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特表2023-509046可塑剤として分岐状ポリエステルポリオールを含有するコーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(54)【発明の名称】可塑剤として分岐状ポリエステルポリオールを含有するコーティング
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/06 20060101AFI20230227BHJP
   C09D 7/47 20180101ALI20230227BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20230227BHJP
【FI】
C09D133/06
C09D7/47
C09D7/65
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540679
(86)(22)【出願日】2020-12-30
(85)【翻訳文提出日】2022-08-29
(86)【国際出願番号】 EP2020088015
(87)【国際公開番号】W WO2021136800
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】19220050.9
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】コリアー,エマーソン,キース
(72)【発明者】
【氏名】リハン,アリ,エー.
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CC022
4J038CG041
4J038DB001
4J038DD122
4J038DL032
4J038GA09
4J038GA11
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA10
4J038PA04
4J038PC02
(57)【要約】
本発明は、(A)物理的硬化性、反応的自己硬化性及び/又は外部硬化性成分であって、(A)の総固形分含量に基づいて0.1質量%~約2.5質量%の分岐状ポリエステルポリオールを含み、該分岐状ポリエステルポリオールの調製が、(a)少なくとも3個のヒドロキシル基を含むポリオールを、6~36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、又は前記脂肪族ジカルボン酸の無水物及びエステル化可能なエステルから選択される該脂肪族ジカルボン酸のエステル化可能な誘導体と反応させて、ヒドロキシル官能性の第一の中間生成物を形成する工程;(b)第一の中間生成物を、環状カルボン酸無水物と反応させて、カルボン酸官能性の第二の中間生成物を形成する工程;及び(c)第二の中間生成物を、1個のエポキシド基を有するエポキシド官能性化合物と反応させて分岐状ポリエステルポリオールを形成する工程により可能である、成分(A);及び(B)成分(A)が1種以上の外部硬化性成分を含む場合に、架橋成分;及び任意に(C)希釈成分を含むコーティング組成物に関する。本発明はさらに、コーティング組成物を使用して基材をコーティングする方法、及び上記で定義された分岐ポリエステルポリオールを可塑剤として使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分、
(A) 物理的硬化性、反応的自己硬化性及び/又は外部硬化性成分であって、
コーティング配合物の総固形分含量に基づいて0.1質量%~2.5質量%の分岐状ポリエステルポリオールを含み、該分岐状ポリエステルポリオールの調製が、以下の工程:
(a)少なくとも3個のヒドロキシル基を含むポリオールを、6~36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、又は前記脂肪族ジカルボン酸の無水物及びエステル化可能なエステルから選択される該脂肪族ジカルボン酸のエステル化可能な誘導体と反応させて、ヒドロキシル官能性の第一の中間生成物を形成する工程、
(b)前記第一の中間生成物を、環状カルボン酸無水物と反応させて、カルボン酸官能性の第二の中間生成物を形成する工程、及び
(c)前記第二の中間生成物を、1個のエポキシド基を有するエポキシド官能性化合物と反応させて、前記分岐状ポリエステルポリオールを形成する工程、
により、(A)が外部硬化性成分の場合に可能である、成分(A)、
(B) 成分(A)が1種以上の外部硬化性成分を含む場合に、架橋成分、及び任意に、
(C) 希釈成分
を含む、コーティング組成物。
【請求項2】
工程(a)において、前記ポリオールのモルの、前記脂肪族ジカルボン酸のジカルボン酸又はエステル化可能な誘導体のモルに対する比が、前記脂肪族ジカルボン酸のジカルボン酸又はエステル化可能な誘導体1モル当たり、前記ポリオール約2.0~約2.2モルである、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
工程(b)において、前記第一の中間生成物のヒドロキシル基の、前記環状カルボン酸無水物の無水物基に対する当量比が、カルボン酸無水物基当たりヒドロキシル基約1.0~約1.25当量である、請求項1又は請求項2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
工程(c)において、前記第二の中間生成物のカルボン酸基の、前記エポキシド官能性化合物のエポキシド基に対する当量比が、エポキシド基1当量当たりカルボン酸基約1.0~約2.5当量である、請求項1から3のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記コーティング組成物が水性であり、且つ工程(c)において、前記第二の中間生成物のカルボン酸基の、前記エポキシド官能性化合物のエポキシド基に対する当量比が、エポキシド基1当量当たりカルボン酸基約1.1~約2.5当量であり、そして未反応のカルボン酸基が塩基で少なくとも部分的に中和されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
成分(A)中に、(メタ)アクリレートポリマー、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、天然油に基づくポリオール、及びポリシロキサンからなる群から選択される1つ以上の樹脂又はポリマーを含有する、請求項1から5のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
成分(A)が外部硬化性であり、そして少なくとも1つのポリオール又は少なくとも1つのエポキシ樹脂を含み、そして成分(A)がポリオールを含有する場合に成分(B)が存在し且つ少なくとも1つのポリイソシアネートを含み、又は成分(A)がエポキシ樹脂を含有する場合に成分(B)が少なくとも1つのポリアミンを含有する、請求項1から6のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のコーティング組成物を基材に適用してコーティング層を形成し、そして前記コーティング層を硬化させることを含む、基材をコーティングする方法。
【請求項9】
前記基材が金属製基材であり、前記金属製基材が電着コーティングでコーティングされ、前記電着コーティングが、充填剤、ベースコート及びクリアコートのうちの少なくとも1つでコーティングされ、前記充填剤、ベースコート及びクリアコートのうちの少なくとも1つが、請求項1から7のいずれか1項に記載のコーティング組成物から形成されたコーティング層である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか1項に定義した分岐状ポリエステルポリオールであるポリエステルポリオールを、可塑剤として使用する方法。
【請求項11】
前記分岐状ポリエステルポリオールを、コーティング組成物中の可塑剤として使用する、請求項10に記載の使用方法。
【請求項12】
前記分岐状ポリエステルポリオールを外部及び/又は内部可塑剤として使用する、請求項10又は11に記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐状ポリエステルポリオールを含有するコーティング組成物、このようなコーティング組成物で基材をコーティングする方法、及びコーティング組成物における可塑剤としての分岐状ポリエステルポリオールの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム形成用樹脂はコーティングの保護効果を担う一方で、その処理は、有機溶媒又は無機溶媒でなければ不可能であり、そして、顔料は彩度又は効果によって光学的な魅力を生み出すが、コーティングの用途及び他の必要なフィルム特性に関して、コーティング組成を最適化するために多様で重要な役割があるのは、コーティング助剤としての可塑剤及び添加剤である。可塑剤は、典型的には、フィルム形成温度を低下させ、そしてコーティングを弾性化するのに役立つ。可塑剤は一般に物理的レベルで作用する。多くのフィルム形成剤は、コーティングに高レベルの硬度を提供しない一方で、同時に良好な弾性を提供するので、可塑剤は、このジレンマを克服するために使用される。
【0003】
フィルム形成用樹脂の鎖移動性が分子間相互作用、例えば強いファンデルワールス力によって制限されるとき、可塑剤の役割は、そのような橋渡し力の形成を低減させる、又は完全に防止することである。これは、このような相互作用を立体的に妨げる弾性化セグメント又はモノマーを組み込むことによって、フィルム形成用樹脂の製造中に可塑化を実施させることにより、達成することができる。このように、あらかじめ、すなわち樹脂の製造中に、弾性に影響を与えるシステムを、内部可塑化と呼ぶ。
【0004】
多くの場合、樹脂の内部可塑化は、処理性が悪い、又はフィルムの特性が最適でないという理由で、用いることができない。このような場合、樹脂のいわゆる二次弾性化又は外部弾性化は、外部可塑剤によって行わなければならない。外部可塑剤は、典型的には、フィルム形成用樹脂の製造中には使用されないので、フィルム形成用樹脂に化学的に組み込まれない。外部可塑化は、2つの異なる方法で達成することができる。硬質フィルム形成用樹脂を、個別の高弾性樹脂、例えば或る脂肪族ポリエステルで「希釈」するか、又は低分子量補助材料の形態の古典的可塑剤、例えばフタル酸エステル(すなわちフタレート)を添加して、分子間相互作用を停止させる。
【0005】
フタル酸エステルとは異なり、脂肪族ポリエステルは、典型的には、不揮発性ポリマー又はオリゴマー溶媒である。それらは移動せず、そして長期的な影響をもたらす。しかし、関連する、より高い濃度では、それらはしばしば望ましくない粘着性のあるコーティング表面を生成する傾向がある。
【0006】
一方で、フタル酸エステルの使用もいくつかの理由で有害である。第一に、フタレートは動物の肝臓、肺、腎臓、及び生殖器系に有害であり得、そして人間にも有害である可能性が最も高いことが発見されている。従って、可能な限り製品からフタレートを低減又は除去する方法を見出すことへの関心が高まっている。第二に、フタレートは、非常に低い分子量を有し、コーティングを通ってその表面まで移動する傾向があり、さらにコーティングからの蒸発が遅く、フィルム中の可塑剤の濃度を徐々に減少させて、これにより可塑化効果を低減させる。
【0007】
