(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(54)【発明の名称】温度差を利用した非侵襲的プロセス流体の流動表示
(51)【国際特許分類】
G01F 23/22 20060101AFI20230227BHJP
G01K 13/02 20210101ALI20230227BHJP
G01K 1/14 20210101ALI20230227BHJP
【FI】
G01F23/22 A
G01K13/02
G01K1/14 L
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537447
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(85)【翻訳文提出日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 US2020063599
(87)【国際公開番号】W WO2021126577
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ルッド,ジェイソン・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ルイス,ザケリー・エー
【テーマコード(参考)】
2F014
2F056
【Fターム(参考)】
2F014AB04
2F014CA03
2F056CL12
2F056WF01
2F056WF08
(57)【要約】
プロセス流体の流動システム(300)は、第1パイプスキンセンサ(306、320、322、324)、及び、第2パイプスキンセンサ(306、320、322、324)を含む。第1パイプスキンセンサ(306、320、322、324)は、プロセス流体導管(100)上の第1位置において、プロセス流体導管(100)の外部温度を測定するように配置される。第2のパイプスキンセンサ(306、320、322、324)は、プロセス流体導管(100)上の第2の位置において、プロセス流体導管(100)の外部温度を測定するように配置される。測定回路(238)は、第1及び第2のパイプスキンセンサ(306、320、322、324)に結合される。コントローラ(222)は、測定回路(238)に結合され、第1及び第2のパイプスキンセンサ(306、320、322、324)からの信号に基づいて、プロセス流体の流動の状態を識別し、プロセス流体の流動の状態の表示を出力するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス流体の流動システムであって、
プロセス流体導管上の第1の位置で、前記プロセス流体導管の外部温度を測定するように配置された第1のパイプスキンセンサ、
プロセス流体導管上の第2の位置で、前記プロセス流体導管の外部温度を測定するように配置された第2のパイプスキンセンサ、
前記第1及び第2のパイプスキンセンサに結合された測定回路、及び、
前記測定回路に結合され、前記第1及び第2のパイプスキンセンサからの信号に基づいて前記プロセス流体の流動の状態を識別し、プロセス流体の流動の状態の表示を出力するように構成されたコントローラ、
を含むプロセス流体の流動システム。
【請求項2】
前記プロセス流体導管の実質的に反対側に、前記第1及び第2のパイプスキンセンサを取り付けるように構成されたクランプ、をさらに含む、請求項1に記載のプロセス流体の流動システム。
【請求項3】
前記第1及び第2のパイプスキンセンサの間のクランプに取り付けられた第3のパイプスキンセンサをさらに含む、請求項2に記載のプロセス流体の流動システム。
【請求項4】
さらに、前記第3のパイプスキンセンサと径方向に対向して前記クランプに取り付けられた第4のパイプスキンセンサ、を含む請求項3に記載のプロセス流体の流動システム。
【請求項5】
前記第1、第2、第3、及び、第4の各パイプスキンセンサは、前記プロセス流体導管の外面について約90度離れて配置されている、請求項4に記載のプロセス流体の流動システム。
【請求項6】
前記プロセスの流動の状態が、プロセス流体がそこを流動している満充填状態のプロセス流体導管、プロセス流体が流動していない満充填状態のプロセス流体導管、プロセス流体がそこを流動している50%より大きい充填状態のプロセス流体導管、プロセス流体がそこを流動している50%より小さい充填状態のプロセス流体導管、から成る群から選択される、請求項5に記載のプロセス流体の流動システム。
【請求項7】
