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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(54)【発明の名称】電荷測定装置を有する質量分析計
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/40 20060101AFI20230227BHJP
   H01J 49/02 20060101ALI20230227BHJP
   H01J 49/42 20060101ALI20230227BHJP
【FI】
H01J49/40
H01J49/02 500
H01J49/42 900
H01J49/42 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537367
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 US2020065301
(87)【国際公開番号】W WO2021126972
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】62/949,554
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520477485
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・インディアナ・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ジャロルド,マーティン・エフ
(72)【発明者】
【氏名】クレマー,デヴィッド・イー
(57)【要約】
質量分析計は、サンプルからイオンを生成するように構成されたイオン発生器を備えるイオン源領域と、イオンを検出し、対応するイオン検出信号を生成するように構成されたイオン検出器と、イオン源領域とイオン検出器との間に配置され、生成されたイオンがイオン検出器に向かって軸方向にドリフトする電気的フィールドフリードリフト領域と、ドリフト領域を通って軸方向にドリフトするイオンが通過するドリフト領域に離れて配置された複数の電荷検出シリンダーと、それぞれが複数の電荷検出シリンダーの異なる電荷検出シリンダーに結合され、それぞれが複数の電荷検出シリンダーのうちの対応するそれぞれの電荷検出シリンダーを通過する生成されたイオンのうちの1つまたは複数のイオンの電荷の大きさに対応する電荷検出信号を生成するように構成された複数の電荷増幅器と、を有し得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルからイオンを生成するように構成されたイオン発生器を備えるイオン源領域と、
イオンを検出し、対応するイオン検出信号を生成するように構成されたイオン検出器と、
前記イオン源領域と前記イオン検出器との間に配置され、生成された前記イオンが前記イオン検出器に向かって軸方向にドリフトする電気的フィールドフリードリフト領域と、
前記ドリフト領域を通って軸方向にドリフトする前記イオンが通過する前記ドリフト領域に離れて配置された複数の電荷検出シリンダーと、
それぞれが前記複数の電荷検出シリンダーの異なる電荷検出シリンダーに結合され、それぞれが前記複数の電荷検出シリンダーのうちの対応するそれぞれの電荷検出シリンダーを通過する生成された前記イオンのうちの1つまたは複数のイオンの電荷の大きさに対応する電荷検出信号を生成するように構成された複数の電荷増幅器と、
を備える質量分析計。
【請求項2】
前記イオン源領域と前記ドリフト領域との間に配置されたイオン領域または器具と、
前記イオン領域または器具に電気的に接続され、生成された前記イオンを前記フィールドフリードリフト領域に加速するように配向された前記イオン領域または器具内に電界を構築するために少なくとも1つの電圧を選択的に生成するように構成された少なくとも1つの電圧源と
をさらに備える、請求項1に記載の質量分析計。
【請求項3】
前記質量分析計は、
少なくとも1つのプロセッサと、
前記イオン領域または器具内に前記電界を構築するために前記少なくとも1つの電圧を生成する前記少なくとも1つの電圧源を制御するように、前記プロセッサによって実行可能な命令が格納された少なくとも1つのメモリと
をさらに備える、請求項2に記載の質量分析計。
【請求項4】
前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令は、
(a)基準時刻RTに前記イオン加速領域内に前記電界を構築するために前記少なくとも1つの電圧を生成する前記少なくとも1つの電圧源を制御し、
(b)加速された前記イオンが前記フィールドフリードリフト領域を通って前記イオン検出器に向かって軸方向にドリフトする時に、前記複数の電荷増幅器のそれぞれによって生成された前記電荷検出信号のサンプルを前記少なくとも1つのメモリに格納し、
(c)前記イオン検出器を監視し、加速された前記イオンの少なくともサブセットのそれぞれの前記イオン検出器による検出時刻(DT)を格納し、
(d)それぞれがRTを基準とした前記検出時刻DTのそれぞれの検出時刻DTに基づいて、前記ドリフト領域通って加速された前記イオンの前記少なくともサブセットの飛行時間(TOF)を決定し、
(e)その前記それぞれのTOFに基づいて、前記複数の電荷増幅器によって生成された前記電荷検出信号の格納された前記サンプルの大きさに基づいて、ならびに、前記ドリフト領域、前記複数の電荷検出シリンダーのそれぞれ、およびその間の間隙の軸方向の長さに基づいて、加速された前記イオンの前記少なくともサブセットのそれぞれの電荷の大きさまたは電荷状態を決定する、前記プロセッサによって実行可能な命令をさらに含む、請求項3に記載の質量分析計。
【請求項5】
前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令は、
(i)加速された前記イオンの前記少なくともサブセットの速度のそれぞれを、その前記それぞれのTOFと、前記ドリフト領域の前記軸方向の長さとに基づいて決定し、
(ii)加速された前記イオンの前記少なくともサブセットのそれぞれに対して、前記イオンの決定された前記速度と前記軸方向の長さとに基づいて複数の時間ウィンドウを決定し、前記複数の時間ウィンドウのそれぞれは、前記イオンのRTまたはDTを基準として、前記イオンが前記複数の電荷検出シリンダーの異なるそれぞれの電荷検出シリンダーを通過する時間ウィンドウに対応し、
(iii)前記複数の電荷増幅器のそれぞれに対して、前記電荷検出信号の大きさを加速された前記イオンの前記少なくともサブセットの大きさに関連付ける1組の方程式を決定するために、加速された前記イオンの前記少なくともサブセットのそれぞれに対して前記それぞれの時間ウィンドウ中に前記電荷増幅器によって生成される前記電荷検出信号の前記サンプルを処理し、
(iv)加速された前記イオンの前記少なくともサブセットのそれぞれの電荷の大きさまたは電荷状態を決定するために複数組の方程式を解く、
ことによって加速された前記イオンの前記少なくともサブセットのそれぞれの前記電荷の大きさまたは電荷状態を決定する、前記プロセッサによって実行可能な命令をさらに含む、請求項4に記載の質量分析計。
【請求項6】
前記イオン領域または器具は、離れて配置された第1および第2のゲートを有するイオン加速領域を備え、前記第1のゲートは前記イオン源領域と隣り合っており、前記第2のゲートは前記フィールドフリードリフト領域と隣り合っており、
前記少なくとも1つの電圧源は前記第1および第2のゲートに電気的に接続され、前記イオン加速領域内に前記電界を構築するために前記第1および第2のゲートのうちの少なくとも1つに対して前記電圧源によって印加される電圧を選択的に制御するように構成された、請求項2から5のいずれか1項に記載の質量分析計。
【請求項7】
前記イオン領域または器具は、イオントラップを備え、
前記少なくとも1つの電圧源は前記イオントラップに電気的に接続され、前記イオントラップ内に前記電界を構築するために、前記イオントラップに印加される電圧を選択的に制御するように構成された、請求項2から5のいずれか1項に記載の質量分析計。
【請求項8】
前記イオン領域または器具は質量電荷比フィルタを備え、
前記少なくとも1つの電圧源は前記質量電荷比フィルタに電気的に接続され、前記質量電荷比フィルタ内に前記電界を構築するために、前記質量電荷比フィルタに印加される電圧を選択的に制御するように構成された、請求項2から5のいずれか1項に記載の質量分析計。
【請求項9】
前記質量分析計は、前記イオン源と前記イオン領域または器具との間に配置された質量電荷比フィルタをさらに備え、
前記イオン領域または器具はイオントラップを備え、
前記少なくとも1つの電圧源は前記質量電荷比フィルタおよび前記イオントラップに電気的に接続され、前記少なくとも1つの電圧源は、選択された質量電荷比を有するイオンのみ、または質量電荷比の選択された範囲内の質量電荷比を有するイオンのみが通過するように前記質量電荷比フィルタを構成する少なくとも第1の電圧を選択的に生成し、前記イオントラップ内に前記電界を選択的に構築する少なくとも第2の電圧を生成するように構成された、請求項2から5のいずれか1項に記載の質量分析計。
【請求項10】
前記質量分析計は、
前記イオン源と前記イオン領域または器具との間に配置された第1の質量電荷比フィルタと、
前記第1の質量電荷比フィルタと前記イオン領域または器具との間に配置され、通過するイオンを解離するように構成された解離段と、
前記イオン源と前記イオン領域または器具との間に配置された第2の質量電荷比フィルタとをさらに備え、
前記少なくとも1つの電圧源は前記第1および第2の質量電荷比フィルタのそれぞれに電気的に接続され、前記少なくとも1つの電圧源は、第1の選択された質量電荷比を有するイオンのみ、または質量電荷比の第1の選択された範囲内の質量電荷比を有するイオンのみが通過するように前記第1の質量電荷比フィルタを構成する少なくとも第1の電圧を選択的に生成し、選択された第2の質量電荷比を有するイオンのみ、または第2の質量電荷比の選択された範囲内の質量電荷比を有するイオンのみが通過するように前記第2の質量電荷比フィルタを構成する少なくとも第2の電圧を生成するように構成された、請求項2から5のいずれか1項に記載の質量分析計。
【請求項11】
前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令は、その前記それぞれのTOFと、前記ドリフト領域の前記軸方向の長さとに基づいて、加速された前記イオンの前記少なくともサブセットの質量電荷比のそれぞれを決定する、前記プロセッサによって実行可能な命令をさらに含む、請求項4から10のいずれか1項に記載の質量分析計。
【請求項12】
前記少なくとも1つのメモリに格納された前記命令は、そのそれぞれの決定された前記質量電荷比と、そのそれぞれの決定された前記電荷の大きさまたは電荷状態とに基づいて、加速された前記イオンの前記少なくともサブセットの質量値のそれぞれを決定する、前記プロセッサによって実行可能な命令をさらに含む、請求項11に記載の質量分析計。
【請求項13】
前記イオン検出器は、マイクロチャネルプレート検出器を備える、請求項1から12のいずれか1項に記載の質量分析計。
【請求項14】
前記イオン検出器は、イオン光子変換検出器を備える、請求項1から12のいずれか1項に記載の質量分析計。
【請求項15】
前記イオン検出器は、ファラデーカップ検出器を備える請求項1から12のいずれか1項に記載の質量分析計。
【請求項16】
前記イオン検出器は、電子増倍検出器を備える、請求項1から12のいずれか1項に記載の質量分析計。
【請求項17】
前記質量分析計は、
前記イオン検出器と、前記複数の電荷増幅器のそれぞれとに動作可能に結合された少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサに、前記イオン検出信号に基づいて前記ドリフト領域を通ってドリフトするイオンの質量電荷比を決定させ、前記複数の電荷増幅器のうちの1つまたは複数の電荷増幅器によって生成された前記電荷検出信号に基づいて前記イオンの対応電荷を決定させる、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な命令を格納した少なくとも1つのメモリと
をさらに備える、請求項1に記載の質量分析計。
【請求項18】
前記イオン発生器および前記サンプルの両方は、前記イオン源領域内に配置される、請求項1から17のいずれか1項に記載の質量分析計。
【請求項19】
前記イオン発生器および前記サンプルは、前記イオン源領域の外側に配置され、
