(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(54)【発明の名称】小型結晶SSZ-27、その合成及び使用
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20230301BHJP
B01J 29/70 20060101ALI20230301BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20230301BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20230301BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J29/70 A
B01J29/70 Z
B01D53/86 222
B01D53/86 228
B01J20/18 A
B01J20/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520495
(86)(22)【出願日】2020-08-17
(85)【翻訳文提出日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 IB2020057717
(87)【国際公開番号】W WO2021064483
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ジョエル イー.
(72)【発明者】
【氏名】ゾーンズ、ステイシー イアン
【テーマコード(参考)】
4D148
4G066
4G073
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA06
4D148AA08
4D148AB01
4D148AB02
4D148BA03X
4D148BA06X
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4D148BA14X
4G066AA61B
4G066AB10D
4G066CA51
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4G066FA34
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4G073BA02
4G073BA04
4G073BA69
4G073BA75
4G073BA83
4G073BB03
4G073BB12
4G073BB14
4G073BB48
4G073BD21
4G073CZ05
4G073CZ41
4G073FB30
4G073FC19
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4G073GB02
4G073UA05
4G169AA01
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4G169AA08
4G169BA07A
4G169BA07B
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4G169CA09
4G169CB02
4G169CB07
4G169ZA32A
4G169ZA32B
4G169ZB08
4G169ZC04
(57)【要約】
本開示は、SSZ-27モレキュラーシーブ材料の小型結晶形、その製造方法、及びその使用に関する。
【選択図】
図1(a)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
500nm以下の平均結晶サイズを有する結晶を含む、SSZ-27フレームワーク構造のモレキュラーシーブ。
【請求項2】
syn,syn-N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサメチル[4.3.3.0]プロペラン-8,11-ジアンモニウムカチオンを細孔内にさらに含む、請求項1に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項3】
20~80の範囲のSiO
2/Al
2O
3のモル比を有する、請求項1に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項4】
図1(a)に示す回折パターンと実質的に同じ粉末X線回折パターンを示す、請求項1に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項5】
(a)
(1)FAUフレームワーク型ゼオライト;
(2)第1族または第2族の金属(M)の供給源;
(3)syn,syn-N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサメチル[4.3.3.0]プロペラン-8,11-ジアンモニウムカチオン(Q)を含む構造指向剤;
(4)水酸化物イオンの供給源;及び
(5)水
を含む反応混合物を提供し;ならびに
