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特表2023-509054ウェハ検査装置、データ処理方法及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(54)【発明の名称】ウェハ検査装置、データ処理方法及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G06T 5/00 20060101AFI20230227BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20230227BHJP
【FI】
G06T5/00 705
G01N21/956 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540764
(86)(22)【出願日】2020-05-19
(85)【翻訳文提出日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 CN2020090991
(87)【国際公開番号】W WO2021135045
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】201911388824.X
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522261477
【氏名又は名称】上海集成電路研発中心有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI IC R & D CENTER CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 497, Gaosi Road, Zhangjiang Hi-Tech Park, Pudong Shanghai 201210, China
(71)【出願人】
【識別番号】522261488
【氏名又は名称】上海先綜検測有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI ALITECS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 406-A, 4th Floor No. 444 East Jiangwan Road, Hongkou District Shanghai 200081, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三橋 隆
(72)【発明者】
【氏名】馬 常群
(72)【発明者】
【氏名】趙 宇航
(72)【発明者】
【氏名】盧 意飛
(72)【発明者】
【氏名】李 銘
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲ちぇん▼
(72)【発明者】
【氏名】王 鵬飛
【テーマコード(参考)】
2G051
5B057
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB02
2G051AC21
2G051BB03
2G051CA03
2G051CB01
2G051EA25
5B057AA03
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CE02
5B057CE06
5B057DA17
5B057DB02
5B057DB09
5B057DC22
(57)【要約】
本発明は、ウェハ検査装置、データ処理方法及び記憶媒体を提供する。当該装置は、検査目標画像生成ユニットと、データ処理ユニットとを含む。データ処理ユニットは、プリ処理モジュールと、ノイズ低減モジュールとを含む。プリ処理モジュールは、リソグラフィ・シミュレータと、ノイズパワースペクトル抽出サブモジュールとを含む。リソグラフィ・シミュレータは、検査対象の設計結果であるウェハレイアウトデータに対してシミュレーションを行うことによって、パワースペクトルPs(u,v)を取得する。ノイズパワースペクトル抽出サブモジュールは、ノイズ信号がを含む検査目標画像の全信号パワースペクトルPs+n(u,v)を取得し、全信号パワースペクトルPs+n(u,v)からパワースペクトルPs(u,v)を用いてノイズパワースペクトルPn(u,v)を取得する。ノイズ低減モジュールは、信号雑音比の要求に基づいてノイズ低減フィルタのタイプ及びその特徴関数値を確定し、特徴関数値、ノイズパワースペクトルPn(u,v)及びパワースペクトルPs(u,v)を入力とし、ノイズ低減フィルタのシステムパラメータを取得し、システムパラメータによりノイズ低減フィルタを構成し、ノイズ情報が除去された後の検査目標画像を取得する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の検査目標画像を検出する検査目標画像生成ユニットと、前記検査目標画像に対して欠陥抽出の処理及び判断を行うデータ処理ユニットとを含むウェハ検査装置であって、
前記データ処理ユニットは、検査対象に関する設計結果であるレイアウトデータに対してシミュレーション計算を行うことによって、パワースペクトルPs(u,v)を取得するリソグラフィ・シミュレータと、前記検査目標画像のノイズ信号を含む全信号パワースペクトルPs+n(u,v)を取得し、前記全信号パワースペクトルPs+n(u,v)からパワースペクトルPs(u,v)を用いてノイズパワースペクトルPn(u,v)を取得するノイズパワースペクトル抽出サブモジュールとを有するプリ処理モジュールと、信号雑音比の要求に基づいてノイズ低減フィルタのタイプ及びその特徴関数を確定し、前記特徴関数、前記ノイズパワースペクトルPn(u,v)及び前記パワースペクトルPs(u,v)を入力とし、ノイズ低減フィルタのシステムパラメータを取得し、前記システムパラメータによりノイズ低減フィルタを構成し、前記検査目標画像が前記ノイズ低減フィルタによりフィルタリングされると、ノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像を取得するノイズ低減モジュールとを含むことを特徴とするウェハ検査装置。
【請求項2】
前記検査目標画像が得られた後、モルフォロジー画像処理技術に基づき、前記検査目標画像の中の検査目標画像要素を抽出することによって、前記検査目標画像のノイズ画像を取得する欠陥抽出モジュールと、前記検査目標画像の中の検査目標画像要素を、前記検査目標画像の中のノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像に加えることによって、ノイズが除去された後の前記検査目標画像を形成する復元モジュールとを更に含むことを特徴とする請求項1に記載のウェハ検査装置。
【請求項3】
前記ノイズ低減フィルタのタイプは、2次元のウィーナーフィルタであることを特徴とする請求項1に記載のウェハ検査装置。
【請求項4】
検査対象に関する設計結果であるウェハレイアウトデータに対してシミュレーションを行うことによって、パワースペクトルPs(u,v)を取得するステップS11と、
前記検査目標画像のノイズ信号を含む全信号パワースペクトルPs+n(u,v)を取得し、前記全信号パワースペクトルPs+n(u,v)から前記パワースペクトルPs(u,v)を用いてノイズパワースペクトルPn(u,v)を取得するステップS12と、
信号雑音比の要求に基づいてノイズ低減フィルタのタイプ及びその特徴関数を確定し、前記特徴関数、前記ノイズパワースペクトルPn(u,v)及び前記パワースペクトルPs(u,v)を入力とし、ノイズ低減フィルタのシステムパラメータを取得し、前記システムパラメータによりノイズ低減フィルタを構成し、前記検査目標画像を前記ノイズ低減フィルタによりフィルタリングすることによって、ノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像を取得するステップS13とを含むことを特徴とする、請求項1に記載のウェハ検査装置を用いるデータ処理方法。
【請求項5】
前記検査目標画像が得られた後、モルフォロジー画像処理技術に基づき、前記検査目標画像の中の検査目標画像要素を抽出することによって、前記検査目標画像のノイズ画像を取得するステップS10と、
復元モジュールが、前記検査目標画像の中の検査目標画像要素を、前記検査目標画像の中のノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像に加えることによって、ノイズが除去された後の前記検査目標画像を形成するステップS14とを更に含むことを特徴とする請求項4に記載のウェハ検査装置のデータ処理方法。
【請求項6】
コンピュータにより、請求項4に記載のウェハ検査装置のデータ処理方法を実行するために用いられ、実行されることができるプログラムを格納するコンピュータ可読媒体であって、
検査対象の設計結果であるウェハレイアウトデータに対してシミュレーションを行うことによって、パワースペクトルPs(u,v)を取得するプログラムと、
