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特表2023-508856骨複合体及び同骨複合体を調製するための組成物
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  • 特表-骨複合体及び同骨複合体を調製するための組成物 図1
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  • 特表-骨複合体及び同骨複合体を調製するための組成物 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(54)【発明の名称】骨複合体及び同骨複合体を調製するための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/12 20060101AFI20230227BHJP
   C12N 11/02 20060101ALI20230227BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20230227BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20230227BHJP
   A61L 27/42 20060101ALI20230227BHJP
   A61L 27/46 20060101ALI20230227BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20230227BHJP
   A61K 38/36 20060101ALI20230227BHJP
   A61K 38/48 20060101ALI20230227BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230227BHJP
   A61K 33/42 20060101ALI20230227BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20230227BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230227BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230227BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20230227BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20230227BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20230227BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20230227BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20230227BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20230227BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20230227BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230227BHJP
【FI】
A61L27/12
C12N11/02
C12N5/0775
A61L27/22
A61L27/42
A61L27/46
A61L27/52
A61K38/36
A61K38/48 100
A61K9/06
A61K33/42
A61L27/20
A61K47/36
A61K47/42
A61L27/38 111
A61K35/28
A61L27/54
A61L27/58
A61P19/08
B33Y70/00
B33Y80/00
B33Y10/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537165
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2020087269
(87)【国際公開番号】W WO2021123344
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】19383140.1
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515116009
【氏名又は名称】グリフォルス・ワールドワイド・オペレーションズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GRIFOLS WORLDWIDE OPERATIONS LIMITED
【住所又は居所原語表記】Grange Castle Business Park,Grange Castle,Clondalkin,Dublin 22,IRELAND
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マリア・イサベル・ブラーボ・カミソン
(72)【発明者】
【氏名】モンセラット・コスタ・リエローラ
(72)【発明者】
【氏名】アルバ・ペレス・ペラルナウ
【テーマコード(参考)】
4B033
4B065
4C076
4C081
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B033NA16
4B033NB22
4B033NB65
4B033ND12
4B033NG05
4B033NH10
4B065AA90X
4B065BC42
4B065BC46
4B065BC47
4B065CA44
4C076AA09
4C076BB32
4C076CC50
4C076EE36P
4C076EE37P
4C076EE42P
4C076FF32
4C076FF35
4C081AB04
4C081BA12
4C081BB06
4C081BC02
4C081CD111
4C081CD112
4C081CD151
4C081CD152
4C081CD18
4C081CD23
4C081CD34
4C081CF011
4C081CF021
4C081CF031
4C081DA12
4C081DC12
4C081EA01
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DC03
4C084DC11
4C084DC12
4C084MA01
4C084MA28
4C084MA67
4C084NA03
4C084NA11
4C084NA12
4C084NA20
4C084ZA96
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA19
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA28
4C086MA67
4C086NA03
4C086NA11
4C086NA12
4C086NA14
4C086NA20
4C086ZA96
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB44
4C087BB63
4C087MA01
4C087MA28
4C087MA67
4C087NA03
4C087NA11
4C087NA12
4C087ZA96
(57)【要約】
例えば、外傷又は癌患者に使用するための骨構築物を調製するための多成分又はマルチパート組成物が本明細書に開示される。マルチパート組成物は、フィブリノーゲン、トロンビン、ハイドロゲル及びカルシウム/リン塩の革新的な組合せに基づいている。有利なことに、マルチパート組成物は、3D印刷プロセスを使用して骨構築物を生成するように印刷されて、所望の幾何学の的確で正確な骨構築物を作製することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨複合体の3次元印刷のためのマルチパート組成物であって、前記マルチパート組成物が、
i)薬学的に許容される担体にフィブリノーゲンを含む第1の部分;
ii)薬学的に許容される担体にトロンビンを含む第2の部分;及び
iii)少なくとも1種の生体適合性無機材料と混合された薬学的に許容されるハイドロゲルを含む第3の部分
を含み、前記少なくとも1種の生体適合性無機材料が、カルシウム原子及びリン原子の少なくとも1つの源を提供し、
前記第3の部分は、
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約1~約300Pa・s、並びに
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約1~約100Pa・s
からなる群から選択される見かけ粘度を有し、
更に、前記マルチパート組成物の少なくとも前記第1の部分及び前記第2の部分が、3次元印刷装置による印刷の前に混合されないように、前記第3の部分が、スタンドアロン組成物であるか、又はそれが、前記マルチパート組成物の前記第1の部分若しくは前記第2の部分のいずれかと混合されている、マルチパート組成物。
【請求項2】
前記第1の部分において、前記フィブリノーゲンが、約5~約200mg/mLの濃度である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第2の部分において、前記トロンビンが、約25及び約1500IU/mLの濃度である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記マルチパート組成物の前記第3の部分が、
室温及び圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約50~約250Pa・s、並びに
室温及び圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約2~約50Pa・s
からなる群から選択される見かけ粘度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記第3の部分が、3次元印刷装置による印刷の前に前記マルチパート組成物の3つの部分が混合されないように、スタンドアロン組成物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記生体適合性無機材料が、バイオガラス、リン酸三カルシウム、単相ハイドロキシアパタイト、二相性ハイドロキシアパタイト-リン酸三カルシウム、天然骨粉末及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記生体適合性無機材料が、リン酸三カルシウム、単相ハイドロキシアパタイト、二相性ハイドロキシアパタイト-リン酸三カルシウム及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記生体適合性無機材料が、β-リン酸三カルシウムである、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記β-リン酸三カルシウムが、ヘリウムピクノメトリーによって決定される場合、約2.95g/cm3~約3.15g/cm3の密度を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記β-リン酸三カルシウムが、ヘリウムピクノメトリーによって決定される場合、約2.95g/cm3~約3.10g/cm3の密度を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記β-リン酸三カルシウムが、約180μm以下のd90粒径分布を有する、請求項8から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記β-リン酸三カルシウムが、約160μm以下のd90粒径分布を有する、請求項8から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記β-リン酸三カルシウムが、°2θ(d値Å)に固有のピークを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けられ、K-α放射を有するCu管陽極で得られた場合、17.0(5.2)、21.9(4.1)、25.8(3.45)、27.8(3.2)、29.65(3.0)、31.0(2.9)、32.45(2.75)、34.4(2.6)、46.9(1.9)、48.0(1.9)、48.4(1.9)、及び53.0(1.7)の角度である、請求項8から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記生体適合性無機材料が、約150μm未満の平均粒径を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記生体適合性無機材料が、約100μm未満の平均粒径を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記生体適合性無機材料が、前記薬学的に許容されるハイドロゲルと混合する前に、アルブミン溶液で水和される、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記薬学的に許容されるハイドロゲルが、親水性多糖からなるハイドロゲル、ゼラチン及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記薬学的に許容されるハイドロゲルが、アルギネート、ヒアルロン酸、ゼラチン及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記薬学的に許容されるハイドロゲルが、アルギネートを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記第3の部分が、約1~10gの生体適合性無機材料対約1mLのハイドロゲルの、生体適合性無機材料:ハイドロゲルの比を有する、請求項1から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が、骨伝導、骨誘導及び/又は骨形成特性を有する材料を更に含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
