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特表2023-508748改良された特殊目的キュベットアセンブリおよびナノ粒子コロイドの光学顕微鏡法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-03
(54)【発明の名称】改良された特殊目的キュベットアセンブリおよびナノ粒子コロイドの光学顕微鏡法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/03 20060101AFI20230224BHJP
   G01N 15/14 20060101ALI20230224BHJP
   G01N 21/49 20060101ALI20230224BHJP
   G02B 21/36 20060101ALN20230224BHJP
【FI】
G01N21/03 Z
G01N15/14 P
G01N21/49 Z
G02B21/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549398
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-22
(85)【翻訳文提出日】2022-08-16
(86)【国際出願番号】 US2020062549
(87)【国際公開番号】W WO2021167673
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】16/793,161
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592096443
【氏名又は名称】ホリバ インスツルメンツ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HORIBA INSTRUMENTS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100123124
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 昌大
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】タタルキエウィチ, ジャン, ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】マスード, ファイザン
【テーマコード(参考)】
2G057
2G059
2H052
【Fターム(参考)】
2G057AA02
2G057AB01
2G057AB04
2G057AB08
2G057AC01
2G057AC08
2G057AD04
2G057BA01
2G057BB01
2G057BB06
2G057BD02
2G057CB03
2G057CB05
2G057DA03
2G057DA05
2G057DA20
2G057DB08
2G057EA06
2G057JA16
2G059AA03
2G059AA05
2G059BB06
2G059BB12
2G059CC12
2G059CC20
2G059DD05
2G059DD16
2G059EE02
2G059FF03
2G059GG01
2G059HH02
2G059KK01
2G059KK04
2G059LL04
2G059NN01
2H052AC06
2H052AE13
2H052AF14
(57)【要約】
液体の大きな動きをできる限り減らし、後方散乱によって誘発される光の広がりをできる限り減らす、小さく、制限された容積を形成する特徴を持つ特殊目的キュベットアセンブリである。この特殊目的キュベットアセンブリは、光シートと、この光シート面に垂直な向きに向けられている、ビデオカメラに接続された光学顕微鏡と、を備える、適切な光学デバイス中に置かれて、液体中のナノ粒子のブラウン運動の記録を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子を観察するシステムであって、
キュベットに向けられる電磁エネルギーを生成する光源と、
前記キュベット内で電磁エネルギーを検出するセンサと、を備え、
前記キュベットは:
容積を定める外壁と底面であって、前記外壁の少なくとも一部分は前記電磁エネルギーについて透過性であり、前記容積は懸濁液と前記ナノ粒子を含むのに適合するものと、
観察チャンバであって、
前記外壁から伸びる観察チャンバ上壁と、前記外壁から伸びる観察チャンバ下壁とであって、前記観察チャンバ上壁と前記観察チャンバ下壁とは互いに実質的に平行であるものを備え、
前記電磁エネルギーは、前記観察チャンバ上壁と前記観察チャンバ下壁と平行な第1の方向で前記観察チャンバに向けて進入し、
前記電磁エネルギーを、前記観察チャンバ上壁と前記観察チャンバ下壁と平行な第2の方向であって前記第1の方向と反対向きである前記第2の方向で、前記観察チャンバから外へ反射するように構成される反射構造を備えるものと、
前記観察チャンバとは別体の、流体連通する混合チャンバと、
前記混合チャンバと流体連通する試料投入口と、
を備え、
前記センサは、前記反射構造の近傍領域の前記電磁エネルギーを検出するよう配置され、この検出される前記電磁エネルギーは、前記第1の方向と垂直に伝わったものである、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記反射構造が、
前記観察チャンバ上壁から前記観察チャンバ下壁へ45度の角度で伸びる第1の反射面と、
前記観察チャンバ上壁の一部または前記観察チャンバ下壁の一部に形成された第2の反射面と、を備えることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の反射面が、前記観察チャンバ上壁、前記観察チャンバ下壁のいずれかと交わる場所またはその両方に、1つまたは複数の切り欠きをさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記反射構造が、
前記観察チャンバ上壁から前記観察チャンバ下壁へ垂直に伸びる反射面を備えることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記反射面が、前記観察チャンバ上壁、前記観察チャンバ下壁のいずれかと交わる場所またはその両方に、1つまたは複数の切り欠きをさらに備えることを特徴とする、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記反射構造は挿入可能な反射面を備え、前記観察チャンバは前記挿入可能な反射面を受けるように構成されたミラースロットを備えることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記ミラースロットが、前記観察チャンバ上壁および前記観察チャンバ下壁の中に形成されていることを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記混合チャンバが撹拌棒を備えることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記観察チャンバ上壁と前記観察チャンバ下壁が、低反射または非反射の表面を備えることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記混合チャンバは、前記観察チャンバより大きいことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記外壁の透過性な部分が高品質の光学ガラスで作られている、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記外壁の第2の部分が、前記透過性な部分と異なる材料で作られている、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
