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特表2023-509158腫瘍治療の医薬組み合わせとその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-07
(54)【発明の名称】腫瘍治療の医薬組み合わせとその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/343 20060101AFI20230228BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230228BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230228BHJP
   C07D 307/81 20060101ALN20230228BHJP
【FI】
A61K31/343
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K39/395 T
A61P35/02
C07D307/81
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540813
(86)(22)【出願日】2020-12-31
(85)【翻訳文提出日】2022-08-30
(86)【国際出願番号】 CN2020142257
(87)【国際公開番号】W WO2021136523
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】201911417368.7
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519448382
【氏名又は名称】フーカン(シャンハイ) ヘルス テクノロジー カンパニー、 リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FUKANG(SHANGHAI)HEALTH TECHNOLOGY CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェン、シャオクン
(72)【発明者】
【氏名】リ、ゼン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZC412
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA06
4C086GA13
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
(57)【要約】
本発明は腫瘍を治療するための医薬組み合わせ及びその使用を開示する。本発明の薬学的組み合わせは、式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物、及び「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」を含む。この薬物組み合わせの各成分は併用され、それぞれの単薬の腫瘍成長に対する抑制率を有意に高めることができ、投与後のマウスに急性の副作用が現れず、この連合療法が良好な安全性と有効性を示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩を含む溶媒和物、及び、「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」を含む医薬組み合わせ。
【化1】
【請求項2】
前記式Aで表される化合物の薬学的に許容される塩は、メフパリブ塩酸塩であり、
及び/又は、前記PD-1阻害剤はPD-1抗体、PD-1ポリペプチド及びPD-1小分子阻害剤中の1つ又は複数であり、さらにトリパリマブ、シンチリマブ、カムレリズマブ、ペムブロリズマブ及びニボルマブ中の一つ又は複数であってよく、さらにトリパリマブであってもよく、さらに拓益であってもよく、
及び/又は、前記PD-L1阻害剤は、PD-L1抗体、PD-L1ポリペプチド及びPD-L1小分子阻害剤中の1つ又は複数であり、さらに、アテゾリズマブ、デュルバルマブ及びアベルマブ中の一つ又は複数であってもよく、
及び/又は、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」及び前記「式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物」を、同時に投与するか、別々に投与し、さらに順次に投与し、
及び/又は、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」は経口投与又は注射投与により投与され、
及び/又は、前記式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物は経口投与により投与することを特徴とする請求項1に記載の医薬組み合わせ。
【請求項3】
前記医薬組み合わせは、メフパリブ塩酸塩とトリパリマブであることを特徴とする請求項1に記載の医薬組み合わせ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物;
請求項1~3のいずれか1項に記載の「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」;及び
薬用補助剤;
を含む医薬組成物X。
【請求項5】
前記医薬組成物Xは、注射剤形又は経口剤形で表されることを特徴とする請求項4に記載の医薬組成物X。
【請求項6】
第I医薬組成物と第II医薬組成物とを含むことを特徴とする医薬組成物Yであって、
前記第I医薬組成物は、請求項1~3のいずれか1項に記載の式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物、及び薬用補助剤を含み、
前記第II医薬組成物は、請求項1~3のいずれか1項に記載の「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」、及び薬用補助剤を含む、
ことを特徴とする医薬組成物Y。
【請求項7】
前記第I医薬組成物は経口剤形で表され、さらに錠剤剤形で表され、
及び/又は、前記第II医薬組成物は注射剤型の形態で表される、