骨伝導、骨誘導及び/又は骨形成特性を有する前記材料が、細胞、タンパク質、成長因子及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が、ヒト間葉系幹細胞(hMSC)を更に含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記hMSCが、薬学的に許容されるハイドロゲル1mLあたり1×103~約5×1010hMSCの濃度である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか一項に記載のマルチパート組成物から得ることができる骨複合体。
【請求項26】
前記生体適合性無機材料が、前記骨複合体の約5%w/w~約60%w/wの濃度である、請求項25に記載の骨複合体。
【請求項27】
骨複合体を調製する方法であって、前記方法が、
i)請求項1から24のいずれか一項に記載のマルチパート組成物を有する3次元印刷装置を提供する工程、
ii)決定された設計に従って前記骨複合体を印刷する工程、及び
iii)任意に、前記骨複合体をインキュベートする工程
を含む、方法。
【請求項28】
前記3次元印刷装置が、
i)フィブリノーゲン又はトロンビンのいずれかを含む第1の層;
ii)フィブリノーゲン又はトロンビンのいずれかを含む第2の層
を印刷し;
前記第1の層がフィブリノーゲンを含む場合、前記第2の層はトロンビンを含み、その逆もまた同様であり、
iii)工程i)及びii)をn回(n≧1)順次繰り返し、交互の層状構造を生成し;
iv)工程iii)の前記交互の層状構造の上に、前記ハイドロゲル及び生体適合性無機材料を含む前記第3の部分を印刷し、
v)任意に、必要に応じて工程i)~iv)を繰り返して前記骨複合体を得る、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
最初に前記フィブリノーゲンが印刷され、2番目に前記トロンビンが前記フィブリノーゲンの上に層として印刷される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
i)前記第1の層が、Xの規定の容積を有し、
ii)前記第2の層が、Yの規定の容積を有し、
iii)工程i)及びii)をn回(n≧1)繰り返し、容積nX+nYの交互の層状構造を生成し;
iv)工程iii)の前記交互の層状構造の上に、前記ハイドロゲル及び生体適合性無機材料を含む前記第3の部分が印刷され、前記第3の部分が容積Zを有する、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
容積X及び容積Yが、容積がnX=nYとなるように同じである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
Z対nX対nYの比(Z:nX:nY)が、約0.60~1.0:1:1である、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
2≦n≦10である、請求項29から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記3次元印刷装置が、
i)本発明の前記マルチパート組成物の前記第3の部分を含む第1の層、
ii)フィブリノーゲン又はトロンビンのいずれかを含む第2の層;
iii)フィブリノーゲン又はトロンビンのいずれかを含む第3の層
を印刷し;
前記第2の層がフィブリノーゲンを含む場合、前記第3の層はトロンビンを含み、その逆もまた同様であり、
iv)工程ii)及びiii)をn回(n≧1)順次繰り返し、フィブリノーゲン及びトロンビンの交互の層状構造を生成し;
v)任意に、必要に応じて工程i)~iv)を繰り返して前記骨複合体を得る、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
i)前記第1の層が、Aの規定の容積を有し、
ii)前記第2の層が、Bの規定の容積を有し、
iii)前記第3の層が、Cの規定の容積を有し、
iv)工程ii)及びiii)をn回(n≧1)繰り返してもよく、容積A+nB+nCの層状構造を生成する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
A対nB対nCの比(A:nB:nC)が、約1~5:1:1である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
2≦n≦10である、請求項34から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
請求項1から24に記載の組成物が、2パート組成物であり、前記方法が、
i)フィブリノーゲン又はトロンビンのいずれかを含む前記組成物の前記第1の部分を印刷する工程;
ii)工程i)をn回(n≧1)繰り返し、フィブリノーゲン又はトロンビンのいずれか一方のみを含む層状構造を生成する工程;
iii)工程ii)で生成された前記層状構造の上に、前記薬学的に許容されるハイドロゲル及び前記生体適合性無機材料と混合されたフィブリノーゲン又はトロンビンの他方を含む前記第2の部分を印刷する工程;
iv)任意に、必要に応じて工程i)~iii)を繰り返して前記骨複合体を得る工程
を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項39】
請求項1から24に記載の組成物が、2パート組成物であり、前記方法が、
i)前記薬学的に許容されるハイドロゲル及び前記生体適合性無機材料と混合されたフィブリノーゲン又はトロンビンの一方を含む前記第2の部分を印刷する工程;
ii)工程i)において印刷された前記部分の上に、フィブリノーゲン又はトロンビンの他方を含む前記第1の部分を印刷する工程;
iii)工程ii)をn回(n≧1)繰り返し、層状構造を生成する工程;
iv)任意に、必要に応じて工程i)~iii)を繰り返して前記骨複合体を得る工程
を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項40】
請求項27から39のいずれか一項に記載の方法から得ることができる骨複合体。
【請求項41】
それを必要とする患者において骨損傷又は骨欠損を治療する方法であって、それを必要とする前記患者に請求項25又は26又は40に記載の骨複合体を移植する工程を含む、方法。
【請求項42】
骨損傷又は骨欠損の治療における請求項25又は26又は40に記載の合成骨複合体の使用。
【請求項43】
3次元プリンタ及び請求項1から24のいずれか1項に記載のマルチパート組成物を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織作製に関する。特に、骨複合体の3D印刷のための組成物が本明細書に開示される。組成物によって、骨複合体を設計図から正確に忠実に印刷することができる。本発明はまた、骨複合体を3D印刷する方法に関し、骨複合体については本明細書に開示される組成物から得ることができる。
【背景技術】
【0002】
骨組織移植片は、整形外科、神経、顎顔面及び歯科手術において広く使用されている。効果的ではあるが、自家骨移植片及びアリオ骨移植片の使用にはいくつかの制限がある。
【0003】
自家骨移植片は患者から採取されるため、追加の手術が必要であり、例えば、感染、失血及びドナー部位における構造的一体性を損ねる等のその採取に関連するリスクが存在する。
【0004】
或いは、耐荷重性同種移植片骨を自家骨の代替物として使用することができる。主に、耐荷重性同種移植片は屍体から抽出され、生きているドナーから自家骨を採取することに関連する複雑さ及び患者の曝露を回避する。しかし、無菌性、適合性及び長期供給に関する問題は残ったままである。
【0005】
使用前に、同種移植片及び自家移植片骨組織の両方は、外科医によって指定された特定の適用のために成形する必要がある。当然のことながら、成形された骨移植片の無菌性に関する考慮事項は最も重要である。いくつかの状況において、生骨移植片代替物の移植は、生きている又は死亡したドナーから抽出された利用可能な形状及びサイズによって制限される。
【0006】
合成骨代替材料及び骨片は、より柔軟な原料を提供し、容易に改造し再形成することができるが、直ちに患者に機械的支持を提供しない。このような材料は、奇妙な形状の骨欠損を埋めるために使用されることが多いが、骨を包むこと又は再表面化には適していない。
【0007】
ヒト同種移植骨組織の使用は、整形外科手術において非常に一般的である。常に、同種移植組織は、骨伝導、骨誘導及び/又は骨形成特性を有する材料を含有する組成物の足場として作用する。適切な材料には、タンパク質及び/又は幹細胞が含まれる。
【0008】
国際特許公開第2012118843号は、とりわけ骨形成タンパク質で任意に被覆された生体適合性のモジュラー足場を提供することにより、骨同種移植片及び自家移植片における上記の欠点に対処する。
【0009】
3D印刷技術とバイオインクを利用することは、骨置換療法における従来のアリオ及び自家骨移植片の没落を改善するための代替物として、従来技術においても示唆されている。例えば、国際特許公開第2018078130号は、セルロースナノフィブリル、カルシウム含有粒子及び間葉系幹細胞、骨芽細胞又は人工多能性幹細胞等の生細胞を含む印刷可能なバイオインクを開示している。セルロースナノフィブリルは、骨構築物の構造的一体性にとって重要である。
【0010】
最先端の技術にもかかわらず、骨置換療法における伝統的なアリオ及び自家骨移植片の使用に対するさらなる代替物の必要性が依然として存在する。このような代替物は、制御された無菌の製造条件下で製造可能であるべきである。このような代替物にとって重要なことは、外科医又は他の医療専門家の仕様に正確で適格な方法で形成される材料の能力である。当然のことながら、このような代替物はすべて機械的一体性を示し、一度移植されると構造的及び耐荷重支持を提供することができるべきである。理想的には、材料は生体適合性であり、骨伝導、骨誘導及び/又は骨形成特性を有する生理活性材料に対して無毒であり得るべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際特許公開第2012118843号
【特許文献2】国際特許公開第2018078130号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ASTM D2196-18e1:Standard Test Methods for Rheological Properties of Non-Newtonian Materials by Rotational Viscometer
【発明の概要】
【0013】
本発明に関して本明細書において使用される場合、「含む/含んでいる」という語及び「有する/含む」という語は、述べられた特徴、整数、ステップ又は成分の存在を指定するために使用されるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、成分又はこれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。
【0014】
本明細書に開示される特定の実施形態は単独で読まれるべきではなく、本明細書は、開示された実施形態が個別にではなく互いに組み合わせて読まれることを意図していることを当業者に理解されるべきである。このように、各実施形態は、本明細書に開示される他の実施形態を修正又は限定するための基礎として機能し得る。
【0015】
濃度、量、及び他の数値データは、ある範囲フォーマットで本明細書において表現又は提示されてもよい。このような範囲フォーマットは、便宜上簡潔にするためにのみ使用されるため、範囲の限界として明示的に列挙された数値だけでなく、各数値及びサブ範囲があたかも明示的に列挙されているかのように、その範囲内に含まれるすべての個々の数値又はサブ範囲を含むように柔軟に解釈されるべきであることを理解されたい。例示として、「10~100」の数値範囲は、明示的に列挙された10~100の値だけでなく、示された範囲内の個々の値及びサブ範囲も含むと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲には、10、11、12、13...97、98、99、100等の個々の値及び10~40、25~40、50~60等のサブ範囲が含まれる。この同じ原則は、「少なくとも10」等の1つの数値のみを列挙する範囲にも適用される。更に、このような解釈は、範囲の広さ又は記述されている特徴に関係なく適用されるべきである。
【0016】
本発明の組成物
第1の態様において、本発明は、骨複合体の3次元印刷のためのマルチパート組成物を提供し、マルチパート組成物は、
i)薬学的に許容される担体にフィブリノーゲンを含む第1の部分;
ii)薬学的に許容される担体にトロンビンを含む第2の部分;及び
iii)少なくとも1種の生体適合性無機材料と混合された薬学的に許容されるハイドロゲルを含む第3の部分
を含み、少なくとも1種の無機材料は、カルシウム原子及びリン原子の少なくとも1つの源を提供し、
第3の部分は、
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約1~約300Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約1~約100Pa・s
からなる群から選択される見かけ粘度を有し、
更に、マルチパート組成物の少なくとも第1の部分及び第2の部分が、3次元印刷装置による印刷の前に混合されないように、第3の部分は、スタンドアロン組成物であるか、又はマルチパート組成物の第1の部分若しくは第2の部分のいずれかと混合されている。
【0017】
