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特表2023-508624NK細胞上で受容体を結合させるための複数のリガンドとコンジュゲートしたナノ粒子を使用したがん処置のための方法及び組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-03
(54)【発明の名称】NK細胞上で受容体を結合させるための複数のリガンドとコンジュゲートしたナノ粒子を使用したがん処置のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/51 20060101AFI20230224BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230224BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230224BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230224BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20230224BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
A61K9/51
A61K39/395 T
A61P35/00
A61K9/14
A61K47/69
A61K31/704
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523117
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-06-03
(86)【国際出願番号】 US2020055818
(87)【国際公開番号】W WO2021076780
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】62/923,060
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522154261
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ノース キャロライナ アット チャペル ヒル
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
【住所又は居所原語表記】109 Church Street, Chapel Hill, North Carolina 27516 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 友和
(74)【代理人】
【識別番号】100182903
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 武慶
(72)【発明者】
【氏名】ワン,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】アウ,キン マン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE23
4C076EE24
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB41
4C085BB43
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA10
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA38
4C086MA41
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、NK細胞表面上の第1の標的に結合する少なくとも1種類の第1の標的化剤、及びがん細胞表面上の第2の標的に結合する少なくとも1種類の第2の標的化剤を含む粒子を含み、第2の標的化剤は第1の標的化剤とは異なる、方法及び組成物を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子であって、
ナチュラルキラー(NK)細胞表面上の第1の標的に結合する少なくとも1種類の第1の標的化剤と、
がん細胞表面上の第2の標的に結合する少なくとも1種類の第2の標的化剤と、を含み、前記第2の標的化剤が前記第1の標的化剤とは異なる、ナノ粒子。
【請求項2】
少なくとも2種類の第1の標的化剤を含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記少なくとも2種類の第1の標的化剤が、前記NK細胞表面上の異なる標的に結合する、請求項2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
前記NK細胞表面上の前記第1の標的が、CD16、4-1BB、NKG2D、TRAIL、NKG2C、CD137、OX40、CD27、KIR、NKG2a、dnam-1、2b4、NKp30a、NKp30b、NKp30c、抗体Fc成分、及びこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項5】
前記NK細胞表面上の前記第1の標的が、CD16及び/又は4-1BBである、請求項4に記載のナノ粒子。
【請求項6】
前記がん細胞が、腺がん、胸腺腫、肉腫、脳がん、頭頸部がん、食道がん、胃がん、肺がん、膀胱がん、腎がん、肝臓がん、膵臓がん、子宮がん、卵巣がん、子宮頸がん、肛門がん、メラノーマ、前立腺がん、乳がん、血液細胞がん、大腸がん、又はこれらのいずれかの組合せに由来する細胞である、請求項1~5のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項7】
前記がん細胞表面上の前記第2の標的が、EGFR、PSMA、Nectin-4、ムチン、HER-2、CD30、CD22、及びこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項8】
前記がん細胞表面上の前記第2の標的がEGFRである、請求項7に記載のナノ粒子。
【請求項9】
前記第1の標的化剤及び/又は前記第2の標的化剤が抗体又はその活性断片である、請求項1~8のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項10】
前記抗体又はその活性断片が、モノクローナル抗体、Fab断片、Fab´-SH断片、FV断片、scFv断片、(Fab´)断片、Fc-融合タンパク質、及びこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項9に記載のナノ粒子。
【請求項11】
治療薬を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項12】
前記治療薬が、エピルビシン(EPI)、ドキソルビシン、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ダウノルビシン、タキソール、ドセタキセル、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、マイトマイシン、シタラビン、シトキサン、及びこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される化学療法薬である、請求項11に記載のナノ粒子。
【請求項13】
前記化学療法薬がエピルビシン(EPI)である、請求項12に記載のナノ粒子。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のナノ粒子及び薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【請求項15】
NK細胞を活性化させる方法であって、前記第1の標的化剤が前記NK細胞表面上の前記第1の標的に結合するような条件下で、前記NK細胞を、請求項1~13のいずれか一項に記載のナノ粒子、及び/又は請求項14に記載の組成物に接触させることを含む、方法。
【請求項16】
NK細胞免疫応答を誘発させる方法であって、前記第1の標的化剤が前記NK細胞表面上の前記第1の標的に結合するような条件下で、前記NK細胞を、請求項1~13のいずれか一項に記載のナノ粒子、及び/又は請求項14に記載の組成物に接触させることを含む、方法。
【請求項17】
がん細胞で細胞傷害性を誘発させる方法であって、前記第2の標的化剤が前記がん細胞表面上の前記第2の標的に結合するような条件下で、前記がん細胞を、請求項1~13のいずれか一項に記載のナノ粒子、及び/又は請求項14に記載の組成物に接触させることを含む、方法。
【請求項18】
前記ナノ粒子又は前記組成物が治療薬を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
治療薬をがん細胞に送達する方法であって、前記第2の標的化剤が前記がん細胞表面上の前記第2の標的に結合し、それにより治療薬を前記がん細胞に送達するような条件下で、前記がん細胞を、前記治療薬を含む請求項1~13のいずれか一項に記載のナノ粒子、及び/又は請求項14に記載の組成物に接触させることを含む、方法。
【請求項20】
NK細胞免疫応答を誘発させる必要がある対象においてこれを誘発させる方法であって、前記第1の標的化剤が前記NK細胞表面上の前記第1の標的に結合するような条件下で、有効量の請求項1~13のいずれか一項に記載のナノ粒子、及び/又は請求項14に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項21】
前記ナノ粒子及び/又は前記組成物が少なくとも2種類の第1の標的化剤を含み、前記少なくとも2種類の第1の標的化剤が結合する前記NK細胞が同じNK細胞である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
NK細胞を活性化させる必要がある対象においてこれを活性化させる方法であって、前記第1の標的化剤が前記NK細胞表面上の前記第1の標的に結合するような条件下で、有効量の請求項1~13のいずれか一項に記載のナノ粒子、及び/又は請求項14に記載の組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項23】
前記ナノ粒子及び/又は前記組成物が少なくとも2種類の第1の標的化剤を含み、前記少なくとも2種類の第1の標的化剤が結合する前記NK細胞が同じNK細胞である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記対象ががんであると診断されている、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
がん細胞を処置する必要がある対象においてこれを処置する方法であって、前記第2の標的化剤が前記がん細胞表面上の前記第2の標的に結合するような条件下で、有効量の請求項1~13のいずれか一項に記載のナノ粒子、及び/又は請求項14に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項26】
がん細胞を処置する必要がある対象においてこれを処置する方法であって、前記第1の標的化剤が前記NK細胞表面上の前記第1の標的に結合し、それにより前記第2の薬剤が前記がん細胞表面上の前記第2の標的に結合するような条件下で、有効量の請求項1~13のいずれか一項に記載のナノ粒子、及び/又は請求項14に記載の組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項27】
治療薬をがん細胞に送達する必要がある対象においてこれをがん細胞に送達する方法であって、前記第2の標的化剤が前記がん細胞表面上の前記第2の標的に結合し、それにより前記対象において前記治療薬を前記がん細胞に送達するような条件下で、前記治療薬を含む、有効量の請求項1~13のいずれか一項に記載のナノ粒子、又は請求項14に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項28】
前記がんが、神経膠芽腫、頭頸部がん、食道がん、胃がん、肺がん、膀胱がん、腎細胞がん、肝細胞がん、膵臓がん、子宮頸がん、肛門がん、メラノーマ、前立腺がん、乳がん、非ホジキンリンパ腫又は大腸がん、及びこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ナノ粒子又は前記組成物が、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、くも膜下腔内、脳室内、眼内、硝子体内、眼窩内、鼻腔内、埋め込み、吸入、腫瘍組織内、及びこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される経路を介して投与される、請求項20~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
有効量の治療薬を前記対象に投与する工程、及び/又は放射線療法の工程を更に含む、請求項20~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記治療薬が、エピルビシン(EPI)、ドキソルビシン、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ダウノルビシン、タキソール、ドセタキセル、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、マイトマイシン、シタラビン、シトキサン、及びこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される化学療法薬である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記化学療法薬がエピルビシン(EPI)である、請求項31に記載の方法
【請求項33】
前記対象が哺乳動物である、請求項20~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記哺乳動物がヒトである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項1~13のいずれか一項に記載のナノ粒子及び/又は請求項14に記載の組成物、及び取扱説明書を含む、キット。
【請求項36】
NK細胞を活性化させることにおける請求項1~13のいずれか一項に記載のナノ粒子及び/又は請求項14に記載の組成物の使用。
【請求項37】
がん細胞に細胞傷害性を誘発させることにおける請求項1~13のいずれか一項に記載のナノ粒子及び/又は請求項14に記載の組成物の使用。
【請求項38】
治療薬をがん細胞に送達させることにおける請求項1~13のいずれか一項に記載のナノ粒子及び/又は請求項14に記載の組成物の使用。
【請求項39】
がんを処置することにおける請求項1~13のいずれか一項に記載のナノ粒子及び/又は請求項14に記載の組成物の使用。
【請求項40】
請求項1~13のいずれか一項に記載のナノ粒子及び/又は請求項14に記載の組成物を含む、使用のための薬物の調製。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の陳述)
本出願は、米国特許法第119条の下で、2019年10月18日に出願された米国仮出願第62/923,060号の優先権を主張し、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
(政府支援に関する陳述)
本発明は、米国国立衛生研究所により授与されたグラント番号CA198999の下で、政府支援により行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
本発明は、免疫調節及びがん免疫療法に関する。
【背景技術】
【0003】
がん免疫療法は、がんを処置するために患者自身の免疫系を利用することであり、がん処置において有力な新規戦略として登場してきた。がん免疫療法における進歩のほとんどが、がんを根絶するため適応免疫系を利用することに着目しているが、抗腫瘍免疫を形成するために自然免疫応答の能力を利用することについて関心が高まっている。初期の相関研究は、適応免疫系に対する耐性メカニズムでは、腫瘍細胞は、適応免疫系を無効にする変異によって適応免疫系を逃れる可能性があることを実証している。自然免疫系における重要な因子(actor)は、ナチュラルキラー(Natural Killer、NK)細胞であり、これは防御の最前線として働く。適応免疫細胞(例えば、T細胞及びB細胞)とは異なり、NK細胞はネオアンチゲンを必要とすることなく、がん細胞に対して自発的な細胞溶解反応を示す。
【0004】
NK細胞活性化は多くの場合、2つ以上の共刺激分子(例えば、CD16及び4-1BB)の活性化に関与しており、NK細胞介在抗がん免疫は多くの場合、NK細胞活性化リガンドの不十分な発現、及びがん細胞上のMHCクラスI及び他の共抑制分子の過剰発現であることによって妨害される。近年、NK細胞及び腫瘍細胞を標的とするいくつかの二重特異性抗体は、会合及び細胞傷害性を促進させるように効果的に操作されているが、この抗体の翻訳は、正常細胞への傷害性有害事象により妨げられる。より重要な点として、これらの二重特異性は1つのNK活性化リガンドのみを含むため、NK活性化を制限する。
【0005】
本発明は、NK細胞表面上の標的に結合する少なくとも1種類の第1の標的化剤、及びがん細胞表面上の標的に結合する少なくとも1種類の第2の標的化剤を有するナノ粒子、並びにこれを使用する方法を提供することにより、当該技術分野における欠点を克服する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、がんを処置し、がん細胞において細胞傷害性を誘発させ、NK細胞免疫応答を誘発させ、NK細胞を活性化させ、及び/又はがん細胞に治療薬を送達するための方法並びに組成物を提供する。
【0007】
したがって、本発明の一態様は、NK細胞表面上の第1の標的に結合する少なくとも1種類の第1の標的化剤、及びがん細胞表面上の第2の標的に結合する少なくとも1種類の第2の標的化剤を含むナノ粒子を提供する。この場合、第2の標的化剤は第1の標的化剤と異なる。
本発明のナノ粒子を含む組成物(例えば、医薬組成物)も、本明細書にて更に提供される。
【0008】
本発明の更なる態様は、NK細胞を活性化させる方法であって、第1の標的化剤がNK細胞表面上の第1の標的に結合するような条件下で、NK細胞と本発明のナノ粒子及び/又は組成物とを接触させることを含む方法を提供する。