前記検査目標画像のノイズ信号を含む全信号パワースペクトルPs+n(u,v)を取得し、前記全信号パワースペクトルPs+n(u,v)から前記パワースペクトルPs(u,v)を用いてノイズパワースペクトルPn(u,v)を取得するプログラムと、
信号雑音比の要求に基づいてノイズ低減フィルタのタイプ及びその特徴関数を確定し、前記特徴関数、前記ノイズパワースペクトルPn(u,v)及び前記パワースペクトルPs(u,v)を入力とし、ノイズ低減フィルタのシステムパラメータを取得し、前記システムパラメータによりノイズ低減フィルタを構成し、前記検査目標画像を前記ノイズ低減フィルタによりフィルタリングすることによって、ノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像を取得するプログラムとを含むことを特徴とするコンピュータ可読媒体。
【請求項7】
検査対象を生成する検査目標画像を検出するために用いられる検査目標画像生成ユニットと、前記検査目標画像に対して欠陥抽出の処理及び判断を行うために用いられるデータ処理ユニットとを含むウェハ検査装置であって、
前記データ処理ユニットは、検査対象領域により形成された前記検査目標画像を、M個の部分領域に分割し、Mより小さいノイズを含むN個の部分領域を選択して、ノイズパワースペクトルPn(u,v)の推定処理に用いるためのノイズ推定用領域確定サブモジュールと、N個の部分領域を含む前記検査目標画像の全信号パワースペクトルPs+n(u,v)を取得するための推定処理サブモジュールと、前記検査目標画像の全信号パワースペクトルPNs+n(u,v)を取得し、前記N個の部分領域の全信号パワースペクトルPNs+n(u,v)をもってノイズパワースペクトルPn(u,v)として、前記M個からなる領域の全信号パワースペクトルPNs+n(u,v)から前記ノイズパワースペクトルPn(u,v)を減算してパワースペクトルPs(u,v)を取得するパワースペクトル推定サブモジュールとを有するプリ処理モジュールと、
信号雑音比の要求に基づいてノイズ低減フィルタのタイプ及びその特徴関数を確定し、前記特徴関数、前記ノイズパワースペクトルPn(u,v)及び前記パワースペクトルPs(u,v)を入力とし、ノイズ低減フィルタのシステムパラメータを取得し、前記システムパラメータによりノイズ低減フィルタを構成し、前記検査目標画像を前記ノイズ低減フィルタによりフィルタリングすることによって、ノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像を取得するノイズ低減モジュールとを含むことを特徴とするウェハ検査装置。
【請求項8】
前記M個の部分領域は隙間なく接続し、形状が同じであり、前記M個の部分領域の形状は、矩形、正方形、菱形又は蜂の巣状であることを特徴とする請求項7に記載のウェハ検査装置。
【請求項9】
前記M個の部分領域それぞれのセルの格子の差異強度二乗和の平均値を計算し、前記平均値が一つの所定値より小さい時、ノイズ信号成分から構成される前記N個の部分領域と判断されることを特徴とする請求項7に記載のウェハ検査装置。
【請求項10】
検査対象領域より得た検査目標画像を、M個の部分領域に分割し、ノイズパワースペクトル推定処理に用いる、Mより小さいノイズを含むN個の部分領域を選択するステップS20と、
前記N個のノイズ領域の全信号パワースペクトルPNs+n(u,v)を取得するステップS21と、
前記検査目標画像の全信号パワースペクトルPs+n(u,v)を取得し、前記N個の部分領域の全信号パワースペクトルPNs+n(u,v)をもってノイズパワースペクトルPn(u,v)とし、前記M個の領域からなる全信号パワースペクトルPs+n(u,v)から前記ノイズパワースペクトルPn(u,v)を減算してパワースペクトルPs(u,v)を取得するステップS22と、
信号雑音比の要求に基づいてノイズ低減フィルタのタイプ及びその特徴関数を確定し、前記特徴関数、前記ノイズパワースペクトルPn(u,v)及び前記パワースペクトルPs(u,v)を入力とし、ノイズ低減フィルタのシステムパラメータを取得し、前記システムパラメータによりノイズ低減フィルタを構成し、前記検査目標画像を前記ノイズ低減フィルタによりフィルタリングすることによって、ノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像を取得するステップS23とを含むことを特徴とする、請求項7に記載のウェハ検査装置を用いるデータ処理方法。
【請求項11】
コンピュータにより、請求項10に記載のウェハ検査装置のデータ処理方法を実行するために用いられ、実行されることができるプログラムを格納するコンピュータ可読媒体であって、
検査対象領域により得た前記検査目標画像を、M個の部分領域に分割し、ノイズパワースペクトル推定処理に用いる、Mより小さいN個のノイズ領域を選択するプログラムと、
ノイズを含む前記N個の部分領域の全信号パワースペクトルPs+n(u,v)を推定するプログラムと、
前記検査目標画像の全信号パワースペクトルPs+n(u,v)を取得し、前記N個の部分領域の全信号パワースペクトルPs+n(u,v)をもってノイズパワースペクトルPn(u,v)とし、前記M個からなる領域の全信号パワースペクトルPs+n(u,v)から前記ノイズパワースペクトルPn(u,v)を減算してパワースペクトルPs(u,v)を取得するプログラムと、
信号雑音比の要求に基づいてノイズ低減フィルタのタイプ及びその特徴関数を確定し、前記特徴関数、前記ノイズパワースペクトルPn(u,v)及び前記差異信号パワースペクトルPs(u,v)を入力とし、ノイズ低減フィルタのシステムパラメータを取得し、前記システムパラメータによりノイズ低減フィルタを構成し、前記検査目標画像を前記ノイズ低減フィルタによりフィルタリングすることによって、ノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像を取得するプログラムとを含むことを特徴とするコンピュータ可読媒体。
【請求項12】
複数の検査対象領域又は複数のウェハに跨る複数の検査対象領域より検査目標画像を取得するために用いられる検査目標画像生成ユニットと、前記検査目標画像に対して欠陥抽出の処理及び判断を行うために用いられるデータ処理ユニットとを含むウェハ検査装置であって、
前記データ処理ユニットは、前記の複数の検査対象領域又はウェハに跨る複数の検査対象領域より取得された前記複数の検査目標画像iを、Mi個の部分領域に分割し、Miより小さいNi個の領域をノイズ推定用領域としてノイズパワースペクトルPin(u,v)の推定処理に用いるために選択するノイズ領域確定サブモジュールと、
前記検査目標画像iから全信号パワースペクトルPis+n(u,v)を推定するパワースペクトル推定サブモジュールと、
前記Ni個のノイズ領域の全信号パワースペクトルPNis+n(u,v)を取得し、それをもってノイズパワースペクトルPin(u,v)とする、ノイズパワースペクトル推定サブモジュールと、
前記ノイズパワースペクトルPin(u,v)及び前記全信号パワースペクトルPis+n(u,v)に基づいて差異信号パワースペクトルPis(u,v)を推定する差異信号パワースペクトル推定サブモジュールと、
前記ノイズパワースペクトルPin(u,v)に対してiの範囲に対する平均値を求め、Pn平均値(u,v)を取得するノイズ信号抽出サブモジュールと
差異信号パワースペクトルPis(u,v)に対してiの範囲に対する平均値を求め、Ps平均値(u,v)を取得する差異信号抽出サブモジュールとを有するプリ処理モジュールと、
信号雑音比の要求に基づいてノイズ低減フィルタのタイプ及びその特徴関数を確定し、前記特徴関数、前記ノイズパワースペクトルPn平均値(u,v)及び差異パワースペクトルPs平均値(u,v)を入力とし、ノイズ低減フィルタのシステムパラメータを取得し、前記システムパラメータによりノイズ低減フィルタを構成し、前記検査目標画像が前記ノイズ低減フィルタによりフィルタリングされることによって、ノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像を取得するノイズ低減モジュールとを含むことを特徴とするウェハ検査装置。
【請求項13】
複数の検査対象領域又は複数のウェハに跨る複数の検査対象領域より前記複数の検査目標画像iを、Mi個の部分領域に分割し、Miより小さいNi個の領域をノイズ推定用領域としてノイズパワースペクトルPn(u,v)の推定処理に用いるために選択するノイズ推定用領域確定のためのステップS30と、
前記検査目標画像iから全信号パワースペクトルPis+n(u,v)を推定するステップS31と、
前記Ni個のノイズ領域の全信号パワースペクトルPNis+n(u,v)を取得し、それをもってノイズパワースペクトルPin(u,v)とする、ステップS32と、
前記ノイズパワースペクトルPin(u,v)と前記全信号パワースペクトルPis+n(u,v)から差異信号パワースペクトルPis(u,v)を推定し、前記全信号パワースペクトルPis(u,v)に対してiの範囲に対する平均値を求め、Ps平均値(u,v)を取得し、ノイズパワースペクトルPin(u,v)に対してiの範囲に対する平均値を求め、Pn平均値(u,v)を取得するステップS33と、
