(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-07
(54)【発明の名称】BETブロモドメイン阻害剤およびジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤の組合せによる主要有害心血管イベント(MACE)の治療方法および/または予防方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/517 20060101AFI20230228BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230228BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230228BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230228BHJP
A61K 31/4985 20060101ALI20230228BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20230228BHJP
A61K 31/522 20060101ALI20230228BHJP
A61K 31/403 20060101ALI20230228BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20230228BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20230228BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
A61K31/517
A61P9/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/4985
A61K31/40
A61K31/522
A61K31/403
A61K31/506
A61K31/496
A61P9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022541984
(86)(22)【出願日】2021-01-07
(85)【翻訳文提出日】2022-08-23
(86)【国際出願番号】 IB2021000006
(87)【国際公開番号】W WO2021140418
(87)【国際公開日】2021-07-15
(32)【優先日】2020-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506115525
【氏名又は名称】レスバーロジックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】レビオダ,ケネス ユージーン
(72)【発明者】
【氏名】ハリデイ,クリストファー ロス アームストロング
(72)【発明者】
【氏名】カーン,アジズ ナイーム
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA361
4C084ZC202
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC07
4C086BC10
4C086BC42
4C086BC46
4C086BC50
4C086CB05
4C086CB07
4C086GA07
4C086GA10
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA36
4C086ZC20
4C086ZC75
(57)【要約】
本明細書では、それを必要とする対象に、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害剤、および式(I)の化合物、またはその立体異性体、互変異性体、医薬的に許容可能な塩もしくは水和物を組み合わせて投与することにより、主要有害心血管イベント(MACE)を治療および/または予防する方法が記載され、式(I)の変数は本明細書に定義されるとおりである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要有害心血管イベント(MACE)の治療および/または予防の方法であって、それを必要とする対象に、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害剤および式Iの化合物、またはその立体異性体、互変異性体、医薬的に許容可能な塩もしくは水和物を投与することを含み、
【化1】
式中、
R
1およびR
3はそれぞれ独立して、アルコキシ、アルキル、アミノ、ハロゲン、および水素から選択され、
R
2は、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、ハロゲン、および水素から選択され、
R
5およびR
7はそれぞれ独立して、アルキル、アルコキシ、アミノ、ハロゲン、および水素から選択され、
R
6は、アミノ、アミド、アルキル、水素、ヒドロキシル、ピペラジニル、およびアルコキシから選択され、
Wは、CおよびNから選択され、WがNである場合、pは0または1であり、WがCである場合、pは1であり、
W-(R
4)
pについては、WはCであり、pは1でR
4はHであり、またはWはNでpは0である、方法。
【請求項2】
MACEの任意の独立した構成要素の治療および/または予防の方法であって、それを必要とする対象に、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害剤および式Iの化合物、またはその立体異性体、互変異性体、医薬的に許容可能な塩もしくは水和物を投与することを含み、
【化2】
式中、
R
1およびR
3はそれぞれ独立して、アルコキシ、アルキル、アミノ、ハロゲン、および水素から選択され、
R
2は、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、ハロゲン、および水素から選択され、
R
5およびR
7はそれぞれ独立して、アルキル、アルコキシ、アミノ、ハロゲン、および水素から選択され、
R
6は、アミノ、アミド、アルキル、水素、ヒドロキシル、ピペラジニル、およびアルコキシから選択され、
Wは、CおよびNから選択され、WがNである場合、pは0または1であり、WがCである場合、pは1であり、
W-(R
4)
pについては、WはCであり、pは1でR
4はHであり、またはWはNでpは0である、方法。
【請求項3】
式Iの前記化合物が、式Iaの化合物、
【化3】
またはその立体異性体、互変異性体、医薬的に許容可能な塩もしくは水和物から選択され、
式中、
R
1およびR
3はそれぞれ独立して、アルコキシ、アルキル、および水素から選択され、
R
2は、アルコキシ、アルキル、および水素から選択され、
R
5およびR
7はそれぞれ独立して、アルキル、アルコキシ、および水素から選択され、
R
6は、アルキル、ヒドロキシル、およびアルコキシから選択され、
Wは、CおよびNから選択され、WがNである場合、pは0または1であり、WがCである場合、pは1であり、
W-(R
4)
pについては、WはCであり、pは1でR
4はHであり、またはWはNでpは0である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
式IまたはIaの前記化合物が、2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン(RVX-208またはRVX000222)またはその医薬的に許容可能な塩である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
一日当たり200mgの2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オンまたは相当量のその医薬的に許容可能な塩を、それを必要とする対象に投与することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
それを必要とする対象が、100mgの2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オンまたは相当量のその医薬的に許容可能な塩を1日2回投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記DPP-4阻害剤が、アログリプチン、リナグリプチン、サキサグリプチン、シタグリプチン、テネリグリプチン、およびビルダグリプチンから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象がヒトである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が、2型糖尿病および低HDLコレステロール(男性では40mg/dL未満、女性では45mg/dL未満)および最近の急性冠症候群(ACS)を有するヒトである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象が、スタチン療法を受けている、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記MACEが、非致死性心筋梗塞、心血管死、脳卒中、および心血管疾患イベントのための入院から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記心血管疾患イベントが、うっ血性心不全である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記心血管疾患イベントのための入院が、うっ血性心不全のための入院である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記MACEが、非致死性心筋梗塞、心血管死、および脳卒中から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年1月8日に出願された米国仮特許出願第62/958,474号の優先権の利益を主張するものであり、その開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、それを必要とする対象に、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害剤および式Iの化合物、またはその立体異性体、互変異性体、医薬的に許容可能な塩もしくは水和物とを組み合わせて投与することにより、主要有害心血管イベント(MACE)(非致死性心筋梗塞、心血管死、脳卒中、および心血管疾患(CVD)イベントのための入院を含む)を治療および/または予防する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
