(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(54)【発明の名称】ガンマ-ヒドロキシ酪酸塩(GHB)投薬
(51)【国際特許分類】
A61K 31/19 20060101AFI20230227BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230227BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230227BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20230227BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230227BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230227BHJP
【FI】
A61K31/19
A61P9/00
A61P9/12
A61P9/04
A61P13/12
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539046
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(85)【翻訳文提出日】2022-07-19
(86)【国際出願番号】 US2020066561
(87)【国際公開番号】W WO2021133778
(87)【国際公開日】2021-07-01
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519426911
【氏名又は名称】ジャズ ファーマシューティカルズ アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】スコビエランダ,フランク
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA02
4C206KA12
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA06
4C206ZA02
(57)【要約】
ナルコレプシー及び他の状態の処置のためのGHB製剤を投与する方法を本明細書に提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在ナトリウムオキシベートを投与されている患者を混合塩オキシベート組成物に切り替えるための方法であって、
治療有効量の混合塩オキシベートを、ナルコレプシーを伴うカタプレキシーまたは過度の日中の眠気を有し、ナトリウムオキシベートで処置されている患者に投与することを含み、前記ナトリウムオキシベート及び前記混合塩オキシベートの量が、オキシベート投薬強度に基づいて10%以内である、前記方法。
【請求項2】
前記混合塩オキシベートが、ナトリウムオキシベート、カリウムオキシベート、マグネシウムオキシベート及びカルシウムオキシベートを含み、前記混合塩オキシベートが、約5%~40%のナトリウムオキシベート(重量/重量%)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合塩オキシベートが、約5%~40%のナトリウムオキシベート(重量/重量%)、約10%~40%のカリウムオキシベート(重量/重量%)、約5%~30%のマグネシウムオキシベート(重量/重量%)、及び約20%~80%のカルシウムオキシベート(重量/重量%)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合塩オキシベートが、約8%mol当量のナトリウムオキシベート、約23%mol当量のカリウムオキシベート、約21%mol当量のマグネシウムオキシベート及び約48%mol当量のカルシウムオキシベートを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記患者が、高ナトリウム摂取に感受性である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記患者が、心不全を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記患者が、高血圧である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記患者が、腎機能障害を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記患者が、脳卒中のリスクを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
1日あたり約0.25g~10.0g、2.0g~10.0g;約3.0g~9.5g;または約4.5g~9.0gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記混合塩オキシベートが、1日あたり2回投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記混合塩オキシベートが、1日あたり1回投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
1日あたり約4.5gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
1日あたり2回、約2.25gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1日あたり約6.0gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
1日あたり2回、約3.0gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
1日あたり約7.5gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
1日あたり2回、約3.75gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
1日あたり約9.0gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
1日あたり2回、約4.5gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記混合塩オキシベート組成物が、液体である、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記液体中の前記混合塩オキシベートの濃度が、350mg/mL~650mg/mL、または約450mg/mL~550mg/mLである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記液体中の前記混合塩オキシベートの濃度が、約0.5g/mLである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記患者が、カタプレキシーに関して処置される、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記患者が、ナルコレプシー患者における過度の日中の眠気に関して処置される、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記混合塩オキシベートが、就寝時に投与される、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記混合塩オキシベートが、就寝時及び就寝時投与の約2.5時間~4時間後に投与される、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
ナルコレプシー患者におけるカタプレキシーまたは過度の日中の眠気を処置するための方法であって、
ナトリウムオキシベートを投与されている患者を混合塩オキシベートに切り替えることを含み、
前記切り替えが、治療有効量の前記混合塩オキシベートを前記患者に投与することを含み、ナトリウムオキシベート及び混合塩オキシベートの量が、オキシベート投薬強度に基づいて5%以内である、前記方法。
【請求項29】
前記混合塩オキシベートが、ナトリウムオキシベート、カリウムオキシベート、マグネシウムオキシベート及びカルシウムオキシベートを含み、前記混合塩オキシベートが、約5%~40%のナトリウムオキシベート(重量/重量%)を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記混合塩オキシベートが、約5%~40%のナトリウムオキシベート(重量/重量%)、約10%~40%のカリウムオキシベート(重量/重量%)、約5%~30%のマグネシウムオキシベート(重量/重量%)、及び約20%~80%のカルシウムオキシベート(重量/重量%)を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記混合塩オキシベートが、約8%mol当量のナトリウムオキシベート、約23%mol当量のカリウムオキシベート、約21%mol当量のマグネシウムオキシベート及び約48%mol当量のカルシウムオキシベートを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記患者が、高ナトリウム摂取に感受性である、請求項28~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記患者が、心不全を有する、請求項28~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記患者が、高血圧である、請求項28~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記患者が、腎機能障害を有する、請求項28~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記患者が、脳卒中のリスクを有する、請求項28~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
1日あたり約2.0g~10.0g;約3.0g~9.5g;または約4.5g~9.0gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項28~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記混合塩オキシベートが、1日あたり2回投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記混合塩オキシベートが、1日あたり1回投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
1日あたり約4.5gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項28~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
1日あたり2回、約2.25gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
1日あたり約6gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項28~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
1日あたり2回、約3.0gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
1日あたり約7.5gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項28~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
1日あたり2回、約3.75gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
1日あたり約9.0gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項28~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