ことを特徴とする請求項6に記載の医薬組成物Y。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の第I医薬組成物を含む第1容器;及び、
請求項6又は7に記載の第II医薬組成物を含む第2容器;
を含む医薬キット。
【請求項9】
腫瘍を予防及び/又は治療するための医薬の製造における物質Mの使用であって、
前記物質Mは、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組み合わせ、請求項4又は5に記載の医薬組成物X、又は、請求項6又は7に記載の医薬組成物Yである使用。
【請求項10】
前記腫瘍は、固形腫瘍及び/又は血液腫瘍であり、具体的に、肺癌、結腸癌、直腸癌、乳癌、前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、脳癌、腎臓癌、卵巣癌、胃癌、皮膚癌、骨癌、神経膠腫、膠芽細胞腫、肝細胞癌、乳頭状腎細胞癌、頭頸部癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫及び多発性骨髄腫中の一つ又は複数であり、
及び/又は、前記「式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物」及び「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」は、同時に投与するか、又は別々に投与し、さらに順次に投与し;
及び/又は、前記式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物の投与量は100~1000mg/回であり、
及び/又は、前記式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物の投与頻度は、0.5~2回/日であり、
及び/又は、前記式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物は経口投与され、
及び/又は、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」の投与量は50~500mg/回であり、
及び/又は、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」の投与頻度は、7~31日ごとに1回であり、
及び/又は、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」は経口投与又は注射投与により投与する、
ことを特徴とする請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物は経口投与され、投与量は100~1000mg/回であり、投与頻度は0.5~2回/日であり;
及び、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」の注射投与の、投与量は50~500mg/回であり、7~31日ごとに一回投与されることを特徴とする請求項10に記載の使用。
【請求項12】
腫瘍を治療するための医薬の調製における、請求項1~3のいずれか1項に記載の前記「式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物」の使用であって、
前記「式Aで表される化合物又はその薬学的に許容される塩」は、請求項1~3のいずれか1項に記載の「PD-1抑制剤及び/又はPD-L1抑制剤」と併用され、
好ましくは、前記腫瘍は、固形腫瘍及び/又は血液腫瘍であり、具体的に、肺癌、結腸癌、直腸癌、乳癌、前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、脳癌、腎臓癌、卵巣癌、胃癌、皮膚癌、骨癌、神経膠腫、膠芽細胞腫、肝細胞癌、乳頭状腎細胞癌、頭頸部癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫及び多発性骨髄腫中の一つ又は複数である、
ことを特徴とする使用。
【請求項13】
腫瘍を治療するための医薬の調製における、請求項1~3のいずれか1項に記載の前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」の使用であって、
前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」は、請求項1~3のいずれか1項に記載の「式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物」と併用され;
好ましくは、前記腫瘍は、固形腫瘍及び/又は血液腫瘍であり、具体的に、肺癌、結腸癌、直腸癌、乳癌、前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、脳癌、腎臓癌、卵巣癌、胃癌、皮膚癌、骨癌、神経膠腫、膠芽細胞腫、肝細胞癌、乳頭状腎細胞癌、頭頸部癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫及び多発性骨髄腫中の一つ又は複数である、
ことを特徴とする使用。
【請求項14】
被験者に有効量の物質Mを投与する段階を含み、
前記物質Mは、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組み合わせ、請求項4又は5に記載の医薬組成物X、又は、請求項6又は7に記載の医薬組成物Yであり、
好ましくは、前記式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物、及び、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」の投与経路、投与量及び投与頻度は、請求項10又は11に記載の通りである、
腫瘍の治療又は予防方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、出願日が2019年12月31日である中国特許出願201911417368.7の優先権を要求する。本出願は、上記の中国特許出願の全文を引用する。
【0002】
技術分野
