(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(54)【発明の名称】プロセスレコードスライド、およびそれをルーズセルに使用する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20230227BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20230227BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20230227BHJP
【FI】
G01N1/28 U
G01N33/483 C
G01N33/48 P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540772
(86)(22)【出願日】2020-12-30
(85)【翻訳文提出日】2022-08-18
(86)【国際出願番号】 IB2020062554
(87)【国際公開番号】W WO2021137178
(87)【国際公開日】2021-07-08
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521151924
【氏名又は名称】シンセン ピーアールエス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハッシャー フレデリック ケー
(72)【発明者】
【氏名】シャム ジー ジェイ
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045BB25
2G045CB01
2G045DA36
2G045FA16
2G052AA33
2G052AB18
2G052AD32
2G052AD52
2G052FA05
2G052FA08
2G052GA31
(57)【要約】
本出願は、プロセスレコードスライド、およびそれをルーズセルに使用する方法に関する。単一~複数の領域のスライドであって、各領域は、1~4つのコントロールターゲットを有し、特殊染色剤、IHC、またはCCなどによる処理に適している。各領域は、疎水性バリアによって結合されてウェルを形成してもよい。スライドは、ルーズセルおよびセル残屑の捕捉に適した接着剤コーティングを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のルーズセルを含むサンプルを保持するように構成された検出エリアであって、少なくとも1つの領域を含む検出エリアと、
前記少なくとも1つの領域の周囲のコントロールエリアであって、少なくとも1つのコントロールターゲットを有するコントロールエリアとを備え、前記コントロールエリアは、
免疫組織化学的または細胞化学的な検出処理中の中間工程のエラーおよび達成度の尺度を示し、かつ、染色された前記複数のルーズセルの抗原密度および色濃度、または、染色された前記複数のセルの上および内部それぞれの色濃度を定性的または定量的に決定するための基準を提供するように構成された、スライド。
【請求項2】
前記検出エリアの前記少なくとも1つの領域は、疎水性バリアによって境界付けされてウェルを形成する、
請求項1に記載のスライド。
【請求項3】
複数の部分と結合するように構成された接着剤コーティングをさらに備え、
前記接着剤コーティングは、-ROH、-R(C=O)OH、-RNH
2、-R(C=O)NH
2、および-RNH
3からなる群から選択される少なくとも1つの末端基を含む、
請求項1に記載のスライド。
【請求項4】
前記検出エリアの前記ウェルは、円形、または正方形、または矩形である、
請求項2に記載のスライド。
【請求項5】
前記コントロールエリアは前記検出エリアの前記少なくとも1つの領域の角にある、
請求項2に記載のスライド。
【請求項6】
前記コントロールエリアは前記検出エリアの前記ウェルの内側にある、
請求項2に記載のスライド。
【請求項7】
前記コントロールエリアは前記検出エリアの前記領域の外側にある、
請求項1に記載のスライド。
【請求項8】
前記コントロールエリアは、少なくとも1つのコントロールドットまたはコントロールストリップを含む、
請求項1に記載のスライド。
【請求項9】
前記コントロールエリアは、部分的または全体的な疎水性バリアによって境界付けされている、
請求項1に記載のスライド。
【請求項10】
前記検出エリアの前記少なくとも1つのウェルは前記サンプルを含む、
請求項1に記載のスライド。
【請求項11】
疎水性物質の被覆をさらに備え、前記疎水性物質はエポキシまたはウレタンである、
請求項1に記載のスライド。
【請求項12】
前記少なくとも1つのコントロールターゲットは、一次ターゲット、一次抗体、二次ターゲット、二次抗体、撮像基準、2D撮像基準ターゲット、3D撮像基準ターゲット、またはターゲットアレイを含む、
請求項1に記載のスライド。
【請求項13】
前記少なくとも1つのコントロールターゲットは、マウス、ウサギ、またはマウス+ウサギの宿主の一次抗体、マウス、ウサギ、またはマウス+ウサギの二次抗体、またはヘマトキシリンおよびエオシンの染色剤を捕捉するように構成されている、
請求項1に記載のスライド。
【請求項14】
前記一次抗体は、FcyRI部位において、活性化されたビーズまたは輸送タンパク質に付着したタンパク質A、タンパク質G、タンパク質A/G、またはFcyRI結合ペプチドのいずれかによって捕捉される、
請求項13に記載のスライド。
【請求項15】
前記ヘマトキシリンおよびエオシンは、活性化されたビーズに付着した化学的ターゲットによって捕捉される、
請求項13に記載のスライド。
【請求項16】
一対の前記一次抗体は、異なる2つの濃度、すなわち100%の第1濃度と、30~70%の第2濃度とを有する、
請求項13に記載のスライド。
【請求項17】
セルを検出するために請求項1に記載のスライドを用いる方法において、
複数のルーズセルを含む前記サンプルを前記検出エリアに配置することと、
少なくとも1つのコントロールターゲットを前記コントロールエリアに配置することと、
前記複数のルーズセルおよび前記少なくとも1つのコントロールターゲットを染色することであって、少なくとも1つの一次ターゲットを前記スライドの前記コントロールエリアに塗布するか、部分と共役した少なくとも1つの一次ターゲットを前記スライドの前記コントロールエリアに塗布するか、または、部分と共役した少なくとも1つの二次ターゲットを前記スライドの前記コントロールエリアに塗布し、かつ、発色する染色試薬を前記検出エリアおよび前記コントロールエリアに塗布することを含む染色することと、
前記染色処理の品質を評価することであって、前記複数のルーズセルおよび前記コントロールターゲットの染色結果を評価することと、
