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特表2023-509189RSPO1タンパク質およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-07
(54)【発明の名称】RSPO1タンパク質およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/47 20060101AFI20230228BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20230228BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20230228BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230228BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230228BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20230228BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230228BHJP
【FI】
C07K14/47
A61K38/17 ZNA
A61K47/60
A61P3/10
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022541989
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(85)【翻訳文提出日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 EP2021050289
(87)【国際公開番号】W WO2021140209
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】20305016.6
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】514282002
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュ ナシオナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】513015441
【氏名又は名称】サントゥル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック - セーエヌエールエス
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE - CNRS
【住所又は居所原語表記】3,rue Michel Ange,F-75016 Paris 16,France
(71)【出願人】
【識別番号】520100435
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・コート・ダジュール
【氏名又は名称原語表記】Universite Cote d’Azur
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】コロンバ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァノ,セレナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076BB13
4C076BB16
4C076CC21
4C076EE23
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA02
4C084BA21
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA18
4C084CA53
4C084MA65
4C084NA14
4C084ZC35
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA27
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、Rspo1タンパク質、および、薬剤としての、特に1型または2型糖尿病等の糖尿病の処置のための、その使用に関する。本開示はまた、それを必要とするヒト対象において膵臓β細胞の増殖を誘導するための方法に関し、当該方法は、上記対象において有効量のRspo1タンパク質を投与する工程を含む。本発明者らは驚くべきことに、組換えRspo1タンパク質による処置が、糖尿病のマウスモデルにおいて、機能的膵臓β細胞のインビボの増殖を誘導し、耐糖能を改善し、グルコース刺激インスリン分泌(GSIS)を増加させることを示した。さらに、ほぼ完全なβ細胞アブレーションを行い、Rspo1タンパク質投与によって残りのβ細胞が正常血糖を維持できる機能的なβ細胞量の増殖および再構築を誘導できることを見出した。最後に、本発明者らは、Rspo1がヒトの糖尿病の処置および予防のための新たな予想外の道を開くヒトβ細胞増殖も誘導できることを示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤として、好ましくは糖尿病の処置を必要とする対象における当該処置において、使用するための、単離されたRspo1タンパク質。
【請求項2】
以下のいずれかである、請求項1に記載の使用するためのRspo1タンパク質:
(i)R-スポンジン1ポリペプチドを含むタンパク質、
(ii)R-スポンジン1ポリペプチドの機能的断片を含むタンパク質、または
(iii)R-スポンジン1ポリペプチドの機能的バリアントを含むタンパク質。
【請求項3】
以下のいずれかである、請求項1または2に記載の使用するためのRspo1タンパク質:
(i)配列番号2~4のいずれか1つのヒトR-スポンジン1ポリペプチドを含むタンパク質、
(ii)配列番号2~4のいずれか1つのヒトR-スポンジン1ポリペプチドの機能的断片を含むタンパク質、または
(iii)配列番号2~4のいずれか1つのR-スポンジン1ポリペプチドの機能的バリアントを含むタンパク質。
【請求項4】
R-スポンジン1ポリペプチドの機能的断片を含むタンパク質であり、
前記機能的断片は好ましくは、R-スポンジン1タンパク質のFU1および/またはFU2ドメイン中の少なくとも40~100の連続アミノ酸残基、典型的には配列番号1~4および配列番号8~24のポリペプチドのいずれかのFU1および/またはFU2ドメイン中の少なくとも40~100の連続アミノ酸残基、を有するポリペプチドを含むまたはそれからなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用するためのRspo1タンパク質。
【請求項5】
以下のいずれかを含む組換えタンパク質である、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用するためのRspo1タンパク質:
(i)配列番号1~4および配列番号8~24のいずれか1つ、または
(ii)配列番号1のRspo1タンパク質の断片の組合せであって、典型的には、機能的ドメインFU1および機能的ドメインFU2、ならびに任意に機能的ドメインTSPを含む。
【請求項6】
LGR4受容体に結合する、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用するためのRspo1タンパク質。
【請求項7】
前記Rspo1タンパク質が天然R-スポンジン1ポリペプチド、好ましくは配列番号3または4のヒトR-スポンジン1、の機能的断片または機能的バリアントを含むタンパク質であり、
前記Rspo1タンパク質が、前記天然R-スポンジン1と比較して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上の以下の活性を示す、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用するためのRspo1タンパク質:
(i)例えばSPRアッセイによって決定される、LGR4受容体への結合親和性;
(ii)例えばインビトロのβ細胞増殖アッセイで決定される、機能的β細胞の増殖の誘導;
(iii)例えばインビボのβ細胞増殖アッセイで決定される、機能的β細胞の増殖の誘導;
(iv)例えばインビトロのβ細胞増殖アッセイで決定される、グルコース刺激インスリン分泌(GSIS)の増加;または、
(v)例えばインビボのβ細胞増殖アッセイで決定される、グルコース刺激インスリン分泌(GSIS)の増加。
【請求項8】
R-スポンジン1の機能的バリアントを含むタンパク質であって、
前記機能的バリアントは親R-スポンジン1ポリペプチド配列に対して少なくとも70%、80%、90%、または少なくとも95%の同一性、好ましくは配列番号1~4および配列番号8~24のポリペプチドの1つに対して少なくとも70%、80%、90%、または少なくとも95%の同一性、を有するポリペプチドを含むか、または本質的にそれからなる、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用するためのRspo1タンパク質。
【請求項9】
前記R-スポンジン1の機能的バリアントが、アミノ酸置換のみによって対応する天然R-スポンジン1配列と異なる、請求項8に記載の使用のためのRspo1タンパク質。
【請求項10】
融合タンパク質であり、例えば抗体のFc領域を含む融合タンパク質である、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用するためのRspo1タンパク質。
【請求項11】
ペグ化またはPAS化タンパク質である、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用するためのRspo1タンパク質。
【請求項12】
1型または2型糖尿病の処置において使用される、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用するためのRspo1タンパク質。
【請求項13】
治療的有効量のRspo1タンパク質が皮下または静脈内経路を介して対象に投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用するためのRspo1タンパク質。
【請求項14】
前記対象がヒト対象である、請求項1~13のいずれか1項に記載の使用するためのRspo1タンパク質。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか1項に定義されるRspo1タンパク質、および、
1つ以上の薬学的に許容し得る賦形剤を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬剤(特に糖尿病の処置)としての使用のためのRspo1タンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年の間に、糖尿病は、世界人口のほぼ9%に影響を及ぼす、流行している規模(epidemic dimension)である最も広範囲に及ぶ代謝障害の1つとなっている(WHO、2016年)。2049年までに、糖尿病に罹患した人の数は、6億人に達すると予想される。糖尿病は高い血糖値を特徴とし、ほとんどの場合、膵臓が十分量のインスリンを分泌できないことに起因する。1型糖尿病(T1D)はインスリン産生β細胞の自己免疫介在性破壊によって引き起こされる一方、2型糖尿病(T2D)はインスリン作用に対する抵抗性および最終的なβ細胞不全/経時的損失に起因する。
【0003】
糖尿病の現在の処置では正常血糖を厳密に回復することができず、T1Dの場合には外因性インスリン注射による欠損インスリン分泌の代わりはむしろ症状緩和のように見えることさえある。したがって、新たに機能するβ細胞を膵臓に補充し、および/または、残りのβ細胞の健全な状態を維持することは、両方の状態の処置のための重要な戦略となる。しかしながら、現在まで、特に1型糖尿病に罹患しているヒト患者において、膵臓β細胞の損失を予防する、または増殖を誘導する利用可能な処置がない。
【0004】
Rspo1は、Rspo2、Rspo3およびRspo4も含む、システインリッチな分泌タンパク質のファミリーに属する。それらは、4つの構造的および機能的に異なるドメインを含む共通の構造的構成を共有する。N末端において、シグナルペプチド配列はR-スポンジン(spondin)タンパク質の標準的な分泌経路への正しい進入を保証している。成熟分泌形態は、R-スポンジン特異的受容体LGR(ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体)4~6との相互作用に重要な、2つのアミノ末端システインリッチフリン様リピート(FU1およびFU2)を含む(de Lau, W. B., Snel, B. & Clevers, H. C. Genome Biol 13, 242, doi:10.1186/gb-2012-13-3-242 (2012))。タンパク質の中央部にはトロンボスポンジン1型リピートドメイン(TSP1)が1つあり、細胞外マトリックスの特定成分との相互作用に関与し、カルボキシ末端塩基性アミノ酸リッチドメインが続いているが、その役割はまだ明らかになっていない。R-スポンジンタンパク質は細胞増殖(Kim, K. A. et al. Science 309, 1256-1259, doi:10.1126/science.1112521 (2005). Da Silva, F. et al. Dev Biol 441, 42-51, doi:10.1016/j.ydbio.2018.05.024 (2018)), cell specification (Vidal, V. et al. Genes Dev 30, 1389-1394, doi:10.1101/gad.277756.116 (2016))、および、性決定(Chassot, A. A. et al. Hum Mol Genet 17, 1264-1277, doi:10.1093/hmg/ddn016 (2008))等のプロセスにおいて重要な役割を発揮することが報告されている。そして、標準的なWNTシグナル伝達経路(WNT/β-カテニンまたはcWNT経路としても知られる)の中心的なレギュレーターとして報告されている(Jin, Y. R. & Yoon, J. K. The R-spondin family of proteins: emerging regulators of WNT signaling. Int J Biochem Cell Biol 44, 2278-2287, doi:10.1016/j.biocel.2012.09.006 (2012))。
【0005】
膵臓の成熟および機能におけるcWNT経路の関与の可能性によって提起された大きな関心にもかかわらず(Scheibner et al 2019, Curr Opin Cell Biol. 61:48-55)、R-スポンジンタンパク質の役割および寄与は、この器官においてほとんど研究されていない。
【0006】
