(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-03
(54)【発明の名称】最終ナノろ過工程による乳画分の製造及び分離
(51)【国際特許分類】
A23C 9/142 20060101AFI20230224BHJP
A23C 23/00 20060101ALI20230224BHJP
A23C 9/00 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
A23C9/142
A23C23/00
A23C9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538845
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(85)【翻訳文提出日】2022-08-19
(86)【国際出願番号】 US2020065136
(87)【国際公開番号】W WO2021133594
(87)【国際公開日】2021-07-01
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515301926
【氏名又は名称】フェアライフ、 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シャキル・ウア・レーマン
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ピーター・ドールマン
(72)【発明者】
【氏名】カミル・ピョートル・ドラパラ
【テーマコード(参考)】
4B001
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC15
4B001AC25
4B001AC31
4B001AC35
4B001AC36
4B001AC44
4B001AC46
4B001AC99
4B001BC01
4B001BC08
4B001BC99
4B001EC05
4B001EC99
(57)【要約】
最終ナノろ過工程を使用して酪農組成物を調製する方法を開示する。概して、本方法は更に、限外ろ過工程、及び逆浸透工程、場合により透析ろ過工程を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)乳製品を約3~約15℃の温度で限外ろ過して、UF透過液画分とUF保持液画分とを製造する工程、
(ii)UF透過液画分を逆浸透工程にかけ、RO透過液画分と、少なくとも約8質量%の乳糖を含有するRO保持液画分とを製造する工程
(iii)RO保持液画分をナノろ過して、
約300~約800ppmのナトリウム及び約1500~約3000ppmのカリウムを含有するNF透過液画分と、
少なくとも約10質量%の乳糖を含有するNF保持液画分と
を製造する工程、並びに
(iv)UF保持液画分、DF/UF保持液画分、NF透過液画分、RO透過液画分、RO保持液画分、及び脂肪リッチ画分の少なくとも2つを組み合わせて、酪農組成物を形成する工程
を含む、酪農組成物を製造する方法。
【請求項2】
RO保持液画分の乳糖含量が、約8~約18質量%、約8~約16質量%、又は約10~約14質量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
NF保持液画分の乳糖含量が、約10~約28質量%、約15~約28質量%、約15~約25質量%、約20~約28質量%、又は約20~約25質量%である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
NF保持液画分の全固形分が、約15~約30質量%、約20~約30質量%、約20~約28質量%、約22~約30質量%、又は約22~約28質量%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
NF保持液画分のミネラル含量が、約0.8~約2質量%、又は約1~約1.8質量%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
NF透過液画分のミネラル含量が、約0.35~約1質量%、又は約0.4~約0.8質量%である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
NF透過液画分のカリウム含量が、約2000~約2500ppmである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
NF透過液画分のナトリウム含量が、約400~約700ppmである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
UF保持液画分のタンパク質含量が少なくとも約9質量%であり、DF/UF保持液画分のタンパク質含量が少なくとも約9質量%である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
UF透過液画分及び/又はUF保持液画分の乳糖含量が、約3.5~約6質量%である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
DF/UF透過液画分及び/又はDF/UF保持画分の乳糖含量が、約3.5~約6質量%である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
乳製品を、約4~約12℃、又は約5~約10℃の温度で限外ろ過する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
組み合わせる工程が、(a)UF保持液画分及びNF透過液画分を、又は(b)脂肪リッチ画分、UF保持液画分、及びNF透過液画分を組み合わせる工程を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
DF/UF透過液画分とDF/UF保持液画分とを製造するために、更に、UF保持液画分を透析ろ過する工程を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
UF保持液画分の透析ろ過が、UF保持液画分、RO透過液画分、及び場合により水の混合物の透析ろ過工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
組み合わせる工程が、(a)DF/UF保持液画分及びNF透過液画分を、又は(b)脂肪リッチ画分、DF/UF保持液画分、及びNF透過液画分を組み合わせる工程を含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