前記複数のルーズセルの状態を定性的に決定することとを含む、方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのコントロールターゲットは、マウス、ウサギ、またはマウス+ウサギの宿主の一次抗体、マウス、ウサギ、またはマウス+ウサギの二次抗体、またはヘマトキシリンおよびエオシンの染色剤を捕捉するように構成されている、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記一次抗体は、前記一次抗体は、FcyRI部位において、活性化されたビーズまたは輸送タンパク質に付着したタンパク質A、タンパク質G、タンパク質A/G、またはFcyRI結合ペプチドのいずれかによって捕捉される、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ヘマトキシリンおよびエオシンは、活性化されたビーズに付着した化学的ターゲットによって捕捉される、
請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年12月31日に出願された米国仮出願第62/955,501号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本出願は、プロセスレコードスライド、およびそれをルーズセル(loose cell)に使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
疎水性バリアによって境界付けされたサンプルウェルを組み込んだ多くのバージョンのスライドがある。これらのスライドの一部は、多くのウェル、例えば、100ウェルを有するように開発および製造されている。しかしながら、これらのスライドのいずれも、サンプルを処理するために使用される一次および二次の染色試薬の定量的測定を提供するためにコントロールターゲットを組み込んでいない。
【0004】
抗体試薬の濃度を決定する方法には、280nmでの希釈サンプルの吸収量を決定することが含まれる。次いで、アッセイレポートを作成して、包装されたバイアルの濃度、すなわち、通常は0.8~1.2mg/mlを得る。しかしながら、吸収量測定は、全ての抗体タンパク質が完全に無傷であると仮定している。ヒンジがある割合で破壊されていても、FabおよびFcの両領域が未だ存在していれば、測定は同じままである。抗体を使用する際、抗体の温度を25℃に上昇させてから、アリコートを抜き取る。スライドのさらなる処理が望まれなくなると、バイアルを4℃での保存に戻す。全てのタンパク質は、経時的に分解し、これは、ヒンジの破損から始まる。生存可能な抗体におけるこの腐敗に対処するために、実験プロトコルは、購入から6ヶ月経過後にバイアルを単に廃棄することである。劣化は染色された組織切片に影響を与えるほど深刻ではないと推定される。しかし、バイアルを一晩外に放置すると、抗体生存率の存続期間が著しく短くなる。抗体の費用がかかるため、大抵の場合、研究室はこの欠陥を無視し、最良の結果が得られることを望んでいる。既知の細胞性制御を使用する場合にのみ、このような初期不良が明らかになる。
【発明の概要】
【0005】
本出願のいくつかの実施形態のスライドは、各サンプルウェル内にコントロールターゲットを組み込むことによって、この状況に対処している。コントロールターゲットの機能は、塗布された一次抗体の機能的濃度を定量化することである。
【0006】
ルーズセルベースのスライドのための共在する工程品質管理(PQC)ソリューションはない。ルーズセル用途には、様々な用途で使用されているパップ塗抹標本、血液塗抹標本、およびマルチウェル/マルチ患者スライドが含まれる。最も一般的には、マルチ患者スライドがパップ塗抹標本の大量処理に使用される。
【0007】
塗布されたスラリーからのルーズセルの捕捉は、セル(細胞)がスライド表面に沈降するのに十分な時間を堆積物に与えることによって起こる。スライドは、セルが沈下したときにセルを共有結合によって捕捉する接着剤コーティングを組み込む。いくつかの実施形態では、コンフォーマルな接着剤を単層の接着剤上に使用してセルと接着剤との間のより高い結合密度を確実にする。このようなコンフォーマルな接着剤スライドの一例は、Erie Gold Plusである。場合によっては、良好な品質のアミノ-シランスライド接着剤は、捕捉性能において十分である。
【0008】
サンプルウェルを有するスライドは、エポキシまたはウレタンなどの疎水性塗料を使用するパターンを印刷することによって製造され得る。複数の印刷プロセスは使用可能であり、スクリーン印刷、パッド印刷、インクジェット、またはローラーボールを含み得る。このようなスライドは、多数の業者によって製造されている。印刷プロセスの一要素は、塗料を硬化するために熱が適用されないことである。なぜなら、熱は接着剤の親水性挙動を通常は低下させてしまうためである。
【0009】
いくつかの用途では、疎水性バリアは使用不可能である。一例は、血液塗抹標本であり、ただし、塗抹処理は塗抹標本の特定領域において血液細胞型を分離する傾向がある。塗抹標本は、通常、ウェッジの裏側によってサンプル液滴を描く、すなわち引くことによって形成される。速度およびウェッジ角は、血液の粘度の関数である。PQCターゲットを基準マークとしてスライド上に配置して、患者サンプルをどこに塗布すべきかを使用者に知らせることができる。
【0010】
単一のサンプルスライドは、疎水性バリアを利用しても、または、利用しなくてもよい。古典的な様式では、血液およびパップ双方の塗抹標本スライドを、疎水性バリアリング無しで作製することができる。自動化されたパップ塗抹標本機械は、患者サンプルを制御された細胞密度スラリーになるように処理するか、またはフィルターディスク上の湿潤層として処理する。このスラリーは、疎水性バリアリング内に塗布されて一定期間にわたって沈下し、その結果として、過剰な液体が除去される。その一例は、未発売のVeracell パップ塗抹標本スライドである。フィルターディスク上の湿潤層は、スライド上に転写印刷されるため、保持バリアリングを必要としない。その一例は、Thin-Prepスライドである。
【0011】
本出願のいくつかの実施形態は、本明細書において、疎水性バリアを有さないスライドのための基準マークとしてPRSコントロールターゲットを組み込む。基準マークとして、コントロールターゲットドットが、1.5cm×1.5cmの領域として名目上は定義される、作業エリアの4つの角に配置される。一般規則として、疎水性バリアを使用しないスライドは、生体材料の1つの患者サンプルのみを取り扱う。コントロールターゲットは、1.5cm×1.5cmの領域内に縁に沿って位置する。
図1Aは、1.5cm×1.5cmの領域を含むが、一方、当業者は、サイズの異なる複数の領域が本開示の範囲内であることを理解するであろう。
【0012】
