IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ▲復▼星弘▲創▼(▲蘇▼州)医▲薬▼科技有限公司の特許一覧

特表2023-5091803位がアミドアルキル基で置換されたクマリン系化合物の製造方法、その生成物及び関連中間体
<>
  • 特表-3位がアミドアルキル基で置換されたクマリン系化合物の製造方法、その生成物及び関連中間体 図1
  • 特表-3位がアミドアルキル基で置換されたクマリン系化合物の製造方法、その生成物及び関連中間体 図2
  • 特表-3位がアミドアルキル基で置換されたクマリン系化合物の製造方法、その生成物及び関連中間体 図3
  • 特表-3位がアミドアルキル基で置換されたクマリン系化合物の製造方法、その生成物及び関連中間体 図4
  • 特表-3位がアミドアルキル基で置換されたクマリン系化合物の製造方法、その生成物及び関連中間体 図5
  • 特表-3位がアミドアルキル基で置換されたクマリン系化合物の製造方法、その生成物及び関連中間体 図6
  • 特表-3位がアミドアルキル基で置換されたクマリン系化合物の製造方法、その生成物及び関連中間体 図7
  • 特表-3位がアミドアルキル基で置換されたクマリン系化合物の製造方法、その生成物及び関連中間体 図8
  • 特表-3位がアミドアルキル基で置換されたクマリン系化合物の製造方法、その生成物及び関連中間体 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-07
(54)【発明の名称】3位がアミドアルキル基で置換されたクマリン系化合物の製造方法、その生成物及び関連中間体
(51)【国際特許分類】
   C07D 311/16 20060101AFI20230228BHJP
   C07D 295/185 20060101ALI20230228BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
C07D311/16 101
C07D295/185 CSP
A61K31/5377
A61P1/04
A61P1/16
A61P3/10
A61P7/06
A61P13/12
A61P17/00
A61P21/04
A61P21/00
A61P25/18
A61P19/02
A61P31/12
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540994
(86)(22)【出願日】2020-12-30
(85)【翻訳文提出日】2022-08-30
(86)【国際出願番号】 CN2020141203
(87)【国際公開番号】W WO2021136333
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】201911422365.2
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522264397
【氏名又は名称】▲復▼星弘▲創▼(▲蘇▼州)医▲薬▼科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲曽▼ ▲慶▼平
(72)【発明者】
【氏名】王 瑞平
(72)【発明者】
【氏名】段 ▲潔▼
(72)【発明者】
【氏名】魏 旭▲東▼
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC73
4C086GA02
4C086GA12
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086ZA18
4C086ZA55
4C086ZA68
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZB07
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZB33
4C086ZC35
(57)【要約】
本発明は、3位がアミドアルキル基で置換されたクマリン系化合物の製造方法及びその関連中間体に関する。前記方法は、
式(VI)の化合物を式(V)の化合物と反応させることにより、式(VII)の化合物を製造するステップ(A)を含み、
式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン及び-O(C1-8アルキル)から選択され、ここで、前記アルキル基は、ハロゲン、1~2個のヒドロキシ基で置換されたC1-8アルキル基、及び-O(C1-8アルキル)から選択される1又は2個の基で任意に置換され、
は、-L-C(O)NRであり、Lは、C1-3アルキレン基である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(VI)の化合物を式(V)の化合物と反応させることにより、式(VII)の化合物を製造するステップ(A)を含み、
【化1】
式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン及び-O(C1-8アルキル)から選択され、ここで、前記アルキル基は、ハロゲン、1~2個のヒドロキシ基で置換されたC1-8アルキル基、及び-O(C1-8アルキル)から選択される1~2個の基で任意に置換され、
は、-L-C(O)NRであり、Lは、C1-3アルキレン基であり、
は、-O(C1-6アルキル)であり、
及びRは、それぞれ独立して、水素、C1-8アルキル基及びC3-10シクロヒドロカルビル基から選択され、ここで、前記アルキル基及びシクロヒドロカルビル基は、ハロゲン、-O(C1-8アルキル)、-NH、-NH(C1-8アルキル)、-N(C1-8アルキル)、及び5~7員ヘテロ環基から選択される1~2個の基で任意に置換され、ここで、前記ヘテロ環基は、N、O及びSから選択される1~2個のヘテロ原子を含有し、かつC1-8アルキル基から選択される1~2個の基で任意に置換され、あるいは、
及びRは、それらが結合しているN原子と共に5~7員ヘテロ環基を形成し、前記ヘテロ環基は、N、O及びSから選択される1個の追加のヘテロ原子を任意に含有し、かつハロゲン、C1-8アルキル基、-O(C1-8アルキル)、-NH、-NH(C1-8アルキル)及び-N(C1-8アルキル)から選択される1~2個の基で任意に置換される、式(VII)の化合物の製造方法。
【請求項2】
及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン及び-O(C1-4アルキル)から選択され、ここで、前記アルキル基は、ハロゲン及び-O(C1-4アルキル)から選択される1~2個の基で任意に置換され、好ましくは、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン及び-O(C1-2アルキル)から選択され、ここで、前記アルキル基は、ハロゲン又はメトキシ基で任意に置換され、より好ましくは、R及びRは、それぞれ独立して、水素、メトキシ基又は
【化2】
である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
は、-O(C1-4アルキル)であり、好ましくは、-O(C1-2アルキル)であり、より好ましくは、エトキシ基である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Lは、メチレン基又はエチレン基であり、好ましくは、メチレン基である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
及びRは、それぞれ独立して、水素及びC1-6アルキル基から選択され、ここで、前記アルキル基は、ハロゲン、-O(C1-6アルキル)、-NH、-NH(C1-6アルキル)、-N(C1-6アルキル)及び5~7員ヘテロ環基から選択される1~2個の基で任意に置換され、ここで、前記ヘテロ環基は、N、O及びSから選択される1~2個のヘテロ原子を含有し、かつC1-6アルキル基から選択される1~2個の基で任意に置換され、あるいは、
及びRは、それらが結合しているN原子と共に5~7員ヘテロ環基を形成し、前記ヘテロ環基は、N、O及びSから選択される1個の追加のヘテロ原子を任意に含有し、かつハロゲン、C1-6アルキル基、-O(C1-6アルキル)、-NH、-NH(C1-6アルキル)及び-N(C1-6アルキル)から選択される1~2個の基で任意に置換され、
好ましくは、R及びRは、それぞれ独立して、水素及びC1-4アルキル基から選択され、ここで、前記アルキル基は、ハロゲン、-O(C1-2アルキル)、-NH(C1-2アルキル)、-N(C1-2アルキル)及び5~7員ヘテロ環基から選択される1~2個の基で任意に置換され、ここで、前記ヘテロ環基は、N、O及びSから選択される1~2個のヘテロ原子を含有し、かつ前記ヘテロ原子のうちの少なくとも1つがNであり、かつ前記ヘテロ環基は、C1-4アルキル基から選択される1~2個の基で任意に置換され、あるいは、
及びRは、それらが結合しているN原子と共に5~7員ヘテロ環基を形成し、前記ヘテロ環基は、N、O及びSから選択される1個の追加のヘテロ原子を任意に含有し、かつハロゲン、C1-4アルキル基、-O(C1-2アルキル)、-NH(C1-2アルキル)及び-N(C1-2アルキル)から選択される1~2個の基で任意に置換され、
より好ましくは、R及びRは、それぞれ独立して、水素及びC1-2アルキル基から選択され、ここで、前記アルキル基は、メトキシ基、ジメチルアミノ基、モルホリニル基、ピペリジニル基又はピペラジニル基から選択される1~2個の基で任意に置換され、前記モルホリニル基、ピペリジニル基又はピペラジニル基は、メチル基で任意に置換され、あるいは、
及びRは、それらが結合しているN原子と共にモルホリニル基、ピペリジニル基又はピペラジニル基を形成し、前記モルホリニル基、ピペリジニル基又はピペラジニル基は、メチル基で任意に置換され、
さらに好ましくは、R及びRは、それぞれ独立して、水素及びC1-2アルキル基から選択され、ここで、前記アルキル基は、モルホリニル基で置換され、あるいは、
及びRは、それらが結合しているN原子と共にモルホリニル基を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記式(VII)の化合物は、以下の化合物5A2の構造を有し、
化合物1を化合物B1と反応させることにより、化合物5A2を製造するステップ(A)を含む、請求項1に記載の方法。
【化3】
【請求項7】
ステップ(A)は、酸性条件下で行われ、及び/又は、反応温度は、-20℃~70℃であり、好ましくは-5℃~60℃であり、より好ましくは20℃~50℃である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
式(VI)の化合物を式(V)の化合物と反応させることにより、式(VII)の化合物を製造するステップ(A)と、
【化4】
式(VII)の化合物から式(I)の化合物を製造するステップ(B)とを含み、
【化5】
式中、R、R、R及びRは、請求項1において定義される通りである、式(I)の化合物の製造方法。
【請求項9】
構造が以下の式(V)に示す通りであり、
【化6】
式中、R及びRは、請求項1~5のいずれか一項において定義される通りである、中間体化合物。
【請求項10】
化合物B1である請求項9に記載の中間体化合物。
【化7】
【請求項11】
ステップ(A)の前に、ステップ(a)及びステップ(b)をさらに含み、
ステップ(a)では、式(II)の化合物をアミン化合物HNRと縮合反応させることにより、式(III)の化合物を製造し、
【化8】
式中、Xは、ハロゲンであり、好ましくはCl又はBrであり、より好ましくはBrであり、L、R、R及びRは、請求項1において定義される通りであり、
好ましくは、反応は、有機溶媒において行われ、より好ましくは、有機溶媒は、中性非プロトン性溶媒であり、さらに好ましくは、有機溶媒は、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ジ置換アミド系溶媒、エステル系溶媒及びその組み合わせから選択され、
より好ましくは、
前記炭化水素系溶媒は、ジクロロメタン、トルエン、キシレン及びそれらの組み合わせから選択され、及び/又は、
前記エーテル系溶媒は、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル及びそれらの組み合わせから選択され、及び/又は、
前記ジ置換アミド系溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン及びそれらの組み合わせから選択され、及び/又は、
前記エステル系溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル及びそれらの組み合わせから選択され、
及び/又は、
反応温度は、-10℃~60℃であり、好ましくは0℃~室温であり、より好ましくは0℃~10℃であり、
ステップ(b)では、式(III)の化合物を式(IV)の化合物と反応させることにより、式(V)の化合物を製造し、
【化9】
式中、Xは、ハロゲンであり、好ましくはCl又はBrであり、より好ましくはBrであり、Rは、請求項1において定義される通りであり、
好ましくは、反応は、塩基の存在下で行われ、前記塩基は、有機塩基又は無機塩基であり、
より好ましくは、
前記有機塩基は、NaNH、ナトリウムアルコキシド、K-HMDS、及びLi-HMDSから選択され、及び/又は、
