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特表2023-509145位置決めシステムに使われるアクチュエータデバイスおよび位置決めシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-07
(54)【発明の名称】位置決めシステムに使われるアクチュエータデバイスおよび位置決めシステム
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20230228BHJP
   H02K 41/02 20060101ALI20230228BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
H02K41/03 A
H02K41/02 A
H01L21/68 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540773
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(85)【翻訳文提出日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 NL2020050811
(87)【国際公開番号】W WO2021137697
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】2024595
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(31)【優先権主張番号】2025135
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520147360
【氏名又は名称】ブイディーエル イネーブリング テクノロジーズ グループ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ファン デ ライト、ヨハネス フベルトゥス アントニウス
(72)【発明者】
【氏名】パティ、フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ブルームホフ、ヨリト フェデ
(72)【発明者】
【氏名】フェルコワイエン、ロブ アントニウス アンドリース
(72)【発明者】
【氏名】ファン ニンホイス、ボブ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ミル、ルール アドリアヌス ヤコブス
【テーマコード(参考)】
5F131
5H641
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131EA02
5F131EB81
5F131EB82
5H641BB06
5H641BB15
5H641BB16
5H641GG03
5H641GG07
5H641GG10
5H641GG12
5H641HH02
5H641JB05
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、位置決めシステムに使われるアクチュエータデバイスに関する。このアクチュエータデバイスは、プレート内で位置決めシステムの支持構造に対して直線的に移動可能である。本発明係るアクチュエータデバイスの一例は、縦方向長さと横方向長さとを有するキャリアと、キャリア内にコイルアセンブリの複数の群と、を備え、コイルアセンブリの群の各々は、少なくとも1つの自由度で前記キャリアを方向づけるように構成される。単一デザインのアクチュエータデバイス1は、限られた構造的サイズを持ち、平面内の複数の自由度において高い精度の運動と位置決めとを可能とする。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決めシステムに使われるアクチュエータデバイスであって、
平面内で、前記位置決めシステムの支持構造に対して直線的に運動可能であり、
-縦方向長さと横方向長さとを有するキャリアと、
-前記キャリア内にコイルアセンブリの複数の群と、
を備え、
前記コイルアセンブリの群の各々は、少なくとも1つの自由度で前記キャリアを方向づけるように構成されることを特徴とするアクチュエータデバイス。
【請求項2】
前記キャリアは、1つ以上の凹部の複数の群を与えられ、
前記1つ以上の凹部の群の各々は、前記コイルアセンブリの1つ以上の群に属する1つ以上のコイルアセンブリを収容するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータデバイス。
【請求項3】
前記1つ以上の凹部の第1の群は、4つのコーナー凹部を備え、
前記コーナー凹部の各々は、前記キャリアのコーナーにまたはコーナーの近辺に与えられることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータデバイス。
【請求項4】
前記コーナー凹部の各々は、2つのコーナー貫通孔を与えられることを特徴とする請求項3に記載のアクチュエータデバイス。
【請求項5】
前記コーナー凹部の各々は、コイルアセンブリの第1の群のUコアコイルアセンブリを収容するように構成され、
前記Uコアコイルアセンブリのヨークの各々は、前記キャリア表面から外側に延びる前記コーナー貫通孔の1つを通してマウントされ、
コイルアセンブリの前記第1の群のコイルアセンブリは、前記Uコアコイルアセンブリのヨークの各々の周囲にマウントされることを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータデバイス。
【請求項6】
コイルアセンブリの第2の群および第3の群をそれぞれ収容するための凹部の第2の群および第3の群は、互いに隣接して、前記キャリアの縦方向に見たときコーナー凹部の第1の群の間に与えられることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載のアクチュエータデバイス。
【請求項7】
1つ以上の凹部の第2の群および/または第3の群は、単一の凹部からなることを特徴とする請求項6に記載のアクチュエータデバイス。
【請求項8】
前記第2の群および前記第3の群の凹部はいずれも、前記キャリアの横方向に平行に方向付けられた縦方向長さを持つことを特徴とする請求項6または7に記載のアクチュエータデバイス。
【請求項9】