【0009】
本発明の別の態様は、NK細胞免疫応答を誘発させる方法であって、第1の標的化剤がNK細胞表面上の第1の標的に結合するような条件下で、NK細胞と本発明のナノ粒子及び/又は組成物とを接触させることを含む方法を提供する。
【0010】
本発明の追加の態様は、がん細胞において細胞傷害性を誘発させる方法であって、第2の標的化剤ががん細胞表面上の第2の標的に結合するような条件下で、がん細胞と本発明のナノ粒子及び/又は組成物とを接触させることを含む方法を提供する。
【0011】
本発明の更なる態様は、治療薬をがん細胞に送達する方法であって、第2の標的化剤ががん細胞表面上の第2の標的に結合し、それにより治療薬をがん細胞に送達するような条件下で、がん細胞と、治療薬を含む本発明のナノ粒子及び/又は組成物とを接触させることを含む方法を提供する。
【0012】
本発明の更なる態様は、その必要がある対象においてNK細胞免疫応答を誘発させる方法であって、第1の標的化剤がNK細胞表面上の第1の標的に結合するような条件下で、有効量の本発明のナノ粒子及び/又は組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0013】
本発明の更なる態様は、その必要がある対象においてNK細胞を活性化させる方法であって、第1の標的化剤がNK細胞表面上の第1の標的に結合するような条件下で、有効量の本発明のナノ粒子及び/又は組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0014】
本発明の更なる態様は、その必要がある対象においてがんを処置する方法であって、第2の標的化剤ががん細胞表面上の第2の標的に結合するような条件下で、有効量の本発明のナノ粒子及び/又は組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0015】
本発明の更なる態様は、その必要がある対象においてがんを処置する方法であって、第1の標的化剤がNK細胞表面上の第1の標的に結合し、それにより第2の薬剤ががん細胞表面上の第2の標的に結合するような条件下で、有効量の本発明のナノ粒子及び/又は組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0016】
本発明の更なる態様は、その必要がある対象において治療薬をがん細胞に送達する方法であって、第2の標的化剤ががん細胞表面上の第2の標的に結合し、それにより治療薬を対象のがん細胞に送達するような条件下で、治療薬を含む有効量の本発明のナノ粒子及び/又は組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0017】
本発明のナノ粒子及び/又は組成物を含むキット、NK細胞を活性化し、がん細胞において細胞傷害性を誘発し、治療薬をがん細胞に送達し、及び/又はがんを処置する上で、本発明のナノ粒子及び/又は組成物を使用する方法、並びに本発明の粒子及び/又は組成物を含む使用するための薬物の調製を、本明細書にて追加的に提供する。
本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下に記載される本発明の説明においてより詳細に対処される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】EGFR標的化三価ナノエンゲージャの作用機序及び特性を示す。図1Aは、全身投与後にEGFRが過剰発現したがんに対するEGFR標的化三価ナノエンゲージャの作用機序のイラスト図を示す。
図1B】EGFR標的化三価ナノエンゲージャの作用機序及び特性を示す。図1B代表的な透過電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)画像(図1B)、並びにEGFR標的化薬物非含有ナノエンゲージャ及びEGFR標的化EPI封入ナノエンゲージャ(α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP)の数平均粒子(D)分布曲線(図1C)を示す。
図1C】EGFR標的化三価ナノエンゲージャの作用機序及び特性を示す。図1Cは、代表的な透過電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)画像(図1B)、並びにEGFR標的化薬物非含有ナノエンゲージャ及びEGFR標的化EPI封入ナノエンゲージャ(α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP)の数平均粒子(D)分布曲線(図1C)を示す。
図1D】EGFR標的化三価ナノエンゲージャの作用機序及び特性を示す。図1Dは、抗体非含有EPI NP及びα-EGFR/α-CD16/α-4-1BB EPI NP(n=3)の、pH依存性インビトロ薬物放出動態を示す。
図2】異なる薬物を含まない、EPI封入NPの代表的なTEM画像を示す。
図3-1】図3は、0.1Mリン酸緩衝食塩水(phosphate buffered saline、PBS)中のナノ粒子分散液におけるナノ粒子トラッキング解析(nanoparticle-tracking analysis、NTA)により決定された、異なる薬物を含まないNP及びEPI封入NPの数平均粒子径(D)分布曲線を示す。全ての測定は、5つの別々の測定の平均に基づいていた。
図3-2】図3は、0.1Mリン酸緩衝食塩水(phosphate buffered saline、PBS)中のナノ粒子分散液におけるナノ粒子トラッキング解析(nanoparticle-tracking analysis、NTA)により決定された、異なる薬物を含まないNP及びEPI封入NPの数平均粒子径(D)分布曲線を示す。全ての測定は、5つの別々の測定の平均に基づいていた。
図4A】異なる生理学的条件下での非標的化EPI NP、α-EGFR EPI NP及びα-EGFR/α-CD16/α-4-1BB EPI NPのインビトロ薬物放出動態を示す。
図4B】異なる生理学的条件下での非標的化EPI NP、α-EGFR EPI NP及びα-EGFR/α-CD16/α-4-1BB EPI NPのインビトロ薬物放出動態を示す。図4Aは、pH6.0~7.0(37℃)である大過剰量の0.1M PBS中でインキュベートした後の、官能化されていない及び異なる抗体で官能化されたEPI封入NPについて記録した時間依存性UV可視スペクトルを示す。ナノ粒子濃度は2mg/mLであった。全ての測定は、3つの別々の測定の平均に基づいていた。図4Bは、標的化されていない異なるEGFR標的化EPI NPのインビトロ薬物放出プロファイルを示す。
図5A】EGFR標的化トリ官能化ナノエンゲージャの物理化学的特性を示す。図5Aは、FITC標識した(i)α-CD16 NP、(ii)α-4-1BB NP、(iii)α-EGFR NP、(iv)α-CD16/α-4-1BB NP、及び(v)α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NPでインキュベートした後の、CD3CD49b増幅マウスNK細胞の代表的なCLSM画像(図5A)及びFACSヒストグラム(図5B)を示す。
図5B】EGFR標的化トリ官能化ナノエンゲージャの物理化学的特性を示す。図5Bは、FITC標識した(i)α-CD16 NP、(ii)α-4-1BB NP、(iii)α-EGFR NP、(iv)α-CD16/α-4-1BB NP、及び(v)α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NPでインキュベートした後の、CD3CD49b増幅マウスNK細胞の代表的なCLSM画像(図5A)及びFACSヒストグラム(図5B)を示す。
図5C】EGFR標的化トリ官能化ナノエンゲージャの物理化学的特性を示す。図5Cは、FITC標識したα-EGFR NP、α-CD16/α-4-1BB NP、及びα-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP(n=3)でインキュベートした後の、EGFRが過剰発現したHT29細胞、MB468細胞、及びA431細胞の代表的なFACSヒストグラムを示す。
図5D】EGFR標的化トリ官能化ナノエンゲージャの物理化学的特性を示す。図5Dは、FACSとして定量され、EGFR陰性Raji細胞に対し、異なる抗体で官能化されたFITC標識したNPの結合親和性を示す。
図5E】EGFR標的化トリ官能化ナノエンゲージャの物理化学的特性を示す。図5Eは、初期処置の3日後にMTSアッセイにより評価した場合の、(i)HT29細胞、(ii)MB468細胞、及び(iii)A431細胞に対する、遊離EPI、非標的化EPI NP、及び異なる抗体で官能化されたEPI NPの直接的なインビトロ毒性を示す。
図5F】EGFR標的化トリ官能化ナノエンゲージャの物理化学的特性を示す。図5Fは、異なるEPI処置により誘発されたDNA損傷を示す。500nMの異なるEPI製剤で1時間処理した後のα-γ-H2AX(PE標識)染色されたHT29細胞、MB468細胞、及びA431細胞の代表的なFACSヒストグラム。処理した細胞を洗浄し、更に24時間培養した後に、FACSに供した。DNA損傷を定量化するため、処理した細胞を固定して透過処理した後、PE標識したα-γ-H2AXで染色した。
図6A】ナノエンゲージャによりNK細胞を活性化させ、インビトロでがん細胞を攻撃することを示す。図6Aは、α-CD16、α-4-1BB、α-CD16NP、α-4-1BB NP、及びこれらの1:1の組合せ、及びα-CD16/α-4-1BB NPで前処理したNK細胞のインビトロ細胞傷害性を示す。標的細胞に対するエフェクター細胞(E/T)の比率は1:1であった。細胞傷害性は処理の24時間後に決定した。データは平均±SEM(n=6)として表されている。統計的有意性は、2元配置分散分析(ANOVA)、続いてテューキーのHSD事後検定により算出した(p<0.05)。
図6B】ナノエンゲージャによりNK細胞を活性化させ、インビトロでがん細胞を攻撃することを示す。図6Bは、抗体で前処理したNK細胞と24時間にわたり共培養された後の(放射線非照射)B16F10-Luc細胞のバイオルミネセンスの定量化を示す。NK細胞は、37℃で30分間、(1×10個のNK細胞あたり1μgである各抗体の濃度で)遊離α-CD16及び/若しくはα-4-1BB又はNPコンジュゲートαCD-16及び/若しくはα-4-1BBで前処理し、1度洗浄した後に、1:1のエフェクター/標的比で播種されたB16F10-Luc細胞(ウェルあたり2×10個の細胞)で共培養した。生細胞は、Bright-Glo(商標)ルシフェラーゼ試薬(n=6)でインキュベートした後、強いバイオルミネセンスシグナルを示す。
図6C】ナノエンゲージャによりNK細胞を活性化させ、インビトロでがん細胞を攻撃することを示す。図6Cは、24時間にわたる抗体で前処理したNK細胞との共培養後の(照射)B16F10-Luc細胞のバイオルミネセンスの定量化を示す。B16F10-Luc細胞は、3時間5Gyのセシウム-137照射に供された後、抗体で前処理したNK細胞と共培養した。NK細胞は、37℃で30分間、1×10個のNK細胞あたり1μgである各抗体の濃度で遊離α-CD16及び/若しくはα-4-1BB又はNPコンジュゲートα-CD16及び/若しくはα-4-1BBで前処理し、1度洗浄した後に、1:1のエフェクター/標的比で播種されたB16F10-Luc細胞(ウェルあたり2×10個の細胞)で共培養した。生存細胞は、Bright-Glo(商標)ルシフェラーゼ試薬(n=6)でインキュベートした後、強いバイオルミネセンスシグナルを示す。
図6D】ナノエンゲージャによりNK細胞を活性化させ、インビトロでがん細胞を攻撃することを示す。図6Dは、α-CD16及びα-4-1BB、α-CD16 NP、α-4-1-BB NP、及びα-CD16/α-4-1BB NPで前処理したNK細胞でインキュベートした後の、放射線非照射B16F10細胞及び5Gy放射線照射されたB16F10細胞の代表的な位相感応型光学画像を示す。E/T比は1:1であった。未結合のNK細胞は、撮像前に洗浄することで除去された。
図6E】ナノエンゲージャによりNK細胞を活性化させ、インビトロでがん細胞を攻撃することを示す。図6Eは、α-CD16、α-4-1BB、α-CD16/α-4-1BB NP(遊離α-EGFR又は遊離α-EGFR NPを含む又は含まない)、α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP(遊離EPI又は遊離EPI NPを含む又は含まない)、及びα-EGFR/α-CD16/α-4-1BB EPI NPで前処理したHT29-Luc2細胞に対する、NK細胞のインビトロ細胞傷害性を示す。細胞傷害性は、処理の24時間後に定量した。E/T比は1:1であった。データは平均±SEM(n=6)として表されている。統計的有意性は、2元配置分散分析(ANOVA)、続いてテューキーのHSD事後検定により算出した(p<0.05)。
図6F】ナノエンゲージャによりNK細胞を活性化させ、インビトロでがん細胞を攻撃することを示す。図6Fは、E/T=1:1で増幅されたNK細胞で共培養する前に異なる免疫療法で処理された後のHT29-Luc2細胞のバイオルミネセンスの定量化を示す。左パネル:異なる免疫療法で1時間処理し、洗浄し、その後完全培地(NK細胞は含まれない)中で3日間更に培養した後のHT29-Luc2細胞のバイオルミネセンス。免疫療法薬の用量は、600nMの遊離EPI/封入EPIでの同時処置の有無に関わらず、1×10個の細胞(各ウェル中)あたり10ngの各抗体であった。細胞生存率は、Bright-Glo(商標)ルシフェラーゼ試薬で定量した。生細胞は、ルシフェラーゼアッセイ(n=6)でインキュベートした後、強いバイオルミネセンスシグナルを示す。右パネル:異なる免疫療法で1時間処理し、洗浄し、その後E/T=1:1で3時間NK細胞と共培養した後のHT29-Luc2細胞のバイオルミネセンス画像。免疫療法薬の用量は、600nMの遊離EPI/封入EPIでの同時処置の有無に関わらず、1×10個の細胞(各ウェル中)あたり10ngの各抗体であった。細胞生存率は、Bright-Glo(商標)ルシフェラーゼ試薬で定量した。生細胞は、ルシフェラーゼアッセイ(n=6)でインキュベートした後、強いバイオルミネセンスシグナルを示す。
図6G】ナノエンゲージャによりNK細胞を活性化させ、インビトロでがん細胞を攻撃することを示す。図6Gは、NK細胞が存在する又は存在しない(1:1のエフェクター/標的比)、薬物非含有α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP又はEPI封入α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP(600nMの封入EPI又は同量の薬物非含有NPを含有する)で処理した3日後に記録されたHT29細胞、MB468細胞、及びA431細胞の生存率を示す。データは平均±SEM(n=8)として表されている。統計的有意性は、2元配置分散分析(ANOVA)、続いてテューキーのHSD事後検定により算出した(p<0.05)。
図6H】ナノエンゲージャによりNK細胞を活性化させ、インビトロでがん細胞を攻撃することを示す。図6Hは、NK細胞による共培養前に、治療用量以下のEPI封入トリ官能化ナノエンゲージャ(α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP)で前処理したHT29細胞、MB468細胞、及びA431細胞の生存率を示す。細胞(MB468細胞及びHT29細胞についてはウェルあたり1×10個の細胞、又はA431細胞についてはウェルあたり5×10個の細胞)は、薬物非含有又はEPI封入した1.2μgのα-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NPで1時間処理され、洗浄され、次いでE/T=1:1の比でNK細胞と共培養された。MTSアッセイの添加後、HT29細胞(パネルa)、MB468細胞(パネルb)及びA431細胞(パネルc)の吸光度(490nm)。NK細胞は、サイトカインを含まない培地では生存性を失うため、490nmにてわずかな吸光度を示すのみであった。したがって、NK細胞により共培養された処置群の吸光度(490nm)は、NK細胞により悪影響を及ぼされることはない。
図7A】NK細胞におけるCD16及び4-1BB共刺激分子の空間時間的な同時活性化は、インビボでマウスの腫瘍増殖を遅延させることを示す。図7Aは、異なる免疫療法薬(n=6マウス/群)で処置を受けた後のB16F10担がんマウスの平均腫瘍増殖曲線(i)、(ii)、及び生存曲線(iii)、(iv)を示す。
図7B】NK細胞におけるCD16及び4-1BB共刺激分子の空間時間的な同時活性化は、インビボでマウスの腫瘍増殖を遅延させることを示す。図7Bは、異なる免疫療法薬(n=6マウス/群)で処置を受けた後のB16F10担がんマウスの平均腫瘍増殖曲線(i)、(ii)、及び生存曲線(iii)、(iv)を示す。
図7C】NK細胞におけるCD16及び4-1BB共刺激分子の空間時間的な同時活性化は、インビボでマウスの腫瘍増殖を遅延させることを示す。免疫細胞を除去したC57BL/6マウスモデルにおいて、B細胞、NK細胞、CD4T細胞、及びCD8T細胞を、摂取5日後、8日後、10日後、12日後、15日後、及び18日後のα-CD20、α-NK1.1、α-CD4、及びα-CD8(300μ/注射)の腹腔内(i.p.)注射により除去した。マウスIgG 2a(300μg/注射)をアイソタイプコントロールとして投与した。α-CD16/α-4-1BB NP(各抗体100μgを含有する)を、摂取6日後、7日後、及び8日後に静脈内(i.v.)投与した。100μgのα-CD16及び/又は100μgのα-4-1BB(遊離又はNPコンジュゲート)を含有する免疫療法薬を、摂取6日後、7日後、及び8日後に尾静脈に静脈内投与した。免疫刺激群におけるマウスの異種移植腫瘍は、免疫療法薬の投与4時間前に5Gyの放射線の単回照射に供され、がん細胞中のNK細胞活性化リガンドを上方制御した。図7Cは、α-CD16/α-4-1BB NP(n=7マウス/群)で処置を受けた後のB16F10担がん免疫細胞を除去したマウスの平均腫瘍増殖曲線(i)、及び生存曲線(ii)を示す。データは平均±SEMとして表されている(p<0.05)。腫瘍増殖曲線の統計的有意性は、1元配置分散分析(ANOVA)、続いてテューキーの事後検定により算出した(p<0.05)。生存曲線の統計的有意性を、ログランク(マンテル-コックス)検定により算出した(p<0.05)。
