(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-07
(54)【発明の名称】ピリドピリミジン系誘導体の結晶形及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20230228BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20230228BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20230228BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20230228BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20230228BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20230228BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230228BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230228BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
C07D471/04 118Z
C07D471/04 CSP
A61K31/519
A61P31/16
A61P31/18
A61P31/22
A61P31/20
A61P37/02
A61P35/00
A61P31/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540974
(86)(22)【出願日】2020-12-31
(85)【翻訳文提出日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 CN2020142037
(87)【国際公開番号】W WO2021136488
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】202010002822.9
(32)【優先日】2020-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519352757
【氏名又は名称】江▲蘇▼恒瑞医▲薬▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI PHARMA CEUTICALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.7 KUNLUNSHAN ROAD, ECONOMIC AND TECHNOLOGICAL DEVELOPMENT ZONE, LIANYUNGANG, JIANGSU 222047, CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】516174208
【氏名又は名称】上海恒瑞医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】NO. 279 WENJING ROAD, MINHANG DISTRICT, SHANGHAI 200245, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ ▲チー▼
(72)【発明者】
【氏名】杜 振▲興▼
(72)【発明者】
【氏名】王 捷
(72)【発明者】
【氏名】王 林
(72)【発明者】
【氏名】▲陸▼ ▲偉▼▲棟▼
(72)【発明者】
【氏名】邵 ▲啓▼云
(72)【発明者】
【氏名】▲馮▼ 君
(72)【発明者】
【氏名】▲賀▼ 峰
【テーマコード(参考)】
4C065
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA04
4C065BB10
4C065CC01
4C065DD03
4C065EE02
4C065HH02
4C065LL06
4C065LL07
4C065PP12
4C065PP15
4C065QQ07
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB10
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB07
4C086ZB26
4C086ZB33
4C086ZC41
4C086ZC55
(57)【要約】
本開示は、ピリドピリミジン系誘導体の結晶形及びその調製方法に関し、具体的には、本開示は、式(I)で表される化合物の結晶形及び調製方法に関する。本開示の新規な結晶形は、良好な物理化学的特性を有し、臨床治療により有利となる。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末X線回折パターンは、8.610、9.740、13.903、15.313、16.354、17.675、17.879、19.184、19.905、20.901、21.365、22.319及び23.057の2θ角に特徴的なピークを有する、 式(I)で表される化合物のA結晶形:
【化1】
【請求項2】
粉末X線回折パターンは、8.610、9.740、10.949、13.314、13.903、15.313、16.060、16.354、16.794、17.675、17.879、19.184、19.905、20.901、21.365、22.319、23.057、23.748、24.430、25.428、26.576、27.270、27.863、28.957、29.842及び31.506の2θ角に特徴的なピークを有する、
請求項1に記載の式(I)で表される化合物のA結晶形。
【請求項3】
粉末X線回折パターンは、
図2に示される、
請求項1に記載の式(I)で表される化合物のA結晶形。
【請求項4】
粉末X線回折パターンは、4.60、8.77、9.90、13.86、15.45、16.44、17.74、18.03、19.31、19.91、21.07、21.52、22.48及び23.22の2θ角に特徴的なピークを有する、
式(I)で表される化合物のB結晶形:
【化2】
【請求項5】
粉末X線回折パターンは、4.60、8.77、9.20、9.90、11.17、13.86、14.51、15.45、16.44、17.74、18.03、18.19、18.51、19.31、19.91、20.07、21.07、21.52、22.48、23.22、24.00、24.61、25.64、26.78、27.43、28.04、29.31、31.21、32.09、32.57、33.23及び34.01の2θ角に特徴的なピークを有する、
請求項4に記載の式(I)で表される化合物のB結晶形。
【請求項6】
粉末X線回折パターンは、
図4に示される、
請求項4に記載の式(I)で表される化合物のB結晶形。
【請求項7】
前記2θ角の許容差範囲は±0.2である、
請求項1~6の何れか1項に記載の式(I)で表される化合物の結晶形。
【請求項8】
