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特表2023-509262車両サービスを提供して、その車両サービスの支払いプロセスを起動する、コンピュータに実装される方法、ソフトウェアプログラム及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(54)【発明の名称】車両サービスを提供して、その車両サービスの支払いプロセスを起動する、コンピュータに実装される方法、ソフトウェアプログラム及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/38 20120101AFI20230301BHJP
   G06Q 20/06 20120101ALI20230301BHJP
   G06Q 50/30 20120101ALI20230301BHJP
【FI】
G06Q20/38 310
G06Q20/06
G06Q50/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514211
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(85)【翻訳文提出日】2022-03-02
(86)【国際出願番号】 EP2020061951
(87)【国際公開番号】W WO2021104682
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】19211786.9
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVASCRIPT
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】コールブレナー・フェリクス
(72)【発明者】
【氏名】レーベル・クリスティアン
【テーマコード(参考)】
5L049
5L055
【Fターム(参考)】
5L049CC42
5L055AA12
(57)【要約】
本発明は、車両サービスを提供して、その車両サービスの支払いプロセスを起動する、コンピュータに実装される方法に関する。本方法は、車両サービスを提供するサービスポイントユニット3と車両1の電子制御ユニット2の間のデータ接続10を構築して、車両サービスの提供開始時の初期車両サービスデータを電子制御ユニット2で収集する工程であって、この初期車両サービスデータが、データ接続10を構築した時のタイムスタンプと、車両1の識別データ11aと、このタイムスタンプ時における車両サービスの提供によって変更されるべき量を表す車両1の状態の少なくとも一つの値11bとを有する工程S10と、電子制御ユニット2で収集された初期車両サービスデータと、車両サービスの提供完了の終りに更新された初期車両サービスデータである最終車両サービスデータとを順番に、或いは互いに一緒にして、データの修正に耐えるように構成されたブロックチェーン網5に保存する工程S20、並びにサービスポイント3と接続されたサービス提供業者通信ユニット4で収集された完了した車両サービスのサービス提供業者サービスデータをブロックチェーン網5に保存する工程S24と、所定の単位の初期車両サービスデータ及び最終車両サービスデータの少なくとも一つの第一の数値20b;20dを所定の単位の完了した車両サービスの提供業者サービスデータの少なくとも一つの第二の数値24a;24bと比較して、第一の数値20b;20dと第二の数値24a,24b及び/又は第一の数値20b;20dと第二の数値24a,24bを用いた算術演算に基づく比較から得られる第三の数値が、所定の数値範囲内にあるか、或いは所定の閾値を下回るか、上回る場合に、この妥当性が肯定的であるとすることによって、車両サービスの提供の妥当性をブロックチェーン網5で検査する工程S25と、この妥当性が肯定的である場合に、車両サービスの支払いプロセスをブロックチェーン網5で起動する工程S26とを有する。本発明の別の観点は、本方法を実現するソフトウェアプログラムと、車両サービスの妥当性を検査して、車両サービスの支払いプロセスを起動するシステムとである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両サービスを提供して、その車両サービスの支払いプロセスを起動する、コンピュータに実装される方法であって、
車両サービスを提供するサービスポイントユニット(3)と車両(1)の電子制御ユニット(2)の間のデータ接続(10)を構築して、車両サービスの提供開始時の初期車両サービスデータを電子制御ユニット(2)で収集する工程であって、この初期車両サービスデータが、データ接続(10)を構築した時のタイムスタンプと、車両(1)の識別データ(11a)と、このタイムスタンプ時における、車両サービスの提供によって変更されるべき量を表す車両(1)の状態の少なくとも一つの値(11b)とを有する工程(S10)と、
電子制御ユニット(1)で収集された初期車両サービスデータと、車両サービスの提供完了の終りに更新された初期車両サービスデータである最終車両サービスデータとを順番に、或いは互いに一緒にして、データの修正に耐えるように構成されたブロックチェーン網(5)に保存する工程(S20)、並びにサービスポイント(3)と接続されたサービス提供業者通信ユニット(4)で収集された完了した車両サービスのサービス提供業者サービスデータをブロックチェーン網(5)に保存する工程(S24)と、
所定の単位の初期車両サービスデータ及び最終車両サービスデータの少なくとも一つの第一の数値(20b;20d)を所定の単位の完了した車両サービスの提供業者サービスデータの少なくとも一つの第二の数値(24a;24b)と比較して、第一の数値(20b;20d)と第二の数値(24a,24b)及び/又は第一の数値(20b;20d)と第二の数値(24a,24b)を用いた算術演算に基づく比較から得られる第三の数値が、所定の数値範囲内にあるか、或いは所定の閾値を下回るか、上回る場合に、この妥当性が肯定的であるとすることによって、車両サービスの提供の妥当性をブロックチェーン網(5)で検査する工程(S25)と、
この妥当性が肯定的である場合に、車両サービスの支払いプロセスをブロックチェーン網(5)で起動する工程(S26)と、を有する当該コンピュータに実装される方法。
【請求項2】
前記のサービスポイントユニット(3)と電子制御ユニット(2)の間でデータ接続(10)を構築する工程(S10)の後で、且つ前記のサービスポイントユニット(3)のデータと電子制御ユニット(2)のデータとをブロックチェーン網(5)に保存する工程の前に、
サービス提供業者通信ユニット(4)と電子制御ユニット(2)の間において、例えば、電子制御ユニット2(2)からサービス提供業者通信ユニット(4)にメッセージ(12a)を送信することによって、車両サービスの提供を開始するためのメッセージ(12a)を交換して、車両サービスの提供が完了した場合に、例えば、電子制御ユニット2(2)からサービス提供業者通信ユニット(4)に別のメッセージ(12b)を送信することによって、サービスの提供が完了したことを示す別のメッセージ(12b)を交換する工程(S12)が行われる請求項1に記載のコンピュータに実装される方法。