信号雑音比の要求に基づいてノイズ低減フィルタのタイプ及びその特徴関数を確定し、前記特徴関数、前記ノイズパワースペクトルPn平均値(u,v)及び前記差異信号パワースペクトルPs平均値(u,v)を入力とし、ノイズ低減フィルタのシステムパラメータを取得し、前記システムパラメータによりノイズ低減フィルタを構成し、前記検査目標画像が前記ノイズ低減フィルタによりフィルタリングされることによって、ノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像を取得するステップS34とを含むことを特徴とする、請求項12に記載のウェハ検査装置を用いるデータ処理方法。
【請求項14】
コンピュータにより、請求項13に記載のウェハ検査装置のデータ処理方法を実行するために用いられ、実行されることができるプログラムを格納するコンピュータ可読媒体であって、
複数の検査対象領域又は複数のウェハに跨る複数の検査対象領域より形成された前記複数の検査目標画像iを、Mi個の部分領域に分割し、Miより小さいNi個の領域をノイズ推定用領域としてノイズパワースペクトルPin(u,v)の推定処理に用いるために選択する、プログラムと、
前記検査目標画像iから全信号パワースペクトルPis+n(u,v)を推定するプログラムと、
前記Ni個のノイズ領域の全信号パワースペクトルPNis+n(u,v)を取得し、それをもってノイズパワースペクトルPin(u,v)とする、ノイズパワースペクトルを推定するプログラムと、
前記ノイズパワースペクトルPin(u,v)と前記全信号パワースペクトルPis+n(u,v)から差異信号パワースペクトルPis(u,v)を推定するプログラムと、前記ノイズパワースペクトルPin(u,v)に対してiの範囲に対する平均値を求め、Pn平均値(u,v)を取得するプログラムと、
前記差異信号パワースペクトルPis(u,v)に対してiの範囲に対する平均値を求め、Ps平均値(u,v)を取得するプログラムと、
信号雑音比の要求に基づいてノイズ低減フィルタのタイプ及びその特徴関数を確定し、前記特徴関数、前記ノイズパワースペクトルPn平均値(u,v)及び前記差異信号パワースペクトルPs平均値(u,v)を入力とし、ノイズ低減フィルタのシステムパラメータを取得し、前記システムパラメータによりノイズ低減フィルタを構成し、前記検査目標画像が前記ノイズ低減フィルタによりフィルタリングされることによって、ノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像を取得するプログラムとを含むことを特徴とするコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造技術分野に関し、特に、ウェハ検査装置及びそのデータ処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウェハ検査装置は、半導体製造工程によく使われる、なくてはならないデバイスである。ウェハ検査装置は、通常、検査対象(例えば、ウェハ)に関する検査目標画像を獲得するために用いられる検査目標画像生成ユニットと、検査目標画像に対して欠陥抽出の処理及び判断を行うために用いられるデータ処理ユニットとを含む。当該データ処理ユニットの大切な核心的な仕事は、有意の欠陥(真の欠陥)と擬似欠陥(ノイズ信号)を区別することである。擬似欠陥は、検査目標画像の中の非本質的な僅かな差異による欠陥であり、なお、擬似欠陥は、工程においてランダムに発生する。
【0003】
検査目標画像生成ユニットは、通常、光学式の顕微鏡又はスキャン式電子顕微鏡を用いる検査装置等であっても良い。例えば、明視野光学検査装置(Bright Field Inspector、BFIと略称される)、暗視野光学検査装置(Dark Field Inspector)、スキャン電子顕微鏡(SEM)式検査装置等である。図1は、従来技術においてよく使用されている一種のウェハ検査装置の構造模式図である。図1に示すように、図1の符号100は、明視野光学検査装置を示している。明視野顕微鏡(brightfield microscope)は、最も汎用される一種の光学顕微鏡である。光線により照明し、サンプルの中のそれぞれの点は、その光吸収・反射の違いにより明るいバックグラウンドにおいて結像する。
【0004】
図1に示すように、ステージ107の上に置かれたウェハ106の欠陥を光学的に検査するために、光源102で発生した光線は、コレクタレンズ103、ビームスプリッタ104、対物レンズ105を通じてウェハ106を照明する。ウェハ106の上に作られた大規模集積回路(Large-scale integrated circuit、LSIと略称される)の微細な構造は、対物レンズ105及びビームスプリッタ104を通じてセンサ101により取得されて検査目標画像を形成する。センサ101により得られた検査目標画像結像は、コンピュータシステム110(データ処理ユニット)にデータとして取り込まれる。コンピュータシステム110は、コンピュータ可読媒体111に記録された実行プログラム112に基づいてセンサ101から取り込まれたデータを処理する。コンピュータシステム110で実行されるプログラムは、各種存在するが、その中で最も重要な機能の一つは、検査目標画像の中からLSIの欠陥に対応する部分を抽出する欠陥抽出プログラムである。
【0005】
図2は、従来技術において欠陥抽出プログラムの原理を示す説明図である。図2に示すように、符号200は、欠陥抽出プログラムの主な入力であるウェハ検査装置100により得られた検査目標画像、参照画像及び主な出力である差異抽出の例示を示す図である。その処理ステップは、以下の通りである。まず、ウェハ検査装置から得られた検査目標画像202(test)を参照画像201(reference)と比較し、差異画像203(difference)を作成する。次に、差異画像203を観測し、欠陥がなければ、差異画像203の上に何も現れず、検査目標画像の上に204で示される欠陥があるならば、差異画像203の上には、差異欠陥205が現れる。また、差異画像203は、差異欠陥205のような比較的大きな差異欠陥を有する他、206で示されるようなLSIの動作に影響しない微細な差異欠陥も有する可能性がある。差異画像205及び差異画像206のような上述した幾つかの差異欠陥から、実際にLSIの欠陥に関する差異画像要素を選出する必要がある。
【0006】
言い換えれば、検査目標画像202と参照画像201は、差異がなければ、差異欠陥は、ゼロになるはずである。しかし、実際には、二つの画像に製造プロセス的な変動や微細なゴミなどが加わるため、差異は、ゼロにならない。よって、上述したLSI製造工程及び条件により生じた、画像要素に影響を与える微小な差異信号をノイズ信号と呼ぶ。
【0007】
図3は、検査目標画像と参照画像の差異に基づいて欠陥を抽出するプログラムのフローチャート図である。図3に示すように、符号300は、当該フローチャート図の模式図であり、次のステップを含む。即ち、センサにより得られた検査目標画像を画像バッフアに一時的に格納するステップ301と、参照画像ライブラリを取得するステップ302と、検査対象の検査目標画像を受け取るステップ303と、対応する参照画像を確定し、参照画像ライブラリから前記検査対象の検査目標画像に対応する参照画像を取り出すステップS304と、検査目標画像と参照画像に対して画像サイズおよび画像位置のアライメント調整を実施するステップ305と、検査目標画像と参照画像の差異を比較し判断するステップ306と、ステップ306により算出された差異に基づいて有意の差異欠陥を取得するステップ307と、全ての検査目標画像の処理が完了したか否かを判断し、完了していなければ、新たな検査目標画像に対してステップ303~ステップ308の処理を繰り返すステップ308とを含む。
【0008】
前記検査目標画像と参照画像の差異計算の一方法は、モルフォロジー(Mathematical Morphology)に基づく画像処理である。モルフォロジーは、通常、画像から領域の形状を表現し及び描くのに有効的な画像の分量を抽出することによって、後続する識別動作において目標対象の最も本質的な形状特徴を捉えることができるようにするために用いられ、例えば、境界及び連通領域等の処理である。検査領域においては、処理の目的により、検査目標画像の処理に対して構造要素を適用するステップを行う必要があり、即ち、最も適切な構造要素を選択し、複数のモルフォロジーの処理を組み合わせ、目的に対応する処理を実現することができる。
【0009】
図3に示すように、ステップ307の処理においては、差異情報をどのようにして有意の欠陥(真の欠陥)と無意味な欠陥(偽の欠陥)に分類するかを詳しく検討する必要がある。従来技術においては、差異情報の強度がある閾値を超えた点を不良となる点としていた(有意の欠陥)。
【0010】