図8A】CD16及び4-1BB受容体の空間時間的な同時活性化が、インビボにて放射線非照射B16F10異種移植腫瘍の成長を遅延させることを示す。線は、放射線照射なしに異なる免疫療法薬で処置を受けた後の、B16F10担がんマウスの個々の腫瘍増殖曲線を示す(n=6マウス/群)。
図8B】5Gyのセシウム-137照射が、C57BL/6マウスのB16F10腫瘍モデルにおけるα-CD16/α-4-1BB NPの抗がん活性を相乗的に改善させることを示す。図8Bの上部パネル:α-CD16/α-4-1BB NPで異なる処置を行った後の放射線非照射及び放射線照射B16F10担がんマウスの平均腫瘍曲線。摂取19日後に、5GyのIR後にα-CD16/α-4-1BB NPでの最初の処置をすることで、5Gy IRを受けたものと比較すると平均腫瘍体積が約60%減少した。対照的に、α-CD16/α-4-1BB NP(IRなし)での処置により、未処置群と比較すると約40%だけ平均腫瘍体積が減少した。これは、5GyのIRは、α-CD16/α-4-1BB NPの抗がん活性を相乗的に(しかし相加的に)改善させることを示す。図8Bの底部パネル:α-CD16/α-4-1BB NPで異なる処置を行った後の放射線非照射及び放射線照射B16F10担がんマウスの生存曲線。未処置群についての平均生存期間は19±1日間であった。α-CD16/α-4-1BB NPによる処置(免疫刺激なし)は、平均3日間生存期間を増加させた(すなわち、平均生存期間=22±2日間)。更なる処置なしでの5Gyの放射線照射により、平均3日間生存期間を増加させた(すなわち、平均生存期間=22±1日間)。5GyのIRに続きα-CD16/α-4-1BB NP処置することで、14日間生存期間が増加した(すなわち、平均生存期間=32±1日間)。これは、放射線照射がα-CD16/α-4-1BB NPの抗がん活性を相乗的に増加させたことを示す。
図8C】CD16及び4-1BB受容体の空間時間的な同時活性化が、インビボにて放射線照射B16F10異種移植腫瘍の成長を遅延させることを示す。線は、最初の処置前に5Gyの放射線照射を行い、異なる免疫療法薬で処置を受けた後の、B16F10担がんマウスの個々の腫瘍増殖曲線を示す(n=6マウス/群)。
図8D】α-CD16/α-4-1BB NPが効果的にNK細胞を同時活性化させ、インビボでのがん免疫療法を改善させることを示す。線は、α-CD16/α-4-1BB NPでの処置を受けた又は5GyのIRを受けた後の、免疫細胞を除去したB16F10担がんマウスの個々の腫瘍増殖曲線を示す(n=7マウス/群)。
図8E-1】図8Eは、T細胞欠損NuマウスにおけるB16F10腫瘍に対する、遊離α-CD16+遊離α-4-1BB及びα-CD16/α-4-1BB NPの抗がん活性を示す。図8EのパネルAは、T細胞欠損NuマウスにおけるB16F10腫瘍モデルについての実験スキームを示す。摂取6日後、7日後及び8日後に、100μgの各抗体を含む3種類の用量の免疫療法薬を尾静脈内注射により投与した。免疫刺激群におけるマウスは、免疫療法薬の最初の投与の3時間前に、5Gyのセシウム-137の単回照射(irradiation、IR)を受けた。インビボ有効性研究は、摂取21日後に終了した。B16F10担がんマウスの個々の腫瘍増殖曲線(図8EのパネルB)及び平均腫瘍増殖曲線(図8EのパネルC)は、異なる免疫療法薬で処置した後に記録した。腫瘍増殖抑制率(Tumor growth inhibition、TGI)は、摂取19日後に記録された処置群及び未処置のコントロール群の平均腫瘍体積に基づき算出された。免疫刺激なしの場合(5GyのIR)、α-CD16+α-4-1NN又はα-CD16/α-4-1BB NPのいずれも腫瘍増殖を抑制しなかった(未処置群に対しp=0.6423)。5GyのIRは、36%のTGIで腫瘍増殖を遅延させた。5GyのIRに続き、α-CD16+α-4-1BBによる処置は、61%のTGIで腫瘍増殖を遅延させた。5GyのIRに続き、α-CD16/α-4-1BB NPによる処置は、78%のTGIで腫瘍増殖を遅延させた(5GyのIRに続き、α-CD16+α-4-1BBによる処置に対してp=0.0181)。全群に対してn=6マウス。統計的有意性は、テューキーの事後検定と共に1元配置分散分析(ANOVA)により算出した。
図8E-2】図8Eは、T細胞欠損NuマウスにおけるB16F10腫瘍に対する、遊離α-CD16+遊離α-4-1BB及びα-CD16/α-4-1BB NPの抗がん活性を示す。図8EのパネルAは、T細胞欠損NuマウスにおけるB16F10腫瘍モデルについての実験スキームを示す。摂取6日後、7日後及び8日後に、100μgの各抗体を含む3種類の用量の免疫療法薬を尾静脈内注射により投与した。免疫刺激群におけるマウスは、免疫療法薬の最初の投与の3時間前に、5Gyのセシウム-137の単回照射(irradiation、IR)を受けた。インビボ有効性研究は、摂取21日後に終了した。B16F10担がんマウスの個々の腫瘍増殖曲線(図8EのパネルB)及び平均腫瘍増殖曲線(図8EのパネルC)は、異なる免疫療法薬で処置した後に記録した。腫瘍増殖抑制率(Tumor growth inhibition、TGI)は、摂取19日後に記録された処置群及び未処置のコントロール群の平均腫瘍体積に基づき算出された。免疫刺激なしの場合(5GyのIR)、α-CD16+α-4-1NN又はα-CD16/α-4-1BB NPのいずれも腫瘍増殖を抑制しなかった(未処置群に対しp=0.6423)。5GyのIRは、36%のTGIで腫瘍増殖を遅延させた。5GyのIRに続き、α-CD16+α-4-1BBによる処置は、61%のTGIで腫瘍増殖を遅延させた。5GyのIRに続き、α-CD16/α-4-1BB NPによる処置は、78%のTGIで腫瘍増殖を遅延させた(5GyのIRに続き、α-CD16+α-4-1BBによる処置に対してp=0.0181)。全群に対してn=6マウス。統計的有意性は、テューキーの事後検定と共に1元配置分散分析(ANOVA)により算出した。
図9A】EGFR標的化ナノエンゲージャは、インビボでEGFRが過剰発現した腫瘍増殖を効果的に抑制することを示す。図9Aは、T細胞欠損NuマウスにおけるA431及びMB468腫瘍モデルについての実験スキームを示す。摂取6日後、8日後及び10日後に、100μgのα-EGFR、100μgのα-CD16及び100μgのα-4-1BB(160μgの遊離EPI/封入EPIを含む/含まない)を含む3つの用量の免疫療法薬/化学免疫療法薬を尾静脈内投与した。
図9B】EGFR標的化ナノエンゲージャは、インビボでEGFRが過剰発現した腫瘍増殖を効果的に抑制することを示す。図9Bは、異なる処置を受けた後、A431を有するNuマウスについて記録された、平均腫瘍増殖曲線(i)、生存曲線、及び生存期間中央値(MS)(ii)を示す(n=6マウス/群)。
図9C】EGFR標的化ナノエンゲージャは、インビボでEGFRが過剰発現した腫瘍増殖を効果的に抑制することを示す。図9Cは、異なる処置を受けた後のMB468異種移植腫瘍を有するNuマウスについて記録された、平均腫瘍増殖曲線及び腫瘍増殖抑制率(TGI)を示す(n=6マウス/群)。TGIは、研究のエンドポイント(摂取125日後)での未処置群に関連した処置群における平均腫瘍体積の変化を比較することにより算出した。
図9D】EGFR標的化ナノエンゲージャは、インビボでEGFRが過剰発現した腫瘍増殖を効果的に抑制することを示す。図9Dは、T細胞欠損NuマウスにおけるEGFRHT29及びEGFRRaji二重異種移植腫瘍モデルについての実験スキームを示す。摂取6日後、8日後及び10日後に、3種類の用量の免疫療法薬/化学免疫療法薬を尾静脈内投与した。インビボ有効性研究は、摂取20日後に終了した。この時、Raji腫瘍の最大直径は10mmに達していた。異なる処置を受けた後の、HT29(i)及びRaji(ii)異種移植腫瘍の平均腫瘍増殖曲線(未処置のコントロール群についてはn=5、その他全ての処置群についてはn=7)。TGIは、研究のエンドポイント(摂取20日後)での未処置群に関連する処置群における平均腫瘍体積の変化を比較することにより算出した。データは平均±SEMとして表されている。統計的有意性平均腫瘍増殖曲線は、1元配置分散分析(ANOVA)、続いてテューキーの事後検定により算出した(p<0.05)。統計的有意性生存曲線を、ログランク(マンテル-コックス)検定により算出した(p<0.05)。
図10A-1】図10Aは、EGFR標的化ナノエンゲージャ(α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP)は、インビボにてEGFRが過剰発現したA431腫瘍の増殖を効果的に抑制することを示す。線は、異なる処置を受けた後にA431を有するNuマウスについて記録された個々の腫瘍増殖曲線を示す(n=6マウス/群)。
図10A-2】図10Aは、EGFR標的化ナノエンゲージャ(α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP)は、インビボにてEGFRが過剰発現したA431腫瘍の増殖を効果的に抑制することを示す。線は、異なる処置を受けた後にA431を有するNuマウスについて記録された個々の腫瘍増殖曲線を示す(n=6マウス/群)。
図10B】α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB EPI NPが、T細胞欠損NuマウスにおけるA431異種移植腫瘍の増殖を効果的に抑制することを示す。図10Bの左パネル:薬物非含有α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP、α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB EPI NP、α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP+遊離EPIで処置した後の、A431腫瘍を有するマウスの平均腫瘍曲線。統計的有意性は、テューキーの事後検定と共に1元配置分散分析(ANOVA)により算出した(p<0.05)。図10Bの右パネル:薬物非含有α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP、α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB EPI NP、α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP+遊離EPIで処置した後の、A431腫瘍を有するマウスの生存曲線(群あたりn=6)。統計的有意性を、ログランク(マンテル-コックス)検定により算出した(p<0.05)。
図10C-1】図10Cは、EGFR標的化ナノエンゲージャ(α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP)が、インビボにてEGFRが過剰発現しているMB468腫瘍の増殖を効果的に抑制することを示す。線は、異なる処置を受けた後にMB468を有するNuマウスについて記録された個々の腫瘍増殖曲線を示す(n=6マウス/群)。
図10C-2】図10Cは、EGFR標的化ナノエンゲージャ(α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP)が、インビボにてEGFRが過剰発現しているMB468腫瘍の増殖を効果的に抑制することを示す。線は、異なる処置を受けた後にMB468を有するNuマウスについて記録された個々の腫瘍増殖曲線を示す(n=6マウス/群)。
図10D】α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB EPI NPが、T細胞欠損NuマウスにおけるMB468異種移植腫瘍の増殖を効果的に抑制することを示す。薬物非含有α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP、α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB EPI NP、α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP+遊離EPIで処置した後の、MB468腫瘍を有するマウスの平均腫瘍曲線が示されている。統計的有意性は、テューキーの事後検定と共に1元配置分散分析(ANOVA)により算出した(p<0.05)。
図10E-1】図10Eは、EGFR標的化ナノエンゲージャが、インビボでEGFRが過剰発現した腫瘍を攻撃するようNK細胞を誘導することにより化学免疫療法を改善させることを示す。線は、異なる処置を受けた後のT細胞欠損Nuマウスにおいて、HT29及びRaji二重異種移植腫瘍モデルの個々の腫瘍増殖曲線を示す(未処置のコントロール群についてはn=5、その他全ての処置群についてはn=7)。
図10E-2】図10Eは、EGFR標的化ナノエンゲージャが、インビボでEGFRが過剰発現した腫瘍を攻撃するようNK細胞を誘導することにより化学免疫療法を改善させることを示す。線は、異なる処置を受けた後のT細胞欠損Nuマウスにおいて、HT29及びRaji二重異種移植腫瘍モデルの個々の腫瘍増殖曲線を示す(未処置のコントロール群についてはn=5、その他全ての処置群についてはn=7)。
図10F】A431担がんNuマウスにおいて、異なる抗体で官能化されたCy5標識NPの体内分布を示す。図10FパネルAは、注入された異なる濃度のCy5標識NPのエクスビボNIR蛍光画像及び異なるCy5標識NPの濃度依存光量子効率のプロットを示す。光量子効率は、注入されたCy5標識NPの濃度に伴い、直線状に増加する。図10FのパネルBは、A431異種移植腫瘍、並びに未処置のマウス、及びCy5標識α-CD16/α-4-1BB NP(マウスあたり100μgの各抗体を含有した、6mgのNP)を加えたα-EGFR(マウスあたり100μg)、Cy5標識α-CD16/α-4-1BB NP(マウスあたり100μgの各抗体を含有した、4mg)を加えたCy5標識α-EGFR NP(マウスあたり100μgのコンジュゲートα-EGFRを含有した、2mgのNP)、並びにCy5標識α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP(マウスあたり100μgの各抗体を含有した、6mgのNP)を投与されたマウスから保存された主要な器官のエクスビボ蛍光画像を示す。左から右に向かって保存した組織:A431異種移植腫瘍、肝臓、膵臓、腎臓、肺、及び心臓。画像は、605±20nmで励起された光源を使用して記録された。蛍光の発光は、690±20nmで記録された。
図11A】EGFR標的化ナノエンゲージャが、NK細胞を腫瘍に動員し、dsDNA切断を増加させることで化学免疫療法を改善することを示す。図11Aは、異なる免疫療法薬/化学免疫療法薬の尾静脈内投与の40時間後に記録された、NuマウスにおけるA431腫瘍モデルにおけるCy5標識ナノエンゲージャ及びEPI封入ナノエンゲージャの体内分布を示す(Cy5標識α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP、α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB EPI NP、及びα-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP+遊離EPIを投与された群についてはn=6、並びにα-EGFR EPI NPを投与された群についてはn=4であるのを除き、コントロール群及び試験群の全てに関してはn=5)。データは平均±SEMを表す。統計的有意性は、テューキーの事後検定と共に2元配置分散分析(ANOVA)により算出した(p<0.05)。
図11B】EGFR標的化ナノエンゲージャが、NK細胞を腫瘍に動員し、dsDNA切断を増加させることで化学免疫療法を改善することを示す。図11Bは、α-NK1.1及びα-EGFRが同時染色されたA431腫瘍区分(図11B)及びα-γ-H2AX染色され(図11D)、処置後40時間保存されたA431腫瘍区分の免疫蛍光画像の定量化を示す。
図11C】EGFR標的化ナノエンゲージャが、NK細胞を腫瘍に動員し、dsDNA切断を増加させることで化学免疫療法を改善することを示す。図11Cは、α-NK1.1及びα-EGFRが同時染色されたA431腫瘍区分(図11B)及びα-γ-H2AX染色され(図11D)、処置後40時間保存されたA431腫瘍区分の免疫蛍光画像の定量化を示す。
図11D】EGFR標的化ナノエンゲージャが、NK細胞を腫瘍に動員し、dsDNA切断を増加させることで化学免疫療法を改善することを示す。図11Dは、異なる免疫療法薬/化学免疫療法薬の静脈内投与の40時間後、A431担がんNuマウスについて記録された血清TNF-α及びINF-γレベルを示す。
図11E】A431担がんNuマウスにおいて、異なる抗体で官能化されたEPI封入NPの体内分布を示す。図11EのパネルAは、異なる濃度の注入されたEPIのエクスビボNIR蛍光画像及び遊離EPIの濃度依存光量子効率のプロットを示す。光量子効率は、注入されたEPIの濃度に伴い、直線状に増加する。図11EのパネルBは、A431異種移植腫瘍、並びに未処置のマウス、及び遊離EPI(マウスあたり160μgのEPI)、α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB EPI NP(マウスあたり100μgの各抗体を含有した、6mgの総NPあたり160μgの封入EPI)、遊離EPI(マウスあたり160μgのEPI)に加えたα-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP(マウスあたり100μgの各抗体を含有した6mgのNP)、α-EGFR EPI NP(マウスあたり100μgのコンジュゲートα-EGFRを含有した6mgのNPあたり160μgのEPI)、α-CD16/α-4-1BB NP(マウスあたり100μgの各抗体を含有した4mgのNP)に加えたα-EGFR EPI NP(マウスあたり100μgのコンジュゲートα-EGFRを含有した6mgのNPあたり160μgのEPI)を投与されたマウスから保存された主要な器官のエクスビボ蛍光画像を示す。左から右に向かって保存した組織:A431異種移植腫瘍、肝臓、膵臓、腎臓、肺、及び心臓。画像は、465±20nmで励起された光源を使用して記録された。蛍光の発光は、590±20nmで記録された。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(定義)
