォーム(複数の場合もある)を含む抗体を得るのに重要な役割を果たす。本開示は、抗体グリコフォームをリモデリングするための複数の酵素を含む融合タンパク質を提供し、このリモデリング後に、哺乳動物における治療的使用に好適なグリコシル化パターンを有する糖ペプチドが生成され得る。
【0025】
特に明記しない限り、本発明の実施には、当該技術分野の技能範囲内にある分子生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の従来技術が用いられるであろう。このような技術は、文献において詳細に説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual, 2nd Ed., ed. by Sambrook, Fritsch and Maniatis (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989);DNA Cloning, Volumes I and II (D.N. Glover ed., 1985);Culture Of Animal Cells (R.I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987);Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986);B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984);学術論文であるMethods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J.H. Miller and M.P. Calos eds., 1987, Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology, Vols. 154 and 155 (Wu et al. eds.), Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer and Walker, eds., Academic Press, London, 1987);Antibodies: A Laboratory Manual, by Harlow and Lane s (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988);及びHandbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV (D.M. Weir and C.C. Blackwell, eds., 1986)を参照のこと。
【0026】
定義
本開示は、本開示の種々の実施形態の以下の詳細な説明、実施例、並びに図面、及び表をそれらの関連する説明と共に参照することにより、より容易に理解され得る。特許請求の範囲により特に示されない限り、本開示は、特定の調製方法、担体、若しくは製剤、又は本開示の抽出物を局所、経口、若しくは非経口投与を目的とする製品若しくは組成物に製剤化する特定の方法に限定されないことを理解されたい。これは、関連技術分野の当業者であれば、かかるものが当然変わり得ることをよく知っているためである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的でのみ使用され、限定を意図するものではないことも理解すべきである。
【0027】
本開示により利用されるように、以下の用語は、特に明記しない限り、以下の意味を有すると理解される。
【0028】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途文脈が明確に指示しない限り、複数形の指示物を含むことが留意されなければならない。したがって、文脈により必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。
【0029】
本明細書で使用する場合、用語「任意の」又は「任意に」は、その後に記載される事象又は状況が発生してもしなくてもよいこと、及び説明が該事象又は状況が発生する例及び発生しない例を含むことを意味する。例えば、語句「薬剤を任意に含む」は、該薬剤が存在してもしなくてもよいことを意味する。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「グリカン」は、多糖又はオリゴ糖を指す。グリカンは、複合糖質、例えば、糖タンパク質、糖脂質、糖ペプチド、グリコプロテオーム、ペプチドグリカン、リポ多糖、又はプロテオグリカンの炭水化物部分を指すためにも本明細書において使用される。グリカンは、通常、単糖間のO-グリコシド結合だけからなる。例えば、セルロースは、-1,4結合されたD-グルコースからなるグリカン(又はより具体的にはグルカン)であり、キチンは、-1,4結合されたN-アセチル-D-グルコサミンからなるグリカンである。グリカンは、単糖残基のホモ又はヘテロポリマーであってもよく、直鎖又は分枝鎖であってもよい。グリカンは、糖タンパク質及びプロテオグリカンのようにタンパク質に結合しているのが見出され得る。それらは一般に、細胞の外面に見出される。O結合型及びN結合型グリカンは、真核生物において非常に一般的であるが、原核生物においても、多くはないが見出され得る。N結合型グリカンは、シークオンのアスパラギンのR基窒素(N)に結合しているのが見出される。シークオンは、Asn-X-Ser又はAsn-X-Thrの配列であり、ここで、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸である。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「操作された」は、アミノ酸配列が人により設計されており、及び/又は存在及び生成が人の介入及び/又は活動を必要とするポリペプチドを表現する。
【0032】
