(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(54)【発明の名称】工具対応部材に結合するための工具部材、工具部材に結合するための工具対応部材、および工具
(51)【国際特許分類】
B23C 5/00 20060101AFI20230227BHJP
B23B 31/113 20060101ALI20230227BHJP
B23C 5/22 20060101ALI20230227BHJP
B23B 29/00 20060101ALI20230227BHJP
【FI】
B23C5/00 A
B23B31/113
B23C5/22
B23B29/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537362
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2020086529
(87)【国際公開番号】W WO2021122821
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】102019220092.3
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597099025
【氏名又は名称】マパル ファブリック フュール プラツィジョンズベルクゼウグ ドクトル.クレス カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレス,ヨッヘン
【テーマコード(参考)】
3C022
3C032
3C046
【Fターム(参考)】
3C022FF01
3C022MM01
3C032CC02
3C046KK13
(57)【要約】
本発明は、工具対応部材(3)に結合するように構成されている工具部材(1)であって、工具部材(1)が、センタリング区分(5)と軸線方向ストッパ(7)とを有しており、工具部材(1)が、差込み回転区分(9)を有しており、差込み回転区分(9)は、工具部材(1)を工具対応部材(3)に結合するために、工具対応区分(3)の差込み回転対応区分(11)と協働するように構成されている、工具部材(1)に関する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具対応部材(3)に結合するように構成されている工具部材(1)であって、該工具部材(1)が、センタリング区分(5)と軸線方向ストッパ(7)とを有しており、前記工具部材(1)が、差込み回転区分(9)を有しており、該差込み回転区分(9)は、前記工具部材(1)を前記工具対応部材(3)に結合するために、該工具対応部材(3)の差込み回転対応区分(11)と協働するように構成されている、工具部材(1)。
【請求項2】
前記差込み回転区分(9)が、螺旋区分線に沿って延びる少なくとも1つの締付け斜面(13)を有している、請求項1に記載の工具部材(1)。
【請求項3】
前記差込み回転区分(9)が、2つの締付け斜面(13)を有しており、該2つの締付け斜面(13)が、好適には互いに同一の軸線方向の位置で配置されている、請求項1または請求項2に記載の工具部材(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの締付け斜面(13)が、前記工具部材(1)の長手方向軸線(L)を中心として、少なくとも90°~最大180°、好適には少なくとも95°~最大120°だけ前記差込み回転区分(9)において延びている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の工具部材(1)。
【請求項5】
前記差込み回転区分(9)が、少なくとも1つの導入面(15)を有しており、該導入面(15)は、前記長手方向軸線(L)を中心とした少なくとも1つの特定の角度位置においてのみ前記工具対応部材(3)内への前記工具部材(1)の挿入を可能にするために、前記工具対応部材(3)の導入対応面(17)と協働するように構成されている、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の工具部材(1)。
【請求項6】
前記差込み回転区分(9)が、軸線方向で前記センタリング区分(5)に続いている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の工具部材(1)。
【請求項7】
前記センタリング区分(5)が、外側円錐部を有しており、および/または前記軸線方向ストッパ(7)が、前記センタリング区分(5)を取り囲む軸線方向の環状面(21)として形成されている、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の工具部材(1)。
【請求項8】
