(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(54)【発明の名称】樹脂組成物、及びこれを組み込んだフローセル
(51)【国際特許分類】
C08G 59/68 20060101AFI20230227BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20230227BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20230227BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20230227BHJP
【FI】
C08G59/68
C08L63/00 C
C08K5/00
G01N37/00 102
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577160
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 US2020066438
(87)【国際公開番号】W WO2021133735
(87)【国際公開日】2021-07-01
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500358711
【氏名又は名称】イルミナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ロフレンコ,エカテリーナ
(72)【発明者】
【氏名】マーケル,ティモシー ジェイ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4J002CD001
4J002CD011
4J002CD021
4J002CD031
4J002CD111
4J002EB106
4J002EV026
4J002EV296
4J002EW176
4J002EZ006
4J002FD206
4J002GQ00
4J036AA01
4J036AB09
4J036AJ09
4J036AK17
4J036GA03
4J036GA04
4J036GA24
4J036HA01
4J036JA09
(57)【要約】
例示的な樹脂組成物は、エポキシ樹脂マトリックスと、第1の光酸発生剤と、第2の光酸発生剤と、を含む。第1の光酸発生剤は、約250g/mol未満の分子量を有するアニオンを含む。第2の光酸発生剤は、約300g/molを超える分子量を有するアニオンを含む。一例では、i)第1の光酸発生剤のカチオン、又はii)第2の光酸発生剤のカチオン、又はiii)第1及び第2の光酸発生剤のカチオンは、樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g*cm)の質量減衰係数を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂マトリックスと、
250g/mol未満の分子量を有するアニオンを含む第1の光酸発生剤と、
約300g/mol超の分子量を有するアニオンを含む第2の光酸発生剤と、を含む樹脂組成物であって、
i)前記第1の光酸発生剤のカチオン、又はii)前記第2の光酸発生剤のカチオン、又はiii)前記第1及び第2の光酸発生剤のカチオンが、前記樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g
*cm)の質量減衰係数を有する、樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂マトリックスが、エポキシ官能化シルセスキオキサン;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル;テトラキス(エポキシシクロヘキシルエチル)テトラメチルシクロテトラシロキサン;(エポキシシクロヘキシルエチル)メチルシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマー;1,3-ビス[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]テトラメチルジシロキサン;1,3-ビス(グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン;3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロ-ヘキサンカルボキシレート;ビス((3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル)アジパート;4-ビニル-1-シクロヘキセン1,2-エポキシド;ビニルシクロヘキセンジオキシド;4,5-エポキシテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル;1,2-エポキシ-3-フェノキシプロパン;メタクリル酸グリシジル;1,2-エポキシヘキサデカン;ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル;ペンタエリスリトールグリシジルエーテル;ジグリシジル1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート;テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル;及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるエポキシ材料を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記第1の光酸発生剤が、ビス-(4-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、及びジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートからなる群から選択される、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記第2の光酸発生剤が、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガラート、及びトリス[(トリフルオロメチル)スルホニル]メタニドからなる群から選択される、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記第1の光酸発生剤の前記カチオン、又は前記第2の光酸発生剤の前記カチオン、又は前記第1及び第2の光酸発生剤の前記カチオンが、約350mmの最大吸収波長(λ
max)を有するジアリールヨードニウムカチオン、及び、トリフェニルスルホニウムカチオンからなる群から選択される、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記第2の光酸発生剤の前記カチオンが、前記樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g
*cm)の質量減衰係数を有し、
前記第1の光酸発生剤の前記カチオンが、前記樹脂組成物を硬化する入射光の波長で0.1L/(g
*cm)未満の質量減衰係数を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記第2の光酸発生剤の前記カチオンが、約350mmの最大吸収波長(λ
max)を有するジアリールヨードニウムカチオン、及びトリフェニルスルホニウムカチオンからなる群から選択され、
前記第1の光酸発生剤の前記カチオンが、ビス-(4-メチルフェニル)ヨードニウムカチオン、(クメン)シクロペンタジエニル鉄(II)カチオン、フェロセンカチオン、1-ナフチルジフェニルスルホニウムカチオン、(4-フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウムカチオン、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカチオン、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミドペルフルオロ-1-ブタンスルホネートカチオン、及び、トリアリールスルホニウムカチオンからなる群から選択される、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記第1の光酸発生剤の前記カチオン、及び前記第2の光酸発生剤の前記カチオンがそれぞれ、前記樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g
*cm)の質量減衰係数を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記第1の光酸発生剤が、前記樹脂組成物中の総固形分の約1質量%~約5質量%の範囲の量で存在し、
前記第2の光酸発生剤が、前記樹脂組成物中の総固形分の約0.1質量%~約2質量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記第2の光酸発生剤の前記アニオンの分子量が、約300g/mol超~約1,000g/molの範囲である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
エポキシ官能化多面体オリゴマーシルセスキオキサンを含むエポキシ樹脂マトリックスと、
約250g/mol未満の分子量を有するアニオンを含む第1の光酸発生剤と、
約300g/mol~約1,000g/molの範囲の分子量を有するアニオンを含む第2の光酸発生剤と、を含む樹脂組成物であって、
i)前記第1の光酸発生剤のカチオン、又はii)前記第2の光酸発生剤のカチオン、又はiii)前記第1及び第2の光酸発生剤のカチオンが、前記樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g
*cm)の質量減衰係数を有する、樹脂組成物。
【請求項12】
前記エポキシ官能化多面体オリゴマーシルセスキオキサンが、グリシジル官能化多面体オリゴマーシルセスキオキサン、エポキシシクロヘキシルエチル官能化多面体オリゴマーシルセスキオキサン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記エポキシ樹脂マトリックスが、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル;テトラキス(エポキシシクロヘキシルエチル)テトラメチルシクロテトラシロキサン;(エポキシシクロヘキシルエチル)メチルシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマー;1,3-ビス[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]テトラメチルジシロキサン;1,3-ビス(グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン;3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロ-ヘキサンカルボキシレート;ビス((3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル)アジパート;4-ビニル-1-シクロヘキセン1,2-エポキシド;ビニルシクロヘキセンジオキシド;4,5-エポキシテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル;1,2-エポキシ-3-フェノキシプロパン;メタクリル酸グリシジル;1,2-エポキシヘキサデカン;ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル;ペンタエリスリトールグリシジルエーテル;ジグリシジル1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート;テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル;及びそれらの組み合わせからなる群から選択される追加のエポキシ材料を更に含む、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
前記第1の光酸発生剤が、前記樹脂組成物中の総固形分の約1質量%~約5質量%の範囲の量で存在する、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
前記第2の光酸発生剤が、前記樹脂組成物中の総固形分の約0.1質量%~約2質量%の範囲の量で存在する、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
前記第1の光酸発生剤が、ビス-(4-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、及びジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートからなる群から選択される、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
前記第2の光酸発生剤が、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガラート、及びトリス[(トリフルオロメチル)スルホニル]メタニドからなる群から選択される、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項18】
前記第1の光酸発生剤の前記カチオン、又は前記第2の光酸発生剤の前記カチオン、又は前記第1の光酸発生剤の前記カチオンと前記第2の光酸発生剤の前記カチオンの両方が、約350mmの最大吸収波長(λ
max)を有するジアリールヨードニウムカチオン、及び、トリフェニルスルホニウムカチオンからなる群から選択される、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項19】
前記第2の光酸発生剤の前記カチオンが、前記樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g
*cm)の質量減衰係数を有し、
前記第1の光酸発生剤の前記カチオンが、前記樹脂組成物を硬化する入射光の波長で0.1L/(g
*cm)未満の質量減衰係数を有する、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項20】
前記第2の光酸発生剤の前記カチオンが、約350mmの最大吸収波長(λ
max)を有するジアリールヨードニウムカチオン、及びトリフェニルスルホニウムカチオンからなる群から選択され、
前記第1の光酸発生剤の前記カチオンが、ビス-(4-メチルフェニル)ヨードニウムカチオン、(クメン)シクロペンタジエニル鉄(II)カチオン、フェロセンカチオン、1-ナフチルジフェニルスルホニウムカチオン、(4-フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウムカチオン、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカチオン、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミドペルフルオロ-1-ブタンスルホネートカチオン、及び、トリアリールスルホニウムカチオンからなる群から選択される、請求項19に記載の樹脂組成物。
【請求項21】
前記第1の光酸発生剤の前記カチオン、及び前記第2の光酸発生剤の前記カチオンはそれぞれ、前記樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g
*cm)の質量減衰係数を有する、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項22】
基材と、
前記基材上の硬化しパターン形成された樹脂であって、前記硬化しパターン形成された樹脂が、間隙領域により分離されている凹部を含み、前記硬化しパターン形成された樹脂が、
エポキシ樹脂マトリックスと、
約250g/mol未満の分子量を有するアニオンを含む第1の光酸発生剤と、
約300g/mol超の分子量を有するアニオンを含む第2の光酸発生剤と、を含む樹脂組成物の硬化形成体を含み、
i)前記第1の光酸発生剤のカチオン、又はii)前記第2の光酸発生剤のカチオン、又はiii)前記第1及び第2の光酸発生剤のカチオンが、前記樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g
*cm)の質量減衰係数を有する、硬化しパターン形成された樹脂と、を含む、フローセル。
【請求項23】
前記凹部の中のヒドロゲルと、
前記ヒドロゲルに付着した増幅プライマーと、を更に含む、請求項22に記載のフローセル。
【請求項24】
前記エポキシ樹脂マトリックスが、エポキシ官能化シルセスキオキサン;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル;テトラキス(エポキシシクロヘキシルエチル)テトラメチルシクロテトラシロキサン;(エポキシシクロヘキシルエチル)メチルシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマー;1,3-ビス[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]テトラメチルジシロキサン;1,3-ビス(グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン;3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロ-ヘキサンカルボキシレート;ビス((3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル)アジパート;4-ビニル-1-シクロヘキセン1,2-エポキシド;ビニルシクロヘキセンジオキシド;4,5-エポキシテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル;1,2-エポキシ-3-フェノキシプロパン;メタクリル酸グリシジル;1,2-エポキシヘキサデカン;ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル;ペンタエリスリトールグリシジルエーテル;ジグリシジル1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート;テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル;及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるエポキシ材料を含む、請求項22に記載のフローセル。
【請求項25】
