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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(54)【発明の名称】エステル系化合物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/82 20060101AFI20230227BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20230227BHJP
   C08K 5/12 20060101ALI20230227BHJP
   C07C 67/08 20060101ALI20230227BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230227BHJP
【FI】
C07C69/82 B CSP
C08L27/06
C08K5/12
C07C67/08
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540710
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 KR2020009374
(87)【国際公開番号】W WO2021137376
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0178656
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】カン ポール
(72)【発明者】
【氏名】キム キドン
(72)【発明者】
【氏名】キム ミンジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヤンジュン
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
4J002
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB50
4H006AC48
4H006BA10
4H006BC31
4H006BJ50
4H006KC30
4H039CA66
4H039CL25
4J002BD041
4J002EH146
4J002FD026
(57)【要約】
本発明は、新規のエステル系化合物およびその用途に関し、耐熱性および相溶性の改善のための新規のエステル系化合物に対する可塑剤としての用途に関する。本発明によるエステル系化合物を耐熱樹脂組成物の可塑剤として使用する場合、耐移行性および加熱減量などの物性の向上に相乗効果を提供して、成形物の物性の向上に寄与することができ、速い吸収速度と短い溶融時間を有して、耐熱樹脂組成物の加工性を改善することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される、化合物。
[化学式1]
【化1】
前記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して、C1-C10アルキルであり、
は、C1-C10アルキレンであり、前記アルキレンの非隣接-CH-は、Oが互いに直接連結されない方式に代えられてもよい。
【請求項2】
前記化学式1において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、C3-C10アルキルであり、前記Lは、C2-C6アルキレンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化学式1において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、C3-C10アルキルであり、前記Lは、下記化学式Aで表される構造から選択される、請求項1に記載の化合物。
[化学式A]
【化2】
前記化学式A中、
およびLは、それぞれ独立して、エチレンまたはプロピレンであり、
Yは、Oであり、
aは、1または2の整数である。
【請求項4】
前記化学式1において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、C3-C10分岐鎖アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
下記化学式1で表される化合物を含む、エステル系可塑剤組成物。
[化学式1]
【化3】
前記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して、C1-C10アルキルであり、
は、C1-C10アルキレンであり、前記アルキレンの非隣接-CH-は、Oが互いに直接連結されない方式に代えられてもよい。
【請求項6】
前記エステル系可塑剤組成物の全重量に対して、前記化学式1で表される化合物を30重量%以上含む、請求項5に記載のエステル系可塑剤組成物。
【請求項7】
多価アルコールおよび1価アルコールの混合物とテレフタル酸を混合した後、触媒の存在下でエステル化反応を行って前記化学式1で表される化合物を含むエステル系可塑剤組成物を製造する方法。
[化学式1]
【化4】
前記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して、C1-C10アルキルであり、
は、C1-C10アルキレンであり、前記アルキレンの非隣接-CH-は、Oが互いに直接連結されない方式に代えられてもよい。
【請求項8】
前記多価アルコールおよび1価アルコールの混合物は、
1:1~1:20の重量比で混合されている、請求項7に記載のエステル系可塑剤組成物を製造する方法。
【請求項9】
前記エステル系可塑剤組成物の全重量に対して、前記化学式1で表される化合物を30重量%以上含む、請求項7に記載のエステル系可塑剤組成物を製造する方法。
【請求項10】
前記エステル系可塑剤組成物の全重量に対して、下記化学式2で表される化合物を残量で含む、請求項9に記載のエステル系可塑剤組成物を製造する方法。
[化学式2]
【化5】
前記化学式2中、
およびRは、それぞれ独立して、C1-C10アルキルである。
【請求項11】
請求項5または請求項6に記載のエステル系可塑剤組成物を含む、塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項12】
前記エステル系可塑剤組成物は、
塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、5~100重量部含まれる、請求項11に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項13】
熱安定剤、充填剤またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項11に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項14】
120℃で72時間加熱した後、常温で測定した初期試験片の重量に対して測定した加熱減量の割合が0.6%以下である、請求項11に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項15】
請求項11に記載の塩化ビニル系樹脂組成物から製造される成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のエステル系化合物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