本明細書において使用される場合、回転粘度計という用語は、液体において一定の角速度(回転速度)で回転する場合にロータに作用する力(トルク)を測定するという原理で動作する装置を指す。回転粘度計は、ニュートン(剪断非依存粘度)又は非ニュートン液体(剪断依存粘度又は見かけ粘度)の粘度を測定するために使用される。本発明のマルチパート組成物の第3の部分は、剪断減粘性、すなわち剪断依存性粘度を有し、そのため、粘度を測定する剪断速度を指定する必要がある。さらなる情報については、当業者は、その内容が参照により本明細書に組み込まれるASTM D2196-18e1:Standard Test Methods for Rheological Properties of Non-Newtonian Materials by Rotational Viscometerを参照されたい。
【0018】
一実施形態において、本発明は、2パート組成物を提供し:
第1の部分(フィブリノーゲン)は第3の部分と混合され、又は
第2の部分(トロンビン)は、第3の部分と混合され、
残りの混合されていない部分はスタンドアロンである。
【0019】
一実施形態において、本発明の2パート組成物は、
第3の部分と混合された第1の部分(フィブリノーゲン)及び
スタンドアロンである第2の部分(トロンビン)
を含む。
【0020】
さらなる実施形態において、本発明は、第1、第2及び第3の部分がスタンドアロンである3パート組成物を提供する。
【0021】
有利なことに、本発明の組成物は、定義された、複雑で、不規則な形状を有することが多い骨構造の的確に正確な印刷を可能にする。このように、本発明の組成物は、屍体及び自家骨移植で問題となり得る骨移植の形状及びサイズに関する重要な満たされていないニーズに対処する。
【0022】
本発明の成分は、すべて天然又は生体適合性の材料であり、そのようにして低い毒性リスクを示す。更に、本発明の組成物の個々の部分を滅菌することができ、したがって、骨構築物が印刷され、患者の体内に移植されると、任意の関連する感染のリスクを低減することができる。適切な、非限定的な滅菌の方法として、滅菌濾過及び放射線が挙げられる。更に、本発明の組成物は、滅菌された骨構築物を得るために滅菌環境で印刷することができる。
【0023】
更に有利なことに、本発明の組成物は、耐荷重支持を提供することができる望ましい構造的及び機械的特性を有する骨構築物を与える。一実施形態において、本発明の組成物には、いかなる追加の補強材料も存在しない。例えば、本発明のマルチパート組成物には、一旦印刷された骨構築物にさらなる強度及び機械的支持を加える任意のポリマー又は繊維材料が存在しなくてもよい。強度及び機械的支持を加えるポリマー材料の非限定的な例として、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)コポリマーを含んでもよい。繊維材料は、植物又は動物由来であってよい。例えば、繊維材料は、綿、亜麻、麻、ジュート、竹、再生木材、古紙、セルロースに由来してもよい。特に、本発明の組成物は、セルロース繊維を欠いてもよい。
【0024】
或いは、さらなる実施形態において、本発明の組成物は、必要に応じて追加の補強材料を含有してもよい。例えば、本発明のマルチパート組成物には、一旦印刷された骨構築物にさらなる強度及び機械的支持を加える任意のポリマー又は繊維材料を含有してもよい。望ましくは、ポリマー及び繊維材料は生体適合性である。例えば、繊維材料は、天然植物又は動物由来であってよい。例えば、繊維材料は、綿、亜麻、麻、ジュート、竹、再生木材、古紙及びセルロースからなる群から選択されてもよい。強度及び機械的支持を加えるポリマー材料の非限定的な例として、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)コポリマーを含んでもよい。
【0025】
更に有利には、本発明のマルチパート組成物は、細胞、タンパク質及び成長因子等の生物学的に活性な物質に対して生存可能で無毒の環境を提供することができる。望ましくは、細胞及びタンパク質等の生物活性物質は、骨伝導、骨誘導及び/又は骨形成特性を有する。例えば、生物活性物質は、任意の細胞型に分化することが可能な未成熟細胞、骨形成タンパク質及びこれらの組合せであってもよい。例えば、生物活性物質は、ヒト間葉系幹細胞(hMSC)、骨形成タンパク質及びこれらの組合せを含んでもよい。
【0026】
本明細書において使用される場合、骨伝導、骨誘導及び骨形成という用語は、相互に関連している。特に、骨形成は、骨が形成されるプロセスである。骨誘導は、骨形成が誘導されるプロセスであり、典型的には、未分化未成熟細胞を刺激して活性骨芽細胞になることを示す。骨伝導は、新しい骨成長の足場として働き、新しい骨成長を助長する移植材料を記述するために利用される用語である。
【0027】
一実施形態において、本発明のマルチパート組成物は、hMSCを含有する。hMSCは、本発明のマルチパート組成物の第3の部分内に存在し得る。適切には、hMSCは、薬学的に許容されるハイドロゲル1mLあたり、約1×103~約5×1010のhMSCの範囲で存在してもよい。例えば、hMSCは、薬学的に許容されるハイドロゲル1mLあたり、約1×104~約5×109、例えば、約1×105~約5×108、例えば、約1×105~約5×107のhMSCの範囲で存在してもよい。一実施形態において、hMSCは、薬学的に許容されるハイドロゲル1mLあたり、約1×106~約9×106のhMSCの範囲で存在してもよい。
【0028】
さらなる実施形態において、本発明のマルチパート組成物は、薬理学的に活性な剤を含有してもよく、そのデポー又は貯蔵庫として機能し得る。例えば、本発明の組成物は、化学療法剤、抗腫瘍剤、抗炎症剤、抗感染剤及びこれらの組合せを含有してもよい。
【0029】
フィブリノーゲン及びトロンビン
本発明において利用されるフィブリノーゲンは、ヒト血漿から取得及び精製され得る。或いは、本発明において利用されるフィブリノーゲンは、組換えであってもよく、組換えプロセスから取得され、精製されてもよい。一実施形態において、本発明のマルチパート組成物の第1の部分は、約5~約200mg/mLの濃度、例えば約25~約175mg/mL、例えば約50~約150mg/mL、適切には約75~約125mg/mLの濃度でフィブリノーゲンを含有してもよい。一実施形態において、本発明のマルチパート組成物の第1の部分は、約75~約100mg/mLのフィブリノーゲンを含有してもよい。本発明のマルチパート組成物の第1の部分は、約80mg/mLのフィブリノーゲンを含有してもよい。
【0030】
本発明において利用されるトロンビンは、ヒト血漿から取得及び精製され得る。或いは、本発明において利用されるトロンビンは、組換えであってもよく、組換えプロセスから取得され、精製されてもよい。一実施形態において、本発明のマルチパート組成物の第2の部分は、約25~1500IU/mLの濃度、例えば、約50~約1250IU/mL、例えば、約75~約1000IU/mL、適切には約100~約750IU/mL、例えば、約250~約750IU/mL、例えば、約400~約600IU/mLの濃度でトロンビンを含有してもよい。一実施形態において、本発明のマルチパート組成物の第2の部分は、約450~約550IU/mLのトロンビンを含有してもよい。本発明のマルチパート組成物の第2の部分は、約500IU/mLのトロンビンを含有してもよい。
【0031】
当業者は、フィブリノーゲン及びトロンビンがヒト凝固カスケードの成分であることを理解している。トロンビンは、フィブリノーゲンに作用してポリマーフィブリンを生じ、本発明のマルチパート組成物が混合されたときにゲル化型転移をもたらす。トロンビン(第2の部分における)の作用によるフィブリノーゲン(第1の部分における)からフィブリンへの転換は、100%定量的である必要はない。本発明はまた、最終骨構築物がフィブリノーゲン、フィブリン及びトロンビンの混合物を含有し得る非定量的変換を企図する。更に、フィブリノーゲン及びトロンビンという用語を使用する際に、本明細書は、以下のフィブリノーゲン及びトロンビンの誘導体をその範囲内に含む:
1.2つのタンパク質間の相互作用を実質的に変化させない、又は
2.得られた末端フィブリン産物を実質的に変化させない。
【0032】
望ましくは、本発明のマルチパート組成物の第1の部分は、少なくとも1種のアミノ酸を含有する薬学的に許容されるビヒクルに製剤化されたフィブリノーゲンを含む。アミノ酸は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びこれらの組合せからなる群から選択され得る。例えば、アミノ酸は、アルギニン、グルタミン酸、イソロイシン及びこれらの組合せからなる群から選択され得る。一実施形態において、本発明のマルチパート組成物の第1の部分は、少なくとも1種のアミノ酸を含有する薬学的に許容されるビヒクルに製剤化されたフィブリノーゲン及びクエン酸バッファを含む。さらなる実施形態において、マルチパート組成物の第1の部分は、塩化ナトリウム等のナトリウム塩を更に含有し得る。
【0033】
さらなる一実施形態において、本発明のマルチパート組成物の第1の部分は、少なくとも1種のアミノ酸を含有する薬学的に許容されるビヒクルに製剤化されたフィブリノーゲン、クエン酸バッファ及び塩化ナトリウム等のナトリウム塩を含む。この実施形態において、アミノ酸は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びこれらの組合せからなる群から選択され得る。例えば、アミノ酸は、アルギニン、グルタミン酸、イソロイシン及びこれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0034】
好ましくは、本発明のマルチパート組成物の第2の部分は、溶解カルシウムを含有する薬学的に許容されるビヒクルに製剤化されたトロンビンを含む。薬学的に許容されるビヒクルは、可溶性カルシウム塩を含んでいてもよい。例えば、カルシウム塩は塩化カルシウムであってもよい。さらなる実施形態において、本発明のマルチパート組成物の第2の部分は、アルブミン及び/又は少なくとも1種のアミノ酸を更に含有し得る。例えば、本発明のマルチパート組成物の第2の部分は、(トロンビンの他に)カルシウム塩及びアルブミンを含有してもよい。例えば、本発明のマルチパート組成物の第2の部分は、(トロンビンの他に)カルシウム塩及び少なくとも1種のアミノ酸を含有してもよい。一実施形態において、本発明のマルチパート組成物の第2の部分は、(トロンビンの他に)カルシウム塩、アルブミン及び無電荷の側鎖を有する少なくとも1種のアミノ酸を含有してもよい。一実施形態において、アミノ酸は、グリシン、アラニン及びこれらの組合せからなる群から選択される。カルシウム塩は、トロンビンのIUあたり約0.01~約2.0mMの濃度、例えばトロンビンのIUあたり約0.01~約1.0mM、例えばトロンビンのIUあたり約0.01~約0.1mMの濃度で存在し得る。
【0035】
ハイドロゲル
本発明のマルチパート組成物の第3の部分を参照して、薬学的に許容されるハイドロゲルは、親水性多糖、ゼラチンハイドロゲル及びこれらの組合せからなる群から選択され得る。本明細書において、ハイドロゲルの構成親水性ポリマー、例えばアルギネート、ゼラチン等への言及は、その親水性ポリマーを用いて調製されるハイドロゲルへの言及として解釈されるべきである。
【0036】
本明細書において使用される場合、ハイドロゲルという用語は、個々のポリマー鎖の化学的又は物理的架橋による構造を維持しながら、水中で膨潤し、大量の水を保持することができる親水性ポリマーの三次元(3D)ネットワークを有する材料として解釈される。本発明の範囲内のハイドロゲルは、少なくとも10%w/wの水、例えば少なくとも20%w/wの水、例えば少なくとも30%w/wの水を含有し得る。ハイドロゲルは、40%w/wの水を含有してもよく、いくつかの実施形態では、ハイドロゲルは、50%w/wを超の水を含有してもよい。
【0037】
例えば、薬学的に許容されるハイドロゲルは、アルギネート、ヒアルロン酸、ゼラチン及びこれらの組合せからなる群から選択されてもよい。一実施形態において、薬学的に許容されるハイドロゲルは、アルギネート、ヒアルロン酸及びこれらの組合せからなる群から選択されてもよい。一実施形態において、薬学的に許容されるハイドロゲルは、アルギネートである。
【0038】
本明細書において使用される場合、アルギネートという用語は、典型的には、海藻又は細菌等の天然源から得られる天然のアニオン性ポリマーを指す。この材料は生体適合性であり、毒性が低く、Ca2+等の2価カチオンを添加することによって、穏やかなゲル化を受けることができる。アルギネートは、(1,4)結合型β-D-マンヌロネート(M)及びα-L-グルロネート(G)残基のブロックを含むブロックコポリマーである。ブロックは、連続するG残基(例えば、GGGGGG)、連続するM残基(例えば、MMMMMM)並びに交互のM残基及びG残基(例えば、GMGMGM)から構成される。異なる源から抽出されたアルギネートは、M及びG含有量並びに各ブロックの長さが異なる。理論によって本発明を限定する意図は全くないが、アルギネートのGブロックがハイドロゲルを形成する分子間架橋に関与すると考えられている。
【0039】
本発明の範囲のアルギネートは、(1,4)結合型β-D-マンヌロネート(M)及びα-L-グルロネート(G)単位の単純な化学誘導体、例えば、エーテル、エステル、カーボネート及びウレタン誘導体を含むがこれらに限定されない。
【0040】
本発明の範囲のアルギネートは、約10,000g/mol~約500,000g/molの分子量を有してもよい。例えば、本発明の範囲のアルギネートは、約40,000g/mol~約400,000g/mol、例えば約50,000g/mol~約300,000g/mol、適切には約60,000g/mol~約250,000g/molの分子量を有してもよい。一実施形態において、本発明において使用されるアルギネートは、約75,000~約200,000g/molの分子量を有してもよい。
【0041】
本発明に有用なアルギネートは、約10kDa~約500kDaの分子量を有してもよい。例えば、本発明の範囲のアルギネートは、約40kDa~約400kDa、例えば約50kDa~約300kDa、適切には約60kDa~約250kDaの分子量を有してもよい。一実施形態において、本発明において使用されるアルギネートは、約75kDa~約200kDaの分子量を有してもよい。