本明細書で使用する場合、本明細書において互換的に使用される用語「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを包含する。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、若しくは塩基、及び/又はそれらの類似体、又はDNA若しくはRNAポリメラーゼによって、若しくは合成反応によってポリマーに組み込まれ得る任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾はポリマーの構築の前又は後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断され得る。ポリヌクレオチドは、合成後に、例えば、標識とのコンジュゲーションにより更に修飾され得る。他の種類の修飾としては、例えば、「キャップ」、1つ以上の天然に存在するヌクレオチドの類似体との置換、ヌクレオチド間の修飾、例えば、非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメート等)によるもの及び荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)によるもの、懸垂部分、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジン等)を含むもの、挿入剤(例えば、アクリジン、ソラレン等)によるもの、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属等)を含むもの、アルキル化剤を含むもの、修飾された結合によるもの(例えば、αアノマー核酸等)、並びにポリヌクレオチド(複数の場合もある)の未修飾形態が挙げられる。さらに、糖に通常存在するヒドロキシル基のいずれかが、例えば、ホスホネート基、ホスフェート基で置き換えられ得るか、標準的な保護基で保護され得るか、又は追加のヌクレオチドへの追加の結合を準備するために活性化され得るか、又は固体若しくは半固体の支持体にコンジュゲートされ得る。5’及び3’末端のOHは、リン酸化され得るか、又はアミンで、若しくは炭素数1~20の有機キャッピング基部分で置換され得る。他のヒドロキシルも標準的な保護基に誘導体化され得る。ポリヌクレオチドは、例えば、2’-O-メチルリボース、2’-O-アリルリボース、2’-フルオロリボース、又は2’-アジドリボース、炭素環式糖類似体、α-アノマー糖、エピマー糖、例えば、アラビノース、キシロース、又はリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、及び塩基性ヌクレオシド類似体、例えば、メチルリボシドが挙げられる、当該技術分野において一般的に既知であるリボース又はデオキシリボース糖の類似形態も含み得る。1つ以上のホスホジエステル結合が代替的な連結基で置き換えられ得る。これらの代替的な連結基としては、限定されるものではないが、ホスフェートがP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO、又はCH(「ホルムアセタール」)で置き換えられており、式中、各R又はR’が独立して、H、又は任意にエーテル(-O-)結合を含む置換若しくは非置換アルキル(1~20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、又はアラルキルである実施形態が挙げられる。ポリヌクレオチドにおける全ての結合が同一である必要はない。上記の説明は、RNA及びDNAが含まれる本明細書において言及される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「ベクター」は、核酸分子であって、該核酸分子が連結されている別の核酸を輸送することができる、核酸分子を指す。
【0034】
本明細書で使用する場合、用語「宿主」は、関心対象のポリペプチドが内部に存在する系(例えば、細胞、生物等)を指す。幾つかの実施形態において、宿主は、特定の感染因子による感染に感受性である系である。幾つかの実施形態において、宿主は、関心対象の特定のポリペプチドを発現する系である。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸及び合成アミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸と同じように機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によりコードされるもの、及び後に修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、及びO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造(すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合しているα炭素)を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。かかる類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)又は修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持する。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的化学構造と異なる構造を有する化合物を指すが、天然に存在するアミノ酸と同じように機能する。
【0036】
本明細書で使用する場合、本明細書において互換的に使用される用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、モノマーがアミノ酸であり、アミド結合により連結されている、代替的にペプチドと称されるポリマーを指すために使用され得る。追加的に非天然アミノ酸、例えば、β-アラニン、フェニルグリシン、及びホモアルギニンも含まれる。核酸にコードされないアミノ酸も本発明において使用され得る。さらに、反応性基、グリコシル化部位、ポリマー、治療用部分、生体分子等を含むように修飾されたアミノ酸も本発明において使用され得る。本発明において使用される全てのアミノ酸は、そのD異性体又はL異性体のいずれかであり得る。L異性体が一般に好ましい。加えて、他のペプチド模倣体も本発明において有用である。本明細書で使用する場合、「ペプチド」は、オリゴペプチド、ポリペプチド、ペプチド、タンパク質、又は糖タンパク質である。本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」は、グリコシル化及び非グリコシル化ペプチドの両方を指す。ペプチドを発現する系により不完全にグリコシル化されるペプチドも包含される。
【0037】
本明細書で使用する場合、「キメラタンパク質」としても既知の用語「融合タンパク質」は、元々別個のタンパク質をコードしていた2つ以上の遺伝子を連結することにより翻訳されるタンパク質を指す。
【0038】
