(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-07
(54)【発明の名称】癌を治療するための組み合わせ療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20230228BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230228BHJP
A61K 31/502 20060101ALI20230228BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230228BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P35/00
A61K31/502
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022541991
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(85)【翻訳文提出日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 IB2021050122
(87)【国際公開番号】W WO2021140478
(87)【国際公開日】2021-07-15
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ハッターズリー,モーリーン
(72)【発明者】
【氏名】パジョー プリオ,ゲイル
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ホアウェイ レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】デ ヴィータ,セレーナ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086CB05
4C086GA07
4C086GA12
4C086GA13
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、概して、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン及びオラパリブの治療的組み合わせ並びに対応する治療方法、医薬組成物及びキットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の治療を、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、前記ヒト対象に、第1の量の(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩と、第2の量のオラパリブ又はその薬学的に許容される塩とを投与することを含み;前記第1の量及び前記第2の量は、合わせて、治療有効量を構成し;及び(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩は、断続的な投与スケジュール下で投与され、且つオラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、連続的な投与スケジュール下で投与される、方法。
【請求項2】
前記癌は、卵巣癌、乳癌、膵臓癌及び前立腺癌から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項3】
前記癌は、再発性又は難治性癌である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記癌は、白金抵抗性又は白金難治性である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩は、21日のサイクルにわたって断続的な投与スケジュール下で経口投与され;且つオラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、21日のサイクルにわたって連続的な投与スケジュール下で経口投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩は、21日毎に連続した7~14日にわたって断続的な投与スケジュールで経口投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩は、21日毎に連続した7又は14日にわたって断続的な投与スケジュールで経口投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩は、21日のサイクルにわたって断続的な投与スケジュール下で経口投与され;且つオラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、7日のサイクルにわたって連続的な投与スケジュール下で経口投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩は、7日毎に連続した3~5日にわたって断続的な投与スケジュールで経口投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩は、7日毎に連続した3又は5日にわたって断続的な投与スケジュールで経口投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
約5mg~約15mgの(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩は、1日1回又は2回、前記ヒト対象に経口投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
