(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-03
(54)【発明の名称】小胞体内のグルタチオン測定用リアルタイム蛍光イメージングセンサおよびこれを用いる方法
(51)【国際特許分類】
C07D 491/16 20060101AFI20230224BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230224BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20230224BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20230224BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20230224BHJP
C12Q 1/26 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
C07D491/16 CSP
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
G01N21/64 F
C12Q1/06
C12Q1/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534427
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(85)【翻訳文提出日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 KR2020018859
(87)【国際公開番号】W WO2021137500
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0178260
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522225583
【氏名又は名称】セル2イン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン、フン ソ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒェ ミ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、グァン モ
(72)【発明者】
【氏名】キム、イェジ
(72)【発明者】
【氏名】シン、チ ウン
(72)【発明者】
【氏名】カン、ヒェ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン ファン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、キ ハン
(72)【発明者】
【氏名】ミン、ス-ヒョン
【テーマコード(参考)】
2G043
2G045
4B063
4C050
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA16
2G043DA02
2G043EA01
2G043FA02
2G043LA03
2G043NA01
2G045AA40
4B063QA01
4B063QA18
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4C050AA02
4C050AA08
4C050BB07
4C050CC07
4C050DD08
4C050EE01
4C050FF02
4C050GG03
4C050HH04
(57)【要約】
本発明は、小胞体(ER)内のグルタチオン測定用リアルタイム蛍光イメージングセンサおよびその製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、小胞体(ER)内のグルタチオン測定用測定用新規化合物、新規化合物の製造方法、前記新規化合物を含む小胞体(ER)内のグルタチオン測定用リアルタイムイメージングセンサ、その製造方法および前記イメージングセンサを用いた小胞体(ER)内のグルタチオンの測定方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式Iで表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩:
【化1】
前記化学式Iにおいて、R
1は、1つ以上のNを含む3-7員環であるヘテロシクロアルキルであり、前記ヘテロシクロアルキルは、R
2置換基が結合しており;前記R
2は、アミド基である。
【請求項2】
前記R
2は、-(C(=O)NH)-R
3であり;
前記R
3は、-(CH
2)
m-R
4、-(CH
2)
m-R
5、-(CH
2)
n-(CH
2OCH
2)
p-(CH
2)
q-R
4、または-(CH
2)
n-(CH
2OCH
2)
p-(CH
2)
q-R
5であり;
ここで、前記mは、1-6の整数であり、前記n、pおよびqは、それぞれ独立して、1-4の整数であり;
前記R
4は、下記化学式IIで表される置換基であり;
前記R
5は、下記化学式IIIで表される置換基である、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【化2】
【化3】
【請求項3】
前記化学式Iで表される化合物は、下記化学式IV~VIIのいずれか1つで表されるものである、請求項2に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【請求項4】
前記化学式Iで表される化合物は、フリー(free)状態で550~680nmで最大放出波長を示し、チオールと結合した状態で430~550nmで最大放出波長を示すものである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
前記放出波長の蛍光強度は、430nm~680nmの範囲で増減するものである、請求項4に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む生細胞(living cell)における抗酸化能測定用組成物。
【請求項7】
前記抗酸化能の測定は、生細胞におけるチオールレベルの測定である、請求項6に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項8】
前記チオールレベルの測定は、生細胞の細胞小器官におけるチオールレベルの測定である、請求項7に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項9】
前記細胞小器官は、小胞体(ER)である、請求項8に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項10】
前記小胞体(ER)における抗酸化能の測定は、化学式IV~VIIのいずれか1つの化合物を用いるものである、請求項9に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項11】
前記チオールレベルの測定にあたり、チオールが増加するにつれ、550~680nmでの蛍光強度が減少し、430~550nmでの蛍光強度は増加するものである、請求項7に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項12】
前記チオールレベルの測定は、430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の比率(ratio)を得て(obtaining)実施するものである、請求項7に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項13】
前記比率は、前記430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の関係(relationship)である、請求項12に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項14】
前記関係は、前記430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の数学的比率関係であり、前記数学的比率関係は、小胞体(ER)におけるチオールの量に応じて比率計量的(ratiometrically)かつ可逆的に増減して、細胞内小器官におけるチオールの量をリアルタイムに示すものである、請求項13に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項15】
前記チオールレベルの測定は、小胞体(ER)内のチオールの定性または定量的検出である、請求項7に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項16】
前記チオールレベルの測定は、リアルタイム定量的測定である、請求項7に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項17】
前記チオールレベルの測定は、細胞の酸化的ストレスまたは酸化度を示すものである、請求項7に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項18】
前記チオールレベルの測定は、細胞の老化度を示すものである、請求項7に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項19】
前記チオールは、グルタチオン(glutathione、GSH)、ホモシステイン(homocysteine、Hcy)、システイン(cysteine、Cys)またはタンパク質のシステイン残基にあるチオールである、請求項7に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項20】
以下のステップを含む生細胞内のチオール増加剤または抑制剤のスクリーニング方法:
(a)請求項6に記載の組成物および候補物質を同時にまたは順序に関係なく順次に生細胞に投与するステップと、
(b)430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の比率(ratio)を得て標準データと比較するステップと、
(c)前記試験物質をチオール増加剤または抑制剤として決定するステップと、
(d)430~550nmでの蛍光強度の、550~680nmでの蛍光強度に対する比率が減少する場合、チオール抑制剤として決定し、蛍光強度の比率が増加する場合、チオール増加剤として決定するステップ。
【請求項21】
前記(d)ステップは、510nmでの蛍光強度の、580nmでの蛍光強度に対する比率(510/580ratio)が減少する場合、チオール抑制剤として決定し、510nmでの蛍光強度の、580nmでの蛍光強度に対する比率(510/580ratio)が増加する場合、チオール増加剤として決定するものである、請求項20に記載の生細胞内のチオール増加剤または抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項22】
前記蛍光比率の測定は、小胞体(ER)に対して測定するものである、請求項20に記載の生細胞内のチオール増加剤または抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項23】
請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含む酸化ストレス誘発疾患診断キット。