キュベットの挿入体であって、該キュベットは、組み合わせて容積を定める外壁と底面とを備え、前記外壁の少なくとも一部分は電磁エネルギーについて透過性であり、前記容積は懸濁液と粒子を含むのに適合するものであり、
前記挿入体は、
前記外壁から伸びる観察チャンバ上壁と、前記外壁から伸びる観察チャンバ下壁とであって、前記観察チャンバ上壁と前記観察チャンバ下壁とは互いに実質的に平行であるものを備え、
前記電磁エネルギーは、前記観察チャンバ上壁と前記観察チャンバ下壁と平行な第1の方向で前記観察チャンバに向けて進入し、
前記電磁エネルギーを、前記観察チャンバ上壁と前記観察チャンバ下壁と平行な第2の方向であって前記第1の方向と反対向きである前記第2の方向で、前記観察チャンバから外へ反射するように構成される反射構造と、
前記観察チャンバとは別体の、流体連通する混合チャンバと、
前記混合チャンバと流体連通する試料投入口と、
を備えることを特徴とする挿入体。
【請求項14】
前記反射構造が、
前記観察チャンバ上壁から前記観察チャンバ下壁へ45度の角度で伸びる第1の反射面と、
前記観察チャンバ上壁の一部または前記観察チャンバ下壁の一部に形成された第2の反射面と、を備えることを特徴とする、請求項13に記載の挿入体。
【請求項15】
前記第1の反射面が、前記観察チャンバ上壁、前記観察チャンバ下壁のいずれかと交わる場所またはその両方に、1つまたは複数の切り欠きをさらに備えることを特徴とする、請求項14に記載の挿入体。
【請求項16】
前記反射構造が、
前記観察チャンバ上壁から前記観察チャンバ下壁へ垂直に伸びる反射面を備えることを特徴とする、請求項13に記載の挿入体。
【請求項17】
前記反射面が、前記観察チャンバ上壁、前記観察チャンバ下壁のいずれかと交わる場所またはその両方に、1つまたは複数の切り欠きをさらに備えることを特徴とする、請求項16に記載の挿入体。
【請求項18】
前記反射構造は挿入可能な反射面を備え、前記観察チャンバは前記挿入可能な反射面を受けるように構成されたミラースロットを備えることを特徴とする、請求項13に記載の挿入体。
【請求項19】
前記ミラースロットが、前記観察チャンバ上壁および前記観察チャンバ下壁の中に形成されていることを特徴とする、請求項18に記載の挿入体。
【請求項20】
前記観察チャンバ上壁と前記観察チャンバ下壁が、低反射または非反射の表面を備えることを特徴とする、請求項13に記載の挿入体。
【請求項21】
前記混合チャンバは、前記観察チャンバより大きいことを特徴とする、請求項13に記載の挿入体。
【請求項22】
前記挿入体の、前記キュベットへの取り付けおよび取り外しが容易になるように適合された取り付け機構をさらに備えることを特徴とする、請求項13に記載の挿入体。
【請求項23】
前記挿入体の表面が、該表面を化学的に密封するコーティングの薄い層で覆われていることを特徴とする、請求項13に記載の挿入体。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料中のナノ粒子の検出および測定のシステムに関する。特に、液体試料中のナノ粒子の観察のためのチャンバの構造に関するものである。
【0002】
(関連する出願)
本出願は、2020年2月18日に出願され、2020年11月2日に米国特許第10823662号として登録された“IMPROVED SPECIAL PURPOSE CUVETTE ASSEMBLY AND METHOD FOR OPTICAL MICROSCOPY OF NANOPARTICLE COLLOIDS”という名称の米国特許出願第16793161号の優先権を主張するものであり、その全ての開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本出願はまた、以下の各出願に関連するものであり、これらの全ての開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。米国特許第10,161,852号として発行された“SPECIAL PURPOSE CUVETTE ASSEMBLY AND METHOD FOR OPTICAL MICROSCOPY OF NANOPARTICLES IN LIQUIDS”という名称の2016年6月28日に出願された米国特許出願第15/594967号。2015年7月1日に出願された“SPECIAL PURPOSE CUVETTE ASSEMBLY AND METHOD FOR OPTICAL MICROSCOPY OF NANOPARTICLES IN LIQUIDS”という名称の米国仮特許出願第62/187391号からの米国非仮出願としての優先権を主張し、米国特許第9,541,490号として2017年1月10日に発行された“SPECIAL PURPOSE CUVETTE ASSEMBLY AND METHOD FOR OPTICAL MICROSCOPY OF NANOPARTICLES IN LIQUIDS”という名称の2016年6月28日に出願された米国特許出願第15/194,823号。米国特許第9,645,070号として発行された“NANOPARTICLE ANALYZER”という名称の2015年6月3日に出願された米国特許出願第14/730,138号。米国特許第9,909,972号として発行された“MULTI-CAMERA APPARATUS FOR OBSERVATION OF MICROSCOPIC MOVEMENTS AND COUNTING OF PARTICLES IN COLLOIDS AND ITS CALIBRATION”という名称の2016年2月8日に出願された米国特許出願第15/018,532号。米国特許第10,012,580号として発行された“APPARATUS AND METHOD FOR MEASUREMENT OF GROWTH OR DISSOLUTION KINETICS OF COLLOIDAL PARTICLES”という名称の2016年10月13日に出願された米国特許出願第15/293,180号。米国特許第9,857,283号として発行された“METHOD FOR CALIBRATING INVESTIGATED VOLUME FOR LIGHT SHEET BASED NANOPARTICLE TRACKING AND COUNTING APPARATUS”という名称の2017年6月27日に出願された米国仮特許出願第15/634,858号。
