(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-07
(54)【発明の名称】閉塞されたポリマー粒子の水性分散体の調製
(51)【国際特許分類】
C08F 265/04 20060101AFI20230228BHJP
【FI】
C08F265/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534269
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(85)【翻訳文提出日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 US2020061230
(87)【国際公開番号】W WO2021126454
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボーリング、ジェームズ シー.
(72)【発明者】
【氏名】ギンバル、ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】ロバートソン、イアン ディー.
【テーマコード(参考)】
4J026
【Fターム(参考)】
4J026AA17
4J026AA45
4J026AA63
4J026BA27
4J026DB03
4J026DB13
4J026FA06
4J026GA02
(57)【要約】
本発明は、多相の閉塞されたポリマー粒子の水性分散体を調製するためのプロセスであって、a)乳化重合条件下で第1のモノマーと連鎖移動剤とを接触させて、-30℃~30℃の範囲のTgを有する第1のポリマー粒子の水性分散体を形成するステップ、次に、b)乳化重合条件下で第1のポリマー粒子の水性分散体を第2のモノマーと接触させて、第1のポリマー粒子内に閉塞された第2のポリマー粒子の水性分散体を形成するステップ、を含み、第1のモノマーが、リン酸モノマー又はその塩であり、第2のモノマーが、少なくとも90重量パーセントのメチルメタクリレートを含む、プロセスに関する。本発明のプロセスから生じる閉塞されたポリマー粒子の水性分散体は、耐水性ブリスターフリーLASDコーティングを調製するために使用することができる配合物において有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相の閉塞されたポリマー粒子の水性分散体を調製するためのプロセスであって、a)乳化重合条件下で第1のモノマーと連鎖移動剤とを接触させて、-30℃~30℃の範囲のT
gを有する第1のポリマー粒子の水性分散体を形成するステップであって、前記連鎖移動剤の濃度が、前記第1のモノマー及び前記連鎖移動剤のモルに基づいて、0.5~1.5モルパーセントである、ステップ、次に、b)乳化重合条件下で前記第1のポリマー粒子の水性分散体を第2のモノマーと接触させて、前記第1のポリマー粒子内に閉塞された第2のポリマー粒子の水性分散体を形成するステップであって、前記第1のモノマーが、前記第1のモノマーの重量に基づいて、0.2~5重量パーセントのリン酸モノマー又はその塩を含む、ステップを含み、前記第2のモノマーが、少なくとも90重量パーセントのメチルメタクリレートを含み、第1のモノマー対前記第2のモノマーの重量対重量比率が、80:20を超えて95:5未満の範囲にある、プロセス。
【請求項2】
前記第1のモノマーが、a)メチルメタクリレート又はスチレン、並びにb)ブチルアクリレート、エチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及び2-プロピルヘプチルアクリレートからなる群から選択される1つ以上のモノマーを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記リン酸モノマーが、前記第1のモノマーの重量に基づいて、0.5~3重量パーセントの濃度のホスホエチルメタクリレートである、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記第2のモノマーが、少なくとも95重量パーセントのメチルメタクリレートを含み、第2のモノマー対前記第1のモノマーの重量対重量比率が、8:92~17:83の範囲にある、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記連鎖移動剤の濃度が、第1のモノマー及び前記連鎖移動剤のモルに基づいて、0.7~1.3モルパーセントの範囲にある、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第1のモノマーが、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、及びホスホエチルメタクリレートを含み、前記第2のモノマーが、少なくとも98重量パーセントのメチルメタクリレートを含む、請求項5に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
