(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(54)【発明の名称】積層造形のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20230227BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230227BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20230227BHJP
B29C 64/40 20170101ALI20230227BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20230227BHJP
【FI】
B29C64/386
B33Y10/00
B33Y50/00
B29C64/40
B29C64/106
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529035
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(85)【翻訳文提出日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 US2020060305
(87)【国際公開番号】W WO2021137953
(87)【国際公開日】2021-07-08
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519444409
【氏名又は名称】コンティニュアス コンポジッツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】バッジ,ダン
(72)【発明者】
【氏名】ネグゴゴール,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】モリス,レイチェル,キャスリーン
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL62
4F213WL85
(57)【要約】
母材(M)で湿潤した補強材(R)から複合構造体(12)を積層造形する際に使用する方法が開示されている。本方法は、複合構造体の仮想モデルを、複合構造体の長さ方向に沿って互いに隣接する複数のスライス片にスライスすることと、複数のスライス片の各々を通過する補強材の点を決定することと、を含み得る。本方法は、複数のスライス片の各々の周囲を点で別様にクロッキングすることと、点のシーケンス化されたサブセットを含む少なくとも1つのツールパスを生成することとを、さらに含み得る。本方法は、積層造形機(10)に少なくとも1つのツールパスに沿って補強材を吐出させることを付加的に含み得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材(M)で湿潤した補強材(R)から複合構造体(12)を積層造形する方法であって、
前記複合構造体の仮想モデルを、前記複合構造体の長さ方向に沿って互いに隣接する複数のスライス片にスライスすることと、
前記複数のスライス片の各々を通過する補強材の点を決定することと、
前記複数のスライス片の各々の周囲を前記点で別様にクロッキングすることと、
前記点のシーケンス化されたサブセットを含む少なくとも1つのツールパスを生成することと、
積層造形機(10)に前記少なくとも1つのツールパスに沿って前記補強材を吐出させることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記仮想モデルの犠牲セクション(30)の形状を選択的に調整して、前記複数のスライス片間の外周長のばらつきを低減することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
所望の数の前記補強材のうちの少なくとも1つを示す入力と、前記複数のスライス片のうち最小外周長のスライス片を通過すべき前記補強材の角度とを受信することをさらに含み、前記点をクロッキングすることが、前記入力に基づいて前記点をクロッキングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記仮想モデルの前記最小外周長のスライス片における所望の数の補強材および前記補強材の前記角度のうちの少なくとも1つを示す入力を受信することが、前記所望の数の補強材を示す入力を受信することを含むとき、前記方法が、前記補強材の既知の寸法および前記最小外周長のスライス片の外周長に基づいて前記補強材の前記角度を決定することをさらに含み、かつ