【0042】
本発明の組成物に有用なアルギネートは、≦2.5、例えば≦2、例えば≦1.5、例えば≦1.0、適切には≦0.5のG/M比を有してもよい。一実施形態において、本発明の組成物に有用なアルギネートは、≦1のG/M比を有してもよい。
【0043】
本発明の組成物における使用に適したアルギネートは、25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定された場合、10s-1の剪断速度で、約1~約100Pa・s、例えば約1~約80Pa・s、例えば約1~約60Pa・s、適切には約3~約40Pa・s、例えば約3~約30Pa・s、例えば約4~約30Pa・s、適切には約4~約25Pa・sの見かけ粘度を有してもよい。
【0044】
本発明の組成物における使用に適したアルギネートは、50,000g/mol~約300,000g/molの分子量及び≦2のG/M比を有してもよい。本発明の組成物における使用に適したアルギネートは、50,000g/mol~約300,000g/molの分子量を有してもよく、25℃及び1atmの圧力での回転粘度計によって測定された場合、10s-1の剪断速度で約1~約60Pa・sの見かけ粘度を有してもよい。
【0045】
別の実施形態において、本発明の組成物における使用に適したアルギネートは、75,000g/mol~約200,000g/molの分子量及び≦1のG/M比を有してもよい。或いは、本発明の組成物における使用に適したアルギネートは、75,000g/mol~約200,000g/molの分子量を有してもよく、25℃及び1atmの圧力での回転粘度計によって測定された場合、10s-1の剪断速度で約1~約60Pa・sの見かけ粘度を有してもよい。
【0046】
本発明の組成物における使用に適したアルギネートは、50,000g/mol~約300,000g/molの分子量、≦2のG/M比並びに25℃及び1atmの圧力での回転粘度計によって測定された場合、10s-1の剪断速度で約1~約60Pa・sの見かけ粘度を有してもよい。
【0047】
別の実施形態において、本発明の組成物における使用に適したアルギネートは、75,000g/mol~200,000g/molの分子量、≦1のG/M比を有してもよく、25℃及び1atmの圧力での回転粘度計によって測定された場合、10s-1の剪断速度で約1~約60Pa・sの見かけ粘度を有してもよい。
【0048】
本明細書において使用される場合、ヒアルロン酸という用語は、β4-グルクロン酸-β3-N-アセチルグルコサミンの繰り返し二糖を含むグリコサミノグリカン多糖を指す。ヒアルロン酸ポリマーは、動物組織から物質を抽出することによって、又は細菌等の適切な生物における組換え発現を介して商業的な量で製造される。
【0049】
本発明のハイドロゲルを調製するために用いられるヒアルロン酸は、約5kDa~約10,000kDa、例えば約50kDa~約9000kDa、例えば約100kDa~約8000kDa、適切には約500kDa~約7000kDa、例えば約1000kDa~約5000kDa、例えば約1000kDa~約4000kDa、適切には約1000kDa~約3000kDa、例えば約1000~約2500kDa、例えば約1500kDa~約2500kDaの分子量を有してもよい。
【0050】
本発明の組成物における使用に適したヒアルロン酸は、25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定された場合、10s-1の剪断速度で、約1~約100Pa・s、例えば約1~約80Pa・s、例えば約1~約60Pa・s、適切には約3~約40Pa・s、例えば約3~約30Pa・s、例えば約4~約30Pa・s、適切には約4~約25Pa・sの見かけ粘度を有してもよい。
【0051】
本発明の組成物における使用に適したヒアルロン酸は、約1000kDa~約4000kDaの分子量を有してもよく、25℃及び1atmの圧力での回転粘度計によって測定された場合、10s-1の剪断速度で約1~約60Pa・sの見かけ粘度を有してもよい。例えば、本発明の組成物における使用に適したヒアルロン酸は、約1000kDa~約2500kDaの分子量を有してもよく、25℃及び1atmの圧力での回転粘度計によって測定された場合、約1~約60Pa・sの見かけ粘度を有してもよい。
【0052】
本明細書で使用される場合、ゼラチンという用語は、家畜化されたウシ、ニワトリ、ブタ、魚類さらにはいくつかの昆虫等の動物の皮膚、骨、腱及び白色連結組織から抽出されたコラーゲンの熱加水分解によって産生されたペプチド及びタンパク質の混合物を指す。動物からのゼラチンの源は皮と骨であり、野菜からはデンプン、アルギネート、ペクチン、寒天及びカラギーナンである。ゼラチンは高分子量ポリペプチドの不均一な混合物であり、ゼラチンの質量の5~10倍の水を膨潤し、吸着してハイドロゲルを形成することができる。ゼラチンは生分解性であり、無毒である。
【0053】
本発明の組成物における使用に適したゼラチンは、25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定された場合、10s-1の剪断速度で、約1~約100Pa・s、例えば約1~約80Pa・s、例えば約1~約60Pa・s、適切には約3~約40Pa・s、例えば約3~約30Pa・s、例えば約4~約30Pa・s、適切には約4~約25Pa・sの見かけ粘度を有してもよい。
【0054】
生体適合性無機材料
本発明のマルチパート組成物の第3の部分を参照して、生体適合性無機材料は、カルシウム原子とリン原子の両方の源を提供し得る。例えば、生体適合性無機材料は、バイオガラス、リン酸三カルシウム、単相ハイドロキシアパタイト、二相性ハイドロキシアパタイト-リン酸三カルシウム、天然骨粉末及びこれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0055】
本明細書で使用される場合、バイオガラスという用語は、カルシウムナトリウムホスホシリケート種を指す。
【0056】
さらなる実施形態において、生体適合性無機材料は、リン酸三カルシウム、単相ハイドロキシアパタイト、二相性ハイドロキシアパタイト-リン酸三カルシウム及びこれらの組合せからなる群から選択され得る。本発明の組成物において利用されるリン酸三カルシウムは、β-リン酸三カルシウムであってもよい。
【0057】
3D印刷プロセス及び装置と適合性であるために、好ましくは生体適合性無機材料は、約200μm未満の平均粒径を有する。例えば生体適合性無機材料は、約150μm未満の平均粒径を有し得る。適切には、生体適合性無機材料は、約100μm未満の平均粒径を有してもよい。例えば、生体適合性無機材料は、約50~約200μmの平均粒径を有してもよい。
【0058】
生体適合性無機材料は、ハイドロゲル1mLあたり、生体適合性無機材料の約1g~約10gの濃度で、本発明のマルチパート組成物の第3の部分に組み込まれてもよい。例えば、ハイドロゲル1mLあたり、約2g~約8g、例えば約2g~約6gの生体適合性無機材料が挙げられる。一実施形態において、生体適合性無機材料は、ハイドロゲル1mLあたり、生体適合性無機材料の約3g~約6gの濃度で、本発明のマルチパート組成物の第3の部分に組み込まれてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態において、本発明の生体適合性無機材料は、薬学的に許容されるハイドロゲルと混合する前に、アルブミン溶液で水和されてもよい。アルブミンは、ヒト、ウシ又は組換え起源の任意の適切な源からのものであってよい。好ましくは、アルブミンはヒトアルブミンである。アルブミン溶液は生理食塩水ベースであってもよい。特定の実施形態において、アルブミン溶液は、約0.01%~約10%w/vのアルブミンを含有し得る。例えば、約0.1%~約5%w/v、例えば、約1%~約3%w/vのアルブミンが挙げられる。
【0060】
一実施形態において、本発明の組成物において利用される好ましい生体適合性無機材料は、β-リン酸三カルシウム(β-TCP)である。β-TCPは、R-3c空間群を持つ菱面体格子を有し得る。β-TCPは、°2θ(d値Å)に固有のピークを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けることができ、K-α放射を有するCu管陽極で得られた場合、17.0(5.2)、21.9(4.1)、25.8(3.45)、27.8(3.2)、29.65(3.0)、31.0(2.9)、32.45(2.75)、34.4(2.6)、46.9(1.9)、48.0(1.9)、48.4(1.9)、及び53.0(1.7)の角度である。
【0061】
β-TCPは、ヘリウムピクノメトリーによって決定される場合、約2.9g/cm3~約3.2g/cm3の密度を有し得る。例えば、β-TCPは、ヘリウムピクノメトリーによって決定される場合、約2.9g/cm3~約3.15g/cm3の密度を有し得る。例えば、β-TCPは、ヘリウムピクノメトリーによって決定される場合、約2.9g/cm3~約3.1g/cm3の密度を有し得る。一実施形態では、β-TCPは、ヘリウムピクノメトリーによって決定される場合、約2.95g/cm3~約3.15g/cm3の密度を有し得る。一実施形態において、β-TCPは、ヘリウムピクノメトリーによって決定される場合、約2.95g/cm3~約3.1g/cm3の密度を有し得る。一実施形態において、β-TCPは、ヘリウムピクノメトリーによって決定される場合、約3.0g/cm3~約3.1g/cm3の密度を有し得る。
【0062】
β-TCP粒子は、約180μm以下のd90粒径分布を有し得る。一実施形態において、β-TCP粒子は、約160μm以下のd90粒径分布を有し得る。別の実施形態において、β-TCP粒子は、約140μm以下のd90粒径分布を有し得る。
【0063】
一実施形態において、本発明の組成物において使用されるβ-TCPは、以下によって特徴付けられ得る:
約180μm以下のd90粒径分布及び
ヘリウムピクノメトリーによって決定される場合、約2.9g/cm3~約3.15g/cm3の密度。
【0064】
一実施形態において、本発明の組成物において使用されるβ-TCPは、以下によって特徴付けられ得る:
約160μm以下のd90粒径分布及び
ヘリウムピクノメトリーによって決定される場合、約2.95g/cm3~約3.15g/cm3の密度。
【0065】
一実施形態において、本発明の組成物において使用されるβ-TCPは、以下によって特徴付けられ得る:
約160μm以下のd90粒径分布及び
ヘリウムピクノメトリーによって決定される場合、約2.95g/cm3~約3.1g/cm3の密度。
【0066】
一実施形態において、本発明の組成物において使用されるβ-TCPは、以下によって特徴付けられ得る:
°2θ(d値Å)に固有のピークを含む粉末X線回折パターン;K-α放射を有するCu管陽極で得られた場合、17.0(5.2)、21.9(4.1)、25.8(3.45)、27.8(3.2)、29.65(3.0)、31.0(2.9)、32.45(2.75)、34.4(2.6)、46.9(1.9)、48.0(1.9)、48.4(1.9)、及び53.0(1.7)の角度、
ヘリウムピクノメトリーによって決定される場合、約2.95g/cm3~約3.15g/cm3の密度及び
約180μm以下のd90粒径分布。
【0067】
一実施形態において、本発明の組成物において使用されるβ-TCPは、以下によって特徴付けられ得る:
°2θ(d値Å)に固有のピークを含む粉末X線回折パターン;K-α放射を有するCu管陽極で得られた場合、17.0(5.2)、21.9(4.1)、25.8(3.45)、27.8(3.2)、29.65(3.0)、31.0(2.9)、32.45(2.75)、34.4(2.6)、46.9(1.9)、48.0(1.9)、48.4(1.9)、及び53.0(1.7)の角度、
ヘリウムピクノメトリーによって決定される場合、約2.95g/cm3~約3.1g/cm3の密度及び
約160μm以下のd90粒径分布。
【0068】
第3の部分の組成物
本発明の組成物の第3の部分、すなわち薬学的に許容されるハイドロゲル及び生体適合性無機材料を含む混合物を参照して、いくつかの実施形態では、第3の部分は、以下からなる群から選択される見かけ粘度を有する:
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約30~約300Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約1~約75Pa・s。
【0069】
さらなる実施形態において、本発明のマルチパート組成物の第3の部分は、以下からなる群から選択される見かけ粘度を有し得る:
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約30~約250Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約5~約75Pa・s。
【0070】
例えば、本発明のマルチパート組成物の第3の部分は、以下からなる群から選択される見かけ粘度を有し得る:
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約30~約200Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約5~約50Pa・s。
【0071】
適切には、本発明のマルチパート組成物の第3の部分は、以下からなる群から選択される見かけ粘度を有し得る:
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約50~約200Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約10~約45Pa・s。
【0072】
一実施形態において、本発明のマルチパート組成物の第3の部分は、以下からなる群から選択される見かけ粘度を有し得る:
