(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-03
(54)【発明の名称】ポリマーブレンド
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20230224BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20230224BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230224BHJP
C08K 5/544 20060101ALI20230224BHJP
C08L 33/08 20060101ALI20230224BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20230224BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20230224BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K5/00
C08L101/00
C08K5/544
C08L33/08
C08J3/20 B CEY
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540629
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(85)【翻訳文提出日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 US2020066558
(87)【国際公開番号】W WO2021138141
(87)【国際公開日】2021-07-08
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519393129
【氏名又は名称】デュポン ポリマーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン アール.オリアニ
(72)【発明者】
【氏名】シャリニ サクセナ
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA34
4F070AC52
4F070FA03
4F070FB06
4F070FC06
4J002AA012
4J002BG04X
4J002BG07X
4J002CF10W
4J002EX077
4J002FD016
4J002FD026
4J002FD036
4J002FD076
4J002FD096
4J002FD207
4J002FD336
4J002GC00
4J002GG01
4J002GJ02
4J002GN00
4J002GQ01
(57)【要約】
コポリエーテル-エステルコポリマーと、ポリアクリレートコポリマーとアミノシランとの反応生成物、を含むポリマーブレンド。更に本明細書においては、ポリマーブレンドの製造方法及びポリマーブレンドを含む物品を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーブレンドであって:
(a)ポリアルキレンテレフタレートの共重合残基及びポリエーテルジオールの共重合残基を含むコポリエーテル-エステルコポリマーと;
(b)ポリアクリレートコポリマーとアミノシランとの反応生成物と;を含み、
i)前記ポリアクリレートコポリマーは、架橋点コモノマーの共重合残基を少なくとも0.3重量%含み、前記ポリアクリレートコポリマー中の共重合残基の重量百分率の総和は100重量%であり;且つ
ii)前記ポリマーブレンドは、前記ポリアクリレートコポリマーと前記アミノシランとの前記反応生成物を、前記ポリマーブレンドの総重量を基準として、5~70重量%含む、ポリマーブレンド。
【請求項2】
前記コポリエーテル-エステルコポリマーは、ポリブチレンフタレートの共重合単位を含む、請求項1に記載のポリマーブレンド。
【請求項3】
前記コポリエーテル-エステルコポリマーは、1種又は複数種のポリエーテルジオールの共重合残基を、前記コポリエーテル-エステルコポリマーの総重量を基準として、約5~約80重量%含む、請求項1又は請求項2に記載のポリマーブレンド。
【請求項4】
前記コポリエーテル-エステルコポリマーは、ポリアルキレンイソフタレートの共重合残基を更に含む、請求項1又は請求項2に記載のポリマーブレンド。
【請求項5】
前記コポリエーテル-エステルコポリマーは、ポリブチレンイソフタレートの共重合単位を含む、請求項1に記載のポリマーブレンド。
【請求項6】
前記ポリアクリレートコポリマーは、エチレンの共重合残基を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマーブレンド。
【請求項7】
前記ポリアクリレートコポリマーは、前記ポリアクリレートコポリマーの総重量を基準として、1種又は複数種の架橋点コモノマーから誘導された共重合残基を0.3~10重量%;1種又は複数種のアルキルアクリレートから誘導された共重合残基を45~80重量%;及びエチレンから誘導された共重合残基を10~55重量%;を含み、前記ポリアクリレートコポリマー中の全ての共重合残基の重量百分率の総和は100重量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマーブレンド。
【請求項8】
前記アミノシランは、式YNHBSi(OR)
a(X)
3~a(式中、aは、1、2又は3の整数であり;Yは、水素原子又はアルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、アルカリール、アルキルシリル、アルキルアミン、C(=O)OR若しくはC(=O)NR基であり;Rは、アシル、アルキル、アリール又はアルカリール基であり;Xは、R又はハロゲン原子であり;Bは、二価の橋掛け基である)で表される、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマーブレンド。
【請求項9】
前記アミノシランは、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピル-トリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン及びビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンからなる群から選択される1種又は複数種の化合物を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマーブレンド。
【請求項10】
前記アミノシランは、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン又は3-アミノプロピルトリエトキシシラン及び3-アミノプロピル-トリメトキシシランの組合せである、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマーブレンド。
【請求項11】
添加剤、フィラー、加工助剤、可塑剤、安定剤、粘度調整剤、着色剤、顔料及び酸化防止剤からなる群から選択される1種又は複数種の他の成分を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマーブレンド。
【請求項12】
前記酸化防止剤は、フェノール系、ホスファイト系及びアミン含有酸化防止剤からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマーブレンド。
【請求項13】
熱可塑性加硫物を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリマーブレンド。
【請求項14】
アミンと前記ポリアクリレートコポリマーの前記架橋点との反応を促進するための少なくとも有効な量の触媒を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリマーブレンド。
【請求項15】
前記触媒は、3級アミンである、請求項1~14のいずれか一項に記載のポリマーブレンド。
【請求項16】
前記触媒は、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)である、請求項1~15のいずれか一項に記載のポリマーブレンド。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のポリマーブレンドを製造するためのプロセスであって:
a)1種又は複数種のポリアクリレートコポリマーをアミノシランと混錬することにより組成物を生成するステップと;
b)1種又は複数種のコポリエーテル-エステルコポリマーを前記組成物と溶融混練するステップと;を含むプロセス。
【請求項18】
ステップ(a)は、150℃未満の温度で行われる、請求項12に記載のプロセス。
【請求項19】
ステップ(b)は、150℃以上の温度で行われる、請求項12に記載のプロセス。
【請求項20】
ステップ(a)及び(b)は、二軸押出機内で順次行われる、請求項12に記載のプロセス。
【請求項21】
請求項1~16のいずれか一項に記載のポリマーブレンドを製造するためのプロセスであって:
a)1種又は複数種のポリアクリレートコポリマーを1種又は複数種のコポリエーテル-エステルコポリマーと溶融混錬するステップと;