(b)前記反応混合物を、SSZ-27フレームワーク構造のモレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供することを含む、
請求項1に記載のモレキュラーシーブの合成方法。
【請求項6】
前記反応混合物が、モル比に関して、以下のような組成を有する、請求項5に記載の方法。
【表1A】
【請求項7】
前記反応混合物が、モル比に関して、以下のような組成を有する、請求項5に記載の方法。
【表1B】
【請求項8】
前記FAUフレームワーク型ゼオライトが、前記反応混合物中のシリカ及びアルミニウムの唯一のまたは主要な供給源である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記FAUフレームワーク型ゼオライトがYゼオライトである、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記結晶化条件が、160℃超~200℃の範囲の温度を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも2つの成分の分離プロセスであって、前記プロセスが、前記少なくとも2つの成分を請求項1に記載のモレキュラーシーブと接触させて、少なくとも1つの分離された成分を生成することを含む、前記分離プロセス。
【請求項12】
有機化合物を含む原料から変換生成物への変換プロセスであって、前記プロセスが、有機化合物変換条件で前記原料を請求項1に記載のモレキュラーシーブを含む触媒と接触させることを含む、前記変換プロセス。
【請求項13】
排気ガスの処理プロセスであって、前記プロセスが、窒素酸化物(NO
x)及び/またはNH
3を含む燃焼排気ガスを、請求項8に記載のモレキュラーシーブを含む触媒と接触させて、NO
xの少なくとも一部を、N
2及びH
2Oに選択的に還元し、及び/またはNH
3の少なくとも一部を酸化することを含む、前記処理プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月2日に提出された米国仮出願第62/909,609号の優先権及び利益を主張する。
【0002】
本開示は、SSZ-27として指定されるモレキュラーシーブ材料、そのような材料の製造方法、及びこれらの材料の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
モレキュラーシーブSSZ-27の組成及び特徴的なX線回折パターンは、米国特許第9,586,829号に開示されており、これには、大型及び中型の細孔を含む材料であるモレキュラーシーブSSZ-26を生成することが知られている構造指向剤(SDA)の異性体の1つを使用したモレキュラーシーブの合成についても記載されている。
【0004】
SSZ-27のフレームワーク構造は、2種類の空洞の組み合わせとして説明することができ、そのうちの1つはハート型である。空洞は、共有の8リングウィンドウを介して接続され、直線型チャネルを作出し、これはペアで一緒に連結されて1次元チャネルシステムを形成する。ハート型の空洞は、50個のT原子([8261051046])からなり、自由寸法が約3.6×5.5Åの2つの8リングウィンドウを有し、これらは、42個のT原子([846846])を有する小さな空洞と共有される。各42Tの空洞は、4つのハート型の空洞を接続する。ハート型の空洞は、大きなサイドポケットとみなすことができ、これは、小さな細孔のゼオライトであるにもかかわらず、SSZ-27の内部容積が比較的大きいことを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SSZ-27反応混合物の従来の結晶化では、1~5μmのサイズ範囲の大きな結晶が生成される。そのような大きな結晶は、本質的に拡散が遅い。拡散性が重要な分離及び化学反応の場合、結晶サイズが小さいほど拡散経路が短くなるため、物質移動が促進され、所望の反応経路が改善され、そのような反応の選択性及び変換にプラスの影響がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、SSZ-27の小型結晶形は、syn,syn-N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサメチル[4.3.3.0]プロペラン-8,11-ジアンモニウムカチオンを使用するゼオライト間変換(すなわち、1つのゼオライト構造から別のゼオライト構造への転換)によって生成することができることが見出された。
【0007】
要約
第1の態様では、500nm以下の平均結晶サイズを有するSSZ-27フレームワーク構造のモレキュラーシーブを提供する。
【0008】
第2の態様では、細孔内にsyn,syn-N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサメチル[4.3.3.0]プロペラン-8,11-ジアンモニウムカチオンを含む、500nm以下の平均結晶サイズを有するSSZ-27フレームワーク構造のモレキュラーシーブを提供する。
【0009】