日常の中で使用される高分子樹脂は、それぞれ特性に合わせて、生活および家電用品、衣類、自動車、建設資材または包装材など、各分野において様々に適用され使用されている。一般的に、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン(PU)およびポリ塩化ビニル(PVC)などから選択される高分子樹脂が汎用的に使用されている。特に、ポリ塩化ビニルは、硬質、軟質特性を有し、様々な成形方法に有利に適用可能であり、価格競争力に優れて汎用的な効用性を備えることから、生活用品から産業資材に至るまで様々な応用分野に適用されている。
【0003】
ポリ塩化ビニルは、樹脂単独で使用されるよりは、様々な物性の実現のために、可塑剤を添加して使用される。可塑剤は、樹脂に柔軟性を与えて、加工性および成形性などの物性を向上させる役割を果たす。しかし、産業の発展に伴い可塑剤の役割も多様化し、柔軟性だけでなく、耐揮発性、耐移行性、耐老化性、耐寒性、耐油性、耐水性、耐熱性など、その適用分野に応じて求められる特性を強化するために多様化している。
【0004】
可塑剤として汎用的に使用されているエステル系化合物の一例としては、ジ-(2-エチルヘキシル)フタレート(DEHP)、ジ-イソノニルフタレート(DINP)、ジ-2-プロピルへプチルフタレート(DPHP)またはジイソデシルフタレート(DIDP)などが挙げられる。しかし、これらは、フタレート可塑剤であり、環境ホルモンの問題があって使用が制限される傾向にある。また、非フタレート系可塑剤に代表されるジオクチルテレフタレート(DOTP)は、移行性、揮発性(加熱減量)などおよび熱安定性などにおいて、製品の物性を改善するには限界があった。
【0005】
そのため、従来、可塑剤として使用されているエステル系化合物の問題を解決し、樹脂との加工性、吸収速度、揮発損失、移行損失および熱安定性などの様々な物性の面で、既存の製品の物性を充分に改善することができるエステル系化合物を提供するための研究が切実に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐熱性および相溶性が改善したエステル系化合物およびその用途を提供することを目的とする。
【0007】
詳細には、本発明は、加熱減量および耐移行性に優れた可塑剤としての用途を有するエステル系化合物、これを含むエステル系可塑剤組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
詳細には、本発明は、上述のエステル系可塑剤組成物を含む塩化ビニル系樹脂組成物およびこれより製造される成形物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明では、下記化学式1で表される化合物、すなわち、新規のエステル系化合物が提供される。
[化学式1]
【化1】
[前記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して、C1-C10アルキルであり、
は、C1-C10アルキレンであり、前記アルキレンの非隣接-CH-は、Oが互いに直接連結されない方式に代えられてもよい。]
【0010】
本発明の一実施形態による化合物は、前記化学式1において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、C3-C10アルキルであり、前記Lは、C2-C6アルキレンであることができる。
【0011】
本発明の一実施形態による化合物は、前記化学式1において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、C3-C10アルキルであり、前記Lは、下記化学式Aで表される構造から選択されることができる。
[化学式A]
【化2】
[前記化学式A中、
およびLは、それぞれ独立して、エチレンまたはプロピレンであり、
Yは、Oであり、
aは、1または2の整数である。]
【0012】
本発明の一実施形態による化合物は、前記化学式1において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、C3-C10分岐鎖アルキルであることができる。
【0013】
また、本発明では、前記化学式1で表される化合物を含むエステル系可塑剤組成物が提供される。
【0014】
本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物は、全重量に対して、前記化学式1で表される化合物を30重量%以上含むことができる。
【0015】
また、本発明では、多価アルコールおよび1価アルコールの混合物とテレフタル酸を混合した後、触媒の存在下でエステル化反応を行って前記化学式1で表される化合物を含むエステル系可塑剤組成物を製造する方法が提供される。
【0016】
本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物を製造する方法において、前記多価アルコール(A)および1価アルコール(B)の混合物は1:1~1:20重量比(A:B)で混合したものであることができる。
【0017】
本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物を製造する方法において、前記エステル系可塑剤組成物の全重量に対して、前記化学式1で表される化合物を30重量%以上含むことができる。
【0018】
本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物を製造する方法において、前記エステル系可塑剤組成物の全重量に対して、下記化学式2で表される化合物を残量で含むことができる。
[化学式2]
【化3】
[前記化学式2中、
およびRは、それぞれ独立して、C1-C10アルキルである。]
【0019】
また、本発明では、上述のエステル系可塑剤組成物を含む塩化ビニル系樹脂組成物が提供される。
【0020】
本発明の一実施形態による塩化ビニル系樹脂組成物において、前記エステル系可塑剤組成物は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、5~100重量部含まれることができる。
【0021】
本発明の一実施形態による塩化ビニル系樹脂組成物は、熱安定剤および充填剤などから選択される一つ以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0022】
本発明の一実施形態による塩化ビニル系樹脂組成物は、120℃で72時間加熱した後、常温で測定した初期試験片の重量に対して測定した加熱減量の割合が0.6%以下であることができる。
【0023】
また、本発明では、上述の塩化ビニル系樹脂組成物から製造される成形物が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、塩化ビニル系樹脂などの耐熱樹脂組成物で求められる耐熱性および相溶性などの物性の向上のための可塑剤として有効なエステル系化合物を提供する。また、これは、可塑剤として汎用的に使用される従来のエステル系化合物の問題であった加工性の問題を改善することができる。
【0025】
本発明によると、耐移行性および加熱減量などの特性の面で特に優れたエステル系可塑剤を非常に経済的な方法で提供することができる。また、これによると、製造工程が単純化し、製造コストを抑えることができる利点を提供する。
