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特表2023-508745改善された波長分散を有する、位置選択的に置換されたセルロースエステルをベースとするC+補償フィルム
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  • 特表-改善された波長分散を有する、位置選択的に置換されたセルロースエステルをベースとするC+補償フィルム 図1
  • 特表-改善された波長分散を有する、位置選択的に置換されたセルロースエステルをベースとするC+補償フィルム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-03
(54)【発明の名称】改善された波長分散を有する、位置選択的に置換されたセルロースエステルをベースとするC+補償フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20230224BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20230224BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20230224BHJP
   C08L 1/10 20060101ALI20230224BHJP
   C08B 3/16 20060101ALN20230224BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALN20230224BHJP
   C08K 5/07 20060101ALN20230224BHJP
【FI】
C08J5/18 CEP
G02B5/30
C08K5/00
C08L1/10
C08B3/16
C08K5/3492
C08K5/07
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548703
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(85)【翻訳文提出日】2022-10-05
(86)【国際出願番号】 US2021017363
(87)【国際公開番号】W WO2021163121
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】62/975,873
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594055158
【氏名又は名称】イーストマン ケミカル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チエンチエン
(72)【発明者】
【氏名】ブキャナン,チャールズ・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】エルキンス,ケイシー・リン
(72)【発明者】
【氏名】マコーネル,ウェズレー・ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ビン
(72)【発明者】
【氏名】シャープ,ロバート・ジャックス
【テーマコード(参考)】
2H149
4C090
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
2H149AA01
2H149AB01
2H149DA02
2H149DA12
2H149FA02Y
2H149FD05
2H149FD06
2H149FD25
2H149FD47
4C090BA25
4C090BB52
4C090BB97
4C090BD15
4C090BD36
4C090CA38
4C090DA31
4F071AA09
4F071AE04
4F071AF31Y
4F071AF35Y
4F071AH12
4F071AH19
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
4J002AB021
4J002EE046
4J002EU186
4J002FD056
4J002GP00
(57)【要約】
本出願は、位置選択的に置換されたセルロースエステルと成分A(式中、A、B、C、R、R、R、R、R、m、nおよびkは本明細書中で規定する)とを含むフィルムを開示する。フィルムは、改善された波長分散を示すC+フィルムである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)
(i)複数の芳香族-CO-置換基、
(ii)複数の第1の不飽和または飽和(C1~6)アルキル-CO-置換基、および
(iii)複数のヒドロキシル置換基
を含む、位置選択的に置換されたセルロースエステルであって、
ここで:
ヒドロキシルの置換度(「DSOH」)が0~0.7であり、
芳香族-CO-置換基の置換度(「DSArCO」)が0.8~1.6であり、
(C1~6)アルキル-CO-置換基の置換度(「DSAk」)が0.9~2.2であり、
芳香族-CO-が(C6~20)アリール-CO-[式中、アリールは非置換であるか、または1~5つのRによって置換されている]
である、位置選択的に置換されたセルロースエステルと;
(2)
【化1】
[式中:
環Aは、(C6~20)アリールまたはN、OもしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり;
環Bは、(C6~20)アリールまたはN、OもしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり;
環Cは、(C6~20)アリールまたはN、OもしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり;
は、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロアルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ、任意選択により1~5つの飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルコキシ、ハロによって置換される(C6~20)アリール;N、OもしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリール;-CHC(O)-Rであり;
は、独立に、水素、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、または飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキルであり;
は、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、(C6~20)アリール、またはN、OもしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり、ここで、アリールまたはヘテロアリールは、非置換であるか、または1~5つのRによって置換され;
は、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、N、O、もしくはSから選択される1~2個のヘテロ原子を含有する飽和もしくは不飽和ヘテロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-ヒドロキシ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、(C6~10)アリール、N、O、もしくはSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり、ここで、各基は、非置換であるか、または1~3つのヒドロキシル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ヒドロキシ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-ヒドロキシ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、または(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキルによって置換され;
各Rは、独立に、ヒドロキシ、シアノ、飽和もしくは不飽和アルキル、飽和もしくは不飽和ハロアルキル、飽和もしくは不飽和アルコキシ、飽和もしくは不飽和ハロアルコキシ、またはハロであり;
各Rは、独立に、ヒドロキシ、シアノ、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO-、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO-、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO-アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、またはハロまたは(C6~20)アリールであり、ここで、アリールは、非置換であるか、または1~5つのRによって置換され;
各Rは、独立に、ヒドロキシル、飽和もしくは不飽和(C1~6)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~6)アルキル、または飽和もしくは不飽和(C1~6)アルコキシであり;
各Rは、R-O-、ヒドロキシ、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO-(C1~20)アルキル、(C1~20)アルケニル、(C1~20)アルケニル-O、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-CO-O-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、N、O、もしくはSから選択される1~2個のヘテロ原子を含有する飽和もしくは不飽和ヘテロ(C1~20)アルキル、(C6~10)アリール、N、O、もしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり;
ここで、各基は、非置換であるか、または1~3つのヒドロキシル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ヒドロキシ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-ヒドロキシ(C1~20)アルキル、または(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、または(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキルによって置換され;
各mは、1、2、3、4または5であり;
nは、1、2、3、4または5である]
である成分Aと;
を含む、フィルムであって、
ここで:
成分Aが、組成物の総重量に対して30wt%未満で存在し、
フィルムの厚さ(「d」)(ミクロン)が1μm~200μmであり、
フィルムが、-10nm~10nmの範囲のR(589nm)を示し、
th(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0超であり、
(589nm)が、589nmで測定した面内リタデーションであり、
th(589nm)が、589nmで測定した面外リタデーションである、フィルム。
【請求項2】
th(550nm)に対するRth(450nm)の比が1.05未満であり、ここで、Rth(450nm)が、450nmで測定した面外リタデーションであり、Rth(550nm)が、550nmで測定した面外リタデーションである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
th(550nm)に対するRth(450nm)の比が0.75~0.85である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
th(550nm)に対するRth(650nm)の比が0.95超であり、ここで、Rth(650nm)が、650nmで測定した面外リタデーションであり、Rth(550nm)が、550nmで測定した面外リタデーションである、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項5】
th(550nm)に対するRth(650nm)の比が1.10~1.25である、請求項4に記載のフィルム。
【請求項6】
thが20~200nmである、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
成分Aが、1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオン、アヴォベンゾン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノール、イソオクチル2-(4-(4,6-ジ([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-3-ヒドロキシフェノキシ)プロパノエート、6,6’-(6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(3-ブトキシフェノール)、またはこれらの組合せである、請求項1~6のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項8】
成分Aが、20wt%未満で存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項9】
芳香族-CO-が、非置換であるか、または1~5つのRによって置換されている、ベンゾイルまたはナフトイルである、請求項1~8のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項10】
