IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴァルタ マイクロバッテリー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧 ▶ エルメリック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特表2023-508987印刷電池、RFIDタグ、及び製造方法
<>
  • 特表-印刷電池、RFIDタグ、及び製造方法 図1
  • 特表-印刷電池、RFIDタグ、及び製造方法 図2
  • 特表-印刷電池、RFIDタグ、及び製造方法 図3
  • 特表-印刷電池、RFIDタグ、及び製造方法 図4
  • 特表-印刷電池、RFIDタグ、及び製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(54)【発明の名称】印刷電池、RFIDタグ、及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 6/04 20060101AFI20230227BHJP
   G06K 19/07 20060101ALI20230227BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20230227BHJP
   H01M 6/40 20060101ALI20230227BHJP
   H01M 4/42 20060101ALI20230227BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20230227BHJP
   H01M 6/12 20060101ALI20230227BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230227BHJP
   H01M 4/50 20100101ALI20230227BHJP
   H01M 4/26 20060101ALI20230227BHJP
   H01M 4/34 20060101ALI20230227BHJP
   H01M 4/24 20060101ALI20230227BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20230227BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20230227BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20230227BHJP
【FI】
H01M6/04
G06K19/07 020
G06K19/077 200
H01M6/40
H01M4/42
H01M4/48
H01M6/12 A
H01M4/62 C
H01M4/50
H01M4/26 H
H01M4/34
H01M4/26 E
H01M4/24 H
H01M50/105
H01M50/121
H01M50/184 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539207
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(85)【翻訳文提出日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2020087832
(87)【国際公開番号】W WO2021130345
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】19219567.5
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】317008263
【氏名又は名称】ヴァルタ マイクロバッテリー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(71)【出願人】
【識別番号】522251984
【氏名又は名称】エルメリック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】クレブス, マルティン
(72)【発明者】
【氏名】フィンク, ウェルナー
(72)【発明者】
【氏名】ラング, サブリナ
【テーマコード(参考)】
5H011
5H024
5H025
5H050
【Fターム(参考)】
5H011AA03
5H011AA09
5H011BB03
5H011CC02
5H011DD14
5H011FF02
5H011GG08
5H011HH01
5H024AA03
5H024AA04
5H024AA12
5H024BB08
5H024CC04
5H024CC16
5H024DD01
5H024DD03
5H024EE09
5H024FF01
5H025BB10
5H025CC01
5H050AA02
5H050AA19
5H050BA02
5H050BA11
5H050CA02
5H050CA05
5H050CB12
5H050EA08
5H050EA23
5H050EA24
5H050FA02
5H050GA03
5H050GA07
5H050GA20
(57)【要約】
400mA以上の電流をRFIDタグ(110)の送信及び/又は受信ユニット(111)に供給するために使用される印刷電池(100)が、層スタック(108)を含み、層スタックが、活性電極材料としての粒状金属亜鉛又は粒状金属亜鉛合金、及び第一弾性結合剤又は結合剤混合物を含むアノード(101);粒状金属酸化物、カソードの電気伝導性を最適化するための少なくとも一つの電気伝導性添加剤、及び第二弾性結合剤又は結合剤混合物を含むカソード(102);及びアノード及びカソードを互いに電気的に絶縁するセパレータ(103)を含み、印刷電池が、アノードと直接接触する第一電気伝導体(105)、カソードと直接接触する第二電気伝導体(106)、及びハウジング(109)を含み、セパレータが、アノードとカソードの間に配置され、かつ第一側と第二側を含み、第一側が、アノードのための第一接触面を含み、それに平行な第二側が、カソードのための第二接触面を含み、セパレータに対して垂直な直線が二つの接触面と交差する重なり領域Aにおいて、二つの接触面が、層として構成されたセパレータに対して垂直な視覚方向に互いに重なり、カソードが、10~90重量%の粒状金属酸化物、1~25重量%の第二弾性結合剤又は結合剤、2.5~35重量%の少なくとも一種の電気伝導性添加剤を含み、電池の重なり領域Aが、17.3cmの最小サイズを有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にピークで400mA以上の電流をRFIDタグ(110)の送信及び/又は受信ユニット(111)に供給するために使用される印刷電池(100)であって、以下の特徴を有する印刷電池:
(a)印刷電池(100)が、層スタック(108)を含み、層スタック(108)が、
- 層として構成されたアノード(101)であって、活性電極材料としての粒状金属亜鉛又は粒状金属亜鉛合金、及び第一弾性結合剤又は結合剤混合物を含むアノード(101)、
- 層として構成されたカソード(102)であって、活性電極材料としての粒状金属酸化物、カソード(102)の電気伝導性を最適化するための少なくとも一つの電気伝導性添加剤、及び第二弾性結合剤又は結合剤混合物を含むカソード(102)、及び
- 層として構成されたセパレータ(103)であって、アノード(101)及びカソード(102)を互いに電気的に絶縁するセパレータ(103)
を含み、
(b)印刷電池(100)が、アノード(101)と直接接触する第一電気伝導体(105)、及びカソード(102)と直接接触する第二電気伝導体(106)を含み、
(c)印刷電池(100)が、層スタック(108)を包囲するハウジング(109)を含み、
(d)セパレータ(103)が、アノード(101)とカソード(102)の間に配置され、かつ第一側(103a)と第二側(103b)を含み、それらのうち第一側(103a)が、アノード(101)のための第一接触面を含み、それに平行な第二側(103b)が、カソード(102)のための第二接触面を含み、
(e)セパレータ(103)に対して垂直な直線が二つの接触面と交差する重なり領域Aにおいて、二つの接触面が、層として構成されたセパレータ(103)に対して垂直な視覚方向に互いに重なり、
(f)カソード(102)が、カソード(102)の固体成分の全重量で表示すると10~90重量%の割合で粒状金属酸化物を含み、
(g)カソード(102)が、カソード(102)の固体成分の全重量で表示すると1~25重量%の割合で第二弾性結合剤又は結合剤を含み、
(h)カソード(102)が、カソード(102)の固体成分の全重量で表示すると2.5~35重量%の割合で少なくとも一種の電気伝導性添加剤を含み、
(i)電池の重なり領域Aが、17.3cmの最小サイズを有する。
【請求項2】
以下の追加の特徴の少なくとも一つを有する、請求項1に記載の印刷電池:
(a)電池が、請求項1の特徴(a)及び(d)~(h)を有する第一層スタックを含み、
(b)電池が、請求項1の特徴(a)及び(d)~(h)を有する第二層スタックを含み、
(c)任意選択的に、電池が、請求項1の特徴(a)及び(d)~(h)を有するn個のさらなる層スタックを含み、但しnは、好ましくは1~100の整数であり、