1日あたり2回、約4.5gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記混合塩オキシベート組成物が、液体である、請求項28~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記液体中の前記混合塩オキシベートの濃度が、350mg/mL~650mg/mL、または約450mg/mL~550mg/mLである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記液体中の前記混合塩オキシベートの濃度が、約0.5g/mLである、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記患者が、カタプレキシーに関して処置される、請求項28~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記患者が、ナルコレプシー患者における過度の日中の眠気に関して処置される、請求項28~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記混合塩オキシベートが、就寝時に投与される、請求項28~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記混合塩オキシベートが、就寝時及び就寝時投与の約2.5時間~4時間後に投与される、請求項28~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
ナルコレプシー患者におけるカタプレキシーまたは過度の日中の眠気に関して処置された患者において、混合塩オキシベート組成物にナトリウムオキシベート組成物を置換するための方法であって、
a.治療有効量のナトリウムオキシベートで処置された患者が、高ナトリウム摂取に感受性であるか否かを決定すること;及び
b.前記患者が高ナトリウム摂取に感受性である場合、治療有効量の混合塩オキシベートを前記患者に投与することを含み、
前記ナトリウムオキシベート及び混合塩オキシベートの量が、オキシベート投薬強度に基づいて同じである、前記方法。
【請求項56】
前記混合塩オキシベートが、ナトリウムオキシベート、カリウムオキシベート、マグネシウムオキシベート及びカルシウムオキシベートを含み、前記混合塩オキシベートが、約5%~40%のナトリウムオキシベート(重量/重量%)を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記混合塩オキシベートが、約5%~40%のナトリウムオキシベート(重量/重量%)、約10%~40%のカリウムオキシベート(重量/重量%)、約5%~30%のマグネシウムオキシベート(重量/重量%)、及び約20%~80%のカルシウムオキシベート(重量/重量%)を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記混合塩オキシベートが、約8%mol当量のナトリウムオキシベート、約23%mol当量のカリウムオキシベート、約21%mol当量のマグネシウムオキシベート及び約48%mol当量のカルシウムオキシベートを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記患者が、心不全を有する、請求項55~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記患者が、高血圧である、請求項55~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記患者が、腎機能障害を有する、請求項55~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記患者が、脳卒中のリスクを有する、請求項55~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
1日あたり約2.0g~10.0g;約3.0g~9.5g;または約4.5g~9.0gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項55~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記混合塩オキシベートが、1日あたり2回投与される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記混合塩オキシベートが、1日あたり1回投与される、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
1日あたり約4.5gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項55~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
1日あたり2回、約2.25gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
1日あたり約6.0gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項55~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
1日あたり2回、約3gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
1日あたり約7.5gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項55~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
1日あたり2回、約3.75gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
1日あたり約9.0gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項55~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
1日あたり2回、約4.5gの前記混合塩オキシベートが投与される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記混合塩オキシベート組成物が、液体である、請求項55~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記液体中の前記混合塩オキシベートの濃度が、350mg/mL~650mg/mL、または約450mg/mL~550mg/mLである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記液体中の前記混合塩オキシベートの濃度が、約0.5g/mLである、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記患者が、カタプレキシーに関して処置される、請求項55~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記患者が、ナルコレプシー患者における過度の日中の眠気に関して処置される、請求項55~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記混合塩オキシベートが、就寝時に投与される、請求項55~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記混合塩オキシベートが、就寝時及び就寝時投与の約2.5時間~4時間後に投与される、請求項55~79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記ナトリウムオキシベート及び前記混合塩オキシベートの量が、グラム対グラムに基づいて同じである、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記切り替えが、治療有効量の前記混合塩オキシベートを前記患者に投与することを含み、ナトリウムオキシベート及び混合塩オキシベートの量がグラム対グラムに基づいて同じである、請求項28~54のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2019年12月24日に出願された米国出願シリアル番号62/953,288、2020年3月23日に出願された米国出願シリアル番号62/993,372、2020年3月27日に出願された米国出願シリアル番号63/000,547、及び2020年7月16日に出願された米国出願シリアル番号63/052,676(この各々の内容は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組込まれる)に対する優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
ガンマヒドロキシ酪酸塩(GHB)は、「オキシベート」としても知られ、多くの人体組織に見出だされる催眠特性を伴う内因性化合物である。GHBは、例えば、哺乳動物の脳及び他の組織に存在する。脳では、GHB濃度が最も高いのは視床下部及び大脳基底核であり、GHBは神経伝達物質として機能すると推論されている(Snead and Morley,1981,Brain Res.227(4):579-89)。GHBの神経薬理学的作用には、脳のアセチルコリンの増加、脳のドーパミンの増加、GABA-ケトグルタル酸トランスアミナーゼの阻害、及び脳における酸素消費の低下を伴わないグルコース利用の低下が含まれる。GHB処置は、ナルコレプシーの兆候及び症状、すなわち、日中の眠気、カタプレキシー、睡眠時麻痺、及び入眠時幻覚を実質的に減少させる。加えて、GHBは、総睡眠時間及びレム睡眠を増加させ、レム潜時を低減させ、睡眠時無呼吸を減少させ、全身麻酔を改善する(例えば、米国特許第6,472,431号;同第6,780,889号;同第7,262,219号;同第7,851,506号;同第8,263,650号;及び同第8,324,275号(その各々の開示は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組込まれる)を参照されたい)。
【0003】
ナトリウムオキシベート(Na.GHB)は、Xyrem(登録商標)として市販されており、ナルコレプシー患者における過度の日中の眠気及びカタプレキシーの処置に関して承認されている。Na.GHBはまた、線維筋痛症候群の患者において疼痛を緩和し機能を改善することに関して(Scharf et al.,2003,J.Rheumatol.30:1070;Russell et al.,2009,Arthritis.Rheum.60:299を参照されたい)、アルコール中毒及びアルコール離脱症候群の処置において(Keating,GM,2014,Jan;34(1):63-80を参照されたい)、パーキンソン病患者における過度の日中の眠気及び疲労を軽減すること、ミオクローヌス及び本態性振戦を改善すること、ならびに遅発性ジスキネジア及び双極性障害を軽減することにおいて(Ondo et al.,2008,Arch.Neural.65:1337;Frucht et al.,2005,Neurology 65:1967;Berner,2008,J.Clin.Psychiatry 69:862を参照されたい)有効であると報告されている。
【0004】
Xyrem(登録商標)は、ナルコレプシー患者への使用に関して、薬物の高い用量強度を必要とする慢性的に使用される製品である。薬物からのナトリウム摂取の量は、患者の食事性ナトリウム摂取を有意に増加させるが、これは、全ての患者、及び特に心血管代謝のリスクを伴う患者、例えば心不全、高血圧、または腎機能障害の患者には望ましくない。ゆえに、当該技術分野では、Xyrem(登録商標)と比較して減少した患者のナトリウム摂取を提供するオキシベート組成物及び処置方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、本開示は、ナトリウムオキシベートで処置された患者(例えば、ナルコレプシー患者におけるカタプレキシー、過度の日中の眠気、または特発性過眠症に関して処置された患者)において、混合塩オキシベート組成物にナトリウムオキシベート組成物を置換する、交換する、変更する、または切り替える方法を提供し、ナトリウムオキシベート及び混合塩オキシベートの量は、オキシベート投薬強度に基づいて同じである。
【0006】
いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、約8%mol当量のナトリウムオキシベート、約23%mol当量のカリウムオキシベート、約21%mol当量のマグネシウムオキシベート及び約48%mol当量のカルシウムオキシベートを含む。
【0007】
一態様では、本開示は、ナルコレプシー患者におけるカタプレキシーまたは過度の日中の眠気の処置のためにナトリウムオキシベートを投与されている患者を、混合塩オキシベート組成物に切り替えることを提供し、本方法は、
治療有効量の混合塩オキシベートを患者に投与することを含み、ナトリウムオキシベート及び混合塩オキシベートの量は、オキシベート投薬強度に基づいて同じである。
【0008】
一態様では、本開示は、ナルコレプシー患者におけるカタプレキシーまたは過度の日中の眠気を処置することを提供し、本方法は、
ナトリウムオキシベートを投与されている患者の用量を混合塩オキシベートに切り替えることを含み、
切り替えは、治療有効量の混合塩オキシベートを患者に投与することを含み、ナトリウムオキシベート及び混合塩オキシベートの量は、オキシベート投薬強度に基づいて同じである。
【0009】