前記第1の光酸発生剤が、ビス-(4-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、及びジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートからなる群から選択され、
前記第2の光酸発生剤が、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガラート、及びトリス[(トリフルオロメチル)スルホニル]メタニドからなる群から選択される、請求項22に記載のフローセル。
【請求項26】
基材上に樹脂組成物を堆積することであって、前記樹脂組成物が、
エポキシ樹脂マトリックスと、
約250g/mol未満の分子量を有するアニオンを含む第1の光酸発生剤と、
約300g/mol超の分子量を有するアニオンを含む第2の光酸発生剤と、を含み、
i)前記第1の光酸発生剤のカチオン、又はii)前記第2の光酸発生剤のカチオン、又はiii)前記第1及び第2の光酸発生剤のカチオンが、前記樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g
*cm)の質量減衰係数を有する、ことと、
作業スタンプを使用して、前記堆積した樹脂組成物をナノインプリントすることと、
前記ナノインプリントした、堆積した樹脂組成物を、30秒以下で約0.5J~約10Jの範囲のエネルギー照射量にて、前記入射光に曝露し、硬化しパターン形成された樹脂を形成することと、を含む、フローセルの作製方法。
【請求項27】
エポキシ樹脂マトリックスと、
第1の分子量を有する第1のアニオンを含む第1の光酸発生剤と、
前記第1の分子量より少なくとも50g/mol大きい第2の分子量を有する第2のアニオンを含む第2の光酸発生剤と、を含む樹脂組成物であって、
i)前記第1の光酸発生剤のカチオン、又はii)前記第2の光酸発生剤のカチオン、又はiii)前記第1及び第2の光酸発生剤のカチオンが、前記樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g
*cm)の質量減衰係数を有する、樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年12月23日に出願された米国仮特許出願第62/952,821号の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント技術は、ナノ構造の経済的かつ効率的な製造を可能にする。ナノインプリントリソグラフィは、ナノ構造を有するスタンプによるレジスト材料の直接機械的変形を用いる。レジスト材料は、スタンプが所定の位置に保持されている間に硬化され、レジスト材料中にナノ構造の形状を固定する。
【0003】
ナノインプリントリソグラフィは、種々の用途で使用され得るパターン形成された基材を製造するために使用されている。いくつかのパターン形成された基材は、流体チャネル及び別個のウェル又は凹部を含む。これらのパターン形成された基材は、フローセルに組み込まれ得る。いくつかのフローセルでは、活性表面化学が別個の凹部に導入され、別個の凹部を取り囲む間隙領域は不活性のままである。これらのフローセルは、広範囲の分子(例えば、DNA)、分子のファミリー、遺伝的発現レベル、又は一塩基多型の検出及び評価に特に有用であり得る。
【発明の概要】
【0004】
樹脂組成物の例及び態様が本明細書に開示される。樹脂組成物は、ナノインプリントリソグラフィで使用するのに好適であり、パターン形成されたフローセル表面を生成するのに好適である。樹脂組成物は、共に使用したときに、硬化度を著しく、そして望ましく変える、例えば、比較的短時間で、樹脂の硬度を増加させ、かつ/又は、2990cm-1における補正強度を低下させる、驚くべき相乗効果を有する、特定の組み合わせの光酸発生剤(photoacid generator、PAG)を含む。
【0005】
第1の態様では、樹脂組成物は、エポキシ樹脂マトリックスと、250g/mol未満の分子量を有するアニオンを含む第1の光酸発生剤と、約300g/mol超の分子量を有するアニオンを含む第2の光酸発生剤と、を含み、i)第1の光酸発生剤のカチオン、又はii)第2の光酸発生剤のカチオン、又はiii)第1及び第2の光酸発生剤のカチオンが、樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g*cm)の質量減衰係数を有する。
【0006】
第1の態様の一例において、エポキシ樹脂マトリックスは、エポキシ官能化シルセスキオキサン;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル;テトラキス(エポキシシクロヘキシルエチル)テトラメチルシクロテトラシロキサン;(エポキシシクロヘキシルエチル)メチルシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマー;1,3-ビス[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]テトラメチルジシロキサン;1,3-ビス(グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン;3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロ-ヘキサンカルボキシレート;ビス((3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル)アジパート;4-ビニル-1-シクロヘキセン1,2-エポキシド;ビニルシクロヘキセンジオキシド;4,5-エポキシテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル;1,2-エポキシ-3-フェノキシプロパン;メタクリル酸グリシジル;1,2-エポキシヘキサデカン;ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル;ペンタエリスリトールグリシジルエーテル;ジグリシジル1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート;テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル;及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるエポキシ材料を含む。
【0007】
第1の態様の一例において、第1の光酸発生剤は、ビス-(4-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、及び、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートからなる群から選択される。
【0008】
第1の態様の一例において、第2の光酸発生剤は、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガラート、及び、トリス[(トリフルオロメチル)スルホニル]メタニドからなる群から選択される。
【0009】
第1の態様の一例において、第1の光酸発生剤のカチオン、又は第2の光酸発生剤のカチオン、又は第1及び第2の光酸発生剤のカチオンは、約350mmの最大吸収波長(λmax)を有するジアリールヨードニウムカチオン、及び、トリフェニルスルホニウムカチオンからなる群から選択される。
【0010】
第1の態様の一例において、第2の光酸発生剤のカチオンは、樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g*cm)の質量減衰係数を有し、第1の光酸発生剤のカチオンは、樹脂組成物を硬化する入射光の波長で0.1L/(g*cm)未満の質量減衰係数を有する。一例において、第2の光酸発生剤のカチオンは、約350mmの最大吸収波長(λmax)を有するジアリールヨードニウムカチオン、及びトリフェニルスルホニウムカチオンからなる群から選択され、第1の光酸発生剤のカチオンは、ビス-(4-メチルフェニル)ヨードニウムカチオン、(クメン)シクロペンタジエニル鉄(II)カチオン、フェロセンカチオン、1-ナフチルジフェニルスルホニウムカチオン、(4-フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウムカチオン、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカチオン、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミドペルフルオロ-1-ブタンスルホネートカチオン、及び、トリアリールスルホニウムカチオンからなる群から選択される。
【0011】
第1の態様の一例において、第1の光酸発生剤のカチオン、及び第2の光酸発生剤のカチオンはそれぞれ、樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g*cm)の質量減衰係数を有する。
【0012】
第1の態様の一例において、第1の光酸発生剤は、樹脂組成物中の総固形分の約1質量%~約5質量%の範囲の量で存在し、第2の光酸発生剤は、樹脂組成物中の総固形分の約0.1質量%~約2質量%の範囲の量で存在する。
【0013】
第1の態様の一例において、第2の光酸発生剤のアニオンの分子量は、約300g/mol超~約1,000g/molの範囲である。
【0014】
本明細書で開示する本樹脂組成物の任意の特徴を、任意の所望の様式及び/又は構成で組み合わせて、例えば、硬化度の増加を含む、本開示で記載する利益を実現することができることと理解されるべきである。
【0015】
第2の態様では、樹脂組成物は、エポキシ官能化多面体オリゴマーシルセスキオキサンを含むエポキシ樹脂マトリックスと、約250g/mol未満の分子量を有するアニオンを含む第1の光酸発生剤と、約300g/mol~約1,000g/molの範囲の分子量を有するアニオンを含む第2の光酸発生剤と、を含み、i)第1の光酸発生剤のカチオン、又はii)第2の光酸発生剤のカチオン、又はiii)第1及び第2の光酸発生剤のカチオンが、樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g*cm)の質量減衰係数を有する。
【0016】
第2の態様の一例において、エポキシ官能化多面体オリゴマーシルセスキオキサンは、グリシジル官能化多面体オリゴマーシルセスキオキサン、エポキシシクロヘキシルエチル官能化多面体オリゴマーシルセスキオキサン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0017】
第2の態様の一例において、エポキシ樹脂マトリックスは、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル;テトラキス(エポキシシクロヘキシルエチル)テトラメチルシクロテトラシロキサン;(エポキシシクロヘキシルエチル)メチルシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマー;1,3-ビス[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]テトラメチルジシロキサン;1,3-ビス(グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン;3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロ-ヘキサンカルボキシレート;ビス((3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル)アジパート;4-ビニル-1-シクロヘキセン1,2-エポキシド;ビニルシクロヘキセンジオキシド;4,5-エポキシテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル;1,2-エポキシ-3-フェノキシプロパン;メタクリル酸グリシジル;1,2-エポキシヘキサデカン;ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル;ペンタエリスリトールグリシジルエーテル;ジグリシジル1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート;テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル;及びそれらの組み合わせからなる群から選択される追加のエポキシ材料を更に含む。
【0018】
第2の態様の一例において、第1の光酸発生剤は、樹脂組成物中の総固形分の約1質量%~約5質量%の範囲の量で存在する。
【0019】
第2の態様の一例において、第2の光酸発生剤は、樹脂組成物中の総固形分の約0.1質量%~約2質量%の範囲の量で存在する。
【0020】
第2の態様の一例において、第1の光酸発生剤は、ビス-(4-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、及び、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートからなる群から選択される。
【0021】
第2の態様の一例において、第2の光酸発生剤は、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガラート、及び、トリス[(トリフルオロメチル)スルホニル]メタニドからなる群から選択される。
【0022】
第2の態様の一例において、第1の光酸発生剤のカチオン、又は第2の光酸発生剤のカチオン、又は第1の光酸発生剤のカチオンと第2の光酸発生剤のカチオンの両方は、約350mmの最大吸収波長(λmax)を有するジアリールヨードニウムカチオン、及び、トリフェニルスルホニウムカチオンからなる群から選択される。
【0023】
第2の態様の一例において、第2の光酸発生剤のカチオンは、樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g*cm)の質量減衰係数を有し、第1の光酸発生剤のカチオンは、樹脂組成物を硬化する入射光の波長で0.1L/(g*cm)未満の質量減衰係数を有する。一例において、第2の光酸発生剤のカチオンは、約350mmの最大吸収波長(λmax)を有するジアリールヨードニウムカチオン、及びトリフェニルスルホニウムカチオンからなる群から選択され、第1の光酸発生剤のカチオンは、ビス-(4-メチルフェニル)ヨードニウムカチオン、(クメン)シクロペンタジエニル鉄(II)カチオン、フェロセンカチオン、1-ナフチルジフェニルスルホニウムカチオン、(4-フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウムカチオン、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカチオン、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミドペルフルオロ-1-ブタンスルホネートカチオン、及び、トリアリールスルホニウムカチオンからなる群から選択される。
【0024】
第2の態様の一例において、第1の光酸発生剤のカチオン、及び第2の光酸発生剤のカチオンはそれぞれ、樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g*cm)の質量減衰係数を有する。
【0025】
本明細書で開示する本樹脂組成物の任意の特徴を、任意の所望の様式で組み合わせることができることと理解されるべきである。更に、本樹脂組成物、及び/又は樹脂組成物の第1の態様の特徴の任意の組み合わせを合わせて使用して、かつ/又は、本明細書で開示する例のいずれかと組み合わせて、例えば、硬化度の増加を含む、本開示で記載する利益を実現することができることと理解されるべきである。
【0026】
第3の態様では、フローセルは、基材と、基材上の硬化しパターン形成された樹脂であって、当該硬化しパターン形成された樹脂が、間隙領域により分離されている凹部を含み、当該硬化しパターン形成された樹脂が、エポキシ樹脂マトリックスと、約250g/mol未満の分子量を有するアニオンを含む第1の光酸発生剤と、約300g/molを超える分子量を有するアニオンを含む第2の光酸発生剤と、を含む樹脂組成物の硬化形成体を含む、樹脂と、を含み、i)第1の光酸発生剤のカチオン、又はii)第2の光酸発生剤のカチオン、又はiii)第1及び第2の光酸発生剤のカチオンが、樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g*cm)の質量減衰係数を有する。
【0027】
第3の態様の一例は、凹部の中のヒドロゲルと、ヒドロゲルに付着した増幅プライマーと、を更に含む。
【0028】
第3の態様の例では、エポキシ樹脂マトリックスは、エポキシ官能化シルセスキオキサン;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル;テトラキス(エポキシシクロヘキシルエチル)テトラメチルシクロテトラシロキサン;(エポキシシクロヘキシルエチル)メチルシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマー;1,3-ビス[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]テトラメチルジシロキサン;1,3-ビス(グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン;3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロ-ヘキサンカルボキシレート;ビス((3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル)アジパート;4-ビニル-1-シクロヘキセン1,2-エポキシド;ビニルシクロヘキセンジオキシド;4,5-エポキシテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル;1,2-エポキシ-3-フェノキシプロパン;メタクリル酸グリシジル;1,2-エポキシヘキサデカン;ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル;ペンタエリスリトールグリシジルエーテル;ジグリシジル1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート;テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル;及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるエポキシ材料を含む。
【0029】
第3の態様の一例において、第1の光酸発生剤は、ビス-(4-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、及びジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートからなる群から選択され、第2の光酸発生剤は、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガラート、及びトリス[(トリフルオロメチル)スルホニル]メタニドからなる群から選択される。