前記コイルアセンブリの各々は、各凹部に絶縁的に収容されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のアクチュエータデバイス。
【請求項10】
前記コイルアセンブリの各々は、互いに積層された複数の巻コイルの群を含むことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のアクチュエータデバイス。
【請求項11】
前記複数のコイルアセンブリの第2の群および/または第3の群は、少なくとも1つの温度センサ、特にPTCサーミスタを備えることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のアクチュエータデバイス。
【請求項12】
前記キャリアは、冷却剤のためのチャネルを備え、
前記チャネルのそれぞれに端には、それぞれ注入口と排出口とが与えられることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のアクチュエータデバイス。
【請求項13】
前記チャネルは、前記注入口から前記排出口にかけて順に、前記コイルアセンブリの第1の群、第2の群および第3の群と熱交換するように接触することを特徴とする請求項12に記載のアクチュエータデバイス。
【請求項14】
前記キャリアは、前記凹部の第1の群、第2の群および第3の群のすべての凹部を覆うカバープレートを与えられることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載のアクチュエータデバイス。
【請求項15】
前記チャネルは、前記凹部に対向する前記カバープレートの表面に与えられることを特徴とする請求項14に記載のアクチュエータデバイス。
【請求項16】
前記キャリアは長方形であることを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載のアクチュエータデバイス。
【請求項17】
対象を平面内で位置決めする位置決めシステムであって、
支持構造と、
対象テーブルと、
位置決めモジュールと、
請求項1から16のいずれかに記載のアクチュエータデバイスと、
を備え、
前記アクチュエータデバイスは、前記対象テーブルを支持するように構成され、
前記位置決めモジュールは、前記アクチュエータデバイスおよび前記対象テーブルを、平面内で、前記支持構造に対して直線的に動かすように構成されることを特徴とする位置決めシステム。
【請求項18】
前記支持構造は、互いに平行に方向づけられた第1の延長ガイドおよび第2の延長ガイドを備え、
前記第1の延長ガイドおよび前記第2の延長ガイドはいずれも、互いに磁極を逆向きに、互いに隣接して配置された磁石の第1の群および第2の群を備えることを特徴とする請求項17に記載の位置決めシステム。
【請求項19】
前記磁石は、永久磁石または電磁石であることを特徴とする請求項18に記載の位置決めシステム。
【請求項20】
動作中、前記第1の延長ガイドおよび前記第2の延長ガイドの磁石の第1の群および第2の群はそれぞれ、前記アクチュエータデバイスのコイルアセンブリの第2の群および第3の群と相互作用することを特徴とする請求項17または18に記載の位置決めシステム。
【請求項21】
前記位置決めモジュール、前記アクチュエータデバイスおよび前記対象テーブルは、位置決めフレーム内に収容され、
前記位置決めフレームは、前記位置決めモジュールを用いて、前記支持構造に対して運動可能であることを特徴とする請求項17から20のいずれかに記載の位置決めシステム。
【請求項22】
前記位置決めフレームと前記対象テーブルとの間にダンピング要素が配置されることを特徴とする請求項17から21のいずれかに記載の位置決めシステム。
【請求項23】
前記支持構造とグランドフロアとの間にエアベアリングが配置されることを特徴とする請求項17から22のいずれかに記載の位置決めシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置決めシステムに使われるアクチュエータデバイスに関する。このアクチュエータデバイスは、プレート内で位置決めシステムの支持構造に対して直線的に移動可能である。本発明はまた、そのようなアクチュエータデバイスを備えた位置決めシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
高真空または低真空(あるいはクリーンルーム)における製造プロセスアプリケーション(例えば、非限定的に、半導体分野でのウェハハンドリングアプリケーション)では、プロダクトの性能向上に伴い、プロセスの信頼性・安定性や、より正確な位置決め機構への要求が高まっている。
【0003】
真空環境での製造プロセスでの要求は、その後の多くのプロセスにおいても、プロダクト(例えば、ウェハ)の位置決めおよび方向づけに関し、高いレベルの基準を設定する。特に、稼働機械部品および/または電気回路部品によってプロセスラインで発生する振動は、プロセスライン内で処理されるプロダクトの移動および位置決めの精度に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0004】
振動の低減は、磁気ベアリングアセンブリ、磁気コイルアセンブリまたはショート磁気ベアリングを使うことによって実現することができる。磁気ベアリングが非接触だとすれば、機械的摩擦が存在しないため、振動を抑制することができる。さらに注油が不要なため、真空動作時に分子汚染を防ぐための排気が不要となる。これとは別に、粒子発生が非常に少ないことは、真空状態でのプロセスアプリケーションにおいて望ましい。これにより、汚染封止を省くことができるからである。
【0005】
高技術の高真空に対して磁気ベアリングまたは磁気コイルアセンブリを適用するときの主要な課題は、コイル内の熱放出を最小化すること、渦電流効果を最小化すること、安定的な制御システムを実現すること、および通常は非線形な特性を線形化することにある。
【0006】
現代の無振動位置決めシステムのデザインでは、磁気コイルアセンブリは、プロダクト(例えば、ウェハ)を平面内で数度の自由度で動かし、位置決めするためのアクチュエータとして実装される。2つの種類のアクチュエータが知られている。1つ目は、直接運動軸(すなわち、各軸(自由度)が単一のアクチュエータを持つもの)が個別のセンサおよび制御で支持されるものである。2つ目は、デュアル運動軸であり、1つ以上の軸(自由度)が積層されたまたは2段階の運動制御を持つものである。第1段階は「粗い」または「より正確でない」移動を担い、最終段階は「正確な」位置決めを担う。最もよく知られたプロセスアプリケーションでは、すべての軸(自由度)が直接運動またはデュアル運動で制御される。