本明細書で使用する場合、本明細書で用いられる用語「抗体」は、完全な抗体分子の抗原結合断片も包含する。抗体の抗原結合断片は、任意の好適な標準的技術、例えば、タンパク質分解又は、抗体の可変ドメイン及び任意に定常ドメインをコードするDNAの操作及び発現を含む遺伝子組換え操作技術を使用して、例えば、完全な抗体分子から得られ得る。かかるDNAは、既知であり、及び/又は、例えば、商業的供給元であるDNAライブラリー(例えば、ファージ抗体ライブラリーが挙げられる)から容易に入手可能であるか、又は合成され得る。DNAは、配列決定され得、かつ、例えば、1つ以上の可変及び/又は定常ドメインを好適な立体配置に配置するか、又はコドンを導入し、システイン残基を生じさ、アミノ酸を修飾、付加、若しくは除去する等して、化学的に又は分子生物学技術を使用して操作され得る。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「抗体Fc領域」は、Fc受容体と称される細胞表面受容体及び補体系の一部のタンパク質と相互作用する、抗体の尾部領域である結晶化可能領域の断片を指す。Fc断片のグリコシル化は、Fc受容体媒介活性に必須である。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「グリコフォーム」は、特定のグリコシル化状態を含む抗体を指す。用語「グリコシル化状態」は、特定の又は所望のグリコシル化パターンを有する抗体を指す。
【0041】
本明細書で使用する場合、用語「抗体Fc領域のグリカンをリモデリングする」は、抗体Fc領域のグリカンにおける残基の種類、位置、数、型、又は結合を変化させること、又は修飾することを指す。一実施形態において、リモデリングは、コアフコースの数又は長さを低減することである。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「標的グリカンオキサゾリン」は、リモデリングされるグリコフォームであるグリカンオキサゾリンを指す。
【0043】
融合タンパク質
治療抗体の生物学的機能を改善し、不均一性を低減するために、グリコシル化経路の遺伝子操作が開発された。均一な糖タンパク質を得る方法は、糖タンパク質リモデリングの戦略に基づく。フコシダーゼは、α-L-フコシドの加水分解を触媒することができる。例えば、α-L-フコシドの加水分解は、α-L-フコースとNアセチルグルコサミン残基との間の1,2-結合、1,3-結合、又は1,6-結合を切断する化学反応を伴う。一方で、エンドグリコシダーゼは、糖タンパク質又は糖脂質からのオリゴ糖の放出を触媒する。例えば、糖タンパク質からのオリゴ糖の放出は、アスパラギンに結合されたグリカンのβ-1,4-ジ-N-アセチルキトビオースコアを加水分解すること、又は全てのN結合型グリカン上、及びAGP(α1-酸性糖タンパク質)の二分岐かつシアル酸付加グリカン上のエンド-β-N-アセチルグルコサミニドを加水分解することにより実行される。フコシダーゼ及びエンドグリコシダーゼの組み合わせで抗体グリコフォームを処理すると、Fc領域に明瞭なグリカンを有する均一な抗体が得られ得る。
【0044】
本開示は、エンドグリコシダーゼ又はその切断断片若しくは変異体のN末端又はC末端のいずれかと融合されたフコシダーゼ又はその切断断片若しくは変異体を含む融合タンパク質であって、融合タンパク質がフコシダーゼ活性及びエンドグリコシダーゼ活性の両方を示す、融合タンパク質を提供する。
【0045】
フコシダーゼ又はその切断断片若しくは変異体及びエンドグリコシダーゼ又はその切断断片若しくは変異体が、直接的に又はリンカーにより互いに融合される。一実施形態において、フコシダーゼ又はその切断断片若しくは変異体は、エンドグリコシダーゼ又はその切断断片若しくは変異体のN末端と直接的又は間接的に連結する。別の実施形態において、フコシダーゼ又はその切断断片若しくは変異体は、エンドグリコシダーゼ又はその切断断片若しくは変異体のC末端と直接又は間接的に連結する。
【0046】
フコシダーゼは、野生型であるか、又はその野生型と比較して改変された形態、例えば、その切断断片又は変異体であり得る。フコシダーゼの例としては、限定されるものではないが、ラクトバチルス・カゼイのα-L-フコシダーゼC(Alfc)、バクテロイデス・フラジリスのフコシダーゼ(BF3242)、バクテロイデス・テタイオタミクロンのα-L-フコシダーゼ(BT2970)、エムティシシア・オリゴトロフィカのα-L-フコシダーゼ(EO0918)、及びエリザベトキンギア・ミリコーラのα-(1-6)-フコシダーゼ(Emfuc3)、又はそれらの断片若しくはそれらの変異体が挙げられる。幾つかの実施形態において、フコシダーゼは、ラクトバチルス・カゼイのα-L-フコシダーゼC及びエリザベトキンギア・ミリコーラのα-(1-6)-フコシダーゼ(Emfuc3)、並びにそれらの切断断片若しくは変異体である。
【0047】
エンドグリコシダーゼは、野生型であるか、又はその野生型と比較して改変された形態、例えば、エンドグリコシダーゼの切断断片又は変異体であり得る。エンドグリコシダーゼの例としては、限定されるものではないが、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、又はそれら断片若しくは変異体が挙げられる。幾つかの実施形態において、エンドグリコシダーゼは、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、又はその切断断片若しくは変異体である。
【0048】
フコシダーゼ又はエンドグリコシダーゼの切断断片も本開示において使用され得る。フコシダーゼ又はエンドグリコシダーゼの切断断片は、ペプチドのN末端、ペプチドのC末端、若しくは両末端、又はペプチドの内部領域のいずれかで切断されている。幾つかの実施形態において、フコシダーゼ又はエンドグリコシダーゼの切断断片は、そのC末端又はN末端切断断片である。一実施形態において、エンドグリコシダーゼの切断断片は、そのIgG結合ドメインである。幾つかの更なる実施形態において、エンドグリコシダーゼの切断断片は、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS又は化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2のIgG結合ドメインである。
【0049】