図4に示すように、図4の符号400は、検査目標画像と参照画像の差異と欠陥を通る直線上の差異強度を示す模式図である。符号401に示された図においては、検査目標画像と参照画像の差異強度は、X軸405とY軸406の座標点で表される濃淡により表現されたものである。符号402で示される濃い斑点は、検査対象と参照画像の差異信号が大きい部分である。符号403で示される符号402より明るい部分は、検査対象と参照画像の差異が小さい部分である。符号410は、符号401図における直線A-A’上での差異の強度を示す模式図である。符号411は、差異信号の強度を示す曲線である。符号412は、直線A-A’上での位置座標を示す軸である。符号413は、差異強度を示す軸である。符号414は、欠陥と判断される差異強度の閾値の一つである。符号415も差異強度の閾値であるが、符号414より低いレベルの閾値である。
【0011】
図4に示すように、図401の直線A-A’の差異強度を示す曲線は、符号411で示されている。曲線図410においては、閾値をIT1(符号414に示される)又はIT0(符号415に示される)とすることによって、欠陥と判断される点の数は、異なってくる。具体的には、閾値をIT1(符号414に示される)とすれば、一つの欠陥を検知するが、閾値をIT0(符号415に示される)とすれば、三つの欠陥を検知する。言い換えれば、検出する擬似的な欠陥が真の欠陥か偽の欠陥かは、閾値Iに依存する問題がある。
【0012】
なお、閾値Iを低く設定すれば、真の欠陥を多数補足する可能性が高まるが、閾値を高く設定すれば、真の欠陥を見落としてしまう可能性が高くなる。上述した技術では、最適な閾値を探すという方法を提案したが、改善には、限界がある。単純に閾値ITを調整するのではなければ、モルフォロジーを用いた、偽の欠陥を低減する処理などの画像処理プロセスにおいては、処理手順の組合せや各種のパラメータの設定などの調整すべき要素は、多数存在する。よって、上述したモルフォロジーを用いた、偽の欠陥を低減する処理などの画像処理の方法は、欠陥の真偽判定の精度向上の一手段となりえる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、ノイズ信号低減フィルタの構成に必要なノイズ信号のパワースペクトル等のパラメータを精度よく推定する手段を提供することを目的としている。これにより、モルフォロジー変換などの画像処理によるフィルタリングや画像特徴抽出などと組み合わせてSNR(Signal to Noise Ratio)を向上させ、無意味な欠陥の判定を低減することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を実現するための、本発明の技術案は、ウェハ検査装置を提供する。当該ウェハ検査装置は、検査対象に関する検査目標画像を獲得する検査目標画像生成ユニットと、前記検査目標画像に対して欠陥抽出の処理及び判断を行うデータ処理ユニットとを含む。前記データ処理ユニットは、検査前の設計結果である、ノイズ差異情報を含まない検査ウェハレイアウトデータに対してシミュレーション計算を行うことによって、パワースペクトルPs(u,v)を取得するリソグラフィ・シミュレータと、ノイズ信号が重なった前記検査目標画像のノイズを含む全信号パワースペクトルPs+n(u,v)を計算して取得し、前記全信号パワースペクトルPs+n(u,v)から前記パワースペクトルPs(u,v)を減算してノイズパワースペクトルPn(u,v)を取得するノイズパワースペクトル抽出サブモジュールとを有するプリ処理モジュールと、信号雑音比の要求に基づいてノイズ低減フィルタのタイプ及びその特徴関数を確定し、前記特徴関数、前記ノイズパワースペクトルPn(u,v)及び前記パワースペクトルPs(u,v)を入力とし、ノイズ低減フィルタのシステムパラメータを取得し、前記システムパラメータによりノイズ低減フィルタを構成し、前記検査目標画像が前記ノイズ低減フィルタによりフィルタリングされると、ノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像を取得するノイズ低減モジュールとを含む。なお、u,vは空間周波数を示す。
【0015】
前記ウェハ検査装置は、前記検査目標画像が得られた後、モルフォロジー画像処理技術に基づき、前記検査目標画像の中の検査目標画像要素を抽出することによって、前記検査目標画像のノイズ画像を取得する欠陥抽出モジュールと、前記検査目標画像の中の検査目標画像要素を、前記検査目標画像の中のノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像に加えることによって、ノイズが除去された後の前記検査目標画像を形成する復元モジュールとを更に含むことが好ましい。
【0016】
前記ノイズ低減フィルタのタイプは、2次元のウィーナーフィルタであることが好ましい。
【0017】
上述した目的を実現するための、本発明のもう一つの技術案は、前記ウェハ検査装置を用いるデータ処理方法を提供する。当該データ処理方法は、検査前に設計結果である、ノイズ差異情報を含まない検査ウェハレイアウトデータに対してシミュレーションを行うことによって、パワースペクトルPs(u,v)を取得するステップS11と、ノイズ信号が重なった前記検査目標画像の全信号パワースペクトルPs+n(u,v)を計算して取得し、前記全信号パワースペクトルPs+n(u,v)から前記パワースペクトルPs(u,v)を減算してノイズパワースペクトルPn(u,v)を取得するステップS12と、信号雑音比の要求に基づいてノイズ低減フィルタのタイプ及びその特徴関数を確定し、前記特徴関数、前記ノイズパワースペクトルPn(u,v)及び前記パワースペクトルPs(u,v)を入力とし、ノイズ低減フィルタのシステムパラメータを取得し、前記システムパラメータによりノイズ低減フィルタを構成し、前記検査目標画像を前記ノイズ低減フィルタによりフィルタリングすることによって、ノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像を取得するステップS13とを含む。
【0018】
前記ウェハ検査装置は、前記検査目標画像が得られた後、モルフォロジー画像処理技術に基づき、前記検査目標画像の中の検査目標画像要素を抽出することによって、前記検査目標画像のノイズ画像を取得するステップS10と、前記復元モジュールは、前記検査目標画像の中の検査目標画像要素を、前記検査目標画像の中のノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像に加えることによって、ノイズが除去された後の前記検査目標画像を形成するステップS14とを更に含むことが好ましい。
【0019】
上述した目的を実現するための、本発明のもう一つの技術案は、コンピュータにより、前記ウェハ検査装置のデータ処理方法を実行するために用いられ、実行されることができるプログラムを格納するコンピュータ可読媒体を提供する。当該コンピュータ可読媒体は、検査前に設計結果である、ノイズ差異情報を含まない検査ウェハレイアウトデータを用いてシミュレーションを行うことによって、パワースペクトルPs(u,v)を取得するプログラムと、ノイズ信号が重なった前記検査目標画像の全信号パワースペクトルPs+n(u,v)を取得し、前記全信号パワースペクトルPs+n(u,v)から前記パワースペクトルPs(u,v)を減算してノイズパワースペクトルPn(u,v)を取得するプログラムと、信号雑音比の要求に基づいてノイズ低減フィルタのタイプ及びその特徴関数を確定し、前記特徴関数、前記ノイズパワースペクトルPn(u,v)及び前記パワースペクトルPs(u,v)を入力とし、ノイズ低減フィルタのシステムパラメータを取得し、前記システムパラメータによりノイズ低減フィルタを構成し、前記検査目標画像を前記ノイズ低減フィルタによりフィルタリングすることによって、ノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像を取得するプログラムとを含む。
【0020】
上述した目的を実現するための、本発明のもう一つの技術案は、ウェハ検査装置を提供する。当該ウェハ検査装置は、検査対象に関する検査目標画像を獲得するために用いられる検査目標画像生成ユニットと、前記検査目標画像に対して欠陥抽出の処理及び判断を行うために用いられるデータ処理ユニットとを含む。前記データ処理ユニットは、検査対象領域により形成された前記検査目標画像を、M個の部分領域に分割し、ノイズパワースペクトル推定処理に用いるMより小さいN個の部分領域を選択してノイズ低減の処理に用いるノイズ領域確定サブモジュールと、N個のノイズを含むN個の部分領域の前記検査目標画像の全信号パワースペクトルPNs+n(u,v)を取得するための推定処理サブモジュールと、前記検査目標画像の全信号パワースペクトルPNs+n(u,v)を取得し、前記N個の部分領域の全信号パワースペクトルPNs+n(u,v)をもってノイズパワースペクトルPn(u,v)として、前記M個からなる領域の全信号パワースペクトルPNs+n(u,v)から前記ノイズパワースペクトルPn(u,v)を減算してパワースペクトルPs(u,v)を取得するパワースペクトル推定サブモジュールと、ノイズを含む前記検査目標画像の全信号パワースペクトルPs+n(u,v)を取得し、それぞれの前記全信号パワースペクトルPNs+n(u,v)から前記ノイズ領域確定モジュールで選択した大きな差異欠陥を含まないN個の部分領域から求めたノイズを含むパワースペクトルPn(u,v) ≒ PNs+n(u,v)を減算してパワースペクトルPs(u,v)を取得することを可能とするパワースペクトル推定サブモジュールとを有するプリ処理モジュールと、信号雑音比の要求に基づいてノイズ低減フィルタのタイプ及びその特徴関数を確定し、前記特徴関数、前記ノイズパワースペクトルPn(u,v)及び前記パワースペクトルPs(u,v)を入力とし、ノイズ低減フィルタのシステムパラメータを取得し、前記システムパラメータによりノイズ低減フィルタを構成し、前記検査目標画像を前記ノイズ低減フィルタによりフィルタリングすることによって、ノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像を取得するノイズ低減モジュールとを含む。
