(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(54)【発明の名称】蒸留装置および蒸留方法
(51)【国際特許分類】
B01D 3/30 20060101AFI20230227BHJP
【FI】
B01D3/30 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539418
(86)(22)【出願日】2020-11-23
(85)【翻訳文提出日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 KR2020016575
(87)【国際公開番号】W WO2021137434
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0177387
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】リム ドンウク
(72)【発明者】
【氏名】イ シンボム
(72)【発明者】
【氏名】ソン ジュンヒェ
(72)【発明者】
【氏名】アン ウヨル
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヒョジン
(72)【発明者】
【氏名】ハン キド
【テーマコード(参考)】
4D076
【Fターム(参考)】
4D076AA16
4D076AA24
4D076BB21
4D076CD01
4D076CD43
4D076EA08Z
4D076EA11Z
4D076FA13
4D076JA01
(57)【要約】
本発明は、蒸留装置に関し、上部から蒸留対象物質が流入し、下部から気体が流入するボディ部と、前記ボディ部の内部で回転する回転軸と、前記回転軸の外部面に備えられる複数の回転コーンと、前記ボディ部の内部面に備えられ、前記それぞれの回転コーンから所定距離離れて配置される複数の固定コーンと、を含み、前記複数の固定コーンそれぞれの間隔がH1であり、前記ボディ部の底面と前記ボディ部の底面から最も近い回転コーンの下部面との間の距離と、前記ボディ部の底面と前記ボディ部の底面から最も近い固定コーンの下部面との間の距離のうち短い距離をH2とする際に、H2はH1よりも大きいことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部から蒸留対象物質が流入し、下部から気体が流入するボディ部と、
前記ボディ部の内部で回転する回転軸と、
前記回転軸の外部面に備えられる複数の回転コーンと、
前記ボディ部の内部面に備えられ、前記それぞれの回転コーンから所定距離離れて配置される複数の固定コーンと、
を含み、
前記複数の固定コーンそれぞれの間隔がH1であり、前記ボディ部の底面と前記ボディ部の底面から最も近い回転コーンの下部面との間の距離と、前記ボディ部の底面と前記ボディ部の底面から最も近い固定コーンの下部面との間の距離のうち短い距離をH2とする際に、H2はH1よりも大きいことを特徴とする蒸留装置。
【請求項2】
前記H1に対する前記H2の比率範囲は、3以上6以下であることを特徴とする、請求項1に記載の蒸留装置。
【請求項3】
前記複数の回転コーンそれぞれの上端部の一定領域は、平坦面の形状であることを特徴とする、請求項1に記載の蒸留装置。
【請求項4】
前記蒸留対象物質は、懸濁重合(suspension polymerization)またはエマルジョン重合(emulsion polymerization)により製造される高分子であることを特徴とする、請求項1に記載の蒸留装置。
【請求項5】
前記ボディ部には、メンテナンス用ハンドホールまたはマンホールを備えることを特徴とする、請求項1に記載の蒸留装置。
【請求項6】
前記ハンドホールまたは前記マンホールは、前記それぞれの固定コーン間ごとに備えられることを特徴とする、請求項5に記載の蒸留装置。
【請求項7】
上部から蒸留対象物質が流入し、下部から気体が流入するボディ部と、前記ボディ部の内部で回転する回転軸と、前記回転軸の外部面に備えられる複数の回転コーンと、前記ボディ部の内部面に備えられ、前記それぞれの回転コーンから所定距離離れて配置される複数の固定コーンと、を含む蒸留装置を用いた蒸留方法であって、
前記ボディ部の上側に備えられた蒸留対象物質流入部から前記蒸留対象物質が流入し、前記ボディ部の下側に備えられた気体流入部から前記気体が流入するa)ステップと、
前記気体と前記蒸留対象物質が前記ボディ部の内部で反応し、前記蒸留対象物質から揮発性物質が分離されるb)ステップと、
前記ボディ部の下側に備えられた回収部を介して前記揮発性物質が分離された蒸留対象物質が回収されるc)ステップと、
を含み、