【請求項3】
前記の第一のデータ接続(10)を構築する工程(S10)が、車両サービスの提供を開始するためのメッセージをサービス提供業者通信ユニット(4)と電子制御ユニット(2)の間で交換する工程(S12)のトリガーとして使用される請求項2に記載のコンピュータに実装される方法。
【請求項4】
前記の初期車両サービスデータのハッシュと最終車両サービスデータの別のハッシュがブロックチェーン網(5)に保存され、このハッシュとこの別のハッシュが電子制御ユニット(2)によって署名される請求項1~3のいずれか1項に記載のコンピュータに実装される方法。
【請求項5】
前記の車両サービスが、電気車両又はハイブリッド車両である車両(1)の充電、燃焼エンジン又は水素エンジンを備えた車両(1)の燃料補給、ハイブリッド車両である車両(1)の燃料補給、駐車、通行料の支払い、レンタカーの使用及び車両(1)内からのショッピングの中の少なくとも一つを包含する請求項1~4のいずれか1項に記載のコンピュータに実装される方法。
【請求項6】
前記の車両サービスが充電であり、電気車両充電ステーションの形のサービスポイントユニット(3)と電子制御ユニット(2)の間のデータ接続(10)が、電気車両充電ステーション(3)の充電ケーブルを車両(1)の充電ポートに差し込むことによって構築され、前記の第一の数値(20b;20d)を第二の数値(24a;24b)を比較することが、充電時間長(20d,24b)又は充電消費量(20b,24a)を比較することから成る請求項5に記載のコンピュータに実装される方法。
【請求項7】
前記のサービスポイントユニット(3)とサービス提供業者通信ユニット(4)を提供するサービス提供業者に依存して、車両サービスの支払いプロセスが、ブロックチェーン網(5)において、例えば、暗号通貨の価格変動を防止するために安定した硬貨により実行されるか、或いは従来の手段、特に、クレジットカードを用いて実行される請求項1~6のいずれか1項に記載のコンピュータに実装される方法。
【請求項8】
前記の初期車両サービスデータ及び最終車両サービスデータをブロックチェーン網(5)に保存する工程(S20)、車両サービスの提供の妥当性を検査する工程(S25)及び車両サービスの支払いプロセスを起動する工程(S26)が自動的に行われる請求項1~7のいずれか1項に記載のコンピュータに実装される方法。
【請求項9】
少なくとも車両サービスの提供の妥当性を検査する工程(S25)と車両サービスの支払いプロセスを起動する工程(S26)が、スマートコントラクト(6)、例えば、イーサリアムスマートコントラクトを用いることにより行われ、このスマートコントラクトが、異なる種類の車両サービス、特に、請求項5に記載された車両サービスに関する単一のスマートコントラクトとして用いられる請求項1~8のいずれか1項に記載のコンピュータに実装される方法。
【請求項10】
本方法は、本方法が自律運転自動車である車両(1)によって実行できるように、全自動化された形で行われる、請求項1~9のいずれか1項に記載のコンピュータに実装される方法。
【請求項11】
コンピュータ上で実行された場合に請求項1~10のいずれか1項に記載のコンピュータに実装される方法を実現するソフトウェアプログラムであり、このコンピュータが、好ましくは、分散型計算システムであり、このシステムの一部がクラウド型計算システムに配置されているソフトウェアプログラム。
【請求項12】
車両サービスを提供して、その車両サービスの支払いプロセスを起動するシステムであって、
車両サービスを提供するように構成されたサービスポイントユニット(3)と車両(1)の電子制御ユニット(2)の間のデータ接続(10)を構築する(S10)データ接続手段であって、この電子制御ユニット(2)が、車両サービスの提供開始時の初期車両サービスデータを電子制御ユニット(2)で収集するように構成され、この初期車両サービスデータが、データ接続(10)を構築した時のタイムスタンプと、車両(1)の識別データ(11a)と、このタイムスタンプ時における、車両サービスの提供によって変更されるべき量を表す車両(1)の状態の少なくとも一つの値とを有するデータ接続手段(10)と、
電子制御ユニット(2)で収集された初期車両サービスデータと、車両サービスの提供完了の終わりに更新された初期車両サービスデータである最終車両サービスデータとを順番に、或いは互いに一緒にして、データの修正に耐えるように構成されたブロックチェーン網(5)に保存する(S20)ように構成された電子制御ユニット(2)と、
サービスポイントユニット(3)と接続され、サービス提供業者通信ユニット(4)で収集された完了した車両サービスのサービス提供業者サービスデータをブロックチェーン網(5)に保存する(S24)ように構成されたサービス提供業者通信ユニット(4)と、
所定の単位の初期車両サービスデータと最終車両サービスデータの少なくとも一つの第一の数値(20b;20d)を所定の単位の完了した車両サービスの提供業者サービスデータの少なくとも一つの第二の数値(24a;24b)と比較して、これらの第一の数値(20b;20d)と第二の数値(24a;24b)及び/又はこれらの第一の数値(20b;20d)と第二の数値(24a;24b)を用いた算術演算に基づく比較から得られる第三の数値が所定の数値範囲内にあるか、或いは所定の閾値を上回るか、下回る場合に、この妥当性が肯定的であるとすることによって、車両サービスの提供の妥当性をブロックチェーン網(5)で検査する(S25)ブロックチェーン網(5)の検査手段(6)と、
この妥当性が肯定的である場合に、車両サービスの支払いプロセスがブロックチェーン網(5)で起動される(S26)ように構成されたブロックチェーン網(5)の起動手段(6)と、を有するシステム。
【請求項13】
前記のサービスポイントユニット(3)とサービス提供業者通信ユニット(4)が単一のユニットに統合されている請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記のブロックチェーン網(5)がイーサリアムブロックチェーン又はイーサリアム中核網である請求項12又は13に記載のシステム。
【請求項15】