約200mg~約300mgのオラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、1日2回、前記ヒト対象に経口投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
癌の治療における使用のための(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩であって、前記治療は、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩の断続的な投与と、オラパリブ又はその薬学的に許容される塩の連続的な投与とを含む、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
癌の治療における使用のためのオラパリブ又はその薬学的に許容される塩であって、前記治療は、オラパリブ又はその薬学的に許容される塩の連続的な投与と、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩の断続的な投与とを含む、オラパリブ又はその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
前記癌は、卵巣癌、乳癌、膵臓癌及び前立腺癌から選択される、請求項13又は14に記載の使用。
【請求項16】
前記癌は、再発性又は難治性癌である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記癌は、白金抵抗性又は白金難治性である、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される担体を含む第1の医薬組成物と;
オラパリブ又はその薬学的に許容される塩を含む第2の医薬組成物及び使用のための指示書と
を含むキット。
【請求項19】
i)(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩、及びii)オラパリブ又はその薬学的に許容される塩を含む医薬品。
【請求項20】
(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩及びオラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、単一の剤形中に存在する、請求項19に記載の医薬品。
【請求項21】
(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩及びオラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、別々の剤形中に存在する、請求項19に記載の医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる、2020年1月9日に出願された米国仮特許出願第62/958,792号明細書の米国特許法第119条(e)下の優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
癌の治療は、かなり進歩してきたが、そのような癌を有するこれらの患者の多くは、不治の病を抱えて生きている。癌には多くのタンパク質及び経路が関与しており、その研究は、急速に進んでいる。したがって、不治の癌を有する患者のために新たな治療の発見を継続することは、重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
いくつかの実施形態では、癌の治療を、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、ヒト対象に、第1の量の(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩と、第2の量のオラパリブ又はその薬学的に許容される塩とを投与することを含む方法が開示される。その方法において、第1の量及び第2の量は、合わせて、治療有効量を構成する。さらに、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩は、断続的な投与スケジュール下で投与され、且つオラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、連続的な投与スケジュール下で投与される。
【0004】
いくつかの実施形態では、癌の治療における使用のためのAZD5153又はその薬学的に許容される塩が開示され、治療は、AZD5153又はその薬学的に許容される塩の断続的な投与と、オラパリブ又はその薬学的に許容される塩の連続的な投与とを含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、癌の治療における使用のためのオラパリブ又はその薬学的に許容される塩が開示され、治療は、オラパリブ又は薬学的に許容される塩の連続的な投与と、AZD5153又はその薬学的に許容される塩の断続的な投与とを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、癌は、卵巣癌、乳癌、膵臓癌及び前立腺癌から選択される。
【0007】
いくつかの実施形態では、癌は、再発性又は難治性癌である。
【0008】
いくつかの実施形態では、癌は、白金抵抗性又は白金難治性である。
【0009】
いくつかの実施形態では、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩は、21日のサイクルにわたって断続的な投与スケジュール下で経口投与され;且つオラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、21日のサイクルにわたって連続的な投与スケジュール下で経口投与される。
【0010】