迅速な冠動脈血行再建、二重抗血小板療法、および集中的脂質低下療法を含む最新のエビデンスに基づく療法の使用にもかかわらず、急性冠症候群(ACS)後に高頻度で主要有害心血管イベント(MACE)が再発する。2型糖尿病(T2DM)患者は、特定の高リスクを有し、ACS症例の約三分の一に相当する(Cannon et al.2015;Schwartz et al.2013;Schwartz et al.2018)。ジペプチジルペプチダーゼ4またはDPP-4阻害剤は、酵素DPP-4を阻害する経口糖尿病薬の一群である。これらの療法は、インクレチン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)およびグルコース依存性イスリン分泌促進ペプチド(GIP)の分解を阻害することによって機能し、それゆえ、複数の効果を通じて、グルコースの制御に潜在的に影響を与え得る(Thornberry and Gallwitz.2009)。DPP-4阻害治療は、確立された心血管疾患、糖尿病、慢性腎臓疾患、およびACSを有する患者において、心血管系障害リスクの非劣性リスクを示している(Rosenstock et al.2019;Green et al.2015;Scirica et al.2013;White et al.2013)。しかしながら、DPP-4阻害剤が、最近のACS患者のMACEを減少させるとは示されておらず、この集団に対する実質的な残存リスクは残されている。せいぜい、DPP-4阻害剤は、心血管系の安全性を評価した臨床試験において、MACEに対して中立的効果を有することが示されている。例えば、SAVOR-TIMI-53およびEXAMINEは、心血管死、心筋梗塞、または虚血性脳卒中の3点MACE複合転帰に対するサキサグリプチンおよびアログリプチンの中立的効果を示唆した。同様に、シタグリプチンの安全性を評価したTECOS試験では、DPP-4阻害剤は、3点〔ハザード比(HR)0.99;95%信頼区間(CI)0.89~1.10)および4点(HR0.98;95% CI 0.89~1.08)MACE複合転帰の両方で、プラセボに対して非劣性と見だされた(Karagiannis et al.2015)。
【0004】
アパベタロン(RVX-208またはRVX000222)は、BETタンパク質転座を防止し、それによって慢性疾患を引き起こす遺伝子の転写を阻害するために、BETタンパク質の第二のブロモドメイン(例えば、BRD2、BRD3、BRD4およびBRDT)に選択的に結合する、画期的医薬品であるブロモドメインおよび末端外(BET)阻害剤(BETi)である。最近完了した臨床第3相試験(BETonMACE、NCT02586155)では、低HDLコレステロールを有する2型糖尿病患者(男性は40mg/dL未満、女性は45mg/dL未満)および最近のACS(7~90日前)を患った患者における、アパベタロン(RVX-208)のMACEに対する効果を評価した。すべての患者が、高強度または最大耐容スタチン治療を受けた。この研究は、2,425人の患者を登録し、MACE転帰を評価した最大の解析対象(FAS)集団は2,418人から構成された。合計で169人の患者がRVX-208とDPP-4阻害剤の両方の投与を受け、合計で167人がDPP-4阻害剤の投与を受けたがRVX-208は投与されず、合計で1,043人がRVX-208の投与を受けたがDPP-4阻害剤は投与されず、合計で1,039人がRVX-208およびDPP-4阻害剤のいずれも投与されなかった。
【0005】
驚くべきことに、実施例2に詳述されるように、我々は、RVX-208およびDPP-4阻害剤の組み合わせで治療された患者が、いずれかの療法のみによる治療と比較して、MACEの減少として測定される、心血管系障害および心血管疾患(CVD)イベントの顕著な減少を示すことを発見した。上述したように、DPP-4阻害剤がMACEを減少させるとは示されていない。実施例2で論じた結果は、DPP-4阻害剤と同様に、アパベタロン自体は、ハザード比またはMACEイベントを有する患者の数(非致死性心筋梗塞、心血管死、脳卒中、および随意に心血管疾患のための入院イベントの単一の複合評価項目として)および特定のMACEイベントである心筋梗塞、心血管死、および心血管疾患のための入院(
図2、5、8、および11を参照)を減少させるものではないことを一貫して実証する。しかしながら、アパベタロンをDPP-4阻害剤と組み合わせた場合、アパベタロン単剤療法またはDPP-4阻害剤単剤療法のいずれかと比較して、全体としてのMACEイベントまたは特定の個々のMACEイベントを有する患者の数は、統計的有意性(例えば、少なくとも約30%および最大約80%;
図1、3、4、6、7、9、10、12、13、および15を参照)に到達する程度にまで、予想外かつ一貫して減少した。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本開示によって提供される技術的解決策は、それを必要とする対象に、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害剤および式Iの化合物、またはその立体異性体、互変異性体、医薬的に許容可能な塩もしくは水和物を投与することにより、主要有害心血管イベント(MACE)、(非致死性心筋梗塞、心血管死、脳卒中、およびCVDイベントのための入院を含む)を治療および/または予防する方法を含む。
【0007】
式Iの化合物は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,053,440号に既に記載されている。式Iの化合物には、
【化1】
またはその立体異性体、互変異性体、医薬的に許容可能な塩もしくは水和物が含まれ、
式中、
R
1およびR
3はそれぞれ独立して、アルコキシ、アルキル、アミノ、ハロゲン、および水素から選択され、
R
2は、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、ハロゲン、および水素から選択され、
R
5およびR
7はそれぞれ独立して、アルキル、アルコキシ、アミノ、ハロゲン、および水素から選択され、
R
6は、アミノ、アミド、アルキル、水素、ヒドロキシル、ピペラジニル、およびアルコキシから選択され、
Wは、CおよびNから選択され、WがNである場合、pは0または1であり、WがCである場合、pは1であり、
W-(R
4)
pについては、WはCであり、pは1でR
4はHであり、またはWはNでpは0である。
【0008】
アパベタロン(RVX-208またはRVX000222)は、式Iの代表例である。
【0009】
一部の実施形態では、本発明は、それを必要とする対象に、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害剤および式Iの化合物、またはその立体異性体、互変異性体、医薬的に許容可能な塩もしくは水和物を投与することによって、心血管死を予防する方法を提供する。
【0010】
一部の実施形態では、本発明は、それを必要とする対象に、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害剤および式Iの化合物、またはその立体異性体、互変異性体、医薬的に許容可能な塩もしくは水和物を投与することによって、CVDイベントによる入院を治療および/または予防する方法を提供する。
【0011】
一部の実施形態では、本発明は、それを必要とする対象に、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害剤および式Iの化合物、またはその立体異性体、互変異性体、医薬的に許容可能な塩もしくは水和物を投与することによって、非致死性心筋梗塞を治療および/または予防する方法を提供する。
【0012】
一部の実施形態では、式Iの化合物は、DPP-4阻害剤と同時に投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物は、連続的にDPP-4阻害剤と投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物は、DPP-4阻害剤と共に単一の医薬組成物として投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物およびDPP-4阻害剤は、別個の組成物として投与される。
【0013】
一部の実施形態では、式Iaの化合物は、
【化2】
またはその立体異性体、互変異性体、医薬的に許容可能な塩もしくはその水和物から選択され、
式中、
R
1およびR
3はそれぞれ独立して、アルコキシ、アルキル、および水素から選択され、
R
2は、アルコキシ、アルキル、および水素から選択され、
R
5およびR
7はそれぞれ独立して、アルキル、アルコキシ、および水素から選択され、
R
6は、アルキル、ヒドロキシル、およびアルコキシから選択され、
Wは、CおよびNから選択され、WがNである場合、pは0または1であり、WがCである場合、pは1であり、
W-(R
4)
pについては、WはCであり、pは1でR
4はHであり、またはWはNでpは0である。
【0014】
一部の実施形態では、式Iの化合物は、2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン(RVX-208またはRVX000222)またはその医薬的に許容可能な塩である。
【0015】
一部の実施形態では、DPP-4阻害剤は、シタグリプチン、サキサグリプチン、リナグリプチン、アログリプチン(alopgliptin)、ビルダグリプチン、アナグリプチン、トレラグリプチン、オマリグリプチン、エボグリプチン(evogliptin)、ゴソグリプチン(gosogliptin)、ゲミグリプチン(gemigliptin)、テネリグリプチン、またはデュトグリプチン(dutogliptin)である。
【0016】
一部の実施形態では、MACE評価項目は、心血管(CV)死、非致死性心筋梗塞、または脳卒中の単一の複合評価項目として狭義に定義される。
【0017】
一部の実施形態では、MACE評価項目は、心血管(CV)死、非致死性心筋梗塞、CVDイベントのための入院、または脳卒中の単一の複合評価項目として広く定義される。一実施形態では、CVDは、うっ血性心不全である。一実施形態では、心血管疾患イベントのための入院は、うっ血性心不全のための入院である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、DPP-4阻害剤と共にRVX-208を投与された患者とDPP-4阻害剤と共にプラセボを投与された患者における、狭義のMACEの累積発生率の比較を示す。