本主題は、本明細書にて開示される主題の代表的な実施形態が示されている添付の実施例を参照して以下に完全にここに記載されるだろう。ただし、本明細書にて開示される主題は異なる形態で具体化可能であり、本明細書に記載の実施形態に限定されるものであると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完全かつ完璧であり、本明細書にて開示される主題の範囲を当業者に完全に伝えるために提供される。
【0020】
特段定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者により、一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書にて本発明の説明で使用される専門用語は、特定の実施形態のみを記載する目的のものであり、本発明を限定しようと意図するものではない。
【0021】
特段文脈が示さない限り、本明細書にて記載の本発明の様々な特徴は、任意の組合せで使用され得ることが特に意図されている。更には、本発明はまた、本発明のいくつかの実施形態では、本明細書に記載のいずれかの特徴又はそれらの組合せを除外又は省略可能であることも企図する。説明のため、本明細書は、複合体が成分A、B、及びCを含むと述べる場合、A、B、又はCのいずれか、又はこれらの組合せは単独で、又は任意の組合せで除外又は放棄される可能性があることを特に意図している。
【0022】
ヌクレオチド配列は、特段具体的に指示しない限り、5´から3´方向に左から右へ、一本鎖のみによって本明細書では提示される。ヌクレオチド及びアミノ酸は、IUPAC-IUB生化学命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)により推奨されている様式で、又は米国連邦規則法典第37巻§1.822及び定例の両方にある三文字コードにて、本明細書では表されている。
【0023】
別段支持された場合を除き、当業者に公知の標準方法は、遺伝子のクローニング、核酸分子の増幅及び検出などに使用されてもよい。こうした技術は、当業者には公知である。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd Ed.(Cold Spring Harbor,NY,1989);Ausubel et al.Current Protocols in Molecular Biology(Green Publishing Associates,Inc.and John Wiley&Sons,Inc.,New York)を参照されたい。
【0024】
本明細書にて言及される全ての刊行物、特許出願、特許、アクセッション番号及び他の参考文献は、それらの全体が本明細書に参照として組み入れられる。
【0025】
定義
以下の用語は、当業者によって十分理解されていると考えられるが、本明細書にて開示される主題の説明を容易にするため、以下の定義を記載する。
【0026】
長年の特許法の慣例に従い、用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「その(the)」は、特許請求の範囲を含む本出願で使用される場合、1つ又は複数を指す可能性がある。
【0027】
特段指示しない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用されるサイズ、バイオマーカの濃度、確率、割合などの量を表現する全ての数は、全ての場合において、用語「約」により修飾されるものであると理解されるべきである。例えば、量は約10%、約5%、約1%、又は約0.5%ずつ変動し得る。従って、特段記載しない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、本明細書にて開示される主題により得ようと試みる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。
【0028】
2つ以上の項目又は条件を記載する際に使用される用語「及び/又は」は、全ての指名された項目若しくは条件が存在若しくは適用可能である状況、又は項目若しくは条件の1つのみ(若しくは全てのものより少ない)が存在若しくは適用可能である状況を指す。本明細書でも使用される場合、「及び/又は」は、列挙された関連項目のうち1つ以上のいずれか、及び全ての考えられる組合せ、並びに代案(「又は」)で解釈される場合の組合せの欠如を指し、かつこれらを包含する。
【0029】
更には、ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の長さ、用量、時間、温度などの量といった測定可能な値を指す場合に本明細書で使用される用語「約」は、特定の量のうち±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、又は更には±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「を含む(including)」、「を含有する(containing)」及び「により特徴付けられる」と同義である用語「を含む(comprising)」は、包括的又はオープンエンド形式であり、追加の列挙されていない要素及び/又は方法の工程を排除しない。「を含む(Comprising)」は、指定の要素及び/又は工程が存在するが、他の要素及び/又は工程を加えることが可能であり、更には関連する手段の範囲内にあることを意味する技術用語である。
【0031】
本明細書で使用される場合、語句「からなる(consinting of)」は、特許請求の範囲で明記されていない任意の要素、工程、又は成分を排除する。語句「からなる(consinting of)」又は「からなる(consint of)」は、プリアンブル直後ではなく請求項の特徴部分の条項に表れる場合、これは条項に記載の要素のみに限定し、他の要素は全体として請求項から除外されない。
【0032】
本明細書で使用される場合、語句「から本質的になる(consinting essentially of)」は、請求された主題の基本的な1つ以上の特徴及び新規の1つ以上の特徴に実質的に悪影響を及ぼすことがない材料又は工程に加え、特定の材料又は工程に請求項の範囲を限定する。
【0033】
本明細書に使用される3つの用語である、用語「を含む(comprising)」、「から本質的になる(consinting essentially of)」、及び「からなる(consinting of)」に関しては、本明細書にて開示される主題は他の用語のうちいずれかの使用を含み得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「対象」及び「患者」は本明細書では互換可能に使用され、ヒトとヒト以外の動物の両方を指す。本発明の対象は、本発明の方法及び組成物により利益を受け得る障害に対して感受性がある任意の対象であり、並びに/又は本発明の方法及び組成物により障害に関して処置され得る。いくつかの実施形態では、本発明の方法のうち、いずれかの方法の対象は、哺乳動物である。本明細書で使用される用語「哺乳動物」としては、ヒト、霊長類、ヒト以外の霊長類(例えば、サル及びヒヒ)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、ハムスターなど)などが挙げられるが、これらに限定されない。ヒト対象としては、新生児、幼児、若年層、及び成人が挙げられる。更なる選択肢として、対象は実験動物及び/又は疾患の動物モデルであり得る。好ましくは、対象はヒトである。
対象は、任意の生物、任意の民族及び任意の年齢の対象であってもよい。
【0035】
「その必要がある対象」又は「必要がある対象」は、本発明の方法及び組成物により処置され得る、又は本明細書に記載のものを含む粒子及び/若しくは組成物の送達により利益があるであろう障害を有することが知られている対象であり、又はこうした障害を有する若しくは発症すると疑われる、又はこうした障害を有する若しくは発症するリスクがある対象である。
【0036】
本明細書で使用される用語「投与する(administering)」又は「投与された(administered)」は、局所投与、非経口投与、及び/又は経口投与、本明細書に記載の投与全てを含むと意味する。非経口投与としては、静脈内投与、皮下投与、及び/又は筋肉内投与(例えば、骨格筋又は心筋への投与)が挙げられるがこれらに限定されない。実際の投与方法及び投与の順番は、とりわけ、利用されている1つ以上の化合物の特定の合剤、及び利用されている他の1つ以上の化合物の1つ以上の特定の製剤によって変化することが理解されるであろう。所与の一連の病状に関する本発明の組成物の最適な投与方法及び投与の順番は、従来の技術を使用し、かつ本明細書に提示される情報を考慮し、当業者によって確認され得る。
【0037】
用語「投与する(administering)」又は「投与された(administered)」はまた、経口経路、舌下経路、頬側経路、経皮経路、直腸経路、筋肉内経路、静脈内経路、動脈内(冠内)経路、脳室内経路、くも膜下腔内経路、及び皮下経路を指すが、これらに限定されない。良好な臨床実務に従い、即時化合物は過度の害を及ぼす作用又は有害な副作用を引き起こすことなしに効果的で有益な作用を生み出す、すなわち、投与に関連する利益が有害作用を上回る用量で投与され得る。
【0038】
本明細書でも使用される場合、用語「処置する(treat)」、「処置する(treating)」、又は「処置(treatment)」は、病状、障害、疾患又は病気に苦しんでいる対象に、例えば、有益な効果及び/又は治療効果といった調節効果を与える任意の種類の作用を示す。この作用とは例えば、当該技術分野で周知されているように、患者の病状(例えば、1つ以上の症状)における改善、障害、疾患、若しくは疾病の進行の遅延、及び/又は病状、障害、疾患若しくは疾病などの臨床パラメータにおける変化を含む。
【0039】
追加的に本明細書で使用される場合、用語「予防(proactive)」、「予防する(prevent)」、「予防する(preventing)」又は「予防(prevention)」は、対象における疾患、障害、及び/若しくは1つ以上の臨床症状の非存在、回避、並びに/又はこれらの発症及び/若しくは進行の遅延、並びに/又は本発明の方法が存在しないことで生じうるようなものに関連する疾患、障害、及び/若しくは1つ以上の臨床症状の発症の重症度の低減をもたらす、任意の種類の作用を指す。予防は完全なものであり得る。例えば、疾患、障害及び/又は1つ以上の臨床症状は完全に存在しない。予防は部分的なものであり得、その結果、対象における疾患、障害、及び/若しくは1つ以上の症状の発生、並びに/又は発症の重症度は、本発明が存在しなかった場合よりも小さい。
【0040】
「有効量」又は「治療有効量」は、治療効果及び/又は有益な効果であり得る所望の効果を生み出すのに十分な本発明の化合物又は組成物の量を指す。一般には、「治療有効量」又は「処置有効量」は、所望の効果を達成するための、十分ではあるが非毒性である活性成分(すなわち、本発明の粒子)の量を指す。例えばこの所望の効果は、症状の重症度及び/若しくは頻度における低減若しくはその排除、又は損傷の改善若しくは治療であり得、それ以外の場合では疾患若しくは任意の他の望ましくない症状の進行を予防、妨害、遅延又は反転させ得るものである。有効量は対象の年齢、全身状態、処置されている病状の重症度、投与される特定の薬剤、処置期間、任意の併用処置の性質、使用される薬学的に許容される担体、並びに当業者の知識及び専門知識の範囲内にある同様の因子によって変動する。必要に応じて、任意の個々の場合における有効量又は治療有効量は、関連のテキスト及び文献を参照することにより、並びに/又はルーチンの実験を使用することにより、当業者により決定され得る(例えば、Remington,The Science and Practice of Pharmacy(latest edition)を参照されたい)。本明細書で使用される用語「生物学的に活性」は、天然起源分子の構造的、制御的、又は生化学的機能を有する酵素又はタンパク質を意味する。
【0041】
本明細書に記載の全ての方法は、本明細書で特段指示しない限り、又は文脈に明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順番で実施され得る。本明細書で提供されるあらゆる例及び全ての例、又は例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく例示しようと意図するものであり、特段請求しない限り、本発明の範囲を限定するものではない。
【0042】
「アミノ酸配列」並びに「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」などの用語は本明細書で互換可能に使用され、アミノ酸配列を、列挙されたタンパク質分子に関連する完全な天然アミノ酸配列(すなわち、自然に生じたタンパク質中に見られる天然アミノ酸のみを含む配列)に限定することを意味するものではない。本明細書にて開示される主題のタンパク質及びタンパク質断片は、組換えアプローチにより産生され得る。又は天然起源の源から単離され得る。タンパク質断片は任意のサイズであり得る。また、例えば4つのアミノ酸残基から、1つのアミノ酸を減じた全体アミノ酸配列といったサイズの範囲であり得る。
【0043】
用語「抗体」及び「免疫グロブリン」は、Fab、Fv、一本鎖Fv(scFv)、Fc、Fd断片、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、並びに抗体の抗原結合部分及び非抗体タンパク質を含む融合タンパク質を含むがこれらに限定されない、任意のアイソタイプの抗体又は免疫グロブリン、抗原への特異的結合を保持する抗体の断片を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、例えば放射性同位元素、検出可能な生成物を生成する酵素、蛍光タンパク質などで検出可能に標識され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、例えばビオチン(ビオチン-アビジン特異的結合対の一員)といった特異的結合対の一員などといった他の部分に更にコンジュゲートすることができる。Fab´、Fv、F(ab´)及び抗原への特異的結合を保持する他の抗体断片(例えば、少なくとも1つのパラトープを含む任意の抗体断片)もまた、これらの用語に包含される。
【0044】
抗体は、例えば、Fv、Fab、及び(Fab´)、並びに二官能性(すなわち、二重特異性)ハイブリッド抗体(例えば、Lanzavecchia et al.,1987を参照されたい)を含み、一本鎖中(例えば、Huston et al.,1988及びBird et al.,1988を参照されたい。これらのそれぞれは、その全体が本明細書に組み入れられる)の他の様々な形態で存在し得る。Hood et al.,1984及びHunkapiller&Hood,1986を一般に参照されたい。語句「検出分子」は、本明細書では最も広範な意味で使用され、特定のバイオマーカの検出を可能とするバイオマーカに対し、十分な特異性で結合可能な任意の分子を含む。検出を可能にするということは、特定のバイオマーカメンバーが存在するか、又はこれが存在していないかを決定することを意味し得る。またいくつかの実施形態では、特定のバイオマーカの量を決定することを意味する。検出分子は、抗体、抗体断片、及び核酸配列を含み得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「標的」は、例えば「マーカ」など、目的の内因性分子又は外因性分子を含む。標的は、1つ若しくは少数の組織の種類、1つ若しくは少数の細胞の種類、1つ若しくは少数の疾患、及び/又は1つ若しくは複数の発症段階に排他的又は主に関連するマーカであってもよい。いくつかの実施形態では、標的はタンパク質(例えば、細胞表面受容体、膜貫通タンパク質、糖タンパク質など)、炭水化物(例えば、グリカン部分、グリコカリックスなど)、脂質(例えば、ステロイド、リン脂質など)及び/又は核酸(例えば、DNA、RNAなど)を含み得る。いくつかの実施形態では、標的はNK細胞標的(例えば、「第1の標的」)であってもよい。いくつかの実施形態では、標的(すなわち、マーカ)は、例えば腫瘍抗原(例えば、「第2の標的」)などの悪性細胞において排他的な量で、又はより多量で存在する分子であってもよい。いくつかの実施形態では、標的は前立腺がんマーカであってもよい。ある特定の実施形態では、前立腺がんマーカは、前立腺特異的膜抗原(prostate specific membrane antigen、PSMA)であり、ほとんどの前立腺組織で発現するが、正常組織よりも前立腺がん組織でより高度に発現する、100kDaの膜貫通糖タンパク質である。いくつかの実施形態では、標的は乳がんマーカであってもよい。いくつかの実施形態では、標的は大腸がんマーカであってもよい。いくつかの実施形態では、標的は直腸がんマーカであってもよい。いくつかの実施形態では、標的は肺がんマーカであってもよい。いくつかの実施形態では、標的は膵臓がんマーカであってもよい。いくつかの実施形態では、標的は卵巣がんマーカであってもよい。いくつかの実施形態では、標的は骨がんマーカであってもよい。いくつかの実施形態では、標的は腎がんマーカであってもよい。いくつかの実施形態では、標的は肝臓がんマーカであってもよい。いくつかの実施形態では、標的は神経がんマーカであってもよい。いくつかの実施形態では、標的は胃がんマーカであってもよい。いくつかの実施形態では、標的は精巣がんマーカであってもよい。いくつかの実施形態では、標的は頭頸部がんマーカであってもよい。いくつかの実施形態では、標的は食道がんマーカであってもよい。いくつかの実施形態では、標的は子宮頸がんマーカであってもよい。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「ナノ粒子」及び/又は「ナノスフェア」は、ナノメートルサイズの範囲のポリマー粒子又は球体を記載する。本明細書で使用される用語「マイクロ粒子」又は「マイクロスフェア」は、マイクロメートルサイズの範囲の粒子又は球体を記載する。粒子又は球体のどちらの種類も、薬物、造影剤、及び/若しくは抗原が、固溶体若しくは固体分散体の形態で中に組み込まれ得る薬物担体、又はこれらの物質がその上に吸収され、封入され、及び/若しくは化学結合され得る薬物担体として使用され得る。
【0047】