(d)層スタックの各々が、17.3cmの最小サイズを有する重なり領域を有し、
(e)電池の層スタックが、電気的に直列で及び/又は電気的に並列で互いに相互接続される。
【請求項3】
以下の追加の特徴を有する、請求項1又は2に記載の印刷電池:
(a)カソード(102)が、特に活性炭素、活性炭素繊維、炭化物誘導炭素、カーボンエアロゲル、グラファイト、グラフェン、及びカーボンナノチューブ(CNT)からなる群からの、電気伝導性添加剤としての少なくとも一種の炭素ベースの材料を含み、
(b)カソード(102)が、2.5~35重量%の範囲の割合で少なくとも一種の炭素ベースの材料を含む。
【請求項4】
以下の追加の特徴を有する、請求項1又は2に記載の印刷電池:
(a)カソード(102)が、電気伝導性添加剤として少なくとも一種の水溶性塩を含み、
(b)カソード(102)が、1~25重量%の範囲の割合で少なくとも一種の水溶性塩を含む。
【請求項5】
以下の追加の特徴の一つを有する、請求項1~4のいずれかに記載の印刷電池:
(a)カソード(102)が、粒状金属酸化物として酸化マンガンを含み、
(b)カソード(102)が、粒状金属酸化物として酸化銀を含む。
【請求項6】
以下の追加の特徴の少なくとも一つを有する、請求項1~5のいずれかに記載の印刷電池:
(a)アノード(101)が、第一弾性結合剤又は結合剤混合物として、セルロース及びその誘導体、ポリアクリレート(PA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリトリフルオロエチレン(PTrFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、及び上述の材料の混合物からなる群の少なくとも一つの材料を含み、
(b)カソード(102)が、第二弾性結合剤又は結合剤混合物として、セルロース及びその誘導体、ポリアクリレート(PA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリトリフルオロエチレン(PTrFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、及び上述の材料の混合物からなる群の少なくとも一つの材料を含み、
(c)第一及び第二弾性結合剤又は結合剤混合物が、材料的に同一である。
【請求項7】
以下の追加の特徴を有する、請求項5に記載の印刷電池:
(a)カソード(102)が、粒状金属酸化物として酸化マンガン及び酸化銀からなる群からの金属酸化物を含み、
(b)カソード(102)が、電気伝導性添加剤として少なくとも一種の水溶性塩を含み、
(c)カソード(102)が、1~25重量%の範囲の割合で少なくとも一種の水溶性塩を含み、
(d)カソード(102)が、第二弾性結合剤又は結合剤混合物としてカルボキシメチルセルロースとSBRの組み合わせを含む。
【請求項8】
以下の追加の特徴の少なくとも一つを有する、請求項1~7のいずれかに記載の印刷電池:
(a)印刷電池が、塩化物ベースの電気伝導性塩を含む水性電解質を含む、
(b)アノードとカソードの間に配置されるセパレータ(103)が、電解質に含浸されている。
【請求項9】
以下の追加の特徴を有する、請求項1~7のいずれかに記載の印刷電池:
(a)セパレータが、固体電解質である。
【請求項10】
以下の追加の特徴を有する、請求項1~9のいずれかに記載の印刷電池:
(a)印刷電池が、第一及び/又は第二電気伝導体(105,106)として、金属粒子、特に銀粒子又は銀合金の粒子からなる電気伝導性トラックを含む。
【請求項11】
無線信号を送信及び/又は受信するための送信及び/又は受信ユニット(111)、及び送信及び/又は受信ユニット(111)にピークで400mA以上の電流を供給するための印刷電池(100)をキャリア(104)上に含むRFIDタグ(110)であって、印刷電池(100)が、請求項1~10のいずれかに記載のように構成されている、RFIDタグ(110)。
【請求項12】
ピークで400mA以上の電流をRFIDタグ(110)の送信及び/又は受信ユニット(111)に供給するために使用される印刷電池(100)を製造するための方法であって、以下の工程を有する方法:
(a)非電気伝導性キャリア(104)の上に第一電気伝導体(105)を印刷し、非電気伝導性キャリア(104)の上に第二電気伝導体(105)を印刷し、
(b)粒状金属亜鉛又は粒状金属亜鉛合金及び第一弾性結合剤又は結合剤混合物を含む印刷ペーストを使用して、第一電気伝導体(105)の上に直接、層としてアノード(101)を印刷し、
(c)粒状金属酸化物、カソードの電気伝導性を最適化するための少なくとも一種の電気伝導性添加剤、及び第二弾性結合剤又は結合剤混合物を含む印刷ペーストを使用して、第二電気伝導体(106)の上に直接、層としてカソード(102)を印刷し、但し
- 印刷ペーストが、その固形成分の全重量で表示すると10~90重量%の割合で粒状金属酸化物を含み、
- 印刷ペーストが、その固形成分の全重量で表示すると1~15重量%の割合で第二弾性結合剤又は結合剤混合物を含み、
- 印刷ペーストが、その固形成分の全重量で表示すると2.5~35重量%の割合で少なくとも一種の電気伝導性添加剤を含み、
(d)アノード(101)及び/又はカソード(102)の上に、層として構成されるセパレータ(103)を印刷又は付与し、
(e)アノード/セパレータ/カソードの順序からなる層スタック(108)を形成する、但し、
- セパレータ(103)が、アノード(101)とカソード(102)の間に配置され、かつ第一側(103a)と第二側(103b)を含み、それらのうち第一側(103a)が、アノード(101)のための第一接触面を含み、それに平行な第二側(103b)が、カソード(102)のための第二接触面を含み、
- セパレータ(103)に対して垂直な直線が二つの接触面と交差する重なり領域Aにおいて、二つの接触面が、層として構成されるセパレータ(103)に対して垂直な視覚方向に互いに重なり、
- 電池の重なり領域Aが、17.3cmの最小サイズを有する。
【請求項13】
以下の追加の特徴及び/又は工程を有する、請求項12に記載の方法:
(a)酸化マンガンが、粒状金属酸化物として使用され、
(b)第一及び/又は第二電気伝導体(105,106)が、アノード(101)及びカソード(102)が印刷される前に電気伝導性炭素層(114)を使用して全面に印刷される。
【請求項14】
以下の追加の特徴及び/又は工程の少なくとも一つを有する、請求項12又は13に記載の方法:
(a)層として構成されるセパレータ(103)の印刷又は付与の前及び/又は後に、アノード(101)及びカソード(102)が、液体電解質に含浸され、
(b)液体電解質に含浸する前に、アノード(101)及びカソード(102)を包囲する封止フレーム(107)が、キャリア(104)の上に形成又は配置される。
【請求項15】
以下の追加の工程を有する、請求項12~14のいずれかに記載の方法:
(a)第一及び第二電気伝導体(105,106)が、同じキャリア(104)の上に互いに隣りに印刷され、
(b)層スタック(108)が配置される閉鎖容器(109)が、折り曲げ後の溶接及び/又は接着結合によってキャリア(104)から形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下に記載される発明は、印刷電池、及び印刷電池によって電流を供給されるRFIDタグに関する。本発明はさらに、印刷電池を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDタグは、あらゆるタイプの製品、例えば医薬及び農業用の殺菌剤を追跡するために使用されることができる。かかるRFIDタグは、例えば、WO2019/145224A1に記載されている。それらは、一般にエネルギー供給ユニット、少なくとも一つのセンサー、制御ユニット、独自の製品識別子が記憶されるデータメモリー、及び送信及び/又は受信ユニットを含む。センサーの助けにより、製品に関する、例えばその包装の開封状態に関する状態情報を決定することが可能である。制御ユニットは、次いで送信及び/又は受信ユニットに状態情報及び製品識別子をデータ受信器へと送らせることができる。理想的には、エネルギー供給ユニットは、数ヶ月にわたってそのために要求されるエネルギーを送ることができるはずであり、その場合において少なくとも50回の来入及び流出データの送信がこの期間中可能であるべきである。
【0003】
送信及び/又は受信ユニットは、原理的にはいかなるデータ送信装置であってもよく、例えばWi-Fi規格(IEEE 802.11)及びBluetooth規格(IEEE 802.15.1)に従ったデータ送信が可能である。しかしながら、製品の世界中での追跡を確実にするため、移動無線ネットワーク、又はデータ送信のための他の実在する無線ネットワークを使用することが好ましい。
【0004】
移動無線ネットワークは、現在、人が住む世界の大部分をカバーし、従って、それらは、製品の世界中での追跡のために特に良く適している。しかしながら、移動無線チップは、それらのエネルギー消費に関する条件を要求することをなお課している。これはまた、LTE規格(LTE=ロングタームエボリューション)に従って送信する新世代移動無線チップにも当てはまる。選択される送信プロトコルに依存して、400mAまでのピーク電流が、少なくとも短時間ウインドウに対して与えられることが必要である。
