(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(54)【発明の名称】腸管内容物分離回収装置、方法及び抽出物
(51)【国際特許分類】
C12M 1/12 20060101AFI20230301BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20230301BHJP
A61K 35/741 20150101ALI20230301BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230301BHJP
C12N 1/02 20060101ALI20230301BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20230301BHJP
B01D 71/10 20060101ALI20230301BHJP
B01D 71/40 20060101ALI20230301BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20230301BHJP
B01D 29/01 20060101ALI20230301BHJP
B01D 36/02 20060101ALI20230301BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20230301BHJP
B01D 63/08 20060101ALI20230301BHJP
B01D 61/18 20060101ALI20230301BHJP
B01D 61/22 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C12M1/12
A61P1/14
A61K35/741
A61P37/02
C12N1/02
B01D61/14 500
B01D71/10
B01D71/40
B01D71/68
B01D29/04 510A
B01D29/04 510D
B01D29/04 530A
B01D36/02
B01D69/00
B01D63/08
B01D61/18
B01D61/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541707
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(85)【翻訳文提出日】2021-09-07
(86)【国際出願番号】 CN2020090333
(87)【国際公開番号】W WO2021135037
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】201911397694.6
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521317601
【氏名又は名称】奇▲輝▼生物科技(▲揚▼州)有限公司
【氏名又は名称原語表記】QIHUI BIOTECHNOLOGY (YANGZHOU) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.88 Wenchang East Road, Jiangdu District Yangzhou, Jiangsu 225001, China
(74)【代理人】
【識別番号】100178434
【氏名又は名称】李 じゅん
(72)【発明者】
【氏名】勾 振▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】▲駱▼ 奇
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4C087
4D006
4D116
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029BB02
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(57)【要約】
本発明は腸管内容物分離回収装置及び方法を提供し、該分離回収装置は、不純物除去モジュール及び目標内容物収集モジュールを含み、該不純物除去モジュールはクロスフローろ過構造を備え、腸管内容物の不純物部分を除去するものであり、前記目標内容物収集モジュールは、主に微孔性膜クロスフローフィルタよって構成される。該方法は粗ろ過、クロスフロー精密ろ過の方式により腸管内容物の不純物を除去し、それから微孔性膜クロスフローフィルタによって濃縮液を得て、目標内容物を収集する。該微孔性膜は、スポンジ状多孔質構造を有し、クロスフローろ過と合わせて、腸管内容物における細菌叢の分離、回収を速く、効果的に実現でき、分離回収された細菌叢パウダーは、初期(当初)のウェット腸管内容物において占める百分率は少なくとも10%~20%で、細菌含有量は少なくとも10
11個/1gパウダーである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸管内容物分離回収装置であって、不純物除去モジュール及び目標内容物収集モジュールを含み、
前記不純物除去モジュールはクロスフローろ過構造を備え、腸管内容物の不純物部分を除去するものであり、
前記目標内容物収集モジュールは、主に微孔性膜クロスフローフィルタよって構成され、
前記微孔性膜はスポンジ状多孔質構造を有し、
微孔性膜の孔径範囲は0.01~20μmであり、好ましくは微孔性膜の孔径範囲は0.1~10μmであり、より好ましくは微孔性膜の孔径範囲は0.2~5μmであり、
微孔性膜の開口率は30%以上、好ましくは50%、60%以上、より好ましくは70%、80%、85%、90%以上であり、
前記微孔性膜は親水性膜であることを特徴とする、前記腸管内容物分離回収装置。
【請求項2】
微孔性膜クロスフローフィルタは、ディスク状構造を有すると共に、らせん状流体流路を内部に設け、クロスフローディスクの有効ろ過面積とクロスフローディスクの全体面積の比率は0.3~0.9で、好ましくは前記比率が0.4~0.8であり、より好ましくは前記比率が0.5~0.6であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
微孔性膜クロスフローフィルタの流路は、らせん状クロスフロー流路であることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
微孔性膜クロスフローフィルタの流路断面積は、入口管断面積よりも小さく、前者と後者の比率は0.8、0.6、もしくは0.5、またはこれ未満であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
微孔性膜は、ポリエーテルスルホン膜、セルロース膜、ポリメタクリレート膜のうちの一種類または複数種類を含み、変性または非変性のものであることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
腸管内容物を分離回収する方法であって、
ステップ1)分散ステップ、腸管内容物と液体分散媒を混合し、腸管内容物と液体分散媒の比は100g:200~5000mlであり、好ましくは100g:300~1000ml、または100g:500~800mlであり、得られた混合物を機械的手段に分散させることによって、均一な分散混合液を形成する、
ステップ2)不純物除去ステップ、分散混合液をろ過フィルタに通過させ、ろ過により不純物を除去し、前記ろ過はクロスフローろ過を含み、浸透液(ろ液)を得る、
ステップ3)収集ステップ、ステップ2)の浸透液を、微孔性膜クロスフローフィルタに通してろ過を行うことによって、濃縮液及びろ過廃液を得て、前記濃縮液は目標内容物を収集するためのものであり、
前記微孔性膜クロスフローフィルタの微孔性膜は、スポンジ状多孔質構造を有し、
微孔性膜の孔径範囲は0.01~20μmであり、好ましくは微孔性膜の孔径範囲は0.