前記仮想モデルの最小外周長のスライス片における所望の数の補強材および前記補強材の角度のうちの少なくとも1つを示す入力を受信することが、前記補強材の前記角度を示す入力を受信することを含むとき、前記方法が、前記補強材の前記既知の寸法および前記最小外周長のスライス片の前記外周長に基づいて前記所望の数の前記補強材を決定することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、
前記シーケンス化されたサブセット内の前記点の各々における前記角度からの前記少なくとも1つのツールパスの偏差を決定することと、
前記複数のスライス片のうち別のスライス片を通過する前記少なくとも1つのツールパスの最大偏差が許容偏差を超える場合に、前記最小外周長の前記スライス片で前記角度を選択的に調整すること、をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、
前記シーケンス化されたサブセット内の前記点の各々における前記角度からの前記少なくとも1つのツールパスの偏差を決定することと、
前記偏差に基づいて、補強材切断コマンドおよび補強材追加コマンドのうちの少なくとも1つを選択的に生成することと、をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのツールパスを生成することが、前記仮想モデルの前記複数のスライス片の各々を通過する補強材を同じ数に維持することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのツールパスを生成することが、前記複数のスライス片の外周長が増加するにつれて、前記角度が広がることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記点をクロッキングすることが、前記最小外周長のスライス片に対する前記複数のスライス片の各々の外周長比に基づいて前記点をクロッキングすることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記点をクロッキングすることが、前記複数のスライス片間の垂直距離にさらに基づいて前記点をクロッキングすることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記点をクロッキングすることが、前記最小外周長のスライス片を通過する前記補強材の角度にさらに基づいて前記点をクロッキングすることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのツールパスを生成することが、前記点の異なるシーケンス化されたサブセットに各々対応する、複数のツールパスを生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのツールパスを生成することが、
管理ツールパスを生成することと、
前記管理ツールパスのオフセットとして、少なくとも1つの追加ツールパスを生成することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記オフセットが前記補強材の寸法に等しい、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのツールパスが、
前記シーケンス化されたサブセット内の前記点の各々を通過する際に、前記積層造形機によって維持されるべきプリントヘッド姿勢を示す法線ベクトルと、
前記点の各々を通過する際に前記積層造形機によって維持されるべきプリントヘッドの向きを示す前方移動方向ベクトルと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年12月30日に出願された米国仮特許出願第62/955,352号の優先権の利益を主張し、その内容は参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、造形システムに関し、より詳細には、複合構造体を積層造形するためのシステムおよびそのシステムを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
フィラメントワインディング(FW)は、容器を製作する既知の方法である。FWは、回転するマンドレルの周囲に樹脂を塗布したフィラメントを巻き取りに関連する。マンドレルは一定の速度で回転し、結びつけられたフィラメントディスペンサも一定の速度でマンドレルの長さに沿って軸方向に移動する。これらの動きを組み合わせることで、マンドレルの軸に対して所定の角度(すなわち、回転運動と並進運動との相対的な速度に対応する角度)でマンドレルの周囲にフィラメントを巻き付けることができる。重なり合うフィラメントの所望のパターンがマンドレル上に敷き詰められたら、マンドレルをオートクレーブに入れ、加熱して樹脂を硬化させる。その後、マンドレルをフィラメントの内側から引き抜くと、その場所に中空の容器を残すことができる。FWを介して製作された容器は、プロセスに必要な手作業が少ないため、安価になり得る。