更に、生乳を乳製品と脂肪リッチ画分とに分離する工程を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
組み合わせる工程が更に、酪農組成物を製造するために水を添加する工程を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
乳製品が、脱脂乳又は全乳を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
UF保持液画分を、組み合わせる工程の前にラクターゼ酵素で処理する、又はDF/UF保持液画分を、組み合わせる工程の前にラクターゼ酵素で処理する、又は方法が更に、酪農組成物をラクターゼ酵素で処理する工程を含む、又はそれらの任意の組合せである、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
工程(i)の前に更に、乳製品を精密ろ過する工程を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
酪農組成物が、約0.05~約10質量%、又は約0.1~約5質量%の脂肪含量を有する、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
酪農組成物が、約1~約15質量%、又は約3~約10質量%のタンパク質含量を有する、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
酪農組成物が、約0.5~約2質量%のミネラル含量を有する、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
酪農組成物が、約4質量%以下のラクトース含量を有する、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
酪農組成物が、全乳、低脂肪乳、脱脂乳、バターミルク、フレーバーミルク、低ラクトース乳、高タンパク質乳、無ラクトース乳、限外ろ過乳、精密ろ過乳、濃縮乳、無糖練乳、又は高タンパク質乳、高カルシウム乳、及び低糖乳である、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
組み合わせる工程が更に、材料の添加を含み、材料が、糖/甘味料、風味材料、防腐剤、安定化剤、乳化剤、プレバイオティクス物質、プロバイオティクス細菌、ビタミン、ミネラル、オメガ3脂肪酸、フィトステロール、抗酸化剤、着色剤、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
更に、酪農組成物を熱処理する工程を含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
熱処理工程が、約135℃~約145℃の範囲の温度での約1~約10秒の範囲の時間にわたるUHT殺菌を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
熱処理工程が、約80℃~約95℃の範囲の温度での約2~約15分の範囲の時間にわたる低温殺菌を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
熱処理工程が、約148℃~約165℃の範囲の温度での約0.05~約1秒の範囲の時間にわたるUHT殺菌を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
更に、酪農組成物を容器に包装する工程を含む、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
乳製品から回収される水の量が、逆浸透前にナノろ過を行う、その他の点では同一の工程により得られる量よりも多い、請求項1から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
NF透過液画分中のミネラルの量が、逆浸透前にナノろ過を行う、その他の点では同一の工程により得られるRO保持液画分中のミネラルの量よりも多い、請求項1から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
NF保持液画分中の乳糖の濃度が、逆浸透前にナノろ過を行う、その他の点では同一の工程により得られるNF保持液画分中での濃度よりも高い、請求項1から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
請求項1から35のいずれか一項に記載の方法により調製される酪農組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2020年12月15日にPCT国際特許出願として出願され、参照により本明細書にその開示の全体が組み込まれている、2019年12月23日に出願した米国仮出願第62/952526号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は概して、限外ろ過、ナノろ過、透析ろ過、及び浸透の技術の組合せを使用して、乳製品をタンパク質、脂肪、炭水化物、及びミネラルの成分へと分離する工程に関する。更に、乳成分の、様々な組合せ及び割合での混合により製造される酪農組成物も含まれる。
【背景技術】
【0003】
膜ろ過工程は、流体の非熱分画・濃縮技術である。圧力下に半透膜を通して流体を通過させる場合、膜の表面上に保持される成分は保持液又は濃縮液と呼ばれ、膜を通過する物質は一括して透過液と呼ばれる。膜技術は概して、分画又は濃縮のために熱又は化学物質を含まないため、流体の特性に悪影響を与えず、乳及びその成分にとって有益である。乳のような流体をこの膜技術で分画した場合、典型的には、タンパク質が変性せず、酵素が不活性化されず、ビタミンが破壊されず、タンパク質と糖との間で反応が起こらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,169,428号
【特許文献2】米国特許第9,510,606号
【特許文献3】米国特許第9,538,770号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Standard Methods for the examination of dairy products、第17版(2004年)、American Public Health Association、Washington DC
【発明の概要】
【0006】