前記無機塩基は、炭酸塩及び金属水素化物から選択され、好ましくは、前記炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸リチウムから選択され、より好ましくは、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムであり、特に好ましくは、炭酸カリウムであり、及び/又は、前記金属水素化物は、NaH、KH、LiH及びCaHから選択され、特に好ましくはNaHであり、
好ましくは、反応は、有機溶媒において行われ、好ましくは、前記有機溶媒は、中性非プロトン性溶媒であり、さらに好ましくは、有機溶媒は、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ジ置換アミド系溶媒及びその組み合わせから選択され、
より好ましくは、
前記炭化水素系溶媒は、ジクロロメタン、トルエン、キシレン及びそれらの組み合わせから選択され、及び/又は、
前記エーテル系溶媒は、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル及びそれらの組み合わせから選択され、及び/又は、
前記ジ置換アミド系溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン及びそれらの組み合わせから選択され、
及び/又は、
反応温度は、-20~100℃であり、好ましくは-20~80℃であり、より好ましくは-10~60℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(A)の前に、
化合物D1をモルホリンと縮合反応させることにより、化合物C1を製造するステップ(a)と、
【化10】
化合物C1をアセト酢酸エチルと反応させることにより、化合物B1を製造するステップ(b)とをさらに含み、
【化11】
式中、Xは、ハロゲンであり、好ましくはCl又はBrであり、より好ましくはBrである、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
X線粉末回折パターンは、およそ8.44±0.2°、13.11±0.2°、15.70±0.2°、19.73±0.2°、21.00±0.2°、22.91±0.2°の回折角(2θ)において特徴的なピークがある、以下の式の化合物の結晶形I。
【化12】
【請求項14】
X線粉末回折パターンは、およそ8.44±0.2°、10.91±0.2°、10.68±0.2°、13.11±0.2°、15.70±0.2°、17.54±0.2°、19.73±0.2°、21.00±0.2°、22.91±0.2°、26.27±0.2°の回折角(2θ)において特徴的なピークがあり、
好ましくは、およそ8.44±0.2°、10.91±0.2°、10.68±0.2°、13.11±0.2°、15.70±0.2°、16.90±0.2°、17.54±0.2°、19.73±0.2°、21.00±0.2°、22.91±0.2°、26.27±0.2°、28.64±0.2°の回折角(2θ)において特徴的なピークがある、請求項13に記載の結晶形I。
【請求項15】
X線粉末回折パターンは、表1に示す回折角(2θ)において特徴的なピークがある、請求項13又は14に記載の結晶形I。
【請求項16】
X線粉末回折パターンは、実質的に図1に示す通りである、請求項13~15のいずれか一項に記載の結晶形I。
【請求項17】
(1)熱重量分析グラフが実質的に図2に示す通りであり、
(2)示差走査熱量測定グラフが実質的に図3に示す通りであり、
(3)動的水分吸着グラフが実質的に図4に示す通りであるという要件のうちの少なくとも1つを満たす、請求項13~16のいずれか一項に記載の結晶形I。
【請求項18】
DSCで特徴付けられると、開始温度がおよそ239℃±5℃であり、ピーク温度がおよそ242℃±5℃である、請求項13~17のいずれか一項に記載の結晶形I。
【請求項19】
無水物結晶形である、請求項13~18のいずれか一項に記載の結晶形I。
【請求項20】
ステップ(B)の反応終了後、反応液を濃縮し、水及び式(I)の化合物の種結晶を添加して結晶化を誘導するステップiと、
ステップiで得られた粗生成物を分離し、加熱条件下で、適切な溶媒と撹拌してから降温させ、分離して結晶状態の式(I)の化合物を得るステップiiと、を含む、請求項13~19のいずれか一項に記載の結晶形Iの製造方法。
【請求項21】
ステップiiで粗生成物を分離した後、加熱条件下で、適切な溶媒と撹拌する前に、適切な溶媒で粗生成物をすすぐステップをさらに含み、及び/又は、
ステップiiで分離して結晶状態の式(I)の化合物を得た後、適切な溶媒ですすぎ、乾燥するステップをさらに含み、及び/又は、
ステップiiに記載の適切な溶媒は、ニトリル系溶媒又はニトリル系溶媒と水との混合溶媒から選択され、好ましくは、ニトリル系溶媒は、アセトニトリル、ベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル又はそれらの組み合わせから選択され、好ましくはアセトニトリルであり、及び/又は、
ステップiiに記載の加熱温度は、好ましくは40~80℃であり、より好ましくは50~70℃であり、及び/又は、
ステップiiでの加熱時間は、少なくとも2hであり、好ましくは少なくとも4hであり、より好ましくは少なくとも8hである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項13~19のいずれか一項に記載の結晶形I及び1種以上の薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項23】
請求項13~19のいずれか一項に記載の結晶形I又は請求項22に記載の医薬組成物の、小胞体ストレス応答に関連するか又はIRE1依存性分解を調節する標的に関連する疾患、障害又は状態を治療又は予防する医薬品の製造における使用。
【請求項24】
前記小胞体ストレス応答に関連する疾患、障害又は状態は、B細胞自己免疫疾患、癌及びウイルス感染症から選択され、好ましくは、
前記B細胞自己免疫疾患は、アジソン病(Addision’s disease)、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性下垂体炎、自己免疫性リンパ増殖性疾患、自己免疫性心筋炎、チャーグーストラウス症候群、後天性表皮水疱症、巨細胞性動脈炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギランーバレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、重症筋無力症、落葉状天疱瘡、尋常性天疱瘡、結節性多発動脈炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎及びウェゲナー肉芽腫症から選択され、及び/又は、
前記癌は、乳腺腫瘍、骨腫瘍、前立腺腫瘍、肺腫瘍、副腎腫瘍、胆管腫瘍、膀胱腫瘍、気管支腫瘍、神経組織腫瘍、胆嚢腫瘍、胃腫瘍、唾液腺腫瘍、食道腫瘍、小腸腫瘍、子宮頸部腫瘍、結腸腫瘍、直腸腫瘍、肝臓腫瘍、卵巣腫瘍、膵臓腫瘍、下垂体腺腫及び分泌腺腫瘍から選択される固形腫瘍であり、及び/又は、
前記癌は、薬物耐性又は放射線耐性固形腫瘍であり、及び/又は、
前記癌は、リンパ腫、白血病及び意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)から選択される血液腫瘍であり、好ましくは、前記リンパ腫は、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、及び/又は、白血病は、急性及び慢性のリンパ性白血病及び骨髄性白血病から選択され、及び/又は、
前記ウイルス感染症は、エンベロープウイルス感染症であり、好ましくは、ウイルス感染症は、ウイルスが複製して感染性子孫を形成する際に小胞体ストレス応答経路を使用するエンベロープウイルス感染症であり、より好ましくは、ウイルス感染症は、麻疹ウイルス、ポックスウイルス、エボラウイルス(Ebola)、Epstein Barrウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、フラビウイルス属に属するウイルス、及びC型肝炎ウイルス(HCV)による感染症から選択され、ここで、前記フラビウイルス属に属するウイルスは、好ましくは日本脳炎ウイルス及び西ナイルウイルスである、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記IRE1依存性分解を調節する標的に関連する疾患、障害又は状態は、神経障害、インスリンの過剰産生を伴う障害及び炎症を伴う障害から選択され、
好ましくは、前記神経障害は、統合失調症であり、前記インスリンの過剰産生を伴う障害は、II型糖尿病であり、前記炎症を伴う障害は、糸球体腎炎、様々な形態の関節炎、多発性硬化症及び炎症性腸疾患から選択される、請求項23に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年12月31日に出願された「3位がアミドアルキル基で置換されたクマリン系化合物の製造方法、その生成物及び関連中間体」と題された第201911422365.2号の中国出願の優先権を主張するものであり、該中国出願の全文全体は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、医薬品化学の分野に関し、具体的には、3位がアミドアルキル基で置換されたクマリン系化合物の製造方法、その生成物及び関連中間体に関する。
【背景技術】
【0003】
癌又は腫瘍は、先進国で2番目に多い死因であり、高性能の早期検出技術、新たな治療法及び改善された治療結果が絶えず出現するが、患者の生活の質を向上させるために、新たな薬物及び治療方法が依然として必要とされる。イノシトール要求性酵素1α(IRE-1α)は、エンドヌクレアーゼであり、主に細胞核に結合された小胞体内に位置し、エンドヌクレアーゼの触媒機能を発揮することにより遺伝子の発現を調整して、小胞体における折り畳まれていないタンパク質のプロセシング及び修飾に影響を与える。細胞が酸素不足、飢餓、炎症、ウイルス感染、発癌などのマイナス要因により刺激されて内部環境の不均衡状態にある場合、小胞体ストレス反応が発生して、タンパク質の合成及びフォールディング障害を引き起こして、最終的に細胞のアポトーシスをもたらすことができる。このとき、「小胞体ストレス応答」(UPR、Unfolded protein response)と呼ばれる細胞自己保護メカニズムは起動されて、小胞体ストレスに対抗するために用いられ、該メカニズムのシグナル伝達経路の重要な構成部分としてのIRE-1αが活性化されて、標的mRNA上の特定の塩基配列を切除することにより関連遺伝子の発現を調整して、タンパク質のフォールディング及び修飾を強化し、小胞体のストレス圧力を軽減し、細胞内の環境の不均衡状態を修復し、細胞を生存させる。したがって、IRE-1αの機能は、腫瘍、代謝、免疫、ウイルス感染、心血管などの多くの分野の疾患といずれも密接に関連している。特に、癌については、悪性腫瘍細胞の急速大量増殖により、腫瘍細胞が、一般的に、酸素不足、栄養素の供給不足、代謝障害、発癌圧力などの様々な要因の相互作用の暴走状態にあり、このような腫瘍微小環境が、小胞体のフォールディングに持続的に影響を与え、また、化学療法、生物学的治療及び放射線治療も小胞体ストレス反応をもたらし、かつUPRによってアポトーシスに対抗するため、腫瘍細胞におけるIRE-1αは、長期間のストレスで持続的に広く活性化されることにより、医薬品(例えば、IRE-1α阻害剤)の作用を受けることができる理想的な腫瘍標的とすることができる。
【0004】
CN103079558Aには、クマリン(coumarin)構造を母核とし、IRE-1αを阻害できる小分子化合物が開示されており、以下の具体的な構造を有する化合物が提供されている。これは、強力で毒性が低く、選択性が高いIRE-1α阻害剤である。
【化1】
CN107973784Aには、α位がアミドアルキル基で置換されたアセト酢酸エチル化合物(2-(N,N-ジメチルアミノカルボニルメチル)アセト酢酸エチル)の以下の合成経路が開示されている。
【化2】
該化合物におけるアセト酢酸エチル構造中の1,3-ジカルボニル基は、塩基性条件下でイミドアミド誘導体と縮合反応し、ピリミジン化合物
【化3】
を合成するために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願第103079558号明細書
【特許文献2】中国特許出願第107973784号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第1の態様に係る式(VII)の化合物の製造方法は、
式(VI)の化合物を式(V)の化合物と反応させることにより、式(VII)の化合物を製造するステップ(A)を含み、
【化4】
式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン及び-O(C1-8アルキル)から選択され、ここで、前記アルキル基は、ハロゲン、1~2個のヒドロキシ基で置換されたC1-8アルキル基、及び-O(C1-8アルキル)から選択される1又は2個の基で任意に置換され、
は、-L-C(O)NRであり、Lは、C1-3アルキレン基であり、
は、-O(C1-6アルキル)であり、
及びRは、それぞれ独立して、水素、-O(C1-8アルキル)、及びC3-10シクロヒドロカルビル基から選択され、ここで、前記アルキル基及びシクロヒドロカルビル基は、ハロゲン、-O(C1-8アルキル)、-NH、-NH(C1-8アルキル)、-N(C1-8アルキル)、及び5~7員ヘテロ環基から選択される1又は2個の基で任意に置換され、前記ヘテロ環基は、N、O及びSから選択される1~2個のヘテロ原子を含有し、かつC1-8アルキル基から選択される1~2個の基で任意に置換され、あるいは、