【請求項24】
以下のステップを含む生細胞における抗酸化能の測定方法:
(a)生細胞における430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の比率(ratio)をリアルタイムに測定するステップと、
(b)請求項6に記載の組成物を生細胞に投与するステップと、
(c)酸化剤をステップ(b)の細胞に投与するステップと、
(d)前記蛍光強度の比率値の変化を観察するステップ。
【請求項25】
前記(a)ステップは、510nmでの蛍光強度の、580nmでの蛍光強度に対する比率(510/580ratio)をリアルタイムに測定するものである、請求項24に記載の生細胞における抗酸化能の測定方法。
【請求項26】
前記抗酸化能の測定方法は、前記ステップ(d)の後、前記蛍光強度の比率値が前記酸化剤を投与しない生細胞の蛍光強度の比率値または前記酸化剤を投与する前の蛍光強度の比率値に回復する時間を測定するステップを追加的に含み、前記時間が短いほど、抗酸化能が高いと判断するものである、請求項24に記載の生細胞における抗酸化能の測定方法。
【請求項27】
前記抗酸化能の測定方法は、前記ステップ(d)の後、前記酸化剤を投与しない生細胞の蛍光強度の比率値と前記酸化剤を投与した生細胞の蛍光強度の比率値との差の酸化剤投与時点から、前記酸化剤を投与する前の蛍光強度の比率値に回復する時点までの積分値を測定するステップを追加的に含み、前記積分値が小さいほど、抗酸化能が高いと判断するものである、請求項24に記載の生細胞における抗酸化能の測定方法。
【請求項28】
前記抗酸化能の測定方法は、前記ステップ(d)の後、前記酸化剤を投与した生細胞の蛍光強度の比率値が減少し始める前記酸化剤の最小濃度を滴定するステップを追加的に含み、前記最小濃度が高いほど、抗酸化能が高いと判断するものである、請求項24に記載の生細胞における抗酸化能の測定方法。
【請求項29】
前記測定方法は、生細胞内の小器官である小胞体(ER)に対して測定するものである、請求項24に記載の生細胞における抗酸化能の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小胞体(ER)内のグルタチオン測定用リアルタイム蛍光イメージングセンサおよびこれを用いる方法に関する。より詳しくは、本発明は、小胞体(ER)内のグルタチオン測定用新規化合物および前記新規化合物を用いた小胞体(ER)内のグルタチオンの測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体は抗酸化系の作用により活性酸素種を適切に除去して恒常性を維持するが、ROSの生成と抗酸化系の作用との間のバランスが崩れると、酸化的ストレス(oxidative stress)が増加し、これは、老化をはじめとして退行性関節炎、白内障、アルツハイマーなどの老化関連の退行性疾患、各種癌、線維化疾患をはじめとして、最近は、糖尿病、肥満、心血管疾患などの代謝性症侯群の発病に重要な共通の原因因子として注目されている。前記ROSは、不安定で反応性が高く、生体分子を酸化させて生化学的、生理的損傷を誘発させ、これは老化の主要機序の一つである。したがって、人体の酸化度のみならず、抗酸化度や抗酸化能力は生体年齢の計測における主たるバイオマーカーになり得る。
【0003】
一方、中間葉幹細胞(mesenchymal stem cells)は、骨髄、臍帯血、胎盤(または胎盤組織細胞)、脂肪(または脂肪組織細胞)などの多様な成体細胞に由来する多分化性の性質を有する幹細胞である。例えば、骨髄(bone marrow)に由来する中間葉幹細胞は、脂肪組織、骨/軟骨組織、筋肉組織に分化できる多分化性によって細胞治療剤としての開発のために多様な研究が進められている。
【0004】
しかし、細胞治療剤の主要成分である幹細胞は、分離後、培養過程で多分化能、組織再生能を失い老化しやすく、治療的有効量に相当する大量の細胞を得るために複数の継代を経る間、このような危険性はさらに大きくなる。また、組織から得られる幹細胞は非常に少ない量であり、これを用いる時には大量の細胞が必要なため、幹細胞の数を増殖させる培養が行われる。最近は、幹細胞の品質に関連して幹細胞の抗酸化活性を測定し、これによって品質を管理する方法として、細胞内抗酸化活性を測定する方法が開示されている。
【0005】
しかし、幹細胞の抗酸化活性の測定により高い活性を備えた高品質の幹細胞の選別方法に関する研究は不十分であるのが現状である。したがって、希少価値が高い細胞治療剤資源である幹細胞の使用効率性を高めるために、高活性の幹細胞の選別に必要な抗酸化能測定用組成物の開発が必要なのが現状である。
【0006】
また、前記のように幹細胞を含む細胞の抗酸化能の測定にあたり、生体試料からチオールを含有する物質の検出および識別は非常に重要である。これにより、細胞を破砕せずに生細胞(living cell)におけるチオールを効果的に検出する蛍光方法が開発されているが、小胞体内の多様なソースのチオール測定による抗酸化能測定物質が必要なのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、本発明による新規なER-FT(Endoplasmic Reticulum Fluorescent Real-time SH group-Tracer)を用いて小胞体(Endoplasmic Reticulum;ER)内のチオールの量に応じて蛍光強度が連続的かつ比率計量的であり、可逆的に増減することを究明し、生きている細胞内小胞体(ER)におけるチオールの量をリアルタイムに定量または定性的に検出するのに著しい敏感性を有するバイオセンサとして有用に利用できることを確認することにより、本発明を完成した。
【0008】
したがって、本発明の目的は、化学式IV~VIIで表されるER-FT(Endoplasmic Reticulum Fluorescent Real-time SH group-Tracer)を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、ER-FT(Endoplasmic Reticulum Fluorescent Real-time SH group-Tracer)を含む小胞体(ER)のチオール検出用組成物を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、ER-FTを用いた生細胞内の小胞体(ER)のチオール増加剤または抑制剤のスクリーニング方法を提供することである。
【0011】
本発明の目的および利点は下記の発明の詳細な説明および特許請求の範囲によってより明確になる。
【0012】
しかし、本発明が達成しようとする技術的課題は以上に言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は以下の記載から当業界における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、本願に記載された多様な具体例が図面を参照して記載される。下記の説明において、本発明の完全な理解のために、多様な特異的詳細事項、例えば、特異的形態、組成物および工程などが記載されている。しかし、特定の具体例はこれらの特異的詳細事項の1つ以上なしに、または他の公知の方法および形態とともに実行できる。他の例において、公知の工程および製造技術は本発明を不必要にあいまいにさせないために、特定の詳細事項として記載されない。「一つの具体例」または「具体例」に対する本明細書全体にわたる参照は具体例と結びついて記載された特別な特徴、形態、組成または特性が本発明の一つ以上の具体例に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる多様な位置で表現された「一つの具体例において」または「具体例」の状況は、必ずしも本発明の同一の具体例を示さない。追加的に、特別な特徴、形態、組成または特性は、1つ以上の具体例において、いかなる好適な方法で組み合わされてもよい。
【0014】
本明細書内に特別な定義がなければ、本明細書に使われたすべての科学的および技術的な用語は、本発明の属する技術分野における当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。
【0015】
本明細書において、用語「比率計量的(ratiometric)」は、算出量が投入量(input)に直接的に比例することを意味する。具体的には、本発明の一実施形態において、「比率計量的」は、本発明の組成物がチオールの投入量に応じて直接的に比例して蛍光強度が増加または減少することを意味する。
【0016】
本明細書において、用語「検出」は、試料中にて化学種や生物学的物質の存在の有無やその量を測定することを意味する。
【0017】
本明細書において、用語「可逆的(reversible)」は、化学反応で反応物と生成物との混合物が平衡状態の混合物を生成することが可能な状態を意味する。より具体的には、本明細書において、化学式Iで表される化合物とチオールとの反応が平衡状態をなして、チオールの量に応じて正反応または逆反応して可逆的に反応が進行できることを意味する。
【0018】
本明細書において、用語「チオール(thiol)」は、炭素と結合したスルフヒドリル基を含む有機化合物を意味し、スルフヒドリル基またはチオール基は混用されて使用される。
【0019】
本発明において、用語、「細胞」は、生物体を構成する構造的または機能的単位を意味するものであって、本発明の目的上、細胞の老化が進行する細胞を制限なく含むことができる。
【0020】
本明細書において、用語、「細胞の老化」は、細胞の形質および機能退化を意味し、それに続く細胞死または増殖停止が起こるまでの一連の過程を含む。前記形質および機能退化は不可逆的なものであってもよい。また、細胞の老化はこれに限定しないが、標準細胞または標準個体に比べて細胞の増殖能の減少、多分化能および組織再生能の喪失、リポフスチン(lipofuscin)蓄積、β-ガラクトシダーゼの活性増加、ミトコンドリアの活性酸素増加、またはこれらの組み合わせを含むか、それを引き起こす過程を示すことができる。細胞または個体の老化は自食作用(autophagy)の活性減少またはミトコンドリア膜電位の減少を含むか、これらを引き起こす過程をさらに含むことができる。若い(young)細胞または個体は、標準細胞または個体に比べて細胞の増殖能の増加、リポフスチンの蓄積減少、β-ガラクトシダーゼの活性減少、またはこれらの組み合わせを含むことを示すことができる。例えば、老化細胞は、継代数2の分裂時間(doubling time)に比べて、分裂時間が2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、9倍以上、10倍以上、50倍以上、または100倍以上増加した場合、その細胞は老化細胞といえる。
【0021】
本発明において、前記細胞老化は、増殖性ストレスおよび/またはDNA損傷を誘発する内因性および外因性刺激の適用により試験管内および生体内ともにおいて細胞を能動的に分裂させる場合、早期に誘導される。このような刺激には、発癌遺伝子の異常発現および/または活性化、イオン化放射線露出による直接的なDNA損傷、活性酸素、化学療法薬物および細胞の継代培養による継代数の増加が含まれる。結果的に、細胞老化は、細胞のストレス反応、癌発生および治療結果および幹細胞の治療結果に積極的な影響を及ぼすことができる。
【0022】
本明細書において、用語「細胞の老化度」は、細胞の老化の程度を定量的または定性的に測定したことを意味することができる。
【0023】