【0007】
直接運動軸アクチュエータは、(サブ)μmの精度が必要とされるプロセスであって、プロセス対象のプロダクトに穏やかな加速が加えられるプロセスで実装される。デュアル運動軸アクチュエータは、(サブ)nmの精度が必要とされるプロセスであって、プロセス対象のプロダクトに急加速が加えられるプロセスで実装される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高い精度の移動および位置決めを必要とする高真空および低真空環境下において、直接運動軸およびデュアル運動軸の制御が統合され、単一の限られた構造的サイズでプロダクトプロセスアプリケーションを可能とする、改良されたアクチュエータデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るアクチュエータデバイスの例では、当該アクチュエータデバイスは、縦方向長さと横方向長さとを有するキャリアと、前記キャリア内にコイルアセンブリの複数の群と、を備え、前記コイルアセンブリの群の各々は、少なくとも1つの自由度で前記キャリアを方向づけるように構成される。
【0010】
本発明に単一デザインのアクチュエータデバイスは、限られた構造的サイズを有し、運動および位置決めに関し複数の自由度で高い精度を実現する。
【0011】
一例では、キャリアは、1つ以上の凹部の複数の群を与えられ、前記1つ以上の凹部の群の各々は、前記コイルアセンブリの1つ以上の群に属する1つ以上のコイルアセンブリを収容するように構成される。
【0012】
特に、前記1つ以上の凹部の第1の群は、4つのコーナー凹部を備え、前記コーナー凹部の各々は、前記キャリアのコーナーにまたはコーナーの近辺に与えられる。前記コーナー凹部の各々は、2つのコーナー貫通孔を与えられる。前記コーナー凹部の各々は、コイルアセンブリの第1の群のUコアコイルアセンブリを収容するように構成され、前記Uコアコイルアセンブリのヨークの各々は、前記キャリア表面から外側に延びる前記コーナー貫通孔の1つを通してマウントされ、コイルアセンブリの前記第1の群のコイルアセンブリは、前記Uコアコイルアセンブリのヨークの各々の周囲にマウントされる。このコイルアセンブリの第1の群は、アクチュエータデバイスキャリアの運動および位置決めをz自由度で制御するように構成される。
【0013】
さらに別のアクチュエータデバイスの有利な例では、コイルアセンブリの第2の群および第3の群をそれぞれ収容するための凹部の第2の群および第3の群は、互いに隣接して、前記キャリアの縦方向に見たときコーナー凹部の第1の群の間に与えられる。これらのコイルアセンブリの第2の群および第3の群は、それぞれ、アクチュエータデバイスキャリアの運動および位置決めをx自由度およびy自由度で制御するように構成される。
【0014】
本発明に係るアクチュエータデバイスの特定の例では、1つ以上の凹部の第2の群および/または第3の群は、単一の凹部からなる。前記第2の群および前記第3の群の凹部はいずれも、前記キャリアの横方向に平行に方向付けられた縦方向長さを持つ。これにより、キャリアの機械加工が容易となり、熱拡散および冷却に関する温度特性が改善される。
【0015】
好ましくは、コイルアセンブリの各々は、各凹部に絶縁的に収容される。これにより、望まれない渦電流の影響を防ぐことができる。
【0016】
特に、コイルアセンブリの各々は、互いに積層された複数の巻コイルの群を含む。このデザインにより、熱抵抗を低く抑えることができる。その結果、フィルファクタが向上し、運動および位置決めが正確となる。
【0017】
別の例では、複数のコイルアセンブリの第2の群および/または第3の群は、少なくとも1つの温度センサ、特にPTCサーミスタを備える。これにより適切な温度制御が可能となる。その結果、動作が安定化し、アクチュエータデバイス1(およびそこに設置されるプロダクト)の動作および位置決めに悪影響を及ぼす故障および/または障害を防ぐことができる。
【0018】
キャリアの温度特性をさらに向上させ、位置決めシステム内でのキャリアの動作を改善するために、一例では、キャリアは、冷却剤のためのチャネルを備え、前記チャネルのそれぞれに端には、それぞれ注入口と排出口とが与えられる。
【0019】
特に、チャネルは、前記注入口から前記排出口にかけて順に、前記コイルアセンブリの第1の群、第2の群および第3の群と熱交換するように接触する。この構成により、冷却剤を効率的に導くことができる。すなわち、先ず冷却剤を、最も熱拡散の小さいコイルアセンブリの第1の群の上に導く。次に冷却剤を、キャリア形状のアクチュエータデバイスの縦方向サイドに沿って導く。最後に冷却剤を、コイルアセンブリのさらなる群(これは、コイルアセンブリの第1の群の間で、アクチュエータデバイスの中央または中間部に配置される)の上に導く。このコイルアセンブリのさらなる群は、動作中、最も熱拡散の大きいものである。
【0020】
さらに改良された例では、凹部の第1の群、第2の群および第3の群のすべての凹部を覆うカバープレートを与えられる。前記凹部に対向する前記カバープレートの表面に与えられると、アクチュエータデバイスの組み立ておよび保守が容易となる。
【0021】
好ましくは、キャリアは長方形である。しかし、プロダクトプロセスアプリケーションによっては、正方形のような他の形状の方がより効果的で実用的なこともある。
【0022】
一例では、対象を平面内で位置決めする位置決めシステムは、支持構造と、対象テーブルと、位置決めモジュールと、前述のいずれかに記載のアクチュエータデバイスと、備え、前記アクチュエータデバイスは、前記対象テーブルを支持するように構成され、前記位置決めモジュールは、前記アクチュエータデバイスおよび前記対象テーブルを、平面内で、前記支持構造に対して直線的に動かすように構成される。
【0023】
特に、支持構造は、互いに平行に方向づけられた第1の延長ガイドおよび第2の延長ガイドを備え、前記第1の延長ガイドおよび前記第2の延長ガイドはいずれも、互いに磁極を逆向きに、互いに隣接して配置された磁石の第1の群および第2の群を備える。
【0024】
特に、磁石は、永久磁石または電磁石であり、前記第1の延長ガイドおよび前記第2の延長ガイドの磁石の第1の群および第2の群はそれぞれ、前記アクチュエータデバイスのコイルアセンブリの第2の群および第3の群と相互作用する。これにより、x自由度およびy自由度において適切な位置制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