1~10μmであり、より好ましくは微孔性膜の孔径範囲は0.2~5μmであり、
微孔性膜の開口率が30%以上、好ましくは50%、60%以上、より好ましくは70%、80%、85%、90%以上であり、
前記微孔性膜は親水性膜であることを特徴とする、前記腸管内容物を分離回収する方法。
【請求項7】
ステップ1)の分散混合液における微生物の濃度は、少なくとも10
8個/ml、もしくは10
9個/ml、または10
10個/mlであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ3)の濃縮液は、還流してステップ2)の浸透液と混合することによって、循環回路を形成することを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ3)の濃縮液を一段前に戻して、浸透液と混合させ、循環回路を形成することを特徴とする、請求項6~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
腸管内容物抽出物を含む組成物であって、
前記腸管内容物抽出物は、請求項1~5のいずれかに記載の腸管内容物分離回収装置、または請求項6~9のいずれかに記載の腸管内容物分離回収方法で調製することによって得られるものであり、
得られた腸管内容物抽出物のサイズは、0.01~50μm、または0.1~40μm、または0.2~30μm、または0.5~20μmであることを特徴とする、前記腸管内容物抽出物を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学的応用技術分野に関し、特に、腸管内容物分離回収装置、分離回収方法及びその抽出物に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物の腸管細菌叢は、哺乳動物体内における重要な代謝、免疫のための「器官(organ)」であり、宿主の全体の代謝に影響を与え、また、宿主代謝は、自身の遺伝子、及び腸管細菌叢の遺伝子による二重影響を受け、宿主と細菌叢の間には「共代謝」プロセスがある。腸管細菌は、宿主の代謝に関与でき、宿主と共代謝関係を構築している。正常な場合、哺乳動物の体内における腸管細菌叢は、比較的に比較的安定しているが、一度失調する(アンバランスになる)と、宿主免疫系の機能不全を引き起こし、疾病につながる。
【0003】
人体内には、大量の共生微生物が存在し、それらの大部分はヒトの腸管に住み着き、数量は1000兆(1014級)を超え、これは人体細胞総数の約10倍以上である。腸管微生物は、99%以上が細菌であり、前記細菌には、大多数の嫌気性菌及び少数の好気性菌を含む。腸管微生物は、人体代謝の重要な関与者であって、ヒトの代謝プロセスに基質、酵素及びエネルギーを与えると共に、腸管微生物の代謝により得られる脂肪酸などは、ヒト上皮細胞の成長と分化を促し、ビタミンの合成、各種イオンの吸収に関与する。腸管は、人体内の最大の免疫器官であり、腸粘膜表面にける腸管微生物と宿主の協働により免疫系の確立及び発展を促し、人体の重要な免疫バリアとなる。なお、腸管微生物は「菌膜バリア」を形成することによって人体に対して保護機能を与える。
【0004】
人体の腸管微生物は、食物の消化を助けるだけではなく、さらに、外部から人体に侵入する病原菌に有効に抵抗するバリアでもあり、常に人類に伴って成長を遂げてきた。長い進化プロセスに形成される均衡且つ安定的な腸管微生態環境は、人体の栄養、代謝及び免疫に重要な役割を果たしている。長い進化プロセスにおいて、腸管微生物は人類と協力し合い、人体の栄養、代謝及び免疫に大変重要な役割を果たしている。
【0005】
腸管における様々な細菌の数量は、均衡なバランスが取れることを前提に役割を発揮する。このようなバランスは非常に脆く、腹痛、下痢の大半の原因は、腸管細菌叢のバランスが崩れることである。栄養失調、肥満症、糖尿病などは、いずれも腸管細菌叢のアンバランスに関係する可能性がある。最新の研究から、老年性認知症、自閉症も腸管細菌叢の失調(アンバランス)に関係する可能性があることが示されている。
【0006】
2013年12月、Science誌が発表した科学進展トップ10には、腸管細菌叢と人体の健康関係の研究が含まれている。腸管微生物細菌叢は、非常に複雑で、一定の比率で組み合わせ、互いに制約しながら互いに依存する腸管細菌叢は、数量上において宿主と共生して共に利益が得られる生態的バランスを形成している。飲食とプロバイオティクスを摂取することによって、腸管微生物細菌叢に対してある程度の作用または影響をもたらすことができる。しかしながら、食生活の改善は、腸管内微生態的バランスを改善することができるが、その過程は遅く、比較的時間がかかる。また、腸管細菌叢に含まれている種類は多く、数量、種類が限られているプロバイオティクスを補充しても、腸管微生態の全体的なバランスを回復させることは困難で、治療効果は限定的である。近年、糞便微生物移植(Fecal Microbiota Transplantation,FMT)は、医学分野における重要な新規技術となり、腸管細菌叢を再構築させることは、徐々に人々に認められるようになり、臨床的にも注目されている。
【0007】
哺乳動物、例えばヒトの糞便には、主に未消化の残渣(例えば食物繊維)、腸分泌物(粘液を含む)、タンパク質、白血球、上皮細胞、細菌、無機物(主に、カルシウムとリン酸塩)、消化不能または吸収不能の食物及び水分などを含む。健常成人の多くは、毎日に一回の排便し、食物の種類、食事の量及び消化器官の機能状態に従って、排出される糞便も変化する。例えば、米、小麦粉、肉類を主に摂取する者は、糞便が繊細かつ少量であり、雑穀、特に多量の野菜を多く摂取する場合は、繊維質が多いために、糞便が粗目で量が多い。
【0008】
糞便中の細菌は極めて多くて、乾燥重量の1/3に占め、多くは正常な細菌叢である。健常乳幼児の糞便中には、主にビフィズス菌、バクテロイド、エンテロバクター、腸球菌、ブドウ球菌などがある。成人糞便中には、大腸菌(Escherichia coli)、嫌気性菌及び腸球菌が主な細菌叢として、約80%を占め、アエロゲネス菌、プロテウス、緑膿菌(Peudomonas aeruginosa)などの多くは通過菌として、10%を超えない。芽胞菌(例えばクロストリジウム属(Clostridium))とイーストは、総量が10%を超えない。糞便中における細菌数と細菌系図は、普段、比較的安定的な状態にあり、宿主との生態的バランスを保持している(「臨床検査診断と臨床適用」王瑞輝編集 中国長春:吉林科学技術出版社 2017年03月)。
【0009】
糞便微生物移植は、健常者糞便中における細菌叢(腸管細菌叢)を患者体内に移すことによって、患者に健常者の腸管細菌叢を持たせ、腸管細菌叢のアンバランスを調節し、正常な機能を有する腸管微生態系を再構築し、腸管内と腸外の疾患の治療に対して助けを提供する。近代、人類の糞便微生物移植を利用する治療中において、使用される糞便細菌状態の状態は、比較的多くは、新鮮な糞便細菌液であることが多く、または糞汁、発酵糞液、あるいは児童糞液が使用される。中国古代の医者による「黄龍湯」は、まさにヒト糞汁を含有する処方である。糞便細菌液による糞便微生物移植は、医療従事者及び患者に対して大きな精神的なチャレンジに耐える必要がある以外にも、より重要な課題は、如何に細菌叢の機能に影響を与えない時間内に糞便細菌の分離、保存を終えるかである。
【0010】
人体腸内において、少なくとも1000~1150種類の細菌が存在し、平均すると各宿主体内に約160種類の優勢菌種が含まれる。人体の腸管微生物は、主な構成群が非常に類似しているが、異なる宿主の個体間には、それぞれの微生物群の相対的含有量と菌株の種類は大きく違っている。微生物細菌叢の差異に影響する要素は、宿主の地域、年齢、生理状態、飲食習慣などの要素が含まれる。ヒトの糞便細菌は、現在、唯一の人類が本質的に共有できる臓器(器官)であり、免疫拒絶反応の問題を考慮する必要がない。それぞれの個体の腸管細菌叢は、生態的バランスがそれぞれ異なり、大きな差異が存在することもある。これにより、ある程度、糞便微生物移植の難易度も上がってしまう。
