(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-03
(54)【発明の名称】修飾された免疫エフェクター細胞及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20230224BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230224BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20230224BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20230224BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230224BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230224BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230224BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230224BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230224BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20230224BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20230224BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20230224BHJP
C07K 14/725 20060101ALN20230224BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N15/12
C12N15/09 110
C12N15/113 Z
C12N15/13
C12N15/62 Z
A61P35/00
A61P35/02
A61K35/17 Z
C12N5/0783
C07K19/00
C07K16/00
C07K14/725
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540754
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(85)【翻訳文提出日】2022-08-22
(86)【国際出願番号】 CN2020140799
(87)【国際公開番号】W WO2021136263
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】202010002929.3
(32)【優先日】2020-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522261558
【氏名又は名称】寧波茂行生物医薬科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尚 小云
(72)【発明者】
【氏名】▲ジアン▼ 海娟
(72)【発明者】
【氏名】王 丹
(72)【発明者】
【氏名】沈 慧
(72)【発明者】
【氏名】馬 麗
(72)【発明者】
【氏名】辛 雨
(72)【発明者】
【氏名】徐 凡麗
(72)【発明者】
【氏名】李 甲▲ルゥ▼
(72)【発明者】
【氏名】馬 小文
(72)【発明者】
【氏名】趙 丹
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA44
4B065CA46
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087NA05
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
修飾された免疫エフェクター細胞を提供し、そのうち前記修飾されていない相応細胞中の相応遺伝子の発現と/又は活性と比べ、TRAC遺伝子とHLA-A遺伝子の発現と/又は活性はダウンレギュレートされ、B2M遺伝子の発現と/又は活性はダウンレギュレートされず、かつCIITA遺伝子の発現と/又は活性はダウンレギュレートされない。前記修飾された免疫エフェクター細胞の調整方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾された免疫エフェクター細胞、その中に前記修飾されない相応細胞中の相応遺伝子の発現と/或は活性と比べて、TRAC遺伝子とHLA-A遺伝子の発現と/或は活性はダウンレギュレートされる、B2M遺伝子の発現と/或は活性はダウンレギュレートされない、且つCIITA遺伝子の発現と/或は活性はダウンレギュレートされない。
【請求項2】
前記修飾によって、TRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子からなる2つの遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされる、請求項1に記載の免疫エフェクター細胞
【請求項3】
対応する野生型細胞と比較して、TRAC 遺伝子及びHLA-A遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされ、B2M遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされず、CIITA遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされない請求項1~2のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項4】
2つの遺伝子の発現及び/又は活性は、対応する野生型細胞と比較してダウンレギュレートされ、2つの遺伝子は、TRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子からなる請求項1~3のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項5】
前記免疫エフェクター細胞は、T細胞を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項6】
前記遺伝子の発現レベル及び/又は活性がダウンレギュレートされることが、前記遺伝子をコードする核酸分子の発現及び/又は活性をダウンレギュレートさせること;及び/又は前記遺伝子によりコードされるタンパク質産物の発現及び/又は活性をダウンレギュレートさせることを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項7】
前記修飾は、遺伝子変異及び/又は遺伝子サイレンシングを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項8】
前記修飾は、アンチセンスRNA、siRNA、shRNA及びCRISPR/Cas9システムからなる群より選択される1以上の物質を前記免疫エフェクター細胞に投与することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項9】
前記修飾は、CRISPR/Cas9システムを前記免疫エフェクター細胞に投与することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項10】
前記修飾は、前記HLA-A遺伝子のエキソン部分を標的とするsgRNAを前記免疫エフェクター細胞に投与することを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項11】
前記修飾は、前記TRAC遺伝子のエキソン部分を標的とするsgRNAを前記免疫エフェクター細胞に投与することをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項12】
前記HLA-A遺伝子のエクソン部分を標的とする前記sgRNAが、SEQ ID NO.16~54、91~92のいずれか1つに示されるヌクレオチドを含む、請求項10に記載の免疫エフェクターセル。
【請求項13】
前記TRAC遺伝子のエクソン部分を標的とするsgRNAは、SEQIDNo.1-15のいずれかに示されるヌクレオチドを含む、請求項12記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項14】
前記アンチセンスRNAがSEQ ID No.93-96のいずれかに示されるヌクレオチドを含む、請求項8~13のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項15】
前記修飾は、前記細胞にCas酵素を投与することをさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項16】
前記Cas酵素は、前記Cas9タンパク質を含むことを特徴とする請求項15に記載の免疫応答細胞。
【請求項17】
前記免疫エフェクター細胞が、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含み、前記CARが、抗原結合構造ドメイン、団子鎖領域、膜貫通構造ドメイン、共刺激構造および一次シグナル伝達構造ドメインを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項18】
前記抗原結合構造ドメインは、腫瘍抗原を特異的に結合する、請求項17に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項19】
前記腫瘍抗原は、CD19、CD20およびBCMAoからなる群から選択される、請求項17に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項20】
前記抗原結合構造ドメインが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、単一ドメイン抗体及びそれらの抗原結合断片からなる群から選択される、請求項17~19のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項21】
前記抗原結合ドメインは、固形腫瘍を標的とする、請求項17~20のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項22】
前記固形腫瘍が、肝臓癌、胃癌、肺癌、乳癌及び非小細胞肺癌からなる群より選択される、請求項21に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項23】
前記抗原結合ドメインが非固形腫瘍を標的とする、請求項17~20のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項24】
前記非固形腫瘍は、Bリンパ球腫瘍、ホジキンリンパ腫、慢性骨髄性白血病、及び急性骨髄性白血病からなる群から選択される、請求項23に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項25】
前記膜貫通ドメインは、CD28、CD3e、CD27、CD3e、及びCD45から選択される膜貫通ドメインを含む、請求項17~24のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項26】
前記共刺激性構造ドメインが、以下のタンパク質:CD137、CD28、CD27、0X40及びCD30から選択される共刺激性構造ドメインを含む、請求項17~25のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項27】
前記ヒアルロン酸領域が、前記抗原結合構造ドメインを前記膜貫通構造ドメインに接続し、前記ヒアルロン酸領域が、以下から選択されるタンパク質由来のヒアルロン酸領域を含む、請求項17~26のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞:ヒト免疫グロブリンヘアピン領域、GS接合体、KIR2DS2ヘアピン領域およびCD8aヘアピン領域。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか1項に記載の修飾された免疫エフェクター細胞を製造する方法であって、それは以下のステップを含む:前記修飾されていない対応する細胞における対応する遺伝子の発現及び/又は活性と比較して、前記免疫エフェクター細胞におけるTRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子の発現及び/又は活性をダウンレギュレートする。B2M遺伝子の発現及び/又は活性をダウンレギュレートせず、かつCIITA遺伝子の発現及び/又は活性をダウンレギュレートしない。
【請求項29】
前記修飾によって、TRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子からなる2つの遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
対応する野生型細胞と比較して、TRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされ、B2M遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされず、CIITA遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされない、請求項28~29いずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
2つの遺伝子の発現及び/又は活性は、対応する野生型細胞と比較してダウンレギュレートされ、前記2つの遺伝子は、TRAC遺伝子およびHLA-A遺伝子を含む、請求項28~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
遺伝子の発現レベル及び/又は活性の前記ダウンレギュレーションが、前記遺伝子をコードする核酸分子の発現及び/又は活性をダウンレギュレーションさせること;及び/又は前記遺伝子によりコードされるタンパク質産物の発現及び/又は活性をダウンレギュレーションさせることを含む、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記修飾は、遺伝子変異及び/又は遺伝子サイレンシングを含む、請求項28~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記修飾は、アンチセンスRNA、siRNA、shRNA及びCRISPR/Cas9システムからなる群より選択される1以上の物質を前記免疫エフェクター細胞に投与することを含む、請求項28~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記修飾は、前記免疫エフェクター細胞にCRISPR/Cas9 システムを投与することを含む、請求項28~34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
前記修飾は、前記HLA-A遺伝子のエクソン部分を標的とするsgRNAoを前記免疫エフェクター細胞に投与することを含む、請求項28~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記修飾は、前記TRAC遺伝子のエクソン部分に標的化されたsgRNAoを前記免疫エフェクター細胞に投与することを含む、請求項28~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記HLA-A遺伝子のエクソン部分を標的とする前記sgRNAは、SEQIDNo.16-54>91-92のいずれか1つに示される核酸配列を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記TRAC遺伝子のエクソン部分を標的とするsgRNAは、SEQIDNo. 1-15のいずれかに示されるリボキシル酸配列を含む請求項37記載の方法。
【請求項40】
前記アンチセンスRNAは、SEQ ID No.93-96のいずれかに示される核酸配列を含む、請求項34~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記修飾は、前記細胞へのCas酵素の投与をさらに含む、請求項34~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記Cas酵素は、前記Cas9タンパク質を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
組成物は、請求項1~27のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞及び薬学上許容される担体を含む。
【請求項44】
細胞集団を含み、前記細胞の集団が、請求項1~27のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞を含む、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
請求項1~27のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞のCARーT細胞製造への応用。
【請求項46】
請求項1~27のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞の薬物製造への応用であって、前記薬物は異体治療に用いられる。
【請求項47】
請求項1~27のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞の薬物製造への応用であって、前記薬物は腫瘍の治療に用いられる。
【請求項48】
前記腫瘍は、固形腫瘍と非固形腫瘍とからなる、請求項47に記載の応用例。
【請求項49】
前記腫瘍が、肝臓癌、胃癌、肺癌、乳癌、非小細胞肺癌、Bリンパ球腫、ホジキンリンパ腫、慢性骨髄性白血病及び急性骨髄性白血病からなる群より選ばれる、請求項47~48のいずれか一項に記載の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はバイオ医薬品に属し、より具体的には、修飾された免疫エフェクター細胞及びその調製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抗腫瘍免疫療法は、様々な悪性腫瘍において耐久性のある強い反応を引き起こす幅広い可能性を示しており、多くの異なるタイプのがんの治療に使用することができる。現在の抗腫瘍免疫療法には、主に免疫細胞標的モノクローナル抗体(mAb)療法と養子細胞療法(ACT)の2種類の免疫療法がある。その中、ACTは体外で刺激と増幅した自己あるいは異体リンパ細胞を人体に戻し、抗腫瘍効果を達成することを指すが、この治療法はMHC多型が一致する患者だけに治療効果が比較的に良いとされる。CAR-Tは新型の有効なMHCに依存しない養子細胞療法であり、CARはキメラ抗原受容体とも呼ばれ、TCR機能を模擬する人工受容体であり、腫瘍細胞表面の抗原を特異的に認識し、腫瘍細胞を標的とする。しかし、自己CAR T細胞の適時かつ成功的な製造と輸注は有効なCAR T細胞治療を実施する最大の障害であり、例えば、患者が以前に化学療法方案による治療し、化学療法薬物は患者のT細胞の体外での増殖困難或いは機能低下を引き起こし、十分な数量のCAR-T細胞製品を産生できなく、或いは品質が比較的に悪い。また、現在、自体CAR-TはALLあるいはCLL患者によく使われ、固形腫瘍患者における応用は大きな挑戦に直面し、例えば腫瘍抗原の異質性は自体CAR-Tの応用を制限した。CARの柔軟性を高め、抗原認識の範囲を広げるために、汎用型のCAR-Tが登場した。汎用CAR T細胞は、同種異系の健常人ドナーから腫瘍抗原特異的T細胞を作製することを主な設計原理としている。この方法で得られたCAR T細胞の増殖効率と生存率は向上するが、同種異系のT細胞の内因性TCRは受容体の同種異系抗原を認識してしまうことによって、移植片対宿主病(GVHD)につながってしまう。また、同種異形のT細胞表面でのHLAの発現は宿主免疫システムの快速拒絶反応(HVGR)をも引き起こしてしまう。したがって、同種細胞治療による免疫拒絶の問題については、さらなる検討が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願は修飾された免疫エフェクター細胞を提供し、そのうち前記修飾されていない相応細胞中の相応遺伝子の発現と/又は活性と比べ、TRAC遺伝子とHLA-A遺伝子の発現と/又は活性はダウンレギュレートされ、B2M遺伝子の発現と/又は活性はダウンレギュレートされず、かつCIITA遺伝子の発現と/又は活性はダウンレギュレートされない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
いくつかの実施形態では、前記修飾は2つの遺伝子の発現及び/又は活性をダウンレギュレートさせ、前記2つの遺伝子はTRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子からなる。
【0005】
いくつかの実施形態では、対応する野生型細胞と比較して、TRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされ、B2M遺伝子の発現及び/又は活性はダウンレギュレートされず、CIITA遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされない。
【0006】
いくつかの実施形態では、対応する野生型細胞と比較して、2つの遺伝子の発現及び/又は活性ははダウンレギュレートされ、前記2つの遺伝子は、TRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子からなる。
【0007】