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約100~約300Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約1~約50Pa・s。
【0073】
非限定的な実施形態
特定の実施形態では、本発明のマルチパート組成物は、
i)アルギニン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸を含有する薬学的に許容されるビヒクルに、フィブリノーゲンを含む第1の部分;
ii)薬学的に許容される担体にトロンビンを含む第2の部分;
iii)少なくとも1種の生体適合性無機材料と混合された薬学的に許容されるハイドロゲルを含む第3の部分であって、少なくとも1種の無機材料は、カルシウム原子及びリン原子の少なくとも1つの源を提供する、第3の部分
を含むか又はそれらから本質的になっていてもよく、
第3の部分は、
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約1~約300Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約1~約100Pa・s
からなる群から選択される見かけ粘度を有する。
【0074】
特定の実施形態では、本発明のマルチパート組成物は、
i)アルギニン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸を含有する薬学的に許容されるビヒクルに、フィブリノーゲンを含む第1の部分;
ii)薬学的に許容される担体にトロンビンを含む第2の部分;
iii)少なくとも1種の生体適合性無機材料と混合されたアルギン酸ハイドロゲルを含む第3の部分であって、少なくとも1種の無機材料は、カルシウム原子及びリン原子の少なくとも1つの源を提供する、第3の部分
を含むか又はそれらから本質的になっていてもよく、
第3の部分は、
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約50~約250Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約2~約50Pa・s
からなる群から選択される見かけ粘度を有する。
【0075】
特定の実施形態では、本発明のマルチパート組成物は、
i)アルギニン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸を含有する薬学的に許容されるビヒクルに、フィブリノーゲンを含む第1の部分;
ii)薬学的に許容される担体にトロンビンを含む第2の部分;
iii)少なくとも1種の生体適合性無機材料と混合されたアルギネート、ヒアルロン酸、ゼラチン及びこれらの組合せからなる群から選択される薬学的に許容されるハイドロゲルを含む第3の部分であって、少なくとも1種の無機材料は、カルシウム原子及びリン原子の少なくとも1つの源を提供する、第3の部分
を含むか又はそれらから本質的になっていてもよく、
第3の部分は、
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約1~約300Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約1~約100Pa・s
からなる群から選択される見かけ粘度を有する。
【0076】
特定の実施形態では、本発明のマルチパート組成物は、
i)アルギニン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸を含有する薬学的に許容されるビヒクルに、フィブリノーゲンを含む第1の部分;
ii)薬学的に許容される担体にトロンビンを含む第2の部分;
iii)少なくとも1種の生体適合性無機材料と混合されたアルギネート、ヒアルロン酸、ゼラチン及びこれらの組合せからなる群から選択される薬学的に許容されるハイドロゲルを含む第3の部分であって、無機材料は、バイオガラス、リン酸三カルシウム、単相ハイドロキシアパタイト、二相性ハイドロキシアパタイト-リン酸三カルシウム、天然骨粉末及びこれらの組合せからなる群から選択される、第3の部分
を含むか又はそれらから本質的になっていてもよく、
第3の部分は、
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約1~約300Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約1~約100Pa・s
からなる群から選択される見かけ粘度を有する。
【0077】
特定の実施形態では、本発明のマルチパート組成物は、
i)アルギニン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸を含有する薬学的に許容されるビヒクルに、フィブリノーゲンを含む第1の部分;
ii)溶解したカルシウム並びにアルブミン、アミノ酸及びこれらの組合せからなる群から選択されるさらなる賦形剤を含有する薬学的に許容される担体にトロンビンを含む第2の部分;並びに
(iii)バイオガラス、リン酸三カルシウム、単相ハイドロキシアパタイト、二相性ハイドロキシアパタイト-リン酸三カルシウム、天然骨粉末及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の生体適合性無機材料と混合された薬学的に許容されるハイドロゲルを含む第3の部分
を含むか又はそれらから本質的になっていてもよく、
第3の部分は、
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約1~約300Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約1~約100Pa・s
からなる群から選択される見かけ粘度を有する。
【0078】
特定の実施形態では、本発明のマルチパート組成物は、
i)薬学的に許容されるビヒクルにフィブリノーゲンを含む第1の部分;
ii)溶解したカルシウム並びにアルブミン、アミノ酸及びこれらの組合せからなる群から選択されるさらなる賦形剤を含有する薬学的に許容される担体にトロンビンを含む第2の部分;並びに
iii)少なくとも1種の生体適合性無機材料と混合された薬学的に許容されるハイドロゲルを含む第3の部分であって、少なくとも1種の無機材料は、カルシウム原子及びリン原子の少なくとも1つの源を提供する、第3の部分
を含むか又はそれらから本質的になっていてもよく、
第3の部分は、
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約1~約300Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約1~約100Pa・s
からなる群から選択される見かけ粘度を有する。
【0079】
特定の実施形態では、本発明のマルチパート組成物は、
i)薬学的に許容されるビヒクルにフィブリノーゲンを含む第1の部分;
ii)溶解したカルシウム並びにアルブミン、アミノ酸及びこれらの組合せからなる群から選択されるさらなる賦形剤を含有する薬学的に許容される担体にトロンビンを含む第2の部分;並びに
iii)少なくとも1種の生体適合性無機材料と混合されたアルギネート、ヒアルロン酸、ゼラチン及びこれらの組合せからなる群から選択される薬学的に許容されるハイドロゲルを含む第3の部分であって、少なくとも1種の無機材料は、カルシウム原子及びリン原子の少なくとも1つの源を提供する、第3の部分
を含むか又はそれらから本質的になっていてもよく、
第3の部分は、
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約1~約300Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約1~約100Pa・s
からなる群から選択される見かけ粘度を有する。
【0080】
特定の実施形態では、本発明のマルチパート組成物は、
i)薬学的に許容されるビヒクルにフィブリノーゲンを含む第1の部分;
ii)溶解したカルシウム並びにアルブミン、アミノ酸及びこれらの組合せからなる群から選択されるさらなる賦形剤を含有する薬学的に許容される担体にトロンビンを含む第2の部分;並びに
iii)少なくとも1種の生体適合性無機材料と混合されたアルギネート、ヒアルロン酸、ゼラチン及びこれらの組合せからなる群から選択される薬学的に許容されるハイドロゲルを含む第3の部分であって、無機材料は、バイオガラス、リン酸三カルシウム、単相ハイドロキシアパタイト、二相性ハイドロキシアパタイト-リン酸三カルシウム、天然骨粉末及びこれらの組合せからなる群から選択される、第3の部分
を含むか又はそれらから本質的になっていてもよく、
第3の部分は、
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約1~約300Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約1~約100Pa・s
からなる群から選択される見かけ粘度を有する。
【0081】
特定の実施形態では、本発明のマルチパート組成物は、
i)薬学的に許容されるビヒクルにフィブリノーゲンを含む第1の部分;
ii)溶解したカルシウム並びにアルブミン、アミノ酸及びこれらの組合せからなる群から選択されるさらなる賦形剤を含有する薬学的に許容される担体にトロンビンを含む第2の部分;並びに
iii)少なくとも1種の生体適合性無機材料と混合された薬学的に許容されるハイドロゲルを含む第3の部分であって、少なくとも1種の無機材料は、カルシウム原子及びリン原子の少なくとも1つの源を提供する、第3の部分
を含むか又はそれらから本質的になっていてもよく、
第3の部分は、
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約50~約250Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約2~約50Pa・s
からなる群から選択される見かけ粘度を有する。
【0082】
特定の実施形態では、本発明のマルチパート組成物は、
i)アルギニン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸を含有する薬学的に許容されるビヒクルに、フィブリノーゲンを含む第1の部分;
ii)溶解したカルシウム並びにアルブミン、アミノ酸及びこれらの組合せからなる群から選択されるさらなる賦形剤を含有する薬学的に許容される担体にトロンビンを含む第2の部分;並びに
iii)少なくとも1種の生体適合性無機材料と混合された薬学的に許容されるハイドロゲルを含む第3の部分であって、少なくとも1種の無機材料は、カルシウム原子及びリン原子の少なくとも1つの源を提供する、第3の部分
を含むか又はそれらから本質的になっていてもよく、
第3の部分は、
25℃及び1atmの圧力において、回転粘度計によって測定される0.1s-1の剪断速度で、約1~約300Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約1~約100Pa・s
からなる群から選択される見かけ粘度を有する。
【0083】
特定の実施形態では、本発明のマルチパート組成物は、
i)アルギニン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸を含有する薬学的に許容されるビヒクルに、フィブリノーゲンを含む第1の部分;
ii)溶解したカルシウム並びにアルブミン、アミノ酸及びこれらの組合せからなる群から選択されるさらなる賦形剤を含有する薬学的に許容される担体にトロンビンを含む第2の部分;並びに
iii)少なくとも1種の生体適合性無機材料と混合された薬学的に許容されるハイドロゲルを含む第3の部分であって、少なくとも1種の無機材料は、カルシウム原子及びリン原子の少なくとも1つの源を提供する、第3の部分
を含むか又はそれらから本質的になっていてもよく、
第3の部分は、
25℃及び1atmの圧力において、回転粘度計によって測定される0.1s-1の剪断速度で、約50~約250Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約2~約50Pa・s
からなる群から選択される見かけ粘度を有する。
【0084】
特定の実施形態では、本発明のマルチパート組成物は、
i)アルギニン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸を含有する薬学的に許容されるビヒクルに、フィブリノーゲンを含む第1の部分;
ii)溶解したカルシウム並びにアルブミン、アミノ酸及びこれらの組合せからなる群から選択されるさらなる賦形剤を含有する薬学的に許容される担体にトロンビンを含む第2の部分;並びに
iii)少なくとも1種の生体適合性無機材料と混合されたアルギネート、ヒアルロン酸、ゼラチン及びこれらの組合せからなる群から選択される薬学的に許容されるハイドロゲルを含む第3の部分であって、少なくとも1種の無機材料は、カルシウム原子及びリン原子の少なくとも1つの源を提供する、第3の部分
を含むか又はそれらから本質的になっていてもよく、
第3の部分は、
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約1~約300Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約1~約100Pa・s
からなる群から選択される見かけ粘度を有する。
【0085】
特定の実施形態では、本発明のマルチパート組成物は、
i)アルギニン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸を含有する薬学的に許容されるビヒクルに、フィブリノーゲンを含む第1の部分;
ii)溶解したカルシウム並びにアルブミン、アミノ酸及びこれらの組合せからなる群から選択されるさらなる賦形剤を含有する薬学的に許容される担体にトロンビンを含む第2の部分;並びに