本発明は、非フタレートの可塑剤を提供することにより、コーティングの可塑化の問題に解決策を提供することを目的とする。この可塑剤は、不揮発性であること、すなわち、コーティング材料内にとどまること、健康問題に関して有害性がないこと、及び硬質フィルム形成用樹脂を希釈するのではなく非常に低い添加剤濃度で作用すること、が意図されている。このような濃度では、可塑剤は、粘着性のある表面を生じさせる、又は隣接する層及び/又は基材への接着などの他の表面特性を劣化させたりする傾向があってはならない。可塑剤はさらに、同じ又は類似の濃度で従来の可塑化フタレートと比較すると、増加した、又は少なくとも同等の可塑化効果を有するべきである。さらに、このような可塑剤を含有するコーティング組成物は、揮発性有機化合物(VOC規制)に適合していなければならない。特定のVOC規制限界は、製品の種類によって、そして国、州、及びさらには時として州内の地域によっても異なり、且つ変更される場合がある。例えば、US EPA CFR-2016-タイトル40-第6巻-パート59-サブパートB-表1によると、自動車の再仕上げのプライマー及びプライマーサーフェイサーにおける規定されたVOCの国内規制限界は、580g/リットルである。自動車の再仕上げの一段階又は二段階トップコートにおける規定されたVOCの国内規制限界は、600g/リットルである。同様に、US EPA CFR-2016-タイトル40-第6巻-パート59-サブパートD-表1によると、建築用フラットの内装コーティングにおける規定されたVOCの国内規制限界は250g/リットルである。そして、建築用フラットの非鉄装飾金属ラッカー及び表面保護剤における規定されたVOCの国内規制限界は、870g/リットルである。提供した例は、米国の国内規則である。特定の州、又は地域の規制であっても、さらに低い場合がある。
【0008】
本出願において見出された可塑剤は、分岐状ポリエステルポリオールであり、外部又は内部可塑剤であってよい。さらに、用語「ポリエステル」とは、いわゆる「オリゴエステル」を包含する。
【0009】
そのような化合物は、例えば、US2016/0017175から知られている。しかしながら、US2016/0017175では、コーティング組成物には、フィルム形成材料(コーティング組成物のバインダー又は媒体とも呼ばれる)の総量に基づいて、約5質量%~約60質量%の分岐状ポリオールが含まれる。可塑剤としてのポリエステルポリオールの、特に少量の添加量での使用は、US2016/0017175に開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US2016/0017175
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明が取り組む課題は、以下の成分、
(A) 物理的硬化性、反応的自己硬化性及び/又は外部硬化性成分であって、
コーティング配合物の総固形分含量に基づいて0.1質量%~2.5質量%の分岐状ポリエステルポリオールを含み、該分岐状ポリエステルポリオールの調製が、以下の工程:
(a)少なくとも3個のヒドロキシル基を含むポリオールを、6~36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、又は前記脂肪族ジカルボン酸の無水物及びエステル化可能なエステルから選択される該脂肪族ジカルボン酸のエステル化可能な誘導体と反応させて、ヒドロキシル官能性の第一の中間生成物を形成する工程、
(b)前記第一の中間生成物を、環状カルボン酸無水物と反応させて、カルボン酸官能性の第二の中間生成物を形成する工程、及び
(c)前記第二の中間生成物を、1個のエポキシド基を有するエポキシド官能性化合物と反応させて、分岐状ポリエステルポリオールを形成する工程、
により、(A)が外部硬化性成分の場合に可能である、成分(A)、
(B) 成分(A)が1種以上の外部硬化性成分を含む場合に、架橋成分、及び任意に、
(C) 希釈成分
を含む、コーティング組成物を提供することによって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
成分(A)の「総固形分含量」は、ASTM D-2369(日付:2010年7月)により、成分(A)0.3gを110℃で1時間乾燥させることによって決定した。
【0013】
もちろん、本発明によるコーティング組成物を硬化させている間に、3つの硬化機構のうちの1つ以上が起こることが可能である。
【0014】
本発明では、コーティング組成物の成分(A)の定義は、架橋のために存在する場合の架橋成分(B)、及びコーティング組成物の適用前に粘度を調整するために任意に使用される希釈成分(C)以外の全てを含む。
【0015】
よって成分(A)は、顔料(存在する場合)、樹脂(本発明の分岐状ポリエステルポリオールを含む)、及び架橋成分(B)及び/又は希釈成分(C)で必要とされ得るものを除く種々の添加剤及び溶媒を含むが、これらに限定されない。
【0016】
用語「物理的硬化性」とは、反応的な硬化がなく、むしろ成分(A)が乾燥し、それによって硬化したコーティングがもたらされることを意味する。
【0017】
用語「反応的自己硬化性」とは、成分(A)の1つ以上の材料成分の反応が、硬化したコーティングをもたらすことを意味する。
【0018】
用語「外部硬化性」とは、さらなる成分、すなわち成分(B)が、成分(A)の1つ以上の材料成分(複数可)と反応する1つ以上の材料成分を含有し、それによって硬化したコーティングが形成されることを意味する。
【0019】
本発明のさらなる目的は、上記のプロセス工程によって得た分岐状ポリエステルポリオールを可塑剤としてコーティング組成物中に使用する方法であり、この可塑剤は、可塑剤が時として付与するような望ましくない物理的特性を最終コーティングフィルムに与えない。
【0020】
分岐状ポリエステルポリオールの調製では、好ましくは、工程(a)において、ポリオールのモルの、脂肪族ジカルボン酸のジカルボン酸又はエステル化可能な誘導体のモルに対する比は、脂肪族ジカルボン酸のジカルボン酸又はエステル化可能な誘導体1モル当たり、ポリオール約2.0~約2.5モルである。
【0021】
より好ましくは、工程(a)において、各ポリオール分子の平均で約1個のヒドロキシル基をジカルボン酸と反応させる。
【0022】
好ましくは、工程(b)における第一の中間生成物のヒドロキシル基の、環状カルボン酸無水物の無水物基に対する当量比は、カルボン酸無水物基当たりヒドロキシル基約1.0~約1.25当量である。
【0023】
さらにより好ましくは、工程(b)において、ヒドロキシル基の実質的に全てを無水物基と反応させる。
【0024】
好ましくは、工程(c)における第二の中間生成物のカルボン酸基の、エポキシド官能性化合物のエポキシド基に対する当量比は、エポキシド基1当量当たりカルボン酸基約1.0~約2.5当量である。
【0025】
コーティング組成物は、有機溶媒ベース(すなわち溶媒型)又は水ベース(すなわち水型)、好ましくは溶媒型であってよい。
【0026】
工程(c)における第二の中間生成物のカルボン酸基の、エポキシド官能性化合物のエポキシド基に対する当量比は、有機溶媒ベースのコーティング組成物を製造するとき、好ましくは、エポキシド基1当量当たりカルボン酸基約1.0~約1.1当量である。
【0027】
コーティング組成物が水型である場合、工程(c)における第二の中間生成物のカルボン酸基の、エポキシド官能性化合物のエポキシド基に対する当量比は、典型的には、エポキシド基1当量当たりカルボン酸基約1~約2.5当量であり、未反応のカルボン酸基は、好ましくは、塩基で少なくとも部分的に中和されている。
【0028】
分岐状ポリオールを含有するコーティング組成物から製造されるコーティングは、優れた耐久性、低い揮発性有機分含量、及び特に低温における改善された弾性を有する。
【0029】
本発明の本明細書では、便宜上、「ポリマー」及び「樹脂」は、樹脂、オリゴマー、及びポリマーを包含して、交換可能に使用される。
【0030】
詳細な説明
ポリエステルポリオールの調製
工程(a)
本発明のコーティング組成物の製造に使用される分岐状ポリエステルポリオールは、少なくとも3個のヒドロキシル基を含むポリオールを、6~36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、又は該脂肪族ジカルボン酸のエステル化可能な誘導体と反応させて、ヒドロキシル官能性の第一の中間生成物を形成する工程(a)で開始する合成によって、調製することができる。
【0031】
6~36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、又は脂肪族ジカルボン酸のエステル化可能な誘導体は、直鎖状、分岐状、又は環状であってよく、このことから、環状ジカルボン酸は、最も好ましくは、少なくとも約6個の炭素原子の非環状セグメントを含む。
【0032】
適したジカルボン酸の非限定的な例には、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸(ブラシル酸)、ドデカンジオン酸、トラウマチン酸、ヘキサデカンジオン酸(タプシン酸)、オクタデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、及び36個の炭素原子を有するダイマー脂肪酸が含まれる。種々の実施形態において、36個の炭素原子を有するα,ω-ジカルボン酸及びダイマー脂肪酸が好ましい。
【0033】
36個の炭素原子を有するダイマー脂肪酸は、複数の異性体を有し得ることが知られている。ダイマー脂肪酸は市販されており、例えば、BASF社から商品名EMPOL(登録商標)で、Arizona Chemical社から商品名UNIDYME(商標)で、Croda International Plc社から商品名Pripol(商標)で、及びEmery Oleochemicals社からEMERY(登録商標)Dimer Acidsとして、入手可能である。ダイマー脂肪酸の製造において、少量のモノマー脂肪酸、及びトリマー脂肪酸及びさらに高級の脂肪酸をなお含有する生成物が得られることは、一般に不可避である。好ましいダイマー脂肪酸は、最少量のモノマー脂肪酸及びトリマー又はさらに高級の脂肪酸のみを含有しているものである。
【0034】
6~36個の炭素原子を有するジカルボン酸のエステル化可能な誘導体には、1~4個の炭素原子を有する脂肪族アルコールとのジカルボン酸のモノエステル又はジエステル、好ましくはメチルエステル及びエチルエステル、及び無水物が含まれる。「無水物」という用語には、その分子内無水物及び分子間無水物が含まれる。分子間無水物には、例えば、前記ジカルボン酸分子のうちの2個のカルボキシル基の縮合反応によって形成される無水物、及び塩酸などの無機酸との前記ジカルボン酸の無水物が含まれる。
【0035】
6~36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸は、少なくとも3個のヒドロキシル基を含むポリオールと反応する。ポリオールのヒドロキシル基は、第1級、第2級、及び/又は第3級ヒドロキシル基であってよい。
【0036】
ポリオールは、トリオール、トリオールのダイマー、テトロール、テトロールのダイマー、テトロールのトリマー、及び糖アルコールからなる群から選択できる。3個以上のヒドロキシル基を有する適したポリオールの非限定的な例には、例えば、グリセロール、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2,2,3-トリメチロールブタン-1,4-ジオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシエチル)アミン、トリス(ヒドロキシプロピル)アミン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、トリグリセロール、又はグリセロールのより高次の縮合物、ジ(トリメチロールプロパン)、ジ(ペンタエリスリトール)、トリ(ペンタエリスリトール)、ペンタエリスリトールエトキシレート、ペンタエリスリトールプロポキシレート、トリスヒドロキシメチルイソシアヌレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)、トリス(ヒドロキシプロピル)イソシアヌレート、イノシトール、又は糖、例えばグルコース、フルクトース、又はスクロース、糖アルコール、例えばキシリトール、ソルビトール、マンニトール、トレイトール、エリスリトール、アドニトール(リビトール)、アラビトール(リキシトール)、キシリトール、ズルシトール(ガラクチトール)イソマルト、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及び/又はブチレンオキシドと反応させた官能価3を有するアルコールに基づく、3以上の官能価を有する、ポリエーテルオールが含まれる。