前記イオン発生器は、前記サンプルからイオンを生成し、生成された前記イオンを前記イオン源領域に供給するように構成された、請求項1から17のいずれか1項に記載の質量分析計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2019年12月18日に出願された米国仮特許出願第62/949,554号に対してその利点および優先権を主張するものであり、その開示は、全体として参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
[0002]本開示は、一般に質量分析器具に関し、より詳しくは、イオン質量電荷比およびイオン電荷を同時に測定するように構成された質量分析器具に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]従来の質量分析計および質量分析器は、物質から生成された気相イオンの質量電荷比を測定することによって、その物質の化学成分の識別を図る。従来の質量分析計および質量分析器が粒子電荷を測定する機能を欠いているため、そのような器具によって生成されたスペクトル情報は、質量電荷比情報に限定されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004]本開示は、添付の特許請求の範囲に記載の特徴のうちの1つまたは複数、および/または以下の特徴およびその組み合わせのうちの1つまたは複数を含み得る。一態様において、質量分析計は、サンプルからイオンを生成するように構成されたイオン発生器を備えるイオン源領域と、イオンを検出し、対応するイオン検出信号を生成するように構成されたイオン検出器と、イオン源領域とイオン検出器との間に配置され、生成されたイオンがイオン検出器に向かって軸方向にドリフトする電気的フィールドフリードリフト領域と、ドリフト領域を通って軸方向にドリフトするイオンが通過するドリフト領域に離れて配置された複数の電荷検出シリンダーと、それぞれが複数の電荷検出シリンダーの異なる電荷検出シリンダーに結合され、それぞれが複数の電荷検出シリンダーのうちの対応するそれぞれの電荷検出シリンダーを通過する生成されたイオンのうちの1つまたは複数のイオンの電荷の大きさに対応する電荷検出信号を生成するように構成された複数の電荷増幅器と、を備え得る。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】質量電荷比に応じてイオンを分離および測定し、イオンが分離した時にイオンの電荷の大きさまたは電荷状態を測定するように構成された質量分析計の簡略図である。
図2】飛行時間(TOF)質量分析計の実施形態として図1の分析計を構成するイオン加速領域の形態で具現化された図1の分析計のイオン処理領域の簡略図である。
図3】質量電荷比に応じてイオンを分離および測定し、イオンが分離した時にイオンの電荷の大きさまたは電荷状態を測定するために、図1および図2のTOF質量分析計を動作するための簡略化されたプロセスの実施形態を図示するフローチャートである。
図4A】フィールドフリードリフト領域において軸方向に配置された3つの電荷検出シリンダーを備える図1および図2の分析計の説明的な例の一部の簡略図であり、時刻T0<T1での分析計の加速領域からの荷電粒子の加速後に、時刻T1に異なる質量電荷比を有する2つの例示的な荷電粒子がフィールドフリードリフト領域に入る例を示す。
図4B図4Aに類似した簡略図であり、時刻T2>T1におけるフィールドフリードリフト領域における2つの例示的な荷電粒子のそれぞれの位置を示す。
図4C図4Aおよび図4Bに類似した簡略図であり、時刻T3>T2でのフィールドフリードリフト領域における2つの例示的な荷電粒子のそれぞれの位置を示す。
図4D図4A図4Cに類似した簡略図であり、時刻T4>T3でのフィールドフリードリフト領域における2つの例示的な荷電粒子のそれぞれの位置を示す。
図4E図4A図4Dに類似した簡略図であり、時刻T5>T4でのフィールドフリードリフト領域における2つの例示的な荷電粒子のそれぞれの位置を示す。
図4F図4A図4Eに類似した簡略図であり、時刻T6>T5でのフィールドフリードリフト領域における2つの例示的な荷電粒子のそれぞれの位置を示す。
図4G図4A図4Fに類似した簡略図であり、時刻T7>T6でのフィールドフリードリフト領域における2つの例示的な荷電粒子のそれぞれの位置を示す。
図4H図4A図4Gに類似した簡略図であり、時刻T8>T7でのフィールドフリードリフト領域における2つの例示的な荷電粒子のそれぞれの位置を示す。
図4I図4A図4Hに類似した簡略図であり、時刻T9>T8でのフィールドフリードリフト領域における2つの例示的な荷電粒子のそれぞれの位置を示す。
図4J図4A図4Iに類似した簡略図であり、時刻T10>T9でのフィールドフリードリフト領域における2つの例示的な荷電粒子のそれぞれの位置を示す。
図4K図4A図4Jに類似した簡略図であり、時刻T11>T10でのフィールドフリードリフト領域における荷電粒子P2の位置を示し、検出器に到達した荷電粒子P1を示す。
図4L図4A図4Jに類似した簡略図であり、時刻T12>T11でのフィールドフリードリフト領域における荷電粒子P2の位置を示し、その後T13>T12で検出器に到達した荷電粒子P2をさらに示す。
図5】時間に対する電荷の大きさのプロットであり、図4A図4Dに図示するように、2つの例示的な荷電粒子が、時間ウィンドウT1~T4(T0を基準とする)中に加速領域の出口と隣り合ったドリフト領域に配置された第1の電荷検出シリンダーを通過する時の電荷増幅器CA1の例示的な出力を示す。
図6】時間に対する電荷の大きさのプロットであり、図4C図4Hに図示するように、2つの例示的な荷電粒子が、時間ウィンドウT3~T8(T0を基準とする)中に第1の電荷検出シリンダーと第3の電荷検出シリンダーとの間のドリフト領域に配置された第2の電荷検出シリンダーを通過する時の電荷増幅器CA2の例示的な出力を示す。
図7】時間に対する電荷の大きさのプロットであり、図4G図4Lに図示するように、2つの例示的な荷電粒子が、時間ウィンドウT7~T12(T0を基準とする)中に第2の電荷検出シリンダーに隣り合っておりイオン検出器に隣り合ったドリフト領域に配置された第3の電荷検出シリンダーを通過する時の電荷増幅器CA3の例示的な出力を示す。
図8】ドリフト領域を通って軸方向に時間的に分離したイオンの電荷値を決定する、図3に図示されたプロセスの一部の実施形態を図示するフローチャートである。
図9】質量電荷比走査可能質量分析計の実施形態として図1の分析計を構成する質量電荷比フィルタと、任意でイオントラップとの形態で具現化された図1の分析計のイオン処理領域の簡略図である。
図10】質量電荷比に応じてイオンを測定し、分析計のフィールドフリードリフト領域でイオンが分離した時にイオンの電荷を測定する、図1および図9の質量電荷比走査可能質量分析計を動作するための簡略化されたプロセスの実施形態を図示するフローチャートである。
図11】質量電荷比走査可能質量分析計の他の実施形態として図1の分析計を構成する、イオン解離領域によって分離された2つの質量電荷比フィルタの形態で具現化された図1の分析計のイオン処理領域の簡略図である。
図12】質量電荷比に応じてイオンを測定し、分析計のフィールドフリードリフト領域でイオンが分離した時にイオンの電荷を測定する、図1および図11の質量電荷比走査可能質量分析計を動作するための簡略化されたプロセスの実施形態を図示するフローチャートである。
図13】一面上に離れて配置された複数の導電性ストリップを有する細長い電気絶縁シートの形態の図1のフィールドフリードリフト領域の実施形態の斜視図である。
図14】フィールドフリードリフト管の形態でフィールドフリードリフト領域を形成するために接合された対向側部とともに示される図13のシートの斜視図である。
図15図14の断面線15-15に沿って見た場合の図13および図14のフィールドフリードリフト管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[0031]本開示の原理の理解を促す目的のため、添付図面に示された多くの例示的な実施形態を以下で参照し、それを説明するために、特定の表現が使用される。
【0007】
[0032]本開示は、荷電粒子の質量電荷比を測定するため、さらに荷電粒子がドリフト領域を通って移動する時の電荷の大きさまたは電荷状態を測定する装置および技法に関し、さらに、測定された質量電荷比ならびに測定された電荷の大きさまたは電荷状態に応じて荷電粒子の質量を決定するための装置および技法に関する。本文書の目的のため、「荷電粒子」および「イオン」という用語は、入れ替え可能に使用されてもよく、両方の用語は、正味の正電荷または負電荷を有する粒子を指すことが意図される。
【0008】
[0033]ここで図1を参照すると、荷電粒子の質量電荷比を測定し、さらに荷電粒子の電荷の大きさまたは電荷状態を測定するように構成された質量分析計10の図が示される。図示された実施形態では、質量分析計10は、イオン処理領域14のイオン入口A1に結合されたイオン源領域12を含み、イオン処理領域14のイオン出口A2は、ドリフト領域16の一端部に結合される。イオン検出器18は、ドリフト領域16の反対側の端部に配置される。一実施形態では、イオン検出器18は、ドリフト領域16に対向する検出面18Aを有する従来のマイクロチャネルプレート検出器であるが、他の実施形態では、イオン検出器18は、ドリフト領域16を通って移動するイオンのその時点での検出に応答して信号を生成するように構成および動作可能な従来の検出器でもよい。イオン検出器として実施され得る他の従来の器具および装置の例は、イオン光子変換検出器、ファラデーカップ検出器、電子増倍検出器、任意のソリッドステート検出器、高電圧衝突ダイノードを有する任意の検出器、または同様のものを含み得るが、これに限定されない。
【0009】
[0034]図1に図示された実施形態では、ドリフト領域16は、細長いドリフト管16A内に画定された線形のドリフト領域である。ドリフト領域16は、イオン処理領域14の出口A2とイオン検出器18のイオン検出面18Aとの間に長さDRLを有し、長手方向軸34が、ドリフト領域16の中央を通って、さらにイオン処理領域14の入口A1および出口A2のそれぞれの中央をそれぞれ通って延在する。ドリフト領域16が線形のドリフト領域の形態で図1に図示されているが、ドリフト領域16は、代替の実施形態では、全体として、または部分的に非線形でもよいことを理解されるであろう。非限定的な一例として、ドリフト領域16は、従来のイオン入口(すなわち導入口)およびイオン出口(すなわち導出口)構造を含む円形のドリフト領域の形で提供されてもよい。当業者は、少なくとも部分的に非線形のドリフト領域の他の例に想到し、そのような代替の構成は、本開示の範囲内に存在することが意図されることが理解されるであろう。
【0010】
[0035]以下で詳述するように、イオン源12は、例示的に、サンプル22からイオンを生成するための任意の従来のデバイスまたは装置20を含み、1つまたは複数の分子的特徴にしたがってイオンを分離、収集、および/または濾過するため、ならびに/もしくはおよび/またはイオンを解離、たとえば断片化させるための1つまたは複数のデバイスおよび/または器具24~24をさらに含んでもよい。例示的な一例として、決して限定的と考えられるべきでないが、イオン発生器20は、従来のエレクトロスプレーイオン化(ESI)源、マトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)源、またはサンプル22からイオンを生成するように構成された他の従来のイオン発生器を含み得る。イオンが生成されるサンプル22は、任意の生物由来材料または他の材料でもよい。
【0011】
[0036]電圧源26は、J個の信号経路を介してイオン源またはイオン源領域12に電気的に接続され、K個の信号経路を介してイオン処理領域14に電気的に接続され、ここでJおよびKは、それぞれ任意の正の整数でもよい。いくつかの実施形態では、電圧源26は、単一の電圧源の形態で実施されてもよく、他の実施形態では、電圧源26は、任意の数の個別の電圧源を含み得る。いくつかの実施形態では、電圧源26は、選択可能な大きさの1つまたは複数の時不変(すなわちDC)電圧を生成して供給するように構成または制御され得る。代替的または追加的に、電圧源26は、1つまたは複数の切り換え可能な時不変の電圧、すなわち1つまたは複数の切り換え可能なDC電圧を生成して供給するように構成または制御され得る。代替的または追加的に、電圧源26は、選択可能な形状、デューティーサイクル、最大振幅および/または周波数の1つまたは複数の時変信号を生成して供給するように構成されてもよく、または制御可能でもよい。後者の実施形態の特定の一例として、決して限定的と考えられるべきではないが、電圧源26は、無線周波数(RF)範囲の1つまたは複数の正弦波(または他の形状の)電圧の形態で1つまたは複数の時変電圧を生成して供給するように構成されてもよく、または制御可能でもよい。
【0012】