b)(a)部の前記組成物をアミノシランと溶融混錬するステップと;を含む、プロセス。
【請求項22】
請求項1~16のいずれか一項に記載のポリマーブレンドを製造するためのプロセスであって、前記ポリアクリレートコポリマーを、前記アミノシラン及び前記コポリエーテル-エステルコポリマーと溶融物中で混ぜ合わせることによって、前記コポリエーテル-エステルコポリマーと、前記ポリアクリレートコポリマー及び前記アミノシランの反応生成物とを含む溶融物を生成し、前記溶融物は、前記ポリマーブレンドを生成するために冷却される、プロセス。
【請求項23】
請求項1~16のいずれか一項に記載のポリマーブレンドを含む物品であって、電源コード被覆及びストレインリリーフを含む家電機器;履物のアウトソール及びミッドソールを含む消費財;動力工具及び他の手持ち型器具用のソフトタッチ性を有するオーバーモールド;紐又はベルトなどの着用品用途;自動車の吸気マニホールドガスケットなどのシーリング用途;被覆などの電線及びケーブル用途;石油及びガス産業用フラットパック;インボード及びアウトボード側の等速ジョイント(CVJ)ブーツ、プロペラシャフトブーツ及びダイアフラムブーツを含む、自動車などの輸送車両に使用するためのブーツ;自動車などの輸送車両に使用するための流体ダクト及びエアダクト;並びに輸送、自動車、流体動力(流体動力伝達線を含む)、電気、電子、ホース及び管並びに家電分野に使用するための他の物品;からなる群から選択される、物品。
【請求項24】
射出成形、ブロー成形、押出、圧縮成形、プレスブロー成形、アキュムレータブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形及び付加製造からなる群から選択される方法により製造される、請求項23に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第365条に基づき2019年12月31日に出願された米国仮特許出願第62/956,070号明細書及び2020年5月13日に出願された米国仮特許出願第第63/024,510号明細書の優先権を主張するものであり、当該明細書のそれぞれの全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、ポリエーテル-ポリエステルブロックコポリマーと、ポリアクリレートコポリマーとアミノシランとの反応生成物、を含むポリマーブレンド;ポリマーブレンドの製造方法;並びにポリマーブレンドを含む物品に関する。
【背景技術】
【0003】
幾つかの特許、特許出願及び刊行物を、本発明が属する技術の現状をより十分に説明するために本明細書に引用する。これらの特許、特許出願及び刊行物のそれぞれの開示全体を、参照により本明細書に援用する。
【0004】
ポリマーブレンドは、様々な消費者製品及び産業機器の製造にとって非常に重要な材料である。したがって、ポリマーブレンドの特性、合成、加工、経済性及び外観を改良することは常に関心の対象であり、且つ重要であり続けている。
【0005】
ポリマー組成物を改良するためのよく知られている方法の一つが、2種以上のポリマーをブレンドすることである。ポリマーを組み合わせることによって、個々の構成成分の1つ又は複数の利点を提供することができる。例えば、望ましい物理特性を有する比較的高価な材料を、それよりも安価な材料と組み合わせることによって、コスト及び性能のバランスがより好ましいポリマーブレンドを製造することができる。
【0006】
エラストマーは、望ましい特性を有し、多くの産業に幅広く適用できるポリマーの重要な種類であり、様々なタイプのエラストマーのブレンドが知られている。エラストマーブレンドは、2種以上のエラストマーを含んでいてもよいし、或いは1種又は複数種のエラストマー及び1種又は複数種の非エラストマー性ポリマーを含んでいてもよい。エラストマーブレンドは、例えば、エラストマー及び他のポリマーが混和性である場合は、アロイ又は固溶体となり得る。ブレンドが2種以上の不混和なポリマーを含む場合は、分散体や共連続ブレンドなどの他の形態をとる可能性もある。
【0007】
エラストマーを含むことができるタイプのブレンドの一つが、熱可塑性相及び「加硫」即ち架橋されたエラストマー相を含む熱可塑性加硫物(「TPV」)である。TPVは、架橋又は加硫物の多くの望ましい特徴と熱可塑性樹脂の特定の特徴とを兼ね備えている。例えば、TPVは、押出機などの熱可塑性樹脂の加工装置を利用して溶融加工することができる。TPV、特に、国際特許出願である国際公開第2004/029155号パンフレットに記載されているものなどのコポリエーテル-エステルTPVは、卓越した引裂強度、引張強度、屈曲寿命、耐薬品性及び幅広い最終使用温度範囲を有することから、自動車、電線及びケーブル、流体動力、電気及び電子的用途、ホース及び管並びに家電分野で使用するための物品の製造を含む幅広い用途に使用されている。
【0008】
これに関連して、Schombourgらに発行された米国特許第6,448,343号明細書には、2種のポリマーを含むTPVが記載されており、1種のポリマーに無水カルボン酸をグラフトするか又は共重合させ、次いでこの酸無水物がグラフトされたポリマーを、酸無水物と反応するアミノシランと反応させ、次いでこの1種のポリマーを架橋させている。
【0009】
更に、Bendlerらに発行された米国特許第7,074,857号明細書には、ポリアルキレンフタレートポリエステル重合体又は共重合体及びポリアクリレート又はポリエチレン/アクリレートゴムと、有効量の過酸化物フリーラジカル開始剤及び有機ジエン架橋助剤との組合せを含む、硬化性熱可塑性エラストマー性ブレンドが記載されている。
【0010】
しかしながら、熱可塑性加硫物及び他のエラストマーブレンドは加工が困難な場合がある。出発物質、試薬及び加工条件の選択が最適でない場合は、例えば、過酸化物などの危険な試薬;照射による架橋などの危険な条件;遅い反応速度;ポリマーの劣化、例えば、放射又はフリーラジカルに曝露されることによるもの;架橋度が不充分なことに起因するか又はポリマーの劣化に起因する望ましくないべたつき;ゲル発生による欠陥(gel defect)、黒点及び他の異物の形成;押出部品の表面粗さ又はブロー成形部品のコブ(lump)によって現れる押出ダイの不安定性;並びに過度の架橋、例えば、ゴムのスコーチに起因する加工の難しさを含む、好ましくない特性又は結果を招く可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、要求の厳しい条件下での使用に合わせて調整された特性を有する新規なポリマーブレンドを製造することが依然として望まれている。このようなポリマーブレンドを製造するプロセスを改良して、その安全性及び効率を高めると共に、ポリマーブレンドの美的品質を改善することも依然として望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本明細書においては、ポリエステル-ポリエーテルブロックコポリマーと、ポリアクリレートコポリマーとアミノシランとの反応生成物、を含むポリマーブレンドを提供する。ポリエステル-ポリエーテルブロックコポリマーは、ポリブチレンテレフタレートの共重合残基及びポリエーテルジオールの共重合残基を含み、ポリアクリレートコポリマーは、酸無水物架橋点(cure site)コモノマーの共重合残基を含む。
【0013】
更に、このポリマーブレンドを製造するためのプロセスも提供する。第1のプロセスにおいては、ポリアクリレートコポリマー及びアミノシランを混ぜ合わせ(combine)、ポリエステル-ポリエーテルブロックコポリマーを添加し、第2ステップで溶融混練する。第2のプロセスにおいては、ポリエステル-ポリエーテルブロックコポリマー、ポリアクリレートコポリマー及びアミノシランを溶融物中で混ぜ合わせる。
【0014】
更に、ポリマーブレンドを含む物品、例えば、家電機器(電源コード被覆及びストレインリリーフ);消費財、例えば、履物のアウトソール及びミッドソール;動力工具及び他の手持ち型器具用のソフトタッチ性を有するオーバーモールド、紐(strap)又はベルト(band)などの着用品用途及び自動車の吸気マニホールドガスケットなどのシーリング用途;被覆などの電線及びケーブル用途;石油及びガス産業用フラットパック(oil and gas flat pack);インボード及びアウトボード側の等速ジョイント(CVJ)ブーツ、プロペラシャフトブーツ及びダイアフラムブーツなどの自動車用ブーツ;並びに自動車などの輸送車両に使用するためのエアダクトも提供する。これらの物品は、熱可塑性又は熱硬化性ポリマーを使用する製造に一般的な方法を用いて製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
特に定義しない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様の又は同等の方法及び材料を本実施形態の実施又は試験において使用することができるが、好適な方法及び材料は、以下に記載される。本明細書に記載される材料、方法、及び実施例は、例示的であるにすぎず、限定的であることは意図されない。
【0016】
本明細書で用いる「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「など(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、「含有する(containing)」という用語又はこれらの任意の他の変形は、非排他的包含を意味する。例えば、構成要素のリストを含むプロセス、方法、物品又は装置は、それらの構成要素に必ずしも限定されず、明示的に列挙されていない、又はそのようなプロセス、方法、物品若しくは装置に固有の他の構成要素を含んでもよい。