いくつかの実施形態では、1日あたり約0.5g~9gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約0.5gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約0.25gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約1.0gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約0.5gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約1.5gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約0.75gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約2.0gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約1.0gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約2.5gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約1.25gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約3.0gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約1.5gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約3.5gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約1.75gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約4.0gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約2.0gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約4.5gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約2.25gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約6gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約3gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約7.5gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約3.75gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約9gの混合塩オキシベートが投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約4.5gの混合塩オキシベートが投与される。
【0010】
いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、就寝時に投与される。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、就寝時及び就寝時投与の約2.5時間~4時間後に投与される。
【0011】
いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、液体中にある。いくつかの実施形態では、液体中の混合塩の濃度は、約0.5g/mLである。
【0012】
いくつかの実施形態では、患者は、カタプレキシーに関して処置される。いくつかの実施形態では、患者は、ナルコレプシー患者における過度の日中の眠気に関して処置される。いくつかの実施形態では、患者は、特発性過眠症に関して処置される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1、試験1の患者からの絶食及び摂食条件下でのXyrem及びJZP-258に関する平均血漿オキシベート濃度-時間プロファイルを示す。
【
図2】実施例1、試験2の患者からの絶食及び摂食条件下でのXyrem及びJZP-258に関する平均血漿オキシベート濃度-時間プロファイルを示す。
【
図3】JZP-258の有効性を評価する実施例2の試験における対象の動態を示す。患者は、非盲検最適化処置及び用量滴定期に参加し、安定した、忍容可能な、有効用量を提供するために必要な場合にはJZP-258の用量を調整することができた。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義
本開示全体を通して、様々な特許、特許出願及び刊行物が参照される。これらの特許、特許出願及び刊行物の開示はその全体が、本開示の日付の時点で当業者に公知である技術をより完全に説明するために、あらゆる目的のために参照により本開示に組み込まれる。引用されている特許、特許出願及び刊行物と本開示との間に何らかの不一致がある場合は、本開示が優先するものとする。
【0015】
便宜上、本明細書、実施例及び特許請求の範囲で採用されるある特定の用語をここに集める。特に定義されない限り、本開示で使用される技術用語及び科学用語は全て、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0016】
「約」という用語は、数値の直前にある場合、範囲(例えば、その値のプラスまたはマイナス10%)を意味する。例えば、本開示の文脈が別様に指示しない限り、または、かかる解釈と矛盾しない限り、「約50」は、45~55を意味し得、「約25,000」は、22,500~27,500を意味し得る。例えば、「約49、約50、約55、…」、「約50」などの数値のリストでは、前値及び後値間の間隔(複数可)の半分未満、例えば、49.5超~52.5未満、に及ぶ範囲を意味する。さらに、「約」値「未満」または「約」値「超」という語句は、本明細書で提供する「約」という用語の定義を考慮して理解されるべきである。同様に、「約」という用語は、一連の数値または値の範囲に先行する場合(例えば、「約10、20、30」または「約10~30」)、それぞれ、一連の全ての値、または範囲の端点を指す。
【0017】
本明細書で使用する場合、「投与する」、「投与すること」、または「投与」という用語は、化合物もしくは化合物の医薬的に許容可能な塩、または化合物もしくは化合物の医薬的に許容可能な塩を含む組成物もしくは製剤を、患者に直接投与することを指す。
【0018】
本明細書で使用する場合、「ガンマ-ヒドロキシ酪酸塩」(GHB)または「オキシベート」という用語は、ガンマ-ヒドロキシ酪酸の負に帯電したまたはアニオン形態(共役塩基)を指す。GHBは、次の構造式を有する:
【化1】
本明細書で使用する場合、「ガンマ-ヒドロキシ酪酸」(GBA)という用語は、ガンマ-ヒドロキシ酪酸塩のプロトン化形態(共役酸)を指す。GBAは、次の構造式を有する:
【化2】
GHBの塩形態は、米国特許第8,591,922号;同第8,901,173号;同第9,132,107号;同第9,555,017号;及び同第10,195,168号(あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0019】
「有効量」及び「治療有効量」という用語は、本開示において相互交換可能に使用され、患者に投与された場合、意図される結果を行うことができる化合物、またはその塩の量を指す。例えば、混合塩オキシベートの有効量は、患者においてカタプレキシーを軽減するために必要とされる量である。「有効量」または「治療有効量」を含む実際の量は、障害の重症度、患者の大きさ及び健康状態、ならびに投与経路を含むがこれらに限定されない多くの条件に応じて変動するだろう。熟練した医師であれば、医療分野において公知の方法を使用して適切な量を容易に決定することができる。
【0020】
Na.GHB及び混合塩形態を比較する場合の「当量」という用語は、約5%(重量%)以内の同量のGHBを含有する。好ましい実施形態では、混合塩の液体製剤は、Na.GHB含有液体製剤Xyrem(0.409g/mLのGHBを含有する)と当量である。
【0021】
好ましい実施形態では、混合塩の液体製剤は、0.234g/mLのカルシウムオキシベート、0.130g/mLのカリウムオキシベート、0.096g/mLのマグネシウムオキシベート、及び0.040g/mLのナトリウムオキシベート(0.413g/mLのGHBを含有する)を含有する。
【0022】
本明細書で使用する場合、「患者」という用語は、哺乳動物、特にヒトを指す。
【0023】
本明細書で使用する場合、「医薬的に許容可能な」という語句は、健全な医学的判断の範囲内にあり、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずにヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに好適であり、妥当な利益/リスク比に見合う、化合物、材料、組成物、及び/または剤形を指す。
【0024】
本明細書で使用する場合、「担体」は、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤などを包含する。活性医薬品成分のための担体の使用は、当該技術分野で公知である。従来の媒体または薬剤が活性成分と適合しない限り、治療用組成物でのその使用は適切ではない。
【0025】
本明細書で使用する場合、「治療効果」という用語は、方法及び/または組成物によって提供される所望のまたは有益な効果を指す。例えば、カタプレキシーを処置するための方法は、その方法がカタプレキシーを軽減する場合に治療効果を提供する。
【0026】
患者に関して本明細書で使用する場合、「処置すること」という用語は、患者の障害の少なくとも1つの症状を改善することを指す。処置は、障害を治癒すること、改善すること、または少なくとも部分的に寛解させることであり得る。
【0027】
「置換」、「切り替え」、「変更」及び「交換」という用語は、本開示の文脈において相互交換可能に使用される。本開示の方法はまた、ナトリウムオキシベートから混合塩オキシベートへの「移行形態」に関して表現され得る。
【0028】
本明細書で使用する場合、1つまたは複数の「塩」という用語は、酸及び塩基の相互作用によって形成される化合物を指し、酸の水素原子は塩基の陽イオンまたはカチオンによって置き換えられる。医薬的に許容可能な塩には、無機酸、例えば例として、塩酸もしくはリン酸、または有機酸、例えばリンゴ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデリン酸などが含まれる。形成される塩はまた、無機塩基、例えば例として、ナトリウム、カリウム、ケイ酸塩、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄、及び有機塩基、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどから誘導され得る。ある特定の好ましい実施形態では、塩は、金属、例えば、アルカリ金属、例えばリチウム、カリウム、ナトリウムなど、アルカリ土類金属、例えばマグネシウム、カルシウム、バリウムなど、またはアルミニウムまたは亜鉛である無機塩基から形成される。他の塩は、アンモニウムを含み得る。アルカリ金属、例えばリチウム、カリウム、ナトリウムなどを、好ましくは酸と共に使用して、pH調整剤を形成し得る。医薬的に許容可能な塩基付加塩の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、または水酸化アンモニウムなどのような無機塩基から誘導されるものが挙げられる(例えば、Berge et al.,1977,J.Pharm.Sci.66:1を参照されたい)。
【0029】
本明細書で使用する場合、本明細書で使用する「GHBの(1つまたは複数の)塩」という用語は、ガンマ-ヒドロキシ酪酸(GHBの共役酸)と塩基、例えば、NaOH、KOH、Mg(OH)2、及びCa(OH)2などとの相互作用によって形成される化合物を指し、酸の水素原子は、塩基の陽イオンまたはカチオンによって置き換えられている。かかる塩には、例えば、ナトリウムオキシベート(「Na.GHB」)、カリウムオキシベート(「K.GHB」)、マグネシウムオキシベート(「Mg.(GHB)2」)、及びカルシウムオキシベート(「Ca.(GHB)2」)などが含まれ得る。かかる塩は、固体形態であり得るか、またはかかる塩は、例えば、水性媒体に溶解される場合のように、部分的または完全に溶媒和された形態であり得ることが当業者によって理解されるであろう。水性媒体中の塩の溶解度に応じて、塩が溶媒和カチオン(複数可)及びアニオン(複数可)として、または沈殿した固体として、水性媒体中に存在し得ることが当業者によってさらに理解されるであろう。
【0030】