式(I)で表される化合物を適量の溶媒と混合し、揮発させて結晶化させるステップであって、前記溶媒は、メタノール、n-ヘプタン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、石油エーテル及びn-プロパノールの1種又は複数種から選ばれるステップ、又は、式(I)で表される化合物を適量の溶媒と混合し、昇温溶解し、降温して結晶化させるステップであって、前記溶媒は酢酸エチルであるステップを含む、
請求項1~3の何れか1項に記載の式(I)で表される化合物のA結晶形の調製方法。
【請求項9】
式(I)で表される化合物を適量の溶媒と混合し、揮発させて結晶化させるステップであって、前記溶媒は、水、イソプロパノール、酢酸エチル、アセトニトリル、アセトフェノン、ジクロロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド及び1,2-ジクロロエタンの1種又は複数種から選ばれるステップ、又は、式(I)で表される化合物を適量の溶媒と混合し、昇温溶解し、降温して結晶化させるステップであって、前記溶媒は、イソプロパノール又はジメチルスルホキシドから選ばれるステップを含む、
請求項4~6の何れか1項に記載の式(I)で表される化合物のB結晶形の調製方法。
【請求項10】
請求項1~3の何れか1項に記載の式(I)で表される化合物のA結晶形及び/又は請求項4~6の何れか1項に記載の式(I)で表される化合物のB結晶形、及び1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を含む、
医薬組成物。
【請求項11】
請求項1~3の何れか1項に記載の式(I)で表される化合物のA結晶形及び/又は請求項4~6の何れか1項に記載の式(I)で表される化合物のB結晶形と1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体又は賦形剤の混合によって調製して得られる、
医薬組成物。
【請求項12】
TLR8をアゴナイズするための薬剤の調製における請求項1~7の何れか1項に記載の式(I)で表される化合物のA結晶形若しくはB結晶形又は請求項10、11に記載の医薬組成物の使用。
【請求項13】
ウイルスによって引き起こされる感染症を治療するための薬剤の調製における請求項1~7の何れか1項に記載の式(I)で表される化合物のA結晶形若しくはB結晶形又は請求項10、11に記載の医薬組成物の使用であって、前記ウイルスは、好ましくは、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス及びヒト免疫不全ウイルスの1種又は複数種である、
使用。
【請求項14】
免疫系を調節するための薬剤の調製における請求項1~7の何れか1項に記載の式(I)で表される化合物のA結晶形若しくはB結晶形又は請求項10、11に記載の医薬組成物の使用。
【請求項15】
腫瘍を治療又は予防するための薬剤の調製における請求項1~7の何れか1項に記載の式(I)で表される化合物のA結晶形若しくはB結晶形又は請求項10、11に記載の医薬組成物の使用。
【請求項16】
式(I)で表される化合物のA結晶形及び/又はB結晶形を1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体又は賦形剤と混合するステップを含む、
請求項10又は11に記載の医薬組成物の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、出願日が2020年1月2日である中国特許出願CN202010002822.9の優先権を主張する。上記中国特許出願の全文は本願に援用される。
【0002】
本開示は、ピリドピリミジン系誘導体の結晶形及びその調製方法に関し、具体的には式(I)で表される化合物の結晶形及び調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
Toll様受容体(toll-like receptors,TLRs)は、先天性免疫に関与する重要な受容体である。TLRsは、マクロファージ細胞及び樹状細胞のような歩哨細胞において通常発現され、微生物から産生される構造的に保存された分子を認識できる単量体の膜貫通非触媒受容体である。これらの微生物が皮膚又は腸粘膜のような物理的障壁を一旦突破すると、TLRsによって認識され、更に免疫細胞応答を活性化する(Mahla,R S.et al.,Front Immunol.4:248(2013))。免疫系が病原微生物を広く認識する能力を有するのは、ある程度、Toll様免疫受容体が広く存在しているためである。
【0004】
哺乳動物において少なくとも10種類の異なるTLRsを有する。いくつかのこのような受容体のリガンド及び対応する信号伝達カスケードは、既に同定された。TLR8は、TLRs(TLRs3、7、8及び9)サブグループのメンバーであり、非自己核酸を一意に認識する細胞のエンドソームコンパートメントに局在する。TLR8は、ヒトにおいて主に単核細胞、NK細胞及び骨髄樹状細胞(mDC)によって発現される。TLR8アゴニストは、IL-6、IL-12、TNF-α及びIFN-γなどの種々の異なる炎症誘発性サイトカインの放出を引き起こすことができる。
【0005】
TLR8は、生体の自然免疫及び獲得免疫においていずれも重要な役割を果たしている。TLR8アゴニストは、免疫調節剤として、卵巣癌、黒色腫、非小細胞肺癌、肝細胞癌、基底細胞癌(basal cell carcinoma)、腎細胞癌、骨髄腫、アレルギー性鼻炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、潰瘍性結腸炎、肝線維症、HBV、フラビウイルス科(Flaviviridae)ウイルス、HCV、HPV、RSV、SARS、HIV又はインフルエンザのウイルス感染などの免疫に関連する種々の異なる疾患の治療に用いることができる。
【0006】
TLR8がTLR7と高い相同性を有するため、TLR8アゴニストは多くの場合、TLR7アゴニストでもある。従って、TLR8とTLR7の二重アゴニストは、例えばWO2009111337、WO2011017611、WO2011068233、WO2011139348、WO2012066336、WO2013033345及びWO2017046112のような多くの特許において報告されている。TLR8選択的アゴニストについての報告が少なく、主にVentiRX社のVTX-2337(WO2007024612)及びGilead社のGS-9688(WO2016141092)があるが、この2つの化合物は、TLR7に対して依然として一定の活性を有し、Cyp及びhERGに対して選択性も悪い。従って、安全且つ治療的により効果的なTLR8アゴニストの研究及び開発を続ける必要がなおある。
【0007】
WO2020007275(出願番号PCT/CN/2019/094310)は、式(I)で表される化合物に関し、当該化合物は(R)-2-((2-アミノ-7-(6-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)ピリジン-3-イル)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)-2-メチルヘキサン-1-オールという化学名の新型TLR8アゴニストであり、臨床有効性又は適応症、及び安全性などの点でいずれも改善され、その構造が下記のとおりである:
【0008】
【0009】
薬学的活性成分の結晶構造は、薬剤の化学的安定性に影響を与える傾向があり、結晶化条件及び保存条件によっては化合物の結晶構造を変化させる可能性があり、他の形態の結晶形の生成を伴うこともある。一般的には、非晶質の薬剤製品は、規則的な結晶構造を有さず、例えば生成物安定性が悪く、析出した結晶が細かく、濾過しにくく、固結しやすく、流動性に劣るなどの他の欠陥を有する傾向がある。従って、上記生成物の様々な性質を改善する必要があるため、結晶形の純度が高くて良好な化学的安定性を有する新規な結晶形を発見するために深く検討する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2009/111337号
【特許文献2】国際公開第2011/017611号
【特許文献3】国際公開第2011/068233号
【特許文献4】国際公開第2011/139348号
【特許文献5】国際公開第2012/066336号
【特許文献6】国際公開第2013/033345号
【特許文献7】国際公開第2017/046112号
【特許文献8】国際公開第2007/024612号
【特許文献9】国際公開第2016/141092号
【特許文献10】国際公開第2020/007275号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示は、良好な安定性を有し、臨床により良く適用できる式(I)で表される化合物の新規な結晶形を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様は、粉末X線回折パターンが8.610、9.740、13.903、15.313、16.354、17.675、17.879、19.184、19.905、20.901、21.365、22.319及び23.057の2θ角に特徴的なピークを有する、式(I)で表される化合物のA結晶形を提供する:
【0013】
【0014】
いくつかの実施形態において、本開示は、粉末X線回折パターンが8.610、9.740、10.949、13.314、13.903、15.313、16.060、16.354、16.794、17.675、17.879、19.184、19.905、20.901、21.365、22.319、23.057、23.748、24.430、25.428、26.576、27.270、27.863、28.957、29.842及び31.506の2θ角に特徴的なピークを有する、式(I)で表される化合物のA結晶形を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態において、本開示は、粉末X線回折パターンが
図2に示される、式(I)で表される化合物のA結晶形を提供する。
【0016】
本開示は、
式(I)で表される化合物を適量の溶媒と混合し、揮発させて結晶化させるステップであって、前記溶媒は、メタノール、n-ヘプタン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、石油エーテル、n-プロパノールの1種又は複数種であってもよいステップ、又は、
式(I)で表される化合物を適量の溶媒と混合し、昇温溶解し、降温して結晶化させるステップであって、前記溶媒は酢酸エチルであってもよいステップを含む、上記式(I)で表される化合物のA結晶形の調製方法を更に提供する。
【0017】
本開示の一態様は、粉末X線回折パターンが4.60、8.77、9.90、13.86、15.45、16.44、17.74、18.03、19.31、19.91、21.07、21.52、22.48及び23.22の2θ角に特徴的なピークを有する、式(I)で表される化合物のB結晶形を提供する:
【0018】
【0019】
いくつかの実施形態において、本開示は、粉末X線回折パターンが4.60、8.77、9.20、9.90、11.17、13.86、14.51、15.45、16.44、17.74、18.03、18.19、18.51、19.31、19.91、20.07、21.07、21.52、22.48、23.22、24.00、24.61、25.64、26.78、27.43、28.04、29.31、31.21、32.09、32.57、33.23及び34.01の2θ角に特徴的なピークを有する、式(I)で表される化合物のB結晶形を提供する。
【0020】
いくつかの実施形態において、本開示は、粉末X線回折パターンが
図4に示される、式(I)で表される化合物のB結晶形を提供する。
【0021】
本開示は、
式(I)で表される化合物を適量の溶媒と混合し、揮発させて結晶化させるステップであって、前記溶媒は、水、イソプロパノール、酢酸エチル、アセトニトリル、アセトフェノン、ジクロロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド及び1,2-ジクロロエタンの1種又は複数種であってもよいステップ、又は、
式(I)で表される化合物を適量の溶媒と混合し、昇温溶解し、降温して結晶化させるステップであって、前記溶媒は、イソプロパノール又はジメチルスルホキシドであってもよいステップを含む、上記式(I)で表される化合物のB結晶形の調製方法を更に提供する。
【0022】
粉末X線回折パターン(XRPD)、示差走査熱量分析(DSC)によって本開示のように得られた結晶形に構造決定、結晶形の研究を行う。
【0023】
いくつかの実施形態において、いくつかの溶媒を用いて調製してA結晶形とB結晶形の混晶を得ることができ、例えば、式(I)で表される化合物を適量の溶媒(例えば、アセトン、酢酸イソプロピル、メチルtert-ブチルエーテル、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、ニトロメタン、酢酸エチル/n-ヘプタン、酢酸ブチル、パラキシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソアミルアルコール、水/エタノール、水/アセトン、酢酸エチル/エタノール、クロロホルムなど)と混合し、揮発させて結晶化させて得られる。その粉末X線回折パターンは、
図6に示される。
【0024】
本開示に係る結晶形の晶析方法は、例えば揮発による晶析、降温による晶析又は室温下での晶析のような従来のものである。
【0025】
本開示に係る結晶形の調製方法で使用される出発原料は、任意の形態の式(I)で表される化合物であってもよく、具体的な形態は、非晶質、任意の結晶形、水和物、溶媒和物などを含むが、これらに限定されない。
【0026】
本開示は、上記式(I)で表される化合物のA結晶形及び/又はB結晶形、及び1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を含む、医薬組成物を更に提供する。
【0027】