前記プロセスの流動の状態は、前記プロセス流体導管の下側表面上に配置された物質を示す、請求項5に記載のプロセス流体の流動システム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記第1及び第2のパイプスキンセンサに対して一定の熱関係を有する基準温度の測定値を取得するように構成され、前記基準温度の測定値は、前記プロセス流体導管の測定された外部温度と異なり、前記コントローラは、前記プロセス流体の流動出力及び熱流計算を用いて、前記プロセス流体の流動出力に基づいて調整されるプロセス流体の温度の推定値出力を提供するように構成される、請求項1に記載のプロセス流体の流動システム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記プロセス流体の温度推定値をローカル出力として提供するように構成される、請求項8に記載のプロセス流体の流動システム。
【請求項10】
前記プロセス流体の温度推定値は、前記プロセス流体の流動の状態に基づいて、前記第1及び第2のセンサの全てよりも少ない数を用いて生成される、請求項8に記載のプロセス流体の流動システム。
【請求項11】
さらに、前記コントローラに結合された通信回路を含み、前記プロセス流体の温度推定値は、遠隔装置に通信される、請求項8に記載のプロセス流体の流動システム。
【請求項12】
前記コントローラは、前記識別されたプロセスの流動の状態を、前記遠隔装置に通信するように構成される、請求項11に記載のプロセス流体の流動システム。
【請求項13】
前記プロセスの流動の状態は、プロセス流体がその中を流動している完全に満充填状態のプロセス流体導管である、請求項1に記載のプロセス流体の流動システム。
【請求項14】
前記プロセスの流動の状態は、プロセス流体の流動のない完全に満充填状態のプロセス流体導管である、請求項1に記載のプロセス流体の流動システム。
【請求項15】
前記プロセスの流動の状態は、プロセス流体がその中を流動している50%より大きい充填状態のプロセス流体導管である、請求項1に記載のプロセス流体の流動システム。
【請求項16】
前記プロセスの流動の状態は、プロセス流体がその中を流動している50%より小さい充填状態のプロセス流体導管である、請求項1に記載のプロセス流体の流動システム。
【請求項17】
前記プロセスの流動の状態は、プロセス流体導管の下側表面上に配置された物質を示す、請求項1に記載のプロセス流体の流動システム。
【請求項18】
流路内のプロセス流体の流動特性を推定する方法であって、
前記流動の導管の外径についての複数の位置で、表面温度の測定値を取得すること、及び、
前記複数の表面温度の測定値を分析して、前記導管内の流動の状態を識別すること、
を含む方法。
【請求項19】
前記識別された流動の状態に基づいて、表面温度の測定値の組み合わせを選択すること、
前記選択された表面温度の測定値の組み合わせに熱流計算を適用して、プロセス流体の温度の推定値を生成すること、及び
前記プロセス流体の温度の推定値を出力として提供すること
をさらに含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の表面温度の各測定値を分析することは、前記各表面温度の各測定値の間の差異が、前記様々な流動の状態の1つを示す所定の閾値を超えるか否かを決定することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記所定の閾値は、ユーザーにより提供される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
さらに、前記識別された流動の状態の表示を生成すること、を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記表示は、ローカル出力として提供される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記表示は、層流、遷移流、及び、乱流、からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
多くの工業プロセスは、パイプやその他の導管を通じてプロセス流体を搬送する。このようなプロセス流体には、液体、気体、及び、場合によっては、巻き込まれた固体を含むことができる。これらのプロセス流体の流動(flows)は、衛生的な食品及び飲料の製造、水処理、高純度の医薬品の製造、化学処理、炭化水素の抽出及び処理、並びに、研磨性及び腐食性のスラリーを利用する水圧破砕技術を含む炭化水素燃料産業を含むが、これらに限定されない様々な産業のいずれかで見出される。
