(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(54)【発明の名称】流動促進剤およびレベリング剤としての添加量にある分岐ポリエステルを含むクリアコート組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 133/06 20060101AFI20230227BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20230227BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20230227BHJP
C09D 7/47 20180101ALI20230227BHJP
【FI】
C09D133/06
C09D7/65
C09D5/00 D
C09D7/47
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540676
(86)(22)【出願日】2020-12-30
(85)【翻訳文提出日】2022-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2020088016
(87)【国際公開番号】W WO2021136801
(87)【国際公開日】2021-07-08
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】コリアー,エマーソン,キース
(72)【発明者】
【氏名】リハン,アリ,エー.
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG041
4J038DD122
4J038GA07
4J038GA11
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA09
4J038KA10
4J038PA06
4J038PB07
4J038PC02
(57)【要約】
本発明は、OH官能性(メタ)アクリルコポリマー(A1)と、工程(a)、(b)および(c)を実施して得られうる、塗装材料組成物の総固体含有率に対して1.0wt.-%~15.0wt.-%の範囲内の量にある分岐OH官能性ポリエステル(A2)と、構成成分(A1)と(A2)との両方と異なり、かつOH官能基と架橋され得る架橋性官能基を含有する少なくとも1種の架橋剤(B1)とを含む、クリアコート塗装材料組成物に関し、任意に予め塗装された基材に本発明のクリアコート塗装材料組成物を塗布する工程を含む、基材を塗装する方法に関し、本発明の方法によって得られうる塗装基材に関し、かつ分岐OH官能性ポリエステル(A2)を、前記クリアコート塗装材料の塗布物を任意に予め塗装された基材上にスプレー塗布するためのクリアコート塗装材料の塗布物中の流動促進剤として、かつ/またはレベリング剤として使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A1)構成成分(A1)としての少なくとも1種のOH官能性(メタ)アクリルコポリマーと、
(A2)工程(a)、(b)および(c)、すなわち、
(a)少なくとも3つのOH基を含む少なくとも1種のポリオールを、6~36個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸および/またはその無水物および/またはそのエステルと反応させて、OH官能性第1の中間体生成物を形成する工程、
(b)工程(a)から得た第1の中間体生成物を、少なくとも1種の環状カルボン酸無水物と反応させて、カルボン酸官能性第2の中間体生成物を形成する工程、ならびに
(c)工程(b)から得た第2の中間体生成物を、1つのエポキシド基を有する少なくとも1種のエポキシド官能性化合物と反応させて、分岐OH官能性ポリエステルを形成する工程
を実施することによって得られうる、
構成成分(A2)としての少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステルと、
(B1)構成成分(A1)と(A2)との両方と異なる、かつOH官能基と少なくとも架橋され得る架橋性官能基を含有する、構成成分(B1)としての少なくとも1種の架橋剤と
を含む、
クリアコート塗装材料組成物であって、
少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステル(A2)が、クリアコート塗装材料組成物中に、塗装材料組成物の総固体含有率に対して1.0wt.-%~15.0wt.-%の範囲内の量で存在する、
クリアコート塗装材料組成物。
【請求項2】
1成分型(1K)塗装材料組成物であり、または2成分型(2K)塗装材料組成物であり、これが、少なくとも構成成分(A1)および(A2)を含有する少なくとも1種の成分(A)を、成分(A)とは別に貯蔵されていた成分(A)と混合する前に、少なくとも構成成分(B1)を含有する少なくとも1種の成分(B)と混合して得られ、かつ任意に更に少なくとも1種の有機溶媒(A3)を含有する追加の希釈成分(C)と混合して得られ;好ましくは2成分型(2K)塗装材料組成物であり、これが、少なくとも構成成分(A1)および(A2)を含有する少なくとも1種の成分(A)を、成分(A)とは別に貯蔵されていた成分(A)と混合する前に、少なくとも構成成分(B1)を含有する少なくとも1種の成分(B)と混合して得られ、かつ任意に更に少なくとも1種の有機溶媒(A3)を含有する追加の希釈成分(C)と混合して得られることにおいて特徴付けられる、請求項1に記載の塗装材料組成物。
【請求項3】
溶剤系塗装材料組成物であり、構成成分(A3)として少なくとも1種の有機溶媒を更に含むことにおいて特徴付けられる、請求項1または2に記載の塗装材料組成物。
【請求項4】
塗装材料組成物の総質量に対して、>30wt.-%、好ましくは>33wt.-%である総固体含有率を有することにおいて特徴付けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の塗装材料組成物。
【請求項5】
少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステル(A2)が、クリアコート塗装材料組成物中に、それぞれの場合に塗装材料組成物の総固体含有量に対して、1.1~13.5wt.-%の範囲内、好ましくは1.5wt.-%~12.5wt.-%の範囲内、更により好ましくは2.0wt.-%~12.0wt.-%の範囲内、なおもより好ましくは3.0~11.5wt.-%の範囲内、最も好ましくは4.0~10.5wt.-%の範囲内の量で存在することにおいて特徴付けられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の塗装材料組成物。
【請求項6】
構成成分(B1)として存在する少なくとも1種の架橋剤が、2つ以上のNCO基を有するポリイソシアネートであることにおいて特徴付けられる、請求項1から5のいずれか一項に記載の塗装材料組成物。
【請求項7】
構成成分(A2)としての少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステルを製造する工程(a)において、ポリオールのモルの、ジカルボン酸および/またはその無水物および/またはそのエステルのモルに対する比が、ジカルボン酸および/またはその無水物および/またはそのエステル1モル当たり2.0~2.2モルのポリオールであることにおいて特徴付けられる、請求項1から6のいずれか一項に記載の塗装材料組成物。
【請求項8】
構成成分(A2)としての少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステルを製造する工程(b)において、第1の中間体生成物のヒドロキシル基の、環状カルボン酸無水物の無水物基に対する当量比が、カルボン酸無水物基1つ当たり1.0~1.25当量のヒドロキシル基であることにおいて特徴付けられる、請求項1から7のいずれか一項に記載の塗装材料組成物。
【請求項9】
構成成分(A2)としての少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステルを製造する工程(c)において、第2の中間体生成物のカルボン酸基の、エポキシド官能性化合物のエポキシド基に対する当量比が、当量のエポキシド基1つ当たり1.0~2.5当量のカルボン酸基であることにおいて特徴付けられる、請求項1から8のいずれか一項に記載の塗装材料組成物。
【請求項10】
基材を塗装する方法であって、任意に予め塗装された基材に、請求項1から9のいずれか一項に記載の少なくとも1種のクリアコート塗装材料組成物を塗布して、少なくとも1つの塗膜を、任意に予め塗装された基材上に形成する少なくとも1つの工程と、少なくとも1つの塗膜を硬化して、少なくとも1つの硬化塗装層を基材上に得る少なくとも1つの更なる工程とを含む、方法。
【請求項11】
少なくとも工程(1)、(2)および(3)、すなわち、
(1)ベースコート塗装材料組成物を、任意に予め塗装された基材上に塗布して、任意に予め塗装された基材上に第1の塗膜を形成する工程と、
(2)第2の塗装材料組成物を、第1の塗膜を硬化する前に、工程(1)後に得られた基材上に存在する第1の塗膜に塗布して、第1の塗膜に隣接する第2の塗膜を形成する工程であって、第2の塗装材料組成物が、請求項1から9のいずれか一項に記載のクリアコート塗装材料組成物である、工程と、
(3)第1の塗膜と第2の塗膜とを合わせて硬化する工程であって、硬化された第2の塗膜が、形成された多層塗装系の最外層であり、硬化された第1の塗装層および第2の塗装層を得る、工程と
を含む、
多層塗装系を、任意に予め塗装された基材上に製造する方法であることにおいて特徴付けられる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも工程(2)が、スプレー塗布を介して実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか一項に記載の方法によって得られうる、塗装基材。
【請求項14】
請求項1、5、および7から9のいずれか一項に記載の、構成成分(A2)としての少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステルを、前記クリアコート塗装材料を、任意に予め塗装された基材上にスプレー塗布するためのクリアコート塗装材料中の流動促進剤として、かつ/またはレベリング剤として、使用する方法。
【請求項15】
少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステルが、請求項1から9のいずれか一項に記載のクリアコート塗装材料の塗布物中に存在することにおいて特徴付けられる、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OH官能性(メタ)アクリルコポリマー(A1)と、工程(a)、(b)および(c)を実施して得られうる、塗装材料組成物の総固体含有率に対して1.0wt.-%~15.0wt.-%の範囲内の量で存在する分岐OH官能性ポリエステル(A2)と、構成成分(A1)と(A2)との両方と異なり、かつ少なくともOH官能基と架橋され得る架橋性官能基を含有する少なくとも1種の架橋剤(B1)とを含む、クリアコート塗装材料組成物に関し、任意に予め塗装された基材に本発明のクリアコート塗装材料組成物を塗布する工程を含む、基材を塗装する方法に関し、本発明の方法によって得られうる塗装基材に関し、かつ分岐OH官能性ポリエステル(A2)を、前記クリアコート塗装材料の塗布物を任意に予め塗装された基材上にスプレー塗布するためのクリアコート塗装材料の塗布物中の流動促進剤として、かつ/またはレベリング剤として、使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車工業では、VOC含有率、すなわち自動車部品等の自動車工業における使用に好適な基材の塗装に使用される塗装材料組成物中に存在する揮発性有機化合物、詳細には有機溶媒の含有率をできる限り低下させることが、特に環境上の理由のために、望ましく、かつ必要である。VOC含有率をこのように低下させることは、例えば、溶媒ベースの(溶剤系)塗装材料組成物ではなく、水性(水系)塗装材料組成物を使用することによって達成され得る。別法では、VOC含有率を低下させることは、特に塗装材料組成物が溶剤系である場合、固体含有率、すなわち不揮発性含有率を上昇させることによって達成することができ、このことは依然としてほとんどの市販のクリアコート組成物に当てはまる。