【0030】
本明細書で開示するフローセルの任意の特徴を、任意の所望の様式で組み合わせることができることと理解されるべきである。更に、フローセル、及び/又は樹脂組成物の第1の態様、及び/又は樹脂組成物の第2の態様の特徴の任意の組み合わせを合わせて使用して、かつ/又は、本明細書で開示する例のいずれかと組み合わせて、例えば、自己蛍光の低下を含む、本開示で記載する利益を実現することができることと理解されるべきである。
【0031】
第4の態様では、方法は、基材上に樹脂組成物を堆積することであって、当該樹脂組成物が、エポキシ樹脂マトリックスと、約250g/mol未満の分子量を有するアニオンを含む第1の光酸発生剤と、約300g/molを超える分子量を有するアニオンを含む第2の光酸発生剤と、を含み、i)第1の光酸発生剤のカチオン、又はii)第2の光酸発生剤のカチオン、又はiii)第1及び第2の光酸発生剤のカチオンが、樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g*cm)の質量減衰係数を有する、ことと、作業スタンプ(working stamp)を使用して、堆積した樹脂組成物をナノインプリントすることと、ナノインプリントした、堆積した樹脂組成物を、30秒以下で約0.5J~約10Jの範囲のエネルギー照射量にて、入射光に曝露し、硬化しパターン形成された樹脂を形成することと、を含む。
【0032】
本明細書で開示する方法の任意の特徴を、任意の所望の様式で組み合わせることができることと理解されるべきである。更に、方法、及び/又はフローセル、及び/又は樹脂組成物の第1の態様、及び/又は樹脂組成物の第2の態様の特徴の任意の組み合わせを合わせて使用して、かつ/又は、本明細書で開示する例のいずれかと組み合わせて、例えば、自己蛍光の低下を含む、本開示で記載する利益を実現することができることと理解されるべきである。
【0033】
第5の態様では、樹脂組成物は、エポキシ樹脂マトリックスと、第1の分子量を有する第1のアニオンを含む第1の光酸発生剤と、第1の分子量より少なくとも50g/mol大きい第2の分子量を有する第2のアニオンを含む第2の光酸発生剤と、を含み、i)第1の光酸発生剤のカチオン、又はii)第2の光酸発生剤のカチオン、又はiii)第1及び第2の光酸発生剤のカチオンが、樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g*cm)の質量減衰係数を有する。
【0034】
本明細書で開示する本樹脂組成物の本態様の任意の特徴を、任意の所望の様式で組み合わせることができることと理解されるべきである。更に、樹脂組成物の本態様、及び/若しくは方法、及び/若しくはフローセル、並びに/又は樹脂組成物の第1の態様、並びに/又は樹脂組成物の第2の態様の特徴の任意の組み合わせを合わせて使用して、かつ/又は、本明細書で開示する例のいずれかと組み合わせて、例えば、硬化度の増加を含む、本開示で記載する利益を実現することができることと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本開示の例の特徴は、以下の詳細な説明及び図面を参照することにより明らかになろう。図面において、同様の参照番号は、類似なものではあるが、おそらく同一ではない構成要素に対応している。簡潔にするために、前述の機能を有する参照番号又は特徴は、それらが現れる他の図面と関連させて記載してもよく、記載しなくてもよい。
【0036】
【
図1】本明細書で開示される方法の一例を示すフロー図である。
【0037】
【
図2A-2E】本明細書で開示する方法の例を示す、概略斜視図である。
【0038】
【0039】
【
図3】4つの比較例の樹脂、及び、本明細書で開示する光酸発生剤の組み合わせを含む1つの実施例の樹脂についての、紫外線(ultraviolet、UV)硬化時間(秒、X軸)に対する、2990cm
-1における補正赤外線(infrared、IR)強度(Y軸)を示すグラフである。
【0040】
【
図4】比較例の樹脂、及び、本明細書で開示する光酸発生剤の組み合わせを含む1つの実施例の樹脂についての、UV光照射量(ジュール、X軸)に対する、2990cm
-1における補正IR強度(Y軸)を示すグラフである。
【0041】
【
図5】本明細書で開示する樹脂の一例で調製した、いくつかの異なるインプリント(インプリント番号、X軸)に対する、硬度(GPa、左のY軸)、及び、2990cm
-1における補正IR強度(右のY軸)を示すグラフである。
【0042】
【
図6】本明細書で開示する光酸発生剤の異なる組み合わせを含む、9つの実施例の樹脂についての自己蛍光(青色強度、Y軸)を、UV硬化時間(秒、X軸)に対して示すグラフである。
【0043】
【
図7】本明細書で開示する光酸発生剤の異なる組み合わせを含む、9つの実施例の樹脂についての2990cm
-1における補正赤外線(IR)強度(Y軸)を、UV硬化時間(秒、X軸)に対して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
いくつかのパターン形成されたフローセルは、個別のウェル又は凹部を有する樹脂材料を含む。ウェル又は凹部を形成するために、樹脂材料は、ナノインプリントリソグラフィなどの様々な技術を使用してインプリントすることができる。ナノインプリントリソグラフィは、テンプレートで樹脂をインプリントした後、樹脂を硬化することを伴う。テンプレートの任意の特徴が樹脂に転写される。
【0045】
ナノインプリントリソグラフィで使用するのに好適であり、パターン形成されたフローセル表面を生成するのに好適な樹脂組成物を本明細書で記載する。樹脂組成物は、光酸発生剤(photoacid generator、PAG)の特定の組み合わせを含む。本明細書で説明される実施例のセクションで示されるように、これらの光酸発生剤を合わせて使用する場合、光酸発生剤は、硬化度を著しく、そして望ましく変える、例えば、比較的短時間で、樹脂の硬度を増加させ、かつ/又は、2990cm-1における補正強度を低下させる、驚くべき相乗効果を有する。本明細書で開示する樹脂組成物の例は、30秒以内で、一定して高い硬化度を示す。場合によっては、高い硬化度は5秒以内で実現され、これは、光酸発生剤の特定の組み合わせを含まず、50秒、100秒、又はそれ以上の硬化時間を有する、他の樹脂と比較して、少なくとも硬化時間が90%減少する。
【0046】
変化した硬化度は、硬度及び低い自己蛍光といった、硬化した樹脂の所望の性質が、より速い硬化プロセスにより悪影響を受けないという事実と関連する。
【0047】
硬化中の樹脂は、完全にガラス化しておらず、リフローを示すことができ、これは、パターン形成された領域における、不十分かつ制御されていないウェル/凹部の形状で明らかとなり得る。更に、硬化中の樹脂は、低い硬度値を有し得る。硬化樹脂の硬度が低いことで、下流処理に対する材料の感度が増加し得る。例えば、低い硬度は、研磨などの、後続のフローセル製造プロセス中における引っ掻き傷の増加をもたらし得る。本明細書で開示する硬化樹脂の例の硬度が所望の範囲(例えば、約0.22GPa~約0.35GPa、又は約0.25GPa~約0.3GPaの範囲)内にあるため、リフロー及び引っ掻き傷(又は、他の有害な下流処理効果)が生じる可能性は最小限となるか、又は存在しない。
【0048】
いくつかの硬化樹脂は、対象となる励起波長において、望ましくないレベルの自己蛍光(例えば、約380nm~約450nmの範囲の紫色励起波長、又は、約450nm~約495nmの範囲の青色励起波長、又は、約495nm~約570nmの範囲の緑色励起波長)を示す。硬化樹脂からの蛍光は、シーケンシング中に凹部内に形成された個別の新生鎖に組み込まれるヌクレオチドの光学ラベルをイメージングするときに、バックグラウンドノイズを増加させる可能性がある。増加したバックグラウンドノイズは、信号対雑音比(signal to noise ratio、SNR)を減少させ、個々の凹部内での個別のクラスターからのシグナルが、シーケンシング中に解像するのが一層難しくなる可能性がある。本明細書で開示する硬化樹脂組成物の例は、青色励起の吸収が最小限であり、紫色又は青色励起波長に曝露したときに、比較的低い、又は青色を非含有の、又はより長い波長の自己蛍光をもたらす。そのため、本明細書で開示する硬化樹脂の例における、パターン形成されたフローセル表面でのシーケンシング中のシグナル干渉の可能性は、最小限であるか、又は存在しない。
【0049】
そのため、本明細書で開示する樹脂組成物は、対応する硬化樹脂の所望の特性を損なうことなく、パターン形成されたフローセル製造のスループットを大幅に増加させる利益を有することができる。
【0050】
定義
【0051】
本明細書に使用される用語は、別段の指定がない限り、関連する技術分野における通常の意味をとるものと理解されたい。本明細書で使用されるいくつかの用語及びそれらの意味は、以下に記載される。
【0052】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。
【0053】
含む(comprising)、含む(including)、含有する(containing)という用語、及びこれらの用語の様々な形態は、互いに同義であり、等しく広義であることを意味する。
【0054】
フローセル及び/又はフローセルの様々な構成要素を説明するために、本明細書では、上(top)、下(bottom)、下方(lower)、上方(upper)、上(on)などの用語が使用される。これらの方向を示す用語は、特定の配向を示すことを意味するものではなく、構成要素間の相対的な配向を指定するために使用されることを理解されたい。方向を示す用語の使用は、本明細書に開示される例を任意の特定の配向に制限すると解釈されるものではない。
【0055】
本明細書に提供される範囲は、そのような値又は部分範囲が明示的に列挙されているかのように、示される範囲及びその示される範囲内の任意の値又は部分範囲を含むことを理解されたい。例えば、約400nm~約1μm(1000nm)の範囲は、約400nm~約1μmの明示的に引用された制限を含むだけでなく、個別の値、例えば約708nm、約945.5nmなど、及び部分範囲、例えば約425nm~約825nm、約550nm~約940nmなどもまた含むと理解されなければならない。更に、「約」及び/又は「実質的に」が値を説明するために使用される場合、これらは、記載した値の微小な変化(最大±10%)を包含することを意味する。
【0056】
「アクリルアミド」とは、構造
【化1】
を有する官能基、又は、アクリルアミド基を含むモノマーである。アクリルアミドは、1つ以上の水素原子の代わりに置換基を有する、化学化合物としてのアクリルアミド(例えばメタクリルアミド)であってよい。アクリルアミド基を含むモノマーの例としては、アジドアセトアミドペンチルアクリルアミド:
【化2】
及びN-イソプロピルアクリルアミド:
【化3】
が挙げられる。他のアクリルアミドモノマーを使用することができ、これらのいくつかの例を本明細書で説明する。
【0057】
本明細書に使用されるとき、「アルデヒド」とは、構造-CHOを含む官能基を含有する有機化合物であり、これは、水素、及び、アルキル又は他の側鎖などのR基にも結合した炭素原子を有するカルボニル中心(即ち、酸素に二重結合した炭素)を含む。アルデヒドの一般構造は、
【化4】
である。
【0058】
本明細書に使用されるとき、「アルキル」は、完全に飽和している(すなわち、二重結合又は三重結合を含有しない)直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖を指す。アルキル基は、1~20個の炭素原子を有し得る。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、三級ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。例として、表記「C1~C4アルキル」は、アルキル鎖中に1~4個の炭素原子が存在すること、すなわち、アルキル鎖が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、及びt-ブチルからなる群から選択されることを示す。
【0059】
本明細書に使用されるとき、「アルケニル」は、1つ以上の二重結合を含有する直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖を指す。アルケニル基は、2~20個の炭素原子を有し得る。例示的なアルケニル基としては、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルなどが挙げられる。
【0060】
本明細書に使用されるとき、「アルキン」又は「アルキニル」は、1つ以上の三重結合を含有する直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖を指す。アルキニル基は、2~20個の炭素原子を有し得る。
【0061】
本明細書で使用するとき、「アリール」は、環骨格中に炭素のみを含有する芳香環又は環系(すなわち、2つの隣接する炭素原子を共有する2つ以上の縮合環)を指す。アリールが環系である場合、系内の全ての環は芳香環である。アリール基は、6~18個の炭素原子を有し得る。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アズレニル、及びアントラセニルが挙げられる。
【0062】
「アミン」又は「アミノ」官能基とは、-NR
aR
b基を意味し、式中、R
a及びR
bはそれぞれ、本明細書で定義する、水素(例えば、
【化5】
)、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C7炭素環、C6~C10アリール、5~10員のヘテロアリール、及び、5~10員の複素環から独立して選択される。
【0063】
本明細書に使用されるとき、「付着した(attached)」という用語は、2つのものが、直接的又は間接的のいずれかで、互いに、接合、締結、接着、接続、又は結合されている状態を指す。例えば、核酸は、共有結合又は非共有結合によってポリマーヒドロゲルに付着され得る。共有結合は、原子間の電子対の共有によって特徴付けられる。非共有結合は、電子対の共有を伴わない物理結合であり、例えば、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、親水性相互作用、及び疎水性相互作用を挙げることができる。
【0064】
「自己蛍光」とは、青色励起波長に曝露されたときの、硬化樹脂による光の放出を意味する。自己蛍光が存在しないことは、蛍光レベルが、検出の閾値制限を下回ることを意味する。用語「低い自己蛍光」とは、検出の閾値制限を上回っており、かつノイズと見なすには十分低い(青色励起波長に曝露されたときの硬化樹脂の)発光レベル、及び、シーケンシング中のクラスターシグナルの検出と干渉しないレベルにあるノイズを意味する(例えば、自己蛍光レベルにより、個別のクラスターからのシグナルを、シーケンシング中に解像可能にするには十分に高い信号対雑音比(SNR)が可能となる)。
【0065】
自己蛍光(autofluorescence、AF)の定量化の観点では、「低い」又は「低レベル」の定義は、励起放射をもたらすために使用される自己蛍光及び/又はランプを測定するために使用するツールに応じて変化し得ることと理解されるべきである。いくつかの例では、参照を使用して、相対的なAFレベルを定義してもよい。一例として、参照とは、0.7mm厚のCORNING(登録商標)EAGLE XG(登録商標)ガラス(CORNING EAGLE XG glass、CEXG)のAFレベルであり、「低AFレベル」とは、青色レーザー励起によるCEXG出力と比較して定義することができる。この出力の数値(任意の単位)は、測定される材料、測定される励起及び発光バンド、励起光の強度などに応じて変化し得るため、相対的な意味で関係する。一例として、0.7mmのCEXGについて約3500AUの発光値の場合、スタックからの全シグナルが、約10,000AU未満(例えば、硬化樹脂の寄与が、CEXGの寄与の2倍未満)、又は、他の例において、約7,000AU未満(例えば、硬化樹脂の寄与がCEXGの寄与の1倍未満)である場合に、硬化樹脂の約500nmの層は、低いAFを有するとみなされ得る。
【0066】
「アジド(azide)」又は「アジド(azido)」官能基は、-N3を指す。
【0067】
本明細書に使用されるとき、「炭素環」は、環系骨格に炭素原子のみを含有する非芳香族環式環又は環系を意味する。炭素環が環系である場合、2つ以上の環が、縮合、架橋、又はスピロ結合方式で一緒に接合され得る。炭素環は、環系内の少なくとも1つの環が芳香族ではないことを条件として、任意の飽和度を有し得る。したがって、炭素環には、シクロアルキル、シクロアルケニル、及びシクロアルキニルが含まれる。炭素環基は、3~20個の炭素原子を有し得る。炭素環式環の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、2,3-ジヒドロ-インデン、ビシクロ[2.2.2]オクタニル、アダマンチル、及びスピロ[4.4]ノナニルが挙げられる。
【0068】
本明細書に使用されるとき、「シクロアルケニル」又は「シクロアルケン」は、少なくとも1つの二重結合を有する炭素環式環又は環系を意味し、環系内の環は、いずれも芳香族ではない。例としては、シクロヘキセニル又はシクロヘキセン及びノルボルネニル又はノルボルネンが挙げられる。また、本明細書に使用されるとき、「ヘテロシクロアルケニル」又は「ヘテロシクロアルケン」とは、少なくとも1つの二重結合を有する、環骨格内に少なくとも1つのへテロ原子を有する炭素環又は環系を意味し、環系の中のいずれも環も、芳香族ではない。
【0069】
本明細書に使用されるとき、「シクロアルキル」とは、完全に飽和した(二重又は三重結合がない)単環又は多環式炭化水素環系を意味する。2つ以上の環から構成される場合、環は、縮合方式で一緒に接合され得る。シクロアルキル基は、環内に3~10個の原子を含有し得る。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は、環内に3~8個の原子を含有し得る。シクロアルキル基は、非置換であってもよく、又は置換されていてもよい。例示的なシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられる。
【0070】
本明細書に使用されるとき、「シクロアルキニル」又は「シクロアルキン」は、少なくとも1つの三重結合を有する炭素環式環又は環系を意味し、環系内の環は、いずれも芳香族ではない。例は、シクロオクチンである。別の例は、ビクロノニンである。本明細書に使用されるとき、「ヘテロシクロアルキニル」又は「ヘテロシクロアルキン」は、少なくとも1つの三重結合を有する、環骨格内に少なくとも1つのへテロ原子を有する炭素環式環又は環系を意味し、環系内の環は、いずれも芳香族ではない。