【0037】
好ましくは、上記定義による分岐状ポリエステルポリオールを合成するために、工程(a)の第1のポリオールは、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、グリセロール、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールエトキシレート、及びペンタエリスリトールプロポキシレートからなる群のうちの少なくとも1つである。
【0038】
好ましくは、上記定義による分岐状ポリエステルポリオールを合成するために、工程(a)において、ポリオールのモルの、脂肪族ジカルボン酸のジカルボン酸又はエステル化可能な誘導体のモルに対する比は、脂肪族ジカルボン酸のジカルボン酸又はエステル化可能な誘導体1モル当たり、ポリオール約2.0~約2.5、好ましくは約2.0~約2.2、及びより好ましくは約2.0~約2.07モルである。特に好ましくは、工程(a)において、各ポリオール分子の平均で約1個のヒドロキシル基をジカルボン酸と反応させる。
【0039】
エステル化工程(a)は、既知の標準的方法によって実施することができる。例えば、この反応は従来的には、約60℃~約280℃の間の温度で、所望される場合は適切なエステル化触媒の存在下で実施されている。エステル化重合のための典型的な触媒は、芳香族炭化水素、例えばキシレン、又は(環状)脂肪族炭化水素、例えばシクロヘキサンなどの共留剤(entraining agent)として少量の好適な溶媒を用いる還流下における、プロトン酸及びルイス酸、例えば硫酸、パラ-トルエンスルホン酸、硫酸塩及び硫酸水素塩、例えば硫酸水素ナトリウム、リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸、チタンアルコキシド、及びジアルキルスズオキシド、例えばジブチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレート、リチウムオクタノエートである。比限定的な具体例として、ポリエステルには、第一スズオクトアート又はジブチルスズオキシドが含まれ得る。酸性無機、有機金属、又は有機触媒は、反応体の総質量に基づいて0.1質量%~10質量%、好ましくは0.2質量%~2質量%の量で使用することができる。後続の工程中での副反応を避ける、又は最小化するために、触媒を伴わずに反応工程(a)を実施することが望ましい。
【0040】
工程(a)のエステル化は、バルクで、又は反応体に対する反応性がない溶媒の存在下で実施することができる。そのような溶媒は、好ましくは非プロトン性溶媒である。適した溶媒の非限定的な例には、炭化水素、例えばパラフィン又は芳香族化合物などが含まれる。一部の実施形態において、n-ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、オルト-キシレン、メタ-キシレン、パラ-キシレン、キシレン異性体混合物、エチルベンゼン、クロロベンゼン、オルト-及びメタ-ジクロロベンゼンを使用することが好ましい。酸性触媒の非存在下で使用できる他の溶媒は、例えばジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル、及び例えばメチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンなどのケトンである。溶媒は、共沸混合物によりエステル化反応の副生物の除去を補助するために使用できる。
【0041】
使用することができる溶媒の量は、出発反応体の質量に基づいて少なくとも0.1質量%、又は少なくとも1質量%、又は少なくとも5質量%でよい。より多量の溶媒を使用してもよいが、商業的に実行可能な時間の長さで反応を実施できるように、反応体の濃度を十分に高く保つことが好ましい。使用してよい溶媒の範囲の例は、各場合とも出発反応体の質量に基づいて、0.1質量%~約20質量%、又は約1質量%~約15質量%、又は約5質量%~約10質量%である。
【0042】
反応は、水除去剤、例えば分子篩、特に分子篩4Å、MgSO及びNaSOの存在下で実施してよい。
【0043】
工程(a)の反応は、好ましくは、60℃~250℃の温度、より好ましくは100℃~240℃の温度で実施する。さらにより好ましくは、工程(a)の反応は、150℃~235℃の温度で実施する。反応時間は、温度、反応体の濃度、及び触媒の存在及び識別(存在する場合)を含む、既知の要因に依存する。典型的な反応時間は、約1~約20時間である。
【0044】
最終的な揮発性有機分含量を最小化するため、工程(a)からの副生物の共沸に使用される溶媒の実用的に可能な限り多くの量を、工程(a)の反応の完了後に除去してよい。最終的な樹脂におけるその性能のために選択された少量の溶媒は、合成の残りを通して使用することができ、例えば試薬の添加後に流すことができる。ヒドロキシ官能性溶媒(例えば、アルコール及びグリコールのモノエーテル)のような活性水素含有化合物などの、無水物又はエポキシドと反応する可能性がある溶媒は、工程(a)及び後続の反応工程の両方において好ましくは避ける。工程(a)の後、反応温度は、残りの合成において、合成のこの段階の後に分子量及び構造に対して望ましくない影響を及ぼし得る縮合型エステル化反応の可能性を最小化するために、好ましくは縮合型エステル化反応が起こり得る温度よりも低く、例えば150℃未満に保たれる。例えば、さらなるエステル化は、望ましくない分岐又は不必要に増加した分子量をもたらす可能性がある。工程(a)の後の、工程(b)を実施する前の温度は、工程(a)中に触媒が使用されたか、及び使用された任意の触媒の性質に応じて、145℃未満、好ましくは140℃未満、又はさらには135℃又は130℃未満に保ってよい。
【0045】
工程(b)
次いで、工程(a)において生成されたヒドロキシル官能性の第一の中間生成物を、環状カルボン酸無水物と反応させて、カルボン酸官能性の第二の中間生成物を形成する。環状カルボン酸無水物は、ヒドロキシル官能性の第一の中間生成物のヒドロキシル基のうちの少なくとも1個と反応して、少なくとも1個のカルボキシル基を有する第二の中間生成物を形成する。好ましくは、環状カルボン酸無水物は、第一の中間生成物のヒドロキシル基の全て又は実質的に全てと反応して、第二の中間生成物を形成する。工程(b)において反応する環状カルボン酸無水物は、芳香族環状無水物又は脂肪族環状無水物のいずれであってもよい。
【0046】
好ましくは、環状カルボン酸無水物は、無水マレイン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、無水フタル酸、無水コハク酸、トリメリット酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、アジピン酸無水物、グルタル酸無水物、マロン酸無水物、イタコン酸無水物、5-メチル-5-ノルボルネンジカルボン酸無水物、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、イサト酸無水物、ジフェン酸無水物、特に低級アルキル置換酸無水物を含む置換無水物、例えばブチルコハク酸無水物、ヘキシルコハク酸無水物、オクチルコハク酸無水物、ブチルマレイン酸無水物、ペンチルマレイン酸無水物、ヘキシルマレイン酸無水物、オクチルマレイン酸無水物、ブチルグルタル酸無水物、ヘキシルグルタル酸無水物、ヘプチルグルタル酸無水物、オクチルグルタル酸無水物、アルキルシクロヘキサンジカルボン酸無水物、及びアルキルフタル酸無水物、例えば4-n-ブチルフタル酸無水物、ヘキシルフタル酸無水物、及びオクチルフタル酸無水物のうちの少なくとも1種である。
【0047】
さらにより好ましくは、カルボン酸無水物はヘキサヒドロフタル酸無水物を含む、又はヘキサヒドロフタル酸無水物である。
【0048】
工程(b)の反応は、環状カルボン酸無水物の各分子のカルボン酸基を工程(a)のヒドロキシル官能性の第一の中間生成物と反応させて、第二の中間生成物を提供する。好ましくは、環状カルボン酸無水物の、第一の中間生成物に対する当量比は、ヒドロキシル基1当量当たり無水物基約0.8~約1.0、より好ましくは約0.85~約1.0、及び最も好ましくは約0.9~約1.0当量である。特に好ましくは、ヘキサヒドロフタル酸無水物の1つの分子又は実質的に1つの分子が、第一の中間生成物の各ヒドロキシル基と反応して、第二の中間生成物を形成する。最も好ましくは、ヒドロキシル官能性の第一の中間生成物の実質的に全てのヒドロキシル基がカルボン酸無水物と反応して、環状無水物の開環からヒドロキシル基及びカルボン酸基のエステルを提供する。
【0049】
工程(b)の無水物開環反応は発熱性である。反応温度の制御は、例えば約150℃を超えないように、カルボン酸無水物反応体の添加を2回以上の添加分に分割することにより行うことができる。例えば、第1の添加分は、カルボン酸無水物の約3分の1~約2分の1であってよく、そして第2の分は工程(b)において反応させるカルボン酸無水物の残分であってもよい。反応混合物の温度は、各部分が添加される前に、約90℃~95℃に冷却してもよい。第1の部分が添加された後、反応混合物を約110℃~約115℃、又はそれ以上に加熱し、その結果、反応混合物の温度を上昇させる発熱が生じてよいが、目標最大値、例えば150℃を超えないようにする。発熱の後、第2の無水物の添加のために、反応混合物を約90℃~95℃に冷却してよい。同様に、第2の無水物の添加が完了した後、反応混合物を約110℃~115℃、又はそれ以上に加熱してもよい。この後、反応の発熱(及び必要な場合は追加の熱)を使用して、反応混合物の温度を、例えば約135℃~約145℃まで、又は約140℃~約145℃まで上昇させ、反応を完了させるためにこの温度で反応混合物を保持する。繰り返しとなるが、バッチは好ましくは150℃を超えるべきではない。
【0050】
工程(c)
第3の工程(c)において、第二の中間生成物の、好ましくは少なくとも約2個のカルボン酸基からカルボン酸基の全てまでが、1個のエポキシド基を有するエポキシド官能性化合物(すなわちモノ-エポキシド化合物)と反応して、分岐状ポリエステルポリオールを形成する。
【0051】
モノ-エポキシド化合物は当技術分野において周知であり、一般式:
【化1】
(式中、R、R、R、及びRは、各々独立して水素又は有機ラジカルであり、ただし、R~Rの少なくとも1つが水素以外であり且つ不飽和又はヘテロ原子を含有してもよく、又はR~Rの2つが不飽和又はヘテロ原子を含有してもよい環状環を形成し得ることが条件である)
により特徴づけられる。
【0052】
上記式の特に好ましいモノ-エポキシドは、R=CH-O-(C=O)-Rで、nが0又は1であり、そしてRが1~30、好ましくは1~20、より好ましくは1~16、最も好ましくは4~14、又はさらにより好ましくは6~12又は8~10個の炭素原子を有する分岐状又は直鎖状、飽和又は不飽和の炭化水素残基であり、且つR=R=R=Hであるものである。n=1の場合、式はグリシジルエステルを表し、そしてn=0の場合、式はグリシジルエーテルを表す。