【0003】
しかしながら、固体含有率を上昇させることが、当然ながら、自動的にVOC含有率を低下させることへと至らせるものの、そうとはいえ、このアプローチには限界があり、その理由は、溶剤系塗装材料組成物中に存在する有機溶媒が、溶媒が十分なスプレー粘度を達成するために重要であるため、それらのスプレー塗布中の塗装組成物のスプレー能力の点で重要な役割を果たしているからである。溶媒の量が少なすぎるとき、スプレー能力の困難さが起こり、更に、ポリマー流動を促進させて基材上の塗装の十分なレベリングを達成するのに十分な量の溶媒が利用できないとき、得られた塗装の、劣化した、劣っているにすぎない外観が観察され得る。換言すると、VOC含有率をできるだけ低下させることが望ましくはあるが、用いられる系からどれだけ多くの溶媒を実際に除去できるかには限界がある。
【0004】
更に、OEM用途においてであるが特にまた塗り替え用途においても溶剤系塗装材料組成物等の塗装材料組成物を使用するとき、例えば、1つの国の中でさえ、メリーランドのような比較的湿度の高い気候、カリフォルニアのような、メリーランドよりも著しく湿度の低い気候、および当然ながら様々な他の州でこれらの2州の間の湿度条件が存在し得る地理的地域に依存する米国のような国において、異なる種類の環境条件が存在し得ることを考えることが重要である。存在する気候、特に湿度、加えて温度も、特に溶剤系塗装材料組成物をスプレー塗布を介して塗布したときに、スプレー方法に対して影響を有し得る。例えば、得られた塗装の、劣化した、劣っているにすぎない外観が、カリフォルニアよりも高湿の地域で観察され得る。特に、塗装が、このようなかなり高湿の条件下で、ダイバック問題に見舞われることがある。ダイバックは、塗膜中の塗装外観の欠陥を説明するのに用いられる用語であり、これは、塗装の初期の硬化が達成された後に現れる。それは、形成された塗膜内のピンチングまたは微細なしわと似ており、かつ、初期の硬化の完了後の最終架橋フェーズの間に、膜中の継続した収縮により引き起こされた塗装中の応力の不均一な順応の結果である。塗膜の最終架橋が達成される前に、膜内に存在するポリマーの可動性が抑制されすぎている場合、ダイバックの欠陥が現れる。ダイバックの欠陥は、詳細には、劣った、即ち低いDOI(distinctiveness of image、イメージの識別性)値へと至らせる。より高い湿度は、膜中のポリマー可動性のより速い低下をもたらして、それにより、膜中に現れることになるダイバックを引き起こし得る。
【0005】
前述した流動性およびレベリング性を改善するために従来のポリエステルを塗装材料組成物中に組み込むことが既知であるが、これらのポリエステルは、所望の、かつ十分なスプレー粘性を保持するために塗装材料組成物の比較的低い固体含有率レベルでしか使用され得ない。その上、これらの従来のポリエステルは、加水分解的に不安定であることが多く、そのため、耐久性の理由のために、多層構造体の最外層としてのクリアコート等のトップコート中に使用されたとき、特に欠点を有する。
【0006】
非従来のポリエステルがWO2016/008655 A1に開示されており、これは、これらの組成物から製造された塗装の可撓性を改善するための超分岐または樹状ポリオールを含む塗装組成物に関する。詳細には、該塗装物は、それらの改善された可撓性に起因して、優れたストーンチップ抵抗を提示している。所望の可撓性/ストーンチップ抵抗を達成するために、該塗装組成物は、塗装組成物中に含有される成膜材料の総量に対して約5%~約60質量%の比較的高量の前述したポリオールを含有しなければならない。
【0007】
そのため、高い固体含有率を伴って付与されることを可能にするが、スプレー塗装において使用されるときに、VOC含有率を更に上昇させずに、それでもなお優れたスプレー能力を呈し、予め塗装された基材上の硬化クリアコーティングがそこから得られうる、かつスプレー塗布が、比較的高い温度、例えば>85°F(>29.4℃)、および比較的高い相対湿度(RH)、例えば65%RH、または更には>85%RHにて実施されるときであっても、最小化された、または更には非存在のダイバックの点で優れた外観を有する、クリアコート塗装材料組成物への必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の基になる目的は、高い固体含有率を伴って付与されることを可能にしながら、それでもなお、スプレー塗布において使用されたときに、VOC含有率を更に上昇させる必要なしに、優れたスプレー能力を呈し、予め塗装された基材上の硬化クリアコーティングがそこから得られうる、かつスプレー塗布が、比較的高い温度、例えば>85°F(>29.4℃)、および比較的高い相対湿度(RH)、例えば65%RHまたは更には>85%RHにて実施されるときであっても、最小化された、または更には非存在のダイバックの点で優れた外観を有する、クリアコート塗装材料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本出願の「特許請求の範囲」の主題によって、かつ本明細書に開示されるその好ましい実施形態によって、すなわち本明細書に記載される主題によって、解決された。
【0011】
本発明の第1の主題は、
(A1)構成成分(A1)としての少なくとも1種のOH官能性(メタ)アクリルコポリマーと、
(A2)工程(a)、(b)および(c)、すなわち、
(a)少なくとも3つのOH基を含む少なくとも1種のポリオールを、6~36個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸および/またはその無水物および/またはそのエステルと反応させて、OH官能性第1の中間体生成物を形成する工程、
(b)工程(a)から得た第1の中間体生成物を、少なくとも1種の環状カルボン酸無水物と反応させて、カルボン酸官能性第2の中間体生成物を形成する工程、ならびに
(c)工程(b)から得た第2の中間体生成物を、1つのエポキシド基を有する少なくとも1種のエポキシド官能性化合物と反応させて、分岐OH官能性ポリエステルを形成する工程
を実施することによって得られうる、構成成分(A2)としての少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステルと、
(B1)構成成分(A1)と(A2)との両方と異なる、かつOH官能基と架橋され得る架橋性官能基を含有する、構成成分(B1)としての少なくとも1種の架橋剤と
を含む、
クリアコート塗装材料組成物であって、
少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステル(A2)が、クリアコート塗装材料組成物中に、塗装材料組成物の総固体含有率に対して1.0wt.-%~15.0wt.-%の範囲内の量で存在する、
クリアコート塗装材料組成物である。
【0012】
本発明の更なる主題は、基材を塗装する方法であって、任意に予め塗装された基材に、本発明のクリアコート塗装材料組成物を塗布して、任意に予め塗装された基材上に少なくとも1つの塗膜を形成する少なくとも1つの工程と、少なくとも1つの該塗膜を硬化して、少なくとも1つの硬化塗装層を基材上に得る少なくとも1つの更なる工程とを含む、方法である。
【0013】
本発明の更なる主題は、本発明の方法によって得られうる塗装基材である。
【0014】
本発明の更なる主題は、上に定義した、かつ本明細書で後に更に定義する、少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステル(A2)を、前記クリアコート塗装材料を任意に予め塗装された基材上にスプレー塗布するためのクリアコート塗装材料の塗布物中の流動促進剤として、かつ/またはレベリング剤として、使用する方法である。
【0015】
驚くべきことに見出されたのは、本発明のクリアコート塗装材料組成物が、高い固体含有率の組成物の形態において付与されることを可能にするが、それが、それでもなお、スプレー塗布において使用されたときに、より多くの有機溶媒を添加することによってそのVOC含有率を更に上げなければならない必要性なしに、スプレー能力の優れた性質を呈することである。対照的に、特に、構成成分(A2)として存在する分岐OH官能性ポリエステルを使用することによって、VOC含有率が効果的に低下し得ることが見出された。特に驚くべきことに見出されたのは、スプレー塗布において使用されたときに、本発明のクリアコート塗装材料組成物の優れたスプレー能力、特定するとスプレー塗布における優れた、増強された流動性、および達成された良好なレベリング性が、本発明のクリアコート塗装材料組成物中に構成成分(A2)として存在する分岐OH官能性ポリエステルの存在に起因することであり、その理由は、これらの効果が、より多くの有機溶媒を使用する必要性のない前記分岐OH官能性ポリエステルを含有しないクリアコート塗装材料組成物を使用したときに観察されなかったためである。
【0016】
更に驚くべきことに見出されたのは、スプレー塗布が、比較的高い温度、例えば>85°F(>29.4℃)、および比較的高い相対湿度(RH)、例えば65%RHまたは更には>85%RHを伴う環境で実施されるときであっても、その塗装が、最小化された、または更には非存在のダイバックの点で優れた外観を有する、スプレー塗布を活用することによって、予め塗装された基材上のクリアコーティングが、本発明のクリアコート塗装材料組成物から得られうることである。詳細には、本発明の塗装材料組成物から得られた塗装は、優れたDOI値を有することが見出された。特に驚くべきことに見出されたのは、これが、本発明のクリアコート塗装材料組成物中に構成成分(A2)として存在する分岐OH官能性ポリエステルの存在に起因して達成されるということであり、その理由は、この効果が、前記分岐OH官能性ポリエステルを含有しないクリアコート塗装材料組成物を使用したときに観察されていないためである。更に見出されたのは、本発明のクリアコート塗装材料組成物中に、構成成分(A2)として存在する分岐OH官能性ポリエステルと、構成成分(A1)として存在する少なくとも1種のOH官能性(メタ)アクリルコポリマーとの両方が、膜硬化の全体の架橋方法を通して十分な可動性を保持してダイバックを回避し、そのため、それにより、所望の流動特性およびレベリング特性を明示していることである。
【0017】
その上、更に驚くべきことに見出されたのは、構成成分(A2)として存在する分岐OH官能性ポリエステルが、特に、これもまた本発明のクリアコート塗装材料組成物中に存在する少なくとも1種のOH官能性(メタ)アクリルコポリマーとの組み合わせで使用されたときに、従来のポリエステルよりも高い程度にまで加水分解的に安定なことであり、これは、得られた塗装の耐久性に関する限り有利であり、その理由は、本発明のクリアコート塗装材料組成物から誘導された、塗布されたクリアコートが、多層塗装系の最外層を表しているためである。このことは、気候が少なくとも1年間の良好な部分でかなり高湿、例えば相対湿度(RH)が、>65%、または更には>85%である地域で利用される/操作される自動車工業での使用にとって、クリアコートが多層構造の部品として自動車部品または車体に適用されるときに、特に有利である。
【0018】
更に、驚くべきことに見出されたのは、本発明のクリアコート塗装材料組成物から誘導されたクリアコートの高い硬化架橋密度が、分岐OH官能性ポリエステルの使用にもかかわらず、脆性を導入することなしに達成され得ることである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
例えば本発明の塗装材料組成物との関連での、本発明の意味における用語「を含む」は、好ましくは、「からなる」の意味を有する。本発明の塗装材料組成物の点で、その中に存在する必須の成分に加えて、本明細書でこの後に確定される、かつ本発明の塗装材料組成物中に任意に含まれる更なる成分のうちの1種以上が、その中に含まれることが可能である。全てのこれらの成分は、それぞれの場合に以下に確定されるそれらの好ましい実施形態中に存在し得る。
