(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(54)【発明の名称】改良された破断時エネルギー及び改良された全伸びを有する単層マルチストランドコード
(51)【国際特許分類】
D07B 1/06 20060101AFI20230227BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20230227BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20230227BHJP
【FI】
D07B1/06 A
B60C9/00 M
B60C9/18 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022541819
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 FR2020052526
(87)【国際公開番号】W WO2021140287
(87)【国際公開日】2021-07-15
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】パトー ガエル
(72)【発明者】
【氏名】バルゲ アンリ
(72)【発明者】
【氏名】ロビー リュカ
(72)【発明者】
【氏名】レイクス オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
3B153
3D131
【Fターム(参考)】
3B153AA08
3B153AA14
3B153AA19
3B153CC29
3B153CC52
3B153FF16
3B153GG01
3D131AA39
3D131AA47
3D131BA02
3D131BA07
3D131BA08
3D131BB04
3D131DA31
(57)【要約】
本発明は、主軸(A)の周りに螺旋状に巻かれたN個のストランド(54)の単層(52)を含む1×N構造を有するマルチストランドコード(50)に関し、各ストランド(54)は、金属フィラメント(F1)の1つの層(56)を有し、軸(B)の周りに螺旋状に巻かれたM>1個の金属フィラメントを含み、コードにおいて、
コード(50)は、全伸びAt>8.10%を有し、コード(50)の破断時エネルギー指標Erは、
によって定義され、ここでσ(Ai)は伸びAiで測定されたMPaの引張応力、dAiはErが52MJ/m
3より厳密に大きくなるような伸びである。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸(A)の周りに螺旋状に巻かれたN個のストランド(54)の単層(52)を含む1×N構造を有するマルチストランドのコード(50)であって、
各ストランド(54)が、金属フィラメント(F1)の1つの層(56)を有し、かつ、軸(B)の周りに螺旋状に巻かれたM>1個の金属フィラメントを含む、コード(50)において、
前記コード(50)は、2014年ASTM規格 D2969-04によって定義される全伸びAt>8.10%を有し、
前記コード(50)の破断時エネルギー指標Erは、
によって定義され、ここでσ(Ai)は伸びAiで測定されたMPa単位の引張応力、dAiは、Erが52MJ/m
3よりも厳密に大きくなるような伸びである、
ことを特徴とする、コード(50)。
【請求項2】
前記全伸びAtが、At≧8.30%、好ましくはAt≧8.50%である、請求項1に記載のコード(50)。
【請求項3】
前記コード(50)の破断時エネルギー指標Erが55MJ/m
3以上である、請求項1~2の何れか1項に記載のコード(50)。
【請求項4】
2014年ASTM規格 D2969-04によって定義された構造伸びAsが、As>4.30%、好ましくはAs≧4.50%、より好ましくはAs≧4.60%であるような前記構造伸びを有する、請求項1~3の何れか1項に記載のコード(50)。
【請求項5】
3.0~10.0GPa、好ましくは3.5~8.5GPaの範囲の割線弾性係数E1を有する、請求項1~4の何れか1項に記載のコード(50)。
【請求項6】
50~180GPa、好ましくは55~150GPaの範囲の接線弾性係数E2を有する、請求項1~5の何れか1項に記載のコード(50)。
【請求項7】
ポリマーマトリックスから抜き出されたコード(50’)であって、前記抜き出されたコード(50’)が、主軸(A)の周りに螺旋状に巻かれたN個のストランド(54)の単層(52)を含む1×N構造を有し、各ストランド(54)が、金属フィラメント(F1)の1つの層(56)を有し、かつ、軸(B)の周りに螺旋状に巻かれたM>1個の金属フィラメントを含む、コード(50’)において、
前記抜き出されたコード(50’)は、2014年ASTM規格 D2969-04によって定義される全伸びAt’≧5.00%を有し、
前記抜き出されたコード(50’)の破断時エネルギー指標Er’は、
によって定義され、ここでσ(Ai)は伸びAiで測定されたMPa単位の引張応力、dAiは、Er’が35MJ/m
3より厳密に大きくなるような伸びである、
ことを特徴とする、抜き出されたコード(50’)。
【請求項8】
前記全伸びAt’は、At’≧5.20%であるような伸びである、請求項7に記載の抜き出されたコード(50’)。
【請求項9】
コード(50)の破断時エネルギー指標Er’が、40MJ/m
3以上である、請求項7又は8に記載の抜き出されたコード(50’)。
【請求項10】
前記ストランド(54)が、直径Dvである前記コード(50;50’)の内部エンクロージャ(59)を定め、前記各ストランド(54)が、直径Dtと、Rt=Pe/(π×Sin(2αe))により定義される螺旋曲率半径Rtと、を有し、前記Peはミリメートル単位で表される前記各ストランドのピッチであり、前記αeは、前記各ストランド(54)の螺旋角であり、前記Dv、前記Dt及び前記Rtはミリメートル単位で表され、前記コード(50;50’)が、25≦Rt/Dt≦180且つ0.10≦Dv/Dt≦0.50の関係を満たす、
請求項1~9の何れか1項に記載のコード(50;50’)。
【請求項11】
前記金属フィラメントの要素(F1)が、直径Dvtである前記ストランド(52)の内部エンクロージャ(58)を定め、前記各金属フィラメント要素(F1)は、直径Dfを有し、Rf=P/(πxSin(2α))により定義される螺旋曲率半径Rfを有し、前記Pはミリメートル単位で表される前記各金属フィラメント要素のピッチであり、前記αは前記各金属フィラメント要素(F1)の螺旋角であり、前記Dvt、前記Df及び前記Rfはミリメートル単位で表され、前記コードが、9≦Rf/Df≦30且つ1.30≦Dvt/Df≦4.50の関係を満たす、
請求項1~10の何れか1項に記載のコード(50;50’)。
【請求項12】
請求項1~6、10及び11の何れか1項に記載のコード(50)の製造方法であって、
N個のストランド(54)を製造するステップ(200)を含み、
前記ステップ(200)が、
過渡的コア(16)の周りに螺旋状に巻かれたM’>1個の金属フィラメント(F1)から構成された層を含む過渡的組立体(22)を供給するステップ(100)と、
前記過渡的組立体(22)を、
螺旋状に巻かれたM1’≧1個の金属フィラメント(F1)から構成された層(26)を含む第1の分割組立体(25)であって、前記M1’金属フィラメント(F1)が、前記過渡的組立体(22)のM’>1個の金属フィラメント(F1)から構成された層に由来する、第1の分割組立体(25)と、
螺旋状に巻かれたM2’>1個の金属フィラメント(F1)から構成された層(28)を含む第2の分割組立体(27)であって、前記M2’金属フィラメント(F1)が、前記過渡的組立体(22)のM’>1個の金属フィラメント(F1)から構成された層に由来する、第2の分割組立体(27)と、
前記過渡的コア(16)又は前記過渡的コア(16)を含む1又は2以上の集合体(83)と、
に分離するステップ(110)と、
