(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(54)【発明の名称】光トランスデューサを備える光音響検出器又は光熱検出器
(51)【国際特許分類】
G01N 29/24 20060101AFI20230227BHJP
G01N 29/032 20060101ALI20230227BHJP
G01N 29/11 20060101ALI20230227BHJP
G01N 21/00 20060101ALI20230227BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20230227BHJP
【FI】
G01N29/24
G01N29/032
G01N29/11
G01N21/00 A
G01N21/27 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539400
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(85)【翻訳文提出日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2020087866
(87)【国際公開番号】W WO2021130364
(87)【国際公開日】2021-07-01
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510132347
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ
(71)【出願人】
【識別番号】516065504
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ グルノーブル アルプ
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】515111048
【氏名又は名称】アンスティテュー ポリテクニック ドゥ グルノーブル
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ラウエルス トーマス
(72)【発明者】
【氏名】バスラウアー スキャンダー
(72)【発明者】
【氏名】クタール ジャン-ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】グリエール アラン
(72)【発明者】
【氏名】ラフォン ギョーム
【テーマコード(参考)】
2G047
2G059
【Fターム(参考)】
2G047AA01
2G047AA12
2G047AC13
2G047BC03
2G047CA04
2G047CA07
2G047GD01
2G047GG28
2G059AA10
2G059EE02
2G059EE12
2G059GG01
2G059JJ05
2G059KK01
(57)【要約】
名称:光トランスデューサを備える光音響検出器又は光熱検出器。本発明は、媒体中の分析物を検出するための装置および方法である。励起光源は励起光波を発生し、媒体に伝播し、媒体を加熱する。装置は、媒体の加熱を検出するためのトランスデューサを含む。1つの実施形態によれば、トランスデューサは、媒体の温度の変化を検出するように構成された熱トランスデューサである。別の実施形態によれば、トランスデューサは、媒体から伝播する光音響波を検出するように構成された音響トランスデューサである。実施形態にかかわらず、トランスデューサは、導波路が設置される膜を使用する。導波路は、共振光空洞を含む。変換は、光空洞の共振波長の変化を分析することによって達成される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの吸収波長の光を吸収する分析物(4)を含有するであろう分析媒体(2)に対して、接触面(3)を介して適用されることを意図する検出装置(1、1’)であって、
前記装置は、前記接触面(3)に形成された開口部(13)と、
吸収波長を含む励起スペクトル帯域(Δλ
11)において、励起周波数(f
11)でパルス化または振幅変調された励起光波(11)を放射するように構成された励起光源(10)であって、前記装置は、前記励起光波(11)が前記開口部(13)を通って前記分析媒体に向かって伝播するように配置される、励起光源(10)と、
前記励起光波(11)の一部を分析物が吸収することによって生じる媒体の周期的な加熱後の媒体の応答を測定することを意図するトランスデューサ(15)と、を備え、
前記トランスデューサ(15)は、
導波路(20)を運ぶ膜(18)と、
第1の反射器(24
1)と、第2の反射器(24
2)とを備える前記導波路であって、それぞれの反射器は、反射スペクトル帯域(Δλ
20)の光を反射する、前記導波路と、
共振光空洞(26)を形成するように互いに間隔をあけて配置される、第1の反射器及び第2の反射器であって、前記共振光空洞は、反射スペクトル帯域内の共振波長(λ
r)を規定する、第1の反射器と第2の反射器と、を備え、
前記導波路は、共振波長(λ
r)で光を透過させ、共振波長ではない反射スペクトル帯域(Δλ
20)の光を反射し、
前記トランスデューサは、
反射スペクトル帯域(Δλ
20)の補助光波(32)を導波路内に放射するように構成された補助レーザ光源(30)と、
共振波長(λ
r)で前記導波路を透過する光波(34)を検出するように配置された光検出器(36)と、
前記光検出器(36)に接続され、前記共振光空洞(26)の前記共振波長の周期的な時間依存変調(λ
r(t))を決定するように構成されたサーボ回路(41)と、を備え、
前記導波路(20)は、前記膜上に直接形成され、
前記膜(18)は、前記媒体の周期的な加熱の影響下で変形するように構成される、装置。
【請求項2】
前記サーボ回路に接続された処理ユニット(42)を備え、
前記共振波長(λ
r)の時間依存変調の振幅(
)を推定し、
推定振幅に応じて、前記媒体(2)中の前記分析物の存在を検出する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記処理ユニットは、前記推定振幅(
)に応じて、前記媒体(2)中の前記分析物の濃度を推定するように構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記開口部(13)上で開口する中空空洞(16)を備え、前記トランスデューサが前記中空空洞に接続されており、前記トランスデューサ(15)が、前記開口部から前記中空空洞を通って伝播する光音響波(6)の振幅を検出するように構成された音響トランスデューサであり、前記励起光波(11)による媒体の照射の影響下で、前記膜(18)が前記励起周波数(f
11)で振動し、前記励起周波数に等しい変調周波数(
)での前記共振波長(λ
r)の時間依存変調をもたらす、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記膜(18)は、前記接触面(3)に平行である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記膜が前記中空空洞(16)の一部を境界付けている、請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
前記トランスデューサ(15)の前記膜(18)は、前記装置の前記接触面(3)を形成し、前記接触面は、前記媒体(2)と接触するように適用されることが意図され、