【0020】
クリアコート塗装材料組成物および任意の構成成分(A3)
本発明のクリアコート塗装材料組成物は、構成成分(A1)としての少なくとも1種のOH官能性(メタ)アクリルコポリマー、構成成分(A2)としての少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステル、および構成成分(B1)としての少なくとも1種の架橋剤を含む。
【0021】
本発明の塗装材料組成物は、具体的には、自動車のOEM仕上げの、およびまた自動車の塗り替えの、技術力および審美性が特に要求される分野において利用される。
【0022】
それぞれの本発明の塗装材料組成物中に存在する全ての成分のwt.-%(質量%)における割合および量は、塗装材料組成物の総質量に対して、それぞれの場合100wt.-%に足し上げられる。
【0023】
用語「クリアなコート」、「クリアコート」または「クリアコーティング」は、当業者に既知であり、基材に塗布された、多層塗装構造体の、実質的に透明な、または透明な最外層を表す。
【0024】
好ましくは、本発明のクリアコート塗装材料組成物は、5wt.-%超の顔料および/または充填剤を含まず、その理由は、そうでなければ組成物から生成されたクリアコート塗装層の透明度または所望の透明性が影響され得るためである。より好ましくは、本発明のクリアコート塗装材料組成物は、顔料および/または充填剤を一切含まず、特に効果顔料を一切含まない。
【0025】
用語「顔料」は、例えばDIN55943(日付:2001年10月)から当業者に既知である。本発明の意味における「顔料」は、実質的に、好ましくは完全に、それらを囲んでいる媒質、例えば本発明で使用される塗装材料組成物のうちの1種に不溶性である粉末またはフレーク形態にある成分を好ましくは指す。顔料は、好ましくは、着色物質、および/またはそれらの磁性の、電気的な、および/または電磁性の性質の理由で顔料として使用され得る物質である。顔料は、好ましくはそれらの屈折率において「充填剤」とは異なり、顔料の屈折率は≧1.7である。用語「充填剤」は、例えばDIN55943(日付:2001年10月)から当業者には既知である。本発明の目的のための「充填剤」は、好ましくは、実質的に、好ましくは全体的に、塗布媒質に、例えば本発明で使用される塗装材料組成物のうちの1種に、不溶である成分であり、具体的には体積を増加させるために使用される成分である。本発明の意味における「充填剤」は、好ましくはそれらの屈折率において「顔料」とは異なり、充填剤の屈折率は<1.7である。好適な充填剤の例は、カオリン、ドロマイト、カルサイト、チョーク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、グラファイト、ケイ酸塩、例えばケイ酸マグネシウム、特に対応するフィロケイ酸塩、例えばヘクトライト、ベントナイト、モンモリロナイト、タルクおよび/またはマイカ、シリカ、特にフュームドシリカ、ヒドロキシド、例えばアルミニウムヒドロキシドまたはマグネシウムヒドロキシド、または有機充填剤、例えば織布繊維、セルロース繊維、ポリエチレン繊維またはポリマー粉末であり、更なる詳細については、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag、1998、250ff.,「Fillers」を参照されたい。好適な顔料の例は、無機および有機着色顔料である。好適な無機着色顔料の例は、白色顔料、例えば亜鉛白色、硫化亜鉛またはリソポン;黒色顔料、例えばカーボンブラック、鉄マンガンブラック、またはスピネルブラック;色顔料、例えば酸化クロム水和物グリーン、コバルトグリーンまたはウルトラマリングリーン、コバルトブルー、ウルトラマリンブルーまたはマンガンブルー、ウルトラマリンバイオレットまたはコバルトバイオレットおよびマンガンバイオレット、赤色酸化鉄、カドミウムスルホセレニド、モリブデートレッドまたはウルトラマリンレッド;褐色酸化鉄、混合ブラウン、スピネルフェーズおよびコランダムフェーズまたはクロムオレンジ;または黄色酸化鉄、ニッケルチタンイエロー、クロムチンイエロー、硫化カドミウム、硫化カドミウム亜鉛、クロムイエローまたはバナジウム酸ビスマスである。更なる無機着色顔料は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム水和物、特にベーマイト、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、およびこれらの混合物である。好適な有機着色顔料の例は、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アントラキノン顔料、ベンズイミダゾール顔料、キノアクリドン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、インダントロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、アゾメチン顔料、チオインディゴ顔料金属錯体顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、フタロシアニン顔料またはアニリンブラックである。
【0026】
好ましくは、本発明の塗装材料組成物は、1成分型(1K)塗装材料組成物であり、または2成分型(2K)塗装材料組成物であり、これは、少なくとも構成成分(A1)および(A2)を含有する少なくとも1種の成分(A)を、成分(A)とは別に貯蔵されていた成分(A)と混合する前に、少なくとも構成成分(B1)を含有する少なくとも1種の成分(B)と混合して得られ、かつ任意に更に少なくとも1種の有機溶媒(A3)を含有する追加の希釈成分(C)と混合して得られる。より好ましくは、本発明の塗装材料組成物は、2成分型(2K)塗装材料組成物であり、これは、少なくとも構成成分(A1)および(A2)を含有する少なくとも1種の成分(A)を、成分(A)とは別に貯蔵されていた成分(A)と混合する前に、少なくとも構成成分(B1)を含有する少なくとも1種の成分(B)と混合して得られ、かつ任意に更に少なくとも1種の有機溶媒(A3)を含有する追加の希釈成分(C)と混合して得られる。
【0027】
好ましくは、本発明の塗装材料組成物は、溶剤系、すなわち有機溶媒(複数可)系の、塗装材料組成物であり、構成成分(A3)として少なくとも1種の有機溶媒を更に含む。このように、好ましくは、本発明の塗装材料組成物は、溶剤系ではなく、すなわち水性の、塗装材料組成物である。
【0028】
本発明の塗装材料組成物との関連での用語「溶剤系」は、好ましくは本発明の目的では、有機溶媒(複数可)が、溶媒としておよび/または希釈剤として、それぞれにおいて本発明の塗装材料組成物中に、本発明の塗装材料組成物の総質量に対して少なくとも35wt.-%の量で好ましくは存在する全ての溶媒および/または希釈剤の主要な構成成分として存在することを意味すると理解される。水は、好ましくは<20wt.-%、より好ましくは<10wt.-%の量で存在する、より小さい割合において追加で存在してよい。
【0029】
本発明の塗装材料組成物は、好ましくは、組成物が溶剤系である場合、それぞれの場合に塗装材料組成物の総質量に対して、少なくとも40wt.-%、より好ましくは少なくとも45wt.-%、きわめて好ましくは少なくとも50wt.-%の有機溶媒(複数可)画分を含む。当業者に既知である全ての従来の有機溶媒が、有機溶媒として使用され得る。用語「有機溶媒」は、詳細には、1999年3月11日のCouncil Directive 1999/13/ECから当業者に既知である。このような有機溶媒の例としては、複素環の、脂肪族のまたは芳香族の炭化水素、モノアルコールまたは多価アルコール、特にメタノールおよび/またはエタノール、エーテル、エステル、ケトン、ならびにアミド、例えばN-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、ブタノール、エチルグリコールおよびブチルグリコールおよびまたそれらのアセテート、ブチルジグリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、イソホロン、またはそれらの混合物が挙げられると考えられる。
【0030】
本発明の塗装材料組成物は、好ましくは、組成物が溶剤系である場合、<20wt.-%である水の画分、より好ましくは、それぞれの場合に塗装材料組成物の総質量に対して、0~<20wt.-%、きわめて好ましくは0.5~20wt.-%、または~17.5wt.-%、または~15wt.-%、または~10wt.-%の範囲内の水の画分を含む。
【0031】
好ましくは、本発明の塗装材料組成物は、塗装材料組成物の総質量に対して、>30wt.-%、好ましくは>33wt.-%である総固体含有率を有する。
【0032】
本発明の塗装材料組成物の総固体含有率は、それぞれの場合に塗装材料組成物の総質量に対して、好ましくは>30~50wt.-%、より好ましくは>33~45wt.-%の範囲内にある。総固体含有率、換言すると不揮発性画分は、本明細書でこの後に記載される方法に従って決定される。
【0033】
構成成分(A1)としてのOH官能性(メタ)アクリルコポリマーおよび構成成分(A5)として更に任意に存在する成膜樹脂
構成成分(A1)は、成膜結合剤として機能する。本発明の目的では、用語「結合剤」は、DIN EN ISO4618(ドイツ版、日付:2007年3月)に従って、成膜を左右する、塗装材料組成物の不揮発性構成成分であると理解される。そのため、その中に含有される顔料および/または充填剤は、用語「結合剤」に包含されない。好ましくは、少なくとも1種の(メタ)アクリルコポリマーは、塗装材料組成物の主要な結合剤である。結合剤成分が、本発明の意味における主要な結合剤として指されるのは、塗装材料塗装材料組成物の総質量に対してより高い割合で存在する他の結合剤成分が組成物中にないときである。
【0034】
用語「(メタ)アクリル」または「(メタ)アクリレート」または「(メタ)アクリルの」は、それぞれの場合に本発明の文脈において、「メタクリル」および/もしくは「アクリル」、「メタクリルの」および/もしくは「アクリルの」、または「メタクリレート」および/もしくは「アクリレート」の意味を含む。したがって、一般における「(メタ)アクリルコポリマー」は、「アクリルモノマー」のみ、「メタクリルモノマー」のみ、または「アクリルモノマーおよびメタクリルモノマー」から形成されうる。しかしながら、アクリルモノマーおよび/またはメタクリルモノマー以外の重合性モノマー、例えばスチレンなどはまた、「(メタ)アクリルコポリマー」中に含有され得る。換言すると、(メタ)アクリルポリマーは、アクリルモノマー単位および/またはメタクリルモノマー単位のみからなり得るが、そうでなければならないわけではない。表示法「(メタ)アクリレートポリマーまたはコポリマー」または「(メタ)アクリルポリマーまたはコポリマー」は、ポリマー/コポリマー(ポリマー骨格/主鎖)が優勢に形成され、すなわち好ましくは、使用されるモノマー単位のうちの50%超または75%超が、(メタ)アクリレート基を有するモノマーから形成されることを意味すると意図される。(メタ)アクリルコポリマーの製造では、好ましくは、モノマーのうちの50%超または75%超が、そのため(メタ)アクリレート基を有する。しかしながら、共重合性ビニルモノマー等のコモノマーとしての更なるモノマーの使用、例えばその製造のためのスチレンの使用は、除外されない。
【0035】
(メタ)アクリルコポリマー(A1)は、OH官能性である。ヒドロキシル含有モノマーとしては、(A1)を製造するのに使用され得るアクリル酸またはメタアクリル酸のヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。ヒドロキシル官能性モノマーの非限定的な例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、これらの、エプシロン-カプロラクトンとの反応生成物、および最大で約10個の炭素の分岐または直鎖アルキル基を有する他のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、およびこれらの混合物が挙げられ、ここで、用語「(メタ)アクリレート」は、メタクリレートエステルとアクリレートエステルとのいずれかまたは両方を示す。一般に、少なくとも約5質量%のヒドロキシル官能性モノマーが、ポリマー中に含まれる。アクリルポリマー等のビニルポリマー上のヒドロキシル基は、他の手段、例えば共重合メタクリル酸グリシジルからの、有機酸またはアミンによる、グリシジル基の開環によって生み出され得る。
