(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-03
(54)【発明の名称】薬剤を注入するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20230224BHJP
A61M 11/00 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
A61M5/32 510P
A61M5/32 502
A61M11/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558044
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-11-24
(86)【国際出願番号】 US2021024042
(87)【国際公開番号】W WO2021195310
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519233892
【氏名又は名称】アクション メディカル テクノロジーズ,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】ACTION MEDICAL TECHNOLOGIES,LLC
【住所又は居所原語表記】1495 Alan Wood Road,Suite 201,Conshohocken,PA 19428,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100105360
【氏名又は名称】川上 光治
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【氏名又は名称】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】ホファー,ジョセフ,ビー
(72)【発明者】
【氏名】パーセル,マーク,ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】オコナー,ケヴィン,シー
(72)【発明者】
【氏名】コントレラス,アンドリュー,ディー
(72)【発明者】
【氏名】マッカンズ,ジェイムズ,ピー
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD09
4C066EE14
4C066FF05
4C066HH12
4C066LL13
4C066NN04
(57)【要約】
本開示は、薬剤およびその他の流体を注射器(シリンジ)から標的部位に注入および送達するよう構成された注入器(インジェクタ)に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸を画定する外側管状スリーブと、
前記外側スリーブ内に配置されたカムと、
前記外側スリーブ内に部分的に配置された内側スリーブであって、前記カムと係合するよう構成された第1の端部を有する内側スリーブと、
バレル、前記バレルの端部に取り付けられた針、プランジャ、および前記バレル内にスライド可能に取り付けられたシール部を含む注射器であって、前記プランジャおよび外側スリーブが前記注入器の動作中に一体的なものとして並進運動するように、固定された空間的関係で、前記プランジャが前記外側スリーブと係合する、注射器と、
を含む注入器であって、
前記外側スリーブは、第1の配置から、前記内側スリーブに対して軸方向に並進運動するよう配置および構成され、
その際、前記内側スリーブは、前記外側スリーブから第1の距離だけ伸び、そこから前記内側スリーブが前記第1の距離より短い第2の距離だけ前記外側スリーブから伸びる第2の配置で前記外側スリーブから伸びるようになるよう構成され、
前記内側スリーブは、さらに、第3の配置になるまで、前記外側スリーブから伸びるよう構成され、前記第3の配置において前記内側スリーブが前記第2の距離より長い第3の距離だけ前記外側スリーブから伸び、前記カムは第1の位置から第2の位置まで回転し、それによって前記内側スリーブは前記外側スリーブに対する軸方向の並進運動が制限されるものである、
注入器。
【請求項2】
前記注入器はさらにキャップを含み、前記注射器はさらに針カバーを含み、
前記キャップは、前記注入器から前記キャップを外すと前記注射器から前記針カバーが外れるように、前記針カバーと係合するよう構成されるものである、
請求項1に記載の注入器。
【請求項3】
前記内側スリーブの第2の端部が、前記内側スリーブの外面から伸びるリッジ部を含み、前記リッジ部は、前記アダプタを前記注入器に固定するようにアダプタと係合するよう構成されるものである、請求項1に記載の注入器。
【請求項4】
前記アダプタの本体が、前記内側スリーブの前記第2の端部を収容する大きさに形成されたキャビティを含み、
前記キャビティの内壁部は、ネジ山が付けられていて、前記第2の端部の前記リッジ部と係合するよう構成される、
請求項3に記載の注入器。
【請求項5】
前記アダプタは、薬剤を静脈内に送達するためのルアー・アダプタ、または薬剤を鼻腔内に送達するための鼻腔スプレイ・アダプタを含むものである、請求項3に記載の注入器。
【請求項6】
前記内側スリーブの内面は、前記内側スリーブの半径方向内向きに且つ長手方向に伸びる複数のリブ部を含み、
前記複数のリブ部は、前記注射器を前記内側スリーブ内に配置して保持するよう構成されるものである、
請求項1に記載の注入器。
【請求項7】
さらに、前記カムの表面と前記プランジャの下面の間に配置された付勢部材を含み、
前記付勢部材は、前記内側スリーブに対して前記外側スリーブを軸方向に並進運動させるよう構成されるものである、請求項1に記載の注入器。
【請求項8】
前記付勢部材は前記第1の配置において無負荷状態に構成される、請求項7に記載の注入器。
【請求項9】
前記カムは、前記カムの長さに沿って伸び且つ前記カムの周りに円周方向に離間する複数の突起部を含み、
前記複数の突起部の各々は傾斜面を有し、この傾斜面は、前記内側スリーブの前記第1の端部における対応する傾斜面と係合するよう構成されて、前記両傾斜面の係合が前記カムに円周方向の力を与えて前記カムを回転させるようにされる、
請求項1に記載の注射器。
【請求項10】
前記カムは、円筒体と、前記カムの端部に配置されたリング部とを含み、
前記リング部は、前記円筒体の直径より大きい直径を有し、また、前記リング部の周りに円周方向に離間し前記カムから半径方向外向きに突出する複数の第1の突起部を有し、
前記円筒体は前記円筒体の周りに円周方向に離間する複数の第2の突起部を有し、前記複数の第2の突起部の各々は傾斜面を有し、この傾斜面は前記内側スリーブの前記第1の端部上の対応する傾斜面と係合するよう構成されるものである、
請求項1に記載の注入器。
【請求項11】
前記カムは、前記カムの周りに円周方向に離間し前記カムから半径方向外向きに突出する複数の第1の突起部を含み、
前記内側スリーブの前記第1の端部は、前記内側スリーブの周りに円周方向に離間し前記第1の端部から半径方向外向きに突出する複数の第2の突起部を含むものである、
請求項1に記載の注入器。
【請求項12】
前記外側スリーブの内面は、
前記外側スリーブの前記内面の周りに円周方向に互いに離間する第1組のリブ部であって、前記外側スリーブの第1の端部から離間した第1の領域まで、前記外側スリーブの第2の端部から第1の長さだけ伸びる第1組のリブ部と、
前記外側スリーブの前記内面の周りに円周方向に互いに離間する第2組のリブ部であって、前記外側スリーブの前記第2の端部から離間した第2の領域まで、前記外側スリーブの前記第1の端部から第2の長さだけ伸びる第2組のリブ部と
を含むものである、
請求項11に記載の注入器。
【請求項13】
前記第2の配置において、前記内側スリーブの前記複数の第2の突起部の中の2つと、前記カムの前記複数の第1の突起部の中の2つとが、それぞれ、前記外側スリーブの前記第1組のリブ部の中の1つのリブ部の両側に配置される、請求項12に記載の注入器。
【請求項14】
前記第3の配置において、前記内側スリーブの前記複数の第2の突起部の中の2つと、前記カムの前記複数の第1の突起部の中の2つとが、それぞれ、前記外側スリーブの前記第2組のリブ部の中の1つのリブ部の両側に配置される、請求項12に記載の注入器。
【請求項15】
前記内側スリーブの前記複数の第2の突起部の中の2つと、前記カムの前記複数の第1の突起部の中の2つとが、それぞれ、前記外側スリーブの前記第1組のリブ部の中の1つのリブ部の両側に配置され、
前記複数の第2の突起部が前記外側スリーブの前記第1組のリブ部の端部を越えて並進運動するとき、前記カムは、前記内側スリーブの前記複数の第2の突起部の中の2つと、前記カムの前記複数の第1の突起部の中の2つとが、それぞれ、前記外側スリーブの前記第2組のリブ部の中の1つのリブ部の両側に配置される、
請求項12に記載の注入器。
【請求項16】
前記内側スリーブの前記複数の第2の突起部の中の2つと、前記カムの前記複数の第1の突起部の中の2つとが、それぞれ、前記外側スリーブの前記第2組のリブ部の中の1つのリブ部の両側に配置されるときに、前記針が露出することが防止される、請求項15に記載の注入器。
【請求項17】
注入器を含む薬剤送達システムであって、
前記注入器は、
長手方向軸を画定する外側管状スリーブと、
前記外側スリーブ内に配置されたカムと、
前記外側スリーブ内に部分的に配置された内側スリーブであって、前記カムと係合するよう構成された第1の端部を有する内側スリーブと、
