IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルゲン−エックス ビーブイビーエーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-07
(54)【発明の名称】天疱瘡症を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230228BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230228BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230228BHJP
   A61K 38/47 20060101ALI20230228BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230228BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230228BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230228BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230228BHJP
【FI】
A61K39/395 Y
A61P17/00
A61P43/00 121
A61K38/47
A61K39/395 M
A61K31/573
A61K45/00
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542004
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(85)【翻訳文提出日】2022-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2021050275
(87)【国際公開番号】W WO2021140202
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】62/958,543
(32)【優先日】2020-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/960,647
(32)【優先日】2020-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517303085
【氏名又は名称】アルジェニクス ビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ピーター バーヘーセン
(72)【発明者】
【氏名】パトリック デュピュイ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA22
4C084AA23
4C084DC22
4C084MA02
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZC192
4C084ZC751
4C085AA14
4C085AA33
4C085BB11
4C085BB42
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG04
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZA89
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
エフガルチギモドなどのFcRnアンタゴニストを使用して天疱瘡を治療する方法が提供される。本発明の方法は、最小限の用量のコルチコステロイドの有無に関わらず、早期の疾患制御および臨床的寛解の維持を可能にする作用の迅速な開始を提供する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天疱瘡を治療する方法であって、
(i)選択することであって、
(a)新たに診断された天疱瘡、
(b)再発性天疱瘡、または
(c)難治性天疱瘡、を有する対象を選択することと、
(ii)有効量のヒト新生児Fc受容体(FcRn)アンタゴニストを、それを必要とする対象に 投与することであって、前記FcRnアンタゴニストは、バリアントFc領域からなり、前記バリアントFc領域は、ホモ二量体を形成する二つのFcドメインからなり、前記Fcドメインのそれぞれのアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群から選択され、
それによって前記対象における天疱瘡を治療する、投与することと、を含む、方法。
【請求項2】
疾患制御または完全寛解が達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
完全寛解が達成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
疾患制御または完全寛解が、≦0.5mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成および/または維持される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
疾患制御または完全寛解が、約0.20~約0.50mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
疾患制御または完全寛解が、≦20mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
疾患制御または完全寛解が、≦10mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
疾患制御または完全寛解が、コルチコステロイドの同時投与なしに達成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
疾患制御が、FcRnアンタゴニストの初回用量の投与から1~24週間、1~20週間、1~15週間、1~13週間、1~12週間、1~10週間、1~6週間、1~4週間、1~16日、または1~2週間で得られる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
完全寛解が、FcRnアンタゴニストの初回用量の投与から2~41週間、2~24週間、2~20週間、2~15週間、2~13週間、2~12週間、2~10週間、または2~6週間で得られる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%の天疱瘡疾患領域指標(PDAI)活性スコアの改善が達成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
絶対PDAI活性スコア6、絶対PDAI活性スコア5、絶対PDAI活性スコア4、絶対PDAI活性スコア3、絶対PDAI活性スコア2、絶対PDAI活性スコア1、または絶対PDAI活性スコア0が達成される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記天疱瘡が、尋常性天疱瘡(PV)、落葉状天疱瘡(PF)、またはPVとPFとの両方を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記対象が、前記天疱瘡疾患領域指標(PDAI)によって分類される軽度、中等度、または重度の天疱瘡を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記FcRnアンタゴニストが、疾患制御または完全寛解が達成されるまで、週1回または隔週で投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記FcRnアンタゴニストが、10mg/kg~30mg/kgの用量で、週1回または2週間毎で静脈内投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記FcRnアンタゴニストが、10mg/kgの用量で週1回または2週間毎に静脈内投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記FcRnアンタゴニストが、25mg/kgの用量で週1回または2週間毎に静脈内投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記FcRnアンタゴニストが、750mg~3000mgの固定用量で週1回または2週間毎に皮下投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記FcRnアンタゴニストが、1000mgまたは2000mgの固定用量で週1回または2週間毎に皮下投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記FcRnアンタゴニストが、最初に同日2回、約1000mgの固定用量で皮下投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記FcRnアンタゴニストが、ヒアルロニダーゼと合剤化されて皮下投与される、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
疾患制御または完全寛解が達成された後に、コルチコステロイドのテーパリング用量を投与することをさらに含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
コルチコステロイドの前記テーパリング用量が、≦0.5mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等で始まる、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
コルチコステロイドの前記テーパリング用量が、10mgのプレドニゾン/日またはその同等の用量で始まる、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
コルチコステロイドのテーパリングが、初回用量のFcRnアンタゴニストの投与から約1か月以内、約3週間以内、約2週間以内、または約1週間以内に開始される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記初回用量またはその後のテーパリング用量の低減が、毎月、3週間毎、2週間毎、または毎週発生し得る、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記初回用量またはその後のテーパリング用量の低減が、2週間毎に起こり得る、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
コルチコステロイドの前記テーパリングが、約0.5mgのプレドニゾン/kg/日もしくはその同等、約0.25mgのプレドニゾン/kg/日もしくはその同等、または約0.1mgのプレドニゾン/kg/日もしくはその同等の低減を含み得る、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記コルチコステロイドが、全身性コルチコステロイドである、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
局所性コルチコステロイドの投与をさらに含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記FcRnアンタゴニストが、導入相および強化相で投与され、
(i)前記導入相の間、疾患制御まで、前記FcRnアンタゴニストが週1回または隔週で投与され、コルチコステロイドが≦0.5mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等の用量で投与され、
(ii)前記強化相の間、新しい病変の出現を防止するために有効な強化終了用量または投与間隔まで、前記FcRnアンタゴニストの用量が低減されるか、もしくは前記FcRnアンタゴニストの投与間隔が延長される、および/または前記コルチコステロイドの用量が減少されるか、もしくは前記コルチコステロイドの投与間隔が延長される、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
維持相をさらに含み、
(iii)前記維持相の間、前記FcRnアンタゴニストおよび/または前記プレドニゾンの前記強化終了用量または投与間隔が、病変の完全なクリアランスまで継続される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記導入相の間、前記FcRnアンタゴニストが、10mg/kg~30mg/kgの用量で静脈内投与される、請求項32または請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記導入相の間、前記FcRnアンタゴニストが、10mg/kgの用量で静脈内投与される、請求項32または請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記導入相の間、前記FcRnアンタゴニストが、25mg/kgの用量で静脈内投与される、請求項32または請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記導入相の間、前記FcRnアンタゴニストが、750mg~3000mgの固定用量で皮下投与される、請求項32または請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記導入相の間、前記FcRnアンタゴニストが、最初に同日2回、約1000mgの固定用量で皮下投与される、請求項32または請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記対象が難治性天疱瘡を有する、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記対象が新たに診断された尋常性天疱瘡を有し、天疱瘡疾患面積指数(PDAI)スコア≧15である、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記対象が、再発性の尋常性天疱瘡を有する、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記対象が新たに診断された落葉状天疱瘡を有し、天疱瘡疾患面積指数(PDAI)スコア≧15である、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記対象が、再発性の落葉状天疱瘡を有する、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記対象が、リツキシマブ不応性である、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記対象が、コルチコステロイド不耐性である、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記対象にB細胞枯渇剤を投与することをさらに含む、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記B細胞枯渇剤がリツキシマブである、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
天疱瘡を治療する方法で使用するためのヒト新生児Fc受容体(FcRn)アンタゴニストであって、前記FcRnアンタゴニストが、バリアントFc領域からなり、前記バリアントFc領域は、ホモ二量体を形成する二つのFcドメインからなり、前記Fcドメインのそれぞれのアミノ酸配列が、配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群から選択され、天疱瘡を治療する前記方法が、請求項1~47のいずれか一項に定義されている通りである、FcRnアンタゴニスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年1月8日に出願された米国仮特許出願第62/958,543号、および2020年1月13日に出願された米国仮特許出願第62/960,647号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されている配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2020年12月14日に作成された上記ASCIIコピーは、712706_AGX5-052PC_ST25.txtと名付けられ、サイズは6,362バイトである。
【0003】
本開示は、尋常性天疱瘡および落葉状天疱瘡を含むがこれらに限定されない天疱瘡症を治療する方法に関する。本方法は、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)のアンタゴニストの使用を伴い、ある特定の実施形態では、このアンタゴニストはエフガルチギモドである。
【背景技術】
【0004】
天疱瘡は、ケラチノサイトのある特定の細胞膜タンパク質の細胞外ドメインに対するIgG自己抗体の産生が、棘融解(ケラチノサイト間の細胞間接着の喪失)をもたらす、慢性水疱形成上皮疾患の一群である。天疱瘡の主な形態としては、尋常性天疱瘡(PV)および落葉状天疱瘡(PF)が挙げられる。天疱瘡における現在の治療戦略は、疾患制御(DC)および持続的な臨床的寛解(CR)を誘発する能力において異なる。コルチコステロイドは、PVの症状に迅速に影響を及ぼすが、有効性を達成するためには、高い1日用量(例えば、1~1.5mg/kg/日の経口プレドニゾン)で投与される必要がある。3~4週間後にDCが達成されない場合は、プレドニゾンの用量を増量する必要があり、非常に活動性のある疾患を有する患者では、コルチコステロイド(例えば、メチルプレドニゾロン)の静脈内(IV)ボーラス投与が、特に治療開始時に好適であることがある。Ritux 3試験では、低用量コルチコステロイドとの併用のリツキシマブ療法により、患者の89%が24か月で治療離脱中の完全寛解(CRoff)を達成できたのに対し、全身性コルチコステロイド単独では、CRoffを達成できたのは患者の34%に過ぎなかった。Joly P.et al.,Lancet 2017;389:2031-2040。リツキシマブによる治療は、天疱瘡患者を治療選択肢の改善をもたらすが、リツキシマブは、作用の開始が比較的遅く、DCを誘発するために、疾患の重症度に応じて、0.5~1.5mg/kg/日の間で中~高用量のコルチコステロイドの併用を必要とする。さらに、リツキシマブを受けている患者は、25~60%の症例で再発し、リツキシマブの追加サイクルを必要とし、リツキシマブ療法は、全身のB細胞を枯渇させる結果として感染のリスクを増大させる。天疱瘡症の甚大な身体的負担と併せて、これらのすべての要因は、水疱、関連する痛み、および身体的不快感の速やかな解決を可能にし、かつステロイド関連の副作用および毒性を避けるために速やかなステロイドのテーパリングを可能にする、即効性の治療の必要性を必然的に生じる。したがって、最小用量のコルチコステロイド(例えば、プレドニゾン1日当たり20mgもしくは1日当たり10mgまたはそれ以下)の有無に関わらず、早期の疾患制御を達成しかつ臨床的寛解を維持するものとなる作用の迅速な開始をもたらす、より安全な薬剤への天疱瘡患者のニーズが依然として存在する。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)アンタゴニストが、天疱瘡および天疱瘡関連障害の治療において有効性が高いという発見に基づく。したがって、本開示は、少なくとも部分的には、FcRnアンタゴニストを用いて天疱瘡および天疱瘡関連障害を治療するための方法に広く向けられている。
【0006】
一態様では、本開示は、有効量のヒト新生児Fc受容体(FcRn)アンタゴニストを、それを必要とする対象に投与することを含む、天疱瘡を治療する方法に向けられており、ここで対象は、(a)新たに診断された天疱瘡、(b)再発性天疱瘡、または(c)難治性天疱瘡を有する。
【0007】
別の態様では、本開示は、(i)(a)新たに診断された天疱瘡、(b)再発性天疱瘡、または(c)難治性天疱瘡を有する対象を選択すること、および(ii)有効量のヒト新生児Fc受容体(FcRn)アンタゴニストを対象に投与することを含む、天疱瘡を治療する方法に向けられている。
【0008】
特定の態様では、本開示はまた、FcRnアンタゴニストが、天疱瘡の迅速な疾患制御(例えば、新たな病変形成の阻害および定着した病変の治癒の開始)を達成できるという驚くべき発見に基づく。特定の実施形態では、疾患制御は、FcRnアンタゴニストの初回用量の投与から約1か月以内に得ることができる。特定の実施形態では、疾患制御は、FcRnアンタゴニストの初回用量の投与から約3週間以内、約2週間以内、または約1週間以内に得ることができる。例示的な実施形態では、疾患制御は、FcRnアンタゴニストの初回用量の投与から約14~16日以内に得ることができる。特定の実施形態では、疾患制御は、FcRnアンタゴニストの1~4回の用量投与(例えば、注射または皮下投与)の後に得ることができる。ある特定の例示的な実施形態では、本発明の方法は、1回または2回のFcRnアンタゴニストの用量投与(例えば、注射または皮下投与)の後に、疾患制御を達成する。
【0009】
さらに他の態様では、本開示は、FcRnアンタゴニストが、コルチコステロイドと同時投与された場合に、従来の療法よりもはるかに低い用量のコルチコステロイドの投与で天疱瘡の疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成できるという驚くべき発見にも基づく。したがって、ある特定の態様では、本開示は、本発明の方法が前例のないレベルの「コルチコステロイドの節約」を提供するという驚くべき発見に基づく。
【0010】
例えば、従来の療法では、非常に高い重量ベースのコルチコステロイドの用量(例えば、1または2mg/kg/日)が必要である。これに対し、ある特定の実施形態では、本発明の方法は、0.5mg/kg/日以下のコルチコステロイド用量で疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成することができる。例示的な実施形態では、本発明の方法は、約0.4mg/kg/日未満のコルチコステロイド用量で疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成することができる。他の例示的な実施形態では、本発明の方法は、約0.3mg/kg/日未満のコルチコステロイド用量で疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成することができる。他の例示的な実施形態では、本発明の方法は、約0.25mg/kg/日未満のコルチコステロイド用量で疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成することができる。他の例示的な実施形態では、本発明の方法は、約0.2mg/kg/日未満のコルチコステロイド用量で疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成することができる。他の例示的な実施形態では、本発明の方法は、約0.1mg/kg/日未満のコルチコステロイド用量で疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成することができる。他の例示的な実施形態では、本発明の方法は、約0.05mg/kg/日未満のコルチコステロイド用量で疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成することができる。
【0011】
他の実施形態では、本発明の方法は、従来の療法よりもはるかに低い固定用量のコルチコステロイドで、疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成することができる。例えば、従来の療法は、高い固定用量のコルチコステロイド(例えば、100~150mg/日)を必要とするのに対し、ある特定の実施形態では、本発明の方法は、20mg/日以下のコルチコステロイド用量で疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成することができる。例示的な実施形態では、本発明の方法は、約17.5mg/日未満のコルチコステロイド用量で疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成することができる。他の例示的な実施形態では、本発明の方法は、約15mg/日未満のコルチコステロイド用量で疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成することができる。他の例示的な実施形態では、本発明の方法は、約12.5mg/日未満のコルチコステロイド用量で疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成することができる。他の例示的な実施形態では、本発明の方法は、約10mg/日未満のコルチコステロイド用量で疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成することができる。他の例示的な実施形態では、本発明の方法は、約9mg/日未満のコルチコステロイド用量で疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成することができる。他の例示的な実施形態では、本発明の方法は、約8mg/日未満のコルチコステロイド用量で疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成することができる。他の例示的な実施形態では、本発明の方法は、約7mg/日未満のコルチコステロイド用量で疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成することができる。他の例示的な実施形態では、本発明の方法は、約6mg/日未満のコルチコステロイド用量で疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成することができる。他の例示的な実施形態では、本発明の方法は、約5mg/日未満のコルチコステロイド用量で疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成することができる。他の例示的な実施形態では、本発明の方法は、約4mg/日未満のコルチコステロイド用量で疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成することができる。他の例示的な実施形態では、本発明の方法は、約3mg/日未満のコルチコステロイド用量で疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成することができる。他の例示的な実施形態では、本発明の方法は、約2mg/日未満のコルチコステロイド用量で疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成することができる。さらに他の例示的な実施形態では、本発明の方法は、約1mg/日未満のコルチコステロイド用量で疾患制御(例えば、迅速な疾患制御)を達成することができる。
【0012】
さらに他の例示的な実施形態では、本発明の方法は、コルチコステロイドの不在下で疾患制御を達成することができる。したがって、特定の態様では、本開示は、天疱瘡症の治療のためのFcRnアンタゴニスト単剤療法に向けられている。
【0013】
特定の実施形態では、疾患制御は、FcRnアンタゴニストの初回用量の投与から約24週間、約23週間、約22週間、約21週間、約20週間、約15週間、約13週間、約12週間、約10週間、約9週間、約8週間、約7週間、約6週間、約5週間、約4週間、約3週間、約2週間、または約1週間以内に得られる。特定の実施形態では、疾患制御は、FcRnアンタゴニストの初回用量の投与から1~24週間、1~20週間、1~15週間、1~13週間、1~12週間、1~10週間、1~6週間、1~4週間、1~16日、または1~2週間で得られる。特定の実施形態では、疾患制御は、FcRnアンタゴニストの初回用量の1~13週間の投与で得られる。
【0014】
他の態様では、本開示は、本発明の方法が、FcRnアンタゴニストの初回用量の投与から約4か月以内に完全寛解(例えば、新しい病変がなく、すべての定着した病変が完全に治癒した)を達成するという驚くべき発見に基づく。ある特定の実施形態では、完全寛解は、FcRnアンタゴニストの初回用量の投与から約41週間、約24週間、約23週間、約22週間、約21週間、約20週間、約15週間、約13週間、約12週間、約10週間、約9週間、約8週間、約7週間、約6週間、約5週間、約4週間、約3週間、または約2週間以内に得られる。ある特定の実施形態では、完全寛解は、2~41週間、2~24週間、2~20週間、2~15週間、2~13週間、2~12週間、2~10週間、または2~6週間のFcRnアンタゴニストの初期用量の投与中に得られる。ある特定の実施形態では、完全寛解は、2~41週間のFcRnアンタゴニストの初回用量の投与で得られる。例示的な実施形態では、完全寛解は、FcRnアンタゴニストおよび約2mg/kg/日以下のコルチコステロイド(例えば、約1mg/kg/日、約0.75mg/kg/日、約0.5mg/kg/日、約0.4mg/kg/日、約0.35mg/kg/日、約0.3mg/kg/日、約0.29mg/kg/日、約0.28mg/kg/日、約0.27mg/kg/日、約0.26mg/kg/日、約0.25mg/kg/日、約0.24mg/kg/日、約0.23mg/kg/日、約0.22mg/kg/日、約0.21mg/kg/日、または約0.2mg/kg/日)の隔週投与後に得られる。例示的な実施形態では、完全寛解は、FcRnアンタゴニストおよび約2mg/kg/日以下のコルチコステロイド(例えば、約1mg/kg/日、約0.75mg/kg/日、約0.5mg/kg/日、約0.4mg/kg/日、約0.35mg/kg/日、約0.3mg/kg/日、約0.29mg/kg/日、約0.28mg/kg/日、約0.27mg/kg/日、約0.26mg/kg/日、約0.25mg/kg/日、約0.24mg/kg/日、約0.23mg/kg/日、約0.22mg/kg/日、約0.21mg/kg/日、または約0.2mg/kg/日)の毎週投与後に得られる。例示的な実施形態では、完全寛解は、FcRnアンタゴニストおよび約20mg/日以下のコルチコステロイドの隔週投与(例えば、約20mg/日、約17.5mg/日、約15mg/日、約10mg/日、約5mg/日、約4mg/日、約3mg/日、約2mg/日、または約1mg/日)の後に得られる。例示的な実施形態では、完全な臨床的寛解は、FcRnアンタゴニストおよび約20mg/日以下のコルチコステロイドの毎週投与(例えば、約20mg/日、約17.5mg/日、約15mg/日、約10mg/日、約5mg/日、約4mg/日、約3mg/日、約2mg/日、または約1mg/日)の後に得られる。ある特定の例示的な実施形態では、本発明の方法は、コルチコステロイドの不在下で完全な臨床的寛解を達成することができる。
【0015】
ある特定の実施形態では、本発明の方法は、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%の天疱瘡疾患領域指標(PDAI)活性スコアの改善を得る。他の実施形態では、本発明の方法は、絶対PDAI活性スコア6以下(例えば、絶対PDAI活性スコア6、絶対PDAI活性スコア5、絶対PDAI活性スコア4、絶対PDAI活性スコア3、絶対PDAI活性スコア2、絶対PDAI活性スコア1、または絶対PDAI活性スコア0)をもたらす。
【0016】