【0002】
圧力、流量、又は、温度などのプロセス流体の特性を測定するには、一般的に、プロセス流体中に延伸される測定器を使用する必要があるこの測定器をプロセス流体に延伸させることは、プロセス流体導管に測定器が通過する開口部を持たせる必要があるという点で、侵襲的な測定である。さらに、その開口部は、プロセス流体が漏洩したり、漏れ出たりしないように密閉されている必要がある。さらにまた、プロセス流体にさらされる測定器は、場合によっては非常に研磨性のある高速プロセス流体によって摩耗又は損傷する可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
プロセス流体の流動システムは、第1パイプスキン(外部表面)センサと第2パイプスキン(外部表面)センサを含む。第1パイプスキンセンサは、プロセス流体導管上の第1の位置でプロセス流体導管の外部温度を測定するように配置される。第2パイプスキンセンサは、プロセス流体導管上の第2の位置でプロセス流体導管の外部温度を測定するように配置される。測定回路は、第1及び第2パイプスキンセンサに結合される。コントローラは、測定回路に結合され、第1及び第2のパイプスキンセンサからの信号に基づいてプロセス流体の流動の状態を識別し、プロセス流体の流動の状態の表示を出力するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】本発明の実施形態が特に適用可能である熱流量測定システムの概略図である。
【
図2】本発明の実施形態が特に適用可能であるプロセス流体の温度推定システムの図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るプロセス流体の温度推定システムの概略図である。
【
図4】プロセス流体の流動が変化するにつれて、異なるパイプ壁の位置の温度を経時的に示すチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る様々な流動の状態についての、流動導管内のプロセス流体の温度を推定する方法のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書に開示された実施形態は、一般的に、測定器又はセンサがプロセス流体導管を通過することを必要とせずに、重要なプロセス流体情報を提供する。したがって、本明細書に記載されている実施形態は、一般的に、プロセスを破損させない点で非侵襲的であると考えられる。しかしながら、プロセス流体導管の外部表面における複数の温度測定値に基づいて、重要な各プロセス流体パラメータが決定され、提供されることができる。例としては、プロセス流体が導管内を流動しているか否かの表示、及び、プロセス流体導管内のある程度の流動の状態を含むことができる。さらに、このプロセス流体の流動の情報は、決定されたプロセス流体の流動に対して調整されるか、又は、他の方法で補償される導管内のプロセス流体の温度の推定値を提供するために、熱流計算、又は、他の適切な計算に対して提供されることができる。以下に示されている説明の多くは、本明細書に記載されている実施形態が、複数の外部温度測定値に基づいて、プロセス流体の流動を表示すことを提供するだけで実施できることが明らかに意図されているという、この相乗効果に焦点を当てている。
【0006】
温度センサをサーモウェル内に配置し、それを導管の開口部を通してプロセス流体の流動に挿入することは、一般的に行われている。しかし、この方法は、上述したように、必ずしも実用的であるとは限らない。さらに、サーモウェルは、一般的に、導管内にねじ式のポート、又は、他の堅牢な機械的マウント/シールを必要とし、したがって、定められた位置となるようにプロセス流体の流動システムが設計される必要がある。したがって、サーモウェルは、正確なプロセス流体の温度を提供するためには有用であるが、多くの制限を有する。
【0007】
最近では、プロセス流体の温度は、パイプのようなプロセス流体導管の外部温度を測定し、熱流計算を用いることによって推定されている。この外部的アプローチは、導管にいかなる開口部又はポートも定義する必要がないため、非侵襲的であると考えられる。したがって、このような非侵襲的なアプローチは、実質的に、導管に沿った任意の場所に展開することができる。
【0008】