前記開口部(13)は、前記膜(20)を通って延在し、
前記トランスデューサ(15)は熱トランスデューサであり、前記励起光波(11)による前記媒体の照射の影響下で、前記膜の温度は周期的な時間依存変動を示し、前記共振波長(λ
r)の周期的な時間依存変調が生じる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置(1’)。
【請求項8】
少なくとも1つの反射器またはそれぞれの反射器が、前記導波路に沿った屈折率の周期的な変調を介して形成されたブラッグミラーである、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記サーボ回路(41)は、前記補助光源(30)に接続され、前記補助光源(30)によって放射される前記光波(32)の波長(λ
32)を前記共振光空洞(26)の前記共振波長(λ
r)にサーボ制御するように構成されたサーボループを備える、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記サーボ回路(41)は、ポンド・ドレバ・ホールサーボ技術を実施する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の反射器(24
1)は、第1のブラッグミラーであり、
前記第2の反射器(24
2)は、第2のブラッグミラーであり、
前記第1のブラッグミラーと前記第2のブラッグミラーは、欠陥(25)を含む同一のブラッグミラーを形成し、前記第1のブラッグミラーと前記第2のブラッグミラーは、それぞれ前記欠陥の両側に位置する前記ブラッグミラーの部分に対応する、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記膜(18)は、変形するとき、少なくとも一つの振動波腹を示し、振動の振幅はそれぞれの波腹で最大であり、
前記導波路(20)は、少なくとも一つの波腹と同じ高さにある、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の反射器及び前記第2の反射器は、前記導波路の屈折率の周期的な変調を得るように前記導波路をレーザ光で刻むことにより得られる、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
分析物(4)が少なくとも1つの吸収波長の光を吸収する、媒体(2)中の分析物(4)を検出する方法であって、
a)前記装置の前記接触面(3)が前記媒体に対して保持されるように、前記媒体(2)に対して請求項1乃至13のいずれか1項に記載の装置(1、1’)を適用するステップと、
b)励起光源(10)を活性化するステップであって、前記励起光源は、前記分析物の吸収波長に対応する波長で、励起周波数(f
11)でパルス化または振幅変調された励起光波(11)を放射する、励起光源(10)を活性化するステップと、
c)サーボ回路(41)によって、前記励起周波数に対応する変調周波数で、前記トランスデューサ(15)の前記導波路(20)の共振波長(λ
r)の周期的な変調を決定するステップであって、前記共振周波数は、前記導波路の透過ピークに対応する、周期的な変調を決定するステップと、
d)前記サーボ回路によって決定される周期的な変調に応じて、媒体中の前記分析物の存在を検出するステップと、を備える方法。
【請求項15】
前記装置は、請求項4乃至6のいずれか1項に記載の装置(1)であり、
前記方法は、
ステップb)に続いて、前記励起周波数(f
11)で前記媒体(2)を周期的に加熱して光音響波(6)を放射させることにより、前記中空空洞(16)を伝播し、前記トランスデューサ(15)の前記膜(18)が前記励起周波数(f
11)で振動する効果の下で、前記トランスデューサの前記導波路(20)の前記共振周波数λ
rが、前記励起周波数(f
11)に等しい変調周波数(
)で変調されるようにするステップと、
ステップd)において、
前記変調周波数(
)における前記共振波長の周期的な変調の振幅(
)を推定するステップと
推定振幅に応じて前記分析物の存在を検出するステップと、を備える請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記装置は、請求項7に記載の装置(1’)であり、前記方法は、
ステップb)の後、前記励起周波数で前記媒体(2)を周期的に加熱し、前記トランスデューサの前記導波路(20)の前記共振周波数λ
rが前記励起周波数に対応する変調周波数(
)で変調されるように、前記励起周波数(f
11)で前記膜(18)を周期的に加熱するステップと、
ステップd)において、
前記変調周波数における前記共振波長の周期的な変調の振幅の推定するステップと、
推定振幅に応じて前記分析物の存在を検出するステップと、を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
ステップd)が、また分析媒体中の前記分析物の濃度を推定するステップを備える、請求項14乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の装置を製造するための製造工程であって、
導波路を形成するように、第1の材料の薄い層を膜上に堆積するステップと、
前記導波路の屈折率の周期的な変調を得るように、前記導波路をフェムト秒レーザ光で刻むステップと、を備える製造工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、光音響検出または光熱検出の原理による媒体中の分析物の検出である。
【背景技術】
【0002】
光音響検出は、励起波と呼ばれるパルスまたは振幅変調された励起電磁波の分析媒体による吸収の影響下で発生した音波の検出に基づく。音波は、分析媒体中に存在する吸収性分子の励起波の吸収の影響下で加熱後に形成される。この加熱は、媒体の変調された熱膨張をもたらし、この膨張が音波の起源となる。
【0003】
光音響検出は、励起波の波長を分析物の吸収波長に設定することによって、1つの特定の分析物に特異的にすることができる。光音響検出はガス中のガス種の検出または生体組織中の特定分子の存在の検出に応用されている。入射波の波長はしばしば赤外に位置する。
【0004】
光音響検出は、次いで、散乱または不透明媒体に適用され得る非侵襲的分析技術である。
【0005】
光音響検出の生体組織への適用は、例えば、以下の刊行物に記載されている。
-Bauer AJ. “IR-spectroscopy for skin in vivo: Optimal skin sites and properties for non-invasive glucose measurement by photoacoustic and photothermal spectroscopy”;Journal of Biopohtonics 11 (2018)
-“Windowless ultrasound photoacoustic cell for in-vivo mid-IR spectroscopy of human epidermis: Low interference by changes of air pressure, temperature, and humidity caused by skin contact opens the possibility for a non-invasive monitoring glucose in the interstitial fluid””; Rev.Sci.Instrum.84, 084901 (2013)
