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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(54)【発明の名称】熱抽出紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/00 20060101AFI20230227BHJP
【FI】
D21H11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022537465
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2020086469
(87)【国際公開番号】W WO2021122779
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】19219126.0
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515233650
【氏名又は名称】モンディ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュバイガー,エリーザベト
(72)【発明者】
【氏名】ゴエス,パウルス
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA02
4L055AA03
4L055AC06
4L055BE02
4L055EA04
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA12
4L055EA16
4L055EA31
4L055GA30
(57)【要約】
実質的にセルロースと酸及び/又は塩基に基づくpH値調整剤などのセルロース生産に必要な製造添加物とから作られた、水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙において、この紙は、長さ加重平均として少なくとも2.0mm、特には長さ加重平均として少なくとも2.5mmの繊維長を有するセルロースのみを含み、さらに、この紙を形成するセルロースは、高濃度粉砕によって30~35%の濃度に粉砕されて、そして場合により低濃度粉砕によって4~6%の濃度に粉砕されているセルロースであって、この紙における微粉の割合は、6.5%より小さい値に設定され、そしてpH値は、擬似中性範囲内、特には7.5を下回る値のpH、好ましくは6.6~7.4の間の値のpHに設定され、そしてこの紙の機械方向の伸びは、3%以下である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースと酸及び/又は塩基に基づくpH値調整剤などのセルロース生産のために必要な製造添加物とから実質的に作られる、水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙であって、長さ加重平均として少なくとも2.0mm、特には長さ加重平均として少なくとも2.5mmの繊維長を有するセルロースのみを含む紙であり、当該紙を形成するセルロースは、高濃度粉砕によって30~35%の濃度に粉砕され、そして場合により低濃度粉砕によって4~6%の濃度に粉砕されているセルロースであって、当該紙におけるセルロース繊維からなる微粉の割合は、6.5%より小さい値に設定され、そしてpH値は、擬似中性範囲内、特には7.5を下回る値のpH、好ましくは6.6~7.4の間の値のpHに設定され、そして当該紙の機械方向の伸びは、3%以下である、紙。
【請求項2】
機械方向(MD)における破断ひずみ:交差方向(CD)における破断ひずみの比率が、1:5.5以下である、特には、1:4.5以下である、請求項1に記載の紙。
【請求項3】
セルロースが、モミ、トウヒ、マツ、カラマツ及びベイマツ又はこれらの2以上の混合物を含む群から選ばれる針葉樹由来のセルロースから選択される、請求項1又は2に記載の紙。
【請求項4】
針葉樹由来のセルロースの15%まで、好ましくは10%まで、特におよそ5%が、ブナ、オーク、ヤマナラシ、ポプラ、アカシア、ハンノキ、カエデ、クリ、アメリカヌマミズキ、アメリカスズカケノキ、ライム及びユーカリ又はこれらの2以上の混合物を含む群から選ばれる落葉樹由来のセルロースによって置き換えられる、請求項3に記載の紙。
【請求項5】
紙が、40~100g/m、好ましくは50~80g/mの間の坪量を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の紙。
【請求項6】
15s~25sの間、特には17s~20sの間の、ガーレーにしたがう空気透過性を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の紙。
【請求項7】
紙からの水抽出物の塩素含量が、0.7mg/l未満であり、そして紙からの水抽出物のアルミニウム含量が、0.1mg/l未満である、請求項1~6のいずれか1項に記載の紙。
【請求項8】
70~600Nm/kg、特には170~400Nm/kg、そして特に好ましくは200~280Nm/kgの、機械方向における曲げ剛性指数を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の紙。
