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特表2023-509188高引張強度の熱可塑性ポリウレタン、配合成分及び製造方法
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  • 特表-高引張強度の熱可塑性ポリウレタン、配合成分及び製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-07
(54)【発明の名称】高引張強度の熱可塑性ポリウレタン、配合成分及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/10 20060101AFI20230228BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20230228BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
C08G18/10
C08G18/48
C08G18/42
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022541988
(86)(22)【出願日】2020-01-07
(85)【翻訳文提出日】2022-08-26
(86)【国際出願番号】 CN2020070682
(87)【国際公開番号】W WO2021138803
(87)【国際公開日】2021-07-15
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522271937
【氏名又は名称】詮達化学股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANDA CHEMICAL CORP.
【住所又は居所原語表記】7F, No. 288, Ming Sheng W. Rd. Taipei, Taiwan 103
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】呉建欣
(72)【発明者】
【氏名】黄英治
(72)【発明者】
【氏名】戴憲弘
(72)【発明者】
【氏名】鄭如忠
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA15
4J034DA01
4J034DA03
4J034DB04
4J034DD11
4J034DF01
4J034DF02
4J034DG01
4J034DG23
4J034HA01
4J034HA07
4J034HB17
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA44
4J034JA46
(57)【要約】
本発明は、高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタン、配合成分及び製造方法に関する。前記高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンは、ポリカ-ボネ-ト誘導体に由来するものであり、且つ前記高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンの引張強度は2.5 MPaよりも大きい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高引張強度の熱可塑性ポリウレタンを製造するための配合成分であって、
前記配合成分は、第1成分と第2成分とを含み、
前記第1成分は、ポリウレタンオリゴマ-を含み、前記第2成分は、鎖延長剤を含み、前記ポリウレタンオリゴマ-は、ポリカ-ボネ-ト誘導体又はビスフェノ-ル化合物と、ジイソシアネ-トとを反応して得られ、前記ポリカ-ボネ-ト誘導体の構造式は、式(1)に示され、

は、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン又はポリエ-テルジアミンのアミン化合物に由来し、前記ジイソシアネ-トは、芳香族ジイソシアネ-ト及び脂肪族ジイソシアネ-トからなる群から選択される1つである場合、前記鎖延長剤は、脂肪族ジオ-ル、ポリエ-テルジオ-ル、ポリエステルジオ-ル及びビスフェノ-ル化合物からなる群から選択される1つであり、前記鎖延長剤と前記ポリウレタンオリゴマ-の重量比は、1~3であり、mは、1~5の整数であり、
はシロキサン基を含有するアミン化合物に由来し、前記ジイソシアネ-トは脂肪族ジイソシアネ-トである場合、前記鎖延長剤は、脂肪族ジオ-ル及びビスフェノ-ル化合物からなる群から選択される1つであり、前記鎖延長剤と前記ポリウレタンオリゴマ-の重量比は、0.2~0.8であり、mは、1~5の整数である、
ことを特徴とする高引張強度の熱可塑性ポリウレタンを製造するための配合成分。
【請求項2】
前記脂肪族ジアミンは、2~40個の炭素原子を有する直鎖状ジアミン又は2~40個の炭素原子を有する分枝鎖型ジアミンを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の高引張強度の熱可塑性ポリウレタンを製造するための配合成分。
【請求項3】
前記芳香族ジイソシアネ-トは、ジフェニルメタンジイソシアネ-ト(MDI)、ジフェニルジフルオロメタンジイソシアネ-ト、p-フェニレンジイソシアネ-ト、o-フェニレンジイソシアネ-ト、m-フェニレンジイソシアネ-ト、2,2'-ビフェニルジイソシアネ-ト、3,3'-ビフェニルジイソシアネ-ト、4,4'-ビフェニルジイソシアネ-ト、ナフタレンジイソシアネ-ト又はそれらの組合せを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の高引張強度の熱可塑性ポリウレタンを製造するための配合成分。
【請求項4】
前記脂肪族ジイソシアネ-トは、ヘキサメチレンジイソシアネ-ト、イソホロンジイソシアネ-ト(IPDI)、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ-ト又はそれらの組合せを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の高引張強度の熱可塑性ポリウレタンを製造するための配合成分。
【請求項5】
前記脂肪族ジオ-ルは、2~40個の炭素原子を有する直鎖状ジオ-ル又は2~40個の炭素原子を有する分岐状ジオ-ルを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の高引張強度の熱可塑性ポリウレタンを製造するための配合成分。