【0006】
これらの文献では、数十キロヘルツの周波数で活性化されるパルスレーザ光源が用いられる。本発明の目的は、使用者の皮膚の下の10μmから50μmの間の深さで、間質体液中のグルコース濃度を推定することである。この目的のために、ユーザの皮膚に対して設置された光音響検出装置が使用される。
【0007】
パルスまたは振幅変調された励起電磁波の媒体による吸収の影響下で、分析された媒体の温度変化の検出に基づく光熱検出の技術も知られている。温度変化は、励起波の吸収の効果の下で、分析媒体中に存在する吸収性分子を加熱することから生じる。
【0008】
周期的な温度変調は、例えば、温度変化の影響下で媒体の屈折率の変化を推定することによって検出することができる。これは、例えば欧州特許第3359949B1号に記載されている。
【0009】
光熱検出または光音響検出が使用されるかどうかにかかわらず、試料はガス試料であってよく、標的目的は、特定のガス種または例えば汚染物質と考えられる特定の粒子の検出である。それはまた、液体または固体試料の問題である可能性があり、産業分野(例えば、食品産業の分野)、または上記のような健康分野での適用の可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Bauer AJ. “IR-spectroscopy for skin in vivo: Optimal skin sites and properties for non-invasive glucose measurement by photoacoustic and photothermal spectroscopy”;Journal of Biopohtonics 11 (2018)
【非特許文献2】“Windowless ultrasound photoacoustic cell for in-vivo mid-IR spectroscopy of human epidermis: Low interference by changes of air pressure, temperature, and humidity caused by skin contact opens the possibility for a non-invasive monitoring glucose in the interstitial fluid””; Rev.Sci.Instrum.84, 084901 (2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、光音響検出を使用する用途、または光熱検出を使用する用途のいずれかにおいて使用され得るトランスデューサを設計した。これにより、各用途に特化した、検出感度が高く、設計が簡単な装置が得られる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の主題は、少なくとも1つの吸収波長の光を吸収する分析物を含有しやすい分析媒体に対して接触面を介して適用されることを意図する検出装置であって、
接触面に形成された開口と、
吸収波長を含む励起スペクトル帯域において、励起周波数でパルス化または振幅変調された励起光波を放射するように構成された励起光源であって、装置が、励起光波が開口部を通って分析媒体に向かって伝播するように配置された、励起光源と、
励起光波の一部が分析物に吸収された後の媒体の応答を測定することを意図したトランスデューサと、を備え、
トランスデューサは、
導波路を運ぶ膜と、
第1の反射器と第2の反射器とを含む導波路であって、それぞれの反射器は、反射スペクトル帯域で光を反射する、導波路と、
共振光空洞を形成するように互いに間隔を置いて配置される第1の反射器および第2の反射器であって、共振光空洞は、反射スペクトル帯域において、共振波長を規定する第1の反射器と第2の反射器と、を備え、
導波路は、
共振波長で光を透過し、
共振波長ではなく、反射スペクトル帯域で光を反射し、
トランスデューサは、
反射スペクトル帯域の補助光波を導波路内に放射するように構成された補助レーザ光源と、
共振波長で導波路によって伝達される光波を検出するように配置された光検出器と、
光検出器に接続され、共振光空洞の共振波長の周期的な時間依存変調を決定するように構成されたサーボ回路と、を備える装置である。
【0014】
装置は、サーボ回路に接続され、
共振波長の時間依存変調の振幅を推定し、
推定振幅に応じて媒体中の分析物の存在を検出するように構成された処理ユニットを備えることができる。
【0015】
処理ユニットは、推定振幅に応じて媒体中の分析物の濃度を推定するように構成されてもよい。
【0016】
光音響実施形態と呼ばれる1つの実施形態によれば、装置は、開口部で開口する中空空洞を備え、トランスデューサは、中空空洞に接続される。トランスデューサは、開口部から中空空洞を通って伝播する光音響波の振幅を検出するように構成された音響トランスデューサであり、励起光波による媒体の照射の影響下で、膜は励起周波数で振動し、励起周波数に等しい変調周波数で共振波長の時間依存変調をもたらす。
【0017】
膜は、接触面に平行であってもよい。膜は、中空空洞の一部を境界付けることができる。
【0018】
光熱実施形態と呼ばれる1つの実施形態によれば、装置は、以下のものである。
トランスデューサの膜は装置の接触面を形成し、接触面は媒体と接触するように適用されることが意図されている。
開口部は膜を通って延在する。
トランスデューサは熱トランスデューサであり、励起光波による媒体の照射の影響下で、膜の温度が周期的な時間依存変動を示し、その結果、共振波長の周期的な時間依存変調が生じる。
【0019】
実施形態にかかわらず、少なくとも1つの反射器またはそれぞれの反射器は、導波路に沿った屈折率の周期的な変調によって形成されたブラッグミラーである。
【0020】
実施形態にかかわらず、サーボ回路は、補助光源に接続され、補助光源によって共振光空洞の共振波長に放射される光波の波長をサーボ制御するように構成されたサーボループを含む。サーボ回路は、特に、ポンド・ドレバ・ホールサーボ技術を実施することができる。
【0021】
実施形態にかかわらず、装置は、以下のようなものであってもよい。
第1の反射鏡は第1のブラッグミラーである。
第2の反射鏡は第2のブラッグミラーである。
第1のブラッグミラー及び第2のブラッグミラーは、欠陥を有する同一のブラッグミラーを形成し、第1のブラッグミラー及び第2のブラッグミラーは、それぞれ欠陥の両側に位置するブラッグミラーの部分に対応する。
【0022】
光音響の実施形態では、装置は、以下のようなものであってもよい。
振動の影響下で、膜は少なくとも1つの振動波腹を示し、振動の振幅はそれぞれの波腹で最大である。
導波路は少なくとも1つの波腹と同じ高さにある。
【0023】
実施形態にかかわらず、導波路は、膜上に直接形成されてもよい。第1の反射器及び第2の反射器は、導波路における屈折率の周期的な変調を得るように、レーザ光で導波路を刻むことにより得ることができる。
【0024】
実施形態にかかわらず、導波路は、膜上に堆積された微細構造光ファイバであってもよい。
【0025】
本発明の第2の目的は、分析物が少なくとも1つの吸収波長を吸収する、媒体中の分析物を検出する方法であって、
a)装置の接触面が媒体に対して保持されるように、媒体に対して本発明の第1の主題による装置を適用するステップと、