本明細書において、用語「抗酸化能」とは、抗酸化剤が酸化を防止する能力で、脂肪を酸素のある密閉容器に入れて酸素消費率を測定することで簡単に測定することができる。しかし、有機体の生化学において抗酸化剤の抗酸化能の測定が重要になっている。
【0024】
本明細書において、前記「抗酸化剤」とは、抗酸化物質または酸化防止剤などと呼ばれ、酸化を防止する物質をあまねく示す言葉である。ここで、抗酸化は、酸化の抑制を意味する。細胞の老化過程とそれに対する予防を説明する時、主に登場する概念で、細胞の老化は、つまり細胞の酸化を意味する。呼吸して体に入ってきた酸素は体に良い作用をするが、この過程で活性酸素が作られる。過度の活性酸素が酸素を不安定な状態に露出させることを引き起こすが、これは動物の体に悪い影響を及ぼす。したがって、活性酸素を適切に維持することが、細胞の酸化、細胞の老化を防ぐものであってもよいが、これに限定されない。
【0025】
本発明の前記抗酸化剤としては、カロテノイド類(ベータカロチン、リコピン、ルテイン)、フラボノイド類(アントシアニン、カテキン、レスベラトロール、プロアントシアニジン)、イソフラボン類(ゲニステイン、ダイゼイン)、ビタミン類、ミネラル、グルタチオン、コエンザイムQ-10、カタラーゼ(catalase)、スーパーオキシドディスムターゼ(superoxide dismutase)、グルタチオン-依存性ペロキシダーゼ(glutathione-dependent peroxidase)およびペルオキシレドキシン(peroxiredoxin)などのような細胞の外部および内部の物質であってもよいが、これに限定されない。
【0026】
本明細書において、用語「酸化的ストレス」とは、生体(または細胞)内で発生する酸化物質とこれに対応する抗酸化剤との間のバランスが崩れて酸化比率(活性酸素の比率)が増加するにつれ、生体(または細胞)内の抗酸化力が低下しながら発生するストレスを意味し、用語「酸化的損傷」乃至「酸化度」は、このような酸化的ストレスによって誘発される生体または細胞内の各種損傷(遺伝子損傷、細胞の代謝異常など)を総称するために使用されるものであってもよいが、これに限定されない。
【0027】
本明細書において、特別な言及がない限り、酸化的損傷物質(または酸化的損傷誘発物質)と酸化的ストレス物質(または酸化的ストレス誘発物質)は、同等の意味で使われる。
【0028】
本発明は、酸化的ストレスを測定して酸化的ストレスを誘発する被検出物質または酸化的損傷物質の存在の有無、およびその濃度を測定することができる。
【0029】
本発明の一実施例によれば、本発明は、下記化学式Iで表される化合物またはその塩を含む小胞体(ER)におけるチオール検出用組成物を提供する:
【化1】
【0030】
前記化学式Iにおいて、R
1は、1つ以上のNを含む3-7員環であるヘテロシクロアルキルであり、前記ヘテロシクロアルキルは、R
2置換基が結合しており;前記R
2は、アミド基であり;前記R
2は、-(C(=O)NH)-R
3であり;前記R
3は、-(CH
2)
m-R
4、-(CH
2)
m-R
5、-(CH
2)
n-(CH
2OCH
2)
p-(CH
2)
q-R
4、または-(CH
2)
n-(CH
2OCH
2)
p-(CH
2)
q-R
5であってもよい。ここで、前記mは、1-6の整数であり、前記n、pおよびqは、それぞれ独立して、1-4の整数であり;前記R
4は、下記化学式IIで表される置換基であり;前記R
5は、下記化学式IIIで表される置換基である:
【化2】
【化3】
【0031】
本発明者らは、細胞内小胞体(ER)におけるチオールの量をリアルタイムに定量または定性的に検出するのに著しい敏感性を有するバイオセンサを開発するために、鋭意研究努力した。その結果、前記化学式Iで表される本発明のER-FT(Endoplasmic Reticulum Fluorescent Real-time SH group-Tracer)が細胞内小胞体(ER)におけるチオールの量に応じて蛍光強度が連続的かつ比率計量的であり、可逆的に増減するということを究明し、細胞内小胞体(ER)におけるチオールの量をリアルタイムに定量または定性的に検出するのに著しい敏感性を有するバイオセンサとして有用に利用できるということを立証した。
【0032】
本発明において、前記放出波長の蛍光強度は、430nm~680nmの範囲で増減できる。
【0033】
本明細書において、用語「Endoplasmic Reticulum Fluorescent Real-time SH group-Tracer(ER-FresH、ER-FT)」は、シアノアクリルアミド求電子体(cyanoacrylamide electrophile)を有するクマリン(coumarin)誘導体であって化学式Iで表される化合物を意味し、本発明における小胞体(ER)内のチオール検出用蛍光物質として使用される。
【0034】
本発明の一実施形態において、本発明の小胞体(ER)は、生細胞(living cell)内に含まれたものである。本発明の組成物は、小胞体(ER)内のチオールレベルを測定するにあたり、細胞から分離された小胞体(ER)に限らず、細胞内に含まれた状態の小胞体(ER)内のチオールレベルを測定できる特徴がある。特に、生きている細胞内小胞体(ER)におけるチオールレベルを特異的に検出することができる。
【0035】
本発明の一実施形態において、本発明のR1は、1または2個のNを含む6員環ヘテロシクロアルキルであり、前記ヘテロシクロアルキルは、R2置換基が結合しており、前記R2は、置換もしくは非置換のアミド基である。本発明において、「6員環ヘテロシクロアルキル」に含まれた用語「6員環」は、ビサイクリック化合物(bicyclic compound)またはスピロ化合物(Spiro compound)のように複数の環が接合された環化合物形態ではない、モノサイクリック化合物としての1つの6員環形態を意味し、「ヘテロシクロアルキル」は、非-芳香族性環状アルキルであって、環内に含まれた炭素原子の少なくとも1つがヘテロ原子、例えば、窒素、酸素または硫黄によって置換されているものを意味する。本実施形態において、R1は、6員環ヘテロシクロアルキルであって、1個または2個の窒素を環内に含まれたヘテロ原子として含む。
【0036】
本発明において、前記化学式Iで表される化合物は、下記化学式IV~VIIで表される化合物のいずれか1つ以上である:
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【0037】
本発明の前記化学式Iで表される化合物、好ましくは、前記化学式IV~VIIのいずれか1つで表される化合物は、生細胞内の小胞体(ER)におけるチオールの量が増加するにつれ、ER-FTに結合するチオールの量が増加できる。
【0038】
本発明において、前記化学式Iで表される化合物、好ましくは、前記化学式IV~VIIのいずれか1つで表される化合物は、フリー(free)状態で550~680nmで最大放出波長を示し、チオールと結合した状態で430~550nmで最大放出波長を示すものである、化学式Iで表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩であってもよい。
【0039】
本発明において、前記化学式Iで表される化合物、好ましくは、前記化学式IV~VIIのいずれか1つで表される化合物は、フリー状態で550~650、550~620、550~600、570~590または580nmで最大放出波長を示す。
【0040】
本発明において、前記化学式Iで表される化合物、好ましくは、前記化学式IV~VIIのいずれか1つで表される化合物は、チオールと結合した状態で450~550、470~550、470~530、490~530、500~520または510nmで最大放出波長を示す。
【0041】
本発明において、前記放出波長の蛍光強度は、430nm~680nmの範囲で増減するものである、化学式Iで表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩であってもよい。
【0042】
本発明の前記化学式Iで表される化合物、好ましくは、前記化学式IV~VIIのいずれか1つで表される化合物は、薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む生細胞(living cell)における抗酸化能測定用組成物であってもよい。
【0043】
本発明において、前記抗酸化能の測定は、生細胞におけるチオールレベルの測定であってもよく、前記チオールレベルの測定は、生細胞の細胞小器官におけるチオールレベルの測定であってもよいし、前記細胞小器官は、小胞体(ER)であってもよい。
【0044】
本発明において、前記チオールレベルの測定は、チオールが増加するにつれ、フリー状態の化合物が示す550~680nmの蛍光強度は減少し、チオールが結合している化合物が示す430~550nmの蛍光強度は増加するものであってもよい。
【0045】
本発明において、蛍光強度は、比率計量的であり、可逆的に増減できる。
【0046】
本発明において、前記チオールレベルの測定は、430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の比率(ratio)を得て(obtaining)実施するものであり、前記比率は、前記430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の関係(relationship)であってもよい。
【0047】
本発明において、前記関係は、前記430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の数学的比率関係であり、前記数学的比率関係は、小胞体(ER)におけるチオールの量に応じて比率計量的(ratiometrically)かつ可逆的に増減して、細胞内小器官におけるチオールの量をリアルタイムに示すものであってもよい。
【0048】
本発明において、前記チオールレベルの測定は、小胞体(ER)内のチオールの定性または定量的検出であってもよく、前記チオールレベルの測定は、リアルタイム定量的測定であってもよい。
【0049】
本発明において、前記チオールレベルの測定は、細胞の酸化的ストレスまたは酸化度を示すものであってもよく、前記チオールレベルの測定は、細胞の老化度を示すものであってもよい。
【0050】
本発明において、前記チオールは、グルタチオン(glutathione、GSH)、ホモシステイン(homocysteine、Hcy)、システイン(cysteine、Cys)またはタンパク質のシステイン残基にあるチオールであってもよい。
【0051】
本発明による化合物を含む組成物を用いて、幹細胞を含むすべての細胞の細胞内小器官である小胞体(ER)の抗酸化能を測定して、抗酸化能に関連する細胞の活性を正確に測定することができ、高活性の細胞分類が可能である。本発明の組成物を用いた細胞の活性の測定は、抗酸化能の測定を含むが、これに限定されるものではない。
【0052】
本発明において、前記化学式Iで表される化合物、好ましくは、前記化学式IV~VIIのいずれか1つで表される化合物は;そのラセミ体、光学異性体、部分立体異性体、光学異性体の混合物、または部分立体異性体の混合物;その薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む細胞内小器官の抗酸化能測定用組成物を提供することができる。
【0053】