【0017】
移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」は、クレームの範囲を、明記されている材料又はステップ並びに特許請求される本発明の基本的及び新規特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。「‘から本質的になる’クレームは、‘からなる’形式で書かれる閉鎖クレーム及び‘含む’形式で起案される完全開放クレームの中間的な位置を占める」。発明又はその一部が、「含む(comprising)」などの非限定的な用語で記載される場合、具体的な状況で特に明記しない限り、この記載はまた、用語「からなる」及び「から本質的になる」を用いる本発明の記載を含むと理解されるべきである。
【0018】
「から本質的になる」という用語は、本明細書において相又は組成物に関し使用される場合、記載された成分を、ポリマー、相又は組成物の総重量を基準として、95重量%を超えて又は99重量%を超えて含む相又は組成物を意味する。したがって、この用語が適用されるポリマー、相又は組成物は、他の成分又は添加剤と一緒に導入され得る任意の担体も含めて、後に記載するものなどの1種又は複数種の他のコモノマー、成分又は添加剤を含んでいてもよい。このような量において、他のコモノマー、成分、添加剤及びそれらの担体は、本明細書で記載される相又は組成物の基本的且つ新規特徴を変化させることはない。
【0019】
更に、その逆であることを明記しない限り、「又は」は、包括的な「又は」を意味し、排他的な「又は」を意味しない。例えば、条件A又はBは、下記のいずれか1つによって満たされる:Aは、真であり(又は存在し)、及びBは、偽である(又は存在しない)、Aは、偽であり(又は存在せず)、及びBは、真である(又は存在する)、並びにA及びBは、両方とも真である(又は存在する)。
【0020】
同様に、不定冠詞「a」又は「an」も、本発明の構成要素及び成分を記載するために用いられる。これは、便宜上及び本発明の一般的な意味を示すために行われるにすぎない。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むように解釈すべきであり、単数形は、限られた状況下で明示的な別段の定めがない限り、複数形も包含する。
【0021】
本明細書で用いられる「約」という用語は、量、サイズ、配合、パラメータ並びに他の量及び特性が正確ではない、そして正確である必要がないが、許容値、換算係数、丸め、測定誤差など、並びに当業者に公知の他の因子を反映して、要望に応じて、近似していても及び/又はより大きくても若しくはより小さくてもよいことを意味する。一般に、量、サイズ、配合、パラメータ又は他の量若しくは特性は、そうであると明記されるかどうかに関わりなく「約」又は「おおよそ」である。
【0022】
加えて、本明細書に示される範囲は、限られた状況下で特に明記しない限りそれらの端点を含む。更に、量、濃度又は他の値若しくはパラメータが、範囲、1若しくは複数の好ましい範囲又は好ましい高い方の値及び好ましい低い方の値のリストとして与えられる場合、これは、任意の範囲上限値又は好ましい高い方の値と、任意の範囲下限値又は好ましい低い方の値との任意の対から、そのような対が別個に開示されるかどうかにかかわらず、形成された全ての範囲を具体的に開示すると理解されるべきである。
【0023】
更に、本明細書において数値の範囲を列挙する場合、具体的な状況下で別段の定めがない限り、この範囲は、それらの端点並びに範囲内のすべての整数、分数及び実数を含むことを意図する。本発明の範囲は、範囲を定義する場合に列挙された具体的な値に限定されることを意図しない。最後に、用語「約」が、値又は範囲の端点を表すのに使用される場合、本開示は、言及されている具体的な値又は端点を含むことが理解されるべきである。
【0024】
本明細書で用いられる「コポリマー」という用語は、2種以上のコモノマーの共重合によって生じる共重合単位を含むポリマーを意味する。これに関連して、コポリマーは、その構成成分であるコモノマーを参照して、又はその構成成分であるコモノマーの量を参照して、例えば「エチレン及び15重量%のアクリル酸を含むコポリマー」又は類似の表現で本明細書に記載することができる。そのような表現は、それが共重合単位としてのコモノマーに言及していないという点で;それがコポリマーについての従来の命名法、例えば、国際純正応用化学連合(IUPAC)命名法を含んでいないという点で;それがプロダクト・バイ・プロセス表現を用いていないという点で;又は別の理由で非公式と見なされることもある。しかしながら、本明細書で使用される場合、その構成成分であるコモノマー又はその構成成分であるコモノマーの量を参照するコポリマーの記載は、そのコポリマーが、指定されたコモノマーの共重合単位を(指定されている場合は指定されている量で)含むことを意味する。本明細書における「単位」及び「残基」という用語は、コポリマーの構成成分であるコモノマーに関しては同義であり、互換的に使用される。当然の結果として、コポリマーは、そのようであると限定された状況で明示的に述べられない限り、所与のコモノマーを所与の量で含有する反応混合物の生成物でないことになる。
【0025】
本明細書において、単独で又は「(メタ)アクリレート((meth)acrylate)」などの組合せの形態で使用される、「(メタ)アクリル((meth)acrylic)」という用語は、アクリル(acrylic)又はメタクリル(methacrylic)、例えば、「アクリル酸又はメタクリル酸」又は「アルキルアクリレート又はアルキルメタクリレート」を指す。
【0026】
「コポリエーテル-エステルポリマー」、「ポリエーテル-ポリエステルブロックコポリマー」、及び「ポリエステル-ポリエーテルブロックコポリマー」という用語は、本明細書において同義であり、互換的に使用される。ポリエステル-ポリエーテルブロックコポリマーは、全てではないが、エラストマー性を示すものもある。
【0027】
本明細書で使用される「熱可塑性加硫物」(「TPV」)という用語は、連続した熱可塑性相中に架橋したゴム相が分散している高分子材料を指す。
【0028】
本明細書で使用される「ポリマーブレンド」という用語は、架橋したゴム相と、熱可塑性相とを有する、溶融加工可能な高分子材料を指す。
【0029】
本明細書においては、コポリエーテル-エステルポリマーと、ポリアクリレートコポリマーとアミノシランとの反応生成物を含むポリマーブレンドを提供する。
【0030】
有利なことに、アミノシランは、比較的安全且つ効率の高い架橋剤である。これらには、過酸化物又は照射によるフリーラジカル架橋にあるような欠点がない。更にアミノシランは、多くの過酸化物と比較して反応性が低いため、保管及び取扱いがより安全である。例えば、アミノシランによる架橋は、フリーラジカル反応に一般的な、酸化防止剤の存在による阻害の問題がない。更に、アミノシランで架橋したポリマー組成物中のポリマー成分は、フリーラジカルと反応して分解することがなく、制御されない酸化によって生じ得る黒点又は他の異物の形成がない。
【0031】
アミノシランには、ポリアミンによる架橋と比較しても幾つかの利点がある。コポリエーテル-エステルポリマーのエステル結合はアミンにより分解する可能性があるが、アミノシランはポリアミンと比較してアミン含有量が少ないので、このような望ましくない副反応が最小限に抑えられる。更に、ポリアクリレートコポリマーにグラフトするポリアミン硬化剤を用いると、懸垂するアミン官能基が残存することがあり、これは、その後の加工でも反応性を有したままとなり、ポリマーブレンドの押出品質に悪影響を及ぼす。それとは対照的に、アミノシランのシラン官能基は、室温下でさえも加水分解及び縮合が起こりやすい。したがって、残存している反応性は保管中に消滅する。最後に、アミノシランは、2つの部分の反応性の選択に関し幅広い選択肢があるため、様々なポリマーブレンド、TPV組成及び加工の選択肢に対し架橋のバランスをとるために必要な技術的努力が減る。
【0032】
好適なポリエステル-ポリエーテルブロックコポリマーは、国際特許出願公開である Publn. Szekelyらによる国際公開第2020/047406号パンフレットに記載されている。しかしながら、簡潔に説明すると、好適なポリエステル-ポリエーテルブロックコポリマーは、エステル結合を介して頭-尾結合した長鎖エステル単位及び短鎖エステル単位の多数の繰り返しを有し、前記長鎖エステル単位は、式(A):
【0033】
【0034】
で表され、前記短鎖エステル単位は、式(B):
【0035】
【0036】
(式中、
Gは、約400~約6000g/mol、好ましくは約400~約3000g/molの数平均分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールから末端ヒドロキシル基を除いた二価の基であり、
Rは、約300g/mol未満の分子量を有するジカルボン酸からカルボキシル基を除いた二価の基であり、
Dは、約250g/mol未満の分子量を有するジオールからヒドロキシル基を除いた二価の基である)で表される。
【0037】