インビトロ分析はRspo1の存在下で、β細胞増殖および機能がMin6腫瘍由来細胞株において増加することを報告した(Wong, V. S., Yeung, A., Schultz, W. & Brubaker, P. L. R-spondin-1 is a novel beta-cell growth factor and insulin secretagogue. J Biol Chem 285, 21292-21302, doi:10.1074/jbc.M110.129874 (2010))。しかしながら、同じグループからのさらに最近の研究は、矛盾する記載を報告した:マウスにおけるRspo1欠損がβ細胞量(cell mass)の増加および血糖コントロールの増強と関連する(Wong, V. S., Oh, A. H., Chassot, A. A., Chaboissier, M. C. & Brubaker, P. L. Diabetologia 54, 1726-1734, doi:10.1007/s00125-011-2136-2 (2011)、および、Chahal et al 201, Pancreas Vol 43(1) pp 93-102)。
【0007】
後者の研究とは対照的に、本発明者らは驚くべきことに、組換えRspo1タンパク質による処置が、糖尿病のマウスモデルにおいて、機能的膵臓β細胞のインビボの増殖を誘導し、耐糖能を改善し、グルコース刺激インスリン分泌(GSIS)を増加させることを示した。さらに、ほぼ完全なβ細胞アブレーションを行い、Rspo1タンパク質投与によって残りのβ細胞が正常血糖を維持できる機能的なβ細胞量の増殖および再構築を誘導できることを見出した。最後に、本発明者らは、Rspo1がヒトの糖尿病の処置および予防のための新たな予想外の道を開くヒトβ細胞増殖も誘導できることを示した。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、薬剤として、好ましくは糖尿病の処置を必要とする対象における当該処置において、使用するための、単離されたRspo1タンパク質に関する。
【0009】
具体的な実施形態において、本開示の上記Rspo1タンパク質は以下のいずれかである:
(i)Rスポンジン-1ポリペプチドを含むタンパク質、
(ii)Rスポンジン-1ポリペプチドの機能的断片を含むタンパク質、または、
(iii)Rスポンジン-1ポリペプチドの機能的バリアントを含むタンパク質。
【0010】
具体的な実施形態において、本開示の上記Rspo1タンパク質は以下のいずれかである:
(i)配列番号2~4のいずれか1つのヒトRスポンジン1ポリペプチドを含むタンパク質、
(ii)配列番号2~4のいずれか1つのヒトRスポンジン-1ポリペプチドの機能的断片を含むタンパク質、または、
(iii)配列番号2~4のいずれか1つのRスポンジン-1ポリペプチドの機能的バリアントを含むタンパク質。
【0011】
具体的な実施形態において、本開示の上記Rspo1タンパク質は、Rスポンジン-1ポリペプチドの機能的断片を含むタンパク質であり、上記機能的断片は好ましくは、Rスポンジン1タンパク質のFU1および/またはFU2ドメイン中の少なくとも40~100の連続アミノ酸残基、典型的には配列番号1~4および配列番号8~24のポリペプチドのいずれかのFU1および/またはFU2ドメイン中の少なくとも40~100の連続アミノ酸残基、を有するポリペプチドを含むまたはそれからなる。
【0012】
具体的な実施形態において、本開示の上記Rspo1タンパク質は、以下のいずれかを含む組換えタンパク質である:
(i)配列番号1~4および配列番号8~24のいずれか1つ、または、
(ii)配列番号1のRspo1タンパク質の断片の組合せであって、典型的には、機能的ドメインFU1および機能的ドメインFU2、ならびに任意に機能的ドメインTSPを含む。
【0013】
具体的な実施形態において、本開示の上記Rspo1タンパク質はLGR4受容体に結合する。
【0014】
具体的な実施形態において、本開示の上記Rspo1タンパク質は、インビトロのβ細胞増殖アッセイおよび/またはインビボのβ細胞増殖アッセイで決定される、機能的β細胞の増殖を誘導する。
【0015】
具体的な実施形態において、本開示の上記Rspo1タンパク質は、天然R-スポンジン1ポリペプチド、好ましくは配列番号3または4のヒトR-スポンジン-1、の機能的断片または機能的バリアントを含むタンパク質であり、
上記Rspo1タンパク質が、上記天然Rスポンジン-1と比較して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上の以下の活性を示す:
(i)例えばSPRアッセイによって決定される、LGR4受容体への結合親和性;
(ii)例えばインビトロのβ細胞増殖アッセイで決定される、機能的β細胞の増殖の誘導;
(iii)例えばインビボのβ細胞増殖アッセイで決定される、機能的β細胞の増殖の誘導;
(iv)例えばインビトロのβ細胞増殖アッセイで決定される、グルコース刺激インスリン分泌(GSIS)の増加;または、
(v)例えばインビボのβ細胞増殖アッセイで決定される、グルコース刺激インスリン分泌(GSIS)の増加。
【0016】
上記の機能的アッセイは、例えば、以下の実施例においてより詳細に説明する。
【0017】
具体的な実施形態において、本開示の上記Rspo1タンパク質は、R-スポンジン1の機能的バリアントを含むタンパク質であって、上記機能的バリアントは親(parent)R-スポンジン1ポリペプチド配列に対して少なくとも70%、80%、90%、または少なくとも95%の同一性、好ましくは配列番号1~4および配列番号8~24のポリペプチドの1つに対して少なくとも70%、80%、90%、または少なくとも95%の同一性、を有するポリペプチドを含むか、または本質的にそれからなる。
【0018】
具体的な実施形態において、上記R-スポンジン1の機能的バリアントは、アミノ酸置換のみによって対応する天然R-スポンジン1配列と異なる。
【0019】
具体的な実施形態において、本開示の上記Rspo1タンパク質は融合タンパク質であり、例えば、抗体のFc領域を含む融合タンパク質である。
【0020】
具体的な実施形態において、本開示の上記Rspo1タンパク質は、ペグ化タンパク質(pegylated protein)またはPAS化タンパク質(PASylated protein)である。
【0021】
本開示によれば、上記Rspo1タンパク質は、1型または2型糖尿病の処置において、ならびに/または、インビボでのβ細胞の増殖およびランゲルハンス島の量の増加の誘導において、特に有用である。具体的な実施形態において、治療有効量のRspo1タンパク質は皮下または静脈内経路を介して必要とする対象に投与される。
【0022】
Rspo1タンパク質のこのようなインビボ使用の具体的な実施形態において、上記対象はヒト対象である。
【0023】
本開示はまた、上記に定義されるRspo1タンパク質、および1つ以上の薬学的に許容し得る賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0024】
具体的な実施形態において、上記医薬組成物は、糖尿病を処置または予防するための1つ以上の追加の医薬成分をさらに含み、典型的にはサイトカイン、抗ウイルス剤、抗炎症剤、抗糖尿病剤または低血糖剤、細胞療法製品(例えば、β細胞組成物)および免疫調節剤からなる群から選択される。
【0025】
本開示はまた、β細胞、典型的にはヒトβ細胞、の増殖を誘導するためのインビトロの方法における、本明細書で定義されるRspo1タンパク質またはアナログの使用に関する。
【0026】
典型的には、上記インビトロ方法は以下の工程を含む:
(i)誘導多能性幹細胞(iPSC)、好ましくはヒト細胞由来のiPSC、を提供する工程、
(ii)上記iPSCをランゲルハンス島のβ細胞にインビトロにおいて分化させる工程、
(iii)増殖条件下において、上記分化させたβ細胞を培養する工程、
(iv)iPS細胞の分化および/または上記β細胞の増殖を誘導するために、工程(ii)および/または(iii)において十分な量の上記Rspo1タンパク質またはアナログが添加される。
【0027】
〔詳細な説明〕
[定義]
本開示がより容易に理解され得るように、特定の用語を最初に定義する。詳細な説明の全体にわたって、追加の定義を示す。
【0028】
用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸および非天然アミノ酸(本明細書では「天然に存在しないアミノ酸」とも示す)、例えば、天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣物を示す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸、ならびに後に修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリンである。アミノ酸アナログとは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造、例えば、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合しているα炭素、を有する化合物を示し、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムである。当該アナログは修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有することができるが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持する。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様に機能する化合物を示す。用語「アミノ酸」および「アミノ酸残基」は、全体を通して互換的に使用される。
【0029】
置換とは、天然に存在するアミノ酸を、別の天然に存在するアミノ酸または非天然アミノ酸で置換することを示す。例えば、合成ペプチドの化学合成の間、天然アミノ酸は、別の天然に存在するアミノ酸または非天然アミノ酸によって容易に置換されることができる。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「タンパク質」は、1つ以上の直鎖(「ポリペプチド鎖」とも示す)に配置されたアミノ酸からできており、球状形態に折り畳まれた任意の有機化合物をいう。これには、タンパク質性物質または融合タンパク質が含まれる。当該ポリペプチド鎖中のアミノ酸は、隣接するアミノ酸残基のカルボキシル基とアミノ基との間のペプチド結合によって一緒に結合してもよい。用語「タンパク質」はペプチド、単鎖ポリペプチド、または主に2つ以上のアミノ酸鎖からなる任意の複合タンパク質をさらに含むが、これらに限定されない。それはさらに、糖タンパク質または他の公知の翻訳後修飾を含むが、これらに限定されない。それはさらに、天然タンパク質の公知の天然または人工の化学修飾、例えば、糖鎖エンジニアリング、ペグ化(pegylation)、ヘシル化(hesylation)、PAS化(PASylation)等、非天然アミノ酸の組込み、化学コンジュゲートまたは他の分子のためのアミノ酸修飾等を含むが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「組換えタンパク質」は、対応するタンパク質を発現するために形質転換された宿主細胞から(例えば、トランスフェクトーマ等から)単離された融合タンパク質等の、組換え手段によって調製、発現、作製または単離されるタンパク質を含む。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「融合タンパク質」は、遺伝的融合によって、例えば別個のタンパク質の別個の機能的ドメインをコードする少なくとも2つの遺伝子断片の遺伝的融合によって、得られるかまたは得ることができる少なくとも1つのポリペプチド鎖を含む組換えタンパク質を示す。したがって、本開示のタンパク質融合物は後述のRスポンジン-1ポリペプチドまたはその断片もしくはバリアントの少なくとも1つ、および少なくとも1つの他の部分を含む。当該他の部分は、Rスポンジン-1ポリペプチドまたはその機能的バリアントもしくは断片以外のポリペプチドである。特定の実施形態において、当該他の部分はまた、非タンパク質部分(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)部分、または他の化学部分もしくはコンジュゲート)であってもよい。第2の部分は抗体のFc領域であり得、したがって、このような融合タンパク質は「Fc融合タンパク質」と示す。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「Fc領域」は免疫グロブリン重鎖のC末端領域(天然配列Fc領域およびバリアントFc領域を含む)を定義するために使用され、好ましくは天然ヒトFc領域に対して5、10、15、または20以下のアミノ酸の挿入、欠失、または置換を含む。天然ヒトFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgA、IgD、IgEまたはIgMアイソタイプのいずれでもあり得る。ヒトIgG重鎖Fc領域は一般に、IgG抗体のC226またはP230の位置からカルボキシル末端までのアミノ酸残基を含むものとして定義される。Fc領域における残基の番号付けは、KabatのEU番号付け(EU index)である。Fc領域のC末端リシン(残基K447)は例えば、Fc融合タンパク質の産生または精製の間に除去されてもよい。
【0034】
本明細書で使用される場合、2つの配列間のパーセント同一性は、ギャップの数および各ギャップの長さを考慮して、配列によって共有される同一の位置の数の関数であり(すなわち、%同一性=同一の位置の数/位置の総数×100)、ギャップの数および各ギャップの長さは2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要がある。配列の比較および2つの配列間のパーセント同一性の決定は後述の数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。
【0035】
2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、ニードルマンおよびブンシュのアルゴリズム(NEEDLEMANおよびWunsch)を使用して決定することができる。
【0036】
2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間のパーセント同一性は、例えば、EMBOSS Needle(ペアワイズアラインメント;www.ebi.ac.ukで利用可能、Rice et al 2000 Trends Genet 16 :276-277)等のアルゴリズムを使用して決定してもよい。例えば、EMBOSS Needleは、BLOSUM62マトリックス、10の「ギャップ開始ペナルティ(gap open penalty)」、0.5の「ギャップ伸長ペナルティ(gap extend penalty)」、偽の「エンドギャップペナルティ(end gap penalty)」、10の「エンドギャップ開始ペナルティ(end gap open penalty)」、および0.5の「エンドギャップ伸長ペナルティ(end gap extend penalty)」とともに使用してもよい。一般に、「パーセント同一性」は、一致する位置の数を比較される位置の数で割って、100を掛けた関数である。例えば、10個の配列位置のうち6個が、アラインメント後の2つの比較される配列の間で同一である場合、同一性は60%である。%同一性は典型的には、分析が行われるクエリー配列の全長にわたって決定される。同じ一次アミノ酸配列または核酸配列を有する2つの分子は、任意の化学的および/または生物学的修飾にかかわらず同一である。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。用語「非ヒト動物」は好ましくは哺乳動物(例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ等)を含む。