前記複数の固定コーンそれぞれの間隔がH1であり、前記ボディ部の底面と前記ボディ部の底面から最も近い回転コーンの下部面との間の距離と、前記ボディ部の底面と前記ボディ部の底面から最も近い固定コーンの下部面との間の距離のうち短い距離をH2とする際に、H2はH1よりも大きく、
前記b)ステップは、前記蒸留対象物質と前記気体が反応するために接触する際に、前記気体の温度が前記蒸留対象物質のガラス転移温度Tg以下であることを特徴とする蒸留方法。
【請求項8】
前記H1に対する前記H2の比率範囲は、3以上6以下であることを特徴とする、請求項7に記載の蒸留方法。
【請求項9】
前記複数の回転コーンそれぞれの上端部の一定領域は、平坦面の形状であることを特徴とする、請求項7に記載の蒸留方法。
【請求項10】
前記蒸留対象物質は、懸濁重合(suspension polymerization)またはエマルジョン重合(emulsion polymerization)により製造される高分子であることを特徴とする、請求項7に記載の蒸留方法。
【請求項11】
前記ボディ部には、メンテナンス用ハンドホールまたはマンホールを備えることを特徴とする、請求項7に記載の蒸留方法。
【請求項12】
前記ハンドホールまたは前記マンホールは、前記それぞれの固定コーン間ごとに備えられることを特徴とする、請求項11に記載の蒸留方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸留装置および蒸留装置を用いた蒸留方法に関し、より詳しくは、熱エネルギーおよび遠心力を用いて、蒸留対象物質から揮発成分の分類により高純度の製品を回収する蒸留装置およびそれを用いた蒸留方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ストリップ塔(stripping column)は、多段からなる蒸留塔に気体(ガスや蒸気)を用いて液状の蒸留対象物質から揮発性成分を蒸発させ、高純度の製品を回収できる装置である。
【0003】
この際、前記ストリップ塔は、蒸留対象物質から高純度の製品を回収するためには高い温度の熱エネルギーが必要であるため、熱に脆弱な食品類や高分子などでは、高純度の製品を分類して回収し難いという問題がある。
【0004】
SSC(Spinning Cone Column)は、熱エネルギーとともに遠心力の機械的エネルギーを用いるものであり、これと関連した先行文献としては、日本特許公報第1995-022646号に開示されている。
【0005】
前記SSCは、上部から流入する蒸留対象物質および下部から流入する気体(蒸気)を介して、遠心力である機械的エネルギーを用いて蒸留対象物質から高純度の製品を回収することで、蒸留対象物質と熱エネルギーとの接触時間が短く、ストリップ塔に比べて低い温度で高純度の製品の回収が可能である。
【0006】
しかしながら、ストリップ(stripping)対象物質がPVC(Polyvinyl chloride)スラリー(slurry)またはラテックス(latex)状である場合、熱または運動エネルギーがラテックス粒子安定性(colloidal stability)を崩して凝固(coagulation)するかフォーム(foam)を形成させ得、これがスケール(scale)に発達する場合に製品の純度および物性を悪化させ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述したような問題を解決するためになされたものであって、ラテックス安定性を向上させる構造の蒸留装置およびそれを用いた蒸留方法を提供することにその目的がある。
【0008】
また、本発明は、メンテナンスが容易な構造の蒸留装置およびそれを用いた蒸留方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような目的を達成するために、本発明に係る蒸留装置は、上部から蒸留対象物質が流入し、下部から気体が流入するボディ部と、前記ボディ部の内部で回転する回転軸と、前記回転軸の外部面に備えられる複数の回転コーンと、前記ボディ部の内部面に備えられ、前記それぞれの回転コーンから所定距離離れて配置される複数の固定コーンと、を含み、前記複数の固定コーンそれぞれの間隔がH1であり、前記ボディ部の底面と前記ボディ部の底面から最も近い回転コーンの下部面との間の距離と、前記ボディ部の底面と前記ボディ部の底面から最も近い固定コーンの下部面との間の距離のうち短い距離をH2とする際に、H2はH1よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
ここで、前記H1に対する前記H2の比率範囲は、3以上6以下であってもよい。
また、前記複数の回転コーンそれぞれの上端部の一定領域は、平坦面の形状であってもよい。
【0011】