【0071】
本明細書に使用されるとき、「堆積」という用語は、手作業であっても自動であってもよく、いくつかの場合には表面特性の改質をもたらす、任意の好適な適用技術を指す。一般に、堆積は、蒸着技術、コーティング技術、グラフト技術などを使用して実行され得る。いくつかの特定の例としては、化学蒸着(chemical vapor deposition、CVD)、スプレーコーティング(例えば、超音波スプレーコーティング)、スピンコーティング、ダンク又はディップコーティング、ドクターブレードコーティング、液滴分配(puddle dispensing)、フロースルーコーティング、エアロゾル印刷、スクリーン印刷、マイクロコンタクト印刷、インクジェット印刷などが挙げられる。
【0072】
本明細書に使用されるとき、「凹部」又は「ウェル」という用語は、樹脂の間隙領域によって少なくとも部分的に包囲される表面開口部を有する、パターン形成された樹脂における不連続の凹状の特徴を指す。凹部は、表面の開口部において、例として、円形、楕円形、正方形、多角形、星形(任意の数の頂点を持つ)などの、様々な形状をとることができる。表面と直交するように取られた凹部の断面は、湾曲形状、正方形、多角形、双曲線、円錐、角のある形状などであることができる。例として、凹部は、ウェル又はトレンチ/ライン/トラフであり得る。凹部はまた、尾根、階段状の作りなど、より複雑な構造を有し得る。
【0073】
「それぞれ」、「各」という用語は、項目の集合を参照して使用されるとき、集合内の個々の項目を識別することを意図しているが、必ずしも集合内の全ての項目を指すものではない。明示的な開示又は文脈がそうでないことを明確に指示する場合、例外が生じ得る。
【0074】
本明細書に使用されるとき、用語「エポキシ」とは、
【化6】
を意味する。
【0075】
本明細書に使用されるとき、「フローセル」という用語は、反応を行うことができるチャンバ(例えば、フローチャネルを含む)と、試薬をチャンバに送達するための入口と、チャンバから試薬を除去するための出口とを有する容器を意味することを意図する。いくつかの例では、チャンバは、チャンバ内で発生する反応の検出を可能にする。例えば、チャンバは、凹部において、アレイ、光学的に標識された分子などの光学的検出を可能にする1つ以上の透明な表面を含み得る。
【0076】
本明細書に使用されるとき、「フローチャネル」は、液体サンプルを選択的に受容することができる、2つの付着された、又は別様においては取り付けられた構成要素間に画定される領域であり得る。いくつかの例では、フローチャネルは、パターン形成された樹脂と蓋又は2つのパターン形成された樹脂との間に画定されてもよく、したがって、パターン形成された樹脂内に画定された1つ以上の凹部と流体連通してもよい。
【0077】
本明細書で使用するとき、「ヘテロアリール」は、環骨格中に窒素(N)、酸素(O)、及び硫黄(S)を含むがこれらに限定されない、1個以上のヘテロ原子、すなわち炭素以外の元素を含有する芳香環又は環系(すなわち、2つの隣接する原子を共有する2つ以上の縮合環)を指す。ヘテロアリールが環系である場合、系内の全ての環は芳香環である。ヘテロアリール基は、5~18環員を有し得る。
【0078】
本明細書で使用するとき、「複素環」は、環骨格中に少なくとも1つのヘテロ原子を含有する非芳香族環又は環系を意味する。複素環どうしは、縮合、架橋、又はスピロ結合式に、一体に接合されてもよい。複素環は、環系中の少なくとも1つの環が芳香族ではないことを条件として、任意の飽和度を有してもよい。環系の中で、ヘテロ原子は、非芳香環又は芳香環のいずれかに存在してよい。複素環基は、3~20環員(即ち、炭素原子及びヘテロ原子を含む、環骨格を形成する原子の数)を有してよい。いくつかの例では、ヘテロ原子は、O、N、又はSである。
【0079】
本明細書に使用されるとき、用語「ヒドラジン」又は「ヒドラジニル」とは、-NHNH2基を意味する。
【0080】
本明細書に使用されるとき、本明細書で使用する用語「ヒドラゾン」又は「ヒドラゾニル」とは、
【化7】
基を意味し、式中、R
a及びR
bはそれぞれ、本明細書で定義する、水素(例えば、
【化8】
)、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C7炭素環、C6~C10アリール、5~10員のヘテロアリール、及び、5~10員の複素環から独立して選択される。
【0081】
本明細書に使用されるとき、「ヒドロキシ」又は「ヒドロキシル」は、-OH基を指す。
【0082】
本明細書に使用されるとき、用語「間隙領域」とは、凹部を分離する、(例えば、パターン形成された樹脂の)表面上の領域を意味する。例えば、間隙領域は、アレイの1つの特徴部を、アレイの別の特徴部から分離することができる。互いに分離された2つの特徴部は、別個であってもよい、すなわち、互いとの物理的な接触が欠如していてもよい。別の例において、間隙領域は、特徴部の第1の部分を、特徴部の第2の部分と分離することができる。多くの例では、間隙領域は、連続的であるが、特徴部は、例えば、それ以外は連続的である表面に画定される複数のウェルの場合のように、不連続である。他の例では、間隙領域及び特徴部は、例えば、それぞれの間隙領域によって分離される複数のトレンチの場合のように、不連続である。間隙領域によって提供される分離は、部分的又は完全な分離であり得る。間隙領域は、表面に画定される特徴部の表面材料とは異なる表面材料を有してもよい。例えば、アレイの特徴部は、間隙領域に存在する量又は濃度を超過する、ある量又は濃度のポリマーコーティング、及びプライマーを有することができる。いくつかの例では、ポリマーコーティング及びプライマーは、間隙領域に存在しなくてよい。
【0083】
「ニトリルオキシド」とは、本明細書に使用されるとき、「RaC≡N+O-」基を意味し、式中、Raは本明細書で定義される。ニトリルオキシドの調製例としては、クロラミド-Tでの処理による、又は、イミドイルクロリド[RC(Cl)=NOH]上での塩基作用による、又は、ヒドロキシルアミンとアルデヒドとの反応によるアルドキシムからのin situ生成が挙げられる。
【0084】
「ニトロン」とは、本明細書に使用されるとき、
【化9】
基を意味し、式中、R
1、R
2、及びR
3は、本明細書で定義されるR
a及びR
b基のいずれかであってよい。
【0085】
本明細書に使用されるとき、「ヌクレオチド」は、窒素含有複素環式塩基、糖、及び1つ以上のリン酸基を含む。ヌクレオチドは、核酸配列のモノマー単位である。RNA中の場合、糖はリボースであり、DNA中の場合、糖は、デオキシリボース、すなわち、リボースの2’位に存在するヒドロキシル基が欠如している糖である。窒素含有複素環式塩基(すなわち、核酸塩基)は、プリン塩基であってもピリミジン塩基であってもよい。プリン塩基としては、アデニン(A)及びグアニン(G)、並びにそれらの修飾された誘導体又は類似体が挙げられる。ピリミジン塩基としては、シトシン(C)、チミン(T)、及びウラシル(U)、並びにそれらの修飾された誘導体又は類似体が挙げられる。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1又はプリンのN-9に結合される。核酸類似体は、リン酸骨格、糖、又は核酸塩基のいずれかが変化していてもよい。核酸類似体の例としては、例えば、ペプチド核酸(peptide nucleic acid、PNA)などのユニバーサル塩基又はリン酸-糖骨格類似体が挙げられる。
【0086】
本明細書に使用されるとき、「光酸発生剤(PAG)」とは、放射線への曝露の際にプロトンを放出する分子である。PAGは一般に、プロトンの光解離を不可逆的に受ける。
【0087】
本明細書に使用されるとき、「プライマー」は、一本鎖核酸配列(例えば、一本鎖DNA)として定義される。増幅プライマーと称され得るいくつかのプライマーは、鋳型増幅及びクラスター生成の開始点として機能する。シーケンシングプライマーと称され得る他のプライマーは、DNA合成のための開始点として機能する。プライマーの5’末端は、ポリマーコーティングの官能基とのカップリング反応を可能にするように修飾されていてもよい。プライマーの長さは、任意の数の塩基の長さであることができ、様々な非天然ヌクレオチドを含むことができる。一例では、シーケンシングプライマーは、10~60塩基、又は20~40塩基の範囲の短鎖である。
【0088】
本明細書に使用されるとき、「スペーサ層」は、2つの構成要素を互いに結合する物質を意味する。いくつかの例では、スペーサ層は、結合を補助する放射線吸収性物質であることができるか、又は、結合を補助する放射線吸収性物質と接触させることができる。スペーサ層は結合領域、例えば、別の材料に結合される予定の、基材上の領域に存在することができ、別の材料は例として、スペーサ層、蓋、別の基材など、又はこれらの組み合わせ(例えば、スペーサ層及び蓋)であってよい。結合領域にて形成される結合は、化学結合(上述のとおり)、又は機械的結合(例えば、ファスナーなどを用いる)であってよい。
【0089】
「チオール」官能基とは、-SHを意味する。
【0090】
本明細書に使用されるとき、用語「テトラジン」及び「テトラジニル」とは、4つの窒素原子を含む6員のヘテロアリール基を意味する。テトラジンは、任意に置換され得る。
【0091】
本明細書に使用されるとき、「テトラゾール」とは、4つの窒素原子を含む5員の複素環基を意味する。テトラゾールは、任意に置換され得る。
【0092】
樹脂組成物
【0093】
本明細書で開示するいくつかの例では、樹脂組成物は、エポキシ樹脂マトリックスと、約250g/mol未満の分子量を有するアニオンを含む第1の光酸発生剤と、約300g/molを超える分子量を有するアニオンを含む第2の光酸発生剤と、を含み、i)第1の光酸発生剤のカチオン、又はii)第2の光酸発生剤のカチオン、又はiii)第1及び第2の光酸発生剤のカチオンが、樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g*cm)の質量減衰係数を有する。
【0094】
本明細書に開示される他の例では、樹脂組成物は、エポキシ樹脂マトリックスと、第1の分子量を有する第1のアニオンを含む第1の光酸発生剤と、第1の分子量より少なくとも50g/mol(及び、場合によっては少なくとも90g/mol)大きい第2の分子量を有する第2のアニオンを含む第2の光酸発生剤と、を含み、i)第1の光酸発生剤のカチオン、又はii)第2の光酸発生剤のカチオン、又はiii)第1及び第2の光酸発生剤のカチオンが、樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g*cm)の質量減衰係数を有する。
【0095】
本明細書で開示する例のいずれかでは、2つの異なるアニオンのうちの一方(例えば、小アニオン)を、2つの異なるアニオンの他方(例えば、大アニオン)よりも速い速度で拡散させるのが望ましい場合がある。一例では、大アニオンは、(密度が等しいと推定すると)小アニオンよりも体積が少なくとも4倍(4x)大きい。
【0096】
エポキシ樹脂マトリックスは、少なくとも1つのエポキシ材料を含む。任意の好適なエポキシモノマー又は架橋可能なエポキシコポリマーを、エポキシ材料として使用することができる。エポキシ材料は、
i) エポキシ官能化シルセスキオキサン(以下で更に説明する);
ii) トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル:
【化10】
iii) テトラキス(エポキシシクロヘキシルエチル)テトラメチルシクロテトラシロキサン:
【化11】
iv) (エポキシシクロヘキシルエチル)メチルシロキサンとジメチルシロキサンのコポリマー:
【化12】
[式中、m:nの比は8:92~10:90の範囲である。];
v) 1,3-ビス[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]テトラメチルジシロキサン:
【化13】
vi) 1,3-ビス(グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン:
【化14】
vii) 3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロ-ヘキサンカルボキシレート:
【化15】
viii) ビス((3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル)アジパート:
【化16】
ix) 4-ビニル-1-シクロヘキセン1,2-エポキシド:
【化17】
x) ビニルシクロヘキセンジオキシド:
【化18】
xi) 4,5-エポキシテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル:
【化19】
xii) 1,2-エポキシ-3-フェノキシプロパン:
【化20】
xiii) メタクリル酸グリシジル:
【化21】
xiv) 1,2-エポキシヘキサデカン:
【化22】
xv) ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル:
【化23】
[式中、nは1~100の範囲である。];
xvi) ペンタエリスリトールグリシジルエーテル:
【化24】
xvii) ジグリシジル1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート:
【化25】
xviii) テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル:
【化26】
xix) これらの組み合わせからなる群から選択されてよい。組み合わせを用いる場合、列挙したエポキシ樹脂材料のいずれか2つ以上を、樹脂組成物中で合わせて使用してよいことと理解されるべきである。
【0097】
エポキシ官能化シルセスキオキサンは、エポキシ基で官能化されたシルセスキオキサンコアを含む。
【0098】
本明細書に使用されるとき、「シルセスキオキサン」という用語は、シリカ(SiO2)とシリコーン(R2SiO)との間のハイブリッド中間体(RSiO1.5)である化学組成物を指す。例示的なシルセスキオキサンとしては、POSS(登録商標)(Hybrid Plastics)の商品名で市販されている、多面体オリゴマーシルセスキオキサンが挙げられる。多面体オリゴマーシルセスキオキサンの例は、Kehagias et al.,Microelectronic Engineering 86 (2009),pp.776-778に記載されているものであり得、これは、参照によりその全体が組み込まれる。組成物は、化学式[RSiO3/2]nを有する有機ケイ素化合物であり、R基は同じであっても異なってもよい。
【0099】
本明細書に開示される樹脂組成物は、モノマー単位として1つ以上の異なるケージ又はコアシルセスキオキサン構造を含み得る。例えば、多面体構造は、
【化27】
などのT
8構造(多八面体ケージ又はコア構造)であってよく、
【化28】
により表される。このモノマー単位は典型的には、官能基R
1からR
8の8つのアームを有する。
【0100】
モノマー単位は、
【化29】
などのT
10と呼ばれる10個のケイ素原子及び10個のR基を有するケージ構造を有し得るか、又は
【化30】
などの、T
12と呼ばれる12個のケイ素原子及び12個のR基を有するケージ構造を有し得る。シルセスキオキサン系材料は、代替的に、T
6、T
14、又はT
16ケージ構造を含んでもよい。
【0101】
平均ケージ含有量は、合成期間に調整され得、及び/又は精製方法によって制御され得、モノマー単位のケージサイズの分布は本明細書に開示される例で使用され得る。一例として、ケージ構造のいずれかが、使用する全シルセスキオキサンモノマー単位の約30%~約100の範囲の量で存在してよい。したがって、シルセスキオキサン系材料は、シルセスキオキサン構成の混合物を含んでよい。
【0102】
シルセスキオキサン系材料は、ケージ構造の混合物であってよく、開口、及び部分的な開口ケージ構造を含み得る。例えば、本明細書に記載する任意のエポキシシルセスキオキサン材料は、個別のシルセスキオキサンケージと、非個別のシルセスキオキサン構造と、かつ/又は、ポリマー、ラダーなどの、不完全に縮合した個別の構造と、の混合物であってよい。部分縮合した材料は、いくつかのケイ素頂点に、本明細書に記載するエポキシR基を含み得るが、いくつかのケイ素原子は、エポキシR基で置換されず、代わりに、OH基で置換され得る。いくつかの例では、シルセスキオキサン材料は、
(a)
【化31】
(b)
【化32】
及び/又は(c)
【化33】
などの、様々な形態の混合物を含む。
【0103】
本明細書で開示する例では、R
1~R
8、又はR
10、又はR
12のうちの少なくとも1つはエポキシを含み、故に、シルセスキオキサンは、エポキシシルセスキオキサン(例えば、エポキシ多面体オリゴマーシルセスキオキサン)と呼ばれる。いくつかの態様では、エポキシシルセスキオキサンは、末端エポキシ基を含む。この種のシルセスキオキサンの例は、以下の構造を有するグリシジルPOSS(登録商標)である。
【化34】
【0104】
この種のシルセスキオキサンの別の例は、以下の構造を有するエポキシシクロヘキシルエチル官能化POSS(登録商標)である。
【化35】
【0105】
本明細書で開示するエポキシ樹脂マトリックスの一例としては、エポキシ官能化多面体オリゴマーシルセスキオキサンが挙げられ、エポキシ官能化多面体オリゴマーシルセスキオキサンは、グリシジル官能化多面体オリゴマーシルセスキオキサン、エポキシシクロヘキシルエチル官能化多面体オリゴマーシルセスキオキサン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。この例としては、単独での、又は、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル;テトラキス(エポキシシクロヘキシルエチル)テトラメチルシクロテトラシロキサン;(エポキシシクロヘキシルエチル)メチルシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマー;1,3-ビス[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]テトラメチルジシロキサン;1,3-ビス(グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン;3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロ-ヘキサンカルボキシレート;ビス((3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル)アジパート;4-ビニル-1-シクロヘキセン1,2-エポキシド;ビニルシクロヘキセンジオキシド;4,5-エポキシテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル;1,2-エポキシ-3-フェノキシプロパン;メタクリル酸グリシジル;1,2-エポキシヘキサデカン;ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル;ペンタエリスリトールグリシジルエーテル;ジグリシジル1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート;テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル;及びそれらの組み合わせからなる群から選択される追加のエポキシ材料と組み合わせた、エポキシシルセスキオキサン材料を挙げることができる。