他の態様では、本開示は、FcRnアンタゴニストが低用量のコルチコステロイドと組み合わされた際に、本発明の方法が相乗効果を達成するという驚くべき発見に基づく。いかなる特定の理論に拘束されるものではないが、FcRnアンタゴニストとコルチコステロイドとの組合せは、新しい基底膜(例えば、デスモグレイン1(すなわち、DSG1もしくはDsg-1)および/またはデスモグレイン3(すなわち、DSG3もしくはDsg-3)の合成)を刺激するとともに、病原性自己抗体(例えば、抗DSG1自己抗体または抗DSG3自己抗体)を除去することもできると考えられる。したがって、ある特定の例示的な実施形態では、FcRnアンタゴニストは、低用量のコルチコステロイド(例えば、約0.2または約0.25または約0.5mg/kg/日の経口プレドニゾンまたはその同等物)との組合せで投与される。好適な実施形態では、コルチコステロイドは、低用量で経口投与される。好適な実施形態では、コルチコステロイドは、皮膚に局所的に投与される。ある特定の実施形態では、コルチコステロイドは、静脈内注射または注入によって全身に投与される。
【0017】
さらに他の態様では、本発明は、新たに診断された天疱瘡患者および以前にコルチコステロイドで治療された天疱瘡患者が、FcRnアンタゴニストにより治療され、その後、従来の治療よりもはるかに早く、および/または高い初回レベルのコルチコステロイドで、コルチコステロイドによる治療をテーパリングしてもよいという発見に基づく。例えば、従来の療法は、典型的には、コルチコステロイドによる天疱瘡の持続的な治療を要し、疾患制御が観察されると、コルチコステロイドの段階的かつ最小限のテーパリングを要する。これに対し、本発明の方法は、従来の療法よりもはるかに早く、かつ大きな用量の低減により、コルチコステロイドのテーパリングを始めることができる。したがって、本開示の一態様は、それを必要とする対象に、有効量のヒト新生児Fc受容体(FcRn)アンタゴニストと、≦2mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等で始まる初回テーパ用量のコルチコステロイドとを投与することを含む、天疱瘡を治療する方法である。いくつかの実施形態では、初回テーパリング用量は、約1.5、約1.0、約0.75、約0.5、または約0.2mg以下のプレドニゾン/kg/日またはその同等である。ある特定の例示的な実施形態では、コルチコステロイドの初回テーパリング用量は、≦0.5mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等である。
【0018】
ある特定の実施形態では、コルチコステロイドのテーパリングは、疾患制御が達成されると開始することができる。上述のように、驚くべき所見は、FcRnアンタゴニストにより治療された天疱瘡患者が、従来の療法よりもはるかに早期にコルチコステロイドのテーパリングを開始しうることである。ある特定の実施形態では、コルチコステロイドのテーパリングは、FcRnアンタゴニストの初回用量の投与から約10週間、約9週間、約8週間、約7週間、約6週間、約5週間、約4週間、約3週間、および約2週間以内で開始することができる。他の実施形態では、コルチコステロイドのテーパリングは、疾患制御後、または完全な臨床的寛解後に開始することができる。ある特定の実施形態では、コルチコステロイドのテーパリングは、FcRnアンタゴニストの初回用量の投与から約1か月以内、約3週間以内、約2週間以内、または約1週間以内で開始することができる。
【0019】
さらに他の実施形態では、本発明の方法は、従来の療法よりもコルチコステロイドのより迅速なテーパリングを可能にする。例えば、従来の療法では、月1回の頻度でコルチコステロイドのテーパリングを可能にするに過ぎないが、本発明のFcRnアンタゴニストは、疾患制御が維持されていれば、より高頻度でテーパリングされ得る。ある特定の例示的な実施形態では、初回用量またはその後のテーパリング用量の低減は、3週間毎に発生し得る。他の例示的な実施形態では、初回用量またはその後のテーパリング用量の低減は、2週間毎に発生し得る。他の例示的な実施形態では、初回用量またはその後のテーパリング用量の低減は、毎週発生し得る。ある特定の実施形態では、コルチコステロイドのテーパリングは、約0.5mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等の低減を、ほぼ毎週、ほぼ2週間毎、またはほぼ毎月含み得る。ある特定の実施形態では、コルチコステロイドのテーパリングは、約0.25mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等の低減を、ほぼ毎週、ほぼ2週間毎、またはほぼ毎月含み得る。ある特定の実施形態では、コルチコステロイドのテーパリングは、約0.1mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等の低減を、ほぼ毎週、ほぼ2週間毎、またはほぼ毎月含み得る。
【0020】
前述の各態様によれば、例示的な実施形態では、FcRnアンタゴニストは、FcRnに結合し、IgGのリサイクルを防止し、および/またはIgGレベルの減少を引き起こすことができる。ある特定の実施形態では、FcRnアンタゴニストは、バリアントFc領域またはドメインからなり、抗原結合部位を欠く。ある特定の他の実施形態では、FcRnアンタゴニストは、FcRnに特異的に結合し、FcRnへのイムノグロブリンの結合を阻害する抗体またはその抗原結合断片である。
【0021】
ある特定の実施形態では、FcRnアンタゴニストは、FcRnへの親和性の増加のために工学的に操作されたヒトIgG1抗体Fc断片である。ある特定の例示的な実施形態では、FcRnアンタゴニストは、バリアントFc領域からなる。ある特定の例示的な実施形態では、バリアントFc領域は、ホモ二量体を形成する二つのFcドメインからなり、Fcドメインのそれぞれのアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Fcドメインのそれぞれのアミノ酸配列は、配列番号1である。いくつかの実施形態では、Fcドメインのそれぞれのアミノ酸配列は、配列番号2である。いくつかの実施形態では、Fcドメインの各々のアミノ酸配列は、配列番号3である。
【0022】
ある特定の例示的な実施形態では、FcRnアンタゴニストは、エフガルチギモドである。
【0023】
ある特定の実施形態では、FcRnアンタゴニストは、FcRnに特異的に結合し、FcRnへのイムノグロブリンの結合を阻害する抗体またはその抗原結合断片である。ある特定の実施形態では、FcRn抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト化IgG4抗体(例えば、ロザノリキシズマブまたはオリラノリマブ)である。他の実施形態では、FcRn抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト化IgG1抗体(例えば、ニポカリマブまたはバトクリマブ)である。
【0024】
いくつかの実施形態では、天疱瘡は、尋常性天疱瘡(PV)、落葉状天疱瘡(PF)、またはPVとPFとの両方を含む。いくつかの実施形態では、天疱瘡は、尋常性天疱瘡(PV)を含む。いくつかの実施形態では、天疱瘡は、落葉状天疱瘡(PF)を含む。いくつかの実施形態では、天疱瘡は、尋常性天疱瘡(PV)と落葉状天疱瘡(PF)との両方を含む。いくつかの実施形態では、天疱瘡は、尋常性天疱瘡(PV)からなる。いくつかの実施形態では、天疱瘡は、落葉状天疱瘡(PF)からなる。いくつかの実施形態では、天疱瘡は、尋常性天疱瘡(PV)と落葉状天疱瘡(PF)との両方からなる。
【0025】
ある特定の実施形態では、尋常性天疱瘡(PV)は、粘膜優性サブタイプである。ある特定の実施形態では、尋常性天疱瘡(PV)は、粘膜皮膚サブタイプである。ある特定の実施形態では、尋常性天疱瘡(PV)は、皮膚サブタイプである。
【0026】
いくつかの実施形態では、対象は、天疱瘡疾患領域指標(PDAI)によって分類される軽度、中等度、または重度の天疱瘡を有する。
【0027】
いくつかの実施形態では、対象は、PDAIにより分類される軽度の天疱瘡を有する。例示的な実施形態では、天疱瘡または天疱瘡関連障害は、PDAIスコア15未満によって特徴付けられる。
【0028】
いくつかの実施形態では、対象は、PDAIにより分類される中等度の天疱瘡を有する。ある特定の実施形態において、天疱瘡関連障害は、PDAIにより分類される中等度から重度の天疱瘡である。いくつかの実施形態では、天疱瘡に罹患している対象は、PDAIスコア≧15かつ<45を有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、対象は重度の天疱瘡を有する。例示的な実施形態では、重度の天疱瘡に罹患している対象は、PDAIスコア≧45を有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、対象は難治性天疱瘡を有する。
【0031】
ある特定の実施形態では、天疱瘡は新たに診断される。他の実施形態では、天疱瘡は再発性天疱瘡である。
【0032】
ある特定の実施形態では、FcRnアンタゴニストは、対象に静脈内投与される。
【0033】
ある特定の実施形態では、FcRnアンタゴニストは、対象に皮下投与される。ある特定の実施形態では、FcRnアンタゴニストは、ヒアルロニダーゼと合剤化されて皮下投与される。
【0034】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、疾患制御まで、週1回以上(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、または7日毎)の頻度で投与される。
【0035】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、疾患制御まで、週1回未満(例えば、8、9、10、11、12、13、もしくは14日毎、または2、3、4、5、6週間毎)の頻度で投与される。
【0036】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、疾患制御まで、約10mg/kgまたは約25mg/kgの用量で、週1回または隔週で投与される。
【0037】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、10mg/日以下のコルチコステロイド用量と同時投与される。
【0038】
いくつかの実施形態では、本方法は、≦2mgのプレドニゾン/kg/日もしくはその同等で始まり、より好ましくは≦1.5mgのプレドニゾン/kg/日もしくはその同等で始まり、さらにより好ましくは≦1mgのプレドニゾン/kg/日もしくはその同等で始まり、または≦0.5mgのプレドニゾン/kg/日もしくはその同等で始まる、テーパリング用量のコルチコステロイドを投与することをさらに含む。ある特定の実施形態では、コルチコステロイドのテーパリング用量は、疾患制御が達成された後に投与される。
【0039】
いくつかの実施形態では、コルチコステロイドは全身投与される。
【0040】
いくつかの実施形態では、疾患制御は、コルチコステロイドを同時投与することなく得られる。いくつかの実施形態では、疾患制御は、プレドニゾンを同時投与することなく得られる。
【0041】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、完全寛解(例えば、PDAIスコア0)まで、週1回以上(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、または7日毎)の頻度で投与される。
【0042】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、完全寛解(例えば、PDAIスコア0)まで、約10mg/kgまたは約25mg/kgの用量で、週1回または隔週で投与される。
【0043】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、完全寛解(例えば、PDAIスコア0)まで、週1回未満(例えば、8、9、10、11、12、13、もしくは14日毎、または2、3、4、5、もしくは6週間毎)の頻度で投与される。
【0044】
いくつかの実施形態では、完全寛解は、20mg/日以下のコルチコステロイド用量で得られる。
【0045】
いくつかの実施形態では、完全寛解は、10mg/日以下のコルチコステロイド用量で得られる。
【0046】
いくつかの実施形態では、完全寛解は、コルチコステロイドを同時投与することなく得られる。
【0047】
いくつかの実施形態では、コルチコステロイドのテーパリング用量は、疾患制御または完全寛解が達成された後に投与される。
【0048】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは静脈内投与される。
【0049】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、週1回静脈内投与される。
【0050】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、2週間毎に静脈内投与される。
【0051】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、10mg/kg~30mg/kgの用量で静脈内投与される。
【0052】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、10mg/kgの用量で静脈内投与される。
【0053】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、25mg/kgの用量で静脈内投与される。
【0054】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは皮下投与される。
【0055】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、週1回皮下投与される。
【0056】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、2週間毎に皮下投与される。
【0057】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、ヒアルロニダーゼと合剤化されて皮下投与される。
【0058】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、約750mg~約3000mgの固定用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、約1000mgまたは約2000mgの固定用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、同日2回、約1000mgの固定用量で皮下投与される。
【0059】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、週1回以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7日毎)の頻度で、約750mg~約1750mgの固定用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、週1回以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7日毎)の頻度で、約1000mgの固定用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、週1回以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7日毎)の頻度で、約10mg~約25mgの用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、週1回以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7日毎)の頻度で、約10mgの用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、週1回以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7日毎)の頻度で、約25mgの用量で皮下投与される。
【0060】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、最初に同日2回、約1000mgの固定用量で皮下投与される。
【0061】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、導入相および強化相で投与される。
【0062】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、導入相および強化相で投与され、その際に、
(i)導入相の間、疾患制御まで、FcRnアンタゴニストが毎週1回または隔週1回で投与され、0.5mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイドが投与され、
(ii)強化相の間、新しい病変の出現を防止するために有効な強化終了用量または投与間隔まで、FcRnアンタゴニストの用量が低減されるか、もしくはFcRnアンタゴニストの投与間隔が延長される、および/またはコルチコステロイドの用量が減少されるか、もしくはコルチコステロイドの投与間隔が延長される。
【0063】
いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、週1回以上の頻度(例えば、1、2、3、4、5、6、または7日毎の投与間隔)である。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、約750mg~約1750mgの固定用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、約1000mgの固定用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、約10mg~約25mgの用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、約10mg/kgの用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、約25mg/kgの用量で皮下投与される。
【0064】
いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、最初に同日2回、約1000mgの固定用量で皮下投与される。
【0065】
いくつかの実施形態では、強化相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、週1回以上の頻度(例えば、1、2、3、4、5、6、または7日毎の投与間隔)である。いくつかの実施形態では、強化相の間、FcRnアンタゴニストは、疾患制御まで、週1回未満の頻度(例えば、8、9、10、11、12、13、もしくは14日毎の投与間隔、または2、3、4週間毎の投与間隔)で投与される。いくつかの実施形態では、強化相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、週1回または2週間に1回である。
【0066】
いくつかの実施形態では、本方法が、導入相と強化相とを含み、(i)導入相の間、FcRnアンタゴニストは、疾患制御まで週1回、2mg/kg/日以下のコルチコステロイド用量(例えば、0.5mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等)で投与され、(ii)強化相の間、新しい病変の出現を防ぐのに有効な強化終了用量または投与間隔まで、FcRnアンタゴニストの用量が減少されるか、もしくはFcRnアンタゴニストの投与間隔が延長される、および/またはコルチコステロイドの用量が減少されるか、もしくはコルチコステロイドの投与間隔が延長される。
【0067】
いくつかの実施形態では、本方法は、維持相をさらに含み、(iii)維持相の間、病変の完全なクリアランスまで、FcRnアンタゴニストおよび/またはプレドニゾンの強化終了用量または投与間隔が継続される。いくつかの実施形態では、維持相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、週1回以上の頻度(例えば、1、2、3、4、5、6、または7日毎の投与間隔)である。いくつかの実施形態では、維持相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、週1回である。いくつかの実施形態では、維持相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、週1回未満の頻度(例えば、8、9、10、11、12、13、もしくは14日毎の投与間隔、または2、3、4、5、もしくは6週間毎の投与間隔)である。いくつかの実施形態では、維持相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、隔週である。
【0068】
いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、10mg/kg~30mg/kgの用量で静脈内投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、10mg/kgの用量で静脈内投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、25mg/kgの用量で静脈内投与される。
【0069】
いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、750mg~3000mgの固定用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、1000mgまたは2000mgの固定用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、最初に同日2回、約1000mgの固定用量で皮下投与される。
【0070】
いくつかの実施形態では、強化相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、週1回、2週間毎、またはそれより少ない頻度である。
【0071】
いくつかの実施形態では、維持相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、週1回、2週間毎、4週間毎、またはそれより少ない頻度である。
【0072】
いくつかの実施形態では、天疱瘡は、FcRnアンタゴニストによる治療後に完全寛解に入る。いくつかの実施形態では、完全寛解は、2mgのプレドニゾン/kg/日(またはその同等)以下のコルチコステロイド用量により達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、1mgのプレドニゾン/kg/日(またはその同等)以下のコルチコステロイド用量により達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約0.5mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量により達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約0.3mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約0.2mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約0.1mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約0.2mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等から約0.50mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等までのコルチコステロイド用量で達成される。
【0073】
いくつかの実施形態では、完全寛解は、約20mgのプレドニゾン/日(またはその同等)のコルチコステロイド用量により達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、約15mgのプレドニゾン/日(またはその同等)のコルチコステロイド用量により達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、約10mgのプレドニゾン/日(またはその同等)以下のコルチコステロイド用量(例えば、約10、約9、約8、約7、または約6プレドニゾン/日(またはその同等))により達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、約5mgのプレドニゾン/日(またはその同等)以下のコルチコステロイド用量(例えば、約5、約4、約3、約2、約1、または約0.5mgプレドニゾン/日(またはその同等))により達成される。
【0074】
いくつかの実施形態では、完全寛解はコルチコステロイドなしで達成される。
【0075】
いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約0.5mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約0.4mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約0.3mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約0.2mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約0.1mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。
【0076】
いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約10mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量(例えば、約10mg、約9mg、約8mg、約7mg、または約6mgのプレドニゾン/日(またはその同等))により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約5mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量(例えば、約5mg、約4mg、約3mg、または約2mgのプレドニゾン/日(またはその同等))により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約2mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解はコルチコステロイドなしで維持される。
【0077】
いくつかの実施形態では、対象は難治性天疱瘡を有する。
【0078】
いくつかの実施形態では、対象はリツキシマブ不応性である。
【0079】
いくつかの実施形態では、対象はコルチコステロイド不耐性である。
【0080】
いくつかの実施形態では、本方法は、対象にB細胞枯渇剤(例えば、リツキシマブ)を投与することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1図1は、尋常性天疱瘡および落葉状天疱瘡を有する患者における、完了したエフガルチギモドの第II相試験(1701試験)のデザインの概要を示す図である。
図2図2は、尋常性天疱瘡および落葉状天疱瘡を有する患者でのエフガルチギモドの第II相試験(1701試験)における、安全性データセット解析および有効性データセット解析のための患者の配置、ならびにコホートへの患者の割り当てを標示するフローチャートである。
図3図3は、天疱瘡患者でのエフガルチギモドの第II相治験(1701試験)の最初の中間結果の概要のスライドである。第II相試験から得たデータのカットオフ日:2019年11月7日。患者集団には、粘膜優位サブタイプ(N=8)、粘膜皮膚サブタイプ(N=10)、および皮膚サブタイプ(N=1)の尋常性天疱瘡(PV)患者、ならびに落葉状天疱瘡(PF)患者(N=4)が含まれた。患者は、エフガルチギモドの初回導入投与後、およびそれに続くエフガルチギモドによる毎週または隔週の維持投与後に、病原性IgG4自己抗体(DSG-1およびDSG-3)の低減と相関する、天疱瘡疾患領域指標(PDAI)活性の減少を示した。
図4図4A図4Dは、第II相試験の4つの患者コホートにおいて天疱瘡疾患領域指標(PDAI)活性によって評価された、エフガルチギモドの臨床的有効性を示す図である(1701試験の最初の中間結果;第II相試験から得たデータのカットオフ日は2019年11月7日)。コホート1:10mg/kgの静注、エフガルチギモドの導入=4回の注入(3週間)、維持=2回の注入(6週間)。コホート2:スクリーニング:適切な経口プレドニゾンがスクリーニング時に疾患の活動性を安定化し、導入時に安定用量で継続されることが可能になる(任意選択的に測定)。導入:同じ用量(10mg/kgの静注)および頻度。維持:2回の追加投与、維持期間を8週まで延長(隔週投与を8週間)。フォローアップ:フォローアップ訪問(2週目)を1回追加、および10週まで延長。コホート3:スクリーニング:適切な経口プレドニゾンがスクリーニング時に疾患の活動性を安定化することが可能になり、いずれかのベースライン後の訪問(全患者)でさらに増加させてもよい。導入:同じ用量(10mg/kgの静注)および頻度。維持:2回の追加投与、維持期間を12週まで延長(12週間にわたって2週間毎に投与)。10週間の無治療フォローアップ。図4Aはコホート1、図4Bはコホート2、図4Cはコホート3、図4Dはコホート4である。 ほとんどの患者は、強いPDAIスコアの改善を示した:コホート1では、抗Dsgの低減を伴うIgGの低減と、PDAIスコアの改善、早期のDC(単独/併用)、および維持中の最適以下のエフガルチギモド用量投与との間に相関があり、コホート2では隔週のエフガルチギモド用量投与で維持が改善された。コホート3では、すべての患者が最終的にプレドニゾンに関連し、維持により症状がさらに改善し、経口プレドニゾンと関連した場合にEoC/CR(強化の終了/完全寛解)が認められた。コホート4では、強力なPDAIスコアの改善が認められ、EoC率が高く、プレドニゾンがCR前にテーパリングされなかった場合にCRがあった。
図5図5A図5Dは、第II相試験の中等度の重症度患者(ベースラインでPDAI 15~44)における臨床的有効性を示す。図5Aはコホート1、図5Bはコホート2、図5Cはコホート3、図5Dはコホート4である。ほとんどの患者は、強力なPDAIスコアの改善を示した。コホート1は、3名の中等度の患者(3名のPV、0名の落葉状天疱瘡(PF))で構成され、コホート2は、2名の中等度の患者(2名のPV、0名のPF)で構成され、コホート3は、4名の中等度の患者(4名のPV、0名のPF)で構成され、コホート4は、5名の中等度の患者(1名のPV、4名のPF)で構成されていた。データは、天疱瘡患者におけるエフガルチギモドの1701試験の最初の中間結果からのものである。第II相試験から得たデータのカットオフ日:2019年11月7日。
図6図6A図6Eは、A)コホート1、B)コホート2、C)コホート3、D)コホート4の尋常性天疱瘡患者、E)コホート4の落葉状天疱瘡患者の経時的なPDAI活性スコアを示すグラフである。データは、天疱瘡患者におけるエフガルチギモドの第II相試験(1701試験)の最終結果からのものである。第II相試験から得たデータのカットオフ日:2020年10月28日。