また、前記蒸留対象物質は、懸濁重合(suspension polymerization)またはエマルジョン重合(emulsion polymerization)により製造される高分子であってもよい。
【0012】
また、前記ボディ部には、メンテナンス用ハンドホールまたはマンホールを備えることができる。
この際、前記ハンドホールまたは前記マンホールは、前記それぞれの固定コーン間ごとに備えられることができる。
【0013】
本発明に係る蒸留方法は、上部から蒸留対象物質が流入し、下部から気体が流入するボディ部と、前記ボディ部の内部で回転する回転軸と、前記回転軸の外部面に備えられる複数の回転コーンと、前記ボディ部の内部面に備えられ、前記それぞれの回転コーンから所定距離離れて配置される複数の固定コーンと、を含む蒸留装置を用いた蒸留方法であって、前記ボディ部の上側に備えられた蒸留対象物質流入部から前記蒸留対象物質が流入し、前記ボディ部の下側に備えられた気体流入部から前記気体が流入するa)ステップと、前記気体と前記蒸留対象物質が前記ボディ部の内部で反応し、前記蒸留対象物質から揮発性物質が分離されるb)ステップと、前記ボディ部の下側に備えられた回収部を介して前記揮発性物質が分離された蒸留対象物質が回収されるc)ステップと、を含み、前記複数の固定コーンそれぞれの間隔がH1であり、前記ボディ部の底面と前記ボディ部の底面から最も近い回転コーンの下部面との間の距離と、前記ボディ部の底面と前記ボディ部の底面から最も近い固定コーンの下部面との間の距離のうち短い距離をH2とする際に、H2はH1よりも大きく、前記b)ステップは、前記蒸留対象物質と前記気体が反応するために接触する際に、前記気体の温度が前記蒸留対象物質のガラス転移温度Tg以下であることを特徴とする。
【0014】
ここで、前記H1に対する前記H2の比率範囲は、3以上6以下であってもよい。
また、前記複数の回転コーンそれぞれの上端部の一定領域は、平坦面の形状であってもよい。
【0015】
また、前記蒸留対象物質は、懸濁重合(suspension polymerization)またはエマルジョン重合(emulsion polymerization)により製造される高分子であってもよい。
【0016】
また、前記ボディ部には、メンテナンス用ハンドホールまたはマンホールを備えることができる。
また、前記ハンドホールまたは前記マンホールは、前記それぞれの固定コーン間ごとに備えられることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る蒸留装置および蒸留方法は、ボディ部の下部空間を大きく確保する構造を有する蒸留装置によりラテックス安定性を維持することができる。
【0018】
また、本発明に係る蒸留装置および蒸留方法は、蒸留装置の各固定コーン間ごとにメンテナンス用マンホールまたはハンドホールを備えることでメンテナンスを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る蒸留装置を示した図である。
【
図3】比較例1および実施例1に対する試験結果を示す図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る蒸留装置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る蒸留装置について詳しく説明する。添付図面は、通常の技術者に本発明の技術的思想が十分に伝達できるようにあくまでも例示的に提供されるものであって、本発明は、以下に提示される図面に限定されず、他の形態にいくらでも具体化できるものである。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る蒸留装置を示した図であり、
図2は、
図1のA部を拡大した図である。
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係る蒸留装置1000は、ボディ部100、回転軸200、回転コーン300、および固定コーン400を含む。
【0022】
ボディ部100は、回転軸200、回転コーン300、および固定コーン400を収容する構成であり、蒸留対象物質がボディ部100の上部から流入し、気体(ガスまたは蒸気)がボディ部100の下部から流入する。
【0023】
より具体的に、ボディ部100は、上板110、側板120、および下板130を含み、ここで、側板120は、管状をなし、上板110および下板130を連結する構造である。
【0024】
ボディ部100は、蒸留対象物質が上部から流入し、重力により下部方向に移動できるように、側板120の上側に備えられ、蒸留対象物質が流入する蒸留対象物質流入部123を含む。
【0025】