以下、添付の図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
図1A】本発明に係るアクチュエータデバイスの実施の形態を示す図である。
図1B】本発明に係るアクチュエータデバイスの実施の形態を示す図である。
図1C】本発明に係るアクチュエータデバイスの実施の形態を示す図である。
図1D】本発明に係るアクチュエータデバイスの実施の形態を示す図である。
図1E】本発明に係るアクチュエータデバイスの実施の形態を示す図である。
図1F】本発明に係るアクチュエータデバイスの実施の形態を示す図である。
図1G】本発明に係るアクチュエータデバイスの実施の形態を示す図である。
図2A】本発明に係るアクチュエータデバイスに使われる電気コイルの例を示す図である。
図2B】本発明に係るアクチュエータデバイスに使われる電気コイルの例を示す図である。
図2C】本発明に係るアクチュエータデバイスに使われる電気コイルの例を示す図である。
図2D】本発明に係るアクチュエータデバイスに使われる電気コイルの例を示す図である。
図3A】本発明に係る位置決めシステムの実施の形態を示す図である。
図3B】本発明に係る位置決めシステムの実施の形態を示す図である。
図3C】本発明に係る位置決めシステムの実施の形態を示す図である。
図3D】本発明に係る位置決めシステムの実施の形態を示す図である。
図4A】本発明に係る位置決めシステムのさらなる実施の形態を示す図である。
図4B】本発明に係る位置決めシステムのさらなる実施の形態を示す図である。
図4C】本発明に係る位置決めシステムのさらなる実施の形態を示す図である。
図4D】本発明に係る位置決めシステムのさらなる実施の形態を示す図である。
図4E】本発明に係る位置決めシステムのさらなる実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の理解を助けるために、図面内で類似する部品には類似する符号を付す。
【0027】
図1A-1Gは、本発明に係るアクチュエータデバイスの実施の形態を示す。アクチュエータデバイスは符号1で示され、特に位置決めシステムで使われる。このような位置決めシステム20の例が、図3A-3Cおよび図4A-4Eにより詳細に示される。
【0028】
高真空または低真空(あるいはクリーンルーム)における製造プロセスアプリケーション(例えば、非限定的に、半導体分野でのウェハハンドリングアプリケーション)では、このようなアクチュエータは、ウェハを運ぶキャリアの支持として役立つ。アクチュエータデバイス1は、ウェハキャリアおよびその上に配置されたウェハ基板とともに、平面内で、位置決めシステムの支持構造に対して直線的に移動可能である。そしてこれらは、ウェハ基板がプロセスチャンバ内で、熱処理や、ウェハ堆積プロセスステップや、フォトリソグラフィステップを受けることを可能とする。
【0029】
図1A-1Eに示されるアクチュエータは、単一の限られた構造的サイズを持ち、高い精度の移動および位置決めを必要とする高真空または低真空下でのプロダクトプロセスアプリケーションを実現する。
【0030】
図示されるように、アクチュエータデバイス1は、平面状であり、第1の表面1Aと、当該第1の表面1Aの反対側の第2の表面1Bとを有する。好ましくはアクチュエータデバイス1はキャリアエレメント10として構成され、好ましくは一体のエレメントとして製造され、非(鉄)材料(例えば、プラスティックやアルミニウム)で形成される。キャリアエレメントまたはキャリア10は、平坦で平板状の構造を持つ。キャリアエレメントまたはキャリア10の厚さ方向の長さzは、縦方向の長さyおよび横方向の長さxより格段に小さい。キャリア10は、縦方向の長さyの方が横方向の長さxより長い(y>x)長方形であってもよいし、x=yの正方形であってもよい。
【0031】
本発明に係る単一デザインのアクチュエータデバイス1は、限られた構造的サイズを持ち、平面内の複数の自由度において高い精度の運動と位置決めとを可能とする。
【0032】
アクチュエータデバイス1は、キャリア10にマウントされたコイルアセンブリの複数の群を与えられる。図1A-1Fの実施の形態では、コイルアセンブリの3つの群が、アクチュエータデバイス1に実装される。これらコイルアセンブリの第1、第2および第3の群は、それぞれ符号110、120および130で示される。コイルアセンブリの第1、第2および第3の群の各々は、少なくとも1つの自由度(6つの自由度、x、y、z、Φ、ψおよびθのうちの)で、キャリア10を方向づけるように構成されたアクチュエータとして機能する。
【0033】
3次元直交座標系に関しては、図1A-1Bおよび1E-1Fを参照されたい。ここでは、アクチュエータデバイス1の3つの直行する自由度(x、yおよびzの並進方向)と、アクチュエータデバイス1のx、yおよびz軸回りの3つの回転自由度(Φ、ψおよびθ方向の回転)が示される。この3次元直交座標系は、図示されるすべての実施の形態に適用される。
【0034】
図1Gに示される実施の形態では、アクチュエータデバイス1’は、コイルアセンブリの2つの群120および130を与えられる。これらの群の各々は、少なくとも3つの自由度で、キャリア10を方向づけるように構成されたアクチュエータとして機能する。これら3つの自由度の中には、x方向およびy方向の自由度がある。
【0035】
図1A-1Fに戻ると、キャリア10は、1つ以上の凹部からなる複数(ここでは3つ)の群を与えられる。これらの凹部の群の数は、アクチュエータデバイス1のコイルアセンブリの群の数に一致する。凹部の群は、好ましくは機械加工その他の材料剥離技術を用いて、アクチュエータデバイス1の第1の表面1A内に与えられる。図1A-1Fに示される実施の形態では、凹部の3つの群は、符号11、12、13で示される。1つ以上の凹部の群11、12、13の各々は、複数のコイルアセンブリの群11、12、13に属する1つ以上のコイルアセンブリを収容するように構成される。
【0036】
すなわち、凹部の第1の群11は、コイルアセンブリの群110に属する1つ以上のコイルアセンブリを収容するように構成される。凹部の第2の群12は、コイルアセンブリの群120に属する1つ以上のコイルアセンブリを収容するように構成される。凹部の第3の群13は、コイルアセンブリの群130に属する1つ以上のコイルアセンブリを収容するように構成される。
【0037】
