(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-03
(54)【発明の名称】水指示ペースト組成物
(51)【国際特許分類】
G01N 31/00 20060101AFI20230224BHJP
G01N 31/22 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
G01N31/00 B
G01N31/22 122
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538847
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(85)【翻訳文提出日】2022-08-19
(86)【国際出願番号】 IB2020001082
(87)【国際公開番号】W WO2021130536
(87)【国際公開日】2021-07-01
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エンドリト・シュルダ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ダブリュー・ヘイゼル
【テーマコード(参考)】
2G042
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BA04
2G042BA07
2G042BB01
2G042CB03
2G042DA08
2G042FA11
2G042FB04
(57)【要約】
水性液体との接触に際に検知可能な色の変化を生じることができる視覚指示ペースト組成物が提供される。ペースト組成物は、約3から約11の間のpH範囲で色を変化させることができる指示染料と;水と反応してより塩基性の高い物質に変換できる無機塩基と;液体担体(例えばポリアルキレングリコール担体)と;任意選択で、ゲル化剤、例えばシリカゲルと;プロトン供与性化合物、例えばカルボン酸又は有機スルホン酸とを含む。ペースト組成物は、測定プローブに塗布した場合、水性液体との接触に際ににじみや流出を伴わない明確な検知可能な色の変化を生じることによって、燃料、例えばガソリンを収容するタンク及び配送システムの底の水レベルを検出するように特に適合されている。ペースト組成物は、保存寿命の延長と耐水性の向上を呈する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性液体との接触に際に検知可能な色の変化を生じさせるためのペースト組成物であって、
a)約3から約11の間のpH範囲で色を変化させることができる少なくとも1種の指示染料と、
b)水と反応して第1の無機塩基を第1の無機塩基よりも塩基性の高い第2の無機塩基に変換することができる、少なくとも1種の第1の無機塩基と、
c)少なくとも1種の液体担体と、
d)任意選択で、少なくとも1種のゲル化剤と、
e)最大で12、好ましくは最大で10、より好ましくは最大で8のpKaを有する少なくとも1種のプロトン供与性化合物と
を含む、ペースト組成物。
【請求項2】
少なくとも1種のプロトン供与性化合物が少なくとも1種の有機酸を含む、請求項1に記載のペースト組成物。
【請求項3】
少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、カルボン酸、有機スルホン酸、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の有機酸を含む、請求項1又は2に記載のペースト組成物。
【請求項4】
少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、C6~C24脂肪族カルボン酸、C6~C18アルキル化アリールスルホン酸、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の有機酸を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【請求項5】
少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、ノナン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の有機酸を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【請求項6】
少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、25℃の水に対して0.01g/L~75g/Lの溶解度を有する少なくとも1種のプロトン供与性化合物を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【請求項7】
少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、少なくともゼロのpKaを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【請求項8】
少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、ペースト組成物が調製される際に存在する水及び第2の無機塩基の総量に対して化学量論的に過剰で存在する、請求項1から7のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【請求項9】
ペースト組成物を25℃で相対湿度70%の空気に少なくとも10分間曝露した際に、色の変化に対してペースト組成物を安定化させるのに有効な量の、少なくとも1種のプロトン供与性化合物を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【請求項10】
25℃の水に接触させてから1分以内にペースト組成物が色の変化を呈することを可能にするのに有効な量の、少なくとも1種のプロトン供与性化合物を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【請求項11】
合計で約0.01~約5質量パーセントの少なくとも1種のプロトン供与性化合物を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【請求項12】
少なくとも1種の第1の無機塩基と少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、第1の無機塩基:プロトン供与性化合物の質量比を1:1~100:1にするのに有効な量で存在する、請求項1から11のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【請求項13】
少なくとも1種の指示染料が、水溶性の少なくとも1種の指示染料を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【請求項14】
少なくとも1種の指示染料が、o-クレゾールフタレイン、フェノールフタレイン、p-ナフトールベンゼイン、エチルビス(2,4-ジニトロフェノール)アセテート、チモールフタレイン、ナイルブルーA、クレゾールレッド、ブロモフェノールブルー、及びチモールブルーからなる群から選択される少なくとも1種の指示染料を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【請求項15】