【0053】
例えば、エポキシド官能性化合物は、エポキシエステル、特にグリシジルエステルであってよい。グリシジルエステルは、単官能性カルボン酸とエピハロヒドリン(例えばエピクロロヒドリン)とを、当技術分野において周知の条件下で反応させることにより調製することができる。グリシジルエステルの例は、グリシジルアセテート、グリシジルプロピオネート、グリシジルメチルマレエート、グリシジルステアレート、グリシジルベンゾエート、及びグリシジルオレエートである。有用なグリシジルエステルの中には、7~17個の炭素原子を有するアルキル基を有するものがある。特に好ましいグリシジルエステルは、9~11個の炭素原子を有する飽和第3級モノカルボン酸のグリシジルエステルである。好ましくは、グリシジルエステルを製造するために使用される単官能性カルボン酸は、ネオアルカン酸、例えば、限定するものではないが、ネオデカン酸又はネオノナン酸である。ネオ酸のグリシジルエステルは、例えば商標Cardura(登録商標)でMomentive Specialty Chemicals,Inc.,Columbus,Ohioから市販されている。
【0054】
モノエポキシドの別の有用なクラスはグリシジルエーテルである。グリシジルエーテルは、単官能性アルコール(例えば、n-ブタノール、プロパノール、2-エチルヘキサノール、ドデカノール、フェノール、クレゾール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)とエピハロヒドリン(例えば、エピクロロヒドリン)との反応により調製することができる。有用なグリシジルエーテルには、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ペンチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、ヘプチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、ノニルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、ペンタデシルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、ヘプタデシルグリシジルエーテル、オクタデシルグリシジルエーテル、ノナデシルグリシジルエーテル、エイコシルグリシジルエーテル、ベネイコシルグリシジルエーテル、ドコシルグリシジルエーテル、トリコシルグリシジルエーテル、テトラコシルグリシジルエーテル、ペンタコシルグリシジルエーテル、デセニルグリシジルエーテル、ウンデセニルグリシジルエーテル、テトラデセニルグリシジルエーテル、ヘキサデセニルグリシジルエーテル、ヘプタデセニルグリシジルエーテル、オクタデセニルグリシジルエーテル、ノナデセニルグリシジルエーテル、エイコセニルグリシジルエーテル、ベネイコセニルグリシジルエーテル、ドコセニルグリシジルエーテル、トリコセニルグリシジルエーテル、テトラコセニルグリシジルエーテル、及びペンタコセニルグリシジルエーテルが含まれる。
【0055】
工程(c)における第二の中間生成物のカルボン酸基の、エポキシド官能性化合物のエポキシド基に対する当量比は、エポキシド基1当量当たりカルボン酸基約1.0~約2.5、又は約1.0~約2.0、又は約1.0~約1.5、又は約1.0~約1.3、又は約1.0~約1.1当量である。しかしながら、カルボン酸基のエポキシド基に対する当量の好ましい範囲は、実施形態が溶媒型コーティング組成物用であるか、又は水型コーティング組成物用であるかに応じて変動するであろう。
【0056】
一実施形態において、分岐状ポリオールは溶媒型コーティング組成物において使用され、第二の中間生成物の全て、又は実質的に全てのカルボキシル基がモノエポキシド化合物と反応する。
【0057】
別の実施形態において、分岐状ポリオールは水型コーティング組成物において使用され、そして平均でいくつかのカルボキシル基が未反応のまま残り、そして例えばアンモニア、アミン、又は別の塩基で中和してもよい。
【0058】
コーティング組成物
本発明によれば、分岐状ポリエステルポリオールは、コーティング組成物の成分の総固形分含量に基づいて、0.1質量%~2.5質量%の量で、本発明によるコーティング組成物の成分(A)に含まれる。好ましくは、本発明によるコーティング組成物の成分(A)は、コーティング組成物の成分の総固形分質量に基づいて、0.2質量%~2.0質量%、及びさらにより好ましくは0.25質量%~1.8質量%又は1.5質量%までの分岐状ポリエステルポリオールを含む。
【0059】
成分(A)に含有されるポリマー及び樹脂
コーティング組成物には、物理的硬化性、反応的自己硬化性、又は外部硬化性樹脂又はポリマーが、主なフィルム形成材料成分として含まれ、これは必須の分岐状ポリエステルポリオール(複数可)とは異なる。
【0060】
このような有用な樹脂又はポリマーの例には、(メタ)アクリレートポリマー(アクリル系ポリマー又はアクリル系樹脂としても知られる)、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、天然油に基づくポリオール、例えば商標PolycinsでVertellus Specialties Inc.,Indianapolis,Ind.から入手可能なもの、例えばヒマシ油に基づくポリオール、ポリシロキサン、及びMormileらの米国特許第5,578,675号、Laneらの米国特許出願公開第2011/0135,832号、及びGroenewoltらの米国特許出願公開第2013/0136865号に記載のものが含まれる。そのようなさらなる樹脂又はポリマーは、所謂架橋剤と反応性である官能性を有してよく、又は自己架橋性であってよく、又は単に物理的硬化性であるか、又は化学的反応なしに乾燥させてもよい。
【0061】
好ましくは、コーティング組成物には、ヒドロキシル基、カルバメート基、又はそのような基の組合せを有するさらなる樹脂又はポリマーが含まれる。
【0062】
最も好ましくは、コーティング組成物は、分岐状ポリエステルポリオールの他に、ヒドロキシ官能性アクリル系ポリマー、ヒドロキシ官能性ポリエステル、又はヒドロキシ官能性ポリウレタンのうちの少なくとも1つを含有する。
【0063】
ポリビニルポリオール、例えばアクリル系(ポリアクリレート)ポリオールポリマーは、ヒドロキシ官能性材料として使用してもよい。アクリル系ポリマー又はポリアクリレートポリマーは、アクリル系及びメタクリル系モノマーの両方及び他の共重合性ビニルモノマーのコポリマーであってもよい。用語「(メタ)アクリレート」は、便宜上、アクリレート、及びメタクリレートのいずれか又は両方を表すために使用され、そして用語「(メタ)アクリル系」は、便宜上、アクリル系及びメタクリル系のいずれか又は両方を表すために使用される。
【0064】
ヒドロキシル含有モノマーには、アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルが含まれる。ヒドロキシル官能性モノマーの非限定的な例には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、これらとイプシロン-カプロラクトンとの反応生成物、及び炭素が約10個までの分岐又は直鎖アルキル基を有する他のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びこれらの混合物が含まれ、ここで用語「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートエステルのいずれか又は両方を表す。一般的に、少なくとも約5質量%のヒドロキシル官能性モノマーがポリマー中に含まれる。アクリル系ポリマーなどのビニルポリマーのヒドロキシル基は、他の手段によっても、例えば、共重合したグリシジルメタクリレートのグリシジル基の、例えば有機酸又はアミンによる開環により、生じさせることができる。
【0065】
ヒドロキシル官能性は、3-メルカプト-1-プロパノール、3-メルカプト-2-ブタノール、11-メルカプト-1-ウンデカノール、1-メルカプト-2-プロパノール、2-メルカプトエタノール、6-メルカプト-1-ヘキサノール、2-メルカプトベンジルアルコール、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、4-メルカプト-1-ブタノール、及びこれらの組合せを含むが、これらに限定されないチオ-アルコール化合物によっても、導入できる。これらの方法の任意を、有用なヒドロキシル官能性アクリル系ポリマーの調製に使用してよい。
【0066】
使用できる適したコモノマーの例には、3~5個の炭素原子を含有するα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸及びクロトン酸、及びアクリル酸、メタクリル酸及びクロトン酸のアルキル及びシクロアルキルエステル、ニトリル及びアミド;4~6個の炭素原子を含有するα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸及びこれらの酸の無水物、モノエステル、及びジエステル;ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、及び芳香族又は脂肪族複素環ビニル化合物が含まれるが、これらに限定されない。アクリル酸、メタクリル酸、及びクロトン酸の適したエステルの代表的な例には、1~20個の炭素原子を含有する飽和脂肪族アルコールとの反応によるこれらのエステル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、ドデシル、3,3,5-トリメチルヘキシル、ステアリル、ラウリル、シクロヘキシル、アルキル置換シクロヘキシル、アルカノール置換シクロヘキシル、例えば2-tert-ブチル及び4-tert-ブチルシクロヘキシル、4-シクロヘキシル-1-ブチル、2-tert-ブチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、3,3,5,5,-テトラメチルシクロヘキシル、テトラヒドロフルフリル及びイソボルニルアクリレート、メタクリレート、及びクロトネート;不飽和ジアルカン酸及び無水物、例えばフマル酸、マレイン酸、イタコン酸及び無水物、及びそれらのアルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、及びtert-ブタノール)とのモノ-及びジエステル、例えば無水マレイン酸、マレイン酸ジメチルエステル及びマレイン酸モノヘキシルエステル;ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルエチルエーテル、及びビニルエチルケトン;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2-ビニルピロリドン、及びp-tert-ブチルスチレンが含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