イーサリアムテスト網としてのリンケビュー網、別のイーサリアムテスト網としてのロプステン網又はエネルギーウェブチェーンのイーサリアムベースのテスト網としてのトバラバ網が、前記の初期車両サービスデータと最終車両サービスデータをブロックチェーン網(5)に保存する工程(S20)、車両サービスの提供の妥当性を検査する工程(S25)及び車両サービスの支払いプロセスを起動する工程(S26)を組み合わせるように構成されている請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両サービスを提供して、その車両サービスの支払いプロセスを起動する、コンピュータに実装される方法、その方法を実現するソフトウェアプログラム及び車両サービスを提供して、その車両サービスの支払いプロセスを起動するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車及び/又はトラックなどの従来の車両の運転者は、充電、燃料補給又は駐車などの多くの手作業を行わなければならない。それらの作業の多くは、異なる手法で、即ち、加入モデル、現金又はクレジットカードを用いて実現される支払い動作又はコントラクトベースの支払いを必要とする。レベル4又は5の全自律運転自動車に適用すると、作業を完了させる運転手が居ないので、それらの支払いを自動的に処理するとの課題が生じる。自動運転車両は、動作させるべき複数のサービスに頼っており、その中の幾つかは、駐車場に関する支払い又は電気車両の場合にはバッテリーの充電に関する支払いなどの金融取引を必要とする。それらのサービスの提供は、必ずしも互いに信頼していない複数の参加者及び機関の協力を必要とする。過去数年にわたって、信頼の無い環境においてビジネスを実行するための安心で安全な媒体をユーザーに提供できるようにするために、複数のブロックチェーンベースのサービスが導入されてきた。
【0003】
複数の提供業者が、彼らのサービスをデジタルで提供している。Ryd社(https://ryd.one/を参照)やPace社(https://www.pace.carを参照)のような会社は、燃料補給や充電に関するスマートフォンベースの支払いソルーション用の限定されたサービスを提供するために、異なる提供業者と協力している。限定されたブロックチェーンベースのソルーションが存在する。非特許文献1では、著者達が、ブロックチェーン技術を用いた中央の課金コーディネーターを提案している。非特許文献2では、著者達が、ブロックチェーンで車両バスのデータを追跡するためのブロックチェーンベースのフレームワークを記述している。それらのアプローチは、車両、保守サービス提供業者、車両製造業者、法律執行会社及び保険会社を結び付けている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】M. Baza, M. Nabil, M. Ismail, M. Mahmoud, E. Serpedin, and M. Rahman, 2018, Blockchain-based Privacy-Preserving Charging Coordination Mechanism for Energy Storage Units, arXiv preprint arXiv: 1811.02001 (2018)
【非特許文献2】M. Cebe, E. Erdin, K. Akkaya, H. Aksu, and S. Uluagac, 2018, Block4Forensic: An Integrated Lightweight Blockchain Framework for Forensics Applications of Connected Vehicles. IEEE Communications, Magazine 56, 10 (2018), 50~57
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のことから、本発明の課題は、車両サービスが単一の機関を信頼する必要無しに、安心で安全な手法で提供されて、支払われるように、車両サービスを提供して、その車両サービスの支払いプロセスを起動する、コンピュータに実装される方法を提供することである。また、本発明の課題は、運営費用を低減するために、支払いサービス提供業者を回避することができ、異なる種類の車両サービスのために同じ方法を使用することができるように、その方法を提供することである。別の課題は、自律運転車両が車両サービスを消費して支払うことができるように、自動的な手法で、即ち、ユーザーの支援無しに、本方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題は、請求項1の方法、請求項11のコンピュータプログラム製品及び請求項12のシステムによって解決される。更なる発展形態及び有利な実施形態は、従属請求項に定義されている。
【0007】
本発明による車両サービスを提供して、その車両サービスの支払いプロセスを起動する、コンピュータに実装される方法は、
車両サービスを提供するサービスポイントユニットと車両の電子制御ユニットの間のデータ接続を構築して、車両サービスの提供開始時の初期車両サービスデータを電子制御ユニットで収集する工程であって、この初期車両サービスデータが、データ接続を構築した時のタイムスタンプと、車両の識別データと、このタイムスタンプ時において、車両サービスの提供によって変更されるべき量を表す車両の状態の少なくとも一つの値とを有する工程と、
電子制御ユニットで収集された初期車両サービスデータと、車両サービスの提供完了の終わりに更新された初期車両サービスデータである最終車両サービスデータとを順番に、或いは互いに一緒にして、データの修正に耐えるように構成されたブロックチェーン網に保存する工程、並びにサービスポイントと接続されたサービス提供業者通信ユニットで収集された完了した車両サービスのサービス提供業者サービスデータをブロックチェーン網に保存する工程と、
所定の単位の初期車両サービスデータ及び最終車両サービスデータの少なくとも一つの第一の数値を所定の単位の完了した車両サービスの提供業者サービスデータの少なくとも一つの第二の数値と比較して、これらの第一と第二の数値及び/又はこれらの第一と第二の数値を用いた算術演算に基づく比較から得られる第三の数値が、所定の数値範囲内にあるか、或いは所定の閾値を下回るか、上回る場合に、この妥当性が肯定的であるとする、ブロックチェーン網で車両サービスの提供の妥当性を検査する工程と、
この妥当性が肯定的である場合に、ブロックチェーン網で車両サービスの支払いプロセスを起動する工程と、
を有する。
【0008】
車両サービスとは、自動車、トラック、自転車、オートバイ、ボート、船、飛行機又はそれ以外の動く器などの車両と関連する、車両が受けることができるか、或いは支払いのための遣り取りで車両が提供することができる、どのようなサービスでもよい。車両サービスの例は、電気車両又はハイブリッド車両である車両への充電、燃焼エンジン又はハイブリッドエンジンを備えた車両への燃料補給、ハイブリッド車両である車両への燃料補給、駐車、通行料の支払い、レンタカーの使用及び車両内からのショッピングなどを包含する。そのため、車両サービスは、支払いに関して電気エネルギー又は化石エネルギーなどの資産を遣り取りするために、車両又は車両のユーザーの形の買い手と、車両サービス提供業者の形の売り手との間で実施される合意、通信又は動作である、車両に関連する金融取引として定義することができる。
【0009】