【背景技術】
【0004】
ナノ粒子は遍在しており、地球上の自然環境において最も豊富に存在する粒子状の物質であり、ヒトの活動に関連する多くの用途にわたって広く普及している。多くの種類の天然ナノ粒子や人工(工学的)ナノ粒子が存在している。ナノ粒子は、空気中、水中環境中、雨水中、飲料水中、生体液中、医薬品中、薬物送達(ドラッグデリバリー)や治療用の製品中、ならびに広範囲の多くの工業製品中に存在する。ナノ粒子は通常、異なるサイズの粒子が共に存在する特徴をもつ多分散集合体内に存在する。
【0005】
ナノ粒子が広く使用されていることを考えると、ナノ粒子の特性を制御し、正確に特徴付ける能力は、多くの用途に有用であろう。ナノ粒子の特性を測定するための従来の方法としては、ナノ粒子トラッキング解析(Nanoparticle Tracking Analysis)が挙げられ、これは、顕微鏡およびビデオカメラを用いて記録されたビデオのフレームを分析し、ブラウン運動中のナノ粒子によって反射または散乱された光の画像を追跡する。そのような分析を行うための機器は、通常、極めて正確に規定された狭い光シートで液体を照射し、光シートに対して通常90度の角度で、ナノ粒子からの散乱光を観察することを可能にする小さなセルまたはキュベットを用いている。したがって、キュベットは、少なくとも2面の光減衰特性が最小である表面(例えば光学ガラス面)を含まなければならない。このようなキュベットは、様々な実験機器におけるあらゆる種類の光学測定に広く使用されており、容易に入手でき、標準化された内部寸法(プロトタイプの場合、10 mm×10 mm×45 mm)を有する。
【0006】
理想的には、粒子の動きが純粋なブラウン運動のみとなるように、ビデオ録画中には液体の大きな動き(bulk movement)をなくすべきである。しかし、ガラスの熱伝導率が低いことを原因として、また、照射ビームから伝達されて液体およびキュベットの壁によって吸収される、潜在的にかなりの量のエネルギーによって、従来のキュベットでは、液体の量にかかわらず、熱によって発生させられた液体のマイクロ流が観察されていた。他のマイクロ流の発生源も可能である。例えば、機器が設置されているテーブルの振動が流れを生じさせることも可能だし、試料の液体の蒸発によって液体の表面が冷やされ、その結果、流れ(対流)を引き起こす温度勾配が生成され得る。また、キュベット内の液体をかき混ぜたり、キュベットでの液体の注入・くみ出しによっても、流れが誘発されうる。効果的で時宜にかなった粒子の分析のために、このような、あるいはその他の誘発された流れをできるだけ早く止めることが常に望ましい。このようなバルク液体の動きの影響を検出し除去する、さまざまなアルゴリズムが利用可能である。しかしながら、それらのアルゴリズムには限界があり、バルク液体の動きが無ければ、常により正確な結果が得られる。
【0007】
液体中のナノ粒子からの散乱光の、最適な検出と処理のための、他の望ましい状況は、光がキュベットに入る壁とは反対側のキュベットの壁(後壁)からの、光の後方散乱を最小化するかあるいは除去することである。このような入射光線の後方散乱は、一般的に、照明領域を広げ(完全に平行ではなく、いくぶん楕円形である光シートを厚くする(thickening))、従って部分的に顕微鏡の焦点が合っていない画像(ぼやけた画像)を形成し、正確な粒子の追跡に適さない。後方散乱によって誘発される広がりは、光シートの幅に本質的に一貫性のない影響を及ぼし、この光シートの幅が各測定で分析される試料の量に影響を及ぼすので、その結果、粒子濃度測定におけるばらつきを引き起こす。二次的に害を及ぼす、キュベット内の他の反射面からの光散乱効果も、光吸収材料やコーティング(黒色塗料など)を用いることで、最小限におさえるべきである。
【0008】
他の重要な検討事項としては、光シートに対して適切な位置で正確に保持し、温度を制御し、液体をかき混ぜたり、液体の注入・くみ出しを可能にする、既に存在する部品との互換性である。このような、かき混ぜや、注入・くみ出しは、キュベット内の同じ試料からの複数の新鮮なアリコートの検査を容易にし、また、キュベットの底部の磁気撹拌棒が外部の回転磁石によって動かされることにより、あるいは、外付のポンプによって、容易に達成できる。
【0009】
したがって、キュベットの観察領域内で、後方散乱によって誘発される光の広がりも軽減しつつ、液体の移動を最小限に抑えることができる、改善されたシステムが求められている。
【発明の概要】
【0010】
以下に述べられる装置、システム、方法は、当業者には明らかであろう通り、動きや光ビームが広がる問題を見事に解決し、その他の改善と利益をももたらす。すなわち、ナノ粒子上で散乱された光を観察するためのシステムが提供される。システムは、キュベットに向けられる電磁エネルギーを生成する光源と、入射光の方向にほぼ垂直な向きで、前記電磁エネルギーを、検出するセンサと、を備える。前記キュベットは、容積を定める外壁と底面を備え、前記外壁の一部分は前記電磁エネルギーについて透過性である。この容積には、懸濁液と前記ナノ粒子が含まれる。前記キュベットはまた、前記外壁から伸びる観察チャンバ上壁と、観察チャンバ下壁を持つ観察チャンバを有し、前記観察チャンバ上壁と前記観察チャンバ下壁とは互いに実質的に平行である。前記電磁エネルギーは、前記観察チャンバ上壁と前記観察チャンバ下壁と平行な第1の方向で前記観察チャンバに向けて進入する。反射構造が、前記電磁エネルギーを、前記観察チャンバ上壁と前記観察チャンバ下壁と平行な第2の方向であって前記第1の方向と反対向きである前記第2の方向で、前記観察チャンバから外へ反射する。混合チャンバが、前記観察チャンバとは別体で、流体連通する。試料投入口が、前記混合チャンバと流体連通する。前記センサは、前記反射構造の近傍領域の電磁エネルギーを検出するよう、もとの光の方向と垂直に配置される。
【0011】
前記反射構造は、前記観察チャンバ上壁から前記観察チャンバ下壁へ45度の角度で伸びる第1の反射面と、前記観察チャンバ上壁の一部または前記観察チャンバ下壁の一部に形成された第2の反射面と、を備えても良い。前記第1の反射面が、前記観察チャンバ上壁、前記観察チャンバ下壁のいずれかと交わる場所またはその両方に、1つまたは複数の切り欠きが形成されていても良い。
【0012】
これに代えて、前記反射構造は、前記観察チャンバ上壁から前記観察チャンバ下壁へ垂直に伸びる反射面を備えても良い。前記反射面が、前記観察チャンバ上壁、前記観察チャンバ下壁のいずれかと交わる場所またはその両方に、1つまたは複数の切り欠きが形成されていても良い。
【0013】
前記混合チャンバは撹拌棒を備えても良い。前記混合チャンバは、前記観察チャンバより大きくても良い。
【0014】