この概要は、本明細書に更に記載される思想のえり抜きを、簡略化した形態で紹介するために提供される。本概要は、請求される主題の必要とされる又は本質的な特徴を同定するとは意図されない。そして、本概要は、請求される主題の範囲の限定に使用するとも意図されない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態と一致して、酪農組成物を製造する方法が開示され、その方法は、(i)乳製品(脱脂乳製品又は脂肪含有乳製品)を約3~約15℃の温度で限外ろ過して、UF透過液画分とUF保持液画分とを製造する工程、(ii)該UF透過液画分を逆浸透工程にかけ、RO透過液画分と、少なくとも約8質量%の乳糖(ラクトース又はその誘導体)を含有するRO保持液画分とを製造する工程、(iii)該RO保持液画分をナノろ過して、約300~約800ppmのナトリウム及び約1500~約3000ppmのカリウムを含有するNF透過液画分と、少なくとも約10質量%の乳糖(ラクトース又はその誘導体)を含有するNF保持液画分とを製造する工程、並びに(iv)該UF保持液画分、DF/UF保持液画分、該NF透過液画分、該RO透過液画分、該RO保持液画分、及び脂肪リッチ画分(fat-rich fraction)の少なくとも2つを組み合わせて、該酪農組成物を形成する工程を含み得る。場合により、本方法は更に、該UF保持液画分を透析ろ過して、DF/UF透過液画分と該DF/UF保持液画分とを製造する工程を含み得る。いくつかの実施形態では、該組み合わせる工程が、少なくとも該UF保持液画分(又は該DF/UF保持液画分)及び該NF透過液画分を組み合わせる工程を含み得る一方、他の実施形態では、該組み合わせる工程が、少なくとも該脂肪リッチ画分、該UF保持液画分(又は該DF/UF保持液画分)、及び該NF透過液画分を組み合わせる工程を含み得る。
【0008】
上記の概要及び以下の詳細な説明の両方ともが例を提供し、例示的であるにすぎない。従って、上記の概要及び以下の詳細な説明は、限定的と見なされるべきではない。更に、特徴又は変形形態が、本明細書に記載されるものに加えて提供され得る。例えば、特定の実施形態は、詳細な説明に記載される、様々な特徴組合せ及び部分的組合せを対象にし得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】最終ナノろ過工程を利用する本発明の一実施形態と一致する分離工程の系統図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
本明細書で使用する用語をより明確に定義するために、以下の定義を与える。異なる指定がない限り、以下の定義は、本開示に適用可能である。用語を本開示中で使用するが本明細書で具体的に定義しない場合、IUPAC Compendium of Chemical Terminology、第2版(1997年)からの定義が、本明細書で用いられる他のいずれかの開示又は定義と矛盾しない、又はその定義が適用されるいずれかのクレームを不明確若しくは不可能にしない限り適用され得る。参照により本明細書に組み込まれているいずれかの文書により提供される任意の定義又は使用が、本明細書で提供される定義又は使用と矛盾する限り、本明細書で提供される定義又は使用が照合する。
【0011】
本明細書では、主題の特徴を、特定の態様及び/又は実施形態の範囲内で、異なる特徴の組合せが想定され得るように記載する。本明細書に開示される各々の態様及び/又は実施形態及び/又は特徴に関して、本明細書に記載されるデザイン、組成物、工程及び/又は方法に有害な影響を及ぼさないすべての組合せが、特定の組合せの明確な記載があってもなくても意図される。更に、特に明示的に言及されない限り、本発明と一致する本発明のデザイン、組成物、工程及び/又は方法を記載するために、本明細書に開示される任意の態様及び/又は実施形態及び/又は特徴が組合せ可能である。
【0012】
本開示では、組成物及び方法が頻繁に、様々な成分又は工程を「含む(comprising)」点で記載されるが、該組成物及び方法は、異なる指定がない限り、同じく、様々な成分又は工程「から本質的になる(consist essentially of)」又は「からなる(consist of)」ことが可能である。例えば、本発明の実施形態と一致する酪農組成物は、脂肪リッチ画分、UF保持液画分、及びNF透過液画分を含み得る;その代わりに脂肪リッチ画分、UF保持液画分、及びNF透過液画分から本質的になり得る;その代わりに脂肪リッチ画分、UF保持液画分、及びNF透過液画分からなり得る。
【0013】
用語「a」、「an」及び「the」は、特に指定がない限り、複数の可能性、例えば少なくとも1つを含むと意図される。例えば、「1つの材料(an ingredient)」及び「1つの付加的乳画分(an additional milk fraction)」は、特に指定がない限り、1つの材料及び付加的乳画分、又は2つ以上の材料及び付加的乳画分の混合物若しくは組合せを含むと意図される。
【0014】
開示される方法では、用語「組み合わせる」は、特に指定がない限り、任意の順序、任意のやり方での任意の時間にわたる、成分の接触を含む。例えば、該成分を、ブレンディング又はミキシングにより組み合わせてもよい。
【0015】
乳糖リッチ画分(ラクトースリッチ又はその誘導体)、乳糖(ラクトース又はその誘導体)、及び関連用語は、当業者が認識するであろうように、ラクトース及びそのいずれかの誘導体、例えば、加水分解性、非加水分解性、エピメリ化、異性化、又はオリゴ糖に変換されたものを含むと意図される。更に、これらの用語は、例えば、ラクターゼ酵素によるラクトースの処理により生じ得るグルコース/ガラクトースを含むとも意図される。
【0016】
本明細書に記載されるのと類似又は同等の任意の方法及び材料が、本発明の実践又は試験において使用できるが、典型的な方法及び材料を本明細書に記載する。
【0017】
様々な数値範囲が本明細書に開示される。いずれかの種類の範囲が本明細書に開示又は請求される場合、その意図は、特に指定がない限り、そのような範囲が合理的に含み得る、該範囲の終点、並びに該範囲に含まれる任意の部分範囲及び部分範囲の組合せを含む、各々の可能な数を個別に開示又は請求することである。代表的な例として、本出願は、UF保持液画分が、特定の実施形態では、約9~約15質量%のタンパク質を有し得ることを開示する。UF保持液画分のタンパク質含量が約9~約15質量%の範囲にあり得るという開示により、その意図は、タンパク質含量が、該範囲内の任意の量であり得る、例えば、約9、約10、約11、約12、約13、約14、又は約15質量%と等しくてもよいことを挙げることである。更に、UF保持液画分は、約9~約15質量%の任意の範囲内(例えば、約10~約14質量%)の量のタンパク質を含有し得て、それは同じく、約9~約15質量%の間の範囲の任意の組合せを含む。更に、「約(about)」特定値が開示されるすべての場合において、その値それ自体が開示される。従って、約9~約15質量%のタンパク質含量の開示は更に、9~15質量%(例えば、10~14質量%)のタンパク質含量を開示し、それは同じく、9~15質量%の間の範囲の任意の組合せを含む。同様に、本明細書に開示される他のすべての範囲は、この例と同様に解釈される。