【0026】
本発明によるエステル系可塑剤を耐熱樹脂組成物の可塑剤として使用すると、耐移行性および加熱減量などの物性の向上に相乗効果を提供して、相溶性、すなわち、可塑化効率を高め、成形物の物性の向上に寄与することができる。また、本発明によるエステル系可塑剤は、速い吸収速度と短い溶融時間を有することから、樹脂組成物の加工性を改善することができ、耐熱樹脂の物性の低下を引き起こさない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明によるエステル系化合物およびその用途について詳細に説明する。ここで、使用される技術用語および科学用語において他の定義がなければ、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明で本発明の要旨を不明瞭にし得る公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0028】
本明細書で使用される単数形態は、文脈で特別な指示がない限り、複数形態も含むことを意図し得る。
【0029】
また、本明細書において特別な言及なしに使用された単位は、重量を基準とし、一例として、%または比の単位は重量%または、重量比を意味し、重量%は、他に定義されない限り、全組成物のいずれか一つの成分が組成物内で占める重量%を意味する。
【0030】
また、本明細書で使用される数値範囲は、下限値と上限値とその範囲内でのすべての値、定義される範囲の形態と幅から論理的に誘導される増分、二重限定されたすべての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限のすべての可能な組み合わせを含む。本発明の明細書において特別な定義がない限り、実験誤差または値の四捨五入によって発生する可能性がある数値範囲以外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0031】
本明細書の用語、「含む」は、「備える」、「含有する」、「有する」または「特徴とする」などの表現と等価の意味を有する開放型記載であり、さらに挙げられていない要素、材料または工程を排除しない。
【0032】
本明細書の用語、「アルキル」は、直鎖または分岐鎖状の脂肪族炭化水素から誘導された1価ラジカルを意味する。また、「アルキレン」は、直鎖または分岐鎖状の脂肪族炭化水素から誘導された2価ラジカルを意味し、エチレンは、-CHCH-の構造式を有し、プロピレンは、-CHCHCH-または-CH(CH)CH-の構造式を有することができる。
【0033】
本明細書の用語、「本発明による化合物」または「本発明の化合物」は、下記化学式1で表される化合物、すなわち、エステル系化合物を意味する。また、前記エステル系化合物は、可塑剤としての用途を有するものであり、エステル系可塑剤と等価の意味を有することができる。
【0034】
本発明者らは、塩化ビニル系樹脂などの耐熱樹脂との加工性は言うまでもなく、耐熱性を向上させるための可塑剤に関する鋭意研究を重ねたところ、互いに異なる構造的特徴を有するアルコールの組み合わせにより、新規のエステル系化合物、すなわち、エステル系可塑剤を見出した。また、本発明によるエステル系化合物は、互いに異なる構造的特徴を有するアルコールの組み合わせおよびこれらの割合を同時に調節して非常に経済的な方法で提供されることができ、上述の目的を達成することができることを確認した。特に、本発明によるエステル系化合物は、耐移行性と耐揮発性などにおいて驚くほど向上した相乗効果を奏することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0035】
本発明は、互いに異なる構造的特徴、すなわち、1価アルコールと多価アルコールが混合されたアルコール混合物を使用することを特徴とする。特に、本発明によるアルコール混合物は、多価アルコールに比べて過量の1価アルコールが混合された混合物であることができ、前記混合物は、1:1~1:20重量比を満たすことができる。
【0036】
このような組成を満たす場合、可塑剤自体の離脱によって発生し得る問題を効果的に防止する。また、汎用的に使用されるエステル系化合物に比べて高い分子量を有するにもかかわらず、同等水準の硬度特性を実現することにより、加工性、作業性などの相溶性に有利な利点を提供し、可塑化効率が高い。すなわち、本発明によると耐熱性および相溶性を同時に満たすことができるエステル系化合物およびその用途を提供することができる。また、上述の物性の実現が可能なエステル系化合物を提供するためのコストダウン技術を確保することができる面で本発明は注目される。
【0037】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0038】
本発明の一実施形態によるエステル系化合物は、下記化学式1で表されることができる。
【0039】
[化学式1]
【化4】
【0040】
[前記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して、C1-C10アルキルであり、
は、C1-C10アルキレンであり、前記アルキレンの非隣接-CH-は、Oが互いに直接連結されない方式に代えられてもよい。]
【0041】
前記アルキレンの非隣接-CH-は、前記Lの両末端に直接結合で連結された酸素原子と隣接した-CH-以外のアルキレンを意味する。
【0042】
前記化学式1で表されるエステル化合物は、上述の構造的特徴により、可塑剤として汎用的に使用されている従来のエステル系化合物であるジオクチルテレフタレート(DOTP)などが有する可塑化効率、移行性などの品質の劣化を改善する。
【0043】
このような効果により相乗効果を示す面で、前記エステル系化合物は、下記構造を満たすことができる。
【0044】
一例として、前記化学式1において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、C3-C10アルキルであり、前記Lは、C2-C6アルキレンであることができる。
【0045】
一例として、前記化学式1において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、C3-C10アルキルであり、前記Lは、下記化学式Aで表される構造から選択されることができる。
【0046】
[化学式A]
【化5】
【0047】
[前記化学式A中、
およびLは、それぞれ独立して、エチレンまたはプロピレンであり、
Yは、Oであり、
aは、1または2の整数である。]
【0048】
一例として、前記化学式1において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、C3-C10分岐鎖アルキルであることができる。
【0049】
一例として、前記化学式1において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、C5-C10分岐鎖アルキルであり、前記Lは、C2-C6直鎖アルキレンであることができる。
【0050】
一例として、前記RおよびRは、それぞれ独立して、メチルブチル、エチルブチル、ジメチルブチル、メチルペンチル、エチルペンチル、ジメチルペンチル、メチルヘキシル、エチルヘキシルおよびジメチルヘキシルなどから選択され、前記Lは、直鎖アルキレンとして、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンまたはヘキシレンであることができる。
【0051】
一例として、前記RおよびRは、互いに同時に1-エチルヘキシルまたは2-エチルヘキシルであり、前記Lは、直鎖アルキレンとして、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンまたはヘキシレンであることができる。
【0052】
一例として、前記化学式1において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、C5-C10分岐鎖アルキルであり、前記Lは、前記化学式Aで表される構造から選択されることができる。この場合、前記化学式Aにおいて、前記LおよびLは、それぞれ独立して、エチレンまたはプロピレンであり、前記Yは、Oであり、前記aは、1または2の整数であることができる。
【0053】
本発明の一実施形態によるエステル系化合物は、耐移行性、加熱減量などの特性の面において優れ、且つこれを採用した耐熱樹脂の硬度、伸び率、引張強度など物理的性質を向上させる。また、改善した可塑化効率を実現する。
【0054】
具体的には、本発明によるエステル系化合物は、可塑剤としての用途を有する。すなわち、本発明によるエステル系化合物は、エステル系可塑剤であることができる。
【0055】
本発明は、上述の本発明によるエステル系化合物を含むエステル系可塑剤組成物およびその製造方法を提供する。
【0056】
一様態である、本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物は、前記化学式1で表されるエステル系化合物を、全重量に対して、30重量%以上含むことができる。
【0057】
本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物は、全重量に対して、下記化学式2で表される化合物を残量として含むことができる。
【0058】
[化学式2]
【化6】
【0059】
[前記化学式2中、
およびRは、それぞれ独立して、C1-C10アルキルである。]
【0060】
前記化学式2で表される化合物は、前記化学式1で表される化合物の製造時に引き起こされる副生成物であることができる。この場合、前記化学式2で表される化合物は、本発明によるエステル系化合物と組み合わされて、可塑化効率、移行性などに悪い影響を及ぼさない。
【0061】
本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物は、試験方法による加熱減量に卓越した利点を提供する。これにより、本発明によるエステル系可塑剤は、可塑剤としての優れた物性を提供し、且つ現在、環境的な問題を引き起こしている従来の可塑剤の問題点を解決することができる点で利点を有する。
【0062】
本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物は、エーテルフリー可塑剤組成物であることができる。ここで、前記エーテルフリーは、前記エステル系可塑剤内に含まれたエーテル化合物が実質的に含まれないか、1,000ppm以下、100ppm以下、10ppm以下であることを意味する。
【0063】
本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物は、多価アルコールおよび1価アルコールの混合物とテレフタル酸を混合した後、触媒の存在下で、エステル化反応を行って製造されることができる。
【0064】
上述のように、本発明によるエステル系可塑剤組成物は、互いに異なる構造的特徴を有するアルコールの組み合わせおよびこれらが所定の割合で混合されることにより、これより製造されたエステル系可塑剤が、耐移行性と耐揮発性などに驚くほど向上した相乗効果を奏することを可能にする。
【0065】
具体的には、本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物の製造方法は、1:1~1:20の重量比を満たす多価アルコールおよび1価アルコールの混合物を使用することを特徴とする。
【0066】
上述の重量比を満たすアルコール混合物を使用する場合、可塑剤の分子量が向上し、樹脂との相互作用が可能な官能基、すなわち、エステル基の数を増加させる。一般的に、可塑剤は、分子量、構造的特徴などに応じて耐老化物性などが左右され、可塑剤の分子量が大きいほど、耐老化物性には優れるが、樹脂との相溶性が低下する傾向にある。しかし、本発明によると、耐老化物性は言うまでもなく、樹脂との相溶性を同時に向上させることができる点で、従来技術とは差がある。
【0067】
また、本発明によると、少なくとも二つ以上の化合物が混合された様態のエステル系可塑剤組成物が提供される。これは、耐移行性と耐揮発性に卓越した相乗効果を発揮する。具体的には、本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物は、前記化学式1で表されるエステル系化合物から選択される少なくとも1種および前記化学式2で表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物が混合された様態であることができる。
【0068】
一例として、本発明による製造方法により製造されたエステル系可塑剤組成物は、ジオクチルテレフタレート(DOTP)単一化合物に比べて、最大30%以下の水準の加熱減量を示すことができる。この場合、前記加熱減量は、120℃で72時間加熱した後、常温(25℃)で測定した初期試験片の重量に対して測定した加熱減量の割合であることができる。
【0069】
一例として、本発明による製造方法により製造されたエステル系可塑剤組成物は、ジオクチルテレフタレート(DOTP)単一化合物に比べて、最大1.5%以下の水準の移行量を示すことができる。この場合、前記移行量は、下記評価方法によって重量を測定し、(Wq2-Wq1)/Wi×100で計算されることができる。
【0070】
また、上述の重量比を満たすアルコール混合物を使用する場合、加熱減量が改善し、且つ引張強度、伸び率および耐熱老化性(例えば、加熱後の引張残率、伸び残率など)に優れたエステル系可塑剤組成物を提供することができる。一方、上述の重量比に比べて低い水準のアルコール混合物を使用する場合、化学式1で表されるエステル系化合物の含量が少なくて大きな効果がない可能性があり、上述の重量比に比べて高い水準のアルコール混合物を使用する場合、分子量の制御が不良で高い硬度を有する高分子量のエステル系可塑剤組成物を形成して好適な加工性を維持し難い欠点がある。
【0071】
本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物の製造方法において、前記アルコール混合物は、前記多価アルコール1重量部を基準として、前記第一級アルコールは、具体的には2~18重量部、より具体的には3~15重量部含まれることができる。
【0072】
特に、このような重量比を満たす場合、樹脂内の移行量が著しく低下した可塑剤組成物を提供することができ好ましい。また、未反応で存在するアルコールまたは副生成物として生成されるエーテル化合物の含量を減少させて、工程効率を高める。一方、前記テレフタル酸と構造的特徴が類似する2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物であるアジピン酸、アゼライン酸などを使用する場合、上述の工程条件による相乗効果を示していない点は、本発明による製造方法の選択性を裏付けるものと言える。
【0073】