前記観察チャンバ上壁と前記観察チャンバ下壁は、低反射または非反射の表面を備えても良い。前記外壁の透過性な部分は高品質の光学ガラスで作られていても良い。前記キュベットの前記外壁は、前記透過性な部分と異なる材料で作られている第2の部分を含んでいても良い。
【0015】
前述のキュベットは、キュベットに挿入される、別体の挿入体で形成されていても良い。前記挿入体は、前記キュベットへの取り付けおよび取り外しが容易になるように適合された取り付け機構を備えても良い。
【0016】
当業者に明らかなように、さらなる態様、代替形態および変形形態も本明細書に開示され、本発明の一部として含まれるものとして具体的に企図されている。本発明は、本出願または関連出願において特許庁によって許可された特許請求の範囲に記載され、特定の実施例の以下の概要の説明は、法的保護の範囲を限定、定義、または他の方法で確立するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は、以下の図面を参照すれば、よりよく理解することができる。図面内の構成要素は、必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、本発明の例示的態様を明確に示すことに重点が置かれている。図面において、同様の参照番号は、異なる図および/または実施形態にわたって対応する部分を示す。いくつかの構成要素および詳細は、本発明をより明確に説明するのに役立つことから、図面に現れない場合があることが理解されるであろう。
【0018】
図1は、ナノ粒子に散在している電磁エネルギーを用いてナノ粒子を検出するシステムを示す。
【0019】
図2は、不鮮明画像と量の不確実性の原因となる後方散乱の影響を示す。
【0020】
図3は、特有のキュベット挿入体(cuvette insert)(検出器の観点から)の部分側面図である。
【0021】
図4Aは、入射光の方向に対して45度の角度で配置された鏡、および入射光の方向と平行に配置された鏡を用いた反射構造を示す。
【0022】
図4Bは、入射光の方向に対して45度の角度で配置された鏡、および入射光の方向と平行に配置された鏡を用いた反射構造を示す。
【0023】
図4Cは、入射光の方向に対して90度の角度で配置された鏡を用いた反射構造を示す。
【0024】
図4Dは、チャンバ壁と反射面との間が曲線的な45度の角度の場合の光ビームの反射を示す。
【0025】
図4Eは、チャンバ壁と反射面との間がくぼみを用いた45度の角度の場合の光ビームの反射を示す。
【0026】
図4Fは、鏡を受けるように構成されたスロットを有する、特有のキュベット挿入体(cuvette insert)(検出器の観点から)の正面図である。
【0027】
図5は、特有のキュベット挿入体の等角上部正面図である。
【0028】
図6は、特有のキュベット挿入体の等角上部側面図である。
【0029】
図7は、特有のキュベット挿入体の上面図である。
【0030】
図8は、特有のキュベット挿入体の底面図である。
【0031】
図9Aは、A-A断面線を示す側面図である。
【0032】
図9Bは、A-A線断面図である。
【0033】
図10は、特有のキュベット挿入体(cuvette insert)(検出器の観点から)の正面図である。
【0034】
図11は、特有のキュベット挿入体(cuvette insert)(入射レーザー光の方向)の側面図である。
【0035】
図12Aは、キュベットに挿入されている、特有のキュベット挿入体(cuvette insert)を示す。
【0036】
図12Bは、キュベットに完全に挿入されたキュベット挿入体を示す。
【0037】
図13は、本願に記述されるキュベット/挿入体を用いない場合の、粒子の対流運動を示す写真である。
【0038】
図14は、本願に記述されるキュベット/挿入体を用いた場合の、粒子の運動を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下において、本発明者が最良の実施態様と考えるものを含む、本発明のいくつかの具体的な実施形態を説明する。これらの具体的な実施形態の例を添付の図面に示す。本発明は、これらの具体的な実施形態に関連して説明されるが、本発明は、説明または図示されている実施形態に限定されるものではない。一方で、別記の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨および範囲内に含まれ得る代替形態、修正形態、および均等物については、本発明に包含されているものである。
【0040】
以下の説明では、本発明を十分に理解するために、多数の具体的な詳細について記載する。本発明の実施形態の例の中には、これらの具体的な詳細の一部または全部を省略して実現可能な場合もある。また、他の例においては、当業者に知られている作業工程は、本発明を不必要に不明瞭にすることを避けるべく、詳細に説明されていない場合もある。本発明の様々な技術および機構は、明確化のために単数形で記載されることがある。しかしながら、各実施形態においては、特に断りのない限り、こういった技術または機構について、複数のものが反復されている場合を含むことに留意されたい。同様に、本明細書に示され、記載されている方法の種々のステップは、必ずしも示された順序で実施されなくともよく、また、ある実施形態において、一部のステップが実施されなくとも良い場合がある。したがって、本明細書で説明される方法のいくつかの実施形態は、図示または説明されているものよりも多いまたは少ないステップを含んでいても良い。さらに、本発明の技術および機構は、2つ以上の物体の間の接続、関係、または通信の説明を含んでいる場合がある。このような物体間の接続や関係は、必ずしも、直接的な、妨げのない接続に限定されてはおらず、それらの2つの物体の間に、他のさまざまな物体やプロセスが介在する場合も含まれる。したがって、記載されている接続は、別段明記されていない限り、必ずしも直接的で、妨げのない接続を意味するものではない。
【0041】
以下に、添付の図面に対応した主な構成例のリストを示す。これらは、参照を容易にするために提示されるものであり、同様の参照番号については、明細書および図面を通じて、対応する構成を示している。
【0042】
10 ナノ粒子で散乱された光を観察するシステム
【0043】
15 光源
【0044】
20 電磁エネルギー(ビームまたはシート)
【0045】
25 キュベット
【0046】
26 キュベット容積
【0047】
28 キュベット挿入体
【0048】
29 キュベットホルダー
【0049】
30 センサ
【0050】
35 キュベット外壁
【0051】
40 キュベット底面
【0052】
47 後方散乱反射
【0053】
48 微小後方散乱拡大領域
【0054】
50 観察チャンバ
【0055】
51 観察チャンバ上壁
【0056】
52 観察チャンバ下壁
【0057】
55 第1の鏡/反射面
【0058】
56 電磁エネルギーの第1の方向
【0059】
57 電磁エネルギーの第2の(反対の)方向
【0060】
60 第2の鏡/反射面