b)励起光源を活性化ステップであって、励起光源は、分析物の吸収波長に対応する波長を有する励起周波数でパルス化または振幅変調された励起光波を放射する、励起光源を活性化するステップと、
c)サーボ回路を用いて、励起周波数に対応する変調周波数でのトランスデューサの導波路の共振波長の周期的な変調を決定するステップであって、共振波長は、導波路の透過ピークに対応する、周期的な変調を決定するステップと、
d)サーボ回路によって決定される周期的な変調に応じて、媒体中の分析物の存在を検出するステップと、含む方法である。
【0026】
装置は、光音響の実施形態に関して説明したようなものであってもよい。したがって、本発明の方法は、
ステップb)の後に、媒体を周期的に励起周波数で加熱して光音響波の放射を生じさせ、この光音響波は中空空洞を通って伝播し、トランスデューサの膜が励起周波数で振動する効果の下で、トランスデューサの導波路の共振周波数が励起周波数に等しい変調周波数で変調されるようにするステップと、
ステップd)において、
変調周波数における共振波長の周期的な変調の振幅を推定するステップと、
推定振幅に応じて分析物の存在を検出するステップと、を備えることができる。
【0027】
装置は、光熱の実施形態に関して説明したようなものであってもよい。したがって、本発明の方法は、
ステップb)の後、励起周波数で周期的に媒体を加熱して、励起周波数で膜を周期的に加熱し、トランスデューサの導波路の共振周波数が、励起周波数に対応する変調周波数で変調されるようにするステップと、
ステップd)において、
変調周波数における共振波長の周期的な変調の振幅を推定するステップと
推定振幅に応じて分析物の存在を検出するステップと、を備えることができる。
【0028】
実施形態にかかわらず、ステップd)は、分析媒体中の分析物の濃度を推定するステップも備え得る。
【0029】
本発明の第3の主題は、本発明の第1の主題による装置を製造するための製造工程であって、導波路は、膜上に直接形成され、製造工程は、
導波路を形成するように、第1の材料の薄い層を膜上に堆積するステップと、
導波路の屈折率の周期的な変調を得るように、導波路をフェムト秒レーザ光で刻むステップと、を備える。
【0030】
本発明は、以下の図を参照して説明の残りの部分で説明される実施形態の実施例の説明を読むことによってよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】光音響実施形態と呼ばれる1つの実施形態による装置の主要構成要素を概略的に示す。
【
図1B】光音響実施形態と呼ばれる1つの実施形態による装置の主要構成要素を概略的に示す。
【
図1C】光音響実施形態と呼ばれる1つの実施形態による装置の主要構成要素を概略的に示す。
【
図1D】光音響実施形態と呼ばれる1つの実施形態による装置の主要構成要素を概略的に示す。
【
図1E】光音響実施形態と呼ばれる1つの実施形態による装置の主要構成要素を概略的に示す。
【
図2A】ブラッグミラーを形成する微細構造の光ファイバを示す。
【
図2B】
図2Aに概略的に示される光ファイバの反射スペクトル帯域を示す。
【
図2C】間隔をあけた2つのブラッグミラーに基づく共振光空洞を形成する微細構造光ファイバを示す。
【
図2D】
図2Cに概略的に示される光ファイバの反射スペクトル帯域を示す。
【
図3A】共振光空洞を含む導波路であって、導波路が変形されていない導波路を示す。
【
図3B】共振光空洞を含む導波路であって、導波路が変形されている、導波路を示す。
【
図3D】変形の影響下における、
図3Cに示されるような導波路の反射スペクトル帯域の変化を示す。
【
図3F】
図3Dに示す変形に対して最適に配置された導波路を示す。
【
図4A】波長ロック法を用いて補助光源の波長をサーボ制御するための回路を概略的に示す。
【
図4B】波長ロック法を用いて得られた誤差関数の変化を示す。
【
図5A】膜の振動の影響下における共振光空洞の共振波長のシフトを示す。
【
図5C】共振波長の時間依存変調に基づく膜の振動振幅の推定値を概略的に示す。
【
図6A】膜に接触して微細構造導波路を形成することを可能にする製造工程の主なステップを示す。
【
図6B】膜に接触して微細構造導波路を形成することを可能にする製造工程の主なステップを示す。
【
図6C】膜に接触して微細構造導波路を形成することを可能にする製造工程の主なステップを示す。
【
図6D】膜に接触して微細構造導波路を形成することを可能にする製造工程の主なステップを示す。
【
図7A】光音響の実施形態による装置を使用する検出方法の主なステップを示す。
【
図7B】光熱の実施形態による装置を使用する検出方法の主なステップを示す。
【
図8A】光熱実施形態と呼ばれる1つの実施形態による装置の主な構成要素を概略的に示す。
【
図8B】光熱実施形態と呼ばれる1つの実施形態による装置の主な構成要素を概略的に示す。
【
図8C】光熱実施形態と呼ばれる1つの実施形態による装置の主な構成要素を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1Aから
図1Eは、本発明による装置1の光音響実施形態と呼ばれる第1の実施形態を示す。装置1は、分析媒体2に対して適用されるように構成される。
【0033】
装置は、分析媒体2に伝播する励起光11を放射するように構成された励起光源10を備える。光源10は、励起周波数f11でパルス化又は振幅変調される。光波11は、媒体中に存在する分析物4の吸収波長λ4を含む励起スペクトル帯域Δλ11で放射される。装置1の目的の1つは、分析物4の存在を検出し、潜在的にその濃度を推定することである。
【0034】
励起スペクトル帯域は、好ましくは可視または赤外にあり、例えば、3μmと15μmの波長の間に広がる。好ましくは、励起スペクトル帯域Δλ11は、装置1が単一の分析物に特異的であるために十分に狭い。例えば、発光スペクトル帯域の幅は、1cm-1のオーダである。分析物がグルコースの場合、発光スペクトル帯域はグルコースの吸収波長、例えば1034cm-1を中心とする。励起光源10は、特にパルスレーザ光源であってもよく、例えば波長可変量子カスケードレーザ(QCL)であってもよい。発光スペクトル帯域Δλは赤外に位置する。
【0035】
分析物4は、分析媒体中に存在する分子であってもよい。媒体が生物組織である場合、それは生物組織の体液中に存在するグルコースの問題であり得る。先行技術に関して述べたように、分析物は気体分子であってもよく、媒体は気体である。例えば、汚染物質と考えられる気体分子であってもよい。媒体は液体であってもよく、分析物は液体中に潜在的に存在する分子である。
【0036】
装置1は、分析媒体2に接触するように分析媒体2に適用されることが意図される接触面3を備える。接触面3は、適用されること意図される媒体2に適合するように設計される。例えば平面である。
【0037】
装置1は、接触面3から延び、中空空洞16を画定する包囲部17を備える。中空空洞16は、媒体2に開口するように接触面3に形成された開口部13を備える。励起光源10は、励起光波11が中空空洞16を通って開口部13を通って媒体2に伝播するように構成される。
【0038】
媒体2中の分析物4の存在の影響下で光音響波6が形成される。光音響波6は、入射光波11によって媒体が周期的に加熱された結果形成される音響波であり、入射光波は励起周波数f11で振幅変調される。光音響波6の一部は、トランスデューサ15によって検出されるように中空空洞16を通って伝播する。