いくつかの実施形態では、前記免疫エフェクター細胞はT細胞を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記遺伝子の発現レベル及び/又は活性がダウンレギュレートされることは、前記遺伝子をコードする核酸分子の発現及び/又は活性をダウンレギュレートさせること;及び/又は前記遺伝子によってコードされるタンパク質産物の発現及び/又は活性をダウンレギュレートさせることを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、修飾は、遺伝子変異及び/又は遺伝子サイレンシングを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記修飾は、アンチセンスRNA、siRNA、shRNA及びCRISPR/Cas9システムからなる群から選択される1つ以上の物質を前記免疫エフェクター細胞に投与することを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記修飾は、免疫エフェクター細胞へのCRISPR/Cas9システムの投与を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、HLA-A遺伝子の前記対立遺伝子は、以下からなる群から選択される: A*02、A*11、A*24、A*30、A*33、A*03、A*01、及びA*26。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記HLA-A遺伝子内の最大2つの対立遺伝子の発現レベル及び/又は活性がダウンレギュレートされる。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記HLA-A遺伝子の1つの対立遺伝子の発現レベル及び/又は活性がダウンレギュレートされる。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記修飾は、前記HLA-A遺伝子のエクソン部分を標的とするsgRNAを前記免疫エフェクター細胞に投与することを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記HLA-A遺伝子のエクソン部分を標的とするsgRNAは、SEQ ID NO.16-54、91~92のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記修飾はまた、前記TRAC遺伝子のエクソン部分を標的とするsgRNAを前記免疫エフェクター細胞に投与することを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記TRAC遺伝子のエクソン部分を標的とするsgRNAは、SEQ ID NO.1-15のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記アンチセンスRNAは、SEQ ID No.93-96のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記修飾は、前記細胞へのCasタンパク質の投与をさらに含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質はCas9タンパク質を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記免疫エフェクター細胞はキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含み、前記CARは抗原結合ドメイン、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、共刺激構造と一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記抗原結合ドメインは腫瘍抗原に特異的に結合する。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記腫瘍抗原は以下からなる群から選択される:CD19、CD133、CD123、CD22、CD30、CD171、CA125、C-met、L1CAM、EC、DLL3、CD99、CS1、5T4、CD138、CS-1(CD2サブクラス1、CRACC、SLAMF7、CD319、19A24とも呼ばれる)、C型レクチン様分子-1(CD133又はCD123)、CD33、上皮成長因子受容体バリアントIII(CD171)、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドGD3、TNF受容体ファミリーB細胞成熟抗原(CA125)、Tn抗原(例:C-met、L1CAMα-CD138)、前立腺特異性膜抗原(CRACC);受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、Fms様チロシンキナーゼ3(FLT3);腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)(EPCAM)、CD38、CD44v6、癌胎児抗原(CEA)、上皮細胞接着分子(EPCAM)、B7H3(CD276)、KIT(CD117)、インターロイキン-13受容体サブユニットα-2(IL-13Ra2又はCD213A2)、メソテリン、インターロイキン11受容体α(IL-11Ra)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、プロテアーゼセリン21、血管内皮成長因子受容体2(TAG72)、Lewis(Y)抗原、CD24、血小板由来成長因子受容体β(CEAβ)、段階特異性胚胎抗原-4(例、プロテアソーム、メガリン因子)、CD20、葉酸受容体α、受容体型チロシンキナーゼCD276(CD117)(LMP2)、細胞表面関連ムチン1(MUC1)、表皮成長因子受容体(IL-13Ra2)、神経細胞接着分子(CD213A2)、IL-11Ra、前立腺酸性ホスファターゼ(PSCA)、突然変異の延長因子2(TAG72)、肝臓配タンパクB2、線維芽細胞活性化タンパクα(CD44v6)、インスリン様成長因子1受容体(CEA受容体)、炭酸酵素IX(EPCAM)、細胞表面関連ムチン1(CD276)、酸化物糖タンパク質9、前立腺酸性ホスファターゼ、変異型100糖タンパク質9、ブレイクアウトクラスタ(CD276)とIL-13Ra2マウス白血病ウイルス癌遺伝子ホモログ1(CD117)から構成された癌遺伝子融合タンパク(IL-13Ra2又はCD213A2)、チロシナーゼ、肝臓タンパク質A型受容体2(IL-11Ra)、フコシルGM1;シアリルPSCA接着分子(PSCA)、トランスグルタミナーゼ5(TAG72)、高分子-黒色腫関連抗原(CEAβ)、o-アセチル-GD2ガングリオシド(TAG72)、葉酸受容体β、腫瘍内皮マーカー1(CEA)、腫瘍内皮マーカー7関連(EPCAM)、密着結合タンパク6(CD276)、甲状腺刺激ホルモン受容体(CD117)、Gタンパク質共役受容体クラスC第5群メンバーD(IL-13Ra2又はCD213A2)、染色体X読み取り枠61(IL-11Ra)、CD97、IL-11Ra、未分化リンパ腫キナーゼ(CD44v6)、ポリシアル酸、胎盤特異的1(CEA受容体)、CD44v6ヘキソサミン部分(EPCAM)、乳腺分化抗原(EPCAM)、尿路上皮分化特異的糖タンパク(CD117)(LMP2)2(MUC1)、A型肝炎ウイルス細胞受容体1(IL-13Ra2)、アドレナリン受容体β3(CD213A2)、ユビキチン(PSCA)3(TAG72)、Gタンパク質共役受容体20(sLe)、リンパ球抗原6複合体遺伝子座K9(TGS5)、嗅覚受容体51(TAG72)、TCRγ可変性タンパク、E2(例、プロテアソーム、メガリン因子)、腫瘍可変タンパク質E2m癌/精巣抗原1(EPCAM)、癌/精巣抗原2(CD276)、黒色腫関連抗原1(CD117)、12p番染色体上のETS転座変異体遺伝子6(IL-13Ra2又はCD213A2)、精子タンパク質17(IL-11Ra)、X抗原ファミリー1A(PSCA)、アンジオポエチン結合細胞表面受容体2(TAG72)、黒色腫癌精巣抗原-1(CEAβ)、黒色腫癌精巣抗原-2(TAG72)、Fos関連抗原1、p53、p53変異体、前立腺特異的タンパク質(CEA)、前立腺癌腫瘍抗原-1(MUC1)、T細胞認識メラノーマ抗原1(IL-13Ra2)ラット肉腫(CD117)変異体、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(IL-13Ra2又はCD213A2)、肉腫転座切断点、メラノーマアポトーシス抑制タンパク質(IL-11Ra)、ERG(PSCA)、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(TAG72)、対のフレームタンパク質IL-11Ra(CEAβ)、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、PSCA鳥髄細胞症ウイルス癌遺伝子神経芽細胞腫由来の同族体(TAG72)、Ras同族体ファミリーメンバーC(CEA)、チロシナーゼ関連タンパク質2(EPCAM)、チトクロームCEA(CD276)、T細胞識別の扁平上皮細胞癌抗原3(CD213A2)、対のフレームタンパク質CD117(PSCA)、前駆体タンパク質結合タンパク質sp32(TAG72)、リンパ球特異性タンパク質チロシンキナーゼ(CD44v6)、Aキナーゼアンカータンパク質4(CEA受容体)、滑膜肉腫X切断点2(EPCAM)、高級糖化最終産物の受容体(EPCAM)、豆莢タンパク質(CD117)、ヒトパピローマウイルスE6(MUC1)、ヒトパピローマウイルスE7(IL-13Ra2)、エンドペプチダーゼE7、カルボキシラーゼHer2/neu、腸内結合タンパク質sp、リンパ球特異性タンパク質(Abl)、滑膜タンパク質アンカータンパク質CD276、滑膜肉腫X切断点72、滑膜肉腫タンパク質、白血球関連免疫グロブリン様受容体1(IL-13Ra2又はCD213A2)、IgA受容体のFc断片(IL-11Ra)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーAメンバー2(PSCA)、PSCA分子様ファミリーメンバーf(TAG72)、C型レクチン領域ファミリー12メンバーA(CEAβ)、骨髄間質細胞抗原2(TAG72)、EGF様モジュールを含むムチン様ホルモン受容体2(CEA)、リンパ球抗原75(EPCAM)、ホスファチジルイノシトールプロテオグリカン-3(CD276)、Fc受容体様5(CD117)及び/又は免疫グロブリンλ様ポリペプチド1。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記抗原結合ドメインは以下からなる群から選択される:モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、単一ドメイン抗体及びその抗原結合断片。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記抗原結合ドメインは固形腫瘍を標的とする。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記固形腫瘍は以下からなる群から選択される:肺癌、乳癌、結腸癌、腎細胞癌、肝癌、非小細胞肺癌、小腸癌、食道癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭又は頚癌、皮膚又は眼内悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、精巣癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰部癌、小児固形腫瘍、膀胱癌、腎又は尿管癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)腫瘍、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管形成、脊椎腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、Kaposi肉腫、表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記抗原結合ドメインは非固形腫瘍を標的とする。
【0029】
いくつかの実施形態では、前記非固形腫瘍は以下からなる群から選択される:慢性リンパ性白血病(CLL)、急性白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、B細胞急性リンパ性白血病(B-ALL)、T細胞急性リンパ性白血病(T-ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、Burkittリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞リンパ腫、多毛細胞白血病、小細胞又は大細胞濾胞リンパ腫、悪性リンパ球増殖性疾患、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、脊髄異形成症候群、ホジキンリンパ腫、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様細胞腫瘍、Bリンパ球腫、Waldenstromマクログロブリン血症。
【0030】
いくつかの実施形態では、前記膜貫通ドメインは、CD28、CD3e、CD27、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、CD19、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、CD11a、TNFR2から選択されるタンパクを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記共刺激ドメインは、以下のタンパク質から選択される共刺激ドメインを含む:D137、CD28、CD27、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、LFA-1、CD2、CD7、CD160(BY55)、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD19、CD4、CD8α、CD8β、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、及び/又はNKG2D。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記一次細胞内シグナル伝達ドメインは以下のタンパク質から選択される機能性シグナル伝達ドメインを含む:CD3ζ、FcRγ(FCER1G)、FcγRIIa、FcRβ(FcεR1b)、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD79a、CD79b、DAP10及び/又はDAP12。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記ヒンジ領域は前記抗原結合ドメインと前記膜貫通ドメインを接続し、前記ヒンジ領域は以下のタンパクから選ばれるヒンジ領域を含む:人Ig(免疫グロブリン)ヒンジ領域、GSコネクタ、KIR2DS2ヒンジ領域又はCD8aヒンジ領域。
【0034】
本願はまた本願に記載する修飾された免疫エフェクター細胞を製造する方法を提供し、それは以下のステップを含む:前記修飾されない相応細胞中の相応遺伝子の発現と/又は活性と比べ、前記免疫エフェクター細胞中のTRAC遺伝子とHLA-A遺伝子の発現と/又は活性をダウンレギュレートする。B 2 M遺伝子の発現及び/又は活性はダウンレギュレートされず、 CIITA遺伝子の発現及び/又は活性はダウンレギュレートされない。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記修飾は2つの遺伝子の発現及び/又は活性をダウンレギュレートさせ、前記2つの遺伝子はTRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子からなる。
【0036】
いくつかの実施形態では、対応する野生型細胞と比較して、TRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされ、B2M遺伝子の発現及び/又は活性はダウンレギュレートされず、CIITA遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされない。
【0037】
いくつかの実施形態では、対応する野生型細胞と比較して、2つの遺伝子の発現及び/又は活性ははダウンレギュレートされ、前記2つの遺伝子は、TRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子からなる。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記ダウンレギュレートされた遺伝子の発現レベル及び/又は活性は、前記遺伝子をコードする核酸分子の発現及び/又は活性をダウンレギュレートすることを含む;及び/又は前記遺伝子がコードするタンパク質産物の発現及び/又は活性をダウンレギュレートさせる。
【0039】
いくつかの実施形態では、修飾は、遺伝子変異及び/又は遺伝子サイレンシングを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、前記修飾は、アンチセンスRNA、siRNA、shRNA及びCRISPR/Cas9システムからなる群から選択される1つ以上の物質を前記免疫エフェクター細胞に投与することを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記修飾は、免疫エフェクター細胞へのCRISPR/Cas9システムの投与を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、前記修飾は、前記HLA-A遺伝子のエクソン部分を標的とするsgRNAを前記免疫エフェクター細胞に投与することを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記HLA-A遺伝子のエクソン部分を標的とするsgRNAは、SEQ ID NO.16-54、91-92のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、前記修飾は、前記TRAC遺伝子のエクソン部分を標的とするsgRNAを前記免疫エフェクター細胞に投与することを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、前記TRAC遺伝子のエクソン部分を標的とするsgRNAは、SEQ ID NO.1-15のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、前記アンチセンスRNAは、SEQ ID No.93-96のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記修飾は、前記細胞へのCasタンパク質の投与をさらに含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質はCas9タンパク質を含む。
【0049】
本願はまた組成物を提供し、それは本願に記載した修飾された免疫エフェクター細胞と薬学上許容される担体を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、本願に記載された修飾された免疫エフェクター細胞を含む細胞群を含む。
【0051】
本願はまた本願の前記修飾された免疫エフェクター細胞がCAR-T細胞の調製における応用を提供する。
【0052】
本願はまた本願の前記修飾された免疫エフェクター細胞が薬物調製における応用を提供し、前記薬物は異形治療に用いる。
【0053】
本願はまた、本願に記載の修飾された免疫エフェクター細胞を患者又は被験者に投与することを含む、異体治療の方法を提供する。
【0054】
本願はまた、異体治療のための本願に記載された修飾された免疫エフェクター細胞を提供する。
【0055】
本願はまた本願の前記修飾された免疫エフェクター細胞の薬物調製における応用を提供し、前記薬物は腫瘍治療に用いる。
【0056】
本願はまた腫瘍を治療する方法を提供し、前記方法は患者又は被験者に本願の前記修飾された免疫エフェクター細胞を投与することを含む。
【0057】
本願はまた前記修飾された免疫エフェクター細胞を提供し、それは腫瘍の治療に用いる。
【0058】
いくつかの実施形態では、前記腫瘍は固形腫瘍と非固形腫瘍を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、前記腫瘍は以下からなる群から選択される:肺癌、乳癌、結腸癌、腎細胞癌、肝癌、非小細胞肺癌、小腸癌、食道癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭又は頚癌、皮膚又は眼内悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、精巣癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰部癌、固形腫瘍、膀胱癌、腎又は尿管癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)腫瘍、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管形成、脊椎腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、Kaposi肉腫、表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫。
【0060】
当業者は、本願の他の態様及び利点について、以下の詳細な説明から容易に洞察することができる。
【発明の効果】
【0061】
以下の詳細な説明では、本願の例示的な実施形態のみを示し、説明する。当業者が認識するであろうように、本願の内容は、当業者が、本願に係る発明の精神及び範囲を逸脱することなく、開示された特定の実施形態に変更を加えることを可能にするものである。したがって、本願の添付図面及び明細書の記載は単なる例示であり、限定的なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
本願に係る発明の具体的な特徴は、特許請求の範囲に記載のとおりである。本願で詳細に説明される例示的な実施形態及び添付図面を参照することによって、本願に係る発明の特徴及び利点をよりよく理解することができる。添付図面の概略説明は以下のとおりである。
【0063】
【
図1】TRAC遺伝子のSg9RNA編集後Sangerシーケンシングの結果を示す。
【
図2】TRAC遺伝子をSg9RNAで編集したTAクローンニングの結果を示す。
【
図3】TRAC遺伝子をSg9RNAで編集したフローサイトメトリーの結果を示す。
【
図4】HLA-A02遺伝子のSg2RNA編集後のSangerシーケンシングの結果を示す。
【
図5】HLA-A02遺伝子のSg5RNA編集後のSangerシーケンシングの結果を示す。
【
図6】HLA-A11遺伝子のSg10-3RNA編集後のSangerシーケンシングの結果を示す。
【
図7】HLA-A11遺伝子のSg21RNA編集後のSangerシーケンシングの結果を示す。
【
図8】修飾免疫エフェクター細胞におけるHLA-A02とTRACの同時ノックアウトの結果を示す。
【
図9】修飾免疫エフェクター細胞におけるHLA-A02及びTRACのタンパク質レベルを示す。
【
図10】修飾た免疫エフェクター細胞におけるTRAC、HLA-A、B2MとCIITAのmRNAレベルを示す。
【
図11】修飾免疫エフェクター細胞におけるB2MとCIITAのタンパク質レベルを示す。
【
図12】修飾免疫エフェクター細胞中のTRAC、HLA-A、B2MとCIITAのタンパクレベルを示す。
【
図13】修飾免疫エフェクター細胞におけるTRACとHLA-AmRNAレベルのノックアウトを示す。
【
図14】修飾免疫エフェクター細胞におけるCD69及びCD137のタンパク質レベルを示す。
【
図15】修飾した免疫エフェクター細胞とNK細胞の共培養を示す。
【
図16】修飾免疫エフェクター細胞のIFN-γ発現レベルを示す。
【
図17】修飾免疫エフェクター細胞中のTRAC、HLA-A、B2MとCIITAのタンパク質レベルを示す。
【
図18】修飾免疫エフェクター細胞のCARへの感染効率を示す。
【
図19】修飾免疫エフェクター細胞の増幅倍数を示す。
【
図20】修飾免疫エフェクター細胞のCD19陽性標的細胞に対する殺傷効果を示す。
【
図21】修飾免疫エフェクター細胞を投与する計画を示す。
【
図22】修飾免疫エフェクター細胞のマウス体内腫瘍に対する殺傷効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下では、特定の具体的な実施形態を用いて本願発明の実施形態を説明するが、この技術に精通している者は、本願で開示されることにより、本願発明の他の利点及び効果を容易に理解され得る。
【0065】
以下では、本願についてさらに説明する:本発明において、特に明記されていない限り、本願で使用される科学技術用語は、当業者にとって一般的に理解され得る意味を有する。さらに、本明細書で使用されるタンパク質及び核酸化学、分子生物学、細胞及び組織培養、微生物学、免疫学に関する用語及び実験手順は、それぞれの分野で広く使用されている用語及び日常的な手順である。また、本発明をよりよく理解するために、関連する用語の定義及び説明を以下に示す。
【0066】