図7図7Aおよび図7Bは、コホート当たりの総IgG(図7A)およびPDAI活性(図7B)によって評価された臨床的有効性を示す。IgGの減少、自己抗体の減少、およびPDAIスコアの改善の間には相関がある。コホート1および2の患者は、エフガルチギモド単剤療法により、またはプレドニゾンとの併用で治療された。コホート3のすべての患者は、最終的にプレドニゾンと関連していた。コホート4の患者は、プロトコールに従ってプレドニゾンとの組合せで治療された。データは、天疱瘡患者におけるエフガルチギモドの第II相治験(1701試験)の最初の中間結果からのものである。第II相試験から得たデータのカットオフ日:2019年11月7日。FU、フォローアップ。
図8図8Aおよび図8Bは、天疱瘡患者におけるエフガルチギモドの第II相治験(1701試験)における総IgGの低減についての薬力学(PD)データを示す。PDプロファイルは、25mg/kgでのエフガルチギモドの4回の毎週投与について示されている。図8Aは、PVにおけるPDプロファイルである。図8Bは、健康なボランティア(HV)および尋常性天疱瘡患者(PV)におけるPDプロファイルである。HVおよびモデリングに基づく予想の範囲内で、PVとHVとの間に類似のPDプロファイルが観察された。データは、治験の最初の中間結果からのものである。第II相試験から得たデータのカットオフ日:2019年11月7日。
図9図9Aおよび図9Bは、PV、健康なボランティア(HV)、および他の適応症における総IgGの低減についての薬力学(PD)データを示す。PDプロファイルは、10mg/kgのエフガルチギモドの4回の毎週投与について示されている。図9Aは、PVにおけるPDプロファイルである。図9Bは、HV、PV、重症筋無力症(MG)および免疫性血小板減少症(ITP)におけるPDプロファイルである。データは、天疱瘡患者におけるエフガルチギモドの第II相治験(1701試験)の最初の中間結果からのものである。第II相試験から得たデータのカットオフ日:2019年11月7日。
図10A図10Aおよび図10Bは、A)コホート1~3、B)コホート4における総IgGの血清レベルを示す。データは、天疱瘡患者におけるエフガルチギモドの第II相試験(1701試験)の最終結果からのものである。第II相試験から得たデータのカットオフ日:2020年6月24日。
図10B】同上。
図11A図11A図11Hは、コホート1~3(A~D)およびコホート4(E~H)におけるIgGサブクラスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4の血清レベルを示す。データは、天疱瘡患者におけるエフガルチギモドの第II相試験(1701試験)の最終結果からのものである。第II相試験から得たデータのカットオフ日:2020年6月24日。
図11B】同上。
図11C】同上。
図11D】同上。
図11E】同上。
図11F】同上。
図11G】同上。
図11H】同上。
図12図12A図12Dは、コホート1~3(図12A)およびコホート4(図12B)における抗デスモグレイン1自己抗体ならびにコホート1~3(図12C)およびコホート4(図12D)における抗デスモグレイン3自己抗体の血清レベルを経時的に示す。データは、天疱瘡患者におけるエフガルチギモドの第II相試験(1701試験)の最終結果からのものである。
図13図13は、実施例12に記載される第III相臨床試験のデザインを概説する図である。ABQOL=自己免疫性水疱性疾患の生活の質、CR=完全な臨床的寛解、CRmin=最低限の治療中の完全寛解、DC=疾患制御、Efg=エフガルチギモドPH20 SC、EoC=強化の終了、EoS=試験の終了、EQ-5D-5L=EuroQol 5次元5段階アンケート、OLE=非盲検延長試験、PD=薬力学、PDAI=天疱瘡疾患領域指標、PF=落葉状天疱瘡、PK=薬物動態学、PV=尋常性天疱瘡、SC=皮下。
図14図14は、実施例13に記載される第III相臨床試験のデザインを概説する図である。CR=完全な臨床的寛解、CRmin=最低限の治療中の完全寛解、CRoff=治療離脱中の完全寛解、DC=疾患制御、Efg=エフガルチギモドPH20 SC、EoT=治療の終了、FU=フォローアップ、SC=皮下、Trt Fail=治療失敗、W=週。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本開示は、尋常性天疱瘡および落葉状天疱瘡を含む天疱瘡の治療における、工学的に操作されたFcRnアンタゴニストとその使用のための方法とを提供する。有利なことに、本明細書に開示される方法は、現在の療法で達成されるよりも速い疾患制御を可能とし、また臨床的寛解を達成した後にコルチコステロイドをテーパリングし中止さえする可能性をもたらす。
【0083】
定義
本明細書に別段の定義のない限り、本発明に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。用語の意味および範囲は明確であるべきだが、何らかの潜在的な曖昧さがある場合は、本明細書に提供される定義は、任意の辞書または外因的定義を超えて優先される。さらに、文脈上別段の要求のない限り、単数形は複数を含み、複数形は単数を含むものとする。概して、本明細書に記載の細胞および組織の培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質および核酸の化学およびハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法、ならびにそれらの技術は、当技術分野で周知であり一般に用いられている。
【0084】
本発明がより容易に理解され得るように、特定の用語が最初に定義される。
【0085】
本明細書で使用される場合、用語「FcRn」は、新生児Fc受容体を指す。例示的なFcRn分子は、RefSeq NM_004107に記載されるFCGRT遺伝子によってコードされるヒトFcRnを含む。対応するタンパク質のアミノ酸配列は、RefSeq NP_004098に記載されている。
【0086】
本明細書で使用される際に、用語「FcRnアンタゴニスト」は、FcRnに特異的に結合し、FcRn(例えば、ヒトFcRn)へのイムノグロブリンの結合を阻害する、任意の薬剤を指す。
【0087】
本明細書で使用される際に、ある特定の実施形態では、用語「FcRnアンタゴニスト」とは、Fc領域を介してFcRnに特異的に結合し、FcRnへのイムノグロブリンの結合を阻害する、Fc領域(例えば、本明細書に開示されるバリアントFc領域)を含むかまたはそれからなる任意の薬剤を指す。ある特定の実施形態では、FcRnアンタゴニストは全長IgG抗体ではない。ある特定の実施形態では、FcRnアンタゴニストは、標的抗原に結合する抗原結合部位、および本明細書に開示されるバリアントFc領域を含む。他の実施形態では、FcRnアンタゴニストは、Fc領域を含むかまたはそれからなり抗原結合部位を欠く、Fc断片である。特定の実施形態では、用語「FcRnアンタゴニスト」とは、その抗原結合ドメインを介して、またはそのFc領域を介してFcRnに特異的に結合し、イムノグロブリンのFc領域(例えば、デスモソームタンパク質に対するIgG自己抗体)のFcRnへの結合を阻害する、抗体またはその抗原結合断片を指す。
【0088】
本明細書で使用される際に、用語「Fc領域」とは、その二つの重鎖のFcドメインによって形成される天然の免疫グロブリンの部分を指す。天然のFc領域は、ホモ二量体である。
【0089】
本明細書で使用される際に、用語「バリアントFc領域」とは、天然のFc領域と比較して一つまたは複数の変更を有するFc領域を指す。変更には、アミノ酸置換、付加、および/または欠失、追加部分の結合、および/または天然グリカンの変更が含まれ得る。この用語はヘテロ二量体Fc領域を包含し、ここでは、構成する各Fcドメインが異なる。このようなヘテロ二量体Fc領域の例としては、以下に限定されないが、「ノブおよび穴」技術を用いて作製されたFc領域が挙げられ、それは例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8216805号に記載されているようなものである。この用語はまた、構成するFcドメインがリンカー部分によって合わせて連結される一本鎖Fc領域を包含し、それは例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009/0252729号A1および米国特許出願公開第2011/0081345号A1に記載されているようなものである。
【0090】
本明細書で使用される際に、用語「Fcドメイン」とは、ヒンジ領域で始まる単一のイムノグロブリン重鎖の部分を指し、この部分は、パパイン切断部位のすぐ上流で始まり、抗体のC末端で終わる。したがって、完全なFcドメインは、ヒンジ(例えば、上部、中央部、および/または下部のヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインのうち少なくとも一部を含む。
【0091】
本明細書で使用される際に、用語「FcRn結合断片」とは、FcRn結合を付与するのに十分なFc領域の一部分を指す。
【0092】
本明細書で使用される際に、用語「EU位置」とは、下記に記載されるFc領域についてのEU付番則におけるアミノ酸位置を指す:
Edelman,G.M.et al.,Proc.Natl.Acad.USA,63,78-85(1969)and Kabat et al,in “Sequences of Proteins of Immunological Interest”,U.S.Dept.Health and Human Services,5th edition,1991.。
【0093】
本明細書で使用される際に、用語「CH1ドメイン」とは、EU位置約118~215に延在するイムノグロブリン重鎖の第一の(最もアミノ末端の)定常領域ドメインを指す。CH1ドメインは、イムノグロブリン重鎖分子のVHドメインとヒンジ領域のアミノ末端とに隣接しており、イムノグロブリン重鎖のFc領域の一部を形成しない。
【0094】
本明細書で使用される際に、用語「ヒンジ領域」とは、CH1ドメインをCH2ドメインに接合する重鎖分子の部分を指す。このヒンジ領域は、およそ25個の残基を含み、可撓性であり、ゆえに、二つのN末端抗原結合領域が独立して動くことを可能にする。ヒンジ領域は、三つの別個のドメイン、すなわち、上部、中央部、および下部のヒンジドメインに細分され得る(Roux et al.,J.Immunol.161:4083(1998))。本開示のFcRnアンタゴニストは、ヒンジ領域のすべてまたは一部を含み得る。
【0095】
本明細書で用いられる際に、用語「CH2ドメイン」とは、EU位置約231~340に延在する重鎖免疫グロブリン分子の一部分を指す。
【0096】
本明細書で使用される際に、用語「CH3ドメイン」とは、CH2ドメインのN末端から、例えば、約341~446位(EU付番系)からおよそ110残基延在する、重鎖免疫グロブリン分子の一部分を含む。
【0097】
本明細書で使用される際に、ある特定の実施形態では、用語「FcRnアンタゴニスト」とは、その抗原結合ドメインを介してFcRnに特異的に結合し、イムノグロブリンのFc領域のFcRnへの結合を阻害する、抗体またはその抗原結合断片を指す。
【0098】
一実施形態では、FcRnに特異的に結合し、イムノグロブリンのFc領域のFcRnへの結合を阻害する抗体は、ニポカリマブであり、M281としても知られる。ニポカリマブは、全長(150kDa)の「Fc不活性」(糖鎖不含かつエフェクター不含)のIgG1モノクローナル抗体である。ニポカリマブは、重症筋無力症(MG)、温式自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、ならびに胎児および新生児の溶血性疾患(HDFN)の治療のために、第II相臨床試験において静脈内注入として投与されている。
【0099】
ニポカリマブは、WO2019/118791に記載され、以下の軽鎖(配列番号4)および重鎖(配列番号5)の配列を含む:
QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTGSDVGSYNLVSWYQQHPGKAPKLMIYGDSERPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYAGSGIYVFGTGTKVTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHKSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号4)
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSTYAMGWVRQAPGKGLEWVSSIGASGSQTRYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLAIGDSYWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号5)
【0100】
一実施形態では、FcRnに特異的に結合し、イムノグロブリンのFc領域のFcRnへの結合を阻害する抗体は、ロザノリキシズマブであり、UCB7665としても知られる。ロザノリキシズマブは、完全長(150kDa)のヒト化IgG4モノクローナル抗体である。ロザノリキシズマブは、MG、免疫性血小板減少(ITP)、および慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)に対する継続中の臨床試験において、皮下注射として投与されている。ロザノリキシズマブは、WO2014019727に最初に記載され、配列番号6の軽鎖および配列番号7の重鎖を含む。
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKSSQSLVGASGKTYLYWLFQKPGKAPKRLIYLVSTLDSGIPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCLQGTHFPHTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号6)
EVPLVESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGFTFSNYGMVWVRQAPGKGLEWVAYIDSDGDNTYYRDSVKGRFTISRDNAKSSLYLQMNSLRAEDTAVYYCTTGIVRPFLYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号7)
【0101】
一実施形態では、FcRnに特異的に結合し、イムノグロブリンのFc領域のFcRnへの結合を阻害する抗体は、オリラノリマブであり、SYNT001としても知られる。オリラノリマブは、別の完全長(150kDa)ヒト化IgG4モノクローナル抗体である。オリラノリマブは、WAIHAの治療のための第II相臨床試験で静脈内注入として投与されている。
【0102】
一実施形態では、FcRnに特異的に結合し、イムノグロブリンのFc領域のFcRnへの結合を阻害する抗体は、バトクリマブであり、IMVT1401/RVT1401/HBM9161としても知られる。バトクリマブは、別の全長(150kDa)の「Fc不活性の」IgG1モノクローナル抗体である。バトクリマブは、MGおよびグレーブス眼症の治療のために、進行中の第II相臨床試験において皮下注射として投与されている。
【0103】
本明細書で使用される際に、用語「CD16」とは、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)に必要なFcγRIII Fc受容体を指す。例示的なCD16分子は、RefSeq NM_000569に記載されるヒトCD16aを含む。
【0104】
本明細書で使用される際に、用語「遊離システイン」とは、成熟FcRnアンタゴニストにおいて実質的に還元された形態で存在する、天然または工学的に操作されたシステインアミノ酸残基を指す。
【0105】
本明細書で使用される際に、用語「抗体」とは、四つのポリペプチド鎖、すなわち、ジスルフィド結合によって相互接続された二つの重鎖(H)鎖および二つの軽鎖(L)鎖、ならびにそれらの多量体(例えば、IgM)を含む免疫グロブリン分子を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(略称VH)と重鎖定常領域とを含む。重鎖定常領域は、CH1、CH2、およびCH3の三つのドメインを含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(略称VL)と軽鎖定常領域とを含む。軽鎖定常領域は、一つのドメイン(CL)を含む。VH領域およびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分化することができ、CDR間には、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるさらに保存された領域が散在する。
【0106】
本明細書で使用される際に、抗体の「抗原結合断片」は、一つのVLと対を成す少なくとも一つのVHを一般的に含み、それらは共に、特定の抗原またはエピトープに特異的に結合することができる。抗原結合断片には、以下に限定されないが、Fv、Fab、Fab’、およびF(ab’)断片、ならびに工学的に操作された一本鎖FV(scFV)断片、ダイアボディなどが含まれ得る。
【0107】
本明細書で使用される際に、用語「N-結合型グリカン」は、Fc領域のCH2ドメイン中に存在するシークオン(すなわち、Asn-X-SerまたはAsn-X-Thr配列であり、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸である)中のアスパラギンの側鎖の窒素(N)に付加されるN-結合型グリカンを指す。このようなN-グリカンは、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるDrickamer K,Taylor ME(2006).Introduction to Glycobiology,2nd ed.に十分に記載されている。
【0108】
本明細書で使用される際に、用語「非フコシル化」とは、米国特許第8067232号に記載されるようなコアフコース分子を欠いたN-結合型グリカンを指し、上記特許の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0109】
本明細書で使用される際に、用語「バイセクティングGlcNAc」とは、米国特許第8021856号に記載されるようなコアマンノース分子に連結されたN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)分子を有するN-結合型グリカンを指し、上記特許の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0110】
本明細書で使用される際に、用語「治療する」、「治療すること」、および「治療」とは、本明細書に記載される治療的または予防的な措置を指す。ある特定の実施形態では、用語「治療する」、「治療すること」、および「治療」とは、本明細書に記載される治療的な措置を指す。「治療」の方法は、疾患もしくは障害または再発した疾患もしくは障害の一つまたは複数の症状を予防、治癒、遅延、重症度の低減、または寛解するために、またはそのような治療の不在下で予期される範囲を超えて対象の生存を延長するために、本明細書に記載される薬剤または薬剤の組合せを対象へ投与することを利用する。
【0111】
本明細書で使用される際に、用語「対象」は、任意のヒトまたは非ヒト哺乳動物を含む。
【0112】
天疱瘡
天疱瘡は、ケラチノサイトの細胞膜タンパク質の細胞外ドメインに対するIgG自己抗体の産生が、棘融解(ケラチノサイト間の細胞間接着の喪失)をもたらす、慢性の水疱形成上皮疾患の一群である。天疱瘡の三つの主要な形態は、尋常性天疱瘡(PV)、落葉状天疱瘡(PF)、および腫瘍随伴性天疱瘡(PP)である。
【0113】
PVは、表皮ケラチノサイト上のデスモソームタンパク質であるデスモグレイン-3(Dsg-3)および/またはデスモグレイン-1(Dsg-1)に対するIgG自己抗体によって引き起こされる。Dsgの細胞外ドメインへの抗体(IgG4が優位であり、補体を活性化しない)の結合は、ケラチノサイト接着の喪失および水疱の形成を引き起こすのに十分であるため、PVの臨床症状を直接的に生成する。Dsg-3は、皮膚の基底細胞層および傍基底細胞層に、ならびに粘液膜の扁平上皮全体にわたって、ほぼ独占的に発現されるのに対し、Dsg-1は、皮膚の表層で優勢であり、粘膜にはほぼ存在しない。したがって、粘膜のPV病変は、主に抗Dsg-3抗体によって誘導されるのに対し、皮膚のPV病変は、抗Dsg-3抗体と抗Dsg-1抗体との両方によって惹起される。興味深いことに、疾患の活動性は、Dsg-1に対する抗体の血清レベルと、それより程度は低いがDsg-3に対する抗体の血清レベルとに、密接に相関することが示されている。
【0114】
Belloni-Fortina A et al.,Clin Dev Immunol.2009;187864.doi:10.1155/2009/187864;Abasq C et al.,Arch Dermatol.2009;145(5):529-35。
【0115】
PFは、Dsg-1に対する抗体によって引き起こされるが、Dsg-1が表皮の表層に発現するため、皮膚のみに関与する。二つの形態、すなわち非地方病性の形態と地方病性の形態(「ブラジル天疱瘡(folgo selvagem)」ともよばれる)とが記述されている。ブラジル天疱瘡は、アマゾン流域に観察されており、この地域では、スナバエ(Lutzomeia longipalpis)の唾液腺に存在する非感染性タンパク質(LJM11)が、Dsg-1との交差反応を引き起こすことが示唆された。その他の点では、地方病性PFと非地方病性PFとは、同じ臨床所見、組織学的所見、および免疫学的所見が共通する。PVと同様に、抗Dsg-1自己抗体は、直接的な病原性を有する。
【0116】
PVおよびPFは稀である。尋常性天疱瘡は、欧州、米国、および日本で最もよく見られる天疱瘡のサブタイプであり、女性に優先的に発症し、患者のほとんどが、疾患発症時に50~60歳である(Kasperkiewicz,Nat.Re.Dis.Primers,2017 May 11;3:17026)。落葉状天疱瘡は、地方病性の形態であることから、南アメリカおよび北アフリカで観察される最も一般的なタイプであり、地域間で性別的な素因が異なり、若年成人に優先的に発生する。PFは、北米と欧州ではあまり一般的ではない(天疱瘡の症例の10~15%)。
【0117】
PVとPFとはどちらも慢性かつ難治性であり、生命を脅かす可能性がある。臨床的には、PVは、粘膜優位であるか、粘膜皮膚性であるか、または、比較的一般にはないが皮膚型のみとして存在する。患者は、ある型から別の型へと頻繁に移行し、典型的には疾患の開始時の粘膜型から後に粘膜皮膚性になってゆく。粘膜皮膚型は、より重度の疾患である傾向があるのに対し、診断の遅れは、粘膜型に共通する。より広い年齢範囲に発症する可能性があるが、そのピーク頻度は50から60歳の間の範囲である。女性はPV集団内にやや過剰に存在し、PV集団では、女性に優先的な甲状腺疾患および関節リウマチが関連している。典型的には、病変は口腔粘膜に始まり、次いで、他の粘膜範囲および皮膚に広がることがある。粘膜の関与は、迅速に破裂し痛みのあるびらんを残す弛緩性水疱からなる。粘膜病変はまた、咽頭、上喉頭、食道、鼻および眼、ならびに生殖器に発症する場合がある。通常、摂食および嚥下、性交の困難など、重大な障害を伴う。多くの場合、体重減少、栄養失調、および生活の質の変化を引き起こす。皮膚病変は、弛緩性の水疱およびびらんを特徴とし、これらは容易に滲出して重感染(皮殻質の病変)となってゆく。任意の皮膚範囲が関与しうるが、病変は頭部、上躯幹および鼠径部に優勢である。それらは痛みがあり、特にひだに痛みがある。検査時に、指が皮膚を病変の周辺で擦った際に表皮が剥離することがあり(ニコルスキー現象)、これはPVの診断を高度に示唆する。
【0118】
PVの診断は、各種ツールのアルゴリズムに従って行われ、概して、疾患を示唆する臨床症状の存在下で実施される。それらは、組織学検査、直接免疫蛍光(DIF)、ならびに間接免疫蛍光(IIF)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)試験のどちらかによる血清中のDsg-3および/またはDsg-1に対する自己抗体の検出を含む。病理組織学は、典型的には、基底層上の棘融解(水疱液中に浮遊するケラチノサイト)を示す。棘融解は、水疱性類天疱瘡(BP)などの他の自己免疫性水疱性疾患には見られないため、PVが強く示唆されるが、診断は、DIFによるケラチノサイトの細胞表面上のIgGおよび/または補体の特徴的な沈着によって確認されるべきである。今日、DIFは診断のためゴールドスタンダード検査と考えられているが、診断を確定するにはIIFおよび/またはELISAが必要である。市販のELISAアッセイは、血清中のDsg-1自己抗体およびDsg-3自己抗体の定量的な測定のために利用可能である。感度の増大(>90%)など、IIFを超える利点をもたらす可能性はあるが、他の自己抗原および自己免疫性水疱性皮膚疾患(AIBD)を除外するのには役に立たない。したがって、IIFおよびELISAは、PVの診断的検査において相補的であると考えることができる。まとめると、現在の国際ガイドラインでは、病理組織学、DIFでの陽性、ならびにIIFおよび/またはELISAでの陽性によって確認された、臨床徴候を標示する患者においてPVの診断を行うことが推奨されている。Hertl M et al.,J Eur Acad Dermatol Venereol.2015;29(3):405-14。
【0119】
PVは慢性疾患であり、自然に改善する傾向はない。それどころか、この疾患は典型的には進行性に悪化し、治療されない場合には一般集団より3倍高い死亡率を有する。治療下では、この疾患は通常、寛解および再発の期間に進行する。最終的に、確実な治癒を達成するには何年もかかる。治療は、高率の重篤な副作用に関連する合併症の要因の一部であることから、死亡率は依然として高く、重度の感染症が今日でも主な死因となっている。Ren Z et al.,J Eur Acad Dermatol Venereol.2018;32(10):1768-1776。
【0120】
Dsg-1は表皮の表部分で発現するため、PF患者は、典型的には、皮膚組織の痒みを伴う鱗片状および皮殻状のびらんを呈する。水疱は、その表在性と破裂し易さのため、稀にしか見られない。別の臨床的なバリアントは、顔面、頭皮、胸部、および肩甲間部の扁平上皮および皮殻性の病変(“脂漏性天疱瘡”)の発達であり得る。より重度の形態では、落屑性紅皮症が、ほぼすべての皮膚表面に関与して観察され得る。PF診断は、PVで使用される治験ツールに従う。組織学的には、角膜下層または表在性顆粒層の裂隙が認められる。DIFは、表皮内のIgGの細胞間沈着を示し、IIFは、皮膚の細胞間成分に対する血清中自己抗体の存在を明らかにする。ELISA試験は、血清中の抗Dsg-1抗体の陽性レベルを定量するのに対し、抗Dsg-3抗体の検査は陰性である。
【0121】
PVと同様に、PFは自然には消散しない傾向にある。可能な限り既存の病変を治癒し、新しい病変の出現を防ぐことを目的とする治療が、常に求められている。
【0122】
天疱瘡の追加形態としては、増殖性天疱瘡、紅斑性天疱瘡、疱疹状天疱瘡、および薬剤誘発性天疱瘡が挙げられる。増殖性天疱瘡は、真菌の繁茂を特徴とし、抗Dsg3 IgG自己抗体により媒介されるPVのバリアントである。紅斑性天疱瘡は、主に顔面と胸および背中の上部における局所的な関与を特徴とし、抗Dsg1 IgG自己抗体によって媒介されるPFのバリアントである。疱疹状天疱瘡は、小さな小胞および膿疱を特徴とし、主に抗Dsg1 IgG自己抗体によって媒介されるサブタイプである。
【0123】
天疱瘡の治療に対する現在のアプローチ
天疱瘡患者の治療管理において医療従事者を支援するために、国内および国際的な専門家達の間で最も重要な臨床評価項目に関する以下の合意に基づく定義、ならびにこれらの疾患の診断および治療のための正規のガイドラインが利用可能である(参照により本明細書に組み込まれるMurrell et al.,J Am Acad Dermatol.2008;58:1043;Murrell et al.,J Am Acad Dermatol.2018 Feb 10;Harman et al.,Br J Dermatol.2017 Nov;177(5):1170-1201;Joly et al.,Lancet.2017 May 20;389(10083):2031-2040),Hebert et al.,J Invest Dermatol.2019 Jan;139(1):31-37を参照):
(a)「疾患制御」(DC)-新しい天疱瘡の病変がなく、定着した病変が治癒し始めている;
(b)「強化相の終了」(EoC)-少なくとも2週間にわたって新しい天疱瘡病変がなく、定着した病変の約80%が治癒している。
(c)「完全寛解」(CR)-新しい病変または定着した病変が存在せず、「完全な臨床的寛解」ともよばれる。
(d)「治療離脱中の完全寛解」(CRoff)-患者がすべての全身療法から少なくとも2か月間離脱している間に、新しい病変または定着した病変が存在しない。
(e)「治療中の完全寛解」(CRmin)-患者が最低限の治療を受けている間に、新しい病変または定着した病変が存在しない。
(f)「最低限の治療」-10mg/日以下の用量でのプレドニゾン(もしくはその同等)および/または少なくとも2カ月(臨床試験中の実用的な理由から、これは8週間まで短縮される)にわたる最小限のアジュバント療法を受ける。
(g)「治療離脱中」-少なくとも2カ月間にわたって全身性薬剤を投与しない。
(h)「再発」または「再燃」(R)-1か月に3つ以上の病変が出現して1週間以内に治癒しないか、または定着した病変が拡大する。
(i)「治療の失敗」-全身治療の全治療用量(例えば、3週間にわたるプレドニゾン1.5mg/kg/日)で疾患制御に達することができない。
【0124】
さらに、疾患の活動性および拡大をモニタリングするための検証されたスケール(例えば、Rosenbach M et al.,J Invest Dermatol.2009;129(10):2404-10;Rahbar Z et al.,JAMA Dermatol.2014;150(3):266-72を参照)が確立されている。 検証された例示的なスコアとしては、天疱瘡疾患領域指標(PDAI)および自己免疫性水疱性皮膚障害強度スコア(ABSIS)が挙げられる。天疱瘡疾患領域指標(PDAI)は、十分に確立されて広く使用されている診断ツールであり、罹患したヒト対象における天疱瘡の重症度の評価および分類に使用される。PDAIを用いて、疾患の重症度を0~263の尺度で採点し、スコア0は疾患のないことを示し、スコア263は最も重度の疾患を示す。
【0125】
軽度、中等度、および重度の天疱瘡の重症度の閾値は、部分的に重複する患者集団を示した異なる論文で示唆されており、それらの論文では、軽度と中等度/重度の疾患の間のカットオフ値としてPDAI 9または15を、中等度と重度の疾患の間のカットオフ値として25または45を提案している(Shimizu et al.,J Dermatol.2014;41(11):969-973;Boulard et al.,Br J Dermatol.2016;175(1):142-9)。国際ガイドラインでは、現在のところ軽度、中等度、または重度の疾患を定義するためのカットオフ値を決定的に述べるには時期尚早であるものと結論付けている(Murrell et al.,J Am Acad Dermatol.2020;82(3):575-585)。
【0126】