【請求項9】
紙が、場合によりカレンダー処理され、特にはソフトニップカレンダー又はロングニップカレンダー、そして特には、シューカレンダーにおいてカレンダー処理される、請求項1~8のいずれか1項に記載の紙。
【請求項10】
紙の表面エネルギーが、33mJ/mを超えるように、好ましくは35mJ/mを超えるように、特に好ましくは38mJ/mを超えるように調整される、請求項1~9のいずれか1項に記載の紙。
【請求項11】
サシェ、コーヒーカプセルのための紙ふた、例えばヨーグルトポットもしくはスープ容器などの食料品容器、又は例えばベーキングミックスのための容器の生産のための方法における、請求項1~10のいずれか1項に記載の水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースとセルロース生産に必要な製造添加物、例えば酸及び/又は塩基に基づくpH値調整剤とから実質的に作られるか、セルロースとセルロース生産に必須な製造添加物、例えば酸及び/又は塩基に基づくpH値調整剤とから実質的に作られる、水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーフィルター、茶フィルターとしての使用又は他の用途のための、熱抽出紙とも呼ばれる特殊な水蒸気透過性及び耐熱水性の紙は、特に食品分野で使用される場合、特定の必要条件を満たしていなければならない。使用される原材料(この場合は木片チップ又はセルロース)だけでなく、添加物もまた、細かく規格化されて、非常に少数の特定の物質から選択され得る。
【0003】
この場合の添加物の一覧は、選ばれた用途に依存して異なっており、そして特には、湯抽出後に、抽出物の全乾燥残渣が10mg/dmの量を超えてはならず、そして特には、紙生産において一般に使用されている添加物は、大幅に削減する必要がある。
【0004】
これに関連して、その後の用途に依存して必要条件が異なること、及び例えば茶をいれるために好適な紙は、クックインバッグ(cook-in bag)として使用できないことが、明らかとなった。
【0005】
しかし、従来のコーヒー及び茶フィルターのほかに、多くの特殊紙もまた、当該分野で公知であり、例えば、熱いコーヒーもしくは熱い茶又はスープを入れて販売される飲料用カップの生産のために使用され得、すなわち使用されてもよい。したがって、例えば、EP1985437A1は、紙が飲料用カップなどに加工される方法を開示し、ここでは、紙が食品分野における形成の直後に、例えば熱いコーヒー又は熱い茶のために使用され得る。
【0006】
いれるためのコーヒーを含むカプセルを受け入れることによりコーヒー又は茶をいれることのできる機械が、産業用品市場のみならず家庭用においてもますます使用されているので、従来のコーヒーフィルターの他に、この種のカプセルの需要が、近年より高まってきている。これらの機械の使用は、非常に多数の使用済みプラスチックカプセルもしくは金属カプセル又はその両方でできたカプセルを生じ、これらは現在、ほとんど捨てられているか、又は特殊廃棄物とされている。海の真ん中などの最も手の届かないところで見いだされるプラスチック廃棄物の問題が、いたるところでますます増え続けているがゆえに、プラスチックをリサイクルされるように捨てることによって、この大きくなり続けている問題をできる限り小さくしなければならない。金属カプセル、特にはアルミニウムカプセルは、非常に高価であり、その生産は、高いエネルギー消費を必要とするので、費用の掛かる処理をしなければならないカプセルを使用することなく、そして環境への危険を冒すことなく、コーヒーを充填したカプセルを用いてコーヒーを入れることができる、カプセルを用いるコーヒーマシンのための新しい種類の容器が、必要である。
【0007】
EP0422898A1は、2枚の丸く切ったフィルター紙を含み、そのうちの1枚は少なくとも3%引き延ばされ得、そしてカプセルの頂部表面を形成する他方の紙は、密閉可能にするためにポリエチレン又はポリプロピレンなどの密閉剤を含侵させている、コーヒーカプセルについての最適化した設計を開示している。
【0008】
さらに、あらかじめ作られた食品が含まれる容器、例えばスープ容器、ヨーグルトポット及びそれらのふた、ならびに、ベーキングミックスのための容器、例えば、製品が即時消費可能であるか又は包装自体の中で完成させることができる容器についての需要が、高まりつつある。環境を保護するため、プラスチックの容器又は容器のふたは、ますます評判が下がってきつつあり、そして特に紙容器は、いつでもひっぱりだこの代替品となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1985437号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0422898号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ミルク、茶、ココア、香料などの熱抽出可能な消耗品のためのサシェ、ならびにスープ容器などの熱い飲料容器、茶及びコーヒーのカプセルなどのふたの生産に好適であるか、又はまた、広範な種々の食品の熱い調理品のための容器、ふたもしくは包装の生産に好適であり、そしてさらに、広範な種々の液状、クリーム状、もしくはペースト様の食品の包装のために直接使用され得る