サンプル封じ込めのための疎水性バリアリングを組み込むスライドは、10個のウェルをめったに超えず、各ウェルは封じ込めエリアを含む。サンプルはウェルの中心に塗布され、ウェルはスピルオーバー容積近くまで満たされる。セルは、ウェルの縁からこぼれ落ちる傾向があり、キャリア緩衝液が蒸発するにつれて、特に熱の適用によって加速される場合、中心に堆積し得る。コントロールターゲットは、ウェルの作業周辺において4つの等距離位置に離されている。染色試薬:IHC用途のための抗体タンパク質は、セルよりも速く沈殿して堆積物の縁部においてそれらの濃度が最も高くなる傾向がある。したがって、セルスラリーは、ターゲットが在るところに沈降することを一般的には回避するであろう。しかし、染色試薬は、コントロールターゲットによって捕捉されるのに十分な時間を有する。任意の染色処理で生体材料が一旦湿潤状態になると、生体材料は、通常は、染色が完了するまで湿潤状態のままである。
【0013】
染色処理は、2つの一次抗体を支持することに限定され、ただし、一方の抗体がマウスベースであり、他方の抗体がウサギを宿主とする。単一の一次抗体構成では、コントロールターゲットは、マウス宿主抗体またはウサギ宿主抗体のいずれかを捕捉する。コントロールターゲットに適用できる多数の設定オプションがある。すなわち、
●単一の(マウスまたはウサギのいずれかをベースとする)一次抗体のための4ドット勾配密度連続、
●一方の対をマウス抗体のために、そして、他方の対をウサギ抗体のために有する2ドット勾配密度連続、
●マウス抗体、ウサギ抗体、マウス二次抗体、およびマウス二次抗体であり得る4つのターゲットドット、または
●上記の任意の組み合わせがある。
【0014】
本出願のいくつかの実施形態は、スライドを対象とし、該スライドは、複数のルーズセルを含むサンプルを保持するように構成された検出エリアと、コントロールエリアとを含み、該コントロールエリアは、免疫組織化学的または細胞化学的な検出処理中の中間工程のエラーおよび達成度の尺度を示し、かつ、染色された前記複数のセルの抗原密度および色濃度、または、染色された前記複数のセルの上および内部それぞれの色濃度を定性的または定量的に決定するための基準を提供するように構成され、
前記検出エリアは、少なくとも1つの領域を含み、
前記コントロールエリアは、前記検出エリアの前記少なくとも1つの領域の周囲にあり、
前記コントロールエリアは、前記基準を提供するための少なくとも1つのコントロールターゲットを含む。
【0015】
少なくとも1つの実施形態は、複数の部分(moieties)と結合するように構成された接着剤コーティングをさらに含み、前記接着剤コーティングは、-ROH、-R(C=O)OH、-RNH2、-R(C=O)NH2、および-RNH3からなる群から選択される少なくとも1つの末端基を含む。
【0016】
少なくとも1つの実施形態において、前記検出エリアの少なくとも1つのウェルの各々は、円形、正方形、または矩形である。
【0017】
少なくとも1つの実施形態において、前記コントロールエリアは前記検出エリアの前記領域の角にある。
【0018】
少なくとも1つの実施形態において、前記コントロールエリアは前記検出エリアの前記領域の内側にある。
【0019】
少なくとも1つの実施形態において、前記コントロールエリアは前記検出エリアの前記領域の外側にある。
【0020】
少なくとも1つの実施形態において、前記コントロールエリアは、少なくとも1つのコントロールドットまたは複数のコントロールドットのアレイを含む。
【0021】
少なくとも1つの実施形態において、前記コントロールターゲットは、マウス、ウサギ、またはマウス+ウサギが宿主の一次抗体、マウス、ウサギ、またはマウス+ウサギの二次抗体、またはヘマトキシリンおよびエオシンの染色剤を捕捉するように構成されている。
【0022】
少なくとも1つの実施形態において、前記一次抗体は、そのFcyRI部位において、タンパク質A、タンパク質G、タンパク質A/G、またはラテックスなどの材料を含むビーズまたは輸送タンパク質に付着したFcyRI結合ペプチドのいずれかによって捕捉される。
【0023】
少なくとも1つの実施形態において、ヘマトキシリンおよびエオシンは、ラテックスなどの材料を含むアミン被覆ビーズに付着した化学的ターゲットによって捕捉される。
【0024】
少なくとも1つの実施形態において、一対の一次ターゲットは、異なる2つの、すなわち一方は100%、他方は30~70%の濃度を有する。
【0025】
少なくとも1つの実施形態において、接着剤の層をさらに含む。
【0026】
少なくとも1つの実施形態において、前記接着剤はアミノシランである。
【0027】
少なくとも1つの実施形態において、前記コントロールエリアは、部分的または全体的な疎水性バリアによって境界付けされている。
【0028】
少なくとも1つの実施形態において、前記検出エリアの前記少なくとも1つのウェルは前記サンプルを含む。
【0029】
少なくとも1つの実施形態において、疎水性物質の被覆をさらに含む。
【0030】
少なくとも1つの実施形態において、前記疎水性物質はエポキシまたはウレタンである。
【0031】
少なくとも1つの実施形態において、コントロールターゲットは、一次ターゲット、一次抗体、二次ターゲット、二次抗体、撮像基準、2D撮像基準ターゲット、3D撮像基準ターゲット、またはターゲットアレイを含む。
【0032】
少なくとも1つの実施形態において、二次ターゲットは異なる2つの、すなわち一方は100%、他方は30~70%の濃度であり得る。
【0033】
少なくとも1つの実施形態において、基準撮像ドットは、少なくとも1つ、すなわち、
●カーボンダストを含む黒色基準ターゲット、
●金属酸化物または金属硫酸塩を含む白色基準ターゲット、または、
●任意の免疫組織化学的、免疫化学的、または細胞化学的な試薬に対して非反応性のタンパク質を含む透明ターゲット
を含む。
【0034】
少なくとも1つの実施形態において、撮像基準ドットは、白色基準ターゲットおよび黒色基準ターゲットのための無水物系エポキシと、〇透明ターゲットのためのウマ科の哺乳類由来のタンパク質とを含む。
【0035】
本出願のいくつかの実施形態は、セルを検出するために前記スライドを使用する方法も対象とし、この方法は、
複数のルーズセルを含むサンプルを前記検出エリアに配置することと、
コントロールターゲットを前記コントロールエリアに配置することと、
前記複数のルーズセルおよび前記コントロールターゲットを染色することであって、少なくとも1つの一次ターゲットを前記スライドの前記コントロールエリアに塗布するか、部分と共役した少なくとも1つの一次ターゲットを前記スライドの前記コントロールエリアに塗布するか、または、前記部分と共役した少なくとも1つの二次ターゲットを前記スライドの前記コントロールエリアに塗布し、かつ、発色する染色試薬を前記検出エリアおよび前記コントロールエリアに塗布することを含む染色することと、
前記染色することの品質を評価することであって、前記複数のルーズセルおよび前記コントロールターゲットの染色結果を評価することと、
前記複数のルーズセルの状態を定性的に決定することを含む。
【0036】
少なくとも1つの実施形態において、前記少なくとも1つのコントロールターゲットは、マウス、ウサギ、またはマウス+ウサギの宿主の一次抗体、マウス、ウサギ、またはマウス+ウサギの二次抗体、またはヘマトキシリンおよびエオシンの染色剤を捕捉するように構成されている。