本発明の他の実施形態によれば、(a)前記化学式Iで表される化合物、好ましくは、 前記化学式IV~VIIのいずれか1つで表される化合物を有効成分として含む組成物および候補物質を同時にまたは順序に関係なく順次に生細胞に投与するステップと、(b)430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の比率(ratio)を得て標準データと比較するステップと、(c)前記試験物質をチオール増加剤または抑制剤として決定するステップと、(d)430~550nmでの蛍光強度の、550~680nmでの蛍光強度に対するの比率が減少する場合、チオール抑制剤として決定し、蛍光強度の比率が増加する場合、チオール増加剤として決定するステップとを含む生細胞内のチオール増加剤または抑制剤のスクリーニング方法であってもよい。
【0054】
本発明において、前記(d)ステップは、510nmでの蛍光強度の、580nmでの蛍光強度に対する比率(510/580ratio)が減少する場合、チオール抑制剤として決定し、510nmでの蛍光強度の、580nmでの蛍光強度に対する比率(510/580ratio)が増加する場合、チオール増加剤として決定するものであってもよい。
【0055】
本発明において、前記蛍光比率の測定は、小胞体(ER)に対して測定するものであってもよい。
【0056】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明の組成物を含む酸化ストレス誘発疾患診断キットを提供する。本明細書の用語「酸化ストレス誘発疾患」は、酸化ストレスによって発生する疾患を意味し、「活性酸素種(ROS)関連疾患」と同じ意味で使われる。
【0057】
本発明において、前記酸化ストレス誘発疾患は、老化、退行性関節炎、白内障、アルツハイマー病、癌、線維化疾患、糖尿病、肥満、虚血、虚血性再灌流損傷、炎症、全身性紅斑狼瘡、心筋梗塞、血栓性脳卒中、出血性脳卒中、出血、脊髄外傷、ダウン症候群、クローン病、リウマチ関節炎、ぶどう膜炎、肺気腫、胃潰瘍、酸素中毒、腫瘍または放射線症であってもよいが、これに限定されるものではい。
【0058】
本発明において、「キット」は、チオールに特異的に結合する本発明の検出可能な化合物を標識として標識してチオールの発現レベルを評価できるツールをいう。検出可能な物質を基質との反応によって直接的に標識するだけでなく、直接的に標識された他の試薬との反応性による発色する標識体が接合された間接的標識も含む。前記標識体と発色反応する発色基質溶液、洗浄液およびその他の溶液などを含むことができ、使用される試薬成分を含んで作製される。本発明のキットは、当業界にて公知のものであれば、これに限定されない。
【0059】
本発明の前記キットは、分析方法に適した1種類またはそれ以上の他の構成成分組成物、溶液または装置をさらに含むことができ、蛍光物質(fluorescein)および色素(dye)などの標識体が使用できるが、これに限定されるものではい。
【0060】
本発明のさらに他の実施形態によれば、(a)生細胞における430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の比率(ratio)をリアルタイムに測定するステップと、(b)請求項6に記載の組成物を生細胞に投与するステップと、(c)酸化剤をステップ(b)の細胞に投与するステップと、(d)前記蛍光強度の比率値の変化を観察するステップとを含む生細胞における抗酸化能の測定方法であってもよい。
【0061】
本発明において、前記(a)ステップは、510nmでの蛍光強度の、580nmでの蛍光強度に対する比率(510/580ratio)をリアルタイムに測定するものであってもよい。
【0062】
本発明において、前記抗酸化能の測定方法は、前記ステップ(d)の後、前記蛍光強度の比率値が前記酸化剤を投与しない生細胞の蛍光強度の比率値または前記酸化剤を投与する前の蛍光強度の比率値に回復する時間を測定するステップを追加的に含み、前記時間が短いほど、抗酸化能が高いと判断するものであってもよい。
【0063】
本発明において、前記抗酸化能の測定方法は、前記ステップ(d)の後、前記酸化剤を投与しない生細胞の蛍光強度の比率値と前記酸化剤を投与した生細胞の蛍光強度の比率値との差の酸化剤投与時点から、前記酸化剤を投与する前の蛍光強度の比率値に回復する時点までの積分値を測定するステップを追加的に含み、前記積分値が小さいほど、抗酸化能が高いと判断するものであってもよい。
【0064】
本発明において、前記抗酸化能の測定方法は、前記ステップ(d)の後、前記酸化剤を投与した生細胞の蛍光強度の比率値が減少し始める前記酸化剤の最小濃度を滴定するステップを追加的に含み、前記最小濃度が高いほど、抗酸化能が高いと判断するものであってもよい。
【0065】
本発明において、前記測定方法は、生細胞内の小器官である小胞体(ER)に対して測定するものであってもよい。
【発明の効果】
【0066】
本発明による化合物を含む組成物を用いて生細胞(living cell)、特に幹細胞内小器官である小胞体(ER)の抗酸化能を測定することができ、小胞体(ER)の抗酸化能の測定結果によって高活性の幹細胞を選別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】化学式IVで表されるER-FTの構造を示す図である。
【
図2】化学式Vで表されるER-FTの構造を示す図である。
【
図3】化学式VIで表されるER-FTの構造を示す図である。
【
図4】化学式VIIで表されるER-FTの構造を示す図である。
【
図5】化学式IV~VIIで表されるER-FTがUC-MSCの細胞の小胞体で観察されたものを共焦点顕微鏡で撮影した図である。
【
図6】化学式IV~VIIで表されるER-FTのIC
50を示した毒性実験の結果である。
【
図7】化学式IV~VIで表されるER-FTのUC-MSCの保持時間に対して、510nm波長、580nm波長の強度、510nm、580nm波長の強度および両波長の強度比で測定した実験の結果である。
【
図8】化学式IV~VおよびVIで表されるER-FTのUC-MSCの保持時間に対して、510nm波長、580nm波長の強度、510nm、580nm波長の強度および両波長の強度比で測定した実験の結果である。
【
図9】化学式IVで表されるER-FT処理後、Diamideを追加してUC-MSCの細胞で観察されたものを共焦点顕微鏡で撮影した図である。
【
図10】化学式IVで表されるER-FT処理後、DiamideおよびDTTを追加してUC-MSCの細胞で観察されたものを共焦点顕微鏡で撮影した図である。
【
図11】化学式Vで表されるER-FT処理後、Diamideを追加してUC-MSCの細胞の小胞体で観察されたものを共焦点顕微鏡で撮影した図である。
【
図12】化学式Vで表されるER-FT処理後、DiamideおよびDTTを追加してUC-MSCの細胞の小胞体で観察されたものを共焦点顕微鏡で撮影した図である。
【
図13】化学式VIで表されるER-FT処理後、Diamideを追加してUC-MSCの小胞体で観察されたものを共焦点顕微鏡で撮影した図である。
【
図14】化学式VIで表されるER-FT処理後、DiamideおよびDTTを追加してUC-MSCの小胞体で観察されたものを共焦点顕微鏡で撮影した図である。
【
図15】化学式VIIで表されるER-FT処理後、Diamideを追加してUC-MSCの小胞体で観察されたものを共焦点顕微鏡で撮影した図である。
【
図16】化学式VIIで表されるER-FT処理後、DiamideおよびDTTを追加してUC-MSCの小胞体で観察されたものを共焦点顕微鏡で撮影した図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明の目的は、化学式IV~VIIで表されるER-FT(Endoplasmic Reticulum Fluorescent Real-time SH group-Tracer)を提供することである。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨により本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないことは当業界における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0070】
[製造例]小胞体(ER)の抗酸化能測定用化合物の合成
小胞体(ER)である小胞体(ER)の抗酸化能の測定に使用する化合物(ER-FT)の製造方法は下記の通りである。
【0071】
【0072】
【0073】
1-(carbobenzyloxy)-4-piperidinecarboxylic acid(0.30g、1.1mmol)とN-(tert-butoxycarbonyl)-ethylenediamine(0.19mL、1.0当量)、1-hydroxybenzotriazol(HOBt;0.23g、1.5当量)、1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)-carbodiimide(EDCI;0.29g、1.5当量)をN,N-dimethylformamide(DMF)5mLに溶かした溶液を、常温で15時間撹拌する。混合物をEtOAcで希釈した後、NaHCO3水溶液とNaCl飽和水溶液で洗浄する。有機層を分離した後、Na2SO4を添加して乾燥した後、これを濾過して得た溶液を減圧蒸留して溶媒を除去する。残りの混合物をSiO2カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物1を得る(0.45g、98%)。
【0074】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 7.31-7.37 (m, 5H), 6.63 (br, 1H), 5.12-5.14 (m, 3H), 4.18-4.21 (m, 2H), 3.32-3.35 (m, 2H), 3.25-3.28 (m, 2H), 2.80~2.85 (m, 2H), 2.22-2.27 (m, 1H), 1.80~1.84 (m, 2H), 1.60~1.67 (m, 2H), 1.42 (s, 9H).
【0075】
【0076】
化合物1(0.45g、1.1mmol)をMeOH10mLに溶かした溶液にpalladium on activated carbon(Pd-C;10wt%、45mg)を添加し、H2気体(1atm)下、15時間撹拌する。混合物をcelite層を通過させて得た濾過液を減圧蒸留して溶媒を除去する。真空乾燥して得た固体の一部(0.15g、0.55mmol)とcyanoacetic acid(48mg、1.0当量)、HOBt(0.11g、1.3当量)、EDCI(0.14g、1.3当量)、N,N-diisopropylethylamine(DIEA;0.15mL、1.5当量)をDMF5mLに溶かした溶液を、常温で14時間撹拌する。減圧蒸留して溶媒を除去し、残りの混合物をSiO2カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物2を得る(0.17g、90%)。
【0077】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 6.62 (br, 1H), 4.96 (br, 1H), 4.46-4.49 (m, 1H), 3.74-3.77 (m, 1H), 3.51 (s, 2H), 3.34-3.37 (m, 2H), 3.28-3.31 (m, 2H), 3.18-3.24 (m, 1H), 2.80~2.85 (m, 1H), 2.34-2.40 (m, 1H), 1.90~1.98 (m, 2H), 1.63-1.80 (m, 2H), 1.44 (s, 9H).