、水蒸気透過性かつ耐熱水性である紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題を解決するために、水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙は、実質的に、長さ加重平均として少なくとも2.0mm、特には長さ加重平均として少なくとも2.5mmの繊維長を有するセルロースのみを含む紙であり、この紙を形成するセルロースは、高濃度粉砕によって30~35%の濃度に粉砕され、そして場合により低濃度粉砕によって4~6%の濃度に粉砕されているセルロースであって、この紙における微粉の割合は、6.5%より小さい値に設定され、そしてpH値は、擬似中性範囲内、特には7.5を下回る値のpH、好ましくは6.6~7.4の間の値のpHに設定され、そしてこの紙の機械方向の伸びは、3%以下であることを特徴とする。長さ加重平均として少なくとも2.0mm、特には長さ加重平均として少なくとも2.5mmの繊維長を有するセルロースを含む紙を選択することにより、従来の紙と比較して実質的により高い引張強度又は破裂強度を有する紙を生産することが可能になる。さらに、水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙における微粉の割合が6.5%未満に設定されているので、一方で紙の必要な空気透過性が保証され、他方では紙の孔の大きさを選択的に調整することができる。pH値を擬似中性範囲内、すなわち7.5未満の値及び好ましくは6.6~7.4の範囲内の値に調整することは、この紙が、熱い飲料及びスープのための熱抽出として好適であるのみならず、例えばこの紙を、例えば熱抽出可能な栄養補助食品などのため、又は直接的に液状、クリーム状、もしくはペースト様の食品の容器及び/又はそのふたの生産のために、使用することもできることを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
紙を形成するセルロースが、高濃度粉砕及び場合により低濃度粉砕を受けたセルロースであるので、紙の伸びを、長手方向の伸びと比較して交差方向に実質的に増大することが可能であり、さらに、未漂白のセルロースが使用される場合には、慣用的に中に含まれている結束繊維を取り除くことを、確実にすることができる。本発明にしたがうと、紙を形成するセルロースは、ゆえに、30%~35%の間の濃度での高濃度粉砕、及び場合により、さらに、4%~6%の間の濃度での低濃度粉砕を受けている。
【0013】
本出願の枠組み内で、用語「紙」が選ばれる場合、これは、特には液状、クリーム状、もしくはペースト様の食品のための、容器又はその構成部分及びふたの両方として、その生産の前、後又は間に使用され得、そして従来的に例えばコーヒーなどの調製のための熱抽出紙としても使用され得る、「水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙」をいう。
【0014】
必要な強度特性をも有する特に良い平坦な紙について、伸び特性は、実質的に、機械方向(MD)の破断ひずみ:交差方向(CD)の破断ひずみの間の比が1:5.5以下、特には1:4.5以下であるように設定される。
【0015】
さらに、水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙の伸びの制限、特には、機械方向での3%以下まで、好ましくは1.5%~3%の間の値の破断ひずみにより、セルロース繊維に由来する交差方向での9.5%までである比較的大きな伸びにもかかわらず、良好な平坦さを保証し、それゆえに、例えばスープ容器、コーヒーカプセル、乳製品のための容器のふたもしくは頂部に好適な、又はさらにベーキングミックスのための容器として好適な紙を、生産することが可能となる。高温及び高圧が使用される際にも裂けることなく繊維構造が破壊されない寸法安定性かつ丈夫な紙を形成することができるので、その結果、この種の紙の、機械方向でのこの小さな伸びにもかかわらず、熱抽出(圧力下を含む)に必要な紙構造を提供することができる。
【0016】
長さ加重平均として少なくとも2.5mmの繊維長を有するセルロースとは、2.5mmの平均繊維長を有するセルロースをいい、ここで、平均値からの偏差はできる限り小さく、好ましくは+0.8mm以下、特には+0.4mm以下、そして特に好ましくは+0.2mm以下である。
【0017】
長さ加重平均で少なくとも2.0mm、特には長さ加重平均で2.5mmの長さ加重繊維長を有するセルロースを用いることにより、非常に短い繊維長を有するセルロース繊維でできた微粉の割合は、抑制される。この種の紙により、均一な性質を達成することが特に可能になり、この性質は、このカプセルなどによって作られる飲料中に入り込む望ましくない微粉又は屑材料(ballast material)の危険性を一切有さず、例えば、高圧におけるコーヒーカプセルなどについての頂部としての使用に好適である。熱い飲料の生産のためには非常に詳細な規制が存在するという事実を考慮すると、どの構成部分が水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙を有し得るか、そして特には、生産添加物又は添加された物質からどのような量の抽出物が最終産物中に含まれるかに関して、法的な必要条件を考慮するのみならず、特には、紙に含まれることが厳格に必要とされるわけではない添加物を事実上含まないことが保証されなければならず、特には、作られる飲料中にセルロース自体に由来する不純物が入り得ないことを保証することをも考慮して、添加される物質の数が制限されなければならないことが、当業者には直ちにわかるであろう。この場合、この紙はアルミニウムを含まないので、食品に接触する必要がある用途のために許されるという事実に、特に留意されるべきである。