本明細書で使用される用語「標的化剤」は、特異マーカ(すなわち、標的)に結合する薬剤を含む。本発明の標的化剤(例えば、標的部分)は、核酸(例えば、アプタマー)、ポリペプチド(例えば、抗体)、糖タンパク質、小分子、炭水化物、脂質などであってもよい。例えば標的化剤は一般に、例えばポリペプチドなどの特定の標的に結合するオリゴヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、又はそれらのアナログ、又はそれらの誘導体)である、アプタマーであり得る。いくつかの実施形態では、標的化剤はペプチド、又はポリペプチド(例えば、腫瘍マーカ(例えば、がん細胞表面上の標的)を特異的に認識する抗体又は抗体の一部分)であってもよい。いくつかの実施形態では、標的化剤は抗体又はその断片であってもよい。いくつかの実施形態では、標的化剤は抗体のFc断片であってもよい。
【0048】
(粒子及び組成物)
本開示は、単一粒子中にNK細胞結合標的及びがん細胞結合標的を含むナノ粒子の利用を記載し、NK細胞免疫応答活性化及びがん細胞の直接処置と、任意選択的には治療薬とを組み合わせたアプローチに関する。
【0049】
したがって、一実施形態では、本発明は、NK細胞表面上の第1の標的に結合する少なくとも1種類の第1の標的化剤(例えば、第1の標的化剤はそのそれぞれの第1の標的に結合する)、及びがん細胞表面上の第2の標的に結合する少なくとも1種類の第2の標的化剤(例えば、第2の標的化剤はそのそれぞれの第2の標的に結合する)を含む粒子(例えば、ナノ粒子)を提供し、この場合第2の標的化剤は、第1の標的化剤と異なる(例えば、それぞれの第1の標的及びそれぞれの第2の標的は異なる標的である)。いくつかの実施形態では、本発明の粒子は、例えば少なくとも2種類の第1の標的化剤(2種類、3種類、4種類、5種類、6種類、7種類、8種類、9種類、10種類、11種類、12種類、13種類、14種類、15種類などを含む)の、2つ以上の第1の標的化剤を含み得る。この場合、少なくとも2種類の第1の標的化剤は、NK細胞表面上の異なる第1の標的に結合する。例えば、少なくとも2種類の第1の標的化剤は、2種類の異なる第1の標的化剤である。いくつかの実施形態では、第1の標的化剤は、例えば、約5個、約10個、約50個、約100個、約500個、約1000個、約2000個、約5000個、約10,000個以上の同じ第1の結合剤、又はその中の任意の数値、若しくはその範囲といった多数の同じ第1の結合剤を含んでもよい。
【0050】
本発明の粒子の種類としては、PLGAベース、PLAベース、多糖ベース(デキストラン、シクロデキストリン、キトサン、ヘパリン)、デンドリマー、ヒドロゲルなどのポリマーナノ粒子;脂質ナノ粒子、脂質ハイブリッドナノ粒子、リポソーム、ミセルなどの脂質ベースのナノ粒子;超常磁性酸化鉄ナノ粒子、金属ナノ粒子、プラチンナノ粒子、リン酸カルシウムナノ粒子、量子ドットなどの無機物ベースのナノ粒子;フラーレン、炭素ナノチューブなどの炭素ベースのナノ粒子;及びナノスケールのタンパク質ベースの複合体が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のマイクロ粒子の種類としては、当該技術分野で公知である、マイクロメートルスケールでのサイズを有し、PLGAベース、PLAベース、多糖ベース(デキストラン、シクロデキストリン、キトサン、ヘパリン)、デンドリマー、ヒドロゲルなどを含むがこれらに限定されないポリマーマイクロ粒子;脂質マイクロ粒子、ミセルなどの脂質ベースのマイクロ粒子;超常磁性酸化鉄マイクロ粒子、プラチンマイクロ粒子などの無機物ベースのマイクロ粒子である粒子が挙げられるが、これらに限定されない。これらの粒子は、Au et al.2019 ACS Cent.Sci.5(1):122-144及びAu et al.2018 ACS Nano 12(2):1544-1563に記載され、それらの開示は、それらの全体が参照として本明細書に組み入れられるもののように、当該技術分野で公知の機構により生成されてもよく、及び/又はこれは吸収され、封入され、若しくは化学結合される物質を有してもよい。
【0051】
本発明の粒子は、NK細胞表面上の第1の標的に結合する少なくとも1種類の第1の標的化剤、及びがん細胞表面上の第2の標的に結合する少なくとも1種類の第2の標的化剤を含み、例えばマイクロ粒子、ナノ粒子といった任意のサイズの粒子であってもよい。いくつかの実施形態では、粒子はナノ粒子であり得る。例えばこの場合、粒子(例えば、ナノ粒子)の直径は1μm以下であり、例えばナノ粒子の直径は、1nm、5nm、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、125nm、150nm、175nm、200nm、225nm、250nm、275nm、300nm、325nm、350nm、375nm、400nm、425nm、450nm、475nm、500nm、525nm、550nm、575nm、600nm、625nm、650nm、675nm、700nm、725nm、725nm、750nm、775nm、800nm、825nm、850nm、875nm、900nm、925nm、950nm、960nm、970nm、980nm、990nm、995nm、996nm、997nm、998nm、又は999nm、又は任意の数値、又はその範囲である。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の直径は、約5nm~約750nm、約10nm~約500nm、約5nm~約999nm、又は約50nm~約900nmであり得る。いくつかの実施形態では、粒子の直径は粒子の集団の平均直径であり得る。例えばこの場合、ナノ粒子の平均直径は、例えば約5nm~約750nm、約10nm~約500nm、約5nm~約999nm、又は約50nm~約900nm、又は任意の数値、又はその範囲であり得る。本発明のナノ粒子又はナノスフェアは、100nm以下(例えば、約1nm~約100nmの範囲)の直径を有し得る。いくつかの実施形態では、100nmを超える直径を有する粒子は、依然としてナノ粒子と呼ばれ得る。したがって、ナノ粒子の上限は約1μmであり得、いくつかの実施形態では、これは500nmであり得る。本発明のマイクロ粒子又はマイクロスフェアは、約0.5マイクロメートル~約100マイクロメートルの直径を有し得る。
【0052】
本発明の第1の標的化剤は、NK細胞表面上の標的に結合する任意の標的化剤であり得る。NK細胞表面上の標的は、本明細書において「第1の標的」と呼ばれてもよい。各第1の標的化剤は、それぞれの第1の標的(例えば、第1の標的化剤の結合パートナー)に結合する。いくつかの実施形態では、NK細胞表面上の第1の標的は、CD16、4-1BB、NKG2D、TRAIL、NKG2C、CD137、OX40、CD27、KIRs、NKG2a、dnam-1、2b4、NKp30a、NKp30b、NKp30c、抗体Fc成分、又はこれらのいずれかの組合せ、並びに現在知られており、又は後に同定されるNK細胞表面上の他のマーカであり得る。いくつかの実施形態では、NK細胞表面上の標的はCD16及び/又は4-1BBであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の粒子はCD16に結合する第1の標的化剤(例えば、第1の標的化剤のそれぞれの第1の標的)を含んでよく、4-1BBに結合する別の異なる第1の標的化剤(例えば、異なる第1の標的化剤のそれぞれの第1の標的)を更に含む。したがって、本発明の実施形態では、本発明のナノ粒子は互いに異なる複数の第1の標的化剤(例えば、2種類、3種類、4種類、5種類、6種類、7種類、8種類、9種類、10種類など)を含み得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、「それぞれの第1の標的」は、特定の第1の標的化剤により認識されるであろう特異的な第1の標的である。例えば、第1の標的Xに対する特異性を有する第1の標的化剤は、第1の標的Xを認識してこれに結合する。したがって第1の標的Xは、第1の標的化剤のそれぞれの第1の標的である。
【0054】
本発明の第2の標的化剤は、がん細胞表面上の標的に結合する任意の標的化剤であり得る。がん細胞表面上の標的は、本明細書において「第2の標的」と呼ばれてもよい。各第2の標的化剤は、それぞれの第2の標的(例えば、第2の標的化剤の結合パートナー)に結合する。非限定的で例示的ながん及び腫瘍細胞の抗原は、S.A.Rosenberg(Immunity 10:281(1991))に記載される。他の実例となるがん及び腫瘍抗原としては、BRCA1遺伝子産物、BRCA2遺伝子産物、gp100、チロシナーゼ、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、LAGE、NY-ESO-1、CDK-4、β-カテニン、MUM-1、Caspase-8、KIAA0205、HPVE、SART-1、PRAME、p15、メラノーマ腫瘍抗原(Kawakami et al.,(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3515;Kawakami et al.,(1994)J.Exp.Med.,180:347;Kawakami et al.,(1994)Cancer Res.54:3124)、MART-1、gp100 MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、CEA、TRP-1、TRP-2、P-15、チロシナーゼ、(Brichard et al.,(1993)J.Exp.Med.178:489);HER-2/neu遺伝子産物(米国特許第4,968,603号明細書)、CA 125、LK26、FB5(エンドシアリン)、TAG 72、AFP、CA19-9、NSE、DU-PAN-2、CA50、SPan-1、CA72-4、HCG、STN(シアリルTn抗原)、c-erbB-2タンパク質、PSA、L-CanAg、エストロゲン受容体、乳脂グロブリン、p53腫瘍抑制タンパク質(Levine,(1993)Ann.Rev.Biochem.62:623);ムチン抗原(国際特許出願公開番号第90/05142号);テロメラーゼ;核マトリックスタンパク質;前立腺酸性ホスファターゼ;パピローマウイルス抗原;及び/又は以下のがん:腺がん、胸腺腫、肉腫、脳がん(例えば、神経膠芽腫)、頭頸部がん、食道がん、胃がん、肺がん(例えば、小細胞肺がん、非小細胞肺がん)、膀胱がん、腎がん(例えば、腎細胞がん)、肝臓がん(例えば、肝細胞がん)、膵臓がん、子宮がん、卵巣がん、子宮頸がん、肛門がん、メラノーマ、前立腺がん、乳がん、血液細胞がん(例えば、白血病、リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫)、大腸がん、及び現在知られている、若しくは後に同定される他のがん若しくは悪性の病状(例えば、Rosenberg,(1996)Ann.Rev.Med.47:481-91を参照されたい)を含むがこれらに限定されないがんに関連すると現在知られており、又はそれであると後に判明する抗原を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、がん細胞表面上の標的は、EGFR、PSMA、Nectin-4、ムチン、HER-2、CD30、CD22、又はこれらのいずれかの組合せであり得るがこれらに限定されない。したがって、本発明の実施形態では、本発明のナノ粒子は互いに異なる複数の第2の標的化剤(例えば、2種類、3種類、4種類、5種類、6種類、7種類、8種類、9種類、10種類など)を含み得る。
【0055】
本明細書で使用される場合、「それぞれの第2の標的」は、特定の第2の標的化剤により認識されるであろう特異的な第2の標的である。例えば、第2の標的Xに対する特異性を有する第2の標的化剤は、第2の標的Xを認識してこれに結合する。したがって第2の標的Xは、第2の標的化剤のそれぞれの第2の標的である。
【0056】
本発明のがん細胞は、任意のがん由来の細胞であり得る。いくつかの実施形態では、がん細胞は、腺がん、胸腺腫、肉腫、脳がん(例えば、神経膠芽腫)、頭頸部がん、甲状腺がん、肉腫、扁平上皮がん、皮膚がん、唾液腺がん、食道がん、胃がん、肺がん(例えば、小細胞肺がん、非小細胞肺がん)、膀胱がん、腎がん(例えば、腎細胞がん)、肝臓がん(例えば、肝細胞がん)、膵臓がん、子宮がん、卵巣がん、子宮頸がん、肛門がん、メラノーマ、前立腺がん、精巣がん、乳がん、血液細胞がん(例えば、白血病、リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫)、大腸がん、及び現在知られている、若しくは後に同定される他のがん若しくは悪性の病状に由来する細胞であり得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、本発明の粒子は、例えば第3の標的化剤、第4の標的化剤、第5の標的化剤など、NK細胞表面及び/又はがん細胞表面上にて発現していない追加の標的(例えば、それぞれの第3の標的、それぞれの第4の標的、それぞれの第5の標的など)に結合する更なる標的化剤を含んでもよい。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態では、標的化剤は抗体又はその活性断片であってもよい。いくつかの実施形態では、第1の標的化剤及び/又は第2の標的化剤は、抗体又はその活性断片であってもよい。いくつかの実施形態では、標的化剤のそれぞれは抗体又はその活性断片である。いくつかの実施形態では、抗体又はその活性断片は、モノクローナル抗体、Fab断片、Fab´-SH断片、FV断片、scFv断片、(Fab´)断片、Fc-融合タンパク質、及びこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される。
【0059】
いくつかの実施形態では、本発明の粒子(例えば、ナノ粒子)は、CD16に特異的に結合する抗体若しくはその活性断片、4-1BBに特異的に結合する抗体若しくはその活性断片、及び/又はEGFRに特異的に結合する抗体若しくはその活性断片を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明の粒子(例えば、ナノ粒子)は、治療薬を更に含んでもよい。非限定的で例示的な治療薬としては、小分子(例えば、細胞傷害性薬物)、核酸(例えば、RNAi薬剤)、タンパク質(例えば、抗体)、ペプチド、脂質、炭水化物、ホルモン、金属、放射活性要素及び化合物、薬物、ワクチン、免疫学的薬剤など、並びに/又はこれらの組合せが挙げられる。
【0061】
いくつかの実施形態では、治療薬は例えば化学療法薬といった、がんの処置に有用な薬剤であってもよい。化学療法薬の非限定的な例としては、ダウモマイシン、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ベラパミル、シトシンアラビノシド、アミノプテリン、デメコルシン、タモキシフェン、アクチノマイシンD、アルキル化剤(ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア及びトリアゼンを含むがこれらに限定されない):ウラシルマスタード、クロルメチン、シクロホスファミド(シトキサン(登録商標))、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレン-メラミン、トリエチレンチオホスホルアミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、及びテモゾロミド;代謝拮抗薬(葉酸拮抗薬、ピリミジンアナログ、プリンアナログ、及びアデノシンデアミナーゼ阻害薬):メトトレキサート、5-フルオロウラシル(5-FU)、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、フルダラビンリン酸エステル、ペントスタチン(Pentostatine)、及びゲムシタビン、天然産物及びそれらの誘導体(例えば、ビンカアルカロイド、抗腫瘍性抗生物質、酵素、リンホカイン及びエピポドフィロトキシン):ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、Ara-C、パクリタキセル(パクリタキセルはタキソール(登録商標)として市販されている)、ドセタキセル、ミスラマイシン、デオキシコ-ホルマイシン、マイトマイシン-C、L-アスパラギナーゼ、インターフェロン(特にIFN-a)、エトポシド、及びテニポシドが挙げられるがこれらに限定されず、他の抗増殖性細胞傷害性薬剤は、ナベルベン(navelbene)、CPT-11、アナストロゾール、レトラゾール(letrazole)、カペシタビン、レロキサフィン、シクロホスファミド、イホスアミド(ifosamide)、及びドロロキサフィンである。追加の抗増殖性細胞傷害性薬剤としては、メルファラン、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、シタラビン、イダトレキサート(idatrexate)、トリメトレキサート、ダカルバジン、L-アスパラギナーゼ、カンプトテシン、トポテカン、ビカルタミド、フルタミド、リュープロリド、ピリドベンゾインドール誘導体、インターフェロン、インターロイキン、構造色性細胞傷害性薬剤(EGFR阻害薬、Her-2阻害薬、CDK阻害薬、及びトラスツズマブを含むがこれらに限定されない)を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、治療薬は、エピルビシン(EPI)、ドキソルビシン、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ダウノルビシン、タキソール、ドセタキセル、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、マイトマイシン、シタラビン、シトキサン、及びこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される化学療法薬である。
【0062】