減衰材は、剛性構造物の振動を軽減して騒音を低減するために使用される。自動車では、2つの主要な振動制振技術、ビチューメンパッド及び水性ラテックスに由来する液性適用音減衰(liquid applied sound damping、LASD)コーティングが主流である。20世紀に広く使用された低コストの代替物であるビチューメンパッドは、比較的低い減衰性能を示し、手間のかかる手作業による適用を必要とする。一方、LASDコーティングは、ロボット噴霧技術によって急速に適用され得るため、有意な市場シェアを得た。更に、LASDコーティングは、より優れた減衰特性、環境、健康、及び安全性(environmental,health,and safety、EH&S)プロファイル、並びにより低い密度を示す。要するに、これらの利点により、自動車OEMが、現在のビチューメンパッドの騒音振動及びハーシュネス(noise vibration and harshness、NVH)管理にLASDを益々利用するようになった。国際公開第2018/062546(A1)号は、振動減衰用途に好適なポリマー粒子の水性分散体を記載している。ブリスタリングの改善された抑制が報告されているが、耐水性は記載されていない。ビチューメンパッドと比較して優れた耐水性を有するLASDコーティングを開発することが当該技術分野において依然として必要とされている。耐水性LASDコーティングは、この技術の顧客による採用を容易にする可能性がある。更に、耐水性の改善により、LASDコーティングを、車両のホイールウェル内などの新しい適用領域に使用することができる。したがって、耐水性であり、優れた外観を示し、高い振動減衰性能を維持するLASDコーティングに配合することができるポリマー粒子の水性分散体を開発することが当該技術分野において進歩しているであろう。
【発明の概要】
【0002】
本発明は、多相の閉塞されたポリマー粒子の水性分散体を調製するためのプロセスであって、a)乳化重合条件下で第1のモノマーと連鎖移動剤とを接触させて、-30℃~30℃の範囲のTgを有する第1のポリマー粒子の水性分散体を形成するステップであって、連鎖移動剤の濃度が、第1のモノマー及び連鎖移動剤のモルに基づいて、0.5~1.5モルパーセントである、ステップ、次に、b)乳化重合条件下で第1のポリマー粒子の水性分散体を第2のモノマーと接触させて、第1のポリマー粒子内に閉塞された第2のポリマー粒子の水性分散体を形成するステップであって、第1のモノマーが、第1のモノマーの重量に基づいて、0.2~5重量パーセントのリン酸モノマー又はその塩を含む、ステップを含み、第2のモノマーが、少なくとも90重量パーセントのメチルメタクリレートを含み、第1のモノマー対第2のモノマーの重量対重量比率が、80:20を超えて95:5未満の範囲にある、プロセスである。
【0003】
本発明は、吸音用途に有用な耐水性ブリスターフリーコーティングを形成する水性組成物を提供することによって、当該技術分野における必要性に対処する。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明は、多相の閉塞されたポリマー粒子の水性分散体を調製するためのプロセスであって、a)乳化重合条件下で第1のモノマーと連鎖移動剤とを接触させて、-30℃~30℃の範囲のTgを有する第1のポリマー粒子の水性分散体を形成するステップであって、連鎖移動剤の濃度が、第1のモノマー及び連鎖移動剤のモルに基づいて、0.5~1.5モルパーセントである、ステップ、次に、b)乳化重合条件下で第1のポリマー粒子の水性分散体を第2のモノマーと接触させて、第1のポリマー粒子内に閉塞された第2のポリマー粒子の水性分散体を形成するステップであって、第1のモノマーが、第1のモノマーの重量に基づいて、0.2~5重量パーセントのリン酸モノマー又はその塩を含む、ステップを含み、第2のモノマーが、少なくとも90重量パーセントのメチルメタクリレートを含み、第1のモノマー対第2のモノマーの重量対重量比率が、80:20を超えて95:5未満の範囲にある、プロセスである。