【0018】
用語「約(about)」は、量、サイズ、調合(formulation)、パラメータ、並びに他の量及び特徴が、正確でなく、正確である必要がないが、望みどおりに許容差、換算係数、丸め、測定誤差等及び当業者には公知の他の要因を反映する、より大きい又は小さいことを含む、おおよそであり得ることを意味する。概して、量、サイズ、調合、パラメータ、又は他の量若しくは特徴が、そうであると明示されていてもいなくても、「約(about)」又は「およそ(approximate)」である。用語「約(about)」は更に、特定の初期混合物がもたらす組成物の、異なる平衡条件に起因して異なる量を含む。用語「約(about)」で修飾されていようといなかろうと、特許請求の範囲は、量に関する均等物を含む。用語「約(about)」は、報告される数値の10%以内、好ましくは、報告される数値の5%以内を意味し得る。
【発明の詳細な説明】
【0019】
酪農組成物を製造する方法が、本明細書に開示及び記載される。そのような方法は、ナノろ過工程を、乳分画工程における最終工程として逆浸透後に利用できる。
【0020】
理論に拘束されることは望まないが、最終ナノろ過工程は、そうでない場合は失われ得る、より多くのミネラル、例えば、Ca、Mg、Na及びKの回収及び使用をもたらすと見られている。従って、本明細書に開示される方法の重要な有用性は、出発乳製品(starting milk product)からの付加的ミネラルの抽出であり、それらのミネラルは、そうでない場合は失われる代わりに、酪農組成物の製造に使用され得る。いくつかの場合、NF透過液流中のミネラルの量は、意外なことには、約0.35~約1質量%、又は約0.4~約0.8質量%に及び得る。同じく有利なことには、驚くべき高レベルのナトリウム(約300~800又は約400~700質量ppm)及びカリウム(約1500~3000又は約2000~2500質量ppm)が、NF透過液流中に回収され得る。
【0021】
他の有用性は、非常に高レベルの乳糖、例えばラクトースを含有し、低下したレベルの他の乳成分、例えば低下したタンパク質含量及び/又は低下したミネラル含量を有するNF保持液流である。濃縮されたラクトース流は、医薬用途において、及びラクトース粉末を製造するため、同じく乳酸、ラクトビオン酸又はエタノールへの変換に使用可能である。
【0022】
更に、ナノろ過に先立って逆浸透を行うことにより、実質的にタンパク質、乳糖(ラクトース又はその誘導体)、脂肪、及びミネラルを含まない多量の乳水(milk water)画分(RO透過液)が形成される。この多量のRO透過液流は、有利なことには、製造設備を通じて、例えば、UF保持液又はNF保持液の透析ろ過において、使用可能である。更に、多量の水の除去は、より迅速且つより効率の良いナノろ過操作を可能にする。
【0023】
本発明の一実施形態と一致して、酪農組成物を製造する方法は、(i)乳製品を約3~約15℃の温度で限外ろ過して、UF透過液画分とUF保持液画分とを製造する工程、(ii)該UF透過液画分を逆浸透工程にかけ、RO透過液画分と、少なくとも約8質量%の乳糖(ラクトース若しくはその誘導体)を含有するRO保持液画分とを製造する工程、(iii)該RO保持液画分をナノろ過して、約300~約800ppmのナトリウム及び約1500~約3000ppmのカリウムを含有するNF透過液画分と、少なくとも約10質量%の乳糖(ラクトース若しくはその誘導体)を含有するNF保持液画分とを製造する工程、並びに(iv)該UF保持液画分、DF/UF保持液画分、該NF透過液画分、該RO透過液画分、該RO保持液画分、及び脂肪リッチ画分の少なくとも2つを組み合わせて、該酪農組成物を形成する工程を含み得る(又は(i)、(ii)、(iii)及び(iv)から本質的になり得る、又は(i)、(ii)、(iii)及び(iv)からなり得る)。いくつかの実施形態では、該組み合わせる工程が、少なくとも該UF保持液画分及び該NF透過液画分を組み合わせる工程を含み得る一方、他の実施形態では、該組み合わせる工程が、少なくとも該脂肪リッチ画分、該UF保持液画分、及び該NF透過液画分を組み合わせる工程を含み得る。これら及び他の実施形態では、該UF保持液画分をRO透過液と組み合わせて透析ろ過してもよい。
【0024】
概して、この工程の特徴(例えば、中でも、乳製品、限外ろ過工程及び結果として生じるUF透過液画分とUF保持液画分、ナノろ過工程及び結果として生じるNF透過液画分とNF保持液画分、透析ろ過工程及び結果として生じるDF/UF透過液画分とDF/UF保持液画分、逆浸透工程及び結果として生じるRO透過液画分とRO保持液画分、並びに酪農組成物を形成するために組み合わされる成分の特徴)は、本明細書に独立に記載され、それらの特徴は、開示される方法を更に記載するために任意の組合せで組み合わせることができる。更に、異なる指定がない限り、開示される方法において列挙される工程のいずれかの前、その最中、及び/又はその後に、他の工程段階を行ってもよい。更に、開示される方法のいずれかに従って製造される任意の酪農組成物(例えば、いつでも消費できる完成乳製品)が、本開示の範囲内であり、本明細書に含まれる。
【0025】
ろ過技術(例えば、限外ろ過、ナノろ過、透析ろ過等)は、適切な条件(例えば圧力)下に膜系(又は選択的バリア)を通して混合物を通過させることにより、混合物-例えば乳-中の成分を分離又は濃縮できる。従って、濃縮/分離は、分子径に基づき得る。膜によって保持される流れを、保持液(又は濃縮液)と呼ぶ。膜の細孔を通過する流れを透過液と呼ぶ。開示される、酪農組成物を製造する方法に言及すると、本方法は、(i)乳製品を約3~約15℃の温度で限外ろ過して、UF透過液画分とUF保持液画分とを製造する工程、(ii)該UF透過液画分を逆浸透工程にかけ、RO透過液画分と、少なくとも約8質量%の乳糖(ラクトース又はその誘導体)を含有するRO保持液画分とを製造する工程、(iii)該RO保持液画分をナノろ過して、約300~約800ppmのナトリウム及び約1500~約3000ppmのカリウムを含有するNF透過液画分と、少なくとも約10質量%の乳糖(ラクトース又はその誘導体)を含有するNF保持液画分とを製造する工程、並びに(iv)該UF保持液画分、DF/UF保持液画分、該NF透過液画分、該RO透過液画分、該RO保持液画分、及び脂肪リッチ画分の少なくとも2つを組み合わせて、該酪農組成物を形成する工程を含み得る。
【0026】