フコシダーゼ又はエンドグリコシダーゼは、それらの変異体であり得る。一実施形態において、エンドグリコシダーゼ変異体は、アミノ酸位D233での変異、好ましくは、アミノ酸位D233Qでの変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼSである。幾つかの実施形態において、エンドグリコシダーゼ変異体は、アミノ酸位T138、D182、D184、D186、D226、又はT227での変異、好ましくは、T138E、T138M、T138Q、T138R、T138M、T138L、T138H、T138N、T138K、D182Q、D184M、D184Q、D184T、D184L、D184F、D184S、D184V、D184K、D184W、E186A、D226Q、又はT227Qを有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2である。
【0050】
幾つかの実施形態において、融合タンパク質は、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼSのIgG結合ドメイン、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2のIgG結合ドメイン、アミノ酸位D233での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS、アミノ酸位T138での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、アミノ酸位D182での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、アミノ酸位D184での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、アミノ酸位D186での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、アミノ酸位D226での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、又はアミノ酸位T227での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2と融合されたラクトバチルス・カゼイのα-L-フコシダーゼCを含む。
【0051】
幾つかの実施形態において、融合タンパク質は、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼSのIgG結合ドメイン、化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2のIgG結合ドメイン、アミノ酸位D233での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS、アミノ酸位T138での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、アミノ酸位D182での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、アミノ酸位D184での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、アミノ酸位D186での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、アミノ酸位D226での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2、又はアミノ酸位T227での変異を有する化膿連鎖球菌のエンドグリコシダーゼS2と融合されたエリザベトキンギア・ミリコーラのα-(1-6)-フコシダーゼを含む。
【0052】
融合タンパク質のアミノ酸配列の例としては、限定されるものではないが、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202、及び204、又はそれらと実質的に類似する配列が挙げられる。好ましくは、融合タンパク質は、配列番号34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、174、176、178、180、182、184、186、188、190、192、194、196、198、200、202及び204からなる群から選択されるアミノ酸配列、又はそれらと実質的に類似する配列を有する。
【0053】
ポリペプチドに適用される場合、ポリペプチドに適用される用語「実質的な類似性」又は「実質的に類似する」は、2つのペプチド配列が、例えば、GAP又はBESTFITプログラムによりデフォルトのギャップの重みを使用して最適にアラインメントされる場合、少なくとも95%の配列同一性、更に好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換により異なる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の化学的性質(例えば、電荷又は疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基により置換されている置換である。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変化させない。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換により互いに異なる場合、配列同一性パーセント又は類似度は、置換の保存的性質に対して補正するために上方調整され得る。この調整を行うための手段は、当業者に既知である。類似の化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸群の例としては、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシン;(2)脂肪族ヒドロキシル側鎖:セリン及びトレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン;(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、及びヒスチジン;(6)酸性側鎖:アスパラギン酸及びグルタミン酸;並びに(7)含硫黄側鎖:システイン及びメチオニンが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換群は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、及びアスパラギン-グルタミンである。
【0054】