【0021】
前記M個の部分領域は、形状が同じであり、矩形、正方形、菱形又は蜂の巣状であることが好ましい。また隙間なく接続されていることが好ましい場合もある。
【0022】
前記N個の部分領域のそれぞれの格子の差異強度二乗和の平均を計算し、当該平均値が一つの所定値より小さい時、ノイズ信号成分から構成されるN個の部分領域と判断されることが好ましい。
【0023】
上述した目的を実現するための、本発明のもう一つの技術案は、前記ウェハ検査装置を用いるデータ処理方法を提供する。当該ウェハ検査装置のデータ処理方法は、検査対象領域により形成された前記検査目標画像を、M個の部分領域に分割し、ノイズパワースペクトル推定処理に用いるMより小さいノイズを含むN個の部分領域を選択してノイズ低減の処理に用いるノイズ領域確定ステップS20と、N個のノイズを含む前記検査目標画像の全信号パワースペクトルPs+n(u,v)を取得するS21と、前記検査目標画像の全信号パワースペクトルPNs+n(u,v)を取得し、前記N個の部分領域の全信号パワースペクトルPNs+n(u,v)をもってノイズパワースペクトルPn(u,v)として、前記M個からなる領域の全信号パワースペクトルPNs+n(u,v)から前記ノイズパワースペクトルPn(u,v)を減算してパワースペクトルPs(u,v)を取得するステップS22と、信号雑音比の要求に基づいてノイズ低減フィルタのタイプ及びその特徴関数を確定し、前記特徴関数、前記ノイズパワースペクトルPn(u,v)及び前記パワースペクトルPs(u,v)を入力とし、ノイズ低減フィルタのシステムパラメータを取得し、前記システムパラメータによりノイズ低減フィルタを構成し、前記検査目標画像を前記ノイズ低減フィルタによりフィルタリングすることによって、ノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像を取得するステップS23とを含む。
【0024】
上述した目的を実現するための、本発明のもう一つの技術案は、コンピュータにより実行されることができるプログラムを格納するコンピュータ可読媒体を提供する。当該コンピュータ可読媒体は、検査対象領域により形成された前記検査目標画像を、M個の部分領域に分割し、ノイズパワースペクトル推定処理に用いるMより小さいN個の部分領域を選択するノイズ領域確定プログラムと、M個のノイズ及び大きい差異欠陥の信号の両者を含む前記検査目標画像の全信号パワースペクトルPs+n(u,v)を取得するプログラムと、前記ノイズ低減領域確定モジュールで選択した大きな差異欠陥を含まないN個の部分領域から求めたノイズを含む全信号パワースペクトルPNs+n(u,v)を取得し、前記N個の部分のノイズパワースペクトルはPn(u,v) ≒PNs+n(u,v)と成ることから求めたノイズパワースペクトルPn(u,v)を用い、前記M個からなる全信号パワースペクトルPs+n(u,v)から前記ノイズパワースペクトルPn(u,v)を減算してパワースペクトルPs(u,v)を取得するプログラムと、信号雑音比の要求に基づいてノイズ低減フィルタのタイプ及びその特徴関数を確定し、前記特徴関数、前記ノイズパワースペクトルPn(u,v)及び前記パワースペクトルPs(u,v)を入力とし、ノイズ低減フィルタのシステムパラメータを取得し、前記システムパラメータによりノイズ低減フィルタを構成し、前記検査目標画像を前記ノイズ低減フィルタによりフィルタリングすることによって、ノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像を取得するプログラムとを含む。
【0025】
上述した目的を実現するための、本発明のもう一つの技術案は、ウェハ検査装置を提供する。当該ウェハ検査装置は、複数の検査対象領域又は複数のウェハに跨る複数の検査対象領域より検査目標画像を取得するために用いられる検査目標画像生成ユニットと、前記検査目標画像に対して欠陥抽出の処理及び判断を行うために用いられるデータ処理ユニットとを含む。前記データ処理ユニットは、前記の複数の検査対象領域又はウェハに跨る複数の検査対象領域より取得された前記複数の検査目標画像i(i=1,2,…は各検査目標画像を示すインデックス)を、Mi個の部分領域に分割し、Miより小さいNi個の領域をノイズ推定用領域としてノイズパワースペクトルPn(u,v)の推定処理に用いるために選択するノイズ領域確定サブモジュールと、全信号パワースペクトルPis+n(u,v)からパワースペクトルPis(u,v)を推定し、前記全信号パワースペクトルPis+n(u,v)は、検査対象領域から推定され、前記検査対象領域は、ノイズ推定領域から求めたノイズパワースペクトルPin(u,v)に対応するパワースペクトル推定サブモジュールと、前記Ni個のノイズ領域の全信号パワースペクトルPis+n(u,v)を取得し、ノイズパワースペクトルPin(u,v)とするノイズパワースペクトル推定サブモジュールと、前記ノイズパワースペクトルPin(u,v)及び前記全信号パワースペクトルPis+n(u,v)に基づいて差異信号パワースペクトルPis(u,v)を推定する差異信号パワースペクトル推定サブモジュールと、前記ノイズパワースペクトルPin(u,v)に対してiの範囲に対する平均値を求め、Pn平均値(u,v)を取得するノイズ信号抽出サブモジュールと、前記差異信号パワースペクトルPis(u,v)に対してiの範囲に対する平均値を求め、Ps平均値(u,v)を取得する差異信号抽出サブモジュールを有するプリ処理モジュールと、信号雑音比の要求に基づいてノイズ低減フィルタのタイプ及びその特徴関数を確定し、前記特徴関数、前記ノイズパワースペクトルPn平均値(u,v)及び前記差異信号パワースペクトルPs平均値(u,v)を入力とし、ノイズ低減フィルタのシステムパラメータを取得し、前記システムパラメータによりノイズ低減フィルタを構成し、前記検査目標画像が前記ノイズ低減フィルタによりフィルタリングされることによって、ノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像を取得するノイズ低減モジュールとを含む。
【0026】
上述した目的を実現するための、本発明のもう一つの技術案は、前記ウェハ検査装置を用いるデータ処理方法を提供する。当該ウェハ検査装置のデータ処理方法は、複数の検査対象領域又はウェハに跨る領域により形成された前記検査目標画像i(i=1,2,…は各検査目標画像を示すインデックス)を、Mi個の部分領域に分割し、Mi以下のNi個の領域をノイズパワースペクトル推定処理に用いるために選択するステップS30と、前記検査目標画像iに基づいて全信号パワースペクトルPis+n(u,v)を推定するステップS31と、前記Ni個のノイズ領域の全信号パワースペクトルPis+n(u,v)を取得し、ノイズパワースペクトルPin(u,v)とするステップS32と、前記選択されたNi個の領域のノイズパワースペクトルPin(u,v)及び前記全信号パワースペクトルPis+n(u,v)に基づき、差異信号パワースペクトルPis(u,v)を推定し、Pis(u,v)に対してiの範囲に対する平均値を求め、Ps平均値(u,v)を取得し、ノイズパワースペクトルPin(u,v)に対してiの範囲に対する平均値を求め、Pn平均値(u,v)を取得するステップS33と、
信号雑音比の要求に基づいてノイズ低減フィルタのタイプ及びその特徴関数を確定し、前記特徴関数、前記ノイズパワースペクトルPn平均値(u,v)及び前記差異信号パワースペクトルPs平均値(u,v)を入力とし、ノイズ低減フィルタのシステムパラメータを取得し、前記システムパラメータによりノイズ低減フィルタを構成し、前記検査目標画像が前記ノイズ低減フィルタによりフィルタリングされることによって、ノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像を取得するステップS34とを含む。
【0027】
上述した目的を実現するための、本発明のもう一つの技術案は、コンピュータにより、前記ウェハ検査装置のデータ処理方法を実行するために用いられる、