【0005】
一般的な使用のため、RFIDタグ、及びそれらのエネルギー供給ユニットは、できるだけ小さくかつ製造するのが経済的でなければならない。さらに、環境に対する優しさ及び安全性は、大量使用における全ての製品に対して重要なパラメータである。特に、これらの理由のため、WO2019/145224A1においては印刷電池が、エネルギー供給ユニットとして考慮されている。
【0006】
しかしながら、これまで知られた印刷電池は、上で述べた条件を満足しないか、又は最も良くても部分的にしかそれらを満足しない。例えば、US2010/081049A1に記載された電池は、上述のオーダーの大きさのピーク電流を送ることができない。全てのリチウムベースのシステムは、それらの燃焼性の電解質による安全上の理由のために考慮からはずされている。ニッケル水素電池は、印刷技術の理由のために問題である。
【発明の概要】
【0007】
ここに記載される発明の目的は、RFIDタグの送信及び/又は受信ユニット、特にLTE規格に従って作動する送信及び/又は受信ユニットに対して最適化されるエネルギー供給ユニットを提供することである。
【0008】
この目的を達成するために、本発明は、以下に記載される電池(特に請求項1の特徴を有する以下に記載の電池の実施形態)、及び以下に記載される方法(特に請求項12の特徴を有する方法)を提案する。請求項11の特徴を有するRFIDタグもまた、本発明の主題である。本発明の改良例は、従属請求項の主題である。
【0009】
用語「電池」は、本来は、直列に接続された複数の電気化学セルを意味した。しかしながら、今日、用語「電池」は、より広く使用され、個々の電気化学セル(個別のセル)も含むことが多い。これはまた、本発明の範囲にも当てはまる。従って、本発明による電池は、一つのアノードだけ及び一つのカソードだけを有する個別のセル又は複数の電気化学セルの組み合わせのいずれであることもできる。
【0010】
本発明の目的によれば、本発明による印刷電池は、ピークで400mA以上の電流を送信及び/又は受信ユニットに供給するために使用されることが好ましい。それゆえ、それは、特にLTE規格に従って作動する移動無線チップにエネルギーを供給することができる。しかしながら、原則として、これはまた、他の用途のために適している。
【0011】
電池は、以下の特徴(a)~(e)を常に有する:
(a)電池が、層スタックを含み、層スタックが、
- 層として構成されたアノードであって、好ましくは均質混合物において、活性電極材料としての粒状金属亜鉛又は粒状金属亜鉛合金、及び第一弾性結合剤又は結合剤混合物を含むアノード、
- 層として構成されたカソードであって、好ましくは均質混合物において、活性電極材料としての粒状金属酸化物、カソードの電気伝導性を最適化するための少なくとも一つの電気伝導性添加剤、及び第二弾性結合剤又は結合剤混合物を含むカソード、及び
- 層として構成されたセパレータであって、アノード及びカソードを互いに電気的に絶縁するセパレータ
を含み、
(b)電池が、アノードと直接接触する第一電気伝導体、及びカソードと直接接触する第二電気伝導体を含み、
(c)電池が、層スタックを包囲するハウジングを含み、
(d)セパレータが、アノードとカソードの間に配置され、かつ第一側と第二側を含み、それらのうち第一側が、アノードのための第一接触面を含み、それに平行な第二側が、カソードのための第二接触面を含み、
(e)セパレータに対して垂直な直線が二つの接触面と交差する重なり領域Aにおいて、二つの接触面が、層として構成されたセパレータに対して垂直な視覚方向に互いに重なる。
【0012】
本ケースの印刷電池は、少なくとも電極、任意選択的に電気伝導体、一部の好ましい実施形態ではセパレータ、及び任意選択的にさらなる機能部品がキャリアの上に印刷ペーストを印刷することによって、特にスクリーン印刷法によって形成される電池を意味することを意図される。従って、本発明による電池では、少なくとも亜鉛を含有するアノード及び金属酸化物を含有するカソードが印刷される。好ましくは、電極及び電気伝導体、特に第一及び第二電気伝導体が印刷される。
【0013】
アノード及びカソードは、各々が10~350μm、好ましくは250μmまでの範囲の厚さを有することが好ましい。カソードは、アノードより幾分厚くなるように構成されることが多い。なぜならアノードは、多くの場合において高いエネルギー密度を有するからである。一部の用途では、30~150μmの厚さを有する層としてアノードを形成し、180~350μmの厚さを有する層としてカソードを形成することが好ましい。アノード及びカソードの容量は、厚さを調整することによってバランスをとられることができる。この点に関してカソードは、アノードに対して大きな寸法をとることが好ましい。
【0014】
亜鉛を含有するアノードを有する電気化学システムを選択する理由は、特に安全性の要求を満たすためである。亜鉛ベースのアノードを有するシステムは、水性電解質を要求し、従って燃焼性ではない。さらに、亜鉛は、環境に優しく、安価である。
【0015】
電極及びセパレータの積み重ねられた配置は、US2010/081049A1に記載されたセルの電極の場合のような同一平面配置より優れることがわかった。積み重ねられた電極を有するセルの電流を運ぶ能力は、有意に高い。なぜなら充電及び放電プロセス時に電極間で行ったり来たり移動するイオンは、平均してずっと短い経路を動くことしか要求されないからである。重なり領域の内側では、電極間の最も短い距離は、アノードとカソードの間に配置されたセパレータの厚さに相当する。
【0016】
スタック内のアノード及びカソードを同一サイズとし、かつ非オフセット配置することにより、重なり領域のサイズは、電極のサイズに正確に対応する。
【0017】
しかしながら、積み重ねられた配置自体は、亜鉛を含有するアノードを有する本発明による電池に必要な電流運搬能力を付与するにはなお十分でない。むしろ、この目的のために、電池は、以下の追加の特徴(f)~(h)の組み合わせによって特徴づけられる:
(f)カソードが、カソードの固体成分の全重量で表示すると10~90重量%の割合で粒状金属酸化物を含み、
(g)カソードが、カソードの固体成分の全重量で表示すると1~25重量%の割合で第二弾性結合剤又は結合剤を含み、
(h)カソードが、カソードの固体成分の全重量で表示すると1~85重量%の割合で少なくとも一種の電気伝導性添加剤を含む。
【0018】
本発明による電池は、層として構成されるアノード、層として構成されるカソード、及び層として構成されるセパレータを有する単一層スタックを含むことができる。しかしながら、それは、二つ又はそれより多いかかる層スタック、特に上述の特徴(a)及び(d)~(h)を有する二つ又はそれより多い同一層スタックを含むことができる。
【0019】
それゆえ、本発明はまた、すぐ下の特徴(a)及び(c)及び任意選択的に(c)を有する電池に関する:
(a)電池が、上述の特徴(a)及び(d)~(h)を有する第一層スタックを含み、
(b)電池が、上述の特徴(a)及び(d)~(h)を有する第二層スタックを含み、
(c)任意選択的に、電池が、上述の特徴(a)及び(d)~(h)を有するn個のさらなる層スタックを含み、但しnは、好ましくは1~100、好ましくは1~10の整数である。
【0020】
本発明によるハウジングは、この場合において全ての層スタックを包囲することが好ましい。さらに、電池は、この場合において層スタックの各個々のもののアノード及びカソードのためにそれぞれ第一及び第二電気伝導体を含むことが好ましい。
【0021】
特に好ましい実施形態では、本発明による電池は、すぐ下の特徴(i)によってさらに特徴づけられる:
(i)電池の重なり領域Aが、17.3cmの最小サイズを有する。
【0022】
本発明による電池が一つだけの層スタックを含む場合には、17.3cmの最小サイズは、一つの層スタックにおける重なり領域を示す。本発明による電池が二つ以上の層スタックを含む場合には、電池の重なり領域Aは、二つ以上の層スタックにおける重なり領域の合計に相当する。従って、重なり領域の全サイズは、少なくとも17.3cmであるべきである。
【0023】
一部の特に好ましい実施形態では、電池は、二つ以上の層スタックを含み、それらの各々は、17.3cmの最小サイズを有する重なり領域によって特徴づけられる。
【0024】
本発明の範囲において、本発明による電池に必要な電流運搬能力を付与するためには、重なり領域は、規定された最小サイズを有する。この最小サイズがどのような大きさでなければならないかは、特にカソード(単数又は複数)の組成に関連する。その組成、粒状金属酸化物、第二弾性結合剤又は結合剤混合物及び少なくとも一つの電気伝導性添加剤は、本発明によれば、確立された割合の範囲内でカソード(単数又は複数)に含有されなければならない。
【0025】
電池の重なり領域は、好ましくは500cm、特に好ましくは100cmの最小サイズを有する。
【0026】
複数の層スタックを有する場合には、互いに独立して機能的な電気化学セルを形成する層スタックが直列及び/又は並列で電気的に互いに相互接続されることが好ましい。本発明による電池の電流運搬能力はまた、それが必要な電力を与えることができるように、このようにして増加されることができる。
【0027】