第3の態様では、500nm以下の平均結晶サイズを有するSSZ-27フレームワーク構造のモレキュラーシーブの合成方法を提供し、方法は:(a)(1)FAUフレームワーク型ゼオライト;(2)第1族または第2族の金属(M)の供給源;(3)syn,syn-N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサメチル[4.3.3.0]プロペラン-8,11-ジアンモニウムカチオン(Q)を含む構造指向剤;(4)水酸化物イオンの供給源;及び(5)水を含む反応混合物を提供し;ならびに(b)反応混合物をSSZ-27フレームワーク構造のモレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供することを含む。
【0010】
第4の態様では、少なくとも2つの成分を分離するためのプロセスを提供し、プロセスは、少なくとも2つの成分を、500nm以下の平均結晶サイズを有するSSZ-27フレームワーク構造のモレキュラーシーブと接触させて、少なくとも1つの分離された成分を生成することを含む。
【0011】
第5の態様では、原料を、500nm以下の平均結晶サイズを有するSSZ-27フレームワーク構造のモレキュラーシーブを含む触媒と、有機化合物変換条件で接触させることを含む、有機化合物を含む原料を変換生成物に変換するためのプロセスを提供する。
【0012】
第6の態様では、窒素酸化物(NOx)及び/またはNH3を含む燃焼排気ガスを、500nm以下の平均結晶サイズを有するSSZ-27フレームワーク構造のモレキュラーシーブを含む触媒と接触させ、NOxの少なくとも一部をN2及びH2Oに選択的に還元し、及び/またはNH3の少なくとも一部を酸化することを含む、排気ガスを処理するためのプロセスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(a)は、実施例2の合成されたままのSSZ-27生成物の粉末X線回折(XRD)パターンを示す。
【0014】
図1(b)は、米国特許第9,586,829号に従って調製した従来の合成されたままのSSZ-27の粉末XRDパターンを示す。
【0015】
【
図2】
図2(a)は、実施例2の合成されたままのSSZ-27生成物の走査型電子顕微鏡写真(SEM)画像を示す。
【0016】
図2(b)は、米国特許第9,586,829号に従って調製された従来の合成されたままのSSZ-27のSEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本明細書中で使用する用語「フレームワーク型」は、“Atlas of Zeolite Framework Types” by Ch. Baerlocher, L.B. McCusker and D.H. Olson (Elsevier, Sixth Revised Edition,2007)に記載されている意味を有する。
【0018】
用語「合成されたままの」とは、本明細書中では、結晶化後の、構造指向剤を除去する前の形態のモレキュラーシーブを指すために使用される。
【0019】
用語「無水」とは、本明細書中では、物理的に吸着された水と化学的に吸着された水の両方を実質的に欠くモレキュラーシーブを指すために使用される。
【0020】
本明細書中で使用するように、周期表の族の付番スキームは、Chem. Eng. News 1985, 63(5),26-27に開示されている。
【0021】
モレキュラーシーブの合成
モレキュラーシーブSSZ-27の小型結晶形は:(a)(1)FAUフレームワーク型ゼオライト;(2)第1族または第2族の金属(M)の供給源;(3)syn,syn-N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサメチル[4.3.3.0]プロペラン-8,11-ジアンモニウムカチオン(Q)を含む構造指向剤;(4)水酸化物イオンの供給源;及び(5)水を含む反応混合物を提供し;ならびに(b)反応混合物をSSZ-27フレームワーク構造のモレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供することを含む方法により合成することができる。
【0022】
反応混合物は、モル比に関して、表1に記載の範囲内の組成を有し得る。
【表1】
表中、Mは、第1族または第2族金属であり;Qは、syn,syn-N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサメチル[4.3.3.0]プロペラン-8,11-ジアンモニウムカチオンを含む。
【0023】
FAUフレームワーク型ゼオライトは、2つ以上のゼオライトを含み得る。2つ以上のゼオライトは、異なるシリカ対アルミナ比を有し得る。異なるゼオライトYがこの例である。FAUフレームワーク型ゼオライトは、反応混合物中のケイ素及びアルミニウムの唯一のまたは主要な供給源として使用することができる。
【0024】