【0004】
FWは効率的に容器を製作する方法であるが、これらの容器はデザインに制約がある場合、および/または過剰な量の原材料を必要とする場合がある。例えば、出願人は、マンドレルがその長さに沿って比較的一定の周囲長を有する場合にのみ、FWがマンドレルの表面上で隣接するフィラメントを密接に整列させ得る可能性があることを見出した。外周長がその長さに沿って変化する場合、隣接するフィラメント間に隙間が生じる可能性がある。これらの隙間は、結果として得られる容器を弱める可能性があり、かつ/または同等の強度を提供するために材料の追加の層を必要とする。追加の材料は、容器のコストと重量を増加させる可能性がある。
【0005】
開示されたシステムおよび方法は、上記で示された1つ以上の問題および/または先行技術の他の問題を克服することを目的としている。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本開示は、母材で湿潤された補強材から複合構造体を積層造形する方法に関するものである。本方法は、複合構造体の仮想モデルを、複合構造体の長さ方向に沿って各々に隣接する複数のスライス片にスライスすることと、複数のスライス片の各々を通過する補強材の点を決定することと、を含み得る。本方法は、複数のスライス片の各々の周囲を点で別様にクロッキングすることと、点のシーケンス化されたサブセットを含む少なくとも1つのツールパスを生成することとを、さらに含み得る。本方法は、積層造形機に少なくとも1つのツールパスに沿って補強材を吐出させることを付加的に含み得る。
【0007】
さらに別の態様では、本開示は、母材で湿潤された補強材から複合構造体を積層造形する別の方法に関するものである。本方法には、複合構造体の仮想モデルを受信することが含まれ得る。仮想モデルは、必須セクションと犠牲セクションとを有し得る。本方法はさらに、複合構造体の長さ方向に沿って互いに隣接する複数のスライス片に仮想モデルをスライスすることと、犠牲セクションの形状を選択的に調整して複数のスライス片間の外周長のばらつきを低減することと、複数のスライス片の各々を通過する補強材の点を決定することと、を含み得る。本方法は、点のシーケンス化されたサブセットを含む少なくとも1つのツールパスを生成することと、積層造形機に少なくとも1つのツールパスに沿って補強材を吐出させることと、を付加的に含み得る。本方法はまた、犠牲セクションを切り離すことを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】開示された例示的な積層造形システムの等角図である。
【
図2】
図2~6は、
図1の積層造形システムによって造形され得る構造体の例示的な部分の等角図である。
【
図3】
図2~6は、
図1の積層造形システムによって造形され得る構造体の例示的な部分の等角図である。
【
図4】
図2~6は、
図1の積層造形システムによって造形され得る構造体の例示的な部分の等角図である。
【
図5】
図2~6は、
図1の積層造形システムによって造形され得る構造体の例示的な部分の等角図である。
【
図6】
図2~6は、
図1の積層造形システムによって造形され得る構造体の例示的な部分の等角図である。
【
図7】
図2~6の構造体の製作中に
図1の積層造形システムによって実行され得る例示的な方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8および9は、
図7のフローチャートで開示した方法を図解したものである。
【
図9】
図8および9は、
図7のフローチャートで開示した方法を図解したものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、任意の所望の形状を有する複合構造体12を造形するために使用され得る例示的なシステム10を示す図である。システム10は、とりわけ、支持体14、少なくとも1つの堆積ヘッド(「ヘッド」)16、マンドレル18、および駆動部20を含み得る。ヘッド16は、マンドレル18上への材料の吐出の間、支持体14に結合され、支持体14によって移動され得る。
図1の開示された実施形態では、支持体14は、材料の吐出中にヘッド16を複数の方向に移動することができるロボットアームである。支持体14は、代替的に、構造体12の製作中にヘッド16を任意の数の方向に移動させることができるガントリーまたはハイブリッドガントリー/アームを具現化してもよい。マンドレル18は、構造体12の外殻の内部型として機能することができ、その一時的または恒久的な部分を形成することができる。駆動部20は、その最も単純な形態で、構造体12の外殻形成中にマンドレル18を回転させるように動力が供給されるモータ(例えば、電気モータ、油圧モータ、空気圧モータなど)を具現化してもよい。支持体14、ヘッド16、および駆動部20の動作は、コントローラ22によって協調的な様式で調整され得る。