変異は、天然配列の抗体又はポリペプチドと比較したアミノ酸配列における変化をもたらす抗体又はポリペプチドをコードする1つ以上のコドンの置換、欠失、又は挿入であり得る。例えば、アミノ酸置換をもたらす部位特異的変異誘発及びPCR媒介変異誘発が挙げられる、本明細書において提供される分子をコードするヌクレオチド配列に変異を導入するための当業者に既知の標準的技術が使用され得る。挿入又は欠失は、任意に約1アミノ酸~5アミノ酸の範囲であり得る。或る特定の実施形態において、置換、欠失、又は挿入としては、元の分子と比較して25アミノ酸未満の置換、20アミノ酸未満の置換、15アミノ酸未満の置換、10アミノ酸未満の置換、5アミノ酸未満の置換、4アミノ酸未満の置換、3アミノ酸未満の置換、又は2アミノ酸未満の置換が挙げられる。許容される変異は、配列におけるアミノ酸の挿入、欠失、又は置換を系統的に作ること、及び全長又は成熟天然配列により示される活性について、得られたバリアントを試験することにより決定され得る。
【0055】
アミノ酸配列挿入としては、長さが1残基~100以上の残基を含有するポリペプチドの範囲のアミノ末端融合及び/又はカルボキシル末端融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとしては、抗体のN末端又はC末端の、酵素(例えば、抗体指向性酵素プロドラッグ治療用の)又は抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドへの融合が挙げられる。
【0056】
保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、同程度の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基と置き換えられる置換である。同程度の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において規定されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。あるいは、飽和変異誘発等により、コード配列の全て又は一部に沿ってランダムに変異が導入される場合があり、活性を保持する変異体を同定するために、得られた変異体を生物活性についてスクリーニングすることができる。変異誘発後、コードタンパク質が発現される場合があり、タンパク質の活性を決定することができる。
【0057】
抗体の生物学的性質の大幅な改変は、(a)置換領域におけるポリペプチド骨格の構造、例えば、シート若しくはらせん形構造、(b)標的部位での分子の電荷若しくは疎水性、又は(c)側鎖の嵩高さの維持への置換の影響が顕著に異なる置換を選択することにより達成される。
【0058】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを、別のクラスに交換することを伴う。かかる置換残基は、保存的置換部位に導入されてもよく、残りの(非保存)部位に導入されてもよい。
【0059】
変異は、当該技術分野において既知の方法、例えば、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)変異誘発、アラニンスキャニング、及びPCR変異誘発を使用してなされ得る。部位特異的変異誘発(例えば、Carter, 1986, Biochem J. 237:1-7;及びZoller et al., 1982, Nucl. Acids Res. 10:6487-500を参照のこと)、カセット変異誘発(例えば、Wells et al., 1985, Gene 34:315-23を参照のこと)、又は他の既知の技術が、バリアントDNAを作製するために、クローン化DNAに対して実行され得る。
【0060】
本開示の融合タンパク質をコードする核酸分子及び本開示の融合タンパク質を産生する発現系
本開示は、本明細書に記載される融合タンパク質を発現する核酸分子も提供する。
【0061】
本開示の幾つかの実施形態において、核酸分子は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197、199、201、及び203からなる群から選択されるヌクレオチド配列又はそれらと実質的に同一な配列を有する。幾つかの更なる実施形態において、核酸は、配列番号33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、173、175、177、179、181、183、185、187、189、191、193、195、197、199、201、及び203からなる群から選択されるヌクレオチド配列、又はそれらと実質的に同一な配列を有する。
【0062】
核酸又はその断片に言及する場合、用語「実質的同一性」又は「実質的に同一な」は、適切なヌクレオチド挿入又は欠失を用いて別の核酸(又はその相補鎖)と最適にアラインメントされる場合に、後述するように、任意の既知の配列同一性のアルゴリズム、例えば、FASTA、BLAST、又はGapにより測定されるように、上記の参照核酸配列の配列全体に対するヌクレオチド塩基の少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも96%、97%、98%、又は99%のヌクレオチド配列同一性が存在することを示す。参照核酸分子に対する実質的な同一性を有する核酸分子は、或る特定の例では、参照核酸分子によりコードされるポリペプチドと同一の又は実質的に類似するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードし得る。
【0063】
融合タンパク質は、原核生物及び真核生物の発現系が挙げられる様々な発現系を使用して産生され得る。多数のかかる系は、商業的供給者から広く入手可能である。一実施形態において、融合タンパク質は、ベクターを使用して発現することができ、ここで、該融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、プロモーター配列に作動可能に連結されている。一実施形態において、プロモーターは、構成的プロモーターである。別の実施形態において、プロモーターは、誘導性プロモーターである。
【0064】
一実施形態において、ポリヌクレオチド又はベクターは、ウイルスに含有される。別の実施形態において、ウイルスは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスからなる群から選択される。本開示の好ましい一実施形態において、ポリヌクレオチド又はベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)シャトルプラスミドに含有される。