【0036】
ヒドロキシル官能価はまた、チオ-アルコール化合物を通して導入されてもよく、3-メルカプト-1-プロパノール、3-メルカプト-2-ブタノール、11-メルカプト-1-ウンデカノール、1-メルカプト-2-プロパノール、2-メルカプトエタノール、6-メルカプト-1-ヘキサノール、2-メルカプトベンジルアルコール、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、4-メルカプト-1-ブタノール、およびこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。これらの方法のうちのいずれかが、有用なヒドロキシル官能性アクリルポリマーを製造するのに使用され得る。
【0037】
使用され得る好適なコモノマーの例としては、3~5個の炭素原子を含有するα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸、ならびにアルキルおよびシクロアルキルエステル、ニトリル、ならびにアクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸のアミド;4~6個の炭素原子を含有するα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸および無水物、これらの酸のモノエステルおよびジエステル;ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、および芳香族または複素環脂肪族ビニル化合物が挙げられるがこれらに限定されない。アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸の好適なエステルの代表的な例としては、1~20個の炭素原子を含有する飽和脂肪族アルコールとの反応からのエステル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、ドデシル、3,3,5-トリメチルヘキシル、ステアリル、ラウリル、シクロヘキシル、アルキル置換シクロヘキシル、アルカノール置換シクロヘキシル、例えば2-tert-ブチルおよび4-tert-ブチルシクロヘキシル、4-シクロヘキシル-1-ブチル、2-tert-ブチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、3,3,5,5,-テトラメチルシクロヘキシル、テトラヒドロフルフリル、およびアクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、およびクロトン酸イソボルニル;不飽和ジアルカノン酸および無水物、例えばフマル酸、マレイン酸、イタコン酸および無水物、ならびにそれらの、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールおよびtert-ブタノール等のアルコールとのモノエステルおよびジエステル、例えばマレイン酸無水物、マレイン酸ジメチルエステルおよびマレイン酸モノヘキシルエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルエチルエーテルおよびビニルエチルケトン;スチレン、a-メチルスチレン、ビニルトルエン、2-ビニルピロリドンおよびp-tert-ブチルスチレンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0038】
(メタ)アクリルポリマー(A1)は、従来の技術を用いて、例えば重合開始剤および任意に連鎖移動剤の存在下でモノマーを加熱することによって製造され得る。重合は、例えば、溶液中で実施されてよい。典型的な開始剤は、有機ペルオキシド、例えばジアルキルペルオキシド、例えばジ-t-ブチルペルオキシド、ペルオキシエステル、例えばt-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエートおよびt-ブチルペルアセテート、ペルオキシジカーボネート、ジアシルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、例えばt-ブチルヒドロペルオキシドおよびペルオキシケタール;アゾ化合物、例えば2,2’アゾビス(2-メチルブタンニトリル)および1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル);ならびにこれらの組み合わせである。典型的な連鎖移動剤は、メルカプタン、例えばオクチルメルカプタン、n-またはtert-ドデシルメルカプタン;水素化化合物、チオサリチル酸、メルカプト酢酸、メクカプトエタノール、および既に挙げた他のチオールアルコール、ならびに二量体のアルファ-メチルスチレンである。
【0039】
重合反応は、通常、約20℃~約200℃の温度にて実施される。該反応は、溶媒または溶媒混合物が還流する温度にて従来行われ得るが、適正な調整によって、還流未満の温度が維持され得る。開始剤は、反応が実施される温度に合致するように選ばれるべきであるので、その温度における開始剤の半減期が好ましくは約30分以下であるべきである。付加重合の更なる詳細は、ポリマー技術分野において一般に入手可能であり、かつ(メタ)アクリレートモノマーを含む混合物の重合の更なる詳細は、ポリマー技術分野においてすぐに入手可能である。溶媒または溶媒混合物は、一般に、反応温度まで加熱され、モノマーおよび開始剤(複数可)が、通常は2時間から6時間の間の時間にわたり、調整された速度において添加される。連鎖移動剤または追加の溶媒が、この時間の間、これもまた調整された速度において供給され得る。次いで、混合物の温度は、反応を完了する時間の間、維持される。任意に、完全な転換を確実にするために、更なる開始剤が添加されてよい。
【0040】
少なくとも1種の(メタ)アクリルポリマー(A1)は、好ましくは、クリアコート塗装材料組成物中に、塗装材料組成物の総固体含有率に対して、5.0wt.-%~85.0wt.-%の範囲内の量で存在する。より好ましくは、少なくとも1種の(メタ)アクリルポリマー(A1)は、クリアコート塗装材料組成物中に、それぞれの場合に塗装材料組成物の総固体含有率に対して、10.0wt.-%~80.0wt.-%、なおもより好ましくは15.0wt.-%~75.0wt.-%、更により好ましくは20.0wt.-%~70.0wt.-%、なおもより好ましくは25.0~65.0wt.-%、最も好ましくは30.0~60.0wt.-%の範囲内の量で存在する。
【0041】
本発明の塗装材料組成物は、少なくとも1種の(メタ)アクリルコポリマーの他に、構成成分(A5)として少なくとも1種の更なるポリマーを含んでよく、これはまた(A1)と(A2)との両方と異なるが、また(B1)とも異なる、結合剤としても機能する。用語「ポリマー」は、当業者に既知であり、かつ本発明の目的では、重付加物および重合体ならびに重縮合物を包含する。用語「ポリマー」は、ホモポリマーとコポリマーとの両方を含む。
【0042】
このような任意の構成成分(A5)は、好ましくは、架橋剤(B1)の架橋性官能基と架橋され得、かつ、この目的のための架橋性基を含み得る。架橋性基はまた、(A1)の場合のようにOH基であってもよいが、また、それらと異なってもよく、すなわち第一級アミノ基、第二級アミノ基、チオール基、カルボキシル基およびカルバメート基からなる群から選択され得る。好ましくは、任意に存在する構成成分(A5)は、官能性のヒドロキシル基(OH基)および/またはカルバメート基、特定するとヒドロキシル基を有する。
【0043】
任意の構成成分(A5)は、例えばOH基を追加で含み得るカルバメート官能性(メタ)アクリルコポリマーであってよい。同様に、例えばポリエーテル、ポリウレタン、天然油をベースとするポリオール、例えばVertellus Specialties Inc.,Indianapolis,Ind.から商品名Polycin(登録商標)で入手可能なもの、例えばヒマシ油をベースとするポリオールが、構成成分(A5)として使用され得る。
【0044】
構成成分(A2)としての分岐OH官能性ポリエステル
少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステル(A2)は、クリアコート塗装材料組成物中に、塗装材料組成物の総固体含有率に対して1.0wt.-%~15.0wt.-%の範囲内の量で存在する。好ましくは、少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステル(A2)は、クリアコート塗装材料組成物中に、それぞれの場合に塗装材料組成物の総固体含有率に対して、1.1wt.-%~13.5wt.-%、より好ましくは1.5wt.-%~12.5wt.-%、更により好ましくは2.0wt.-%~12.0wt.-%、なおもより好ましくは3.0~11.5wt.-%、最も好ましくは4.0~10.5wt.-%の範囲内の量で存在する。
【0045】
好ましくは、少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステル(A2)は、ポリエステルポリオールである。好ましくは、少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステル(A2)は2つ超のOH基を有する。
【0046】
好ましくは、少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステル(A2)は、加えて、カルボン酸基を含む。好ましくは、少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステル(A2)は、20mgKOH/g未満のポリエステル固体の酸価を有し、より好ましくは3~15mgKOH/gのポリエステル固体の酸価を有し、更により好ましくは5~12mgKOH/gの範囲内のポリエステル固体の酸価を有する。
【0047】
好ましくは、少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステル(A2)は、100~145mgKOH/gの範囲内のポリエステル固体のOH価を有し、より好ましくは115~130mgKOH/gの範囲内のポリエステル固体のOH価を有する。
【0048】
本発明の塗装材料組成物中の構成成分(A2)としての使用に好適なポリエステルは、例えばWO2016/008655 A1に開示されている。
【0049】
構成成分(A2)としての少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステルは、工程(a)、(b)および(c)、すなわち、
(a)少なくとも3つのOH基を含む少なくとも1種のポリオールを、6~36個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸および/またはその無水物および/またはそのエステルと反応させて、OH官能性第1の中間体生成物を形成する工程と、
(b)工程(a)から得た第1の中間体生成物を、少なくとも1種の環状カルボン酸無水物と反応させて、カルボン酸官能性第2の中間体生成物を形成する工程と、
(c)工程(b)から得た第2の中間体生成物を、1つのエポキシド基を有する少なくとも1種のエポキシド官能性化合物と反応させて、分岐OH官能性ポリエステルを形成する工程と
を実施することによって得られうる。
【0050】
構成成分(A2)の製造-工程(a)
6~36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸および/またはその無水物および/またはそのエステルは、直鎖、分岐または環状であってよく、これにより、環状ジカルボン酸は、最も好ましくは、少なくとも約6個の炭素原子の非環状セグメントを含む。
【0051】