「オキシベート投薬強度」という用語は、特定の用量におけるGHBの量を指す(例えば、Xyremの各mLは、0.5gのナトリウムオキシベートを含有し、これは、0.409g/mLオキシベート投薬強度に当量である)。本開示全体を通して、組成物中のオキシベート投薬強度は、一般に、組成物中に存在するオキシベートの量に関して表されるが、本開示は、オキシベート投薬強度が、用量内に含有されるGBAの当量濃度にて表される実施形態を企図する。
【0031】
組成物中のGBAの当量濃度は、以下の式によって計算され得る:
【数1】
【0032】
ゆえに、Xyremの各mLは、0.5gのナトリウムオキシベートを含有し、これは、0.413g/mLのGBAの当量濃度に当量である。
【0033】
本明細書で使用する場合、「JZP-258」という用語は、約8%のナトリウムオキシベート、約23%のカリウムオキシベート、約21%のマグネシウムオキシベート及び約48%のカルシウムオキシベート(GHBの%モル当量)を含み、0.409g/mLのGHB濃度(または、別の方法で表すと、0.413g/mLのGBAの当量濃度)を有する混合塩オキシベートを含有する溶液を指す。次の表は、JZP-258の代表的な用量における、ナトリウムオキシベート、カリウムオキシベート、マグネシウムオキシベート及びカルシウムオキシベートの%mol当量、重量/体積%、及び絶対量を説明する。
【表1】
【0034】
本明細書で使用する場合、「混合塩」または「混合塩オキシベート」という用語は、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の異なるカチオンが組成物中に互いに組み合わせて存在するGHBの塩を指す。かかる塩の混合物は、例えば、Na.GHB、K.GHB、Mg.(GHB)2、及びCa.(GHB)2からなる群から選択される塩を含み得る。混合塩オキシベートは、米国特許第8,591,922号;同第8,901,173号;同第9,132,107号;同第9,555,017号;及び同第10,195,168号(その内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0035】
本明細書で使用する場合、「重量/重量%」という用語は、塩混合物中の特定の塩の正規化された重量パーセントを指す。
【0036】
本明細書で使用する場合、「重量/重量%比」という用語は、塩の混合物中の重量/重量%値の比を指す。例えば、塩Na.GHB、K.GHB、Mg.(GHB)2、及びCa.(GHB)2が、それぞれ、8%、25.5%、19.5%及び47%の重量/重量%で存在する場合、混合物中のNa.GHB、K.GHB、Mg.(GHB)2、及びCa.(GHB)2の重量/重量%比は、8:25.5:19.5:47である。
【0037】
本明細書で使用する場合、「重量/体積%」という用語は、特定の体積の溶液中の特定の塩の正規化された重量パーセントを指す。
【0038】
本明細書で使用する場合、「製剤」という用語は、本明細書に開示する医薬組成物の安定した医薬的に許容可能な調製物を指す。
【0039】
本明細書で使用する場合、「液体製剤」という用語は、水ベースの製剤、特に水溶液である製剤を指す。
【0040】
ナトリウムオキシベート(Na.GHB)は、Xyrem(登録商標)として市販されており、7歳以上のナルコレプシー患者におけるカタプレキシーまたは過度の日中の眠気の処置用に承認されている。Xyrem(登録商標)の承認された1日用量を投与(6~9グラム/晩を経口投与)すると、成人患者は1日に1100~1638mgのナトリウムを摂取することになる。The American Heart Associationは、1日ナトリウム摂取を2300mg未満、「理想的な」1日摂取を1500mg未満にすることを推奨しており(AHA 2017;Whelton 2012)、The National Academies of Science,Engineering,and Medicineからの近年の報告(2019)は、2300mg/日のレベルを超えると心血管疾患リスクの強力な原因となるエビデンスに基づいて、「2300mg/日を超える場合は摂取を減らす」ように成人に勧告している。ゆえに、Xyrem(登録商標)投与は、推奨される1日摂取目標の実質的な量を占めるナトリウム摂取を提供し、これにより、1日ナトリウム摂取目標に対するアドヒアランスが困難になる。というのも、Xyremを考慮しなくても、2歳以上の米国人に関する平均1日ナトリウム摂取は、3400mgを超えているからである(US Department of Agriculture,Agricultural Research Service.Nutrient intakes from food:mean amounts consumed per individual,by gender and age,in the United States,2009-2010.In:What We Eat in America,NHANES 2009-2010.Washington,DC:US Department of Agriculture,Agricultural Research Service;2012)。
【0041】
JZP-258(本開示の好ましい実施形態)は、実質的により少ないナトリウムを伴ってXyremと同じ処置利益を提供するために開発されたため、ナルコレプシーの生涯にわたる疾患を有する患者は、最適な健康のための1日ナトリウム摂取目標を達成することがより可能になり得る。
【0042】
JZP-258は、カルシウムオキシベート、マグネシウムオキシベート、カリウムオキシベート、及びナトリウムオキシベートを含有する混合塩オキシベートであり、毎晩6~9グラムの用量範囲で投与する場合、87~131mgのナトリウムを提供する。この量は、当量用量のXyrem(登録商標)投与によって提供される量よりもナトリウムが92%少ない。全ての人にとって重要であるが、高血圧、うっ血性心不全、及び心筋梗塞を含む、複数の心血管合併症の存在が増加していることを考えると、ナルコレプシーの生涯にわたる疾患を有する全ての患者にとって、1日ナトリウム摂取目標は重要な考慮事項である(Jennum P,et al.Comorbidity and mortality of narcolepsy:a controlled retro- and prospective national study.Sleep.2013 Jun 1;36(6):835-40.;Ohayon MM.Narcolepsy is complicated by high medical and psychiatric comorbidities:a comparison with the general population.Sleep Med.2013 Jun;14(6):488-92.;and Black J,et al.Medical comorbidity in narcolepsy:findings from the Burden of Narcolepsy Disease(BOND)study.Sleep Med.2017 May;33:13-18。)。ゆえに、Xyrem(登録商標)療法を受けている患者は、ナトリウムオキシベートから、投与された場合に必要な治療上の利益を提供するがより少ない食事性ナトリウムを提供する混合塩オキシベートに切り替えることで恩恵を受けることができる。
【0043】
ただし、ある薬物療法から別の薬物療法に患者を切り替えることは、新しい療法の有効な用量が何であるか、または新しい療法が有効であるかどうかさえ全く予測できないため、困難である。本開示は、本開示の一実施形態、JZP-258の開発中の予期しない発見に関する。
【0044】
JZP-258の開発中、JZP-258及びXyrem(登録商標)の薬物動態特性は類似しているが、JZP-258が、a)絶食条件下でXyrem(登録商標)と比較しておよそ20%低いCmax、b)絶食条件下でXyrem(登録商標)と比較してより長い最高濃度到達時間、c)Xyrem(登録商標)と比較してより少ない食物効果を呈したため、生物学的同等性は確立されなかったことが見出された(実施例1)。
【0045】
生物学的同等性が実証されなかったため、JZP-258の安全性及び有効性を支持するために第3相試験を実施した(実施例2)。本試験は、試験登録時にナルコレプシーを有する4つの患者群を含んだ。
・群1:試験前にXyrem(登録商標)を服用している患者;
・群2:試験前にナルコレプシーのカタプレキシー症状を処置することを目的とした他の薬物(「他の抗カタプレキシー薬」)と共にXyrem(登録商標)を服用している患者;
・群3:試験前に他の抗カタプレキシー薬を服用している患者;及び
・群4:試験前にXyrem(登録商標)または他の抗カタプレキシー薬を服用していない患者(「Xyrem(登録商標)-ナイーブ」)。
【0046】
群1及び2の対象は、Xyrem(登録商標)からJZP-258(GHBのグラム対グラム)に切り替え、JZP-258用量を最小2週投与し、その後、後続の8週にわたって用量を滴定して、安定した、忍容可能な、有効用量を提供した。Xyrem(登録商標)及びJZP-258が生物学的に同等ではないことが確立されていたため、JZP-258の用量を滴定期中に大幅に調整する必要があるだろうと予測した。ただし、これは観察されず、代わりに、Xyrem(登録商標)からJZP-258に切り替えた患者の大半(69.5%)が同じ用量強度を維持し、用量調整が行われた患者の大半で、変化は中程度(すなわち、1.5グラム以内、すなわち、一回の漸増用量変化)であったことが予期せず見出された。
【0047】
ゆえに、本開示は、患者を、ナトリウムオキシベートから混合塩オキシベートに切り替える方法を提供し、ナトリウムオキシベート及び混合塩オキシベートの量は、オキシベート投薬強度に基づいて同じである(すなわち、ナトリウムオキシベート投与において患者に投与されるGHBの量及び混合塩オキシベート投与において患者に投与されるGHBの量は同じである)。
【0048】
以下の特許、刊行物及び出願は、本開示に関連しており、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる:米国特許第6,472,431号;同第6,780,889号;同第7,262,219号;同第8,263,650号;同第8,461,203号;同第8,859,619号;同第9,539,330号;同第7,851,506号;同第8,324,275号;同第8,952,062号;同第8,731,963号;同第8,772,306号;同第8,952,029号;同第9,050,302号;同第9,486,426号;同第10,213,400号;同第8,591,922号;同第8,901,173号;同第9,132,107号;同第9,555,017号;同第10,195,168号;同第8,778,301号;同第9,801,852号;同第8,771,735号;同第8,778,398号;同第9,795,567号;米国特許公開番号US2018/0042855、ならびに米国出願シリアル番号16/688,797、62/769,380及び62/769,382。
【0049】
混合塩オキシベート
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、混合塩オキシベートを、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、ガンマ-ヒドロキシ酪酸塩(GHB)及びアルカリ金属またはアルカリ土類金属の3つまたは4つ以上の医薬的に許容可能なカチオンを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、GHB及びアルカリ金属またはアルカリ土類金属の1つを超える医薬的に許容可能なカチオンを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、GHBならびに、Na+、K+、Mg+2、及びCa+2からなる群から選択される2つ、3つ、または4つのカチオンを含む。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、GHBならびに、K+、Mg+2、及びCa+2からなる群から選択される全3つのカチオンを含む。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、Na+を含有しないか、またはより少ないNa+を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、ヒドロキシ酪酸塩のナトリウム塩(Na.GHB)、ガンマ-ヒドロキシ酪酸塩のカリウム塩(K.GHB)、ガンマ-ヒドロキシ酪酸塩のマグネシウム塩(Mg.(GHB)2)、及びガンマ-ヒドロキシ酪酸塩のカルシウム塩(Ca.(GHB)2)からなる群から選択される2つ、3つ、または4つの塩を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、様々な重量/重量パーセント(重量/重量%)のNa.GHB、K.GHB、Mg.(GHB)2、及びCa.(GHB)2を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、塩のいずれか、例えばNa.GHB塩、K.GHB塩、Mg.(GHB)2塩またはCa.(GHB)2は、約1%~5%、約5%~10%、約10%~15%、約15%~20%、約20%~25%、約25%~30%、約30%~35%、約35%~40%、約40%~45%、約45%~50%、約50%~55%、約55%~60%、約60%~65%、約65%~70%、約70%~75%、約75%~80%、約80%~85%、約85%~90%、約90%~95%、または約95%~100%(重量/重量%)で存在する。いくつかの実施形態では、Na.GHB塩は、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%の重量/重量%(重量/重量%)で存在する。いくつかの実施形態では、Na.GHB塩は、存在しない。