具体的には、前記ステップは、上述の重量比を満たすアルコール混合物を使用し、具体的には、前記テレフタル酸10~50重量%、前記1価アルコール10~70重量%および前記多価アルコール1~25重量%を混合した後、エステル化反応が行われることができる。より具体的には、前記テレフタル酸20~45重量%、前記1価アルコール20~60重量%および前記多価アルコール3~20重量%、最も具体的には、前記テレフタル酸30~40重量%、前記1価アルコール30~60重量%および前記多価アルコール4~16重量%を混合した後、エステル化反応が行われることができる。
【0074】
本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物の製造方法において、前記1価アルコールは、炭素数1~10のアルコールであることができる。また、前記1価アルコールが分岐鎖状の場合、好適な硬度を実現し、樹脂の機械的物性が利点を提供することができ好ましい。その非限定的な一例としては、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノールなどから選択されるものであることができる。好ましくは、1-エチルヘキシル、2-エチルヘキシルまたはこれらの組み合わせであることができる。
【0075】
本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物の製造方法において、前記多価アルコールは、炭素数2~10のアルキレン基を含む化合物であることができる。その非限定的な一例としては、グリセロール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびジプロピレングリコールなどから選択されるグリコール系化合物;および1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、3-メチレンペンタン-1,5-ジオール、1,7-プタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオールおよび2-メチルオクタン-1,8-ジオールなどから選択されるジオール系化合物;から選択されるものであることができる。
【0076】
本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物の製造方法において、前記多価アルコールが直鎖状の場合、引張強度および伸び率に対する安定性に優れる面で好ましい。
【0077】
本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物の製造方法において、エステル系可塑剤組成物は、テレフタル酸;2-エチルヘキサノールを含む1価アルコール;および直鎖状の多価アルコール;の組み合わせから誘導されるものが最も好ましい。
【0078】
本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物の製造方法において、前記触媒は、Sn系またはTi系を含む有機金属触媒、スルホン酸系または硫酸系を含む酸触媒、またはこれらの混合触媒を使用することができる。この場合、前記触媒の使用量は、制限されず、通常の触媒使用量で使用されることができる。
【0079】
一例として、前記有機金属触媒において、Ti系有機金属触媒は、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラ-イソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラペンチルチタネート、テトラヘキシルチタネート、テトラ-オクチルチタネート、テトラノニルチタネート、テトラドデシルチタネート、テトラヘキサデシルチタネート、テトラ-オクタデシルチタネート、テトラデシルチタネートおよびテトラへプチルチタネートなどのテトラアルキルチタネート;およびテトラフェニルチタネートなどのテトラアリールチタネート;から選択されることができる。
【0080】
一例として、前記酸触媒は、硫酸パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸およびブタンスルホン酸などから選択されることができる。
【0081】
一例として、前記触媒は、通常の使用量で使用可能であることは言うまでもなく、具体的には、テレフタル酸、1価アルコールおよび多価アルコールの全重量100重量部に対して、0.01~1重量部使用されることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0082】
本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物の製造方法において、前記ステップは、テレフタル酸、1価アルコールおよび多価アルコールを一括仕込みして行われることができる。また、テレフタル酸に1価アルコールおよび多価アルコールの混合物を連続して投入する連続仕込みまたはテレフタル酸に1価アルコールおよび多価アルコールをそれぞれ連続して投入する連続仕込みにより行われてもよいことは言うまでもない。また、前記ステップは、多価アルコールのみを連続仕込みして行われることもできる。
【0083】
本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物の製造方法において、前記ステップは、80℃以上の反応温度下でエステル化反応が開始されることができる。
【0084】
一例として、前記ステップの反応温度は、135℃以上であることができる。
【0085】
一例として、前記ステップの反応温度は、150℃以上であることができる。
【0086】
一例として、前記ステップの反応温度は、170~270℃であることができる。
【0087】
一例として、前記ステップは、互いに異なる反応温度下で多段階で行われることができる。具体的には、170~200℃の反応温度下で行われる第1ステップと、210~250℃の反応温度下で行われる第2ステップとを含むことができる。
【0088】
また、前記ステップは、上述の反応温度下で、10分間~24時間行われることができる。反応時間は、下記式1によって得られた酸価により適宜調節されることができる。前記酸価は低いほど好ましいが、5以下の値であれば、制限されない。この場合、前記酸価が高いとは、未反応の芳香族化合物が可塑剤内に残っていることを意味し、可塑剤の純度に良好でない影響を及ぼし得る。
【0089】
[式1]
酸価(acid value)=(滴定量×5.6×ファクター(factor))/試料量
【0090】
[前記式1中、
滴定に使用されたアルカリ溶液が0.1N KOH水溶液である場合には、前記ファクター(factor)が1である。]
【0091】
また、前記ステップは、不活性雰囲気下で行われることができる。前記不活性雰囲気は、窒素、アルゴンなどから選択される不活性ガス雰囲気を意味する。
【0092】
本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物の製造方法は、前記ステップの後、中和するステップおよび未反応のアルコールを回収するステップなどを含む精製ステップをさらに含むことができる。このような精製ステップにより回収された未反応のアルコールは、再使用可能であり、これにより、継続して反応ステップに使用されて、より経済的な工程を提供できるという利点を提供する。
【0093】
前記中和するステップは、通常のアルカリ溶液を使用して行われることができる。