iii)少なくとも1種の生体適合性無機材料と混合されたアルギネート、ヒアルロン酸、ゼラチン及びこれらの組合せからなる群から選択される薬学的に許容されるハイドロゲルを含む第3の部分であって、無機材料は、バイオガラス、リン酸三カルシウム、単相ハイドロキシアパタイト、二相性ハイドロキシアパタイト-リン酸三カルシウム、天然骨粉末及びこれらの組合せからなる群から選択される、第3の部分
を含むか又はそれらから本質的になっていてもよく、
第3の部分は、
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約1~約300Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約1~約100Pa・s
からなる群から選択される見かけ粘度を有する。
【0086】
特定の実施形態では、本発明のマルチパート組成物は、
i)アルギニン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸を含有する薬学的に許容されるビヒクルに、フィブリノーゲンを含む第1の部分;
ii)溶解したカルシウム並びにアルブミン、アミノ酸及びこれらの組合せからなる群から選択されるさらなる賦形剤を含有する薬学的に許容される担体にトロンビンを含む第2の部分;並びに
iii)少なくとも1種の生体適合性無機材料と混合されたアルギネート、ヒアルロン酸、ゼラチン及びこれらの組合せからなる群から選択される薬学的に許容されるハイドロゲルを含む第3の部分であって、少なくとも1種の無機材料は、カルシウム原子及びリン原子の少なくとも1つの源を提供する、第3の部分
を含むか又はそれらから本質的になっていてもよく、
第3の部分は、
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約50~約250Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約2~約50Pa・s
からなる群から選択される見かけ粘度を有する。
【0087】
特定の実施形態では、本発明のマルチパート組成物は、
i)アルギニン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸を含有する薬学的に許容されるビヒクルに、フィブリノーゲンを含む第1の部分;
ii)溶解したカルシウム並びにアルブミン、アミノ酸及びこれらの組合せからなる群から選択されるさらなる賦形剤を含有する薬学的に許容される担体にトロンビンを含む第2の部分;並びに
iii)少なくとも1種の生体適合性無機材料と混合されたアルギネート、ヒアルロン酸、ゼラチン及びこれらの組合せからなる群から選択される薬学的に許容されるハイドロゲルを含む第3の部分であって、無機材料は、バイオガラス、リン酸三カルシウム、単相ハイドロキシアパタイト、二相性ハイドロキシアパタイト-リン酸三カルシウム、天然骨粉末及びこれらの組合せからなる群から選択される、第3の部分
を含むか又はそれらから本質的になっていてもよく、
第3の部分は、
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約50~約250Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約2~約50Pa・s
からなる群から選択される見かけ粘度を有する。
【0088】
特定の実施形態では、本発明のマルチパート組成物は、
i)薬学的に許容されるビヒクルにフィブリノーゲンを含む第1の部分;
ii)薬学的に許容される担体にトロンビンを含む第2の部分;
iii)少なくとも1種の生体適合性無機材料と混合されたアルギネート、ヒアルロン酸、ゼラチン及びこれらの組合せからなる群から選択される薬学的に許容されるハイドロゲルを含む第3の部分であって、少なくとも1種の無機材料は、カルシウム原子及びリン原子の少なくとも1つの源を提供する、第3の部分
を含むか又はそれらから本質的になっていてもよく、
第3の部分は、
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約50~約250Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約2~約50Pa・s
からなる群から選択される見かけ粘度を有する。
【0089】
特定の実施形態では、本発明のマルチパート組成物は、
i)薬学的に許容されるビヒクルにフィブリノーゲンを含む第1の部分;
ii)薬学的に許容される担体にトロンビンを含む第2の部分;
iii)少なくとも1種の生体適合性無機材料と混合されたアルギネート、ヒアルロン酸、ゼラチン及びこれらの組合せからなる群から選択される薬学的に許容されるハイドロゲルを含む第3の部分であって、無機材料は、バイオガラス、リン酸三カルシウム、単相ハイドロキシアパタイト、二相性ハイドロキシアパタイト-リン酸三カルシウム、天然骨粉末及びこれらの組合せからなる群から選択される、第3の部分
を含むか又はそれらから本質的になっていてもよく、
第3の部分は、
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約50~約250Pa・s及び
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約2~約50Pa・s
からなる群から選択される見かけ粘度を有する。
【0090】
前述の実施形態のすべてにおいて、本発明の組成物における使用に適したアルギネートは、25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定された場合、10s-1の剪断速度で、約1~約100Pa・s、例えば約1~約80Pa・s、例えば約1~約60Pa・s、適切には約3~約40Pa・s、例えば約3~約30Pa・s、例えば約4~約30Pa・s、適切には約4~約25Pa・sの見かけ粘度を有してもよい。本発明の組成物における使用に適したアルギネートは、50,000g/mol~約300,000g/molの分子量及び≦2のG/M比を有してもよい。本発明の組成物における使用に適したアルギネートは、50,000g/mol~約300,000g/molの分子量を有してもよく、25℃及び1atmの圧力での回転粘度計によって測定された場合、10s-1の剪断速度で約1~約60Pa・sの見かけ粘度を有してもよい。
【0091】
前述の実施形態のすべてにおいて、本発明の組成物における使用に適したアルギネートは、75,000g/mol~約200,000g/molの分子量及び≦1のG/M比を有してもよい。或いは、本発明の組成物における使用に適したアルギネートは、75,000g/mol~約200,000g/molの分子量を有してもよく、25℃及び1atmの圧力での回転粘度計によって測定された場合、10s-1の剪断速度で約1~約60Pa・sの見かけ粘度を有してもよい。本発明の組成物における使用に適したアルギネートは、50,000g/mol~約300,000g/molの分子量、≦2のG/M比並びに25℃及び1atmの圧力での回転粘度計によって測定された場合、10s-1の剪断速度で約1~約60Pa・sの見かけ粘度を有してもよい。別の実施形態において、本発明の組成物における使用に適したアルギネートは、75,000g/mol~200,000g/molの分子量、≦1のG/M比を有してもよく、25℃及び1atmの圧力での回転粘度計によって測定された場合、10s-1の剪断速度で約1~約60Pa・sの見かけ粘度を有してもよい。
【0092】
本発明の骨複合体
さらなる態様において、本発明は、本発明のマルチパート組成物から得られる骨複合体を提供する。
【0093】
特定の実施形態において、この生体適合性無機材料は、本発明の骨複合体の約5%w/w~約60%w/wの間の濃度である。例えば、約15%w/w~約60%w/wの間の濃度、例えば約25%w/w~約60%w/wの間の濃度、適切には約35%w/w~約60%w/wの間の濃度である。その他の実施形態において、生体適合性無機材料は、約5%w/w~約50%w/w、約5%w/w~約40%w/w、約5%w/w~約30%w/w及び約10%w/w~約25%w/wからなる群から選択される濃度である。
【0094】
本発明の方法
さらなる態様において、本発明は、骨複合体を調製する方法であって、方法は、
本発明のマルチパート組成物に3次元印刷装置を提供する工程、
決定された設計に従って骨複合体を印刷する工程、及び
任意に合成骨複合体をインキュベートする工程
を含む。
【0095】
当然のことながら、本発明の組成物のマルチパートの性質のために、異なる部分が印刷される順序の様々な異なる並べ替えが可能になり、本発明の方法の範囲に含まれる。例えば、骨複合体を調製する本発明の方法は、3次元印刷装置を含んでもよく、
i)フィブリノーゲン又はトロンビンのいずれかを含む第1の層;
ii)フィブリノーゲン又はトロンビンのいずれかを含む第2の層
印刷し;
第1の層がフィブリノーゲンを含む場合、第2の層はトロンビンを含み、その逆もまた同様であり、
iii)工程i)及びii)をn回(n≧1)順次繰り返し、交互の層状構造を生成し;
iv)工程iii)の交互の層状構造の上にハイドロゲル及び生体適合性無機材料を含む第3の部分を印刷し、
v)任意に、必要に応じて工程i)~iv)を繰り返して骨複合体を得る。
【0096】
本発明の方法を参照して、一実施形態において、最初にフィブリノーゲンが印刷され、2番目にトロンビンがフィブリノーゲンの上に層として印刷される。
【0097】
例えば、先に概説された本発明の方法の実施形態を参照して、
第1の層は、Xの規定の容積を有してもよく、
第2の層は、Yの規定の容積を有してもよく、
工程i)及びii)をn回(n≧1)順次繰り返してもよく、容積nX+nYの交互の層状構造を生成し;
交互の層状構造の上にハイドロゲル及び生体適合性無機材料を含む第3の部分が印刷され、第3の部分は容積Zを有する。
【0098】
特定の実施形態では、容積X及び容積Yは、容積nX=nYとなるように同じである。
【0099】
例えば、特定の実施形態において、Z対nX対nYの比(Z:nX:nY)は約0.60~1.0:1:1である。適切には、Z対nX対nYの比(Z:nX:nY)は約0.80~1.0:1:1である。例えば、特定の実施形態において、Z対nX対nYの比(Z:nX:nY)は約0.90~0.99:1:1である。例えば、Z対nX対nYの比(Z:nX:nY)は約0.95:1:1である。さらなる実施形態において、3次元プリンタは、等しい容積のマルチパート組成物の第1、第2及び第3の部分を印刷してもよく、その結果、Z対nX対nYの比(Z:nX:nY)は、約1:1:1である。
【0100】
他の実施形態において、Z対nX対nYの比(Z:nX:nY)は約1~5:1:1である。適切には、Z対nX対nYの比(Z:nX:nY)は約2~4:1:1である。いくつかの実施形態において、Z対nX対nYの比(Z:nX:nY)は約3~4:1:1である。例えば、Z対nX対nYの比(Z:nX:nY)は約4:1:1である。
【0101】
いくつかの実施形態では2≦n≦10である。
【0102】
骨複合体を調製する本発明の方法の他の実施形態において、3次元印刷装置は、
i)本発明のマルチパート組成物の第3の部分(すなわち、ハイドロゲル及び生体適合性無機材料)を含む第1の層;
ii)フィブリノーゲン又はトロンビンのいずれかを含む第2の層;
iii)フィブリノーゲン又はトロンビンのいずれかを含む第3の層
を印刷してもよく;
第2の層がフィブリノーゲンを含む場合、第3の層はトロンビンを含み、その逆もまた同様であり、
iv)工程ii)及びiii)をn回(n≧1)順次繰り返し、フィブリノーゲン及びトロンビンの交互の層状構造を生成し;
v)任意に、必要に応じて工程i)~iv)を繰り返して骨複合体を得る。
【0103】
例えば、先に概説された本発明の方法の実施形態を参照して、
第1の層は、Aの規定の容積を有してもよく、
第2の層は、Bの規定の容積を有してもよく、
第3の層は、Cの規定の容積を有してもよく、
工程ii)及びiii)をn回(n≧1)繰り返してもよく、容積A+nB+nCの層状構造を生成する。
【0104】
特定の実施形態において、容積B及び容積Cは、容積nB=nCとなるように同じである。
【0105】
例えば、特定の実施形態において、A対nB対nCの比(A:nB:nC)は約1~5:1:1である。適切には、A対nB対nCの比(A:nB:nC)は約2~4:1:1である。いくつかの実施形態において、A対nB対nCの比(A:nB:nC)は約3~4::1である。例えば、A対nB対nCの比(A:nB:nC)は約4:1:1である。
【0106】
例えば、特定の実施形態において、A対nB対nCの比(A:nB:nC)は約0.60~1.0:1:1である。適切には、A対nB対nCの比(A:nB:nC)は約0.80~1.0:1:1である。いくつかの実施形態において、A対nB対nCの比(A:nB:nC)は約0.90~0.99:1:1である。例えば、A対nB対nCの比(A:nB:nC)は約0.95:1:1である。さらなる実施形態において、3次元プリンタは、等しい容積のマルチパート組成物の第1、第2及び第3の部分を印刷してもよく、その結果、A対nB対nCの比(A:nB:nC)は、約1:1:1である。
【0107】
いくつかの実施形態では2≦n≦10である。
【0108】
本発明の2パート組成物について、本発明の方法は、3次元印刷装置を含んでもよく:
i)フィブリノーゲン又はトロンビンのいずれかを含む組成物の第1の部分を印刷すること;
ii)工程i)をn回(n≧1)繰り返し、フィブリノーゲン又はトロンビンのいずれか一方のみを含む層状構造を生成すること;
iii)工程ii)で生成された層状構造の上に、薬学的に許容されるハイドロゲル及び生体適合性無機材料と混合されたフィブリノーゲン又はトロンビンの他方を含む第2の部分を印刷すること;
iv)任意に、必要に応じて工程i)~iii)を繰り返して骨複合体を得ること。
【0109】
或いは、本発明の2パート組成物について、本発明の方法は、3次元印刷装置を含んでもよく:
i)薬学的に許容されるハイドロゲル及び生体適合性無機材料と混合されたフィブリノーゲン又はトロンビンの一方を含む第2の部分を印刷すること;