いくつかの実施形態では、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩は、21日毎に連続した7~14日にわたって断続的な投与スケジュールで経口投与される。例えば、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩は、21日毎に7、8、9、10、11、12、13又は14日にわたって連続して経口投与され、及び21日サイクルの残りの日は、空き日である。
【0011】
いくつかの実施形態では、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩は、21日のサイクルにおいて1日目から7日目まで経口投与され、8日目から21日目までは、空き日である。
【0012】
いくつかの実施形態では、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩は、21日のサイクルにおいて1日目から14日目まで経口投与され、15日目から21日目までは、空き日である。
【0013】
いくつかの実施形態では、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩は、7日のサイクルにわたって断続的な投与スケジュール下で経口投与され;且つオラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、7日のサイクルにわたって連続的な投与スケジュール下で経口投与される。
【0014】
いくつかの実施形態では、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩は、7日毎に連続した3~5日にわたって断続的な投与スケジュールで経口投与される。例えば、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩は、7日毎に3、4又は5日にわたって連続して経口投与され、及び7日サイクルの残りの日は、空き日である。
【0015】
いくつかの実施形態では、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩は、7日のサイクルにおいて1日目から3日目まで経口投与され、4日目から7日目までは、空き日である。
【0016】
いくつかの実施形態では、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩は、7日のサイクルにおいて1日目から5日目まで経口投与され、6日目及び7日目は、空き日である。
【0017】
いくつかの実施形態では、約5mg~約15mgの(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩は、1日1回又は2回、ヒト対象に経口投与される。いくつかの実施形態では、約5mg~約10mgの3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩は、1日1回又は2回、ヒト対象に経口投与される。例えば、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩は、1日1回約5mg、1日2回約5mg、1日1回約10mg、1日2回約10mg、1日1回約15mg又は1日2回約15mgで経口投与され得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、約200mg~約300mgのオラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、1日2回、ヒト対象に経口投与される。いくつかの実施形態では、約200mg又は約300mgのオラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、1日2回、ヒト対象に経口投与される。例えば、オラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、1日2回約200mg又は1日2回約300mgで経口投与される。
【0019】
いくつかの実施形態では、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される担体を含む第1の医薬組成物と;オラパリブ又はその薬学的に許容される塩を含む第2の医薬組成物及び使用のための指示書とを含むキットが開示される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】OVCAR3異種移植モデルにおける断続的及び連続的投与スケジュールでのAZD5153単独、オラパリブ単独並びにAZD5153及びオラパリブの組み合わせによる治療後の経時的な腫瘍体積の縮小を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
いくつかの実施形態では、AZD5153及びオラパリブの組み合わせ療法によって癌を治療する方法が開示される。いくつかの実施形態では、方法は、それを必要とする対象に、第1の量のAZD5153又はその薬学的に許容される塩と、第2の量のオラパリブ又はその薬学的に許容される塩とを投与することを含み、第1の量及び第2の量は、合わせて、治療有効量を構成する。
【0022】
用語「AZD5153」は、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オンの化学名及び以下に示される構造を有する化合物を指す。
【化1】
【0023】
AZD5153は、二価トリアゾロピリダジン系ブロモドメイン及び末端外(BET)阻害剤である。ブロモドメイン含有タンパク質は、多様な疾病に関与しており、治療標的として非常に興味深い。BETファミリーは、BRD2、BRD3、BRD4及びBRDTとして知られる4種のタンパク質からなり、その各々が2つの別々のブロモドメインを含有する。BRD4は、特に、癌(例えば、血液系腫瘍)を治療するための有望な薬物標的としてみなされてきた。