バレル、前記バレルの端部に取り付けられた針、プランジャ、および前記バレル内にスライド可能に取り付けられたシール部を含む注射器であって、前記プランジャおよび外側スリーブが前記注入器の動作中に一体的なものとして並進運動するように前記プランジャが固定された空間的関係で前記外側スリーブと係合する、注射器と、
を含むものであり、
前記外側スリーブは、第1の配置から、前記内側スリーブに対して軸方向に並進運動するよう配置および構成され、
その際、前記内側スリーブは、前記外側スリーブから第1の距離だけ伸び、そこから前記内側スリーブが前記第1の距離より短い第2の距離だけ前記外側スリーブから伸びる第2の配置で前記外側スリーブから伸びるようになるよう構成され、
前記内側スリーブは、さらに、第3の配置になるまで、前記外側スリーブから伸びるよう構成され、前記第3の配置において前記内側スリーブが前記第2の距離より長い第3の距離だけ前記外側スリーブから伸び、前記カムは第1の位置から第2の位置まで回転し、それによって前記内側スリーブは前記外側スリーブに対する軸方向の並進運動が制限されるものであり、
さらに、前記内側スリーブの第2の端部に結合するよう構成されたアダプタを含む
薬剤送達システム。
【請求項18】
前記アダプタは、さらに、前記内側スリーブの第2の端部を収容する大きさに形成されたキャビティを含み、
前記キャビティの内壁部は、ネジ山が付けられていて、前記第2の端部上のリッジ部と係合するよう構成され、前記リッジ部は前記内側スリーブの外面から伸びるものである、
請求項17に記載の薬剤送達システム。
【請求項19】
前記アダプタは、薬剤を静脈内に送達するためのルアー・アダプタ、または薬剤を鼻腔内に送達するための鼻腔スプレイ・アダプタを含むものである、請求項17に記載の薬剤送達システム。
【請求項20】
さらに、前記カムの表面と前記プランジャの下面の間に配置された付勢部材を含み、
前記付勢部材は、前記内側スリーブに対して前記外側スリーブを軸方向に並進運動させるよう構成されたものである、
請求項17に記載の薬剤送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤およびその他の流体用の注入器に関し、特に注射器(シリンジ)から薬剤および他の流体を注入するよう構成された注入器に関する。
【0002】
関連出願
本願は、2020年3月25日に出願された米国仮特許出願第62/994488号の優先権を主張するものであり、その開示全体を参照によりここ(本明細書)に組み込む。
【背景技術】
【0003】
薬剤および他の流体を標的部位に注入するために多くの方法が使用される。これらには、注射器(syringes:シリンジ)、自己注入器(注射器)および薬物ポンプが含まれる。薬剤は様々な深さで注入することができる。例えば、薬剤は、表皮(epidermis)、真皮(dermis)、皮下領域(subcutaneous region)または筋肉(筋肉内)中に注入され得る。また、薬剤または他の流体は、静脈内に(intravenously)、骨内に(intraosseusly)、および/または例えば眼内のような体の他の部分に、送達または投与され得る。これらの装置の幾つかは、患者による家庭での使用を特に意図している。これらの装置は様々な薬剤を送達または投与するために使用することができる。例えば、注入器(injectors)は、アナフィラキシ(anaphylaxis)の危険性がある患者へのエピネフリンの投与(送達)に使用することができる。そのような装置には、英国のリンカーン・メディカル社(Lincoln Medical Ltd.)によって販売されているアナペン(ANAPEN(商標))注入器(injector:注射器)、および米国ペンシルベニア州のマイラン社(Mylan Inc.)によって販売されているエピペン(EPIPEN(登録商標))注入器(注射器)が含まれる。
【0004】
多くの注入器は、強力なバネを使用して、予め充填された注射器内にプランジャ・ロッドを押し込み、注入器を脚の側面または他の身体位置に押し入れつつ組織内に薬剤を注入する。これらの注入器の幾つかは、使用前および/または使用後に針を視覚的に遮蔽するという利点を有し、それによって針を恐れる患者は恩恵を受ける。現在の注入器は、電子機器およびさらにスピーカを含めて27個以上の(26個を超える)部品を含み得るものであり、部品の量および複雑さに起因して組立てが複雑になる可能性があり、それによってユーザにとって高い価格となる。また、追加の部品によってこれらの複雑な装置の故障(障害)の可能性が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0143050号
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/0228769号
【特許文献3】米国特許出願公開第2017/0136186号
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0050609号
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
1つ以上の実施形態では、注入器が、長手方向の軸を画定(規定)する外側管状スリーブ(管状の外側スリーブ)を含んでいる。1つ以上の実施形態では、注入器は、その外側スリーブ内に配置されたカム(cam)を含んでいる。1つ以上の実施形態では、注入器は、外側スリーブ内に部分的に配置された内側スリーブを含み、内側スリーブの第1の端部がそのカムと係合するよう構成される。1つ以上の実施形態では、注入器は、バレル(注射筒)と、バレルの端部に取り付けられた針と、プランジャと、バレル内にスライド(摺動)可能に取り付けられたシール部(封止部)とを有する注射器(シリンジ)を含んでいる。幾つかの実施形態では、プランジャは、プランジャおよび外側スリーブが注入器の動作(操作)中に一体的なもの(ユニット)として並進運動(translate:平行移動)するように、固定された空間的関係で外側スリーブに係合(嵌合)する。幾つかの実施形態では、外側スリーブは、第1の配置(configuration:形態、構成)から、内側スリーブに対して軸方向に並進運動するよう配置および構成される。幾つかの実施形態では、内側スリーブは、外側スリーブから第1の距離だけ伸びる(伸長する)よう構成され、そこから、内側スリーブが第1の距離より短い第2の距離だけ外側スリーブから伸びる第2の配置で外側スリーブから伸びるようになるよう構成される。幾つかの実施形態では、内側スリーブは、さらに、第3の配置になるまで、外側スリーブから伸びるよう構成され、第3の配置において、内側スリーブが第2の距離より長い第3の距離だけ外側スリーブから伸び、そのカムは第1の位置から第2の位置まで回転し、それによって内側スリーブは外側スリーブに対する軸方向の並進運動が制限される。
【0007】
1つ以上の実施形態では、薬剤送達または投与システムは注入器を含んでいる。幾つかの実施形態では、注入器は、長手方向の軸を画定する外側管状スリーブ(管状の外側スリーブ)を含んでいる。幾つかの実施形態では、注入器は、その外側スリーブ内に配置されたカムを含んでいる。幾つかの実施形態では、注入器は、外側スリーブ内に部分的に配置された内側スリーブを含み、内側スリーブの第1の端部は、カムと係合するよう構成される。幾つかの実施形態では、注入器は、バレルと、バレルの端部に取り付けられた針と、プランジャと、バレル内にスライド(摺動)可能に取り付けられたシール部とを含む注射器、を含んでいる。幾つかの実施形態では、プランジャは、プランジャおよび外側スリーブが注入器の動作中に一体的なもの(ユニット)として並進運動するように、固定された空間的関係で外側スリーブに係合(嵌合)する。幾つかの実施形態では、外側スリーブは、第1の配置から、内側スリーブに対して軸方向に並進運動するよう配置および構成される。幾つかの実施形態では、内側スリーブは、外側スリーブから第1の距離だけ伸びる(伸長する)よう構成され、そこから、内側スリーブが第1の距離より短い第2の距離だけ外側スリーブから伸びる第2の配置で外側スリーブから伸びるようになるよう構成される。幾つかの実施形態では、内側スリーブは、さらに、第3の配置になるまで、外側スリーブから伸びるよう構成され、第3の配置において、内側スリーブが第2の距離より長い第3の距離だけ外側スリーブから伸び、そのカムは第1の位置から第2の位置へと回転し、それによって内側スリーブは外側スリーブに対する軸方向の並進運動が制限される。1つ以上の実施形態では、薬剤送達または投与システムは、内側スリーブの第2の端部に結合するよう構成されたアダプタを含んでいる。
【0008】
以下の説明では、様々な追加的な態様(特徴)が示される。その態様は、個々の特徴および複数の特徴の組合せに関連し得る。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、例示的および説明的なものであるに過ぎず、ここ(本明細書)に開示される実施形態が基礎とする広い発明概念(思想)を制限するものではないと理解されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
ここで提示される装置および方法の特徴は、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明においてより充分に開示されまたは明らかにされ、以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明は、同様の番号が同様の部分を指す図面と共に考慮されるものである。