第1の不飽和または飽和(C1~20)アルキル-CO-置換基が、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、3-メチルブタノイル、ペンタノイル、4-メチルペンタノイル、3-メチルペンタノイル、2-メチルペンタノイル、ヘキサノイル、またはクロトニルである、請求項1~9のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項11】
セルロースエステルが、複数の第2の(C1~20)アルキル-CO-置換基をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項12】
第2の(C1~20)アルキル-CO-置換基が、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、3-メチルブタノイル、ペンタノイル、4-メチルペンタノイル、3-メチルペンタノイル、2-メチルペンタノイル、ヘキサノイル、または2-エチルヘキサノイルである、請求項1~11のいずれか一項に記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
C+フィルムは、ディスプレイに広範に使用されてきた。該フィルムは通常、ディスプレイの画質を改善するために、A+フィルムと一緒に多層構造中に使用される。最近では、C+フィルムは、液晶ベースの材料およびポリスチレン誘導体などのいくつかの異なる材料から作製することができる。また、C+フィルムを製造するためにセルロースエステルが利用されてきた。例えば、米国特許公開第20170306054号は、C+フィルムを製造するために使用できる位置選択的に置換されたセルロースエステルを開示している。しかしながら、C+フィルムの波長分散は通常、正常であり、短波長のC+フィルムのΔnthまたはRthが長波長より大きく、結果として色ずれが生じる。したがって、改善された波長分散を有するC+フィルムが、依然として満たされていない大きなニーズとして存在する。本出願は、改善された波長分散を示す位置選択的に置換されたセルロースエステルが配合されて含まれるC+フィルムを開示する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本出願は、
(1)
(i)複数の芳香族-CO-置換基、
(ii)複数の第1の不飽和または飽和(C1~6)アルキル-CO-置換基、および
(iii)複数のヒドロキシル置換基
を含む、位置選択的に置換されたセルロースエステルであって、
ここで:
ヒドロキシルの置換度(「DSOH」)が0~0.7であり、
芳香族-CO-置換基の置換度(「DSArCO」)が0.8~1.6であり、
(C1~6)アルキル-CO-置換基の置換度(「DSAk」)が0.9~2.2であり、
芳香族-CO-が、(C6~20)アリール-CO-[式中、アリールは非置換であるか、または1~5つのRによって置換されている]
である、位置選択的に置換されたセルロースエステルと、
(2)
【0003】
【化1】
【0004】
[式中:
環Aは、(C6~20)アリールまたはN、OもしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり;
環Bは、(C6~20)アリールまたはN、OもしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり;
環Cは、(C6~20)アリールまたはN、OもしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり;
は、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロアルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ、任意選択により1~5つの飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルコキシ、ハロによって置換される(C6~20)アリール;N、OもしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリール;-CHC(O)-Rであり;
は、独立に、水素、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、または飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキルであり;
は、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、(C6~20)アリール、またはN、OもしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり、ここで、アリールまたはヘテロアリールは、非置換であるか、または1~5つのRによって置換され;
は、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、N、O、もしくはSから選択される1~2個のヘテロ原子を含有する飽和もしくは不飽和ヘテロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-ヒドロキシ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、(C6~10)アリール、N、O、もしくはSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり、ここで、各基は、非置換であるか、または1~3つのヒドロキシル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ヒドロキシ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-ヒドロキシ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、または(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキルによって置換され;
各Rは、独立に、ヒドロキシ、シアノ、飽和もしくは不飽和アルキル、飽和もしくは不飽和ハロアルキル、飽和もしくは不飽和アルコキシ、飽和もしくは不飽和ハロアルコキシ、またはハロであり;
各Rは、独立に、ヒドロキシ、シアノ、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO-、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO-、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO-アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、またはハロまたは(C6~20)アリールであり、ここで、アリールは、非置換であるか、または1~5つのRによって置換され;
各Rは、独立に、ヒドロキシル、飽和もしくは不飽和(C1~6)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~6)アルキル、または飽和もしくは不飽和(C1~6)アルコキシであり;
各Rは、R-O-、ヒドロキシ、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO-(C1~20)アルキル、(C1~20)アルケニル、(C1~20)アルケニル-O、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-CO-O-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、N、O、もしくはSから選択される1~2個のヘテロ原子を含有する飽和もしくは不飽和ヘテロ(C1~20)アルキル、(C6~10)アリール、N、O、もしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり;
ここで、各基は、非置換であるか、または1~3つのヒドロキシル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ヒドロキシ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-ヒドロキシ(C1~20)アルキル、または(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、または(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキルによって置換され;
各mは、1、2、3、4または5であり;
nは、1、2、3、4または5である]
である成分Aと、
を含むフィルムであって、
ここで:
成分Aが、組成物の総重量に対して30wt%未満で存在し、
フィルムの厚さ(「d」)(ミクロン)が、1μm~200μmであり、
フィルムが、-10nm~10nmの範囲のR(589nm)を示し、
th(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0超であり、
(589nm)が、589nmで測定した面内リタデーションであり、
th(589nm)が、589nmで測定した面外リタデーションである、
フィルムを開示する。
【0005】
本出願は、以下の図面について言及する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】補償フィルムのパラメータを規定する概略図を提供する。
図2】補償フィルム中の波長分散モード:(a)正常波長分散、(b)フラット波長分散、および(c)逆波長分散の図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、本発明の以下の詳細な説明およびその中で記述される実施例を参照することによって、より容易に理解することができる。本発明は、記載される特定の方法、配合、および条件に限定されず、変更が可能とすることを理解されたい。また、本明細書中で用いられる用語は、本発明の特定の態様を説明することのみを目的とし、限定されることは意図しないことも理解すべきである。
【0008】
定義
本明細書および後続の特許請求の範囲において、多数の用語が言及されるが、これらは、以下の意味を有すると定義されるものとする。
【0009】
値は、所与の数を「約」または「およそ」で表すことができる。同様に、範囲を、本明細書において、「約」+特定の1つの値から、かつ/または「約」+別の特定の値までを表すことができる。そのような範囲を表すとき、別の態様は、特定の1つの値から、かつ/または他の特定の値までを含む。同様に、頭に「約」を用いることによって値を近似値として表すとき、特定の値は別の態様を形成すると理解されよう。
【0010】
本明細書中で用いられる場合、用語「ある(a)」、「ある(an)」および「その(the)」は、1または複数を意味する。
本明細書中で用いられる場合、用語「および/または」は、2以上の項目のリスト中で用いられるとき、列挙された項目のいずれか1つをそれ自体で用いることができる、または2つ以上の列挙された項目の任意の組合せで用いることができることを意味する。例えば、組成物が、成分A、Bおよび/またはCを含有すると説明される場合、組成物は、単独のA、単独のB、単独のC、AとBの組合せ、AとCの組合せ、BとCの組合せ、またはA、BおよびCの組合せを含有することができる。
【0011】
本明細書中で用いられる場合、用語「含む(comprising)」、「含む(comprises)」および「含む(comprise)」は、用語の前に列挙された対象から用語の後に列挙された1つ以上の要素への移行のために用いられるオープンエンド移行句であり、移行句の後に列挙される1つ以上の要素は必ずしも、対象を構成する要素のみではない。
【0012】
本明細書中で用いられる場合、用語「有する(having)」、「有する(has)」および「有する(have)」は、上記の「含む(comprising)」、「含む(comprises)」および「含む(comprise)」と同じオープンエンドの意味を有する。
【0013】
本明細書中で用いられる場合、用語「含む(including)」、「含む(includes)」および「含む(include)」は、上記の「含む(comprising)」、「含む(comprises)」および「含む(comprise)」と同じオープンエンドの意味を有する。
【0014】
光学フィルムの製造における使用に好適な位置選択的に置換されたセルロースエステルは、複数のアルキル-アシルまたはアルキル-CO-置換基、複数のアリール-アシルまたはアリール-CO-置換基、ヘテロアリール-アシルまたはヘテロアリール-CO-置換基を含むことができる。本明細書中で用いられる場合、用語「アシル置換基」または「R-CO-」は、構造:
【0015】
【化2】
【0016】
を有する置換基を示すものとする。
セルロースエステル中のそのようなアシルまたはR-CO-基は、一般に、エステル結合を介して(すなわち、酸素原子を通じて)セルロースのピラノース環に結合される。
【0017】
芳香族-CO-は、芳香族含有環系を有するアシル置換基である。例としては、アリール-CO-またはヘテロアリール-CO-が挙げられる。具体例としては、ベンゾイル、ナフトイル、およびフロイルが挙げられ、それぞれ、非置換であるか、または置換されている。
【0018】
本明細書中で用いられる場合、用語「アリール-アシル」置換基は、「R」がアリール基であるアシル置換基を示すものとする。本明細書中で用いられる場合、用語「アリール」は、アレーン(すなわち、単環式または多環式芳香族炭化水素)中の環炭素から水素原子を除去することによって形成される一価の基を示すものとする。ある場合には、アリール-アシル基の前に炭素単位が付く(例えば、(C5~6)アリール-アシル、(C6~12)アリール-アシル、または(C6~20)アリール-アシル)。さまざまな実施形態における使用に好適なアリール基の例としては、これらに限定されないが、フェニル、ベンジル、トリル、キシリル、およびナフチルが挙げられる。そのようなアリール基は、置換されていても置換されていなくてもよい。