例示的な実施形態では、「軽度の天疱瘡」は、PDAIスコア15未満として特徴付けられ、「中程度の天疱瘡」は、PDAIスコア15~45未満により特徴付けられ、「重度の天疱瘡」は、PDAスコア45以上により特徴付けられる。自己免疫性水疱性疾患の生活の質(ABQOL)スコアが、患者の日常生活に与える疾患とその治療法の影響を突き止めるために開発され、検証された。Sebaratnam DF et al.,JAMA Dermatol.2013;149(10):1186-91。
【0127】
最新の国際ガイドライン(Ren Z et al.,J Eur Acad Dermatol Venereol.2018;32(10):1768-1776)によれば、コルチコステロイドは、天疱瘡の第一選択治療であり続けている。これらは、今日知られている最も迅速に作用する治療形態であり、有効用量で使用される場合に、約3週間で疾患制御(新しい病変がなく、定着した病変が治癒し始める)をもたらす。 Ratnam KV et al.,Int J Dermatol.1990;29(5):363-7;Czernik A et al.,Arch Dermatol.2008;144(5):658-61;Chaidemenos G et al.,J Eur Acad Dermatol Venereol.2011;25(2):206-10。経口プレドニゾンは、最も一般的に使用されるコルチコステロイドである。経口プレドニゾンの開始用量は、1日当たり1~2mg/kgの範囲で高く、リツキシマブまたは免疫抑制剤と組み合わせた場合に低減され得る(1日当たり0.5~1mg/kg)。少なくとも3~4週間経過後に疾患制御が得られない場合、プレドニゾンの用量を増量する必要がある。非常に活動性の高い疾患を有する患者では、コルチコステロイド(例えばメチルプレドニゾロン)の静脈内ボーラス投与が好適である場合があり、特に治療開始時に好適である。
【0128】
本明細書で使用される際に、用語「プレドニゾン同等用量」とは、プレドニゾンの用量またはプレドニゾン以外の全身性コルチコステロイドの同等用量を意味する。全身性コルチコステロイドは周知であり、様々な力価および製剤の化合物を含む。これらは一般的に、注射剤または錠剤として製剤化される。市販の全身性コルチコステロイドの例としては、以下に限定されないが、ベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニゾロン、およびトリアムシノロンが挙げられる。
【0129】
ある特定の実施形態では、局所性コルチコステロイドも投与されてもよい。局所性コルチコステロイドは周知であり、様々な力価および製剤の化合物を含む。これらは概して、軟膏、クリーム、オイル、ローション、シャンプー、フォーム、および/またはゲルとして製剤化される。市販の局所性コルチコステロイドの例としては、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、酪酸クロベタゾン、デソニド、デソキシメタゾン、吉草酸ジフルコルトロン、二酢酸ジフロラゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルランドレノリド、プロピオン酸フルチカゾン、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタソール、ヒドロコルチゾン、17-酪酸ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、プレニカルバート、およびトリアムシノロンアセトニドが挙げられる。局所性コルチコステロイドは、治療を必要とする患部または病変に局所的に適用することができ、それによって、コルチコステロイド治療の望ましくない全身性の効果を制限する。
【0130】
天疱瘡患者の治療管理は非常に困難である。その主要な原理は、一方では、新たな水疱の発生を速やかに止め、次いで臨床的寛解を達成することであり、一方では、全身療法、例えばコルチコステロイドなどの副作用を最小限にすることである。コルチコステロイドは、これらの慢性疾患において高い累積毒性を有し、この毒性は、可能な限り曝露量および曝露期間を減らすことによって軽減されなければならない。第二に、治療の目的は、最小限のコルチコステロイド療法で、または何の治療さえ行わずに、新しい病変の発達を防ぐことである。この目的のために、患者は、高度医療施設によって管理される必要があり、そこでは、経験豊富な皮膚科医により注意深くモニタリングを受けることができる。多くの患者において、粘膜病変が存在する場合、口腔医、眼科医、および婦人科医を含めた、多分野のアプローチが必要である。
【0131】
疾患制御後、経口プレドニゾンは、疾患制御を強化するために安定用量で維持される。強化の終了は、少なくとも2週間にわたって新しい病変が不在であること、および定着した病変の約80%が既に治癒したこととして定義される。この時点は、プレドニゾンをテーパリングし始める屈曲時間として、大多数の医師によって選択される。強化期間は、患者間で大きく異なり、粘膜のびらんおよび広範囲の皮膚病変は治癒が遅い傾向にある。
【0132】
疾患制御が強化されると、プレドニゾンの用量を徐々に低減するテーパリングスケジュールが設定される。この段階の目標は、副作用を防ぐために、完全な臨床的寛解(新しい病変がなく、確立されたすべての病変が完全に治癒した)を達成すると同時に、プレドニゾンの最小限の有効量(少なくとも2か月間にわたって1日あたり10mg以下)に達すること、またはプレドニゾンを止めること(治療離脱)さえある。残念なことに、この二重の目的は達成困難であり、患者の大部分がプレドニゾンのテーパリング用量下で再発する。前向き試験では、プレドニゾンを受けたPV患者の64%が、12か月後に最小限の用量での最初の臨床的寛解を達成したが、再発が高頻度で、すなわち6か月以内に症例の45%で起こった。Beiscert S et al.,J Invest Dermatol.2010;130(8):2041-8。最終的に、PVの一般的な経過は、再発および一過性の寛解のエピソードの一つであり、永久的な寛解を達成する前に何年ものプレドニゾン治療を要する。ある研究では、PV患者の36%が、プレドニゾンまたはその同等を少なくとも10年間投与された。Mimouni D et al.,J Eur Acad Dermatol Venereol.2010;24(8):947-52。一方、コルチコステロイドに関連する副作用(骨粗鬆症、糖尿病、高血圧、クッシング症候群、白内障、緑内障、感染症など)のリスクは、治療期間とともに増加する。したがって、ほとんどのPV患者は、寛解下で維持し、累積プレドニゾン用量を低減するために、アジュバント療法(例えば、リツキシマブ、免疫抑制剤)を必要とする。
【0133】
本明細書で使用される際に、用語「初回用量」とは、天疱瘡患者に(テーパリング前に)投与された開始コルチコステロイド用量またはコルチコステロイドの初回用量を意味する。
【0134】
本明細書で使用される際に、用語「テーパリング用量」とは、天疱瘡患者に投与される際の低減されたコルチコステロイド用量を意味する。用語「初回テーパリング用量」とは、例えば0.5mg/kg/日プレドニゾンの用量またはその同等を天疱瘡患者に投与する際に、最初の低減されたコルチコステロイド用量を意味する。さらに低減した用量を投与してもよい。初回用量および/またはその後のテーパリング用量の低減は、定期的に、例えば、2週間毎に発生し得る。
【0135】
PVの成人におけるリツキシマブの最近の承認は、疾患の治療法の根幹を劇的に変化させており、現在では、より重度の症例に対するプレドニゾンとの第一選択療法として提案されている。Ren Z et al.,J Eur Acad Dermatol Venereol.2018;32(10):1768-1776。最近まで、リツキシマブは主に、他の治療にはあまり反応しない難治性PV患者に使用されていた。しかし、寛解が長期間続かないこと、ならびにプレドニゾンおよび免疫抑制剤に関連する数多くの重篤な有害事象があることから、研究者は代替の第一選択治療を開発することになった。第二選択治療および第三選択治療としてのリツキシマブ(1サイクル当たり1~2g)は、他のどの治療でも達成できなかった高率の長期寛解を誘発することが示された(1年後のPVの寛解率75%)。リツキシマブ療法後の再発率は、長期のフォローアップでは1年後の25%から最大80%までの範囲であった。Wang HH et al.,Acta Derm Venereol.2015;95(8):928-32。最近の証拠では、第一選択治療として第一サイクルのリツキシマブ(2g)の後、12か月および18か月後に低用量のプレドニゾン(疾患の重症度に応じて1日当たり0.5~1mg/kg)との組合せで新たなサイクル(0.5g)を行うことの有効性が示されている。Joly et al.,Lancet.2017 May 20;389(10083):2031-2040)。この第一選択レジメンを用いて、2年後の高い割合の完全寛解(この文脈では、治療離脱中の完全寛解であることを意味する)、すなわち89%が実証された。再発症例はさらに低い(2年後に24%)ことが観察され、多くが最初のサイクル後6~12か月以内に発生した。強力なプレドニゾン節約効果、すなわち約3分の2の節約効果が実証された。
【0136】
それにもかかわらず、第一選択治療または第二/第三選択治療のいずれかとして使用されるリツキシマブは、作用の開始が遅く、疾患制御(最初の注入からの平均時間:6~7週間)および臨床的寛解(最小限のプレドニゾン療法を平均6~7ヶ月、9カ月の治療離脱)の早期達成をもたらさない。Hebert V et al.,J Invest Dermatol.2019;139(1):31-37;Wang HH et al.,Acta Derm Venereol.2015;95(8):928-32。さらに、リツキシマブ療法は、重篤な有害事象(例えば、感染の33%)を誘発するリスクを伴う。遅発性好中球減少および低ガンマグロブリン血症、ならびに患者が潜在的に致死的な感染症(例えば、ニューモシスチス・カリニ、多巣性白質脳症、敗血症)を発症するリスクでは、リツキシマブ投与下の患者の臨床状態および免疫状態を長期的にモニタリングする必要がある。
【0137】
PF患者は、典型的には、PV患者と同じタイプの臨床転帰尺度の管理とモニタリングとに従うが、リツキシマブはこの状態について承認されていない。
【0138】
FcRnアンタゴニスト
新生児Fc受容体(FcRn)は、一生のすべての段階で、IgGの血清レベルおよび組織分布に影響を与える。FcRnは、IgGの細胞内輸送用内在性膜受容体である。それゆえに、FcRnは、主にIgG輸送およびホメオスタシスに関与する多機能分子である。Challa DK et al.,Curr Top Microbiol Immunol.2014;382:249-72;Roopenian DC et al.,Nat Rev Immunol.2007;7(9):715-25。FcRn発現細胞にて飲作用によりIgGが取り込まれた後、IgGのFc部分は、早期の酸性エンドソーム(pH<6.5)中、高い親和性でFcRnに結合する。この結合は、IgGをリソソーム分解から免れさせ、リサイクルのために細胞表面に追いやる。細胞外空間の中性に近いpH(約pH7.4)では、IgGはFcRnとの複合体から放出される。このpH依存性のサルベージ経路は、リサイクルされない他のIgに比べて高い循環内IgG濃度の維持と長いIgGの半減期(t1/2)とで説明できる。Roopenian DC et al.,J Immunol.2003;170(7):3528-33;Waldmann TA et al.,J Clin Invest.1990;86(6):2093-2098;Wani MA et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.2006;103(13):5084-5089。
【0139】
一態様では、本発明は、FcRnアンタゴニスト組成物を使用した天疱瘡の治療方法を提供する。ある特定の実施形態では、これらの組成物は、天然のFc領域と比較して増加した親和性および低減したpH依存性によりFcRn、特にヒトFcRnに特異的に結合する、バリアントFc領域またはそのFcRn結合断片を含むかまたはそれからなる。他の実施形態では、FcRnアンタゴニスト組成物は、その抗原結合ドメインを介してFcRnに特異的に結合し、免疫グロブリンのFc領域のFcRnへの結合を阻害する、抗体またはその抗原結合断片である。一般に、これらのFcRnアンタゴニストは、Fc含有剤(例えば、抗体およびイムノアドへシン)のin vivoでのFcRnへの結合を阻害し、その結果、Fc含有剤の分解速度が増加し、同時に、これらの薬剤の血清レベルが低下する。
【0140】
単離されたバリアントFc領域(例えば、アミノ酸Y、T、E、K、F、およびYをそれぞれEU位置252、254、256、433、434、および436に含むバリアントFc領域)は、同じバリアントFc領域を含む全長抗体よりもin vivoでより有効なFcRnアンタゴニストである。したがって、ある特定の実施形態では、FcRnアンタゴニスト組成物は全長抗体ではない。ある特定の実施形態では、FcRnアンタゴニスト組成物は、抗体可変ドメインを含まない。ある特定の実施形態では、FcRnアンタゴニスト組成物は、抗体可変ドメインまたはCH1ドメインを含まない。しかし、ある特定の実施形態では、FcRnアンタゴニスト組成物は、抗体可変ドメインを含む、一つまたは複数の追加の結合ドメインまたは部分に連結されたバリアントFc領域を含むことがある。
【0141】
任意のFc領域を、本明細書に開示されるFcRnアンタゴニスト組成物で使用するためのバリアントFc領域を生成するように変更することができる。一般に、Fc領域、またはそのFcRn結合断片は、ヒト免疫グロブリン由来である。しかし、Fc領域は、ラクダ科の種、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)または非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー、マカク)種を含めた、任意の他の哺乳類種の免疫グロブリンに由来し得ることが理解される。さらに、Fc領域またはその一部は、IgM、IgG、IgD、IgA、およびIgEを含む任意のイムノグロブリンクラス、ならびにIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む任意のイムノグロブリンアイソタイプに由来し得る。ある特定の実施形態では、Fc領域は、IgG Fc領域(例えば、ヒトIgG領域)である。ある特定の実施形態では、Fc領域は、IgG1 Fc領域(例えば、ヒトIgG1領域)である。ある特定の実施形態では、Fc領域は、いくつかの異なるFc領域の一部分を含むキメラFc領域である。キメラFc領域の適切な例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0243966号A1に記載されている。様々なFc領域遺伝子配列(例えば、ヒト定常領域遺伝子配列)が、公的にアクセス可能な寄託物の形態で利用可能である。本発明の範囲は、Fc領域の対立遺伝子、バリアント、および変異を包含することが理解されよう。
【0142】
Fc領域は、さらに切断されるかまたは内部を欠失して、その最小のFcRn結合断片を生成してもよい。Fc領域断片のFcRnに結合する能力は、例えばELISAなど、当技術分野で認識されている任意の結合アッセイを用いて決定することができる。
【0143】
本明細書に開示されるFcRnアンタゴニストの製造可能性を高めるために、構成するFc領域は、いかなる非ジスルフィド結合システイン残基も含まないことが好ましい。したがって、ある特定の実施形態では、Fc領域は遊離システイン残基を含まない。
【0144】
天然のFc領域と比較して増加した親和性および減少したpH依存性によりFcRnに特異的に結合する任意のFcバリアントまたはそのFcRn結合断片を、本明細書に開示されるFcRnアンタゴニスト組成物に使用することができる。ある特定の実施形態では、バリアントFc領域は、所望の特徴を付与するアミノ酸変化、置換、挿入、および/または欠失を含む。ある特定の実施形態では、バリアントFc領域または断片は、アミノ酸Y、T、E、K、F、およびYをそれぞれEU位置252、254、256、433、434、および436に含む。バリアントFc領域において使用され得るアミノ酸配列の非限定的な例を、以下の表1に記載する。
表1:バリアントFc領域の非限定的な例のアミノ酸配列
【表1】
【0145】
ある特定の実施形態では、FcRn-アンタゴニストは、バリアントFc領域からなり、バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列は、配列番号1、2、または3に記載されるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列は、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列は、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0146】
ある特定の実施形態では、FcRn-アンタゴニストは、バリアントFc領域からなり、バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列は、配列番号1、2、または3に記載されるアミノ酸配列からなる。ある特定の実施形態では、バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列は、配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなる。ある特定の実施形態では、バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列からなる。ある特定の実施形態では、バリアントFc領域のFcドメインのアミノ酸配列は、配列番号3に記載されるアミノ酸配列からなる。
【0147】
ある特定の実施形態では、FcRnアンタゴニストは、バリアントFc領域からなり、前記バリアントFc領域は、ホモ二量体を形成する二つのFcドメインからなり、Fcドメインのそれぞれのアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、および配列番号3からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、FcRnアンタゴニストは、バリアントFc領域からなり、前記バリアントFc領域は、ホモ二量体を形成する二つのFcドメインからなり、Fcドメインのそれぞれのアミノ酸配列は、配列番号1である。ある特定の実施形態では、FcRnアンタゴニストは、バリアントFc領域からなり、前記バリアントFc領域は、ホモ二量体を形成する二つのFcドメインからなり、Fcドメインのそれぞれのアミノ酸配列は、配列番号2である。ある特定の実施形態では、FcRnアンタゴニストは、バリアントFc領域からなり、前記バリアントFc領域は、ホモ二量体を形成する二つのFcドメインからなり、Fcドメインのそれぞれのアミノ酸配列は、配列番号3である。
【0148】
ある特定の実施形態において、バリアントFc領域は、追加のFc受容体に対する結合親和性を変更(例えば、増加または減少)している。バリアントFc領域は、例えば、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32a)、FcγRIIB(CD32b)、FcγRIIIA(CD16a)、およびFcγRIIIB(CD16b)のうちの一つまたは複数に対する結合親和性を変更(例えば、増加または低減)することができる。追加的なFc受容体に対する親和性を変える任意の当技術分野で認識されている手段を用いることができる。ある特定の実施形態では、バリアントFc領域のアミノ酸配列が変更される。
【0149】
ある特定の実施形態において、バリアントFc領域は、Kabatに記載されるEUインデックスにより付番される234、235,236,239,240,241,243,244,245,247,252,254,256,262,263,264,265,266,267,269,296,297,298,299,313,325,326,327,328,329,330,332,333、および334からなる群から選択される一つまたは複数の位置に、非天然型アミノ酸残基を含む。任意選択的に、Fc領域は、当業者に公知の追加的および/または代替的な位置に非天然アミノ酸残基を含んでいてもよい(例えば、内容が参照によりその全体を本明細書に組み込まれる米国特許第5,624,821号、第6,277,375号、第6,737,056号、PCT出願公開WO01/58957、WO02/06919、WO04/016750、WO04/029207、WO04/035752、およびWO05/040217号を参照)。
【0150】
ある特定の実施形態において、バリアントFc領域は、Kabatに記載されるEUインデックスにより付番された234D、234E、234N、234Q、234T、234H、234Y、234I、234V、234F、235A、235D、235R、235W、235P、235S、235N、235Q、235T、235H、235Y、235I、235V、235F、236E、239D、239E、239N、239Q、239F、239T、239H、239Y、2401、240A、240T、240M、241W、241L、241Y、241E、241R.243W、243L、243Y、243R、243Q、244H、245A、247V、247G、252Y、254T、256E、262I、262A、262T、262E、263I、263A、263T、263M、264L、264I、264W、264T、264R、264F、264M、264Y、264E、265G、265N、265Q、265Y、265F、265V、265I、265L、265H、265T、266I、266A、266T、266M、267Q、267L、269H、269Y、269F、269R、296E、296Q、296D、296N、296S、296T、296L、296I、296H、269G、297S、297D、297E、298H、298I、298T、298F、299I、299L、299A、299S、299V、299H、299F、299E、313F、325Q、325L、325I、325D、325E、325A、325T、325V、325H、327G、327W、327N、327L、328S、328M、328D、328E、328N、328Q、328F、328I、328V、328T、328H、328A、329F、329H、329Q、330K、330G、330T、330C、330L、330Y、330V、330I、330F、330R、330H、332D、332S、332W、332F、332E、332N、332Q、332T、332H、332Y、および332Aからなる群から選択される少なくとも一つの非天然アミノ酸残基を含む。任意選択的に、Fc領域は、当業者に公知の追加的および/または代替的な非天然アミノ酸残基を含んでいてもよい(例えば、内容が参照によりその全体を本明細書に組み込まれる米国特許第5,624,821号、第6,277,375号、第6,737,056号、PCT出願公開WO01/58957、WO02/06919、WO04/016750、WO04/029207、WO04/035752、およびWO05/040217号を参照)。
【0151】
本明細書に開示されるFcRnアンタゴニストに使用され得る他の既知のFcバリアントとしては、以下に限定されないが、Ghetie et al.,1997,Nat.Biotech.15:637-40;Duncan et al,1988,Nature 332:563-564;Lund et al.,1991,J.Immunol.,147:2657-2662;Lund et al,1992,Mol.Immunol.,29:53-59;Alegre et al,1994,Transplantation 57:1537-1543;Hutchins et al.,1995,Proc Natl.Acad Sci USA,92:11980-11984;Jefferis et al,1995,Immunol Lett.,44:111-117;Lund et al.,1995,FASEB J.,9:115-119;Jefferis et al,1996,Immunol Lett.,54:101-104;Lund et al,1996,J.Immunol.,157:4963-4969;Armour et al.,1999,Eur J Immunol 29:2613-2624;Idusogie et al,2000,J.Immunol.,164:4178-4184;Reddy et al,2000,J.Immunol.,164:1925-1933;Xu et al.,2000,Cell Immunol.,200:16-26;Idusogie et al,2001,J.Immunol.,166:2571-2575;Shields et al.,2001,J Biol.Chem.,276:6591-6604;Jefferis et al,2002,Immunol Lett.,82:57-65;Presta et al.,2002,Biochem Soc Trans.,30:487-490);米国特許第5,624,821号;第5,885,573号;第5,677,425号;第6,165,745号;第6,277,375号;第5,869,046号;第6,121,022号;第5,624,821号;第5,648,260号;第6,528,624号;第6,194,551号;第6,737,056号;第6,821,505号;第6,277,375号;米国特許出願公開第2004/0002587号;およびPCT出願公開WO94/29351;WO99/58572;WO00/42072;WO02/060919;WO04/029207;WO04/099249;WO04/063351に開示されるものが挙げられ、これらの内容は参照によりその全体を本明細書に組み込まれる。
【0152】
ある特定の実施形態では、バリアントFc領域はヘテロ二量体であり、ここでは、構成するFcドメインは互いに異なっている。Fcヘテロ二量体を産生する方法は、当技術分野で公知である(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第8216805号を参照)。ある特定の実施形態では、バリアントFc領域は、一本鎖Fc領域であり、ここで、構成するFcドメインは、リンカー部分によって合わせて連結される。単鎖Fc領域を作製する方法は、当技術分野で公知である(例えば、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009/0252729号A1および米国特許出願公開第2011/0081345号A1を参照)。
【0153】
自己免疫性疾患で観察される病原性IgG抗体は、これらの疾患の病原性トリガーであるか、または疾患の進行に寄与するかのどちらかであり、細胞性Fc受容体の不適切な活性化を介して疾患を媒介するものと考えられる。凝集した自己抗体および/または自己抗原(免疫複合体)と複合体化した自己抗体は、活性化したFc受容体に結合し、数多くの自己免疫性疾患(部分的には、自己組織に対する免疫学的に媒介された炎症に起因して発生する)を引き起こす(例えば、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれるClarkson et al.,New Engl J Med 314(9),1236-1239(2013));米国特許出願公開第2004/0010124号A1;米国特許出願公開第2004/0047862号A1;および米国特許出願公開第2004/0265321号A1を参照)。したがって、抗体媒介性障害(例えば、自己免疫性疾患)を治療するためには、有害な自己抗体を除去すること、およびこれらの抗体の免疫複合体の活性化Fc受容体(例えば、CD16aなどのFcγ受容体)との相互作用を遮断することの両方が有利となる。
【0154】
したがって、ある特定の実施形態では、FcRnアンタゴニストのバリアントFc領域は、CD16a(例えば、ヒトCD16a)への結合の増加を示す。これは、FcRnアンタゴニストが、FcRn阻害によって除去される標的である自己抗体の免疫複合体誘導性炎症応答にさらに拮抗することを可能にするという点で特に有利である。CD16a(例えば、ヒトCD16a)に対する親和性を増加させる任意の当技術分野で認識された手段を用いることができる。ある特定の実施形態では、FcRnアンタゴニストは、N結合グリカンを含むバリアントFc領域を含む(例えば、EU位置297)。この場合、グリカン構造を変更することによって、CD16aに対するFcRnアンタゴニストの結合親和性を増加させることができる。Fc領域のN-結合型グリカンの変更は、当技術分野で周知である。例えば、非フコシル化N-グリカン、またはバイセクティングGlcNAc構造を有するN-グリカンは、CD16aに対する親和性の増加を示すことが示されている。したがって、ある特定の実施形態では、N-結合型グリカンは非フコシル化される。非フコシル化は、当技術分野で認識された任意の手段を使用して達成することができる。例えば、FcRnアンタゴニストは、フコシルトランスフェラーゼを欠く細胞において発現することができ、その結果、フコースは、バリアントFc領域のEU位置297でN-結合型グリカンに付加されない(例えば、内容が参照によりその全体を本明細書に組み込まれる米国特許第8,067,232号を参照)。ある特定の実施形態では、N-結合型グリカンは、バイセクティングGlcNAc構造を有する。バイセクティングGlcNAc構造は、当技術分野で認識された任意の手段を使用して達成することができる。例えば、FcRnアンタゴニストは、バイセクティングGlcNAcがバリアントFc領域のEU位置297でN-結合型グリカンに追加されるように、ベータ1-4-N-アセチルグルコサミン転移酵素III(GnTIII)を発現する細胞で発現することができる(例えば、内容が参照によりその全体を本明細書に組み込まれる米国特許第8021856号を参照)。追加的または代替的に、N-結合型グリカン構造の改変は、in vitroでの酵素的手段によっても達成することができる。
【0155】
特定の実施形態では、本開示は、中に含有されるFcRnアンタゴニスト分子の一部分が改変型グリカン構造を含む、FcRnアンタゴニスト組成物を提供する。ある特定の実施形態では、FcRnアンタゴニスト組成物は、本明細書に開示される複数のFcRnアンタゴニスト分子を含み、それらの分子の少なくとも50%(任意選択的に、少なくとも60、70、80、90、95、または99%)は、非フコシル化N-結合型グリカンを有するFc領域またはそのFcRn結合断片を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される複数のFcRnアンタゴニスト分子を含むFcRnアンタゴニスト組成物であって、それらの分子の少なくとも50%(任意選択的に、少なくとも60、70、80、90、95、または99%)が、バイセクティングGlcNAcを有するN-結合型グリカンを含むFc領域またはそのFcRn結合断片を含む。
【0156】
ある特定の実施形態では、バリアントFc領域は、N-結合型グリカンを含まない。これは、当技術分野で認識された任意の方法を使用して達成することができる。例えば、Fcバリアントは、N-結合型グリコシル化の不可能な細胞内で発現することができる。追加的または代替的に、Fcバリアントのアミノ酸配列は、N-結合型グリコシル化を(例えば、NXTシークオンの変異によって)防止または阻害するために変更することができる。あるいは、Fcバリアントは、無細胞系で合成(例えば、化学的に合成)することができる。
【0157】