【0056】
いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートがNa.GHB、K.GHB、Mg.(GHB)2、及びCa.(GHB)2の混合物を含む場合、Na.GHB塩は、約1%~15%、5%~10%、または約8%の重量/重量%で存在する;K.GHB塩は、約10%~30%、15%~25%、または約25.5%の重量/重量%で存在する;Mg.(GHB)2塩は、約10%~30%、15%~25%、または約19.5%の重量/重量%で存在する;及びCa.(GHB)2塩は、約30%~60%、40%~50、または約47%の重量/重量%(重量/重量%)で存在する。
【0057】
いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、約8%のナトリウムオキシベート(重量/重量%)、約25.5%のカリウムオキシベート(重量/重量%)、約19.5%のマグネシウムオキシベート(重量/重量%)及び約47%のカルシウムオキシベート(重量/重量%)を含む。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートがNa.GHB、K.GHB、Mg.(GHB)2、及びCa.(GHB)2の混合物を含む場合、Na.GHB、K.GHB、Mg.(GHB)2及びCa.(GHB)2塩は、それぞれ、約8:25.5:19.5:47の重量/重量%比で存在する。
【0058】
いくつかの実施形態では、本開示の混合塩オキシベートを、液体(例えば水)に溶解して、医薬組成物を提供し、混合塩オキシベートの濃度は、重量/体積%で表される。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートがNa.GHB、K.GHB、Mg.(GHB)2、及びCa.(GHB)2の混合物を含む場合、Na.GHB塩は、約1%~15%、5%~10%、または約8%の重量/体積%で存在する;K.GHB塩は、約10%~30%、15%~25%、または約26%の重量/体積%で存在する;Mg.(GHB)2塩は、約10%~30%、15%~25%、または約19.2%の重量/体積%で存在する;及びCa.(GHB)2塩は、約30%~60%、40%~50、または約46.8%の重量/体積%で存在する(重量/体積%)。
【0059】
いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートを含有する液体医薬組成物は、約8%のナトリウムオキシベート(重量/体積%)、約26.0%のカリウムオキシベート(重量/体積%)、約19.2%のマグネシウムオキシベート(重量/体積%)及び約46.8%のカルシウムオキシベート(重量/体積%)を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、%モル当量のNa.GHB、K.GHB、Mg.(GHB)2、及びCa.(GHB)2(%mol当量)として表される、様々なパーセンテージのオキシベートを含む。本明細書で使用する場合、「%モル当量」及び「%mol当量」という用語は、GHB当量のパーセントとして表される塩のモル組成を指す。当業者は、各GHB単位が1モル当量であると見なされるため、一価カチオンであるNa+及びK+は塩あたり1モル当量を有し、二価カチオンであるMg+2及びCa+2は塩あたり2モル当量を有することを理解するだろう。本開示において有用な%mol当量の量については、米国特許第8,591,922号;同第8,901,173号;同第9,132,107号;同第9,555,017号;同第10,195,168号を参照されたい。
【0061】
いくつかの実施形態では、塩のいずれか、例えばNa.GHB塩、K.GHB塩、Mg.(GHB)2塩またはCa.(GHB)2は、約1%~5%、約5%~10%、約10%~15%、約15%~20%、約20%~25%、約25%~30%、約30%~35%、約35%~40%、約40%~45%、約45%~50%、約50%~55%、約55%~60%、約60%~65%、約65%~70%、約70%~75%、約75%~80%、約80%~85%、約85%~90%、約90%~95%、または約95%~100%(%mol当量)で存在する。いくつかの実施形態では、Na.GHB塩は、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%の%mol当量(%mol当量)で存在する。いくつかの実施形態では、Na.GHB塩は、存在しない。
【0062】
いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートがNa.GHB、K.GHB、Mg.(GHB)2、及びCa.(GHB)2の混合物を含む場合、Na.GHB塩は、約1%~15%、5%~10%、または約8%の%mol当量で存在する;K.GHB塩は、約10%~30%、15%~25%、または約23%の%mol当量で存在する;Mg.(GHB)2塩は、約10%~30%、15%~25%、または約21%の%mol当量で存在する;及びCa.(GHB)2塩は、約30%~60%、40%~50、または約48%の%mol当量(%mol当量)で存在する。
【0063】
いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、約8%mol当量のナトリウムオキシベート、約23%mol当量のカリウムオキシベート、約21%mol当量のマグネシウムオキシベート及び約48%mol当量のカルシウムオキシベートを含む。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートがNa.GHB、K.GHB、Mg.(GHB)2、及びCa.(GHB)2の混合物を含む場合、Na.GHB、K.GHB、Mg.(GHB)2及びCa.(GHB)2塩は、それぞれ、約8:23:21:48の%mol当量比で存在する。
【0064】
いくつかの実施形態では、医薬組成物がNa.GHB、K.GHB、及びCa.(GHB)2の混合物を含む場合、Na.GHB塩は、約5%~40%の%mol当量で存在し、K.GHB塩は、約10%~40%の%mol当量で存在し、Ca.(GHB)2塩は、約20%~80%の%mol当量で存在する。
【0065】
医薬組成物:
いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、本開示の方法における投与に好適な医薬組成物の形態である。
【0066】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、水溶液を含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、溶液中のGHBの塩の混合物の濃度は、約50mg/mL~950mg/mL、約250mg/mL~750mg/mL、約350mg/mL~650mg/mL、または約450mg/mL~550mg/mLである。いくつかの実施形態では、溶液中のGHBの塩の混合物の濃度は、約500mg/mLである。
【0068】
いくつかの実施形態では、医薬組成物のpHは、約7.0~9.0、約7.0~8.5、または約7.3~8.5である。
【0069】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、化学的に安定であり、微生物の増殖に対して耐性がある。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、防腐剤を含まない。米国特許第6,472,431号;同第6,780,889号;同第7,262,219号;同第8,263,650号;同第8,461,203号及び他を、pH及びGHB濃度間の関係ならびに微生物の増殖に対するそれらの効果に関して参照されたい。
【0070】
いくつかの実施形態では、pH調整剤または緩衝剤は、医薬組成物に添加され得る。pH調整剤または緩衝剤の選択は、微生物負荷に対する耐性及び/またはGHBの安定性に影響し得、これは分析可能なGHBにおける減少によって測定する。リンゴ酸でpH調整または緩衝されたGHBの医薬組成物は、微生物増殖及びGHBの化学的分解の両方に耐性があり、好ましい。他のpH調整剤または緩衝剤が選択されてもよい。これに基づいて選択されたpHを調整する薬剤は、味覚試験研究を受けることになる。ただし、本明細書に開示する、または当業者に公知であるだろう任意のpH調整剤または緩衝剤は、本明細書に開示する組成物または製剤から有用であると企図される。当然ながら、本明細書に記載するまたは当業者に公知であるだろう任意の塩、香味剤、賦形剤、または他の医薬的に許容可能な添加物は、本明細書に開示する組成物または製剤に有用であると企図される。
【0071】
いくつかの実施形態では、pH調整剤または緩衝剤は、酸である。いくつかの実施形態では、pH調整剤または緩衝剤は、無機酸または有機酸である。いくつかの実施形態では、pH調整剤または緩衝剤は、リンゴ酸、クエン酸、酢酸、ホウ酸、乳酸、塩酸、リン酸、硫酸、スルホン酸、及び硝酸からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、pH調整剤または緩衝剤は、リンゴ酸である。
【0072】
本明細書に開示する水溶液は、典型的には、有効量のGHBを含み、これは、医薬的に許容可能な担体及び/または水性媒体に溶解または分散され得る。
【0073】
製剤
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する医薬組成物は、本開示の方法における投与に好適な製剤で提供される。
【0074】
いくつかの実施形態では、製剤は、液体製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は、固体製剤である。例えば、参照により組み込まれる米国特許第6,472,431号;同第6,780,889号;同第7,262,219号;同第8,263,650号;同第8,461,203号、同第8,591,922号、同第8,901,173号、同第9,132,107号、同第9,555,017号、同第9,795,567号、同第10,195,168号、米国シリアル番号62/769,380及び62/769,382ならびに米国特許公開番号2018/0263936を参照されたい。
【0075】
いくつかの実施形態では、製剤は、化学的に安定であり、微生物の増殖に対して耐性がある。いくつかの実施形態では、製剤は、防腐剤を含まない。いくつかの実施形態では、ガンマ-ブチロラクトン(GBL)のレベルは、製剤の0.1%以下である。いくつかの実施形態では、ガンマ-ブチロラクトン(GBL)のレベルは、製剤の0.5%以下である。
【0076】
いくつかの実施形態では、組成物は、経口投与に好適である。参照により組み込まれる米国特許第6,472,431号;同第6,780,889号;同第7,262,219号;同第8,263,650号;同第8,461,203号、同第8,591,922号、同第8,901,173号、同第9,132,107号、同第9,555,017号、及び同第10,195,168号ならびに米国シリアル番号62/769,380及び62/769,382を、香味剤、甘味料、着色剤、界面活性剤、担体、賦形剤、結合剤、緩衝化合物または緩衝剤及び他の製剤成分の例に関して参照されたい。
【0077】
好ましい実施形態では、製剤は液体製剤であり、製剤は、0.234g/mLのカルシウムオキシベート、0.130g/mLのカリウムオキシベート、0.096g/mLのマグネシウムオキシベート、及び0.040g/mLのナトリウムオキシベート(0.409g/mLのGHBまたは0.413g/mLのGBAの当量濃度を含有する)を含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、製剤は、単回または複数回の投薬レジメンでの投与に好適である。米国シリアル番号62/769,380及び62/769,382を参照されたい。
【0079】
上記の製剤はいずれも、経口投与の前に水性媒体と混合するための粉末または乾燥形態として調製及び/または包装され得るか、あるいはそれらは水性媒体中で調製され、包装され得る。水性媒体との混合後に、好ましくは溶液を調製するために、これらの製剤は、微生物増殖及びGHBのGBLへの化学的変換の両方に耐性があり、それにより、水性媒体中のGHBの治療用製剤の有効期間を増加させる。その後、これらの製剤は、患者に投与されるべきGHBの投薬量を測定するために、容易に滴定可能な液体媒体を提供する。