特に、本発明による電池に含まれる層スタックの直列電気相互接続は、このために好ましい。この目的のため、本発明による電池は、追加の電気伝導体を有してもよく、それは、異なる層スタックのアノード及びカソードを互いに電気接続するか、又は相互接続されるアノード及びカソードが、共通の電気伝導体によって互いに接続されることができる。直列で相互接続される四つ以上の層スタックを有する本発明による電池は、特に層スタックの各々が17.3cmの最小サイズを有する重なり領域によって特徴づけられるとき、LTE規格に従って作動する移動無線チップに電気エネルギーを供給するために特に好適である。
【0028】
しかしながら、一部の実施形態では、本発明による電池に含まれる層スタックは、並列に電気相互接続されることが好ましい。
【0029】
原則として、本願における電極中の構成要素の重量割合についての全てのパーセンテージ記載は、それぞれの電極の固体成分の全重量に対して表示される。この場合にそれぞれ含まれる構成要素の重量割合は、合計で100重量%になる。それらが決定される前、電極に含まれる湿分は、除去されることが必要であるかもしれない。
【0030】
第二弾性結合剤又は結合剤混合物の割合は、少なくとも1重量%でなければならない。なぜなら第二弾性結合剤又は結合剤混合物は、カソード(単数又は複数)に含有される金属酸化物粒子を互いに対して固定し、同時にカソード(単数又は複数)に特定の可撓性を付与することを意図されるからである。しかしながら、その割合は、上で述べた最大割合を超えてはならない。なぜなら上で述べた最大割合を超えると、金属酸化物粒子が少なくとも部分的に互いに接触しなくなる危険が起こるからである。上で述べた範囲内では、1~15重量%の割合、特に5~15重量%の割合がより好ましい。
【0031】
粒状金属酸化物の割合及び少なくとも一種の電気伝導性添加剤の割合は、相互に依存する。少なくとも一種の電気伝導性添加剤の割合が上述の下限に近づくと、粒状金属酸化物の割合が高くなることが好ましい。同じことは、この逆でも当てはまる。
【0032】
粒状金属酸化物の割合について上述の範囲内では、50~90重量%の範囲の割合がより好ましい。
【0033】
少なくとも一種の電気伝導性添加剤の割合について上述の範囲内では、2.5~35重量%の範囲の割合がより好ましい。
【0034】
さらに、重なり領域Aのサイズ、及びカソード(単数又は複数)における粒状金属酸化物及び少なくとも一種の電気伝導性添加剤の全割合Gもまた、相互に依存することが好ましい。重なり領域のサイズが上述の下限に近くなると、全割合Gが高くなることが好ましい。同じことは、この逆でも当てはまる。
【0035】
好ましい改良では、電池は、すぐ下の追加の特徴(a)~(c)の少なくとも一つによって特徴づけられる:
(a)カソードにおける粒状金属酸化物及び少なくとも一種の電気伝導性添加剤の全割合Gが、カソード(単数又は複数)の固体成分の全重量の0.85~0.95倍の範囲にあり、
(b)カソード(単数又は複数)における粒状金属酸化物の重量割合と少なくとも一種の電気伝導性添加剤の重量割合の比が、20:1~5:1の範囲にあり、
(c)全割合Gに対する電池の重なり領域A[cm]のサイズの比率について、以下の条件式を満足する:
x[cm]*0.95A[cm]*G
【0036】
電池の特に好ましい実施形態では、すぐ上の特徴(a)~(c)は、互いに組み合わせて実施される。
【0037】
カソード(単数又は複数)における金属酸化物の高い割合は、電池の容量を増加する。しかしながら、電流運搬能力については、少なくとも一種の電気伝導性添加剤の割合は、金属酸化物の全割合よりずっと重要である。
【0038】
好適な電気伝導性添加剤の選択に関して、二つの特に好ましい変形例が、本発明の範囲における選択のために利用可能である。
【0039】
第一の特に好ましい変形例では、電池は、すぐ下の追加の特徴(a)及び(b)の少なくとも一つによって特徴づけられる:
(a)カソード(単数又は複数)が、特に活性炭素、活性炭素繊維、炭化物誘導炭素、カーボンエアロゲル、グラファイト、グラフェン、及びカーボンナノチューブ(CNT)からなる群からの、電気伝導性添加剤としての少なくとも一種の炭素ベースの材料を含み、
(b)カソード(単数又は複数)が、25~35重量%の範囲の割合で少なくとも一種の炭素ベースの材料を含む(上記参照)。
【0040】
電池の特に好ましい実施形態では、すぐ上の特徴(a)及び(b)は、互いに組み合わせて実施される。
【0041】
この変形例は、特定の電気伝導性添加剤がカソード(単数又は複数)の電気伝導性を高めるだけでなく、それらのファラデー容量に加えてカソード(単数又は複数)に二倍の層の容量を付与するという事実を使用する。それゆえ、極めて高い電流が、短時間で与えられることができる。
【0042】
驚くべきことに、同様のプラスの効果は、カソードが乾燥状態にあるときにカソード中で結晶状態にあることができる電気伝導性塩を電極ペーストによってカソード(単数又は複数)にそれらの製造時に添加することによって達成されることができることが見出された。電解質の続く印刷中、結晶性電気伝導性塩は、極めて迅速に湿潤されることができ、イオン伝導性液での電極の良好な浸透に導くことができる。
【0043】
対応するように、第二の特に好ましい変形例では、電池は、すぐ下の追加の特徴(a)及び(b)の少なくとも一つによって特徴づけられる:
(a)カソード(単数又は複数)が、電気伝導性添加剤として少なくとも一種の水溶性塩を含み、
(b)カソード(単数又は複数)が、1~25重量%の範囲の割合で少なくとも一種の水溶性塩を含む。
【0044】
電池の特に好ましい実施形態では、すぐ上の特徴(a)及び(b)は、互いに組み合わせて実施される。
【0045】
水溶性塩として、特にハロゲン化物、好ましくは塩化物、特に塩化亜鉛及び/又は塩化アンモニウムが、電気伝導性を改良する目的のためにカソード(単数又は複数)に添加されることができる。
【0046】
一部の好ましい実施形態では、上述の変形例を組み合わせてもよい。これらの場合において、電池は、すぐ下の特徴(a)及び(b)の組み合わせによって特徴づけられる:
(a)カソード(単数又は複数)が、特に活性炭素、活性炭素繊維、炭化物誘導炭素、カーボンエアロゲル、グラファイト、グラフェン、及びカーボンナノチューブ(CNT)からなる群からの、第一電気伝導性添加剤としての少なくとも一種の炭素ベースの材料を含み、
(b)カソード(単数又は複数)が、第二電気伝導性添加剤として少なくとも一種の水溶性塩を含む。
【0047】
電池の好ましい実施形態では、電池は、すぐ下の特徴(a)及び(b)の組み合わせによって特徴づけられる:
(a)カソード(単数又は複数)が、粒状金属酸化物として酸化マンガンを含み、
(b)カソード(単数又は複数)が、粒状金属酸化物として酸化銀を含む。
【0048】
本発明による電池は、亜鉛/酸化マンガン電池又は亜鉛/酸化銀電池であることが好ましい。
【0049】
他の好ましい実施形態では、電池は、すぐ下の追加の特徴(a)~(c)の少なくとも一つによって特徴づけられる:
(a)アノード(単数又は複数)が、第一弾性結合剤又は結合剤混合物として、セルロース及びその誘導体、特にカルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリレート(PA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリトリフルオロエチレン(PTrFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、及び上述の材料の混合物からなる群の少なくとも一つの材料を含み、
(b)カソード(単数又は複数)が、第二弾性結合剤又は結合剤混合物として、セルロース及びその誘導体、特にカルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリレート(PA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリトリフルオロエチレン(PTrFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、及び上述の材料の混合物からなる群の少なくとも一つの材料を含み、
(c)第一及び第二弾性結合剤又は結合剤混合物が、材料的に同一である。
【0050】
電池の特に好ましい実施形態では、すぐ上の特徴(a)及び(b)は、互いに組み合わせて実施される。これらの特に好ましい実施形態の一部の改良では、すぐ上の特徴(a)~(c)は、互いに組み合わせて実施される。
【0051】
特に好ましくは、電極結合剤として好適な多糖(特にセルロース誘導体)とSBRの組み合わせが、カソード(単数又は複数)及びアノード(単数又は複数)の両方において結合剤又は結合剤混合物として含まれる。例えば、アノード(単数又は複数)及びカソード(単数又は複数)は0.5~2.5重量%のカルボキシメチルセルロース及び/又はキトサン、及び5~10重量%のSBRを含有することができる。セルロース誘導体又はキトサンは、ここでは乳化剤として使用される。それらは、ペースト中への弾性結合剤(SBR)の分布を助ける。
【0052】
本発明による電池のアノード(単数又は複数)は、固体成分の全重量で表わすと1~25重量%の割合で第一弾性結合剤又は結合剤混合物を含む。アノード(単数又は複数)は、40~80重量%の範囲の割合で粒状金属亜鉛又は粒状金属亜鉛合金を含むことが好ましい。
【0053】
任意選択的に、アノード(単数又は複数)はまた、ある割合の電気伝導性添加剤を含むことができる。しかし、アノード(単数又は複数)の活性材料は、本来的に既に電気伝導性であるので、これは、必ずしも要求されない。