【0018】
水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙の食品好適性におけるさらなる改善のために、結束繊維非含有の未漂白の紙が、使用される。結束繊維を含まない紙を達成するために、紙を形成するセルロースは、紙生産の間、高濃度粉砕、特には130~190kWh/tの範囲内、好ましくはおよそ170kWh/tの高濃度粉砕を受け、この粉砕は、セルロースから全ての結束繊維を取り除くことを可能にするが、しかし、そして同時に、交差方向でのセルロース繊維の過度の伸びをも避けることを可能にする。結束繊維は、紙表面におけるアーティファクトを構成し、したがって、その後の処理に対し不利な影響を有する。紙構造における結束繊維は、外観の点でもそして強度の点でも、除かれるべきである。結束繊維含量を決定する方法は、Tappi T275 -Somerville結束繊維含量において記載される。本発明におけるこの紙は、本明細書中で、Tappi T275にしたがって測定して0.15mmスリット幅で0.01%未満の結束繊維断片を有すると考えられる。
【0019】
驚くべきことに、生産添加物、例えば消泡剤、析出抑制剤、デンプン、定着剤、粘着剤、フィラーなどの添加が省略でき、そしてそれにもかかわらず最高900m/分までの機械速度を示す最新の高速抄紙機で、この機械が実質的に最高速度未満で操作されることなく生産可能である、水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙を、生産することができる。通常、機械速度は、先行技術から公知である生産添加物の添加を通してのみ加速することができるが、これは、特別に選りすぐった成分ならびにその消化及び処理を介して防ぐことができる。
【0020】
本発明にしたがうと、水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙は、したがって、その生産の間に、無機酸及び無機塩基、例えば硫酸(HSO)及び苛性ソーダ(NaOH)のみがpH値調整剤として使用されるように開発されている。この場合、抽出の間の湯による、容易に溶解する塩素の最終産物への導入を避けるために、塩素含量については、特には低く保たれることが重要である。同様に、より多い窒素含量は、紙を用いて調製された飲料、焼いたケーキなどの風味を変えることがあるので、水抽出物中の窒素含量は制限されなければならない。220℃で分離可能な窒素化合物の含量は、DIN 38406-E5-1:1983-10にしたがってKjeldal消化により測光法で決定され、好ましくは、0.025mg/g乾燥物質未満に制限される。
【0021】
本発明の開発にしたがい、セルロースは、モミ、トウヒ、マツ、カラマツ及びベイマツを含む群から選ばれる針葉樹由来のセルロースから選択される。針葉樹は、高い繊維長を有することが知られ、特には、一般に、高い引張強度を有さなければならない紙の生産において使用される。発明にしたがい、長さ加重だけでなく、好ましくは1種及び同じ種類の木に由来するか又は2種の異なる木、例えばトウヒ及びマツの混合に由来するセルロースを選択する試みがなされる。
【0022】
本発明の開発にしたがい、セルロースは、針葉樹由来のセルロースの15%以下、好ましくは10%以下、特におよそ5%が、ブナ、オーク、ヤマナラシ、ポプラ、アカシア、ハンノキ、カエデ、クリ、アメリカヌマミズキ、アメリカスズカケノキ、ライム及びユーカリを含む群から選ばれる落葉樹、又はこれらの2以上の混合に由来するセルロースと置き換えられるように、水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙のために選択される。紙の性質を実質的に変えずに保つために、15%以下、好ましくは10%以下、特にはおよそ5%のセルロースが、針葉樹由来のものよりもより短い繊維長を有する落葉樹由来のセルロースによって置き換えられ得る。この置き換えにもかかわらず、本発明にしたがって、特には、水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙の破断ひずみ特性を維持することが、可能である。
【0023】
本発明にしたがうこの種の紙は、開発に関係して、40~100g/m、好ましくは50~80g/mの間の坪量を示し得る。この場合の坪量は、意図する適用、例えば抽出のために適用される熱若しくは圧力、又は適用の所要時間及び種類に依存して選択され、そして多くの場合、およそ60~80g/mの範囲内である。
【0024】