実行されることができるプログラムを格納するコンピュータ可読媒体を提供する。当該コンピュータ可読媒体は、複数の検査対象領域又は複数のウェハに跨る領域により形成された前記検査目標画像i i(i=1,2,…は各検査目標画像を示すインデックス)を、Mi個の部分領域に分割し、Miより少ないNi個の領域を選択してノイズ推定用領域としてノイズパワースペクトルPin(u,v)の推定処理に用いるために選択するプログラムと、前記ノイズ推定用領域から求めた、前記ノイズパワースペクトルPin(u,v)と前記検査対象画像iの全信号パワースペクトルPis+n(u,v)を取得し、それぞれの前記全信号パワースペクトルPis+n(u,v)から前記Ni個のノイズ領域を使って求めたノイズパワースペクトルPin(u,v)を減算して差異信号パワースペクトルPis(u,v)を取得し、前記ノイズパワースペクトルPin(u,v)に対してiの範囲に対する平均値Pn平均値(u,v)を,パワースペクトルPis(u,v)に対してiの範囲に対する平均値Ps平均値(u,v)を取得するプログラムと、信号雑音比の要求に基づいてノイズ低減フィルタのタイプ及びその特徴関数を確定し、前記特徴関数、前記ノイズパワースペクトルPn平均値(u,v)及び前記パワースペクトルPs平均値(u,v)を入力とし、ノイズ低減フィルタのシステムパラメータを取得し、前記システムパラメータによりノイズ低減フィルタを構成し、前記検査対象画像が前記ノイズ低減フィルタによりフィルタリングされることによって、ノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像を取得するプログラムとを含む。
【0028】
上述した技術案から分かるように、ウェハ検査装置において無意味な欠陥の発生の可能性を下げるために、本発明は、検査目標画像と参照画像の差異を、欠陥評価データにおける有意の欠陥と無意味な欠陥(ノイズ信号)の比率である信号雑音比(singal to noise ratio、SNRと略称される)を高めるノイズ信号低減技術を提供する。本発明は、正確なノイズパワースペクトルを推定するので、各種のノイズ信号低減フィルタを用いてSNRを向上することができる。よって、ノイズ信号低減フィルタのパラメータとなる信号及びノイズ信号のパワースペクトル等に対する正確な推定が特に重要になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】従来技術におけるウェハ検査装置の模式図である。
図2】従来技術においてウェハ検査装置で得られた検査目標画像と参照画像およびそれらの差異画像による欠陥抽出の例を示す説明図である。
図3】従来技術においてウェハ検査装置を用いる画像データ処理のフローチャート図である。
図4】従来技術において検査目標画像と参照画像の差異信号と欠陥を通る直線上の差異強度を示す模式図である。
図5】本発明の実施形態において本発明によるノイズ信号低減システムのパラメータを確定する手順を示す模式図である
図6】本発明の実施形態においてシミュレーションで原画像とノイズ信号低減フィルタの効果を比較した結果である。
図7】本発明の実施形態において差異情報を検査対象の位置に対応させた説明図である。
図8】本発明の実施形態においてノイズ信号のパワースペクトル計算法を示すフローチャート図である。
図9】本発明の実施形態においてモルフォロジーを用いた画像処理のフローチャート図である。
図10】本発明の実施形態においてパラメータ化されたモルフォロジー用構造要素の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明の具体的な実施形態を更に詳しく説明する。全体の構成から細部の構成の順に説明するのが望ましい。
【0031】
本発明の実施形態においては、ウェハ検査装置は、検査目標画像生成ユニット及びデータ処理ユニットを含み、検査目標画像生成ユニットは、通常、光学式の検査装置又はスキャン式電子顕微鏡を用いる検査装置等であっても良く、ここでは、限定されない。本発明の目的は、データ処理ユニットが取得したウェハ検査目標画像信号を処理する際、検査結果に含まれる無意味な欠陥を低減し、即ち、画像情報に含まれるノイズ信号を低減することである。
【0032】
言い換えれば、本発明の目的は、画像情報の中のノイズ信号を低減する最適な方法を提供する。なお、本発明の実施形態においては、画像情報の中のノイズ信号(擬似欠陥)を低減する方式は、様々ある。また、本発明においては、検査目標画像と参照画像の差異を、欠陥評価データにおける有意の欠陥と無意味な欠陥(ノイズ信号)の比率の問題と考え処理する方式は、他の分野においても実用できる。
【0033】
本発明の実施形態においては、データ処理ユニットは、検査目標画像に対して欠陥抽出の処理及び判断を行う。データ処理ユニットは、検査前に設計結果とする、ノイズ差異情報を含まない検査ウェハレイアウトデータに対してシミュレーションを行うことによって、パワースペクトルPs(u,v)を取得するリソグラフィ・シミュレータと、ノイズ信号が重なった前記検査対象画像の全信号パワースペクトルPs+n(u,v)を取得し、前記全信号パワースペクトルPs+n(u,v)から前記パワースペクトルPs(u,v)を減算してノイズパワースペクトルPn(u,v)を取得するノイズパワースペクトル抽出サブモジュールとを有するプリ処理モジュールと、信号雑音比の要求に基づいてノイズ低減フィルタのタイプ及びその特徴関数を確定し、前記特徴関数、前記ズパワースペクトルPn(u,v)及び前記パワースペクトルPs(u,v)を入力とし、ノイズ低減フィルタのシステムパラメータを取得し、前記システムパラメータによりノイズ低減フィルタを構成し、前記検査目標画像が前記ノイズ低減フィルタによりフィルタリングされると、ノイズ情報が低減された後の前記検査目標画像を取得するノイズ低減モジュールとを含む。
【0034】
言い換えれば、本発明は、光学シミュレーションをする場合、ノイズ信号のパワースペクトルをゼロに設定して計算することができるので、信号のみのパワースペクトルPsを計算することができる。シミュレーションで得られたPsを基に、Pn(u,v)=Ps+n(u,v)-Ps(u,v)を計算することにより、ノイズ信号のパワースペクトルを推定することができる。
【0035】
具体的には、ウェハ検査装置による処理結果に擬似欠陥が発生する可能性を減らすために、検査対象画像と参照画像の差異を、欠陥評価データにおける有意の欠陥と擬似欠陥の比率(SNR:signal to noise ratio)として大きくさせた。様々なノイズ低減フィルタを用いてSNRを向上することができることは、当業者にとって明らかである。よって、信号及びノイズのパワースペクトル等のようなノイズ低減フィルタのパラメータを正確に推定することは、特に重要である。
【0036】
従来技術においては、信号及びノイズのパワースペクトルを正確に推定する方式は、沢山あるが、ここでは、2次元のウィーナーフィルタ(Wiener Filer)を例として説明する。ウィーナーフィルタは、定常ランダム過程の相関特性及びスペクトル特性を用いてノイズ混じりの信号をフィルタリングする方法であり、一定の制限条件で、その出力と一つの所与の関数(通常、所望出力と言われる)との差の平方が最小になり、数学演算により、最終的に一つのテプリッツ方程を解く問題になる。ウィーナーフィルタは、最小二乗フィルタ又は最小平方フィルタとも言われる。
【0037】
2次元のウィーナーフィルタにおいては、そのシステム特性M(u,v)は、次の式で表される。
ここで、H(u,v)は、システムの特性を示す関数であり、ノイズ要因以外の劣化がなければ、H(u,v)は、1になる。* は、共役を示し、Pn(u,v)は、ノイズ(Noise)のパワースペクトルを示し、Ps(u,v)は、信号のパワースペクトルを示し、u,vは、空間周波数を示す。
【0038】
現実のシステムの検査プロセスにおいては、Pn(u,v)とPs(u,v)は分離されて観測されることはなく、Ps+n(u,v)の形で観測されて得られる。通常、幾つかの仮定に基づいてPn(u,v)を推定していたため、Pn(u,v)が推定された結果には、誤差が含まれた。しかしながら、本発明の実施形態においては、PnとPsを分離して推定することを可能とすることによって、高性能のノイズ信号低減システムを提供することができる。
【0039】
<第1実施形態>
図5を参照しながら、本発明の一つの実施形態を説明する。なお、図5の符号500で示されたものは、システム、回路及び装置であっても良い。以下、図5の符号を用いて動作過程を説明する。製造方法ならば、図面を用いて当該方法のステップを説明するが、構造と動作等を別々にして説明するのが難しいので、構造と一緒に説明する。
【0040】
図5は、本発明のノイズ低減システムのパラメータを確定する一つの好ましい実施形態の模式図である。図5に示すように、符号509は、ウェハであり、符号510は、ウェハに対して照明する光源であり、符号501は、レイアウトデータであり、符号502は、リソグラフィ・シミュレータ(通常は、コンピュータシミュレーションプログラムである)であり、符号503は、パワースペクトルPs(u,v)の計算モジュールであり、符号504は、信号のパワースペクトルPs(u,v)の計算結果であり、符号505は、画像センサであり、符号506は、ノイズパワースペクトル抽出サブモジュールであり、符号507は、ノイズ(Noise)のパワースペクトルPnの計算モジュールであり、符号508は、ノイズのパワースペクトルPn(u,v)の計算結果であり、符号511は、システムの特徴を示す関数H(u,v)であり、符号512は、ノイズ低減システム(Noise Reduction System)のパラメータの確定を示し、符号513は、ノイズ低減フィルタ(Noise Reduction Filter)を示す。