【請求項6】
前記ポリエ-テルジオ-ルは、ポリテトラメチレンエ-テルグリコ-ル、ポリテトラメチレンエ-テルグリコ-ル-エチレンオキシド、ポリテトラメチレンエ-テルグリコ-ル-プロピレンオキシド及びそれらの組合せからなる群から選択される1つである、ことを特徴とする請求項1に記載の高引張強度の熱可塑性ポリウレタンを製造するための配合成分。
【請求項7】
前記ポリエステルジオ-ルは、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール又はそれらの組合せを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の高引張強度の熱可塑性ポリウレタンを製造するための配合成分。
【請求項8】
前記ポリエ-テルジアミンの重量平均分子量は、100~5,000 Daである、ことを特徴とする請求項1に記載の高引張強度の熱可塑性ポリウレタンを製造するための配合成分。
【請求項9】
前記シロキサン基を含有するアミン化合物の分子量は、150~10,000 Daである、ことを特徴とする請求項1に記載の高引張強度の熱可塑性ポリウレタンを製造するための配合成分。
【請求項10】
前記ポリウレタンオリゴマ-は、水素核磁気共鳴スペクトルにおいて、1.35 ppm~1.65 ppm付近の化学シフトで特徴的なピークを有するか、又は3.65 ppm~4.15 ppmの化学シフトで特徴的なピークを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の高引張強度の熱可塑性ポリウレタンを製造するための配合成分。
【請求項11】
前記ポリウレタンオリゴマ-の重量平均分子量は、4,000~40,000 Daである、ことを特徴とする請求項1に記載の高引張強度の熱可塑性ポリウレタンを製造するための配合成分。
【請求項12】
引張強度が2.5 MPaよりも大きい熱可塑性ポリウレタンの製造に適用される、ことを特徴とする請求項1に記載の高引張強度の熱可塑性ポリウレタンを製造するための配合成分。
【請求項13】
熱可塑性ポリウレタンであって、高引張強度を有し、前記熱可塑性ポリウレタンは、ポリウレタンオリゴマ-とジオ-ルとを反応して得られ、前記ポリウレタンオリゴマ-の構造式は、式(2)で示され、
mは0であり、xは5~100である場合、前記ポリウレタンオリゴマ-は、ビスフェノ-ル化合物とジイソシアネ-トとで製造され、
は、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン又はポリエ-テルジアミンのアミン化合物に由来し、Rは、芳香族ジイソシアネ-ト又は脂肪族ジイソシアネ-トに由来する場合、前記ジオ-ルは、脂肪族ジオ-ル、ポリエ-テルジオ-ル、ポリエステルジオ-ル又はビスフェノ-ル化合物からなる群から選択される1つであり、前記ジオ-ルと前記ポリウレタンオリゴマ-との重量比は、1~3であり、mは、1~5の整数であり、xは、5~100であり、
は、シロキサン基を含有するアミン化合物に由来し、Rは、脂肪族ジイソシアネ-トに由来する場合、前記ジオ-ルは、脂肪族ジオ-ル及びビスフェノ-ル化合物からなる群から選択される1つであり、前記ジオ-ルと前記ポリウレタンオリゴマ-の重量比は、0.2~0.8であり、mは、1~5の整数であり、xは、5~100である、ことを特徴とする熱可塑性ポリウレタン。
【請求項14】
前記高引張強度の熱可塑性ポリウレタンの引張強度が2.5 MPaよりも大きい、ことを特徴とする請求項13に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項15】
前記高引張強度の熱可塑性ポリウレタンの重量平均分子量は、10,000~400,000 Daである、ことを特徴とする請求項13に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項16】
前記高引張強度の熱可塑性ポリウレタンは、水素核磁気共鳴スペクトルにおいて、1.35 ppm~1.65 ppm付近の化学シフトで特徴的なピークを有するか、又は3.65 ppm~4.15 ppmの化学シフトの範囲で特徴的なピークを有する、ことを特徴とする請求項13に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項17】
前記ポリウレタンオリゴマ-の重量平均分子量は、4,000~40,000 Daである、ことを特徴とする請求項13に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項18】
前記脂肪族ジアミンは、2~40個の炭素原子を有する直鎖状ジアミン又は2~40個の炭素原子を有する分枝鎖型ジアミンを含む、ことを特徴とする請求項13に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項19】
前記芳香族ジイソシアネ-トは、ジフェニルメタンジイソシアネ-ト(MDI)、ジフェニルジフルオロメタンジイソシアネ-ト、p-フェニレンジイソシアネ-ト、o-フェニレンジイソシアネ-ト、m-フェニレンジイソシアネ-ト、2,2'-ビフェニルジイソシアネ-ト、3,3'-ビフェニルジイソシアネ-ト、4,4'-ビフェニルジイソシアネ-ト、ナフタレンジイソシアネ-ト又はそれらの組合せを含む、ことを特徴とする請求項13に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項20】
前記脂肪族ジイソシアネ-トは、ヘキサメチレンジイソシアネ-ト、イソホロンジイソシアネ-ト(IPDI)、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ-ト又はそれらの組合せを含む、ことを特徴とする請求項13に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項21】
前記脂肪族ジオ-ルは、2~40個の炭素原子を有する直鎖状ジオ-ル又は2~40個の炭素原子を有する分岐状ジオ-ルを含む、ことを特徴とする請求項13に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項22】