【0005】
第1のポリマー粒子は、乳化重合条件下で第1のモノマーと連鎖移動剤とを接触させて、Fox方程式によって計算されるように、-30℃、好ましくは-20℃~30℃、好ましくは20℃、より好ましくは10℃の範囲のTgを有する、第1のポリマー粒子の水性分散体を形成することによって有利に調製され、連鎖移動剤の濃度は、第1のモノマー及び連鎖移動剤のモルに基づいて、0.5、好ましくは0.7、より好ましくは1モルパーセント~1.5、好ましくは1.3、より好ましくは1.2モルパーセントである。
【0006】
連鎖移動剤は、重合プロセス中にポリマーの分子量を調節することができる任意の化合物である。特に好適な連鎖移動剤には、n-ドデシルメルカプタン(n-dodecyl mercaptan、n-DDM)及びt-ドデシルメルカプタン(t-dodecyl mercaptan、t-DDM)などのアルキルメルカプタンが挙げられる。
【0007】
本明細書で使用される場合、「第1のモノマー」は、-30℃~30℃の範囲のT
gを有する、第1のポリマー粒子を形成するように選択されたモノマーを指す。好ましい第1のモノマーは、a)メチルメタクリレート(methyl methacrylate、MMA)又はスチレン、並びにb)ブチルアクリレート(butyl acrylate、BA)、エチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及び2-プロピルヘプチルアクリレートからなる群から選択される1つ以上のモノマーを含み、MMA及びBAの組み合わせが好ましい。第1のモノマーはまた、第1のポリマー粒子の重量に基づいて、0.2、より好ましくは0.5、より好ましくは0.8、最も好ましくは1.0重量パーセント~5、より好ましくは3、最も好ましくは2重量パーセントのリン含有酸モノマー又はその塩の構造単位を更に含む。好適なリン含有酸モノマーの例には、アルコールが重合可能なビニル若しくはオレフィン基を含むか、又はそれらで置換されるアルコールのホスホネート及び二水素ホスフェートエステルが含まれる。好ましい二水素ホスフェートエステルは、ホスホエチルメタクリレート及びホスホプロピルメタクリレートを含むヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのホスフェートであり、ホスホエチルメタクリレートが特に好ましい。「ホスホエチルメタクリレート」(Phosphoethyl methacrylate、PEM)は、本明細書では、以下の構造を指すために使用され、
【化1】
式中、Rが、H又は以下であり、
【化2】
式中、点線が、酸素原子への結合点を表す。
【0008】
第2のポリマー粒子は、第1のモノマーの実質的又は完全な重合後、乳化重合条件下で第1のポリマー粒子の水性分散体を第2のモノマーと接触させることによって、第2のステップで有利に調製され、第2のモノマーは、好ましくは、少なくとも92、より好ましくは少なくとも95、より好ましくは少なくとも98、より好ましくは少なくとも99重量パーセントのメチルメタクリレートを含む。第2のモノマーは、最大8重量パーセントのメタクリル酸(methacrylic acid、MAA)などの別のモノマーを含み得る。
【0009】
第1及び第2のモノマーは、重合時に構造単位を形成する。本明細書で使用される場合、指定のモノマーの「構造単位」は、重合後のモノマーの残留物を指す。例えば、MMAの構造単位は、以下に示したとおりであり、
【化3】
式中、点線は、構造単位のポリマー骨格への結合点を表す。
【0010】
結果として生じる高Tg第2のポリマー粒子は、国際公開第2018/062546(A1)号に開示されるように、低Tgポリマー粒子を重ねる分離した外層を形成するのとは対照的に、低Tg(軟質)ドメイン第1ポリマー粒子内に分離した高Tg(硬質)ドメインを形成する。分離したドメインは、第1のポリマー粒子に閉塞される(組み込まれる)と言われる。閉塞は、原子間力顕微鏡法によって確認された。閉塞された多相ラテックス粒子の形態の考察及び記載は、J.CoatTechnol.