工程(i)の乳製品は、脱脂乳若しくはその代わりに全乳を含み得る(又は脱脂乳若しくはその代わりに全乳から本質的になり得る、又は脱脂乳若しくはその代わりに全乳からなり得る)。いくつかの実施形態では、開示される方法が更に、生乳又は新鮮乳(全乳)を乳製品(脱脂乳とも呼ばれる)と脂肪リッチ画分(クリーム又はバター脂肪とも呼ばれる)とに分離(例えば、遠心分離又は精密ろ過)する工程を含む。生乳又は新鮮乳(全乳)は、およそ87質量%の水、3~4質量%のタンパク質、4~5質量%の炭水化物/ラクトース、3~4質量%の脂肪、及び0.3~0.8質量%のミネラルを含有する牛乳であり得る。新鮮乳製品又は生乳製品を、脱脂乳製品と脂肪リッチ画分とに分離する場合、脂肪リッチ画分は、典型的に、高レベルの脂肪(例えば、20~50質量%の脂肪、又は30~50質量%の脂肪)及び固形物(例えば、30~60質量%、又は40~55質量%)を含有し、頻繁にはおよそ1.5~4質量%のタンパク質、2~5質量%のラクトース、及び0.2~0.9質量%のミネラルを含有するが、それらに限定されない。
【0027】
工程(i)では、典型的には0.01~0.1ミクロン範囲にある細孔径を有する限外ろ過膜を使用して、乳製品の限外ろ過を行い得る。酪農産業では、限外ろ過膜は頻繁に、細孔径よりはむしろ分画分子量(MWCO)に基づいて同定される。限外ろ過膜の分画分子量は、1000~100,000ダルトン、又は10,000~100,000ダルトンを変動し得る。例えば、乳製品は、高分子膜系を使用して限外ろ過され得る(セラミック膜も使用できる)。高分子膜系(又はセラミック膜系)は、約1,000ダルトン超、約5,000ダルトン超、又は約10,000ダルトン超の分子量を有する物質が保持されるのに対して、低分子量種は通過するように、細孔径を構成してもよい。例えば、10,000ダルトンの分画分子量を有するUF膜系が、乳タンパク質を分離及び濃縮するために、酪農産業で使用できる。いくつかの実施形態では、限外ろ過の工程が、約0.01~約0.1μmの範囲の細孔径を有する膜系、及び典型的には15~150psig範囲又は45~150psig範囲にある操作圧を使用する。それに限定されないが、限外ろ過工程は頻繁に、約3~約15℃、例えば、約4~約12℃、又は約5~約10℃の範囲の温度で行われ得る。より低温での限外ろ過は、より高温での限外ろ過(例えば、約25~50℃)と比べて優れた製品品質及び感覚刺激特性をもたらし、その上、低温限外ろ過を利用した場合、低温殺菌工程が必要でない。
【0028】
工程(ii)では、RO透過液画分及びRO保持液画分(RO保持液画分は、少なくとも約8質量%の乳糖(ラクトース又はその誘導体)を含有する)を製造するために、UF透過液画分の一部又は全部を逆浸透してもよい。逆浸透は、実質的にすべての残留乳成分が保持され(RO保持液)、水(RO透過液、乳水)のみが通過する精密ろ過工程又は濃縮工程である。頻繁には、逆浸透膜系は、100Daをはるかに下回る分画分子量を有するため、水以外の成分は、逆浸透工程において濃縮される(例えばミネラル)。概して、逆浸透は、約0.001μm以下の細孔径を有する膜系を含む。操作圧は、典型的に、450~1500psig、又は450~600psigの範囲にある。頻繁には、約5~約45℃、又は約15~約45℃に及ぶ温度を使用できる。
【0029】
工程(iii)では、NF透過液画分(約300~約800ppmのナトリウム及び約1500~約3000ppmのカリウムを含有する)とNF保持液画分(少なくとも約10質量%の乳糖(ラクトース又はその誘導体)を含有する)を製造するために、RO透過液画分の一部又は全部をナノろ過工程にかけてもよい。酪農産業でのナノろ過は、典型的に、およそ100~300Da超の分子量を有する粒子を保持する膜エレメントを使用する。ナノろ過は、圧力下に膜を通して液体を押し流し、指定カットオフより大きい分子量を有する物質は保持する一方、より小さい粒子は膜孔を通過する、圧力による工程である。流入流中のラクトースをミネラルから全般的に分離するには、ラクトースの最大保持用の細孔径を選択し得る。限外ろ過と同様に、ナノろ過は、濃縮及び分離の両方ともを同時に行える。
【0030】
RO保持液画分のナノろ過は、典型的には0.001~0.01ミクロン範囲にある細孔径、例えば、約0.001~約0.008μmの範囲にある細孔径を有するナノろ過膜を使用して行われ得る。いくつかの実施形態では、ナノろ過の工程が、0.001~約0.01μmの範囲にある細孔径を有する膜系を、典型的には150~450psigの範囲の操作圧、及び約10~約60℃(又は約15~約45℃)に及ぶ操作温度で利用するが、それに限定されない。
【0031】
場合により、DF/UF透過液画分とDF/UF保持液画分とを製造するために、UF保持液画分-工程(i)で製造したUF保持液画分の一部又は全部-を透析ろ過してもよい。DF/UF透過液画分を、UF透過液と混合してから逆浸透して、結果として生じるRO保持液を次いで、ミネラルを抽出して乳糖(ラクトース又はその誘導体)を分離するためにナノろ過してもよい。概して、透析ろ過工程は、上記のような限外ろ過膜を使用して行う。しかしながら、他の膜を透析ろ過工程に使用してもよい。一実施形態では、UF保持液画分の透析ろ過は、UF保持液画分と水との混合物の透析ろ過工程を含み得る。他の実施形態では、UF保持液画分の透析ろ過が、UF保持液画分とRO透過液画分との混合物の透析ろ過工程を含み得る。更に他の実施形態では、UF保持液画分の透析ろ過が、UF保持液画分、RO透過液画分及び水の混合物の透析ろ過工程を含み得る。これらの混合物は、UF保持液画分、及びRO透過液画分、及び/又は水の任意の適切な割合又は相対量を利用できる。頻繁に、UF保持液画分の透析ろ過は、DF/UF透過液画分(UF保持液から抽出された、乳糖(例えばラクトース)及びミネラルを含む)、並びにDF/UF保持液画分(タンパク質リッチ)をもたらす。
【0032】
UF保持液画分を、限外ろ過膜系に導入する前に、他の成分(例えば、水及び/又はRO透過液画分)と混合(で希釈)する場合、他の成分のUF保持液画分に対する質量比は、頻繁に約0.1:1~約1:1、約0.2:1~約0.8:1、又は約0.3:1~約0.7:1に及ぶが、それらに限定されない。透析ろ過-限外ろ過膜を使用する-は、任意の適切な濃縮率で行うことができ、その非限定的な例は、約1.2~約5、約1.3~約4、約1.2~約3、又は約2~約3を含む。
【0033】
