(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-03
(54)【発明の名称】天然C12-15アルキルベンゾエート
(51)【国際特許分類】
C07C 69/78 20060101AFI20230224BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20230224BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20230224BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230224BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20230224BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
C07C69/78
C11D7/26
A61K8/37
A61Q19/00
A61Q13/00 102
G01N30/88 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548933
(86)(22)【出願日】2021-02-11
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 US2021017625
(87)【国際公開番号】W WO2021163301
(87)【国際公開日】2021-08-19
(32)【優先日】2020-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】318012609
【氏名又は名称】ホールスター ビューティーアンドパーソナルケア イノベーションズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン デイビス
(72)【発明者】
【氏名】ギャリー ニューダール
(72)【発明者】
【氏名】ジーン チャン
(72)【発明者】
【氏名】フェリシア パークス
【テーマコード(参考)】
4C083
4H003
4H006
【Fターム(参考)】
4C083AC331
4C083CC02
4C083KK03
4H003DA02
4H003EB04
4H003EB06
4H003EB41
4H003ED02
4H003ED28
4H003ED29
4H003FA26
4H003FA30
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB12
4H006AB14
4H006BJ50
4H006BN10
4H006KC30
(57)【要約】
少なくとも部分的に天然源から、例えば、鎖長が炭素原子数12~15の範囲内である種々の植物に由来するアルキル化合物から、例えば、パーム由来のC12化合物から製造されたC12-15アルキルベンゾエートであって、公知のC12-15アルキルベンゾエートについて知られているすべての用途を含むあらゆる化粧品用途に有用であるC12-15アルキルベンゾエート。このC12-15アルキルベンゾエートは、コスト削減に加えて、天然由来の材料が顧客によって一般的に高く評価される、化粧品や、美容及び/又はボディケア製品、並びにフレグランスの使用分野においてより好まれるであろうより天然の製品を提供することを含む、当該技術分野における公知の製品よりも多くの利点を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルベンゾエート組成物であって、
230nmでのHPLCにより
図1に提示したとおりの同定特性を有するか、もしくは、
230nmでのHPLCにより、およそ、下表:
【表1】
のとおりの5つの主ピークのピーク面積比を有するか、もしくは
230nmでのHPLCにより、およそ14.609、17.861、22.020及び27.333に4つの主ピークを有するか、
植物由来の、好ましくは12~14個の炭素原子を有するアルキル基、例えば、パーム由来のC12化合物から少なくとも部分的に調製されたものであるか、又は
植物由来のアルキル基から調製されたものであって、植物由来のアルキル基がアルキルベンゾエート中のアルキル基の70%以上を占める、
アルキルベンゾエート組成物。
【請求項2】