及びRは、それらが結合しているN原子と共に5~7員ヘテロ環基を形成し、前記ヘテロ環基は、N、O及びSから選択される1個の追加のヘテロ原子を任意に含有し、かつハロゲン、C1-8アルキル基、-O(C1-8アルキル)、-NH、-NH(C1-8アルキル)及び-N(C1-8アルキル)から選択される1又は2個の基で任意に置換される。
【0007】
本発明の第2の態様に係る式(I)の化合物の製造方法は、本発明の第1の態様に記載のステップ(A)と、
式(VII)の化合物から式(I)の化合物を製造するステップ(B)とを含み、
【化5】
式中、R、R及びRは、本発明の第1の態様において定義される通りである。
【0008】
本発明の第3の態様に係る中間体化合物は、構造が、以下の式(V)に示す通りであり、
【化6】
式中、R及びRは、本発明の第1の態様において定義される通りである。
【0009】
本発明の第4の態様に係る化合物Orin1001の結晶形IのX線粉末回折パターンは、およそ8.44±0.2°、13.11±0.2°、15.70±0.2°、19.73±0.2°、21.00±0.2°、22.91±0.2°の回折角(2θ)において特徴的なピークがある。
【化7】
別の態様において、本発明は、本発明の結晶形I及び1種以上の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0010】
さらなる態様において、本発明は、本発明の結晶形I又は本発明の医薬組成物の、小胞体ストレス応答(UPR)に関連する疾患、障害又は状態、あるいはIRE1依存性分解(RIDD)を調節する標的に関連する疾患、障害又は状態を治療又は予防する医薬品の製造における応用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一般的な用語及び定義
他に定義されない限り、本明細書において使用した技術的及び科学的用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。矛盾が存在する場合には、本願に係る定義が優先される。本明細書において商品名が記載されている場合、その対応する商品又はその活性成分を意味することを意図する。本明細書に引用されるすべての特許、開示されている特許出願及び出版物はいずれも参照により本明細書に組み込まれる。
【0012】
「およそ」又は「約」という用語は、数値変数と併用される場合、一般的に、該変数の値及び該変数のすべての値が、実験誤差内(例えば、平均値の95%の信頼区間内)、又は規定値の±10%以内、又はより広い範囲にあることを意味する。
【0013】
「任意で」又は「任意の」という用語は、以後に説明される事象又は状況が発生してもよく、発生しなくてもよいことを意味し、該説明は、上記事象又は状況が発生するケースと、上記事象又は状況が発生しないケースを含む。
【0014】
「置換」及び「置換された」という用語は、特定の原子における1個以上(例えば、1個、2個、3個又は4個)の水素が、指摘された基で選択的に置換されることを意味するが、現在の状況における特定の原子の正常な原子価を超えず、かつ上記置換後に、安定した化合物を形成することを条件とする。置換基及び/又は変形の組み合わせは、このような組み合わせが安定した化合物を形成する場合にのみ可能となる。ある置換基が存在しないことを説明する場合、該置換基の位置には1個以上の水素原子があってもよいことが理解されるべきであるが、形成された構造により化合物が安定した状態にあることを前提とする。
【0015】
置換基が「…任意に置換される」と説明される場合、置換基は、置換されなくてもよく、置換されてもよい。ある原子又は基が置換基リストのうちの1個以上の置換基で任意に置換されると説明されると、該原子又は基における1個以上の水素は、独立して選択された任意の置換基で置換されてもよい。置換基がオキソである(すなわち、=O)場合、2個の水素原子が置換されることを意味する。
【0016】
特に明記しない限り、本明細書において使用されているように、置換基の結合点は、置換基の任意の適切な位置であってもよい。
【0017】
「含む(comprise)」という表現、又はその類似する表現「含む(include)」、「含有する(contain)」、「有する(have)」などは、非限定的であり、他の列挙されていない要素、ステップ又は成分を排除しない。「…からなる」という表現は、他の列挙されていない要素、ステップ又は成分を排除する。「…から実質的になる」という表現は、範囲が、特許請求される主題の基本的及び新規な特徴に実質的に影響を与えない任意の要素、ステップ又は成分と共に、特定の要素、ステップ又は成分に限定されることを意味する。「含む」という表現が、「…から実質的になる」及び「…からなる」という表現を包含することが理解されるべきである。
【0018】
「1種(個)以上」又は「少なくとも1種(個)の」という表現は、1、2、3、4、5、6、7、8、9種(個)又はそれ以上を表すことができる。
【0019】
数値範囲の下限及び上限を開示する場合、該範囲内にある任意の数及び任意の含まれる範囲は、いずれも具体的に開示される。特に、本明細書に開示される各値の範囲は、より広い範囲の値内に包含される各値及び範囲を表すものと理解されるべきである。
【0020】
本明細書に使用されるm~nという表現は、m~nの範囲と、そのうちの各値からなるサブ範囲と、各値とを意味する。例えば、「C1-8」という表現は、1~8個の炭素原子の範囲を包含し、かつそのうちの任意のサブ範囲及び各値、例えば、C2-5、C3-4、C1-2、C1-3、C1-4、C1-5、C1-6、C1-7など、及びC、C、C、C、C、C、C、Cなどをさらに包含すると理解されるべきである。例えば、「C3-10」という表現も同様に理解されるべきであり、例えば、それに含まれる任意のサブ範囲及び各値、例えば、C3-9、C6-9、C6-8、C6-7、C7-10、C7-9、C7-8、C8-9など及びC、C、C、C、C、C、C、C10などを包含する。また例えば、「3~10員」という表現は、そのうちの任意のサブ範囲及び各値、例えば、3~5員、3~6員、3~7員、3~8員、4~5員、4~6員、4~7員、4~8員、5~7員、5~8員、6~7員、7~8員、9~10員など、及び3、4、5、6、7、8、9、10員などを包含すると理解されるべきである。本明細書における他の同様の表現も同様に理解されるべきである。
【0021】
本明細書で特に明記しない限り、「1」、「1個」及び「該」などの単数形の指示は、複数の指示を含む。
【0022】
「ハロ」又は「ハロゲン」又は「ハロゲン化」という用語は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)原子、好ましくはフッ素、塩素又は臭素原子を表すと理解されるべきである。
【0023】
「アルキル」という用語は、本明細書において単独で、又は、他の基と組み合わせて使用される場合、飽和の直鎖、分岐鎖又は環状炭化水素基を意味する。本明細書に使用されるように、「C1-8アルキル」という用語は、1~8個(例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個)の炭素原子を有する飽和直鎖、分岐鎖又は環状炭化水素基を意味する。例えば、「C1-6アルキル」は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、3-メチルペンタン-3-イル、及びヘキシル基(例えば、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基など)であってもよい。「C1-8アルキル」は、そのうちのサブ範囲、例えば、「C1-3アルキル」、「C2-3アルキル」、「C4-6アルキル」などを包含する。
【0024】
「アルキレン」という用語は、本明細書において単独で、又は、他の基と組み合わせて使用される場合、飽和の直鎖又は分岐鎖の二価の炭化水素基を意味する。例えば、「C1-8アルキレン」という用語は、1~8個の炭素原子を有するアルキレン基、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、1-メチルエチレン基、2-メチルエチレン基又はメチルプロピレン基などを意味する。
【0025】
「アルコキシ」という用語は、単結合によって酸素原子に結合される、上述したように定義されるアルキル基を意味する。アルコキシ基は、酸素原子を介して分子の他の部分に結合される。アルコキシ基は、ーO(アルキル基)として表すことができる。「C1-8アルコキシ」又は「-O(C1-8アルキル)」は、1~8個の炭素原子を含有するアルコキシ基を意味し、そのうちのアルキル部分は、直鎖、分岐鎖又は環状構造であってもよい。アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などを含むが、それらに限定されない。
【0026】
「シクロヒドロカルビル」という用語は、炭素原子及び水素原子で構成された飽和又は不飽和の非芳香族性の環状炭化水素基を意味し、好ましくは1又は2個の環を含む。上記シクロヒドロカルビル基は、単環式、縮合多環式、橋かけ環式又はスピロ環式構造であってもよい。シクロヒドロカルビル基は、3~10個の炭素原子を有してもよく、すなわち、「C3-10シクロヒドロカルビル」、例えば、C3-8シクロヒドロカルビル基、Cシクロヒドロカルビル基、Cシクロヒドロカルビル基及びCシクロヒドロカルビル基である。シクロヒドロカルビル基の非限定的な例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基及びスピロ[3.3]ヘプチル基などを含むが、それらに限定されない。
【0027】
「ヘテロ環基」又は「ヘテロ環式炭化水素基」という用語は、例えば3~10個(適切には3~8個、より適切には3~7個、5~7個、特に適切には4~6個)の環原子を有する単環又は二環式の非芳香族環系(3~10員、3~8員、3~6員)を意味し、そのうちの少なくとも1個の環原子(例えば、1、2又は3個)は、N、O及びSから選択されるヘテロ原子であり、かつ残りの環原子はCである。該環系は、飽和であってもよく(対応する「ヘテロシクロアルキル」と理解されてもよい)、不飽和であってもよい(すなわち、環内に1個以上の二重結合及び/又は三重結合を有する)。該用語は、C原子がオキソ(=O)で置換されてもよく、及び/又は、環上のS原子が1個又は2個のオキソ(=O)で置換されてもよいというケースをさらに包含する。ヘテロ環基は、例えば、アゼチジニル基、オキセタニル基などの4-員環、又は、テトラヒドロフラン基、ジオキサニル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピラゾリジニル基、ピロリニル基、オキソピロリジニル基、2-オキソイミダゾリジン-1-イルなどの5-員環、又は、テトラヒドロピラニル基、ピペリジニル基、モルホリニル基、ジチアニル基、チオモルホリニル基、ピペラジニル基、1,1-ジオキソ-1,2-チアジナン-2-イル又はトリチアン基などの6-員環、又は、ジアゼピン環などの7-員環であってもよい。任意に、ヘテロ環基は、ベンゾ縮合型であってもよい。ヘテロ環基は、二環式であってもよいが、それに限定されず、例えば、ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-イル)環などの5,5-員環、又は、ヘキサヒドロピロロ[1,2ーa]ピラジンー2(1H)ーイル環などの5,6-員二環である。上述したように、窒素原子を含む環は、部分的に不飽和であってもよく、すなわち、1個以上の二重結合を含んでもよいが、それに限定されず、例えば、2,5-ジヒドロ-1H-ピロール基、4H-[1,3,4]チアジアジン基、4,5-ジヒドロオキサゾール基又は4H-[1,4]チアジニル基環であり、又は、ベンゾ縮合型であってもよいが、それに限定されず、例えば、ジヒドロイソキノリン基環である。
【0028】
「炭化水素系」溶媒という用語は、1~10個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖又は環状炭化水素の溶媒を意味する。上記炭化水素は、飽和であってもよく、不飽和であってもよい。炭化水素系溶媒の例は、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、オクタン又はその組み合わせを含むが、それらに限定されず、好ましくはヘキサン又はヘプタンである、アルカン系溶媒である。炭化水素系溶媒の実例は、さらに、例えば、少なくとも1個の芳香環を含み、かつ直鎖、分岐鎖又は環状炭化水素基で任意に置換される、芳香族炭化水素系溶媒である。芳香族炭化水素系溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン又はそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されず、好ましくはトルエン、キシレン又はそれらの組み合わせである。
【0029】