第1の分割組立体(25)を第2の分割組立体(27)と再組み立てして、金属フィラメント(F1)の層を有し且つM>1個の金属フィラメント(F1)を含むストランド(52)を形成するステップ(140)と、
によって行われ、
前記方法が更に、
前記N個のストランド(54)をケーブル配線によって組み立てて、前記コード(50)を形成するステップ(300)を含む、
方法。
【請求項13】
Mが、3から18、好ましくは4から15の範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ポリマーマトリックス(Ma)と、請求項7~11の何れか1項に記載の少なくとも1つの抜き出されたコード(50’)とを備えることを特徴とする補強製品(R)。
【請求項15】
タイヤ(P)であって、請求項7~11の何れか1項に記載の少なくとも1つの抜き出されたコード(50’)又は請求項14に記載の補強製品を備えることを特徴とする、タイヤ(P)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コード、補強製品、及びこれらのコードを含むタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ラジアルカーカス補強体を有する建設プラント車両用タイヤであって、トレッドと、2つの非伸縮性ビードと、ビードをトレッドに接続する2つのサイドウォールと、カーカス補強体とトレッドとの間に円周方向に配置されたクラウン補強体とを備えたタイヤは、先行技術、特に文献WO2016/131862から公知である。このクラウン補強体は、金属コードのような補強要素によって補強された複数のプライを含み、1つのプライのコードは、プライのエラストマーマトリックスに埋め込まれている。
【0003】
クラウン補強体は、ワーキング補強体、保護補強体、及び場合によっては他の補強体、例えばフープ補強体を含む。
【0004】
保護補強体は、幾つかの保護フィラメント状補強要素を含む1又は2以上の保護プライを備える。各保護フィラメント状補強要素は、1×N構造を有するコードである。このコードは、N=4本のストランドがp3=20mmのピッチで螺旋状に巻かれた単層を含む。各ストランドは、M=3の内部フィラメントがp1=6.7mmのピッチで螺旋状に巻かれた内部層だけでなく、V=8の外部フィラメントがp2=10mmのピッチで内部層の周りに螺旋状に巻かれた外部層を含む。各内部フィラメント及び外部フィラメントは、0.35mmに等しい直径を有し、コードの全伸びは6%である。
【0005】
一方、タイヤが、例えば岩の形の障害物を通り過ぎるとき、これらの障害物は、クラウン補強体の範囲までタイヤを穿孔する危険性がある。これらの穿孔は、腐食剤がタイヤのクラウン補強体に入り、その寿命を短縮する可能性がある。他方、保護プライのコードは、特にタイヤが障害物を通過するときに、コードに加わる比較的大きな変形及び荷重から生じる破断を示す可能性があることが判明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016/131862号
【特許文献2】国際公開第2016083265号
【特許文献3】国際公開第2016083267号
【特許文献4】欧州特許第0548539号明細書
【特許文献5】欧州特許第1000194号明細書
【特許文献6】欧州特許第0622489号明細書
【特許文献7】国際公開第2012055677号
【特許文献8】特開2007092259号公報
【特許文献9】国際公開第2007128335号
【特許文献10】特開06346386号公報
【特許文献11】欧州特許第0143767号明細書
【特許文献12】仏国特許第2 419 181号明細書
【特許文献13】仏国特許第2 419 182号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、破断の数及び穿孔の数を低減又は排除することを可能にするコードである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、本発明の1つの主題は、主軸(A)の周りに螺旋状に巻かれたN個のストランドの単層を含む1×N構造を有するマルチストランドコードであって、各ストランドは、金属フィラメントの1つの層を有し、軸(B)の周りに螺旋状に巻かれたM>1個の金属フィラメントを含み、
コードは、2014年ASTM標準 D2969-04によって定義される全伸びAt>8.10%を有し、
コードの破断時エネルギー指標Erは、
ここで、σ(Ai)は伸びAiで測定されたMPa単位の引張応力、dAiはErが52MJ/m
3よりも厳密に大きくなるような伸びである。
【0009】
比較的高い全伸びと、比較的高いコードの破断エネルギーとによって、本発明によるコードは、穿孔を低減し、従って、タイヤの寿命を延ばすことを可能にする。具体的には、本発明者らは、従来技術のコードよりも剛性が低いコードが、障害物に対してより良好に動作することを発見した。本発明者らは、従来技術において一般的な手法で教示されるように、障害物によって生じる変形に対抗するためにコードを可能な範囲まで補剛し強化するよう試みるのでなく、剛性の低いコードを用いて障害物を包み込むことがより効果的であることを見出した。障害物を包み込むことによって、障害物に対して設定される荷重が低減され、従って、タイヤが穿孔される危険性も低下する。この剛性低減効果は、
図7に示されており、ここでは、応力下において、本発明によるコードは、フィラメントの半径方向の隙間の結果、軽荷重下で良好な変形性を示す。
【0010】
比較的高い全伸びと比較的高い破断エネルギーにより、本発明によるコードは、破断回数を低減することも可能である。具体的には、本発明を支える発明者らは、コード破断を低減するための決定基準が、従来技術において広く教示されているような破断時の力だけではなく、本出願において
図4に一部示されているように、伸びの関数として応力曲線下の面積によって表される破断時エネルギー指標であることを発見した。具体的には、従来技術のコードは、破断時の力が比較的大きく破断時の伸びが比較的小さいか、或いは破断時の伸びが比較的大きく破断時の力が比較的小さいかの何れかである。何れの場合も、従来技術のコードは、比較的低い破断時エネルギー指標で破断する。本発明によるコードは、比較的高い全伸びに起因して、必然的に比較的高い破断時伸びを示す。相乗的に、比較的低い弾性係数は、弾性領域における応力-伸び曲線の比較的低い勾配の理由から、破断時の伸びを押し戻すことを可能にする。最後に、とりわけ、本発明者らは、以下の比較試験で示されるように、全伸びの増大によって、破断時伸びを押し戻すだけでなく、ひいては応力が増大することによって、破断時エネルギーを大きくすることが可能になることを発見した。
【0011】
「aとbとの間」という表現で表される任意の値の範囲は、aより大きくbより小さい値の範囲(すなわち、端点a及びbは含まない)を表し、他方、「aからbまで」という表現で表される任意の値の範囲は、端点「a」から端点「b」の範囲まで、すなわち、厳密に端点「a」及び「b」を含む値の範囲を意味する。
【0012】
当業者によく知られたパラメータである全伸びAtは、例えば、応力-伸び曲線を得るように試験したコードに対して2014年ASTM規格 D2969-04を適用することにより決定することができる。Atは、コードが破断する応力-伸び曲線上の点、すなわち、荷重が最大応力値まで増加した後で破断後に急激に減少する点の伸び軸への投影に対応する伸び(%単位)として、得られた曲線から導出される。応力に関する減少があるレベルを超えると、コードの破断が発生したことを意味する。
【0013】
コードの破断時エネルギー指標Erは、下記の関係
を用いて伸びの関数として引張応力曲線下の面積を計算することにより求められる。この破断時エネルギー指標は、比エネルギー密度(MJ/m