前記ポリエ-テルジオ-ルは、ポリテトラメチレンエ-テルグリコ-ル、ポリテトラメチレンエ-テルグリコ-ル-エチレンオキシド、ポリテトラメチレンエ-テルグリコ-ル-プロピレンオキシド及びそれらの組合せからなる群から選択される1つである、ことを特徴とする請求項13に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項23】
前記ポリエステルジオ-ルは、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール又はそれらの組合せを含む、ことを特徴とする請求項13に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項24】
前記ポリエ-テルジアミンの重量平均分子量は、100~5,000 Daである、ことを特徴とする請求項13に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項25】
前記シロキサン基を含有するアミン化合物の分子量は、150~10,000 Daである、ことを特徴とする請求項13に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項26】
請求項1に記載の配合成分を用いて鎖延長反応を反応させ、高引張強度の熱可塑性ポリウレタンを製造し、前記高引張強度の熱可塑性ポリウレタンの引張強度が2.5 MPaよりも大きい、ステップを含む、ことを特徴とする高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【請求項27】
前記鎖延長反応の温度は、60 ~100℃である、ことを特徴とする請求項26に記載の製造方法。
【請求項28】
前記高引張強度の熱可塑性ポリウレタンは、水素核磁気共鳴スペクトルにおいて、1.35 ppm~1.65 ppmの範囲の化学シフトで特徴的なピークを有するか、又は3.65 ppm~ 4.15 ppm範囲の化学シフトで特徴的なピークを有する、ことを特徴とする請求項26に記載の製造方法。
【請求項29】
前記高引張強度の熱可塑性ポリウレタンの重量平均分子量は、10,000~400,000 Daである、ことを特徴とする請求項26に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高引張強度の熱可塑性ポリウレタン、配合成分及び製造方法に関する。特に、前記高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンは、ポリカ-ボネ-ト誘導体に由来し、且つ高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンの引張強度は、2.5 MPaよりも大きい。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性高分子は、リモデリングの特性があるため、熱硬化性高分子よりも環境に優しく、また材料に様々な応用性や加工性を持たせることから、広い分野で使用されている。
【0003】
しかしながら、ポリウレタンなどの熱可塑性高分子の線状鎖構造を維持するためには、材料特性を犠牲にする必要がある。化学的又は物理的混合及び変性したポリウレタンは、純度及び構造規則性が低いため、線形ポリウレタンの欠点をさらに悪化させる場合がある。通常、ポリウレタンが化学変性すると、引張長さは長くすることができるが、化学変性後のポリウレタンの引張強度は高くとしても約1.5 MPaしかならず、このようなパリマーは柔らかく、弱いポリマー材料に分類され、機械的要件を満たすことができない。これによって、このようなポリマーは、高強度が要求される技術分野に適用できない。
【0004】
以上のように、関連業界の要求を満たすために、高引張強度を有する熱可塑性ポリマー及び配合成分をどのように設計するかは、解決すべき問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の本発明の背景に鑑みて、産業界の要求を満たすために、本発明の第1の目的は、高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンを得ることを達成するために、特定の配合成分及び重量比によって、高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンの製造に使用される配合成分を提供することである。
【0006】
具体的には、上述した高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンの製造に用いられる配合成分は、第1成分と第2成分とを含み、前記第1成分は、ポリウレタンオリゴマ-を含み、前記第2成分は、鎖延長剤を含み、前記ポリウレタンオリゴマ-は、ポリカ-ボネ-ト誘導体又はビスフェノ-ル化合物と、ジイソシアネ-トとを反応して得られる。
【0007】
前記ポリカ-ボネ-ト誘導体の構造式は、式(1)に示される。

ある実施例では、Rは、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン又はポリエ-テルジアミンのアミン化合物に由来し、且つ前記ジイソシアネ-トは、芳香族ジイソシアネ-ト及び脂肪族ジイソシアネ-トからなる群から選択される1つである場合、前記鎖延長剤は、脂肪族ジオ-ル、ポリエ-テルジオ-ル、ポリエステルジオ-ル及びビスフェノ-ル化合物からなる群から選択される1つであり、前記鎖延長剤と前記ポリウレタンオリゴマ-の重量比は、1~3であり、mは、1~5の整数である。
【0008】
具体的に、上述した実施形態のアミン化合物及びジイソシアネ-トを反応して生成されたポリカ-ボネ-ト誘導体は、シロキサン(siloxane)官能基又はポリシロキサン(polysiloxane)セグメントを有しないポリカ-ボネ-ト誘導体である。
【0009】
別の実施例では、Rはシロキサン基を含有するアミン化合物に由来し、前記ジイソシアネ-トは脂肪族ジイソシアネ-トである場合、前記鎖延長剤は、脂肪族ジオ-ル及びビスフェノ-ル化合物からなる群から選択される1つであり、前記鎖延長剤と前記ポリウレタンオリゴマ-の重量比は、0.2~0.8であり、mは、1~5の整数である。
【0010】
具体的に、上述した別の実施形態のシロキサン基を含有するアミン化合物及びジイソシアネ-トを反応して生成されたポリカ-ボネ-ト誘導体は、シロキサン(siloxane)官能基又はポリシロキサン(polysiloxane)セグメントを有するポリカ-ボネ-ト誘導体である。