酪農組成物を製造する方法の工程(iv)は、該酪農組成物を形成するために、UF保持液画分、DF/UF保持液画分、NF透過液画分、RO透過液画分、RO保持液画分、及び脂肪リッチ画分の少なくとも2つを組み合わせる工程を含む。該酪農組成物を形成するために、それらの成分の任意の組合せを、任意の適切な相対的割合で混合又は組み合わせ得る。いくつかの実施形態では、少なくともUF保持液画分及びNF透過液画分を組み合わせ得るか、又は少なくとも脂肪リッチ画分、UF保持液画分、及びNF透過液画分を組み合わせ得る。場合により、RO透過液画分及び/又は水を更に、組み合わせる工程において添加してもよい。他の実施形態では、少なくともDF/UF保持液画分及びNF透過液画分を組み合わせ得るか、又は少なくとも脂肪リッチ画分、DF/UF保持液画分、及びNF透過液画分を組み合わせ得る。場合により、RO透過液画分及び/又は水を更に、組み合わせる工程において添加してもよい。
【0034】
更に、材料及び/又は付加的乳画分も、組み合わせる工程において添加可能である。付加的又は代替的に、材料及び/又は付加的乳画分を、組み合わせる工程の後に酪農組成物に添加してもよい。適切な材料の非限定的な例は、糖/甘味料、風味材料、防腐剤(例えば、酵母若しくはカビの増殖を妨げる)、安定化剤、乳化剤、プレバイオティクス物質、プロバイオティクス細菌、ビタミン、ミネラル、オメガ3脂肪酸、フィトステロール、抗酸化剤、又は着色剤等、並びにそれらの任意の混合物又は組合せを含み得る。
【0035】
付加的乳画分は、乳の一成分(タンパク質、ラクトース/糖、脂肪、ミネラル)を、牛乳中に見出されるよりも少なくとも15%多く含有するいずれかの画分を含むと意図される「成分リッチ画分」であり得る。例えば、乳糖リッチ画分は頻繁に、約6~約20質量%の糖(即ち、任意の形、例えば、ラクトース、グルコース、ガラクトース等)、約6~約18質量%の糖、又は約7~約16質量%の糖を含有し得る。ミネラルリッチ画分は、約1~約20質量%のミネラル、約1~約10質量%のミネラル、又は約1.5~約8質量%のミネラルを含有し得る。脂肪リッチ画分は頻繁に、約8~約50質量%の脂肪、約20~約50質量%の脂肪、又は約30~約45質量%の脂肪を含有し得る。
【0036】
これらの成分リッチ乳画分は、本明細書に記載されるように、又は当業者には公知の任意の技術により、例えば、参照により本明細書にその全体が組み込まれている米国特許第7,169,428号(特許文献1)、同第9,510,606号(特許文献2)、及び同第9,538,770号(特許文献3)に開示される膜ろ過工程により製造できる。付加的又は代替的に、成分リッチ乳画分(又は乳画分)は、水と粉末材料(例えば、タンパク質粉末、ラクトース粉末、ミネラル粉末等)とを混合する工程を含む工程により製造され得る。
【0037】
任意の適切な容器及び条件を、本明細書に開示されるいずれかの組み合わせる工程に使用でき、そのような工程は、バッチ式又は連続的に行われ得る。一例として、完成酪農組成物の一組を形成するために、成分を、適切な容器(例えば、タンク、サイロ等)中で大気圧下、場合により撹拌又はミキシングにより、及び場合により1つの材料(若しくは複数の材料)及び/又は1つの付加的乳画分(若しくは複数の乳画分)と共に組み合わせてもよい。他の例として、成分を、パイプ又は他の適切な容器の中で軽い圧力(例えば5~50psig)下、連続的に組み合わせてもよく、場合により材料及び/又は付加的乳画分と混合してもよく、完成酪農組成物は、貯蔵タンクに移すか、又は小売流通及び販売用の容器に充填してもよい。この連続的な組合せ、混合、及び/又は包装に使用可能である代表的なシステムは、tetra aldoseシステム及びtetra flexidoseシステムを含み得る。成分、並びに他の材料及び/又は乳画分を組み合わせる他の適切な方法、システム、及び装置は、本開示からすぐに明らかである。
【0038】
望ましければ、限外ろ過前に乳製品にラクターゼ酵素を添加してもよい、又は組み合わせる工程の前に各成分にラクターゼ酵素を添加してもよい、又は結果として生じる酪農組成物にラクターゼ酵素を添加してもよい。本明細書に記載されるように、酪農組成物を形成するために、成分は、任意の適切な割合で組み合わせ得て、場合により任意の適切な材料及び/又は付加的乳画分を工程(iv)で添加してもよい。付加的又は代替的に、任意の適切な材料及び/又は付加的乳画分を、組み合わせる工程の後に酪農組成物に添加してもよい。
【0039】
本発明の実施形態と一致して、望ましければ、UF保持液画分を、組み合わせる工程の前にラクターゼ酵素で処理してもよい。同様に、望ましければ、DF/UF保持液画分を、組み合わせる工程の前にラクターゼ酵素で処理してもよい。付加的又は代替的に、ラクターゼ酵素を工程(iv)中に添加してもよい、又は酪農組成物を-工程(iv)後に-ラクターゼ酵素で処理してもよい。そのような場合、ラクトース含量は、約1質量%未満、約0.5質量%未満、約0.2質量%未満、又は約0.1質量%未満に低下し得る。
【0040】
場合により、方法は更に、限外ろ過工程の前に、MF透過液画分とMF保持液画分とをもたらす、乳製品(例えば脱脂乳)を精密ろ過する工程を含んでもよい。そのような場合、工程(i)は、UF透過液画分とUF保持液画分とを製造するために、MF透過液画分を限外ろ過する工程を含み得る。精密ろ過は、典型的には0.1~10ミクロン範囲にある比較的大きい細孔径、例えば、約0.2~約2μm、又は約0.1~約0.2μmの範囲にある細孔径を有する精密ろ過膜を使用して行い得る。いくつかの実施形態では、精密ろ過の工程が、約0.1~約0.2μmの範囲にある細孔径を有する膜系を、典型的には約75psig未満(例えば、10~15psig)の操作圧、及び約5~約60℃(又は約35~約55℃)に及ぶ操作温度で利用するが、それに限定されない。
【0041】
頻繁に、精密ろ過膜は、細菌、細菌胞子、体細胞、及び他の外部からの浮遊物を、液状乳から除去するために酪農産業において使用できるため、結果として生じる乳製品の品質及び使用期限を改善する。精密ろ過膜は、チーズ又は乳清チーズから脂肪を分離するため、及び乳脂肪を液状乳から分離するために、遠心分離の代案として使用できる。
【0042】
UF保持液画分及びDF/UF保持液画分のタンパク質含量は、独立に、少なくとも約5質量%、少なくとも約6質量%、少なくとも約7質量%、少なくとも約8質量%、又は少なくとも約9質量%のタンパク質であり得る。UF保持液及びDF/UF保持液のタンパク質含量に関する例示的で非限定的な範囲は、独立に、約5~約20質量%のタンパク質、約6~約18質量%のタンパク質、又は約9~約15質量%のタンパク質を含み得る。
【0043】
同じく、UF透過液画分、UF保持液画分、DF/UF透過液画分、及びDF/UF保持液画分の乳糖(ラクトース又はその誘導体)含量は、それに限定されないものの、独立に、約7質量%以下、又は約6質量%以下であり得るが、約3質量%以上、又は約3.5質量%以上であり得る。
【0044】