上記のように、プロセス流体の温度は、パイプのようなプロセス流体導管の外部温度を測定し、熱流計算を採用することによって推定することができる。このようなシステムでは、一般的に、パイプスキン(外部表面)温度Tskinと、基準温度Treferenceと、熱インピーダンス値(パイプ壁に対する相対値、及び、パイプスキンの位置と基準温度の測定位置との間の熱関係に対する相対値)を熱流計算で使用して、導管内のプロセス流体の温度を推測し、又は、その他の方法で推定している。
プロセス流体の温度が変化(例えば、上昇又は下降)すると、システムの温度プロファイルが変化する。流動する配管のスキン温度と基準温度との間のこの温度差は、2つの位置の間を流動する熱の結果である。2つの位置の間の熱インピーダンス(又は、熱流に関連する他の同様の定数)の知識と組み合わせることで、プロセス流体導管の内側表面の温度を推定することができる。プロセス流体導管の内面は、プロセス流体と直接に接触しているため、この内面温度を用いてプロセス流体の温度を推定することができる。
【0009】
上述したプロセス流体の温度の推定は、一般的に、導管の内側表面の温度が導管を流動するプロセス流体の断面全体を示しているという仮定に基づいている。この仮定は、充填される導管を流動する乱流プロセスの流体に対しては一般的に正確であるが、この仮定がそれほど正確でないプロセス流体の流動の状態がいくつか存在する。例えば、プロセス流体の流動が層流又は部分的な乱流である場合、この仮定はそれほど正しくなく、プロセス流体の温度の推定精度が低下する可能性がある。さらに、プロセス流体導管が完全に満たされていない場合、又は、プロセス流体が導管を流動していない場合、も温度の推定精度に影響を与える可能性がある。
【0010】
図1は、本発明の実施形態が特に適用可能であるプロセス流体の温度推定システムの概略図である。図に示されているように、システム200は、一般的に、導管又はパイプ100の周囲にクランプするように構成されたパイプクランプ202を含む。パイプクランプ202は、クランプ部分202がパイプ100に位置決めされてクランプされることを可能にするために、1つ以上のクランプ耳204を有することができる。パイプクランプ202は、パイプクランプ202がパイプ上に位置決めできるように開かれ、その後、クランプ耳204によって閉じられて固定することができるように、クランプ耳204の1つをヒンジ部分に置き換えることができる。
図1に関して例示されたクランプは特に有用であるが、パイプの外周にシステム200を確実に位置決めするための任意の適切な機械的配置を、本明細書に記載された実施形態に従って使用することができる。
【0011】
システム200は、パイプ100の外径116に対してバネ208によって付勢された、熱流センサカプセル206、又は、適切な表面センサ、を含む。「カプセル」という用語は、特定の構造、又は、形状を意味することを意図しておらず、したがって、様々な形状、サイズ、及び、構成で形成することができる。バネ208が図示されているが、当業者は、センサカプセル206を外径116と連続的に接触させることを促すために様々な技術を用いることができることを理解するであろう。センサカプセル206は、一般的に、抵抗温度デバイス(RTD)、又は、熱電対のような1つ以上の温度感受性素子を含む。カプセル206内のセンサは、ハウジング210内の送信機回路に電気的に接続されており、この送信機回路は、センサカプセル206から1つ以上の温度測定値を取得し、センサカプセル206からの測定値、及び、ハウジング210内で測定された温度などの基準温度、又は、その他の方法でハウジング210内の回路で提供された温度、に基づいてプロセス流体の温度の推定値を計算するよう構成される。
【0012】
1つの例としては、基本的な熱流計算は次のように簡略化できる。
Tcorrected= Tskin+ (Tskin-Treference) * (Rpipe/Rsensor)。
【0013】
この式において、Tskinは、導管の外部表面の測定温度である。さらに、Treferenceは、Tskinを測定する温度センサからの熱インピーダンス(Rsensor)を有する位置に対して得られる第2の温度である。Treferenceは、典型的には、ハウジング210内の専用の温度センサによって感知される。しかしながら、Treferenceは、他の方法でも感知、又は、推論することができる。例えば、温度センサを送信機の外部に配置して、熱伝導計算における端子温度の測定を置き換えることができる。この外部のセンサは、送信機を取り巻く環境の温度を測定することになる。別の例として、産業用電子機器は、通常、オンボードの温度測定機能を備えている。この電子機器の温度測定値は、熱伝導計算の端子温度の代用として使用することができる。別の例として、システムの熱伝導率が既知であり、送信機の周囲の周囲温度が固定又はユーザー制御されている場合、固定又はユーザー制御可能な温度を基準温度として使用することができる。