【0106】
他のシルセスキオキサンの例では、アームの大部分、例えば8個、10個、若しくは12個のアーム、又はR基は、エポキシ基を含む。他の例では、R1~R8、又はR10、又はR12は同一であり、故に、R1~R8、又はR10、又はR12はそれぞれ、エポキシ基を含む。更に他の例では、R1~R8、又はR10、又はR12は同一ではなく、故に、R1~R8、又はR10、又はR12のうちの少なくとも1つはエポキシを含み、R1~R8、又はR10、又はR12のうちの少なくとも他の1つは、非エポキシ官能基であり、これは場合によっては、アジド/アジド(azide/azido)、チオール、ポリ(エチレングリコール)、ノルボルネン、及びテトラジン、又は更に、例えば、アルキル、アリール、アルコキシ、及びハロアルキル基からなる群から選択される。いくつかの態様では、非エポキシ官能基は、樹脂の表面エネルギーを増加させるように選択される。これらの他の例では、エポキシ基の、非エポキシ基に対する比は、7:1~1:7、又は9:1~1:9、又は11:1~1:11の範囲である。
【0107】
本明細書で開示する例では、エポキシシルセスキオキサンはまた、制御されたラジカル重合(controlled radical polymerization、CRP)剤、及び/又は、官能基R1~R8、若しくはR10、若しくはR12の1つ以上として、樹脂若しくはコア若しくはケージ構造に組み込まれた、対象となる別の官能基を含む、修飾エポキシシルセスキオキサンであってもよい。
【0108】
エポキシ樹脂マトリックス中で、単一のエポキシ材料を用いるのか、又は、エポキシ材料の組み合わせを用いるのかにかかわらず、樹脂組成物中でのエポキシ樹脂マトリックスの総量は、総固形分の約93質量%~約99質量%の範囲である。
【0109】
本明細書で開示する例示的なエポキシ材料のいずれかを用いると、紫外線(UV)光及び(光酸発生剤の組み合わせにより生成された)酸を用いる反応開始の際に、エポキシ基がモノマー単位及び/又はコポリマーを、重合及び/又は架橋させて、架橋マトリックスにすることと理解されるべきである。
【0110】
樹脂組成物の例としては、光酸発生剤の組み合わせもまた含まれる。この組み合わせのいくつかの例では、第1の光酸発生剤は、カチオン、及び小アニオン、即ち、約250g/mol未満の分子量を有するアニオンを含み、第2の光酸発生剤は、カチオン、及び大アニオン、例えば、約300g/mol超、例えば、約300g/mol~約1,000g/molの範囲などの分子量を有するアニオンを含む。この組み合わせの他の例において、第1の光酸発生剤は、カチオン、及び、第1の分子量を有する小アニオンを含み、第2の光酸発生剤は、カチオン、及び、第1の分子量よりも少なくとも50g/mol大きい分子量を有する大アニオンを含む。
【0111】
樹脂組成物中の光酸発生剤のカチオンの少なくとも1つは、樹脂組成物を硬化するために使用可能な入射光(例えば、紫外線(UV)光)の強力な吸収を示すはずである。中圧水銀(medium pressure mercury、MPM)ランプ及びUV発光ダイオード(light emitting diode、LED)などの、高電力UV光源は、特定波長を中心とする狭い範囲の波長の中で、発光し得る、又は、UVエネルギーへ曝露を制限するようにフィルタをかけることができる。中心波長の光は、入射光と本明細書では呼ばれる。いくつかの例では、特定の波長(入射光)は、約365nmである。
【0112】
「強力な吸収」、「強力に吸収する(strongly absorb)」、及び「強力に吸収する(strongly absorbing)」とは、第1及び/又は第2の光開始剤のカチオンが、樹脂組成物を硬化するために使用される入射光の波長の±40nm以内の、最大吸収(Amax)を有し、かつ/又は、樹脂組成物を硬化するために使用される入射光の波長における、第1及び/若しくは第2の光開始剤のカチオンの吸収度が、最大吸収(Amax)の10%を上回り、かつ/又は、第1及び/若しくは第2の光開始剤のカチオンが、樹脂組成物を硬化するための入射光の波長で少なくとも0.1L/(g*cm)の質量減衰係数を有することを意味する。一例では、入射光は、約350nm~約380nm(中心は例えば約365nm)の範囲の波長を有し、第1の光酸発生剤のカチオン又は第2の光酸発生剤のカチオンは、入射光の波長において、約0.9L/(g*cm)~約1.1L/(g*cm)の範囲の質量減衰係数を有する。
【0113】
約365nmの光などの入射光を強力に吸収可能なカチオンの例としては、約350nmの最大吸収波長(λ
max)を有するトリフェニルスルホニウムカチオン及びジアリールヨードニウムカチオンが挙げられる。トリフェニルスルホニウムカチオンは、以下の構造を有し得、
【化36】
式中、Rは水素原子であり、R’は、
【化37】
である。
約350mmの最大吸収波長(λ
max)を有するジアリールヨードニウムカチオンは、以下の構造を有し得る
【化38】
【0114】
樹脂組成物中の光酸発生剤が、入射光への樹脂の曝露の際に効率的に活性化されるように、カチオンの少なくとも1つが、入射光の強力な吸収を示すのが望ましい。カチオンの1つが入射光を吸収するとき、エネルギーを印加されたカチオンは、関連するアニオンが酸生成することを可能にする。エネルギーを吸収するカチオンはまた、他の光酸発生剤のアニオンにエネルギーを移して、酸生成を可能とすることもできる。カチオンの両方が入射光を吸収するとき、それぞれのカチオンは、関連するアニオンが、それぞれ酸生成することを可能にする。一方又は両方のカチオンによる光の効率的な吸収により、光酸発生剤は、所望のレベルの、それぞれの酸を生成することができる。
【0115】
樹脂組成物のいくつかの例では、第1及び第2の光酸発生剤は共に、同一のカチオンを有する。これらの例では、カチオンの両方が、樹脂組成物を硬化するために使用される入射光の強力な吸収を示す。第1の光酸発生剤のカチオン、及び第2の光酸発生剤のカチオンはそれぞれ、樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g*cm)の質量減衰係数を有する。これらの例では、第1の光酸発生剤のカチオン、及び第2の光酸発生剤のカチオンの両方は、約350mmの最大吸収波長(λmax)を有するジアリールヨードニウムカチオン、及びトリフェニルスルホニウムカチオンからなる群から選択されることができる。
【0116】
しかし、2つの強力な吸収性カチオンは、硬化樹脂の自己蛍光もまた増加させ得ることと理解されるべきである。そのため、第1及び第2の光酸発生剤が同一のカチオンを有する場合において、自己蛍光の増加を避けるために、より少量の各光酸発生剤を使用するのが望ましい場合がある。これらの例では、第1の光酸発生剤は樹脂組成物中に、樹脂組成物の総固形分の約1質量%~約1.3質量%の範囲の量で存在することができ、第2の光酸発生剤は樹脂組成物中に、樹脂組成物の総固形分の約0.125質量%~約1.3質量%の範囲の量で存在することができる。
【0117】
樹脂組成物の他の例では、第1及び第2の光酸発生剤は異なるカチオンを有する。カチオンの一方は、入射光を強力に吸収し得るが、カチオンの他方は、入射光を最小限に吸収するか、又は全く吸収しない。約365nmにおける光などの入射光を最小限に吸収する、又は吸収しないカチオンの例としては、ビス-(4-メチルフェニル)ヨードニウムカチオン、(クメン)シクロペンタジエニル鉄(II)カチオン、フェロセンカチオン、1-ナフチルジフェニルスルホニウムカチオン、(4-フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウムカチオン、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカチオン、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミドペルフルオロ-1-ブタンスルホネートカチオン、及びトリアリールスルホニウムカチオンが挙げられる。
【0118】
場合によっては、第2の光酸発生剤(大アニオンを含む)は、入射光を強力に吸収するカチオンを含むのが望ましい場合がある。以下で詳述するように、大アニオンは強力な酸を生成する傾向にあり、これは重合反応速度を増加させ得る。そのため、いくつかの例では、第2の光酸発生剤(大アニオンを有する)のカチオンは、樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g*cm)の質量減衰係数を有し、第1の光酸発生剤(小アニオンを有する)のカチオンは、樹脂組成物を硬化する入射光の波長で、0.1L/(g*cm)未満の質量減衰係数を有する。具体的な一例において、第2の光酸発生剤のカチオンは、約350mmの最大吸収波長(λmax)を有するジアリールヨードニウムカチオン、及びトリフェニルスルホニウムカチオンからなる群から選択され、第1の光酸発生剤のカチオンは、ビス-(4-メチルフェニル)ヨードニウムカチオン、(クメン)シクロペンタジエニル鉄(II)カチオン、フェロセンカチオン、1-ナフチルジフェニルスルホニウムカチオン、(4-フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウムカチオン、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカチオン、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミドペルフルオロ-1-ブタンスルホネートカチオン、及び、トリアリールスルホニウムカチオンからなる群から選択される。
【0119】
本明細書で簡潔に言及するように、樹脂組成物が入射光に曝露されるとき、強力な吸収性カチオンは入射光を吸収し、これは、それぞれ強酸及び弱酸を生成するように大アニオン及び小アニオンを効率的に活性化する。酸は、エポキシ樹脂マトリックス中のエポキシ材料のエポキシ環の中の酸素原子から、電子対を引き抜くことができる。酸素原子は、隣接するモノマーのエポキシ反応性基上の、より置換された炭素を攻撃することにより重合反応を伝播させることができ、これにより、開環してポリマー鎖を生長させる。
【0120】
大アニオンと小アニオンの組み合わせ、及び、関連する強酸及び弱酸は驚くべきことに、重合速度に相乗的に影響を及ぼし得る。大アニオンは強酸を生成し、これはより反応性であるため、各ポリマー鎖に対する伝播速度を増加させる。しかし、大アニオンはそのサイズにより、拡散が限定され得る。言い換えれば、大アニオンは、活性ポリマー鎖が重合を継続するために、より多くのモノマーを発見する能力を制限し得る。小アニオンは、大アニオンが生成するよりも弱い酸を生成し、故に、初期的には伝播速度を増加させない。しかし、小アニオンは、未硬化の樹脂組成物よりも高い粘度を有し、より制限された、部分的に硬化した樹脂を通って、より効率的に拡散可能であり得る。そのため、小アニオン及びその弱酸は、より嵩高い大アニオン及びその伝播鎖末端がトラップされた後で、重合を継続し得る。したがって、小アニオンは、大アニオンよりも高いモノマー転化を促進し得る。小アニオンの効率的な拡散と組み合わせた、大アニオンの速い初期反応速度(initial fast kinetics)は、硬化樹脂の硬度又は自己蛍光特性に悪影響を及ぼすことなく、硬化度に驚くべき、かつ相乗的な効果を生み出すようである。
【0121】
第1の光酸発生剤は、小アニオンを含み、小アニオンは、本明細書では、約250g/mol未満の分子量を有するアニオンとして定義される。いくつかの例では、小アニオンの分子量は、約140g/mol~約240g/molの範囲である。好適な小アニオンの例としては、ヘキサフルオロアンチメート(SbF6
-)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6
-)、又はヘキサフルオロアルセネート(AsF6
-)が挙げられる。ヘキサフルオロアンチメートは、約235g/molの分子量を有する。ヘキサフルオロホスフェートは、約145g/molの分子量を有する。ヘキサフルオロアルセネートは、約188g/molの分子量を有する。
【0122】
第1の光酸発生剤のいくつかの具体例としては、ビス-(4-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(IGM ResinsからOMNICAT(登録商標)PAG 270として市販されている)、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(SylantoからSYLANTO(商標)7MPとして市販されている)、及び、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート(SylantoからSYLANTO(商標)7MSとして市販されている)が挙げられる。
【0123】
第1の光酸発生剤は樹脂組成物中に、樹脂組成物の総固形分の約1質量%~約5質量%の範囲の量で含まれ得る。別の例では、第1の光酸発生剤は、樹脂組成物の総固形分の約2質量%~約5質量%の範囲の量で含まれ得る。
【0124】
第2の光酸発生剤は大アニオンを含み、大アニオンは、いくつかの例では、約300g/mol超の分子量を有するアニオンとして定義される。いくつかの例では、大アニオンの分子量は、約300g/mol超~約1,000g/molの範囲である。いくつかの例では、大アニオンの分子量は、約400g/mol~約900g/mol、又は約600g/mol~約700g/molの範囲である。好適な大アニオンの例としては、テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート((C6F5)4B-)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガラート((C6F5)4Ga-)、又は、トリス[(トリフルオロメチル)スルホニル]メタニド((CF3SO2)2C-)が挙げられる。テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガラートは、約740g/molの分子量を有する。トリス[(トリフルオロメチル)スルホニル]メタニドは、約411g/molの分子量を有する。
【0125】
第2の光酸発生剤の具体例としては、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレートは、IRGACURE(登録商標)PAG 290(BASF Corp.製)の商品名で市販されている。
【0126】
他の例では、第1及び第2の光酸発生剤は、一方の光酸発生剤の分子量が、他方の光酸発生剤よりも、少なくとも50g/mol大きくなるように選択される。この例では、分子量の差が少なくとも50g/molである限り、任意の組み合わせのアニオンを使用してよい。したがって、一例では、第1の光酸発生剤は、ヘキサフルオロホスフェートアニオン(PF6
-)(約145g/molの分子量を有する)を含み得、第2の光酸発生剤は、ヘキサフルオロアンチメートアニオン(SbF6
-)(約235g/molの分子量を有する)を含み得る。この例では、一方のカチオンが入射光を強力に吸収する限り、任意の組み合わせのカチオンを使用してよい。
【0127】
本明細書で開示する例のいずれかでは、第2の光酸発生剤は樹脂組成物中に、樹脂組成物の総固形分の約0.1質量%~約2質量%の範囲の量で含まれ得る。別の例では、第2の光酸発生剤は、樹脂組成物の総固形分の約0.25質量%~約1.5質量%の範囲の量で含まれ得る。
【0128】
樹脂組成物は、表面添加剤もまた含み得る。表面添加剤は、樹脂組成物の表面張力を調整可能であり、これにより、インプリント装置(例えば作業スタンプ)からの樹脂の脱着性を改善し、樹脂組成物のコーティング性を改善し、薄膜の安定性を促進し、かつ/又はレベリングを改善することができる。表面添加剤の例としては、ポリアクリレートポリマー(BYKから入手可能なBYK(登録商標)-350など)が挙げられる。表面添加剤の量は、3質量%以下であり得る。
【0129】
樹脂組成物の一具体例は、エポキシ樹脂マトリックスと、約250g/mol未満の分子量を有するアニオンを含む第1の光酸発生剤と、約300g/molを超える分子量を有するアニオンを含む第2の光酸発生剤と、を含み、i)第1の光酸発生剤のカチオン、又はii)第2の光酸発生剤のカチオン、又はiii)第1及び第2の光酸発生剤のカチオンが、樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g*cm)の質量減衰係数を有する。
【0130】
樹脂組成物の別の具体例は、エポキシ官能化多面体オリゴマーシルセスキオキサンを含むエポキシ樹脂マトリックスと、約250g/mol未満の分子量を有するアニオンを含む第1の光酸発生剤と、約300g/mol~約1,000g/molの範囲の分子量を有するアニオンを含む第2の光酸発生剤と、を含み、i)第1の光酸発生剤のカチオン、又はii)第2の光酸発生剤のカチオン、又はiii)第1及び第2の光酸発生剤のカチオンが、樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g*cm)の質量減衰係数を有する。
【0131】
樹脂組成物の任意の例が、エポキシ樹脂マトリックス構成成分を第1及び第2の光酸発生剤と混合することで作製可能である。樹脂組成物を堆積させるために、これらの構成成分(エポキシ樹脂マトリックス構成成分及び光酸発生剤)を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(propylene glycol monomethyl ether acetate、PGMEA)、トルエン、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)などといった好適な溶媒中で希釈する(ことで、用いる堆積技術に対する所望の粘度を実現する)ことができる。一例では、溶媒中のエポキシ樹脂マトリックスの濃度は、約15重量%(wt%)~約56wt%の範囲であり、溶媒中の光酸発生剤の組み合わせの濃度は、約0.15wt%~約4wt%の範囲である。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、上限は、エポキシ樹脂マトリックスのそれぞれの溶解度、及び選択される溶媒中での光酸発生剤に応じて高くなり得ると考えられている。一例では、溶媒はPGMEAである。樹脂組成物及び溶媒溶液又は混合物中では、樹脂組成物の総濃度(エポキシ樹脂マトリックス、及び光酸発生剤を含む)は、約15wt%~約60wt%の範囲であり得、溶媒の量は約40wt%~約85wt%の範囲であり得る。