「ハロゲン化アルカン系」溶媒という用語は、上述したアルカン系溶媒を意味し、そのうちの1個以上(例えば1~6個、1~5個、1~4個、1~3個又は1~2個)の水素原子がハロゲンで置換される。1個より多いハロゲン置換基がある場合、ハロゲンは同じであっても異なってもよく、かつ同じ又は異なるC原子に位置してもよいことが当業者に理解されるであろう。ハロゲン化アルカン系溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ヘキサクロロエタン及び1,2,3-トリクロロプロパン又はそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されず、好ましくはジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン又はその組み合わせ、特にジクロロメタンである。
【0030】
「エステル系」溶媒という用語は、3~10個の炭素原子を有するエステルの溶媒を意味する。エステル系溶媒は、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル又はそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されず、好ましくは酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル又はそれらの組み合わせである。
【0031】
「エーテル系」溶媒という用語は、2~10個の炭素原子を有するエーテルの溶媒を意味する。エーテル系溶媒の例は、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル又はその組み合わせを含むが、それらに限定されず、好ましくはテトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル又はそれらの組み合わせである。
【0032】
「ニトリル系」溶媒という用語は、2~10個の炭素原子を有するニトリルの溶媒を意味する。ニトリル系溶媒の例は、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル又はそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されず、好ましくはアセトニトリル、ベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル又はそれらの組み合わせ、特にアセトニトリルである。
【0033】
「ジ置換アミド系」溶媒という用語は、C1-3アルキルアシル基をアミン化合物と結合して形成されたアミドのようなアミド系溶媒を意味し、ここで、アミドのN原子は、それぞれ独立して、C1-3アルキル基から選択される2個のアルキル基で置換されるか、又はアミドのN原子上の2個の置換基は、それに結合されたアミドのN原子と共に、1個のN原子を含む5~7員ヘテロ環を形成する。ジ置換アミド系溶媒の例は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0034】
本明細書に使用されるように、「室温」という用語は、およそ20~30℃、好ましくはおよそ25℃を意味する。
【0035】
特に指定されない限り、本明細書に記載の百分率、部などは、いずれも重量を基準とする。特に指定されない限り、濃度は重量を基準とし、混合溶液における液体割合は体積を基準とし、反応試薬と化合物との割合(百分率を含む)及び反応収率はモル量を基準とする。
【0036】
「結晶形」又は「結晶」という用語は、三次元秩序を示す任意の固体物質を意味し、非結晶質固体物質と逆に、境界が明瞭なピークを有する特徴的なX線粉末回折パターンを生成する。
【0037】
「X線粉末回折(XRPD)パターン」という用語は、実験的に観察される回折パターン又はそれに由来するパラメータ、データ又は値を意味する。XRPDパターンは、一般的にピーク位置(横座標)及び/又はピーク強度(縦座標)によって特徴付けられる。XRPDパターンは、例えば、型番Bruker D8 advance Xの機器で測定したものであってもよい。
【0038】
本明細書に使用されるように、「2θ」という用語は、X線回折実験の設定に基づいて度数(°)で示されたピーク位置を意味し、かつ一般的に回折パターンにおける横座標単位である。実験設定は、入射ビームがある格子面とθ角度を形成するときに反射が回折される場合、反射ビームが2θ角度で記録されることを必要とする。特定の結晶形に関する特定の2θ値に対する本明細書の言及は、本明細書に記載のX線回折実験条件で測定した2θ値(度で示される)を意味することを意図していることが理解されるべきである。
【0039】
本明細書に使用されるように、X線回折ピークに関する「実質的に」という用語は、代表的なピーク位置及び強度変化が考慮されていることを意味する。同一の多結晶形をそれぞれ測定して得られた結果の間に、多くの理由により、PXRDパターンに差が生じる可能性がある。誤差の原因は、試料製造の差(例えば、試料の高さ)、機器誤差、スケール誤差及び操作誤差(ピーク位置の決定における誤差を含む)を含む。優先配向、すなわち、PXRD試料の結晶におけるランダムな配向の欠如は、相対的ピーク高さの有意な差をもたらす可能性がある。スケール誤差及び試料の高さの誤差により、一般的に、回折パターンのすべてのピークが同じ方向に沿って同じ量だけ移動する。一般的に、同じ方法を使用して回折装置の差を補うことにより、2種類の異なる機器により取得されたXRPDピーク位置が一致性を有することができる。これらの方法が同じ又は異なる回折装置からのXRPD測定結果に適用されると、ある特定の多結晶形のピーク位置は、一般的に約±0.2°(2θ)異なる。また、相対ピーク強度がまた、機器間のばらつき及び結晶化度、優先配向、製造されたサンプル表面及び当業者に知られている他の要因により変化し、かつこれを単に定性的な尺度と見なすべきであることは当業者に理解されるであろう。
【0040】
示差走査熱量測定(DSC)により、結晶がその結晶構造に変化を生じたり、結晶が熔融により熱を吸収又は放出したりする際の転移温度を測定する。同種の化合物の同種の結晶形には、連続的な分析において、熱転移温度及び融点の誤差は、典型的におよそ5℃以内にある。ある化合物がある所定のDSCピーク又は融点を有すると記載される場合、該DSCピーク又は融点が±5℃であることを意味する。「実質的に」もこのような温度の変化が考慮されていることを意味する。DSCは、異なる結晶形を識別するための補助方法を提供する。異なる結晶形態は、それらの異なる転移温度特徴によって識別することができる。なお、混合物については、そのDSCピーク又は融点がより広い範囲に変動している可能性がある。また、物質溶融のプロセスにおいて分解に伴うため、溶融温度と昇温速度とが互いに関連する。DSCグラフは、例えば、型番TA DSC Q200の機器で測定したものであってもよい。
【0041】
熱重量分析(TGA)は、化合物の熱安定性を測定する一般的な方法である。本明細書において、TGAは、さらに化合物の水和状態を測定するために用いられる。テストプロセスにおいて、昇温速度は、グラフに一定の影響を与える。例えば、速すぎる昇温速度は、中間生成物の検出に不利である。TGAグラフは、例えば、型番TA TGA Q500の機器で測定したものであってもよい。
【0042】
動的水分吸着(DVS)は、動的に加速された水分吸着プロセスにより、医薬品、補助材料又は包装材料の水分に対する吸着状況を考察する一般的な方法である。一般的に、水分吸着等温線を用いてサンプルの水分吸着プロセスにおけるサンプルの水分含有量と相対湿度との関連度を説明する。DVSグラフは、例えば、型番IGAsorpの機器で測定したものであってもよい。
【0043】
本明細書に使用される「粒度分布(PSD)」は、粒子径分布範囲を示し、累積粒度分布割合(例えば、分数、小数又は百分率として表される)が特定値に達するときに対応する粒子径で表すことができ、例えば、D(0.5)又はD50が、メジアン径を表す。粒度分布は、レーザー光回折法により測定することができ、例えば、米国Malvern社のMastersizerレーザー粒度分析計により測定することができる。
【0044】
「原子経済性」という用語は、化学合成プロセスにおいて、合成方法及びプロセスが、反応プロセスに使用される原料の原子を生成物の分子にできるだけ多く転化するように設計されることを意味する。原子経済性が高い反応又は合成経路は、効率を向上させ、副生成物又は廃棄物の生成を減少させることができる。
【0045】
「薬学的に許容される」という用語は、製剤の他の成分と適合し、かつ投与対象としての服用者に許容できない毒性がないことを意味する。
【0046】
「薬学的に許容される担体」は、生体に対して顕著な刺激を有さず、かつ該活性化合物の生物学的活性及び特性を損なわない担体物質を意味する。「薬学的に許容される担体」は、流動促進剤、甘味剤、希釈剤、防腐剤、染料/着色剤、矯味剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、崩壊剤、安定剤、溶媒又は乳化剤を含むが、それらに限定されない。
【0047】
「投与」又は「投薬」などの用語は、生物学的作用の所望の部位への化合物又は組成物の送達を可能にするための方法を意味する。これらの方法は、非経口投与(静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、血管内注射又は点滴を含む)、局所性投与及び直腸投与などを含むが、それらに限定されない。
【0048】
本明細書に使用される「有効量」(例えば、「治療有効量」又は「予防有効量」)という用語は、投与後に、ある程度で所望の効果を達成し、例えば、治療される障害の1種以上の症状を緩和するか又は障害もしくはその症状の出現を予防する活性成分の量を意味する。
【0049】
本明細書に使用される「個体」は、ヒト又は非ヒト動物、特にヒトを含む。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】結晶形IのX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
図2】結晶形Iの熱重量分析(TGA)グラフを示す。
図3】結晶形Iの示差走査熱量測定(DSC)グラフを示す。
図4】結晶形Iの動的水分吸着(DVS)グラフを示す。
図5】結晶形IのDVS測定前後のXRPD比較図を示す。
図6】7日目の結晶形Iの安定性試験結果(XRPD)を示し、図中、曲線の末尾に付された「-1」及び「-2」がそれぞれ「サンプル-1」及び「サンプル-2」を示す。
図7】14日目の結晶形Iの安定性試験結果(XRPD)を示し、図中、曲線の末尾に付された「-1」及び「-2」がそれぞれ「サンプル-1」及び「サンプル-2」を示す。
図8】結晶形Iの粒度分布試験図を示す。
図9】結晶形Iの機械的処理後の試験結果(XRPD)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下の発明の詳細な説明が、非限定的な実施態様を例示することを意図することにより、当業者が本発明の技術手段、その原理及びその実際の応用をより十分に理解して、当業者が多くの形態で本発明を修正して実施することができることで、本発明が特定の用途の要件を最適に満たすことができる。
【0052】
本発明の製造方法
本発明の第1の態様に係る式(VII)の化合物の製造方法は、
式(VI)の化合物を式(V)の化合物と反応させることにより、式(VII)の化合物を製造するステップ(A)を含み、
【化8】
式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン及び-O(C1-8アルキル)から選択され、ここで、上記アルキル基は、ハロゲン、1~2個のヒドロキシ基で置換されたC1-8アルキル基、及び-O(C1-8アルキル)から選択される1又は2個の基で任意に置換され、
は、-L-C(O)NRであり、Lは、C1-3アルキレン基であり、
は、-O(C1-6アルキル)であり、
及びRは、それぞれ独立して、水素、-O(C1-8アルキル)、及びC3-10シクロヒドロカルビル基から選択され、ここで、上記アルキル基及びシクロヒドロカルビル基は、ハロゲン、-O(C1-8アルキル)、-NH、-NH(C1-8アルキル)、-N(C1-8アルキル)、及び5~7員ヘテロ環基から選択される1又は2個の基で任意に置換され、ここで、上記ヘテロ環基は、N、O及びSから選択される1~2個のヘテロ原子を含有し、かつC1-8アルキル基から選択される1~2個の基で任意に置換され、あるいは、
及びRは、それらが結合しているN原子と共に5~7員ヘテロ環基を形成し、上記ヘテロ環基は、N、O及びSから選択される1個の追加のヘテロ原子を任意に含有し、かつハロゲン、C1-8アルキル基、-O(C1-8アルキル)、-NH、-NH(C1-8アルキル)及び-N(C1-8アルキル)から選択される1又は2個の基で任意に置換される。
【0053】
一実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン及び-O(C1-4アルキル)から選択され、ここで、上記アルキル基は、ハロゲン及び-O(C1-4アルキル)から選択される1又は2個の基で任意に置換される。好ましい実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン及び-O(C1-2アルキル)から選択され、ここで、アルキル基は、ハロゲン又はメトキシ基で任意に置換される。より好ましい実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、水素、メトキシ基又は
【化9】
である。
【0054】
一実施形態において、Rは、-O(C1-4アルキル)であり、好ましくは-O(C1-3アルキル)である。より好ましい実施形態において、Rは、-O(C1-2アルキル)である。特定の実施形態において、Rは、エトキシ基である。