少なくとも1種の第1の無機塩基がCaOを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【請求項16】
少なくとも1種の液体担体が少なくとも1種のポリアルキレングリコールを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【請求項17】
水性液体との接触に際に検知可能な色の変化を生じさせるためのペースト組成物を作製する方法であって、
a)約3から約11の間のpH範囲で色を変化させることができる少なくとも1種の指示染料、
b)水と反応して第1の無機塩基を第1の無機塩基よりも塩基性の高い第2の無機塩基に変換することができる、少なくとも1種の無機塩基、
c)少なくとも1種の液体担体、
d)任意選択で、少なくとも1種のゲル化剤、及び
e)最大で12、好ましくは最大で10、より好ましくは最大で8のpKaを有する少なくとも1種のプロトン供与性化合物
を組み合わせる工程を含む、方法。
【請求項18】
a)少なくとも1種のポリアルキレングリコール、少なくとも1種の指示染料、及び少なくとも1種のプロトン供与性化合物を組み合わせて、第1の混合物を得る工程と、
b)第1の混合物を少なくとも1種の無機塩基と組み合わせて第2の混合物を得る工程と、
c)任意選択で、第2の混合物を少なくとも1種のゲル化剤と組み合わせてペースト組成物を得る工程と
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1種のプロトン供与性化合物が少なくとも1種の有機酸を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、カルボン酸、有機スルホン酸、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の有機酸を含む、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、C6~C24脂肪族カルボン酸、C6~C18アルキル化アリールスルホン酸、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の有機酸を含む、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、ノナン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の有機酸を含む、請求項17から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、25℃の水に対して0.01g/L~75g/Lの溶解度を有する少なくとも1種のプロトン供与性化合物を含む、請求項17から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、少なくともゼロのpKaを有する、請求項17から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
ペースト組成物が調製される際に存在する水及び第2の無機塩基の総量に対して、化学量論的に過剰な量の少なくとも1種のプロトン供与性化合物が用いられる、請求項17から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ペースト組成物を25℃で相対湿度70%の空気に少なくとも10分間曝露した際に、色の変化に対してペースト組成物を安定化させるのに有効な量の、少なくとも1種のプロトン供与性化合物が用いられる、請求項17から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
25℃の水に接触させてから1分以内にペースト組成物が色の変化を呈することを可能にするのに有効な量の、少なくとも1種のプロトン供与性化合物が用いられる、請求項17から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
ペースト組成物が、合計で約0.01~約2質量パーセントの少なくとも1種のプロトン供与性化合物を含む、請求項17から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1種の指示染料が、水溶性の少なくとも1種の指示染料を含む、請求項17から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも1種の指示染料が、o-クレゾールフタレイン、フェノールフタレイン、p-ナフトールベンゼイン、エチルビス(2,4-ジニトロフェノール)アセテート、チモールフタレイン、ナイルブルーA、クレゾールレッド、ブロモフェノールブルー、及びチモールブルーからなる群から選択される少なくとも1種の指示染料を含む、請求項17から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
請求項17から30のいずれか一項に記載の方法によって得られるペースト組成物。
【請求項32】
中に内容物が入っている容器内の水性液体を検出する方法であって、請求項1から16又は31のいずれか一項に記載のペースト組成物の層を上に配置した測定プローブを、容器の内容物に接触させる工程と、測定プローブを容器から引き抜く工程と、ペースト組成物と水性液体との相互作用によって生じる色の変化について、ペースト組成物の層を目視で検査する工程とを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定化させた視覚指示ペースト組成物、並びに炭化水素、例えばガソリン、油又は他の燃料及び石油留分と混合された場合の水性液体の存在、特にレベルを検出するためのその利用に関する。より詳細には、本発明は、炭化水素貯蔵タンク、配送車両、分配システム等に一般に分離相として少量で存在し得る水性液体との接触するにより色の変化を受けることができる、安定化させた視覚指示ペースト組成物に関する。本発明の組成物は、炭化水素で部分的に満たされたタンク内に存在する水の量を判定するためにガソリン貯蔵及び輸送タンクの底の水レベルを判定する際に、並びに水が含酸素配合成分、例えばエーテル及びアルコールを含有する場合に使用するように特に適合させている。
【背景技術】
【0002】
水のレベル又は存在を検出できるペースト組成物が、先行技術において開示されてきた。
【0003】
例えば、米国特許第4,699,885号には、水性液体との接触に際に検知可能な色の変化を生じさせるための視覚指示ペースト組成物が開示されており、組成物は、約7から11の間のpH範囲で色を変化させることができる水溶性指示染料と、水を吸収することができるが、水又は炭化水素によって急速に浸出しない、液体担体に分散させた苛性粉末の形態の不溶性無機塩基とを含む。中国公開出願第CN103173206号は、同様のペースト組成物を開示する。しかし、前記出願に開示されている水指示ペーストは、1つ又は複数の発生源に由来する微量の水の導入により保存中に色が変わる場合があることが見出されている。したがって、ペーストの製造又は保存中に高湿度条件が存在する場合に水がペーストに侵入したり、ユーザがペーストを塗布するたびに容器を開けている間に水がペーストに吸収されたりする場合がある。加えて、ペーストの調合時に用いられる原材料、例えば液体担体と共に水が導入される場合もある。