【0039】
光音響の実施形態では、トランスデューサ15は音響トランスデューサである。その機能は、光音響波6の振幅及び/又は周波数を測定することである。より正確には、目標とする用途において、トランスデューサ15は、励起光波の励起周波数f11における光音響波6の振幅を推定することを可能にする。
【0040】
トランスデューサ15は、光音響波6にさらされるとき、振動するように構成された可撓性膜18を備える。膜18は、半径方向平面PXYに平行であることが好ましい。膜の直径またはその最大対角線は、1mmから10mmである。膜の厚さは、横軸Zに平行で、半径方向の面に垂直であり、好ましくは10μmから500μm、好ましくは10μmから100μmである。膜の厚さは、好ましくは、膜の半径(またはその最大の半対角線)の1/10から1/200の間である。
【0041】
励起光源10は、励起光11が中空空洞16を介して媒体2に伝播するように構成されている。
図1Aに示す例では、励起光波11は、膜18を貫通して形成された二次開口部19を通って伝播する。
【0042】
膜に形成された二次開口部19は、膜18の両側の圧力を低周波数で平衡状態にすることも可能である。これにより、膜18の両側の圧力の低周波変動の影響下での膜18の潜在的な変形を回避することができる。圧力の低周波変動とは、膜の動作周波数範囲より低い周波数で生じる圧力差を意味する。二次開口部19の直径は、例えば、膜の直径の1/10未満である。例えば、10μmまたは20μmのオーダである。
【0043】
トランスデューサ15は、膜18上に延び、膜と接触し、膜に平行な導波路20を備える。導波路は、入口20iと出口20oとの間に延在する。導波路は、第1の屈折率n1を有する第1の材料21から作られる。
【0044】
導波路20は光ファイバであってもよく、この場合、第1の材料は光ファイバのコアの材料である。また、第1の材料21の薄い層、例えばSiON(酸窒化シリコン)の堆積物から形成される導波路の問題であってもよく、これは
図1Aから
図1Eに示される例に対応する。導波路は、屈折率が第1の材料n
1の屈折率n
3よりも低い閉じ込め材料23によって囲まれる。導波路20が光ファイバの場合、閉じ込め材料23は光ファイバのクラッドである。
【0045】
導波路20は、有利には、第1の材料21の薄い層から形成され、閉じ込め材料23は、単に、第1の材料を取り囲む空気であってもよい。導波路の横軸Zに沿った厚さは、10μmまたは5μm未満であることが好ましい。このような導波路を形成するために用いられる製造工程を
図6Aから
図6Dを参照して説明する。膜上に直接導波路を形成することにより、光ファイバを膜に接合する工程を回避することができる。光ファイバの使用に関する別の利点は、より剛性の低い導波路が得られることである。
【0046】
選択された構成にかかわらず、閉じ込め材料23の屈折率n3は、第1の材料21の屈折率n1よりも低い。第1の材料21が膜18上に直接堆積される場合、第1の材料21の屈折率n1は、膜18が形成される材料の屈折率よりも高いことが好ましい。
【0047】
導波路20の一例を
図1Bに示す。この例では、第1の材料21は、膜18上に堆積される。導波路は、第2の屈折率n
2の第2の材料22のセグメントを備え、これらのセグメントは、導波路20に沿って周期的に分布される。第2の屈折率n
2は、第1の屈折率n
1とは異なる。第1屈折率n
1より高くてもよい。第1の屈折率と第2の屈折率との間の相対的な変化は、0.01%(10
-4)から0.1%(10
-3)まで変化し得る。
【0048】
導波路によって規定される軸に沿って、屈折率がn1とn2との間で周期的に変調され、反射スペクトル帯域Δλ20内にブラッグミラーを形成する。ブラッグミラーの構造は、当業者には公知である。屈折率が周期的に変化し、光が伝播する軸に沿って、2つの異なる屈折率のセグメントが交互に形成される構造であり、それぞれのセグメントの光学的厚さは、λB/4niであり、ここで、λBは、反射スペクトル帯域Δλ20の中心波長であり、niは、問題の材料の屈折率(ni=n1またはni=n2)である。屈折率コントラストが低いほど、周期の数が多くなる。
【0049】
反射スペクトル帯域Δλ
20は、共振波長λ
rを中心とする。後者は以下のようなものである。
【数1】
ここで
n
effは回折格子の有効な指標であり、
【数2】
Λは、回折格子の空間周期、すなわち、導波路の軸に沿った二つの連続するセグメント21および22の長さである。
【0050】
導波路20は、セグメント21とセグメント22とが交互に形成されたブラッグミラーが欠陥を含むようなものである。欠陥とは、屈折率変調の周期性における局所的な破断を意味する。この欠陥は、例えば、所定の材料、例えば、第1の材料21で作られ、一期間の長さΛ又は複数の連続した期間の長さを延長した連続した空間25に対応する。欠陥と同じレベルでは、導波路は単一の材料を含み、導波路20の軸に沿って距離dが延びる。距離dは、
【数3】
ここでkは正の自然整数、共振ファブリペロー光空洞26が形成され、共振波長λ
rを規定する。欠陥が1つの期間Λの長さに及ぶ場合、λ
r=λ
Bである。
【0051】
d>kλB/neffである場合、また、反射スペクトル帯域Δλ20には、ブラッグ波長λBと異なる他の共振波長λrが現れることがある。この場合、共振ピークが最も狭い共振波長を保持することが好ましい。
【0052】
これにより、欠陥は、導波路20において、第1ブラッグミラー241と第2ブラッグミラー242とを分離することができる。第1のブラッグミラー241、第2のブラッグミラー242、およびブラッグミラー間の空間25によって形成されるアセンブリが、共振空洞26を形成する。
【0053】
次に、導波路20は、
共振波長λrではなくブラッグミラー241、242の反射スペクトル帯域Δλ20の光を反射し、
共振空洞26の共振波長λrで光を透過させる、ように構成される。
【0054】
トランスデューサ15は、導波路20の入口20iに向かって補助光波32を放射するように配置された補助光源30、特にレーザダイオードも備える。補助光波32は、発光波長λ32を中心とする発光スペクトル帯域Δλ32で放射される。発光スペクトル帯域Δλ32は、反射スペクトル帯域Δλ20に含まれることが好ましい。
【0055】
好ましくは、発光スペクトル帯域Δλ32の幅は、反射スペクトル帯域Δλ20の幅よりも狭い。例えば、発光スペクトル帯域Δλ32の幅は、1nmであってもよく、500PMや100PMよりも小さくてもよい。発光スペクトル帯域Δλ32の幅は、発光スペクトル帯域の半値全幅を意味する。
【0056】
補助光源30は、連続波レーザであることが好ましい。これは、例えば、1mWの出力を有し、1.55μmの波長で発光し、1pmのオーダのスペクトル幅を有するDFBレーザダイオード(DFBは分布帰還(distributed feedback)の頭字語である)であってもよい。このタイプのレーザダイオードは、電気通信の分野で一般的に使用されている。
【0057】
トランスデューサ15は、光検出器36、好ましくは高速光検出器、およびここではフォトダイオードを備える。光検出器は、反射スペクトル帯域Δλ20を含む検出スペクトル帯域Δλ36を有する。
【0058】
トランスデューサ15は、共振空洞26の共振波長λ
rの時間依存変調λ
r(t)に従うように構成されたサーボ回路41を備える。このような回路を、
図4Aおよび