いくつかの実施形態では、本発明は本発明の粒子(例えば、ナノ粒子)及び薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」は、生物学的に望ましくないわけではない、又はそれ以外の理由で望ましくないわけではない物質を意味する。すなわち、この物質は、実質的に有害な生物学的効果を引き起こすことなく、かつ中に含まれる組成物の他の成分のいずれかと有害な様式で相互作用することなく、本発明の組成物と共に対象に投与され得る。物質は、当業者に周知であるように、活性成分の何らかの分解を最小限にし、かつ対象における何らかの有害な副作用を最小限にするように自然に選択されることになる(例えば、Remington´s Pharmaceutical Science;最新版を参照されたい)。本発明の組成物にとって例示的な薬学的に許容される担体としては、当該技術分野で周知されているように、無菌パイロジェンフリー水及び無菌パイロジェンフリー生理食塩水、並びに特にヒト対象といった本発明の対象に注入及び/又は送達するのに好適な他の担体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
本発明はまた、本発明の粒子(例えばナノ粒子)を、治療目的で又は研究目的のためにインビトロ、エクスビボ、及び/又はインビボで細胞又は対象に送達するための方法を提供する。
【0064】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、NK細胞を活性化させる方法であって、第1の標的化剤がNK細胞表面上の第1の標的(例えば、第1の標的化剤のそれぞれの標的)に結合するような条件下で、NK細胞と本発明の粒子(例えば、ナノ粒子)又は組成物とを接触させることを含む方法を提供する。
【0065】
いくつかの実施形態では、本発明は、NK細胞免疫応答を誘発させる方法であって、第1の標的化剤がNK細胞表面上の第1の標的(例えば、第1の標的化剤のそれぞれの標的)に結合するような条件下で、NK細胞と本発明の粒子(例えば、ナノ粒子)又は組成物とを接触させることを含む方法を提供する。
【0066】
いくつかの実施形態では、本発明は、がん細胞において細胞傷害性を誘発させる方法であって、第2の標的化剤ががん細胞表面上の第2の標的(例えば、第2の標的化剤のそれぞれの標的)に結合するような条件下で、がん細胞と本発明の粒子(例えば、ナノ粒子)又は組成物とを接触させることを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子又は組成物は治療薬を更に含んでもよく、がん細胞と粒子及び/又は組成物を接触させ、それにより治療薬をがん細胞に送達する。
【0067】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療薬をがん細胞に送達する方法であって、第2の標的化剤ががん細胞表面上の第2の標的(例えば、第2の標的化剤のそれぞれの標的)に結合し、それにより治療薬をがん細胞に送達するような条件下で、がん細胞と、治療薬を含む本発明の粒子(例えば、ナノ粒子)又は組成物とを接触させることを含む方法を提供する。
【0068】
いくつかの実施形態では、本発明は、その必要がある対象においてNK細胞免疫応答を誘発させる方法であって、第1の標的化剤がNK細胞表面上の第1の標的(例えば、第1の標的化剤のそれぞれの標的)に結合するような条件下で、有効量の本発明の粒子(例えば、ナノ粒子)又は組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、粒子及び/又は組成物は少なくとも2種類の第1の標的化剤を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも2種類の第1の標的化剤が結合するNK細胞は同じNK細胞である。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明は、その必要がある対象においてNK細胞を活性化させる方法であって、第1の標的化剤がNK細胞表面上の第1の標的(例えば、第1の標的化剤のそれぞれの標的)に結合するような条件下で、有効量の本発明の粒子(例えば、ナノ粒子)又は組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、粒子及び/又は組成物は少なくとも2種類の第1の標的化剤を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも2種類の第1の標的化剤が結合するNK細胞は同じNK細胞である。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の方法のうち、いずれかの方法の対象は、がんであると診断されている。いくつかの実施形態では、がんは、腺がん、胸腺腫、肉腫、脳がん(例えば、神経膠芽腫)、頭頸部がん、食道がん、胃がん、肺がん(例えば、小細胞肺がん、非小細胞肺がん)、膀胱がん、腎がん(例えば、腎細胞がん)、肝臓がん(例えば、肝細胞がん)、膵臓がん、子宮がん、卵巣がん、子宮頸がん、肛門がん、メラノーマ、前立腺がん、乳がん、血液細胞がん(例えば、白血病、リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫)、大腸がん、及びこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される。
【0071】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象(例えば、その必要がある対象)においてがん細胞を処置する方法であって、第2の標的化剤ががん細胞表面上の第2の標的(例えば、第2の標的化剤のそれぞれの標的)に結合するような条件下で、有効量の本発明の粒子(例えば、ナノ粒子)又は組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明は、その必要がある対象においてがんを処置する方法であって、第1の標的化剤がNK細胞表面上の第1の標的(例えば、第1の標的化剤のそれぞれの標的)に結合し、それにより第2の標的化剤ががん細胞表面上の第2の標的(例えば、第2の標的化剤のそれぞれの標的)に結合するような条件下で、有効量の本発明の粒子(例えば、ナノ粒子)又は組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0073】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療薬をその必要がある対象におけるがんのがん細胞に送達する方法であって、第2の標的化剤ががん細胞表面上の第2の標的(例えば、第2の標的化剤のそれぞれの標的)に結合し、それにより治療薬を対象のがん細胞に送達するような条件下で、治療薬を含む本発明の有効量の粒子(例えば、ナノ粒子)又は組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の粒子(例えば、ナノ粒子)又は組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、くも膜下腔内、脳室内、眼内、硝子体内、眼窩内、鼻腔内、埋め込み、吸入、腫瘍組織内、及びこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される経路を介して投与されてもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、有効量の治療薬(例えば、化学療法薬)を対象に投与する工程及び/又は放射線療法の工程を更に含んでもよい。本発明の粒子及び/又は組成物の投与と併用されて投与されてもよい非限定的で例示的な治療薬としては、小分子(例えば、細胞傷害性薬物)、核酸(例えば、RNAi薬剤)、タンパク質/ペプチド(例えば、抗体)、脂質、炭水化物、ホルモン、金属、放射活性要素及び化合物、薬物、ワクチン、免疫学的薬剤など、並びに/又はこれらの組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、治療薬は例えば化学療法薬といった、がんの処置に有用な薬剤であり得る。化学療法薬の非限定的な例としては、ダウモマイシン、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ベラパミル、シトシンアラビノシド、アミノプテリン、デメコルシン、タモキシフェン、アクチノマイシンD、アルキル化剤(ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア及びトリアゼンを含むがこれらに限定されない):ウラシルマスタード、クロルメチン、シクロホスファミド(シトキサン(登録商標))、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレン-メラミン、トリエチレンチオホスホルアミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、及びテモゾロミド;代謝拮抗薬(葉酸拮抗薬、ピリミジンアナログ、プリンアナログ、及びアデノシンデアミナーゼ阻害薬):メトトレキサート、5-フルオロウラシル(5-FU)、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、フルダラビンリン酸エステル、ペントスタチン(Pentostatine)、及びゲムシタビン、天然産物及びそれらの誘導体(例えば、ビンカアルカロイド、抗腫瘍性抗生物質、酵素、リンホカイン及びエピポドフィロトキシン):ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、Ara-C、パクリタキセル(パクリタキセルはタキソール(登録商標)として市販されている)、ドセタキセル、ミスラマイシン、デオキシコ-ホルマイシン、マイトマイシン-C、L-アスパラギナーゼ、インターフェロン(特にIFN-a)、エトポシド、及びテニポシドが挙げられるがこれらに限定されず、他の抗増殖性細胞傷害性薬剤は、ナベルベン(navelbene)、CPT-11、アナストロゾール、レトラゾール(letrazole)、カペシタビン、レロキサフィン、シクロホスファミド、イホスアミド(ifosamide)、及びドロロキサフィンである。追加の抗増殖性細胞傷害性薬剤としては、メルファラン、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、シタラビン、イダトレキサート(idatrexate)、トリメトレキサート、ダカルバジン、L-アスパラギナーゼ、カンプトテシン、トポテカン、ビカルタミド、フルタミド、リュープロリド、ピリドベンゾインドール誘導体、インターフェロン、インターロイキン、構造色性細胞傷害性薬剤(EGFR阻害薬、Her-2阻害薬、CDK阻害薬、及びトラスツズマブを含むがこれらに限定されない)を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の粒子及び/又は組成物の投与と併用して投与されてもよい治療薬は、エピルビシン(EPI)、ドキソルビシン、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ダウノルビシン、タキソール、ドセタキセル、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、マイトマイシン、シタラビン、シトキサン、及びこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される化学療法薬である。
【0076】
本発明の追加の態様は、NK細胞を活性化させ、がん細胞に細胞傷害性を誘発させ、治療薬をがん細胞に送達し、及び/又はがんを処置する際の、本発明の粒子(例えば、ナノ粒子)及び/又は組成物の使用を含む。本明細書では、本発明の粒子(例えば、ナノ粒子)及び/又は組成物を含む、使用のための薬物の調製を更に提供する。
いくつかの実施形態では、本明細書では、本発明の粒子(例えば、ナノ粒子)及び/又は組成物、並びに取扱説明書を含むキットを更に提供する。
【0077】
(使用のための医薬組成物及び方法)
いくつかの実施形態では、本発明は、薬学的に許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、保存剤、及び/又はアジュバントのうち1つ以上と共に、本発明の粒子を含む組成物もまた提供する。こうした組成物は、有効量の粒子を含有し得る。したがって、医薬組成物又は薬物の調製においては、本明細書にて提供されるような粒子の使用もまた含まれる。こうした組成物は、本明細書に記載される様々な疾患及び障害の処置で使用され得る。
【0078】
医薬製剤にとって許容される製剤成分は、使用される投与量及び濃度では移植患者にとって非毒性である。本明細書で提供される粒子に加えて、本明細書による組成物は、例えばpH、容積オスモル濃度、粘度、透明性、色、等張性、匂い、無菌性、安定性、溶解速度又は放出速度、組成物の吸着又は浸透を修飾し、維持し、又はこれらを保存するための成分を含有し得る。医薬組成物を処方するための好適な物質としては、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、又はリジン);抗菌剤;酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、又は亜硫酸水素ナトリウム);緩衝剤(例えば、酢酸塩、ホウ酸塩、炭酸水素塩、トリス-HCl、クエン酸、リン酸塩、又は他の有機酸);増量剤(例えば、マンニトール又はグリシン);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(ethylenediamine tetraacetic acid、EDTA));錯化剤(例えば、カフェイン、ポリビニルピロリドン、β-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン);フィラー;単糖類;二糖類;及び他の炭水化物(例えば、グルコース、マンノース又はデキストリン);タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン);着色料、香料及び希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(例えばナトリウム);保存剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸又は過酸化水素);溶媒(例えば、グリセリン、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール);糖アルコール(例えば、マンニトール又はソルビトール);懸濁化剤;界面活性剤又は湿潤剤(例えば、プルロニック(登録商標)、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20、ポリソルベート80などのポリソルベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポール(tyloxapal);安定性増強剤(例えば、スクロース又はソルビトール);浸透圧増強剤(例えば、アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくは塩化ナトリウム又は塩化カリウム、マンニトールソルビトール);送達担体;希釈剤;賦形剤及び/又は医薬アジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
医薬組成物中の主要な溶媒又は担体は、実際には水性又は非水性のいずれかであってもよい。こうした組成物にとって好適な溶媒又は担体としては、非経口投与のための組成物において一般的な他の物質と共に補充され得る、注射用水(例えば、滅菌水)、生理食塩水、又は人工脳脊髄液が挙げられる。中性緩衝生理食塩水又は血清アルブミンと混合される生理食塩水は、更に例示的な溶媒である。
【0080】
本発明の粒子を含む組成物は、所望の純度を有する選択された組成物と、凍結乾燥ケーキ又は水溶液の形態である最適な製剤とを混合することにより、貯蔵のために調製され得る。更には、粒子はスクロースなどの適切な賦形剤を使用し、凍結乾燥物として処方されてもよい。
【0081】
製剤成分は、投与部位に許容される濃度で存在する。緩衝剤は有利には、生理学的pH又はわずかにそれよりも低く、通常約4.0~約8.5、又は代替的には約5.0~約8.0のpH範囲内であるpHに組成物を維持するために使用される。医薬組成物は、pHが約6.5~8.5のトリス緩衝剤、又はpHが約4.0~5.5の酢酸塩緩衝剤を含むことができるが、これはソルビトール又はその好適な代替物を更に含んでもよい。
【0082】
医薬組成物は、錠剤の製造に好適である非毒性賦形剤との混合物中に、有効量の本発明の粒子を含んでもよい。滅菌水又は別の適切な溶媒に錠剤を溶解させることによって、溶液は単位用量形態に調製され得る。好適な賦形剤としては、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウム、ラクトース、若しくはリン酸カルシウムといった不活性物質;又はデンプン、ゼラチン、若しくはアカシアといった結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、又はタルクなどの潤滑剤が挙げられるがこれらに限定されない。
【0083】
追加の医薬組成物は、持続送達製剤又は制御送達製剤の形態である。例えばリポソーム担体、生体分解性マイクロ粒子又は多孔質ビーズ、及びデポ注射などの様々な他の持続送達手段又は制御送達手段を処方するための手段が可能である。徐放性製剤としては、例えばフィルム、又はマイクロカプセル、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリ乳酸、L-グルタミン酸のコポリマー及びγエチル-L-グルタマート、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)、エチレン酢酸ビニル、又はポリ-D(-)-3-ヒドロキシ酪酸といった成形物品の形態である半透性ポリマーマトリックスが挙げられる。徐放性組成物はまたリポソームを含み得るが、これは当該技術分野で公知であるいくつかの方法のうちいずれかにより調製され得る。
【0084】
インビボ投与のために使用される医薬組成物は、通常は無菌状態である。滅菌は、無菌ろ過膜を通したろ過により達成され得る。組成物が凍結乾燥される場合、滅菌は凍結乾燥及び再構成の前、又は凍結乾燥及び再構成後のいずれかで行われ得る。非経口投与のための組成物は、凍結乾燥形態又は溶液で保存され得る。ある特定の実施形態では、非経口組成物は、例えば静注液バッグ、若しくは皮下注射針で突き刺し可能であるストッパーを有するバイアルといった滅菌アクセスポートを有する容器、又は注射にすぐに使用できる滅菌プレフィルドシリンジの中に入れられる。
【0085】