前記工具部材(1)が、少なくとも1つの切刃(25)を備えた加工区分(23)を有している、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の工具部材(1)。
【請求項9】
特に請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の工具部材(1)に結合するように構成されている工具対応部材(3)であって、センタリング対応区分(27)と、軸線方向対応ストッパ(29)とを備えており、前記工具対応部材(3)が、差込み回転対応区分(11)を有しており、該差込み回転対応区分(11)は、前記工具対応部材(3)を前記工具部材(1)に結合するために、該工具部材(1)の差込み回転区分(9)と協働するように構成されている、工具対応部材(3)。
【請求項10】
前記差込み回転対応区分が、少なくとも1つの締付け突出部(31)を有しており、該締付け突出部(31)は、前記工具部材(1)と前記工具対応部材(3)との間の、特に前記少なくとも1つの締付け突出部(31)と少なくとも1つの締付け斜面(13)との間の相対回転が生じた場合に、特に前記工具部材(1)が前記工具対応部材(3)の方向に移動させられるように、前記工具部材(1)の前記差込み回転区分(9)の前記少なくとも1つの締付け斜面(13)と協働するように構成されている、請求項9に記載の工具対応部材(3)。
【請求項11】
前記センタリング対応区分(27)が、内側円錐部を有しており、および/または前記軸線方向対応ストッパ(29)が、前記センタリング対応区分(27)を取り囲む軸線方向の環状対応面(35)として形成されている、請求項9または請求項10に記載の工具対応部材(3)。
【請求項12】
前記工具対応部材(3)が、シャンク区分(37)を有しており、該シャンク区分(37)が、好適には、前記工具対応部材(3)を工作機械に結合するように構成されている、請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の工具対応部材(3)。
【請求項13】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の工具部材(1)と、請求項9から請求項12のいずれか一項に記載の工具対応部材(3)とを含む、工具(41)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具対応部材に結合されるように構成されている工具部材と、工具部材に結合されるように構成されているこのような工具対応部材と、このような工具部材およびこのような工具対応部材を備えた工具とに関する。
【背景技術】
【0002】
複合的な工具は、特に需要に応じて、特に、交換ヘッドとも呼ばれる加工ヘッドを交換するか、または摩耗または損傷した場合に交換することができるように、種々異なる複数の部材から構成されている。このような工具の種々異なる部材間には、結合箇所またはインタフェースが構成されており、結合箇所またはインタフェースを介して種々異なる部材が互いに機械的に結合され、かつ互いに相対的に位置調整される。このようなインタフェースは、工具を需要に応じてより長くまたはより短く構成するためにも役立ち得る。インタフェースの領域における工具の部材の結合および分離は、簡単かつ迅速に可能であることが望ましく、さらにこれらの部材の互いに相対的な位置調整は、特に軸線方向位置および半径方向位置に関してできるだけ正確に行われることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
独国特許出願公開第10048910号明細書からは、中空円錐形の切欠きが円錐形の突出部と協働し、これにより半径方向のセンタリングを提供し、軸線方向の位置を定義するために、結合された状態で互いに接触する平坦面が設けられている結合箇所が知られている。工具の両方の部材は、軸線方向で結合箇所が組み合わせられた状態で、締付け装置によって互いに緊締される。この結合箇所またはインタフェースは、HFSインタフェースとしても知られている。
【0004】
このような結合箇所では、個別の部材相互の締付けは、一般的にはたとえば独国特許出願公開第10112966号明細書から知られているような両端ねじ山付きスピンドルにより行われる。したがって、付加的な部材、すなわち両端ねじ山付きスピンドルと、この両端ねじ山付きスピンドルを操作するための少なくとも1つの別の部材とが必要となる。さらに、特に超硬合金体において、両端ねじ山付きスピンドルの係合のための雌ねじ山を作製することは、手間がかかり、高価である。しかし、まさに工具ヘッドは、一般的に超硬合金から成る基体を有している。このようなシステムでは、締付け工程は比較的時間がかかり、さらに失敗することがある。
【0005】