[0037]電圧源26は、M個の信号経路によって、従来のプロセッサ28に電気的に接続されているものとして例示的に示され、ここでMは任意の正の整数でもよい。イオン検出器18は、少なくとも1つの信号経路を介してプロセッサ28にも電気的に接続される。プロセッサ28は、例示的に従来のものであり、単一の処理回路または複数の処理回路を備え得る。プロセッサ28は、例示的に、命令が格納されたメモリ30を備える、またはメモリ30と結合されており、命令は、プロセッサ28によって実行されると、プロセッサ28に、イオン源領域12の動作を選択的に制御するための1つまたは複数の出力電圧と、イオン処理領域14の動作を選択的に制御するための1つまたは複数の出力電圧を生成するように、電圧源26を制御させる。メモリ30に格納された命令は、さらに例示的に、従来の手法でイオン質量電荷比値を決定するために、イオン検出器18によって生成されたイオン検出信号を処理するための命令を含む。いくつかの実施形態では、プロセッサ28は、1つまたは複数の従来のマイクロプロセッサまたはコントローラの形態で実施してもよく、そのような実施形態において、メモリ30は、1つまたは複数のマイクロプロセッサ実行可能命令または命令セットの形態で命令を格納する1つまたは複数の従来のメモリユニットの形態で実施されてもよい。他の実施形態では、プロセッサ28は、代替的または追加的に、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または同様のサーキットリーの形態で実施されてもよく、そのような実施形態において、メモリ30は、内部で命令がプログラムされ格納されているFPGA中に、および/またはその外部に含まれたプログラマブル論理ブロックの形態で実施されてもよい。さらに他の実施形態では、プロセッサ28および/またはメモリ30は、1つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)の形態で実施されてもよい。当業者は、プロセッサ28および/またはメモリ30が実施され得る他の形態を認識し、そのような実施の他の形態は、本開示によって企図され、本開示の範囲内に存在することが意図されることが理解されるであろう。いくつかの代替の実施形態では、電圧源26は、1つまたは複数の不変および/または時変出力電圧を選択的に生成するようにそれ自体がプログラム可能でもよい。
【0013】
[0038]プロセッサ28は、さらに例示的に、P個の信号経路を介して1つまたは複数の周辺デバイス32(PD)へ結合され、ここでPは、任意の正の整数でもよい。1つまたは複数の周辺デバイス32は、信号入力をプロセッサ28へ提供するための1つまたは複数のデバイス、および/またはプロセッサ28が信号出力を提供する1つまたは複数のデバイスを含んでもよい。いくつかの実施形態では、周辺デバイス32は、従来のディスプレイモニタ、プリンタ、および/または他の出力デバイスのうちの少なくとも1つを含み、そのような実施形態では、メモリ30には、プロセッサ28によって実行された時に、プロセッサ28に、格納されたデジタル化電荷検出信号の解析を表示および/または記録するように1つまたは複数の上記出力周辺デバイス32を制御させる命令が格納されている。
【0014】
[0039]図示された実施形態では、イオン源またはイオン源領域12は、例示的に、電圧源26に結合された少なくとも1つのイオン発生器20を備える。プロセッサ28は、例示的に、たとえばメモリ30に格納された命令によって、イオン発生器20にサンプル22からイオンを生成させるために1つまたは複数の電圧を生成するように電圧源26を制御するようにプログラムされる。いくつかの実施形態では、イオン発生器20およびサンプル22はイオン源領域12内に配置され、他の実施形態では、イオン発生器20およびサンプル22の両方がイオン源領域12の外部に配置され、さらに他の実施形態では、サンプル22がイオン源領域12の外部に配置され、イオン発生器20がイオン源領域12の内部に配置されるが、図1の破線表現によって図示されるように、サンプル22に、流動的に、または他のやり方で動作可能に結合される。一実施形態では、イオン発生器20は、荷電液滴の霧状ミストの形態でサンプルからイオンを生成するように構成された従来のエレクトロスプレーイオン化(ESI)源である。代替の実施形態では、イオン発生器20は、従来のマトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)源でもよく、またはそれを備えてもよい。ESIおよびMALDIが2つの従来のイオン発生器を表すに過ぎず、イオン発生器20は、代替的に、サンプルからイオンを生成するための任意の従来のデバイスまたは装置の形態で提供されてもよいことが理解されるであろう。
【0015】
[0040]いくつかの実施形態では、イオン源またはイオン源領域12は、1つまたは複数のイオン処理段24~24をさらに備えてもよく、ここでFは任意の正の整数でもよい。そのような実施形態では、プロセッサ28は、例示的に、1つまたは複数のイオン処理段24~24の動作を制御する1つまたは複数の電圧を生成するために電圧源26を制御するようにプログラムされる。そのようなイオン処理段24~24の例は、1つまたは複数の分子的特徴にしたがって荷電粒子を分離、収集、および/または濾過するための1つまたは複数のデバイスおよび/または器具、ならびに/もしくは荷電粒子を解離、たとえば断片化させるための1つまたは複数のデバイスおよび/または器具を、任意の順序および/または組み合わせで備えてもよいが、それに限定されない。1つまたは複数の分子的特徴にしたがって荷電粒子を分離するための1つまたは複数のデバイスおよび/または器具の例は、1つまたは複数の質量分析計または質量分析器、1つまたは複数のイオンモビリティ分析計、1つまたは複数のガスクロマトグラフおよび液体クロマトグラフ、および同様のものを含むが、それに限定されない。質量分析計または質量分析器の例は、1つまたは複数の質量分析計または質量分析器を備えるイオン源12の実施形態では、飛行時間(TOF)質量分析計、リフレクトロン質量分析計、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)質量分析計、四重極質量分析計、トリプル四重極質量分析計、磁場形質量分析計、または同様のものを含むが、それに限定されない。イオンモビリティ分析計の例は、1つまたは複数のイオンモビリティ分析計を備えるイオン源12の実施形態では、単管線形イオンモビリティ分析計、多重管線形イオンモビリティ分析計、円管イオンモビリティ分析計、または同様のものを含むが、それに限定されない。荷電粒子を収集するための1つまたは複数のデバイスおよび/または器具の例は、四重極イオントラップ、六重極イオントラップ、または同様のものを含むが、それに限定されない。荷電粒子を濾過するための1つまたは複数のデバイスおよび/または器具の例は、質量電荷比にしたがって荷電粒子を濾過するための1つまたは複数のデバイスまたは器具、粒子モビリティにしたがって荷電粒子を濾過するための1つまたは複数のデバイスまたは器具、および同様のものを含むが、それに限定されない。荷電粒子を解離するための1つまたは複数のデバイスおよび/または器具の例は、衝突誘起解離(CID)、表面誘起解離(SID)、電子捕獲解離(ECD)および/または光誘起解離(PID)、または同様のものによって電荷粒子を解離するための1つまたは複数のデバイスまたは器具を含むが、それに限定されない。イオン処理段24~24は、任意の上記のような従来のイオン分離器具および/またはイオン処理器具のうちの1つまたは任意の組み合わせを任意の順序で含んでもよく、いくつかの実施形態は、任意の上記のような従来のイオン分離器具および/またはイオン処理器具のうちの複数の隣り合った器具または離れて配置された器具を含んでもよいことを理解されるであろう。
【0016】
[0041]電荷検出器アレイ40は、例示的に、ドリフト領域16の内部に配置される、またはドリフト領域16と一体化されている。図1に図示する実施形態では、電荷検出器アレイ40は、例示的に、複数のN個の離れて配置された直列の電荷検出シリンダー40~40を含み、ここでNは、2より大きい任意の正の整数でもよい。決して限定的とは考えられるべきでない例示的の一実施形態では、Nはおよそ100でもよいが、他の実施形態では、Nは100未満、または100よりも大きくてもよい。いずれの場合でも、電荷検出シリンダー40~40は、それぞれ、イオンがそれぞれのシリンダーを通過できるようにするために全体にわたってボアを画定し、例示された実施形態では、電荷検出シリンダー40~40は、ドリフト領域16の中央の長手方向軸34がそれぞれの中央を通るように、端と端を付けて配置される。図示された実施形態では、それぞれの電荷検出シリンダー40~40は、イオン入口端とイオン出口端との間の長さCDLを画定するが、代替の実施形態では、電荷検出シリンダー40~40のうちの1つまたは複数は、CDLより長い長さ、または短い長さを有してもよい。最短のCDLは、例示的に、物理的に認識可能で、そこを通過する1つまたは複数のイオンへの電気的に検出可能な信号応答を生成するものである。理論上はCDLの上限は存在しないが、利用可能な空間および器具の動作条件などの実践上で考慮しなければならない事柄は、特定の用途において最長の有用なCDLを通常制限する。
【0017】
[0042]図示された実施形態では、複数の接地リング42~42N-1のそれぞれは、電荷検出シリンダー40~40N-1のうちのそれぞれの隣り合った対の間に画定された空間内に配置され、もう1つ他の接地リング42は、最後の電荷検出シリンダー40のイオン出口に隣り合って配置される。それぞれの接地リング42~42は、例示的に、貫通したリング開口RAを画定し、長手方向軸34がその中心を通り、ここで、RAは、例示的に、電荷検出シリンダー40~40の内径以下である。図示された実施形態では、電荷検出シリンダー40~40は、空間長SLだけ、互いから軸方向に離れている。図示された実施形態では、接地リング42~42N-1のそれぞれは、それぞれの接地リング42~42と電荷検出シリンダー40~40のうちのそれぞれの隣り合った電荷検出シリンダーとの間の距離がSL/2となるように、電荷検出シリンダー40~40のうちのそれぞれの隣り合った電荷検出シリンダーのイオン入口とイオン出口との間の空間SLを半径方向に二等分するように配置され、接地リング42は、接地リング42からそれぞれへの距離がSL/2となるように、電荷検出シリンダー40のイオン出口と、イオン検出器18の検出面18Aとの間の空間SLを二等分するように配置される。いくつかの実施形態では、接地リング42~42のうちの1つまたは複数は省略されてもよい。
【0018】
[0043]例示的な一実施形態では、ドリフト管16Aが、例示的に地電位(図1に図示)または他の基準電位に結合され、その内部に複数の電荷検出シリンダー40~40が適切に装着された導電性シリンダーの形態で提供される。1つまたは複数の接地リング42~42を含む上記の実施形態では、そのような1つまたは複数の接地リングが導電性シリンダーの内面に電気的および機械的に結合されてもよく、または、導電性シリンダーおよび1つまたは複数の接地リング42~42が単体の構造を有するように導電性シリンダーと一体的に形成されてもよい。他の例示的な実施形態では、ドリフト管16Aは、相互接続された一連の交互の導電性または電気絶縁スペーサーと、内部に複数の電荷検出シリンダー40~40が適切に装着され得る複数の接地リング42~42のそれぞれとで形成されてもよい。さらに他の例示的な実施形態では、ドリフト管16Aは、複数の離れて配置された平行な導電性ストリップが取り付けられた、または複数の離れて配置された平行な導電性ストリップが、たとえば従来の金属元型堆積技法を使用するなどの従来の手法で形成された、たとえば可撓性の回路基板などの可撓性または半可撓性の電気絶縁材料の巻き取り可能なシートの形態で提供されてもよい。この実施形態の非限定的な例が図13図15に図示され、以下で詳細に説明される。当業者は、ドリフト管16Aおよび/または電荷検出シリンダー40~40および/または1つまたは複数の接地リング42~42(それらを含む実施形態において)が提供され得る他の形態を認識し、そのような他の形態は本開示の範囲内に存在することが意図されることが理解されるであろう。
【0019】