ii)工程i)において印刷された部分の上に、フィブリノーゲン又はトロンビンの他方を含む第1の部分を印刷すること;
iii)工程ii)をn回(n≧1)繰り返し、層状構造を生成すること;
iv)任意に、必要に応じて工程i)~iii)を繰り返して骨複合体を得ること。
【0110】
本発明の2パート組成物の印刷に関する実施形態に関して、印刷された第1の部分の容積の、印刷された第2の部分の容積に対する比(第1の部分:第2の部分)は、約1:1~8であってもよく、例えば約1:6、約1:4、適切には約1:2、例えば、約1:1であってもよい。特定の実施形態において、印刷された第1の部分の容積の、印刷された第2の部分の容積に対する比は、1:2である。
【0111】
さらなる態様において、本発明は、本発明の方法から得られる骨複合体を提供する。
【0112】
本発明の他の態様
さらなる態様において、本発明は、骨損傷又は骨欠損の治療を必要とする患者において、骨損傷又は骨欠損を治療する方法を提供し、それを必要とする患者に本発明の骨複合体を移植する工程を含む。
【0113】
本発明のさらなる態様は、骨損傷又は骨欠損の治療における本発明の骨複合体の使用に関する。本発明の骨複合体は、外傷及び/又は癌患者の治療における特定の使用を見出すことができる。
【0114】
更に別の態様において、本発明は、以下を含むキットを提供し、キットは以下を含む
3次元プリンタ及び
本発明のマルチパート組成物。
【0115】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の図面においてより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
図1】本発明の3パート組成物についての一連の印刷試験を示す図である。規定の幾何学の構造が印刷され、異なる組成の結果が、示されているグリッド配列に概説される。
図2】ATP細胞増殖アッセイ(Promega社)によって測定された本発明の組成物におけるhMSC細胞増殖のプロットを示す図である。
図3】LIVE/DEAD Cell Viability Assay(Life Technologies社)を用いて測定された本発明の組成物におけるhMSC細胞生存率の図を描写する図である。
図4】本発明組成物について、hMSC骨形成細胞分化アッセイの結果を示す図である。
図5】本発明の2パート組成物についての一連の印刷試験を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0117】
本明細書の以下に開示される例は、一般化された例のみを表し、本発明を再現することができる他の配置及び方法が可能であり、本発明によって包含されることは、当業者に容易に明らかなはずである。
【実施例1】
【0118】
本発明の3パート組成物を用いた規定の幾何学の物体の印刷。
有利なことに、本発明の組成物は、規定の不規則な形状を有する構造を的確に正確に印刷することができる。本発明のいくつかのマルチパート組成物の性能を示す一連の試験が以下に概説される。組成物を3D印刷装置にロードし、コンピュータデザインドローイングが対象の形状をもたらした。3D印刷装置の操作は、当業者の通常の技能及び能力の範囲内である。
【0119】
本発明の3パート組成物の成分が以下に概説される。本発明のマルチパート組成物から得られ、図1に示される骨構築物のすべては、同フィブリノーゲン成分(第1の部分)及びトロンビン(第2の部分)を含有し、以下のTable1(表1)に定性的に概説される。
【0120】
【表1】
【0121】
外科用シーラント製品VERASEALは、販売許可番号EU/1/17/1239/001-004の下、Grifols社によって製造及び販売されており、実施例1~5に概説されたすべての実験において利用されたフィブリノーゲン及びトロンビン成分の源であった。この製品は、Biologies License Number (BLN) 125640の下、Grifols社によって米国においてFIBRIN SEALANTとしても販売されている。
【0122】
続いて、ハイドロゲル組成物を、Table2(表2)に概説された濃度の標準的な方法を用いて調製した。例えば、5gのアルギン酸ナトリウム[(75~200kDa、G/M比≦1、粘度20~200mPa・s(PRONOVA UP LVM、DuPont)]をラミナーフローキャビネットにおいて量り分けた。MilliQ水(100mL)を50℃に加熱し、アルギン酸ナトリウムをラミナーフローキャビネットにおいて混合しながら添加した。水は、アルギン酸ナトリウム粉末が見えなくなるまで、50℃の一定温度に保った(約1時間)。得られた溶液は、無菌性を維持するために覆われ、ゲル化プロセスを加速するために約6℃に冷却した。
【0123】
HYALUBRIXは注射器から直接利用された。
【0124】
【表2】
【0125】
Table3(表4)は、本発明のマルチパート組成物組成物の第3の部分における構成成分及びそれらの濃度を概説する。ハイドロゲルに取り込む前に、Table3(表4)に示された重量の生体適合性無機材料(バイオガラス、TCP等)は、8mLのアルブミン水和溶液で水和され、手動で混合した。アルブミン水和溶液は、生理食塩水ビヒクル中20mg/mLの濃度のヒト血清アルブミンから構成された。生理食塩水とヒト血清アルブミン[ALBUTEIN]の両方はGrifols社から入手した。
【0126】
得られた懸濁液を140gで2分間遠心分離した。余剰な水和溶液は、マイクロピペットを用いて除去した。水和された生体適合性無機材料は、手動混合でTable2(表2)に概説されたハイドロゲルと合わせられた。得られた組成物の概要は、Table3(表4)に示される。
【0127】
生体適合性無機材料の物理的特性を参考として以下に列挙する:
【0128】
【表3】
【0129】
Table3(表4)において利用されている#1~9のナンバリングは、図1に示されている骨構築物のナンバリングに直接対応する。
【0130】
【表4】
【0131】
Table1(表1)及びTable3(表4)に概説されている組成物を印刷するための3D印刷プロセスはすべて、一般化された方法に従う。フィブリノーゲンとトロンビンの部分は交互の層として印刷される。印刷されたレイヤーの数はオペレータの裁量によるが、通常は2~20枚の範囲である。所望の数のフィブリノーゲン及びトロンビン層が印刷されると、ペースト組成物が層状フィブリノーゲン/トロンビン構造の上に印刷される。
【0132】
第3の部分組成物#7(アルギネート&β-TCP)を例にとると、3Dプリンタを利用して、フィブリノーゲン成分及びトロンビン成分(Table1(表1))を以下のように別々の容器から交互に印刷した。0.0177cm3(17.7μL)の容積を有するフィブリノーゲン成分の第1の層を印刷表面積上に印刷した。0.0177cm3(17.7μL)の容積を有するトロンビンの第2の層を前層のフィブリノーゲンの上に印刷する。8層のトロンビンと交互に配置された合計8層のフィブリノーゲンは、印刷されて、交互の層状構造を生成する。
【0133】
続いて、Table3(表4)に概説された0.149cm3(149μL)の第3の部分組成物#7がフィブリノーゲン及びトロンビンの交互の層状構造の上に印刷され、再びこの材料を別の容器から印刷した。互いに印刷された3つの組成物を含む結果として生じる構造は、第1のマクロ層と呼ばれる。このマクロ層において、フィブリノーゲン組成物とトロンビン組成物と組成物#7の全体的な比は、約1:1:1である。マクロ層内において、フィブリノーゲン層及びトロンビン層が反応してフィブリンを形成し、構造を強化する。
【0134】
さらなるマクロ層は、図1に概説された骨構造を構築するために、設計ファイルに従って、第1のマクロ層に隣接し、その上に順次印刷される。
【0135】
印刷工程の間、組成物に作用するシリンジ先端における剪断速度は、15s-1及び40s-1であると決定された。
【0136】
上部マクロ層を下層マクロ層の上に直接印刷する前に、オペレータは、下部マクロ層の上にベース層を印刷する追加のステップを実行してもよい。ベース層は、典型的には、フィブリノーゲンの単層及びトロンビンの単層から構成される。ベースレイヤーの周囲は上方に投影され、上方に回転した周囲長によって囲まれたオープンスペースを規定する。ベースレイヤーは、実際において機能し、巣のように見える。上部マクロ層は、ベース層に規定されたオープンスペースに(前掲で説明したように)印刷され、上方に回転した周囲長は、上部マクロ層が印刷されると、上部マクロ層に構造的支持を追加するネスティング機能を提供する。
【0137】
いかなる疑念も回避するために、そこに印刷されたさらなる層に構造及び支持を提供するように、巣のように機能するベース層を印刷するという概念は、本発明のすべての方法ステップに適用可能で組合せ可能な一般的な概念である。この概念は、前の段落において説明された特定の例に分離されているものとして扱うべきではない。当業者は、本発明の方法対するベース層又はネスト層の一般的な適用性を理解するはずである。
【実施例2】
【0138】
ヒト間葉系幹細胞との本発明の組成物の適合性
細胞、タンパク質及びその他の生物活性材料に無毒環境を提供する本発明の組成物の能力は、非常に有利である。細胞の生存及び細胞分化を促進する3D印刷された骨構築物は、治療の観点から非常に望ましい。
【0139】
ヒト間葉系幹細胞(hMSC)は、ヒトドナーの骨髄から得られた。hMSCは、GMPの実践に従って抽出され、続いてダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)及び10%のヒト血清B(hSERB)において、エクスビボで増殖した。細胞培養培地を遠心分離し、任意の過剰な液体を除去した。得られた細胞は、遠心管の底部に沈降物を形成した。
【0140】
hMSCの沈降物は、Table3(表4)に示される組成物#1、#2、#7及び#8と混合された。hMSC沈降物は、関連するハイドロゲルと混合され、得られた混合物は、水和生体適合性無機材料に添加された。得られたペーストは、任意の細胞損傷を避けるために手動で(穏やかに)混合された。得られた組成物の概要をTable4(表5)に示し、参照を容易にするために#1'、#2'、#7、#8'という番号を付けた。
【0141】
【表5】
【0142】
hMSCを含む組成物#T、#2'、#7'及び#8'は、容積基準で約1:1:1の比で、Table1(表1)のフィブリノーゲン及びトロンビン成分と、インビトロ(3D印刷なし)で混合した。得られた混合物は、前掲で論じた標準条件(DMEM+10%hSERB)で7日間培養した。
【0143】
CELLTITER-GLO 3D細胞生存率アッセイ(Promega社)を用いて、代謝活性細胞の存在のマーカーであるATPの定量に基づいて、3D細胞培養中の生細胞数を決定した。細胞溶解後、得られた発光シグナルは、試料中に存在するATPの濃度に比例し、したがって培地に存在する生細胞の数に比例した。
【0144】
端的には、等量のCELLTITER-GLO 3D試薬(Promega社)を細胞培養容積に添加し、内容物を5分間激しく混合して細胞溶解を誘導した。プレートは、室温で更に25分間インキュベートし、記録される発光シグナルを安定化させた。
【0145】
図2は、細胞生存率アッセイの結果を示す。図2から、組成物#T、#2'、#7'及び#8'の各々が、3日目及び7日目にATP濃度の増加を示したことが明らかである。組成物#7'は、特に有望な結果を示したが、試験された組成物のすべてがポジティブな結果をもたらした。したがって、組成物はhMSCに対して無毒であると結論づけることができる。
【0146】
Table4(表5)に概説された組成物はまた、細胞内エステラーゼ活性(カルセインAMプローブによる)及び原形質膜完全性(エチジウムホモダイマー(EthD-1)プローブによる)をそれぞれ測定する2つのプローブを採用することにより、生細胞及び死細胞の同時検出に基づくLIVE/DEAD Viability Assay(Life Technologies社)に供した。核内容物は、Hoechst33342蛍光色素で染色した。蛍光顕微鏡を用いて細胞の特徴を可視化した。
【0147】
図3において、0日目及び7日目に10倍の対物レンズでキャプチャされた細胞生存率アッセイからの画像を参照されたい。図は、生存しているhMSC、死んだhMSC及び染色された核を示す。0日目には、どの組成物に関しても注意すべきことはほとんどない。しかしながら、7日目において、大きな陰影のある、斑点のある領域が、本発明の組成物と混合した場合に高濃度の細胞が生存可能であることを示す。したがって、図3から、本発明の組成物が、骨足場全体にわたる細胞接着及び空間的細胞分布を可能にし、細胞増殖を促進するのに適していることは明らかである。
【実施例3】
【0148】
本発明の組成物の骨形成能の決定
Table4(表5)に概説された組成物の骨形成能は、細胞分化分析プロトコールによって決定した。
【0149】
hMSCを含むTable4(表5)の組成物#T、#2'、#7'及び#8'は、容積基準で約1:1:1の比で、Table1(表1)のフィブリノーゲン及びトロンビン成分と、インビトロ(3D印刷なし)で混合した。得られた混合物の溶液は、等量の骨形成分化培養培地(STEMPRO Basal Media(90%)+GIBCO社からのSTEMPRO Osteo Supplement 10%)を補充された。骨形成分化培養培地は、3日ごとに交換した。
【0150】
14日目に、組成物/hMSCを、SIGMAFAST BCIP/NBT溶液を用いてアルカリホスファターゼ(ALP)活性について試験した。分化培養前の組成物は、ALP染色を示さなかった(0日目、図4参照のこと)。しかしながら、14日目において、図4の14日目に染色されたフィラメント型構造によって例示されるように、多数の細胞がALP活性に対してポジティブに染色された。図4は、骨形成培養の14日後に、組成物#T、#2'、#7'及び#8'の各々について、多数のALP陽性細胞を示す。これらの知見は、本発明の組成物がhMSCの骨芽細胞への分化/骨誘導の成功を支持することを肯定的に補強する。更に、細胞は14日目の目視検査で骨細胞様の形態を示した。
【0151】