独国特許出願公開第10326928号明細書からは、偏心ピンを有する半径方向締付けシステムを備えたインタフェースが知られている。このようなシステムでは、締付け工程はたしかに迅速で、あまり複雑ではないが、このシステムは、さらに多くの部材を有しており、製造にはさらに手間がかかる。さらに、偏心ピンにより半径方向力が加えられ、この半径方向力は結局のところ、工具の1つの部材に対する別の部材の傾倒をもたらしてしまうので、締付け精度は減じられてしまう。
【0006】
本発明の根底にある課題は、上述の欠点が発生しない工具部材、工具対応部材および工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本願の技術的な教示、特に独立請求項に記載の教示ならびに従属請求項および明細書に開示された実施形態に記載の教示が提供されることによって解決される。
【0008】
この課題は特に、工具対応部材に結合されるように構成されている工具部材であって、工具部材が、センタリング区分と軸線方向ストッパとを有している工具部材を提供することにより解決される。さらに工具部材は、差込み回転区分を有しており、この差込み回転区分は、工具部材を工具対応部材に結合するために、工具対応部材の差込み回転対応区分と協働するように構成されている。差込み回転区分により、工具対応部材に対する工具部材の位置決めに関して極めて正確な、同時に単純で、小型に、特に短い構造であり確実に機能する、工具部材を工具対応部材に固定的かつ安定的に結合する手段が提供される。特に、付加的な部材は不要であり、差込み回転区分の製作も、廉価で僅かな手間しか要しない。
【0009】
工具部材は、特に、工具の結合箇所またはインタフェースの第1部材であり、このインタフェースまたは結合箇所の第2部材は、対応する工具対応部材であり、この工具対応部材に、工具部材は意図した通りに結合させられる。工具は、特に工具部材と、工具対応部材とを有していてよく、1つの構成によれば、工具部材と工具対応部材とから構成されていてよいが、工具が、より多くの部材を有しており、したがって工具が特に複数のこのようなインタフェースまたは結合箇所を有していることも可能である。
【0010】
工具部材は、特に、工具ヘッドまたは加工ヘッドであってよい。工具対応部材は、特にホルダであってよく、このホルダは、直接に工作機械の一部であるか、またはホルダ自体が工作機械内に導入され、この工作機械において固定されてよい。しかし、工具対応部材は、延長部材、中間部材等であってもよい。工具部材も、延長部材または中間部材等であってよい。特に、工具部材および工具対応部材が、延長部材または中間部材として形成されていることも可能であり、これらの延長部材または中間部材自体を、特に別の延長部材または中間部材に、あるいは工具ヘッドまたは加工ヘッドに、あるいはホルダにさらに結合することができる。
【0011】
差込み回転区分は、特に、工具部材が工具対応部材に不動に、特に工具部材および/または工具の長手方向軸線の方向で結合するように、工具対応部材の差込み回転対応区分と協働するように構成されている。
【0012】
特に、工具部材の差込み回転区分と、工具対応部材の差込み回転対応区分とは、好適には一緒に1つの差込み回転機構を形成する。
【0013】
このような差込み回転機構は、特に、この機構を介して結合させられる部材が、まず軸線方向の差込み運動を介して互いに結合させられ、次いで回転運動により互いに位置固定されることにより特定されている。差込み運動中に進められる差込み距離は、好適には、差込み回転機構の回転運動中に、互いに回転させられるべき要素の最初の係合から、これらの部材同士の軸線方向の当接に至るまで進められる、回転距離とも呼ばれる軸線方向の距離よりも長く、特にはるかに長い。
【0014】
つまり、差込み回転機構により工具対応部材に工具部材を取り付けるためには、特に工具部材がまず軸線方向で工具対応部材に対して相対的に差込み運動で、特に回転運動なしに移動させられ、次いで工具対応部材に対して相対的に回転させられ、これにより不動の安定的な結合部を形成することができる。
【0015】
差込み回転区分は、特に、差込み運動に続く回転運動に基づいて生じる軸線方向の運動が、先行する差込み運動と同一の方向で行われるように構成され、かつ差込み回転対応区分に適合させられている。工具部材を工具対応部材に結合するための差込み回転区分の回転運動時に、工具部材は特に工具対応部材に向かって引っ張られる。特にその際に工具部材が工具対応部材の方向に移動させられる。
【0016】
好適な1つの構成によれば、差込み回転機構は、バヨネット機構として構成されている。
【0017】
工具部材、工具対応部材および/または工具の長手方向軸線は、特に、対応する部材の最も長い延在長さに沿って延びる軸線、および/または対応する部材の対称軸線を規定する軸線、および/または工作物の加工時の対応する部材の意図された回転軸線に一致する軸線である。軸線方向は長手方向軸線に沿って延びており、半径方向は、この長手方向軸線に対して垂直であり、周方向は、特に長手方向軸線の周囲で同心円状に延びている。
【0018】