【0041】
上述したノイズ低減システムの動作原理は、以下の通りである。
設計結果であるウェハのレイアウトデータ501を用い、リソグラフィ・シミュレータ502によりノイズ差異情報を含まないレイアウトデータ501に対してシミュレーション計算を行う。当該シミュレーション計算の結果に基づき、パワースペクトル503を計算し、パワースペクトルPs(u,v)のデータ504を取得することができる。一方、センサ505によりウェハ509のレイアウトデータ501に対応する検査目標画像を取得し、センサから得られた検査目標画像及び参照画像から得られた差異画像には、ノイズ信号が含まれている。光源510は、ウェハ509を照明する。
【0042】
また、検査目標画像及びリソグラフィ・シミュレータ502のシミュレーション結果を入力とし、ノイズ信号情報抽出ステップ(符号506)を完成する。その後、パワースペクトルPnの計算ステップ(符号507)により、ノイズ(Noise)のパワースペクトルPn(u,v)(符号508で示される)を取得することができる。
【0043】
上述したデータを取得した後、符号511で示されるシステム(System)の特徴の関数H(u,v)、Pn(u,v)及びPs(u,v)を入力とし、ステップ512によりノイズ低減システム(Noise Reduction System)のパラメータを確定し、更に、ノイズ低減フィルタ(Noise Reduciton Filter)(513)を構成する。
【0044】
ウェハから光学検査装置を経由しセンサによって得られた検査目標画像信号には、製造上、光学的、電気的、その他の理由により、得られた検査目標画像にノイズ信号が重なったものとなっている。一方、LSIの設計情報であるレイアウトデータ(Layout Data)等に基づく光学シミュレーションにより得られた画像情報には、ノイズ信号が含まれない。従って、光学シミュレーションの画像から検査目標画像のパワースペクトルPs(u,v)を求め、ノイズ信号のパワースペクトルPn(u,v)は、検査装置により得られた検査対象画像と光学シミュレーションにより得られた画像の差異に基づいて計算することができる。故に、上述した二つのパワースペクトルを用いることによって、高精度のノイズ信号低減システムを実現することができる。
【0045】
また、システムの特性を示す関数H(u,v)は、ノイズ信号以外の影響がなければ、得られた出力の変動は、「1」となるが、ノイズ信号以外の影響がある場合、システム特性を示す関数H(u,v)は、「1」ではない。
【0046】
図5に示すように、光源510によって照明されたウェハの検査目標をセンサ505でとらえた画像信号には、ウェハ上のパーティクルによる微細欠陥に関するノイズ信号、光学系の欠陥に基づくノイズ信号及びウェハ製造プロセスに起因する微細欠陥に関するノイズ信号等のような主な欠陥信号が重なっている。上述したこれらのノイズ信号は、多くの場合、検査装置における差異計算などのデータ処理ステップによって相殺消去されることができない。
【0047】
本発明の実施形態においては、センサ検査出力結果信号Ps+n(u,v)は、ノイズ信号Pn(u,v)と検査対象の画像信号Ps(u,v)の混合である。当該センサ検査出力結果から得られた検査目標画像信号Ps+n(u,v)から、ノイズ信号に関する信号Pn(u,v)を抽出することは、式(1)で示された高性能なノイズ信号低減フィルタを構成するうえで重要である。図5のフローチャートにおいて示された方式によれば、光学シミュレーションによりノイズ信号を含まない画像情報に基づく信号Ps(u,v)を取得することができる。従って、センサ検査出力結果信号Ps+n(u,v)からPs(u,v)を減算することにより、ノイズ信号Pn(u,v)を取得することができる。当該ノイズ信号Pn(u,v)を得ると、より性能の高いノイズ信号低減フィルタを実現することができる。
【0048】
図6に示すように、図の中の符号600は、センサから得られた検査目標画像とノイズ低減フィルタにより処理された後の画像情報を比較した効果の模式図である。符号601で示された画像は、ウェハ検査装置により得られた、ノイズ信号を含む検査目標画像と参照画像との差異欠陥を示すものであり、ノイズ信号の低減処理がされていない。符号602及び符号603は、それぞれX軸とY軸を示しており、このX軸とY軸で生成される平面に差異信号の強弱が濃淡で示されている。符号604は、欠陥が存在するために大きな差異が発生した部分であり、符号605の領域には、薄い濃淡の斑を見ることができるが、これは、ノイズ信号に対応する。符号610は、ノイズが除去された後の画像である。右の図に示すように、符号610で示される画像は、ノイズ信号低減フィルタを用いたシミュレーション結果である。符号612、符号613は、X軸とY軸を示しており、このX軸とY軸で生成される平面に差異信号の強弱が濃淡で示されている。符号614は、欠陥が存在するために大きな差異が発生した部分であり、符号615領域には、薄い濃淡の斑を見ることができるが、これは、ノイズ信号低減フィルタを用いた場合に対応する。
【0049】
ノイズ信号の状態領域を良く表すために、ノイズ信号低減フィルタを用いない場合の符号605と用いた場合の符号615を比較すると、明らかにその状態の差が見られる。上述した実施形態においては、実際シミュレーションにより確認を行ったところ、ノイズ信号低減フィルタを用いない601のケースの場合には、SNR(Signal to Noise Ratio)が5.61dBであったのに対して、ノイズ信号低減フィルタを用いた610のケースの場合は、SNRが15.0dBであった。
【0050】
<第2実施形態>
図7及び図8を参照しながら、本発明のもう一つの実施形態を説明する。
本実施形態においては、まず、検査対象領域を複数の部分領域に分割し、各部分領域に含まれる差異の強度を示す情報が、差異のピークに関連する情報かノイズ信号に関連する情報かを判断する。ノイズ信号に関連する部分領域のみを用いてノイズ信号のパワースペクトルを計算し、そのパワースペクトルを用いてノイズ信号低減フィルタを構成するアプローチである。
【0051】
言い換えれば、本発明の一つの好ましい実施形態においては、まず、ノイズ信号のパワースペクトル推定に用いられるノイズ領域を確定し、即ち、検査対象領域により形成された前記検査目標画像を、M個の部分領域に分割し、その中のM以下のN個の領域をノイズパワースペクトル推定のために用いるように選択する必要がある。当該N個の領域をノイズパワースペクトル推定に用いるように選択することは、格子ごとに差異の強度の二乗和の平均をとり、その平均値が所定の値より小さい場合、ノイズ信号成分から構成される格子と判定する方法を採用することができる。
【0052】
図7に示すように、図7の中の符号700は、差異情報を検査対象の位置に対応させた模式図である。検査目標画像に欠陥が存在する場合は、符号701に示したような差異に基づくピークが現れる。また、符号702、符号703は、別の欠陥に基づく差異のピークであるが、両者のピークの強度は、比較的小さい。符号700に示された図においては、欠陥差異のピークは、X軸(符号706)、Y軸(符号707)と差異の強度(符号708)を座標軸とする3次元の空間にプロットされている。ここで、X-Y平面を仮想格子(符号704)で分割する。この例では、仮想格子は、6X6個と設定されているが、差異ピークが関連する格子と主としてノイズ信号成分で構成される格子(符号705)から構成される。仮想格子は、必ずしも矩形である必要が無く、任意の形状であって良い。ただし、仮想格子は、互いに重なりが無く、検査対象領域全体を隙間なく覆っていることが望ましい。
【0053】
差異欠陥のピークと関連する格子と主としてノイズ信号成分で構成される格子を分類する方法が必要である。各格子の差異の強度に関する統計的性質を用いて判断する分類方法がある。例えば、格子ごとに差異の強度の二乗和の平均をとり、その平均値が所定の値より小さい場合、ノイズ信号成分から構成される格子と判定する方法がある。この判定方法は、あくまで例であり、別の判定法も考えられるが、ここでは、限定されない。
【0054】
具体的には、本発明の実施形態においては、図8は、当該実施形態においてノイズ信号のパワースペクトル計算法を示すフローチャート図である。図8に示すように、当該ノイズ信号のパワースペクトル計算法は、次のステップを含む。ステップ801においては、例えば、仮想格子等の方式により、検査対象領域を複数の部分領域に分割し、部分領域の形状は、必ずしも矩形である必要がなく、任意の形状であっても良い。ステップ802においては、着目した部分領域が差異欠陥ピーク(defect signal)を含むか否かを判断し、当該判断は、前に述べた統計的性質に基づく方法を利用することができる。ステップ803においては、差異ピーク(defect)を含むか否かを判断し、含む場合、ステップ804をスキップし、含まない場合、ステップ804においてノイズ信号のパワースペクトルPn(u,v)の評価・改善を行う。ステップ805においては、次の部分領域を取り出し、ステップ806において全ての部分領域の処理が終了したか否かを判断し、終了していなければ、ステップ802からステップ806を繰り返す。