【0094】
前記未反応のアルコールを回収するステップは、未反応で存在するアルコールは言うまでもなく、反応副生成物を除去するステップであることができ、沸点の差を利用する蒸留ステップであることができる。このような蒸留ステップによる場合、分離しようとする物質の沸点の差が、好ましくは10℃以上であることが好ましい。また、前記蒸留は、多段蒸留または混合蒸留であることができる。前記多段蒸留の場合、分離しようとする物質それぞれの沸点の差によって個別に分離する方法であることができ、前記混合蒸留の場合、分離しようとする物質を同時に蒸留する方法であることができる。
【0095】
また、本発明では、上述の製造方法から製造されたエステル系化合物を含むエステル系可塑剤組成物が提供される。
【0096】
具体的には、本発明によるエステル系可塑剤組成物は、下記化学式1および化学式2で表される化合物を含むことができる。具体的には、前記エステル系可塑剤組成物は、前記化学式1で表されるエステル系化合物を30重量%以上含むことができる。
【0097】
[化学式1]
【化7】
【0098】
[化学式2]
【化8】
【0099】
[前記化学式1および化学式2中、
およびRは、それぞれ独立して、C1-C10アルキルであり、
は、C1-C10アルキレンであり、前記アルキレンの非隣接-CH-は、Oが互いに直接連結されない方式に代えられてもよい。]
【0100】
一例として、前記化学式1および化学式2において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、C3-C10アルキルであり、前記Lは、C2-C6アルキレンであることができる。
【0101】
一例として、前記化学式1および化学式2において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、C3-C10アルキルであり、前記Lは、下記化学式Aで表される構造から選択されることができる。
【0102】
[化学式A]
【化9】
【0103】
[前記化学式A中、
およびLは、それぞれ独立して、エチレンまたはプロピレンであり、
Yは、Oであり、
aは、1または2の整数である。]
【0104】
一例として、前記化学式1および化学式2において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、C3-C10分岐鎖アルキルであることができる。
【0105】
一例として、前記化学式1および化学式2において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、C5-C10分岐鎖アルキルであり、前記Lは、C2-C6直鎖アルキレンであることができる。
【0106】
本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物は、エーテルフリー可塑剤であることができる。この場合、前記エーテルフリーは、前記エステル系可塑剤内に含まれたエーテル化合物が実質的に含まれないか、1,000ppm以下、100ppm以下、10ppm以下であることを意味する。
【0107】
本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物は、従来、可塑剤、すなわち、ジオクチルテレフタレート(DOTP)などの可塑剤を含み、これらから引き起こされ得る移行性、揮発性(加熱減量)などの品質の劣化を解消することができる。また、これより製造された試験片の加熱減量に卓越した利点を提供する。このような結果として、本発明によるエステル系可塑剤は、可塑剤としての優れた物性を提供し、且つ現在、環境的な問題を引き起こしている従来の可塑剤の問題点を解決した。
【0108】
また、本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物は、上述の低分子可塑剤の問題点は言うまでもなく、既存の高分子可塑剤が有している問題点まで解決することができる。具体的には、本発明によるエーテル系可塑剤組成物は、600以上の分子量を有するにもかかわらず、上述の低分子可塑剤と同等水準の硬度を実現する。これにより、塩化ビニル系樹脂などの耐熱樹脂との加工性に悪い影響を及ぼさず、高い可塑化効率を実現する。
【0109】
より具体的には、本発明によると、前記化学式2で表される化合物を20重量%以下で含むエステル系可塑剤組成物を提供することができる。
【0110】
最も具体的には、本発明によると、前記化学式2で表される化合物を18重量%以下で含むエステル系可塑剤組成物を提供することができる。
【0111】
本発明は、上述の本発明によるエステル系可塑剤組成物を含む塩化ビニル系樹脂組成物が提供される。具体的には、前記塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、前記エステル系可塑剤組成物を5~100重量部含むことができる。
【0112】
本発明の一実施形態による塩化ビニル系樹脂組成物は、熱安定剤および充填剤などから選択される添加剤をさらに含むことができる。
【0113】
前記熱安定剤は、Ca、Zn、Al、Mgなどから選択される二つ以上を含む複合熱安定剤であることができる。
【0114】
一例として、前記熱安定剤は、前記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、1~15重量部含むことができる。具体的には3~12重量部、より具体的には5~10重量部含むことができる。上述の含量で使用される場合、熱安定性の向上に役立つ。また、本発明によるエステル系可塑剤および塩化ビニル系樹脂との相溶性および相乗効果に優れることから、他の安定剤よりも著しい効果を示す。また、ベンゾフェノール、トリアゾールおよびアクリロニトリルなどから選択される非金属安定剤をさらに含むこともできる。
【0115】
前記充填剤は、塩化ビニル系樹脂組成物の生産性、乾燥状態の感触(Dry touch感)を向上させることができる。このような充填剤は、炭酸カルシウム、クレイ、タルク(Talc)および珪藻土などから選択されることができる。
【0116】
一例として、前記充填剤は、前記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して5~100重量部含むことができる。また、目的に応じて、前記充填剤は、前記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して100重量部超の使用量で使用可能であることは言うまでもない。
【0117】
本発明の一実施形態による塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂に対する吸収速度と短い溶融時間を有することから樹脂の加工性を高める。また、本発明による塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂をはじめ、アクリル樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂およびポリエステル樹脂などから選択される耐熱樹脂を含むことができ、それ以外にも、様々な高分子樹脂を含むことができる。
【0118】