【0010】
【
図1】
図1は、ここに記載された一実施形態による注入器の側面図である。
【
図4】
図4は、
図1の注入器の、外側スリーブ、内側スリーブおよびカムの分解側面図である。
【
図7】
図7は、
図6の内側スリーブの端部の詳細な斜視図である。
【
図12】
図12Aおよび12Bは、それぞれ、キャップを取り外した後における
図1の注入器の側面図および側断面図である。
【
図13】
図13Aおよび13Bは、注射器の針を注入器の内側スリーブから伸ばして針を標的部位に挿入した後におけるそれぞれ
図1の注入器の側面図および側断面図である。
【
図14】
図14Aおよび14Bは、それぞれ、薬剤送達後の
図1の注入器の側面図および側断面図である。
【
図15】
図15Aおよび15Bは、それぞれ、内側スリーブが注射器の針を覆って(にわたって)伸びた後における
図1の注入器の側面図および側断面図である。
【
図16A】
図16Aは、薬剤の注入前における
図1の注入器の、外側スリーブ、内側スリーブおよびカムの端面図である。
【
図16B】
図16Bは、薬剤の注入完了後における
図1の注入器の、外側スリーブ、内側スリーブおよびカムの端面図である。
【
図16C】
図16Cは、内側スリーブの伸長およびロックアウト(閉鎖、保護)後における
図1の注射器の、外側スリーブ、内側スリーブおよびカムの端面図である。
【
図17A】
図17Aは、薬剤の注入前における
図1の注入器の外側スリーブ、内側スリーブおよびカムの断面斜視図である。
【
図17B】
図17Bは、薬剤の注入完了後における
図1の注入器の外側スリーブ、内側スリーブおよびカムの断面斜視図である。
【
図17C】
図17Cは、内側スリーブの伸長およびロックアウト後における
図1の注入器の外側スリーブ、内側スリーブおよびカムの断面斜視図である。
【
図22】
図22は、ここに記載された一実施形態による、
図1の注入器と共に使用するよう構成されたルアー・アダプタの斜視図である。
【
図26】
図26は、注射器の針の伸長後における
図1のアダプタに取り付けられた
図22のルアー・アダプタの詳細な断面斜視図である。
【
図27】
図27は、ここに記載された一実施形態による、
図1の注入器と共に使用するよう構成された鼻腔スプレイ・アダプタの斜視図である。
【
図33】
図33は、
図1のアダプタの外側スリーブおよび内側スリーブの断面斜視図である。
【
図34】
図34は、カムの複数のカム要素と内側スリーブの複数のカム歯状部との係合を示す、
図1の注入器のカムおよび内側スリーブの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
好ましい実施形態のこの説明は、添付の図面と関連付けて読まれるよう意図されており、図面は、本発明の記載された説明全体の一部と見なされる。図面は必ずしも一定の縮尺で描かれておらず、本発明の或る特徴は、明確性および簡潔性のために縮尺的に誇張してまたは幾分か概略的な形態で示されることがある。説明において、相対的な用語、例えば、“水平な”(horizontal)、“垂直な”(vertical)、“上の”(up)、“下の”(down)、“頂部の”(top)および“底部の”(bottom)、並びにそれらの派生語(例えば、“水平に”(horizontally)、“下方に”(downwardly)、“上方に”(upwardly)、等)は、そのとき説明されるようなまたは考察中の図面に示されるような方位または配向を指す、と解釈されるべきである。これらの相対的な用語は、説明の便宜上のものであり、通常、特定の方位または配向を必要とするよう意図するものではない。“内向きに”(inwardly)対“外向きに”(outwardly)、“長手方向の”(longitudinal)対“側方の”(lateral)、等を含む用語は、必要に応じて、互いに相対的なものとして、または伸長軸または回転軸もしくは回転中心に対するものとして、解釈されるものである。例えば“接続された”または“連結された”(connected)および“相互接続された”または“相互連結された”(interconnected)のような、取り付け、結合、等に関する用語は、特に明記しない限り、構造が直接または間接的に介在構造体を介して互いに固定(固着)されまたは取り付けられた関係、並びに可動または剛性(固定)の双方の取付けまたは関係を指す。“作動的にまたは作動可能に接続(連結)された”(operatively or operably connected)という用語は、その関係によって意図されるように適切な構造が動作することが可能になるような取付け、結合または接続もしくは連結である。請求の範囲において、手段プラス機能(means-plus-function)の節は、使用される場合には、構造的な均等手段だけでなく均等な構造体も含めて、列挙された機能を実行するための記載された説明または図面によって記載され、示唆されまたは明らかにされる構造体を包含(カバー)するよう意図されている。ここで使用される“薬剤”(medicament)または“薬物”若しくは“薬品”(drug)という用語は、標的に送達するための任意の物質を指す。例えば、これらの用語には、抗凝固剤(anticoagulants)、ワクチン(vaccines)、生物製剤(biologics)、および任意の注入可能な流体が含まれる。
【0012】
本開示内容は、標的部位に薬剤を注入するための注入器を実現する。注入器は、医療専門家、介護士または患者の自己投与による容易な使用を実現し、長期間保管された後にも信頼性ある使用ができるよう構成される。さらに、注入器は少数の部品を利用するので、それは安価で製造が容易である。ここに記載された注入器は、例えば、エピネフリン(epinephrine)、ケタミン(ketamine)、アトロピン(atropine)、ジアゼパム(diazepam)またはナロキソン(naloxone)を投与するために使用することができる。
【0013】
図1は一実施形態による注入器100の側面図を示し、
図2は注入器100の側断面図を示している。
図3は、注入器100の分解図を示している。注入器100は、プランジャ102、付勢部材(a biasing member)104、注射器(シリンジ)106、カム(cam)108、内側スリーブ110、外側スリーブ112、針カバー係合(嵌合)部材114、およびキャップ116を含んでいる。
図2に示されているように、注射器106は、内側スリーブ110、外側スリーブ11、およびキャップ116によって画定されるチャンバ(室)内に配置される。ここ(本明細書)でさらに詳細に説明するように、ユーザ(使用者)が注射器106に含まれる薬剤を注入したいとき、ユーザはキャップ116を取り外して注射器106の針を選択的に配備(deploy:配置、展開)して薬剤を注入する。
【0014】
図4は、カム108、内側スリーブ110および外側スリーブ112の分解図を示している。ここでさらに詳細に説明するように、カム108、内側スリーブ110および外側スリーブ112は、協働して、(i)注入部位に針を挿入する前に注射器の針を覆い、(ii)薬剤の注入の完了時に、可聴な(例えば“クリック音”)および/または触覚的な(tactile)フィードバックを与え、 (iii) 注入の完了後に注射器の針を覆って、不注意による針刺し傷害を防止する。
【0015】
図2に示されているように、カム108は、外側スリーブ112内に配置され、また、外側スリーブ112内で軸方向に並進運動するよう構成される。また、ここでより詳細に説明されるように、カム108は、注入器100の使用中に外側スリーブ112内で回転するよう構成される。
図5Aはカム108の斜視図を示し、
図5Bはカム108の端面図を示している。カム108は、円筒体(cylindrical body:円筒状本体)120と、円筒体120から伸び且つ円筒体120より大きい外径を、例えば円筒体120の一端部に、有するリング部(環状部)122と、を含んでいる。カム108は、さらに、リング部122から半径方向外向きに伸びる複数の突起部(protrusions:突出部)124を含んでいる。複数の突起部124は、リング部122の周りに円周方向に互いに離間している。ここ(本明細書)で説明されるように、複数の突起部124は、使用中に外側スリーブ112内でのカム108の並進運動および回転を案内(誘導)するよう構成される。カム108は、さらに、例えばリング部122に隣接して、円筒体120の外側から伸びる複数のカム要素126を含んでいる。複数のカム要素126は、それぞれカム面128を含んでいる。ここで詳細に説明されるように、複数のカム面128は、円筒体120の円周に対して角度を成していて、内側スリーブ110上の対応する各面との係合によってカム108に円周方向の力が加えられて、それによって注入器100の動作中にカム108が所望の回数だけ回転するようにされる。円筒体120は、プランジャ102の通過を可能にする開孔部130を画定する。
【0016】
図6は内側スリーブ110の斜視図を示し、
図37は代替的な内側スリーブ110の斜視図を示している。
図7は内側スリーブ110の端部の詳細な斜視図を示している。
図8は内側スリーブ110の断面斜視図を示している。