3単位)を表す。この面積を求めるのに従来から矩形法が用いられ、すなわち、引張応力σ(Ai)が、無次元の%で表される伸びAiで測定されてMPa単位で表され、i=0のとき:Ai=0=A0=伸び0%、i=tのとき:Ai=t=At:コードの破断時全伸びである。従って、破断時エネルギー指標Erは、iが0からtの範囲で、(1/2σ(Ai)+σ(Ai+1))×(Ai+1-Ai)の和となる。この積分において、矩形のサンプリングは、(Ai+1-Ai)により定義される幅が実質的に0.025%に等しくなるように、すなわち
図4に描かれるように0.1%の伸びに対して4つの矩形で定義される。
【0014】
本発明において、コードは、N個のストランドの単層を備え、これは、まさしく、ストランドの1つの層から構成された組立体を備え、組立体が、ゼロでもなく2でもなく、ストランドのただ1つの単層を有することを意味する。
【0015】
有利には、各ストランドの巻回方向は、コードの巻回方向と反対である。
【0016】
ストランドの層の巻回方向の定義は、ストランドがコードの軸に対して形成する方向である。巻回方向は、一般的には、文字Z又は文字Sで示される。
【0017】
ストランドの巻回方向は、2014年ASTM規格 D2969-04に準拠して決定される。
【0018】
本発明によるコードは、単一螺旋を有する。定義上は、単一螺旋コードとは、層の各ストランドの軸が主軸の周りに単一の螺旋を示すコードであり、各ストランドの軸がコードの軸の周りに第1の螺旋とコードの軸によって示される螺旋の周りに第2の螺旋とを示す二重螺旋コードとは対照的である。言い換えれば、コードが実質的に直線的な方向に延びる場合、コードは、螺旋状に巻き合わされたストランドの単層を備え、層の各ストランドが、実質的に直線的な方向に平行な主軸の周りに螺旋経路を示し、その結果、主軸に実質的に垂直な断面の平面においては、層の各ストランドの中心と主軸との間の距離が、層の全てのストランドについて実質的に一定で同一であるようになる。対照的に、二重螺旋ストランドが実質的に直線方向に延びる場合、層の各ストランドの中心と実質的に直線方向との間の距離は、層の全てのストランドについて異なるものである。
【0019】
コードについて上述したのと同様に、本発明による各ストランドは単一螺旋を有する。定義上は、単一螺旋ストランドは、層の各金属フィラメント要素の軸が単一の螺旋を示すストランドであり、各金属フィラメント要素の軸がストランドの軸の周りに第1の螺旋とストランドの軸によって示される螺旋の周りに第2の螺旋とを示す二重螺旋ストランドとは対照的である。言い換えれば、ストランドが実質的に直線方向に延びる場合、ストランドは、螺旋状に巻き合わされた金属フィラメント要素の単層を備え、層の各金属フィラメント要素は、実質的に直線方向に平行な主軸の周りに螺旋経路を示し、その結果、主軸に実質的に垂直な断面の平面において、層の各金属フィラメント要素の中心と主軸の間の距離が、層の金属フィラメント要素の全てについて実質的に一定で同一であるようになる。対照的に、二重螺旋ストランドが実質的に直線方向に延びる場合、層の各金属フィラメント要素の中心と実質的に直線方向との間の距離は、層の全ての金属フィラメント要素について異なっている。
【0020】
本発明によるコードは、金属の中心コアを有していない。本コードは、Nをストランドの数とする1×N構造のコード、或いは、「オープンコード」(開放構造を有するコード)とも呼ばれる。本発明による上記コードでは、内部エンクロージャは空であり、従って、充填材料がなく、特にエラストマー組成物もない。その結果、充填材料のないコードと呼ばれる。
【0021】
フィラメント要素とは、主軸に沿って長手方向に延び且つ主軸に垂直な断面を有する要素であって、その最大寸法Gが主軸に沿った寸法Lと比較して相対的に小さいものをいう。比較的小さいという表現は、L/Gが100以上、好ましくは1000以上であることを意味する。この定義は、円形断面を有するフィラメント要素と非円形断面、例えば多角形や長円形の断面を有するフィラメント要素の両方を対象とする。極めて好ましくは、各金属フィラメント要素は円形断面を有する。
【0022】
定義上は、金属という用語は、大部分(すなわち、その重量の50%より多く)又は全体(その重量の100%)が金属材料で構成されたフィラメント要素を意味する。各金属フィラメント要素は、好ましくは鋼製、より好ましくは当業者によって一般に炭素鋼と呼ばれるパーライト系又はフェライト-パーライト系炭素鋼、又はステンレス鋼(定義上、少なくとも10.5%のクロムを含む鋼)で作られる。
【0023】
好ましくは、金属フィラメント及びストランドは、予備成形を受けない。言い換えれば、コードは、金属フィラメント要素の各々及びストランドの各々を個別に予備成形するステップを有していない方法によって得られたものである。
【0024】
有利には、全伸びAtは、At≧8.30%、好ましくはAt≧8.50%である。
【0025】
有利には、全伸びAtは、At≦20.00%、好ましくはAt≦16.00%である。
【0026】
有利には、コード(50)の破断時エネルギー指標Erは、55MJ/m3以上である。
【0027】
好ましくは、コード(50)の破断時エネルギー指標Erは、200MJ/m3以下であり、好ましくは150MJ/m3以下である。
【0028】
好ましくは、コードは、As>4.30%、好ましくはAs≧4.50%、より好ましくはAs≧4.60%であるような、2014年ASTM規格 D2969-04によって決定される構造伸びAsを有する。
【0029】
好ましくは、コードは、As≦10.0%、好ましくはAs≦9.50%であるような2014年ASTM規格 D2969-04によって決定された構造的伸び度Asを有している。
【0030】
当業者によく知られたパラメータである構造的伸びAsは、例えば、力-伸び曲線を得るようにして試験したコードに対して2014年ASTM規格 D2969-04を適用することにより決定される。Asは、力-伸び曲線の構造部分への接線と力-伸び曲線の弾性部分への接線との間の交点の伸び軸上への投影に対応する伸び(%単位)として、得られた曲線から導出される。力-伸び曲線は、増大する伸びに向かって進むにつれて、構造部、弾性部、及び塑性部を含む点を念頭に置かれたい。構造部は、コードの通気性から生じる構造的伸び、つまりコードを構成する様々な金属ストランド間の空きスペースに相当する。弾性部は、コードの構造、特に様々な層の角度及びストランドの直径から生じる弾性伸びに相当する。塑性部は、ストランドの1又は2以上の金属フィラメント要素の可塑性(弾性限界を超える不可逆的変形)に起因する塑性伸びに対応する。
【0031】
好ましくは、コードは、3.0~10.0GPaの範囲、及び好ましくは3.5~8.5GPaの範囲の割線弾性係数を有する。
【0032】
本発明によるコードは、従って、小さな力に対して大きな変形と、低い第1剛性とを有することができる。
【0033】
割線弾性係数E1は、2014年ASTM規格 D 885/D 885M - 10aの条件下で得られた応力-伸び曲線の原点を、この同じ曲線の1%横座標点に接続する直線の勾配である。
【0034】
好ましくは、コードは、50~180GPa、好ましくは55~150GPaの範囲の接線弾性係数E2を有する。
【0035】
このように、本発明によるコードは、荷重を吸収又は伝達することを可能にする最小剛性を有する。
【0036】
接線弾性係数E2は、2014年ASTM規格 D 885/D 885M - 10aの条件下で得られた力-伸び曲線上で次のように算出される。E2は、力-伸び曲線上のコードの最大接線弾性係数に相当する。
【0037】
本発明の別の主題は、ポリマーマトリックスから抜き出されたコードであって、抜き出されたコードは、主軸(A)の周りに螺旋状に巻かれたN個のストランドの単層を含む1×N構造を有し、各ストランドが、金属フィラメントの1つの層を有し、主軸(B)の周りに螺旋状に巻かれたM>1個の金属フィラメントを含み、
上記抜き出されたコード(50’)は、2014年ASTM規格 D2969-04によって定義される全伸びAt’≧5.00%を有し、
抜き出されたコード(50’)の破断時エネルギー指標Er’は、