【0004】
米国特許第4,717,671号は、米国特許第4,699,885号に開示されている組成物と同様の視覚指示ペースト組成物を記載し、組成物は、ポリアルキレングリコール担体に対して混和性又は可溶性であり、水との接触により加水分解されてホウ酸又はその塩を生じることができるホウ素含有化合物、例えばホウ酸エステルの水分抑制量を含ませることによって、保存寿命の延長と耐水性の向上を達成している。発明者らは、そのようなホウ素含有化合物の代わりに「酸、無水物、塩、酸化物、分子篩吸着剤及び活性金属化合物を含む他の添加される有機化合物を用いる試みは、全て失敗した」と報告している。
【0005】
米国特許第6,376,250B1号は、高分子量ポリオールである液体担体、アルカリ土類酸化物から選択される苛性粉末、ゲル化剤、界面活性剤、充填材、指示染料及び中性染料を含む視覚指示ペースト組成物への水捕捉剤としてのアルミニウムイソプロポキシドの組込みを記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,699,885号
【特許文献2】中国公開出願第CN103173206号
【特許文献3】米国特許第4,717,671号
【特許文献4】米国特許第6,376,250B1号
【特許文献5】米国特許第4,578,357号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の開発にもかかわらず、そのようなペースト組成物の製造、保存、及び/又はそれらが保存された容器が一定期間にわたり繰り返し開けられることによる周辺の雰囲気への度重なる曝露の結果として接触し得る少量の水分の悪影響に対し、水指示ペースト組成物を効果的に安定化させる代替的方法に対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、保存寿命の延長と耐水性の向上を呈する一方で、それと同時に、水性液体及び炭化水素に対する低溶解度と、適用される基材への良好な接着性を特徴とする、安定化させた視覚指示ペーストを提供する。本発明の他の態様には、そのような安定化させた視覚指示ペーストを作製する方法が含まれる。
【0009】
本発明の他の実施形態において、炭化水素を収容するタンク及び配送システムの底にある水性液体(例えば、水又は水を含酸素配合成分、例えばアルコール及びエーテルと組み合わせて含有する液体)のレベルを特定するのに有用な、安定化させた視覚指示組成物をその上にコーティングした測定プローブが提供される。容器内のそのような水性液体のレベルを測定するためにそのようなプローブを利用する方法も提供される。
【0010】
今回、(i)約3から約11の間のpH範囲で色を変化させることができる指示染料と、(ii)無機塩基(典型的には1種又は複数のポリアルキレングリコールをベースとする液体担体に分散されている)と、(iii)任意選択でゲル化剤とで構成されるペースト組成物が、12以下のpKaを有する1種又は複数のプロトン供与性化合物を比較的少量含有する場合、そのようなプロトン供与性化合物を欠くペーストと比較して、保存寿命と耐水性のかなりの向上を呈することが発見された。この発見は、特に、酸、例えばアジピン酸及びステアリン酸を使用して水の悪影響に対して同様のペースト組成物を安定化させる試みは成功しなかったという米国特許第4,578,357号の教示に照らすと、驚くべきものであった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によると、12以下のpKaを有する任意のプロトン供与性化合物、又はそのようなプロトン供与性化合物の組合せが、本発明のペースト組成物における安定剤として用いることが可能である。他の実施形態によると、プロトン供与性化合物のpKaは、11以下、10以下、9以下、又は8以下である。他の実施形態において、プロトン供与性化合物のpKaは、-3以上、-2以上、-1以上、又は0以上であることが好ましい。例えば、プロトン供与性化合物のpKaは、-3~12、-2~10、又は0~8の範囲であってもよい。プロトン供与性化合物が2つ以上のプロトンを供与することができる場合(例えば、ジカルボン酸、例えばクエン酸の場合等)、本明細書で使用するpKaは、最も低いpKa値、即ち、pKa1を指す。化合物のpKaは、当技術分野で公知の従来の方法により判定可能であり、公知の化合物のpKaを記載する多くの異なる情報源が容易に利用可能である。
【0012】
本発明のある特定の他の実施形態において、プロトン供与性化合物又はそのような化合物の組合せが、ペースト組成物の液体担体(例えば、ポリアルキレングリコール)成分に対して完全に混和性又は可溶性であることが有利な場合がある。
【0013】
本発明のある特定の態様によると、プロトン供与性化合物は、少なくとも部分的に水溶性である。しかし、好ましくは、プロトン供与性化合物の水溶性は、限定的である(即ち、プロトン供与性化合物は、あらゆる割合で水に自由に可溶なわけではない)。例えば、プロトン供与性化合物は、25℃の水に対して少なくとも0.01g/L又は少なくとも0.05g/Lの溶解度を有してもよい。他の例において、プロトン供与性化合物は、25℃の水に対して75g/L以下又は60g/L以下の溶解度を有してもよい。
【0014】
プロトン供与性化合物は、好ましくは有機化合物、例えば有機酸である。本発明の目的に適した酸としては、カルボン酸(1つ又は複数の-CO2H基を含有する有機化合物)、及び有機スルホン酸(1つ又は複数の-SO3H基を含有する有機化合物)が挙げられるが、これらに限定されない。有機酸は、脂肪族有機酸(酸官能基が脂肪族炭素原子上で置換されていることを意味する)、又は芳香族有機酸(酸官能基が芳香族炭素原子上で置換されていることを意味する)であってもよい。1つ又は複数の脂肪族部分と1つ又は複数の芳香族部分とを含有する有機酸を用いることも可能である。
【0015】
本発明において有用な適切なプロトン供与性化合物の例としては、C6~C24脂肪族モノカルボン酸(飽和でも不飽和でもよく、直鎖状でも分枝状でもよく、又は1つ又は複数の脂肪族環構造を含有してもよい)及びC4~C8脂肪族ジカルボン酸(飽和でも不飽和でもよく、直鎖状でも分枝状でもよい)を含むC4~C24脂肪族カルボン酸、並びにC6~C18アルキル化アリールスルホン酸(即ち、C6~C18アルキル基とスルホン酸基が芳香族環、例えばベンゼン環に結合している化合物)、例えばノナン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、アジピン酸、コハク酸、及びこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