【0037】
少なくとも1つの実施形態において、前記一次抗体は、FcyRI部位において、活性化されたビーズまたは輸送タンパク質に付着したタンパク質A、タンパク質G、タンパク質A/G、またはFcyRI結合ペプチドのいずれかによって捕捉される。
【0038】
少なくとも1つの実施形態において、前記ヘマトキシリンおよびエオシンは、活性化されたビーズに付着した化学的ターゲットによって捕捉される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1A】
図1Aは、少なくとも1つの実施形態に係るコントロールターゲットも含有する疎水性バリアリングを有するスライドの上面図である。
【
図1B】
図1Bは、少なくとも1つの実施形態に係るコントロールターゲットも含有する疎水性バリアリングを有するスライドの一部の上面図である。
【
図2】
図2は、少なくとも1つの実施形態に係るコントロールターゲットをそれぞれ含有する複数の疎水性バリアリングを有するスライドの上面図である。
【
図3A】
図3Aは、少なくとも1つの実施形態に係るp16INK4aおよびKi-67一次抗体のための複数のコントロールターゲットを有するパップテスト(子宮頸部細胞診)スライドの上面図である。
【
図3B】
図3Bは、少なくとも1つの実施形態に係るp16INK4aおよびKi-67一次抗体のための一コントロールターゲットの上面図である。
【
図4】
図4は、少なくとも1つの実施形態に係るパップ染色のためのPQCターゲットを支持するためのThinPrep適合パップ塗抹標本スライドの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下の開示は、提供される主題の異なる特徴を実施するための、多くの異なる実施形態、または実施例を提供する。本開示を簡略化するために、構成要素および配置の具体実施例を以下に記載する。これらは、当然、単なる例であって限定することを意図するものではない。例えば、以下の記載において、第1の特徴を第2の特徴の上方または第2の特徴に接して形成することは、第1および第2の特徴が直接接触して形成される実施形態を含んでいてもよく、また、第1および第2の特徴が直接接触していなくてもよいように、第1および第2の特徴の間に追加の特徴が形成されてもよい実施形態も含んでいてもよい。さらに、本開示は、様々な実施例において参照番号および/または符号を繰り返す場合がある。この反復は、簡明化のためであり、議論される種々の実施形態および/または構成の間の関係をそれ自体で決定づけるものではない。
【0041】
さらに、酵素溶液およびペルオキシダーゼ発色試薬などの免疫組織化学的方法および免疫化学的方法に使用される試薬は、作業温度または室温での安定性が制限される。安定性が制限されるため、試薬は頻繁に調製される。さらに、誤った結果をもたらす非特異的抗体結合は、依然として問題である。
一次ターゲット
【0042】
いくつかの実施形態では、コントロールターゲット102は、一次抗体試薬を試験するために1つまたは複数の一次ターゲットを含む。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「一次ターゲット」は、そのFcyR1部位の1つのみによって一次抗体に特異的に結合する反応性および非反応性の要素(elements)の組成物を意味する。本明細書中で使用される場合、用語「一次タンパク質」は、一次抗体のFcyRIに結合するタンパク質を意味する。本明細書中で使用される場合、用語「一次ダミータンパク質」は、いかなる一次抗体または二次抗体にも反応しないであろうタンパク質を意味する。本明細書中で使用される場合、用語「最大ターゲット密度」は、隣接するタンパク質の最大単層密度を指す。本明細書中で使用される場合、用語「代理抗原」は、IHCまたはICCアッセイにおいて使用される一次抗体によってターゲット化されないが、それにもかかわらず、IHCまたはICCアッセイにおいて使用される一次抗体(マウスまたはウサギベース)の2つのFcyRI領域のうちの1つのみを介して一次抗体に結合するタンパク質を指す。本明細書中で使用される場合、用語「マウスのみの代理抗原」は、マウスベースの一次抗体のFcyRIにのみ独自に反応するタンパク質または抗原を意味する。本明細書中で使用される場合、用語「ウサギのみの代理抗原」は、ウサギベースの一次抗体のFcyR1のみに独自に反応するペプチドまたはタンパク質を意味する。
【0044】
有胎盤哺乳類タンパク質は、重量が50~65kDaの範囲である。一次抗体IgGタンパク質は、Y字形で通常はモデル化される2つのFab領域および1つのFc領域から構成される。Fcは、ヒンジによって2つのFab領域に結合されている。全ての非共役抗体は、宿主である哺乳類(最も頻繁にはマウスまたはウサギ)内において該宿主にアンタゴニスト抗原ペプチドに接種することにより培養される。宿主は、交配抗原を捕捉することができる抗体のFab領域のN末端付近に結合アミノ酸配列を組み立てることによって、有害アンタゴニスト抗原ペプチドを撃退する抗体を産生する。抗体のFc領域は、常に、宿主哺乳類のものである。宿主抗体のFc領域は、典型的には、最高から最低の結合親和性の順位で二次抗体にとって利用可能な3つの結合部位、すなわち、FcyRI(CD64)、FcyRII(CD32)、およびFcyRIII(CD16)を有する。
【0045】
一次ダミータンパク質は、マウス、ウサギ、ヤギ、ウシ、およびヒツジに対して反応しないように選択される。なぜなら、これらは、大抵は二次抗体に結合し得るからである。いくつかの実施形態では、ダミー一次タンパク質は、ウマ科、すなわち、ウマ、ロバ、ゼブラ、バク、またはサイの任意の構成員である。BSA(ウシ血清アルブミン)は、加熱および時間なしに組織またはほとんどのスライド接着剤化学物質に共有結合しないため、適切なダミータンパク質ではない。ウシ、ヒツジ、およびヤギもまた適切なダミータンパク質ではない。なぜなら、これらのタンパク質は、場合によっては、一次抗体の特異性に依存してマウスまたはウサギと混同され得るためである。
【0046】
一次タンパク質は、宿主抗マウスまたは宿主抗ウサギのいずれかである。宿主は、ヤギまたはウマ科の任意の構成員に限定される。
【0047】
ペプチドに基づく一次タンパク質は、KLHサブユニット(キーホールリンペットヘモシアニン)のような輸送タンパク質に共有結合したC末端にシステイン残基を有するマウスまたはウサギのFcyRI反応性ペプチドからも構成され得る。KLHサブユニットは、共役を通してペプチドのシステイン残基に結合するその遊離アミン部位でSulfo-SMCCにより活性化される。活性化されていないKLHサブユニットだけで一次ダミータンパク質を作るには十分である。
【0048】
完全タンパク質としてのKLHは、約8000kDaである。完全タンパク質状態では、KLHはpHまたは温度に関して安定しておらず、そのため、タンパク質をサブユニット、すなわち390kDaでのKLH1と350kDaでのKLH2とに分離させる。これらのサブユニットのどちらも、Sulfo-SMCCにより活性化される場合、システイン残基を通常はペプチドのC-末端に有するペプチドのために、輸送タンパク質として使用することができる。