【0054】
一つの特に好ましい実施形態では、電池は、四つのすぐ下の追加の特徴(a)~(d)の組み合わせによって特徴づけられる:
(a)カソード(単数又は複数)が、粒状金属酸化物として酸化マンガン及び酸化銀からなる群からの金属酸化物を含み、
(b)カソード(単数又は複数)が、電気伝導性添加剤として少なくとも一種の水溶性塩を含み、
(c)カソード(単数又は複数)が、1~25重量%の範囲の割合で少なくとも一種の水溶性塩を含み、
(d)カソード(単数又は複数)が、第二弾性結合剤又は結合剤混合物としてカルボキシメチルセルロースとSBRの組み合わせを含む。
【0055】
一部の実施形態では、セパレータはまた、印刷されることができることが冒頭で既に述べられた。このために好適なペーストは、例えばEP2561564B1に見出すことができる。
【0056】
しかしながら、他の実施形態では、セパレータはまた、多孔質シート材料、例えばアノードとカソードの間に配置される多孔質フィルム又は不織布であることができる。好適なシート材料及び対応する手順は、EP3477727A1に記載されている。
【0057】
特に好ましくは、60~120μmの範囲の厚さ及び35~60%の範囲の多孔度(全体積に対する中空体積の割合)を有する微多孔質プラスチックフィルム又は不織布が使用される。不織布又はフィルムは、ポリオレフィン、例えばポリエチレンからなることが好ましい。
【0058】
特に、例えばEP2960967B1における好ましい実施形態に記載されるような固体電解質は、電解質の間に配置されることができる。但し、液体電解質が使用される変形例は、多くの場合において好ましい。
【0059】
従って、本発明による電池の層スタック(単数又は複数)は、すぐ下の追加の特徴(a)及び(b)の少なくとも一つによって特徴づけられる:
(a)電池が、塩化物ベースの電気伝導性塩を含む水性電解質を含む、
(b)アノードとカソードの間に配置されるセパレータが、電解質に含浸されている。
【0060】
電池の特に好ましい実施形態では、すぐ上の特徴(a)及び(b)は、互いに組み合わせて実施される。
【0061】
特に、塩化亜鉛及び塩化アンモニウムは、塩化物ベースの電気伝導性塩として好適である。水性電解質のpHは、中性又はわずかに酸性の範囲で変化することが好ましい。
【0062】
一部の特に好ましい実施形態では、水性電解質は、粘度を高めるための添加剤(セットアップ剤)及び/又は無機充填粒子を、特に電解質がペースト状濃度を持つのに十分な量で含む。かかる電解質はまた、電解質ペーストとして以下に言及されるだろう。
【0063】
特に、二酸化ケイ素は、セットアップ剤として好適である。しかしながら、カルボキシメチルセルロースのような結合物質はまた、粘度を高めるために使用されることができる。
【0064】
例えばセラミック固体、水にほとんど又は完全に不溶性の塩、ガラス及び玄武岩及び炭素は、無機充填粒子として好適である。用語「セラミック固体」は、この場合においてセラミック製品を製造するために使用されうる全ての固体をカバーすることを意図され、それは、アルミノシリケートのようなシリケート材料、ガラス及びクレー材料、二酸化チタン及び酸化アルミニウムのような他の酸化物原材料、並びに炭化ケイ素又は窒化ケイ素のような非酸化物材料を含む。
【0065】
本願の範囲において用語「ほとんど又は完全に不溶性(不溶解性)」は、室温で水にせいぜい低い溶解性、好ましくは不溶解性であることを意味する。無機充填剤粒子の溶解性、特に水にほとんど又は完全に不溶性である上述の塩の溶解性は、この目的のために理想的には室温での水における炭酸カルシウムの溶解性を超えるべきではない。炭酸カルシウムはさらに、電解質ペーストが粒状充填剤成分として含有してもよい無機固形物の特に好ましい例である。
【0066】
特に好ましい実施形態では、電解質ペーストは、以下の組成を有する:
- 塩化物ベースの電気伝導性塩 30~40重量%
- セットアップ剤(例えばSiO粉末) 2~4重量%
- 無機粒子(例えばCaCO) 10~20重量%
- 溶媒(好ましくは水) 40~55重量%
【0067】
塩化亜鉛及び/又は塩化アンモニウムがまた、ここでは塩化物ベースの電気伝導性塩として使用されることが好ましい。
【0068】
別の好ましい実施形態では、電池は、以下の追加の特徴(a)によって特徴づけられる:
(a)電池が、第一及び/又は第二電気伝導体として、金属粒子、特に銀粒子又は銀合金の粒子からなる電気伝導性トラックを含む。
【0069】
電気伝導体を製造するための銀粒子を有する印刷可能な電気伝導性ペーストは、従来技術であり、市場で容易に入手可能である。
【0070】
本発明によるRFIDタグは、無線信号を送信及び/又は受信するための送信及び/又は受信ユニット、及び送信及び/又は受信ユニットにピークで400mA以上の電流を供給するための印刷電池をキャリア上に含み、電池が、請求項1~10のいずれかに記載のように構成されている。
【0071】
電池によって送出可能なピーク電流を測定するためには、電池のインピーダンスは、電気化学インピーダンススペクトル(EIS)から導かれることが好ましい。この測定方法では、インピーダンスZは、測定周波数fの関数Z=Z(f)として決定される。1秒の長さのパルス化電流によって負荷することは、最良でインピーダンス値Z(0.5Hz)に相当する。これは、オームの法則(ピーク電流i=電圧差ΔU/Z(0.5Hz)に従う電子用途の開回路電圧と閉回路電圧の間の電圧差とともに考慮される。
【0072】
好ましくは、電池は、キャリア上に直接、印刷されている。しかしながら、電池を別個に製造し、例えば接着剤によってそれをキャリア上に固定することも好ましい。
【0073】
RFIDタグの可能な好ましい構成に関して、WO2019/145224A1をここでは参照されたい。例えば、これは、RFIDタグの一部でありうるセンサーシステムを明確に記載している。かかるセンサーシステムの助けでRFIDタグでラベル付けされた製品に関する状態情報を決定することができる。
【0074】
ここに記載される本発明の範囲では、特にキャリア及び送信及び/又は受信ユニットが重要である。後者は、冒頭で述べた移動無線チップ、特にLTE規格に従ってデータ送信を扱うチップであることが好ましい。
【0075】
キャリアは、ほとんどいかなる希望の方法でも構成されることができる。重要なことは、本発明による電池の電気伝導体が印刷されるキャリアの表面が短絡又は沿面流を防止するためにいかなる電気伝導特性も持たないことだけである。例えば、キャリアは、プラスチックベースのタグであってもよく、その場合において、例えば一方の面に接着剤面を有し、それによって製品に固定することができるポリオレフィン又はポリエチレンテレフタレートのフィルムが好適である。電池の電気伝導体及びその他の機能ユニットは、他の側に取り付けられることができる。
【0076】
特に好ましい実施形態では、RFIDタグは、RFIDタグの周囲の環境から電気エネルギーを得ることができる。この目的のため、RFIDタグは、環境からのエネルギーを電気エネルギーに変換することができるエネルギー変換器を備えることができる。例えば、圧電効果、熱電効果又は光電効果は、変換のために使用されることができる。環境からのエネルギーは、例えば光、電界、磁界、電磁界、動き、圧力及び/又は熱の形で及び/又は他の形態のエネルギーで与えられることができ、エネルギー変換器の助けで使用されるか、又は取り入れられることができる。
【0077】
好ましい実施形態では、エネルギー変換器は、それが本発明による電池を充電することができるように本発明による電池に結合される。酸化亜鉛/マンガン又は酸化亜鉛/銀電池は、いわゆる一次電池の中に分離され、それは、原則として充電のために意図されず、それでもなお、かかる電池で限られた範囲で再充電するように作用する。
【0078】
少なくとも本発明による電池の最も重要な機能部分が印刷法の助けで、特にスクリーン印刷によって形成されることは、既に述べた。本発明による方法は、上記のような電池を製造するために使用され、すぐ下の工程(a)~(c)によって特徴づけられる:
(a)非電気伝導性キャリアの上に第一電気伝導体を印刷し、非電気伝導性キャリアの上に第二電気伝導体を印刷し、
(b)粒状金属亜鉛又は粒状金属亜鉛合金及び第一弾性結合剤又は結合剤混合物を含む印刷ペーストを使用して、第一電気伝導体の上に直接、層としてアノードを印刷し、
(c)粒状金属酸化物、カソードの電気伝導性を最適化するための少なくとも一種の電気伝導性添加剤、及び第二弾性結合剤又は結合剤混合物を含む印刷ペーストを使用して、第二電気伝導体の上に直接、層としてカソードを印刷し、但し
- 印刷ペーストが、その固形成分の全重量で表示すると10~90重量%の割合で粒状金属酸化物を含み、
- 印刷ペーストが、その固形成分の全重量で表示すると1~25重量%、好ましくは1~15重量%、特に好ましくは5~15重量%の割合で第二弾性結合剤又は結合剤混合物を含み、
- 印刷ペーストが、その固形成分の全重量で表示すると1~85重量%、好ましくは2.5~35重量%の割合で少なくとも一種の電気伝導性添加剤を含み、
(d)アノード及び/又はカソードの上に、層として構成されるセパレータを印刷又は付与し、
(e)アノード/セパレータ/カソードの順序からなる層スタックを形成する、但し、