プロトン供与性化合物、又はプロトン供与性化合物の組合せは、水分に対する所望のレベルの安定化又は阻害を示すのに十分な量でペースト組成物に用いられる。同時に、そのような量は、所望の期間内(典型的には、25℃のそのような水性液体に接触させると1分未満で)に水性液体を検出するという意図された目的に使用された場合に、ペースト組成物の色が変わる能力を阻害するような多量であってはならない。したがって、ある特定の実施形態によると、ペースト組成物は、ペースト組成物を25℃で相対湿度70%の空気に少なくとも10分間曝露した際に、色の変化に対してペースト組成物を安定化させるのに有効な量の、少なくとも1種のプロトン供与性化合物を含む。なお更なる実施形態において、ペースト組成物は、25℃の純水に接触させてから1分以内又は30秒以内にペースト組成物が色の変化を呈することを可能にするのに有効な量の、少なくとも1種のプロトン供与性化合物で構成される。本発明のある特定の実施形態においては、前述の基準の両方が満たされてもよい(即ち、ペースト組成物は、ペースト組成物を25℃で相対湿度70%の空気に少なくとも10分間曝露した際に、色の変化に対してペースト組成物を安定化させ、25℃の純水に接触させてから1分以内又は30秒以内にペースト組成物が色の変化を呈することを可能にすることの両方に有効な量の、少なくとも1種のプロトン供与性化合物を含んでもよい)。一般に、プロトン供与性化合物は、ペースト組成物の総質量に対して約0.01~約5パーセントの範囲の濃度で本発明のペースト組成物中に存在してもよい。プロトン供与性化合物の量は、諸要因のうち、選択された特定のプロトン供与性化合物、プロトン供与性化合物のpKa値、及び無機塩基の種類と量に基づいて適宜調節してもよい。
【0017】
ある特定の実施形態によると、少なくとも1種の第1の無機塩基と少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、第1の無機塩基:プロトン供与性化合物の質量比を1:1~100:1にするのに有効な量で存在する。他の実施形態によると、少なくとも1種のプロトン供与性化合物は、ペースト組成物が調製される際に存在する水及び第2の無機塩基の総量に対して化学量論的に過剰でペースト組成物中に存在する。
【0018】
本発明の安定化させた視覚指示ペースト組成物は、25℃で水又は水性液体、即ち、水を含有する液体、例えば水含有含酸素炭化水素との接触により、用いる指示染料に応じ、一般に約60秒以内又は約30秒以内、通常は約5~15秒以内に色が変わる。含酸素炭化水素は、例えば、低級アルコール、例示的にはメタノール、エタノール、第3級ブチルアルコール、第2級ブチルアルコール及びこれらの混合物;低級ポリオール、例えばアルキレングリコール、並びに低級ケトン、例えばアセトン及びメチル第3級ブチルエーテル等から選択されてもよい。「水性液体」という用語は、本明細書においては、そのような水と同様の化学的特性を有する物質を、本発明の組成物の色の変化をもたらさない「油性液体」、即ち、燃料、石油又は炭化水素油等とは区別して指定するために用いられる。上記において言及される水性液体は、約95%までの含酸素炭化水素を含有してもよく、典型的には、炭化水素から水層に浸出される炭化水素、例えばガソリン中の含酸素配合成分の使用から得ることができるものである。ある特定の実施形態によると、水性液体は、1種又は複数の非水成分、例えば含酸素配合成分中に水が溶解若しくは可溶化している、又は1種又は複数の非水成分が水中に溶解若しくは可溶化している、均質な液体又は溶液の形態である。
【0019】
本発明のペースト組成物に用いられる指示染料は、好ましくは水溶性染料であり、商業的供給源から微細な無水結晶性粉末として容易に入手可能なものである。一般に、染料粒子は、約200ミクロン以下の直径を呈する。これらの染料は、ペースト組成物を水に接触させると、約3から約11の間のpH範囲でペースト組成物の色の変化をもたらすことができることが特徴である。典型的には、最初に調合されるペースト組成物は、第1のpH値と、第1のpH値での指示染料の色の結果としての第1の色を有することが特徴である。ペースト組成物を水性液体に接触させると、水性液体中に存在する水がペースト組成物中に存在する第1の無機塩基(例えば、酸化カルシウム)と相互作用して、第1の無機塩基よりも塩基性の高い第2の無機塩基(例えば、水酸化カルシウム)を形成すると考えられる。第2の無機塩基の形成は、pH値の上昇をもたらす、即ち、ペースト組成物が第1のpH値よりも高い第2のpH値を呈するようになる。第2のpH値は、第1のpH値よりも指示染料の色を変化させるよう十分に高い。例えば、指示染料は、第1のpH値では無色であるが、第2の(より高い)pH値では青色又は紫色であってもよい。
【0020】
そのような指示染料は通常、所望の色の変化を示すのに十分な量でペースト組成物の成分として用いられる。一般に、そのような染料は、ペースト組成物の総質量に対して約0.05から約5パーセントの間、好ましくは約0.1から約3パーセントの間の範囲の濃度で用いられてもよい。本発明の組成物における構成要素として用いることができる代表的な指示染料としては、フェノールフタレイン、o-クレゾールフタレイン、p-ナフトールベンゼイン、エチルビス(2,4-ジニトロフェノール)アセテート、チモールフタレイン、ナイルブルーA、クレゾールレッド、ブロモフェノールブルー、及びチモールブルーが挙げられるが、これらに限定されない。使用される指示染料は、その規制状況及び/又は毒性特性に基づいて選択してもよい。
【0021】
本発明の視覚指示ペースト組成物の構成要素として用いられる無機塩基は、液体担体中では有意な程度には溶解もイオン化もしないが、水に容易に溶解できる(直接、又は水と反応して水酸化カルシウムを形成する酸化カルシウムの場合のように、水との反応の結果としてのいずれかで)ものでなければならない。本発明の実施形態によると、無機塩基は、細かく分割された粒子の形態で、例えば、粉末としてペースト組成物中に存在する。本発明のある特定の実施形態によると、無機塩基の細かく分割された粒子は、液体担体中に分散されていてもよい。一般に、アルカリ土類酸化物、水酸化物、若しくはこれらの混合物の無水固体形態、又はin situでアルカリ土類酸化物若しくは水酸化物を生成する任意の化合物、例えばアルカリ土類水素化物が、本発明のペースト組成物への使用に適している。これらの材料は、細かく分割された工業銘柄の結晶性粉末の形態であってもよく、商業的供給源から容易に入手可能なものである。本発明に従い用いることができる典型的な無機塩基には、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、酸化バリウム、水酸化バリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、及びこれらの金属の水素化物、例えば水素化カルシウムが含まれる。アルカリ土類酸化物、例えば酸化カルシウム(CaO)が本発明における使用にとりわけ適している。
【0022】
無機塩基の選択は、一つには、ペースト組成物の調合時に用いられる特定の指示染料又は指示染料の組合せに依存することになる。例えば、無機塩基は、最初に調合されるペースト組成物に、同じくペースト組成物中に存在する指示染料が第1の色(又は無色)となるpHを付与するように選択されてもよい。
【0023】
一般に、無機塩基は、本発明のペースト組成物に特徴的な望ましい感水性特性を示すため、ペースト組成物の約1~約25質量パーセント、好ましくは約5から約20質量パーセントの間の範囲の濃度で用いられる。
【0024】