本願では、「免疫エフェクター細胞」という用語は、通常、免疫応答に関与し、エフェクター機能を行使する免疫細胞を指す。例えば、前記エフェクター機能を行使することは、異物抗原を除去すること又はイムノエフェクター応答を促進することなどを含んでいてもよい。免疫応答細胞には、形質細胞、T細胞、 B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT (NKT)細胞、肥満細胞、及び骨髄由来の食細胞などがある。
【0067】
本願では、「修飾する」という用語は、通常、細胞の状態又は構造を変化させる変化、及び/又は、細胞の状態又は構造を変化させる変化を指す。前記修飾は、典型的には、前記修飾のない対応する細胞と比較した細胞の状態又は構造の変化であり、前記修飾は、例えば、細胞の内因性遺伝子発現レベルがダウンレギュレート、アップレギュレート又は発現しない遺伝子工学手段による内因性遺伝子発現レベル又は機能の変化を含んでよく、前記遺伝子工学手段は、相同組み換え、CRISPR/CAS9システム等による遺伝子編集を含んでいてもよい。前記変化は、細胞タンパク質の発現、構造又は機能の変化、例えば、前記内因性遺伝子の発現レベル又は機能の変化によって達成される対応するタンパク質の発現、構造又は機能の変化、例えば、タンパク質翻訳の調節、翻訳後修飾によって達成されるタンパク質発現、構造又は機能の変化を更に含んでいてもよい。また、当該修飾には、外来遺伝子の導入、外来タンパク質の発現等を含んでいてもよい。
【0068】
本願では、「TRAC」という用語は、通常、T細胞受容体α鎖定常領域(T cell receptor alpha con-stant)を指す。T細胞受容体(TCR)は通常、T細胞表面上に存在する特異的受容体であり、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合する抗原を認識する。TCRは通常、2本の異なるタンパク鎖で構成される(ヘテロ二量体)。ヒトでは、多数のT細胞のTCRは1本のα鎖と1本のβ鎖(TRAとTRBをそれぞれ符号化)からなり、このようなT細胞はαβT細胞と呼ばれ、少数のT細胞ではγ鎖とδ鎖(TRGとTRDをそれぞれ符号化)からなり、このようなT細胞はγδT細胞と呼ばれる。通常、αβT細胞はT細胞総数の約95%、γδT細胞はT細胞総数の約5%を占めるが、この比率は個体の発育過程や病態(例えば白血病)で変化し、種によっても異なる。TCRを構成する各鎖はすべて可変区と定常区を含み、人類の中で、α鎖をコードする遺伝子(TRA、例えばHGNC:12027に示す情報)は14番染色体に位置し、多遺伝子断片から構成し、可変段 (V) 、連結段 (J) と定常区(C) を含み、TRAC遺伝子は通常T細胞受容体α鎖定常区(C) をコードする遺伝子序列(例:HGNC:12029に示す情報)を指し、それは14番染色体(14 q11.2;14:22、547、 505-22、552、131)に位置する。通常N断片の抗原識別領域をコードする可変部 (V)遺伝子の1つは結合部 (J) の1つと再配列し、機能性V領域エキソンを産生し、このエキソンは転写され、スプライシングによって定常領域(C) と連結し、それによってT細胞受容体α鎖コード配列を形成する。
【0069】
本願では、「HLA-A」という用語は、通常、ヒト染色体6 p21.3に位置するHLA-A遺伝子(例:HGNC:4931に示す情報)によってコードされるヒト白血球抗原(human leukocyte antigens)ポリペプチド鎖を指す。HLA-Aはヒト細胞表面クラスI MHC分子を構成する3つの主要ポリペプチド型の1つであり、他にHLA-BとHLA-Cがある。HLA-A遺伝子がコードするα鎖とB 2 M遺伝子がコードするβ鎖(β2-ミクログロブリン)からなるヘテロ二量体はHLA-A類MHC I分子である。前記HLA-A遺伝子がコードするα鎖はα1ドメイン、α2ドメイン、α3ドメイン、膜貫通領域及び細胞質領域を含むことができ、そのうちα1ドメイン、α2ドメインはペプチド断片と結合することによってMHCI分子(例:HLA-Aクラス)から前記ペプチド断片を免疫系細胞に提示する。ヒトでは、ほとんどの哺乳類と同様に、MHC I分子のα鎖はその一次構造に多くのバリエーションを持つ多型であり、2013年12月現在、1740の活性化タンパク質と117の不活性化タンパク質をコードする2432のHLA-A対立遺伝子が確認されている。本願では、HLA-A対立遺伝子は、IMGT/HLAデータベース第3.38.0版(https://www.ebi.ac.uk/ipd/imgt/hla/)に収録された、WHO HLA Factor Naming Committeeによって命名された異なるHLA-A対立遺伝子の配列情報を含み得る。
【0070】
本願では、「B2M」という用語は、通常、クラスMHC I分子の一部であるβ2ミクログロブリン(β2-microglobulin)を指す。β2ミクログロブリン(β鎖とも呼ばれる)は、HLAコードされたα鎖とともにクラスMHC Iの分子を形成しうる。B 2 Mは通常すべての有核細胞に発現している。ヒトでは、β2ミクログロブリンは15 q21.1に位置するB 2 M遺伝子(例:HGNC:914に示す情報)によってコードされている。
【0071】
本願では、「CIITA」という用語は、通常、クラスII主要組織適合遺伝子複合体(MHCII)のトランス活性化因子を指す。前記トランス活性化因子は酸性転写活性化ドメイン、4つのLRR(ロイシンリッチ反復配列)とGTP結合ドメインを有するタンパク質である。前記タンパク質は細胞核に位置でき、II類主要組織適合遺伝子複合体(MHCII)遺伝子転写の正調節因子として、これらの遺伝子を発現する「主制御因子」と呼ばれる。当該タンパク質はGTPと結合することもあり、 GTPとの結合を利用して細胞核内に輸送される;細胞核内では通常、アセチルトランスフェラーゼ(AT)活性を介してコアクチベーターのように作用する。ヒトでは、このタンパク質は16 p13.13に局在する遺伝子(例:HGNC:7067に示す情報)によりコードされ、異なるアイソフォームをコードするいくつかの転写物変異体を生じることができる。
【0072】
本願では、「野生型細胞」という用語は、通常、自然に存在する、又は自然に由来する細胞を指す。
【0073】
本願では、 「T細胞」という用語は、通常、種々の細胞媒介免疫反応に関与する胸腺由来細胞を指す。
【0074】
本願では、「核酸」、「ポリヌクレオチド」又は「核酸分子」という用語は、通常、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)及びそれらの一本鎖又は二本鎖の形態のポリマーを指す。特に限定されない限り、この用語は、天然に存在するヌクレオチドのアナログを含む核酸を含み得、前記核酸は、参照核酸(例えば配列情報が示される)のものと同様の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドのものと同様の様式で代謝される。含んでいてもよい特に明記されていない限り、核酸の配列は、短縮コドン置換、対立遺伝子、オーソログ、SNP、相補配列、及び明示された配列など、その保存的に修飾された変異体を含み得る。
【0075】
本願では、「発現」という用語は、通常、特定のヌクレオチド配列の転写及び/又は翻訳を指す。
【0076】
本願では、「遺伝子突然変異」という用語は、通常、遺伝子の構造的に生じる塩基対の組成又は配列順序の変化を指す。例えば、単一塩基の変化による点突然変異、あるいは複数塩基の欠失、重複と挿入などである。
【0077】
本願では、「遺伝子サイレンシング」という用語は、通常、調節機構により特定の遺伝子の発現を阻止することを指す。主に2種類を含む:1つはDNAメチル化、異染色質化及び位置効果などの要素による転写レベルでの遺伝子サイレンシング(transcriptional gene silencing、TGS)であり、もう1つは転写後遺伝子サイレンシング(post-transcriptional gene silencing、PTGS)であり、すなわち遺伝子転写後のレベルで標的RNAに対する特異的な干渉により遺伝子発現に影響する。通常、遺伝子がサイレンシングされると、対応する遺伝子の発現がダウンレギュレート/減少する。遺伝子がノックアウトされると、通常は発現しないように見え、例えば、ある特定の遺伝子のすべてのアレルがノックアウトされると、その遺伝子の発現は消失するように見える。遺伝子サイレンシングは一般的に遺伝子ノックダウン機構と考えられ、遺伝子サイレンシングに汎用される方法はRNAiなどである。
【0078】
本願では、「内因」という用語は、生物、細胞、組織、又はシステムから、あるいはそれらの内部で産生されるいかなる物質を指す。
【0079】
本願では、「外来」という用語は、生物学的、細胞学的、組織学的、又はシステムの外部から導入された、又は外部で生成された物質を指す。
【0080】
本願では、「アンチセンスRNA」という用語は、通常、転写産物mRNA (メッセンジャーRNA)に対して相補的な一本鎖RNAを指す。アンチセンスRNAは、 mRNAに結合して遺伝子の発現を抑制する。例えば、アンチセンスRNAは標的mRNAと結合した後、この二本鎖RNA分子のRNA酵素IIIに対する感受性を増加させ、それを分解させる。例えば、アンチセンスRNAはmRNAの上流の非コード領域に結合し、標的mRNAの翻訳を直接阻害する。
【0081】
本願では、「siRNA」という用語は、通常、Small interfering RNA (低分子干渉RNA)又はshort interfering RNA (短干渉RNA)の略語を指す。siRNAは一種類の二本鎖非コードRNA分子であり、長さは約18-28塩基対であり、mRNAとの相補的な結合を通じてmRNAの分解を引き起こし、特定の遺伝子の発現を妨害する。いくつかの実施形態では、siRNAは長2本鎖RNA又はshRNAをDicer酵素で処理した産物であってもよい。いくつかの実施方式では、siRNAは細胞に入って他のタンパク質とRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)を形成し、有義鎖は分解を発生し、アンチ義鎖は相補の標的配列と結合でき、これによって遺伝子サイレンシングを実現する。
【0082】
本願では、「shRNA」という用語は、通常、short hairpin RNAの略語、すなわち「ショートヘアピンRNA」を指す。shRNAは通常2つの短い逆方向反復配列を含み、その中間はヘアピン構造を形成する茎の輪(ループ)配列で区切られる。RNAポリメラーゼIIIの転写ターミネーターとして5~6個のT塩基を含んでもよい。いくつかの実施形態では、shRNAはウイルスベクター又はプラスミドを介して細胞に入り、ポリメラーゼII又はポリメラーゼIIIの作用下で転写を行い、転写産物は細胞核から輸出(通常はExportin 5)した後にDicer処理を経てRISCに輸送し、センス鎖は分解し、アンチセンス鎖は相補的な標的配列と結合し、それによって遺伝子サイレンシングを実現する。
【0083】
本願では、「CRISPR/Casシステム」という用語は、通常、RNAによって導かれたヌクレアーゼ又は他のエフェクター分子を標的シーケンスに、例えば標的シーケンスの分解を引き起こすように方向づけ、達成することができるRNAによって導かれたヌクレアーゼ又は他のエフェクター分子及びgRNA分子を含む一群の分子を指す。いくつかの実施形態では、CRISPRシステムは、gRNA及びCasタンパク質、例えば、Cas9タンパク質を含む。Cas9又はその機能的変異体を含むシステムを、本願では「Cas9システム」又は「CRISPR/Cas9システム」と称する。いくつかの実施形態では、gRNA分子とCas分子は複合化して、リボ核タンパク質(RNP)複合体を形成しうる。
【0084】
本願では、「gRNA分子」又は「ガイドRNA」、「ガイドRNA」、「ガイドRNA」、「ガイドRNA分子」、「gRNA」らの用語は、互換的に使用され、通常、特異的にRNA指向性のヌクレアーゼ又は他のエフェクター分子(一般的にgRNA分子と複合)を標的配列上に誘導する核酸分子を指す。いくつかの実施形態では、このガイドは、gRNAの一部がDNA(例えばgRNAガイドドメインを介して)とハイブリダイゼーションし、gRNA分子の一部がRNAガイドヌクレアーゼ又は他のエフェクター分子と結合することによって達成される(たとえば、少なくともgRNAtracr)。いくつかの実施形態では、gRNA分子は単一の連続なポリヌクレオチド分子から構成され、本文では「単一ガイドRNA」あるいは「sgRNA」などと称する。他の実施方案では、gRNA分子は自身が会合(一般的には交雑)できる複数の(例えば2つ)ポリヌクレオチド分子から構成され、本文では「二重ガイドRNA」あるいは「dgRNA」などと称する。
【0085】
本願では、「Casタンパク質」という用語は、通常、CRISPR/CasシステムにおいてDNAの切断を担う酵素を指す。I、II、 III型CRISPR/Cas系の酵素を含み得る。たとえば、 「Cas3」 、 「Cas9」 、 「Cas10」 などである。
【0086】
本願では、「Cas9タンパク」という用語は、通常、DNAの切断を担う細菌II型CRISPR/Cas系由来の酵素を指す。Cas9は野生型タンパク質とその機能性変異体を含み得る。
【0087】
本願では、「対立遺伝子」とは、通常、遺伝子座における遺伝子配列の潜在的に異なる変化の形態を指す。遺伝子座は遺伝子座又は遺伝子座とも呼ばれ、特定の遺伝子が存在するなど、染色体上の一定の位置を指す。ゲノム内の遺伝子座の位置は、遺伝子地図(geneticmap)と呼ばれる。
【0088】
本願では、「キメラ抗原受容体(CAR)」という用語は通常、腫瘍関連抗原(tumor associated antigen、TAA)を認識する抗体の抗原結合領域又は他の標的分子の結合断片が細胞内シグナルドメイン「免疫受容体チロシン活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motifs、ITAM、通常はCD 3ζ又はFcεRIγ)」と融合して形成される抗原受容体を指す。例えば、CARの基本構造は1つの腫瘍関連抗原(tumor-associatedantigen、TAA)あるいは他の標的分子の抗原結合ドメイン(通常モノクローナル抗体抗原結合領域に由来するscFv)、1つの細胞外ヒンジ領域(Hingearea)、1つの膜貫通ドメイン(Transmembraneregion)と1つの細胞内免疫受容体チロシン活性化モチーフ(Immunoreceptortyrosine-basedactivationmo-tif、ITAM)を含んでいてもよい含んでいてもよい。
【0089】
本願では、「結合ドメイン」という用語は、通常、(特異性)標的分子(例えば抗原)に結合する所与の標的エピトープ或は所与の標的部位を指す、或は前記所与の標的エピトープ或は所与の標的部位と相互に作用する、或は前記所与の標的エピトープ或は所与の標的部位を識別するドメインを指す。
【0090】
本願では、「特異的結合」という用語は、通常、生体分子を含む異種分子集団の存在下で標的の存在を決定できる、標的と抗体の間の結合などの測定可能で再現性のある相互作用を指す。例えば、標的(エピトープであってもよい)と特異的に結合する抗体とは、他の標的と結合するよりも大きな親和性、親和性、容易性、および/または持続性でその標的と結合する抗体のことである。いくつかの実施形態では、抗体は、異なる種のタンパク質に保存されているタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態では、特異的結合は、排他的結合を含んでいてもよいが、排他的結合を必要としない。
【0091】
本願では、「膜貫通ドメイン」という用語は、通常、DNAレベルで細胞外領域、膜貫通領域及び細胞内領域を含む少なくとも1つのエクソンによってコードされるポリペプチド又はタンパク質を指す。膜貫通ドメインは一般的に、N末端の細胞外領域、中間の保存された膜貫通ストレッチ領域、C末端の細胞質領域の3つの異なる構造領域を含む。。膜貫通ドメインには、細胞内ドメイン又は細胞質ドメインも含まれることがある。
【0092】
本願では、「ヒンジ領域」という用語は、通常、CAR構造において結合ドメインと膜貫通ドメインの間に位置する領域を指す。ヒンジ領域は通常IgG 1とIgG 4のようなIgGファミリーから由来し、IgDとCD 8から由来するものもあるが、通常ヒンジ領域はある程度の柔軟性を有し、CAR分子とその特異的な標的との間の空間的拘束に影響を与え、ひいてはCAR T細胞と腫瘍細胞との間の接触に影響を与える。
【0093】
本願では、「共刺激」という用語は、通常、リンパ球による第2のシグナル伝達の活性化源を指し、通常は、適応免疫に関与する免疫細胞(T細胞/B細胞間又は抗原提示細胞/T細胞間)の表面での共刺激分子とその受容体との相互作用によって生じる。例えば、T細胞の完全な活性化は、二重シグナル伝達及びサイトカインの作用に依存する。T細胞活性化の第一シグナルはその受容体TCRと抗原の特異的結合、即ちT細胞抗原認識から来る;T細胞活性化の第2のシグナルは、抗原提示細胞の共刺激分子とT細胞表面の対応する受容体との相互作用である共刺激分子に由来する。
【0094】
本願では、「共刺激ドメイン」という用語は、通常、共刺激信号(第二信号とも呼ばれます)を伝達することができる共刺激分子の対応する受容体の細胞内部分を指す。例えば、CAR-T細胞において、CD137(又は他の共刺激分子受容体)からの共刺激ドメインはCAR構造中の細胞外の結合ドメインが相応の抗原と結合した後に活性化され、共刺激シグナルを伝達する。
【0095】
本願では、「一次シグナル伝達ドメイン」という用語は、通常、CARを含む細胞、例えばCAR-T細胞の免疫エフェクター機能を促進するシグナルを生成することができる細胞内のアミノ酸配列を指す。例えば、CAR-T細胞における免疫エフェクター機能の例は、細胞溶解活性及びサイトカインの分泌を含む補助活性を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、一次シグナル伝達ドメインはエフェクター機能シグナルを伝達し、細胞に特化機能を指示する。一次シグナル伝達ドメイン全体を用いることは可能であるが、多くの場合、鎖全体を用いる必要はない。一次シグナル伝達ドメインの切断部分を用いる限り、このような切断部分はエフェクター機能シグナルを伝達することができれば、完全な鎖の代わりに用いることができる。一次シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインのいずれかの短い部分を含むことを指す。
【0096】
本願では、「腫瘍抗原」という用語は、通常、腫瘍細胞の表面上に無傷又は断片として発現され、薬剤を腫瘍細胞に偏向的に誘導するために使用できる分子(タンパク質、糖、脂質など)を指す。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、例えば、B細胞上のCD 19のような、系統マーカーのような、正常細胞及び癌細胞の両方の発現のマーカーであってもよい。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は腫瘍細胞の中に過剰発現する細胞表面分子であり、例えば、正常細胞と比べて、1倍過剰発現、2倍過剰発現、3倍或はもっと多い倍過剰発現である。いくつかの実施形態では、前記細胞表面分子は腫瘍細胞に異常に発現され、例えば、正常細胞に発現される対応分子と比較して欠失、付加又は突然変異の分子を含む。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は腫瘍細胞表面上に排他的に無傷で、又は断片(例えば、 MHC/ペプチド)として発現されてもよく、正常細胞表面上には合成されず、又は発現されない。いくつかの実施形態では、本願のCARは、抗体又は抗体断片のような、MHCに提示されるペプチドに結合する抗原結合ドメインを含み得る。通常、内因性タンパク質由来のペプチドは主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI分子に結合し、CD8+Tリンパ球上のT細胞受容体(TCR)によって認識される。MHC Iクラス複合体はすべての有核細胞から構成的に発現する。ウイルス特異的及び/又は腫瘍特異的ペプチド/MHC複合体は、免疫療法のための特異的クラスの細胞表面標的として使用することができる。(Sastryなどを参照してください。J Virol.2011 85 (5) :1935-1942;Sergeeva他、Blood、2011 117 (16):4262-4272;Vermaほか、J Immunol 2010 184 (4) :2156-2165;Willemsenなど、Gene Ther 2001 8 (21):1601-1608;Daoなど、Sci Transl Med 2013 5 (176):176 ra 33;Tassevほか、Cancer Gene Ther 2012 19(2):84-100)。
【0097】
本願では、「モノクローナル抗体」という用語は、通常、実質的に同質である抗体の集団から得られる抗体を指す。すなわち、個体群を構成する個々の抗体は、ごく少量で存在する可能性のある天然に存在する突然変異及び/又は翻訳後修飾(例えば異性化、アミド化)を除いて同一である。モノクローナル抗体は特異度が高く、単一の抗原性部位を標的とする。異なる決定基(表)に対する異なる抗体を含む典型的なポリクローナル抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原上の単一決定基を標的としていた。特異性に加えて、モノクローナル抗体はハイブリドーマ培養で合成され、他の免疫グロブリンで汚染されないという点で優れている。修飾語「単クローン」は、実質的に同質の抗体集団から得られる抗体の特徴を示しており、特定の方法による抗体産生が要求されると解釈すべきではない。
【0098】
本願では、用語「ポリクローナル抗体」は、通常、異なる抗体分子の組成物を指す。ポリクローナル抗体は、同一又は異なる抗原に対する複数の異なる特異的抗原決定基と結合又は反応することができる。ポリクローナル抗体の抗原特異的変異度は、ポリクローナル抗体を構成する個々の抗体の可変領域、例えば相補性決定領域(CDR) 1、 CDR 2、 CDR 3領域に存在する。例えば、ポリクローナル抗体は、動物を標的sFGFR又はその一部で免疫することによって調製することができる。例えば、ポリクローナル抗体は、所望の標的sFGFRに特異的である複数のモノクローナル抗体を混合することによって調製されてもよい。
【0099】
本願では、「ヒト抗体」という用語は、通常、ヒトの生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域を有する抗体を指す。ヒト抗体は従来技術において公知(例:van Dijk、M.A.及びvan de Winkel、 J.G.、 Curr.Opin.Chem.Biol.5 (2001) 368-374)である。免疫後に内因性免疫グロブリン産生なしで成人抗体の完全な全体集合又はアンソロジー(たとえば、Jakobovits、A.など、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90 (1993) 2551-2555;Jakobovits、 A.など、Nature 362 (1993) 255-258;Brueggemann、 M.など、YearImmunol.7 (1993) 33-40)を生成できるトランスジェニック動物(例えばマウス)でも成人抗体を生成することができる。成人抗体(例:Hoogenboom、H.R.及びWinter、G.、J.Mol.Biol.227 (1992) 381-388;Marks、J.D.ほか、J.Mol.Biol.222 (1991) 581-597)はファージディスプレイライブラリー内で生成することもできる。「ヒト抗体」という用語は、定常領域において修飾される抗体を含むこともできる。
【0100】