【0019】
【
図2】
図2は、DPP-4阻害剤なしでRVX-208を投与された患者とDPP-4阻害剤なしでプラセボを投与された患者における、狭義のMACEの累積発生率の比較を示す。
【0020】
【
図3】
図3は、DPP-4阻害剤と共にRVX-208を投与された患者とDPP-4阻害剤なしでRVX-208を投与された患者における、狭義のMACEの累積発生率の比較を示す。
【0021】
【
図4】
図4は、DPP-4阻害剤と共にRVX-208を投与された患者とDPP-4阻害剤と共にプラセボを投与された患者における、広義のMACEの累積発生率の比較を示す。
【0022】
【
図5】
図5は、DPP-4阻害剤なしでRVX-208を投与された患者とDPP-4阻害剤なしでプラセボを投与された患者における、広義のMACEの累積発生率の比較を示す。
【0023】
【
図6】
図6は、DPP-4阻害剤と共にRVX-208を投与された患者とDPP-4阻害剤なしでRVX-208を投与された患者における、広義のMACEの累積発生率の比較を示す。
【0024】
【
図7】
図7は、DPP-4阻害剤共にRVX-208を投与された患者とDPP-4阻害剤と共にプラセボを投与された患者における、非致死性心筋梗塞の累積発生率の比較を示す。
【0025】
【
図8】
図8は、DPP-4阻害剤なしでRVX-208を投与された患者とDPP-4阻害剤なしでプラセボを投与された患者における、非致死性心筋梗塞の累積発生率の比較を示す。
【0026】
【
図9】
図9は、DPP-4阻害剤と共にVX-208を投与された患者とDPP-4阻害剤なしでRVX-208を投与された患者における、非致死性心筋梗塞の累積発生率の比較を示す。
【0027】
【
図10】
図10は、DPP-4阻害剤と共にRVX-208を投与された患者とDPP-4阻害剤と共にプラセボを投与された患者における、CV死の累積発生率の比較を示す。
【0028】
【
図11】
図11は、DPP-4阻害剤なしでRVX-208を投与された患者とDPP-4阻害剤なしでプラセボを投与された患者における、CV死の累積発生率の比較を示す。
【0029】
【
図12】
図12は、DPP-4阻害剤と共にVX-208を投与された患者とDPP-4阻害剤なしでRVX-208を投与された患者における、CV死の累積発生率の比較を示す。
【0030】
【
図13】
図13は、DPP-4阻害剤と共にRVX-208を投与された患者とDPP-4阻害剤と共にプラセボを投与された患者における、うっ血性心不全による入院の累積発生率の比較を示す。
【0031】
【
図14】
図14は、DPP-4阻害剤なしでRVX-208を投与された患者とDPP-4阻害剤なしでプラセボを投与された患者における、うっ血性心不全イベントによる入院の累積発生率の比較を示す。
【0032】
【
図15】
図15は、DPP-4阻害剤と共にRVX-208を投与された患者とDPP-4阻害剤なしでRVX-208を投与された患者における、うっ血性心不全イベントによる入院の累積発生率の比較を示す。
【0033】
定義
「随意」または「随意に」とは、その後に記述されるイベントまたは状況が発生するかもしれず、または発生しないかもしれず、また、記述がイベントまたは状況が発生する場合、および発生しない場合を含むことを意味する。例えば、「随意に置換されたアリール」は、以下に定義されるように、「アリール」および「置換されたアリール」の両方を包含する。当業者であれば、一つ以上の置換基を含有する任意の基に関して、こうした基は、立体的に非実用的、合成的に非実行可能、および/または本質的に不安定な、いかなる置換または置換パターンを導入することを意図していないことを理解するであろう。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「水和物」は、化学量論的または非化学量論的な量の水のいずれかが結晶構造に組み込まれる結晶形態を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「アルケニル」は、本明細書で(C2~C8)アルケニルと称される、2~8個の炭素原子の直鎖または分岐基などの少なくとも一つの炭素-炭素二重結合を有する不飽和直鎖または分岐炭化水素を指す。例示的なアルケニル基としては、以下に限定されないが、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル(hexadienyl)、2-エチルヘキセニル、2-プロピル-2-ブテニル、および4-(2-メチル-3-ブテン)-ペンテニルが挙げられる。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「アルコキシ」は、酸素に結合されたアルキル基(O-アルキル)を指す。「アルコキシ」基はまた、酸素と結合したアルケニル基(「アルケニルオキシ」)、または酸素と結合したアルキニル基(「アルキニルオキシ」)を含む。例示的なアルコキシ基としては、限定されるものではないが、1~8個の炭素原子のアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を有する基であって、本明細書では(C1~C8)アルコキシと呼称される、基が挙げられる。例示的なアルコキシ基には、メトキシおよびエトキシが含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」は、飽和直鎖または分岐炭化水素、例えば、本明細書では(C1~C8)アルキルと称される、1~8個の炭素原子の直鎖または分岐基を指す。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2-メチル-1-プロピル、2-メチル-2-プロピル、2-メチル-1-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-3-ブチル、2,2-ジメチル-1-プロピル、2-メチル-1-ペンチル、3-メチル-1-ペンチル、4-メチル-1-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2,2-ジメチル-1-ブチル、3,3-ジメチル-1-ブチル、2-エチル-1-ブチル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、およびオクチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「アミド」は、NRaC(O)(Rb)またはC(O)NRbRcの形態を指し、Ra、RbおよびRcはそれぞれ独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、および水素から選択される。アミドは、炭素、窒素、Rb、またはRcを介して別の基に結合することができる。アミドはまた、環状であってもよく、例えばRbおよびRcは結合されて、例えば5または6員環などの、3~8員環を形成してもよい。用語「アミド」は、例えばスルホンアミド、尿素、ウレイド、カルバメート、カルバミン酸、およびその環状バージョンなどの、基を包含する。用語「アミド」はまた、カルボキシ基に付加されたアミド基、例えば、アミド-COOHまたはアミド-COONAなどの塩、カルボキシ基に付加されたアミノ基(例えば、アミノ-COOHまたはアミノ-COONAなどの塩)を包含する。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「アミン」または「アミノ」は、NRdReまたはN(Rd)Reの形態を指し、RdおよびReは独立してアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、カルバメート、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、複素環、および水素から選択される。アミノは、窒素を介して親分子基に結合することができる。アミノはまた、環状であってもよく、例えば、任意の二つのRdおよびReが一緒に結合またはNと結合して、3~12員環(例えば、モルホリノまたはピペリジニル)を形成してもよい。アミノという用語は、対応する任意のアミノ基の第四級アンモニウム塩も含む。例示的なアミノ基は、アルキルアミノ基を含み、RdおよびReのうちの少なくとも一つはアルキル基である。一部の実施形態では、RdおよびReはそれぞれ、ヒドロキシル、ハロゲン、アルコキシ、エステル、またはアミノで随意に置換されてもよい。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「アリール」は、単環式、二環式、または他の多環式の炭素環式、芳香族環系を指す。アリール基は、随意に、アリール、シクロアルキル、およびヘテロシクリルから選択される一つ以上の環に融合されてもよい。本開示のアリール基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、リン酸塩、硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、およびチオケトンから選択される群と置換され得る。例示的なアリール基には、以下に限定されないが、フェニル、トリル、アントラセニル(anthracenyl)、フルオレニル、インデニル、アズレニル、およびナフチル、ならびに5,6,7,8-テトラヒドロナフチル(tetrahydronaphthyl)などのベンゾ縮合炭素環部分が含まれる。例示的なアリール基は、単環式芳香族環系も含むが、これに限定されるものではなく、環は、本明細書で「(C6)アリール」と称される6個の炭素原子を含む。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「アリールアルキル」は、少なくとも一つのアリール置換基(例えば、アリール-アルキル)を有するアルキル基を指す。例示的なアリールアルキル基としては、限定されるものではないが、単環式芳香族環系を有するアリールアルキルが含まれ、環は、本明細書で「(C6)アリールアルキル」と称される6個の炭素原子を含む。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「カルバメート」は、RgOC(O)N(Rh)、RgOC(O)N(Rh)Ri、またはOC(O)NRhRiの形態を指し、Rg、RhおよびRiはそれぞれ独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、および水素から選択される。例示的なカルバメートには、限定されるものではないが、アリールカルバメートまたはヘテロアリールカルバメートが含まれる(例えば、Rg、RhおよびRiの少なくとも一つは、アリールまたはヘテロアリール、例えばピリジン、ピリダジン、ピリミジン、およびピラジンなど、から独立して選択される)。