好適なジカルボン酸の非限定的な例としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸(ブラシル酸)、ドデカン二酸、トラウマチン酸、ヘキサデカン二酸(タプシン酸)、オクタデカン二酸、テトラデカン二酸、および36個の炭素原子を有する二量体脂肪酸が挙げられる。様々な実施形態では、α,ω-ジカルボン酸および36個の炭素原子を有する二量体脂肪酸が好ましい。36個の炭素原子を有する二量体脂肪酸が複数の異性体を有し得ることが既知である。二量体脂肪酸は、例えばBASFから商品名EMPOL(登録商標)で、Arizona Chemicalから商品名UNIDYME(商標)で、Croda International Plcから商品名Pripol(商標)で、かつEmery OleochemicalsからEMERY(登録商標)Dimer Acidsとして市販されている。二量体脂肪酸の生産では、少量の単量体脂肪酸、ならびにまた、三量体脂肪酸および高級脂肪酸を依然として含有する生成物を得ることが一般に避けられない。好ましい二量体脂肪酸は、最少量のみの単量体脂肪酸および三量体または高級脂肪酸を含有するものである。
【0052】
6~36個の炭素原子を有するジカルボン酸の無水物および/またはエステルとしては、1~4個の炭素原子を有する脂肪族アルコールとのそれらのモノエステルまたはジエステル、好ましくは、メチルエステルおよびエチルエステル、ならびに無水物が挙げられる。用語「無水物」は、それらの分子内無水物および分子間無水物を含む。分子間無水物としては、例えば、前述したジカルボン酸分子のうちの2つのカルボキシル基および前述したジカルボン酸の無水物の、塩酸等の無機酸との縮合反応によって形成された無水物が挙げられる。
【0053】
6~36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸は、少なくとも3つのヒドロキシル基を含むポリオールと反応させる。ポリオールのヒドロキシル基は、第一級、第二級および/または第三級ヒドロキシル基であり得る。
【0054】
ポリオールは、トリオール、トリオールの二量体、テトロール、テトロールの二量体、テトロールの三量体、および糖アルコールからなる群から選択され得る。3つ以上のヒドロキシル基を有する好適なポリオールの非限定的な例としては、グリセロール、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2,2,3-トリメチロールブタン-1,4-ジオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、トリグリセロールまたはグリセロールの高級縮合物、ジ(トリメチロールプロパン)、ジ(ペンタエリスリトール)、トリ(ペンタエリスリトール)、ペンタエリスリトールエトキシレート、ペンタエリスリトールプロポキシレート、トリスヒドロキシメチルイソシアヌレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)、トリス(ヒドロキシプロピル)イソシアヌレート、イノシトール、または糖、例えばグルコース、フルクトースまたはスクロース、例えば、糖アルコール、例えばキシリトール、ソルビトール、マンニトール、スレイトール、エリスリトール、アドニトール(リビトール)、アラビトール(リキシトール)、キシリトール、ズルシトール(ガラクチトール)イソマルト、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドと反応する3つの官能価を有するアルコールに対して3つ以上の官能価を有するポリエテロールが挙げられる。
【0055】
好ましくは、工程(a)の第1のポリオールは、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、グリセロール、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールエトキシレートおよびペンタエリスリトールプロポキシレートからなる基のうちの少なくとも1つである。
【0056】
好ましくは、構成成分(A2)としての少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステルを製造する工程(a)では、ポリオールのモルの、ジカルボン酸および/またはその無水物および/またはそのエステルのモルに対する比は、ジカルボン酸および/またはその無水物および/またはそのエステル1モル当たり2.0~2.2モル、より好ましくは2.0~2.07モルのポリオールである。特に好ましくは、各ポリオール分子の平均して1つのヒドロキシル基を、工程(a)においてジカルボン酸と反応させる。
【0057】
エステル化の工程(a)は、既知の標準的な方法によって実施され得る。例えば、この反応は、従来、約60℃から約280℃の間の温度にて、所望であれば適当なエステル化触媒の存在下で実施される。エステル化重合のための典型的な触媒は、プロトン酸およびルイス酸、例えば硫酸、パラ-トルエンスルホン酸、スルフェートおよび硫酸水素、例えば硫酸水素ナトリウム、リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸、チタンアルコキシド、およびジアルキルスズオキシド、例えばジブチルスズオキシド、ジラウリン酸ジブチルスズ、オクタン酸リチウム、同調因子として少量の好適な溶媒を伴う還流下で、例えば芳香族炭化水素、例えばキシレン、または(シクロ)脂肪族炭化水素、例えばシクロヘキサンである。非限定的な特定の例として、ポリエステルとしては、オクチル酸スズまたはジブチルスズオキシドが挙げられる。酸性の無機の触媒、有機金属触媒または有機触媒は、反応物の総質量に対して、0.1質量%~10質量%、好ましくは0.2質量%~2質量%の量で使用され得る。それに続く工程中の副反応を回避する、または最小化するために、触媒を含まない反応の工程(a)を実施することが望ましいことがある。
【0058】
工程(a)のエステル化は、バルクで実施されてもよく、または反応物に向かって非反応性である溶媒の存在下で実施されてもよい。このような溶媒は、好ましくは非プロトン性溶媒である。好適な溶媒の非限定的な例としては、炭化水素、例えばパラフィンまたは芳香族が挙げられる。いくつかの実施形態では、n-ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、オルト-キシレン、メタ-キシレン、パラ-キシレン、キシレン異性体混合物、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ならびにオルト-およびメタ-ジクロロベンゼンを使用することが好ましい場合がある。酸性触媒の不在下で使用され得る他の溶媒は、エーテル、例えばジオキサンテトラヒドロフラン、ならびにケトン、例えばメチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンである。溶媒は、エステル化反応の副生成物を、共沸蒸留により除去するのを支援するために使用され得る。
【0059】
使用され得る溶媒の量は、出発反応物の質量に対して、少なくとも0.1質量%、または少なくとも1質量%、または少なくとも5質量%であってよい。より高量の溶媒が使用されてもよいが、反応物の濃度を、商業的に実行可能な時間の長さにおいて実施されることになる反応を可能にするのに十分高く保つことが好ましい。利用され得る溶媒の範囲の例は、それぞれの場合に出発反応物の質量に対して、0.1質量%~約20質量%、または約1質量%~約15質量%、または約5質量%~約10質量%である。
【0060】
反応は、水除去剤、例えばモレキュラーシーブ、特にモレキュラーシーブ4Å、MgSO4およびNa2SO4の存在下で実施され得る。
【0061】
工程(a)の反応は、好ましくは、60℃~250℃の温度にて、より好ましくは100℃~240℃の温度にて実施される。更により好ましくは、工程(a)の反応は、150℃~235℃の温度にて実施される。反応時間は、反応物の温度、濃度、および存在する場合には触媒の存在および同一性を含めた既知の要因に依存する。典型的な反応時間は、約1~約20時間であり得る。
【0062】
最終の揮発性有機含有率を最小化するために、工程(a)からの副生成物を共沸するのに使用される溶媒の、実用的であるほど多くが、工程(a)の反応の完了後に除去され得る。最終の樹脂中のそれらの能力で選択される少量の溶媒が、合成の残りを通じて、例えば試薬の添加に従ったフラッシュとして使用され得る。無水物またはエポキシド、例えばヒドロキシ官能性溶媒(例えばアルコールおよびグリコールのモノエーテル)のような活性水素含有化合物と反応することができる溶媒は、工程(a)とそれに続く反応の工程との両方の間、好ましくは回避される。工程(a)の後、反応温度は、縮合型エステル化反応が起こり得る温度未満に好ましくは保持され、例えば150℃未満に保持され、これは、合成の残りが、合成のこの段階後に分子量および構造に対する望ましくない効果を有すると考えられる縮合型エステル化反応の機会を最小にするためである。例えば、更なるエステル化が、望ましくない分岐または非所望に増加した分子量を生成し得る。工程(a)の後、かつ工程(b)を実施する前の温度は、工程(a)の間に触媒が使用されるかどうかに応じて、かつ使用される任意の触媒の性質に応じて、145℃未満、好ましくは140℃未満、または更には135℃未満、または130℃未満に保たれ得る。
【0063】
構成成分(A2)の製造-工程(b)
環状カルボン酸無水物は、ヒドロキシル官能性第1の中間体生成物のヒドロキシル基のうちの少なくとも1つと反応して、少なくとも1つのカルボキシル基を有する第2の中間体組成物を形成する。好ましくは、環状カルボン酸無水物は、第1の中間体生成物のヒドロキシル基のうちの全てまたは実質的に全てと反応させて、第2の中間体生成物を形成する。工程(b)において反応させる環状カルボン酸無水物は、芳香族環状無水物または脂肪族環状無水物のいずれかであってよい。
【0064】
好ましくは、環状カルボン酸無水物は、マレイン酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、フタル酸無水物、コハク酸無水物、トリメリット酸無水物、メチルテトラヒドルフタル酸無水物、アジピン酸無水物、グルタル酸無水物、マロン酸無水物、イタコン酸無水物、5-メチル-5-ノボルネンジカルボン酸無水物、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、イサト酸無水物、ジフェン酸無水物、置換された無水物、特に含まれるのは低級アルキル置換酸無水物、例えばブチルコハク酸無水物、ヘキシルコハク酸無水物、オクチルコハク酸無水物、ブチルマレイン酸無水物、ペンチルマレイン酸無水物、ヘキシルマレイン酸無水物、オクチルマレイン酸無水物、ブチルグルタル酸無水物、ヘキシルグルタル酸無水物、ヘプチルグルタル酸無水物、オクチルグルタル酸無水物、アルキルシクロヘキサンジカルボン酸無水物、およびアルキルフタル酸無水物、例えば4-n-ブチルフタル酸無水物、ヘキシルフタル酸無水物およびオクチルフタル酸無水物のうちの少なくとも1種である。
【0065】
更により好ましくは、カルボン酸無水物は、ヘキサヒドロフタル酸無水物を含む、またはヘキサヒドロフタル酸無水物である。
【0066】
工程(b)の反応は、工程(a)のヒドロキシル官能性第1の中間体生成物と反応させた環状カルボン酸無水物の各分子についてのカルボン酸基を有する第2の中間体生成物を付与する。好ましくは、環状カルボン酸無水物の、第1の中間体生成物に対する当量比は、ヒドロキシル基の1当量当たり0.8~1.0当量、より好ましくは0.85~1.0当量、最も好ましくは0.9~1.0当量の無水物基である。特に好ましくは、ヘキサヒドロフタル酸無水物の1つの分子または実質的に1つの分子は、第1の中間体生成物の各ヒドロキシル基と反応して、第2の中間体生成物を形成する。ヒドロキシル官能性第1の中間体生成物の実質的に全てのヒドロキシル基が、カルボン酸無水物と反応して、ヒドロキシル基と、環状無水物の開環からのカルボン酸基とのエステルを付与することが最も好ましい。
【0067】
好ましくは、構成成分(A2)としての少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステルを製造する工程(b)において、第1の中間体生成物のヒドロキシル基の、環状カルボン酸無水物の無水物基に対する当量比は、カルボン酸無水物基1つ当たり1.0~1.25当量のヒドロキシル基である。