によって定義され、
ここで、σ(Ai)は伸びAiで測定されたMPa単位の引張応力であり、dAiは、Er’が35MJ/m
3より厳密に大きくなるような伸びである。
【0038】
好ましくは、ポリマーマトリックスは、エラストマーマトリックスである。
【0039】
ポリマーマトリックス、好ましくはエラストマーマトリックスは、ポリマー、好ましくはエラストマー組成物をベースとするものである。
【0040】
ポリマーマトリックスは、少なくとも1つのポリマーを含むマトリックスであると理解される。ポリマーマトリックスは、このように、ポリマー組成物をベースとするものである。
【0041】
エラストマーマトリックスの定義は、少なくとも1つのエラストマーを含有するマトリックスである。このように、好ましいエラストマーマトリックスは、エラストマー組成物に基づくものである。
【0042】
「基づく」という表現は、組成物が、使用される種々の構成成分の化合物及び/又はその場反応の生成物を含み、これらの構成成分の幾つかは、組成物の製造の種々の段階の間に少なくとも部分的に互いに反応することができ、及び/又は反応することが意図されており、従って、組成物は、完全に又は部分的に架橋された状態又は非架橋の状態であることができることを意味するものと理解されたい。
【0043】
ポリマー組成物は、組成物が少なくとも1つのポリマーを含むことを意味すると理解される。好ましくは、このようなポリマーは、熱可塑性、例えばポリエステル又はポリアミド、熱硬化性ポリマー、エラストマー、例えば天然ゴム、熱可塑性エラストマー、或いはこれらのポリマーの組み合わせとすることができる。
【0044】
エラストマー組成物は、組成物が少なくとも1つのエラストマーと少なくとも1つの他の成分とを含むことを意味すると理解される。好ましくは、少なくとも1つのエラストマーと少なくとも1つの他の成分を含む組成物は、エラストマー、架橋系及び充填剤を含む。これらのプライに使用できる組成物は、フィラメント状補強要素のスキムコーティングのための従来の組成物であり、ジエンエラストマー、例えば天然ゴム、補強充填剤、例えばカーボンブラック及び/又はシリカ、架橋系、例えば加硫系、好ましくは硫黄、ステアリン酸及び酸化亜鉛を含み、任意選択的に加硫促進剤及び/又は遅延剤及び/又は種々の添加剤を含む。金属フィラメントとこれらが埋め込まれているマトリックスとの間の接着は、例えば金属コーティング、例えば真鍮の層によって与えられる。
【0045】
抜き出されたコードに対する本出願に記載された特徴の値は、ポリマーマトリックス、特にエラストマーマトリックス、例えばタイヤから抜き出されたコード上で測定され、又はコードから決定される。このように、例えばタイヤでは、抜き出されるコードの半径方向外側の材料のストリップが除去され、抜き出されるコードをポリマーマトリックスと半径方向で同一平面上に見ることができるようにする。この除去は、カッター及びナイフを用いたストリッピングにより、又はプレーニングによって行うことができる。次に、抜き出されるコードの端部がナイフを用いて切り離される。次いで、コードを引っ張ってマトリックスから抜き出し、抜き出されるコードを可塑化しないように比較的浅い角度を適用する。次に、抜き出されたコードは、例えばナイフを用いて注意深く洗浄され、金属フィラメントの表面を損傷しないように注意しながら、コードに局所的に付着しているポリマーマトリックスの残りを剥離するようにする。
【0046】
好ましくは、全伸びAt’は、At’≧5.20%であるようなものである。
【0047】
好ましくは、コード(50)の破断時エネルギー指標Er’は、40MJ/m3以上である。
【0048】
本明細書に記載された有利な特徴は、上記で定義されたコードと抜き出されたコードに等しく適用される。
【0049】
有利には、コードは、ストランドが直径Dvであるコードの内部エンクロージャを定め、各ストランドが直径Dtを有し、Rt=Pe/(πxSin(2αe))により定義される螺旋曲率半径Rtを有し、ここでPeはミリメートル単位で表される各ストランドのピッチであり、αeは各ストランドの螺旋角(54)であり、Dv、Dt及びRtはミリメートル単位で表され、:25≦Rt/Dt≦180及び0.10≦Dv/Dt≦0.50である。
【0050】
本発明によるコードは、優れた長手方向の圧縮性を示し、他の全ての条件が同じであれば、比較的小さな直径を示す。
【0051】
本発明を支える発明者らは、第1に、各ストランドの直径Dtに対して十分に大きな曲率半径Rtの理由から、コードが十分に通気されることにより、コードの長手方向軸からの各ストランドの比較的大きな間隔により座屈の危険性が低減され、この間隔によってストランドは、螺旋の理由から比較的高い長手圧縮変形に対応できると主張している。対照的に、従来技術のコードの各ストランドの曲率半径Rtは、直径Dtと比較して比較的小さいので、金属フィラメント要素は、コードの長手方向軸に近くあって、その螺旋の理由から、対応できる長手方向圧縮変形が本発明によるコードよりも遙かに低い。
【0052】
第2に、各ストランドの曲率半径Rtが大きすぎる場合、本発明によるコードは、例えばタイヤのための補強的役割を確保するには圧縮状態での長手方向剛性が不十分となるであろう。
【0053】
更に、内部エンクロージャ直径Dvが大きすぎる場合、コードは、ストランドの直径に対して直径が大きすぎることになる。
【0054】
特性Dt、Dv及びRt並びに以下に述べる他の特性の値は、コードが製造された直後、すなわちエラストマーマトリックスに埋め込む工程の前に、或いはエラストマーマトリックス、例えばタイヤから抜き出されたとき、エラストマーマトリックスがコードから、特にコード内部に存在する材料が除去される洗浄工程を受けたときに測定され又はコードから決定される。元の状態を確保するために、各金属フィラメント要素とエラストマーマトリックスとの間の接着界面は、例えば炭酸ナトリウム浴中での電気化学的処理によって除去されなければならない。後述するタイヤの製造方法の成形ステップに関連する効果、特にコードの伸びは、プライ及びコードの抜き出しによって除去され、これにより抜き出し中に、成形ステップの前からの特性を実質的に回復させる。
【0055】
本発明によるコードのエンクロージャは、ストランドによって範囲が定められ、一方では各ストランドの半径方向内側にあって他方では各ストランドに接する理論円によって範囲が定められた体積に相当する。この理論円の直径は、エンクロージャの直径Dvに等しい。
【0056】
各ストランドの螺旋角αeは、当業者にはよく知られたパラメータであり、次の計算:tanαe=2xπ x Re/Peを用いて決定することができ、この式において、Peは各ストランドが巻かれるミリメートル単位で表されたピッチ、Reはミリメートル単位で表された各ストランドの螺旋半径、tanは正接関数を示し、αeは度数で表される。
【0057】
ミリメートル単位で表される螺旋直径Deは、関係:De=Pe×Tan(αe)/πを用いて計算され、ここでPeは、各ストランドが巻かれるミリメートル単位で表されるピッチ、αeは、上記で決定された各ストランドの螺旋角、Tanは接線関数である。螺旋直径Deは、コードの主軸に垂直な平面において、層のストランドの中心を通る理論円の直径に相当する。
【0058】
ミリメートル単位で表されるエンクロージャ直径Dvは、関係:Dv=De-Dtを用いて計算され、ここでDtは各ストランドの直径、Deは螺旋直径であり、何れもミリメートル単位で表される。
【0059】
ミリメートル単位で表される曲率半径Rtは、関係:Rt=Pe/(πxSin(2αe))を用いて計算され、ここでPeは各ストランドのミリメートル単位で表されるピッチ、αeは各内部ストランドの螺旋角、Sinは正弦関数である。
【0060】
各ストランドが巻かれるピッチは、このフィラメント要素によってカバーされ、配置されるコードの軸に平行に測定される長さであり、その後、このピッチを有するストランドは、コードの上記軸の周りに完全に回転することが想起されるであろう。