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「炭素環」は、アリール基またはシクロアルキル基を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「カルボキシ」は、COOHまたはその対応するカルボン酸塩(例えば、COONa)を指す。カルボキシという用語はまた、例えばカルボキシ基がカルボニル基と結合した、例えばC(O)-COOH、または塩と結合した、例えばC(O)-COONaなどの「カルボキシカルボニル」も含む。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「シクロアルコキシ」は、酸素に結合されたシクロアルキル基を指す。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「シクロアルキル」は、飽和または不飽和の環式、二環式、または架橋された3~12個の炭素、または3~8個の炭素の二環式炭化水素基を指し、本明細書では、シクロアルカンに由来して「(C3~C8)シクロアルキル」と呼ばれる。例示的なシクロアルキル基としては、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロペンタン、およびシクロペンテンが含まれるが、これらに限定されない。シクロアルキル基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、リン酸塩、硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、およびチオケトンで置換されてもよい。シクロアルキル基は、他のシクロアルキル飽和基もしくは不飽和基、アリール基、またはヘテロシクリル基に融合され得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「ジカルボン酸」は、飽和および不飽和炭化水素ジカルボン酸およびその塩などの少なくとも二つのカルボン酸基を含む基を指す。例示的なジカルボン酸は、アルキルジカルボン酸を含む。ジカルボン酸は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、水素、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、リン酸塩、硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、およびチオケトンと置換されてもよい。ジカルボン酸には、以下に限定されないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、フタル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、マロン酸、フマル酸、(+)/(-)-リンゴ酸、(+)/(-)酒石酸、イソフタル酸、およびテレフタル酸が含まれる。ジカルボン酸は、無水物、イミド、ヒドラジド(例えば、無水コハク酸およびスクシンイミド)などのカルボン酸誘導体をさらに含む。
【0048】
用語「エステル」は、構造C(O)O-、C(O)ORj、RkC(O)O-Rj、またはRkC(O)O-を指し、Oは水素に結合せず、RjおよびRkは独立して、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、エーテル、ハロアルキル、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルから選択されうる。Rkは水素でありうるが、Rjは水素でありえない。エステルは環状であってもよく、例えば、炭素原子およびRj、酸素原子およびRk、またはRjおよびRkが結合して3~12の員環を形成してもよい。例示的なエステルとしては、限定されるものではないが、Rj及びRkのうちの少なくとも一つが、O-C(O)アルキル、C(O)-O-アルキル、およびアルキルC(O)-O-アルキルなどのアルキルである、アルキルエステルが挙げられる。例示的なエステルは、アリールまたはヘテオアリールエステルも含み、RjおよびRkのうちの少なくとも一つは、例えば、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、および例えば、ニコチンエステルなどのピラジンなどの、ヘテロアリール基である。例示的なエステルは、構造RkC(O)O-を有するリバースエステルも含み、酸素は親分子に結合される。例示的なリバースエステルとしては、サクシネート(succinate)、D-アルギニネート(D-argininate)、L-アルギニネート(L-argininate)、L-リジネート(L-lysinate)、およびD-リジネート(D-lysinate)が挙げられる。エステルはまた、カルボン酸無水物および酸ハロゲン化物を含む。
【0049】
本明細書で使用される場合、「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、F、Cl、Br、またはIを指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「ハロアルキル」という用語は、一つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基を指す。「ハロアルキル」は、一つ以上のハロゲン原子で置換されたアルケニル基またはアルキニル基も包含する。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロアリール」は、例えば、窒素、酸素、および硫黄などの1~3個のヘテロ原子などの、一つ以上のヘテロ原子を含む、一環、二環、または多環の芳香族環系を指す。ヘテロアリールは、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、リン酸塩、硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミドおよびチオケトンに含まれる一つ以上の置換基で置換され得る。ヘテロアリールはまた、非芳香族環に融合されてもよい。ヘテロアリール基の例には、限定されるものではないが、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジル、トリアジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、(1,2,3)-および(1,2,4)トリアゾリル、ピラジニル、ピリミジリル(pyrimidilyl)、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、フリル、フェニル、イソオキサゾリル、およびオキサゾリルが含まれる。例示的なヘテロアリール基としては、限定されるものではないが、単環式芳香族環を含み、環は、2~5個の炭素原子および1~3個のヘテロ原子を含み、本明細書では「(C2~C5)ヘテロアリール」と呼称される。
【0052】
本明細書で使用される場合、「複素環」、「ヘテロシクリル(heterocyclyl)」、または「複素環式」という用語は、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される一つ、二つ、または三つのヘテロ原子を含む、飽和または不飽和の3、4、5-、6-、または7-員環を指す。複素環は、芳香族(ヘテロアリール)または非芳香族であり得る。複素環は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、リン酸塩、硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミドおよびチオケトンを含む一つ以上の置換基で置換され得る。複素環はまた、二環式、三環式、および四環式基を含み、この時、上記複素環のいずれかは、アリール、シクロアルキル、および複素環から独立して選択される一つまたは二つの環に融合される。例示的な複素環には、アクリジニル、ベンジミダゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾキサゾリル、ビオチニル、シンノリニル(cinnolinyl)、ジヒドロフリル、ジヒドロインドリル(dihydroindolyl)、ジヒドロピラニル(dihydropyranyl)、ジヒドロチエニル(dihydrothienyl)、ジチアゾリル、フリル、ホモピペリジニル(homopiperidinyl)、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、インドリル、イソキノリル、イソチアゾイジニル(isothiazolidinyl)、イソチアゾリル(isothiazolyl)、イソキサゾリジニル(isoxazolidinyl)、イソオキサゾリル、モルホリニル、オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラニル、ピラゾリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピラゾリニル(pyrazolinyl)、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリミジル、ピロリジニル、ピロリジン-2-オニル、ピロリニル、ピロリル、キノリニル、キノキサロイル(quinoxaloyl)、テトラヒドロフリル、テトラヒドロイソキノリル(tetrahydroisoquinolyl)、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリル(tetrahydroquinolyl)、テトラゾリル、チアジアゾリル、チアゾリジニル(thiazolidinyl)、チアゾリル、チエニル、チオモルホリニル(thiomorpholinyl)、チオピラニル(thiopyranyl)、およびトリアゾリルを含む。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロキシ」および「ヒドロキシル」は、-OHを指す。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロキシアルキル」は、アルキル基に結合されるヒドロキシを指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロキシアリール」は、アリール基に結合されるヒドロキシを指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「ケトン」は、C(O)-Rn(例えば、アセチルとしてC(O)CH3)またはRn-C(O)-Roの構造を指す。ケトンは、RnまたはRoを介して別の基に結合することができる。RnおよびRoは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリルあるいはアリールであってもよく、またはRnおよびRoは結合して3~12の員環を形成することができる。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「フェニル」は、6員の炭素環式芳香族環を指す。フェニル基はまた、シクロヘキサンまたはシクロペンタン環に融合されてもよい。フェニルは、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、リン酸塩、硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、およびチオケトンを含む一つ以上の置換基で置換され得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「チオアルキル」は、硫黄(S-アルキル)に結合されたアルキル基を指す。