【0014】
R
pipeは、導管の熱インピーダンスであり、パイプ材料情報、パイプの壁の厚み情報など、を取得することによって手動で取得することができる。さらに、又は、代替的に、R
pipeに関連するパラメータは、較正中に決定すること、又は、その後の使用のために計算し、記憶することができる。したがって、上述のような適切な熱流束計算を使用して、ハウジング210内の回路は、プロセス流体の温度に対する推定値(T
corrected)を計算し、そのようなプロセス流体の温度に関する表示を適切なデバイス及び/又は制御室に伝達することができる。
図1に図示された例では、そのような情報は、アンテナ212を介して無線で伝達されてもよい。
【0015】
図2は、本発明の実施形態が特に適用可能な、熱流量測定システム200のハウジング210内の回路のブロック図である。システム200は、コントローラ222に結合された通信回路220を含む。通信回路220は、推定されたプロセス流体の温度に関する情報を伝達することができる任意の適切な回路とすることができる。通信回路220は、熱流量測定システム200が、プロセス通信ループ又はセグメントを介して、プロセス流体の温度出力を通信することを可能にする。 プロセス通信ループプロトコルの好適な例としては、4-20 milliampプロトコル、Highway Addressable Remote Transducer(HART:登録商標)プロトコル、FOUNDATION(登録商標)Fieldbusプロトコル、及び、WirelessHARTプロトコル(IEC62591)などが挙げられる。
【0016】
熱流量測定システム200は、矢印226で示されているように、システム200の全ての構成要素に電力を供給する電源モジュール224も含む。熱流量測定システム200が、HART(登録商標)ループやFOUNDATION(登録商標)Fieldbusセグメントなどの有線プロセス通信ループに結合されている実施形態では、電源モジュール224は、システム200の様々なコンポーネントを動作させるために、ループ又はセグメントから受信した電力を調整するための適切な回路を含むことができる。したがって、このような有線プロセス通信ループの実施形態では、電源モジュール224は、それが結合されているループによって装置全体に電力を供給できるように、適切な電力調整を提供することができる。他の実施形態では、無線プロセス通信が使用される場合、電源モジュール224が、バッテリなどの電力源と、適切な調整回路とを含むことができる。
【0017】
コントローラ222は、カプセル206内のセンサからの測定値と、ハウジング210内の端子温度などの追加の基準温度と、を使用して、熱流量に基づくプロセス流体の温度の推定値を生成できる任意の適切な配置を含む。一実施例では、コントローラ222はマイクロプロセッサである。コントローラ222は、通信回路220に通信的に結合されている。
【0018】
測定回路228は、コントローラ222に結合され、1つ以上の温度センサ230から得られた測定値に関するデジタル表示を提供する。測定回路228は、一つ以上のアナログ-デジタル変換器及び/又は適切な多重化(multi-plexing)回路を含み、一つ以上のアナログ-デジタル変換器を温度センサ230とインタフェースすることができる。さらに、測定回路228は、使用される様々なタイプの温度センサに適切であり得るような、適切な増幅及び/又は線形化回路を含むことができる。
【0019】
温度センサ230は、例示的に端子温度センサ232、電子機器温度センサ234を含み、ブロック236によって示されるように、同様にその他の項目を含むことができる。電子機器温度センサ234は、システム200の電子回路に結合され、電子機器の温度を決定するために使用される。典型的には、電子機器温度センサ234は、電子回路を過熱から保護するために使用される。例えば、電子機器が所定の温度に達すると、その温度を下げるためにファンがオンにされる。一実施形態としては、電子機器温度センサ234は、基準温度を感知する。
【0020】