本発明による塩化ビニル系樹脂組成物は、電線被覆材として作製される時に、特に低い加熱減量および耐移行性を実現する。また、優れた加熱後の伸び残率および引張残率を有する。特に、本発明による塩化ビニル系樹脂組成物は、ASTM D638試験方法に準じて、120℃で72時間加熱した後、測定した長さと、常温で測定した初期長さに基づいて計算した初期長さに対する加熱後の伸び残率が80%以上、具体的には90%以上であり、より具体的には95%以上までも達成可能である。また、120℃で72時間加熱した後、常温で測定した初期の重量に対して測定した加熱減量の割合が、0.5%以下、具体的には0.45%以下、より具体的には0.2%以下まで達成可能である。
【0119】
また、本発明による塩化ビニル系樹脂組成物は、目的に応じて、様々な様態の処方に適用されることができる。一例として、コンパウンド処方、シート処方およびプラスチゾル処方などが挙げられる。
【0120】
また、本発明では、上述の塩化ビニル系樹脂組成物から製造される成形物が提供される。前記成形物は、目的による用途および形態に応じて様々な様態に適用可能であることは言うまでもない。具体的には、前記成形物は、電線被覆材などであることができる。また、底材、自動車内装材、フィルム、シート、壁紙またはチューブなどであることができる。
【0121】
以下、実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を詳細に説明するための一つの参照であって、本発明がこれに限定されるものではなく、様々な形態に実現されることができる。また他に定義されない限り、すべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者の一人によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。また、本発明において説明に使用される用語は、単に特定の実施例を効果的に記述するためのものであって、本発明を制限することを意図しない。
【0122】
また、本発明において他に言及しない限り、温度は、すべて℃単位を意味し、常温は、25℃を意味する。
【0123】
(評価方法)
1)硬度(ASTM D2240):
それぞれの試験片に対して、ASTM D2240方法に準じて硬度計(ASKER CL-150、単位Shore A)を使用して、硬度試験機(「A」type)の針を完全に下ろした後、10秒後に示された常温での硬度値を読み取る。硬度は、それぞれの試験片に対して5か所を試験した後、平均値を計算した。
【0124】
2)引張強度、伸び率[ASTM D638]:
それぞれの試験片に対して、テスト機器であるU.T.Mを用いて、200mm/minのクロスヘッドスピード(cross head speed)で引っ張った後、試験片が切断する地点の引張強度と伸び率を測定した。引張強度(kgf/cm)の計算は、ロード(load)値(kgf)/厚さ(cm)×幅(cm)で計算し、伸び率(%)は、エクステンション(extension)/初期長さ×100で計算した。前記測定は、常温で行われる。
【0125】
また、ギアオーブンを用いて、120℃で72時間放置した後、伸び率と引張強度を同じ方法で測定した。常温でのASTM D638方法の結果を加熱後の結果で除して%値を取得し、これを引張残率および伸び残率として示した。
【0126】
3)耐移行性:
それぞれの試験片を径3cmの円形に切り出した後、小数点第4位まで初期の重量(Wi)を測定した。初期の重量(Wq1)が測定された3M油紙(55mm×85mm)の間に試験片を挟んだ後、5kgの荷重を加えた状態で、70℃のオーブンで4日間放置した後、試験片を取り出し、試験片の重量および油紙の重量(Wq2)を測定し、移行量の計算は、(Wq2-Wq1)/Wi×100で行った。この場合、前記移行量は、可塑剤の流出量(%)を意味する。
【0127】
4)加熱減量:
それぞれの試験片に対して、小数点第4位まで初期の重量(Wi)を測定した。120℃のオーブンにクランプを用いて試験片を固定させ、72時間後、試験片を取り出し、恒温槽(25℃)で4時間以上保管した後、試験片の重量(Wo)を測定し、加熱減量の計算は、(Wi-Wo)/Wi×100で行った。
【0128】
(実施例1)
温度センサ、機械式撹拌機、凝縮器、デカンタ(Decantor)および窒素注入装置が設置された1L反応器に、2-エチルヘキサノール(2-Ethylhexanol)320g、テレフタル酸(terephthalic acid)200gおよび1,4-ブタンジオール(1,4-Butanediol)22.5gを投入した後、窒素条件下で撹拌させて180度まで昇温させた。昇温後、TNBT(Tetra N-butyl Titanate)を0.2g投入し220度に加温して、8時間エステル化(esterification)反応を行った。反応が完了すると、90度まで冷却した後、アルカリ溶液(1M NaOH solution)を投入した後、珪藻土を用いてフィルタリングした。次に、回転蒸発濃縮器を用いて未反応のアルコール、水、不純物を除去し、最終生成物であるエステル可塑剤組成物を取得した。
【0129】
取得したエステル可塑剤組成物をGPC分析により、全重量に対するDOTPの含量(%)を確認した。その結果は下記表1に示した。
【0130】
また、前記製造方法で製造されたエステル系可塑剤組成物を用いて試験片を作製した。試験片の作製は、PVC(重合度1000)400gに可塑剤200g、複合熱安定剤(RUP-110)32gおよび炭酸カルシウム80gを配合し、ロールミルを170℃で3分間作業して、1mmのシートを作製した。次に、プレス作業として、180℃で予熱3分、加熱10分、冷却3分間作業した後、厚さ3mmの試験片を作製した。
【0131】
前記試験片を使用して、前記評価方法により測定された物性結果を下記表1および表2に示した。
【0132】
(実施例2~実施例12)
前記実施例1の製造方法と同様に行うが、アルコール混合物の組成および重量比と多価アルコールの投入量および投入法を下記表1のように変更し、最終生成物であるエステル可塑剤を取得した。
【0133】
取得したエステル可塑剤をGPC分析により、全重量に対するDOTPの含量(%)を確認し、その結果を下記表1に示した。
【0134】
また、前記実施例1と同じ方法で試験片を作製し、前記評価方法により測定された物性結果を下記表1および表2に示した。
【0135】
(比較例1)
商用のジオクチルテレフタレート(DOTP、ハンファケミカル)を用いた。
【0136】
前記実施例1と同じ方法で試験片を作製し、前記評価方法により測定された物性結果を下記表1および表2に示した。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
前記表1に示されているように、本発明によるエステル系化合物を含む可塑剤組成物を採用する場合、耐移行性および加熱減量に卓越した効果を発揮することが分かる。具体的には、本発明によると、比較例1に比べて45.7%以下の移行量(実施例1)を実現するだけでなく、0.01%水準の著しく低い移行量を実現することができることを確認した。また、比較例1に比べて61.7%以下の加熱減量(実施例6)を実現するだけでなく、0.09%水準の著しく低い加熱減量を実現することができることを確認した。また、本発明によると、比較例1で使用したジオクチルテレフタレート(DOTP)と同等以上の引張強度および伸び率を実現することができ、これを代替可能な素材として有効に適用されることができることが期待される。
【0140】
前記表2に示されているように、本発明によるエステル系化合物を含む可塑剤組成物を採用する場合、ジオクチルテレフタレート(DOTP)と同等以上の引張強度および伸び率を実現することができることは言うまでもなく、引張残率および伸び残率においても利点を提供することができる。