【0024】
AZD5153の調製及び使用は、国際公開第2016/016618号パンフレットに開示され、その内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、遊離塩基AZD5153、すなわち(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オンが対象に投与される。いくつかの実施形態では、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オンの薬学的に許容される塩が対象に投与される。いくつかの実施形態では、結晶性AZD5153が対象に投与される。いくつかの実施形態では、AZD5153の共結晶が対象に投与され、コフォーマー分子は、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸である。結晶性AZD5153及びAZD5153の共結晶の例は、国際公開第2016/016618号パンフレットに記載される。
【0025】
オラパリブは、4-[(3-{[4-(シクロプロピルカルボニル)ピペラジン-1-イル]カルボニル}-4-フルオロフェニル)メチル]フタラジン-1(2H)-オンとして化学的に記載され、以下の化学構造を有する。
【化2】
【0026】
オラパリブは、PARP1、PARP2及びPARP3を含むポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)酵素の経口投与可能な阻害剤である。PARP酵素は、DNA転写及びDNA修復などの正常な細胞機能に関与する。オラパリブは、両方とも単剤療法又は以下の白金系化学療法として、インビトロで選択された腫瘍細胞株の増殖を阻害し、ヒト癌のマウス異種移植モデルにおける腫瘍増殖を低減することが示されている。オラパリブによる治療後の細胞傷害性及び抗腫瘍活性の増大は、DNA損傷の相同組換え修復(HRR)に関与するBRCA(乳癌遺伝子)及び非BRCAタンパク質において欠損を有する細胞株及びマウス腫瘍モデルにおいて認められ、白金応答と相関した。インビトロでの研究は、オラパリブに誘導される細胞傷害性がPARP酵素活性の阻害及びPARP-DNA複合体の形成の増大を伴い、DNA損傷及び癌細胞の死滅をもたらす場合があることを示した。
【0027】
オラパリブの調製及び使用は、国際公開第2004/080976号パンフレットに開示され、その内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、遊離塩基オラパリブが対象に投与される。いくつかの実施形態では、オラパリブの薬学的に許容される塩が対象に投与される。いくつかの実施形態では、結晶性オラパリブ又はオラパリブの薬学的に許容される塩が対象に投与される。いくつかの実施形態では、マトリックスコポリマー中にオラパリブの固体分散体を含む経口錠剤が対象に投与される。特定の実施形態では、経口錠剤は、マトリックスコポリマーのコポビドン中にオラパリブの固体分散体を含む。そのような固体分散体及び経口錠剤の調製は、国際公開第2010/041051号パンフレットに開示され、その内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
いくつかの実施形態では、AZD5153又はその薬学的に許容される塩及びオラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、治療サイクルにおいて別々に、逐次的に又は同時に投与される。いくつかの実施形態では、AZD5153又はその薬学的に許容される塩は、治療サイクルにおいて断続的に投与され、且つオラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、治療サイクルにおいて連続的に投与される。用語「断続的な」又は「断続的に」は、本明細書で使用する場合、治療サイクルにおいて規則的又は不規則的な間隔のいずれかで治療剤、例えばAZD5153の投与を中止すること及び開始することを意味する。継続的な投与に関して、治療サイクルにおいて少なくとも1日の空き日がある。「空き日」は、AZD5153が投与されない日を意味する。用語「連続的な」又は「連続的に」は、中止又は中断を伴わずに規則的な間隔で(すなわち空き日がない)治療剤、例えばオラパリブを投与すること指す。
【0029】
「サイクル」、「治療サイクル」又は「投与スケジュール」は、本明細書で使用する場合、規則的なスケジュールで繰り返される組み合わせ治療の期間を指す。例えば、治療は、1週間、2週間又は3週間なされる場合があり、AZD5153又はオラパリブは、協調的な様式で投与される。いくつかの実施形態では、治療サイクルは、約1週~約3ヶ月である。いくつかの実施形態では、治療サイクルは、約5日~約1ヶ月である。いくつかの実施形態では、治療サイクルは、約1週~約3週である。いくつかの実施形態では、治療サイクルは、約1週、約10日、約2週、約3週、約4週、約2ヶ月又は約3ヶ月である。いくつかの実施形態では、治療サイクルにおける休止の期間、すなわち空き日は、約1日~約1ヶ月である。いくつかの実施形態では、治療サイクルにおける休止の期間は、約1日、約3日、約5日、約1週、約2週又は約3週である。
【0030】