特定の実施形態では、FcRnアンタゴニスト分子は、例えば、FcRnアンタゴニストへの分子(例えば、結合部分またはイメージング部分)の共有結合により修飾されてもよく、その際に、FcRnアンタゴニストがFcRnに特異的に結合するのを共有結合が妨げないようにする。例えば、以下に限定されないが、FcRnアンタゴニストは、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護ブロッキング基による誘導体化、タンパク質切断、細胞性リガンドまたは他のタンパク質への連結などによって改変されてもよい。
【0158】
ある特定の実施形態では、FcRnアンタゴニストは、半減期延長剤に連結されたバリアントFc領域を含む。本明細書で使用される際に、用語「半減期延長剤」とは、本明細書に開示されるFcRnアンタゴニストに連結された場合にFcRnアンタゴニストの半減期を増加させる、任意の分子を指す。任意の半減期延長剤が、(共有結合または非共有結合のいずれかにより)FcRnアンタゴニストに連結され得る。ある特定の実施形態では、半減期延長剤は、ポリエチレングリコールまたはヒト血清アルブミンである。ある特定の実施形態では、FcRnアンタゴニストは、血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)、IgG、赤血球などの血液輸送分子または細胞など、対象に存在する半減期延長剤に特異的に結合する結合分子に連結される。
【0159】
本明細書に開示されるFcRnアンタゴニストは、優れた製造可能性を有する。例えば、それらは、哺乳類細胞において高レベルで発現することができる(例えば、10L攪拌槽バイオリアクター中のCHO細胞において6g/L)。さらに、プロテインA精製後、得られた精製済みFcRnアンタゴニスト組成物は、非常に高いパーセンテージのFcRnアンタゴニストモノマーを有し、非常に低いレベルのFcRnアンタゴニストタンパク質の凝集体および分解生成物を含有する。したがって、ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書に開示される複数のFcRnアンタゴニスト分子を含むFcRnアンタゴニスト組成物を提供し、ここで、組成物中のFcRnアンタゴニスト分子の95%超は単量体である(例えば、95、96,97、98、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9%超)。ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書に開示される複数のFcRnアンタゴニスト分子を含むFcRnアンタゴニスト組成物を提供し、ここで、組成物中のFcRnアンタゴニスト分子の5%未満が凝集体中に存在する(例えば、5、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1%)未満)。ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書に開示される複数のFcRnアンタゴニスト分子を含むFcRnアンタゴニスト組成物を提供し、ここでは、組成物は、FcRnアンタゴニスト分子の分解産物を実質的に含まない。
【0160】
本発明に有用なFcRnアンタゴニストの製造方法は、例えば、米国特許第10,316,073号に開示されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0161】
FcRnアンタゴニスト組成物は、単独で、または一つもしくは複数の追加の治療剤と組み合わせて使用することができる。ある特定の実施形態では、追加の治療剤は抗炎症剤である。任意の抗炎症剤を、本明細書に開示されるFcRnアンタゴニストと組み合わせて使用することができる。抗炎症剤としては、コルチコステロイド、例えば、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、およびデキサメタゾンが挙げられる。ある特定の実施形態では、追加の治療剤は、リツキシマブ、ダクリズマブ、バシリキシマブ、ムロモナブ-CD3、インフリキシマブ、アダリムマブ、オマリズマブ、エファリズマブ、ナタリズマブ、トシリズマブ、エクリズマブ、ゴリムマブ、カナキヌマブ、ウステキヌマブ、またはベリムマブである。ある特定の実施形態では、追加の治療剤は、白血球枯渇剤(例えば、B細胞またはT細胞の枯渇剤)である。任意の白血球枯渇剤を、本明細書に開示されるFcRnアンタゴニスト組成物と組み合わせて使用することができる。ある特定の実施形態では、白血球枯渇剤は、B細胞枯渇剤である。ある特定の実施形態では、白血球枯渇剤は、細胞表面マーカーに対する抗体である。適切な細胞表面マーカーとしては、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD53、CD70、CD72、CD74、CD75、CD77、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85、またはCD86が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の例示的な実施形態では、B細胞枯渇剤は、CD20に結合する抗体(例えば、リツキサン)である。FcRnアンタゴニストおよび追加の治療剤は、同一または異なる投与経路を介して、同時にまたは順次対象に投与することができる。
【0162】
エフガルチギモド
エフガルチギモド(ARGX-113)は、ヒトFcRnに対するナノモルの親和性で結合するzaアロタイプの改変型ヒト免疫グロブリン(Ig)ガンマ(IgG)1由来のFcである。エフガルチギモドは、IgG1の残基D220-K447(EU付番スキーム)を包含し、ABDEG(商標)技術を用いて工学的に操作され、生理的pHおよび酸性pHの両方でFcRnに対する親和性が増大している。Vaccaro C et al.,Nat Biotechnol.2005;23(10):1283。内容が参照によりその全体を本明細書に組み込まれる、米国特許第10,316,073号を参照されたい。酸性pHおよび生理的pHの両方でのエフガルチギモドのFcRnに対する親和性の増加により、IgGのFcRn媒介性リサイクルの阻害が生じる。
【0163】
エフガルチギモドの分子量は約54kDaであり、これは全長IgG(MW 約150kDa)の分子量の約3分の1である。したがって、10mgのエフガルチギモドは約185nmolであり、その結果、10mgのエフガルチギモド/体重kgの用量は、約185nmolのエフガルチギモド/体重kgに相当し、25mgのエフガルチギモド/体重kgの用量は、約462.5nmolのエフガルチギモド/体重kgに相当する。これに対して、10mgの全長IgG抗体/体重kgの用量は、約67nmol/体重kgに相当する。さらに、1000mgの固定用量のエフガルチギモドは、約18500nmolの固定用量のエフガルチギモドに対応するのに対し、2000mgの固定用量のエフガルチギモドは、約37000nmolの固定用量のエフガルチギモドに対応する。
【0164】
酸性および中性の両方のpHでFcRnに対する親和性が増大するため、エフガルチギモドはFcRn/IgG複合体の形成を遮断し、それにより、IgG媒介性自己免疫疾患を引き起こす自己抗体を含む内因性IgGの分解をもたらす。このエフガルチギモドによるFcRnの遮断は、自己抗体レベルの迅速かつ大幅な減少をもたらすが、このことは自己免疫適応の治療のための戦略の根底をなし、IgG自己抗体が疾患の病理学、例えば天疱瘡(PVおよびPF)などの状態において中心的な役割を果たすことが予想される。
【0165】
rHuPH20
エフガルチギモドは、静脈内(IV)および皮下(SC)の両方の投与経路について開発中である。SC投与については、ある特定の実施形態では、エフガルチギモドは単独で投与されてもよい。あるいは、SC投与については、ある特定の実施形態では、エフガルチギモドは、ヒアルロニダーゼ、例えば、特にrHuPH20と合剤化されてもよい。合剤化された材料により、より高い体積の投与が可能になる。
【0166】
rHuPH20は、ハロザイムの市販製品であるハイレネックス(登録商標)組換え(ヒアルロニダーゼヒト注射液)の有効成分であり、ハイレネックス(登録商標)と呼ばれ、2005年12月に米国でFDAにより上市を承認された。ハイレネックス(登録商標)は、水分補給を達成するための、他の注射薬の分散および吸収を増加させるための、ならびにSC尿路造影において放射線不透過性剤の吸収を改善するための、SC流体投与におけるアジュバントとして標示される組織浸透性調整剤である。
【0167】
rHuPH20は、ヒトヒアルロニダーゼの可溶性断片をコードするデオキシリボ核酸プラスミドを含有する遺伝子操作されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって産生される組換え酵素ヒトヒアルロニダーゼである(後頭部タンパク質20[PH20])。
【0168】
HZ202 rHuPH20 DSは現在、ハイレネックス(登録商標)、およびrHuPH20 DSと合剤化された他の生物製剤に登録されている。このように、ある特定の実施形態では、HZ202 rHuPH20 DSは、SC投与のためのエフガルチギモド/rHuPH20合剤製品(すなわち、エフガルチギモドPH20 SC)中に使用される。
【0169】
SC注射体積は、典型的には、より大きな体積に伴う注射の痛みの懸念があるため、2.5mLに制限される。rHuPH20は、速やかなSC注射に伴う体積の制限に対し解決策を提供することが実証されている。rHuPH20は局所的に、かつ一過性に作用して、皮膚の皮下層に見られるゲル様物質であるヒアルロン酸を脱重合する。これにより、流体の流れに対する抵抗が減少し、注射された薬剤および流体の分散および吸収が増加し、限定的な腫脹または疼痛でより大きな体積を注射することが可能になる。rHuPH20は、SCを投与した際に比較的大きな体積(10mL)を速やかに吸収させることを可能にすることが示されている。Shpilberg O et al.,Br J Cancer.2013;109(6):1556-1561。10mLのIgG溶液を、2,000U/mLでrHuPH20を用いてSC投与した場合、観察された注射部位の腫脹はごくわずかであったが、10mLのIgG溶液をrHuPH20なしで注射した場合、注射部位の大きな腫脹が観察された。Shpilberg O et al.,Br J Cancer.2013;109(6):1556-1561。
【0170】
rHuPH20は一過性に作用し、系統的に吸収されない。長期間の局所効果を及ぼさないことが示されている。rHuPH20は、皮膚で30分未満の半減期を有する。皮下組織のヒアルロン酸レベルは、ヒアルロン酸の自然の迅速なターンオーバーにより、24~48時間以内に正常に戻る。
【0171】
rHuPH20は、他の有効成分(非ホジキンリンパ腫(NHL)および慢性リンパ性白血病(CLL)に対するリツキサン・ハイセラ(登録商標)/マブセラ(登録商標)SC[リツキシマブ〕、およびハーセプチン・ハイレクタ(商標)/ハーセプチン(登録商標)SC[トラスツズマブ〕)をSC投与するために米国および欧州において承認されており、その酵素濃度は2,000U/mLであり、注射体積は5~13.4mLに及ぶ。
【0172】
方法
本明細書では、FcRnアンタゴニストを使用して天疱瘡を治療する方法が提供される。ある特定の実施形態では、天疱瘡は尋常性天疱瘡(PV)である。ある特定の実施形態では、天疱瘡は落葉状天疱瘡(PF)である。ある特定の実施形態では、天疱瘡は、PVとPFとの両方を含み得る。特定の実施形態では、FcRnアンタゴニストは、エフガルチギモドである。本明細書に開示される方法の重要な目標および特徴は、天疱瘡の治療における、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン)およびリツキサンなどの潜在的に毒性を有する薬剤の使用を低減するかまたは排除さえすることである。本明細書に開示される方法の別の重要な目標および特徴は、疾患制御の迅速な開始である。本明細書に開示される方法のさらに別の重要な目標および特徴は、好ましくはコルチコステロイド(例えば、プレドニゾン)およびリツキサンなどの潜在的に毒性を有する薬剤を使用せず、最低限の治療で長期間続く完全寛解を達成することである。
【0173】
本開示の態様は、それを必要とする対象に有効量のヒト新生児Fc受容体(FcRn)アンタゴニストを投与することを含む、天疱瘡を治療する方法であり、対象は、(a)新たに診断された天疱瘡、(b)再発性天疱瘡、または(c)難治性天疱瘡を有する。
【0174】
再発性天疱瘡とは、4週間に少なくとも3つの新たな天疱瘡病変が出現し1週間以内に治癒しないこと、または定着した病変が拡大することを指す。
【0175】
難治性天疱瘡とは、現在の療法では制御されない天疱瘡を指す。いくつかの実施形態では、難治性天疱瘡とは、コルチコステロイドで制御されない天疱瘡を指す。いくつかの実施形態では、難治性天疱瘡とは、リツキシマブで制御されない天疱瘡を指す。いくつかの実施形態では、難治性天疱瘡とは、リツキシマブおよびコルチコステロイドで制御されない天疱瘡を指す。いくつかの実施形態では、難治性天疱瘡とは、最大量のコルチコステロイドで制御されない天疱瘡を指す。いくつかの実施形態では、難治性天疱瘡とは、最大量のリツキシマブで制御されない天疱瘡を指す。いくつかの実施形態では、難治性天疱瘡は、最大量のリツキシマブおよび最大量のコルチコステロイドで制御されない天疱瘡を指す。ある特定の実施形態では、難治性天疱瘡とは、全身治療の全治療用量、例えば、プレドニゾン1.5mg/kg/日で3週間で、疾患制御(以下を参照)に到達できないことを指す。
【0176】
いくつかの実施形態では、天疱瘡は、尋常性天疱瘡(PV)、落葉状天疱瘡(PF)、またはPVとPFとの両方を含む。いくつかの実施形態では、天疱瘡は、尋常性天疱瘡(PV)を含む。いくつかの実施形態では、天疱瘡は、落葉状天疱瘡(PF)を含む。いくつかの実施形態では、天疱瘡は、尋常性天疱瘡(PV)と落葉状天疱瘡(PF)との両方を含む。いくつかの実施形態では、天疱瘡は、尋常性天疱瘡(PV)からなる。いくつかの実施形態では、天疱瘡は、落葉状天疱瘡(PF)からなる。いくつかの実施形態では、天疱瘡は、尋常性天疱瘡(PV)と落葉状天疱瘡(PF)との両方からなる。
【0177】
ある特定の実施形態では、天疱瘡は、天疱瘡疾患領域指標(PDAI)によって分類される軽度、軽度~中等度、中等度、重度(広範囲)、または中等度~重度の天疱瘡として特徴付けられうる。ある特定の実施形態では、天疱瘡は、軽度の天疱瘡(例えば、PDAIスコア<15)として特徴付けられうる。他の実施形態では、天疱瘡は、中等度の天疱瘡(例えば、PDAIスコア15~<45)として特徴付けられうる。他の実施形態では、治療される対象は、重度の天疱瘡(例えば、PDAIスコア≧45)を有する。
【0178】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、疾患制御まで週1回投与される。本明細書で使用される際に、「疾患制御」とは、新しい病変がないこと、および定着した病変が治癒し始めることを指す。
【0179】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、完全寛解まで週1回投与される。本明細書で使用される際に、「完全寛解」とは、新しい病変が不在であること、および定着した病変が完全に治癒したことを指す(炎症後の色素沈着過剰または回復した病変に由来する紅斑を除く)。
【0180】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、約10mg/kg~約25mg/kgの用量で週1回、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、約10mg/kgの用量で週1回、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、約15mg/kgの用量で週1回、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、約20mg/kgの用量で週1回、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、約25mg/kgの用量で週1回、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、10mg/kg~25mg/kgの用量で週1回、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、10mg/kgの用量で週1回、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、15mg/kgの用量で週1回、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、20mg/kgの用量で週1回、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、25mg/kgの用量で週1回、静脈内投与される。
【0181】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、約750mg~約1750mgの固定用量で週1回、皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、約750mgの固定用量で週1回、皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、約1000mgの固定用量で週1回、皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、約1250mgの固定用量で週1回、皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、約1500mgの固定用量で週1回、皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、約1750mgの固定用量で週1回、皮下投与される。
【0182】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、750mg~1750mgの固定用量で週1回、皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、750mgの固定用量で週1回、皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、1000mgの固定用量で週1回、皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、1250mgの固定用量で週1回、皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、1500mgの固定用量で週1回、皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、1750mgの固定用量で週1回、皮下投与される。
【0183】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、約10mg/kg~約25mg/kgの用量で週1回、皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、約10mg/kgの用量で週1回、皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、約15mg/kgの用量で週1回、皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、約20mg/kgの用量で週1回、皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、約25mg/kgの用量で週1回、皮下投与される。
【0184】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、10mg/kg~25mg/kgの用量で週1回、皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、10mg/kgの用量で週1回、皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、15mg/kgの用量で週1回、皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、20mg/kgの用量で週1回、皮下投与される。いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、25mg/kgの用量で週1回、皮下投与される。
【0185】
いくつかの実施形態では、FcRnアンタゴニストは、導入相および強化相で投与される。ある特定の実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、週1回以上の頻度で、例えば、週2回または隔日で投与される。ある特定の実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、週1回未満の頻度で、例えば、隔週1回で投与される。特定の実施形態では、(i)導入相の間、疾患制御まで、FcRnアンタゴニストが週1回投与され、0.5mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイドが投与され、(ii)強化相の間、新しい病変の出現を防ぐのに有効な強化終了用量または投与間隔まで、FcRnアンタゴニストの用量が減少される、および/もしくはFcRnアンタゴニストの投与間隔が例えば、隔週に1回まで延長される、ならびに/またはコルチコステロイドの用量が減少される、および/もしくはコルチコステロイドの投与間隔が延長される。
【0186】
特定の実施形態では、(i)導入相の間、疾患制御まで、FcRnアンタゴニストが週1回投与され、0.5mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイドが投与され、(ii)強化相の間、新しい病変の出現を防ぐのに有効な強化終了用量または投与間隔まで、FcRnアンタゴニストの用量が減少される、および/またはFcRnアンタゴニストの投与間隔が例えば、隔週に1回まで延長される。
【0187】
特定の実施形態では、(i)導入相の間、疾患制御まで、FcRnアンタゴニストが週1回投与され、0.5mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイドが投与され、(ii)強化相の間、新しい病変の出現を防ぐのに有効な強化終了用量または投与間隔まで、コルチコステロイドの用量が減少される、および/またはコルチコステロイドの投与間隔が延長される。
【0188】
特定の実施形態では、(i)導入相の間、疾患制御まで、FcRnアンタゴニストが週1回投与され、0.5mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイドが投与され、(ii)強化相の間、新しい病変の出現を防ぐのに有効な強化終了用量または投与間隔まで、FcRnアンタゴニストの用量が減少される、および/またはFcRnアンタゴニストの投与間隔が例えば、隔週に1回まで延長される、ならびにコルチコステロイドの用量が減少される、および/またはコルチコステロイドの投与間隔が延長される。
【0189】
いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、約10mg/kg~約25mg/kgの用量で静脈内投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、約10mg/kgの用量で静脈内投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、約15mg/kgの用量で静脈内投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、約20mg/kgの用量で静脈内投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、約25mg/kgの用量で静脈内投与される。
【0190】
いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、10mg/kg~25mg/kgの用量で静脈内投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、10mg/kgの用量で静脈内投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、15mg/kgの用量で静脈内投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、20mg/kgの用量で静脈内投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、25mg/kgの用量で静脈内投与される。
【0191】
いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、約750mg~約1750mgの固定用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、約750mgの固定用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、約1000mgの固定用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、約1250mgの固定用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、約1500mgの固定用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、約1750mgの固定用量で皮下投与される。
【0192】
いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、750mg~3000mgの固定用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、750mg~1750mgの固定用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、750mgの固定用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、1000mgの固定用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、1250mgの固定用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、1500mgの固定用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、1750mgの固定用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、2000mgの固定用量で皮下投与される。
【0193】
いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、約10mg~約25mgの用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相、FcRnアンタゴニストは、約10mg/kgの用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相、FcRnアンタゴニストは、約15mg/kgの用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相、FcRnアンタゴニストは、約20mg/kgの用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、約25mg/kgの用量で皮下投与される。
【0194】
いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、10mg~25mgの用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相、FcRnアンタゴニストは、10mg/kgの用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相、FcRnアンタゴニストは、15mg/kgの用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相、FcRnアンタゴニストは、20mg/kgの用量で皮下投与される。いくつかの実施形態では、導入相の間、FcRnアンタゴニストは、25mgの用量で皮下投与される。
【0195】
いくつかの実施形態では、強化相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、週1回以下の頻度である。例えば、様々な特定の実施形態では、強化相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくは21日毎に1回、または2、3、4、5、もしくは6週間毎に1回である。様々な特定の実施形態では、強化相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、7~8、7~9、7~10、7~11、7~12、7~13、7~14、7~15、7~16、7~17、7~18、7~19、7~20、または7~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、強化相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、8~9、8~10、8~11、8~12、8~13、8~14、8~15、8~16、8~17、8~18、8~19、8~20、または8~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、強化相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、9~10、9~11、9~12、9~13、9~14、9~15、9~16、9~17、9~18、9~19、9~20、または9~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、強化相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、10~11、10~12、10~13、10~14、10~15、10~16、10~17、10~18、10~19、10~20、または10~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、強化相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、11~12、11~13、11~14、11~15、11~16、11~17、11~18、11~19、11~20、または11~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、強化相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、12~13、12~14、12~15、12~16、12~17、12~18、12~19、12~20、または12~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、強化相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、13~14、13~15、13~16、13~17、13~18、13~19、13~20、または13~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、強化相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、14~15、14~16、14~17、14~18、14~19、14~20、または14~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、強化相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、15~16、15~17、15~18、15~19、15~20、または15~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、強化相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、16~17、16~18、16~19、16~20、または16~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、強化相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、17~18、17~19、17~20、または17~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、強化相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、18~19、18~20、または18~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、強化相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、19~20日または19~21日毎に1回である。