本願では、「ヒト化抗体」という用語は、通常、非ヒト種(例えばマウス)由来の重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む抗体を指すが、VH及び/又はVL配列の少なくとも一部は、ヒトの生殖細胞系列可変配列に類似するように変更されている。例えば、「ヒト化抗体」という用語は、関連する抗原に免疫特異的に結合することができ、かつ、実質的にヒト抗体のアミノ酸配列を有するフレーム(FR)領域及び実質的に非ヒト抗体のアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)を含む抗体又はその変異体、誘導体、類似体又は断片である。「基本的には」という用語は、CDRの場合、CDRのアミノ酸配列が、非ヒト抗体CDRのアミノ酸配列の少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%と同一であることを指す。ヒト化抗体は、実質的に少なくとも1つの、通常は2つの可変領域(Fab、Fab’、F (ab.) 2、FabC、Fv)を含み、その全て又は実質的に全てのCDR領域は、非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、全て又は実質的に全てのフレーム領域は、ヒト免疫グロブリンの共通配列を有するフレーム領域である。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体はまた、少なくとも一部分の免疫グロブリン定常領域(Fc)を含むことができ、通常はヒト免疫グロブリンの定常領域である。
【0101】
本願では、「単一ドメイン抗体」という用語は、通常、抗体軽鎖を欠失し、重鎖の可変領域を含む抗体のクラスを指す。分子量が小さいため、ナノ抗体(Nanobody)とも呼ばれる。単一ドメイン抗体は、ラクダ科動物で最初に発見され、その後、ナースザメ、スターザメ、エイなどの軟骨魚綱動物でも同様の抗体が発見されている。例えば、従来の抗体が欠失した軽鎖でも重鎖定常領域でもあるCH 1領域の抗体は重鎖抗体(Heavy chain antibody、HcAb)と呼ばれ、 HcAbは各種ラクダ科動物に遍在している。例えば、IgNARと呼ばれる新規抗原受容体(Ig new antigen receptor)と呼ばれる重鎖抗体は、 5つの定常領域と1つの可変領域から成る2本の同重鎖から成る。重鎖抗体の可変領域は、抗体重鎖の可変領域のみで構成され、従来のFabと同様に抗原に特異的に結合するため、従来の抗体と同様に機能する。
【0102】
本願では、「腫瘍」という用語は通常、異常な細胞増殖によって形成される増殖物又は実質性病変を指す。本願では、腫瘍は固形腫瘍又は非固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、X線、 CT、超音波検査、又は触診により触知可能な有形の腫瘤を固形腫瘍と呼び、X線、 CT、及び超音波検査では触知できない腫瘍又は触知可能な腫瘍を非固形腫瘍と呼ぶ。
【0103】
本願では、分化クラスター(Cluster of differentiation)とも呼ばれる「CD」という用語は、免疫抗原標識として使用される細胞表面分子を識別するために使用されることが多い。CD分子は多くの用途があり、通常は細胞の重要な受容体又はリガンドとして使用される。一部のCDは細胞のシグナル伝達カスケードに関与して細胞の挙動を変化させるが、一部のCDタンパクは細胞のシグナル伝達に関与しないが、細胞接着などの別の機能を有している。2016年4月21日現在のヒトのCD分子の総数は371であり、例えば、本願で膜貫通ドメインのソースとしているCD28、CD3e、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137とCD154、共刺激ドメインのソースとしているCD137、CD28、CD134(OX-40)とCD278(ICOS)である。
【0104】
本願では、「薬学上許容される担体」という用語は、通常、細胞製剤の運搬、貯蔵、移送又は投与に関する薬学上許容される物質、組成物、又は媒体を指す。例えば、液体、半固体又は固体の充填剤、希釈剤、等張剤、溶剤又はシスト材料などです。薬学上許容される担体は、薬学上許容される塩を含んでいてもよく、ここで、用語「薬学的に許容される塩」は、本願に記載の細胞の性質に応じて、比較的無毒な酸または塩基を用いて調製した活性化合物の塩、例えば、塩化ナトリウムを含む。薬学上許容される担体はまた、有機酸(例えば乳酸)、生物活性物質(例えば、ポリペプチド、抗体など)及び抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシンなど)などを含んでいてもよい。薬学上許容される担体はまた、ヒドロゲル、例えばポリアクリルアミドを含むヒドロゲルを含んでいてもよい。薬学上許容される担体はまた、細胞に用いる貯蔵液、冷凍貯蔵液、注射液などを含み得る。一般に、前記薬学上許容される担体は、担持する細胞の活性を維持することができ、その治療効果を妨げない。前記薬学上許容される担体は、細胞の保存、輸送、および細胞の増殖、移動を促進してもよく、臨床応用に適している。
【0105】
本願では、「組成物」という用語は、通常、患者、ヒト患者に適用するのに適した組成物を指す。例えば、本願に記載する組成物は、本願に記載する免疫エフェクター細胞、及び任意に薬学上許容される担体を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、許容可能な組成物は、使用される用量及び濃度でレシピエントに対して非毒性である。本願の組成物は液体、冷凍と凍結乾燥組成物を含むが、それに限定されない。
【0106】
本願では、「同種療法」という用語は、通常、治療目的を達成するために、当該被験者又は患者由来ではない臓器、組織、細胞などを被験者又は患者に投与する治療方法を指す。
【0107】
本願では、「含む」という用語は、通常、他の要素を除外することなく、明示的に指定された特徴を含むことを指す。
【0108】
本願では、「約」という用語は、通常、指定値以上0.5%~10%の範囲での変動を意味し、例えば、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、又は10%の範囲での変動を指す。
【0109】
一方、本願は修飾された免疫エフェクター細胞を提供し、その中前記修飾されない相応細胞中の相応遺伝子の発現と/又は活性と比べ、TRAC遺伝子とHLA-A遺伝子の発現と/又は活性はダウンレギュレートされ、B 2 M遺伝子の発現と/又は活性はダウンレギュレートされず、かつCIITA遺伝子の発現と/又は活性はダウンレギュレートされない。
【0110】
一方、本願はまた本願の前記修飾された免疫エフェクター細胞を製造する方法を提供し、それは以下のステップを含む:前記修飾されない相応細胞中の相応遺伝子の発現と/又は活性と比べ、前記免疫エフェクター細胞中のTRAC遺伝子とHLA-A遺伝子の発現と/又は活性をダウンレギュレートする。B 2 M遺伝子の発現及び/又は活性はダウンレギュレートされず、 CIITA遺伝子の発現及び/又は活性はダウンレギュレートされない。
【0111】
本願では、この修飾はTRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子からなる2つの遺伝子の発現及び/又は活性をダウンレギュレートする。
【0112】
免疫エフェクター細胞
【0113】
本願では、前記免疫エフェクター細胞は形質細胞、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT (NKT)細胞、肥満細胞及び/又は骨髄由来の食細胞を含み得る。
【0114】
本願では、前記形質細胞はエフェクターB細胞/抗体分泌細胞を指し、原始形質細胞、幼若形質細胞、Russell小体、Dutcher小体と炎状細胞などを含み得る。
【0115】
本願では、前記B細胞は形質細胞以外のすべてのB細胞タイプ、例えば、前B細胞、未熟B細胞、成熟B細胞、活性化B細胞などを指す。
【0116】
本願では、前記T細胞は、液性免疫及び細胞性免疫を補助することができるヘルパーT細胞(Helper T cells、Th)を含み得る。細胞性及び液性免疫を抑制する抑制性T細胞(Suppressor T cells、Ts);エフェクターT細胞(Effector T cells、Te)、リンホカインを放出するエフェクターT細胞;標的細胞を殺傷できる細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T cells、Tc);IV型アレルギーの役割に関与する遅発性アレルギーT細胞(Delayed type hypersensitivityT cells、Td);ThとTsに作用し免疫効果を拡大するT細胞(Ta)の増幅(Ta);本来のT細胞又は天然のT細胞(Virgin or Natural T cells)本来のT細胞又は天然のT細胞が抗原と接触して分化する能力T細胞又は記憶T細胞;記憶T細胞(Memory T cell、Tm)は、特異的な抗原刺激を記憶する。
【0117】
例えば、細胞傷害性T細胞は、細胞表面マーカーCD 8+を有してもよい。
【0118】
例えば、ヘルパーT細胞は、細胞表面マーカーCD 4+を有してもよい。
【0119】
本願では、前記修飾されていない対応する細胞は、野生型細胞及び/又は人工的に修飾された細胞を含み得る。前記野生型細胞は自然に存在する又は自然由来の細胞を含むことができ、例えば人体から分離した形質細胞、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT (NKT)細胞、肥満細胞と/又は骨髄由来の食細胞、又は人体から分離した前駆細胞又は多潜在能力細胞から分化を誘導して免疫エフェクター細胞を得る;前記人工改造された細胞は人体から分離され、又は人体から分離された前駆細胞/多能性細胞から分化を誘導して得られ、その後さらに人工改造された形質細胞、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT (NKT)細胞、肥満細胞及び/又は骨髄由来の食細胞である。例えば、前記人体は健康人体である。例えば、前記健康な人体は腫瘍又は免疫システム関連疾病又は病症を患っていないことを含んでいてもよい。
【0120】
本願では、前記人工改造はTRAC遺伝子、HLA-A遺伝子、B 2 M遺伝子とCIITA遺伝子を識別部位/標的として行わない人工改造であってもよく、例えば、前記人工改造はTRAC遺伝子、HLA-A遺伝子、B 2 M遺伝子とCIITA遺伝子の発現と/又は活性に影響せず、前記TRAC遺伝子、HLA-A遺伝子、B 2 M遺伝子とCIITA遺伝子の発現と/又は活性に影響しないとは、前記人体から分離され、又は人体から分離された前駆細胞又は多潜在能力細胞から分化を誘導して得て、更に人工改造されていない相応細胞と比べ、TRAC遺伝子、HLA-A遺伝子、B 2 M遺伝子とCIITA遺伝子の発現と/又は活性は変化せず、前記発現と/又は活性の変化は完全に一致するわけではなく、例えば、所属分野の通常の技術手段を利用して検査を行い、両者の中のTRAC遺伝子、遺伝子、HLA-A遺伝子、B 2 M遺伝子とCIITA遺伝子のmRNA定量分析は有意差がなく(P>0.05)、例えば、所属領域の常規技術手段による検査・測定を行い、両者中の前記TRAC遺伝子、HLA-A遺伝子、B 2 M遺伝子とCIITA遺伝子の相応ポリペプチド/タンパク定量分析は有意差がなかった(P>0.05)。例えば、前記人工修飾細胞はCAR-T細胞を含んでいてもよい。例えば、前記CAR-T細胞はそのCAR分子が以下の分子を標的とする結合ドメインを含むCAR-T細胞を含んでいてもよい:CD19、PSCA、CD123、CD20、CEA、FAP、CD133、EGFR、EGFRVIII、BCMA、PSMA、Her2、CA125、EphA2、C-met、L1CAM、CAR-T、CS1、ROR1、EC、NY-ESO-1、MUC1、LewisY、GPC3、GD2、DLL3、CD99、5T4、CD22、CD30、CD33、CD138、及び/又はCD171。CD19、CD133、CD123、CD22、CD30、CD171、CA125、C-met、L1CAM、EC、DLL3、CD99、CS1、5T4、CD138、CS-1(CD2サブクラス1、CRACC、SLAMF7、CD319、19A24とも呼ばれる)、C型レクチン様分子-1(CD133又はCD123)、CD33、表皮成長因子受容体バリアントIII(CD171)、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドGD3、TNF受容体ファミリーB細胞成熟抗原(CA125)、Tn抗原(例:C-met、L1CAMα-CD138)、前立腺特異的膜抗原(CRACC);受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、Fms様チロシンキナーゼ3(FLT3);腫瘍関連糖タンパク質72(SLAMF7)、CD38、CD319、癌胎児抗原(CD2サブクラス1、CRACC、SLAMF7、CD319、19A24とも呼ばれる)、上皮細胞接着分子(CD133又はCD123)、B7H3(CD171)、KIT(GD2)、インターロイキン-13受容体サブユニットα-2(CA125)、メソテリン、インターロイキン11受容体α(例:C-met、L1CAMα-CD138)、前立腺幹細胞抗原(CRACC)、プロテアーゼセリン21、血管内皮成長因子受容体2(ROR1)、CD44v6(Y)抗原、CD24、血小板由来成長因子受容体β(FLT3)、段階特異性胚胎抗原-4(CD123)、CD20、葉酸受容体α、受容体型チロシンキナーゼCD171(CD133)、細胞表面関連ムチン1(CD123)(MUC1)、上皮成長因子受容体(CD171)、神経細胞接着分子(CA125)、CD138、前立腺酸性ホスファターゼ(C-met又はL1CAM)、突然変異の延長因子2(CD138)、肝臓配タンパクB1002、線維芽細胞活性化タンパクα(CRACC)、インスリン様成長因子1受容体(SLAMF7)、炭酸酵素IX(CD133β)、細胞表面関連ムチンキナーゼ(例、プロテアソーム、メガリン因子)サブタンパク質、糖タンパク質9、前立腺酸性ホスファターゼ(CA125)、変異体9、ブレイクアウトクラスタ(CD171)とC-metマウス白血病ウイルス癌遺伝子ホモログ1(GD2)から構成された癌遺伝子融合タンパク(CA125)、チロシナーゼ、肝臓タンパク質A型受容体2(例:C-met、L1CAMα-CD138)、フコシルGM1シアリルCRACC接着分子(CRACC)、トランスグルタミナーゼ5(ROR1)、高分子-黒色腫関連抗原(FLT3)、o-アセチル-GD2ガングリオシド(SLAMF7)、葉酸受容体β、腫瘍内皮マーカー1(CD2サブクラス1、CRACC、SLAMF7、CD319、19A24とも呼ばれる)、腫瘍内皮マーカー7(CD133又はCD123)、密着結合タンパク6(CLDN6)、甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)、Gタンパク結合受容体C類第5群メンバーD(GPRC5D)、染色体X読み取り可能枠61(CXORF61)、CD97、CD179a、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)、ポリシアル酸、胎盤特異性1(PLAC1)、globoHglycoceramideのヘキソース部分(GloboH)、乳腺分化抗原(NY-BR-1)、尿路上皮分化特異糖タンパク(CLDN6)2(UPK2)、A型肝炎ウイルス細胞受容体1(TSHR)、アドレナリン受容体β3(GPRC5D)、汎結合タンパク(CXORF61)3(CD179a)、Gタンパク結合受容体20(ALK)、リンパ球抗原6複合体遺伝子座K9(LY6K)、嗅覚受容体51E2(PLAC1)、TCRγ可変読み取り可能枠タンパク(globoHglycoceramide)、Wilm腫瘍タンパク(WT1);癌/精巣抗原1(UPK2)、癌/精巣抗原2(CLDN6)、黒色腫関連抗原1(TSHR)、12p番染色体上のETS転座変異体遺伝子6(GPRC5D)、精子タンパク質17(CXORF61)、X抗原ファミリー1A(ALK)、アンジオポエチン結合細胞表面受容体2(PLAC1)、黒色腫癌精巣抗原-1(GloboH)、黒色腫癌精巣抗原-2(NY-BR-1)、Fos関連抗原1、p53、p53変異体、前立腺特異的タンパク質(CLDN6)、前立腺癌腫瘍抗原-1(GloboH)、T細胞認識メラノーマ抗原1(TSHR)ラット肉腫(TSHR)変異体、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(GPRC5D)、肉腫転座切断点、メラノーマアポトーシス抑制タンパク質(CXORF61)、ERG(ALK)、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(PLAC1)、対のフレームタンパク質CD179a(GloboH)、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、ALK鳥髄細胞症ウイルス癌遺伝子神経芽細胞腫由来の同族体(NY-BR-1)、Ras同族体ファミリーメンバーC(CLDN6)、チロシナーゼ関連タンパク質2(UPK2)、チトクロームGloboH(CLDN6)、T細胞識別の扁平上皮細胞癌抗原3(GPRC5D)、対のフレームタンパク質TSHR(CXORF61)、前駆体タンパク質結合タンパク質sp32(CD179a)、リンパ球特異性タンパク質チロシンキナーゼ(ALK)、Aキナーゼアンカータンパク質4(LY6K)、滑膜肉腫X切断点2(PLAC1)、高級糖化最終産物の受容体(globoHglycoceramide)、豆莢タンパク質(WT1)、ヒトパピローマウイルスE6(GloboH)、ヒトパピローマウイルスE7(TSHR)、エンドペプチダーゼE7、カルボキシラーゼ、腸結合タンパク質sp(CLDN6)、、滑膜肉腫X切断タンパク質、滑膜肉腫タンパク質CLDN6、滑膜肉腫X切断点2、、滑膜肉腫タンパク質HAVCR1変異、CD72、白血球関連免疫グロブリン様受容体1(GPRC5D)、IgA受容体のFc断片(CXORF61)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーAメンバー2(ALK)、ALK分子様ファミリーメンバーf(PLAC1)、C型レクチン領域ファミリー12メンバーA(GloboH)、骨髄間質細胞抗原2(NY-BR-1)、EGF様モジュールを含むムチン様ホルモン受容体2(CLDN6)、リンパ球抗原75(UPK2)、ホスファチジルアルコールプロテオグリカン-3(CLDN6)、Fc受容体様5(TSHR)と/又は免疫グロブリンλ様ポリペプチド1(CXORF61)。
【0121】
TRAC遺伝子、HLA-A遺伝子、B 2 M遺伝子、及びCIITA遺伝子
【0122】
本願では、 TRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子の発現及び/又は活性は、対応する野生型細胞と比較してダウンレギュレートされ、 B 2 M遺伝子の発現及び/又は活性はダウンレギュレートされず、CIITA遺伝子の発現及び/又は活性はダウンレギュレートされなかった。
【0123】
本願では、両遺伝子の発現及び/又は活性は、 TRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子からなる対応する野生型細胞と比較してダウンレギュレートされた。
【0124】
本願では、前記ダウンレギュレートされた遺伝子の発現レベル及び/又は活性は、前記遺伝子をコードする核酸分子の発現及び/又は活性をダウンレギュレートすることを含む。及び/又は前記遺伝子がコードするタンパク質産物の発現及び/又は活性をダウンレギュレートさせる。
【0125】
例えば、前記タンパク産物はポリペプチドを含んでいてもよい。
【0126】
本願では、前記TRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子の発現及び/又は活性はダウンレギュレートされるか、又は前記ダウンレギュレートされる前記免疫エフェクター細胞におけるTRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子の発現及び/又は活性は、前記修飾されない対応する細胞と比較して、前記修飾は前記TRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子のヌクレオチド配列構造を変更することを含み得る。前記ヌクレオチド配列はコード領域又は非コード領域、例えばシス制御要素配列、エクソン配列を含むことができ、前記シス制御要素配列はプロモーターを含んでいてもよい。前記変化は一部又は全部配列欠失、外因断片の挿入、塩基部位突然変異などを含み、挿入した外因断片はTRAC遺伝子とHLA-A遺伝子の配列構造を置換又は破壊し、正常に翻訳できないようにする。前記塩基部位突然変異はフレームシフト突然変異、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異などを含み得る。前記変化はヌクレオチド配列の化学基修飾、例えばメチル化などを含んでいてもよい。ヌクレオチド配列構造の変化は遺伝子配列測定、例えばサンガー配列測定、亜硫酸塩配列測定などによって検出できる。
【0127】
本願では、前記TRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子の発現及び/又は活性は、ダウンレギュレートされるか、又は前記ダウンレギュレートされる免疫エフェクター細胞におけるTRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子の発現及び/又は活性は、前記修飾されない対応する細胞と比較して、前記修飾が前記TRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子のmNNA含有量を低下させることも含む。前記mRNAの含有量は分野の技術者が公知する実験方法及び生物統計学方法によって得られ、例えば分子プローブin situハイブリダイゼーション、リアルタイム蛍光定量PCR (qPCR、RT-PCR)であり、前記リアルタイム蛍光定量PCRはSYBR Green法、TaqMan法、ダブルハイブリダイゼーションプローブ法、分子ビーコン法を含んでいてもよい。前記mRNA含有量の検出結果は実験又は統計における不可避な誤差を許容し、前記誤差は所属分野に公知である。誤差は、±8%、±6%、±5%、±4%、±3%など、±10%の範囲内であってもよい。前記mNNA含有量は少なくとも30%、例えば35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%に低下し、例えば、前記修飾された免疫エフェクター細胞にTRAC遺伝子とHLA-A遺伝子のmNNAを検出できない。
【0128】
本願では、前記TRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子の発現及び/又は活性はダウンレギュレートされるか、又は前記ダウンレギュレートされる免疫エフェクター細胞におけるTRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子の発現及び/又は活性は、前記修飾されない対応する細胞と比較して、前記修飾が前記TRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子発現のポリペプチド含有量を低下させることも含む。前記ポリペプチドは前記修飾されていない相応細胞中のTRAC遺伝子とHLA-A遺伝子発現によって産生したポリペプチドと構造、機能が一致するポリペプチドであり、TRAC遺伝子とHLA-A遺伝子ヌクレオチド配列の変化によって産生した機能、構造が変化したポリペプチドは比較範囲にない。前記ポリペプチドの含有量は分野の技術者が公知する実験方法及び生物統計学方法によって得られ、たとえばフローサイトメトリー分析、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、細胞免疫蛍光染色法、免疫ブロット法(Western blotting、WB)である。前記ポリペプチド含有量の検出結果は実験又は統計において不可避な誤差を許容し、前記誤差は分野において公知である。誤差は、±8%、±6%、±5%、±4%、±3%など、±10%の範囲内であってもよい。前記ポリペプチド含有量の低下は少なくとも30%であり、例えば35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%であり、例えば、前記修飾された免疫エフェクター細胞中にTRAC遺伝子とHLA-A遺伝子発現のポリペプチドを検出できない。