【0011】
糞液移植の重要なポイントの一つは、移植待ち糞便細菌の調製である。現在、比較的多いのは糞便細菌液である。しかし、糞便細菌液の調製については、未だ共識がなく、調製される糞便細菌液に影響を与える要素は多くある。第一、糞便量:糞便重量は細菌叢数に比例せず、且つ、個体差が比較的大きく、糞便細菌液を調製する場合、糞便採取量を決める統一標準がない。第二、調製時間:糞便細菌叢に嫌気性菌が多く含まれ、各菌種の代謝時間が異なる。そのため、分離抽出をできる限り短い時間内に完成させる必要があり、でなければ嫌気性菌の死亡や、細菌叢種類の相対な存在量(abundance)に大きな変化が起きてしまい、臨床的治療効果に影響してしまう。第三、従来の調製フロー及び方法:主に、手動による粗ろ過に加えて遠心濃縮法を用いるか、または精密ろ過に加えて遠心濃縮法を用いる。従来の調製方法により得られた糞便細菌は、当初の腸管内容物における細菌叢分布に比べて、細菌叢の種類及び存在量に大きな違いが生じ、且つ再現性が悪い。第四、糞便細菌液の状態:新鮮な糞便細菌液と凍結乾燥糞便細菌液があり、凍結乾燥糞便細菌液は、新鮮な糞便細菌液にグリセリンを添加した後、低温で凍結することによって調製され、または凍結糞便細菌カプセルに調製してもよい。
【0012】
現在、糞便細菌自動分離回収システムには、多段ろ過による他の不純物を除去することが多く、中国では、例えばCN103330961B、CN105624024B及びCN204097475U等、一部の文献によって公開されている。しかし、これらの糞便細菌分離回収システムは、いずれも糞便溶液における大粒子の不純物、例えば未消化の食物残渣等をろ過分離して得られるものであり、該菌液には多量の食物残渣、細菌代謝産物及び水が含まれているはずである。現在、一般的に用いられる手段は、遠心機により大粒子の不純物がろ過された混合液を遠心して分層させ、上澄み液または沈殿物を廃棄することで、有用な細菌叢を得る。多くの腸管細菌は、大きさが0.1~50μmの間であり、上澄み液の廃棄によって、大量のサイズの小さい微生物が失われることになる。上澄み液を残すと共に、沈殿物を廃棄する場合、サイズの大きい微生物が失われることにある。さらに、該方法は、糞便サンプル成分の多様性及び複雑性、及び各操作者の操作の違いによって、該方法の差異が大きく、結果的に制御不能になり、標準化の再現可能な操作を実現できず、且つ操作も不便を伴うものである。
【0013】
なお、これらの方法は、制御性が悪く、特定の腸管微生物を選択的にスクリーニングすることはできず、将来、腸管疾患の精密治療のニーズを満たすことはできない。同時に、このような装置では、従来フィルタろ過方式により精密ろ過を行い、サイズの比較的小さい不純物を除去する。精密ろ過フィルタは、開孔サイズが0.01mm~1mmであり、不純物によって非常に詰まりやすく、これによりろ過の効率を大きく低下させる共に、糞便には粘性成分が多く含まれるため、従来のフィルタろ過方式の効率を大幅に低下させ、有効時間における細菌叢の分離抽出を実現することができない。糞便細菌における細菌含有量が高いため、従来の多段ろ過の特許技術では、得られる単位体積あたりの細菌含有量が低く、操作の再現性、細菌叢とサンプルの一貫性が比較的悪く、これにより細菌叢移植の難易度が上がる。
【0014】
WO2012122478A1はヒト糞便抽出物の組成物について開示している。混合(ブレンド)されたサンプルを、2.0mm未満のフィルタに通過させ、ろ液を1つの遠心管に採取し、10分間遠心する。上澄み液を除去し、細胞を希釈剤に再懸濁させ、再び10分間遠心する。最終上澄み液を廃棄して、細胞をある水性溶液に再懸濁させ、組成物を得る。該文献の方法では、大量の細菌が廃棄されてしまうと共に、空気中での操作は多量の嫌気性菌の死亡をもたらしてしまう。
【0015】
WO2016065777A1は以下について開示している。管腔内容物における微生物分離装置であって、現物タンクの排出口は、段階ろ過装置の入口に接続され、段階ろ過装置は、1つまたは複数の段階ろ過フラスコより構成され、貯液タンクの出液口は、現物タンクの注液口と、少なくとも1つの段階ろ過フラスコに連通し、密閉式の分離物タンクは、材料供給口が段階ろ過装置の排出口に連通し、少なくとも1つの分注瓶より構成される分注装置は、1つ目の分注瓶の菌液入口は分離物タンクの菌液出口に連通し、脱臭装置は、臭気入口が臭気管路を経由して現物タンクの臭気出口と分離物タンクの臭気出口にそれぞれ連通し、臭気管路において現物タンクと分離物タンクの臭気をそれぞれ脱臭装置に導入させるエアポンプが少なくとも1つ設けられ、該分離装置は、段階ろ過フラスコ内の液体に対して揺動、スイングまたは波動のような振動を行わせることにより、ろ過を助けるものである。
【0016】
WO2016201114A1は以下について開示している。経口微生物叢回復療法(MRT)組成物を製造するための方法であって、該方法は以下を含む。糞便試料を採取し、上記の糞便試料を精製することによって精製中間体を得る。ここで、上記糞便試料の精製は、希釈剤を上記糞便試料に入れ、上記の糞便試料を希釈剤と混合することによって混合物を形成し、上記の混合物をろ過し、上記のろ過ステップによる濾液を遠心管に移し、上記の濾液を遠心することによって精製中間体を得て、上記の精製中間体を凍結乾燥させることによって複数の凍結乾燥ペレットを得て、さらに上記の複数の凍結乾燥ペレットを一つまたは複数のカプセル内に封入する。
【0017】
CN201810852561.2は下記について開示している。腸管内容物分離回収装置、方法及びその製品であって、従来の遠心式分離技術の替わりに、側壁ろ過及び回転分離技術を組み合わせた微孔性膜分離モジュールによる腸管微生物抽出を採用した。ニュークリポアメンブレン(nuclear pore membrane)のろ過特徴を利用して、腸管内容物分離の適用において、異なる孔径の各ニュークリポアメンブレンのろ過により、各種類の腸管内容物を収集し、ニュークリポアメンブレン上で捕捉されたものはいずれも所望の産物である。該発明は、本発明者による早期発明として、遠心操作による腸管微生物の取得において、比較的大きく改善されているが、不純物除去段階において依然として従来のろ過手段を用いて、腸管微生物の最後の収集はニュークリポアメンブレンを使用し、ニュークリポアメンブレンはほぼ均一な孔径を有する膜構造であり、クロスフローろ過を行うために下端に負圧を印加する必要があり、全体としてのろ過効率、及び、得られる腸管微生物の品質面において、依然向上させる余地がある。
【0018】
従来の糞便細菌叢の抽出処理は、遠心工程を利用することが多い。しかし、遠心操作プロセスにおいて、腸管内容物間の差異があり、これらの差異とは糞便中における様々な食物残渣、菌類の組成、存在量を含み、毎回の分層の結果がいずれも異なり、無くしてしまう菌種も異なる。遠心工程のパラメータ、例えば回転数、固液比などがいずれ同じでも、最終に得られる細菌叢の製品品質は制御不能で、有効な再現性を達成できない。なおさら、操作プロセスにおいて手動操作があり、プロセス全体の再現可能性は非常に大きなチャレンジに直面する。
【0019】
次に、抽出効率は一般的に低く、抽出プロセスにおいて腸管細菌を無くすことは深刻で、抽出される菌の数量が限られ、FMT治療効果を低下させると共に、FMTのコストが大きくなってしまう。
同時に、糞便細菌叢は複数のフローによる処理が必要で、糞便細菌叢は主に嫌気性菌であるため、窒素ガス置換の生体工学チャンバー(グローブボックス)内で遠心操作を行う必要があり、操作が困難になり、また、すべての操作を窒素ガスの生体工学チャンバー(グローブボックス)内で実施できる訳ではないので、品質を保証しづらく、治療効果も不安定になってしまう。
【0020】