NF保持液画分の乳糖(ラクトース又はその誘導体)含量は、少なくとも約8質量%、少なくとも約10質量%、少なくとも約14質量%、少なくとも約17質量%、又は少なくとも約20質量%の乳糖(ラクトース又はその誘導体)であり得るが、それに限定されない。NF保持液画分の乳糖含量に関する例示的で非限定的な範囲は、約10~約28質量%、約15~約28質量%、約15~約25質量%、約20~約28質量%、又は約20~約25質量%の乳糖(例えば、ラクトース又はその誘導体)を含み得る。NF保持液画分の固形分は概して、少なくとも約15質量%、少なくとも約20質量%、又は少なくとも約22質量%であり、頻繁には25~30質量%までに及び得る。NF保持液画分は、最小量のタンパク質、典型的には約1質量%未満、約0.7質量%未満、約0.5質量%未満、又は約0.3質量%未満のタンパク質を含有する。NF保持液画分は、頻繁に、約0.8~約2質量%のミネラル、例えば、約1~約1.8質量%のミネラルを含有する。
【0045】
NF透過液画分は概して、1質量%未満の固形物、並びに単に最小量の乳糖(例えばラクトース)及びタンパク質を含有する。意外なことに、NF透過液は、著しい量のミネラルを含有し、頻繁に約0.35~約1質量%、例えば約0.4~約0.8質量%に及ぶ。同じく有利なことには、高レベルのナトリウム-約300~約800ppm又は約400~約700ppm-及びカリウム-約1500~約3000ppm又は約2000~約2500ppm-がNF透過液流中に存在し得る。これらのppm量は、質量ppmである。
【0046】
逆浸透工程の後のRO保持液画分は、著しい量の乳糖(ラクトース又はその誘導体)、例えば少なくとも約8質量%又は少なくとも約10質量%、頻繁に約14~18質量%までを含有し、0.6~1.8質量%の範囲又は0.7~1.2質量%の範囲のミネラルを含有する。概して、RO透過液(乳水)画分は、実質的に、乳成分-脂肪、タンパク質、乳糖(例えばラクトース)及びミネラル-のいずれも含まない。例えば、乳水画分は、約0.1質量%以下の乳糖(例えばラクトース)、及び約0.1質量%以下のミネラルを含有し得る。更に、乳水画分は、約0.1質量%以下の脂肪、及び約0.1質量%以下のタンパク質、及び少なくとも約95質量%の水、少なくとも約98質量%の水、少なくとも約99質量%の水、又は少なくとも約99.5質量%の水を含有し得る。
【0047】
本発明の方法の実施形態と一致する適切な分離工程10の例示的で非限定的な一例を
図1に示す。まず、新鮮全乳(生乳)15を、クリーム28と脱脂乳製品22とに分離20する。次いで、該脱脂乳製品22を、例えば、本明細書に記載される高分子膜系を介して限界ろ過30し、頻繁にはタンパク質リッチ乳画分と呼ばれるUF保持液38と、乳糖(ラクトース又はその誘導体)及びミネラルを含有するUF透過液32とを得る。次いで、該UF透過液32を逆浸透40し、乳糖(ラクトース又はその誘導体)及びミネラルを含有するRO保持液48と、本質的に水からなるRO透過液42とを得る。次いで、該RO保持液48をナノろ過50し、NF透過液52(ミネラルリッチである)とNF保持液58(乳糖リッチである)とを得る。場合により、
図1中のUF保持液38の一部又は全部を、RO透過液42と混合して透析ろ過60し、DF/UF透過液画分62とDF/UF保持液画分68(タンパク質リッチである)とを得る。
【0048】
図1中の酪農組成物80は、UF保持液画分38、DF/UF保持液画分68、NF透過液画分52、RO透過液画分42、及びクリーム28(脂肪リッチ画分)を、任意の適切な割合で、組み合わせる又は混合する工程により形成される。必要に応じて、成分の混合前、又は酪農組成物80の形成後に、成分をラクターゼ酵素72、74、76で処理してもよい。続いて、酪農組成物80を、熱処理85してから、冷却及び包装90する。
【0049】
本明細書に開示される、酪農組成物を製造するための改善された方法の実施形態と一致して、これらの方法は更に、望ましければ、それぞれの酪農組成物をラクターゼ酵素で処理する工程を含み得る。従って、ラクトース含量は、約1質量%未満、約0.5質量%未満、約0.2質量%未満、又は約0.1質量%未満に低下し得る。
【0050】
更に、それらの方法は更に、酪農組成物を熱処理する工程を含み得る。一実施形態では、該熱処理工程が、約80℃~約95℃の範囲の温度での約2~約15分の範囲の時間にわたる低温殺菌を含み得る。他の実施形態では、該熱処理工程が、約135℃~約145℃の範囲の温度での約1~約10秒の範囲の時間にわたるUHT殺菌を含み得る。更に他の実施形態では、該熱処理工程が、約148℃~約165℃の範囲の温度での約0.05~約1秒の範囲の時間にわたる超UHT殺菌を含み得る(例えば、155℃でおよそ0.1秒)。他の適切な、低温殺菌又は殺菌の温度及び時間条件が、本開示からすぐに明らかである。更に、本発明は、低温殺菌/殺菌工程を行うために使用する方法又は装置によって限定されず、バッチ式に操作されようと連続的に操作されようと、任意の適切な技術及び装置が使用可能である。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態では、酪農組成物を製造するための改善された方法が、熱処理工程の後に更に、任意の適切な容器への任意の適切な条件下での酪農組成物の包装工程(無菌又は他のやり方)を含み得る。従って、酪農組成物を形成するために、本明細書に記載される様々な成分、材料、及び付加的乳画分を組み合わせた後、酪農組成物を、無菌条件(又は非無菌条件)下に容器に包装できる。酪農製品の、小売店での流通及び/又は販売に使用可能であるような任意の適切な容器が使用可能である。典型的な容器の例示的で非限定的な例は、カップ、ボトル、バッグ、ポーチ等を含む。該容器は、任意の適切な材料、例えば、ガラス、金属、プラスチック等、並びにそれらの組合せからなり得る。
【0052】
それに限定されないが、酪農組成物は、約1~約15質量%、又は約3~約10質量%のタンパク質含量を有し得る。付加的又は代替的に、酪農組成物は、約0.05~約10質量%、又は約0.1~約5質量%の脂肪含量を有し得る。付加的又は代替的に、酪農組成物は、約0.5~約2質量%のミネラル含量を有し得る。付加的又は代替的に、酪農組成物は、約4質量%以下のラクトース含量を有し得る。
【0053】
本発明と一致する酪農組成物の代表的で非限定的な例は、約0.5質量%以下の脂肪、約2~約15質量%のタンパク質、約0.5~約2質量%のミネラル、及び約4質量%以下のラクトースを含有し得る。本発明と一致する酪農組成物の他の代表的で非限定的な例は、約0.5~約1.5質量%の脂肪、約2~約15質量%のタンパク質、約0.5~約2質量%のミネラル、及び約4質量%以下のラクトースを含有し得る。本発明と一致する酪農組成物の更に他の代表的で非限定的な例は、約1.5~約2.5質量%の脂肪、約2~約15質量%のタンパク質、約0.5~約2質量%のミネラル、及び約4質量%以下のラクトースを含有し得る。更に、本発明と一致する酪農組成物の他の代表的で非限定的な例は、約2.5~約5質量%の脂肪、約2~約15質量%のタンパク質、約0.5~約2質量%のミネラル、及び約4質量%以下のラクトースを含有し得る。