【0129】
本願では、前記TRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされる、又は前記ダウンレギュレートされる免疫エフェクター細胞におけるTRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子の発現及び/又は活性は、前記TRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子の発現をノックアウト又はノックダウンすること、又はTRACタンパク質及びHLA-Aタンパク質の機能を破壊するその他の操作を行うことを指すことができる。
【0130】
本願では、前記B2M遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされず、かつCIITA遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされない、又は前記B 2 M遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされず、かつCIITA遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされないことは、前記B2M遺伝子及びCIITA遺伝子のmNNA含有量が、前記修飾されていない対応する細胞と比較して低下しないことを含み得る。前記mRNAの含有量は分野の技術者が公知する実験方法及び生物統計学方法によって得られ、例えば分子プローブin situハイブリダイゼーション、リアルタイム蛍光定量PCR (qPCR、RT-PCR)であり、前記リアルタイム蛍光定量PCRはSYBR Green法、TaqMan法、ダブルハイブリダイゼーションプローブ法、分子ビーコン法を含んでいてもよい。前記mRNA含有量の検出結果は実験又は統計における不可避な誤差を許容し、前記誤差は所属分野に公知である。誤差は、±8%、±6%、±5%、±4%、±3%など、±10%の範囲内であってもよい。前記mNNA含有量が低下しないことは含有量の上昇又は不変を含むことができ、前記不変は比較する両者中の前記B2M遺伝子とCIITA遺伝子の相応mRNA定量分析が著しい差(P>0.05)を持たないことを含み得る。
【0131】
本願では、前記B 2 M遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされておらず、かつCIITA遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされておらず、又は前記B2M遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされておらず、かつCIITA遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされていないことは、前記B 2 M遺伝子及びCIITA遺伝子発現のポリペプチド含有量が、前記修飾されていない対応する細胞と比較して低下していないことを含み得る。前記ポリペプチドは前記修飾されていない相応細胞のB 2 M遺伝子とCIITA遺伝子発現によって産生したポリペプチドと構造、機能が一致するポリペプチドである。前記ポリペプチドの含有量は分野の技術者が公知する実験方法及び生物統計学方法によって得られ、たとえばフローサイトメトリー分析、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、細胞免疫蛍光染色法、免疫ブロット法(Western blotting、WB)である。前記ポリペプチド含有量の検出結果は実験又は統計において不可避な誤差を許容し、前記誤差は分野において公知である。誤差は、±8%、±6%、±5%、±4%、±3%など、±10%の範囲内であってもよい。前記ポリペプチドの含有量が低下しないことは含有量の上昇又は不変を含み、前記不変は比較した両者の中の前記B2M遺伝子とCIITA遺伝子の相応するポリペプチドの定量分析が著しい差(P>0.05)を有しないことを含む。
【0132】
本願では、前記B 2 M遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされず、かつCIITA遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされない、又は前記B 2 M遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされず、かつCIITA遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされないことは、前記修飾されていない対応する細胞に対して、CIITA遺伝子及びB 2 M遺伝子、CIITA遺伝子及びB 2 M遺伝子をコードするmRNA及び/又はポリペプチドに対して人工的な介入を行うことを含み、例えば、前記人工的な介入は、前記修飾されていない対応する細胞に、CIITA遺伝子及びB 2 M遺伝子又はそのコードするmRNA分子を標的とし、その構造又は含有量を変更することができるヌクレオチド分子又は他の化合物を導入することを含んでいてもよい。
【0133】
本願では、前記B2M遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされず、かつCIITA遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされず、又は前記B 2 M遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされず、かつCIITA遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされないことは、前記修飾されない対応する細胞と比較して、前記B 2 M遺伝子及び前記CIITA遺伝子のヌクレオチド配列構造に変化がなく、前記ヌクレオチド配列構造に変化がないことを含み、遺伝子シーケンシング、例えばサンガーシーケンシング、亜硫酸塩シーケンシングなどによって検出できる。前記ヌクレオチド配列構造の変化がないことは人為的な変化がないことを含み、また自然に現れ、その機能に影響しない変化を含み得る。
【0134】
本願では、前記B2M遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされず、かつCIITA遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされない、又は前記B 2 M遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされず、かつCIITA遺伝子の発現及び/又は活性がダウンレギュレートされないことは、B 2 M遺伝子又はそれがコードするタンパク質、CIITA遺伝子又はそれがコードするタンパク質を標的とする修飾が行われないことを意味することができる。
【0135】
本願では、前記HLA-A遺伝子における最大2つの対立遺伝子の発現レベル及び/又は活性がダウンレギュレートされる。例えば、前記2つの対立遺伝子は前記免疫エフェクター細胞中のHLA-A遺伝子の一対の対立遺伝子であることができる。例えば、前記HLA-A遺伝子の1つの対立遺伝子の発現レベル及び/又は活性はダウンレギュレートされる。
【0136】
本願では、TRAC遺伝子は、HGNC:12029によって示される遺伝子及びそのすべての対立遺伝子型を含み得る。例えば、TRAC遺伝子及びそのすべてのアレル型は、免疫エフェクター細胞内に存在することができるTRAC遺伝子型を含んでいてもよい。例えば、TRAC遺伝子は、SEQ ID NO.55によって示されるヌクレオチド配列を含んでいてもよい。
【0137】
例えば、前記TRAC遺伝子は、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上など、SEQ ID NO.55で示されるヌクレオチド配列と80%以上の相同性を有するヒト由来のヌクレオチド配列を含んでいてもよい。
【0138】
本願では、HLA-A遺伝子は、HGNC:4931によって示される遺伝子及びそのすべてのアレル型を含み得る。例えば、HLA-A遺伝子は、WHO HLA Factor Naming Committeeによって命名された、IMGT/HLAデータベースバージョン3.38.0 (https://www.ebi.ac.uk/ipd/imgt/hla/)によって収録されているすべてのHLA-A対立遺伝子タイプを含むことができ、IMGT/HLAデータベースバージョン3.38.0によって開示されているHLA-A対立遺伝子タイプ及びその配列情報は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0139】
例えば、HLA-A対立遺伝子は、A*02、A*24、A*01、A*03、A*32、A*11、A*26、A*68、A*23、A*29、A*31、A*33、A*25、A*43、A*74、A*30、A*69のうちの任意の1つ又は複数を含んでいてもよい。
【0140】
例えば、HLA-A対立遺伝子は、A*02:01、A*03:01、A*01:01、A*24:02、A*68:01、A*11:01、A*31:01:02、A*29:02、A*32:01、A*26、A*23:01、A*30:02、A*25:01、A*33:03のうちの任意の1つ又は複数を含んでいてもよい。
【0141】
例えば、HLA-A対立遺伝子は、A*02:01:01、A*01:01:01、A*03:01:01、A*24:02:01、A*11:01:01、A*32:01:01、A*29:02:01、A*31:01:02、A*23:01:01、A*26:01:01、A*68:01:02、A*30:01:01、A*68:02:01、A*25:01:01、A*68:01:01、A*02:05:01のうちの任意の1つ又は複数を含んでいてもよい。
【0142】
例えば、HLA-A対立遺伝子は、A*02、A*30、A*03、A*01、A*24、A*32、A*68、A*11、A*26、A*23、A*31、A*25のうちの任意の1つ又は複数を含んでいてもよい。
【0143】
例えば、HLA-A対立遺伝子は、A*02:01、A*03:01、A*24:02、A*01:01、A*11:01、A*26:01、A*25:01、A*68:01、A*32:01、A*31:01のうちの任意の1つ又は複数を含んでいてもよい。
【0144】
例えば、HLA-A対立遺伝子は、A*24、A*33、A*02、A*11、A*26、A*31、A*01、A*24:02、A*02:01、A*33:03、A*11:01、A*26:01、A*02:06、A*31:01:02、A*26:03、A*26:02、A*02:07、A*01:01、A*02:10、A*03:01のうちの任意の1つ又は複数を含んでいてもよい。
【0145】
例えば、HLA-A対立遺伝子は、A*02、A*24、A*33、A*11、A*26、A*31、A*30、A*03、A*01、A*32、A*29、A*68、A*23、A*25、A*34、A*36、A*43、A*66、A*74を含んでいてもよい。
【0146】
例えば、HLA-A対立遺伝子は、A*24:02、A*33:03、A*02:01、A*11:01、A*02:01、A*31:01、A*26:01、A*02:07、A*30:01、A*26:02、A*01:01、A*03:01、A*30:04、A*26:03のうちの任意の1つ又は複数を含み得る。
【0147】
例えば、HLA-A対立遺伝子は、A*02:01、A*11:01、A*24:02、A*30:01、A*26:01、A*23:01、A*02:07、A*02:06、A*03:01、A*01:01、A*31:01:02、A*33:03、A*32:01、A*68:01、A*02:03、A*02:05のうちの任意の1つ又は複数を含んでいてもよい。
【0148】
例えば、HLA-A対立遺伝子は、A*03:01、A*02:01、A*23:01、A*01:01、A*30:02、A*30:01、A*33:03、A*29:02、A*74:01、A*36:01、A*24:02、A*02:02、A*68:01、A*68:02、A*34:02、A*66:02、A*31:01:02、A*32:01、A*02:05、A*66:01、A*26:01のうちの任意の1つ又は複数を含んでいてもよい。
【0149】
例えば、HLA-A対立遺伝子は、A*02、A*11、A*24、A*30、A*33、A*03、A*01、A*26のうちの任意の1つ又は複数を含んでいてもよい。
【0150】
例えば、HLA-A対立遺伝子は、A*11:01、A*24:02、A*02:01、A*02:07、A*33:03、A*02:06、及びA*30:01のうちの任意の1つ又は複数を含んでいてもよい。
【0151】
例えば、HLA-A対立遺伝子は、HLA-A*02:01:01:01、HLA-A*11:01:01:01、HLA-A*24:02:01、HLA-A*30:01:01:01、HLA-A*33:01:01:01、HLA-A*03:01:01:01、HLA-A*01:01:01:01、HLA-A*26:01:01:01のうちの任意の1つ又は複数を含んでいてもよい。
【0152】
例えば、HLA-A遺伝子は、SEQ ID NO.56-63のいずれかに示される核酸配列を含んでいてもよい。
【0153】
例えば、前記HLA-A遺伝子は、SEQ ID NO.56-63のいずれかに示される核酸配列と80%以上の相同性を有する、ヒト由来のヌクレオチド配列、例えば、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上を含んでいてもよい。
【0154】
修飾
【0155】
本願では、前記修飾は、遺伝子ノックアウト及び/又は遺伝子サイレンシングを含み得る。
【0156】
例えば、前記修飾は、遺伝子の全部又は一部の欠失、遺伝子変異、及び/又は遺伝子サイレンシングを含んでいてもよい。
【0157】
例えば、前記ノックアウトは、遺伝子の全部又は一部の欠失、遺伝子変異などを含んでいてもよい。
【0158】
例えば、前記遺伝子は、前記HLA-A遺伝子及び/又は前記TRAC遺伝子を含んでいてもよい。
【0159】
例えば、前記修飾は、前記免疫細胞における2つのTRAC対立遺伝子のいずれか1つがノックアウトされ、2つのHLA-A対立遺伝子のいずれか1つがノックアウトされることを含んでいてもよい。
【0160】
例えば、前記修飾は、前記免疫細胞において2つのTRAC対立遺伝子がノックアウトされ、2つのHLA-A対立遺伝子のいずれか1つがノックアウトされることを含んでいてもよい。
【0161】
例えば、前記修飾は、2つのTRAC対立遺伝子のいずれか1つがノックアウトされ、2つのHLA-A対立遺伝子がノックアウトされることを含んでいてもよい。
【0162】
例えば、前記修飾は、2つのTRAC対立遺伝子がノックアウトされ、2つのHLA-A対立遺伝子がノックアウトされることを含んでいてもよい。
【0163】
例えば、前記遺伝子部分断片欠失は≧1つのエクソン配列の欠失を含んでいてもよい。
【0164】
例えば、前記遺伝子変異は、例えばミスセンス変異、フレームシフト変異、及び/又はナンセンス変異をもたらすことができる塩基対の組成又は配列順序の変更を含んでいてもよい。前記ミスセンス突然変異は通常、ある塩基対の変化により、あるアミノ酸をコードするコドンを別のアミノ酸をコードするコドンに変え、タンパク質を構成する相応のアミノ酸を変化させる。前記シフト突然変異は通常、DNA鎖中の3の整数倍でない1つまたは複数の塩基の挿入または欠失であり、コーディングコドンに変化をもたらすものである。前記ナンセンス変異は通常、アミノ酸をコードするコドンをターミネーターに変える塩基対の変化であり、その部位でタンパク質合成が早期に停止するものである。
【0165】
例えば、前記塩基対の組成又は配列順序の変化は、単一ヌクレオチド又は塩基の変化(点突然変異とも呼ばれる)及び/又はポリヌクレオチド又は塩基の変化を含んでいてもよい。例えば、前記単一のヌクレオチド又は塩基の変化は、1つの塩基又はヌクレオチドの別の塩基又はヌクレオチドによる置換、塩基の挿入又は欠失を含んでいてもよい。例えば、前記ポリヌクレオチドまたは塩基の変化は、塩基配列のセグメントの損失、塩基配列のセグメントの挿入および/または塩基配列のセグメントの再配列を含んでいてもよい。前記一部の塩基配列は遺伝子中の任意の1つのエクソン/又はイントロンの一部である。前記再配列は前記1段の塩基配列の重複、逆位、転位などを含んでいてもよい。
【0166】
例えば、この遺伝子サイレンシングは、転写レベルでの遺伝子サイレンシング(tran-scriptional gene silenc-ing、TGS)及び/又は転写後遺伝子サイレンシング(post-transcriptional gene silen-cing、PTGS)を含んでいてもよい。前記転写レベルのサイレンシングはDNA分子のメチル化を含み、それによってDNAを抑制し、例えばプロモーター配列のメチル化である。前記転写後遺伝子サイレンシングは前記遺伝子転写後に標的RNAに対する特異的な介入による遺伝子発現変化を含んでいてもよい。mRNAレベルは、例えばRNA干渉(RNAi)により減少した。
【0167】
本願では、前記修飾は相同組換えを利用して外因性ヌクレオチド配列を内因性の正常遺伝子に取り替え、これによって前記内因性の正常遺伝子を不活性化させる技術又は方法を含み得る。前記外因性ヌクレオチド配列は既知である。例えば、前記外因性ヌクレオチド配列は前記内因性の正常遺伝子の部分断片であってもよい。例えば、前記外因性ヌクレオチド配列は5’から3’まで順次に相同アーム1、挿入されるヌクレオチド配列、相同アーム2を含んでいてもよい。前記挿入するヌクレオチド配列はレポーター遺伝子、非コード配列又は内因の正常遺伝子の変異配列を含み得る。
【0168】
本願では、前記修飾は、アンチセンスRNA、siRNA、shRNA及びCRISPR/Cas9システムからなる群から選択される1以上の物質を前記免疫エフェクター細胞に投与することを含み得る。
【0169】
本願では、前記アンチセンスRNAは、転写産物mRNA (メッセンジャーRNA)に相補的な一本鎖RNAであってもよい。
【0170】
例えば、前記アンチセンスRNAの少なくとも60%の核酸配列に対して、少なくとも80%のように、少なくとも90%のように、少なくとも70%のように、mRNAに対して相補的であり、100%のように相補的である。
【0171】
例えば、前記アンチセンスRNAは標的mRNAと結合した後、前記二本鎖RNA分子のRNA酵素IIIに対する感受性の増加を引き起こし、したがってそれを分解させる。
【0172】
例えば、前記アンチセンスRNAは、mRNAの上流の非コード領域に結合して、標的mRNAの翻訳を阻害する。
【0173】
例えば、前記アンチセンスRNAは人工的に調製される。
【0174】
例えば、前記アンチセンスRNAは、短いヘアピン構造を形成することができない。
【0175】
本願では、前記アンチセンスRNAは、SEQ ID NO:93-96のいずれかに記載されたヌクレオチド配列を含み得る。
【0176】
本願では、前記siRNAは、長さが約18~28塩基対である2本鎖非コードRNA分子のクラスであってもよい。
【0177】
例えば、前記siRNAはmRNAとの相補的結合によってmRNAの分解を引き起こし得る。
【0178】
例えば、前記siRNAの長さは、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28塩基対であってもよい。
【0179】
例えば、前記siRNAは、手動調製される。
【0180】
例えば、前記siRNAは細胞内長二本鎖RNA又はshRNAをDicer酵素で処理して得られる。
【0181】
本願では、前記shRNAは、短いヘアピン構造を形成できるRNAのクラスを指す。
【0182】
例えば、前記shRNAは、2つの短い逆方向反復配列と、前記2つの短い逆方向反復配列の間に位置する幹ループ(loop)配列と、を含んでいてもよい。
【0183】
例えば、前記shRNA内の少なくとも連続する18個の核酸配列は、少なくとも19個、例えば、少なくとも20個、例えば、少なくとも21個、例えば、少なくとも22個、例えば、少なくとも23個、例えば、少なくとも24個、例えば、少なくとも25個、例えば、少なくとも26個などのように、標的mRNAに相補的に結合することができる。
【0184】
例えば、前記shRNAは、本願のsgRNAを含まない。
【0185】
本願では、前記修飾は、前記免疫エフェクター細胞にCRISPR/Casシステムを投与することを含み得る。
【0186】
CRISPR/Casシステム
【0187】
本願では、前記CRISPR/Casシステムは、ガイドRNA (gRNA)及びCas酵素を含み得る。gRNAは、crRNA及びtracrRNAを含み得る。前記crRNAと前記tracrRNAがそれぞれ2つの異なるヌクレオチド分子に位置する時、前記gRNAはdgRNA (二分子gRNA)と呼ばれ、前記crRNAと前記tracrRNAが同じヌクレオチド分子に位置する時、前記gRNAはsgRNA (一分子gRNA)と呼ばれる。
【0188】
本願では、前記CRISPR/Casシステムは、gRNA核酸配列及びCasタンパク質を含み得る。例えば、 gRNA核酸配列とCasタンパクとのRNP複合体である。
【0189】
本願では、前記CRISPR/Casシステムは、前記gRNAをコードする核酸配列とCasタンパク質をコードする核酸配列とをさらに含んでいてもよく、前記gRNAをコードする核酸配列とCasタンパク質をコードする核酸配列は、プラスミド、ウイルス(アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス等)又はそれらが属する分野で従来用いられている他のベクター中に配置されていてもよい。例えば、前記gRNAをコードする核酸配列及びCasタンパク質をコードする核酸配列は、同じベクター内に存在してもよく、又は異なるベクター内に存在してもよい。例えば、tracrRNAをコードする核酸配列とcrRNAをコードする配列は、同じベクターに存在してもよいし、異なるベクターに存在してもよい。個々のコード化された配列の発現を駆動するためのプロモーターは、同じであっても、異なるものであってもよい。
【0190】
本願では、前記CRISPR/Casシステムは、複数のガイドRNAを含み得る。各ガイドRNAは、CRISPR/Casシステムが1つ以上の標的配列を切断するように、異なる標的配列を含み得る。例えば、1つまたは複数のガイドRNAは、CRISPR/Cas複合体における活性や安定性などの特性が同じであっても異なっていてもよい。複数のガイドRNAが使用される場合、各ガイドRNAは同じベクター又は異なるベクターでコードされ得る。提示された複数のガイドRNA発現を駆動するためのプロモーターは、同じであっても異なっていてもよい。例えば、前記ガイドRNAはHLA-A遺伝子を標的とし、TRAC遺伝子を標的とするガイドRNAを含む。
【0191】
本願では、前記修飾は、前記細胞へのCas酵素の投与をさらに含む。前記Cas酵素はCasタンパク、Casタンパクをコードする核酸配列を含んでいてもよい。
【0192】