組成物は、公知技術に従い、任意選択的にはマイクロ針、マイクロプロジェクタイル法、パッチ、電極、接着剤、バッキング、及び/又はパッケージングを含むものによる経皮送達用に処方され得る、又はジェット送達用の製剤であり得る。例えば、米国特許第8,043,250号、同8,041,421号、同8,036,738号、同8,025,898号、同8,017,146号を参照されたい。
【0086】
いったん本発明の医薬組成物を処方すると、これは溶液、懸濁液、ゲル、エマルジョン、固体、又は脱水粉末若しくは凍結乾燥粉末として滅菌バイアル中に保存され得る。こうした製剤は、すぐに使用できる形態、又は投与前に再構成される形態(例えば、凍結乾燥)のいずれかで保存され得る。
【0087】
医薬組成物を処方するために使用される成分は、好ましくは高純度であり、かつ有害である可能性が高い汚染物質を実質的に含まないもの(例えば、少なくとも米国食品(National Food、NF)グレード、少なくとも、一般的な分析グレード、及び少なくとも、より典型的な医薬品グレード)である。更には、インビボ使用を意図した組成物は、通常無菌である。所与の化合物を使用前に合成しなくてはならないという点から、得られる生成物は、合成プロセス又は精製プロセス中に存在し得る、任意の有害である可能性が高い毒性薬剤(特にいずれかのエンドトキシン)を典型的には実質的に含まない。非経口投与(parental administration)用組成物はまた、無菌であり、実質的に等張であり、GMP条件下で作製される。
【0088】
本発明は、マルチドーズ投与単位又はシングルドーズ投与単位を製造するためのキットを提供する。例えば、本発明によるキットはそれぞれ、乾燥させた組成物を有する第1の容器と、水性希釈剤を有する第2の容器との両方を含有してもよい。例えばこれらの容器は、シングルチャンバプレフィルドシリンジ及びマルチチャンバプレフィルドシリンジを含む(例えば、液体シリンジ、溶解シリンジ、又は針なしシリンジ)。
【0089】
本発明の医薬組成物は非経口で送達され得る。これは典型的には、注射によって送達され得る。注射は、眼内注射、腹腔内注射、門脈内注射、筋肉内注射、静脈内注射、くも膜下腔内注射、脳内(実質内)注射、脳室内注射、硝子体内注射、動脈内注射、病巣内注射、病変周囲注射又は皮下注射であり得る。点眼薬は、眼内投与に使用され得る。いくつかの例では、注射は、処置が標的にする特定の1本以上の骨の近傍に局在し得る。非経口投与のため、キメラタンパク質は、薬学的に許容される溶媒中にキメラタンパク質を含む、非経口的に許容されるパイロジェンフリー水溶液で投与され得る。非経口注射に特に好適な溶媒は、適切に保存され、無菌の等張溶液として中にキメラタンパク質を処方した滅菌蒸留水である。
【0090】
本発明の粒子を含む医薬組成物は、ボーラス注射によって、及び/又は点滴により連続的に、埋め込み型デバイス、徐放システム若しくは持続放出を達成するための他の手段によって投与され得る。医薬組成物はまた、膜、スポンジ、又は所望の分子をその上に吸収又は封入した別の適切な物質を埋め込むことによって、局所的に投与され得る。埋め込み型デバイスを使用する場合、該デバイスは任意の好適な組織又は器官へと埋め込まれてもよく、所望の分子は、拡散、時間設定型放出ボーラス(timed-release bolus)、又は連続放出を介して送達されてもよい。合剤は、例えば注射可能なマイクロスフェア、生体分解性粒子、ポリマー化合物(例えば、ポリ乳酸;ポリグリコール酸;又は共重合(乳酸/グリコール酸)(PLGA)、ビーズ又はリポソームであり、デポ注射を介して送達され得、生成物の制御放出又は徐放を提供することができる)といった薬剤と共に処方されてもよい。ヒアルロン酸を含む製剤は、循環における持続時間を促進させる効果を有する。
【0091】
本発明の粒子を含む主題の組成物は、吸入のために処方されてもよい。これらの実施形態では、粒子は吸入用の乾燥粉末として処方され得る。又は粒子吸入溶液はまた、吸入投与などのエアロゾル送達用の噴霧剤と共に処方され得る。
【0092】
本発明のある特定の医薬組成物は、消化管を通し、経口などで送達され得る。この様式で投与される本発明の粒子は、錠剤及びカプセルなどの固形剤形の配合に習慣的に使用されるこれらの担体を用いて、又はこれらの担体を用いないで処方されてもよい。カプセルは、バイオアベイラビリティが最大化され、事前の全身分解(pre-systemic degradation)が最小化される、消化管に存在する時点で製剤の活性部分を放出するように設計され得る。追加の薬物は、粒子の吸収を促進させるために含まれ得る。経口投与のため、消化酵素に耐性を与えるために修飾アミノ酸が使用されてもよい。希釈剤、香料、低融点ワックス、植物油、潤滑剤、懸濁化剤、錠剤崩壊剤、及び結合剤もまた使用されてもよい。
【0093】
粒子を含む主題の組成物はまた、エクスビボで使用されてもよい。こうした例では、対象から取り除かれた細胞、組織又は器官は、粒子と共に曝露又は培養される。次いで、培養された細胞は対象若しくは異なる対象へと戻して埋め込まれてもよい、又は他の目的に使用されてもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、免疫応答の確率を下げるため、本発明の粒子は封入され、周囲組織による浸潤を避けてもよい。封入物質は典型的には、粒子の放出が可能であるが、患者の免疫系による、又は周囲組織由来の他の有害因子による細胞破壊を防止する、生体適合性の半透過性ポリマー封入物又は膜である。
【0095】
提供される医薬組成物は、予防処置及び/又は治療処置のために投与され得る。一般には、本発明の粒子の毒性及び治療有効性は、細胞培養液及び/又は実験動物における標準的な薬学的手順に従って決定され得る。これには例えば、LD50(集団の50%に対する致死量)及びED50(集団の50%における治療有効量)を決定することが挙げられる。毒性と治療効果との間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50として表現され得る。高い治療指数を呈示する組成物が好ましい。
【0096】
細胞培養液及び/又は動物研究から得られたデータは、処置のため、対象への投与量の範囲を明確に表す際に使用され得る。活性成分の投与量は典型的には、ED50を含む循環濃度の範囲内にあり、これはほぼ又は全く毒性がない。投与量は、使用される剤形及び利用される投与経路に応じ、上記範囲内で変動し得る。
【0097】
本発明の粒子を含む、治療的に又は予防的に使用される医薬組成物の有効量は、例えば治療状況及び治療目的に応じて変動する。当業者は、ある一定の実施形態による、処置のための適切な投与量レベルはしたがって、送達されている組成物、粒子が使用される対象の適応症、投与経路、及びサイズ(体重、体表面及び器官のサイズ)並びに/又は対象の条件(年齢及び健康状態)に一部応じて変化することを理解するであろう。臨床医は、最適な治療効果を得るため、力価により投与量を測定し、かつ投与経路を変更してもよい。本発明の粒子を投与するための通常の投与量は、約0.001mg/kg~2,000mg/kgの範囲である。例えば、いくつかの実施形態では、粒子は1~3週間ごとに静脈内へと投与され得る。
【0098】
投与頻度は、製剤中の粒子の薬物動態パラメータに応じて変動する。例えば、臨床医は、所望の効果を達成する投与量に達するまで組成物を投与する。したがって組成物は、単回用量として若しくは(同様の所望の分子を含んでも、含まなくてもよい)2回以上の経時的な用量として、又は埋め込み型デバイス若しくはカテーテルを介した連続点滴として、投与されてもよい。処置は経時的に連続していてもよく、断続的であってもよい。適切な投与量の更なる改良は、当業者によって日常的に行われており、これは彼らにより日常的に実施されている作業の範囲内である。適切な投与量は、適切な用量反応データの使用により確認されてもよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、粒子は1種以上の他の治療薬及び/又は異なる治療と組み合わせて投与され得る。治療薬の例としては、抗感染症薬(例えば、防腐剤、抗生物質、及び/若しくは抗真菌薬)、抗炎症薬、並びに/又は免疫調節薬が挙げられるがこれらに限定されない。治療薬は粒子と同時に投与され得る、かつ/又は異なる時点で投与され得る。治療薬の投与経路は、粒子の投与経路と同じであり得、又は異なり得る。
【0100】
本発明の障害を処置するため、本発明の粒子を含む組成物は、障害の重症度を反映させた少なくとも1つの指標において、持続して改善をもたらすのに十分な量で及び時間にわたり、その必要がある対象に投与され得る。例えば、粒子は約1日ごと、約2日ごと、約3日ごと、約4日ごと、約5日ごと、約6日ごと、約7日ごと、約8日ごと、約9日ごと、若しくは約10日以上ごと、及び/又は約1週間ごと、約2週間ごと、約3週間ごと、約4週間ごと、約5週間ごと、約6週間ごと、約7週間ごと、約8週間ごと、約9週間ごと、若しくは約10週間以上ごとに投与され得る。他の実施形態では、粒子は1週間及び/又は1ヶ月及び/又は1年につき約1回、約2回、約3回、約4回、約5回、約6回、約7回、約8回、約9回、又は約10回以上であり得る。いくつかの実施形態では、対少なくとも1~7日間、又はいくつかの例では1~6週間あけて少なくとも2回、対象に改善が見られた場合、改善は「持続している」と見なされる。適切な時間間隔は、どんな疾患病状が処置されているかに応じてある程度変動する。改善が持続しているかどうかを決定するための適切な時間間隔の決定は、当業者の範囲内である。
【0101】
本明細書に記載の本発明の粒子を含むキット及び/又は医薬組成物もまた、本明細書にて提供される。いくつかのキットは、容器(例えば、バイアル又はアンプル)内に粒子及び/又は組成物を含む。また、上で開示された様々な方法での粒子及び/又は組成物の取扱説明書を含んでもよい。粒子及び/又は組成物は、例えば溶液の一部として、又は固体(例えば、凍結乾燥粉末)としての形態を含む、様々な形態であり得る。説明書は、適切な液体中でいかに粒子を調製(例えば、溶解若しくは再懸濁)するか、並びに/又は本明細書に記載の疾患及び障害の処置のためにいかに粒子を投与するかの説明を含み得る。
【0102】
キットはまた、例えば緩衝剤、塩、金属錯イオン及び医薬組成物に関するセクションにおいて上に記載された他の薬剤といった様々な他の成分を含んでもよい。これらの成分は、キメラタンパク質と共に含まれてもよく、又は別個の容器に入っていてもよい。キットはまた、キメラタンパク質と共に投与するための他の治療薬を含んでもよい。こうした薬剤の例としては、上記障害又は病状を処置するための薬剤が挙げられるがこれらに限定されない。
【0103】
以下の実施例は、本明細書で提供される粒子及び組成物のある特定の態様を単に説明するために提供される。したがってこれらは、特許請求される発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【実施例
【0104】
以下の実施例は、実例となる実施形態を提供する。以下の実施例のある特定の態様は、実施形態の実践において良好に機能することを目的として、本発明の発明者らにより見出され、企図された技術及び手順といった点において開示される。本開示及び当業者の一般レベルの観点から、当業者は以下の実施例が例示のみを意図しており、多数の変更、修正及び変化は、特許請求される主題の範囲から逸脱しない限り使用され得ることを理解するであろう。
【0105】
実施例1:NK細胞介在免疫療法のためのトリ官能化ナノエンゲージャ
この研究は、上皮増殖因子受容体(EGFR)発現腫瘍を標的とすることができ、NK細胞介在免疫療法を可能とするナノエンゲージャを開発した。ナノエンゲージャは化学療法薬を腫瘍に送達可能であり、更には治療効果を増強可能である。ナノエンゲージャプラットフォームは、生体適合性ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)PEG-PLGAナノ粒子(NP)に基づく。セツキシマブ(抗ヒトEGFR抗体、α-EGFR)、及び2種類のNK活性化剤:抗CD16(α-CD16)及び抗4-1BB(α-4-1BB)抗体を用いてNPを官能化する。化学療法薬であるエピルビシン(EPI)もまた、NP内部に封入され得る。これらの三価ナノエンゲージャを、EGFRが過剰発現した腫瘍における制御放出EPIに適合させるために作製するだけではなく、全身投与後に循環NK細胞を動員し、これを活性化させるようにも設計した(図1A)。
【0106】
多価非標的化及びEGFR標的化α-CD16及びα-4-1BB官能化された薬物非含有及びEPI封入PEG-PLGA NP(EPI NP)を、NK細胞介在化学免疫療法のための多価EGFR標的ナノエンゲージャの設計:2段階の製造方法(図1B図1C図2及び図3;表1)により操作した。コアをアジド官能化した薬物非含有NP及びコアをアジド官能化したEPI封入NPを、ナノ沈殿法(Au et al.2019 ACS Cent.Sci.5(1):122-144)により最初に調製した。次に、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)官能化したα-CD16、α-4-1BB、及びα-EGFRを、銅非含有アジド-シクロオクチン環化付加(Au et al.2018 ACS Nano 12(2):1544-1563)により、アジド官能化したNPに定量的にコンジュゲートさせた。二価NP及び三価NPの製造のため、α-CD16:α-4-1BBのモル比1:1及びα-CD16:α-4-1BB:α-EGFRのモル比1:1:1を使用した。約2.7wt/wt%のEPIで、EPI NPを封入した(図1D)。封入EPIは、生理学的条件でpH依存性制御放出を起こし、最初の24時間でそのおよそ半分を、弱酸性(pH6.0)の細胞外腫瘍微小環境及び初期エンドソーム条件で放出した(図1D及び図4A図4B)。蛍光活性化細胞セルソーティング(fluorescence-activated cell sorting、FACS)結合アッセイにより、α-CD16及びα-4-1BB官能化NPがA488標識マウスCD16及びTexas Red標識マウス4-1BBにそれぞれ選択的に結合したことを確認した。更なるインビトロ結合アッセイ及び共焦点レーザ顕微鏡法(confocal laser scanning microscopy、CLSM)研究により、4つの異なるFITC標識した多価α-CD16NP及び/又はα-4-1BB NP全てがNK細胞に選択的に結合したことを確認した(図5A図5B)。異なるα-EGFR官能化したNPの、EGFRが過剰発現したHT29(大腸腺がん)細胞、MB468(トリプルネガティブ乳がん)細胞、及びA431(扁平上皮腫)細胞に対する結合親和性を、インビトロ結合アッセイ(図5C)及びCLSMにより検証した。コントロールEGFR非発現Raji細胞では、非特異的結合は観察されなかった(図5D)。インビトロCLSM研究により、3つのEGFRが過剰発現したがん細胞全てが、EGFR標的化NPと短時間インキュベーションした後に封入EPIを取り込んだことを確認した。標的化EPI封入NPは、HT29細胞、MB468細胞、及びA431細胞に対して直接的な抗がん活性を示し、50%阻害濃度(half-maximal inhibitory concentration、IC50)は4~6μMであった(図5E)。一方同じ濃度の非標的化EPI NP又はNPアンカー抗体はわずかに毒性を示した。γ-H2AXアッセイ(図5F)により、細胞由来DNAへのEPIのインターカレーションの結果としての、がん細胞におけるDNA二本鎖切断の形成を確認した。
【0107】
α-CD16及びα-4-1BB官能化したナノ粒子は、インビトロでNK細胞を効果的に活性化可能である:この研究の1つの目的は、α-CD16及びα-4-1BBのNP製剤は、遊離α-CD16及びα-4-1BB抗体よりもNK活性化について効果的であることを示すことであった。NK細胞上のCD16及び4-1BB刺激分子の有効な空間時間的活性化は、NK細胞介在特異的溶解を増大させ得ることを実証するため、ルシフェラーゼ標識B16F10(B16F10-Luc)標的細胞の存在下でNK細胞細胞傷害性アッセイを実施した。NK細胞単独では、NK細胞ががん細胞を認識/がん細胞に結合せず、活性化しなかったため、1:1のエフェクター細胞/標的細胞(E/T)比率(図6A図6B)でB16F10-Luc細胞に対する直接的細胞傷害性は限定されている(約10%)ことを示した。がん細胞の認識又は結合を可能とするため、腫瘍細胞に所与の5Gyの放射線照射(IR)を行い、B16F10-Luc細胞の表面上にNK細胞活性化リガンド(例えば、CD112、ULBP-1)を上方制御させた。こうした免疫刺激時には、NK細胞はB16F10-Luc細胞に対して中程度の細胞傷害性を示した(図6A)。遊離α-CD16又はα-4-1BBでNK細胞を前処理することで、細胞傷害性はそれぞれ44.4±2.6%及び38.0±3.7%に有意に増加した(図6A及び図6C)。α-CD16 NP及びα-4-1-BB NPで前処理したNK細胞は、遊離抗体で前処理したNK細胞よりも有意に高い毒性を示した(それぞれ、52.7±1.9%及び57.9±3.5%)。こうした細胞傷害性の増加は、NPによるCD16及び4-1BBの共刺激分子の協同的結合及びより効果的なライゲーション(「クラスター形成」)の増加により説明され得る。最も重要なのは、両方のNK活性化剤(α-CD16/α-4-1BB NP)を含むNPの前処理により、NK細胞の細胞傷害性は77.1±2.1%に更に増加した。これは、遊離α-CD16+遊離α-4-1BBを用いた前処理(処理に対してp=0.0019)及びα-CD16 NP+α-4-1BB NPを用いた前処理(p=0.0207)よりも有意に高い。細胞傷害性の増加は、両方の遊離アゴニスト抗体を組み合わせることでは達成し得ない、二重抗体で官能化されたNPにおける両方の刺激分子の同時活性化及びクラスター形成効果により説明され得る。α-CD16/α-4-1BB NP前処理されたNK細胞と免疫刺激したB16F10細胞との会合を、位相感応型光学顕微鏡法により直接確認した(図6D)。
【0108】