【0196】
いくつかの実施形態では、強化相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、週1回または2週間に1回である。
【0197】
いくつかの実施形態では、方法は、維持相をさらに含み、(iii)維持相の間、病変の完全なクリアランスまで、FcRnアンタゴニストおよび/またはプレドニゾンの強化終了用量または投与間隔は継続される。
【0198】
いくつかの実施形態では、維持相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、週1回以下の頻度である。例えば、様々な特定の実施形態では、維持相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくは21日毎に1回、または2、3、4、5、もしくは6週間毎に1回である。様々な特定の実施形態では、維持相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、7~8、7~9、7~10、7~11、7~12、7~13、7~14、7~15、7~16、7~17、7~18、7~19、7~20、または7~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、維持相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、8~9、8~10、8~11、8~12、8~13、8~14、8~15、8~16、8~17、8~18、8~19、8~20、または8~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、維持相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、9~10、9~11、9~12、9~13、9~14、9~15、9~16、9~17、9~18、9~19、9~20、または9~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、維持相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、10~11、10~12、10~13、10~14、10~15、10~16、10~17、10~18、10~19、10~20、または10~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、維持相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、11~12、11~13、11~14、11~15、11~16、11~17、11~18、11~19、11~20、または11~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、維持相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、12~13、12~14、12~15、12~16、12~17、12~18、12~19、12~20、または12~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、維持相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、13~14、13~15、13~16、13~17、13~18、13~19、13~20、または13~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、維持相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、14~15、14~16、14~17、14~18、14~19、14~20、または14~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、維持相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、15~16、15~17、15~18、15~19、15~20、または15~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、維持相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、16~17、16~18、16~19、16~20、または16~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、維持相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、17~18、17~19、17~20、または17~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、維持相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、18~19、18~20、または18~21日毎に1回である。様々な特定の実施形態では、維持相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、19~20日または19~21日毎に1回である。
【0199】
いくつかの実施形態では、維持相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、週1回である。いくつかの実施形態では、維持相の間、FcRnアンタゴニストの投与間隔は、隔週に1回である。
【0200】
いくつかの実施形態では、天疱瘡は完全寛解に入る。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約5mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約3mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約2mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約1mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約0.5mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約0.4mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約0.3mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約0.2mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約0.1mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。
【0201】
いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦5mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦3mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦2mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦1mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦0.5mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦0.4mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦0.3mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦0.2mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦0.1mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。
【0202】
いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約20mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約15mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約10mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約5mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約3mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約2mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。
【0203】
いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦10mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦5mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦3mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦2mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量で達成される。
【0204】
いくつかの実施形態では、完全寛解はコルチコステロイドなしで達成される。
【0205】
いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約20mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約15mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約10mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約5mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約2mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約1mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約0.5mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約0.4mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約0.3mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約0.2mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦約0.1mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。
【0206】
いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦20mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦15mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦10mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦5mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦2mgのプレドニゾン/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦1mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦0.5mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦0.4mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦0.3mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦0.2mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。いくつかの実施形態では、完全寛解は、≦0.1mgのプレドニゾン/kg/日またはその同等のコルチコステロイド用量により維持される。
【0207】
いくつかの実施形態では、完全寛解はコルチコステロイドなしで維持される。
【0208】
いくつかの実施形態では、対象はリツキシマブ不応性である。
【0209】
いくつかの実施形態では、対象はコルチコステロイド不耐性である。
【0210】
参照による組み込み
前述の説明および以下の実施例で引用される様々な刊行物のそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0211】
本発明は、以下の非限定的な実験例を参照してさらに理解されるものとなる。
【0212】
実施例1-天疱瘡患者の治療におけるエフガルチギモドの第II相臨床試験の概要
本実施例は、天疱瘡(尋常性または落葉状)の治療のための、エフガルチギモド(新生児Fc受容体(FcRn)を遮断することができるヒトIgG1のバリアントFc断片)の安全性、PD、PK、有効性、および使用条件(投与量、維持投与頻度)を評価するための、完了した非盲検、非対照、適応設計の第II相試験(ARGX-113-1701)を記載する。
【0213】
以下でさらに詳細に説明するように、軽度から中等度の尋常性または落葉状の天疱瘡に罹患する34名の患者が、試験に登録された。連続コホートでは、単剤療法として、または低用量経口プレドニゾンへのアドオンとして、10mg/kgまたは25mg/kgを様々な投与頻度で静脈内投与した。
【0214】
試験では、PVまたはPFの臨床診断を有する成人の男性または女性の患者を登録したが、この診断では、直接免疫蛍光法により陽性を、ならびに間接免疫蛍光法および/または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により陽性を確認しており、軽度から中等度の疾患重症度(天疱瘡疾患領域指標[PDAI]<45)を有していた。Dsg-3抗原および/またはDsg-1抗原に対して向けられる自己抗体の血清レベルを、スクリーニング時に特定した。患者は、新たに診断された患者、または治療離脱中の再発患者、または従来の免疫抑制剤のある場合とない場合で経口プレドニゾンをテーパリング用量で摂取したにも関わらず再発した患者であった。試験中の治療は、エフガルチギモド単剤療法、または経口プレドニゾンもしくはその同等と組み合わせたエフガルチギモドから構成された。
【0215】
エフガルチギモドは、天疱瘡患者において良好な安全性および忍容性のプロファイルを明示したが、これは以前のエフガルチギモドの研究と一致していた。血清IgGレベル減少、自己抗体レベル減少、および天疱瘡疾患面積指数(PDAI)スコアの改善と、臨床転帰との間に、強い関連性が示された。エフガルチギモドは、単剤療法またはプレドニゾンとの併用のいずれかで、作用の迅速な開始を明示し、中央値16日で患者の90%に疾患制御をもたらした。0.06~0.48mg/kg/日の用量範囲の低用量コルチコステロイドを用いた、エフガルチギモドによる長期治療の最適化により、患者の59%において2~41週間以内に完全な臨床的寛解がもたらされた。
【0216】
試験の結果では、エフガルチギモドは安全であり、疾患の活動性と臨床転帰に対して作用の速やかな開始を誘導することが示され、全体的に、天疱瘡の有望な治療法としてのエフガルチギモドを支持するものであった。
【0217】
実施例2:研究デザイン
軽度から中等度の疾患重症度(ベースラインでPDAI<45)(Rosenbach,M,et al.,J Invest Dermatol,2009.129(10):2404-10)を有するPVおよびPFの患者を、欧州およびイスラエルの16の臨床研究センターに登録した。PVまたはPFの診断は、直接免疫蛍光法により陽性を、ならびに間接免疫蛍光法および/またはDsg-1/3 ELISAにより陽性を確認する必要がある。患者は新たに診断されたか、または再発しているかのどちらかであった。スクリーニング時に経口プレドニゾン(またはその同等)および免疫抑制剤の治療コースを有する患者を包含可能であったが、免疫抑制剤をベースライン前に中止する必要があった。第二選択治療(例えば、IVIg、リツキシマブ、血漿交換/免疫吸着)に対する難治性疾患の既往を有する患者は除外した。さらに、ベースライン訪問前の2か月以内に、経口プレドニゾンおよび従来の免疫抑制剤以外の、疾患の臨床経過に干渉する可能性のある療法(例えば、プレドニゾロンボーラスの静注、ダプソン、スルファサラジン、テトラサイクリン、ニコチンアミド、血漿分離交換/血漿交換、免疫吸着、およびIVIg)を使用することは許容されず、6か月以内にリツキシマブおよび他のCD20標的化生物製剤を使用することも許容されなかった。スクリーニング時の血清中の総IgGレベル<6g/Lの患者も除外した。
【0218】
非盲検の非対照試験を、4つの連続コホートを用いた適応デザインを使用して実施し、このコホートでは、2時間にわたってIV投与されるエフガルチギモドを、二つの異なる投与量(10および25mg/体重kg)で試験した。少なくとも4名の評価可能な患者を、各コホート1~3に登録し、少なくとも10名の評価可能な患者をコホート4に登録するものとした。図1は、この試験のデザインの概略を示す。エフガルチギモドの注入前に前投薬は必要なかった。毎週の注入により定めた通りに導入相の期間を変えて、また、注入の頻度を変えて(隔週または4週毎)維持相の期間を変えて、試験を行った。
【0219】
全体的に、試験には、2週間のスクリーニング期間、各コホートに指定された9(コホート1)~34週間の治療期間(コホート4)、および無治療のフォローアップ期間(コホート1について8週間、コホート2~4について10週間)を含めた。各投与前に、前回の訪問で得た総IgG血清レベルを検証し、総IgGが<1.2g/Lであった場合に、このレベルを超えて回復するまでエフガルチギモド治療は許容されなかった。独立データモニタリング委員会(IDMC)は、以前のコホートから得た安全性および有効性のデータに基づいて、コホート間の治療レジメンの変化に関する推奨事項を与えた。各コホートには、少なくとも4名の評価可能な患者を含めた。
【0220】
治療期間中、適格患者は、以下のようなIV注入および投与スケジュールを介して、エフガルチギモドを受けるものとした。コホート1の患者は、9週間の治療期間を有し、4回の毎週の10mg/kgの注入と、それぞれ2週間および4週間の間隔で2回の10mg/kgの維持注入とを受けた。コホート2の患者は、11週間の治療期間を有し、4回の毎週の10mg/kgの注入と、4回の隔週の10mg/kgの維持注入(すなわち、隔週の投与)とを受けた。コホート3の患者は、15週間の治療期間を有し、4回の毎週の10mg/kgの注入と、6回の隔週の10mg/kgの維持注入とを受けた。コホート4の患者は、強化終了(EoC)に達するまで毎週25mg/kgの注入を受け、少なくとも5回の毎週の注入を行い、その後、34週目の治療終了まで隔週25mg/kgの維持注入を行う。EoCは、少なくとも2週間にわたり新たな病変が発達せず、定着した病変の大部分(およそ80%)が治癒している時点として定義される。
【0221】
コホート1~3では、エフガルチギモドを、単剤療法(新たに診断された患者および治療離脱中の患者)またはプレドニゾンへのアドオン治療(プレドニゾンの最初の安定コース中の新たに診断された患者、およびテーパリング用量のプレドニゾンで再発している患者)のどちらかとして、ベースラインから使用した。後者の状況下では、新たに診断された患者はプレドニゾン20mg/日を受け、再発患者は同じテーパリング用量でプレドニゾンを継続した。コホート4では、新たに診断されたすべての患者および治療離脱中の再発患者においてプレドニゾン、すなわち20mg/日と併せて、または再発の発生したテーパリング用量で、エフガルチギモド治療を体系的に開始した。コホート4では、経口プレドニゾンの用量を、強化終了(EoC)時にテーパリングできるものとした。逆に、プレドニゾンを、疾患の進行の場合に試験を中止する前に、臨床的判断にしたがって、40mg/日またはさらに高用量のテーパリング用量に増加できるものとした。試験中、天疱瘡に対する他の全身的治療は許容されなかったのに対し、局所性コルチコステロイド、鎮痛剤、およびコルチコステロイド療法に対する支持療法(例えば、ビタミンD、プロトンポンプ阻害剤、特定の食事)は許容された。
【0222】
記述統計法を用いて、安全性および有効性のデータを解析した。概要をコホートおよび/またはエフガルチギモド用量によって示した。
【0223】
上述したように、経口プレドニゾンは、併用治療およびレスキュー療法として本試験で許容された唯一の治療であった。これは、新たに診断された患者および治療離脱中の患者において、エフガルチギモド治療に20mg/日のプレドニゾンを追加すること、および再発患者において以前のプレドニゾン用量に増加させることから構成された。疾患の進行により患者が試験を中止するまで、レスキュー治療下の患者を試験に確保した。
【0224】
実施例3:安全性および有効性の評価
主要評価項目は安全性であり、安全性は、本試験の全コースを通じて、治療により発現した有害事象(TEAE)の頻度および重症度、重篤な有害事象(SAE)、バイタルサイン、ECG(心電図)パラメータ、身体検査異常、および日常的な臨床検査評価(血液学、生化学、尿検査)を含めて評価した。追加の安全性パラメータとして、血清中の総IgGレベルを各訪問時に測定した。
【0225】
有効性評価項目には、天疱瘡疾患活動性指数(PDAI)評価;新しい病変がないこと、および定着した病変が治癒し始めることとして定義される、DCまでの時間;1か月に3つ以上の新しい病変が出現し1週間以内に自然に治癒しないこと、または定着した病変が拡大することとして定義され、DC後のいずれかの訪問から評価される、再発までの時間;少なくとも2週間にわたって新たな病変が発達せず、病変のおよそ80%が治癒した時点として定義される、EoCまでの時間;新しい病変が存在しないこと、および定着した病変が完全に治癒したこと(炎症後の色素沈着過剰または回復した病変に由来する紅斑を除く)によって定義される、CRを完了するまでの時間;ならびに少なくとも8週間の10mg/日以下のプレドニゾン用量によって定義される、最低限の治療下で臨床的寛解(CRmin)を完了するまでの時間が含まれる。
【0226】
その他の副次的評価項目には、薬力学(総IgGおよびサブタイプである抗Dsg-1自己抗体および抗Dsg-3自己抗体)ならびに薬物動態パラメータ、ならびに免疫原性(抗薬剤抗体(ADA)の発現率)の評価を含めた。抗Dsg-1自己抗体および抗Dsg-3自己抗体の血清レベルの測定を、抗デスモグレイン-1および-3 IgG ELISA検査キット(ユーロイミューン、ドイツ)でそれぞれ行った。
【0227】
実施例4.天疱瘡の試験の集団および患者の配置
53名の患者が適格性のスクリーニングを受け、35名が参加に適格であり、34名が試験に登録され(ベースライン前に患者1名が同意を取り下げた)、これらは安全性解析対象集団を構成した(図2)。5か国(ドイツ、ハンガリー、イスラエル、イタリア、ウクライナ)の12の臨床試験センターが、本試験のために少なくとも患者1名を治療した。患者6名をコホート1に割り当て、患者5名をコホート2に割り当て、患者8名をコホート3に割り当て、患者15名をコホート4に割り当てた。
【0228】
この試験の結果には、最初の中間解析(データカットオフが2019年11月7日、報告日が2020年2月21日)、2回目(後期)の中間解析(データカットオフが2020年3月25日、報告日が2020年7月30日)、3回目(後期)の中間解析(データカットオフが2020年6月24日)、および最終解析(データカットオフが2020年10月28日)の結果が含まれる。別段の示唆のない限り、実施例に示されるデータは、最終解析から得たものである。
【0229】
実施例5:中間解析
図3に要約されるように、この第II相試験(データカットオフが2019年11月7日)の結果の最初の中間解析では、以下が示された。
(i)複数の投与レジメンを用いて10mg/kgおよび25mg/kgのIVのエフガルチギモドを評価する適応試験に登録された23名の患者により、病原性のIgGの減少と天疱瘡疾患領域指数スコアの改善との間に明確な相関が確立された。
(ii)患者の83%が全体的に疾患制御を達成し、78%が4週間以内に達成した。
(iii)迅速な疾患制御は、単剤療法と低用量プレドニゾンとの組合せとの両方に関連していた。
(iv)コルチコステロイドの併用により、最適化されたエフガルチギモドの投与を受けた患者の70%(5/7)が臨床的寛解(CR)を達成し、5件のCRが2~10週間以内に観察され、併用療法中の全患者のうち39%がCRを達成した。
(v)CR達成後に、患者に対しコルチコステロイドの併用をテーパリングする可能性が実証された。
【0230】
A.人口統計およびベースライン特性
解析集団別に中間解析患者の人口統計学的特性およびベースライン特性を表2Aに示す。
表2A.人口統計およびベースライン特性-安全性解析対象集団-最初の中間解析から得たデータ(第II相試験から得たデータのカットオフ日:2019年11月7日)
【表2】
【0231】
2回目の中間解析の患者の人口統計学的特性およびベースライン特性を表2Bに示す。2020年6月24日のカットオフ日の時点で、PV患者26名およびPF患者8名が登録され、そのうち22名が女性であり、12名が男性であった。PVサブタイプには、粘膜優位(n=9)、皮膚粘膜(n=14)、および皮膚(n=3)が含まれる。軽度ベースラインPDAI患者12名(<15)および中等度ベースラインPDAI患者22名(15~44)が試験に参加した。新たに診断された患者は14名であり、再発患者は20名であった。ベースラインで、患者11名が、エフガルチギモド単剤療法により試験を始めたのに対し、23名が低用量プレドニゾンに関連して開始した。
表2B.人口統計およびベースライン特性-安全性および有効性の解析対象集団-最終解析から得たデータ(第II相試験から得たデータのカットオフ日:2020年6月24日)
【表3】
【0232】
B.曝露
曝露の程度(治験薬への曝露日数および各患者が受けた注射数)は、投与されるエフガルチギモド用量ごとに安全性解析対象集団全体に対して表3に提示される。
コホート1~3では、患者は10mg/kgの用量を受け、コホート4では、患者は25mg/kgの用量を受けた。
表3:試験ARGX-113-1701での曝露-安全性解析対象集団-最初の中間解析から得たデータ(第II相試験から得たデータのカットオフ日:2019年11月7日)
【表4】
n=患者数、SD=標準偏差
【0233】
C.臨床的有効性
この試験の有効性の解析は副次的な目的であった。すべての有効性解析は、有効性解析対象集団を用いて実施した。有効性評価には、疾患の程度の評価および同意に基づく臨床評価項目の評価を含めた。
【0234】
D.PDAI活性スコア
コホート1~3の各治療相(導入、維持、無治療のフォローアップ)の終了時のPDAI活性スコアのベースラインからの変化を表4に示す。コホートごとの各訪問時のPDAI活性のベースラインからの変化を図4に示し、4つのコホートすべてにおける天疱瘡疾患領域指数(PDAI)活性によって評価された臨床有効性を図示する。ほとんどの患者は、強いPDAIスコアの改善を示した:コホート1では、抗Dsgの低減を伴うIgGの低減と、PDAIスコアの改善、早期のDC(単独/併用)、および維持中の最適以下のエフガルチギモド用量投与との間に相関があり、コホート2では隔週のエフガルチギモド用量投与で維持が改善された。コホート3では、すべての患者が最終的にプレドニゾンに関連し、維持により症状がさらに改善し、経口プレドニゾンと関連した場合にEoC/CRが認められた。コホート4では、強力なPDAIスコアの改善が認められ、EoC率が高く、プレドニゾンがCR前にテーパリングされなかった場合にCRがあった。
【0235】
図5は、中等度の重症度の患者コホート1~4におけるPDAI活性によって評価された臨床有効性を示す。ほとんどの患者は、強力なPDAIスコアの改善を示した。コホート1は、3名の中等度の患者(3名のPV、0名のPF)で構成され、コホート2は、2名の中等度の患者(2名のPV、0名のPF)で構成され、コホート3は、4名の中等度の患者(4名のPV、0名のPF)で構成され、コホート4は、5名の中等度の患者(1名のPV、4名のPF)で構成されていた。天疱瘡の第III相試験のために提案された患者集団は、中等度から重度のPV/PFである。
【0236】
図6は、試験の最終解析で決定されたA)コホート1、B)コホート2、C)コホート3、およびD)コホート4の経時的なPDAI活性スコアを図示する。
表4.PDAI活性スコアの低下:コホート1~3におけるベースラインから得たパーセント変化-有効性解析対象集団-最初の中間解析から得たデータ(第II相試験から得たデータのカットオフ日:2019年11月7日)
【表5】
*1 導入相終了コホート1~3(訪問5)
*2 維持相終了*2(コホート1-M2、コホート2-M4、コホート3-M6)
*3 無治療フォローアップの終了(コホート1-FU2、コホート2および3-FU3)
CI=信頼区間
【0237】