【0010】
以下でより詳細に説明されるように、構造体12は、システム10によって、母材(M)で少なくとも部分的にコーティングされた連続補強材(R)から製作され得る。本開示の目的のために、母材でコーティングされた連続補強材は、複合材料とみなされ得る。構造体12は、所望により、固体内部(例えば、マンドレル18が構造体12の恒久部分を形成し、固体である場合)、非固体の充填物(例えば、マンドレル18が構造体12の恒久部分を形成し、100%未満の固体である場合)、または中空内部(例えば、マンドレル18が構造体12の恒久部分でなく、製作構造体12の完了中および/または製作後に除去された場合)の上に敷き詰められた複合材料の外殻から構成され得る。構造体12の内部は、固体または部分的に固体である場合、所望により、外殻と同じ複合材料であっても、異なる材料であってもよい。
【0011】
母材は、硬化可能な任意のタイプの材料(例えば、ゼロ揮発性有機化合物樹脂などの液状樹脂、粉末金属、等)を含むことができる。例示的な樹脂には、熱硬化性樹脂、一液型または多液型エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、カチオン性エポキシ、アクリル化エポキシ、ウレタン、エステル、熱可塑性樹脂、フォトポリマー、ポリエポキシド、チオール、アルケン、チオール-エンなどが含まれる。
【0012】
連続補強材は、例えば、炭素、ガラス、植物質、木材、鉱物、金属、プラスチック(例えば、UHMWPE)等から作られる個々の繊維、トウ、ロービング、ワイヤ、チューブ、ソックス、および/またはシートの形態を有することができる。「補強材」という用語は、ヘッド16から吐出される母材で少なくとも部分的に浸潤する連続材料の構造型および非構造型(例えば、機能型)の両方を包含することを意味していることに留意されたい。
【0013】
補強材がヘッド16の内側にある間、および補強材がヘッド16に渡されている間、および/または補強材がヘッド16から吐出されている間、補強材は母材に曝露されてもよい(例えば、少なくとも部分的に湿潤されてもよい)。母材、乾燥した(例えば、含浸されていない)補強材、および/または事前に含浸された補強(例えば、既に母材に曝露されている補強材)は、当業者に明らかな任意の方法でヘッド16に搬送され得る。いくつかの実施形態では、母材が連続補強材をコーティングする前および/または後に、充填材料(例えば、チョップドファイバー)が母材と混合されてもよい。
【0014】
1つ以上の硬化促進剤(例えば、光源、放射線源、超音波エミッタ、マイクロ波発生器、磁場発生器、レーザ、ヒータ、触媒ディスペンサなど)24は、ヘッド16に近接して(例えば、ヘッド16内、ヘッド16上、および/またはヘッド16に隣接して)取り付けられ、ヘッド16から吐出される母材の硬化に影響を与える(例えば、開始、強化、完了または他の方法で促進する)ように構成され得る。硬化促進剤24は、材料吐出および構造体12の形成中に、構造体12の一部をエネルギー(例えば、電磁放射、振動、熱、化学触媒など)に選択的に曝露するように制御され得る。エネルギーは、母材内で起こる反応を誘発し、反応の速度を上げ、母材を焼結させ、母材を熱分解し、母材を硬化させ、材料を硬くし、または別の方法として、ヘッド16から吐出する際に母材を部分的にまたは完全に硬化させてもよい。硬化促進剤24によって生成されるエネルギーの量は、構造体12がヘッド16から離れて軸方向に所定の長さ以上に成長する前に、母材を少なくとも部分的に硬化させるのに十分な量があればよい。一実施形態では、構造体12は、軸方向の成長が母材をコーティングする補強材の外径に等しくなる前に、その形状を保持するのに十分な程度に硬化される。
【0015】
連続補強材は、支持体14および/または駆動部20によって与えられるヘッド16とマンドレル18との間との相対運動を介してヘッド16から引き抜かれ得る。母材が補強材にまとわりつく可能性があり、それによって補強材とともにヘッド16からも引き抜かれる。引き抜き動作は、補強材内に張力を誘発する可能性があり、張力は、構造体12の強度を(例えば、補強材を整列させ、座屈を抑制することなどによって)増加させてもよい。必要に応じて、ヘッド16を通る補強材の移動は、ヘッド内部機構を介して、支援することができることに留意されたい。しかしながら、ヘッド16からの補強材の吐出速度は、主に、ヘッド16とマンドレル18との間の相対的な移動の結果であり得る。