コイルアセンブリの群110に属するコイルアセンブリを収容する凹部の第1の群11をより詳細に見ると、第1の群11は4つのコーナー凹部11A、11B、11C、11Dからなることが分かる。これらのコーナー凹部11A、11B、11C、11Dの各々は、キャリア10のコーナー10A、10B、10C、10Dの近辺に配置されることが分かる。特にコーナー凹部11A-11Bおよび11C-11Dは、キャリア10の各横側面yに隣接して配置される。
【0038】
さらに、各コーナー凹部11A、11B、11C、11Dは、コーナー貫通孔17A-17Dを与えられる。特にコーナー凹部11A-11Bおよび11C-11Dの各々は、2つのコーナー貫通孔17A1-17A2、17B1-17B2、17C1-17C2、17D1-17D2(より簡単に表現すれば、17#1-17#2、ただし#は各コーナーA-Dを示す)を与えられる。
【0039】
各コーナー凹部11A-11B-11C-11Dは、コイルアセンブリ110の第1の群に属するUコアコイルアセンブリを収容するように構成される。これらのUコアコイルアセンブリは符号110A-110Dで示され、より詳細には図2Dに示される。Uコアコイルアセンブリ110A-110Dの各々は、2つのコイルセクション110#1-110#2(#はA-Dを示す)からなる。これらは巻コア113#1-113#2(再び、#はA-Dを示す)の周囲に巻き付けられる。2つのコイルセクション110#1-110#2同士は、ワイヤ接続114によって電気的に相互接続される。巻コア113#1-113#2の各々は、それぞれ巻コア開口115#1-115#2を与えられる。
【0040】
各Uコアコイルアセンブリ110A-110Dは、リラクタンスヨーク111A-111Dをさらに備える。リラクタンスヨーク111A-111Dの各々は、2つのヨークレグ111#1-111#2(#はA-Dを示す)を有する。好ましくは、各リラクタンスヨークは、鋼や鉄などの強磁性材料で作られる。図1A、1B、1D、1E、1F、に示されるように、各ヨーク111A-111Dは、2つのヨークレグ111#1-111#2を用いて、各コーナー凹部11A-11B-11C-11Dのコーナー貫通孔17#1-17#2を通してマウントされる。特に2つのヨークレグ111#1-111#2はそれぞれ、第2の表面1Bから、コーナー貫通孔17#1-17#2および巻コア#1-110#2(#はA-Dを示す)からなる。これらは巻コアの巻コア開口115#1-115#2を通して、外側に延びる。コイルアセンブリの第1の群110のコイルアセンブリ110A-110Dの各コイルセクション110#1-110#2は、ヨークヨーク111A-111Dの各ヨークレグ111#1-111#2の周囲にマウントされる。
【0041】
図1Bに示され、図1E、1F、3A、3B、3C、4A、4Bにも示されるように、U字型のヨーク111A-111Dの中央部は、アクチュエータデバイス1の(キャリア10の)第2の表面の下側で延びる。
【0042】
Uコアコイルアセンブリ110A-110Dは、リラクタンスコイルアクチュエータとして機能し、キャリア10をz方向の自由度に方向づけるまたは位置決めするように構成される。Uコアコイルアセンブリ110A-110Dを互いに独立に作動させることにより、アクチュエータ10をΦ自由度方向(x軸回り)およびψ自由度方向(y軸回り)に位置決めすることができる。
【0043】
この例では、コイルアセンブリの第1の群は、4つのUコアコイルアセンブリ110A-110Dを備える。Uコアコイルアセンブリ110A-110Dの各々は、キャリア10のコーナーの近辺に配置され、アクチュエートされる。Uコアコイルアセンブリの数は4子に限定されず、任意であってよい。しかしながら、図示されない本発明の他の例では、キャリア10は、より少ない(例えば2個)またはより多い(例えば6個または8個)Uコアコイルアセンブリ110#を与えられてもよい(ここで、#は2つのコイルA-B、6つのコイルA-F、または8つのコイルA-Hを示す)。コイルアセンブリの第1の群に属するUコアコイルアセンブリの数は、キャリア10のサイズおよびそのアプリケーションに応じて、任意に選択されてよい。
【0044】
同様に、図1A-1Fに示されるアクチュエータデバイス1は、コイルアセンブリの第2の群120および第3の群を収容するための、1つ以上の凹部の第2の群12および第3の群13を示す。これらの凹部12および13は、アクチュエータデバイス1のキャリア10の第1の表面1Aに与えられる。凹部12および13は、互いに隣接して配置され、キャリア10のx方向に見たとき、コーナー凹部11A-11Dの間に(特に、コーナー凹部11A-11Bと11C-11Dとの間に)配置される。
【0045】
この特定の例では、1つ以上の凹部の第2の群および/または第3の群は、それぞれ符号12および13で示される。
【0046】
特に、第2および第3の群の凹部12-13は、キャリア10の横方向の長さxと平行な方向の長さを持つ。実際、凹部12-13の長さ方向は、キャリア10の縦方向の長さyと垂直である。
【0047】
図1A-1Fに示される例では、コイルアセンブリ120の第2の群は、6個の別個のコイルアセンブリ120A-120Fを備える。第2の凹部12内のコイルアセンブリのキャリア10に対する方向により、第2の群120は、キャリア10を少なくともx方向の自由度で方向づけるまたは位置決めするように構成される。
【0048】
同様に、コイルアセンブリ130の第3の群は、2個の別個のコイルアセンブリ130A-130Bを備える。第3の凹部13内のコイルアセンブリのキャリア10に対する方向により、第3の群130は、キャリア10を少なくともy方向の自由度で方向づけるまたは位置決めするように構成される。代替的に、2つのコイルアセンブリ130A-130Bを互いに独立にアクチュエートすることにより、アクチュエータ10をθ方向(z軸回りの回転)の自由度で位置決めすることができる。
【0049】
コイルアセンブリの第1の群に属するUコアコイルアセンブリの数の任意性と同様に、コイルアセンブリの第2および第3の群内のコイルアセンブリの数も任意であり、1から8までのいずれの数であってよい(好ましくは2以上)。コイルアセンブリ130の第3の群の例では、4個の別個のコイルアセンブリ130A-130A’-130B-130B’を備えることができる。この場合、コイルアセンブリ130A-130A’および130B-130B’はそれぞれ、キャリア10のy方向にグループ化される。コイル120#および13#の数は、キャリア10のサイズおよびそのアプリケーションに依存してもよい。