本発明のペースト組成物用のビヒクルとして、水を吸収することができるが、水によって、又はペースト組成物をその意図された使用中に接触させる炭化水素によって容易に浸出されない液体担体が用いられる。この文脈において、「液体担体」という用語は、25℃で液体である担体を指す。他の組成物原材料に対して不活性である、そのような特性を呈する任意の有機化合物、又はその混合物を用いることができる。液体担体の他の望ましい特性は、良好なペーストの稠度のために十分に高い粘度を有すること、低い凝固点を有すること、及びペースト組成物を水性液体との接触により、指示染料のかなり迅速な、即ち、約2分以内の呈色反応を阻害しないことである。用いることができるとりわけ適切な液体担体には、視覚指示ペースト組成物が用いられる水/炭化水素環境における組成物の溶解を妨げるのに十分に高い分子量の脂肪族ポリオール、アルキレングリコール、及びポリアルキレングリコールが含まれる。一般に、少なくとも約75g/molの数平均分子量を有するポリオール、グリコール、及びこれらの混合物が本発明の組成物における液体担体として有用である。本発明の組成物に用いることができる例示的なポリオールとしては、1,4-ブタンジオール;1,3-ブタンジオール;ヘキシレングリコール;1,2,6-ヘキサントリオール;及び1,6-ヘキサンジオールが挙げられる。ポリアルキレングリコールは通常、ポリアルキレングリコールの各アルキレン鎖単位に約2から4個の間の炭素原子を含有する(例えば、アルキレン鎖単位は、オキシエチレン、オキシプロピレン及び/又はオキシブチレン鎖単位であってもよい)。用いることができる例示的なポリアルキレングリコールとしては、約200から約4000g/mol間の数平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィーにより判定される)を有するポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン/プロピレングリコール(ランダム又はブロック)及びポリブチレングリコールが挙げられる。当業者には明らかなように、そのようなポリオール及びグリコールは市販製品であり、単独で、又は他の従来の液体担体の有無に関わらず、混合物として用いることができ、混合物として用いられる場合は、最適な親水性/疎水性バランスを得るために用いられる。ポリプロピレングリコールとポリエチレング
リコールとの組合せ又は混合物は、本発明のある特定の実施形態において用いられる。一般に、液体担体は、ペースト組成物の総質量に対して少なくとも約40質量パーセント、一般には約50から約90質量パーセントの間の量で用いられる。ペースト組成物の総質量の約60から80パーセントの間の量で用いられる。数平均分子量が約200から1500g/molの間のポリアルキレングリコール(特に、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール、これらの組合せを含む)が特に望ましい特性を示し、したがって、本発明の組成物における使用に好ましい。
【0025】
所望の場合、増粘剤及び/又は色安定剤として機能し、ペースト組成物の他の原材料に対して不活性であるゲル化剤又はゲル化剤の組合せを、本発明のペースト組成物の追加の構成要素として任意選択で用いてもよい。そのようなゲル化剤を使用する目的は、浸出を遅延させ、組成物をゲル化することである。本発明のペースト組成物がその用途において提供する視覚的検出を阻害する色以外の色を有し、示された増粘特性及び色安定化を示すのに役立つ任意公知の物質を用いることができる。本発明のペースト組成物の成分として用いられる例示的な適切なゲル化剤には、不活性無機フィラー又は希釈剤、例えばタルク、クレイ、ケイ藻土、ケイ酸カルシウム、シリカ、ヒュームドコロイダルシリカ、アルミナ、パイロフィライト、カルサイト、又はこれら若しくは他の細かく分割された固体材料の混合物が含まれる。一般に、用いられる場合、ゲル化剤は、ペースト組成物の総質量を基準として約20質量パーセントまで、又はそれ以上、好ましくは約2から約15質量パーセントの間の量で使用される。
【0026】
本発明の組成物は、ペースト組成物の製造のために本技術分野において用いられている慣用的方法によって調製できる。一般に、組成物の成分は、従来より室温でミキサーに供給され、均一で滑らかなペーストになるまで配合されるが、ペーストを配合するために従来より用いられている高温又は他の条件下で配合することを用いてもよいことは理解される。組成物の原材料の組込みは、破砕、乾式混合、又は液体担体への配合によって成分を個別に、又は一緒に組み込むことによって容易に実施される。したがって、無機塩基、指示染料、プロトン供与性化合物、及び/又は用いられる場合のゲル化剤は、液体担体への他の原材料の組込みの前、同時、又は後に組み込んでもよい。あるいは、液体担体に固体原材料を組み込む前に、プロトン供与性化合物を液体担体に溶解させてもよい。
【0027】
好ましい実施形態によると、ペースト組成物は、
a)約3から約11の間のpH範囲で色を変化させることができる少なくとも1種の指示染料;
b)水と反応して第1の無機塩基を第1の無機塩基よりも塩基性の高い第2の無機塩基に変換することができる、少なくとも1種の無機塩基;
c)少なくとも1種の液体担体;
d)任意選択で、少なくとも1種のゲル化剤;及び
e)最大で12、好ましくは最大で10、より好ましくは最大で8のpKaを有する少なくとも1種のプロトン供与性化合物
を組み合わせる工程を含む方法によって調製できる。
【0028】
特に、そのような方法は、
a)少なくとも1種の液体担体、少なくとも1種の指示染料、及び少なくとも1種のプロトン供与性化合物を組み合わせて、第1の混合物を得る工程と;
b)第1の混合物を少なくとも1種の無機塩基と組み合わせて第2の混合物を得る工程と;
c)任意選択で(ただし、好ましくは)、第2の混合物を少なくとも1種のゲル化剤と組み合わせてペースト組成物を得る工程と
を含んでもよい。
【0029】
水は、有利にはペースト組成物の調製中に除外される。例えば、ペースト組成物の成分は、無水であっても、本質的に水を含まないものであってもよい。本発明のある特定の実施形態によると、ペースト組成物の成分のうちのいくつかは、ペースト組成物の更なる成分を添加する前に、水を除去する、又は含水量を低減するために組み合わせて乾燥させてもよい。例えば、複数の液体担体、例えば様々なポリアルキレングリコールがペースト組成物の調合に使用される場合、そのような液体担体を組み合わせ、加熱しながら真空ストリッピングに供して含水量を低減し、次いで残りの成分(十分に低い含水量を有する)を添加してもよい。ペースト組成物の成分を組み合わせることは、大気中の水分のペースト組成物への吸収を防止するために、乾燥雰囲気(例えば、乾燥窒素)下で行ってもよい。本発明によるペースト組成物が調合されたら、ペースト組成物の分注を可能にするために容易に開封でき、次いでペースト組成物を水分曝露から保護するために再密封できる適切な密封可能容器に移してもよい。適切な密封可能容器としては、例えば、適切な材料、例えばプラスチック又は金属で構成されたキャップ付きチューブ、ボトル、ペール缶、及びドラム缶が挙げられる。
【0030】
理解すべきことであるが、本発明のペースト組成物は、当業者に周知のアジュバント、例えば固着剤、水捕捉剤等を追加で含んでもよい。固着剤としては、ケーシングゼラチン、セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、亜硫酸廃液、水分散性合成樹脂、鉱油、又は同等の粘着剤等の材料が用いられてもよく、これらは全て当技術分野では周知である。
【0031】