【0055】
一実施形態において、Lは、メチレン基又はエチレン基である。好ましい実施形態において、Lは、メチレン基である。
【0056】
一実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、水素及びC1-6アルキル基から選択され、上記アルキル基は、ハロゲン、-O(C1-6アルキル)、-NH、-NH(C1-6アルキル)、-N(C1-6アルキル)及び5~7員ヘテロ環基から選択される1~2個の基で任意に置換され、ここで、上記ヘテロ環基は、N、O及びSから選択される1~2個のヘテロ原子を含有し、かつC1-6アルキル基から選択される1~2個の基で任意に置換され、あるいは、
及びRは、それらが結合しているN原子と共に5~7員ヘテロ環基を形成し、上記ヘテロ環基は、N、O及びSから選択される1個の追加のヘテロ原子を任意に含有し、かつハロゲン、C1-6アルキル基、-O(C1-6アルキル)、-NH、-NH(C1-6アルキル)及び-N(C1-6アルキル)から選択される1~2個の基で任意に置換される。
【0057】
好ましい実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、水素及びC1-4アルキル基から選択され、ここで、上記アルキル基は、ハロゲン、-O(C1-2アルキル)、-NH(C1-2アルキル)、-N(C1-2アルキル)及び5~7員ヘテロ環基から選択される1~2個の基で任意に置換され、上記ヘテロ環基は、N、O及びSから選択される1~2個のヘテロ原子を含有し、かつ上記ヘテロ原子のうちの少なくとも1つがNであり、かつ上記ヘテロ環基は、C1-4アルキル基から選択される1~2個の基で任意に置換され、あるいは、
及びRは、それらが結合しているN原子と共に5~7員ヘテロ環基を形成し、上記ヘテロ環基は、N、O及びSから選択される1個の追加のヘテロ原子を任意に含有し、かつハロゲン、C1-4アルキル基、-O(C1-2アルキル)、-NH(C1-2アルキル)及び-N(C1-2アルキル)から選択される1~2個の基で任意に置換される。
【0058】
より好ましい実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、水素及びC1-2アルキル基から選択され、ここで、上記アルキル基は、メトキシ基、ジメチルアミノ基、モルホリニル基、ピペリジニル基又はピペラジニル基から選択される1~2個の基で任意に置換され、上記モルホリニル基、ピペリジニル基又はピペラジニル基は、メチル基で任意に置換され、あるいは、
及びRは、それらが結合しているN原子と共にモルホリニル基、ピペリジニル基又はピペラジニル基を形成し、上記モルホリニル基、ピペリジニル基又はピペラジニル基は、メチル基で任意に置換される。
【0059】
さらに好ましい実施形態において、R及びRは、それぞれ独立して、水素及びC1-2アルキル基から選択され、ここで、上記アルキル基は、モルホリニル基で置換され、あるいは、
及びRは、それらが結合しているN原子と共にモルホリニル基を形成する。
【0060】
一実施形態において、上記式(VII)の化合物は、以下の化合物5A2の構造を有し、ステップ(A)において、化合物1を化合物B1と反応させることにより、化合物5A2を製造する。
【化10】
【0061】
一実施形態において、ステップ(A)は、酸性条件下で行われる。別の実施形態において、反応温度は、-20℃~70℃である。好ましい実施形態において、反応温度は、-5℃~60℃である。より好ましい実施形態において、反応温度は、20℃~50℃である。
【0062】
本発明の第2の態様に係る式(I)の化合物の製造方法は、本発明の第1の態様に記載のステップ(A)と、
式(VII)の化合物から式(I)の化合物を製造するステップ(B)とを含み、
【化11】
式中、R、R及びRは、本発明の第1の態様において定義される通りである。
【0063】
一実施形態において、ホルミル化試薬は、ヘキサメチレンテトラミン及びパラホルムアルデヒドから選択される。好ましい実施形態において、ステップ(B)は、酸の存在下で行われる。別の好ましい実施形態において、反応温度は、50℃~120℃であり、好ましくは60℃~100℃であり、より好ましくは80℃~90℃である。
【0064】
一実施形態において、ステップ(A)の反応終了後、以下の方法でステップ(A)の反応生成物としての式(I)の化合物を精製する。
【0065】
ステップiでは、式(I)の化合物の粗生成物をハロゲン化アルカン系溶媒及び水と混合して、混合物を得る。
【0066】
ステップiiでは、ステップiで得られた混合物の有機相を分離し、濃縮して固体を得て、固体を適切な溶媒で洗浄して、結晶状態の式(I)の化合物を得る。
【0067】
別の実施形態において、ステップiとステップiiとの間に、混合物を洗浄するステップをさらに含む。別の実施形態において、アルカリ性の水溶液を用いて混合物を洗浄する。
【0068】
さらに別の実施形態において、ステップiとステップiiとの間に、混合物のpH値を調整するステップをさらに含み、ここで、混合物のpH値をほぼ中性に調整する。別の実施形態において、pH値を、およそ6~8、好ましくはおよそ7に調整する。
【0069】
別の実施形態において、ステップiiでは有機相を分離した後、濃縮する前に、濾過又は遠心分離のステップをさらに含み、濾過又は遠心分離により得られた溶液を濃縮して固体を得る。好ましくは、上記濾過又は遠心分離のステップは、濾過である。さらに別の実施形態において、ステップiiでは有機相を分離した後、有機相における水分を実質的に除去するか又は部分的に除去するように、乾燥ステップをさらに含む。
【0070】
別の実施形態において、ステップiiに記載の適切な溶媒は、有機溶媒である。一実施形態において、有機溶媒は、ニトリル系溶媒、エステル系溶媒及びそれらの組み合わせから選択され、好ましくはニトリル系溶媒又はエステル系溶媒である。一実施形態において、ニトリル系溶媒は、アセトニトリル、ベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル又はそれらの組み合わせから選択され、好ましくはアセトニトリルである。別の実施形態において、エステル系溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル及びそれらの組み合わせから選択され、好ましくは酢酸エチルである。
【0071】
別の実施形態において、ステップiに記載の式(I)の化合物の粗生成物は、ステップ(A)の反応終了後、反応混合物を減圧下で濃縮してそのうちの溶媒を除去することにより得られた残留物を意味する。さらに別の実施形態において、ステップiに記載の式(I)の化合物の粗生成物は、ステップ(A)の反応終了後、反応混合物を減圧下で濃縮して得られた残留物を溶媒で溶解し、シリカゲルのショートパッド(short pad of silica gel)を通して濾過して、濾液を濃縮して得られた残留物を意味する。
【0072】
一実施形態において、ステップ(B)における中間体としての式(VII)の化合物をホルミル化試薬と反応させて式(I)の化合物を得た後、以下のステップを含む方法に従って精製する。
【0073】
ステップiでは、反応液を濃縮し、水及び式(I)の化合物の種結晶を添加して結晶化を誘導し、
ステップiiでは、ステップiで得られた粗生成物を分離し、加熱条件下で、適切な溶媒と撹拌してから降温させ、分離して結晶状態の式(I)の化合物を得る。
【0074】
一実施形態において、ステップiiで粗生成物を分離した後、加熱条件下で、適切な溶媒と撹拌する前に、適切な溶媒で粗生成物をすすぐステップをさらに含む。
【0075】
さらに別の実施形態において、ステップiiで分離して結晶状態の式(I)の化合物を得た後、適切な溶媒ですすぎ、乾燥するステップをさらに含む。
【0076】
別の実施形態において、ステップiiに記載の適切な溶媒は、ニトリル系溶媒又はニトリル系溶媒と水との混合溶媒から選択される。別の実施形態において、ニトリル系溶媒は、アセトニトリル、ベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル又はそれらの組み合わせから選択され、好ましくはアセトニトリルである。
【0077】
別の実施形態において、ステップiiに記載の加熱温度は、好ましくは40~80℃であり、より好ましくは50~70℃である。
【0078】
別の実施形態において、ステップiiでの加熱時間は、少なくとも2hであり、好ましくは少なくとも4hであり、より好ましくは少なくとも8hである。
【0079】
一実施形態において、上記式(I)の化合物は、以下の化合物Orin1001の構造を有し、ステップ(A)において、化合物5A2をホルミル化試薬と反応させることにより、化合物Orin1001を製造する。
【化12】
一実施形態において、本発明の方法は、ステップ(A)の前に、以下のステップ(a)及びステップ(b)をさらに含む。
【0080】
ステップ(a)では、式(II)の化合物をアミン化合物HNRと縮合反応させることにより、式(III)の化合物を製造し、
【化13】
式中、Xは、ハロゲンであり、L、R、R及びRは、上記定義される通りである。一実施形態において、反応は、有機溶媒において行われる。好ましい実施形態において、有機溶媒は、中性非プロトン性溶媒である。さらに好ましい実施形態において、有機溶媒は、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ジ置換アミド系溶媒、エステル系溶媒及びその組み合わせから選択される。一実施形態において、炭化水素系溶媒は、トルエン、キシレン及びそれらの組み合わせから選択される。一実施形態において、ハロゲン化炭化水素系溶媒は、ジクロロメタンである。別の実施形態において、エーテル系溶媒は、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル及びそれらの組み合わせから選択される。さらに別の実施形態において、上記ジ置換アミド系溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン及びそれらの組み合わせから選択される。別の実施形態において、上記エステル系溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル及びそれらの組み合わせから選択される。一実施形態において、反応温度は、-10℃~60℃であり、好ましくは0℃~室温であり、より好ましくは0℃~10℃である。
【0081】
ステップ(b)では、式(III)の化合物を式(IV)の化合物と反応させることにより、式(V)の化合物を製造し、
【化14】
式中、Xは、ハロゲンであり、R及びRは、上記定義される通りである。さらに別の実施形態において、反応は、塩基の存在下で行われ、上記塩基は、有機塩基又は無機塩基である。一実施形態において、有機塩基は、NaNH、ナトリウムアルコキシド、K-HMDS及びLi-HMDSから選択される。別の実施形態において、無機塩基は、炭酸塩及び金属水素化物から選択される。一実施形態において、炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸リチウムから選択され、より好ましくは、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムである。特定の実施形態において、炭酸塩は、炭酸カリウムである。別の実施形態において、金属水素化物は、NaH、KH、LiH及びCaHから選択される。特定の実施形態において、金属水素化物は、NaHである。一実施形態において、反応は、有機溶媒において行われる。好ましい実施形態において、上記有機溶媒は、中性非プロトン性溶媒である。さらに好ましい実施形態において、有機溶媒は、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ジ置換アミド系溶媒及びその組み合わせから選択される。一実施形態において、上記炭化水素系溶媒は、トルエン、キシレン及びそれらの組み合わせから選択される。一実施形態において、ハロゲン化炭化水素系溶媒は、ジクロロメタンである。別の実施形態において、上記エーテル系溶媒は、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル及びそれらの組み合わせから選択される。さらに別の実施形態において、上記ジ置換アミド系溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン及びそれらの組み合わせから選択される。一実施形態において、反応温度は、-20~100℃であり、好ましくは-20~80℃であり、より好ましくは-10~60℃である。
【0082】
一実施形態において、上記式(II)の化合物は以下の化合物D1の構造を有し、上記式(III)の化合物は以下の化合物C1の構造を有し、ステップ(a)は以下の通りである。
【0083】
ステップ(a)では、化合物D1をモルホリンと縮合反応させることにより、化合物C1を製造し、
【化15】
式中、Xは、ハロゲンである。
【0084】
別の実施形態において、上記式(III)の化合物は以下の化合物C1の構造を有し、上記式(IV)の化合物はアセト酢酸エチルであり、上記式(V)の化合物は以下の化合物B1の構造を有し、ステップ(b)は以下の通りである。
【0085】
ステップ(b)では、化合物C1をアセト酢酸エチルと反応させることにより、化合物B1を製造し、
【化16】
式中、Xは、ハロゲンである。
【0086】