【0050】
コイルアセンブリの第2の群および第3の群のコイルアセンブリ120A-120Fおよび130A-130Bは、実際には永久磁石ローレンツアクチュエータとして機能する。
【0051】
図2A-2Dには、第1(図2D)、第2および第3(図2A-2C)の群のコイルアセンブリのいくつかのコイルの構成が示される。図2A-2Cでは、各コイルアセンブリ(120A-120F;130A-130B)は、コイルアセンブリの第2の群120および第3の群130の一部であり、1つ1つが屈曲したコイル(18A)を複数積層された構造を取る。すなわち、6枚のコイル18A-18Fが積層されている。このデザインにより、熱抵抗を低く抑えることができる。その結果、フィルファクタが向上し、運動および位置決めが正確となる。
【0052】
さらに、各コイルアセンブリ120A-120F;130A-130Bは、例えば電気的絶縁材料(例えば、ポリイミドフィルム材料)で形成されたエンクロージャー19を用いて、各凹部12-13に絶縁的に収容される。このようなフィルム材料は、ボックス19として折りたたまれて形成されて配置され、アセンブリ120A-120F;130A-130Bを収容するように設計される。このようなポリイミドフィルム材料には、カプトン(登録商標)がある。
【0053】
コネクティングガイド15A-15B-15Cを介して、複数のコイルアセンブリ110A-110D;120A-120F;130A-130Bが、位置決めシステム20の位置決め機構22の適切な制御回路に電気的に接続される。
【0054】
図1Dに示されるさらに別の例では、複数のコイルアセンブリ120A-120F;130A-130Bの少なくとも1つの第2の群120および/または第3の群130はそれぞれ、少なくとも1つの温度センサ121および131を与えられる。特に温度センサ121および131は、PTCサーミスタであってもよい。これにより適切な温度制御が可能となる。その結果、動作が安定化し、アクチュエータデバイス1(およびそこに設置されるプロダクト)の動作および位置決めに悪影響を及ぼす故障および/または障害を防ぐことができる。
【0055】
キャリア10の熱特性をさらに改善し、位置づけシステム20内の動作を改善するために、例えば図1Cに示されるように、下面(第2の表面1B)から見たキャリア10が与えられる。これは、第2の表面1Bに少なくとも1つの冷却剤用のチャネル16を備え、チャネル16のそれぞれの端部に注入口16Aおよび排出口18Bを備える。
【0056】
特に注入口16Aから排出口18Bにかけて、チャネル16は、コイルアセンブリの第1、第2および第3の群と順次熱交換するように接触する。太い破線は、コイルアセンブリ110-120-130の複数の群に沿ってチャネル16を流れる冷却剤の流れの向きを示す。
【0057】
この例では、2つのチャネル16-16’が与えられる。チャネル16-16’の各々は、冷却剤を、コイルアセンブリの第1の群110、第2の群120および第3の群130と順次熱交換するように接触するように導くための注入口16Aおよび16Bを備える。流れの向きを示す破線矢印に従うと、各チャネル16(16’)に関し、冷却剤はそれぞれ、先ず第1のコイルアセンブリ110C-B(110D-A)を通り、次に第2のコイルアセンブリ120D-E-F(120B-A)を通り、最後に第3のコイルアセンブリ130B(130A)を通る。
【0058】
しかしながら、冷却剤を、コイルアセンブリの第1の群110、第2の群120および第3の群130と順次熱交換するように接触するように導くために、単一のチャネル16を使ってもよい。
【0059】
このチャネル配置では、冷却剤(例えば、水)を次にように導く。先ず冷却剤を、最も熱拡散の小さいコイルアセンブリの第1の群の上に導く。ここで、第1の群110のコイルアセンブリは110A-110Dである。次に冷却剤を、キャリア形状のアクチュエータデバイス1の縦方向サイドに沿って導く。最後に冷却剤を、コイルアセンブリ120A-120F;130A-130Bのさらなる群120-130(これは、コイルアセンブリ110A-110Dの第1の群の間で、アクチュエータデバイス1の中央または中間部に配置される)の上に導く。このコイルアセンブリのさらなる群120-130は、動作中、最も熱拡散の大きいものである。
【0060】
図1Eに示されるように、キャリア10は、キャリア10の第1の表面に配置されるカバープレート14(遮蔽プレート)を与えられる。カバープレート14は、凹部の第1の群11、第2の群12および第3の群のすべての凹部ならびにコイルアセンブリの群110-120-130いくつかのコイルアセンブリ110A-110D;120A-120F;130A-130Bを覆う。キャリア10は、コーナーにまたはコーナーの近辺に、いくつかの取り付け開口10A’-10D’を与えられる。これにより、アクチュエータデバイス1の組み立ておよび保守が容易となる。
【0061】
図1Cに示される実施の形態と異なる特定の実施の形態では、冷却剤のためのチャネル16(またはチャネル16-16’)は、凹部11-12-13およびアクチュエータデバイス1/キャリア10の第1の表面に対向する、カバープレート14の表面内に与えられる。この実施の形態は、キャリア10の第1の表面1Aにマウントされたカバープレート14とともに、図1に示される。薄いグレーで示される冷却剤のためのチャネル16は、チャネル16が(例えば、機械加工を用いて)カバープレート14の表面内に与えられることを示す。これは図1Fには示されないが、第1の表面1Aの上面に対向する(図1Bの実施の形態に示される)。
【0062】
好ましくは、キャリア10は、長方形である(図1A-1F)。しかし、プロダクトプロセスアプリケーションによっては、正方形(図1G)のような他の形状の方がより効果的で実用的なこともある。
【0063】
図1A-1Fでは、アクチュエータデバイス1は、コイルアセンブリ110A-110D;120A-120F;130A-130Bの3つの群11-12-13を備える。これにより、アクチュエータ10を6つの自由度(自由度x、y、z、Φ、ψ、θ)で位置決めすることができる。
【0064】
図1Gには、アクチュエータデバイス1’の他の例が示される。ここでは、各コーナー10A-10Dのコイルアセンブリ110A-110Dの第1の群11が割愛される。アクチュエータデバイス1’は、コイルアセンブリの第2の群120および第130の群を備える。従って、アクチュエータデバイス1’を4つの自由度x、y、ψ(y軸回りの回転)およびθ(z軸回りの回転)で位置決めするように構成される。従ってこの実施の形態では、構造的サイズがさらに限定され、動きおよび位置決めに関する精度の改善は抑えられ、しかし他のタイプのプロセスアプリケーションでも複数の自由度に対応できる。