本発明は、腫瘍治療の医薬組み合わせ及びその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
悪性腫瘍の精密治療は、腫瘍治療薬の発展の必然的な主流であり、今後の発展方向である。ポリアデノシン二リン酸リボグリゲーゼ(PARP)は、近年、腫瘍の精密治療の理念を体現するホットな薬物ターゲットであり、その阻害剤は、DNA塩基切除修復(BER)経路重要酵素PARP1/2を阻害することにより、DNA相同組換え欠損(HRD)にはBRCA1/2、PTEN、EWS-FLIなどが含まれ、相乗な致死効果を有する。HRDは腫瘍細胞でのみ発生し、正常細胞のHR機能は正常であるため、PARP阻害剤はHR経路欠陥腫瘍に対して高い選択性を有する。2014年には進行卵巣癌の治療用として、PARP阻害剤であるオラパリーブ(olaparib)の市販が欧米で同時に承認され、抗腫瘍標的としてのPARP阻害剤と相乗な致死理論の可能性が初めて臨床で確立された。現在、世界で4つのPARP阻害剤が上場されており、オラパリーブは2018年に中国市場に参入した。中国オリジナルのPARP阻害剤は現在新薬が上場されておらず、少数のPARP阻害剤は臨床の初期段階にある。
【0004】
特許第WO2013117120号に開示されているメフパリブ塩酸塩(Mefuparib hydrochloride)は(その構造式は
【化1】

である)、構造が新しく、その母核2-アリールフランが活性天然物中に広く存在し、薬物化学の優勢構造の1つであり、新薬物の将来性によい。当該PARP阻害剤は、水溶性が良く(>35mg/ml、オラパリーブ(olaparib)より350倍以上高く)、合成プロセスが簡単であり、制剤が簡単であり、安定性が良く、薬物動態性質が優れ、組織分布が高く、血液脳関門を透過しやすくなどの利点がある。これらの特徴は、様々な悪性腫瘍に対するメフパリブの治療に重要な基礎を提供する。
【0005】
腫瘍免疫治療は、人体の免疫システムを働かし、抗腫瘍免疫力を強化することによって、腫瘍細胞を抑制し殺傷する。腫瘍免疫治療は現在の腫瘍治療分野における最も有望な研究方向の一つである。PD-1(programmed death-1)は、アポトーシスのT細胞ハイブリドーマで得られ、アポトーシスと関連するためプログラム死PD-1受容体と命名され、PD-1プログラム死受容体は重要な免疫抑制分子であり、CD28スーパーファミリーのメンバーである。PD-1は主に活性化T細胞とB細胞に発現され、これは活性化T細胞の表面受容体であり、PD-1はPD-L1(B7-H1)とPD-L2(B7-DC)の2つのリガンドを有する。機体内の腫瘍微小環内の腫瘍は浸潤したT細胞にPD-1分子を高発現させ、腫瘍細胞はPD-1の配位子PD-L1とPD-L2を高発現させ、腫瘍微小環内のPD-1通路の持続的に活性化を引き起こし、PD-L1とPD-1が結合した後、T細胞機能が抑制され、免疫システムに腫瘍を攻撃する信号を出すことができない。PD-1抗体とPD-L1抗体を含むPD-1阻害剤は、腫瘍免疫治療の新しい薬物である。手術、放射化治療、標的薬とは異なり、PD-1阻害剤自体は癌細胞を直接殺傷することはできないが、これは患者自身の免疫システムを活性化させることによって抗癌する。
【0006】
現在、5種類のPD-1阻害剤が中国、米国、欧州など数十カ国で発売されており、2種類のPD-1抗体と3種類のPD-L1抗体を含み、それぞれOpdivo(Nivolumab)、Keytruda(Pembrolizumab)、Tecentriq(Atezolizumab)、Imfinzi(Durvalumab)、Bavencio(Avelumab)である。OpdivoとKeytrudaは既に中国国内で上場されている。このほか、国内の製薬会社からの3種類のPD-1が上場されており、それぞれJunshi Biosciences Co.,Ltd.のトリパリマブ(拓益)、innoventbiogics)のシンチリマブ(達伯舒)、Hengrui Pharmaceuticals Co.,Ltdのカムレリズマブである。
【0007】
2017年に開催されたサンアントニオ乳がん学会では、研究員は重大な研究結果が発表された。MEDIOLAのII期試験は、一つのPD-1抗体imfinzi(durvalumab)とPARP阻害剤Olaparib(Lynparza)を併用して、BRCA遺伝子の突然変異の、HER2増幅の陰性末期乳がん患者に用いる臨床実験である。データによると、12週の疾病抑制率は80%であり、28週の有効率は63%であり、28週の中位DoRは9.2カ月であり、28週の中位PFSは8.2カ月であり、28週の疾病抑制率は50%であった。従来のオラパリーブ単一薬治療を受けた患者よりも有効率が59.9%であり、中位PFSは7.0カ月であった。オラパニーブ関連の最も一般的なレベル3の不良は、貧血(12%)と好中球の減少(6%);ドルバルマブ(durvalumab)に関連する最も一般的なレベル3の副作用は膵炎(6%)である。
【0008】
2018年米国婦人科腫瘍学会(SGO)で、TOPACIO研究(PARP阻害剤のニラパリブ(Niraparib)とPD-1阻害剤のキトルダ(Keytruda)との併用の結果が報告され、プラチナ耐性/難治性卵巣癌及びトリプル陰乳癌患者に対して、PARP阻害剤とPD-1阻害剤の併用が持続することが示された。プラチナ二次耐性又は原発耐性卵巣癌患者又はトリプル陰性乳がん患者において、合計ORR(CR及びPRを含む)は25%であり、DCR(CR+PR+SD)は68%である。プラチナ系原発耐性患者では、ORRは24%である。患者の治療効果はマーカーの状態とは無関係である。BRCA野生型の患者では、ORRは26%である(9/34)。HRD陰性の患者では、ORRは29%である(7/24)。治療効果の持続期間に関するデータはまだ未完成で、応答のある60%(9/15)の患者が依然として治療を受けており、疾患が改善された患者の半分以上が6カ月以上の治療を受けた。副作用としては、レベル3以上の不良事件が32件/合計58件(55%)発生し、最も多いレベル3以上の不良事件は、貧血(18%)、血小板減少(15%)、疲労(4%)である。主な副作用はPARP阻害剤により引き起こし、また、15%(8人)の患者に免疫関連の副作用があった。
【0009】