【0061】
60-1 ミラースロット(挿入穴)
【0062】
60-2 挿入可能な鏡/反射面
【0063】
61 反射構造
【0064】
62 顕微鏡で観察される領域
【0065】
65 曲線的な鏡/反射面
【0066】
67 電磁エネルギーの反射
【0067】
70 切り欠き
【0068】
72 電磁エネルギーの反射
【0069】
75 混合チャンバ(混合室)
【0070】
80 混合チャンバと観察チャンバ間の流体連通
【0071】
85 取り付け機構
【0072】
90 試料投入口
【0073】
95 撹拌棒
【0074】
100 低反射または非反射表面
【0075】
105 外壁の透過性な部分(高品質光学ガラス)
【0076】
110 キュベット外壁の第2の部分
【0077】
115 干渉低減コーティング
【0078】
本発明の主な目的は、標準サイズのキュベット内で、光シートがキュベットに入ることを可能にしながら、ビデオの記録中に液体の流れを防止または大幅に制限し、また、キュベット内の液体の撹拌を可能にしながら、散乱光を垂直方向にキュベットから出射可能にするような特徴を提供することである。この目的は、入射光シートをまたぐように配置され、垂直方向の散乱光の記録が可能な2つの平行な面によって達成された。さらに、ビデオカメラの視野とキュベットの後壁との間の光シートの経路に、(1)粒子の照明が増加し、(2)温度勾配を均一化して粒子の熱ドリフトを軽減するように、ミラーが配置される。
【0079】
このような特殊な目的のキュベットの製造は、少なくとも2つの方法で達成することができる。1つの選択肢は、標準的な市販のガラスキュベット内に配置される挿入体を製造することである。別の選択肢は、主にプラスチックから作られるが、キュベットの側面に成形された2つの光学ガラス窓を有するような特徴を有するキュベットとすることである。このような構成によれば、光学グレードガラスのような高価な材料の使用を最小限にすることによって、コストを低減することができる。以下の図面を用いて本発明をより詳細に説明する。
【0080】
図1は、ナノ粒子のブラウン運動を観察するためのシステム10を用いた従来の実験装置を例示する。通常は関連する光学系(図示せず)を備えたレーザーである光源15は、キュベット25に入射する電磁エネルギー20(光ビームもしくは光シート)を生成する。キュベット25は、ナノ粒子(コロイド)と共に液体を収容する。例えば顕微鏡やカメラ(図示せず)を備えるセンサ30は、電磁エネルギー20の方向と垂直な向きで、キュベット25からの画像を記録する。キュベット25は、ホルダー29により、キュベットの動きを防ぐ位置に保持され、動きに誘発された不鮮明さを減らし、より良好な画像を生成するとともに、必要に応じて温度測定と安定化を可能とする。
【0081】
図2は、不鮮明画像の原因ともなり得る後方散乱の影響を示す。電磁エネルギー20は、キュベット25に入射し、キュベット外壁35に衝突して、後方散乱電磁エネルギー20が集束しにくくなり、厚くなってしまう(thickened)。この後方散乱反射が矢印47で示されている。このあまり集束されていない光シートがナノ粒子に当たると、センサ30によって撮影される画像が不鮮明になる可能性がある。画像の不鮮明さをある程度まで修正する処理技術も存在しているものの、不鮮明な画像はブラウン運動の分析を不正確にする可能性があり、観測されるコロイドの量を変化させてしまう。しかし、反射面の近傍(すなわち、微小後方散乱拡大領域48)では、この広がりは、使用する装置の仕様に比べてそれほど実質的なものではない。シリンドリカルレンズと対物レンズによって生成される光シートの実用的な実施では、最も狭い場所の周囲の光シートの変化が、ナノ粒子の可視化に用いられる顕微鏡の被写界深度(DOF)よりも大きくならないようにする。通常、異なる希釈剤(異なる屈折率)で試験したとき、最も狭い場所で厚さ約50ミクロンであり、最も狭い場所の中心から3mm離れたところでは、厚さ60ミクロン以下である。典型的な20x顕微鏡のDOFは、50~60ミクロンの間である(これは主観的な測定であり、焦点の中心から離れると、画像はどんどん不鮮明になっていく)。したがって、調査対象物から光シートの向きを外す代わりに、試料を再度照らすよう向け直すべきである。これは、1枚の90度の鏡の単なる組み合わせや、図3に示されるように、顕微鏡62によって観察される領域が45度の鏡の近傍にあるようにされた2枚の鏡面の組み合わせによって実現できる。本開示の趣旨を逸脱せずに、さらに多くの鏡を用いることも可能である。さらに、「鏡」/「反射面」および「反射構造」の用語は、裏面に金属被覆を有するガラス製の鏡、高度に研磨された金属ミラー、その他の反射率の高い表面、を含むことを意図する。好ましくは、「鏡」/「反射面」および「反射構造」は、入射電磁放射の少なくとも95%、より最適には少なくとも99%を反射するように構成される。
【0082】
鏡によって後方散乱された光は、最初の光シートによって照らされた領域よりも僅かに広い領域のみしか照らさないため、いわゆる暗視野顕微鏡(dark background microscopy)に利用できるものの二倍の光強度を効果的に得ることができる。わずかに光を吸収する粒子の場合、光シートの2つの部分が反対の方向を有するので、それゆえそれらは粒子のそれぞれ反対の側面を加熱する傾向となり、したがって、粒子の温かい表面付近での水の膨張による漂流を軽減する。
【0083】
図3は、本発明の観察チャンバ50を示しており、これは、キュベット25の構造中に形作られていても良いし、あるいは代わりに、標準寸法のキュベット内にぴったりと適合するキュベット挿入体28として構成されていても良く、電磁エネルギー20が、キュベット25の壁35を貫通して観察チャンバ50に入ることができるようになっている。観察チャンバ50は、キュベット25の外壁35から伸びる観察チャンバ上壁51と、同様にキュベット25の外壁から伸びる観察チャンバ下壁52とを備える。観察チャンバ上壁51と観察チャンバ下壁52とは、互いに実質的に平行であり、電磁エネルギー20は、観察チャンバ上壁51および観察チャンバ下壁52に平行な第1の方向56で観察チャンバ50に向けて進入する。観察チャンバ50はまた、電磁エネルギー20を、観察チャンバ上壁51および観察チャンバ下壁52に平行だが、電磁エネルギーが進入する第1の方向56と反対向きの第2の方向57で観察チャンバ50から外へ反射する反射構造61を備える。図3では、反射構造は、観察チャンバ上壁51から観察チャンバ下壁52へ、45度の角度で伸びる第1の反射面55と、観察チャンバ下壁52の一部として形成される第2の反射面60とで構成されている。観察チャンバ上壁51および観察チャンバ下壁52は、非常に低反射の表面もしくは無反射の表面を有する。それらは、黒色に塗装されても良いし、または非反射性材料の層で上塗り(coated)されていても良い。
【0084】