【0065】
本開示の融合タンパク質の用途
本開示は、抗体のFc領域のグリカンをリモデリングする方法であって、抗体のFc領域に不均一なグリカンを有する抗体を得る工程と、抗体を本明細書に記載される融合タンパク質と接触させる工程とを含む、方法を提供する。
【0066】
本開示の一実施形態において、本方法は、
Fc領域に不均一なグリカンを有する抗体、本開示の融合タンパク質、及び標的グリカンオキサゾリンを準備することと、ここで、抗体Fc領域のグリカンが、Fc領域のAsn残基に結合しているN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を含む、好ましくは、抗体Fc領域のグリカンが、Fc領域のAsn-297に結合しているN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基を含む;
抗体を融合タンパク質及び抗体Fc領域に結合する標的グリカンオキサゾリンと接触させることと、
を含み、
これにより、抗体Fc領域のリモデリングされたグリカンが得られ得る。
【0067】
一実施形態において、標的グリカンオキサゾリンは、抗体Fc領域に結合するためにFc領域のグリカンの一部と置き換わる。どの理論によっても限定されることを意図しないが、本開示による融合タンパク質は、抗体Fc領域のグリカンにおけるN結合型GlcNAcを除去し、次いで、抗体Fc領域に標的グリカンオキサゾリンを付加するためのグリコシル化が起こると考えられる。その結果、抗体Fc領域のリモデリングされたグリカンが得られ得る。
【0068】
リモデリングされたグリカンの例としては、限定されるものではないが、Sia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-3)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-3)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-3/α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-6/α2-3)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-3/α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-6/α2-3)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-3)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-3)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-3)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc、Sia(α2-3)GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAc、又はManGlcNAcが挙げられる。
【0069】
好ましくは、本方法は、リモデリングされたグリカンを有するFc領域を有する抗体を精製することを更に含む。
【0070】
本発明の態様は、本発明の実施形態及びその多数の利点のより良い理解を提供する以下の例示的な非限定的実施例によって更に説明される。以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。次に続く実施例において開示される技術は、本発明の実施において良好に機能するように本発明において使用される技術を表し、したがって、その実施するための好ましい形態を構成するとみなされ得ることが当業者により理解されよう。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示される特定の実施形態において多数の変更を行っても、本発明の要旨及び範囲から逸脱することなく同様又は同程度の結果を得ることができることを理解すべきである。
【実施例
【0071】
融合タンパク質
実施例1:融合タンパク質の作製
以下の表1~表5に示すように、フコシダーゼBF3242(表1)、Alfc(表2)、BT2970(表3)、EO0918(表4)、及びEmfuc3(表5)に融合された全長又は切断型(IgG結合モチーフのみ)EndoS又はEndoS2を含有する融合タンパク質を作製した。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
【表5】
【0077】
抗体Fc領域のグリカンのリモデリング
実施例2:フコシダーゼ活性アッセイ
試験抗体、すなわち、トラスツズマブ(TRZ)を、endoS2を用いてTris-HCl(pH7.0)中で37℃にて1時間処理した。プロテインAアフィニティークロマトグラフィー樹脂(MabSelect(商標))上に吸着させ、Tris-HCl(pH7.4)で洗浄し、クエン酸緩衝液(pH3.0)により溶出させることにより処理した抗体を精製した。得られた抗体のFc領域における大部分の残存グリカンは、N-アセチルグルコサミン-フコース(GlcNAc-Fuc)である。精製された抗体を融合タンパク質又は天然のフコシダーゼを用いてTris-HCl緩衝液(pH 7.0)中で37℃にて16時間処理し、続いて、55℃で20分間加熱して、酵素活性を不活性化した。0.22μmメンブレンを通して反応混合物を濾過し、処理された抗体をアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。
【0078】
残存フコースのレベルを、インタクトなタンパク質の質量分析により決定した。TRZ-N/N(Fc領域に2つのGlcNAcを含有するTRZ)、TRZ-N/NF(Fc領域に1つのGlcNAc及び1つのGlcNAc-Fucを含有するTRZ)、及びTRZ-NF/NF(Fc領域に2つのGlcNAc-Fucを含有するTRZ)の比率を各質量ピークの強度により同定した。結果を以下の表6に、及び図1に示す。
【0079】
【表6】
【0080】
結果は、バクテロイデス・フラジリスのフコシダーゼBF3242のフコシダーゼ活性が、それを化膿連鎖球菌(S. pyogenes)のendoS2のD184M変異体に融合させることにより改善されなかったことを示した。BF3242(18.22%のフコースが除去された)をE-C401(14.35%)及びE-N401(7.11%)と比較のこと。