[0044]各電荷検出シリンダー40~40は、N個の電荷増幅器CA1~CANの対応する電荷増幅器の信号入力に電気的に接続され、各電荷増幅器CA1~CANの信号出力は、プロセッサ28に電気的に接続される。イオン処理領域14のイオン出口A2から荷電粒子がドリフト管16Aに入ると、入ってきた荷電粒子は、ドリフト領域16を通ってイオン検出器18の検出面18Aに向かって軸方向に移動して入る。荷電粒子がドリフト管16Aを通って軸方向に移動する時、そのような荷電粒子のそれぞれは、複数の電荷検出シリンダー40~40を順次通過する。それぞれのそのような荷電粒子がそれぞれの連続した電荷検出シリンダー40~40を通過した時、その荷電粒子によって電荷が誘起され、誘起された電荷は、その粒子の電荷の大きさに比例した大きさを有する。電荷増幅器CA1~CANは、それぞれ例示的には従来のものであり、その出力で対応するそれぞれの電荷検出信号を生成するために、電荷検出器40~40のそれぞれの電荷検出器上で荷電粒子によって誘起された電荷に反応する。電荷増幅器CA1~CANによって生成された電荷検出信号は、プロセッサ28に供給される。電荷増幅器CA1~CANによって生成された電荷検出信号の大きさは、任意の時点において、(i)電荷検出シリンダー40~40の対応するそれぞれを通過する単一の荷電粒子の場合、その単一の荷電粒子の電荷の大きさ、または(ii)電荷検出シリンダー40~40の対応するそれぞれを同時に通過する複数の荷電粒子の場合、それらの複数の荷電粒子の合成の電荷の大きさ、と比例する。プロセッサ28は、次に、電荷増幅器CA1~CANのそれぞれによって生成された電荷検出信号を受信およびデジタル化し、プロセッサ28に結合された、または他のやり方でプロセッサ28によってアクセス可能であるメモリ30または1つまたは複数の他のメモリユニットにデジタル化された電荷検出信号を格納するように、例示的に動作可能である。
【0020】
[0045]質量分析計10のドリフト領域16はフィールドフリードリフト領域(すなわち非電界)であり、イオン処理領域14のイオン出口A2を介してドリフト管16Aに初期速度で入る荷電粒子イオンは、ほぼ不変速度でイオン検出器18の検出面18Aに向かってドリフトする。この点に関して、イオン源12および/またはイオン処理領域14は、初期速度でドリフト管16Aへイオンを通過させる原動力を通常提供する。その原動力は、いくつかの異なる形態のうちの任意の一形態または任意の組み合わせにおいて例示的に提供されてもよく、その例は、1つまたは複数のイオン加速電界、1つまたは複数の磁界、外部環境とイオン源12との間の圧力差および/またはイオン源12とドリフト管16Aとの間の圧力差、ならびに同様のものを含み得るが、これに限定されない。いずれの場合でも、荷電粒子がフィールドフリードリフト領域16を通ってドリフトすると、荷電粒子は、質量電荷比にしたがって時間において分離し、より低い質量電荷比を有する荷電粒子は、より高い質量電荷比を有する荷電粒子よりも速くイオン検出器18に到達する。
【0021】
[0046]簡単に上述したように、メモリ30は、例示的に、(a)プロセッサ28に、(i)イオン発生器20に、荷電粒子を生成させ、(ii)イオン処理領域14からドリフト領域16へ、荷電粒子のうちの個々の荷電粒子を通過させる、荷電粒子の所定のグループまたはセットを通過させる、または生成した荷電粒子の全てを通過させ、ドリフト領域16を通って荷電粒子はそれぞれが不変エネルギーを有して軸方向にイオン検出器18へ移動するために、従来の手法で電圧源26を制御させ、(b)検出器18に到達する荷電粒子の質量電荷比を決定するために、従来の手法でイオン検出器18によって生成された検出信号を処理する、プロセッサ28によって実行可能な命令を含む。図1に図示された質量分析計10の実施形態では、メモリ30は、さらに例示的に、ドリフト領域16を通って軸方向に移動した荷電粒子のそれぞれの電荷の大きさおよび/または電荷状態を決定するために、さらに、その後、測定された粒子質量電荷比ならびに測定された粒子電荷の大きさまたは電荷状態に基づいて粒子質量を決定するために、イオン検出器18によって生成された検出信号、および電荷増幅器CA1~CANのそれぞれ、または少なくともいくつかによって生成された検出信号を処理する、プロセッサ28によって実行可能な命令を含む。いくつかの実施形態では、たとえば、イオン源12および/またはイオン処理領域14が複数のイオンを生成し、たとえばイオン処理領域14のイオン出口A2からドリフト領域16に同時に供給するように構成された場合、図1に例として図示されるように、イオン処理領域14のイオン出口A2と第1の電荷検出シリンダー16のイオン入口端との間(または第1の電荷検出シリンダー16のイオン入口端の前方に配置され得る接地リングのイオン出口A2とイオン入口との間)に長さPRLのアレイ前空間を含むようにドリフト管16Aを構成することが望ましい場合がある。これによって、ドリフト領域16を通って軸方向に移動している荷電粒子は、電荷検出器アレイ16による電荷測定を実行前に、(フィールドフリー領域16における質量電荷比に応じた)何らかの量の時間的な軸方向の分離が行われることを可能にして、それにより、電荷増幅器CA1~CANのうちの最初の1つまたは複数の電荷増幅器によって生成された電荷検出信号の品質および有用性を高め得る。アレイ前空間16Bの長さPRLは、用途に基づいて例示的に選択されてもよく、いくつかの実施形態では、アレイ前空間16Bは、全体的に省略され得る。
【0022】
[0047]ここで図2を参照すると、イオン加速領域14’の形態で実施されたイオン処理領域14の実施形態が示される。図2で図示された実施形態では、イオン加速領域14’は、イオン入口A1を画定する導電性ゲート36と、イオン出口A2を画定する他の導電性ゲート38とを含む。ゲート36、38は、軸方向に、互いから離れて配置され、ゲート36がイオン源領域12に隣り合って配置され、ゲート38がドリフト管16Aの入口端に隣り合って配置される。一実施形態では、ゲート36、38は、例示的に、それぞれの入口A1/出口A2を画定する導電性プレートまたはリングの形態でそれぞれが提供される。いくつかのそのような実施形態では、イオン加速領域14’は、たとえば、イオン出口A2によって荷電粒子を配向するために、プロセッサ28によって従来の手法で構成および/または制御される1つまたは複数の従来の放射集束構造またはデバイスを備え得る。いくつかの代替の実施形態では、ゲート36、38の一方または両方は、導電性グリッドまたは他の従来の導電性ゲート構造の形態で提供され得る。いずれの場合でも、電圧源26の電圧出力VS1は、導電性ゲート36に電気的に接続され、電圧源26の他の電圧出力VS2は導電性ゲート38に電気的に接続される。
【0023】
[0048]イオン加速領域14’の動作は、1つまたは複数の生成されたイオンがイオン入口A1を介してイオン加速領域14’に入った場合、プロセッサ28は、イオン出口A2を通ってドリフト管16Aの入口端に入るようにイオンを加速するように配向されたゲート36、38間に電界Eを生成するように電圧源26を制御するように動作可能である点で従来通りである。正荷電粒子の場合、電圧VS1およびVS2は、図2に図示された方向で、ゲート36、38間に電界Eを生成するように選択され、負荷電粒子の場合、電圧VS1およびVS2は、図2に図示された方向とは逆方向で、ゲート36、38間に電界を生成するように選択される。いずれの場合も、生成された電界Eは、イオン加速領域14’に含まれた1つまたは複数の生成されたイオンをドリフト領域16へ加速するように動作し、ドリフト領域16を通って、1つまたは複数の生成されたイオンは、それぞれ不変エネルギーでイオン検出器18に向かって軸方向にドリフトする。イオン処理領域14が図2に例として図示されるようにイオン加速領域14’として実施される場合、質量分析計10は、構造上、フィールドフリードリフト管16Aに、またはその一部として、またはそれを画定して軸方向に配置される電荷検出器アレイ40を有する飛行時間(TOF)質量分析計である。
【0024】
[0049]ここで図3を参照すると、イオン質量電荷比、イオン電荷(大きさおよび/または電荷状態)ならびにイオン質量を測定するように、図1および図2のTOF質量分析計(すなわち、イオン処理領域14として実施される図2のイオン加速領域14’を有する図1の質量分析計10)を動作するための例示的なプロセス100を図示する簡略フローチャートが示される。プロセス100は、例示的に、粒子質量電荷比、粒子電荷および粒子質量の測定を実行する、プロセッサ28によって実行可能な命令の形態でメモリ30に格納される。プロセス100は、例示的に、イオン発生器20によって生成された1つまたは複数の荷電粒子がイオン加速領域14’内、すなわちゲート36、38間に存在する時点で開始する。プロセス100の前に、プロセッサ28は、イオン発生器20に複数のイオンを生成させるために従来の手法で電圧源26を制御する。イオン源12がイオン処理段24~24を全く備えない(図1参照)実施形態では、生成された複数のイオンの全てではないが大部分が、入口A1を通過し、イオン加速領域14’に存在し、場合によっては、出力電圧VS1、VS2の一方または両方を、存在するのであればイオン発生器20に印加された電圧に関して制御するように、電圧源26の制御により支援される。
【0025】
[0050]イオン源12がイオン処理段24~24図1を参照)のうちの1つまたは複数を備える代替の実施形態では、プロセッサ28は、生成された複数のイオンのサブセットをイオン加速領域14’に供給するために、および/または生成された複数のイオンの修正セットをイオン加速領域14’に供給するために従来の手法で1つまたは複数のイオン処理段24~24を制御する、または他のやり方で動作させるように電圧源26を制御するように動作可能である。例示的な一実施形態では、決して限定的とは考えられるべきでないが、1つまたは複数のイオン処理段24~24は、たとえば四重極フィルタなどの従来の質量電荷比フィルタの形態で実施されてもよく、プロセッサ28は、この例示的な実施形態では、閾値の質量電荷比値を上回る質量電荷比または閾値の質量電荷比値を下回る質量電荷比を有する、もしくは質量電荷比の所定の範囲内の質量電荷比を有する複数の生成されたイオンのサブセットをイオン加速領域14’へ通過させるために、電圧源26を制御するように動作可能でもよい。他の例示的な実施形態では、同様に決して限定的とは考えられるべきでないが、1つまたは複数のイオン処理段24~24は、代替的または追加的に、複数の生成されたイオンまたはサブセットを解離、たとえば断片化し、その場合、生成された複数の荷電粒子の修正セットをイオン加速領域14’へ通過させるように、プロセッサ28によって動作可能または制御可能な解離段を備える。さらに他の例示的な実施形態では、決して限定的とは考えられるべきでないが、1つまたは複数のイオン処理段24~24は、閾値のイオンモビリティ値を上回るイオンモビリティ値または閾値のイオンモビリティ値を下回るイオンモビリティ値を有する、もしくはイオンモビリティ値の所定の範囲内のイオンモビリティ値を有する複数の生成されるイオンのサブセットをイオン加速領域14’へ通過させるようにプロセッサ28によって制御可能なイオンモビリティ分析計を備え得る。当業者は、1つまたは複数のイオン処理段24~24として実施され得る他の器具または段、および器具または段の組み合わせを認識し、任意のそのような他の器具または段ならびに/もしくは器具または段の組み合わせが本開示の範囲内に存在することが意図されることが理解されるであろう。全体として、1つまたは複数のイオン処理段24~24は、1つまたは複数のイオン処理段24~24を備えるイオン源12の実施形態では、1つまたは複数の分子的特徴にしたがってイオンを分離、収集および/または濾過する、ならびに/もしくはイオンを解離、たとえば断片化するように構成された1つまたは複数の器具または段および/またはその様々な組み合わせの形態で実施され得る。
【0026】
[0051]再度図3を参照すると、プロセス100は、例示的に、プロセッサ28が、例示的に、ドリフト領域16の寸法情報(DI)の少なくとも一部をメモリ30に格納するように動作可能なステップ102で開始する。いくつかの実施形態では、ステップ102は、プロセッサ28によって部分的に実行され、たとえば、プロセッサ28に結合された周辺デバイス32を使用して寸法情報をメモリ30に入力することによって手動で部分的に実行され、他の実施形態では、プロセッサ28は、たとえば、メモリ30またはプロセッサ28に結合された周辺デバイス32によって読み込み可能な外部メモリデバイスに格納されたファイルからDIを読み込むことによって、ステップ102を全体的に実行し得る。一実施形態では、DIは、例示的に、少なくとも、ドリフト領域16、すなわちイオン加速領域14’のイオン出口A2とイオン検出器18のイオン検出面18Aとの間の全長DRL、複数の電荷検出シリンダー40~40の長さCDL、隣り合った電荷検出シリンダー40~40間の空間の長さSL、電荷検出シリンダー40~40の総個数N、存在する場合のアレイ前の長さPRL、および、SLと異なる場合は、最後の電荷検出シリンダー40のイオン出口端とイオン検出器のイオン検出面18Aとの距離を含む。寸法情報(DI)は、例示的に、ドリフト領域16を軸方向に通過する荷電粒子のそれぞれを、荷電粒子が、軸方向に、電荷検出シリンダー40~40のそれぞれ、または電荷検出シリンダー40~40の少なくともサブセットを通過する対応時刻と一致させることを目的として格納される。
【0027】