4回の毎週注入を含む導入期間内で(コホート1、2および3)、PDAI活性が減少し、それは4週間後のコホート1の変化の中央値-46.5%(範囲-39.8%、-75%)から、コホート3の変化の中央値-83.3%(範囲-100%、+80.0%)に及んだ。維持期間の終了時に、コホート1のPDAI活性(2週間の次に4週間という間隔で2回の注入を行う)は、導入終了時よりも高い傾向があった(維持終了時に変化の中央値-25.5%、および導入終了時に変化の中央値-46.5%)。コホート2(隔週で4回の注入)では、PDAI活性は、導入終了時と比較して、維持終了時にさらに大きく減少した(導入終了時での変化の中央値-54.4%と比較して、維持終了時での変化の中央値は-69.8%)。コホート3(隔週で6回の注入)では、PDAI活性は先のコホートと比較してさらに減少し、維持終了時の変化の中央値は-91.7%であった(導入終了時の変化の中央値-83.3%と比較)。
【0238】
無治療フォローアップの間、コホート1のPDAI活性は、ベースライン値に戻る傾向があった(変化の中央値-16.8%)のに対し、コホート2および3のPDAI活性は、維持終了時と比較してほぼ同じレベルで安定していた(それぞれ変化の中央値-76.30%および-89.2%)。
【0239】
コホート4では、強化終了まで毎週投与する導入治療期間と、第34週まで隔週投与する維持治療期間とからなる治療レジメンは、コホート1~3と比較して異なっていた。したがって、期間をコホート1~3と直接比較することはできない。コホート4におけるPDAI活性の経時変化を図4Dに提示するが、この図は、4週間後のPDAI活性の変化の中央値-73.7%(範囲-51.5%、-80.3%)を示している。
【0240】
E.臨床転帰
臨床転帰には、疾患制御(DC)、完全な臨床的寛解(CR)、および再発の評価が含まれる。
【0241】
E.1.疾患制御
有効性解析集団(n=31)では、患者28名(90.3%)が試験中にDCに達し、患者24名(77.4%)が4週間の導入期間内にDCを有した(表5)。DCは、軽度と中等度の重症度の患者、新たに診断された患者と再発した患者、単剤療法下とプレドニゾン併用下の患者の間で均等に分布した。DCまでの時間の中央値は、コホート1~3の患者については早くも15.0日(範囲:8~30日)であり、コホート4の患者では29日(範囲:9~30日)であった。逆に、コホート2の患者2名が疾患の進行を経験し、その結果、両方の症例で早期の中止となった。
表5.試験ARGX-113-1701-疾患制御の発現率(全体および4週間の導入期間中)ならびに疾患制御までの時間-有効性解析対象集団 -最初の中間解析から得たデータ(第II相試験から得たデータのカットオフ日:2019年11月7日)
【表6】
n=患者数
【0242】
E.2.完全な臨床的寛解(CR)
CRをコホート3および4で評価した。コホート3では、CRはPDAI活性スコア0に基づいており、コホート4では、CRは治験責任医師によって評価された。CRがコホート3および4で観察され、そこでは、以前のコホートと比較して、エフガルチギモド治療が延長され(コホート3では11週間、コホート4では最大34週間)、プレドニゾンは全患者で関連していた。これら二つのコホートでは、患者7名がCRを達成し、コホート3では患者5名(71.4%)、コホート4では患者7名(46.7%)であった(表6)。特に、中等度の疾患重症度を有する患者3名が、コホート3でCRに達した。
【0243】
CRまでの期間中央値は、コホート3で36日であった(範囲:13~93日)。コホート4では、患者2名のCRまでの期間は44日と72日であった。CR時のプレドニゾン用量は、CR達成の寄与要因であることが見出された。実際に、CRに達したすべての患者は、0.06~0.48mg/kg(コホート3の中央値:0.27mg/kg/日、コホート4の中央値:0.28mg/kg/日)の範囲のプレドニゾンの1日用量を受けた。したがって、エフガルチギモドと、1日あたり0.25~0.50mg/kgという低用量のプレドニゾンとの組合せは、CRを達成するのに十分であり得る。
表6.試験ARGX-113-1701-CR時点におけるCRの発生率および併用したプレドニゾンの同等用量-コホート3および4-有効性解析対象集団-最初の中間解析から得たデータ(第II相試験から得たデータのカットオフ日:2019年11月7日)
【表7】
n=患者数
【0244】
E.3.再発
再発は、DCに到達した患者(N=19)で評価され、患者8名(42.1%、表7)で報告された。CR後(N=1)よりも遅くDC後(N=7)の早期に、さらに頻繁に発生した。コホート1~3の患者では、DC後の再発までの期間中央値は141日であり(N=7、範囲10~169)、コホート4の患者1名はDC後63日目に再発した。再発の時点で、患者3名がプレドニゾンの併用をせずに治療され、患者5名がプレドニゾン治療を1日当たり平均用量0.14±0.06mg/kg(中央値0.17mg/kg/日、範囲は0.07~0.20mg/kg/日)で受けた。
【0245】
DCに達した直後に起こり得る再発は、実際には2週間毎のエフガルチギモドのレジメン下で(N=4)、またはエフガルチギモドの無治療フォローアップ(N=4)中でのみ観察されたが、毎週のエフガルチギモド投与中にあった患者は再発しなかった。これらの所見によれば、エフガルチギモドの毎週の投与レジメンが再発の予防に最適であるものと仮定することができる。
表7.試験ARGX-113-1701-再発の時点における再発の発生率および併用したプレドニゾンの同等用量-有効性解析対象集団 -最初の中間解析から得たデータ(第II相試験から得たデータのカットオフ日:2019年11月7日)
【表8】
n=患者数
【0246】
中間臨床転帰に関する有効性の結論
要約すると、薬力学的効果(IgG、抗Dsg-1自己抗体および抗Dsg-3自己抗体に対する効果)、活動性に対する臨床効果(PDAI)、および疾患の臨床転帰(疾患制御、臨床的寛解)は、低用量プレドニゾンと組み合わせたPVおよびPFの治療に潜在的な有益な効果を及ぼすことを支持するものである。
【0247】
最適な薬力学的効果および臨床有効性を達成するための治療用量投与レジメンは、10mg/kgのエフガルチギモド(1000mgのエフガルチギモドPH20 SCと解釈される)の毎週の注入であった。
【0248】
結論として、この第II相試験において、エフガルチギモドは、PVおよびPFに対する有効で安全な潜在性のある治療であることが観察された。
【0249】
実施例7-第II相天疱瘡試験(ARGX-113-1701)から得た天疱瘡患者における薬理学的特性
(a)総IgG
総IgGレベルと試験日とのベースラインからの平均変化率を図7に示し、導入相、維持相、および無治療フォローアップ相の終了時の総IgGレベル減少の概要を表8に示す。
【0250】
コホート1、2、および3における毎週の注入を4回含む導入期間中、総IgGレベルは、ベースライン-55.0%から-67.9%の平均変化の範囲で減少した。維持期間の終了時に、コホート1の総IgGレベル(2週間の次に4週間という間隔で2回の注入を行う)は、ほぼベースラインに戻り、ベースラインからの平均変化は-4.37%であった。コホート2(隔週4回の注入)および3(隔週6回の注入)では、IgGレベルは、維持相終了時のベースラインからの平均変化でそれぞれ-50.67%および-49.21%に抑制されたままであった。これは、コホート1の2週間および4週間の間隔と比較して、隔週での注入後の総IgGレベルがさらに効率的に抑制されることを標示していた。
【0251】
無治療フォローアップの終了時に、コホート1(最終投与の8週間後)の総IgGレベルは、ベースラインから+23.30%まで増加し、コホート2および3(どちらも最終投与の10週間後)では、それぞれベースラインから-9.65%および-6.25%までのベースラインにほぼ戻った。
【0252】
コホート4では、強化終了まで毎週投与する導入治療期間と、第34週まで隔週投与する維持治療期間とからなる治療レジメンは、コホート1~3と比較して異なっていた。したがって、期間をコホート1~3と直接比較することはできない。コホート4における総IgGの減少の経時変化を図7Aに示し、この図では、4週間後の-69.85%の平均変化を示す。図7Aに図示する総IgGレベルと、図7Bおよび図7Cに図示するPDAI活性スコアとの間には、明らかな相関がある。
【0253】
第II相試験におけるPVでの総IgGの減少を図8に示す。PDプロファイルは、25mg/kgでのエフガルチギモドの4回の毎週投与について示されている。図8Aは、PVにおけるPDプロファイルを示し、図8Bは、健康なボランティア(HV)およびPVにおけるPDプロファイルを示す。HVおよびモデリングに基づく予想の範囲内で、PVとHVとの間に類似のPDプロファイルが観察された。
【0254】
図9Aおよび図9Bは、10mg/kgのエフガルチギモドの4回の毎週投与についてのPDプロファイルを図示する。図9Aは、PVにおけるPDプロファイルを示し、図9Bは、HV、PV、重症筋無力症(MG)、およびITPにおけるPDプロファイルを示す。
【0255】
図10Aおよび図10Bは、A)コホート1~3、B)コホート4における総IgGの血清レベルを示す。データは、カットオフ日2020年6月24日の天疱瘡患者におけるエフガルチギモドの第II相試験(1701試験)の結果から得たものである。
【0256】
図11A図11Hは、コホート1~3(A~D)およびコホート4(E~H)におけるIgGサブクラスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4の血清レベルを示す。データは、カットオフ日2020年6月24日の天疱瘡患者におけるエフガルチギモドの第II相試験(1701試験)から得たものである。
表8.総IgGの減少量:コホート1~3におけるベースラインからの変化率-有効性解析対象集団。
【表9】
a 訪問5でコホート1~3の導入相の終了。
b 維持相の終了(コホート1-M2、コホート2-M4、コホート3-M6)
c 無治療フォローアップの終了(コホート1-FU2、コホート2および3-FU3)
n=患者数、CI=信頼区間
【0257】
要約すると、エフガルチギモドにより治療された天疱瘡患者は、ベースラインに比較して、最初の注入後の総血清IgGレベルのおよそ40%の減少を示した。29日目における4回の毎週注入後の10mg/kgでの薬力学(PD)効果の中央値は、総IgGの62%の減少であり、一方で25mg/kg用量では66%であった。
【0258】
(b)抗Dsg抗体
抗Dsg-3レベルおよび抗Dsg-1レベルの平均レベルと試験日との対比を、図12A~Dに示す。天疱瘡の病原性自己抗体である抗Dsg-1特異的IgGおよび抗Dsg-3特異的IgGは、主にIgG4サブクラスであるが、それらの血清レベルは、総IgGと類似の様式で減少した。病原性抗体の迅速なクリアランスが観察され、有効性解析対象集団の全患者において、導入相終了時に、抗Dsg1抗体ではベースラインから61%の中央値の減少、抗Dsg3抗体では49%の減少に達した。
【0259】
病原性抗Dsg-1/-3自己抗体レベルの減少とPDAIスコアの改善との間には、試験全体を通して明確な関連性が観察された。4週間の固定投与の終了時に、PDAI活性スコアの減少の中央値は75%であった(図6A図6E)。これらの所見は、天疱瘡サブタイプまたは病歴に関係なく一致しており、天疱瘡におけるエフガルチギモドの潜在的な幅広い有用性を示唆している。
【0260】
コホート1~3における維持訪問の数および頻度の可変性により、PD効果の中央値は変動した。2回目の維持訪問でのコホート1のPD効果の中央値は、9%のIgGレベルの減少であり、4回目の維持訪問でのコホート2では、53%の減少であり、6回目の維持訪問でのコホート3では、51%の減少であった。EoCを達成してエフガルチギモドの隔週投与に切り替えたコホート4の患者は、隔週の注入が維持されている限り、およそ50%のレベルで持続的なIgGレベルの減少があった。
【0261】
同様に、抗Dsg3抗体についてはさらに不均一であったとはいえ、病原性抗体の抑制を維持することができた。コホート3および4におけるエフガルチギモドによる延長治療により、持続的なPDAI活性の減少に転じた。コホート3からの患者7名は、ベースラインからのPDAI活性スコアの減少の中央値78%(増加230から減少100に及ぶ)で試験を完了し、コホート4からの患者4名は、試験終了時に、ベースラインから93%の減少の中央値(範囲79、100)を示した。
【0262】
無治療フォローアップの終了時(最後の薬剤投与後の8週目または10週目)に、IgGレベルは正常値まで上昇して戻り、ベースラインから39%の減少~43%の増加の範囲であった。抗Dsg1自己抗体については、ベースラインからの変化の中央値は80%の減少であり、抗Dsg3抗体については43%の減少であり、全体として、総IgGレベルとは対照的に、病原性抗体をさらに長く抑制することが図示されている。
【0263】
実施例8:エフガルチギモド単剤療法
ベースラインでエフガルチギモド単剤療法を受けた患者8名は、ベースラインでプレドニゾンを追加的に受けた患者における中央値92%の低下(増加50から減少100に及ぶ)と比較すると、4週間の固定投与の終了時に、PDAI活性スコアの中央値61%の減少(増加411から減少100に及ぶ)を示した。低用量プレドニゾンの併用は、より深くPDAI活性スコアを減少させるものと思われたが、エフガルチギモド単剤療法の明らかな効果から、エフガルチギモド単独で臨床的有効性に大きな寄与を及ぼすこと、およびエフガルチギモドと低用量コルチコステロイドとが潜在的な相乗効果を有することが示唆された。
【0264】
実施例9-最終臨床転帰
エフガルチギモドの効果の速やかな開始により、患者31名中28名(90%)に迅速なDCがもたらされ、DCまでの期間中央値は16日であった(範囲6、92)(表9)。DCは、PVおよびPFにおいて、軽度および中等度の疾患において、新たに診断された患者および再発患者において、ならびにベースラインでエフガルチギモド単剤療法またはプレドニゾンとの併用のエフガルチジモドを受けている患者において、同等の割合で達成された。長期の維持療法により、13例の完全な臨床的寛解がもたらされた(コホート3では患者5名、コホート4では患者8名)。再発の発生は、DCに到達した患者(n=28)で評価され、患者10名(36%)で報告された。
表9.有効性解析対象集団から得た全集団およびサブグループ毎の疾患制御、臨床的寛解、および再発の発生率。
【表10】
【0265】
エフガルチギモドの作用の速やか開始および高いEoC率は、ステロイドのテーパリングを惹起し、全体的にプレドニゾン消費量の低減に繋がった。ベースラインのプレドニゾン同等用量の中央値は、コホート1~3の患者では0.26mg/kg/日(範囲0.06、0.54)、コホート4の患者では0.31mg/kg/日(範囲0.06、0.61)であった。EoCの時点では、コホート4でのみ評価され、併用プレドニゾン用量の中央値は、1日あたり0.28mg/kg(範囲0.22、0.40mg/kg/日、n=11)であった。コホート3および4の患者におけるプレドニゾンの1日用量の中央値は、0.27mg/kg/日(範囲0.06~0.48)であった。
【0266】
実施例10-薬物動態パラメータ
10mg/kgまたは25mg/kgのエフガルチギモドをIVで処置された患者における薬物動態パラメータは、10または25mg/kgの用量で投与された健康なボランティアにおけるPKデータ[Ulrichts,P.,et al.,Neonatal Fc receptor antagonist efgartigimod safely and sustainably reduces IgGs in humans.J Clin Invest,2018.128(10):p.4372-4386.]、および10mg/kgを用いた他の試験から得たPKデータ[Howard,J.F.,Jr.,et al.,Randomized phase 2 study of FcRn antagonist efgartigimod in generalized myasthenia gravis.Neurology,2019.92(23):p.e2661-e2673 and Newland,A.C.,et al.,Phase 2 study of efgartigimod,a novel FcRn antagonist,in adult patients with primary immune thrombocytopenia.Am J Hematol,2020.95(2):p.178-187]と一致していた。比例関係に明らかな偏差を観察できなかった。CmaxおよびCtroughが一貫していたことによって示されるように、毎週または隔週の投与後に、エフガルチギモドのごくわずかな蓄積が明白にあった。10mg/kgまたは25mg/kgの初回の毎週の注入後、注入終了時に観察された平均Cmaxは、178μg/mLおよび586μg/mLであり、間隔投与終了時に観察されたCtrough中央値は、それぞれ9.34μg/mLおよび26.0μg/mLであった。
【0267】
実施例11-完全な臨床的寛解を達成するための措置の開始、応答の深度、および使用条件
この実施例で示されるデータは、試験ARGX-113-1701の2回目の中間解析から得たものである。
【0268】
天疱瘡における臨床的有効性は、PDAIスコアの改善、定義された臨床転帰の達成、臨床的改善を達成または持続するために必要なプレドニゾン用量、および再発の予防から解釈することができる。
【0269】
迅速なPDAI活性スコアの改善と早期DCの達成(4週間以内)は、エフガルチギモドによる治療の速やかな開始の効果を標示している。全体的に、治療コホート全体の90%(31名中28名)の患者がDCを達成し、治療コホート全体の77%(41名中24名)の患者が4週間以内にDCを達成した一方で、患者の大部分(N=16)ではDCが、1回または2回のみの薬剤投与後に達成された、すなわち、訪問3の前または訪問3の時に観察されたことにも留意されたい。DC達成までの期間中央値は、エフガルチギモドのみで治療された患者では15日、経口プレドニゾンとの併用でエフガルチギモドにより治療された患者では22日であった。
【0270】
各コホートで観察された臨床転帰の全体的なまとめを表10に示す。コホート1~3で評価された臨床転帰には、DCおよび再発が含まれていた。コホート3をまず観察すると、患者は全病変の完全な治癒も達成した。すべての病変の完全な治癒は、CRとして定義され、PDAI活性スコア0に相当する。コホート1~3では、プロトコールによれば、CRは治験責任医師によって記録された臨床転帰ではないため、コホート3におけるCRの発生は、記録されたPDAI活性スコアに基づいて報告される。コホート4では、EoCおよびCRの評価を臨床転帰として追加した。
表10:コホート1~4における臨床転帰の概要
【表11】
CR=完全な臨床的寛解、DC=疾患対照、EoC=強化の終了、N=患者数、NA=該当なし。
a中間解析時に治療を行っていた患者9名
bコホート3では計算され、コホート4では治験責任医師が評価したCR。
【0271】
CR時のプレドニゾン用量がCR達成の寄与要因であることが見出されたため、少なくとも隔週、中間の経口プレドニゾン用量(すなわち、0.25~0.50mg/kg/日の間)と組み合わせてエフガルチギモド治療を受けていた患者において、CR達成の速度を解析した。合計で、患者10名がこの投与レジメンで治療され、うち70%(患者10名中7名)がCRを達成し、コホート3では患者3名、コホート4では患者4名であった。注目すべきことに、少なくとも隔週のエフガルチギモド用量投与と0.25~0.50mg/kg/日の間の経口プレドニゾン同等用量との治療の組合せでCRを達成した患者7名中6名が、CRが達成されるまで、テーパリングのない安定したプレドニゾン用量を投与された。
【0272】
コホート3では、少なくとも隔週のエフガルチギモドおよびプレドニゾン0.25~0.50mg/kg/日により治療された患者3名が、CRを達成した。他の4名の患者は、エフガルチギモド治療相中にプレドニゾンなしで治療された(N=1)か、プレドニゾン0.06~0.14mg/kg/日により治療された(N=2)か、または毎週のエフガルチギモド治療を患者が受けている間にプレドニゾンをテーパリングされた(N=1;プレドニゾンテーパリングは30日間に4段階で0.54mg/kg/日から0.13mg/kg/日へ;PDAI活性の改善)。
【0273】
コホート4では、治療期間が延長されかつプレドニゾンの使用がより標準化された状態で、中間解析の時点で、93%(患者15名中14名)がDCを達成し、73%(患者15名中11名)がEoCを達成し、47%(15名中7名)がCRを達成した。少なくとも隔週のエフガルチギモドとプレドニゾン0.25~0.50mg/kg/日との治療の併用でCRを達成した患者4名に加えて、プレドニゾン用量が0.19~0.24mg/kg/日とわずかに低い患者3名がCRを達成した。
【0274】
最低限の治療中のCRは、患者が最低限の治療を受けている間に新しい病変または定着した病変が不在であるものとして定義された。最低限の治療は、10mg/日以下の用量でのプレドニゾン(もしくはその同等)および/または少なくとも2カ月間の最小限のアジュバント療法として定義された。最低限の治療中のCRは、任意のプレドニゾン用量でDC、EoC、およびCRを達成した後の次の疾患転帰パラメータであった。そのため、CRを達成した患者についてプレドニゾンの1日用量および期間を分析した。2回目の中間解析の時点で、患者3名が最低限の治療中のCRを達成していた(コホート3では患者1名、コホート4では患者2名)。さらに、他の患者は、10mg/日超のプレドニゾン用量または8週間未満で持続的なCRを有したか、CRを達成せずプレドニゾンを10mg/日以下までテーパリングしてEoCを達成したか、または10mg/日超のプレドニゾンでEoCを達成した。DCのみを達成したか、臨床的改善が不十分であったか、または試験を早期に中止した患者は少数であった。
【0275】
実施例12-第II相臨床試験についての考察および要約
エフガルチジモド導入相の間、総血清IgG、IgGサブクラス、および抗Dsg1/3自己抗体の急激な減少が、2~3週間の毎週治療コース後に約70%まで観察された。これに対して、B細胞枯渇抗体であるリツキシマブは、数か月以内に自己抗体価の緩やかなかつ進行性の低下を示し、このことは、治療間の作用機序に決定的な差異があることを示している。FcRnアンタゴニスト、例えばエフガルチギモドによるFcRnの遮断は、ケラチノサイトの剥離およびケラチノサイトの破壊に関与する自己抗体の即時的な分解を引き起こすのに対し、B細胞枯渇剤、例えばリツキシマブによる自己抗体産生B細胞の除去は、約3週間の典型的な半減期を有する循環自己抗体に即時的な影響を与えない。
【0276】
FcRnを飽和させてそれによって病原性抗体を排除するIVIgの有用性は、いくつかの研究で合理的に説明されている。 Grando,SA,et al.,Int Immunopharmacol,2020.82:106385;Amagai,M,et al.,J Am Acad Dermatol,2009.60(4):595-603。さらに、FcRn欠損マウスは実験的な天疱瘡に耐性であり(Li,N,et al.,J Clin Invest,2005.115(12):3440-50)、ケラチノサイトにおけるFcRnの発現が記録されている(Cauza,K,et al.,J Invest Dermatol,2005.124(1):132-9)ことから、FcRn阻害を介した病原性自己抗体からの保護が、自己抗体の分解の誘導を介して媒介されるだけでなく、ケラチノサイトのFcRnの直接的な遮断も介して媒介されることは、理に適うように思われる。したがって全体的に、疾患の活動性は、多数の病原性作用を有する病原性抗体の存在と直接的に関連しているため、病原性抗体の効率的な枯渇を正確に目指した戦略は、治療に対する患者の応答に深い影響を与える可能性がある。それに伴い、本試験のすべてのコホートにおいて、プレドニゾン併用療法の有無に関わらず、患者の大部分でDCが1~4週間以内の速さで達成された。DCは、PVおよびPFを有する患者、新たに診断された患者および再発患者、ならびに軽度および中等度の天疱瘡の患者で、同様に観察された。
【0277】
試験の適応性により、隔週のエフガルチギモドの維持相の間に血清IgGの低下が良好に維持されたという明確な観察がもたらされたが、4週間毎の投与は、病原性自己抗体を十分に抑制しておくには不十分であり、4~8週間後にIgG血清レベルの回復に至った。長期間のエフガルチギモド治療を受けているコホート(コホート3:11週間、コホート4:34週間)では、CRを数週間以内(中央値:6週間、範囲:2~41週間)に達成することができ、このことは、第III相試験で天疱瘡患者のさらに大きなコホートにおけるCRの速度およびCRまでの時間を試験するための促進および裏付けのデータを提供する。
【0278】
特に、CRは、0.06~0.48mg/kg/日(中央値:0.28mg/kg/日)に及ぶプレドニゾン用量と関連した際に最適に発生し、このことは、プレドニゾンのエフガルチギモドへの相加効果を標示する。コルチコステロイドは、遺伝子発現を調節し、白血球の移動、白血球の機能、および液性因子ならびにサイトカインシグナル伝達に作用する数多くの炎症性遺伝子を広く抑制することが知られている。さらに、その十分に説明された免疫抑制効果以外に、プレドニゾンは、E-カドヘリンおよびデスモグレインなどのケラチノサイト接着分子をコードする遺伝子の発現を上方制御することも示されている。 Nguyen,VT,et al.,J Biol Chem,2004.279(3):2135-46。全体として、エフガルチギモドを受けている天疱瘡患者におけるプレドニゾンの相加的効果は多様化する可能性があった。
【0279】
抗Dsg-1自己抗体および抗Dsg3自己抗体の減少は概して、総IgGレベルの減少の経過に続いて生じたが、抗Dsg3抗体レベルは、一部の患者において、IgG血清レベルとの相関性が低く、PDAIの増加に繋がらないことが見出された。このことは、循環抗Dsg3抗体レベルが必ずしも疾患の活動性と相関しないことを標示する以前の報告と一致している。Colliou,N,et al.,Sci Transl Med,2013.5(175):175ra30。治療の中止は、4~6週間以内に正常なIgGレベルへの進行性の回復をもたらしたが、多くの患者は疾患寛解または低悪性度疾患のままであった。興味深いことに、数名の患者において、自己抗体レベルは、無治療フォローアップでは抑制されたままであり、一方で、予想通りに総IgGが急増した。
【0280】
この第II相臨床試験では、患者の36%で再発が発生し、それらは主に早期再発からなっていた、すなわちCR前に発生し、2週間以上の投与間隔の増加中に観察された。後期再発、すなわちCR後は、隔週の投与量で、または無治療フォローアップ中に発生した。これに対して、患者が毎週のエフガルチギモド投与で維持された際には再発は発生せず、このことは、CR達成以外に、エフガルチギモドの毎週投与が再発の予防を支持し得ることを示唆している。
【0281】
実施例13-皮下投与による第III相試験の理論的根拠
天疱瘡は慢性疾患であるため、現在の治療法は慢性投与を必要とする。以下に記載される第III相試験では、エフガルチギモドを、患者にとってより簡便である新しい高濃度製剤での平坦用量で、皮下(SC)経路を介してrHuPH20と共に投与する。
【0282】
標的化した曝露およびPD効果を達成するようエフガルチギモドとの簡便なSC投与を可能にするために、エフガルチギモドをrHuPH20と合剤化する。この化合物は、2mLを超える体積のSC注射を促進するために、承認済みの治療用抗体との合剤に使用されている。rHuPH20を他の治療用タンパク質と組み合わせて使用することで、典型的には、異なる程度ではあるがこれらのタンパク質の吸収速度が増加し、rHuPH20によるエフガルチギモドの吸収速度の増加により、SC投与後のエフガルチギモドへの全体的な曝露が増加することが期待され、それにより、許容可能な体積でのSC用量の投与と、最大PD効果に近い結果を生じる曝露を目標とする投与の持続とが可能になる。
【0283】
1000mgのエフガルチギモドSCの用量は、IgGレベルへの影響に関して、IV注入として投与される10mg/kgのエフガルチギモドと同等である。10mg/kgのIV投与は、1)4回の毎週注入後に、ITP患者の第II相治験において一過性の臨床的有効性をもたらし、全身型重症筋無力症(gMG)患者の第II相治験では臨床的効果の延長をもたらし;2)飽和PD効果に近い結果を生じることが示された。毎週よりも高いまたは多い頻度での投与は、PD効果の改善(すなわち、自己抗体のいっそうの低下)および/または臨床効果をもたらすことが予想されず、最適なリスク/ベネフィット比の低下と関連しうる。用量を下げることは、PD効果の低下をもたらすものと予想され、それゆえ、一貫性の低い、および/または不完全な臨床応答をもたらす可能性があり、このことは、天疱瘡の重篤かつ慢性的な症状を考慮すると望ましくない。そして、3)gMG患者およびITP患者の第II相試験において好ましい安全性プロファイルを明示した。
【0284】
実施例14-皮下投与による第III相臨床試験のデザイン-ARGX-113-1904
ARGX-113-1904は、天疱瘡(尋常性または落葉状)の成人患者におけるエフガルチギモドPH20 SCの有効性、安全性、および忍容性を検討する無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験である。この試験にはADDRESSという頭字語が付される。
エフガルチギモドPH20 SCを、1日目および8日目に2000mgの用量で投与し、その後、最低限の治療中の完全な寛解(最低限の治療中のCR)まで1000mgの毎週投与を行う。患者には、同じレジメンでプラセボも投与するものとする。
【0285】
本試験は、低用量の経口プレドニゾンのアドオン療法を伴うエフガルチギモドPH20 SCが、PVおよびPFに対する可能な治療様式であることを実証することを意図しており、その投与は、最小限のプレドニゾン用量で早期の疾患寛解に繋がるものとなる。PVまたはPFの患者において、エフガルチギモドPH20 SCの有効性、安全性、患者の転帰の尺度、忍容性、免疫原性、PK、およびPDを評価する。
【0286】
全体的な設計
これは、PVまたはPFを有する18~80歳の成人患者における、エフガルチギモドPH20 SCの有効性、安全性、患者の転帰の尺度、忍容性、免疫原性、PK、およびPDを検討する、前向き多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。試験デザインの図は図13を参照されたい。登録患者は、以下のように新たに診断された患者または再燃を経験している患者のどちらかである:
・中等度から重度(PDAI活性スコア≧15)であって、新たに診断され未治療である。
・中等度から重度(PDAI活性スコア≧15)であって、経口プレドニゾン(またはその同等)の初回コースを受けている間に新たに診断される。臨床的判断によれば、患者は、ベースライン前の少なくとも2週間、PVまたはPFの徴候の有意な改善を示さず、ベースラインで毎日(1日1回)0.5mg/kgのプレドニゾン治療を開始するのに適しているものと考えられる。
・中等度から重度(PDAI活性スコア≧15)であって、再燃を経験し、プレドニゾン療法を離脱±従来の免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、シクロホスファミド、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル)。従来の免疫抑制剤をベースライン前に中止する。
・中等度から重度(PDAI活性スコア≧15)であって、安定用量のプレドニゾン(またはその同等)±従来の免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、シクロホスファミド、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル)を投与されており、患者がベースラインで1日1回0.5mg/kgのプレドニゾン治療を開始するのに適しているという条件で、テーパリング用量の経口プレドニゾン(またはその同等)を受けている間に再燃を経験する。従来の免疫抑制剤をベースライン前に中止する。