- セパレータが、アノードとカソードの間に配置され、かつ第一側と第二側を含み、それらのうち第一側が、アノードのための第一接触面を含み、それに平行な第二側が、カソードのための第二接触面を含み、
- セパレータに対して垂直な直線が二つの接触面と交差する重なり領域Aにおいて、二つの接触面が、層として構成されるセパレータに対して垂直な視覚方向に互いに重なる。
【0079】
二つ以上の層スタックを有する本発明による電池を製造する場合には、上述の工程(a)~(e)は、複数回実施されることが必要でありうる。
【0080】
各場合において、電池の重なり領域Aは、上述の17.3cmの最小サイズを有することが有利である。それゆえ、層スタック(単数又は複数)の電極及びセパレータ(単数又は複数)をそれに応じて寸法決定し、配置することが好ましい。
【0081】
第一及び第二弾性結合剤又は結合剤混合物の選択又は割合、電気伝導性を最適化するための少なくとも一つの電気伝導性添加剤の選択又は割合、及び粒状金属酸化物、粒状金属亜鉛又は粒状金属亜鉛合金の選択又は割合に関する好ましい実施形態は、本発明による電池の記載において既に述べられた。そこで記載される好ましい実施形態はまた、記載した製造方法と関連して当てはまる。
【0082】
同じことは、キャリア及びセパレータの選択に対して当てはまり、それらはまた、電池の記載に詳細に既に特定されている。
【0083】
それぞれの固体成分に加えて、印刷ペーストはまた、揮発性溶媒又は懸濁剤を含有することが好ましい。理想的には、これは、水である。
【0084】
印刷時に問題がないように、印刷ペーストに含有される全ての粒子成分は、最大50μmまでの粒子サイズを有することが好ましい。
【0085】
続く工程では、携帯無線チップは、電池の隣りで、キャリアの上に固定されることができる。それゆえ、電池のための電気伝導体の印刷中、携帯無線チップ及び任意選択的に携帯無線チップに結合されたアンテナから及びそれへの全ての他の電気接続を同時に印刷することが好ましい。
【0086】
前記方法の一つの好ましい実施形態では、それは、すぐ下の追加の特徴及び/又は工程(a)及び(b)の少なくとも一つによって特徴づけられる:
(a)酸化マンガンが、粒状金属酸化物として使用され、
(b)第一及び/又は第二電気伝導体が、アノード及びカソードが印刷される前に電気伝導性炭素層を使用して全面に印刷される。
【0087】
前記方法の特に好ましい実施形態では、すぐ上の特徴(a)及び(b)は、互いに組み合わせて実施される。
【0088】
炭素層は、第一及び/又は第二電気伝導体、又は複数の層スタックの場合には第一電気伝導体及び第二電気伝導体を保護するために使用される。特に第一及び/又は第二電気伝導体が銀粒子を含むとき、銀が電解質に溶解し、電気伝導性トラックの弱化又はさらには破壊が起こる危険がある。炭素層は、銀層が電解質と直接接触することから保護することができる。
【0089】
好ましくは、炭素層は、5~30μm、特に10~20μmの範囲の厚さで形成される。
【0090】
一部の好ましい実施形態では、炭素層は、付与後に熱処理を受ける。それによってその漏密性が高められる。
【0091】
前記方法の別の好ましい実施形態では、それは、すぐ下の特徴及び/又は工程(a)及び(b)の少なくとも一つによって特徴づけられる:
(a)層として構成されるセパレータの印刷又は付与の前及び/又は後に、アノード及びカソードが、液体電解質に含浸され、
(b)液体電解質に含浸する前に、アノード及びカソードを包囲する封止フレームが、キャリアの上に形成又は配置される。
【0092】
前記方法の特に好ましい実施形態では、すぐ上の特徴(a)及び(b)は、互いに組み合わせて実施される。
【0093】
好ましい液体電解質は、本発明による電池の記載の範囲において既に言及した。もし上記の水溶性塩の一種が少なくとも一種の電気伝導性添加剤として使用されるなら、この塩が加えられる電極が水に含浸されるだけで十分でありうる。なぜなら液体電解質は、そのとき自動的に形成されるからである。
【0094】
封止フレームは、電極の上に付与された液体がキャリアの上で走らないことを確実にする。封止フレームの可能な実施形態及びその形成の変形例は、EP3477727A1から知られている。
【0095】
好ましくは、封止フレームは、接着剤化合物から形成され、それは、印刷法の助けで付与されることができる。この場合において、それぞれ使用される電解質に抵抗し、かつキャリアと十分な結合を形成することができる接着剤であればいずれも原則として使用することができる。特に、封止フレームはまた、溶解されたポリマー組成物から形成されてもよく、ポリマー組成物に含有される溶媒は、ポリマー組成物を凝固するために除去されなければならない。
【0096】
熱活性化可能なフィルム、特にホットメルトフィルム、又は自己接着フィルムから封止フレームを形成することも可能である。
【0097】
第一の特に好ましい代替実施形態では、前記方法は、以下の特徴によって特徴づけられる:
(a)セパレータを付与する前に、電解質ペーストの第一層が、特に30~70μmの厚さでアノードの上に又はカソードの上に印刷され、
(b)セパレータが、電解質ペーストの第一層の上に付与され、
(c)セパレータを付与した後に、電解質ペーストの第二層が、特に30~70μmの厚さでセパレータの上に印刷される。
【0098】
第二の特に好ましい代替実施形態では、前記方法は、以下の特徴によって特徴づけられる:
(a)セパレータを付与する前に、電解質ペーストの第一層が、アノードの上に印刷され、電解質ペーストの第二層が、カソードの上に印刷され、好ましくは各々が30~70μmの厚さを有し、
(b)セパレータが、電解質ペーストの第一又は第二層の上に付与され、
(c)電解質の第一層がセパレータの一方の側に配置され、電解質の第二層がセパレータの他方の側に配置されるように層スタックが形成される。
【0099】
このようにして構成された層スタックでは、電解質ペーストの層の一つが常に、電極とセパレータの間に配置される。
【0100】
特に好ましい特徴の組み合わせ
LTEメッセージを送信するためには、スキャンがまず行なわれる。この場合において、ラベルは、データ送信のために好適な周波数をサーチする。このプロセスは、平均2秒かかり、50mAを要求する。周波数が見つかったら、いわゆるTXパルスが送られる。かかるパルスは、約150ミリ秒続き、このために約200mAの電流パルスを要求する。150ミリ秒の長さを有するパルスは、4Hzの周波数にほぼ相当する。従って、4Hzでの本発明による電池のインピーダンスは、かかるパルスの送信のために重要である。
【0101】
特に良好な結果は、この文脈において、もしアノード組成及びカソード組成並びに電解質の組成が互いに整合するなら達成されることができる。特に好ましくは、以下のペースト組成が本発明による電池のアノード、カソード及び電解質層を製造するために組み合わせて使用される。
【0102】
アノードペースト:
- 亜鉛粉末(水銀不含) 65~79重量%
- 乳化剤(例えばCMC) 1~5重量%
- 結合剤、弾性(例えばSBR) 5~10重量%
- 溶媒(例えば水) 15~20重量%
【0103】
カソードペースト:
- 二酸化マンガン 50~70重量%
- 電気伝導性材料(例えばグラファイト、 5~8重量%
カーボンブラック)
- 乳化剤(例えばCMC) 2~8重量%
- 結合剤、弾性(例えばSBR) 8~15重量%
- 溶媒(例えば水) 20~30重量%
【0104】
電解質ペースト
- 電気伝導性塩、塩化亜鉛 30~40重量%
- セットアップ剤(例えば酸化ケイ素粉末) 2~4重量%
- 無機粒子(例えばCaCO) 10~20重量%
- 溶媒(例えば水) 40~55重量%
【0105】
ペースト中の個々の成分の割合は、合計で100重量%になることが好ましい。電極中の非揮発性成分の割合は、ペーストの対応する百分率割合から計算されることができる。例えば、上記のペーストから製造されるアノード中の亜鉛及び弾性結合剤の割合は、81.25~92.94重量%(亜鉛)及び5.62~13.16重量%(弾性結合剤)の範囲である。上記のペーストから製造されるカソード中の二酸化マンガン及び弾性結合剤の割合は、61.72~82.35重量%(二酸化マンガン)及び8.51~20.83重量%(弾性結合剤)の範囲にある。
【0106】
電解質ペーストは、60~120μmの範囲の厚さ及び35~60%の多孔度を有する微細孔ポリオレフィンフィルム(例えばPE)と組み合わせて使用されることが好ましい。好ましくは、上の第一又は第二の特に好ましい代替実施形態によれば、電解質ペーストの層は、電極及び/又はセパレータの上に、特定された範囲の厚さで、特に好ましくは各々が約50μmの厚さで形成される。アノードは、30~150μm、特に70μmの厚さを有する層として印刷されることが好ましい。カソードは、180~350μm、特に280μmの厚さを有する層として印刷されることが好ましい。
【0107】
前記方法の別の好ましい実施形態では、すぐ下の追加の特徴及び/又は工程(a)及び(b)の少なくとも一つによって特徴づけられる:
(a)第一及び第二電気伝導体(単数又は複数)が、同じキャリアの上に互いに隣りに印刷され、
(b)層スタックが配置される閉鎖容器が、折り曲げ後の溶接及び/又は接着結合によってキャリアから形成される。
【0108】
前記方法の特に好ましい実施形態では、すぐ上の特徴(a)及び(b)は、互いに組み合わせて実施される。
【0109】