これは、食品及び飲料の抽出のための任意の必要条件のために、明らかに好適であるので、本発明の開発にしたがい、水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙は、この紙からの湯抽出物の塩素含量が0.7mg/lを下回り、そしてこの紙からの湯抽出物のアルミニウム含量が0.1mg/lを下回るように選択される。特には、添加物に由来するアルミニウム含量を下げること、及び低い塩素含量は、水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙を、食品及び飲料分野で使用することができるようにする。
【0025】
この種の紙の望ましい表面平滑性が、確実に維持されているか又は達成されているので、特には、水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙は、必要な場合にさらにカレンダー化されるように開発される。特にはソフトニップカレンダー又はロングニップカレンダーの手段によるか、及び特に好ましくはシューカレンダー(shoe calender)の手段による、カレンダー加工の任意選択的工程は、紙の表面を平滑化させるが、同時に、破裂強度、機械方向における伸び特性及びガーレー値に対して大きすぎる悪影響を有さない。シューカレンダーにおける50~170mmのシュー長(shoe length)の選択、例えば、10MPaまでのニップ圧、280℃までのカレンダーローラーの表面温度は、水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙の所望の平滑化挙動及び印刷性に対して良い影響を有する。ソフトニップカレンダー又はロングニップカレンダー、及び特には、シューカレンダーが使用される場合、過剰な紙の圧縮を避けるために、カレンダーローラーの線荷重が、350kN/mの値、好ましくは250kN/mの値、及び特に好ましくは250kN/mの値を超えないことを確実にすることが賢明であり、結果として、この紙の所望の平滑性及び印刷性が達成され得る。ロングニップカレンダー、及び特にはシューカレンダーの場合、線荷重の値は、700kN/m、好ましくは600kN/m、及び特に好ましくは500Kn/Mを超えてはならない。
【0026】
本発明の開発にしたがい、硫酸塩処理した未漂白のセルロースを、水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙のために使用する。未漂白のセルロースの使用は、これを使用しない場合には必要である漂白剤の使用を避けることを意味し、これは実質的に、熱抽出容器又は食品及び飲料分野ならびに食品添加物分野における他の容器の自立型パウチ又はふたとしての、この紙の全体的な好適性を改善する。
【0027】
本発明の開発に対応して、機械方向での曲げ剛性指数を70~600Nm/kg、特には170~400Nm/kg、及び特に好ましくは200~280Nm/kgの間の値に調整することによって、この紙が十分な可撓性を有し使用の間に破れない一方で、剛性が例えば自立型パウチの生産のためにでさえ十分であることが、保証される。特定の引き裂き耐性指数の調整は、この文脈で重要である。本発明の開発に対応して、これは、長手方向及び交差方向において実質的に同じであり、10.0mN.m/g~13.0mN.m/gの範囲内にある。
【0028】
最後に、水蒸気透過性かつ耐熱水性のこの種の紙による水の吸収及びそれによってその中に含まれる製品が湿ることを確実に避けるため、及び/又は対応する風味の保護を保証するため、本発明を、この紙がコーティングされた設計を有することを確実にするように開発した。少なくとも1つのコーティングがこの紙に適用されて、これが本発明にしたがう水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙に効果的に貼りついていなければならず、そして偶然に剥がれることがないことを確実にするため、本発明の開発にしたがい、この紙の表面エネルギーは、33mJ/mを超える、好ましくは35mJ/mを超える、特に好ましくは38mJ/mを超えるように調整される。この場合の表面エネルギーは、この紙及び表面に近い紙の層における極性部分及び分散性部分を合わせたものと考えられる。この表面エネルギーを、Kruss測定機器を用いて決定した;試験液として、水及びジヨードメタンを使用した。表面エネルギーについて、紙の上側とスクリーン側との間の相違は、好ましくは3mJ/m、特に好ましくは2mJ/mである。この方法で、コーティングが適用された場合、例えば片側でコーティングが偶然剥がれないように、この紙の両側が均等に挙動することを確実にすることができる。この紙の表面エネルギーは、使用されるセルロース及び抄紙機において絶対に必須である生産添加物からもたらされる。したがって、その調整は、例えばセルロースの選択を介して可能である。
【0029】
紙コーティングは、例えば以下の方法のうちの1つから選択されてもよい:ラミネーティング、ペースティングもしくは押し出しコーティング、又は押し出しペースティング、分散コーティング又はメタライジング。この種のコーティングの形成のために使用されるコーティング材料は、メタライジングプロセスを除き、主に熱抽出又は熱調製のための食料品に対する法律の下で定められた必要条件を満たすプラスチックであり、紙とコーティング(単数又は複数)との混成物全体が、これらの必要条件に適合しなければならない。生分解性すなわち堆肥可能なプラスチック、例えばポリ乳酸又はポリビニルアルコールなどが、特に好ましい。しかし、各々の場合において他の対応する材料、例えばポリエチレン又はポリプロピレンなどもまた、使用され得る。紙の片側又は両側がコーティングされ得、そして種々の数及び種類のプラスチック又は材料が、コーティングのために使用され得る。対応する層の厚みは、それぞれの材料及び他の望ましいバリア性に適合され、1層あたり5~25μm、特には7~20μmの間であり、合計でおよそ50μmより厚くはない。