蒸留対象物質は、懸濁重合(suspension polymerization)またはエマルジョン重合(emulsion polymerization)により製造される高分子であってもよい。
【0026】
懸濁重合工程により製造される高分子は、例えば、ポリ塩化ビニル(poly(vinyl chloride)、PVC)、ポリメチルメタクリル酸(Poly(methyl methacrylate)、PMMA)、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroetylene、PTFE)、ポリスチレン(polystyrene、PS)などが該当することができる。
【0027】
エマルジョン重合工程により製造される高分子は、例えば、ポリ塩化ビニル(poly(vinyl chloride)、PVC)、ポリメチルメタクリル酸(Poly(methyl methacrylate)、PMMA)、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroetylene、PTFE)、ポリビニルアルコール(Poly(vinyl alcohol)、PVA)などが該当することができる。
【0028】
本発明の一実施形態においては、蒸留対象物質としてPVCを例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。蒸留対象物質がPVCである場合、PVCスラリーまたはラテックス状であり、suspension、micro-suspension、emulsion polymerizationなどによるPVC solid particleが10~60wt%含まれている。この際、PVCは、単一モノマー製品であってもよく、コポリマー製品であってもよい。
【0029】
また、ボディ部100は、蒸留対象物質の流入方向とは逆に、下部から上部方向に気体が上昇できるように、側板120の下側に備えられ、気体が流入する気体流入部125を含む。
【0030】
さらに、上板110の一側には、残留気体が外部に排出できるように気体排出部113が備えられ、下板130の一側には、蒸留対象物質から揮発性物質が分類された高純度の製品を回収するための回収部133が備えられる。
【0031】
ただし、蒸留対象物質流入部123、気体流入部125、気体排出部113、および回収部133は、機能上の目的に符合するように多様に配置できるため、上述した配置構造に限定されない。
【0032】
回転軸200は、前記ボディ部100の内部で上下方向に配置され、軸回転することができる。
この際、
図1には示されていないが、回転軸200に回転動力を供給するための回転軸制御部がボディ部100に備えられることができる。
【0033】
一方、回転コーン300は、回転軸200の外部面に備えられる構成である。
より具体的に、回転コーン300は、回転軸200の外部面の周縁に沿って形成された円錐形の形状を有し、この際、回転コーン300の上端部(ボディ部100の上部方向)に行くほど直径が広くなる形状を有する。回転コーン300は、複数備えられることができ、回転軸200を中心に回転軸200とともに回転することができる。
【0034】
この際、
図2を参照すると、回転コーン300の上端部の一定領域310は、平坦面の形状を有することができる。
ここで、回転コーン300の上端部の一定領域310は、回転軸200と接しない一側端の一定領域を意味する。
【0035】
従来の蒸留装置において、回転コーン300の上端部は、最端部分の縁まで一定の傾きを有する傾斜面状に延びる。この場合、蒸留対象物質は、遠心力により回転コーン300の上端部に広がるにつれ、回転コーン300の上端部の端部分において剪断力の影響を大きく受けることになり、ラテックス安定性が破壊されることになる。
【0036】
したがって、本発明の一実施形態のように、回転コーン300の上端部の一定領域310を平坦面の形状に作って回転コーン300の上端部の端部分の傾斜面を無くすことで、過剰の回転運動エネルギーからのラテックス安定性を増加させることができる。
【0037】
次に、固定コーン400は、ボディ部100の内部面に備えられる構成であり、ボディ部100の内部面の周縁に沿って円錐形に形成される。
より具体的に、固定コーン400は、ボディ部100の側板120の内部面の周縁に沿って備えられ、複数備えられることができる。固定コーン400は、回転コーン300と同様に、固定コーン400の上端部(ボディ部100の上部方向)に行くほど直径が広くなる形状を有し、回転することなく側板120の内部面に固定される構成である。
【0038】
一方、固定コーン400は、回転コーン300から所定距離離れて配置される。より具体的には、回転コーン300の上部面の上側に所定距離離れて1つの固定コーン400が配置され、回転コーン300の下部面の下側に所定距離離れてまた1つの固定コーン400が配置される。すなわち、固定コーン400と回転コーン300は、上下方向に交互に配置される。