【0065】
本発明では、アクチュエータデバイス1は、コイルアセンブリの少なくとも2つの群(特にコイルアセンブリ120#および130#のそれぞれ群12および13)を備える点に注意する。
【0066】
図3A-3Cおよび4A-4Eは、対象を平面内に位置決めするための位置決めシステム20いくつかの態様および例を開示する。システム20は、支持構造25;対象テーブル24;位置決めモジュールまたは計測部品22および図1A-1Gに示されるアクチュエータデバイス1を備える。アクチュエータデバイス1は、対象テーブル24を支持するように構成される。位置決めモジュールまたは計測部品22は、アクチュエータデバイス1を対象テーブル24とともに、xy平面内で、支持構造25に対して直線的に動かすように構成される。
【0067】
特に位置決めモジュールまたは計測部品22、アクチュエータデバイス1および対象テーブル24は、位置決めフレーム21にマウントされる。さらに位置決めフレーム21は、運用中の冷却、安定性支持およびアクチュエータ1の精度向上のための補助手段を与えられてもよい。
【0068】
対象テーブル24は、基板ウェハ(図示せず)または同様のプロダクト(例えば、プロセスチェンバ31)(図4D参照)内でフォトリソグラフィ処理ステップを受けるプロダクト)を支持するのに役立つ。こうした処理ステップは、真空環境において、動きおよび位置決めに関し非常に高い精度を必要とする。対象テーブル24は、基板ウェハを収容する凹部24を与えられてもよい。
【0069】
支持構造25は、第1の延長ガイド25Aおよび第2の延長ガイド25Bを備える。これらの延長ガイド25A-25Bは、位置決めシステム内で互いに平行な向きを向く。第1の延長ガイド25Aおよび第2の延長ガイド25Bはいずれも、互いに磁極を逆向きに、互いに隣接して配置された磁石の第1の群26および第2の群27を備える。磁石アセンブリの第2の群27の各々は、別個の2つの磁石28A-28Bを備える。
【0070】
好ましくは、磁石26;28A-28Bは、永久磁石または電磁石である。動作中、第1の延長ガイド25Aおよび第2の延長ガイド25Bの磁石の第1の群26および第2の群27はそれぞれ、アクチュエータデバイスのコイルアセンブリの第2の群120および第3の群130と相互作用し、これにより、ローレンツアクチュエータの永久磁石として機能する。特に、第1の延長ガイド25Aの磁石の第1の群26は、コイルアセンブリ120A-120Fの第2の群120と相互作用する。これにより、アクチュエータデバイス1および対象テーブル24の、延長ガイド24A-25Bの縦方向であるx方向(x自由度)の動きおよび位置決めが可能となる。
【0071】
第2の延長ガイド25B磁石の第2の群27;28A-28Bは、コイルアセンブリ130A-130Bの第3の群130と相互作用する。これにより、アクチュエータデバイス1および対象テーブル24の、y方向(y自由度)の動きおよび位置決めが可能となる。
【0072】
位置決めモジュール/計測部品22を収容することにより、位置決めフレーム21内のアクチュエータデバイス1および対象テーブル24は、位置決めモジュール22を用いて、支持構造25に対して運動可能である。これは、第2の群および第3の群のいくつかのコイルアセンブリの、少なくともxy平面内(xおよびy自由度)の相互作用による。さらに、コイルアセンブリの第3の群の2つのコイルアセンブリ130A-130Bの独立制御により、アクチュエータデバイス1および対象テーブル24の、z軸回りのひねる方向の運動が可能となる(θ自由度)。
【0073】
ケーブルスラブ29が、位置決めフレーム21の重心近くに与えられる。これにより、信号の劣化および振動が最小化される。
【0074】
支持構造25はまた、2つの追加的な延長ガイド25Cを与えられる。これは、第1および第2の延長ガイド25A-25Bを間にはさんで、位置決めシステム20のそれぞれ反対側に配置される。延長ガイド25A-25B-25Cは、コイルアセンブルの第1の群110、第2の群120および第3の群130と適切に相互作用するために、強磁性体材料で作られる。特に、追加的な延長ガイド25Cは、コイルアセンブリの第1の群110のUヨークコイルアセンブリ110A-110Dと相互作用する。これにより、アクチュエータデバイス1および対象テーブル24の、z方向(z自由度)への方向づけが可能となる。さらに、コイルアセンブリの第1の群のコイルアセンブリ110A-110Dの独立制御により、アクチュエータデバイス1および対象テーブル24の、Φ自由度(x軸回りの回転)およびψ自由度(y軸回りの回転)の曲げが可能となる。
【0075】
延長ガイド25A-25B-25Cは、磁気遮蔽プレート30によって覆われる。磁気遮蔽プレート30は、凹部24A内に配置された対象テーブル24および基板ウェハ(図示せず)を、磁石26;27-28A-28Bおよびアクチュエータデバイス1による磁気干渉から遮蔽する。
【0076】
符号32A-32Dは、コイルアセンブリの第1の群110のUヨークコイルアセンブリ110A-110Dのヨーク111A-111Dに接続されたヨークコネクタを示す。これらのヨークコネクタ32A-32Dは、アクチュエータデバイス1(および対象テーブル24)と位置決めフレーム21との機械的接続を形成する。これにより、アクチュエータデバイス1(および対象テーブル24)および位置決めフレーム21の、延長ガイド25A-25B-25Cに沿った変位が可能となる。
【0077】
図4A-4Cは、図1A-1Dに示されるアクチュエータデバイス1を与えられた位置決めシステム20を示す。従って、コイルアセンブリの3つの群110-120-130が示され、キャリア10および対象テーブル24の6つの自由度(自由度s、y、z、Φ、ψ、θ)での位置決めが可能となる。
【0078】
図4Dは、簡略化したデザインの位置決めシステム20を示す。このシステムは、図1Gに示されるアクチュエータデバイス1を与えられ、従ってコイルアセンブリの2つの群120-130のみが与えられる。これにより、キャリア10の、4つの自由度x、y、ψ(y軸回りの回転)およびθ(z軸回りの回転)の位置決めが可能となる。コイルアセンブリ110A-110Dの第1の群110を欠くことは、z方向のアクチュエートがないことを意味する。この運動制御の制限を補償するために、位置決めシステム20とグランドフロア33との間にエアベアリング34が与えられる。これにより、z方向の振動が最小化される。