既に述べたように、本発明による方法では、アノード/セパレータ/カソードの順序を有する層スタックが形成される。これは、互いに隣りの(即ち、同一平面配置で)電極をキャリアの上に印刷し、アノード及びカソード並びにそれらの間に配置されたセパレータが重ね合わせられるようにキャリアを折り曲げることによってなされることが好ましい。キャリアは、折り曲げ後に少なくとも三つの側で得られた層スタックを包囲する。残りの側の溶接及び/又は接着剤結合によって、閉鎖容器を形成することができる。接着剤結合は、特にアノード及びカソードが前述の接着剤フレームで予め包囲されているときに考えられる。この場合において、封止フレームは、接着剤結合をもたらすことができる。
【0110】
本発明のさらなる特徴及び本発明から生じる利点は、以下の例示的な実施形態及び図面で見出されることができ、それらの助けで本発明が説明されるだろう。以下に記載される実施形態は、本発明の説明及び良好な理解のためだけに役立ち、いかなる方法でも限定されるものとして解釈されるべきでない。
【0111】
例示的な実施形態
(1)第一電気伝導体105及び第二電気伝導体106を含む電流リード構造は、200μmの厚さを有するPETフィルム104の上にスクリーン印刷によって印刷される。この場合において、商業的に入手可能な電気伝導性銀ペーストが印刷ペーストとして使用される。
【0112】
(2)さらなる工程では、電流リード構造は、炭素粒子の薄い被覆でカバーされる。炭素粒子の被覆は、12μmの厚さで形成されることが好ましい。この場合において、電子部品における電気伝導性層及び接続を形成するために使用されるような一般的な炭素ペーストが印刷ペーストとして使用される。
【0113】
炭素粒子の被覆による電流リード構造の被覆状態を最適化するためには、形成された被覆を熱処理に供することが好ましい。この場合において使用されうる温度は、主にPETフィルムの熱安定性によって規定され、それに応じて選択されなければならない。
【0114】
(3)続いて、アノード101及びカソード102を形成するために、第一電気伝導体105が亜鉛ペーストを使用して全面に印刷され、第二電気伝導体106が酸化マンガンペーストを使用して全面に印刷される。ペーストは、以下の組成を有する:
【0115】
亜鉛ペースト:
- 亜鉛粒子 70重量%
- CMC 2重量%
- SBR 6重量%
- 溶媒(水) 22重量%
【0116】
酸化マンガンペースト:
- 酸化マンガン 60重量%
- グラファイト 6重量%
- 塩化亜鉛 2重量%
- CMC 2重量%
- SBR 5重量%
- 溶媒(水) 25重量%
【0117】
アノード101及びカソード102の各々は、PETフィルム104の上で20cmの面積を占める。アノードは、この場合において70μmの厚さを有する層として形成されることが好ましい。カソードは、280μmの厚さを有する層として形成されることが好ましい。一つより多い印刷プロセスが、カソード層の形成のために必要とされるかもしれない。
【0118】
(4)続く工程では、アノード101は、セパレータ103でカバーされる。例えば、商業的に入手可能な不織布セパレータ又は微細孔ポリオレフィンフィルムがセパレータ103として使用されることができる。好ましくは、60~120μmの範囲の厚さ及び35~60%の多孔度(全体積に対する中空体積の比率)を有する微細孔ポリオレフィンフィルムがこの場合において使用される。
【0119】
(5)別の続く工程では、アノード101及びカソード102並びにセパレータ103は、アノード101及びカソード102を包囲する封止クレーム107が接着剤化合物によってPETフィルム104の上に形成された後、塩化亜鉛水溶液を使用して上に印刷される。例えば、商業的に入手可能なはんだが、封止クレーム107の形成のための開始材料として使用されることができる。
【0120】
高い粘稠性の塩化亜鉛水溶液(電解質ペースト)の第一層を電極の一つの上に、特に約50μmの厚さで印刷し、この第一層の上にセパレータを付与し、セパレータの上に電解質ペーストの第二層を、同様に約50μmの厚さで印刷することが特に有利であることがわかった。封止クレーム107は、この場合において第一層の印刷前に既に形成されていることが好ましい(変形例1)。
【0121】
電解質ペーストの第一層をアノードの上に、特に約50μmの厚さで印刷し、電解質ペーストの第二層をカソードの上に、特に約50μmの厚さで印刷し、セパレータをこれらの層の一つの上に付与することが有利であることが同様にわかった。封止クレーム107は、この場合において第一及び第二の層の印刷前に既に形成されていることが好ましい(変形例2)。
【0122】
結果として(但し、第二の場合において工程(6)の後のみ)、電解質の層は、次いでセパレータの両側の上に配置される。好ましくは、以下の組成を有する電解質ペーストが、この場合において使用される:
- 塩化亜鉛 35重量%
- セットアップ剤(二酸化ケイ素) 3重量%
- 水不溶性無機粒子 15重量%
- 溶媒(水) 47重量%
【0123】
(6)最後に、PETフィルム104は、アノード101及びカソード102並びにそれらの間に配置されるセパレータ103が層スタック108を形成するように折り線104aに沿って折り曲げられる。PETフィルム104とともに、封止フレーム107は、閉鎖ハウジング109を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0124】
図1図1は、上の工程(1)~(6)を有する例示的実施形態による手順を真上から見た平面図で概略的に示す。
【0125】
図2図2は、図1に表わされた手順に従って形成された電池の断面を概略的に示す。
【0126】
図3図3は、図2に表わされた電池を有するRFIDタグを概略的に示す(上からの平面図)。
【0127】
図4図4は、異なるサイズの重なり領域を有する本発明による電池の層スタックの二つの例を概略的に示す(上から鉛直方向の平面図)。
【0128】
図5図5は、本発明による電池でのパルス試験の結果を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0129】
図3に表わされたRFIDタグ110は、電池100に加えて、無線信号を送信及び/又は受信するための送信及び/又は受信ユニット111、センサーシステム113、及び送信及び/又は受信ユニット111に結合されたアンテナ112を含む。RFIDタグの構成要素は、電気伝導体構造によって互いに接続される。RFIDタグ110を製品の上に固定するために使用されることができる接着剤層(表わさず)は、タグ110の下側に配置されることができる。
【0130】
電池100は、電気的に直列に接続された四つの層スタックを含み、各々が1.5ボルトの定格電圧を有することが特に好ましい。それゆえ、電池100は、6ボルトの定格電圧を与えることができる。
【0131】
図4は、層として構成されるセパレータ103が、層として構成されるアノード101と層として構成されるカソード102の間に配置される層スタックの例を表わす。アノード101及びカソード102は、各々が矩形に構成され、各々がセパレータ103の同じ面積をカバーする。図においては、全ての層が図の平面に平行に配置されている。アノード101によってカバーされるセパレータ103の領域は、本明細書では第一接触面として規定される。カソード102によってカバーされるセパレータ103の領域は、本明細書では第二接触面として規定される。
【0132】
図4(1)では、アノード101及びカソード102は、第一及び第二接触面が図の平面に対して垂直な(従ってセパレータ103に対して垂直な)視覚方向に互いに部分的にのみ重なるように互いに対してオフセットされて配置される。それゆえ、重なり領域Aは、アノード101及びカソード102がセパレータ103をカバーする領域より小さい。
【0133】
図4(2)では、アノード101及びカソード102は、完全に重なる。それゆえ、重なり領域Aのサイズは、アノード101及びカソード102の面積に正確に相当する。
【0134】
図4(2)に表わされるように電極の完全な重なりは、高い電流運搬能力に関して有利である。
【0135】
図5に表わされるパルス試験の結果は、例示的実施形態に従って製造された四つの層スタック(好ましい電解質ペーストを有する変形例2による電解質層の製造)を含む電池で得られた。四つの層スタックの重なり領域は、各々22cmであった。層スタックは、直列で電気接続され、6Vの定格電圧を送出した。実際、開回路電圧は、約6.4ボルトであり、放電終止電圧は、約3.1ボルトであった。測定前、電池は、エージングを人工的にシミュレートするために45℃で1ヶ月間保管された。それでもなお、電池は、合計118個のTXパルスを送出した。負荷試験では、新しい電池は、400個より多くのTXパルスを送出し、従ってLTEチップの電流供給のために明らかに好適である。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-07-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にピークで400mA以上の電流をRFIDタグ(110)の送信及び/又は受信ユニット(111)に供給するために使用される印刷電池(100)であって、以下の特徴を有する印刷電池:
(a)印刷電池(100)が、層スタック(108)を含み、層スタック(108)が、
- 層として構成されたアノード(101)であって、活性電極材料としての粒状金属亜鉛又は粒状金属亜鉛合金、及び第一弾性結合剤又は結合剤混合物を含むアノード(101)、