アクリル系ポリマーは、従来技法を使用して、例えば重合開始剤及び任意に連鎖移動剤の存在下でモノマーを加熱することによって、調製してよい。重合は、例えば溶液中で実施してよい。典型的な開始剤は、有機過酸化物、例えばジアルキルペルオキシド、例えばジ-t-ブチルペルオキシド、ペルオキシエステル、例えばt-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート、及びt-ブチルペルアセテート、ペルオキシジカーボネート、ジアシルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、例えばt-ブチルヒドロペルオキシド、及びペルオキシケタール;アゾ化合物、例えば2,2’アゾビス(2-メチルブタンニトリル)及び1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル);及びこれらの組合せである。典型的な連鎖移動剤は、メルカプタン、例えばオクチルメルカプタン、n-又はtert-ドデシルメルカプタン;ハロゲン化された化合物、チオサリチル酸、メルカプト酢酸、メルカプトエタノール及びすでに言及した他のチオールアルコール、及び二量体のアルファ-メチルスチレンである。
【0068】
ポリマー化反応は、通常、約20℃~約200℃の温度で実施される。反応は、溶媒又は溶媒混合物が還流する温度で好都合に行われ得るが、適切に制御すれば、還流温度未満が維持される。開始剤は、反応が実施される温度に合わせて選択され、これにより、その温度における開始剤の半減期が、好ましくは約30分以下であるようにすべきである。添加重合一般及び(メタ)アクリレートモノマーを含む混合物の重合のさらなる詳細は、ポリマー技術分野で容易に入手できる。一般的には、溶媒又は溶媒混合物を反応温度に加熱して、モノマー及び開始剤(複数可)を、制御された速度で或る期間、通常は2~6時間にわたり、添加する。連鎖移動剤又は追加の溶媒も、制御された速度でこの時間の間に供給してよい。次に、混合物の温度を或る期間維持して、反応を完了させる。任意に、完全な変換を確実にするために、追加の開始剤を添加してもよい。
【0069】
ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、直鎖及び分岐ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリ(エチレンオキシド-コ-プロピレンオキシド)のブロックコポリマーを含む、オリゴマー及びポリマーエーテルを使用してよい。他のポリマーポリオールは、ポリオール開始剤、例えば、1,3-プロパンジオール又はエチレングリコール又はプロピレングリコールなどのジオール、又はトリメチロールプロパン又はペンタエリスリトールなどのポリオールと、ラクトン又はアルキレンオキシドの鎖延長試薬とを反応させることにより得られる。活性水素により開環させることができるラクトンは、当技術分野において周知である。適したラクトンの例には、ε-カプロラクトン、γ-カプロラクトン、β-ブチロラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、β-メチル-γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-デカノラクトン、δ-デカノラクトン、γ-ノナンラクトン、γ-オクタノラクトン、及びこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。特に好ましいラクトンは、ε-カプロラクトンである。有用な触媒には、ポリエステル合成のための上記のものが含まれる。あるいは、上記反応は、ラクトン環と反応する分子のヒドロキシル基のナトリウム塩を形成させることにより開始させることができる。同様のポリエステルポリオールは、ポリオール開始剤分子と12-ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシ酸とを反応させることによって得られる。
【0070】
他の実施形態では、ポリオール開始剤化合物を、オキシラン含有化合物と反応させて、ポリウレタンエラストマー重合で使用されるポリエーテルジオールを製造する。アルキレンオキシドポリマーセグメントには、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-シクロヘキセンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、1-ヘキセンオキシド、tert-ブチルエチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、1-デセンオキシド、イソブチレンオキシド、シクロペンテンオキシド、1-ペンテンオキシド、及びこれらの組合せの重合生成物が含まれるが、これらに限定されない。オキシラン含有化合物は、好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、及びこれらの組合せから選択される。アルキレンオキシドの重合は、典型的には塩基で触媒される。重合は、例えば、ヒドロキシル官能性開始剤化合物及び触媒量の苛性、例えば、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、又はカリウムtert-ブトキシドなどを装填すること、及びモノマーを反応に利用可能に保つのに十分な速度でアルキレンオキシドを加えることにより実施してよい。2個以上の異なるアルキレンオキシドモノマーは、同時添加によりランダム共重合させてよく、又は逐次添加によりブロックで重合させてもよい。エチレンオキシド又はプロピレンオキシドのホモポリマー又はコポリマーが好ましい。テトラヒドロフランは、SbF 、AsF 、PF 、SbCl 、BF 、CFSO 、FSO 、及びClO のような対イオンを使用して、カチオン性開環反応により重合させてよい。開始は、第3級オキソニウムイオンの形成による。ポリテトラヒドロフランセグメントは、「リビングポリマー」として調製することができ、上記のうちの任意のようなジオールのヒドロキシル基との反応により停止させることができる。ポリテトラヒドロフランは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)としても知られている。上記のポリオールの任意が、この方法で、ポリオール開始剤として使用されて延長されてもよい。
【0071】
使用してもよい適したポリカーボネートポリオールの非限定的な例には、ポリオールとジアルキルカーボネート(例えばジエチルカーボネート)、ジフェニルカーボネート、又はジオキソラノン(例えば5-及び6員環を有する環状カーボネート)との、触媒様アルカリ金属、スズ触媒、又はチタン化合物の存在下における反応により調製されるものが含まれる。有用なポリオールには、これらのすでに言及した任意のものが含まれるが、これらに限定されない。芳香族ポリカーボネートは、通常、ビスフェノール、例えば、ビスフェノールAと、ホスゲン又はジフェニルカーボネートとの反応により調製される。脂肪族ポリカーボネートは、特にカルバメート官能性材料が自動車OEM又は再仕上げトップコートにおいて使用されるときに、黄化に対してより高い耐性があるので好ましい。
【0072】
ポリエステルポリオールは、(a)ポリカルボン酸又はそれらのエステル化可能な誘導体(所望であればモノカルボン酸と共に)、(b)ポリオール(所望であれば単官能性アルコールと共に)、及び(c)所望であれば他の改質成分を反応させることにより調製できる。ポリカルボン酸及びそれらのエステル化可能な誘導体の非限定的な例には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ハロフタル酸、例えばテトラクロロ-又はテトラブロモフタル酸、アジピン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサン-ジカルボン酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリシクロデカンジカルボン酸、エンドエチレンヘキサヒドロフタル酸、ショウノウ酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、及びシクロブタンテトラカルボン酸が含まれる。脂環式ポリカルボン酸は、それらのシス又はそれらのトランス形態で、又は2つの形態の混合物としてのいずれかで使用してよい。これらのポリカルボン酸のエステル化可能な誘導体には、1~4個の炭素原子を有する脂肪族アルコール又は4個以下の炭素原子を有するヒドロキシアルコールによるそれらの単一の又は複数のエステル、好ましくはメチルエステル及びエチルエステル、及び存在する場合には、これらのポリカルボン酸の無水物が含まれる。ポリカルボン酸と共に使用することができる適したモノカルボン酸の非限定的な例には、安息香酸、tert-ブチル安息香酸、ラウリン酸、イソノナン酸及び天然に存在する油の脂肪酸が含まれる。適したポリオールの非限定的な例には、上ですでに言及したものの任意、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチルペンタンジオール、エチルブチルプロパンジオールジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアネート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及び天然油由来のポリオールが含まれる。ポリオールと共に使用してよいモノアルコールの非限定的な例には、ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコール、及びエトキシル化された及びプロポキシル化されたフェノールが含まれる。適した改質変成分の非限定的な例には、ポリイソシアネート及び/又はジエポキシド化合物、及び所望であればモノイソシアネート及び/又はモノエポキシド化合物も含む、ポリエステルの官能基に対して反応性の基を含有する化合物が含まれる。ポリエステルの重合は、既知の標準的方法により実施してよい。この反応は従来的には、180℃~280℃の間の温度で、所望される場合は適切なエステル化触媒の存在下で実施されている。エステル化重合のための典型的な触媒は、芳香族炭化水素、例えばキシレン、又は(環状)脂肪族炭化水素、例えばシクロヘキサンなどの共留剤(entraining agent)として少量の好適な溶媒を用いる還流下におけるプロトン酸、ルイス酸、チタンアルコキシド、及びジアルキルスズオキシド、例えばリチウムオクタノエート、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレート、パラ-トルエンスルホン酸である。
【0073】
ヒドロキシル官能基を有するポリウレタンも、分岐状ポリエステルポリオールと一緒にコーティング組成物に使用してよい。適したポリウレタンポリオールの例には、ポリエステル-ポリウレタン、ポリエーテル-ポリウレタン、及びポリカーボネート-ポリウレタンが含まれ、ポリカプロラクトンポリエステルを含むポリエーテル及びポリエステル又はポリカーボネートジオールをポリマージオール反応体として使用して重合されたポリウレタンを含むが、これらに限定されない。これらのポリマージオールに基づくポリウレタンは、ポリマージオール(ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリテトラヒドロフランジオール、又はポリカーボネートジオール)、1種以上のポリイソシアネート、及び、任意に、1種以上の鎖延長化合物の反応により調製される。用語として使用される鎖延長化合物は、イソシアネート基と反応性の2個以上の官能基、好ましくは2個の官能基を有する化合物、例えばジオール、アミノアルコール、及びジアミンである。好ましくは、ポリマージオールに基づくポリウレタンは、実質的に直鎖状である(すなわち、実質的に全ての反応体が二官能性である)。
【0074】