【0055】
図8で示された実施形態では、ノイズ信号に関するパワースペクトルの評価・改善をステップ804で逐次的に実施しているが、本発明の実施形態においては、同様の処理フローを用いて全部分領域のスキャンを行い、ノイズ信号に関する部分領域の一覧表を完成させ、その後に、パワースペクトルPn(u,v)を計算することができる。
【0056】
<第3実施形態>
通常、ウェハ検査装置においては、1つの検査対象領域に対する検査によってその作業を終了することはない。一枚のウェハ上に多数の検査対象領域が存在する。さらに、複数の同一レイアウトの集積回路を搭載した複数ウェハの検査を連続的に実施することもある。このように、複数の検査対象領域の処理をする場合は、第一の実施形態および第二の実施形態のように、ひとつの検査対象領域に限ったノイズ信号及び/又はパワースペクトル推定にこだわる必要は無い。
【0057】
具体的には、当該ウェハ検査装置は、複数の検査対象領域又はウェハに跨る領域の検査目標画像を取得するために用いられる検査目標画像生成ユニットと、前記検査目標画像に対して欠陥抽出の処理及び判断を行うデータ処理ユニットとを含む。前記データ処理ユニットは、前記の複数の検査対象領域又はウェハに跨る領域により形成された前記検査目標画像i(i=1,2,…は各検査目標画像を示すインデックス)を、Mi個の部分領域に分割し、その中のNi個の主としてノイズ信号成分で構成されるノイズ領域を選択してノイズパワースペクトル推定を用い、前記NiがMi以下であるノイズ領域確定サブモジュールと、Ni個のノイズを含む前記検査目標画像の全信号パワースペクトルPis+n(u,v)を推定取得するための推定処理サブモジュールと、前記ノイズ領域確定モジュールで選択した大きな差異欠陥を含まないノイズを含むNi個の部分領域から求めたノイズ信号が重なった前記検査目標画像の全信号パワースペクトルPNis+n(u,v)を計算して取得し、ノイズパワースペクトルはPin(u,v) ≒PNis+n(u,v)と成ることから求めたノイズパワースペクトルPin(u,v)とそれぞれの前記前記Mi個からなる全信号パワースペクトルPis+n(u,v)から前記ノイズパワースペクトルPin(u,v)を減算して前記Mi個の部分のパワースペクトルPis(u,v)を取得するパワースペクトル推定サブモジュールとを有するプリ処理モジュールと、すべての検査対象領域のノイズパワースペクトルPin(u,v)に対してiの範囲に対する平均値を求め、Pn平均値(u,v)を取得するノイズ信号抽出サブモジュールと、前記差異信号パワースペクトルPis(u,v)に対してiの範囲に対する平均値を求め、Ps平均値(u,v)を取得する差異信号抽出サブモジュールとを有するプリ処理モジュールと、信号雑音比の要求に基づいてノイズ低減フィルタのタイプ及びその特徴関数を確定し、前記特徴関数、前記ズパワースペクトルPn平均値(u,v)、Ps平均値(u,v)及び前記パワースペクトルPs(u,v)を入力とし、ノイズ低減フィルタのシステムパラメータを取得し、前記システムパラメータによりノイズ低減フィルタを構成し、前記検査目標画像が前記ノイズ低減フィルタによりフィルタリングされることによって、ノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像を取得するノイズ低減モジュールとを含む。ここで平均値を求める演算は単純な算術的な平均だけにはとどまらず、より一般的な最適な推定値を求める演算の意味にとらえられなければならない。
【0058】
本発明の実施形態においては、ノイズ信号のパワースペクトルの改善演算を上述した複数の検査対象領域又はウェハに跨って行い、精度を向上することができる。
【0059】
<第4実施形態>
図9は、本発明の実施形態においてモルフォロジーを用いた画像処理の例示を示す模式図である。図9の、モルフォロジーを用いた無意味な欠陥を低減する処理等の画像処理プロセスにおいては、ノイズ信号と考えられる比較的小さい要素信号906~909と抽出したい検査目標画像要素信号902~905を区別することが比較的容易であるが、要素信号の中から、有意の欠陥を区別するためにはさらに複雑な処理が必要となる。
【0060】
よって、本発明の実施形態においては、本発明のウェハ検査装置は、欠陥抽出モジュール及び復元モジュールを含む。前記検査目標画像が得られた後、欠陥抽出モジュールは、モルフォロジー画像処理技術に基づき、前記検査目標画像の中の検査目標画像要素を抽出することによって、前記検査目標画像のノイズ画像を除去する。本発明の思考回路を用いて検査目標画像のノイズ画像のみを処理すれば、フィルタの選択が比較的簡単であり、フィルタリングする効果の正確度も高まった。また、前記検査目標画像のノイズ画像を取得した後、復元モジュールは、検査目標画像の中の検査目標画像要素を、前記検査目標画像の中のノイズ情報が除去された後の前記検査目標画像に加えることによって、ノイズが除去された後の前記検査目標画像を直接に形成することができる。
【0061】
具体的には、図9は、本発明の実施形態においてモルフォロジーを用いた画像処理の例示を示す模式図である。図9の中の符号900は、微細な差異欠陥からなるノイズ信号を除去し、所定の大きさ以上の画像を抽出するフィルタリングの例示を示す。符号901は、入力画像であり、ノイズ信号の微細な差異欠陥の要素信号906~909及び抽出したい検査目標画像要素信号902~905を含む。符号910は、モルフォロジー演算を組み合わせてなる画像処理を表し、即ち、モルフォロジー処理である。符号910のモルフォロジー画像処理に用いられる構造要素は、符号911により示される。当該例におけるモルフォロジー処理により得られた出力画像920は、ノイズ信号が除去された、微細な画像要素が除去された後の画像である。当該例において用いられるモルフォロジー処理は、Erosion演算の方法を使用することができる。
【0062】
具体的には、除去されるノイズ信号の微細な差異欠陥の画像構造要素特徴に基づき、構造要素911の形状及びサイズを選択することができる。erosion演算時に得られたパターン構造要素922~925は入力されたパターン構造要素902~905の関係から変形を受けている。Erosion演算に基づく変形は、異なるので、902~905と同じパターン要素を得るために、更にパターン演算を行う必要がある。ここで示されたモルフォロジー処理に基づくノイズ信号のフィルタリングは、一つの例であり、パターンの構造抽出及び外形抽出等の様々な複雑な処理に用いられることができる技術である。
【0063】
モルフォロジーを用いた画像処理においては、目的とする処理に適合する構造要素の選択と単位となるモルフォロジー処理を組み合わせて所望の処理手順を実現する必要がある。このような利用者にとっての利便性の向上を図るため、処理手順をマクロとして記述しライブラリに保存する。
【0064】
モルフォロジー処理に用いる構造要素は、そのモデルの記述をパラメータ化することができ、マクロ記述の汎用化を可能にする。図10は、パラメータ化されたモルフォロジー用構造要素の例を示している。図に示すように、円と矩形の構造要素のパラメータ化を行った例が1000に示され、円のパラメータ化の例が1010に示されている。図1011は、半径R1012をパラメータとしたモデルである。仮に、半径Rを「1」とし、インスタンシエイト(instantiate)された例1013は、1014で示された円である。一方、半径Rを「2」とし、インスタンシエイトされた例1015は、1016で示された円である。仮に、矩形をパラメータ化した構造要素の例が1020に示されている。この場合、1021の矩形に示されているように、a(1022)及びb(1023)の二つのパラメータがモデルに使われている。例1024においては、パラメータとしてa=1,b=1.3を採用して1026に示された矩形が実現される。例1025においては、パラメータとしてa=2, b=1を採用して1027に示された矩形が実現される。これらのパラメータ化された構造要素は、一例に過ぎず、より複雑な構造要素のモデルを定義することができる。他の構造要素を用いることにより、複雑な構造の抽出及びノイズ信号除去等をモルフォロジー処理により実現できる。
【0065】
よって、モルフォロジー処理を用いて検査精度向上機能を実現した場合は、モルフォロジー処理の手順の選択及び検査精度制御のパラメータの選択により、検査精度が変化する。そのため、最適な選択を行う必要がある。検査精度の評価がコンピュータプログラムによって実現できる場合は、パラメータ及び処理手順の選択を変化させて最適の手順及びパラメータの選択を探索することができる。また、検査精度の評価をコンピュータプログラムで実現できない場合でも、人間が良否を判断することにより、最適な選択を実現できる。
【0066】
上述した内容は、本発明の好ましい実施形態に過ぎない。これらの実施形態は、本発明の特許請求の範囲を制限しない。本発明の明細書及び図面の内容を用いて行われた等価構造の変化は、同じ理由で何れも本発明の特許請求の範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】