【0011】
前記ポリウレタンオリゴマ-の製造過程において、不活性溶媒又は反応助剤を使用することができる。これによって、前記ポリカ-ボネ-ト誘導体とジイソシアネ-トとの相溶性及び反応速度を向上させることができる。
前記不活性溶媒は、非プロトン性溶媒、又は非プロトン性溶媒及びプロトン性溶媒の混合溶媒を含む。前記非プロトン性溶媒は、テトラヒドロフラン、アニソール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルフェン又はそれらの組合せを含む。
【0012】
前記反応助剤は、オクタン酸第一スズ(stannous octoate)又はジブチルスズジラウレート(dibutyltin dilaurate)を含む。
【0013】
本発明の第2の目的は、熱可塑性ポリウレタンを提供することである。前記熱可塑性ポリウレタンは、高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンであり、ポリウレタンオリゴマ-とジオ-ルとを反応して得られる。前記ポリウレタンオリゴマ-の構造式は、式(2)で示されており、第1の目的で得られた前記ポリカ-ボネ-ト誘導体又はビスフェノ-ル化合物とジイソシアネ-トとで製造される。


ある実施例では、mは0であり、xは5~100である場合、前記ポリウレタンオリゴマ-がビスフェノ-ル化合物とジイソシアネ-トとで製造される。好ましくは、前記ビスフェノ-ル化合物は、ビスフェノールAを含む。
【0014】
ある実施例では、Rは、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン又はポリエ-テルジアミンのアミン化合物であり、且つRは、芳香族ジイソシアネ-ト又は脂肪族ジイソシアネ-トに由来する場合、前記ジオ-ルは、脂肪族ジオ-ル、ポリエ-テルジオ-ル、ポリエステルジオ-ル及びビスフェノ-ル化合物からなる群から選択される1つであり、前記ジオ-ルと前記ポリウレタンオリゴマ-の重量比は、1~3であり、mは、1~5の整数であり、xは、5~100である。
【0015】
別の実施例では、Rは、シロキサン基を含有するアミン化合物に由来し、且つRは、脂肪族ジイソシアネ-トに由来する場合、前記ジオ-ルは、脂肪族ジオ-ル及びビスフェノ-ル化合物からなる群から選択される1つであり、前記ジオ-ルと前記ポリウレタンオリゴマ-との重量比は、0.2~0.8であり、mは、1~5の整数であり、xは、5~100である。
【0016】
上述したように、前記アミン化合物又はシロキサン基を含有するアミン化合物で合成されたポリカ-ボネ-ト誘導体を、それぞれ、特定の種類のジイソシアネ-トと反応させて、ケイ素を含有しない又はシロキサン基を含有するポリウレタンオリゴマ-を得る。前記ケイ素を含有しない又はシロキサン基を含有するポリウレタンオリゴマ-を、特定の種類のジオ-ルと鎖延長反応(chain extension)させ、前記ジオ-ルと、前記ケイ素を含有しない又はシロキサン基を含有するポリウレタンオリゴマ-との重量比はそれぞれ1~3及び0.2~0.8である。これによって、上述した高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンを得ることができる。
【0017】
具体的には、前記高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンの引張強度は、2.5 MPaよりも大きい。好ましくは、前記高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンの引張強度は、5.0 MPaよりも大きい。
【0018】
具体的には、前記高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンの重量平均分子量は、10,000~400,000 Daである。
【0019】
具体的には、前記高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンは、水素核磁気共鳴スペクトルにおいて、1.35 ppm~1.65 ppm付近の化学シフトで特徴的なピークを有するか、3.65 ppm~ 4.15 ppmの化学シフトで特徴的なピークを有する。前記高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンは、7.50 ppm~8.00 ppmの化学シフトで、カルバメート(carbamate)のアミノ(-C=O)NH-)の特徴的なピークを有する。
【0020】
本発明の第3の目的は、高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンの製造方法を提供することである。前記方法は、本発明の第1の目的で得られた配合成分を鎖延長反応させ、高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンを得るステップであって、前記高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンの引張強度が2.5 MPaよりも大きいステップを含む。前記製造方法は、廃ポリカーボネートをポリカ-ボネ-ト誘導体の原料として使用することができるので、本発明の第3目的によって提供される高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンの製造方法では、ポリカーボネート廃棄物の処理問題を解決することができる。従来の廃棄ポリマー焼却処理法と比較して、前記方法では、二酸化炭素を新規な高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンの構造に固定することができ、その製造過程では、二酸化炭素を放出せず、二酸化炭素の炭素循環を延長することができる。したがって、本発明の第3の目的によって提供される高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンの製造方法は、環境に優しく且つアトムエコノミーの高い熱可塑性ポリウレタン製造方法である。
具体的には、前記鎖延長反応の温度は、60~100℃である。
【0021】
以上のように、本発明によって提供される高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタン、配合成分及び製造方法は、少なくとも以下の革新的な特徴および利点を有する。