次に、EGFR標的化トリ官能化ナノエンゲージャが、ホタルルシフェラーゼ発現HT29細胞(HT29-Luc2)に対するNK細胞細胞傷害性をどのように改善するかを調査した。B16F10-Luc細胞と同様に、NK細胞単独では、HT29-Luc2細胞に対して非常に低い細胞傷害性を示した(図6F、上部パネル)。同様に、遊離α-EGFR又はα-EGFR NPの存在下で、遊離α-CD16及び遊離α-4-1BB又はα-CD16 NP及びα-4-1BB NPで前処理したHT29-Luc2細胞は、標的リガンドがNK活性化剤と会合しなかったため、NK細胞細胞傷害性に有意に影響することはなかった。一方、薬物非含有及びEPI封入トリ官能化ナノエンゲージャ(α-EGFR NP/α-CD16 NP/α-4-1BB NP)の両方は、NK細胞細胞傷害性を有意に増加させた(図6E及び図6F、下部パネル)。治療有効性におけるこうした増加は、α-EGFRの標的化効果及びNK活性化剤へのその結合に起因する。この研究では、EPIはNK細胞細胞傷害性を有意に増加させなかった(図6E)。更なるインビトロ毒性研究により、治療用量以下の薬物非含有又はEPI封入三価ナノエンゲージャは、HT29細胞、MB469細胞及びA431細胞に対するNK細胞の細胞傷害性を有意に増強させ得ることを確認した(図6G及び図6H)。遊離α-EGFR、α-CD16及びα-4-1BB抗体を組み合わせることでは、NK細胞細胞傷害性の増強を達成することはできなかった。位相感応型光学顕微鏡研究により、α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NPで前処理したがん細胞へのNK細胞の会合を確認したが、α-CD16/α-4-1BB NP及びα-EGFR NPで前処理したがん細胞においては有意なNK細胞の会合は確認されなかった。したがって、コンジュゲートα-EGFRは、NK細胞を動員及び活性化させるためには三価NPにとって不可欠である。
【0109】
CD16及び4-1BB刺激分子の空間時間的な同時活性化は、NK細胞を効果的に活性化させ、インビボでがんを根絶可能であるが、生物学的ターゲッティングを必要とする。4匹のがんのマウスモデルを使用し、インビトロ観察を検証した。α-CD16/α-4-1BB NPのインビボ有効性を試験するため、B16F10同一遺伝子マウスメラノーマモデルを利用した。免疫能力のあるC57BL/6マウスは、摂取5日後、8日後、10日後、12日後、15日後及び18日後に、α-CD20、α-NK1.1、α-CD4及びα-CD8(300μg/注射)をi.p.注射することにより、B細胞、NK細胞、CD4T細胞及びCD8T細胞の免疫細胞を除去した状態である。マウスIgG 2a(300μg/注射)をアイソタイプコントロールとして投与した。α-CD16/α-4-1BB NP(各抗体100μgを含有する)を、摂取6日後、7日後、及び8日後にi.v.投与した。100μgのα-CD16及び/又は100μgのα-4-1BB(遊離又はNPコンジュゲート)を含有した免疫療法薬を、摂取6日後、7日後、及び8日後に尾静脈に静脈内投与した。免疫刺激群におけるマウスの異種移植腫瘍は、免疫療法薬の投与4時間前に5Gyの放射線の単回照射に供され、がん細胞中のNK細胞活性化リガンドを上方制御した。α-CD16/α-4-BB NPは中程度の抗がん活性(平均腫瘍体積≒摂取19日後では未処置群よりも40%小さい;未処置群に対してp=0.0479)及び生存期間のわずかな延長(絶対増殖遅延(absolute growth delay、AGD))=+3日間;未処置群に対してはp=0.0156;図7A図8A及び図8B)。更には、遊離抗体、抗体で官能化されたNP、又はそれらの1:1の組合せでの処置は、有意な抗がん活性を示さなかった(図7B及び図8B)。こうした有効性の欠如は、腫瘍細胞に対するNK細胞の認識/この細胞への結合の欠如と一致する。α-CD16/α-4-BB NPの効果は、動物の系全体を通したNK細胞の非特異的活性化により促進される可能性が高い。ただし、こうした系の活性化は、毒性といった観点から望ましくない。
【0110】
腫瘍細胞のNK認識/標的化を可能とするため、腫瘍に5Gy放射線照射した。放射線照射に続き、マウスをα-CD16/α-4-BB NPで処置し、α-CD16、α-4-BB、α-CD16 NP、α-4-BB NP、若しくはそれらの1:1の組合せでコントロールを処置した。放射線療法のみを受けたマウスと比較した場合、約60%の腫瘍増殖の低減を伴う、α-CD16/α-4-BB NPによるロバストな処置応答(摂取19日後)を観察した(図7B及び図8B図8C)。α-CD16 NPとα-4-1BB NPとの組合せもまた腫瘍増殖を抑制したが、抑制はα-CD16/α-4-1BB NPよりも有意ではなかった。他の処置は、コントロールと比較した場合に腫瘍増殖を有意に遅延させなかった。これらの発見は、効果的なNK活性化及び腫瘍の標的化/結合の両方は、NK細胞介在がん処置において全てが不可欠の機構であることを示唆している。
【0111】
CD16及び4-1BBは、同一遺伝子モデルにおいても適応免疫系を活性化させることが可能であるため、B16F10腫瘍モデルにおいて免疫細胞除去実験を実施し、処置効果がNK細胞活性化に起因すると検証した。CD20B細胞、CD4T細胞及びCD8T細胞の除去は、α-CD16/α-4-1BB NPの抗がん有効性に有意に影響しなかった(アイソタイプコントロール群に対し、それぞれ、p=0.4448、0.5590及び0.4859;図7C及び図8D)。一方で、α-NK1.1によるNK細胞の除去により、α-CD16/α-4-1BB NPの抗がん有効性は有意に低減した(アイソタイプコントロール群に対してp<0.0001)。T細胞欠損胸腺欠損ヌード(Nu)マウスのB16F10異種移植腫瘍モデルでもこれらの治療薬もまた試験した。これらのマウスは適応免疫系を欠損しており、α-CD16/α-4-1BB NP(放射線療法により標的化される)は効果的な処置であった(図8E)。これらのNPの作用機序は自然免疫系によるものであることが更に確認された。
【0112】
EGFR標的化トリ官能化ナノエンゲージャは、インビボにおけるEGFRが過剰発現したがん増殖を効果的に抑制する:全身性疾患を標的化するために放射線療法を利用することができない場合、この研究は標的リガンドにより腫瘍細胞を標的化することができるナノエンゲージャを操作することを目的としていた。原理証明を実証するため、EGFRターゲッティングを選択した。EGFR標的化三価ナノエンゲージャにより、更なる外部免疫刺激なしに効果的なNK細胞介在免疫療法及び化学免疫療法が可能となることを実証するため、包括的なインビボ抗がん有効性研究をEGFRが過剰発現したA431腫瘍モデルで実施した(図9A)。この研究は、EGFRターゲッティングのみでは効果的な処置を与えないことを示し、α-EGFR処置はコントロールと比較した場合、最小限の効果を示した(未処置群に対してp=0.6127、図9B及び図10A)。遊離α-EGFR及びα-CD16/α-4-1BB NP又はα-EGFR NP及びα-CD16/α-4-1BB NPによる処置は、腫瘍増殖において中程度の遅延をもたらした(未処置群に対し、それぞれp=0.0046及びp=0.0061)。α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NPによる処置は、未処置群と比較すると、初期処置の平均24日間で腫瘍増殖遅延を伴う最もロバストな処置応答、及び平均18日間の生存期間の延長を有した(p=0.0018)。このデータは、EGFR標的化ナノエンゲージャが、外部刺激の必要なしにEGFRが過剰発現した腫瘍細胞を攻撃するようにNK細胞を効果的に誘導可能であることを確認した。
【0113】
NPもまた化学療法薬を送達可能であり、化学免疫療法が可能となるため、化学療法ペイロードを有するEGFR標的化ナノエンゲージャの使用を試験した。EPIをモデル薬物として使用した。遊離EPI、α-EGFR EPI NP、α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB EPI NP、α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP及び遊離EPI、並びにα-CD16/α-4-1BB NP及びα-EGFR EPI NPの抗がん活性を比較した。遊離EPI及びα-EGFR EPI NPを用いた処置は、腫瘍増殖速度をわずかに低下させた(未処置群に対してそれぞれp=0.0017及びp=0.0061、図9B及び図10A)。α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP及び遊離EPIを別々に投与した化学免疫療法は、α-CD16/α-4-1BB/α-EGFR NP単独と比較した場合、有効性を有意に改善させることはなかった(p=0.8531;図9B及び10B)。ただし、α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB EPI NPによるEGFR標的化化学免疫療法は、約40日間にわたり腫瘍増殖を効果的に抑制し、生存期間を有意に延長させた(α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP及び遊離EPIによる未処置群及び処置に対して、それぞれp=0.0017及びp=0.0362)。研究のエンドポイント(摂取75日後)にて、α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB EPI NPで処置したマウスの半数は生存していたが、他の処置群のマウスはいずれも長期の生存を達成しなかった。この結果は、効果的な標的化化学免疫療法は、化学療法薬及びアゴニスト抗体が同時にがんに到達する場合にのみ達成され得ることを強調している。
【0114】
これらの発見を確認するため、MB468腫瘍モデルにおいてインビボ有効性研究を行い、薬物非含有ナノエンゲージャ及びEPI封入ナノエンゲージャの両方の抗がん効果を検証した(図9A)。A431腫瘍モデルで観察された抗がん活性と同様に、薬物非含有α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NPでの処置は腫瘍増殖を有意に遅らせ(未処置群に対してp=0.0002)、かつ60%の腫瘍増殖抑制率(TGI)をもたらした(図9C及び図10C)。α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB EPI NPによる化学免疫療法は、MB468腫瘍に対してロバストな抗がん活性を示し、研究のエンドポイント(TGI=84%)にて処置されたマウスの83%が病勢の安定を有した(すなわち、腫瘍体積において25%未満の増加)。一方、α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP+遊離EPI、又はα-EGFR EPI NP+α-CD16/α-4-1BB NPによる処置は、腫瘍増殖速度を遅らせたのみであり、64%及び49%のTGIをそれぞれもたらした(α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB EPI NPによる処置に対してp<0.0001;図9C及び図10D)。これは、化学療法薬をEGFR標的化ナノエンゲージャ中へと封入することで、標的化同時化学免疫療法の有効性を増強させることを示している。
【0115】
NK細胞に基づく処置における腫瘍ターゲッティングの重要性を更に検証するため、EGFR発現HT29細胞及びEGFR陰性Raji腫瘍を有する二重異種移植腫瘍モデルを使用してナノエンゲージャを試験した(図9D)。多剤耐性タンパク質1受容体の過剰発現を前提として、EGFR陰性Raji腫瘍モデルはNK細胞介在溶解に対し感受性であり、小分子アントラサイクリン処置に対して非感受性であるため、これを陰性コントロールとして選択した。A431腫瘍モデル及びMB468腫瘍モデルと同様に、遊離α-CD16及びα-4-1BB、α-CD16/α-4-1BB NP、並びにα-CD16/α-4-1BB NP+遊離α-EGFRでの処置は、NK細胞が腫瘍を認識しなかったため、HT29腫瘍の増殖を抑制せず(未処置群に対してp=0.1171)、かつRaji腫瘍の増殖を抑制しなかった(未処置群に対してp=0.1171;図9D及び図10E)。一方、α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NPによるEGFR標的化免疫療法は、HT29腫瘍増殖を有意に遅延させ、研究のエンドポイントにおいて66%のTGIをもたらした(未処置群に対してp=0.0081;図9D及び図10F)。ただし、この処置はRaji腫瘍増殖に有意には影響しなかった(未処置群に対してp=0.2805;図9D及び図10E)。この研究からのデータは、生物学的ターゲッティングがNK介在免疫療法にとって重要であり、EGFR標的化ナノエンゲージャがEGFR発現腫瘍に非常に有効であり、かつこれに特異的であることをはっきりと確証している。A431腫瘍モデル及びMB468腫瘍モデルで観察された抗がん活性と同様に、遊離EPI+α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NPによる同時処置は、HT29腫瘍の処置効果を更に改善させなかった(α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NPによる処置に対してp=0.2014;図9D及び図10E)。反対に、α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB EPI NPによる処置はHT29腫瘍増殖を完全に抑制し、84%の平均TGIをもたらした(未処置群に対するp=0.0113、α-CD16/α-4-1BB/α-EGFR NP+遊離EPIによる処置に対するp=0.0276)。HT29腫瘍に対し改善された抗がん活性は、EGFRが過剰発現した腫瘍に対するEPIの標的化送達により説明され得る。この標的化処置は、Raji腫瘍増殖に影響しなかった(未処置群に対してp=0.0503)。HT29はA431及びMB468より低いEGFR抗原発現を有するが、全処置群においてEGFR陰性Raji腫瘍で観察された有効性の欠如は、観察された抗腫瘍活性が自然免疫系の全身活性化ではなく、標的化がん細胞とNK細胞との特異的な会合に関係することを確認した。
【0116】
NK細胞介在化学免疫療法に関するEGFR標的化トリ官能化ナノエンゲージャへの機構的洞察:トリ官能化ナノエンゲージャの機能の機構へと洞察を加えるため、A431腫瘍モデルを使用し、相関研究を行った。エクスビボ近赤外蛍光イメージング法による体内分布研究は、α-EGFRと同時投与された場合、腫瘍がわずかな量(0.2%ID/g未満)のCy5標識α-CD16/α-4-1BB NPを取り込んだことを示した(図10F及び図11A)。一方、投与された約5.7±1.3%ID/gのCy5標識α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NPは腫瘍内に蓄積した。これはCy5標識α-EGFR NP+Cy5-標識α-CD16/α-4-1BB NPの量よりも約3倍(p=0.0251)高かった。EGFR標的化三価NPの腫瘍取込みの増加は、循環NK細胞と腫瘍細胞との会合を促進させ、腫瘍浸潤NK1.1NK細胞の数を約17倍に増加させた(図11B)。ただし、病理組織学的研究で示されるように、有意なDNA損傷は観察されなかった(図11C)。NP同時固定されたα-CD16及びα-4-1BBもまたNK細胞を効果的に活性化させるため、血清サイトカインレベル(例えば、TNF-α、INF-γ)は三価ナノエンゲージャによる処置後に有意に増加した(図11D)。特に、これらの増強はEGFR標的化ナノエンゲージャにより処置されたマウスでのみ観察することが可能であるが、α-EGFR NPとα-CD16/α-4-1BB NPとの組合せではこれは観察されなかった(図11A)。これは、α-CD16/α-4-1BB NPによるNK細胞活性化はNK細胞による腫瘍細胞認識を促進させず、それゆえに無効な免疫活性化をもたらしたことが理由である。化学免疫療法群で同様の体内分布傾向を観察した(図11A及び図11E)。α-EGFRで官能化された全てのEPI封入NPは、遊離EPI(≒3%ID/g)と比較すると、有意に高いEPI取込み(8.5~10%ID/g)を有する。EPI取込みの増加は、病理組織学的研究で観察されるように、より高いγ-H2AX発現(DNA損傷によりもたらされる)と一致している(図11C)。α-EGFR/α-CD16/α-4-1BB EPI NPの投与もα-EGFR/α-CD16/α-4-1BB NP+遊離EPIの投与のどちらも血清サイトカインレベルには影響しなかった。これは同時EPI処置がNK細胞抗腫瘍活性に影響しなかったことを示唆している(図11D)。この包括的な機構的研究は、テーラーメイドEPI封入ナノエンゲージャが細胞傷害性化学療法薬をがん細胞に効果的に送達可能であり、NK細胞が腫瘍細胞を攻撃するのを促進させることを確認した。
【0117】
この研究は、化学療法薬を同時標的化送達し、かつがんを根絶するために宿主の自然免疫系を活性化させるための、翻訳可能なマルチモーダルがん処置プラットフォームを提供する。これは、本発明のEGFR標的化三価ナノエンゲージャが、腫瘍細胞に治療用量の細胞傷害性化学療法薬を同時送達しながらも、腫瘍細胞を攻撃するためにNK細胞を動員かつ活性化可能であることを実証した。包括的インビトロ研究及びインビボ研究は、この合成致死性が従来的な化学免疫療法戦略では達成不可能であることを実証した。このデータは、ロバストなNK活性化及び生物学的ターゲッティングの両方がNK細胞介在がん処置では重要であり、NPに基づく処置はこの用途に唯一適していることを実証した。生物学的ターゲッティングの必要性はまた、本アプローチでは全身的/非特異的毒性が低いことを示唆している。ナノエンゲージャの単純なモジュール設計により、化学療法薬の容易な交換が可能となり、異なるタイプのがんを処置するための部分を標的とし、様々なタイプの免疫細胞に会合する。ナノエンゲージャプラットフォームの開発は、現在利用可能な併用免疫療法戦略を改善させることができる。
【0118】
前述の内容は本発明の実例となるものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。本発明は以下の特許請求の範囲により定義され、特許請求の範囲と同等物はその中に含まれる。
【0119】
【表1-1】
【表1-2】

【表1-3】

図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3-1】
図3-2】
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E-1】
図8E-2】
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A-1】
図10A-2】
図10B
図10C-1】
図10C-2】
図10D
図10E-1】
図10E-2】
図10F
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
【国際調査報告】