【0038】
[Rspo1タンパク質]
本開示は、特定のRspo1タンパク質またはそのアナログ、および、薬剤として、特に糖尿病の処置を必要とする対象における当該処置において、または、ランゲルハンス島の膵臓β細胞(好ましくは、ヒトβ細胞)のインビボもしくはインビトロでの産生を誘導するための、それらの使用に関する。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「Rspo1タンパク質」は、対応するRspo1遺伝子によってコードされる天然R-スポンジン1タンパク質、またはその機能的等価物のいずれかを示す。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「アナログ」は、特に次のセクションに記載される所望の特性の少なくとも1つ以上に関して、R-スポンジン1タンパク質と同じ特性または実質的に同じ特性を有する非タンパク質化合物を示す。当該アナログには、2000Daまで、好ましくは800Da以下の小分子または合成有機分子、ならびにR-スポンジン1タンパク質のペプチド模倣物、アプタマーおよび構造的または機能的模倣物が含まれる。アナログにはさらに、LGR4に対する結合特異性を有し、R-スポンジン1タンパク質と同じ特性または実質的に同じ特性を有する抗体(以下、「アゴニスト抗体」と示す)が含まれる。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「アプタマー」は、高度に特異的な三次元コンホメーションを採用することができるオリゴヌクレオチド(DNAまたはRNA)の鎖を示す。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性がある部分、すなわち、抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子を示す。したがって、用語「抗体」は、抗体分子全体だけでなく、抗体断片、ならびに抗体のバリアント(誘導体を含む)および抗体断片も包含する。
【0043】
天然抗体において、2つの重鎖はジスルフィド結合によって互いに連結され、各重鎖はジスルフィド結合によって軽鎖に連結される。軽鎖には、ラムダ(λ)およびカッパ(k)の2つの種類がある。抗体分子の機能活性を決定する5つの主な重鎖クラス(またはアイソタイプ)がある:IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgE。各鎖は、異なる配列ドメインを含む。軽鎖は、可変ドメイン(VL)および定常ドメイン(CL)の2つのドメインを含む。重鎖は、可変ドメイン(VH)および3つの定常ドメイン(CH1、CH2およびCH3、集合的にCHと示す)の4つのドメインを含む。軽鎖(VL)および重鎖(VH)の両方の可変領域は、抗原に対する結合認識および特異性を決定する。軽鎖(CL)および重鎖(CH)の定常領域ドメインは、抗体鎖会合、分泌、経胎盤可動性(trans-placental mobility)、補体結合、Fc受容体(FcR)への結合等の重要な生物学的特性を付与する。
【0044】
Fv断片は免疫グロブリンのFab断片のN末端部分であり、1つの軽鎖および1つの重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定基との間の構造的相補性にある。抗体結合部位は、超可変または相補性決定領域(CDR)に主に由来する残基から構成される。時折、非超可変領域またはフレームワーク領域(FR)由来の残基は、抗体結合部位に関与し得るか、または全体的なドメイン構造、したがって結合部位に影響を及ぼし得る。相補性決定領域またはCDRはアミノ酸配列を示し、一緒になって天然免疫グロブリン結合部位の天然Fv領域の結合親和性および特異性を定義する。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖はそれぞれ、L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3およびH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3とそれぞれ示される、3つのCDRをそれぞれ有する。したがって、抗原結合部位は、典型的には重鎖および軽鎖V領域のそれぞれからのCDRセットを含む6つのCDRを含む。フレームワーク領域(FR)は、CDR間に介在するアミノ酸配列を示す。それによれば、軽鎖および重鎖の可変領域は、典型的には以下の配列である4つのフレームワーク領域および3つのCDRを含む:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。
【0045】
したがって、ハイブリドーマ技術および/またはファージディスプレイ技術等の当業者はハイブリドーマ技術および/またはファージディスプレイ技術等の従来の技術によって得られた抗LGR4抗体のうち、当業者によってさらに、次のセクションで説明する所望の特性の少なくとも1つ以上を示す抗LGR4抗体を選択し、本実施例でさらに説明する機能的アッセイを使用することによって、アゴニスト抗体をスクリーニングしてもよい。
【0046】
用語「Rspo1タンパク質」は特に、天然R-スポンジン1タンパク質の機能的断片、天然R-スポンジン-1タンパク質の機能的バリアント、または組換えタンパク質、特に、天然R-スポンジン1タンパク質の当該断片または機能的バリアントを含む融合タンパク質を含む任意のタンパク質を含み、すべて一般的に「機能的等価物」と示される。
【0047】
天然R-スポンジン1タンパク質は、典型的にはそのN末端からC末端まで、シグナルペプチド(SP)、2つのシステインリッチフリン様ドメイン(FU1およびFU2)、トロンボスポンジン(TSP1)モチーフ(TSP)ならびに塩基性アミノ酸リッチ(BR)ドメインを含む。図13は、ヒトRスポンジン-1についての種々のドメインの模式図を提供する。R-スポンジン1タンパク質はLGR4受容体に結合することが知られている。
【0048】
ヒトR-スポンジン1のフリン様1領域(FU1)の例は、配列番号13~15のいずれかを含む。
【0049】
ヒトR-スポンジン1のフリン様2領域(FU2)の例は、配列番号16~18のいずれかを含む。
【0050】
具体的な実施形態において、Rspo1タンパク質は、ヒトR-スポンジン1ポリペプチド(好ましくは配列番号2~4のいずれか1つのポリペプチド)またはその機能的断片を含むタンパク質である。
【0051】
Rspo1タンパク質の別の例は、配列番号6のマウスR-スポンジン1ポリペプチドまたはその機能的断片を含むタンパク質である。
【0052】
本開示のRspo1タンパク質において使用するためのR-スポンジン1ポリペプチドまたはその機能的断片の例を、以下の表1に記載する。
【0053】
【表1】
【0054】
以下の市販のR-スポンジン1タンパク質またはその機能的断片もまた、本開示に従って使用してもよい:
-全長マウスRspo1組換えタンパク質Hisタグ(SinoBiological Ref. 50316-M08S);
-短鎖(short length)マウスRspo1組換えタンパク質(aa 21~135)(CliniScience Ref. LS-G16201-100);
-CHO細胞で産生されたヒトRspo1組換えタンパク質(Peprotech Ref. 120-38);
-大腸菌で産生されたヒトRspo1組換えタンパク質Hisタグ(Creative Biomart Ref. RSPO1-1942H);
-HEK293細胞で産生されたヒトRspo1組換えタンパク質Fcタグ:(Creative Biomart Ref. RSPO1-053H)。
【0055】
より具体的な実施形態において、上記Rspo1タンパク質は、配列番号1~4および配列番号8~24のポリペプチドのいずれか1つを含む、単離された組換えタンパク質である。より具体的な実施形態において、本発明の上記組換えタンパク質は、融合タンパク質(例えば、Fc融合タンパク質)であり、典型的には配列番号1~4および配列番号8~24のいずれか1つを含む。
【0056】
[R-スポンジン1の機能的等価物]
天然R-スポンジン1タンパク質と同様の有利な特性を有するR-スポンジン1タンパク質のさらなる機能的等価物は、候補分子をスクリーニングし、そして当該候補分子が参照天然R-スポンジン1タンパク質(典型的には、配列番号3または4のヒトR-スポンジン1タンパク質)の所望の機能的特性を維持しているか否かを試験することによって、同定することもできる。
【0057】
一実施形態において、R-スポンジン1の機能的等価物はLGR4受容体に結合する。
【0058】
例えば、R-スポンジン1の上記機能的等価物は、対応する天然R-スポンジン1(典型的には配列番号3または4のヒトR-スポンジン1)と少なくとも同じ親和性でLGR4受容体に結合する。当該親和性は例えばSPRアッセイによって決定される。
【0059】
別の実施形態において、R-スポンジン1の機能的等価物は、競合結合アッセイによって決定される、天然R-スポンジン1(例えばヒトR-スポンジン1)のLGR4受容体への結合を阻害する。
【0060】
具体的な実施形態において、R-スポンジン1の機能的等価物は、対応する天然Rスポンジン-1(好ましくはヒト天然R-スポンジン1)と比較して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上の以下の活性を示す:
(i)例えばSPRアッセイによって決定される、LGR4受容体への結合親和性;
(ii)例えばインビトロのβ細胞増殖アッセイで決定される、機能的β細胞の増殖の誘導;
(iii)例えばインビボのβ細胞増殖アッセイで決定される、機能的β細胞の増殖の誘導;
(iv)例えばインビトロのβ細胞増殖アッセイで決定される、グルコース刺激インスリン分泌(GSIS)の増加;または、
(v)例えばインビボのβ細胞増殖アッセイで決定される、グルコース刺激インスリン分泌(GSIS)の増加。
【0061】
活性を決定する際に使用するためのアッセイおよび条件のさらなる詳細は、以下の実験のパートに開示する。
【0062】
種々の実施形態において、機能的等価物は、上記の所望の活性の1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはすべてを示す組換えタンパク質である。具体的な実施形態において、機能的等価物は、少なくとも上記の所望の活性(ii)~(v)を示す組換えタンパク質である。
【0063】
具体的な実施形態において、上記機能的等価物は、配列番号3の対応する天然ヒトR-スポンジン1と比較して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、およびより好ましくは100%以上の上記所望の活性を示す組換えタンパク質である。
【0064】
[機能的断片]
具体的な実施形態において、R-スポンジン1の機能的等価物は、天然R-スポンジン1ポリペプチドの断片を含むタンパク質である。
【0065】
具体的な実施形態において、「R-スポンジン1ポリペプチドの断片」は、配列番号1~4および配列番号8~24の任意のポリペプチドの少なくとも40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210個の連続するアミノ酸残基を有するポリペプチドを示す。
【0066】
R-スポンジン1の断片は定義により、全長野生型R-スポンジン1よりも少なくとも1アミノ酸短い。具体的な実施形態において、R-スポンジン1の上記断片は、トロンボスポンジン-1ドメイン(TSP1とTSP2)および/または塩基性アミノ酸リッチドメイン(BR)を欠く。
【0067】
具体的な実施形態において、R-スポンジン1の上記断片は、FU2ドメインの少なくとも40~52個の連続するアミノ酸(例えば、配列番号4のヒトR-スポンジン1の残基91~残基143)、および/またはR-スポンジン1タンパク質のFU1ドメインの少なくとも40~61個の連続するアミノ酸(配列番号4のヒトR-スポンジン1の残基34~残基95)を含む。
【0068】
より具体的な実施形態において、「R-スポンジン1の断片」は、以下を有するポリペプチドを示す:
(i)配列番号1~4および配列番号8~24のいずれか1つ、または、
(ii)配列番号1のR-スポンジン1ポリペプチドの断片の組合せ(典型的には、機能的ドメインFU1および機能的ドメインFU2、ならびに任意に機能的ドメインTSPを含む)。
【0069】
したがって、特定の実施形態において、R-スポンジン1の機能的等価物は、以下を含むタンパク質であり:
(i)配列番号1~4および配列番号8~24のいずれか1つ、または、
(ii)配列番号1のR-スポンジン-1ポリペプチドの断片の組合せ(典型的には、機能的ドメインFU1および機能的ドメインFU2、ならびに任意に機能的ドメインTSPを含む);
上記タンパク質は、対応する天然R-スポンジン1と比較して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれ以上の以下の活性を示す:
(i)例えばSPRアッセイによって決定される、LGR4受容体への結合親和性;
(ii)例えばインビトロのβ細胞増殖アッセイで決定される、機能的β細胞の増殖の誘導;
(iii)例えばインビボのβ細胞増殖アッセイで決定される、機能的β細胞の増殖の誘導;
(iv)例えばインビトロのβ細胞増殖アッセイで決定される、グルコース刺激インスリン分泌(GSIS)の増加;または、
(v)例えばインビボのβ細胞増殖アッセイで決定される、グルコース刺激インスリン分泌(GSIS)の増加。
【0070】
[機能的変異体バリアント]
具体的な実施形態において、上記機能的等価物は、R-スポンジン1(典型的にはヒトR-スポンジン1)の機能的ドメインFU1および/またはFU2の機能的バリアントを含むタンパク質である。
【0071】
具体的な実施形態において、上記「機能的バリアント」は、親(天然)R-スポンジン1タンパク質または親(天然)R-スポンジン1の機能的断片に対して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または少なくとも95%の同一性を有するポリペプチドを含むか、または本質的にそれからなる。具体的な実施形態において、上記機能的バリアントは配列番号1~4および配列番号8~24のいずれか1つの親ポリペプチドの1つに対して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または少なくとも95%の同一性を有する。
【0072】