【0061】
有利には、コードは、金属フィラメント要素が直径Dvtのストランドのための内部エンクロージャを定めるようになっており、各金属フィラメント要素は、直径Dfと、Rf=P/(πxSin(2α))により定義される螺旋曲率半径Rfとを有し、ここでPはミリメートル単位で表された各金属フィラメント要素のピッチであり、αは各金属フィラメント要素(F1)の螺旋角、Dvt、Df及びRfはミリメートル単位で表され、コードは、以下の関係9≦Rf/Df≦30且つ1.30≦Dvt/Df≦4.50を満たす。
【0062】
各ストランドのエンクロージャは、金属フィラメントによって範囲が定められ、一方では各金属フィラメント要素の半径方向内側にあって他方では各金属フィラメント要素に接する理論円によって範囲が定められた体積に相当する。この理論円の直径は、エンクロージャ直径Dvtに等しい。
【0063】
各金属フィラメント要素の螺旋角αは、当業者にはよく知られたパラメータであり、次の計算:tanα=2xπxR/Pを用いて決定することができ、この式において、Pは各ストランドが巻かれるミリメートル単位で表されたピッチ、Rはミリメートル単位で表された各ストランドの螺旋半径、tanは正接関数を示し、αは度数で表される。
【0064】
ミリメートル単位で表される螺旋直径Dhは、関係:Dh=P×Tan(α)/πを用いて計算され、ここでPは、各金属フィラメント要素が巻かれるミリメートル単位で表されるピッチ、αは、上記で決定された各金属フィラメント要素の螺旋角、Tanは接線関数である。螺旋直径Dhは、コードの主軸に垂直な平面において、層の金属フィラメント要素の中心を通る理論円の直径に相当する。
【0065】
ミリメートル単位で表されるストランドのエンクロージャ直径Dvtは、関係:Dvt=Dh-Dfを用いて計算され、ここでDfは、各金属フィラメント要素の直径、Dhは螺旋直径で、何れもミリメートル単位で表される。
【0066】
ミリメートル単位で表される曲率半径Rfは、関係:Rf=P/(πxSin(2α))を用いて計算され、ここでPは、各金属フィラメント要素のミリメートル単位で表されるピッチ、αは各金属フィラメント要素の螺旋角、Sinは正弦関数である。
【0067】
各金属フィラメント要素が巻かれているピッチは、このフィラメント要素によってカバされ且つ配置されているコードの軸に平行に測定される長さであり、その端部において、このピッチを有するフィラメント要素が、コードの上記軸の周りを完全に回転することが想起されるであろう。
【0068】
以下に説明する任意選択の特徴は、かかる組み合わせが技術的に両立する限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0069】
1つの有利な実施形態では、全ての金属フィラメント要素は、同じ直径Dfを有する。
【0070】
本発明の別の主題は、コードの製造方法であって、
本方法が、
N個のストランドを製造するステップを含み、
過渡的コアの周りに螺旋状に巻かれたM’>1個の金属フィラメントから構成された層を含む過渡的組立体を供給するステップと、
上記過渡的組立体を、
螺旋状に巻かれたM1’≧1個の金属フィラメントから構成された層を含む第1の分割組立体であって、M1’金属フィラメントが過渡的組立体のM’>1個の金属フィラメントから構成された層に由来する、第1の分割組立体と、
螺旋状に巻かれたM2’>1個の金属フィラメントから構成された層を含む第2の分割組立体であって、M2’金属フィラメントが過渡的組立体のM’>1個の金属フィラメントから構成された層に由来する、第2の分割組立体と、
上記過渡的コア又は上記過渡的コアを含む1又は2以上の集合体と、
に分離するステップと、
第1の分割組立体を第2の分割組立体と再組み立てして、金属フィラメントの層を有し且つM>1個の金属フィラメントを含むストランドを形成するステップと、
によって行われ、
上記方法が更に、
N個のストランドをケーブル配線によって組み立ててコードを形成するステップを含む。
【0071】
各ストランドは、文献WO2016083265及びWO2016083267に記載されている方法に従い且つ設備を採用することによって製造される。分割ステップを実施するこのような方法は、金属フィラメント要素が螺旋状に巻かれる単一の組立ステップを含む従来のケーブル法と区別されるべきであり、組立ステップに先行して、特に構造的伸びの値を増大させるために、各金属フィラメント要素を個別に予備成形するステップがある。このような方法及び設備は、文献EP0548539、EP1000194、EP0622489、WO2012055677、JP2007092259、W02007128335、JPH06346386又はEP0143767に記載されている。これらの方法の際には、可能な限り大きな構造的伸びを得るために、金属モノフィラメントが個別に予備成形される。しかしながら、金属モノフィラメントを個別に予備成形するこのステップは、特定の設備を必要とし、個別の予備成形ステップのない方法と比較して、優れた構造的伸びを達成することを可能にすることなく、本方法を比較的非生産的にするだけでなく、予備成形工具に接する摩擦のためにこの方法で予備成形された金属モノフィラメントに悪影響を有する。このような悪影響は、金属モノフィラメントの表面に破断開始点を生成し、従って、金属モノフィラメントの耐久性、特に圧縮下での耐久性に悪影響を及ぼす。このような予備成形マークの有無は、製造方法後に電子顕微鏡で観察可能であり、より単純には、コードの製造に使用される方法を知ることによっても観察可能である。
【0072】
使用される製造方法のため、コードの各金属フィラメント要素には予備成形マークがない。このような予備成形マークは、特に平坦部を含む。予備成形マークはまた、各金属フィラメント要素が延びる主軸に実質的に垂直な断面の平面に延びる亀裂を含む。このような亀裂は、主軸に実質的に垂直な断面の平面において、各金属フィラメント要素の半径方向外側の表面から、各金属フィラメント要素の内側に向かって半径方向に延びる。このような亀裂は、上述したように、機械的予備成形工具によって曲げ荷重により、すなわち各金属製フィラメント要素の主軸に対して垂直に発生し、耐久性に対して極めて不利なものとなっている。これに対し、WO2016083265及びWO2016083267に記載される方法では、金属フィラメント要素を過渡的コア上にまとめて且つ同時に予備成形されて、予備成形荷重がねじれ状態で作用され、従って各金属フィラメント要素の主軸に対して垂直ではない。生じた亀裂は、各金属フィラメント要素の半径方向外面から半径方向に各金属フィラメント要素の内部に向かって延びるのではなく、各金属フィラメント要素の半径方向外面に沿って延び、耐久性を低下させないようにする。
【0073】
有利には、コードは、D≦6.00mm、好ましくは、D≦5.00mmであるような直径Dを有する。
【0074】
直径又は見かけの直径(Dで表される)は、長さ200mmの2本の完全に直線的なロッドの間にコードを挟み、後述のコンパレータを用いてコードが打ち込まれるスペースを測定することによって測定される。例えば、KAEFERモデルのJD50/25について、1/100ミリメートルの精度を達成でき、aタイプの接点を装備し、接触圧力は約0.6Nである。測定プロトコルは、一連の3回の測定(コードの軸に垂直に、ゼロ張力下で行われる)の3回の繰り返しからなる。
【0075】
一実施形態では、各金属フィラメント要素は、単一の金属モノフィラメントを含む。ここで、各金属フィラメント要素は、有利には、金属モノフィラメントから構成される。この実施形態の変形例では、金属モノフィラメントは、銅、亜鉛、スズ、コバルト又はこれらの金属の合金、例えば真鍮又は青銅を含む金属コーティングの層で直接コーティングされる。この変形例では、各金属フィラメント要素は、次に、例えば鋼で作られた金属モノフィラメントから構成され、金属コーディング層で直接コーティングされたコアを形成する。
【0076】