本発明のペースト組成物は、ペースト組成物の総質量に対して典型的には約5質量%までの量(例えば、0.1質量%~4質量%)の1種又は複数の界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤(例えば、エトキシ化ノニルフェノール界面活性剤)を追加で含んでもよい。
【0032】
ゲル化剤以外の1種又は複数のフィラーも、ペースト組成物中に存在してもよい。炭酸カルシウム及び石膏が、適切なフィラーの例である。
【0033】
本発明は、水、又は先に定義したような「水性液体」と混合され得る炭化水素用のタンク又は他の貯蔵若しくは配送施設における水レベルを特定するように特に適合させた、容易に利用可能な安定化させたペースト組成物を提供する。本発明のペースト組成物の特定の用途は、車両のガソリンタンクへの水の送出を防止するために頻繁に監視しなければならないガソリン貯蔵タンクの底にある水のレベルの測定に見出される。含酸素配合成分、即ち、アルコール若しくはエーテル、例えばメタノール、エタノール、第3級ブチルアルコール、メチルt-ブチルエーテル、又はこれらの混合物を含有するガソリンを収容するガソリン用の貯蔵又は配送施設の底にある水は、約90体積パーセントまでのアルコールを含有することがある。
【0034】
本発明によるペースト組成物は、容器内に存在し得る水性液体のレベルを測定するために、下記のように利用されてもよい。典型的には、炭化水素燃料、例えばガソリンが過剰量の水で汚染された場合、炭化水素燃料を貯蔵又は保持するために使用されている容器、例えばタンクの内容物の相分離が観察され、容器の底に水性液体相が形成され、炭化水素相(水性液体相よりも密度が低い)が水性液体相の上に分離相として形成される。本発明のペースト組成物の一定量を測定プローブの少なくとも一方の端に層(好ましくは、薄い均一な層)として配置できる。測定プローブは、長尺で、容器上部の開口部を通過しつつ容器の底に到達するように構成された寸法を有するものであってもよい。測定プローブは、容器の内容物に対して耐性のある任意適切な材料、例えば木材、金属又はエンジニアリング熱可塑性樹脂で構成されてもよい。次いで、ペースト組成物の層がその上に配置された測定プローブの端は、容器の開口部及び容器の内容物を通して容器の底に到達するまで下げ入れることができる。ペースト組成物が水性液体と接触したら、測定プローブはペースト組成物の色の変化を達成するのに有効な時間(典型的には、1又は2分までの期間)容器の内容物と接触した状態に保たれ、次いで、容器から引き抜かれて色の変化について目視で検査される。ペースト組成物は、水性液体の形態の水と接触していた場合のみ視認可能に色が変わるため、容器内に形成されているいずれの水性相の存在及び深度も容易に確認することができる。そのような水性相が検出された場合は、その後、水性相を吸い出す、又は容器を空にして洗浄する等の対応策を講じることができる。
【0035】
本発明の例示的、非限定的態様は、下記のように要約することができる。
【0036】
態様1:水性液体との接触に際に検知可能な色の変化を生じさせるためのペースト組成物であって、
a)約3から約11の間のpH範囲で色を変化させることができる少なくとも1種の指示染料と;
b)水と反応して第1の無機塩基を第1の無機塩基よりも塩基性の高い第2の無機塩基に変換することができる、少なくとも1種の第1の無機塩基と;
c)少なくとも1種の液体担体と;
d)任意選択で、少なくとも1種のゲル化剤と;
e)最大で12、好ましくは最大で10、より好ましくは最大で8のpKaを有する少なくとも1種のプロトン供与性化合物と
を含む、ペースト組成物。
【0037】
態様2:少なくとも1種のプロトン供与性化合物が少なくとも1種の有機酸を含む、態様1に記載のペースト組成物。
【0038】
態様3:少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、カルボン酸、有機スルホン酸、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の有機酸を含む、態様1又は2に記載のペースト組成物。
【0039】
態様4:少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、C6~C24脂肪族カルボン酸、C6~C18アルキル化アリールスルホン酸、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の有機酸を含む、態様1~3のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【0040】
態様5:少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、ノナン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の有機酸を含む、態様1~4のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【0041】
態様6:少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、25℃の水に対して0.01g/L~75g/Lの溶解度を有する少なくとも1種のプロトン供与性化合物を含む、態様1~5のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【0042】
態様7:少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、少なくともゼロのpKaを有する。態様1~6のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【0043】
態様8:少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、ペースト組成物が調製される際に存在する水及び第2の無機塩基の総量に対して化学量論的に過剰で存在する、態様1~7のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【0044】
態様9:ペースト組成物を25℃で相対湿度70%の空気に少なくとも10分間曝露した際に、色の変化に対してペースト組成物を安定化させるのに有効な量の、少なくとも1種のプロトン供与性化合物を含む、態様1~8のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【0045】
態様10:25℃の水に接触させてから1分以内に:ペースト組成物が色の変化を呈することを可能にするのに有効な量の、少なくとも1種のプロトン供与性化合物を含む、態様1~9のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【0046】
態様11:合計で約0.01~約5質量パーセントの少なくとも1種のプロトン供与性化合物を含む、態様1~10のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【0047】
態様12:少なくとも1種の第1の無機塩基と少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、第1の無機塩基:プロトン供与性化合物の質量比を1:1~100:1にするのに有効な量で存在する、態様1~11のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【0048】