機能的バリアントは、典型的には、対応する天然ポリペプチドまたはその機能的断片と比較して、アミノ酸置換、欠失または挿入によって得られる変異体バリアントであってもよい。特定の実施形態において、機能的バリアントは、親ポリペプチドと比較して、その配列全体にわたってアミノ酸欠失、挿入または置換の組合せを有していてもよい。特定の実施形態において、上記機能的バリアントは、特に配列番号1~4および配列番号8~24の天然R-スポンジン1ポリペプチドの1つと比較して、天然または非天然アミノ酸のみによるアミノ酸置換のみを介して、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸のみの天然アミノ酸による置換を介して、対応する天然R-スポンジン1配列またはその機能的断片とは異なる。具体的な実施形態において、機能的バリアントは、配列番号4のヒトR-スポンジン1と比較して、1、2または3個のアミノ酸置換を有する変異体バリアントである。
【0073】
他の実施形態において、上記機能的変異体バリアントは、親(天然)R-スポンジン1タンパク質またはその機能的断片に対して、例えば配列番号1~4および配列番号8~24のいずれかのポリペプチドに対して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または少なくとも95%の同一性を有するポリペプチドである。当該ポリペプチドは対応する天然R-スポンジン1タンパク質(典型的には、ヒトR-スポンジン1タンパク質)のFU1ドメインと100%同一であるFU1ドメインを含む。
【0074】
他の実施形態において、上記機能的変異体バリアントは、親(天然)R-スポンジン1タンパク質またはその機能的断片に対して、例えば配列番号1~4および配列番号8~24のいずれかのポリペプチドに対して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または少なくとも95%の同一性を有するポリペプチドである。当該ポリペプチドは対応する天然R-スポンジン1タンパク質(典型的には、ヒトR-スポンジン1タンパク質)のFU2ドメインと100%同一であるFU2ドメインを含む。
【0075】
他の実施形態において、上記機能的変異体バリアントは、親(天然)R-スポンジン1タンパク質に対して、例えば配列番号1~4および配列番号8~24のいずれかのポリペプチドに対して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または少なくとも95%の同一性を有するポリペプチドである。当該ポリペプチドは天然R-スポンジン1タンパク質(典型的には、ヒトR-スポンジン1タンパク質)の対応するFU1およびFU2ドメインとそれぞれ100%同一であるFU1およびFU2ドメインを含む。
【0076】
より具体的な実施形態において、上記機能的バリアントのアミノ酸配列は大部分が保存的アミノ酸置換を介して、天然R-スポンジン1配列またはその機能的断片と異なっていてもよく、例えば、バリアントにおける置換の少なくとも10つ(少なくとも9つ、8つ、7つ、6つ、5つ、4つ、3つ、2つまたは1つ、等)が保存的アミノ酸残基置換である。
【0077】
本開示の文脈において、保存的置換は、以下のように反映されるアミノ酸の種類内の置換によって定義されてもよい:
脂肪族残基 I、L、VおよびM
シクロアルケニル関連残基 F、H、W、およびY
疎水性残基 A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、WおよびY
負の電荷を有する残基 DおよびE
極性残基 C、D、E、H、K、N、Q、R、S、およびT
正の電荷を有する残基 H、K、およびR
小型である残基 A、C、D、G、N、P、S、TおよびV
非常に小型である残基 A、G、S
ターンに関与する残基 A、C、D、E、G、H、K、N、Q、R、S、P、および形成 T
可撓性残基 Q、T、K、S、G、P、D、E、およびR
より保存的な置換基には、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、およびアスパラギン-グルタミンが含まれる。疎水性/親水性特性および残基の重量/サイズに関する保存も、配列番号1~4または配列番号8~24のいずれか1つの親ポリペプチドと比較して、バリアント変異体ポリペプチドにおいて実質的に保持されていてもよい。
【0078】
具体的な実施形態において、機能的バリアントは、別の天然アミノ酸によって、好ましくは上記で定義した保存的アミノ酸置換によって、置換された1、2または3アミノ酸残基を除いて、配列番号1~4または配列番号8~24のいずれか1つと同一であるポリペプチドを含む。
【0079】
Xu et al(Journal of Biological Chemistry, 2015, Vol 290, No4, pp 2455-2465)には、LGR4-Rspo1複合体の結晶構造が記載されている。特に、ヒトRspo1の2つの中央タンデムFU1/FU2ドメインが、LGR受容体、特に残基34~135への結合に必要であることを報告している。より具体的には、Rspo1の同じ側に位置するヒトRspo1のβ4-β3、β5-β6およびβ8-β7ヘアピンの連結ループがLGR4への結合に関与することを報告している。
【0080】
したがって、上記の実施形態と組合せてもよい他の具体的な実施形態において、ヒトR-スポンジン1の機能的変異体バリアントはヒトR-スポンジン1タンパク質の少なくとも以下のアミノ酸残基を含む:Asp-85、Arg-87、Phe-107、Asn-109、Phe-110およびLys-122。上記の実施形態と組合せてもよい他の具体的な実施形態において、アミノ酸残基53、56、94、97、102、106、111、114、125および129の保存されたシステインも変異されていなくてもよい(Xu et al 2015の図3も参照されたい)。
【0081】
さらに、当業者は、種々の種間で保存された残基が適切な構造を維持するために重要であり、したがって、このようなアミノ酸位置を変異させることを控えることを理解するだろう。または、多くの部位において、1つまたは2つ以上のアミノ酸位置が種バリアント間で、および/またはRspoファミリーの他のメンバー(Rspo2、Rpo3およびRspo4、等)の間で保存的であるバリエーションを示す:当業者はそのような保存的置換のいくつかが、Rspo1の機能に悪影響を及ぼさず、したがって、そのような保存的であるバリエーションを有する天然R-スポンジン1と比較して、変異されていることを理解するのであろう。
【0082】
特に、他の具体的な実施形態において、機能的バリアントは、それゆえ、以下のアミノ酸置換または欠失の1つ以上を含むことを除いて、ヒトR-スポンジン1とほぼ同一のポリペプチド配列を含む:K115Q、S134T、G138S、S143G、Q163R、Q164K、R170K、V184G、A188T、A189T、R198K、V204T、N226H、L227P、E231N、A235P、A237S、G238N、R242H、ΔQ248、Q251P、V254T、A260V、A263T。
【0083】
これらのアミノ酸置換は、図12に示すように2つの配列を整列させると、ヒトRスポンジン1からマウスR-スポンジン1までのアミノ酸置換に対応する。
【0084】
R-スポンジン1内の他の部位では、機能に影響を及ぼすことなく、さらなるバリエーションを許容してもよい。例えば、当業者はまた、ヒトRスポンジン1および他の哺乳動物Rスポンジン1タンパク質(霊長類、ラット、イヌ、ネコ等)のアライメントを比較することによって、機能的バリアントを同定するための他の考えられるアミノ酸置換または挿入を同定してもよい。
【0085】
また、上記のように、および以下の実験のパートに記載される機能的アッセイを使用して、天然R-スポンジン1ポリペプチドの有利な所望の特性を維持する、R-スポンジン1の任意の機能的バリアントの能力についてスクリーニングしてもよい。
【0086】
[本開示の組換えタンパク質]
特定の実施形態において、本開示の上記Rspo1タンパク質は可溶性タンパク質および/または組換えタンパク質である。
【0087】
より具体的な実施形態において、上記組換えRspo1タンパク質は融合タンパク質であり、より具体的にはFc融合タンパク質である。
【0088】
R-スポンジン1ポリペプチド以外の種々のポリペプチドは、種々の目的のため(例えば、タンパク質のインビボ半減期を増加させるため、タンパク質の同定、単離および/または精製を容易にするため、タンパク質の活性を増加させるため、およびタンパク質のオリゴマー化を促進するため、等)に、R-スポンジン1ポリペプチドまたは上記のその機能的等価物(特に、断片または変異体バリアント)と融合することができる。
【0089】
多くのポリペプチドは、それらがその一部である組換え融合タンパク質の同定および/または精製を容易にすることができる。例えば、ポリアルギニン、ポリヒスチジンが含まれる。ポリアルギニンを含むポリペプチドは、イオン交換クロマトグラフィーによる有効な精製を可能にする。
【0090】
具体的な実施形態において、抗体のFc領域を含むポリペプチド、任意にIgG抗体、または実質的に類似のタンパク質は、直接的に、または任意にペプチドリンカーを介して、Rスポンジン-1ポリペプチドと融合することができ、それによって、本開示のFc融合タンパク質を形成する。
【0091】
本開示によって意図される抗体の別の改変は、得られる分子の半減期を増加させるために、少なくともRスポンジン-1ポリペプチド(またはその機能的断片もしくはバリアント)と血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミンまたはその断片)とのコンジュゲートまたはタンパク質融合物である。このようなアプローチは、例えば、Ballanceら(欧州特許第0322094号)に記載されている。
【0092】
別の可能性は、得られる分子の半減期を増加させるために、血清タンパク質に結合できる、例えばヒト血清アルブミン(すなわち、抗HSA融合タンパク質)に結合できるタンパク質を含み、例えば、HSAまたはダルピン、ナノフィチン、フィノマー等の任意の他のドメインタイプ構造に結合するFabまたはナノボディに由来する抗HSA結合部分を含む、本開示の融合タンパク質である。このようなアプローチは、例えば、Nygrenら(欧州特許第0486525号)に記載されている。
【0093】
本開示の組換え融合タンパク質は、ロイシンジッパーまたは他の多量体化モチーフを含むポリペプチドを含むことができる。公知のロイシンジッパー配列の中には、二量体化を促進する配列および三量体化を促進する配列がある。例えば、Landschulz et al. (1988), Science 240: 1759-64を参照のこと。ロイシンジッパーは反復ヘプタドリピート(heptad repeat)を含み、多くの場合、4つまたは5つのロイシン残基が他のアミノ酸と散在する。ロイシンジッパーの使用および調製は、当該技術分野で周知である。
【0094】
融合タンパク質はまた、1つ以上のペプチドリンカーを含んでいてもよい。一般に、ペプチドリンカーは複数のポリペプチドを連結して多量体を形成するのに役立つアミノ酸のストレッチ(stretch)であり、タンパク質の連結部分の所望の機能に必要とされる柔軟性または剛性を提供する。典型的には、ペプチドリンカーは約1~30アミノ酸長である。ペプチドリンカーの例としては、-Gly-Gly-、GGGGS(配列番号25)、(GGGGS)n(nは1~8であり、典型的には4である)が挙げられるが、これらに限定されない。連結部分は例えば、Huston, J. S., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 85: 5879-83 (1988), Whitlow, M., et al., Protein Engineering 6: 989-95 (1993), Newton, D. L., et al., Biochemistry 35: 545-53 (1996)、ならびに米国特許第4,751,180号および第4,935,233号に記載されている。
【0095】
本開示の組換えRspo1タンパク質は、その正常なシグナル配列を欠き、代わりにそれに取って代わる異なるシグナル配列を有する、R-スポンジン1タンパク質またはその機能的等価物を含むことができる。シグナル配列の選択は組換えタンパク質が産生される宿主細胞の種類に依存し、そして異なるシグナル配列が天然のシグナル配列に取って代わることができる。
【0096】
本開示によって意図される、本明細書のR-スポンジン1タンパク質または関連する組換えRspo1タンパク質の別の改変は、ペグ化またはヘシル化またはPAS化等の関連技術である。
【0097】
より一般的には、Rspo1タンパク質は、O結合およびN結合オリゴ糖、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリシアル酸およびヒアルロン酸、ならびにホモアミノ酸ポリマー、エラスチン様ポリペプチド、XTENおよびPAS等の非構造化タンパク質ポリマーを含む、天然および半合成多糖類を含む生分解性増量剤とコンジュゲートしてもよい。
【0098】
本開示のRspo1タンパク質は例えば、抗体の生物学的(例えば、血清)半減期を増加させるためにペグ化することができる。Rspo1タンパク質をペグ化するために、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)基がRspo1タンパク質に結合する条件下で、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体等のPEGと反応させる。ペグ化は、反応性PEG分子(またはアナログ反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応によって行うことができる。
【0099】
本明細書で使用される場合、用語「ポリエチレングリコール」は、モノ(C1~C10)アルコキシポリエチレングリコールまたはアリールオキシポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールマレイミド等の、他のタンパク質を誘導体化するために使用されている任意の形態のPEGを包含することが意図される。タンパク質をペグ化するための方法は当該技術分野で公知であり、本開示のタンパク質に適用することができる。例えば、Jevsevar et al 2010 Biotechnol J. 5(1) : 113-28、または、Turecek et al 2016 J Pharm Sci 2016 105(2) : 460-375を参照のこと。したがって、特定の実施形態において、本開示のRspo1タンパク質はペグ化されている。
【0100】
本開示によって意図されるRspo1タンパク質または関連する組換えタンパク質の別の改変は、PAS化である。例えば、Protein Engineering, Design & Selection vol. 26 no. 8 pp. 489-501, 2013を参照のこと。したがって、特定の実施形態において、本開示のRspo1タンパク質はPAS化されている。
【0101】
Xten技術は例えば、Nature Biotechnology volume 27 number 12 2009: 1186-1192に概説されている。