第1族または第2族の金属(M)は、結晶化プロセスに有害ではない任意のM含有化合物を使用することができる。第1族または第2族の金属は、ナトリウムまたはカリウムであってもよい。第1族または第2族の金属の供給源として、金属水酸化物、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫酸塩、金属硝酸塩、及び金属カルボン酸塩が挙げられ得る。本明細書中で使用する場合、語句「第1族または第2族の金属」は、第1族の金属と第2族の金属が代替として使用されることを意味するのではなく、1つ以上の第1族の金属を単独で、または1つ以上の第2族の金属と組み合わせて、及び1つ以上の第2族金属を単独で、または1つ以上の第1族の金属と組み合わせて使用することができることを意味する。
【0025】
本モレキュラーシーブを調製する際に、構造指向剤は、以下の構造(1)によって表されるsyn,syn-N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサメチル[4.3.3.0]プロペラン-8,11-ジアンモニウムカチオン(Q)を含む:
【化1】
【0026】
Qの適切な供給源は、第四級アンモニウム化合物の水酸化物及び/または他の塩である。
【0027】
反応混合物はまた、モレキュラーシーブ材料のシード、例えば以前の合成で得られたSSZ-27を、好ましくは反応混合物の0.01~10,000重量ppm(例えば、100~5000重量ppm)の量で含み得る。種結晶添加は、完全な結晶化を生じさせるのに必要な時間を短縮するのに有利であり得る。さらに、種結晶添加は、望ましくない相でのSSZ-27の核形成及び/または形成を促進することによって、得られる生成物の純度の向上をもたらし得る。
【0028】
反応混合物成分は、複数の供給源から供給され得ることに留意されたい。また、2つ以上の反応成分を1つの供給源から提供することができる。反応混合物は、バッチ式または連続的に調製することができる。
【0029】
上記の反応混合物に由来する所望のモレキュラーシーブの結晶化は、例えばポリプロピレンジャーまたはテフロン加工もしくはステンレス鋼のオートクレーブなどの適切な反応容器内で、静的、タンブルまたは撹拌条件下で、160℃超~200℃(例えば、165℃~185℃)の温度で、用いる温度にて結晶化が生じるのに十分な時間(例えば、約1~14日)の間、実施することができる。SSZ-26よりもSSZ-27の形成を促進するために、160℃を超える結晶化温度が望ましい。結晶化は通常オートクレーブ内で行われるため、反応混合物は自生圧力を受ける。
【0030】
所望のモレキュラーシーブ結晶が形成されたら、遠心分離または濾過などの標準的な機械的分離技術によって、固体生成物を反応混合物から分離することができる。回収した結晶を水洗した後、数秒~数分(例えば、フラッシュ乾燥の場合は5秒~10分)または数時間(例えば、75℃~150℃のオーブン乾燥の場合は4~24時間)乾燥させ、合成されたままのモレキュラーシーブ結晶を取得する。乾燥工程は、大気圧または真空下で実施することができる。
【0031】
結晶化プロセスの結果として、回収された結晶性モレキュラーシーブ生成物は、その細孔内に、モレキュラーシーブの合成に使用する構造指向剤の少なくとも一部を含む。
【0032】
合成されたままのモレキュラーシーブを、その後の処理に供し、モレキュラーシーブの合成に使用する構造指向剤の一部または全部を除去してもよい。構造指向剤の除去は、合成されたままの材料を、空気、窒素、またはそれらの混合物から選択される雰囲気中にて、構造指向剤の一部または全部を除去するのに十分な温度で加熱する熱処理(例えば、か焼)を使用して実施してもよい。熱処理は、最大700℃(例えば、400℃~700℃)の温度で、少なくとも1分間、一般的には20時間以内(例えば、1~12時間、または3~8時間)実施してもよい。熱処理には大気圧以下の圧力を使用してもよいが、利便性の理由から大気圧が望ましい。さらに、または代替的に、構造指向剤は、オゾンで処理することによって除去することができる。
【0033】
モレキュラーシーブ内のフレームワーク外の第1族または第2族の金属カチオンは、当技術分野で周知の技術に従って(例えば、イオン交換によって)、水素、アンモニウム、または任意の所望の金属カチオンに置き換えることができる。
【0034】
モレキュラーシーブの特性評価
合成されたままの無水の形態で、本発明のSSZ-27モレキュラーシーブは、モル比に関して、表2に示す範囲内の化学組成を有し得る。
【表2】
表中、Qは、syn,syn-N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサメチル[4.3.3.0]プロペラン-8,11-ジアンモニウムカチオンを含み;Mは、第1族または第2族金属である。
【0035】
本開示のSSZ-27結晶は、好ましくは、それぞれ独立して、約500nm以下、約250nm以下、または約150nm以下の平均結晶サイズを有し得る。さらに、または代替的に、本開示のSSZ-27結晶は、25~500nmの範囲(例えば、25~250nm、25~125nm、50~500nm、または50~250nm)の平均結晶サイズを有し得る。米国特許第9,586,830号に従って調製された従来のSSZ-27は、一般的に、少なくとも1μm(例えば、1~5μm)の平均結晶サイズを有する。