ポリウレタンポリオールの製造に使用されるジイソシアネートは、芳香族、脂肪族、又は脂環式であってよい。有用なジイソシアネート化合物には、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンビス-4-シクロヘキシルイソシアネート(H12MDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、m-テトラメチルキシレンジイソシアネート(m-TMXDI)、p-テトラメチルキシレンジイソシアネート(p-TMXDI)、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとしても知られている)、2,4-又は2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、エチレンジイソシアネート、1,2-ジイソシアナトプロパン、1,3-ジイソシアナトプロパン、1,6-ジイソシアナトヘキサン(ヘキサメチレンジイソシアネート又はHDI)、1,4-ブチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、メタ-キシリレンジイソシアネート及びパラ-キシリレンジイソシアネート、4-クロロ-1,3-フェニレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロ-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、及びキシリレンジイソシアネート(XDI)、及びこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。分岐熱可塑性ポリウレタンを製造するために限られた量で使用できる(任意に、単官能性アルコール又は単官能性イソシアネートと共に)より多価の官能性ポリイソシアネートの非限定的な例には、1,2,4-ベンゼントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4”-トリイソシアネート、ジイソシアネートのイソシアヌレート、ジイソシアネートのビウレット、ジイソシアネートのアロファネート等が含まれる。
【0075】
種々の実施形態において、ポリマージオールは、好ましくは少なくとも約500、より好ましくは少なくとも約1000、及びさらにより好ましくは少なくとも約1800の質量平均分子量、及び約10,000以下の質量平均分子量を有するが、約5000以下、特に約4000以下の質量平均分子量を有するポリマージオールも好ましい。ポリマージオールは、有利には、約500~約10,000、好ましくは約1000~約5000、及びより好ましくは約1500~約4000の範囲内の質量平均分子量を有する。質量平均分子量は、ASTM D-4274によって決定される。
【0076】
ポリイソシアネート、ポリマージオール、及びジオール又は他の鎖延長剤の反応は、典型的には、昇温で、適した触媒、例えば第3級アミン、亜鉛塩、及びマンガン塩の存在下で実施される。ポリエステルジオールなどのポリマージオールの延長剤に対する比は、最終的なポリウレタンエラストマーの所望の硬度又は柔軟性に大きく依存して比較的広い範囲内で変えることができる。例えば、ポリエステルジオールの延長剤に対する当量の割合は、1:0~1:12、及びより好ましくは1:1~1:8の範囲内でよい。好ましくは、使用されるジイソシアネート(複数可)は、イソシアネートの当量の、活性水素を含有する材料の当量に対する全体としての割合が、1:1~1:1.05、及びより好ましくは1:1~1:1.02の範囲内にあるように釣り合わせる。ポリマージオールセグメントは、典型的にはポリウレタンポリマーの約35質量%~約65質量%、及び好ましくはポリウレタンポリマーの約35質量%~約50質量%である。
【0077】
ポリシロキサンポリオールは、水素化ケイ素を含有するポリシロキサンを、2個又は3個の末端第1級ヒドロキシル基を含有するアルケニルポリオキシアルキレンアルコール、例えば、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル及びペンタエリスリトールモノアリルエーテルなどのアリルポリオキシアルキレンアルコールでヒドロシリル化することにより製造できる。
【0078】
上記のポリオール樹脂及びポリマーの任意は、既知の方法に従って、例えばヒドロキシル官能性材料とアルキルカルバメート、例えばメチルカルバメート又はブチルカルバメートとの反応によって、「トランスカルバメート化」又は「トランスカルバモイル化」と称される反応により、カルバメート基を有するように誘導体化してよい。コーティング組成物において使用するためのカルバメート官能性樹脂及びポリマーを形成する他の方法では、樹脂及びポリマーを、カルバメート官能性モノマーを用いて重合させてよい。
【0079】
架橋性成分(B)
成分(A)中に分岐状ポリエステルポリオールを含有するコーティング組成物には、成分(A)が1つ以上の外部硬化性成分を含む場合、架橋性成分(B)中に少なくとも1つの架橋剤又は硬化剤、例えば活性メチロール、メチルアルコキシ、又はブチルアルコキシ基を有するアミノプラスト架橋剤;ブロックされた又はブロックされていないイソシアネート基を有し得るポリイソシアネート架橋剤;ポリ無水物;及び分岐状ポリオールのヒドロキシル及びカルボン酸基に反応性であり得るポリエポキシド官能性架橋剤又は硬化剤;又は成分(A)中に含有され得るエポキシ樹脂に反応性であり得るポリアミン、が含まれる。
【0080】
アミノプラスト又はアミノ樹脂は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、Encyclopedia of Polymer Science and Technology 第1巻、第752~789頁(1985年)に記載されている。アミノプラストは、活性化された窒素と、より低い分子量のアルデヒドとの反応により、任意に、さらにアルコール(好ましくは、メタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等の1~4個の炭素原子を有するモノアルコール)との反応により得られて、エーテル基を形成する。活性化された窒素の好ましい例は、メラミン、ベンゾグアナミン、シクロヘキシルカルボグアナミン、及びアセトグアナミンなどの活性化されたアミン;尿素自体、チオ尿素、エチレン尿素、ジヒドロキシエチレン尿素、及びグアニル尿素を含む尿素;グリコールウリル(glycoluril);ジシアンジアミドなどのアミド;及び少なくとも1個の第1級カルバメート基又は少なくとも2個の第2級カルバメート基を有するカルバメート官能性化合物である。活性化された窒素は、より低い分子量のアルデヒドと反応させる。該アルデヒドは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド、又はアミノプラスト樹脂の製造に使用される他のアルデヒドから選択されてもよいが、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒド、特にホルムアルデヒドが好ましい。活性化された窒素基は、少なくとも部分的にアルデヒドでアルキロール化され、完全にアルキロール化されることもある。好ましくは活性化された窒素基は完全にアルキロール化される。反応は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,082,180号で教示されているように、酸により触媒されてもよい。
【0081】
活性化された窒素とアルデヒドとの反応により形成された任意のアルキロール基は、1個以上の単官能性アルコールにより部分的に又は完全にエーテル化される。単官能性アルコールの適した例には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブチルアルコール、ベンジルアルコール等が含まれるが、これらに限定されない。1~4個の炭素原子を有する単官能性アルコール及びこれらの混合物が好ましい。エーテル化は、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,105,708号及び第4,293,692号で開示された方法により実施してよい。アミノプラストは、少なくとも部分的にエーテル化されていてもよく、そして種々の実施形態ではアミノプラストは完全にエーテル化されている。例えば、アミノプラスト化合物は、複数のメチロール及び/又はエーテル化されたメチロール基、ブチロール基、又はアルキロール基を有し、それらは任意の組合せで及び非置換の窒素水素と一緒に存在してよい。適した硬化剤化合物の例には、モノマー又はポリマーメラミン樹脂及び部分的に又は完全にアルキル化されたメラミン樹脂を含むメラミンホルムアルデヒド樹脂、及び尿素樹脂(例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂などのメチロール尿素、及びブチル化された尿素ホルムアルデヒド樹脂などのアルコキシ尿素)が含まれるが、これらに限定されない。完全にエーテル化されたメラミン-ホルムアルデヒド樹脂の非限定的な一例は、ヘキサメトキシメチルメラミンである。
【0082】
アルキロール基は、自己反応が可能であり、オリゴマー及びポリマーアミノプラスト架橋剤を形成する。有用な材料は、重合度により特徴づけられる。メラミンホルムアルデヒド樹脂には、数平均分子量が約2000未満、より好ましくは1500未満、及びさらにより好ましくは1000未満の樹脂を使用することが好ましい。
【0083】
アミノプラスト架橋剤を含むコーティング組成物は、硬化反応を増強する強酸触媒をさらに含んでよい。そのような触媒は当技術分野において周知であり、例えば、パラ-トルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェニル酸ホスフェート、モノブチルマレエート、ブチルホスフェート、及びヒドロキシホスフェートエステルが含まれる。強酸触媒は、例えばアミンでブロックされることが多い。
【0084】
特に再仕上げコーティングのために、ポリイソシアネート架橋剤が一般に使用される。適したポリイソシアネート架橋剤の例には、アルキレンポリイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、4-及び/又は2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、3-イソシアナト-メチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、例えば2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4-及び/又は2,6-ジイソシアナトトルエン、ナフチレンジイソシアネート、及びこれらのポリイソシアネートの混合物が含まれるが、これらに限定されない。一般的に、3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートが使用され、これらはジイソシアネートの誘導体又は付加体であってもよい。有用なポリイソシアネートは、過剰量のイソシアネートと水、ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、グリセリン、ソルビトール、又はペンタエリスリトール)との反応によって、又はイソシアネートとそれ自体との反応からイソシアヌレートを生じさせることで得られる。例には、ビウレット基含有ポリイソシアネート、例えば米国特許第3,124,605号及び米国特許第3,201,372号又はDE-OS1,101,394に記載されているもの;イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート、例えば米国特許第3,001,973号、DE-PS1,022,789、1,222,067及び1,027,394、及びDE-OS1,929,034及び2,004,048に記載されているもの;ウレタン基含有ポリイソシアネート、例えばDE-OS953,012、BE-PS752,261又は米国特許第3,394,164号及び第3,644,457号に記載されているもの;カルボジイミド基含有ポリイソシアネート、例えばDE-PS1,092,007、米国特許第3,152,162号、及びDE-OS2,504,400、2,537,685及び2,552,350に記載されているもの;アロファネート基含有ポリイソシアネート、例えばGB-PS994,890、BE-PS761,626及びNL-057,102,524に記載されているもの;及びウレトジオン基含有ポリイソシアネート、例えばEP-A0,377,177に記載されているもの、が含まれ、各参考文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0085】