【0102】
[本開示のタンパク質をコードする核酸分子]
本開示のRspo1タンパク質をコードする核酸分子もまた、本明細書に開示される。
【0103】
ヌクレオチド配列の例は表1に定義されている例#1~#21のいずれか1つのアミノ酸配列をコードするもの、特に配列番号1~4および配列番号8~24のいずれか1つをコードするものであり、核酸配列は表1から容易に誘導され、遺伝暗号を使用し、任意で宿主細胞種に依存するコドンの偏りを考慮に入れる。
【0104】
本開示はまた、哺乳動物細胞(例えば、哺乳動物のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株)におけるタンパク質発現のために最適化されている後者の配列に由来する核酸分子に関する。
【0105】
核酸は、細胞全体、細胞溶解物中に存在してもよく、または部分的に精製されたもしくは実質的に純粋な形態の核酸であってもよい。核酸はアルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動および当該技術分野で周知の他の技術を含む標準的な技術によって、他の細胞成分または他の汚染物質、例えば、他の細胞核酸またはタンパク質から精製される場合、「単離される」または「実質的に純粋になる」。本開示の核酸は例えば、DNAまたはRNAであり得、イントロン配列を含んでも含まなくてもよい。一実施形態において、核酸は、ファージディスプレイベクター等のベクター中に、または組換えプラスミドベクター中に存在してもよい。
【0106】
本開示の核酸は、標準的な分子生物学技術を使用して得ることができる。コードするDNA断片(例えば、Rspo1をコードする断片)が得られたら、これらのDNA断片を、標準的な組換えDNA技術によってさらに操作することができる。これらの操作において、Rspo1をコードするDNA断片は別のDNA分子、または別のタンパク質(例えば、抗体定常領域(Fc領域)または可撓性リンカー)をコードする断片に作動可能に連結してもよい。ヌクレオチド配列の例には、組換え融合タンパク質、特に、Fc領域のコード配列と作動可能に連結されるアミノ酸配列番号1~4および8~24のいずれか1つのコード配列を含むFc融合タンパク質、をコードするヌクレオチド配列がさらに含まれる。
【0107】
本文脈において使用される場合、用語「作動可能に連結される」は、2つのDNA断片が機能的な様式で、例えば、2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームのままであるように、またはタンパク質が所望のプロモーターの制御下で発現されるように連結されることを意味することが意図される。
【0108】
[本開示のRspo1タンパク質を産生するトランスフェクトーマの作製]
本開示のRspo1タンパク質は、例えば、当該技術分野で知られている組換えDNA技術および遺伝子トランスフェクション方法の組合せを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマにおいて産生させることができる。
【0109】
例えば、Rspo1タンパク質またはその対応する断片を発現させるために、部分的または全長組換えタンパク質をコードするDNAを、標準的な分子生物学または生化学技術(例えば、DNA化学合成、PCR増幅またはcDNAクローニング)によって得ることができ、遺伝子が転写および翻訳制御配列に作動可能に連結されるように、DNAを発現ベクターに挿入することができる。
【0110】
本文脈において、用語「作動可能に連結される」は、ベクター内の転写および翻訳制御配列が組換えタンパク質の転写および翻訳を調節するそれらの意図された機能に役立つように、抗体遺伝子をベクターにライゲーションされていることを意味することを意図している。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。タンパク質をコードする遺伝子は標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片およびベクター上の相補的制限部位のライゲーション、または制限部位が存在しない場合は平滑末端ライゲーション)によって発現ベクターに挿入される。
【0111】
組換え発現ベクターは、宿主細胞からの組換えタンパク質の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。シグナルペプチドが組換えタンパク質のアミノ末端にフレームで連結されるように、Rspo1コード遺伝子をベクター中にクローン化することができる。シグナルペプチドはRspo1の天然シグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非Rspo1タンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
【0112】
Rspo1タンパク質をコードする遺伝子に加えて、本明細書に開示される組換え発現ベクターは、宿主細胞における組換えタンパク質の発現を制御する調節配列を保持する。用語「調節配列」は遺伝子をコードするタンパク質の転写または翻訳を制御するプロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図している。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル等の因子に依存することが、当業者によって理解されるだろう。哺乳動物宿主細胞発現のための調節配列は、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を導くウイルスエレメント、例えばサイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、およびポリオーマに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーを含む。あるいは、ユビキチンプロモーターまたはP-グロビンプロモーター等の非ウイルス調節配列を使用してもよい。さらに、SV40初期プロモーターおよびヒトT細胞白血病ウイルス1型の長い末端リピート由来の配列を含む、SRaプロモーター系等の異なる供給源由来の配列から構成される調節エレメントも存在する。
【0113】
Rspo1タンパク質をコードする遺伝子および調節配列に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択可能なマーカー遺伝子等のさらなる配列を保持してもよい。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、すべてAxelらによる米国特許第4,399,216号、第4,634,665号および第5,179,017号を参照のこと)。例えば、典型的には、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサート等の薬物に対する耐性を付与する。選択可能なマーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅を伴うdhfr-宿主細胞において使用するため)およびneo遺伝子(G418選択のため)が含まれる。
【0114】
Rspo1タンパク質の発現について、組換えタンパク質をコードする発現ベクターを、標準的な技術によって宿主細胞にトランスフェクトする。用語「トランスフェクション」の種々の形態は、原核生物または真核生物宿主細胞への外因性DNAの導入のために一般的に使用される広範な技術(例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクション等)を包含することが意図される。理論的には、原核生物または真核生物宿主細胞のいずれかにおいて、本開示のタンパク質を発現させることが可能である。真核細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞、酵母または糸状菌)におけるタンパク質の発現については、このような真核細胞、特に哺乳動物細胞が、原核細胞よりも、適切に折り畳まれ、機能的なRspo1タンパク質を会合させる(assemble)および分泌する可能性が高いため検討される。
【0115】
具体的な一実施形態において、本開示のクローニングまたは発現ベクターは、好適なプロモーター配列に作動可能に連結された、配列番号1~4および配列番号8~24のいずれか1つのRspo1タンパク質のコード配列の1つを含む。
【0116】
本開示の組換えタンパク質を発現するための哺乳動物宿主細胞には、DHFR選択マーカー(Kaufman and Sharp, 1982に記載される)と共に使用される、dhfr-CHO細胞(Urlaub and Chasin, 1980に記載される)、CHOK1 dhfr+細胞株、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)が含まれる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入するとき、宿主細胞において組換えタンパク質を発現させるのに十分な期間宿主細胞を培養し、そして任意に、宿主細胞が増殖する培養培地中にタンパク質を分泌させることによって組換えタンパク質が産生される。
【0117】
本開示の組換えタンパク質は、例えば、標準のタンパク質精製方法を使用して、分泌後に培養培地から回収および精製することができる。
【0118】
具体的な一実施形態において、本開示の宿主細胞は、好適なプロモーター配列にそれぞれ作動可能に連結される、配列番号1~4および配列番号8~24のいずれか1つを含むRspo1タンパク質の発現に好適なコード配列を有する発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞である。
【0119】
例えば、本開示は、ヒトR-スポンジン1タンパク質をコードする配列番号5の核酸を少なくとも含む宿主細胞に関する。
【0120】
次に、後者の宿主細胞を、本開示の組換えタンパク質の発現および産生に好適な条件下においてさらに培養してもよい。
【0121】
[医薬組成物]
別の態様において、本開示は、本明細書中に開示されるRspo1タンパク質またはそのアナログのうちの1つまたは組合せを含む組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。当該組成物は上記のように、Rspo1タンパク質の1つまたは組合せ(例えば、2つ以上の異なる)を含んでいてもよい。
【0122】
例えば、上記医薬組成物は、薬学的に許容し得る担体と一緒に処方された、配列番号1~4および配列番号8~24のいずれか1つのポリペプチドを含む組換えタンパク質、またはその機能的バリアントを含む。
【0123】
本明細書に開示される医薬組成物は、併用療法、すなわち他の薬剤と組合せて投与することもできる。例えば、併用療法は、少なくとも1つの抗炎症剤または別の抗糖尿病剤と組合せた、本開示のRspo1タンパク質、例えば、配列番号1~4および配列番号8~24のいずれか1つのポリペプチドまたはその機能的バリアントを含む組換えタンパク質を、含んでいてもよい。併用療法において使用することができる治療剤の例は、以下の本開示のRspo1タンパク質の使用に関するセクションにおいてより詳細に説明する。
【0124】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容し得る担体」は、生理学的に適合性である任意のおよびすべての溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を含む。担体は、非経口、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下または眼内投与(例えば、注射または注入による)に適しているべきである。
【0125】
一実施形態において、担体は皮下経路または静脈内注射に適しているべきである。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち、Rspo1タンパク質は化合物を不活性化し得る酸および他の天然条件の作用から化合物を保護するために、材料中において被覆されていてもよい。
【0126】
滅菌リン酸緩衝生理食塩水は、薬学的に許容し得る担体の一例である。他の好適な担体は当業者に周知である。(Remington and Gennaro, 1995)。製剤は、1つ以上の賦形剤、保存剤、可溶化剤、緩衝剤、バイアル表面でのタンパク質損失を防ぐためのアルブミンをさらに含んでいてもよい。
【0127】
医薬組成物の形態、投与経路、用量およびレジメンは、処置される状態、疾患の重症度、患者の年齢、体重および性別等に当然依存する。
【0128】
本開示の医薬組成物は、経口、鼻腔内、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、非経口、局所、眼内、または直腸投与等のために製剤化することができる。有効成分としてのRspo1タンパク質は、単独で、または別の有効成分と組合せて、単位投与形態で、従来の医薬担体との混合物として、動物およびヒトに投与することができる。
【0129】
好適な単位投与形態には、錠剤、ゲルカプセル、粉末、顆粒および経口懸濁液または溶液等の経口経路形態、舌下および口腔投与形態、エアロゾル、インプラント、皮下、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、皮下、経皮、くも膜下および鼻腔内投与形態ならびに直腸投与形態を含む。
【0130】
好ましくは、医薬組成物は、注射することができる製剤に薬学的に許容し得るビヒクルを含む。これらは特に、等張、滅菌、生理食塩水溶液(リン酸一ナトリウムもしくはリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウム等、または当該塩の混合物)、または乾燥、特に凍結乾燥組成物であってもよく、これらは場合に応じて、滅菌水または生理食塩水の添加で、注射溶液の構成を可能にする。
【0131】
投与のために使用される用量は、種々のパラメーターの作用として、特に使用される投与の様式、関連する病理、または代わりに所望の処置期間の作用として適合させることができる。
【0132】
医薬組成物を調製するために、有効量のRspo1タンパク質を、薬学的に許容し得る担体または水性媒体中に溶解または分散させてもよい。
【0133】
注射使用に好適な医薬形態は、滅菌された水溶液または分散液;ゴマ油、ピーナッツ油または水性プロピレングリコールを含む製剤;および滅菌された注射溶液または分散液の即時調製のための滅菌された粉末または凍結乾燥物を含んでいてもよい。すべての場合において、この形態は、滅菌されていなければならず、そして注射し易さが存在する程度に流体でなければならない。それは、製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌等の微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。
【0134】