一実施形態において、ステップ(a)又はステップ(b)におけるXは、Cl及びBrから選択される。好ましい実施形態において、Xは、Brである。
【0087】
一実施形態において、本発明の第1の態様に係る方法は、以下の経路に従って実施され、
【化17】
式中、X、L、R、R、R、R、R、R、ステップ(a)、ステップ(b)及びステップ(A)は、上記定義される通りである。
【0088】
一実施形態において、本発明の第2の態様に係る方法は、以下の経路に従って実施され、
【化18】
式中、X、L、R、R、R、R、R、R、ホルミル化試薬、ステップ(a)、ステップ(b)、ステップ(A)及びステップ(B)は、上記定義される通りである。
【0089】
本発明の第3の態様に係る中間体化合物は、構造が、以下の式(V)に示す通りであり、
【化19】
式中、R及びRは、本発明の第1の態様において定義される通りである。
【0090】
一実施形態において、
は、-L-C(O)NRであり、Lは、メチレン基又はエチレン基であり、
は、-O(C1-6アルキル)であり、
及びRは、それぞれ独立して、水素及びC1-6アルキル基から選択され、上記アルキル基は、ハロゲン、-O(C1-6アルキル)、-NH、-NH(C1-6アルキル)、-N(C1-6アルキル)及び5~7員ヘテロ環基から選択される1~2個の基で任意に置換され、上記ヘテロ環基は、N、O及びSから選択される1~2個のヘテロ原子を含有し、かつC1-6アルキル基から選択される1~2個の基で任意に置換され、あるいは、
及びRは、それらが結合しているN原子と共に5~7員ヘテロ環を形成し、上記ヘテロ環は、N、O及びSから選択される1個の追加のヘテロ原子を任意に含有し、かつハロゲン、C1-6アルキル基、-O(C1-6アルキル)、-NH、-NH(C1-6アルキル)及び-N(C1-6アルキル)から選択される1~2個の基で任意に置換される。
【0091】
別の実施形態において、
は、-L-C(O)NRであり、Lは、メチレン基であり、
は、-O(C1-6アルキル)であり、
及びRは、それぞれ独立して、水素及びC1-4アルキル基から選択され、上記アルキル基は、ハロゲン、-O(C1-2アルキル)、-NH(C1-2アルキル)、-N(C1-2アルキル)及び5~7員ヘテロ環基から選択される1~2個の基で任意に置換され、ここで、上記ヘテロ環基は、N、O及びSから選択される1~2個のヘテロ原子を含有し、かつ上記ヘテロ原子のうちの少なくとも1つがNであり、かつ上記ヘテロ環基は、C1-4アルキル基から選択される1~2個の基で任意に置換され、あるいは、
及びRは、それらが結合しているN原子と共に5~7員ヘテロ環を形成し、上記ヘテロ環は、N、O及びSから選択される1個の追加のヘテロ原子を任意に含有し、かつハロゲン、C1-4アルキル基、-O(C1-2アルキル)、-NH(C1-2アルキル)及び-N(C1-2アルキル)から選択される1~2個の基で任意に置換される。
【0092】
さらに別の実施形態において、
は、-L-C(O)NRであり、Lは、メチレン基であり、
は、-O(C1-6アルキル)であり、
及びRは、それらが結合しているN原子と共にモルホリン環を形成する。
【0093】
特定の実施形態において、式(V)の中間体化合物は、化合物B1である。
【化20】
本発明の結晶形I
本発明の第4の態様に係る化合物Orin1001の結晶形IのX線粉末回折パターンは、およそ8.44±0.2°、13.11±0.2°、15.70±0.2°、19.73±0.2°、21.00±0.2°、22.91±0.2°の回折角(2θ)において特徴的なピークがある。
【0094】
一実施形態において、結晶形IのX線粉末回折パターンは、およそ8.44±0.2°、10.91±0.2°、10.68±0.2°、13.11±0.2°、15.70±0.2°、17.54±0.2°、19.73±0.2°、21.00±0.2°、22.91±0.2°、26.27±0.2°の回折角(2θ)において特徴的なピークがある。好ましい実施形態において、結晶形IのX線粉末回折パターンは、およそ8.44±0.2°、10.91±0.2°、10.68±0.2°、13.11±0.2°、15.70±0.2°、16.90±0.2°、17.54±0.2°、19.73±0.2°、21.00±0.2°、22.91±0.2°、26.27±0.2°、28.64±0.2°の回折角(2θ)において特徴的なピークがある。
【0095】
一実施形態において、結晶形IのX線粉末回折パターンは、表1に示す回折角(2θ)において特徴的なピークがある。別の実施形態において、結晶形IのX線粉末回折パターンは、実質的に図1に示す通りである。
【0096】
表1 Orin1001 XRPD 2θ角データ表
【表1】
一実施形態において、上記結晶形Iは、
(1)熱重量分析グラフが実質的に図2に示す通りであり、
(2)示差走査熱量測定グラフが実質的に図3に示す通りであり、
(3)動的水分吸着グラフが実質的に図4に示す通りであるという要件のうちの少なくとも1つを満たす。
【0097】
一実施形態において、DSCで特徴付けられると、上記結晶形Iは、開始温度がおよそ239℃±5℃であり、ピーク温度がおよそ242℃±5℃である。
【0098】
一実施形態において、結晶形Iは、無水物結晶形である。
【0099】
一実施形態において、結晶形IのX線粉末回折パターンは、以下の方法を用いて測定される:X線粉末回折装置:Bruker D8 advance X、放射源:Cu-Kα、走査範囲:3(2θ)~40(2θ)、走査ステップ:0.02(2θ)、走査速度:0.3sec/step。
【0100】
一実施形態において、結晶形Iの熱重量分析グラフは、以下の方法を用いて測定される:TGA熱重量分析装置:TA TGA Q500、温度範囲:室温~350℃、走査速度:10℃/min、保護ガス:窒素ガス、流速:40mL/min(天秤)又は60mL/min(サンプル)。
【0101】
一実施形態において、結晶形Iの示差走査熱量測定グラフは、以下の方法を用いて測定される:DSC示差走査熱量測定装置:TA DSC Q200、温度範囲:25℃~300℃、走査速度:10℃/min、保護ガス:窒素ガス、流速:50mL/min。
【0102】
一実施形態において、結晶形Iの動的水分吸着グラフは、以下の方法を用いて測定される:DVS動的水分吸着装置:IGAsorp、温度:25℃、温度安定性:0.1℃/min、キャリアガス:窒素ガス、流速:250mL/min、走査:2、最小時間:30min、最大時間:2時間、待ち上限:98%、湿度変化勾配:吸着:0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、脱着:80、70、60、50、40、30、20、10、0。
【0103】
一実施形態において、結晶形Iの粒度分布(PSD)は、Malvern Mastersizer 2000を用いて測定される。使用されるパラメータは、ポンプ速度:2500rpm、分散剤の体積:800mL、分散剤:水、分散媒:1%のツイーン80であってもよい。
【0104】
一実施形態において、結晶形Iの機械的処理安定性は、結晶形Iを乳鉢に置いて、それぞれ2min、5min研磨し、XRPD測定を行い、研磨後の固体を分析するという方法を用いて測定される。
【0105】
一実施形態において、結晶形Iの粒度分布(PSD)は、表2に示す通りである。
【0106】
表2 結晶形Iの粒度分布(PSD)データ
【表2】
一実施形態において、結晶形Iは、嵩密度が0.72g/mlであり、タップ密度が0.90g/mlであり、カール指数が20%であり、安息角が30.6°である。
【0107】
一実施形態において、結晶形Iの機械的処理安定性の結果は、図9に示す通りである。
【0108】
本発明の結晶形Iは、優れた安定性を有する。例えば、機械的処理後、回折パターンは、実質的に変化しない。
【0109】
医薬組成物及び用途
一態様において、本発明は、本発明の結晶形I及び1種以上の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0110】
さらなる態様において、本発明は、本発明の結晶形I又は本発明の医薬組成物の、小胞体ストレス応答(UPR)に関連する疾患、障害又は状態あるいはIRE1依存性分解(RIDD)を調節する標的に関連する疾患、障害又は状態を治療又は予防する医薬品の製造における応用を提供する。
【0111】
本発明のさらなる態様は、さらに、小胞体ストレス応答に関連する疾患、障害又は状態あるいはIRE1依存性分解を調節する標的に関連する疾患、障害又は状態を治療又は予防するための本発明の結晶形I又は本発明の医薬組成物に関する。
【0112】
本発明のさらなる態様は、小胞体ストレス応答に関連する疾患、障害又は状態あるいはIRE1依存性分解を調節する標的に関連する疾患、障害又は状態を治療又は予防する方法をさらに提供し、上記方法は、治療を必要とする個体に本発明の結晶形I又は本発明の医薬組成物を有効量で投与するか、又は上記疾患、障害又は状態に対する治療有効量の本発明の結晶形I又は本発明の医薬組成物を個体内に存在させることを含む。
【0113】
一実施形態において、上記小胞体ストレス応答に関連する疾患、障害又は状態は、腫瘍、代謝に関連する疾患、免疫に関連する疾患、ウイルス感染症及び心血管疾患から選択される。
【0114】
一実施形態において、上記小胞体ストレス応答に関連する疾患、障害又は状態は、B細胞自己免疫疾患、癌及びウイルス感染症から選択される。一実施形態において、治療可能なB細胞自己免疫疾患は、アジソン病(Addision’s disease)、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性下垂体炎、自己免疫性リンパ増殖性疾患、自己免疫性心筋炎、チャーグーストラウス症候群、後天性表皮水疱症、巨細胞性動脈炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギランーバレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、重症筋無力症、落葉状天疱瘡(pemphigus foliaceous)、尋常性天疱瘡、結節性多発動脈炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎(Takayasu’s arteritis)及びウェゲナー肉芽腫症(Wegener’s granulomatosis)から選択される。一実施形態において、治療可能な癌は、固形腫瘍である。さらなる実施形態において、固形腫瘍は、乳腺腫瘍、骨腫瘍、前立腺腫瘍、肺腫瘍、副腎腫瘍(例えば、副腎皮質腫瘍)、胆管腫瘍、膀胱腫瘍、気管支腫瘍、神経組織腫瘍(ニューロン及び神経膠腫を含む)、胆嚢腫瘍、胃腫瘍、唾液腺腫瘍、食道腫瘍、小腸腫瘍、子宮頸部腫瘍、結腸腫瘍、直腸腫瘍、肝臓腫瘍、卵巣腫瘍、膵臓腫瘍、下垂体腺腫及び分泌腺腫瘍から選択される。一実施形態において、治療可能な癌は、薬物耐性又は放射線耐性固形腫瘍である。一実施形態において、治療可能な癌は、血液腫瘍である。さらなる実施形態において、血液腫瘍は、リンパ腫又は白血病である。別の実施形態において、血液腫瘍は、骨髄腫の前駆体である、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)である。一実施形態において、リンパ腫は、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、及び非ホジキンリンパ腫(例えば、皮膚T細胞リンパ腫、例えば、セザリー症候群及び菌状息肉症、びまん性大細胞リンパ腫、HTLV-1関連T細胞リンパ腫、結節性末梢T細胞リンパ腫、節外性末梢T細胞リンパ腫(extranodal peripheral T cell lymphoma)、中枢神経系リンパ腫及びAIDS関連リンパ腫)から選択される。さらに別の実施形態において、白血病は、急性及び慢性のリンパ性白血病及び骨髄性白血病(例えば、急性リンパ性白血病又はリンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、T細胞前リンパ球性白血病、成人T細胞白血病及びヘアリー細胞白血病)から選択される。一実施形態において、治療可能なウイルス感染症は、ウイルスが複製して感染性子孫を形成する際に小胞体ストレス応答経路を使用するエンベロープウイルス感染症である。さらなる実施形態において、治療可能なウイルス感染症は、麻疹ウイルス、ポックスウイルス及びエボラウイルス(Ebola)から選択される。さらに別の実施形態において、治療可能なウイルス感染症は、Epstein Barrウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、フラビウイルス属に属するウイルス(例えば、日本脳炎ウイルス及び西ナイルウイルス)及びC型肝炎ウイルス(HCV)から選択されるウイルスの感染による感染症である。
【0115】
一実施形態において、上記IRE1依存性分解を調節する標的に関連する疾患、障害又は状態は、神経障害、インスリンの過剰産生を伴う障害及び炎症を伴う障害から選択される。好ましい実施形態において、神経障害は、統合失調症である。別の好ましい実施形態において、インスリンの過剰産生を伴う障害は、II型糖尿病である。さらなる好ましい実施形態において、炎症を伴う障害は、糸球体腎炎、様々な形態の関節炎、多発性硬化症及び炎症性腸疾患から選択される。
【0116】
有益な効果
従来技術(例えば、CN103079558A)に記載の方法に比べて、本発明の方法は、簡単で効率が高く、原子利用率が高く、収率が高いという利点を有する。