【0068】
工程(b)の無水物開環反応は、発熱性である。その反応温度は、カルボン酸無水物反応物の添加を2つ以上の添加部分へと分けることによって、例えば約150℃を超えないように、調整され得る。例えば、第1の添加部分は、カルボン酸無水物の約3分の1~約2分の1であってよく、第2の部分は、工程(b)において反応させたカルボン酸無水物の平衡であってよい。反応混合物の温度は、各部分が添加される前に、約90℃~95℃まで冷却することが可能とさせ得る。第1の部分が添加された後、反応混合物は、約110℃~115℃以上まで加熱されてよく、反応混合物の温度を上向きにすることを可能とさせ得る発熱をもたらすが、標的の、最大、例えば150℃は超えない。発熱後、反応混合物は、第2の無水物の添加のために、約90℃~95℃まで冷却され得る。同様に、第2の無水物の添加が完了した後、反応混合物は約110℃~115℃以上まで加熱させてよく、その後、反応発熱(および必要な場合、追加の加熱)が用いられて、反応混合物の温度を、最大で、例えば約135℃~約145℃、または約140℃~約145℃まで持ち込み、ここで、反応混合物は、反応が完了することを可能にするよう保たれる。ここでも、バッチは、好ましくは、150℃を超えるべきでない。
【0069】
構成成分(A2)の製造-工程(c)
第3の工程(c)では、第2の中間体生成物の、好ましくは少なくとも2つのカルボン酸基から全てのカルボン酸基までを、1つのエポキシド基を有するエポキシド官能性化合物(すなわちモノエポキシド化合物)と反応させて、高分岐ポリエステルポリオールを形成する。
【0070】
モノエポキシド化合物は、当技術分野で周知であり、一般式:
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素、または有機基であり、ただし条件として、R
1~R
4のうちの少なくとも1つは、水素以外であり、かつ不飽和またはヘテロ原子を含有してよく、またはR
1~R
4のうちの2つは、環状の環を形成してよく、これは不飽和またはヘテロ原子を含有してよい)
によって特徴付けられ得る。
【0071】
上の式の特に好ましいモノエポキシドは、式中、R1=CH2-O-(C=O)n-Ra(式中、nは、0または1であり、Raは、1~30個、好ましくは1~20個、より好ましくは1~16個、最も好ましくは4~14個、または更により好ましくは6~12個もしくは8~10個の炭素原子を有する、分岐または直鎖、飽和または不飽和の炭化水素残基である)であり、R2=R3=R4=Hであるものである。n=1である場合、該式は、グリシジルエステルを示し、n=0である場合、該式はグリシジルエーテルを示す。
【0072】
例えば、エポキシド官能性化合物は、エポキシエステル、特にグリシジルエステルであってよい。グリシジルエステルは、単官能性カルボン酸をエピハロヒドリン(例えばエピクロロヒドリン)と、当技術分野で周知の条件下で反応させることによって製造され得る。グリシジルエステルの例は、酢酸グリシジル、プロピオン酸グリシジル、メチルマレイン酸グリシジル、ステアリン酸グリシジル、安息香酸グリシジルおよびオレイン酸グリシジルである。有用なグリシジルエステルの中では、7~17個の炭素原子を有するアルキル基を有するものがある。特に好ましいグリシジルエステルは、9~11個の炭素原子を有する飽和第三級モノカルボン酸のグリシジルエステルである。好ましくは、グリシジルエステルを生成するために使用される単官能性カルボン酸は、ネオアルカン酸、例えば、限定なしに、ネオデカン酸またはネオノナン酸である。ネオ酸のグリシジルエステルは、例えばMomentive Specialty Chemicals,Inc.,Columbus,Ohioから商品名Cardura(登録商標)で市販されている。
【0073】
モノエポキシドの別の有用な部類は、グリシジルエーテルである。グリシジルエーテルは、単官能性アルコール(例えば、n-ブタノール、プロパノール、2-エチルヘキサノール、ドデカノール、フェノール、クレソール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)の、エピハロヒドリン(例えばエピクロロヒドリン)との反応によって製造され得る。有用なグリシジルエーテルとしては、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ペンチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、ヘプチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、ノニルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、ペンタデシルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、ヘプタデシルグリシジルエーテル、オクタデシルグリシジルエーテル、ノナデシルグリシジルエーテル、エイコシルグリシジルエーテル、ベネイコシルグリシジルエーテル、ドコシルグリシジルエーテル、トリコシルグリシジルエーテル、テトラコシルグリシジルエーテル、ペンタコシルグリシジルエーテル、デセニルグリシジルエーテル、ウンデセニルグリシジルエーテル、テトラデセニルグリシジルエーテル、ヘキサデセニルグリシジルエーテル、ヘプタデセニルグリシジルエーテル、オクタデセニルグリシジルエーテル、ノナデセニル
グリシジルエーテル、エイコセニルグリシジルエーテル、ベネイコセニルグリシジルエーテル、ドコセニルグリシジルエーテル、トリコセニルグリシジルエーテル、テトラコセニルグリシジルエーテルおよびペンタコセニルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0074】
工程(c)における、第2の中間体生成物のカルボン酸基の、エポキシド官能性化合物のエポキシド基に対する当量比は、エポキシド基1当量当たり1.0~2.5当量、または1.0~2.0当量、または1.0~1.5当量、または1.0~1.3当量、または1.0~1.1当量のカルボン酸である。カルボン酸基のエポキシド基に対する当量の好ましい範囲は多様であるが、その実施形態が、溶剤系塗装組成物についてであるか、水系塗装組成物であるかに応じて多様となる。
【0075】
好ましくは、第2の中間体生成物の全てのまたは実質的に全てのカルボキシル基を、モノエポキシド化合物と反応させる。
【0076】
構成成分(B1)としての架橋剤
構成成分(B1)としての架橋剤は、構成成分(A1)と(A2)との両方と異なり、かつOH官能基と少なくとも架橋され得る架橋性官能基を含有する。好ましくは、架橋剤の架橋性官能基は、少なくとも構成成分(A1)のOH基と、かつ任意にまた構成成分(A2)のOH基と、架橋するのに好適である。
【0077】
好適な架橋剤(B1)は、活性メチロール、メチルアルコキシまたはブチルアルコキシの各基、ポリイソシアネート架橋剤を有するアミノプラスト架橋剤であり、これは、ブロックされたまたは非ブロックの(遊離の)イソシアネート基、ポリ無水物およびポリエポキシド官能性架橋剤または硬化剤を有してよく、これは、(A1)のヒドロキシルと、かつ(A2)のヒドロキシル基および/またはカルボン酸基と、反応性であり得る。
【0078】
アミノプラストまたはアミノ樹脂は、当業者には既知である。アミノプラストは、活性窒素の、低分子量アルデヒドとの反応によって、任意に、アルコール(好ましくは、1~4個の炭素原子を有するモノアルコール、例えばメタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノールなど)との更なる反応によって得られ、エーテル基を形成する。活性窒素の好ましい例は、活性アミン、例えばメラミン、ベンゾグアナミン、シクロヘキシルカルボグアナミンおよびアセトグアナミン;尿素それ自体、チオ尿素、エチレン尿素、ジヒドロキシエチレン尿素およびグアニル尿素を含めた尿素;グリコールウリル;アミド、例えばジシアンジアミド;および少なくとも1つの第一級カルバメート基または少なくとも2つの第二級カルバメート基を有するカルバメート官能性化合物である。活性窒素は、低分子量アルデヒドと反応させる。アルデヒドは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド、またはアミノプラスト樹脂を作製するのに使用される他のアルデヒドから選択され得るが、ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドから選択されてよく、ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒド、特にホルムアルデヒドが好ましい。活性窒素基は、アルデヒドで少なくとも部分的にアルキロール化され、完全にアルキロール化されてよく;好ましくは、活性窒素基は、完全にアルキロール化される。反応は、酸によって触媒され得る。
【0079】
活性窒素のアルデヒドとの反応によって形成された任意のアルキロール基は、1種以上の単官能性アルコールと、部分的にまたは完全にエーテル化され得る。単官能性アルコールの好適な例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブチルアルコール、ベンジルアルコールなどが挙げられるがこれらに限定されない。1~4個の炭素原子を有する単官能性アルコールおよびこれらの混合物が好ましい。アミノプラストは、少なくとも部分的にエーテル化されてよく、様々な実施形態では、アミノプラストは、完全にエーテル化される。例えば、アミノプラスト化合物は、複数のメチロールおよび/またはエーテル化メチロール、ブチロールまたはアルキロールの各基を有してよく、これらは、任意の組み合わせにおいて、かつ非置換窒素水素を伴って存在し得る。好適な硬化剤化合物の例としては、モノマーまたはポリマーメラミン樹脂を含めたメラミンホルムアルデヒド樹脂、ならびに部分的にまたは完全にアルキル化されたメラミン樹脂、ならびに尿素樹脂(例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂等のメチロール尿素、およびブチル化尿素ホルムアルデヒド樹脂等のアルコキシ尿素)が挙げられるがこれらに限定されない。完全にエーテル化されたメラミン-ホルムアルデヒド樹脂の1つの非限定的な例は、ヘキサメトキシメチルメラミンである。
【0080】
アルキロール基は、自己反応して、オリゴマーおよびポリマーアミノプラスト架橋剤を形成することが可能である。有用な材料は、重合度によって特徴付けられる。メラミンホルムアルデヒド樹脂では、約2000未満、より好ましくは1500未満、更により好ましくは1000未満の数平均分子量を有する樹脂を使用することが好ましい。
【0081】
アミノプラスト架橋剤を含めた塗装組成物は、硬化性反応を増強させるための強酸触媒を更に含んでよい。このような触媒は、当技術分野で周知であり、例えば、パラ-トルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェニル酸ホスフェート、マレイン酸モノブチル、リン酸ブチルおよびリン酸ヒドロキシエステルが挙げられる。強酸触媒は、例えばアミンでブロックされることが多い。
【0082】