遊離塩基または薬理学的に許容し得る塩としての活性化合物の溶液は、界面活性剤、例えばヒドロキシプロピルセルロース、と好適に混合される水で調製することができる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれら混合物中、ならびに油中において、分散液を調製することもできる。保存および使用の通常の条件下において、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐために保存料を含む。
【0135】
本開示のRspo1タンパク質は、中性または塩形態の組成物に処方することができる。薬学的に許容し得る塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基で形成される)が挙げられ、これは無機酸(例えば、塩酸もしくはリン酸)、または有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等)で形成される。遊離カルボキシル基で形成される塩はまた、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄)、および有機塩基(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等)からも誘導することができる。
【0136】
担体はまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、それらの好適な混合物、ならびに植物油を含む溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散液の場合には必要とされる粒子径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等)によってもたらされることができる。多くの場合、等張剤(例えば、糖または塩化ナトリウム)を含むことが好ましい。注射組成物の長期の吸収は、吸収を遅延させる剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン、の組成物における使用によってもたらされることができる。
【0137】
滅菌された注射溶液は活性化合物、すなわちRspo1タンパク質、の必要量を適切な溶媒中に、必要に応じて上記に列挙した種々の他の成分と共に混合し、続いて濾過滅菌することによって調製される。一般的に、分散液は、基本的な分散媒および上記に列挙した成分からの必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクルへ種々の滅菌された有効成分を混合することにより調製される。滅菌された注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は真空乾燥および凍結乾燥技術であり、有効成分の粉末と予め滅菌濾過された溶液から任意のさらなる所望の成分との粉末が得られる。
【0138】
処方に際して、溶液は投与処方に適合した様式で、さらに治療的に有効である量で投与されるだろう。製剤は上記の種類の注射溶液等の種々の剤形で容易に投与されるが、薬物放出カプセル等も使用することができる。
【0139】
水溶液中での非経口投与のために、例えば、溶液は必要ならば好適に緩衝化されるべきであり、そして液体希釈剤は最初に、十分な生理食塩水またはグルコースで等張にされるべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与に特に好適である。この関係で、使用できる滅菌水性媒体は本開示の観点から当業者に知られているのであろう。例えば、1用量を1mlの等張NaCl溶液に溶解し、1000mlの皮下溶解液に添加するか、または提案された注入部位に注入することができる(例えば、"Remington's Pharmaceutical Sciences" 15th Edition, pages 1035-1038 and 1570-1580を参照されたい)。処置される対象の状態に依存して、ある程度の用量のばらつきが必然的に生じ得る。いずれにしても、投与責任者が個々の対象に適した用量を決定する。
【0140】
本開示のRspo1タンパク質またはそれらのアナログは、約0.01mg~1000mg/kgまたは1mg~100mg/kgを含むように、治療混合物内に処方してもよい。複数回投与もまた可能である。
【0141】
組換えタンパク質の注入または皮下注射に好適な製剤は当技術分野で記載されており、例えば、Advances in Protein Chemistry and Structural Biology Volume 112, 2018, Pages 1-59 Therapeutic Proteins and Peptides Chapter One - Rational Design of Liquid Formulations of Proteins: Mark C.Manning, Jun Liu, Tiansheng Li, Ryan E.Holcombに概説されている。
【0142】
[本開示のタンパク質の使用および方法]
本開示のRspo1タンパク質は、インビトロおよびインビボでの有用性を有する。例えば、これらの分子は種々の障害を処置または予防するために、例えば、インビトロ、エクスビボもしくはインビボで培養中の細胞に投与することができ、または、対象に(例えば、インビボで)投与することができる。
【0143】
本明細書で使用される場合、用語「処置する(treat)」、「処置する(treating)」または「処置(treatment)」は、(1)疾患を抑制すること;例えば、疾患、状態または障害の病状または総体的症状を経験または表示している個体における疾患、状態または障害を抑制すること(すなわち、病状および/または総体的症状のさらなる進展を停止させること);および(2)疾患を改善すること;例えば、疾患の重症度を低下させる、または疾患の1つ以上の症状を軽減または緩和する等、疾患、状態または障害の病状または総体的症状を経験または表示している個体における疾患、状態または障害を改善すること(すなわち、病状および/または総体的症状を逆転させること)のうちの1つ以上を示す。
【0144】
特に、糖尿病の処置に関して、より具体的には1型糖尿病に関して、用語「処置」は、膵臓β細胞の損失の抑制、ならびに/または膵臓β細胞(特に上記対象における機能的インスリンを分泌するβ細胞)の量の増加、ならびに/または、特に、疾患(例えば、1型糖尿病)により膵臓β細胞および/もしくはランゲルハンス島が損失している患者における血糖制御の改善を示してもよい。
【0145】
本開示のRspo1タンパク質またはそのアナログは、インビボでの膵臓β細胞の増殖を誘導し、機能的なインスリンを分泌するランゲルハンス島を再構成することができる。それにより、糖尿病患者、または機能的なインスリンを分泌するβ細胞を必要とする患者、または高血糖に関連する障害を有する患者、またはグルコース刺激インスリン分泌が欠損している患者の処置に使用してもよい。
【0146】
本明細書で使用される場合、用語「糖尿病」は一般に、インスリン不足またはその作用に対する抵抗性を生じる任意の状態または障害を示す。
【0147】
糖尿病の例には、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠性糖尿病、および成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0148】
したがって、本開示は、必要とする対象において、上記に開示される障害の1つを処置するための方法に関する。当該方法は、上記に開示されるRspo1タンパク質またはアナログ(典型的には配列番号1~4および配列番号8~24のいずれか1つのポリペプチドまたはその機能的バリアントを含む組換えタンパク質)の治療有効量を上記対象に投与する工程を含む。
【0149】
特定の実施形態において、上記対象は、Rspo1遺伝子発現が低い患者の中から選択されている。
【0150】
上記に開示される使用するためのRspo1タンパク質またはアナログは、例えば上記の疾患の処置または予防のために、唯一の有効成分として投与してもよく、または、例えばサイトカイン、抗ウイルス剤、抗炎症剤、抗糖尿病剤または低血糖剤、細胞療法製品(例えば、β細胞組成物)および免疫調節剤等の他の薬剤をアジュバントとしてもしくはそれらと組合せて、併用して投与してもよい。
【0151】
例えば、上記に開示される、使用のためのRspo1タンパク質またはアナログは、細胞療法、特にβ細胞療法と組合せて使用してもよい。
【0152】
本明細書で使用される場合、用語「細胞療法」は、少なくとも治療有効量の細胞組成物の、それを必要とする対象へのインビボ投与を含む療法をいう。患者に投与される細胞は、同種または自家であってもよい。用語「β細胞療法」は、細胞組成物が有効成分としてβ細胞、特にインスリン分泌β細胞を含む細胞療法を示す。当該β細胞は、Rspo1タンパク質を使用して、以下に記載されるインビトロの方法で産生してもよい。
【0153】
細胞療法製品とは、治療目的で上記患者に投与される細胞組成物を示す。上記細胞療法製品は、治療的に有効な用量の細胞、および任意で、追加の賦形剤、アジュバント、または他の薬学的に許容し得る担体を含む。
【0154】
好適な抗糖尿病剤または血糖降下剤には、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断剤、コレステロール低下薬、ビグアニド、メトホルミン、チアゾリジンジオン、血糖降下剤スルファミド、DPP-4阻害剤、α-グルコシダーゼ阻害剤、インスリンまたはその誘導体(短時間作用型、速効型または長時間作用型インスリンを含む)、GLP1アナログ、カルバモイルメチル安息香酸の誘導体;典型的にはインスリン受容体、SLGT2阻害剤、GABR標的分子、およびIL2R標的分子が含まれてもよいが、これらに限定されない。
【0155】
上記によれば、本開示は、さらに別の態様を提供する:
本発明の治療有効量のRspo1タンパク質またはアナログと、少なくとも1つの第2の薬物物質とを同時投与(例えば、同時にまたは連続して)する工程を含み、上記第2の薬物物質は例えば上記の、サイトカイン、抗ウイルス剤、抗炎症剤、抗糖尿病剤、細胞療法製品(例えば、β細胞組成物)である、上記に定義される方法。
【0156】
別の実施形態において、本開示のRspo1タンパク質またはアナログは、膵臓β細胞および/またはランゲルハンス島の増殖を誘導するために、インビトロの方法において使用することができる。
【0157】
したがって、一態様において、本開示はさらに、以下の工程を含む、β細胞をインビトロで産生するための方法を提供する:
(i)β細胞を提供する工程、
(ii)上記β細胞の増殖を誘導する条件下で、本開示の有効量の上記Rspo1タンパク質またはアナログの存在下で上記β細胞を培養する工程。
【0158】
上記製造方法の具体的な実施形態において、上記β細胞は初代細胞であり、好ましくはβ細胞療法またはランゲルハンス島の移植を必要とする対象由来の初代細胞である。
【0159】
他の具体的な実施形態において、工程(i)で提供される上記β細胞は、上記iPS細胞をβ細胞に分化させた後に、iPS細胞から得られている。
【0160】
したがって、特定の実施形態において、本開示は、以下の工程を含む、誘導多能性幹細胞からβ細胞をインビトロで産生するための方法に関する:
(i)誘導多能性幹細胞(iPSC)を提供する工程、
(ii)上記iPSCをランゲルハンス島のβ細胞にインビトロで分化させる工程、および、
(iii)増殖条件下において上記分化させたβ細胞を培養する工程、
iPS細胞を分化するおよび/または、上記β細胞の増殖を誘導するために、工程(ii)および/または工程(iii)において十分な量の上記Rspo1タンパク質またはアナログを添加する。
【0161】
iPSCをランゲルハンス島のβ細胞に分化させるための方法は、例えば、Pagliuca, et al. Cell 159, 428-439 (2014)およびRezania et al. Nat Biotechnol. 2014 Nov;32(11):1121-33等で、当技術分野において既に説明されており、関連部分は本開示に組み込まれる。
【0162】
上記開示はさらに、例えば、糖尿病、好ましくは1型糖尿病、を処置するための対象において、上記方法によって得ることができるまたは得られた上記β細胞を含む組成物、および細胞療法製品としてのその使用をさらに含む。β細胞またはランゲルハンス島を患者に移植するための方法は、例えば、Shapiro, et al (2000) The New England Journal of Medicine. 343 (4): 230-238、および、Shapiro et al (2017) Nature Reviews Vol 13 : 268-277に開示されている。
【0163】
本明細書に開示される組成物(例えば、本開示のRspo1タンパク質)および使用説明書からなるキットもまた、本開示の範囲内である。キットは、少なくとも1つのさらなる試薬、または1つ以上のさらなる抗体もしくはタンパク質をさらに含むことができる。キットは、典型的にはキットの内容物の意図される使用を示すラベルを含む。用語「ラベル」は、キット上またはキットと共に供給される、または別にキットに付随する、任意の書面または記録された材料を含む。キットは上記で定義したように、患者がRspo1処置に応答するグループに属するか否かを診断するためのツールをさらに含んでもよい。
【0164】
別の治療ストラテジーは、ヒト対象の試料から単離されたβ細胞を増殖させる薬剤としての、本明細書に開示されるRspo1タンパク質の使用に基づく。
【0165】
したがって、本開示は、以下の工程を含む、必要とする対象を治療するための方法に関する:
(a)対象から細胞を単離する工程、
(b)任意で、上記細胞を増殖および/またはリプログラミングして、誘導多能性幹細胞にする工程、
(c)上記iPS細胞をβ細胞に分化させる工程、
(d)Rspo1タンパク質またはアナログ、例えば配列番号1~4および配列番号8~24のいずれか1つを含む組換えタンパク質またはその機能的バリアント、の存在下、任意で他の細胞と、上記β細胞をインビトロで増殖させる工程、
(e)任意で、増殖したβ細胞を回収し、および/または増殖したβ細胞を処方し、治療有効量の上記増殖したβ細胞を対象に投与する工程。
【0166】
本開示はさらに、本明細書に開示される上記Rspo1タンパク質(配列番号1~4および配列番号8~24のいずれか1つを含む組換えタンパク質またはその機能的バリアント等)の、β細胞をインビトロで増殖させる薬剤としての使用に関する。
【0167】
本開示はまた、ヒト、特に機能的β細胞を損失している対象、典型的には糖尿病に罹患している対象、におけるβ細胞の増殖を誘導するための薬剤としてインビボで使用するための、本明細書に開示されるRspo1タンパク質(配列番号1~4および配列番号8~24のいずれか1つを含む組換えタンパク質またはその機能的バリアント等)にも関する。
【0168】
したがって、本開示は、以下の工程を含む、糖尿病、例えば、1型糖尿病または機能的β細胞の損失を伴う別の障害、に罹患している対象の処置方法に関する:
(i)上記対象において、有効量の本明細書に開示されるRspo1タンパク質またはアナログ、典型的にはRspo1タンパク質を投与する工程、および、
(ii)上記対象において有効量のβ細胞組成物を投与する工程、
上記有効量のRspo1タンパク質またはアナログは、上記β細胞組成物の増殖を増加させる能力を有する。工程(i)および(ii)は同時にまたは連続して実施することができ、特に、工程(i)または工程(ii)のいずれかを最初に上記対象に投与する。