コポリエーテル-エステルコポリマー中の式(A)及び式(B)の共重合単位の重量百分率は相補的である。即ち、式(A)及び式(B)の共重合単位の重量百分率の総和は100重量%である。同様に、コポリエーテル-エステルコポリマー中の式(A)及び式(B)の共重合単位のR基のモル百分率も相補的である。即ち、式(A)及び式(B)の共重合単位のR基のモル百分率の総和は100mol%である。
【0038】
本発明で使用する場合、ポリマー鎖中の単位に適用される「長鎖エステル単位」という用語は、長鎖グリコールとジカルボン酸との反応生成物を意味する。好適な長鎖グリコールは、末端(又はできる限り末端の近くに)ヒドロキシ基を有し、且つ約400~約6000g/mol、好ましくは約600~約3000g/molの数平均分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールである。好ましいポリ(アルキレンオキシド)グリコールとしては、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(トリメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、これらのアルキレンオキシドの共重合グリコール及びエチレンオキシド末端ポリ(プロピレンオキシド)グリコールなどのブロックコポリマーが挙げられる。これらグリコールの2種以上の混合物を使用することができる。式(A)の長鎖エステル単位は、コポリエーテル-エステルポリマーの「ソフトセグメント」と称することもできる。
【0039】
本発明で使用する場合、コポリエーテルエステルのポリマー鎖中の単位に適用される「短鎖エステル単位」という用語は、約550g/mol未満の分子量を有する低分子量化合物又はポリマー鎖単位を意味する。これらは、低分子量(分子量約250g/mol未満)ジオール又はジオールの混合物をジカルボン酸と反応させ、上の式(B)で表されるエステル単位を形成することによって製造される。式(B)の短鎖エステル単位は、コポリエーテル-エステルポリマーの「ハードセグメント」と称することもできる。
【0040】
反応により短鎖エステル単位を形成する好ましい低分子量ジオールは、2~8個の炭素原子を含む脂肪族ジオールであり、より好ましいジオールは1,4-ブタンジオールである。本発明で使用する場合、「ジオール」という用語には、言及したものなどの、それと等価なエステル形成性誘導体が含まれる。例えば、エチレングリコールに替えてエチレンオキシド又はエチレンカーボネートを使用することができる。分子量はジオールの分子量を指し、エステル形成性誘導体の分子量を指すものではない。
【0041】
上述の長鎖グリコール及び低分子量ジオールと反応してコポリエーテルエステルを生成することができるジカルボン酸は、低分子量、即ち、約300g/mol未満の分子量を有する脂肪族、脂環式又は芳香族ジカルボン酸である。本明細書で使用する「ジカルボン酸」という用語は、コポリエーテルエステルポリマーを形成する際のグリコール及びジオールとの反応において、実質的にジカルボン酸と同様に機能する、2個のカルボキシル官能基を有するジカルボン酸の機能的等価物を含む。これら等価物としては、エステル並びに酸ハロゲン化物及び酸無水物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。この分子量要件は酸に関するものであり、その等価物であるエステル又はエステル形成性誘導体に関するものではない。
【0042】
芳香族ジカルボン酸が好ましい。本明細書で用いる「芳香族ジカルボン酸」という用語は、炭素環式芳香環構造内の炭素原子にそれぞれ結合している2個のカルボキシル基を有するジカルボン酸を意味する。両方の官能性カルボキシル基が同じ芳香環に結合している必要はなく、1個を超える環が存在する場合、これらは、二価の脂肪族若しくは芳香族基又は-O-若しくは-SO2-などの二価基によって結合していてもよい。
【0043】
好適な芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸及びイソフタル酸;他のベンゼンジカルボン酸(benzoic diacid);ビス(p-カルボキシフェニル)メタンなどの2個のベンゼン核を持った置換されたジカルボキシ化合物;p-オキシ-1,5-ナフタレンジカルボン酸;2,6-ナフタレンジカルボン酸;2,7-ナフタレンジカルボン酸;4,4’-スルホニルジ安息香酸;並びにこれらのC1~C12アルキル及び環置換誘導体、例えば、ハロ、アルコキシ及びアリール誘導体が挙げられる。芳香族ジカルボン酸も使用されるという条件であれば、p-(ベータ-ヒドロキシエトキシ)安息香酸などのヒドロキシ酸も使用することができる。8~16個の炭素原子を有する芳香族酸が好ましく、テレフタル酸、イソフタル酸並びにフタル酸及びイソフタル酸の混合物がより好ましい。
【0044】
コポリエーテル-エステルポリマーは、好ましくは、式(B)に対応する共重合した短鎖エステル単位を、コポリエーテル-エステルの総重量を基準として、15若しくは約15~99若しくは約99重量パーセント含み、コポリエーテル-エステルの重量の残部は、上述の式(A)に対応する共重合した長鎖エステル単位から構成される。より好ましくは、コポリエーテル-エステルポリマーは、共重合した短鎖エステル単位を20若しくは約20~95若しくは約95重量パーセント、一層好ましくは30若しくは約30~90若しくは約90重量パーセント又は50若しくは約50~90若しくは約90重量パーセント含み、ここでも同様に、コポリエーテル-エステルの重量の残部は、共重合した長鎖エステル単位から構成される。
【0045】
より好ましくは、上述の式(A)及び(B)中のRで表される二価基の少なくとも約70モル%が1,4-フェニレン二価基であり、上述の式(B)中のDで表される基の少なくとも約70モル%が1,4-ブチレン基である。このより好ましいコポリエーテル-エステルにおいて、1,4-フェニレン二価基以外のR基及び1,4-ブチレン基以外のD基のモル百分率の合計は、無名数で30を超えない。
【0046】
コポリエーテル-エステルの調製に2種以上のジカルボン酸の混合物が使用される場合、好ましい第2のジカルボン酸はイソフタル酸である。イソフタル酸及びテレフタル酸の混合物がより好ましい。例えば、好ましい混合物では、コポリエーテル-エステル中の共重合しているイソフタル酸エステル残基の量は、コポリエーテル-エステル中の共重合しているジカルボン酸残基-(-C(O)RC(O)-)-の総モル数を基準として、好ましくは35モル%未満又は30モル%未満、より好ましくは25モル%未満であり、残部である少なくとも70モル%のフェニレン二価基はテレフタル酸から誘導されたものである。幾つかの好ましい実施形態において、コポリエーテル-エステル中の共重合しているイソフタル酸エステル残基は、コポリエーテル-エステル中の共重合しているジカルボン酸残基-(-C(O)RC(O)-)-の総重量を基準として、35重量%未満であり、より好ましくは25重量%未満である。ここでも同様に、例えば、好ましい混合物中において、コポリエーテル-エステル中の共重合しているジカルボン酸残基-(-C(O)RC(O)-)-の総重量を基準として、残部であるフェニレン二価基は、テレフタル酸から誘導されたものである。
【0047】
好ましいポリマーブレンドは、(1)ポリ(テトラメチレングリコール)又はポリ(トリメチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドの残基を含むグリコール(EO/POグリコール)並びにこれらの2種以上の混合物;(2)イソフタル酸、テレフタル酸及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択されるジカルボン酸;並びに(3)1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択されるジオール;を含むモノマーから調製されるコポリエーテル-エステルポリマーを含む。また、好ましいポリマーブレンド中のコポリエーテル-エステルポリマーは熱可塑性である、即ち、これらは溶融加工可能であり、溶融ピーク温度を示す。
【0048】
ポリブチレンテレフタレートから構成されるハードセグメントと、およそ5又は10%~約70又は80重量%、好ましくは約10又は20~約60重量%の、ポリエーテルグリコールと芳香族二酸との反応生成物から構成されるソフトセグメントとを有するコポリエーテル-エステルが特に好ましい。ポリエーテルブロックは、ポリテトラメチレングリコールから誘導され、およそ1000g/mol~2000g/molの分子量を有する。これと相補的に、ハードセグメントの割合は、およそ20重量%又は30重量%~90又は95重量%、好ましくは約40~約80又は90重量%である。
【0049】
好適なポリエーテル-ポリエステルコポリマーは、Wilmington,DEのDuPont Specialty Products USA,LLCからHytrel(登録商標)の商標で市販されている。
【0050】
本明細書に記載するポリマーブレンドはまた、1種又は複数種のポリアクリレートコポリマーとアミノシランとの反応生成物も含む。好適なポリアクリレートコポリマーは、Steven R.Orianiに発行された米国特許第8,779,044号明細書に記載されている。しかしながら、簡潔に説明すると、好適なアクリレートコポリマーは、非晶質であり、
a)非晶質アクリレートコポリマーの総重量を基準として少なくとも45重量%又は少なくとも50重量%の、構造:
【0051】
【0052】