本開示は、上記式(I)で表される化合物のA結晶形及び/又はB結晶形と1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体又は賦形剤の混合によって調製して得られる、医薬組成物を更に提供する。
【0028】
本開示は、上記式(I)で表される化合物のA結晶形及び/又はB結晶形を1種又は複数種の薬学的に許容可能な担体又は賦形剤と混合するステップを含む、医薬組成物の調製方法を更に提供する。
【0029】
本開示は、TLR8をアゴナイズするための薬剤の調製における本開示に記載の式(I)で表される化合物のA結晶形若しくはB結晶形又は医薬組成物の使用を更に提供する。
【0030】
本開示は、ウイルスによって引き起こされる感染症を治療するための薬剤の調製における本開示に記載の式(I)で表される化合物のA結晶形若しくはB結晶形又は医薬組成物の使用であって、前記ウイルスが好ましくはB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス及びヒト免疫不全ウイルスの1種又は複数種である使用を更に提供する。
【0031】
本開示は、免疫系を調節するための薬剤の調製における本開示に記載の式(I)で表される化合物のA結晶形若しくはB結晶形又は医薬組成物の使用を更に提供する。
【0032】
本開示は、腫瘍を治療又は予防するための薬剤の調製における本開示に記載の式(I)で表される化合物のA結晶形若しくはB結晶形又は医薬組成物の使用を更に提供する。
【0033】
本願の明細書及び特許請求の範囲において、別途説明がない限り、本明細書で使用される科学及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。しかし、本開示をより良く理解するように、以下にいくつかの関連する用語の定義及び解釈が提供される。なお、本願により提供される用語の定義及び解釈が当業者によって一般的に理解される意味と矛盾する場合、本願により提供される用語の定義及び解釈が優先するものとする。
【0034】
本開示に記載の「スラリー化」とは、溶媒における物質の溶解性が悪いが、溶媒における不純物の溶解性が良いという特性を利用して精製する方法を指し、スラリー化による精製は、脱色し、結晶形を変更し又は少量の不純物を除去することができる。
【0035】
本開示に記載の「粉末X線回折パターン又はXRPD」とは、ブラッグ式2dsinθ=nλ(式において、λはX線の波長であり、回折の次数nは、任意の正の整数であり、通常、1次回折ピークを取り、n=1)に基づき、X線が掃引角θ(入射角の余角、ブラッグ角とも呼ばれる)で結晶に入射し、又は一部の結晶試料におけるd格子面間距離を有する特定の原子面に入射する場合、ブラッグ式を満たすことができ、これにより、この組の粉末X線回折パターンを測定することを意味する。
【0036】
本開示に記載の「粉末X線回折パターン又はXRPD」は、粉末X線回折計においてCu-Kα放射を使用することによって得られたパターンである。
【0037】
本開示に記載の「示差走査熱量分析又はDSC」とは、試料の昇温又は恒温中、熱効果に関連する全ての物理的変化及び化学的変化を特徴付け、試料の相転移情報を取得するために、試料と参照物との間の温度差及び熱流差を測定することを指す。
【0038】
本開示に記載の「2θ又は2θ角度」とは、回折角を指し、θはブラッグ角であり、単位は°又は度であり、2θの許容差範囲は±0.3、±0.2又は±0.1である。
【0039】
本開示に記載の「格子面間隔又は格子面間隔(d値)」とは、空間格子において互いに平行ではなく、隣接する2つの格子の点を連結する3つの単位ベクトルa、b、cを選択し、この3つの単位ベクトルが格子を並置された平行六面体単位に分割することを指し、格子面間隔と呼ばれる。空間格子は、決定された平行六面体単位で結線して分割され、1組の直線格子が得られ、空間格子又は結晶格子と呼ばれる。格子及び結晶格子は、それぞれ幾何学的な点及び線で結晶構造の周期性を反映し、異なる結晶面は、その面間隔(即ち、隣接する2つの平行結晶面間の距離)がそれぞれ異なり、単位は、Å又はオングストロームである。
【発明の効果】
【0040】
本発明の有益な効果
本開示で調製された式(I)で表される化合物のA結晶形、B結晶形は、純度が高く、光照射、高温、高湿の条件で結晶形の安定性が良好であり、HPLC純度の変化が小さく、物理化学的安定性が高く、原料の保存及び使用により有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】式(I)で表される化合物の非晶質のXRPDパターンである。
【
図2】式(I)で表される化合物のA結晶形のXRPDパターンである。
【
図3】式(I)で表される化合物のA結晶形のDSCパターンである。
【
図4】式(I)で表される化合物のB結晶形のXRPDパターンである。
【
図5】式(I)で表される化合物のB結晶形のDSCパターンである。
【
図6】式(I)で表される化合物のA結晶形とB結晶形の混晶のXRPDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、実施例と組み合わせて本開示をより詳しく説明するが、本開示の実施例は、本開示の技術案を説明するものに過ぎず、本開示の実質や範囲を限定するものではない。
【0043】
試験に使用される機器の試験条件:
【0044】
1、示差走査型熱量計(Differential Scanning Calorimeter,DSC)
機器の型番:Mettler Toledo DSC 1 STARe System。
パージガス:窒素。
昇温速度:10.0℃/min。
温度範囲:40~300℃。
【0045】
2、示差走査型熱量計(Differential Scanning Calorimeter,DSC)
機器の型番:Mettler Toledo DSC 3+。
パージガス:窒素。
昇温速度:10.0℃/min。
温度範囲:25~300℃。
【0046】
3、X線回折スペクトル(X-ray Powder Diffraction,XRPD)
機器の型番:BRUKER D8 DISCOVERY 粉末X線回折計。
放射線:単色Cu-Kα放射線(Cu-Kα1の波長は1.5406Åであり、Cu-Kα2の波長は1.54439Åであり、Cu-Kαの波長は、Kα1とKα2の加重平均値λ=1.5418Åを取る)。
走査方式:θ/2θ、走査範囲:5~48°。
電圧:40KV、電流:40mA。
【0047】
4、X線回折スペクトル(X-ray Powder Diffraction,XRPD)
機器の型番:BRUKER D8 Focus 粉末X線回折計。
放射線:単色Cu-Kα放射線(Cu-Kα1の波長は1.5406Åであり、Cu-Kα2の波長は1.54439Åであり、Cu-Kαの波長は、Kα1とKα2の加重平均値λ=1.5418Åを取る)。
走査方式:θ/2θ、走査範囲:2~40°。
電圧:40KV、電流:40mA。
【0048】
そのうち、2θが小数2位を保留するデータは、BRUKER D8 Focus粉末X線回折計によって測定される。
【0049】
実施例において、特に説明しない限り、反応はいずれもアルゴン雰囲気又は窒素雰囲気において行うことができる。
【0050】