【0016】
図1に見られるように、構造体12は、マンドレル18の軸26とほぼ一致する長さ方向(L)と、長さ方向(L)に沿って変化する外周長(P)を有し得る。
図2および
図3に見られるように、長さ方向(L)に沿った所定の位置で外周長(P)を通過する補強材(R)の数は、各補強材(R)の幅(W)および補強材(R)の角度(α)(例えば、軸26に対する補強材(R)の中心軸または縁の角度)に少なくとも部分的に依拠し得る。
図2の実施形態では、軸26に対する補強材(R)の角度(α)は約(例えば、工学公差内で)90°であり、単一の補強材(R)のみが外周長(P)を通過する。
図3の実施形態では、軸26に対する補強材(R)の角度(α)は、約(例えば、工学公差内で)0°であり、最大数(すなわち、重なりが生じない最大数)の補強材(R)が外周長(P)を通過する。構造体12内の補強材(R)の角度(α)を、0°と±90°の間で選択的に変化させて、長さ方向(L)に沿った構造体12の特定の位置で外周長(P)を通過する補強材(R)の数を調整してもよい。同様に、長さ方向(L)に沿った構造体12の所与の位置で外周長(P)を通過する補強材(R)の数を、1~最大数の間で選択的に変化させて、軸26に対する補強材(R)の角度を調整してもよい。
【0017】
図4、
図5、および
図6に示すように、マンドレル18(
図1を参照)上で補強材(R)を互いに隣接させて(すなわち、隙間なく、重なり合うことなく、構造体12の製作中に補強材(R)を追加または削除することなく)吐出するために、構造体12の長さ(L)に沿って異なるサイズの外周長(P)を通過する補強材(R)の角度(α)を変える必要があり得る。例えば、より大きな外周長(P1)を通過する補強材(R)の数を、より小さな外周長(P2)を通過する際に隙間を作ることなく同じ数で維持するためには、外周長(P1)全体を覆いつくすために外周長(P1)における補強材(R)をより大きな角度(α、例えば45°から60°)にシフトさせなければならない。別の表現をすると、より小さな外周長(P2)を通過する補強材(R)の数を、より大きな外周長(P1)を通過するのと同じ数で、重なりが生じることなく維持するためには、外周長(P2)の補強材(R)を、より小さな角度(α、例えば60°から45°)にシフトさせなければならない。
【0018】
コントローラ22(
図1を参照)は、長さ方向(L)に沿った任意の位置で構造体12の外周長(P)を通過する補強材(R)の角度(α)を選択的に変化させるために、支持体14、ヘッド16、および/または駆動部20の動作を調節するようにプログラムされてもよい。コントローラ22は、システム10の動作を制御するように構成された単一のプロセッサまたは複数の一般的または特殊なプロセッサを具現化するか、または他の方法として含むことができる。コントローラ22は、例えば、設計限界、性能特性、動作命令、ツールパス、およびシステム10の各構成要素の対応するパラメータのようなデータを記憶するためのメモリをさらに含み得るか、またはそれに関連付けられ得る。電源回路、信号調整回路、ソレノイドドライバ回路、通信回路、および他の適切な回路を含む、他の様々な既知の回路をコントローラ22に関連付けることができる。さらに、コントローラ22は、有線および/または無線伝送を介してシステム10の他の構成要素と通信することが可能である。
【0019】
1つ以上のマップがコントローラ22のメモリに記憶され、構造体12の製作中に使用され得る。これらのマップの各々には、ルックアップテーブル、グラフ、および/または方程式の形式でデータの集合が含まれ得る。開示された実施形態では、マップは、構造体12の所望の形状(例えば、サイズ、形状、材料組成および形状、性能パラメータ、輪郭など)を作り出すために必要なヘッド16および/またはマンドレル18の動きを決定し、その動きに協調して硬化促進剤24および/または他の関連構成要素の動作を調節するためにコントローラ22によって使用されてもよい。
【0020】
図7、
図8、および
図9は、構造体12の製作中にコントローラ22によって実行され得る例示的な方法を示している。これらの図は、開示された概念をさらに説明するために、次の項でより詳細に議論される。
【0021】
産業上の利用可能性
開示されたシステムは、任意の所望の断面形状、外周長、および長さを有する複合構造体を造形するために使用され得る。複合構造体は、同じまたは異なるタイプで、同じまたは異なる直径の任意の数の異なる連続繊維、および同じまたは異なる構成の任意の数の異なる母材を含み得る。次に、システム10の動作について詳細に説明する。
【0022】