【0039】
ここで、固定コーン400は、自身よりも上側に配置された回転コーン300の上部面から落下する蒸留対象物質を、自身よりも下側に配置された回転コーン300の上部面にガイドする役割をする。この際、固定コーン400の上部面は、ボディ部100の下部に向かう傾きを有する。このような傾きを有するため、固定コーン400の上側回転コーン300から落下する蒸留対象物質が、固定コーン400の傾きに沿って固定コーン400の下側回転コーン300に移動することができる。
【0040】
本発明の一実施形態に係る蒸留装置1000を用いた蒸留過程は、次のように行われる。
蒸留対象物質が蒸留対象物質流入部123から流入すると、回転コーン300に落下することになる。この際、回転コーン300が回転しているため、遠心力により、回転コーン300の上部面に沿って回転軸200から遠い端に蒸留対象物質が広がることになる。遠心力により広がった蒸留対象物質は、回転コーン300の下側に配置された固定コーン400に落下し、固定コーン400の上部面の傾きに沿ってスライドして移動した後、固定コーン400の下側に配置された回転コーン300に落下する。この過程で、蒸留対象物質は、気体流入部125から流入して上昇する気体と反応して揮発性物質が分類され、ボディ部100の最下端部まで移動し、回収部133を介して回収される。
【0041】
一方、蒸留装置の下部に備えられた気体流入部125に蒸留対象物質と反応する気体が流入することは上述したとおりである。この際、運転温度と比べて高温の気体が投入されるため、蒸留装置の下部においてラテックスと高温の気体が局所部位で接触する場合にラテックス安定性を破壊することになる。
【0042】
したがって、本発明の一実施形態に係る蒸留装置1000においては、それぞれの固定コーン400間の間隔と比べて、ボディ部の内部の底面から回転コーンまたは固定コーンまでの距離をさらに大きくすることで、ボディ部100の下部空間が大きく確保できるように構造を変更した。すなわち、高温の気体がボディ部100の内部温度により或る程度の熱交換が行われた後にラテックスと接触するようにした。
【0043】
すなわち、
図2を参照すると、H2は、H1よりも大きい値を有する。ここで、H1は、固定コーン400間の短間隔であり、H2は、蒸留装置の下部空間として、ボディ部100の底面とボディ部100の底面から最も近い回転コーンの下部面との間の距離と、ボディ部100の底面とボディ部100の底面から最も近い固定コーンの下部面との間の距離のうち短い距離と定義することができる。
より具体的に、H2/H1>1であり、好ましくは、H1に対するH2の比率範囲(H2/H1)が3以上6以下であることが好ましい。
【0044】
従来の蒸留装置においては、固定コーン間の短間隔H1だけの下部空間H2が備えられる。この際の下部空間は、全体蒸留装置の高さと対比して約10%を占めるが、これは、短間隔H1に該当する高さである。
【0045】
過熱している気体がボディ部100の内部の下部空間で熱交換により温度が減少し、最下部に移動した蒸留対象物質、例えば、PVCと接触する当時に、気体の温度がPVCのガラス転移温度Tg以下まで減少してこそ、ラテックス安定性の破壊を防止することができる。気体の温度が熱交換によりPVCのガラス転移温度Tg以下の温度まで減少するためには、下部空間H2が短間隔H1の3倍以上確保されなければならず、これは、蒸留装置の全体高さの約30%に該当する。
【0046】
しかしながら、短間隔H1の6倍を超過する下部空間H2が備えられる場合(これは、蒸留装置の全体高さの約60%に該当する)には、既に気体が蒸留装置の内部温度条件に達したため、これ以上下部空間H2を大きくすることは効果がないだけでなく、かえって過度に大きい下部空間により回転コーン300および固定コーン400が配置される空間が不足し、蒸留効率が低下することになる。
【0047】
以下、
図3を参照して、本発明の一実施形態に係る蒸留装置1000の効果を立証するための試験結果を説明する。
<比較例1>
短間隔H1に該当する下部空間H2を有する蒸留装置を構成し、ストリップ(stripping)を行った。蒸留対象物質としてはエマルジョン(Emulsion)状のPVCラテックスを用い、用いられた熱媒体は140℃の気体であり、蒸留装置のボディ部の内部温度は60℃である。繰り返し運転を行い、ラテックス安定性の維持時間を測定した。
【0048】
<実施例1>
短間隔H1の3倍の下部空間H2を有する蒸留装置を構成し、ストリップを行った。蒸留対象物質としては比較例1と同様にエマルジョン状のPVCラテックスを用い、用いられた熱媒体は140℃の気体であり、蒸留装置のボディ部の内部温度は60℃である。繰り返し運転を行い、ラテックス安定性の維持時間を測定した