いくつかの実施形態では、AZD5153又はその薬学的に許容される塩及びオラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、1つ以上の治療サイクル、例えば治療コースにおいてヒト対象に投与される。「治療コース」は、複数の治療サイクルを含み、これらは、規則的なスケジュールで繰り返され得るか、又は患者の疾患進行が監視されるにつれて漸減スケジュールとして調整され得る。例えば、患者の治療サイクルは、より長い治療期間及び/又はより短い休止期間を治療コースの開始時(例えば、患者が最初に診断されるとき)に有し、癌が寛解に入ると、休止期間を長くすることにより、1つの治療サイクルの長さを長くすることができる。治療サイクルにおける治療及び休止の期間、治療サイクル数及び治療コース時間の長さは、患者の疾患進行、治療寛容性及び予後に基づいて、当業者により、治療コースの全体を通して決定及び調整され得る。いくつかの実施形態では、方法は、1~10回の治療サイクルを含む。いくつかの実施形態では、方法は、2~8回の治療サイクルを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、AZD5153又はその薬学的に許容される塩は、21日の治療サイクルにおいて7~14日(例えば、7、8、9、10、11、12、13又は14日)にわたって投与される一方、オラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、21日の治療サイクルにおいて21日にわたって投与される。いくつかの実施形態では、AZD5153又はその薬学的に許容される塩は、21日治療サイクルにおいて7又は14日にわたって投与される一方、オラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、21日の治療サイクルにおいて21日にわたって投与される。いくつかの実施形態では、AZD5153又はその薬学的に許容される塩は、7日の治療サイクルにおいて3~5日(例えば、3、4又は5日)にわたって投与される一方、オラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、7日の治療サイクルにおいて7日にわたって投与される。
【0032】
いくつかの実施形態では、AZD5153又はその薬学的に許容される塩は、21日治療サイクルにおいて1日目から7日目まで投与される一方、オラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、21日の治療サイクルにおいて1日目から21日目まで投与される。いくつかの実施形態では、AZD5153又はその薬学的に許容される塩は、21日治療サイクルにおいて1日目から14日目まで投与される一方、オラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、21日の治療サイクルにおいて1日目から21日目まで投与される。いくつかの実施形態では、AZD5153又はその薬学的に許容される塩は、7日治療サイクルにおいて1日目から5日目まで投与される一方、オラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、7日の治療サイクルにおいて1日目から7日目まで投与される。いくつかの実施形態では、AZD5153又はその薬学的に許容される塩は、7日治療サイクルにおいて1日目から3日目まで投与される一方、オラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、7日の治療サイクルにおいて1日目から7日目まで投与される。
【0033】
いくつかの実施形態では、AZD5153は、経口投与される。いくつかの実施形態では、AZD5153は、1日当たり最大約40mg(例えば、最大約5mg、最大約10mg、最大約15mg、最大約20mg、最大約25mg、最大約30mg、最大約35mg又は最大約40mgのAZD5153)の用量で投与される。AZD5153は、1日1回(QD)又は1日2回(BID)のいずれかで投与され得る。いくつかの実施形態では、AZD5153は、約5mgのBID、約10mgのQD、約10mgのBID又は約15mgのQDの用量で投与される。
【0034】
いくつかの実施形態では、オラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、経口投与される。いくつかの実施形態では、オラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、カプセル剤形中にある。いくつかの実施形態では、オラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、錠剤剤形中にある。いくつかの実施形態では、オラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、1日当たり2回の約300mgの用量で経口投与される。いくつかの実施形態では、オラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、1日2回の約200mgの用量で経口投与される。
【0035】
いくつかの実施形態では、AZD5153及びオラパリブは、21日の治療サイクルにおいて癌を治療するために対象に経口投与され、AZD5153は、治療サイクルにおいて1日目から7日目まで約5mgのBID、10QD、10mgのBID、15mgのQD又は15mgのBIDの用量で投与され、オラパリブは、治療サイクルにおいて1日目から21日目まで約200mg又は300mgのBIDの用量で投与される。
【0036】
いくつかの実施形態では、AZD5153及びオラパリブは、21日の治療サイクルにおいて癌を治療するために対象に経口投与され、AZD5153は、治療サイクルにおいて1日目から14日目まで約5mgのBID、10QD、10mgのBID、15mgのQD又は15mgのBIDの用量で投与され、オラパリブは、治療サイクルにおいて1日目から21日目まで約200mg又は300mgのBIDの用量で投与される。
【0037】