例えば、前記Casタンパク質は、ガイドRNA(gRNA)と相互作用する少なくとも1つの構造ドメインを含んでよく、例えば、前記Casタンパク質は、ガイドRNAによって標的シーケンスに誘導されてよく、例えば、前記ガイドRNAは、Casタンパク質の標的シーケンスへの結合を誘導するように、標的シーケンスだけでなくCasタンパク質と相互作用し、例えば、前記ガイドRNAは標的切断に特異性を提供し、前記 Casタンパク質は、異なるガイドRNAと対になって異なる標的シーケンスを切断する汎用的なものであってもよく;例えば、前記Casタンパク質は一本鎖又は二本鎖DNAを切断してもよく;例えば、前記Casタンパク質はRNAを切断してもよく;例えば、前記Casタンパク質はRNA/DNAの切り込みを起こしてもよく;少なくとも一つのDNA結合構造ドメイン及び少なくとも一つのヌクレアーゼからなるものである。 構造ドメイン;例えば、前記ヌクレアーゼ構造ドメインは、DNA結合構造ドメインに対して異種であってもよく;例えば、Casタンパク質を修飾することによってヌクレアーゼ活性が変化してもよく;例えば、前記Casタンパク質は、DNAの発現又は活性を結合して制御するために使用されてもよく;例えば、Casタンパク質は、Casヌクレアーゼであってもよい。
【0193】
本願では、前記CRISPR/Casシステムは、リボ核酸タンパク質複合体を含む、クラス1又は2のシステム成分を含んでいてもよい(例えば、Makarovaら、Nat Rev Microbiol、13 (11):722-36 (2015);Shmakovら、Molecular Cell、60:385-397 (2015)。これらのうち、クラス2CRISPR/Casシステムは単一タンパク質エフェクターを有する。II、VとVI型Casタンパクは単一タンパク質、RNAガイドヌクレアーゼにすることができ、本願では「クラス2Casヌクレアーゼ」と称する。クラス2 CasヌクレアーゼはCas9、Cpf 1、C2c1、C2c2とC2c3タンパク質を含み得る。Cas9又はCpf1タンパク質(Zetscheなど、Cell、163:1-13(2015))はRuvC様ヌクレアーゼドメイン又はHNH様ヌクレアーゼドメインを含むことができ、ZetscheにおけるCpf1配列はそれら全体で本願に導入される。
【0194】
例えば、 CasタンパクはII型CRISPR/Cas系(CRISPR/Cas9系のCas9タンパク)又はV型CRISPR/Cas系(例:Cpf 1タンパク質)のタンパクである。例えば、Casタンパク質は、Cas9タンパク質又はCpf 1タンパク質のようなクラス2CRISPR/Casシステムから生じることができる。クラス2Casヌクレアーゼファミリータンパク質はDNAエンドヌクレアーゼ活性を有する酵素であり、本願にさらに記載された適切なガイドRNAを設計することにより望ましい核酸標的を切断するようにそれらを導くことができる。
【0195】
例えば、2つのクラスCRISPR/Casシステム成分は、IIA型、IIB型、IIC型、V型、又はVI型システムから生じることができる。Cas9とそのオーソログを含む。Cas9タンパク質又はそのオーソログは、以下の例示的な種に由来し得る:化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、好熱性レンサ球菌(Streptococcus thermophilus)、レンサ球菌属(Streptococcus sp.)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus) (Staphylococcus aureus)、無害なリステリア菌(Francisella novicida) (Listeria in-nocua)、Lactobacillus gasseri (Lactobacillus gasseri)、Pasteurellamultocida (Francisella novicida)、Saccharomycescerevisiae (Wolinella succinogenes)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、Campylobacter jejuni (Campylobacter jejuni)、Pasteurella multocida (Streptococcus pyogenes)、S.kanselii (Listeria in-nocua) (Streptococcus thermophilus)、緋色スピロヘータ菌(Streptococcus sp.)、 Nocardia属(Staphylococcus aureus)、S.burnetii (Listeria in-nocua)、緑のStreptococc (Lactobacillus gasseri) us属細菌(Francisella novicida)、Streptococcus属細菌(Wolinella succinogenes)、Pseudomycetus属細菌(Neisseria meningitidis)、 Dedella属細菌(Campylobacter jejuni) (Wolinella succinogenes)、Lactobacillus属細菌(Streptococcus pyogenes)、Lactobacillus属細菌(Streptococcus thermophilus)、Campylobacter属細菌、Campylobacter属細菌、 Brucella pylobacter属細菌(Streptococcus sp.)、海洋細菌、海洋細菌、 Bacterium属細菌、 Bacterium Lactobacillus gasseri属細菌、 Bacterium属、Microcystis aeruginosa (Wolinella succinogenes)、Paracocytogenes属種(Neisseria meningitidis)、Arabidopsis (Campylobacter jejuni)、ボツリヌス菌Clostridium属(Streptococcus pyogenes)、Clostridium difficile (Streptococcus thermophilus)、Haeus属種(Streptococcus sp.)、好塩性亜硝化球菌(Staphylococcus aureus)、Daphylococcus属種(Listeria in-nocua)、泡沫核球藍菌(Lactobacillus gasseri)、Candida属種(Francisella novicida)、極大節螺菌(Wolinella succinogenes)、円板状節藍菌(Neisseria meningitidis)、Corynebacterium difficile属種(Campylobacter jejuni)、スフィンゴバクテリウム属種(Streptococcus pyogenes)、土壌ミクロスフィンゴ属細菌(Streptococcus thermophilus)、ビラン細菌属種(Streptococcus sp.)、アフリカ生息熱腔菌(Staphylococcus aureus)、灰奈氏球菌(Listeria in-nocua)、Campylobacter pylori (Lactobacillus gasseri)又はジフテリア菌(Francisella novicida)。
【0196】
例えば、Cas9タンパク質はStreptococcus pyogenesに由来してもよく;例えば、Cas9タンパク質は、サーモフィラス菌に由来していもいよい;例えば、Cas9タンパク質は、黄色ブドウ球菌に由来してもよく;例えば、前記Cpf 1タンパク質は、Pasteurella tultocida (Francisella tularensis)、アミノ酸球菌属(Acidaminococcus)、Actinomyces属(Eubacterium eligens)、Leptospira dabilis (Leptospira inadai)、ペプトン菌Bacteroides (Prevotella dis-iens)、又はActinopポルフィリン菌(Porphyromonasmacacae)に由来してもよい。例えば、前記Cpf 1タンパク質は、アミノ酸球菌属又はスピロヘータ科(Lachnospiraceae)に由来してもよい。
【0197】
例えば、前記Cas9タンパク質は、化膿性連鎖球菌Cas9と60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の相同性を有するアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0198】
例えば、前記Cas9タンパク質は、SEQ ID NO:65で示されるアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0199】
例えば、Cas9タンパク質をコードする例示的な核酸配列は、以下の文献に記載される:Cong等、SCIENCE 2013、399 (6121):819-823;Wang他、 CELL 2013、153 (4) :910-918;Mali他、SCIENCE 2013、 399 (6121):823-826;Jinekなど、SCIENCE 2012、 337 (6096):816-821。
【0200】
例えば、Cas9タンパク質をコードする前記ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:64で示される。
【0201】
例えば、Cas9タンパク質は修飾されていてもよい。例えば、前記修飾はアミノ酸置換を含み、他のポリペプチド断片と融合タンパク質を構成する。前記他のポリペプチド断片はPEST配列、ユビキチン、ポリユビキチン、核局在シグナル(NLS)を含み得る。
【0202】
本願では、前記crRNAは、crRNAの標的配列によって任意の標的配列を標的とすることができるgRNAの標的配列を含み得る。例えば、前記標的シーケンスと標的核酸分子上の標的シーケンスとの間の相補程度は約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%であってもよい。例えば、前記標的シーケンスと標的核酸分子上の標的シーケンスは100%相補的であってもよい。例えば、前記標的シーケンスと標的核酸分子上の標的シーケンスは少なくとも1つのミスマッチを含んでいてもよい。例えば、標的シーケンス及び標的核酸分子上の標的シーケンスは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のミスマッチを含んでいてもよい。例えば、前記標的シーケンスと標的核酸分子上の標的シーケンスは1~6個のミスマッチを含んでいてもよい。例えば、標的シーケンス及び標的核酸分子上の標的シーケンスは、5又は6個のミスマッチを含んでいてもよい。例えば、前記標的シーケンスと標的核酸分子上の標的シーケンスはミスマッチを含まない。
【0203】
本願では、標的配列の長さは、使用されるCRISPR/Casシステム及び構成要素に依存し得る。例えば、異なる細菌種からの異なるCasタンパク質は異なる最適標的シーケンス長を有する。さらに、前記標的配列は長さ5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50又は50以上のヌクレオチドを含んでもよい。例えば、前記標的シーケンスは長さ18~24のヌクレオチドを含んでいてもよい。例えば、前記標的シーケンスは長さ19~21のヌクレオチドを含んでいてもよい。例えば、前記標的シーケンスは長さ20ヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0204】
本願では、crRNAは、CRISPR/Cas複合体の形成を促進するのに十分であるように、tracrRNAと相補的になることができる任意のシーケンスcrRNAを含み得るcrRNA旗ざおシーケンスをさらに含み得る。例えば、旗シーケンスは、同じCRISPR/Casシステム内のtracrRNAを補完する自然に存在するcrRNAのシーケンスの全部又は一部(「タグ付け」又は「手」とも呼ばれる)を含んでもよい。例えば、旗シーケンスは、自然に存在するCRISPR/Casシステムからの反復シーケンスの全部又は一部を含んでいてもよい。たとえば、シーケンスには、短く又は修飾されたタグ又はハンドルのシーケンスを含み得る。tracrRNA内の、crRNAポール・シーケンスを補完する部分は、tracrRNAポール・シーケンスと呼ばれてもよい。例えば、tracrRNAと、tracrRNAとハイブリダイズするフラッグ部分との間の、2つの配列のうちのより短い方に沿った相補性の程度は、約40%、50%、60%、70%、80%又はそれ以上でありうる。例えば、 tracrRNAとtracr RNAとの交雑の旗の部分は、 2つの配列のうち短い方に沿って100%相補的ではなかった。crRNAの長さは、使用しているCRISPR/Casシステム又はtracrRNAによって異なる。例えば、crRNA旗シーケンスは長さが10~50ヌクレオチド又は50ヌクレオチド以上を含んでいてもよい。例えば、crRNA旗シーケンスは長さ15~40ヌクレオチドを含んでいてもよい。例えば、crRNA旗シーケンスは長さ20~30ヌクレオチドを含んでいてもよい。例えば、crRNA旗シーケンスは長さ22ヌクレオチドを含んでいてもよい。ダブルガイドRNAを使用する場合、crRNAフラッグシーケンスの長さに上限はありません。
【0205】
本願では、tracrRNAは、自然に存在するCRISPR/Casシステムからの野生型tracrRNA配列の全部又は一部を含み得る。例えば、tracrRNAは、野生型tracrRNAの短縮又は修飾変異体を含んでいてもよい。tracrRNAの長さは、使用しているCRISPR/Casシステムによって異なる。例えば、tracr RNAは長さ5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、又は100以上のヌクレオチドを含んでいてもよい。例えば、tracrは少なくとも20ヌクレオチドの長さである。例えば、tracrRNAは少なくとも40ヌクレオチドの長さである。例えば、tracrRNAは、1つ又は複数のヘアピン構造又は茎環構造、又は1つ又は複数のバルジ構造などの二次構造を含んでいてもよい。
【0206】
本願では、前記ガイドRNAは、本明細書で「二重ガイドRNA」又は「dgRNA」と呼ばれる2つのRNA分子を含み得る。例えば、dgRNAは、crRNAを含む第1のRNA分子と、tracrRNAを含む第2のRNA分子とを含んでいてもよい。前記第1と第2 RNA分子はcrRNAとtracr RNA上の旗竿配列間の塩基対合によってRNA二本鎖を形成できる。
【0207】
例えば、5'から3'までの第1のRNA分子は、標的シーケンスと相補的な標的シーケンス、crRNA旗シーケンスを含んでいてもよい。5'から3'までの第2のRNA分子は、例えば、Cas9のようなCasヌクレアーゼであってもよい、crRNA旗シーケンスに相補的なtracrRNA旗シーケンス、ヌクレアーゼ結合配列を含んでもよい。
【0208】
本願では、前記ガイドRNAは、「一分子gRNA」又は「sgRNA」と呼ばれる単一のRNA分子を含み得る。例えば、sgRNAは、tracrRNA、tracrRNAに共有結合したcrRNAを含んでいてもよい。例えば、crRNA及びtracrRNAは、リンカー核酸配列を介して共有結合的に接続され得る。例えば、単一分子gRNAは、crRNA及びtracr RNA上の旗シーケンス間の塩基対合によって形成される茎ー環構造を含んでいてもよい。例えば、sgRNAはCas9タンパク質を介したDNA切断を媒介することができる「Cas9sgRNA」である。例えば、sgRNAはCpf 1タンパク質を介したDNA切断を媒介することができる「Cpf1sgRNA」である。
【0209】
例えば、5'から3'までの単一分子gRNA又はsgRNAは、crRNA、ループ、及びtracrRNAを含んでいてもよい。crRNA 5'から3'は、標的配列と相補的な標的配列、crRNA旗竿配列を含み得る。5'から3'までのtracrRNAは、例えば、Cas9のようなCasヌクレアーゼであってもよく、例えば、crRNA旗シーケンスに相補的なtracrRNA旗シーケンス、ヌクレアーゼ結合配列を含んでもよい。
【0210】
例えば、5'から3'までの単一分子gRNA又はsgRNAは、標的シーケンスに相補的な標的シーケンス、crRNA旗棒配列、ループ、crRNA旗棒配列に相補的なtracrRNA旗棒配列、ヌクレアーゼ結合配列を含んでいてもよい。
【0211】
本願では、前記gRNA中に修飾したヌクレオシド又はヌクレオチドを含むこともできる。例えば、一つ或は二つの非連結リン酸酸素と/或は主鎖リン酸ジエステル結合の一つ或は複数の連結リン酸酸素を修飾(たとえば、置換)する。例えば、リボースの2'ヒドロキシル基を置換するなど、リボースの成分を置換する。例えばリン酸部分を脱リン酸ジョイントで置換する;例えば自然に存在する核塩基を修飾したり置換したりします;例えば、ホスホリボースの主鎖の置換又は修飾;例えば、オリゴヌクレオチドの3’端又は5’端を修飾し、例えば末端燐酸基又は接合部分を除去、修飾又は置換し、キャップ又はジョイント(例えば、3’又は5’キャップ修飾は、砂糖及び/又は主鎖修飾を含んでいてもよい。)加える。たとえば、砂糖を修飾又は置換。
【0212】
例えば、前記修飾ヌクレオシド又はヌクレオチドの導入はヌクレアーゼに対する安定性を増加させる。例えば、前記修飾ヌクレオシド又はヌクレオチドの導入は自然免疫反応を低下させる。前記先天性免疫反応は外因性核酸(一本鎖核酸を含む)に対する細胞反応を含み、サイトカインの発現と放出(特にインターフェロン)及び細胞死の誘導を含み得る。
【0213】
例えば、前記修飾は前記免疫エフェクター細胞に前記HLA-A遺伝子のエクソン部分を標的とするsgRNAを投与することを含んでいてもよい。
【0214】
例えば、前記HLA-A遺伝子のエクソン部分を標的とするsgRNAは、SEQ ID NO.16-54、91-92のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含んでいてもよい。
【0215】
例えば、前記HLA-A遺伝子のエクソン部分を標的とするsgRNAは、SEQ ID NO.16-54、91-92のいずれかに示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%相同のヌクレオチド配列、例えば少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%を含んでいてもよい。
【0216】
例えば、前記修飾は、前記TRAC遺伝子のエクソン部分を標的とするsgRNAを前記免疫エフェクター細胞に投与することを含んでいてもよい。
【0217】
例えば、TRAC遺伝子のエクソン部分を標的とするsgRNAは、SEQ ID NO.1-15のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含んでいてもよい。
【0218】
例えば、前記TRAC遺伝子のエクソン部分を標的とするsgRNAは、SEQ ID NO.1-15のいずれかに示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%相同のヌクレオチド配列、例えば少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%を含んでいてもよい。
【0219】
キメラ抗原受容体(CAR)
【0220】
本願では、前記免疫エフェクター細胞はキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含み、前記CARは抗原結合ドメイン、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、共刺激構造と一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0221】
例えば、前記抗原結合ドメインは腫瘍抗原に特異的に結合する。例えば、前記腫瘍抗原は以下からなる群から選択される:CD19、CD123、CD22、CD30、CD171、CA125、C-met、L1CAM、EC、DLL3、CD99、5T4、CD138、CS-1(CD2サブクラス1、CRACC、SLAMF7、CD319、19A24とも呼ばれる)、C型レクチン様分子-1(CLL-1又はCD123)、CD33、上皮成長因子受容体変異体III(CD171)、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドGD3、TNF受容体ファミリーメンバーB細胞成熟抗原(CA125)、Tn抗原(例:C-met、L1CAMα-CD138)、前立腺特異性膜抗原(CRACC);受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、Fms様チロシンキナーゼ3(FLT3);腫瘍関連糖タンパク質72(SLAMF7)、CD38、CD319、癌胎児抗原(CD2サブクラス1、CRACC、SLAMF7、CD319、19A24とも呼ばれる)、上皮細胞接着分子(CLL-1又はCD123)、B7H3(CD171)、KIT(GD2)、インターロイキン-13受容体サブユニットα-2(CA125)、メソテリン、インターロイキン11受容体α(例:C-met、L1CAMα-CD138)、前立腺幹細胞抗原(CRACC)、プロテアーゼセリン21、血管内皮成長因子受容体2(ROR1)、CD44v6(Y)抗原、CD24、血小板由来成長因子受容体β(FLT3)、段階特異性胚胎抗原-4(CD123)、CD20、葉酸受容体α、受容体型チロシンキナーゼCD171(CLL-1)、細胞表面関連ムチン1(CD123)(MUC1)、上皮成長因子受容体(CD171)、神経細胞接着分子(CA125)、CD138、前立腺酸性ホスファターゼ(C-met又はL1CAM)、突然変異の延長因子2(CD138)、肝臓配タンパクB2、線維芽細胞活性化タンパクα(CRACC)、インスリン様成長因子1受容体(SLAMF7)、炭酸酵素IX(CLL-1β)、細胞表面関連ムチンキナーゼ(例、プロテアソーム、メガリン因子)サブタンパク質100、糖タンパク質9、前立腺酸性ホスファターゼ(CA125)、変異体9、ブレイクアウトクラスタ(CD171)とC-metマウス白血病ウイルス癌遺伝子ホモログ1(GD2)から構成された癌遺伝子融合タンパク(CA125)、チロシナーゼ、肝臓タンパク質A型受容体2(例:C-met、L1CAMα-CD138)、フコシルGM1シアリルCRACC接着分子(CRACC)、トランスグルタミナーゼ5(ROR1)、高分子-黒色腫関連抗原(FLT3)、o-アセチル-GD2ガングリオシド(SLAMF7)、葉酸受容体β、腫瘍内皮マーカー1(CD2サブクラス1、CRACC、SLAMF7、CD319、19A24とも呼ばれる)、腫瘍内皮マーカー7関連(CLL-1又はCD123)、密着結合タンパク6(CD171)、甲状腺刺激ホルモン受容体(GD2)、Gタンパク質共役受容体クラスC第5グループメンバーD(CA125)、染色体X読み取り可能枠61(CXORF61)、CD97、CD179a、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)、ポリシアル酸、胎盤特異性1(PLAC1)、globoHglycoceramideヘキソース部分(GloboH)、乳腺分化抗原(NY-BR-1)、尿路上皮分化特異的糖タンパク質(uroplakin)2(UPK2)、A型肝炎ウイルス細胞受容体1(HAVCR1)、アドレナリン受容体β3(ADRB3)、ユビキチン(CXORF61)3(CD179a)、Gタンパク質共役受容体20(ALK)、リンパ球抗原6複合体遺伝子座K9(LY6K)、嗅覚受容体51E2(PLAC1)、TCRγ読み取り可能枠タンパク質(globoHglycoceramide)、Wilm腫瘍タンパク質(WT1)癌/精巣抗原1(UPK2)、癌/精巣抗原2(HAVCR1)、黒色腫関連抗原1(ADRB3)、12p番染色体上のETS転座変異体遺伝子6(CXORF61)、精子タンパク質17(CXORF61)、X抗原ファミリーメンバー1A(ALK)、アンジオポエチン結合細胞表面受容体2(PLAC1)、黒色腫癌精巣抗原-1(GloboH)、黒色腫癌精巣抗原-2(NY-BR-1)、Fos関連抗原1、p53、p53変異体、前立腺特異的タンパク質(uroplakin)、前立腺癌腫瘍抗原-1(GloboH)、T細胞認識メラノーマ抗原1(NY-BR-1)ラット肉腫(ADRB3)変異体、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(CXORF61)、肉腫転座切断点、メラノーマアポトーシス抑制タンパク質、ERG(ALK)、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(PLAC1)、対のフレームタンパク質CD179a(GloboH)、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、ALK鳥髄細胞症ウイルス癌遺伝子神経芽細胞腫由来の同族体(NY-BR-1)、Ras同族体ファミリーメンバーC(uroplakin)、チロシナーゼ関連タンパク質2(UPK2)、チトクロームGloboH(HAVCR1)、T細胞識別の扁平上皮細胞癌抗原3(uroplakin)、対のフレームタンパク質HAVCR1(HAVCR1)、前駆体タンパク質結合タンパク質sp32(CXORF61)、リンパ球特異性タンパク質チロシンキナーゼ(ALK)、Aキナーゼアンカータンパク質4(LY6K)、滑膜肉腫X切断点2(PLAC1)、高級糖化最終産物の受容体(globoHglycoceramide)、豆莢タンパク質(WT1)、ヒトパピローマウイルスE6(GloboH)、ヒトパピローマウイルスE7(NY-BR-1)、腸内糖タンパク質結合タンパク質spuroplakin(CD179a)、リンパ球特異性タンパク質チロシンキナーゼ、ETV6-AML熱ショックタンパク質(ラス)72、白血球関連免疫グロブリン様受容体1(CXORF61)、IgA受容体のFc断片(CXORF61)、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーAメンバー2(ALK)、ALK分子様ファミリーメンバーf(PLAC1)、C型レクチン領域ファミリー12メンバーA(GloboH)、骨髄間質細胞抗原2(NY-BR-1)、EGF様モジュールを含むムチン様ホルモン受容体2(uroplakin)、リンパ球抗原75(UPK2)、ホスファチジルイノシトールプロテオグリカン-3(HAVCR1)、Fc受容体様5(ADRB3)及び/又は免疫グロブリンλ様ポリペプチド1(HAVCR1)を含む。