電磁エネルギー20は、キュベット25の外壁35から進行し、チャンバ壁51、52と平行な方向で観察チャンバ50に進入し、入射エネルギー20の方向56から45度の角度の鏡である第1の反射面55にぶつかり、その結果エネルギー20は、観察チャンバ下壁52の一部を含む鏡である第2の反射面60の方に向かって反射する。エネルギー20が第2の反射面60にぶつかると、第2の反射面60から第1の反射面55へ反射され、チャンバ壁51、52に平行だが、入射の方向56と反対向きの方向57で観察チャンバ50から外へ反射する。従って、エネルギー20は、チャンバ壁51、52と平行に、観察チャンバ50に進入して、観察チャンバ50から出る。
【0085】
図3は、反射構造61の一つの可能な実施形態を示し、図4Aは電磁エネルギー20の単一ビームを用いた同様の実施形態を示す。図3および図4Aにおいて、第2の反射面60は観察チャンバ下壁52に形成され、観察チャンバ下壁52が観察チャンバ上壁51よりも長くなっている。システム10のセンサ30が観察する領域62は、角から離れた、しかし反射構造61から近傍の、電磁エネルギー20が観察チャンバ壁51、52と平行に進行し、後方散乱による広がりがわずかであるような場所に位置される。
【0086】
図4Bは他の実施形態を示し、第2の反射面60が観察チャンバ上壁51に形成され、観察チャンバ上壁51が観察チャンバ下壁51よりも長くなっている。センサ30が観察する領域62は、同様に、角から離れた、しかし反射構造61から近傍に位置されている。図4Cに示される実施形態では、反射構造は、光ビーム20を180度反射(反対方向に戻す)する、観察チャンバ上壁51から観察チャンバ下壁52へ垂直に伸びる単一の反射面60から構成される。観察される領域62は、同様に、図4Cに示される。この構成は、散乱面60がレーザー光をわずかに吸収し、それにより時間とともに暖かくなり、その結果、熱膨張によって流体の流れを作り出す場合には、希釈剤の逆流を生じさせる可能性がある。
【0087】
電磁エネルギー20の光線が、図4Dに示すような曲線的な反射面65に遭遇し、電磁エネルギー20が、第1の反射面55と観察チャンバ壁とをつなぐ角の近くを通った場合、要素67によって示されるように、観察チャンバ壁51、52と平行でない方向に散乱されることがある(観察チャンバの同じ体積に戻らない、それた光線で、そのために照明の強さが弱くなる)。この問題に対する解決策は、機械加工を使用して、観察チャンバ壁の、壁面が45度の反射面55に移行するところに、図4Eに示すように、切り欠き70を形成することである。この切り欠き70が存在することで、要素72によって示されるように、入射光20は意図した方向に反射される。図4Eには単一の切り欠きのみが示されているが、切り欠きは、観察チャンバ壁51、52の一方もしくは両方の表面に形成できることは、当業者にとって明らかである。換言すれば、1つまたは複数の切り欠き70は、第1の反射面55が観察チャンバ上壁51と交わる場所、または、第1の反射面55が観察チャンバ下壁52と交わる場所、あるいは、第1の反射面55が観察チャンバ壁51、52と交わる両方の場所に形成することができる。この、曲線的な角から光が散乱する問題は、図4Cに示す実施形態でも生じ得、1つまたは複数の切り欠きを、反射面60が、観察チャンバ上壁51、観察チャンバ下壁52、あるいはその両方51、52、と交わる場所に形成することが可能である。
【0088】
図4Fは、観察チャンバ50の一端に形成されたミラースロット60-1を有する、特別に設計されたキュベット挿入体28を示す。挿入体28は、ミラースロット60-1と、観察チャンバ上壁と下壁(51、52)に形成された切り欠き70で作られている。挿入可能な鏡/反射面60-2が別体で形成され、ミラースロット60-1に挿入される。挿入可能な鏡/反射面60-2は、特別に用意された(なめらかな)金属鏡、あるいは、裏面に金属被覆を有するガラス製のものでもよい。これは吸収を防止し、製造が容易である。
【0089】
これらすべての実施形態において、センサ30は、反射構造61に隣接する(構造の左側の)電磁エネルギー20を検出するように配置される。実験によれば、可視レーザー光(波長が400nm~700nm)を使用すると、f=50mmのシリンドリカルレンズと4x対物レンズのシステムで作られ、50~60ミクロンの厚さをもつ典型的な光シートでは、この領域は、反射構造61から約0.5~2ミリメートルの範囲に及ぶ(上記、散乱光の広がりについて述べられた議論を参照)。この距離は、図4Aにおいては、上部の切り欠きから左へ、45度の反射面/鏡55から離れる方向に測定され、図4Bにおいては、下部の切り欠きから、45度の反射面/鏡55から離れる方向に測定され、図4Cにおいては、直角の反射面/鏡60から離れる方向に測定される。
【0090】
前述したように、観察チャンバ50およびその内部の構造体は、キュベット25内、あるいは、標準的なキュベット25の内部にぴったり密接するキュベット挿入体28内に、構成することができる。図5図12は、キュベット挿入体28の実施形態の他の部分を示しているが、そこに記載された特徴は、代わりにキュベット25自体に形成されても良いことを理解されたい。いくつかの応用では、キュベット挿入体28は用途が広く、利点を有する。
【0091】
図5は、挿入体28の等角正面図であり、等角上面図の正面における観察チャンバ50を示す。この3次元表現は、観察チャンバ上壁51、観察チャンバ下壁52、観察チャンバ上壁51から観察チャンバ下壁52へ伸びる第1の反射面55、第1の反射面55が観察チャンバ壁51、52と交わる場所の2つの切り欠き70、観察チャンバ下壁52の一部として形成される第2の反射面60、を示す。また、図5において、取り付け機構85、試料投入口90、混合チャンバ75と観察チャンバ50間の流体連通80が生じる領域、が示される。取り付け機構85は、図中で、穴のあるツメとして表示されているが、フックや、その他、挿入体28を簡単にキュベット25から取り外して試料の間で洗浄可能な他の構成を含め、代替とすることが可能である。
【0092】
図6は、試料をキュベット挿入体28に入れてキュベット25に投入できる、試料投入口90の位置がより良く見える、他の等角上面図を表している。
【0093】
図7は、キュベット挿入体28の上面図を、図8は下面図を、それぞれ表す。試料投入口90は、混合チャンバ75と流体連通している。混合チャンバ75と観察チャンバ50との間の流体連通80の領域も見ることができる。図9A-Bは、キュベット挿入体28のこの部分の側面図および断面図を示す。混合チャンバ75は、観察チャンバ50の下方に、別体で配置されている。しかし、混合チャンバ75と観察チャンバ50との間の流体連通80が存在している。混合チャンバ75は、観察チャンバ50より大きくてよく、例えばマグネット撹拌器を有する撹拌棒95を備えていても良い。混合チャンバ75と、その観察チャンバ50への流体連通80の形状は、撹拌棒95が動いているとき、観察チャンバ50の内部で渦やその他の流れを生じさせ、その結果、異なるアリコートが観察できる(混合が、粒子移動の記録の間に行われる)ようになっている。
【0094】