アルゴン雰囲気又は窒素雰囲気とは、反応フラスコに容量約1Lのアルゴン又は窒素バルーンが接続されていることを指す。
【0051】
水素雰囲気とは、反応フラスコに容量約1Lの水素バルーンが接続されていることを指す。
【0052】
加圧水素化反応には、Parr 3916EKX型水素化装置及び清藍QL-500型水素発生器又はHC2-SS型水素化装置が使用される。
【0053】
水素化反応は、一般に真空排気して、水素を注入し、3回繰り返して操作する。
【0054】
マイクロ波反応には、CEM Discover-S 908860型マイクロ波反応器が使用される。
【0055】
実施例において、特に説明しない限り、溶液とは水溶液を指す。
【0056】
実施例において、特に説明しない限り、反応温度は室温であり、20℃~30℃である。
【0057】
実施例における反応過程の監視は、薄層クロマトグラフィー(TLC)により行われ、反応に使用される展開溶媒、化合物を精製するために使用されるカラムクロマトグラフィーの溶出液系及び薄層クロマトグラフィーの展開溶媒系は、A:ジクロロメタン/メタノール系、B:n-ヘキサン/酢酸エチル系、C:石油エーテル/酢酸エチル系を含み、溶剤の体積比は化合物の極性によって調節されるが、少量のトリエチルアミン及び酢酸などの塩基性又は酸性試薬を加えて調節されてもよい。
【0058】
実施例1
【0059】
【0060】
ステップ1
(R)-2-((7-ブロモ-2-クロロピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)-2-メチルヘキサン-1-オール 1c
化合物1a(400mg,1.434mmol,特許出願WO2014022728に開示の方法によって調製して得られた)を10mLのテトラヒドロフランに加え、(R)-2-アミノ-2-メチルヘキサン-1-オール1b(377mg,2.873mmol)を加え、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(556mg,4.302mmol)を加え、100℃で封管して撹拌して16時間反応させ、反応が終了し、室温まで冷却させ、濾過して不溶解物を除去し、濾液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって溶出剤系Aで得られた残留物を精製し、表題生成物1c(4.0g,収率55.3%)を得た。
MS m/z(ESI):373.1[M+1]。
【0061】
ステップ2
(R)-2-((7-ブロモ-2-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)-2-メチルヘキサン-1-オール 1d
化合物1c(250mg,0.669mmol)を10mLのテトラヒドロフランに加え、2,4-ジメトキシベンジルアミン(560mg,3.349mmol)を加え、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(259mg,2.004mmol)を加え、封管して100℃で16時間撹拌し、反応液に20mLの水を加え、ジクロロメタンで抽出し(20mL×3)、有機相を合わせ、有機相をそれぞれ水(20mL)、飽和塩化ナトリウム溶液(20mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過して乾燥剤を除去し、濾液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって溶出剤系Bで得られた残留物を精製し、表題生成物1d(295mg,収率87.5%)を得た。
MS m/z(ESI):504.1[M+1]
【0062】
ステップ3
(R)-2-((2-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-7-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)-2-メチルヘキサン-1-オール 1e
化合物1d(295mg,0.54mmol)を5mLのエチレングリコールジメチルエーテルに加え、ビス(ピナコラト)ジボロン(223mg,878.169μmol)を加え、1,1′-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(43mg,0.059mmol)を加え、酢酸カリウム(173mg,1.76mmol)を加え、アルゴンガスを3回置換し、80℃に昇温させて撹拌しながら2時間反応させた。反応液を減圧濃縮した後、反応系に20mLの水を加え、ジクロロメタンで抽出し(10mL×3)、有機相を合わせ、有機相をそれぞれ水(20mL)、飽和塩化ナトリウム溶液(20mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過して乾燥剤を除去し、濾液を減圧濃縮して粗表題生成物1e(322mg,収率100%)を得た。
【0063】
ステップ4
(R)-2-((2-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-7-(6-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)ピリジン-3-イル)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)-2-メチルヘキサン-1-オール 1g
化合物1e(650mg,1.178mmol)を20mLの1,4-ジオキサン及び4mLの水に加え、1-((5-ブロモピリジン-2-イル)メチル)-4-メチルピペラジン1f(318mg,1.170mmol,特許出願WO20020026052に開示の方法によって調製して得られた)を加え、1,1′-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(86mg,0.117mmol)を加え、炭酸カリウム(489mg,3.538mmol)を加え、アルゴンガスを3回置換し、80℃に昇温させて撹拌しながら2時間反応させた。反応液を減圧濃縮した後、反応系に30mLの水を加え、ジクロロメタンで抽出し(30mL×3)、有機相を合わせ、有機相をそれぞれ水(30mL)、飽和塩化ナトリウム溶液(30mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過して乾燥剤を除去し、濾液を減圧濃縮してシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって溶出剤系Bで得られた残留物を精製して表題生成物1g(650mg,収率89.70%)を得た。
MS m/z(ESI):615.1[M+1]。
【0064】
ステップ5
(R)-2-((2-アミノ-7-(6-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)ピリジン-3-イル)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)-2-メチルヘキサン-1-オール I