【0059】
「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「アルコキシ」、「アミノ」および「アミド」基は、随意に、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボニル、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、リン酸塩、硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、チオケトン、ウレイドおよびNから選択される少なくとも一つの群と置換されてもよく、またはそれらによって妨げられてもよく、あるいはそれらと分岐してもよい。置換基は分岐して、置換または非置換の複素環またはシクロアルキルを形成し得る。
【0060】
本明細書で使用される場合、随意に置換される置換基上の適切な置換は、本開示の化合物またはそれらの調製に有益な中間体の合成的または医薬的有用性を無効としない基を指す。好適な置換の例としては以下が挙げられるが、これらに限定されない。C1~C8アルキル、C2~C8アルケニルまたはアルキニル;C6アリール、5または6員ヘテロアリール;C3-C7シクロアルキル;C1~C8アルコキシ;C6アリールオキシ;CN;OH;オキソ;ハロ、カルボキシ;例えばNH(C1-C8アルキル)、N(C1~C8アルキル)2、NH((C6)アリール)、またはNH((C6)アリール)2などのアミノ;ホルミル;例えばCO(C1~C8アルキル)、-CO((C6アリール)などのケトン、例えばCO2(C1~C8アルキル)およびCO2(C6アリール)などのエステル。当業者であれば、本開示の化合物の安定性および薬理学的活性および合成活性に基づいて、適切な置換を容易に選択することができる。
【0061】
本明細書で使用される場合、「医薬的に許容可能な組成物」という用語は、一つ以上の医薬的に許容可能な担体と共に製剤化された本明細書に開示される少なくとも一つの化合物を含む組成物を指す。
【0062】
本明細書で使用される場合、「医薬的に許容可能な担体」という用語は、医薬投与と適合性のある、あらゆる、すべての溶媒、分散媒体、コーティング、等張剤および吸収遅延剤などを指す。医薬的に活性な物質のためのこのような媒体および製剤の使用は、当技術分野で周知である。組成物はまた、補足的、追加的、または強化された治療機能を提供する他の活性化合物を含有してもよい。本明細書で使用される場合、「医薬的に許容可能な組成物」という用語は、一つ以上の医薬的に許容可能な担体と共に製剤化された本明細書に開示される少なくとも一つの化合物を含む組成物を指す。
【0063】
本明細書で使用される場合、「医薬的に許容可能なプロドラッグ」という用語は、健全な医薬的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応を伴わずに、ヒトおよび下等動物の組織と接触して使用することに適し、合理的な利益/リスク比が釣り合っており、および意図される使用に効果があり、ならびに、可能であれば、式Iの化合物の双性イオン型である、本発明の化合物のプロドラッグを表す。議論が、Higuchi et al.“Prodrugs as Novel Delivery Systems”,Symposium Series,Vol.14,および Roche,E.B.,ed.Bioreversible Carriers in Drug Design ,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987、にて提供されており、これら両方が参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
「医薬的に許容可能な塩」という用語は、本組成物で使用される化合物中に存在し得る酸性または塩基性基の塩を指す。本質的に塩基性である本組成物に含まれる化合物は、様々な無機酸および有機酸を有する多種多様な塩を形成することができる。こうした塩基性化合物の医薬的に許容可能な酸付加塩を調製するために使用され得る酸は、非毒性の酸付加塩を形成する酸であり、すなわち、薬理学的に許容可能なアニオンを含有する塩、限定されないが、硫酸塩、クエン酸塩、メイターテ(matate)、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、イソニコチン酸、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩(glucaronate)、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩およびパモ酸(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート(naphthoate))塩を含む。アミノ部分を含む本組成物に含まれる化合物は、上述の酸に加えて、様々なアミノ酸を有する医薬的に許容可能な塩を形成し得る。本来酸性である本組成物に含まれる化合物は、様々な薬理学的に許容可能なカチオンを有する塩基塩を形成することができる。こうした塩の例としては、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、特にカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、亜鉛、カリウム、および鉄塩が挙げられる。
【0065】
さらに、本明細書に記載の化合物が酸付加塩として取得される場合、遊離塩基は、酸性塩の溶液を塩基性化することによって取得することができる。逆に、生成物が遊離塩基である場合、塩基化合物から酸付加塩を調製するための従来的な手順に従って、遊離塩基を適切な有機溶媒に溶解し、溶液を酸で処理することによって、付加塩、特に医薬的に許容可能な付加塩を生産し得る。当業者は、非毒性の医薬的に許容可能な付加塩を調製するために使用され得る様々な合成方法を認識するであろう。
【0066】
式IまたはIaの化合物は、一つ以上のキラル中心および/または二重結合を含んでもよく、したがって、幾何異性体、エナンチオマー、またはジアステレオマーなどの立体異性体として存在する。本明細書で使用される場合、用語「立体異性体」は、全ての幾何異性体、エナンチオマー、またはジアステレオマーからなる。これらの化合物は、立体中心炭素原子の周りの置換基の構成に応じて、記号「R」または「S」で指定されうる。本発明は、これらの化合物およびその混合物の様々な立体異性体を包含する。立体異性体には、エナンチオマーおよびジアステレオマーが含まれる。エナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物は、術語では「(±)」と指定されうるが、当業者は、構造がキラル中心を黙示的に示しうることを認識するであろう。
【0067】
本発明の方法で使用する化合物の個々の立体異性体は、非対称または立体中心を含む市販の出発原料から合成的に調製されてもよく、またはラセミ混合物を当業者が周知の分割方法を用いて調製されてもよい。これらの分解方法は、(1)キラル補助剤へのエナンチオマー混合物の結合、再結晶化またはクロマトグラフィーにより得られたジアステレオマー混合物の分離、および光学的に純粋な生成物の補助剤からの解放、(2)光学的に活性な分解剤を使用した塩の形成、または(3)キラルクロマトグラフィーカラム上の光学エナンチオマーの混合物の直接的な分離、によって例示される。立体異性混合物はまた、キラル相ガスクロマトグラフィー、キラル相高速液体クロマトグラフィー、キラル塩複合体としての化合物の結晶化、またはキラル溶媒中の化合物の結晶化などの周知の方法によって、その構成要素である立体異性体に分割され得る。立体異性体はまた、周知の非対称合成法によって、立体異性体的に純粋な中間体、試薬、および触媒から取得することができる。
【0068】
幾何異性体は、式IまたはIaの化合物中にも存在することができる。本発明は、炭素-炭素二重結合の周りの置換基の配置、または炭素環の周りの置換基の配置から生じる、様々な幾何異性体およびその混合物を包含する。炭素-炭素二重結合の周りの置換基は、「Z」または「E」構成で指定され、用語「Z」および「E」は、IUPAC標準に従って使用される。特に指定のない限り、二重結合を示す構造は、E異性体およびZ異性体の両方を包含する。
【0069】
炭素-炭素二重結合の周りの置換基は、代替的に、「シス」または「トランス」と呼んでもよく、「シス」は、二重結合の同じ側の置換基を表し、「トランス」は、二重結合の反対側の置換基を表す。炭素環の周りの置換基の配置は、「シス」または「トランス」として示される。用語「シス」は、環の平面の同じ側の置換基を表し、用語「トランス」は、環の平面の反対側の置換基を表す。置換基が、環の平面の同一面および対向面の両方上に配置される化合物の混合物は、「シス/トランス」と示される。
【0070】
本明細書に開示される式Iの化合物は、互変異性体として存在してもよく、両方の互変異性体の形態が、一つの互変異性体構造のみが表現されているが、本発明の範囲に包含されることが意図される。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「ジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤」または「DPP-4阻害剤」は、小分子有機化学化合物(≦1kDa)、またはペプチド(例えば、可溶性ペプチド)、タンパク質(例えば、抗体)、核酸(例えば、siRNA)、または前記の二つ以上を結合する複合体などの大きな生体分子などの物質を指し、これはジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)酵素を抑制する活動を有する。DPP-4阻害剤の非限定的な例としては、シタグリプチン、サキサグリプチン、リナグリプチン、アログリプチン(alopgliptin)、ビルダグリプチン、アナグリプチン、トレラグリプチン、オマリグリプチン、エボグリプチン(evogliptin)、ゴソグリプチン(gosogliptin)、ゲミグリプチン(gemigliptin)、テネリグリプチン、またはデュトグリプチン(dutogliptin)、あるいは前述のいずれかの医薬的に許容可能な塩が挙げられる。