試験は、非盲検延長(OLE)試験ARGX-113-1905に登録しない患者に対する、最長3週間のスクリーニング期間、最長30週間の治療期間、および8週間のフォローアップ期間を含む(実施例15)。
適格性が確認された後、患者を2:1の比率で無作為化して、以下のように、エフガルチギモドPH20 SCまたはプラセボを投与する。
・エフガルチギモドPH20 SCを、1日目および8日目に2000mgの用量で投与し、その後、最低限の治療中のCRが観察されるまで1000mgの毎週投与を行う。エフガルチギモドPH20 SCは、完全寛解(CR)までオンサイト訪問で投与され、ベースライン後に少なくとも6回の毎週のオンサイト訪問がある。CRを達成した後、最低限の治療中のCRが達成されるまで、エフガルチギモドPH20 SCを、オンサイト訪問で、または看護師により自宅で投与する。
・プラセボ(2000U/mLのrHuPH20を含むビヒクル)SCを、同じレジメンを用いて投与する。
CRを、新しい病変が不在であること、および定着した病変が完全に治癒したこと(炎症後の色素沈着過剰または回復した病変に由来する紅斑を除く)として定義する。最低限の治療中のCRを、患者が≦10mg/日の最小限のプレドニゾン療法を少なくとも8週間受けている間に新しい病変が不在であること、および定着した病変が完全に治癒したこととして定義する。無作為化を、ベースラインでの疾患状態(再燃を経験し、新たに診断された)、疾患重症度(PDAI活性スコア<30およびPDAI活性スコア≧30)、ならびに体重(≦77.5kg以下および>77.5kg)によって階層化する。重度のPVまたはPF(PDAI活性スコア≧45)を有する患者は、試験集団全体の最大30%を占めるものとなる。
【0287】
天疱瘡併用療法
治療の割り当てにかかわらず、すべての患者は、1日1回、開始用量0.5mg/kgで経口プレドニゾン(またはプレドニゾロンなどの同等のもの)を同時に受ける。経口プレドニゾン(またはその同等)を除き、試験中に他の全身療法(例えば、免疫抑制剤、IVIg、ダプソン、免疫吸着、抗CD20生物製剤)は許可されない。
【0288】
患者は、CRまで、および少なくとも6週間、毎週クリニックを訪問して、エフガルチギモドPH20 SCを受け、疾患活動性および疾患転帰について評価される。CR後、最低限の治療中のCRまで、エフガルチギモドPH20 SCが、オンサイト訪問で、または看護師により自宅で投与される。疾患制御(DC)が達成される前のベースライン後のいずれかの訪問で、プレドニゾンの用量は、疾患が進行しているかまたは臨床変化が不十分である場合の臨床判断に従って、1段階または2段階ずつ投与量を増加させることによって調整される。疾患の進行および不十分な臨床変化は、以下のように判断される:
・疾患の進行:DC前のベースライン後のいずれかの訪問での観察で、ベースラインスコアと比較してPDAI活性スコアが少なくとも5増加している。
・不十分な臨床変化:患者が開始ベースライン用量のプレドニゾン(またはその同等)で治療されてから3~4週間後、または新たな増分用量のプレドニゾンで治療されてから3~4週間後に、DCが存在しない。
開始用量に基づくプレドニゾンの用量漸増ルールは、以下の通りである:
・プレドニゾンの1日用量の段階的な漸増は、臨床的判断により1段階または2段階で発生し、中等度の進行には1段階、重度の進行には2段階が推奨される。
・不十分な臨床変化の場合には、1ステップずつ投与量を増加することによって調整する。
・臨床判断に従って、かつ上記と同じ推奨の下で、1段階または2段階(例えば、1日1回、0.75mg/kg~1または1.25mg/kg、1mg/kg~1.25または1.5mg/kg)で、前の段階からさらに漸増することができる。
・最大漸増は1.5mg/kg、1日1回、3週間まで。
1日1回、1.5mg/kgで経口プレドニゾンを少なくとも3週間与えた後、DCが達成されない場合、患者を治療不成功と考える。
【0289】
1日用量0.5mg/kgのプレドニゾンでDCを達成した患者について、プレドニゾンを、CRまで1日1回、0.5mg/kgで維持し、その後2週間維持する。漸増プレドニゾン用量(すなわち、>0.5mg/kgを1日1回)でDCを達成した患者については、プレドニゾン用量をDCの達成後2週間まで維持し、その後、以下の段階的手順に従ってテーパリングを実施する:開始用量(すなわち、0.5mg/kgを1日1回)に達するまで、用量を2週間毎に1日1回0.25mg/kgずつ低減する。次いで、開始用量(0.5mg/kgを1日1回)を、持続的なCRが2週間達成されるまで維持するか、またはプレドニゾンのテーパリングを、少なくとも4週間の持続的な強化終了のある場合に開始してもよい(EoCは、少なくとも2週間は新しい病変が発達せず、病変のおよそ80%が治癒した時点で定義される)。その後、CRまたはEoCが持続する限り、さらにテーパリングを実施する。20mg/日まで新たなテーパリングされたそれぞれのプレドニゾン用量を2週間維持する。その後、プレドニゾンの用量を、さらに1週間当たり2.5mg/日でテーパリングする。10mg/日に達した場合、この用量レベルを、最低限の治療中のCRが達成されるまで維持する。その後、治験責任医師による臨床的判断の上、プレドニゾンをさらにテーパリングすることができる。
【0290】
DCと最低限の治療中のCRとの間の期間に再燃が発生した場合、プレドニゾン用量を増加させる。再燃は、4週間以内に3つ以上の新しい病変が出現し、それが1週間以内に自然治癒しないこと、またはDCを達成した患者において、定着した病変が拡大することによって定義される。CR後に再燃が発生し、エフガルチジモドPH20 SCが看護師により自宅で投与された場合、患者はCRを再び達成するまで、毎週のオンサイト訪問を再開するものとなる。DCと最低限の治療中のCRとの間に再燃が観察され少なくとも0.3mg/kg/日である用量を超える、2用量レベルの用量によって制御されない患者は、治療失敗と考えられる。少なくとも1つの新しい病変が観察されるか、または定着した病変が再燃として定義されることなく広範囲に残っている場合の訪問では、臨床的判断により、プレドニゾン用量を維持するか、または増加させてもよい。病変が解消した場合、プレドニゾン用量のテーパリングを予定通りに推進する。
【0291】
最低限の治療中のCRを達成した後に治療失敗または再燃を経験した患者は、第30週より前にOLE試験ARGX-113-1905(実施例13)にロールオーバーすることができる。試験ARGX-113-1905にロールオーバーしない患者は、8週間の無治療フォローアップ期間を完了するものとなる。プレドニゾンに関連するSAEを経験した患者は、臨床的判断により、OLEへの早期のロールオーバーからも利益を得ることがある。
【0292】
参加者数:
合計150名のPVまたはPFの患者を、以下のように無作為化する:
・合計126名のPV患者を2:1の比率で無作為化し、エフガルチギモドPH20 SCまたはプラセボをそれぞれ与える
・最大24名のPF患者を2:1の比率で無作為化し、エフガルチギモドPH20 SCまたはプラセボをそれぞれ与える
介入群および期間:
各患者の可能な最大総試験期間は、最大41週間である。
・スクリーニング期間:最大3週間
・治療期間:ベースラインから30週間
・フォローアップ期間:OLE試験に登録していない患者の、エフガルチギモドPH20 SCの最終投与の8週間後
【0293】
本試験は、中等度から重度の尋常性天疱瘡(PV)または落葉状天疱瘡(PF)を有する18~80歳の成人患者における、エフガルチギモドPH20 SCの有効性、安全性、忍容性、免疫原性、PK、およびPDを検討する、前向き多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。本試験は、低用量の経口プレドニゾンのアドオン療法を伴うエフガルチギモドPH20 SCが、PVおよびPFに対する有効性の高い治療様式であり、その投与が、最小限のプレドニゾン用量で早期の疾患寛解に繋がることを実証する。
【0294】
プレドニゾンのテーパリング
1日1回0.5mg/kg超のプレドニゾンの用量漸増後にDCが達成されてから2週間後、プレドニゾンのテーパリングを開始する。プレドニゾンのテーパリングは、疾患の再燃を防ぎつつコルチコステロイドの副作用を最小限にするために、すべての医療従事者が適用する手順である。この治験では:
・テーパリング間の2週間の間隔は、1日当たり1.5mgから0.5mg/kgへの25%の逓減(例えば、1日当たり1.5から1.25mg/kg、次いで1日当たり1mg/kg、および0.75mg/kg/日)で定義される。CRの達成されるプレドニゾンの投与量(1日当たり0.5mg/kgの開始用量よりも低くはできない)を、持続的なCRを観察するためにCR後の2週間維持するか、またはプレドニゾンのテーパリングを、少なくとも4週間の持続的なEoCの場合に開始または継続してもよい(EoCは、少なくとも2週間は新しい病変が発達せず、病変のおよそ80%が治癒した時点で定義される)。
・2週間にわたる毎日の0.5mg/kg以上のプレドニゾンでCRが観察された際に、または持続的なEoCが観察された際に、テーパリングを開始してもよい。20mg/日まで新たなテーパリングされたそれぞれのプレドニゾン用量を2週間維持する。その後、プレドニゾンの用量を、さらに1週間当たり2.5mg/日でテーパリングする。10mg/日に達した場合、この用量レベルを、最低限の治療中のCRが達成されるまで維持する。
・最低限の治療中のCRが達成された場合は、プレドニゾンを臨床的判断の上でさらにテーパリングすることができるが、プレドニゾンを4週間毎に2.5mg/日減少させることが推奨される。
【0295】
一過性の病変が出現した場合は、臨床的判断に従って、プレドニゾンのテーパリングを一時的に遅延させるか、またはプレドニゾンを増加させてもよい。用量漸増を、再燃が発生した場合に実施する。以上まとめると、本試験は、プレドニゾンのレジメンの方針に関して、現実の臨床診療に可能な限り近いことを目標にするとともに、エフガルチギモドPH20 SC治療に関連する場合のプレドニゾンの節約の可能性を研究することを可能にする。
【0296】
主要評価項目として30週間以内に最低限の治療中のCRを達成した患者の割合と30週間の治療期間:
30週間という試験期間は、活動性グループに属する大部分の患者における主要評価項目である最低限の治療中のCRの観察を含めるために、天疱瘡患者における第II相試験ARGX-113-1701の結果に基づいて選択した。最低限の治療中のCRがほとんどの患者で達成されると予想される時点は、積極的な治療下の患者において24~30週間の間で異なり、患者の体重に依存する。患者間のこの変動を考慮すると、試験の30週間以内に最低限の治療中のCRを達成したすべての患者は、主要評価項目で治療に応答するものと考えられる。
【0297】
エフガルチギモドPH20 SCのカスタマイズされたレジメンとOLEへのロールオーバー:
本試験は、スクリーニング期間を最長3週間、最低限の治療中のCRまでの治療期間を30週間、およびOLE試験ARGX-113-1905に登録しない患者のフォローアップ期間を8週間含む(実施例13)。迅速な効果と患者間での疾患活動性の変動性により、カスタマイズされたエフガルチギモドPH20 SCレジメンを提示する。最低限の治療中のCRが達成されるまで、患者に、低用量プレドニゾン併用レジメンと共に、エフガルチギモドPH20 SCを皮下投与する。その後、エフガルチギモドPH20 SCの投与を中止し、さらにテーパリングして治療離脱中のCRを達成するためのオプションとともに、プレドニゾンによる併用療法を推進する。
【0298】
選択基準
参加者は、以下の基準のすべてが適用される場合にのみ、試験に含まれる適格性がある。
・試験の要件を理解する能力、書面によるインフォームドコンセント(研究に関連する健康情報の使用および開示に対する同意を含む)を提供する能力、治験実施計画書の手順(必要な試験訪問を含む)を遵守する意欲および能力。
・患者は男性または女性であり、インフォームドコンセントフォーム(ICF)に署名した時点で18歳~80歳である。
・患者は、PV(粘膜、皮膚、皮膚粘膜)またはPFの臨床診断を受けており、この診断は、皮膚組織学、直接免疫蛍光(IF)での陽性、ならびに間接IFおよび/またはELISAでの陽性によって確定されている。
・患者は以下のプロファイルのうち1つを満たす:
ベースラインでPDAI活性スコア≧15を有し、未治療である、新たに診断された疾患。
【0299】
経口プレドニゾン(またはその同等)の初回コースを受けている、PDAI活性スコア≧15を有する新たに診断された疾患。臨床的判断によれば、患者は、ベースライン前の少なくとも2週間、PVまたはPFの徴候の有意な改善を示さず、ベースラインで1日1回0.5mg/kgのプレドニゾン治療を開始するのに適しているものと考えられる。
【0300】
PDAI活性スコア≧15の再燃を経験し、診断から最長4年であり、プレドニゾン療法を離脱±従来の免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、シクロホスファミド、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル)である。従来の免疫抑制剤をベースライン前に中止する。
【0301】
PDAI活性スコア≧15の再燃を経験し、診断から最長4年であり、安定用量のプレドニゾン±従来の免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、シクロホスファミド、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル)を少なくとも2週間投与され、患者がベースラインで1日1回0.5mg/kgのプレドニゾン治療を開始するのに適しているという条件で、テーパリング用量の経口プレドニゾン(またはその同等)を受けている。従来の免疫抑制剤をベースライン前に中止する。
【0302】
除外基準
以下の基準のいずれかが適用される場合、参加者は試験から除外される。
・患者が、腫瘍随伴性天疱瘡、薬剤誘発性天疱瘡、増殖性天疱瘡、紅斑性天疱瘡、またはその他の任意の非PV/非PF自己免疫性水疱性疾患の確定診断を有する。
・ベースラインでのPDAI活性スコア<15によって定義される軽度の疾患重症度を有する患者。
・臨床的判断による、スクリーニングからベースラインまでの期間にPVまたはPFの有意な改善を示した患者(例えば、患者が、スクリーニング期間中、DCまたはPDAI活性スコアの大幅な低減を達成した)。
・患者が、ベースライン訪問前の2か月以内に、経口プレドニゾンまたは従来の免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、シクロホスファミド、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル)以外の、臨床的な疾患活動性に影響を及ぼす可能性のある療法を投与されている。例えば、除外された療法は、静脈内メチルプレドニゾロン、ダプソン、スルファサラジン、テトラサイクリン、ニコチンアミド、血漿分離交換/血漿交換、免疫吸着、およびIVIgである。
・ベースライン訪問前の6か月以内に何らかのモノクローナル抗体(リツキシマブまたは別の抗CD20生物製剤を含む)を使用。
・投与された治療の構成成分のいずれかに対する既知の過敏症。
・患者が、経口プレドニゾンに対する既知の禁忌を有する。
・患者が、第一選択療法および第二選択療法への応答の失敗によって定義される、難治性疾患の既往を有する。
【0303】
投与される試験的介入
試験的介入の一覧を表11に示す。固定用量のエフガルチギモドPH20 SCを、皮膚の天疱瘡の病変をすべて避けた身体部位に投与し、好適な部位として腹部を用いる。腹部が病変によって影響を受ける場合は、オプションの部位(大腿部および腕)を選んでもよい。注射用プラセボ溶液は、注射用のエフガルチギモドPH20 SC溶液と同じ賦形剤を含有するが、エフガルチギモドを含まない。試験の盲目性を保持するため、マスクしたバイアルを提供する。さらに、患者は、併用療法として経口プレドニゾン(またはプレドニゾロンなどの同等物)を受ける。
表11.試験介入-ARGX-113-1904
【表12】
IMP=治験薬製品、SC=皮下
aIMPを、皮膚の天疱瘡病変をすべて避けた身体部位に投与し、好適な部位としては腹部を用いる。腹部が病変によって影響を受ける場合は、オプションの部位(大腿部または腕)を選んでもよい。
【0304】
試験終了(EoS)/早期終了(ET)
すべての患者が、OLE試験ARGX-113-1905に登録された患者の試験終了である第30週/EoS/ETを完了する。
【0305】
無治療フォローアップ期間
30週目に達した患者は、早期に中止するか、または、治療不成功でありOLE試験にロールオーバーしない患者は、8週間の無治療フォローアップ期間に入る。
【0306】
有効性評価
エフガルチギモドPH20 SCの有効性は、治験責任医師によるオンサイト訪問で評価され、以下が評価される:PDAI、DC、EoC、CR、最低限の治療中のCR、治療離脱中のCR、および再燃。治験責任医師は、最後の訪問以降のプレドニゾンの1日用量と、オンサイト訪問での治療失敗とを記録する。自宅訪問については、治験責任医師は、最低限の治療中のCRが達成されるまで少なくとも2週間毎に患者に電話をかけ、患者がCRに留まっていることを確認する。
【0307】
天疱瘡の臨床的な活動性は、PDAIを用いて評価される。
【0308】
実施例15-皮下投与による非盲検第3相延長臨床試験-RGX-113-1905
ARGX-113-1905は、PVまたはPFを有する成人患者における、エフガルチギモドPH20 SCの安全性、忍容性、および有効性を評価する、非盲検長期延長(OLE)フォローアップ試験である。試験ARGX-113-1905は、試験ARGX-113-1904においてエフガルチギモドPH20 SC治療アームに無作為化された患者に対し、エフガルチギモドPH20 SCの延長治療および再治療の選択肢を提供し(実施例14)、試験ARGX-113-1904においてプラセボ治療アームに無作為化された患者に対し、最初のエフガルチギモドPH20 SC治療および再治療の選択肢を提供する。この試験にはADDRESS+という頭字語が付される。
【0309】
試験ARGX-113-1904から試験ARGX-113-1905への盲検ロールオーバーでは、患者は異なる臨床段階にある可能性がある。患者は、最低限の治療でCRを達成した可能性があるか、患者は、最低限の治療の基準を満たさずにCRを達成した可能性があるか、患者は、CRを達成せずにDCまたはEoCを(少なくとも2週間にわたって新しい病変が発達せず、病変の約80%が治癒した時点で)達成した可能性があるか、患者は、治療失敗を経験した可能性があるか、または患者は、最低限の治療中のCRを達成した後に再燃を経験した可能性がある。
【0310】
ARGX-113-1905試験は、プレドニゾン療法を(さらに)テーパリングして治療離脱中のCRを達成する能力、最低限の治療中のCRをまだ達成していない患者についてCRと最低限の治療中のCRとを達成する能力、ならびに再燃を治療する能力を評価し、患者の転帰の尺度、ならびに試験期間中にわたるエフガルチギモドPH20 SCの安全性、PD、PK、および免疫原性を評価する。
【0311】
全体的な設計
これは、先行試験ARGX-113-1904に参加した成人のPVまたはPFの患者における、エフガルチギモドPH20 SCの有効性、安全性、忍容性、免疫原性、PK、およびPDに関する前向き多施設OLE試験である。試験デザインの図は図14を参照されたい。
【0312】
試験ARGX-113-1904のEoS訪問または早期終了訪問の患者は、試験ARGX-113-1904の盲検性を保ちつつ、適格性の確認後に試験ARGX-113-1905に登録する選択肢が与えられる。各患者について、試験ARGX‐113-1905のベースライン訪問日は、試験ARGX-113-1904のEoS訪問日と同じである。
【0313】
天疱瘡併用療法
ベースラインで、患者を、試験ARGX-113-1904のEoSでの臨床状態に従って以下のように治療する:
・最低限の治療中のCRまたは治療離脱中のCRにある患者を、エフガルチギモドPH20 SC治療を行わずに、オンサイト訪問を通じて4週間毎に観察する。最低限の治療中のCRを達成した患者(8週間にわたって1日当たり経口プレドニゾン≦10mg)では、治療離脱中のCRを患者が達成するまで、プレドニゾンのテーパリングを治験責任医師の判断の上で推進してもよい。
・CRを達成したが最低限の治療中のCRを達成しなかった患者は、最低限の治療中のCRが達成されるまで、経口プレドニゾンのアドオン療法を継続しながら、毎週1000mgのエフガルチギモドPH20 SCの投与を受ける。治療離脱中のCRを患者が達成するまで、プレドニゾンのテーパリングを治験責任医師の判断の上で推進してもよい。患者を、オンサイト訪問を通じて、または4週間に1回のオンサイト訪問を伴う自宅訪問を通じて治療する。
・DCを達成したがCRを達成していない患者は、CRが達成されるまで、経口プレドニゾンのアドオン療法を伴う1000mgのエフガルチギモドPH20 SCの毎週のオンサイト投与を受け、次いで、オンサイトで、または4週間に1回のオンサイト訪問を伴う自宅訪問を通じてのどちらかで、最低限の治療中のCRが達成されるまで、毎週1000mgのエフガルチギモドPH20 SCの投与を受け続ける。
・試験ARGX-113-1904に定義されたような治療失敗の特定の状態下にある患者(すなわち、少なくとも3週間にわたって経口プレドニゾン1.5mg/kg/日によるDCが不在であること、またはDCと最低限の治療中のCRの達成との間に再燃があり、再燃が観察され少なくとも0.3mg/kg/日である用量を超える2用量レベルによって制御されないこと)、または最低限の治療中のCRを達成した後に再燃した患者は、試験ARGX-113-1905に通常より早くロールオーバーしてもよく、1日目および8日目に2000mg用量でエフガルチギモドPH20 SCにより治療され、続いて、最低限の治療中のCRまで、経口プレドニゾンのアドオン療法と共に毎週1000mgを投与される。DCの不在下では、患者は0.5mg/kg/日の開始用量でプレドニゾンを受ける。再燃の場合、患者は、開始用量として、ARGX-113-1904からの最終用量を受け、再燃が軽度の重症度(PDAI活性スコア<15)である場合には最低0.3mg/kg/日、再燃が中等度から重度(PDAI活性スコア≧15)である場合には0.5mg/kg/日が推奨される。エフガルチギモドPH20 SCの投与は、オンサイト訪問または自宅訪問中に行われる。
・プレドニゾン関連SAEの発達した患者は、試験ARGX-113-1905に通常より早くロールオーバーしてもよく、上述の臨床状態に従って、オンサイト訪問または自宅訪問を通じて、エフガルチギモドPH20 SCにより治療されてもよい。プレドニゾンの併用は、SAEの性質および重症度に適合する限りにおいて、上記の臨床状態に適合すると考えられ、そうでなければプレドニゾンの併用はより低い用量となるかまたはないものと考えられる。
【0314】
DCが達成される前のベースライン後のいずれかの訪問で、プレドニゾンの用量は、疾患が進行しているかまたは臨床変化が不十分である場合の臨床判断に従って、1段階または2段階ずつ投与量を増加させることによって調整する。疾患の進行および不十分な臨床変化は、以下のように定義される:
・疾患の進行:DC前のベースライン後のいずれかの訪問での観察で、ベースラインスコアと比較してPDAI活性スコアが少なくとも5増加している
・不十分な臨床変化:患者が開始ベースライン用量のプレドニゾンで治療されてから3~4週間後、または任意の新たな増分用量のプレドニゾンで治療されてから3~4週間後に、DCが存在しない
【0315】
開始用量に基づくプレドニゾンの用量漸増ルールは、以下の通りである:
・プレドニゾンの1日用量の段階的な漸増は、臨床判断により1段階または2段階で発生し、中等度の進行には1段階、重度の進行には2段階が推奨される
・不十分な臨床変化の場合には、1ステップずつ投与量を増加することによって調整する
・臨床判断に従って、かつ上記と同じ推奨の下で、1段階または2段階(例えば、1日1回、0.75mg/kgから1または1.25mg/kg、1mg/kgから1.25または1.5mg/kg)で、前の段階からさらに漸増することができる
・最大漸増は1.5mg/kg、1日1回、3週間まで
経口プレドニゾン1.5mg/kgを1日1回、患者が受けてから少なくとも3週間後にDCが達成されない場合、患者は治療不成功と考えられ、試験から撤退する。
【0316】
ベースラインで毎日の開始用量を用いてDCを達成した患者については、プレドニゾンの用量は、CRまで、および次の2週間にわたって、その開始用量を1日1回で維持する。漸増用量のプレドニゾンを用いてDCを達成した患者については、その用量をDC達成の2週間後まで維持し、次いで、開始用量が達成されるまで2週間毎に25%の低減でテーパリングする。この開始用量は、持続的なCRが2週間達成されるまで、または強化終了(EoC)が4週間にわたる場合に維持される。その後、CRまたはEoCが持続される限り、さらにテーパリングを実施する。20mg/日まで新たなテーパリングされたそれぞれのプレドニゾン用量を2週間維持する。その後、プレドニゾンの用量を、さらに1週間当たり2.5mg/日でテーパリングする。10mg/日に達した場合、この用量レベルを、最低限の治療中のCRが達成されるまで維持する。次いで、治験責任医師の臨床的判断に従って、プレドニゾン用量をさらにテーパリングして、治療離脱中のCRに到達することができる。
【0317】
参加者数:
・ARGX-113-1904に無作為化されたすべての参加者(すなわち、尋常性天疱瘡(PV)または落葉状天疱瘡(PF)の患者最大150名)は、試験ARGX-113-1905にロールオーバーする適格性がある。
【0318】
介入群および期間:
最大52週目までエフガルチギモドPH20 SC投与を受け、最後のエフガルチギモドPH20 SC投与の8週間後のフォローアップ期間を設けられた患者について、最大60週間。
【0319】
少なくとも1つの新しい病変が観察されるか、または定着した病変が再燃として定義されずに広範囲なままである(すなわち、4週間以内に3つ以上の新しい病変が出現し、それが1週間以内に自然治癒しないか、またはDCを達成した患者において、定着した病変が広がる)訪問時に、プレドニゾン用量を、臨床的判断に従って維持するかまたは増加してもよい。病変が解消した場合、プレドニゾン用量のテーパリングを予定通りに推進する。
【0320】
最低限の治療中のDCとCRとの間の期間に再燃が発生した場合、プレドニゾン用量を増加させてDCを再び達成する。CR後に再燃が発生し、IMPが看護師により自宅で投与された場合、患者はCRを再び達成するまで、毎週のオンサイト訪問を再開するものとなる。再燃が観察されかつ少なくとも0.3mg/kg/日である用量を超える、2用量レベルの用量によって制御されない患者は、臨床的判断に従って管理される、すなわち、さらに増加させたプレドニゾン用量を受けるか、または試験から撤退させられるかのいずれかである。最低限の治療中のCR前に再燃した患者を撤退させることは、治療失敗として定義される。
【0321】
最低限の治療中のCRを達成した後の(すなわち、エフガルチギモド治療から離脱している間の)再燃の場合、患者は、新しいサイクルのエフガルチギモドPH20 SCにより直ちに治療/再治療される。新しいエフガルチギモド治療の最初の日は、転帰(DC、CRなど)の評価およびプレドニゾンの漸増またはテーパリングのスケジュールの新しいベースラインを定義するものとなる。
【0322】
新しい治療サイクルでは、患者に、最初の2週間は2000mgの毎週用量で、その後、最低限の治療中のCRまで1000mgの毎週用量で、エフガルチギモドPH20 SCを投与する。経口プレドニゾンを臨床的判断に従って選択された用量で投与するが、軽度の再燃(PDAI活性スコア<15)の場合は0.3mg/kgを1日1回、中等度から重度の再燃(PDAI活性スコア≧15)の場合は0.5mg/kgを1日1回が推奨される。新しい治療サイクルの治療目標は、最初に再びDCを達成することであり、したがって、それに応じてこれらの患者を治療する。
【0323】
44週目まで、適格患者において、エフガルチギモドPH20 SCの新しい治療サイクルを開始することができる。45週目から49週目の間にエフガルチギモドPH20 SCの新しい治療サイクルを必要とする患者ではて、開始は任意選択的であり、臨床的判断および患者の同意に基づく。49週目以降は、少なくとも4週間のエフガルチギモド治療/サイクルを確保するために、新しいエフガルチギモド治療サイクルは許可されないものとなる。
【0324】
経口プレドニゾンを除き、試験中に他の全身療法(例えば、免疫抑制剤、IVIg、ダプソン、免疫吸着、抗CD20生物製剤)は許可されない。
【0325】
長期間の毎週投与の必要性が予想されることを考慮すると、SC投与は、天疱瘡患者のIV製剤よりも非常に好適である。そのため、rHuPH20を伴うエフガルチギモドを、最低限の治療中のCRまで毎週SC投与し、最低限の治療中のCRを達成した後の再燃の場合は、再治療を開始してもよい。速やかなPD効果および臨床応答を達成するために、2000mgの用量を最初の2週間に投与し、続いて、PD効果および関連する臨床応答を維持するために1000mgの毎週用量を投与する。
【0326】
投与される試験的介入
試験的介入の一覧を表12に示す。固定用量のエフガルチギモドPH20 SCを、皮膚の天疱瘡の病変をすべて避けた身体部位に投与し、好適な部位として腹部を用いる。腹部が病変によって影響を受ける場合は、オプションの部位(大腿部および腕)を選んでもよい。
表12.試験介入-ARGX-113-1905
【表13】
CR=完全な臨床的寛解、最低限の治療中のCR=最低限の治療中の完全寛解、DC=疾患制御、IMP=治験薬製品、SC=皮下。
aIMPを、皮膚の天疱瘡病変をすべて避けた身体部位に投与し、好適な部位としては腹部を用いる。腹部が病変によって影響を受ける場合は、オプションの部位(大腿部または腕)を選んでもよい。
【0327】
エフガルチギモドPH20 SCの有効性は、治験責任医師によるオンサイト訪問および家庭訪問で評価され、以下が時系列で評価される:PDAI、DC、EoC、CR、最低限の治療中のCR、治療離脱中のCR、および再燃。治験責任医師は、最後の訪問以降のプレドニゾンの平均1日用量と、オンサイト訪問での治療失敗とを記録する。自宅訪問については、治験責任医師は、最低限の治療中のCRまで2週間毎に患者に電話をかけて、患者がCRに留まっていることを確認し、プレドニゾンのテーパリングスケジュールを決定する。
【0328】
さらに、天疱瘡の臨床的な活動性を、PDAIを用いて評価する。
【0329】
有効性評価項目
・PV患者において最低限の治療中のCRを達成した患者の割合
・PV患者およびPF患者のうち最小限のプレドニゾンでCRを達成した患者の割合
・DCまでの時間
・完全な臨床的寛解(CR)完了までの時間
・最低限の治療中のCRまでの時間
・治療離脱中のCRまでの期間
・再燃までの時間
・治療不成功率
・再燃の速度
・試験全体のプレドニゾン累積用量
・各訪問時のPDAI
【0330】
薬物動態
・エフガルチギモドの血清濃度
【0331】
薬理学
・総IgGおよびサブタイプ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)の血清レベル
・抗Dsg-1自己抗体および抗Dsg-3自己抗体の血清レベル
【0332】
免疫原性
エフガルチギモドPH20 SC(エフガルチギモドおよびrHuPH20の両方)に対するADA
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E-F】
図11G-H】
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2022-10-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023509195000001.app
【国際調査報告】