そのため、従来技術において、標準化の糞便細菌分離と移植技術が不足していることが、糞便微生物移植の発展を制限する重要な原因の一つとなっている。如何に糞便細菌分離を高速かつ効果的に実施すると共に、その再現可能性、標準化を保証し、及び得られた糞便細菌と当初サンプルの一貫性を保証することは、糞便細菌分離にとってとても重要な意義がある。当該技術分野は、腸管内容物分離回収装置、及び腸管内容物を分離回収する方法により、上記の遠心分離の課題を効果的に解決し、上記従来技術における全部または一部の欠点を解消または緩和することが求められている。
【発明の概要】
【0021】
上記の従来技術の課題に対して、本発明の目的は、まず腸管内容物分離回収装置を提供することであり、当該腸管内容物分離回収装置は、微孔性膜超微細モジュールクロスフローろ過によって、特定の腸管細菌叢を効率よく、精密、制御可能に収集することを実現するものである。
【0022】
同時に、本発明は、さらに、腸管内容物を分離回収する方法、及び分離回収により得られる腸管内容物の抽出物を提供する。
【0023】
ここで特記すべきは、特に説明しない限り、本明細書に用いられる用語は、当該技術分野における各科学技術の用語の一般的な意味、各種技術辞典、教科書等に定義されている専門用語と意味が同一である。
【0024】
本発明は、まず、腸管内容物分離回収装置を提供し、そのうち、前記内容物分離回収装置は、不純物除去モジュール及び目標内容物収集モジュールを含み、前記不純物除去モジュールはクロスフローろ過構造を備え、腸管内容物の不純物部分を除去するものであり、前記目標内容物収集モジュールは、主に微孔性膜クロスフローフィルタよって構成され、前記微孔性膜はスポンジ状多孔質構造を有し、微孔性膜の孔径範囲は0.01~20μmであり、好ましくは微孔性膜の孔径範囲は0.1~10μmであり、より好ましくは微孔性膜の孔径範囲は0.2~5μmであり、微孔性膜の開口率(開孔率)が30%以上、好ましくは50%、60%以上、より好ましくは70%、80%、85%、90%以上であり、前記微孔性膜は親水性膜である。
【0025】
さらに、微孔性膜クロスフローフィルタは、ディスク状構造を有し、クロスフローディスクの有効ろ過面積とクロスフローディスクの全体面積の比率は0.3~0.9で、好ましくは前記比率が0.4~0.8であり、より好ましくは前記比率が0.5~0.6である。この二つの値の比率は、クロスフローろ過における微孔性膜の有効使用率を示すものである。本発明では、微孔性膜クロスフローディスクの全体面積が約270cm2、有効ろ過面積が約150cm2とすることができる。
さらに、微孔性膜クロスフローフィルタの流路は、らせん状流路である。らせん状クロスフロー流路は、液体の流動に対して効果的な支持を提供するとともに、できるだけ微孔性膜を利用してクロスフローろ過を行うことができる。
さらに、微孔性膜クロスフローフィルタの流路断面積は、入口管断面積よりも小さく、前者と後者の比率は0.8、0.6、もしくは0.5、またはこれ未満である。例えば、入口管の断面積が約35mm2の場合、微孔性膜クロスフローフィルタの流路の断面積は約15~20mm2になる。本発明では、別途加圧または負圧設備を使用しなくても、クロスフローろ過を行うことができ、また、余計のコストを増加させるが、対応の設備を利用できないという訳ではない。
【0026】
さらに、上記の分離回収装置はポンプを備え、前記ポンプは腸管内容物溶液を、不純物除去モジュールから管路を経由して目標内容物収集モジュールに輸送するものである。上記ポンプは、腸管内容物溶液の交差感染を回避し、医療用消耗品の要求を満たすため、蠕動ポンプが好ましい。
【0027】
さらに、上記の不純物除去モジュールは、多段ろ過、例えば粗ろ過と微細ろ過のモジュールを含む。上記微細ろ過モジュールは、クロスフローろ過が用いられることが好ましい。
【0028】
さらに、クロスフローろ過の濃縮液は、一段階前のろ過の浸透液と混合し、循環回路を形成する。
微孔性膜は、ポリエーテルスルホン膜、セルロース膜、ポリメタクリレート膜のうちの一種類または複数種類を含み、変性または非変性のものである。好ましくは、微孔性膜であるポリエーテルスルホン膜は、湿式相反転多孔質ろ過膜(wet casting phase inversion membrane)である。ポリエーテルスルホン膜は、改良型ポリエーテルスルホンろ過膜とすることができ、そのディスクろ過膜003(0.03μm)、010(0.1μm)、020(0.2μm)、045(0.45μm)、065(0.65μm)、080(0.80μm)、120(1.2μm)、500(5.0μm)、1000(10μm)とすることができる。本発明の微孔性膜は、帯状繊維が粒子を連結することにより構築されるネットワーク構造を有し、非均一な孔構造は、孔の立体的または3次元的な変化を呈し、スポンジ状多孔質構造は、高い空隙率を有する。このような膜構造は、クロスフローろ過の際に、比較的均一なニュークリポアメンブレンに対して優れた性能を示し、別途加圧あるいは負圧装置を使用する必要がなく、クロスフローろ過を速やかで効果的に実現することができる。同時に、微孔性膜が使用中に破損することを回避するために、その裏面にスペーサを設けてもよい。
【0029】
さらに、本発明の一つの実施例は、腸管内容物分離回収装置を提供し、該腸管内容物分離回収装置は、不純物除去モジュール及び目標内容物収集モジュールを含み、前記不純物除去モジュールは攪拌粗ろ過モジュールと、精密ろ過モジュールを備え、
前記攪拌粗ろ過モジュールは、上部に攪拌装置が設けられ下部に粗ろ過フィルタが設けられ底部に出液口と還流口が設けられる容器であり、
前記精密ろ過モジュールは、精密ろ過クロスフローディスク式フィルタを含み、
腸管内容物(糞便)は、溶媒(例えば生理食塩水)と混合した後、まず腸管内容物を溶媒に充分に分散するように上記の攪拌装置で充分に攪拌し、次に、粗ろ過フィルタにより比較的大きいサイズの不純物を除去した後、第1の輸送ポンプで上記の精密ろ過クロスフローディスク式フィルタに輸送し、上記精密ろ過クロスフローディスク式フィルタに通して比較的細かい不純物を除去し、
上記の目標内容物収集モジュールは、微孔性膜フィルタが用いられる微孔性膜クロスフローディスク式フィルタを備え、上記精密ろ過モジュールによるろ過後の浸透液を、第2の輸送ポンプで上記の微孔性膜クロスフローディスク式フィルタに輸送し、上記の微孔性膜フィルタによるクロスフローろ過後、上記の微孔性膜クロスフローディスク式フィルタの濃縮液から目標内容物を収集する。
【0030】
さらに、上記精密ろ過クロスフローディスク式フィルタは、フィルタ孔径が5~100μmであり、好ましくは5~50μmであり、より好ましくは10μm、20μm、25μmまたは30μmである。
さらに、上記微孔性膜クロスフローディスク式フィルタのフィルタ(微孔性膜)は、孔径が0.01~20μmであり、好ましくは0.1~10μmであり、より好ましくは0.2μm、0.5μm、1μm、2μm、5μmまたは7μmである。
【0031】
さらに、上記精密ろ過モジュールは、貯液タンクをさらに備え、上記の精密ろ過クロスフローディスク式フィルタによりろ過された浸透液は、上記の貯液タンクに入り、それから目標内容物収集モジュールに入る。精密ろ過された濃縮液は、管路により上記還流口を経由して上記容器に還流して、粗ろ過された浸透液と混合し、循環回路を形成する。
【0032】
さらに、上記の目標内容物収集モジュールは、浸透液流出液タンクをさらに備え、上記微孔性膜クロスフローディスク式フィルタによりろ過された浸透液は上記浸透液流出液タンクに入り、濃縮液は管路を経由して上記の精密ろ過モジュールの貯液タンクに還流し、10~60分間、好ましくは50分間循環ろ過後、上記微孔性膜クロスフローディスク式フィルタの濃縮液から目標内容物を収集する。
【0033】
さらに、上記目標内容物収集モジュールは、1つの微孔性膜クロスフローディスク式フィルタを含み、または、上記目標内容物収集モジュールは、複数の異なる孔径の微孔性膜クロスフローディスク式フィルタを含み、異なる孔径の微孔性膜クロスフローディスク式フィルタは孔径の大きい方から小さい方に順次配置され、サイズの異なる目標内容物を収集するために用いられる。