差込み回転機構の差込み運動は、特に長手方向軸線の方向、つまり軸線方向であり、差込み回転機構の回転運動は、特に周方向、すなわち長手方向軸線を中心とする方向である。
【0019】
センタリング区分は、特に、半径方向、つまり長手方向軸線に対して垂直方向で、工具対応部材に対する工具部材のセンタリングが生じるように構成されている。
【0020】
軸線方向ストッパは、特に、工具部材が工具対応部材に結合されている場合に、工具対応部材に対する工具部材の軸線方向の位置、つまり長手方向軸線の方向での工具部材の位置を規定するように構成されている。
【0021】
本発明の1つの改良形によれば、差込み回転区分が、螺旋区分線に沿って延びる少なくとも1つの締付け斜面を有していることが規定されている。これは、差込み回転区分の、特に単純で短い構造であり、簡単に製造することができる構成を成す。螺旋区分線とは、特に、長手方向軸線を中心とした螺旋線の一区分に沿って、特に最大180°、好適には180°未満だけ延びる線であると理解される。したがって、ねじ山とは異なり、長手方向軸線を全周にわたって、特に何周にもわたって取り囲む螺条を切ることは不要である。特に、締付け斜面は、工具部材が工具対応部材に結合させられる場合に、特に差込み回転機構の回転運動中に、工具対応部材の締付け突出部が締付け斜面上を滑るか、または走行することができるように構成されている。締付け斜面が螺旋区分線に沿って延びていることにより、回転運動時には同時に、特に工具部材と工具対応部材とが互いに緊締されるように、工具部材と工具対応部材との間の軸線方向の相対運動が生じる。
【0022】
少なくとも1つの締付け斜面は、特に締付け楔を具現化し、その際に締付け斜面は、工具対応部材の締付け突出部と一緒に楔形伝動装置を実現するので、緊締時、特に締付け回転機構の回転運動中に、工具部材が強い力で工具対応部材に向かって引っ張られる。
【0023】
本発明の1つの改良形によれば、差込み回転区分が、2つの締付け斜面を有していることが規定されている。これにより、工具対応部材との特に効果的な緊締を達成することができる。好適には、両方の締付け斜面は、それぞれ対応する螺旋区分線に沿って延びている。好適には、2つの締付け斜面は、周方向で互いにずらされて差込み回転区分に配置されており、好適には、180°だけ、または少なくとも約180°だけ互いにずらされて配置されている。
【0024】
好適には、両方の締付け斜面は、特に締付け斜面上の等価点に関して、互いに同一の軸線方向の高さまたは同一の軸線方向の位置で、差込み回転区分に配置されている。特に、これらの締付け斜面の始端部と終端部とは、好適にはそれぞれ互いに同一の軸線方向の高さに配置されている。これにより、工具部材が、工具対応部材との緊締時に傾倒することは有利に回避され、特に、工具対応部材に対する工具部材の回転時に長手方向軸線に対して直交する横方向での横方向力の導入が回避される。
【0025】
好適には代替的または付加的に、両方の締付け斜面が、同一の勾配を有していることが規定されている。
【0026】
特に好適には、両方の締付け斜面が、互いに同一に形成されている。
【0027】
少なくとも1つの締付け斜面の勾配、好適には両方の締付け斜面の勾配は、好適には、差込み回転機構内の少なくとも1つの締付け斜面の領域においてセルフロックが生じるように選択されている。特に、好適には、工具対応部材の少なくとも1つの締付け突出部と工具部材の少なくとも1つの締付け斜面との間にセルフロックが生じる。これにより有利には、工具対応部材における工具部材の特に効果的な位置固定が得られる。
【0028】
少なくとも1つの締付け斜面、好適には両方の締付け斜面の勾配は、特に鋼対鋼のペアの場合、好適には約15°、好適には15°である。
【0029】
好適には、両方の締付け斜面のそれぞれは、工具対応部材の締付け突出部とそれぞれ協働するように構成されており、工具対応部材は、好適には、対応して2つの締付け突出部を有している。
【0030】
本発明の1つの改良形によれば、少なくとも1つの締付け斜面、好適には締付け斜面のそれぞれが、好適には長手方向軸を中心として少なくとも90°~最大180°、好適には少なくとも95°~最大120°だけ差込み回転区分において延びていることが規定されている。したがって、工具対応部材に工具部材を緊締するために、比較的小さな角度範囲の比較的小さな回転運動しか必要とならない。同時に、強い力での締付けが達成される。
【0031】
本発明の1つの改良形によれば、差込み回転区分が、少なくとも1つの導入面を有しており、この導入面が、長手方向軸線を中心とした少なくとも1つの特定の角度位置においてのみ工具対応部材内への工具部材の挿入を可能にするために、工具対応部材の導入対応面と協働するように構成されていることが規定されている。この構成では、導入面は、導入対応面と協働しながら、工具部材が工具対応部材に結合するための接合位置を定義する。特に好適には、導入面は、最大で1つの特定の角度位置、または特に同等であり、互いに180°だけずらされた最大で2つの角度位置における工具対応部材内への工具部材の挿入を可能にする。