【0049】
図1を参照すると、いくつかの実施形態では、一次ターゲットは、一次ターゲットアレイ1021~1024に整理されている。いくつかの実施形態では、一次ターゲットアレイ102は、一次ターゲット密度勾配アレイである。いくつかの実施形態では、アレイ内の各々のターゲットは、同じ最大ターゲット密度(タンパク質/表面積)を有する。しかしながら、一次タンパク質とダミー一次タンパク質との比率は、広範囲の一次抗体希釈物を同定することができることを確実にするために比率が段階付けられている。一般規則として、2つの一次代理抗原ターゲットによる検出は、濃度を検出伝達曲線にマッピングするのに十分である。いくつかの実施形態では、一次ターゲット密度勾配アレイは、複数の一次ターゲットローディングドットを含み、一方のアレイがマウスベースであり、他方のアレイがウサギベースである。
【0050】
いくつかの実施形態では、一次ターゲットの密度は、100%、80%、60%、40%など直線的に増加または減少する。いくつかの実施形態では、一次ターゲットの密度は、100%、33%、10%、3%など対数的に増加または減少する。
【0051】
いくつかの実施形態では、一次ターゲット密度勾配アレイにおいて、最も高い一次ターゲット密度を有するローディングドットにおいて、一次ターゲット密度は、一次ターゲットが染色処理中にローディングドットを飽和させることができないように十分に高い。
【0052】
いくつかの実施形態では、普遍的な代理抗原は、タンパク質Aまたはタンパク質Gのどちらかである。タンパク質Aは、FcyRIに結合し、有胎盤哺乳類のFab領域内のいくつかのエリアに結合する。タンパク質Gは、ほとんどの有胎盤哺乳類のFcyRI部位にのみ結合するであろう。
【0053】
いくつかの実施形態では、代理抗原は、マウスまたはウサギに対してのみ特異性を有する。特異性を支持するために、代理抗原は、抗マウスおよび抗ウサギタンパク質、輸送タンパク質上の抗マウスおよび抗ウサギペプチド、または抗マウスおよび抗ウサギVHHタンパク質ドメインからそれぞれ構成され得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、ダミー代理抗原は、ウマ科の動物、または、ヤギを除く有蹄有胎盤哺乳類に由来する抗体を含む。ウマ科には、ウマ、ロバ、バク、サイおよびラバなどの動物が含まれる。ウマ科は、進化的かつ遺伝的にさらに分離され、したがって、非特異的染色の発生を減少させる。ヤギは使用できない、なぜなら、多くの場合、二次染色剤は未反応ヤギ一次部位に結合する可能性がある抗ヤギタンパク質をその配列決定において使用するためである。
【0055】
染色処理において使用される代理抗原と一次抗体との間の相互作用の様式は、実際の抗原と一次抗体との間の相互作用とは異なるが、代理抗原ターゲットは、一次抗体の効力の評価を提供することができる。一次抗体は、mg/ml単位の濃度のアッセイを伴う。しかしながら、このアッセイは、アッセイのどのパーセンテージが完全なIgGタンパク質を表すかを示さない。ターゲット中の代理抗原の密度濃度は既知であるため、塗布された一次抗体の濃度の捕捉を決定することができる。外挿法によって、共在組織切片の抗原密度を決定することができる。組織上の抗原密度の分解性は、一次抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)、二次抗体、および二次染色剤の酵素獲得により累積置換に限定される。塗布された一次抗体の濃度は、組織型に依存し、いくらかの過剰マージンが常に含まれる。したがって、一次抗体は、その変位制限内で、全ての利用可能な抗原部位に結合するであろうという仮定である。
【0056】
いくつかの実施形態では、一次ターゲット密度勾配アレイは、普遍的な代理抗原のローディングドットアレイである。いくつかの実施形態では、アレイ中のローディングドットは、代理抗原の濃度を増加または減少させることを含む。いくつかの実施形態では、代理抗原はダミー代理抗体などの1つまたは複数のダミータンパク質に配合され、代理抗原の濃度は最大ターゲット密度を維持しつつ代理抗原とダミータンパク質との比率を変更することによって上昇または低下される。
【0057】
いくつかの実施形態では、コントロールエリア102は、代理抗原ターゲットの少なくとも2つのアレイを含む。いくつかの実施形態では、コントロールエリア140は、抗マウス抗体を含む第1の代理抗原ターゲットアレイ、および抗ウサギ抗体を含む第2の代理抗原ターゲットアレイを含み、両方ともダミー代理抗原に配合されて、最大ターゲット密度を維持しつつ所望の反応性密度を形成する。
【0058】
したがって、これらの実施形態によれば、IHCまたはICC工程により、代理抗原一次ターゲットは、二次ターゲットによって開発された酵素獲得および抗原回収の要素を使用して一次抗体濃度を評価することができる。
2D/3Dターゲット
【0059】
いくつかの実施形態では、一次ターゲット、二次ターゲット、または抗原回収ターゲットなどのコントロールターゲットは、2Dターゲットを含む。
【0060】
本明細書中で使用される場合、用語「2Dターゲット」は、ペプチド、タンパク質、抗原、抗体、または任意の他のコントロールターゲット材料が、スライド上の2D平面上に堆積されることを意味する。
【0061】
2Dターゲットは、堆積がより容易であるため製造が比較的安価である。したがって、コストが懸念される場合には2Dターゲットが好まれる。
【0062】
いくつかの実施形態では、一次ターゲット、二次ターゲット、または抗原回収ターゲットなどのコントロールターゲットは、3Dターゲットを含む。
【0063】
本明細書中で使用される場合、用語「3Dターゲット」は、ペプチド、タンパク質、抗原、抗体、または任意の他のコントロールターゲット材料のうちの少なくとも1つが、支持構造およびスライド上の3D空間に堆積された複合体に塗布されることを意味する。
【0064】
1つまたは複数の実施形態では、3Dターゲットは、スライド上に3D骨格を形成し、コントロールターゲット物質を骨格上に堆積することによって構築される。いくつかの実施形態では、3D骨格は多糖クラスターである。多糖類は、ペプチド上またはタンパク質の表面上でヒドロキシル基またはアミン基と共有結合を形成し、これは、タンパク質を一緒に連結し、ターゲットをスライドコーティング接着剤に固定する。いくつかの実施形態では、コントロールターゲットは、ホルムアルデヒド固定によって3D骨格上に固定される。その後、ターゲットは2Dおよび3D両方の構成要素で構成される。
【0065】
1つまたは複数の実施形態では、3Dターゲットは、一次または二次ターゲット物質が共有結合されるサブミクロンのビーズから構築される。次に、ホルムアルデヒド固定を適用して、正常な抗原回収処理に対して一次または二次ターゲット材料を安定化する。次に、堆積されたターゲットは、2Dおよび3Dの成分からなる。