車両サービスを提供するサービスポイントと車両の電子制御ユニットの間のデータ接続は、有線式又は無線式であるとすることができ、サービスポイントによって電子制御ユニットに運ばれるデータは、アナログデータ、デジタルデータ、音声データ又はビデオデータなどのどのような形にすることも、或いは単純に電子制御ユニットと接続された車両又は電子制御ユニット自体のデータポートにおいて電流又は電圧を供給又は変化させる形態であるとすることもできる。例えば、車両の充電ポートに充電ケーブルを差し込む事象を車両の車両バスから読み取ることは、データ接続の構築と見做してよい。車両サービスの提供は、例えば、車両のバッテリーの充電時に、車両サービスの提供の始めと終わりに、それぞれ情報を入手するために、初期車両データと最終車両データを生成するなど、幾らかの時間が掛かってもよい。例えば、車両内からのショッピング又は駐車チケットの受取時に、車両サービスが即座に提供される場合、初期車両サービスデータは、車両サービスの提供直前、或いは提供以前の短い時間、例えば、1ミリ秒から1秒前の或る時点における情報から構成され、最終車両サービスデータは、車両サービスの提供直後、或いは提供以後の短い時間、例えば、1ミリ秒から1秒後の或る時点における情報から構成される。初期車両サービス及び/又は最終車両サービスデータは、車両サービスの提供の前及び/又は後における、データ接続を構築した時のタイムスタンプ、車両の識別データ、及びこのタイムスタンプ時における、車両サービスの提供によって変更されるべき量及び/又は変更された量を表す車両の状態の少なくとも一つの値以外に、車両の位置データ、例えば、GPS(全世界測位システム)データなどの更に別の情報を包含してよい。
【0010】
この電子制御ユニットは、単一のユニットの形の車両のエンジン制御ユニットであるか、或いは車両の別のユニットに含まれてよく、固定のユニット又は取り外し可能なユニットの形で車両の内部に配置してもよい。初期車両サービスデータ及び最終車両サービスデータは、電子制御ユニットのRAM(ランダムアクセスメモリ)、HD(ハードディスク)、SSD(ソリッドステイトディスク)又はそれと同様の機器に収集してよい。また、好適なインタフェースにより電子制御ユニットと接続されたUSB(ユニバーサルシリアルバス)スティックなどの取り外し可能な記憶媒体に保存することが可能である。ラズベリーパイを電子制御ユニットとして使用してよい。
【0011】
データの修正に耐える、ブロックチェーン又はブロック・チェーンとも呼ばれるブロックチェーン網は、暗号を用いて関連付けられた、増えて行く、ブロックと呼ばれるレコードのリストとして定義することができ、各ブロックは、一般的にマークルツリーと表現される、それ以前のブロックの暗号化ハッシュと、タイムスタンプと、トランザクションデータとを有する。それは、二つの参加者の間でトランザクションを効率的に、検査可能な恒久的な手法で記録できるオープンな分散型台帳として知られている。分散型台帳として使用するために、ブロックチェーンは、典型的には、ノード間通信と新しいブロックを検査するためのプロトコルに共同で準拠するピアツーピア網によって管理されている。所与のブロック内のデータは、一旦記録されると、網の過半数の同意を必要とする、それに続く全てのブロックの変更無しには遡って変更することができない。そのため、ブロックチェーンのレコードは変更不可能ではないが、ブロックチェーンは、設計上安全であると考えてよく、ビザンチン障害耐性が高い分散型計算システムの例である。ブロックチェーンは、イーサリアムブロックチェーンの形であってよく、このイーサリアムは、オープンソースでパブリックなブロックチェーンベースの分散型計算プラットフォーム及びスマートコントラクト(スクリプト記述)機能を特徴とするオペレーティングシステムとして定義することができる。この電子制御ユニットは、順番に、即ち、最初の初期車両サービスデータとその後の最終車両サービスデータの形で、或いは互いに一緒にして、即ち、組合せデータとしての初期車両サービスデータと最終車両サービスデータの形で、初期データと最終データをブロックチェーン網に保存してよい。高度な透明性のために、車両のユーザーは、初期車両サービスデータと最終車両サービスデータ及び/又は完了した車両サービスのサービス提供業者サービスデータに注目/追跡/アクセスすることを許されてよい。
【0012】
車両サービスの提供の妥当性は、初期車両サービスデータと最終車両サービスの少なくとも一つの第一の数値を完了した車両サービスの提供業者サービスデータの少なくとも一つの第二の数値と比較することによって、ブロックチェーン網で検査され、両方の値は同じ所定の単位である。例えば、第一の数値は、秒単位での充電時間長又はkW分又はkW時の単位の充電消費量であるとしてよい。例えば、充電ステーションの形のサービスポイントから車両に充電用電気を送る時のエネルギー損失のために、同じ秒又はkW分/kW時の単位での提供業者サービスデータの第二の数値が、第一の数値よりも大きいくてよい。両方の値は、所定の数値範囲の境界又は所定の閾値までのそれらのマージンを比較することにより、ブロックチェーン網で比較される。それに代わって、及び/又はそれに追加して、両方の値を互いに比較するために、第一と第二の数値の互いの引き算又は第一と第二の数値の比率としてのそれらの割り算などの第一と第二の数値を用いた算術演算に基づく比較から得られる第三の数値を使用してよい。第一と第二の数値及び/又は第三の数値が、所定の数値範囲内にあるか、或いは所定の閾値を上回るか、下回る場合に、車両サービスの提供が肯定的であるとされる。
【0013】
この妥当性が肯定的である場合、車両サービスの支払いプロセスが、ブロックチェーン網で起動される。この比較と起動は、スマートコントラクトによって実施してよい。この支払いは、ブロックチェーン網で、或いはクレジットカードの使用などの従来の手段により行ってよい。
【0014】
従って、本発明による方法は、車両がサービスを消費して、支払うことを可能にするために、車両サービスの提供の妥当性をブロックチェーンに基づき検査する工程を有する。自動運転自動車の特徴に対応するために、並びに普段使いの自動車の所有者の生活をより容易にするためにも、本発明の方法は、車両が値を生成して個々のビジネスユニットとして動作することを可能にする。この電子制御ユニットは、複数のサービス提供業者通信ユニットの形の複数のエコシステム及び異なるサービス提供業者との処理及び通信を扱うことができるブロックチェーン網に接続することが可能である。サービス提供業者通信ユニットの中の一つ以上は、サービス提供業者のバックエンドユニットの形でよい。電子制御ユニットの組合せ、各サービス提供業者通信ユニット及びブロックチェーン網は、車両が発生させた全ての料金及びコストを自動的に支払うとともに、駐車場の料金所などのインフラストラクチャーとの通信時の認証プロセスを扱うために使用することができる。それは、充電又は駐車事象に対する支払い時の高い精度でのマイクロペイメント又はナノペイメントを可能にする。更に、本発明による方法は、車両/自動車を介した収入の発生又は相乗り機能をも可能にする。それに追加して、ブロックチェーン網の恩恵を受けることによって、本発明による方法は、ユーザーが単一の機関を信頼する必要が無い、車両サービスの安心で安全な提供を規定する。また、本方法は、ブロックチェーン網での車両と充電ポイントの消費量を追跡することにより、高い透明性を提供するとともに、支払い提供業者の必要性を回避し、従って、運営コストを低減する。