【0032】
好適には、差込み回転区分が、2つの導入面を有しており、これらの導入面は、工具対応部材の2つの導入対応面と協働するように相応に構成されている。両方の導入面は、好適には、互いに少なくともほぼ平行に、好適には互いに平行に配向されており、および/または長手方向に対して直交する横方向で互いに反対の側で差込み回転区分に配置されているか、または形成されている。
【0033】
好適には、少なくとも1つの導入面が、平坦面として形成されている。特に、少なくとも1つの導入面は、好適には長手方向軸線と、0°と最大でも僅かにしか異ならない角度を成し、この角度は、特に最大5°、好適には最大4°、好適には最大2°、好適には最大1°、好適には最大0.5°である。特に好適には、角度は0°であり、つまり、長手方向は、導入面内にあるか、もしくは導入面は、長手方向に沿って延びている。
【0034】
工具対応部材の少なくとも1つの導入対応面は、少なくとも1つの導入面に対して、好適には対応して相補的に形成されている。
【0035】
本発明の1つの改良形によれば、差込み回転区分は、軸線方向でセンタリング区分に続いていることが規定されている。したがってこの構成では、特に、センタリング区分と差込み回転区分との間の機能分離が設けられている。したがって、一方ではセンタリング区分のセンタリング機能が最適化されていてよく、他方では差込み回転区分の取付け機能が最適化されていてよい。好適には、差込み回転区分は、特にセンタリング区分を起点として軸線方向に、組み付けられた状態では工具対応部材の方向に延びる、工具部材の締付け延長部として形成されている。
【0036】
本発明の1つの改良形によれば、センタリング区分が外側円錐部を有しているか、または外側円錐部、特に円錐形の突出部、特に短円錐(Kurzkegel)として形成されていることが規定されている。このことは、特に外側円錐部として形成されたセンタリング区分が、内側円錐部として形成された工具対応部材のセンタリング区分と協働する場合に、工具対応部材における工具部材の特に良好なセンタリングを可能にする。
【0037】
代替的または付加的には、軸線方向ストッパが、好適には軸線方向の環状面として、特にその法線ベクトルが少なくともほぼ長手方向、好適にはまさに長手方向を指す環状面として、または長手方向と、最大でも数度、特に最大5°、好適には最大4°、好適には最大3°、好適には最大2°、好適には最大1°、好適には最大0.5°である最大でも小さな角度を形成する環状面として形成されている。好適には、軸線方向の環状面は、センタリング区分を特に環状に、特に閉じた周方向線に沿って取り囲んでいる。
【0038】
特に、センタリング区分と軸線方向ストッパとは一緒に、特に独国特許出願公開第10048910号明細書に図示されている構成のように、平坦な当接部を備えた短円錐インタフェースとして形成されている。
【0039】
本発明の別の改良形によれば、工具部材が、少なくとも1つの切刃を備えた加工区分を有していることが規定されている。この構成では、工具部材は、有利には、工具ヘッドとして、特に交換ヘッドとして形成されている。少なくとも1つの切刃は、好適には、幾何学的に定義された切刃である。好適な構成では、少なくとも1つの切刃は、一体に、つまりワンピースに、特に統一された材料の切刃として、または複数の部材から、特に挿入、接着またはろう付けされた切刃として、あるいは交換切刃として工具部材に設けられていてよい。
【0040】
特に、工具部材は、好適には超硬合金から成るフライスヘッドとして、またはろう付けされた切刃を備えたフライスヘッドとして、またはドリル、コアドリル、摩擦工具として構成されていてよい。
【0041】
加工区分は、好適には軸線方向でセンタリング区分に続いていて、差込み回転区分とは反対の側に配置されている。特に、加工区分は、工具部材の、規定通りに工作物に面している遠位の端部に配置されており、差込み回転区分は、工具部材の、規定通りに工作物とは反対側の近位の端部に配置されている。この場合、センタリング区分と軸線方向ストッパとは、遠位の端部と近位の端部との間に配置されている。
【0042】
好適には、工具部材には、連行要素、特にスパナ面(Schluesselflaeche)が形成されており、このスパナ面は、工具部材と工具対応部材とを互いに緊締することができる締付け手段と係合するために働く。特に、スパナ面は、オープンエンドスパナが係合することができるように構成されていてよい。
【0043】
課題は、工具部材、特に本発明に係る工具部材または上述の実施形態のいずれか1つによる工具部材に結合するように構成されている工具対応部材を提供することによっても解決される。工具対応部材品は、センタリング対応区分と、軸線方向対応ストッパと、差込み回転対応区分とを有しており、差込み回転対応区分は、工具対応部材を工具部材に結合するために、工具部材の差込み回転区分と協働するように構成されている。工具対応部材に関して、特に、工具部材に関連して上記で既に説明した利点が実現される。特に好適には、工具対応部材は、少なくとも1つの特徴に関して、工具部材に関連して上記で既に明示的または暗示的に説明したように構成されている。