[0052]ステップ102の後、プロセス100はステップ104に進み、プロセッサ28は、電圧源26に、荷電粒子のそれぞれが、それぞれの不変速度で、ドリフト領域16を軸方向にドリフトするように、電圧VS1およびVS2を生成させる、または電圧VS1およびVS2を、イオン加速領域14’に存在する荷電粒子をイオン出口A2を通ってドリフト領域16へ加速するように配向されたイオン加速領域14’においてイオン加速電界を構築する値に切り換えさせるように、基準時刻RTに電圧源26を制御するように動作可能である。プロセス100を説明する目的上、RTにおいて、M個の荷電粒子がイオン加速領域14’からドリフト領域16へ加速されることが仮定され、ここでMは任意の正の整数でもよい。
【0028】
[0053]ステップ104の後、プロセス100はステップ106へ進み、プロセッサ28は、電荷増幅器CA1~CANのそれぞれによって生成された電荷検出信号、または少なくともそのサブセットを、ドリフト領域16へ加速されたM個の荷電粒子がイオン検出器18に向かって軸方向にドリフトしたRTに関連して、記録、すなわち格納するように動作可能である。一実施形態では、プロセッサ28は、ステップ106で、電荷増幅器CA1~CANによって生成された電荷検出信号を、選択されたサンプルレートでサンプリングするように動作可能である。いくつかの実施形態では、プロセッサ28は、電荷検出信号がアクティビティを停止した時、すなわちステップ104でドリフト領域16に加速された荷電粒子の全てがそれぞれの電荷検出シリンダー40~40を通過した後に、それぞれの電荷検出信号のサンプリングを連続的に中止するように動作可能でもよい。他の実施形態では、プロセッサ28は、イオン検出器18での荷電粒子のうちの最後の荷電粒子の検出後にサンプリングを中止するように動作可能でもよい。
【0029】
[0054]いずれの場合でも、プロセスはステップ106からステップ108へ進み、プロセッサ28は、M個の荷電粒子のそれぞれがイオン検出器18の検出面18Aに到達して、検出された基準時刻RTを基準として、検出時刻DT~DTを記録、すなわちメモリ30に格納するように動作可能である。その後、ステップ110で、プロセッサ28は、それぞれが基準時刻RTと、格納された検出時刻DT~DTのうちの対応する検出時刻、たとえば、TOF1-M=(DT1-M-RT)とに応じて、M個の荷電粒子の飛行時間(TOF)を計算し、メモリ30に格納するように動作可能である。それによって、イオン検出器18におけるM番目の荷電粒子の検出後、メモリ30は、M個の飛行時間値TOF1-Mをそれ自体に格納する。
【0030】
[0055]ステップ110の後、プロセス100はステップ112に進み、プロセッサ28は、たとえばCH1-M=F(DI,TOF1-M,CA1~CAN)など、格納済み寸法情報DI、それぞれの格納済み飛行時間TOF1-M、および電荷増幅器CA1~CANの全部または少なくともサブセットによって生成された格納済み電荷検出信号、に基づいて、またはその関数としてM個の荷電粒子の電荷の大きさまたは電荷状態(CH)を計算してメモリ30に格納するように動作可能である。
【0031】
[0056]ステップ112の後、プロセス100はステップ114に進み、プロセッサ28は、たとえばm/z1-M=F(TOF1-M,DRL,U)など、それぞれの飛行時間TOF1-M、ドリフト領域16の長さDRL、および荷電粒子をイオン加速領域14’からドリフト領域16へ加速する電圧VS1、VS2の大きさに関係した電位Uの既知の関数として、既知の関数として、従来の手法でM個の荷電粒子の質量電荷比(m/z)を計算してメモリ30に格納するように動作可能である。
【0032】
[0057]ステップ114の後、プロセス100はステップ116に進み、プロセッサ28は、たとえば、m1-M=m/z1-M*CH1-Mなど、たとえばm/zとCHの積として、従来の手法でM個の荷電粒子の質量値(m)を計算してメモリ30に格納するように動作可能である。
【0033】
[0058]最後の荷電粒子Mがイオン検出器18に到達した後のいずれの時でも荷電粒子の新規のセットまたはサブセットがイオン加速領域14’に存在することを仮定すると、プロセス100はステップ104に戻り得ることが理解されるであろう。これによって、プロセス100は、図3の破線表現で図示されるように、ステップ108~116のいずれかの後にステップ104に戻ってもよく、ループ後のステップ110~116の残りは、質量分析計10の制御された動作から分離して実行され得る。
【0034】
[0059]プロセッサ28は、例示的に、様々な異なるプロセスまたはアルゴリズムを使用して、プロセス100のステップ112を実行し得る。プロセス100のステップ112の実行のためのそのような一プロセス200の一例が図8に図示され、以下で詳述される。ただし、このプロセスを説明する前に、軸方向に配置された3つの電荷検出シリンダー40~40を含む簡略化されたドリフト領域16を通って軸方向に移動する、異なる質量電荷比を有する2つの荷電粒子P1およびP2の簡略化された例が図4A図7を参照して説明され、この例は、図8に図示されるプロセス200の動作を実演するために使用される。
【0035】
[0060]ここで図4A図4Lを参照すると、イオン加速領域14’のゲート38のイオン出口A2とイオン検出器18のイオン検出面18Aとの間でドリフト領域16に軸方向に配置された3つの電荷検出シリンダー40~40を含む、図1および図2のTOF質量分析計10の一部の簡略化された例が示される。この簡略化された質量分析計を用いて、図4A図4Lは、ドリフト領域16に加速され、時間に応じて、3つの電荷検出シリンダー40~40のそれぞれを通って連続してドリフトする2つの荷電粒子P1、P2を図示し、ここで、P1はP2よりも低い質量電荷比を有する。図5は、荷電粒子が通過する時に第1の電荷増幅器CA1によって生成される例示的な電荷検出信号を図示し、図6および図7は、第2の電荷増幅器CA2および第3の電荷増幅器CA3それぞれによって生成される例示的な電荷検出信号を図示する。
【0036】
[0061]図4Aに図示されるように、荷電粒子P1およびP2は、基準時刻T=T0に、イオン加速領域14’からドリフト領域16へ加速される。この例では、荷電粒子P1およびP2は、両方とも、T=T0にイオン加速領域14’のイオン出口A2を通過し、T=T0にドリフト領域を通る軸方向のドリフトを開始することが理解される。プロセス100のステップ104に関して上述しように、プロセッサ28は、基準時刻RTをRT=T0として記録するように動作可能である。
【0037】
[0062]後続の時刻T1>T0に、第1の荷電粒子P1および第2の荷電粒子P2の両方は、図1にも図示されるように、第1の電荷検出シリンダー40に入る。図4Bに図示されるように、時刻T2>T1に荷電粒子P1は電荷検出シリンダー40を出て、図4Dに図示されるように、時刻T4>T2に荷電粒子P2は電荷検出シリンダー40を出る。図5に図示するように、荷電粒子P1およびP2の両方が電荷検出シリンダー40を通って移動するT1とT2との間で、荷電粒子P1およびP2は、ともに、電荷検出シリンダー40上で大きさC1の電荷を誘起する。同様に図5に図示するように、その後、T2とT4との間で、粒子P2のみが電荷検出シリンダー40を通って移動することを継続し、電荷検出シリンダー40上で大きさC2の電荷を誘起する。
【0038】
[0063]図4C図4Hに図示するように、荷電粒子P1およびP2は、それぞれ時刻T3およびT5に第2の電荷検出シリンダー40に入り、ここでT5>T4>T3である。時刻T6>T5に、荷電粒子P1は電荷検出シリンダー40を出て、時刻T8>T6に、荷電粒子P2は電荷検出シリンダー40を出る。図6に図示するように、T3とT5との間で粒子P1のみが電荷検出シリンダー40を通って移動する場合、荷電粒子P1は、電荷検出シリンダー40上で大きさC3の電荷を誘起する。同様に図6に図示されるように、荷電粒子P1およびP2の両方が電荷検出シリンダー40を通って移動するT5とT6との間で、荷電粒子P1およびP2はともに電荷検出シリンダー40上で大きさC4>C3の電荷を誘起し、荷電粒子P2のみが電荷検出シリンダー40を通って移動するT6とT8の間で、荷電粒子P2は、電荷検出シリンダー40上でC5<C3の電荷を誘起する。
【0039】
[0064]図4G図4Lに図示するように、荷電粒子P1およびP2は、それぞれ時刻T7およびT9に第3の電荷検出シリンダー40に入り、ここでT9>T8>T7である。時刻T10>T9に、荷電粒子P1は電荷検出シリンダー40を出て、時刻T11>T10に、荷電粒子P1はイオン検出器18の検出面18Aに接触する。プロセス100のステップ108に関して上述したように、イオン検出器18は、T=T11で荷電粒子P1の検出時に検出信号を生成し、プロセッサ28は、荷電粒子P1の検出時刻DTP1をDTP1=T11として記録するように動作可能である。
【0040】
[0065]時刻T12>T11に、荷電粒子P2は電荷検出シリンダー40を出て、時刻T13>T12に、荷電粒子P2はイオン検出器18の検出面18Aに接触する。プロセス100のステップ108に関して上述したように、イオン検出器18は、T=T13で荷電粒子P2の検出時に検出信号を生成し、プロセッサ28は、荷電粒子P2の検出時刻DTP2をDTP2=T13として記録するように動作可能である。
【0041】
[0066]図7に図示するように、T7とT9との間で、第3の電荷検出シリンダー40を通って移動する荷電粒子P1のみが、電荷検出シリンダー40上で大きさC6の電荷を誘起する。荷電粒子P1およびP2の両方が電荷検出シリンダー40を通って移動するT9とT10との間で、荷電粒子P1およびP2はともに電荷検出シリンダー40上で大きさC7>C6の電荷を誘起し、荷電粒子P2のみが電荷検出シリンダー40を通って移動するT10とT12との間で、荷電粒子P2は、電荷検出シリンダー40上でC8<C6の電荷を誘起する。
【0042】
[0067]ここで図8を参照すると、図3に図示され上述されたプロセス100のステップ112を実行するための例示的なプロセス200を図示する簡略化されたフローチャートが示される。プロセス200は、例示的に、図1および図2に図示される飛行時間質量分析計10のドリフト領域16を通って移動する荷電粒子の電荷の大きさまたは電荷状態の測定を実行する、プロセッサ28によって実行可能な命令の形態で、メモリ30に格納される。プロセス200は、例示的に、プロセッサ28がカウンタiを1または何らかの他の定数に設定するように動作可能であるステップ202で開始する。その後、ステップ204で、プロセッサ28は、例示的に、たとえば、TWi,1-N=F(DI,TOF)など、i番目の荷電粒子がプロセス100の一部としてN個の電荷検出シリンダー40~40のそれぞれを通過する時刻または時間ウィンドウTWi,1-Nを決定し、メモリ30に格納するために、寸法情報DIとともに、プロセス100のステップ110で決定された(図3に図示されたプロセス100にしたがってドリフト領域16を通過した合計M個の荷電粒子のうちの)i番目の荷電粒子の飛行時間値TOFを処理するように動作可能である。
【0043】
[0068]一実施形態では、プロセッサ28は、関係v=DRL/TOFにしたがってドリフト領域16におけるi番目の荷電粒子の(不変)速度vを最初に決定することによってステップ204を実行するように動作可能である。ここでi番目の荷電粒子のvが既知の場合、プロセッサ28は、ドリフト領域内の既知の位置、i番目の荷電粒子の速度v、および基準時刻RTとi番目の荷電粒子の検出時刻DTとの一方または両方を基準として、電荷検出シリンダー40~40のイオン入口端および/または出口端の間の距離に基づいて、N個の時間ウィンドウTWi,1-Nを決定するように動作可能である。一例として、i番目の荷電粒子が第1の電荷検出シリンダー40を通過する時間ウィンドウに対応する時間ウィンドウTWi,1は、関係TWi,1=PRL/vから(PRL+CDL)/vにしたがって、基準時刻RTを基準としてプロセッサ28によって決定され得る。i番目の荷電粒子が第2の電荷検出シリンダー40を通過する時間ウィンドウに対応する時間ウィンドウTWi,2は、同様に、関係TWi,2=(PRL+CDL+SL)/vから(PRL+2CDL+SL)/vなどにしたがって、基準時刻RTを基準としてプロセッサ28によって決定され得る。他の例として、時間ウィンドウTWi,1は、関係TWi,1=[DT-N(CDL+SL)/v]から{DT-[(N-1)(CDL)+(N)(SL)]/v}などにしたがってi番目の荷電粒子の検出時刻DTを使用して、基準時刻RTを基準としてプロセッサ28によって決定され得る。他の実施形態では、プロセッサ28は、検出時刻DTに関連して、またはRTとDTとの間の時刻を基準として、時間ウィンドウTWi,1-Nを計算するように動作可能でもよい。いずれの場合でも、N個の電荷検出シリンダー40~40のそれぞれをi番目の荷電粒子が通過するRT、DT、またはその間の何らかの基準時間を基準として時間ウィンドウに対応する時間ウィンドウTWi,1-Nのそれぞれがステップ204で決定されると、プロセス200はステップ206および208に進み、カウンタiを1だけ増分し、荷電粒子のうちの全M個の荷電粒子の時間ウィンドウTW1-M,1-Nが決定されるまでステップ204が再実行される。ステップ204~208の完了後、メモリ30は、時間ウィンドウTW1-M,1-NのM×Nの行列をそれ自体に格納し、M行のそれぞれは、M個の荷電粒子の対応するそれぞれの荷電粒子の時間ウィンドウデータを含み、N列のそれぞれは、N個の電荷検出シリンダー40~40の対応するそれぞれの電荷検出シリンダーの時間ウィンドウデータを含む。