図7のフローチャートに示されるように、造形イベントの開始時に、製作予定の所望の構造体12に関する情報が、システム10に(例えば、支持体14、ヘッド16、および駆動部20の動作を調節する責任を負うコントローラ22に)受信され得る。これは、とりわけ、構造体12の仮想モデル(例えば、母材コーティングされた補強材の特定のスケジュールにオーバーレイされるマンドレル18、ステップ700)と、構造体12の長さ(L)に沿った1つ以上の位置における軸26に対する補強材の所望の角度(ステップ705)と、使用される特定の補強材(例えば、材料、幅、厚さなど)の選択(ステップ710)と、を受信することを含み得る。ステップ705でユーザから受信した所望の角度の代わりに、ユーザは、代替的に、構造体12の任意の所与の軸方向位置で構造体12の外周長を通過する特定の数の補強材(R)を選択し得ることが企図される。
【0023】
少なくともステップ700の完了後、コントローラ22は、長さ方向(L)に沿って構造体12のCADモデルを仮想的にスライスするように構成され得る(ステップ715)。スライスは、重要な場所(例えば、形状変化の場所)でのみ実行でき、規則的に間隔をあけたデフォルトの間隔で実行されてもよく、ならびに/またはユーザによって指定された間隔および/もしくは位置で実行されてもよい。一実施形態では、結果として得られるスライス片は、(例えば、
図8に示されるように)軸26にほぼ直交するように配向され得る。別の実施形態では、スライスは、補強材(R)の角度(α)と概ね整列するように配向され得る。この実施形態では、同心円として示されているが、スライスの形状は、同じ、同心、または類似である必要はない場合がある。スライス片を生成するために使用される方法のいかんに関わらず、コントローラ22は、どのスライス片が最小外周長(P)を有するかを決定することができる(ステップ720)。
【0024】
ステップ700~710で受信した入力に応じて、コントローラ22は、ユーザによって要求された所与の特定の角度(α)で、最小外周長(P)を横切る補強材の数(R)を選択するか、最小外周長スライス片を通過するユーザが要求した特定の数の補強材(R)のための角度(α)を選択するか、のいずれかを行うことができる(ステップ725)。これらのシナリオのいずれかにおいて、最小外周長のスライス片(例えば、
図8に示すスライス片-1)は、構造体12の仮想モデルの残りの部分内のすべての補強材(R)の軌道をレイアウトするための開始点として使用され得る。
図8では端部外周長として示されているが、最小外周長のスライス片は、構造体12の端部の間に同じように容易に配置され得ることに留意されたい。
【0025】
一例では、コントローラ22は、最小外周長のスライス片における(α)のユーザ要求角度について、最小外周長のスライス片の周囲に適合するユーザによって入力された形状を有する補強材の最大数が「n」であると決定されてもよい。この決定は、以下のEQ-1を使用して行うことができる。
EQ-1
n=P/(W/sinα)、式中
nは最小外周長(P)を通過する補強材の最大数であり、
Wは、補強材の寸法(例えば、幅または直径)であり、かつ
αは、軸26に対する補強材の角度である。
【0026】
別の例では、コントローラ22は、最小外周長を通過するようにユーザによって要求された補強材の数「n」に対して、補強材が互いに隣接して(すなわち、隙間なくまたは重なりあうことなく)位置するか、またはその間に所望の量の等しい隙間または重なりで位置するようにする角度は、(α)でなければならないと決定してもよい。この決定は、以下のEQ-2を使用して行うことができる。
EQ-2
α=sin-1(n・W/P)、式中
nは最小外周長を通過する補強材の数であり、
Wは補強材の寸法であり、かつ
αは、軸26に対する補強材の角度である。
【0027】
コントローラ22は、補強材の数「n」のみに基づいて、最小外周長のスライス片(
図8のスライス片-1参照)から始めて、各スライス片の周囲の各補強材の三次元中心点(すなわち、補強材1から補強材nまで)を決定してもよい(ステップ730)。中心点は、各スライス片の周囲に均等に分布し、構造体12の外面に位置し、角度(α)に対応する方向および隣接する外周長のスライス片に対する軸方向の位置にクロッキングされ得る(ステップ730)。クロッキングの量は、最小外周長に対する所定のスライス片の外周長の比率に対応し得る。例えば、
図8の各スライス片1~mの中心点1~nを参照されたい。この例では、中心点1~nはスライス片
1の12:00に位置する点
1から始まり、残りの各点2~nは互いに360度/nだけ互いに離れて角度的に分散していてもよい。スライス片
2では、点
1は、12:00の開始位置から、P1での角度(α)、外周長P1/P2の比率、およびP1からP2までの軸方向距離の関数である外周長P2の周囲の新しい角度で反時計回りにシフトされる。このシフトは、以下のEQ-3を使用して行うことができる。