総合的には、PARP阻害剤とPD-1抗体を併用したがん治療は、臨床で顕著な治療効果がある一方で、副作用のリスクが大きく、現在の臨床データの報告によると、副作用は主にPARPにより引き起こされる。したがって、PARP阻害剤とPD-1抗体との併用は、がん治療のための広い市場性を有し、より良い臨床効果とより低い副作用は、臨床開発の必然的な傾向である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、従来の技術とは異なる腫瘍治療の医薬組み合わせ及びその使用を提供する。本発明の医薬組み合わせの各成分を併用することで、腫瘍成長に対する各医薬の抑制率を有意に高めることができ、投与後のマウスには急性副作用が見られず、この併用療法の良好な安全性と有効性を示した。
【0011】
本発明は、式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物、又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物、及び「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」を含む医薬組み合わせを提供する。
【0012】
【化2】
【0013】
ある実施形態において、前記式Aで表される化合物の薬学的に許容される塩はメフパリブ塩酸塩(Mefuparib hydrochloride)である。
【0014】
ある実施形態において、前記PD-1阻害剤はPD-1抗体、PD-1ポリペプチド及びPD-1小分子阻害剤中の一つ又は複数であってもよい。さらにトリパリマブ(toripalimab)、シンチリマブ(sintilimab)、カムレリズマブ(camrelizumab)、ペムブロリズマブ(pembrolizumab)及びニボルマブ(nivolumab)中の一つ又は複数であってもよく、さらにトリパリマブ(toripalimab)であってもよい。
【0015】
ある実施形態において、前記PD-L1阻害剤はPD-1抗体、PD-1ポリペプチド及びPD-1小分子の阻害剤中の一つ又は複数であってもよい。さらにアテゾリズマブ(Atezolizumab、商品名はTecentriqである)、デュルバルマブ(Durvalumab、商品名はImfinziである)及びアベルマブ((Avelumab、商品名はBavencioである)中の一つ又は複数であってもよい。
【0016】
ある実施形態において、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」及び式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物は、同時に投与してもよく、別々に投与してもよい。前記別々に投与することは、順次に投与してもよい。
【0017】
前記同時に投与することは、「前記PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」及び「前記式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物、又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物」を単一薬物組み合わせに含めて同時に投与することであってもよく、或は、「前記PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」を含む単一医薬組成物と、「前記式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物、又はその薬学的に許容される塩を含む溶媒和物」を含む単一医薬組成物を同時に投与することであってもよい。
【0018】
前記別々に投与することは、「前記PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」を含む単一医薬組成物と、「前記式Aで表される化合物、薬学的に許容可能な塩、その溶媒和物やその薬学的に許容される塩の溶媒和物」を含む単一医薬組成物を異なる時点で別に投与することであってもよい。前記別々に投与することは、時間的に近接していてもよく、時間的に離れていてもよい。
【0019】
前記順次に投与することは、「前記PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」を含む単一医薬組成物と、「前記式Aで表される化合物、薬学的に許容される塩、その溶媒和物やその薬学的に許容される塩の溶媒和物」を含む単一医薬組成物中の一つをまず投与し、もう一つを後で投与してもよい。前記別々に投与することは、時間的に近接していてもよく、時間的に離れていてもよい。
【0020】
同時に投与しても別々に投与しても、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」と前記「式Aで表される化合物、薬学的許与可能な塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物」の投与方法(投与経路、投与量、投与間隔を含め)が同じでも異なってもよく、最適な治療効果を得るために、当業者は必要に応じて調整することができる。
【0021】
ある実施形態において、前記医薬組み合わせはメフパリブ塩酸塩とトリプリマブである。
【0022】
本発明はさらに、
式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物;
前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」;及び
薬用補助剤;
を含む医薬組成物Xを提供する。
【0023】
医薬組成物は、投与方法に応じて様々な適切な剤形に製造することができ、消化管投与剤形(例えば、経口剤(錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤)、ガス剤形(吸入剤)及び非消化管投与剤形(例えば、注射剤形、軟膏剤、乳剤)を含む。
【0024】
ある実施形態において、前記医薬組成物Xは、注射剤形又は経口剤形で表される。前記経口剤形は錠剤であってもよい。
【0025】
本発明は、さらに第I医薬組成物及び第II医薬組成物を含む医薬組成物Yを提供する。
【0026】