特に再仕上げ塗装のために、ポリイソシアネート架橋剤が一般に使用される。好適なポリイソシアネート架橋剤の例としては、アルキレンポリイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、4-および/または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチル-シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、2,4’-および/または4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、3-イソシアナト-メチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、例えば2,4’-および/または4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4-および/または2,6-ジイソシアナトトルエン、ナフチレンジイソシアネート、およびこれらのポリイソシアネートの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。一般に、3つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートが好ましくは使用され、これらはジイソシアネートの誘導体または付加物であり得る。有用なポリイソシアネートは、過剰量のイソシアネートの、水、ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、グリセリン、ソルビトールもしくはペンタエリスリトール)との反応により、またはイソシアネートの、それ自体との反応により、イソシアネートを付与することによって、得られうる。例としては、ビウレット基含有ポリイソシアネート、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート、ウレタン基含有ポリイソシアネート、カルボジイミド基含有ポリイソシアネート、アロファネート基含有ポリイソシアネートおよびウレトジオン基含有ポリイソシアネートが挙げられる。
【0083】
ウレタン反応のための硬化性触媒、例えばスズ触媒が、塗装組成物中で使用され得る。典型的な例は、ジラウリン酸ジブチルスズ、酸化ジブチルスズおよびオクタン酸ビスマスを含めたスズおよびビスマス化合物であるが、これらに限定されない。使用されるとき、触媒は、典型的には、不揮発性の総含有率の質量に対して、約0.05~2質量パーセントのスズの量で存在する。
【0084】
好ましくは、構成成分(B1)として存在する少なくとも1種の架橋剤は、好ましくは非ブロックである、2つ以上のNCO基を有するポリイソシアネートである。この場合、本発明の塗装材料組成物は、当然ながら、2K塗装材料組成物である。
【0085】
更なる任意の構成成分
本発明の塗装材料組成物は、所望の用途に応じて、1種以上の通常使用される添加剤を含有してよい。例えば、塗装材料組成物は、反応性希釈剤、光安定剤、抗酸化剤、脱気剤、乳化剤、スリップ添加剤、重合抑制剤、可塑剤、フリーラジカル重合用の開始剤、接着促進剤、流動性調整剤、成膜補助剤、垂れ抑制剤(sag control agent(SCA))、難燃剤、腐食抑制剤、乾燥剤、殺生物剤、増粘剤および/またはマット剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含んでよい。それらは、既知の、かつ通例の割合で使用され得る。好ましくは、それらの含有率は、塗装材料組成物の総質量に対して、0.01~20.0wt.-%、より好ましくは0.05~15.0wt.-%、特に好ましくは0.1~10.0質量%、最も好ましくは0.1~7.5質量%、特に0.1~5.0質量%、最も好ましくは0.1~2.5質量%である。
【0086】
塗装材料組成物の製造は、通例の、既知の製造方法および混合方法、ならびに混合ユニットを用いて、または従来の溶解機および/または撹拌機を用いて実施され得る。
【0087】
本発明の方法
本発明の更なる主題は、基材を塗装する方法であって、該方法は、任意に予め塗装された基材に本発明のクリアコート塗装材料組成物を、好ましくはスプレー塗布を介して塗布して、少なくとも1つの塗膜を、任意に予め塗装された基材上に形成する少なくとも1つの工程と、少なくとも1つの該塗膜を硬化して、少なくとも1つの硬化塗装層を該基材上に得る少なくとも1つの更なる工程とを含む、方法。
【0088】
本方法は、自動車のOEM仕上げのために用いられ得るが、また、自動車の塗り替え塗布のためにも使用され得る。
【0089】
本発明の塗装材料組成物との関連で本明細書で上に記載された全ての好ましい実施形態はまた、前述した本発明の方法に関する好ましい実施形態でもある。
【0090】
好ましくは、本発明の方法は、少なくとも工程(1)、(2)および(3)、すなわち、
(1)ベースコート塗装材料組成物を、任意に予め塗装された基材上に塗布して、任意に予め塗装された基材上に第1の塗膜を形成する工程と、
(2)第2の塗装材料組成物を、第1の塗膜を硬化する前に、工程(1)後に得られた基材上に存在する第1の塗膜に塗布して、第1の塗膜に隣接する第2の塗膜を形成する工程であって、第2の塗装材料組成物が本発明のクリアコート塗装材料組成物である、工程と、
(3)第1の塗膜と第2の塗膜とを合わせて硬化する工程であって、硬化された第2の塗膜が、形成された多層塗装系の最外層であり、硬化された第1の塗装層および第2の塗装層を得る、工程と
を含む、
多層塗装系を、任意に予め塗装された基材上に製造する方法である。
【0091】
好ましくは、少なくとも工程(2)、より好ましくはまた工程(1)も、スプレー塗布を介して実施される。
【0092】
任意に予め塗装された基材上に形成された第1の塗膜は、この段階で、未硬化塗膜である。そのため、第1の塗装材料組成物と第2の塗装材料組成物との両方が、ウェットオンウェットで塗布される。
【0093】
本発明の方法は、それぞれの金属基材を含めた、自動車の車体またはそれらの部品の塗装に特に好適であるが、また、ポリマー基材等のプラスチック基材にも好適である。結果として、好ましい基材(基板:substrate)は、自動車の車体またはそれらの部品である。
【0094】
本発明に従って使用される金属基材として好適なのは、通例、使用され、当業者に既知である全ての基材である。本発明によって使用される基材は、好ましくは、金属基材、より好ましくは、鋼;好ましくは、むきだしの鋼、冷延鋼板(cold rolled steel(CRS))、熱延鋼板、亜鉛めっき鋼、例えば溶融亜鉛めっき鋼(hot dip galvanized steel(HDG))、合金亜鉛めっき鋼(例えば、Galvalume(登録商標)、GalvannealedまたはGalfan)およびアルミニウム系めっき鋼、アルミニウムとマグネシウムとの合金、ならびにまたZn/Mg合金およびZn/Ni合金からなる群から選択される鋼からなる群から選択される。特に好適な基材は、自動車の車体の部品、または完成した車体の製造用である。
【0095】
好ましくは、熱可塑性ポリマーが、プラスチック基材として使用される。好適なポリマーは、ポリ(メタ)アクリレートであり、含まれるのは(メタ)アクリル酸ポリメチル、(メタ)アクリル酸ポリブチル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリビニリデンフルオリド、ポリ塩化ビニル、ポリエステルであり、含まれるのはポリカーボネートおよび酢酸ポリビニル、ポリアミド、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、およびまたポリブタジエン、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリアクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレンコポリマー(A-EPDM)、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリルエステルコポリマー)およびABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー)、ポリエーテルイミド、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、含めるのはTPU、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、およびこれらの混合物である。ポリカーボネートおよびポリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0096】
本発明に従って使用される基材は、好ましくは、少なくとも1種の金属リン酸塩、例えばリン酸亜鉛で予処理された金属基材である。基材が洗浄された後、かつ基材が電着塗装される前に通常起こるリン酸化の手段によるこの種類の予処理は、特に自動車工業において通例である予処理の工程である。
【0097】
上に要約したように、使用される基材は、予め塗装された基材、すなわち少なくとも1つの硬化塗膜を保持する基材であってよい。工程(1)において使用される基材は、硬化電着塗装層を用いて予め塗装され得る。基材は、例えば、少なくとも1つの追加のプレコートとしての少なくとも1つの硬化プライマー塗膜を伴っても付与され得る。用語「プライマー」は、当業者に既知である。プライマーは、典型的には、基材が、硬化電着塗装層を伴って付与された後に塗布される。硬化プライマー塗膜もまた存在する場合、硬化電着塗膜はその下に、好ましくは硬化プライマー塗膜に隣接して存在する。
【0098】
好ましくは、本発明の方法は、工程(1a)を更に含み、これは、工程(1)の後、工程(2)の前に実施される。前記工程(1a)では、工程(1)の後に得られた第1の塗膜は、工程(2)において第2の塗装材料組成物を塗布する前に、好ましくは1~20分の間、より好ましくは2~15分の間、特定すると5~10分の間、蒸散される。好ましくは、工程(1a)は、40℃を超えない温度にて、より好ましくは、18~30℃の範囲内の温度にて実施される。
【0099】
本発明の意味における用語「蒸散」は、溶媒および/または水のうちの少なくともいくつかが、次の塗装材料組成物が塗布される前に、かつまたは硬化が実施される前に、塗膜から(すなわち形成されている塗装層から)蒸発される、脱水を意味する。硬化は、蒸散によっては全く実施されない。
【0100】
好ましくは、本発明の方法は工程(2a)を更に含み、これは、工程(2)の後、かつ工程(3)の前に実施される。前記工程(2a)では、工程(2)の後に得られた第2の塗膜は、硬化する工程(3)を実施する前に、好ましくは1~20分の間、より好ましくは2~15分の間、特定すると5~10分の間、蒸散される。好ましくは、工程(2a)は、40℃を超えない温度にて、より好ましくは18~30℃の範囲内の温度にて実施される。
【0101】
本発明の方法の工程(3)では、第1の塗膜と第2の塗膜とは合わせて硬化され、すなわち同時に一緒に硬化される。硬化された第2の塗膜は、工程(3)の後で得られる、形成された多層塗装系の最外層を表す。
【0102】
それぞれの得られた硬化塗膜は、塗膜層を表す。そのため、工程(3)を実施した後、第1のおよび第2の塗装膜が、任意に予め塗装された基材上に形成され、第2の層は、形成された多層塗装系の最外層である。
【0103】
好ましくは、工程(3)は、110℃未満、好ましくは105℃未満の温度にて実施され、特定すると15~75℃、または15~65℃の範囲内の温度にて、5~45分の間、好ましくは20~45分の間、特定すると25~35分の間、実施される。
【0104】
本発明の塗装基材
本発明の更なる主題は、本発明の方法によって得られうる塗装基材である。
【0105】
本発明の塗装材料組成物および本発明の方法との関連で本明細書で上に記載された全ての好ましい実施形態はまた、前述した本発明の塗装基材に関する好ましい実施形態でもある。
【0106】
本発明の使用
本発明の更なる主題は、上に定義した、かつ本明細書で後に更に定義する、少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステル(A2)を、前記クリアコート塗装材料を任意に予め塗装された基材上にスプレー塗布するためのクリアコート塗装材料の塗布物中の流動促進剤として、かつ/またはレベリング剤として、使用する方法である。
【0107】
好ましくは、少なくとも1種の分岐OH官能性ポリエステルは、本発明のクリアコート塗装材料の塗布物中に存在する。
【0108】
本発明の塗装材料組成物、本発明の方法および本発明の塗装基材との関連で本明細書で上に記載された全ての好ましい実施形態はまた、前述した本発明の使用に関する好ましい実施形態でもある。
【0109】
方法
1.不揮発性画分
不揮発性画分(固体または固体含有量)は、ASTM D-2369(日付:2010年7月)に準拠して決定される。これは、0.3gのサンプルを、事前に乾燥させたアルミニウム皿中に秤量し、サンプルを有する皿を乾燥キャビネット中で110℃にて60分間乾燥させ、それをデシケータ中で冷却し、次いで再秤量することを含む。利用されるサンプルの総量に対する残留物が、不揮発性画分に相当する。