【0034】
さらに、上記目標内容物は腸管微生物(腸管細菌叢)であり、ビフィズス菌、乳酸杆菌、大腸菌、腸球菌等を含み、上記腸管微生物のサイズは0.1μm~50μmである。
【0035】
さらに、上記攪拌粗ろ過モジュールの容器外部にカバーが設置され、前記カバーは天井部に排気口が設けられ、糞便からの臭いガスが上記の排気口から排出され、脱臭装置により脱臭される。
【0036】
さらに、上記分離回収装置は脱酸素モジュールが設置され、腸管内容物が分離回収プロセス中において低酸素または無酸素の雰囲気下にあることを保証、維持している。
【0037】
本発明は、同様に、本発明の装置による腸管内容物を分離回収する方法を提供し、上記方法は本発明の装置を利用して行われ、
ステップ1)分散ステップ、腸管内容物と液体分散媒を混合し、腸管内容物と液体分散媒の比は100g:200~5000mlであり、好ましくは100g:300~1000ml、または100g:500~800mlであり、得られた混合物を機械的に分散させることによって、均一な分散混合液を形成する、
ステップ2)不純物除去ステップ、分散混合液をろ過フィルタに通過させ、ろ過により不純物を除去し、前記ろ過はクロスフローろ過を含み、浸透液(ろ液)を得る、
ステップ3)採取ステップ、ステップ2)の浸透液を、微孔性膜クロスフローフィルタに通してろ過を行うことによって、濃縮液及びろ過廃液を得て、前記濃縮液は目標内容物を収集するためのものであり、
前記微孔性膜クロスフローフィルタの微孔性膜は、スポンジ状多孔質構造を有し、微孔性膜の孔径範囲は0.01~20μmであり、好ましくは微孔性膜の孔径範囲は0.1~10μmであり、より好ましくは微孔性膜の孔径範囲は0.2~5μmであり、微孔性膜の開口率が30%以上、好ましくは50%、60%以上、より好ましくは70%、80%、85%、90%以上であり、上記微孔性膜は親水性フィルムである。
【0038】
さらに、ステップ1)の分散混合液中において、細菌の含有量は、少なくとも108個/ml、または109個/ml、または1010個/mlである。
さらに、ステップ3)の濃縮液は、還流してステップ2)の浸透液と混合し、循環回路を形成する。
【0039】
さらに、ステップ2)のろ過、不純物除去は、粗ろ過と微細ろ過に分けられ、粗ろ過のフィルタ孔径は10μmより大きく、または50μm、または100μm、または200μmよりも大きく、または500μmよりも大きく、粗浸透液(ろ液)が得られ、それから、粗浸透液に対して微細ろ過を行う。
【0040】
さらに、ステップ2)の微細ろ過は、クロスフローろ過であり、微細ろ過のフィルタ孔径は5~100μm、好ましくは5~50μm、より好ましくは10μm、20μm、25μmまたは30μmであり、微細浸透液(ろ液)と濃縮液が得られ、そのうち微細浸透液はステップ3)における微孔性膜クロスフローフィルタに入り、ろ過を行い、濃縮液及びろ過流出液が得られる。
【0041】
さらに、ステップ3)の濃縮液は、一段階前に戻り、浸透液と混合することによって、循環回路を形成する。
【0042】
さらに、上記ステップ1)の機械的手段は、攪拌、または他の同様の固液混合物を効果的に分散させる手段、例えばボールミル、震盪(振盪)などである。
【0043】
さらに、ステップ3)の濃縮菌液を凍結乾燥することによってパウダーに調製する。
腸管内容物抽出物を含む組成物であって、上記腸管内容物抽出物は、上記いずれかに記載の腸管内容物分離回収装置または上記のいずれかに記載の腸管内容物分離回収方法によって調製され、得られた腸管内容物抽出物の大きさは0.01~50μm、0.1~40μm、0.2~30μm、または0.5~20μmである。
【0044】
さらに、上記腸管内容物抽出物は、濃縮菌液であり、凍結乾燥によりパウダーとなり、細菌含有量が少なくとも1011個/1gパウダー、または2×1011個/1gパウダー、または5×1011個/1gパウダー、または1012個/1gパウダーである。
【0045】
上記腸管内容物抽出物における細菌叢の分布(種類及び存在度)は、腸管内容物の細菌叢分布に非常に近い。
腸管内容物におけるこのような特定の処理待ち物質は、粘着度が高い、個体差が大きいなどの特徴、腸管内容物の個体差や操作員の操作差異があるため、従来の細菌叢抽出に遠心分離がよく用いられるが、遠心分離により、多量の細菌が分離して廃棄され、品質に対する制御性が悪く、多量の細菌が失われ、生物多様性が低く、再現性が悪く、操作が不便で、環境制御が悪く、細菌生存率が低く(腸管中の多量の嫌気性菌)、このため、治療効果が悪く、または不安定になってしまう。
【0046】
腸管内容物に含まれる菌種の繁殖速度が異なるため、腸管内容物の分離抽出を有効時間内、例えば1.5h、好ましくは1h以内に完成しなければ、得られる抽出物における菌種の分布は、初期(当初)の腸管内容物における菌種分布と異なってしまう。
【0047】
本発明の腸管内容物の分離回収装置は、遠心部品を使用せず、遠心手段により目標内容物を得る必要はなく、クロスフローろ過と微孔性膜の組み合わせによって目標内容物を得る。ろ過効率を保証しつつ、有効時間以内に抽出を完成し、そのため、閉塞、効率低下などの課題を解決し、すべての菌種を効果的に抽出し、本来の菌種の相対的な存在度を保持することができる。
【0048】
本発明は、従来の遠心式分離技術の替わりに、微孔性膜クロスフローろ過を用いて目標となる腸管内容物を濃縮するものであって、まず、抽出ステップをより精密制御可能にし、分離効率を高くし、同時に操作を簡単にし、自動化レベルを高くすることができ、また、孔径の異なる微孔性膜を用いることによって、サイズ効果を利用して、所望の腸管内容物を選択的に分離することができる。
【0049】
本発明はろ過を粗ろ過と精密ろ過に分け、クロスフローろ過により精密ろ過を行う。従来ではフィルタの方式を用いて精密ろ過を行うが、精密ろ過のフィルタの孔径の大きさは0.01~1mmであり、非常に不純物によって詰まり(閉塞)やすく、ろ過の効率を大きく低下させると共に、糞便中に比較的多くの粘性成分があるため、従来のフィルタろ過の効率が下がってしまう。このような多量の対象微生物は精密ろ過フィルタの閉塞によりスムーズに通過できないため、最終的に収集された目標微生物の含有量が大きく低下してしまう。クロスフローろ過の方式によって糞便サンプル中における比較的小さい不純物を除去し、水流によって生じる膜面に平行な接線力(せん断力)によって、耐えず膜表面の残留物(捕捉物)洗い流すことによって、開孔の詰まりを防ぎ、分離効率を向上し、微生物がフィルタを通過する確率を大幅に向上させ、フィルタの寿命を延ばすことができる。
【0050】
従来、精密ろ過モジュールは、詰まりやすいため、孔径20μm以下のフィルタでろ過することは難しい。ろ物にも、高い比率で小さいサイズの不純物が含まれている。本発明の精密ろ過モジュールは、クロスフローろ過の手段が用いられるので、精密ろ過モジュールは、孔径サイズが15μmひいてはもっと小さい、クロスフローフィルタを用いることによって、クロスフローフィルタを通過するより小さいサイズの不純物の含有量を大きく低下させ、目標内容物収集モジュールにより採取される目標内容物の純度をより高くすることができる。
【0051】
本発明は精密ろ過ステップの後で、微孔性膜クロスフローろ過の方式により対象となる腸管内容物を濃縮し、精密ろ過モジュールと目標内容物収集モジュールの協働を達成する。精密ろ過モジュールと目標内容物収集モジュールのフィルタの孔径の設計により、大きさの異なる目標内容物を濃縮する。例えば、精密ろ過モジュールとして孔径5μmのクロスフローフィルタを用いて、目標内容物収集モジュールとして1μmのクロスフローフィルタを用いて、サイズが1~5μmの間にある目標内容物を選択的に収集できる。
【0052】