図9は内側スリーブ110の端面図を示している。内側スリーブ110は、第1の端部136から第2の端部138まで伸びる円筒体134を含んでいる。内側スリーブ110は、さらに、円筒体134から伸び且つ円筒体134より大きい外径を有するリング部140と、例えば円筒体134の第1の端部136に、リング部140から半径方向外向きに伸びる複数の突出部(projections)142とを含んでいる。ここでさらに詳細に説明するように、複数の突出部142は、注入器100の動作中に外側スリーブ112内での内側スリーブ110の回転を制限するよう構成される。内側スリーブ110は、さらに、円筒体134の第1の端部136から伸びる複数のカム歯状部144を含んでいる。ここで詳細に説明されるように、複数のカム歯状部144は、それぞれ、注入器100の動作中にカム108の複数のカム要素126のカム面128と係合してカム108の回転を生じさせるよう構成された傾斜面146(即ち、円筒体134の円周に対して傾斜している)を含んでいる。
図8および9に示されているように、内側スリーブ110は、さらに、円筒体134から半径方向内向きに伸び且つ円筒体134に沿って長手方向に伸びる複数のリブ部(ribs:助材、助骨状部)148を含んでいる。複数のリブ部148は、注射器106が内側スリーブ110の円筒体134内に配置されたときに、注射器106を所定の位置に位置決めして(配置して)保持する。内側スリーブ110は、さらに、内側スリーブ110を通って伸びる窓150を含んでおり、窓150によって、ユーザは注入前(例えば、キャップ116の取り外し後)に注射器106の内容物を見ることができる。留意すべきこととして、
図37に示される内側スリーブ110は、
図6に示される内側スリーブ110と同じまたは類似した複数の特徴のうちの1つ以上の特徴を含んでおり、および、
図37の内側スリーブ110は、内側スリーブ110がカム108のカム要素126の数に対応する任意の数のカム歯状部144、例えば6つのカム歯状部、を含み得ることが示されるように設けられている。
【0017】
内側スリーブ110は、さらに、円筒体134の第2の端部138において円筒体134から伸びる複数のリッジ部(ridges:隆起部、棟部)152を含んでいる。複数のリッジ部152は、それぞれ、内側スリーブ110の円周の周りに部分的に伸び、また、円筒体134の円周に対して鋭角で配置された複数の面を含んでいる。ここでさらに詳細に説明されるように、複数のリッジ部152によって、アダプタの各ネジ山と係合することによって、アダプタを注入器100に接続(連結)することが可能になる。
【0018】
内側スリーブ110は、さらに、内側スリーブ110の前面156から伸び且つ前面156を通って開孔部158の周りに円周方向に伸びるリブ部154を含んでいる。開孔部158は、注入器の動作中に注射器106の針が中を通過できるよう構成される。ここでさらに詳細に説明されるように、リブ部154は、注入器100に結合されたアダプタのダイアフラム(diaphragm:隔膜)と係合して内側スリーブ110をアダプタにシール部(封止)するよう構成される。
【0019】
図10は外側スリーブ112の斜視図を示し、
図11は外側スリーブ112の断面斜視図を示している。外側スリーブ112は、内側スリーブ110、カム108および注射器106を収容するための円筒体160を含んでいる。円筒体160は、第1の端部162から第2の端部164へと伸びている。外側スリーブ112は、それぞれが円筒体160から内向きに伸びる複数の第1のリブ部166および複数の第2のリブ部168を含んでいる。複数の第1のリブ部166は、第2の端部164から第1の端部162に向かって伸びるが、複数の第1のリブ部166は、第1の端部162へと最後まで(ずっと)伸びてはいない。ここでさらに説明するように、これによって、カム108は、注入器100の動作の特定の段階で、具体的には薬剤の注入の完了時に、外側スリーブ112内で回転することができる。複数の第2のリブ部168は、第2の端部164から離間している。ここでさらに詳細に説明するように、これによって、注入器100の動作の特定の段階で、特に注入部位から注入器100を取り外して内側スリーブ110を伸長させた後で、カム108は、外側スリーブ112内で回転することが可能になる。様々な実施形態において、第1のリブ部166および第2のリブ部168は、注入器100の長手方向軸Aと平行に伸びる(
図3に示されている)。複数の第1のリブ部166は、内側スリーブ110が伸ばされたときに、内側スリーブ110を位置決め(配置)するように、内側スリーブ110上のリング部140と係合(に係止)するよう構成された肩状部(ショルダ部)170を画定する。
【0020】
外側スリーブ112は、さらに、円筒体160の第2の端部164から伸びる複数のフィンガ部(指状部)172を含んでいる。複数のフィンガ部172の外側に溝部174が画定されている。ここでより詳細に説明するように、溝部174は、キャップ116を外側スリーブ112に結合するようにキャップ116上のビード部(bead:盛上り部、縁取り部)を受け入れる(収容する)よう構成される。また、外側スリーブ112は、キャップ116が注入器100上の所定位置にあるときにキャップ116と係合するよう構成された複数の傾斜付き突出部(ramped projections)176を含んでいる。複数の傾斜付き突出部176は、円筒体160から外向きに、複数のフィンガ部172の中の1つ以上フィンガ部の外側に沿って伸びてもよい。複数の傾斜付き突出部176は、外側スリーブ112の長手方向軸に対して傾斜した複数の面(斜面)を有してもよい。ここでより詳細に説明するように、キャップ116が外側スリーブ112に対してねじられると、その傾斜した複数の面によって、キャップ116は外側スリーブ112の第1の端部162から離れるように外向きに押圧(押し出)される。複数のフィンガ部172は、キャップ116の取付けおよび取外し中に内向きに(長手方向軸Aに向かって)曲がる(屈曲する)ことができる。
【0021】
ここで説明するように、外側スリーブ112は、プランジャ102を外側スリーブ112に結合するようにプランジャ102の複数の歯状部を受け入れるよう構成された複数の開孔部178を第1の端部162に有する。また、外側スリーブ112は、プランジャ102の複数の歯状部用のリードイン(導入部)を形成するように、複数のランプ部(ramps:傾斜部、斜面部)180を第1の端部162に有する。
【0022】
図18Aおよび18Bは、それぞれ、キャップ116の斜視図および側断面図を示している。キャップ116は、ユーザ(使用者)がキャップ116をつかんでそれを注入器100から取り外すことを可能にする特徴(features:機能、外観)を含むことができる。キャップ116は、外側スリーブ112における溝部174と係合するようにキャップ116の内側の周りに円周方向に伸びるビード部(bead)182を含んでいる。キャップ116は、キャップ116の端部に伸びていて外側スリーブ112の複数の傾斜付き突出部176を受け入れる(収容する)よう構成された複数の凹部(recesses:凹所)184を画定する。そのキャップがユーザによってねじられると、凹部184の各側面が傾斜付き突出部176に接触する。この接触は、外側スリーブ112から離れるようにキャップ116を軸方向に押す軸方向の力をキャップ116に与えて、ユーザがキャップ116を注入器100から取り外すのを支援する。キャップ116は、その底端部にボス(boss)186を有する。ボス186は、針カバー係合部材114の一部を受け入れる(収容する)よう構成された溝部187を含んでいる。
【0023】
図19に示されているように、針カバー係合部材114は、円筒体188と、円筒体188から内向きに伸びる複数の歯状部190とを含んでいる。複数の歯状部190は、注射器106の針カバーと係合するよう構成される。複数の歯状部190は、円筒体188の複数の部分を円筒体188の中心に向かって内向きに押圧(プレス)することによって形成することができる。針カバー係合部材114は、さらに、針カバー係合部材114をキャップ116に結合させるようにキャップ116を係合させるための複数の脚部(フット部)192を含んでいる。具体的には、複数の脚部192はキャップ116における溝部187に係合する。従って、キャップ116を取り外すと、注射器106から針カバーもが外れる。
【0024】
図31は注射器106の側面図を示し、
図32は注射器106の側断面図を示している。注射器106は、薬剤を予め充填されてもよく、バレル(注射筒)194、針196、針カバー198、およびプランジャ・シール部(封止部)200を含んでいる。バレル194は、ガラス・バレル、例えば真っ直ぐな円筒状(cane:ケイン状)ガラスで形成されるようなガラス・バレル、とすることができる。代替的に、バレル194はポリマー材料で形成することができる。バレル194は、バレル194と薬剤の間の化学的相互作用を減少させるための材料で被覆することができる。針196は、バレル194の遠位端部に取り付けられ、薬剤をバレル194から標的部位へと中を通して送達することができる管腔(lumen:ルーメン)を画定する。針196は、例えばカシメ(staking:杭打ち)および接着剤のような任意の適切な方法を使用して、バレル194に取り付けることができる。プランジャ・シール部200は、バレル194内に配置されて、バレル194内で軸方向に並進運動(translate:平行移動)するよう構成される。プランジャ・シール部200は、エラストマ材料で形成することができ、使用前の薬剤の無菌性を維持するようにバレル194の内壁部に対して(接触して)シール部を形成することができる。
【0025】