前記第I医薬組成物は、前記式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物、及び薬用補助剤を含む。
【0027】
前記第II医薬組成物は、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」、及び及び薬用補助剤を含む。
【0028】
ある実施形態において、前記第I医薬組成物は、経口剤形、さらに錠剤剤形で表される。
【0029】
ある実施形態において、前記第II医薬組成物は、注射剤形で表される。
【0030】
ある実施形態において、前記第I薬剤製剤は、錠剤剤形で表され、前記第II薬剤製剤は注射剤型で表される。
【0031】
本発明は、さらに、
前記第I医薬組成物を含む第1容器、
前記第II医薬組成物を含む第2容器、
を含む薬物キットを提供する。
【0032】
本発明は、さらに腫瘍の予防及び/又は治療するための医薬の調製に使用される物質Mの使用を提供する。ここで、前記物質Mは、前記医薬組み合わせ、前記医薬組成物X、又は前記薬物の組成物Yである。
【0033】
前記腫瘍の種類は、固形腫瘍及び/又は血液腫瘍であってもよい。前記固形腫瘍は肺癌、結腸癌、直腸癌、乳癌、前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、脳癌、腎臓癌、卵巣癌、胃癌、皮膚癌、骨癌、神経膠腫、膠芽細胞腫(glioblastoma)、肝細胞癌、乳頭状腎細胞癌、頭頸部癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫及び多発性骨髄腫中の一つ又は複数であってもよい。
【0034】
前記使用において、前記式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物、及び、「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」の投与方法(投与経路、投与量、投与間隔を含め)が同じであっても異なってよい。最適の治療効果を得るために、当業者は必要に応じて調整することができる。
【0035】
前記「式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物」及び、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」の使用量は、被験者の体重により投与してもよい。
【0036】
ある実施形態において、前記「式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、又は薬学的に許容される塩の溶媒和物」及び「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」は、同時に投与しても別々に投与してもよい。
【0037】
ある実施形態において、前記「式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物」の投与量は、100~1000mg/回である。
【0038】
ある実施形態において、前記式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物の投与頻度は、0.5~2回/日である。
【0039】
ある実施形態において、前記式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物、又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物が経口投与により投与される。
【0040】
ある実施形態において、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」の投与量は、50~500mg/回である。
【0041】
ある実施形態において、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」の投与頻度は、7~31日ごとに1回である。
【0042】
ある実施形態において、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」は、経口投与又は注射投与により投与される。
【0043】
ある実施形態において、前記式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物の経口投与の使用量は、100~1000mg/kgであり、投与頻度は0.5~2回/日である。
【0044】
及び、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」の注射投与において、使用量は50~500mg/kgであり、投与頻度は7~31日ごとに1回である。
【0045】
本発明は、さらに、腫瘍を治療するための医薬の調製における、前記式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物の使用を提供し、ここで、前記「式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物」は、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」と併用される。
【0046】
【化3】
【0047】
ここで、前記「式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物」と、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」とは、同時に投与しても別々に投与してもよく、また別々に投与してもよい。前述の別々に投与することは、順次に投与することであってもよい。
【0048】
ここで、前記式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物は経口投与により投与してもよい。
【0049】
ここで、前記式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物の投与量は、100~1000mg/kgであってもよい。
【0050】
ここで、前記式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物の投与頻度は、0.5~2回/日であってもよい。