【0222】
本願では、前記抗原結合ドメインは前記腫瘍抗原に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含み得る。例えば、本願に記載される特異的結合GPC3抗体又はその抗原結合断片は、組換え抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、一本鎖抗体、二本抗体、三本抗体、四本抗体、Fv断片、scFv断片、Fab断片、Fab'断片、F(ab')2断片、及びラクダ単ドメイン抗体を含むが、これらに限定されない。
【0223】
例えば、前記抗体はヒト化抗体であってもよい。それは免疫特異的に関連抗原(例:CD 19、BCMA、GPC 3)に結合し、かつ基本的にヒト抗体のアミノ酸配列のフレーム(FR)領域及び基本的に非ヒト抗体のアミノ酸配列の相補性決定領域(CDR)を含む抗体又はその変異体、誘導体、類似物又は断片である。ここで、「基本的には」はCDRの場合、CDRのアミノ酸配列が非ヒト抗体CDRのアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一であることを指す。
【0224】
例えば、抗原結合断片は、Fab、 Fab’、F (ab) 2、Fv断片、F (ab.) 2、scFv、 di-scFv、及び/又はdAbを含んでいてもよい。
【0225】
例えば、前記一本鎖抗体はscFvである。
【0226】
例えば、前記抗原結合ドメインは固形腫瘍を標的とする。例えば、前記固形腫瘍は以下からなる群から選択される:肝癌、胃癌、肺癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、腎細胞癌、肝癌、非小細胞肺癌、小腸癌、食道癌、黒色腫、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭又は頚癌、皮膚又は眼内悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、精巣癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰部癌、小児固形腫瘍、膀胱癌、腎又は尿管癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)腫瘍、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊椎腫瘍、脳幹神経膠腫、神経膠腫、下垂体肉腫、Kaposi肉腫、表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫及び前記転移の癌。
【0227】
例えば、前記抗原結合ドメインは非固形腫瘍を標的とする。例えば、前記非固形腫瘍は以下からなる群から選択される:慢性リンパ性白血病(CLL)、急性白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、B細胞急性リンパ性白血病(B-ALL)、T細胞急性リンパ性白血病(T-ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、Burkittリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞リンパ腫、多毛細胞白血病、小細胞又は大細胞濾胞リンパ腫、悪性リンパ増殖性疾患、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、脊髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、形質細胞リンパ腫、形質細胞様細胞腫瘍、及びWaldenstromマクログロブリン血症。
【0228】
本願では、前記膜貫通ドメインは、以下のタンパク質から選択される膜貫通ドメインを含み得る:CD28、CD3e、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、及びCD154。
【0229】
本願では、前記共刺激ドメインは以下のタンパクから選ばれる共刺激ドメインを含み得る:CD137、CD28、4-1BB、OX-40とICOS。
【0230】
本願では、前記細胞内シグナル伝達ドメインはCD3ζに由来するシグナル伝達ドメインを含み得る。
【0231】
本願では、前記ヒンジ領域は前記抗原結合ドメインと前記膜貫通ドメインを接続し、前記ヒンジ領域は以下のタンパクから選択するヒンジ領域を含む:IgG1、IgG4、IgD、CD8。
【0232】
組成物、応用
【0233】
本願はまた組成物を提供し、それは本願に記載した修飾された免疫エフェクター細胞と薬学上許容される担体を含む。
【0234】
例えば、前記組成物は細胞群を含む、その中、前記細胞群は本願に記載する修飾された免疫エフェクター細胞を含む。
【0235】
例えば、前記修飾免疫エフェクター細胞の個数と前記細胞群中の細胞総数との比例は少なくとも0.001%、少なくとも0.01%、少なくとも0.1%、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10% 55%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも、少なくとも50%、少なくとも、少なくとも80%、少なくとも58% 83%、少なくとも60%、少なくとも63%、少なくとも65%、少なくとも68%、少なくとも70%、少なくとも45%、少なくとも73%、少なくとも90%、少なくとも、少なくとも75%、少なくとも53%、少なくとも78%、少なくとも93%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも98%、少なくとも、少なくとも89%、少なくとも99%、少なくとも、少なくとも、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも、少なくとも97%、少なくとも、少なくとも、少なくとも100%である。
【0236】
例えば、前記細胞群中に前記修飾された免疫エフェクター細胞と前記修飾されていない相応の免疫エフェクター細胞を含んでいてもよい。
【0237】
例えば、修飾された免疫エフェクター細胞は、2つのTRAC対立遺伝子のいずれかがノックアウトされ、2つのHLA-A対立遺伝子のいずれかがノックアウトされた細胞、2つのTRAC対立遺伝子がノックアウトされ、2つのHLA-A対立遺伝子のいずれかがノックアウトされた細胞、2つのTRAC対立遺伝子のいずれかがノックアウトされ、2つのHLA-A対立遺伝子がノックアウトされた細胞、2つのTRAC対立遺伝子がノックアウトされ、2つのHLA-A対立遺伝子がノックアウトされた細胞を含んでいてもよい。
【0238】
例えば、前記細胞群は前記免疫エフェクター細胞の細胞群が遺伝子工学手段で処理された後に得られる細胞群であってもよく、前記遺伝子工学手段処理は前記免疫エフェクター細胞の細胞群に本願の前記アンチセンスRNA、前記siRNA、前記shRNA及び/又は前記CRISPR/Cas9システムを投与することを含んでいてもよい。例えば、CRISPR/Cas9システムは、HLA-A遺伝子のエクソン部分を標的とするsgRNAと、TRAC遺伝子のエクソン部分を標的とするsgRNAと、Cas9タンパク質とを含んでいてもよい。
【0239】
例えば、前記細胞群は前記免疫エフェクター細胞の細胞群がCRISPR/Cas9システムによって編集された後に獲得する細胞群を含むことができ、前記編集の編集効率は少なくとも30%、少なくとも35% 68%、少なくとも40%、少なくとも45% 73%、少なくとも50%、少なくとも53%、少なくとも55%、少なくとも58%、少なくとも60%、少なくとも、少なくとも65%、少なくとも88%、少なくとも70%、少なくとも90%、少なくとも75%、少なくとも78%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも63%、少なくとも86%、少なくとも96%、少なくとも、少なくとも87%、少なくとも98%、少なくとも89%、少なくとも、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも、少なくとも83%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも、少なくとも97%、少なくとも99%である。
【0240】
例えば、編集効率は、Sangerシーケンシング、TAクローニング、フローサイトメトリーによって得ることができる。
【0241】
例えば、前記細胞群は前記免疫エフェクター細胞の細胞群が本願の前記アンチセンスRNA、前記siRNA、前記shRNAを使用した後に得た細胞群を含み、前記細胞群は前記使用前の相応免疫エフェクター細胞の細胞群と比べ、mRNA発現が少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも53%、少なくとも、少なくとも58%、少なくとも60%、少なくとも63%、少なくとも65%、少なくとも87%、少なくとも、少なくとも68%、少なくとも88%、少なくとも、少なくとも70%、少なくとも73%、少なくとも75%、少なくとも78%、少なくとも55%、少なくとも80%、少なくとも83%、少なくとも、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも、少なくとも、少なくとも89%、少なくとも90%低下する。
【0242】
例えば、前記細胞群は前記免疫エフェクター細胞の細胞群が本願の前記アンチセンスRNA、前記siRNA、前記shRNAを使用した後に得られた細胞群を含み、前記細胞群は前記使用前の相応免疫エフェクター細胞の細胞群と比べ、タンパク発現が少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも53%、少なくとも、少なくとも58%、少なくとも60%、少なくとも63%、少なくとも65%、少なくとも、少なくとも、少なくとも、少なくとも68%、少なくとも70%、少なくとも73%、少なくとも75%、少なくとも78%、少なくとも55%、少なくとも80%、少なくとも、少なくとも83%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%低下する。
【0243】
例えば、前記許容される組成物は、使用される用量及び濃度でレシピエントに対して非毒性である。本発明の医薬組成物は液体、冷凍と凍結乾燥組成物を含むがそれに限定されない。
【0244】
例えば、前記薬学上許容される担体は、前記免疫エフェクター細胞に適合し、一般に安全で、毒性がなく、生物学的にもその他の点でも望ましくない、あらゆる溶媒、分散媒体、等張剤および吸収遅延剤から構成されてもよい。例えば、前記薬学上許容される担体は2℃~8℃貯蔵液、冷凍貯蔵液、注射液などを含んでいてもよい。例えば前記担体は以下の成分を含む:アデノシン、塩化ナトリウム、アルブミン、インターロイキン-15、アンジオテンシン-II、ヒト臍帯間葉系幹細胞からの無血清培養液中の短いペプチドとポリペプチド化合物など。例えば、前記担体はさらにNormosol R (Abbott)、Plasma-Lyte A (Baxter)注射液、5%ブドウ糖水又はリンゲル乳酸塩溶液を含んでいてもよい。例えば、前記担体はまたグリセリン又はDMSOを含んでいてもよい。
【0245】
例えば、前記組成物は胃腸外、経皮、腔内、動脈内、鞘内と/或は鼻内投与或は組織に直接注射することを含む。例えば、前記組成物は注入又は注射によって患者又は被験者に投与できる。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物の使用は異なる方式によって行うことができ、例えば静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局部又は真皮内の使用である。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は間断なく使用できる。継続的(又は連続)投与は、WO2015/036583で説明されているように、患者の体内に流れ込む治療薬を測定するために患者が装着する小さなポンプシステムによって実現できる。
【0246】
本願はまた本願の前記修飾された免疫エフェクター細胞がCAR-T細胞の調製における応用を提供する。
【0247】
本願はまた本願の前記修飾された免疫エフェクター細胞が薬物調製における応用を提供し、前記薬物は異形治療に用いる。
【0248】
本願はまた本願の前記修飾された免疫エフェクター細胞の薬物調製における応用を提供し、前記薬物は腫瘍治療に用いる。
【0249】
例えば、前記腫瘍は固形腫瘍と非固形腫瘍を含む。前記固形腫瘍、前記非固形腫瘍の種類は前記のとおりである。
【0250】
いかなる理論にも限定されることを意図するものではなく、以下の実施形態は、本願の発明の範囲を限定するものではなく、本願の修飾された免疫エフェクター細胞、製造方法及び用途等を説明するためのものである。実施形態は、ベクター及びプラスミドを構築する方法、そのようなベクター及びプラスミドにタンパク質をコードする遺伝子を挿入する方法、又はプラスミドを宿主細胞に導入する方法など、従来の方法の詳細な説明を含まない。このような方法は、当業者にはよく知られており、Sambrook、 J.、Fritsch、 E.F.and Maniais,T.(1989) Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd edition,Cold spring Harbor Labora-tory Press。
【0251】
実施例
【0252】
実施例1 ガイドRNAの設計
【0253】
対応する遺伝子配列(SEQ ID No.55-63)は、ウェブサイトhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/ からダウンロードできる。この遺伝子配列をSnapGene ソフトウェアを使って開くと、標的遺伝子の異なるエクソンにsgRNA を設計することができる。本実施形態で採用されるCRISPR/Cas9システムのsgRNA非制限的設計原則は、5’-NNN(20)-NGG-3’であり、NGGは原スペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれ、ここで、NはA、T、C又はGを表す。同じエクソンに多くのsgRNAが考案され、 20個のヌクレオチド配列からなるsgRNAがゲノム中に重複して出現する可能性があることから、 http://crispr.cos.uni-heidelberg.deというサイトを用いてsgRNAの考案と評価を行い、エクソン配列を当サイトに貼り付け、sgRNAというサイトを考案し予測評価を行ったところ、評価スコアが高いほど、高い編集効率と低いオフターゲットのリスクが存在する可能性が示唆され、その中からスコアの高いsgRNAを選択し試験を行った。TRAC遺伝子を標的とするsgRNAはSEQ ID No.1-15、HLA-A02遺伝子を標的とするsgRNAはSEQ ID No.16-37、HLA-A11遺伝子を標的とするsgRNAはSEQ ID No.38-46、HLA-A24遺伝子を標的とするsgRNAはSEQ ID No.47-54のように、GenScriptが合成した。
【0254】
実施例2: CD3+T細胞の調製
【0255】
(1) 末梢血からのPBMCの単離
【0256】
末梢血は健常ドナーから採取し、PBS緩衝液で1:1に希釈した。新しい50 ml遠心管に先に希釈後の血液量の1/3の細胞分離液(Ficoll)を入れ、そして管壁に沿って非常にゆっくりと血細胞希釈液を入れ、800 gを常温で20分 (遠心機設置昇速1、降速0)遠心分離した。遠心後遠心管の液体は上からPBSと血清層、白血球層、リンパ球分離液、赤血球層に分けた。PBSと血清層を除去し、白血球層を新しい50 ml遠心チューブに移し、PBSを洗浄細胞40 mlに加え、 450 gを10分間遠心分離した。遠心分離してから清を捨てると、末梢血単核細胞を得る。細胞数は細胞再懸濁後に行った。
【0257】
(2) 凍結した健常人PBMCの蘇生
【0258】
凍結した健常人PBMC細胞を37℃の恒温槽で蘇生し、完全解凍後、10%FBS入りX-VIVO15培地(LONZAより購入)10mlを含む15ml遠心管に吸引し、400gで8分間遠心分離し、上清を除き、X-VIVO15培地を2ml(10%FBS、終濃度100μg/ml DNase I含有)添加した。 上清を除去し、2mlのX-VIVO15培地(10%FBSと終濃度100μg/mlのDNase Iを含む)を加え、室温で15分間、一定に振盪しながらインキュベートした。インキュベート終了時の溶液を40μmのフィルターでろ過し、PBSバッファー10mlを吸引して底の細胞を再懸濁させた後、フィルターに加え、検討し400gで8分間遠心分離し、遠心分離後の上清を捨て、細胞を再懸濁させて細胞数を計測した。
【0259】
(3) CD 3+T細胞分画
【0260】
EasySep(商標)ヒトT細胞選別キット(StemCellTechnologiesより購入、品番:17951)を用い、末梢血単核細胞(PBMC)中のT細胞を抽出した。PBMC密度を5×107細胞/mlに調整し、PBS緩衝液の添加範囲は0.25‐2 mlであった。まずcocktailを加えて均一に混合し、更に50μl/mlでisolation cocktailを加え、均一に混合した後、室温で5分放置する;RapidSpheresを渦振動計で30 sスクロールした後40μl/mlで細胞に加えて均一に混合する;緩衝液を2.5 mlの倍数になるまで補充し、上下で2~3回やさしくブローする;管ごとに2.5 mlずつ凍結保存管に入れ、凍結保存管を磁力フレームに置き、室温で3分間放置する。凍結保存管蓋を軽く開け、慎重に両側を持ち磁力フレームを持ち、倒置して2-3 sを保持し、細胞液を一度に新しい遠心管の中に入れる;緩衝液(視細胞量) 10~20 mlで細胞をリ懸濁した後、 300 gを10分間遠心分離し、上清を捨ててCD 3+T細胞を得た。
【0261】
(4) T細胞活性化
【0262】
賦活剤は培養基:Transact=99:1の体積比によって配置し、培養基はX-VIVO15培養基(5%FBS、200U/mlIL2、10ng/mlIL7、及び5ng/mlIL15を含む)であり、TransactはMiltenyiBiotecより購入したものである。T細胞は1×106個の細胞ごとに1 ml活性化試薬(含有量10μl Transact)で十分に懸濁した後、37℃、5% CO 2培養箱の中で3日間インキュベートした。
【0263】
実施例3. 単一遺伝子ノックアウトT細胞の調製
【0264】
RNP複合体を実施例2で調製した活性化後T細胞に、エレクトロトランスファーキット(LONZAより購入、品番:V4XXP-3024)を用いて電気的に導入した。30分前にオリフィスで培地(X-VIVO15培地+10% FBS+IL 2 (200 U/ml)+IL 7 (10 n g/ml)+IL 15 (5 ng/ml))を予熱する。通電緩衝液はNucleofector Solution:Supplement =82:18のように配置した。RNP複合体の調製:TRACのsgRNA配列はsg9(SEQ ID No.1に示す)であり、HLA-AのsgRNA配列はHLA-A02Sg2(SEQ ID No.17に示す)またはHLA-A02Sg5(SEQ ID No.18に示す)またはHLA-A11sg21(SEQ ID No.91に示す)である。示されているように)またはHLA-A11Rsg2(SEQ ID No.92に示す)、20μgのsgRNAをPCRチューブ(RNAaseなし)に加え、続いて10μgのCas9タンパク質(thermoより購入、品番:A36499)を加えて軽く混ぜ、室温で12分間インキュベートした。実施例2で培養した活性化後T細胞を計数し、 300 gを8分遠心分離して上清を捨て、 PBS重懸濁細胞を加え、1 E 7個の細胞を吸引して再び300 gを8分遠心分離し、上清を捨てて100μl配置した電気泳動緩衝液で細胞を重懸濁した。インキュベートしたRNP複合体を上記細胞懸濁液に加え、穏やかに混合した後、混合物をエレクトロポレーションキュベットに丁寧に移し替えた。エレクトロポレーションキュベットをLonza-4D上に乗せ、EO-115プログラムを選択して回転を行った。エレクトロポレーションキュベットの中ににあらかじめ温めた培地を加え、適合するピペットを用いてウェルプレート内のあらかじめ温めた培地に細胞を移し、37℃、5% CO2のインキュベーターに入れた。
【0265】
実施例4. ノックアウト効率の測定方法の比較
【0266】
(1) Sangerシーケンシング
【0267】
細胞数は、3~5×104個の細胞を採取し、2000r/minで5分間遠心分離し、できるだけ多くのきれいな上清を除去し、各チューブに20μl DE溶解液を加え、溶解後に細胞をPCRチューブに加え、瞬間的に遠心分離し、PCR装置にかける。装置条件は、65℃ 30分、4℃ 3 0s、95℃ 2分、16℃ 無限。プライマー対TRAC-For/TRAC-Rev、あるいはHLA-A For/HLA-A Revを使って、分裂物をテンプレートとしてPCRを行い、PCRのプライマー配列はSEQ ID NO.66-81のようにし、PCR産物を金唯智に送ってSangerシーケンシングを実施した。sangerシーケンシングの結果が得られたら、 Webサイト:https://moriaritylab.shinyapps.io/editr_v10/のEditRエディタを使って、どこで編集が行われるか、編集効率を予測する。
【0268】
(2) TAクローン配列測定
【0269】