【0080】
GHBは、適切な場合には、所望のビヒクルまたは媒体へのより容易な製剤化のために凍結乾燥され得る。活性化合物は、非経口投与用に製剤化され得、例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、病変内、腹腔内または他の非経口経路を介する注射用に製剤化され得る。活性構成要素または成分としてGHB剤を含有する水溶液を含む組成物の調製は、本開示に照らして当業者に公知となる。典型的には、かかる組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして、注射剤として調製することができる。注射前に液体を添加して溶液または懸濁液を調製するために使用するのに好適な固体形態もまた調製することができる;調製物は、乳化されることもできる。米国特許第6,472,431号;同第6,780,889号;同第7,262,219号;同第8,263,650号;同第8,461,203号、同第8,591,922号、同第8,901,173号、同第9,132,107号、同第9,555,017号、同第9,795,567号、同第10,195,168号、米国シリアル番号62/769,380及び62/769,382、ならびに米国特許公開番号2018/0263936を、非経口投与に関するさらなる情報の例に関して参照されたい。
【0081】
製剤化されたら、溶液は、投与製剤と適合した様式にて、及び治療上有効である量で投与されることになる。製剤は、上記の注射可能溶液のタイプなどの様々な剤形で容易に投与されるが、薬物放出カプセル剤なども採用することができる。
【0082】
経口治療投与の場合、活性化合物を賦形剤と共に組み込み、錠剤、バッカル錠剤またはタブ、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁剤、シロップ、ウエハーなどの形態で使用して、水性媒体と混ぜ合わせてよい。かかる組成物及び調製物は、少なくとも0.1%の活性化合物を含有するべきである。組成物及び調製物のパーセンテージは、当然ながら、変動してよく、好都合には、単位の重量の約2~75%間、または好ましくは25~60%間であり得る。かかる治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、適切な投薬量が得られるようなものである。例えば、米国特許第6,472,431号;同第6,780,889号;同第7,262,219号;同第8,263,650号;同第8,461,203号、同第8,591,922号、同第8,901,173号、同第9,132,107号、同第9,555,017号、同第9,795,567号、同第10,195,168号、米国シリアル番号62/769,380及び62/769,382、ならびに米国特許公開第2018/0263936を参照されたい。
【0083】
本開示の方法
一態様では、本開示は、ナトリウムオキシベートで処置された患者(例えばナルコレプシー患者におけるカタプレキシーまたは過度の日中の眠気に関して処置された患者)において、混合塩オキシベート組成物にナトリウムオキシベート組成物を置換する、交換する、変更するまたは切り替える方法を提供し、ナトリウムオキシベート及び混合塩オキシベートの量は、オキシベート投薬強度に基づいて同じである。
【0084】
一態様では、本開示は、ナトリウムオキシベートを投与されている患者を、混合塩オキシベート組成物に変更または切り替えるための方法を提供し、本方法は、治療有効量の混合塩オキシベートを患者に投与することを含み、ナトリウムオキシベート及び混合塩オキシベートの量は、オキシベート投薬強度に基づいて同じである。
【0085】
一態様では、本開示は、ナトリウムオキシベートによって処置されている状態について患者を処置するための方法を提供し、本方法は、
ナトリウムオキシベートを投与されている患者の用量を混合塩オキシベートに切り替えるまたは変更することを含み、
切り替えは、治療有効量の混合塩オキシベートを患者に投与することを含み、ナトリウムオキシベート及び混合塩オキシベートの量は、オキシベート投薬強度に基づいて同じである。
【0086】
いくつかの実施形態では、ナトリウムオキシベートから混合塩オキシベートへの置換、交換、変更または切り替えは、連続用量で起こる(すなわち、ナトリウムオキシベートが第1の用量で投与され、混合塩オキシベートがオキシベート投薬強度に基づいて同じ量で次の継続用量で投与される)。いくつかの実施形態では、患者は、ある日にナトリウムオキシベートを投与され、混合塩オキシベートをオキシベート投薬強度に基づいて同じ量で翌日に投与される。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、1日あたり2回のオキシベート用量を投与することを含み、第1の用量はナトリウムオキシベート(例えば、Xyrem(登録商標))からなり、第2の用量は混合塩オキシベートからなる。
【0087】
いくつかの実施形態では、本開示は、ナルコレプシー患者におけるカタプレキシーまたは過度の日中の眠気に関して処置された患者において、混合塩オキシベート組成物にナトリウムオキシベート組成物を置換する、交換する、変更するまたは切り替える方法を提供し、本方法は、
a.治療有効量のナトリウムオキシベートで処置された患者が、高ナトリウム摂取に感受性であるか否かを決定すること;及び
b.患者が高ナトリウム摂取に感受性である場合、治療有効量の混合塩オキシベートを患者に投与することを含み、
ナトリウムオキシベート及び混合塩オキシベートの量は、オキシベート投薬強度に基づいて同じである。
【0088】
いくつかの実施形態では、本開示は、ナトリウムオキシベート(例えばXyrem(登録商標))から混合塩オキシベートへの1対1の用量切り替えのための方法を提供する。
【0089】
いくつかの実施形態では、ナトリウムオキシベートから混合塩オキシベートへの置換、交換、変更または切り替えは、移行期間中に2つのオキシベート製剤(例えば、Xyrem(登録商標)及び本開示の混合塩オキシベート)の混合物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、移行期間は、約1週、約2週、約3週、約4週または約5週未満である。いくつかの実施形態では、移行期間は、約1週、約2週、約3週、約4週または約5週である。
【0090】
本開示の方法によれば、投与される混合塩オキシベートは、本明細書に記載の混合塩オキシベート組成物のいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、投与される混合塩オキシベート中の各塩の相対量は、重量/重量%で表される。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、ナトリウムオキシベート、カリウムオキシベート、マグネシウムオキシベート及びカルシウムオキシベートを含み、混合塩オキシベートは、約5%~40%のナトリウムオキシベート(重量/重量%)を含む。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、約5%~40%のナトリウムオキシベート(重量/重量%)、約10%~40%のカリウムオキシベート(重量/重量%)、約5%~30%のマグネシウムオキシベート(重量/重量%)、及び約20%~80%のカルシウムオキシベート(重量/重量%)を含む。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、約8%のナトリウムオキシベート(重量/重量%)、約25.5%のカリウムオキシベート(重量/重量%)、約19.5%のマグネシウムオキシベート(重量/重量%)及び約47%のカルシウムオキシベート(重量/重量%)を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、液体医薬組成物にて投与される混合塩オキシベート中の各塩の相対量は、重量/体積%で表される。いくつかの実施形態では、液体医薬組成物は、ナトリウムオキシベート、カリウムオキシベート、マグネシウムオキシベート及びカルシウムオキシベートを含む混合塩オキシベートを含み、混合塩オキシベートは、約5%~40%のナトリウムオキシベート(重量/体積%)を含む。いくつかの実施形態では、液体医薬組成物は、約5%~40%のナトリウムオキシベート(重量/体積%)、約10%~40%のカリウムオキシベート(重量/体積%)、約5%~30%のマグネシウムオキシベート(重量/体積%)、及び約20%~80%のカルシウムオキシベート(重量/体積%)を含む混合塩オキシベートを含む。いくつかの実施形態では、液体医薬組成物は、約8%のナトリウムオキシベート(重量/体積%)、約26.0%のカリウムオキシベート(重量/体積%)、約19.2%のマグネシウムオキシベート(重量/体積%)及び約46.8%のカルシウムオキシベート(重量/体積%)を含む混合塩オキシベートを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、投与される混合塩オキシベート中の各塩の相対量は、%mol当量で表される。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、ナトリウムオキシベート、カリウムオキシベート、マグネシウムオキシベート及びカルシウムオキシベートを含み、混合塩オキシベートは、約5%~40%mol当量のナトリウムオキシベートを含む。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、約5%~40%mol当量のナトリウムオキシベート、約10%~40%mol当量のカリウムオキシベート、約5%~30%mol当量のマグネシウムオキシベート、及び約20%~80%mol当量のカルシウムオキシベートを含む。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、約8%mol当量のナトリウムオキシベート、約23%mol当量のカリウムオキシベート、約21%mol当量のマグネシウムオキシベート及び約48%mol当量のカルシウムオキシベートを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、1日2回投与される。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、1日1回投与される。米国シリアル番号62/769,380及び62/769,382を参照されたい。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、就寝時に投与される。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、就寝時及び就寝時投与の約2.5時間~4時間後に投与される。
【0094】
いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートの用量は、患者に投与される混合塩オキシベートの量に関して記載される。いくつかの実施形態では、1日あたり約0.25g~10.0g、約1.0g~9.0g、約2.0g~10.0g;約3.0g~9.5g;または約4.5g~9.0gの混合塩オキシベートが投与される。
【0095】
いくつかの実施形態では、1日あたり約1.0gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約0.5gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約3.0gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約1.5gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約4.5gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約2.25gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約6.0gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約3.0gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約7.5gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約3.75gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約9.0gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約4.5gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。
【0096】
いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートの用量は、患者に投与されるGHBの量に関して記載される。いくつかの実施形態では、1日あたり約0.818g~7.362g、約1.636g~8.18g;約2.454g~7.771g;または約3.681g~7.362gのGHBを含有する混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。