【0132】
フローセル及び方法
【0133】
本明細書で開示する樹脂組成物の任意の例を、フローセルの形成に用いることができる。
【0134】
樹脂組成物にパターン形成してフローセルの表面を形成する方法100の例を、
図1に示す。示すように、方法100の一例は、樹脂組成物を基材上に堆積させることであって、樹脂組成物がエポキシ樹脂マトリックスと、約250g/mol未満の分子量を有するアニオンを含む第1の光酸発生剤と、約300g/mol超の分子量を有するアニオンを含む第2の光酸発生剤と、を含み、i)第1の光酸発生剤のカチオン、又はii)第2の光酸発生剤のカチオン、又はiii)第1及び第2の光酸発生剤のカチオンが、樹脂組成物を硬化する入射光の波長で少なくとも0.1L/(g
*cm)の質量減衰係数を有する、ことと(参照番号102)、作業スタンプを使用して、堆積した樹脂組成物をナノインプリントすることと(参照番号104)、ナノインプリントした、堆積した樹脂組成物を、30秒以下で約0.5J~約10Jの範囲のエネルギー照射量にて、入射光に曝露し、硬化しパターン形成された樹脂を形成することと(参照番号106)、を含む。
【0135】
得られたフローセル表面は、基材と、基材上の硬化しパターン形成された樹脂と、を含み、硬化しパターン形成された樹脂は、間隙領域により分離される凹部を含み、硬化しパターン形成された樹脂は、本明細書で開示する樹脂組成物の例から形成されている。
【0136】
方法100は、
図2A~
図2Cに概略的に示される。方法100のいくつかの例は、シーケンシングなどの特定用途のために、凹部を機能化することを更に含む。凹部の機能化の例を、
図2D~
図2Eに示す。
【0137】
図2Aは基材12を示し、
図2Bは、基材12上に堆積した樹脂組成物14の例を示す。
【0138】
好適な基材12の例としては、エポキシシロキサン、ガラス、改質又は官能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン、及びスチレンと他の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(例えば、Chemours製のTEFLON(登録商標))、環状オレフィン/シクロオレフィンポリマー(cyclo-olefin polymer、COP)(例えば、Zeon製ZEONOR(登録商標))、ポリイミドなど)、ナイロン(ポリアミド)、セラミック/セラミック酸化物、シリカ、溶融シリカ、又はシリカ系材料、ケイ酸アルミニウム、ケイ素及び改質ケイ素(例えば、ホウ素ドープp+ケイ素)、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化ケイ素(SiO2)、五酸化タンタル(Ta2O5)、又は他の酸化タンタル(TaOx)、酸化ハフニウム(HfO2)、炭素、金属、無機ガラスなどが挙げられる。基材12は、タンタルオキシド又は別のセラミックオキシドのコーティング層が表面に存在する、ガラス又はケイ素であってもよい。
【0139】
基材12のいくつかの例は、基材12に付着させた、表面結合したエポキシシランを有し得、当該エポキシシランは、他の樹脂組成物構成成分と反応し、基材12上で樹脂組成物14(及び硬化樹脂組成物14’)を形成することができる。
【0140】
ある例では、基材12は、約2mm~約300mmの範囲の直径、又は最大約10フィート(約3メートル)の最大寸法を有する矩形シート若しくはパネルを有し得る。一例では、基材12は、約200mmから約300mmの範囲の直径を有するウェーハである。別の例では、基材12は、約0.1mmから約10mmの範囲の幅を有するダイである。例示的な寸法が提供されるが、任意の適切な寸法を有する基材12を使用できることを理解すべきである。別の例として、300mmの丸いウェーハよりも大きな表面積を有する長方形の基材12であるパネルが使用され得る。
【0141】
樹脂組成物14は、本明細書に記載する樹脂組成物の任意の例であってよく、これは光酸発生剤の組み合わせを含む。樹脂組成物14は、手動又は自動であってよい、任意の好適な塗布技術を用いて、基材12上に堆積することができる。例として、樹脂組成物14の堆積は、蒸着技術、コーティング技術、グラフト技術などを使用して行うことができる。いくつかの特定の例としては、化学蒸着(CVD)、スプレーコーティング(例えば、超音波スプレーコーティング)、スピンコーティング、ダンク又はディップコーティング、ドクターブレードコーティング、液滴分配、エアロゾル印刷、スクリーン印刷、マイクロコンタクト印刷、インクジェット印刷などが挙げられる。一例では、スピンコーティングが使用される。
【0142】
次いで、任意の好適なパターン形成技術を使用して、堆積樹脂組成物14にパターン形成を行う。
図2Bに示す例では、ナノインプリントリソグラフィを用いて樹脂組成物14にパターン形成を行う。樹脂組成物14の堆積後に、樹脂組成物14をソフトベークして過剰の溶媒を取り除くことができる。行う場合、樹脂の堆積後、かつ、作業スタンプ20が樹脂に配置される前に、かつ、0秒超~約3秒の間、約50℃~約150℃の範囲の低温で、ソフトベークを行ってよい。一例では、ソフトベーク時間は約30秒~約2.5分の範囲である。
【0143】
図2Bに示すように、ナノインプリントリソグラフィモールド又は作業スタンプ20は、樹脂組成物14の層に押しつけられ、樹脂組成物14上にインプリントを形成する。作業スタンプ20は、樹脂組成物14に転写される所望のパターンのテンプレートを含む。言い換えれば、樹脂組成物14は、作業スタンプ20の突出部によってインデントされる、又は穿孔される。樹脂組成物14を次に、作業スタンプ20が定位置にある状態で硬化することができる。
【0144】
本明細書で開示する樹脂組成物14に関して、ナノインプリントした、堆積した樹脂組成物14を、30秒以下で約0.5J~約10Jの範囲のエネルギー照射量にて、入射光に曝露することにより、硬化を達成することができる。入射光は化学線、例えば紫外線(UV)放射線であり得る。一例では、放出されるUV放射線の大部分は、約365nmの波長を有し得る。
【0145】
本明細書で開示する例では、エネルギー曝露は、第2の光酸発生剤(吸収性カチオン及び大アニオンを含む)の、エポキシ樹脂マトリックスの重合及び/又は架橋を開始する強酸(超酸)への分解を促進する。エネルギー曝露は、カチオンによる直接エネルギー吸収、又は、第2の光酸発生剤のカチオンから、エポキシ樹脂マトリックスの重合及び/若しくは架橋を継続する弱酸への間接的なエネルギー移動のいずれかにより、第1の光酸発生剤の分解もまた促進する。本明細書で説明する光酸発生剤の組み合わせによりもたらされる、効率的な硬化度では、入射光の露光時間は、30秒以下であり得る。場合によっては、入射光の露光時間は10秒以下であり得る。更に他の例では、入射光の露光時間は、約3秒であり得る。
【0146】
硬化プロセスは、単一のUV露光段階を含み得る。硬化、及び作業スタンプ20の開放後、トポグラフィー特徴、例えば凹部16が樹脂組成物14に画定される。
図2Cに示すように、凹部16が画定された樹脂組成物14は、硬化しパターン形成された樹脂14’と呼ばれる。少なくとも部分的には、本明細書で開示する光酸発生剤の組み合わせの効率的な光重合により、本明細書で開示する方法は、十分に硬化したフィルムを得るために、UV硬化後のハードベーク工程を伴わない。
【0147】
硬化しパターン形成された樹脂14’の化学的組み立ては、樹脂組成物14で用いるエポキシ樹脂マトリックス及び光酸発生剤に左右される。
【0148】
図2Cに示すように、硬化しパターン形成された樹脂14’は、樹脂14’に画定された凹部16、及び、隣接する凹部16を分離する間隙領域22を含む。本明細書で開示する例では、凹部16はポリマーヒドロゲル18(
図2C及び
図2D)、並びにプライマー24(
図2E及び
図2F)で官能化されるが、間隙領域22の部分は結合のために用いられ得るものの、その上にポリマーヒドロゲル18又はプライマー24を有しない。
【0149】
規則的、反復的、及び規則的でないパターンを含む、凹部16の多くの異なるレイアウトを、想定することができる。ある例では、凹部16は、密なパッキング及び改善された密度のために六角形グリッドで配置されている。他のレイアウトは、例えば、直線的な(例えば長方形)レイアウト(例えば、線又はトレンチ)、三角形のレイアウトなどを含み得る。いくつかの例では、レイアウト又はパターンは、行及び列をなしている凹部16のx-yフォーマットであり得る。いくつかの他の例では、レイアウト又はパターンは、凹部16及び/又は間隙領域22の反復配置であり得る。なおも他の例では、レイアウト又はパターンは、凹部16及び/又は間隙領域22のランダムな配置であってもよい。パターンは、ストライプ、渦巻き、線、三角形、長方形、円、円弧、照合印、格子縞、対角線、矢印、正方形、及び/又は斜交平行を含み得る。一例では、凹部16は、
図2Cに示すように、各列に配置されたウェルである。
【0150】
凹部16のレイアウト又はパターンは、画定された領域内の凹部16の密度(即ち、凹部16の数)に関して特徴付けることができる。例えば、凹部16は、1mm2当たり約200万の密度で存在してもよい。例えば、少なくとも、1mm2あたり約100、1mm2あたり約1,000、1mm2あたり約10万、1mm2あたり約100万、1mm2あたり約200万、1mm2あたり約500万、1mm2あたり約1000万、1mm2あたり約5000万、又はそれ以上、又はそれ以下の密度を含む、異なる密度に調整され得る。硬化しパターン形成された樹脂14’における凹部16の密度は、上記の範囲から選択される低い方の値のうちの1つと、高い方の値のうちの1つとの間であってもよいことを更に理解されたい。例として、高密度アレイは、約100nm未満で離間した凹部16を有することを特徴とし得、中密度アレイは、約400nm~約1μmで離間した凹部16を有することを特徴とし得、低密度アレイは、約1μmを上回って離間した凹部16を有することを特徴とし得る。例示的な密度が提供されているものの、任意の好適な密度を有する基材を用いることができると理解されるべきである。
【0151】
凹部16のレイアウト又はパターンは、更に又は代替として、平均ピッチ、即ち凹部16の中心から隣接する凹部16の中心までの間隔(中心間間隔)、又は、1つの凹部16の右端部から隣接する凹部16の左端部までの間隔(端から端までの間隔)に関して、特徴付けることができる。パターンは、平均ピッチ周辺の変動係数が小さくなるように規則的である場合もあれば、パターンが不規則である場合もあり、その場合、変動係数は比較的大きくなる可能性がある。いずれの場合も、平均ピッチは、例えば、少なくとも約10nm、約約50nm、約0.1μm、約0.5μm、約1μm、約5μm、約10μm、又は約100μm、又はそれ以上、又はそれ以下であってもよい。凹部16の特定のパターンの平均ピッチは、上記の範囲から選択される低い方の値のうちの1つと、高い方の値のうちの1つとの間であり得る。ある例では、凹部16は、約1.5μmのピッチ(中心間間隔)を有する。平均ピッチ値の例が提供されるが、他の平均ピッチ値も使用され得ることを理解すべきである。
【0152】
それぞれの凹部16のサイズは、その容積、開口面積、深さ、及び/又は直径によって特徴付けられ得る。
【0153】
それぞれの凹部16は、流体を閉じ込めることができる任意の容積を有し得る。最小又は最大の容積は、例えば、フローセルの下流での使用に期待されるスループット(例えば、多重度)、解像度、ヌクレオチド、又は分析物の反応性に対応するように選択され得る。例えば、容積は、少なくとも約1×10-3μm3、約1×10-2μm3、約0.1μm3、約1μm3、約10μm3、約100μm3、又はそれ以上若しくはそれ以下であり得る。ポリマーヒドロゲル18は、凹部16の容積の全て又は一部を満たすことができることと理解されるべきである。
【0154】
各凹部の開口部が占有する面積は、上記のウェル容積と同様の基準に基づいて選択され得る。例えば、各凹部開口部の面積は、少なくとも約1×10-3μm2、約1×10-2μm2、約0.1μm2、約1μm2、約10μm2、約100μm2、又はそれ以上若しくはそれ以下であることができる。各凹部の開口部が占有する面積は、上記の値よりも大きい、小さい、又はそれらの間であり得る。
【0155】
各凹部16の深さは、ポリマーヒドロゲル18の一部を収容するのに十分な大きさであり得る。一例では、深さは約0.1μm、約0.5μm、約1μm、約10μm、約100μm、又はそれ以上若しくはそれ以下であり得る。いくつかの例では、深さは約0.4μmである。それぞれの凹部16の深さは、上で示された値よりも大きいか、それよりも小さいか、又はそれらの間であり得る。
【0156】
場合によっては、各凹部16の直径又は長さ及び幅は、約50nm、約0.1μm、約0.5μm、約1μm、約10μm、約100μm、又はそれ以上若しくはそれ以下であってよい。それぞれの凹部16の直径又は長さ及び幅は、上で示された値よりも大きいか、それよりも小さいか、又はそれらの間であり得る。
【0157】
図2C及び
図2Dで示すように、樹脂組成物14をパターン形成して硬化した後、硬化しパターン形成された樹脂14’を処理し、ポリマーヒドロゲル18の塗布用表面を調製することができる。
【0158】
一例では、硬化しパターン形成された樹脂14’をシラン化に曝露し得、これにより、硬化しパターン形成された樹脂14’にシラン、又はシラン誘導体を付着させる。シラン化は、凹部16内(例えば、底部表面上、及び側壁に沿って)、並びに、間隙領域22上など、表面にわたり、シラン又はシラン誘導体を導入する。
【0159】
シラン化は、任意のシラン又はシラン誘導体を用いて達成することができる。シラン又はシラン誘導体と、ポリマーコーティング18との間に共有結合を形成するのが望ましい場合があるため、シラン又はシラン誘導体の選択は、部分的には、(
図2Dに示すように)ポリマーヒドロゲル18を形成するために使用される官能化分子に左右され得る。硬化しパターン形成された樹脂14’にシラン又はシラン誘導体を付着させるために使用する方法は、用いられるシラン又はシラン誘導体に応じて変化し得る。いくつかの例が本明細書で説明される。
【0160】
好適なシラン化法の例としては、蒸着(例えば、YES法)、スピンコーティング、又は他の堆積法が挙げられる。硬化しパターン形成された樹脂14’をシラン化するために使用可能な方法及び材料のいくつかの例を本明細書で記載するが、他の方法及び材料を用いることができることと理解されるべきである。
【0161】
YES CVDオーブンを用いる例では、基材12上の硬化しパターン形成された樹脂14’はCVDオーブンに配置される。チャンバを通気してよく、その後、シラン化サイクルを開始する。サイクル中に、シラン又はシラン誘導体容器を好適な温度(例えば、ノルボルネンシランに対しては約120℃)で維持してよく、シラン又はシラン誘導体蒸気ラインを好適な温度(例えば、ノルボルネンシランに対しては約125℃)で維持してよく、真空ラインを好適な温度(例えば、約145℃)で維持してよい。
【0162】
別の例では、シラン又はシラン誘導体(例えば、液体ノルボルネンシラン)をガラス瓶の内側に入れ、パターン形成された基材12を含むガラス真空デシケータ内に配置してもよい。次に、デシケータは約15mTorr~約30mTorrの範囲の圧力まで真空引きし、約60℃~約125℃の範囲の温度でオーブン内に配置してよい。シラン化を進行させ、その後、デシケータをオーブンから取り出し、冷却して空気中に通気させる。
【0163】
蒸着、YES法、及び/又は真空デシケータでは、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体(例えば、1個の炭素原子の代わりに酸素又は窒素を含む(ヘテロ)ノルボルネン)、トランスシクロオテン、トランスシクロオテン誘導体、トランスシクロペンテン、トランスシクロヘプテン、トランスシクロノネン、ビシクロ[3.3.1]ノナ-1-エン、ビシクロ[4.3.1]デカ-1(9)-エン、ビシクロ[4.2.1]ノナ-1(8)-エン、及びビシクロ[4.2.1]ノナ-1-エンなどのシクロアルケン不飽和部分を含むシラン又はシラン誘導体などの様々なシラン又はシラン誘導体を用いてよい。これらのシクロアルケンのいずれかを、例えば、R基、例えば水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリサイクル(heteroalicycle)、アラルキル、又は(ヘテロアリサイクル)アルキルで置換することができる。ノルボルネン誘導体の例としては、[(5-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エニル)エチル]トリメトキシシランが挙げられる。他の例として、シラン又はシラン誘導体が、シクロオクチン、シクロオクチン誘導体、又は、ビシクロノニン(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノナ-4-イン若しくはその誘導体、ビシクロ[6.1.0]ノナ-2-イン、若しくはビシクロ[6.1.0]ノナ-3-イン)などのシクロアルキン不飽和部分を含む場合に、これらの方法を用いることができる。これらのシクロアルキンは、本明細書に記載するR基のいずれかで置換することができる。
【0164】
シラン又はシラン誘導体の付着により、前処理済の(例えば、シラン化済の)硬化しパターン形成された樹脂14’が形成され、これは、シラン化凹部及びシラン化間隙領域を含む。
【0165】
その他の例では、硬化しパターン形成された樹脂14’はシラン化に曝露されなくてもよい。むしろ、硬化しパターン形成された樹脂14’はプラズマアッシングに曝露され得、次いで、ポリマーヒドロゲル18が、プラズマアッシングされた、硬化しパターン形成された樹脂14’上に、直接スピンコーティング(又は別様においては堆積)され得る。この例では、プラズマアッシングは、ポリマーヒドロゲル18を、硬化しパターン形成された樹脂14’に付着可能な、表面活性化剤(例えば、ヒドロキシル(C-OH若しくはSi-OH、及び/又はカルボキシル基)を生成し得る。これらの例では、ポリマーヒドロゲル18は、プラズマアッシングにより生成した表面基と反応するように選択される。
【0166】
更に他の例では、硬化しパターン形成された樹脂14’は未反応のエポキシ基を含んでいてもよく、このため、シラン化に曝露されなくてもよい。これは、未反応のエポキシ基は、ポリマーヒドロゲル18のアミノ官能基と直接反応できるからである。この例では、例えば、潜在的な汚染物質の表面を洗浄することが望ましい場合、プラズマアッシングを行うことができる。
【0167】
ポリマーヒドロゲル18を次に、前処理済の硬化しパターン形成された樹脂14’に塗布してよい(
図2C及び
図2Dに示すように)。ポリマーヒドロゲル18は、液体及び気体に対して透過性であり、硬化しパターン形成された樹脂14’に繋留される、半硬質ポリマー材料であってよい。
【0168】
ポリマーヒドロゲル18の例としては、アクリルアミドコポリマー、例えば、ポリ(N-(5-アジドアセトアミドペンチル)アクリルアミド-コ-アクリルアミド、PAZAMが挙げられる。PAZAM及び他のいくつかの形態のアクリルアミドコポリマーは、次の構造(I)で表され、