【0022】
(1)本発明によって提供される高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンを製造するための配合成分は、2液型の配合成分であり、ポリカ-ボネ-ト誘導体に由来する新規ポリウレタンオリゴマ-(第1成分)と鎖延長剤(第2成分)とを含み、特定のポリウレタンオリゴマ-と鎖延長剤の種類及び使用重量比の範囲に制御することで、既存の配合成分で製造できない高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンを製造することができる。
【0023】
(2)本発明によって提供される高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンは、引張強度が2.5 MPaよりも大きく、且つ特定の組成では、15.0 MPa引張強度を超え、300%の引張長さを超えることができるので、加工を行う前にも優れた熱可塑性ポリウレタン弾性体の性質を有する。
【0024】
(3)本発明によって提供される高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンの製造方法は、廃ポリカーボネートをスタート原料として使用することができる。したがって、上述した高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンの製造方法では、ポリカーボネート廃棄物の問題を解決することができる。上述した方法では、二酸化炭素を新規な高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンの構造に固定することができるので、製造過程においては二酸化炭素を放出せず、二酸化炭素の炭素循環を延長し、環境に優しく且つアトムエコノミーの高い熱可塑性ポリウレタン製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態のポリウレタンオリゴマ-の水素核磁気共鳴スペクトルである。
図2】第2実施形態の熱可塑性ポリウレタンの水素核磁気共鳴スペクトルである。
図3】熱可塑性ポリウレタンEM-G30の示差走査熱量(DSC)曲線である。
図4】熱可塑性ポリウレタンSI-O70の示差走査熱量(DSC)曲線である。
図5】熱可塑性ポリウレタンEM-E45の示差走査熱量(DSC)曲線である。
図6】熱可塑性ポリウレタンEM-P45の示差走査熱量(DSC)曲線である。
図7】熱可塑性ポリウレタンEM-G30の引張強度及び延伸率の関係を示す図である。
図8】熱可塑性ポリウレタンSI-O70の引張強度及び延伸率の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に関する前述した内容及びその他の技術的内容、特徴及び効果は、図面及び好ましい実施形態を参照しながら、詳細に説明する。本発明をより詳しく理解するために、以下の記載では、ステップ及び組成について詳細に説明する。なお、本発明の実施は、当業者によくしれれている技術的な詳細に限定されない。また、実施形態及び実施例では、本発明を不必要に限定することを回避するために、周知の組成や製造ステップなどは詳細に説明されていない。本発明の好ましい実施例について、以下の内容において詳細に説明するが、これらの詳細な説明に加えて、本発明は、他の実施形態でも実施することができ、且つ本発明の範囲を限定されず、特許請求の範囲に規定されていることを留意されたい。
【0027】
本発明の第1実施形態によれば、本発明は、高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンの配合成分を開示しており、前記配合成分は、第1成分及び第2成分を含有し、前記第1成分は、ポリウレタンオリゴマ-を含み、前記第2成分は、鎖延長剤を含み、前記ポリウレタンオリゴマ-は、ポリカ-ボネ-ト誘導体又はビスフェノ-ル化合物とジイソシアネ-トとを反応して合成され、前記ポリカ-ボネ-ト誘導体の構造は、構造式(1)に示されている。


ある実施例では、Rは、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン又はポリエ-テルジアミンなどのアミン化合物に由来するものであり、前記ジイソシアネ-トは、芳香族ジイソシアネ-ト及び脂肪族ジイソシアネ-ト又はその組合せである場合、前記鎖延長剤は、脂肪族ジオ-ル、ポリエ-テルジオ-ル、ポリエステルジオ-ル及びビスフェノ-ル化合物又はその組合せであり、前記鎖延長剤と前記ポリウレタンオリゴマ-との重量比は1~3であり、mは、1~5の整数である。
【0028】
別の実施例では、Rは、シロキサン基を含有するアミン化合物であり、前記ジイソシアネ-トは、脂肪族ジイソシアネ-トである場合、前記鎖延長剤は、脂肪族ジオ-ル及びビスフェノ-ル化合物又はその組合せであり、前記鎖延長剤と前記ポリウレタンオリゴマ-の重量比は、0.2~0.8であり、mは、1~5の整数である。
【0029】
ある実施例では、前記脂肪族ジアミンは、2~40の炭素原子を有する直鎖状ジアミン、又は2~40の炭素原子を有する分枝鎖型ジアミンを含む。上記の脂肪族ジアミンのジアミン基の相対位置は、対称的または非対称的である。好ましくは、2~40の炭素原子を有する直鎖状ジアミンは、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン又は1,6-ヘキサンジアミンである。
【0030】
ある実施例では、前記ポリエ-テルジアミンの重量平均分子量は、100~5,000 Daである。好ましくは、前記ポリエ-テルジアミンは、ジェファミン(Jeffamine)シリ-ズのポリエ-テルジアミンである。
【0031】
ある実施例では、前記芳香族ジイソシアネ-トは、ジフェニルメタンジイソシアネ-ト(MDI)、ジフェニルジフルオロメタンジイソシアネ-ト、p-フェニレンジイソシアネ-ト、o-フェニレンジイソシアネ-ト、m-フェニレンジイソシアネ-ト、2,2'-ビフェニルジイソシアネ-ト、3,3'-ビフェニルジイソシアネ-ト、4,4'-ビフェニルジイソシアネ-ト、ナフタレンジイソシアネ-ト又はそれらの組合せを含む。
【0032】
ある実施例では、脂肪族ジイソシアネ-トは、ヘキサメチレンジイソシアネ-ト、イソホロンジイソシアネ-ト、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ-ト又はそれらの組合せを含む。
【0033】