【0117】
CN103079558Aの方法に従って中間体5A2を製造すると、経路は以下の通りである。
【化21】
該経路は、アセト酢酸エチル(SM1)及びブロモ酢酸エチル(SM2)を用いて、α位がエステルアルキル基で置換されたアセト酢酸エチル化合物(化合物2)を製造し、収率が80%であるステップ(1)と、3位がエステルアルキル基で置換されたクマリン系化合物(化合物3)を製造し、収率が60%であるステップ(2)と、化合物4を製造し、収率が67%であるステップ(3)と、酸アミン縮合反応によりアミド基を導入して、化合物5A2を製造するステップ(4)とを含む。ここで、CN103079558Aの実施例62に記載の方法に従ってステップ(4)を行って、粗生成物5A2を得て、収率が43%である。上記ステップ(1)~ステップ(4)の総収率は、およそ13.8%であり、ここで、上記ステップ(2)~ステップ(4)の総収率は、およそ17.3%である。
【0118】
以上は合計で4つのステップを含み、ステップ(2)~ステップ(4)は、直線的合成((linear synthesis)方式で行われ、3つのステップが連続的である線形反応であり、そのうちのステップ(2)において、閉環反応により化合物1とクマリン母核を構築し、ステップ(3)及びステップ(4)において、さらに3位置換基にアミド基を導入することにより、化合物5A2を得る。このプロセスにおいて、まず化合物3にエステル基を導入し、次にそれを除去しアミド基に変換する必要があり、ステップが煩雑であり、原子経済性が低く、かつ収率が低い。
【0119】
それに比べて、本発明の3位がアミドアルキル基で置換されたクマリン系化合物(例えば、化合物5A2)の製造方法において、まず2つのステップによりα位がアミドアルキル基で置換されたアセト酢酸アルキルを製造し(例えば、式(V)の化合物の製造方法又は中間体化合物B1の製造方法、又は、例えば、実施例1に示す方法を参照)、次に化合物1との閉環ステップによりクマリン母核を直接的に構築する。上記ステップの総数は3つである。上述した「まずモジュールを構築し、次に収束する」という考えに基づいて、本発明の製造方法は、収束的合成(convergent synthesis)を実現して、連続反応のステップを減らし、生産効率のさらなる改善に役立つ。本発明者らは、本発明におけるα位がアミドアルキル基で置換されたアセト酢酸アルキル化合物と置換フェノール化合物との閉環反応によるクマリン母核の構築が、収束的合成を実現して、反応ステップを減らし、反応の総収率、原子経済性及び生産効率を向上させる鍵であることを思いがけず見出した。
【0120】
また、本発明の製造方法における、二官能性の式(II)の酸ハライド化合物(又は化合物D1)によりアミド基を導入することは、CN103079558Aにおける、エステル基を導入してから加水分解し、次に酸アミン縮合を行う方法に比べて、より高い原子利用率を有することが明らかである。
【0121】
本発明の製造方法は、さらに、高い総収率を達成し、工業化生産に役立つ。例えば、本発明の代表的な例として、実施例1及び実施例2の総収率は、およそ46.6%である。
【0122】
したがって、本発明の3位がアミドアルキル基で置換されたクマリン系化合物の製造方法は、以下の利点を有する。アミド基の導入タイミングを最適化し、まずアミドで置換された1,3-ジカルボニル基を含む化合物を製造し、次にそれを閉環に用いて、簡潔な経路でクマリン母核構造とアミド基を含む側鎖とを効率的に構築し、原子利用率が高く、収率が高く、工業化生産に役立つ。かつ、収束的合成経路を構築して、連続反応のステップを減らし、生産効率のさらなる向上に役立つ。
【0123】
本発明のOrin1001の結晶形Iは、純度が高く、安定性が高く、操作性が高く、製造プロセスが簡単であり、大規模生産に応用することができる。
【実施例
【0124】
以下の実施例に使用される機器装置及び検出条件は、以下の通りである。
【0125】
X線粉末回折装置は、Bruker D8 advance Xであり、放射源がCu-Kαであり、テストの走査範囲が3(2θ)~40(2θ)であり、走査ステップが0.02(2θ)であり、走査速度が0.3sec/stepである。
【0126】
TGA熱重量分析装置は、TA TGA Q500であり、温度範囲が室温~350℃であり、走査速度が10℃/minであり、保護ガスが窒素ガスであり、流速が40mL/min(天秤)又は60mL/min(サンプル)である。
【0127】
DSC示差走査熱量測定装置は、TA DSC Q200であり、温度範囲が25℃~300℃であり、走査速度が10℃/minであり、保護ガスが窒素ガスであり、流速が50mL/minである。
【0128】
DVS動的水分吸着装置は、IGAsorpであり、温度が25℃であり、温度安定性が0.1℃/minであり、キャリアガスが窒素ガスであり、流速が250mL/minであり、走査が2であり、最小時間が30minであり、最大時間が2時間であり、待ち上限が98%であり、湿度変化勾配が、吸着において、0、10、20、30、40、50、60、70、80、90であり、脱着において、80、70、60、50、40、30、20、10、0である。
【0129】
HPLC(反応監視)について、Waters Acquity Arc液体クロマトグラフィーシステム又は同等の機器が用いられ、クロマトグラフィーカラム:ZORBA×Eclipse×DB C18、4.6×150mm、3.5μm、又は同じタイプのクロマトグラフィーカラム、移動相A:0.05%のトリフルオロ酢酸水溶液、移動相B:0.05%のトリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液、濃度勾配実行時間:20分間。
【0130】
HPLC(純度測定)について、Waters Acquity Arc液体クロマトグラフィーシステム又は同等の機器が用いられ、クロマトグラフィーカラム:Eclipse×DB C18、4.6×150mm、3.5μm、又は同じタイプのクロマトグラフィーカラム、カラム温度:30℃、検出波長:210nm、移動相A:0.05%のトリフルオロ酢酸水溶液、移動相B:0.05%のトリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液、濃度勾配実行時間:20分間。
【0131】
LC-MSは、Shimadzu LCMS 2010(クロマトグラフィーカラム:sepax ODS 50×2.0 mm、5μm)、又はAgilent 1200 HPLC、1956 MSD(クロマトグラフィーカラム:Shim-pack XR-ODS 30×3.0 mm、2.2 μm)、又はNB-PDM-LCMS-004(クロマトグラフィーカラム:Agilen SB-C18 4.6x50mm 1.8 μm、又はporoshell SB-C 18 2.7um 3.0*50mm, SN:USCFE02201)が用いられ、イオン化方式がES(+)である。
【0132】
合成スキーム
【化22】
まずハロアセチルハロゲン化物(化合物D1)をアミン(モルホリン)と反応させて、α位がハロゲン化されたアミド(化合物C1)を製造し、次にそれをアセト酢酸エチルと反応させて、α位がアミドアルキル基で置換されたアセト酢酸エチル化合物(中間体B1)を製造する。中間体B1を置換フェノール化合物(化合物1)と縮合反応させ、閉環して、3位がアミドアルキル基で置換されたクマリン系化合物5A2を得て、ヘキサメチレンテトラミン(HMTA)との反応によりアルデヒド基を導入して、目的化合物Orin1001を得る。
【0133】
実施例1 中間体B1の製造
方法A ブロモアセチルブロミドによる中間体B1の製造:
ステップ1:中間体C1-1の製造
【化23】
中間体C1-1を、国際特許出願WO1999032436の実施例A9のStep1に開示された方法を参照して製造してもよく、以下の方法1又は方法2に従って製造してもよい。
【0134】
方法1(低温反応):
反応釜にジクロロメタン(75.0L)及びブロモアセチルブロミド(D1-1、5.0kg、1.00eq.)を添加し、0℃~5℃まで降温させ、0℃~5℃まで予冷されたモルホリン(4.32kg、2.00eq.)を添加し、0~5℃で少なくとも0.5時間撹拌し、Rf=0の出発物質が消失するまでTLCにより反応を監視した。0~5℃で飽和NHCl水溶液(25.0L)で反応をクエンチし、少なくとも20分間撹拌し続けた。反応液を静置して分層した後、有機相を分離して飽和NHCl水溶液(25.0L)で洗浄した。明らかな留分が滴下しなくなるまで≦45℃で有機相を減圧下で濃縮した。同様の規模で別のバッチを製造した。2つのバッチを合わせて、合計で9.25kgの中間体としての2-ブロモ-1-モルホリンエタン-1-オン(C1-1)を得て、収率が90.0%であり、HPLC測定純度が99.6%である。H NMR (300 MHz, DMSO-d) δ 3.44-3.49 (m, 4H), 3.55-3.69 (m, 4H) 4.13 (S, 2H). LC-MS: [M+1]=208.1
方法2(室温反応):
窒素ガス保護下で、5Lの四口フラスコ内にブロモアセチルブロミド(D1-1、250g、1.00eq.)及びジクロロメタン(3.75L)を添加し、塩水浴で5℃まで降温させた。モルホリン(216g、2.00eq.)を滴下し、かつ温度を0~10℃に制御した。滴下終了後、反応温度を≦10℃に制御し、30分間撹拌した。塩水浴を除去し、室温で2時間反応させた。TLC測定によると、ブロモアセチルブロミドが完全に反応した。反応系の温度を≦10℃まで低下させ、飽和NHCl水溶液(1.25L)を滴下した。混合物を分液し、有機相を飽和NHCl水溶液(1.25L)でもう1度洗浄した。明らかな留分が滴下しなくなるまで≦45℃で有機相を減圧下で濃縮して、234.8gの中間体としての2-ブロモ-1-モルホリンエタン-1-オン(C1-1)を得て、収率が90.0%であり、KF=0.27%であり、HPLC測定純度が99.2%である。H-NMR (DMSO-d6) δ 3.40-3.50 (m, 4H), 3.50-3.60 (m, 4H), 4.11 (s, 2H).
ステップ2:中間体B1の製造
【化24】
方法1(NaHを塩基とする):
中間体C1-1(4.93kg、1.00eq.)にTHF(4.45kg、5.0L)を添加し、撹拌して中間体C1-1のTHF透明溶液を得て、0~5℃まで冷却し、使用に備える。反応釜にTHF(17.8kg、20.0L)を添加し、さらにNaH(60%、0.845kg、1.10eq.)を添加し、かつ0~5℃まで降温させた。釜内に0~5℃まで予め冷却されたアセト酢酸エチル(2.50kg、1.00eq.)を添加し、0~5℃で少なくとも0.5時間撹拌してから上記調製された0~5℃の中間体C1-1のTHF溶液を添加した。反応液を0~5℃で少なくとも2時間撹拌し続けた。サンプリングしてHPLC測定を行って、中間体C1-1のピーク面積が≦5.0%になるまで反応を監視した。0~5℃で飽和NHCl水溶液(35.0L)を添加し、混合物を静置して分層した。酢酸エチル(25.0L)で水相を抽出し、有機層を合わせ、かつおよそ45℃で5.0±1.0Vまで減圧下で濃縮してから水(6.5L)を添加し、15分間撹拌した。混合物を静置して分層し、明らかな留分が滴下しなくなるまで有機層を45℃で減圧下で濃縮した。残留物にn-ヘプタン(5.0L)を添加し、少なくとも0.5時間撹拌してから混合物を静置して分層し、下層液体を瓶に収集して、4.45kgの中間体としての2-アセチル-4-モルホリン-4-オキソブタン酸エチル(B1)を得て、収率が90.0%であり(粗生成物)、HPLC測定によると、中間体B1の純度が84.7%であり、次の反応に直接使用した。H NMR :(300MHz, DMSO-d) δ 1.17-1.24 (m, 3H), 2.27 (s, 3H), 2.77-2.94 (m, 2H), 3.38-3.60 (m, 8H), 3.98-4.05 (m, 1H), 4.07-4.16 (m, 2H). LC-MS: [M+1]=258.2
方法2(炭酸カリウムを塩基とする):
2-1:反応釜にTHF(8.90kg、10.0L)、中間体C1-1(1.89kg、1.05eq.)及び炭酸カリウム(3.19kg、3.00eq.)を添加し、40±5℃で少なくとも15時間撹拌し、サンプリングしてHPLC測定を行って、中間体C1-1のピーク面積が≦5.0%になるまで反応を監視した。反応混合物を室温まで冷却し、濾過し、濾過ケーキをTHF(2.0Lx2)ですすいだ。濾液を合わせ、塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を合わせた後、明らかな留分が滴下しなくなるまでおよそ45℃で減圧下で濃縮して、1.99kgの中間体としての2-アセチル-4-モルホリン-4-オキソブタン酸エチル(B1)を得て、収率が101%であり(粗生成物)、HPLC測定によると、中間体B1の純度が86.2%であり、次の反応に直接使用した。B1の特徴付けの結果は、上記と一致する。
【0135】
2-2:反応釜にTHF(20.55kg、10V)、中間体C1-1(4.37kg、1.05eq.)、アセト酢酸エチル(2.32kg、1.00eq.)及び炭酸カリウム(7.40kg、3.00eq.)を添加し、40±5℃で少なくとも16時間撹拌し、サンプリングしてHPLC測定を行って、中間体C1-1のピーク面積が≦5.0%になるまで反応を監視した。16h後に反応が終了していないと、反応混合物に少量の水を添加し、40±5℃で4h撹拌し、必要に応じて、中間体C1-1のピーク面積が≦5.0%になるまで繰り返す。反応混合物を25±5℃まで冷却し、濾過し、濾過ケーキをTHF(2.0Vx2)ですすいだ。濾液を合わせ、塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を合わせた後、明らかな留分が滴下しなくなるまで45℃以下で減圧下で濃縮して、4.87kgの中間体としての2-アセチル-4-モルホリン-4-オキソブタン酸エチル(B1)を得て、収率が106%であり、HPLC測定によると、中間体B1の純度が86.2%である。B1の特徴付けの結果は、上記と一致する。