【0019】
本明細書中で用いられる場合、用語「アルキル-アシル」は、「R」がアルキル基であるアシル置換基を示すものとする。本明細書中で用いられる場合、用語「アルキル」は、非芳香族炭化水素から水素原子を除去することによって形成される一価の基を示すものとし、ヘテロ原子を含んでもよい。本明細書における使用に好適なアルキル基は、直鎖状、分枝状、または環状であってもよく、飽和でも不飽和でもよい。本明細書における使用に好適なアルキル基としては、(C1~20)、(C1~12)、(C1~5)、または(C1~3)アルキル基のいずれかが挙げられる。さまざまな実施形態において、アルキルは、C1~5直鎖状アルキル基であってもよい。さらに他の実施形態において、アルキルは、C1~3直鎖状アルキル基であってもよい。好適なアルキル基の具体例としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、シクロペンチル、およびシクロヘキシル基が挙げられる。アルキル-アシル基の例としては、アセチル、プロピオニル、ブチロイルなどが挙げられる。
【0020】
「ヘテロアルキル」は、1個以上の炭素原子が、N、O、またはSから選択されるヘテロ原子と置き換えられるアルキルである。
「ハロアルキル」は、少なくとも1個の水素がハロゲン基で置き換えられるアルキル置換基を意味する。ハロアルキル基中の炭素単位が含まれていることが多い(例えばハロ(C1~6)アルキル)。ハロアルキル基は、直鎖状でも分枝状であってもよい。ハロアルキルの非限定例としては、クロロメチル、トリフルオロメチル、ジブロモエチルなどが挙げられる。
【0021】
「ヘテロアリール」は、アリール環中の少なくとも1つの炭素単位が、O、NおよびSなどのヘテロ原子で置き換えられるアリールを意味する。ヘテロアリールは、単環式でも多環式であってもよい環である。多くの場合、ヘテロアリール環系を構成する単位、例えば、5~20員環系が含まれる。5員ヘテロアリールは、ヘテロアリール環を形成する5個の原子を有する環系を意味する。ヘテロアリールの非限定例としては、ピリジニル、キノリニル、ピリミジニル、チオフェニルなどが挙げられる。
【0022】
「アルコキシ」は、アルキル-O-または酸素基に末端結合したアルキル基を意味する。多くの場合、炭素単位が含まれる(例えば、(C1~6)アルコキシ)。アルコキシの非限定例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどが挙げられる。
【0023】
「ハロアルコキシ」は、複数の水素のうちの少なくとも1個がハロゲンで置き換えられるアルコキシを意味する。多くの場合、炭素単位が含まれる(例えば、ハロ(C1~6)アルコキシ)。ハロアルコキシの非限定例としては、トルフルオロメトキシ、ブロモメトキシ、1-ブロモ-エトキシなどが挙げられる。
【0024】
「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードなどのハロゲンを意味する。
「置換度」は、一無水グルコース単位(「AGU」)当たりの置換基の平均置換レベルを説明するために用いられる。一般に、従来のセルロースは、置換されうる各AGU中の3つヒドロキシル基を含有する。したがって、DSは、0~3の間の値を有しうる。しかしながら、低分子量セルロース混合エステルは、末端基寄与から3より少し高い全置換度を有しうる。低分子量セルロース混合エステルは、本開示においてより詳細に後述する。DSが統計的平均値であるため、1の値は、すべてのAGUが単一置換基を有することを保証しない。ある場合では、一部は2つ、また一部は3つの置換基を有する非置換の無水グルコース単位であり得、大半の場合、値は整数でない。全DSは、ヒドロキシル置換基を含まない、一無水グルコース単位当たりの全置換基の平均数として定義される。一AGU当たりの置換度はまた、例えば、ヒドロキシル、アセチル、ブチリル、またはプロピオニルなどの特定の置換基も指しうる。加えて、置換度は、無水グルコース単位の炭素単位のいずれかを指定することができる。
【0025】
置換度がヒドロキシルを指す場合、すなわち、DSOHの場合、置換されない一無水グルコース当たりの平均ヒドロキシル基を指す。結果として、DSOHは、全置換度の計算には用いられない。
【0026】
数値域
本明細書は、本発明に関連する特定のパラメータを定量化するために数値域を用いる。数値域を記載する場合、その範囲は、範囲の下限値のみを列挙するクレーム制限ならびに範囲の上限値のみを列挙するクレーム制限の文字的サポートを与えるものとして解釈されるべきであることを理解されたい。例えば、開示される10~100の数値域は、「10超」(上界なし)を列挙するクレームおよび「100未満」(下界なし)を列挙するクレームの文字的サポートを提供する。
【0027】
本明細書は、本発明に関連する特定のパラメータを定量化するために特定の数値を用いるが、この特定の数値は、特に数値域の一部ではない。本明細書中に記載されるそれぞれの特定の数値は、広範囲、中程度の範囲、狭い範囲の文字的サポートを提供するものとして解釈されるものと理解されたい。それぞれの特定の数値に関連する広い範囲は、数値プラス/マイナス数値の60パーセントを2有効桁まで四捨五入したものである。それぞれの特定の数値に関連する中程度の範囲は、数値プラス/マイナス数値の30パーセントを2有効桁まで四捨五入したものである。それぞれの特定の数値に関連する狭い範囲は、数値プラス/マイナス数値の15パーセントを2有効桁まで四捨五入したものである。例えば、本明細書が62°Fの特定温度を記載する場合、該説明は、25°F~99°F(62°F+/-37°F)の広い数値域、43°F~81°F(62°F+/-19°F)の中程度の数値域、および53°F~71°F(62°F+/-9°F)の狭い数値域の文字的サポートを提供する。これらの広い、中程度の、および狭い数値域は、特定値のみに該当するだけでなく、これらの特定値間の差にも該当すべきである。したがって、本明細書が、110psiaの第1の圧力および48psiaの第2の圧力(62psiの差)を記載する場合、これらの2つのストリーム間の圧力差の広範囲、中範囲、および狭範囲は、それぞれ、25~99psi、43~81psi、および53~71psiであると考えられる。
【0028】
特許文献および刊行物が参照される本出願を通して、これらの参考文献の全体開示は、本発明が関与する最新技術をより完全に説明するために、本発明と矛盾しない程度まで参照により本出願に組み込まれることが意図される。
【0029】
補償フィルムは、液晶ディスプレイ(LCD)および有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)の画質を改善するために重要である。補償フィルムの複屈折は、画質に重要である。これは、補償フィルムを特性評価するために、面内複屈折(Δn)および面外複屈折(Δnth)で広範に使用されている。ΔnおよびΔnthは、以下の式によって規定される。
【0030】
Δn=(n-n
Δnth=[n-(n+n)/2]
普通、ポリマーから作られるフィルム(通常、延伸される)は、複屈折の発生を要する。高分子フィルムは、一方向(x方向)に沿って存在し、nは、フィルム面内の延伸方向に沿った屈折率であり、一方でnは、フィルム面内の延伸方向に対して垂直にある屈折率であり、nは、フィルム面に対して垂直にある屈折率である。Δnが負のフィルムの場合、延伸方向に沿った屈折率は、延伸方向に対して垂直方向に沿った屈折率より小さく、これはn<nを意味する。したがって、負の複屈折を有するフィルムの場合、nはフィルム面内の速軸に沿った屈折率であり、nは遅軸に沿った屈折率である。Δnが正のフィルムの場合、延伸方向に沿った屈折率は、延伸方向に対して垂直方向に沿った屈折率より大きく、これはn>nを意味する。したがって正の複屈折を有するフィルムの場合、nはフィルム面内の遅軸に沿った屈折率として定義され、nは速軸に沿った屈折率である。延伸されなかったフィルムまたはΔnが0のフィルムの場合、nはフィルム面内の遅軸に沿った屈折率であるのに対し、nはフィルム面内の速軸に沿った屈折率であり、nはフィルム面に対して垂直にある屈折率である。これに応じて、面内リタデーション(R)および面外リタデーション(Rth)が、Δnと補償フィルムの厚さ(d)との積およびΔnthとdとの積として規定される。
【0031】
=(n-n
th=[n-(n+n)/2]
加えて、Nz係数も広範に使用され、以下の式によって規定される。
【0032】
=(n-n)/(n-n)=-Rth/R+0.5
適用分野に応じて、3つの屈折率すべてが異なる(n≠n、n≠nおよびn≠n)二軸フィルムや、2つの屈折率が非常に近いが第3の屈折率とは異なる(n=n≠n、n=n≠n、n=n≠n)一軸フィルムなどのさまざまな補償フィルムが開発されてきた。一軸フィルムの場合、A+フィルム、A-フィルム、C+フィルムおよびC-フィルムがあり、これらは以下の式によって規定される。
A+:n>n=n;N係数=1
A-:n<n=n;N係数=1
C+:n=n<n;N係数=∞
C-:n=n>n;N係数=∞
負のΔnまたはRを有するフィルムの場合、nはフィルム面内の速軸に沿った屈折率である。正のΔnまたはRを有するフィルムの場合、nはフィルム面内の遅軸に沿った屈折率である。延伸されなかったフィルムまたはΔnが0のフィルムの場合、nはフィルム面内の遅軸に沿った屈折率であるのに対し、nはフィルム面内の速軸に沿った屈折率であり、nはフィルム面に対して垂直にある屈折率である。
【0033】
C+フィルムは、重量な一部類の補償フィルムである。C+フィルムは通常、ディスプレイの光の漏れを保証するために利用される。多くの場合、C+フィルムは、多層補償フィルム中で、A+フィルムなどの他の補償フィルムと一緒に使用される。
【0034】
加えて、波長分散も補償フィルムに重要である。波長分散は、光の波長による複屈折またはリタデーションに関連する。R(450nm)/R(550nm)、R(650nm)/R(550nm)、Rth(450nm)/Rth(550nm)およびRth(650nm)/Rth(550nm)は、450nm、550nmおよび650nmのリタデーションの比を示し、波長分散を特性評価するために広範に使用される。図2に示すように、正常波長分散は、補償フィルムの複屈折またはリタデーションが、短波長で大きくなることを意味し、フラット波長分散は、補償フィルムの複屈折またはリタデーションが、試験した波長範囲全体にわたって一定であることを意味し、逆波長分散は、補償フィルムの複屈折またはリタデーションが、短波長で小さくなることを意味する。逆波長分散は、ディスプレイの色ずれを顕著に低下させることができるため大変望ましい。
【0035】
セルロースエステルは、補償フィルムに幅広く使用されてきた。セルロースエステルは、ポリカーボネートおよびポリ(環状オレフィン)などの他の材料と比較して多くの利点を有する。ほとんどのセルロースエステル系補償フィルムは、酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロースおよび酢酸酪酸セルロースなどの脂肪族アシル置換基を有するセルロースエステルから作製される。アシル置換基は、無作為に分布される。該補償フィルムは通常、ゼロ未満のRthまたはΔnthを有するC-フィルムである。セルロースエステルをベースとするC+フィルムは、セルロースエステルへの芳香族アシル置換基を追加し、芳香族アシル置換基または長鎖脂肪族アシル置換基の位置を制御することによって達成することができる。位置選択的に置換されたセルロースエステルをベースとするC+フィルムの例は、US20170306054およびUS出願第62/891591号で報告されている。
【0036】
セルロースエステルから作製されるC+補償フィルムの一問題は、R(450nm)/R(550nm)>1およびR(650nm)/R(550nm)<1の該補償フィルムの正常波長分散である。フラットまたは逆波長分散を有するセルロースエステルをベースとするC+フィルムの市販製品は存在しない。
【0037】
さまざまな実施形態において、ピラノース環のC2およびC3にアリール-アシル置換基が優先的に組み込まれる、位置選択的に置換されたセルロースエステルを用いることができる。位置選択性は、炭素13NMR分光法によってセルロースエステル中のC6、C3およびC2における相対的置換度(「RDS」)を決定することによって測定することができる(Macromolecules、1991年、24、3050~3059頁)。一タイプのアシル置換基の場合または第2のアシル置換基が少量しか存在しない(DS<0.2)とき、RDSは、環炭素の統合によって直接、最も容易に決定することができる。同様の量の2つ以上のアシル置換基が存在するとき、環RDSの決定に加えて、場合によっては、カルボニル炭素の統合によって各置換基のRDSを独立に決定するために、セルロースエステルを追加の置換基と完全に置換させる必要がある。従来のセルロースエステルでは、位置選択性は一般に観察されず、C6/C3、C6/C2、またはC3/C2のRDS比は一般に1に近いか、またはそれ以下である。本質的には、従来のセルロースエステルはランダムコポリマーである。対照的に、適当な溶媒中に溶解したセルロースに1種以上のアシル化試薬を添加すると、セルロースのC6位は、C2位およびC3位よりずっと速くアシル化される。その結果、C6/C3比およびC6/C2比は1より優位に大きく、これは6,3-または6,2-強化された位置選択的に置換されたセルロースエステルの特徴である。
【0038】