【0072】
本明細書で使用される場合、「治療」または「治療すること」は、疾患もしくは障害、またはその少なくとも一つの識別可能な症状の改善を指す。別の実施形態では、「治療」または「治療すること」は、必ずしも患者によって識別可能ではない、少なくとも一つの測定可能な物理的パラメータの改善を指す。さらに別の実施形態では、「治療」または「治療すること」は、物理的、例えば識別可能な症状の安定化など、生理学的、例えば物理的パラメータの安定化など、のいずれか、または両方で、疾患または障害の進行を低減させることを指す。さらに別の実施形態では、「治療」または「治療すること」は、疾患または障害の発症または進行を遅らせることを指す。例えば、コレステロール障害を治療することは、血中コレステロール値の減少を含み得る。
【0073】
本明細書で使用される場合、「予防」または「予防すること」は、所与の疾患もしくは障害、または所与の疾患もしくは障害の症状を獲得するリスクの低減を指す。
【0074】
用語「狭義のMACE」は、心血管(CV)死、非致死性心筋梗塞、または脳卒中の単一の複合評価項目として定義される。
【0075】
用語「広義のMACE」は、心血管(CV)死、非致死性心筋梗塞、CVDイベントのための入院、または脳卒中の単一の複合評価項目として定義される。
【0076】
本明細書で使用される場合、「心血管疾患イベント」または「CVDイベント」は、心血管系障害の身体的症状であり、脳卒中、非致死性心筋梗塞、心血管死、およびCVDイベントおよびうっ血性心不全のための入院などのイベントを含む。本明細書で使用される場合、「CVDイベントのための入院」は、不安定狭心症のための入院、進行性閉塞性冠動脈疾患の症状、任意の時点での緊急血行再建処置、または無作為化前のインデックスイベントの30日以上後の緊急血行再建処置と定義される。一部の実施形態では、「CVDイベントのための入院」は、うっ血性心不全を含む、心血管系障害の身体的症状のための入院を含む。一実施形態では、CVDイベントのための入院は、うっ血性心不全のための入院である。
【0077】
本明細書で使用される場合、「心血管系障害」には、心血管死、非致死性心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症を含むCVDイベントのための入院、進行性閉塞性冠動脈疾患の症状、任意の時点での緊急血行再建処置、またはインデックスイベントの30日以上後の緊急血行再建処置、およびうっ血性心不全が含まれる。
【0078】
本明細書で使用される場合、「最近の急性冠症候群」または「最近のACS」は、スタチン(高強度のスタチン治療または最大耐容スタチン治療)、アパベタロン、および本明細書に定義されるDPP-4阻害剤から選択される少なくとも一つの物質で、対象が治療される7~90日前に、対象において起こる心臓への突然の血流減少に関連する状態または状態の範囲を指す。細胞死が心臓組織に損傷または破壊をもたらす際の、そのような状態の一つは、心臓発作または心筋梗塞である。心臓への突然の血流の減少が、細胞死を引き起しはしないが、心臓がどのように機能するかを変化させる際の、別のそのような状態は、心臓発作の高リスクの徴候である。通常は突然始まるACSの徴候および症状には、以下に限定されないが、しばしば痛み、圧迫感、緊張感または灼熱感として説明される胸痛(狭心症)または不快感、胸から肩、腕、上腹部、背中、首、または顎に広がる痛み、吐き気または嘔吐、消化不良、息切れ(呼吸困難)、突然の激しい発汗(発汗)、立ちくらみ、めまい、または失神、普通でない、または説明のつかない疲労、および落ち着かない、または心配な感情が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0079】
一実施形態では、本発明は、それを必要とする対象に、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害剤および式Iの化合物、またはその立体異性体、互変異性体、医薬的に許容可能な塩もしくは水和物との組み合わせを投与することによって、非致死性心筋梗塞、CV死、脳卒中、およびCVDイベントのための入院を含む、主要有害心血管イベント(MACE)を治療および/または予防する方法を提供し、
【化3】
またはその立体異性体、互変異性体、医薬的に許容可能な塩もしくは水和物において、
式中、
R
1およびR
3はそれぞれ独立して、アルコキシ、アルキル、アミノ、ハロゲン、および水素から選択され、
R
2は、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、ハロゲン、および水素から選択され、
R
5およびR
7はそれぞれ独立して、アルキル、アルコキシ、アミノ、ハロゲン、および水素から選択され、
R
6は、アミノ、アミド、アルキル、水素、ヒドロキシル、ピペラジニル、およびアルコキシから選択され、
Wは、CおよびNから選択され、WがNである場合、pは0または1であり、WがCである場合、pは1であり、
W-(R
4)
pについては、WはCであり、pは1でR
4はHであり、またはWはNでpは0である。
【0080】
一実施形態では、式Iの化合物は、2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン(RVX-208またはRVX000222)またはその医薬的に許容可能な塩である。
【0081】
一実施形態では、DPP-4阻害剤は、シタグリプチン、サキサグリプチン、リナグリプチン、アログリプチン(alopgliptin)、ビルダグリプチン、アナグリプチン、トレラグリプチン、オマリグリプチン、エボグリプチン(evogliptin)、ゴソグリプチン(gosogliptin)、ゲミグリプチン(gemigliptin)、テネリグリプチン、またはデュトグリプチン(dutogliptin)から選択される。
【0082】
一実施形態では、MACE評価項目は、心血管(CV)死、非致死性心筋梗塞、または脳卒中の単一の複合評価項目として狭義に定義される。
【0083】
一実施形態では、MACE評価項目は、心血管(CV)死、非致死性心筋梗塞、CVDイベントのための入院、または脳卒中の単一の複合評価項目として広く定義される。
【0084】
一実施形態では、それを必要とする対象に、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害剤および式Iaの化合物、またはその立体異性体、互変異性体、医薬的に許容可能な塩もしくは水和物を投与することにより、心血管(CV)死、非致死性心筋梗塞、CVDイベントのための入院、または脳卒中を含む、MACEの任意の個々の構成要素を治療および/または予防するための方法であって、
【化4】
式中、
R
1およびR
3はそれぞれ独立して、アルコキシ、アルキル、および水素から選択され、
R
2は、アルコキシ、アルキル、および水素から選択され、
R
5およびR
7はそれぞれ独立して、アルキル、アルコキシ、アミノ、ハロゲン、および水素から選択され、
R
6は、アルキル、ヒドロキシル、およびアルコキシから選択され、
Wは、CおよびNから選択され、WがNである場合、pは0または1であり、WがCである場合、pは1であり、
W-(R
4)
pについては、WはCであり、pは1でR
4はHであり、またはWはNでpは0である。
【0085】
一実施形態では、式Iの化合物は、DPP-4阻害剤と同時に投与される。
【0086】
一実施形態では、式Iの化合物は、DPP-4阻害剤と連続的に投与される。
【0087】
一実施形態では、式Iの化合物は、DPP-4阻害剤と共に単一の医薬組成物で投与される。
【0088】
一実施形態では、式Iの化合物及びDPP-4阻害剤は、別個の組成物として投与される。
【0089】
一実施形態では、それを必要とする対象は、毎日200mgの2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オンを、または相当量のその医薬的に許容可能な塩を投与される。
【0090】
一実施形態では、それを必要とする対象は、100mgの2-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)-5,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オンまたは相当量のその医薬的に許容可能な塩を1日2回投与される。
【0091】
一実施形態では、対象はヒトである。
【0092】
一実施形態では、対象は、2型糖尿病および低HDLコレステロール(男性は40mg/dL未満、女性は45mg/dL未満)を有する、および最近の急性冠症候群(ACS)を有するヒトである。
【0093】
一実施形態では、対象は、2型糖尿病を有するヒトである。
【0094】
一実施形態では、対象は、低HDLコレステロール(すなわち、男性では40mg/dL未満、女性では45mg/dL未満)を有するヒトである。
【0095】
一実施形態では、対象は、最近のACSを有するヒトである。
【0096】
一実施形態では、対象は、スタチン療法を受けているヒトである。一実施形態では、対象は、高強度または最大耐容スタチン療法を受けているヒトである。一実施形態では、高強度スタチン治療または療法は、少なくとも20mg、または少なくとも40mg、または20~80mg、または20~40mg、または40~80mgの1日投与を指す。一実施形態では、最大耐容スタチン治療または療法は、少なくとも40mg、または40mg~80mg、または80mgの毎日の損失を指す。一実施形態では、対象はロスバスタチン療法を受けている。一実施形態では、対象はアトルバスタチン療法を受けている。
(参考文献)
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Karagiannis,T.,Bekiari,E.,Boura,P.,et al.(2015)Cardiovascular Risk with DPP-4 Inhibitors: Latest Evidence and Clinical Implications.Ther Adv Drug Saf,7(2),36-38.