【0051】
ここで、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」は、経口投与又は注射投与であってもよい。
【0052】
ここで、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」の投与量は、50~500mg/回であってもよい。
【0053】
ここで、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」の投与頻度は、7~31日ごとに1回であってもよい。
【0054】
ここで、前記腫瘍は固形腫瘍及び/又は血液腫瘍であってもよい。前記固形腫瘍は、肺癌、結腸癌、直腸癌、乳癌、前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、脳癌、腎臓癌、卵巣癌、胃癌、皮膚癌、骨癌、神経膠腫、膠芽細胞腫(glioblastoma)、肝細胞癌、乳頭状腎細胞癌、頭頸部癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫及び多発性骨髄腫中の一つ又は複数であってもよい。
【0055】
ある実施形態において、前記式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物の経口投与で、投与量は100~1000mg/回であり、投与頻度は0.5~2回/日である。
【0056】
及び、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」の注射投与で、投与量は50~500mg/回であり、投与頻度は7~31日ごとに一回である。
【0057】
本発明は、さらに腫瘍を治療するための薬物の製造における、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」の使用を提供し、ここで、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」は「式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物」と併用される。
【0058】
【化4】
【0059】
ここで、前記「式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物」と、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」は、同時に投与しても別々に投与してもよく、また別々に投与してもよい。前記別々に投与することは、順次に投与することであってもよい。
【0060】
ここで、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」は経口投与又は注射投与であってもよい。
【0061】
ここで、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」の投与量は、50~500mg/回であってもよい。
【0062】
ここで、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」の投与頻度は、7~31日ごとに1回であってもよい。
【0063】
ここで、前記式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物は経口投与することができる。
【0064】
ここで、前記式Aで表される化合物の投与量は、100~1000mg/回であってもよい。
【0065】
ここで、前記式Aで表される化合物の投与頻度は、0.5~2回/日であってもよい。
【0066】
ここで、前記腫瘍は固形腫瘍及び/又は血液腫瘍であってもよい。前記固形腫瘍は、肺癌、結腸癌、直腸癌、乳癌、前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、脳癌、腎臓癌、卵巣癌、胃癌、皮膚癌、骨癌、神経膠腫、膠芽細胞腫(glioblastoma)、肝細胞癌、乳頭状腎細胞癌、頭頸部癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫及び多発性骨髄腫中の一つ又は複数であってもよい。
【0067】
ある実施形態において、前記式Aで表される化合物の経口投与で、投与量は、100~1000mg/回であり、投与頻度は、0.5~2回/日である。
【0068】
及び、前記「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」の注射投与で、投与量は50~500mg/回であり、投与頻度は7~31日ごとに1回である。
【0069】
本発明は、さらに、被験者に有効量の物質Mを投与する段階を含む腫瘍を治療又は予防する方法を提供し、前記物質Mは前記医薬組み合わせ、前記医薬組成物X又は前記医薬組成物Yである。
【0070】
前記方法において、前記腫瘍は固形腫瘍及び/又は血液腫瘍であってもよい。前記固形腫瘍は、肺癌、結腸癌、直腸癌、乳癌、前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、脳癌、腎臓癌、卵巣癌、胃癌、皮膚癌、骨癌、神経膠腫、膠芽細胞腫(glioblastoma)、肝細胞癌、乳頭状腎細胞癌、頭頸部癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫及び多発性骨髄腫中の一つ又は複数であってもよい。
【0071】
前記方法において、前記式Aで表される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物、及び、「PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤」の投与方法(投与経路、投与量、投与頻度などを含む)はすべて前述した通りである。
【0072】
「PD-1抗体」という用語は、T細胞表面のPD-1と結合し、PD-1とそのリガンドとの結合を遮断することができる抗体を指す。PD-1の全称はプログラム性細胞死タンパク質1(programmed cell death protein 1)であり、重要な免疫抑制分子である。
【0073】