位置選択的に置換されたセルロースエステルの例およびその調製方法は、US20170306054、およびUS20170307796に記載されており、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。一般に、これらの出願は、低い置換度(DS)を有する出発セルロースエステルを、ジメチルアセトアミド(DMAC)およびN-メチルイミダゾール(NMI)中に溶解し、次いでそれをアシル化試薬と接触させることによるセルロースエステルの調製に関する。これに応じて、本発明のさまざまな実施形態のために、位置選択的に置換されたセルロースエステルを調製するために2つの一般的な方法を用いることができる。一方法では、位置選択的に置換されたセルロースエステルは、まずセルロース溶液を1種以上のアルキルアシル化試薬と接触させ、後続して、所望の置換度(「DS」)および重合度(「DP」)を有するセルロースエステルを生成するために十分な接触温度および接触時間で、セルロース溶液をアリールアシル化試薬と接触させることによる段階的添加を用いて調製することができる。この段階的添加において、アルキル基を含有するアシル基をC6に優先的に取り入れてよく、アリール基を含有するアシル基をC2および/またはC3に優先的に取り入れてよい。あるいは、位置選択的に置換されたセルロースエステルは、セルロース溶液を1種以上のアルキルアシル化試薬と接触させ、後続して、アルキル基を含有するアシル基が優先的にC6に取り入れられたアルキルエステルを単離することによって調製することができる。次いで、アルキルエステルを適当な有機溶媒に溶解し、所望の置換度(「DS」)および重合度(「DP」)を有するセルロースエステルを生成するために十分な接触温度および接触時間で、アリール基を含有するアシル基をC2および/C3に優先的に取り入れることができるアリール-アシル化試薬と接触させてよい。こうして調製されたセルロースエステルは、一般に、以下の構造を含む:
【0039】
【化3】
【0040】
式中、R、R、およびRは、水素(ただし、R、R、およびRは同時に水素ではないことを条件とする)、アルキル-アシル基、および/またはアリール-アシル基(上記のものなど)であり、これらは、エステル結合を介してセルロースに結合される。
【0041】
これらの方法によって調製されたセルロースエステルの重合度(「DP」)は、少なくとも10であってもよい。他の実施形態では、セルロースエステルのDPは、少なくとも50、少なくとも100、または少なくとも250であってもよい。他の実施形態では、セルロースエステルのDPは、約5~約100の範囲、または約10~約50の範囲とすることができる。
【0042】
本明細書における使用に好適なアシル化試薬としては、これらに限定されないが、本明細書中に記載の位置選択的に置換されたセルロースエステルのアシル置換基における使用に好適な上記アルキルもしくはアリール基を含有する、アルキルもしくはアリールカルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、および/またはカルボン酸エステルを挙げることができる。好適なカルボン酸無水物の例としては、これらに限定されないが、酢酸無水物、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、ピバロイル無水物、安息香酸無水物、およびナフトイル無水物が挙げられる。カルボン酸ハロゲン化物の例としては、これらに限定されないが、塩化または臭化アセチル、プロピオニル、ブチリル、ピバロイル、ベンゾイル、およびナフトイルが挙げられる。カルボン酸エステルの例としては、これらに限定されないが、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ピバロイル、ベンゾイルおよびナフトイルメチルエステルが挙げられる。1つ以上の実施形態において、アシル化試薬は、酢酸無水物、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、ピバロイル無水物、ベンゾイル無水物、およびナフトイル無水物からなる群から選択される1種以上のカルボン酸無水物であってもよい。
【0043】
本出願は、(1)(i)複数の芳香族-CO-置換基;(ii)複数の第1の不飽和または飽和(C1~6)アルキル-CO-置換基;および(iii)複数のヒドロキシル置換基を含む位置選択的に置換されたセルロースエステルであって、ここで:ヒドロキシルの置換度(「DSOH」)が0~0.5であり、芳香族-CO-置換基の置換度(「DSArCO」)が0.8~1.6であり、(C1~6)アルキル-CO-置換基の置換度(「DSAk」)が0.9~2.2であり、芳香族-CO-が、(C6~20)アリール-CO-[式中、アリールは、非置換であるか、または1~5つのRによって置換されている]である、位置選択的に置換されたセルロースエステルと、(2)
【0044】
【化4】
【0045】
[式中:環Aは、(C6~20)アリールまたはN、O、もしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり;環Bは、(C6~20)アリールまたはN、O、もしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり;環Cは、(C6~20)アリールまたはN、O、もしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり;Rは、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロアルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ、任意選択により1~5つの飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルコキシ、ハロによって置換されている(C6~20)アリール;N、OもしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリール;-CHC(O)-Rであり;Rは、独立に、水素、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、または飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキルであり;Rは、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、(C6~20)アリール、またはN、OもしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり、ここで、アリールまたはヘテロアリールは、非置換であるか、または1~5つのRによって置換され;Rは、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、N、O、もしくはSから選択される1~2個のヘテロ原子を含有する飽和もしくは不飽和ヘテロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-ヒドロキシ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、(C6~10)アリール、N、O、もしくはSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり、ここで、各基は、非置換であるか、または1~3つのヒドロキシル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ヒドロキシ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-ヒドロキシ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、または(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキルによって置換され;各Rは、独立に、ヒドロキシ、シアノ、飽和もしくは不飽和アルキル、飽和もしくは不飽和ハロアルキル、飽和もしくは不飽和アルコキシ、飽和もしくは不飽和ハロアルコキシ、またはハロであり;各Rは、独立に、ヒドロキシ、シアノ、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO-、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO-、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO-アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、またはハロまたは(C6~20)アリールであり、ここで、アリールは、非置換であるか、または1~5つのRによって置換され;各Rは、独立に、ヒドロキシル、飽和もしくは不飽和(C1~6)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~6)アルキル、または飽和もしくは不飽和(C1~6)アルコキシであり;各Rは、R-O-、ヒドロキシ、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO-(C1~20)アルキル、(C1~20)アルケニル、(C1~20)アルケニル-O、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-CO-O-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、N、O、もしくはSから選択される1~2個のヘテロ原子を含有する飽和もしくは不飽和ヘテロ(C1~20)アルキル、(C6~10)アリール、N、O、もしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり;
ここで、各基は、非置換であるか、または1~3つのヒドロキシル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ヒドロキシ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-ヒドロキシ(C1~20)アルキル、または(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、または(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキルによって置換されており;各mは、1、2、3、4または5であり、nは、1、2、3、4または5である]である成分Aと、を含むフィルムであって、ここで:成分Aが、組成物の総重量に対して30wt%未満で存在し、フィルムの厚さ(「d」)(ミクロン)が、1μm~200μmであり、フィルムが、-10nm~10nmの範囲のR(589nm)を示し、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0超であり、R(589nm)が、589nmで測定した面内リタデーションであり、Rth(589nm)が、589nmで測定した面外リタデーションである、フィルムを開示する。
【0046】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、フィルムは延伸されない。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、フィルムは延伸される。この実施形態の一クラスにおいて、フィルムは、二軸延伸されるか、または一軸延伸される。
【0047】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、Rは、R-O-である。
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、フィルムは、-5nm~5nmの範囲のR(589nm)を示し、ここで、R(589nm)は、589nmで測定した面内リタデーションである。一実施形態において、フィルムは、-1nm~1nmの範囲のR(589nm)を示し、ここで、R(589nm)は、589nmで測定した面内リタデーションである。一実施形態において、フィルムは、0.2nm~9nmの範囲のR(589nm)を示し、ここで、R(589nm)は、589nmで測定した面内リタデーションである。
【0048】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが2.0超である。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0~22である。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0~10である。
【0049】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、Rth(550nm)に対するRth(450nm)の比は1.05未満であり、ここで、Rth(450nm)は、450nmで測定した面外リタデーションであり、Rth(550nm)は、550nmで測定した面外リタデーションである。
【0050】
この実施形態の一クラスにおいて、Rth(550nm)に対するRth(650nm)の比は0.95超であり、ここで、Rth(650nm)は、650nmで測定した面外リタデーションであり、Rth(550nm)は、550nmで測定した面外リタデーションである。
【0051】
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが2.0超である。
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0~22である。
【0052】
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0~10である。
この実施形態の一クラスにおいて、Rth(550nm)に対するRth(650nm)の比は1.0超であり、ここで、Rth(650nm)は、650nmで測定した面外リタデーションであり、Rth(550nm)は、550nmで測定した面外リタデーションである。
【0053】
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが2.0超である。
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0~22である。