【実施例】
【0097】
実施例1:臨床開発
アパベタロン(RVX-208)は、低HDLコレステロール(男性では40mg/dL未満、女性では45mg/dL未満)を有する2型糖尿病患者および最近の急性冠症候群(ACS)の患者におけるMACEに対する効果について、最近完了した臨床第3相試験(BETonMACE、NCT02586155)で評価された。すべての患者は、高強度スタチン治療を受け、すなわち、ロスバスタチンは1日20~40mg、または最大1日量40mg、またはアトルバスタチンは1日40~80mg、または最大1日量80mgであった。
【0098】
アトルバスタチンまたはロスバスタチンによる集中または最大耐容療法を受けている、2型糖尿病および低HDLコレステロール(男性は40mg/dL以下、女性は45mg/dL以下)を有する、過去7~90日間のACS患者(n=2425)が、二重盲検様式で割り当てられ、アパベタロン100mgを1日2回または対応するプラセボを経口投与された。基本特性には、性別女性(25%)、インデックスACSイベントとしての心筋梗塞(74%)、インデックスACSとしての冠動脈血行再建(76%)、二重抗血小板療法による治療(87%)およびレニン・アンギオテンシン系阻害剤による治療(91%)、LDLコレステロール中央値65mg/デシリットル、およびHbA1c中央値7.3%が含まれる。主要な有効性の尺度は、心血管死、非致死性心筋梗塞、または脳卒中の最初の発生までの時間である。仮定には、プラセボ群における年間7%の主要イベント率および1.5年間の追跡期間中央値が含まれる。患者は、少なくとも250件の主要評価項目イベントが発生するまで追跡され、アパベタロンを用いて主要評価項目の30%の減少を検出するため80%の検出力を提供した。
【0099】
実施例2:事後解析
BETonMACE臨床試験では、合計でN=336人の患者(アパベタロン治療群でN=169人、プラセボ治療群でN=167人)が、特定のスタチン療法(アトルバスタチンおよびロスバスタチン)を伴うRVX-208およびその他のガイドラインで定義された治療に加えて、DPP-4阻害剤(アログリプチン、リナグリプチン、サキサグリプチン、シタグリプチン、テネリグリプチン、およびビルダグリプチンから選択される)を投与された。無作為に抽出され、イベントの最初の発現日の前にDPP-4阻害剤治療の少なくとも一回の投与を受けた患者は、確認されたイベントの日付でMACEイベントとして打ち切られた。イベントの初回発現日以降にDPP-4阻害剤治療の少なくとも一回の投与を受けた患者は、非MACEイベントとして打ち切られ、最終接触日を打ち切り日として使用した。試験中にDPP-4阻害剤による治療を受けなかったすべての患者について、最初のイベントまでの時間は、無作為化の日付および確認されたイベントの日付、または打ち切りの対象に対する最終接触の日付を使用して計算された。
【0100】
アパベタロン群およびプラセボ群内の評価項目の分布を、有意水準アルファ=0.05の両側ログランク検定(LRT)を用いて比較した。累積発生率は、イベント率の1-KM(カプラン・マイヤー)推定値として示されている。
【0101】
狭義のMACE
図1~3はそれぞれ、狭義のMACE(すなわち、心血管死、非致死性心筋梗塞、または脳卒中として定義される複数の主要評価項目の単一の複合評価項目として)の累積発生率を、試験群および対照群の二つの患者の群間で比較するが、それらは以下のように記述される。
i.DPP-4阻害剤治療を受けている患者、アパベタロンを投与(試験)またはプラセボを投与(対照)(
図1)。
ii.DPP-4阻害剤治療を受けていない患者、アパベタロンを投与(試験)またはプラセボを投与(対照)(
図2)、および
iii.アパベタロン治療を受けている患者、DPP-4阻害剤を投与(試験)またはDPP-4阻害剤を投与しない(対照)(
図3)。
【0102】
図1では、患者がDPP-4阻害剤で治療され、アパベタロンまたはプラセボのいずれかを投与された場合、アパベタロン群において10(5.9%)およびプラセボ群において26(15.6%)の合計で36の主要評価項目があったが、これは18カ月時点でアパベタロン群において4.8%およびプラセボ群において11.8%のカプラン・マイヤー推定イベント率であることを表す。これは、18ヵ月時点で、DPP-4阻害剤のみで治療された患者は、推定される狭義のMACEイベント率を11.8%であったが、患者がアパベタロンとDPP-4阻害剤の組み合わせで治療されたとき、推定される狭義のMACEイベント率は、60%近く減少し、4.8%となることを意味する。
図1に図示するように、アパベタロンとDPP-4阻害剤の併用は、DPP-4阻害剤単独の治療と比較して、具体的には、任意の所与の時点で狭義のMACEイベントを有する患者の数を62%減少(ハザード比[HR]、0.38;95%CI、0.20~0.74;P=0.004)させることにより、狭義のMACEの複合評価項目を有意に減少させた。
【0103】
図2では、患者がDPP-4阻害剤で治療されず、アパベタロンまたはプラセボのいずれかを投与された場合、アパベタロン群において114(10.9%)、プラセボ群において114(11.0%)の合計で228の主要評価項目が存在したが、これは18カ月時点でアパベタロン群において8.0%、プラセボ群において8.3%のカプラン・マイヤー推定イベント率であることを示す。これは、18ヵ月時点で、アパベタロンのみで治療された患者は、推定される狭義のMACEイベント率が10.9%であったのに対し、アパベタロンまたはDPP-4阻害剤で治療されなかった患者は、推定される狭義のMACEイベント率が11.0%であったことを意味する。
図2に示すように、アパベタロン単剤療法は、非治療と比較して、狭義のMACEの複合評価項目を減少させなかった(ハザード比[HR]、0.99;95%CI、0.77~1.29;P=0.96)。
【0104】
図3に図示するように、アパベタロンとDPP-4阻害剤の組み合わせで治療された患者は、アパベタロン単独で治療された患者と比較して、狭義のMACEの複合評価項目に対して0.59(95%CI、0.36~0.97;P=0.04)の有意なハザード比を示した。これは、アパベタロンとDPP-4阻害剤の併用により、アパベタロン単独による治療と比較して、任意の所与の時点で狭義のMACEイベントを有する患者の数が41%減少したことを意味する。
【0105】
結論として、アパベタロン単剤療法は、任意の所与の時点で狭義のMACEイベントを有する患者の数を、非治療と比較して減少しなかった(
図2参照)。さらに、本開示の背景で確立されているように、DPP-4阻害剤が、MACEの低減に何らかの効果を有することは示されていない。したがって、単剤療法として各々は効果のないアパベタロンとDPP-4阻害剤の併用療法が、任意の所与の時点で狭義のMACEイベントを有する患者の任意の減少をもたらすことは予想外であり、ましてDPP-4阻害剤単剤療法と比較して62%、またはアパベタロン単剤療法と比較して59%という有意な減少は予想外であった。
【0106】
広義のMACE
図4~6はそれぞれ、
図1~3で上述した同じ二つの患者の群間の、広義のMACE(すなわち、心血管死、非致死性心筋梗塞、脳卒中、または心血管疾患(CVD)のための入院として定義される複数の主要評価項目の単一の複合評価項目としての)の累積発生率を比較する。
【0107】
図4では、患者がDPP-4阻害剤で治療され、アパベタロンまたはプラセボのいずれかを投与された場合、アパベタロンとDPP-4阻害剤の併用は、DPP-4阻害剤単独による治療と比較して(傾向のある統計的有意性を有して)、具体的には、任意の所定の時点で広義のMACEイベントを有する患者の数を56%減少させる(ハザード比[HR]、0.44;95%CI、0.23~0.82;P=0.01)ことにより、広義のMACEの複合評価項目を減少させることが見て取れた。
【0108】