Res.,5(2)169-180,2008に見出すことができる。閉塞された第2のポリマー粒子対第1のポリマー粒子の重量対重量比率は、好ましくは6:94、より好ましくは8:92~19:81、より好ましくは17:83の範囲にある。
【0011】
閉塞されたポリマー粒子は、好ましくは、80nm、より好ましくは100nm~400nm、より好ましくは300nm、最も好ましくは200nmの範囲の動的光散乱によるz平均粒径を有する。ポリマー粒子は、好ましくは、10,000から、より好ましくは11,000g/モル~好ましくは22,000、より好ましくは18,000まで、より好ましくは15,000まで、最も好ましくは13,000g/モルまでの範囲のMn(以下に記載のゲル浸透クロマトグラフィによって測定)を有する。
【0012】
閉塞された多相ポリマー粒子の水性分散体の固形分は、好ましくは、20~60重量パーセントの範囲にある。好ましくは、多相ポリマー粒子は、2相ポリマー粒子である。
【0013】
閉塞されたポリマー粒子の水性分散体は、LASD用途に好適な配合物の一部として有利に使用される。配合物は、増量剤、デンプンなどの焼成添加剤、及びレオロジ調整剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含む。好ましくは、配合物は、これらの添加剤の全てを含む。
【0014】
配合物は、更に好ましくは、構造Iの非イオン性化合物を含み、
【化4】
式中、R
1が、H又はC
6-C
18-アルキルであり、R
2が、H又はCH
3であり、xが、30から、好ましくは45から、より好ましくは80~300、好ましくは250まで、より好ましくは200までである。
【0015】
好ましい非イオン性化合物は、ポリエチレングリコール(R1が、Hである)又はポリエチレンオキシド二級アルコールエトキシレート(R1が、分岐状アルキル基である)である。市販の好適な非イオン性化合物には、CARBOWAX(商標)PEG 4000及び8000ポリエチレングリコール(それぞれ、PEG4000及びPEG8000)、並びにTERGITOL(商標)15-S-20及び15-S-40二級アルコールエトキシレート(The Dow Chemical Company又はその関連会社の商標)が含まれる。
【0016】
配合物中の構造Iの非イオン性化合物の濃度は、配合物の重量に基づいて、0.2から、より好ましくは0.5重量パーセント~5、より好ましくは3まで、最も好ましくは2重量パーセントまでの範囲にある。
【0017】
閉塞されたポリマー粒子のソフトドメインのリン含有酸官能化、好ましくはPEM官能化は、規定された狭いMn範囲にわたって、これらの閉塞されたポリマー粒子を含む配合物のテクスチャ、ブリスタリング、及び水吸収プロファイルに特に有益な効果を有することが見出され、更に、構造Iの非イオン性化合物を、リン含有酸官能化した閉塞されたポリマー粒子とともに配合物に含めることにより、これらの重要な特性が改善されることが見出されている。
【0018】
驚くべきことに、振動減衰用途に好適なコーティングは、非常に低い水吸収、及びブリスタリングの徴候がほとんど又は全くない、望ましいテクスチャで調製することができることが発見されている。
【0019】
閉塞された粒子のMnを測定するゲル浸透クロマトグラフィ法
GPC試料を、閉塞されたポリマー固形分に基づいて、5mg/mLの濃度でTHF中で調製した。試料溶液を、室温で一晩フラットベッドシェーカー上に保持し、次いでGPC分析の前に0.45μm PTFEフィルター(Whatman)を通して濾過した。GPC機器のセットアップは、Agilent 1200シリーズHPLCシステム(脱気器、ポンプ、オートサンプラー)、及びWyatt T-rEX屈折率検出器からなる。ポリマー分離は、1mL/分の流速でTHFを移動相として使用して、1つのTOSOH TSKgel GMHxl-L及び1つのTOSOH TSKgel G5000Hxlカラム(各々9μmのスチレンジビニルベンゼンゲルで充填;各寸法7.5mm ID×30cm)からなるカラムセットで実施され、注入量は、40μLであった。
【0020】
Astra 7ソフトウェア(Wyatt Technology)が、データ取得及び処理に使用された。Mn及びMwを、以下の表1に示すように、ポリスチレン標準(Agilent Technology)に基づく、従来のキャリブレーション法を使用して計算した:
【0021】
【0022】