【0054】
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0~10である。
この実施形態の一クラスにおいて、Rth(550nm)に対するRth(650nm)の比は1.0~1.25であり、ここで、Rth(650nm)は、650nmで測定した面外リタデーションであり、Rth(550nm)は、550nmで測定した面外リタデーションである。
【0055】
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが2.0超である。
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0~22である。
【0056】
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0~10である。
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、Rth(550nm)に対するRth(450nm)の比は1.0未満であり、ここで、Rth(450nm)は、450nmで測定した面外リタデーションであり、Rth(550nm)は、550nmで測定した面外リタデーションである。
【0057】
この実施形態の一クラスにおいて、Rth(550nm)に対するRth(650nm)の比は0.95超であり、ここで、Rth(650nm)は、650nmで測定した面外リタデーションであり、Rth(550nm)は、550nmで測定した面外リタデーションである。
【0058】
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが2.0超である。
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0~22である。
【0059】
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0~10である。
この実施形態の一クラスにおいて、Rth(550nm)に対するRth(650nm)の比は1.0超であり、ここで、Rth(650nm)は、650nmで測定した面外リタデーションであり、Rth(550nm)は、550nmで測定した面外リタデーションである。
【0060】
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが2.0超である。
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0~22である。
【0061】
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0~10である。
この実施形態の一クラスにおいて、Rth(550nm)に対するRth(650nm)の比は1.0~1.25であり、ここで、Rth(650nm)は、650nmで測定した面外リタデーションであり、Rth(550nm)は、550nmで測定した面外リタデーションである。
【0062】
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが2.0超である。
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0~22である。
【0063】
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0~10である。
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、Rth(550nm)に対するRth(450nm)の比は0.9未満であり、ここで、Rth(450nm)は、450nmで測定した面外リタデーションであり、Rth(550nm)は、550nmで測定した面外リタデーションである。
【0064】
この実施形態の一クラスにおいて、Rth(550nm)に対するRth(650nm)の比は0.95超であり、ここで、Rth(650nm)は、650nmで測定した面外リタデーションであり、Rth(550nm)は、550nmで測定した面外リタデーションである。
【0065】
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが2.0超である。
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0~22である。
【0066】
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0~10である。
この実施形態の一クラスにおいて、Rth(550nm)に対するRth(650nm)の比は1.0超であり、ここで、Rth(650nm)は、650nmで測定した面外リタデーションであり、Rth(550nm)は、550nmで測定した面外リタデーションである。
【0067】
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが2.0超である。
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0~22である。
【0068】
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0~10である。
この実施形態の一クラスにおいて、Rth(550nm)に対するRth(650nm)の比は1.0~1.25であり、ここで、Rth(650nm)は、650nmで測定した面外リタデーションであり、Rth(550nm)は、550nmで測定した面外リタデーションである。
【0069】
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが2.0超である。
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0~22である。
【0070】
このクラスの一サブクラスにおいて、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0~10である。
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、Rth(550nm)に対するRth(650nm)の比は0.95超であり、ここで、Rth(650nm)は、650nmで測定した面外リタデーションであり、Rth(550nm)は、550nmで測定した面外リタデーションである。
【0071】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、Rth(550nm)に対するRth(650nm)の比は1.0超であり、ここで、Rth(650nm)は、650nmで測定した面外リタデーションであり、Rth(550nm)は、550nmで測定した面外リタデーションである。
【0072】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、Rth(550nm)に対するRth(650nm)の比は1.10~1.25であり、ここで、Rth(650nm)は、650nmで測定した面外リタデーションであり、Rth(550nm)は、550nmで測定した面外リタデーションである。
【0073】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、芳香族-CO-は(C6~20)アリール-CO-[式中、アリールは、非置換であるか、または1~5つのRによって置換されている]である。この実施形態の一クラスにおいて、芳香族-CO-は、非置換であるか、または1~5つのRによって置換されている、ベンゾイルまたはナフトイルである。この実施形態の一クラスにおいて、芳香族-CO-は、非置換であるか、または1~5つのRによって置換されている芳香族-CO-はベンゾイルである。この実施形態の一クラスにおいて、芳香族-CO-は、非置換であるか、または1~5つのRによって置換されているナフトイルである。
【0074】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、芳香族-CO-は、非置換であるか、または1~5つのRによって置換されている、ベンゾイルまたはナフトイルである。この実施形態の一クラスにおいて、セルロースエステルは、0.8~1.5の全DSArCOを有する。この実施形態の一クラスにおいて、セルロースエステルは、0.8~1.2の全DSArCOを有する。この実施形態の一クラスにおいて、セルロースエステルは、1.2~1.5の全DSArCOを有する。
【0075】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、芳香族-CO-は、非置換であるか、または1~5つのRによって置換されている、ベンゾイルである。この実施形態の一クラスにおいて、セルロースエステルは、0.8~1.5の全DSArCOを有する。この実施形態の一クラスにおいて、セルロースエステルは、0.8~1.2の全DSArCOを有する。この実施形態の一クラスにおいて、セルロースエステルは、1.2~1.5の全DSArCOを有する。
【0076】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、芳香族-CO-は、非置換であるか、または1~5つのRによって置換されている、ナフトイルである。この実施形態の一クラスにおいて、セルロースエステルは、0.8~1.5の全DSArCOを有する。この実施形態の一クラスにおいて、セルロースエステルは、0.8~1.2の全DSArCOを有する。この実施形態の一クラスにおいて、セルロースエステルは、1.2~1.5の全DSArCOを有する。
【0077】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、セルロースエステルは、0.7~2.2の、第1の不飽和または飽和(C1~6)アルキル-アシル置換基(「DSFAk」)の置換度を有する。一実施形態において、セルロースエステルは、0.7~1.9の、第1の不飽和または飽和(C1~6)アルキル-アシル置換基(「DSFAk」)の置換度を有する。
【0078】
この実施形態の一クラスにおいて、第1の不飽和または飽和(C1~20)アルキル-CO-置換基は、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、3-メチルブタノイル、ペンタノイル、4-メチルペンタノイル、3-メチルペンタノイル、2-メチルペンタノイル、ヘキサノイル、またはクロトニルである。この実施形態の一クラスにおいて、第1の不飽和または飽和(C1~6)アルキル-CO-置換基は、アセチル、プロピオニル、またはクロトニルである。
【0079】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、セルロースエステルは、複数の第2の(C1~20)アルキル-CO-置換基をさらに含む。この実施形態の一クラスにおいて、第2の(C1~20)アルキル-CO-置換基(「DSSAk」)の置換度は0.05~0.6である。
【0080】
この実施形態の一クラスにおいて、第2の(C1~20)アルキル-CO-置換基は、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、3-メチルブタノイル、ペンタノイル、4-メチルペンタノイル、3-メチルペンタノイル、2-メチルペンタノイル、ヘキサノイル、または2-エチルヘキサノイルである。この実施形態の一クラスにおいて、第2の(C1~20)アルキル-CO-置換基は、アセチル、イソブチリル、3-メチルブタノイル、ペンタノイル、4-メチルペンタノイル、3-メチルペンタノイル、2-メチルペンタノイル、ヘキサノイル、または2-エチルヘキサノイルである。この実施形態の一クラスにおいて、第2の(C1~20)アルキル-CO-置換基は、アセチルまたは2-エチルヘキサノイルである。
【0081】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、芳香族-CO-は、非置換であるか、または1~5つのRによって置換されているナフトイルである。一実施形態において、芳香族-CO-はナフトイルである。
【0082】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、成分Aは、
【0083】
【化5】
【0084】
である。この実施形態の一クラスにおいて、RはR-O-である。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%超で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~30wt%の範囲で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~20wt%の範囲で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~15wt%の範囲で存在する。
【0085】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、成分Aは、
【0086】
【化6】
【0087】
である。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%超で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~30wt%の範囲で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~20wt%の範囲で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~15wt%の範囲で存在する。