【0078】
【0079】
10-oxo-2,3,5,6-tetrahydro-1H,4H,10H-11-oxa-3a-azabenzo[de]anthracene-9-carbaldehyde(0.12g、0.45mmol)と化合物2(0.17g、1.1当量)、piperidine(44μL、1.0当量)を2-propanol3mLに溶かした溶液を、60℃で16時間加熱した後、常温に冷却する。減圧蒸留して溶媒を除去し、残りの混合物をSiO2カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物3を得る(0.25g、96%)。
【0080】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ (ppm) = ((E)-配座異性体) 8.63 (s, 1H), 7.94 (s, 1H), 6.99 (s, 1H), 6.55 (br, 1H), 4.97 (br, 1H), 4.29 (br, 2H), 3.28-3.38 (m, 8H), 3.06 (br, 2H), 2.86 (t, J = 6.3 Hz, 2H), 2.76 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 2.36-2.42 (m, 1H), 1.94-2.00 (m, 6H), 1.71-1.80 (m, 2H), 1.44 (s, 9H).
【0081】
ER-FresH A
化合物3(0.25g、0.42mmol)をtrifluoroacetic acid(TFA;2mL)/CH2Cl2(2mL)混合溶液に溶かした後、常温で2時間撹拌する。減圧蒸留して溶媒を除去した後、残りの化合物とp-toluenesulfonyl chloride(TsCl;32mg、1.0当量)、DIEA(58μL、2.0当量)をDMF2mLに溶かした溶液を、常温で4時間撹拌する。減圧蒸留して溶媒を除去し、残りの混合物をSiO2カラムクロマトグラフィーで精製して、ER-FReSH Aを得る(23mg、22%)。
【0082】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ (ppm) = ((E)-配座異性体) 8.63 (s, 1H), 7.92 (s, 1H), 7.72 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.31 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.00 (s, 1H), 6.52 (t, J = 5.9 Hz, 1H), 5.66 (t, J = 6.1 Hz, 1H), 4.26 (br, 2H), 3.32-3.38 (m, 6H), 3.02-3.08 (m, 4H), 2.85 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 2.76 (t, J = 6.3 Hz, 2H), 2.41 (s, 3H), 2.36-2.42 (m, 1H), 1.86-1.99 (m, 6H), 1.68-1.77 (m, 2H).
【0083】
【0084】
【0085】
1-(carbobenzyloxy)-4-piperidinecarboxylic acid(0.24g、0.87mmol)とN-(tert-butoxycarbonyl)-4,7,10乃至trioxa-1,13-tridecanediamine(0.28g、1.0当量)、HOBt(0.18g、1.3当量)、EDCI(0.22g、1.3当量)をDMF10mLに溶かした溶液を、常温で18時間撹拌する。混合物をEtOAcで希釈した後、NaHCO3水溶液とNaCl飽和水溶液で洗浄する。有機層を分離した後、Na2SO4を添加して乾燥した後、これを濾過して得た溶液を減圧蒸留して溶媒を除去する。残りの混合物をSiO2カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物4を得る(0.49g、99%)。
【0086】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 7.31-7.36 (m, 5H), 6.37 (br, 1H), 5.12 (s, 2H), 4.96 (br, 1H), 4.17-4.23 (m, 2H), 3.57-3.64 (m, 10H), 3.52 (t, J = 5.9 Hz, 2H), 3.35-3.39 (m, 2H), 3.19-3.23 (m, 2H), 2.81-2.86 (m, 2H), 2.20~2.26 (m, 1H), 1.73-1.83 (m, 6H), 1.61-1.68 (m, 2H), 1.43 (s, 9H).
【0087】
【0088】
化合物4(0.49g、0.87mmol)をMeOH5mLに溶かした溶液に、Pd-C(10wt%、49mg)を添加し、H2気体(1atm)下、14時間撹拌する。混合物をcelite層を通過させて得た濾過液を減圧蒸留して溶媒を除去する。真空乾燥して得た固体とcyanoacetic acid(74mg、1.0当量)、HOBt(0.17g、1.3当量)、EDCI(0.22g、1.3当量)、DIEA(0.23mL、1.5当量)をDMF5mLに溶かした溶液を、常温で12時間撹拌する。減圧蒸留して溶媒を除去し、残りの混合物をSiO2カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物5を得る(0.34g、79%)。
【0089】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 6.53 (br, 1H), 4.95 (br, 1H), 4.43-4.47 (m, 1H), 3.75-3.79 (m, 1H), 3.57-3.66 (m, 10H), 3.53 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 3.52 (s, 2H), 3.36-3.39 (m, 2H), 3.18-3.23 (m, 3H), 2.81-2.87 (m, 1H), 2.33-2.39 (m, 1H), 1.87-1.94 (m, 2H), 1.73-1.82 (m, 5H), 1.64-1.72 (m, 1H), 1.44 (s, 9H).
【0090】
【0091】
化合物5(0.13g、0.26mmol)をTFA(2mL)/CH2Cl2(1mL)混合溶液に溶かした後、常温で3時間撹拌する。減圧蒸留して溶媒を除去した後、残りの化合物とDIEA(0.12mL、2.6当量)をCH2Cl2 3mLに溶かした溶液を0℃に冷却する。p-TsCl(63mg、1.3当量)を添加した後、温度を常温に上げながら4時間撹拌する。混合物をCH2Cl2で希釈した後、NaCl飽和水溶液で洗浄する。有機層を分離した後、Na2SO4を添加して乾燥した後、これを濾過して得た溶液を減圧蒸留して溶媒を除去する。残りの混合物をSiO2カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物6を得る(68mg、47%)。
【0092】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 7.77 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.32 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 6.62 (t, J = 5.2 Hz, 1H), 5.85 (t, J = 5.6 Hz, 1H), 4.42-4.46 (m, 1H), 3.67-3.73 (m, 5H), 3.62-3.64 (m, 2H), 3.58 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 3.50~3.55 (m, 6H), 3.33-3.37 (m, 2H), 3.14-3.20 (m, 1H), 3.04-3.08 (m, 2H), 2.74-2.80 (m, 1H), 2.43 (s, 3H), 2.35-2.41 (m, 1H), 1.82-1.91 (m, 2H), 1.58-1.80 (m, 6H).
【0093】
ER-FresH B
10-oxo-2,3,5,6-tetrahydro-1H,4H,10H-11-oxa-3a-azabenzo[de]anthracene-9-carbaldehyde(30mg、0.11mmol)と化合物6(68mg、1.1当量)、piperidine(11μL、1.0当量)を2-propanol 1mLに溶かした溶液を、常温で15時間撹拌する。減圧蒸留して溶媒を除去し、残りの混合物をSiO2カラムクロマトグラフィーで精製して、ER-FT Bを得る(77mg、86%)。
【0094】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ (ppm) = ((E)-配座異性体) 8.63 (s, 1H), 7.92 (s, 1H), 7.77 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.30 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 6.99 (s, 1H), 6.53 (t, J = 5.3 Hz, 1H), 5.74 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 4.25 (br, 2H), 3.67-3.69 (m, 4H), 3.62-3.64 (m, 2H), 3.53-3.60 (m, 4H), 3.50~3.52 (m, 2H), 3.32-3.39 (m, 6H), 3.04-3.08 (m, 2H), 3.02 (br, 2H), 2.87 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 2.76 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 2.42 (s, 3H), 2.34-2.41 (m, 1H), 1.95-2.00 (m, 4H), 1.89-1.92 (m, 2H), 1.66-1.81 (m, 6H).
【0095】
【0096】
【0097】
1-(tert-butoxycarbonyl)-4-piperidinecarboxylic acid(0.30g、1.3mmol)とN-carbobenzyloxy-ethylenediamine hydrochloride(0.31g、1.0当量)、HOBt(0.27g、1.3当量)、EDCI(0.33g、1.3当量)、DIEA(0.34mL、1.5当量)をDMF10mLに溶かした溶液を、常温で18時間撹拌する。混合物をEtOAcで希釈した後、NaCl飽和水溶液で洗浄する。有機層を分離した後、Na2SO4を添加して乾燥した後、これを濾過して得た溶液を減圧蒸留して溶媒を除去する。残りの混合物をSiO2カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物7を得る(0.53g、100%)。
【0098】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 7.31-7.38 (m, 5H), 6.24 (br, 1H), 5.22 (br, 1H), 5.10 (s, 2H), 4.08-4.14 (m, 2H), 3.33-3.39 (m, 4H), 2.68-2.73 (m, 2H), 2.14-2.20 (m, 1H), 1.73-1.76 (m, 2H), 1.52-1.60 (m, 2H), 1.46 (s, 9H).