【0044】
差込み回転対応区分は、特に、差込み運動に続く回転運動に基づいて生じる軸線方向の運動が、先行する差込み運動と同一の方向で行われるように構成され、かつ差込み回転区分に適合させられている。工具対応部材に工具部材を結合するための差込み回転区分の回転運動時に、工具部材は特に工具対応部材に向かって引っ張られる。その際に特に工具部材が、工具対応部材の方向に移動させられる。
【0045】
本発明の1つの改良形によれば、差込み回転対応区分は、少なくとも1つの締付け突出部、好適には締付け突起を有していることが規定されている。少なくとも1つの締付け突出部は、工具部材と工具対応部材との間の、特に少なくとも1つの締付け斜面と少なくとも1つの締付け突出部との間の長手方向軸線を中心とした相対回転が、特に少なくとも1つの締付け突出部が少なくとも1つの締付け斜面上で滑動するように行われた場合に、特に工具部材が工具対応部材の方向に移動させられ、特に工具対応部材に向かって軸線方向に押圧され、特に工具対応部材と緊締されるように、工具部材の少なくとも1つの締付け斜面と協働するように構成されている。
【0046】
特に、差込み回転対応区分は、好適には、2つの締付け突出部を有しており、各締付け突出部は、好適には、工具部材の差込み回転区分が好適に有している両方の締付け斜面のうちのそれぞれの1つと協働するように構成されている。両方の締付け突出部は、好適には、工具対応部材において互いに径方向で反対の側に配置されている。特に、両方の締付け突出部は、好適には、工具対応部材に同一の軸線方向の高さで配置されている。このことは、既に説明したように、工具部材が工具対応部材に緊締された場合に、工具対応部材に対して相対的な傾倒モーメントが工具部材に導入されないという利点を有している。
【0047】
本発明の1つの改良形によれば、センタリング対応区分が、内側円錐部を有しており、内側円錐部は特に、工具対応部材に対して工具部材をセンタリングするために、特に工具部材のセンタリング区分の外側円錐部と協働するように構成されかつ適合されていることが規定されている。したがって、センタリング対応区分は、特に円錐形または円錐区分形の切欠きとして形成されており、この切欠き内に工具部材の、円錐突出部または円錐延長部として形成されたセンタリング区分を挿入することができる。
【0048】
好適には、内側円錐部として形成されたセンタリング対応区分が、外側円錐部として形成されたセンタリング区分よりも弾性であり、すなわちより弾性変形可能に形成されているので、センタリング対応区分の内側円錐部は、工具対応部材と工具部材との緊締時に、センタリング区分の外側円錐部により変形させられ、特に拡張させられる。したがって、軸線方向ストッパと軸線方向対応ストッパとの相互作用において、特に冗長性(Ueberbestimmung)が達成されるので、工具部材は工具対応部材に対して極めて不動に安定した確実な位置で取り付けられる。
【0049】
軸線方向対応ストッパは、好適には、軸線方向の環状対応面として形成されており、すなわち、その法線ベクトルが好適には長手方向に対して平行に配向されている環状の面として、または長手方向と、最大でも数度、特に最大5°、好適には最大4°、好適には最大3°、好適には最大2°、好適には最大1°、好適には最大0.5°である最大でも小さな角度を形成する環状面として形成されている。好適には、軸線方向の環状対応面は、センタリング対応区分の内側円錐部を、特に環状に、特に閉じた周方向線に沿って取り囲んでいる。
【0050】
好適には、緊締された状態で軸線方向ストッパの軸線方向の環状面が、軸線方向対応ストッパの軸線方向の環状対応面に当接し、特にこれらの面は、好適には全面にわたって接触している。特にこれにより、センタリング対応区分の内側円錐部の拡張に関して既に説明した冗長性が達成される。
【0051】
本発明の1つの改良形によれば、工具対応部材がシャンク区分またはチャック区分を有しており、シャンク区分またはチャック区分は、好適には、工具対応部材を工作機械、特に工作機械のスピンドルに結合するように構成されていることが規定されている。
【0052】
工具対応部材のシャンク区分は、好適には、特に工作機械のスピンドルに結合するための中空シャンクテーパインタフェースを有している。
【0053】
好適な1つの構成では、工具部材が、少なくとも1つの切刃を備えた加工区分を有していると同時に、工具対応部材が、シャンク区分またはチャック区分を有している。
【0054】