【0088】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、成分Aは、1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオン、アヴォベンゾン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノール(Tinuvin 1577)、イソオクチル2-(4-(4,6-ジ([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-3-ヒドロキシフェノキシ)プロパノエート(Tinuvin 479)、6,6’-(6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(3-ブトキシフェノール)(Tinuvin 460)、またはこれらの組合せである。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%超で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~30wt%の範囲で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~20wt%の範囲で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~15wt%の範囲で存在する。
【0089】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、成分Aは、1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオンである。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%超で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~30wt%の範囲で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~20wt%の範囲で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~15wt%の範囲で存在する。
【0090】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、成分Aはアヴォベンゾンである。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%超で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~30wt%の範囲で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~20wt%の範囲で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~15wt%の範囲で存在する。
【0091】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、成分Aは、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノール(Tinuvin 1577)である。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~30wt%の範囲で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~20wt%の範囲で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~15wt%の範囲で存在する。
【0092】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、成分Aは、イソオクチル2-(4-(4,6-ジ([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-3-ヒドロキシフェノキシ)プロパノエート(Tinuvin 479)である。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%超で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~30wt%の範囲で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~20wt%の範囲で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~15wt%の範囲で存在する。
【0093】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、成分Aは、6,6’-(6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(3-ブトキシフェノール)である。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%超で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~30wt%の範囲で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~20wt%の範囲で存在する。この実施形態の一クラスにおいて、成分Aは、1wt%~15wt%の範囲で存在する。
【0094】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、成分Aは、20wt%未満で存在する。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、成分Aは1wt%超で存在する。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、成分Aは2.5wt%超で存在する。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、成分Aは1wt%~30wt%の範囲で存在する。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、成分Aは2.5wt%~30wt%の範囲で存在する。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、成分Aは、2.5wt%~30wt%の範囲で存在する。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、成分Aは、5wt%~30wt%の範囲で存在する。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、成分Aは、2.5wt%~25wt%の範囲で存在する。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、成分Aは、1wt%~20wt%の範囲で存在する。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、成分Aは、1wt%~18wt%の範囲で存在する。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、成分Aは、1wt%~15wt%の範囲で存在する。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、成分Aは1wt%~10wt%の範囲で存在する。
【0095】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、mは1である。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、mは2である。一実施形態において、mは3である。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、mは4である。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、mは5である。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、mは1、2、3または4である。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、mは1、2または3である。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、mは1または2である。
【0096】
一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、nは1である。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、nは2である。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、nは3である。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、nは4である。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、nは5である。一実施形態において、nは1、2、3、または4である。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、nは1、2または3である。一実施形態において、または他の任意の実施形態との組合せにおいて、nは1または2である。
【0097】
実施形態
実施形態1。(1)(i)複数の芳香族-CO-置換基;(ii)複数の第1の不飽和または飽和(C1~6)アルキル-CO-置換基;および(iii)複数のヒドロキシル置換基を含む位置選択的に置換されたセルロースエステルであって、ここで:ヒドロキシルの置換度(「DSOH」)が0~0.5であり、芳香族-CO-置換基の置換度(「DSArCO」)が0.8~1.6であり、(C1~6)アルキル-CO-置換基の置換度(「DSAk」)が0.9~2.2であり、芳香族-CO-が(C6~20)アリール-CO-[式中、アリールは、非置換であるか、または1~5つのRによって置換されている]である、位置選択的に置換されたセルロースエステルと、(2)
【0098】
【化7】
【0099】
[式中:環Aは、(C6~20)アリールまたはN、OもしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり;環Bは、(C6~20)アリールまたはN、OもしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり;環Cは、(C6~20)アリールまたはN、OもしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり;Rは、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロアルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ、任意選択により1~5つの飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルコキシ、ハロによって置換される(C6~20)アリール;N、OもしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリール;-CHC(O)-Rであり;Rは、独立に、水素、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、または飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキルであり;Rは、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、(C6~20)アリール、またはN、OもしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり、ここで、アリールまたはヘテロアリールは、非置換であるか、または1~5つのRによって置換され;Rは、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、N、O、もしくはSから選択される1~2個のヘテロ原子を含有する飽和もしくは不飽和ヘテロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-ヒドロキシ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、(C6~10)アリール、N、O、もしくはSからなる群から選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり、ここで、各基は、非置換であるか、または1~3つのヒドロキシル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ヒドロキシ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-ヒドロキシ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、または(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキルによって置換され;各Rは、独立に、ヒドロキシ、シアノ、飽和もしくは不飽和アルキル、飽和もしくは不飽和ハロアルキル、飽和もしくは不飽和アルコキシ、飽和もしくは不飽和ハロアルコキシ、またはハロであり;各Rは、独立に、ヒドロキシ、シアノ、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO-、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO-、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO-アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、またはハロまたは(C6~20)アリールであり、ここで、アリールは、非置換であるか、または1~5つのRによって置換され;各Rは、独立に、ヒドロキシル、飽和もしくは不飽和(C1~6)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~6)アルキル、または飽和もしくは不飽和(C1~6)アルコキシであり;各Rは、R-O-、ヒドロキシ、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO-(C1~20)アルキル、(C1~20)アルケニル、(C1~20)アルケニル-O、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-CO-O-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、N、O、もしくはSから選択される1~2個のヘテロ原子を含有する飽和もしくは不飽和ヘテロ(C1~20)アルキル、(C6~10)アリール、N、O、もしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり;