いくつかの実施形態では、AZD5153及びオラパリブは、7日の治療サイクルにおいて癌を治療するために対象に経口投与され、AZD5153は、治療サイクルにおいて1日目から5日目まで約5mgのBID、10QD、10mgのBID、15mgのQD又は15mgのBIDの用量で投与され、オラパリブは、治療サイクルにおいて1日目から7日目まで約200mg又は300mgのBIDの用量で投与される。
【0038】
いくつかの実施形態では、AZD5153及びオラパリブは、7日の治療サイクルにおいて癌を治療するために対象に経口投与され、AZD5153は、治療サイクルにおいて1日目から3日目まで約5mgのBID、10QD、10mgのBID、15mgのQD又は15mgのBIDの用量で投与され、オラパリブは、治療サイクルにおいて1日目から7日目まで約200mg又は300mgのBIDの用量で投与される。
【0039】
「治療する」、「治療すること」及び「治療」という用語は、対象におけるBRD4、PARP若しくは癌に関連する酵素若しくはタンパク質活性の減少若しくは阻害、対象における癌の1つ以上の症状の改善又は対象における癌の進行の緩徐化若しくは遅延を含む。用語「治療する」、「治療すること」及び「治療」は、対象における腫瘍の成長又は癌性細胞の増殖の低下又は阻害も含む。
【0040】
用語「阻害する」、「阻害」又は「阻害すること」は、生物活性又はプロセスのベースラインの活性における減少を含む。
【0041】
用語「癌」は、身体の一部における異常な細胞の制御されない分裂によって引き起こされる疾患を含むが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、癌は、BRD4阻害剤(例えば、AZD5153)による治療に影響されやすい癌を含む。いくつかの実施形態では、癌は、PARP阻害剤(例えば、オラパリブ)による治療に影響されやすい癌を含む。いくつかの実施形態では、癌は、卵巣癌、乳癌、膵臓癌及び前立腺癌である。いくつかの実施形態では、癌は、再発性又は難治性癌である。いくつかの実施形態では、癌は、白金抵抗性又は白金難治性癌である。
【0042】
用語「医薬組成物」は、活性成分及び薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤を含む組成物を含み、活性成分は、AZD5153若しくはその薬学的に許容される塩又はオラパリブ若しくはその薬学的に許容される塩である。用語「薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤」は、当業者によって確かめられるように、妥当な医学的判断の範囲内において、過度の毒性、刺激作用、アレルギー応答又は他の問題若しくは合併症を伴うことなく、人間及び動物の組織に接する使用に適した化合物、物質、組成物及び/又は製剤を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、サシェ剤などの固形剤形である。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、1つ以上の水性又は非水性の、非毒性の、非経口的に許容されるバッファ系、希釈剤、可溶化剤、共溶媒又は担体中の注射可能な滅菌溶液の形態である。無菌注射用調製物は、無菌注射用水性若しくは油性懸濁液又は非水性希釈剤、担体若しくは共溶媒中の懸濁液でもあり得、これは、1つ以上の適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用して、既知の手順に従って製剤化され得る。医薬組成物は、ivボーラス/点滴注入のための溶液又は他の賦形剤を有する若しくは有しない緩衝系との還元のための凍結乾燥系(これのみ若しくは賦形剤を有する)とすることができる。凍結乾燥された冷凍乾燥物質は、非水性溶媒又は水性溶媒から調製され得る。剤形は、以降の点滴のためのさらなる希釈のための濃縮物でもあり得る。
【0043】
用語「対象」は、恒温哺乳動物、例えば霊長動物、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット及びマウスを含む。いくつかの実施形態において、対象は、霊長類であり、例えばヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、卵巣癌、乳癌、膵臓癌及び前立腺癌などの癌に罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、卵巣癌又は乳癌に罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、再発性又は難治性卵巣癌に罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、再発性又は難治性乳癌に罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、癌に罹患しており、未治療である(例えば、癌のための治療を全く受けていない)。いくつかの実施形態では、対象は、癌に罹患しており、白金抵抗性又は白金難治性である。白金抵抗性疾患は、白金系レジメンが最後に施されてから6ヶ月以内の進行によって定義される。白金難治性疾患は、白金含有レジメンの間に少なくとも部分奏効がないことによって定義される。白金系レジメンは、シスプラチン及びカルボプラチンなどの金属白金を含有する薬物を含む。
【0044】