【0049】
図3は、上述した比較例1および実施例1に対する試験結果を示す図である。
図3を参照すると、蒸留対象物質のラテックス安定性が約50分間維持可能な条件で、各繰り返し運転の回数別の安定性の維持時間を測定した際に、比較例1のように固定コーンの短間隔H1に該当する下部空間H2だけが提供される場合、すなわち、H1=H2である場合、蒸留装置の繰り返し運転の回数が増加するにつれ、ラテックス状態の維持時間が大幅に減少することが分かる。
【0050】
これに対し、実施例1のように下部空間H2を大きく確保した際に、繰り返し運転にもかかわらず、ラテックス安定性が維持される。
ここで、上述した繰り返し運転とは、回収部133を介して回収された蒸留対象物質を蒸留装置に再投入する過程を繰り返し運転することを意味する。
【0051】
図4は、本発明の他の実施形態に係る蒸留装置を示した図である。
図4を参照すると、本発明の他の実施形態に係る蒸留装置1000’は、ボディ部100、回転軸200、回転コーン300、固定コーン400、およびマンホールまたはハンドホール500を含む。
【0052】
本発明の他の実施形態に係る蒸留装置1000’は、
図1の蒸留装置と同様であるが、メンテナンス用マンホール(man-hole)またはハンドホール(hand-hole)をさらに含むことに差がある。ボディ部100、回転軸200、回転コーン300、および固定コーン400は、本発明の一実施形態に係る蒸留装置1000と同様であるため、詳しい説明は省略する。
【0053】
ここで、マンホールまたはハンドホール500がボディ部100に備えられ、マンホールを介して人が直接出入りしながら蒸留装置の各構成をメンテナンスするか、またはハンドホールを介して手を入れてメンテナンスすることができる。
【0054】
好ましくは、メンテナンスをさらに容易にできるように、マンホールまたはハンドホールは、それぞれの固定コーン400の間ごとに備えられることができる。
【0055】
このように本発明に係る蒸留装置は、固定コーン間の短間隔と比べてボディ部の下部空間の大きさを大きくすることで、蒸留装置の下部においてラテックスが高温の気体と直接接触するのを防止することができ、これにより、ラテックス安定性を維持することができる。また、本発明に係る蒸留装置は、各固定コーン間ごとにメンテナンス用マンホールまたはハンドホールを備えることでメンテナンスを容易にすることができる。
【0056】
以下、本発明に係る蒸留方法について説明する。本発明の一実施形態に係る蒸留方法は、前述した蒸留装置1000を介して行われることができる。
この際、本発明の一実施形態に係る蒸留方法は、ボディ部100の上側に備えられた蒸留対象物質流入部123から蒸留対象物質が流入し、ボディ部100の下側に備えられた気体流入部125から気体が流入するa)ステップと、気体と蒸留対象物質がボディ部100の内部で反応し、蒸留対象物質から揮発性物質が分離されるb)ステップと、ボディ部100の下側に備えられた回収部133を介して揮発性物質が分離された蒸留対象物質が回収されるc)ステップと、を含む。
【0057】
この際、複数の固定コーン400それぞれの間隔がH1であり、ボディ部100の底面とボディ部100の底面から最も近い回転コーン300の下部面との間の距離と、ボディ部100の底面とボディ部100の底面から最も近い固定コーン400の下部面との間の距離のうち短い距離をH2とする際に、H2はH1よりも大きい。したがって、H2/H1>1であり、好ましくは、H1に対するH2の比率範囲(H2/H1)が3以上6以下であることが好ましい。
【0058】
また、b)ステップは、前記蒸留対象物質と前記気体が反応するために接触する際に、前記気体の温度が前記蒸留対象物質のガラス転移温度Tg以下であることを特徴とするが、例えば、蒸留対象物質がPVCである際には、PVCと接触する気体の温度がPVCのガラス転移温度Tg以下まで減少していなければならない。
【0059】
本発明の一実施形態に係る蒸留方法に関するその他の詳細な説明は、前述した蒸留装置1000に関する説明に替えることができる。
【0060】
以上、限定された実施形態と図面により本発明を説明したが、本発明の説明のために例示として挙げた実施形態は本発明が具体化される1つの実施形態にすぎず、本発明の要旨が実現されるために多様な形態で組み合わせが可能である。したがって、本発明は、上記の実施形態に限定されず、以下の請求範囲で請求するように、本発明の要旨から逸脱することなく、当該発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば誰でも多様な変更実施が可能な範囲まで本発明の技術的特徴を有するといえる。
【国際調査報告】