【0015】
サービスポイントユニットと電子制御ユニットの間のデータ接続を構築する工程の後で、電子制御ユニットとサービス提供業者通信ユニットのデータをブロックチェーン網に保存する工程の前に、有利には、
サービス提供業者通信ユニットと電子制御ユニットの間で、例えば、電子制御ユニットからサービス提供業者通信ユニットにメッセージを送信することによって、車両サービスの提供を開始するためのメッセージを交換し、車両サービスの提供が完了した場合に、例えば、電子制御ユニットからサービス提供業者通信ユニットに別のメッセージを送信することによって、車両サービスの提供が完了したことを示す別のメッセージを交換する工程を実施してよい。電子制御ユニットとサービス提供業者通信ユニットの間の接続は、無線式及び/又はインターネットを介したデータ伝送と関連する方式でよい。従って、電子制御ユニットは、車両が、車両のバッテリーの充電などの車両サービスを受けられることをサービス提供業者通信ユニットに通報することができる。それに対して、サービス提供業者通信ユニットは、充電用電気を車両に送れることを、サービス提供業者通信ユニットと有線式又は無線式に接続してよいサービスポイントユニットに通報することができる。また、サービス提供業者通信ユニットは、サービスポイントユニットが車両のバッテリーの充電などの車両サービスを提供/送達できることを電子制御ユニットに通報することができる。それに対して、電子制御ユニットは、車両のバッテリーがフル充電されたこと、並びに車両への充電用電気の提供/送達が完了したことをサービス提供業者通信ユニットに通報することができる。
【0016】
本発明の有利な実施形態では、第一のデータ接続の構築は、車両サービスの提供を開始するためのサービス提供業者通信ユニットと電子制御ユニットの間のメッセージの交換に関するトリガーとして使用される。例えば、充電ケーブルが車両の充電ポートに差し込まれた時に、電子制御ユニットが、その事象を車両バスから読み取って、充電ポイントの形のサービスポイントユニットでの充電開始事象を起動する。このように、車両サービスの提供が簡単な手法で速く開始される。
【0017】
初期車両サービスデータのハッシュと最終車両サービスデータの別のハッシュがブロックチェーン網に保存されて、このハッシュとこの別のハッシュが電子制御ユニットによって署名されるのが好ましい。このようにして、ブロックチェーン網への初期車両サービスデータと最終車両サービスデータの転送が安全で信頼できる形で実施することができる。
【0018】
上述した通り、車両サービスは、電気車両又はハイブリッド車両である車両の充電、燃焼エンジン又は水素エンジンを備えた車両の燃料補給、ハイブリッド車両である車両への燃料補給、駐車、通行料の支払い、レンタカーの使用及び車両内からのショッピングの中の少なくとも一つを包含してよい。このようにして、本発明による方法を使用することによって、信頼できない環境において、車両への、並びに車両による異なる種類の車両サービスを安全に提供することができる。
【0019】
上述した通り、車両サービスが充電である場合、電気車両用充電ステーションの形のサービスポイントユニットと電子制御ユニットの間のデータ接続は、電気車両用充電ステーションの充電ケーブルを車両の充電ポートに差し込むことによって構築されてよく、第一の数値を第二の数値と比較することが、有利には、充電時間長又は充電消費量の比較から構成される。充電時間長と充電消費量を組み合わせることも可能である。
【0020】
サービスポイントユニットとサービス提供業者通信ユニットを提供するサービス提供業者に依存して、車両サービスの支払いプロセスが、ブロックチェーン網において、例えば、暗号通貨の価格変動を避けるために安定した硬貨を介して実行されるか、或いは従来の手段、特に、クレジットカードを使用して実行される。従って、本発明による方法は、どのような種類の支払いプロセスを起動して、車両サービスの支払うを行うのかに関して柔軟である。ユーザーのプライバシーを向上させるためには、個人情報などの車両のユーザーのデータ及び/又はクレジットカードデータなどのそれ以外のユーザー特有の情報をオフチェーンで保存すること、即ち、ブロックチェーン網に保存しないのが好ましい。車両がユーザーに割り当てられている場合、ユーザーデータは、車両の識別データによって示されて、電子制御ユニットで収集され、初期車両サービスデータと最終車両サービスデータにより構成される。
【0021】
ブロックチェーン網に初期車両サービスデータと最終車両サービスデータを保存する工程、車両サービスの提供の妥当性を検査する工程及び車両サービスの支払いプロセスを起動する工程が自動的に実施されるのが好ましい。このようにして、ユーザー又は第三者による誤った取引及び/又は有害な取引が最小化されて、本方法が速く安全に実施される。
【0022】
有利には、少なくとも車両サービスの支払いプロセスの妥当性の検査と車両サービスの支払いプロセスの起動は、スマートコントラクト、例えば、イーサリアムスマートコントラクトを用いて行われ、このスマートコントラクトは、異なる種類の車両サービス、特に、上述した車両サービスに関する単一のスマートコントラクトとして使用される。このようにして、運営コストを低減するために、異なる種類の車両サービスに関して、単一のスマートコントラクトを簡単かつ効率的に用いることができる。支払いプロセスがスマートコントラクトにより扱われる場合、支払いサービス提供業者が冗長となって、省略することができる。
【0023】
特に、本方法が自律運転車両又は自動運転車両である車両によって実行できるように、本方法が全自動化された形で実施されるのが有利である。
【0024】
本発明の別の観点は、コンピュータ上で実行された場合に本発明による方法を実現するソフトウェアプログラムである。前記のソフトウェアプログラムでは、コンピュータは、好ましくは、分散型計算システムであり、この計算システムの一部は、クラウド計算システム内に配置されるか、構成されるか、そこで動作するか、或いはそれらの一つ以上である。このソフトウェアプログラムは、このソフトウェアプログラムを表現するコンピュータプログラム製品又はそのデータを運搬するデータ記憶媒体として実現されてよい。
【0025】
また、本発明は、車両サービスを提供して、その車両サービスの支払いプロセスを起動するシステムに関する。このシステムは、
車両サービスを提供するように構成されたサービスポイントユニットと車両の電子制御ユニットの間のデータ接続を構築するデータ接続手段であって、この電子制御ユニットが、車両サービスの提供開始時の初期車両サービスデータを電子制御ユニットで収集するように構成され、この初期車両サービスデータが、データ接続を構築した時のタイムスタンプと、車両の識別データと、このタイムスタンプ時における、車両サービスの提供によって変更されるべき量を表す車両の状態の少なくとも一つの値とを有するデータ接続手段と、