EQ-3
Point
nSlice
m=Point
nSlice
m-1+f(α
Pm-1,Pm/Psmallest,L
Pm to Pm-1)、式中
Point
nSlice
mは、所与のスライス片m内の点nのクロッキング位置であり、
Point
nSlice
m-1は、隣接するスライス片m~1内の同じ点nのクロッキング位置であり、
α
Pm-1は、隣接するスライス片m~1での補強材の角度αであり、
Pm/Psmallestは、所与のスライス片Pmの最小外周長に対する外周長の比率であり、かつ
L
Pm to Pm-1は、所与のスライス片Pmと隣接するスライス変Pm-1との間の構造体12に沿った軸方向距離である。
【0028】
次に、コントローラ22は、共通の補強材に対応する中心点のサブセットを生成することができる(ステップ735)。例えば、コントローラ22は、1のラベルが付けられたすべての中心点を含む第1のサブセット、(例えば、Point1Slice1,Point1Slice2,…,Point1Slicem)、2のラベルが付けられたすべての中心点を含む第2のサブセット(例えば、Point2Slice1,Point2Slice2,…,Point2Slicem)、以下同様にnのラベルが付けられたすべての中心点を含むサブセット(例えば、PointnSlice1,PointnSlice2,…,PointnSlicem)が生成されるまでそのようなサブセットを生成し得る。中心点は、各サブセット内で、構造体12の第1の端部のスライス片(例えば、Slice1)から始まり、最小外周長のスライス片を通過し、構造体12の反対側の端部のスライス片(例えば、Slicem)で終了するようにシーケンス化されてもよい。
【0029】
次に、コントローラ22は、ステップ735で生成された中心点のサブセットに対応する1つ以上のツールパスを生成することができる(ステップ745)。一例では、中心点の第1のサブセット(ステップ740)に対応する管理ツールパスが生成され得(ステップ747)、追加のツールパス(例えば、中心点のセットの数に等しい数のツールパス)は、その後、管理ツールパスからのオフセットとして単に生成され得る。この例では、オフセット寸法は、各ツールパスに沿って配置される補強材の寸法と等しくてもよい。別の例では、中心点の各サブセットに個別のツールパスが独立して生成され、いずれのサブセットであっても支配ツールパスまたはオフセットツールパスとして指定されない。
【0030】
例示的なツールパス(例えば、管理ツールパス)は、ヘッド16の出口(例えば、ツール中心点、TCP)が通過すべき中心点のシーケンス化されたサブセット、サブセット内の各中心点でヘッド16が達成すべき姿勢またはポーズ、および各中心点におけるヘッド16の向きを含み得る。ヘッド16の中心軸は、各中心点におけるマンドレル18の外面に対してほぼ(例えば、工学公差内で)垂直であり、かつサブセット内の現在の中心点から次の中心点に直線的に通るベクトルとほぼ整合する前方移動方向を有するように配向されるべきである。各中心点の法線は、前方移動方向ベクトルと、前方移動方向ベクトルと同一平面上にある中心点の外周長ベクトルとを交差させることによって算出することができる。
【0031】
図8に示すように、隣接するスライス片間の外周長が大きく変化すると、隣接するスライス片間のツールパス内の角度(α)も同様に大きく変化する場合がある。ユーザが入力した角度(α)からの大幅な偏差は、一部の用途では許容されない場合がある。したがって、コントローラ22は、実際のものと所望のものとの間の差(α)と許容偏差との比較を行うように構成されてもよい(ステップ750)。許容偏差は、ユーザによって入力されてもよく、構造体12のサイズ、形状、用途等に基づいてコントローラ22によって決定されてもよく、および/または産業界によって提供される標準偏差であってもよい。ステップ750で決定された差が許容偏差より小さいことを、その比較が示すとき(ステップ750:いいえ)、コントローラ22は、システム10による印刷を開始するために、ステップ745で決定されたツールパスに対応する支持体14、ヘッド16、および/または駆動部20にコマンドを指示してもよい(ステップ755)。
【0032】
しかしながら、ステップ750で、コントローラ22が、その差が許容偏差よりも大きいと決定した場合(ステップ750:はい)、コントローラ22は、ツールパスを選択的に調整するようにプログラムされ得る。例えば、コントローラ22は、中間スライスで始まる1つ以上の追加のツールパスを挿入し、および/または既存のツールパスの一部を切り離し、中間スライスを最小外周長として指定することができる(ステップ760)。その後、制御はステップ725に戻り得る。
【0033】