【0054】
本明細書に開示される方法により製造され得る典型的な酪農組成物の更なる非限定的な例は、全乳、低脂肪乳、脱脂乳、バターミルク、フレーバーミルク、低ラクトース乳、高タンパク質乳、無ラクトース乳、限外ろ過乳、精密ろ過乳、濃縮乳、無糖練乳、高タンパク質乳、高カルシウム乳、及び低糖乳(reduced sugar milk)等を含む。
【実施例】
【0055】
本発明を更に、本発明の範囲に課される限定といずれにせよ解釈されるべきではない以下の実施例により例証する。本明細書の記載を読んだ後、当業者には、本発明の趣旨又は添付クレームの範囲から逸脱することなく、様々な他の態様、実施形態、改変、及びそれらの均等物が思い浮かび得る。
【0056】
全固形物(質量%)は、試験法SMEDP 15.10 Cに従い、CEMターボ固形分/水分分析計(CEM Corporation社、Matthews、North Carolina)により特定した。灰分は、適切な装置中の550℃で恒量まで燃焼した後に残る残留物であり、550℃でのそのような処理は、典型的には、すべての有機物を除去し、残存物は主にミネラルである(Standard Methods for the examination of dairy products、第17版(2004年)、American Public Health Association、Washington DC(非特許文献1))。灰分試験は、Phoenix(CEMマイクロ波炉)を使用して行い、試料を550℃で30分間加熱した。灰分含量(又はミネラル含量)は、質量%で特定した。
【0057】
Ca、Mg、Na及びKの特定含量は、Perkin Elmer原子吸光分光光度計を使用して特定した。タンパク質を沈殿させるために試料をトリクロロ酢酸で処理し、ろ過液を、原子吸光分光光度計で分析した。タンパク質含量、脂肪含量、及びラクトース含量は、AOAC(公認分析化学者協会(Association of Official Analytical Chemists))法により特定した。
【0058】
図1に概説される工程に従って、実施例1では、生乳(5℃未満)を、遠心分離機により脂肪リッチ画分(クリーム)と無脂肪画分(無脂肪乳又は脱脂乳)とに分離した。該遠心分離工程は、5℃未満の温度で行った。次いで、5℃の脱脂乳を、10,000ダルトン(Da)超の分子量を有するあらゆる分子がUF保持液中に保持される細孔径を有するUF膜を通過させることにより、タンパク質リッチ画分(UF保持液)とラクトースリッチ画分(UF透過液)とに分画し、該UF保持液は、11.9質量%の平均タンパク質含量及び0.4質量%の脂肪含量を有した。該UF透過液は、5.62~5.77質量%の全固形物、0.10~0.15質量%のタンパク質、0.46~1.15質量%の灰分、及び6.7~6.9のpH範囲を有した。このUF透過液を、ROスパイラル型高分子エレメント(Koch Membranes社、長さ0.95メートル及び直径0.095メートル)を含有するROユニット(GEA Model R Pilot Unit、GEA Process Engineering Inc.社)中で濃縮した。RO工程中の温度は、400~500psigの圧力下、6~19℃を変動した。次いで、RO濃縮液(RO保持液)を、NFシステム(GEA Model R Pilot Unit、GEA Process Engineering Inc.社)においてNF膜エレメント(NF-200、スパイラル型膜エレメント、分画分子量200Da、直径3インチ、長さ0.95メートル;直径0.095メートル)を使用して、12~26℃範囲の温度で脱灰した。
【0059】
Table I(表1)は、実施例1の8時間の実験中のUF透過液画分、UF保持液画分、RO透過液画分、RO保持液画分、NF保持液画分、及びNF透過液画分のそれぞれの平均組成をまとめる。Table I(表1)中、ミネラル含量(質量%)は概して灰分含量(質量%)と類似したため、灰分試験の結果を、本開示での総ミネラル含量の定量に使用する。Table I(表1)は、乳画分の各々に関して、それぞれのCa、Mg、Na及びKの平均含量を質量ppmでまとめる。
【0060】
酪農組成物は、UF保持液、NF透過液、RO濃縮液、RO透過液、及びクリームの混合により製造した。ラクトースをグルコースとガラクトースとに変換するために、熱処理前に、4℃で16時間、市販のラクターゼ酵素を酪農組成物に添加した。Table II(表2)は、実施例1からの乳画分及び比較乳画分(UF、次いでNF、次いでROを使用して調製)を使用して調製した酪農組成物をまとめる。目的は、実質的に同じである酪農組成物を得ることであったため、比較例及び実施例1には、わずかに異なるブレンドを使用した。6人からなるパネルが、3点識別試験を使用して、試料の官能特性を略式に評価した(即ち、パネリストに、1つの異なる試料と2つの同様試料を提示し、各試料を味見して、異なる試料を同定するようパネリストに指示した)。パネルは、実施例1の組成物と比較組成物との間のいかなる差異も区別できなかった。
【0061】
Table III(表3)は、UF/RO/NFを使用したシミュレーション実験である発展的実施例(Constructive Example)2をまとめ、Table IV(表4)は、従来のUF/NF/ROを使用したシミュレーション比較実験をまとめる。これらのシミュレーションは、UF/RO/NF工程とUF/NF/RO工程との直接比較を提供するため、及び逆浸透を最終ナノろ過工程の前に行う実施例2のUF/RO/NF工程の有用性を示すために行った。意外且つ有利なことには、実施例2のUF/RO/NF工程は、従来のUF/NF/RO工程よりも、多くの水を回収でき(水を購入する必要なしに、製造設備の他の部分での使用向け)、多くのミネラルを回収でき、且つ多くの濃縮ラクトース流をもたらし得る。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【符号の説明】
【0067】
10 分離工程
15 新鮮全乳(生乳)
20 分離
22 脱脂乳製品
28 クリーム
30 限界ろ過
32 UF透過液
38 UF保持液
40 逆浸透
42 RO透過液
48 RO保持液
50 ナノろ過
52 NF透過液
58 NF保持液
60 透析ろ過
62 DF/UF透過液画分
68 DF/UF保持液画分
72 ラクターゼ酵素
74 ラクターゼ酵素
76 ラクターゼ酵素
80 酪農組成物
85 熱処理
90 冷却及び包装
【国際調査報告】