【0036】
結晶サイズは、個々の結晶(双晶を含む)に基づいているが、結晶の集合は含まない。結晶サイズは、3次元結晶の最長の対角線の長さである。結晶サイズの直接測定は、SEMやTEMなどの顕微鏡法を使用して実行することができる。例えば、SEMによる測定は、材料の形態を高倍率(通常は1000倍~50,000倍)で検査することを含む。SEM法は、モレキュラーシーブ粉末の代表的な部分を適切な試料台に分散させて、個々の粒子が1000倍~50,000倍の倍率で視野全体に適度に均一に広がるようにすることにより実行することができる。この集団から、ランダムな個々の結晶の統計的に有意なサンプル(例えば、50~200)を調べ、個々の結晶の最長の対角線を測定し、記録する。明らかに大きな多結晶凝集体である粒子は、測定値に含めるべきではない。これらの測定値に基づいて、サンプルの結晶サイズの算術平均を計算する。平均結晶サイズは、Scherrerの式を使用したX線回折によって決定することもできる。
【0037】
米国特許第9,586,829号によって示されているように、モレキュラーシーブSSZ-27は、合成されたままの形態で、少なくとも以下の表3に記載のピークを含み、その焼成形態では、少なくとも表4に記載のピークを含む粉末X線回折パターンを有する。
【表3】
【表4】
【0038】
本明細書に記載するように調製した、合成されたままの形態またはか焼形態の小型結晶SSZ-27は、
図1(a)に示す結晶と実質的に同じ特徴的なX線粉末回折パターンを有し得る。ゼオライトの粉末X線回折パターンの特定の線は、ゼオライト結晶の関連する寸法が減少するにつれて広がる傾向があり、その結果、隣接する線が重なり始め、それによって部分的に分解されたピークまたは未分解の広範なピークとして現れ得ることが知られている。
【0039】
本明細書に提示する粉末X線回折パターンは、標準的な技術によって収集した。放射線はCuKα放射線であった。ピークの高さと位置を、2θの関数として(θはブラッグ角度である)、ピークの相対強度(バックグラウンドを調整)から読み取り、記録された線に対応する平面間の間隔であるdを計算することができる。
【0040】
産業上の利用可能性
本発明のSSZ-27モレキュラーシーブは、分子種の混合物を分離し、イオン交換によって不純物を除去し、様々な有機変換プロセスを触媒するために使用することができる。分子種の分離は、分子サイズ(速度論的直径)または分子種の極性の程度のいずれかに基づき得る。分離プロセスは、少なくとも2つの成分をSSZ-27モレキュラーシーブと接触させて、少なくとも1つの分離された成分を生成することを含み得る。
【0041】
本発明のSSZ-27モレキュラーシーブは、炭化水素(例えば、メタン、エタン、エチレン、及びそれらの組み合わせ)の存在下でのこれらのガスを含有するストリーム内のCO2の選択的吸着剤、及び粉末もしくはペレット状または膜状の吸着剤としての使用に適し得る。SSZ-27モレキュラーシーブは、これらのガスを含有する1つまたは2つの炭素原子の炭化水素の吸着プロセス、及び粉末もしくはペレット状または膜状の吸着剤での分離に適し得る。例えば、SSZ-27は、エタンの存在下でエチレンの選択的吸着剤として使用され得る。SSZ-27モレキュラーシーブはまた、メタンの存在下でエチレンの選択的吸着剤として使用され得る。
【0042】
本発明のSSZ-27モレキュラーシーブは、多種多様な有機化合物変換プロセスを触媒するための触媒として使用することができる。本明細書に記載のSSZ-27モレキュラーシーブによって触媒され得る有機変換プロセスの例として、酸素化物のオレフィンへの変換、低級アルコールのアミノ化、及びジメチルエーテルのCOによる低温でのカルボニル化が挙げられる。メタノールは、エチレン及び/またはプロピレンの合成に特に好ましい酸素化物である。
【0043】
本発明のSSZ-27モレキュラーシーブまたはSSZ-27を含む金属は、還元剤(例えば、NH3)と窒素酸化物(NOx)との反応を促進して、元素状窒素(N2)と水(H2O)を選択的に形成することができる。したがって、触媒を、還元剤による窒素酸化物の還元を促進するように配合することができる(すなわち、SCR触媒)。そのような還元剤の例として、炭化水素(例えば、C3~C6炭化水素)、ならびにアンモニア及びアンモニアヒドラジンなどの窒素還元剤、または尿素、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムもしくはギ酸アンモニウムなどの任意の適切なアンモニア前駆体が挙げられる。
【0044】
本発明のSSZ-27モレキュラーシーブまたはSSZ-27を含む金属はまた、アンモニアの酸化を促進し得る。SSZ-27には、モレキュラーシーブに含浸された銅または鉄などの1つ以上の金属イオンを含めることができる。触媒は、特にSCR触媒の下流で通常遭遇するアンモニアの濃度にて酸素によるアンモニアの酸化を促進するように配合することができる(例えば、アンモニアスリップ触媒(ASC)などのアンモニア酸化(AMOX)触媒)。