【0097】
いくつかの実施形態では、1日あたり約0.818gのGHBを含有する混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約0.409gのGHBを含有する混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約2.454gのGHBを含有する混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約1.227gのGHBを含有する混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約3.681gのGHBを含有する混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約1.841gのGHBを含有する混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約4.908gのGHBを含有する混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約2.454gのGHBを含有する混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約6.135gのGHBを含有する混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約3.068gのGHBを含有する混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約7.362gのGHBを含有する混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約3.681gのGHBを含有する混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。
【0098】
本開示全体を通して、組成物にて投与されるオキシベートの量は、一般に、投与されるGHBの量に関して表されるが(上記を参照されたい)、本開示は、オキシベート投薬が、投与されるGBAの対応量で表される実施形態を企図する。
【0099】
組成物中のGBAの対応量は、以下の式によって計算され得る:
GBAの対応量=
【数2】
【0100】
いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートの用量は、患者に投与されるGHBの対応量に関して記載される。いくつかの実施形態では、1日あたり約0.826g~7.434g、約1.652g~8.26g;約2.478g~7.847g;または、約3.717g~7.434gの対応量のGBAを含有する混合塩オキシベート(例えばJZP-258)が投与される。
【0101】
いくつかの実施形態では、1日あたり約0.826gの対応量のGBAを含有する混合塩オキシベート(JZP-258など)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約0.413gの対応量のGBAを含有する混合塩オキシベート(JZP-258など)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約2.478gの対応量のGBAを含有する混合塩オキシベート(JZP-258など)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約1.239gの対応量のGBAを含有する混合塩オキシベート(JZP-258など)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約3.717gの対応量のGBAを含有する混合塩オキシベート(JZP-258など)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約1.859gの対応量のGBAを含有する混合塩オキシベート(JZP-258など)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約4.956gの対応量のGBAを含有する混合塩オキシベート(JZP-258など)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約2.478gの対応量のGBAを含有する混合塩オキシベート(JZP-258など)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約6.195gの対応量のGBAを含有する混合塩オキシベート(JZP-258など)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約3.098gの対応量のGBAを含有する混合塩オキシベート(JZP-258など)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり約7.434gの対応量のGBAを含有する混合塩オキシベート(JZP-258など)が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり2回約3.717gの対応量のGBAを含有する混合塩オキシベート(JZP-258など)が投与される。
【0102】
いくつかの実施形態では、ナトリウムオキシベートから混合塩オキシベートへの置換、交換、変更または切り替えのために本明細書に提供する方法は、患者がジバルプロエクスナトリウムを共投与される場合、混合塩オキシベートの用量を少なくとも約20%減らすことをさらに含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、複数回投薬レジメンにおける(本明細書に開示する)混合塩オキシベートを含む組成物または製剤の経口投与を含む。米国特許第8,591,922号(あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。いくつかの実施形態では、複数回投薬レジメンは、1つまたは複数のステップを含み、それは以下の通りである:(i)約500mg/mLの混合塩オキシベートを含む水溶液を水性媒体で希釈して、約1~10グラムの塩の混合物の第1の用量を提供する;(ii)該用量を患者に経口投与する;(iii)約500mg/mLの混合塩オキシベートを含む水溶液を希釈して、約1~10グラムの混合塩オキシベートの第2の用量を提供する;及び(iv)患者に第2の用量を経口投与する。患者に投与される用量は、約2.25~4.5グラムの間であり得る。(全ての体積及び数値は、Na GHB当量として提示する)。
【0104】
患者の大多数において、ナトリウムオキシベートから混合塩オキシベートへの置換、交換、変更または切り替えは、グラム対グラム置換であり、ナトリウムオキシベート及び混合塩オキシベート用量で投与されるGHBの量は同じである。ただし、場合によっては、用量を切り替えた後、少量の用量調整(または滴定)が必要になる。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベート(例えば、JZP-258)を用いた投薬の最初の夜に、処置をナトリウムオキシベートと同じ用量(グラム対グラム)及びレジメンで開始し、有効性及び忍容性に基づいて必要に応じて滴定する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、置換、交換、変更または切り替えの後に、混合塩オキシベートの用量を滴定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、滴定期は、1日から8週、1週から6週、または2週から4週である。滴定期は、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、または8週であることができる。
【0105】
いくつかの実施形態では、滴定は、ナトリウムオキシベートの1日用量と比較して、混合塩オキシベートの1日用量を増加させることを含む。いくつかの実施形態では、滴定は、ナトリウムオキシベートの1日用量と比較して、混合塩オキシベートの1日用量を約1.5g未満増加させることを含む。いくつかの実施形態では、滴定は、ナトリウムオキシベートの1日用量と比較して、混合塩オキシベートの1日用量を約0.25g、約0.5g、約1.0g、約1.5g、または約2.0g増加させることを含む。いくつかの実施形態では、滴定は、ナトリウムオキシベートの1日用量と比較して、混合塩オキシベートの1日用量を約1.0~1.5g増加させることを含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、滴定は、ナトリウムオキシベートの1日用量と比較して、混合塩オキシベートの1日用量を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、滴定は、ナトリウムオキシベートの1日用量と比較して、混合塩オキシベートの1日用量を約1.5g未満低減させることを含む。いくつかの実施形態では、滴定は、ナトリウムオキシベートの1日用量と比較して、混合塩オキシベートの1日用量を約0.25g、約0.5g、約0.75g、約1.0g、約1.25g、約1.5g、約1.75g、または約2.0g低減させることを含む。いくつかの実施形態では、滴定は、ナトリウムオキシベートの1日用量と比較して、混合塩オキシベートの1日用量を約1.0~1.5g低減させることを含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、ナトリウムオキシベートから混合塩オキシベート組成物(グラム対グラム)に切り替えられた患者は、成人患者である。いくつかの実施形態では、オキシベートから混合塩オキシベート組成物(グラム対グラム)に切り替えられた患者は、小児患者である。
【0108】
いくつかの実施形態では、本開示は、ナトリウムオキシベートから混合塩オキシベート組成物に移行する方法を提供し、混合塩オキシベートは、食物と共に投与される。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベート組成物は、食物を伴わずに投与される。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベート組成物は、食物の有無にかかわらず投与される。いくつかの実施形態では、患者は、患者の最後の食事の少なくとも2時間後に混合塩オキシベート組成物を投与される。いくつかの実施形態では、患者は、患者の最後の食事の少なくとも2時間後に、混合塩オキシベート組成物の第1の用量(すなわち、患者がナトリウムオキシベートから混合塩オキシベート組成物に移行する用量)を投与される。いくつかの実施形態では、患者は、患者の最後の食事の少なくとも2時間、少なくとも1.5時間、約1.0時間、約0.5時間または約15分後に、混合塩オキシベート組成物の第1の用量を投与される。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートは、本明細書に記載される滴定期後(すなわち、混合塩オキシベート組成物の安定用量が達成されるとき)、食物の有無にかかわらず投与される。
【0109】
実施形態は、混合塩オキシベート組成物を投与することに関して記載される;ただし、本開示はまた、本明細書に記載の組成物及び製剤における混合塩オキシベートの投与を企図する。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベート組成物は、液体である。いくつかの実施形態では、液体中の混合塩の濃度は、50mg/mL~950mg/mL、約250mg/mL~750mg/mL、約350mg/mL~650mg/mL、または約450mg/mL~550mg/mLである。いくつかの実施形態では、液体中の混合塩の濃度は、約0.5g/mLである。
【0110】
いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートを投与された患者は、高ナトリウム摂取に関連する望ましくない副作用のリスクがある患者である。いくつかの実施形態では、患者は、心不全を有する。いくつかの実施形態では、患者は、高血圧症である。いくつかの実施形態では、患者は、腎機能障害を有する。いくつかの実施形態では、患者は、脳卒中のリスクがある。
【0111】
いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートを投与された患者は、肝機能障害を有する患者である。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートを投与された患者の肝機能障害は、肝疾患の重症度に関するチャイルドピュー分類によって決定される。肝疾患の重症度に関するチャイルドピュー分類は、肝機能障害の重症度を評価する15ポイントのスケールである。脳症、腹水症、ビリルビン及びアルブミンの濃度、ならびにプロトロンビン時間の延長の存在が、肝疾患の重症度に関するチャイルドピュー分類で評価される。肝疾患の重症度に関するチャイルドピュー分類で5~6ポイントのスコアが割り当てられた肝機能障害のある患者は、チャイルドクラスAに割り当てられる。肝疾患の重症度に関するチャイルドピュー分類で7~9ポイントのスコアが割り当てられた肝機能障害のある患者は、チャイルドクラスBに割り当てられる。肝疾患の重症度に関するチャイルドピュー分類で10~15ポイントのスコアが割り当てられた肝機能障害のある患者は、チャイルドクラスCに割り当てられる。