この実施形態では、各金属ストランドは、上述のように、好ましくはスチール製であり、1000MPa~5000MPaの範囲の機械的強度を有する。このような機械的強度は、タイヤの分野で一般的に遭遇するスチール等級、すなわちNT(ノーマルテンシル)、HT(ハイテンシル)、ST(スーパーテンシル)、SHT(スーパーハイテンシル)、UT(ウルトラテンシル)、UHT(ウルトラハイテンシル)及びMT(メガテンシル)等級に対応し、高い機械的強度を使用すると、コードが埋め込まれることになるマトリックスの補強の向上及びこの方式で補強されたマトリックスの軽量化を潜在的に可能にする。
【0077】
有利には、層は、螺旋状に巻かれたN個のストランドから構成され、Nは2~6の範囲である。
【0078】
N個のストランドを組み立てる工程は、ケーブル配線によって実施される。ケーブル配線の定義は、組み立ての前後で同期回転を行うことに起因して、ストランドが自己軸の周りにねじれを生じないことである。このことは、コードの延性を増大させるだけでなく、オープンコードストランド単独の場合よりも大きい破断力を達成するという主要な利点を有している。
【0079】
M’金属フィラメント要素の部分的な再組立を可能にする第1の実施形態では、分離ステップと再組立ステップが、M1’+M2’<M’となるように実施される。
【0080】
M’金属フィラメント要素の完全な再組み立てを可能にする第2の実施形態では、分離ステップ及び再組み立てステップは、M1’+M2’=M’となるように実行される。
【0081】
以下に説明する有利な特徴は、上述した第1及び第2の実施形態の方法にも同様に適用される。
【0082】
好ましくは、M=M1’+M2’は3~18、好ましくは4~15の範囲である。
【0083】
有利には、過渡的コアが第1及び第2の分割組立体と各々同伴する2つの部分に分離される実施形態において、過渡的コアの抜き出しを容易にするために、以下のようにする。
M’=4又はM’=5では、M1’=1、2又は3及びM2’=1、2又は3であり、 M’≧6では、M1’≦0.75×M’であり、
M’≧6では、M2’≦0.75×M’である。
【0084】
過渡的コアが第1及び第2の組立体と同伴する2つの部分に分離される実施形態において、過渡的コアの抜き出しを更に容易にするために、M’≧6であり、M1’≦0.70×M’及びM2’≦0.70×M’である。
【0085】
極めて優先的には、過渡的組立体を提供するステップは、過渡的コアの周りに螺旋状に巻かれたM’>1個の金属フィラメント要素をねじることによって組み立てるステップを含む。
【0086】
有利には、過渡的組立体を供給するステップは、過渡的組立体のバランス調整をするステップを含む。このように、バランス調整をするステップは、M’金属フィラメント要素及び過渡的コアを含む過渡的組立体に対して行われるので、バランス調整ステップは、第1及び第2の分割組立体に分離するステップの上流側で暗黙的に行われる。このことは、組立ステップの下流側で様々な組立体が辿る経路において、特にガイド手段、例えばプーリーを介して過渡的組立体を組み立てるステップの間に加えられる残留ねじれを管理する必要性が回避される。
【0087】
有利には、本方法は、再組立ステップの下流側で最終組立品のバランス調整するステップを含む。
【0088】
有利には、本方法は、最終組立体の移動方向周りの回転を維持するステップを含む。この回転維持ステップは、過渡的組立体を分離するステップの下流側で且つ最終的組立体のバランス調整するステップの上流側で実施される。
【0089】
好ましくは、本方法は、金属フィラメント要素の各々を個別に予備成形するステップを含まない。金属フィラメント要素の各々を個別に予備成形するステップを使用する従来技術の方法では、金属フィラメント要素は予備成形ツール、例えばローラーによって形状が与えられ、これらのツールは、金属フィラメント要素の表面上に欠陥を生じさせる。これらの欠陥は、金属フィラメント要素の耐久性を著しく低下させ、従って、最終的な組立品の耐久性を低下させる。
【0090】
極めて好ましくは、過渡的コアは、金属フィラメント要素である。好ましい実施形態では、過渡的コアは、金属モノフィラメントである。金属フィラメント要素間のスペースの直径、従って最終組立品の幾何学的特徴は、繊維材料、例えばポリマー材料で作られた過渡的コアとは対照的に、これに応じて極めて正確に制御され、圧縮性が最終組立品の幾何学的特徴のばらつきを引き起こす可能性がある。
【0091】
他の同様に有利な実施形態では、過渡的コアは、織物フィラメント要素である。このような織物フィラメント要素は、少なくとも1つのマルチフィラメント織物プライを含むか、変形例では、織物モノフィラメントから構成される。使用できる繊維フィラメントは、ポリエステル、ポリケトン、脂肪族又は芳香族ポリアミド、及びこれらの材料を含む繊維フィラメントの混合物から選択される。そのため、これは、金属フィラメント要素の過渡的コアに対する摩擦及び過渡的コアに加わるねじれによってもたらされる過渡的コアの破損のリスクを低減する。
【0092】
本発明による補強製品
【0093】
本発明の更なる主題は、ポリマーマトリックスと、上で定義されたような少なくとも1つの抜き出されたコードとを含む補強製品である。
【0094】
有利には、補強製品は、ポリマーマトリックスに埋め込まれた本発明による1又は複数のコードを備え、複数のコードの場合、コードは主方向に並んで配置されている。
【0095】
本発明によるタイヤ
【0096】
本発明の更なる主題は、本明細書で定義された少なくとも1つの抜き出されたコード又は本明細書で定義された補強製品を備えるタイヤである。
【0097】
好ましくは、タイヤは、2つのビードに係止され、それ自体がトレッドによって載せられるクラウン補強体によって半径方向に載せられるカーカス補強体を備え、クラウン補強体は、2つのサイドウォールによって上記ビードに接合され、上に定義されたように少なくとも1つのコードを含む。
【0098】
好ましい一実施形態では、クラウン補強体は、保護補強体とワーキング補強体とを備え、ワーキング補強体は、本明細書で定義された少なくとも1つのコードを含み、保護補強体は、トレッドとワーキング補強体との間に半径方向に配置されている。
【0099】
コードは、「大型車両」-すなわち地下鉄、バス、道路運搬車(ローリー、トラクター、トレーラー)、オフロード車両-すなわち農業車両又は建設プラント車両、或いは他の運搬又は処理車両などの大型車両から選択される産業車両を特に意図している。
【0100】
好ましくは、タイヤは、建設プラントタイプの車両用である。従って、タイヤは、タイヤが取り付けられることが意図されているリムのシートの直径(インチ単位)が30インチ以上であるサイズを有している。
【0101】
本発明はまた、本発明による組立体、又は本発明による含浸組立体を含むゴム物品に関する。ゴム物品の定義は、ボール、非空気タイヤケーシングのような非空気的物体、コンベヤベルト又はキャタピラトラックのようなゴムでできたあらゆるタイプの物品である。
【0102】
本発明は、図面を参照しながら単に非限定的な実施例として与えられた以下の記載を読むとより理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【
図1】本発明によるタイヤの円周方向に垂直な断面図である。
【
図4】本発明によるコード(50)の応力-伸び曲線の一部を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態によるコード(50)の軸に垂直な概略断面図である(直線状で静止していると仮定している)。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係るコード(60)の
図5と同様の図である。
【
図7】フィラメントの半径方向のクリアランスによって軽引張荷重下で、
図5のコード(50)の変形性の効果を示す概略図である。
【
図8】
図5のコード(50)の製造を可能にする本発明による方法の概略的図である。
【
図9】
図5のコード(50)の製造を可能にする本発明による方法の概略的図である。