【0110】
2.DOIおよび外観
DOI(イメージの識別性)、表面における反射により生成された対象物のイメージの鮮明さによって特徴付けられる光沢のアスペクトが、ASTM E 284-17に準拠して測定される。最高かつ最良のレーティングは10である。測定されたDOIが、ダイバックの発生に起因して≦7(角度20°)であるとき、外観は、許容されないものと考えられる。
【実施例】
【0111】
以下の実施例は、本発明を更に例示するが、本発明の範囲を限定するものとは解釈されない。
【0112】
1.本発明で使用する分岐ポリエステルポリオールの製造
工程(a)
反応器に、12.01質量部のトリメチロールプロパン、6.30質量部のアジピン酸および1.13質量部の混合キシレンを装入した。反応器の含有物を混合し、230℃に加熱した。副生成物の水を、それが生じたときに除去し、温度を200℃超に約5時間維持し、次いで、できるだけ多くのキシレンを除去し、反応生成物(第1の中間体生成物)を90℃に冷却した。
【0113】
工程(b)
次いで、反応器に、8.39質量部の溶融ヘキサヒドロフタル酸無水物(60℃)および4.52質量部のエチル3-エトキシプロピオネートを添加した。反応器の含有物を撹拌し、115℃に加熱した。発熱がピークに達した後(温度を150℃未満に保ち)、反応器の含有物を136℃に加熱し、次いで再び90℃に冷却し、追加の16.78質量部の溶融ヘキサヒドロフタル酸無水物(60℃)を添加し、続いて1.42質量部のエチル3-エトキシプロピオネートをフラッシュした。反応器の含有物を撹拌し、115℃に加熱した。発熱がピークに達した後(温度を150℃未満に保ち)、反応器の含有物を145℃に加熱した。温度を145℃に90分間維持し、次いで140℃に冷却した。こうして、第2の中間体を形成した。
【0114】
工程(c)
温度を140℃から148℃の間に保ち、37.40質量部のCardura(商標)E10-Pを約90分にわたって添加し、続いて1.42質量部のエチル3-エトキシプロピオネートをフラッシュした。反応混合物を145℃に3時間保ち、次いで冷却し、5.32質量部のAromatic100および5.31質量部の酢酸n-ブチルで希釈した。こうして、超分岐ポリエステルポリオール(PP)溶液(80wt.-%固体)を得た。
【0115】
2.クリアコート材料塗装組成物の製造
2.1 比較例C1を製造するための「A」成分
比較例C1を製造するための「A」成分を、表2.1に列挙した構成成分をこの順序で混合して製造した。「pbw」は質量部を意味する。
【0116】
【0117】
Solus(登録商標)2300は、Eastman社から入手可能なセルロース系の市販製品である。ヒマシ油系ポリオールは、365mgKOH/gのOH価を有し、かつ市販されている。HALSは、市販のヒンダードアミン系光安定剤である。(メタ)アクリル樹脂1分散液は、約50wt.-%の固体含有率、約75℃の計算値Tg(ガラス転移温度)、および約400gの固体/当量-OHの計算値ヒドロキシル当量質量を有するOH官能性(メタ)アクリル樹脂の有機溶媒分散液である。(メタ)アクリル樹脂2分散液は、約69wt.-%の固体含有率、約64℃の計算値Tg、および約449gの固体/当量-OHの計算値ヒドロキシル当量質量を有するOH官能性(メタ)アクリル樹脂の有機溶媒分散液であり、該分散液は、p-クロロベンゾトリフルオリド(PCBTF)を含有し、PCBTFは、分散液中に、分散液中に存在する全ての溶媒の総質量に対して42wt.-%の量で存在する。(メタ)アクリル樹脂3分散液は、約43wt.-%の固体含有率、約74℃の計算値Tg、および約645gの固体/当量-OHの計算値ヒドロキシル当量質量を有するOH官能性(メタ)アクリル樹脂の有機溶媒分散液である。
【0118】
2.2 本発明の実施例I1を製造するための「A」成分
本発明の実施例I1を製造するための「A」成分を、表2.1に列挙した構成成分をこの順序で混合して製造した。その後、項目1に記載した4.86質量部の分岐ポリエステルポリオール溶液を追加で添加した。
【0119】
2.3 クリアコート塗装材料組成物C1(比較)
上で項目2.1に記載した「A」成分を、「B」成分としてのポリイソシアネート硬化剤と、混合容積比2:1(「A」:「B」)を用いて混合した。HDI系ポリイソシアネート硬化剤の分散液(54~56wt.-%の固体含有率)を、硬化剤「B」成分として使用した。したがって、95.14質量部の「A」成分を、51.13質量部の「B」成分と混合した。その後、得られた組成物を、1種以上の有機溶媒を含有する希釈成分を活用して、スプレー可能な粘度へと、最大で20vol.-%希釈した(Ford#4カップ中14~18mPa・s)。得られた比較例C1は、34~38wt.-%の総固体含有量を有した。
【0120】
2.4 クリアコート塗装材料組成物I1(本発明)
上で項目2.2に記載した「A」成分を、「B」成分としてのポリイソシアネート硬化剤と、混合容積比2:1(「A」:「B」)を用いて混合した。HDI系ポリイソシアネート硬化剤の分散液(54~56wt.-%の固体含有率)を、硬化剤「B」成分として使用した。したがって、100質量部の「A」成分を、53.93質量部の「B」成分と混合した。その後、得られた組成物を、1種以上の有機溶媒を含有する希釈成分を活用して、スプレー可能な粘度へと最大で20vol.-%希釈した(Ford#4カップ中14~18mPa・s)。得られた本発明の実施例I1は、34~38wt.-%の総固体含有率を有した。得られた塗装材料組成物中に存在するポリエステル(A2)の量は、組成物の総含有率に対して5.19wt.-%であった。
【0121】
2.5 比較例C2を製造するための「A」成分
比較例C2を製造するための「A」成分を、表2.2に列挙した構成成分をこの順序で混合して製造した。「pbw」は質量部を意味する。
【0122】
【0123】
Solus(登録商標)2300は、Eastmanから入手可能なセルロース系の市販製品である。1種の構成成分として使用したSolus(登録商標)2300を含有する溶液は、その使用前に、12.52質量部の酢酸メチルおよび18.79質量部のアセトンを47.10質量部のPCBTFに添加し、これらの溶媒を激しく撹拌しながら互いに混合し、18.59質量部のSolus(登録商標)2300を撹拌しながら添加し、それにより混合物の温度が125°F(51.67℃)を超えないことを確認し、3.00質量部のPCBTFを添加することによって製造した。混合物は、その中に存在する全ての構成成分が一旦完全に溶解したら、使用することができる。(メタ)アクリル樹脂1分散液、(メタ)アクリル樹脂2分散液および(メタ)アクリル樹脂3分散液は、C1およびI1を製造するための「A」成分の製造に使用した分散液である。
【0124】
2.6 本発明の実施例I2を調整するための「A」成分
本発明の実施例I2を調整するための「A」成分を、表2.3に列挙した構成成分をこの順序で混合して製造した。「pbw」は質量部を意味する。
【0125】
【0126】
表2.3に相当する本発明の実施例I2を製造するための「A」成分は、表2.2に相当する比較例C2を製造するための「A」成分に相当し、例外は、それが超分岐ポリエステルを追加で含有する(6.01質量部)ことである。分岐ポリエステルポリオール溶液は、項目1に記載したものである。
【0127】
2.7 クリアコート塗装材料組成物C2(比較)
上で項目2.5に記載した「A」成分を、「B」成分としてのポリイソシアネート硬化剤と、混合容積比4:1(「A」:「B」)を用いて混合した。HDI系ポリイソシアネート硬化剤の分散液(54~56wt.-%の固体含有率)を、硬化剤「B」成分として使用した。したがって、93.99質量分の「A」成分を、25.27質量部の「B」成分と混合した。その後、得られた組成物を、1種以上の有機溶媒を含有する希釈成分を活用して、スプレー可能な粘度へと最大で15vol.-%希釈した(Ford#4カップ中14~18mPa・s)。得られた比較例C2は、34~38wt.-%の総固体含有率を有した。
【0128】
2.8 クリアコート塗装材料組成物I2(本発明)
上で項目2.6に記載した「A」成分を、「B」成分としてのポリイソシアネート硬化剤と、混合容積比4:1(「A」:「B」)を用いて混合した。HDI系ポリイソシアネート硬化剤の分散液(54~56wt.-%の固体含有率)を、硬化剤「B」成分として使用した。したがって、100質量部の「A」成分を、27.01質量部の「B」成分と混合した。その後、得られた組成物を、1種以上の有機溶媒を含有する希釈成分を活用して、スプレー可能な粘度へと最大で15vol.-%希釈した(Ford#4カップ中14~18mPa・s)。得られた本発明の実施例I2は、34~38wt.-%の固体含有率を有した。得られた塗装材料組成物中に存在するポリエステル(A2)の量は、組成物の総固体含有率に対して9.28wt.-%であった。
【0129】
3.多層塗装系の製造
3.1 クリアコート塗装材料組成物C1を活用して得た多層塗装系MCC1
基材として硬化プライマーコートを保持する30.48×40.64センチメートル(12×16インチ)の鋼パネル、および市販の溶剤系を使用したが、水希釈性ベースコート材料(BASFから入手可能な90ラインの水系金属ベースコート)を、spraymation(登録商標)machineを介してプライマーコート上にスプレー塗布した。室温(23℃)にて最大で10分間蒸散した後、上で項目2.3に記載したその製造の後に、比較のクリアコート塗装材料組成物C1を、未硬化ベースコート膜上にウェットオンウェットで直接スプレー塗布した。ベースコートおよびクリアコートのウェットオンウェット塗布を含む塗装方法は、>90°F(>32.2°C)、および比較的高湿な条件を模して>90%相対湿度(RH)にて実施した。次いで、塗布した両方の塗膜を、30分間、60℃にて合わせて硬化し、多層塗装系MCC1で塗装した基材を得た。
【0130】
3.2 クリアコート塗装材料組成物I1を活用して得た多層塗装系MCI1
多層塗装系MCI1で塗装した基材を、MCC1について上で項目3.1に記載したのと同じ方法で得たが、例外は、比較のクリアコート塗装材料組成物C1の代わりに、本発明のクリアコート塗装材料組成物I1を、上で項目2.4に記載したその製造の後に直接使用したことである。
【0131】
3.3 クリアコート塗装材料組成物C2を活用して得た多層塗装系MCC2
多層塗装系MCC2で塗装した基材を、MCC1について上で項目3.1に記載したのと同じ方法で得たが、例外は、比較のクリアコート塗装材料組成物C1の代わりに、比較のクリアコート塗装材料組成物C2を、上で項目2.7に記載したその製造の後に直接使用したことである。
【0132】
3.4 クリアコート塗装材料組成物C2を活用して得た多層塗装系MCI2
多層塗装系MCI2で塗装した基材を、MCC1について上で項目3.1に記載したのと同じ方法で得たが、例外は、比較のクリアコート塗装材料組成物C1の代わりに、本発明のクリアコート塗装材料組成物I2を、上で項目2.8に記載したその製造の後に直接使用したことである。
【0133】
4.多層塗装系で塗装した基材の性質
多層塗装系MCC1、MCC2、MCI1およびMCI2のうちの1種で塗装した各基材を、(塗装直後の)クールダウン後に、かつ翌日、24時間後に、外観(ダイバック)についてレーティングした。
【0134】
ダイバックおよびDOI
ダイバック、およびまたピンチングを、多層塗装系MCC1およびMCC2の場合に観察し、その一方で、MCI1およびMCI2では、ダイバックがないことおよびピンチングがないことを観察した。
【0135】
MCC1およびMCC2のDOIは、それぞれ<7であり、その一方でMCI1およびMCI2について測定したDOIは、両方の場合に8~9であった。
【0136】
これらのデータは、本発明で使用するポリエステルの、クリアコート塗装材料組成物中への添加量における組み込みが、暑く高湿な条件にあっても、ダイバックがないこと、およびピンチングがないことを観察した点で、改善した外観へと導くことを示している。これらのデータはまた、本発明で使用するポリエステルが、クリアコート塗装材料組成物中の流動剤およびレベリング剤として有利にも使用され得ることを示している。
【国際調査報告】