【0066】
2Dターゲットと比較して、3Dターゲットは、染色サンプルとより類似する挙動をする。組織切片およびセルなどのIHCまたはICCの染色サンプルは、高さを有する。サンプルの高さは、通常、4ミクロン~10ミクロンの範囲である。染色においてターゲットとされる抗原部位は、組織切片の露出された表面トポロジー上の任意の場所であり得る。したがって、サンプル中の抗原部位は、切片の底面の頂部、または、組織の側壁に沿った任意の場所どちらかにおいて平面であり得る。したがって、サンプルの側壁上の抗原のほうが、2Dターゲットよりも、有意に多くの着色剤を色原体から沈殿させることができる。2D要素に3D要素を包含することは、他の2Dターゲットドットに適用されて仮想3Dアレイを形成できるステップオフセットを作成する。実験的に、本発明者らは、80nm~0.5umの任意の3Dターゲットが、組織切片と同様に暗く染色されることを見出した。0.6umよりも大きいビーズは、透過光照射で多すぎる損失光損失を引き起こし、染色が起こらなくてもビーズを暗く見せる。ただし、これは、反射光照明が使用される場合は問題ではない。
【0067】
さらに、染色処理において一般的に使用される試薬であるDABは、比較的短時間で経時劣化し、その結果、色および強度が変化する。本発明者らは、DAB染色された3Dターゲットにおいて、色および明度は、サンプル中の色および明度と同様に変化することを見出した。
特殊染色剤
【0068】
いくつかの実施形態では、コントロールターゲットは、特殊な染色剤を含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、特殊染色剤は、アルシアンブルー、アナリンブルー-オレンジG溶液、アザン染色剤、ビルショウスキー銀染色剤、ブラウン・ブレン-グラム染色剤、クレシルバイオレット、DAB、フォンタナ・マッソン、ゴードンスウィートの銀染色、グロコットのメタンアミン銀法、ホールのビリルビン染色剤、ジョーンズメタンアミン銀法、ルクソールファストブルー、ルクソールファストブルー-クレシルバイオレット、ムチカルミン(マイヤー法)、ミュラー-モーリーコロイド鉄、オレンジG、核ファストレッド、ジアスターゼ消化によるPAS、過ヨウ素酸シッフ(PAS)、リンタングステン酸、ヘマトキシリン、ピクロシリウスレッド、酸化トルイジンブルー、トリクローム-ゴモリワンステップ、トリクロームマッソン、ビクトリアブルー、フォンコッサ、ワイゲルトのレソシンフクシン、ワイゲルトの鉄ヘマトキシリン、チール・ネールゼン法、またはこれらの組み合わせを含む。
【0070】
サブミクロンのラテックスビーズは、それらの表面において露出したアミン部位を有する直径が200nmから5umの範囲のサイズで入手可能である。WO2018/228576に記載されているように、化学的ターゲットは全て、ラテックスビーズ上のアミンと結合するために使用されるヒドロキシル末端基を有する。反応速度は遅いが、定常的に揺らすと、24時間で反応を完了することができる。
撮像基準ターゲット
【0071】
いくつかの実施形態では、コントロールエリア102は、撮像基準ターゲットをさらに含む。いくつかの実施形態では、画像基準ターゲットは、黒色の1つまたは複数のターゲット、白色の1つまたは複数のターゲット、または透明ターゲットを含む。
【0072】
染色された生体材料を含む顕微鏡スライドのデジタル撮像は、染色された材料に対してプレスクリーニングおよび潜在的に完全な診断決定を行うために進化している。いくつかの実施形態では、染色処理の後、スライドは撮像処理に供され、撮像処理中に、光照射レベルまたは露光は、デジタル画像が白色または黒色の境界のいずれかで圧縮されないように調節される。根本的な仮定は、白色および黒色のターゲットが、染色シグナルのレベルが到達し得る両極端を表すことである。しかし、このようにすると、デジタルスケールでは、組織切片の染色によって実現され得るよりも黒がはるかに黒く、白色がはるかに白くなるため、圧縮がある。
【0073】
いくつかの実施形態では、疎水性バリアの外部または内部に位置するが、サンプルウェル内には位置しない2つの撮像基準コントロールターゲットがある。これら2つの撮像基準コントロールターゲットは、透過光および反射型光による撮像のための黒色および白色の基準を表す。
【表1】
【0074】
エポキシ塗料は本質的に光沢を有するため、エポキシ塗料は、反射型光照射のために接眼レンズによって白色基準であると思われる高い第1面反射を有する。透過光では、同じ黒色ドットは、光透過を不明瞭にして透過黒色基準になる。透明ドットは、透過光のための白色基準として機能し、一方、反射光のための黒色基準として現れる。疎水性バリア製造の製造を単純化するために、バリア材料は、先に説明したように他の撮像基準となる追加の小さなウェルを有する黒色エポキシ塗料である。
【0075】
透過光を用いた撮像は、組織上の抗原密度の虚偽表示という結果をもたらす。これは、染色された組織が単一平面上に全ての抗原部位を有するモノリシックスラブではないために起こる。むしろ、組織は、その厚さ内の任意の場所に抗原部位を有することができる。二次染色剤は着色剤粒子を生成し、着色剤粒子は粒子が酵素部位を被覆し、継続した沈殿を妨げるまで沈殿し続ける。抗原部位が組織切片の側壁にある場合、酵素が被覆されることはなく、沈殿物は抗原の存在を過剰に表現する。透過光では、沈殿した着色剤がより厚いため、「濃さ」が生じる。対照的に、反射光は、着色剤の積み重なりの上面を「見る」だけであり、抗原密度のより正確な表示という結果をもたらす。
【0076】
いくつかの実施形態では、白色ターゲットは、完全な白色に近い色を有する。完全な白色を得ることは困難であるため、いくつかの実施形態では、白色ターゲットの色は完全な白色から5~10%離れている。完全な白色から5%未満離れた白色を生成することは困難であり、完全な白色から10%を超えて離れる色は、信号強度を染色するための対照(コントロール)として十分に正確でないことがある。
【0077】
いくつかの実施形態では、白色ターゲットは白色顔料を含む。いくつかの実施形態では、白色顔料は、強光に晒されたままでなければ経時的に安定している金属酸化物または金属硫酸塩の顔料である。いくつかの実施形態では、白色顔料は、酸化アルミニウム、酸化チタン、または硫酸バリウムを含む。いくつかの実施形態では、金属酸化物または金属硫酸塩は、ビーズの形態である。
【0078】
いくつかの実施形態では、黒色ターゲットは黒色顔料を含む。いくつかの実施形態では、黒色顔料は炭素系顔料を含む。いくつかの実施形態では、黒色顔料はカーボンダストを含む。いくつかの実施形態では、カーボンダストの直径は2ミクロン未満である。
【0079】
いくつかの実施形態では、撮像基準ターゲット製剤は界面活性剤を含まず、それによって、スライドが受ける可能性のある一連の染色剤および試薬に対してインク/塗料が反応性であることを防止している。
【0080】