【発明を実施するための形態】
【0104】
本発明によるタイヤの実施例
【0105】
タイヤの通常のそれぞれ軸方向(X)、半径方向(Y)及び周方向(Z)に対応する基準X、Y、Zのフレームが、
図1及び
図2に描かれている。
【0106】
タイヤの「正中周方向平面」Mは、タイヤの回転軸に垂直であり、各ビードの環状補強構造から等距離に位置する平面である。
【0107】
図1及び
図2は、本発明によるタイヤを示し、一般的な参照番号Pで示される。
【0108】
タイヤPは、建設プラントタイプの大型車両、例えば「ダンパー」タイプの大型車両用である。従って、タイヤPは、タイプ53/80R63の寸法を有する。
【0109】
タイヤPは、クラウン補強体14によって補強されたクラウン12と、2つのサイドウォール16と、2つのビード18とを有し、これらのビード18の各々は、環状構造、この例ではビードワイヤ20によって補強されている。クラウン補強体14は、トレッド22によって半径方向に載せられ、サイドウォール16によってビーズ18に接続されている。カーカス補強体24は、2つのビード18に係止され、この例では2つのビードワイヤ20の周りに巻かれ、タイヤ20の外側に向かって位置するターンアップ26を備え、ここではホイールリム28に装着された状態が示されている。カーカス補強体24は、クラウン補強体14によって半径方向に載せられている。
【0110】
カーカス補強体24は、半径方向のカーカスコード(図示せず)によって補強された少なくとも1つのカーカスプライ30を備える。カーカスコードは、互いに実質的に平行に配置され、正中周方向平面M(2つのビード18の中間に位置し、クラウン補強体14の正中を通るタイヤの回転軸に垂直な平面)に対して80°~90°の間で構成される角度を形成するように、一方のビード18から他方に延在している。
【0111】
タイヤPはまた、タイヤPの半径方向内側の面34を定め、タイヤPの内部のスペースから生じる空気の拡散からカーカスプライ30を保護することを目的とするエラストマーから構成されたシーリングプライ32(一般に「インナーライナ」として知られている)を含む。
【0112】
クラウン補強体14は、タイヤPの半径方向外側から内側に向かって、トレッド22の内側に半径方向に配置された保護補強体36と、保護補強体36の内側に半径方向に配置されたワーキング補強体38と、ワーキング補強体38の内側に半径方向に配置された付加補強体40とを備える。このため、保護補強体36は、トレッド22とワーキング補強体38との間で半径方向に配置されている。ワーキング補強体38は、保護補強体36と追加補強体40との間に半径方向に介在している。
【0113】
保護補強体36は、保護金属コードを含む第1及び第2の保護プライ42、44を備え、第1のプライ42は、第2のプライ44の内側に半径方向に配置されている。任意選択的に、保護金属コードは、タイヤの円周方向Zに対して、少なくとも10°に等しい角度、好ましくは10°~35°の範囲、優先的には15°~30°の角度を形成する。
【0114】
ワーキング補強体38は、第1及び第2のワーキングプライ46,48を備え、第1のプライ46は、第2のプライ48の内側に放射状に配置されている。各プライ46、48は、少なくとも1本のコード50を含む。任意選択的に、ワーキング金属コード50は、1つのワーキングプライから他のワーキングプライに交差し、タイヤの周方向Zに対して最大で60°に等しい角度、好ましくは15°~40°の範囲の角度を形成する。
【0115】
追加の補強体40は、リミッティングブロックとも呼ばれ、その目的は、膨張の機械的応力を部分的に吸収することであり、例えば、それ自体既知のように、例えばFR 2 419 181又はFR 2 419 182に記載されているような追加の金属補強要素からなり、タイヤPの円周方向Zと、最大10°、好ましくは5°から10°までの範囲で、同じ角度になっている。
【0116】
本発明による補強製品の実施例
【0117】
図3は、本発明による補強製品を示し、一般的な参照番号Rで示される。補強製品Rは、ポリマーマトリックスMaに埋め込まれた少なくとも1本のコード50’、この例では複数のコード50’を備える。
【0118】
図3は、ポリマーマトリックスMa、コード50’を、方向Yを半径方向、方向X及びZを軸方向及び周方向とする基準X、Y、Zのフレームで描いたものである。
図3において、補強製品Rは、主方向Xに並置され、補強製品R内で互いに平行に延びる複数のコード50’を含み、全体としてポリマーマトリックスMaに埋設されたものである。本実施例では、ポリマーマトリックスMaは、エラストマー化合物をベースとするエラストマーマトリックスである。
【0119】
本発明の第1の実施形態によるコード
【0120】
図5は、本発明の第1の実施形態によるコード50を表している。
【0121】
各保護補強要素43、45及び各フープ補強要素53、55は、タイヤ10から抜き出されると、以下に説明するように抜き出されたコード50’から形成される。コード50は、この例では、各保護プライ42,44及び各フープ層52,54の各ポリマーマトリックスをそれぞれ形成するポリマーマトリックスに埋め込むことによって得られ、ここで保護補強要素43,45及びフープ補強要素53,55がそれぞれ埋め込まれる。
【0122】
コード50及び抜き出されたコード50’は、単層を有する金属製である。
【0123】
コード50又はコード50’は、主軸(A)の周りに螺旋状に巻かれたN=3のストランド54の単層52を含む1×N構造の層を備え、各ストランド54は、金属フィラメント56F1の単一層を備え、軸(B)の周りに螺旋状に巻かれたM>1の金属フィラメントを含み、この例ではM=5とした。
【0124】
上述したように、値Atは、2014年ASTM規格 D2969-04を適用して、コード50の力-伸長曲線をプロットすることにより決定される。
【0125】
コード50は、全伸びAt>8.10%、好ましくはAt≧8.30%、より好ましくはAt≧8.50%を有し、全伸びAt≦20.00%、好ましくはAt≦16.00%、この例ではAt=13.4%である。
【0126】
本明細書で述べたように、この応力-伸び曲線から、この曲線の下の面積が導出される。
図4は、コード50の破断時エネルギー指標を決定するための矩形法を示す図である。
【0127】
コード50の破断時エネルギー指標Erは、以下
のようなものであり、
と実質的に等しく、これは、厳密には52MJ/m
3より大きく、好ましくは55MJ/m
3以上であり、200MJ/m
3以下、及び好ましくは150MJ/m
3以下である。
【0128】
コード50は、As>4.30%、好ましくはAs≧4.50%、より好ましくはAs≧4.60%となるような構造伸びAsを有し、As≦10.0%、好ましくはAs≦9.50%となる。この例ではAs=9.3%である。
【0129】
コード50は、3.0~10.0GPa、好ましくは3.5~8.5GPaの範囲の割線弾性係数E1を有する。この例ではE1=4.0GPaである。
【0130】
コード50は、接線弾性係数E2が50~180GPaの範囲、好ましくは55~150GPaの範囲である。この例では、E2=73GPaである。
【0131】
抜き出されたコード50’は、全伸びAt’>5.00%、好ましくはAt’≧5.20%である。この例ではAt’=10%である。
【0132】
抜き出されたコード50’の破断時エネルギー指標Er’は、
であるようなものであり、これは、
と実質的に等しく。
であり、これは厳密には35MJ/m
3より大きく、好ましくは40MJ/m
3以上である。
【0133】
ストランド54は、直径Dvのコード50;50’の内部エンクロージャ59を定め、各ストランド54は直径Dtを有し、Rt=Pe/(πxSin(2αe))=80/(πxsin(2×5.3×π/180)=138mmにより定められる螺旋曲率半径Rtを有している。
【0134】
Rt/Dt=138/2.03=68≦180、68≧25.