再仕上げコーティング組成物のためのそのようなイソシアネート架橋剤は、一般にヒドロキシル官能性フィルム形成成分とは別個に保管され、適用の直前にこれと組み合わされる。例えば、二部式、又は二剤、又は二成分再仕上げコーティング組成物は、架橋部分、パッケージ、又は成分中に、脂肪族ビウレット及びイソシアヌレート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレートのうちの1種を含んでよい。
【0086】
スズ触媒などのウレタン反応のための硬化触媒を、コーティング組成物において使用することができる。典型的な例は、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキシド、及びビスマスオクトエートを含む、スズ及びビスマス化合物であるが、これらに限定されない。使用される場合、触媒は、典型的には、不揮発性媒体全体の質量に基づいて、約0.05~2質量パーセントのスズの量で存在する。
【0087】
二無水物も、分岐状ポリエステルポリオールを架橋するために使用してよい。二環のカルボン酸無水物の非限定的な例には、ピラニル二無水物、エチレンジアミンテトラ酢酸二無水物、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、及びシクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物が含まれる。
【0088】
ポリエポキシド架橋剤には、エポキシド基を有するアクリル系ポリマー、例えばアリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、又はグリシジルメタクリレートのコポリマー、及びポリオール及びポリカルボン酸のポリグリシジルエステル及びエーテルが含まれる。
【0089】
溶媒、顔料、充填剤及び添加剤
分岐状ポリエステルポリオールを含むコーティング組成物は、溶媒、顔料、充填剤、又は通例の添加剤をさらに含んでよい。
【0090】
溶媒
1種以上の溶媒を、コーティング組成物中で好ましくは利用する。溶媒は、典型的には、分岐状ポリエステルポリオール及び他のフィルム形成材料、架橋剤及び添加剤を溶解するか又は分散させるために用いられる。一般的に、成分の溶解性特性に応じて、溶媒は任意の有機溶媒及び/又は水でよい。溶媒は、成分(A)及び/又は成分(B)及び成分(C)中に含有されてよい。好ましくは、成分(C)は、1種以上の溶媒からなる。
【0091】
溶媒(複数可)は、極性有機溶媒(複数可)でよい。例えば、溶媒は極性脂肪族溶媒又は極性芳香族溶媒であってよい。有用な溶媒の中には、ケトン、エステル、アセテート、非プロトン性アミド、非プロトン性スルホキシド、及び非プロトン性アミン溶媒がある。具体的な有用な溶媒の例には、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、エステル、例えばエチルアセテート、ブチルアセテート、ペンチルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、脂肪族及び/又は芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、溶媒ナフサ、及びミネラルスピリット、エーテル、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールエーテル、アルコール、例えばエタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、及びtert-ブタノール、窒素含有化合物、例えばN-メチルピロリドン及びN-エチルピロリドン、及びこれらの組合せが含まれる。
【0092】
しかしながら、液体溶媒は、水、又は水と少量の有機の水溶性又は水混和性共溶媒との混合物でもよい。
【0093】
コーティング組成物中の溶媒は、0.01質量パーセント~99質量パーセントの量で、好ましくは10質量パーセント~60質量パーセントの量で、又は30質量パーセント~50質量パーセントの量で存在してよい。
【0094】
顔料及び充填剤
コーティング組成物が、ベースコートトップコート、モノコートトップコート、又はプライマーとして配合される場合、それらは、特別の効果顔料を含む顔料及び充填剤を好ましくは含有する。ベースコート及びモノコートトップコートコーティング組成物中で利用してよい特別な効果顔料の非限定的な例には、メタリック、真珠光沢、及び色可変効果フレーク顔料が含まれる。メタリック(真珠光沢、及び色可変を含む)トップコートの色は、1種以上の特別なフレーク顔料を使用して製造される。メタリック色はゴニオアパレント(gonioapparent)効果を有する色として一般的に定義される。例えば、American Society of Testing Methods(ASTM)の文書F284では、メタリックは、「金属フレークを含有するゴニオアパレント材料の外見に関わる」と定義されている。メタリックベースコートの色は、アルミニウムフレーク顔料、コーティングされたアルミニウムフレーク顔料、銅フレーク顔料、亜鉛フレーク顔料、ステンレス鋼フレーク顔料、及び青銅フレーク顔料のようなメタリックのフレーク顔料を使用して、及び/又は二酸化チタンでコーティングされたマイカ顔料及び酸化鉄でコーティングされたマイカ顔料のような処理されたマイカを含む真珠光沢のフレーク顔料を使用して製造することができ、異なった角度で見たときに異なった外見(反射率又は色)をコーティングに与える。金属フレークは、コーンフレークタイプ、レンズ状、又は循環耐性であってよく、マイカは、天然、合成、又は酸化アルミニウムタイプであってよい。フレーク顔料は、高い剪断によってフレーク又はその結晶性形態が破壊されるか又は曲げられて、ゴニオアパレント効果が減少するか又は損なわれるので、凝集させず、及び高い剪断下で破砕しない。フレーク顔料は、低い剪断下における撹拌によりバインダー成分中に申し分なく分散される。1種又は複数のフレーク顔料は、コーティング組成物中に、各場合とも全バインダー質量に基づいて、約0.01質量%~約50質量%又は約15質量%~約25質量%の量で含まれてよい。市販のフレーク顔料の非限定的な例には、BASF Corporation社から入手できるPALIOCROME(登録商標)顔料が含まれる。
【0095】
ベースコート及びモノコートトップコートコーティング組成物中で利用ができる他の適した顔料及び充填剤の非限定的な例には、無機顔料、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウム、カーボンブラック、黄土、シエナ土、コハク、ヘマタイト、リモナイト、赤色酸化鉄、透明な赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、褐色酸化鉄、酸化クロムグリーン、ストロンチウムクロメート、リン酸亜鉛、ヒュームドシリカなどのシリカ、カルシウムカーボネート、タルク、バライト、第2鉄アンモニウムフェロシアニド(プルシアンブルー)、及びウルトラマリン、及び有機顔料、例えばメタル化及び非メタル化アゾレッド、キナクリドンレッド及びバイオレット、ペリレンレッド、銅フタロシアニンブルー及びグリーン、カルバゾールバイオレット、モノアリーライド及びジアリーライドイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、トリルオレンジ、ナフトールオレンジ、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム又は酸化ジルコニウムに基づくナノ粒子等が含まれる。1種又は複数の顔料は、好ましくは、樹脂又はポリマー中に、又はすでに記載された種類のバインダー樹脂などの顔料分散剤と共に、既知の方法によって分散される。一般的に、顔料及び分散する樹脂、ポリマー、又は分散剤を、顔料凝集塊を一次顔料粒子に破壊するのに十分に高い剪断下で接触させ、そして顔料粒子の表面を分散樹脂、ポリマー、又は分散剤で濡らす。凝集塊の破壊及び1次顔料粒子の濡れは、顔料安定性及び発色にとって重要である。顔料及び充填剤は、典型的には、コーティング組成物の総質量に基づいて約60質量%までの量で利用できる。使用される顔料の量は、顔料の性質及び色の深さ、及び/又は顔料が作ることを意図する効果の強度に依存し、及び着色コーティング組成物中における顔料の分散性にも依存する。各場合とも、着色コーティング組成物の総質量に基づく顔料含有率は、好ましくは、0.5質量%~50質量%、より好ましくは1質量%~30質量%、非常に好ましくは2質量%~20質量%、さらに特に2.5質量%~10質量%である。
【0096】
クリアコートコーティング組成物には、通常、顔料は含まれないが、該組成物から作られるクリアコートコーティング層の透明度又は所望の明澄度に不都合に影響しない少量の着色剤又は充填剤を含んでよい。
【0097】
添加剤
追加の所望の、通例のコーティング添加剤には、例えば、界面活性剤、安定剤、浸潤剤、分散剤、接着促進剤、UV吸収剤、立体障害アミン光安定剤、例えばHALS化合物、ベンゾトリアゾール又はオキサニリド;フリーラジカルスカベンジャー;滑り添加剤;消泡剤;先行技術から周知の種類の反応性希釈剤;浸潤剤、例えばシロキサン、フッ素化合物、カルボン酸モノエステル、リン酸エステル、ポリアクリル酸及びそれらのコポリマー、例えばポリブチルアクリレート、又はポリウレタン;接着促進剤、例えばトリシクロデカンジメタノール;流動制御剤;フィルム形成助剤、例えばセルロース誘導体;レオロジー制御添加剤、例えば特許WO94/22968、EP-A-0276501、EP-A-0249201又はWO97/12945から知られている添加剤;例えばEP-A-0008127で開示されたような架橋したポリマー微粒子;無機フィロシリケート、例えばアルミニウム-マグネシウムシリケート、モンモリロナイト型のナトリウム-マグネシウム及びナトリウム-マグネシウム-フッ素-リチウムフィロシリケート;シリカ、例えばAerosils(登録商標);又はイオン性及び/又は会合性基を含有する合成ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルピロリドン、スチレン-無水マレイン酸コポリマー又はエチレン-無水マレイン酸コポリマー及びそれらの誘導体、又は疎水的に修飾されたエトキシル化されたウレタン又はポリアクリレート;難燃剤等が含まれる。典型的なコーティング組成物には、そのような添加剤の1種又は組合せが含まれる。
【0098】
コーティング組成物の適用
本発明のコーティング組成物は、当技術分野において周知のいくつかの技術のうちの任意によってコーティングすることができる。これらの技法には、例えば、スプレーコーティング、浸漬コーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、ナイフコーティング、塗り、注ぎ、浸漬、含浸、したたらせ又はローリング等が含まれる。自動車車体のパネルには、スプレーコーティングが典型的に使用される。スプレー適用方法、例えば、圧搾空気スプレー、エアレススプレー、高速回転、静電スプレー適用などを、単独で又は熱風スプレーなどの熱スプレー適用と併用して、使用することが好ましい。