【0044】
[0069]ステップ206におけるYES分岐の後に、プロセッサ28は、例示的に、ステップ210で、カウンタiを1または何らかの他の定数にリセットするように動作可能である。その後、ステップ212で、プロセッサ28は、例示的に、それぞれの時間ウィンドウ中にM個の荷電粒子のうちの対応する荷電粒子によって寄与されたi番目の電荷増幅器CAiによって生成された異なる電荷の大きさと一致するように、時間ウィンドウ行列のi番目の列の各時間ウィンドウ中にi番目の電荷増幅器CAiによって生成された電荷検出の大きさを処理するように動作可能である。たとえば、M個の荷電粒子のうちの第1の荷電粒子がi番目の電荷検出シリンダー40を通過する時間ウィンドウTW1,i中に、第1の荷電粒子は、時間ウィンドウTW1,i中にi番目の電荷増幅器CAiによって生成された電荷検出信号で捕捉された電荷をi番目の電荷検出シリンダー40上で誘起する。同様に、M個の荷電粒子のうちの第2の荷電粒子がi番目の電荷検出シリンダー40を通過する時間ウィンドウTW2,i中に、第2の荷電粒子は、その時間ウィンドウTW2,i中にi番目の電荷増幅器CAiによって生成された電荷検出信号で捕捉された電荷をi番目の電荷検出シリンダー40上で誘起する。さらに、M個の荷電粒子のうちの第1および第2の荷電粒子の両方がi番目の電荷検出シリンダー40を通過する時間ウィンドウTW1,iとTW2,iとの間の重複の間、第1および第2の荷電粒子は、ともに、その時間ウィンドウ重複中などにi番目の電荷増幅器CAi上で合成電荷を誘起する。したがって、時間ウィンドウ行列のi番目の列の時間ウィンドウ中に、i番目の電荷増幅器CAiによって生成された電荷検出信号を処理することによって、M個の荷電粒子および/またはその様々な組み合わせのそれぞれを、対応する電荷の大きさの値にマッピングする方程式のセットを生成する。ステップ212の後、プロセス200はステップ214および216に進み、カウンタiを1だけ増分し、N個の電荷増幅器CA1~CANのそれぞれによって生成された電荷検出信号の大きさが、M個の荷電粒子のうちの対応する荷電粒子および/または様々な組み合わせにマッピングされるまで、ステップ212が再実行される。ステップ212~216の完了後、メモリ30が、M個の荷電粒子および/またはその様々な組み合わせのそれぞれを、それぞれの電荷の大きさの値に関係付ける連立方程式を格納する。ステップ216の後、プロセッサ28はステップ218に進み、その連立方程式または少なくともそのサブセットを解いて、M個の荷電粒子のそれぞれの電荷の大きさCH1-Mを決定し、またはM個の荷電粒子の少なくともサブセットの電荷の大きさを決定する。いくつかの実施形態では、プロセッサ28は、ステップ218で、たとえば、関係CS=CH/eにしたがって、決定された電荷の大きさの値CH1-Mのうちの1つまたは複数を電荷状態値CS1-Mに変換するようにさらに動作可能でもよく、ここでeは素電荷(定数)である。
【0045】
[0070]再度、図4A図7に図示された簡略例を参照すると、荷電粒子の簡略化されたセットおよび簡略化された質量分析計構造に対する適用による各プロセスの動作をさらに説明するために、ここで、プロセス100および200のステップがその例に適用される。この簡略例において、M=2(2つの荷電粒子P1およびP2)およびN=3(3つの電荷検出シリンダー40~40およびそれぞれの電荷増幅器CA1~CA3)である。以下の説明では、時間ウィンドウは、例示的に、上述したように基準時刻RTを基準として決定されるが、時間ウィンドウは、いくつかの非限定的な例が上述された質量分析計10の動作と関連する1つまたは複数の他の時間イベントを基準として決定されてもよいことが理解されるであろう。
【0046】
[0071]ステップ104で、プロセッサ28は、基準時刻RT=T0に、P1およびP2をドリフト領域16に加速するために電圧源26を制御するように動作可能である。その後、ステップ106で、プロセッサ28は、図4A~4Lに図示されるように荷電粒子P1およびP2がイオン検出器18に向かってドリフトして入る時に、3つの電荷増幅器CA1~CA3のそれぞれによって生成された電荷検出信号のサンプルをメモリに格納するように動作可能である。ステップ108で、プロセッサ28は、イオン検出器18による荷電粒子P1の検出時刻DTP1をDTP1=T11としてメモリ30に格納し(図4K参照)、イオン検出器18の荷電粒子P2の検出時刻DTP2をDTP2=T13(図4L参照)としてメモリ30に格納するように動作可能である。その後、ステップ110で、プロセッサ28は、第1の荷電粒子P1の飛行時間TOFP1をTOFP1=(DTP1-RT)として計算し、第2の荷電粒子P2の飛行時間TOFP2をTOFP2=(DTP2-RT)として計算するように動作可能である。その後、ステップ112で、プロセス200はプロセッサ28によって実行される。
【0047】
[0072]プロセス200のステップ204でi=1の場合、プロセッサ28は、関係v=DRL/TOFP1にしたがって、ドリフト領域16を通る第1の荷電粒子P1の(不変)速度vを最初に決定するように動作可能である。その後、プロセッサ28は、ステップ204で、TW1,1を、図4Aおよび図4Bに図示されるように、PRL/v=T1から(PRL+CDL)/v=T2もしくはT1からT2、または簡便な表記法を使用するとT1-T2として決定するように動作可能である。プロセッサ28は、その後、ステップ204で、TW1,2を、図4C図4Fに図示されるように、(PRL+CDL+SL)/v=T3から(PRL+2CDL+SL)/v=T6、またはT3-T6として決定するように動作可能である。最後に、プロセッサ28は、ステップ204で、TW1,3を、図4G図4Jに図示されるように、(PRL+2CDL+2SL)/v=T7から(PRL+3CDL+2SL)/v=T10、またはT7-T10として決定するように動作可能である。その後、プロセス200は、ステップ206を通るループを実行し、ステップ208でiをi=2に増分し、i=2としてステップ204を再実行する。関係v=DRL/TOFP2にしたがってプロセッサ28によって決定されたドリフト領域16における第2の荷電粒子P2の(不変)速度vの場合、プロセッサ28は、それぞれ図4A図4D図4E図4H、および図4I図4Lに図示されるように、後続の時間ウィンドウTW2,1=T1-T4、TW2,2=T5-T8、およびTW2,3=T9-T12を決定するために進む。ステップ206でi=2=Mが満たされると、プロセス200は以下の2×3(すなわちM×N)時間ウィンドウ行列TW:
【数1】
を用いて、ステップ210~216に進む。
【0048】
[0073]プロセス200のステップ212でi=1の場合、プロセッサ28は、CA1の大きさを、P1およびP2によって個々におよび/または集合的になされた寄与に対して整合またはマッピングするために、TWの列1の時間ウィンドウに対してCA1を処理するように動作可能である。図5を参照すると、2つの列1の時間ウィンドウTW1,1=(T1-T2)およびTW2,1=(T1-T4)から、T1とT2との間の電荷検出信号CA1の大きさC1は、P1およびP2がともに電荷検出シリンダー40上で合成電荷を誘起し、それによってCHP1+CHP2=C1が得られた結果であることが明らかであり、ここでCHP1は、荷電粒子P1の電荷の大きさであり、CHP2は荷電粒子P2の電荷の大きさである。時間ウィンドウTW1,1およびTW2,1から、T2とT4との間の電荷検出信号CA1の大きさは、P2のみが電荷検出シリンダー40上で電荷を誘起し、それによってCHP2=C2が得られた結果であることがさらに明らかである。
【0049】
[0074]プロセス200は、ステップ214および216を通るループを実行し、カウンタiをi=2に増分し、プロセッサ28は、その後、ステップ212で、CA2の大きさをP1およびP2によって個々におよび/または集合的になされた寄与に対して整合またはマッピングするために、TW行列の列2の時間ウィンドウに対してCA2を処理するように動作可能である。図6を参照すると、2つの列2の時間ウィンドウTW1,2=(T3-T6)およびTW2,2=(T5-T8)から、T3とT5との間の電荷検出信号CA1の大きさC3は、P1のみが電荷検出シリンダー40上でその電荷を誘起し、それによってCHP1=C3が得られた結果であることが明らかである。TW1,2およびTW2,2から、T5とT6との間の電荷検出信号CA2の大きさC4は、P1およびP2がともに電荷検出シリンダー40上で合成電荷を誘起し、それによってCHP1+CHP2=C4が得られた結果であることがさらに明らかである。最後に、TW1,2およびTW2,2から、T6とT8との間の電荷検出信号CA2の大きさC5は、P2のみが電荷検出シリンダー40上で電荷を誘起し、それによってCHP2=C5が得られた結果であることが明らかである。
【0050】
[0075]プロセス200は、再度、ステップ214および216を通るループを実行し、カウンタiをi=3に増分し、プロセッサ28は、その後、ステップ212で、CA3の大きさをP1およびP2によって個々におよび/または集合的になされた寄与に対して整合またはマッピングするために、TW行列の列3の時間ウィンドウに対してCA3を処理するように動作可能である。図7を参照すると、CA2に関するステップ212の動作と同様にして、CA3の3つの大きさC6、C7およびC8は、結果としてCHP1=C6、CHP1+CHP2=C7、およびCHP2=C8が得られることが明らかである。それによって、ステップ214のYES分岐後に、プロセス200は、以下の連立方程式を用いてステップ218に進む。
【0051】
[0076]C1=CHP1+CHP2
[0077]C2=CHP2
[0078]C3=CHP1
[0079]C4+CHP1+CHP2
[0080]C5=CHP2
[0081]C6=CHP1
[0082]C7=CHP1+CHP2
[0083]C8=CHP2
【0052】
[0084]ステップ218で、プロセッサ28は、CHP1およびCHP2に対する前述の連立方程式を解くように動作可能である。プロセッサ28は、任意の従来の数学的手法を使用して、前述の連立方程式を解くようにプログラムされてもよい。一例として、プロセッサ28は、CHP1およびCHP2それぞれを個々の測定結果の代数平均として計算し、その後、個々の測定結果とともに合成された測定結果を満たすように、必要に応じて、それらの値の一方または両方を修正することによって、図4A図7の例において連立方程式を解くようにプログラムされてもよい。したがって、たとえば、プロセッサ28は、ステップ218で、関係CHP1=(C3+C6)/2およびCHP2=(C2,+C5+C8)/3にしたがって、この例のCHP1およびCHP2を決定し、その後、上記の2つの方程式とともに方程式CHP1+CHP2=(C1+C4+C7)/3を満たすためにCHP1および/またはCHP2を修正するように動作可能でもよい。代替の実施形態では、プロセッサ28は、例として最小2乗法または他の回帰技法などの1つまたは複数の回帰分析技法、ルンゲクッタ法または他の反復技法などの1つまたは複数の反復技法、または同様のものを含み得るが、これに限定されない、従来の数学的方程式解法のうちの任意の1つまたは組み合わせを使用して、および/または従来のデータフィッティング技法のうちの任意の1つまたは組み合わせを使用して、ステップ210~216の結果として得られた連立方程式を解くことによってステップ218を実行するようにプログラムされてもよいことが理解されるであろう。
【0053】
[0085]この例を完了するために再度図3のプロセス100に戻り、プロセッサ28は、ステップ114で、2つの荷電粒子P1およびP2の質量電荷比のそれぞれを、m/zP1=F(TOFP1,DRL,U)およびm/zP2=F(TOFP2,DRL,U)など、ドリフト領域16の長さDRLのそれぞれの測定された飛行時間TOFP1およびTOFP2、ならびにイオン加速領域14’からドリフト領域16へ荷電粒子を加速する電圧VS1,VS2の大きさに関係する電位Uの従来の関数として計算するように動作可能である。その後、ステップ16で、プロセッサ28は、関係mP1=(m/zP1)(CHP1)およびmP2=(m/zP2)(CHP2)にしたがって荷電粒子P1およびP2それぞれの質量mP1およびmP2を計算するように動作可能である。
【0054】