電子制御ユニットで収集された初期車両サービスデータと、車両サービスの提供完了の終わりに更新された初期車両サービスデータである最終車両サービスデータとを順番に、或いは互いに一緒にして、データの修正に耐えるように構成されたブロックチェーン網に保存するように構成された電子制御ユニットと、
サービスポイントユニットと接続され、サービス提供業者通信ユニットで収集された完了した車両サービスのサービス提供業者サービスデータをブロックチェーン網に保存するように構成されたサービス提供業者通信ユニットと、
所定の単位の初期車両サービスデータと最終車両サービスデータの少なくとも一つの第一の数値を所定の単位の完了した車両サービスの提供業者サービスデータの少なくとも一つの第二の数値と比較して、これらの第一と第二の数値及び/又は第一と第二の数値を用いた算術演算に基づく比較から得られる第三の数値が所定の数値範囲内にあるか、或いは所定の閾値を上回るか、下回る場合に、この妥当性が肯定的であるとされることによって、車両サービスの提供の妥当性をブロックチェーン網で検査するためのブロックチェーン網内の検査手段と、
前記の妥当性が肯定的である場合に、車両サービスの支払いプロセスがブロックチェーン網で起動されるように構成されたブロックチェーン網内の起動手段と、
を有する。
【0026】
本発明によるシステムは、本発明による方法と関連して述べたものと同じ利点と効果を示す。これらの検査手段と起動手段は、有利には、スマートコントラクト内で組み合わされてよい。
【0027】
サービスポイントユニットとサービス提供業者通信ユニットが単一のユニットに統合されるのが好ましい。このようにして、別個の筐体が回避されて、両方のユニットの間の伝送エラーの可能性が最小化される。
【0028】
ブロックチェーン網は、有利には、イーサリアムブロックチェーン又はイーサリアム中核網として実現される。これらの網は、信頼でき、使い勝手が良く、保存容量と反応時間/待ち時間に関する所要の性能を提供することができる。イーサリアムテスト網としてのリンケビー網、別のイーサリアムテスト網としてのロップステン網又はエネルギーウェブチェーンのイーサリアムベースのテスト網としてのトバラバ網が、ブロックチェーン網における初期車両サービスデータ及び最終車両サービスデータの保存、車両サービスの提供の妥当性の検査及び車両サービスの支払いプロセスの起動を組み合わせるように構成されているのが好ましい。これらのどの構成を用いても、反応時間/待ち時間が、システムの速い信頼できる性能を提供するように最適化されている。
【0029】
本発明の別の観点、特徴及び利点は、以下の実施例の記述だけで、或いは添付図面と連携して明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第一の実施形態による電気自動車に充電する形の車両サービスの提供の妥当性を検査するシステムの機能ユニットを有する模式的なワークフロー図
図2】本発明の第二の実施形態による方法の工程のシーケンスの模式図
図3】本発明の別の実施形態による車両サービスの提供の妥当性を検査して、その車両サービスの支払いプロセスを起動するシステムの異なる網構成を用いたイーサリアムトランザクションの待ち時間のグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0031】
ここで、以下において、本発明の実施例を詳しく説明する。
【0032】
図1は、電気自動車1に充電する形の車両サービスの提供の妥当性を検査して、その充電の支払いプロセスを起動するシステムの機能ユニット1,2,3,4,5及び6を有するワークフロー図を図示している。電気自動車の形の車両1は、充電ケーブルの形のデータ及びエネルギー伝送接続部10を介して、充電ステーション又は充電ポイントとして実現されたサービスポイントユニット3と接続される。このサービスポイントユニット3は、サービスポイントユニット3とサービス提供業者通信ユニット4の間の要求メッセージ及び/又は確認メッセージとしての充電開始メッセージ13aと充電停止メッセージ13bを伝送するために、第一のサービスデータ接続部13を介して、車両1への充電を提供するサービス提供業者通信ユニット4と接続される。
【0033】
車両1の電子制御ユニット2は、充電ケーブル10が車両1の充電ポートに差し込まれるか、或いは引き抜かれた時に車両データ及び車両サービスデータを分析する分析ユニット2aを備えたラズベリーパイによって表されている。車両1は、車両バスの形の車両データ接続部11を介して、ケーブル10を差し込んだ時の(図示されていない)タイムスタンプと一緒に、その識別子11a、車両1のバッテリーの充電レベル11b、GPS位置データ11c及びケーブル挿入事象11dの形の初期車両サービスデータをラズベリーパイ2に通報する。そして、ラズベリーパイ2は、分析ユニット2aを用いて、これらのデータ11a~11dを分析して、第一の電子制御ユニットデータ接続部12を介して充電開始メッセージ12aを送信することによって、サービス提供業者通信ユニット4での充電プロセスを起動する。この要求は、メッセージ13aによって、第一のサービスデータ接続部13を介して、最終的に電気車両1に電力を提供するサービスポイントユニット2に配信される。充電の開始が成功した場合、ラズベリーパイ2は、その時点のタイムスタンプとセッション識別子を含む車両サービスデータを第二の電子制御ユニットデータ接続部20を介してブロックチェーン網5に、例えば、図1に図示された通りのリンケビーイーサリアムテスト網に保存する。
【0034】
ケーブル10が車両1の充電部から引き抜かれた時に、ラズベリーパイ2は、再び分析ユニット2aを用いて、最終車両サービスデータとしての更新された初期車両サービスデータを分析する。これは、充電停止メッセージ12bを送信することによって充電停止事象を起動して、充電ポイント2が、サービス提供業者通信ユニットから充電停止メッセージ13bを受信した時点で電力の提供を停止する。そして、ラズベリーパイ2は、ケーブル10が引き抜かれた時の更新されたタイムスタンプと一緒に、その識別子20a、車両のバッテリーの更新された充電レベル20b、更新されたGPS位置データ20c及びケーブル10の差し込みから引き抜きまでの時間長20d及び/又はケーブル引き抜き事象11dの形の最終車両サービスデータを第二の電子制御ユニットデータ接続部20を介してブロックチェーン網5に保存する。サービス提供業者通信ユニット4は、サービス提供業者通信ユニット4で収集された完了した車両サービスの車両1に転送された充電量24aとケーブル10の差し込みから引き抜きまでの時間長24bの形のサービス提供業者サービスデータを第二のサービスデータ接続部24を介してブロックチェーン網5に保存する。スマートコントラクト6は、第一のブロックチェーンデータ接続部25を介してスマートコントラクト6によって受信されるデータであるエネルギー補給データ25bとしての充電ポイント3の提供されたエネルギー24aと、車両1の初期充電レベル11bと更新された充電レベル20bの間の差としての消費されたエネルギーとを比較する。それに代わって、或いはそれに追加して、スマートコントラクト6は、電子制御ユニット2のケーブル10の差し込みから引き抜きまでの時間長20dを、充電時間長データ25aとしてサービス提供業者通信ユニット4によって収集された完了した車両サービスのケーブル10の差し込みから引き抜きまでの時間長24bと比較してよい。この比較が肯定的である場合に、トバラバブロックチェーンでの支払い26aが、スマートコントラクト6によって、第一のブロックチェーンデータ接続部25又は第二のブロックチェーンデータ接続部26を介して起動されて、このプロセスが終了する。ブロックチェーン網5は、リンケビーイーサリアムテスト網、スマートコントラクト6及びトバラバブロックチェーンを有する。