(式中、R1は、H又はC1~C10アルキルであり、R2は、C1~C12アルキル、C1~C20アルコキシアルキル、C1~C12シアノアルキル又はC1~C12フルオロアルキルである)を有する少なくとも1種のモノマーの共重合単位と;
b)不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物からなる群から選択される1種又は複数種の架橋点コモノマーの共重合単位と
を含む。
【0053】
ポリアクリレートコポリマーは、好ましくは非晶質である。本明細書において、ポリアクリレートコポリマーを表す際に使用される「非晶質」という用語は、室温の無応力下で殆ど又は全く結晶構造を示さないコポリマーを指す。或いは、非晶質材料は、ASTM D3418-08に準拠して測定した融解熱が4J/g未満である。
【0054】
好ましいポリアクリレートコポリマーは、a)少なくとも1種のプロペン酸のアルキルエステル又はアルコキシアルキルエステル及びb)架橋点モノマーの共重合単位を含む。好適なプロペン酸のアルキル及びアルコキシアルキルエステルとして、例えば、アルキルアクリレート及びアルコキシアルキルアクリレートに加えて、プロペン酸がC1~C10アルキル基で置換された化学種が挙げられる。このような化学種の例として、アルキルメタクリレート、アルキルエタクリレート、アルキルプロパクリレート及びアルキルヘキサクリレート、アルコキシアルキルメタクリレート、アルコキシアルキルエタクリレート、アルコキシアルキルプロパクリレート及びアルコキシアルキルヘキサクリレートが挙げられる。ポリアクリレートコポリマーはまた、1種を超えるアルキルエステル又はアルコキシアルキルエステルの化学種、例えば、2種のアルキルアクリレートの共重合単位を含むこともでき、又はプロペン、1-ブテン、1-ヘキセンなどのa-オレフィンを含むこともできる。
【0055】
プロペン酸及び置換プロペン酸のアルキル及びアルコキシアルキルエステルは、好ましくは、アクリル若しくはメタクリル酸のC1~C12アルキルエステル又はアクリル若しくはメタクリル酸のC1~C20アルコキシアルキルエステルである。好ましいエステルの例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-(n-プロポキシ)エチルアクリレート、2-(n-ブトキシ)エチルアクリレート、3-メトキシプロピルアクリレート及び3-エトキシプロピル-アクリレートが挙げられる。より好ましくは、エステル基は、分岐又は非分岐のC1~C8アルキル基を含む。更に好ましくは、エステル基は、非分岐C1~C4アルキル基である。更に好ましいアルキル(メタ)アクリレートエステルとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート及びブチルアクリレートが挙げられる。
【0056】
ポリアクリレートコポリマー中のプロペン酸エステルコモノマーの量は、ポリアクリレートコポリマーの総重量を基準として、少なくとも45重量%又は少なくとも50重量%である。好ましくは、この濃度は、少なくとも55重量%、より好ましくは少なくとも60重量%となる。プロペン酸エステルの濃度が45又は50重量%未満であると、例えば、以下に記載するポリエチレン/アクリレートゴムにある程度の結晶性が存在することになる可能性が高くなる。ポリアクリレートコポリマー又はポリエチレン/アクリレートゴムの結晶性は、ポリアクリレートコポリマー又はポリエチレン/アクリレートゴムとアミノシランとの反応生成物の弾性を低下させる可能性があるか、又はポリマーブレンドの弾性を低下させる可能性がある。
【0057】
本発明の実施に有用なポリアクリレートコポリマーは、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の無水物、不飽和エポキシド及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される架橋点モノマーの共重合単位を更に含む。これらの架橋点モノマー単位は、アミン又は他の窒素含有化学種、例えば、カルバメートと反応することができる官能基を含む。
【0058】
好適な不飽和カルボン酸としては、これらに限定されるものではないが、アクリル酸及びメタクリル酸、1,4-ブテン二酸、シトラコン酸並びに1,4-ブテン二酸のモノアルキルエステルが挙げられる。重合前の1,4-ブテン二酸は、cis-若しくはtrans体又は両方、例えば、マレイン酸又はフマル酸の混合物で存在してもよい。好適な架橋点コモノマーとしては、不飽和カルボン酸の無水物、例えば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸及び無水イタコン酸も挙げられる。好ましい架橋点モノマーとしては、マレイン酸及びその任意の酸ハーフエステル(モノエステル)又はジエステル、特にメチル又はエチル酸ハーフエステル(例えば、マレイン酸モノエチル);フマル酸及びその任意の酸ハーフエステル又はジエステル、特にメチル、エチル又はブチル酸ハーフエステル;並びにイタコン酸のモノアルキル及びモノアリールアルキルエステルが挙げられる。好ましいポリアクリレートコポリマーは、1種又は複数種の架橋点コモノマーから誘導された共重合残基を0.3若しくは0.5~10重量%又は1.0若しくは1.5~8重量%又は1.7若しくは2~5重量%含む。
【0059】
好ましいポリアクリレートコポリマーは、プロペン酸エステル及び架橋点コモノマーの共重合単位からなるか又はこれらから本質的になる。
【0060】
好適なアクリレートコポリマーは、Louisville,KYのZeon Chemicals L.P.により製造され、HyTemp(商標)エラストマーの商品名で市販されており、また、Noxtite(商標)ACMアクリルゴムは、Novi,MIのUnimatec Chemicals America,Inc.から入手可能である。
【0061】
ポリエチレン/アクリレートゴムは、ポリアクリレートコポリマーの好ましい種類である。好適なポリエチレン/アクリレートゴムは、上に述べたアクリル酸エステル及び架橋点コモノマーを上に述べた量で含むことに加えて、エチレンから誘導された共重合単位を、ポリエチレン/アクリレートゴム中の共重合しているコモノマー単位の総モル数を基準として、85mol%以下又は82mol%以下で含む。
【0062】
好ましいポリエチレン/アクリレートゴムは、1種又は複数種のアルキルアクリレートから誘導された共重合残基を、ポリエチレン/アクリレートゴムの総重量を基準として、45重量%以上又は50重量%以上と、1種又は複数種の架橋点コモノマーから誘導された共重合残基を少なくとも0.1mol%、0.3mol%又は0.5mol%とを含む。より好ましくは、ポリエチレン/アクリレートゴムは、1種又は複数種のアルキルアクリレートから誘導された共重合残基を45~80重量%又は50~70重量%又は50~65重量%含む。1~6個の炭素原子を含む分岐又は非分岐アルキル基が好ましく、1~4個の炭素原子を含む非分岐アルキル基がより好ましい。更に、好ましいポリエチレン/アクリレートゴムは、1種又は複数種の架橋点コモノマーから誘導された共重合残基を、0.3若しくは0.5~10重量%又は1.0若しくは1.5~8重量%又は1.7若しくは2~5重量%含む。ポリエチレン/アクリレートゴムの残部は、エチレンの共重合単位からなるか又は基本的になる。
【0063】
好適なポリエチレン/アクリレートゴムは、Wilmington,DEのDuPont Specialty Products USA,LLCからVamac(登録商標)の商標で市販されている。
【0064】
好適なアミノシランは、ケイ素原子から懸垂している少なくとも1個の加水分解性基、例えば、アルコキシ、アセトキシ又はハロ、好ましくはアルコキシを有する。好ましくは、架橋縮合反応することが可能な少なくとも2個のこの種の加水分解性基が存在する。アミン部分は、架橋点コモノマーとの反応速度が充分でなければならない。一般に、3級アミンは、好ましい架橋点コモノマーとの反応がゆっくりであり、したがって、それほど好ましくない。2種以上の異なるアミノシランの混合物を使用することもできる。
【0065】
アミノシランは、式YNHBSi(OR)a(X)3-a(式中、a=1~3、好ましくは2又は3であり;Yは、水素、アルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、アルカリール、アルキルシリル、アルキルアミン、C(=O)OR又はC(=O)NRであり;Rは、アシル、アルキル、アリール又はアルカリール基であり;Xは、R又はハロゲン原子であってもよく;Bは、好ましくはアルキレン基である二価の橋掛け基である)で表すことができる。Bに好適なアルキレン基は、非分岐、分岐(例えば、ネオヘキシレン)又は環式(例えば、シクロヘキシレン)である。Bは、ヘテロ原子の橋掛け、例えば、エーテル結合を含むことができる。好ましくは、Bは、プロピレン部分(-C3H6-)である。好ましくは、Rは、メチル又はエチル基である。好ましくは、Yは、アミノアルキル、水素又はアルキル基である。より好ましくは、Yは、水素又は1級アミノアルキル基(例えば、アミノエチル)である。好ましくは、Xは、塩素原子又はメチル基、より好ましくはメチル基である。
【0066】