「PD-1ポリペプチド」という用語は、T細胞表面のPD-1と結合し、PD-1とそのリガンドとの結合を遮断することができるポリペプチドを指す。
【0074】
「PD-1小分子抑制剤」という用語は、T細胞表面のPD-1と結合し、PD-1とそのリガンドとの結合を遮断することができる化学小分子を指す。
【0075】
「PD-L1抗体」という用語は、腫瘍細胞表面のPD-L1と結合し、PD-L1とT細胞表面のPD-1との結合を遮断することができる抗体を指す。PD-L1の全称はプログラム性細胞死タンパク質1リガンド1(programmed cell death protein 1 ligand 1)である。
【0076】
「PD-L1ポリペプチド」という用語は、腫瘍細胞表面のPD-L1と結合し、PD-L1とT細胞表面のPD-1との結合を遮断することができるポリペプチドを指す。
【0077】
「PD-L1小分子抑制剤」という用語は、腫瘍細胞表面のPD-L1と結合し、PD-L1とT細胞表面のPD-1との結合を遮断することができる小分子化合物を指す。「小分子化合物」とは、分子量が1000未満の化合物を指す。
【0078】
「薬学的に許容される塩」という用語は、化合物が比較的無毒で、薬学的に許容される酸又は塩基で調製された塩を指す。化合物中に相対酸性の官能基が含まれる場合、純粋な溶液又は適切な不活性溶媒中で十分な量の薬学的に許容される塩基をこのような化合物の中性形態に接触させることによって塩基付加塩を得ることができる。「薬学的に許容される塩」という用語は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、ビスマス塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩を含むが、これらに限定されない。化合物中に相対塩基性の官能基が含まれる場合、純粋な溶液又は適切な不活性溶媒中で十分な量の薬学的に許容できる塩基をこのような化合物の中性形態に接触させることによって酸付加塩を得ることができる。前記薬学的に許容される無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸水素イオン、リン酸、リン酸一水素イオン、リン酸二水素イオン、亜リン酸、硫酸、硫酸水素根イオンなどを含むが、これらに限定されない。前記薬学的に許容できる有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、アンチブテン二酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、サリチル酸、酒石酸、メタンスルホン酸、イソニコチン酸、酸性クエン酸、オレイン酸、タンニン酸、パントテン酸、酒石酸水素、アスコルビン酸、ゲンチジン酸、フマル酸、グルコン酸、糖酸、ギ酸、エタンスルホン酸、パモ酸(すなわち4,4’-メチレン-ビス(3-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸)、アミノ酸(例えばグルタミン酸、アルギニン)などが含まれるが、これらに限定されない。化合物に相対酸性と相対塩基性の官能基が含まれる場合、塩基付加塩又は酸付加塩に変換することができる。具体的には、Berge et al.,「Pharmaceutical Salts」、Journal of Pharmaceutical Science 66:1-19(1977)、又は、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use(P.Heinrich Stahl and Camile G.Wermuth,ed.,Wiley-VCH,2002)を参照することができる。
【0079】
「溶媒和物」という用語は、化合物と溶媒(水、メタノール、エタノールなどを含むが、これらに限定されない)とが結晶化して形成される物質を指す。溶媒和物は化学量論系溶媒和物と非化学量論系溶媒和物に分けられる。
【0080】
「薬学的に許容される塩の溶媒和物」という用語は、化合物が、薬学的に許容される(比較的無毒で、安全で、患者の使用に適する)酸又は塩基、溶媒(水、メタノール、エタノールなどを含むが、これらに限定されない)と結合して形成される物質を指し、ここで、薬学的に許容される塩は、前述の用語「薬学的に許容される塩」と同じ意味であり、溶媒は化学量論的又は非化学量論的である。薬学的に許容される塩の溶媒和物には、塩酸塩一水和物を含むが、これらに限定されない。
【0081】
「治療有効量」という用語は、患者に投与される、疾患を効果的に治療するのに十分な化合物の量を指す。治療有効量は化合物、疾患の種類、疾患の重症度、患者の年齢などによって変化するが、当業者が状況に応じて調整することができる。
【0082】
本分野の常識を違反しない上で、上記各好ましい条件を、任意に組み合わせて、すなわち本発明の各好ましい実施例を得ることができる。
【0083】
本発明に用いられる試薬と原料はすべて市販されている。
【発明の効果】
【0084】
本発明の積極的な進歩効果は、腫瘍成長に対する本発明の医薬組成物の抑制率は60%に達することができ、試験段階において、被験体は急性の副作用がなかった。
【図面の簡単な説明】
【0085】
図1】治療開始後の実験動物の体重変化率である。
図2】治療開始後の実験動物腫瘍成長曲線である。
図3】投与後(PG-D24)の実験動物個体の腫瘍体積であり、ここで「-」は中央値を示す。
図4】PBMC接種の3週間後の実験動物の末梢血のhCD 45 FACS検出であり、ここで“-”は中央値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0086】
以下、実施例の形態により本発明をさらに説明するが、そのため本発明を上記の実施例の範囲に製限するものではない。以下の実施例に具体的な条件が記載されていない実験方法は、通常の方法と条件に従って、又は商品説明書に従って選択される。
【0087】
1、供試薬
供試薬1:拓益(トリパリマブPD-1モノクローナル抗体)注射液。
供試薬2:メフパリブ塩酸塩。
【0088】
2、供試品の調製
2.1、溶媒選択:拓益PD-1モノクローナル抗体注射液:PBS;メフピペリ塩酸塩:生理食塩水。
2.2、調製方法:
【表1】
【0089】
3、実験材料と機器装置
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