図20はプランジャ102の斜視図を示している。プランジャ102は、キャップ部分202と、キャップ部分202から伸びるプランジャ・ロッド204とを含んでいる。プランジャ・ロッド204は、注射器106のプランジャ・シール部200と係合するためのキャップ部分202とは反対側の端部にネジ山付き部分205を含むことができる。注入器100の組立て期間中に、プランジャ・ロッド204が注入器106のプランジャ・シール部200と係合できるように(形態で)、プランジャ・ロッド204は、カム108の開孔部130を通しおよび内側スリーブ110の開孔部158を通して挿入される。プランジャ102は、さらに、例えば
図2に示されているように、プランジャ102を外側スリーブ112に固定(ロック)するように外側スリーブ112における各開孔部178と係合させるためにキャップ部分202から伸びる1つ以上のアーム部206を含むことができる。各アーム部206は、開孔部178と係合させるための外向きに伸びる歯状部208を含むことができる。組立て期間中、各歯状部208は外側スリーブ112上の複数のランプ部180のそれぞれの1つと接触し、アーム部206は半径方向内向きに曲がる(屈曲する)。1つの歯状部208が開孔部178に到達すると、アーム部206はその自然位置に向かって曲げ戻って、歯状部208が開孔部178と係合するようにされる。ここに記載されるように、各歯状部208が各開孔部178と係合した状態で、プランジャ102は、外側スリーブ112に固定(ロック)されて、これら(プランジャとスリーブ)が使用中に一緒に並進運動するようにされる。例えば
図20および21に示されているように、プランジャ102は、さらに、注入器100の輸送および回収を容易にするために、注入器100をベルトまたは他の物品(アイテム)に留める(クリップする)のに使用できる、キャップ部分202から伸びるクリップ(留め具)210、を含むことができる。別の例では、
図38および39に示されているように、プランジャ102は、代替的に、注入器100の輸送および回収を容易にするために、注入器100をベルトまたは他の物品に留めるのに使用できるワニ口クリップ(alligator clip)211を含むことができる。或る幾つかの場合、ワニ口クリップ211は注入器100の一部に成形(モールド)されてもよい。例えば、ワニ口クリップ211の端部213は、注入器の外側スリーブ112に(中に)成形(モールド)されてもよく、それによってワニ口クリップ211が注入器100に固定される。幾つかの他の場合、ワニ口クリップ211は、注入器100に取り外し可能に結合されてもよい。例えば、ワニ口クリップ211の端部213は、リング状構造(構造体)を含んでもよく、そのリング状構造は、外側スリーブ112上に配置されると、外側スリーブ112上で拡張し、外側スリーブ112の表面の周りに係合(スナップ)して注入器100に固定されるものである。そのような場合、ワニ口クリップ211は、プランジャ102とは別個の構成要素(部品)であってもよい。
【0026】
幾つかの実施形態では、
図21に示されるように、プランジャ102のキャップ116は、注射器106に含まれる薬剤の種類(タイプ)に対応する標識(インジケータ、指標部)212を含んでいる。例えば、標識212は、円形、楕円形、六角形、台形、ハート形、星形、または任意の他の適切なまたは所望の形状とすることができる。
【0027】
付勢部材(biasing member)104は、例えば、螺旋コイル・バネ(helical coil spring)とすることができる。しかし、付勢部材104は他の形態を取り得ると理解されるべきである。例えば、付勢部材104は、圧縮可能なエラストマ製の構成要素(部品)とすることができる。
【0028】
次に、注入器100の動作について説明する。
図1および2は、注入器100がユーザに提供される際の配置であり得る初期の配置における注入器100の側面図および側断面図をそれぞれ示している。この初期配置では、キャップ116は注入器100上の所定位置にあり、外側スリーブ112に結合される。具体的には、外側スリーブ112上の傾斜付き突出部176は、キャップ116の凹部184に配置され、キャップ116上のビード部182は外側スリーブ112の溝部174に配置される。さらに、針カバー係合部材114の複数の歯状部190は、注射器106の針カバー198と係合する。ユーザが注入器100を使用する準備ができたら、ユーザはキャップ116を外側スリーブ112に対してねじりおよび/または引っ張ってキャップ116を注入器100から取り外すことができる。キャップ116が外れると、複数の歯状部190と針カバー198との係合により、針カバー198もが外れる。
【0029】
図12Aおよび12Bは、キャップ116を取り外した後の注入器100の側面図および側断面図をそれぞれ示している。これらの図に見られるように、内側スリーブ110は、付勢部材104によって加えられる力の結果として伸ばされて、内側スリーブ110が注射器106の針196を遮蔽するようにされる。
図12Bに示されているように、付勢部材104は、付勢部材104の一端部がプランジャ102のキャップ部分202と接触し且つ付勢部材104の反対側の端部がカム108と接触するように、配置される。 注入器100が
図12Aおよび12Bに示される配置にある場合、付勢部材104は、完全に伸ばされまたは近似的に(ほぼ)完全に伸ばされた状態にあり得る。その結果、付勢部材104は、内側スリーブ110または注入器100の他の構成要素に大きい力を与えることはない。これによって、保管期間中に大きい力に晒された結果として、各構成要素が損傷したり永久変形したりする恐れなく、注入器100を長期間保管することができる。これによって、保管期間中に圧縮状態または負荷状態にある複数のバネまたは他の複数の付勢部材を含む従来技術の装置(デバイス)より優れた利点が得られ得る。内側スリーブ110のリング部140は外側スリーブ112の肩状部(ショルダ部)170と接触して、内側スリーブ110が外側スリーブ112から脱落するのを防止する。
【0030】
図16Aは、注入器100が
図12Aおよび12Bに示された配置にあるときの外側スリーブ112、内側スリーブ110およびカム108の端面図を示しており、
図17Aはこの配置におけるこれら同構成要素の断面斜視図を示している。注入器100の他の構成要素は、説明のために図示されていない。
図34に示されているように、内側スリーブ110の複数のカム歯状部144は、カム108の複数のカム要素126と接触している。任意の適切な数のカム歯状部144およびカム要素126を使用することができる。例えば、一実施形態では、内側スリーブ110は7つのカム歯状部144を含み(例えば
図7に示されているように)、カム108は7つのカム要素126を含んでいる(例えば
図5Aに示されているように)。別の実施形態における別の例では、内側スリーブ110は6つのカム歯状部144を含み(例えば
図37に示されるように)、カム108は6つのカム歯状部144に対応する6つのカム要素126を含んでいる。複数の界面(interfacing surfaces)(カム面128および傾斜面146)が長手方向軸Aとなす角度は、カム108に所望の円周方向の力を与えるように選択することができる。例えば、一実施形態では、これらの界面は、それぞれ、長手方向軸Aに対して約30度のねじれ角を画定する。
【0031】
図33に示されているように、内側スリーブ110の複数の突出部142は、外側スリーブ112のそれぞれの第1のリブ部166の両側面(opposite sides:反対向きの両面)に配置され、この係合によって、注入器100の使用中に外側スリーブ112に対する内側スリーブ110の回転が防止される。例えば、突出部142-1および142-2は、第1のリブ部166-1の両側面に配置される。カム108の各突起部124は、外側スリーブ112の第1のリブ部166と第2のリブ部168の間に配置される。例えば、
図16Aおよび17Aに示されているように、突起部124-1は、第1のリブ部166-1と第2のリブ部168-1の間に配置される。内側スリーブ110は、カム108が有する突起部124より多くの突出部142を含むことができる。その結果、内側スリーブ110は、各第1のリブ部166の各側面部(両側)に突出部142を含むことができるが、カム108は、各第1のリブ部166の片方の側面部(一方の側)にのみ突起部124を有する。
【0032】
ユーザが注射器106に含まれる薬剤を注入したい場合、ユーザは内側スリーブ110の第2の端部138を注入部位(即ち、患者の組織)に接触させる。内側スリーブ110が注入部位と接触した状態で、プランジャ102に圧力を加えると、外側スリーブ112が注入部位に向かって内側スリーブ110上を(覆って)並進運動し、それによって付勢部材104を圧縮する。外側スリーブ112が前方に移動すると、内側スリーブ110の複数の突出部142およびカム108の複数の突起部124は、複数の第1のリブ部166および複数の第2のリブ部168に沿ってスライド(滑動)する。
【0033】
プランジャ102および外側スリーブ112が前方に並進運動すると、プランジャ102によってプランジャ・シール部200に加えられる圧力の結果として、注射器106も前方に移動する。
図13Aおよび13Bに示されているように、注射器106の前方への移動によって、針196が内側スリーブ110の端部における開孔部158を通って伸び、注入部位(即ち患者の組織内)に挿入される。図を簡明にするために付勢部材104が