最後に、課題は、本発明に係る少なくとも1つの工具部材または上述の実施形態のいずれか1つによる少なくとも1つの工具部材と、本発明に係る少なくとも1つの工具対応部材または上述の実施形態のいずれか1つによる少なくとも1つの工具対応部材とを有する工具であって、これらの工具部材と工具対応部材とが好適には互いに結合可能、特に互いに結合されている工具を提供することによっても解決される。工具に関して、特に、一方では工具部材に関して、他方では工具対応部材に関して既に説明した利点が実現される。特に工具は、工具部材と工具対応部材とにより形成され、特に工具部材と工具対応部材との間の結合領域において形成されているインタフェースまたは結合箇所を有している。
【0055】
本発明を以下に図面につき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図4】
図2に示した工具対応部材に結合された状態で
図1に示した工具部材を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1は、
図2に図示した実施例の工具対応部材3に結合するように構成されている工具部材1の1つの実施例の概略図を示している。
図1を参照すると、工具部材1は、センタリング区分5と軸線方向ストッパ7とを有している。さらに、工具部材1は、差込み回転区分9を有しており、この差込み回転区分9は、工具部材1を工具対応部材3に結合するために、工具対応部材3の、さらに
図2に図示した差込み回転対応区分11と協働するように構成されている。差込み回転区分9と差込み回転対応区分11とは一緒に、特に差込み回転機構、好適にはバヨネットファスナを形成する。工具部材1は、まず長手方向軸線Lの方向、つまり軸線方向に差込み運動を実施し、次いで回転運動を行うことにより工具対応部材3に結合させられる。回転運動時に、工具部材1は工具対応部材3に対して回転させられ、これにより工具対応部材3における工具部材1の位置固定が達成される。差込み距離は、回転運動中の差込み回転機構の最初の回転運動の開始から、工具対応部材3における工具部材1の軸線方向の当接、ひいては工具対応部材3における工具部材1の位置固定の終了に至るまで進められる、軸線方向の回転距離とも呼ばれる長手方向Lに沿った軸線方向の移動距離よりも長く、好適にははるかに長い。
【0058】
これにより、極めてコンパクトで簡単に操作することができる、構成部材が少なく、確実に機能すると同時に軸線方向で短い構造である、工具部材1を工具対応部材3に結合する手段が提供される。
【0059】
差込み回転区分9は、好適には、長手方向軸線Lを中心とした螺旋区分線に沿って延びる少なくとも1つの締付け斜面13、本実施例では2つの締付け斜面13を有している。両方の締付け斜面13は、好適には同一の軸線方向の位置に配置されており、特にそれらの始点および終点は、長手方向軸線Lの方向で見て、それぞれ同一の軸線方向の高さに配置されている。両方の締付け斜面13は、好適には、互いに径方向で反対の側に配置されており、特に周方向で約180°、好適には180°だけ互いにずらされている。
【0060】
締付け斜面13は、好適にはそれぞれ、長手方向軸線Lを中心とする周方向で少なくとも90°~最大180°、好適には少なくとも95°~最大120°だけ延びている。
【0061】
好適には、差込み回転区分9は、軸線方向、つまり長手方向軸線Lの方向でセンタリング区分5に続いている。特に、差込み回転区分9は、好適には、締付け延長部として形成されている。
【0062】
差込み回転区分9は、好適には、少なくとも1つの導入面15を有している。この導入面15は、長手方向軸線Lを中心とした少なくとも1つの特定の角度位置、好適には最大で1つまたは最大で2つの特定の角度位置においてのみ工具対応部材3内への工具部材1の挿入を可能にするために、工具対応部材3の挿入対応面17(
図2を参照)と協働するように構成されている。
【0063】
好適には、このような2つの導入面15が設けられており、
図1では、これら2つの導入面15のうちの1つだけが観察者に面し、したがって図示されている。他方の導入面15は、好適には、径方向で反対側に位置するように差込み回転区分9に形成または配置されており、したがって観察者には見えない。
【0064】
したがって、工具対応部材3も、好適には、2つの導入対応面17を有している。
【0065】
センタリング区分5は、好適には、外側円錐部19として形成されている。軸線方向ストッパ7は、好適には、センタリング区分5を閉じた周方向線に沿って取り囲む軸線方向の環状面21として形成されている。
【0066】
センタリング区分5は、本実施例では特に短円錐として形成されている。軸線方向ストッパ7は、特に平坦面として形成されている。
【0067】
工具部材1は、好適には加工区分23を有しており、この加工区分23自体は、好適には少なくとも1つの切刃25、特に幾何学的に定義された少なくとも1つの切刃25、好適には幾何学的に定義された複数の切刃25を有している。加工区分23は、センタリング区分5に続くように、差込み回転区分9とは反対側に配置されており、これにより、センタリング区分5は、長手方向軸線Lに沿って見て、加工区分23と差込み回転区分9との間に配置されている。