【0030】
水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙は、好ましくは未漂白で使用されるが、漂白した紙の使用もまた、原則としては可能であるが、しかし、生産プロセスにおいて使用される漂白剤ゆえに、天然の茶色の紙の使用よりも好ましくない。
【0031】
水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙は、茶及び/もしくはコーヒー調製物のためのカプセルならびに/又はヨーグルト及びミルク製品のための封のための頂部を生産するための方法、又はスープ調製物もしくは熱い飲料調製物のための自律型パウチの生産のための方法において使用され得、例えば、必要な場合に熱い飲料の中に追加で溶解される構成成分、例えばミルク粉末、茶、チョコレートなどが、含まれてもよい。
【0032】
本発明は、例示的な実施形態の助けを用いて以下でより詳細に説明される。生産した製品の性質の説明のために使用される変数の測定に関して、その測定又は決定のために以下の基準が使用されており、以下、これらは別個に挙げない。
【0033】
【表1】
【実施例
【0034】
実施例1
本発明にしたがう、第1の水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙の生産。
80%~81%のトウヒ及び19%~20%のマツの木のみから生産された、42のカッパー価を有する未漂白の硫酸クラフトセルロースを使用し、水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙を生産した。1000m/分を超える最高速度で擬似中性的に作動した(特には紙生産のために504m/分で操作した)袋抄紙機において、98%硫酸のみを使用して、pHを下げて調整した。生じた白色の水は、6.2~およそ7.5のpH値を有する。紙生産の間に通常使用される化学物質、例えばミョウバン、デンプン、析出抑制剤、消泡剤、滑石又は他のサイズ剤を使用するべきではなく、プラント内の対応する追加開口部を水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙の生産が始まる少なくとも1時間前に閉鎖することにより、生産する紙におけるこれらの材料の何らかの残存量を、確実に留めることができる。同様に、短い繊維を有する紙の夾雑を避けるため、繊維ゲッターを別の抄紙機又は他の廃棄物容器へと移す。この切り替えを、生産の開始前に、数時間、好ましくはおよそ3時間行う。この場合、紙自体の廃棄物、乾燥廃棄物及び端切れが紙生産の間に再びストックにフィードバックしないように、抄紙機を操作する。これらの流れを、生産の間に、いわゆる中間容器内に導く。
【0035】
ベース材料は、高濃度粉砕及びその後の低濃度粉砕を受け、ここで、高濃度粉砕の場合、濃度を30%~35%の間に設定し、そして低濃度粉砕の場合、4%~6%の間に設定する。さらに、高濃度粉砕の場合、交差方向における張り及び低濃度粉砕を、17~20秒にわたる多孔性の到達(ガーレー)にしたがって制御する。上述の例示的な実施形態において、高濃度粉砕の間の特定の粉砕負荷は、160~180kWh/tの間であり、そして低濃度粉砕の間は120~145kWh/tである。
【0036】
抄紙機に、Fourdrinierスクリーン部の長いスクリーンを供する。この紙を、55kN/mの第1ニップ、75kN/mの第2ニップ及び500kN/mの圧力でのシュー圧における圧力で、2つの従来型ニップ及びシュープレスを用いるプレス部においてプレスする。水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙を、乾燥部においてスラローム乾燥を用いて乾燥させる。乾燥を、7%残留湿度に達する標的値まで続ける。
【0037】
この方法で生産した紙は、以下を有する:
17sの空気透過性(ガーレー)
207Nm/kgの曲げ剛性指数
61g/mの坪量、及び
機械方向で1.92%の破断ひずみ
交差方向で6.25%の破断ひずみ。
【0038】
性質を試験するために、ISO 6588-2:2012標準にしたがって、2gの紙から100mlの水を用いて還元水による沸騰により、1時間にわたって熱抽出物を作った。標準において特定した緩衝溶液/塩化カリウム溶液は、用いなかった。
【0039】
繊維材料を濾別し、そして濾過液中の塩素を、イオンクロマトグラフィーを用いて、及びアルミニウムイオンを、原子吸光分析を用いて決定した。0.62mg/lの塩素含量及び0.079mg/lのアルミニウム含量が達成されたことを実証した。濾過液において6.8のpH値を、決定した。
【0040】
セルロースは、2.47mmの繊維長、6.48%の微粉割合(画分0.05~0.5mm)及び0.005%の結束繊維含量を有した。
【0041】
上側の表面エネルギーは、40mJ/mであり、そしてスクリーン側は42mJ/mであった。
【0042】
実施例2