用語「治療有効量」は、両方を合わせて、対象において生物学的又は医学的応答、例えばBRD2、BRD3、BRD4及びBRDTの1つ以上又は癌を含むPARP、BETに関連する酵素又はタンパク質活性の低下又は阻害;癌の症状の寛解;又は癌の進行の緩徐化又は遅延を誘発することになるAZD5153の量及びオラパリブの量を含む。いくつかの実施形態では、用語「治療有効量」は、両方を合わせて、少なくとも部分的に癌を軽減し、阻害し、且つ/若しくは回復させるか、又はBRD4若しくはPARPを阻害し、且つ/若しくは対象における腫瘍の成長若しくは癌性細胞の増殖を低下させるか若しくは阻害するのに有効である、AZD5153及びオラパリブの量を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、AZD5153又はその薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される担体を含む第1の医薬組成物と;オラパリブ又は薬学的に許容される塩を含む第2の医薬組成物;並びに第1及び第2の医薬組成物を組み合わせて使用するための指示書とを含むキットが開示される。いくつかの実施形態では、第1の医薬組成物は、第1の量の(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩を含み、且つ第2の医薬組成物は、第2の量のオラパリブ又はその薬学的に許容される塩を含み;第1の量及び第2の量は、合わせて、治療有効量を構成する。
【0046】
いくつかの実施形態では、i)(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩、及びii)オラパリブ又はその薬学的に許容される塩を含む医薬品が開示される。医薬品のいくつかの実施形態では、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩及びオラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、単一の剤形中に存在する。医薬品のいくつかの実施形態では、(3R)-4-[2-[4-[1-(3-メトキシ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-b]ピリダジン-6-イル)-4-ピペリジル]フェノキシ]エチル]-1,3-ジメチル-ピペラジン-2-オン又はその薬学的に許容される塩及びオラパリブ又はその薬学的に許容される塩は、別々の剤形中に存在する。
【実施例】
【0047】
実施例1.卵巣癌の前臨床モデルにおけるオラパリブと組み合わせたAZD5153、二価BRD4阻害剤の有効性
OVCAR3:NIH-OVCAR3ヒト卵巣腫瘍細胞(15×106/マウス)を雌CB.17 SCIDマウスに皮下移植した。マウスは、腫瘍体積に基づいて有効性に関して8個の群に無作為化され、移植後およそ10日間、溶媒(0.5% HPMC/0.1% Tween 80)、AZD5153;オラパリブ又はAZD5153及びオラパリブの組み合わせのいずれかで治療された。AZD5153は、0.5% HPMC/0.1% Tween 80において製剤化され、42日にわたって経口投与された。オラパリブは、精製水中の50%の30%w/v HP-B-CD(Kleptose)において製剤化され、42日にわたって投与された。組み合わせ群に関して、オラパリブは、42日にわたって毎日投与され、AZD5153は、毎日、2サイクルに関して7日の投与及び14日の休止又は2サイクルに関して14日の投与及び7日の休止のいずれかで投与された。腫瘍の長さ及び幅をノギスで測定し、式(長さ×幅2)*π/6を使用して腫瘍体積を算出し、続いて腫瘍体積として報告した。
【0048】
結果:
図1に示されるとおり、AZD5153及びオラパリブの単剤療法の両方は、OVCAR3卵巣モデルにおいて中程度に有効であり、薬剤の組み合わせは、非常に強力な有効性を示し、組み合わせの有効性は、AZD5153の断続的な投与で維持され、AZD5153による毎日の投与に匹敵する。
【0049】
実施例2.再発性/難治性の卵巣癌、膵臓癌、三種陰性乳癌又は前立腺癌を治療するための組み合わせの臨床試験
MTD単剤療法拡大及びオラパリブ組み合わせ用量漸増に特異的な組み入れ基準(HGSO癌患者)
・再発した状況における白金抵抗性若しくは白金難治性HGSO、卵管又は原発性腹膜癌が組織学的又は細胞学的に確認された。白金抵抗性疾患は、白金系レジメンが最後に施されてから6ヶ月以内の進行によって定義される。白金難治性疾患は、白金含有レジメンの間に少なくとも部分奏効がないことによって定義される。
・標準療法に対して難治性であるか又は標準療法が存在しない三種陰性乳癌(TNBC)
・難治性転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCPRC)
・標準治療時に進行を伴う膵管腺癌(PDAC)
・再発した状況において白金抵抗性又は白金難治性HGSO(高いグレードの深刻な卵巣)であると組織学的又は細胞学的に確認された患者は、RECIST v1.1判定基準(Eisenhauer et al.2009)に従ってCTスキャンによりベースライン時に正確に評価することができ、反復評価に好適な少なくとも1つの病変を有しなければならない。白金抵抗性疾患は、白金系レジメンが最後に施されてから6ヶ月以内の進行によって定義される。白金難治性疾患は、白金含有レジメンの間に少なくとも部分奏効がないことによって定義される。
・患者は、それらのBRCA変異状態とは無関係に試験に許容されることになる。それらのBRCA変異状態についての情報は、患者がそれらの標準治療の一部として試験されている場合、収集されなければならない。
・オラパリブ又は他のPARP阻害剤に対する以前の応答は、要求されない。
・患者は、スクリーニング時の生検に受け入れられる少なくとも1つの疾患部位を有しなければならず、腫瘍生検のための候補でなければならない。患者は、スクリーニング中に新規の腫瘍生検を受けるものとする。治療中の腫瘍生検は、この試験のオラパリブ組み合わせ用量漸増部分において必須であり、MTD(最大耐用量)での単剤療法拡大において同意している患者から任意選択で行われることになる。
・この試験のオラパリブ組み合わせ部分に関して、患者は、試験参加時に≧10g/dLのヘモグロビンを有することが要求される。