【0112】
いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートを投与された患者は、チャイルドクラスA、チャイルドクラスB、またはチャイルドクラスCの患者である。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートを投与された患者は、チャイルドクラスAの患者である。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートを投与された患者は、チャイルドクラスBの患者である。いくつかの実施形態では、混合塩オキシベートを投与された患者は、チャイルドクラスCの患者である。
【0113】
いくつかの実施形態では、本開示の方法に従って処置された肝機能障害を有する患者は、肝機能障害のない患者に推奨される混合塩オキシベートの初回用量の半分を投与される。いくつかの実施形態では、本開示の方法に従って処置された肝機能障害を有する患者は、肝機能障害のない患者に推奨される混合塩オキシベートの初回用量の40%~60%間を投与される。いくつかの実施形態では、本開示の方法に従って処置された肝機能障害を有する患者は、肝機能障害のない患者に推奨される用量よりも少ない混合塩オキシベートの初回用量を投与される。
【0114】
いくつかの実施形態では、肝機能障害の非存在下では約1.0gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)の初回用量を受けるだろう肝機能障害を有する患者は、1日あたり約0.5gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)を投与される。いくつかの実施形態では、肝機能障害の非存在下では約1.0gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)の初回用量を受けるだろう肝機能障害を有する患者は、1日あたり2回約0.25gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)を投与される。
【0115】
いくつかの実施形態では、肝機能障害の非存在下では約1.5gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)の初回用量を受けるだろう肝機能障害を有する患者は、1日あたり約0.75gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)を投与される。いくつかの実施形態では、肝機能障害の非存在下では約1.5gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)の初回用量を受けるだろう肝機能障害を有する患者は、1日あたり2回約0.38gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)を投与される。
【0116】
いくつかの実施形態では、肝機能障害の非存在下では約2.25gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)の初回用量を受けるだろう肝機能障害を有する患者は、1日あたり約1.13gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)を投与される。いくつかの実施形態では、肝機能障害の非存在下では約2.25gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)の初回用量を受けるだろう肝機能障害を有する患者は、1日あたり2回約0.56gの混合塩オキシベート(例えばJZP-258)を投与される。
【0117】
いくつかの実施形態では、患者は、睡眠障害、例えば無呼吸、睡眠時間妨害、ナルコレプシー、カタプレキシー、睡眠時麻痺、入眠時幻覚、睡眠覚醒、不眠症、及び夜間ミオクローヌスに関して処置される。いくつかの実施形態では、患者は、カタプレキシーに関して処置される。いくつかの実施形態では、患者は、ナルコレプシー患者における過度の日中の眠気に関して処置される。いくつかの実施形態では、患者は、特発性過眠症患者における過度の日中の眠気に関して処置される。例えば、米国特許第6,472,431号;同第6,780,889号;同第7,262,219号;同第8,263,650号;同第8,461,203号、同第8,591,922号、同第8,901,173号、同第9,132,107号、同第9,555,017号、同第9,795,567号、同第10,195,168号、米国シリアル番号62/769,380及び62/769,382、ならびに米国特許公開第2018/0263936を参照されたい。
【0118】
作製方法
混合塩オキシベート、組成物及び製剤は、当業者に公知の方法を使用して調製してよく、それには、米国特許第8,591,922号;同第8,901,173号;同第9,132,107号;同第9,555,017号;同第10,195,168号及び米国公開番号2018/0263936(参照により本明細書に組み込まれる)に記載の方法が含まれる。
【実施例】
【0119】
実施例1:
【0120】
JZP-258の薬物動態(PK)を特性決定するために、健常ボランティアにおいて2つの第1相生物学的同等性/生物学的利用能(BE/BA)試験を行った。
【0121】
試験1:オキシベート製剤の投与後の薬物動態、生物学的利用能、生物学的同等性、及び食物効果を評価するための非盲検、無作為化クロスオーバー試験。
【0122】
主要目的:(1)絶食及び摂食条件下でXyrem経口溶液と比較したJZP-258の相対的生物学的利用能及び生物学的同等性を評価すること(2)絶食及び摂食条件下でJZP-258のPKを評価すること(食物効果)(3)絶食条件下でXyrem経口溶液と比較した異なる比率でのJZP-258及びXyremの2つの混合物の相対的生物学的利用能及び生物学的同等性を評価すること(4)絶食条件下でJZP-258 2.25gのPKを評価すること。
【0123】
第1部:対象を4つの群に無作為化し、絶食または摂食条件下で4.5gのXyremまたは4.5gのJZP-258で処置した。
【0124】
第2部:異なる比率のJZP-258及びXyremの混合物を、絶食条件下でXyremと比較した。
【0125】
評価:オキシベートPKプロファイルを決定するための血液試料は、1、3、5及び7日目に用量前;各処置の後、用量後10、20、30、45、60、及び75分時点;ならびに用量後1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、及び8時間時点にて採取した。その後、PK分析用の血液試料は、各用量後の最初の1時間は指定時点から±2分以内に、1時間以降は指定時点から±5分以内に採取した。血液試料採取の実際の時間を記録した。最小1日のウォッシュアウト期間で、4つの処置を分離した。
【0126】
データ収集:血漿オキシベートについて計算されたPKパラメータには、Cmax、Tmax、t1/2、λz、AUC0-t、及びAUC0-infを含んだ。
【0127】
【0128】
試験2(JZP258-101):健常対象においてオキシベート製剤を投与した後の薬物動態、生物学的利用能、及び生物学的同等性を評価するための非盲検、無作為化クロスオーバー、第1相試験。
【0129】
主要目的:絶食条件下で60mLの水と共に服用したXyremに対してJZP-258経口溶液の相対的生物学的利用能及び生物学的同等性を評価すること。
【0130】
対象を6つの群に無作為化し、絶食または摂食条件下で60mLの水240mLと共に服用した4.5gのXyremまたは4.5gのJZP-258のいずれかで処置した。
【0131】
オキシベートPKプロファイルを決定するための血液試料は、1、3、5、7、9、及び11日目に、用量前;各用量の後、用量後10、20、30、45、60、及び75分時点;ならびに用量後1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、及び8時間時点にて採取した。PK分析用の血液試料は、各用量後の最初の1時間は指定時点から±2分以内に、1時間以降は指定時点から±5分以内に採取した。血液試料採取の実際の時間を記録した。最小1日のウォッシュアウト期間で、6つの処置を分離した。
【表3】
【0132】
結果
・JZP-258のPK特性は、Xyremと類似していた(例えば、超用量比例性、及び摂食条件下でのCmaxの低下);
・Xyrem及びJZP-258間のAUCは、同じ絶食及び摂食条件下で生物学的に同等であった。
・ただし、JZP-258が、a)絶食条件下でXyremと比較しておよそ20%低いCmax、b)絶食条件下でXyremと比較してわずかに長い最大濃度到達時間、及びc)Xyremと比較して少ない食物効果を有した点で、Xyrem及びJZP-258間のCmaxは生物学的に同等ではなかった。(
図1、
図2及び表3のデータを参照されたい)
【0133】
【0134】
実施例2:
【0135】
JZP-258ではCmaxに関する生物学的同等性が実証されなかったため、JZP-258の登録を支持するための第3相有効性及び安全性試験を実施した。
【0136】
主要目的:ナルコレプシー患者におけるカタプレキシーの処置におけるJZP-258の有効性を評価すること。
【0137】
試験デザイン:この試験は、試験登録時にナルコレプシー患者の複数の群を含み(
図3)、そのうちの2つはXyremで前処置し、以下の通りにJZP-258に移行させた。
・試験登録時に抗カタプレキシー薬としてXyremのみで処置された患者を、XyremからJZP-258(グラム対グラム)に切り替え、このJZP-258用量を最小2週維持した。処置最適化に必要な場合、治験責任医師の裁量にて、JZP-258の用量を、後続の8週の間に滴定して、安定した、忍容可能な、有効用量とした。
・Xyremを、スクリーニングの前に少なくとも2か月にわたってナルコレプシーのカタプレキシー症状を処置することを目的とした他の薬物(「他の抗カタプレキシー薬」)と共に服用している患者は、XyremからJZP-258(グラム対グラム)に切り替え、このJZP-258用量を最小2週維持した。この2週間の後、対象は、最小2週から最大8週間にわたって、追加の抗カタプレキシー薬を徐々に減らしていった。最適化に必要な場合、JZP-258の用量をさらに滴定して、この8週間の間に、安定した、許容できる、有効な用量とした。
【0138】
対象は、2週の安定用量期に入る前に、少なくとも2週にわたって、JZP-258の変更されない、忍容可能な、有効用量(治験責任医師の判断による)のみで維持されなければならない。2週の安定用量期の間、対象は、2週にわたって安定したJZP-258用量を変更せずに維持した。この期間中に、週毎のカタプレキシー発作のベースライン数及びベースラインEDSスコア、ならびに他の二次エンドポイント(該当する場合)を評価した。
【0139】
結果:
【0140】
JZP-258がXyremと生物学的に同等ではなかったため(実施例1を参照されたい)、Xyrem患者は、8週の滴定期の終わりまでに異なる用量のJZP-258に移るだろうと予想された;ただし、これは本試験では観察されなかった。予期せぬことに、XyremからJZP-258に切り替えて安定用量期に入った対象(全体でN=59)のうち、大多数(69.5%)は同じ用量強度を維持した(表4);用量を変更した患者に関しては、変更は、概して1.5グラム以内であった;すなわち、1回の漸増用量変化内であった。
【0141】
【0142】
表5に示すように、Xyrem(登録商標)からJZP-258に切り替えた患者の場合、安定した総夜間用量に到達するために必要な用量調整の中央値は0であり(すなわち、Xyrem(登録商標)からJZP-258にグラム対グラムに基づいて切り替えた後の用量調整は必要ない)、安定した総夜間用量に到達するまでの時間(日数)の中央値は1日であった。
【0143】
【0144】
JZP-258の全体的なAEプロファイルは、Xyrem(登録商標)で以前に観察されたものと一致した。試験登録時の処置ごとの非盲検最適化処置及び滴定期(OLOTTP)中に総参加者の5%超で発生した試験処置下で発現した有害事象(TEAE)(安全性集団)は、頭痛、悪心、眩暈、カタプレキシー(ベースラインからの悪化)、食欲減退、下痢及び鼻咽頭炎であった(表6)。
【0145】
【0146】
本出願全体を通して引用される全ての文書、特許、特許出願、刊行物、製品説明書、及びプロトコルは、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】