【0169】
十分に説明された本発明は以下の実施例によってさらに説明されるが、これらは例示に過ぎず、さらなる限定を意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0170】
図1】WTマウス膵臓におけるR-スポンジン遺伝子発現のRT-qPCR分析。Rspo1はマウス膵臓で発現し、逆にRspo2とRspo4は検出されない。(n=5、齢=3カ月、p<0.0001(****)、p<0.001(***)、p<0.01(**)、および、p<0.05。
図2】胎生15.5日(E15.5)から生後9カ月までのマウス膵臓におけるRspo1発現のRT-qPCR分析。(n=5、p<0.0001(****)、p<0.001(***)、p<0.01(**)、および、p<0.05())。
図3】Rspo1プローブで標識した成体膵臓のRNAscope。両方のRNAの発現は、外分泌コンパートメント内の腺房細胞(細胞内の点)に限定されている。
図4】Rspo1KOマウスにおけるIPGTT。Rspo1損失は、血糖ピークの有意な減少を伴う耐糖能の改善につながる。(n=5、齢=2.5カ月、p<0.0001(****)、p<0.001(***)、p<0.01(**)、および、p<0.05())
図5】Rspo1KOマウス膵臓の定量分析。Rspo1損失はランゲルハンス島の構造変化を誘導せず、全膵島表面はRspo1損失時に変化しない(A)。実際、Rspo1KOマウスでは、インスリン(B)、グルカゴン(C)およびソマトスタチン産生細胞数(D)に変化は認められなかった。(n=5;齢=3カ月、p<0.0001(****)、p<0.001(***),p<0.01(**),p<0.05())
図6】Rspo1組換えタンパク質によって処置された野生型マウスの体重および基礎血糖。Rspo1組換えタンパク質処置は、体重および基礎血糖のいかなる変化も誘導しない(n=6;処置開始時の齢=2カ月、p<0.0001(****)、p<0.001(***)、p<0.01(**)、および、p<0.05())
図7】Rspo1処置時のIPGTTおよびインスリン血症測定。処置された動物は齢を一致させた対照マウスと比較して耐糖能が良好であり、血糖ピークが強く低下し、正常血糖への戻りが早い(A)。耐糖能の亢進は、Rspo1投与時のグルコース刺激インスリン分泌の増加によって引き起こされる(B)(n=6、齢=3カ月、p<0.0001(****)、p<0.001(***)、p<0.01(**)、および、p<0.05())
図8】Rspo1投与時のパラフィン膵臓切片の免疫蛍光分析。Rspo1組換えタンパク質で処置されたマウスは有意な膵島肥大(明るい灰色)および増殖β細胞数の増加(BrdUで標識されている(白色))を示す。
図9】Rspo1組換えタンパク質注射時のWT膵臓の定量分析。Rspo1を毎日注射したマウスにおいて、有意なβ細胞増殖の増加が示された。結果として、生理食塩水のみを注射した齢を一致させた対照と比較して、組換えRspo1で処置したマウスで膵島面積が増加した。Rspo1組換えタンパク質投与はβ細胞量(C)を有意に増加させるが、α細胞数(D)には何ら影響を示さない。(n=6、齢=3カ月、p<0.0001(****)、p<0.001(***)、p<0.01(**)、および、p<0.05()。
図10】Rspo1処置はβ細胞アブレーション時に機能的β細胞新生を誘導する。WTマウスを高用量のストレプトゾトシン(STZ)で処置してβ細胞をアブレーションした後、明らかに糖尿病(血糖≧300mg/dl)であるときにRspo1(または生理食塩水)で処置した。生理食塩水で処置した動物は深刻な高血糖を発症したが、Rspo1で処置した対応物は血糖のピークに続いて血糖値が徐々に正常化した。これらの実験の過程の間の定量的な免疫組織化学分析(着色した長方形におけるパーセンテージ)は、STZ後のβ細胞の損失をはっきり示した。興味深いことに、Rspo1処置時に、インスリン+細胞数の漸進的増加が観察され、この継続的増加は最終的に全β細胞量の補充をもたらした。
図11】Rspo1処置はヒトβ細胞増殖を誘導する。ヒト膵島を、Rspo1の存在下または非存在下、およびBrdUの存在下で5日間培養した。免疫組織化学分析では、対照(左)におけるインスリン産生細胞の増殖(白点)は非常に少なかった。興味深いことに、Rspo1処置(右)において、ヒト増殖β細胞数の大幅な増加がはっきり示され、Rspo1がヒトβ細胞増殖も誘導できることが実証された。
図12】デフォルト設定を使用した、Clustal Omegaを使用してオンラインで得られたRスポンジン1のヒト配列およびマウス配列のアライメント(https://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/)
図13】ヒトRスポンジン-1についての異なるドメインの模式図を提供する。
図14】Min6細胞を、種々の濃度のヒト組換えRspo1(hR1)で24時間処置した。Min6の定量によって、hR1が200nMおよび400nMの濃度において不死化マウスβ細胞を有意に刺激することができることを明らかにした。
図15】組換えhR1をエンドトキシンから精製し、Min6細胞と種々の濃度でインキュベートした。24時間後、Min6細胞の数は、対照と比較して、400nMおよび1μMのhR1での暴露で有意に高かった。
図16】定量分析により、hR1の単回用量により、WTマウスにおいて増殖β細胞数を有意に増加させることができることが実証された。
図17】免疫染色されたβ細胞の定量研究によって、hR1での長期間の処置は、PBSを注射された対照と比較して、増殖β細胞の数および膵島全体のサイズを有意に増加させることが実証された。
【実施例
【0171】
[Rスポンジン1天然タンパク質の機能的等価物の活性を決定するための詳細なプロトコール]
(1.SPRアッセイによって決定された、LGR4受容体への結合親和性)
表面プラズモン共鳴(SPR)を、Biacore3000装置(Biacore, Uppsala, Sweden)を使用して行う。リガンド(マウスLgr4)の固定化は、デキストラン被覆CM5チップの活性化、続いてチップ表面のリガンドの共有結合によって達成される。リガンド安定化後、精製Rspo1組換えタンパク質(100mM)を固定化リガンド表面上に流し、リガンドに対する分析対象物の結合応答を記録する。相互作用のレベルは応答単位(RU)で表され、最大値は親和性/相互作用の最大レベルに対応する。
【0172】
(2.インビトロのβ細胞増殖アッセイで決定された、機能的β細胞の増殖の誘導)
Rspo1組換えタンパク質処理での増殖アッセイのために、細胞を、150.000細胞/ウェルの濃度においてガラス上およびカバースリップ上の6ウェルプレートに播種し、そして処理の12時間前に無血清標準培養培地(1%ペニシリン/ストレプトマイシンが補充された)中で維持する。細胞を、67ng/mlのR1を含む無血清標準培養培地または培地のみ(対照)を使用して、5分間、1時間、6時間および24時間さらに培養する。処理後、カバースリップを最初にPBSで洗浄し、次いで4%PFA中で5分間固定し、0.1%Triton中で10分間透化処理し、撹拌しながら4℃においてPBS中に保存する。免疫標識の前に、細胞をブロッキング溶液(PBS、10%FCS)中で45分間ブロッキングし、次いで、一次抗体(Ki67 1:50、Dako、M7249)と共に4℃において一晩インキュベートする。続いて、細胞をPBS(3×5分)で洗浄し、二次抗体(例えば、ロバ抗ラットIgG二次抗体、Alexa Fluor 488コンジュゲート、1:1000)と45分間インキュベートする。カバースリップをDAPI(Vectashield、H-1200)を含む封入剤でマウントし、ZEISS Axiomanager Z1 Imaging Systemを使用して処理する。増殖は、1切片あたりのKi67+細胞の数を数えて定量し、全細胞数/切片で正規化する。
【0173】
(3.インビボのβ細胞増殖アッセイで決定された、機能的β細胞の増殖の誘導)
動物管理のためのベルギー規則のガイドラインに従い、地方倫理委員会の承認を得て、トランスジェニックマウス系統および129-SV野生型動物(チャールズ・リバー)を収容し、使用した。
【0174】
Rspo1組換えタンパク質(SinoBiologic、50316-M08S)をPBSで溶解し、400μg/kgの濃度で毎日、腹腔内投与した。
【0175】
Rspo1添加時の細胞増殖を評価するために、WTマウスをRspo1で処置し、続いてBrdU(飲料水を介して1mg/ml)で7日間処置した後、試験を行う。DNA複製中にBrdUを組み込んだ細胞を、免疫組織化学を使用して検出する。
【0176】
免疫組織化学のために、組織を単離し、4℃において30分間、4%PFA中で固定し、脱水し、パラフィン中に包埋し、そして6μmスライドに切片化する。切片を、アルコール濃度を減少させながら再水和し(キシレン、100%エタノール、80%エタノール、60%エタノール、30%エタノールおよび水)、次いでブロッキング緩衝液(PBS 10%ウシ胎仔血清-FCS)で処理し、一次抗体と共に4℃において一晩インキュベートする。マウスRspo1による実験では、使用した一次抗体は以下のものであった:モルモットポリクローナル抗インスリン(1/500)、マウスモノクローナル抗グルカゴン(1/500)およびマウスフルオレセインコンジュゲート抗ブロモデオキシウリジン(BrdU)(1/50)。次いで、スライドを二次抗体(1/1000を使用した)と共に室温で45分間インキュベートし、ZEISS Axiomanager Z1 Imaging Systemを使用して処理した。BrdU計数は、ランゲルハンス島内の増殖細胞を手動で計数し、総膵島表面上の最終数を正規化することによって評価する。すべての値は、少なくとも5匹の動物のデータセットの平均±SEMとして報告する。Prismソフトウェア(GraphPad)を使用して、ダゴスティーノ-パーソンオムニバス正規性検定を使用してそれらが正規分布に従ったか否かを最初に決定することによって、データを分析する。従っていない場合は、対応のない(unpaired)/ノンパラメトリックのマン-ホイットニー検定を使用した。逆に、ガウス分布を仮定して、対応のないt検定(2群を比較した)または対応のないAnova試験(2群超を比較した)を使用する。p<0.0001(****)、p<0.001(***)、p<0.01(**)、p<0.05()の場合、結果は有意とみなす。
【0177】
(4.インビトロのβ細胞増殖アッセイで決定された、グルコース刺激インスリン分泌(GSIS)の増加)
Rspo1組換えタンパク質補充によるGSISの評価のために、MIN6細胞を、低グルコース(2mM)および高グルコース(25mM)無血清標準培養培地と共に2時間インキュベートし、次いで、Rspo1(67ng/ml)を含む無血清標準培養培地または培地のみ(対照)でさらに2時間処理する。次いで、培地を回収し、4℃で3分間2000×gで遠心して上清を回収し、-20℃で保存する。
【0178】
MIN6上清のインスリン濃度を、ELISAイムノアッセイ(Mercodia, Uppsala, Sweden)によって、製造業者の指示に従って評価する。すべての試薬および試料を、使用前に室温に温めた。吸光度は分光光度計(Sunrise BasicTecan, Crailsheim, Germany)を使用して450nmで読み取り、Tecan Magellanデータ分析ソフトウェアで補完する。インスリン濃度は、Microsoft Excelの二次方程式を使用して計算した。キャリブレーション曲線は、対応するインスリン濃度値の平均に対して、各キャリブレーター(キャリブレーター0を除く)の既知の吸光度値をプロットすることによって算出する。
【0179】
(5.インビボのβ細胞増殖アッセイで決定された、グルコース刺激インスリン分泌(GSIS)の増加)
動物管理のためのベルギー規則のガイドラインに従い、地方倫理委員会の承認を得て、トランスジェニックマウス系統および129-SV野生型動物(チャールズ・リバー)を収容し、使用した。マウスRspo1組換えタンパク質をSinoBiological(50316-M08S)から入手した。
【0180】
Rspo1組換えタンパク質をPBSに溶解し、400μg/kgの濃度で5週間毎日腹腔内投与する。インスリン血症測定のために、1l/分の流速で酸素中に送達されたイソフルランを使用してマウスを麻酔する。眼窩後静脈洞から、ガラス毛細管を使用してK3EDTA採血管に全血試料を採取する。基礎インスリン血症を測定するために、6時間の飢餓状態後に血液試料を採取する。グルコース刺激インスリン分泌量を評価するために、2g/kg(体重)のD-(+)-グルコースを腹腔内注射した2分後にさらに採血を行う。全血試料を氷水中において一度に冷却する。血漿を、4℃において7分間、2000×gで遠心分離することによって分離する。得られた血漿を予め冷却したチューブに移し、液体窒素において速やかに凍結させ、最後に-80℃において保存する。
【0181】
マウス血漿試料のインスリン濃度を、ELISAイムノアッセイ(Mercodia, Uppsala, Sweden)により、製造業者の指示に従って評価する。すべての試薬および試料を、使用前に室温に温める。吸光度は分光光度計(Sunrise BasicTecan, Crailsheim, Germany)を使用して450nmで読み取り、Tecan Magellanデータ分析ソフトウェアで補完した。インスリン濃度は、Microsoft Excelの二次方程式を使用して計算する。キャリブレーション曲線は、対応するインスリン濃度値の平均に対して、各キャリブレーター(キャリブレーター0を除く)の既知の吸光度値をプロットすることによって算出する。
【0182】
[材料および方法]
(細胞培養)
15%熱不活化ウシ胎仔血清、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび100μg/mlL-グルタミンを補充した、25mmol/Lグルコースを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、加湿5%CO2、95%空気中において、Min6細胞を37℃で維持した。R1処理時の増殖アッセイのために、細胞を150.000細胞/ウェルの濃度で6ウェルプレートに播種し、試験した分子の種々の濃度で24時間インキュベートした。続いて、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、トリプシン-EDTAでプレートから持ち上げ、TOMAチャンバーにて手動で定量した。
【0183】
(動物の管理および操作)
マウスのプロトコールは、ニース大学の施設内倫理委員会(Ciepal-Azur)により審査および承認され、ヨーロッパの動物研究ガイドラインに従ってすべてのコロニーを維持した。動物管理のためのベルギー規則のガイドラインに従い、地方倫理委員会の承認を得て、トランスジェニックマウス系統および129-SV野生型動物(チャールズ・リバー)を収容し、使用した。
【0184】