態様13:少なくとも1種の指示染料が、水溶性の少なくとも1種の指示染料を含む、態様1~12のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【0049】
態様14:少なくとも1種の指示染料が、o-クレゾールフタレイン、フェノールフタレイン、p-ナフトールベンゼイン、エチルビス(2,4-ジニトロフェノール)アセテート、チモールフタレイン、ナイルブルーA、クレゾールレッド、ブロモフェノールブルー、及びチモールブルーからなる群から選択される少なくとも1種の指示染料を含む、態様1~13のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【0050】
態様15:少なくとも1種の第1の無機塩基がCaOを含む、態様1~14のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【0051】
態様16:少なくとも1種の液体担体が少なくとも1種のポリアルキレングリコールを含む、態様1~15のいずれか一項に記載のペースト組成物。
【0052】
態様17:水性液体との接触に際に検知可能な色の変化を生じさせるためのペースト組成物を作製する方法であって、
a)約3から約11の間のpH範囲で色を変化させることができる少なくとも1種の指示染料;
b)水と反応して第1の無機塩基を第1の無機塩基よりも塩基性の高い第2の無機塩基に変換することができる、少なくとも1種の無機塩基;
c)少なくとも1種の液体担体;
d)任意選択で、少なくとも1種のゲル化剤;及び
e)最大で12、好ましくは最大で10、より好ましくは最大で8のpKaを有する少なくとも1種のプロトン供与性化合物
を組み合わせる工程を含む、方法。
【0053】
態様18:
a)少なくとも1種のポリアルキレングリコール、少なくとも1種の指示染料、及び少なくとも1種のプロトン供与性化合物を組み合わせて、第1の混合物を得る工程と;
b)第1の混合物を少なくとも1種の無機塩基と組み合わせて第2の混合物を得る工程と;
c)任意選択で、第2の混合物を少なくとも1種のゲル化剤と組み合わせてペースト組成物を得る工程と
を含む、態様17に記載の方法。
【0054】
態様19:少なくとも1種のプロトン供与性化合物が少なくとも1種の有機酸を含む、態様17又は18に記載の方法。
【0055】
態様20:少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、カルボン酸、有機スルホン酸、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の有機酸を含む、態様17~19のいずれか一項に記載の方法。
【0056】
態様21:少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、C6~C24脂肪族カルボン酸、C6~C18アルキル化アリールスルホン酸、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の有機酸を含む、態様17~20のいずれか一項に記載の方法。
【0057】
態様22:少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、ノナン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の有機酸を含む、態様17~21のいずれか一項に記載の方法。
【0058】
態様23:少なくとも1種のプロトン供与性化合物が、25℃の水に対して0.01g/L~75g/Lの溶解度を有する少なくとも1種のプロトン供与性化合物を含む、態様17~22のいずれか一項に記載の方法。
【0059】
態様24:少なくとも1種のプロトン供与性化合物が少なくともゼロのpKaを有する、態様17~23のいずれか一項に記載の方法。
【0060】
態様25:ペースト組成物が調製される際に存在する水及び第2の無機塩基の総量に対して、化学量論的に過剰な量の少なくとも1種のプロトン供与性化合物が用いられる、態様17~24のいずれか一項に記載の方法。
【0061】
態様26:ペースト組成物を25℃で相対湿度70%の空気に少なくとも10分間曝露した際に、色の変化に対してペースト組成物を安定化させるのに有効な量の、少なくとも1種のプロトン供与性化合物が用いられる、態様17~25のいずれか一項に記載の方法。
【0062】
態様27:25℃の水に接触させてから1分以内にペースト組成物が色の変化を呈することを可能にするのに有効な量の、少なくとも1種のプロトン供与性化合物が用いられる、態様17~26のいずれか一項に記載の方法。
【0063】
態様28:ペースト組成物が、合計で約0.01~約2質量パーセントの少なくとも1種のプロトン供与性化合物を含む、態様17~27のいずれか一項に記載の方法。
【0064】
態様29:少なくとも1種の指示染料が、水溶性の少なくとも1種の指示染料を含む、態様17~28のいずれか一項に記載の方法。
【0065】
態様30:少なくとも1種の指示染料が、o-クレゾールフタレイン、フェノールフタレイン、p-ナフトールベンゼイン、エチルビス(2,4-ジニトロフェノール)アセテート、チモールフタレイン、ナイルブルーA、クレゾールレッド、ブロモフェノールブルー、及びチモールブルーからなる群から選択される少なくとも1種の指示染料を含む、態様17~29のいずれか一項に記載の方法。
【0066】
態様31:態様18~30のいずれか一項に記載の方法によって得られるペースト組成物。
【0067】
態様32:中に内容物が入っている容器内の水性液体を検出する方法であって、態様1~16又は31のいずれか一項に記載のペースト組成物の層を上に配置した測定プローブを、容器の内容物に接触させる工程と、測定プローブを容器から引き抜く工程と、ペースト組成物と水性液体との相互作用によって生じる色の変化について、ペースト組成物の層を目視で検査する工程とを含む、方法。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
26.5gのポリプロピレングリコール(分子量=750g/mol)、26.5gのポリプロピレングリコール(分子量=1025g/mol)、及び31.6gのポリエチレングリコール(分子量=400g/mol)を、撹拌装置、加熱マントル及び温度調節器を備え、窒素パージし真空にした丸底フラスコに添加した。65℃に加熱し、完全真空を適用して含水量を300ppm未満に低下させた。真空を停止し、2.0gのo-クレゾールフタレイン及び1.0gのドデシルベンゼンスルホン酸を添加した。固体が溶解するまで65℃で撹拌した。7.0gの酸化カルシウムを添加し、分散させた。6.0gのCab-O-Sil(登録商標)M5ヒュームドシリカをゆっくりと添加し、撹拌してペーストを形成した。ペーストはオフホワイト色であった。木製スティックに塗布し、1phrの水を含有するE10ガソリンに浸漬すると、水性層に接触したペーストは、2秒で薄い紫色に、15秒で濃い紫色に変わった。
【0069】
(実施例2)