【0035】
図1に図示されたシステムのワークフローと機能ユニット1,2,3,4,5及び6により、自動車1がサービスに接続して、消費し、その消費に対して支払うことを可能にする本来のエコシステムが提供される。本発明の適用可能性を示すために、電気車両に充電する使用形態が図1に図示されている。ラズベリーパイは、車両エンジン制御ユニット2(ECU)を表すために使用されている。ラズベリーパイ2は、自動車1の診断インタフェース(OBD2)に接続され、それは、同様のリソース制約を有するので、現実の車両バスデータを用いて動作させて、ラズベリーパイ2を実際の車載ECU2に置き換える場合の要件を収集することを可能にする。
【0036】
充電ケーブル10が差し込まれると、その事象が車両バス11から読み取られる。そして、充電開始事象が充電ポイント3で起動される。安心かつ信頼される手法で充電プロセスの開始を記録するために、車両識別子11a、タイムスタンプ及びバッテリーの充電状態11bを含む車両情報のハッシュが、電子制御ユニット2によって署名されたトランザクションを介して、イーサリアムブロックチェーンに保存される。ユーザーのプライバシーを向上させるために、ユーザーデータは、オフチェーンで保存される、即ち、ブロックチェーン5には保存されない。充電ケーブル10が引き抜かれると、充電停止事象を介して充電プロセスが終了する。その結果、更新された車両データのハッシュがイーサリアムブロックチェーンに保存される。
【0037】
全ての関係者によって信頼することができる、充電プロセスの安全な支払いを保証するために、イーサリアムスマートコントラクト6が使用される。このコントラクト6は、充電ポイント3のデータを車両1のデータと比較することを可能にする。充電ポイント運営者のビジネスモデルに依存して、充電時間長25a又は充電消費量25bが比較される。当該値が或る閾値内にある場合、支払い26aが自動的に起動される。提供業者に依存して、支払い26aは、ブロックチェーン技術を用いて(例えば、暗号通貨の価格変動を避けるために安定した硬貨を介して)、或いはクレジットカードのような従来の手段を用いて実行することができる。
【0038】
スマートコントラクトの異なる設計の中で、最も効率的なシステムは、システムの論理部を、ブロックチェーン5に車両データのハッシュを保存して、消費されたエネルギーを自動的に比較する一つのスマートコントラクト6として組み合わせたものである。また、データの保存と比較のために、複数のコントラクトを用いる代わりに、一つのスマートコントラクト6だけを用いることは、スマートコントラクト6を備えた場合のイーサリアムのガス代を節約する。また、それは、一つのトランザクションだけを使用してデータを保存し、比較することが可能となるので、本発明による方法を実施する際の待ち時間を低減する。しかし、一つのコントラクトによるアプローチは、分業の原則に反する。また、本発明によるシステムでは、多くの仲介者(即ち、充電ポイント集合体又は支払い提供業者)が必要ないので、本発明による方法は関係者の数を半減させる。
【0039】
図2は、時間が上から下に経過する形での本発明による方法の方法の工程のシーケンスを図示している。最初の工程S10では、データ接続10が、電気車両1への充電などの車両サービスを提供するサービスポイントユニット3と車両の電子制御ユニットデータ2の間で構築されて、電子制御ユニット2において、車両サービスの提供開始時の初期車両サービスデータが収集される。この初期車両サービスデータは、データ接続10を構築した時のタイムスタンプと、車両1の識別データ11aと、このタイムスタンプ時における、充電レベル又は充電時間長としてよい、車両サービスの提供によって変更されるべき量を表す車両1の状態の少なくとも一つの値11bとを有する。工程S12は、例えば、電子制御ユニット2からサービス提供業者通信ユニット4へのメッセージ12aの送信による、サービス提供業者通信ユニット4と電子制御ユニット2の間における車両サービスの提供を開始するためのメッセージ12aの交換と、車両サービスの提供が完了した場合に、例えば、電子制御ユニット2からサービス提供業者通信ユニット4への別のメッセージ12bの送信による、車両サービスの提供が完了したことを示す別のメッセージ12bの交換とから成る。充電の開始と停止は、別の手法で、例えば、電気自動車のバッテリーの抵抗を監視することにより、例えば、充電を停止すべきことを直に認識した充電ポイント3によって実行することができる。そのため、この工程S12は、矢印とこの工程を示す四角形の破線によって任意選択として表示されている。
【0040】
次の工程S20は、工程18,19によって表される通り順番に、或いは単一の工程S20として表される通り互いに一緒にして、初期車両サービスデータと、車両サービスの提供完了の終わりに更新された初期車両サービスデータである最終車両サービスデータとをデータの修正に耐えるように構成されたブロックチェーン又はブロックチェーン網5に保存することに焦点を当てている。工程18,19,20と同時、或いはこれらの工程の前/後の工程S24が、サービスポイントユニット3と接続されたサービス提供業者通信ユニット4で収集された完了した車両サービスのサービス提供業者サービスデータをブロックチェーン網5に保存することを表している。
【0041】
次に、工程S25で、ブロックチェーン網5において、所定の単位の初期車両サービスデータ及び最終車両サービスデータの少なくとも一つの第一の数値20b;20dと、所定の単位の完了した車両サービスの提供業者サービスデータの少なくとも一つの第二の数値24a;24bとの比較、即ち、例えば、電子制御ユニット2の充電時間長20bとサービス提供業者通信ユニット4の充電時間長24a又は電子制御ユニット2の充電消費量20dとサービス提供業者通信ユニット4の充電消費量24bの比較によって、車両サービスの提供の妥当性が検査される。第一の数値20b;20dと第二の数値24a;24b及び/又は第一の数値20b;20dと第二の数値24a;24bを用いた算術演算に基づく比較から得られる第三の数値が所定の数値範囲内にあるか、或いは所定の閾値を下回るか、上回る場合に、この妥当性が肯定的であるとされる。この第三の数値は、第一の数値と第二の数値の間の差及び/又はそれらの比率として計算してよい。この妥当性が肯定的である場合、起動工程S26がブロックチェーン網5で実行されて、車両サービスに対して支払うための支払いプロセス26aが起動される。