【0099】
【0100】
化合物7(0.53g、1.3mmol)をMeOH10mLに溶かした溶液に、Pd-C(10 wt%、53mg)を添加し、H2気体(1atm)下、2時間撹拌する。混合物をcelite層を通過させて得た濾過液を減圧蒸留して溶媒を除去する。真空乾燥して得た真空乾燥して得た固体の一部(0.10g、0.37mmol)とDIEA(0.13mL、2.0当量)をCH2Cl2 3mLに溶かした溶液に、pentafluorobenzoyl chloride(52μL、1.0当量)を添加した後、2時間撹拌する。混合物をCH2Cl2で希釈した後、NaHCO3水溶液とNaCl飽和水溶液で洗浄する。有機層を分離した後、Na2SO4を添加して乾燥した後、これを濾過して得た溶液を減圧蒸留して溶媒を除去する。残りの混合物をSiO2カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物8を得る(0.12g、73%)。
【0101】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 7.33 (br, 1H), 6.28 (t, J = 5.3 Hz, 1H), 4.10~4.15 (m, 2H), 3.58-3.61 (m, 2H), 3.49-3.53 (m, 2H), 2.70~2.75 (m, 2H), 2.25 (tt, J = 11.6 Hz, J = 3.7 Hz, 1H), 1.77-1.80 (m, 2H), 1.52-1.61 (m, 2H), 1.45 (s, 9H). 19F NMR (470 MHz, CDCl3): δ (ppm) = -140.8 (2F), -150.6 (1F), -159.9 (2F).
【0102】
【0103】
化合物8(0.12g、0.27mmol)をHCl溶液(4M、dioxane)2mLに溶かした後、常温で2時間撹拌する。減圧蒸留して溶媒を除去した後、残りの化合物とcyanoacetic acid(24mg、1.0当量)、HOBt(56mg、1.3当量)、EDCI(70mg、1.3当量)、DIEA(73μL、1.5当量)をDMF2mLに溶かした溶液を、常温で17時間撹拌する。混合物をCH2Cl2で希釈した後、NaCl飽和水溶液で洗浄する。有機層を分離した後、Na2SO4を添加して乾燥した後、これを濾過して得た溶液を減圧蒸留して溶媒を除去する。残りの混合物をSiO2カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物9を得る(44mg、37%)。
【0104】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) = 8.94 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 7.91 (t, J = 5.6 Hz, 1H), 4.24-4.28 (m, 1H), 3.97-4.09 (m, 2H), 3.63-3.67 (m, 1H), 3.30~3.34 (m, 2H), 3.18-3.21 (m, 2H), 3.00~3.05 (m, 1H), 2.64-2.69 (m, 1H), 2.31-2.38 (m, 1H), 1.68-1.72 (m, 2H), 1.51-1.59 (m, 1H), 1.34-1.43 (m, 1H). 19F NMR (470 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) = -141.9 (2F), -153.0 (1F), -161.4 (2F).
【0105】
ER-FresH C
化合物9(44mg、0.10mmol)と10-oxo-2,3,5,6-tetrahydro-1H,4H,10H-11-oxa-3a-azabenzo[de]-anthracene-9-carbaldehyde(30mg、1.1当量)をDMF1mLに溶かした溶液に、chlorotrimethylsilane(TMSCl;39μL、3.0当量)を添加した後、130℃で5時間撹拌する。常温に冷却した混合物をCH2Cl2で希釈した後、NaCl飽和水溶液で洗浄する。有機層を分離した後、Na2SO4を添加して乾燥した後、これを濾過して得た溶液を減圧蒸留して溶媒を除去する。残りの混合物をSiO2カラムクロマトグラフィーで精製して、ER-FT Cを得る(33mg、48%)。
【0106】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ (ppm) = ((E)-配座異性体) 8.61 (s, 1H), 7.89 (s, 1H), 7.48 (br, 1H), 6.99 (s, 1H), 6.62 (br, 1H), 4.29 (br, 2H), 3.97-4.09 (m, 2H), 3.57-3.61 (m, 2H), 3.48-3.52 (m, 2H), 3.33-3.39 (m, 4H), 3.03 (br, 2H), 2.73-2.86 (m, 4H), 2.40~2.47 (m, 1H), 1.89-2.04 (m, 6H), 1.72-1.80 (m, 2H). 19F NMR (470 MHz, CDCl3): δ (ppm) = -140.7 (2F), -150.8 (1F), -159.9 (2F).
【0107】
【0108】
【0109】
N-(tert-butoxycarbonyl)-4,7,10乃至trioxa-1,13-tridecanediamine(0.10g、0.31mmol)とDIEA(0.1mL、2.0当量)をCH2Cl2 3mLに溶かした溶液に、pentafluorobenzoyl chloride(44μL、1.0当量)を添加した後、2時間撹拌する。混合物をCH2Cl2で希釈した後、NaHCO3水溶液とNaCl飽和水溶液で洗浄する。有機層を分離した後、Na2SO4を添加して乾燥した後、これを濾過して得た溶液を減圧蒸留して溶媒を除去する。残りの混合物をSiO2カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物10を得る(0.15g、94%)。
【0110】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 7.18 (br, 1H), 4.88 (br, 1H), 3.65 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 3.58-3.61 (m, 6H), 3.46-3.52 (m, 6H), 3.17-3.21 (m, 2H), 1.88-1.92 (m, 2H), 1.70~1.75 (m, 2H), 1.41 (s, 9H). 19F NMR (470 MHz, CDCl3): δ (ppm) = -140.7 (2F), -151.8 (1F), -160.6 (2F).
【0111】
【0112】
化合物10(0.15g、0.29mmol)をHCl溶液(4M、dioxane)2mLに溶かした後、常温で2時間撹拌する。減圧蒸留して溶媒を除去した後、残りの化合物と1-(tert-butoxycarbonyl)-4-piperidinecarboxylic acid(69mg、1.0当量)、HOBt(59mg、1.3当量)、EDCI(73mg、1.3当量)、DIEA(76μL、1.5当量)をDMF3mLに溶かした溶液を、常温で16時間撹拌する。混合物をEtOAcで希釈した後、NaHCO3水溶液とNaCl飽和水溶液で洗浄する。有機層を分離した後、Na2SO4を添加して乾燥した後、これを濾過して得た溶液を減圧蒸留して溶媒を除去する。残りの混合物をSiO2カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物11を得る(0.17g、93%)。
【0113】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 7.31 (br, 1H), 6.24 (br, 1H), 4.07-4.12 (m, 2H), 3.53-3.63 (m, 12H), 3.49-3.52 (m, 2H), 3.33-3.37 (m, 2H), 2.70~2.75 (m, 2H), 2.18 (tt, J = 11.6 Hz, J = 3.6 Hz, 1H), 1.88-1.92 (m, 2H), 1.73-1.81 (m, 4H), 1.52-1.60(m, 2H), 1.43 (s, 9H). 19F NMR (470 MHz, CDCl3): δ (ppm) = -140.7 (2F), -151.8 (1F), -160.6 (2F).
【0114】
【0115】
化合物11(0.17g、0.27mmol)をHCl溶液(4M、dioxane)2mLに溶かした後、常温で1時間撹拌する。減圧蒸留して溶媒を除去した後、残りの化合物とcyanoacetic acid(23mg、1.0当量)、HOBt(54mg、1.3当量)、EDCI(67mg、1.3当量)、DIEA(70μL、1.5当量)をDMF2mLに溶かした溶液を、常温で18時間撹拌する。混合物をCH2Cl2で希釈した後、NaHCO3水溶液とNaCl飽和水溶液で洗浄する。有機層を分離した後、Na2SO4を添加して乾燥した後、これを濾過して得た溶液を減圧蒸留して溶媒を除去する。残りの混合物をSiO2カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物12を得る(0.11g、69%)。
【0116】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 7.16 (br, 1H), 6.39 (br, 1H), 4.41-4.46 (m, 1H), 3.73-3.77 (m, 1H), 3.53-3.63 (m, 12H), 3.50~3.52 (m, 4H), 3.33-3.37 (m, 2H), 3.17-3.23 (m, 1H), 2.81-2.86 (m, 1H), 2.35 (tt, J = 10.8 Hz, J = 4.0 Hz, 1H), 1.87-1.96 (m, 4H), 1.71-1.78 (m, 3H), 1.60~1.68 (m, 1H). 19F NMR (470 MHz, CDCl3): δ (ppm) = -140.7 (2F), -151.6 (1F), -160.5 (2F).