図13および14には示されていないが、これらの配置では付勢部材104が存在していて圧縮されるであろうと理解されるべきである。注射器106は、バレル194の端部におけるフランジ194aが内側スリーブ110における複数のリブ部148の端部に接触するまで、前方に移動する。フランジ194aが複数のリブ部148と接触した状態では、内側スリーブ110に対する注射器バレル194のそれ以上の並進運動が防止され、プランジャ102の継続的な押し下げによって、プランジャ・シール部200がバレル194内で並進運動し、バレル194内に格納された薬剤が注入される。この位置は、
図14Aおよび14Bに示されている。複数のリブ部148の長さ(即ち、複数のリブ部148の端部から内側スリーブ110の前面までの距離)は、針196の所望の挿入深さを形成するように選択することができる。注射器バレル194のフランジ194aと複数のリブ部148との接触によって、内側スリーブ110から伸びる針196の範囲が制御されるので、複数のリブ部148の長さを変えると、挿入の深さが変わり得る。複数のリブ部148の長さの変更は、相異なる注射器106または針196と共に使用するために注入器100をカスタマイズ(特注)するのにも使用され得る。この制御された挿入深さによって、薬剤が適切な位置に確実に注入される(例えば、筋肉内注入)ように挿入の深さを制御する際に利点が得られる。
【0034】
注入の終りに達したとき(即ち、注射器106内の所望の量の薬剤が注入されたとき)、カム108の複数の突起部124は複数の第1のリブ部166の端部に達する。複数の突起部124が複数の第1のリブ部166をいったん通過する(クリアする、越える)と、複数のカム要素126の複数のカム面128と、内側スリーブ110上の複数の突出部142の複数の傾斜面146との接触によって、カム108が回転する。
図16Aおよび16B並びに
図17Aおよび17Bにおける突起部124-1の位置を比較することによって分かるように、カム108は反時計回りに回転した状態にある。カム108の回転によって、各突起部124は複数の第2のリブ部168のそれぞれの1つに接触する(例えば、突起部124-1が第2のリブ部168-2に接触する)。この接触によって、注入が完了していることを示す可聴な(例えば、“クリック音”)および/または触覚的な(tactile)フィードバックをユーザに提供することができる。複数の第1のリブ部166の長さは、注射器バレル194内で、プランジャ・ロッド205の、およびそれによるプランジャ・シール部200の、所望のストローク(1工程の動作)、を達成するように選択することができる。これによって、薬剤の送達(投与)が完了したことを聴覚的または触覚的に示す前に、適切な量の薬剤が送達(投与)されることが確実に(確保)される。複数の第1のリブ部166の長さは、注射器バレル194の長さに基づいてカスタマイズ(特別設計)することができる。これによって、注入器100の複数の構成要素の各々を変更(修正)することなく、注入器100を相異なる注射器サイズ用に(に対して)構成することできるようになる。例えば、プランジャ102、カム108、内側スリーブ110、およびキャップ116を、特定の注射器に適合するようカスタマイズされた複数の第1のリブ部166を有する外側スリーブ112と共に使用することができる。これによって、工具(tooling:工作機械設備)コストが低減され、製造業者が抱える必要があるとされる量の在庫が簡素化および低減される。
【0035】
注入の完了後、ユーザは、注入部位から注入器100を取り外し始めることができる。ユーザがそのようにすると、内側スリーブ110およびカム108は、付勢部材104の付勢下で、外側スリーブ112の第2の端部164に向かって
図15Aおよび15Bに示された位置へと移動して戻る。カム108の複数の突起部124が複数の第2のリブ部168の端部に達すると、カム要素126の複数のカム面128と複数のカム歯状部144の複数の傾斜面146との接触によって、カム108が再び回転する。この場合、カム108は、複数のカム要素126が複数のカム歯状部144の複数の垂直面147(
図7に示されている)に向かって移動してそれらと接触し得るように、回転する。カム108が停止すると、カム108の各突起部124が、複数の第2のリブ部168の中のそれぞれの1つの端部と整列して接触する。例えば、
図16Cおよび17Cに示されているように、突起部124-1は、第2のリブ部168-2の端部と整列して接触する。この位置では、カム108および内側スリーブ110は、外側スリーブ112内で軸方向に並進運動することができない。従って、内側スリーブ110および外側スリーブ112は、それらの位置にロック(固定)される。その結果、内側スリーブ110を後退させることができず、針196は内側スリーブ110の端部から再び露出し得ない。これによって、従来技術の注入器で発生し得る不注意による針刺し損傷を防ぐことができる。
【0036】
別の態様において、
図22~26に示されているような、注入器100と共に使用されるルアー(Luer)アダプタ300が提供される。ルアー・アダプタ300によって、注射器106内の薬剤は、例えば静脈ラインを通して、患者に供給することができる。ルアー・アダプタ300は、円筒状部分304と、円筒状部分304の一端部に先端部306とを有する本体302を含んでいる。円筒状部分304は、先端部306の反対側にある円筒体302の一端部において開いているキャビティ(cavity:空洞)308を画定する。キャビティ308は、注入器100を少なくとも部分的に収容するよう構成される。アダプタ300は、アダプタ300を内側スリーブ(110)に結合するように、内側スリーブ110の端部において、例えば1/4回転のネジ係合によって、複数のリッジ部152と係合するための複数のネジ山(スレッド)を画定(規定)する内壁部310を含んでいる。
【0037】
アダプタ300は、先端部306の端部にルアー・コネクタ314を含んでいる。ルアー・コネクタ314は、チューブ(管)セットの雌型ルアー取付具に接続(連結)するための雄型ルアー・コネクタとすることができる。代替的に、ルアー・コネクタ314は、雄型ルアー取付具に接続するための雌型ルアー・コネクタとすることができる。アダプタ300とチューブ・セットとの接続は、例えば、ベクトン・ディキンソン社(Becton Dickinson)によってLUER-LOK(米国登録商標)(ルアー-ロック)およびLUER-SLIP(米国登録商標)(ルアー-スリップ)という名称で販売されているような、ロック(固定)またはスリップ(嵌め込み)タイプのルアー接続を使用してもよい。
【0038】
アダプタは、さらに、先端部306内に配置されたダイアフラム316を含んでいる。ダイアフラム316は、円錐台状部分318およびフランジ320を含んでいる。フランジ320は、アダプタ300の肩状部と内側スリーブ110の間に配置されるよう構成される。ダイアフラム316は、内側スリーブ上の複数のリブ部(例えばリブ部154)およびアダプタ300の肩状部によってシール(封止)することができる。使用中、ダイアフラム316の円錐台状部分318は、注射器106の針196によって突き刺される。ダイアフラム316は、例えばエラストマ材料で組み立てることができる。ダイアフラム316は、薬剤がルアー・コネクタ314を通して確実に送達され且つ注入器100またはルアー・アダプタ300から確実に漏出しないよう構成される。
【0039】
図26に示されているように、コネクタ314およびダイアフラム316は一緒にチャネル(導管)322を画定し、薬剤が注入される間、針196がチャネル322内に少なくとも部分的に配置される。
【0040】
アダプタ300は、さらに、円筒状部分304から外向きに伸びる複数のフィンガ・フランジ324を含むことができる。注射器106から薬剤を送達するために、ユーザは、複数のフィンガ・フランジ324の周りにユーザの指を当て且つプランジャ102のキャップ部分202をユーザの手のひらで支えて(キャップ部分202に手のひらを当てて)、注入器100をつかむことができる。次いで、ユーザは、薬剤の投与を生じさせるように押圧する(squeeze)ことができる。薬剤を投与した後、ユーザは、針196がダイアフラム316から後退するように(形態で)、上述のように、内側スリーブ110に対して外向きに内側スリーブ110をスライド(滑動)させ得るように解放する(release)ことができる。内側スリーブ110の位置がロック(固定)されると、次いで、ユーザは、アダプタ300を注入器100から取り外して注入器100とルアー・アダプタ300の双方を処分することができる。
【0041】
図25は、注入器100に結合されたアダプタ300を示している。図示されているように、内側スリーブ110の第2の端部138はダイアフラム316と係合し、針196は内側スリーブ110内に配置される。
図26は、プランジャ102および外側スリーブ112を押し下げて針196を伸ばしダイアフラム316の円錐台状部分318を突き刺してチャネル322内に配置されるようにした後の注入器100およびアダプタ300を示している。針196がこの位置にある状態で、プランジャ102を押圧すると、ルアー・コネクタ314に結合されたチューブを通して薬剤が投与される。
【0042】
別の実施形態では、注入器100と共に使用するための鼻腔スプレイ・アダプタ400が提供される。鼻腔スプレイ・アダプタ400によって、注射器106内の薬剤が鼻腔内送達(投与)によって患者に供給することができる。鼻腔スプレイ・アダプタ400は、円筒状部分404と、円筒状部分404の一端部に先端部406とを有する本体402を含んでいる。円筒状部分404は、注入器100を部分的に受け入れる(収容する)よう構成されたキャビティ(空洞)408を画定する。アダプタ400は内壁部410を含んでおり、内壁部410は、例えば1/4回転(巻回)のネジ係合によって、アダプタ400を内側スリーブ(110)に結合させるように、内側スリーブ110の端部において複数のリッジ部152と係合するための複数のネジ山(スレッド)を画定する。