【化39】
式中、
R
Aは、アジド、任意選択で置換アミノ、任意選択で置換アルケニル、任意選択で置換アルキン、ハロゲン、任意選択で置換ヒドラゾン、任意選択で置換ヒドラジン、カルボキシル、ヒドロキシ、任意選択で置換テトラゾール、任意選択で置換テトラジン、ニトリルオキシド、ニトロン、硫酸塩、及びチオールからなる群から選択され、
R
BはH又は任意選択で置換アルキルであり、
R
C、R
D、及びR
Eはそれぞれ、H及び任意選択で置換アルキルからなる群から独立して選択され、
-(CH
2)
p-のそれぞれは、任意選択で置き換えられ得、
pは、1~50の範囲の整数であり、
nは、1~50,000の範囲の整数であり、及び
mは、1~100,000の範囲の整数である。
【0169】
構造(I)において繰り返される特徴「n」及び「m」の配置が代表的なものであり、モノマーサブユニットがポリマー構造(例えば、ランダム、ブロック、パターン化、又はそれらの組み合わせ)中に任意の順序で存在し得ることに注意されたい。
【0170】
PAZAM及び他の形態のアクリルアミドコポリマーの分子量は、約5kDaから約1500kDa又は約10kDaから約1000kDaの範囲であり得るか、あるいは特定の例では、約312kDaであり得る。
【0171】
いくつかの例では、PAZAM及び他の形態のアクリルアミドコポリマーは線状ポリマーである。他のいくつかの例では、PAZAM及び他の形態のアクリルアミドコポリマーは、軽度に架橋されたポリマーである。
【0172】
他の例では、ポリマーヒドロゲル18は、構造(I)の変形であってもよい。一例では、アクリルアミドユニットはN,Nージメチルアクリルアミド(
【化40】
)で置き換えられ得る。この例では、構造(I)のアクリルアミドユニットは
【化41】
で置き換えられ得、ここで、R
D、R
E、及びR
FはそれぞれH又はC1~C6アルキルであり、R
G及びR
HはそれぞれC1~C6アルキルである(アクリルアミドの場合のようにHではない)。この例では、qは、1~100,000の範囲の整数であってもよい。別の例では、アクリルアミドユニットに加えて、N,N-ジメチルアクリルアミドが使用され得る。この例では、構造(I)は繰り返す特徴「n」及び「m」に加えて
【化42】
を含み得、ここでR
D、R
E、及びR
FはそれぞれH又はC1~C6アルキルであり、R
G及びR
HはそれぞれC1~C6アルキルである。この例では、qは、1~100,000の範囲の整数であってもよい。
【0173】
ポリマーヒドロゲル18の別の例として、構造(I)における繰り返す特徴「n」は、構造(II)を有する複素環式アジド基を含むモノマーで置き換えられ得、
【化43】
式中、R
1はH又はC1~C6アルキルであり、R
2はH又はC1~C6アルキルであり、Lは、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子と、炭素上の10個の任意選択の置換基及び鎖中の任意選択の窒素原子を有する線状鎖を含むリンカーであり、Eは、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子を含む線状鎖であり、その線状鎖中の炭素原子及び任意の窒素原子上に任意選択の置換基を含み、Aは、H又はC1~C4アルキルがNに付着したN置換アミドであり、Zは窒素含有複素環である。Zの例としては、単環構造又は縮合構造として存在する5~10員環が挙げられる。Zのいくつかの特定の例としては、ピロリジニル、ピリジニル、又はピリミジニルが挙げられる。
【0174】
更に別の例として、ポリマーヒドロゲル18は、構造(III)及び(IV)の各々の繰り返し単位を含んでもよく、
【化44】
ここで、R
1a、R
2a、R
1b及びR
2bのそれぞれは、水素、任意選択では置換アルキル又は任意選択では置換フェニルから独立して選択され、R
3a及びR
3bのそれぞれは、水素、任意選択で置換アルキル、任意選択で置換フェニル、又は任意選択で置換C7~C14アラルキルから独立して選択され、L
1及びL
2のそれぞれは、任意選択で置換アルキレンリンカー又は任意選択で置換ヘテロアルキレンリンカーから独立して選択される。
【0175】
他の分子が官能化されて、オリゴヌクレオチドプライマー24をそれらにグラフトする限り、他の分子が、ポリマーヒドロゲル18を形成するために使用されてもよいことを理解されたい。適切なポリマー層の他の例としては、アガロースなどのコロイド構造、又はゼラチンなどのポリマーメッシュ構造、又はポリアクリルアミドポリマー及びコポリマー、シランフリーアクリルアミド(silane free acrylamide、SFA)、又はアジド分解バージョンのSFAなどの架橋ポリマー構造を有するものが挙げられる。適切なポリアクリルアミドポリマーの例は、アクリルアミドとアクリル酸若しくはビニル基を含むアクリル酸とから、又は[2+2]光付加環化反応を形成するモノマーから合成され得る。適切なポリマーヒドロゲル42の更に他の例としては、アクリルアミドとアクリレートとの混合コポリマーが挙げられる。本明細書に開示される例では、星状ポリマー、星型又は星型ブロックポリマー、デンドリマーなどを含む分岐ポリマーなど、アクリルモノマー(例えば、アクリルアミド、アクリレートなど)を含む様々なポリマー構造が利用され得る。例えば、モノマー(例えば、アクリルアミド、触媒を含有するアクリルアミドなど)は、ランダムに又はブロックで、星型状ポリマーの分岐(アーム)に組み込まれてもよい。
【0176】
ポリマーヒドロゲル18は、スピンコーティング、又はディッピング若しくはディップコーティング、又は正圧若しくは負圧下での、官能化した分子のフロー、又は別の好適な技術を使用して、前処理済の硬化しパターン形成された樹脂14’の表面に堆積することができる。ポリマーヒドロゲル18は混合物中に存在することができる。一例では、混合物は水中、又は、エタノールと水との混合物中に、PAZAMを含む。
【0177】
コーティングした後、ポリマーヒドロゲル18もまた、硬化プロセスに曝露し、パターン形成された基材全体にわたり(即ち、凹部16内及び間隙領域22に)ポリマーヒドロゲル18のコーティングを形成することができる。一例では、ポリマーヒドロゲル18の硬化は、室温(例えば、約25℃)~約95℃の範囲の温度で、約1ミリ秒~約数日の範囲の時間にわたって行うことができる。別の例では、時間は10秒~少なくとも24時間の範囲であり得る。更に別の例では、時間は、約5分~約2時間の範囲であってよい。
【0178】
ポリマーヒドロゲル18を、前処理済の凹部及び間隙領域に付着することは、共有結合によるものであってよい。ポリマーヒドロゲル18の、シラン化した又はプラズマアッシングされた凹部への共有結合は、様々な使用の間の、最終的に形成されたフローセルの寿命にわたる、凹部16内でのポリマーヒドロゲル18の維持に有用である。以下は、シラン又はシラン誘導体とポリマーコーティング18との間で起こり得る反応のいくつかの例である。
【0179】
シラン又はシラン誘導体は、不飽和部分としてのノルボルネン又はノルボルネン誘導体を含み、ノルボルネン又はノルボルネン誘導体は、i)PAZAMのアジド/アジド(azide/azido)基との1,3-双極性環化付加反応を受ける;ii)PAZAMに付着したテトラジン基とのカップリング反応を受ける;PAZAMに付着したヒドラゾン基との環化付加反応を受ける;PAZAMに付着したテトラゾール基との光クリック反応(photo-click reaction)を受ける;又は、PAZAMに付着したニトリルオキシド基との付加環化を受けることができる。
【0180】
シラン又はシラン誘導体が、不飽和部分としてのシクロオクチン又はシクロオクチン誘導体を含む場合、シクロオクチン又はシクロオクチン誘導体は、i)PAZAMのアジド/アジド(azide/azido)との、歪み促進型アジド-アルキン1,3-付加環化(strain-promoted azide-alkyne 1,3-cycloaddition、SPAAC)を受ける、又は、ii)PAZAMに付着したニトリルオキシド基との、歪み促進型アルキン-ニトリルオキシド環化付加反応を受けることができる。
【0181】
シラン又はシラン誘導体がビシクロノニンを不飽和部分として含む場合、ビシクロノニンは、二環式系での歪みにより、PAZAMに付着したアジド又はニトリルオキシドとの、同様のSPAACアルキン付加環化を受けることができる。
【0182】
凹部16内でポリマーヒドロゲル18を形成し、硬化しパターン形成された樹脂14’の間隙領域22上でポリマーヒドロゲル18が形成されないようにするために、ポリマーヒドロゲル18は、間隙領域22から研磨により除去され得る。研磨プロセスは、下にある硬化しパターン形成された樹脂14’、及び/又は、これらの領域における基材12に悪影響を与えることなく、ポリマーヒドロゲル18を間隙領域22から取り除くことができる化学スラリー(chemical slurry)(例えば研磨剤、緩衝剤、キレート剤、界面活性剤、及び/又は分散剤を含む)により行うことができる。あるいは、研磨は、研磨剤粒子を含まない溶液により行ってよい。化学スラリーは、化学機械研磨システムで用いることができる。この例では、研磨ヘッド/パッド、又は他の研磨ツールは、凹部16にポリマーヒドロゲル18を残し、下にある、硬化しパターン形成された樹脂14’を少なくとも実質的に無傷のままにしながら、間隙領域22からのポリマーヒドロゲル18を研磨することが可能である。一例として、研磨ヘッドは、Strasbaugh ViPRR II研磨ヘッドであってよい。別の例では、研磨は、研磨パッド、及び、いかなる研磨剤をも含まない溶液により行ってよい。例えば、研磨パッドは、研磨粒子を非含有の溶液(例えば、研磨剤粒子を含まない溶液)と共に用いてよい。
【0183】
図2Dは、ポリマーヒドロゲル18が凹部16に塗布された後の、フローセルプレカーサー10を示す。フローセルプレカーサー10は、洗浄工程に曝露されてよい。本プロセスは、水浴及び音波処理を利用し得る。水浴は、約22℃~約30℃の範囲の、比較的低温にて維持されてよい。シラン化され、コーティングされ、研磨された、パターン形成された基材もまた、別の好適な技術によりスピン乾燥、又は乾燥されてよい。
【0184】
図2D及び
図2Eに示すように、プライマー24(例えば、
図2Fに示す、2つの異なるプライマー24、24’)を、凹部16内のポリマーヒドロゲル18にグラフトするために、グラフトプロセスを行う。プライマー24、24’は、任意のフォワード増幅プライマー及び/又はリバース増幅プライマーであってよい。この例では、プライマー24、24’は、2つの異なるプライマーである。
【0185】
プライマー24、24’がポリマーヒドロゲル18に固定化されるのが望ましい。いくつかの例では、固定化は、それぞれのプライマー24、24’の5’末端における、ポリマーヒドロゲル18への一点共有結合によるものであってよい。当該技術分野において公知の任意の好適な共有結合法を用いてよい。いくつかの例では、固定化は、強力な非共有結合によるものであってよい。
【0186】
使用可能な末端プライマー(terminated primer)の例としては、アルキン末端プライマー、テトラジン末端プライマー、アジド末端プライマー、アミノ末端プライマー、エポキシ又はグリシジル末端プライマー、チオホスフェート末端プライマー、チオール末端プライマー、アルデヒド末端プライマー、ヒドラジン末端プライマー、ホスホラミダイト末端プライマー、トリアゾリンジオン末端プライマー、及び、ビオチン末端プライマーが挙げられる。いくつかの具体例では、スクシンイミジル(NHS)エステル末端プライマーを、ポリマーヒドロゲル18の表面にてアミンと反応させてよく、アルデヒド末端プライマーを、ポリマーヒドロゲル18の表面にてヒドラジンと反応させてよく、又は、アルキン末端プライマーを、ポリマーヒドロゲル18の表面にてアジドと反応させてよく、又は、アジド末端プライマーを、ポリマーヒドロゲル18の表面にてアルキン若しくはDBCO(ジベンゾシクロオクチン)と反応させてよく、又は、アミノ末端プライマーを、ポリマーヒドロゲル18の表面にて活性化カルボキシレート基若しくはNHSエステルと反応させてよく、又は、チオール末端プライマーを、ポリマーヒドロゲル18の表面にてアルキル化反応物質(例えば、ヨードアセトアミド若しくはマレイミド)と反応させてよく、ホスホラミダイト末端プライマーを、ポリマーヒドロゲル18の表面にてチオエーテルと反応させてよく、又は、ビオチン修飾プライマーを、ポリマーヒドロゲル18の表面にてストレプトアビジンと反応させてよい。
【0187】
プライマー24、24’のそれぞれは、捕捉及び/又は増幅目的のために、ユニバーサル配列(universal sequence)を有する。プライマー24、24’の例は、P5及びP7プライマーを含み、これらの例は、例えば、HiSeq(商標)、HiSeqX(商標)、MiSeq(商標)MiSeqDX(商標)、MiNISeq(商標)、NextSeq(商標)、NextSeqDX(商標)、NovaSeq(商標)、iSEQ(商標)、Genome Analyzer(商標)、及び、他の機器プラットフォームでシーケンシングするために、Illumina Inc.により販売されている商用フローセルの表面で用いられる。
【0188】
対形成した末端の逐次シーケンシング(sequential paired end sequencing)のために、これらのプライマー24、24’のそれぞれは、切断部位もまた含んでよい。プライマー24、24’の切断部位は互いに異なり得るため、プライマー24、24’の切断は同時に起こらない。好適な切断部位の例としては、酵素により切断可能な核酸塩基若しくは化学的に切断可能な核酸塩基、修飾核酸塩基、又はリンカー(例えば、核酸塩基間のリンカー)が挙げられる。酵素により切断可能な核酸塩基は、グリコシラーゼ及びエンドヌクレアーゼ、又はエキソヌクレアーゼによる反応により切断を受けやすい場合がある。切断可能な核酸塩基の1つの具体例は、デオキシウラシル(deoxyuracil、dU)であり、これはUSER酵素により標的化可能である。一例では、ウラシル塩基は、P5プライマー(P5U)、又はP7プライマー(P7U)の3’末端から7番目の塩基位置に組み込まれ得る。他の非塩基部位もまた、使用してよい。化学的に切断可能な核酸塩基、修飾核酸塩基、又はリンカーの例としては、8-オキソグアニン、ビシナルジオール、ジスルフィド、シラン、アゾベンゼン、光切断可能な基、アリルT(アリル官能性を有するチミンヌクレオチド類似体)、アリルエーテル、又はアジド官能エーテルが挙げられる。
【0189】
一例では、グラフトは、フロースルー堆積(例えば、一時的に結合された蓋を使用する)、ダンクコーティング、スプレーコーティング、液滴分配、又はプライマー24、24’をポリマーヒドロゲル18に付着させる別の適切な方法により達成され得る。これらの例示的な技術のそれぞれは、プライマー24、24’、水、緩衝液、及び触媒を含み得るプライマー溶液又は混合物を利用し得る。
【0190】
ダンクコーティングは、フローセルプレカーサー10(
図2Dに示す)を、温度制御した一連の浴に浸すことを伴い得る。浴はまた、流れ制御され得、かつ/又は、窒素ブランケットで覆われ得る。浴は、プライマー溶液又は混合物を含み得る。様々な浴を通して、プライマー24、24’は、凹部16の少なくともいくつかにおける、ポリマーヒドロゲル18のプライマーグラフト官能基に付着する。一例では、フローセルプレカーサー10は、プライマー溶液又は混合物を含む第1の浴に導入され、ここでは、反応が生じてプライマー24、24’に付着し、その後、洗浄にために更なる浴に移される。浴から浴への移動には、ロボット式アームを伴い得るか、又は、手動で行われ得る。乾燥システムもまた、ダンクコーティングで用いられ得る。
【0191】
フローセルプレカーサー10に直接、プライマー溶液又は混合物を吹き付けることにより、スプレーコーティングが達成され得る。スプレーコーティングされたウェーハは、約0℃~約70℃の範囲の温度で、約4分~約60分の範囲の時間、インキュベートされ得る。インキュベーション後、プライマー溶液又は混合物は希釈され、例えば、スピンコーターを用いて取り除かれ得る。
【0192】
液滴分配を、プール及びスピンオフ法に従い行うことができ、故に、スピンコーターを用いて達成することができる。プライマー溶液又は混合物は、フローセルプレカーサー10に(手動で、又は自動プロセスにより)塗布され得る。塗布したプライマー溶液又は混合物は、フローセルプレカーサー10の全面に塗布され得る、又は全面に拡散され得る。プライマーコーティングされたフローセルプレカーサー10は、約0℃~約80℃の範囲の温度で、約2分~約60分の範囲の時間、インキュベートされ得る。インキュベーション後、プライマー溶液又は混合物は希釈され、例えば、スピンコーターを用いて取り除かれ得る。
【0193】
他の例では、プライマー24、24’はポリマーヒドロゲル18に事前にグラフトされ得、故に、ポリマーヒドロゲル18が塗布されると、凹部16に存在することができる。
【0194】
図2E及び
図2Fは、プライマーグラフト後のフローセル10’の一例を示す。
【0195】
図2E及び
図2Fに示す例は、蓋又は他のフローセル10’が結合していない、フローセル10’の例である。ある例では、蓋は、例えば、間隙領域22の一部において、硬化しパターン形成された樹脂14’の少なくとも一部分に結合され得る。蓋と硬化しパターン形成された樹脂14’との間に形成される結合は、化学結合、又は機械的結合(例えば、締結具などを使用して)であってもよい。
【0196】
蓋は、基材12、及び硬化しパターン形成された樹脂14’に向けられる励起光に対して透過性である任意の材料であり得る。例として、蓋は、ガラス(例えば、ホウケイ酸、溶融シリカなど)、プラスチックなどであり得る。好適なホウケイ酸ガラスの市販の例は、Schott North America,Inc.から入手可能なD 263(登録商標)である。好適なプラスチック材料、すなわち、シクロオレフィンポリマーの市販の例は、Zeon Chemicals L.P.から入手可能なZEONOR(登録商標)製品である。
【0197】
蓋は、レーザー結合、拡散接合、陽極接合、共晶結合、プラズマ活性化結合、ガラスフリット結合、又は当技術分野において既知の他の方法などの任意の好適な技術を使用して、硬化しパターン形成された樹脂14’に結合され得る。一例では、スペーサ層は、蓋を硬化しパターン形成された樹脂14’に結合するために使用され得る。スペーサ層は、硬化しパターン形成された樹脂14’の少なくとも一部と、蓋とを一緒に封止する任意の材料であり得る。いくつかの例では、スペーサ層は、硬化しパターン形成された樹脂14’及び蓋の結合を補助する放射線吸収材料であり得る。
【0198】
他の例では、フローセル10’のうちの2つは、凹部16がこれらの間に形成されるフローチャネルに面するように、互いに結合され得る。フローセル10’を、蓋を結合するための、本明細書に記載する同様の技術及び材料を使用して、間隙領域22にて結合することができる。
【0199】
フローセルの使用方法
【0200】