【0117】
ER-FresH D
化合物12(57mg、96μmol)と10-oxo-2,3,5,6-tetrahydro-1H,4H,10H-11-oxa-3a-azabenzo[de]-anthracene-9-carbaldehyde(28mg、1.1当量)をDMF1mLに溶かした溶液に、TMSCl(16μL、1.3当量)を添加した後、130℃で14時間撹拌する。常温に冷却した混合物をCH2Cl2で希釈した後、NaCl飽和水溶液で洗浄する。有機層を分離した後、Na2SO4を添加して乾燥した後、これを濾過して得た溶液を減圧蒸留して溶媒を除去する。残りの混合物をSiO2カラムクロマトグラフィーで精製して、ER-FT Dを得る(31mg、38%)。
【0118】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ (ppm) = ((E)-配座異性体) 8.61 (s, 1H), 7.88 (s, 1H), 7.35 (br, 1H), 6.99 (s, 1H), 6.44 (br, 1H), 4.26 (br, 2H), 3.51-3.63 (m, 14H), 3.33-3.39 (m, 6H), 3.07 (br, 2H), 2.82-2.87 (m, 2H), 2.73-2.78 (m, 2H), 2.31-2.40 (m, 1H), 1.87-2.04 (m, 8H), 1.68-1.79 (m, 4H). 19F NMR (470 MHz, CDCl3): δ (ppm) = -140.6 (2F), -151.8 (1F), -160.5 (2F).
【0119】
前記製造例において、R
3によるER-FresH A/B/C/Dの区分は、下記表1の通りである。
【表1】
【0120】
[実験例]実験方法
1.ER-FT(Endoplasmic Reticulum Fluorescent Real-time SH group-Tracer)派生化合物(以下、化学式IV~VIIのいずれか1つ)のチオール化合物とのin vitro反応
図5は、化学式IV~VIIで表されるER-FTがUC-MSCの小胞体で観察されたものを共焦点顕微鏡で撮影した図である。
【0121】
(1)共焦点ディッシュ(confocal dish)に臍帯中間葉幹細胞(UC-MSC)の細胞およびHella細胞シーディング(UC-MSC:5×104、HeLa cell:2×105)後、24時間培養する。(2)10~20μMの濃度のER-FT(化学式IV~VII)を各細胞培地ごとに2mlずつ用意する。(3)ディッシュにER-FT投与して染色後、37℃で30分間インキュベータで培養する。(4)1mM ER tracker Redを2μlずつ入れてよく混合した後、30分培養する。(5)培地サクション後、HBSS2mlを添加する。
【0122】
共焦点顕微鏡により細胞を撮影し、その結果は
図5の通りである。
【0123】
2.細胞毒性試験
図6は、化学式IV~VIIで表されるER-FTのIC
50を示す毒性実験の結果である。
【0124】
(1)UC-MSCの細胞(4×103cells/well)を96well dishに24時間培養した。(2)5、10、20、40μMの濃度のER-FT派生化合物(化学式IV~VII)2mlを用意して処理した後、37℃、24時間培養した。(3)10X EZ-cytox各wellあたり10μlずつ添加して、3時間培養した。(4)プレートリーダを用いて450nmにおける吸光度を測定した(基準波長600~650nm)。
【0125】
細胞毒性試験の結果、
図6および下記表2のように、化学式IV(ER-FreSH A)の毒性が最も低いことが確認された。
【表2】
【0126】
3.ER-FT派生化合物別の細胞内保持時間の測定
図7は、化学式IV~VIで表されるER-FTのUC-MSCの保持時間に対して、510nm波長の強度、580nm波長の強度、510nm、580nm波長の強度および両波長の強度比で測定した実験の結果である。
【0127】
図8は、化学式IV、VIおよびVIIで表されるER-FTのUC-MSCの細胞保持時間に対して、510nm波長の強度、580nm波長の強度、510nm、580nm波長の強度および両波長の強度比で測定した実験の結果である。
【0128】
(1)96well plateにUC-MSC4,000個/wellシーディング後、24時間培養する。(2)10、15、20μMの濃度のER-FT(化学式IV~VI)を含む細胞培地を用意する。(3)培地サクション後、ER-FT染色を実施し、37℃で1時間インキュベータで培養する。(4)培地サクション後、wellあたりHBSSを100μlずつ添加する。
【0129】
オペレッタイメージング(Operetta imaging)の結果、
図7および
図8のように、UC-MSCで化学式IV、Vが一定の蛍光強度(intensity)を示す。化学式VI、VIIの場合には初期蛍光強度が高いが、初期の20分間蛍光強度が次第に減少して他のER-FTに類似する強度を示した。
【0130】
図7および
図8のように、すべての結果をまとめた時、化学式VI、VIIは細胞内に長く留まっていて洗浄(wash)されるまで時間がかかる。また、すべて洗浄された後、蛍光強度は類似の水準を示した。
【0131】
4.ER-FT派生化合物別の反応性の測定
図9は、化学式IVで表されるER-FT処理後、Diamideを追加してUC-MSCの細胞で観察されたものを共焦点顕微鏡で撮影した図である。
【0132】
図10は、化学式IVで表されるER-FT処理後、DiamideおよびDTTを追加してUC-MSCの細胞で観察されたものを共焦点顕微鏡で撮影した図である。
【0133】
図11は、化学式Vで表されるER-FT処理後、Diamideを追加してUC-MSCの細胞の小胞体で観察されたものを共焦点顕微鏡で撮影した図である。
【0134】
図12は、化学式Vで表されるER-FT処理後、DiamideおよびDTTを追加してUC-MSCの細胞の小胞体で観察されたものを共焦点顕微鏡で撮影した図である。
【0135】
図13は、化学式VIで表されるER-FT処理後、Diamideを追加してUC-MSCの小胞体で観察されたものを共焦点顕微鏡で撮影した図である。
【0136】
図14は、化学式VIで表されるER-FT処理後、DiamideおよびDTTを追加してUC-MSCの小胞体で観察されたものを共焦点顕微鏡で撮影した図である。
【0137】
図15は、化学式VIIで表されるER-FT処理後、Diamideを追加してUC-MSCの小胞体で観察されたものを共焦点顕微鏡で撮影した図である。
【0138】
図16は、化学式VIIで表されるER-FT処理後、DiamideおよびDTTを追加してUC-MSCの小胞体で観察されたものを共焦点顕微鏡で撮影した図である。
【0139】
(1)共焦点ディッシュ(Confocal dish)に細胞(UC-MSC:5×104)をシーディングした後、24時間培養する。(2)10~20μMの濃度のER-FT(化学式IV~VI)を含む各細胞培地を2mlずつ用意する。(3)ディッシュで培地サクション後、ER-FT染色を実施し、37℃のインキュベータで30分間培養する。(4)1mM ER tracker Red2μlずつ入れてよく混合した後、30分間培養する。(5)培地サクション後、HBSS2mlを添加する。(6)ERターゲッティング実験後、細胞に100mM Diamide10μlをレーザの当たる部分にピペットで入れる。(7)共焦点イメージングにより細胞の変化を観察する。(8)前記のような方法で1M DTT20ulを入れる。(9)共焦点イメージングにより細胞の変化を観察する。
【0140】
図9~
図16のように、4種類のER-FT(化学式IV~VIIとも、Diamideを処理すれば、510nmの蛍光強度が減少し、580nmの蛍光強度が増加し、DTTを処理すれば、510nmの蛍光強度が増加し、580nmの蛍光強度が減少する。
【0141】
本発明による化合物または組成物を用いて、生きている細胞(living cell)内の小器官である小胞体(ER)およびゴルジ体の抗酸化能を測定することができる。これを幹細胞に適用して、幹細胞における抗酸化能の測定結果に応じて高活性の幹細胞を選別して細胞治療剤の効率性を増大させることができる。
【0142】
本明細書で引用したすべての参照文献、記事、公報および特許および特許出願がそのまま本明細書に参照として組み込まれている。したがって、下記の特許請求の範囲の真義および範疇は上記の好ましい実施形態の説明によって制限されてはならない。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明は、小胞体(ER)内のグルタチオン測定用リアルタイム蛍光イメージングセンサおよびこれを用いる方法に関する。より詳しくは、本発明は、小胞体(ER)内のグルタチオン測定用新規化合物および前記新規化合物を用いた小胞体(ER)内のグルタチオンの測定方法に関する。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式Iで表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩:
【化1】
前記化学式Iにおいて、R
1は、1つ以上のNを含む3-7員環であるヘテロシクロアルキルで
あり、
前記化学式Iで表される化合物は、下記化学式IV~VIIのいずれか1つで表されるものである。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【請求項2】
前記化学式Iで表される化合物は、フリー(free)状態で550~680nmで最大放出波長を示し、チオールと結合した状態で430~550nmで最大放出波長を示すものである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
前記放出波長の蛍光強度は、430nm~680nmの範囲で増減するものである、請求項
2に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む生細胞(living cell)における抗酸化能測定用組成物。
【請求項5】
前記抗酸化能の測定は、生細胞におけるチオールレベルの測定であり、前記チオールレベルの測定にあたり、チオールが増加するにつれ、550~680nmでの蛍光強度が減少し、430~550nmでの蛍光強度は増加するものである、請求項
4に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項6】
前記抗酸化能の測定は、生細胞におけるチオールレベルの測定であり、前記チオールレベルの測定は、430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の比率(ratio)を得て(obtaining)実施するものである、請求項
4に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項7】
前記抗酸化能の測定は、生細胞におけるチオールレベルの測定であり、前記チオールレベルの測定は、小胞体(ER)内のチオールの定性または定量的検出である、請求項
4に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項8】
前記抗酸化能の測定は、生細胞におけるチオールレベルの測定であり、前記チオールレベルの測定は、リアルタイム定量的測定である、請求項
4に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項9】
前記抗酸化能の測定は、生細胞におけるチオールレベルの測定であり、前記チオールレベルの測定は、細胞の酸化的ストレスまたは酸化度を示すものである、請求項
4に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項10】
前記抗酸化能の測定は、生細胞におけるチオールレベルの測定であり、前記チオールレベルの測定は、細胞の老化度を示すものである、請求項