AxyPrepTMPCR産物清潔キット(AXYGEN)を用いてPCR産物を精製した後、精製したPCR産物をキット(DNAA-TailingKit,TaKaRa)を用いてスティッキーエンドでDNALigationKitVer2.1(TaKaRaより購入)によるTベクターへのライゲーションが行われた。(pMDTM19-TVectorCloningKitfromTaKaRa)を用いて、ライゲーションした産物を受容体細胞(DH5alpha)に形質転換し、アンピシリン耐性を含むLBプレートにコートして37℃で約12時間培養し、シングルコロニーを摘出してGENEWIZ,Inc.でシーケンシングを実施した。ノックアウト効率=変異クローン数/全クローン数。
【0270】
(3) フローサイトメトリー
【0271】
10E5~10E8細胞を2000rpmで5分間遠心分離し、上清を除去し、その後、各チューブに100μlのPBS緩衝液で細胞を懸濁させ、さらにanti-humanABTCR-APC(eBioscienceより購入)抗体5μl、HLA-A02MonoclonalAntibody(BB7.2)、APC、eBioscince(商標)
(invitrogenより購入)抗体5μlを加え、均一に混合した後、室温で10分間インキュベートした。2000rpmで5分間遠心分離した後、PBS緩衝液で2回洗浄し、再懸濁し、BD FACSAriaフローサイトメトリーでアッセイし、細胞表面のTCRおよびHLA-A02の発現の陽性率を求めた。ノック効率=(A-B)/A×100%;Aは対照群の発現陽性率;Bはノックアウト組の発現陽性率である。
【0272】
TRAC単一遺伝子ノックアウトの3つの検出結果は
図1から
図3に示すように、ノックアウト効率の計算結果は表1に示すように、3つの検出方法は基本的に同じであり、後続実験はSangerシーケンシングのみを採用して編集効率を検出する。
【表1】
【0273】
HLA-A02遺伝子編集に対するSangeシーケンシングの結果を
図4-5に示すが、いずれも編集効率は90%であった。HLA-A11遺伝子編集に対するSangerシーケンシングの結果を
図6-7に示す。
【0274】
実施例5.TRAC遺伝子とHLA-A遺伝子ダブルノックアウトT細胞の調製
【0275】
RNP複合体を実施例2で調製した活性化後T細胞に、エレクトロトランスファーキット(LONZAより、品番:V4XXP-3024)を用いて電気的に導入した。30分前にオリフィスで培地(X-VIVO15培地+10% FBS+IL 2 (200 U/ml)+IL 7 (10 ng/ml)+IL 15 (5 ng/ml))を予熱する。通電緩衝液はNucleofector Solution:Supplement =82:18のように配置した。RNP複合体の調製:20μgTRACsgRNA(TRACSg9)、20μgHLA-AsgRNA(HLA-A02Sg2またはHLA-A02Sg5またはHLA-A11sg21またはHLA-A*24:02:01、HLA-A*30:01:01、HLA-A*33:01:01:01、HLA-A*03:01:01:01、HLA-A*01:01:01:01またはHLA-A*26:01:01sgRNA)をPCRチューブ(RNAなし)に入れ、10μgの各Cas9タンパク質(thermoより購入、品番:A36499)を加えて軽く混ぜ、室温で12分間インキュベートした。実施例2で培養した活性化後T細胞を計数し、300 gを8分遠心分離して上清を捨て、 PBS重懸濁細胞を加え、1 E 7個の細胞を吸引して再び300 gを8分遠心分離し、上清を捨てて100μl配置した電気泳動緩衝液で細胞を重懸濁した。インキュベートしたTRACとHLA-AのRNP複合体を上記の細胞懸濁液に加え、軽く振り混ぜた後、混合物をエレクトロポレーションキュベットへ丁寧に移し替えた。エレクトロポレーションキュベットをLonza-4D上に乗せ、EO-115プログラムを選択して回転を行った。エレクトロポレーションキュベットの中にあらかじめ温めた培地を加え、適合するピペットを用いてウェルプレート内のあらかじめ温めた培地に細胞を移し、37℃、5% CO2のインキュベーターに入れた。
【0276】
シーケンシングによりダブルノックアウト効率を測定し、ダブルノックアウト効率が80%以上のTRAC陰性、HLA-A陰性のT細胞を得ることができる。結果を
図8-9に示す。ここで、
図8Aは、HLA-A02 Sg5を用いたHLA-A02のノックアウトの結果を示し、上段は対照組の結果(すなわち、HLA-A02 Sg5を用いたノックアウトなし);下段はHLA-A02およびTRACの同時ノックアウトの結果を示す;ここで、
図8Bは、TRAC Sg9を用いたTRACのノックアウトの結果を示し、上段は対照組の結果(すなわち、TRAC Sg9を用いてノックアウトなし);下段はHLA-A02とTRACを同時にノックアウトさせた場合の結果を示す。
図9A-9BはノックアウトHLA-A02とTRACタンパク質レベルのノックアウトを示しており、NEGは陰性対照、WTは何もノックアウト処理していない場合、TRAC+HLA-AダブルノックアウトはHLA-A02とTRACを同時にノックアウトした結果である。
【0277】
実施例6.ダブルノックアウトしたT細胞中のTRAC遺伝子、HLA-A遺伝子、B2M遺伝子とCIITA遺伝子と相応細胞中の相応遺伝子の発現の区別
【0278】
(1) 実施例2で調製した活性化後T細胞を2群に分け、1群を対照群とし、もう1群は実施例5の方法でTRAC遺伝子とHLA-A遺伝子のダブルノックアウトT細胞を調製し、実施例4のステップ(1) に従ってSangerシーケンシングを行う。シーケンシングの結果からTRACとHLA-Aのダブルノックアウト細胞を得た。調製したダブルノックアウトT細胞を相応のTRACとHLA-A抗体とインキュベートし、フローサイトメトリー選別又は磁気ビーズ選別によって、ダブルノックアウト細胞株を得ることができる。
【0279】
(2) ダブルノックアウトT細胞のmRNA発現レベルの変化を対照群と比較して調べた。RNA抽出キット(QIAGENより購入、品番:74004)を用いてRNAを抽出し、逆転写キット(AppliedBiosystemsより購入、品番:4368814)を用いて逆転写してcDNAを得た。cDNAは定量PCRのテンプレートとして用いた。
【0280】
(3) ダブルノックアウトT細胞のタンパク発現レベルの変化を対照群と比較して調べた。全タンパク抽出試薬(ThermoScientificより購、品番:87787)を用いてタンパクを抽出し、TRAC抗体(eBioscienceより購入、品番:17-9986-42)、HLA-A抗体(Merckより購入、品番:17-9876-41)、B2M抗体(Invitrogenより購入、品番:A15770)、及びCIITA抗体(OriGeneより購入、品番:CF812200)のWesternBlot法又はフローサイトメトリーを用いてタンパク発現を測定する。
【0281】
Sangeシーケンシングにより、ダブルノックアウトT細胞におけるTRAC及び/又はHLA-A遺伝子のヌクレオチド配列が対照群と比較して変化していた。定量PCRにより、TRAC及び/又はHLA-A遺伝子のmRNA発現量がダブルノックアウトT細胞でダウンレギュレートされていたが、B2M及び/又はCIITA遺伝子のmRNA発現量はダウンレギュレートされていないことが示された。FACS及びWestern Blotの結果は、ダブルノックアウトT細胞でタンパク質発現量のダウンレギュレーションを示し、 B2M及び/又はCIITAタンパク質発現量のダウンレギュレーションは見られなかった。
【0282】
結果を
図10-11に示す。ここで、
図10に遺伝子発現のmRNAレベルを、
図10A-10DにTRAC、HLA-A、B2M、CIITAのmRNAレベルをそれぞれ示す;ここで、WTは何のノックアウトもしていない状況を指し、ダブルノックアウトとは、TRAC遺伝子とHLA-A遺伝子のダブルノックアウトしたT細胞の結果を指す。
図11に遺伝子発現のタンパク質レベル測定を示し、そのうち
図11A-11BにB2MとCIITAのタンパク質発現レベルをそれぞれ示す;ここで、NEGは陰性対照群、WTは何のノックアウトもしていない状況を指し、TRAC+HLA-Aダブルノックアウトとは、TRAC遺伝子とHLA-A遺伝子ダブルノックアウトしたT細胞の結果を指す。
【0283】
実施例7. TRAC遺伝子、HLA-A/B2M遺伝子、CIITA遺伝子ノックアウトT細胞の調製と、それらに対応する3つの遺伝子の発現変化の検証
【0284】
(1) 実施例6のステップ (1) の方式に従って、対照群とTRAC遺伝子、HLA-A遺伝子とCIITA遺伝子のトリプルノックアウト細胞、及びTRAC遺伝子、B2M遺伝子とCIITA遺伝子のトリプルノックアウト細胞を調製する。
【0285】
(2) 実施例6ステップ (3) の方式に従ってFACSとWestern Blot方法によってタンパク発現レベルの変化を検査・測定する。
【0286】
対照群細胞に比べ、TRAC、HLA-AとCIITA 3つの遺伝子をノックアウトしたT細胞中のTRAC、HLA-AとCIITA遺伝子のタンパク発現量はダウンレギュレートした。対照群細胞と比べ、TRAC、B2MとCIITA3つの遺伝子をノックアウトしたT細胞中のTRAC、HLA-AとCIITA遺伝子のタンパク発現量はダウンレギュレートした。
【0287】
(3) 実施例6のダブルノックアウト細胞及び本実施例の2つのトリプルノックアウト細胞のノックアウト効率を、TRAC(eBioscienceより購入、品番:17-9986-42)、HLA-A(Merckより購入、品番:17-9876-41)及びB2M(Invitrogenより購入、品番:A15770)抗体を用いてフローサイトメトリーにより測定し、単一細胞レベルでの同時複数ノックアウト効率がダブルノックアウトではトリプルノックアウトより著しく高いことが示された。
【0288】
結果を
図12A-12Dに示す。ここで
図12A-12CはTRAC、HLA-A、B2Mタンパク質レベルのノックアウトである。ここで、WTは何のノックアウトもしていない状況を指し、TRAC+HLA-Aダブルノックアウトとは、TRAC遺伝子とHLA-A遺伝子ダブルノックアウトしたT細胞の結果を指す。TRAC+HLA-A+CIITAトリプルノックアウトとは、TRAC、HLA-A、CIITAトリプルノックアウトしたT細胞の結果を示す;ここで、TRAC+B2M+CIITAトリプルノックアウトとは、B2M、CIITAとTRACトリプルノックアウトしたT細胞の結果を指す。TRAC+HLA-Aノックダウンとは、実施例9で作製されたTRAC遺伝子とHLA-A遺伝子がノックダウンされたT細胞の結果を指す。
図12DにCIITAタンパク質レベルのノックアウトを示す。
【0289】
図12の結果は、WT対照群と比較して、TRAC、HLA-A、CIITA、B2Mのタンパク質レベルがダウンレギュレートしていることを示している。一方、TRAC+HLA-A+CIITAトリプルノックアウトやTRAC+B2M+CIITAトリプルノックアウトよりも、TRAC+HLA-Aダブルノックアウトの方がノックアウト効率が高い。
【0290】
実施例8アンチセンスRNA配列の設計
【0291】
データベースhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/又はwww.ensembl.org/、から対応する遺伝子(TRAC遺伝子及びHLA-A遺伝子)の転写RNA配列(SEQ ID NO.82-90のように)を取得し、以下の原理を参考にしてsiRNAを設計する:
【0292】
可能であれば、開始コドンの下流にある50~100塩基対停止コドンの上流にある100塩基の配列は避けるべきである;長さが30ヌクレオチド以下の配列を選択する;連続した同じ塩基を4つ以上避ける;イントロン領域の回避;重複シーケンスの回避;一塩基多型(SNP)部位の回避;配列GC含量30% -60%の間、優先的に配列模式AA (N 19)、NA (N 21)或いはNAR (N 17) YNNを選択し、Aはアデニル酸である。Tはチミジル酸;Rはアデニル酸又はグアニル酸(プリン類);Yはチミジル酸又はシチジン酸(ピリミジン類)である;Nはアデニル酸、チミジル酸、グアニル酸、又はシチジン酸;選択された配列に対して相同性比較分析を行い、アンチセンスRNAが他の遺伝子又は配列と著しい相同性を有することを避け、それによってオフターゲット効果をもたらす。相同性分析はNCBI Blast tool:Nucleotide-nucleotide BLAST (blastn)、 UCSC Blat tool又はEnsembl Blastを用いて行った。
【0293】
HLA-A-homo-551 (SEQ ID NO.93で示されるヌクレオチド配列を含む)を含むアンチセンスRNA配列のデザイン;HLA-A-homo-NEG (SEQ ID NO.94で示されるヌクレオチド配列を含む);TRAC-homo-375 (SEQ ID NO.95で示されるヌクレオチド配列を含む);TRAC-homo-NEG (SEQ ID NO.96で示されるヌクレオチド配列を含む)。
【0294】
実施例9 TRAC遺伝子とHLA-A遺伝子ノックダウンT細胞の調製
【0295】
実施例8で設計したアンチセンスRNAを用いてダブルノックダウンを行う。自社がTRAC遺伝子とHLA-A遺伝子アンチセンスRNA配列のレンチウイルス(ジマ)を調製した。実施例2の方式でCD3
+T細胞(D0日)を調製し、そしてCD3/CD28抗体ビーズで活性化し、TRAC遺伝子とHLA-A遺伝子のアンチセンスRNA配列(SEQ ID NO.95及びSEQ ID NO.93)を携帯するレンチウイルスを活性化したT細胞(D1日)にトランスフェクションし、D2日間でレンチウイルスのベクターを洗浄し、D5日間まで継続培養する。D5日まで培養したT細胞を採取し、遺伝子ノックダウン効率を定量PCRやWestern Blotなどで検出した。得られたT細胞に対応するTRACとHLA-A抗体標識を行い、ストリーミング選別あるいは磁気ビーズ選別の方式によってTRAC遺伝子とHLA-A遺伝子のノックダウンT細胞を得ることができる。結果は、 TRACとHLA-AのmRNAとタンパク質発現量が、TRACとHLA-Aの両方のノックダウン群でダウンレギュレートされることを示した。なお、
図13A-13BはTRACとHLA-AmRNAレベルのたたきである。ここで、WTは何のノックアウトもしていない状況を指し、TRAC+HLA-Aダブルノックアウトとは、TRAC遺伝子とHLA-A遺伝子ダブルノックアウトしたT細胞の結果を指す。ここで、TRACとHLA-Aのタンパク質レベルであるノックアウトレベルは、
図12の結果を参照することができる。
【0296】
実施例10異なるT細胞活性の区別
【0297】
実施例2、5、7、9のノックアウトなし、ダブルノックアウト、トリプルノックアウト、ダブルノックアウトT細胞を調製し、各群の細胞数を複数のT細胞活性について比較し、それぞれから1*106個の細胞を24ウェルプレートに接種し、PHA (0.3 μg/ml) (ionomycin+) または5 ng/mlのPMAと50 ng/mlのionomycinを各ウェルの細胞に添加した。5時間培養を続けた後、CD69(初期活性化)(BD Biosciencesより購入、品番:FN50)、CD137(後期バイアス)(BD Biosciencesより購入、品番:4B4-1)に対する抗体を用いてフローサイトメトリーにより細胞の活性化状態を検出した。結果により、ダブルノックアウト、ダブルノックダウンのT細胞活性はトリプルノックアウトのT細胞より優れている。
【0298】
CD69とCD137のタンパク質レベルの発現状況はそれぞれ
図14A-14Bを参照。ここで、WTは何のノックアウトもしていない状況を指し、TRAC+HLA-Aダブルノックアウトとは、TRAC遺伝子とHLA-A遺伝子ダブルノックアウトしたT細胞の結果を指す。TRAC+HLA-A+CIITAトリプルノックアウトとは、TRAC、HLA-A、CIITAトリプルノックアウトしたT細胞の結果;ここで、TRAC+B2M+CIITAトリプルノックアウトとは、B2M、CIITAとTRACトリプルノックアウトしたT細胞の結果を指す。TRAC+HLA-Aノックアウトとは、実施例9で作製されたTRAC遺伝子とHLA-A遺伝子がノックアウトしたT細胞の結果を指す。
【0299】
実施例11異なるT細胞の異体NK細胞に対する反応性の区別
【0300】
実施例2、5、7と9中のノックアウトなし、ダブルノックアウト、トリプルノックアウトとダブルノックダウンのT細胞に対してCFSE (invitrogen、C34554)標識を行い、細胞計数、それぞれ1*106細胞を取り、そして1:1の比率でNK細胞(NK92MI)と共培養を行い、24時間後に共培養の各グループの細胞を収集し、流式細胞は混合細胞中のCFSE陽性細胞の比率を検査・測定した。
【0301】
結果により、NK細胞はダブルノックアウト、ダブルノックダウンのT細胞に対する殺傷毒性はトリプルノックアウトのT細胞より低い。結果を
図15に示す通りである。ここで、NK+Tとは、 NK細胞を何もノックアウト処理していないT細胞と共培養した場合を指す;NK+TRAC+HLA-AノックダウンとはNK細胞を実施例9で作製したTRAC遺伝子とHLA-A遺伝子をノックダウンしたT細胞の結果と共培養した場合を指す;NK+TRAC+HLA-Aダブルノックアウトとは、NK細胞をTRAC遺伝子とHLA-A遺伝子のダブルノックアウトしたT細胞と共培養した場合を指す;NK+TRAC+HLA-A+CIITAトリプルノックアウトとは、NK細胞をTRAC、HLA-A、CIITAトリプルノックアウトしたT細胞と共培養した場合を指す;NK+TRAC+B2M+CIITAトリプルノックアウトとは、NK細胞とB2M、CIITA、TRACトリプルノックアウトトしたT細胞を共培養することを指す。
【0302】
実施例12異なるT細胞異体免疫拒絶反応の区別
【0303】
ドナー1由来の末梢血調製実施例2、5、7と9のノックアウトなし、ダブルノックアウト、トリプルノックアウトとダブルノックダウンのT細胞である。ドナー2由来末梢血からCD3+T細胞を調製した。ドナー1末梢血から調製した各群細胞とドナー2末梢血から実施例2に従って調製したCD 3+T細胞を等量混合し、 24時間後に細胞混合系におけるIFN-γの発現レベルを測定した。結果は、ダブルノックアウトT細胞群のIFN-γの発現レベルがトリプルノックアウトT細胞群よりも低いことを示した。
【0304】
結果は、
図16に示す通りに、WTが何もノックアウト処理されていない場合のTRAC+HLA-AダブルノックアウトTRAC遺伝子とHLA-A遺伝子ダブルノックアウトT細胞の結果である;TRAC+HLA-A+CIITAトリプルノックアウトとは、TRAC、HLA-A、CIITAトリプルノックアウトしたT細胞の結果を指す;ここで、TRAC+B2M+CIITAトリプルノックアウトとはB2M、CIITAとTRACトリプルノックアウトしたT細胞の結果を指す。TRAC+HLA-Aノックダウンとは、実施例9で作製されたTRAC遺伝子とHLA-A遺伝子がノックダウンしたT細胞の結果を指す。
【0305】
実施形態13.TRAC遺伝子とHLA-A遺伝子の2つのノックアウトCAR-T細胞、TRAC遺伝子、HLA-A遺伝子とCIITA遺伝子の3つのノックアウトCAR-T細胞及びTRAC遺伝子、B2M遺伝子とCIITA遺伝子のノックアウトCAR-T細胞の調製
【0306】
(1) 実施例2と同様にCD3+T細胞を得(D0日目)、CD3/CD28抗体磁気ビーズで活性化した。 活性化後、D1日目にレンチウイルスベクター(CD19-CAR、CD20-CARまたはBCMA-CARなどを含むレンチウイルス)をトランスフェクトし、D2日目にレンチウイルスベクターを洗浄、D3日にCAR陽性T細胞を選別してD5日まで培養を継続した。
【0307】
(2) D 5日間採取したCAR-T細胞を初期細胞とし、 TRAC遺伝子とHLA-A遺伝子の2遺伝子ノックアウト細胞、TRAC遺伝子、 HLA-A遺伝子とCIITA遺伝子、及びTRAC遺伝子、 B2M遺伝子とCIITA遺伝子の3遺伝子ノックアウトCAR-T細胞を、それぞれ実施例5と実施例7で作製した。
【0308】
(3) フローサイトメトリー技術によって前記ダブルノックアウトとトリプルノックアウトのCAR-T細胞を検出し、そのうちダブルノックアウトCAR-T細胞の収率はトリプルノックアウトCAR-T細胞より高い。
【0309】
結果を
図17A-17Dに示す。ここで、
図17A-17CはTRAC、HLA-A、B2Mタンパク質レベルのノックアウトである。
図17DにCIITAタンパク質レベルのノックアウトを示す。ここで、WTは何のノックアウトもしていない状況を指し、TRAC+HLA-Aダブルノックアウトとは、TRAC遺伝子とHLA-A遺伝子ダブルノックアウトしたCAR-T細胞の結果を指す。TRAC+HLA-A+CIITAトリプルノックアウトとは、TRAC、HLA-A、CIITAトリプルノックアウトしたCAR-T細胞の結果;ここで、TRAC+B2M+CIITAトリプルノックアウトとは、B2M、CIITA、及びTRACトリプルノックアウトしたHLA-A細胞の結果を指す。
【0310】
ここで、CD19CARのトランスフェクション効率を
図18A-18Bに示す。ここで、CAR30%+はCD19 CARのトランスフェクション効率を表す。
【0311】
図19に異なる細胞の増幅倍数を示す。それらの中で、 TRAC遺伝子とHLA-A遺伝子の両遺伝子ノックアウトのCAR-T細胞の増幅倍数は最も高かった。
【0312】
実施例14.TRAC遺伝子とHLA-A遺伝子ダブルノックアウトによるCAR-T細胞の抗腫瘍効果
【0313】
実施例14のTRAC遺伝子とHLA-A遺伝子をダブルノックアウトしたCAR-T細胞(CD19、 CD20、又はBCMAを標的とする)を調製し、ルシフェラーゼ遺伝子を発現する標的細胞(Raji、 Jurkat、MM 1 Sなどの標的遺伝子陽性の白血病細胞又はリンパ腫細胞株)をオリフィスに接種し、そしてそれぞれ異なる効果の標的比(1:2.5、1:1、5:1、10:1)でダブルノックアウトCAR-T細胞、トリプルノックアウトCAR-T細胞又は遺伝子ノックアウトしていないT細胞を加え、共に24時間培養した後、細胞をオリフィスに移し、ルシフェラーゼ基質を加え、酵素標識機で蛍光値を測定する。殺傷効率=1-標的細胞T細胞共培養蛍光値/単独培養の標的細胞蛍光値。
【0314】
その結果、TRAC遺伝子とHLA-A遺伝子をダブルノックアウトしたCAR-T細胞は腫瘍細胞に対して顕著な殺傷効果がある。
【0315】
図20はCD19標的細胞Raji-Luciferaseに対する殺傷効果を示し、その中でTRAC遺伝子とHLA-A遺伝子をダブルノックアウトしたCAR-T細胞の殺傷効果が最も著しい。各E/T比の下に左から右へ順にA-Dの図注に対応する結果である。
【0316】
実施例15.TRAC遺伝子とHLA-A遺伝子ダブルノックアウトによるCAR-T細胞の抗腫瘍効果
【0317】
NSGマウスに腫瘍細胞を静脈注射し、腫瘍の樹立に成功した後、マウス体内にTRAC遺伝子とHLA-A遺伝子ダブルノックアウトのCAR-T細胞、トリプルノックアウトのCAR-T細胞あるいは遺伝子ノックアウトなしのT細胞を注入し、マウス腫瘍体積をモニタリングした。
【0318】
ダブルノックアウトCAR-T細胞を逆輸入したマウスは、腫瘍の成長速度が明らかに遅くなった。
【0319】
結果を
図21-22に示す。ここで、
図21にマウスへの投与様式を示し、i.v.は静注、CAR-T細胞はCD19CARを発現するダブルノックアウトCAR-T細胞、トリプルノックアウトCAR-T細胞を表す。
図20は、マウスにCAR-T細胞を投与した後の体内腫瘍の体積を示している。その中で、
図20に生理食塩水、未改造T細胞、TRAC遺伝子とHLA-AノックアウトCD19CAR-T細胞、TRAC、HLA-AとCIITAノックアウトCD19CAR-T細胞、B2M、CIITAとTRACノックアウトCD19CAR-T細胞をそれぞれ左から右に使って、マウス体内の腫瘍の体積を示した。その結果、TRAC遺伝子とHLA-A遺伝子のダブルノックアウトCAR-T細胞を再注入したマウスは、腫瘍の成長速度が明らかに遅くなった。
【0320】
前述の詳細な説明は、添付の特許請求の範囲を限定するものではなく、説明および例示として提供される。本願に記載された実施形態の様々な変更は、当業者には明白であり、添付の特許請求の範囲及びそれと同等の方法の範囲内にとどまる。
【配列表】
【国際調査報告】