本明細書で開示されるフローセル10’は、合成によるシーケンシング(sequencing-by-synthesis、SBS)、環状アレイシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、パイロシーケンシングなどとしばしば称される技術を含む、様々なシーケンシングアプローチ又は技術において使用され得る。これらの技術のいずれかを用いると、ポリマーヒドロゲル18、及び付着したプライマー24、24’が凹部16内に存在し、間隙領域22には存在しないため、増幅が凹部に限定される。
【0201】
一例として、合成によるシーケンシング(SBS)反応が、Illumina(San Diego,CA)製のHiSeq(商標)、HiSeqX(商標)、MiSeq(商標)、MiSeqDX(商標)、MiniSeq(商標)、NovaSeq(商標)、iSeq(商標)、NextSeqDX(商標)、又はNextSeq(商標)シーケンサシステムなどのシステムで実行され得る。SBSにおいて、核酸鋳型(例えば、シーケンシング鋳型)に沿った核酸プライマー(例えば、シーケンシングプライマー)の伸長を監視して、鋳型中のヌクレオチド配列を決定する。基礎となる化学プロセスは、重合(例えば、ポリメラーゼ酵素により触媒される)又はライゲーション(例えば、リガーゼ酵素により触媒される)であることができる。特定のポリメラーゼベースのSBSプロセスにおいて、シーケンシングプライマーに添加したヌクレオチドの順序及びタイプの検出を使用して鋳型のシーケンスを決定することができるように、蛍光標識されたヌクレオチドを、鋳型依存形式で、シーケンシングプライマーに添加する(それにより、シーケンシングプライマーを伸長する)。
【0202】
シーケンシングの前に、捕捉及び増幅プライマー24、24’をシーケンシングライブラリーに曝露することができ、これは、クラスター生成などの任意の好適な方法を使用して増幅される。
【0203】
クラスター生成の一例では、ライブラリー断片は、高性能再現性DNAポリメラーゼ(high-fidelity DNA polymerase)を使用して3’伸長によって、ハイブリダイズされたプライマー24、24’からコピーされる。元のライブラリー断片を変性させるが、コピーは固定化されたままにする。等温ブリッジ増幅を使用して、固定化されたコピーを増幅し得る。例えば、コピーされた鋳型はループオーバーして隣接する相補的なプライマー24、24’にハイブリダイズし、ポリメラーゼはコピーされた鋳型をコピーして二本鎖ブリッジ構造を形成し、当該構造は変性して2本の一本鎖を形成する。これらの2本の鎖は、ループオーバーして隣接する相補的なプライマー24、24’にハイブリダイズし、再度伸長して、2つの新しい二本鎖ループを形成する。このプロセスを、等温変性及び増幅のサイクルによって各鋳型コピーに対して繰り返して、密集したクローンクラスターを作り出す。二本鎖ブリッジ構造の各クラスターが変性される。一例では、逆方向鎖は、特異的な塩基切断によって除去され、順方向鋳型ポリヌクレオチド鎖を残す。クラスター化により、凹部16のそれぞれにいくつかの鋳型ポリヌクレオチド鎖が形成される。このクラスター化の例にはブリッジ増幅があり、この増幅は実行できる増幅の一例である。排除増幅(Examp)ワークフロー(Illumina Inc.)などの他の増幅技術が使用され得ることを理解すべきである。
【0204】
鋳型ポリヌクレオチド鎖上の相補的な配列にハイブリダイズするシーケンシングプライマーが導入され得る。このシーケンシングプライマーは、鋳型ポリヌクレオチド鎖をシーケンシングの準備ができた状態にする。鋳型の3’末端及びフローセル結合プライマー24、24’(コピーに付着されない)は、シーケンシング反応への干渉を防止するために、特に、望ましくないプライミングを防止するために、ブロッキングされ得る。
【0205】
シーケンシングを開始するために、組み込み混合物がフローセル10’に加えられ得る。一例では、組み込み混合物は、液体キャリア、ポリメラーゼ、及び蛍光標識したヌクレオチドを含む。蛍光標識したヌクレオチドは、3’OHブロッキング基を含み得る。組み込み混合物がフローセル10’に導入されると、流体はフローチャネルに入り、凹部16(鋳型ポリヌクレオチド鎖が存在する)に流れ込む。
【0206】
蛍光標識したヌクレオチドが鋳型に依存する方法でシーケンシングプライマーに追加され(それにより、シーケンシングプライマーを伸長し)、シーケンシングプライマーに追加されたヌクレオチドの順序及びタイプの検出が、鋳型の配列決定に使用され得る。より具体的には、ヌクレオチドの1つは、それぞれのポリメラーゼにより、シーケンシングプライマーを伸長し鋳型ポリヌクレオチド鎖に相補的である新生鎖に組み込まれる。言い換えれば、フローセル10’にわたる鋳型ポリヌクレオチド鎖の少なくともいくつかにおいて、それぞれのポリメラーゼは、組み込み混合物中のヌクレオチドの1つによってハイブリダイズしたシーケンシングプライマーを伸長する。
【0207】
ヌクレオチドの組み込みは、画像化イベントを通じて検出され得る。画像化イベント中、照明システム(図示せず)は、フローセル10’表面に励起光を提供してもよい。
【0208】
いくつかの例では、ヌクレオチドは、ヌクレオチドがシーケンシングプライマーに加えられると、更なるプライマー伸長を終結させる可逆的終結特性(例えば、3’OHブロッキング基)を更に含み得る。例えば、可逆的末端部分を有するヌクレオチド類似体がシーケンシングプライマーに加えられ、その結果、デブロッキング剤が送達されて当該部分を除去するまで、その後の伸長は起こり得ない。したがって、可逆的終端を使用する例の場合、検出が行われた後、デブロッキング試薬はフローセル10’に送達され得る。
【0209】
洗浄(複数可)は、様々な流体送達ステップの間で行ってもよい。次に、SBSサイクルをn回繰り返し、シーケンシングプライマーをnヌクレオチドによって伸長し、それによって長さnの配列を検出することができる。
【0210】
いくつかの例では、順方向鎖が、配列決定され、除去され、次に、逆方向鎖が、本明細書に記載されるように構築され、配列決定されてもよい。
【0211】
SBSが詳細に説明されたが、本明細書に記載のフローセル10’は、遺伝子型決定のために、又は他の化学的及び/若しくは生物学的用途において、他のシーケンシングプロトコルと共に利用され得ることを理解すべきである。
【0212】
図1、及び
図2A~
図2Fに記載する例は、フローセル10’の形体での例示的な樹脂組成物の使用を示すものの、本明細書で開示する樹脂組成物は、低い自己蛍光が所望される他の用途で使用可能であることと理解されるべきである。一例として、樹脂組成物14、14’は、任意の光学ベースのSBS技術で使用可能である。他の例として、樹脂組成物14、14’は、相補型金属酸化物半導体(complementary metal-oxide semiconductors、CMOS)などの平面導波管で使用可能である。
【0213】
本開示を更に説明するために、本明細書に実施例を示す。これらの実施例は、例示の目的で提供され、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解すべきである。
非限定的な作業例
【0214】
例1
【0215】
本例の比較例及び実施例の樹脂組成物は、グリシジル多面体オリゴマーシルセスキオキサン、及び、エポキシシクロヘキシル多面体オリゴマーシルセスキオキサンモノマーのエポキシ樹脂マトリックスを含んだ。
【0216】
2つの比較例の樹脂組成物(1及び2)を、小アニオンを有する光酸発生剤(即ち、OMNICAT(登録商標)PAG 270(トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート))で調製し、2つの他の比較例の樹脂組成物(3及び4)を、大アニオンを有する光酸発生剤(即ち、IRGACURE(登録商標)PAG 290(トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボレート))で調製した。1つの実施例の樹脂組成物(5)を、OMNICAT(登録商標)PAG 270とIRGACURE(登録商標)PAG 290との組み合わせで調製した。
【0217】
【0218】
比較例及び実施例の樹脂のそれぞれを、PGMEAとDMSOとの溶媒混合物に組み込んだ(例えば、約18質量%)。樹脂/溶媒混合液を広げ、樹脂のそれぞれに、複数のハンドインプリントを行った。インプリントした樹脂組成物を、1秒、3秒、5秒、7.5秒、15秒、及び/又は30秒を含む異なる露光時間を使用して(365nmのUV光を使用して)硬化した。
【0219】
硬化したインプリント済の樹脂を、フーリエ変換赤外分光法(Fourier-transform infrared spectroscopy、FTIR)を用いて分析し、結果を
図3に示す。Y軸は、2990cm
-1における補正強度を表す。この波長における強度と樹脂の硬度、故に、エポキシモノマーの硬化度との間に、相関がある。2990cm
-1における、低い補正強度は、高い硬化度に対応する。
図3に示すように、同様の硬化時間における、実施例5に対する、2990cm
-1における補正強度は、比較例1、2、3、及び4のそれぞれよりも低かった。3秒の硬化時間において、実施例5は、約0.11の、2990cm
-1における補正強度を有した一方で、比較例1及び比較例2は、それぞれ、約0.142及び約0.125の、2990cm
-1における補正強度を有した。5秒の硬化時間において、比較例3及び比較例4は、それぞれ、約0.146及び約0.136の、2990cm
-1における補正強度を有した。光酸発生剤の組み合わせを有する実施例の樹脂組成物(実施例5)は、小アニオンを含む光酸発生剤、又は、大アニオンを含む光酸発生剤のいずれかを有する、比較例の樹脂と比較して、最も高い硬化度(即ち、2990cm
-1における最も低い補正強度)、及び、最も速い硬化度を有したことを、これらの結果は示す。
【0220】
例2
【0221】
本例の比較例及び実施例の樹脂組成物には、グリシジル多面体オリゴマーシルセスキオキサン、及び、エポキシシクロヘキシル多面体オリゴマーシルセスキオキサンモノマーのエポキシ樹脂マトリックスを含んだ。
【0222】
比較例の樹脂(6)は、光開始剤(photoinitiator、PI)(即ち、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン)、及び、光酸発生剤(即ち、ビス-(4-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート)を含んだ。実施例の樹脂(7)は、同一のエポキシ樹脂マトリックスを含んだが、PI/PAGの組み合わせの代わりに、本明細書で開示する光酸の組み合わせの例を含んだ。実施例の樹脂7における光酸の組み合わせは、小アニオンを有する光酸発生剤(即ち、ビス-(4-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート)、及び、大アニオンを有する光酸発生剤(即ち、IRGACURE(登録商標)PAG 290)を含んだ。
【0223】
【0224】
比較例及び実施例の樹脂のそれぞれを、PGMEAとDMSOとの溶媒混合物に組み込んだ(例えば、約18質量%)。樹脂/溶媒混合液を、EVG製のHERCULES(登録商標)ツールを用いてインプリントした。365nmにおける、異なる照射量(J)の入射UV光を用いて、インプリントした樹脂組成物を硬化した。実施例の樹脂7に対する照射量は、1J~10Jの範囲であった一方で、比較例6に対する照射量は、5J~60Jの範囲であった。
【0225】
硬化した、インプリントされた樹脂を、FTIRを用いて分析し、結果を
図4に示す。Y軸は、2990cm
-1における補正強度を表す。
図4に示すように、1J(使用したツールでは約3.33秒)~10J(使用したツールでは約33.3秒)の間での、UV照射量のそれぞれにおける、実施例7に対する2990cm
-1における補正強度は、5J(使用したツールでは約16.65秒)~60J(使用したツールでは約199.8秒)の間での、UV照射量のそれぞれにおける、比較例6に対する2990cm
-1における補正強度よりも低かった。UV照射量の全てにおいて、実施例7は、約0.10以下の、2990cm
-1における補正強度を有したが、比較例6は、0.225~約0.12の範囲の、2990cm
-1における補正強度を有した。光酸発生剤の組み合わせを有する実施例の樹脂組成物(実施例7)は、PI/PAGパッケージを含む樹脂と比較したときに、UV照射量が一桁を超えて減少しても、高い硬化度に達したことを、これらの結果は示す。
【0226】
実施例7の樹脂を含む樹脂混合物もまた、25個の異なるガラスウェーハに堆積させ、マスターテンプレートを用いてインプリントした。マスターテンプレートを所定位置で保持しながら、樹脂を0.9Jの照射量で硬化した(3秒の硬化時間)。インプリント1、5、10、15、及び20に関して、硬化度を、硬度測定及びFTIRを用いて評価した。結果を
図5に示す。硬度値(0.23GPa~0.25GPaの間で一貫)、及び2990cm
-1における補正IR強度(0.090~0.100の間で一貫)の両方が、異なるインプリントに対して安定であることを、これらの結果は示す。
【0227】
凹部の深さ、側壁の角度、頂部の直径などの品質測定もまた行った。結果は本明細書で再現しないが、使用したマスターテンプレートに対する予測値の範囲内であった。実施例の樹脂に、高品質の微細な特徴をパターン形成可能であることを、品質測定は示す。
【0228】
例3
【0229】
本例の実施例の樹脂組成物には、グリシジル多面体オリゴマーシルセスキオキサン、及び、エポキシシクロヘキシル多面体オリゴマーシルセスキオキサンモノマーのエポキシ樹脂マトリックスを含んだ。
【0230】
実施例の樹脂(8A~8C、9A~9C、及び10A~10C)は、同一のエポキシ樹脂マトリックス、及び、様々な量の、小アニオンを有する光酸発生剤(即ち、ビス-(4-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート)、及び、大アニオンを有する光酸発生剤(即ち、IRGACURE(登録商標)PAG 290)を含んだ。樹脂組成物を以下の表3に提供する。
【表3】
【0231】
実施例の樹脂のそれぞれを、PGMEAとDMSOとの溶媒混合物に組み込んだ(例えば、約18質量%)。樹脂/溶媒混合液を、EVG製のHERCULES(登録商標)ツールを用いてインプリントした。2秒、4秒、8秒、及び16秒を含む異なる露光時間を使用して、(365nmにおける入射UV光を使用して)インプリントした樹脂組成物を硬化した。
【0232】
硬化した、インプリントした樹脂のそれぞれに対して、自己蛍光(AF)を測定した。結果を
図6に示す。Y軸は、青色の蛍光強度を表す(任意単位(arbitrary unit、au))。
図6に示すように、青色の蛍光強度は、樹脂組成物に関係なく、硬化時間が増加すると増加した。実施例8A、実施例8B、及び実施例8C(それぞれ、大アニオンを含む光酸発生剤を0.5質量%含む)に対する青色強度は、全ての硬化時間において10,000を下回り、このことは、大アニオンを含む少量の光酸発生剤が、自己蛍光に悪影響を与えないことを示している。大アニオンを含む光酸発生剤の質量%が1に増加したとき(実施例9A、実施例9B、及び実施例9C)、小アニオンを含む光酸発生剤の量に関係なく、青色は最長の硬化時間(16秒)にて、10,000を超えて増加した。このことは、多量の光酸発生剤を含む樹脂組成物が、短い硬化時間での低い自己蛍光という観点では、良好に性能を発揮し得るということを示している。大アニオンを含む光酸発生剤の質量%が1.5に増加したとき(実施例10A、実施例10B、及び実施例10C)、小アニオンを含む光酸発生剤の量に関係なく、青色は長い硬化時間(8秒及び16秒)にて、10,000を超えて増加した。このことは、多量の光酸発生剤を含む樹脂組成物が、短い硬化時間での低い自己蛍光という観点では、良好に性能を発揮するということもまた示している。
【0233】
これらの硬化した、インプリントされた樹脂もまた、FTIRを用いて分析し、結果を
図7に示す。Y軸は、2990cm
-1における補正強度を表す。
図7に示すように、実施例8A、実施例8B、及び実施例8C(それぞれ、大アニオンを含む光酸発生剤を0.5質量%含む)に対する、2990cm
-1における補正強度は、それぞれの硬化時間において非常に類似した(例えば、2秒にて約0.125、4秒にて約0.10、8秒にて0.08~0.085、及び、16秒にて約0.08)。2及び4秒の硬化時間において、多量の、大アニオンを含む光酸発生剤は、小アニオンを含む光酸発生剤の量に関係なく、2990
-1における補正強度を下げるようであった。より具体的には、2及び4秒の硬化時間において、実施例9A、実施例9B、実施例9C、実施例10A、実施例10B、及び実施例10Cのそれぞれは、実施例8A、実施例8B、及び実施例8Cのそれぞれよりも低い2990cm
-1における補正強度を有した。しかし、8及び16秒の硬化時間において、多量の、大アニオンを含む光酸発生剤は、少量の、小アニオンを含む光酸発生剤と対になったときよりも、多量の、小アニオンを含む光酸発生剤と対になった場合に、より効果的であった。より具体的には、8及び16秒の硬化時間において、実施例9B、実施例9C、実施例10B、及び実施例10Cのそれぞれは、実施例9A及び実施例10Aよりも低い2990cm
-1における補正強度を有した。
【0234】
図7における実施例の樹脂のそれぞれに対する、2990cm
-1における補正強度もまた、同一の硬化時間における、(実施例1の)
図3の比較例の樹脂のそれぞれのそれぞれよりも低い。これらの結果は、それら単独で使用される光酸発生剤のいずれかと比較して、本明細書で開示する、光酸発生剤の組み合わせの様々な実施例の相乗効果を示す。
【0235】
追記事項
【0236】
以下により詳細に考察される、前述の概念及び更なる概念の全ての組み合わせが、(かかる概念が相互に矛盾しなければ)本明細書に開示される発明の主題の一部であると企図されることを理解されたい。具体的には、本開示の終わりに現れる特許請求される主題の全ての組み合わせは、本明細書に開示される発明の主題の一部であると企図される。本明細書で明示的に用いられ、また参照により組み込まれる任意の開示においても出現し得る用語は、本明細書で開示される特定の概念と最も一致する意味が与えられるべきであることも理解すべきである。
【0237】
「一例」、「別の例」、「ある例」などへの本明細書全体を通じての言及は、例に関連して記載されている特定の要素(例えば、特徴、構造、及び/又は特性)が、本明細書に記載されている少なくとも1つの例に含まれており、他の例に存在していても、存在していなくともよいことを意味している。更に、文脈上明確に別段の指示がない限り、任意の例に関する記載の要素は、様々な例において任意の好適な様式で組み合わせ得ることを理解すべきである。
【0238】
いくつかの実施例を詳細に説明してきたが、開示された例は修正され得ることを理解すべきである。したがって、これまでの説明は非限定的なものであると考えるべきである。
【国際調査報告】