化合物1g(650mg,0.138mmol)を5mLのトリフルオロ酢酸に加え、室温で3時間を反応させ、反応液を減圧濃縮し、反応液に20mLの飽和炭酸水素ナトリウムを加え、ジクロロメタン(20mL×3)で抽出し、有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液(30mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過して乾燥剤を除去し、濾液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって溶出剤系Bで得られた残留物を精製し、生成物I(320mg,収率65.14%)を得た。粉末X線回折によって検出した後、当該化合物は非晶質であり、XRPDスペクトルは、
図1に示される。
MS m/z(ESI):465.1[M+1]
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ8.87-8.88(d,1H),8.60-8.61(m,1H),8.14-8.16(d,1H),7.79-7.80(s,1H),7.51-7.53(d,1H),7.20(s,1H),6.36(br,2H),5.12-5.15(t,1H),3.66(s,2H),3.68-3.70(m,1H),3.48-2.53(m,1H),2.32-3.42(m,8H),2.12(s,3H),1.90-1.92(m,2H),1.40(s,3H),1.22-1.23(m,4H),0.80-0.84(m,3H)。
【0065】
実施例2
実施例1で得られた式(I)で表される化合物(200mg,0.43mmol)を10mLの酢酸エチルに加え、還流するまで昇温させ、撹拌して溶解させた後、溶液をゆっくりと室温まで降温させ、撹拌し、濾過し、濾過ケーキを酢酸エチルで洗浄し、濾過ケーキを収集し、真空下で乾燥し、式(I)で表される化合物のA結晶形を100mg得て、その特徴的なピーク位置は、下記表のように示される。
【0066】
【0067】
実施例3
式(I)で表される化合物(400mg,0.86mmol)を8mLのイソプロパノールに加え、固体が溶解して清澄になるまで加熱還流し、室温まで自然冷却して撹拌し、濾過し、濾過ケーキをイソプロパノールで洗浄し、濾過ケーキを収集し、真空下で乾燥し、式(I)で表される化合物のB結晶形を200mg得て、その特徴的なピーク位置は、下記表のように示される。
【0068】
【0069】
実施例4
式(I)で表される化合物のA結晶形とB結晶形を開口したクリーンな秤量フラスコに入れ、加熱(40℃,60℃)、光照(4500lx±500lx)、高湿(90%±5%,75%±5%)条件下での試料の安定性を考察し、サンプリング考察期間は30日であった。
【0070】
【0071】
【0072】
実施例5
式(I)で表される化合物のB結晶形を取って3ヶ月の長期間(25℃,60%RH)、加速(40℃,75%RH)安定性考察を行い、結果は、下記表のように示される。
【0073】
【0074】
実験結果により、式(I)で表される化合物のB結晶形を長期間(25℃,60%RH)、加速(40℃,75%RH)安定性条件下で3ヶ月間放置した後、その物理化学的安定性が良好であることが示されている。
【0075】
試験例:
生物学的評価
試験例1、本開示に係る化合物によるヒト由来TLR8及びTLR7へのアゴニスト活性の測定
本開示に係る化合物によるHEK-BlueTM hTLR8安定導入細胞により発現されたhTLR8への活性化作用は、以下の実験方法によって測定される。
【0076】
一、実験の材料と機器
1.DMEM(Gibco,10564-029)、
2.ウシ胎児血清(GIBCO,10099)、
3.トリパンブルー溶液(Sigma,T8154-100ML)、
4.Flexstation 3多機能マイクロプレートリーダー(Molecμlar Devices)、
5.HEK-BlueTM hTLR8細胞系(InvivoGen,hkb-hTLR8)、又はHEK-BlueTM hTLR7細胞系(InvivoGen,hkb-hTLR7)、
6.HEK-Blue検出試薬(InvivoGen,hb-det3)、
7.リン酸塩緩衝液(PBS)pH7.4(上海源培生物科技株式会社,B320)。
【0077】
二、実験の手順
a.ヒト由来TLR8へのアゴニスト活性の測定
HEK-Blue検出培地を配置し、HEK-Blue検出乾燥粉末を1袋取り、50mLのエンドトキシン除去水を加えて溶解させ、更に37℃のインキュベーターに入れ、10分後に滅菌濾過した。まず、化合物を20mMの原液に配合し、更に純粋なDMSOで最高濃度が6×106nMになるまで希釈した後、3倍勾配希釈し、合計10ポイントであり、培地で先に化合物を20倍希釈した後、各ウェルに希釈後の化合物を20μL加えた。
【0078】
HEK-BlueTM hTLR8細胞を取り、まず、上清を除去し、予熱されたPBSを2~5mL加え、インキュベーターに1~2分間放置され、細胞を軽くピペッティングし、トリパンブルーで染色してカウントした。HEK-Blue検出培地で細胞を再懸濁して濃度が2.2×105細胞/mLになるまで調整し、180μLの細胞を20μLの薬剤が加えられた上記96ウェル細胞培養プレートに加え、37℃で6~16時間培養した。
【0079】
プレートリーダーで読み取り、波長は620nmであった。対応するOD値を得ることができ、Graphpad Prismによって計算して薬剤のEC50値を得た。
【0080】
b.ヒト由来TLR7へのアゴニスト活性の測定
HEK-Blue検出培地を配置し、HEK-Blue検出乾燥粉末を1袋取り、50mLのエンドトキシン除去水を加えて溶解させ、更に37℃のインキュベーターに入れ、10分後に滅菌濾過した。まず、化合物を20mMの原液に配合し、更に純粋なDMSOで最高濃度が6×106nMになるまで希釈し、3倍勾配希釈し、合計10ポイントであった。
【0081】
培地で先に配合された上記化合物を20倍希釈した後、各ウェルに希釈後の化合物を20μL加えた。
【0082】
HEK-BlueTM hTLR7細胞を取り、まず、上清を除去し、更に予熱されたPBSを2~5mL加え、インキュベーターに1~2分間放置され、細胞を軽くピペッティングし、トリパンブルーで染色してカウントした。HEK-Blue検出培地で細胞を再懸濁して濃度が2.2×105細胞/mLになるまで調整し、180μLの細胞を20μLの薬剤が加えられた上記96ウェル細胞培養プレートに加え、37℃で6~16時間培養した。
【0083】
プレートリーダーで読み取り、波長は620nmであった。対応するOD値を得ることができ、Graphpad Prismによって計算して薬剤のEC50値を得た。
【0084】
本開示に係る化合物によるヒト由来TLR8及びTLR7への活性化作用は、以上の試験によって測定することができ、測定されたEC50値は、表1-1に示される。
【0085】
【0086】
結論によれば、本開示に係る化合物は、ヒト由来TLR8に対して優れた活性化作用を有し、ヒト由来TLR7に対して活性化作用を有さず、本開示に係る化合物がTLR8に対して選択性を有することを示す。
【0087】
試験例2、本開示に係る化合物によるヒト肝ミクロソームCYP3A4のミダゾラム代謝部位の酵素活性への阻害作用