C15アルキルベンゾエート化合物が添加された、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物を含む、化粧品、もしくは美容及び/もしくはボディケア製品、又はフレグランス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示されるのは、少なくとも部分的に天然源から、例えば、鎖長が炭素原子数12~15の範囲内である種々の植物に由来するアルキル化合物から、例えば、パーム由来のC12化合物から製造された新規C12-15アルキルベンゾエートであって、InnospecによるFINSOLV(登録商標) TNなどの公知のC12-15アルキルベンゾエートについて知られているすべての用途を含むあらゆる化粧品用途に有用である新規なC12-15アルキルベンゾエートである。さらに、当該新規C12-15アルキルベンゾエートは、コスト削減に加えて、これは、特に、天然由来の材料が顧客によって一般的に高く評価される、化粧品や、美容及び/又はボディケア製品、並びにフレグランスの使用分野においてより好まれるであろうより天然の製品を提供することを含む、当該技術分野における公知の製品よりも多くの利点を提供する。
【0002】
当該新規C12-15アルキルベンゾエートは、サンスクリーン、サンタン、デオドラント、制汗剤、エモリエントクリーム、ハンドクリーム及び/又はローション、並びにボディクリーム及び/又はローション、ボディオイル及びマッサージオイル、アルコール系ローション、メークアップ及び/又はネイル製品、例えば、ファンデーションローション、口紅、リップグロス、リップバーム、メークアップリムーバー、フェイスマスク、バス及びアフターバス製品、シェービング調剤、プレエレクトリックシェーブローション、合成洗剤、ヘアケア製品、パウダー、フレグランス、フットケア製品及びアフターシェーブローション及び/又はバームを含む様々な化粧品及び/又は美容及び/又はボディケア製品において、エモリエント、可溶化剤、湿潤剤及び/又は粘着防止剤として使用できる。
【0003】
植物由来のアルキル基から調製された当該新規C12-15アルキルベンゾエートは、他の公知のC12-15アルキルベンゾエートと同様に、非毒性、非刺激性、非感作性及び非コメド形成(non-comedgenic)特性を有する。
【0004】
これらのC12-15アルキルベンゾエート化合物は、以下の一般式により一般的記述することができる。
【0005】
【0006】
ここで、Rは、C12~C15アルキルであり、好ましくは、直鎖状であるが、分岐が可能であり、好ましくは非置換であるが、置換基が存在していてもよく、例えばアルキル基の末端炭素原子に1つ以上のOH基が存在する。
【0007】
新規なC12-15アルキルベンゾエート化合物は、かかるC12-15アルキルベンゾエート化合物の混合物であって、それらの化合物の一定量がC12アルキルベンゾエート化合物、C13アルキルベンゾエート化合物、C14アルキルベンゾエート化合物及び/又はC15アルキルベンゾエート化合物である混合物であってもよい。混合物中の各タイプの化合物の量は、混合物の特性に影響を与える。混合物中の各タイプのアルキルベンゾエートの一部又は全部は植物由来のもの又は合成物であることができ、高百分率、例えば70%以上のアルキル基が天然植物由来の原料からのものである実施形態が好ましい。かかる新規C12-15アルキルベンゾエート化合物は、例えば、天然植物由来のC12-14アルキルアルコール基を使用でき、完全合成C12-15アルキルベンゾエートの全ての性能要件を維持したまま、これに、製品のINCI表示/名称をC12-15アルキルベンゾエートに保つのに十分なだけの合成C12-C15アルキルアルコール基が添加される。
【0008】
C12-15アルキルベンゾエート化合物の混合物は、全てが天然原料、例えば植物由来、例えばパーム由来のC12化合物である化合物を含んでもよく、あるいは、かかる天然産の化合物といくらかの合成C12-15アルキルベンゾエート化合物との混合物を含んでもよい。例えば、特定の実施形態では、特定のアルキルベンゾエート化合物の量を調整することが望ましい場合があり、これは、C12-15アルキルベンゾエート化合物の既存の組成物に、ある量の単一種類の合成アルキルベンゾエート化合物、例えばC15を添加して、当該組成物中のC15化合物の量を増加させることによって達成することが可能である。また、天然産のパーム由来のC12-15アルキルベンゾエート化合物を、C12-15アルキルベンゾエート化合物の他の公知の混合物、例えば、ある量のFINSOLV(登録商標) TNと混合することが可能である。
【0009】