4に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項11】
前記抗酸化能の測定は、生細胞におけるチオールレベルの測定であり、前記チオールは、グルタチオン(glutathione、GSH)、ホモシステイン(homocysteine、Hcy)、システイン(cysteine、Cys)またはタンパク質のシステイン残基にあるチオールである、請求項
4に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項12】
以下のステップを含む生細胞内のチオール増加剤または抑制剤のスクリーニング方法:
(a)請求項
4に記載の組成物および候補物質を同時にまたは順序に関係なく順次に生細胞に投与するステップと、
(b)430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の比率(ratio)を得て標準データと比較するステップ
と、
(c)430~550nmでの蛍光強度の、550~680nmでの蛍光強度に対する比率が減少する
候補物質を、チオール抑制剤として決定し、蛍光強度の比率が増加する
候補物質を、チオール増加剤として決定するステップ。
【請求項13】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含む酸化ストレス誘発疾患診断キット。
【請求項14】
以下のステップを含む生細胞における抗酸化能の測定方法:
(a)生細胞における430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の比率(ratio)をリアルタイムに測定するステップと、
(b)請求項
4に記載の組成物を生細胞に投与するステップと、
(c)酸化剤をステップ(b)の細胞に投与するステップと、
(d)前記蛍光強度の比率値の変化を観察するステップ。
【請求項15】
前記測定方法は、生細胞内の小器官である小胞体(ER)に対して測定するものである、請求項
14に記載の生細胞における抗酸化能の測定方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0143
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0143】
本発明は、小胞体(ER)内のグルタチオン測定用リアルタイム蛍光イメージングセンサおよびこれを用いる方法に関する。より詳しくは、本発明は、小胞体(ER)内のグルタチオン測定用新規化合物および前記新規化合物を用いた小胞体(ER)内のグルタチオンの測定方法に関する。
本発明の態様は以下を含む。
<1>
下記化学式Iで表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩:
前記化学式Iにおいて、R
1
は、1つ以上のNを含む3-7員環であるヘテロシクロアルキルであり、前記ヘテロシクロアルキルは、R
2
置換基が結合しており;前記R
2
は、アミド基である。
<2>
前記R
2
は、-(C(=O)NH)-R
3
であり;
前記R
3
は、-(CH
2
)
m
-R
4
、-(CH
2
)
m
-R
5
、-(CH
2
)
n
-(CH
2
OCH
2
)
p
-(CH
2
)
q
-R
4
、または-(CH
2
)
n
-(CH
2
OCH
2
)
p
-(CH
2
)
q
-R
5
であり;
ここで、前記mは、1-6の整数であり、前記n、pおよびqは、それぞれ独立して、1-4の整数であり;
前記R
4
は、下記化学式IIで表される置換基であり;
前記R
5
は、下記化学式IIIで表される置換基である、<1>に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
<3>
前記化学式Iで表される化合物は、下記化学式IV~VIIのいずれか1つで表されるものである、<2>に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
<4>
前記化学式Iで表される化合物は、フリー(free)状態で550~680nmで最大放出波長を示し、チオールと結合した状態で430~550nmで最大放出波長を示すものである、<1>に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
<5>
前記放出波長の蛍光強度は、430nm~680nmの範囲で増減するものである、<4>に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
<6>
<1>~<5>のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む生細胞(living cell)における抗酸化能測定用組成物。
<7>
前記抗酸化能の測定は、生細胞におけるチオールレベルの測定である、<6>に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
<8>
前記チオールレベルの測定は、生細胞の細胞小器官におけるチオールレベルの測定である、<7>に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
<9>
前記細胞小器官は、小胞体(ER)である、<8>に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
<10>
前記小胞体(ER)における抗酸化能の測定は、化学式IV~VIIのいずれか1つの化合物を用いるものである、<9>に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
<11>
前記チオールレベルの測定にあたり、チオールが増加するにつれ、550~680nmでの蛍光強度が減少し、430~550nmでの蛍光強度は増加するものである、<7>に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
<12>
前記チオールレベルの測定は、430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の比率(ratio)を得て(obtaining)実施するものである、<7>に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
<13>
前記比率は、前記430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の関係(relationship)である、<12>に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
<14>
前記関係は、前記430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の数学的比率関係であり、前記数学的比率関係は、小胞体(ER)におけるチオールの量に応じて比率計量的(ratiometrically)かつ可逆的に増減して、細胞内小器官におけるチオールの量をリアルタイムに示すものである、<13>に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
<15>
前記チオールレベルの測定は、小胞体(ER)内のチオールの定性または定量的検出である、<7>に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
<16>
前記チオールレベルの測定は、リアルタイム定量的測定である、<7>に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
<17>
前記チオールレベルの測定は、細胞の酸化的ストレスまたは酸化度を示すものである、<7>に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
<18>
前記チオールレベルの測定は、細胞の老化度を示すものである、<7>に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
<19>
前記チオールは、グルタチオン(glutathione、GSH)、ホモシステイン(homocysteine、Hcy)、システイン(cysteine、Cys)またはタンパク質のシステイン残基にあるチオールである、<7>に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
<20>
以下のステップを含む生細胞内のチオール増加剤または抑制剤のスクリーニング方法:
(a)<6>に記載の組成物および候補物質を同時にまたは順序に関係なく順次に生細胞に投与するステップと、
(b)430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の比率(ratio)を得て標準データと比較するステップと、
(c)前記試験物質をチオール増加剤または抑制剤として決定するステップと、
(d)430~550nmでの蛍光強度の、550~680nmでの蛍光強度に対する比率が減少する場合、チオール抑制剤として決定し、蛍光強度の比率が増加する場合、チオール増加剤として決定するステップ。
<21>
前記(d)ステップは、510nmでの蛍光強度の、580nmでの蛍光強度に対する比率(510/580ratio)が減少する場合、チオール抑制剤として決定し、510nmでの蛍光強度の、580nmでの蛍光強度に対する比率(510/580ratio)が増加する場合、チオール増加剤として決定するものである、<20>に記載の生細胞内のチオール増加剤または抑制剤のスクリーニング方法。
<22>
前記蛍光比率の測定は、小胞体(ER)に対して測定するものである、<20>に記載の生細胞内のチオール増加剤または抑制剤のスクリーニング方法。
<23>
<1>~<5>のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含む酸化ストレス誘発疾患診断キット。
<24>
以下のステップを含む生細胞における抗酸化能の測定方法:
(a)生細胞における430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の比率(ratio)をリアルタイムに測定するステップと、
(b)<6>に記載の組成物を生細胞に投与するステップと、
(c)酸化剤をステップ(b)の細胞に投与するステップと、
(d)前記蛍光強度の比率値の変化を観察するステップ。
<25>
前記(a)ステップは、510nmでの蛍光強度の、580nmでの蛍光強度に対する比率(510/580ratio)をリアルタイムに測定するものである、<24>に記載の生細胞における抗酸化能の測定方法。
<26>
前記抗酸化能の測定方法は、前記ステップ(d)の後、前記蛍光強度の比率値が前記酸化剤を投与しない生細胞の蛍光強度の比率値または前記酸化剤を投与する前の蛍光強度の比率値に回復する時間を測定するステップを追加的に含み、前記時間が短いほど、抗酸化能が高いと判断するものである、<24>に記載の生細胞における抗酸化能の測定方法。
<27>
前記抗酸化能の測定方法は、前記ステップ(d)の後、前記酸化剤を投与しない生細胞の蛍光強度の比率値と前記酸化剤を投与した生細胞の蛍光強度の比率値との差の酸化剤投与時点から、前記酸化剤を投与する前の蛍光強度の比率値に回復する時点までの積分値を測定するステップを追加的に含み、前記積分値が小さいほど、抗酸化能が高いと判断するものである、<24>に記載の生細胞における抗酸化能の測定方法。
<28>
前記抗酸化能の測定方法は、前記ステップ(d)の後、前記酸化剤を投与した生細胞の蛍光強度の比率値が減少し始める前記酸化剤の最小濃度を滴定するステップを追加的に含み、前記最小濃度が高いほど、抗酸化能が高いと判断するものである、<24>に記載の生細胞における抗酸化能の測定方法。
<29>
前記測定方法は、生細胞内の小器官である小胞体(ER)に対して測定するものである、<24>に記載の生細胞における抗酸化能の測定方法。
【国際調査報告】