ポリアクリレートコポリマーと反応させるのに好ましいアミノシランとしては、これらに限定されるものではないが、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピル-トリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルベンジルアミノエチルアミノ-プロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。好適なアミノシランは、Midland,MIのDow Chemical Companyから;St.Louis,MOのMilliporeSigmaから;及びSILQUEST(商標)の商品名でWaterford,NYのMomentive Performance Materials,Inc.から市販されている。
【0067】
理論に束縛されることを望むものではないが、アミノシランのアミン基は、ジカルボン酸基又は誘導体と反応することにより、ポリアクリレートコポリマーの主鎖に沿ってイミド基を形成するという仮説が立てられる。アミノシランのシラン基は、同じくアミノシラン試薬に由来するイミドの窒素から懸垂している。更に、2個以上の懸垂シラン基が反応して、1個又は複数個のアルカノール、アリールアルカノール、カルボン酸又はハロ酸分子などのX-H又はR-H分子が脱離することにより、シラン-酸素-シランの共役結合が形成され、こうしてポリアクリレートコポリマーが架橋することができるという仮説が立てられる。この架橋は、単一の-[-Si-O-Si-]-部分により形成することもできるし、又は複数のアルコキシシラン基を反応させることによって3個以上のケイ素原子を含むシロキサン網目を形成することにより、形成することもできる。この種の反応は、例えば、Xiangke Shi et al.,Silicon(2012)4:109-119に記載されている。
【0068】
反応混合物中のポリアクリレートコポリマーのアミノシラン対ジカルボン酸架橋点のモル比は、好ましくは0.2~1.5の範囲、より好ましくは0.2~1.0の範囲、一層好ましくは0.25~0.8の範囲内にある。重要なことであるが、混合物に過剰量のアミノシランを添加すると、早期架橋及びポリアクリレートコポリマーがポリマーブレンド中に充分に分散しないことに起因して、成形品又は押出品の表面外観が悪化する可能性がある。同じく重要なことであるが、反応混合物に添加するアミノシランの量が不充分だと、粘着性を示すポリマーブレンドが生成する可能性があり、これは、例え可能であったとしても、加工には必ず困難が伴う。
【0069】
コポリエーテル-エステルポリマーと、ポリアクリレートコポリマーとアミノシランとの反応生成物は、ポリマーブレンドの所望の性質に応じて任意の相対量で組み合わせることができる。好ましくは、コポリエーテル-エステルポリマーの重量と、ポリアクリレートコポリマーとアミノシランとの反応生成物の重量比は、0.5:1~19:1の間、より好ましくは0.66:1~19:1の間、最も好ましくは1:1~4:1の間又は1.5:1~4:1の間となる。或いは、コポリエステル-エーテルは、好ましくは、ポリマーブレンド中に、コポリエーテル-エステル、ポリアクリレートコポリマー及びアミノシランの総重量を基準として、約30重量%~95重量%、より好ましくは40重量%~95重量%、一層好ましくは50重量%~80重量%で存在する。
【0070】
ポリアクリレートコポリマーとアミノシランとの反応生成物の重量百分率を算出する場合、反応生成物の重量は、ポリマーブレンドの製造中に添加される出発物質、即ち、ポリマー及びアミノシランの重量に等しいものとし、少量の分子、典型的には、シラン基の縮合及びアミンとポリアクリレートコポリマーのカルボン酸架橋点との反応により必然的に発生するアルコール及び水は無視する。ポリマーブレンド製造時の液化の度合いに応じて、これらの分子を除去してもよいし、又はエステル交換によりブレンドの一部となってもよい。
【0071】
コポリエーテル-エステルポリマーと、ポリアクリレートコポリマーとアミノシランとの反応生成物のブレンドは、技術的な要件を満たすために必要な任意の種類又は量の1又は複数の他の成分、例えば、添加剤、フィラー、加工助剤、可塑剤、安定剤、粘度調整剤、着色剤、顔料を更に含むことができる。耐久消費財用途においては、酸化防止剤、具体的には、フェノール系、ホスファイト系及びアミン含有酸化防止剤が特に有用である。これらの他の成分は、ブレンド製造の任意の段階で、又は後段の加工ステップで、当該技術分野において慣用されている量で添加することができる。アミノシラン及びポリアクリレートコポリマーの反応は、混合プロセスにおいて、例えば、二本ロールのゴム練り機内で、又はBanbury(商標)型密閉式混練機、Haake Rheocord(商標)混練機、Brabender Plastograph(商標)混練機、Farrel形連続混練機、Buss(商標)ニーダー若しくは単軸及び二軸押出機などの、ゴム状(gum rubber)組成物のコンパウンディングに適した密閉式混練機を使用して実施することができる。二軸押出機が好ましい。好ましくは、1又は複数のポリアクリレートコポリマーは、押出機に1種又は複数種のアミノシランをポリマーに注入した後に供給される。
【0072】
アミノシランを注入する前の押出機バレル温度は、好ましくは150℃以下であり、一方、注入点の下流側のバレル温度は、好ましくは150℃以上である。押出機の設定温度を150℃以下にしてアミノシランを注入すると、シランの縮合が起こる前にアミノシランをポリアクリレートコポリマーと確実に混合することができ、これがひいては、アミノシラン架橋の効率を向上させるため、所与の硬化状態を達成するために必要となるアミノシランがより少なくなる。アミノシランは、150℃以上の温度で、アミンと架橋点との反応を介してポリアクリレートコポリマーにグラフトし、シランは速やかに縮合して架橋を形成する。コポリエステル-エーテルポリマーは、押出機から吐出される前の任意の時点で添加することができる。好ましくは、コポリエステル-エーテルポリマーは、バレル温度が150℃以下のところで添加され、したがって、シランの縮合は、コポリエステル-エーテルポリマーの溶融及び混練と実質的に同時に起こる。
【0073】
アミノシランは、任意選択的に、1種又は複数種の非反応性溶媒又は担体で、必要に応じて希釈することができる。好適な溶媒及び担体としては、これらに限定されるものではないが、無水トルエン、無水エタノール及びアセトンが挙げられる。溶媒又は担体中のアミノシランの濃度は、アミノシラン及び溶媒又は担体の総重量を基準として、約10重量%~約95重量%の範囲とすることができる。
【0074】
押出機のスクリューは、液状のアミノシランを注入点及びその下流側でポリマーと均一に混合するのに適した設計にすべきである。押出機スクリューのポリアクリレートの架橋が起こる部分では、好ましくは、架橋したエラストマーを確実にコポリエーテル-エステルポリマー中に分散させるように、ニーディングブロックなどの高能力(high work)エレメントが使用される。押出機内のポリマー反応混合物、反応生成物又はブレンドの、混錬度合い、温度及び滞留時間を制御するための逆送りエレメント、ギア型ミキサー(gear mixer)、順送りエレメント及びブリスターリングなどの他のスクリューエレメントは、反応押出分野の当業者によく知られている。好ましくは、押出機は、硬化反応により生成した揮発性物質を抜き出すための少なくとも1つの真空脱揮ポートを有する。押出機のスクリュー速度は、幅広い範囲で、典型的には200~600RPM、より好ましくは250~400RPMの範囲で変化させることができる。好ましくは、バレル温度は、100℃~240℃の間に設定される。
【0075】
ポリマーブレンドの製造中に起こる反応を促進するための触媒も、プロセスの任意の時点で添加することができる。例えば、アミンとポリアクリレートコポリマーの架橋点との反応を促進するのに適した触媒は、好ましくは、アミノシランを添加する前、同時、又は基本的に同時に添加され、それによりアミノシランは、シランが縮合してシロキサン結合を形成する前に、ポリアクリレートコポリマーの架橋点と反応する。好適な触媒は、ポリアクリレートコポリマーをポリアミン硬化するための促進剤として、当該技術分野においてよく知られている。幾つかの好適な触媒が、例えば米国特許第3,883,472号明細書に記載されている。3級アミンは、アミノシランのポリアクリレートコポリマーへのグラフトを促進するための好ましい種類の触媒である。特に好ましい触媒は、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU)である。好ましくは、ポリマーブレンドは、アミンとポリアクリレートコポリマーの架橋点との反応を促進するために少なくとも有効な量の触媒を含む。触媒は、アミノシランの重量を基準として1重量部(pbw)~50pbwの量で存在することができる。より好ましくは、触媒は、アミノシラン5pbw当たり1pbwの量で存在する。
【0076】
シロキサン結合の形成を促進するための触媒も、ポリマーブレンド製造の任意の時点で添加することができる。好適な触媒は、S.Levigoureux、P.Garcia、M.Ficquenet and I.Denizet,“Catalyst alternatives to replace DBTDL and crosslink speed improvement of a low voltage cable insulation”,9th International Conference on Insulated Power Cables,Versailles,France,June 2015に記載されているように、当該技術分野においてよく知られている。そのような触媒として、スルホン酸及びカルボン酸、金属水酸化物、有機スズ化合物などが挙げられる。しかしながら、シロキサンを形成するための触媒は、好ましくはポリマーブレンドには存在しない。その理由の少なくとも一部は、これらが、シラン縮合及びアミンとエラストマーの架橋点との反応によって水及びアルコールが発生するに従い、コポリエステル-エーテルポリマーの望ましくない加水分解又はアルコリシスを触媒し得ることにある。