本発明の精密ろ過モジュールと目標内容物収集モジュールのクロスフローろ過は、好ましくは、いずれもクロスフローディスク式フィルタが用いられ、マイクロクロスフローディスク式フィルタの内部に、らせん状で配置される管路によりクロスフローろ過を行うことによって、有効ろ過面積を大きく増大させ、フィルタの体積を低減することができる。
【0053】
本発明に係る腸管内容物の分離回収方法は、より高い抽出率及びより高い抽出効率を有し、初期(当初)のウェット腸管内容物に対して、分離回収された細菌叢パウダーの百分率が少なくとも10%~20%であり、細菌含有量は少なくとも1011個/1g細菌叢パウダー、即ち100g初期ウェット糞便から得られる細菌叢パウダーが少なくとも10g~20gであり、本発明に係る菌の数量の抽出効率は、少なくとも6.7×109個/(cm2・h)~1.34×1010個/(cm2・h)であり、即ち100g初期ウェット糞便で、約150cm2の有効ろ過面積下において、最大60minで分離回収を終わらせることができ、得られる細菌叢パウダーが少なくとも10g~20gで、細菌数が1×1012個~2×1012個である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
ここにおいて説明する図面は、本発明に係る実施例の理解を深めるためのものであり、本発明の一部を構成し、本発明に係る模式的な実施例及びその説明は、本発明を不当に限定するものではなく、本発明を解釈するために用いられるものである。図面を参照すること。
【0055】
【
図1】
図1は実施例1の腸管内容物分離抽出システムである。
【
図2】
図2は比較例1における従来の遠心式分離方法による腸管内容物分離抽出システムの模式図である。
【
図3】
図3は実施例1における上記の腸管内容物分離回収装置により分離し、微孔性膜クロスフローディスク式フィルタ(12)の濃縮液から収集される産物の200倍顕微鏡下の写真である。
【
図4】
図4は比較例1における従来の遠心式分離方法によって得られる下層沈殿物中の2gの固体沈殿物を25mlの生理食塩水に溶解させているものの、200倍顕微鏡下の写真である。
【
図5】
図5は比較例2における上記腸管内容物分離回収装置による分離後、微孔性膜クロスフローディスク式フィルタの濃縮液から収集された産物の200倍顕微鏡下の写真である。
【
図6】
図6は実施例1のクロスフローディスク式フィルタの構造模式図である。
【
図7】
図7は比較例1の遠心後のサンプル写真(左図 図a:1回目遠心後のサンプル写真;真ん中図 図b:2回目遠心後のサンプル写真;右図 図c:3回目遠心後のサンプル写真)である。
【
図8】
図8は比較例1の遠心後の上澄み液の電子顕微鏡写真(左図 図a:1回目遠心後の上澄み液;真ん中図 図b:2回目遠心後の上澄み液;右図 図c:3回目遠心後の上澄み液)である。
【
図9】
図9は実施例6と比較例3によって分離回収された目標内容物のAlpha多様性比較図である。
【
図10】
図10は実施例6と比較例3によって分離回収された目標内容物、初期(当初)糞便のBeta多様性比較図である。
【
図11】
図11は実施例6と比較例3によって分離回収された目標内容物、初期(当初)糞便のBeta多様性比較図である。
【
図12】
図12は実施例6と比較例3によって分離回収された目標内容物、初期(当初)糞便の菌種多様性比較図である。
【
図13】
図13は実施例7と比較例4~5によって分離回収された目標内容物の平均複製数/gパウダーのlog値の比較図である。 [符号の説明] 1:不純物除去モジュール、2:目標内容物収集モジュール、3:攪拌粗ろ過モジュール、4:精密ろ過モジュール、5:攪拌装置、6:容器、7:粗ろ過フィルタ、8:出液口、9:還流口、10:精密ろ過クロスフローディスク式フィルタ、11:第1の輸送ポンプ、12:微孔性膜クロスフローディスク式フィルタ、13:第2の輸送ポンプ、14:貯液タンク、15:流出液タンク、16:カバー、17:排気口、18:脱臭装置、201:攪拌粗ろ過モジュール、202:精密ろ過モジュール、203:攪拌装置、204:容器、205:粗ろ過フィルタ、206:精密ろ過フィルタ、501:クロスフロー進液口、502:濃縮液出液口、503:らせん状に配置されたクロスフローろ過管路。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の目的は、技術構成及びメリットをより明らかにするために、以下において、具体的実施例及び対応の図面により、本発明の技術構成を明確、全面的に記載する。記載されている実施例は、本発明における実施例のすべてではなく、一部に過ぎないことは言うまでもない。当該技術分野における当業者は、本発明の実施例に基づき、進歩性のある労働を必要とせずに得られる他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属するものである。
【0057】
本発明において、腸管内容物の細菌叢の測定は、主に16SrRNA geneアンプリコンシーケンスが用いられる。
以下、図面に合わせて、本発明の実施例の技術構成について詳しく説明する。
【実施例1】
【0058】
図1に、本発明の一実施例に基づく腸管内容物分離回収装置が示され、そのうち、前記腸管内容物分離回収装置は、不純物除去モジュール1、及び、目標内容物収集モジュール2を含み、そのうち、不純物除去モジュール1は攪拌粗ろ過モジュール3と精密ろ過モジュール4を含む。
【0059】
攪拌粗ろ過モジュール3は、内部に攪拌装置5が設けられている容器6を含み、攪拌装置5は容器6の上部に位置し、容器6の下部に粗ろ過フィルタ7が設けられ、攪拌装置5は粗ろ過フィルタ7の上に位置し、且つ、容器6の底部に互いが仕切られている出液口8と還流口9が設けられている。
【0060】
操作する際は、例えば、130gの初期のウェット腸管内容物(糞便)と750mlの生理食塩水を、容器6中で混合した後、攪拌装置5により充分に攪拌分散させ、粗ろ過フィルタ7でろ過して、出液口8により排出することで、糞便中における粒子の比較的大きい不純物を除去することができる。
【0061】
精密ろ過モジュール4は、精密ろ過クロスフローディスク式フィルタ10を含み、そのうち、粗ろ過でろ過された液体を出液口8から排出した後、第1の輸送ポンプ11から精密ろ過クロスフローディスク式フィルタ10に輸送して、精密ろ過クロスフローディスク式フィルタ10で比較的微細の不純物を除去した。精密ろ過モジュール4は、さらに、精密ろ過クロスフローディスク式フィルタ10の流体に連通する貯液タンク14を含み、精密ろ過クロスフローディスク式フィルタ10によりろ過された浸透液は貯液タンク14に流れ込む。濃縮液は、管路により還流口9を経由して容器6の底部に還流し、粗ろ過浸透液と混合することができる。精密ろ過クロスフローディスク式フィルタ10は、フィルタ孔径が10μmである。
【0062】
目標内容物収集モジュール2は、微孔性膜フィルタを用いた微孔性膜クロスフローディスク式フィルタ12を含み、精密ろ過モジュール4によりろ過された浸透液は、第2の輸送ポンプ13により微孔性膜クロスフローディスク式フィルタ12に輸送され、微孔性膜フィルタによりろ過され、微孔性膜クロスフローディスク式フィルタ12の濃縮液中から目標内容物を収集した。
【0063】
微孔性膜クロスフローディスク式フィルタ12は、フィルタ孔径が0.1μmである。微孔性膜は、親水性ポリエーテルスルホン膜であって、開口率が85%である。クロスフローディスクは、有効ろ過面積が155cm2であって、クロスフローディスクの全体面積との比率は0.5である。入口管の断面積は約35mm2、クロスフローディスク通路の断面積は約15mm2である。
【0064】
微孔性膜クロスフローディスク式フィルタ12によりろ過された浸透液は、流出液タンク15に入り、濃縮液は、管路を経由して精密ろ過モジュールの貯液タンク14に還流した。操作する際、例えば5分間循環ろ過した後、微孔性膜クロスフローディスク式フィルタ12の濃縮液から目標内容物を収集した。すべてのサンプルは、約60分間でろ過、収集を完成することができる。サンプルは、凍結乾燥処理後、パウダーが15g得られ、パウダー中に含まれる細菌含有量は1011個/1gパウダーである。