- 層として構成されたカソード(102)であって、活性電極材料としての粒状金属酸化物、カソード(102)の電気伝導性を最適化するための少なくとも一つの電気伝導性添加剤、及び第二弾性結合剤又は結合剤混合物を含むカソード(102)、及び
- 層として構成されたセパレータ(103)であって、アノード(101)及びカソード(102)を互いに電気的に絶縁するセパレータ(103)
を含み、
(b)印刷電池(100)が、アノード(101)と直接接触する第一電気伝導体(105)、及びカソード(102)と直接接触する第二電気伝導体(106)を含み、
(c)印刷電池(100)が、層スタック(108)を包囲するハウジング(109)を含み、
(d)セパレータ(103)が、アノード(101)とカソード(102)の間に配置され、かつ第一側(103a)と第二側(103b)を含み、それらのうち第一側(103a)が、アノード(101)のための第一接触面を含み、それに平行な第二側(103b)が、カソード(102)のための第二接触面を含み、
(e)セパレータ(103)に対して垂直な直線が二つの接触面と交差する重なり領域Aにおいて、二つの接触面が、層として構成されたセパレータ(103)に対して垂直な視覚方向に互いに重なり、
(f)カソード(102)が、カソード(102)の固体成分の全重量で表示すると10~90重量%の割合で粒状金属酸化物を含み、
(g)カソード(102)が、カソード(102)の固体成分の全重量で表示すると1~25重量%の割合で第二弾性結合剤又は結合剤を含み、
(h)カソード(102)が、カソード(102)の固体成分の全重量で表示すると2.5~35重量%の割合で少なくとも一種の電気伝導性添加剤を含み、
(i)電池の重なり領域Aが、17.3cmの最小サイズを有する。
【請求項2】
以下の追加の特徴の少なくとも一つを有する、請求項1に記載の印刷電池:
(a)電池が、請求項1の特徴(a)及び(d)~(h)を有する第一層スタックを含み、
(b)電池が、請求項1の特徴(a)及び(d)~(h)を有する第二層スタックを含み、
(c)任意選択的に、電池が、請求項1の特徴(a)及び(d)~(h)を有するn個のさらなる層スタックを含み、但しnは、好ましくは1~100の整数であり、
(d)層スタックの各々が、17.3cmの最小サイズを有する重なり領域を有し、
(e)電池の層スタックが、電気的に直列で及び/又は電気的に並列で互いに相互接続される。
【請求項3】
以下の追加の特徴を有する、請求項1に記載の印刷電池:
(a)カソード(102)が、特に活性炭素、活性炭素繊維、炭化物誘導炭素、カーボンエアロゲル、グラファイト、グラフェン、及びカーボンナノチューブ(CNT)からなる群からの、電気伝導性添加剤としての少なくとも一種の炭素ベースの材料を含み、
(b)カソード(102)が、2.5~35重量%の範囲の割合で少なくとも一種の炭素ベースの材料を含む。
【請求項4】
以下の追加の特徴を有する、請求項1に記載の印刷電池:
(a)カソード(102)が、電気伝導性添加剤として少なくとも一種の水溶性塩を含み、
(b)カソード(102)が、1~25重量%の範囲の割合で少なくとも一種の水溶性塩を含む。
【請求項5】
以下の追加の特徴の一つを有する、請求項1に記載の印刷電池:
(a)カソード(102)が、粒状金属酸化物として酸化マンガンを含み、
(b)カソード(102)が、粒状金属酸化物として酸化銀を含む。
【請求項6】
以下の追加の特徴の少なくとも一つを有する、請求項1に記載の印刷電池:
(a)アノード(101)が、第一弾性結合剤又は結合剤混合物として、セルロース及びその誘導体、ポリアクリレート(PA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリトリフルオロエチレン(PTrFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、及び上述の材料の混合物からなる群の少なくとも一つの材料を含み、
(b)カソード(102)が、第二弾性結合剤又は結合剤混合物として、セルロース及びその誘導体、ポリアクリレート(PA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリトリフルオロエチレン(PTrFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、及び上述の材料の混合物からなる群の少なくとも一つの材料を含み、
(c)第一及び第二弾性結合剤又は結合剤混合物が、材料的に同一である。
【請求項7】
以下の追加の特徴を有する、請求項5に記載の印刷電池:
(a)カソード(102)が、粒状金属酸化物として酸化マンガン及び酸化銀からなる群からの金属酸化物を含み、
(b)カソード(102)が、電気伝導性添加剤として少なくとも一種の水溶性塩を含み、
(c)カソード(102)が、1~25重量%の範囲の割合で少なくとも一種の水溶性塩を含み、
(d)カソード(102)が、第二弾性結合剤又は結合剤混合物としてカルボキシメチルセルロースとSBRの組み合わせを含む。
【請求項8】
以下の追加の特徴の少なくとも一つを有する、請求項1に記載の印刷電池:
(a)印刷電池が、塩化物ベースの電気伝導性塩を含む水性電解質を含む、
(b)アノードとカソードの間に配置されるセパレータ(103)が、電解質に含浸されている。
【請求項9】
以下の追加の特徴を有する、請求項1に記載の印刷電池:
(a)セパレータが、固体電解質である。
【請求項10】
以下の追加の特徴を有する、請求項1に記載の印刷電池:
(a)印刷電池が、第一及び/又は第二電気伝導体(105,106)として、金属粒子、特に銀粒子又は銀合金の粒子からなる電気伝導性トラックを含む。
【請求項11】
無線信号を送信及び/又は受信するための送信及び/又は受信ユニット(111)、及び送信及び/又は受信ユニット(111)にピークで400mA以上の電流を供給するための印刷電池(100)をキャリア(104)上に含むRFIDタグ(110)であって、印刷電池(100)が、請求項1~10のいずれかに記載のように構成されている、RFIDタグ(110)。
【請求項12】
ピークで400mA以上の電流をRFIDタグ(110)の送信及び/又は受信ユニット(111)に供給するために使用される印刷電池(100)を製造するための方法であって、以下の工程を有する方法:
(a)非電気伝導性キャリア(104)の上に第一電気伝導体(105)を印刷し、非電気伝導性キャリア(104)の上に第二電気伝導体(105)を印刷し、
(b)粒状金属亜鉛又は粒状金属亜鉛合金及び第一弾性結合剤又は結合剤混合物を含む印刷ペーストを使用して、第一電気伝導体(105)の上に直接、層としてアノード(101)を印刷し、
(c)粒状金属酸化物、カソードの電気伝導性を最適化するための少なくとも一種の電気伝導性添加剤、及び第二弾性結合剤又は結合剤混合物を含む印刷ペーストを使用して、第二電気伝導体(106)の上に直接、層としてカソード(102)を印刷し、但し
- 印刷ペーストが、その固形成分の全重量で表示すると10~90重量%の割合で粒状金属酸化物を含み、
- 印刷ペーストが、その固形成分の全重量で表示すると1~15重量%の割合で第二弾性結合剤又は結合剤混合物を含み、
- 印刷ペーストが、その固形成分の全重量で表示すると2.5~35重量%の割合で少なくとも一種の電気伝導性添加剤を含み、
(d)アノード(101)及び/又はカソード(102)の上に、層として構成されるセパレータ(103)を印刷又は付与し、
(e)アノード/セパレータ/カソードの順序からなる層スタック(108)を形成する、但し、
- セパレータ(103)が、アノード(101)とカソード(102)の間に配置され、かつ第一側(103a)と第二側(103b)を含み、それらのうち第一側(103a)が、アノード(101)のための第一接触面を含み、それに平行な第二側(103b)が、カソード(102)のための第二接触面を含み、
- セパレータ(103)に対して垂直な直線が二つの接触面と交差する重なり領域Aにおいて、二つの接触面が、層として構成されるセパレータ(103)に対して垂直な視覚方向に互いに重なり、
- 電池の重なり領域Aが、17.3cmの最小サイズを有する。
【請求項13】
以下の追加の特徴及び/又は工程を有する、請求項12に記載の方法:
(a)酸化マンガンが、粒状金属酸化物として使用され、
(b)第一及び/又は第二電気伝導体(105,106)が、アノード(101)及びカソード(102)が印刷される前に電気伝導性炭素層(114)を使用して全面に印刷される。
【請求項14】
以下の追加の特徴及び/又は工程の少なくとも一つを有する、請求項12に記載の方法:
(a)層として構成されるセパレータ(103)の印刷又は付与の前及び/又は後に、アノード(101)及びカソード(102)が、液体電解質に含浸され、
(b)液体電解質に含浸する前に、アノード(101)及びカソード(102)を包囲する封止フレーム(107)が、キャリア(104)の上に形成又は配置される。
【請求項15】
以下の追加の工程を有する、請求項12に記載の方法:
(a)第一及び第二電気伝導体(105,106)が、同じキャリア(104)の上に互いに隣りに印刷され、
(b)層スタック(108)が配置される閉鎖容器(109)が、折り曲げ後の溶接及び/又は接着結合によってキャリア(104)から形成される。
【国際調査報告】