【実施例】
【0045】
以下の例示的な実施例は、非限定的であることが意図される。
【0046】
実施例1
構造指向剤の合成
N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサメチル[4.3.3.0]プロペラン-8,11-ジヨウ化二アンモニウムの異性体混合物を、米国特許第4,910,006号に記載されているように調製した。S.Smeets et al.(Angew.Chem.Int.Ed.2019,58,2-9)に記載されるように、所望の異性体生成物、すなわちsyn,syn-N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサメチル[4.3.3.0]プロペラン-8,11-ジヨウ化二アンモニウムを、温めたアセトニトリルと水(13/1 v/v)からの選択的再結晶によって、生成物が1H NMR分光法によって純粋であると見なされるまで単離した。
【0047】
次いで、二ヨウ化物塩を脱イオン水に溶解し、過剰のBIO-RAD AG(登録商標)1-X8水酸化物イオン交換樹脂とともに一晩撹拌した。樹脂を濾過し、濾液を希HClで滴定することにより水酸化物含有量について分析した。
【0048】
実施例2
小型結晶SSZ-27の合成
23mLの鋼製Parrオートクレーブ用のテフロンライナー内にて、0.58gの溶液中、0.5ミリモルのsyn,syn-N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサメチル[4.3.3.0]プロペラン-8,11-二水酸化二アンモニウムの溶液(水酸化物の寄与に基づく)を、1gの1N NaOH、1gの脱イオン水、及び0.36gのCBV720Y-ゼオライト粉末(Zeolyst International;SiO2/Al2O3モル比=30)と混合することによって懸濁液を調製した。次いで、ライナーに蓋をして、23mLオートクレーブ内に密封し、対流式オーブン内でタンブリング条件(約43rpm)下で170℃にて7~10日間加熱した。次いで、固体を遠心分離によって単離し、脱イオン水で洗浄し、95℃のオーブンで乾燥させた。
【0049】
得られた合成されたままの生成物を粉末XRD及びSEMによって分析した。
【0050】
生成物の粉末XRDパターンを
図1(a)に示し、このパターンは、粉末XRDパターンにおけるピークの広がりから推測されるように、生成物が結晶サイズを有意に減少させたことを示している。比較のために、米国特許第9,586,829号に従って調製された従来の合成されたままのSSZ-27の粉末XRDパターンを
図1(b)に示す。
【0051】
生成物のSEM画像を
図2(a)に示し、この画像は、結晶が500nm未満の結晶サイズを有する小型一次結晶子の形態であることを示している。比較のために、米国特許第9,586,829号に従って調製された従来の合成されたままのSSZ-27のSEM画像を
図2(b)に示し、この画像は、結晶の結晶サイズが1μmより大きいことを示している。
【0052】
誘導結合プラズマ(ICP)元素分析によって決定されたように、合成されたままの生成物は、以下の元素組成を有していた:
Si=34.0%;Al=2.27%;Na=0.266%。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
500nm以下の平均結晶サイズを有する結晶を含む、SSZ-27フレームワーク構造のモレキュラーシーブ。
【請求項2】
syn,syn-N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサメチル[4.3.3.0]プロペラン-8,11-ジアンモニウムカチオンを細孔内にさらに含む、請求項1に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項3】
20~80の範囲のSiO
2/Al
2O
3のモル比を有する、請求項1に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項4】
下記に示す回折パターンと実質的に同じ粉末X線回折パターンを示す、請求項1に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項5】
(a)
(1)FAUフレームワーク型ゼオライト;
(2)第1族または第2族の金属(M)の供給源;
(3)syn,syn-N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサメチル[4.3.3.0]プロペラン-8,11-ジアンモニウムカチオン(Q)を含む構造指向剤;
(4)水酸化物イオンの供給源;及び
(5)水
を含む反応混合物を提供し;ならびに
(b)前記反応混合物を、SSZ-27フレームワーク構造のモレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供することを含む、
請求項1に記載のモレキュラーシーブの合成方法