一実施形態では、天然産の植物、例えばパームに由来するアルキルベンゾエート化合物は、主に又はもっぱら、C12-14アルキルベンゾエート化合物を含み、別の実施形態ではC12アルキルベンゾエート化合物のみを含み、即ちC15化合物を含まない。このような場合、天然産のパーム由来のアルキルベンゾエート化合物を容易に使用することができ、あるいは、業界標準規格又は最終使用パラメータが義務付ける場合、ある量のC15化合物が添加されてもよい。例えば、かかる混合物は、95/5のC12-14アルキルベンゾエート化合物とC15化合物の比、あるいは、95/5のC12-14アルキルベンゾエート化合物とC12-15化合物の比を有することができる。しかしながら、存在する又は添加されたC15化合物の量は、所望の用途に応じて、例えば、12%、10%、8%、6%、5.2%、5%、4%、3%、2%又は1%に調整することができる。特定の実施形態では、より少ないC15化合物、例えば5~6%、例えば5.2%未満、又は3~5%、あるいは3%未満の化合物混合物が好ましい。
【0010】
好ましくは、上記の量の化合物は、製造プロセス中に、例えば、植物由来原料及び/又は合成原料からの使用のためのアルキルアルコール、例えば、C15化合物用の使用するアルキルアルコールの量を選択することにより添加される。しかしながら、C12-14アルキルベンゾエート化合物を、C15アルキルベンゾエート化合物と別々に調製し、その後、それらから混合物を製造することによって、所望の混合物を達成することができる。
【0011】
例えば、特定の好ましい一実施形態において、最終組成物中の成分の百分率(%)は以下のとおりである。
【0012】
【0013】
これらの値は、所望の最終用途及び/又は所望の特性に基づいて変更することができる。
【0014】
R基、すなわちC12-15アルキルベンゾエート化合物中のエステルの分岐の程度は、当該化合物の様々な特性、例えば密度、屈折率、特に流動点に影響を及ぼす。これは、より多くの分岐が存在するほで、流動点がより低くなることを意味する。したがって、C12、C13、C14及び15の割合と、これらの鎖長のそれぞれの分岐のタイプ及び程度は重要な場合があり、主にC12~C14化合物を含む組成物にどの程度のC15化合物を加えるかを決定し得る。
【0015】
C12-15アルキルベンゾエート化合物の混合物の正確な化学組成は、クロマトグラフ分析によって決定することができる。
【0016】
天然産の植物、例えばパームに由来するアルキルベンゾエート化合物は、当業者によって、他の既知のC12-15アルキルベンゾエート化合物、例えばInnospecのFINSOLV(登録商標) TNの「グリーン(環境にやさしい)」バージョンであると見なされるであろう。天然産の植物、例えばパームに由来するアルキルベンゾエート化合物は、好ましくは、ISO 16128 Natural Standardを満たしている。このような利点により、天然産のアルキルベンゾエート化合物は、合成化合物、典型的には石油由来の化合物の代わりに、より天然、例えば低石油を望んでいる多種多様な製品で使用するのに高い関心を持たれるであろう。
【0017】
新規なアルキルベンゾエート化合物の好ましい特性は、以下のとおりである。
【0018】
【0019】
さらに注目すべきは、天然産の植物、例えばパームに由来するC12-15アルキルベンゾエート化合物の貯蔵寿命が長く、例えば4年間、好ましくはさらに長く、例えば5年間であることである。
【0020】
C12-15アルキルベンゾエート化合物の調製は、当業者に容易に理解される公知の製造方法によって可能である。
【0021】
【0022】
例示のフローチャートは、いくつかの天然アルキルアルコール及びいくつかの合成アルキルアルコールが製造プロセスに使用されるプロセスを提供する。
【0023】
パーム由来のアルコール、すなわちアルキルアルコールが、合成アルキルアルコールと共にバッチに装入され、これはエステル化を導入する温度にされる。安息香酸がバッチに装入され、エステル化プロセスの開始温度より低い目標温度にされる。適切な触媒が目標温度で導入され、適切な速度で反応を進行させ、目標パラメータに達するまで反応を進行させる。その後、生成物は冷却され、生成物を包装することができる。
【0024】
好ましくは、反応は、生成物中に反応物が残留せずに完了まで進行するが、いくらかの量の微量反応物が残留してもよく、例えば、0.5%以下の遊離アルコール、例えば、0.2%のアルコールが残留してもよい。
【0025】
1つの選択肢は、アルコール用の天然のC12-14アルコール原料、例えばパーム核C12/C14(好ましくは共蒸留)(脂肪アルコールは約46/16(C12が約74%、C14が26%)であろう)を使用することである。
【0026】