図5では、患者がDPP-4阻害剤で治療されないが、アパベタロンまたはプラセボのいずれかを投与された場合、アパベタロン単剤療法は、非治療と比較して広義のMACEの複合評価項目を減少させなかったことが分かる(ハザード比[HR]、1.00;95%CI、0.79~1.28;P=0.99)。
【0109】
図6に示すように、アパベタロンとDPP-4阻害剤の組み合わせで治療された患者は、アパベタロン単独で治療された患者と比較して、広義のMACEの複合評価項目に対して0.61(95%CI、0.38~0.97;P=0.04)の有意なハザード比を示した。これは、アパベタロンとDPP-4阻害剤の併用により、アパベタロン単独による治療と比較して、任意の所与の時点で広義のMACEイベントを有する患者の数が39%減少したことを意味する。
【0110】
結論として、アパベタロン単剤療法は、任意の所与の時点で広義のMACEイベントを有する患者の数を、非治療と比較して減少させなかった(
図5参照)。さらに、本開示の背景で確立されているように、DPP-4阻害剤が、MACEの低減に何らかの効果を有することは示されていない。したがって、単剤療法としてそれぞれ無効であるアパベタロンとDPP-4阻害剤の併用療法が、任意の時点で広義のMACEイベントを有する患者の任意の減少をもたらすことは予想外であり、ましてDPP-4阻害剤単剤療法と比較して56%、またはアパベタロン単剤療法と比較して39%という有意な減少は予想外であった。
【0111】
非致死性心筋梗塞
図7~9はそれぞれ、
図1~3で上述したように、同じ二つの患者の群間の非致死性心筋梗塞の累積発生率を比較する。
【0112】
図7では、患者がDPP-4阻害剤で治療され、アパベタロンまたはプラセボのいずれかを投与された場合、アパベタロンとDPP-4阻害剤の併用は、DPP-4阻害剤単独の治療と比較して、特に、任意の所与の時点で非致死性心筋梗塞イベントを有する患者の数を58%減少させたことにより(ハザード比[HR]、0.42、95%CI、0.20~0.89;P=0.02)、非致死性心筋梗塞の評価項目を有意に減少させたことが見て取れた。
【0113】
図8では、患者がDPP-4阻害剤で治療されなかったが、アパベタロンまたはプラセボのいずれかを投与された場合、アパベタロン単剤療法は、非治療と比較して非致死性心筋梗塞の評価項目を減少させなかったことが見て取れた(ハザード比[HR]、0.99、95%CI、0.71~1.39;P=0.96)。
【0114】
図9に示すように、アパベタロンとDPP-4阻害剤の併用で治療された患者は、アパベタロン単独治療患者と比較して、非致死性心筋梗塞の評価項目に対するハザード比0.72(95%CI、0.38~1.06、P=0.31)を示した。これは、アパベタロンとDPP-4阻害剤の併用により、アパベタロン単独による治療と比較して、任意の所与の時点で非致死性心筋梗塞イベントを有する患者の数が28%減少したことを意味する。
【0115】
結論として、アパベタロン単剤療法は、任意の時点で非致死性心筋梗塞イベントを有する患者の数を、非治療と比較して減少させなかった(
図8参照)。さらに、本開示の背景で確立されているように、DPP-4阻害剤が、MACEの低減に何らかの効果を有することは示されていない。したがって、単剤療法としてそれぞれ無効であるアパベタロンとDPP-4阻害剤の併用療法が、任意の所与の時点で非致死性心筋梗塞イベントを有する患者の数の任意の減少をもたらすことは予想外であり、ましてDPP-4阻害剤単剤療法と比較して58%の有意な減少、またはアパベタロン単剤療法と比較して28%の減少は予想外であった。
【0116】
心血管死
図10~12はそれぞれ、
図1~3で上述したように、同じ二つの患者の群間の心血管死の累積発生率を比較する。
【0117】
図10では、患者がDPP-4阻害剤で治療され、アパベタロンまたはプラセボのいずれかを投与される場合、アパベタロンとDPP-4阻害剤の併用は、DPP-4阻害剤単独による治療と比較して、具体的には、任意の所与の時点での心血管死イベントを有する患者の数を77%減少させることによって(ハザード比[HR]、0.23;P95%CI、0.05~1.02、P=0.05)、心血管死の評価項目を有意に減少したことが見て取れた。
【0118】
図11では、患者がDPP-4阻害剤で治療されないが、アパベタロンまたはプラセボのいずれかを投与された場合、アパベタロン単剤療法は、非治療と比較して心血管死の評価項目を減少させなかったことが分かる(ハザード比[HR]、0.97;95%CI、0.64~1.47;P=0.89)。
【0119】
図12に図示するように、アパベタロンとDPP-4阻害剤の併用で治療された患者は、アパベタロン単独による治療を受けた患者と比較して、心血管死の評価項目に対して0.37(95%CI、0.16~0.85;P=0.02)の有意なハザード比を示した。これは、アパベタロンとDPP-4阻害剤の併用により、アパベタロン単独による治療と比較して、任意の所与の時点で心血管死イベントを有する患者の数を63%減少させることを意味する。
【0120】
結論として、アパベタロン単剤療法は、任意の時点で心血管死イベントを有する患者の数を、非治療と比較して減少しない(
図11参照)。さらに、本開示の背景で確立されているように、DPP-4阻害剤が、MACEの低減に何らかの効果を有することは示されていない。したがって、単剤療法としてそれぞれ無効であるアパベタロンとDPP-4阻害剤の併用療法が、任意の時点で心血管死イベントを有する患者の任意の減少をもたらすことは予想外であり、ましてDPP-4阻害剤単剤療法と比較して77%の有意な減少、アパベタロン単剤療法と比較して63%という有意な減少は予想外であった。
【0121】
うっ血性心不全のための入院
図13~15はそれぞれ、
図1~3で上述したように、同じ二つの患者の群間のうっ血性心不全のための入院の累積発生率を比較する。
【0122】
図13では、患者はDPP-4阻害剤で治療され、アパベタロンまたはプラセボのいずれかを投与されたが、アパベタロンとDPP-4阻害剤の併用は、DPP-4阻害剤単独による治療と比較して、特に、任意の所与の時点でうっ血性心不全イベントのために入院している患者の数を80%(ハザード比[HR]、0.20;95%CI、0.05-0.75;P=0.02)減少させることによって、うっ血性心不全の入院の評価項目を有意に減少させたことが見て取れる。
【0123】
図14では、患者がDPP-4阻害剤で治療されなかったが、アパベタロンまたはプラセボのいずれかを投与された場合、アパベタロン単剤療法は、特に、任意の所与の時点でうっ血性心不全イベントのために入院している患者の数を27%(ハザード比[HR]、0.73;95%CI、0.46~1.19、P=0.20)減少させることによって、非治療と比較して、うっ血性心不全の入院の評価項目を減少させたことが見て取れる。
【0124】
図15に示すように、アパベタロンとDPP-4阻害剤の併用で治療された患者は、アパベタロン単独で治療された患者と比較して、うっ血性心不全のための入院の評価項目に対する0.41(95%CI、0.14~1.19;P=0.10)のハザード比を示した。これは、アパベタロンとDPP-4阻害剤の併用により、アパベタロン単独による治療と比較して、任意の時点でうっ血性心不全イベントのために入院している患者の数が59%減少したことを意味する。
【0125】
結論として、アパベタロン単剤療法は、プラセボのみの投与を受けた患者と比較して、任意の所与の時点でうっ血性心不全イベントのために入院している患者の数を27%減少させることができた(
図14参照)。さらに、本開示の背景で確立されているように、DPP-4阻害剤が、MACEの低減に何らかの効果を有することは示されていない。したがって、アパベタロンとDPP-4阻害剤の併用療法が、DPP-4阻害剤が単剤療法として無効である時、DPP-4阻害剤単剤療法と比較して、任意の所定の時点でうっ血性心不全のために入院している患者の数に80%の有意な減少をもたらすこと、またはアパベタロン単剤療法と比較して59%の減少をもたらすことは予想外であった。
【国際調査報告】