26.5gのポリプロピレングリコール(分子量=750g/mol)、26.5gのポリプロピレングリコール(分子量=1025g/mol)及び31.6gのポリエチレングリコール(分子量=400g/mol)を、撹拌装置、加熱マントル及び温度調節器を備え、窒素パージし真空にした丸底フラスコに添加した。65℃に加熱し、完全真空を適用して含水量を300ppm未満に低下させた。真空を停止し、0.425gのチモールブルー及び0.085gのノナン酸を添加した。固体が溶解するまで65℃で撹拌した。7.0gの酸化カルシウムを添加し、分散させた。8.0gのCab-O-Sil(登録商標)M5ヒュームドシリカをゆっくりと添加し、撹拌してペーストを形成した。ペーストはオレンジ色であった。木製スティックに塗布し、1phrの水を含有するE10ガソリンに浸漬すると、水性層と接触したペーストは、12秒で淡い青色に、25秒で濃い青色に変わった。密閉したサンプル容器に保存したペーストは30日で緑色に変わったが、このような組成物の保存寿命は、組成物がより大型の商業規模で、水分をより厳密に排除できる条件下で調製される場合は、はるかに長くなることが予想される。
【0070】
(実施例3)
26.5gのポリプロピレングリコール(分子量=750g/mol)、26.5gのポリプロピレングリコール(分子量=1025g/mol)、及び31.6gのポリエチレングリコール(分子量=400g/mol)を、撹拌装置、加熱マントル及び温度調節器を備え、窒素パージし真空にした丸底フラスコに添加した。65℃に加熱し、完全真空を適用して含水量を300ppm未満に低下させた。真空を停止し、0.5gmのチモールブルー及び0.44gのアジピン酸を添加した。固体が溶解するまで65℃で撹拌した。7.0gの酸化カルシウムを添加し、分散させた。6.0gのCab-O-Sil(登録商標)M5ヒュームドシリカをゆっくりと添加し、撹拌してペーストを形成した。ペーストは、オレンジ色であった。木製スティックに塗布し、1phrの水を含有するE10ガソリンに浸漬すると、水性層と接触したペーストは、2秒で淡い青色に変わった。
【0071】
(実施例4)
26.5gのポリプロピレングリコール(分子量=750g/mol)、26.5gのポリプロピレングリコール(分子量=1025g/mol)、及び31.6gのポリエチレングリコール(分子量=400g/mol)を、撹拌装置、加熱マントル及び温度調節器を備え、窒素パージし真空にした丸底フラスコに添加した。65℃に加熱し、完全真空を適用して含水量を300ppm未満に低下させた。真空を停止し、0.5gmのチモールブルー及び0.36gのコハク酸を添加した。固体が溶解するまで65℃で撹拌した。7.0gの酸化カルシウムを添加し、分散させた。6.0gのCab-O-Sil(登録商標)M5ヒュームドシリカをゆっくりと添加し、撹拌してペーストを形成した。ペーストはオレンジ色であった。木製スティックに塗布し、1phrの水を含有するE10ガソリンに浸漬すると、水性層に接触したペーストは、2秒で淡い青色に変わった。
【0072】
(実施例5)
26.5gのポリプロピレングリコール(分子量=750g/mol)、26.5gのポリプロピレングリコール(分子量=1025g/mol)、及び31.6gのポリエチレングリコール(分子量=400g/mol)を、撹拌装置、加熱マントル及び温度調節器を備え、窒素パージし真空にした丸底フラスコに添加した。65℃に加熱し、完全真空を適用して含水量を300ppm未満に低下させた。真空を停止し、1.0gmのチモールフタレイン及び1.0gmのドデシルベンゼンスルホン酸を添加した。固体が溶解するまで65℃で撹拌した。7.0gの酸化カルシウムを添加し、分散させた。6.0gのCab-O-Sil(登録商標)M5ヒュームドシリカをゆっくりと添加し、撹拌してペーストを形成した。ペーストはオフホワイト色であった。木製スティックに塗布し、1phrの水を含有するE10ガソリンに浸漬すると、水性層に接触したペーストは、15秒で淡い青色に、60秒で濃い青色に変わった。
【0073】
(実施例6)
26.5gのポリプロピレングリコール(分子量=750g/mol)、26.5gのポリプロピレングリコール(分子量=1025)、及び31.6gのポリエチレングリコール(分子量=400g/mol)を、撹拌装置、加熱マントル及び温度調節器を備え、窒素パージし真空にした丸底フラスコに添加した。65℃に加熱し、完全真空を適用して含水量を300ppm未満に低下させた。真空を停止し、0.25gのクレゾールレッド及び2.0gmのドデシルベンゼンスルホン酸を添加した。固体が溶解するまで65℃で撹拌した。7.0gの酸化カルシウムを添加し、分散させた。6.0gのCab-O-Sil(登録商標)M5ヒュームドシリカをゆっくりと添加し、撹拌してペーストを形成した。ペーストは褐色であった。木製スティックに塗布し、1phrの水を含有するE10ガソリンに浸漬すると、水性層に接触したペーストは、5秒で淡い紫色に、15秒で濃い紫色に変わった。
【0074】
(実施例7)
26.5gのポリプロピレングリコール(分子量=750g/mol)、26.5gのポリプロピレングリコール(分子量=1025g/mol)、及び31.6gのポリエチレングリコール(分子量=400g/mol)を、撹拌装置、加熱マントル及び温度調節器を備え、窒素パージし真空にした丸底フラスコに添加した。65℃に加熱し、完全真空を適用して含水量を300ppm未満に低下させた。真空を停止し、0.2gのブロモフェノールブルー及び5.0gmのドデシルベンゼンスルホン酸を添加した。固体が溶解するまで65℃で撹拌した。7.0gの酸化カルシウムを添加し、分散させた。6.0gのCab-O-Sil(登録商標)M5ヒュームドシリカをゆっくりと添加し、撹拌してペーストを形成した。ペーストは、褐色であった。木製スティックに塗布し、1phrの水を含有するE10ガソリンに浸漬すると、水性層に接触したペーストは、2秒で淡い青色に、10秒で濃い青色に変わった。
【0075】
(例8(比較))
26.5gのポリプロピレングリコール(分子量=750g/mol)、26.5gのポリプロピレングリコール(分子量=1025g/mol)、及び31.6gのポリエチレングリコール(分子量=400g/mol)を、撹拌装置、加熱マントル及び温度調節器を備え、窒素パージし真空にした丸底フラスコに添加した。65℃に加熱し、完全真空を適用して含水量を300ppm未満に低下させた。真空を停止し、0.86gのチモールブルー及び0.085gのホウ酸トリプロピルを添加した。固体が溶解するまで65℃で撹拌した。7.0gの酸化カルシウムを添加し、分散させた。8.0gのCab-O-Sil(登録商標)M5ヒュームドシリカをゆっくりと添加し、撹拌してペーストを形成した。ペーストは濃いオレンジ色であった。木製スティックに塗布し、1phrの水を含有するE10ガソリンに浸漬すると、水性層に接触したペーストは、10秒で淡い青色に、20秒で濃い青色に変わり、ペーストが水性層の上の炭化水素層に接触したところでは、ペースト上に黒色の斑点が形成された。密閉されたサンプル容器内のペーストは、1日で青色に変わった。
【0076】
この例は、本発明によるペースト組成物がプロトン供与性化合物を含むことの有益な効果を実証している。例8のペースト組成物は、ホウ酸トリプロピル(先行技術において教示されている安定剤)を含有していたが、プロトン供与性化合物を含有していなかった。ホウ酸トリプロピルではなくノナン酸を含む以外は例8と同様の組成を有する実施例2のペースト組成物と比較して、はるかに短い保存寿命が観察された。
【国際調査報告】