[0086]図4A図7に図示された例は、図1および図2に図示されたタイプの簡略化された飛行時間質量分析計の例示的な動作を説明する目的でのみ提供され、決して限定的であることが意図されないことが理解されるであろう。当業者は、上述したプロセスまたはその変形が、たとえば数百、数千、またはそれ以上などの多くの荷電粒子の質量電荷比、電荷の大きさおよび/または電荷状態、ならびに質量値の決定に直接適用され得ることを理解するであろう。代替的に、当業者は、電荷増幅器CA1~CANによって生成された電荷検出信号のうちの1つまたは複数に基づいて複数の荷電粒子の大きさおよび/または電荷状態を決定するための他の技法を認識し、そのような他の技法は、本開示の範囲内に存在することが意図されることを理解されるであろう。
【0055】
[0087]図1に図示した質量分析計10において、粒子電荷値を決定するために、電荷検出信号の全てが使用されなくてもよいことをさらに理解されるであろう。荷電粒子が塊となってイオン処理領域14を出るいくつかの実施形態では、たとえば、最初の1つまたはいくつかの電荷増幅器によって生成された電荷検出信号は、プロセッサ28によって無視されてもよい。代替的または追加的に、ドリフト管16Aは、上述したように、そのような塊となった粒子が複数の電荷検出シリンダー40~40の1つ目を通過する前にドリフト領域16の軸方向に分離するのを少なくとも開始できる任意の所望の長さを有するアレイ前空間16Bを含むように構成され得る。
【0056】
[0088]ここで図9を参照すると、従来のイオントラップ62の後段の従来の質量電荷比フィルタ(m/zフィルタ)60の形態で実施されるイオン処理領域14の他の実施形態14”が示される。図9に図示された実施形態では、質量電荷比フィルタ60の一端部がイオン処理領域14”のイオン入口A1を画定し、イオントラップ62のイオン出口端がイオン処理領域14”のイオン出口A2を画定する。質量電荷比(m/z)フィルタ60は、従来のものであり、例示的に、電圧源26に動作可能に結合された四重極または他の器具の形態で実施されてもよい。図示された実施形態では、たとえば、電圧源26の出力電圧VS1は、K個の信号経路を介してm/zフィルタ60に動作可能に結合され、ここでKは任意の正の整数でもよく、電圧源26の他の出力電圧VS2は、同様に、L個の信号経路を介してm/zフィルタ60に動作可能に結合され、ここでLは任意の正の整数でもよい。いくつかの実施形態では、VS1は、たとえば、互いに180度位相がずれた一対の逆相電圧の形態でm/zフィルタ60に供給された選択可能な周波数および最大振幅の時変電圧信号であり、VS2は、選択可能な振幅の不変電圧、たとえば、DC電圧である。そのような実施形態において、プロセッサ28は、例示的に、選択された質量電荷比の質量電荷比を有するイオン、または質量電荷比の選択された範囲内の質量電荷比を有するイオンのみが、m/zフィルタ60を通過するために選択されたm/zフィルタ60内の電界条件を創り出すために従来の手法で出力電圧VS1およびVS2を制御するようにプログラムされる、またはプログラム可能である。いくつかの代替の実施形態では、VS1のみがm/zフィルタ60に印加され、閾値質量電荷比を上回る質量電荷比を有するイオンのみがm/zフィルタ60を通過するために選択されたm/zフィルタ60内に電界条件を創り出すようにプロセッサ28によって制御される。
【0057】
[0089]図9に図示された実施形態では、イオントラップ62は同様に従来のものであり、例示的に、入口ゲート64を有する四重極、六重極または他の器具の形態で、たとえば、イオントラップ62のイオン入口A2’および出口ゲート66を画定する従来のエンドキャップの形態で、たとえば、イオン処理領域14”のイオン出口A2を画定する他の従来のエンドキャップの形態で、実施され得る。図示された実施形態では、電圧源26の出力電圧VS3は、入口エンドキャップ64に動作可能に結合され、電圧源26の出力電圧VS4は出口エンドキャップ66に動作可能に結合され、出力電圧VS5はJ個の信号経路を介してイオントラップ62の本体に動作可能に結合され、ここでJは任意の正の整数でもよい。いくつかの実施形態では、VS3およびVS4は、選択可能な振幅を有する切り換え可能なDC電圧であり、VS5は、たとえば、互いに180度位相がずれた一対の逆相電圧の形態でイオントラップ62に供給された選択可能な周波数および最大振幅の時変電圧信号である。そのような実施形態では、プロセッサ28は、例示的に、イオン入口A2’を介してイオントラップ62へ荷電粒子を選択的に通過させ、荷電粒子をイオントラップ62内に閉じ込め、閉じ込められたイオンをイオントラップ62からイオン出口A2を通って選択的に放出するために従来の手法で出力電圧VS3~VS5を制御するようにプログラムされる、またはプログラム可能である。いくつかの代替の実施形態では、m/zフィルタ60およびイオントラップ62は、たとえば、エンドキャップを有する従来の四重極質量電荷比フィルタの形態の単一の器具に統合され得る。いずれの場合でも、結果として得られた質量分析計10は、例示的に、単一の質量電荷比質量分析計、質量電荷比質量分析計の単一の範囲、および/または質量電荷比走査質量分析計として動作するように制御可能である。ただし、いずれの動作モードでも、質量分析計10は、粒子質量電荷比、粒子電荷の大きさまたは電荷状態、および粒子質量値を決定するように構成される。
【0058】
[0090]ここで図10を参照すると、イオン質量電荷比、イオン電荷(大きさおよび/または電荷状態)ならびにイオン質量を測定するように、図1および図9の質量分析計(すなわち、イオン処理領域14として実施される図9のイオン処理領域14”を有する図1の質量分析計10)を動作するための例示的なプロセス300を図示する簡略フローチャートが示される。プロセス300は、例示的に、粒子質量電荷比、粒子電荷および粒子質量の測定を実行する、プロセッサ28によって実行可能な命令の形態でメモリ30に格納される。プロセス300は、例示的に、1つまたは複数の荷電粒子がイオン発生器20によって生成され、イオン源領域12に、またはその一部に構築されたイオン加速構造および/または圧力差条件を介してイオン処理領域14”に向かって進み、そこを通る時点で開始する。プロセス300は、例示的に、プロセス100のステップのうちの多くを含み、したがって同様のステップは、同様の番号で識別され、そのようなステップ中のプロセッサ28の動作は、図3に関して上述された通りである。
【0059】
[0091]プロセス300は、例示的に、プロセス100のステップ102を開始し、ドリフト領域寸法情報(DI)がメモリ30に格納される。その後、ステップ302で、プロセッサ28がカウンタi=1または何らかの他の定数に設定するように動作可能である。その後、ステップ304で、プロセッサ28は、例示的に、第1の選択された質量電荷比m/zを有するイオンのみ、または質量電荷比の第1の選択された範囲i内の質量電荷比を有するイオンのみが通過するようにm/zフィルタ60を構成するように電圧源26を制御するように動作可能である。その後、ステップ306で、プロセッサ28は、例示的に、m/zフィルタ60を出る荷電粒子を収集および捕捉するようにイオントラップ62を制御または構成するように電圧源26を制御するように動作可能である。例示的に、プロセッサ28は、複数の荷電粒子をイオントラップ62で収集するために、事前に定義された期間、イオントラップ62の上記の制御を維持するように動作可能である。事前に定義された期間は、異なる用途および/または異なるサンプル22によって異なり得る。いずれの場合でも、プロセッサ28がイオントラップ62の上記の制御を維持するように動作可能である事前に定義された時間の満了後、プロセス300はステップ308に進み、プロセッサ28は捕捉された荷電粒子をイオントラップ62から加速するように電圧源26を制御するように動作可能である。そのような制御は、例示的に、ゲート64、66の一方または両方に印加されたDC電圧を適切に切り換えることによって実現され、いずれの場合でも、イオントラップ62から解放された荷電粒子が質量分析計10のドリフト領域16を通ってドリフトを開始する基準時刻RTを設定する。ステップ308の後、プロセッサ28は、例示的に、全て上述したように、ドリフト領域16を通ってドリフトする荷電粒子の質量電荷比、電荷の大きさまたは電荷状態、ならびに質量値を決定するために、図3に図示したプロセス100のステップ106~116を実行するように動作可能である。
【0060】
[0092]m/zフィルタ60が選択された質量電荷比の荷電粒子を選択的に通過させる、または質量電荷比値の非常に狭い範囲内の質量電荷比を有する荷電粒子を通過させるように制御されるいくつかの実施形態では、ドリフト領域16を通ってドリフトする荷電粒子の質量電荷比が既知であり、ステップ114が省略可能なようにステップ114で計算される必要がない。ただし、いくつかのそのような実施形態では、たとえばm/zフィルタ60を較正する際に使用される追加の質量電荷比情報を提供するために、および/または質量電荷比分解能の改善を実現するために、ステップ114は含まれる場合がある。いずれの場合でも、プロセス300はステップ116からステップ310へ進み、プロセッサ28は、カウンタiをカウント値Qと比較するように動作可能である。i<Qの場合、プロセス300はステップ312に進み、ステップ312でカウンタiを増分し、ステップ304に戻って第2の選択された質量電荷比m/zを有するイオンのみ、または質量電荷比の第2の所定範囲i内の質量電荷比を有するイオンのみが通過するようにm/zフィルタ60を構成するように電圧源26を制御し、第2の選択された質量電荷比または質量電荷比の第2の選択された範囲は、第1の選択された質量電荷比または質量電荷比の第1の選択された範囲とは増加的に異なり、たとえば、それよりも大きくなる、または小さくなる。ステップ310で、i=Qの場合、質量電荷比の範囲は走査および処理され、プロセス300が終了する。選択された質量電荷比または質量電荷比の選択された範囲における値Qおよび徐々に増えるステップサイズは、例示的に、質量電荷比値の任意の所望範囲を走査するように選択されてもよい。
【0061】
[0093]m/zフィルタ60およびイオントラップ62が、上述したように単一の器具となるように結合される代替の実施形態では、プロセス300は、それに応じて、ステップ304およびステップ306を結合して、プロセッサ28がm/zのイオンのみを捕捉するように結合された器具を構成するように電圧源26を制御するように動作可能である単一のステップとする、またはステップ306および308を結合して、プロセッサ28がm/zのイオンのみを結合された器具から放出するように電圧源26を制御するように動作可能である単一のステップとするように修正され得る。いくつかの代替の実施形態では、m/zフィルタ60を出た荷電粒子がドリフト領域16に直接入るように、イオントラップ62が省略されてもよい。ただし、そのような実施形態では、基準時刻RTを設定するためにイオン加速領域がイオン源領域12に含まれ、m/zフィルタ60が、そのような実施形態では、ドリフト領域の一部となるため、寸法情報DIは、少なくとも軸方向におけるm/zフィルタ60の寸法情報を含む。
【0062】
[0094]ここで図11を参照すると、解離段72が間に配置された2つの従来の質量電荷比フィルタ(m/zフィルタ)70、74の形態で実施されるイオン処理領域14の他の実施形態14”’が示される。図11に図示された実施形態では、質量電荷比フィルタ70の一端部がイオン処理領域14”’のイオン入口A1を画定し、質量電荷比フィルタ74のイオン出口端がイオン処理領域14”’のイオン出口A2を画定する。質量電荷比(m/z)フィルタ70、74は、従来のものであり、それぞれが、例示的に、電圧源26に動作可能に結合された四重極または他の器具の形態で実施されてもよく、解離段72は、同様に従来のものであり、図示された実施形態では、電圧源26に動作可能に結合される。
【0063】
[0095]図示された実施形態では、電圧源26の出力電圧VS1は、H個の信号経路を介してm/zフィルタ70に動作可能に結合され、ここでHは任意の正の整数でもよく、電圧源26の他の出力電圧VS2は、同様に、I個の信号経路を介してm/zフィルタ70に動作可能に結合され、ここでIは任意の正の整数でもよい。電圧源26の他の出力電圧VS3は、L個の信号経路を介してm/zフィルタ74に動作可能に結合され、ここでLは任意の正の整数でもよく、電圧源26の他の出力電圧VS4は、同様に、R個の信号経路を介してm/zフィルタ74に動作可能に結合され、ここでRは任意の正の整数でもよい。いくつかの実施形態では、VS1およびVS3は、たとえば、互いに180度位相がずれた一対の逆相電圧の形態でそれぞれm/zフィルタ70、74に供給された選択可能な周波数および最大振幅の時変電圧信号であり、VS2およびV4は、選択可能な振幅の不変電圧、たとえば、DC電圧である。そのような実施形態において、プロセッサ28は、例示的に、選択された質量電荷比のうちの質量電荷比を有するイオンのみ、または質量電荷比の選択された範囲内の質量電荷比を有するイオンのみが、m/zフィルタ70、74を通過するために選択されたm/zフィルタ70、74内の電界条件を創り出すために従来の手法でVS1~VS4を制御するようにプログラムされる、またはプログラム可能である。いくつかの代替の実施形態では、VS1のみがm/zフィルタ70に印加され、閾値質量電荷比を上回る質量電荷比を有するイオンのみがm/zフィルタ70を通過するために選択されたm/zフィルタ70内に電界条件を創り出すようにプロセッサ28によって制御される。代替的または追加的に、VS3のみがm/zフィルタ74に印加され、閾値質量電荷比を上回る質量電荷比を有するイオンのみがm/zフィルタ74を通過するために選択されたm/zフィルタ74内に電界条件を創り出すようにプロセッサ28によって制御される。