ここで、各基は、非置換であるか、または1~3つのヒドロキシル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ハロ(C1~20)アルコキシ、飽和もしくは不飽和ヒドロキシ(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-ヒドロキシ(C1~20)アルキル、または(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-CO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、飽和もしくは不飽和(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-COO-(C1~20)アルキル、または(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-O-CO-(C1~20)アルキルによって置換されており;各mは、1、2、3、4または5であり;nは、1、2、3、4または5である]である成分Aと、を含む、フィルムであって、ここで:成分Aが、組成物の総重量に対して30wt%未満で存在し、フィルムの厚さ(「d」)(ミクロン)が1μm~200μmであり、フィルムが、-10nm~10nmの範囲のR(589nm)を示し、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0超であり、R(589nm)が、589nmで測定した面内リタデーションであり、Rth(589nm)が、589nmで測定した面外リタデーションである、フィルム。
【0100】
実施形態2。(1)(i)複数の芳香族-CO-置換基;(ii)複数の第1の不飽和または飽和(C1~6)アルキル-CO-置換基;および(iii)複数のヒドロキシル置換基を含む位置選択的に置換されたセルロースエステルであって、ここで:ヒドロキシルの置換度(「DSOH」)が0~0.5であり、芳香族-CO-置換基の置換度(「DSArCO」)が0.8~1.6であり、(C1~6)アルキル-CO-置換基の置換度(「DSAk」)が1.1~2.2であり、芳香族-CO-が(C6~20)アリール-CO-[式中、アリールは、非置換であるか、または1~5つのRによって置換されている]である、位置選択的に置換されたセルロースエステルと、(2)
【0101】
【化8】
【0102】
[式中:環Aは、(C6~20)アリールまたはN、OもしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり;環Bは、(C6~20)アリールであり;環Cは、(C6~20)アリールであり;Rは、アルキル、ハロアルキル、任意選択により1~5つのアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、ハロによって置換される(C6~20)アリール;N、OもしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリール;-CHC(O)-Rであり;Rは、独立に、水素、アルキル、またはハロアルキルであり;Rは、アルキル、ハロアルキル、(C6~20)アリール、またはN、OもしくはSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有する5~10員ヘテロアリールであり、ここで、アリールまたはヘテロアリールは、非置換であるか、または1~5つのRによって置換され;Rは、(C1~20)アルキル、ハロ(C1~20)アルキル、(C1~20)アルキル-CO-(C1~20)アルキルであり、それぞれ、非置換であるか、または1~3つのヒドロキシル、(C1~20)アルコキシル、またはハロ(C1~20)アルコキシル、ヒドロキシ(C1~20)アルキル、(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル、(C1~20)アルコキシ-ヒドロキシ(C1~20)アルキル、または(C1~20)アルコキシ-(C1~20)アルキル-CO-(C1~20)アルキル-によって置換され;各Rは、独立に、ヒドロキシ、シアノ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、またはハロであり;各Rは、独立に、ヒドロキシ、シアノ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、またはハロまたは(C6~20)アリールであり、ここで、アリールは、非置換であるか、または1~5つのRによって置換され;各Rは、独立に、ヒドロキシル、(C1~6)アルキル、ハロ(C1~6)アルキル、または(C1~6)アルコキシルであり;各mは、1、2、3、4または5であり;nは、1、2、3、4、または5である]である成分Aと、を含むフィルムであって、ここで:成分Aが、組成物の総重量に対して30wt%未満で存在し、フィルムの厚さ(「d」)(ミクロン)が1μm~200μmであり、フィルムが、-10nm~10nmの範囲のR(589nm)を示し、Rth(589nm)とd(nm)との比に10を乗じたものが1.0超であり、R(589nm)が、589nmで測定した面内リタデーションであり、Rth(589nm)が、589nmで測定した面外リタデーションである、フィルム。
【0103】
実施形態3。Rth(550nm)に対するRth(450nm)の比が1.05未満であり、ここで、Rth(450nm)が、450nmで測定した面外リタデーションであり、Rth(550nm)が、550nmで測定した面外リタデーションである、実施形態1または2のフィルム。
【0104】
実施形態4。Rth(550nm)に対するRth(450nm)の比が0.75~0.85である、実施形態1または2のフィルム。
実施形態5。Rth(550nm)に対するRth(650nm)の比が0.95超であり、ここで、Rth(650nm)が、650nmで測定した面外リタデーションであり、Rth(550nm)が、550nmで測定した面外リタデーションである、実施形態1~4のいずれか1つのフィルム。
【0105】
実施形態6。Rth(550nm)に対するRth(650nm)の比が1.10~1.25である、実施形態5のフィルム。
実施形態7。成分Aが、1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオン、アヴォベンゾン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノール、イソオクチル2-(4-(4,6-ジ([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-3-ヒドロキシフェノキシ)プロパノエート、6,6’-(6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(3-ブトキシフェノール)、またはこれらの組合せである、実施形態1~6のいずれか1つのフィルム。
【0106】
実施形態8。成分Aが、20wt%未満で存在する、実施形態1~7のいずれか1つのフィルム。
実施形態9。芳香族-CO-が、非置換であるか、または1~5つのRによって置換されている、ベンゾイルまたはナフトイルである、実施形態1~8のいずれか1つのフィルム。
【0107】
実施形態10。第1の不飽和または飽和(C1~20)アルキル-CO-置換基が、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、3-メチルブタノイル、ペンタノイル、4-メチルペンタノイル、3-メチルペンタノイル、2-メチルペンタノイル、ヘキサノイル、またはクロトニルである、実施形態1~8のいずれか1つのフィルム。
【0108】
実施形態11。セルロースエステルが、複数の第2の(C1~20)アルキル-CO-置換基をさらに含む、実施形態1~10のいずれか1つのフィルム。
実施形態12。第2の(C1~20)アルキル-CO-置換基が、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、3-メチルブタノイル、ペンタノイル、4-メチルペンタノイル、3-メチルペンタノイル、2-メチルペンタノイル、ヘキサノイル、または2-エチルヘキサノイルである、実施形態1~11のいずれか1つのフィルム。
【実施例
【0109】
略語
1MIM:1-メチルイミダゾール;2EHまたは2-EH:2-エチルヘキサノイル;2EHCl:塩化2-エチルヘキサノイル;AcOH:酢酸;Ak:アルキルアシルまたはアルキル-CO-;Ar:アリール;ArCO:アリール-アシルまたはアリール-CO-;atm:大気圧;Bz:ベンゾイル;BzCl:塩化ベンゾイル;℃:摂氏度;C2DS:無水グルコース単位のC2位の平均置換度;C3DS:無水グルコース単位のC3位の平均置換度;C6DS:無水グルコース単位のC6位の平均置換度;CE:セルロースエステル;CPN;シクロペンタノン;CPr:プロピオニル置換セルロースエステルまたはプロピオン酸セルロース;CPr2EH:プロピオニルおよび2-エチルヘキサノイル置換セルロースエステルまたはプロピオン酸2-エチルヘキサン酸セルロース;CPr2EHBz:プロピオニル、2-エチルヘキサノイルおよびベンゾイル置換セルロースエステルまたはプロピオン酸2-エチルヘキサン酸安息香酸セルロース;CPr2EHNp:プロピオニル、2-エチルヘキサノイルおよびナフトイル置換セルロースエステルまたは2-エチルヘキサン酸ナフトエ酸セルロース(cellulose 2-ethylhexanoate naphthoate);CPrPvNp:プロピオニル、ピバロイルおよびナフトイル置換セルロースエステルまたはプロピオン酸ピバル酸ナフトエ酸セルロース;DCM:ジクロロメタン;DEP:フタル酸ジエチル;DMAC:ジメチルアセトアミド;DMSO:ジメチルスルホキシド;DPDO:1,3-ジフェニルプロパン-1,3-ジオン;DS:平均置換度;eq:当量;EtOH:エタノール;Ex:実施例;FAk:第1のアルキル-アシルまたは第1のアルキル-CO-;SAk:第2のアルキル-アシルまたは第2のアルキル-CO-;FAr:第1のアリール-アシルまたは第1のアリール-CO-;g:グラム;Int:中間体;i-PrOHまたはiPrOH:イソプロパノール;KOAc:酢酸カリウム;MEK:メチルエチルケトン;MeOH:メタノール;MIPK:メチルイソプロピルケトン;hrまたはh:時間;L:リットル;min:分;mL:ミリリットル;μm:マイクロメートルまたはミクロン;mol:モル;NMI:N-メチルイミダゾール;NMR:核磁気共鳴;Np:ナフトイル;NpCl:2-塩化ナフトイル;Pr:プロピオニル;RBF:丸底フラスコ;RM:反応混合物;rt:室温;SAr:第2のアリール-アシルまたは第2のアリール-CO-;Tot.:合計;TFA:トリフルオロ酢酸;TFAA:無水トリフルオロ酢酸。
【0110】
NMR特性評価:プロトンNMRデータを、600MHzで操作するJEOL Model Eclipse-600 NMR分光計で入手した。サンプル管のサイズは5mmであり、サンプル濃度は、1mLのDMSO-d当たり約20mgだった。各スペクトルを、64のスキャンおよび15秒のパルス遅延を用いて80℃で記録した。1~2滴のトリフルオロ酢酸-dを各サンプルに添加して、目的のスペクトル領域から残留水をシフトした。内部基準としてDMSO-d6の中心ピークを用いてテトラメチルシランから化学シフトを100万分の1(「ppm」)で報告する(2.49ppm)。
【0111】
定量的13C NMRデータを、100MHzで操作するJEOL Model GX-400 NMR分光計で入手した。サンプル管のサイズは10mmであり、サンプル濃度は、1mLのDMSO-d当たり約100mg/mLだった。緩和剤としてのセルロースエステル100mg当たり5mgで、クロム(III)アセチルアセトネートを各サンプルに添加した。各スペクトルは、典型的には、10000のスキャンおよび1秒のパルス遅延を用いて、80℃で記録した。内部基準としてDMSO-d6の中心ピークを用いてテトラメチルシランから化学シフトをppmで報告する(39.5ppm)。
【0112】
US2012/0262650で開示された手順を適応することによって、セルロースエステルのさまざまなアシル基のプロトンおよび炭素NMR割当、置換度および相対的置換度(「RDS」)を決定した。
【0113】
DMTA測定を、5分間の等温温度に設定したTA Instruments製のDMA Q800で行い、後続して3℃/minでの25℃~230℃への温度ランプ上で行った。振動ずれは0.1%で設定した。
【0114】
フィルムの調製のためのセルロースエステル溶液およびフィルム調製物は、US2012/0262650に開示される手順を適応することによって作製した。