【0043】
アダプタ400は、先端部406の端部において、スプレイ(噴霧、噴出)によって薬剤がユーザの鼻腔内に放出されることを可能にする開孔部412を含んでいる。アダプタ400は、さらに、先端部406内に配置されたダイアフラム416を含んでいる。ダイアフラム416は、円錐台状部分418およびフランジ420を含んでいる。フランジ420は、アダプタ400の肩状部と内側スリーブ110の第2の端部138の間に配置されるよう構成される。ダイアフラム416は、内側スリーブ110上の複数のリブ部(例えばリブ部154)およびアダプタ400によってシール(封止)することができる。使用中、ダイアフラム416の円錐台状部分418は、
図30に示されるように、注射器106の針196によって突き刺されて、薬剤が開孔部412を通って放出できるようにされる。ダイアフラム416は、例えばエラストマ材料で組み立てることができる。ダイアフラム416は、薬剤が開孔部412を通して確実に送達され且つ注入器100またはアダプタ400から確実に漏出しないよう構成される。
【0044】
さらに、
図28に示されているように、噴霧挿入部材(インサート、入れ子)(atomizing insert)414を、開孔部412に隣接して先端部406に配置することができる。噴霧挿入部材414は、開孔部412を通して患者に送達するために、薬剤を微粒子または液滴に変換し得る。噴霧挿入部材414は、
図29および30の断面図ならびに
図35および36に、より詳細に示されている。
図29および30に示されているように、噴霧挿入部材414は、ダイアフラム416と開孔部412の間の先端部406内に配置される。
図36(35)は、噴霧挿入部材414の分解図を示している。噴霧挿入部材414は、内側部材430および外側部材432を含んでいてもよい。外側部材432は、内側部材430が配置される内側通路436を画定する。
図36は、内側部材430の斜視図を示している。内側部材430は、実質的に円筒状であってもよく、内側部材430の長さに沿って長手方向に伸びる1つ以上のチャネル(溝、流路)438を含んでもよい。チャネル438によって、内側部材430と外側部材432の間で開孔部412に向かって薬剤が流れることが可能になる。内側部材430は、さらに、内側部材の遠位面442に形成された複数のトラック(tracks:経路、軌道)440を含んでもよい。各トラック440は、それぞれのチャネル438から内側部材430の中心部に向かって伸びる。複数のトラック440は、開孔部412に隣接する遠位面442の中心部で交わって(出会って)もよい。複数のトラック440は、開孔部412に向かって移動する薬剤に旋回運動を与えるように、湾曲した経路(paths)を辿ってもよい。
【0045】
アダプタ400は、さらに、円筒状部分404から外向きに伸びるフィンガ・フランジ424を含むことができる。注射器106から薬剤を送達するために、ユーザは、フィンガ・フランジ424の周りにユーザの指を当て且つプランジャ102のキャップ部分202をユーザの手のひらで支えて、注入器100をつかむことができる。次いで、ユーザは、薬剤の投与を生じさせるように押圧することができる。薬剤を投与した後、ユーザは、針196がダイアフラム416から後退するように(形態で)、上述のように、内側スリーブ110に対して外向きに内側スリーブ110をスライド(滑動)させ得るように解放することができる。内側スリーブ110の位置がロック(固定)されると、次いで、ユーザは、アダプタ400を注入器100から取り外して注入器100と鼻腔スプレイ・アダプタ400の双方を処分することができる。
【0046】
鼻腔スプレイ・アダプタ400によって、薬剤を鼻腔内投与することが可能になり、それによって、患者への針の挿入の必要性が回避され、これは一部の患者、特に、針を恐れる患者、または四肢がない患者、または充分な末梢循環がない患者にとって、好ましいものであり得る。粘膜を横切って患者の血流に薬剤を送達(投与)することによって、鼻腔スプレイ・アダプタ400付き注入器は有効用量の投与量を送達する。これは、例えばナロキソン(Naloxone)のようなオピオイド過量(過剰)投与を治療するのに使用される医薬に、特に有用であり得る。
【0047】
様々な実施形態において、キット(kit:一式、セット)が提供される。キットには、注入器100、ルアー・アダプタ300、鼻腔スプレイ・アダプタ400 が含まれている。鼻腔スプレイ・アダプタ400およびルアー・アダプタ300を用意することによって、スプレイ・ノズルを通して粘膜に、ルアー・アダプタ300を使用して静脈内に、または針を通して筋肉内に、皮下に、骨内にまたは任意の他の適切な深さで、薬剤を送達(投与)することができる。これによって、ユーザまたは患者は投与時に選択肢が与えられ、それによって、彼らは彼らにとってより快適または最も効果的な投与方法を選択することが可能になる。
【0048】
別の実施形態では、注入器を操作する方法が実現される。その方法は、注入器からキャップを取り外すことを含んでいる。その方法は、標的位置に対して内側スリーブの端部を配置することを含んでいる。注入器が所定の位置にあると、外側スリーブに力が加えられる。外側スリーブに力を加えると、(i)内側スリーブに対して外側スリーブおよび注射器が軸方向に並進運動し、(ii)注射器の針が内側スリーブの遠位端から標的位置へと(内に)伸び、 (iii) 注射器バレル上のフランジが内側スリーブ上のリブ部に接触する。続いて、外側スリーブおよびプランジャに継続的な力が加えられる。外側スリーブに継続的に力を加えると、注射器内でプランジャ・ロッドおよびシール部の並進運動が生じて、薬剤が送達(投与)される。薬剤の送達後、注入器は標的位置から取り除かれる。付勢部材が内側スリーブに力を加えると、内側スリーブが外側スリーブに対して遠位方向に並進運動して注射器の針を覆うようにされて、内側スリーブが外側スリーブに対して所定位置に固定(ロック)されるようにされる。
【0049】
別の実施形態において、薬剤を鼻腔内に送達するために注入器および鼻腔スプレイ・アダプタを使用する方法が実現される。まず、注入器のキャップが取り外される。鼻腔スプレイ・アダプタが注入器に係合される。鼻腔スプレイ・アダプタの先端部は、患者の鼻腔内にまたは患者の鼻腔に隣接して配置される。注入器の外側スリーブは、鼻腔スプレイ・アダプタの先端部に向かって並進運動させられて、鼻腔スプレイ・アダプタの先端部を通して患者に薬剤が放出される。
【0050】
別の実施形態では、薬剤を静脈内に送達するために注射器を使用する方法が実現される。まず、注入器のキャップが取り外される。ルアー・アダプタが注入器に接続(連結)される。ルアー・アダプタはチューブ・セットに結合される。注入器の外側スリーブは、ルアー取付具に向かって並進運動させられて、ルアー・コネクタを通しチューブ・セットを通して患者に薬剤が送達(投与)される。
【0051】
前述の説明および図面は本発明の好ましいまたは例示的な実施形態を表しているが、ここに記載された実施形態の趣旨(精神)および範囲ならびに均等手段の範囲から逸脱することなく、ここで様々な追加、変形および置換が施されてもよいことが理解される。特に、本発明は、その趣旨または基本的な特徴から逸脱することなく、他の形態、構造、配置、割合、サイズで、および他の要素、材料および構成要素(部品)で具体化できることは、この分野の専門家にとって明らかである。さらに、ここに記載された方法/プロセスにおいて、本発明の趣旨から逸脱することなく多数の変形例を作成し得る。この分野の専門家は、さらに、本発明が、構造、配置、割合、サイズ、材料および構成要素の多くの変形と共に使用され得る、そうでなければ本発明の実施において使用され得るものであり、それらが、本発明の原理から逸脱することなく特定の環境および動作要件に特に適合化されること、を理解する。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸を画定する外側管状スリーブと、
前記外側
管状スリーブ内に配置されたカムと、
前記外側
管状スリーブ内に部分的に配置された内側スリーブであって、前記カムと係合するよう構成された第1の端部を有する内側スリーブと、
バレル、前記バレルの端部に取り付けられた針、プランジャ、および前記バレル内にスライド可能に取り付けられたシール部を含む注射器であって、前記プランジャおよび外側
管状スリーブが前記注入器の動作中に一体的なものとして並進運動するように、固定された空間的関係で、前記プランジャが前記外側
管状スリーブと係合する、注射器と、
を含む注入器であって、
前記外側
管状スリーブは、第1の配置から、前記内側スリーブに対して軸方向に並進運動するよう配置および構成され、
その際、前記内側スリーブは、前記外側
管状スリーブから第1の距離だけ伸び、そこから前記内側スリーブが前記第1の距離より短い第2の距離だけ前記外側
管状スリーブから伸びる第2の配置で前記外側
管状スリーブから伸びるようになるよう構成され、
前記内側スリーブは、さらに、第3の配置になるまで、前記外側
管状スリーブから伸びるよう構成され、前記第3の配置において前記内側スリーブが前記第2の距離より長い第3の距離だけ前記外側