図10は、キュベット25の外壁35を透かして見たキュベット挿入体28の正面図を示す。図11は、キュベット挿入体28の他の側面図を示す。
【0095】
後方散乱の低減をさらに補助するため、挿入体28の上方、下方および後方の観察チャンバ壁51、52は、黒く塗られていても良いし、他の非反射性表面コーティング100が施されていても良い。センサ30は、紙面に対して垂直または直交する位置に配置され、観察チャンバ50に焦点が合わされる。また、センサ30と同じ平面内にある挿入体28の表面は、黒色に塗装されているか、または、他の非反射性コーティング100が施されていても良い。
【0096】
キュベット挿入体28は、容積26を定める外壁35と底面40とを有するキュベット25と共に使用されるものであり、外壁35の少なくとも一部は、電磁エネルギー105に対して透過性であり、容積26は、液体と粒子との懸濁液を含むのに適合している。挿入体28は、キュベット25の外壁35から伸びる観察チャンバ上壁51と、外壁35から伸びる観察チャンバ下壁52と、を備え、観察チャンバ上壁51と下壁52は、たがいに平行である。電磁エネルギー20は、観察チャンバ上壁および下壁51、52と平行な第1の方向56で観察チャンバ50に向けて進入し、挿入体28の観察チャンバ50内の反射構造61は、電磁エネルギー20を、観察チャンバ上壁および下壁51、52と平行な第2の方向57であって第1の方向56と反対向きである第2の方向57で、観察チャンバ50から外へ反射するように構成される。挿入体28は、観察チャンバ50と別体であるが流体連通80を有する混合チャンバ75と、混合チャンバ75と流体連通する試料投入口90とを有する。
【0097】
この挿入体28は、観察チャンバ上壁51から観察チャンバ下壁52へ45度の角度で伸びる第1の反射面55を有する反射構造61と、観察チャンバ上壁51の一部(図4B)、または、観察チャンバ下壁52の一部(図4A)に形成される第2の反射面60と、を備えていても良い。さらに挿入体28は、図4E図5に提案されるように、第1の反射面55が、観察チャンバ上壁51、観察チャンバ下壁52、あるいはその両方の壁51、52、と交わる場所に、1つまたは複数の切り欠き70を備えていても良い。またそれに代えて、観察チャンバ内の挿入体の反射構造61が、観察チャンバ上壁51から観察チャンバ下壁52へ直角に伸びる反射面60を有していても良い(図4C、4F)。さらに挿入体28は、図4Cの実施形態において、反射面60が、観察チャンバ上壁51、観察チャンバ下壁52、あるいはその両方の壁51、52、と交わる場所に、1つまたは複数の切り欠き70を備えていても良い。観察チャンバ上壁51と下壁52は、非常に低反射、もしくは無反射の表面100を有する。挿入体28は、さらに、挿入体のキュベット25への取り付けおよび取り外しが容易になるように適合された取り付け機構85を備えていても良い。
【0098】
図9Bに示されるように、キュベット挿入体28は、混合チャンバ75内で、撹拌棒95とともに使用しても良い。混合チャンバ75は、観察チャンバ50よりも大きくても良い。挿入体28は、テフロン(登録商標)やその他類似の摩擦を低減するコーティング115(図10参照)の薄い層で覆われて、光は通過可能としつつ挿入体28の全表面を化学的に密封し、コロイドが、たんぱく質のような他の物質と相互作用したり、金属に触れたときに凝集したりする心配がない。
【0099】
図12Aは、キュベット外壁35、キュベット底面40、ならびにキュベット容積26、を有するキュベット25に挿入されるキュベット挿入体28を示す。挿入体は、キュベット25の上部から底面40へ向かって下方向に移動し、キュベット容積26と置き換わる。図12Bでは、挿入体28の全体が挿入されており、キュベット25の底部で静止している。また、この図を見る他の代わりの方法は、図5~11に示される構造において、キュベット挿入体28がキュベット25と一体化され、分離できない構造になっているというものである。キュベット外壁35の一部分105、すなわち、挿入体28の観察チャンバ50が観察されるキュベット外壁の部分は、透過性で、高品質の光学ガラスでできていてもよい。キュベット外壁の第2の部分110は、より費用対効果の高い材料など、透過性部分105の材料とは異なる材料で作られていても良い。
【0100】
図13図14は、挿入体が、バルク液体の流れを阻止する働きをすることを確認する。図13図14はともに、300フレームの映像の合成画像で、いずれも、粒子の動きを示す。図13は、挿入体が用いられていない場合に、粒子が主にバルク液体の流れによって、すべての粒子が共通して実質的に直線的な方向にどのように動くかを示している。図14は、挿入体が用いられている場合に、粒子の運動がブラウン運動だけになるように、バルク流体の流れが除去され、すべての粒子に共通する識別可能なパターンがなくなっていることを示している。条件および試料は、図13図14の間で同じであり、本明細書に開示された挿入体を含む点が異なるだけである。
【0101】
本願明細書に記載されるシステム、方法、および構造は、ナノ粒子を観察および分析することに言及しているが、これらの同じシステム、方法、および構造は、ミクロンサイズ粒子などのより大きな粒子寸法に使用することができる。
【0102】
本発明の例示的な実施形態および用途は、上記のようなものを含めて本明細書に記載されており、含まれる実施例の図に示されているが、本発明は、これらの例示的な実施形態および用途、または例示的な実施形態および用途が動作する方法、または本明細書に記載される方法に限定されるものではない。実際、当業者には明らかなように、例示的な実施形態に対する多くの変形および修正が可能である。本発明は、結果として得られる装置、システム又は方法が、本出願又は関連する特許出願に基づいて特許庁により許可される特許請求の範囲のうちの1つの範囲内にある限り、任意の装置、構造、方法又は機能を含むことができる。


図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2022-08-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子を観察するシステムであって、
キュベットに向けられる電磁エネルギーを生成する光源と、
前記キュベット内で電磁エネルギーを検出するセンサと、を備え、
前記キュベットは:
容積を定める外壁と底面であって、前記外壁の少なくとも一部分は前記電磁エネルギーについて透過性であり、前記容積は懸濁液と前記ナノ粒子を含むのに適合するものと、
観察チャンバであって、
前記外壁から伸びる観察チャンバ上壁と、前記外壁から伸びる観察チャンバ下壁とであって、前記観察チャンバ上壁と前記観察チャンバ下壁とは互いに実質的に平行であるものを備え、
前記電磁エネルギーは、前記観察チャンバ上壁と前記観察チャンバ下壁と平行な第1の方向で前記観察チャンバに向けて進入し、
前記電磁エネルギーを、前記観察チャンバ上壁と前記観察チャンバ下壁と平行な第2の方向であって前記第1の方向と反対向きである前記第2の方向で、前記観察チャンバから外へ反射するように構成される反射構造を備えるものと、