【0064】
[0096]図11に図示された実施形態では、電圧源26は、2つの電圧出力VS5およびVS6を介して解離段72に動作可能に結合されるとして示される。そのような電圧源接続は、解離段72が荷電粒子を解離、たとえば断片化するために1つまたは複数の電圧信号によって制御可能なデバイスまたは器具の形態で実施された実施形態でのみ含まれることが理解されるであろう。そのような実施形態では、VS5は、選択可能な周波数および最大振幅を有する時変電圧信号でもよく、VS6は、選択可能な振幅を有する不変電圧、たとえばDC電圧でもよい。いくつかのそのような実施形態では、電圧源26はVS5のみを生成してもよく、他の実施形態では、電圧源26はVS6のみを生成してもよい。他の実施形態では、解離段72は、電圧源26に全く接続されていない場合もあり、その代わりに1つまたは複数のガス源(不図示)にのみ結合されてもよく、解離段72は、1つまたは複数のガス源によって提供された1つまたは複数のガスとの衝突によって荷電粒子を解離、たとえば断片化するように動作可能である。いずれの場合でも、結果として得られた質量分析計10は、例示的に、単一の質量電荷比質量分析計、単一の範囲の質量電荷比質量分析計、単一の質量電荷比走査質量分析計(たとえば、m/zフィルタ70またはm/zフィルタ74で質量電荷比の範囲を走査する)および/または二倍質量電荷比走査質量分析計(たとえば、m/zフィルタ70およびm/zフィルタ74の両方で質量電荷比の範囲を走査する)として動作するように制御可能である。ただし、いずれの動作モードでも、質量分析計10は、粒子質量電荷比、粒子電荷の大きさまたは電荷状態、ならびに粒子質量値を決定するように構成される。
【0065】
[0097]ここで図12を参照すると、イオン質量電荷比、イオン電荷(大きさおよび/または電荷状態)ならびにイオン質量を測定するように、図1および図11の質量分析計(すなわち、イオン処理領域14として実施される図11のイオン処理領域14”’を有する図1の質量分析計10)を動作するための例示的なプロセス400を図示する簡略フローチャートが示される。プロセス400は、例示的に、粒子質量電荷比、粒子電荷および粒子質量の測定を実行する、プロセッサ28によって実行可能な命令の形態でメモリ30に格納される。プロセス300と同様に、プロセス400は、例示的に、1つまたは複数の荷電粒子がイオン発生器20によって生成され、イオン源領域12に、またはその一部に構築されたイオン加速構造および/または圧力差条件を介してイオン処理領域14”’に向かって進み、そこを通る時点で開始する。プロセス400は、例示的に、プロセス100のステップのうちの多くを含み、したがって同様のステップは、同様の番号で識別され、そのようなステップ中のプロセッサ28の動作は、図3に関して上述された通りである。
【0066】
[0098]プロセス400は、例示的に、プロセス100のステップ102を開始し、ドリフト領域寸法情報(DI)がメモリ30に格納される。その後、ステップ402で、プロセッサ28が2つのカウンタi=1およびj=1、または何らかの他の定数に設定するように動作可能である。その後、ステップ404で、プロセッサ28は、例示的に、第1の選択された質量電荷比m/zを有するイオンのみ、または質量電荷比の第1の選択された範囲内の質量電荷比を有するイオンのみが通過するようにm/zフィルタ70を構成するように電圧源26を制御するように動作可能である。その後、ステップ406で、プロセッサ28は、例示的に、m/zフィルタ70を出る荷電粒子を解離、たとえば断片化する解離段72を構成するように電圧源26を制御するように動作可能である。電圧源26が解離段72を制御するように動作可能でない実施形態では、ステップ406は、省略されてもよく、または解離領域72のガスフローまたは他の制御特徴を制御する適切な制御ステップによって置き換えられてもよい。その後、ステップ408で、プロセッサ28は、例示的に、解離段を出た解離済みイオンのうちの、第1の選択された質量電荷比m/zを有するイオンのみ、または質量電荷比の第1の選択された範囲j内の質量電荷比を有するイオンのみが通過するようにm/zフィルタ74を構成するように電圧源26を制御するように動作可能である。
【0067】
[0099]いくつかの実施形態では、m/zフィルタ74は、図9のm/zフィルタ60に関して上述したように、イオン捕捉機能を備えるように、従来の手法で構成されてもよく、そのような実施形態で、プロセッサ28は、ステップ408で、何らかの期間、m/zフィルタ74内の荷電粒子を収集および捕捉するように電圧源26を制御し、その後、m/zフィルタ74から解放された荷電粒子が質量分析計10のドリフト領域16を通るドリフトを開始する基準時刻RTを設定するm/zフィルタ74からの捕捉済み荷電粒子を加速するように電圧源26を制御するようにさらに動作可能である。上記のようなイオン捕捉機能を備えないm/zフィルタ74の実施形態では、基準時刻RTを設定するためにイオン加速領域がイオン源領域12に含まれ、m/zフィルタ70、74および解離段72が、そのような実施形態では、ドリフト領域16の一部となるため、寸法情報DIは、少なくとも軸方向におけるm/zフィルタ70、74および解離段72の寸法情報を含む。他のそのような実施形態では、たとえば従来のイオントラップまたは他のイオン加速段などの形態でのイオン加速段は、解離段72の一部として備えられてもよく、または、複数の荷電粒子を収集し基準時刻RTを設定する目的のため、解離段72とm/zフィルタ74との間で質量分析計10に挿入されてもよい。さらに他のそのような実施形態では、従来のイオントラップまたは他のイオン加速段は、複数の荷電粒子を収集し基準時刻RTを設定する目的のため、図9に図示されたイオン処理領域14’の実施形態に例として図示されるように、m/zフィルタ74とドリフト領域16との間で質量分析計10に挿入されてもよい。
【0068】
[00100]ステップ408の後、プロセッサ28は、例示的に、全て上述したように、ドリフト領域16を通ってドリフトする荷電粒子の質量電荷比、電荷の大きさまたは電荷状態、ならびに質量値を決定するために、図3に図示したプロセス100のステップ106~116を実行するように動作可能である。m/zフィルタ74が選択された質量電荷比の荷電粒子を選択的に通過させる、または質量電荷比値の非常に狭い範囲内の質量電荷比を有する荷電粒子を通過させるように制御されるいくつかの実施形態では、ドリフト領域16を通ってドリフトする荷電粒子の質量電荷比が既知であり、ステップ114が省略可能なようにステップ114で計算される必要がない。ただし、いくつかのそのような実施形態では、たとえばm/zフィルタ74を較正する際に使用される追加の質量電荷比情報を提供するために、および/または質量電荷比分解能の改善を実現するために、ステップ114は含まれる場合がある。いずれの場合でも、プロセス400は、ステップ116からステップ410に進み、プロセッサ28はカウンタjをカウント値Rと比較するように動作可能である。j<Rの場合、プロセス400はステップ412に進み、ステップ412でカウンタjを増分し、ステップ408に戻って第2の選択された質量電荷比m/zを有するイオンのみ、または質量電荷比の第2の所定範囲j内の質量電荷比を有するイオンのみが通過するようにm/zフィルタ74を構成するように電圧源26を制御し、第2の選択された質量電荷比または質量電荷比の第2の選択された範囲は、第1の選択された質量電荷比または質量電荷比の第1の選択された範囲とは増加的に異なり、たとえば、それよりも大きくなる、または小さくなる。
【0069】
[00101]ステップ410で、j=Rの場合、質量電荷比の範囲は、m/zフィルタ74によって走査され、処理され、プロセス400はステップ414に進み、プロセッサ28は、カウンタiをカウント値Qと比較するように動作可能である。i<Qの場合、プロセス400はステップ416に進み、ステップ416でカウンタiを増分し、ステップ404に戻って第2の選択された質量電荷比m/zを有するイオンのみ、または質量電荷比の第2の所定範囲i内の質量電荷比を有するイオンのみが通過するようにm/zフィルタ74を構成するように電圧源26を制御し、第2の選択された質量電荷比または質量電荷比の第2の選択された範囲は、第1の選択された質量電荷比または質量電荷比の第1の選択された範囲とは増加的に異なり、たとえば、それよりも大きくなる、または小さくなる。ステップ414で、i=Qの場合、質量電荷比の範囲は、m/zフィルタ70によって走査され、処理され、プロセス400が終了する。選択された質量電荷比または質量電荷比の選択された範囲における値RおよびQとともに、徐々に増えるステップサイズは、例示的に、質量電荷比値の任意の所望範囲を走査するように選択されてもよい。
【0070】
[00102]ここで図13図15を参照すると、上述した質量分析計の形態のいずれかで実施され得る質量分析計10のドリフト領域16の実施形態が示される。図示された実施形態では、ドリフト管16Aは、離れて配置された複数の平行な導電性ストリップが取り付けられた、または離れて配置された複数の平行な導電性ストリップが、たとえば従来の金属元型堆積技法を使用するなどの従来の手法で形成された、たとえば可撓性の回路基板材料などの可撓性または半可撓性の電気絶縁材料の細長いシートの形態で提供されてもよい。この実施形態では、たとえば図14に図示されるような細長いシリンダーを形成するために、可撓性または半可撓性シートのそれぞれの反対の側部が接合された時に、離れて配置された複数の平行な導電性ストリップが、複数の電荷検出シリンダー40~40と、1つまたは複数の接地リング42~42とを形成するように、導電性ストリップが例示的に配向される。いくつかの代替の実施形態では、接地リング42~42のうちの1つまたは複数もしくは全部が省略されてもよい。当業者は、ドリフト管16Aおよび/または電荷検出シリンダー40~40および/または1つまたは複数の接地リング42~42(それらを含む実施形態において)が提供され得る他の形態を認識し、そのような他の形態は本開示の範囲内に存在することが意図されることが理解されるであろう。
【0071】
[00103]本開示は上述した図面および記載において図示および詳細に説明されたが、これらの開示は例示的で、特徴において限定的でないと考えられるべきであり、その例示的な実施形態が示され、説明されたに過ぎず、本開示の趣旨内の全ての変更および変形は保護されることが望ましいことが理解される。たとえば、いくつかの構造は、荷電粒子を加速および/または他のやり方で荷電粒子に対して動作するように構成および配向される、明細書において1つまたは複数の電界を構築するように制御可能および/または構成可能であるとして、添付図面において図示され、本明細書で説明され、当業者は、荷電粒子の加速および/または荷電粒子に対する他の動作が、いくつかの場合において、代替的または追加的に、1つまたは複数の磁界によって実現され得ることを認識するであろう。したがって、本明細書に記載の電界のうちの1つまたは複数を1つまたは複数の適切な磁界と置き換える、または向上させる任意の従来の構造および/または機構は、本開示の範囲内に存在することが意図されることが理解されるであろう。他の例として、ドリフト管16Aの様々な実施形態は、全体的に線形構造、すなわち線形ドリフト管として添付図面で図示され、本明細書で説明されたが、本明細書に記載の考え方は他の形状および構成のドリフト管に直接適用可能であり、その例は、リフレクトロン飛行時間質量分析計において従来実施されるようなV形ドリフト管、マルチリフレクトロン飛行時間質量分析計において従来実施されるようなW形ドリフト管、L形ドリフト管、または同様のものを含むがそれに限定されないことが理解されるであろう。ドリフト管16Aの形状に関して限定がないことが意図され、決して推論されるべきではない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図4J
図4K
図4L
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】