【0079】
図4Eは、図4A-4Dに示されるものと似た位置決めシステム20を示す。これもまた、コイルアセンブリの3つの群110-120-130を含む。これにより、キャリア10および対象テーブル24の6つの自由度(自由度x、y、z、Φ、ψおよびθ)の位置決めが可能となる。さらに、計測経路における高周波振動を防ぐために、受動的ダンピング要素35が、位置決めフレーム21と対象テーブル24との間に配置される。受動的ダンピングにより、より高いサーボ帯域が得られ、位置決めシステム20(特に、計測経路22)の精度が改善される。さらに符号36は、カラムおよび計測経路22の励起を防ぐために、位置決めシステム20内にマウントされた追加的なバランスマスボディを示す。
【0080】
上記の例で、コイルアセンブリの複数の群が1つの(単一の)キャリアに統合された、改良されたアクチュエータデバイスが実現される。このアクチュエーティングコイルアセンブリの複数の群を備えた単一デザインにより、直接運動軸およびデュアル運動軸の両方に関して、キャリアおよび対象テーブルの6つの自由度(自由度x、y、z、Φ、ψおよびθ)の位置決めが可能となる。上記で説明したように、運動の6自由度とは、s、yおおよびz方向/軸の運動、ならびにx、yおよびz軸回りの回転を意味する。直接運動とは、単一の位置センサおよび同じ方向の制御を用いた、単一軸方向の運動の分散制御を意味する。デュアル運動制御とは、ある方向/軸の運動は移動および位置決めに関して低精度だが、他の方向/軸の運動はより高精度の制御として役立つことを意味する。
【0081】
さらに、統合された冷却および温度センサが、熱拡散および冷却に関してキャリアの温度特性を保つ。これは、動作中のアクチュエータの機械的安定性および運動精度を保つ。
【0082】
アクチュエーティングコイルアセンブリの複数の群を用いた6自由度のデザインにより、単一方向(典型的にはx方向)のロングストローク運動および他の自由度方向のショートストローク運動を実現するためのキャリアの運動が可能となる。
【0083】
本発明に係るアクチュエータデバイスは、高真空または低真空(またはクリーンルーム)でのプロダクトプロセスアプリケーション(例えば、半導体分野でのウェハハンドリングアプリケーション)で実現可能である。しかし、ウェハハンドリングアプリケーションに限定されるものではないことに注意する。本発明に係るアクチュエータデバイスは、キャリアまたはプロダクトの運動および位置決めが当該アプリケーションの性能に重要である他のアプリケーションにも利用可能である。
【0084】
特にこのアクチュエータデバイスは、請求項で定義された位置決めシステムに利用可能である。ここでは位置決めシステムは、スキャニングシステムとして構成される。そしてアクチュエータデバイスは、平面内で、スキャニングシステムの支持構造に対して、6自由度で一定速度で運動可能である。このように、位置決めシステム(スキャニングシステム)の制御システムは、アクチュエータデバイスのいくつかのコイルアセンブリを正確に制御することができる。このとき、システムを通して、アクチュエータデバイスの意図された運動を非常に正確にモニタすることができる。
【0085】
このような位置決めシステムおよび/またはスキャニングシステムは、計測フレームと周辺構造との間にスプリング-ダンパシステム(エアベアリング)を用いて、振動低減機能または振動除去機能を実現してもよい。例えば、スキャニングシステムおよび位置決めシステムは、アクチュエーションにより計測フレーム内に誘起された振動を最小化するためのバランスマス構造を含んでもよい。
【符号の説明】
【0086】
1・・アクチュエータデバイス、
1A・・第1の表面、
1B・・第2の表面、
10・・キャリアボディ、
10A-10D・・キャリアコーナー、
10A’-10D’・・取り付け開口、
11・・凹部の第1の群、
11A-11D・・凹部の第1の群に属する別個の凹部、
110・・コイルアセンブリの第1の群、
110A-110D・・コイルアセンブリの第1の群に属する第1のコイルアセンブリ、
110#1-110#2・・コイルアセンブリ110#のコイルセクション(#はA-D)、
111A-111D・・第1のコイルセクションヨーク、
111#1-111#2・・ヨーク111#のヨークレグ(#はA-D)、
113#3-113#2・・コイルセクション110#1-110#2の巻コア(#はA-D)、
114・・コイルセクション110#1-110#2のワイヤコネクション(#はA-D)、
115#1-115#2・・コイルセクション113#1-113#2の巻コア開口(#はA-D)、
12・・凹部の第2の群、
120・・コイルアセンブリの第2の群、
120A-120F・・コイルアセンブリの第2の群に属する第2のコイルアセンブリ、
121・・コイルアセンブリ第2の群の温度センサ、
13・・凹部の第3の群、
130A-130B・・コイルアセンブリの第3の群に属する第3のコイルアセンブリ、
131・・コイルアセンブリ第3の群の温度センサ、
14・・クロージャープレートまたは遮蔽プレート、
15A-15B-15C・・コイルアセンブリのためのコネクティングガイド、
16・・冷却剤チャネル、
16A・・冷却剤チャネル注入口、
16B・・冷却剤チャネル排出口、
17A-17D・・第1の凹部の貫通孔、
17#1-17#2・・ヨーク111#のヨークレグ111#1-111#2の貫通孔(#はA-D)、
18A-18F・・コイルアセンブリの第2および第3の群の別個の巻コイル、
19・・コイルアセンブリの第2および第3の群の電気的に絶縁されたポケット、
20・・位置決めシステム、
21・・位置決めフレーム、
22・・位置決め手段/計測部品、
23・・追加的なマス/計測部品、
24・・対象テーブル、
24A・・対象テーブルの表面の凹部、
25・・支持構造、
26・・第1の磁石アセンブリ、
27・・第2の磁石アセンブリ、
28A-28B・・第2の磁石アセンブリの別個の磁石、
29・・信号ケーブルスラブ、
30・・磁気遮蔽プレート、
31・・プロセスチェンバ、
32A-32D・・ヨークコネクタ、
33・・グランドフロア、
34・・エアベアリング、
35・・受動的ダンピング要素、
36・・バランスマスボディ。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
【国際調査報告】