アッセイされた組成物のすべては、hMSCの骨細胞への分化を促進した。
【実施例4】
【0152】
本発明の2パート組成物を用いた規定の幾何学の物体の印刷
本発明の範囲内の2パート組成物をTable5(表6)に従って調製した。第2の組成物がフィブリノーゲン又はトロンビンを含むかどうかによって、第1の組成物は、前掲のTable1(表1)に概説されたフィブリノーゲン又はトロンビンの他方から構成された。第2の組成物は、Table5(表6)に概説される成分を含んでいた。
【0153】
【表6】
【0154】
図5に例示されるように、本発明の2パート組成物は、本発明の3パート組成物の制御又は精度のレベルを有する3D印刷を行わない。しかしながら、組成物#A、#B及び#Dについて有望な結果が得られ、実施例4は、適切な骨構築物を、本発明の範囲内で、2パート組成物で3D印刷することができ、さらなる努力及び時間により精度を精緻化することができるという概念実証研究として役立つ。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨複合体の3次元印刷のためのマルチパート組成物であって、前記マルチパート組成物が、
i)薬学的に許容される担体にフィブリノーゲンを含む第1の部分;
ii)薬学的に許容される担体にトロンビンを含む第2の部分;及び
iii)少なくとも1種の生体適合性無機材料と混合された薬学的に許容されるハイドロゲルを含む第3の部分
を含み、前記少なくとも1種の生体適合性無機材料が、カルシウム原子及びリン原子の少なくとも1つの源を提供し、
前記第3の部分は、
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約1~約300Pa・s、並びに
25℃及び1atmの圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約1~約100Pa・s
からなる群から選択される見かけ粘度を有し、
更に、前記マルチパート組成物の少なくとも前記第1の部分及び前記第2の部分が、3次元印刷装置による印刷の前に混合されないように、前記第3の部分が、スタンドアロン組成物であるか、又はそれが、前記マルチパート組成物の前記第1の部分若しくは前記第2の部分のいずれかと混合されている、マルチパート組成物。
【請求項2】
前記第1の部分において、前記フィブリノーゲンが、約5~約200mg/mLの濃度である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第2の部分において、前記トロンビンが、約25及び約1500IU/mLの濃度である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記マルチパート組成物の前記第3の部分が、
室温及び圧力で、回転粘度計によって測定される場合、0.1s-1の剪断速度で、約50~約250Pa・s、並びに
室温及び圧力で、回転粘度計によって測定される場合、1s-1の剪断速度で、約2~約50Pa・s
からなる群から選択される見かけ粘度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記第3の部分が、3次元印刷装置による印刷の前に前記マルチパート組成物の3つの部分が混合されないように、スタンドアロン組成物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記生体適合性無機材料が、バイオガラス、リン酸三カルシウム、単相ハイドロキシアパタイト、二相性ハイドロキシアパタイト-リン酸三カルシウム、天然骨粉末及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記生体適合性無機材料が、リン酸三カルシウム、単相ハイドロキシアパタイト、二相性ハイドロキシアパタイト-リン酸三カルシウム及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記生体適合性無機材料が、β-リン酸三カルシウムである、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記β-リン酸三カルシウムが、ヘリウムピクノメトリーによって決定される場合、約2.95g/cm3~約3.15g/cm3の密度を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記β-リン酸三カルシウムが、ヘリウムピクノメトリーによって決定される場合、約2.95g/cm3~約3.10g/cm3の密度を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記β-リン酸三カルシウムが、約180μm以下のd90粒径分布を有する、請求項8から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記β-リン酸三カルシウムが、約160μm以下のd90粒径分布を有する、請求項8から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記β-リン酸三カルシウムが、°2θ(d値Å)に固有のピークを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けられ、K-α放射を有するCu管陽極で得られた場合、17.0(5.2)、21.9(4.1)、25.8(3.45)、27.8(3.2)、29.65(3.0)、31.0(2.9)、32.45(2.75)、34.4(2.6)、46.9(1.9)、48.0(1.9)、48.4(1.9)、及び53.0(1.7)の角度である、請求項8から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記生体適合性無機材料が、約150μm未満の平均粒径を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記生体適合性無機材料が、約100μm未満の平均粒径を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記生体適合性無機材料が、前記薬学的に許容されるハイドロゲルと混合する前に、アルブミン溶液で水和される、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記薬学的に許容されるハイドロゲルが、親水性多糖からなるハイドロゲル、ゼラチン及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記薬学的に許容されるハイドロゲルが、アルギネート、ヒアルロン酸、ゼラチン及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記薬学的に許容されるハイドロゲルが、アルギネートを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記第3の部分が、約1~10gの生体適合性無機材料対約1mLのハイドロゲルの、生体適合性無機材料:ハイドロゲルの比を有する、請求項1から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が、骨伝導、骨誘導及び/又は骨形成特性を有する材料を更に含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
骨伝導、骨誘導及び/又は骨形成特性を有する前記材料が、細胞、タンパク質、成長因子及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が、ヒト間葉系幹細胞(hMSC)を更に含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記hMSCが、薬学的に許容されるハイドロゲル1mLあたり1×103~約5×1010hMSCの濃度である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか一項に記載のマルチパート組成物から得ることができる骨複合体。
【請求項26】
前記生体適合性無機材料が、前記骨複合体の約5%w/w~約60%w/wの濃度である、請求項25に記載の骨複合体。
【請求項27】
骨複合体を調製する方法であって、前記方法が、
i)請求項1から24のいずれか一項に記載のマルチパート組成物を有する3次元印刷装置を提供する工程、
ii)決定された設計に従って前記骨複合体を印刷する工程、及び
iii)任意に、前記骨複合体をインキュベートする工程
を含み、
前記方法が、ヒトを治療又は手術する方法を含まない
方法。
【請求項28】
前記3次元印刷装置が、
i)フィブリノーゲン又はトロンビンのいずれかを含む第1の層;
ii)フィブリノーゲン又はトロンビンのいずれかを含む第2の層
を印刷し;
前記第1の層がフィブリノーゲンを含む場合、前記第2の層はトロンビンを含み、その逆もまた同様であり、
iii)工程i)及びii)をn回(n≧1)順次繰り返し、交互の層状構造を生成し;
iv)工程iii)の前記交互の層状構造の上に、前記ハイドロゲル及び生体適合性無機材料を含む前記第3の部分を印刷し、
v)任意に、必要に応じて工程i)~iv)を繰り返して前記骨複合体を得る、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
最初に前記フィブリノーゲンが印刷され、2番目に前記トロンビンが前記フィブリノーゲンの上に層として印刷される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
i)前記第1の層が、Xの規定の容積を有し、
ii)前記第2の層が、Yの規定の容積を有し、
iii)工程i)及びii)をn回(n≧1)繰り返し、容積nX+nYの交互の層状構造を生成し;
iv)工程iii)の前記交互の層状構造の上に、前記ハイドロゲル及び生体適合性無機材料を含む前記第3の部分が印刷され、前記第3の部分が容積Zを有する、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
容積X及び容積Yが、容積がnX=nYとなるように同じである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
Z対nX対nYの比(Z:nX:nY)が、約0.60~1.0:1:1である、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
2≦n≦10である、請求項29から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記3次元印刷装置が、
i)本発明の前記マルチパート組成物の前記第3の部分を含む第1の層、
ii)フィブリノーゲン又はトロンビンのいずれかを含む第2の層;
iii)フィブリノーゲン又はトロンビンのいずれかを含む第3の層
を印刷し;
前記第2の層がフィブリノーゲンを含む場合、前記第3の層はトロンビンを含み、その逆もまた同様であり、
iv)工程ii)及びiii)をn回(n≧1)順次繰り返し、フィブリノーゲン及びトロンビンの交互の層状構造を生成し;
v)任意に、必要に応じて工程i)~iv)を繰り返して前記骨複合体を得る、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
i)前記第1の層が、Aの規定の容積を有し、
ii)前記第2の層が、Bの規定の容積を有し、
iii)前記第3の層が、Cの規定の容積を有し、
iv)工程ii)及びiii)をn回(n≧1)繰り返してもよく、容積A+nB+nCの層状構造を生成する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
A対nB対nCの比(A:nB:nC)が、約1~5:1:1である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
2≦n≦10である、請求項34から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
請求項1から24に記載の組成物が、2パート組成物であり、前記方法が、
i)フィブリノーゲン又はトロンビンのいずれかを含む前記組成物の前記第1の部分を印刷する工程;
ii)工程i)をn回(n≧1)繰り返し、フィブリノーゲン又はトロンビンのいずれか一方のみを含む層状構造を生成する工程;
iii)工程ii)で生成された前記層状構造の上に、前記薬学的に許容されるハイドロゲル及び前記生体適合性無機材料と混合されたフィブリノーゲン又はトロンビンの他方を含む前記第2の部分を印刷する工程;
iv)任意に、必要に応じて工程i)~iii)を繰り返して前記骨複合体を得る工程
を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項39】
請求項1から24に記載の組成物が、2パート組成物であり、前記方法が、
i)前記薬学的に許容されるハイドロゲル及び前記生体適合性無機材料と混合されたフィブリノーゲン又はトロンビンの一方を含む前記第2の部分を印刷する工程;
ii)工程i)において印刷された前記部分の上に、フィブリノーゲン又はトロンビンの他方を含む前記第1の部分を印刷する工程;
iii)工程ii)をn回(n≧1)繰り返し、層状構造を生成する工程;
iv)任意に、必要に応じて工程i)~iii)を繰り返して前記骨複合体を得る工程
を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項40】
請求項27から39のいずれか一項に記載の方法から得ることができる骨複合体。
【請求項41】
それを必要とする患者において骨損傷又は骨欠損を治療するためのキットであって、前記キットが、それを必要とする前記患者に移植される請求項25又は26又は40に記載の骨複合体を含む、キット
【請求項42】
求項25又は26又は40に記載の合成骨複合体を含むキットであって、前記キットが、骨損傷又は骨欠損の治療における使用のためのものである、キット
【請求項43】
3次元プリンタ及び請求項1から24のいずれか1項に記載のマルチパート組成物を含むキット。
【国際調査報告】