【0081】
驚くべきことに、Alfcのフコシダーゼ活性は、この酵素をD184変異型endoS2酵素のN末端又はC末端のいずれかに融合させることにより顕著に増加した。例えば、Alfcは、20.72%のフコースを試験抗体から除去した一方で、EndoS2 D184M変異体のN末端に融合されたAlfcは、40.19%のフコースを除去した。AlfcをC-N401と比較のこと。更に予想外なことに、EndoS2 D184MのC末端に融合されたAlfc(C-C401)は、86.37%ものフコースを試験抗体から除去した。注目すべきことに、全ての試験されたAlfcのEndoS2 D184変異体、すなわち、D184M、D184Q、D184T、D184L、及びD184FのC末端との融合物は、AlfcのEndoS2変異体のN末端との融合物と比較して予想外に高いフコシダーゼ活性を示した。
【0082】
実施例3:追加のAlfc融合タンパク質のフコシダーゼ活性
天然又は部位特異的変異型EndoS2酵素のC末端に融合されたAlfcを有する追加の融合タンパク質を、TRZに対するそれらのフコシダーゼ活性について、実施例2で上記した通りに試験した。結果を以下の表7に、及び図2に示す。
【0083】
【表7】
【0084】
結果は、試験された全てのAlfc/EndoS2融合タンパク質が、Alfc単独と比較して顕著により多くのフコースをTRZから除去したことを示した。
【0085】
5種のフコシダーゼの切断型EndoS2との追加の融合タンパク質を、TRZに対するそれらのフコシダーゼ活性について、実施例2で上記した通りに試験した。結果を以下の表8に、及び図3に示す。
【0086】
【表8】
【0087】
Alfcの脱フコース能力は明らかに改善された。BT2970及びEO0918の融合タンパク質は、抗体のコアフコースを除去することができなかった。
【0088】
実施例4:切断型EndoS2又は部位特異的変異型EndoS2酵素に融合されたAlfc又はEmfuc3を有する追加の融合タンパク質
切断型EndoS2又は部位特異的変異型EndoS2酵素に融合されたAlfc又はEmfuc3を有する追加の融合タンパク質を、TRZに対するそれらのフコシダーゼ活性について、実施例2で上記した通りに試験した。結果を以下の表9に、及び図4に示す。
【0089】
【表9】
【0090】
Alfcの脱フコース能力は、インタクトなEndoS2変異のC末端に融合される場合(C-C204)に、切断型EndoS2(IgG結合ドメイン)(A-C202及びA-N202)と比べてより増加し得る。Emfuc3の脱フコース能力は、切断型EndoS2(IgG結合ドメイン)のN末端に融合される場合(A-N205)に改善され得るが、切断型EndoS2(IgG結合ドメイン)のC末端に融合される場合(A-C205)には改善されない。
【0091】
実施例5
切断型又は部位特異的変異型のEndoS又はEndoS酵素のN末端に融合されたAlfc又はEmfuc3を有する追加の融合タンパク質を、TRZに対するそれらのフコシダーゼ活性について、実施例2で上記した通りに試験した。結果を以下の表10に、及び図5に示す。
【0092】
【表10】
【0093】
Alfcの活性は、EndoS2との融合後に劇的に改善されたが、EndoSとの融合後では改善されなかった。対照的に、Emfuc3の活性は、EndoS2との融合後よりもEndoSとの融合後に、より明白に改善された。
【0094】
実施例6:EndoS若しくはEndoS2/Emfuc3、EndoS/BF3242を有する追加の融合タンパク質、Alfc、Emfuc3、又はBF3242フコシダーゼ
EndoS若しくはEndoS2/Emfuc3、EndoS/BF3242を有する追加の融合タンパク質、Alfc、Emfuc3、又はBF3242フコシダーゼ酵素を、TRZに対するそれらのフコシダーゼ活性について、実施例2で上記した通りに試験した。結果を以下の表11に、及び図6に示す。
【0095】
【表11】
【0096】
実施例5と比較すると、Emfuc3をEndoS変異及びEndoS2変異のN末端と融合させた場合に、エンドグリコシダーゼのC末端に融合させた場合と比べてより顕著な改善が観察された。
【0097】
実施例7:切断型又は部位特異的変異型のEndoS2又はEndoS酵素に融合されたBF3242を有する追加の融合タンパク質
切断型又は部位特異的変異型のEndoS2又はEndoS酵素に融合されたBF3242を有する追加の融合タンパク質を、TRZに対するそれらのフコシダーゼ活性について、実施例2で上記した通りに試験した。結果を以下の表12に、及び図7に示す。
【0098】
【表12】
【0099】
BF3242の脱コアフコース能力は、エンドグリコシダーゼと融合させることにより改善できなかった。
【0100】
実施例8:融合タンパク質であるC-C401によるTRZの糖鎖の操作
試験抗体TRZを、融合タンパク質であるC-C401、すなわち、endoS2 D184MのC末端に融合されたAlfcを用いてTris-HCl(pH7.0)中で37℃にて16時間~20時間処理した。反応物を30℃に調整した後、シアル酸付加複合型グリカン-オキサゾリン、すなわち、Sia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc-オキサゾリン又は非シアル酸付加バージョン(GalGlcNAcManGlcNAc-オキサゾリン)を添加し、反応物を30分間~1時間インキュベートした。糖鎖が操作されたTRZを実施例2で上記した通りに精製した。得られた糖鎖が操作されたTRZは、Fc領域に2つのSia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc(G2S2)又は2つのGalGlcNAcManGlcNAc(G2)を含有していた。反応物の試料を異なる時間間隔で取り出し、SDS-PAGEにより解析した。結果を図8A及び図8Bに示す。
【0101】
図8Aに示すように、TRZ(レーン1)のC-C401による20時間の処理は、N結合型GlcNAcを除いて全てを除去して(レーン4)、TRZ-N/N(GlcNAc/GlcNac;レーン3)が得られた。温度を調整し、Sia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc-オキサゾリンを添加した後のTRZ-N/Nグリコシル化の量は、10分、20分、及び30分後でそれぞれ95%、98%、及び98%であった。レーン5、6、及び7を参照のこと。糖鎖が操作されたTRZ-G2S2/G2S2精製物をレーン8に示す。