ある実施例では、脂肪族ジオ-ルは、2~40個の炭素原子を有する直鎖ジオ-ル又は2~40個の炭素原子を有する分岐状ジオ-ルである。前記脂肪族ジオ-ルのジオ-ル基の相対位置は、対称であってもよく、非対称であってもよい。好ましくは、2~40個の炭素原子を有する直鎖ジオ-ルは、1,4-ブタンジオ-ル、1,5-ペンタンジオ-ル又は1,6-ヘキサンジオ-ルである。
【0034】
ある実施例では、ポリエ-テルジオ-ルは、ポリテトラメチレンエ-テルグリコ-ル(polytetramethylene ether glycol, PTMEG)、ポリテトラメチレンエ-テルグリコ-ル-エチレンオキシド(polytetramethylene ether glycol-ethylene glycol copolymer)、ポリテトラメチレンエ-テルグリコ-ル-プロピレンオキシド(polytetramethylene ether glycol-propylene glycol copolymer)又はそれらの組合せである。
【0035】
ある実施例では、ポリエステルジオ-ルは、ポリエステルジオール(polyester diol)、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール(polycaprolactone diol)又はそれらの組合せを含む。
【0036】
具体的には、ポリエ-テルジアミンの重量平均分子量は、100~5,000 Daである。
【0037】
ある実施例では、シロキサン基を含有するアミン化合物の分子量は、150~10,000 Daである。好ましくは、前記シロキサン基の構造式は、式(3)で示されている。


ある実施例では、ポリウレタンオリゴマ-は、水素核磁気共鳴スペクトルにおいて1.35 ppm ~1.65 ppm付近の化学シフトで特徴的なピーク、又は3.65 ppm~4.15 ppmの化学シフトで特徴的なピークを有する。具体的には、当該ポリウレタンオリゴマ-の水素核磁気共鳴スペクトルは、図1に示されており、2.5 ppm~3.0ppm及び8.0ppm付近のピークはそれぞれDMSO及びDMF溶媒の特徴的なピールである。
【0038】
ある実施例では、前記ビスフェノ-ル化合物は、ビスフェノールAを含む。
【0039】
ある実施例では、前記ポリウレタンオリゴマ-の重量平均分子量は、4,000~40,000 Daである。
【0040】
ある実施例では、高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンを製造するための配合成分は、引張強度が約2.5 MPaよりも大きい熱可塑性ポリウレタン。好ましくは、約5.0 MPaを超える引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンである。
【0041】
本発明の第2実施形態は、熱可塑性ポリウレタンを提供し、前記熱可塑性ポリウレタンが高引張強度の熱可塑性ポリウレタンであり、ポリウレタンオリゴマ-とジオ-ルとを反応させて製造され、前記ポリウレタンオリゴマ-の化学式は、式(2)である。


ある実施例では、mが0であり、xが5~100であることは、前記ポリウレタンオリゴマ-がビスフェノ-ル化合物とジイソシアネ-トとを反応させることで製造されている。好ましくは、ビスフェノ-ル化合物は、ビスフェノールAを含む。
【0042】
ある実施例では、Rは、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン又はポリエ-テルジアミンのアミン化合物に由来するものであり、Rは、芳香族ジイソシアネ-ト又は脂肪族ジイソシアネ-トのイソシアネートに由来するものである場合、前記ジオ-ルは、脂肪族ジオ-ル、ポリエ-テルジオ-ル、ポリエステルジオ-ル及びビスフェノ-ル化合物からなる群から選択される1つであり、且つジオ-ルとポリウレタンオリゴマ-との重量比は、1~3であり、mは、1~5の整数であり、xは、5~100である。
【0043】
別の実施例では、Rは、シロキサン基を含有するアミン化合物に由来するものであり、且つRが脂肪族ジイソシアネ-トに由来する場合、前記ジオ-ルは、脂肪族ジオ-ル及びビスフェノ-ル化合物からなる群から選択される1つであり、前記ジオ-ルと前記ポリウレタンオリゴマ-との重量比は、0.2~0.8であり、mは、1~5の整数であり、xは、5~100である。
【0044】
ある実施例では、前記高引張強度の熱可塑性ポリウレタンの引張強度は、約2.5 MPaよりも大きい。好ましくは、前記高引張強度の熱可塑性ポリウレタンの引張強度は、約5.0 MPaよりも大きく、且つ引張長比は300%よりも大きい。
【0045】
ある実施例では、前記高引張強度の熱可塑性ポリウレタンの重量平均分子量は、10,000~400,000 Daである。
【0046】
ある実施例では、前記高引張強度の熱可塑性ポリウレタンは、水素核磁気共鳴スペクトルにおいて、1.35 ppm ~1.65 ppm付近の化学シフトで特徴的なピークを有するか、また3.65 ppm~ 4.15 ppmの化学シフト範囲で特徴的なピークを有する。具体的には、前記高引張強度の熱可塑性ポリウレタンの水素核磁気共鳴スペクトルは、図2に示されており、2.5~3.0ppm付近及び8.0ppmの化学シフトはそれぞれDMSO和DMF溶媒の特徴的なピークである。
【0047】
ある実施例では、前記ポリウレタンオリゴマ-の重量平均分子量は、4,000~40,000 Daである。
【0048】
ある実施例では、前記脂肪族ジアミンは、2~40個の炭素原子を有する直鎖状ジアミン又は2~40個の炭素原子を有する分枝鎖型ジアミンを含む。前記脂肪族ジアミンのジアミン基の相対位置は、対称であってもよく、非対称であってもよい。好ましくは、前記2~40個の炭素原子を有する直鎖状ジアミンは、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン又は1,6-ヘキサンジアミンである。
【0049】
ある実施例では、前記ポリエ-テルジアミンの重量平均分子量は、100~5,000 Daである。好ましくは、前記ポリエ-テルジアミンは、Jeffamineシリーズのポリエ-テルジアミンである。
【0050】
ある実施例では、前記芳香族ジイソシアネ-トは、ジフェニルメタンジイソシアネ-ト(MDI)、ジフェニルジフルオロメタンジイソシアネ-ト、p-フェニレンジイソシアネ-ト、o-フェニレンジイソシアネ-ト、m-フェニレンジイソシアネ-ト、2,2'-ビフェニルジイソシアネ-ト、3,3'-ビフェニルジイソシアネ-ト、4,4'-ビフェニルジイソシアネ-ト、ナフタレンジイソシアネ-ト又はそれらの組合せを含む。