分子量の数及び重量の平均は、ポリスチレンの検量線及び試料溶出プロファイルに基づいて、以下の式によって取得した:
【数1】
【0023】
式中、ポリスチレン検量線に基づいて、hiは、第iの体積増分でのGPC曲線の高さであり、Miは、第iの保持体積で溶出された種の分子量である。
【実施例】
【0024】
実施例1-10%硬質段階を用いる2段階の閉塞されたポリマー粒子の水性分散体の調製
第1のモノマー乳剤を、脱イオン水(492g)、ラウリルエーテルスルフェートナトリウム(43g、水中31%活性)、BA(1066g、8.32モル)、MMA(797g、7.96モル)、PEM(43g、60%活性、0.12モル)、及びn-DDM(37g、0.18モル)を混合することによって調製した。第2のモノマー乳剤を、脱イオン水(134g)、ウリルエーテルスルフェートナトリウム(5g、水中30%活性)、及びMMA(214g、2.14モル)を混合することによって調製した。
【0025】
脱イオン水(881g)及びラウリルエーテルスルフェートナトリウム(2.4g、31%活性)を、パドルスターラ、温度計、窒素入口、及び還流冷却器を備えた5Lの4口丸底フラスコに添加した。フラスコの内容物を、窒素下で84℃まで加熱し、撹拌を開始した。次いで、第1のモノマー乳剤(132g)の一部分を迅速に添加し、続いて脱イオン水(55g)中の過硫酸アンモニウム(5g)の溶液を添加した。10分間撹拌した後、残りの第1のモノマー乳剤、及び脱イオン水(90g)中の過硫酸アンモニウム(2.1g)の開始剤溶液を80分かけて別々に添加した。フラスコの内容物を84℃で10分間保持し、その後、第2のモノマー乳剤、及び脱イオン水(10g)中の過硫酸ナトリウム(0.2g)を含む開始剤溶液を、10分間にわたって別々にフラスコに添加した。
【0026】
次いで、バッチを冷却し、残留モノマーを酸化還元対で還元し、次いでpH9に中和した。z平均粒径は、Brookhaven BI-90 Plus粒径分析装置によって165nmであると測定され、固形分パーセントは、51%であることが見出された。ゲル浸透クロマトグラフィで計算したMnは、12,000g/モルであることが見出された。
【0027】
実施例2-15%硬質段階を用いる2段階の閉塞されたポリマー粒子の水性分散体の調製
モノマー乳剤1及びモノマー乳剤2の相対量を85:15の重量対重量比率に調整したことを除いて、実施例1に記載のプロセスに従った。z平均粒径は、160nmであると測定され、固形分パーセントは、51%であることが見出された。ゲル浸透クロマトグラフィで計算したMnは、12,000g/モルであることが見出された。
【0028】
実施例3-MMA/MAA 10%硬質段階を用いる2段階の閉塞されたポリマー粒子の水性分散体の調製
第2のモノマー乳剤において、1.5重量パーセントのMMA(3.2g)を等量(3.2g)のMAAに置き換えたことを除いて、実施例1に記載のプロセスに従った。z平均粒径は、163nmであると測定され、固形分パーセントは、52%であることが見出された。ゲル浸透クロマトグラフィで計算したMnは、12,000g/モルであることが見出された。
【0029】
実施例4-より低い連鎖移動剤濃度を用いる2段階の閉塞されたポリマー粒子の水性分散体の調製
第1のモノマー乳剤において、n-DDMの量が37g~18.5g(0.09モル)に減少したことを除いて、実施例1に記載のプロセスを繰り返した。粒径は、168nmであると測定され、固形分パーセントは、51%であることが見出された。ゲル浸透クロマトグラフィで計算したMnは、20,000g/モルであることが見出された。
【0030】
実施例5-より低い連鎖移動剤濃度を用いる2段階の閉塞されたポリマー粒子の水性分散体の調製
第1のモノマー乳剤において、n-DDMの量が37g~29g(0.14モル)に減少したことを除いて、実施例1に記載のプロセスを繰り返した。z平均粒径は、175nmであると測定され、固形分パーセントは、51%であることが見出された。ゲル浸透クロマトグラフィで計算したMnは、15,000g/モルであることが見出された。
【0031】
実施例6-より高い連鎖移動剤濃度を用いる2段階の閉塞されたポリマー粒子の水性分散体の調製
第1のモノマー乳剤において、n-DDMの量が37g~48g(0.24モル)に増加したことを除いて、実施例1に記載のプロセスを繰り返した。z平均粒径は、192nmであると測定され、固形分パーセントは、51%であることが見出された。ゲル浸透クロマトグラフィで計算したMnは、10,000g/モルであることが見出された。