4、実験動物と飼育管理
4.1、実験動物
種属品係:Mus Musculus,NCG(NOD-Prkdcem26Cd52Il2rgem26Cd22/Nju);性別:メス;体重:18~22g;数量:55匹;実験動物プロバイダー:江蘇集萃薬康生物科学技術有限会社。
【0092】
4.2、飼育管理
飼育管理:実験動物はSPF級衡温衡湿の層流クリーンルームで飼育し、独立通風ケージIVCを使用し、5匹あだりに1ケージであった。
温度/湿度:(23±3)℃/40~70%の範囲に制御する。
ケージ:ポリカーボネートから製造された。体積は370mm×155mm×135mmである。軟製トウモロコシ芯の高圧消毒洗浄マットは、週に2回交換した。各ケージにはケージタグがあり、動物の数、性別、品係、受付時間、グループ別、実験開始時間が表示されている。
飼料と飲用水:SPF級マウス飼料、コバルト60照射で消毒する。飲用水は限外濾過浄化水であり、高圧滅菌処理を経た。動物は無菌の食べ物と水を自由に摂取することができる。
動物番号:耳に穴を開ける。
【0093】
5、実験方法
5.1、細胞培養
MDA-MB-436腫瘍細胞(YK-CL-075)はATCCから購入した。不活性化された10%ウシ胎児血清、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンを含むLeibovitz’s L-15培地を用いて37℃、5%COのインキュベーターで腫瘍細胞を培養し、3~4日ごとに細胞成長後に分注し継代して、対数成長期にある腫瘍細胞を体内腫瘍の接種に用いた。
PBMC(ヒト末梢血単一核細胞):ALLCELLS(Donor#:A 0075)に由来する。
【0094】
5.2、腫瘍細胞の接種とグループ分け
PBSとMatrigelを体積比1:1で再懸濁したMDA-MB-436腫瘍細胞の濃度は1×10/mlであり、マウスの右側脇肋骨皮下に100μl/匹で接種し、腫瘍の体積が約1000mm程度まで成長する時、無菌条件下で腫瘍を取り、小塊に切り、1塊の大きさは約2mm×2mm×2mmであり、実験動物の右側脇肋骨皮下に接種し、2週間後にPBMC細胞をPBSで再懸濁した後、マウス体内に接種し、細胞接種量は2×106/マウスであった。実験動物の腫瘍が93mm程度まで成長したときにグループに分けて投与(当日はPG-D0と記録)し、合計4群で、各群10匹であり、具体的な投与形態は表4に示された。
【0095】
5.3、マウス体重の測定と実験指標
週に2回、ノギスを用いて腫瘍体積を測定し、腫瘍の長径と短径を測定し、その体積計算式は:体積=0.5×長径×短径である。
【0096】
腫瘍体積からT/C値を計算し、ここで、Tは各被験体処理群の相対腫瘍体積(RTV)の平均値であり、Cは対照群の相対腫瘍体積(RTV)の平均値である。RTVは投与後と投与前の腫瘍体積比である。腫瘍成長 抑制率(TGI、%)=(1-T/C)×100%。
【0097】
PBMCの接種3週間後、マウス末梢血を採取し、ヒト由来CD45細胞(hCD45細胞)の割合をフローサイトメトリー(FACS)によって測定した。
【0098】
実験が完了した後、腫瘍をはがして重さを量り、きれいに並べて写真を撮った。
【0099】
6、投与形態
【表4】
【0100】
7、統計学分析
IBM SPSS Statistics 22.0統計学ソフトウェアを使用し、混合線形モデル分析を使用して腫瘍体積に対して群間統計学分析を行い、One-Way ANOVA分析を使用して腫瘍重量に対して群間統計学分析を行い、p<0.05は有意差があると認められる。
【0101】
実施例1 試験結果
1、実験動物投与後の反応及び体重変化
実験期間中、各群のマウスは投与後明らかな急性副作用が見られなかった。実験中後期には、各群のマウスの体重が減少し、具体的には図1を参照する。前述の実験により、メフパリブ塩酸塩+拓益PD-1モノクローナル抗体注射液の併用の安全性が良好であることが認められた。
【0102】
2、腫瘍成長抑制結果
治療後の実験動物腫瘍体積変化を表5、図2及び図3に示した。
【表5】
【0103】
結論:グループ化後24日間(PG-D24)において、メフパリブ塩酸塩群、拓益PD-1モノクローナル抗体注射液群、メフパリブ塩酸塩+拓益PD-1モノクローナル抗体注射液群の腫瘍成長抑制率はそれぞれ54%、29%、60%であり、各治療群の腫瘍体積はすべて対照群より有意に小さかった(p<0.05)。メフパリブ塩酸塩+拓益PD-1モノクローナル抗体注射液群の腫瘍体積は拓益PD-1モノクローナル抗体注射液群より有意に小さかった(p<0.05)。併用薬はPD-1単一薬より有意に優れた治療効果とメフパリブ塩酸塩より優れた治療趨勢が得られることが示された。
【0104】
3、末梢血FACS検査
PBMC接種3週間後、マウス末梢血hCD45のFACS検出は図4を参照する。
【0105】
図4から、マウス末梢血中のhCD45細胞FACSの検査結果は陽性であり、ヒト化免疫再構築モデルのモデリングに成功し、hCD45細胞の中央値が、メフパリブ塩酸塩群、拓益PD-1モノクローナル抗体注射液群、メフパリブ塩酸塩+拓益PD-1モノクローナル抗体注射液群でいずれも対照群より高かったことが明らかになった。ここで、メフパリブ塩酸塩+拓益PD-1モノクローナル抗体注射液群の中央値はメフパリブ塩酸塩群と拓益PD-1モノクローナル抗体注射液群より高かった。
【0106】
以上から、PBMCヒト化MDA-MB-436皮下移植腫瘍モデルにおいて、拓益PD-1モノクローナル抗体注射液とメフパリブ塩酸塩の併用投与は統計学的に有意な抗腫瘍効果を生じ、腫瘍成長を効果的に抑制することができ、その腫瘍抑制率は拓益PD-1モノクローナル抗体注射液より有意に高く、マウス末梢血中のhCD45細胞の割合も相応に高くなった。
【0107】
以上、本発明の具体的な実施形態を説明したが、これらは単なる例示であり、本発明の原理と本質を逸脱することなく、これらの実施形態に対して様々な変更又は修正を行うことができることは、当業者が理解すべきである。したがって、本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲によって限定される。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】