【0099】
本発明のコーティング組成物及びコーティング系は、技術的に及び美的に特に要求の厳しい自動車OEM仕上げ、さらに自動車再仕上げの分野で、特に使用される。コーティング組成物は、単段階及び多段階の両方のコーティング方法で、特に、着色ベースコート又はモノコートコーティング層が、コーティングされていない又は予備コーティングされている基材に最初に適用されて、その後で別のコーティング層が任意に適用され得る(着色フィルムがベースコートコーティングである場合)方法で使用することができる。よって本発明は、少なくとも1層の着色ベースコートを含み、その上に配置された少なくとも1層のクリアコートを含んでもよいマルチコートコーティング系も提供し、ここで、クリアコート又はベースコートのいずれか、又はそれらの両方は、本明細書に開示の分岐状ポリエステルポリオールを含有するコーティング組成物から製造されるものである。ベースコート及びクリアコートコーティング組成物の両方、及びプライマー組成物が、開示の分岐状ポリエステルポリオールを含むことができる。
【0100】
適用されたコーティング組成物は、或る静止時間又は「フラッシュ」期間の後、硬化することができる。静止時間は、例えば、コーティングフィルムの平準化及び脱揮に、又は溶媒などの揮発性構成要素の蒸発に役立つ。静止時間は、上昇した温度の適用により、又は低下させた湿度により支援され又は短縮され得るが、これがコーティングフィルムに、例えば未完成の架橋など如何なる損傷又は変質も残さないことが条件である。コーティング組成物の熱硬化は、方法に関して変わったところはないが、その代わりに、強制通風炉中の加熱又はIRランプによる照射などの典型的な既知の方法により行われる。熱硬化は複数の段階で行うこともできる。別の好ましい硬化方法は、近赤外(NIR)照射による硬化方法である。硬化の種々の方法が使用され得るが、熱硬化が好ましい。一般的に、熱硬化は、コーティングされた物品を、主として照射の熱源により提供される上昇した温度に曝露することにより実施される。適用後、適用されたコーティング層は、例えば30~200℃、又は40~190℃、又は50~180℃の温度の熱で、1分~10時間まで、より好ましくは2分~5時間まで、及び特に3分~3時間の時間で硬化されるが、自動車再仕上げのために使用される温度、好ましくは30~90℃の間の温度で、より長い硬化時間を使用してもよい。分岐状ポリオールは、再仕上げコーティング用、及びより高温で硬化される元の仕上げコーティング用の両方で使用することができる。再仕上げコーティング組成物を適用するための典型的な方法は、適用と、室温又は30~90℃の間の上昇した温度での硬化を伴う乾燥とを含む。OEMコーティングは、典型的には、より高い温度、例えば約110~約135℃で硬化される。硬化時間は、使用される特定の成分及び層の厚さなどの物理的パラメータに応じて変更されるであろうが、典型的な硬化時間は、約15~約60分、及び好ましくは、ブロックされた酸触媒系に対して約15~25分、及びブロックされていない酸触媒系に対して約10~20分の範囲である。
【0101】
硬化したプライマー層は、典型的には、約50μm~約75μmの厚さを有する。形成された硬化したベースコート層は、所望の色及び色を提供する連続した層を形成させるために必要な厚さに主として依存して、約5~約75μmの厚さを有する。形成された硬化したクリアコート層は、典型的には約30μm~約65μmの厚さを有する。
【0102】
コーティング組成物は、被覆のない鋼、リン酸化された鋼、亜鉛めっきされた鋼、又はアルミニウムなどの金属基材、及びプラスチック及び複合体などの非金属製基材を含む多くの異なった種類の基材に適用することができる。上記基材は、硬化された又は未硬化の電着されたプライマー、プライマーサーフェーサー及び/又はベースコートの層などの別のコーティングの層をその上にすでに有する、これらの材料の任意のものであってもよい。
【0103】
基材は、電着(エレクトロコート)プライマーで最初に下塗りされてもよい。電着組成物は、自動車車両のコーティング作業で使用される任意の電着組成物であってよい。エレクトロコート組成物の非限定的な例には、BASF社より販売されているエレクトロコーティング組成物が含まれる。電着コーティング浴は通常、水又は水の混合物及び有機共溶媒中でイオン性安定化(例えば、塩形成アミン基)を有する主要なフィルム形成エポキシ樹脂を含む水性分散液又はエマルションを含む。熱の適用などの適切な条件下で主要な樹脂の官能基と反応し得る架橋剤は、主要なフィルム形成樹脂と共に乳化されて、その結果、コーティングを硬化する。架橋剤の好適な例には、ブロックされたポリイソシアネートが含まれるが、これに限定されない。電着コーティング組成物には、通常、1種以上の顔料、触媒、可塑剤、融着助剤、消泡剤、流動制御剤、浸潤剤、界面活性剤、UV吸収剤、HALS化合物、抗酸化剤、及び他の添加剤が含まれる。
【0104】
電着コーティング組成物は、好ましくは、10~35μmの厚さの乾燥フィルムに適用される。適用後、コーティングされた車体は、浴から取り出されて脱イオン水ですすがれる。そのコーティングは、適切な条件下で、例えば、約135℃~約190℃で約15分~約60分の間焼きつけることにより硬化できる。
【0105】
本発明のコーティング組成物から製造された本発明のコーティングは、エレクトロコート、サーフェーサーコート、ベースコート系又はすでに硬化された典型的な既知のクリアコート系にさえ強く接着するので、自動車OEM仕上げにおける使用だけでなく、自動車再仕上げに、又はすでに塗装された自動車車体の組み立てユニットの擦過防止にも抜群に適している。
【0106】
可塑剤としてのポリエステルポリオールの使用方法
本発明のさらなる課題は、上記で定義した分岐状ポリエステルポリオールの可塑剤としての、特にコーティング組成物における可塑剤、例えばプライマー、充填剤、ベースコート及びクリアコートとしての使用方法である。
【0107】
可塑剤は、典型的には、コーティング配合物の成分(A)の総固形分に基づいて、0.1質量%~2.5質量%の範囲の量で使用される。
【0108】
以下の実施例は、記載された及び特許請求された方法及び組成物の範囲を例示するが、決して限定するものではない。全ての部は、特に断りのない限り質量部である。
【実施例
【0109】
分岐状ポリエステルポリオールPPの合成
工程(a)
反応器に、12.010質量部のトリメチロールプロパン、6.300質量部のアジピン酸、及び1.130質量部の混合キシレンを入れた。反応器の内容物を混合し、230℃に加熱した。副生物の水は、それが生成される際に除去し、温度を200℃よりも高温で約5時間維持し、次に、キシレンの大部分を可能な限り除去し、反応生成物(第一の中間生成物)を90℃に冷却した。
【0110】
工程(b)
次いで反応器に、8.390質量部の溶融ヘキサヒドロフタル酸無水物(60℃)及び4.520質量部のエチル3-エトキシプロピオネートを加えた。反応器の内容物を撹拌し、115℃に加熱した。発熱がピークに達した後(温度は150℃未満に保ちながら)、反応器の内容物を136℃に加熱し、次に再び90℃に冷却し、16.780質量部の追加の溶融ヘキサヒドロフタル酸無水物(60℃)を加え、その後1.420質量部のエチル3-エトキシプロピオネートを流した。反応器の内容物を撹拌し、115℃に加熱した。発熱がピークに達した後(温度は150℃未満に保ちながら)、反応器の内容物を145℃に加熱した。温度は145℃で90分間維持し、その後140℃に冷却した。このようにして、第2の中間物を形成した。
【0111】
工程(c)
温度を140~148℃の間に保ちながら、37.400質量部のCardura(商標)E10-Pを約90分間にわたって加え、その後1.420質量部のエチル3-エトキシプロピオネートを流した。反応混合物を145℃で3時間保持し、その後冷却し、5.320質量部のAromatic 100及び5.310部のn-ブチルアセテートで還元した。このようにして、分岐状ポリエステルポリオールPP溶液(80質量%固体)を得た。
【0112】
本発明によるクリアコート組成物A(CCC A)
成分(A)
成分(A)を、下記の表1による材料成分を混合して得た。全ての部は質量部である。
【0113】
【表1】
【0114】
成分(A)の固形分含量の総質量のみに基づいて、分岐状ポリエステルポリオールPPは、おおよそ1.9質量%の量で含有されていた。
【0115】
比較用クリアコート組成物A’(CCC A’)
比較用クリアコート組成物A’を、表1による材料成分を混合して得たが、ポリエステルポリオールPPの代わりに、1.015質量部のブチルベンジルフタレートを用いた。
【0116】
架橋成分(B)
架橋成分(B)として、BASF Corporation社、米国から入手可能なLimco Medium Hardener、すなわちポリイソシアネート架橋剤を用いた。
【0117】
希釈剤組成物(C)
希釈剤成分(C)として、BASF Corporation社、米国から入手可能なLimco Reducer12を用いた。
【0118】
混合比率
コーティング組成物を得るために、成分(A)、(B)及び(C)を8:2:1容量で混合した。
【0119】
このようにして得たコーティング組成物の固形分含量の総質量に基づいて、分岐状ポリエステルポリオールPPは、おおよそ1.3質量%の量で、「すぐに使用可能な」配合物中に含有されていた。
【0120】
コーティングの調製
クリアコート試験に使用したパネルは、ベースコート層を適用する前にP400で研磨して洗浄した後、試験クリアコート層を適用したエレクトロコート鋼(e-coated steel)であった。3つの異なる色の市販ベースコート、BASF Supreme Plus黒、BASF Supreme Plus白、BASF Supreme Plus赤を使用した。ベースコート層を、研磨して洗浄したエレクトロコートパネル上にスプレーして、隠蔽した(約2.5~7.6μm)。ベースコート層を周囲温度で10~20分間フラッシュ乾燥させ、次いでクリアコート層を約50~60μmにスプレーし、試験前に周囲温度で1週間空気乾燥させた。
【0121】
性能試験
「X」初期接着試験
「X」初期接着試験は、ASTM D3359、2017 02、方法Aに準拠して実施した。
【0122】
湿度96時間後の「X」接着
ASTM D1735、2014 06により、パネルを湿度100%中37.8℃(100°F)で96時間調整した後、拭き取り乾燥して、周囲条件で10分間回復させてから、ASTM D3359、2017 02、方法Aによる接着試験を行った。
【0123】
周囲グラベロメーター試験
周囲グラベロメーター試験は、ASTM D3170、2014 06に準拠して実施した。
【0124】
低温グラベロメーター試験
パネルを、24時間以上、25℃未満で調整し、次いで、回復させずに直接グラベロメーター機器に運んで、ASTM D3170、2014 06による試験を行った。試験パネルを吸い取り乾燥させ、マスキングテープで処理して「ハンギング チャド(残ったくず)(hanging chads)」を除去してから評価した。
【0125】
円錐マンドレル試験
円錐マンドレル試験は、ASTM D522、方法A、2013年に準拠して実施した。
【0126】
カップ試験
カップ試験は、DIN EN ISO1520、2007 11に準拠して実施した。
【0127】
表2に得られた結果を示す。
【0128】
【表2】
【0129】
顔料の多いプライマー組成物を配合した場合、組成物の総固形分含量に基づいて0.25質量%という低量の分岐状ポリエステルポリオールを用いても、同様の可塑化結果が得られた。
【国際調査報告】