図3は、本発明の一実施形態に係るプロセス流体の温度推定システムの概略図である。システム300は、システム200(
図1に示す)といくつかの類似性を有し、同様の構成要素には同様の番号が付与されている。特に、システム300は、バネ又は他の適切な機械的要素308を介してパイプ100の外面に接触するように付勢されるセンサカプセル306を含む。さらに、センサカプセル306は、プロセス流体の推定値を生成するために、ハウジング310内の電子機器に電気的に結合される。しかしながら、
図3に示すように、3つの追加の温度センサカプセル320、322、及び、324は、パイプ100に関する異なる半径方向の位置に配置され、クランプ302によってそれに結合されている。図示された例では、4つのセンサカプセル(306、320、322、及び、324)が、約90°の間隔で配置されている。したがって、温度センサカプセル306は、パイプ100の上部に配置され、温度センサカプセル324は、その下部に配置される。同様に、センサカプセル320は、パイプ100の片側に配置され、センサカプセル322は、センサカプセル320の実質的に直径方向の反対側に配置される。各センサカプセルは、ワイヤ(図示せず)又は無線通信を用いて、接続ヘッド326、328、及び、330などのそれぞれの接続ヘッドを介して、送信機ハウジング310内の測定回路に電気的に結合される。認識できるように、各センサカプセルは、そのそれぞれの位置でパイプスキン温度を測定し、そして、それぞれのセンサカプセルの取り付け位置に対応するパイプ100の内側表面の温度の推定値を生成するように使用することができる。送信機ハウジング310内に配置された電子機器のコントローラ222は、異なる位置における内側表面の温度の様々な推定値の間の差に基づいて、プロセス流体の流動する状態を決定するようにプログラムされるか、又は、さもなければ構成される。さらに、
図1及び
図2に関して上述したように、基準温度表示は、送信機ハウジング310内に配置された基準温度センサによってか、又は、アンテナ312を介したようなプロセス通信を介して通信されるか、又は、追加の温度センサに結合することによってか、により提供されることができる。一実施形態においては、温度センサは、送信機ハウジング310内に端子接合部に近接して配置され、測定回路228に結合される。
【0021】
パイプ又は導管100についての異なる位置に2つ以上のセンサカプセルを配置することにより、システム300は、提供されるプロセス流体の温度を正確に推定するために、プロセス流体が適切に流動しているか否か、を判定することができる。さらに、本明細書に記載される実施形態では、プロセス流体導管100が、部分的にしか充填されていないか否か、及び/又は、プロセス流体がプロセス流体導管100を通って流動しているか否か、も判定することができる。これらの追加の表示は、システム300によってローカルに(ローカルディスプレイを介してなどで)提供されてもよいし、アンテナ312を介したプロセス通信を経由してなどで、遠隔装置に通信されてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、センサの特性が何を意味するかを決定する前に、様々なセンサカプセルの取り付け方向を認識していることが重要である。言い換えれば、送信機ハウジング310内のコントローラ222は、センサカプセル306がプロセス流体導管100の上部に配置されていることを認識していなければならず、同様に、センサカプセル324がその下部側に配置されていることを認識していなければならない。同様に、コントローラは、センサカプセル320及び322が、プロセス流体導管の反対側に各々配置されていることも認識していなければならない。この情報を用いて、コントローラ222は、より正確なプロセス流体の温度推定値を提供するために、変化するプロセス流体の流動の状態の表示を生成、及び/又は、修正をすることができる。以下は、流動する各状態と、それらがコントローラ222によって識別されることができる方法の例である。
【0023】
仮に、プロセス流体を横切る勾配が、上部のセンサで最も高い温度を生成し、下部の温度センサが最も低く、両側部のセンサが実質的に同じ表示を提供する場合、コントローラ222は、プロセス流体がプロセス流体導管100を流動していないと判定することができる。これは、プロセス流体が、プロセス流体導管の全ての内側表面に接触しており、流体が流動していないので、より暖かい流体がプロセス流体導管の上部に移動し、より冷たい流体が下部に留まることになるからである。そのようなプロファイルが発生した場合、コントローラ222は、プロセス流体に対する無流動の状態の表示を提供することができる。さらに、プロセス流体の温度の平均は、上部及び下部の各センサを平均化し、その推定値を2つの側部センサで提供される推定値と比較することによって提供されることができる。この例では、コントローラ222は、プロセス流体の温度の推定値だけでなく、プロセス流体が流動していないことを示す追加の表示も提供することができる。