【0077】
本明細書に記載するポリマーブレンドの製造に使用されるプロセス条件及びアミノシランの量は、様々な技術的目標を達成するために修正することができる。ポリアクリレートコポリマーの架橋が不充分であった場合、ブレンドの粘着性が高すぎてペレット化できなくなる可能性があり、又はペレット化しても、ブレンドのペレットが集合(massing)又は集塊化(clumping)する可能性がある。このような問題は、アミノシラン含有量を増加することによるか、アミンとエラストマー架橋点との反応速度を高める触媒を含有させることによるか、又はアミノシランを添加する条件を変更して、シラン縮合が誘導される前にアミノシランがポリアクリレートコポリマーと確実に完全に混合されるようにすることによって、対処することができる。原則として、ブレンドの引張強度及び伸展性(extensibility)は、非集合性ペレットを製造するために必要な最小量よりも僅かに多い量のアミノシランを用いることによって最適化される。アミノシランの量がそれよりも多くなると、ブレンドの弾性率が高くなる一方で、伸展性が低下する傾向にある。
【0078】
反応押出技術分野の熟練した科学者及び技術者は、本明細書に記載するポリマーブレンドの製造に関する技術的要件を満たすための許容される運転パラメータが達成されるように、押出機の運転、スクリュー設計及び押出機への原料の供給方法に関する従来の原則を適用することができる。例えば、アミノシラン注入機構の設計は、好ましくは、詰まりにくく、連続的に安定した流れを提供するものである。押出機のスクリューには、好ましくは、アミノシランをポリマーに速やか且つ均一に混合するためのニーディングブロックなどのエレメントが組み込まれている。アミノシラン及びエラストマーを確実にグラフトさせるために、この部分における滞留時間が長くなるように、逆送りエレメント及びギア型ミキサーを使用することができる。コポリエーテル-エステルコポリマーとポリアクリレートコポリマー及びアミノシランとの溶融及び混錬に関与するスクリュー部分には、コポリエーテル-エステルコポリマー中にエラストマーを確実に良好に分散させるために、ニーディングブロック、逆送りエレメント又は他の高能力エレメントを組み込むことが必要である。当業者によく知られているように、押出機の供給速度、押出量、スクリューのRPM及び溶融温度も滞留時間及び混錬に影響を与える。典型的な押出機のスクリュー速度は、100~500RPMの範囲、より典型的には200~400RPMの範囲とすることができる。押出機出口のポリマー温度は、典型的には240℃~315℃、240℃~300℃、好ましくは250℃~290℃の範囲にある。
【0079】
更に、得られたポリマーブレンドは、固相重合によって粘度を増大させるために後処理することができる。この技法において、ポリマーブレンドは、残存しているヒドロキシル及びカルボン酸残基のエステル化を促進するのに充分な時間、コポリエーテル-エステルポリマーの溶融ピーク温度よりもおよそ10℃~40℃低い温度に曝露され、それにより、ポリマーブレンドの粘度が増大する。
【0080】
ポリマーブレンドは、コポリエステル-エーテルポリマーマトリックス内に分散している不連続の架橋したエラストマー粒子から、軽度に架橋したエラストマー及びコポリエステル-エーテルを含む共連続相まで、そしてこれらの形態の混合物までの範囲の、多岐にわたる様々な形態により特徴付けることができる。これらの形態の一部は、本明細書に記載する物品に使用するのに適していない場合がある。その理由は、更にコンパウンディングすることが困難な材料になり得ること、又はこれらの破断点引張り伸び(tensile elongation to break)が100%未満になるなど、弾性に劣る可能性があること、又はこれらが老化挙動に劣る可能性があること、又はこの形態が不安定である、即ち、コポリエステル-エーテルコポリマーの溶融ピーク温度を超える温度で静止したまま保持すると、ポリマーブレンドが粗くなる可能性があることにある。最も好ましくは、アミノシラン及びポリアクリレートコポリマーの反応生成物は、ポリエステル-エーテルブロックコポリマー中に不連続な粒子として存在する。この形態のポリマーブレンドは、熱可塑性加硫物、即ちTPVである。
【0081】
一般に、コポリエーテル-ポリエステルブロックコポリマー中の反応生成物の分布及び分散の程度は、引張試験用試験片を成形し、ポリマーブレンドの引張強度を測定することによって評価することができる。ポリマーブレンドの機械的性能は、Instron引張試験機などの荷重フレームを介して、ISO-527-1(2019)に準拠し、射出成形された5A試験片を使用し、20mm/分の引張速度で評価することができる。アミノシランとポリアクリレートコポリマーとの反応生成物の分散が悪いとブレンドの引張強度が低下する。引張強度はブレンド中のコポリエステル-エーテルポリマーの種類及び量にも依存するが、当業者は、これらの原理及び技法を、ブレンドの特性を最適化するように適用することができる。
【0082】
好ましいポリマーブレンドは、コポリエステル-エーテルコポリマーの溶融ピーク温度を超える温度で静止したまま保持しても、安定な形態を示す。不安定な形態のブレンドは、このような条件下では、顕著な粗面化、コブの形成又はそれ以外の押出成形物の歪みが現れる。ブレンド形態の安定性は、テープダイを取り付けた単軸押出機を用いて評価することができる。試験に供するブレンド組成物を一定速度で押出し、シート又はテープ試料を回収する。次いで押出機のスクリューを一旦停止し、その間、ブレンドの温度を保持し、押出機を再始動した直後に第2試料を回収する。最も好ましくは、押出物は両方とも見た目が滑らかであり、静止保持期間を経ても変化がない。それよりも好ましくないのは、初期試料が滑らかである一方、第2試料が粗く、コブが多く、又は歪んでいる場合である。最も好ましくないのは、試料が両方とも粗く、コブが多く、又は歪んでいる場合である。
【0083】
コポリエーテル-エステルコポリマー及びポリアクリレートコポリマーの種類及び重量比を変更することにより、本明細書に記載するポリマーブレンドは、軟質の(ショアAがおよそ60)高弾性熱可塑性エラストマーから、より剛性の高い(ショアDがおよそ70)可撓性プラスチックまで、多様に変化させることができる。一般に、ポリアクリレートコポリマーとアミノシランとのエラストマー性反応生成物の含有量が増加すると、ポリマーブレンドの強度及び剛性は低下するが、その一方で、熱風及び高温水による劣化に対する耐性は向上する。本明細書に記載する本発明のポリマーブレンドは、同じ硬度を有する純粋なコポリエステル-エーテルポリマーと比較して、熱風及び高温水による劣化に対する耐性が優れている。
【0084】
本明細書に記載するポリマーブレンドは、幅広い工業用途、例えば、電線及びケーブルの被覆;家電機器;履物などの消費財;石油及びガス産業用フラットパック;自動車などの輸送車両に使用されるエアダクト並びにインボード及びアウトボード側等速ジョイント(CVJ)ブーツ、ダイアフラムブーツ並びにプロペラシャフトブーツなどのブーツ;ソフトタッチ材料、着用品及びシーリング用途;自動車などの輸送車両に使用される流体及びエアダクト;並びに自動車に使用される他の物品、流体動力(流体動力伝達線など)、電気及び電子的用途、ホース及び管並びに家電分野を含む物品の製造に使用することができる。
【0085】
これらの物品は、熱可塑性高分子材料から物品を作製するための従来法、例えば、射出成形、ブロー成形、押出、圧縮成形、プレスブロー成形(Ossberger成形)、アキュムレータブロー成形、押出ブロー成形又は射出ブロー成形などを用いて製造することができる。
【0086】
以下に本発明を更に詳細に説明するための実施例を示す。本発明を実施するために現時点で考えられる好ましい形態を示すが、これらの実施例は本発明を例示することを意図し、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0087】
材料
コポリエステル-エーテルAは、2000g/molのPTMEG(72.5重量%)、テレフタル酸(18.4重量%)及び1,4-ブタンジオール(9.1重量%)の共重合残基を含む。このポリマーは、短鎖エステル単位(ハードセグメント)約22.6重量%及び長鎖エステル単位(ソフトセグメント)77.4重量%含み、溶融ピーク温度は177℃である。
【0088】
コポリエステル-エーテルBは、1000g/molのPTMEG(7.8重量%)、テレフタル酸(55.8重量%)及び1,4-ブタンジオール(36.4重量%)の共重合残基を含む。このポリマーは、短鎖エステル単位を約91重量%及び長鎖エステル単位を9重量%含み、溶融ピーク温度は221℃である。
【0089】
コポリエステル-エーテルCは、2000g/molのPTMEG(50.6重量%)、テレフタル酸(31重量%)及び1,4-ブタンジオール(18.4重量%)の共重合残基を含む。このポリマーは、短鎖エステル単位を約46重量%及び長鎖エステル単位を54重量%含み、分子量を高めるために固相重合法に付される。このポリマーの溶融ピーク温度は198℃である。