【0136】
方法B クロロアセチルクロリドによる中間体B1の製造:
【化25】
ステップ1:中間体C1-2の製造:
中間体C1-2を、米国特許US5753660Aの実施例57のPartAに開示された方法を参照して製造してもよく、以下の方法に従って製造してもよい。
【0137】
窒素ガス保護下で、ジクロロメタン(1.54L)及びクロロアセチルクロリド(D1-2、300g、1.05eq.)を5Lの四口フラスコに添加し、氷水浴で≦10℃まで降温させた。KCO(523g、1.5eq.)を数回に分けて添加し、温度を≦20℃に制御した。モルホリン(220g、1.0eq.)を滴下しながら温度を≦20℃に制御して、白い霧が発生して、発熱した。滴下終了後、20℃まで自然昇温させた。3時間撹拌し、TLC測定によると、クロロアセチルクロリドが消失した。氷水浴で温度を≦10℃に制御し、水(1.54L)を滴下して、発熱を観察した。混合物を静置して水相及び有機相を分離し、水相をジクロロメタン(1.5Lx2)で抽出した。有機相を合わせ、水洗した(1.0Lx2)。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。明らかな留分がなくなるまで有機相を減圧下で濃縮して、中間体としての2-クロロ-1-モルホリンエタン-1-オン(C1-2、290g)を得て、中間体が黄色油状液体であり、収率が70%であり、HPLC測定によると、純度が97%である。H-NMR(300 MHz, CDCl): δ 3.51-3.54 (m, 2H), 3.61-3.64 (m, 2H), 3.68-3.74 (m, 4H), 4.06 (s, 2H). LC-MS: [M+1]=164
ステップ2:中間体B1の製造:
500mLの三口フラスコにアセト酢酸エチル(23.86g、1.5eq.)及びメチル-tert-ブチルエーテル(160mL)を添加し、0℃まで降温させ、炭酸カリウム(25.34g、1.5eq.)を添加した。反応温度を0~5℃に制御し、30分間撹拌した。中間体C1-2(20.00g、1.0eq.)のメチル-tert-ブチルエーテル溶液を添加し、50℃まで加熱し、一晩反応させた。サンプリングしてHPLC測定を行って、C1-2の含有量が2.2%であると示された。濾過し、濾過ケーキをジクロロメタンですすぎ、濾液を減圧下で濃縮して、油状物を得た。油状物をジクロロメタンに溶解し、水洗した。水相をジクロロメタンで1回抽出した。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。有機相を減圧下で濃縮乾固して、39gの中間体としての2-アセチル-4-モルホリン-4-オキソブタン酸エチル(B1)を得て、中間体が淡黄色油状物であり、収率が124.1%である(粗生成物)。HPLC測定によると、中間体B1の純度が88.6%であり、次の反応に直接使用した。
【0138】
実施例2 中間体5A2の製造
【化26】
1:反応釜にメタンスルホン酸(19.98kg、13.5L)を添加し、温度を≦40℃に制御し、4-メトキシ-1,3-ベンゼンジオール(1、2.7kg、1.00eq.)を添加した。さらに中間体B1(5.5kg、1.10eq.)を添加した。反応液を40±5℃で少なくとも18時間撹拌し、サンプリングしてHPLC測定を行って、原料1のピーク面積が≦5.0%になるまで反応を監視した。反応液を0~5℃まで冷却し、温度を≦40℃に制御し、水(27.0L)を添加し、さらに0~5℃まで冷却して16時間撹拌した。混合物を遠心分離して得られた固体を水(8.0L)とアセトニトリル(5.5Lx2)でそれぞれすすいで、湿潤固体を得た。反応釜を窒素ガスで3回置換した。アセトニトリル(13.5L)及び上記湿潤固体を添加し、70±5℃まで加熱して少なくとも1時間撹拌した。25±5℃まで降温させ、混合物を遠心分離して得られた固体をアセトニトリル(4.0Lx2)ですすぎ、次に真空オーブンに移し、温度を40~45℃(オーブン本体の温度)に制御して少なくとも8時間真空乾燥させ、室温まで冷却して、5gの中間体としての7-ヒドロキシ-6-メトキシ-4-メチル-3-(2-モルホリン-2-オキソエチル)-2H-クロメン-2-オン(5A2)を得て、収率が60%であり、純度が99.5%である。H-NMR: (300 MHz /DMSO-d) δ 2.31(s, 3H), 3.44-3.45 (m, 2H) 3.55-3.65 (m, 8H), 3.87(s, 3H), 6.78(s, 1H), 7.16(s, 1H), 10.19(s, 1H). LC-MS:[M+1]=334.2
2:反応釜Aにメタンスルホン酸(50mL、5.0V)を添加し、温度を≦40℃に制御し、中間体B1(25.06g、0.95eq.)を添加し、さらに4-メトキシ-1,3-ベンゼンジオール(1、10.0g、1.00eq.)を添加し、反応液を40±5℃で少なくとも24時間撹拌した。サンプリングしてHPLC測定を行って、原料1のピーク面積が≦5.0%になるまで反応を監視した。24h後に反応が終了せず、かつ残留した中間体B1<4%であれば、40±5℃で中間体B1(0.05eq.)を滴下し、少なくとも5時間撹拌し、必要に応じて、原料1のピーク面積が≦5.0%になるまで該操作を繰り返す。反応釜Bに水(100mL、10.0V)を添加し、次に反応釜Bに反応釜Aの反応混合物を滴下し、2.5±2.5℃で少なくとも16時間撹拌した。混合物を遠心分離して得られた固体を水(30mL、3.0V)とアセトニトリル(20mL×2、2.0Vx2)でそれぞれすすいで、湿潤固体を得た。反応釜Aを窒素ガスで3回置換した。アセトニトリル((50mL、5.0V)及び上記湿潤固体を添加し、70±5℃まで加熱して少なくとも8時間撹拌した。25~30℃まで降温させ、混合物を遠心分離して得られた固体をアセトニトリル(15mL×2、1.5V×2)ですすぎ、次に真空オーブンに移し、温度を40~45℃(オーブン本体の温度)に制御して少なくとも8時間真空乾燥させ、室温まで冷却して、8.5gの中間体としての7-ヒドロキシ-6-メトキシ-4-メチル-3-(2-モルホリン-2-オキソエチル)-2H-クロメン-2-オン(5A2)を得て、収率が36%であり、純度が99.7%である。特徴付けの結果は、上記と一致する。
【0139】
実施例3 化合物Orin1001の製造
【化27】
方法1:
反応フラスコ内に中間体5A2(10g、1.00eq.)、ヘキサメチレンテトラミン(HMTA、16.8g、4.00 eq.)及びトリフルオロ酢酸(500mL)を添加し、窒素雰囲気下で90℃で1.5時間加熱した。LC-MS測定によると、完全に反応した。反応液を室温まで冷却し、減圧下で濃縮して溶媒を除去して、残留物を得た。得られた残留物に水(30mL)を添加し、かつ10%の炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した。ジクロロメタン(1000mx3)で抽出し、有機相を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、さらにそれぞれアセトニトリルと酢酸エチルで洗浄して、化合物Orin1001(黄色固体、5g)を得た。収率が46%である。H NMR (TH03493-010-2M CDCl, 400 MHz): δ 12.45 (s, 1H, OH), 10.59 (s, 1H, CHO), 7.24 (s, 1H, ArH), 3.95 (s, 3H, CH), 3.78-3.62 (m, 10H, CH), 2.46 (s, 3H, CH). LC-MS [M+H] = 362.2。
【0140】
最終的に得られた化合物Orin1001に対してX線粉末回折(XRPD)測定を行うことにより、それが結晶状態であることを証明し、結晶形Iと命名した。
【0141】
該結晶形Iに対してTGA、DSC、DVS及び安定性試験を行った。結果は以下の通りである。
【0142】
1)XRPD測定
結晶形IのXRPDパターンは、実質的に図1に示す通りである。2θデータ表は、表1に示す通りである。
【0143】
2)TGA試験
熱重量分析(TGA)結果によると、200℃まで加熱するとき、およそ0.017%の重量損失率を有し、その熱重量分析グラフが実質的に図2に示す通りである。図2から分かるように、Orin1001の結晶形Iは無水物である。
【0144】
3)DSC試験
示差走査熱量測定(DSC)結果によると、約239.4℃まで加熱すると、吸熱ピークが現れ始め、その示差走査熱量測定グラフが実質的に図3に示す通りである。図3から分かるように、Orin1001の結晶形Iは、開始温度(Tonset)がおよそ239℃±5℃、例えば、239℃であり、ピーク温度(Tpeak)がおよそ242℃±5℃、例えば242℃である。
【0145】
4)DVS試験
動的水分吸着(DVS)結果によると、結晶形Iは、90%相対湿度で平衡化した後に重量が0.34%増加し、吸湿性が低く、かつDVS測定後に変化しなかった。そのDVS測定結果は実質的に図4に示す通りであり、DVS測定前後のXRPD比較図は実質的に図5に示す通りである。図4及び図5から分かるように、上記Orin1001の結晶形Iは吸湿性が低い。
【0146】
5)安定性試験
結晶形Iの2つのサンプルをそれぞれ40℃/75%の相対湿度(RH)条件下、及びオーブン内温度60℃(湿度無制御)の条件下で14日間放置し、それぞれ0日目、7日目及び14日目にサンプリングしてHPLC純度測定及びXRPD測定を行い、結果によると、結晶形Iが高い化学的及び物理的安定性を有する(表3、表4、図6、及び図7)。
【0147】
表3 結晶形Iの安定性試験結果(HPLC純度:ピーク面積%)-7日目
【表3】
表4 結晶形Iの安定性試験結果(HPLC純度:ピーク面積%)-14日目
【表4】
表3、表4、図6、及び図7から分かるように、Orin1001の結晶形Iは、優れた安定性を有する。
【0148】
方法2:
反応釜にトリフルオロ酢酸(230.40kg、150.0L、20.0V)を添加し、0~10℃まで降温させた。温度を10℃以下に制御し、ヘキサメチレンテトラミン(HMTA、23.44kg、7.50eq.)及び中間体5A2(7.44kg、1.00eq.)を添加した。温度を80±5℃まで調整し、少なくとも40時間撹拌した。サンプリングしてHPLC測定を行って、中間体5A2のピーク面積が≦5.0%になるまで反応を監視した。反応液を70℃以下で約120Lまで減圧下で濃縮した。0~10℃まで降温させ、精製水(200.0L)及びOrin1001種結晶(1.00wt%)を添加した。温度を0~10℃に維持して少なくとも16時間撹拌し続けた。遠心分離し、濾過ケーキを精製水(5.0L)ですすぎ、アセトニトリル(5.0Lx2)ですすいだ。反応釜を窒素ガスで3回置換した。反応釜にアセトニトリル(27.0L)、精製水(13.5L)及び上記得られた湿潤濾過ケーキを添加した。60±5℃まで加熱して少なくとも8時間撹拌した。25~30℃まで降温させ、遠心分離し、濾過ケーキをアセトニトリル(7.5Lx2)ですすいだ。濾過ケーキを真空オーブンに移し、温度を40~45℃(オーブン本体の温度)に制御して少なくとも4時間真空乾燥させた。材料の乾燥を停止させ、オーブン内温度を30℃以下に低下させて、Orin1001(黄色固体、4.61kg)を得て、収率が57%であり、HPLC測定によると、純度が99.9%である。特徴付けの結果は、上記と一致する。
【0149】
1)結晶形Iの粒度分布(PSD)試験
結晶形Iは、粒状結晶であり、顕微鏡(Nikon Eclipse LV100POL)で観察すると、その粒子径が50~100μmである。
【0150】
結晶形Iの粒度分布(PSD)をMalvern Mastersizer 2000で測定した。ポンプ速度:2500rpm、分散剤の体積:800mL、遮蔽度:10%~20%、分散剤:水、分散媒:1%のツイーン80、バックグラウンド測定時間:12s、サンプル測定時間:12s、測定サイクル:3。結果は以下の表に示す通りである。
【0151】
【表5】
結晶形Iは、嵩密度が0.72g/mlであり、タップ密度が0.90g/mlであり、カール指数が20%であり、安息角が30.6°であり、流動性が非常に高い。流動性の高い粉末は、舞い上がりにくく、吸着性が低く、粘性も低く、産業上の応用利便性を有する。
【0152】
2)機械的処理安定性試験
結晶形Iを乳鉢に置いて、それぞれ2min、5min研磨し、XRPD測定を行い、研磨後の固体を分析した。結果は、図8に示すように、2min、5min研磨した後、結晶形が変化しないことを示す。これは、結晶形Iの機械的処理安定性が高く、大規模な工業生産に役立つことを示す。
【0153】
本発明の典型的な実施形態が例示及び説明されたが、本発明は、説明された詳細に限定されない。様々な可能な修正及び置換が本発明の精神から逸脱しないため、当業者は一般的な試験により本発明の変形及び等価物を想到することができるため、すべてのこれらの変形及び等価物は、いずれも以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】