管状スリーブから伸び、前記カムは第1の位置から第2の位置まで回転し、それによって前記内側スリーブは前記外側
管状スリーブに対する軸方向の並進運動が制限されるものである、
注入器。
【請求項2】
前記注入器はさらにキャップを含み、前記注射器はさらに針カバーを含み、
前記キャップは、前記注入器から前記キャップを外すと前記注射器から前記針カバーが外れるように、前記針カバーと係合するよう構成されるものである、
請求項1に記載の注入器。
【請求項3】
前記内側スリーブの第2の端部が、前記内側スリーブの外面から伸びるリッジ部を含み、前記リッジ部は、前記アダプタを前記注入器に固定するようにアダプタと係合するよう構成されるものである、請求項1に記載の注入器。
【請求項4】
前記アダプタの本体が、前記内側スリーブの前記第2の端部を収容する大きさに形成されたキャビティを含み、
前記キャビティの内壁部は、ネジ山が付けられていて、前記第2の端部の前記リッジ部と係合するよう構成される、
請求項3に記載の注入器。
【請求項5】
前記アダプタは、薬剤を静脈内に送達するためのルアー・アダプタ、または薬剤を鼻腔内に送達するための鼻腔スプレイ・アダプタを含むものである、請求項3に記載の注入器。
【請求項6】
前記内側スリーブの内面は、前記内側スリーブの半径方向内向きに且つ長手方向に伸びる複数のリブ部を含み、
前記複数のリブ部は、前記注射器を前記内側スリーブ内に配置して保持するよう構成されるものである、
請求項1に記載の注入器。
【請求項7】
さらに、前記カムの表面と前記プランジャの下面の間に配置された付勢部材を含み、
前記付勢部材は、前記内側スリーブに対して前記外側
管状スリーブを軸方向に並進運動させるよう構成されるものである、請求項1に記載の注入器。
【請求項8】
前記付勢部材は前記第1の配置において無負荷状態に構成される、請求項7に記載の注入器。
【請求項9】
前記カムは、前記カムの長さに沿って伸び且つ前記カムの周りに円周方向に離間する複数の突起部を含み、
前記複数の突起部の各々は傾斜面を有し、この傾斜面は、前記内側スリーブの前記第1の端部における対応する傾斜面と係合するよう構成されて、前記両傾斜面の係合が前記カムに円周方向の力を与えて前記カムを回転させるようにされる、
請求項1に記載の注射器。
【請求項10】
前記カムは、円筒体と、前記カムの端部に配置されたリング部とを含み、
前記リング部は、前記円筒体の直径より大きい直径を有し、また、前記リング部の周りに円周方向に離間し前記カムから半径方向外向きに突出する複数の第1の突起部を有し、
前記円筒体は前記円筒体の周りに円周方向に離間する複数の第2の突起部を有し、前記複数の第2の突起部の各々は傾斜面を有し、この傾斜面は前記内側スリーブの前記第1の端部上の対応する傾斜面と係合するよう構成されるものである、
請求項1に記載の注入器。
【請求項11】
前記カムは、前記カムの周りに円周方向に離間し前記カムから半径方向外向きに突出する複数の第1の突起部を含み、
前記内側スリーブの前記第1の端部は、前記内側スリーブの周りに円周方向に離間し前記第1の端部から半径方向外向きに突出する複数の第2の突起部を含むものである、
請求項1に記載の注入器。
【請求項12】
前記外側
管状スリーブの内面は、
前記外側
管状スリーブの前記内面の周りに円周方向に互いに離間する第1組のリブ部であって、前記外側
管状スリーブの第1の端部から離間した第1の領域まで、前記外側
管状スリーブの第2の端部から第1の長さだけ伸びる第1組のリブ部と、
前記外側
管状スリーブの前記内面の周りに円周方向に互いに離間する第2組のリブ部であって、前記外側
管状スリーブの前記第2の端部から離間した第2の領域まで、前記外側
管状スリーブの前記第1の端部から第2の長さだけ伸びる第2組のリブ部と
を含むものである、
請求項11に記載の注入器。
【請求項13】
前記第2の配置において、前記内側スリーブの前記複数の第2の突起部の中の2つと、前記カムの前記複数の第1の突起部の中の2つとが、それぞれ、前記外側
管状スリーブの前記第1組のリブ部の中の1つのリブ部の両側に配置される、請求項12に記載の注入器。
【請求項14】
前記第3の配置において、前記内側スリーブの前記複数の第2の突起部の中の2つと、前記カムの前記複数の第1の突起部の中の2つとが、それぞれ、前記外側
管状スリーブの前記第2組のリブ部の中の1つのリブ部の両側に配置される、請求項12に記載の注入器。
【請求項15】
前記内側スリーブの前記複数の第2の突起部の中の2つと、前記カムの前記複数の第1の突起部の中の2つとが、それぞれ、前記外側
管状スリーブの前記第1組のリブ部の中の1つのリブ部の両側に配置され、
前記複数の第2の突起部が前記外側
管状スリーブの前記第1組のリブ部の端部を越えて並進運動するとき、前記カムは、前記内側スリーブの前記複数の第2の突起部の中の2つと、前記カムの前記複数の第1の突起部の中の2つとが、それぞれ、前記外側
管状スリーブの前記第2組のリブ部の中の1つのリブ部の両側に配置される、
請求項12に記載の注入器。
【請求項16】
前記内側スリーブの前記複数の第2の突起部の中の2つと、前記カムの前記複数の第1の突起部の中の2つとが、それぞれ、前記外側
管状スリーブの前記第2組のリブ部の中の1つのリブ部の両側に配置されるときに、前記針が露出することが防止される、請求項15に記載の注入器。
【請求項17】
注入器を含む薬剤送達システムであって、
前記注入器は、
長手方向軸を画定する外側管状スリーブと、
前記外側
管状スリーブ内に配置されたカムと、
前記外側
管状スリーブ内に部分的に配置された内側スリーブであって、前記カムと係合するよう構成された第1の端部を有する内側スリーブと、
バレル、前記バレルの端部に取り付けられた針、プランジャ、および前記バレル内にスライド可能に取り付けられたシール部を含む注射器であって、前記プランジャおよび外側
管状スリーブが前記注入器の動作中に一体的なものとして並進運動するように前記プランジャが固定された空間的関係で前記外側
管状スリーブと係合する、注射器と、
を含むものであり、
前記外側
管状スリーブは、第1の配置から、前記内側スリーブに対して軸方向に並進運動するよう配置および構成され、
その際、前記内側スリーブは、前記外側
管状スリーブから第1の距離だけ伸び、そこから前記内側スリーブが前記第1の距離より短い第2の距離だけ前記外側
管状スリーブから伸びる第2の配置で前記外側
管状スリーブから伸びるようになるよう構成され、
前記内側スリーブは、さらに、第3の配置になるまで、前記外側
管状スリーブから伸びるよう構成され、前記第3の配置において前記内側スリーブが前記第2の距離より長い第3の距離だけ前記外側
管状スリーブから伸び、前記カムは第1の位置から第2の位置まで回転し、それによって前記内側スリーブは前記外側
管状スリーブに対する軸方向の並進運動が制限されるものであり、
さらに、前記内側スリーブの第2の端部に結合するよう構成されたアダプタを含む
薬剤送達システム。
【請求項18】
前記アダプタは、さらに、前記内側スリーブの第2の端部を収容する大きさに形成されたキャビティを含み、
前記キャビティの内壁部は、ネジ山が付けられていて、前記第2の端部上のリッジ部と係合するよう構成され、前記リッジ部は前記内側スリーブの外面から伸びるものである、
請求項17に記載の薬剤送達システム。
【請求項19】
前記アダプタは、薬剤を静脈内に送達するためのルアー・アダプタ、または薬剤を鼻腔内に送達するための鼻腔スプレイ・アダプタを含むものである、請求項17に記載の薬剤送達システム。
【請求項20】
さらに、前記カムの表面と前記プランジャの下面の間に配置された付勢部材を含み、
前記付勢部材は、前記内側スリーブに対して前記外側
管状スリーブを軸方向に並進運動させるよう構成されたものである、
請求項17に記載の薬剤送達システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
さらに、
図28に示されているように、噴霧挿入部材(インサート、入れ子)(atomizing insert)414を、開孔部412に隣接して先端部406に配置することができる。噴霧挿入部材414は、開孔部412を通して患者に送達するために、薬剤を微粒子または液滴に変換し得る。噴霧挿入部材414は、
図29および30の断面図ならびに
図35および36に、より詳細に示されている。
図29および30に示されているように、噴霧挿入部材414は、ダイアフラム416と開孔部412の間の先端部406内に配置される。
図35は、噴霧挿入部材414の分解図を示している。噴霧挿入部材414は、内側部材430および外側部材432を含んでいてもよい。外側部材432は、内側部材430が配置される内側通路436を画定する。
図36は、内側部材430の斜視図を示している。内側部材430は、実質的に円筒状であってもよく、内側部材430の長さに沿って長手方向に伸びる1つ以上のチャネル(溝、流路)438を含んでもよい。チャネル438によって、内側部材430と外側部材432の間で開孔部412に向かって薬剤が流れることが可能になる。内側部材430は、さらに、内側部材の遠位面442に形成された複数のトラック(tracks:経路、軌道)440を含んでもよい。各トラック440は、それぞれのチャネル438から内側部材430の中心部に向かって伸びる。複数のトラック440は、開孔部412に隣接する遠位面442の中心部で交わって(出会って)もよい。複数のトラック440は、開孔部412に向かって移動する薬剤に旋回運動を与えるように、湾曲した経路(paths)を辿ってもよい。
【国際調査報告】