【0090】
ポリエチレン/アクリレートゴムAは、メチルアクリレートの共重合単位を55重量%、カルボン酸官能基を有する架橋点モノマーの共重合単位を3.1重量%含み、残部はエチレンの共重合単位である。このポリマーは非晶質であり、溶融ピーク温度を示さない。
【0091】
ポリエチレン/アクリレートゴムBは、メチルアクリレートから誘導された共重合単位を23重量%、ブチルアクリレートから誘導された共重合単位を41重量%、カルボン酸官能基を有する架橋点コモノマーから誘導された共重合単位を3.2重量%含み、残部はエチレンの共重合単位である。このポリマーは非晶質であり、溶融ピーク温度を示さない。
【0092】
ポリアクリレートコポリマーAは、エチルアクリレートを54重量%、ブチルアクリレートを44重量%及びカルボン酸官能基を有する架橋点モノマーを2重量%含む。このポリマーは非晶質であり、溶融ピーク温度を示さない。
【0093】
PBTは、Wilmington,DelawareのDuPont de Nemours,Inc.からCrastin(登録商標)6129として入手可能なポリブチレンテレフタレートである。
【0094】
アミノシランAは、Sigma-Aldrich Corporationから入手可能な3-アミノプロピルトリエトキシシランである。
【0095】
アミノシランBは、Sigma-Aldrich Corporationから入手可能な3-アミノプロピルトリメトキシシランである。
【0096】
ジアミンは、Sigma-Aldrich Corporationから入手可能な2,2,4(2,4,4)-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミンである。
【0097】
DBUは、Sigma-Aldrich Corporationから入手可能な3級アミン触媒である1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エンである。
【0098】
試験方法
射出成形を行う前に、ペレットを一晩乾燥させるか又は少なくとも80℃~90℃の真空オーブンで4若しくは6時間乾燥させた。材料をArburg 1.5oz機で射出成形した。バレル温度を、ASTM D3418-15の方法により測定されたコポリエーテル-エステルポリマーの溶融ピーク温度を超える温度に設定した。
【0099】
ポリマーブレンドの引張特性(引張強度、破断伸び)を、Instron(商標)引張試験機を用いて、ISO-527-1(2019)に準拠し、射出成形された5A試験片を使用し、引張速度を20mm/分として測定した。ポリマーブレンドの可撓性を、Instron(商標)曲げ試験機を用いて、ISO-178(2019)に準拠し、射出成形された4mmの多目的試験片を使用し、試験速度を1.270mm/分として評価した。ポリマーブレンドの硬度(ショアA及びショアD)を、ISO-868(2003)に記載されている標準条件を用いて評価した。射出成形された4mmの多目的試験片又は5A試験片を使用し、15秒後の硬度に替えてピーク(初期)硬度を報告する点を変更した。全ての試料をそのISO規格に準拠して状態調整した。
【0100】
ポリマーブレンドの押出品質及び安定性を、25.4mm×0.8mmのテープダイを取り付けた直径19.1mmの単軸押出機を用いて評価する。押出機のバレルは3つの加熱ゾーンを有し、ダイは単一の加熱ゾーンを有する。温度を実施例に記載する通りに設定し、典型的には、供給ゾーンからダイに向かって上昇させ、押出機の最終温度及びダイ温度が、試験に供するブレンド中のコポリエーテル-エステルコポリマーの溶融ピーク温度よりも約20℃高くなるように設定する。2種の空冷された押出テープを回収して押出品質を評価する:
テープ1-押出機を25rpmで定常状態で運転させながら回収。
テープ2-テープ1を回収した後、スクリューの回転を5分間停止し、その後25rpmで再開。始動直後に回収した押出物をテープ2とする。
【0101】
テープの外観を次に示す説明に従い目視で評価する:
平滑:表面は光沢のある外観を有し、畝、コブ、波打ち又は他の欠陥がない。
光沢なし:表面はくすんで見えるが、それ以外の欠陥は見られない。
粗い:表面に、畝、コブ、波打ち又は他の連続的若しくは不連続的な欠陥がある。
【0102】
実施例1
表Iの実施例E1、E2及びE3は、ソフトセグメント含有量の高いコポリエステル-エーテルコポリマーを使用することにより、硬度が低く、良好な物理特性及び押出品質を有する熱可塑性エラストマーが得られることを示している。これらの実施例は更に、触媒をアミノシランと併用することの利点を示している。表Iのポリマーブレンドは、12のバレルゾーンを有する30mmの同方向回転二軸押出機を使用し、300rpm及び吐出速度10.9kg/hrで運転することにより製造した。コポリエステル-エーテルコポリマーをバレルゾーン1に供給し、ポリエチレン/アクリレートゴムをバレルゾーン4に供給し、アミノシラン又はジアミン架橋剤をバレルゾーン5に供給した。バレルゾーン1~7の設定温度は100℃とし、一方、ゾーン8~12は220℃に設定した。ポリマーブレンドを220℃に設定したストランドダイを介して押出し、得られたストランドを水浴中で冷却してペレット化した。触媒を使用する場合は、アミノシラン又はジアミンを予備混合した。
【0103】
表Iのポリマーブレンドの押出品質を、温度設定を170℃、180℃及び190℃(供給ゾーンから吐出まで)とし、テープダイの温度を190℃に設定した単軸押出機を用いて評価した。実施例E1、E2及びE3のポリマーブレンドは、押出機を5分間休止する前及び休止後の両方で滑らかに押出された(テープ1及び2)が、比較例CE1のテープ2は粗く、品質が劣っていた。
【0104】
実施例E1及びE3では、DBU触媒及びアミノシランを併用することにより、アミノシランのみ(E2)又はDBU触媒及びジアミン(CE1)を含むブレンドよりも優れた引張強度を有するポリマーブレンドが得られた。DBU触媒を使用することによって、非粘着性の自由流動性ペレットを製造するのに必要なアミノシランの量も低減された。実施例E1、E2及びE3では、アミノシランを、自由流動性を有するペレットを製造するのに必要な最小限の含有量で使用している。触媒が存在しないE2では、必要とされる1級アミン等価物は、E1又はE3に必要なアミノシランよりも20%を超えて多くなる。
【0105】
【0106】
実施例2
表IIのポリマーブレンドを実施例1に記載したプロセス条件に従い製造した。但し:二軸押出機のバレルゾーン8~12の温度を220℃から240℃に上昇させた。コポリエステル-エーテルBのより高い溶融ピーク温度に対応するために、テープの押出に使用する温度プロファイルを220℃、230℃及び240℃(供給ゾーンから吐出まで)とし、テープダイの温度を240℃に設定した。
【0107】
表IIの実施例E4及びE5は、ソフトセグメント含有量が低く、DBU触媒を含む又は含まないコポリエステル-エーテルコポリマーの使用を示すものである。DBU触媒及びアミノシランを併用することにより、ポリマーブレンドの引張強度及び伸びを増大させながら、アミノシランの使用量を減らすことが可能であり、これは実施例1の結果と一致している。E4及びE5は優れたテープ押出品質を示し、5分間の休止後(押出テープ2)も粗面化は見られない。
【0108】
比較例CE2は従来のジアミン硬化剤を使用しており、押出テープ2の押出品質は劣っている。比較例CE3は、E4のコポリエステル-エーテルコポリマーをポリブチレンテレフタレートホモポリマー(PBT)に替えたものである。驚くべきことに、コポリエステル-エーテルBは、PBTとの組成的な差は7.8重量%のPTMEGが存在することのみであってさえも、CE3はE4よりも可撓性及び伸展性がはるかに劣っている。本発明は、厳しい要求への対策に合わせてポリマーブレンドを調整するための解決策を提供することを目的としているので、コポリエステル-エーテルコポリマーを使用することによって、ホモポリマーポリエステルを使用するよりも配合の自由度がはるかに高くなる。
【0109】
【0110】
実施例3
表IIIのポリマーブレンドは、分子量を増加させるために固相重合を行ったコポリエステル-エーテルコポリマーをポリアクリレートコポリマーとブレンドする使用を示すものである。実施例E6及びE7を実施例1のプロセスに従い調製した。テープの押出に、200℃、210℃及び220℃(供給ゾーンから吐出まで)の温度プロファイルを使用し、テープダイの温度を220℃に設定した。
【0111】
表IIIの結果は、ポリエチレン/アクリレートゴムを使用したE6は、ポリアクリレートコポリマーをベースとするE7よりも強度及び伸展性が高いことを示している。E6及びE7はどちらも良好なテープ押出特性を示し、テープ1及び2の間に表面の仕上がりの劣化は見られないが、E6は平滑な仕上がりである一方、E7は光沢のない仕上がりである。どちらも許容可能であるが、特定の用途では、一方又は他方が好ましい場合もある。
【0112】
【0113】
本発明の特定の好ましい実施形態を上で説明し、具体的に例示してきたが、本発明をこのような実施形態に限定することは意図されない。以下の特許請求の範囲に示されるように、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、様々な改変形態がなされ得る。
【国際調査報告】