【0065】
収集された微孔性膜クロスフローディスク式フィルタ12の濃縮液を、200倍顕微鏡下で観察し、
図3に示される通りである。
【0066】
微孔性膜クロスフローディスク式フィルタ12は、らせん状構造が用いられ、
図7に示される通りである。らせん状構造の設計は比較的コンパクトで、設備全体の体積の低減に寄与するとともに、比較的優れたろ過効果が得られる。
【0067】
攪拌粗ろ過モジュール3の容器6は、外部にカバー16を設けることができ、カバー16の頂部に排気口17が設け、糞便から生じる臭い気体が排気口17から排出され、脱臭装置18により脱臭される。
【0068】
[比較例1]
腸管内容物分離回収装置は、実施例1における腸管内容物分離回収装置に比べて、不純物除去モジュールのみが含まれ、
図2に示される通りである。不純物除去モジュールは、攪拌粗ろ過モジュール201及び精密ろ過モジュール202を含む。攪拌粗ろ過モジュール201は、実施例1における攪拌粗ろ過モジュール3と同じように、上部に攪拌装置203が設けられ下部に粗ろ過フィルタ205が設けられる容器204であって、糞便と水が容器204中において混合された後、攪拌装置203により充分に分散させ、粗ろ過フィルタ205でろ過されることによって、糞便における粒子の比較大きい不純物が除去され、精密ろ過モジュール202は、精密ろ過フィルタ206を含み、通常のろ過方式(非クロスフローろ過)により、糞便中における粒子の比較的小さい不純物を除去するために用いられる。精密ろ過のフィルタは孔径が比較的小さいため、ろ過ステップにおいて、ろ液の浸透速度が遅く、少量のサンプルでも精密ろ過フィルタが詰まってしまい、頻繁に交換または清掃する必要があり、でなければろ液の浸透通過が困難になる。
【0069】
精密ろ過フィルタ206により不純物を除去した後の糞便懸濁液は、遠心方式により腸管微生物の分離を行い、1500rpmで3分間行い、3回繰り返し、毎回遠心された後のサンプル写真は
図8に示す通りである。毎回遠心された上層の上澄み液に対して、電子顕微鏡分析を行い、
図9に示される通りである。
図8及び
図9から分かるように、得られたサンプルに対して遠心する際、遠心によって得られた上澄み液中に大量の菌種が含まれ、これらの菌種が失われることによって、最終的に得られた腸管内容物の抽出物の有効量が低減し、菌種の分布は初期(当初)の腸管内容物における菌種の分布は異なる。
【0070】
3回遠心された後の最終下層沈殿物は、合計約6gで、2gの固体沈殿物を25mlの生理食塩水に溶解させ、200倍顕微鏡下の写真が
図4に示される通りである。
図4から分かるように、採取された下層沈殿物において、微生物含有量が低い。そのため、微生物を遠心分離により収集する効果は比較的悪く、産物における微生物含有量が低く、このため治療効果が望ましくない。
【0071】
実施例1は、比較例1に比べて、クロスフローろ過により精密ろ過を行い、糞便サンプル中におけるサイズの比較的小さい不純物を除去し、水流によって生じる膜面に平行な接線力によって、耐えず膜表面の残留物(捕捉物)洗い流すことによって、開孔の詰まりを防ぎ、分離効率を向上し、フィルタの寿命を延ばすことができる。精密ろ過ステップを行った後、従来の遠心式分離技術の替わりに、微孔性膜クロスフローろ過を用いて目標となる腸管内容物を濃縮し、まず、抽出ステップをさらに精密制御可能にし、分離効率を高くし、同時に操作を簡単にし、自動化レベルを高くした。
【0072】
[比較例2]
腸管内容物分離回収装置は、不純物除去モジュール及び目標内容物収集モジュールを含み、不純物除去モジュールは攪拌粗ろ過モジュールと精密ろ過モジュールを含み、攪拌粗ろ過モジュールは上部に攪拌装置が設けられ、下部に粗ろ過フィルタが設けられ、底部に出液口と還流口が設けられた容器であり、130gの糞便と750mlの生理食塩水を容器中で混合した後、攪拌装置により充分に分散させ、粗ろ過フィルタでろ過して糞便中における粒子の比較的大きい不純物を除去した。
【0073】
精密ろ過モジュールは、2層の異なる孔径の精密ろ過フィルタを含み、精密ろ過フィルタの孔径は上、下でそれぞれ0.5mm、10μmであり、粗ろ過でろ過された液体を精密ろ過フィルタに輸送して、精密ろ過フィルタにより比較的細かい不純物を除去し、精密ろ過フィルタはさらに貯液タンクを含み、精密ろ過フィルタでろ過された後の浸透液は貯液タンク中に流れ込む。
【0074】
目標内容物収集モジュールは、実施例1中の目標内容物収集モジュールと同じである。しかし、精密ろ過モジュールは、従来の多段ろ過方式が用いられ、ろ過効率が低かった。すべてのサンプルは、ろ過、収集に150分間前後を必要とし、実施例1よりも大幅に時間がかかり、得られた目標産物が約7gであった。採取された微孔性膜クロスフローディスク式フィルタの濃縮液を、200倍顕微鏡下で観察し、
図5に示される通りである。収集された微生物含有量は、比較例1よりも増加したが、実施例1よりは大幅に低かった。なお、実施例1よりも、比較例2の不純物含有量が明らかに高かった。
【0075】
これにより分かるように、実施例1は、比較例2に比べて、精密ろ過モジュール、目標収集物モジュールは同時にクロスフローろ過方式を用いて、水流によって生じる膜面に平行な接線力によって、耐えず膜表面の残留物(捕捉物)洗い流すことによって、開孔の詰まりを防ぐ。また、耐えず膜表面の残留物(捕捉物)洗い流すことによって、微生物と捕捉された不純物の分離にも寄与し、ろ過効率を上げて、微生物がフィルタを通過する確率を大きく向上させた。比較例2では、回収抽出プロセスの全体にかかる時間が長く、ろ過ステップにおいてフィルタが閉塞しやすく、得られた目標産物の量も少なかった。
【0076】
[実施例2~5]
本発明の別の実施例2において、腸管内容物分離回収装置を提供し、その全体構造は実施例1と同一である。その精密ろ過クロスフローディスク式フィルタ10のフィルタ孔径は5μm、微孔性膜クロスフローディスク式フィルタ(12)のフィルタ孔径は1μmである。実施例1と実施例2で分離された濃縮液の粒径分布の比較図は、
図6に示される通りである。精密ろ過モジュールと目標内容物収集モジュールフィルタの孔径の設計により、大きさの異なる目標内容物を濃縮することができ、実施例2の濃縮液における目標内容物の粒径分布は、より狭いものである。
【0077】
本発明のもう一つの実施例3は、腸管内容物分離回収装置を提供する。その全体構造は実施例1と同じである。その精密ろ過クロスフローディスク式フィルタ10のフィルタ孔径は100μm、微孔性膜クロスフローディスク式フィルタ12のフィルタ孔径は0.05μmである。
【0078】
本発明のもう一つの実施例4は、腸管内容物分離回収装置を提供する。その全体構造は実施例1と同じである。その精密ろ過クロスフローディスク式フィルタ10のフィルタ孔径は50μm、微孔性膜クロスフローディスク式フィルタ12のフィルタ孔径は20μmである。
【0079】
本発明のもう一つの実施例5は、腸管内容物分離回収装置を提供する。その全体構造は実施例1と同じである。その精密ろ過クロスフローディスク式フィルタ10のフィルタ孔径は5μm、微孔性膜クロスフローディスク式フィルタ12のフィルタ孔径は0.05μmである。
【0080】
[実施例6と比較例3]
同一の腸管内容物(糞便)を重量に応じて3つに平均的に分け、それぞれDY、MY、Fと標記し、実施例6にはDY、実施例3にはMY、及び初期(当初)糞便はFと標記した。
【0081】
実施例6において、腸管内容物の分離と回収には、実施例1と同一の分離回収装置を用いて、以下を含む:
ステップ1)分散:腸管内容物と液体分散媒を混合し、腸管内容物と液体分散媒(生理食塩水)の比例が100g:500mlとなるように混合し、得られた混合物を機械的手段によって分散させながら、攪拌装置5で充分に攪拌することで、分散混合液を形成する、