【0135】
Dv/Dt=0.32/2.03=0.16≦0.50及び0.16≧0.10.
【0136】
各ストランド52の金属フィラメント要素F1は、直径Dvtのストランド52の内部エンクロージャ58を定め、各金属フィラメント要素F1は直径Dfを有し、Rf=P/(πxSin(2α))=10・4/(πxSin(2×25・8xπ/180)=4・2mmで定められる螺旋曲率半径Rfを有する。
【0137】
Rf/Df=4.2/0.46=9≦30。
【0138】
【0139】
本発明に係るコードの製造方法
【0140】
次に、
図8及び
図9に描かれたようなマルチストランドコード50の製造方法の例について説明する。
【0141】
最初に、供給手段からフィラメント要素F1及び過渡的コア16を巻き戻す。
【0142】
次に、本方法は、一方では、過渡的コア16の周りにM’金属フィラメント要素F1の単層でM’金属フィラメント要素F1をねじることによって組み立てるステップと、他方では、ツイスターによって行われる過渡的組立体22のバランス調整するステップと、を含む、過渡的組立体22を供給するステップ100を含む。
【0143】
本方法は、過渡的組立体22を、第1の分割組立体25、第2の分割組立体27、過渡的コア16又は過渡的コア16を含む1又は2以上の集合体、この場合過渡的コア16に分離するステップ110を含む。
【0144】
供給手段11の下流において、過渡的組立体22を第1の分割組立体25、第2の分割組立体27及び過渡的コア16に分離するステップ110は、過渡的組立体22を前駆集合体、第2の分割組立体27及び最後に過渡的コア16に分離するステップ120を含む。
【0145】
分離ステップ122の下流側で、過渡的組立体を前駆集合体と分割集合体に分離するステップ120は、分割集合体を第2分割組立体27と過渡的コア16に分離するステップ124を含む。この場合、分離ステップ124は、分割集合体を第2の分割組立体27、過渡的コア16及び補完集合体に分割するステップを含む。
【0146】
供給ステップ100の下流側で、過渡的組立体を第1の分割組立体25、第2の分割組立体27及び過渡的コア16に分離するステップ110は、前駆集合体を第1の分割組立体25及び補完的集合体に分離するステップ130を含む。
【0147】
分離ステップ110、120、124及び130の下流側で、本方法は、第1の分割組立体25を第2の分割組立体27と再組立してストランド54を形成するステップ140を含む。この実施形態では、再組立ステップ140は、第1の分割組立体25を第2の分割組立体27と再組立してストランド54を形成し、M>1の金属フィラメントF1を含むステップであり、Mは3~18、好ましくは4~15であり、ここでM=5である。
【0148】
この実施形態では、供給ステップ100、分離ステップ110及び再組立ステップ140は、全てのM’金属フィラメント要素F1が同じ直径Dfiを有し、同じピッチPで螺旋状に巻かれており、上述した同じ螺旋曲率半径Rfを有するように実施される。
【0149】
M’金属フィラメント要素の部分的な再組立を可能にするこの実施形態では、M1’+M2’<M’となるように分離ステップ110及び再組立ステップ140が実施される。ここで、M1’=1、M2’=4:M1’+M2’=5<8である。最終的に、M1’≦0.70×M’=0.70×8=5.6、M2’≦0.70×M’=0.70×8=5.6となることがわかる。
【0150】
最終的なバランス調整ステップを実行する。
【0151】
最後に、ストランド54は、貯蔵スプールに貯蔵される。同様にしてN個のストランド54が製造される。
【0152】
過渡的コア16に関して、本方法は、過渡的コア16をリサイクルするステップを含む。このリサイクルステップでは、分離ステップ110の下流側、この場合分離ステップ124の下流側で、過渡的コア16を回収し、先に回収した過渡的コア16を組立ステップの上流側に導入する。このリサイクルステップは連続的である。
【0153】
このように説明された方法は、金属フィラメント要素F1の各々を個別に予備成形するステップを有していないことに留意されたい。
【0154】
コード50を形成するために、N個のストランド54をケーブル配線で組み立てることを含む組立ステップ300が実行される。この例では、N=3である。
【0155】
このように説明された本方法は、ストランド54の各々を個別に予備成形するステップを有していないことに留意されたい。
【0156】
本発明の第2の実施形態によるコード
【0157】
図6は、本発明の第2の実施形態によるコード60を描いている。
【0158】
本明細書で説明した第1実施形態とは異なり、第2実施形態によるコード60は、N=4となるようなものである。
【0159】
本発明による様々なコード50、50’、60、60’、51、52、53、53’、54と従来技術のコードEDT1、EDT1’、EDT2、EDT2’の特性は、以下の表1、2、3にまとめられている。
【0160】
比較試験
【0161】
コードの全伸び及び破断時エネルギー指標の評価
【0162】
2014年ASTM規格 D2969-04を適用してコードの応力-伸び曲線をプロットし、本発明による種々のコード50、50’、60、60’、51、52、53、53’、54と従来技術のコードEDT1、EDT1’、EDT2及びEDT2’について全伸び及びエネルギー-破断指標を算出した。
【0163】
表3において、「NA」は、そのパラメータが測定されていないことを意味する。
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
表1、2及び3は、本発明によるコード50、50’、60、60’、51、52、53、53’、54が、従来技術のコードEDT1、EDT1’、EDT2及びEDT2’と比較して、改善されたエネルギー破断指標を有すると共に、より良い変形性を有することを実証している。
【0168】
従って、本発明によるコードは、前提部分で述べた問題を解決することができる。
【0169】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0170】
50 コード
52 フープ層
54 フープ層
56 金属フィラメント
59 内部エンクロージャ
【国際調査報告】