【0032】
実施例7-硬質ドメインにおいてMMA及びBAを用いる2段階の閉塞されたポリマーの調製
第2のモノマー乳剤のモノマー組成物が、全てのMMAの代わりにBA(10.7g)及びMMA(203.3g)であることを除いて、実施例1に記載のプロセスに従った。z平均粒径は、170nmであることが見出され、固形分パーセントは、51%であることが見出された。ゲル浸透クロマトグラフィで計算したMnは、12,000g/モルであることが見出された。
【0033】
比較実施例1-より低い連鎖移動剤濃度を用いる2段階の閉塞されたポリマー粒子の水性分散体の調製
第1のモノマー乳剤において、n-DDMの量が37g~9.6g(0.05モル)に低減したことを除いて、実施例1に記載のプロセスを繰り返した。z平均粒径は、167nmであると測定され、固形分パーセントは、51%であることが見出された。ゲル浸透クロマトグラフィで計算したMnは、34,000g/モルであることが見出された。
【0034】
比較実施例2-より高い連鎖移動剤濃度を用いる2段階の閉塞されたポリマー粒子の水性分散体の調製
第1のモノマー乳剤において、n-DDMの量が37g~57g(0.28モル)に増加したことを除いて、実施例1に記載のプロセスを繰り返した。z平均粒径は、164nmであると測定され、固形分パーセントは、52%であることが見出された。ゲル浸透クロマトグラフィで計算したMnは、8600g/モルであることが見出された。
【0035】
比較実施例3-MMA及びイソボルニルメタクリレートの10%硬質段階を用いる2段階の閉塞されたポリマー粒子の水性分散体の調製
第2のモノマー乳剤において、イソボルニルメタクリレート(106g)を等量のMMA(106g)に置き換えたことを除いて、実施例1に記載のプロセスを繰り返した。z平均粒径は、164nmであると測定され、固形分パーセントは、51%であることが見出された。ゲル浸透クロマトグラフィで計算したMnは、12,000g/モルであることが見出された。
【0036】
比較実施例4-スチレンの10%硬質段階を用いる2段階の閉塞されたポリマー粒子の水性分散体の調製
スチレン(214g)をMMAの代わりに第2のモノマー乳剤において使用したことを除いて、実施例1に記載のプロセスを繰り返し、第2のモノマー乳剤の供給時間は、30分間にわたって反応器に添加した。z平均粒径は、163nmであると測定され、固形分パーセントは、51%であることが見出された。ゲル浸透クロマトグラフィで計算したMnは、13,000g/モルであることが見出された。
【0037】
コーティング配合物の調製
コーティング配合物を、表2に列挙される成分から列挙される順序で調製した。成分を一般的なスターラで10分間混合し、次いで一晩平衡化させた。乳剤ポリマーとは、実施例1~7及び比較実施例1~5の閉塞されたポリマー粒子の水性分散体を指す。
【0038】
【0039】
水吸収試験
コーティングを、アルミニウムパネル上に4×100×80mm試料で塗布した。次いで、試料を室温で30分間放置し、続いて150℃で30分間焼成した。試料を室温まで冷却し、秤量して、それらの総質量を決定した。次いで、試料を10cmの水に48時間浸漬し、再度秤量した。水吸収は、浸漬試料と未浸漬試料との間の質量差のパーセンテージとして報告した。
【0040】
ブリスタリング
ブリスタリングを、以下に定義するように1~10の尺度で評価した:
10:微量又は表面欠損なし
8:軽度の隆起
6:中程度の隆起
4:強度の隆起
2:重度の隆起
【0041】
テクスチャ
テクスチャを、以下に定義するように1~10の尺度で評価した:
10:微量又は表面欠損なし
8:軽度のクレータ、ピンホール
6:中程度のクレータ、ピンホール
4:強度のクレータ、ピンホール
2:重度のクレータ、ピンホール
【0042】
表3は、配合物から調製したコーティングについての水吸収、ブリスタリング、及びテクスチャ結果をまとめたものである。
【0043】
【表3】
実施例1~7の組成物から形成したコーティングは全て、少なくとも8のテクスチャ及びブリスタリングの数値評価によって示されるように、重大な欠損を伴わない優れた外観を示す。更に、実施例1~7の各コーティングは、10%未満の許容可能な水吸収を有する。対照的に、比較実施例の組成物は全て、外観の少なくとも1つの態様において不足がある。結果は、M
nの臨界性、並びに閉塞された第2のポリマーにおけるMMAの構造単位の高い重量分率を示す。
【国際調査報告】