【0051】
具体的には、前記脂肪族ジイソシアネ-トは、ヘキサメチレンジイソシアネ-ト、イソホロンジイソシアネ-ト、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ-ト又はそれらの組合せを含む。
【0052】
ある実施例では、前記脂肪族ジオ-ルは、2~40個の炭素原子を有する直鎖ジオ-ル又は2~40個の炭素原子を有する分岐状ジオ-ルである。前記脂肪族ジオ-ルのジオール基の相対位置は、対称又は非対称である。好ましくは、2~40個の炭素原子を有するジオールは、1,4-ブタンジオ-ル、1,5-ペンタンジオ-ル、又は1,6-ヘキサンジオ-ルである。
【0053】
ある実施例では、前記ポリエ-テルジオ-ルは、ポリテトラメチレンエ-テルグリコ-ル(polytetramethylene ether glycol, PTMEG)、ポリテトラメチレンエ-テルグリコ-ル-エチレンオキシド(polytetramethylene ether glycol-ethylene glycol copolymer)、ポリテトラメチレンエ-テルグリコ-ル-プロピレンオキシド(polytetramethylene ether glycol-propylene glycol copolymer)及びそれらの組合せからなる群から選択される1つである。
【0054】
ある実施例では、前記ポリエステルジオ-ルは、ポリエステルジオール(polyester diol)、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール(polycaprolactone diol)又はそれらの組合せを含む。
【0055】
具体的には、前記ポリエ-テルジアミンの重量平均分子量は、100~5,000 Daである。
【0056】
ある実施例では、前記シロキサン基を含有するアミン化合物の分子量は、150~10,000 Daである。好ましくは、前記シロキサン基の構造式は、式(3)で示される。


本発明の第3実施形態は、高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンの製造方法を提供し、以下のステップを含む。第1実施形態に記載の配合成分を使用して鎖延長反応を反応させ、高引張強度の熱可塑性ポリウレタンを製造する。前記高引張強度の熱可塑性ポリウレタンの引張強度は、2.5 MPaよりも大きい。
【0057】
ある実施例では、前記鎖延長反応の温度は、60~100℃である。
【0058】
ある実施例では、前記高引張強度の熱可塑性ポリウレタンは、水素核磁気共鳴スペクトルにおいて、1.35 ppm~1.65 ppm付近の化学シフト範囲で特徴的なピークを有するか、又は3.65 ppm~4.15 ppmの化学シフト範囲で特徴的なピークを有する。
【0059】
ある実施例では、前記高引張強度の熱可塑性ポリウレタンの重量平均分子量は、10,000~400,000 Daである。
【0060】
ある体表的な実施例では、ジフェニルメタンジイソシアネ-ト(MDI)とポリカ-ボネ-ト誘導体とで製造されたポリウレタンオリゴマ-と、ポリエ-テルジオ-ル(PTMEG2000)又はポリカプロラクトンジオール(PCL2000)とを合成して本発明の高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンを得る。その構造式は、式(4)で示され、Rは、1,6-ヘキサンジアミンに由来し、Rは、ジフェニルメタンジイソシアネ-ト(MDI)に由来し、Rは、ポリエ-テルジオ-ル(PTMEG2000)又はポリカプロラクトンジオール(PCL2000)に由来する。
【0061】
式(4)におて、mは、1~5の整数であり、xは、5~100であり、yは、1~40である。


以下の例及び実験例は、上述した発明の内容及び実施例に記載された内容によって実験を行ったものであり、本発明として、以下のように、詳細に説明する。
【0062】
(例一):本発明のポリカ-ボネ-ト誘導体の共通の製造ステップ
ポリカーボネートと、ジアミン化合物又はケイ素系ジアミン化合物と、溶媒との混合物を提供する。前記混合物は、ジフェニルカーボネート又はその組成物を含んでも良い。適切な溶媒は、イソプロピルエーテル、アニソール、フェネチルエーテル、フェニルプロピルエーテル、フェンブチルエーテル、oーメチルアニソール、pーメチルアニソール、mーメチルアニソール、ベンジルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、2-メチルテトラヒドロピラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン又はシクロヘキシルベンゼンである。50~200 ℃で、前記のポリカーボネートと前記ジアミン又はケイ素系ジアミン化合物とを混合して反応させ、溶媒及び副生成物を蒸留により除去すること、又は、カラムクロマトグラフィーにより精製して副生成物を除去することで、ポリカ-ボネ-ト誘導体を得る。具体的な実験例の配合成分、ポリカーボネート及びジアミンの使用量は、表1に示されている
【0063】

(例二):本発明のポリウレタンオリゴマ-の共通の製造ステップ
ポリウレタンオリゴマ-は、ポリマー重合によって製造されたものである。具体的には、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネ-ト(MDI)、イソホロンジイソシアネ-ト(IPDI)又は1,6-ヘキサメチレンジイソシアネ-ト(HDI)などの各種ジイソシアネ-トと、例えば、ポリカ-ボネ-ト誘導体A、E又はSなどの前記ポリカ-ボネ-ト誘導体とを、60~100℃で縮重合させ、反応中に、例えば、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド又はアニソールなどの溶媒を添加して反応を進行させる。反応終了後、FT-IRスペクトルにおいて1750±50 cm-1で、カルバメート官能基の特徴的なピークを検出することができる。具体的な実験例の配合成分及び使用量は、表2に示されている
【0064】

表2に示すポリウレタンオリゴマ-は、水素核磁気共鳴スペクトルにおいて約1.35 ppm~1.65 ppm付近の化学シフトで特徴的なピークを有するか、又は3.65 ppm~4.15 ppm付近の化学シフトで特徴的なピークを有する。化学シフトの7.50-8.00 ppmでは、カルバメート(carbamate)のアミノ基(-C=O)NH-)の特徴的なピークを有する。