【0042】
図3は、車両サービスの提供の妥当性を検査して、車両サービスの支払いプロセスを起動するシステムの異なる網構成を用いたイーサリアムトランザクションの待ち時間のグラフを図示している。設計を評価するために、本発明による自動化されたシステムを使用した場合にユーザーが経験する待ち時間が、充電ポイント3でNFC(NFC:Near Field Communication)カードを用いてユーザーを認証して、所定の支払い情報を用いて支払い26aを容認する既存の手動による自動化されていないプラットフォームと比較されている。また、特に、イーサリアムのトランザクション料に対して、このプラットフォームの運営コストが比較されている。イーサリアムテスト網のブロックチェーンに基づく本発明による方法は、既存の手動で運営されるプラットフォームよりも平均して30%速い。本発明によるシステムを使用するコストは、既知のソリューションと比べて、ほぼ50%、イーサ価格で300ドル低減することができる。
【0043】
ブロックチェーンの確認時間のために追加される待ち時間は、図3のグラフに表示されている。それは、電気車両の充電時における10回のテストケースのそれぞれ一つの充電プロセスに関する全てのトランザクションの平均実行時間30を表示している。各充電プロセスは、充電を開始するための遣り取りS13a(図1のメッセージ12a,13aを参照)と充電を停止するための遣り取りS13b(図1のメッセージ12b,13bを参照)と共に、工程S18,S19,S25及びS26を実施する時間長の積み重なった縦の欄によって表示されている。
【0044】
インフュラ社(https://infura.ioを参照)が主催するリモートノード31,32,33,34の異なるガス代[1Gウェイ(31を参照)、5Gウェイ(32を参照)、10Gウェイ(33を参照)及び100Gウェイ(34を参照)]が、AWS(アマゾンWebサービス)が主催するリモートノード35及びリンケビーテスト網のラズベリーパイ2上で動作する一つのライトノード36からAPI(Application Programming Interface)だけを使用した非ブロックチェーンソリューション41までのものと比較されている。同じ構成がロプステンテスト網37とトバラバテスト網40でテストされている。1Gウェイ又は0.000000001イーサのガス代に関するトランザクションコストは、65,697ガス×0.000000001イーサ=0.000065697イーサである。従って、160.83ドルのイーサ価格は、0.01ドルのトランザクション料となる。
【0045】
リンケビュー網のブロック時間は15秒である。データ保存機能を呼び出す場合、それは係属中のトランザクションのプールに送信される。このテスト網の係属中のトランザクションは多くないので、それは毎回次のブロックにマイニングされる。その理由は、トランザクションのガス代が100Gウェイにまで上昇することが性能の改善に繋がらないからである。
【0046】
イーサリアムは、コントラクト関数を実行するために異なる手法(これまで使用されてきた標準的なトランザクションとコントラクト呼び出し)を提供する。これらの呼び出しは、ノードのVM(仮想機械)内で直に実行される。これは、それらが決して網に送信されないことを意味する。そのため、コントラクト呼び出しは、コントラクトの状態を変更することができず、従って、読み取り専用である。我々のケースでは、エネルギー消費量又は時間長を比較する方法を比較するために、コントラクト呼び出しを使用することができる。これらの方法は、パラメータとして車両のエネルギー(充電時間長)を取って来て、それを充電ポイント3のエネルギー(充電時間長)と比較する。この呼び出しは、ブロックチェーンの状態を変更せず、そのため、全くガスを消費しない。それは、コントラクト関数を呼び出して、戻り値として比較出力を受け取る。コントラクト関数の呼び出しが局所的に行われるので、マイニングトランザクションは不要である。これは、トランザクション速度をほぼ100倍上昇させる。関数呼び出しの中央の実行時間は、インフュラ社のノードにトランザクションを送信する場合の18.298秒に対して、221ミリ秒である。このリンケビューテスト網上で動作するインフュラ社によって主催されるリモートノードを用いた構成は、符号39によって表されている。この待ち時間の性能が優れている一方、構成31と比べた実行時間における改善は、信頼性を低下させるとの犠牲を伴う。本方法の呼び出しとその局所的な実施は、ブロックチェーン5に書き込まれないことを意味する。これは、その後の段階での比較に関する入力値25a,25bを調べることができないとの事実を生じさせる。結局、これは、呼び出し方法による比較が、それをJavaScriptで直に実現して、ブロックチェーン5を完全に回避するのと同じ程度安全であることを意味する。従って、便利さと使い易さにおける改善が、信頼性を低下させるとの犠牲を伴う。
【0047】
データ保存方法の呼び出しは、待ち時間の大部分を使う。データ保存S18,S19とエネルギー又は時間消費量の比較S25のトランザクションは最適化することができる。データ保存方法は、一つの追加トランザクションを免れるために、エネルギー比較方法内で呼び出される。このリンケビューテスト網で動作するインフュラ社によって主催されるリモートノードを用いた構成は、符号38によって表されている。このデータの保存S18,S19と比較S25に関するトランザクション(1Gウェイ/1コントラクト・インフュラ/リンケビュー)を組み合わせた構成38は、一つの追加の保存トランザクションを回避できるので、リンケビュー網とロプステン網での性能が最良の構成である。
【0048】
非ブロックチェーンソルーション41を使用するよりも10秒だけ遅いエネルギーウェブチェーンのイーサリアムベースのテスト網であるトバラバ網40における性能の方が、より良好である。NFCカードを用いた手動のプロセスの時間は、ブロックチェーン技術を用いた本発明による方法よりも10秒を大幅に上回る長い時間超過している。
【0049】
本発明では、車両がサービスの支払いを自動的に行うことを可能にする方法とシステムが提示されている。本発明による方法と本発明によるシステムの各々は、車両データの信頼できる保存、例えば、スマートコントラクトを介した消費されたエネルギーの妥当性の自動的な検査及びブロックチェーン技術を用いた支払いの選択肢を提供する。全自動化された実施形態では、自律運転自動車は、ユーザーの遣り取り無しに車両サービスの支払いが可能である。
【0050】
例えば、車両1に充電する形の車両サービスに関するスマートコントラクト6を用いた、ここで前に開示された、単一又は複数の実施形態に関して開示された一つの技術的な特徴又は複数の技術的な特徴は、技術的な理由から存在しないと規定されるか、或いは存在できない場合を除いて、例えば、駐車券又は通行料金を支払う形の車両サービスに関する同じスマートコントラクトを用いた別の実施形態でも存在してよい。
図1
図2
図3
【国際調査報告】