図4Bを参照して以下に説明する。サーボ回路41は、補助光源30が発する補助光波32の発光波長λ
32を共振空洞26の共振波長λ
rに対応させるなど、補助光源をサーボ制御できる。
【0059】
装置は、サーボ回路41によって決定された時間依存変調λ
r(t)の周波数
または振幅
を計算するように構成された処理ユニット42を備えるか、または処理ユニットに接続される。処理ユニット42は、例えば、励起光波11の励起周波数f
11に対応する周波数
における共振波長の変調の振幅を推定するように設計またはプログラムされる。処理ユニット42の動作については、
図5Aから5Cを参照してさらに詳細に説明する。
【0060】
装置は、後部容積を規定するカバー48を備え、後部容積は、膜18とカバー48との間に延びる容積に対応する。一般に、導波路20は、第1の反射器241および第2の反射器242から形成された共振空洞26を備え、当該反射器は、導波路20を微細構造化することによって得られる。この説明で与えられる例では、第1の反射器241および第2の反射器242はブラッグミラーであるが、他のタイプの微細構造も考えられる。
【0061】
本発明の1つの重要な側面は、以下に説明するように、以下の事実に関係する。
補助光源30が活性化され、その発光波長λ32が導波路20の共振波長λr(またはより正確には共振空洞26の共振波長)に対応しない光波32を放射すると、導波路20は反射波32’を反射する。しかし
補助光源30が活性化され、その発光波長λ32が共振空洞26の共振波長λrに対応する光波32を放射すると、導波路20は透過波34を光検出器36に伝達する。発光波長λ32が共振波長λrに近づくほど、透過波34の強度は高くなる。
【0062】
本発明は、音響周波数f
aの音波6にさらされると、膜18が光音響波6の周波数f
aで振動の振幅A
aで振動することに基づいている。この結果、導波路20は周期的に変形し、その変形の影響下で共振波長λ
rは周期的な時間依存変調λ
r(t)を示す。共振波長の時間依存変調の振幅
は膜の振動の振幅に依存し、当該振幅は音響振幅A
aに比例する。時間依存変調の周波数
は音響周波数f
aに対応し、これは励起周波数f
11にも対応する。周波数
での変調の振幅
を計算することによって、装置は、
図5Aから5Cを参照して説明したように、媒体中の分析物の存在を検出し、任意にその濃度を推定することを可能にする。
【0063】
図1Cは、
図1Aを参照して説明した、放射平面P
XY内の特定の要素の図を示す。この例では、膜18は、半径の100分の1の厚さである薄い円盤の形態をとる。
【0064】
図1Dは、分析媒体2に対する膜18および導波路20の位置を示す三次元図である。
【0065】
図1Eは、励起光源10が反射器14と関連する装置の例を示す。励起光11は、放射面P
XYに平行に放射され、反射器14によって開口部13に向かって反射されて媒体2に向かって伝播する。補助光源30および光検出器36は、導波路20に対して位置合わせされる。あるいは、補助光源30および/または光検出器36は、フォトニック結晶によって導波路20に結合されてもよい。
【0066】
一変形例によれば、トランスデューサ15の膜18は、音響チャネルによって空洞に接続され、空洞16は、光音響波6の一部を膜18に伝達する。
【0067】
図2Aは、導波路20が微細構造光ファイバであり、その内部にブラッグ回折格子が形成される実施形態を示す。光ファイバにおけるこの種の微細構造は、通常、ファイバブラッグ回折格子(FBG(fiber Bragg Grating))と呼ばれる。光ファイバは、コアを形成する第1の材料21と、クラッドを形成する閉じ込め材料23とを備える。光ファイバのコアには、第1の材料と屈折率が異なる第2の材料22の介在物または空洞が形成されている。
図2Bは、このように微細化された光ファイバの反射スペクトルを示す。反射スペクトルは、波長(x軸-単位nm)の関数として照明強度(y軸)によって正規化された反射強度に対応する。反射スペクトル帯域Δλ
20で反射が最大となる。このような導波路は、光波32が照射されると、反射スペクトル帯域Δλ
20では、全反射スペクトル帯域Δλ
20で光波32’を反射する。
【0068】
図2Cは、同様の光ファイバを示しており、
図1Bを参照して説明したように、二つのブラッグミラー24
1及び24
2は、第1の材料21が充填された空間25によって分離されている。空間25の長さが、反射スペクトル帯域に含まれる共振波長の
【数4】
倍に対応する場合、光ファイバは、共振空洞26を備える。
【0069】
図2Dは、このように微細化された光ファイバの反射スペクトルを示す。共振波長λ
rを除いて、反射スペクトル帯域Δλ
20で反射が最大となる。このような導波路は、補助光源30から放射された光波32によって反射スペクトル帯域Δλ
20で照明されると、波長λ
32が共振波長と異なる場合には光波32’を反射し、波長λ
32が共振ピークに位置する場合には透過光波と呼ばれる光波34を透過する。
【0070】
図2Cおよび2Dは、Matlab(登録商標、Mathworks)で書かれたモデルを用いて得られたものであり、このモデルでは、構造は3mmの長さLに沿って延びると考えられ、第1および第2の材料間の屈折率コントラストは10
-3であると考えられ、それぞれのブラッグミラーの周期は約0.5μmであると考えられた。従って、それぞれのブラッグミラーは、3000に等しい数の周期を有する。
【0071】
図3Aから
図3Cは、
図1Bまたは
図2Cに示すような導波路20の変形から生じる共振波長λ
rの変化を示す。
図3Aおよび
図3Bは、それぞれ、変形されていない導波路および変形された導波路20を示す。変形の影響下で、屈折率変調の空間周期はΛからΛ’=Λ+dΛに変化する。式(1)を適用すると、ブラッグ波長λ
Bにおけるシフトdλ
Bが生じ、この波長は反射スペクトル帯域Δλを拡張する。λ
Bのシフトは、以下のようになる。
【数5】
ここで、
εは、μεで表した変形に相当し、10
-4%に相当する。変形εは長さの正規化された変動で、次のようになる。
【数6】
×は乗算演算子である。
【0072】
式(3)は、膜18がSiO
2から作られ、第1の材料と第2の材料との間の指数ジャンプが10
-3である場合を考慮して得られたものである。これは、
図3Bに示すように、それぞれのブラッグミラーの均一な変形に基づいている。式(3)によれば、1マイクロ歪みの変形に対して、ブラッグ波長λ
Bにおけるシフトdλ
Bは1.2pmである。
【0073】
図3Cでは、導波路20の不均一な変形が示されており、ブラッグミラーのあるセグメントは他のセグメントよりも変形が少ない。
【0074】
図3Dは、
図3Cを参照して説明したような構成におけるブラッグミラーの反射スペクトルの変化を示すモデルである。曲線a、bおよびcは、それぞれ、変形がないこと、0から10マイクロ歪みの変形、および4から6マイクロ歪みの間の変形に対応する。スペクトルシフトは小さく、10pmより小さい。曲線bおよびcは、導波路の同じ平均変形に対応し、5マイクロ歪みに等しい。これらの2つの構成間の共振波長のシフトは、導波路の軸に沿った歪みの変動に起因し、それぞれ0~10マイクロ歪みおよび4~6マイクロ歪みの範囲である。変形が均一であればあるほど、変形の影響下での共振波長のスペクトルシフトは大きくなる。
【0075】