フィルムキャスティングのためのドープ溶液調製:セルロースエステル固形物および添加剤を溶媒に添加して、セルロースエステルおよび可塑剤の総重量に対して8~16wt%の最終濃度を得た。混合物を密封し、ローラー上に置き、24時間混合して均一な溶液を作製した。
【0115】
溶液調製に使用される溶媒は、これらに限定されないが、CPN、MEK、DCM/アセトン=90/10(wt/wt)、DCM/MeOH=90/10(wt/wt)、DCM/MeOH=95/5(wt/wt)、DCM/EtOH=90/10(wt/wt)、DCM/EtOH=95/5(wt/wt)、およびMEK/MIPK=20/80(wt/wt)であってもよい。
【0116】
フィルムキャスティング:フィルム(1.1~1.9、2.1)の場合、上記で調製した溶液を、ドクターブレードを使用して、ガラス薄板上にキャスティングして、所望の厚さのフィルムを得た。キャスティングは、45%~50%に制御した相対湿度下の換気フード中で行った。キャスティング後、DCM/アセトン=90/10(wt/wt)、DCM/EtOH=90/10(wt/wt)、DCM/EtOH=95/5(wt/wt)、DCM/MeOH=90/10(wt/wt)、DCM/MeOH=95/5(wt/wt)を溶媒として使用した場合、特に断りのない限り、カバーパン下でフィルムを45分間乾燥させて、溶媒の蒸発速度を最小限にした後でパンを取り除いた。パンが取り除かれたままフィルムを15分間乾燥させた。フィルムをガラス基板上で静置し、強制空気オーブン中、100℃で10分間焼きなました。MEKまたはMEK/MIPK=20/80(wt/wt)を溶媒として使用した場合、特に断りのない限り、フィルムを85℃のオーブン中で15分間乾燥し、強制空気オーブン中、100℃で10分間焼きなました。フィルムを9つの部分で測定した。フィルム3.1、4.1、4.2、5.1、5.2、6.1、6.2、7.1、および7.2の場合、上記で調製したドープを、ドクターブレードを使用して、ガラス板上にキャスティングして、所望の厚さのフィルムを得た。キャスティングは、45%~50%に制御した相対湿度下の換気フード中で行った。カバーパン下でフィルムを60分間乾燥させて、溶媒の蒸発速度を最小限にした後でパンを取り除いた。パンが取り除かれたままフィルムを15分間乾燥させ、次いで、フィルムをガラスから剥がし、強制空気オーブン中、100℃で10分間焼きなました。
【0117】
光学的測定:フィルムの光学的リタデーションおよび分散の測定は、370~1000nmのスペクトル領域を有するJ.A.Woollam M-2000V Spectroscopicc Ellipsometerまたは250~2500nmのスペクトル領域を有するJ.A.Woollam RC2 Ellipsometerを使用して行った。J.A.Woolam Co.,Inc.製のRetMeas(リタデーション測定)プログラムを使用して光学フィルムの面内リタデーション(R)および面外リタデーション(Rth)を得た。フィルム厚さは、Metricon Prism Coupler 2010(Metricon Corp.製)または手持ち型Positector 6000を使用して測定した。ヘイズおよびbの測定は、拡散透過率モード(2.54cm(1インチ)直径のポート)のHunterLab Ultrascan VIS比色計を使用して行った。
【0118】
化学薬品:1,3-ジフェニルプロパン-1,3-ジオンは、Millipore Sigmaから購入し、アヴォベンゾンは、東京化成工業株式会社(TCI)から購入し、Tinuvin 1577は、Ciba Specialty Chemical Corp.から購入し、Tinuvin 479はBASFから購入した。
【0119】
中間体1(CPr、DSpr=1.13)
4口丸底フラスコに、N雰囲気下、オーバーヘッド攪拌および底弁を用いて、iPrOH(259g)を添加した。ジャケットは41℃に設定した。反応容器に、Eastman(商標)CAP 482-20(60g)を添加し、RMを40分間攪拌した。RMに、AcOH(4.63g、0.41当量)およびDMSO(259g)中のN・HO(18.0g、1.89当量)を添加した。RMを24時間攪拌した。水を添加することによって粗生成物を沈降させた。粗生成物をウォッシュバッグで濾過し、多量の水で洗浄した。固形物をアルミニウムパンに移し、真空下(60℃)で終夜乾燥して標題化合物を得た。H NMR、13C NMR:DSpr=1.13、DSOH=1.87、C2DS=0.26、C3DS=0.34、C6DS=0.53。
【0120】
中間体2(CPr、DSPr=1.16)
Int 2は、Int 1の調製手順を適応するが、例外としてN・HO(1.87当量)およびAcOH(0.4当量)をEastman(商標)CAP482-20(1.0当量)に添加することによって調製した。H NMR、13C NMR:DSpr=1.16、DSOH=1.84、C2DS=0.26、C3DS=0.32、C6DS=0.57。
【0121】
中間体3(CPr2EH、DSpr=1.13およびDS2EH=0.49)
窒素雰囲気下、オーバーヘッド機械的攪拌子を備えたジャケット付き4口樹脂窯反応フラスコに、無水DMAC(1.86mol)およびNMI(0.39mol)を添加した。Int 1(0.089モル)をRMに添加し、RMを(30℃で)48時間攪拌した。次いで、DMAC(0.089モル)中の2-EHCl(0.52モル)を25分にわたってゆっくり添加した。RMを(70℃で)16時間攪拌し、水(4L)を添加することによって粗生成物を沈降させた。固形物を集め、脱イオン水で6時間連続的に洗浄し、真空下(55℃)で終夜乾燥して標題化合物を得た。H NMRおよび13C NMR:DSPr=1.13、DS2EH=0.49、DSOH=1.38、C2DS=0.38、C3DS=0.40、C6DS=0.85。
【0122】
実施例1
Ex1は、US20170306054(Ex12、表3)に記載のとおりに調製した。
【0123】
実施例2
Ex2は、US出願第62/891561号(Ex7、表9)に記載の手順に従って調製した。
【0124】
実施例3(CPr2EHBz)
窒素雰囲気下、DMAC(86mL、21.2モル当量)および1MIM(16mL、4.5モル当量)を含有するRBフラスコ中に攪拌混合物に、真空下で終夜乾燥したInt3(10g、1.0モル当量)を添加した。RMを26℃で4時間攪拌し、次いでDMAC(14mL)中のBzCl(5.1g、0.91モル当量)をゆっくり1時間にわたってRM中に添加した。RMを26℃で14時間攪拌した。粗生成物をiPrOH(2.2L)中に沈降させ、固形物を水で洗浄(2×500mL)し、連続的に脱イオン水で5時間洗浄し、真空下で終夜乾燥して、標題化合物を得た。H NMRおよび13C NMR:DsPr=1.13、Ds2EH=0.49、DsBz=0.96、C2DS=0.94、C3DS=0.63、C6DS=1.00。
【0125】
実施例4(CPr2EHBz)
Ex4は、Ex3の調製手順を適応することによって調製した。Ex5の場合、Int3(10g、1.0モル当量)およびBzCl(5.48g、1.06モル当量)を使用した。H NMRおよび13C NMR:DsPr=1.13、Ds2EH=0.49、DsBz=1.02、C2DS=0.94、C3DS=0.68、C6DS=1.00。
【0126】
実施例5
一般的手順は、出願WO2019190756A1(中間体1および実施例1の調製)に記載されていた。
【0127】
ステップ(1)中間体4(クロトン酸セルロース)(DsCr=1.39)の調製
1ARYセルロースパルプ(70g、1.0当量、5wt%)を、冷やした(25℃の)ジャケット付き反応窯に添加した。次いで、TFAA(151g、1.67当量)のTFA(1180g、24当量)溶液を、オーバーヘッド攪拌しながら、冷やしたセルロース固形物に添加した。添加を完了した後、RMを55℃で加熱し、16時間攪拌し、次いで室温まで冷却した。次いで、トランス-クロトン酸(52.0g、1.4当量)、TFA(10mL)、およびTFAA(154g、1.7当量)の溶液を調製し、45分間攪拌した。結果として得られた試薬混合物を、室温で、RMに添加し、結果として得られたRMを8時間攪拌した。RMを脱イオン水(1000mL)で処理し、濾過した固体材料を得た。固形物をiPrOH中に懸濁し、30分間攪拌し、混合物を濾過した。結果として得られた固形物を水性KOAc(5M、2000mL)中に懸濁し、36時間攪拌した。固形物を濾過して集め、脱イオン水で8時間連続的に洗浄し、真空下(60℃、12時間)で乾燥して標題中間体を得た。H NMR、13C NMR:DSCr=1.39、DSOH=1.61、C2DS=0.61、C3DS=0.72、C6DS=0.05。
【0128】
ステップ2、Ex5(クロトン酸安息香酸セルロース)(DsCr=1.39、DsBz=0.94)の調製
オーブン乾燥した1000mLのジャケット付き3口丸底フラスコ(機械的攪拌子を備える)に、Int 11(20g、1.0当量)、後続してピリジン(150mL)およびDMAC(50mL)をジャケット付き丸底フラスコにN雰囲気下で添加した。RMを、窒素の雰囲気下で固体添加用漏斗を使用して投入した。RMを50℃まで加熱し、固体が溶解するまで混合物を攪拌し、次いでRMを25℃まで冷却した。次いでBzCl(15.08g、1.4当量)を25℃で2分にわたって添加し、RMを30分間攪拌した後、50℃で終夜攪拌した。アセトン(約150mL)をRMに添加し、後続して脱イオン水(2200mL)を添加して粗生成物を沈降させた。粗生成物を濾過し、iPrOH:水の1:1溶液で洗浄した(2×)。粗生成物を脱イオン水で少なくとも5時間連続的に洗浄し、固形物を濾過して集め、真空(22.5mm Hg、60℃)下で終夜乾燥した。H NMR、13C NMR:DSCr=1.39、DSBz=0.94、DSOH=0.29、C2DS=0.83、C3DS=0.89、C6DS=0.99。
【0129】
Ex6(CPrBz)
窒素雰囲気下、DMAC(172mL、21.2モル当量)および1-メチルイミダゾール(32mL、4.5モル当量)を含有するRBフラスコ中の攪拌混合物に、真空下で終夜乾燥したInt2(20g、1.0モル当量)を添加した。RMを50℃で4時間攪拌し、26℃に冷却し、次いでBzCl(14.2g、DMAC(14mL)中1.3モル当量)をゆっくり1時間にわたってRM中に添加した。RMを26℃で14時間攪拌した。粗生成物は、沈降したiPrOH(2.2L)であり、固形物を水(2×500mL)で洗浄し、脱イオン水で5時間連続的に洗浄し、真空下で終夜乾燥して標題化合物を得た。H NMRおよび13C NMR:DsPr=1.18、DsBz=1.25(表1)。
【0130】
Ex7(CPrBz)
Ex7は、同様の手順で、ただし例外として1.5モル当量のBzClを添加して調製した。
【0131】
表1は、位置選択的に置換されたセルロースエステルEx1~7についての特性評価の情報の概要を提供する。
【0132】
【表1】
【0133】
表2は、フィルムをキャスティングするために使用される溶媒系と共に成分Aを用いて配合されたさまざまな位置選択的に置換されたセルロースエステルから調製されたフィルムの特性評価を提供する。
【0134】
フィルム中の成分Aおよび可塑剤のパーセンテージは、以下のとおりに規定する。成分Aまたは可塑剤のパーセンテージ=成分Aまたは可塑剤の重量/(セルロースエステル、成分A、可塑剤および添加する他のすべての成分)の総重量。
【0135】
ドープ溶液の濃度は、以下のように規定される。ドープ溶液の濃度=(溶媒を除外したセルロースエステル、成分A、可塑剤および添加される他のすべての成分)の総重量/(セルロースエステル、成分A、可塑剤、添加される他のすべての成分および溶媒)の総重量。
【0136】
例えば、フィルム1.3の場合、樹脂1(5g、90wt%)および成分A(0.556g、10wt%)をMEK:MIPK(20:80)(40.74g、12wt%の濃度)中に添加した。全成分が完全に混合して透明の溶液が得られるまで、混合物をローラー上に置いた。
【0137】
【表2】
【0138】
表3に示すように、対照フィルムサンプルと比較して、本発明のフィルムサンプルは、改善された波長分散を示した。例えば、フィルム1.1(対照)と比較して、フィルム1.2および1.3は、Rth(450nm)/Rth(550nm)が1.07以下であり、Rth(650nm)/Rth(550nm)が0.96以上の改善された波長分散を示した。さらに、フィルム1.6および1.8は、Rth(450nm)/Rth(550nm)が1.05以下であり、Rth(650nm)/Rth(550nm)が0.96以上のさらに改善された波長分散を示した。フィルム1.4、1.5,1.7および1.9は、Rth(450nm)/Rth(550nm)が0.92以下であり、Rth(650nm)/Rth(550nm)が1.0以上のさらに改善された波長分散を示した。
【0139】
フィルム2.1(対照)と比較して、フィルム2.2はまた、Rth(450nm)/Rth(550nm)が1.05以下であり、Rth(650nm)/Rth(550nm)が0.96以上の改善された波長分散を示した。
【0140】
フィルム3.1と比較して、フィルム3.2はまた、Rth(450nm)/Rth(550nm)が1.03以下であり、Rth(650nm)/Rth(550nm)が0.97以上の改善された波長分散を示した。
【0141】
フィルム4.1と比較して、フィルム4.2はまた、Rth(450nm)/Rth(550nm)が0.94以下であり、Rth(650nm)/Rth(550nm)が1.00以上の改善された波長分散を示した。
【0142】
フィルム5.1と比較して、フィルム5.2はまた、Rth(450nm)/Rth(550nm)が0.98以下であり、Rth(650nm)/Rth(550nm)が0.98以上の改善された波長分散を示した。
【0143】
フィルム6.1、6.2、7.1および7.2は、Rth(450nm)/Rth(550nm)が1.0以下であり、Rth(650nm)/Rth(550nm)が0.98以上の波長分散を有する。
【0144】
表3は、フィルムについての追加の光情報の概要を提供する。
【0145】
【表3】
図1
図2
【国際調査報告】