代替的に、最小外周長のスライス片でユーザの所望する角度(α)を正確に有するようにツールパスに依拠する代わりに、そのような偏差によって構造体12内の他のスライス片における偏差が許容偏差範囲内に戻るならば、最小外周長のスライス片において所望の角度(α)が多少偏差することを許容することもできる。例えば、最小外周長のスライス片の所望の角度(α)が45°になるようにユーザによって選択され、最大許容偏差が±10°になるように選択または自動設定された場合、ステップ745の完了後に最大外周長スライス片で生じる60°の角度(α)は、最大許容偏差を超えるであろう(ステップ750:はい)。しかしながら、最小外周長のスライス片において、角度(α)がユーザ所望の角度から±5°(例えば40°まで)偏差することが許容された場合(例えば、正確に45°に設定される代わりに)、最大外周長のスライス片における角度(α)は、許容偏差範囲内の55°にしかならないことが判明し得るだろう。したがって、コントローラ22が、ステップ750において、最小外周長のスライス片以外のいずれかのスライス片において許容偏差を超えたと決定した場合(ステップ750:はい)、コントローラ22は、最小外周長スライス片に対する所望の角度(α)を、残りのスライス片の角度(α)の偏差を低減する値に調整してもよい(ステップ765)。その後、制御はステップ730に戻り得る。
【0034】
いくつかの用途では、構造体12の特定の層内の補強材(R)の角度(α)を変えることは全く許容されない場合がある(例えば、偏差閾値が非常に小さい場合がある)。これらの同じ用途では、製作後に構造体12の一部を廃棄することも可能である場合がある。例えば、
図9は、必須セクション28と、製作後に必須セクション28から切り離されて廃棄され得る犠牲セクション30とを有するものとして構造体12を図示している。犠牲セクション30は、開示された方法およびシステムを介して構造体12の巻き取りを可能にするために、および/または製作中に一時的に硬化するか、さもなければ所望の特性を提供するために利用され得る。通常、犠牲セクション30は、軸26を通過する平面32に対して、必須セクション28をミラーリングするか、または実質的にバランスをとることができる。しかしながら、代わりに、犠牲セクション30が、長さ(L)に沿ったすべての所与の位置でほぼ(例えば、工学公差内で)同じ外周長(P)を提供するように調整(外周長を増加および/または減少)される場合、補強材(R)は、望ましい間隔を保つために(すなわち、隣接する補強材(R)の隙間をあけることを避けるおよび/または重なりを避けるために)ほぼ(例えば、工学公差内で)同じ角度(α)を維持し得ることが見出されている。
【0035】
したがって、
図7のステップ715に戻ると、コントローラ22は、その後、構造体12の仮想モデルが犠牲セクション30を含むかどうかを決定することができる(ステップ765)。仮想モデルに犠牲セクション30が含まれていない場合(ステップ765:いいえ)、制御は上記のようにステップ715からステップ720に進行してもよい。しかしながら、コントローラ22が、犠牲セクション30が仮想モデル内に含まれると決定した場合(ステップ765:はい)、コントローラ22は、仮想モデル内に含んでいる構造体12の形状を調整することができる(ステップ770)。例えば、犠牲セクション30の形状は、長さ(L)に沿った隣接する軸方向位置における外周長のより小さな偏差(例えば、いくつかの実施形態では、工学公差内でほぼ等しい外周長)を提供するために、特定の軸方向位置(例えば、通常より小さい外周長、
図9に示す)において外周長を選択的に増加してもよく、および/または他の軸方向位置(例えば、通常より大きな外周長)において外周長を選択的に減少させてもよい。制御は、ステップ770からステップ720に進行してもよい。
【0036】
開示されたシステムは、補強材の間の隙間または補強材の重なりを回避しながら、構造体12の(すなわち、表面材に対する)外殻を製作する方法を提供し得る。これにより、構造体12の強度を向上し、および/または所望の特性を達成するために必要とされる補強材の外層の数を減らすことができる。構造体12を製作するために必要なリソース(時間、材料、労力など)が少なくてすむため、その結果コストが低くなり得る。
【0037】
開示されたシステムおよび方法に様々な修正および変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。他の実施形態は、開示されたシステムの明細および実施を考慮することから当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は単なる例示とみなされ、真の範囲は以下の特許請求の範囲およびそれらの等価物によって示されることが意図されている。
【国際調査報告】