ステップ2)不純物除去:分散混合液をフィルタ構造に通過させて不純物を除去し、前記ろ過は粗ろ過とクロスフロー微細ろ過を含み、容器6における分散混合液を粗ろ過フィルタ7でろ過し、出液口8から排出し、糞便中の粒子の比較的大きい不純物を除去する、
粗ろ過された浸透液は、フィルタ孔径50μmの精密ろ過クロスフローディスク式フィルタ10に進入し、比較的細かい不純物を除去し、
ここで、攪拌装置5で5min攪拌後、充分な浸透液が得られ、精密ろ過操作を開始する。精密ろ過を10min行った後、充分な浸透液(ろ液)が得られ、目標内容物の収集ステップを開始する、
ステップ3)採取:ステップ2)の浸透液を、微孔性膜クロスフローフィルタを通過してろ過を行い、濃縮液とろ過廃液が得られ、前記濃縮液は目標内容物を収集するために用いられる、
上記微孔性膜クロスフローフィルタの微孔性膜は、非均一の孔構造を有し、微孔性膜の孔径範囲は0.2μmで、開口率が80%で、上記微孔性膜は親水性膜であり、クロスフローディスクの有効ろ過面積は155cm2、入口管の断面積は約35mm2、クロスフローディスク通路の断面積が約15mm2であり、
ステップ4)凍結乾燥:ステップ3)で得られた目標内容物を凍結乾燥して、パウダー12g形成し、パウダー中に含まれる細菌含有量は1.5×1011個/1gパウダーである。カプセルにする。
そのうち、不純物除去ステップで精密ろ過された濃縮液を戻して粗ろ過された浸透液と混合し、循環回路を形成し、微孔性膜クロスフローフィルタの濃縮液を戻して不純物除去ステップの精密ろ過された浸透液と混合し、循環回路を形成する。
ステップ1)~ステップ3)のステップ、即ち分離回収ステップは全体的に60minかかる。
【0082】
[比較例3]
図2に示されるような腸管内容物分離回収装置を用いて、100gの腸管内容物と550ml生理食塩水を混合し、攪拌機で5min攪拌後、粗ろ過フィルタ、孔径が0.25mmの精密ろ過フィルタを通過させてろ過し、精密ろ過で得られた浸透液を2000rpmの遠心回転数で5min遠心処理した後、上澄み液を廃棄し、生理食塩水を添加する、このように遠心を3回行い、上澄み液を廃棄し、残りの沈殿物、即ち目標内容物を得た。
実施例6(DY)、比較例3(MY)を繰り返し4回行い(一週間以内に同一ドナーの糞便に対して4回実験を行った)、得られた目標内容物と初期(当初)糞便(F)に対して、16sR DNAシーケンス方法を用いて、そのうちの菌種の種類及び存在度を測定した。
【0083】
微生物多様性を群集生態学的に検討し、単一サンプルの多様性分析(Alpha多様性)により、微生物叢落の存在度及び多様性を反映することができ、一連の統計学的分析指標によって環境群集の種類存在度と多様性の推定を含む。Shannon:サンプルにおける微生物の多様性指標の一つを推定するために用いられる。Shannon値が大きいほど、群落多様性が高いことを示している。
【0084】
図9により、本発明により抽出された細菌叢は、遠心法よりも生物多様性に優れ、遠心法との差異が明らかであるが示されている。
【0085】
PCA分析(Principal Component Analysis)、即ち主成分分析は、分散分解を運用して、多群のデータの差異を2次元座標図上に反映し、座標軸は分散値を最大に反映可能な2つの固有値を取る。試料の組成が近いほど、PCA図に反映される距離はより近い。
【0086】
図10~
図12は、本発明で抽出される細菌叢が種類と存在量(豊度)において初期糞便とより近く、その類似度がより高く、統計学的差異が顕著であることを示している。
【0087】
実施例6(DY)、比較例3(MY)で得られた目標内容物は、初期糞便(F)と統計学差異が顕著である。
【0088】
R値(R-value)は、(-1、1)の間に介在し、R値(R-value)が0よりも大きければ、群間の差異が有意であることを示している。統計的分析の信頼度は、P値(P-value)で表され、P<0.05は統計的に有意差があることを示している。
【0089】
表1は実施例6(DY)、比較例3(MY)で得られた目標内容物及び初期糞便(F)の統計学的数値を示している。
【表1】
【0090】
これから分かるように、本発明で得られた目標内容物(細菌叢)は、その種類及び分布が、遠心法よりも、初期(当初)腸管内容物(糞便)における細菌叢の種類及び分布に近い。同時に、本発明は、より優れた再現可能性を有することが分かった。
【0091】
[実施例7と比較例4~5]
充分に均一に混合された腸管内容物(糞便)は、重量に応じて1部あたりの重量が100gとなるように、9つに平均に分け、3つは実施例7に用いられ、3つは比較例4に用いられ、3つは比較例5に用いられる。
【0092】
実施例7における腸管内容物の分離と回収は、実施例1と同じ分離回収装置及び方法が用いられたが、その違いは以下のみである。
容器6に加えられた生理食塩水は500ml、粗ろ過のフィルタ孔径は2mm、精密ろ過モジュール4のフィルタ孔径は40μm、微孔膜クロスフローディスク式フィルタ12のフィルタ孔径は0.5μm、開口率は85%である。
【0093】
60分間かけて分離、回収を完成させ、得られた濃縮菌液を凍結乾燥することで細菌パウダーを得るようにし、3回繰り返し、それぞれが12g、11g、12gであった。
【0094】
比較例4は、中国特許出願CN201810852561.2における実施例3を参照して行ったが、その違いは以下のみである。生理食塩水は500ml、精密ろ過フィルタ孔径は上から下の順でそれぞれ0.5mmと40μmである。
【0095】
120分間かけて分離、回収し、得られた濃縮菌液を凍結乾燥することで細菌パウダーを得て、3回繰り返し、それぞれが8g、8g、7gであった。
【0096】
比較例5は、比較例1の方式を参照して行ったが、その違いは以下のみである。容器6に加えられた生理食塩水は550mlで、粗ろ過のフィルタ孔径が2mm、精密ろ過モジュール4のフィルタ孔径が40μmである。
【0097】
150分間かけて分離、回収し、得られた濃縮菌液を凍結乾燥することで細菌パウダーを得て、3回繰り返し、それぞれが3g、2g、2gであった。
【0098】
得られた実施例7、比較例4、比較例5におけるサンプルの平均複製数を測定した。サンプルの平均複製数はサンプル中の生体サンプル数を反映している。
【0099】
実施例7、比較例4、比較例5のサンプルの平均複製数/gパウダーの結果は、表2に示される通りである。
【0100】
【0101】
表2の平均複製数/gパウダーの数値に対して、対数を取り、
図13に示される通りである。
実施例7、比較例4及び比較
図5の結果から、本発明の方法で得られた結果の桁が一致し、再現性が良好で、分離回収の効率が高くて、1h以内に分離回収を終わらせることができ、得られる細菌叢パウダーのクオリティがより高いことが判明した。従来技術を用いた比較例4は、得られた結果の桁が一致し、再現性が良好であったが、その精密ろ過ステップにおいては、依然従来のろ過、及び、クロスフローで収集する際にニュークリポアメンブレンが用いられ、分離回収時間全体がより長く、得られた細菌叢パウダーのクオリティも本発明より劣り、平均複製数/gパウダー値も本発明よりも3桁低かった。従来の多段通常ろ過が用いられる比較例5は、得られた結果に明らかな差異があり、再現性が悪く、全体の分離回収時間がより長く、得られた細菌叢パウダーの質量がより少なく、平均複製数/gパウダーの値は本発明より8桁以上低かった。
【0102】
以上は本発明に係る実施形態を詳細に説明したが、理解や説明の便宜上例を挙げているに過ぎず、本発明を限定するものではない。上述した実施形態は、本発明を詳細に説明したものの、当業者は、上述した実施形態に記載の技術構成を修正するか、またはそのうちの技術的特徴を等価的に変更することができ、これらの修正または変更は、本発明に係る実施形態に記載の技術構成の趣旨及び範囲に属すると理解すべきである。
【国際調査報告】