【0102】
図8Bに目を向けると、TRZの16時間の脱グリコシル化後(レーン3)に、温度を調整し、GalGlcNAc2ManGlcNAc-オキサゾリンを添加した後のTRZ-N/Nグリコシル化の量は、全ての時点で98%であったことを示す。レーン4~レーン7を参照のこと。糖鎖が操作されたTRZ-G2/G2精製物をレーン8に示す。
【0103】
実施例9:融合タンパク質であるC-C401によるリツキシマブ(RTX)の糖鎖の操作
試験抗体RTXを融合タンパク質C-C401を用いてTris-HCl中で処理した。温度を30℃に調整後、Sia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc-オキサゾリンを添加し、反応物を1時間インキュベートした。グリカンがリモデリングされたRTXを、実施例2で上記した通りに精製した。得られたRTXは、Fc領域に2つのG2S2を含有した。反応物の試料を異なる時間間隔で取り出し、SDS-PAGEにより解析した。結果を図9に示す。
【0104】
RTX(レーン4)のC-C401による20時間の処理は、N結合型GlcNAcを除いて全てを除去して、RTX-N/N(GlcNAc/GlcNac;レーン5)が得られた。温度を調整し、Sia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc-オキサゾリンを添加した後のRTX-N/Nグリコシル化の量は、10分、20分、及び30分後でそれぞれ95%、98%、及び98%であった。レーン6、7、及び8を参照のこと。糖鎖が操作されたRTX-G2S2/G2S2精製物をレーン9に示す。
【0105】
実施例10:融合タンパク質であるC-C406によるTRZの糖鎖の操作
試験抗体TRZを、融合タンパク質C-C406、すなわち、endoS2 D184SのC末端に融合されたAlfcを用いてTris-HCl(pH7.0)中で37℃にて16時間処理した。温度を30℃に調整後、Sia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc-オキサゾリンを添加し、反応物を1時間インキュベートした。グリカンがリモデリングされたTRZを、上記の実施例2に記載したように精製した。得られたTRZは、Fc領域に2つのG2S2を含有した。反応物の試料を異なる時間間隔で取り出し、SDS-PAGEにより解析した。結果を図10に示す。
【0106】
TRZ(レーン1)のC-C406による16時間の処理は、N結合型GlcNAcを除いて全てを除去して、TRZ-N/N(GlcNAc/GlcNac;レーン4)が形成された。温度を調整し、Sia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc-オキサゾリンを添加した後のTRZ-N/Nグリコシル化の量は、30分、60分、90分、及び120分後でそれぞれ90%、95%、98%、及び98%であった。レーン5、6、7、及び8を参照のこと。糖鎖が操作されたTRZ-G2S2/G2S2精製物をレーン9に示す。
【0107】
実施例11:融合タンパク質であるC-C407によるTRZの糖鎖の操作
試験抗体TRZを、融合タンパク質C-C407、すなわち、endoS2 D184VのC末端に融合されたAlfcを用いてTris-HCl(pH7.0)中で37℃にて12時間処理した。Sia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc-オキサゾリンを添加し、反応物を1時間インキュベートした。グリカンがリモデリングされたTRZを上記の通り精製した。得られたTRZは、Fc領域に2つのG2S2を含有した。反応物の試料を異なる時間間隔で取り出し、SDS-PAGEにより解析した。結果を図11に示す。
【0108】
TRZ(レーン1)のC-C407による12時間の処理は、N結合型GlcNAcを除いて全てを除去して、TRZ-N/N(GlcNAc/GlcNac;レーン8)が得られた。温度を調整し、Sia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc-オキサゾリンを添加した後のTRZ-N/Nグリコシル化の量は、30分、60分、90分、及び120分後でそれぞれ80%、95%、98%、及び98%であった。レーン4、5、6、及び7を参照のこと。糖鎖が操作されたTRZ-G2S2/G2S2精製物をレーン9に示す。
【0109】
実施例12:融合タンパク質であるC-C204によるTRZの糖鎖の操作
試験抗体TRZを、融合タンパク質C-C204、すなわち、endoS2 T138MのC末端に融合されたAlfcを用いてTris-HCl(pH7.0)中で37℃にて16時間処理した。Sia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc-オキサゾリンを添加し、反応物を4時間インキュベートした。グリカンがリモデリングされたTRZ(50分)を上記の通り精製した。得られたTRZは、Fc領域に2つのG2S2を含有した。反応物の試料を異なる時間間隔で取り出し、SDS-PAGEにより解析した。結果を図12に示す。
【0110】
TRZ(レーン1)のC-C204による16時間の処理は、N結合型GlcNAcを除いて全てを除去して、TRZ-N/N(GlcNAc/GlcNac;レーン3)が得られた。温度を調整し、Sia(α2-6)GalGlcNAcManGlcNAc-オキサゾリンを添加した後のTRZ-N/Nグリコシル化の量は、15分、30分、45分、50分、120分、及び240分後でそれぞれ80%、95%、98%、98%、95%、及び90%であった。レーン4、5、6、7、8、及び9を参照のこと。糖鎖が操作されたTRZ-G2S2/G2S2(50分)精製物をレーン10に示す。
【0111】
本開示が上記に記載の特定の実施形態と共に記載されたが、その多数の代替例並びにその改変及び変形形態が、当業者には明らかとなるであろう。全てのかかる代替例、改変、及び変形形態は、本開示の範囲に入るとみなされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
【配列表】
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【手続補正書】
【提出日】2021-06-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2023508620000001.app
【国際調査報告】