いくつかの実施形態では、撮像基準ターゲットは、パッドスタンプによってスライド上に印刷される。他の実施形態では、撮像基準ターゲットはシリンジによって印刷される。なぜなら、シリンジはターゲット堆積物の大きさを制御することができるためである。
【0081】
撮像基準ターゲットを使用すると、デジタル分析が最適化される。なぜなら、デジタル化範囲の全てが、完全な黒および白の基準の使用に対して黒/白のスライドの定義内にあるためである。デジタル分析は、染色されたサンプル中に存在する抗原の量をより正確に決定するために、コントロールターゲットの色の補間を補助する。画像基準ターゲットは、コントロールターゲットでの反応量を測定するための基準点を提供するために、デジタル分析の較正を補助するために使用される。
コントロールターゲットの堆積方法
【0082】
いくつかの実施形態では、本願明細書は、プロセスレコードスライド上にコントロールターゲットを堆積させる方法を対象としている。いくつかの実施形態では、スライドおよびコントロールターゲットは、上記のものと同一または類似である。
【0083】
いくつかの実施形態では、コントロールターゲットを堆積させる方法は、一次コントロールターゲットまたは二次コントロールターゲットをスライド上に堆積させることを含む、。
【0084】
いくつかの実施形態では、一次コントロールターゲットまたは二次コントロールターゲットを堆積することは、所定の濃度でコントロールターゲットの溶液を調製し、コントロールターゲットを固定し、溶液をスライド上に印刷することを含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、コントロールターゲットの溶液を調製することは、タンパク質とスライド接着剤との間のリンカーとして機能するために、コントロールターゲットおよび多糖を含む溶液を調製することを含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、コントロールターゲットを固定することは、コントロールターゲットをホルムアルデヒドで固定することを含む。ホルムアルデヒドは、コントロールターゲットが正常な抗原回収プロトコルに耐えることができるように、コントロールターゲットを架橋する。
【0087】
いくつかの実施形態では、コントロールターゲットは架橋されている。組織内では、タンパク質は、タンパク質を拡散および変性から防ぐ傾向がある組織の他の部分に結合される。溶液中のコントロールターゲットは疎性タンパク質を含むため、コントロールターゲットは、熱およびpHに対してより感度が高く、そのため、特にIHCまたはICCによるAR処理を経る場合は、スライド上で拡散および変性する傾向がある。
【0088】
真菌増殖阻害剤は、チメロサールまたはプリジン-2-スルフィナートナトリウム塩(クロビン500)の環境にやさしい代替物であり得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、一次ターゲットは、以下のように調製される。
濃度45μg/mlの1mlの一次タンパク質マスター希釈液一式を形成する。ロバ抗マウス、ロバ抗ウサギ、およびロバのIgG(H&L)タンパク質を必要に応じてdH2Oで希釈して、45μg/ml濃度を実現する。典型的には、これらのタンパク質は、購入時の濃度で1~10mg/mlである。10μlの真菌増殖阻害剤を加える。真菌増殖阻害剤は、チメロサールまたはプリジン-2-スルフィナートナトリウム塩(クロビン500)の環境にやさしい代替物であり得る。
各マスター希釈液を10μlの0.2%ホルムアルデヒドで40~60℃で1~4時間固定する。
直鎖状ポリマー(真菌増殖阻害剤を含む)として30μlの0.45%濃度アミロースを添加し、30分間混合する。
20μlの0.1M重炭酸アンモニウムを添加して、任意の未反応ホルムアルデヒドをクエンチする。
マスタータンパク質溶液を使用して、ロバとマウスおよびロバとウサギのターゲット混合物を作成し、この場合、各ターゲットは、700μlのマスタータンパク質溶液が含まれている。
【0090】
いくつかの実施形態では、二次ターゲットは、以下のように調製される。
45μg/mlの濃度を有する1mlの二次タンパク質マスター希釈液一式を形成する。マウス、ウサギ、およびロバのIgG(H&L)タンパク質を必要に応じてdH2Oで希釈して、45μg/ml濃度を実現する。典型的には、これらのタンパク質は、購入時の濃度で10~60mg/mlである。10μlの真菌増殖阻害剤を加える。
各マスター希釈液を10μlの0.2%ホルムアルデヒドで40~50℃で1~4時間固定する。
直鎖状ポリマー(真菌増殖阻害剤を有する)として30μlの0.45%濃度アミロースを添加し、30分間混合する。
20μlの0.1M重炭酸アンモニウムを添加して、任意の未反応ホルムアルデヒドをクエンチする。
マスタータンパク質溶液を使用して、ロバとマウスおよびロバとウサギのターゲット混合物を作成し、この場合、各ターゲットは、700μlのマスタータンパク質溶液が含まれている。
【0091】
いくつかの実施形態では、調製された一次または二次ターゲット、または画像基準ターゲットは、以下に従って1つの印刷周期でスライド上に印刷される。
ターゲット溶液を接着剤でコーティングした顕微鏡に印刷する。
全ての水が蒸発するまで60℃で空気乾燥し、その後冷却する。
印刷されたターゲットアレイ上にスプレーすることによってパラフィン溶媒混合物を塗布する。
パラフィンをリフローしてターゲットアレイの封止を完了し、溶媒を追い出す。このようにして、パラフィンをその硬化した固体状態に戻す。
【実施例】
【0092】
以下の実施例は、本開示を例示することを意図するが、限定するものではない。以下の実施例は、使用され得るものの典型的な実施例のタイプであるが、当業者には既知の他の方法が代替的に使用されてもよい。実施例に使用される材料は、商業的購入により入手可能である。
実施例1.総合的な工程品質管理を有するP16INK4aおよびKi-67サンプルスライド
【0093】
現在、P16INK4aおよびKi-67染色を支持するマルチウェル試験スライドは存在するが、これらのマルチウェル試験スライドはいずれの対照(コントロール)も欠如しているため、染色された結果は、AR処理がプロトコルに従って行われ、一次抗体試薬がスライド間または抗体のロットコード間の一貫した性能を有するそれらの機能に関して一貫していると仮定する。
【0094】
図4は、10ウェルの実施例を示し、各ウェルは4つのコントロールターゲットを含む。4つのコントロールターゲットは、各一次抗体について一対に分割され、一方はマウス宿主を有し、他方はウサギ宿主を有する。この対は、100%の2D/3D指標と50%の2D/3D指標とから構成される。これらのターゲットは、一次抗体が塗布されたこと、およびそれらの濃度が、ウェル内において、一致する抗原部位を含有するセルを正しく染色するのに十分であったことを検証するように機能する。
【0095】