【0050】
AZD5153+オラパリブ組み合わせ用量漸増
AZD5153とオラパリブの組み合わせは、10mgのBIDのAZD5153及び300mgのBIDのオラパリブの用量で開始することになる。組み合わせ投与は、中断の判定基準を満たすまで21日のサイクル期間にわたって進行することになる。
【0051】
300mgのBIDのオラパリブと組み合わせたAZD5153の次の用量レベルは、進行中の単剤療法用量漸増及び既に投与された組み合わせコホートの両方から明らかになる安全性データに基づいて選択されることになる。
【0052】
AZD5153に関する用量漸増及びオラパリブ300mgのBIDの固定用量を有するオラパリブの例は、表2に示される。追加の用量レベル又は代替の投与スケジュールは、AZD5153単剤療法コホートを含む既に結論付けられたコホートからの安全性及びPKデータの展開に基づくSRC(安全性審査委員会)によって評価され、推奨され得る。オラパリブと組み合わせたAZD5153の用量レベルは、公表された単剤療法MTDを超えず、次のコホートの間の用量増加は、2倍を超えない。
【0053】
10mgのBIDの用量が連続的な投与時に許容されない場合、断続的なスケジュール(すなわち2週間投与/1週間休止、3日間投与/4日間休止又は追加のスケジュール)が、SRCのフィードバックに基づいて毒性を軽減するために探索され得る。
【0054】
【0055】
用量漸増及び漸減は、以下のベイジアン適応型デザインスキーマに従うことになる:
・最小で3名の患者が第1の組み合わせコホートに採用されることになり、AZD5153(10mg BID)及びオラパリブ300mg BIDの組み合わせ用量で治療されることになる。
・DLT(用量規制毒性)が見られない場合、次のコホートは、単剤療法において安全として示されたものと一致して漸増されるが、2倍を超えないAZD5153用量で開放されることになる。オラパリブ用量は、300mg BIDで継続することになる。
・AZD5153構成成分の漸増が、DLTを招くことなく単剤療法MTDに達する場合、組み合わせMTDは、300mg BIDのオラパリブを伴うAZD5153における単剤療法MTDと同じであると申告されることになる。
・少なくとも1例のDLTが、300mg BIDのオラパリブと組み合わせたいずれかのコホートで観察される場合、CRMモデリングが単剤療法と同じ様式で使用されることになる(第5.1.4節)。
・必要に応じて、ベイジアンロジスティック回帰モデル、すなわちBLRM(Neuenschwander et al 2015)が、用量の組み合わせ全体にわたって毒性をより十分に理解するために適用され得る。この場合、用量漸増は、
- 全ての許容可能な組み合わせが毒性であると予測されるとき;
- 全ての許容可能な組み合わせが安全であると予測されるとき;
- 治療される患者の数が最大でおよそ18名に達するとき;及び
- SRCが、組み合わせMTDが十分な信頼を有して同定されているとみなすとき
に終了し得る。
・AZD5153構成成分は、推定される単剤療法MTD(又は単剤療法で試験された最高用量)を超えて漸増されず、オラパリブ構成成分は、300mg BIDを超えて漸増されない。
【0056】
患者は、それぞれの組み合わせ用量レベルにおいて登録されることになる。試験のこの部分における患者の数は、各コホートにおける患者の数及びコホートの数に依存することになる。
【0057】
11名の患者に関する予備的なデータが分析され、AZD5153(10mg BID)及びオラパリブ(300mg BID)で治療された3名の患者は、サイクル1における組み合わせ治療後に血小板減少症のDLTを経験したことが報告された。1名の患者は、グレード3の血小板減少症のAEを経験し、続いて投与中断後に回復した。別の患者は、グレード4の血小板減少症のAEを経験し、これも投与中断後に回復し;患者は、減少した用量(AZD5153 5mg BID+オラパリブ300mg BID)で治療を再開した。第3の患者は、グレード4の血小板減少症のAEを経験し、これは、投与中断後に回復したが、グレード2に続いてグレード3として2回再発し、回復しない/解決しないものとして最後に記録された。AEに関連して、AZD5153又はオラパリブを中止した患者はいなかった。
【0058】
この記載された説明は、実施例を使用して、本発明を開示し、且つあらゆる当業者が、本発明を実行すること(例えば、本開示の塩、物質又は組成物のいずれかを製造及び使用すること、並びに本開示の方法又はプロセスのいずれかを実施すること)を可能にする。本発明の特許取得の対象となる範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が認識する他の実施例を含み得る。そのような他の実施例は、それらが、特許請求の範囲の逐語的な文言と異ならない要素を有する場合又はそれらが、特許請求の範囲の逐語的な文言と非実質的な相違を有する均等な要素を含む場合、特許請求の範囲内であることが意図される。本明細書では、本発明の好ましい実施形態が示され、且つ説明されているが、そのような実施形態は、例示としてのみ提供され、他の点で本発明の範囲を限定することを意図されていない。本発明の実施において、本発明の説明されている実施形態に対する様々な代替形態が採用され得る。本節で使用されている節の見出し及び全体の開示は、限定することを意図されていない。
【0059】
上記で引用された全ての参考文献(特許及び非特許)は、参照により本特許出願に組み込まれる。これらの参考文献の考察は、単にそれらの著者によりなされた主張を要約することを意図している。任意の参考文献(又は任意の参考文献の一部)が、関連する先行技術(又はあらゆる先行技術)であることを何ら承認するものではない。本出願人は、引用された参考文献の正確さ及び妥当性に異議を唱える権利を留保する。
【国際調査報告】