HPLCは、各ランが全く同じ結果をもたらすような厳密な技術ではないことは当該技術分野で理解されている。したがって、本開示に示したHPLCピーク面積比は、例えば、±10%、±5%又は±2%及び±1%の許容範囲内の値を含み、保持時間に関するHPLCピーク値も、例えば、±0.2分、±0.1分、±0.05分又は±0.02分で、あるいは、百分率許与差、例えば±10%の時間、±5%の時間、±2%の時間、又は±1%の時間で変わりうる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、サンプルAのHPLC結果を示す図である。
【
図2】
図2は、サンプルBのHPLC結果を示す図である。
【
図3】
図3は、例示的な製造フローチャートを示す図である。
【実施例】
【0028】
サンプルAを、
図3に提示した処方にしたがって製造した。
結果:パーム由来のC12と合成C15を用いて製造されたC12-15アルキルベンゾエートについての報告。
【0029】
2つのサンプルを用いて比較検討を行った:
1.天然C-12、サンプルA
2.InnospecからのFINSOLV(登録商標) TN、サンプルB
【0030】
FINSOLV(登録商標) TNは、公開情報に基づき、下記のとおり化学的に表現される。
【0031】
【0032】
230nmでのHPLC法による化合物の組成は、サンプルA及びBについてそれぞれ
図1及び
図2に示される情報を提供した。
【0033】
【0034】
スキャンと%組成から、使用した出発材料が異なるため、これら2つのサンプルからの化合物の寄与は非常に異なることが明らかである。
【0035】
【0036】
AVO=アボベンゾン(Avobenzone)=ブチルメトキシジベンゾイルメタン
BTZ=ベモトリジノール(Bemotrizinol)=ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
DHHB=ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート
EHT=エチルヘキシルトリアゾン
【0037】
上の表では、非常に類似した特性がこれら2つのサンプルによって与えられた。このことは、一般的に、産業界におけるこれらの用途が著しく重複し得ることを意味する。
【0038】
凝固点:
サンプルA及びサンプルBを冷凍庫(-15℃)に一晩入れておいた。凍結直後は両社とも室温で固体であり、サンプルAはサンプルBよりも早く液体になった。このことは、サンプルAがサンプルBよりも高い凝固点を有することを意味する。
【0039】
【0040】
光安定性試験において、サンプルA及びサンプルBは、試験した2つのUVフィルターについて非常に類似した光安定性を有する。したがって、当業界における公知の製品、例えば完全合成物、と同様に、パーム由来のC12を用いて製造された新規なC12-15アルキルベンゾエートを効果的に使用することができる。
【0041】
【0042】
実際の配合物の比較作業において。
・30%のサンプルAを含むバッチは、30%のサンプルBよりも低い粘度を有していた。
・30%のサンプルAを含むバッチは、30%のサンプルBよりも低いpHを有していた。
【0043】
pHは、より中性に近いpHが望まれる場合、様々な既知の方法によって調整することができる。pHを調整するための典型的なアプローチとしては、金属水酸化物及び様々なアミンを含む化粧品グレードのアルカリ性材料が挙げられる。
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
したがって、1つの目的は、新規C12-15アルキルベンゾエートによって、完全合成C12-15アルキルベンゾエートの有益な特性を提供しながら、顧客が当該新規C12-15アルキルベンゾエートを天然又は十分に天然と見なすほどに、表6及び7に提示される一連の特性の両方に対して同様の特性を達成することである。
【0048】
さらに注目すべきは、当該新規C12-15アルキルベンゾエートの溶解性及び低い融点は、市販製品において1対1の置換としてFINSOLV(登録商標) TNをうまく置き換えるのに必要なようなものであり、したがって、多くの市販製品におけるすべての周知の利点を提供するとともに、より天然で、より環境に優しく、より低合成であり、例えば石油由来の原料がより少ない、材料、すなわち、より顧客が望む最終製品を提供することである。
【0049】
要約すると、天然植物由来の材料を含む新規C12-15アルキルベンゾエートは、意外にも、植物由来の材料の量が高い場合でも、例えば60%以上、70%以上、71%以上、75%以上、又は80%以上と高い場合でも、FINSOLV(登録商標) TNなどの合成C12-15アルキルベンゾエートの有益な特性を再現することができる。
【国際調査報告】