であって、
前記反応混合物が、モル比に関して、以下のような組成を有し、
【表1A】
前記FAUフレームワーク型ゼオライトが、前記反応混合物中のシリカ及びアルミニウムの唯一の供給源である、前記の方法。
【請求項6】
前記反応混合物が、モル比に関して、以下のような組成を有する、請求項5に記載の方法。
【表1B】
【請求項7】
前記FAUフレームワーク型ゼオライトがYゼオライトである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記結晶化条件が、160℃超~200℃の範囲の温度を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも2つの成分の分離プロセスであって、前記プロセスが、前記少なくとも2つの成分を請求項1に記載のモレキュラーシーブと接触させて、少なくとも1つの分離された成分を生成することを含む、前記分離プロセス。
【請求項10】
有機化合物を含む原料から変換生成物への変換プロセスであって、前記プロセスが、有機化合物変換条件で前記原料を請求項1に記載のモレキュラーシーブを含む触媒と接触させることを含む、前記変換プロセス。
【請求項11】
排気ガスの処理プロセスであって、前記プロセスが、窒素酸化物(NO
x)及び/またはNH
3を含む燃焼排気ガスを、請求項
1に記載のモレキュラーシーブを含む触媒と接触させて、NO
xの少なくとも一部を、N
2及びH
2Oに選択的に還元し、及び/またはNH
3の少なくとも一部を酸化することを含む、前記処理プロセス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
本発明のSSZ-27モレキュラーシーブまたはSSZ-27を含む金属はまた、アンモニアの酸化を促進し得る。SSZ-27には、モレキュラーシーブに含浸された銅または鉄などの1つ以上の金属イオンを含めることができる。触媒は、特にSCR触媒の下流で通常遭遇するアンモニアの濃度にて酸素によるアンモニアの酸化を促進するように配合することができる(例えば、アンモニアスリップ触媒(ASC)などのアンモニア酸化(AMOX)触媒)。
本発明に関連して、以下の内容を更に開示する。
[1]
500nm以下の平均結晶サイズを有する結晶を含む、SSZ-27フレームワーク構造のモレキュラーシーブ。
[2]
syn,syn-N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサメチル[4.3.3.0]プロペラン-8,11-ジアンモニウムカチオンを細孔内にさらに含む、[1]に記載のモレキュラーシーブ。
[3]
20~80の範囲のSiO
2
/Al
2
O
3
のモル比を有する、[1]に記載のモレキュラーシーブ。
[4]
図1(a)に示す回折パターンと実質的に同じ粉末X線回折パターンを示す、[1]に記載のモレキュラーシーブ。
[5]
(a)
(1)FAUフレームワーク型ゼオライト;
(2)第1族または第2族の金属(M)の供給源;
(3)syn,syn-N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサメチル[4.3.3.0]プロペラン-8,11-ジアンモニウムカチオン(Q)を含む構造指向剤;
(4)水酸化物イオンの供給源;及び
(5)水
を含む反応混合物を提供し;ならびに
(b)前記反応混合物を、SSZ-27フレームワーク構造のモレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供することを含む、
[1]に記載のモレキュラーシーブの合成方法。
[6]
前記反応混合物が、モル比に関して、以下のような組成を有する、[5]に記載の方法。
【表1A】
[7]
前記反応混合物が、モル比に関して、以下のような組成を有する、[5]に記載の方法。
【表1B】
[8]
前記FAUフレームワーク型ゼオライトが、前記反応混合物中のシリカ及びアルミニウムの唯一のまたは主要な供給源である、[5]に記載の方法。
[9]
前記FAUフレームワーク型ゼオライトがYゼオライトである、[5]に記載の方法。
[10]
前記結晶化条件が、160℃超~200℃の範囲の温度を含む、[5]に記載の方法。
[11]
少なくとも2つの成分の分離プロセスであって、前記プロセスが、前記少なくとも2つの成分を[1]に記載のモレキュラーシーブと接触させて、少なくとも1つの分離された成分を生成することを含む、前記分離プロセス。
[12]
有機化合物を含む原料から変換生成物への変換プロセスであって、前記プロセスが、有機化合物変換条件で前記原料を[1]に記載のモレキュラーシーブを含む触媒と接触させることを含む、前記変換プロセス。
[13]
排気ガスの処理プロセスであって、前記プロセスが、窒素酸化物(NO
x
)及び/またはNH
3
を含む燃焼排気ガスを、[8]に記載のモレキュラーシーブを含む触媒と接触させて、NO
x
の少なくとも一部を、N
2
及びH
2
Oに選択的に還元し、及び/またはNH
3
の少なくとも一部を酸化することを含む、前記処理プロセス。
【国際調査報告】