さらに、疎水性バリアの外部または内部に位置するが、サンプルウェル内には位置しない2つの撮像基準コントロールターゲットがある。これら2つの撮像基準コントロールターゲットは、透過光および反射型光による撮像のための黒色および白色の基準を表す。
【表2】
【0096】
エポキシ塗料は本質的に光沢を有するため、エポキシ塗料は、反射型光照射のために接眼レンズによって白色基準であると思われる高い第1面反射を有する。透過光では、同じ黒色ドットは、光透過を不明瞭にして透過黒色基準になる。透明ドットは、透過光のための白色基準として機能し、一方、反射光のための黒色基準として現れる。疎水性バリア製造の製造を単純化するために、バリア材料は、先に説明したように他の撮像基準となる追加の小さなウェルを有する黒色エポキシ塗料である。
【0097】
ターゲットは、患者サンプル領域の周囲に位置するが、これは、研究室は使用される試薬の量を最小限にしようとしたが、大抵は、サンプルを正しく処理するのに十分な方法を使用しなかったということである。四隅にターゲットを有することにより、患者サンプルを被覆するのに十分な染色剤材料が処理の間中塗布されていたことを確認することがより容易である。
実施例2.総合的な工程品質管理を有する従来の手作業パップ塗抹標本スライド
【0098】
手作業パップ塗抹標本スライドは、世界中で日常的に作製されている。患者サンプルの前処理が無いため、塗抹標本には粘液や他のセル残屑が含まれる。同じ発明者によるWO2018/228576(参照により本明細書に組み込まれる)に詳述されているように、染色試薬の性能を捕捉するために既知の挙動化学的指標を組み込むことが可能である。この目的のために、複数の追加のPQCターゲットをブランク接着剤被覆スライドに、このスライドの製造時に塗布する。PQCターゲットはデジタル的に撮像され得て、結果は染色試薬の使用可能な寿命を指示するために使用される。
実施例3.総合的な工程品質管理を有するThinPrepパップ塗抹標本スライド
【0099】
主要な自動頸部塗抹標本処理システムは、ThinPrepである。自動システムは、バイアルから患者サンプルの一部を採取して、粘液を濾過し、ある程度まで、任意の赤血球または他の残屑を濾過する。洗浄されたサンプルは、接触プリント法を通して接着剤被覆スライド上に堆積される。スライドは、サンプル堆積エリアの外側にある矩形の概略で4つの角に位置する4つの基準点を有する。基準マークの独自の形状は、染色された結果をデジタル的に撮像する場合、サンプル処理をCytyc社のサンプル前処理システムによって実行して、スライドの起点を識別する。ThinPrepテクノロジーに欠けている要素は、染色試薬および処理が必要に応じて実行されていることを検証するスライド上工程QCである。PQCは、これ以外の場合は利用できない処理欠陥および試薬劣化の情報を撮像システムに提供する。標準的なパップ染色試薬、すなわち5染色剤3段階配列は、既知のドリフト挙動および劣化挙動を有する3つの試薬、すなわちヘマトキシリン、エオシン、およびホスホタングステン酸を含む。染色試薬の性能を捕捉するために、既知の挙動化学的ターゲットを組み込むことが可能である。この目的のために、スライドの製造時に、ThinPrepスライドに複数の追加のPQCターゲットを塗布する。撮像システムは、ここで、染色試薬性能のフィードバックを提供するため、および、診断決定基準に影響を与えることなく、染色剤色をシフトして正規化されたビューを提示できる基盤を確立するために、必要なPQC情報を有する。
【0100】
上記は、当業者が本開示の態様をより良く理解できるように、複数の実施形態の特徴を概説する。当業者は、本明細書に導入される実施形態の同じ目的を実行するため、および/または同じ効果を達成するために、他のプロセスおよび構造を設計または変更するための基礎として本開示を容易に使用してもよいことを認識するものとする。当業者はまた、そのような同等の構成が、本開示の精神および範囲から逸脱しないこと、およびそれらが、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書において様々な変更、置換、および改変を行ってもよいことを理解するものとする。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「一次ターゲット」は、そのFcyRI部位の1つのみによって一次抗体に特異的に結合する反応性および非反応性の要素(elements)の組成物を意味する。本明細書中で使用される場合、用語「一次タンパク質」は、一次抗体のFcyRIに結合するタンパク質を意味する。本明細書中で使用される場合、用語「一次ダミータンパク質」は、いかなる一次抗体または二次抗体にも反応しないであろうタンパク質を意味する。本明細書中で使用される場合、用語「最大ターゲット密度」は、隣接するタンパク質の最大単層密度を指す。本明細書中で使用される場合、用語「代理抗原」は、IHCまたはICCアッセイにおいて使用される一次抗体によってターゲット化されないが、それにもかかわらず、IHCまたはICCアッセイにおいて使用される一次抗体(マウスまたはウサギベース)の2つのFcyRI領域のうちの1つのみを介して一次抗体に結合するタンパク質を指す。本明細書中で使用される場合、用語「マウスのみの代理抗原」は、マウスベースの一次抗体のFcyRIにのみ独自に反応するタンパク質または抗原を意味する。本明細書中で使用される場合、用語「ウサギのみの代理抗原」は、ウサギベースの一次抗体のFcyRIのみに独自に反応するペプチドまたはタンパク質を意味する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
図1Bを参照すると、いくつかの実施形態では、一次ターゲットは、一次ターゲットアレイ1021~1024に整理されている。いくつかの実施形態では、一次ターゲットアレイ
1021~1024は、一次ターゲット密度勾配アレイである。いくつかの実施形態では、アレイ内の各々のターゲットは、同じ最大ターゲット密度(タンパク質/表面積)を有する。しかしながら、一次タンパク質とダミー一次タンパク質との比率は、広範囲の一次抗体希釈物を同定することができることを確実にするために比率が段階付けられている。一般規則として、2つの一次代理抗原ターゲットによる検出は、濃度を検出伝達曲線にマッピングするのに十分である。いくつかの実施形態では、一次ターゲット密度勾配アレイは、複数の一次ターゲットローディングドットを含み、一方のアレイがマウスベースであり、他方のアレイがウサギベースである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
いくつかの実施形態では、コントロールエリア102は、代理抗原ターゲットの少なくとも2つのアレイを含む。いくつかの実施形態では、コントロールエリア102は、抗マウス抗体を含む第1の代理抗原ターゲットアレイ、および抗ウサギ抗体を含む第2の代理抗原ターゲットアレイを含み、両方ともダミー代理抗原に配合されて、最大ターゲット密度を維持しつつ所望の反応性密度を形成する。
【国際調査報告】