本発明にしたがう第2の水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙の生産。
80%~81%のトウヒ及び19%~20%のマツの木のみから生産された、41のカッパー価を有する未漂白の硫酸クラフトセルロースを使用し、水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙を生産した。1000m/分を超える最高速度で擬似中性的に作動した(特には紙生産のためにおよそ504m/分で操作した)袋抄紙機において、98%硫酸のみを使用して、pHを下げて調整した。生じた白色の水は、6.2~およそ7.5のpH値を有する。紙生産において通常使用される化学物質、例えばミョウバン、デンプン、析出抑制剤、消泡剤、滑石又はサイズ剤を使用するべきではなく、プラント内の対応する追加開口部を紙生産が始まる少なくとも1時間前に閉鎖することにより、生産する紙におけるこれらの材料の何らかの残存量を、確実に留めることができる。同様に、短い繊維を有する水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙の夾雑を避けるため、繊維ゲッターを別の抄紙機又は他の廃棄物容器へと移す。この切り替えを、生産の開始前に、数時間、好ましくはおよそ3時間行う。この場合、紙自体の廃棄物、乾燥廃棄物及び端切れが紙生産の間に再びストックにフィードバックしないように、抄紙機を操作する。これらの流れを、生産の間に、いわゆる中間容器内に導く。
【0043】
ベース材料は、高濃度粉砕及びその後の低濃度粉砕を受け、ここで、高濃度粉砕の場合、濃度を30%~35%の間に設定し、そして低濃度粉砕の場合、4%~6%の間に設定する。さらに、高濃度粉砕の場合、交差方向における張り及び低濃度粉砕を、17~20秒にわたる多孔性の到達(ガーレー)にしたがって制御する。上述の例示的な実施形態において、高濃度粉砕の間の特定の粉砕負荷は、160~180kWh/tの間であり、そして低濃度粉砕の間は120~145kWh/tである。
【0044】
抄紙機に、特にはFourdrinierスクリーン部の長いスクリーンを供する。この紙を、55kN/mの第1ニップ、75kN/mの第2ニップ及び500kN/mの圧力でのシュー圧における圧力で、2つの従来型ニップ及びシュープレスを用いるプレス部においてプレスする。水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙を、乾燥部においてスラローム乾燥を用いて乾燥させる。乾燥を、7%残留湿度に達する標的値まで続ける。
【0045】
この方法で生産した紙は、以下を有する:
15.1sの空気透過性(ガーレー)
237Nm/kgの曲げ剛性指数
65g/mの坪量、及び
機械方向で1.77%の破断ひずみ
交差方向で7.69%の破断ひずみ。
【0046】
性質を試験するために、ISO 6588-2:2012標準にしたがって、2gの紙から100mlの水を用いて還元水による沸騰により、1時間にわたって熱抽出物を作った。標準において特定した緩衝溶液/塩化カリウム溶液は、用いなかった。
【0047】
繊維材料を濾別し、そして濾過液中の塩素を、イオンクロマトグラフィーを用いて、及びアルミニウムイオンを、原子吸光分析を用いて決定した。0.66mg/lの塩素含量及び0.052mg/lのアルミニウム含量が達成されたことを実証した。濾過液において6.7のpH値を、決定した。
【0048】
セルロースは、2.62mmの繊維長、5.19%の微粉割合(画分0.05~0.5mm)及び0.005%の結束繊維含量を有した。
【0049】
上側の表面エネルギーは、39mJ/mであり、そしてスクリーン側は41mJ/mであった。
【0050】
実施例3
本発明にしたがう第3の水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙の生産。
56%~60%のトウヒ及び25%~29%のマツの木及び15%のカバノキから生産された、5未満のカッパー価を有する漂白硫酸クラフトセルロースを使用し、水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙を生産した。およそ900m/分の最高速度で擬似中性的に作動した(特には紙生産のためにおよそ620m/分で操作した)袋抄紙機において、98%硫酸のみを使用して、pHを下げて調整した。生じた白色の水は、6.7~およそ6.9のpH値を有する。紙生産において通常使用される化学物質、例えばミョウバン、デンプン、析出抑制剤、消泡剤、滑石又はサイズ剤を使用するべきではなく、プラント内の対応する追加開口部を紙生産が始まる少なくとも1時間前に閉鎖することにより、生産する紙におけるこれらの材料の何らかの残存量を、確実に留めることができる。同様に、短い繊維を有する紙の夾雑を避けるため、繊維ゲッターを他の廃棄物容器へと移す。この切り替えを、生産の開始前に、数時間、好ましくはおよそ3時間行う。この場合、紙自体の廃棄物、乾燥廃棄物及び端切れが紙生産の間に再びストックにフィードバックしないように、抄紙機を操作する。これらの流れを、生産の間に、いわゆる中間容器内に導く。
【0051】