【0024】
下部及び各側部センサが全てほぼ等しい温度を提供するが、上部センサ(センサカプセル306)が、周囲と側部及び下部センサの各値の間にある温度である場合、コントローラ222は、プロセス流体導管の50%を超える部分が充填さされていることを示すことができる。さらに、この状態が発生した場合、コントローラ222は、側部及び下部センサカプセルの値のみに基づいて、プロセス流体の温度の推定値を提供することができ、さらに、導管が50%より大きく100%より小さく充填されているという表示を提供することができる。
【0025】
仮に、上部及び側部のセンサが、周囲温度と下部センサの温度との間にある温度で測定されるが、上部センサの値が、周囲温度に最も近い場合、コントローラ222は、プロセス流体導管が50%未満で充填されていることを示すことができる。さらに、プロセス流体の温度の表示は、下部センサカプセル324からの温度のみに基づいて提供されることができ、コントローラ222は、導管100が50%未満で充填されている、という表示を提供することができる。
【0026】
仮に、上部及び側部のセンサが、実質的に同じ温度であるが、下部センサカプセル324が、異なる値を記録する場合、コントローラ222は、プロセス流体導管の下部の内側表面に何らかの物質が存在することを判定することができる。そのような物質の例としては、水分、沈殿物などを挙げることができる。そのような例では、プロセス流体の温度推定値は、上部及び側部センサのみに基づいて提供されることができ、コントローラ222は、導管100の下部内側表面に物質が検出されたということの追加の表示を提供することができる。
【0027】
図4は、プロセス流体の流動の変化に伴う、パイプ壁の異なる各位置の温度を経時的に示すチャートである。
図4に示されるデータは、プロセス流体が流動していない場合の状態を例示するものである。このデータは、参照番号400で示されるような側部に取り付けられたセンサと、参照番号402で示されるような下部に取り付けられたセンサ、からのデータとの間の差異を示すものである。時間t
1において、プロセス流体の流動を生成し始めるために、ポンプが作動される。見てわかるように、各センサは類似する温度測定にさらされ、その値は時間t
2ですぐに収束する。
【0028】
図3について図示された実施形態では、クランプ機構に結合され、々が、各々の接続ヘッドに結合された複数のセンサカプセルを示しているが、他の実施形態では、複数のセンサポイントが、クランプ機構に直接に組み込まれ、種々のセンサ線が、送信機ハウジング310に配線されて、測定回路228に直接に結合される可能性があることが明示的に意図されている。さらに、
図3について示された実施形態では、合計4つのセンサカプセルを利用しているが、3つのそのようなセンサカプセル(上部、下部、及び、片方の側部のセンサカプセル)を使用することによって、いくつかのプロセス流体の変動情報が識別可能であることも意図されている。さらに、4つ以上のセンサカプセルを使用することによって、追加情報を識別可能であることも明示的に意図されている。さらにまた、複数のそのようなシステム300が、プロセス流体導管に沿って異なる長手方向の位置に配置されていてもよく、それぞれのシステム内のコントローラの一方又は両方には、流動の方向に沿った温度の流動の変動を分析して、プロセス流体の推定システムにおける追加のプロセス流体の流動の状態及び/又は修正を決定できるように、他のプロセス流体の推定システムからの追加情報が提供されてもよいことが明示的に意図されている。例えば、そのような情報は、プロセス流体の流動が、乱流、層流、又は、遷移流であることを示す場合がある。断面勾配は、また、流動が完全に発達しているか否かを示すだけでなく、乱流状態への擾乱を検出するために使用されてもよい。エルボ、バルブ、レデューサーなどの配管の乱れによって、十分に発達した乱流が破壊される可能性がある。正確な温度計測(及び、流量計測)は、多くの場合、流動の状態が十分に発達しているか否かに依存している。
【0029】