好ましくは、導波路20は、最も大きな変形を受ける膜18の部分の上に延在する。膜18は、振動の振幅が最大となる1つ以上の振動波腹を示す。それぞれの波腹は、モデリングおよび/または実験によって決定することができる。好ましくは、導波路20は、膜の振動の少なくとも1つの波腹上に延在する。これにより、導波路20の変形が最大化され、変形によるスペクトルシフトがさらに増大する。これにより、より良好な感度が得られる。
【0076】
本発明者らは、
図1A及び
図1Dに概略的に示すような膜18の変形をモデル化した。モデル化された膜は、半径1mm、厚さ10μmのSiO
2から作られ、1Paの圧力にさらされた。膜の直径の1つに沿った変形を
図3Eに示す。x軸は膜の中心からの距離(mm)に対応し、y軸はマイクロ歪みの変形に対応する。共振空洞26は、好ましくは、変形の最大振幅を有するレベル、すなわち膜18の中心に設置される。
図3Eに示すシミュレーションは、この膜では、1Paの圧力を加えると、いくつかの10
-2マイクロ歪みの変形が誘発されることを示している。
【0077】
図3Eでは、膜の変形は中央部2
cでは負、周辺部2
pでは正である。共振空洞26は、有利には、膜2のセグメント上に設置され、膜の振動の影響下で、それが圧縮の問題であるか拡張の問題であるかにかかわらず、変形が同じ符号である。
【0078】
図3Fは、共振空洞26が膜2の中央部2
cに位置する導波路であって、膜の中心の両側に中心から±0.5mmの距離だけ延びる導波路20を概略的に示す。膜の振動の影響下で、変形は
図3Eに示すように交互に負(ε<0)になり、その後正になる。変形が負の場合、光空洞は圧縮され、第2の材料22のセグメントは互いに接近する。変形が正の場合、光空洞は拡大し、第2の材料22のセグメントは互いに離れて移動する。
【0079】
図4Aおよび
図4Bは、サーボ回路41の動作を概略的に示し、その機能は、ガイド20に形成された共振空洞26の共振波長λ
rに波長λ
32をサーボ制御することである。サーボ回路41は、波長λ
32を共振波長λ
rに固定する。固定は、通常、トップ・オブ・フリンジ・ロックと呼ばれるタイプである。これは、例えば、Chow J.H. ”Phase-sensitive interrogation of fiber Bragg grating resonators for sensing applications”, J. Light. Technol., vol.23, No.5, pp.1881-1889, May 2005またはBlack E.” An introduction to Pound-Drever-Hall laser frequency stabilization”, Am.J.Phy.69(1), January 2001に記載されている回路のような、ポンド・ドレバ・ホールサーボ技術を使用する回路の問題である。
【0080】
サーボ回路41は、補助光源30によって放射される補助光波32の波長λ32を、10kHzから数百MHzの変調周波数で変調する変調器411を備える。発光波長λ32の変調周波数は、装置によって対処される最大音響周波数よりもはるかに高い。これは、例えば、装置によって対処される最大音響周波数の10倍よりも高くすることができる。導波路20から出て光検出器36で検出された光波34の強度は、サーボ回路41に伝達され、サーボ回路は、光検出器36で検出された強度の変化を波長変調の関数として表す関数hを測定する。
【0081】
関数hの符号に応じて、誤差信号が光源に送られ、発光波長λ32が増減する。例えば、波長が増加するにつれて検出される強度の変化が負である場合、発光波長は徐々に減少する。波長の増加につれて検出される強度の変化が正である場合、発光波長は増加する。検出される変調による強度変化が0に近い場合、発光波長は導波路の共振波長に対応する。サーボ回路41は、以下の事実を用いる。
λ32<λrの場合、波長λ32が増加すると透過波34の強度が増加する。逆に、波長λ32の減少は、透過波34の強度の減少をもたらす。
λ32>λrの場合、波長λ32が増加すると、透過波34の強度が減少する。逆に、波長λ32の減少は、透過波34の強度の増加をもたらす。
【0082】
したがって、補助光波32の波長λ32に小さな変調を適用し、透過光波34の強度に対する変調の効果を観察することによって、補助光源30をサーボ制御して、補助光波32の波長λ32が導波路20の共振波長λrを追跡するようにすることができる。
【0083】
トップ・オブ・フリンジ・ロックによって共振波長を追跡することによって、共振波長を、音響周波数が10kHzより高い場合には10-6pmのオーダ、または音響周波数が1kHzより低い場合には10-3pmのオーダの波長感度で追跡することができる。SiO2膜に適用される式(3)を考慮すると、このような感度によって、数ピコ歪み程度、あるいは数mPaに相当する膜の変形を推定することができると推定される。したがって、共振空洞26のスペクトルシフトが小さく、このスペクトルシフトがおそらく数pmのオーダであることを考えると、ポンド・ドレバ・ホール法が適切である。
【0084】
また、トップ・オブ・フリンジ・ロックによって共振波長を追跡することにより、温度や湿度などの環境パラメータの変動の影響下で、空洞26の共振波長の変動に対して追跡を鈍感にすることができる。
【0085】
図5Aから
図5Cは、光音響波6の影響下で膜18が振動するときの共振波長λ
rにおける周期的な時間依存変動λ
r(t)と音響波の振幅との関係を示す。サーボ回路41によって実行されるサーボ制御のため、発光波長λ
32(t)における周期的な時間依存変動は、膜振動によって引き起こされる共振波長λ
r(t)の時間依存変調に対応すると考えられる。
図5Aは、導波路20の変形の影響下での透過光波34のスペクトルおよびスペクトルシフトdλ
rを示す。
図5Bは、導波路20の変形から生じる共振波長λ
rの時間依存変調を示し、変調は周期的であり、音響周波数f
aに対応する周波数
の変調を示す。サーボ回路41は、共振波長に波長λ
32をサーボ制御することにより、このような変調を決定することができる。この変調は処理ユニット42に送られ、処理ユニットは共振波長の変調の振幅
を計算する。処理ユニット42は、当該振幅に基づいて、光音響波6の音響周波数f
aに対応する膜の振動振幅を推定する。膜の振動の振幅に基づいて、音響周波数f
aで、分析物4が媒体中に存在するかどうかを決定し、または媒体中の分析物4の濃度を推定することができる。
【0086】
媒体中の分析物4の濃度の推定は、
分析物の濃度と膜の振動の振幅の間、
または分析物の濃度と共振波長の変調の振幅との間、の関係を確立するために、前もって較正を行うことを必要とすることがある。
【0087】
音響振幅A
aの決定は、必ずしも共振波長の値の決定を必要とせず、変調振幅
の正確な決定のみを必要とすることに留意されたい。
【0088】
図6Aから
図6Dは、非光ファイバ導波路20を膜18上に形成することを可能にする主なステップを示す。
【0089】
例えばSiO
2(指数1.44)の厚さ4μmの第1の層101、例えばSiON(酸窒化シリコン-指数1.60)の厚さ1μmの第2の層102が堆積された、例えばSi基板である基板100が提供される。
図6Aを参照すること。
【0090】
方法は、以下を備える。
フォトリソグラフィを用いて第2の層102をエッチングし、導波路20を形成するステップ。
図6Bを参照すること。この例では、SiONが導波路の第1の材料21に対応する。
第1の層101の一部を解放するために、基板100の裏面をエッチングして、当該部分がぶら下がった膜18を形成するステップ。この工程により、中空空洞16を囲む包囲部17を形成することもできる。