前記観察チャンバとは別体の、流体連通する混合チャンバと、
前記混合チャンバと流体連通する試料投入口と、
を備え、
前記センサは、前記反射構造の近傍領域の前記電磁エネルギーを検出するよう配置され、この検出される前記電磁エネルギーは、前記第1の方向と垂直に伝わったものである、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記反射構造が、
前記観察チャンバ上壁から前記観察チャンバ下壁へ45度の角度で伸びる第1の反射面と、
前記観察チャンバ上壁の一部または前記観察チャンバ下壁の一部に形成された第2の反射面と、を備えることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の反射面が、前記観察チャンバ上壁、前記観察チャンバ下壁のいずれかと交わる場所またはその両方に、1つまたは複数の切り欠きをさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記反射構造が、
前記観察チャンバ上壁から前記観察チャンバ下壁へ垂直に伸びる反射面を備えることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記反射面が、前記観察チャンバ上壁、前記観察チャンバ下壁のいずれかと交わる場所またはその両方に、1つまたは複数の切り欠きをさらに備えることを特徴とする、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記反射構造は挿入可能な反射面を備え、前記観察チャンバは前記挿入可能な反射面を受けるように構成されたミラースロットを備えることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記ミラースロットが、前記観察チャンバ上壁および前記観察チャンバ下壁の中に形成されていることを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記混合チャンバが撹拌棒を備えることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記観察チャンバ上壁と前記観察チャンバ下壁が、低反射または非反射の表面を備えることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記混合チャンバは、前記観察チャンバより大きいことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記外壁の透過性な部分が高品質の光学ガラスで作られている、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記外壁の第2の部分が、前記透過性な部分と異なる材料で作られている、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
キュベットの挿入体であって、該キュベットは、組み合わせて容積を定める外壁と底面とを備え、前記外壁の少なくとも一部分は電磁エネルギーについて透過性であり、前記容積は懸濁液と粒子を含むのに適合するものであり、
前記挿入体は、
前記外壁から伸びる観察チャンバ上壁と、前記外壁から伸びる観察チャンバ下壁とであって、前記観察チャンバ上壁と前記観察チャンバ下壁とは互いに実質的に平行であるものを備え、
前記電磁エネルギーは、前記観察チャンバ上壁と前記観察チャンバ下壁と平行な第1の方向で前記観察チャンバに向けて進入し、
前記電磁エネルギーを、前記観察チャンバ上壁と前記観察チャンバ下壁と平行な第2の方向であって前記第1の方向と反対向きである前記第2の方向で、前記観察チャンバから外へ反射するように構成される反射構造と、
前記観察チャンバとは別体の、流体連通する混合チャンバと、
前記混合チャンバと流体連通する試料投入口と、
を備えることを特徴とする挿入体。
【請求項14】
前記反射構造が、
前記観察チャンバ上壁から前記観察チャンバ下壁へ45度の角度で伸びる第1の反射面と、
前記観察チャンバ上壁の一部または前記観察チャンバ下壁の一部に形成された第2の反射面と、を備えることを特徴とする、請求項13に記載の挿入体。
【請求項15】
前記第1の反射面が、前記観察チャンバ上壁、前記観察チャンバ下壁のいずれかと交わる場所またはその両方に、1つまたは複数の切り欠きをさらに備えることを特徴とする、請求項14に記載の挿入体。
【請求項16】
前記反射構造が、
前記観察チャンバ上壁から前記観察チャンバ下壁へ垂直に伸びる反射面を備えることを特徴とする、請求項13に記載の挿入体。
【請求項17】
前記反射面が、前記観察チャンバ上壁、前記観察チャンバ下壁のいずれかと交わる場所またはその両方に、1つまたは複数の切り欠きをさらに備えることを特徴とする、請求項16に記載の挿入体。
【請求項18】
前記反射構造は挿入可能な反射面を備え、前記観察チャンバは前記挿入可能な反射面を受けるように構成されたミラースロットを備えることを特徴とする、請求項13に記載の挿入体。
【請求項19】
前記ミラースロットが、前記観察チャンバ上壁および前記観察チャンバ下壁の中に形成されていることを特徴とする、請求項18に記載の挿入体。
【請求項20】
前記観察チャンバ上壁と前記観察チャンバ下壁が、低反射または非反射の表面を備えることを特徴とする、請求項13に記載の挿入体。
【請求項21】
前記混合チャンバは、前記観察チャンバより大きいことを特徴とする、請求項13に記載の挿入体。
【請求項22】
前記挿入体の、前記キュベットへの取り付けおよび取り外しが容易になるように適合された取り付け機構をさらに備えることを特徴とする、請求項13に記載の挿入体。
【請求項23】
前記挿入体の表面が、該表面を化学的に密封するコーティングの薄い層で覆われていることを特徴とする、請求項13に記載の挿入体。
【請求項24】
前記挿入体の表面を密封するコーティングが、電磁エネルギーを通過させるものであることを特徴とする、請求項23に記載の挿入体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0086
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0086】
図4Bは他の実施形態を示し、第2の反射面60が観察チャンバ上壁51に形成され、観察チャンバ上壁51が観察チャンバ下壁52よりも長くなっている。センサ30が観察する領域62は、同様に、角から離れた、しかし反射構造61から近傍に位置されている。図4Cに示される実施形態では、反射構造は、光ビーム20を180度反射(反対方向に戻す)する、観察チャンバ上壁51から観察チャンバ下壁52へ垂直に伸びる単一の反射面60から構成される。観察される領域62は、同様に、図4Cに示される。この構成は、散乱面60がレーザー光をわずかに吸収し、それにより時間とともに暖かくなり、その結果、熱膨張によって流体の流れを作り出す場合には、希釈剤の逆流を生じさせる可能性がある。
【国際調査報告】