【0065】
(例三):本発明の熱可塑性ポリウレタンの共通の製造ステップ
ポリウレタンオリゴマ-と各種のジオ-ル鎖延長剤とを加熱して鎖延長反応を反応させ、各種の異なる熱可塑性ポリウレタンを得ることができる。具体的な実験例に使用された配合成分、重量比及び得られた熱可塑性ポリウレタンの性質データは、表3及び表4に示されている。
【0066】

表3は、熱可塑性ポリウレタンの合成配合成分表であり、制御組EM-100は、前記ポリカ-ボネ-ト誘導体Eとジフェニルメタンジイソシアネ-ト(MDI)とを100%合成したサンプルであり、使用されたポリウレタンオリゴマ-の配合成分は、表2に示されている。本実験では、異なる種類及び重量比のジオ-ルとポリウレタンオリゴマ-とを用いて熱可塑性ポリウレタンの合成を行い、得られた熱可塑性ポリウレタンの性質を測定した。ここでは、適切な反応配合成分を選択して、高引張強度などの優れた特性を持つ熱可塑性ポリウレタンを得る目的を達成した。製造された熱可塑性ポリウレタンの特性を表4で表示している。
【0067】

a: 引張強度(stress)は万能引張機によって測定した。
b: 延伸率(strain)は、万能引張機によって測定した。
c: 膜特性は、膜生成後の巨視的な状態。
d: PC(wt.%)は、熱可塑性ポリウレタンに含まれる理論上のポリカーボネートの含有量(カーボネート(g)/熱可塑性ポリウレタン(g));
e: Tgは、ガラス転移温度である。
n.a.は、測定値が測定下限値を下回り、数値が読み取れないことを意味している。
【0068】
表4の熱可塑性ポリウレタン性質の実験数値の分析によると、AM-G30、AM-G45、EM-G30、EM-G45、EM-L30、EM-L45及びSI-O70の熱可塑性ポリウレタンが2.5MPaを超える引張強度及び良好な膜の伸縮弾性の両方を有することが明白である。
【0069】
表3の熱可塑性ポリウレタンを合成するための配合成分表を参照しながら、表2の実験データの分析によると、本発明のポリカ-ボネ-ト誘導体に由来するポリウレタンオリゴマ-は、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールと合成して引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンを得ることができないことが示される。これによって、本発明が提供した高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンを製造するための配合成分における鎖延長剤(ジオ-ル)は、配合相溶特異性(組合せに、配合・混合できないこと)を有することが分かる。
【0070】
表2に記載のシロキサン基を含有するジアミンに由来するポリカ-ボネ-ト誘導体Sと芳香族ジイソシアネ-ト(MDI)とを合成して得られたポリウレタンオリゴマ-(SM)は、脂肪族ジオ-ル(1,6-ヘキサンジオ-ル)と合成することで、熱可塑性ポリウレタンを得ることができない。ポリカ-ボネ-ト誘導体Sと脂肪族ジイソシアネ-ト(IPDI)とを合成して得られたポリウレタンオリゴマ-(SI)は、本発明のジオ-ル/ポリウレタンオリゴマ-の重量比の範囲内に制御することによって、引張強度が54 MPaに達した熱可塑性ポリウレタン(SI-O70)を得ることができる。これによって、鎖延長剤(ジオ-ル)と反応して本発明の高引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンを得るには、シロキサン基を含有するポリウレタンオリゴマ-が芳香環構造を有しないことが必要であることが分かった。換言すれば、高引張強度を有する、シロキサン基を含有する熱可塑性ポリウレタンは、脂肪族ジイソシアネ-ト、特に、イソホロンジイソシアネ-ト(IPDI)に由来することは好ましいである。
【0071】
前記熱可塑性ポリウレタンEM-G30及びSI-O70は、示差走査熱量測定機によって熱量分析し、示差走査熱量曲線(DSC)は、図3及び図4に示されている。熱可塑性ポリウレタンEM-E45及びEM-P45の示差走査熱量曲線(DSC)は、図5及び図6に示されている。結果に示すように、ポリエチレングリコール(E)又はポリプロピレングリコール(P)を鎖延長剤とした場合、DSC曲線は、-33℃又は-20℃において吸熱現象が現れた。これは、熱可塑性ポリウレタンEM-E45及びEM-P45は、室温における吸熱効果により、内部の高分子鎖セグメント構造が柔らかく、引張強度を持たないことを示している。したがって、熱分析データでは、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールが本発明の配合成分における鎖延長剤として適切でないことを明確に実証できた。
【0072】
熱可塑性ポリウレタンの引張強度測定
前記熱可塑性ポリウレタンEM-G30、SI-O70、EM-E45及びEM-P45は、万能引張機(メーカー型番:MTS Landmark 370.02 Test System)によって、引張強度及び延伸率を測定した。測定条件は、ASTM D638規格を準じたサイズのサンプルを作製し、試験サンプルの引張速度は、100 mm/minであり、測定した熱可塑性ポリウレタンEM-G30及びSI-O70の測定結果は、図7及び図8に示されている。EM-G30の引張強度は、5.0MPaを超えて、約13.0MPaに達し、その延伸率は、約1200%と高く、SI-O70の引張強度は、約54MPaに達した。EM-E45及びEM-P45の測定では、実験中にサンプルが破損し、引張強度が測定不能になった。これによって、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールシリーズのジオ-ルは、本発明配合成分の鎖延長剤として適切でないことが実証された。
【0073】
以上の内容では、特定の実験例を用いて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明の要旨を逸脱しない限り、当業者によって種々の修正や変更を加えることができる。また、要約書及び発明の名称などの記載は、本願発明に関連する技術文献の検索を支援するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】