Rspo1組換えタンパク質(SinoBiological, 50316-M08S; Peprotech, 120-38)をPBSに溶解し、腹腔内投与した。Rspo1添加時の細胞増殖を評価するために、WTマウスをRspo1で処置し、続いてBrdU(飲料水を介して1mg/ml)で7日間処置した後、試験を行った。DNA複製中にBrdUを組み込んだ細胞を、免疫組織化学を使用して検出した。
【0185】
(免疫組織化学)
組織を単離し、4℃において30分間、4%PFA中で固定し、脱水し、パラフィン中に包埋し、6μmスライドに切片化した。切片を、アルコール濃度を減少させながら再水和し(キシレン、100%エタノール、80%エタノール、60%エタノール、30%エタノールおよび水)、次いでブロッキング緩衝液(PBS 10%ウシ胎仔血清-FCS)で処理し、一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。使用した一次抗体は以下のものであった:モルモットポリクローナル抗インスリン(1/500)、マウスモノクローナル抗グルカゴン(1/500)、ヤギモノクローナル抗ソマトスタチン(1/250)、ウサギモノクローナル抗アミラーゼ(1/100)、ラットKi67(1/50)およびマウスフルオレセインコンジュゲート抗ブロモデオキシウリジン(BrdU)(1/50)。次いで、スライドを二次抗体(1/1000で使用した)と共に室温で45分間インキュベートし、ZEISS Axiomanager Z1およびVectra Polaris Automated Quantitative Pathology Imaging Systemを使用して処理した。
【0186】
Rspo1(プローブ401991)およびRspo3(プローブ402011)転写物のin situ RNA検出を、RNAscope(Advanced Cell Diagnostic)を使用して行った。組織を迅速に単離し、10%緩衝ホルマリン中で16時間固定し、脱水し、パラフィン中に包埋し、6μmスライドに切片化した。試料前処理、プローブハイブリダイゼーションならびにシグナル増幅および検出は、製造業者のプロトコールに従って行った。
【0187】
(腹腔内グルコース負荷試験(IPGTT)および血糖値測定)
IPGTTについては、マウスを6時間飢餓状態にし、体重による用量のD-(+)-グルコース(2g/kg)を腹腔内注射した。血糖値は、ONETOUCH Verio glucometer(LifeScan)を使用して、グルコース投与後の計器に示された時点で測定した。
【0188】
(血中インスリン値測定)
インスリン血症測定のために、1l/分の流速で酸素中に送達されたイソフルランを用いてマウスを麻酔した。眼窩後静脈洞から、ガラス毛細管を使用してK3EDTA採血管に全血試料を採取した。基礎インスリン血症を測定するために、6時間の飢餓状態後に血液試料を採取した。グルコース刺激インスリン分泌量を評価するために、2g/kg(体重)のD-(+)-グルコースを腹腔内注射した2分後にさらに採血を行った。全血試料を氷水中で一度に冷却した。血漿を、4℃で7分間、2000gで遠心分離することによって分離した。得られた血漿を予め冷却したチューブに移し、液体窒素中で速やかに凍結させ、最後に-80℃で保存した。
【0189】
(ELISA免疫測定法)
血漿インスリン濃度を、ELISAイムノアッセイ(Mercodia, Uppsala, Sweden)により、製造者の指示に従って評価した。すべての試薬および試料を、使用前に室温に温めた。吸光度は分光光度計(Sunrise BasicTecan, Crailsheim, Germany)を使用して450nmで読み取り、Tecan Magellanデータ分析ソフトウェアで補完した。インスリン濃度は、Microsoft Excelを使用して計算した。キャリブレーション曲線は、対応するインスリン濃度値の平均に対して、各キャリブレーター(キャリブレーター0を除く)の既知の吸光度値をプロットすることによって算出した。
【0190】
(定量およびデータ分析)
HALO-Indica Labsのモジュールを使用して、少なくとも5匹のマウス/遺伝子型/状態の膵臓全体について定量分析を行った。BrdU計数は、ランゲルハンス島内の増殖細胞を手動で計数し、総膵島表面上の最終数を正規化して評価した。すべての値は、少なくとも5匹の動物のデータセットの平均±SEMとして報告する。Prismソフトウェア(GraphPad)を使用して、ダゴスティーノ-パーソンオムニバス正規性検定を使用してそれらが正規分布に従ったか否かを最初に決定することによって、データを分析した。従っていない場合は、対応のない/ノンパラメトリックのマン-ホイットニー検定を使用した。逆に、ガウス分布を仮定して、対応のないt検定(2群を比較した)または対応のないAnova試験(2群超を比較した)を使用した。p<0.0001(****)、p<0.001(***)、p<0.01(**)、p<0.05()の場合、結果は有意とみなす。
【0191】
(ストレプトゾトシンを介した糖尿病の誘発)
高血糖を誘発するために、STZ(Sigma)を0.1Mクエン酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)に溶解し、溶解後10分以内に単回用量(115mg/kg)を腹腔内投与した。糖尿病の進行は、血糖値のモニターすることにより評価した。
【0192】
[結果]
RT-qPCR法を使用した徹底的な定量分析により、Rspo1は膵臓で発現しており、Rspo2およびRspo4のmRNAはまったく検出されないことを明らかにした(図1)。より正確に言えば、Rspo1は、胚第15.5日(E15.5)から始まる胚発生の間、すでに検出可能である。その後、生後(P6付近)にピークに達し、成体期の間に胚発生の量に戻る(図2)。
【0193】
Rspo1を特異的に認識する抗体の欠如により、膵臓内でのそれらの局在を評価するために、RNAscopeと呼ばれる比較的新しいin situハイブリダイゼーション技術を使用した。得られた結果から、Rspo1は外分泌コンパートメント内に局在し、その発現は腺房細胞に限定されることが示された(図3)。興味深いことに、さらなる分析により、ランゲルハンス島のみにおいて、さらに特にβ細胞において、Rspo1受容体であるLgr4の発現がはっきりと示され、ヒト膵島でも同様であった(図示せず)。
【0194】
Rspo1活性が膵臓の発達および機能に不可欠であるか否かを評価するために、最初にRspo1-フルノックアウト(Rspo1KO)マウス系統を分析した。このトランスジェニック系統において、Rspo1転写物の標的破壊は、LacZレポーター、続いてネオマイシン耐性カセットのRspo1遺伝子の第3エクソンへの挿入により達成された(Chassot, A. A.et al. Hum Mol Genet 17, 1264-1277, doi:10.1093/hmg/ddn016(2008))。
【0195】
Rspo1の発現が腺房細胞のみに限定されているにもかかわらず、膵臓生理に役割を果たすことができるか否かを決定するために、腹腔内グルコース負荷試験(IPGTT)を実施してグルコース刺激による正常血糖を回復する身体の能力を評価した。6時間の飢餓期間の後、Rspo1-/-変異マウスおよびRspo1+/+齢を一致させた対照(age-matched control)の両方に、グルコースの体重依存性投与を行った。
【0196】
重要なことに、Rspo1を欠くマウスは応答が有意に改善されたことを示し、血糖ピークが強く減少した。さらに、Rspo1欠損動物では正常血糖へのより速い回復も観察された(図4)。
【0197】
Rspo1機能損失動物におけるグルコース処理の改善の根底にある機構についてさらに洞察を得るために、定量分析を使用した。それゆえに、膵臓切片を、インスリン、グルカゴンおよびソマトスタチンホルモンを認識する抗体で免疫染色し、染色領域を定量した。総膵島表面の第1の分析は、試験した2つのグループの間に差異がないことを明らかにした(図5A)。さらに、より詳細な定量は、インスリン(図5B)、グルカゴン(図5C)およびソマトスタチン(図5D)を発現する細胞数におけるいかなる差異もはっきりと示さなかった。最後に、膵臓切片当たりの膵島の総数も評価し、Rspo1-/-マウスおよびその齢を一致させた対照との間に矛盾がないことを再度示した(図示せず)。
【0198】
得られた結果を考慮して、Rspo1損失時の耐糖能の改善が膵臓細胞数および機能の有意な変化によってではなく、インスリン感受性の末梢変化であって、Rspo1が全身において遺伝的に除去されることによって引き起こされるかもしれないという仮説を立てた。
【0199】
次に、Rspo1の過剰発現の結果について考えた。この目的を達成するために、野生型成体マウスに組換え型Rspo1タンパク質を4週間毎日腹腔内注射した。処置したマウスは、全処置期間を通じて、齢を一致させた対照(同量の生理食塩水のみを注射)と比較して、体重および基礎血糖に差を示さなかった(図6)。
【0200】
興味深いことに、IPGTTにより、Rspo1組換えタンパク質で処置したマウスは対照群と比較して、血糖ピークが低下し、正常血糖の回復が早いことから、耐糖能が有意に改善したことが明らかになった(図7A)。さらに、ELISA試験を使用してインスリン血中濃度を測定したところ、組換えRspo1を注射したマウスでは、齢を一致させた対照動物と比較してグルコース刺激インスリン分泌(GSIS)が亢進していることも実証できた(図7B)。
【0201】
最後に、これらの表現型の考えられる原因を説明するために、免疫蛍光技術に頼り、そして細胞増殖のマーカーであるインスリンおよびBrdUでパラフィン膵臓切片を染色した。驚くべきことに、Rspo1組換えタンパク質で処置したマウスの膵島内で増殖しているβ細胞の数が多いことを観察しただけでなく、これらのマウスにおいて膵島のサイズが大きくなっていることにも注目した(図8)。定量分析を使用して、Rspo1組換えタンパク質注射でβ細胞増殖の増加を確認することができた(図9A)。結果として、組換えRspo1で処置されたマウスのランゲルハンス島は、生理食塩水でのみ処置された齢を一致させた対照対応物と比較して有意に大きいことが見出された(図9B)。この増大したサイズは主に、インスリン産生β細胞量の増大によって引き起こされ(図9C)、α細胞量はRspo1投与後に変化しなかった(図9D)。
【0202】
補足(supplementary)インスリン産生細胞が機能的であるか否かを決定するために、WT動物に高用量のストレプトゾトシン(STZ)を注射し、膵臓β細胞量を除去した。これらの動物が明らかに糖尿病であり、血糖が約300mg/dlになったら、Rspo1または生理食塩水(対照)で毎日処置した。生理食塩水で処置した対照マウスでは血糖がさらに増加したが、Rspo1を処置した対照マウスでは(血糖の一過性のピークに続いて)安定したリカバリーが認められた(図10)。生理食塩水処置およびRspo1処置した、単離された膵臓の切片について定量的な免疫組織化学分析を行った。STZ処置はすべての条件においてインスリン産生細胞の損失を誘導したが、Rspo処置した動物においてそれらのβ細胞量の進行性再生を示し、β細胞アブレーション後に再構成された膵島をもたらした(図10)。対照と比較して寿命が長かった生存動物において体重(図示せず)および血糖が正常であったことは注目に値する。
【0203】
最後に、これらの結果がヒトにも転換され得るか否かを決定するために、Rspo1の存在下(75mM、5日間)または非存在下において、BrdUの存在下にてRPMI中でヒト膵島を培養し、増殖細胞を標識した。免疫組織化学分析では、対照において増殖インスリン産生細胞は非常に少なかった(図11)。興味深いことに、Rspo1処置では、ヒト増殖β細胞数の大幅な増加がはっきり示され、Rspo1がヒトβ細胞増殖も誘導できることが実証された。
【0204】
(ヒトRspo1)
ヒトRspo1(hR1)がマウスβ細胞増殖を刺激しているか否かを評価するために、hR1をマウスインスリノーマ(Min6)細胞と共に種々の濃度において24時間インキュベートした。特に、hR1は、200nMおよび400nMの濃度において、PBSでインキュベートした対照細胞と比較して、Min6数が26%の有意な増加を誘導した(図14)。hR1分裂促進性に対するエンドトキシンの寄与を排除するために、hR1のエンドトキシン精製調製物を使用して実験を繰り返した。興味深いことに、この形態のhR1は、400nM以上の濃度においてインキュベートしたときに、β細胞数の35%増加をもたらした(図15)。
【0205】
これらのデータは、hR1がインビトロでマウスβ細胞に対して増殖効果を発揮することを明確に示している。これらの実験結果をインビボの条件に移すために、WTげっ歯類に短期処置を行った。具体的には、100μg/Kg、400μg/Kgおよび1350μg/Kgの濃度でhR1を注射してから30分後にマウス膵臓を回収した。Ki67標識β細胞の免疫組織化学分析および定量分析から、hR1はインビボで投与するとβ細胞の増殖を強く誘導できることが示された(図16)。
【0206】
これらの実験結果によって助長されるように、30μg/Kg~400μg/Kgに及ぶ異なる用量でhR1を毎日注射した成体WT動物の長期処置を行った。この実験のために、マウスに組換えhR1のエンドトキシン精製調製物を28日間投与した。その後、動物を屠殺し、β細胞マーカープロホルモンコンベラート1/3(PC1/3)およびBrdUを認識する抗体を使用して膵臓組織を免疫蛍光法により分析し、増殖細胞を同定した。興味深いことに、BrdUおよびPC1/3二重陽性細胞の有意な増加が、200μg/Kgおよび400μg/Kgの濃度において組換えhR1で処置したマウスにおいて観察された(図17)。特に、β細胞の過剰増殖は膵島サイズの有意な増大と関連していた(図17)。
【0207】
[結論]
得られたデータは、マウス膵臓におけるRspo1の重要な役割を説明する。組換え型である完全長のタンパク質の毎日の注射によって達成されるRspo1の過剰発現のみにより、処置されたマウスのグルコース耐性が有意に改善されるだけでなく、β細胞量が増加する。興味深いことに、この新しい増殖β細胞も完全に機能しているように見え、処置されたマウスはグルコース刺激時により多量のインスリンを産生することができる。重要なのは、ほぼ完全なβ細胞アブレーションによって、残りのβ細胞が正常血糖を維持できる機能的β細胞量を増殖および再構成できるという知見であった。これらのデータはまた、ヒト組換えRspo1がマウスβ細胞の増殖を刺激し、ランゲルハンス島のサイズを増大させることができることを強く示している。最後に、Rspo1がヒトβ細胞増殖を誘導することもできるという実証は、新たな予想外の道を開く。
【0208】
これらの結果を総合すると、Rspo1は膵臓において重要なパラクリン役割を果たし、例えば、Rspo1タンパク質のインビボ投与によるRspo1発現の増加を目指す方策は、ヒトにおける糖尿病の処置および/または予防に有益であることを示唆している。
【0209】
【表2-1】
【0210】
【表2-2】
【0211】
【表2-3】
【0212】
【表2-4】
【0213】
【表2-5】
図1
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図5
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【配列表】
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【国際調査報告】