【0141】
以上のように、本発明では、特定された事項と限定された実施例および比較例によって説明しているが、これは、本発明のより全般的な理解を容易にするために提供されたものであって、本発明は前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から様々な修正および変形が可能である。
【0142】
したがって、本発明の思想は、上述の実施例に限定して定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、本特許請求の範囲と均等または等価的な変形があるすべてのものなどは、本発明の思想の範疇に属するといえる。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される、化合物。
[化学式1]
【化1】
前記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して、C1-C10アルキルであり、
は、C1-C10アルキレンであり、前記アルキレンの非隣接-CH-は、Oが互いに直接連結されない方式に代えられてもよい。
【請求項2】
前記化学式1において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、C3-C10アルキルであり、前記 は、C2-C6アルキレンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化学式1において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、C3-C10アルキルであり、前記 は、下記化学式Aで表される構造から選択される、請求項1に記載の化合物。
[化学式A]
【化2】
前記化学式A中、
およびLは、それぞれ独立して、エチレンまたはプロピレンであり、
Yは、Oであり、
aは、1または2の整数である。
【請求項4】
前記化学式1において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、C3-C10分岐鎖アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
下記化学式1で表される化合物を含む、エステル系可塑剤組成物。
[化学式1]
【化3】
前記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して、C1-C10アルキルであり、
は、C1-C10アルキレンであり、前記アルキレンの非隣接-CH-は、Oが互いに直接連結されない方式に代えられてもよい。
【請求項6】
前記エステル系可塑剤組成物の全重量に対して、前記化学式1で表される化合物を30重量%以上含む、請求項5に記載のエステル系可塑剤組成物。
【請求項7】
多価アルコールおよび1価アルコールの混合物とテレフタル酸を混合した後、触媒の存在下でエステル化反応を行って前記化学式1で表される化合物を含むエステル系可塑剤組成物を製造する方法。
[化学式1]
【化4】
前記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して、C1-C10アルキルであり、
は、C1-C10アルキレンであり、前記アルキレンの非隣接-CH-は、Oが互いに直接連結されない方式に代えられてもよい。
【請求項8】
前記多価アルコールおよび1価アルコールの混合物は、
1:1~1:20の重量比で混合されている、請求項7に記載のエステル系可塑剤組成物を製造する方法。
【請求項9】
前記エステル系可塑剤組成物の全重量に対して、前記化学式1で表される化合物を30重量%以上含む、請求項7に記載のエステル系可塑剤組成物を製造する方法。
【請求項10】
前記エステル系可塑剤組成物の全重量に対して、下記化学式2で表される化合物を残量で含む、請求項9に記載のエステル系可塑剤組成物を製造する方法。
[化学式2]
【化5】
前記化学式2中、
およびRは、それぞれ独立して、C1-C10アルキルである。
【請求項11】
請求項5または請求項6に記載のエステル系可塑剤組成物を含む、塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項12】
前記エステル系可塑剤組成物は、
塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、5~100重量部含まれる、請求項11に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項13】
熱安定剤、充填剤またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項11に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項14】
120℃で72時間加熱した後、常温で測定した初期試験片の重量に対して測定した加熱減量の割合が0.6%以下である、請求項11に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項15】
請求項11に記載の塩化ビニル系樹脂組成物から製造される成形物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明の一実施形態による化合物は、前記化学式1において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、C3-C10アルキルであり、前記 は、C2-C6アルキレンであることができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本発明の一実施形態による化合物は、前記化学式1において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、C3-C10アルキルであり、前記 は、下記化学式Aで表される構造から選択されることができる。
[化学式A]
【化2】
[前記化学式A中、
およびLは、それぞれ独立して、エチレンまたはプロピレンであり、
Yは、Oであり、
aは、1または2の整数である。]
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
一例として、前記化学式1において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、C3-C10アルキルであり、前記 は、C2-C6アルキレンであることができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
一例として、前記化学式1において、前記RおよびRは、それぞれ独立して、C3-C10アルキルであり、前記 は、下記化学式Aで表される構造から選択されることができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0071
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0071】
本発明の一実施形態によるエステル系可塑剤組成物の製造方法において、前記アルコール混合物は、前記多価アルコール1重量部を基準として、前記1価アルコールは、具体的には2~18重量部、より具体的には3~15重量部含まれることができる。
【国際調査報告】