ヒト肝ミクロソームCYP3A4のミダゾラム代謝部位に対する本開示に係る化合物の酵素活性は、以下の実験方法によって測定される。
【0088】
一、実験の材料と機器
1.リン酸緩衝液(PBS)、
2.NADPH(Sigma N-1630)、
3.ヒト肝ミクロソーム(Corning Gentest)、
4.ABI QTrap 4000液体クロマトグラフィー質量分析計(AB Sciex)、
5.Inertsil C8-3カラム,4.6×50mm,5μm(Dikma Corporation,USA)、
6.CYPプローブ基質(15μMのミダゾラム,SIGMA UC429)及び陽性対照阻害剤(ケトコナゾール,SIGMA K1003)。
【0089】
二、実験の手順
100mMのPBS緩衝液を調製し、当該緩衝液を用いて2.5mg/mLのミクロソーム溶液及び5mMのNADPH溶液を調製し、PBSで5X濃度の化合物作動液(150、50、15、5、1.5、0.15、0.015、0μM)を勾配希釈した。PBSで5X濃度のケトコナゾール作動液(150、50、15、5、1.5、0.15、0.015、0μM)を勾配希釈した。PBSで濃度が15μMのミダゾラム作動液に希釈した。
【0090】
2.5mg/mLのミクロソーム溶液、15μMのミダゾラム作動液、MgCl2溶液及び化合物作動液(150、50、15、5、1.5、0.15、0.015、0μM,濃度ごとに異なる反応系を設置した)をそれぞれ20μL取り、均一に混合した。陽性対照群において化合物の代わりに同一濃度のケトコナゾールを使用した。同時に5mMのNADPH溶液と共に37℃で5分間プレインキュベートした。5分後にNADPHを20μL取って各ウェルに加え、反応を開始させ、30分間インキュベートした。全てのインキュベート試料に2つずつの試料を用意した。30分後に全ての試料に内部標準含有のアセトニトリルを250μL加え、均一に混合し、800rpmで10分間振った後、3700rpmで10分間遠心分離した。80μLの上清液をLC-MS/MS分析に移した。
【0091】
数値をGraphpad Prismによって計算して得られたCYP3A4のミダゾラム代謝部位に対する薬剤のIC50値は、表1-2に示される。
【0092】
【0093】
結論によれば、本開示に係る化合物は、ヒト肝ミクロソームCYP3A4のミダゾラム代謝部位に対して阻害作用を有さず、より高い安全性を示し、CYP3A4代謝のミダゾラム代謝部位に基づく代謝的薬剤相互作用を生じないことを示唆している。
【0094】
試験例3、本開示に係る化合物によるヒト肝ミクロソームCYP2D6の酵素活性への阻害作用
ヒト肝ミクロソームCYP2D6に対する本開示に係る化合物の酵素活性は、以下の実験方法によって測定される。
【0095】
一、実験の材料と機器
1.リン酸緩衝液(PBS)、
2.NADPH(Sigma N-1630)、
3.ヒト肝ミクロソーム(Corning Gentest)、
4.ABI QTrap 4000液体クロマトグラフィー質量分析計(AB Sciex)、
5.Inertsil C8-3カラム,4.6×50mm,5μm(Dikma Corporation,USA)、
6.CYPプローブ基質(20μMのデキストロメトルファン,SIGMA Q0750)及び陽性対照阻害剤(キニジン,SIGMA D9684)。
【0096】
二、実験の手順
100mMのPBS緩衝液を調製し、当該緩衝液を用いて2.5mg/mLのミクロソーム溶液及び5mMのNADPH溶液を調製し、PBSで5X濃度の化合物作動液(150、50、15、5、1.5、0.15、0.015、0μM)を勾配希釈した。PBSで5X濃度のキニジン作動液(150、50、15、5、1.5、0.15、0.015、0μM)を勾配希釈した。PBSで濃度が20μMのデキストロメトルファン作動液に希釈した。
【0097】
2.5mg/mLのミクロソーム溶液、20μMのデキストロメトルファン作動液、MgCl2溶液及び化合物作動液(150、50、15、5、1.5、0.15、0.015、0μM,濃度ごとに異なる反応系を設置した)をそれぞれ20μL取り、均一に混合した。陽性対照群において化合物の代わりに同一濃度のキニジンを使用した。同時に5mMのNADPH溶液と共に37℃で5分間プレインキュベートし、5分後にNADPHを20μL取って各ウェルに加え、反応を開始させ、30分間プレインキュベートした。全てのインキュベート試料に2つずつの試料を用意した。30分後に全ての試料に内部標準含有のアセトニトリルを250μL加え、均一に混合し、800rpmで10分間振った。3700rpmで10分間遠心分離した。80μLの上清液をLC-MS/MS分析に移した。
【0098】
数値をGraphpad Prismによって計算して得られたCYP2D6代謝部位に対する薬剤のIC50値は、表1-3に示される。
【0099】
【0100】
結論によれば、本開示に係る化合物は、ヒト肝ミクロソームCYP2D6の酵素活性に対する阻害作用が低く、より高い安全性を示し、CYP2D6に基づく代謝的薬剤相互作用を生じないことを示唆している。
【0101】
試験例4、本開示に係る化合物によるヒト肝ミクロソームCYP3A4のテストステロン代謝部位の酵素活性への阻害作用
ヒト肝ミクロソームCYP3A4のテストステロン代謝部位に対する本開示に係る化合物の酵素活性は、以下の実験方法によって測定される。
【0102】
一、実験の材料と機器
1.リン酸緩衝液(PBS)、
2.NADPH(Sigma N-1630)、
3.ヒト肝ミクロソーム(Corning Gentest)、
4.ABI QTrap 4000液体クロマトグラフィー質量分析計(AB Sciex)、
5.Inertsil C8-3カラム,4.6×50mm,5μm(Dikma Corporation,USA)、
6.CYPプローブ基質(テストステロン/100μM,SIGMA K1003)及び陽性対照阻害剤(ケトコナゾール,Dr. Ehrenstorfer GmbH,C17322500)。
【0103】
二、実験の手順
100mMのPBS緩衝液を調製し、当該緩衝液を用いて2.5mg/mLのミクロソーム溶液及び5mMのNADPH溶液を調製し、PBSで5X濃度の化合物作動液(150、50、15、5、1.5、0.15、0.015、0μM)を勾配希釈した。PBSで5X濃度のケトコナゾール作動液(150、50、15、5、1.5、0.15、0.015、0μM)を勾配希釈した。PBSで濃度が50μMのデキストロメトルファン作動液に希釈した。
【0104】
2.5mg/mLのミクロソーム溶液、50μMのテストステロン作動液、MgCl2溶液及び化合物作動液(150、50、15、5、1.5、0.15、0.015、0μM,濃度ごとに異なる反応系を設置した)をそれぞれ20μL取り、均一に混合した。陽性対照群において化合物の代わりに同一濃度のケトコナゾールを使用した。同時に5mMのNADPH溶液と共に37℃で5分間プレインキュベートした。5分後にNADPHを20μL取って各ウェルに加え、反応を開始させ、30分間インキュベートした。全てのインキュベート試料に2つずつの試料を用意した。30分後に全ての試料に内部標準含有のアセトニトリルを250μL加え、均一に混合し、800rpmで10分間振った。3700rpmで10分間遠心分離した。80μLの上清液をLC-MS/MS分析に移した。