【0068】
工具部材1は、本実施例では特に加工ヘッドとして、特に好適にはフライスヘッドとして形成されている。切刃25は、ろう付けされた切刃、挿入された切刃として形成されていてもよいし、加工区分23と一体に、特に、統一された材料で形成されていてもよい。工具部材1は、ドリル、コアドリル、摩擦工具として、または他の適切な形式で形成されていてよい。
【0069】
図2は、工具対応部材3の実施例の図を示している。同一かつ機能同一の要素には、すべての図面において同一の参照符号が付されているので、その限りでは、上述の説明がそれぞれ参照される。
【0070】
図2に示した工具対応部材3は、工具部材1との結合箇所の領域において部分的に切断されて図示されている。
【0071】
特に工具対応部材3は、センタリング区分5と協働するように構成されているセンタリング対応区分27と、軸線方向ストッパ7と協働するように構成されている軸線方向対応ストッパ29とを有している。さらに工具対応部材3は、差込み回転対応区分11を有している。
【0072】
差込み回転対応区分11はまた、少なくとも1つの締付け突出部31を有しており、この締付け突出部31は、工具部材1が工具対応部材3に対して回転させられた場合、特に少なくとも1つの締付け突出部31が少なくとも1つの締付け斜面13上を走行した場合に、工具部材1が工具対応部材3に向かって進められ、特に工具対応部材3内に引き込まれ、最終的に工具対応部材3と緊締されるように、少なくとも1つの締付け斜面13と協働するように構成されている。
図2に図示した実施例では、特に径方向で互いに反対側に位置する2つの締付け突出部31が設けられている。
【0073】
センタリング対応区分27は、本実施例では好適には内側円錐部33として形成されており、この内側円錐部33は好適には外側円錐部19よりも弾性であるので、外側円錐部19が差込み回転機構によって内側円錐部33内に引き込まれる場合に、内側円錐部33、特に内側円錐部33の壁が少なくとも部分的に拡張される。
【0074】
軸線方向対応ストッパ29は、本実施例では特に、特に内側円錐部33を閉じた周方向線に沿って取り囲む軸線方向の環状対応面35として形成されている。工具対応部材3と工具部材1とが互いに緊締された状態では、軸線方向の環状面21が、好適には、軸線方向の環状対応面35に全面にわたって不動に接触している。
【0075】
全体として、外側円錐部19と内側円錐部33とは一緒に、工具対応部材3に対する工具部材1の半径方向の位置決めを引き起こし、工具部材1と工具対応部材3とが互いに緊締される場合に、軸線方向の環状面21は、軸線方向の環状対応面35との協働において、工具部材1と工具対応部材3との間の軸線方向の相対位置を定義する。
【0076】
工具対応部材3は、工作機械、特に工作機械のスピンドルに結合するように構成されているシャンク区分37をさらに有している。シャンク区分37は、好適には、中空シャンクテーパ39を有している。
【0077】
図3は、
図2に示した工具対応部材3の詳細図を示している。
図3では、締付け突出部31のうちの1つ、さらに導入対応面17のうちの1つ、さらには内側円錐部33および環状対応面35を特に良好に確認することができる。
【0078】
図4は、工具部材1と工具対応部材3とを互いに結合した状態で有している工具41の詳細図を示しており、工具41は、好適には工具部材1と工具対応部材3とから成っている。
【0079】
図4では、工具対応部材3の詳細が単に縦断面図で図示されている一方で、工具部材1は工具対応部材3内に断面されずに配置されて、もしくは工具対応部材3に結合されて図示されている。工具対応部材3に工具部材1を緊締するために、好適には差込み回転区分9が、まず差込み回転対応区分11内に軸線方向で導入される。この場合に、導入面15が、導入対応面17と協働して、軸線方向の導入または挿入のための長手方向軸線Lを中心とした角度位置を定義する。締付け斜面13が締付け突出部31の高さに配置されている場合、工具部材1は、工具対応部材3に対して、好適には約90°、好適には90°よりいくらか多く締付け方向に回転させられ、その際に締付け突出部31が締付け斜面13上を走行し(または締付け斜面13が締付け突出部31上を走行し)、工具部材1、特に外側円錐部19は、特に環状面21が環状対応面35に当接するまで、工具対応部材3内、特に内側円錐部33内へと深く引き込まれる。好適には内側円錐部33は、少なくとも部分的に、特に僅かに拡張されるので、結果として工具対応部材3における工具部材1の冗長性、ひいては高精度かつ安定的な固定が達成される。
【0080】
全体的に、廉価で短い構造であり、正確かつ安定していて、簡単に操作することができる、構成部材が少ない、工具部材1を工具対応部材3に結合するための手段が提供される。
【国際調査報告】