プロセス流体導管の外部表面についての追加の温度測定を採用する実施形態では、断面温度の直線性を決定することができる。この直線性の表示は、スケーリング、間引き、堆積物の存在、又は、蒸気用途における不要な水、などの状態を検出するのに役立ち、対策を講じるための表示を提供することもできる。これは、場合によっては、対策を講じないと、効率への影響、圧力の上昇、又は、プロセス流体導管の永久的な損傷、につながる可能性があるため、重要であると考えられる。
【0030】
定常状態の温度差は、場合によっては、対処可能な状態を決定するために必要な全てであるかもしれないが、温度変化によるタイミング情報を監視することによって、スケーリング又は薄厚化(thinning)レベルのより良い理解を提供することができる。したがって、システム300によって提供される様々なプロセス流体の推定値は、外部デバイスによって保存されるか、又は、内部に保存され、経時的に分析されて、システムの摩耗、又は、その他の劣化を示す傾向を識別することができる。
【0031】
これまで説明した実施形態は、一般的に、センサカプセル内に抵抗温度装置(RTD)を有するセンサカプセルの使用を想定しているが、本発明の実施形態に従って、任意の適切な温度感知構造、又は、技術を使用することが可能である。例えば、光ファイバーなどのセンサの方法は、導管100についての温度測定点のより高い密度を提供する技術を提供することができる。
【0032】
図5は、本発明の一実施形態に係る、様々な流動の状態についての、流動の導管内のプロセス流体の温度を推定するための方法のブロック図である。方法500は、ブロック502で始まり、プロセス流体導管についての複数の位置でのスキン温度が測定される。例えば、スキン温度は、
図3について上述したように、上部、下部、及び、側部の各位置で測定されてもよい。次に、ブロック504において、特定の流動の状態を識別するために、様々な温度測定値の間のあらゆる差異が分析される。流動の状態の例、及び、そのような流動の状態が生成する測定温度の差異については、上述されたとおりである。また、測定値の差異(又は、同等性)が必要とされる程度は、ユーザーが選択した閾値として設定することができること、又は、プロセス流体の温度推定システムの組み立て又は構築中に、製造者を介して、プログラム的に入力することができること、が明示的に意図される。測定された温度の差に基づいて識別される可能性のある様々な状態の例としては、参照番号506に示されるように、100%の満充填で流動するプロセス流体導管、参照番号508に示されるように、流動のない状態、参照番号510に示されるように、50%を超えて充填されて流動する状態、参照番号512に示されるように、50%未満で充填されて流動する状態、参照番号514に示されるように、プロセス流体導管の下部内側表面における物質の存在、が挙げられる。認識されることができるように、追加のセンサカプセルが、プロセス流体導管について配置される(45°間隔で配置されるなど)場合、プロセス流体導管の充填の追加のレベル(25%及び75%など)も提供される場合がある。次に、ブロック516において、プロセス流体の流動の状態は、出力として提供されてもよく、及び/又は、プロセス流体の温度推定値を調整するか、又は、他の方法で補償するか、のために使用されてもよい。上述したように、所定の実施態様では、プロセス流体の温度の推定は、利用可能なセンサの全てよりも少ないものからのデータに基づいてもよい。例えば、プロセス導管が50%未満しか充填されていない場合、プロセス流体の推定は、下部のセンサカプセル(
図3に示された324のような)によって感知されるスキン温度のみに基づいて実施される。対照的に、プロセス流体の流動の状態が、物質(堆積物など)がプロセス流体導管100の下部表面に近接して配置されているが、プロセス流体導管がそれ以外は満杯であることを示す場合、プロセス流体の温度推定は、上部及び側部センサカプセルの測定値に基づき、下部センサカプセルから受け取った値は省略されることになる。したがって、調整されたプロセス流体の温度推定は、識別されたプロセス流体の流動の状態に基づいて提供される。次に、ブロック518において、システムは、任意選択で、識別されたプロセス流体の流動の状態を報告してもよい。
【0033】
本発明を好ましい実施形態を参照して説明したが、当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、実施形態及び詳細な説明において変更がなされ得ることを認識するであろう。
【国際調査報告】