【0105】
数値をGraphpad Prismによって計算して得られたCYP3A4のテストステロン代謝部位に対する薬剤のIC50値は、表1-4に示される。
【0106】
【0107】
結論によれば、本開示に係る化合物は、ヒト肝ミクロソームCYP3A4のテストステロン代謝部位に対して阻害作用を有さず、より高い安全性を示し、CYP3A4のテストステロン代謝部位に基づく代謝的薬剤相互作用を生じないことを示唆している。
【0108】
試験例5、本開示に係る化合物による末梢血単核細胞(PBMC)を刺激してIL12及びIFNγを分泌させる能力の測定
本開示に係る化合物によるPBMCを刺激してIL12及びIFNγを分泌させる能力は、以下の実験方法によって測定される。
【0109】
一、実験の材料と機器
1.RPMI 1640(Invitrogen,11875)、
2.FBS(Gibco,10099-141)、
3.Ficoll-Paque PREMIUM(GE,17-5442-02)、
4.トリパンブルー溶液(Sigma,T8154-100ML)、
5.SepMateTM-50(Stemcell,15460)、
6.Bright-LineTM血球計(Sigma,Z359629-1EA)、
7.96ウェル平底プレート(Corning,3599)、
8.96ウェルv底プレート(Corning,3894)、
9.Human IL-12 ELISA kit(Neobioscience,EHC152.96)、
10.Human IFNγ kit(cisbio,62HIFNGPEG)、
11.PHERAStar多機能マイクロプレートリーダー(BMG,PHERAStar)。
【0110】
二、実験の手順
化合物を純粋なDMSOで希釈し、最高濃度が5mMであり、4倍勾配希釈し、合計9ポイントであった。その後、4μLの化合物を196μLの10%FBS含有のRMPI 1640培地に加え、均一に混合した。50μLを取って新しい96ウェル細胞培養プレートに入れた。
【0111】
全ての試薬を室温に平衡化させ、250mLの培養フラスコに60mLの血液及び等体積のPBS+2%FBSを加え、軽くピペッティングして均一に混合して希釈させた。50mLのPBMC分離チューブSepMateTM-50に15mLのリンパ球分離液Ficoll-Paque PREMIUMを加えた後、希釈後の血液を30mL加えた。1200gで室温で10分間遠心分離した。上清を取った後、300gで8分間遠心分離した。10%FBS含有のRMPI1640培地で再懸濁してカウントし、PBMCの数を3.33×106細胞/mLに調整し、150μLを取って化合物が加えれた細胞培養プレートに置き、37℃で、5.0%のCO2のインキュベーターで24時間培養した。細胞培養プレートを遠心分離機に入れ、1200rpmで、室温で10分間遠心分離し、各ウェルから150μLの上清を取った。
【0112】
Human IL-12検出試薬キットの試薬を常温まで平衡化させ、試薬キットの説明書に従い、標準品の最高濃度は2000pg/mLであり、2倍勾配希釈し、合計8ポイントであった。測定される試料を20倍希釈した。その後100μL/wellで予めコーティングされたプレートに加えた。37℃で90分間インキュベートした。プレートを洗浄し、抗生物質化され抗体を100μL/well加えた。37℃で60分間インキュベートした。プレートを洗浄し、HRP結合酵素を100μL/well加えた。37℃で30分間インキュベートし、プレートを洗浄し、TMBを加え、室温で5分間インキュベートした。最後に停止溶液を加えて反応を停止させ、マイクロプレートリーダーによって450nmの吸光度を読み取った。
【0113】
Human IFNγ検出試薬キットの試薬を常温に平衡化させ、遮光条件下で試薬キットの説明書に従い、標準品及び検出抗体を調製した。各ウェルに遠心分離により得られた上清液を16μL加え、更に各ウェルに新しく調製された混合検出抗体を4μL加え、振とうして均一に混合し、暗所にて室温で一晩インキュベートし、PHERAStarは、htrfプログラムによって読み取られた。
【0114】
PBMCを刺激して化合物が加えられていない群の平均値より3倍高いSD(化合物が加えられていない群のSD)を生成できることに対応する化合物濃度を当該化合物のMEC(Minimal Effective Concentration)値と定義した。
【0115】
本開示に係る化合物によるPBMCを刺激してIL12及びIFNγを分泌させる能力は、以上の試験によって測定され、測定されたMEC値は、表1-5に示される。
【0116】
【0117】
結論によれば、PBMCを刺激してIL12及びIFNγを分泌させる活性のデータから見れば、本開示に係る化合物は、有効濃度が低いという利点を有する。
【0118】
試験例6
1、実験目的
全自動パッチクランプを利用してhERGカリウムチャネルをトランスフェクションした安定細胞株において本開示に係る化合物によるhERGカリウム電流への遮断作用を試験した。
【0119】
2、実験方法
2.1 実験材料と機器
2.1.1 実験材料:
【0120】
【0121】
2.1.2 実験機器:
【0122】
【0123】
2.2 全自動パッチクランプ実験ステップ
HEK293-hERG安定細胞株を1:4の密度でMEM/EBSS培地(10%FBS,400μg/mLのG418,1%のMEM非必須アミノ酸溶液(100×),1%のピルビン酸ナトリウム溶液)で継代培養し、培養から48~72時間以内に全自動パッチクランプ実験を行った。実験当日に細胞を0.25%トリプシンで消化した後、遠心分離によって細胞を収集し、細胞外液(140mMのNaCl,4mMのKCl,1mMのMgCl2,2mMのCaCl2,5mMDのデキストロース一水和物,10mMのHepes,pH7.4,298mOsmol)で細胞を再懸濁して細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液をPatchliner機器の細胞バンクに置き、Patchliner機器は、負圧制御装置によって細胞をチップ(NPC-16)に置き、負圧によって単一細胞をチップのウェルに吸引した。全細胞パターンを形成した後、機器は、設定されたhERG電流電圧プログラムに応じてhERG電流を得て、その後、機器は、自動的に低濃度から高濃度へ、化合物の灌流を行った。HEAK Patchmaster、HEAK EPC10パッチクランプ増幅器(Nanion)とPathlinersoftware及びPathcontrol HTsoftwareにより提供されたデータ分析ソフトウェアにより、化合物の各濃度下での電流及びブランク対照電流を分析した。
【0124】
2.3 試験結果
本開示に係る化合物によるhERGカリウム電流への遮断作用は、以上の試験によって測定され、測定されたIC50値は、表1-6に示される。
【0125】
【0126】
結論によれば、本開示に係る化合物は、hERGに対する阻害作用が低く、hERGチャネルによって引き起された副作用を低下させることができる。
【国際調査報告】