図6Cを参照すること。
第2の材料22の空洞を形成するために、導波路20をフェムト秒レーザパルスに一点ずつ露光するステップであって、この動作は従来から刻印(inscription)と呼ばれている、露光するステップ。
図6Dを参照すること。レーザ照射の影響下で、SiONの指数は局所的に変化する。そのため露出したSiONは、その屈折率n
2が露出していないSiONの屈折率と異なる第2の材料22に対応する。具体的には、露光により微小気泡が発生し、屈折率の変化を引き起こす。この結果、光の伝播軸に沿って、導波路20の屈折率が導波路内で変調される。
それぞれのパルスの持続時間は、例えば、800nmの波長で100fsに等しく、それぞれのパルスのエネルギーは30nJである。パルス周波数は、数Hzから200kHzの間で構成することができる。
別の露光技術はUV光刻印であり、これはChow J.H. “Phase-sensitive interrogation of fiber Bragg grating resonators for sensing applications”, J. Light. Technol., vol.23, No.5, pp.1881-1889, May 2005に記載されている。例えば、UV光刻印は、光ファイバを微細構造化することを可能にする。
【0091】
露光によって生じる屈折率の変調は10-3のオーダと比較的小さい。しかし、フェムト秒レーザによる刻印は、ブラッグミラーを例えば1mmオーダの短い長さにわたって製造することを可能にする。このタイプの露光は、高フィネスの共振空洞26を得ることを可能にし、共振ピークの幅は、数十pmよりも小さく、あるいは10pmよりも小さく、場合によっては、5pmよりも小さい。
【0092】
それぞれのブラッグミラーが延びる長さを長くすることができる。これは共振ピークの幅を減少させる。
【0093】
したがって、光音響の第1の実施形態を採用する場合、
図7Aに示される以下のステップを実施することによって、分析媒体中の分析物の存在を検出すること、またはその濃度を推定することさえ可能である。
ステップ110:接触面が媒体に対して保持されるように、装置1を媒体に適用するステップ、
ステップ120:励起光源10を活性化し、励起光源が、分析物の吸収波長λ
4に対応する波長を有する励起周波数f
11でパルス化または振幅変調された励起光波11を放射する、励起光源を活性化するステップ、
ステップ130:励起光波による媒体の照明の影響下で、中空空洞16を通って伝播する光音響波6の放射を得て、トランスデューサの膜が励起周波数f
11で振動し、トランスデューサの導波路20の共振周波数λ
rが励起周波数f
11に等しい変調周波数
で周期的に変調されるようにするステップ、
ステップ140:サーボ回路41によって、励起周波数f
11における導波路20の共振波長λ
rの時間依存変調、すなわち、導波路の透過ピークに対応する共振波長を決定するステップ、
ステップ150:サーボ回路によって決定された時間依存変調に応じて、励起周波数に依存する周波数、特に励起周波数よりも二倍高い周波数における共振波長の変調の振幅を計算するステップ、
ステップ160:媒体中の分析物の存在を検出し、および/または変調の振幅に依存して分析物濃度を推定するステップ。
【0094】
分析物の存在は、媒体2を代表し、既知量の分析物を含む較正試料を用いて行われる較正によって検出され得るか、またはその濃度が推定され得る。
【0095】
図8Aから8Cは、本発明による装置1’の光熱実施形態と呼ばれる第2の実施形態を示す。装置1’は、分析媒体2に対して適用されるように構成される。
【0096】
装置1’は、第1の実施形態を参照して説明したような構成要素を備える。一つの相違点は、膜18が、開口部13が形成される支持壁3を形成することである。
【0097】
装置1’は、励起光波11を放射する励起光源10を備える。パルスレーザ源の問題であり、パルス周波数は、例えば、10Hzから500Hzであり、例えば、100Hzに等しい。励起光11は媒体2に伝播する。実施形態によれば、励起光源は、励起光波11が膜18に形成された開口部13を介して媒体2に伝播するように構成されている。
【0098】
媒体中に分析物4が存在する効果の下で、励起波の一部が吸収される。この結果、媒体4の加熱5がされる。分析物が媒体の表面部分に存在する場合、媒体の加熱5は、熱の拡散を介して、接触面を形成する膜18に伝播する。媒体の表面部分とは、接触面と、分析媒体を形成する材料の熱浸透深さの2倍または3倍までの範囲の深さとの間に含まれる部分を意味する。
【0099】
膜18は、好ましくは、膜の温度が、おそらくタイムラグの後に、媒体2の温度の変化に従うと考えられるように、熱伝導性を有する。膜はこのような熱伝導率を有するのに十分薄い。
【0100】
この実施形態によれば、トランスデューサ15は熱トランスデューサであり、その機能は、励起光波11による媒体2の周期的な励起の影響下で、膜の温度の周期的な変調を検出することであり、好ましくは定量することである。
【0101】
トランスデューサ15は、光音響の実施形態に関して説明したように、補助光源30と、導波路20と、光検出器36と、サーボ回路41とを備える。
【0102】
膜18の加熱の影響下で、導波路20の温度が変化する。この結果、共振波長λrの変動が生じ、これは特に、導波路が形成される材料21、22の屈折率の変動に起因する。
【0103】
温度の影響下における共振波長の変化は、次の式で表すことができる。
【数7】
Tは、温度に対応する。
【0104】
補助源32の波長λ32が1.55μmに等しい場合、トランスデューサの感度は、11pm/℃と推定され得る。
【0105】
光熱の実施形態が使用される場合、
図7Bに示される以下のステップを実施することによって、分析された媒体中の分析物の存在を検出すること、またはその濃度を推定することさえ可能である。
ステップ110:接触面(この場合は膜)が媒体に対して保持されるように、装置1を媒体に適用するステップ、
ステップ120:励起光源10を活性化するステップであって、励起光源が分析物の吸収波長λ
4に対応する波長を有する励起周波数f
11で励起光波11を放射する、励起光源10を活性化するステップ、
ステップ135:励起光波による媒体の照明の影響下で、媒体2の周期的な加熱を得て、生成された熱が熱の拡散を介して膜18に伝播し、トランスデューサの導波路20の共振周波数λ
rが、励起周波数f
11に等しい変調周波数
で周期的に変調されるようにするステップ、
ステップ140:サーボ回路41によって、励起周波数f
11で導波路20の共振波長λ
rの時間依存変調を決定するステップであって、共振波長は、導波路、変調の透過ピークに対応する時間依存変調を決定するステップ、
ステップ155:サーボ回路によって決定された時間依存性変動に応じて、共振波長の変動の振幅を計算するステップ、
ステップ165:媒体中の分析物の存在を検出し、および/または変動に応じて分析物濃度を推定するステップ。
【0106】
分析物の存在は、媒体2を代表し、既知量の分析物を含む較正試料を用いて行われる較正によって検出され得るか、またはその濃度が推定され得る。
【0107】
本発明は、環境分野、産業分野(例えば、食品産業分野)、または生物医学分野における分析物検出用途において、気体、液体または固体試料上に実施される可能性がある。
【国際調査報告】