ベース材料は、高濃度粉砕及びその後の低濃度粉砕を受け、ここで、高濃度粉砕の場合、濃度を30%~35%の間に設定し、そして低濃度粉砕の場合、4%~6%の間に設定する。さらに、高濃度粉砕の場合、交差方向における張り及び低濃度粉砕を、17~20sにわたる多孔性の到達(ガーレー)にしたがって制御する。上述の例示的な実施形態において、高濃度粉砕の間の特定の粉砕負荷は、70~80kWh/tの間であり、そして低濃度粉砕の間は40~50kWh/tである。
【0052】
抄紙機に、特にはFourdrinierスクリーン部の長いスクリーンを供する。この紙を、60kN/mの第1ニップ、90kN/mの第2ニップ及び95kN/mの第3ニップで、3つのニップを用いてプレス部において生産する。この紙を、乾燥部においてスラローム乾燥を用いて乾燥させる。乾燥を、7%残留湿度に達する標的値まで続ける。
【0053】
この方法で生産した紙は、以下を有する:
19.2sの空気透過性(ガーレー)
83Nm/kgの曲げ剛性指数
100g/mの坪量
機械方向で2.12%の破断ひずみ
交差方向で7.83%の破断ひずみ。
【0054】
性質を試験するために、ISO 6588-2:2012標準にしたがって、2gの紙から100mlの水を用いて還元水による沸騰により、1時間にわたって熱抽出物を作った。標準において特定した緩衝溶液/塩化カリウム溶液は、用いなかった。
【0055】
繊維材料を濾別し、そして濾過液中の塩素を、イオンクロマトグラフィーを用いて、及びアルミニウムイオンを、原子吸光分析を用いて決定した。0.69mg/lの塩素含量及び0.038mg/lのアルミニウム含量が達成されたことを実証した。濾過液において6.8のpH値を、決定した。
【0056】
セルロースは、2.33mmの繊維長、6.24%の微粉割合(画分0.05~0.5mm)及び0.001%の結束繊維含量を有した。
【0057】
上側の表面エネルギーは、44mJ/mであり、そしてスクリーン側は46mJ/mであった。
【0058】
実施例4
本発明にしたがう第4の水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙の生産。
80%~81%のトウヒ及び19%~20%のマツの木のみから生産された、44のカッパー価を有する未漂白の硫酸クラフトセルロースを使用し、水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙を生産した。およそ900m/分の最高速度で擬似中性的に作動した(特には紙生産のためにおよそ605m/分で操作した)袋抄紙機において、98%硫酸のみを使用して、pHを下げて調整した。生じた白色の水は、6.6~およそ7.1のpH値を有する。紙生産において通常使用される化学物質、例えばミョウバン、デンプン、析出抑制剤、消泡剤、滑石又はサイズ剤を使用するべきではなく、プラント内の対応する追加開口部を紙生産が始まる少なくとも1時間前に閉鎖することにより、生産する紙におけるこれらの材料の何らかの残存量を、確実に留めることができる。同様に、短い繊維を有する紙の夾雑を避けるため、繊維ゲッターを別の抄紙機又は他の廃棄物容器へと移す。この切り替えを、生産の開始前に、数時間、好ましくはおよそ3時間行う。この場合、紙自体の廃棄物、乾燥廃棄物及び端切れが水蒸気透過性かつ耐熱水性の紙の生産の間に再びストックにフィードバックしないように、抄紙機を操作する。これらの流れを、生産の間に、いわゆる中間容器内に導く。
【0059】
ベース材料は、高濃度粉砕及びその後の低濃度粉砕を受け、ここで、高濃度粉砕の場合、濃度を30%~35%の間に設定し、そして低濃度粉砕の場合、4%~6%の間に設定する。さらに、高濃度粉砕の場合、交差方向における張り及び低濃度粉砕を、17~20秒にわたる多孔性の到達(ガーレー)にしたがって制御する。上述の例示的な実施形態において、高濃度粉砕の間の特定の粉砕負荷は、170~190kWh/tの間であり、そして低濃度粉砕の間は90~120kWh/tである。
【0060】
抄紙機に、特にはFourdrinierスクリーン部の長いスクリーンを供する。この紙を、70kN/mの第1ニップ、90kN/mの第2ニップ及び105kN/mの第3ニップで、3つのニップを用いてプレス部において生産する。
【0061】
この紙を、乾燥部においてスラローム乾燥を用いて乾燥させる。乾燥を、7%残留湿度に達する標的値まで続ける。
【0062】
この方法で生産した紙は、以下を有する:
18.7sの空気透過性(ガーレー)
422Nm/kgの曲げ剛性指数
40g/mの坪量
機械方向で2.28%の破断ひずみ
交差方向で8.21%の破断ひずみ。
【0063】
性質を試験するために、ISO 6588-2:2012標準にしたがって、2gの紙から100mlの水を用いて還元水による沸騰により、1時間にわたって熱抽出物を作った。標準において特定した緩衝溶液/塩化カリウム溶液は、用いなかった。
【0064】
繊維材料を濾別し、そして濾過液中の塩素を、イオンクロマトグラフィーを用いて、及びアルミニウムイオンを、原子吸光分析を用いて決定した。0.59mg/lの塩素含量及び0.071mg/lのアルミニウム含量が達成されたことを実証した。濾過液において6.7のpH値を、決定した。
【0065】
セルロースは、2.51mmの繊維長、5.45%の微粉割合(画分0.05~0.5mm)及び0.005%の結束繊維含量を有した。
【0066】
上側の表面エネルギーは、37mJ/mであり、そしてスクリーン側は39mJ/mであった。
【国際調査報告】